(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】水中モータの永久磁石ロータ構造、水中モータおよび水中装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2791 20220101AFI20230201BHJP
【FI】
H02K1/2791
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534145
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 CN2020130284
(87)【国際公開番号】W WO2021129260
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】201911349565.X
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521417336
【氏名又は名称】深之藍海洋科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DEEPINFAR OCEAN TECHNOLOGY INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】魏建▲カン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼超
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622PP05
5H622PP18
5H622PP19
(57)【要約】
本発明は、水中モータの永久磁石ロータ構造、水中モータおよび水中装置を提供し、モータ分野に関する。当該水中モータ永久磁石ロータ構造は、ロータエンドキャップと、前記ロータエンドキャップの内円周の表面に設けられた複数の永久磁石と、前記複数の永久磁石の表面に設けられた保護用付着構造と、前記複数の永久磁石の表面に前記保護用付着構造を粘着させ、前記保護用付着構造を覆う接着剤層と、を備える。本発明に係る永久磁石ロータ構造は、防腐と耐摩耗の特性を有し、このような永久磁石ロータ構造を含む水中モータの使用寿命を延長することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中モータに用いられる永久磁石ロータ構造であって、
ロータエンドキャップと、
前記ロータエンドキャップの内円周の表面に設けられた複数の永久磁石と、
前記複数の永久磁石の表面に設けられた保護用付着構造と、
前記複数の永久磁石の表面に前記保護用付着構造を粘着させ、前記保護用付着構造を覆う接着剤層と、を備えることを特徴とする永久磁石ロータ構造。
【請求項2】
前記接着剤層は滑らかな表面を有することを特徴とする請求項1に記載の永久磁石ロータ構造。
【請求項3】
前記接着剤層の表面には可視気泡がないことを特徴とする請求項1に記載の永久磁石ロータ構造。
【請求項4】
前記接着剤層はアクリル構造の接着剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の永久磁石ロータ構造。
【請求項5】
前記接着剤層は前記複数の永久磁石を密封することを特徴とする請求項1に記載の永久磁石ロータ構造。
【請求項6】
前記保護用付着構造は非磁性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石ロータ構造。
【請求項7】
前記保護用付着構造は非磁性ステンレス鋼網、ナイロン布又は防腐糸で織られた網を含むことを特徴とする請求項1に記載の永久磁石ロータ構造。
【請求項8】
前記非磁性ステンレス鋼網は316Lのステンレス鋼網を含むことを特徴とする請求項7に記載の永久磁石ロータ構造。
【請求項9】
前記316Lのステンレス鋼網の厚さ範囲は0.01~0.07mmであることを特徴とする請求項8に記載の永久磁石ロータ構造。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の永久磁石ロータ構造を備えることを特徴とする水中モータ。
【請求項11】
請求項9に記載の水中モータを含むことを特徴とする水中装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ分野に関し、具体的には水中モータの永久磁石ロータ構造、水中モータおよび水中装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水中装置において、外部ロータモータはスペースを節約し、コンパクトな設計と美しい外観を持つ特徴がある。水中モータの動作環境が特殊であるため、ロータの永久磁石を保護するために、普通、永久磁石ロータ構造に対して防腐と耐摩耗の処理を行う必要がある。
【0003】
前記背景技術に開示された上記の情報は、本発明の背景に対する理解を深めるためにのみ用いられるものであり、当業者に対して一致する従来技術を構成しない情報を含んでもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた防腐と耐摩耗の性能を持ち、特殊な環境で長時間にわたって動作できる水中モータの永久磁石ロータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様において、水中モータの永久磁石ロータ構造であって、ロータエンドキャップと、前記ロータエンドキャップの内円周の表面に載置された複数の永久磁石と、前記複数の永久磁石の表面に設けられた保護用付着構造とを備える。
【0006】
本発明の実施形態によれば、前記接着剤層は滑らかな表面を有する。
本発明の実施形態によれば、前記接着剤層の表面には可視気泡がない。
本発明の実施形態によれば、前記接着剤層はアクリル構造の接着剤を含む。
【0007】
本発明の実施形態によれば、前記接着剤層は前記複数の永久磁石を密封する。
本発明の実施形態によれば、前記保護用付着構造は非磁性材料からなるものである。
本発明の実施形態によれば、前記保護用付着構造は非磁性ステンレス鋼網、ナイロン布または防腐糸で織られた網を含む。
【0008】
本発明の実施形態によれば、前記非磁性ステンレス鋼網は型番316Lのステンレス鋼網を含む。
本発明の実施形態によれば、前記316Lステンレス鋼網の厚さ範囲は0.01~0.07mmである。
【0009】
本発明の別の態様によれば、上記のいずれか一つの永久磁石ロータ構造を備える水中モータにも関する。
本発明の別の態様によれば、上記の水中モータを備える水中装置にも関する。
【0010】
上記のように、非磁性のステンレス鋼網、ナイロン布、防腐糸で織られた網は、いずれも良好な力学性能と良好な延展性を有するため、永久磁石が外部の硬い粒子に損傷されないように保護する役割を果たすことができる。また、前記付着構造は、一定の耐化学腐食の特性を有し、接着剤層と結合して永久磁石の防腐保護構造を構成してもよい。しかしながら、保護用付着構造を含む接着剤層を作製するとき気泡が発生することがある。表面に気泡のある接着剤層では、気泡自体が通路と見なされる。海水は気泡で形成された通路を通って永久磁石と接触し、さらに永久磁石を腐食することになる。上記のような滑らかな表面を有する接着剤層は、海水と永久磁石との接触を効果的に遮断し、海水が前記永久磁石構造を腐食することを防ぐことができる。同時に、滑らかな表面を有する接着剤層は、前記保護用付着構造の粘着をより強固し、気泡の存在による保護用付着構造の脱落を避けることもできる。
【発明の効果】
【0011】
上記のような水中装置は、水中撮影装置の担体と、水中推進器等を含む。前記水中装置には、前記水中モータを備えている。前記水中モータの永久磁石ロータ構造が防腐と耐摩耗の特性を有するため、当該水中モータは、厳しい動作環境で動作することができる。このように、本発明に係る水中モータは、従来技術における水中モータより使用寿命が比較的に長い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の一部の図面は、本発明に対するさらなる理解を提供するために用いられ、本発明の例示的な実施形態及び説明は、本発明を解釈するために用いられ、本発明に対する不当な限定を構成しない。
【
図1】関連技術のモータ永久磁石ロータ構造の写真を示す図である。
【
図2】関連技術のモータ永久磁石ロータ構造の一定期間使用後の写真を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造を示す図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造の写真を示す図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造の実験後の写真を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面と実施形態を関連付けて、本発明の具体的な実施形態をより詳しく説明し、本発明の態様及びその各態様の利点をより深く理解することができるようにする。しかしながら、以下に説明する具体的な実施形態と実施例は、説明の目的にすぎず、本発明に対する制限ではない。
【0014】
本発明に記載の「接続」は、別途明確な規定や限定があるわけではなく、広義的に理解すべきである。直接接続であってもよいし、元来の直接接続方式を置き換えたものであってもよい。また、本発明に記載する「上」「下」「左」「右」「上端」「下端」等の方位又は位置関係は、図面に示す方位及び位置関係に基づいて、本発明を説明し、また説明を簡略化するためだけであって、装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成と操作をしなければならないことを指示または暗示するものではないので、本発明に対する制限と理解するべきではない。さらに、用語「第1」、「第2」、「まず」、「次に」、「また、次に」、「さらに」等は、説明するためにのみ用いられ、相対的な重要性を指示あるいは暗示する、または技術的特徴の数を暗黙的に示すと理解するべきではない。これにより、「第1」、「第2」と限定された特徴は、1つまたは複数の前記特徴を明示的または暗黙的に含むことができる。本発明の説明において、「複数」は、別途具体的な限定がない限り、2つまたは2つ以上を意味する。
【0015】
本発明の説明において、「設置」、「粘着」、「貼付け」、「接続」という用語は、別途明確な規定と限定がない限り、広義的に理解すべき、例えば固定接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体型接続であってもよい。当業者にとって、上記用語の本発明における具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解するべきである。
【0016】
以下の開示は、本発明の異なる構成を実現するための多くの異なる実施形態または例を提供する。本発明の開示を簡略化するために、以下、特定の例の構成要素および設置について説明する。もちろん、これらは例にすぎず、本発明を制限することを目的としない。さらに、本発明に様々な特定のプロセスおよび/または材料の例を提供したが、当業者は、他のプロセスの適用および/または他の材料の使用を認識することができる。
【0017】
図1は、関連技術のモータロータ構造を示すものである。
図1に見えるように、現在、外部ロータ水中モータの防腐処理技術は、永久磁石の表面に防腐層を塗布することを含む。モータが水中環境で動作する時、砂利のような硬い物がモータロータとステータとの間に入って、ロータ永久磁石表面の防腐コーティングを摩耗させ、破損させることが避けられない。
【0018】
図2に見えるように、永久磁石表面の防腐層が破損されると、永久磁石に防腐層の保護がない部分は、海水によって腐食される恐れがある。
また、従来技術では、別の防腐と耐摩耗性の手段がある。すなわち、ステンレス鋼溶接により、永久磁石ロータ構造全体をステンレス鋼ハウジング内に密封し、モータ永久磁石ロータ構造を保護する目的を達成する。このような技術の欠点は、製作コストがすごく高く、工程に対する要求も非常に厳しく、低コストの娯楽レベルの製品には適用しないことである。また、例えば、溶接シールに抜け穴があるなどのような技術的欠陥が発生すると、全体の溶接保護が効果を失う恐れがある。
【0019】
これを鑑みて、本実施形態は、水中モータ永久磁石ロータ構造に関する。以下、添付図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態を説明する。
図3は本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造を示すものである。
【0020】
図3は、本実施形態の水中モータの永久磁石ロータ構造であって、モータ永久磁石ロータエンドキャップ302と、モータの複数の永久磁石304と、接着剤層306と、保護用付着構造308とを備え、これら4つが接続されて、本実施形態の水中モータ永久磁石ロータ構造を構成している。
図3に示すように、本実施形態における永久磁石ロータ構造は、
図1に示す従来技術のモータ永久磁石構造と比較すれば、両者の構造が明らかに異なることがわかる。
【0021】
図3に見えるように、モータ永久磁石ロータエンドキャップ302は、広義でのモータの一部である。
本発明の例示的な実施形態によれば、ロータエンドキャップ302に使われる材料は比較的多く、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、エンジニアリングプラスチックPVC、ABSゴムなどがある。
【0022】
本実施形態において、ロータエンドキャップ302はステンレス鋼で形成されており、形状の外観は中空の円筒に似ている。ロータエンドキャップ302の一端を密封して、モータの他の構造に接続することができ、他端は、ビュー方向に垂直であり、開放的である。本実施形態において、ロータエンドキャップ302は、機械加工により成形されてもよいし、その他の方法で成形されてもよい。モータロータ構造については、当業者には周知のことであるため、ここでは省略する。なお、
図3に示すモータロータ構造においては、永久磁石ロータ構造のエンドキャップの寸法と形状などは、いずれも実際の必要に応じて変更可能であり、製造方法も実際の必要に応じて調整可能である。
【0023】
図3に見えるように、複数の永久磁石304は、広義でのモータの一部であり、モータ永久磁石ロータエンドキャップ302の円周内の表面(内壁)に載置され、均一に分布している。永久磁石とは、通常、開放状態においてより高い残留磁気を長期的に保持できる磁石を指して、例えば、天然磁石や人工磁石などである。本実施形態では、水中用モータの永久磁石ロータ構造において、複数の永久磁石304は、合金永久磁石、希土類永久磁石材料、サマリウムコバルトまたはフェライト永久磁石等である。
【0024】
モータステータは、本実施形態では動かず、コア、ステータ巻線、およびホルダの3つの部分からなる者である。
図3に見えるように、本実施形態では、図示した接着剤層構造306は、アクリル構造の接着剤を使用する。
【0025】
例示的な実施形態によれば、使用されるアクリル構造の接着剤は、従来の接着剤材料を代わることができる。また、機械による固定に比べると、アクリル構造の接着剤の使用は、設計製造をより柔軟にし、コストを低減することができる。
【0026】
接着層306は、すなわち、アクリル構造の接着剤が硬化して形成されたものである。接着層306は、非常に優れた防水性能及び化学腐食防止性能を有し、一定の厚さに達した後でも、良好な力学的性能を有する。接着層306を作製するには、アクリル構造の接着剤を永久磁石の表面に完全に塗布し、永久磁石構造全体を覆うために、明らかな欠陥がなければよい。なお、接着層306は、例えば改質したアクリレート構造の接着剤等、他の種類の構造の接着剤で硬化して形成してもよい。
【0027】
図3に見えるように、本実施形態における水中モータの永久磁石ロータ構造における保護用付着構造308は、接着剤層306の粘着力によって複数の永久磁石304の表面に固定されている。本実施形態では、保護用付着構造308は、316Lのステンレス鋼網を使用する。使用された316Lステンレス鋼網308のメッシュ数は350~400メッシュであり、厚さは0.01~0.07mmである。
【0028】
本実施形態において、316Lステンレス鋼網はチタン鋼に属し、優れた耐食性、耐高温性及び耐クリープ性を有する。保護用付着構造308は、接着剤層構造306と組み合わせると、特定の動作環境において、永久磁石を海水による腐食と、硬質物等による破損から保護することができる。また、316Lステンレス鋼網は、保護用付着構造308として磁性を持たず、永久磁石と磁力作用を起こさないため、永久磁石ロータ構造が全体として動作することに影響を及ぼさない。
【0029】
本実施形態では、保護用付着構造316Lのステンレス鋼網308を選用した後、ステンレス鋼網308の上にアクリル構造の接着剤を塗布し、未硬化の接着剤層構造の上に配置する。接着剤層構造の中のアクリル構造接着剤と鋼網上の構造接着剤を完全に融合させ、ステンレス鋼網全体を接着剤で完全に覆い、すなわちアクリル構造の接着剤をステンレス鋼網に浸潤させる。
【0030】
アクリル構造の接着剤をステンレス鋼網に完全に浸潤させるために、具体的な操作方法としては、専門のブラシ工具を使い、少量のアクリル構造接着剤をステンレス鋼網に複数回塗布し、リアルタイムで鋼網の状態を観察し、できるだけ平らにし、随時に欠陥を埋めることである。
【0031】
最後に、本実施形態では、アクリル構造の接着剤の接着剤層構造306が自然に硬化した後、
図3に示すような永久磁石ロータ構造が形成される、アクリル構造接着剤の硬化時間は、普通3~5分である。
【0032】
本実施形態で作製した構造が防腐と耐摩耗の特性を有することを検証するため、本実施形態における永久磁石ロータ構造を備える水中モータを、80℃の海水中に入れて168時間運転し続け、従来技術における水中モータ永久磁石ロータ構造の深刻な腐食度合いと比べると、本実施形態に係る構造に明らかな腐食は生じなかった。
【0033】
本発明は、別の実施形態で、低コストの永久磁石ロータ構造を提供する。
本実施形態における永久磁石ロータ構造は、ロータエンドキャップと、複数の永久磁石と、接着剤層と、保護用付着構造と、滑らかな表面を有する接着剤層とを備える。
【0034】
本実施形態のロータエンドキャップは、水中推進器の一部である。当該ロータエンドキャップの主な材質は炭素繊維材質であり、軽量かつ耐摩耗の特性を有する。
本実施形態の永久磁石ロータ構造における接着剤層は、アクリル構造の接着剤を硬化させて形成したものである。上記接着層構造には保護用付着構造も設けられており、本実施形態では、保護用付着構造の材料は非磁性の316Lステンレス鋼網を用いる。
【0035】
非磁性316Lステンレス鋼網のメッシュ数は350-400メッシュであり、これにより、316Lステンレス鋼網は、砂利などの硬質物を効果的に遮断できるとともに、接着層のアクリル構造接着剤を316Lステンレス鋼網に十分浸潤させるための十分な隙間があり、両者を緊密に結合させることができる。
【0036】
接着層が316Lのステンレス鋼網に完全に浸潤したら、未硬化の接着剤層表面に厚さ0.01~0.05mmの磁性のあるステンレス鋼シートを若干配置し、できるだけ接着剤層の内壁の曲率半径に応じて配置する。なお、ステンレス鋼シートを置く前に、ステンレス鋼シートの両面にセロハンテープを貼り付けるか、または離型剤を塗布してから、ステンレス鋼シートを未硬化の接着剤層の表面に軽く置く。このようにすると、後続工程において、鋼シートを比較的簡単に除去することができる。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、ある種類のステンレス鋼シート自体が磁性を有し、永久磁石と相互作用して磁気力を発生し、この磁気力が接着剤層の表面に印加し、接着剤層及びステンレス鋼網の表面の気泡を押し出し、接着剤層を自然に圧縮する。接着剤層のアクリル構造接着剤が硬化した後、予めセロハンテープを貼り付けたり、または離型剤を塗布したりすることによって、鋼シートが接着剤層に接着しないようにしているため、ステンレス鋼シートを簡単に取り外したり、鋼シートを離型したりすることができる。このとき、本実施形態では、非常に滑らかで、かつ、可視気泡のない滑らかな表面を持つ接着剤層が得られる。
【0038】
上記実施形態の永久磁石ロータ構造において、防腐構造が永久磁石の表面の接着剤層であり、接着剤層内に防腐網や布が設けられている。上記のような防腐構造の作製過程において、ブラシ後の網や布の表面に大面積の気泡が発生する可能性がある。接着剤層の表面の気泡の存在により、接着剤層に内蔵された防腐布や網の付着力が弱くなり、防腐布や網が脱落しやすくなる。また、気泡は通路に相当し、海水はこの通路を通ってモータロータ構造の永久磁石に接触し、永久磁石を腐食しやすい。同時に、砂利などの硬い物も気泡の存在により、防腐構造を直接または間接的に破損させることになる。
【0039】
図4Aは、本発明の一実施形態に係るモータロータ構造写真を示すものである。
本実施形態における永久磁石ロータ構造が防腐と耐摩耗性を有することを検証するために、
図4Aに示されている本発明に係るモータロータ構造を備える水中モータを、80℃の海水環境に置いて、168時間運転させた。本実施形態に係る当該水中装置に備えられた水中モータが、滑らかな表面を有する永久磁石ロータ構造を備え、実験が終了した後、この永久磁石ロータ構造に腐食は見られなかった。続いて、この構造を砂池内において168時間運転させ続けて、
図4Bに見えるように、実験が終了した後、本発明の実施形態におけるモータ永久磁石ロータ構造には明らかなすり傷は見られなかった。
【0040】
この構造は、アクリル構造の接着剤を用いてステンレス鋼網全体をロータ永久磁石の表面に粘着し、端部を接着剤で密封し、磁石の磁力により接着剤層の気泡を完全に排除する。これにより、コストを低減することができるとともに、気泡の存在によるステンレス鋼網の付着力に及ぼす影響を回避することができ、ロータを完全に密封して防腐しつつ耐摩耗性を向上させることができる。
【0041】
本発明はモータロータ構造に適用される。モータロータもモータの回転部品であり、電気エネルギーと機械エネルギーや、機械エネルギーと電気エネルギーの変換を実現するための装置である。モータロータは、内部ロータ伝動方式と外部ロータ伝動方式とに分けられ、水中モータは外部ロータ回転方式のモータロータ、すなわち本実施形態を適用した外部ロータモータロータを多用する。水中モータの永久磁石ロータ構造は、特殊な動作環境の下で、良好な防腐と耐摩耗性を有し、それによってモータの使用寿命を延長し、生産コストを低減し、資源を節約することができる。
【0042】
また、本発明は別の実施形態のモータ永久磁石ロータ構造を提供する。以下、図面を参照しながら説明する。
図3に見えるように、実施形態によれば、永久磁石ロータ構造は、ロータエンドキャップ302と、複数の永久磁石304と、接着剤層306と、保護用接着構造308と、滑らかな表面を有する接着剤層310とを備える。
【0043】
図5は本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造の作製方法を示す。
図5に見えるように、S501において、複数の永久磁石を備えるロータエンドキャップを用意する。
【0044】
図5に見えるように、S503において、保護用付着構造を用意する。
図5に見えるように、S505において、複数の永久磁石表面に接着剤層を塗布する。
図3に見えるように、本実施形態において、接着剤層306はシリコーン構造接着剤を用いる。シリコーン構造接着剤層は良好な粘着性能、密封性能及び耐食性を有する。硬化後のシリコーン構造接着剤層306は、防水と耐食性のみならず、耐クリープ性と耐衝撃性などのような優れた力学的性質も有する。
【0045】
図5に見えるように、S507において、接着剤層に保護用付着構造を置く。
図3に見えるように、本実施形態では、シリコーン構造接着剤層306に内蔵された保護用付着構造308の材料は、ポリアミド繊維布、通称ナイロン布である。ナイロン布は合成繊維布で、軽量で、腐食に強く、展延性がよく、価格が安い。また、ナイロン布とシリコーン構造の接着剤との浸潤性が良いので、両者を融合させると、互いの化学構造を破壊することなく、永久磁石構造を保護する役割を共に果たすことができる。
【0046】
図5に見えるように、S509において、保護用付着構造に硬質シートを置く。
図5に見えるように、S511において、硬質シートにより保護用付着構造に圧力を加える。
【0047】
図3に示すように、本実施形態における永久磁石ロータ構造のシリコーン構造接着剤層306は、滑らかな表面を有する接着剤層310を有する。本実施形態では、シリコーン構造の接着剤306がナイロン布308に完全に浸潤した後、シリコーン構造接着剤306が未硬化の時、PVC硬質シートをその表面に配置した後、PVC硬質シートの表面に永久磁石または鉄塊を配置する。まず、PVC硬質シートは、実施例2のステンレス鋼シートとは異なり、置く前に離型の預処理を行う必要がなく、シリコーン構造の接着剤の表面に直接置くことができるので、時間を節約できる。次に、PVC硬質シートの表面に永久磁石鉄塊を置いて、永久磁石鉄塊とロータエンドキャップ302に内蔵された複数の永久磁石304との相互作用により磁力を発生し、この磁力が接着剤層306及び保護用付着構造308にちょうど径方向に作用し、余分な接着剤及び接着剤層の表面の気体を排出することができる。
【0048】
シリコーン構造接着剤が完全に硬化した後、外に置いてある永久磁石または鉄塊およびPVC硬質シートを取り外すと、
図3に示すような永久磁石ロータ構造が得られる。
上記実施形態と同様に、実験により、本実施形態における構造の防腐と耐摩耗の特性を検証した。
【0049】
以上、本発明の3つの実施形態を例示的に説明した。上記の背景技術とは異なり、本発明によれば、水中モータ永久磁石ロータ構造に構造接着剤を塗布することで、モータの腐食を効果的に防止し、保護用付着構造を増加させ、動作環境における永久磁石に対する硬物の破壊を効果的に防止することができる。また、本発明に記載の接着剤層の滑らかな表面構造は、永久磁石を間接的に保護する。また、本発明は、各種の低コストで優れた力学的性質の材料を組み合わせて使用することができ、本発明に記載の永久磁石ロータ構造を量産することができる。
【0050】
最後に、上記は本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明を限定するものではなく、前記実施形態を参照して本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、前記各実施形態の技術的態様を修正したり、その一部の技術的特徴を均等に置き換えたりすることができる。本発明の精神と原則の範囲中に行ういかなる修正、均等置換え、改善などは、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0051】
302 ロータエンドキャップ
304 永久磁石
306 接着剤層
308 保護用付着構造
310 接着剤層
【手続補正書】
【提出日】2022-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ分野に関し、具体的には水中モータの永久磁石ロータ構造、水中モータおよび水中装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水中装置において、外部ロータモータはスペースを節約し、コンパクトな設計と美しい外観を持つ特徴がある。水中モータの動作環境が特殊であるため、ロータの永久磁石を保護するために、普通、永久磁石ロータ構造に対して防腐と耐摩耗の処理を行う必要がある。
【0003】
前記背景技術に開示された上記の情報は、本発明の背景に対する理解を深めるためにのみ用いられるものであり、当業者に対して一致する従来技術を構成しない情報を含んでもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた防腐と耐摩耗の性能を持ち、特殊な環境で長時間にわたって動作できる水中モータの永久磁石ロータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様において、水中モータの永久磁石ロータ構造であって、ロータエンドキャップと、前記ロータエンドキャップの内円周の表面に載置された複数の永久磁石と、前記複数の永久磁石の表面に設けられた保護用付着構造とを備える。
【0006】
本発明の実施形態によれば、前記接着剤層は滑らかな表面を有する。
本発明の実施形態によれば、前記接着剤層の表面には可視気泡がない。
本発明の実施形態によれば、前記接着剤層はアクリル構造の接着剤を含む。
【0007】
本発明の実施形態によれば、前記接着剤層は前記複数の永久磁石を密封する。
本発明の実施形態によれば、前記保護用付着構造は非磁性材料からなるものである。
本発明の実施形態によれば、前記保護用付着構造は非磁性ステンレス鋼網、ナイロン布または防腐糸で織られた網を含む。
【0008】
本発明の実施形態によれば、前記非磁性ステンレス鋼網は型番316Lのステンレス鋼網を含む。
本発明の実施形態によれば、前記316Lステンレス鋼網の厚さ範囲は0.01~0.07mmである。
【0009】
本発明の別の態様によれば、上記のいずれか一つの永久磁石ロータ構造を備える水中モータにも関する。
本発明の別の態様によれば、上記の水中モータを備える水中装置にも関する。
【0010】
上記のように、非磁性のステンレス鋼網、ナイロン布、防腐糸で織られた網は、いずれも良好な力学性能と良好な延展性を有するため、永久磁石が外部の硬い粒子に損傷されないように保護する役割を果たすことができる。また、前記付着構造は、一定の耐化学腐食の特性を有し、接着剤層と結合して永久磁石の防腐保護構造を構成してもよい。しかしながら、保護用付着構造を含む接着剤層を作製するとき気泡が発生することがある。表面に気泡のある接着剤層では、気泡自体が通路と見なされる。海水は気泡で形成された通路を通って永久磁石と接触し、さらに永久磁石を腐食することになる。上記のような滑らかな表面を有する接着剤層は、海水と永久磁石との接触を効果的に遮断し、海水が前記永久磁石構造を腐食することを防ぐことができる。同時に、滑らかな表面を有する接着剤層は、前記保護用付着構造の粘着をより強固し、気泡の存在による保護用付着構造の脱落を避けることもできる。
【発明の効果】
【0011】
上記のような水中装置は、水中撮影装置の担体と、水中推進器等を含む。前記水中装置には、前記水中モータを備えている。前記水中モータの永久磁石ロータ構造が防腐と耐摩耗の特性を有するため、当該水中モータは、厳しい動作環境で動作することができる。このように、本発明に係る水中モータは、従来技術における水中モータより使用寿命が比較的に長い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の一部の図面は、本発明に対するさらなる理解を提供するために用いられ、本発明の例示的な実施形態及び説明は、本発明を解釈するために用いられ、本発明に対する不当な限定を構成しない。
【
図1】関連技術のモータ永久磁石ロータ構造の写真を示す図である。
【
図2】関連技術のモータ永久磁石ロータ構造の一定期間使用後の写真を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造を示す図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造の写真を示す図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造の実験後の写真を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面と実施形態を関連付けて、本発明の具体的な実施形態をより詳しく説明し、本発明の態様及びその各態様の利点をより深く理解することができるようにする。しかしながら、以下に説明する具体的な実施形態と実施例は、説明の目的にすぎず、本発明に対する制限ではない。
【0014】
本発明に記載の「接続」は、別途明確な規定や限定があるわけではなく、広義的に理解すべきである。直接接続であってもよいし、元来の直接接続方式を置き換えたものであってもよい。また、本発明に記載する「上」「下」「左」「右」「上端」「下端」等の方位又は位置関係は、図面に示す方位及び位置関係に基づいて、本発明を説明し、また説明を簡略化するためだけであって、装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成と操作をしなければならないことを指示または暗示するものではないので、本発明に対する制限と理解するべきではない。さらに、用語「第1」、「第2」、「まず」、「次に」、「また、次に」、「さらに」等は、説明するためにのみ用いられ、相対的な重要性を指示あるいは暗示する、または技術的特徴の数を暗黙的に示すと理解するべきではない。これにより、「第1」、「第2」と限定された特徴は、1つまたは複数の前記特徴を明示的または暗黙的に含むことができる。本発明の説明において、「複数」は、別途具体的な限定がない限り、2つまたは2つ以上を意味する。
【0015】
本発明の説明において、「設置」、「粘着」、「貼付け」、「接続」という用語は、別途明確な規定と限定がない限り、広義的に理解すべき、例えば固定接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体型接続であってもよい。当業者にとって、上記用語の本発明における具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解するべきである。
【0016】
以下の開示は、本発明の異なる構成を実現するための多くの異なる実施形態または例を提供する。本発明の開示を簡略化するために、以下、特定の例の構成要素および設置について説明する。もちろん、これらは例にすぎず、本発明を制限することを目的としない。さらに、本発明に様々な特定のプロセスおよび/または材料の例を提供したが、当業者は、他のプロセスの適用および/または他の材料の使用を認識することができる。
【0017】
図1は、関連技術のモータロータ構造を示すものである。
図1に見えるように、現在、外部ロータ水中モータの防腐処理技術は、永久磁石の表面に防腐層を塗布することを含む。モータが水中環境で動作する時、砂利のような硬い物がモータロータとステータとの間に入って、ロータ永久磁石表面の防腐コーティングを摩耗させ、破損させることが避けられない。
【0018】
図2に見えるように、永久磁石表面の防腐層が破損されると、永久磁石に防腐層の保護がない部分は、海水によって腐食される恐れがある。
また、従来技術では、別の防腐と耐摩耗性の手段がある。すなわち、ステンレス鋼溶接により、永久磁石ロータ構造全体をステンレス鋼ハウジング内に密封し、モータ永久磁石ロータ構造を保護する目的を達成する。このような技術の欠点は、製作コストがすごく高く、工程に対する要求も非常に厳しく、低コストの娯楽レベルの製品には適用しないことである。また、例えば、溶接シールに抜け穴があるなどのような技術的欠陥が発生すると、全体の溶接保護が効果を失う恐れがある。
【0019】
これを鑑みて、本実施形態は、水中モータ永久磁石ロータ構造に関する。以下、添付図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態を説明する。
図3は本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造を示すものである。
【0020】
図3は、本実施形態の水中モータの永久磁石ロータ構造であって、モータ永久磁石ロータエンドキャップ302と、モータの複数の永久磁石304と、接着剤層306と、保護用付着構造308とを備え、これら4つが接続されて、本実施形態の水中モータ永久磁石ロータ構造を構成している。
図3に示すように、本実施形態における永久磁石ロータ構造は、
図1に示す従来技術のモータ永久磁石構造と比較すれば、両者の構造が明らかに異なることがわかる。
【0021】
図3に見えるように、モータ永久磁石ロータエンドキャップ302は、広義でのモータの一部である。
本発明の例示的な実施形態によれば、ロータエンドキャップ302に使われる材料は比較的多く、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、エンジニアリングプラスチックPVC、ABSゴムなどがある。
【0022】
本実施形態において、ロータエンドキャップ302はステンレス鋼で形成されており、形状の外観は中空の円筒に似ている。ロータエンドキャップ302の一端を密封して、モータの他の構造に接続することができ、他端は、ビュー方向に垂直であり、開放的である。本実施形態において、ロータエンドキャップ302は、機械加工により成形されてもよいし、その他の方法で成形されてもよい。モータロータ構造については、当業者には周知のことであるため、ここでは省略する。なお、
図3に示すモータロータ構造においては、永久磁石ロータ構造のエンドキャップの寸法と形状などは、いずれも実際の必要に応じて変更可能であり、製造方法も実際の必要に応じて調整可能である。
【0023】
図3に見えるように、複数の永久磁石304は、広義でのモータの一部であり、モータ永久磁石ロータエンドキャップ302の円周内の表面(内壁)に載置され、均一に分布している。永久磁石とは、通常、開放状態においてより高い残留磁気を長期的に保持できる磁石を指して、例えば、天然磁石や人工磁石などである。本実施形態では、水中用モータの永久磁石ロータ構造において、複数の永久磁石304は、合金永久磁石、希土類永久磁石材料、サマリウムコバルトまたはフェライト永久磁石等である。
【0024】
モータステータは、本実施形態では動かず、コア、ステータ巻線、およびホルダの3つの部分からなる者である。
図3に見えるように、本実施形態では、図示した接着剤層構造306は、アクリル構造の接着剤を使用する。
【0025】
例示的な実施形態によれば、使用されるアクリル構造の接着剤は、従来の接着剤材料を代わることができる。また、機械による固定に比べると、アクリル構造の接着剤の使用は、設計製造をより柔軟にし、コストを低減することができる。
【0026】
接着層306は、すなわち、アクリル構造の接着剤が硬化して形成されたものである。接着層306は、非常に優れた防水性能及び化学腐食防止性能を有し、一定の厚さに達した後でも、良好な力学的性能を有する。接着層306を作製するには、アクリル構造の接着剤を永久磁石の表面に完全に塗布し、永久磁石構造全体を覆うために、明らかな欠陥がなければよい。なお、接着層306は、例えば改質したアクリレート構造の接着剤等、他の種類の構造の接着剤で硬化して形成してもよい。
【0027】
図3に見えるように、本実施形態における水中モータの永久磁石ロータ構造における保護用付着構造308は、接着剤層306の粘着力によって複数の永久磁石304の表面に固定されている。本実施形態では、保護用付着構造308は、316Lのステンレス鋼網を使用する。使用された316Lステンレス鋼網308のメッシュ数は350~400メッシュであり、厚さは0.01~0.07mmである。
【0028】
本実施形態において、316Lステンレス鋼網はチタン鋼に属し、優れた耐食性、耐高温性及び耐クリープ性を有する。保護用付着構造308は、接着剤層構造306と組み合わせると、特定の動作環境において、永久磁石を海水による腐食と、硬質物等による破損から保護することができる。また、316Lステンレス鋼網は、保護用付着構造308として磁性を持たず、永久磁石と磁力作用を起こさないため、永久磁石ロータ構造が全体として動作することに影響を及ぼさない。
【0029】
本実施形態では、保護用付着構造316Lのステンレス鋼網308を選用した後、ステンレス鋼網308の上にアクリル構造の接着剤を塗布し、未硬化の接着剤層構造の上に配置する。接着剤層構造の中のアクリル構造接着剤と鋼網上の構造接着剤を完全に融合させ、ステンレス鋼網全体を接着剤で完全に覆い、すなわちアクリル構造の接着剤をステンレス鋼網に浸潤させる。
【0030】
アクリル構造の接着剤をステンレス鋼網に完全に浸潤させるために、具体的な操作方法としては、専門のブラシ工具を使い、少量のアクリル構造接着剤をステンレス鋼網に複数回塗布し、リアルタイムで鋼網の状態を観察し、できるだけ平らにし、随時に欠陥を埋めることである。
【0031】
最後に、本実施形態では、アクリル構造の接着剤の接着剤層構造306が自然に硬化した後、
図3に示すような永久磁石ロータ構造が形成される、アクリル構造接着剤の硬化時間は、普通3~5分である。
【0032】
本実施形態で作製した構造が防腐と耐摩耗の特性を有することを検証するため、本実施形態における永久磁石ロータ構造を備える水中モータを、80℃の海水中に入れて168時間運転し続け、従来技術における水中モータ永久磁石ロータ構造の深刻な腐食度合いと比べると、本実施形態に係る構造に明らかな腐食は生じなかった。
【0033】
本発明は、別の実施形態で、低コストの永久磁石ロータ構造を提供する。
本実施形態における永久磁石ロータ構造は、ロータエンドキャップと、複数の永久磁石と、接着剤層と、保護用付着構造と、滑らかな表面を有する接着剤層とを備える。
【0034】
本実施形態のロータエンドキャップは、水中推進器の一部である。当該ロータエンドキャップの主な材質は炭素繊維材質であり、軽量かつ耐摩耗の特性を有する。
本実施形態の永久磁石ロータ構造における接着剤層は、アクリル構造の接着剤を硬化させて形成したものである。上記接着層構造には保護用付着構造も設けられており、本実施形態では、保護用付着構造の材料は非磁性の316Lステンレス鋼網を用いる。
【0035】
非磁性316Lステンレス鋼網のメッシュ数は350-400メッシュであり、これにより、316Lステンレス鋼網は、砂利などの硬質物を効果的に遮断できるとともに、接着層のアクリル構造接着剤を316Lステンレス鋼網に十分浸潤させるための十分な隙間があり、両者を緊密に結合させることができる。
【0036】
接着層が316Lのステンレス鋼網に完全に浸潤したら、未硬化の接着剤層表面に厚さ0.01~0.05mmの磁性のあるステンレス鋼シートを若干配置し、できるだけ接着剤層の内壁の曲率半径に応じて配置する。なお、ステンレス鋼シートを置く前に、ステンレス鋼シートの両面にセロハンテープを貼り付けるか、または離型剤を塗布してから、ステンレス鋼シートを未硬化の接着剤層の表面に軽く置く。このようにすると、後続工程において、鋼シートを比較的簡単に除去することができる。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、ある種類のステンレス鋼シート自体が磁性を有し、永久磁石と相互作用して磁気力を発生し、この磁気力が接着剤層の表面に印加し、接着剤層及びステンレス鋼網の表面の気泡を押し出し、接着剤層を自然に圧縮する。接着剤層のアクリル構造接着剤が硬化した後、予めセロハンテープを貼り付けたり、または離型剤を塗布したりすることによって、鋼シートが接着剤層に接着しないようにしているため、ステンレス鋼シートを簡単に取り外したり、鋼シートを離型したりすることができる。このとき、本実施形態では、非常に滑らかで、かつ、可視気泡のない滑らかな表面を持つ接着剤層が得られる。
【0038】
上記実施形態の永久磁石ロータ構造において、防腐構造が永久磁石の表面の接着剤層であり、接着剤層内に防腐網や布が設けられている。上記のような防腐構造の作製過程において、ブラシ後の網や布の表面に大面積の気泡が発生する可能性がある。接着剤層の表面の気泡の存在により、接着剤層に内蔵された防腐布や網の付着力が弱くなり、防腐布や網が脱落しやすくなる。また、気泡は通路に相当し、海水はこの通路を通ってモータロータ構造の永久磁石に接触し、永久磁石を腐食しやすい。同時に、砂利などの硬い物も気泡の存在により、防腐構造を直接または間接的に破損させることになる。
【0039】
図4Aは、本発明の一実施形態に係るモータロータ構造写真を示すものである。
本実施形態における永久磁石ロータ構造が防腐と耐摩耗性を有することを検証するために、
図4Aに示されている本発明に係るモータロータ構造を備える水中モータを、80℃の海水環境に置いて、168時間運転させた。本実施形態に係る当該水中装置に備えられた水中モータが、滑らかな表面を有する永久磁石ロータ構造を備え、実験が終了した後、この永久磁石ロータ構造に腐食は見られなかった。続いて、この構造を砂池内において168時間運転させ続けて、
図4Bに見えるように、実験が終了した後、本発明の実施形態におけるモータ永久磁石ロータ構造には明らかなすり傷は見られなかった。
【0040】
この構造は、アクリル構造の接着剤を用いてステンレス鋼網全体をロータ永久磁石の表面に粘着し、端部を接着剤で密封し、磁石の磁力により接着剤層の気泡を完全に排除する。これにより、コストを低減することができるとともに、気泡の存在によるステンレス鋼網の付着力に及ぼす影響を回避することができ、ロータを完全に密封して防腐しつつ耐摩耗性を向上させることができる。
【0041】
本発明はモータロータ構造に適用される。モータロータもモータの回転部品であり、電気エネルギーと機械エネルギーや、機械エネルギーと電気エネルギーの変換を実現するための装置である。モータロータは、内部ロータ伝動方式と外部ロータ伝動方式とに分けられ、水中モータは外部ロータ回転方式のモータロータ、すなわち本実施形態を適用した外部ロータモータロータを多用する。水中モータの永久磁石ロータ構造は、特殊な動作環境の下で、良好な防腐と耐摩耗性を有し、それによってモータの使用寿命を延長し、生産コストを低減し、資源を節約することができる。
【0042】
また、本発明は別の実施形態のモータ永久磁石ロータ構造を提供する。以下、図面を参照しながら説明する。
図3に見えるように、実施形態によれば、永久磁石ロータ構造は、ロータエンドキャップ302と、複数の永久磁石304と、接着剤層306と、保護用接着構造308と、滑らかな表面を有する接着剤層310とを備える。
【0043】
図5は本発明の一実施形態に係るモータ永久磁石ロータ構造の作製方法を示す。
図5に見えるように、S501において、複数の永久磁石を備えるロータエンドキャップを用意する。
【0044】
図5に見えるように、S503において、保護用付着構造を用意する。
図5に見えるように、S505において、複数の永久磁石表面に接着剤層を塗布する。
図3に見えるように、本実施形態において、接着剤層306はシリコーン構造接着剤を用いる。シリコーン構造接着剤層は良好な粘着性能、密封性能及び耐食性を有する。硬化後のシリコーン構造接着剤層306は、防水と耐食性のみならず、耐クリープ性と耐衝撃性などのような優れた力学的性質も有する。
【0045】
図5に見えるように、S507において、接着剤層に保護用付着構造を置く。
図3に見えるように、本実施形態では、シリコーン構造接着剤層306に内蔵された保護用付着構造308の材料は、ポリアミド繊維布、通称ナイロン布である。ナイロン布は合成繊維布で、軽量で、腐食に強く、展延性がよく、価格が安い。また、ナイロン布とシリコーン構造の接着剤との浸潤性が良いので、両者を融合させると、互いの化学構造を破壊することなく、永久磁石構造を保護する役割を共に果たすことができる。
【0046】
図5に見えるように、S509において、保護用付着構造に硬質シートを置く。
図5に見えるように、S511において、硬質シートにより保護用付着構造に圧力を加える。
【0047】
図3に示すように、本実施形態における永久磁石ロータ構造のシリコーン構造接着剤層306は、滑らかな表面を有する接着剤層310を有する。本実施形態では、シリコーン構造の接着剤306がナイロン布308に完全に浸潤した後、シリコーン構造接着剤306が未硬化の時、PVC硬質シートをその表面に配置した後、PVC硬質シートの表面に永久磁石または鉄塊を配置する。まず、PVC硬質シートは、
前記実施
例のステンレス鋼シートとは異なり、置く前に離型の預処理を行う必要がなく、シリコーン構造の接着剤の表面に直接置くことができるので、時間を節約できる。次に、PVC硬質シートの表面に永久磁石鉄塊を置いて、永久磁石鉄塊とロータエンドキャップ302に内蔵された複数の永久磁石304との相互作用により磁力を発生し、この磁力が接着剤層306及び保護用付着構造308にちょうど径方向に作用し、余分な接着剤及び接着剤層の表面の気
泡を排出することができる。
【0048】
シリコーン構造接着剤が完全に硬化した後、外に置いてある永久磁石または鉄塊およびPVC硬質シートを取り外すと、
図3に示すような永久磁石ロータ構造が得られる。
上記実施形態と同様に、実験により、本実施形態における構造の防腐と耐摩耗の特性を検証した。
【0049】
以上、本発明の3つの実施形態を例示的に説明した。上記の背景技術とは異なり、本発明によれば、水中モータ永久磁石ロータ構造に構造接着剤を塗布することで、モータの腐食を効果的に防止し、保護用付着構造を増加させ、動作環境における永久磁石に対する硬物の破壊を効果的に防止することができる。また、本発明に記載の接着剤層の滑らかな表面構造は、永久磁石を間接的に保護する。また、本発明は、各種の低コストで優れた力学的性質の材料を組み合わせて使用することができ、本発明に記載の永久磁石ロータ構造を量産することができる。
【0050】
最後に、上記は本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明を限定するものではなく、前記実施形態を参照して本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、前記各実施形態の技術的態様を修正したり、その一部の技術的特徴を均等に置き換えたりすることができる。本発明の精神と原則の範囲中に行ういかなる修正、均等置換え、改善などは、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0051】
302 ロータエンドキャップ
304 永久磁石
306 接着剤層
308 保護用付着構造
310 接着剤層
【国際調査報告】