(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】拡張吸着流動床のための改良カラムおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/60 20060101AFI20230201BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20230201BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20230201BHJP
B01D 15/22 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
G01N30/60 A
G01N30/60 G
B01J20/281 Y
B01D15/00 101A
B01D15/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534252
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 CA2020051663
(87)【国際公開番号】W WO2021108914
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522222696
【氏名又は名称】エヴォルヴ バイオロジクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダーリー,ジリアン
(72)【発明者】
【氏名】ベッグ,フルヴォイェ
(72)【発明者】
【氏名】ホルネス,アリン
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA09
4D017AA11
4D017BA07
4D017CA13
4D017CB01
4D017DA02
4D017DA03
4D017DA08
4D017EA05
(57)【要約】
本開示はクロマトグラフィーカラムおよびこれを使用したクロマトグラフ分離の方法を提供する。特に、本開示はカラムの断面積がフレア状にカラムの端近くの領域で増加する改良カラムを提供する。改良カラムは拡張吸着流動床(Expanded Bed Absorption)(EBA)システムにおいて使用することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフ媒体を含むための管状ハウジングであって、前記管状ハウジングは垂直主軸、下端および上部外向きフレア状領域を含み、前記下端および前記上部外向きフレア状領域は前記主軸により分離される、管状ハウジング;
流体を前記下端に提供するための入口;ならびに
溶出材料を収集するための出口
を含む、クロマトグラフィーカラム。
【請求項2】
前記出口は前記上部外向きフレア状領域から延在する、請求項1に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項3】
前記上部外向きフレア状領域は底端および上端を有し、前記上端は、前記底端より大きな直径を有する、請求項1または2に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項4】
前記底端の直径は前記主軸の直径と同じであり、前記上端の直径は、前記主軸の直径の少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4または1.5倍である、請求項3に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項5】
前記外向きフレア状領域の前記上端から延在する狭小化フレア状領域をさらに含む、請求項3または4に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項6】
前記狭小化フレア状領域は水平から5~20°、任意で水平から8~12°の角度で延在する、請求項5に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項7】
前記出口は前記狭小化フレア状領域から延在する、請求項5または6に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項8】
前記上部外向きフレア状領域は前記主軸から1~50°、任意で前記主軸から2~12°、3~10°、15~50°または20~45°の角度で延在する、請求項1-7のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項9】
前記入口は流体分配器に動作可能に連結される、請求項1-8のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項10】
前記流体分配器は静的流体分配器である、請求項9に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項11】
前記クロマトグラフ媒体は拡張床を含む、請求項1-10のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項12】
前記出口は、前記溶出材料を収集するためのコレクタに動作可能に連結され、前記コレクタは前記カラム内の定位置に配置される、請求項1-11のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項13】
請求項1-12のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラムを含む拡張吸着流動床(EBA)システム。
【請求項14】
請求項1-12のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラムを含む疑似移動床システム(SMB)。
【請求項15】
標的分子を前記標的分子および望まれない成分を含む混合物から精製する方法であって、
a)前記標的分子および前記望まれない成分を含む流体を請求項1-12のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラムに提供すること、
b)前記流体を前記クロマトグラフ媒体と接触させること、ならびに
c)前記標的分子を前記クロマトグラフ媒体から溶出させること
を含む、方法。
【請求項16】
前記クロマトグラフ媒体は粒子を含み、前記流体を提供する前に、前記粒子は流動化され、前記媒体が沈降床から拡張床に拡張される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子は、流動化バッファーを、分配器を使用して前記カラムに提供することにより流動化される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記沈降床の高さに対する前記拡張床の高さの拡張比は、ステップa)~c)を通して、1.8~2.5、任意で2~2.3で維持される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記流体は前記カラムに可変速度で提供される、請求項15-18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
溶出は前記標的分子を含む溶出液を前記カラム内の定位置から収集することを含む、請求項15-19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
標的分子を前記標的分子および望まれない成分を含む混合物から精製するための、請求項1-12のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーカラムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この開示は、2019年12月6日に出願された米国仮出願第62/944,579号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)の恩典を主張する。
【0002】
分野
本開示は一般に拡張吸着流動床のためのカラムおよびこれを使用したクロマトグラフ分離の方法に関する。特に、本開示はカラムの断面積がフレア状(flared)にカラムの端近くの領域で増加する改良カラムに関する。
【背景技術】
【0003】
拡張吸着流動床(EBA)は所望のタンパク質が供給材料から精製されるクロマトグラフプロセスである。吸着材粒子を含むカラムは、上向き液体流をカラムに適用することにより拡張され、そのため、安定な流動床が粒子沈降速度と上向き液体流速の間の平衡状態で懸濁された吸着材粒子を用いて形成される。供給材料が拡張床に適用され、標的タンパク質は吸着材に結合し、一方、細胞片、細胞および汚染物質は通過する。
【0004】
疑似移動床(SMB)クロマトグラフィーは固体の一定流(固定相)に対向して移動する液体流(移動相)に基づくクロマトグラフ技術である。向流は、分離の可能性を増加させ、これにより、伝統的なバッチクロマトグラフィーと比べてプロセスの効率が増強される。供給材料の連続流を分離させることもまた、可能になる。その結果、大量の高精製材料が著しく低減されたコストで生成され得る。
【0005】
伝統的なEBAカラムは手動操作を必要とし、カラムを出て行く粒子を回避するために、流動床の高さが上下するのに伴い、出口コレクタを上下させることが挙げられ、連続SMBプロセスにおいて使用するのが困難となり得る。例えば、連続SMBプロセスにおいて使用することができるEBAカラムの改良型が望ましい。
【発明の概要】
【0006】
可変断面積を有する改良クロマトグラフィーカラムが開発されている。カラムは、拡張吸着流動床(EBA)および/または疑似移動床(SMB)クロマトグラフィープロセスにおいて使用され得る。特に、改良カラムはカラムの一部について均一な断面積を有し、次いで、「フレア」状のカラムの上端付近の面積は増加し、そのため、カラムの端は大きな断面積を有する。この設計はクロマトグラフ媒体の線流速を減少させることができ、粒子がカラムから出て行くことが最小に抑えられ得る。
【0007】
したがって、本開示は、下記を含むクロマトグラフィーカラムを提供する:
クロマトグラフ媒体を含むための管状ハウジングであって、管状ハウジングは垂直主軸、下端および上部外向きフレア状領域を含み、下端および上部外向きフレア状領域は主軸により分離される、管状ハウジング;
流体を下端に提供するための入口;および
溶出材料を収集するための出口。
【0008】
1つの実施形態では、出口は上部外向きフレア状領域から延在する。
【0009】
別の実施形態では、上部外向きフレア状領域は底端および上端を有し、上端は底端より大きな直径を有する。任意で、底端の直径は主軸の直径と同じであり、上端の直径は、主軸の直径の少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4または1.5倍である。
【0010】
1つの実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、外向きフレア状領域の上端から延在する狭小化フレア状領域をさらに含む。
【0011】
1つの実施形態では、狭小化フレア状領域は水平から5~20°、任意で水平から8~12°の角度で延在する。
【0012】
別の実施形態では、出口は狭小化フレア状領域から延在する。
【0013】
別の実施形態では、上部外向きフレア状領域は、主軸から1~50°、任意で主軸から2~12°、3~10°、15~50°または20~45°の角度で延在する。
【0014】
別の実施形態では、入口は流体分配器に動作可能に連結される。任意で、流体分配器は静的流体分配器である。
【0015】
別の実施形態では、クロマトグラフ媒体は流動、または拡張粒子床を含む。
【0016】
別の実施形態では、出口は、溶出材料を収集するためのコレクタに動作可能に連結され、コレクタはカラム内の定位置に配置される。
【0017】
本開示はまた、本明細書で記載されるクロマトグラフィーカラムを含む拡張吸着流動床(EBA)システムを提供する。
【0018】
本開示はまた、本明細書で記載されるクロマトグラフィーカラムを含む疑似移動床システム(SMB)を提供する。
【0019】
本開示はまた、下記を含む、標的分子を標的分子および望まれない成分を含む混合物から精製する方法を提供する:
a)標的分子および望まれない成分を含む流体を本明細書で記載されるクロマトグラフィーカラムに提供すること、
b)流体をクロマトグラフ媒体と接触させること、ならびに
c)標的分子をクロマトグラフ媒体から溶出させること。
【0020】
1つの実施形態では、クロマトグラフ媒体は粒子を含み、流体を提供する前に、粒子は流動化され、媒体が沈降床から拡張床に拡張される。
【0021】
別の実施形態では、粒子は、静的分配器を使用して流動化バッファーをカラムに提供することにより流動化される。
【0022】
別の実施形態では、沈降床の高さに対する拡張床の高さの拡張比は、ステップa)~c)を通して、1.8~2.5、任意で2~2.3で維持される。
【0023】
別の実施形態では、流体は可変速度でカラムに提供される。
【0024】
別の実施形態では、溶出は標的分子を含む溶出液をカラム内の定位置から収集することを含む。
【0025】
本開示はまた、標的分子を標的分子および望まれない成分を含む混合物から精製するための、本明細書で記載されるクロマトグラフィーカラムの使用を提供する。
【0026】
本開示の他の特徴および利点は、下記の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本開示の実施形態を示す詳細な説明および具体例は例として提供されるにすぎないことが理解されるべきであり、というのも、本開示の精神および範囲内にある様々な変更および改変はこの詳細な説明から当業者に明らかになるであろうからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】フレア状上部を有する改良商業規模EBAカラムを示す。
【
図3】実施例1において使用されるバッファーの順序を示す。
【
図4】標準EBAカラム、3°フレアを有する改良EBAカラム、および10°フレアを有する改良EBAカラムについての定常状態拡張比を示す。
【
図5】3°フレア角を有する改良EBAカラムについて、液体切り換え中に引き起こされる樹脂床および微粒子雲の拡張比を示す。
【
図6】10°フレア角を有する改良EBAカラムについて、液体切り換え中に引き起こされる樹脂床および微粒子雲の拡張比を示す。
【
図7】標準EBAカラムについて、液体切り換え中に引き起こされる樹脂床および微粒子雲の拡張比を示す。
【
図8】3°フレア角を有する改良EBAカラム(上)、10°フレア角を有する改良EBAカラム(中)、および標準EBAカラム(下)についての導電率曲線を示す。推定されるAUCは高導電率バッファーがWFIと交換されるのに必要とされるバッファーの時間または体積を表す。
【
図9】3°および10°フレア改良カラム、および標準カラムについての積分AUCを示す。
【
図10】フレア状上部-3°フレア角を有する改良EBAカラムを示す。上部円錐領域の体積=77.29mL。
【
図11】(A-L)液体切り換え中の導電率のための曲線下面積(AUC)計算を示す。
図11Aは、3°フレア改良カラム中での1M NaOHについてのAUCを示す。
図11Bは、3°フレア改良カラム中での1M NaClについてのAUCを示す。
図11Cは、3°フレア改良カラム中での2M NaClについてのAUCを示す。
図11Dは、3°フレア改良カラム中での、3M NaClについてのAUCを示す。
図11Eは、10°フレア改良カラム中での1M NaClについてのAUCを示す。
図11Fは、10°フレア改良カラム中での2M NaClについてのAUCを示す。
図11Gは、10°フレア改良カラム中での、1M NaOHについてのAUCを示す。
図11Hは、10°フレア改良カラム中での、3M NaClについてのAUCを示す。
図11Iは、標準カラム中での1M NaOHについてのAUCを示す。
図11Jは、標準カラム中での1M NaClについてのAUCを示す。
図11Kは、標準カラム中での2M NaClについてのAUCを示す。
図11Lは、標準カラム中での3M NaClについてのAUCを示す。
【
図12】カラムA、PreD、およびDに共通の溶液についての流量-拡張関係を示す。(再生=1M NaCl、CIP=1M NaOH、保存=0.1M NaOH)。
【
図13】フレア状上部-10°フレア角を有する改良EBAカラムを示す。上部円錐領域の体積=35.15mL。
【
図14】第2の狭小化フレア状領域を有する改良EBAカラムを示す。
【
図15】標準EBAカラム上での典型的なプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
I.定義
別記されない限り、このおよび他のセクションにおいて記載される定義および実施形態は、当業者により理解されるように、好適である、本明細書で記載される本開示の全ての実施形態および態様に適用可能であることが意図される。
【0029】
本開示の範囲の理解において、「含む」という用語およびその派生語は、本明細書では、明言された特徴、要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在を特定するが、他の明言されていない特徴、要素、成分、群、整数および/またはステップの存在を排除しない制限なし用語であることが意図される。前記はまた、同様の意味を有する単語、例えば、「含有する」、「有する」という用語およびそれらの派生語に当てはまる。「から構成される」という用語およびその派生語は、本明細書では、明言された特徴、要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在を特定するが、他の明言されていない特徴、要素、成分、群、整数および/またはステップの存在を排除する閉じた用語であることが意図される。「から本質的に構成される」という用語は、本明細書では、明言された特徴、要素、成分、群、整数、および/またはステップならびに特徴、要素、成分、群、整数、および/またはステップの基本、および新規特性(複数可)に実質的に影響しないものの存在を特定することが意図される。
【0030】
「実質的に」、「約」および「およそ」などの程度の用語は、本明細書では、最終結果が著しくは変化しないような、修飾された用語の逸脱の合理的な量を意味する。これらの程度の用語は、この逸脱が、修飾する単語の意味を打ち消すことがなければ、修飾された用語の少なくとも±5%の逸脱を含むものと解釈されるべきである。
【0031】
本出願では、単数形「1つの(a、an)」、および「その(the)」は、内容により明確に別記されない限り、複数の参照物を含む。
【0032】
II.カラム
拡張吸着流動床(EBA)クロマトグラフィーの分野では、クロマトグラフ媒体は線流速に敏感である可能性がある。特に、クロマトグラフ媒体は拡張する(体積が増加する)につれ、カラムの流体レベルは上昇する可能性がある。カラムの「フレア状」端部は拡張が起きた時の流体レベル高さの変化を低減させることができる。そのような設計はクロマトグラフィー中に要求されるオペレーター妨害の量を最小に抑えることができる。それはまた、樹脂およびまたは微粉(低密度および/または高可動性小または断片化樹脂)のカラムを出て行く可能性を低減させ得る。
【0033】
したがって、本開示は、クロマトグラフィーを実施するための改良カラム(本明細書では「クロマトグラフィーカラム」とも呼ばれる)を提供する。特に、改良カラムはカラムの一部について均一な断面積を有し、次いで、断面積は「フレア状」にカラムの端近くで増加し、そのため、カラムの端はカラムの残りよりも大きな断面積を有する。増加した断面積を有するカラムの部分は、低減した内部線流速を有し得る。
【0034】
図2は本開示のカラムの態様を示す。したがって、一実施形態では、クロマトグラフィーカラム1は、管状ハウジング2を含み、管状ハウジングはクロマトグラフ媒体を含むためのハウジング内部3を規定する。
【0035】
管状ハウジング2は、垂直主軸4、下端5および上部外向きフレア状領域6(本明細書では「外向きフレア状領域」とも呼ばれる)を含み、下端5および上部フレア状領域6は主軸4により分離される。主軸4は一貫した直径を有し、一方、上部外向きフレア状領域6の直径は外向きフレア状領域が主軸から延在するにつれ増加し、これにより、「フレア状」または「円錐形状」となる。
【0036】
外向きフレア状領域6は垂直主軸4からフレア角Aで延在する。フレア角が大きくなるほど、上部外向きフレア状領域の直径は、それが主軸から延在するにつれ、より急速に増加する。1つの実施形態では、フレア角Aは1~50°、任意で2~12°、3~10°、15~50°または20~45°の範囲である。他の実施形態では、フレア角Aは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45または50°である。
【0037】
別の実施形態では、その最大点(すなわち、外向きフレア状領域の上端)での外向きフレア状領域6の直径D3は主軸の直径D1の1.1~5倍、任意で主軸の直径の1.2~2倍、1.1~4倍または1.1~3倍である。
【0038】
1つの特定の実施形態では、その最大点での外向きフレア状領域の直径D3は主軸4の直径の1.4倍であり、主軸から30°の角度で延在する。
【0039】
主軸4の様々な高さが本明細書で企図される。1つの実施形態では、主軸4の高さH1は10~100センチメートル、任意で15~45センチメートルまたは20~30センチメートルである。
【0040】
主軸4の様々な直径が本明細書で企図される。1つの実施形態では、主軸4の直径D1は2~50センチメートル、任意で2~8センチメートルまたは15~35センチメートルである。
【0041】
外向きフレア状領域6の様々な高さもまた本明細書で企図される。1つの実施形態では、外向きフレア状領域6の高さH2は2.5~20センチメートル、任意で5~15センチメートルである。
【0042】
外向きフレア状領域の直径は外向きフレア状領域の底端(そこで、主軸に連結する)から外向きフレア状領域の上端まで増加する。外向きフレア状領域の底端の直径は主軸4の直径と同じか、またはこれに類似する。1つの実施形態では、外向きフレア状領域6の底端の直径D2は3~50センチメートル、任意で15~35センチメートルである。
【0043】
外向きフレア状領域の直径D3は主軸4の直径より大きい。1つの実施形態では、外向きフレア状領域6の直径D3は8~70センチメートル、任意で25~45センチメートルである。
【0044】
カラムは、通常、樹脂の形態のクロマトグラフ媒体を保持するように設計される。樹脂は様々な材料およびサイズの粒子(またはビーズ)を含むことができる。好適な樹脂が当技術分野で知られている。樹脂の例としては、MABDirect樹脂(炭化タングステン-アガロースビーズ、メジアン粒子サイズ分布範囲:90-110μm;密度:2.8-3.2g/mL;リガンド:p-アミノ安息香酸)およびFastLine DEAE樹脂(炭化タングステン-アガロースビーズ;メジアン粒子サイズ分布範囲:110-140μm;密度:2.8-3.2g/mL;リガンド:DEAE)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0045】
樹脂はカラム内に2つの形態の1つで存在することができる:充填または沈降形態(本明細書では「沈降床」とも呼ばれる)および拡張、または流動形態。流動形態では、樹脂の粒子はバッファーなどの流体中に懸濁される。流動化されると、粒子はカラム内で「拡張床」(本明細書では「流動床」とも呼ばれる)を形成する。
【0046】
1つの実施形態では、沈降床の高さH3は主軸の高さH1の30-60%、任意で主軸の高さH1の35%-55%または40-50%である。
【0047】
別の実施形態では、拡張床の高さはカラムの高さH5の75-100%、任意でカラムの高さH5の85-99%または85-95%である。
【0048】
本明細書では、「拡張比」という用語は、拡張床高さ/沈降床高さを示す。1つの実施形態では、クロマトグラフ媒体の拡張比は1.8~2.5、任意で2~2.3である。
【0049】
沈降床20が
図2に示され、高さH3を有する。その床上方の領域はヘッドスペース21と呼ばれる。ヘッドスペースの高さH4は任意で拡張床上方1-10センチメートルおよび沈降床上方10-40センチメートルである。
【0050】
1つの実施形態では、ヘッドスペースの高さH4は、カラムの動作中、外向きフレア状領域の高さH2を超えて変化しない。
【0051】
粒子を流動化するために使用することができるバッファーの例としては、1M NaOH、WFI、1M NaCl、2M NaClおよび3M NaClが挙げられるが、それらに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、例えば、
図14に示されるように、狭小化フレア状領域30は外向きフレア状領域6の上端から延在する。狭小化フレア状領域は流れを上部ポート8に向け直すことができる。
【0053】
狭小化フレア状領域30の様々な高さH6が本明細書で企図される。
【0054】
狭小化フレア状領域の直径は狭小化フレア状領域の底端(ここで、外向きフレア状領域の上端に連結する)から、狭小化フレア状領域の上端まで減少する。狭小化フレア状領域の底端の直径は外向きフレア状領域の上端の直径と同じか、またはこれに類似する。
【0055】
狭小化フレア状領域30は水平からフレア角Dで延在する。1つの実施形態では、フレア角Dは水平から5~20°、任意で水平から8~12°の範囲である。他の実施形態では、フレア角Dは水平から8、9、10、11または12°である。
【0056】
図2のカラムはまた、下部ポート7(入口7とも呼ばれる)および上部ポート8(出口8とも呼ばれる)を含む。
【0057】
下部ポート7は、例えば、流体をカラムに提供するために使用することができる。下部ポートを介して提供することができる流体の例としてはバッファー、例えばクロマトグラフ媒体を拡張するためのバッファーおよび溶出バッファー、洗浄流体および処理される原料が挙げられる。
【0058】
上部ポート8は、例えば、溶出材料を収集するために使用される。
【0059】
下部ポート7は任意で流体分配器10に動作可能に連結され、これは、流体(例えば、流動化バッファー、溶出バッファーおよび/または供給原料)をカラムに分配する。1つの実施形態では、流体分配器10は静的分配器である。別の実施形態では、流体分配器10は非静的分配器である。静的(動かない)分配器は電動回転分配器などの非静的分配器と区別される。1つの実施形態では、流体分配器は流体の均一流をカラムに送達させるように適合される。流体分断は任意で、中央分配器ラインから突出した複数のアームを含み、各々が、流体をカラムに提供するように適合される。アームは任意で直線状(例えば、
図16、上部に示される)か、または曲線状(
図16下部に示される)である。
【0060】
上部ポート8は、外向きフレア状領域6の上端から延在することができる。カラムが狭小化フレア状領域30を含む場合、上部ポート8は、狭小化フレア状領域30の上端から延在することができる。上部ポート8はコレクタ11に動作可能に連結され得る。
【0061】
コレクタ11は任意で、カラム内で固定された高さに配置される。1つの実施形態では、コレクタ11は、拡張床上方1~6センチメートル、任意で2~5センチメートルの固定された高さに配置される。
【0062】
本開示のカラムは任意で、拡張吸着流動床(Expanded Bed Absorption)(EBA)システムにおいて使用するために適合される。したがって、本開示はまた、本明細書で記載されるカラムを含むEBAシステムを提供する。
【0063】
本開示のカラムは任意で、疑似移動床(SMB)システムにおいて使用するために適合される。したがって、本開示はまた、本明細書で記載されるカラムを含むSMBシステムを提供する。
【0064】
III.方法および使用
本開示はまた、下記を含む、標的分子を標的分子および望まれない成分を含む混合物から精製する方法を含む:
a)標的分子および望まれない成分を含む流体を本開示のクロマトグラフィーカラムに提供すること、
b)流体をクロマトグラフ媒体と接触させること、
c)標的分子をクロマトグラフ媒体から溶出させること。
【0065】
一実施形態では、標的分子はタンパク質である。
【0066】
別の実施形態では、望まれない成分としては細胞、細胞片、含有物(containment)および/または望ましくないタンパク質が挙げられる。
【0067】
1つの実施形態では、流体は血漿、任意でヒト血漿であり、標的分子は、血漿タンパク質、任意でIVIG、アルブミンまたはα-1アンチトリプシン(AAT)である。
【0068】
別の実施形態では、標的分子はIgA、IgM、IgD、IgE、α-1-プロテイナーゼインヒビター、血液凝固促進タンパク質、血液抗凝固タンパク質、血栓溶解剤、抗血管新生タンパク質、α-2-抗プラスミン因子、C-1エステラーゼインヒビター、アポリポタンパク質、HDL、LDL、フィブロネクチン、β-2-グリコプロテインI、フィブリノゲン、プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子、プラスミノーゲンインヒビター、血漿プロテアーゼインヒビター、トロンビン、アンチトロンビンIII、ストレプトキナーゼ、インター-α-トリプシンインヒビター、α-2-マクログロブリン、アミロイドタンパク質、フェリチン、プレアルブミン、GC-グロブリン、ヘモペキシン、C3-補体、トランスフェリン、ウロキナーゼ、α-1-酸-糖タンパク質、および、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、フォン・ヴィルブランド因子、第VIII因子-フォン・ヴィルブランド因子複合体、第IX因子、第X因子、第XI因子、C1インヒビター、プロテインCおよびプロテインSからなる群より選択される凝固または抗凝固因子である。
【0069】
1つの実施形態では、クロマトグラフ媒体は樹脂を含む。方法は任意で、流体を提供する前に、樹脂を流動化し、拡張床を提供する(例えば、沈降床を拡張して拡張床にする)ことをさらに含む。樹脂は流動化バッファーをカラムに提供することにより、任意で流動化される。様々な流動化バッファーが当技術分野で知られており、1M NaOH;WFI;1M NaCl;2M NaCl;3M NaCl;0.1M NaOH;0.5M NaCl;20mM NaCl;20mM NaCl、0.6M NaCl;0.1M KH2PO4;5mM KH2PO4;10mM NCP、10mM EACA;0.2M KH2PO4、0.5M NaCl、10mM EACA(pH7.80);0.2M KH2PO4、0.5M NaCl、10mM EACA(pH4.50);265mMグリシン(pH4.15);5mM NaOAc(pH5.75);5mM NaOAc、1M NaCl;0.5M NaOAc(pH5.25);0.15M NaOAc(pH5.25);10mM NaOAc、300mM NaCl;25mM NaOAc(pH5.20);5mM NaAce(pH4.50);10mM KH2PO4、80mM NaCl;0.1M NaOH、1M NaCl;50mM NaClおよび60mM NaHCO3が挙げられるが、それらに限定されない。
【0070】
1つの実施形態では、方法は、標的分子を溶出させる前に、クロマトグラフィーカラムをすすぎ、望まれない材料の少なくともいくらかを除去することをさらに含む。このステップは、流体をクロマトグラフ媒体と接触させた後、および、標的分子をクロマトグラフ媒体から溶出させる前に実施することができる。カラムをすすぐために使用され得るすすぎ流体の例としては、20mM NaCl;5mM KH2PO4;10mM NCP、10mM EACA;0.15M NaOAc(pH5.25)および25mM NaOAc(pH5.20)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0071】
1つの実施形態では、「標的分子を溶出させること」は好適な溶出バッファーをカラムに提供すること、その後、標的分子を含む溶出液をカラムから収集することを含む。溶出液は、例えば、
図2の出口コレクタ8などの出口コレクタから収集することができる。1つの実施形態では、溶出液はカラム内の定位置から収集される。言い換えれば、調節可能な高さを有するコレクタは必要とされない。
【0072】
本方法では、限定はされないが、流動化バッファー、すすぎ流体、溶出バッファーならびに標的分子および望まれない成分を含む流体を含む液体が、分配器、任意で静的分配器を使用してカラムに提供される。
【0073】
本開示のカラムは、一定、または比較的一定の拡張比(拡張床高さ/沈降床高さ)を有するカラムの動作を可能にすることができる。1つの実施形態では、クロマトグラフ媒体の拡張比は、動作中1.8~2.5、任意で2~2.3で維持される。
【0074】
拡張床の高さを一定、または比較的一定に維持することは、コレクタの高さがプロセスを通して固定された高さで維持できることを意味する。よって、別の実施形態では、コレクタ8は拡張床上方1~6センチメートル、任意で2~5センチメートルの固定された高さで維持される。
【0075】
カラムに提供される液体の流速は、拡張比が、分離プロセスを通して一定、または比較的一定なままとなるように変化させることができる。
【0076】
別の実施形態では、流体を提供する前に、バッファーがカラムに提供され、クロマトグラフ媒体が流動化される。
【0077】
1つの実施形態では、方法は継続的に実施される。例えば、方法はコレクタの高さの手動調節なしで実施され得る。例えば、方法は任意で、疑似移動床(SMB)システムの一部として実施され得る。
【0078】
当技術分野で知られているように、SMBシステムは一連のカラムを近接流路で組み合わせており、これにより、原料がシステムに添加され、標的分子が連続動作で収集される。この動作は、時限注入、および、一連のカラムによる逐次様式での生成物およびバッファーの流路分流により達成され得る。
【0079】
下記非限定的な例は本開示を説明する。
【0080】
実施例
フレア状上部拡張吸着流動床(EBA)クロマトグラフィーカラムは、動作中にクロマトグラフ媒体(樹脂)および微粉が排出ラインに入る確率を低減させ、流速の増加またはカラムを通って流れる流体粘度の増加がある場合の、過拡張のリスクを低減させることが見出された。バッファー交換のための異なるヘッドスペース体積の効果もまた、調査した。
【0081】
I.導入
図1は大規模EBAカラム設計の一例であり、PlasmaCap IGの臨床製造のために使用された。出口コレクタは拡張床上方の液体中に沈められる。プロセスを通して、様々な物理および化学特性を有する液体がカラムに通過させられる。拡張床の高さは液体特性が変化するにつれ、増加、および減少することが許される。
【0082】
排出管は手動で上昇、および低下させられ、変化する床高さ上方およそ3-5cmの液体が維持される。出口が拡張床と共に上昇されない場合、クロマトグラフ媒体はカラムを通って出口を介して出て行き、生成物プール中に含まれる。出口が拡張床と共に低下されない場合、生成物を回収するためにより高い体積が必要とされ、生成物が過度に希釈されるという結果になる。さらに、最低サイズおよび密度を有するクロマトグラフ媒体の微粉もまた、床内に擾乱が存在するとカラムから出て行く可能性がある。使用されるバッファーが異なる粘度を有する場合、これが、液体切り換え中に特に懸念される。微粉の雲が主床高さ上方に、より長い期間存続する可能性があり、それらは、排出ラインに入る可能性がある。
【0083】
元のEBAカラムの改良型が連続疑似移動床(SMB)システムにおいて使用するのに望ましい。SMBシステムにおいてEBAカラムを使用するために、2つの主な問題点に対処する必要がある。第1に、EBAカラムを作動させる手動特性を自動特性に変更させる必要がある。第2に、排出ラインに入る可能性がある樹脂の確率を低減させる必要がある。
【0084】
図2では、フレア状上部設計を有する改良商業規模EBAカラムを見ることができる。カラムの上部は閉鎖系であり、この場合、上部は外部環境から物理的に閉鎖され、閉鎖された管流路に空気に曝露されることなく誘導される。これにより、排出ライン上の第2のポンプに対する必要性が排除される。
【0085】
カラムを可変拡張ではなく、一定拡張および可変流を用いて動作させるとまた、調節可能な高さを有するコレクタに対する必要性が排除される。動作中に排出ラインの高さを手動で増加または減少させる必要なく、カラムを動作させることがより容易になり、調整における人的ミスのリスクが最小に抑えられる。この設計は連続SMBシステム上で使用するのにより好適である。というのも、手動で調整する必要のある部品がなくなるからである。
【0086】
カラムの上部フレア状領域(本明細書では「上部外向きフレア状領域」とも呼ばれる)は上部の直径が、底部の直径より大きい円錐台のような形状とされる。
【0087】
以下で記載されるように、直径の増加は軸領域から収集が起こるカラムの上部までの直線流の減少を引き起こした。線流速の減少に伴い、樹脂微粉が開口領域まで上昇する可能性が低減されることもまた示された。加えて、水平流ベクトルの導入は、流れまたは流体特性の変化により、過拡張のリスクを低減させた。より小さなヘッドスペースにより、より良好な変換効率に導かれることもまた示された。
【0088】
手順
標準およびフレア状カラム設計を、使用可能な実験室規模のカラムおよびEBA DEAE樹脂を使用して比較した。標準EBAカラムは2cm直径カラムとし、改良カラムは3.3cm直径フレア状上部領域を有し、フレア角が3°および10°である2.2cm直径カラムとした(仕様が
図10および
図13に示される)。
【0089】
手順:
1.標準EBAカラム、3°フレア角を有する改良EBAカラム、および10°フレア角を有する改良EBAカラム上でのDEAE EBA樹脂の拡張比を、様々な物理的性質を有する一連の液体を使用して評価する。
【0090】
2.全てのカラム設計について、液体切り換えにより引き起こされる過拡張微粉樹脂雲の高さおよび持続期間をモニタする。
【0091】
3.様々なカラムを比較して、交換効率についての異なるヘッドスペース体積の効果を評価する。
【0092】
材料および装置
表1-3は研究において使用される材料および装置を詳述する。
【表1】
【表2】
【表3】
【0093】
方法
1.SOP-E-015カラム充填およびアンパックに従うが、1M NaOHを充填バッファーとして使用して20±0.5cmの沈降ベッド体積までカラムを充填した。改良3°および10°フレア角カラムを20cmまで充填し、標準カラムを19.5cmまで充填した。
【0094】
2.インライン導電率計をカラムの排出ラインに設置した。
【0095】
3.流速を所定の流速に設定し、樹脂を2×(1M NaClを用いて)に拡張させた。改良カラムでは30mL/分、および標準カラムでは27mL/分。
【0096】
4.バッファーを上記流速でカラムに通して流した。
【0097】
5.樹脂床の高さを、拡張を通して一定の間隔で記録し、拡張比を決定した。導電率データを記録した。
【0098】
6.拡張のために十分な時間を許し、その新しい定常状態に到達させた。
【0099】
7.微粉樹脂雲が交換中に見られた場合、その高さを、雲が主樹脂床高さまで低減するのにかかった時間と共に記録した。どのくらい樹脂が失われたかを定性的に測定するために出口ビーカー中に存在した任意の残留微粉の写真を撮った。
【0100】
8.ステップ4-7を、全ての特定したバッファーをカラムに通して流すまで繰り返した。
【0101】
バッファーを
図3で概説される順で使用した。1M NaOHから始めた。というのも、これは、樹脂が最初に充填されたものだからである。WFIがNaOHおよびNaClの後に続き、そのため、低濃度バッファーが高濃度バッファーに続くことができた。樹脂の著しいリフティングが起こることが予測され、そのため、これは、3つのカラム設計間での微粉樹脂雲の違いを特徴付けるために注目された。樹脂が排出ラインに入った場合、それは指摘され、樹脂はシーケンスの終わりにポンピングしてカラムに戻された。
【0102】
改良カラムは、10°フレアカラムでは3cmの、3°フレアカラムでは10cmの固定ヘッドスペースを有した。10cmの固定ヘッドスペースを標準EBAカラムのために使用した(2×樹脂拡張ライン上方)。
【0103】
結果および考察
下記セクションは、様々な物理的性質を有する一連の液体を使用して、標準EBAカラム、3°フレア角を有する改良EBAカラム、および10°フレア角を有する改良EBAカラム上でのDEAE EBA樹脂の拡張比を検討する。それらはまた、液体切り換えにより引き起こされる過拡張微粉樹脂雲の高さおよび持続期間を検討する。様々なカラムの交換効率に対する異なるヘッドスペース体積の効果もまた評価される。
【0104】
樹脂床の拡張比
図4では、標準EBAカラム、ならびに3°および10°フレアを有する改良EBAカラムについての定常状態拡張比を見ることができる。円形マーカーにより示されるように、標準EBAカラムは最高拡張比レベルを有した。3°フレア角を有する改良EBAカラムは、四角マーカーにより示され、2番目に高い拡張比を有した。三角形マーカーに示されるように、10°フレア角を有する改良EBAカラムは最低拡張比を有した。フレア角が大きくなるほど、より早くカラム直径が増加し、樹脂床の拡張比がより小さくなる。使用されるバッファーの連続についてのいくつかの特性が下記表4において見ることができる。どのくらい樹脂が拡張するかを決定するための最も信頼できる因子は導電率であった。導電率が増加すると、拡張比は確実に増加した。密度および粘度は1M NaCl~3M NaClを分析した場合、同様に床高さに関する明確な線形増加傾向を有したが、1M NaOHとした場合、傾向はそれほど信頼できなかった。
【表4】
【0105】
樹脂微粉雲の拡張比
図5では、3°フレア角を有する改良EBAカラムについての、液体切り換え中に引き起こされる樹脂床および微粉雲の拡張比に対してのデータを見ることができる。それぞれ、樹脂床高さおよび導電率を表す黒色および灰色データセットを見ると、傾向が見えてくる可能性がある。傾向は導電率が増加するにつれ、床高さも増加するというものである。導電率が高いほど床高さが高くなる。導電率が低い場合、床高さもまた低い。しかしながら、高導電率バッファーのすぐ後に低導電率バッファーが続く場合、興味深い現象がカラム内の樹脂床と液体の界面で起こる。樹脂の小さな微粉が上向き流に流され、カラムの上部を循環する。微粉の雲(黄色点により可視化)が7-8分間、徐々にまばらになり、消散するまで存続する。
【0106】
図6では、10°フレア角を有する改良EBAカラムについての、液体切り換え中に引き起こされる樹脂床および微粉雲の拡張比に対してのデータを見ることができる。
図5と同様に、高導電率液体からWFIへの液体切り換え中に、微粉雲がカラムの上部に7-8分間上昇した。追加のフレア角は雲中の樹脂の量に関して有意の違いを有するとは考えられなかった。
【0107】
図7では、標準EBAカラムについての、液体切り換え中に引き起こされる樹脂床および微粉雲の拡張比に対してのデータを見ることができる。導電率データセットは、システムに入る泡のために、ある点でわずかに破壊される。しかしながら、傾向は前のカラム設計と同じである。微粉雲は液体切り換え中にカラムの上部まで上昇した。
【0108】
カラムから廃棄ビーカーまでの途中で生成された微粉の量も観察された。3°フレアカラムと10°フレアカラムの間には、同様の量の樹脂が改良カラムについて排出ラインから途中で生成されたので、最小の違いしか存在しなかった。標準カラムについては、わずかにより多くの樹脂が、廃棄容器中で見られた。理論に縛られないが、フレア設計により排出ライン中に進む可能性がある樹脂および微粉の量が低減した可能性がある。
【0109】
ヘッドスペース体積およびバッファー平衡
3°フレア角カラムは10cmおよび77.29mLのヘッドスペースを有し、10°フレア角は3cmおよび35.15mLのヘッドスペースを有し、標準カラムは10cmおよび31.42mLの維持されたヘッドスペースを有した。
【0110】
分析のために使用した方法は、液体切り換え中の導電率について推定曲線下面積(AUC)を比較するものであった。
図9に示されるように、AUCは平衡に必要とされる時間またはバッファーの量を表す。AUCの積分を実施した後、
図10をプロットした。計算は
図11において見ることができる。
【0111】
任意の液体についてのAUCは、3°フレア状カラムおよび標準カラムと比較して、10°フレアを使用した場合低くなることが示された。3cm対10cmのヘッドスペースの違いが平衡時間に最大の影響を与えた。全体で、10°フレアカラムは総AUCを有し、これは3°フレアカラムより34%少なく、標準カラムより36%少なかった。実際には、標準カラムが使用される場合、ほんの3-5cmのヘッドスペースしか手動で維持されず、そのため、その交換効率は3°フレアカラムと同様のものとなるであろうことに注意すべきである。
【0112】
概要
カラムを通って流れる、流速の増加または流体粘度の増加がある場合の過拡張のリスクを低減させるフレア設計を示した(
図4)。フレア角が大きくなるほど、より良好にカラムは過拡張を低減させた。3°フレア設計は標準設計より良好であり、10°フレア設計は3°フレア設計より良好であった。フレア設計は動作中、微粉が排出ラインに入る確率を低減させるのに、標準EBA設計よりも良好であることが示された。バッファー交換についての異なるヘッドスペース体積の効果もまた調査し、ヘッドスペースが小さいほど、バッファー交換がより効率的であったことが示された。標準EBAカラムのより典型的な使用では、ヘッドスペースは3-5cmで維持され、これは、バッファー交換効率を増加させるが、しかしながら、それはまた樹脂損失の量も増加させることになるであろう。
【0113】
全体として、フレア設計カラムは元のEBAカラムの改良型となり、連続疑似移動床(SMB)システムにおいて使用することができる。
【国際調査報告】