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特表2023-505242発光素子、表示装置用のバックライトユニット、および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】発光素子、表示装置用のバックライトユニット、および表示装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20230201BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20230201BHJP
   F21V 9/38 20180101ALI20230201BHJP
   F21V 9/08 20180101ALI20230201BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230201BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230201BHJP
【FI】
F21S2/00 481
F21V9/32
F21V9/38
F21V9/08 200
G02B5/20
F21Y115:10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533491
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2019083822
(87)【国際公開番号】W WO2021110269
(87)【国際公開日】2021-06-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513121384
【氏名又は名称】ベステル エレクトロニク サナイー ベ ティカレト エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】アイドゥンドアン・ギュネス
【テーマコード(参考)】
2H148
3K244
【Fターム(参考)】
2H148AA01
2H148AA19
2H148AA25
3K244AA01
3K244BA02
3K244BA07
3K244BA11
3K244BA42
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA01
3K244FA06
3K244GA04
(57)【要約】
【課題】発光素子、該発光素子を含むバックライトユニット、ならびに該発光素子および/または該バックライトユニットを備える表示装置を提供する。
【解決手段】発光素子100は、第1色の光を発するように構成された複数の第1量子ドット112が埋め込まれている誘電体層110と、誘電体層110に埋め込まれており、複数の第1量子ドット112が放出したエネルギーの少なくとも一部を表面プラズモンに変換するように構成されているメタマテリアル構造120と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1色の光を発するように構成された複数の第1量子ドット(112)が埋め込まれている誘電体層(110)と、
前記誘電体層(110)に埋め込まれており、前記複数の第1量子ドット(112)が放出したエネルギーの少なくとも一部を表面プラズモンに変換するように構成されているメタマテリアル構造(120)と、
を備える、発光素子(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の発光素子(100)において、前記第1色が、緑色であり、特には、約480nm~約600nmの波長範囲内である、発光素子(100)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光素子(100)において、前記誘電体層(110)には、前記第1色と異なる第2色の光を発するように構成された複数の第2量子ドット(114)が埋め込まれている、発光素子(100)。
【請求項4】
請求項3に記載の発光素子(100)において、前記メタマテリアル構造(120)は、前記第2色の光が表面プラズモンに変換されないように構成されている、発光素子(100)。
【請求項5】
請求項3または4に記載の発光素子(100)において、前記第2色が、赤色である、発光素子(100)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の発光素子(100)において、前記メタマテリアル構造(120)が、多層構造である、発光素子(100)。
【請求項7】
請求項6に記載の発光素子(100)において、前記多層構造が、前記第1色の波長範囲を表面プラズモンに変換するように構成された様々な共鳴経路を提供する、発光素子(100)。
【請求項8】
請求項6または7に記載の発光素子(100)において、前記多層構造の各層が、それぞれ格子体として構成されている、発光素子(100)。
【請求項9】
請求項8に記載の発光素子(100)において、前記多層構造の各層内で、前記格子体の格子間隔が変化する、発光素子(100)。
【請求項10】
請求項8または9に記載の発光素子(100)において、前記多層構造の隣合う層の格子体同士が、互いに略直交に向いている、発光素子(100)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の発光素子(100)において、前記メタマテリアル構造(120)が、双曲線分散型のメタマテリアル構造、特には、双曲線分散型のフィッシュネット形メタマテリアル構造である、発光素子(100)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の発光素子(100)において、前記メタマテリアル構造(120)が、金属材料、特には、金および/または銀を含有しているか、あるいは、金属材料、特には、金および/または銀からなる、発光素子(100)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の発光素子(100)において、前記誘電体層(110)が、高分子材料、特には、TiOおよび/またはSiNを含有している、発光素子(100)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の発光素子(100)と、
第3色の光を発するように構成された光源(610)と、
を備える、バックライトユニット、特には、表示装置用のバックライトユニット。
【請求項15】
画像を表示するように構成された表示パネル(620)と、
請求項1から13のいずれか一項に記載の発光素子(100)および/または請求項14に記載のバックライトユニット(100,610)と、
を備える、表示装置(600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、発光素子、該発光素子を含むバックライトユニット、ならびに該発光素子および/または該バックライトユニットを備える表示装置に関する。詳細には、本開示の実施形態は、量子ドット技術を利用してバックライトを設けたQLED表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置は、コンピュータモニタ、テレビモニタ、携帯電話のディスプレイ、携帯情報端末(PDA)や、それ以外のますます多くの装置などの用途にも普及している。液晶ディスプレイは、液晶の光調節特性を一対の偏光子と組み合わせて利用したフラットパネルディスプレイである。液晶は光を発さないので、バックライトユニットを使うことで、カラー画像が作り出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大型ディスプレイに対する需要から、ディスプレイの消費エネルギーを十分に抑えつつも、画像品質を優れたものにすることのできる、新たなディスプレイ構造への要望が上っている。具体的に述べると、画像品質を優れたものにするには、液晶ディスプレイのバックライトユニットが、比較的少ない消費エネルギーで高輝度の白色光を生じさせることができるものでなければならない。
【0004】
上記からみて、当該技術分野の同問題を少なくとも一部解消した、新たな発光素子、該発光素子を含むバックライトユニット、ならびに該発光素子および/または該バックライトユニットを備える表示装置が有用となる。
【0005】
上記を踏まえて、発光素子、該発光素子を含むバックライトユニット、ならびに該発光素子および/または該バックライトユニットを備える表示装置が提供される。
【0006】
本開示の目的の一つは、発光素子の輝度を上げることである。本開示の他の目的は、発光素子の消費エネルギー、特には、表示装置のバックライトユニットの消費エネルギーを最小限に抑える又は小さくすることである。
【0007】
本開示のさらなる側面、利点および特徴は、特許請求の範囲、明細書および添付の図面から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
同目的は、独立請求項の構成によって解決される。好適な実施形態は、従属請求項で与えられる。
【0009】
本開示の一独立態様では、発光素子が提供される。同発光素子は、第1色の光を発するように構成された複数の第1量子ドットが埋め込まれている誘電体層と、前記誘電体層に埋め込まれており、前記複数の第1量子ドットが放出したエネルギーの少なくとも一部を表面プラズモンに変換するように構成されているメタマテリアル構造と、を備える。そして、同表面プラズモンは、前記第1色の光に変換される。換言すると、緑色光子が、表面プラズモンとして「暗号化」される。
【0010】
本開示の他の独立態様では、バックライトユニット、特には、LCD装置などの表示装置用のバックライトユニットが提供される。同バックライトユニットは、本開示の実施形態に係る発光素子と、第3色の光を発するように構成された光源と、を備える。
【0011】
本開示のさらなる他の独立態様では、表示装置、特には、LCD装置が提供される。同表示装置は、画像を表示するように構成された表示パネルと、本開示の実施形態に係る発光素子および/またはバックライトユニットと、を備える。
【0012】
本開示のさらなる他の独立態様では、発光素子の製造方法が提供される。同方法は、第1色の光を発するように構成された複数の第1量子ドットが埋め込まれている誘電体層を形成することと、前記複数の第1量子ドットが放出したエネルギーの少なくとも一部を表面プラズモンに変換するように構成されているメタマテリアル構造を前記誘電体層に埋め込むことと、を備える。
【0013】
実施形態は、本開示の方法を実施する装置/機器にも向けられており、本記載の方法の各側面を実行する装置部/機器部も包含する。同方法のこれらの側面は、ハードウェアコンポーネント、適切なソフトウェアでプログラムされたコンピュータ、両者の任意の組合せ、あるいは、その他の任意の様式によって実行され得る。
【0014】
上記で簡単にまとめた本開示についてのより具体的な説明を、実施形態を参照しながら行うことで、本開示の上記の構成を詳細に理解することができるであろう。添付の図面は本開示の実施形態に関するものであり、各図の説明は下記のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書で説明する実施形態に係る発光素子の概略図である。
図2】本明細書で説明する実施形態に係る色変換の様子を示す図である。
図3】本明細書で説明する実施形態に係るメタマテリアル構造の概略平面図である。
図4】本明細書で説明する実施形態に係るメタマテリアル構造の概略斜視図である。
図5】本明細書で説明する実施形態に係る複数の単位セルを含むメタマテリアル構造の概略斜視図である。
図6】本明細書で説明する実施形態に係る表示装置の概略図である。
図7】本明細書で説明する実施形態に係る発光素子の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本開示の各実施形態について詳細に言及する。図面には、同実施形態の1つ以上の例が示されている。同図の下記の説明内において、同じ参照符号は、同じ構成/構成要素を指すものとする。全体としては、個々の実施形態の相違点のみに触れている。各々の例は、本開示の例示に過ぎず、本開示を限定するものではない。また、一実施形態の一部として図示又は説明する特徴を、他の実施形態に適用したり他の実施形態と併せて使用したりすることで、さらなる実施形態を生み出すことも可能である。本明細書は、そのような変更や変形を包含するものとして意図している。
【0017】
フラットパネルディスプレイとは、液晶(LC)セルおよびバックライトユニットを備えたものであり得る。バックライトユニットは、適切な色座標の一様な白色光を生成してLCセルに照射する。青色LEDチップ上部に黄色蛍光体層を配置するというのが、白色光を得るための選択肢の一つである。同構造では、青色光の一部が、赤色と緑色を重ね合わせた色である黄色光に変換される。黄色蛍光体層が放出したものであるその黄色光と元の青色光とが組み合わさった結果が、白色光となる。
【0018】
白色光を得るには、その他にも、量子ドット又は量子井戸を使用するという選択肢がある。色変換体として、例えば、前記黄色蛍光体が、緑色光を発する量子ドットと赤色光を発する量子ドットとに置き換えられ得る。これらの量子ドット(あるいは、同量子ドットを具備したナノ粒子)は、高分子マトリクス中で均質に混合される。よって、この組成物内の同量子ドットの分布は、無作為となる。
【0019】
高分子マトリクス中のこのような量子ドットは、発生した緑色光が赤色量子ドットに再吸収されることで、量子効率が低下し得る。赤色量子ドットの吸光スペクトルには、可視スペクトル内の緑色領域が含まれている。よって、緑色量子ドットが放出した光は、赤色量子ドットに再吸収されて赤色光として再放出される。それによって発光効率や生成される白色光中の緑色成分が減少するため、カラーガマット(色再現領域)が狭まる。
【0020】
本開示の実施形態は、緑色などの特定の色に相当するエネルギーを表面プラズモンに変換するように構成されているメタマテリアル構造を誘電体層に埋め込むことで、上記の問題を解消可能にしている。これにより、例えば緑色領域内の多数の光子が、表面プラズモンに変換される。それによって、赤色量子ドットによる再吸収が減少したり、さらには無くなったりする。換言すると、本開示の実施形態は、緑色光子を表面プラズモンとして「暗号化」することで、赤色量子ドットとの接触を防いでいる。これにより、発光効率が向上する。さらに、発光素子の消費エネルギーを最小限に抑える又は小さくすることができる。
【0021】
図1は、本明細書で説明する実施形態に係る発光素子100の概略図である。発光素子100は、LCD装置などの表示装置のバックライトユニットに含められ得る。
【0022】
発光素子100は、第1色の光を発するように構成された複数の第1量子ドット112が埋め込まれている誘電体層110と、誘電体層110に埋め込まれており、前記複数の第1量子ドットが放出したエネルギーの少なくとも一部を共鳴経路Rによって表面プラズモンに変換するように構成されているメタマテリアル構造120と、を備える。そして、同表面プラズモンが前記第1色の光(例えば、緑色光)に変換されて、発光素子100から放出される。
【0023】
誘電体層110は、「色変換層」や「色変換膜」とも称され得る。
【0024】
つまり、前記第1量子ドットが放出した前記第1色の光子(例えば、緑色光子)を前記メタマテリアル構造の表面プラズモンとして「暗号化」することで、それ以外の量子ドットによる再吸収を阻止している。例えば、双曲線分散型のフィッシュネット形メタマテリアル構造が、前記第1量子ドットから放出されたエネルギー/光子とカップリングする表面プラズモン励起のためのホストとして機能し得る。
【0025】
具体的に述べると、電子と正孔が互いに結合した際のエネルギーは、光、熱または表面プラズモンの形態で放出される可能性がある。誘電体層110の第1量子ドット112では、電子と正孔の結合で放出されるエネルギーが、表面プラズモンモードに結合する。すなわち、第1量子ドット112では、キャリア同士の結合で放出されたエネルギーが表面プラズモンに変換されて、(それと同時に)同表面プラズモンのエネルギーが前記第1色の光に変換される。
【0026】
表面プラズモンは、エネルギー状態密度が高い。そのため、第1量子ドット112と表面プラズモンとのカップリングは、前記キャリア同士からの熱の形態のエネルギー放出よりも高速で発生する。よって、表面プラズモンのカップリングのこの仕組みにより、前記キャリア同士からの高速経路による光の形態でのエネルギー放出が可能となる。熱の形態で放出されるエネルギーを減少させることができ、前記発光素子の発光効率の向上が可能となる。
【0027】
(本明細書で説明する他の実施形態と組み合わせることが可能な)一部の実施形態において、誘電体層110は、高分子材料を含有している。メタマテリアル構造120および複数の第1量子ドット112は、同高分子材料の内部に埋め込まれ得る。よって、前記メタマテリアル構造を、前記発光素子と接する光源側に配置することで、発光素子100の発光効率がさらに向上する可能性がある。前記誘電体層は、TiO、SiNなどの高屈折率誘電体であり得る。
【0028】
一部の応用例において、前記第1色は緑色である。具体的に述べると、第1量子ドット112は、緑色の光を発するように構成された量子ドット、すなわち、緑色量子ドットであり得る。前記第1色は、約480nm~約600nmの波長範囲に相当し得るか又は同波長範囲内であり得る。緑色波長は、赤色量子ドットに再吸収される可能性が高い。よって、発生した緑色光子の再吸収を表面プラズモンへの変換によって阻止可能とすることで、発光素子100の発光効率を向上させることができる。
【0029】
一部の実施形態において、誘電体層110には、複数の第2量子ドット114が埋め込まれている。複数の第2量子ドット114は、前記第1色と異なる第2色の光を発するように構成されている。一部の応用例において、前記第2色は、赤色である。
【0030】
メタマテリアル構造120は、前記第2色の光またはエネルギーが表面プラズモンに変換されないように構成され得る。具体的に述べると、メタマテリアル構造120は、複数の第2量子ドット114の赤色波長によって表面プラズモン共鳴が生じないように構成され得る。これにより、発光素子100のカラーガマットを広げることができる。
【0031】
(本明細書で説明する他の実施形態と組み合わせることが可能な)一部の実施形態において、複数の第1量子ドット112(例えば、緑色量子ドット)のサイズ、および/または複数の第2量子ドット114(例えば、赤色量子ドット)のサイズは、100nm未満、具体的には50nm未満、より具体的には10nm未満であり得る。
【0032】
また、複数の第1量子ドット112(例えば、緑色量子ドット)および/または複数の第2量子ドット114(例えば、赤色量子ドット)は、半導体特性を示し得る。これにより、複数の第1量子ドット112および/または複数の第2量子ドット114は、表示装置のバックライトユニットの用途に極めて適したものとなる。
【0033】
図2は、本明細書で説明する実施形態に係る発光素子を用いた色変換の様子を示す図である。
【0034】
同発光素子は、複数の第1量子ドット112および複数の第2量子ドット114を有している。第1量子ドット112は緑色量子ドットであり得て、第2量子ドット114は赤色量子ドットであり得る。図2の例では量子ドットが1個ずつ描かれているが、これよりも「巨大」な、ナノ結晶などの量子ドット体が、誘電体層110内に分散して埋め込まれている場合もあると理解されたい。巨大な各量子ドット体が、複数の量子ドットを具備し得る。
【0035】
バックライトユニット(図示せず)が、背景光Aを提供し得る。同バックライトユニットは、例えば、青色LEDを有し得る。すなわち、背景光Aは、青色光であり得る。第1量子ドット112は、青色の背景光Aの少なくとも一部をメタマテリアル構造120の表面プラズモンに変換する。具体的に述べると、第1量子ドット112では、キャリア同士の結合で放出されたエネルギーが表面プラズモンに変換されて、それと同時に同表面プラズモンのエネルギーが緑色光Bに変換される。表面プラズモンへの変換により、発生した緑色光子の再吸収を阻止することができる。
【0036】
また、第2量子ドット114は、青色背景光Aの少なくとも一部を赤色光Cに変換する。変換されることなく前記発光素子を通過する青色光A、第1量子ドット112及び表面プラズモンへの変換によって提供される緑色光B、ならびに第2量子ドット114が発する赤色光Cが重なり合って、白色光が形成される。同白色光が、LCDパネルのバックライトとして利用され得る。
【0037】
図3は、本明細書で説明する実施形態に係るメタマテリアル構造の単位セルUCの概略平面図である。図4は、本明細書で説明する実施形態に係るメタマテリアル構造の単位セルUCの概略斜視図である。図5は、本明細書で説明する実施形態に係る複数の単位セルUCを含むメタマテリアル構造の概略斜視図である。
【0038】
本願を通して用いる「メタマテリアル構造」とは、自然界で発見され得ない人工的な構造に関する用語である。メタマテリアルは、周期的に構成されてなる金属成分及び/又は誘電体成分で、誘電率εや透磁率μを操作することが可能な物質である。これにより、負の屈折や完全レンズや電磁波誘起透明化の提供が可能となる。
【0039】
メタマテリアルは、誘電体物質と併用されることで、表面プラズモンを伝播することが可能となる。表面プラズモンとは、金属/誘電体の界面における電子の集団的振動である。これらの振動は、波のような振る舞いを形成する。この光成分の波長は、光子の波長よりも短い。これにより、通常の物質よりも高速で光を伝播させることができる。高速の伝播速度以外にも、表面プラズモンは、高い運動量を有することから光子よりも高いエネルギーを伝え、かつ、散逸媒体の影響を受け難い。よって、表面プラズモン-光子のカップリングにより、バックライトユニットの発光効率を向上させることが可能である。
【0040】
(本明細書で開示する他の実施形態と組み合わせることが可能な)一部の実施形態において、前記メタマテリアル構造は、多層構造である。換言すると、前記メタマテリアル構造は、互いに積み重なった複数の層を有し得る。一部の応用例において、前記多層構造の各層は、それぞれ格子体として構成され得る。
【0041】
本開示を通して用いる「格子体」とは、図3図5に示すように、所与の物質の略平行な線状部や棒状部同士のことを指す用語である。隣合う2層の線状部又は棒状部同士は、互いに略直交したものとされ得る。
【0042】
「略平行」とは、例えば格子体の線状部又は棒状部同士等が略平行に向いていることに関する用語であり、厳密に平行な向きからの例えば1°以下、さらには、5°以下等の数度のずれも「略平行」と見なされる。同様に、「略直交」とは、例えば相異なる層の格子体の線状部又は棒状部同士等が略直交に向いていることに関する用語であり、厳密に直交な向きからの例えば1°以下、さらには、5°以下等の数度のずれも「略直交」と見なされる。
【0043】
(本明細書で開示する他の実施形態と組み合わせることが可能な)一部の実施形態では、前記多層構造の各層内で、前記格子体の格子間隔が変化する。換言すると、各層内で、格子間隔が非一様とされる。同格子間隔は、例えば、第1方向に行くほど幅広となり得て、すなわち、第1方向とは逆方向の第2方向に行くほど幅狭となり得る。
【0044】
一部の応用例において、前記メタマテリアル構造は、双曲線分散型のメタマテリアル構造(例えば、双曲線分散型のフィッシュネット形メタマテリアル構造)である。
【0045】
一部の実施形態において、前記メタマテリアル構造の前記多層構造は、前記第1色の波長範囲またはエネルギー範囲を表面プラズモンに変換するように構成された、様々な共鳴経路を提供する。当該様々な共鳴経路は、個々の格子体の格子間隔を非一様にすることでもたらされ得る。具体的に述べると、1以上の前記格子体の1以上の前記格子間隔に調節を施すことで、前記メタマテリアル構造の前記多層構造の共鳴特性の調整が行われ得る。
【0046】
第1量子ドット112は前記メタマテリアル構造に近接するものとされ得て、かつ、第1量子ドット112の発光波長は前記メタマテリアル構造のプラズモン共鳴の近傍とされ得る。これにより、第1量子ドット112のエネルギーは、直接かつ近接場でのプラズモン振動の励起を通じて放出される。したがって、ホスト構造(つまり、前記メタマテリアル構造)の様々な各部分ごとに、例えば480nm~600nm(緑色)のうちの特定の一波長の表面プラズモンが励起される。
【0047】
前記メタマテリアル構造は、単位セルと称する同一コンポーネント同士の周期的構造である。図3及び図4には単位セルが一つだけ描かれているが、図5には複数の単位セルUCを含むメタマテリアル構造が描かれている。
【0048】
単位セルUCのサイズは、ナノメートル領域である前記表面プラズモンの波数ベクトル近傍とされ得る。各単位セルUSの形状は、特定の一以上の波長をカバーするように構成されている。具体的に述べると、単位セルUCの形状は、共鳴波長を480nm~600nmの範囲に制限するように構成され得る。
【0049】
本開示の一実施形態では、前記メタマテリアル構造が、前記高分子膜内のうちの、前記バックライトユニットのLEDよりも遠くに設けられており、かつ、単位セルUCが、上記の所望の波長範囲に適した様々なサイズの金属製格子体によって提供されている。前記多層構造の同格子体が画成する、単位セルUCの開口部H同士は、同一でない。当該開口部同士は、サイズが一様に減少するものとされてもよい(図3を参照のこと)。
【0050】
前記メタマテリアル構造、特に、前記格子体は、金、銀などの金属材料からなり得る。これらは、プラズモン挙動に関して極めて有利な材料である。前記誘電体層は、TiO、SiNなどの高屈折率誘電体であり得る。
【0051】
図4を参照すると、入射する青色光子Aは、緑色量子ドット又は赤色量子ドットに吸収されるか、あるいは、変換されることなく前記高分子膜内を伝播する。前記格子体の形状は、青色光子及び赤色光子に影響を及ぼさないように構造化されたものである。緑色量子ドット112が青色光子を吸収して発光した場合、赤色量子ドット114によって再吸収され得るか、あるいは、図4に示すように前記メタマテリアル構造の表面プラズモンを励起して同表面プラズモンにエネルギーを受け渡し得る。効率は、量子ドット濃度およびメタマテリアル層の層数に正比例する。
【0052】
図6は、本明細書で説明する実施形態に係る表示装置600の概略図である。同表示装置は、LCD装置であり得る。
【0053】
表示装置600は、表示パネル620を備える。表示パネル620は、液晶パネルであり得る。表示装置600は、さらに、青色などの第3色の光を発するように構成された光源610を備える。一部の実施形態において、光源610は、青色LEDなどの少なくとも1つのLEDを有し得る。
【0054】
本開示の発光素子110は、光源610が発した光を表示パネル620に対する白色光に変換するように、表示パネル620と光源610との間に配置され得る。具体的に述べると、発光素子110は、光源610が発した青色光を白色光に変換し得る。
【0055】
図7は、本開示の実施形態に係る発光素子の製造方法700のフローチャートである。
【0056】
方法700は、ブロック710において、第1色の光を発するように構成された複数の第1量子ドットが埋め込まれている誘電体層を形成することと、ブロック720において、前記複数の第1量子ドットが放出したエネルギーの少なくとも一部を表面プラズモンに変換するように構成されているメタマテリアル構造を前記誘電体層に埋め込むことと、を備える。
【0057】
本開示の実施形態では、緑色などの特定の色の量子ドットが放出したエネルギーの少なくとも一部を表面プラズモンに変換するように構成されているメタマテリアル構造が、誘電体層に埋め込まれている。これにより、例えば緑色領域内の多数の光子が、表面プラズモンに変換される。それによって、赤色量子ドットによる再吸収が減少したり、さらには無くなったりする。換言すると、本開示の実施形態は、緑色光子を表面プラズモンとして「暗号化」することで、赤色量子ドットとの接触を防いでいる。これにより、発光効率が向上する。さらに、発光素子の消費エネルギーを最小限に抑える又は小さくすることができる。
【0058】
これまで本開示の実施形態について説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定まる基幹的範囲を逸脱しない範疇で、本開示のその他のさらなる実施形態が創出されることも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
これまで本開示の実施形態について説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定まる基幹的範囲を逸脱しない範疇で、本開示のその他のさらなる実施形態が創出されることも可能である。
なお、本開示は、実施の態様として以下の内容を含む。
[態様1]
第1色の光を発するように構成された複数の第1量子ドット(112)が埋め込まれている誘電体層(110)と、
前記誘電体層(110)に埋め込まれており、前記複数の第1量子ドット(112)が放出したエネルギーの少なくとも一部を表面プラズモンに変換するように構成されているメタマテリアル構造(120)と、
を備える、発光素子(100)。
[態様2]
態様1に記載の発光素子(100)において、前記第1色が、緑色であり、特には、約480nm~約600nmの波長範囲内である、発光素子(100)。
[態様3]
態様1または2に記載の発光素子(100)において、前記誘電体層(110)には、前記第1色と異なる第2色の光を発するように構成された複数の第2量子ドット(114)が埋め込まれている、発光素子(100)。
[態様4]
態様3に記載の発光素子(100)において、前記メタマテリアル構造(120)は、前記第2色の光が表面プラズモンに変換されないように構成されている、発光素子(100)。
[態様5]
態様3または4に記載の発光素子(100)において、前記第2色が、赤色である、発光素子(100)。
[態様6]
態様1から5のいずれか一項に記載の発光素子(100)において、前記メタマテリアル構造(120)が、多層構造である、発光素子(100)。
[態様7]
態様6に記載の発光素子(100)において、前記多層構造が、前記第1色の波長範囲を表面プラズモンに変換するように構成された様々な共鳴経路を提供する、発光素子(100)。
[態様8]
態様6または7に記載の発光素子(100)において、前記多層構造の各層が、それぞれ格子体として構成されている、発光素子(100)。
[態様9]
態様8に記載の発光素子(100)において、前記多層構造の各層内で、前記格子体の格子間隔が変化する、発光素子(100)。
[態様10]
態様8または9に記載の発光素子(100)において、前記多層構造の隣合う層の格子体同士が、互いに略直交に向いている、発光素子(100)。
[態様11]
態様1から10のいずれか一項に記載の発光素子(100)において、前記メタマテリアル構造(120)が、双曲線分散型のメタマテリアル構造、特には、双曲線分散型のフィッシュネット形メタマテリアル構造である、発光素子(100)。
[態様12]
態様1から11のいずれか一項に記載の発光素子(100)において、前記メタマテリアル構造(120)が、金属材料、特には、金および/または銀を含有しているか、あるいは、金属材料、特には、金および/または銀からなる、発光素子(100)。
[態様13]
態様1から12のいずれか一項に記載の発光素子(100)において、前記誘電体層(110)が、高分子材料、特には、TiO2および/またはSiNを含有している、発光素子(100)。
[態様14]
態様1から13のいずれか一項に記載の発光素子(100)と、
第3色の光を発するように構成された光源(610)と、
を備える、バックライトユニット、特には、表示装置用のバックライトユニット。
[態様15]
画像を表示するように構成された表示パネル(620)と、
態様1から13のいずれか一項に記載の発光素子(100)および/または態様14に記載のバックライトユニット(100,610)と、
を備える、表示装置(600)。
【国際調査報告】