(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】トリアゾール抗真菌化合物PC945の多形
(51)【国際特許分類】
C07D 405/06 20060101AFI20230201BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230201BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230201BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230201BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230201BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230201BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230201BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230201BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230201BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230201BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20230201BHJP
A61K 31/201 20060101ALI20230201BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20230201BHJP
A61K 31/4174 20060101ALI20230201BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20230201BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
C07D405/06 CSP
A61K31/496
A61K45/00
A61K9/10
A61K9/72
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/24
A61K31/506
A61K31/7048
A61K38/12
A61K31/201
A61K31/404
A61K31/4174
A61K31/365
A61P31/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533459
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 GB2020053107
(87)【国際公開番号】W WO2021111142
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517123830
【氏名又は名称】プルモシデ リミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジョン ウォリス
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド スティール
(72)【発明者】
【氏名】スザンヌ バッター
(72)【発明者】
【氏名】オサマ スレイマン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ノーザン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン マイキーティウク
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー マーシャル
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB03
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4C063DD41
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4C084ZB351
4C084ZC751
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4C086ZC75
4C206AA01
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4C206MA76
4C206NA13
4C206NA14
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、式(I)の化合物:
【化1】
の結晶多形の現出及び関連する態様に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態の4-(4-(4-(((3R,5R)-5-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)-5-(2,4-ジフルオロフェニル)テトラヒドロフラン-3-イル)メトキシ)-3-メチルフェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(4-フルオロフェニル)ベンズアミドである式(I)の化合物:
【化1】
であって、該結晶形態が、多形形態1である、前記化合物。
【請求項2】
前記結晶形態が、(±0.2) 7.0、7.4、7.9、18.2、19.7、20.8、24.7度の2θから選択される3、4、5、6、又は7つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
実質的に
図1に示されるような粉末X線回折パターンを有する形態(形態1)の、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記結晶形態が、16.80Å、23.58Å、及び25.58Åの単位格子寸法、並びに90°のα、β、及びγ角を有する、請求項1~3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
結晶形態の4-(4-(4-(((3R,5R)-5-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)-5-(2,4-ジフルオロフェニル)テトラヒドロフラン-3-イル)メトキシ)-3-メチルフェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(4-フルオロフェニル)ベンズアミドである式(I)の化合物:
【化2】
であって、該結晶形態が、多形形態2である、前記化合物。
【請求項6】
前記結晶形態が、(±0.2) 10.8、17.0、20.3、22.7、23.9、及び24.3度の2θから選択される3、4、5、又は6つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
実質的に
図2に示されるような粉末X線回折パターンを有する形態(形態2)の、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
前記結晶形態が、16.81Å、5.65Å、及び35.56Åの単位格子寸法、並びに90°のα角、101.54°のβ角、及び90°のγ角を有する、請求項5~7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
第2の又はさらなる活性成分との組み合わせでの医薬としての使用のための、請求項1~8のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項記載の化合物を、任意に、1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~8記載の化合物が、水性媒体に懸濁された粒子状形態である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記水性媒体が、少なくとも約40%の水、例えば、少なくとも約60%の水、少なくとも約80%の水、少なくとも約95%の水、少なくとも約99%の水など、例えば、少なくとも約99%の水を含む、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記水性媒体が、荷電浸透圧調整剤を含む、請求項10~12のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記荷電浸透圧調整剤が、塩化ナトリウムである、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記水性媒体が、共溶媒、例えば、プロピレングリコールを含む、請求項10~14のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記水性媒体が、界面活性剤、例えば、Lipoid S100を含む、請求項10~15のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項17】
第2の又はさらなる活性成分を含む、請求項10~16のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記第2の又はさらなる活性成分が、抗真菌剤(ボリコナゾール又はポサコナゾールなど)、アムホテリシンB、エキノキャンディン(カスポファンギンなど)、及び3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA還元酵素の阻害剤(ロバスタチン、プラバスタチン、又はフルバスタチンなど)から選択される、請求項9記載の使用のための化合物又は請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記第2の又はさらなる活性成分が、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ニスタチン、リモシジン、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、アルバコナゾール、エフィナコナゾール、エポキシコナゾール、フルコナゾール、イサブコナゾール、イトラコナゾール、プロピコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、アバファンギン(abafungin)、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、アニデュラファンギン(anidulafungin)、ミカファンギン(micafungin)、安息香酸、シクロピロクス、フルシトシン(5-フルオロシトシン)、グリセオフルビン、トルナフタート、及びウンデシレン酸から選択される、請求項9記載の使用のための化合物又は請求項17記載の医薬組成物。
【請求項20】
医薬品としての使用のための、請求項1~8のいずれか1項記載の化合物又は請求項10~19のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項21】
真菌症の治療における使用のための又は真菌症に関連する疾患の予防もしくは治療における使用のための、請求項1~8のいずれか1項記載の化合物又は請求項10~19のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項22】
真菌症の治療のため又は真菌症に関連する疾患の予防又は治療のための医薬品の生産における、請求項1~8のいずれか1項記載の化合物又は請求項10~19のいずれか1項記載の医薬組成物の使用。
【請求項23】
真菌症の対象の治療の方法であって、該対象に、有効量の請求項1~8のいずれか1項記載の化合物又は請求項10~19のいずれか1項記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
対象における真菌症に関連する疾患の予防又は治療の方法であって、該対象に、有効量の請求項1~8のいずれか1項記載の化合物又は請求項10~19のいずれか1項記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項25】
前記真菌症が、アスペルギルス属の菌種によって引き起こされる、請求項21~24のいずれか1項記載の使用のための化合物、使用、又は方法。
【請求項26】
前記アスペルギルス属の菌種が、アスペルギルス・フミガーツス又はアスペルギルス・プルランス、特に、アスペルギルス・フミガーツスである、請求項25記載の使用のための化合物、使用、又は方法。
【請求項27】
前記アスペルギルス属の菌種が、アゾール耐性アスペルギルス・フミガーツスである、請求項26記載の使用のための化合物、使用、又は方法。
【請求項28】
前記真菌症が、カンジダ属の菌種、例えば、カンジダ・アルビカンス又はカンジダ・グラブラタ;クモノスカビ属の菌種、例えば、リゾプス・オリザエ;クリプトコッカス属の菌種、例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス;ケトミウム属の菌種、例えば、ケトミウム・グロボーサム;アオカビ属の菌種、例えば、ペニシリウム・クリソゲナム、又は白癬菌属の菌種、例えば、トリコフィトン・ルブルムによって引き起こされる、請求項21~24のいずれか1項記載の使用のための化合物、使用、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、真菌症の治療に有用な化合物の結晶多形の現出(manifestation)、並びにその組成物及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
真菌性感染症の発生率が、過去20年間でかなり増加してきており、侵襲性の形態は、特に免疫不全患者又は免疫抑制患者の間での罹患及び死亡の1番の原因である。播種性カンジダ症、肺アスペルギルス症、及び新たな日和見真菌は、これらの重篤な真菌症を生じさせる最もよくみられる主体である。真菌が、自身を互いに結び付け、自身がそれらのインビトロ又はインビボ基質に付着するのを可能とする細胞外マトリックス(ECM)を産生することができることは、真菌の特別な特徴である。これらのバイオフィルムは、宿主の免疫系の敵対的な環境から真菌を保護し、抗真菌剤の活性に抵抗するのに役立つ(Kaur及びSinghの文献、2013)。
【0003】
肺アスペルギルス症は、非侵襲性又は侵襲性の状態のいずれかに分けることができる。さらなる細分化が、アスペルギルス症に対するアレルギー成分を有する症状(ABPA;アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis)として知られる)を示す患者における状態の特性を、該症状を示さない患者と比較して描写するのに用いられる。肺アスペルギルス症の誘発因子は、高用量の免疫抑制性医薬品への曝露又は集中治療室での挿管の実施などの急性のものであり得る。あるいは、誘発因子は、TB感染などの以前の感染に起因する慢性のものであり得る(Denningらの文献、2011a)。慢性アスペルギルス肺感染症は、患者に、生涯にわたる経口アゾール薬での治療を必要とする広範囲かつ永続的な肺損傷を残すことがある(Limperらの文献、2011)。
【0004】
多くの研究によって、アスペルギルス感染症が、臨床上の喘息において重要な役割を果たすことがあることが示唆されている(Chishimbaらの文献、2012;Pasqualottoらの文献、2009)。さらに、最近公表された研究は、アスペルギルス感染症をCOPDの患者でのより劣った臨床結果と関連づけている(Bafadhelらの文献、2013)。同様に、横断研究によって、患者の痰の中のアスペルギルス属の菌種(Aspergillus spp.)及びカンジダ属の菌種(Candida spp.)の存在と、患者の悪化した肺機能との間の関連が示されている(Chotirmallらの文献、2010;Agbetileらの文献、2012)。
【0005】
侵襲性アスペルギルス症(IA)は、免疫不全患者、例えば、同種幹細胞移植又は固形臓器移植(肺移植など)を受けた患者の間に高い死亡率をもたらす。免疫不全患者で報告された初のIAの症例は、1953年に発生している。この事象は、治療計画へのコルチコステロイド及び細胞傷害性化学療法の導入と同時に生じた(Rankinの文献、1953)。侵襲性アスペルギルス症は、その高い発生率及び関連する死亡率を考慮すれば、白血病及び他の血液悪性腫瘍の治療における主要な懸念事項である。死亡率は、通常、50%を超え(Linらの文献、2001)、同種造血幹細胞移植レシピエントにおいては、経口トリアゾール系医薬品が利用できるにもかかわらず、長期死亡率が90%に達することもある(Salmeronらの文献、2012)。固形臓器移植、特に、肺の移植を受けた患者において、高用量のステロイドの使用は、患者を、感染症に対して脆弱なままとする(Thompson及びPattersonの文献、2008)。また、この疾患は、より低重度度の免疫不全患者集団にも生じている。これらには、基礎となるCOPD又は肝硬変を患う者、高用量ステロイドを投与されている患者、及び中心静脈カテーテルが取り付けられている又は機械的換気によって支えられている個体が含まれる(Dimopoulosらの文献、2012)。
【0006】
既存の抗真菌医薬品は、主に、経口投与又は全身投与のいずれかで投与される。これらのよく利用される送達経路は、肺気道感染症を治療するためには不十分であり、これは、感染症の部位で達成される薬物濃度が、影響を受けていない器官におけるそれよりも低い傾向があるためである。これは、肝臓の場合に特にそうであり、肝臓は、ボリコナゾールで治療されかつ上昇したトランスアミナーゼレベルを患っている患者の最高で15%において、毒性の主な部位である(Levinらの文献、2007;Lat及びThompsonの文献、2011)。肝臓の曝露もまた、肝臓のP450酵素の阻害から生じる著しい薬物相互作用をもたらす(Jeongらの文献、2009;Wexlerらの文献、2004)。
【0007】
さらに、クリニック及び農業双方でのトリアゾールの使用の普及が、いくつかの場で増加しており問題になっている耐性真菌症の出現をもたらしている(Denningらの文献、2011b;Bowyer及びDenningの文献、2014)。
【0008】
真菌症の治療に有用な化合物が、WO2016/087878 A1(Sunoseらの文献、2016)及びWO2016/087880 A1(Colleyらの文献、2016)に記載されている。化合物Iは、上述の特許出願公開に開示されており、これは、4-(4-(4-(((3R,5R)-5-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)-5-(2,4-ジフルオロフェニル)テトラヒドロフラン-3-イル)メトキシ)-3-メチルフェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(4-フルオロフェニル)ベンズアミド:
【化1】
である。
【0009】
化合物Iは、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)ステロール14α-デメチラーゼ(CYP51A及びCYP51B)の強力な阻害剤であり、インビトロ及びインビボで強力な長時間作用型の抗真菌剤として特性が描写されている(Colleyらの文献、2017)。さらに、公知の全身性トリアゾール剤との組み合わせでの化合物Iでの外用治療が、インビトロヒト肺胞二重層モデル(alveolus bilayer model)において及び好中球減少性免疫低下マウスの肺においてアスペルギルス・フミガーツスに対する相乗的な抗真菌作用を示したことが開示されている(Colleyらの文献、2019)。また、化合物Iは、ポサコナゾール、ボリコナゾール、及びフルコナゾールよりも強力な、全世界で集められたカンジダ・アウリス(Candida auris)単離株の阻害剤であることが分かった(Shivaprakashらの文献、2019)。免疫低下マウスにおける化合物Iの鼻腔内投与後のバイオマーカーの分析によって、抗真菌作用が、反復投薬時に累積すること、及びそれが持続性であったことが示された(Kimuraらの文献、2017)。
【0010】
多形は、その化合物の物理化学的及び生物製剤学的性質に対する影響のために、薬用品の開発における重要な考慮事項である。この特性は、小分子などの一つの独立した存在が、異なる複数の結晶格子を採用することができる場合には常に生じる。結果として生じる固体状態充填の違いは、貯蔵安定性、溶解性プロファイル、及び密度の差を招くことがあり、それにより、製剤及び製品生産、並びに溶解特性に影響を及ぼす。溶解特性は、インビボでのバイオアベイラビリティを決定する重要な因子である。
【0011】
真菌症の治療における使用のための化合物Iの多形形態を提供することが依然として必要とされている。特に、結晶形態の化合物Iであって、その肺への局所的投与に関係する適当な物理的及び化学的安定性並びに他の薬物関連の性質を有する、前記結晶形態の化合物Iを提供することが必要である。これらには、十分なバイオアベイラビリティ及び許容し得る薬物動態学的性質に加えて、それのマイクロ微細化による影響の受けやすさ、それの容易に分散可能な水性懸濁液としての製剤が含まれる。
【発明の概要】
【0012】
(発明の概要)
本発明は、結晶形態の4-(4-(4-(((3R,5R)-5-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)-5-(2,4-ジフルオロフェニル)テトラヒドロフラン-3-イル)メトキシ)-3-メチルフェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(4-フルオロフェニル)ベンズアミドである式(I)の化合物:
【化2】
であって、該結晶形態が、多形形態1である、前記化合物を提供する。
【0013】
加えて、本発明は、結晶形態の4-(4-(4-(((3R,5R)-5-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)-5-(2,4-ジフルオロフェニル)テトラヒドロフラン-3-イル)メトキシ)-3-メチルフェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(4-フルオロフェニル)ベンズアミドである式(I)の化合物:
【化3】
であって、該結晶形態が、多形形態2である、前記化合物を提供する。
【0014】
当業者は、特定の互変異性体が上に示されているものの、該化合物が、複数の互変異性形態で存在し得ることを認めるであろう。本発明は、全てのそのような互変異性形態を包含する。
【0015】
本明細書において、式(I)の化合物は、化合物Iと呼ばれる。
【0016】
実施例に記載されているように、結晶多形形態1及び結晶多形形態2は、はっきりと異なる結晶構造を有する。特に、本発明の多形形態1及び2は、それらを、治療薬剤としての使用に特に適したものとする以下の特徴及び性質を有する。多形は、高い融点[約202℃ (形態1)及び約183℃(形態2)]を示し;物理的に強固であり(XRPD、TGA、及びDSC分析によって決定);良好な化学的安定性を有し(1H NMR分光法及びHPLC分析によって決定);吸入可能な粒子サイズまで容易にマイクロ微細化され;かつ吸入によって水性懸濁液として投与された場合に生体利用可能である。従って、形態1の多形及び形態2の多形は、本明細書に記載されるさまざまな治療的応用に有用であることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1:多形形態1の代表的な試料の高分解能XRPDパターン。
【
図2】
図2:多形形態2の代表的な試料の高分解能XRPDパターン。
【
図3】
図3:多形形態1及び2の高分解能XRPDパターンを縦方向に揃えた図。
【
図4】
図4:多形形態1及び2の高分解能XRPDパターンを重ねた図。
【
図5】
図5:多形形態1の計算されたXRPDパターン。
【
図6】
図6:多形形態2の計算されたXRPDパターン。
【
図7】
図7:形態1、2、及び3の代表的な試料のXRPDパターンと比較した形態3の先行技術試料のXRPDパターン。
【
図8】
図8:粗体投入材料(多形形態3)の熱分析(DSC及びTGA)。
【
図9】
図9:水性アセトン(5% H
2O)から得た多形形態1のDSCトレース。
【
図10】
図10:マイクロ微細化後に水性アセトン(5% H
2O)から得た多形形態1のXRPDパターン。
【
図11】
図11: THF/TBMEから得た多形形態2のXRPDトレース。
【
図12】
図12: THF/TBMEから得た多形形態2のDSCトレース。
【
図13】
図13:マイクロ微細化後にTHF/TBMEから得た多形形態2の高分解能XRPDパターン。
【
図16】
図16:多形形態1の高速走査DSCトレース(40℃/分)。
【
図17】
図17: 多形形態2の高速走査DSCトレース(40℃/分)。
【
図18】
図18: MIBKから得た多形形態2の熱分析(DSC及びTGA)。
【
図19】
図19: 2.2mg/kgの名目用量での雄性ラットへの多形形態1の吸入投与後の平均血漿薬物濃度。
【
図20】
図20: 2.2mg/kgの名目用量レベルでの雄性ラットへの多形形態2の吸入投与後の平均血漿薬物濃度。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
X線粉末回折(XRPD)パターンは、回折角2θに対する回折された光線強度のプロットからなる。粉末X線回折パターンの2θピーク位置は、結晶相の単位格子に直接的に関係しており、各多形形態にユニークなパターンをもたらす。その結果、XRPDパターンは、各多形に対して特徴的であり、ある多形を別のものと区別するのに使用することができる。粉末X線回折パターンを、本明細書に記載されるように調製された多形形態1及び2の試料から直接得た(
図1及び
図2)。2つのパターンの目視での比較(
図3及び
図4)から、化合物Iの形態1及び2が、2つの別個の結晶状態を表すことが明確である。
【0019】
2θでの反射は、2つ(又はそれを超える)回折パターンを比較する場合に±0.2° 2θ以内に反射が認められなければ、ユニークである(従って、その結晶形態に特徴的である)とみなされる。多形形態1及び2は、いくつかのユニークな反射を示す(表1)。
表1: 多形形態1及び2のユニークなXRPD反射
【表1】
【0020】
シンクロトロン光源X線結晶構造解析を用いる多形形態1及び2の構造の解明によって、多形形態1及び2のXRPDパターンを、単一の結晶データセットから得た実験的な回折値から計算することができた。双方の多形で、実験データ(
図1及び
図2)と計算されたパターン(
図5及び
図6)との間に非常に密接な相関が認められた。
【0021】
従って、実質的に
図1に示されるような粉末X線回折パターンを有する多形形態1の化合物Iの結晶形態が提供される。
【0022】
好適には、多形形態1の化合物Iの結晶形態であって、(±0.2) 7.0、7.4、7.9、18.2、19.7、20.8、及び24.7度の2θから選択される3、4、5、6、又は7つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、前記結晶形態が提供される。
【0023】
多形形態1の追加のXRPDパターンピークを、表3に示す。従って、好適には、多形形態1の化合物Iの結晶形態であって、以下の7つのピーク:(±0.2) 7.0、7.4、7.9、18.2、19.7、20.8、及び24.7度の2θ、並びに(±0.2) 10.2、16.7、17.9、23.3、及び24.2度の2θから選択される1、2、3、4,又は5つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、前記結晶形態が提供される。
【0024】
好適には、多形形態1の化合物Iの結晶形態であって、16.80Å、23.58Å、及び25.58Åの単位格子寸法、並びに90°のα、β、及びγ角を有する、前記結晶形態が提供される。
【0025】
従って、実質的に
図2に示されるような粉末X線回折パターンを有する多形形態2の化合物Iの結晶形態が提供される。
【0026】
また、多形形態2の化合物Iの結晶形態であって、(±0.2) 10.8、17.0、20.3、22.7、23.9、及び24.3度の2θから選択される3、4、5、又は6つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、前記結晶形態も提供される。
【0027】
多形形態2の追加のXRPDパターンピークを、表3に示す。従って、好適には、多形形態2の化合物Iの結晶形態であって、以下の6つのピーク:(±0.2) 10.8、17.0、20.3、22.7、23.9、及び24.3度の2θ、並びに(±0.2) 16.6、19.5、20.3、22.0、26.6、及び26.9度の2θから選択される1、2、3、4、5、又は6つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、前記結晶形態が提供される。
【0028】
好適には、多形形態2の化合物Iの結晶形態であって、16.81Å、5.65Å、及び35.56Åの単位格子寸法、並びに90°のα角、101.54°のβ角、及び90°のγ角を有する、前記結晶形態が提供される。
【0029】
(形態3(先行技術)多形)
化合物Iは、特許出願公開WO2016/087878 A1及びWO2016/087880 A1の従来技術に開示されている。これらの出願において、該明細書に開示されるように調製された化合物Iは、以下:(a)ピリジン中の化合物Iを含む反応混合物への水の添加による粗体の固体化合物Iの取得、及びそれに続くDCM中0~3%のMeOHで溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製;(b)DMF中の化合物Iを含む冷却した反応混合物への水の添加、及びそれに続く反応混合物のさらなる冷却及び濾過による回収による固体化合物Iの取得、及びそれに続く水中への濾過ケーキのスラリー化、及び濾過による固体の回収又は;(c)DMSO中の化合物Iを含む反応混合物への水の添加、及びそれに続く、EtOAcでの化合物Iの抽出、真空下での揮発性物質の蒸発、及びDCM中0~2%のMeOHで溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィーによる残渣の精製、及びDCM中0~50%のEtOAcで溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィーによる再精製、を含む方法のうちの1つによって単離された。
【0030】
本開示の目的のために、前記明細書に記載された合成経路による以前に開示された化合物Iは、本明細書で形態3と称される化合物Iの低結晶性の現出である。これらの経路の共通の特徴は、多形形態3が、混和性の有機溶媒(DMF又はDMSOなど)中の化合物Iの溶液への水の添加又はクロマトグラフィーによる精製後の溶媒混合物の蒸発のいずれかにより化合物Iの急速な製造の結果として生じることである。本明細書で以下に開示されるように、水は、これらの例においては、ほぼアモルファス状態での化合物Iの急速な析出を招く、化合物Iの強力な貧溶媒である。同じ原理が、化合物Iを含有する溶離液の急速な蒸発が、形態1又は形態2などのより規則的な結晶形態ではなくむしろ多形形態3を生じさせるクロマトグラフィーから回収された試料に当てはまる。
【0031】
理論に束縛されるものではないが、実験データは、揮発性溶媒(DCMなど)中の溶液の急速な蒸発による化合物Iの析出が、無秩序な固体状態を招くことを教示している。同じことが、貧溶媒の添加による;例えば、混和性の有機溶媒中の化合物Iの溶液を水でクエンチすることによる化合物Iの(ほぼ即座の)析出にあてはまる。以前に開示されたこれらのプロセスは双方とも、式Iの化合物が、本明細書で開示される多形形態1及び2によって例示されるより熱力学的に安定な高度に規則的な結晶状態を得るのに十分な時間を与えない。
【0032】
形態3の代表的な試料を、以下の手順によって調製した。ピリジン(30mL)中の4-(4-(4-(((3R,5R)-5-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)-5-(2,4-ジフルオロフェニル)テトラヒドロフラン-3-イル)メトキシ)-3-メチルフェニル)ピペラジン-1-イル)安息香酸(2.50g、4.24mmol)、EDCI(1.63g、8.48mmol)、及びDMAP(0.03g、0.21mmol)の懸濁液に、4-フルオロアニリン(0.41mL、4.32mmol)を添加した。反応混合物を、60℃で2時間撹拌し、次いで、室温まで冷却し、水(60mL)で希釈し、5分間撹拌した。得られた固体を、濾過によって集め、水(3×10mL)及びジエチルエーテル(2×15mL)で洗浄して、黄褐色の粉末を得た。そのように得られた粗生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、40g、DCM中0~3%のMeOH、グラジエント溶出)によって精製した。得られた黄色固体(2.37g)を、DMSO(6.50mL)中に懸濁させ、混合物を、溶解が完了するまで60℃で加熱した。溶液を、室温まで冷却し、この撹拌溶液に、水(20mL)を添加すると、白色固体の析出が生じた。固体を濾過によって集め、水(3×10mL)及びジエチルエーテル(3×5mL)で洗浄し、次いで、真空下50℃で3日間乾燥させて、化合物Iをオフホワイトの固体として得た(2.25g、77%)。
【0033】
図7は、本研究(「形態3参考例」)で用いられるバッチに典型的な形態3の試料と比較され、かつ形態1及び形態2の多形から得られるXRPDパターンに対して比較された、上述の通り調製された多形形態3(「従来技術試料」)としての化合物IのXRPDパターンを示す。形態3の材料のXRPDトレースは、それが、低結晶性のものであることを明らかにし、その結果、それは、容易に開発可能な存在とはみなされなかった。その結果、この多形形態に対して、バイオアベイラビリティの比較データは得られていない(実施例を参照されたい)。
【0034】
(多形形態1及び形態2の性質)
(さまざまな温度での多形形態1及び2の熱力学的安定性)
本明細書において形態1及び形態2と称される結晶状態が、エナンチオトロピックな多形ペアを構成することが決定されている。この性質は、それらの相対的な熱力学的安定性の温度依存性に起因しており、それによって、特性(実験的に決定された)温度までは、該多形のうちの一方が該材料の最も熱力学的に安定な現出であり;それを超えると、それらの安定性の順序が、逆転する。この例では、等しい量の該2つの多形を含む懸濁液を、6種の異なる溶媒のうちの1つの中で、50℃、70℃、及び135℃で熟成させた(表6)。50℃及び70℃の双方で行われた全ての実験において、1:1の混合物は、形態2の多形のみを含有する懸濁液に変化した。対照的に、135℃の温度で維持された混合物は全て、形態1に変換された。これらのデータは、形態1と形態2との間の熱力学的関係が、エナンチオトロピックなものであり、かつ安定性が逆転する温度(エナンチオトロピックな遷移点)が、70~135℃の温度範囲内にあるという仮定を支持する。
【0035】
形態1又は形態2のいずれかがエナンチオトロピックな遷移点を下回る温度で種々の条件から生じる傾向を、交差種晶添加実験(cross-seeding experiment)を用いて調査した(本明細書の表8~表13を参照されたい)。表8に記載される単一の有機溶媒系では、等しい量の形態1及び形態2を含む混合物は変化して、形態2の多形のみを含む懸濁液を与えた。例外は、5%の水をドープしたIPAの2成分混合物であり、これは、多形混合物のままであった(表8、エントリー10~12)。この結果を、2つの異なる方式で生じたものとして解釈することが可能である。第1は、水性IPA中では、いずれの形態としても化合物Iの溶解性が、多形の相互変換が生じるには低すぎ、従って、速度論的因子が、結果を決定していると結論付けることである。第2の仮定は、形態1が、実験の温度範囲内で準安定な多形のままであるという事実にもかかわらず、水の存在が、多形混合物に対して、形態1に有利な影響を及ぼすということである。
【0036】
この仮説を、一連のスラリー化及び交差種晶添加実験(表9~表13)で調査し、その間に、低レベルでの水の存在が、形態1の多形が優位となるのに好都合な共溶媒として作用することが決定された。この特性は、形態2の多形が、単独のアセトン及び水中に及びそれらの混合物中に(表9);THF及び水性THF中に(表10);ジオキサン/水混合物中に(表11)、及び増加する比率の水を含有するMEK中に(表12)スラリー化された場合に観察された。
【0037】
データから、多形転移を誘導するのが、これらの溶媒に添加された水の存在であることが明らかであった。しかしながら、低いレベルでの場合を除き、水も、強力な貧溶媒であり、双方の多形の溶解性を顕著に低下させる。この溶解性プロファイルの結果は、単独の水中又は水が多い溶媒混合物中では、形態2から形態1への変化(turnover)のプロセスは、極めて低い溶解性によって生じないか又は阻害されるかのいずれかである(表11、エントリー3、6、及び8)。
【0038】
多形の相互変換が、加熱時に、変化速度の温度との依存関係から(アレニウスの式により)予想されるものよりも容易に生じることが観察され(表9、10、及び12)、おそらく、懸濁された固体の溶解性の増加によって増加していた。冷却MEK又はTHF中で平衡化させた場合の多形の動態が、系内の水の存在又は非存在に依存的であるだけでなく、それらの最初の多形組成にも影響を受けることが分かった(表13)。これら2つの多形の混合物が、予想通りに名目上乾燥した媒体中で形態2の懸濁液に変換されたのに対して、単一の多形は、変化しなかった。対照的に、水の存在は、ここでも、形態1の状態に有利であり、出発混合物中のこの多形のはじめからの存在が(種晶として働き)、相互変換を促進するさらなる証拠が存在した。
【0039】
本明細書で開示されるスラリー化及び交差種晶添加実験からのデータは、溶媒系に対する曝露の際に多形形態1及び2のどちらが優勢であるかが、有機溶媒の選択、それの含水量、スラリー温度、接触時間、及び純度(すなわち、その多形組成)に影響を受けることを明らかにしている。それでもやはり、本明細書に記載される研究は、所望により、形態1又は形態2のいずれかの物理的完全性を生じさせかつ保持するそれらの操作を可能にするパラメーターの理解を提供する。さらに、形態1の結晶状態が、水性の有機媒体中で好ましいものの、水が主成分であるものは、多形の相互変換に関して本質的に不活性であることが決定された。
【0040】
これらの系の挙動及びそれがもたらす教示は、化合物Iがそれによって患者に送達され得る適当な製剤を設計するのに重要である。
【0041】
形態1及び形態2の多形は、容易にマイクロ微細化され得る。これは、これらが、気道(例えば、肺)への送達のための製剤における使用に適したものであることを意味する。
【0042】
本明細書に記載される研究は、驚くべきことに、特に、形態2の多形が、該形態が、そのような環境で周囲温度では準安定であるという証拠にもかかわらず、水性懸濁液としての製剤用に好適な化合物Iの結晶性の現出であることを示している。本明細書で開示される研究から得られたデータは、高い割合の水を含む媒体中では、水中での化合物Iの極めて低い溶解性が、多形の完全性の喪失に対する効果的な速度論的障壁を提供することを明らかにしている。化合物Iの物理化学的性質(高分子量及び親油性)は、これら2つの主な結晶形態が、そのような条件下で容易に相互変換せず、その結果、それらの初期の多形組成を保持することを確実とする。本明細書の別の場所で示されるように、形態2の多形は、予想外にかつ有利なことに、水性懸濁液として製剤化され吸入によって投与される場合に、形態1の多形のバイオアベイラビリティよりも優れたバイオアベイラビリティを示す。従って、形態2の多形は、噴霧された水性懸濁液中の吸入型治療薬剤としての使用に好適な化合物Iの現れ(presentation)である。
【0043】
この多形安定性の性質は、吸入によって投与される場合の形態1のより低い全身バイオアベイラビリティとともに、以下で議論されるこの多形の選択的な適応及び提供に有利である。
【0044】
(一般合成方法)
(溶媒和物)
一態様において、溶媒和された形態の化合物Iが提供される。化合物Iを、アニソール、アセトフェノン、ベンジルアルコール、クロロベンゼン、及びクメンなどのいくつかの芳香族溶媒中で熟成させた場合に、適当な溶媒和物が得られる。あるいは、化合物IをTHF中で熟成させた場合に、適当な溶媒和物が得られる。好適には、このようにして得られた化合物Iの溶媒和物は、TGAによって分析すると、約13~14重量%の溶媒を含有する。好適には、化合物I対溶媒の比は、ほぼ化学量論的(1:1)である。
【0045】
同定された化合物Iの溶媒和物が、熱的に脱溶媒和して、形態1の結晶多形を生じることが分かった。例えば、アニソール溶媒和物は、DSC分析において2つのシャープな吸熱を示した。第1のものは、112~114℃で生じ、1当量弱の溶媒に対応し1H NMRデータに一致する、TGAプロファイルから決定される13.4%の重量減少と一致した。第2の吸熱は、202℃にピークを有し、形態1の融点に対応していた。
【0046】
従って、一態様において、結晶多形形態1として化合物Iを調製するためのプロセスであって、溶媒和された形態の化合物I、例えば、アニソール、アセトフェノン、ベンジルアルコール、クロロベンゼン、又はクメンと形成される溶媒和物を加熱して、溶媒を除去し、それにより、結晶多形形態1として化合物Iを製造することを含む、前記プロセスが提供される。好適には、溶媒和された形態の化合物Iは、多形形態1の合成における中間体である。
【0047】
(形態1の多形)
一実施態様において、多形形態1としての化合物Iの調製のためのプロセスであって、溶媒中の化合物Iの溶液から多形形態1としての化合物Iを結晶化させる工程を含み、該溶媒が、トルエン、2-メトキシエタノール、水性IPA(例えば、3~6%のH2O v/v、例えば、5%のH2O v/vなどを含有)、及び水性アセトン(例えば、5~10%のH2O v/vを含有)からなる群から選択される、前記プロセスが提供される。
【0048】
好適には、溶媒は、水性アセトン(5%のH2O v/vを含有)である。
【0049】
(形態2の多形)
一実施態様において、多形形態2としての化合物Iの調製のためのプロセスであって、名目上乾燥有機溶媒中で化合物Iの溶液から多形形態2としての化合物Iを結晶化させる工程を含み、該溶媒が、MIBK、THF、PrOAc、EtOH、DME、MeOH、MeCN、MeNO2、n-ヘプタン、Et2O、IPA、MEK、アセトン、TBME、i-BuOH、又はTHFとTBMEとの混合物からなる群から選択される、前記プロセスが提供される。好適には、該プロセスは、名目上乾燥有機溶媒混合物中の化合物Iの溶液から多形形態2としての化合物Iを結晶化させる工程であって、該溶媒混合物が、MIBK、THF、PrOAc、EtOH、DME、MeOH、MeCN、MeNO2、n-ヘプタン、Et2O、IPA、MEK、アセトン、TBME、及びi-BuOHからなる群から選択される2種以上の溶媒を含む、前記工程を含む。
【0050】
本発明の目的のために、「名目上乾燥(nominally dry)」は、溶媒に水が添加されていないことを意味する。実験条件は水を排除するように設計されるものの、選択された溶媒の親水性に応じて、微量の水が存在することもある。
【0051】
好適には、溶媒は、MIBKである。あるいは、溶媒系は、THFとトルエンとの混合物であり、ここで、好適には、該混合物は、2:1~1:2のTHF:トルエン(それぞれ、10:5 v/v; 9:5 v/v; 8:4 v/v; 8:16 v/vのTHF:トルエンなど)を含む。あるいは、溶媒系は、THFとTBMEとの混合物であり、ここで、好適には、該混合物は、4:1~1:2のTHF:TBME(それぞれ、8:2 v/v; 8:2.5 v/v; 8:4 v/v; 8:6 v/v 8:8 v/v; 8:10 v/v、又は8:12 v/vのTHF:TBMEなど)を含む。
【0052】
(医薬製剤)
実施態様において、本発明の化合物を、任意に、1種以上の医薬として許容し得る希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物が提供される。
【0053】
好適には、本発明の化合物は、肺又は鼻に局所的に投与され、特に、肺に局所的に投与される。従って、実施態様において、本発明の化合物を、任意に、1種以上の局所用に許容し得る希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物が提供される。好適には、本発明の化合物は、吸入によって投与される。
【0054】
好適には、医薬として許容し得る希釈剤又は担体は、水である。
【0055】
好都合には、組成物は、単位剤形で投与され得、例えば、「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、第17版、Mack Publishing Company、Easton、PA.、(1985)に記載されているような、医薬業界で周知の方法のうちのいずれかによって調製され得る。また、組成物は、好都合には、複数単位剤形で投与され得る。
【0056】
肺又は鼻腔内投与に適した組成物としては、粉末、液体溶液、懸濁液、水性懸濁液、溶液又は懸濁液又は加圧もしくは非加圧エアロゾルを含む点鼻液が挙げられる。
【0057】
鼻又は肺への局所的投与は、水性懸濁液などの非加圧製剤を用いて達成され得る。そのような製剤は、噴霧によって、すなわち、ネブライザー、例えば、手で持つことができかつ携帯型であるか又は非携帯型であるかのいずれかであり、かつ家庭又は病院での使用が意図されるものによって投与され得る。そのような装置の例は、RESPIMAT吸入器である。
【0058】
懸濁液及びエアロゾル製剤(加圧型であっても非加圧型であっても)は、通常、本発明の化合物を、例えば、0.5~10μm、好適には、約1~5μm、例えば、1~2μmなどのD50を有する粒子状形態で含有する。好適には、粒子状形態の本発明の化合物は、0.2~1μm、例えば、0.2~0.5μmなどのD10を有する。好適には、粒子状形態の本発明の化合物は、2~6μm、例えば、3~4μmなどのD90を有する。化合物の粒子状形態は、例えば、マイクロ微細化された形態であり得る。マイクロ微細化は、Hosokawa Alpineによって生産されるジェットミルなどのジェットミルを用いて実施され得る。結果として生じる粒子サイズ分布は、レーザー回折を用いて(例えば、Malvern Mastersizer 2000S装置を用いて)測定され得る。粒子サイズ分布は、D10、D50、及びD90値を用いて表され得る。粒子サイズ分布のD50中央値は、分布を半分に分割するミクロンでの粒子サイズと定義される。レーザー回折から誘導される測定値は、体積分布としてより正確に記述され、その結果、この方法を用いて得られるD50値は、より有意義には、Dv50値(体積分布の中央値)と呼ばれる。本明細書で使用されるDv値は、レーザー回折を用いて測定される粒子サイズ分布を指す。同様に、レーザー回折との関連で用いられるD10及びD90値は、Dv10及びDv90値を意味するものと解釈され、それぞれ、粒子サイズであって、それによって、分布の10%が、D10値未満にある、前記粒子サイズ、及び分布の90%が、D90値未満にある前記粒子サイズを指す。
【0059】
本発明の特定の一態様により、本発明の化合物を水性懸濁液として、すなわち、水性媒体に懸濁された粒子状形態で含む医薬組成物が提供される。
【0060】
水性媒体は、通常、水並びに緩衝液、浸透圧調整剤(塩化ナトリウムなど)、pH調整剤、粘度調整剤、共溶媒(プロピレングリコールなど)及び界面活性剤(Lipoid S100など)から選択される1種以上の賦形剤を含む。
【0061】
好適には、水性媒体は、少なくとも約40%の水、例えば、少なくとも約60%の水、少なくとも約80%の水、少なくとも約95%の水、又は少なくとも約99%の水など、例えば、少なくとも約99%の水などを含む。
【0062】
好適には、化合物Iが、水性懸濁液として投与される場合、化合物Iは、結晶多形形態2として採用される。好適には、水性懸濁液製剤中の化合物Iの濃度は、1~10mg/mL、例えば、4~6mg/mLなどである。
【0063】
従って、一実施態様により、結晶多形形態2として採用され、水性媒体に懸濁された粒子状形態の化合物Iを含む医薬組成物が提供される。
【0064】
また、鼻又は肺への局所的投与は、加圧エアロゾル製剤を用いて達成され得る。エアロゾル製剤は、通常、クロロフルオロカーボン(CFC)又はヒドロフルオロカーボン(HFC)などの適当なエアロゾルプロペラントに懸濁又は溶解させた活性成分を含む。好適なCFCプロペラントとしては、トリクロロモノフルオロメタン(プロペラント11)、ジクロロテトラフルオロメタン(プロペラント114)、及びジクロロジフルオロメタン(プロペラント12)が挙げられる。好適なHFCプロペラントとしては、テトラフルオロエタン(HFC-134a)及びヘプタフルオロプロパン(HFC-227)が挙げられる。プロペラントは、通常、全吸入組成物の40重量%~99.5重量%、例えば、40重量%~90重量%を構成する。製剤は、共溶媒(例えば、エタノール)及び界面活性剤(例えば、レシチン、トリオレイン酸ソルビタンなど)などの賦形剤を含んでいてもよい。他の考えられる賦形剤としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、グリセリンなどが挙げられる。エアロゾル製剤は、キャニスター内に包装され、適当な用量が、絞り弁によって送達される(例えば、Bespak、Valois、もしくは3M又はAptar、Coster、もしくはVariによって供給されるように)。
【0065】
また、肺への局所的投与は、乾燥粉末製剤を用いて達成してもよい。乾燥粉末製剤は、通常、1~10μmのMMAD又は0.5~10μm、例えば、1~5μm付近のD50を有する粒子状形態の本開示の化合物を含有するであろう。粒子状形態の本発明の化合物の粉末は、マイクロ微細化プロセス又は類似の小サイズ化プロセス(size reduction process)によって調製され得る。マイクロ微細化は、上述の通りに実施され測定され得る。製剤は、通常、比較的大きな粒子サイズの、例えば、MMADが50μm以上の、例えば、100μm以上の、又はD50が40~150μmのラクトース、グルコース、又はマンニトール(好ましくは、ラクトース)などの局所用に許容し得る希釈剤を通常含有するであろう。本明細書で使用される場合、「ラクトース」という用語は、α-ラクトース・一水和物、β-ラクトース・一水和物、無水α-ラクトース、無水β-ラクトース、及びアモルファスラクトースなどの含ラクトース成分を指す。ラクトース成分は、マイクロ微細化、篩、製粉、圧縮、凝集、又は噴霧乾燥によって加工され得る。また、さまざまな形態のラクトースの市販の形態、例えば、Lactohale(登録商標)(吸入グレードラクトース;DFE Pharma)、InhaLac(登録商標)70(乾燥粉末吸入器用の篩にかけられたラクトース;Meggle)、Pharmatose(登録商標)(DFE Pharma)、及びRespitose(登録商標)(篩にかけられた吸入グレードラクトース;DFE Pharma)製品も包含される。一実施態様において、ラクトース成分は、α-ラクトース・一水和物、無水α-ラクトース、及びアモルファスラクトースからなる群から選択される。好ましくは、ラクトースは、α-ラクトース・一水和物である。
【0066】
また、乾燥粉末製剤は、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、又はステアリン酸マグネシウムなどの他の賦形剤を含有する。
【0067】
乾燥粉末製剤は、通常、乾燥粉末吸入(DPI)装置を用いて送達される。例示的な乾燥粉末送達系としては、SPINHALER、DISKHALER、TURBOHALER、DISKUS、SKYEHALER、ACCUHALER、及びCLICKHALERが挙げられる。乾燥粉末送達系のさらなる例としては、ECLIPSE、NEXT、ROTAHALER、HANDIHALER、AEROLISER、CYCLOHALER、BREEZHALER/NEOHALER、MONODOSE、FLOWCAPS、TWINCAPS、X-CAPS、TURBOSPIN、ELPENHALER、MIATHALER、TWISTHALER、NOVOLIZER、PRESSAIR、ELLIPTA、ORIEL乾燥粉末吸入器、MICRODOSE、PULVINAL、EASYHALER、ULTRAHALER、TAIFUN、PULMOJET、OMNIHALER、GYROHALER、TAPER、CONIX、XCELOVAIR、及びPROHALERが挙げられる。
【0068】
クリーム及びペッサリーなどの水性懸濁液以外の製剤においては、好適には、化合物Iは、結晶多形形態1として採用される。
【0069】
(医療での使用)
化合物Iは、真菌症の治療に及び真菌症に関連する疾患の予防又は治療のために有用である。
【0070】
本発明の態様において、真菌症の治療のため及び真菌症に関連する疾患の予防又は治療のための医薬品の生産における化合物Iの使用が提供される。
【0071】
本発明の別の態様において、真菌症に罹患した対象の治療の方法であって、該対象に、有効量の化合物Iを投与することを含む、前記方法が提供される。本発明の別の態様において、対象における真菌症に関連する疾患の予防又は治療の方法であって、該対象に、有効量の化合物Iを投与することを含む、前記方法が提供される。
【0072】
本発明の別の態様において、肺又は鼻(特に、肺)の真菌症に罹患した対象の治療の方法であって、該対象に、有効量の化合物Iを吸入によって投与することを含む、前記方法が提供される。
【0073】
本発明の別の態様において、対象における肺又は鼻(特に、肺)の真菌症に関連する疾患の予防又は治療の方法であって、該対象に、有効量の化合物Iを吸入によって投与することを含む、前記方法が提供される。
【0074】
真菌症は、特に、アスペルギルス属の菌種、例えば、アスペルギルス・フミガーツス又はアスペルギルス・プルランスなど、特に、アスペルギルス・フミガーツスによって引き起こされ得る。また、真菌症は、カンジダ属の菌種、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)又はカンジダ・グラブラタ(Candida glabrata);クモノスカビ属の菌種(Rhizopus spp.)、例えば、リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae);クリプトコッカス属の菌種(Cryptococcus spp.)、例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans);ケトミウム属の菌種(Chaetomium spp.)、例えば、ケトミウム・グロボーサム(Chaetomium globosum);アオカビ属の菌種(Penicillium spp.)、例えば、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、及び白癬菌属の菌種(Trichophyton spp.)、例えば、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)によっても引き起こされ得る。
【0075】
真菌症に関連する疾患は、例えば、肺アスペルギルス症である。
【0076】
好適には、真菌症及び真菌症に関連する疾患の治療における使用のための形態2の多形の形態の化合物Iが提供される。
【0077】
あるいは、真菌症及び真菌症に関連する疾患の治療における使用のための形態1の多形の形態の化合物Iが提供される。
【0078】
化合物Iを、真菌症の発症の前に化合物Iを投与することによって予防的設定で用いてもよい。例えば、化合物Iは、早産児、肺又は心臓の先天性の欠陥を有する小児、免疫低下対象(例えば、HIV感染症を患っている者)、喘息患者、嚢胞性線維症の対象、高齢対象、及び心臓又は肺に影響を及ぼす慢性の健康状態を患う対象(例えば、うっ血性心不全又は慢性閉塞性肺疾患)などの、真菌症を発症するリスクのある対象に予防的に投与され得る。
【0079】
好適には、真菌症及び真菌症に関連する疾患の予防における使用のための形態1の多形の形態の化合物Iが提供される。あるいは、真菌症及び真菌症に関連する疾患の予防における使用のための形態2の多形の形態の化合物Iが提供される。
【0080】
対象には、ヒト及び動物対象、特に、ヒト対象が含まれる。
【0081】
本発明の化合物は、アスペルギルス・フミガーツス感染症などの真菌症の治療のため、及び危険な状態にある対象におけるアスペルギルス・フミガーツス感染症などの真菌症に関連する疾患の予防又は治療のために特に有用である。危険な状態にある対象は、上で定義されている。
【0082】
また、本発明の化合物は、アゾール耐性アスペルギルス・フミガーツス感染症などのアゾール耐性真菌症の治療にも、特に、ポサコナゾールとの組み合わせで有用である。
【0083】
本発明の化合物は、第2の又はさらなる活性成分と組み合わせて投与され得る。第2の又はさらなる活性成分は、例えば、他の抗真菌剤(ボリコナゾール又はポサコナゾールなど)、アムホテリシンB、エキノキャンディン(カスポファンギンなど)、及び3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA還元酵素の阻害剤(ロバスタチン、プラバスタチン、又はフルバスタチンなど)から選択され得る。
【0084】
第2の又はさらなる活性成分は、アスペルギルス・フミガーツス感染症などの真菌症、又はアスペルギルス・フミガーツス感染症などの真菌症に関連する疾患、又はアスペルギルス・フミガーツス感染症などの真菌症と併存する状態の治療又は予防に適した活性成分を含む。
【0085】
本発明の化合物は、第2の又はさらなる活性成分と共製剤化してもよく、又は該第2の又はさらなる活性成分を、同じ又は異なる経路で別々に投与されるように製剤化してもよい。
【0086】
例えば、本発明の化合物は、ボリコナゾール又はポサコナゾールなどの抗真菌薬で既に全身的に治療中の患者に投与され得る。
【0087】
例えば、本発明の化合物は、アムホテリシンB、エキノキャンディン、例えば、カスポファンギンなど、及び3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA還元酵素の阻害剤、例えば、ロバスタチン、プラバスタチン、又はフルバスタチンなどから選択される1種以上の薬剤と共投与、例えば、共製剤化され得る。
【0088】
本発明の化合物は、あるいは(又は加えて)、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ニスタチン、リモシジン、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、アルバコナゾール、エフィナコナゾール、エポキシコナゾール、フルコナゾール、イサブコナゾール、イトラコナゾール、プロピコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、アバファンギン(abafungin)、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、アニデュラファンギン(anidulafungin)、ミカファンギン(micafungin)、安息香酸、シクロピロクス、フルシトシン(5-フルオロシトシン)、グリセオフルビン、トルナフタート、及びウンデシレン酸から選択される1種以上の薬剤と共投与、例えば、共製剤化され得る。
【0089】
好ましい組合せ相手としては、イントラコナゾール(intraconazole)、ボリコナゾール、カスポファンギン、及びポサコナゾールが挙げられる。
【0090】
本発明の態様により、:(a)本発明の化合物を、任意に、1種以上の希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物;(b)第2の活性成分を、任意に、1種以上の希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物;(c)任意に、それぞれが第3の又はさらなる活性成分を、任意に、1種以上の希釈剤又は担体と組み合わせて含む1種以上のさらなる医薬組成物、並びに(d)それを必要としている対象への医薬組成物の投与のための説明書を含むパーツのキットが提供される。それを必要としている対象は、アスペルギルス・フミガーツス感染症などの真菌症を患っているか又はそれになりやすい対象であり得る。
【0091】
本発明の化合物は、適当な間隔で、例えば、1週間に1回、1日おきに1回、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回投与され得る。
【0092】
平均体重(50~70kg)のヒトに好適な投与量は、50μg~10mg/日程度、例えば、500μg~5mg/日であると期待されるが、投与されるべき厳密な用量は、当業者によって決定され得る。
【0093】
多形形態1の結晶形態にある化合物Iは、以下の好ましい特質:
・高い融点(>200℃)によって証拠が示されるような広い範囲の熱安定性を示すこと;
・その多形の完全性を維持しつつマイクロ微細化されやすいこと;及び
・水性懸濁液以外の製剤中などの、それの投与用に意図された製剤中で形態2への変換に抵抗すること
のうちの1つ以上を有するものと期待される。
【0094】
多形形態2の結晶形態にある化合物Iは、以下の好ましい特質:
・高い融点(>180℃)によって証拠が示されるような広い範囲の熱安定性を示すこと;
・局所用の医薬品、特に、肺の疾患を治療するために意図されたものとして有効なバイオアベイラビリティを有すること及び水性懸濁液として吸入によって投与される場合に、形態1のバイオアベイラビリティよりも高いバイオアベイラビリティを示すこと;
・その多形の完全性を維持しつつマイクロ微細化されやすいこと;及び
・患者へのそれの投与における使用のために意図された水性懸濁液中で、形態1への変換に抵抗すること
のうちの1つ以上を有するものと期待される。
【実施例】
【0095】
(実験)
(略語)
定義されていない略語は全て、それらの一般的に受け入れられている意味を伝えることが意図される。
【表2】
【0096】
(機器及び方法)
機器、方法、及び手順の以下の説明は、いくつかの異なる研究室及び場所で行われており、そのために、効果が同等な種々の機器、方法、及び手順の使用が必要であった実験に関するものである。多くのそのようなパラメーターを、所望の結果を妨げることなく変更し得ることが当業者には分かるであろう。従って、本明細書に以下で記載されるそのような機器、方法、及びプロセスが、ある状況において用いられているものの、それらはまた、本発明を実施するのに用い得る例示的な実験条件を構成する。従って、以下の機器、方法、及びプロセスは、決して本発明を限定するように解釈されるべきではない。
【0097】
(X線粉末回折)
粉末X線回折パターンは、Cu Kα線(45kV、40mA)、θ-θ角度計、集光ミラー、発散スリット(1/2’’)、入射及び発散ビーム双方でのソーラースリット(soller slit)(4mm)、及びPIXcel検出器を用いてPANalytical回折計で収集された。データの収集に使用されたソフトウェアは、X’Pert Data Collector、バージョン2.2fであり、データは、X’Pert Data Viewer、バージョン1.2dを用いて示された。XRPDパターンは、PANalytical X’Pert PROを用いて、周囲条件下の透過箔試料台(ポリイミド-Kapton、12.7μm厚のフィルム)によって、周囲条件下で取得された。データの収集範囲は、0.202s-1の連続的なスキャン速度で2.994~35° 2θであった。
【0098】
あるいは、粉末X線回折パターンは、Cu Kα線(40kV、40mA)を用い、自動化XYZステージ、自動試料位置調節用のレーザービデオ顕微鏡、及びHiStar二次元面検出器を用いてBruker AXS C2 GADDS回折計で収集された。X線光学系は、0.3mmのピンホールコリメーターと組み合わせた単一のゲーベル(Gobel)多層膜ミラーからなっていた。1週間に1回の性能チェックを、認証標準NIST 1976コランダム(平板)を用いて行った。ビームの広がりは、約4mmであった。θ-θ連続スキャンモードを、試料と検出器との距離を2cmとして採用し、それにより、3.2°~29.7°の有効2θ範囲を提供した。通常、試料を、X線光線に120秒間曝した。データの収集に使用したソフトウェアは、GADDS for XP/2000 4.1.43であり、データは、Diffrac Plus EVA v15.0.0.0を用いて解析され表示された。
【0099】
周囲条件下で分析された試料は、粉砕せずに入手した状態のままの粉末を用いて平板標本として調製された。該試料の約1~2mgを、ガラススライドに軽く押し付けて平らな表面を得た。非周囲条件下で分析された試料は、熱伝導性化合物と共にシリコンウェハー上に載せられた。次いで、試料を、20℃/分で適切な温度まで加熱し、それに続き、1分間等温的に保持してから、データの収集を開始した。
【0100】
粉末X線回折パターンを、Cu Kα線(40kV、40mA)、θ-2θ角度計、並びにV4の発散及び受光スリット、Geモノクロメーター、及びLynxeye検出器を用いて、Bruker D8回折計で収集した。装置を、認証コランダム標準(NIST 1976)を用いてその性能に関してチェックした。データの収集に使用されたソフトウェアは、Diffrac Plus XRD Commander v2.6.1であり、データは、Diffrac Plus EVA v15.0.0.0を用いて解析され表示された。
【0101】
試料を、粉末を入手した状態のまま用いて平板標本として周囲条件下で試験した。試料を、研磨加工されたゼロバックグラウンドの(510)シリコンウェハーに切削された空洞内に静かに詰めた。分析の間、試料を、それ自体の平面で回転させた。データを、以下のように収集した:
角度範囲: 2°~42° 2θ
ステップ幅: 0.05° 2θ
収集時間: 0.5秒/ステップ
【0102】
(ダイヤモンド光源X線結晶構造解析)
データを、Dectris Pilatus 2M検出器を用いてFluid Film Devicesの3軸回折計で収集した。結晶を、ペルフルオロポリエーテル油を用いてMiTeGenのループ内に載せた。用いた波長は、0.6889Åであった。データは全て、295Kで収集された。構造を、ルーチンの自動直接法によって解き、全てのユニークなF2測定値に対する最小二乗精密化によって精密化した。
【0103】
(1H NMR分光法)
NMRスペクトルを、オートサンプラーが取り付けられDRX400コンソールによって制御されるBrukerの400MHz装置で収集した。自動化実験は、標準的なBrukerの装填実験(the standard Bruker loaded experiments)を用い、Topspin v1.3と共に動作するICON-NMR v4.0.7を用いて取得された。ルーチンではない分光法の場合は、データは、Topspin単独の使用によって取得された。試料は、特に断りのない限り、DMSO-d6中に調製された。オフラインで分析は、ACD Spectrus Processor 2012を用いて行った。
【0104】
(示差走査熱量測定)
DSCデータを、50位置のオートサンプラーを取り付けたTA InstrumentのQ2000で収集した。熱容量の較正を、サファイアを用いて行い、エネルギー及び温度の較正を、認証インジウムを用いて行った。典型的には、ピンホールをあけたアルミニウム皿に入った0.5~3mgの試料を、25℃から300℃まで10℃/分で(低速走査速度の場合)又は25℃から300℃まで40℃/分で(高速走査速度の場合)加熱した。50mL/分での乾燥窒素のパージを、試料全体に維持した。装置制御ソフトウェアは、Advantage for Q Series v2.8.0.394及びThermal Advantage v5.5.3であり、データは、Universal Analysis v4.5Aを用いて解析された。
【0105】
(熱重量分析)
TGAデータを、16位置のオートサンプラーを取り付けたTA Instrument Q500 TGAで収集した。装置機器を、認証済みのアルメル及びニッケルを用いて温度較正した。典型的には、5~10mgの試料を、風袋を前もって差し引いたアルミニウムDSC皿に載せ、周囲温度から350℃まで10℃/分で加熱した。60mL/分での窒素パージを、試料全体に維持した。装置制御ソフトウェアは、Advantage for Q Series v2.5.0.256及びThermal Advantage v5.5.3であり、データは、Universal Analysis v4.5Aを用いて解析した。
【0106】
(HPLCによる化学純度決定)
純度分析を、ChemStationソフトウェアvB.04.03を用いて、ダイオードアレイ検出器を取り付けたAgilent HP1100シリーズシステムで行った。試料を、50℃まで加熱することによる水性MeCN(1:1混合物)中への溶解によって調製して、0.5mg/mL溶液を得た。試料を、以下に示すパラメーターを用いて分析した(表2)。
表2: 化学純度決定のためのHPLCパラメーター/方法。
【表3】
【0107】
(形態1及び形態2の多形の調製)
本明細書における「粗体投入材料」への言及は、上に記載した方法のいずれか1つにより合成され単離された形態3を意味するものと解釈される。この材料の代表的な参照XRPDトレースを、
図7に示す。これは、低結晶化度の材料と矛盾しない。
【0108】
(水性アセトン(5% H
2O v/v)からの再結晶化によるマイクロ微細化形態1の調製)
粗体投入材料の試料(100g、形態3)を、アセトン(1.00L)中5%の水の混合物中に懸濁させ、形態1の種晶(100mg)を添加し、混合物を、室温で1晩撹拌した。懸濁液を濾過し、濾過ケーキを、アセトン(20mL)中5%の水の混合物で洗浄し、固体を40℃で乾燥させると、そのDSCトレース(
図9)から決定して多形形態1が白色の粉末(85.5g、85.5%回収、98.7% HPLC純度)として得られた。そのようにして得られた生成物をマイクロ微細化すると、D値で表される粒子サイズ分布が、以下:
D
10=0.75μM;D
50=1.59μM、及びD
90=3.23μM
のようであった粉末が得られた。このマイクロ微細化固体のXRPDトレース(
図10)により、その多形の完全性が、本プロセスの間保持されたことが確認された。
【0109】
(MIBK中での熟成による形態2の多形の調製)
粗体投入材料(10g)を、室温でMIBK(30体積、300mL)中に懸濁させた。懸濁液を、25℃~50℃の間で24時間熟成させた(加熱-冷却サイクル、1サイクルあたり8時間)。一定分量を、3時間後50℃で採取し、濾過し、空気乾燥させ、XRPDによって分析した。24時間後、残りの固体を室温で濾過し、2時間空気乾燥させた。得られた固体を、形態2の多形と名付ける。代表的な試料のXRPDパターンを、
図2に示す。
【0110】
(THF/TBMEからの再結晶化によるマイクロ微細化形態2の調製)
粗体投入材料(476.4g)を、窒素下45~55℃でTHF(3.82L)中に入れた。温かい溶液を、45~55℃の内温を維持しながら、インラインフィルターを通して清澄化させた。TBME(0.72L)を、45~55℃の内温を維持しながら、1.5時間かけて滴下した。形態2の多形の種晶(500mg)を添加し、それに続き、清澄化したTBME(5.01L)を10.5時間かけて45~55℃で滴加した。添加が完了した後に、混合物を、0℃まで3.5時間かけて冷却した。撹拌を、この温度でさらに7.5時間継続し、得られた懸濁液を真空下濾過し、固体を清澄化したTHF(380mL)及びTBME(570mL)の混合物で洗浄した。濾過ケーキを、吸引により乾燥させ、単離した固体を、真空下45℃で窒素下21時間乾燥させて、XRPD分析及びDSC分析(それぞれ、
図11及び
図12)によって形態2の多形であると確認されたオフホワイトの固体(401.4g、84.2%)を得た。
【0111】
そのようにして得られた生成物をマイクロ微細化すると、D値で表される粒子サイズ分布が、以下:
D
10=0.42μM;D
50=1.24μM、及びD
90=3.57μM
のようであった粉末が得られた。これらの特徴が、吸入による投与用に意図される製品に適していることが当業者には分かるであろう。マイクロ微細化の間の多形の完全性の維持が、粒子の小サイズ化に取り掛かる前に得られたXRPDトレース(
図11)と比較して著しい変化を示さない、製粉後に得られたXRPDトレース(
図13)から確認された。従って、形態2の多形は、それの意図される目的に必要な性質を有する材料を誘導するのに必要とされるマイクロ微細化プロセスを受けやすくかつそれに対して安定である。
【0112】
(形態1及び形態2の多形の特性評価)
(X線粉末結晶構造解析)
本明細書で開示される方法によって調製された多形形態1(
図1)及び多形形態2(
図2)の高分解能XRPDトレースは、2つの別の固体状態に特徴的なはっきりと異なるパターンを示す。実験的に決定されたパターンは、結晶構造が誘導されたシンクロトロン源で集められたデータから計算されたものと一致していることが分かった(それぞれ、
図5及び
図6)。2つのパターン(
図3及び
図4)の比較により、所与の試料の多形の性質を決定するXRPD分析の信頼性が示される。形態1及び2の多形の特性を描写するそれらそれぞれのXRPDトレースから誘導される2θ値(度での)、面間隔(d-間隔)、及びピークの相対強度を、以下の表に示す(表3)。
表3:多形化合物Iの形態1及び2の粉末X線回折ピーク。
【表4】
【0113】
(シンクロトロン光源X線結晶構造解析による形態1及び2の構造決定)
多形形態1及び2の構造決定に、Diamond Light Source、Oxfordshire、UKで取り掛かった。形態1のデータを、ビームラインI19で、7×12×140μmの単結晶から集めた。形態1の結晶多形の結晶データ及び構造精密化パラメーターを、以下に示し(表4)、そのa軸沿いに見た解かれた構造の画像を、本明細書に含めた(
図14)。
表4: 多形形態1の結晶データ及び構造精密化パラメーター。
【表5】
【0114】
形態2のデータを、ビームラインI19で、5×5×50μmの単結晶から集めた。形態2の結晶多形の結晶データ及び構造精密化パラメーターを、以下に示し(表5)、そのb軸沿いに見た解かれた構造の画像を、本明細書に含めた(
図15)。
表5: 多形形態2の結晶データ及び構造精密化パラメーター。
【表6】
【0115】
(熱力学的安定性の関係)
(さまざまな温度での多形形態1及び2の熱力学的安定性)
等しい量の形態1及び2の混合物(100mg)を、結晶化用チューブに入れ、それに続き、選択した溶媒を入れた。懸濁液を、示された温度(表6)に72時間加熱し、その間に試料を、24時間間隔で採取した。固体を、濾過によって熟成温度で単離し、その後、真空下45℃で20時間乾燥させた。2つの例(表6、エントリー1及び2)では、懸濁液を、135℃で保持した。これは、形態Iを24時間の時点から実験の終了まで含んでいた。残りの例(表6、エントリー4~6)では、72時間の時点では溶液を形成しており、軽く冷却すると固体が再び生じ、それは全て、形態1であると決定された。より低い温度で熟成されたものは全て、24時間以内に形態2を与えた。
表6: さまざまな温度で熟成させた形態1及び2の懸濁液のXRPD分析。
【表7】
脚注: a.72時間後にXRPD分析によって決定; b.溶解が、この温度で生じた;軽く冷却すると固体が得られた。
【0116】
(示差走査熱量測定によるプロファイリング)
DSCによる調査を、上述の方法により行った。
【0117】
98.4%純度の粗体投入材料の試料を、示差走査熱量測定にかけたところ、該試料の加熱時にいくつかの熱的事象が示された。166℃での小さい吸熱が、180℃での第2のより大きな吸熱の前に起こり、そのほぼ直後に、約183℃での発熱及び約201℃での最後の吸熱が続いた(
図8を参照されたい)。これらの分析は、一連の熱誘発性の転移が生じ、その間に初めの低結晶性材料(形態3)が、多形形態2(m.p.180~185℃)に変化し、次いで、それが融解し、形態1(m.p.201~202℃)に転移することを明らかにした。
【0118】
多形形態1及び多形形態2の融解熱(ΔH
f)の正確な値を得るために、高速走査DSC(40℃/分の加熱速度を用いる)を用いて、より低い走査速度(10℃/分)で生じる形態2の融液からの形態1の再結晶化事象を取り除いた。これらの多形の同じ試料の反復分析(n=10)によって、形態1及び2が、それぞれ、72.28J/g及び77.15J/gの平均融解熱を有していたことが示された(表7)。
表7: 形態1及び2の高速走査DSCトレースからの融解データ。
【表8】
【0119】
図16は、この多形形態1の試料の高速走査DSCトレースを含み、それが、202.6℃の融点を有することを明らかにしている。同様に、
図17は、この多形形態2の試料の高速走査DSCトレースを示し、この形態が、182.6℃の融点を有することを示している。
【0120】
BurgerとRamburgerの規則(1979)では、「より高融点の形態が、より低い融解熱を有する場合には、2つの形態は、通常、エナンチオトロピックであり、そうでなければ、それらは、モノトロピックである」とされている。複数のバッチのDSC分析により、形態1の融解熱が、一貫して、形態2の融解熱よりも低かったことが確認され、このことから、多形形態1及び2が、エナンチオトロピックな関係にあることが結論できる。絶対零度から、形態1及び2が等しい熱力学的安定性を有する温度である遷移点まで、形態2が、より熱力学的に安定な状態(最も低いGibbs自由エネルギーを有する)であるということになる。この遷移温度より上では、形態1の多形が、その融点に到達するまで、より熱力学的に好ましい。
【0121】
(熱重量分析(TGA))
TGAプロファイリングを、上述の方法によって行い、化合物Iの多形に関連する残留溶媒の量を決定するのに用いた。加えて、それを用いて、加熱時に化合物Iの溶媒和された形態から放出される溶媒の量を測定した。化合物Iの多形の試料にみられる典型的な残留溶媒レベルは、以下の通りであった。
【0122】
トルエンから調製された形態1の多形は、25から120℃への加熱時に、0.1molの水の喪失に一致する0.3% w/wの重量減少を示した。320℃からの分解が明らかであった(データは示していない)。
【0123】
EtOHから得た形態2の試料は、25~150℃で、0.03molのEtOHの喪失に帰せられる0.2% w/wの重量減少を示し、化合物Iの分解が、320℃で始まった。MIBKから単離された形態2の多形材料は、試料が320℃で分解し始めるまで重量減少を示さなかった(
図18)。アニソール溶媒和物では、試料を25~160℃で加熱した場合、13.4% w/wの減少が生じた(データは示していない)。
【0124】
(スラリー化及び交差種晶添加実験)
形態1及び2(50% w/w)の混合物を調製し、次いで、該混合物の試料(20mg)を、溶媒系(50体積、1.0mL)中に懸濁させ、種々の温度で96時間振盪した。固体を濾過し、空気乾燥させ、XRPDによって分析した。得られた結果(表8)は、調査された系の1つを除くすべて(エントリー10~12)において、多形形態の混合物が、室温及び50℃の双方で維持された場合に、形態2に変化していたことを明らかとした。形態2が、5℃で維持されていた懸濁液からも単離された(エントリー1)ので、酢酸プロピル中での転移が、特に容易であることが分かった。特に、変化が、この溶媒中及びTBME中(エントリー4~6)だけでなく、以前に粗体投入材料(形態3)から形態1を生じさせた芳香族溶媒であるトルエン中(エントリー7~9)でも生じることが分かった。水性イソプロピルアルコールから回収された材料は、双方の形態の混合物であることが分かった(エントリー10~12)。
表8: 5℃、25℃、及び50℃での形態1及び2の交差種晶添加実験
【表9】
脚注: 全ての試料は、熟成の間懸濁液のままであった。
【0125】
この観察は、化合物Iの溶解性がこの溶媒系中では低すぎて、完全な転移が起こらないこと又はこれらの条件が、形態Iの形態2への転移に対して好適度がもともと低いことのいずれかを示唆する。このような調整実験(conditioning experiment)からの出力を決定する際の水の影響を決定するために、形態2の多形の挙動を、名目上乾燥有機媒体中と水混和性の溶媒との単相性の水性混合物中とで調査した。
【0126】
形態2の固体を、唯一の溶媒としてのヘプタン、TBME、トルエン中、又はシクロヘキサン中に、25又は50℃の双方で24時間懸濁させた場合、知覚できる結晶構造の変化は生じなかった。同じ結果が、調整媒体(conditioning medium)が、ニートのアセトン(表9、エントリー1及び6)又は単独の水(表9、エントリー5及び10)のいずれかであった場合にも得られた。しかしながら、50℃のアセトン-水混合物中24時間では、2つの例において、形態2が形態1へと転移していた明確な証拠が存在した(表9、エントリー7及び9)。この結果は、この温度範囲において、この化合物Iの多形が、形態2と比べて準安定であることを考えれば、予期せぬものであった。
表9: アセトン、水、及びアセトン/水混合物中にスラリー化された形態2の動態。
【表10】
【0127】
この予期せぬ転移の普遍性を調査するために、類似の実験を、THF中及びTHF/水混合物中で行った。上で開示されるデータと一致して、25及び50℃双方での少なくとも4時間の期間の単独のTHF中での多形形態2としての化合物Iインキュベーションは、混合物の多形組成に対する作用を何ら有しないことが分かった。しかしながら、水の添加は、形態2の多形の形態1への変化に対して顕著な作用を示し、これは、低い温度及び高い温度の双方で生じることが観察された(表10)。25℃では、10%及び20%の水を含む混合物は、それぞれ、4時間及び24時間後に形態1に戻った(表10、エントリー2及び3)。著しいことに、50℃では、水性THF混合物の全てが、形態1の結晶状態の生成をもたらした(表10、エントリー6~8)。
表10: THF及びTHF/水混合物中でスラリー化された形態2の動態。
【表11】
脚注: ndは、決定されなかった(データを収集しなかった)ことを示す。
【0128】
水の存在が、上で報告した多形遷移を誘発することが明らかである。しかしながら、低いレベルで以外でも、水は、これらの系において強力な貧溶媒であり、その比率が上がるにつれて、水性溶媒混合物中の原薬の溶解性を顕著に低下させる。この溶解性プロファイルの結果は、単独の水中又は水が多い溶媒混合物中では、形態2から形態1への変化のプロセスは、特に、周囲温度で、全く生じないか、又は極めて低い溶解性によって阻害されるかのいずれかであるということである。アセトンの場合、及び特にTHF中では、温度を上げると、投入された形態2の溶解性が上昇し、それの形態1の状態への転移が加速される。
【0129】
類似の相互変換の意義深いパターンが、ジオキサン及び水のさまざまな混合物中、周囲温度及び高い温度で形態2をスラリー化させる実験から得られた(表11)。10%の水の存在下では、形態1の多形が、25℃で1時間以内にスラリー混合物中にはっきりと表れる。しかしながら、含水量を40%まで上昇させた場合は、この遷移は、24時間の時点で採取された試料のみが、形態1として存在することが明らかとされた程度まで遅くなる。この3成分系は、50℃でも同様な挙動を示した。しかしながら、より高い温度の65℃では、形態1が3時間後に生成されたように、変化速度が増加する。上述の実験から得られるデータと一致して、この系において水の比率を80%まで上昇させることは、25℃、50℃で及びさらには65℃での多形の相互変換を停止させるのに十分であった。
表11: 1,4-ジオキサン/水混合物中にスラリー化された形態2の動態
【表12】
†少量の形態2が残っている
【0130】
有機溶媒の性質、外来性の(adventitious)水の存在、及びスラリー温度の相互作用(及び推定接触時間による)が、25及び50℃の双方での、含水量を1体積%から8体積%へと漸次増加させたMEK中での形態2の固体の熟成によって明らかとされた(表12)。含水量が6%を超えるまでは、化合物Iの溶解性が19から30mg/mlに増加するにもかかわらず(データは示していない)、形態2の完全性が、低い方の温度では少なくとも24時間維持されたことが観察された。水の比率が8%に到達すると、該薬物の溶解性は23mg/mLに低下していたにもかかわらず、スラリー混合物は、形態1の多形に戻った。
【0131】
温度を50℃まで上げると、多形の相互変換が、含水量が2%を超える混合物について24時間の時点で見られたように、転移プロセスが促進された。これらのデータから、化合物Iが曝される環境条件が、多形1又は2の2つの多形のうちのどちらが生じるかだけでなく、相互変換が起こる速度も決定することが明らかである。
表12: MEK/水混合物中にスラリー化された形態2の動態。
【表13】
【0132】
試料の動態に対する初めの多形組成の影響を、無水MEK及びTHF中並びに5%の水をドープした同じ溶媒中での単一の多形又は双方の等量混合物のいずれかの平衡化によって調査した。
表13: 単独及び水の存在下でのMEK及びTHF中での個々の及び混合物としての形態1及び2の平衡化。
【表14】
a. 双方の平衡化温度での結果 別途示されない限り同じ。b. 形態2のいくらかの証拠が、10℃で存在。
【0133】
得られた結果(表13)は、無水媒体中では、2つの多形は、個別に存在するのであれば、それらの構造的な完全性を維持することを明らかにしている(表13、エントリー1、2、4、及び5)。変化のいくらかの比較的重要でない証拠が、10℃のTHF中で見られ(表13、エントリー4)、これは、高吸湿性溶媒中の微量の水分の存在に帰すことができる。しかしながら、2つの多形の混合物は、双方の温度のMEK又はTHFのいずれかの中で形態2に転移した(表13、エントリー3及び6)。このことは、この形態が、無水又はほぼ無水の条件下で好ましいことを明らかとしている。
【0134】
5%の水を前記2種の溶媒に混ぜ合わせた場合に認められた結果は、速度論的因子を考慮に入れると、2つの形態のうちのどちらが優位であるかが、これらの条件下で逆転していることを示している。水性MEK(5%の水)中では、ここでも、単独の多形は、実験の期間にわたって変化しなかった(表13、エントリー7及び8)。対照的に、2成分系多形混合物は、この媒体中で形態1に変化した(表13、エントリー9)。水性THF(5%の水)中では、最も好ましい多形としての形態1の優位性が、特に明らかである。この環境においては、形態1の懸濁液は、同じ条件下の水性MEKで認められる結果と一致して、変化しないままである(表13、エントリー10)。
【0135】
しかしながら、5%の水をドープしたTHF中では、2成分混合物を含む懸濁液及び形態2の多形単独で構成される懸濁液は双方とも、形態1のみを含有する懸濁液に変化した(表13、エントリー11及び12)。これらの混合物中の少量成分としての水の存在が、水が存在しない場合には形態2に有利であることが観察される安定性の序列を覆すので、これらのデータは、特に驚くべきである。この結果は、本発明者らが、本明細書の別の場所で、形態2の多形が、この実験の温度範囲(5~10℃)内で及び少なくとも70℃の温度未満で化合物Iのより熱力学的に安定な方のエナンチオトロープであるという証拠を開示していることを考慮すれば、予期せぬものである。
【0136】
(ラットへの吸入投与による形態1及び2の比較による薬物動態学的プロファイリング)
ラットにおける形態1又は形態2のいずれかの単回の吸入用量の後の血漿における未変化体の薬物濃度の時間的推移を比較するために、試験に取り掛かった。
【0137】
規制機関によりそれが受け入れられるという理由で、雄のRccHan(商標):WISTラットを適当な種及び系統と考えた。吸入投与経路を、臨床投与の条件をシミュレーションするのに選択した。薬物処置の開始時に10~12週齢及び306~341gの体重の合計で14頭の動物(1群あたり6頭の動物と2頭の予備の動物)を、本試験において用いた。処置は、第1群の動物へのマイクロ微細化形態1(98.94%純度)又は第2群の動物へのマイクロ微細化形態2(98.10%純度)のいずれかの噴霧製剤を用いる単回の2時間吸入曝露からなっていた。2つの多形形態の薬物動態学的パラメーターを、動物における薬理学及び毒性学研究並びにヒトにおける臨床研究を支援するように決定した。
【0138】
懸濁液を、先ず界面活性剤の濃縮溶液(湿潤溶液)及び生理食塩水溶液を調製することによって生産した。次いで、これらを用いてビヒクルを作製した。生理食塩水溶液は、以下のように調製した。塩化ナトリウム(50g)を、5000mLのメスフラスコ中に秤量し、水でメスアップし、マグネチックスターラーで10分間撹拌し、次いで、0.22μmのメンブランフィルターに通した。湿潤溶液は、以下のように調製した。Lipoid S100(10g)を、2000mLのDuran瓶中に秤量し、1000gのプロピレングリコールを添加し、混合物を、1インチの高剪断スクリーンを取り付けたSilversonミキサーで1分間8000rpmで撹拌し、次いで、0.22μmのメンブランフィルターに通した。ビヒクルは、以下のように調製した。湿潤溶液(500mL)を、5000mLのメスフラスコに移し、生理食塩水溶液でメスアップし、マグネチックスターラーで10分間撹拌し、0.22μmのメンブランフィルターに通した。
【0139】
1000mLのバッチの4mg/mLの化合物Iの懸濁液を、以下のように調製した。化合物I(4.00g)を、小さいビーカー中に秤量し、100mLの湿潤溶液を添加し、混合物を1インチの高剪断スクリーンを取り付けたSilversonミキサーを用いて5分間8000rpmで撹拌した。次いで、混合物を、生理食塩水溶液を用いて5000mLのDuran瓶中に移し、1インチの高剪断スクリーンを取り付けたSilversonミキサーを用いて5分間8000rpmで撹拌し、その後、それを、2~8℃の間で保管した。より高い又はより低い強度の懸濁液(範囲:0.2~20mg/mL)を、より高いmg/mLの懸濁液についてはAPIの投入重量を適宜調整することによって、又はより低いmg/mLの懸濁液についてはビヒクルでさらに希釈することによって調製した。すべての製剤は、少なくとも30分間磁気的に撹拌され、投与前に視覚的に評価された。
【0140】
ラットを、投薬前の連続する3日間吸入投薬手順に順化させた。25.2μg/Lの目標エアロゾル濃度での口吻部のみの曝露による120分間のエアロゾル吸入投与によって、動物に対し試験物質での処置を行った。2時間の曝露期間及び300gの仮定体重からの吸入用量の推定値を、以下の式を用いて計算した:
【数1】
(式中、Cは、エアロゾル濃度(μg/L)であり;RMVは、毎分換気量(L/分)であり;Dは、曝露期間(120分)であり、BWは、群平均体重(kg)である)。平均到達エアロゾル濃度、推定吸入用量、及び粒子サイズ分布(PSD)をまとめたデータを、以下に示す(表14)。
表14: エアロゾル吸入投与の間に達成された化合物Iのチャンバーエアロゾル濃度及び推定吸入投薬量。
【表15】
脚注: MMAD. 空気力学的質量中央径; σg. 幾何標準偏差
【0141】
表14に示されるように、25.2μg/Lの目標エアロゾル濃度を選択して、2.2mg/kgの名目用量を送達した。形態1の28.8μg/Lの実際のエアロゾル濃度が達成され、第1群の動物に対して約2.48mg/kgの推定吸入投薬量が提供された。形態2について達成されたエアロゾル濃度は、32.6μg/Lであり、それによって、第2群の動物について約2.82mg/kgの推定吸入投薬量が送達された。
【0142】
達成されたエアロゾル濃度は、標的値に近く、推定吸入用量は、第1群及び第2群についてそれぞれ目標の113%及び128%であった。粒子サイズ分布により、生じたエアロゾルは、ラットが吸入できるものであったことが確認された。
【0143】
静脈血試料(0.3mL)を、動物の尾静脈から採取し、かつ試料を、投薬後(用量の投与開始から2時間)及びその後の処置の3、4、6、8、12、24、28、32、36、及び48時間後の時点で採取した。試料を、K2EDTA抗凝固剤で処理し、2000gで10分間4℃で回転させ、次いで、分析まで凍結(-20℃±10)させて保管した。それに続き、血漿試料を、バリデーション済みのLC-MS/MS法を用いてLGCによって化合物Iに関して分析した。
【0144】
(抽出及び分析手順)
ラット血漿試料を、ボルテックス混合し、25μLの分量を取り出し、12.5μLの内部標準作業溶液(20ng/mLの化合物2を含む)及び25μLの10mMギ酸アンモニウム水溶液で処理した。混合物を、5分間1400rpmでボルテックスし、その後、300μLのMTBEを添加し、次いで、試料を10分間タンブル混合した。3500gで5分間の遠心分離後に、有機層の150μLの分量を取り出し、乾固するまで窒素下50℃で約15分間エバポレートした。残渣を、0.1%のギ酸を含有する100μLのアセトニトリルと水(50:50)の混合物中に再構成し、5分間1400rpmでボルテックス混合した。次いで、このように調製された試料を、バリデーション済みのLC-MS/MSを用いて分析して、化合物Iの元の血漿濃度を決定した。
【0145】
LC系は、Acquity UPLC C8(50×2.1mm)分析用カラムを取り付けたAcquity Binary Solvent Managerを含んでおり、該カラムは、40℃の公称温度に維持された。試料を、0.8mL/分の流速でアセトニトリル中0.1%のギ酸(移動相A)及び水中0.1%のギ酸(移動相B)を用いるグラジエント溶出(表15)によって2.3分間の分析時間にわたって分析した。
表15: HPLC溶離液グラジエントプロファイル。
【表16】
【0146】
化合物Iを、参照標準として使用し、テトラ重水素化誘導体化合物2を、内部標準として採用した。化合物2は:4-(4-(4-(((3R,5R)-5-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)-5-(2,4-ジフルオロフェニル)テトラヒドロフラン-3-イル)メトキシ)-3-メチルフェニル)ピペラジン-1-イル)-N-(4-フルオロフェニル-2,3,5,6-d
4)ベンズアミドである。
【化4】
【0147】
機器の制御、データ収集、ピーク面積積分、及び記憶は全て、MassLynx(バージョン4.1)を用いて行った。各較正標準の質量分析計の応答(内部標準に対する分析物のピーク面積比)を、Watson LIMS(バージョン7.2)によって計算し、名目上の(調製された)濃度に対してプロットした。重み付きの(1/x2)最小二乗線形回帰分析を用いて、検量線の方程式を計算した。試料中の化合物Iの濃度を、検量線から有効数字3桁まで逆算した。マイクロソフトエクセル2010を、さらなる計算に使用した。すべての百分率は、小数第1位まで示される。
【0148】
薬物動態学的分析を、Phoenix WinNonlinで行った。最高平均血漿濃度(Cmax)及びそれらの発生時間(Tmax)を決定した。最後の定量可能な試料の時間までの平均血漿濃度対時間曲線下面積(AUCt)を、線形台形則によって推定した。原薬の投与後にその有害作用は存在せず、連続的な血液試料が、吸入曝露の開始後48時間まで採取された。
【0149】
2つの多形の、それらのラットへの吸入投与後の平均薬物動態学的パラメーターが、表16にまとめられており、以下においてより詳細に記載される。
表16: 化合物Iの形態1及び2の、それらのラットへの吸入投与後の平均薬物動態学的パラメーター。
【表17】
脚注: a.双方のAUC
t値は、0~48時間である; b.形態1で達成された用量(2.48mg/kg)に対して正規化された形態2のAUC
t。
【0150】
(血漿濃度)
形態1及び2の吸入投与後の薬物の血漿濃度は、双方の群についての曝露の開始後48時間まで定量可能なままであった。この血漿濃度を、以下に示す(それぞれ、表17及び18)。それから誘導された平均血漿濃度-時間プロファイルを、図で表す(形態1及び2についてそれぞれ
図19及び
図20)。
表17: 2.2mg/kgの名目用量レベルでの雄性ラットに対する形態1の吸入投与後の薬物の血漿濃度。
【表18】
脚注: a. 吸入曝露の開始から; IAD: 投薬直後; NS: 試料なし。
【0151】
表18: 2.2mg/kgの名目用量レベルでの雄性ラットへの形態2の吸入投与後の薬物の血漿濃度。
【表19】
脚注: a. 吸入曝露の開始から; IAD: 投薬直後; NS: 試料なし。
【0152】
形態1(第1群)の平均血漿濃度は、曝露の開始後6時間の時点で最大値まで増加し、その後、曝露の開始後48時間の時点での最後のサンプリング時間まで着々と低下した。形態1について、平均Cmaxは、4.95ng/mLであり、平均AUCt値は、122ng.時間/mLであった。形態2の平均血漿濃度は、曝露の開始後6時間の時点で最大値まで増加し、その後、曝露の開始後48時間まで着々と低下した。形態2について、平均Cmaxは、8.59ng/mLであり、平均AUCt値は、230ng.時間/mLであった。双方の多形は、類似のTmax値を有していたが、個々の平均血漿濃度は、形態1のデータと比較して、形態2を投与されたラットの群における11回のサンプリング時間の全てでより大きなものであった。その結果、用量で正規化されたCmax及びAUCt値は、形態2でそれぞれ1.5倍及び1.7倍高かった。
【0153】
(相対的バイオアベイラビリティ)
吸入投与後の2つの多形の相対的バイオアベイラビリティ(RF)を、式:
RF=AUCt(形態2)/AUCt(形態1)×達成された用量(形態1)/達成された用量(形態2)
を用いて計算した。
【0154】
形態2の多形の用量正規化AUCt値(表16)は、ラットへの吸入投与後に形態1と比較して166%の相対的バイオアベイラビリティを示す。
【0155】
この試験は、双方の結晶形態が、吸入経路によって全身利用可能であったこと、及び曝露が、投与の開始後48時間までの期間持続したことを明らかとしている。しかしながら、形態2(
図20)が、48時間のPKプロファイルの間一貫して、形態1(
図19)が与える薬物の全身濃度よりも高い薬物の全身濃度を与えたことは注目に値する。形態2の多形の用量正規化C
max及びAUC
t値は、形態1のものよりも、それぞれ、約1.5倍及び1.7倍高い。
【0156】
その優れたバイオアベイラビリティを考慮すると、形態2の多形は、治療的作用部位での急速な溶解及び薬物濃度の増大が必要とされる真菌症の治療において有用であると期待し得る。水性懸濁液中では、上記のように、形態2は、この環境で準安定であると考えられているものの、形態2が形態1に遷移することは妨げられているようである。従って、形態2の多形は、水性懸濁液としての吸入による投与に特に適している。
【0157】
また、形態1は、この多形形態の全身バイオアベイラビリティによって例示されるように、真菌症の治療において有用であると期待し得る。加えて、形態1の多形は、クリーム剤及びペッサリー剤などの、水中性懸濁液以外の製剤において有用であると期待し得る。そのような投与は、局所投与を受け得る皮膚及び他の部位に影響を及ぼす真菌症などの、真菌症に感染するする恐れのある個体における真菌症の予防に有用であり得る。
【0158】
(データの要約)
本明細書は、化合物Iの2つの新たな多形形態:形態1及び形態2を開示する。双方の形態は、それらの高い融点によって証拠が示されるように良好な熱安定性を有する(表7を参照されたい)。さらに、形態2のバイオアベイラビリティは、形態1のそれよりも特に高いが、双方の多形は、水性懸濁液として吸入によって投与される場合、許容し得るバイオアベイラビリティを有する(本明細書において上に示されている相対的バイオアベイラビリティのデータを参照されたい)。双方の結晶形態は、吸入投与に適合する粒子サイズ分布を与えるマイクロ微細化に適している(
図10及び
図13を参照されたい)。形態1の多形は、水性懸濁液以外の製剤における使用に特に適していると期待される。形態2の多形は、吸入による投与用に意図されるものなどの、水性懸濁液製剤における使用に特に適している。
【0159】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲の全体で、文脈がそうでないことを必要とする場合を除き、「を含む(comprise)」という語、並びに「を含む(comprises)」及び「を含む(comprising)」など変形形態は、明言されたインテジャー(integer)、工程、インテジャーの群、又は工程の群を含めることを含意するが、任意の他のインテジャー、工程、インテジャーの群、又は工程の群の排除は含意しないと理解される。
【0160】
本発明の明細書の至る所で言及される全ての特許、特許出願、及び引例は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0161】
本発明は、好適な及びより好適な群、並びに適当な及びより適当な群、並びに上述の群の実施態様の全ての組合せを包含する。
【0162】
【国際調査報告】