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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】リオシグアトの放出調節医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20230201BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 9/22 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 9/24 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 9/52 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230201BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P11/00
A61P9/12
A61P43/00 111
A61K9/22
A61K9/24
A61K9/48
A61K9/16
A61K9/52
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/38
A61K47/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534406
(86)(22)【出願日】2020-12-05
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2020061558
(87)【国際公開番号】W WO2021111419
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】201921050140
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522224933
【氏名又は名称】ザイダス・ライフサイエンシーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カナン・エサキムトゥ・ムタイヤン
(72)【発明者】
【氏名】チェタン・ラジャセカラ・ムルティ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィマル・トゥルシーダース・カネリア
(72)【発明者】
【氏名】ニカレシュ・ラヴィンドラバイ・パテル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA38
4C076AA40
4C076AA51
4C076AA53
4C076AA67
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC15
4C076DD23
4C076DD29
4C076DD37
4C076DD40
4C076DD41
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE33
4C076FF31
4C086AA01
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZA42
4C086ZA59
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、リオシグアト又はその薬剤として許容される塩の放出調節医薬組成物に関する。特に、本発明の組成物は、安定であり、製剤特性を有し、また24時間にわたって拡張された治療上有効な血漿レベルをもたらす。本発明はまた、そのような組成物を調製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リオシグアト及び1つ又は複数の放出遅延剤を含む放出調節医薬組成物。
【請求項2】
約0.5mg~約7.5mgのリオシグアトを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
放出遅延剤が、水膨潤性ポリマー、水不溶性ポリマー及び非ポリマー物質からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
a.リオシグアト、1つ又は複数の浸透圧原、及び任意選択で1つ又は複数の放出遅延剤を含むコア;並びに
b.1つ又は複数の放出遅延剤を含む半透性コーティング
を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
放出遅延剤が、組成物の15%~95質量%の量で存在する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
浸透圧原が、組成物の2%~55質量%の量で存在する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
半透性コーティング中の放出遅延剤が、水不溶性のポリマーである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
水不溶性ポリマーが、組成物の2%~30質量%の量で存在する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
コアが、リオシグアト、1つ又は複数の放出遅延剤及び1つ又は複数の浸透圧原を含む第1の層;と水膨潤性ポリマーを含む第2の層を含む二層錠剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項10】
水膨潤性ポリマーが、組成物の0.5%~20質量%の量で存在する、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
コアには、リオシグアト、ポリエチレンオキシド及び塩化カリウムが含まれる、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項12】
リオシグアトが、1つ又は複数の放出遅延剤のマトリックスに埋め込まれている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
放出遅延剤が、組成物の10%~70質量%の量で存在する、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
a.リオシグアトを含むコア;
b.コア上の任意選択のバリアコーティング;及び
c.1つ又は複数の放出遅延剤を含む少なくとも1種のコーティング
を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
放出遅延剤が、組成物の1%~30質量%の量で存在する、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
錠剤、カプセル、顆粒剤、ペレット、微小錠剤、微小錠剤及び/又はペレットを充填させたカプセル、或いはサッシェに充填させた顆粒剤の形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
1日1回投与に適している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
1日2回投与に適している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
40℃及び75%相対湿度で少なくとも1カ月間貯蔵した後、組成物中のリオシグアトの効力の少なくとも80%を保持する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
標準的なUSP回転パドル装置において75rpm、37℃で0.1%SLSを加えたpH6.8の0.05Mリン酸カリウム緩衝液900mLを含む試験液にさらした場合、1時間で15%以下、16時間で70%以上のリオシグアトを放出する、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リオシグアトの放出調節医薬組成物又はその薬剤として許容される塩に関する。特に、本発明の組成物は、安定であり、製剤特性を有し、また24時間にわたって拡張された治療上有効な血漿レベルをもたらす。本発明はまた、そのような組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リオシグアト、3,5-ジアミノ-6-(2,3-ジクロロフェニル)-1,2,4-トリアジンは、化学式C20H19FN8O2及び以下の構造式を有する:
【0003】
【化1】
【0004】
リオシグアトは、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)、心肺系の酵素及び一酸化窒素(NO)のための受容体の刺激薬であり、肺高血圧症の治療に有用である。
【0005】
米国特許第7,173,037号は、リオシグアト及びその関連化合物、並びにそれらの薬剤として許容される塩を開示している。
【0006】
リオシグアトは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症及び肺動脈性肺高血圧症の治療のためにTID(1日3回)投与される、0.5mg~2.5mgの範囲の用量の即時放出錠剤形態として、アデムパス(登録商標)の商標で、米国で認可されている。
【0007】
リオシグアトの既存の市販錠剤製剤は、錠剤が胃に到達すると、有効成分の即時放出をもたらす。リオシグアトの絶対生物学的利用能は高く、約94%であり、ピーク血漿濃度は、薬物投与後1.5時間以内に観察される。したがって、即時放出錠剤の投与は、吸収速度が速いため、有害な薬理学的事象の頻度がより高くなり得る。即時放出錠剤剤形の別の欠点は、これらの錠剤で達成される血漿濃度は周期的であり、薬物の投与後にピークが発生し、その後、次の薬物投与前にトラフ値となることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,173,037号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、投与間隔中の薬物の血漿濃度の変動を減らすために、標的期間にわたって信頼性の高いより遅い吸収を有する、リオシグアトを含む放出調節医薬組成物の既存及び継続的な必要性が存在し、それはリオシグアトの使用に関連するいくつかの懸念に対処し得る。また、所望の治療効果を達成するために必要な薬物の量を最小限に抑えることができ、それによって薬物の安全性及び耐容性プロファイルを改善することができる。
【0010】
標的期間にわたって信頼性の高い吸収を有し、同時に製品のバルク製造に望ましい優れた製剤特性を備えている、リオシグアトの放出調節医薬組成物を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一般的な一態様では、リオシグアト及び1つ又は複数の放出遅延剤を含む放出調節医薬組成物が提供される。
【0012】
別の一般的な態様では、1日1回又は1日2回投与に適したリオシグアトの放出調節医薬組成物が提供される。
【0013】
リオシグアトの調節放出は、マトリックス剤形、リザーバー剤形、多粒子剤形、粘膜付着性剤形又は浸透性剤形を用いて達成することができる。
【0014】
別の一般的な態様では、リオシグアトのマトリックスと1つ又は複数の放出遅延剤及び1つ又は複数の薬剤として許容される賦形剤を含む放出調節医薬組成物が提供される。剤形のマトリックスは、リオシグアト放出の期間中に実質的に影響を受けないままである。剤形のマトリックスは、拡散及び/又は浸食によってリオシグアトを放出する。
【0015】
別の一般的な態様では、リオシグアトを含むコア、コア上の任意選択のバリアコーティング、及び1つ又は複数の放出遅延剤を含む少なくとも1種のコーティングを含む放出調節医薬組成物が提供される。
【0016】
別の一般的な態様では、
(a)リオシグアト及び1つ又は複数の放出遅延剤を含む複数の粒子を含む持続放出成分;と
(b)持続放出成分上にコーティングされたリオシグアトを含む即時放出成分
を含む放出調節医薬組成物が提供される。
【0017】
別の一般的な態様では、リオシグアト、1つ又は複数の浸透圧原、及び任意選択で1つ又は複数の放出遅延剤を含むコア、並びに半透性コーティングを含む放出調節医薬組成物が提供される。半透性コーティングは、1つ又は複数の水不溶性ポリマーを含む。剤形は、主に浸透圧によってリオシグアトを送達し得る。
【0018】
別の一般的な態様では、リオシグアト、1つ又は複数の放出遅延剤及び任意選択で1つ又は複数の薬剤として許容される賦形剤を含む安定な放出調節医薬組成物が提供され、この組成物は、40℃及び75%相対湿度で少なくとも1カ月間安定である。
【0019】
放出調節医薬組成物の実施形態には、以下の特徴の1つ又は複数が含まれていてもよい。例えば、薬剤として許容される賦形剤には、1つ又は複数の充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤/滑沢剤/粘着防止剤、浸透圧原(osmogenn)、可塑剤などが含まれていてもよい。
【0020】
別の一般的な態様では、高血圧症を治療する方法が提供され、それは、患者に、治療有効量の、リオシグアト及び1つ又は複数の放出遅延剤を含む放出調節医薬組成物の形態のリオシグアトを、経口投与することを含む。
【0021】
代表的な放出調節医薬組成物には、錠剤、カプセル、顆粒剤、ペレット、微小錠剤、微小錠剤及び/又はペレットを充填させたカプセル、或いはサッシェに充填させた顆粒剤が含まれる。
【0022】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、下記説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、リオシグアトの安定な放出調節医薬組成物を開発することが可能であることを発見しており、それは、1日1回又は1日2回投与に適しており、標的期間にわたって信頼性の高い吸収を有する。本発明による組成物はまた、製品のバルク製造に望ましい優れた製剤特性(流動性、圧縮性、含量均一性など)を備えている。
【0024】
本発明は、肺高血圧症の治療のためのリオシグアトの経口放出調節組成物に関する。リオシグアトの放出調節は、マトリックス剤形、多粒子剤形、リザーバー剤形、粘膜付着性剤形又は浸透性剤形を用いて達成することができる。
【0025】
用語「リオシグアト」には、本明細書で特に指示がない限り、化合物の任意の薬剤として許容される形態及び塩が含まれることを理解されたい。リオシグアトは、結晶又は非晶質形態で存在していてもよい。本発明の医薬組成物は、約0.5mg~約7.5mgのリオシグアトを含む。通常、本発明の放出調節組成物は、約0.5%~10質量%のリオシグアトを含む。
【0026】
本明細書では、用語「約」は、記載された数値にかなり近いこと、例えば、プラス又はマイナス10%又は5%を表す。
【0027】
前述及び説明全体で使用される用語「放出調節医薬組成物」は、剤形からの薬物の長期放出又は即時放出と長期放出の組合せをもたらす成分を含有する剤形を含む。用語「長期放出」は、「持続放出」、「制御放出」又は「遅延放出」として代替的に使用してもよい。
【0028】
前述及び説明全体で使用される用語「成分」は、リオシグアトを含有する粉末、粒子、凝集体、顆粒剤、ペレット、微小錠剤、マイクロカプセル、錠剤、コア及びその上のコート/層又は当業者に公知の任意の固体物理的形態を表す。
【0029】
前述及び説明全体で使用される用語「放出遅延剤」は、医薬組成物からの薬物の放出を遅くする任意の材料又は物質を表す。放出遅延剤は、ポリマー又は非ポリマーであってもよい。様々な送達系では、用語「放出遅延剤」は、様々な専門用語、例えば、浸透圧剤形の「添加溶剤」、粘膜付着性剤形の「粘膜付着性ポリマー」などとして使用してもよい。
【0030】
本発明の剤形は、放出遅延剤に加えて、希釈剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤/滑沢剤/粘着防止剤、浸透圧原、可塑剤などのような1つ又は複数の薬剤として許容される賦形剤も含んでいてもよい。
【0031】
適当な希釈剤の例には、粉糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶性セルロース、粉末セルロース、ラクトース、マンニトール、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、及びソルビトールが含まれるがそれらに限定されない。希釈剤は、組成物の5%~90質量%の量で存在していてもよい。
【0032】
適当な結合剤の例には、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、及びα化デンプンが含まれるが、それらに限定されない。結合剤は、組成物の1%~20質量%の量で存在していてもよい。
【0033】
適当な崩壊剤の例には、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、α化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びデンプングリコール酸ナトリウムが含まれるが、それらに限定されない。崩壊剤は、組成物の0.5%~20質量%の量で存在していてもよい。
【0034】
適当な滑沢剤又は潤滑剤又は粘着防止剤の例には、タルク、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、植物油、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸マグネシウムが含まれるが、それらに限定されない。滑沢剤は、組成物の0.1%~10質量%の量で存在していてもよい。
【0035】
適当な浸透圧原の例には、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、d-マンニトール、尿素、ソルビトール、イノシトール、ラフィノース、スクロース、グルコース、セルロースポリマーなどの親水性ポリマー、及びその混合物が含まれるが、それらに限定されない。浸透圧原は、組成物の10%~20質量%の量で存在していてもよい。
【0036】
適当な可塑剤の例には、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、クエン酸トリエチル、安息香酸ベンジル、脂肪酸のブチル及びグリコールエステル、鉱油、オレイン酸、ステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヒマシ油、トウモロコシ油、ココナッツオイル、及びショウノウ油が含まれるが、それらに限定されない。可塑剤は、組成物の0.01%~20質量%の量で存在していてもよい。
【0037】
剤形に取り込むことができる他の賦形剤には、防腐剤、酸化防止剤、又は薬品工業で一般に使用される任意の他の賦形剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0038】
マトリックス剤形:
一実施形態では、リオシグアトは、浸食性又は非浸食性ポリマーマトリックス中に埋め込まれている。浸食性マトリックスは、ポリマーマトリックスをイオン化させて浸食又は溶解を十分に引き起こすために、酸又は塩基の存在下又は不在下において水性媒体中で浸食性又は膨潤性又は溶解性であるマトリックスを含む。水性媒体と接触させると、浸食性ポリマーマトリックスは、水を吸収し、リオシグアトを閉じ込める水性膨潤ゲル又は「マトリックス」を形成する。水性膨潤マトリックスは、使用環境中で徐々に浸食、膨潤、崩壊、分散又は溶解し、それによって使用環境へのリオシグアトの放出が制御される。
【0039】
水膨潤性、浸食性、又は溶解性マトリックスの調製に使用されるポリマーの例には、天然に存在する多糖類、例えばキチン、キトサン、デキストラン及びプルラン;寒天ガム、アラビアゴム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、トラガカントゴム、カラゲナン、グアールガム、キサンタンガム及びスクレログルカン;デンプン、例えばデキストリン及びマルトデキストリン;親水性コロイド、例えばペクチン;アルギネート、例えばアルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、カリウム又はカルシウム、アルギン酸プロピレングリコール;ゼラチン;コラーゲン;並びにセルロース系材料、例えばメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トリメリット酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、及びエチルヒドロキシエチルセルロースが含まれるが、それらに限定されない。
【0040】
非浸食性マトリックス系では、リオシグアトは、不活性マトリックス中に分散する。薬物は、拡散によって不活性マトリックスを介して放出される。不活性マトリックスに適した物質の例には、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー、メチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、ポリ塩化ビニル、及びポリエチレン;エチルセルロース、酢酸セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、並びに脂肪族化合物、例えばカルナウバ蝋、微結晶蝋、及びトリグリセリドが含まれるが、それらに限定されない。
【0041】
浸食性又は非浸食性ポリマー放出遅延剤は、組成物の10%~70質量%の量で存在していてもよい。
【0042】
本発明の放出調節マトリックス剤形は、一般に、当技術分野で公知の標準的な技術を使用して調製することができる。通常、それらは、リオシグアト、放出遅延剤、及び他の賦形剤を乾式混合し、続いて適切な顆粒が得られるまで溶媒を使用して混合物を造粒することによって調製することができる。造粒は、当技術分野で既知の方法によって行なうことができる。湿潤顆粒は、流動床乾燥機内で乾燥させ、篩分けし、適切なサイズまで粉砕する。滑沢剤を乾燥顆粒と混合して、最終剤形を得ることができる。放出遅延剤は、顆粒内又は顆粒外又は両方に使用することができる。
【0043】
或いは、マトリックス剤形は、リオシグアトを、単独で又は1つ若しくは複数の放出遅延剤と併せて、及び1つ若しくは複数の薬剤として許容される賦形剤を含有する粉末状又は顆粒状組成物の直接圧縮によって調製することができる。
【0044】
別の実施形態では、マトリックス多粒子剤形は、複数のリオシグアトを含有する粒子を含み、各粒子は、リオシグアトと、リオシグアトの水性媒体への溶解速度を制限することが可能なマトリックスを形成するように選択された1つ又は複数の放出遅延剤との混合物を含む。この実施形態に有用な放出遅延剤は、一般に水不溶性の物質、例えば蝋、セルロース、又は他の水不溶性ポリマーである。必要な場合、マトリックスは、任意選択で結合剤として又は浸透性改質剤として使用できる水溶性物質と配合製剤化してもよい。
【0045】
これらの剤形の製造に有用な放出遅延剤の例には、微結晶性セルロース、蝋、例えばパラフィン、変性植物油、カルナウバ蝋、硬化ヒマシ油、ビーズワックスなど、並びに合成ポリマー、例えば塩化ポリビニル、酢酸ポリビニル、酢酸ビニルとエチレンのコポリマー、ポリスチレンなどが含まれる。任意選択でマトリックスに配合できる水溶性結合剤又は放出遅延剤には、水溶性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリジノン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、カラギーナン、並びに他のそのような天然及び合成物質が含まれる。
【0046】
マトリックス多粒子剤は、一般に、押出し/球形化方法によって調製することができる。この方法の場合、リオシグアトは、結合剤を用いて湿潤塊とし、多孔板又は型を通して押出し、回転ディスクに配置することができる。押出物は、回転板上で球形、回転楕円体、又は円形ロッドに丸めることができる断片に細分してもよい。
【0047】
或いは、マトリックス多粒子剤は、蝋顆粒を調製することによって調製することができる。この方法では、所望量のリオシグアトを液体蝋と共に撹拌して、均質な混合物を形成し、冷却し、次いでスクリーンに押し通して顆粒を形成することができる。
【0048】
マトリックス多粒子剤を製造するためのさらなる方法は、リオシグアトと放出遅延剤の混合を助けるための有機溶媒の使用を伴うものであってもよい。リオシグアトと放出遅延剤は、溶媒と合わせてペーストを形成し、次いでスクリーンに押し通して顆粒を形成し、次いでそこから溶媒を除去することができる。
【0049】
或いは、リオシグアトと放出遅延剤は、1種又は複数の溶媒と合わせて放出遅延剤を完全に溶解させ、得られた溶液(固体薬物粒子を含有することもある)を噴霧乾燥して、微粒子剤形を形成することもできる。この技術は、放出遅延剤がセルロースエーテル又はセルロースエステルなどの高分子量合成ポリマーであるときに好ましいかもしれない。本方法に通常使用される溶媒には、アセトン、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、及び2種以上の混合物が含まれていてもよい。
【0050】
別の実施形態では、マトリックス多粒子剤は、溶融噴霧凝固方法によって形成することができる。溶融凝固コアは、放出遅延剤を含んでいてもよい。
【0051】
放出遅延剤は、コーティングされていないコアの質量に基づいて少なくとも10%~70質量%がコア中に存在していてもよい。
【0052】
溶融噴霧凝固法のための放出遅延剤は、蝋、長鎖アルコール、脂肪酸エステル、グリコール化脂肪酸エステル、ホスホグリセリド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、長鎖カルボン酸、糖アルコール、及びその混合物からなる群から選択される。例示的な放出遅延剤には、高度に精製した形態の蝋、例えばカルナウバ蝋、白色及び黄色ビーズワックス、セレシン蝋、微結晶性蝋、及びパラフィン蝋;長鎖アルコール、例えばステアリルアルコール、セチルアルコール及びポリエチレングリコール;脂肪酸エステル(脂肪又はグリセリドとしても公知である)、例えばパルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、モノ、ジ、及びトリベヘン酸グリセリルの混合物を含めた、モノ、ジ、及びトリアルキルグリセリドの混合物、トリステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル及び硬化綿実油を含めた硬化植物油;グリコール化脂肪酸エステル、例えばステアリン酸ポリエチレングリコール及びジステアリン酸ポリエチレングリコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体;長鎖カルボン酸、例えばステアリン酸;並びに糖アルコール、例えばマンニトール及びエリトリトールが含まれる。
【0053】
多粒子剤は:(a)リオシグアト及び放出遅延剤を含む溶融混合物を形成する工程;(b)工程(a)の溶融混合物を噴霧手段に送達して溶融混合物からの液滴を形成する工程;と(c)工程(b)からの液滴を凝固させて多粒子剤を形成する工程を含む溶融凝固方法によって作製される。
【0054】
多粒子剤はまた、1つ又は複数の薬剤として許容される賦形剤と混合又はブレンドして適当な剤形を形成してもよい。適当な剤形には、錠剤、カプセル、サッシェ、構成用経口粉末などが含まれていてもよい。
【0055】
溶融噴霧凝固多粒子剤を形成した後、多粒子剤は、任意選択で、任意の従来のコーティング、例えば保護フィルムコーティング、薬物の持続放出をもたらすためのコーティング、又は味覚マスキングをもたらすためのコーティングでコーティングしてもよい。
【0056】
コーティングは、従来の可塑剤、及び他の賦形剤、例えば粘着防止剤、潤滑剤などを含んでいてもよい。コーティングは、従来の器具、例えばパンコーター、流動床コーター、例えば、トップスプレー、接線スプレー、又はボトムスプレーよって施すことができる。
【0057】
浸透性剤形
リオシグアトは、浸透圧送達デバイス又は浸透圧ポンプに組み込まれている。浸透圧ポンプは、半透性コーティングに取り囲まれた浸透的に有効な組成物を含有するコアを含む。半透性コーティングは、水を通すが、水に溶解した溶質は、通常コーティングを通して容易に拡散できない。
【0058】
本発明の一実施形態では、リオシグアトは、リオシグアト、1つ又は複数の放出遅延剤及び1つ又は複数の浸透圧原を含む第1の層と、1つ又は複数の水膨潤性ポリマー、任意選択で1つ又は複数の浸透圧原を含む第2の層を含む二層錠剤コアに取り込まれている。二層錠剤コアは、レーザー穿孔によって剤形に作られた1つ又は複数の開口部又はオリフィスを含有する半透性コーティングに取り囲まれている。このタイプの剤形で使用される放出遅延剤は、添加溶剤としても言及されている。添加溶剤は、1つ又は複数のオリフィスを通して薬物の送達を助けるように薬物を移動させる。
【0059】
放出遅延剤又は添加溶剤は、単一の材料又は材料の混合物であってもよい。非架橋ポリエチレンオキシドは、添加溶剤として使用することができる。他の適当な添加溶剤の例には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルピロリドン、並びにこれらのポリマーとポリエチレンオキシドの混合物が含まれるがそれらに限定されない。組成物中に存在する放出遅延剤又は添加溶剤の量は、組成物の15%~95質量%の範囲であってもよい。
【0060】
適当な水膨潤性ポリマーの例には、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、分子量が30,000~5,000,000のポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);κカラギーナン、分子量が10,000~360,000のポリビニルピロリドン;陰イオン及び陽イオンヒドロゲル;高分子電解質複合体;グリオキサールと架橋した残留酢酸塩の少ないポリ(ビニルアルコール);メチルセルロースの混合物;架橋寒天及びカルボキシメチルセルロース;N-ビニルラクタムの水膨潤性ポリマーなどが含まれるが、それらに限定されない。このようなポリマーは、組成物の0.5%~20質量%の量で存在していてもよい。
【0061】
半透性コーティングに適した材料の例には、セルロースアシレート、セルロースジアシレート、セルローストリアシレート、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸寒天、三酢酸アミロース、酢酸βグルカン、アセトアルデヒドジメチルアセテート、酢酸エチルカルバミン酸セルロース、ポリアミド、ポリウレタン、スルホン化ポリスチレン、酢酸フタル酸セルロース、酢酸メチルカルバミン酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸ジメチルアミノ酢酸セルロース、酢酸エチルカルバミン酸セルロース、酢酸クロロ酢酸セルロース、ジパルミチン酸セルロース、ジオクタン酸セルロース、ジカプリル酸セルロース、セルロースジペンタンレート(cellulose dipentanlate)、酢酸吉草酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、プロピオン酸コハク酸セルロース、メチルセルロース、酢酸p-トルエンスルホン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、架橋ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド)などがあるが、それらに限定されない。
【0062】
錠剤上の半透膜コーティングは、錠剤コアの質量の2%~30%に相当する質量で存在する。
【0063】
本明細書では、表現「オリフィス」には、機械的手順によって半透膜に穴を開けられた1つ又は複数の開口が含まれる。或いは、それは、半透膜にゼラチンプラグなどの浸食性要素を組み込むことによって形成することができる。
【0064】
本発明の浸透圧ポンプは、標準的な技術によって製造することができる。例えば、一実施形態では、通路に隣接する区画の1つの領域に収容できる薬物及び他の賦形剤は、薬物が占有することになる区画の領域の内部寸法に対応する寸法を有する固体に圧縮し、或いは薬物及び他の賦形剤は、溶媒と共に、従来の方法、例えばボールミル粉砕、カレンダー加工、撹拌又はロール練りによって固体又は半固形形態に混合し、次いであらかじめ選択された形状に圧縮することができる。次に、親水性ポリマーの層は、同様の方法で薬物の層と接触させて配置することができ、2つの層を半透性の壁で囲むことができる。薬物製剤と親水性ポリマーの積層は、従来の二層圧縮技術によって作製することができる。壁は、圧縮層を、壁形成材料又は放出遅延剤に成形、噴霧又は浸漬することによって適用することができる。
【0065】
或いは、浸透性剤形のコアは、3層錠剤コアであってもよい。3層錠剤コアは、リオシグアト及び他の賦形剤を含む第1の層、より大きな量のリオシグアト及び他の賦形剤を含む第2の層と、押込層でありリオシグアトを欠く第3の層を含む。3層の浸透性剤形では、制御された方法で第1の薬物含有層及び次に第2の薬物含有層から、薬物が制御された方法で順次放出されて、長期にわたって漸増する放出速度が提供される。
【0066】
リザーバー剤形
本発明の別の実施形態では、リオシグアトを含むコア及び1つ又は複数の組成物の外面上の放出遅延コーティングを含む組成物、例えば錠剤又はビーズが提供される。従来の即時放出圧縮錠剤は、放出遅延剤を含むコーティングによって少なくとも部分的にコーティングされていてもよく、或いは、リオシグアトが組み込まれ、次いでビーズが放出遅延剤を含むコーティングによって少なくとも部分的にコーティングされている薬剤として許容されるビーズが使用される。いくつかの実施形態では、追加のバリアコーティングがコアとコーティングの間に存在していてもよい。
【0067】
コーティングは、例えば、水若しくは水性媒体に実質的に若しくは完全に不浸透性であるか、又は水若しくは水性媒体若しくは生物学的液体中でゆっくり浸食される、及び/又は水若しくは水性媒体若しくは生物学的液体と接触して膨潤するポリマーから構成されていてもよい。コーティングはまた、従来の結合剤、可塑剤、充填剤、滑剤、着色剤、圧縮補助剤などを含んでいてもよい。
【0068】
コーティングに適したポリマーの例には、アクリレート、メタクリレート、アクリル酸又はそのエステルのコポリマー、セルロース及びその誘導体、例えばエチルセルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリエチレン及びポリビニルアルコールなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0069】
組成物中に存在するポリマーの量は、組成物の1%~30質量%の範囲であってもよい。
【0070】
多粒子剤形
リオシグアトの調節放出をもたらすために粒子が1つ又は複数の放出遅延剤でコーティングされている多粒子剤を含む組成物が提供される。多粒子状粒子は、リオシグアト及び1つ又は複数の賦形剤を含む。個々の粒子のサイズは、一般に約50ミクロン~約2mmであるが、この範囲外のサイズのビーズも有用であり得る。
【0071】
多粒子剤組成物は、押出し及び球形化、湿式造粒、流動床造粒、及びロータリーベッド造粒の技術を含むがそれらに限らない、当業者に既知の技術を使用して調製することができる。その上、多粒子剤はまた、粉末コーティングなどの薬物層状化技術によって、又は適切な結合剤溶液中のリオシグアトの溶液又は分散液を、ワースターコーター若しくは回転型処理装置などの流動床のシードコア上に噴霧することにより、リオシグアト組成物を適用することによって、ノンパレイユシードなどのシードコア上にリオシグアト組成物(薬物プラス賦形剤)を構築することによって調製することもできる。
【0072】
本発明の別の実施形態では、約10時間~約24時間にわたってリオシグアトの放出が可能な即時放出ビーズ及び放出制御ビーズを組み込む医薬組成物が提供される。この実施形態の医薬組成物は、一般に、全組成物質量の約10%~約50質量%の範囲の量の即時放出リオシグアトビーズ及び全組成物質量の約50%~約90質量%の範囲の量の放出制御リオシグアトビーズを含む。
【0073】
これらの多粒子剤は、錠剤剤形に圧縮してもよく、或いは、これらの多粒子剤は、カプセル又はサッシェに充填してもよい。
【0074】
粘膜付着性剤形
別の実施形態では、1つ又は複数の放出遅延剤を含むリオシグアトの放出調節医薬組成物が提供される。このタイプの剤形で使用される放出遅延剤は、粘膜付着性ポリマーとも称される。
【0075】
粘膜付着性ポリマーは、胃腸管の粘膜内層に付着可能な天然又は合成ポリマーである。粘膜付着性ポリマーは、コーティング又は薬物送達マトリックスの一部として適用することができる。粘膜付着性ポリマーは、胃腸管の壁への組成物の付着によって胃腸の保持を改善するために組成物に含まれている。
【0076】
適当な粘膜付着性ポリマーの例には、ポリカルボフィル(ジビニルグリコールと架橋したポリアクリル酸)、キトサン、デキストランナトリウム、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリスチレンスルホン酸、硫酸ポリビニル、ポリグルタミン酸、ウシ血清アルブミン、フィコール、酸性(高等電点)ゼラチン、ポリブレン、ポリビニルメチルイミダゾール、ポリガラクトサミン、ポリ四級化合物、プロラミン、ポリイミン、ジエチルアミノエチルデキストラン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンピロリドン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレン、ポリヒスチジン、ポリ-p-アミノスチレン、ポリオキセタン、コポリメタクリレート、ポリアミドアミン、及びカチオン性デンプンが含まれるが、それらに限定されない。
【0077】
粘膜付着性ポリマーは、組成物の0.1%~20質量%の量で存在していてもよい。
【0078】
粘膜付着性組成物は、錠剤、カプセル、多粒子剤組成物、又は浸透圧デバイスの形態であってもよい。
【0079】
本発明の粘膜付着性組成物は、リオシグアト、粘膜付着性ポリマー、及び他の賦形剤を混合し、続いて先に記載したような湿式造粒、直接圧縮、押出し、又は球形化方法を行なうことによって調製することができる。
【0080】
本発明の別の実施形態では、(a)リオシグアト及び少なくとも1つの薬剤として許容される賦形剤を含む即時放出第1の層と、(b)リオシグアトを含む持続放出第2の層を含む、多層固体組成物が提供され、ここで、即時放出層及び持続放出層は、任意選択で薬物を含有しない賦形剤の層によって分離されている。多層錠剤を形成する場合、層は、従来の湿式造粒若しくは乾式造粒(圧縮)技術、又は当技術分野で既知の他の任意の技術によって調製することができる。次いで、層は、圧縮し、合わせて、従来の多層錠作製設備を使用して多層錠剤を形成することができる。持続放出層は、持続放出マトリックス系について前述したように、1つ又は複数の放出遅延ポリマーを含有する。加えて、全ての層は、任意選択で1つ又は複数の薬剤として許容される賦形剤を含有していてもよい。
【0081】
別の実施形態では、リオシグアト、1つ又は複数の放出遅延剤及び1つ又は複数の薬剤として許容される賦形剤を含む安定な放出調節医薬組成物が提供される。
【0082】
本明細書では、用語「安定」は、組成物が貯蔵及び送達される期間にわたって患者に実質的に同じ治療上の利益を組成物が提供するように、その貯蔵及び使用の期間を通して、その製造時にそれが有していた有効成分の実質的に同じ特性及び特徴を保持することを表す。
【0083】
別の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、40℃及び75%相対湿度で少なくとも1カ月、例えば、3カ月、6カ月、12カ月、24カ月など、貯蔵した後、リオシグアトの効力の少なくとも80%を保持する。
【0084】
別の実施形態では、本発明は、リオシグアトの放出調節医薬組成物を提供し、この組成物は、標準的なUSP回転パドル装置において75rpm、37℃で0.1%SLSを加えたpH6.8の0.05Mリン酸カリウム緩衝液900mLを含む試験液にさらした場合、1時間で15%以下のリオシグアト、16時間で70%以上のリオシグアトを放出する。
【0085】
代替の実施形態では、組成物は、標準的なUSP回転パドル装置において75rpm、37℃で0.1%SLSを加えたpH6.8の0.05Mリン酸カリウム緩衝液900mLを含む試験液にさらした場合、1時間で10%以下のリオシグアト、16時間で75%以上のリオシグアトを放出する。
【0086】
本発明は、本発明の例として提供され、本発明の範囲を限定しない、以下の実施例によって例示されている。
【実施例
【0087】
(実施例1:長期放出浸透性錠剤)
【0088】
【表1】
【0089】
手順:
薬物層を調製するための顆粒は、急速なミキサー造粒機中で、エタノールに溶解したポビドンを含有する結合剤溶液を使用して、リオシグアト、ポリエチレンオキシド及びポビドンの粉末混合物を造粒することによって調製した。調製した顆粒は、流動床乾燥機中で乾燥させ、乾燥した顆粒を篩分けして適切な寸法の顆粒を得て、ステアリン酸マグネシウムで潤滑化した。
【0090】
押込層を調製するための顆粒は、ラピッドミキサー造粒機を用いて、エタノールに溶解したポビドンを含有する結合剤溶液を使用して、ポリエチレンオキシド、ポビドン、塩化カリウム及び赤色酸化第二鉄の粉末混合物を造粒することによって調製した。調製した顆粒は、流動床乾燥機中で乾燥させ、乾燥した顆粒を篩分けして適切な寸法を得て、ステアリン酸マグネシウムで更に潤滑化した。
【0091】
薬物層及び押込層のために上記ステップで調製した顆粒を、適切な金型を備えた二層圧縮機を使用して圧縮して、二層コア錠剤を得た。
【0092】
アセトン/水混合物に溶かした酢酸セルロース及びポリエチレングリコールの溶液を噴霧することによって、二層コア錠剤を取り囲む半透膜をコーティングした。
【0093】
直径が約0.6±0.3mm、深さが0.5±0.3mmの薬物放出に適したオリフィスを、半透膜の薬物層に近接する区画の狭い端部に穿孔した。
【0094】
溶解データは、以下に示す溶解条件を用いてin vitro溶解試験装置を使用して決定した:
【0095】
【表2】
【0096】
(実施例2:長期放出マトリックス錠剤)
【0097】
【表3】
【0098】
顆粒は、急速なミキサー造粒機を用いて、水に溶解したヒプロメロースを含有する結合剤溶液を使用して、リオシグアト、微結晶性セルロース、及びヒプロメロースの粉末混合物を造粒することによって調製した。調製した顆粒を乾燥させ、ステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、適切な金型を用いて圧縮機を使用して圧縮して、錠剤を得た。
【0099】
(実施例3:長期放出リザーバー錠剤)
【0100】
【表4】
【0101】
顆粒は、水に溶解したポビドンを含有する結合剤溶液を使用して、リオシグアト、微結晶性セルロース、及びラクトース一水和物の粉末混合物を造粒することによって調製した。顆粒を乾燥させ、ステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、適切な金型を用いて圧縮機を使用して圧縮して、錠剤を得た。
【0102】
塩化メチレン及びイソプロピルアルコールの溶媒混合物に溶かしたエチルセルロース、ヒプロメロース及びクエン酸トリエチルの溶液を噴霧することによって、錠剤をコーティングした。
【0103】
特定の実施形態に関連して本発明を記述してきたが、ある種の修正及び等価物は、当業者に明らかであり、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】