(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】発光スペクトルに基づく予測モデルを使用して未知のサンプル組成を分析するためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/73 20060101AFI20230201BHJP
G01N 21/72 20060101ALI20230201BHJP
G01N 21/35 20140101ALI20230201BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20230201BHJP
G01N 24/08 20060101ALI20230201BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20230201BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20230201BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20230201BHJP
【FI】
G01N21/73
G01N21/72
G01N21/35
G01N21/33
G01N24/08 510P
G01N27/62 D
G06N3/02
G06N20/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535121
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 CA2020051719
(87)【国際公開番号】W WO2021113991
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518410032
【氏名又は名称】パーキンエルマー・ヘルス・サイエンシーズ・カナダ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER HEALTH SCIENCES CANADA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アルハイミ, アブドゥルラフマン
(72)【発明者】
【氏名】マッケイ, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】バディエイ, ハミード
【テーマコード(参考)】
2G041
2G043
2G059
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA12
2G041LA06
2G041LA09
2G043AA01
2G043AA04
2G043BA01
2G043EA08
2G043EA09
2G043FA06
2G043HA05
2G043JA03
2G043JA04
2G043LA02
2G043NA01
2G043NA02
2G059AA01
2G059CC03
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH01
2G059HH03
2G059MM01
(57)【要約】
本開示の態様は、発光スペクトルに基づく予測モデルを使用して未知のサンプル組成を分析するための技術に関する。1つの方法は、既知の濃度の複数の純粋な元素を含むトレーニングサンプルに対応する第1の発光スペクトルを受信することと、第1の発光スペクトルに基づいて、既知の濃度の複数の純粋な元素に対応する複数のスペクトル領域を判定することと、既知の濃度の各純粋な元素に対応する各スペクトル領域について、スペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた特徴を判定することと、未知のサンプルの発光スペクトルに基づいて、未知のサンプルの複数の成分の未知の濃度を予測するために予測モデルをトレーニングすることと、未知の濃度の複数の成分を含む未知のサンプルに対応する第2の発光スペクトルを受信することと、トレーニングされた予測モデルの適用に基づいて、前記サンプルの成分のそれぞれについて濃度を生成することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の濃度の複数の純粋な元素を含むトレーニングサンプルに対応する第1の発光スペクトルを受信することと、
前記トレーニングサンプルに対応する前記第1の発光スペクトルに基づいて、既知の濃度の前記複数の純粋な元素に対応する複数のスペクトル領域を判定することであって、前記複数のスペクトル領域のそれぞれは、既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対するものである、前記判定することと、
前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、所与のスペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴を判定することと、
前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられた前記1つまたは複数の特徴を含む特徴ベクトルを形成することと、
前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記特徴ベクトルを、前記所与のスペクトル領域に対応する純粋な元素の既知の濃度と関連付けることと、
前記関連付けられた特徴ベクトルに基づいて、未知のサンプルの複数の成分の未知の濃度を予測するために予測モデルをトレーニングすることと、
画像化モダリティの1つまたは複数の検出器から、未知の濃度の複数の成分を含む前記未知のサンプルに対応する第2の発光スペクトルを受信することと、
前記トレーニングされた予測モデルの適用に基づいて、前記未知のサンプルの前記成分のそれぞれについて濃度を生成することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられた前記1つまたは複数の特徴は、前記所与のスペクトル領域、または前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークのうちの1つまたは複数の特性を含み、前記1つまたは複数の特性は、
前記所与のスペクトル領域の面積もしくは前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの面積、
前記所与のスペクトル領域に関連付けられた、もしくは前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられたデータポイント、
前記所与のスペクトル領域の境界もしくは前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの境界の測定値、または、
前記所与のスペクトル領域もしくは前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの近似曲線、のうちの1つまたは複数を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられた前記1つまたは複数の特徴を前記判定することは、
前記所与のスペクトル領域に対応する前記第1の発光スペクトルの一部を畳み込みニューラルネットワークに入力して、前記所与のスペクトル領域に対応する前記純粋な元素の前記既知の濃度を予測する1つまたは複数の特徴を判定すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記畳み込みニューラルネットワークは、前記所与のスペクトル領域または前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークのうちの1つまたは複数の特性を検出する複数のフィルタを含み、前記特性は、
前記所与のスペクトル領域の面積もしくは前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの面積、
前記所与のスペクトル領域に関連付けられた、もしくは前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられたデータポイント、
前記所与のスペクトル領域の境界もしくは前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの境界の測定値、または、
前記所与のスペクトル領域もしくは前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの近似曲線、のうちの1つまたは複数を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられた前記1つまたは複数の特徴を前記判定することは、
前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの代表値を生成することであって、前記1つまたは複数の特徴は、前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの前記代表値を含む、前記生成すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの前記代表値を前記生成することは、
前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークのピーク強度を判定すること、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの前記代表値を前記生成することは、
前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークのガウス曲線近似または3次スプライン補間のうちの1つまたは複数を実行して、近似ピーク曲線を生成すること、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの前記代表値を前記生成することは、
前記近似ピーク曲線を積分して前記近似ピーク曲線の面積を判定することであって、前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークの前記代表値は前記近似ピーク曲線の前記面積である、前記判定すること、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記特徴ベクトルを前記関連付けることは、
前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記特徴ベクトル及び前記所与のスペクトル領域に対応する前記純粋な元素の前記既知の濃度に基づく値を含むマトリックスを形成すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記予測モデルを前記トレーニングすることは、前記既知の濃度の各純粋な元素に対応する各スペクトル領域について、前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられた前記1つまたは複数の特徴と前記所与のスペクトル領域に対応する前記純粋な元素の前記既知の濃度との間の線形関係を判定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記線形関係を前記判定することは、
前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記特徴ベクトルと前記所与のスペクトル領域に対応する純粋な元素の既知の濃度との間の最小二乗線形回帰を実行すること、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記未知のサンプルの前記成分のそれぞれについて前記濃度を前記生成することは、
前記第2の発光スペクトルに基づいて、前記未知の濃度の前記複数の前記成分に対応する複数のスペクトル領域を判定することであって、前記複数のスペクトル領域のそれぞれは、前記未知の濃度の前記複数の前記成分のそれぞれに対するものである、前記判定することと、
前記未知の濃度の前記複数の成分のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、未知の濃度の成分に対応する前記所与のスペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴を判定することと、
前記未知の濃度の前記複数の前記成分のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記未知の濃度の前記成分に対応する前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられた前記1つまたは複数の特徴からなる特徴ベクトルを形成することと、
前記未知の濃度の前記複数の前記成分のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記特徴ベクトルを前記トレーニングされた機械学習アルゴリズムに適用することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の前記成分のそれぞれについて、前記未知の濃度の前記複数の前記成分のそれぞれに対する前記スペクトル領域に基づいて、前記成分の特定を判定すること、
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記特徴ベクトルを前記トレーニングされた予測モデルに前記適用することは、最小二乗線形回帰を実行することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記発光フィルタから、ブランクサンプルに対応する第3の発光スペクトルを受信することであって、前記ブランクサンプルは、前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素を含まず、前記既知の濃度の前記複数の前記純粋な元素に対応する前記複数のスペクトル領域を前記判定することは、前記ブランクサンプルに対応する前記第3の発光スペクトルにさらに基づいている、前記受信すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
発光スペクトルを提供する画像化モダリティの1つまたは複数の検出器と、
コンピューティングデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、コンピューティングデバイスに、
既知の濃度の複数の純粋な元素を含むトレーニングサンプルに対応する第1の発光スペクトルを受信することと、
前記トレーニングサンプルに対応する前記第1の発光スペクトルに基づいて、既知の濃度の前記複数の純粋な元素に対応する複数のスペクトル領域を判定することであって、前記複数のスペクトル領域のそれぞれは、既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対するものである、前記判定することと、
前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、所与のスペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴を判定することと、
前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられた前記1つまたは複数の特徴を含む特徴ベクトルを形成することと、
前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記特徴ベクトルを、前記所与のスペクトル領域に対応する純粋な元素の既知の濃度と関連付けることと、
前記関連付けられた特徴ベクトルに基づいて、未知のサンプルの複数の成分の未知の濃度を予測するために予測モデルをトレーニングすることと、
前記1つまたは複数の検出器から、未知の濃度の複数の成分を含む前記未知のサンプルに対応する第2の発光スペクトルを受信することと、
前記トレーニングされた予測モデルの前記適用に基づいて、前記未知のサンプルの前記成分のそれぞれについて濃度を生成すること、
を行わせるための命令を格納する、コンピューティングデバイスと、
を含む、システム。
【請求項17】
前記画像化モダリティは、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)、赤外分光法、核磁気共鳴(NMR)分光法、紫外線(UV)分光法、原子蛍光分光法、火炎発光分光法、火花及びアーク発光分光法、誘導結合プラズマ質量分光法、有機分子の四重極ベースの質量分光法、飛行時間型質量分光法、磁気セクター質量分光法、トラップベース質量分光法、フーリエ変換イオンサイクロトロン質量分光法、イオン移動度分光法、及び微分移動度分光法、のうちの1つまたは複数である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記命令は、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記コンピューティングデバイスにさらに、
前記第2の発光スペクトルに基づいて、未知の濃度の前記複数の成分に対応する複数のスペクトル領域を判定することであって、前記複数のスペクトル領域のそれぞれは、前記未知の濃度の前記複数の成分のそれぞれに対するものである、前記判定することと、
前記未知の濃度の前記複数の成分のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、未知の濃度の成分に対応する所与のスペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴を判定することと、
前記未知の濃度の前記複数の成分のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記未知の濃度の前記成分に対応する前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられた前記1つまたは複数の特徴からなる特徴ベクトルを形成することと、
前記未知の濃度の前記複数の成分のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記特徴ベクトルを前記トレーニングされた機械学習アルゴリズムに適用させること、
を行わせる、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
発光フィルタから、未知の濃度の複数の成分を含むサンプルに対応する発光スペクトルを受信することと、
前記発光スペクトルに基づいて、前記未知の濃度の前記複数の前記成分に対応する複数のスペクトル領域を判定することと、
前記未知の濃度の前記複数の成分のそれぞれに対応する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、未知の濃度の成分に対応する所与のスペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴を判定することと、
前記未知の濃度の前記複数の成分のそれぞれに対応する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記未知の濃度の前記成分に対応する前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられた前記1つまたは複数の特徴からなる特徴ベクトルを形成することと、
前記未知の濃度の前記複数の成分のそれぞれに対応する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記特徴ベクトルをトレーニングされた機械学習アルゴリズムに適用することであって、前記トレーニングされた機械学習アルゴリズムは、純粋な元素の濃度と、前記純粋な元素のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴との間の学習された関係に基づいている、前記適用することと、
前記トレーニングされた機械学習アルゴリズムの前記適用に基づいて、未知の濃度の前記成分のそれぞれについて推定濃度を生成することと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記特徴ベクトルをトレーニングされた機械学習アルゴリズムに前記適用する前に、
発光フィルタから、既知の濃度の複数の純粋な元素を含むトレーニングサンプルに対応するトレーニング発光スペクトルを受信することと、
前記トレーニングサンプルに対応する前記トレーニング発光スペクトルに基づいて、既知の濃度の前記複数の純粋な元素に対応する複数のスペクトル領域を判定することであって、前記複数のスペクトル領域のそれぞれは、既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対するものである、前記判定することと、
前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、所与のスペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴を判定することと、
前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記所与のスペクトル領域の前記シグネチャピークに関連付けられた前記1つまたは複数の特徴を含む特徴ベクトルを形成することと、
前記既知の濃度の前記複数の純粋な元素のそれぞれに対する前記複数のスペクトル領域のそれぞれについて、前記特徴ベクトルを、前記所与のスペクトル領域に対応する純粋な元素の既知の濃度と関連付けることと、
前記関連付けられた特徴ベクトルに基づいて、サンプルの複数の成分の未知の濃度を推定するために予測モデルをトレーニングすることと、
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月10日に出願された「Systems and Methods for Analyzing Unknown Sample Compositions Using a Prediction Model Based On Optical Emission Spectra」と題された米国非仮特許出願第16/709,199号の優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に明示的組み込まれる。
【0002】
本明細書の開示は、概して、分光システム及び方法に関する。より具体的には、いくつかの例では、本開示は、発光分光法を介して未知のサンプル組成を分析するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発光分光法(optical emission spectroscopy、OES)は、広範囲のサンプルの成分(例えば、元素組成)を判定するために使用される画像化及び分析技術である。特に、OES技術はサンプルを励起し、励起の結果としてサンプルから放出される光を測定する。放出光は、放出された光の異なる波長を測定できるように空間的に分散され、測定されたスペクトルをもたらす。OES中に測定されるスペクトルは、通常、サンプルの構成元素及び/または化合物を判定するために使用できる複数の原子発光線のセットを含む。原子発光線は、構成元素の電子が特定の原子のより高い電子エネルギーレベルからより低い電子エネルギーレベルに移動するときに放出されるエネルギーの結果である。各原子元には、固有の原子発光線のセットがある。したがって、OES中に測定された発光スペクトルを使用して、各構成元素または化合物の電子によって放出されるエネルギーの予測パターンに基づいて、サンプルの成分を定性的に特定することができる。
【0004】
複数の構成元素及び/または化合物を含むことに加えて、サンプルの各成分は、広範囲の濃度を有する可能性がある。OES中、特定の元素によって放出される光の量(例えば、特定の原子発光線のセットに関連付けられた光の量)は、サンプル内のその特定の元素の濃度と相関している。したがって、OES中に得られた発光スペクトルを使用して、サンプル内の各構成元素の濃度を定量的に判定できる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様は、発光スペクトルに基づく予測モデルを使用して未知のサンプル組成を分析するための技術に関する。
【0006】
本開示は、例えば未知のサンプル組成を推定するための方法を提供する。サンプル組成には、スペクトル干渉を引き起こす可能性のある干渉元素または化合物と共に、所望の分析物が含まれ得る。予測モデルを使用することにより、この方法は、サンプル組成(例えば、構成元素または化合物の同一性と濃度)のより正確な推定を可能にする。
【0007】
少なくとも1つの方法では、第1の発光スペクトルは、記憶装置、外部コンピューティングシステムから、または分光システムの1つまたは複数の検出器から受信され得る。第1の発光スペクトルは、既知の濃度の複数の純粋な元素を含むトレーニングサンプルに対応し得る。コンピューティングシステムの1つまたは複数のプロセッサは、トレーニングサンプルに対応する第1の発光スペクトルに基づいて、既知の濃度の複数の純粋な元素に対応する複数のスペクトル領域を判定することができる。コンピューティングシステムは、既知の濃度の各純粋な元素に対応する各スペクトル領域について、スペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴をさらに判定することができる。その後、コンピューティングシステムは、既知の濃度の各純粋な元素に対応する各スペクトル領域について、スペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴を含む特徴ベクトルを形成することができる。コンピューティングシステムは、特徴ベクトルを、スペクトル領域に対応する純粋な元素の既知の濃度と関連付けることができる。さらに、または代わりに、コンピューティングシステムは、各スペクトル領域について、特徴ベクトル及びスペクトル領域に対応する純粋な元素の既知の濃度に基づく値を含むマトリックスを形成することができる。コンピューティングシステムは、関連する特徴ベクトルまたはマトリックスに基づいて、未知のサンプルの複数の成分の未知の濃度を予測するための予測モデルをトレーニングすることができる。分光システムの1つまたは複数の検出器から、第2の発光スペクトルを受信することができる。第2の発光スペクトルは、未知の濃度の複数の成分を含む未知のサンプルに対応し得る。コンピューティングシステムは、トレーニングされた予測モデルの適用に基づいて、未知のサンプルの成分のそれぞれについて濃度を生成することができる。
【0008】
特定の例では、未知のサンプルの成分のそれぞれについて濃度を生成することは、第2の発光スペクトルに基づいて、未知の濃度の複数の成分に対応する複数のスペクトル領域を判定することを含み得る。コンピューティングシステムは、未知の濃度の複数の成分のそれぞれに対応する各スペクトル領域について、未知の濃度の成分に対応するスペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴を判定することができる。コンピューティングシステムは、未知の濃度の複数の成分のそれぞれに対応する各スペクトル領域について、未知の濃度の成分に対応するスペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴からなる特徴ベクトルを形成することができる。さらに、未知の濃度の複数の成分のそれぞれに対応する各スペクトル領域について、コンピューティングシステムは、特徴ベクトルをトレーニングされた機械学習アルゴリズムに適用することができる。
【0009】
発光フィルタには、発光スペクトルにより照明された視野が存在する。発光フィルタの視野の位置は、例えば(x、y)位置座標を使用して特徴付けられ得る。視野内の各位置に関して、発光スペクトルは、それぞれの入射角で発光フィルタを照明し得る。その位置の発光フィルタからの透過スペクトルの測定強度に、入射角は影響を与え得る。
【0010】
以下の開示はまた、例えば、発光スペクトルを提供する画像化モダリティの1つまたは複数の発光フィルタを含み得るシステム、及び、予測モデルを使用した分光法により未知のサンプル組成を分析するための命令を格納するコンピューティングデバイスを提供する。コンピューティングデバイスの1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、命令は、コンピューティングデバイスに、1つまたは複数の発光フィルタから、既知の濃度の複数の純粋な元素を含むトレーニングサンプルに対応する第1の発光スペクトルを受信させ、トレーニングサンプルに対応する第1の発光スペクトルに基づいて、既知の濃度の複数の純粋な元素に対応する複数のスペクトル領域を判定させ、既知の濃度の各純粋な元素に対応する各スペクトル領域について、スペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴を判定させ、既知の濃度の各純粋な元素に対応する各スペクトル領域について、スペクトル領域のシグネチャピークに関連付けられた1つまたは複数の特徴を含む特徴ベクトルを形成させ、既知の濃度の各純粋な元素に対応する各スペクトル領域について、特徴ベクトルを、スペクトル領域に対応する純粋な元素の既知の濃度と関連付けさせ、関連付けられた特徴ベクトルに基づいて、未知のサンプルの複数の成分の未知の濃度を予測するために予測モデルをトレーニングさせ、発光フィルタから、未知の濃度の複数の成分を含む未知のサンプルに対応する第2の発光スペクトルを受信させ、トレーニングされた予測モデルの適用に基づいて、未知のサンプルの成分のそれぞれについて濃度を生成させる、ことができる。
【0011】
いくつかの態様では、画像化モダリティは、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)、赤外分光法、核磁気共鳴(NMR)分光法、または紫外線(UV)分光法のうちの1つまたは複数であり得る。
【0012】
本明細書で説明される様々な実施例の態様は、他の実施例の態様と組み合わされてもよく、及び/または他の実施例の態様の代わりに使用されてもよいことを、理解されたい(例えば1つの独立請求項に従属する請求項の要素を使用して、他の独立請求項の実施態様がさらに特定され得る)。本開示の他の特徴及び利点は、下記の図、発明を実装するための形態、及び特許請求の範囲から、明らかになるであろう。
【0013】
本開示の目的及び特徴は、後述の図面、及び特許請求の範囲を参照することにより、より良く理解されよう。図面では、様々な図を通して同様の部分を示すために、同様の数字が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本明細書の開示の態様が実施され得る例示的なコンピューティングハードウェアのブロック図である。
【
図3】発光スペクトルに基づく予測モデルを使用して未知のサンプル組成を分析するための例示的な方法を示す。
【
図4A】本開示の様々な態様で使用される予測モデルを生成及び適用するための例示的なトレーニング及びテストマトリックスを示している。
【
図4B】本開示の様々な態様で使用される予測モデルを生成及び適用するための例示的なトレーニング及びテストマトリックスを示している。
【
図4C】本開示の様々な態様で使用される予測モデルを生成及び適用するための例示的なトレーニング及びテストマトリックスを示している。
【
図4D】本開示の様々な態様で使用される予測モデルを生成及び適用するための例示的なトレーニング及びテストマトリックスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、OESによる化学サンプルの成分(例えば、元素、化合物など)の判定は、サンプル内の第1の元素からの原子発光線(干渉成分と呼ばれることもある)が、第2の元素(所望の分析物と呼ばれることもある)からの対象の原子発光線とオーバーラップするときに生じるスペクトル干渉のために難しいことが多いと認識し、理解した。スペクトル干渉は、原子発光線スペクトルの、スペクトルの豊富さの結果である可能性がある。サンプルの干渉成分は、OESスペクトル内の所望の分析物の原子発光線と(直接または部分的に)オーバーラップする不要な線を形成する可能性がある。したがって、スペクトル干渉は、サンプルの成分の定性的及び定量的判定の両方を複雑にする可能性がある。
【0016】
干渉補正の従来の技術は、分析されている未知のサンプルの様々な特質または特性(例えば、同一性、サンプル組成など)を事前に知ることを含む。例えば、従来の技術の1つでは、所望の分析物のOES分析を実行する前に、まず未知のサンプルの干渉成分の組成を判定する。スペクトル干渉補正の別の従来の技術では、ブランクサンプル及び既知の元素のいくつかの標準濃度を持つサンプルの参照スペクトルを使用する。本発明者らは、スペクトル干渉補正のこれらの従来の技術は、分析される未知のサンプルごとにこれらの技術の様々なステップを複数回繰り返さなければならないので、労働集約的で、時間効率が悪く、エラーが発生しやすいことを認識し、理解した。したがって、本発明者らは、これらの従来の技術よりも単純でエラーが発生しにくいスペクトル干渉を補正する技術を開発した。
【0017】
本開示の様々な実施態様は、前述の課題のうちの1つまたは複数に対処する。例えば、本開示は、発光スペクトルに基づく予測モデルを使用して未知のサンプル組成を分析するためのシステム、方法、デバイス、及び装置を説明することができる。
【0018】
本明細書では、発光スペクトルに基づく予測モデルを使用して、OESを介して未知のサンプル組成を分析するための技術について説明する。いくつかの実施形態では、予測モデルの使用は、干渉成分に起因するスペクトル干渉を補正するために、サンプルの干渉成分の組成を判定する必要性を克服する。干渉成分の組成を判定する必要がなくなるため、必要なステップ数が減り、時間とコストが節約され、エラーの可能性が減る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、上記のシステム、方法、装置、及びデバイスのユーザは、以下に説明するように、「ブランク」サンプル及び未知のサンプルのみを入力することができ、干渉成分の同一性及び/または組成を事前に知る必要、または追加の分析を実行して干渉成分の同一性及び/または組成を判定する必要がない。本開示の様々な実施形態において、純粋な元素の予想される発光スペクトルは、どの構成元素及び/または化合物がどの濃度でサンプルを構成するかを判定することを可能にするのに十分であり得る。本明細書に開示されるこれらの実施形態は、ユーザが、干渉補正の従来の技術における面倒で時間のかかるステップを克服することを可能にし得る。
【0019】
図1は、OESシステムの実施例の図である。例示的なOESシステム100の構成要素は、励起エネルギーを使用して、サンプルからの放出光が分析されるサンプルの構成元素または化合物の原子を励起してサンプルの組成を判定するOES技術の文脈で、例として以下に説明される。しかしながら、他の種類の分光システムは、追加及び代替の構成要素及び/または技術を含み得ることを理解されたい。例えば、他のタイプの分光システムは、様々な形態の原子発光分光法、火炎発光分光法、誘導結合プラズマ原子発光分光法、火花及びアーク発光分光法などを含み得る。例示的な光学画像化システム100の構成要素は、以下の順序で提示される。励起エネルギーは、サンプルによって発生及び吸収され、サンプルが光を放出すると、通常の動作で、つまりエネルギーの経路に沿って、検出器を通過する。
図1に示すように、OESシステム100は、高レベルで、電源102、サンプル110、回折格子デバイス116、1つまたは複数の検出器(例えば、120A、120Bなど)、及びコンピューティングシステム124を含み得る。
【0020】
電源102は、(例えば、電源コンセントを介して)電気を受け取り、その電気を使用して、エネルギーを放出し、及び/またはエネルギーをサンプル110に向ける任意のデバイスであり得る。例えば、
図1に示すように、電源102は、電極104を使用して電気スパークまたはアークをサンプル110に放出する電気デバイスであり得る。電源102を使用して、サンプル110内の構成元素及び化合物の原子の電子を励起することができる。放出108は、熱エネルギー(例えば、励起源が火炎である場合)、及び/または電気エネルギーであり得る。さらに、放出108は、人間の目に見えるもの(例えば、火花、光、レーザーなど)か、または見えないもの(例えば、紫外線、赤外線、熱など)であり得る。
【0021】
図1に示される例示的なOESシステム100では、電源102からの放出108は、電極104を使用して生成され得る。例えば、電源102は、電極104に高電圧を印加して、それが高電圧源になるようにすることができる。したがって、サンプル110と電極104との間の電位差を使用して、放出108(この場合は放電)を生じさせることができる。
【0022】
図1のOESシステム100の例では、励起フィルタ106は、電源102からサンプル110に向かって移動するときに、放出108をフィルタリング、濃縮、及び/またはそうでなければ調整するデバイスであり得る。例えば、励起フィルタ106を使用して、サンプルに向けられる放出108の強度の特定の範囲を増加、減少、または設定することができる。いくつかの実施態様では、例えば、励起源が光をサンプルに向ける場合、励起フィルタ106を使用して、サンプル110に到達するであろう光の波長または波長範囲を選択することができる。OESシステム100は、選択するための複数の励起フィルタを提供することができる。ユーザは、使用する励起フィルタを選択することができ、または励起フィルタは、コンピューティングシステム124、またはOESシステム100の動作を制御する他のコントローラによって自動的に選択され得る。いくつかの実施態様では、追加のデバイス(例えば、スイッチ、ファイバ束など)は、例えば光ファイバケーブルを介して、放出108が励起フィルタ106を出てサンプル110の様々な点に向かって出るときに、放出108を迂回させるのを助けることができる。
【0023】
放出108がサンプル110に衝突すると、放出108は、サンプル110の少なくとも一部、例えば、放出されたエネルギーに接触するサンプルの表面において構成元素及び化合物を励起、加熱、気化し、及び/またはそうでなければエネルギーを与えることができる。例えば、放出されたスパーク、アーク、または炎は、例えば、
図1に示されるように、サンプルのごく一部をプラズマ112に変える可能性がある。いくつかの実施態様では、サンプル110の一部は、摂氏数千度まで加熱される可能性がある。
【0024】
プラズマ112の成分の電子は、放出108を介して電源102から伝達されたエネルギーの結果として励起され得る。当業者に知られているように、電子は、典型的には、様々なエネルギーレベルの軌道において原子の周りに位置し得る。電子の励起により、電子はより高いエネルギーレベルに対応する軌道に移動することができる。より高いエネルギーレベルに対応する軌道への電子の移動は、前の(より低い)エネルギーレベルに対応する軌道に空孔を残す可能性がある。この空孔により、原子が不安定になり得る。原子を安定させるために、より高いエネルギーレベルに移動した電子とは異なる、または同じ電子が、空孔を有する前の(より低い)エネルギーレベルに戻ることがある。電子がより高いエネルギーレベルに対応する軌道からより低いエネルギーレベルに対応する軌道に移動するとき、エネルギーが放出され得る。エネルギー放出は、光または発光の形であり得る。各構成元素または化合物(例えば、成分110A及び成分110B)が、電子エネルギーレベルに対応する固有の電子軌道を有する固有の原子構造によって定義または特徴付けされ得るとすると、上記のプロセスの結果として放出されるエネルギーは、固定波長の発光または放射エネルギーを生じさせ得る。例えば、構成元素または化合物の原子軌道の2つ以上のエネルギーレベルの違いはすでにわかっている可能性があるため、各遷移(例えば、電子がより高いエネルギーレベルからより低いエネルギーレベルに移動する)によって固定波長の特定の光輝線または放射エネルギーを生じさせることができる。
【0025】
このプロセスを通じて放出されるエネルギー量は離散的であり、元素または化合物に特徴的な電子軌道に依存するため、ユーザは放出されるエネルギー量の特定のパターン(例えば、発光スペクトル)に基づいて元素または化合物を特定可能であり得る。例えば、通常、非常に高いエネルギーレベルに対応する軌道に電子を持っている一部の元素は、電子がエネルギーレベルを下に移動する結果として、特定の量の非常に高いエネルギーを放出し得る。さらに、いくつかの構成元素または化合物(例えば、金属元素)は、放出108と相互作用した後、多くの波長の発光を放出し、したがって、多くの輝線の発光スペクトルをもたらす。これは、金属元素の原子構造におけるエネルギーレベルの様々な組み合わせ間の複数の電子遷移が原因であり得、したがって、多くの波長のエネルギー放射を放出する。したがって、放出されるエネルギーの特定のパターンは、構成元素または化合物が持つことが知られている原子軌道間の電子の予測可能な動きの結果であり得る。
【0026】
上記のプロセスを介して構成元素または化合物によって放出される光は、「放出光」、「発光」、「発光スペクトル」または「原子発光」と呼ばれることがある。放出光は、離散的な波長のものであり得、したがって、それを放出する元素または化合物に応じて、別個の光輝線を形成し得る。
【0027】
サンプル110は、様々な構成元素または化合物(例えば、成分110A及び110B)を含み得ると予想される。さらに、元素または化合物の原子は、その電子に対して複数の原子軌道を有する可能性があり、各原子軌道は異なるエネルギーレベルに対応すると予想される。例えば、成分110Aの原子は、成分110Bの原子の原子軌道とは異なる原子軌道のセットを有し得る。この多様性は、構成元素または化合物によって放出される複数の量のエネルギーをもたらす可能性があり、それは、回折格子デバイス116を通って流れるように向けられ得る複数の波長の放出エネルギー(例えば、光)を形成し得る。簡単にするために、サンプルから生じ、回折格子デバイス116に向けられる複数の波形の放出されたエネルギー(例えば、光)は、「複数の輝線」114と呼ぶことができる。
図1に示されるように、複数の輝線114は、回折格子デバイス116を通過するように向けられ得る。例えば、サンプル110から放出された発光は、反射面、ファイバ束などを使用することにより、回折格子デバイス116に向けられ得る。
【0028】
回折格子デバイス116は、例えば、それらの波長または波長範囲に基づいて、入ってくる複数の輝線114を分離することができる。構成原子のより高いエネルギーレベルからより低いエネルギーレベルに電子が落ちる結果として構成原子によって放出される異なる量のエネルギーは、発光の異なる波長または波長範囲に一致し得る。前述のように、放出されるエネルギーの具体的な量は、原子構造、例えば、原子の電子軌道のエネルギーレベルに依存し得る。また、前述のように、各構成元素及び/または化合物は、それ自体の固有の原子構造を有し得る。したがって、入ってくる複数の輝線を波長及び/または波長範囲によって分離することによって、回折格子デバイス116は、発光に関連付けられた元素及び/または化合物に基づいて複数の輝線を分離することができる。
図1に示されるように、回折格子デバイス116は、複数の輝線114をそれらの元素固有の波長によって別個の輝線118に分離し、これは、簡単にするために「輝線」118、「元素固有の輝線」118、または「波長固有の輝線」118とも呼ばれ得る。別個の輝線118は、それぞれの検出器デバイス(例えば、検出器120A、検出器120Bなど)に移動するか、またはそれらによって検出され得る。
【0029】
検出器デバイス120A~120Bは、各波長固有の輝線の強度を測定することができる。検出器120は、受信した光を画像データに変換する感光デバイスであり得る。例えば、検出器120は、電荷結合素子(CCD)検出器であり得る。CCD検出器または他の同様の検出器は、光の強度に基づいて、電荷を蓄積し得る様々な検出器要素を含み得る。本開示のいくつかの態様では、電磁放射の他の検出器、例えば、光電子増倍管、フォトダイオード、及びアバランシェフォトダイオードなどを使用することができる。個々の光輝線118から測定される強度は、サンプル内の元素の濃度に比例する。さらに、輝線から、検出器デバイス120A~120Bは、個々の輝線のピーク信号を収集することができる。集合的または個別に、検出器デバイス120A~120Bは、受信された信号を処理して、波長の関数として光強度ピークを示すスペクトルを生成することができる。さらに、または代わりに、
図1に示されるように、検出器デバイス120A~120Bは、個々の輝線から受信した信号を、処理されるコンピューティングシステム124に送信することができる。コンピューティングシステム124は、
図1に示されるように、無線ネットワーク122を含む任意の適切な通信媒体を介して信号を受信することができる。処理された信号は、サンプル110によって放出された光にどの波長の光が存在するか、及び関連するピーク強度を明らかにすることができる。スペクトルに存在する波長は、構成元素または化合物を特定し得、ピーク強度は、サンプル110中の構成元素または化合物の量の指標を提供し得る。
【0030】
コンピュータシステム124は、検出器120A~120Bから測定された強度を判定または取得し、このデータを処理して、本明細書に記載の方法を使用してサンプル110の組成を判定することができる。コンピュータシステム124のユーザインタフェースを使用して、測定された強度、波長、及び/または推定されたサンプル組成を表示、印刷、または格納することができる。さらに、コンピュータシステム124は、トレーニングサンプルから(例えば、機械学習、畳み込みニューラルネットワークなどを介して)学習するためのアプリケーションを格納及び実行して、テストサンプルの組成をよりよく予測することができる。コンピュータシステム124に関するさらなる詳細は、
図2と併せて説明され得る。
【0031】
図1は、例示的なOESシステムを示し、他の形態の画像化モダリティを使用して、本明細書に提示される方法を実施し、本開示の実施形態の利益を享受することができる。例えば、本開示のいくつかの態様では、OES画像化デバイスは、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)デバイス、赤外線分光法デバイス、核磁気共鳴(NMR)分光法デバイス、紫外線(UV)分光デバイスなどのうちの1つまたは複数で置き換えることができる。
【0032】
図2は、本開示の態様を実施するために使用され得るコンピューティング環境200を示す。高レベルでは、コンピューティング環境200は、サンプルの発光スペクトルを生成するための分光システム210と、発光スペクトルを処理及び分析し、サンプル組成を知らずにスペクトル干渉補正を実行し、スペクトル干渉補正後のサンプル組成を判定するためのコンピューティングシステム250とを含み得る。
図1を参照して上で説明したように、電源202は、(例えば、エネルギーの)放出を発生させて、サンプル(例えば、トレーニングサンプル204A、未知のサンプル204B、ブランクサンプル204C)内の構成原子を励起することができる。さらに説明するように、
図3A及び3Bに関連して、トレーニングサンプル204Aは、既知の成分を含み得、したがって、既知のサンプル組成を有し得る。放出とサンプルとの間の相互作用により、サンプルは、検出器208(例えば、CCD)で受信され得る様々な波長及び強度の発光を放出し得る。検出器208は、コンピューティングシステム250の入力デバイス251に、検出されたスペクトルに対応する信号を提供し得る。本明細書で論じられるように、トレーニングサンプルから得られる発光スペクトルを使用して、未知のサンプル(例えば、未知の成分206Bを有する未知のサンプル204B)の組成を知る必要なしに、スペクトル干渉補正を実行するための予測モデルを生成することができる。さらに、後述するように、構成元素または化合物を最小限含むかまたは全く含まない、ブランクサンプル204Cから生じる発光スペクトルを使用して、未知のサンプル204Bから生じる発光スペクトルからバックグラウンドノイズを除去することができる。
【0033】
引き続き
図2を参照すると、コンピューティングシステム250は、1つまたは複数の機器の動作を制御するソフトウェアを実行することができ、及び/または、例えば、ユーザインタフェースまたは分光システム210から得られるデータを処理することができる。ソフトウェアには、例えば磁気ディスク、磁気テープ、CD-ROM、及び半導体メモリなどの機械可読媒体に記録された1つまたは複数のモジュールが含まれ得る。機械可読媒体は、コンピューティングシステム250内に常駐し得、またはネットワークI/O257により、コンピューティングシステム250に接続(例えば外部ネットワーク270を介してアクセス)され得る。しかし、代替的な実施例では、ソフトウェアの代わりにハードウェア組み込みロジックの形態のコンピュータ命令が使用され得、またはソフトウェアの代わりにファームウェア(すなわちPROM、EPROM、またはEEPROMなどのデバイスに記録されたコンピュータ命令)が使用され得る。本明細書で使用される機械可読命令という用語には、ソフトウェア、ハードウェア組み込みロジック、ファームウェア、及びオブジェクトコードなどを包含することが意図される。
【0034】
コンピューティングシステム250は、本明細書で説明される様々な画像処理動作を実行するための特定の命令でプログラムされ得る。コンピューティングシステム250は、例えば、特別にプログラムされた組み込みコンピュータ、ラップトップまたはデスクトップコンピュータなどのパーソナルコンピュータ、あるいはソフトウェアを実行すること、好適な制御コマンドを発行すること、及び/またはリアルタイムで情報を記録することが可能な別の種類のコンピュータであり得る。コンピューティングシステム250は、機器のオペレータに情報を報告する(例えば、発光スペクトル、ピーク強度、ピーク波長、シグネチャピーク、近似曲線、サンプル組成予測、干渉元素組成予測、スペクトル干渉の指標などを表示する)ためのディスプレイ256、オペレータが情報及びコマンドを入力できるようにするための入力デバイス251(例えば、キーボード、マウス、光学画像化システムとのインタフェースなど)、及び/または、システムによって行われた測定値のプリントアウトまたは永久記録を提供するため、及び画像を印刷するためのプリンタ258、を含むか、それらに接続されるか、または通信可能にリンクされ得る。キーボードで入力されたいくつかのコマンドにより、ユーザは、特定のデータ処理タスクを実行することが可能となり得る。いくつかの実施態様では、データ取得及びデータ処理は、自動化され、システムの初期化後、ユーザ入力をほとんど、または全く必要としない。
【0035】
コンピューティングシステム250は、1つまたは複数のプロセッサ263を備え得、これは、コンピュータプログラムの命令を実行して、本明細書で説明される機能のうちのいずれかを実行し得る。命令は、読み出し専用メモリ(ROM)252、ランダムアクセスメモリ(RAM)253、着脱可能媒体254(例えばUSBドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD))、及び/または任意の他の種類のコンピュータ可読媒体またはメモリ(集合的に「電子記憶媒体」と称される)などの、有形の、非一時的コンピュータ媒体に格納され得る。命令はまた、接続された(または内部の)ハードドライブ259または他の種類の記憶媒体に格納されてもよい。コンピューティングシステム250は、ディスプレイデバイス256(例えば生成された画像、発光スペクトル、近似曲線、シグネチャピークなどを表示するため)及びプリンタ258などの1つまたは複数の出力デバイスを備え得、本明細書で説明される動作を実行するための画像プロセッサなどの1つまたは複数の出力デバイスコントローラ255を備え得る。1つまたは複数のユーザ入力デバイス251には、リモコン、キーボード、マウス、タッチスクリーン(ディスプレイデバイス256に統合され得る)などが含まれ得る。コンピューティングシステム250はまた、外部ネットワーク270と通信するためのネットワーク入力/出力(I/O)インタフェース257(例えばネットワークカード)などの1つまたは複数のネットワークインタフェースを備え得る。ネットワークI/Oインタフェース257は、有線インタフェース(例えば電気的インタフェース、RFインタフェース(同軸を介した)、光インタフェース(ファイバを介した))、無線インタフェース、またはこれら2つの組み合わせであり得る。ネットワークI/Oインタフェース257は、外部ネットワーク270を介して通信するように構成されたモデムを備え得る。外部ネットワークには、例えば、ローカルエリアネットワーク、ネットワークプロバイダの無線、同軸、ファイバ、またはハイブリッドファイバ/同軸分配システム(例えばDOCSISネットワーク)、または任意の他の望ましいネットワークが含まれ得る。
【0036】
コンピューティングシステム250の要素のうちの1つまたは複数は、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして実装され得る。コンピューティングシステム250の構成要素を追加、削除、結合、分割などするように、変更が加えられてもよい。さらに、
図2に示される要素は、本明細書で説明されるような動作を実行するように特別に構成されプログラムされたコンピューティングデバイス及び構成要素を使用して、実装され得る。例えば、コンピューティングシステム250のメモリは、コンピュータ実行可能命令を格納し得、コンピュータ実行可能命令は、コンピューティングシステム250のプロセッサ263及び/または1つまたは複数の他のプロセッサにより実行されると、コンピューティングシステム250に、本明細書で説明される動作のうちの1つ、いくつか、または全てを実行させる。このようなメモリ及びプロセッサ(複数可)は、付加的または代替的に、1つまたは複数の集積回路(IC)を介して実装され得る。ICは、例えば、ROMに格納された、及び/またはICに組み込まれたプログラミング命令または他のデータにアクセスするマイクロプロセッサであり得る。例えば、ICは、本明細書で説明される計算及び他の動作専用のゲート及び/または他のロジックを有する特定用途向け集積回路(ASIC)を備え得る。ICは、ゲートまたは他のロジックに組み込まれた他の動作と共に、ROMまたはRAMから読み出されたプログラミング命令の実行に基づいて、いくつかの動作を実行し得る。さらに、ICは、画像データをディスプレイバッファに出力するように構成され得る。
【0037】
コンピューティングシステム250は、プロセッサ263を介して実行するための格納されたプログラム、コード、または命令を含み得る1つまたは複数のアプリケーション260をさらに含むことができる。例えば、アプリケーション260は、様々な機械学習操作を実行するためのツール(例えば、機械学習(ML)ツール261)を含み得、これは、未知のサンプルからのサンプル組成及びスペクトル干渉を判定するためのトレーニング予測モデルを含み得る。アプリケーション260は、発光スペクトルから1つまたは複数のシグネチャピークを検出し、少なくとも1つのシグネチャピークから既知の元素または化合物を特定するためのアプリケーション(元素IDツール262)をさらに含むことができる。アプリケーション260は、分光システム210から受信した発光スペクトルの画像処理に依存することができる。例えば、アプリケーションは、発光スペクトルが外部で(例えば、別のコンピューティングシステムまたはコンピューティングシステム250の別のコンポーネントで)画像処理を受けた後に得られた画像を分析することができる。さらに、または代わりに、アプリケーション260は、プロセッサ263を使用して、さらなる分析を実行するために、発光スペクトルに対して画像処理を実行することができる。
図3は、アプリケーション260によって実行される方法のより詳細な実施形態を提供することができる。
【0038】
図3は、発光スペクトルに基づく予測モデルを使用して未知のサンプル組成を分析するための例示的な方法300を示す。方法300の1つまたは複数のステップは、1つまたは複数のプロセッサを有するコンピュータシステムによって実行することができる(例えば、
図2に示すコンピューティング環境200、及び/または
図1に示すコンピューティングシステム124のように)。さらに、コンピューティングシステムは、例えば、検出器120A、120B、208などを介して、OESシステムから受信したデータ(例えば、発光スペクトル)に基づいて、1つまたは複数のステップを実行することができる。高レベルでは、方法300は、トレーニングフェーズ300A及び適用フェーズ300Bを含み得る。トレーニングフェーズ300Aは、未知のサンプル組成(例えば、サンプルの構成元素及び化合物の同一性及び濃度)を推定することができる予測モデルをトレーニングするための1つまたは複数のステップを含む。以下で説明するように、トレーニングフェーズ300Aは、分光システム210から受信した既知のサンプル組成の発光スペクトルを含む少なくとも1つのトレーニングサンプルに依存することができる。適用フェーズ300Bは、トレーニングフェーズ300Aで形成された予測モデルを使用して、未知のサンプル組成の同一性及び濃度を予測するための1つまたは複数のステップを含む。未知のサンプル組成は、サンプルの所望の構成元素及び化合物の発光にスペクトル干渉を引き起こす可能性がある干渉構成元素及び化合物を含み得ることが理解されるべきである。しかしながら、本明細書に提示されるいくつかの実施形態は、所望の構成元素及び化合物の同一性及び濃度のより正確な推定を提供することによって、干渉元素によって引き起こされるスペクトル干渉を克服する。さらに、本明細書に提示されるいくつかの実施形態は、前述のように、干渉元素を特定する必要性を克服する。
【0039】
ここで、方法300のトレーニングフェーズ300Aを参照すると、ステップ302Aは、既知のサンプル組成の発光スペクトルを含むトレーニングデータセットを受信することを含み得る。サンプルの少なくとも重要な部分を構成する構成元素または化合物の同一性及び濃度が知られている場合、サンプル組成を知ることができる。したがって、トレーニングデータセットには、そのドメインとして、複数のサンプル組成の発光スペクトルを含めることができる。各発光スペクトルは、例えば、シグネチャピークによって特徴付けられるスペクトル領域を含み得る。シグネチャピークは、既知の元素または化合物に関連付けることができる。トレーニングデータセットには、その範囲として、複数のサンプルのそれぞれの構成元素と化合物の同一性と濃度を含めることもできる。いくつかの実施態様では、トレーニングデータセットは、コンピューティングシステムに(例えば、ハードドライブ259内に)格納され得、及び/または他の既知のサンプル組成及びそれらのそれぞれの発光スペクトルに関する情報を介して定期的に更新され得る。MLツール261は、本明細書で説明されるステップを使用して予測モデルを更新及び/またはトレーニングするために使用され得る。いくつかの態様では、トレーニングデータセットは、例えば、外部コンピューティングシステム、サーバ、またはライブラリからコンピューティングシステムに供給され得る。いくつかの実施形態では、受信された発光スペクトルは、例えば、本明細書で論じられる後続のステップのために、画像プロセッサを介してデジタル化及び分析され得る。さらに、発光スペクトル、及びそれらのそれぞれの既知のサンプル組成情報(例えば、サンプル成分の同一性及びそれらのそれぞれの濃度)は、例えば、アプリケーション260のMLツール261のデータ構造内及び/またはハードドライブ259内に格納され得る。
【0040】
ステップ302Bにおいて、コンピューティングシステムは、受信された発光スペクトルからスペクトル領域を特定または判定することができる。スペクトル領域は、シグネチャピークを含む発光スペクトルの領域に基づくことができる。例えば、発光スペクトルは、波長範囲にわたって強度が変動する曲線を含み得る。シグネチャピークには、特定の波長または波長範囲付近で強度が著しく大幅に増加することが含まれる。シグネチャピークは、変動が比較的小さい曲線の他の領域と対照的である可能性がある。
【0041】
いくつかの実施態様では、スペクトル領域及び/またはスペクトル領域のシグネチャピークは、画像処理技術を使用して特定され得る。例えば、そのような技術の1つは、所定の閾値を超える及び/または下回る発光曲線に対応する強度値を検索することを含み得る。別の技術は、発光曲線の極大値または最大値、及び検出された最大値のいずれかの側の対応する極小値を検出することを含み得る。シグネチャピークのスパンに基づいて、スペクトル領域が少なくともシグネチャピークにまたがる波長範囲を含むように、発光曲線をクロッピングすることができる。スペクトル領域は、シグネチャピーク以外のピークを含み得ることが企図される(例えば、シグネチャピークがより弱い強度の1つまたは複数のピークに隣接している場合)。そのような例では、スペクトル領域が少なくともシグネチャピークとシグネチャピークに隣接するマイナーピークにまたがる波長範囲を含むように、発光曲線をクロッピングすることができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、シグネチャピークは、構成元素または化合物に特徴的であり得る。例えば、シグネチャピークの波長または波長範囲は、
図1に関連して以前に議論されたように、原子構造におけるエネルギーレベルを横切る電子遷移の結果として放出されるエネルギーの量を示し得る。各元素及び/または化合物は、固有のエネルギーレベルを有する固有の原子構造を持っているため、これらのエネルギーレベルにわたる電子遷移から放出されるエネルギーも、各元素及び/または化合物に対して固有であり得る。したがって、シグネチャピークの波長または波長範囲を使用して、元素または化合物を特定できる。したがって、該当する場合(例えば、明確なシグネチャピークがある場合)、コンピューティングシステムは、(例えば、ステップ302Cのように)シグネチャピークの波長に基づいてサンプルの成分を特定し得る。
【0043】
各発光スペクトルの特定または判定されたスペクトル領域ごとに、コンピューティングシステムは、成分の濃度を予測するスペクトル領域の1つまたは複数の特徴を判定することができる(例えば、ステップ304)。例えば、1つまたは複数の特徴は、スペクトル領域の生のデータポイントまたはスペクトル領域306Aのシグネチャピーク、スペクトル領域もしくはスペクトル領域のシグネチャピークの上の近似曲線の極大値もしくは最大値(例えば、カーブフィット最大値306B)、またはスペクトル領域の近似曲線の下の面積もしくはスペクトル領域のシグネチャピークの近似曲線の下の面積(カーブフィット面積306C)を含み得るが、これらに限定されない。成分濃度を予測し得る他の特徴は、例えば、スペクトル領域のシグネチャピーク以外のピークに関連付けられたデータを含み得る。例えば、このような特徴には、スペクトル領域のシグネチャピークとは異なるピークの生データポイント、スペクトル領域のシグネチャピークとは異なるピークの上の近似曲線のローカルまたはグローバル最大値、またはスペクトル領域のシグネチャピークとは異なるピークの近似曲線の下の面積が含まれ得る。
【0044】
いくつかの実施態様では、ステップ304は、スペクトル領域からの複数のデータポイントをテストすることによって、成分濃度を最も予測できる高いスペクトル領域の特徴を判定することを含み得る。上記のように、実際の構成元素または化合物は、スペクトル領域のシグネチャピークに基づいて特定でき、トレーニングデータセットは既知のサンプル組成を使用することができるため、濃度はすでに既知であり得る。様々なデータポイントのテストは、畳み込みニューラルネットワークを使用したデータポイントの処理を含むことができ、これには、特徴の重みを、それらが成分の濃度をどれだけ良好に予測するかに基づいて、スペクトル領域の様々なデータポイントに割り当てることが含まれ得る。
【0045】
成分濃度を予測するスペクトル領域の、判定または特定された特徴は、各構成元素または化合物で必ずしも同じであるとは限らない。例えば、トレーニングデータセットは、元素Xに対応するシグネチャピークのカーブフィット最大値がサンプル内の元素のX濃度を最も予測できることを示し得るのに対し、トレーニングデータセットは、元素Yに対応するシグネチャピークのカーブフィット面積がサンプル中の元素Yの濃度を最も予測していることを示している可能性もある。他の実施態様では、成分の濃度を予測するスペクトル領域の特定された特徴は、様々な構成元素または化合物で同じであり得る。特定または判定された特徴は、例えば、MLツールアプリケーション261によって、ハードドライブ259に保存され得る。保存された特徴は、テストフェーズで取得して、未知のサンプルの発光の最も予測できる特徴を判定し、未知のサンプルの組成を判定することができる。
【0046】
サンプルの様々な成分の濃度を予測するスペクトル領域の特徴を特定した後、これらの特徴の値を判定、計算、及び/または測定することができる。
【0047】
ステップ308で、コンピューティングシステムは、成分濃度を予測する判定された特徴の値及びそれぞれの成分濃度に基づいて、トレーニングマトリックスを生成することができる。いくつかの実施態様では、トレーニングマトリックスは、それぞれの既知のサンプル組成及びそのそれぞれの発光スペクトルごとに生成され得る。さらに、または代わりに、既知のサンプル組成及び判定された特徴の値は、マトリックス以外の形式で配置され得る。例えば、成分濃度を予測する判定された特徴の値は、特徴ベクトルとして配置され得る。特徴ベクトルは、特徴が成分濃度をどれだけ良好に予測するかに基づいて、重みの変数を割り当てたり、提供したりすることができる。
図4A~4Cは、トレーニングマトリックスの例示的な実施形態を示している。
【0048】
ステップ310で、コンピューティングシステムは、例えば、トレーニングマトリックスを使用して、予測モデルをトレーニングすることができる。トレーニングは、成分濃度を予測する判定された特徴の値と成分の実際の濃度との間の数学的関係を判定するために、1つまたは複数の機械学習アルゴリズムまたは統計的方法に依存することができる。例えば、トレーニングには、部分最小二乗回帰を使用して、成分の濃度を予測する判定された特徴の値と、成分の実際の濃度との間の数学的関係を判定することが含まれ得る。少なくとも1つの実施形態では、スペクトル領域の様々な特徴の値が、マトリックス中の既知の濃度の様々な成分に対して提供され得る。成分の濃度を最も予測できる特徴、ならびに数学的関係(例えば、傾き)は、マトリックスを介して判定できる。
【0049】
ステップ312は、トレーニングされた予測モデルを電子記憶媒体に記憶することを含み得る。例えば、様々な元素及び化合物の濃度について学習された関係、ならびにそれぞれの様々な元素及び化合物のスペクトル領域からの特徴は、MLツールアプリケーション261によってハードドライブ259上に格納され得る。各元素または化合物は、固有の原子構造が与えられると、電子遷移の結果として固有の発光を提供するため、各元素または化合物は、固有のシグネチャピークの波長または波長範囲によって特定できる。後続のステップでテストサンプルから特定されたスペクトル領域に応じて、スペクトル領域の特徴と濃度の間の数学的関係は、ステップ312で格納されたトレーニング済み予測モデルから取得できる。
【0050】
ここで、方法300のテストフェーズ300Bを参照すると、ステップ314Aは、未知のサンプル組成の発光スペクトルを含むテストデータを受信することを含み得る。既知のサンプル組成の複数のサンプルからの発光スペクトルを含み得るトレーニングデータセットとは対照的に、テストデータは、サンプルの組成の知識が望まれるサンプルの発光スペクトルを含むことができる。さらに、テストデータに対応するサンプルには、対象の分析物と共に、スペクトル干渉を引き起こす可能性のある干渉元素及び化合物が含まれ得る。前述のように、スペクトル干渉補正の従来の方法では、少なくとも干渉元素と化合物の組成(例えば、同一性、濃度など)を知る必要があり得た。トレーニングフェーズ300Aからの予測モデルを使用することにより、本開示の様々な実施形態は、干渉元素及び化合物の組成を知る必要性を克服することができる。さらに、様々な実施形態は、予測モデルを使用してサンプルの発光を分析することによって、スペクトル干渉によって引き起こされる有害な影響を補償するサンプルの組成のより正確な判定を提供する。
【0051】
ステップ314Bで、コンピューティングシステムは、受信された発光スペクトルからスペクトル領域を特定または判定することができる。スペクトル領域は、シグネチャピークを含む発光スペクトルの領域に基づくことができる。例えば、発光スペクトルは、波長範囲にわたって強度が変動する曲線を含み得る。シグネチャピークには、特定の波長または波長範囲付近で強度が著しく大幅に増加することが含まれる。シグネチャピークは、変動が比較的小さい曲線の他の領域と対照的である可能性がある。
【0052】
いくつかの実施態様では、スペクトル領域及び/またはスペクトル領域のシグネチャピークは、画像処理技術を使用して特定され得る。例えば、そのような技術の1つは、所定の閾値を超える及び/または下回る発光曲線に対応する強度値を検索することを含み得る。別の技術は、発光曲線の極大値または最大値、及び検出された最大値のいずれかの側の対応する極小値を検出することを含み得る。シグネチャピークのスパンに基づいて、スペクトル領域が少なくともシグネチャピークにまたがる波長範囲を含むように、発光曲線をクロッピングすることができる。スペクトル領域は、シグネチャピーク以外のピークを含み得ることが企図される(例えば、シグネチャピークがより弱い強度の1つまたは複数のピークに隣接している場合)。そのような例では、スペクトル領域が少なくともシグネチャピークとシグネチャピークに隣接するマイナーピークにまたがる波長範囲を含むように、発光曲線をクロッピングすることができる。
【0053】
シグネチャピークは、構成元素または化合物に特徴的であり得ることを理解されたい。例えば、シグネチャピークの波長または波長範囲は、
図1に関連して以前に議論されたように、原子構造におけるエネルギーレベルを横切る電子遷移の結果として放出されるエネルギーの量を示し得る。各元素及び/または化合物は、固有のエネルギーレベルを有する固有の原子構造を持っているため、これらのエネルギーレベルにわたる電子遷移から放出されるエネルギーも、各元素及び/または化合物に対して固有であり得る。したがって、シグネチャピークの波長または波長範囲を使用して、元素または化合物を特定できる。したがって、該当する場合(例えば、明確なシグネチャピークがある場合)、コンピューティングシステムは、(例えば、ステップ314Cのように)シグネチャピークの波長に基づいてサンプルの成分を特定し得る。
【0054】
各発光スペクトルの特定または判定されたスペクトル領域ごとに、コンピューティングシステムは、成分の濃度を予測するスペクトル領域の1つまたは複数の特徴を判定することができる(例えば、ステップ316)。しかしながら、テストデータの成分濃度は不明であるため、特徴はトレーニングフェーズ300Aから判定できる。(例えば、ステップ314Bから)特定または判定されたスペクトル領域、及び(例えば、ステップ314Cから)スペクトル領域のシグネチャピークから特定された構成元素または化合物に基づいて、コンピューティングシステムは、例えば、ステップ304から、特定された成分の濃度を予測していると判定された特徴を検索することができる。
【0055】
前述のように、1つまたは複数の特徴は、スペクトル領域の生のデータポイントまたはスペクトル領域318Aのシグネチャピーク、スペクトル領域もしくはスペクトル領域のシグネチャピークの上の近似曲線の極大値もしくは最大値(例えば、カーブフィット最大値318B)、またはスペクトル領域の近似曲線の下の面積もしくはスペクトル領域のシグネチャピークの近似曲線の下の面積(カーブフィット面積318C)を含み得るが、これらに限定されない。また、前述のように、成分濃度を予測し得る他の特徴は、例えば、スペクトル領域のシグネチャピーク以外のピークに関連付けられたデータを含み得る。
【0056】
コンピューティングシステムは、未知のサンプルの発光スペクトルのシグネチャピークから特定された構成元素及び/または化合物に基づいて使用する予測特徴の格納されたリストをすでに有している可能性があると考えられる。トレーニングフェーズ300Aに関連して前述したように、格納された予測特徴のリストは、テストデータセットで特定された構成元素と化合物を期せずして有する様々な既知のサンプル組成からのトレーニングに基づいて判定できる。
【0057】
(トレーニングフェーズ300Aの結果に基づいて)成分濃度を最も予測できるように規定されているスペクトル領域の特徴に基づいて、これらの特徴の値を計算及び/または測定することができる。
【0058】
次に、コンピューティングシステムは、トレーニングフェーズでトレーニングされた予測モデルを使用して、ステップ316からの判定された特徴を使用して未知のサンプル組成の成分濃度を推定または予測することができる。少なくとも1つの実施態様では、コンピューティングシステムは、成分濃度を予測する判定された特徴の値に基づいて、特徴ベクトル及び/またはテストマトリックスを生成することができる(例えば、ステップ320のように)。テストデータの成分濃度は不明であるため、特徴ベクトルをステップ312において格納された予測モデルに入力して、テストデータの成分濃度を推定することができる(例えば、ステップ324のように)。例えば、特徴が成分濃度をどれだけ良好に予測するかに基づいて、特徴ベクトルに重みを割り当てることができる。したがって、予測モデルから学習した数学的関係を特徴ベクトルに適用して、テストされている未知のサンプルの構成元素または化合物の濃度を計算することができる。
【0059】
さらに、または代わりに、判定された特徴を使用して、成分濃度がまだ不明であるテストマトリックスを形成することができる。テストマトリックスの例が示され、
図4Dと併せて説明される。(例えば、ステップ322のように)予測モデルをテストマトリックスに適用して、(例えば、ステップ324のように)未知のサンプル組成の成分濃度を推定することができる。推定された成分濃度及びそれらの同一性は、ディスプレイデバイス256を介してコンピューティングシステムのユーザに表示され、ハードドライブ259に格納され、またはプリンタ258を使用して印刷され得る。いくつかの実施態様では、ユーザは、例えば、入力デバイス251を使用して、構成元素または化合物に関するさらなる情報を判定することが可能であり得る。例えば、ユーザは、構成元素または化合物を特定するために使用された発光のシグネチャピークを表示したり、構成元素または化合物の推定濃度の信頼水準を判定したりすることが可能であり得る。
【0060】
テストフェーズ300Bで提示されるステップを使用してその同一性及び濃度が判定または推定される構成元素または化合物は、干渉元素または化合物だけでなく、所望の分析物を含み得ることが企図される。前述のように、従来の方法では、干渉元素または化合物は通常、スペクトル干渉を引き起こすことにより、サンプル組成の正確な測定に影響を与える可能性がある。しかしながら、複数の既知のサンプル組成及びそれらのそれぞれの発光スペクトルの使用を通じてトレーニングされた予測モデルに依存することによって、本開示の様々な実施形態は、スペクトル干渉によって引き起こされる問題を克服する。
【0061】
図4A~4Dは、本開示の様々な態様で使用される予測モデルを生成及び適用するために使用される例示的なトレーニング及びテストマトリックスを示している。
図4A~4Cに示されるトレーニングマトリックス、及び
図4Dに示されるテストマトリックスは、
図3の方法300のトレーニングフェーズ300A及びテストフェーズ300Bのそれぞれの1つまたは複数のステップで使用することができる。例えば、
図4Aに示されるトレーニングマトリックスは、(例えば、
図3のステップ304のように)サンプルの成分の濃度を予測する既知のサンプル組成(例えば、様々な濃度のリチウムサンプル)の発光スペクトルのスペクトル領域の特徴を判定するために使用され得る。
図4B及び4Cは、判定された特徴とサンプル組成(例えば、構成元素または化合物の濃度)との間の予測モデルを判定するためのトレーニングマトリックスにおける判定された特徴(例えば、シグネチャピークのピーク強度)の使用を示す。例えば、
図4B及び4Cはそれぞれ、リチウムの既知のサンプル組成及びカルシウムの既知のサンプル組成についての例示的なトレーニングマトリックスをそれぞれ示している。したがって、
図4B及び4Cのトレーニングマトリックスを使用して、例えば、数学的関係を判定することによって、スペクトル領域からの特徴を使用して未知のサンプル中のリチウム及びカルシウムの濃度を予測するための予測モデルをトレーニングすることができる(例えば、
図3のステップ310のように)。
図4Dに示されるテストマトリックスを使用して、(例えば、
図4B及び4Cに示されるトレーニングマトリックスに基づいて)予測モデルを適用して、未知のサンプル組成の成分濃度を推定するために使用され得る(例えば、ステップ323~324のように)。
【0062】
ここで
図4Aを参照すると、トレーニングマトリックス400を使用して、成分に対応するスペクトル領域の複数の特徴のうち、どの特徴が成分の濃度を予測するための最も予測できる特徴であり得るかを判定することができる。
図4Aに示すように、トレーニングで使用される例示的な成分は、(例えば、マーカー404によって示される)0.2パーツパーミリオン(ppm)の濃度のサンプル及び1ppmの濃度のサンプル中のリチウムである。
【0063】
マトリックスの行402はそれぞれ、リチウムサンプルの発光スペクトルのスペクトル領域の異なる特徴に対応し得る。トレーニングマトリックス400Aなどのトレーニングマトリックスを使用して、成分の濃度を予測するそれらの能力について、異なる特徴をテストすることができる。例えば、第1の行でテストされる特徴は、2つのリチウムサンプルに対応するスペクトル領域のシグネチャピークの最大ポイント(「シグネチャピークのピーク強度」)である。第2の行でテストされる特徴は、2つのリチウムサンプルに対応するスペクトル領域のシグネチャピークの近似曲線の下の面積(「カーブフィット面積」)である。成分のスペクトル領域の他の特徴に対応するために、他の行を追加することができる(例えば、マトリックス400Aに示されるリチウムのように)。したがって、成分の濃度を予測する能力について、様々な特徴をテストできる。
【0064】
マトリックスの列404はそれぞれ、サンプル組成内にあると特定または仮定された成分の異なる濃度に対応し得る。したがって、例示的なトレーニングマトリックス400では、列は、濃度0.2ppmのリチウムサンプル及び濃度1ppmのリチウムサンプルに対応する。前に説明したように、シグネチャピークの波長または波長範囲を使用して、サンプル組成中の特定の元素または化合物の存在を特定または仮定することができる。各成分の各行内で、成分の濃度は、スペクトル領域の濃度と特徴との間の数学的関係の判定において、例えば、成分の濃度を最も予測できる特徴を判定するために使用され得る。トレーニングマトリックスの各エントリについて、成分の濃度がスペクトル領域の特徴に対応する値の上にリストされていることが示されている。トレーニングデータセットで使用されているサンプル組成については成分の濃度がわかっている場合があるが、テストされているサンプル組成については成分の濃度がわからない場合がある。したがって、
図4Dで使用されるテストマトリックスに示されるように、成分X及びYの濃度は未知であり、本明細書に提示される方法を使用して判定されるであろう。
【0065】
図4Aのトレーニングマトリックスに示されるように、特徴F1と成分濃度との間の関係は線形であることが分かる。その濃度1525209の特徴F1の値に対する濃度0.2ppmのリチウムの比率は、1.31*10
-7となるのに対し、その濃度7626044の特徴F1の値に対する濃度1ppmのリチウムの比率は、1.31*10
-7となるので、これが分かる。行406に示すように、判定された数学的関係の線形性と一貫性(例えば、1.31*10
-7の傾き)は、F1が成分の濃度を推定する際にかなり予測度が高いことを示している。対照的に、特徴F2、3の対応する値に対する濃度0.2ppmのリチウムの比率は0.067となり、特徴F2、13の対応する値に対する濃度1ppmのリチウム比率は0.077となる。特徴F2と成分濃度の間の数学的関係は一貫していないため、F2は、成分濃度を推定するためのF1ほど特徴を予測できない可能性がある。それにもかかわらず、スペクトル領域の1つまたは複数の特徴は、特定の構成元素または化合物の濃度をより予測し得るが、他の構成元素または化合物の濃度を予測するほどではない。さらに、スペクトル領域の特徴と成分の濃度との間の数学的関係は、線形である必要はなく、または傾きとして示される必要もない。結果として、予測モデルは傾きのマトリックスに基づく必要はない。特徴F1(例えば、シグネチャピークのピーク強度)が成分の濃度を判定する上で最も予測できると判定した後、特徴と濃度の間の予測モデル(例えば、機械学習アルゴリズム、数学的関係など)を判定する方法は、
図4B及び4Cと併せて説明される。
【0066】
図4Bは、リチウムの既知のサンプル組成のトレーニングデータを備えたマトリックスを示している。トレーニングデータを使用して、組成(例えば、リチウムの濃度)と特徴(例えば、シグネチャピークのピーク強度)の間の予測モデル(例えば、機械学習アルゴリズム、数学的関係など)を判定できる。使用される特定の特徴(例えば、シグネチャピークのピーク強度)は、
図4Aと併せて、上記に提示された方法を使用して判定され得る。
図4Bに示される本例では、シグネチャピークのピーク強度がリチウムの濃度を予測するための最も予測度の高い特徴であると判定されたため、この特徴は、本明細書で説明されるように、予測モデルを判定するために使用される。
【0067】
ここで
図4Bを参照すると、マーカー412A及び412Bは、マトリックスが、リチウムの5つのサンプルのトレーニングデータを含むことを示しており、サンプルは、0.02ppm、0.1ppm、0.2ppm、0.5ppm、及び1ppmの濃度を有している。リチウムの各サンプルの発光スペクトルは、リチウムが共通の成分である結果としての共通性を反映することができる。例えば、リチウムサンプルの発光スペクトルは、特定の波長またはその近くでピーク、増幅、及び/または微小変動を生じさせることができる。マーカー414で示されるように、これらの特定の波長には、例えば、222ナノメートル(nm)、225nm、234nm、238nm、258nm、261nm、274nm、293nm、325nm、327nm、403nm、408nm、422nm、460nm、610nm、及び671nmが含まれ得る。トレーニングマトリックス418は、これらの特定の波長で測定されている発光スペクトルの特徴の値を示し得る。発光スペクトルの特徴には、例えば、ピーク、増幅、及び/または微小変動下での面積か、ピーク、増幅、及び/または微小変動に関連付けられたデータポイント(例えば、最大及び/またはピーク強度、最小強度、変曲点での強度、極大での強度、極小での強度など)か、ピーク、増幅、及び/または微小変動の境界の測定値か、あるいは、ピーク、増幅、及び/または微小変動の近似曲線が含まれ得る。
【0068】
マーカー418に示すように、これらの特定の波長で測定されている特徴は、ピーク強度である。ただし、これらの特定の波長の1つまたは複数でのピーク強度(またはその他の特徴)の値は、例えば、値が閾値を満たさない場合があるため、重要ではない場合がある。マーカー420によって示されるように、閾値を満たさない値は、これらの値のそれぞれに対応する波長でのピーク、増幅、及び/または微小変動をバックグラウンドノイズとして破棄するためにヌル(例えば、「0」)で表現され得る。
【0069】
それにもかかわらず、マーカー422によって示されるように、発光スペクトルのいくつかの波長のピーク強度の値は、(例えば、値が閾値を満たすので)十分に高いものであり得る。リチウムの場合、これらのピーク強度は、マーカー416で示されるように、460nm、610nm、及び671nmの波長またはその近くに集中し得る。これらの波長に対応するピークは、リチウムのシグネチャピークとして特定できる。前に説明したように、既知の各構成元素または化合物は、それらのシグネチャピークによって特定できる。トレーニングマトリックス418は、各サンプル(例えば、それぞれ、0.02ppm、0.1ppm、0.2ppm、0.5ppm、及び1ppmのリチウムサンプル)の発光スペクトルについて、これらのシグネチャピークでの特徴の値(例えば、ピーク強度値)を示し得る。したがって、0.5ppmのリチウムサンプルのシグネチャピークの強度値には、460nmで6,712、610nmで3,813,022、671nmで3,813,022が含まれ得る。
【0070】
トレーニングマトリックス(例えば、マトリックス418)を使用して、成分(例えば、リチウム)の濃度と放出スペクトルの特徴の値(例えば、シグネチャピークでの強度値)との間の予測モデル(例えば、機械学習アルゴリズム、数学的関係など)を判定することができる。マトリックス418に示されるように、サンプル中のリチウムの濃度と、サンプルの発光スペクトルの各シグネチャピークの強度値との間に線形関係があり得る。例えば、波長460nmでのシグネチャピークの強度値は、濃度0.02ppmのリチウムサンプルでは268である。0.1ppmのリチウムサンプルの場合、460nmの波長でのシグネチャピークは1342の強度値をもたらし得る。どちらの例でも、波長460nmまたはその近くのシグネチャピークの場合、強度値に対する濃度の比率は7.5*10
-5である。マトリックス418からわかるように、波長460nmでのシグネチャピークの強度値に対するこの濃度のリチウムの比率は、他の濃度のリチウムにも当てはまり得る。波長610nm及び671nmでのシグネチャピークの場合、強度値は、
図4Bに示されるように、例えば、約152521で、濃度0.02ppmのリチウムサンプルについて同じであり得る。濃度0.1ppmのリチウムサンプルの場合、波長610nm及び671nmでのシグネチャピークの強度値も、例えば、
図4Bに示すように約762604で同じであり得る。これらの両方の濃度の波長610nm及び671nmのシグネチャピークの場合、それぞれのシグネチャピークの強度値に対する濃度の比率は1.3*10
-7である。波長610nm及び671nmでのシグネチャピークの強度値に対するこの濃度のリチウムの比率は、他の濃度(例えば、0.2ppm、0.5ppm、1ppmなど)のリチウムのこれらの波長でのシグネチャピークにも当てはまり得る。
【0071】
したがって、
図4Bに示されるトレーニングマトリックスは、3つのシグネチャピークの特定の線形関係に基づいて、サンプル中のリチウムの濃度を判定するための予測モデルを提供し得る。線形関係は、460nmの波長またはその近くのシグネチャピークの7.5*10
-5の傾きに基づくことができ、610nm及び671nmの波長またはその近くの1.3*10
-7の傾きに基づくことができる。後述するように、これらの線形関係に基づく予測モデルを使用して、テストマトリックスを介して未知のサンプルからリチウムの濃度を判定することができる。
【0072】
上記のように、未知のサンプルの構成元素または化合物は、未知のサンプルの発光スペクトル上のそれらのシグネチャピークによって特定され得る。したがって、トレーニングマトリックス、それらの対応するトレーニングデータ、及びそれらの結果の予測モデルは、化合物または元素ごとに異なり得る。例えば、
図4Bは、リチウムのトレーニングマトリックス及びトレーニングデータを示しており、
図4Cは、カルシウムのトレーニングマトリックス及びトレーニングデータを示している。
【0073】
ここで
図4Cを参照すると、マーカー432A及び432Bは、マトリックスが、カルシウムの5つのサンプルについてのトレーニングデータを含むことを示す(例えば、それぞれ、0.02ppm、0.1ppm、0.2ppm、0.5ppm、及び1ppmの濃度で)。サンプルは、カルシウムがサンプルの共通の成分である結果として、共通性(例えば、シグネチャピーク)を反映する発光スペクトルを生成し得る。発光スペクトルはまた、(例えば、マーカー434によって示されるように)特定の波長でピーク、増幅、及び/または微小変動を生じさせ得る。しかしながら、カルシウムのこれらの特定の波長は、他の元素または化合物の波長と重複する場合と必ずしも重複しない場合がある。トレーニングマトリックス438は、これらの特定の波長で測定されている発光スペクトルの特徴の値を示し得る。
図4Cのトレーニングマトリックス438によって示されるように、測定されている特徴は、ピーク強度である可能性がある。これらの波長の一部でのピーク強度の値は、閾値を満たさないため、重要ではない場合がある。マーカー440A及び440Bによって示されるように、閾値を満たさない値は、それらをバックグラウンドノイズとして破棄するためにヌル(例えば、「0」)で表現され得る。マーカー442によって示されるように、発光スペクトルのいくつかの波長のピーク強度の値は、(例えば、閾値を満たすことによって)十分に高いものであり得、カルシウムのシグネチャピークとして特定され得る。これらのシグネチャピークは、マーカー436で示されるように、393nm及び397nmの波長またはその近くに集中し得る。構成元素及び/または化合物はそれらのシグネチャピークによって特定可能であり得るため、カルシウムのシグネチャピークはリチウムのシグネチャピークとは異なる波長に配置される。トレーニングマトリックス438は、カルシウムの各サンプル(例えば、それぞれ0.02ppm、0.1ppm、0.2ppm、0.5ppm、1ppmの濃度のカルシウムサンプル)の発光スペクトルのこれらのシグネチャピークでのピーク強度を示し得る。
【0074】
カルシウムの濃度と各シグネチャピークの強度値の間にも線形関係があり得る。例えば、波長393nmまたはその近くのシグネチャピークの強度値は、濃度0.02ppmのカルシウムサンプルでは630である。波長393nmまたはその近くのシグネチャピークの場合、濃度0.1ppmのカルシウムサンプルの強度値は3150である。波長393nmまたはその近くの両方の濃度で、強度値に対する濃度の比率は3.2×10
-5である。この比率は、波長393nmまたはその近くにある他のカルシウム濃度のシグネチャピークにも当てはまり得る。波長397nmのシグネチャピークの場合、強度値はまた、濃度0.02ppmのカルシウムサンプルでは630nmであり、また濃度0.1ppmのカルシウムサンプルでは3150nmである。したがって、この波長またはその近くの両方の例では、強度値に対する濃度の比率は3.2×10
-5のままであり得、これらの波長での他のカルシウム濃度にも当てはまり得る。したがって、
図4Cに示されるトレーニングマトリックスは、は、カルシウムの濃度を判定するための予測モデルを提供し得る。しかしながら、
図4Bに示されるリチウムの予測モデルとは異なり、カルシウムの予測モデルは、そのシグネチャピークの両方についての特定の線形関係に基づくことができる。線形関係は、波長393nm及び397nmまたはその近くのシグネチャピークの3.2×10
-5の傾きに基づくことができる。後述するように、これらの線形関係に基づく予測モデルを使用して、未知のサンプルの発光スペクトルのシグネチャピークに基づいてカルシウムが同定された後、テストマトリックスを通して未知のサンプルからのカルシウムの濃度を判定することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、どの特徴がサンプル組成を判定するのに最も予測度が高いかを判定するプロセス(例えば、
図4Aに関連して説明される)、予測特徴と濃度との間の予測モデルを判定するプロセス(例えば、
図4B及び4Cに関連して説明される)との関係を組み合わせることができる。例えば、機械学習アルゴリズムは、成分の既知の濃度に関連付けられた特徴ベクトルまたは特徴マトリックスを使用してトレーニングできる。特徴ベクトルまたは特徴マトリックスは、成分サンプルの発光スペクトルのスペクトル領域の様々な特徴を含み得る。したがって、特徴マトリックスの特徴ベクトルには、例えば、スペクトル領域の下の面積、スペクトル領域に関連付けられたデータポイント(例えば、最大及び/またはピーク強度、最小強度、変曲点での強度、極大での強度、極小での強度など)、スペクトル領域の境界の測定値、及び/またはスペクトル領域のピーク、増幅、及び/または微小変動の、近似曲線が含まれ得る。
【0076】
図4Dは、未知のサンプル組成を判定するために予測モデルを適用するための例示的なテストマトリックスを示している。未知のサンプル組成は、マーカー452A及び452Bに示されるように、未知の濃度[X]及び[Y]を有する未知の成分X及びYを含み得る。未知のサンプルに基づく発光スペクトルが生成される場合がある。未知のサンプルの発光スペクトルには、特定の波長でのピーク、増幅、及び/または微小変動が含まれる場合がある(例えば、マーカー454で示される)。これらの特定の波長は、他の元素または化合物の波長と重複する場合と必ずしも重複しない場合がある。マトリックス460は、これらの特定の波長で測定されている発光スペクトルの特徴の値を示し得る。
図4Dのマトリックス460によって示されるように、測定されている特徴は、ピーク強度である可能性がある。重要ではない値(例えば、閾値を満たさないため)を持つピーク強度は、バックグラウンドノイズとして破棄するために、ヌル(例えば、「0」)で表現され得る。シグネチャピークのクラスター周辺に基づく(例えば、マーカー456及び458のような)シグネチャピーク及び/またはスペクトル領域は、発光スペクトルから特定され得る。特定は、(例えば、閾値を満たすことによって)十分に高い発光スペクトルのいくつかの波長のピーク強度の値に基づくことができる。構成元素及び/または化合物は、それらのシグネチャピークによって、またはそれらのシグネチャピークを含むスペクトル領域によって特定され得る。したがって、393nm及び397nmでのシグネチャピークからなるスペクトル領域456は、カルシウムの存在を示し得る。460nm、610nm、及び671nmのシグネチャピークからなるスペクトル領域458は、リチウムの存在を示し得る。シグネチャピークは、トレーニングデータ(例えば、
図4B及び
図4Cの)ならびに元素及び化合物に関する既知の情報(例えば、シグネチャピーク)に基づいて特定され得る。
【0077】
特定された成分に対応する各スペクトル領域のシグネチャピークのそれぞれについて、ピーク強度(及び/またはシグネチャピークの他の特徴)を測定することができる。したがって、
図4Dに示すように、波長393nm及び397nmでのカルシウムのシグネチャピークは、それぞれ3150の強度をもたらす(例えば、マーカー462で示されているように)。
図4Cと併せて論じたカルシウムの予測モデルに基づいて、カルシウムの濃度と3.2×10
-5の比率に基づく強度値との間に線形関係があり得る。したがって、カルシウムの両方のシグネチャピークの強度値が3150の場合、未知のサンプル中のカルシウムの濃度は0.1ppmであり得る。
【0078】
マーカー464で示されているように、波長460nmでのリチウムのシグネチャピークは6712の強度をもたらす。
図4Bと併せて説明したように、波長460nmまたはその近くのシグネチャピークでのリチウムの予測モデルに基づいて、リチウムの濃度と、7.5×10
-5の比に基づくシグネチャピークの強度値との間に線形関係があり得る。したがって、波長460nmでのシグネチャピークの強度値が6712の場合、未知のサンプルのリチウムの濃度は0.5ppmであり得る。
【0079】
本明細書で説明される方法、システム、及びプロセスは、本明細書で説明される実施例の情報を使用して展開された変形形態及び適応形態を含むことが企図される。本開示は、例示的な実施態様を参照して具体的に示され説明されたが、請求される主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更が本開示において行われてもよいことが、当業者には理解されよう。
【0080】
説明全体を通して、システム及び構成物が特定の構成要素を有する、含む、または備えると説明される場合、あるいはプロセス及び方法が特定のステップを有する、含む、または備えると説明される場合、挙げられた構成要素から基本的に成る、または挙げられた構成要素から成る本開示のシステム及び構成物が存在すること、ならびに挙げられた処理ステップから基本的に成る、または挙げられた処理ステップから成る本開示のプロセス及び方法が存在することが、さらに企図される。
【国際調査報告】