(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】クランプ体フリーホイールユニット、及びクランプ体フリーホイールユニットを有する、電動自転車のための駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16D 41/26 20060101AFI20230201BHJP
F16D 41/07 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
F16D41/26
F16D41/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534264
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 DE2020101019
(87)【国際公開番号】W WO2021110214
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】102019218785.4
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522222881
【氏名又は名称】ゲーエムエヌ パウル ミュラー インドゥストリー ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】エルバッハー マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ラトケ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイゲル クリストフリート
(72)【発明者】
【氏名】ノアック ウルリッヒ
(57)【要約】
提案される解決手段は、クランプ体フリーホイールユニット(3)、及びクランプ体フリーホイールユニット(3)を有する電動自転車(1)のモータアシスト駆動のための駆動装置(A)に関するものである。
提案されたクランプ体フリーホイールユニット(3)は、複数のクランプ体(5)と、保持器(35)と、複数の転動体(6)とを備える。
クランプ体フリーホイールユニット(3)を介して連結され得る内部軸と外部軸との間の力の伝達が、複数のクランプ体(5)によって、2つの反対回転方向のうちの一方においてのみ許容され、
クランプ体フリーホイールユニット(3)の複数のクランプ体(5)が、保持器(35)によって、周方向(U)に定められた間隔において一緒に保持され、
内部軸と外部軸がクランプ体フリーホイールユニット(3)を介して連結されたときに、複数の転動体(6)によって、互いに相対回転可能となるように据え付けられる。
そして、複数の転動体(6)及びクランプ体(5)の少なくとも一部は、単一の保持器(35)に一緒に保持されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクランプ体(5)と、保持器(35)と、複数の転動体(6)とを有するクランプ体フリーホイールユニットであって、
前記クランプ体フリーホイールユニット(3)を介して互いに連結可能な内部軸と外部軸との間の力伝達が、前記複数のクランプ体(5)によって、2つの互いに対向する回転方向のうちの一方にのみ可能であり、
前記クランプ体フリーホイールユニット(3)の前記複数のクランプ体(5)は、前記保持器(35)によって周方向(U)に互いに対して定められた間隔で保持され、
前記内部軸と前記外部軸は、前記クランプ体フリーホイールユニット(3)を介して互いに連結された場合に、前記複数の転動体(6)によって互いに対して回転可能となるように支持され、
前記複数の転動体(6)、及び前記複数のクランプ体(5)の少なくとも一部は、単一の前記保持器(35)に一緒に保持されていることを特徴とする、クランプ体フリーホイールユニット。
【請求項2】
複数の転動体(6)は、前記クランプ体フリーホイールユニット(3)の第1軸受列(3c)に配置され、前記軸受列は前記周方向(U)に延び、複数のクランプ体(5)を有する前記クランプ体フリーホイールユニット(3)の第2軸受列(3a、3b)と平行に延びることを特徴とする、請求項1に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項3】
複数の転動体(6)は、複数のクランプ体(5)と共に、前記クランプ体フリーホイールユニット(3)の前記周方向(U)に延びる軸受列(3a、3b)に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項4】
少なくとも2つのクランプ体(5)が、複数の転動体(6)及び複数のクランプ体(5)を有する前記軸受列(3a、3b)において、前記周方向(U)に互いに追従し、続いて、少なくとも1つの転動体(6)が、前記少なくとも2つのクランプ体(5)のいずれかに前記周方向(U)に追従することを特徴とする、請求項3に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項5】
前記クランプ体フリーホイールユニット(3)は、少なくとも2つの軸受列(3a、3b)を備え、前記軸受列は、それぞれ複数のクランプ体(5)を有し、かつ、互いに平行に延びることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項6】
前記クランプ体フリーホイールユニット(3)は、少なくとも2つの軸受列(3a、3b)を備え、前記軸受列は、それぞれ複数のクランプ体(5)を有し、かつ、前記内部軸及び前記外部軸のための前記クランプ体フリーホイールユニット(3)によって規定される回転軸(D)に沿って、互いに並んで配置されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項7】
前記クランプ体フリーホイールユニット(3)は、前記クランプ体フリーホイールユニット(3)によって規定される回転軸(D)に沿って互いに隣り合う3つの軸受列(3a~3c)を、前記内部軸及び前記外部軸のために備えることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のクランプ体フリーホイールユニット(3)。
【請求項8】
前記3つの軸受列(3a~3c)のうち、2つの軸受列(3a、3b)は、それぞれ複数のクランプ体(5)を有し、1つの軸受列(3c)は、複数の転動体(6)のみを有することを特徴とする、請求項7に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項9】
複数のクランプ体(5)を有する前記軸受列(3a、3b)の一方と、前記複数の転動体(6)のみを有する前記軸受列(3c)との間に、前記回転軸(D)に関して半径方向外側に延びるウェブ(350)が、前記保持器(35)上に形成されていることを特徴とする、請求項8に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項10】
2つの隣接する軸受列(3a、3b)の前記クランプ体(5)は、互いに接続され、特に互いに一体的に構成され、半径方向外側で前記回転軸(D)を中心に延びるスロットによって互いに局所的に分離されていることを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項11】
前記クランプ体フリーホイールユニット(3)の1つ以上の軸受列(3a、3b)は、周方向(U)に互いに追従し、かつ、半径方向外側にそれぞれスロットが設けられた複数のクランプ体(5)を有するクランプ体列によって形成されていることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項12】
少なくとも1つのシール(4)が、前記保持器(35)に設けられ、特に前記保持器上に射出成形されていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項13】
前記シール(4)は、前記クランプ体フリーホイールユニット(3)によって規定される回転軸(D)に関して、前記保持器(35)の軸方向前側(31)に設けられていることを特徴とする、請求項12に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項14】
前記転動体の少なくとも一部は、シリンダローラ(6)の形態であることを特徴する、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のクランプ体フリーホイールユニット。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載のクランプ体フリーホイールユニット(3)を少なくとも1つ有する、電動自転車(1)のための駆動装置。
【請求項16】
前記駆動装置(A)は、少なくとも1つの駆動モータと、前記少なくとも1つの駆動モータによって生成される駆動トルクを出力軸に伝達するためのギア機構とを備え、前記少なくとも1つの駆動モータと前記ギア機構、及び/又は前記ギア機構と前記出力軸は、前記クランプ体フリーホイールユニット(3)を介して互いに連結解除可能であることを特徴とする、請求項15に記載の駆動装置。
【請求項17】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載のクランプ体フリーホイールユニットを少なくとも1つ有する、及び/又は、請求項15又は16に記載の駆動装置(A)を有する、電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案する解決手段は、クランプ体フリーホイールユニットであって、複数のクランプ体と、複数のクランプ体が周方向に互いに定められた間隔で保持される保持器(ケージ)と、クランプ体フリーホイールユニットを介して互いに連結される2つの軸を回転可能に支持するための複数の転動体と、を有するクランプ体フリーホイールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
クランプ体フリーホイールユニットは、広く知られている。この場合、クランプ体フリーホイールユニットによって互いに連結可能な内部及び外部部品、特に内部軸又は外部軸の間で、互いに反対向きである2つの回転方向のうち、一方向にのみ力を伝達するために複数のクランプ体が使用される。このようにして、一方の回転方向へ回転中に力の伝達を行うことができる一方、クランプ体フリーホイールユニットを介して、部品の相対的な回転が、反対の回転方向で可能である。この場合、クランプ体は、クランプ体フリーホイールユニットの保持器内に、クランプ体フリーホイールユニットによって規定される回転軸周りの周方向の一方へ、互いに規定された間隔で保持され、この場合、周方向に垂直に延びる傾斜軸を中心に傾斜させることができるため、回転方向に応じて、クランプ体を介して、非ポジティブロック方式でトルクが伝達されるかどうかが決まる。
【0003】
クランプ体フリーホイールユニットの複数のクランプ体に加えて、比較的大きなトルクで正確に回転可能に支持するために、互いに連結することが意図される部品が互いに相対的に回転可能に支持される転動体を設けることも知られている。例えば、転動体は、クランプ体フリーホイールユニットの内部リングとクランプ体フリーホイールユニットの外部リングとの間で、互いに連結することが意図される部品の前方に配置されるか、又は部品に直接配置されている。例えば、内部リングは内部軸に接続することができ、外部リングは外部軸に接続することができる。転動体がクランプ体フリーホイールユニットに組み込まれている場合、回転可能な転動体を互いに対して定められた間隔で保持するために、通常、別の保持器がそのために提供される。あるいは、特に転動体が針状の形態である場合、転動体用に保持器に凹部が設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、電動自転車でのクランプ体フリーホイール動作の使用、この場合、内部軸と外部軸のように、互いに連結することが意図されている2つの部品間に設ける必要のある公差、及び、厳しい構造空間条件に関して、クランプ体フリーホイール動作の改良が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この背景に対し、クランプ体フリーホイールユニットの複数の転動体の少なくとも一部と、クランプ体フリーホイールユニットのクランプ体とが、1つの保持器に一緒に保持される、請求項1に記載のクランプ体フリーホイールユニットが提案される。
【0006】
その結果、提案された解決策は、クランプ体と追加の転動体の両方に共通の保持器を提供するという基本概念に基づいている。その結果、1つの共通の保持器の中に、一方ではクランプ体用の、他方では転動体用の、異なるタイプの保持器の受け部材が形成されることになる。提案されたクランプ体フリーホイールユニットは、結果として、クランプ体に加えて、クランプ体フリーホイールユニットを介して内部軸及び外部軸を互いに結合する際に、これら内部軸及び外部軸を互いに相対的に回転可能に支持するのに適する複数の転動体を含む。この場合、追加の転動体は、クランプ体用の保持器に回転可能に保持される。
【0007】
転動体とクランプ体を共通の保持器に統合することで、クランプ体フリーホイールユニットの更なる小型化が可能になる。実際には、より大きな公差範囲が許容され、公差設定における追加の安全装置をもはや設ける必要がないため、クランプ体のコストを大幅に削減することも可能である。組み立てを簡略化することもできる。さらに、提案されたクランプ体フリーホイールユニットの結果として、最大トルクに関するロバスト性を高めることができ、フリーホイール動作中のドラグトルク(空転トルク)を低減できることが見出された。
【0008】
この場合、提案されたクランプ体フリーホイールユニットは、内部軸と外部軸を連結するために、クランプ体及び転動体がそれぞれ外部で又は内部で隣接する、内部リング及び/又は外部リングを有することができる。ただし、これは絶対に必要というわけではない。特に、クランプ体フリーホイールユニットは、軸がクランプ体及び/又は転動体に直接接触するように、内部リング無しで、及び/又は外部リング無しで構成することができる。
【0009】
特に、提案されたクランプ体フリーホイールユニットの一変形例は、電動自転車(したがって、E-バイク又は電動アシスト自転車)のための電動駆動装置で使用するために構成され、提供されるであろう。クランプ体フリーホイールユニットを介して、例えば、第1の外部又は内部軸を第1回転方向に(モータ駆動で)回転する場合、力を別の第2の内部又は外部軸に伝達して、他方の第2軸を駆動することができる。同時に、他方の第2駆動軸も、クランプ体フリーホイールユニットを介して第1回転方向に回転させることができ、この場合、第1駆動軸を追い越すことができる。さらに、第1駆動軸を回転することなく、クランプ体フリーホイールユニットを介して第2駆動軸を回転させることもできる。この様に、クランプ体フリーホイールユニットは、電動自転車の運転者によって出力軸で加えられるトルクが駆動モータに伝達されず、力の流れがクランプ体フリーホイールユニットによって駆動モータの方向に遮断されるように、特に、電動自転車の電動駆動装置の少なくとも1つの駆動モータを出力軸から切り離すように、構成及び提供されてもよい。この様に、電動自転車の電動駆動装置を、クランプ体フリーホイールユニットを介して、筋力で作動される電動自転車のペダル駆動から切り離すことができるので、電動自転車の運転者は、電動駆動装置が非作動である(すなわち、モータの補助が無い)ときに、電動駆動装置の少なくとも1つの駆動モータ及び/又はギア機構の結果として、反作用の抵抗無しで、筋力によって作動する方法で電動自転車を駆動できる。
【0010】
一変形例では、クランプ体フリーホイールユニットの複数の転動体は、周方向に延びる第1軸受列に配置され、また、その軸受列は、複数のクランプ体(これらは一つの同じ保持器に保持されている)を有するクランプ体フリーホイールユニットの第2軸受列と平行に延びている。第1及び第2軸受列は、その結果、クランプ体フリーホイールユニットによって規定される回転軸に関して、軸方向に互いにオフセットした状態で配置されている。
【0011】
一変形例では、複数の転動体が、複数のクランプ体と共に、クランプ体フリーホイールユニットの周方向に延びる軸受列に配置されている。その結果、周方向において、複数の転動体及び複数のクランプ体は、この軸受列内で互いに追従する。このような変形は、この場合、転動体とクランプ体のこのような(混合の)軸受列に加えて、追加の軸受列もまたクランプ体フリーホイールユニットに設けることができ、この追加の軸受列は、転動体とクランプ体との混合物、転動体のみ、又はクランプ体のみを含むことができるという事実を、特に含む。
【0012】
一変形例では、複数の転動体と複数のクランプ体とを備える軸受列において、少なくとも2つのクランプ体は、少なくとも1つの転動体が少なくとも2つのクランプ体の内の1つに周方向で追従する前に、周方向に互いに直接追従している。これに基づく変形例では、クランプ体を介した力伝達のためにより大きなトルクを伝達できるように、典型的には、転動体よりも多くのクランプ体が軸受列内に設けられる。
【0013】
一変形例では、クランプ体フリーホイールユニットは、少なくとも2つの軸受列を備え、それら軸受列はそれぞれ複数のクランプ体を有し、かつ、クランプ体フリーホイールユニットによって規定される回転軸に沿って互いに並んで配置されている。例えば、クランプ体フリーホイールユニットは、回転軸に沿って互いに隣り合って配置される3つの軸受列を備えてもよい。この例では、2つの軸受列がそれぞれ複数のクランプ体(クランプ体のみ、又は複数の転動体との混合)を有することができる一方、1つの軸受列が複数の転動体のみを有することができる。3列のクランプ体フリーホイールユニットの対応する変形例では、結果として、専ら転動体を備える少なくとも1つの軸受列が設けられ、その転動体は、しかし、他の1つ又はすべての軸受列にあるクランプ体と同様に、同一の保持器に回転可能に保持されている。
【0014】
3列のクランプ体フリーホイールユニットの一変形例では、保持器は、複数のクランプ体を有する軸受列の1つと、専ら複数の転動体を有する軸受列との間に、回転軸に対して半径方向外側に延びるウェブを形成している。そして、異なる軸受列は、この半径方向外側に延びるウェブによって、クランプ体フリーホイールユニットにおいて、機能的にだけでなく構造的にも互いに分離されている。
【0015】
各々がクランプ体を有する2つの軸受列では、原則として、それら軸受列を跨いで連結されていないクランプ体を設けることができる。
【0016】
代替的な変形例では、2つの隣接する軸受列のクランプ体は、互いに接続され、特に互いに一体的に構成され、それによって単一のクランプ体列を形成する。例えば、クランプ体列のクランプ体は、半径方向内側に共通の基部を有し、半径方向外側に回転軸を中心に延びるスロットによって互いに局所的に分離されている。周上に延びるスロットにより、結果的に、クランプ体列が2つの軸受列で形成され、そこに周方向に前後に配置された一列のクランプ体が設けられ、それぞれ共通の基部を介して内部軸に力を伝達できる。
【0017】
その結果、提案された解決策には、保持器に、転動体のみを含む列(転動体列)に加えて、周方向に互いに追従する少なくとも1列のクランプ体、例えば、スロット付き又はスロット無しのクランプ体(クランプ体列)が、さらに設けられているクランプ体フリーホイールユニットの変形例が特に含まれる。さらに、クランプ体列の周方向に互いに追従するクランプ体間の隙間に、軸方向に前後に位置する2つの転動体を配置することにより、転動体とクランプ体をそれぞれ有する2つの軸受列を保持器に形成して備える変形例も含まれる。
【0018】
追加的な機能統合のために、一変形例では、少なくとも1つのシールが保持器に設けられる。このシールは、例えば、保持器に射出成型される。
【0019】
例えば、そのシールは、クランプ体フリーホイールユニットによって規定される回転軸に関して、保持器の軸方向前側に設けられる。保持器の前面側でそこに一体化され、特にその上に射出成形されるシールは、例えば、電動自転車の駆動装置において、クランプ体フリーホイールユニットが装着されたときの環境に対してシールすることを可能にする。
【0020】
例えば、保持器に設けられ、特にその上に射出成形されたシールは、少なくとも1つのシールリップを形成する。
【0021】
一変形例では、転動体の少なくとも一部は、シリンダローラの形態である。
【0022】
提案された解決策は、さらに、少なくとも1つの提案されたクランプ体フリーホイールユニットを有する電動自転車のための駆動装置に関する。駆動装置は、結果として、例えば、電動自転車の電動駆動のために構成及び提供され、クランプ体フリーホイール動作を提供するための提案されたクランプ体フリーホイールユニットの少なくとも1つの変形を有している。
【0023】
一変形例では、駆動装置は、少なくとも1つの駆動モータによって生成される駆動トルクを(歯車機構を介して)出力軸に伝達するために、少なくとも1つの駆動モータと歯車機構とを備える。出力軸は、例えば、電動自転車のボトムブラケット軸であってもよい。そして、少なくとも1つの駆動モータと歯車機構、及び/又は歯車機構と出力軸は、クランプ体フリーホイールユニットを介して、互いに連結を解除できる。このようにして、結果として、駆動モータの方向への力の流れは、クランプ体フリーホイールユニットを介して遮断されるので、電動駆動装置、特にその少なくとも1つの駆動モータは、筋力によって作動される駆動中に「引きずられる」必要がない。
【0024】
提案された解決策は、少なくとも1つの提案されたクランプ体フリーホイールユニット及び/又は1つの提案された駆動装置を有する電動自転車をさらに含む。
【0025】
添付の図は、例として可能な提案された解決策の変形を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】3つの軸受列を有する、提案されたクランプ体フリーホイールユニットの第1変形例の斜視図であり、そのクランプ体及び転動体は、クランプ体フリーホイールユニットの単一で共通の保持器に保持されている。
【
図2】2つの混合軸受列を有する、提案されたクランプ体フリーホイールユニットの別の変形例の斜視図であり、その2つの混合軸受列は、軸方向に隣り合って配置され、それぞれが共通の保持器内にクランプ体及び転動体を有する。
【
図3】提案された解決策の変形例が使用されている、電動自転車の変形例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、提案されたクランプ体フリーホイールユニット3の第1変形例を示す斜視図である。
図1のクランプ体フリーホイールユニット3は、3つの列を有し、すなわち、3つの軸受列3a、3b、3cを備えて構成されている。これら3つの軸受列3a、3b、3cは、クランプ体フリーホイールユニット3によって規定される回転軸Dと、それと平行に延びる軸方向Xに沿って互いに隣り合っている。
【0028】
第1軸方向前側30から軸方向Xに互いに続く第1の2つの軸受列3a、3bは、それぞれクランプ体5のみを有する。これらクランプ体5は、回転軸Dを中心として周方向Uに、互いに定められた間隔をおいて互いに並んで保持され、回転軸Dと平行な傾斜軸を中心として傾斜可能に支持されている。これにより、クランプ体フリーホイールユニット3を介して互いに結合される内部軸と外部軸の回転方向と、それに依存する傾斜位置に応じて、クランプ体5は内部軸と外部軸間でトルク伝達したり、内部軸と外部軸の相対回転を可能にしたりできる。内部軸との接続のために、クランプ体フリーホイールユニット3は、内部軸を係合でき、特に押圧できる中央軸受開口部Oを有する。次に外部軸は、例えば、クランプ体フリーホイールユニット3が外部軸の中空端部に挿入されるか、又はその逆で、少なくともその一端が中空である(中空)軸がクランプ体フリーホイールユニット3に装着され、特に押し付けられることによって、クランプ体フリーホイールユニット3に径方向外側で接続できる。
【0029】
図1のクランプ体フリーホイールユニット3の、クランプ体5を有する2つの軸受列3a及び3bは、シリンダローラ6の形態の転動体のみを有する第3軸受列3cによって補足されている。シリンダローラ6によって、内部軸と外部軸は、クランプ体フリーホイールユニット3を介して互いに結合されている場合、(追加的に)互いに対して回転可能に支持されることができる。シリンダローラ6は、この例では、周方向Uに互いに定められた間隔をおいて保持器受け部材356に保持されている。その保持器受け部材356は、他の2つの軸受列3a、3bのクランプ体5のための保持器受け部材355も形成している同一の保持器35によって形成されている。
図1のクランプ体フリーホイールユニット3の保持器35は、結果として、クランプ体5用とシリンダローラ6用の両方の保持器受け部材355、356を一体化している。
【0030】
クランプ体5を有する隣接する軸受列3bから、軸受列3cのシリンダローラ6を空間的に分離するために、保持器35は、環状に延び、半径方向外側に突出するウェブ350を形成している。
【0031】
原則的に、第1の2つの軸受列3a、3bのクランプ体5は、互いに完全に別個で構成できる。図示された
図1の変形例では、これに対して、第1の2つの隣接する軸受列3a及び3bのクランプ体5は、互いに一体的に構成されている。構造的な観点から、
図1のクランプ体フリーホイールユニット3は、結果として、単一の転動体列3cと、それに軸方向に隣接して配置される単一のクランプ体列3a、3bとを有している。
【0032】
このように、クランプ体5は、半径方向内側に位置する側に共通の基部50を有し、半径方向外側に位置する側に回転軸Dを中心として延びるスロットによって、互いに局所的に分離されている。
【0033】
外部軸に対して付勢するための環状ばね7が、周方向に延びるこのスロットに配置され、したがって2つの軸受列3a、3bの間に配置されている。周方向に延びるスロットの結果として、最終的には、クランプ体列3a、3bの周方向で前後に配置されたクランプ体5の正確な1列の一部である2つの軸受列3a、3bが形成される。このようにして、スロットによって規定される軸方向の間隔は、クランプ体5の半径方向外側のカバー面の一部分間に予め設定され、それら部分は、それぞれ外部軸に隣接する。同時に、両方の軸受列3a、3bのクランプ体5は、共通の基部50を介して力を内部軸に伝達する。
【0034】
3つの軸受列3a、3b、3cは、保持器35の2つの軸方向前側30、31の間に配置されている。これらの前側30、31の一方(
図1では、左側に示す前側31)に、シールリップを有する環状シール4が射出成形される。このようにして、クランプ体フリーホイールユニット3を装着する際に、軸方向及び/又は半径方向のシールも提供できる。
【0035】
図2の追加の変形例では、クランプ体フリーホイールユニット3は、単一のクランプ体列内に軸受列3a、3bの混在を提供する。ここでは、軸受列3aと3bの間に環状ばね7も設けられている。さらに、クランプ体5及びシリンダローラ6は、クランプ体フリーホイールユニット3の共通の保持器35に保持されている。シール4もまた、この保持器35の前側31に射出成型されている。
【0036】
図1のクランプ体フリーホイールユニットと異なり、
図2のクランプ体フリーホイールユニット3は2列で、軸受列3a、3bが混在して構成され、クランプ体5とシリンダローラ6の両方が、回転軸Dを中心とする周方向Uに設けられている。その結果、各軸受列3a、3bにおいて、クランプローラ5に加えてシリンダローラ6が、保持器35内に配置されている。その結果、保持器35は、各軸受列3a、3bに対して、クランプ体5用の保持器受け部材355だけでなく、シリンダローラ6用の保持器受け部材356も形成している。
図2の変形例では、正確に1つのシリンダローラ6が、この場合、各軸受列3a、3bにおいて複数(この場合、3つ)のクランプ体5に繰り返し追従している。
【0037】
図1の変形例と
図2の変形例の両方において、クランプ体5が2つの軸受列3a、3bを内部で橋渡しする一方、外部ではそれらが隙間によって分離され、その中に環状ばね7が挿入されるように規定されてもよい。
【0038】
図1及び
図2のクランプ体フリーホイールユニット3は、例えば、
図3による電動自転車1の電動駆動装置Aで使用するために設けられている。この電動駆動装置Aは、駆動側電子制御ユニットSEと、例えば電動自転車のハンドルバーに配置された操作ユニット2とによって制御される方法で、電動自転車1の電動支持を可能にする。この例では、前輪11及び後輪12が、電動自転車1のフレーム10に(前部領域ではそれに関節結合されたフォークに)回転可能に支持されている。後輪12は、例えば、チェーン又はベルト13の形態の力伝達部材を介し、電動駆動装置Aによって駆動できる。
【0039】
駆動トルクは、駆動装置Aの少なくとも1つの電気モータによって(典型的には、駆動装置Aの歯車機構と連動して)、チェーン又はベルト13に接続された出力軸に向けて伝達される。特に、電動自転車1のボトムブラケット軸であり得る出力軸は、この例では、クランプ体フリーホイールユニット3の内部軸又は外部軸を形成し、クランプ体フリーホイールユニット3を介して電動駆動装置Aの駆動軸に連結される。この例では、クランプ体フリーホイールユニット3は、非作動時の電動駆動装置Aを、筋力による作動の結果として、出力軸で生成されるトルクに対抗して作用させず、その一方で、モータで生成されたトルクを後輪12に伝達させることができる。この場合、対応するクランプ体のフリーホイール動作を統合するための頑丈でコンパクトな構造タイプが、(
図1の変形例のように)クランプ体5の軸方向の横、又は(
図2の変形例のように)共通の保持器35内にあるクランプ体5の間にシリンダローラ6を配置することによって可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 電動自転車
10 フレーム
11 前輪
12 後輪
13 チェーン/ベルト(力伝達部材)
2 操作ユニット
3 クランプ体フリーホイールユニット
30、31 前側
35 保持器
350 ウェブ
355 保持器受け部材
356 保持器受け部材
3a、3b、3c 軸受列
4 シール
5 クランプ体
50 基部
6 シリンダローラ(転動体)
7 環状ばね
A 駆動装置
D 回転軸
O ベアリング開口部
SE 電子制御ユニット
U 周方向
X 軸方向
【国際調査報告】