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特表2023-505321ダイナミックな足底アーチサポートを実現するソールを有する靴
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】ダイナミックな足底アーチサポートを実現するソールを有する靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20230201BHJP
   A43B 7/142 20220101ALI20230201BHJP
   A43B 13/42 20060101ALI20230201BHJP
   A43B 13/12 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
A43B13/14 B
A43B7/142
A43B13/42 101
A43B13/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534379
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 NO2020050279
(87)【国際公開番号】W WO2021112683
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】20191442
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522224519
【氏名又は名称】ゲイトライン エーエス
【氏名又は名称原語表記】GAITLINE AS
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル,ホーヴァル
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA02
4F050BA05
4F050BA08
4F050BA56
4F050BF09
4F050HA53
4F050HA56
4F050HA60
4F050JA09
4F050JA27
(57)【要約】
本発明は、ダイナミックな足底アーチサポートを実現するソールを有する靴(1)を提供する。該靴は、ゴム製アウトソール(9)と、アッパー(10)と、ミッドソール(2)と、を備え、ミッドソールは、硬質弾性材料(4)と、軟質弾性材料(5)と、を備える。硬質弾性材料は、軟質弾性材料の1.3倍~3倍の範囲の弾性硬度を有する。硬質弾性材料は、ミッドソールの周辺部の内側に帯(3)のように配置される。軟質弾性材料(5)は、硬質弾性材料の帯の内側のミッドソール内に配置される。該靴は、内側から外側の方向において、軟質弾性材料の下方に配置された支持構造体(8)をさらに備える。支持構造体は、靴のサイズに合う足をもつ一般的なユーザの舟状骨の中心の垂直方向下方から4cm前方に位置する。支持構造体は、硬質弾性材料よりも高い弾性硬度を有し、靴を水平な面の上に立てた状態で、内側が外側よりも縦方向寸法が大きくなっている。これにより、足底アーチの外側よりも足底アーチの内側の下方でサポート力を増加させることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイナミックな足底アーチサポートを実現するソールを有する靴(1)であって、
ゴム製アウトソール(9)と、アッパー(10)と、ミッドソール(2)とを備え、
前記ミッドソールは、
・ 硬質弾性材料(4)と、
・ 軟質弾性材料(5)と、
を備え、
前記硬質弾性材料は、前記軟質弾性材料の1.3倍~3倍の範囲の弾性硬度を有し、
前記硬質弾性材料は、前記ミッドソールの周辺部の内側に帯(3)のように配置され、
前記帯は、好ましくは前記ミッドソールの側部および踵に沿った前記周辺部から内側に向けて、前記ミッドソールの厚さの0.1倍~1倍の範囲で延在し、
前記帯は、好ましくは前記ミッドソールの踵部において、内側(M)が外側(L)よりも広く、
前記軟質弾性材料(5)は、前記硬質弾性材料の帯の内側の前記ミッドソール内に配置され、
前記内側から前記外側の方向において、前記軟質弾性材料の下方に配置された支持構造体(8)をさらに備え、前記支持構造体は、前記靴のサイズに合う足をもつ一般的なユーザの舟状骨副骨の中心の垂直方向下方から4cm前方に位置し、
前記支持構造体は、前記硬質弾性材料よりも高い弾性硬度を有し、
前記靴を水平面上に立てた状態で、前記内側が前記外側よりも縦方向寸法が大きくなっており、
これにより、前記足底アーチの外側よりも前記足底アーチの内側の下方でサポート力を増加させることができる、
靴。
【請求項2】
前記支持構造体(8)は、前記ゴム製アウトソール(9)内に配置される、
請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記支持構造体(8)は、前記ゴム製アウトソール内、または前記ゴム製アウトソールと前記ミッドソールとの間、または前記ミッドソール内に配置され、さらなる支持構造体が、前記ミッドソール内に配置される、
請求項1に記載の靴。
【請求項4】
前記さらなる支持構造体は、シャンク(6)を備え、前記シャンクは、前記ミッドソールの踵から前足部において、前記軟質弾性材料に埋め込まれている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項5】
前記シャンク(6)は、ラスト長の60%~95%にわたって延在し、ラスト幅の60%~95%にわたって延在し、
前記シャンクは、前記踵からユーザの舟状骨の前方の位置までの中間部分おいて、後ろから見た右足のミッドソールの場合は時計回りに捻じられており、
前記捻じれの角度α2は、水平線から1°~10°の範囲であり、
前記シャンクは、好ましくはポリアミドから形成され、リブのない前記シャンクの厚さは、好ましくは0.5mm~3mmである、
請求項4に記載の靴。
【請求項6】
前記硬質弾性材料として、ショアA硬度が40~80の範囲のポリウレタン(PU)と、前記軟質弾性材料として、ショアA硬度が20~60の範囲のポリウレタン(PU)と、を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の靴。
【請求項7】
前記ミッドソールの上面の少なくとも一部が傾斜しており、
前記ミッドソールは、前記踵および前記中間部分からユーザの舟状骨の前方の位置において、前記内側が前記外側よりも高い位置にあり、前記傾斜の角度α1は、水平線から1°~7°の範囲である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の靴。
【請求項8】
前記α2≧前記α1である、
請求項5または7に記載の靴。
【請求項9】
前記ミッドソールの中足部領域における前記支持構造体の上方の前記軟質弾性材料の厚さは、前記ミッドソールの踵領域における前記支持構造体の上方の前記軟質弾性材料の厚さよりも薄い、
請求項1~8のいずれか1項に記載の靴。
【請求項10】
前記靴は、糖尿病患者にとって実用性が高く、任意の組み合わせで、以下のような特徴:
・ 前記靴の内側から外側の方向において、前記靴の横方向寸法を2%、5%、10%または15%以上増加させたものであること、
・ 前記靴のソールとアッパーとの間の縦方向寸法を2%、5%、10%または15%以上増加させたものであること、
・ 好ましくは、前記靴のサイズに合う足をもつユーザの第1趾(母趾)の母趾球の下方の領域において、また前記ユーザの第1趾の母趾球の中心点の下方において、および前記中心点の周囲で少なくとも0.5cmの領域において、周囲の領域よりも前記ソールの弾性硬度を減少させることで、および/または高度または高さまたは厚さを減少させることで、前記ユーザの第1趾の母趾球の下方の組織への接触圧力を減少させる構造的改良を含むこと、および
・ 前記靴のサイズに合う足をもつ前記ユーザの踵の骨の下方の領域において、前記周囲の領域よりも前記ソールの弾性硬度を減少させることで、および/または高度または高さまたは厚さを減少させることで、前記ユーザの踵の骨の中心点の下方、および前記中心点の周囲で少なくとも1cmの領域において、前記踵の骨の下方の組織に対する接触圧力を減少させる構造的改良を含むこと、
のうちの1つまたは複数を有する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の靴。
【請求項11】
少なくとも前記ソールの踵部は、歩行用の靴のものよりも厚く、
前記靴は、ランニング用の靴である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関する。より詳細には、本発明は、ダイナミックで快適な足底アーチサポート実現するソールを有する靴を提供する。
【背景技術】
【0002】
数千年もの間、様々な種類の靴が使われてきた。硬い平らな地面を歩くことが多い現代社会では、足に関する様々な問題が蔓延している。良い靴は、それらの問題の多くを軽減することができる。健康な足、および下敷きから骨、関節、筋肉および結合組織へと力を健康的に導くための従来型の歩行用の靴は、通常、硬いソールを有する。ソールの厚さの50%超が硬い非弾性材料から作製されていることが多い。一般的な歩行関連の生体力学的問題を軽減するための、おそらく最先端の設計である別の靴の設計が、欧州特許第2747592B1号明細書に記載および図示されている。米国特許出願第2018/0199665A1号には、強化された快適性、柔軟性およびパフォーマンスの特徴を実現するための複数の層状構造を備える軽量ソール構造を含む履き物(フットウェア)が記載および図示されている。
【0003】
国際公開第2009/010078A1号には、解剖学的足部支持ベッドを有する成形されたソールが記載および図示されている。成形されたソールは、従来のソールの場合よりも効果が高い内側長手方向部分に沿った長手方向アーチサポートを含む。この効果は、舟状骨(舟状骨副骨)の下方で発揮され、足のより良好な解剖学的支持がもたらされる。
【0004】
舟状骨は、足の長手方向のアーチの内側上部または内側に位置する舟形の骨であり、距骨と3つの楔状骨に隣接し、内側は立方骨に位置する。舟状骨の丸みを帯びた舟形部は、距骨の側にある。この関節の丸みを帯びた形状によって、舟状骨は、距骨と足の長手方向軸に関連して、内側にも下側にも自由に回転することができる。舟状骨は、人間の足の長手方向アーチを構成する上で最も重要な骨と考えられている。足跡の踵から、または足跡に合ったサイズのラストに沿って測定すると、舟状骨は、足底アーチの内側に位置し、足跡またはラストにわたって長さの約30%~50%の範囲、より具体的には約35%~45%の範囲で、中心は約38%~40%の範囲で延在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
数多くの靴の設計およびインソールの設計があるにもかかわらず、ダイナミックで快適な足底アーチサポートを実現する靴の設計の代替案または改良に対する需要が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ダイナミックな足底アーチサポートを実現するソールを有する靴を提供する。該靴は、ゴム製アウトソールと、アッパーと、を備える。ゴム製アウトソールは、代替的にアンダーソールまたは底ゴムとも呼ばれる。該靴は、ミッドソールをさらに備える。ミッドソールは、
・ 硬質弾性材料と、
・ 軟質弾性材料と、
を備える。ここで、硬質弾性材料は、軟質弾性材料の1.3倍~3倍の範囲、好ましくは1.5倍~2.5倍の範囲の弾性硬度を有する。
【0007】
該靴は、硬質弾性材料がミッドソールの周辺部の内側に帯のように配置される点において特徴的である。好ましくは、帯は、ミッドソールの側部および踵に沿った周辺部から内側に向けて、ミッドソールの厚さの0.1倍~1倍の範囲で延在する。好ましくは、帯は、ミッドソールの踵部において、内側が外側よりも広くなっている。好ましくは、帯は、ミッドソールの踵部において、内側が外側よりも1.5倍~4倍、1.5倍~3倍、2倍~3倍、または2.5倍~3倍広くなっている。
【0008】
軟質弾性材料は、硬質弾性材料の帯の内側のミッドソール内に配置される。
【0009】
該靴は、内側から外側の方向において、軟質弾性材料の下方に配置された支持構造体をさらに備える。支持構造体は、靴のサイズに合う足をもつ一般的なユーザの舟状骨副骨の中心の垂直方向下方から4cm、または中心の3cm前方に位置する。好ましくは、支持構造体は、硬質弾性材料よりも高い弾性硬度を有し、および/または靴を水平面上に立てた状態で、内側が外側よりも縦方向寸法が大きくなっており、これにより、足底アーチの外側よりも足底アーチの内側の下方でサポート力を増加させることができる。
【0010】
ソールは、歩行用の標準的な靴のソールよりもユーザの足底アーチ、内側楔状骨および舟状骨副骨の下方でより硬い弾性を有する。ただし、足底アーチの下方で足に対向する軟質弾性材料により、最初の圧縮弾性は軟らかく、快適性を提供することができる。
【0011】
上述したように、先行技術である米国特許出願第2018/0199665A1には、複数の層状構造を備える軽量ソール構造を含む履き物が記載および図示されている。図1および図12A図12Hに示すように、ならびに段落番号[0031]および[0036]に記載されているように、硬質弾性材料160は、軟質弾性材料130の下方に配置され、それらの間には、湾曲プレート150およびストローベル(strobel)部材140が配置される。ストローベル部材140は、アッパーをソール構造に固定して、層130および160の間の直接接触のために閉じられている。米国特許出願第2018/0199665A1号の図12A図12Hに示すように、軟質材料130は、材料160、150および140の層の上にあり、靴を水平な下敷きの上に立てた状態で、硬質材料160よりもはるかに高い位置まで延在する。図12Eに示すように、米国特許出願第2018/0199665A1に記載の靴を着用するユーザの舟状骨副骨の下方には、内側から外側にかけて配置される効果的な支持構造体は存在しない。
【0012】
これに対して、本発明の靴に必須な特徴は、内側から外側の方向において、軟質弾性材料の下方に配置される支持構造体である。支持構造体は、靴のサイズに合う足をもつ一般的なユーザの舟状骨副骨の中心の垂直方向下方から4cm、または中心の3cm前方に位置する。また、硬質弾性材料がミッドソールの周辺部の内側に帯のように配置され、軟質弾性材料が硬質弾性材料の帯の内側のミッドソール内に配置される。軟質弾性材料と硬質弾性材料との間には他の材料が存在しない。これらの材料は、他の材料を介在することなく、直接隣接および直接接触している。本発明の靴において、硬質弾性材料は、靴を水平な下敷きの上に立てた状態で、軟質弾性材料よりも高い位置まで延在する。本発明の靴において、ミッドソールの踵および側部の周辺部のすぐ内側に硬質弾性材料を設けることでサイドサポートが大きくなる。米国特許出願第2018/0199665A1号の靴の場合、ユーザの足の側部側の軟質弾性材料を厚くすることでサイドサポートが大きくなる。
【0013】
弾性硬度は、ASTM D2240に準じて測定される。
【0014】
硬質弾性材料および軟質弾性材料にはタイプAが使用され、その結果、弾性硬度についてショアA値を得ることができる。支持構造体にはタイプAまたはタイプDが使用され、その結果、弾性硬度についてそれぞれショアA値またはショアD値を得ることができる。ショア硬度は、当業者には既知の関係でヤングの弾性係数(ヤング率)に関連している。この関係は非線形であり、図、表、または式を用いて最も容易に求めることができる。ヤングの弾性係数は、一般的な知識として知られているように、曲げに対する抵抗力に関するものである。
【0015】
軟質弾性材料の1.3倍~3倍の範囲の弾性強度を有する硬質弾性材料のこの特徴は、ショアA値に関するものである。例えば、軟質弾性材料のショアA硬度が30の場合、硬質弾性材料のショアA硬度は、39~90の範囲になる。
【0016】
好ましくは、支持構造体が嵌め込み部またはシャンクである場合、支持構造体のショアD硬度は70~90であり、好ましくは約80である。好ましくは、嵌め込み部またはシャンクは、軟質弾性材料に一体化されているか、その中に成形される。支持構造体は、ゴム製アウトソール内に一体化されている場合、またはゴム製アウトソールとミッドソールとの間に配置される場合、好ましくはゴム製アウトソールに一体化されたアーチローラの形態で、好ましくはショアA硬度≧70であり、例えばショアA硬度が約75であり、またはショアD硬度≧30であり、例えばショアD硬度が約35である。
【0017】
好ましくは、靴は、ミッドソール上に配置された嵌め込み(inlay)ソールを備える。しかしながら、靴は、嵌め込みソールを有さなくてもよい。靴は、サンダルであり得る。
【0018】
ミッドソールという用語は、ゴム製アウトソールの上方のソールを意味し、嵌め込みソールまたはインソールがその上にあってもよいし、なくてもよい。
【0019】
靴、ミッドソール、ソール、またはラストの踵から測定すると、支持構造体の中心線は、内側から外側の方向において、踵から前部までの長さの約30%~50%の範囲、より具体的には約35%~45%の範囲、例えば約38%~40%の範囲の距離を有する。
【0020】
一般的に、本発明の靴は、硬質弾性材料および軟質弾性材料の形態で、踵領域において厚さ方向に50%超、60%超、または75%超の相対的に軟らかい弾性材料を有するソールまたはミッドソールを備える。
【0021】
ただし、内側楔状骨および舟状骨副骨の下方のソールの部分において、ソールは、厚さ方向に約50%または50%未満の軟らかい弾性材料を有することができる。これにより、ダイナミックな弾性剛性は、より効果が高くなり、内側足底アーチの下方で漸進的に増加する。また、踵および好ましくは前足部は、中足部よりも軟らかい弾性剛性を有することになる。踵は、さらに下へ沈み込むことができ、前足部は、内側足底アーチの下部よりも低く、および/または軟らかい弾性剛性を有することができる。
【0022】
上述したように、および特許請求の範囲に記載するように、低い弾性硬度を有する材料と、高い弾性硬度を有する材料と、多かれ少なかれ硬い材料とを組み合わせて、低い弾性硬度を有する材料を上にすることで、先進的でありながら快適な舟状骨および足底アーチサポートを得ることができる。
【0023】
好ましくは、支持構造体は、ゴム製アウトソールの一体化した一部として、ゴム製アウトソール内に配置される。多くの好ましい実施形態において、さらなる支持構造体がミッドソール内、好ましくは軟質弾性材料内に配置され、任意選択で硬質弾性材料内にも配置される。好ましくは、支持構造体は、ミッドソールとゴム製アウトソール内に配置される。
【0024】
好ましくは、支持構造体は、靴を水平な面の上に立てた状態で靴の踵から見て、内側から外側に配置された円錐形構造を有し、内側において最大の縦方向寸法を有する。その断面形状は、円形、楕円形、半円形、半楕円形、または多角形とすることができ、好ましくは、任意の実施形態では、内側において最大の縦方向寸法を有し、円錐形または円錐状構造を有する。支持構造体は、ゴム製アウトソール内、ミッドソール内、またはその両方に配置することができる。好ましくは、支持構造体は、靴を水平な面の上に立てた状態で、つま先および踵に向けてそれぞれ実質的に平行な側部を有する実質的に円筒形構造を有し、外側よりも内側でより大きい縦方向断面寸法を有する。
【0025】
靴の好ましい実施形態において、支持構造体は、ソールの足底アーチを覆う嵌め込み部を備える。好ましくは、嵌め込み部は、台形状であり、その最も長い側が内側である。好ましくは、嵌め込み部の内側は、湾曲しており、凸状側が上向きになっている。好ましくは、嵌め込み部は、内側から外側の方向において直線状/平坦であり、後ろから見た右足の靴の場合は時計回りに捻じられている。これにより、足底アーチの自然な形状が嵌め込み部と一致することができる。嵌め込み部は、シャンクの短いバージョンであると言える。好ましくは、嵌め込み部は、後ろから見た右足のミッドソールの場合は時計回りに捻じられており、且つ/または湾曲しており、その上面の角度α2は、水平線から1°~10°の範囲、より好ましくは2°~10°の範囲、または3°~7°の範囲である。好ましくは、嵌め込み部は、下側に沿った長手方向リブを備える。リブは、内側が外側よりも高い位置にある。最大伸長に、リブは、嵌め込み部の下側から、リブのない嵌め込み部の厚さに少なくとも等しい距離だけ外向きに延在する。好ましくは、嵌め込み部は、ポリマー材料、好ましくはポリアミド、好ましくはPA6またはPA66から形成される。好ましくは、リブのない嵌め込み部の厚さは、0.5mm~5mm、より好ましくは1mm~4mm、または2mm~3mmである。PEまたはPETなどの他のポリマー、炭素繊維、炭素複合材、または金属を使用することもできる。ただし、寸法は、サイズ39の靴に3mm厚のPA6の嵌め込み部と同様の曲げ剛性をもたせるように適合させる必要がある。
【0026】
好ましくは、靴は、シャンクを備える。好ましくは、シャンクは、中間ソールの踵から前足部においてミッドソールに、好ましくは軟質弾性材料に埋め込まれる。代替的に、シャンクは、軟質弾性材料の層の間に配置される。好ましくは、シャンクは、ラスト長の60%~95%にわたって延在し、ラスト幅の60%~95%にわたって延在する。
【0027】
好ましくは、シャンクは、踵からユーザの舟状骨の前方の位置までの中間部分おいて、後ろから見た右足のミッドソールの場合は時計回りに捻じられている。好ましくは、その捻じれの角度α2は、水平線から1°~10°の範囲、より好ましくは2°~10°の範囲、または3°~7°の範囲である。好ましくは、シャンクは、シャンクの下側に沿った長手方向リブを備える。リブは、踵および中間部分からユーザの舟状骨の前方の位置まで延在する。好ましくは、リブは、存在する場合、シャンクの外側よりもシャンクの内側が高い位置にある。好ましくは、最大伸長時に、リブは、シャンクの下側から、リブのないシャンクの厚さに少なくとも等しい距離だけ外向きに延在する。好ましくは、シャンクは、ポリマー材料、好ましくはポリアミド、好ましくはPA6またはPA66から形成される。好ましくは、リブのないシャンクの厚さは、0.5mm~3mmである。PEまたはPETなど、好ましくはポリアミドと同様の曲げ剛性を有する他のポリマー、炭素繊維、炭素複合材、または金属を使用することもできる。好ましくは、シャンクのショアD硬度は、70~90であり、好ましくは約80である。ただし、寸法は、内側から外側の方向において中足部領域におけるシャンクの中間点で測定して、サイズ39の靴に3mm厚のPA6のシャンクと同様の曲げ剛性をもたせるように適合させる必要がある。好ましくは、寸法は、比例的に調整され、例えば、サイズ39の靴の3分の2の寸法を有する靴は、好ましくは、2mm厚のPA6のシャンクを有する。代替的に、または追加的に、弾性曲げ剛性を、単独で、または厚さ/寸法/リブ、またはリブなし、および/またはスロットの調整と組み合わせて調整することができる。これにより、上述したようにPA6またはPA66のシャンクと同様の曲げ剛性を有するシャンクを提供することができる。シャンクの上方および下方の中足部における軟質弾性材料の厚さは、シャンクの厚さの少なくとも1倍である。これにより、アーチローラの上方でシャンクを適切に曲げることができる。軟質弾性材料に埋め込まれた、慎重に適合された曲げ剛性を有するこのようなシャンクは、中足部の下方にサポートを提供するアーチローラと組み合わされ、外側よりも内側の下方のサポートを増加させ、本発明の靴の最良の実施形態である。
【0028】
好ましくは、ミッドソールは、硬質弾性材料として、ショアA硬度が40~80の範囲、より好ましくはショアA硬度が約60のポリウレタン(PU)と、軟質弾性材料として、ショアA硬度が20~60の範囲、より好ましくはショアA硬度が約30のポリウレタン(PU)と、を含む。
【0029】
好ましくは、ミッドソールの上面の少なくとも一部が傾斜している。ミッドソールは、踵および中間部分からユーザの舟状骨の前方の位置において、内側が外側よりも高い位置にある。好ましくは、内側から外側の方向における傾斜の角度α1は、水平線から1°~7°の範囲、より好ましくは3°~5°の範囲である。好ましくは、上面は、前足部領域において、実質的に水平である。
【0030】
嵌め込み部またはシャンクの回転角α2、およびミッドソールの上面の傾斜角α1について、好ましくはα2≧α1であり、より好ましくはα2>α1である。
【0031】
好ましくは、ミッドソールの中足部領域における支持構造/シャンクの上方の軟質弾性材料の厚さは、ミッドソールの踵領域における支持構造体の上方の軟質弾性材料の厚さよりも薄い。これにより、ユーザの足による最初の圧縮時には軟らかい弾性が提供されるが、さらなる圧縮時には、靴の踵領域よりも中足部領域において漸進的な硬い弾性サポートが提供される。ここで、ミッドソールの踵領域よりも中足部領域においてより少ない圧縮から硬い弾性が始まり、これは、外側よりも内側でより発揮される。
【0032】
好ましくは、硬質弾性材料は、軟質弾性材料の周りに横方向に帯のように配置されるだけでなく、軟質弾性材料の下方の層にも配置される。これにより、硬質弾性材料は、ソール形状の「カップ」として好ましくは配置され、そのカップに、軟質弾性材料および好ましくは嵌め込み部、および好ましくはシャンクが、例えば成形によって配置される。
【0033】
この靴の構造は、快適性とダイナミックなサポートとの組み合わせを提供するが、特定の目的のために調整可能である。靴、特にそのミッドソールがどのように設計され、どのように構築される必要があるか、またその理由は、以下のさらなる説明から明らかになるであろう。
【0034】
靴の快適性を保ちながらその特定の効果を発揮するように靴を設計および構築することに関する精密さが、この靴がダイナミックな足底アーチサポートを有すると記載される理由の1つである。より詳細には、ソールを最初に圧縮するときの弾性は、軟質弾性材料の弾性によって導かれて軟らかい。さらに圧縮すると、内側楔状骨および舟状骨副骨の下方のソール領域は、プログレッシブスプリングのように相対的に硬くなる。その結果、内側楔状骨および舟状骨副骨の下方の足底アーチ領域よりも、踵領域および前足部領域がさらに沈み込む。この効果は、ソールの圧縮量に応じて変化する。これにより、サポートがダイナミックであると言える。
【0035】
踵骨または舟状骨などの骨格の下方とは、特に明示されない限り、靴のサイズに合う足をもつ一般的なユーザの特定の骨の中心よりも垂直方向下方を意味する。
【0036】
当業者には明らかであるように、左足の靴の捻じれに関する定義は逆になる。
【0037】
また、本発明の靴は、糖尿病患者用の靴、小児用の靴、およびランニング用の靴など、特殊な実施形態も含む。
【0038】
糖尿病患者にとって特に関連性があるのは、本発明の靴が、そのいくつかの特徴によって、足へのダイナミックな体重配分を強化することができることである。特徴の1つとして、より大きい軟質弾性材料を設けるのではなく、ミッドソールの側部および踵の周辺部の内側に帯のように配置された硬質弾性材料の効果が挙げられる。さらなる特徴として、外側に捻じられた踵側ソールおよびシャンク/インサートと、中足部アーチサポートとによって、歩行中のユーザの足の重心を、足に沿った骨格の質量中心または体積中心の下方の垂直線に沿うように導くために、ユーザの結果的な力を固有に導くことが挙げられる。また、特徴の1つとして、本明細書の他の箇所で明示するような固有のダイナミックな弾性が挙げられる。さらなる特徴として、平坦な下敷きに対して長手方向の凸状ソールと横方向の凹状または平坦なソールとが組み合わされていることが挙げられる。その結果、部分的に不安定な靴が得られ、極端な部分圧が集中することを回避することができ、脳が感覚系から強化された連続信号を受け取ることができると想定される。血液循環も向上することが想定される。具体的な例として、感覚系(神経)が足の組織における負荷および応力の小さな偏差を検知し、足および体の位置を調整するための信号を提供して、非常に迅速且つ正確で、しばしば無意識な、姿勢の振り子(postural pendulum)とも呼ばれる調整によって、バランスのとれた位置に留まることができるため、バランスよく立っているときに、重心も足も静止していない。その結果、足に対する圧力変動がダイナミックに行われて、中足部の軟部組織を含む循環に刺激を与えるプロセスが実現される。このプロセスは、足を支える大量の軟らかい材料を設けるものではなく、靴の構造設計によって強化されるものである。重大な深部組織の損傷がない足をもつ、初期段階の糖尿病患者にとって、添付の特許請求の範囲の独立請求項に定義され、アーチローラおよびシャンクを含む基本的な靴の実施形態は、最適な靴である可能性がある。
【0039】
足の深部組織に重大な炎症および/または損傷をもつ糖尿病患者のために、該靴は、好ましくは、任意の組み合わせで、以下のような特徴:
・ 靴の内側から外側の方向において、靴の横方向寸法を2%、3%、5%、8%、10%または15%以上増加させたものであること、
・ 靴のソールとアッパーとの間の縦方向寸法を2%、3%、5%、8%、10%または15%以上増加させたものであること、
・ 好ましくは、靴のサイズに合う足をもつユーザの第1趾(母趾)の母趾球の下方の領域において、またユーザの第1趾の母趾球の中心点または患部組織の中心点の下方において、および中心点の周囲で少なくとも0.5cm、例えば0.5cm、1cm、1.5cm、2cm、または3cmの領域において、および任意選択で同様にさらなる中足骨頭/母趾球の下方において、周囲の領域よりもソールの弾性硬度を減少させることで、および/または高度または高さまたは厚さを減少させることで、および/または中足骨の下方にペロッテを追加することで、ユーザの第1趾の母趾球の下方の組織への接触圧力を減少させる構造的改良を含むことであって、ここで、負荷の一部を前足部の他の部分に移すことで、ユーザの第1趾球の下方の接触圧力が減少し、および
・ 靴のサイズに合う足をもつユーザの踵の骨の下方の領域において、例えば踵骨の内側領域(踵骨外反の場合)の下方において、周囲の領域よりもソールの弾性硬度を減少させることで、および/または高度または高さまたは厚さを減少させることで、ユーザの踵の骨の全足底領域の下方での最適で広い圧力分布に対して、踵の骨の下方の組織に対する接触圧力を減少させる構造的改良を含むこと、
のうちの1つまたは複数を有する。
【0040】
好ましい実施形態において、ソールは、ユーザの踵の骨の中心点または患部組織の中心点の下方、およびその中心点の周囲で少なくとも1cm、1.5cm、2cm、2.5cm、3cm、または4cmの範囲で調整される。踵骨の下方の圧力の減少に加えて、中足部領域の動的負荷は、踵骨の下方の弾性硬度のさらなる減少に寄与する。
【0041】
増加した寸法の特徴は、炎症の様々な程度に関する調整を含む。例えば、寸法は、欧州の靴のサイズ規格のサイズ39(ISO/TS19407:2015、EUまたはEUR)に対して調整される。他のサイズまたは規格については、寸法を比例的に調整することができる。
【0042】
接触圧力を減少させるための構造的改良は、踵骨および第1中足骨頭の下方など、糖尿病患者を悩ます典型的な損傷部位の接触圧力を減少させるために靴を調整するためのものである。第1趾の母趾球の下方、および/または踵の骨の下方の特定領域において軟質弾性材料を使用することで、および/または第1趾の母趾球および/または踵の骨の下方に開口が設けられるようにシャンクを改良して、ミッドソールの高さを少なくとも0.5mm、1mm、または2mm減少させること、および/または弾性剛性をショアA単位で少なくとも5、10、または15減少させることが助けになるであろう。同様に、ユーザの足において影響を受けた深部組織領域の中心点の下方でのソールの調整も、本発明の靴のさらなる実施形態に含まれる。
【0043】
靴の調整による物理的効果は、原理的には論理的推論、および/または計算/シミュレーション、および/または測定によって知られているか予測可能であるが、糖尿病患者に対する臨床効果は、包括的科学試験が行われるまで検証することができない。この靴が多くの人に役立つとしても、糖尿病によって直接的または間接的に引き起こされる深部組織の損傷によって深刻な影響を受けている人には、個別のフォローアップと対応を常に行うべきである。
【0044】
例えば欧州のサイズ20および21などの非常に小さいサイズの小児用の靴は、添付の特許請求の範囲の請求項1に記載の固有の特徴を必ずしもすべて含む必要がない。しかしながら、アーチローラは必ず存在し、ソールの少なくとも踵および中足部領域において、横方向よりも内側が適度に厚いか高いソールである必要がある。
【0045】
本発明の靴のさらなる実施形態は、ランニング用の靴を含む。ランニング用の靴は、好ましくはミッドソールに標準的なPUよりも軽い材料などを使用することで、好ましくはより軽量である。例えば、軽量なPUグレードの弾性剛性を適度な重量増加に伴って高めることができるため、ナノ炭素繊維などの炭素繊維で強化されたPUは実用性が高い。他の例として、ポリエーテルおよびポリアミドなどのブロック共重合体が挙げられる。ランニング用の靴の場合、ミッドソールは、歩行用の標準的な靴よりも好ましくは5%~50%厚く、より好ましくは10%~30%厚い。好ましくは、ソールの厚さは、主に、軟質弾性材料および硬質弾性材料の厚さの増加によるものである。また、好ましくは、ランニング用の靴のソールの踵領域は、歩行用の標準的な靴と比較して、ソールの中間領域および前足部領域よりも相対的に高い位置にあり、好ましくは5%~30%高い。ここで、ソールは、少なくとも踵領域において高い位置にある。好ましくは、ソールの踵領域および前足部領域の両方が、歩行用の標準的な靴のものよりも厚く、また、好ましくは「前足部ドロップ」、すなわちソールの踵の厚さと前足部の厚さとの差が増加する。これは、ソールの踵領域および前足部領域の両方、および好ましくは中足部領域の厚さが増加し、好ましくはソールの踵領域における厚さの増加がより大きいことを意味する。例えば、本発明の典型的なランニング用の靴の場合、ソールの踵部は、ソールの前足部分よりも厚さが増加しており、例えば、サイズ39の靴について、踵の骨の中心の下方で測定された厚さはと、靴のサイズに合う足をもつ一般的なユーザの第1趾の母趾球の中心の下方で測定された厚さとの差は、7mmまたは9mmから、10mmまたは11mmまで増加していていもよい。このような調整は、添付の特許請求の範囲に記載の独立請求項の保護範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の靴のミッドソールの踵領域を通る内側から外側の断面を示す図である。
図2】シャンクの形態を有する、本発明の靴のミッドソールのインサートを示す図である。
図3】本発明の靴の中足部領域を通る内側から外側の断面を示す図である。
図4】本発明の靴の前足部領域を通る内側から外側の断面を示す図である。
図5】本発明の靴を示す図である。
図6】本発明の靴のミッドソールの外側における長手方向断面を示す図である。
図7】本発明の靴のミッドソールの内側における長手方向断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の靴において必須の支持構造体は、好ましくはアーチローラである。好ましくは、さらなる支持構造体は、ミッドソール内の軟質弾性材料に埋め込まれたシャンクである。シャンクは、足底アーチの全体を覆うように、少なくとも踵から前方向に延在する。好ましくは、アーチローラは、ゴム製アウトソールに一体化されるように配置される。代替的に、アーチローラは、ゴム製アウトソールとミッドソールとの間に配置され、この場合、必ずシャンクがその上方にある。
【0048】
より詳細には、本発明の靴1は、好ましくは、アーチローラ8と、シャンク6と、を備える。アーチローラは、ゴム製アウトソールに一体化され、またはゴム製アウトソールとシャンクとの間に配置される。アーチローラは、内側から外側の方向において、靴のサイズに合う足をもつ一般的なユーザの舟状骨の直下またはわずかに前方に配置される。ここで、直下またはわずかに前方とは、垂直方向下方に突出した、舟状骨の中心から4cm、0~3cm、1cm~3cm、または約2cm前方を意味する。アーチローラの位置と向きに関する別の表現として、アーチローラは、内側楔状骨の中心の下方にあり、ソールを横切って内側から外側の方向に延在し、サイズ39の靴の場合、舟状骨副骨の中心から約2.3cm前方に、垂直方向下方に突出する。
【0049】
図1を参照すると、後ろから見た、本発明の右足の靴1のゴム製アウトソール9を有するミッドソール2の踵領域を通る内側から外側の断面が示されている。硬質弾性材料4の帯3は、ミッドソールの周辺部の内側に延在する。図に明確に示すように、帯は、内側Mが外側Lよりも広い。また、硬質弾性材料は、ミッドソールの下部に配置されており、下部は、ゴム製アウトソールに取り付けられている。ミッドソールでは、軟質弾性材料5が帯の内側および下部を覆って充填される。断面図では、軟質弾性材料内のシャンク6が明確に示されている。
【0050】
図に明確に示すように、ゴム製アウトソール9を水平面上に配置した場合、シャンクが時計回りに捻じられ、ミッドソールの踵部の上面、ならびにリムおよび縁部を除くその実質的に均等または平坦な部分が時計回りに傾斜する。図に示す実施形態において、断面として選択された位置では、インサートの内側の上方の軟質弾性材料の厚さは3mmであり、インサートの外側の上方の軟質弾性材料の厚さは約5mm~6mmである。断面の位置は、典型的なユーザの立方骨の中心から垂直方向下方である。シャンクの中心または中心線で測定すると、シャンクの上方の軟質弾性材料の厚さは4.5mmである。図に明確に示すように、ミッドソールの下側に平行な水平線に対して、ミッドソールの上面が時計回りに傾斜しているよりも、シャンクが時計回りに捻じられている程度の方が大きい。シャンクは、外側よりも内側が厚く、それぞれ1.5mmに対して約3mmである。シャンクの下側において、リブ7が下向きに延在する。好ましくは、シャンクは、少なくともミッドソールの踵領域において、軟質弾性材料の中心について、軟質弾性材料の内側に対して非対称に配置される。
【0051】
ここに記載する具体的な寸法、角度および位置は、サイズ39の靴の場合の典型的な一例である。他の靴のサイズについては、寸法は直線的に調整される。その他の実施形態、または他の足の問題の場合、インサートの捻じれおよびミッドソールの上面の傾斜、ならびに材料の寸法および量は異なっている場合があり、例えば反対方向になっていたり、より大きくなっていたり、より小さくなっている。
【0052】
さらに図2を参照すると、本発明の靴のミッドソールに埋め込まれるシャンク6が示されている。シャンクは、踵領域および中足部領域において時計回りに捻じられており、靴の前足部領域において水平である。これは、図2の破線1-1、3-3および4-4にそれぞれ沿った図1図3および図4の断面図でより明確に示されている。リブ7は、断面図でのみ見ることができる。好ましくは、シャンクの形態を有する支持構造体は、成形用のアンカーポイントとしての孔(図示せず)と、曲げ剛性の減少およびアンカーのための、少なくとも前足部領域における長手方向のスロット11と、を有する。
【0053】
図3は、本発明の靴の中足部領域を通る内側から外側の断面を示している。シャンクおよびミッドソールの上面は、後ろから見た右足の靴の場合は時計回りに捻じられている。ゴム製アウトソール9には、アーチローラ8が一体化されている。内側Mにおいて、アーチローラは、ゴム製アウトソールの残りの部分よりも先に地面に接することになる。好ましくは、ゴム製アウトソールおよび一体化されたアーチローラの硬度は、ショアA硬度≧70であり、例えば約75であり、またはショアD硬度≧30であり、例えば約35である。シャンク6の上方の軟質弾性材料5の厚さは、リブのないシャンクの厚さの0.6倍~2倍、または0.8倍~1.5倍、例えば約1倍である。シャンク6の下方の軟質弾性材料5の厚さは、リブのないシャンクの厚さの0.6倍~2倍、または0.8倍~1.8倍、例えば約1.3倍である。シャンクの内側部分は、アーチローラの内側部分の垂直方向上方にある。軟質弾性材料および硬質弾性材料は、ソールの厚さの約30%~60%、または約50%を構成する。したがって、相対的により剛性の高い材料のゴム製アウトソール/アーチローラおよびシャンクによって厚さの大部分が形成されるので、中足部領域におけるミッドソールの弾性剛性は、特に内側において、ソールの踵領域および前足部領域よりも相対的に高くなる。
【0054】
図4は、本発明の靴の前足部領域を通る内側から外側の断面を示している。シャンク6の上方の軟質弾性材料5の厚さは、リブのないシャンクの厚さの0.6倍~2倍、または0.7倍~1倍、例えば約0.8倍である。シャンク6の下方の軟質弾性材料5の厚さは、リブのないシャンクの厚さの0.2倍~1.5倍、または0.3倍~1.2倍、例えば約0.5倍である。前足部におけるソールは、ソールの中足部分よりも薄く、より軟らかく、より低い位置に上面を有する。
【0055】
図5は、ゴム製アウトソール9と、アッパー10と、インソール(図示せず)と、を有する本発明の完全な靴1の一実施形態を、外側から見た図である。靴が平坦な硬い下敷き上に無負荷で立っている状態において、アーチローラ8は、図に示すように外側では下敷きに到達しないが、内側では到達する。当業者であれば、これが図3に示されていることを認識することができる。図6および図7は、この特徴を明確に示している。典型的には、靴のサイズに応じて、アーチローラの内側部分の2cm~6cm、または好ましくは3cm~5cmが、歩行時に平坦な下敷きに接触する。したがって、本発明の靴の一部の実施形態において、アーチローラは、ユーザの足底アーチの下方において、ソールの内側から外側までの全長にわたって延在していない。
【0056】
好ましくは、本発明の靴1は、アーチローラ8と、シャンク6と、を備える。好ましくは、アーチローラは、ゴム製アウトソールに一体化されるか、ゴム製アウトソールと、ミッドソールまたはシャンクとの間に配置される。アーチローラは、内側から外側の方向において、靴のサイズに合う足をもつ一般的なユーザの舟状骨の直下またはわずかに前方に配置される。ここで、直下またはわずかに前方とは、舟状骨の中心の垂直方向下方から前方4cmまでを意味する。ソールに沿って踵から前部まで測定すると、これは、踵から前方までの長さの30%~50%、または35%~45%、より詳細には38%~40%に相当する。
【0057】
アーチローラ8は、靴を水平面上に立てた状態での縦方向の断面寸法に関して円錐形構造を有する。水平方向の断面寸法は、アーチローラの内側から外側までの長さに沿って実質的に同一であるか、減少している。代替的に、垂直方向および/または断面方向のアーチローラの断面寸法は、段階的に変化している。
【0058】
アーチローラは、少なくとも内側において、重厚なゴム製とすることができる。シャンクの内側は、存在する場合、アーチローラの内側の上方に配置される。
【0059】
好ましくは、アーチローラは、ゴム製アウトソールに一体化される。下方または側部から見て、ゴム製アウトソールに一体化されたアーチローラは、長手方向部分においてアーチローラ8を含む図3に示すように、外側よりも内側においてさらに下方まで延在する。図7に示すように、靴のゴム製アウトソールの表面の長手方向の全体的に凸状の湾曲部12は、内側においてアーチローラ8と1mm~5mm交差する。図6に示すように、靴のゴム製アウトソールの表面の長手方向の全体的に凸状の湾曲部12は、外側において全体的な湾曲部12から1mm~5mm減少している。図6および図7は、本明細書に記載の特徴のみを示すために簡略化された図であり、周辺部のやや内側における断面と、側部および内側の周辺部の断面とをそれぞれ示している。
【0060】
靴の長手方向におけるアーチローラの交差寸法は、実質的に同一であるか、内側よりも外側で小さくなっている。シャンクと組み合わされたアーチローラは、ダイナミックで漸進的なサポートをユーザに提供することができる。これにより、回内運動が多いほどサポートが増加し、且つアーチローラがシャンクを「持ち上げ」てアーチローラの上方でシャンクが沈み込むことを実際に抑制し、且つシャンクがアーチローラの周りで曲線を描いて下方向に曲がり、足底腱膜である足底アーチの全長を快適にサポートすることができるようになる。シャンクは、適切な曲げ剛性を有する必要があるが、これは、上述したようにシャンクとソールを選択することで確保することができる。これにより、いわゆる「舟状骨の落ち込み(naviculare drop)」を軽減または防止することができる。また、足底腱膜炎、踵骨骨棘および同様の問題も、ほとんどのユーザにとって軽減または防止される。
【0061】
「舟状骨の落ち込み」とは、生体力学的用語であり、ユーザの体重によって足底アーチが伸びて押し下げられることを意味する。本発明により、過度の舟状骨の落ち込みを軽減または防止することができる。舟状骨副骨の持ち上げまたはリフターは、その効果を説明する別の用語であり、本発明の靴に対する従来型の歩行用の靴における舟状骨副骨の落ち込みに対する舟状骨副骨の持ち上げを意味する。
【0062】
内側において、アーチローラが床と接触する際に、全体的に凸状のアンダーソールの表面の湾曲部より先にアーチローラが床に到達する。アーチローラ8は、より大きい縦方向寸法を有し、靴の外側よりも内側で高くなっており、アンダーソールの表面の全体的に凸状の湾曲部よりも先に平坦な床に到達する。
【0063】
本発明の靴のソールは、ユーザの足による最初の圧縮時において、従来型の歩行用の靴よりも軟らかく、広範囲な減衰を有するスポーツ用の靴の最初の軟らかさに類似した軟らかい弾性を有する。圧縮が大きくなると、特に踵および中足部の内側において、さらには踵領域よりも中足部領域において、弾性が漸進的に硬くなる。そのため、踵骨にかかる重量が増加すると、さらなる圧縮に対する抵抗力が、外側よりも内側でより高くなる。その結果、踵の骨の内側への過剰な回転(生体力学的には「踵骨転位」と定義される)に対して、ダイナミックで漸進的な抵抗力が生じる。このトルクは、後ろから見て右足を時計回りに回転させる。これは、従来型の歩行用の靴またはスポーツ用の靴を使用した場合と比較して、踵骨の垂直運動とアキレス腱の垂直方向のアライメントに影響を及ぼす。これにより、過度の踵骨転位を軽減または防止することができる。同様に、踵の衝撃から中足部のスタンスにステップを進行させる場合、中足部領域、足底アーチの下方、および特にその内側において、徐々に硬くなる弾性で、より早くて(より少ない圧縮で)より硬い弾性によって足底アーチが支えられて、「舟状骨副骨の持ち上げ」が実現される。好ましくは、靴は、アーチローラとシャンクとの組み合わせを含み、これにより、アーチローラは、中足部の内側で最も圧縮が強くなる部分において、下敷きからシャンクに向けて力を強め、シャンクが曲がって足底アーチに沿って力が分散される。このような詳細な設計であれば、実質的にシャンクの曲げは足底アーチの形状に沿うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】