(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】測定信号を生成するための装置
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
G01L3/10 305
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534196
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 IB2020061914
(87)【国際公開番号】W WO2021117022
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】102019219503.2
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】301042963
【氏名又は名称】ボーンズ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】BOURNS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1200 COLUMBIA AVENUE,RIVERSIDE,CALIFORNIA 92507,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤールストーファー ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】バーナー セバスチャン
(57)【要約】
本発明は、回転軸(8)の周りのトーションシャフト(10)に加えられるトルク(13)に依存する測定信号(19)を生成するための装置(9)に関する。装置(9)は、磁石リング(16)を含み、磁石センサ(18)及び評価システム(21)を特徴とする。
-前記磁石リング(16)は、前記トーションシャフト(10)の第1軸方向位置に固定され、磁場(17)を生成するための事前定義された数の磁石極(28、29)を有し、
-前記磁石センサ(18)は、前記第1軸方向位置とは異なる前記トーションシャフト(10)の第2軸方向位置に固定され、
--前記回転軸(8)の周りのラジアル平面(36)に位置し、第1センサ要素(33)に到達する磁場(17)に依存する第1センサ信号を出力する第1センサ要素(33)と、
--前記第1センサ要素(33)のラジアル平面(36)に位置するが、2つの隣接する磁石極の周方向延在部よりも小さい距離(35)で第1センサ要素(33)から離間され、第2センサ要素(34、38)に到達する磁場(17)に依存する第2センサ信号を出力する第2センサ要素(34、38)と、を含み、
-前記評価システム(21)は、前記第2センサ信号に基づいて前記第1センサ信号から漂遊磁場信号成分(39)をフィルタリングし、フィルタリングされた第1センサ信号に基づいて測定信号(19)を出力するように適合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(8)の周りのトーションシャフト(10)に加えられるトルク(13)に依存する測定信号(19)を生成するための装置(9)であって、磁石リング(16)を含み、前記磁石リング(16)は、前記トーションシャフト(10)の第1軸方向位置に固定され、磁場(17)を生成するための事前定義された数の磁石極(28、29)を有する、装置(9)であり、
磁石センサ(18)及び評価システム(21)を特徴として備え、
-前記磁石センサ(18)は、前記第1軸方向位置とは異なる前記トーションシャフト(10)の第2軸方向位置に固定され、
--前記回転軸(8)の周りのラジアル平面(36)に位置し、第1センサ要素(33)に到達する磁場(17)に依存する第1センサ信号を出力する第1センサ要素(33)と、
--前記第1センサ要素(33)のラジアル平面(36)に位置するが、2つの隣接する磁石極の周方向延在部よりも小さい距離(35)で第1センサ要素(33)から離間され、第2センサ要素(34、38)に到達する磁場(17)に依存する第2センサ信号を出力する第2センサ要素(34、38)と、を含み、
-前記評価システム(21)は、前記第2センサ信号に基づいて前記第1センサ信号から漂遊磁場信号成分(39)をフィルタリングし、フィルタリングされた第1センサ信号に基づいて測定信号(19)を出力するように適合されている、ことを特徴とする装置(9)。
【請求項2】
【請求項3】
前記第1センサ要素は、デカルト座標系で第1センサ要素に到達する磁場を測定するように適合され、前記第2センサ要素は、デカルト座標系で前記第2センサ要素に到達する磁場を測定するように適合されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置(9)。
【請求項4】
センサ要素(33、34、38)のそれぞれの前記回転軸(8)からの距離(36)は、r
encoderの3%~15%、好ましくは、7%である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の装置(9)。
【請求項5】
前記第2センサ要素(38)は、前記第1センサ要素(33)から円周方向に離間(37)されている、ことを特徴とする前述の請求項のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項6】
前記磁石センサ(18)は、第3センサ要素(34)及び第4センサ要素をさらに含み、前記第3センサ要素(34)は、前記第1センサ要素(33)に周方向に位置し、且つ前記第1センサ要素(33)から軸方向に離間され、前記第3センサ要素(34)に到達する磁場(17)に依存する第3センサ信号を出力し、前記第4センサ要素は、前記第2センサ要素(37)に周方向に位置し、前記第3センサ要素(34)に軸方向に位置し、前記第3センサ要素(34)に到達する磁場(17)に依存する第4センサ信号を出力し、周方向距離(37)は、一方の磁石極(28、29)の周方向延在部の半分よりも小さい、ことを特徴とする請求項5に記載の装置(9)。
【請求項7】
前記評価システム(21)は、第1センサ信号と第4センサ信号の差と、第2センサ信号と第3センサ信号の差との間の商を生成することによって、前記第1センサ信号から前記漂遊磁場信号成分をフィルタリングするように適合されている、ことを特徴とする請求項6に記載の装置(9)。
【請求項8】
周方向距離は、一方の磁石極の周方向延在部の三分の一である、ことを特徴とする前述の請求項のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項9】
-駆動方向に移動可能なシャシー(5)と、
-駆動方向から見て後側に前記シャシー(5)を移動可能に運ぶ2つの後輪(4)と、
-駆動方向から見て前側に前記シャシー(5)を移動可能に運ぶ2つの前輪(3)と、
-前輪(3)を操舵するための回転軸(8)を中心に操舵コラム(7)を旋回させるための操舵輪(6)と、
-アクチュエータを用いて前輪(3)を操舵するための操舵コラム(7)に加えられるトルクを測定するための前述の請求項のいずれか一項に記載の装置(9)と、を含む車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の周りの回転角を測定するための装置、及び該装置を含む車両に関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1の前提部分による回転軸の周りのトーションシャフトに加えられるトルクを測定するための装置は、EP1870684A1から知られている。既知の装置では、トルクを検出するために使用される第1センサ要素と、故障判定のための第2センサ要素がある。故障判定は、既知のプロセスによって行われる。例えば、2つのセンサ要素の出力を時系列で比較して、出力間に有意差がある場合、有意差の前後で不安定な出力変化を示すセンサ要素が故障状態に設定されると判定する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、装置を改良することである。
【0004】
目的は、独立した請求項の特徴によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0005】
本発明の一態様によれば、回転軸の周りのトーションシャフトに加えられるトルクに依存する測定信号を生成するための装置は磁石リングを含み、磁石リングは、トーションシャフトの第1軸方向位置に固定され、磁場を生成するための事前定義された数の磁石極を有する。この装置は、磁石センサを特徴とする。磁石センサは、第1軸方向とは異なるトーションシャフトの第2軸方向位置に固定されており、回転軸の周りのラジアル平面に位置し、第1センサ要素に到達する磁場に依存する第1センサ信号を出力する第1センサ要素と、第1センサ要素のラジアル平面に位置するが、2つの隣接する磁石極の周方向延在部よりも小さい距離で第1センサ要素から離間され、第2センサ要素に到達する磁場に依存する第2センサ信号を出力する第2センサ要素と、を含む。
装置は、評価システムをさらに含む。評価システムは、第2センサ信号に基づいて第1センサ信号から漂遊磁場信号成分をフィルタリングし、フィルタリングされたセンサ信号に基づいて測定信号を出力するように適合されている。
【0006】
第1センサ要素は、好ましくは、デカルト座標系で第1センサ要素に到達する磁場を測定するように適合されている。また、第2センサ要素は、好ましくは、デカルト座標系で第2センサ要素に到達する磁場を測定するように適合されている。
【0007】
装置は、冒頭で述べた装置において、第2センサ要素が、その出力第1センサ信号を第2センサ信号に対してもっともらしくすることによって、第1センサ要素の正しい機能を監視するためにのみ使用できるという考えに基づいたものである。しかしながら、センサ要素が共通の磁石センサに配置され、互いに近接して配置されている場合、磁石リングの磁場に干渉場が重ねられ、第1センサ信号及び第2センサ信号は、第1センサ信号及び第2センサ信号においてほぼ同じ量を有し、したがって、フィルターで除去することができる。従って、干渉場の影響を99%減らすことができる。これにより、例えばステアリング制御ループでの測定信号の後処理が大幅に安定する。
【0008】
【0009】
提供される装置の別の実施形態では、各センサ要素の回転軸からの距離は、rencoderの3%~15%、好ましくは、7%である。この距離範囲では、磁石リングの磁場は十分に乱されず、トーション要素の正確な検出トーションを可能にする。
【0010】
提供される装置の好ましい実施形態では、第2センサ要素は、第1センサ要素から周方向に離間されている。基本的に、第2センサ要素は、第1センサ要素の周りのラジアル平面上に任意に配置することができる。しかしながら、第1センサ要素から周方向に離間されている第2センサ要素を配置する場合、磁石リングは非常に簡単に構造化することができる。
【0011】
提供される装置の更なる実施形態では、磁石センサは、第3センサ要素及び第4センサ要素をさらに含む。第3センサ要素は、第1センサ要素に周方向に位置し、且つ第1センサ要素から軸方向に離間され、第3センサ要素に到達する磁場に依存する第3センサ信号を出力する。第4センサ要素は、第2センサ要素に周方向に位置し、第3センサ要素に軸方向に位置し、第3センサ要素に到達する磁場に依存する第4センサ信号を出力する。周方向距離は、一方の磁石極の周方向延在部の半分よりも小さい。これにより、干渉場をセンサ信号からキャンセルすることができる。これは、第1センサ信号と第4センサ信号の差と、第2センサ信号と第3センサ信号の差との間の商を生成することによって、第1センサ信号から漂遊磁場信号成分をフィルタリングするときに最も容易に達成できる。
【0012】
提供される装置のまた別の実施形態では、周方向距離は、一方の磁石極の周方向延在部の三分の一である。
【0013】
本発明の別の態様によれば、車両は、駆動方向に移動可能なシャシーと、駆動方向から見て後側にシャシーを移動可能に運ぶ2つの後輪と、駆動方向から見て前側にシャシーを移動可能に運ぶ2つの前輪と、前輪を操舵するための回転軸を中心に操舵コラムを旋回させるための操舵輪と、回転軸を中心とした操舵コラムの回転角を測定するための以上に提供された装置の1つとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の上記の特徴、特性及び利点、ならびにそれらが達成される方式及び方法は、図に関連してさらに詳細に説明される実施形態の以下の説明に基づいて、さらに包括的になるであろう。
【
図2】
図1の自動車における回転軸の周りの回転角を測定するための装置の原理概略断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による、
図2の装置内の磁石リング及びセンサを備えた集積回路の断面図である。
【
図4】
図3の装置内の磁石リング及び集積回路の上面図である。
【
図5】第1配置での測定環境における
図5と6の部分の上面図である。
【
図6】第2配置での測定環境における
図5と6の部分の上面図である。
【
図7】第3配置での測定環境における
図5と6の部分の上面図である。
【
図8】第4配置での測定環境における
図5と6の部分の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面において、同じ技術的要素には同じ参照符号が付されており、一度しか記載されていない。図面は純粋に概略的なものであり、特に、実際の幾何学的な比率を反映していない。
【0016】
操舵システム2を含む車両1の概略斜視図である
図1を参照されたい。
【0017】
本実施形態では、車両1は、2つの前輪3と2つの後輪4によってサポートされるシャシー5を含む。前輪3は、操舵システム4によって車輪角28で旋回することができるので、車両1は曲線で駆動することができる。
【0018】
操舵システム2は操舵輪6を含む。操舵輪6は、第1操舵シャフト7に装着され、次に第1操舵シャフト7は、回転軸8の周りに回転できるように装着される。第1操舵軸7は、より詳細に示されていない方法で第1操舵軸7が接続されたトーション要素10に加えられるトルクに依存する測定信号19を生成するために装置9にガイドされる。第2操舵シャフト11は、回転軸8上の第1操舵シャフト7の反対側の前記トーション要素10に接続され、操舵ギア12に接続される。操舵輪6が操舵トルク13で旋回する場合、操舵トルクは、それに従って、操舵ギア12に伝達され、操舵ギア12は、それに応じ車輪角28を有する曲線で前輪3を操舵する。
【0019】
操舵プロセスは、旋回中の第2操舵シャフト11を支援できる補助モータ15によってサポートされ得る。この目的のために、装置9は操舵トルク13を検出する。次に、補助モータ15は、特に、検出された操舵トルク13に従って第2操舵シャフト11を車輪角28で操舵する。
【0020】
操舵トルク13を検出するために、装置9は、第1操舵軸7に接続され磁場17を誘導する磁石リング16の形態で磁気発生要素を含む。装置9はまた、磁石センサ18を含む。磁石センサ18は、第2操舵軸11に接続され、磁場17を測定する。磁場17は、磁石リング16によって誘導され、第2操舵軸11、従って磁石センサ18に対する第1操舵軸7、従って磁性リング16の相対角位置に依存する。
【0021】
磁石センサ18は、センサ信号アレイ20を評価システム21に送信する。センサ信号アレイ20については、以下ではより詳細に説明する。評価システム21は、センサ信号アレイ21を受信し、その上で、2つの操舵軸7、11の間の相対回転位置、従ってトーションシャフト10に加えられるトルクに依存する測定信号19を計算し生成する。次に、操舵トルク13に基づいて車輪角28を設定するために、この測定信号19を使用して補助モータ15を駆動する。
【0022】
【0023】
第1操舵軸7は、回転軸8の周りで回転可能な第1受けソケット22に押し込まれる。第1受けソケット22は、第1操舵軸7の反対側に、第1操舵軸7が旋回するときに磁石リング16が回転軸を中心に旋回するように磁石リング16を運ぶフランジ23をさらに含む。同様に、第2操舵軸11は、回転軸8の周りでも回転可能な第2受けソケット24に押し込まれる。その中で、第2受けソケット24は、第2操舵軸11の反対側にフランジ25を含む。このフランジ25には、
図2の印刷回路基板として実施される評価システム21を運ぶホルダ26が取り付けられる。
【0024】
評価システム21とともに、ホルダ26は、磁石リング16の軸レベル27上に磁石センサを運ぶ。トーションシャフト10は回転軸8を中心に捻じれ可能であるため、磁石リング16が操舵トルク13により回転軸8を中心に回転するとき、トーションシャフト10は、第2操舵軸11の慣性のために回転軸8を中心に捻じれ、その結果、磁石リング16は、回転軸8の周りの周方向に磁石センサ18に対して相対的に変位する。この周方向変位は、上記の第1操舵軸7の第2操舵軸11に対する相対角位置である。磁石センサ18に到達する磁石リング16からの磁場17は、磁石リング16と磁石センサ18との間の周方向変位に依存する。つまり、周方向変位は、トーションシャフト10のトーション、従って操舵トルク13を示すので、上記の測定信号19を生成するために使用することができる。
【0025】
上記の測定原則は、磁性リング16からの磁場17が乱されずに磁気センサ18に到達することを必要とする。実際の環境では、磁気リング16の磁場17を乱す外部磁場が常に存在する。
【0026】
以下の説明は、外乱磁場をキャンセルすることを可能にする2つの実施形態を示している。
【0027】
第1実施形態では、磁石リング16及び磁石センサ18は、特別な形態で実施され、
図3と4に概略的に示される。
【0028】
磁石リング16は、周方向に24個の磁石に分割され、各磁石は、北極28と、北極28に半径方向に隣接する南極29とを有する。従って、第1実施形態の磁石リング16は、合計48個の磁石極を含む。磁石リング16は、完全な軸方向高さ30が8mm、半径が20.5mmである。
【0029】
配置された磁石センサ18は、1.09mmのエアギャップ32で半径方向に変位している。磁石センサ18は、第1センサ要素33と、半径方向及び周方向に均等に配置された第2センサ要素34を含む。2つのセンサ要素33、34は、1.84mmの軸方向変位35で半径方向に変位している。その中で、センサ要素33、34の磁石リング16からの半径方向距離36は1.39mmである。第1センサ要素33と第2センサ要素34は、軸極境界から同じ軸方向距離を有する。第1センサ要素33は、軸方向上部の磁石極に軸方向に配置され、第2センサ要素34は、軸方向下部の磁石極に軸方向に配置される。
【0030】
第1と第2センサ要素33、34から1.84mmの周方向距離37で周方向に変位するように、第3センサ要素38及び第4センサ要素(図示せず)が配置される。第1と第2センサ要素33、34と同様に、第3センサ要素38及び第4センサ要素は、半径方向及び周方向に均等に配置される。つまり、第3センサ要素38及び第4センサ要素は、1.84mmの軸方向変位で半径方向に変位し、磁石リング16からの第3センサ要素38及び第4センサ要素の半径方向距離36は1.39mmである。第3センサ要素38及び第4センサ要素は、軸極境界から同じ軸方向距離を有する。第3センサ要素38は、軸方向上部の磁石極に軸方向に配置され、第4センサ要素は、軸方向下部の磁石極に軸方向に配置され、その結果、第4センサ要素は、
図3と4の視点から見えない。
【0031】
第1センサ要素33及び第3センサ要素38に到達する磁石リング16の磁場17は、半径方向成分Br、周方向成分Bt、及び軸方向成分Baに分割することができる。磁石センサ18が配置された軸方向位置では、軸方向磁場成分Baは、磁石リング16と磁石センサ18との間の周方向変位に対して一定であると見なすことができ、したがって無視することができる。詰まり、磁石センサ18に到達する磁場17は、軸方向平面で回転するベクトルと見なすことができる。センサ要素33、34及び38の1つによって測定された磁場17のベクトルの角度は、測定される磁石リング16と磁石センサ18との間の周方向変位に直接依存する。
【0032】
しかしながら、センサ要素33、34及び38のそれぞれが円筒座標系ではなくデカルト座標系で磁場を測定するため、センサ要素33、34及び38の1つによって測定された磁場17のベクトルの角度は、直接測定することができない。例えば、センサ要素33、34及び38のそれぞれは、3つのホール発生器で実施することができ、各ホール発生器は、1つのデカルト空間方向の磁場17を測定する。
【0033】
この特許出願の出願日にMelexis NVによって販売されたMelexisMLX90372のような多くの磁石センサは、周方向に変位したセンサ要素33、34及び38の少なくとも2つを使用して、それらの測定結果を比較し、漂遊磁場、特に外乱磁場をフィルタリングする。しかしながら、センサ要素の1つ、例えば、センサ要素33は、常に別のセンサ要素、例えば、センサ要素38を周方向にリードするので、漂遊磁場をフィルタリングするための多くのストラテジーの適用は、磁石リング16の適用において実現不可能である。
【0034】
しかしながら、上記の磁石センサMelexisMLX90372を磁石センサ18として用いた例示的な測定試験は、以下でrencoderと呼ばれる磁石リング16の半径31及び回転軸8から見た以下でφelementsと呼ばれる第1センサ要素33と第3センサ要素38との間の変位角37が、以下の式を満たす場合、漂遊磁界をフィルタリングするためのストラテジーが信頼できることを示している。
【0035】
【0036】
これは、値aが2に選択された実験結果に基づいて示されるべきである。磁石センサ18としてMelexis MLX 90372を使用する
図5~8に示すテスト設定により、外乱磁場を実験的に除去した。ここで、磁石リング16及び磁石センサ18は、装置9の評価システム21とともに、外乱磁場をシミュレートする2つのヘルムホルツコイル39の間に互いに静止して配置されている。
【0037】
回転軸9を見ると、ヘルムホルツコイル39は、回転軸9に対して点対称に配置されている。磁石リング16、及び磁石リング16に対して静止する実験用の磁石センサ18は、回転軸9を中心に任意の回転角40だけ一緒に回転可能である。
図5は、回転角40が0°の第1位置41でのテスト設定を示すと仮定すると、
図6は、回転角40が90°の第2位置42でのテスト設定を示し、
図7は、回転角が180°の第3位置43でのテスト設定を示し、
図8は、回転角40が270°の第4位置44でのテスト設定を示す。
【0038】
MelexisMLX90372の漂遊磁界フィルタリング技術を使用して測定信号19を生成するか否か、又は、センサ要素33、34及び38の1つだけを使用して測定信号19を生成するか否かに関係なく、外乱磁場が印加されていない場合、測定信号19は常に同じ測定信号19を出力すべきである。測定信号19は、ヘルムホルツコイル39がオンにされ、外乱磁場をテスト設定に印加する場合にのみ、回転角40にわたって変化する。
【0039】
テスト設定の最初の実行では、測定信号19は、四つの異なる外乱磁場で生成される。ここでは、漂遊磁界フィルタリングストラテジーは適用されていない。すべに述べたように、これは、例えば、磁石センサ18のセンサ要素33、34又は38の1つの出力のみを考慮することによって達成することができる。
【0040】
得られた曲線を
図9に示す。第1曲線45は、外乱磁場が0A/mである場合に、回転角40にわたって磁石センサによって生成された測定信号19の流れを示す。第2曲線46は、外乱磁場が1000A/mである場合に、回転角40にわたって従来技術の磁石センサによって生成された測定信号19の流れを示す。第3曲線47は、外乱磁場が2500A/mである場合に、回転角40にわたって従来技術の磁石センサによって生成された測定信号19の流れを示す。第4曲線48は、外乱磁場が4000A/mである場合に、回転角40にわたって従来技術の磁石センサによって生成された測定信号19の流れを示す。
【0041】
図9からわかるように、外乱磁場が印加されていない場合、測定信号19は、従来の磁石センサを含む装置の動作点49上に常に維持される。外乱磁場が印加されると、測定信号19は、外乱磁場の強さに依存する、それ以上参照されない振幅で、動作点49の周りで振動する。
【0042】
テスト設定の別の実行では、測定信号19は、MelexisMLX90372の漂遊磁界フィルタリング機能を使用することによってさらに生成された。ここで、測定信号19は、上記と同じ4つの異なる外乱磁場で生成された。得られた曲線は、
図9のダイアグラムの一部に焦点を合わせたウィンドウ50内の
図9に示されている。第5曲線51は、B
dist=0A/mの場合に、回転角40にわたって磁石センサ18によって生成された測定信号19の流れを示す。第6曲線52は、B
dist=1000A/mの場合に、回転角40にわたって磁石センサ18によって生成された測定信号19の流れを示す。第7曲線53は、B
dist=2500A/mの場合に、回転角40にわたって磁石センサ18によって生成された測定信号19の流れを示す。第8曲線54は、B
dist=4000A/mの場合に、回転角40にわたって磁石センサ18によって生成された測定信号19の流れを示す。
【0043】
図9からわかるように、外乱磁場が印加されていない場合、磁石センサ18によって生成された測定信号19は、磁石センサ18を含む装置9の操作点55上に常に維持される。外乱磁場が印加されると、測定信号19は、外乱磁場の強さに依存する、それ以上参照されない振幅で、動作点55の周りで振動する。これらの振幅は、曲線45~48の振幅よりも最大99%小さくなっている。
【0044】
それによる測定結果は、磁石センサ18のセンサ要素がデカルト座標系で磁場を検出したとしても、上記の実施形態が外乱磁場の影響を低減することを示している。
【国際調査報告】