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特表2023-505387体細胞をリプログラムするための方法およびキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】体細胞をリプログラムするための方法およびキット
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/074 20100101AFI20230201BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20230201BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20230201BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20230201BHJP
   C07K 14/435 20060101ALN20230201BHJP
【FI】
C12N5/074 ZNA
C12M3/00 Z
A61K35/545
A61P25/00
A61P19/00
A61L27/38 300
C07K14/435
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552688
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 US2020060071
(87)【国際公開番号】W WO2021096998
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/933,926
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522183803
【氏名又は名称】越智 厚雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】越智 厚雄
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C081
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029AA21
4B029BB11
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BC41
4B065BD38
4B065BD39
4B065CA44
4C081AB02
4C081AB18
4C081CD34
4C081EA11
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB64
4C087NA20
4C087ZA01
4C087ZA96
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA32
4H045CA50
4H045DA83
4H045EA60
(57)【要約】
本発明は、体細胞を多能性幹細胞様細胞にリプログラムするための方法に関する。そのような細胞は、外因性の遺伝子、タンパク質、または化学物質を導入することなく、Oct4、NanogおよびSox2を含む多能性誘導遺伝子を発現する可能性がある。体細胞における機械感受性伸展活性化イオンチャネルの阻害が多能性誘導因子遺伝子を特異的に活性化するという発見は、体細胞を阻害剤、GsMTX4とともに、機械感受性伸展活性化イオンチャネルに対してインキュベートし、軟質ヒドロゲル表面で培養するか、コレステロール枯渇物質、メチル-ベータ-シクロデキストリン(MβCD)で処理する細胞リプログラミング培養方法を引き出した。記載されている方法は、多能性幹細胞様細胞を産生し、続いて、脂肪細胞、骨細胞、神経細胞を含む細胞に再分化する。体細胞リプログラミングの効率を高めるために、方法を組み合わせることができる。体細胞リプログラミングキットはまた、ヒドロゲル(脱水)およびMβCDでキャストされた組織培養ディッシュで作成された。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非多能性哺乳動物細胞を人工多能性幹細胞に誘導する方法であって、
前記非多能性哺乳動物細胞を、以下:
a.前記哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
b.前記哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤;
c.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
の2つまたはそれより多くと接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記非多能性哺乳動物細胞が、多能性誘導因子を発現するように遺伝子操作されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、GsMTX4のLエナンチオマー、GsMTX4のDエナンチオマー、GsMTX4の配列と少なくとも90%同一である配列を有するペプチド、またはそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、GsMTX4である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約5μMの濃度である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞コレステロール低減剤が、シクロデキストリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シクロデキストリンが、メチル-β-シクロデキストリンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シクロデキストリンが、約5mMの濃度である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞外マトリックスが、約15kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞外マトリックスが、約7.4kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記人工多能性幹細胞が、脂肪細胞、神経細胞、骨細胞、内皮細胞、赤血球、樹状細胞、血小板、リンパ球、および筋芽細胞からなる群より選択される細胞型に分化することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
遺伝子Oct4、NanogおよびSox2の1つまたは複数の前記発現が、前記非多能性哺乳動物細胞と比較して前記人工多能性幹細胞で誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
2番目の非多能性細胞型を有する細胞の単離集団を含む医薬組成物であって、前記細胞が、1番目の非多能性細胞型から動物細胞を変換する組成物により得られ、前記組成物が、
a.前記非多能性哺乳動物細胞を、以下:
i.前記哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
ii.前記哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤;
iii.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
の2つまたはそれより多くと接触させること、
および
b.ステップ(a)からの前記細胞の前記2番目の非多能性細胞型への分化を誘導すること
により1番目の細胞型の非多能性哺乳動物細胞を人工多能性幹細胞に誘導することを含む、医薬組成物。
【請求項14】
a.細胞培養培地、
b.以下:
i.哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
ii.前記哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤
の1つまたは両方で処理された1つまたは複数の前記哺乳動物細胞;および
c.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
を含む細胞培養容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月11日に出願された米国仮特許出願第62/933,926号の優先権を主張するものである。
【0002】
2. 配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている配列表を含む。2020年11月11日に作成された前記ASCIIコピーは、001WO_SL_ST25.txtと名付けられ、サイズが26,627バイトである。
【0003】
本発明は、一般に、分化能を保持する多能性幹細胞様細胞になる体細胞をリプログラムする方法に関する。記載の方法、試薬、組成物、幹細胞様細胞ならびに神経細胞、脂肪細胞、筋肉細胞および骨細胞などの分化した細胞は、再生療法を必要とする種々の疾患を処置するために使用される。
【背景技術】
【0004】
変性疾患の分子および細胞メカニズムの現在の理解をするため、多能性幹細胞および分化した細胞は、再生医療の進歩に対応するために大きな需要となっている。
【0005】
多細胞生物の恒常性メカニズムの下で、最終的に分化して損傷した細胞は、プログラム細胞死により除去されるが、除去されたものは、同じ機能を保持する新規に分化した細胞で即座に置き換えられる。細胞死が、病原性の環境内で、または大部分の組織が喪失している組織の損傷により、新規細胞の生成を上回る場合、再生療法は、喪失した組織を回復して、臓器機能を修復するために不可欠になる。多能性分化能を保持する胚盤胞における幹細胞の存在の発見は、分化した細胞を生成して、喪失した臓器の一部または臓器全体を再構築することができる再生幹細胞療法を確立するための挑戦を促した。以下に列記するものは、再生療法に適用するのに有用な種々の種類の細胞を生成するために、エクスビボでの操作を通じて分化能を保持すると現在認識されている細胞源である。
【0006】
胚性幹細胞(ES細胞)
ES細胞は、ヒトまたはマウスの初期胚、胚盤胞に由来する多能性細胞であり[Evans and Kaufman,Nature,292:154(1981);Martin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:7634(1981)]、生体内に存在する全種類の細胞に分化する能力を維持しながら、長期間にわたってインビトロで培養することができる特有の特徴を有している。ヒト胚性幹細胞は、上述した特性を利用する、パーキンソン病、若年性糖尿病、および白血病などの種々の疾患のための細胞移植療法に有用であると期待されている。しかし、ES細胞の移植は、臓器移植と同様に、拒絶反応を引き起こす問題を有している。さらに、倫理的観点から、ヒト胚を破壊することにより確立されるES細胞の使用に対する多くの反対意見がある。
【0007】
造血幹細胞
造血幹細胞は、血液または骨髄から単離された細胞であり、それ自体で更新することができ、種々の特化された細胞に分化することができ、骨髄を循環血液に移動することができ、プログラム細胞死を実行することができ、それによって有害であるか不要である細胞が自己破壊する。骨髄内の100,000細胞ごとに約1つの細胞は、長期の造血性の幹細胞であり、骨髄に存在する他の細胞には、間質細胞、間質幹細胞、血液前駆細胞、ならびに成熟した、および成熟する白血球細胞および赤血球細胞が含まれる。
【0008】
間葉系幹細胞(MSC)
MSCは、組織または骨髄間質細胞および臍帯細胞および脂肪由来間質/幹細胞を含む「成体」幹細胞の一例である。それらは、1種類より多くではあるが全ての種類ではない、体の特化された細胞を産生することができることを意味する「多能性」である。MSCは、骨格細胞において認められる異なる特化された細胞を作製成する。例えば、それらは、軟骨細胞(軟骨細胞(chondrocyte))、骨細胞(骨芽細胞)および脂肪細胞(脂肪細胞(adipocyte))に分化または特化することができる。これらの特化された細胞は、それぞれ、独自の特徴的な形状、構造および機能を有し、それぞれ、特定の組織に属する。MSCの分化能が、心筋修復、ならびに骨および神経細胞の修復のような種々の疾患における細胞療法に有用である可能性があることを示唆するが、精製された間葉系幹細胞の増殖は、個体、年齢および組織の起源の間で一致していない。さらに、細胞の増殖は、数回の継代後に低下し、多数の細胞の調製には、問題がある。
【0009】
人工多能性幹細胞
患者自身の分化した体細胞の分化が、多能性およびES細胞と類似の増殖能を有する細胞を確立するために誘導される可能性がある場合、そのような人工多能性幹細胞(iPSC)を、拒絶反応または倫理的困難がない理想的な多能性細胞として使用することができる[米国特許第10,017,744号]。山中グループにより最初に報告されたiPSC[Takahashi and Yamanaka,Cell 126:663(2006);米国特許第8,048,999号]は、胚性幹細胞の明確な特性を維持するために重要な遺伝子および因子を強制的に発現させることにより、胚性幹細胞様状態に遺伝子的にリプログラムされたマウス成体細胞である。ヒトiPSCは、2007年後期に最初に報告された[Takahashi et al.,Cell 131:861(2007);米国特許公開第2013/0065311号]。マウスiPSCは、幹細胞マーカーの発現、3つの胚葉すべてからの細胞を含む腫瘍の形成、および発生の非常に早い段階でマウス胚に注入された場合に多くの異なる組織に寄与することができることを含む、多能性幹細胞の重要な特徴を示した。ヒトiPSCはまた、幹細胞マーカーを発現し、3つの胚葉すべてに特徴的な細胞を生成することができる。iPSCは、多能性幹細胞の定義基準に合致しているが、iPSCおよび胚性幹細胞が臨床的に重要な方法において異なるかは知られていない。
【0010】
モロニーマウス白血病ウイルスおよびレンチウイルスは、元来、成体細胞にリプログラミング因子を導入するために使用されていた[米国特許第8,440,461号]。このプロセスが、結果として、ウイルスの組込みとなるので、技術が癌の発生の可能性を回避するためにヒトにとって有用な処置をもたらすことができる前に調節して試験する必要がある。動物研究において、幹細胞因子を導入するために使用されるウイルスは、時として癌を引き起こす。アデノウイルスおよびセンダイウイルスは、非組込みウイルス(non-integrating virus)であり、また、因子(PIF)を成体細胞に誘導する多能性を導入するために使用されたが、リプログラミング効率は低い[Zhou and Freed,Stem Cells.27:2667(2009);Chen et al.,Cell Reprogram.15:503(2013)]。ウイルス感染およびゲノム組込みに基づくリプログラミング法を非ウイルス送達戦略に採用するための研究者らによるチャレンジは、結果として、体細胞における遺伝子発現を誘導する一過性の多能性を誘導するための代替技術となった。それらは、エピソーム、RNAおよび組換えタンパク質を使用するリプログラミング因子送達システムであるが、それぞれ、(タンパク質に基づく送達システムについて)低効率または調製における困難などの欠点を有する[Woltjen et al.,Nature 458:766(2009);米国特許公開第2018/0072999号;Kogut I.et al.Nature Communications 9:745(2018);米国特許公開第2013/0302295号;国際特許公開第WO2009/077134号;Zhou H.et al.,Cell Stem Cell 4:381(2009);米国特許第9,068,170号]。これらの技術は、発生運命が以前決定されていると想定されていた細胞を「脱分化」することを可能にする。iPSC技術は、リプログラミング因子を導入することにより、ヒト疾患のモデリング、薬剤開発およびスクリーニング、ならびに個別化された再生細胞療法のために患者固有の幹細胞を生成する機会を与える。
【0011】
化学的に支援され、リプログラムされた体細胞(ciPSC)
PI遺伝子発現のためのウイルスベクターおよび腫瘍遺伝子の使用は、診療所におけるこれらの細胞の安全な使用について正当な関心事を生じている。したがって、当分野は、新規化学物質/小分子(<900ダルトン)に基づくリプログラミング戦略にシフトしている。最初に報告されたのは、化学的に支援されたciPSCの生成であり、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤バルプロ酸(VPA)を使用することにより、癌遺伝子c-MycおよびKlf4(4つの山中因子のうちの2つ)の必要性を排除し、また、リプログラミング効率が、4つの転写因子法[Huangfu et al.,Nat.Biotechnol.,26:1269(2008);米国特許第9,982,237号]の100倍に増加したことが認められている。他方で、研究は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)阻害剤BIX-01294を使用して、原形質膜のカルシウムチャネルを活性化し、Dingの研究室からの4つの山中因子を使用するリプログラミング効率を改善した[Armond et al.,Sci.Rep.,4:3692(2014);Shi et al.,Cell Stem Cell,3:568 2008);Shi et al.,Cell Stem Cell,2:525(2008);Lin et al.,Nat.Methods.,6:805(2009)]。初代ヒト線維芽細胞(CRL2097またはBJ)上のトランスフォーミング増殖因子-β(TGFβ)受容体およびMAPK/ERKキナーゼ(MEK)の阻害剤は、4つの山中因子をコードする遺伝子を保持するレトロウイルスで形質導入された[オーストラリア特許出願第2015201026号]。それらは、7つの小分子の組み合わせにより、処置から1週間以内にヒト線維芽細胞からのiPSC生成の効率が200倍よりも高く改善することを示した。続いて、いくらかの群は、Sox2、Klf4およびc-Mycを必要とせずに、単一の転写因子Oct4の存在下で3週間以内にマウス胚および成体線維芽細胞からのリプログラミングを可能にするのに充分であった、特定の化学物質の組み合わせを同定した[Li et al.,Cell Res.,21:196(2011);Yuan et al.,Stem Cells,29:549(2011);Zhu et al.,Cell Stem Cell,7:651(2010)]。このプロトコルを使用して開発されたiPSCは、多能性遺伝子の発現、エピジェネティックな状態、およびグローバルな遺伝子発現プロファイルの点で、マウスES(mES)細胞に類似である。
【0012】
Houらは、7つの小分子化合物VC6TFZ:VPA、CHIR99021(CHIR)、616452、トラニルシプロミン、フォルスコリン(FSK)、2-メチル-5-ヒドロキシトリプタミン(2-Me-5HT)、およびD4476の組み合わせを使用して最大0.2%の効率でマウス胚性線維芽細胞(MEF)からのマウスiPSCのすべての化学的生成を最初に報告した[Hou et al.,Science,341:651(2013);国際特許公開第WO2015/003643号]。この方法は、また、山中のiPSCプロトコル(0.01%~0.1%)と比較してより高い誘導効率を有していた。化学的人工多能性幹細胞(ciPSC)は、mES細胞と類似のグローバル遺伝子発現プロファイルを示した。この研究は、小分子を使用することにより、マスターレギュレーター遺伝子の異所性発現が細胞運命のリプログラミングに必要ではないという原理の証明を提供し、したがって、細胞療法のための機能的に望ましい細胞型を生成する際に潜在的に使用される全化学的リプログラミング戦略への道を示す。ciPSCを生成するためにこれまで使用されてきたほとんどの小分子は、エピジェネティック修飾因子、細胞シグナル伝達およびアポトーシスの修飾因子、wingless統合部位増殖因子(WNT)シグナル調節因子、細胞老化の調節因子、または代謝の調節因子として分類することができる。
【0013】
特異的様式の細胞培養により誘導された幹細胞様表現型細胞
組織微小環境内の核リプログラミングイベントは、多くの発生過程および組織維持にとって重要である[Halley-Stott et al.,Development,140:2468(2013);Reik et al.,Science,293:1089(2001);Lamouille et al.,Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.,15:178(2014)]。画期的な実験において、生物学的因子は、インビトロでの体細胞のiPSCへの核リプログラミングを誘導することが示された[Takahashi and Yamanaka,Cell,126:663(2006);De Matteis et al.,Stem Cells,27:2761(2009);Downing et al.,Nat.Mater.,12:1154(2013)]。しかし、インビトロで、細胞は、外因性因子の非存在下で異なる系統に分化形質転換し、局所的な機械化学的因子が重要な要素であり得、そのような変化を誘導するのに充分であることを示唆する[Guo et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,111:5252(2014)]。これと一致して、最近の結果は、リプログラミング因子と組み合わせた位置特異的なパターンで、または異なる基板剛性で細胞を培養すると、結果として核リプログラミングの有効性が高まることになる[Su, et al.,Biomaterials,34:3215(2013);Kilian et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,107:4872(2010);Engler et al.,Cell,126:677(2006);Mitra et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,114:3882(2017)]ことを示している。しかし、核リプログラミングにおける生化学的因子の非存在下で異なる機械的手がかりにより果たされる役割は、充分に確立されていない。機械的制約(例えば、基板剛性および細胞形態)は、細胞増殖、アポトーシス、および分化を含む多くの細胞プロセスを制御するのに不可欠である[Chen et al.,Science,276:1425(1997);McGrail et al.,FASEB J.,29:1280(2015);Kshitiz et al.,Integr Biol.,4:1008(2012);Kumar et al.,PLoS One 7:e33089(2012)]。生物物理学的力は、上皮から間葉系への変形を調節する上で重要であることが示されている[Desprat et al.,Dev Cell,15:470(2008)]。マトリックス剛性、細胞形状、および表面形状はすべて、インビトロで幹細胞分化を指示することが示されている[McGrail et al.,FASEB J.,29:1280(2015);Kshitiz et al.,Integr Biol.,4:1008(2012);米国特許公開第2008/0187995号]。加えて、発生中のショウジョウバエ胚に力を適用することを含むインビボ実験は、組織のメカニズムを変更することで、分化プログラムを変更することができることを示している[Kumar et al.,PLoS One,7:e33089A(2012);Desprat et al.,Dev Cell,15:470(2008)]。まとめると、これらの結果は、幹細胞分化を指示する上で生物物理学的手がかりの重要性を強調する。
【0014】
本明細書で使用されるように、以下の用語は、定められた意味を有するものとする。それ以外の場合、すべての用語は、関連技術の当業者により通常与えられる意味を有するものとする。
【0015】
用語「胚盤胞」は、胚が発生する内部細胞塊と呼ばれる細胞のクラスターを含む初期胚発生における薄壁の中空構造を指す。
【0016】
用語「多能性誘導遺伝子」は、その発現が、体細胞を多能性状態にリプログラムするのに寄与する遺伝子を指す。
【0017】
用語「多能性誘導因子」は、多能性誘導遺伝子の発現生成物を指す。多能性誘導因子は、多能性因子である可能性があるが、そうである必要はない。外因的に導入された多能性誘導因子の発現は、一過性である可能性がある、すなわち、それは、多能性を誘導するためおよび/または安定した多能性状態を確立するために、リプログラミングプロセスの少なくとも一部の間に必要である可能性があるが、その後、多能性を維持する必要はない。インビトロで体細胞を多能性にリプログラムするための目的のPIFの例は、Ocl4、Nanog、Sox2、Lin28、Kit’d、c-hfyc、および体細胞をインビトロでリプログラムする方法においてこれらの1つまたは複数を置き換えることができる任意の遺伝子/タンパク質である。
【0018】
用語「リプログラミング因子」は、細胞リプログラミングに、例えばインビトロで促進または寄与する遺伝子、RNA、またはタンパク質を指す。
【0019】
用語「ヒドロゲル」は、大量の水または生物体液を吸収することができる三次元の親水性ポリマーネットワークであることを指す。それらの高い水分含量、多孔性、および柔らかい粘稠度のため、それらは、天然の生体組織を厳密にシミュレートする。
【0020】
用語「機械感受性伸展活性化イオンチャネル(MSAIC)」は、正電荷イオン(すなわちカチオン)を、例えばチャネルを発現する細胞に適用される機械的な力または圧力に応答して細胞に出入りする通過を可能にするように開くイオンチャネルを指す。本明細書で使用されるように、その用語はまた、機械的に活性化されたカチオンチャネルのポリペプチド成分、例えば、カチオンチャネルのサブユニットも含む。いくらかの実施形態において、本発明の機械的に活性化されたカチオンチャネルは、ニューロンなどの細胞を含むが、それらに限定されない、疼痛伝達などの感覚伝達に関与する。
【0021】
用語「幹細胞」は、培養中に無期限で分割して特化された細胞を生じさせる能力を有する細胞を指す。
【0022】
用語「体細胞」は、配偶子(卵子または精子)以外の任意の体細胞を指す。
【0023】
用語「胚性幹細胞」は、着床前段階の胚に由来し、培養中に長期間分化することなく分割することができ、3つの主要な胚葉の細胞および組織に発生することが知られている初期(未分化)細胞を指す。
【0024】
用語「分化」は、特化されていない胚性細胞が心臓細胞、肝臓細胞、または筋肉細胞などの特化された細胞の特徴を獲得するプロセスを指す。分化は、細胞の遺伝子の、細胞の外側の物理的および化学的条件との相互作用により、通常は、細胞表面に埋め込まれたタンパク質を含むシグナル伝達経路を通じて制御される。
【0025】
用語「多能性」は、臓器のすべての組織に分化することができるが、単独では完全な生物の発生を維持することができない単一細胞の状態を指す。
【0026】
用語「人工多能性幹細胞」は、ある特定の胚性遺伝子の体細胞への導入により形成された、胚性幹細胞と類似の一種の多能性幹細胞を指す。
【0027】
用語「核リプログラミング」は、核を新規細胞質環境に導入することにより実験的に導入される遺伝子活性における変化を記述すること、細胞の分化状態が、別の状態に変化するプロセスを指す。
【0028】
用語「多能性幹細胞様細胞」は、PI因子を発現する細胞を指す。
【0029】
用語「山中因子」は、胚性幹(ES)細胞において高度に発現される一連の遺伝子、Oct3/4、Sox2、Klf4およびc-Mycを指し、それらの過剰発現は、マウス体細胞およびヒト体細胞の両方に多能性を誘導することができ、これらの因子がES細胞の多能性に必要な発生シグナル伝達ネットワークを調節することを示唆する。
【0030】
用語「シクロデキストリン」は、α-(1,4)結合したグルコピラノースサブユニットで構成される環状多糖類のファミリーを指す。シクロデキストリン(CD)は、有用な分子キレート剤である。それらは、クリプタンド、カリックスアレーン、シクロファン、スフェランドおよびクラウンエーテルから形成される構造と同じである、ケージ様の超分子構造を保持する。超分子構造を有するこれらの化合物は、相互作用する分子、イオンまたはラジカルの間に共有結合が形成されない分子間相互作用を含む化学反応を実行する。これらの反応すべての大部分は、「ホスト-ゲスト」型である。上述したすべての超分子ホストと比較して、シクロデキストリンは、最も重要である。それらの包接錯体形成能のため、それらが複雑になる材料の特性を大幅に変更することができる。分子錯化現象の結果として、CDは、多くの工業製品、技術、および分析方法に幅広く使用されている。CDの無視できる細胞毒性効果は、薬物担体、食品および香料、化粧品、包装、布、分離プロセス、環境保護、発酵および触媒などの用途において重要な性質である。
【発明の概要】
【0031】
本発明は、機械感受性伸展活性化イオンチャネル(MSAIC)に特異的な阻害が、体細胞(骨髄細胞)における一連のPIFの発現を活性化させ、続いて、細胞が多能性幹細胞様表現型を獲得するようにする発見に基づく。発見によるさらなる教示は、体細胞がMSAICの阻害後、2つの種類、1)16時間以内にPIFの発現を増加させるもの(例えば、骨髄細胞)および2)PIFの発現を抑制するものに分割するができることであった。線維芽細胞などの2番目の種類の細胞が、細胞コレステロール含量を低減するMβCDで処理される場合、PIFの発現は、1番目の種類の細胞のように16時間内のMSAIC阻害後に増加した。追加の発見は、MSAIC阻害が継続する場合、PIFの発現を低減する2番目の種類の細胞が72時間まで最終的にPIF発現を増加させたことを示した。したがって、MSAICの持続的な阻害が、体細胞における転写因子の発現を活性化し、多能性幹細胞様表現型を獲得した。MSAICの阻害に続いて幹細胞様表現型を誘導する可能性は、MSAICシグナル伝達を弱める実験条件により調査された。試験されたものは、1)GsMTX4によりMSAICを阻害すること、2)ポリアクリルアミドゲルで製造された軟質マトリックス上で細胞を培養すること、ならびに3)体細胞をMβCDなどのコレステロール枯渇化合物で処理することであった。すべてのアプローチは、MSAICの弱化が幹細胞様表現型に必要な転写因子のレパートリーを誘導し、また新規表現型を有する「再」分化細胞を示した、本発明の原理の証拠を提供した。インビトロ培養における分化した細胞の新規表現型は、脂肪細胞、骨形成細胞、筋肉細胞、腱形成細胞、ニューロン、ミクログリア、内皮細胞、赤血球前駆細胞などを含んでいた。最後に、この原理の適用により、ソフトゲルおよびコレステロール枯渇化学物質を含む体細胞リプログラミングキットの調製が可能になった。本発明は、Oct4、Nanog、Sox2およびc-Mycを含むが限定されない転写因子を発現し、続いて形態学的に多様な体細胞に分化する幹細胞様細胞を生成し、したがって、本発明が再生医療に著しく有益であることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、骨髄細胞におけるMSAIC阻害剤、GsMTX4によるPI遺伝子特異的活性化を示す。
図2図2は、細胞外マトリックスの特定の剛性率が骨髄細胞におけるPI遺伝子の誘導を引き起こしたことを示す。
図3図3は、GsMTX4の存在下で16時間培養した脾臓細胞におけるPI遺伝子発現の抑制を示す。
図4図4は、新鮮な骨髄細胞において観察されるようにGsMTX4に対する類似の応答を示す骨髄間質細胞株を示す。
図5図5は、脾臓細胞で観察されたのと類似のGsMTX4に対する応答を示す胚性線維芽細胞株を示す。
図6図6は、GsMTX4を用いる3日目の培養物での脾臓細胞におけるPI遺伝子の活性化を示す。
図7図7は、GsMTX4を用いる3日目の培養物でのEF細胞におけるPI遺伝子の活性化を示す。
図8図8は、MβCDを用いる脾臓細胞の処理が、骨髄細胞と同様にGsMTX4に対するPI遺伝子応答を変更することを示す。
図9図9A図9Bは、ヒドロゲル上の球体および溶解した球体細胞の顕微鏡検査を示す。図1Aは、16時間のインキュベーション後のヒドロゲル上の球体を示す。図1Bは、14日後にヒドロゲル上の円形細胞クラスターに溶解した球体を示す。
図10図10A図10Cは、ヒドロゲル上の球体およびディッシュ底面上の細胞のPI遺伝子のメッセージ分析を示す。図10Aは、Oct4遺伝子発現を示す;図10Bは、Nanog遺伝子発現を示す;および図10Cは、Sox2遺伝子発現を示す。
図11図11は、1000bpsでのOct4特異的RT-PCRフラグメントのヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。
図12図12は、マウスOct4の登録されたゲノムヌクレオチド配列(配列番号2)を示す。
図13図13は、1000bpsでのNanog特異的RT-PCRフラグメントのヌクレオチド配列(配列番号3)を示す。
図14図14は、マウスNanogの登録されたゲノムヌクレオチド配列(配列番号4)を示す。
図15図15A図15Bは、経時的なMβCD処理済みEF細胞の形態およびPI遺伝子発現の変化を示す。図15Aは、経時的な形態学的変化を示す;図15Bは、PI遺伝子の誘導動態を示す。
図16図16は、EF細胞の顕微鏡画像を示す。
図17図17A図17Eは、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで分化させた脂肪細胞様細胞を示す。図17Aは、褐色脂肪細胞を示す;図17Bは、白色脂肪細胞を示す;図17-C-Eは、オイルレッドO染色脂肪細胞を示す。
図18図18A図18Cは、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで分化させた骨芽細胞を示す。
図19図19A図19Dは、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで分化させた神経細胞様細胞を示す。図19Aは、皮質ニューロンを示す;図19Bは、星状細胞を示す;図19Cは、ミクログリアを示す;図19Dは、オリゴデンドロサイトを示す。
図20図20は、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで分化させた内皮細胞様細胞を示す。
図21図21A図21Fは、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで分化させた細胞クラスターを示す。図21Aは、星状細胞様細胞を示す;図21Bは、ミクログリア様細胞を示す;図21Cは、非分類細胞のクラスターを示す。細胞型は、形態学に基づいて標識された。
図22図22A図22Cは、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで発生させた神経細胞のネットワークを示す。細胞型は、形態学に基づいて標識された。
図23図23A図23Dは、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで分化させた分類されない凝集した細胞クラスターを示す。
図24図24は、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで分化および成熟させた脂肪細胞クラスターを示す。
図25】MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで分化させた筋芽細胞様細胞。
図26図26A図26Bは、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで分化させた腱細胞/前駆細胞様細胞を示す。細胞型は、形態学に基づいて標識された。
図27図27A図27Eは、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞に由来するインビトロで発生させた細胞の配置を示す。
図28図28は、組織培養ディッシュのポリスチレン表面上の球体からの細胞の分化を示す。
図29図29A図29Cは、体細胞を幹細胞様細胞にリプログラムし、デノボ表現型細胞に分化させるためのプロトコルを示す。
図30図30は、ポリアクリルアミドゲルでキャストされたペトリ皿および落し蓋(矢印)を示す。
図31図31A図31Eは、MβCD細胞およびヒドロゲルで処理されたヒト末梢血単核細胞に由来する未成熟赤血球様および巨核球/血小板様細胞のインビトロ発生を示す。図31A図31Bは、赤血球様細胞のクラスターを示す;図31C図31Eは、巨核球/血小板様細胞のクラスターを示す。
図32図32は、体細胞リプログラミングキットで指示された体細胞リプログラミングクラスターセッティングを示す。
図33図33は、ポリアクリルアミドゲル上に体細胞を播種する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1)非多能性細胞を1つまたは複数のコレステロール枯渇剤と接触させること、2)非多能性細胞を1つまたは複数のMSAIC阻害剤と接触させること、3)軟質マトリックス上で細胞を培養すること、または4)前述のいずれかの組み合わせにより非多能性細胞から多能性細胞を産生するための方法が本明細書で提供される。組み合わせが利用される場合、ステップは、順次または同時に実行することができる。特定の実施形態において、方法は、1)非多能性細胞を1つまたは複数のコレステロール枯渇剤と接触させることおよび非多能性幹細胞を1つまたは複数のMSAIC阻害剤と接触させること、2)非多能性細胞を1つまたは複数のコレステロール枯渇剤と接触させることおよび細胞を軟質マトリックス上で培養すること、ならびに3)非多能性細胞を1つまたは複数のMSAIC阻害剤と接触させることおよび細胞を軟質マトリックス上で培養することを含む。一実施形態において、細胞を軟質マトリックス上で培養する前に、コレステロール枯渇剤を、非多能性細胞と接触させる。特定の実施形態において、細胞を例えばチューブで懸濁させている間に細胞をコレステロール枯渇剤と接触させる。別の実施形態において、細胞を軟質マトリックス上で培養する前に、細胞をMSAIC阻害剤と接触させる。一実施形態において、細胞を軟質マトリックス上で培養するのと同時に、細胞をMSAIC阻害剤と接触させる。特定のコレステロール枯渇剤およびMSAIC阻害剤を、細胞との接触のそれらの濃度および時間とともに、以下に提供する。同様に、kPaで測定されたマトリックスの柔軟性の度合いを、以下に提供する。
【0034】
種々の非多能性細胞は、開示された方法にしたがって誘導することができる。ヒト細胞を含む哺乳動物細胞が好ましい。細胞型には、ヒト線維芽細胞およびヒト末梢血単核細胞が含まれる。一実施形態において、非多能性細胞は、Oct4、NanogおよびSox2などの多能性誘導因子を発現するように遺伝的に修飾されていない細胞である。一実施形態において、多能性誘導因子を発現するように遺伝的に修飾されていない非多能性細胞は、哺乳動物細胞である。一実施形態において、多能性誘導因子を発現するように遺伝的に修飾されていない非多能性細胞は、ヒト細胞である。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の遺伝子、Oct4、NanogおよびSox2の発現は、非多能性哺乳動物細胞と比較して、多能性幹細胞で誘導される。
【0035】
種々の非多能性細胞は、開示された方法にしたがって誘導することができる。ヒト細胞を含む哺乳動物細胞が好ましい。細胞型には、ヒト線維芽細胞およびヒト末梢血単核細胞が含まれる。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の遺伝子、Oct4、NanogおよびSox2の発現は、非多能性哺乳動物細胞と比較して、多能性幹細胞で誘導される。
【0036】
MSAIC阻害剤
本発明の一実施形態は、非多能性細胞をMSAIC阻害剤と接触させることにより非多能性(体)細胞で多能性を誘導する方法を提供する。ある特定の実施形態において、MSAIC阻害剤は、体細胞で、Oct4、Nanog、Sox2およびc-Mycを含むが限定されないPIFの転写を活性化する。MSAIC阻害剤は既知であり、ガドリニウム、ルテニウムレッド、およびGsMTX4を含む。一実施形態において、MSAIC阻害剤は、ピエゾ1伸展活性化チャネルの阻害剤である。MSAIC阻害剤の好ましい実施形態は、GsMTX4である。GsMTX4は、クモ毒から精製された水溶性の34merペプチドである。水溶性阻害剤は、PIFの発現が、インビトロ培養においてDMSOにより抑制されることが認められたため、DMSOのみに溶解するものが好ましい[Czysz et al.,PLoS One 10(2)(2015)]。理論に縛られることなく、GsMTX4を用いるMSAICの阻害が、ポリスチレン細胞培養表面(本質的に無限の伸長力を保持する)上での微小環境を段階分けし、軟質細胞外マトリックスと接触している細胞の環境をシミュレートすると仮定される。
【0037】
ある特定の実施形態において、細胞は、MSAIC阻害剤と、少なくとも1μM、約10μMから約1μM、10μMから1μM、約7μMから約3μM、7μMから3μM、約5μMまたは5μMの濃度で接触する。特定の実施形態において、MSAIC阻害剤は、約10μMから約1μM、10μMから1μM、約7μMから約3μM、7μMから3μM、約5μMまたは5μMの濃度でのGsMTX4である。好ましい実施形態において、細胞は、GsMTX4と5μMの濃度で接触する。
【0038】
ある特定の実施形態において、細胞は、MSAIC阻害剤と、少なくとも12時間、約12時間から約96時間、12時間から20時間、約16時間、16時間、24時間から96時間、48時間から96時間、約72時間、または72時間接触する。一実施形態において、細胞は、GsMTX4と、5μMの濃度で16時間接触する。別の実施形態において、細胞は、GsMTX4と5μMの濃度で72時間接触する。
【0039】
ある特定の実施形態において、細胞は、MSAIC阻害剤と約4℃から42℃の温度、約20℃から40℃の温度、約37℃の温度、37℃の温度、約25℃の温度、または25℃の温度で接触する。
【0040】
コレステロール枯渇剤
本発明の一実施形態は、非多能性細胞をコレステロール枯渇剤と接触させることにより非多能性(体)細胞において多能性を誘導する方法を提供する。ある特定の実施形態において、コレステロール枯渇剤は、体細胞で、Oct4、Nanog、Sox2およびc-Mycを含むが限定されないPIFの転写を活性化する。コレステロール枯渇剤は、メチル-β-シクロデキストリン(MβCD)ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン(HPαCD)、およびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)などのシクロデキストリンを含む。
【0041】
GsMTX4などのMSAIC阻害剤を用いる処理は、体細胞を2つの種類に分割し、1番目は、PIFを16時間以内に発現するが、2番目は、抑制の期間後に遅延した様式でPIFを発現する。本発明の一実施形態は、コレステロール枯渇剤を用いて処理することにより、インビトロで2番目の種類の細胞を1番目の種類に変化させる方法を提供する。一実施形態において、コレステロール枯渇剤は、シクロデキストリンファミリーに属するものである。好ましい実施形態において、細胞コレステロールは、MβCD(環状オリゴ糖)を用いる処理により枯渇される。細胞コレステロールの枯渇の後、GsMTX4での処理は、2番目の種類の体細胞におけるPI因子を16時間以内に活性化する。したがって、また、2番目の種類の体細胞を、GsMTX4での処理に続いてすでに多能性幹細胞様細胞にリプログラミング可能である1番目の種類の体細胞に変換する方法も、本明細書で提供される。本発明の追加の実施形態は、体細胞を多能性幹細胞様細胞にリプログラムするための細胞コレステロール枯渇剤およびMSAIC阻害剤の相乗利用を提供する。相乗効果を引き起こす好ましい実施形態は、MβCDおよびGsMTX4を使用する。
【0042】
ある特定の実施形態において、細胞は、コレステロール枯渇剤と、少なくとも1mM、約10mMから約1mM、10mMから1mM、約7mMから約3mM、7mMから3mM、約5mMまたは5mMの濃度で接触する。特定の実施形態において、コレステロール枯渇剤は、約10mMから約1mM、10mMから1mM、約7mMから約3mM、7mMから3mM、約5mMまたは5mMの濃度でのMβCDである。好ましい実施形態において、細胞は、MβCDと5mMの濃度で接触する。
【0043】
ある特定の実施形態において、細胞は、コレステロール枯渇剤と、少なくとも12時間、約12時間から約96時間、12時間から20時間、約16時間、16時間、24時間から96時間、48時間から96時間、約72時間、または72時間接触する。一実施形態において、細胞は、MβCDと5mMの濃度で20分間接触する。
【0044】
ある特定の実施形態において、細胞は、コレステロール枯渇剤と、約4℃から42℃の温度、約20℃から40℃の温度、約37℃の温度、37℃の温度、約25℃の温度、または25℃の温度で接触する。
【0045】
軟質細胞外マトリックス
本発明の別の実施形態は、細胞を軟質細胞外マトリックス上で培養することにより、体(非多能性)細胞に多能性を誘導する方法を提供する。一実施形態において、細胞におけるPIFの発現は、軟質細胞外マトリックス上で培養することで誘導される。好ましい実施形態において、軟質細胞外マトリックスは、ヒドロゲルで製造される。本発明の実施形態は、ヒドロゲルが、ポリアクリルアミドゲルまたはシリコンゲルであることを示唆する。ポリアクリルアミドゲルの柔軟性は、水、アクリル、およびビス-アクリルアミドの比率を変更することにより調整可能である。上記に示すように、PIFの誘導は、特定の範囲の(パスカルにより示される)柔軟性に依存する。異なる種類の細胞は、本開示の教示により与えられる知識の利益を有する当業者により決定可能である、細胞外マトリックスの異なる柔軟性を必要とする可能性がある。
【0046】
本発明の一実施形態は、軟質細胞外マトリックス上でのインビトロ培養において、PIFであるOct4およびNanogの非スプライシングメッセージを発現する前駆体多能性幹細胞様細胞を維持する方法を提供した。
【0047】
好ましい実施形態において、本発明は、7.4kパスカル(kPa)、3.2kPaおよび1.7kPaでの柔軟性の例を提供し、3.2kPaが好ましい実施形態である。異なる実施形態において、細胞外マトリックスは、約20kPa以下、約15kPa以下、約10kPa以下、約7.4kPa以下、約3.2kPa以下、約1.7kPa以下、約1kPa以下、20kPa以下、15kPa以下、10kPa以下、7.4kPa以下、3.2kPa以下、1.7kPa以下、1kPa以下、20kPa、15kPa、10kPa、7.4kPa、3.2kPa、1.7kPa、20kPa、15kPa、10kPa、7.4kPa、3.2kPa、1.7kPa、1kPaのヤング弾性率を有する。
【0048】
分化した細胞
したがって、本発明の一実施形態は、10%ノックアウト血清代替物、1×非必須アミノ酸、および5×10-5Mの2-メルカプトエタノールを添加した培地DMEM/F12で体細胞の種類を分化させる方法を提供する。分化した細胞の例には、オイルレッドO陽性白色脂肪細胞および褐色脂肪細胞、神経細胞、アリザリン陽性骨芽細胞が含まれる。
【0049】
例えば、褐色脂肪細胞は、同時に大量の多様な栄養素(例えば、グルコース、脂質、アミノ酸)を摂取して消費し、同化代謝および異化代謝の両方に同時に携わることができるので肥満症の治療に需要がある[Payab,M.et al.Int J Obes(2020)https://doi.org/10.1038/s41366-020-0616-5]。本明細書で提供される方法は、多能性細胞を、脂肪細胞、神経細胞、骨細胞、内皮細胞、赤血球、樹状細胞、血小板、リンパ球、および筋芽細胞を含む種々の細胞型に分化する方法を含む。神経細胞の場合、神経細胞型は、皮質ニューロン、星状細胞、ミクログリア、およびオリゴデンドロサイトを含むことができる。多能性細胞を誘導して異なる系統に分化させる方法は既知であり、本開示の技術にしたがって作成された多能性細胞を分化させるのに使用することができる。
【0050】
上記の本発明の実施形態は、複数の方法を組み合わせて機械感受性伸展活性化イオンチャネルを弱める方法を提供した(図29)。例えば、胚性線維芽細胞をMβCDで処理し、その後、ポリアクリルアミドで製造された軟質ヒドロゲル上で培養した。別の実施例において、胚性線維芽細胞をGsMTX4で処理し、その後、ポリアクリルアミドで製造された軟質ヒドロゲルで培養した。一実施形態において、細胞-コレステロール枯渇化合物および軟質細胞外マトリックスの併用は、より頻繁なリプログラミングおよび新規に分化された表現型を保持する細胞の出現の増加を誘導する。追加の実施形態において、体細胞リプログラミングキットが提供され、その構成要素は、コレステロール枯渇剤、例えばMβCD、および低弾性ヒドロゲル、例えばポリアクリルアミドをペトリ皿に含む。特定の実施形態において、ポリアクリルアミドゲルは、3.5cm径のペトリ皿にキャストした後、空気乾燥する。リプログラミング培地を用いる乾燥したポリアクリルアミドの再水和は、低弾性細胞培養マトリックス表面を調製する。固定量のコレステロール枯渇剤、例えばMβCD粉末を、培地を含む試験管中で溶解することにより、コレステロール枯渇溶液を調製する。一実施形態において、コレステロール枯渇剤と接触した体細胞は、コレステロール含量を低下させ、低弾性ポリアクリルアミドゲルで培養して幹細胞様細胞を生成する。
【0051】
また、開示された方法にしたがって産生された多能性細胞、開示された方法にしたがって産生された分化した細胞を含む医薬組成物、およびその方法で使用した試薬、例えば組織培養培地および細胞培養容器も提供する。細胞培養容器は、ディッシュ、ボトル、プレートおよびマルチウェルプレートを含む。
【0052】
全体として、本発明の実施形態は、体細胞をPSC様細胞にリプログラムし、その後、それらを再生医療に有用な種々の体細胞に細分化させる新規方法および必要なツールを提供した。本発明が、本明細書に提示される実施形態のいずれかの1つまたは複数の任意の態様、または1つもしくは複数の態様の任意の組み合わせを包含することが企図される。
【0053】
8. 実施形態
明示的に企図される実施形態には、以下が含まれる:
1.非多能性哺乳動物細胞を人工多能性幹細胞に誘導する方法であって、非多能性哺乳動物細胞を以下:
a.哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
b.哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤;
c.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
の2つまたはそれより多くと接触させることを含む、方法。
2.非多能性哺乳動物細胞が、多能性誘導因子を発現するように遺伝子操作されていない、実施形態1の方法。
3.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、GsMTX4のLエナンチオマー、GsMTX4のDエナンチオマー、GsMTX4の配列と少なくとも90%同一である配列を有するペプチド、またはそれらの混合物からなる群より選択される、実施形態1の方法。
4.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、GsMTX4である、実施形態1の方法。
5.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約10μMから約1μMの濃度である、実施形態3の方法。
6.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、10μMから1μMの濃度である、実施形態3の方法。
7.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約7μMから約3μMの濃度である、実施形態3の方法。
8.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、7μMから3μMの濃度である、実施形態3の方法。
9.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約5μMの濃度である、実施形態3の方法。
10.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、5μMの濃度である、実施形態3の方法。
11.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と約12時間から約96時間接触する、実施形態3の方法。
12.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と12時間から20時間接触する、実施形態3の方法。
13.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と約16時間接触する、実施形態3の方法。
14.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と16時間接触する、実施形態3の方法。
15.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と24時間から96時間接触する、実施形態3の方法。
16.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と48時間から96時間接触する、実施形態3の方法。
17.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と約72時間接触する、実施形態3の方法。
18.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と72時間接触する、実施形態3の方法。
19.細胞コレステロール低減剤が、シクロデキストリンである、実施形態1の方法。
20.シクロデキストリンが、メチル-β-シクロデキストリンである、実施形態19の方法。
21.シクロデキストリンが、約10mMから約1mMの濃度である、実施形態20の方法。
22.シクロデキストリンが、10mMから1mMの濃度である、実施形態20の方法。
23.シクロデキストリンが、約7mMから約3mMの濃度である、実施形態20の方法。
24.シクロデキストリンが、7mMから3mMの濃度である、実施形態20の方法。
25.シクロデキストリンが、約5mMの濃度である、実施形態20の方法。
26.シクロデキストリンが、5mMの濃度である、実施形態20の方法。
27.細胞が、シクロデキストリンと約15分間から約60分間接触する、実施形態20の方法。
28.細胞が、シクロデキストリンと15分間から60分間接触する、実施形態20の方法。
29.細胞が、シクロデキストリンと約20分間から約40分間接触する、実施形態20の方法。
30.細胞が、シクロデキストリンと20分間から40分間接触する、実施形態20の方法。
31.細胞が、シクロデキストリンと約15分間から約30分間接触する、実施形態20の方法。
32.細胞が、シクロデキストリンと20分間から30分間接触する、実施形態20の方法。
33.細胞が、シクロデキストリンと約20分間接触する、実施形態20の方法。
34.細胞が、シクロデキストリンと20分間接触する、実施形態20の方法。
35.細胞が、シクロデキストリンと約30分間接触する、実施形態20の方法。
36.細胞が、シクロデキストリンと30分間接触する、実施形態20の方法。
37.細胞外マトリックスが、約15kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態1の方法。
38.細胞外マトリックスが、約10kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態1の方法。
39.細胞外マトリックスが、約7.4kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態1の方法。
40.細胞外マトリックスが、約3.2kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態1の方法。
41.細胞外マトリックスが、約1.7kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態1の方法。
42.細胞外マトリックスが、約1kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態1の方法。
43.細胞外マトリックスが、約15kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態3の方法。
44.細胞外マトリックスが、約10kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態3の方法。
45.細胞外マトリックスが、約7.4kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態3の方法。
46.細胞外マトリックスが、約3.2kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態3の方法。
47.細胞外マトリックスが、約1.7kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態3の方法。
48.細胞外マトリックスが、約1kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態3の方法。
49.細胞外マトリックスが、約15kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態19の方法。
50.細胞外マトリックスが、約10kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態19の方法。
51.細胞外マトリックスが、約7.4kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態19の方法。
52.細胞外マトリックスが、約3.2kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態19の方法。
53.細胞外マトリックスが、約1.7kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態19の方法。
54.細胞外マトリックスが、約1kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態19の方法。
55.細胞外マトリックスが、ヒドロゲルである、実施形態1の方法。
56.細胞外マトリックスが、ポリアクリルアミドゲルである、実施形態55の方法。
57.細胞外マトリックスが、シリコンゲルである、実施形態1の方法。
58.人工多能性幹細胞が、脂肪細胞、神経細胞、骨細胞、内皮細胞、赤血球、樹状細胞、血小板、リンパ球、および筋芽細胞からなる群より選択される種類型に分化することができる、実施形態1の方法。
59.多能性幹細胞が、神経細胞に分化することができ、神経細胞型が、皮質ニューロン、星状細胞、ミクログリア、およびオリゴデンドロサイトからなる群より選択される、実施形態58の方法。
60.非多能性哺乳動物細胞が、線維芽細胞および末梢血単核細胞からなる群より選択されるヒト細胞である、実施形態1の方法。
61.遺伝子Oct4、NanogおよびSox2の1つまたは複数の発現が、非多能性哺乳動物細胞と比較して人工多能性幹細胞で誘導される、実施形態1の方法。
62.非多能性哺乳動物細胞を人工多能性幹細胞に誘導する方法であって、非多能性哺乳動物細胞を以下:
a.哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
b.哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤;
c.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
の2つまたはそれより多くと接触させることを含み;
非多能性哺乳動物細胞が、多能性誘導因子を発現するように遺伝子操作されておらず;
存在する場合、1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約5μMの濃度でのGsMTX4を含み;
存在する場合、1つまたは複数のコレステロール低減剤が、約5mMの濃度でのメチル-β-シクロデキストリンであり;および
存在する場合、軟質細胞外マトリックスが、約7.5kPaのヤング弾性率を有する
方法を含む、実施形態。
63.非多能性哺乳動物細胞を人工多能性幹細胞に誘導する方法であって、非多能性哺乳動物細胞を以下:
a.哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
b.哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤;
c.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
の2つまたはそれより多くと接触させることを含み;
非多能性哺乳動物細胞が、多能性誘導因子を発現するように遺伝子操作されておらず;
存在する場合、1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約5μMの濃度でのGsMTX4を含み、非多能性哺乳動物脂肪が、GsMTX4と約16時間接触し;
存在する場合、1つまたは複数のコレステロール低減剤が、約5mMの濃度でのメチル-β-シクロデキストリンであり、非多能性哺乳動物細胞が、メチル-β-シクロデキストリンと約20分間接触し;および
存在する場合、軟質細胞外マトリックスが、約7.5kPaのヤング弾性率を有する
方法を含む、実施形態。
64.人工多能性幹細胞が、脂肪細胞、神経細胞、骨細胞、内皮細胞、赤血球、樹状細胞、血小板、リンパ球、および筋芽細胞からなる群より選択される細胞型に分化することができる、実施形態62の方法。
65.多能性幹細胞が、神経細胞に分化することができ、神経細胞型が、皮質ニューロン、星状細胞、ミクログリア、およびオリゴデンドロサイトからなる群より選択される、実施形態62の方法。
66.非多能性哺乳動物細胞が、線維芽細胞および末梢血単核細胞からなる群より選択されるヒト細胞である、実施形態62の方法。
67.遺伝子Oct4、NanogおよびSox2の1つまたは複数の発現が、非多能性哺乳動物細胞と比較して人工多能性幹細胞で誘導される、実施形態62の方法。
68.人工多能性幹細胞が、脂肪細胞、神経細胞、骨細胞、内皮細胞、赤血球、樹状細胞、血小板、リンパ球、および筋芽細胞からなる群より選択される細胞型に分化することができる、実施形態63の方法。
69.多能性幹細胞が、神経細胞に分化することができ、神経細胞型は、皮質ニューロン、星状細胞、ミクログリア、およびオリゴデンドロサイトからなる群より選択される、実施形態63の方法。
70.非多能性哺乳動物細胞が、線維芽細胞および末梢血単核細胞からなる群より選択されるヒト細胞である、実施形態63の方法。
71.遺伝子Oct4、NanogおよびSox2の1つまたは複数の発現が、非多能性哺乳動物細胞と比較して人工多能性幹細胞で誘導される、実施形態63の方法。
72.2番目の非多能性細胞型を有する細胞の単離集団を含む医薬組成物であって、細胞が、1番目の非多能性細胞型から動物細胞を変換する組成物により得られ、組成物が、
a.非多能性哺乳動物細胞を、以下:
i.哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
ii.哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤;
iii.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
の2つまたはそれより多くと接触させること、
および
b.ステップ(a)からの細胞の2番目の非多能性細胞型への分化を誘導すること
により1番目の細胞型の非多能性哺乳動物細胞を人工多能性幹細胞に誘導することを含む、医薬組成物。
73.1番目の非多能性哺乳動物細胞も2番目の非多能性哺乳動物細胞も、多能性誘導因子を発現するように遺伝子操作されていない、実施形態72の組成物。
74.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、GsMTX4のLエナンチオマー、GsMTX4のDエナンチオマー、GsMTX4の配列と少なくとも90%同一である配列を有するペプチド、またはそれらの混合物からなる群より選択される、実施形態72の組成物。
75.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、GsMTX4である、実施形態72の組成物。
76.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約10μMから約1μMの濃度である、実施形態74の組成物。
77.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、10μMから1μMの濃度である、実施形態74の組成物。
78.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約7μMから約3μMの濃度である、実施形態74の組成物。
79.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、7μMから3μMの濃度である、実施形態74の組成物。
80.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約5μMの濃度である、実施形態74の組成物。
81.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、5μMの濃度である、実施形態74の組成物。
82.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と約12時間から約96時間接触する、請求項74に記載の実施形態。
83.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と約12時間から約20時間接触する、実施形態74に記載の組成物。
84.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と約16時間接触する、実施形態74に記載の組成物。
85.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と16時間接触する、実施形態74に記載の組成物。
86.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と24時間から96時間接触する、実施形態74に記載の組成物。
87.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と48時間から96時間接触する、実施形態74に記載の組成物。
88.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と約72時間接触する、実施形態74に記載の組成物。
89.細胞が、機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤と72時間接触する、実施形態74に記載の組成物。
90.細胞コレステロール低減剤が、シクロデキストリンである、実施形態72の組成物。
91.シクロデキストリンが、メチル-β-シクロデキストリンである、実施形態90の組成物。
92.シクロデキストリンが、約10mMから約1mMの濃度である、実施形態91の組成物。
93.シクロデキストリンが、10mMから1mMの濃度である、実施形態91の組成物。
94.シクロデキストリンが、約7mMから約3mMの濃度である、実施形態91の組成物。
95.シクロデキストリンが、7mMから3mMの濃度である、実施形態91の組成物。
96.シクロデキストリンが、約5mMの濃度である、実施形態91の組成物。
97.シクロデキストリンが、5mMの濃度である、実施形態91の組成物。
98.細胞が、シクロデキストリンと約15分間から60分間接触する、実施形態91の組成物。
99.細胞が、シクロデキストリンと15分間から60分間接触する、実施形態91の組成物。
100.細胞が、シクロデキストリンと約20分間から約40分間接触する、実施形態91の組成物。
101.細胞が、シクロデキストリンと20分間から40分間接触する、実施形態91の組成物。
102.細胞が、シクロデキストリンと約15分間から約30分間接触する、実施形態91の組成物。
103.細胞が、シクロデキストリンと20分間から30分間接触する、実施形態91の組成物。
104.細胞が、シクロデキストリンと約20分間接触する、実施形態91の組成物。
105.細胞が、シクロデキストリンと20分間接触する、実施形態91の組成物。
106.細胞が、シクロデキストリンと約30分間接触する、実施形態91の組成物。
107.細胞が、シクロデキストリンと30分間接触する、実施形態91の組成物。
108.細胞外マトリックスが、約15kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態72の組成物。
109.細胞外マトリックスが、約10kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態72の組成物。
110.細胞外マトリックスが、約7.4kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態72の組成物。
111.細胞外マトリックスが、約3.2kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態72の組成物。
112.細胞外マトリックスが、約1.7kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態72の組成物。
113.細胞外マトリックスが、約1kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態72の組成物。
114.細胞外マトリックスが、約15kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態74の組成物。
115.細胞外マトリックスが、約10kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態74の組成物。
116.細胞外マトリックスが、約7.4kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態74の組成物。
117.細胞外マトリックスが、約3.2kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態74の組成物。
118.細胞外マトリックスが、約1.7kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態74の組成物。
119.細胞外マトリックスが、約1kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態74の組成物。
120.細胞外マトリックスが、約15kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態90の組成物。
121.細胞外マトリックスが、約10kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態90の組成物。
122.細胞外マトリックスが、約7.4kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態90の組成物。
123.細胞外マトリックスが、約3.2kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態90の組成物。
124.細胞外マトリックスが、約1.7kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態90の組成物。
125.細胞外マトリックスが、約1kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態90の組成物。
126.細胞外マトリックスが、ヒドロゲルである、実施形態72の組成物。
127.細胞外マトリックスが、ポリアクリルアミドゲルである、実施形態126の組成物。
128.細胞外マトリックスが、シリコンゲルである、実施形態72の組成物。
129.2番目の非多能性細胞型が、脂肪細胞、神経細胞、骨細胞、内皮細胞、赤血球、樹状細胞、血小板、リンパ球、および筋芽細胞からなる群より選択される、実施形態72の組成物。
130.2番目の非多能性細胞型が、皮質ニューロン、星状細胞、ミクログリア、およびオリゴデンドロサイトからなる群より選択される神経細胞型である、実施形態129の組成物。
131.1番目の非多能性細胞型が、線維芽細胞および末梢血単核細胞からなる群より選択されるヒト細胞である、実施形態72の組成物。
132.遺伝子Oct4、NanogおよびSox2の1つまたは複数の発現が、1番目の非多能性細胞型で誘導される、実施形態72の組成物。
133.2番目の非多能性細胞型を有する細胞の単離集団を含む医薬組成物であって、細胞が、1番目の非多能性細胞型から動物細胞を変換する組成物により得られ、組成物が、
a.非多能性哺乳動物細胞を、以下:
i.哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
ii.哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤;
iii.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
の2つまたはそれより多くと接触させること、
および
b.ステップ(a)からの細胞の2番目の非多能性細胞型への分化を誘導すること
により1番目の細胞型の非多能性哺乳動物細胞を人工多能性幹細胞に誘導することを含み;
非多能性哺乳動物細胞は、多能性誘導因子を発現するように遺伝子操作されておらず;
存在する場合、1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約5μMの濃度でのGsMTX4を含み;
存在する場合、1つまたは複数のコレステロール低減剤が、約5mMの濃度でのメチル-β-シクロデキストリンであり;および
存在する場合、軟質細胞外マトリックスが、約7.5kPaのヤング弾性率を有する
医薬組成物。
134.2番目の非多能性細胞型が、脂肪細胞、神経細胞、骨細胞、内皮細胞、赤血球、樹状細胞、血小板、リンパ球、および筋芽細胞からなる群より選択される細胞型である、実施形態133の組成物。
135.2番目の非多能性細胞型が、神経細胞型であり、神経細胞型が、皮質ニューロン、星状細胞、ミクログリア、およびオリゴデンドロサイトからなる群より選択される、実施形態133の組成物。
136.1番目の非多能性細胞型が、線維芽細胞および末梢血単核細胞からなる群より選択されるヒト細胞である、実施形態133の組成物。
137.遺伝子Oct4、NanogおよびSox2の1つまたは複数の発現が、1番目の非多能性細胞型に誘導される、実施形態133の組成物。
138.2番目の非多能性細胞型を有する細胞の単離集団を含む医薬組成物であって、細胞が、1番目の非多能性細胞型から動物細胞を変換する組成物により得られ、組成物が、
a.非多能性哺乳動物細胞を、以下:
i.哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
ii.哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤;
iii.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
の2つまたはそれより多くと接触させること、
および
b.ステップ(a)からの細胞の2番目の非多能性細胞型への分化を誘導すること
により1番目の細胞型の非多能性哺乳動物細胞を人工多能性幹細胞に誘導することを含み;
非多能性哺乳動物細胞が、多能性誘導因子を発現するように遺伝子操作されておらず;
存在する場合、1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約5μMの濃度でのGsMTX4を含み、非多能性哺乳動物脂肪が、GsMTX4と約16時間接触し;
存在する場合、1つまたは複数のコレステロール低減剤が、約5mMの濃度でのメチル-β-シクロデキストリンであり、非多能性哺乳動物細胞が、メチル-β-シクロデキストリンと約20分間接触し;および
存在する場合、軟質細胞外マトリックスが、約7.5kPaのヤング弾性率を有する、医薬組成物。
139.2番目の非多能性細胞型が、脂肪細胞、神経細胞、骨細胞、内皮細胞、赤血球、樹状細胞、血小板、リンパ球、および筋芽細胞からなる群より選択される細胞型である、実施形態138の組成物。
140.2番目の非多能性細胞型が、神経細胞型であり、神経細胞型が、皮質ニューロン、星状細胞、ミクログリア、およびオリゴデンドロサイトからなる群より選択される、実施形態138の組成物。
141.1番目の非多能性細胞型が、線維芽細胞および末梢血単核細胞からなる群より選択されるヒト細胞である、実施形態138の組成物。
142.遺伝子Oct4、NanogおよびSox2の1つまたは複数の発現が、1番目の非多能性細胞型に誘導される、実施形態138の組成物。
143.a.細胞培養培地、
b.以下:
i.哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
ii.哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤
の1つまたは両方で処理された1つまたは複数の哺乳動物細胞;および
c.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
を含む細胞培養容器。
144.哺乳動物細胞が、多能性誘導因子を発現するように遺伝子操作されていない、実施形態143の容器。
145.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、GsMTX4のLエナンチオマー、GsMTX4のDエナンチオマー、GsMTX4の配列と少なくとも90%同一である配列を有するペプチド、またはそれらの混合物からなる群より選択される、実施形態143の容器。
146.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、GsMTX4である、実施形態143の容器。
147.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約10μMから約1μMの濃度である、実施形態145の容器。
148.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、10μMから1μMの濃度である、実施形態145の容器。
149.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約7μMから約3μMの濃度である、実施形態145の容器。
150.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、7μMから3μMの濃度である、実施形態145の容器。
151.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約5μMの濃度である、実施形態145の容器。
152.機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、5μMの濃度である、実施形態145の容器。
153.細胞コレステロール低減剤が、シクロデキストリンである、実施形態143の容器。
154.シクロデキストリンが、メチル-β-シクロデキストリンである、実施形態153の容器。
155.シクロデキストリンが、約10mMから約1mMの濃度である、実施形態154の容器。
156.シクロデキストリンが、10mMから1mMの濃度である、実施形態154の容器。
157.シクロデキストリンが、約7mMから約3mMの濃度である、実施形態154の容器。
158.シクロデキストリンが、7mMから3mMの濃度である、実施形態154の容器。
159.シクロデキストリンが、約5mMの濃度である、実施形態154の容器。
160.シクロデキストリンが、5mMの濃度である、実施形態154の容器。
161.細胞外マトリックスが、約15kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態143の容器。
162.細胞外マトリックスが、約10kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態143の容器。
163.細胞外マトリックスが、約7.4kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態143の容器。
164.細胞外マトリックスが、約3.2kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態143の容器。
165.細胞外マトリックスが、約1.7kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態143の容器。
166.細胞外マトリックスが、約1kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態143の容器。
167.細胞外マトリックスが、約15kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態145の容器。
168.細胞外マトリックスが、約10kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態145の容器。
169.細胞外マトリックスが、約7.4kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態145の容器。
170.細胞外マトリックスが、約3.2kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態145の容器。
171.細胞外マトリックスが、約1.7kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態145の容器。
172.細胞外マトリックスが、約1kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態145の容器。
173.細胞外マトリックスが、約15kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態153の容器。
174.細胞外マトリックスが、約10kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態153の容器。
175.細胞外マトリックスが、約7.4kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態153の容器。
176.細胞外マトリックスが、約3.2kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態153の容器。
177.細胞外マトリックスが、約1.7kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態153の容器。
178.細胞外マトリックスが、約1kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する、実施形態153の容器。
179.細胞外マトリックスが、ヒドロゲルである、実施形態143の容器。
180.細胞外マトリックスが、ポリアクリルアミドゲルである、実施形態179の容器。
181.細胞外マトリックスが、シリコンゲルである、実施形態143の容器。
182.a.細胞培養培地、
b.以下:
i.哺乳動物細胞のイオンチャネルを阻害するのに充分な量の1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤;
ii.哺乳動物細胞のコレステロールレベルを低減するのに充分な量の1つまたは複数の細胞コレステロール低減剤
の1つまたは両方で処理された1つまたは複数の哺乳動物細胞;および
c.20kPaまたはそれより小さいヤング弾性率を有する軟質細胞外マトリックス
を含み、
非多能性哺乳動物細胞が、多能性誘導因子を発現するように遺伝子操作されておらず;
存在する場合、1つまたは複数の機械感受性伸展活性化イオンチャネル阻害剤が、約5μMの濃度でのGsMTX4を含み;
存在する場合、1つまたは複数のコレステロール低減剤が、約5mMの濃度でのメチル-β-シクロデキストリンであり;および
存在する場合、軟質細胞外マトリックスが、約7.5kPaのヤング弾性率を有する、細胞培養容器。
183.体細胞における内因性多能性誘導転写因子の発現を増加させる方法であって、細胞膜受容体のシグナル伝達を修飾することを含む、方法。
184.体細胞が、線維芽細胞である、実施形態183の方法。
185.多能性誘導転写因子が、Oct-4、Sox-2、Nanogおよびc-Mycから選択される、実施形態183の方法。
186.細胞膜受容体が、機械感受性および/または伸展活性化イオンチャネルである、実施形態183の方法。
187.細胞膜受容体シグナル伝達が、細胞を機械感受性および/または伸展活性化イオンチャネル特異的阻害剤と接触させることにより修飾される、実施形態183の方法。
188.阻害剤が、GsMTX4である、実施形態187の方法。
189.細胞膜受容体シグナル伝達が、少なくとも1つの細胞脂質の枯渇により修飾される、実施形態183の方法。
190.少なくとも1つの細胞脂質が、コレステロールである、実施形態189の方法。
191.細胞外脂質の枯渇が、細胞をシクロデキストリンファミリーの分子と接触させることにより生じる、実施形態189の方法。
192.分子が、メチル-ベータ-シクロデキストリンである、実施形態191の方法。
193.細胞膜受容体シグナル伝達が、細胞を低弾性細胞外マトリックスで培養することにより修飾される、実施形態183の方法。
194.マトリックスが、ポリアクリルアミドゲルである、実施形態193の方法。
195.ポリアクリルアミドゲルの弾性が、7.4kパスカル未満である、実施形態194の方法。
196.細胞膜受容体シグナル伝達が、
a.細胞を機械感受性および/または伸展活性化イオンチャネル特異的阻害剤と接触させること;
b.少なくとも1つの細胞脂質の枯渇;ならびに
c.細胞を低弾性細胞外マトリックスで培養すること
により修飾される、実施形態183の方法。
197.実施形態183の方法により産生される細胞であって、内因性多能性転写因子を発現する、細胞。
198.実施形態183の方法により産生される細胞であって、多能性誘導転写因子を発現する、細胞。
199.分化した細胞であって、実施形態198の細胞に由来する、細胞。
200.実施形態183の方法を実行するためのキット。
201.コレステロール枯渇化合物および低弾性細胞外マトリックスを含む、実施形態200のキット。
202.メチル-β-シクロデキストリンおよび乾燥ポリアクリルアミドゲルを含む、実施形態200のキット。
【0054】
9. 実施例
本明細書に記載の本発明の代表的な実施形態のある特定の特徴および特性を強調している以下の実施例は、例示の目的のために提供され、限定されるものではない。
9.1. 実施例1
9.1.1. 材料および方法
マウス、細胞および抗体
【0055】
C57BL/6オスマウス(4週齢~6週齢)をジャクソンラボラトリーから購入した。骨髄細胞および脾臓細胞を、4週齢~6週齢のオスC57BL/6マウスから得た。単一細胞懸濁液中の細胞は、使用前に赤血球が枯渇していた。骨髄間質細胞を培養し、記載されている[Tormo et al.,Bio-protocol 4:e1031(2014)]ように、T75培養フラスコで継代した。胚性線維芽細胞を、前述した[Qiu et al.,Bio-protocol 6:e1859(2016)]ように、C57BL/6の13日胎児から調製した。リプログラミングに使用した細胞は、2回から4回の継代期間で培養したものであった。
【0056】
GsMTX4を用いるMSAIC阻害アッセイ
細胞を、群あたり3連で、6ウェルプレート(10細胞/ウェル)で培養した。PBSに溶解したGsMTX4を、実験群に濃度5μMで添加した。16時間後、脾臓細胞および骨髄細胞については、スクレーパーにより細胞を回収し、RNeasy(キアゲン)またはTrizol(インビトロジェン)を用いた全RNA抽出のためにペレット化した。EF細胞およびBM間質細胞について細胞培養培地を排出し、培養ウェルの細胞溶解緩衝液に直接再懸濁した。抽出したRNAをcDNA合成(Applied Bioscience)に供し、リアルタイムPCRサーモサイクラー(バイオ・ラッド、CFX384)によりマウスPI遺伝子および対照遺伝子に特異的なメッセージを分析した。使用したプライマは:Oct4(5’:CTACAGTCCCAGGACATGAA(配列番号5)、3’:TGGTCTCCAGACTCCACCTC(配列番号6)、Sox2(5’:ATGATGGAGACGGAGCTGAA(配列番号7)、3’:TTGCTGATCTCCGAGTTGTG(配列番号8)、Nanog(5’:AAGTACCTCAGCCTCCAGCA(配列番号90)、3’:GCTTGCACTTCATCCTTTGG(配列番号10)、CFBP/α(5’:CGACTTCTACGAGGTGGAGC(配列番号11)、3’:TCGATGTAGGCCGCTGATGTC(配列番号12)、c-Myc(5’:CACCATGCCCCTCAACGTGA(配列番号13)、3’:TTATGCACCAGAGTTTCG(配列番号14)、RUNX1(5’:CGTATCCCCGTAGATGGCAG(配列番号15)、3’:GCCAGGGTGGTCAGCTAGTA(配列番号16)、PU.1(5’:AGAGCATACCAACGTCCAATGC(配列番号17)、3’:GTGCGGAGAAATCCCAGTAGTG(配列番号18)、IRF8(5’:CGTGGAAGACGAGGTTACGCTG(配列番号19)、3’:GCTGAATGGTGTGTGTCATAGGC(配列番号20)、FOXP1(5’:ATCCCAGAACGGGTCCAGCGGTGGCAACCAC(配列番号21)、3’:GATCTGCTGCATTTGTTGAGGAGTGATAAC(配列番号22)、KLF4(5’:GGTGCAGCTTGCAGCAGTAA(配列番号23)、3’:AAAGTCTAGGTCCAGGAGGTCGTT(配列番号24)、アクチン(5’:GTGACGAGGCCCAGAGCAAGAG(配列番号25)、3’:AGGGGCCGGACTCATCGTACTC(配列番号26)、GAPDH 5’:CATCACCATCTTCCAGGAGCG(配列番号27)、3’:ACGGACACATTGGGGGTAGG(配列番号28)であった。各Cq(Ct)の値は、アクチンまたはGAPDHハウスキーピング遺伝子のメッセージレベルと比較して、各特定の遺伝子のメッセージレベル(インデックス値で示される)を推定する式に適用された。
【0057】
低弾性組織培養プレートおよび培養プレートにおけるヒドロゲルキャスティング
定義された弾性表面(0.2kpa、4kpa、50kpa)を有する組織培養プレートを、Matrigenから購入した。ポリアクリルアミドゲルをペトリ皿にキャストするため、3.5cmのペトリ皿を使用した。各ディッシュに330μLのポリアクリルアミドゲルカクテルを入れ、すぐにサイズをあわせた落し蓋(ポリプロピレン)を上に載せた(図30)。ポリアクリルアミドゲルの3つの異なる弾性を、研究中に調製した。[アクリルアミド(40%):ビス-アクリルアミド(2%):水]の比を刊行されているデータ[Tse and Engler,Curr.Protoc.Cell Biol.Chapt.10 Unit 10.16(2010)]にしたがって決定した。それらは、1.7kpaでは(75:112.5:812.5)、3.2kpaでは(100:150:750)、7.4kpaでは(250:30:720)であった。50mlのコニカル遠沈管キャップのスライスを落とし蓋に使用した(図30において矢印の先)。
【0058】
90分後、落し蓋を注意深く取り除き、ディッシュ内のゲルを3mlの滅菌水で5回洗浄した。ディッシュからの水の各吸引は、1mlのマイクロピペッタを用いて穏やかに実行された。洗浄中、キャストされたアクリルアミドゲルは、底からはずれる。最後に、ゲルを、使用の前の2時間、DMEM/F12培地で飽和させた。TEMEDを除くポリアクリルアミドゲルのための各成分をフィルタ滅菌した。落し蓋は、70%Et-OHで滅菌し、組織培養フード内で乾燥させた。全プロセスは、組織培養フード内で実行された。
【0059】
MβCDを用いる細胞の処理およびリプログラミング培養
細胞を、15mlの遠沈管内で、2×10/mlの濃度で5mMのMβCDを添加したDMEMに懸濁した。細胞懸濁液を37℃で30分間インキュベートし、5分毎に穏やかに撹拌した。37℃に温めたDMEM/F12で1回洗浄し、少量の完全培地(30μl/2×10細胞)[DMEM/F12(コーニング)、20%ノックアウト血清代替物(Gibco)、1%非必須アミノ酸(Gibco)、5×10-5Mの2-メルカプトエタノール]に再懸濁した。ヒドロゲル上でリプログラミング培養を開始するため、ペトリ皿に2.5mlの完全培地を添加し、その後、細胞懸濁液30μlをヒドロゲルに載せた。複数のディッシュを、水を充填して蓋をしていない6cmのペトリ皿を有する15cm径のペトリ皿に収容した。ゲル上およびディッシュの底面上の細胞を毎日観察し、注目すべき表現型の細胞をEVOS細胞モニタリングシステム(サーモフィッシャー)で記録した。種々の表現型の細胞が、一般的に利用可能な方法として細胞系統に特異的なマーカー(例えば、脂肪細胞にはオイルレッドO、カルシウム沈着細胞にはアリザリン)のアッセイにより特徴づけられた。
【0060】
EF細胞のリプログラミング培養におけるPI遺伝子の発現のためのRT-PCRアッセイ
ペトリ皿内のMβCD処理済みでヒドロゲル曝露済みの培養に由来する細胞を、Trizolによる全RNAの抽出に供した。上述したようにcDNAを調製し、PCRマスターミクス(バイオツールズ)およびリアルタイムPCRアッセイのために上記で列記したプライマを使用して、通常のPCRを実行した(35サイクル)。PCR産物を、1.5%アガロースゲル、エチジウムブロマイド染色を使用して分解し、結果は、ゲルドキュメンテーションシステム(バイオ・ラッド)により獲得した。
9.2. 実施例2
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の核リプログラミング
【0061】
ヒトPBMCは、利用可能なiPSC技術による幹細胞へのリプログラミングのための体細胞の魅力的な源である。末梢血のサンプリングは、医学における一般的な方法であり、個々の特定の様式で得ることが可能である。PBMCの精製もまた、フィコール(Ficol)勾配遠心分離による標準の方法である。以前、レンチウイルスを使用する標準iPSC技術により、結果として一連のiPSCの確立となった[Simara,Pavel et al.Stem cells and development vol.27,10-(2018)、US9447382B2]。本発明の方法が、ヒトPBMCを幹細胞様細胞にリプログラムするため、またインビトロでデノボ表現型に分化させるために適用することができるかを調べるため、細胞をMβCDで処理し、その後、以下に(infula)記載されるように、軟質ポリアクリルアミドゲル上で培養する実験を実行した。
【0062】
ヒト末梢血を、左前腕静脈からヘパリン処理済みチューブに回収した(corrected)。フィコール-ハイパーク法(密度、1.077;Pharmacia Biotech、ウプサラ、スウェーデン)を使用して血液単核細胞を分離した。細胞を37℃で20分間、DMEM中の5mMのMβCDと2回繰り返してインキュベートし、室温で900gでの遠心分離によりペレット化した。37℃に温めたDMEM/F12で1回洗浄し、少量の完全培地(30μl/2×10細胞)[DMEM/F12(コーニング)、20%ノックアウト血清代替物(Gibco)、1%非必須アミノ酸(Gibco)、5×10-5Mの2-メルカプトエタノール]に再懸濁した。培養ペトリ皿の細胞を毎日顕微鏡により監視し、新規表現型細胞を記録した。図31A図31Dに示すように、我々は、赤血球、赤血球前駆細胞、樹状細胞様細胞、リンパ球様小細胞および血小板様小粒子に似た新規表現型細胞を観察した。それらの細胞は、培養1週間後に認識され、未成熟赤血球様細胞の数は、培養期間が2週間よりも長くなると増加した。MβCDでも軟質ヒドロゲルでも処理されていなかった対照の培養は、多数の細胞死を示し、顕微鏡検査により、類似の状況は、観察されなかった。
【0063】
図31A図31Dは、MβCD細胞およびヒドロゲルで処理されたヒト末梢血単核細胞に由来する未成熟赤血球様および巨核球/血小板様細胞のインビトロ発生を示す。図31A図31Bは、赤血球様細胞のクラスターを示し、図31C図31Eは、巨核球/血小板様細胞のクラスターを示す。
【0064】
重要なことに、赤血球の産生は、末梢血単核細胞ではなく骨髄細胞に由来するものに厳密に限定されることが既知である[Dzierzak and Sjaak,Cold Spring Harbor perspectives in medicine vol.3,4 a011601.1Apr.2013,doi:10.1101/cshperspect.a011601]。したがって、本発明は、需要を満たすために細胞を生成し、貧血ならびにリンパ球減少症に血球を輸血するための独特で貴重な機会を提供した。
9.3. 実施例3
体細胞リプログラミングキット
【0065】
現在の発見は、体細胞が機械的ストレスの減衰後に多能性幹細胞様細胞にリプログラミング可能であることを教示した。これに関連して、低パスカル(例えば、3.2kpa)のアクリルアミドゲル表面上でのインビトロ培養は、線維芽細胞を多能性幹細胞様細胞に変形させる。加えて、MβCDを用いる細胞コレステロール枯渇は、線維芽細胞を多能性幹細胞様細胞にリプログラムする。潜在的に、それらの技術は、体細胞を幹細胞にリプログラムし、続いて異なる種類の細胞に分化させるための新規プラットフォームを生成する可能性がある。標準的な熟練者が体細胞をリプログラムすることを可能にするキットは、軟質ポリアクリルアミドゲルがキャストされ、乾燥させた3.5cm径のペトリ皿、およびチューブ内のMβCD粉末のアリコートを含む。以下に、「体細胞リプログラミングキット」に関連する「材料、方法、および手順」を説明する。
9.3.1. 材料および方法
【0066】
リプログラミング試薬(MβCD)を含むチューブ。1つの細胞型のリプログラミング用の各チューブ。乾燥幹細胞マトリックス(アクリルアミドゲル)を含む35mmのペトリ皿をセットする。各ペトリ皿は、1つが1.7kpa、2番目が3.2kpa、3番目が7.4kpaを有しているので、再水和後の弾性が異なる乾燥ポリアクリルアミドゲルを有している。したがって、各ディッシュにおけるマトリックスの異なる柔軟性は、目的の特定の体細胞の最適なリプログラミングおよび後に続く再分化のために選択することができる。
抗生物質を有するDMEM
完全培地:抗生物質、ノックアウト血清(20%)、非必須アミノ酸(1×)、5×10-5Mで2-メルカプトエタノールを有するDMEM/F-12
ペトリ皿(14cm径;6cm径)
使い捨て10mlシリンジ
シリンジフィルタ(0.22μm)
記録を保持するための細胞イメージングシステム、例えばEVOS細胞イメージングシステム(サーモフィッシャー)。
【0067】
毎日のプロトコル
1日目
組織培養フード内で、ペトリ皿を、清浄水が満たされた蓋がない5.5cmのペトリ皿を収容している14cmのペトリ皿に入れる。3mlの完全培地を、幹細胞マトリックス(乾燥ポリアクリルアミドゲル)を有する3.5cmのペトリ皿に添加する。
例えば図32を参照されたい。
2日目
汚染および再構成された幹細胞マトリックスの存在についてペトリ皿を監視する。
3日目
汚染についてペトリ皿を監視する。
使用直前にリプログラミング溶液を調製する。リプログラミング試薬をチューブ内で5mlのDMEMに溶解する。充分にボルテックスして完全に混合/溶解し、シリンジフィルタにより滅菌する。
37℃で温める。
胚性線維芽細胞(300億個~500億個の細胞)を15mlのコニカルチューブに回収する。
DMEMで1回洗浄する。
細胞ペレットを半量のリプログラミングMβCD溶液(約2.5ml)に再懸濁し、37℃で20分間、5分毎に混合しながらインキュベートする。回転させてペレット化し、上清を取り除いた後、リプログラミング溶液の残りの半分(約2.5ml)に再度、再懸濁し、5分毎に混合しながらさらに20分間、37℃でのインキュベーションを継続する。スピンダウン(洗浄不要)し、ペレットを20μlから30μlの完全培地に再懸濁する。200μlのピペットマンを用いて、35mmのペトリ皿の幹細胞マトリックスに静かに細胞を播種する。ペトリ皿1つにつき、マトリックス上に約20μlを播種する(図33)。組織培養フード内で細胞がマトリックス上に沈降するまで20分待機する。ペトリ皿コンボ全体を37℃のCOインキュベータに静かに移し、リプログラミング/分化培養を開始する。
7日目
βFGF(10ng/ml)を添加する。
8日目以降
マトリックス上の細胞および培養の底面を監視する。
【0068】
9.4. 考察
骨髄細胞におけるMSAICのシグナル伝達が多能性誘導(PI)遺伝子の発現を活性化することができたかを試験するために調査が実行された。MSAICのシグナル伝達を修飾するため、採用されたものは、GsMTX4であり[Gnanasambandam et al.,Biophys.J.112:31(2017)]、それは、MSAICに対して特定の機能的ブロッキング活性を保持している[Park et al.,PAIN,137:208(2008)]。GsMTX4は、感覚ニューロンの触覚、圧力、固有受容、および疼痛の機械的閾値を高めるために以前使用されていたトリクイグモ科のクモ(タランチュラ)のクモ毒から精製された水溶性34merペプチドである[Bowman et al.,Toxicon,49:249(2007)]。PI遺伝子発現を特徴づけるため、他のいくらかのMSAIC阻害剤(例えばHC067047[Everaerts et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 107:19084(2010)])が、DMSOまたはアルコールにのみ溶解し、それ自体でPI遺伝子の発現を変化させることが既知であったため、水溶性GsMTX4は、有用であった[Czysz et al.,PLoS One,10(2)(2015);Ogony et al.,Stem Cells Dev.,22:2196(2013)]。
【0069】
実験において、マウス骨髄細胞をインビトロで、5μMのGsMTX4の存在下、37℃で16時間培養した。その後、細胞を、図1の左に列記されたようなPI遺伝子のメッセージについてアッセイした。この細胞培養において、細胞を、本質的に無限の伸長力を保持する硬質ポリエチレン表面に曝露した。培養におけるGsMTX4の存在は、細胞が、MSAICによる強い伸展ストレスを検知することを防止すると予想された。際立ったことに、GsMTX4の存在下で培養した細胞は、対照細胞と比較して、Oct4メッセージの100倍よりも強く発現した(図1)。また、造血幹細胞の表現型に関与していると報告されているSox2、C/EBPαおよびRUNX1も、細胞内で顕著に活性化された[Hasemann et al.,PLoS Genet.10(1):e1004079(2014);North et al.,Stem Cells.22:158(2004)]。したがって、データは、GsMTX4での処理が、幹細胞の表現型に重要な特定の遺伝子発現を大幅に活性化したことを示した。
【0070】
新鮮な骨髄細胞を、10%FBSが添加されたDMEM中、GsMTX4(5μM)を有する6ウェルプレートで16時間培養した。左に列記された遺伝子に特異的なメッセージを、リアルタイムPCRで特徴づけ、β-アクチンメッセージの値と比較した相対的な指標として提示された。示された各実験値は、3連の試料の平均および標準偏差であった。示された結果は、類似の結果を有する3つの実験を表す。
【0071】
非PI遺伝子、IRF8およびFOXP1の発現についてRNAをアッセイする場合、発現の変化は小さく、PI遺伝子に匹敵しない。そのため、GsMTX4は、遺伝子特異的な方法でPI遺伝子発現を強化した。研究は、MSAICにより検出された伸展傷害が、骨髄細胞におけるPI遺伝子の発現を敏感に/優勢的に抑制した。より硬質な細胞外マトリックス刺激MSAICシグナル伝達が、多能性分化能を低下させることにより、幹細胞分化を促進すると解釈することができる。
【0072】
MSAICのGsMTX4媒介阻害は、細胞が軟質細胞外マトリックスと接触した微小環境を与えることが想定されている。これに関連して、深層的な洞察を得るために、種々の剛性率の組織培養ウェルで培養した骨髄細胞の応答を調査した。選択された剛性率は、0.2kパスカル、4kパスカルおよび50kパスカルであった。細胞を、ウェルで16時間培養し、上述したようにPI遺伝子発現についてアッセイした。重要なことに、PI遺伝子の顕著な発現は、4kパスカルが最も高く誘導し、0.2kパスカルまたは50kパスカルが最も低いレベルの誘導を示したように、特定の剛性率で観察された(図2)。
【0073】
骨髄細胞を、左に列記されたように特定の剛性率のマトリックスでコートされた6ウェルプレートで培養した。左に列記された遺伝子のメッセージを、図1に記載されるようにqPCRで特徴づけた。結果は、過度に柔らかくまたは硬くても、PI遺伝子の発現が大幅に増加することにはならなかったので、PI遺伝子の活性化が細胞外マトリックスの剛性率の特定の範囲に依存したことを示唆した。
【0074】
GsMTX4による脾臓細胞におけるPI遺伝子の調節は、骨髄細胞で観察されたものと矛盾する。脾臓細胞をGsMTX4の存在下で16時間培養する場合、PI遺伝子の活性化が観察されず、代わりに、発現レベルが低かったが、PI遺伝子発現は、一貫して抑制されていた(図3)。脾臓細胞を図1に記載されるように6ウェルプレートで培養した。左に列記された遺伝子発現を、図1に示したものと同じ方法により評価した。
【0075】
同じ圧力および伸展ストレスに曝露した場合、反対の表現型を保持する細胞をより明確に調査するため、研究は、骨髄由来の間質細胞株およびEF株を準備することにより拡張された。GsMTX4の存在下、骨髄間質細胞株がO/Nで培養された場合、細胞におけるPI遺伝子の活性化は、新鮮な骨髄細胞の活性化と類似していた(図4)。骨髄間質細胞株を、図1に記載されるようにGsMTX4で処理した。左に列記された遺伝子発現を、図1に示したものと同じ方法により評価した。同様な方法で、EF細胞は、新鮮な脾臓細胞の研究において観察されたように応答した(図5)。胚性線維芽細胞を、図1に記載されるようにGsMTX4で処理した。左に列記された遺伝子発現を、図1に示したものと同じ方法により評価した。
【0076】
データは、機械的ストレスにより誘導されるPI遺伝子の調節パターンが、インビトロで適応した細胞株に受け継がれる可能性があることを示した。データはまた、MSAICシグナル伝達に応答する特定の表現型が、インビボからインビトロの適応に起因する一過性のメカニズムによるものではなく、本質的にプログラムされたメカニズムによるものであることを示唆した。MSAICによるPI遺伝子調節のこの安定した表現型は、体細胞に多能性を保持させるメカニズムに関連する可能性がある。
【0077】
さらなる実験において、脾臓細胞およびEF細胞におけるPI遺伝子調節は、抑制が継続しているかの洞察を得るために、GsMTX4処理の開始から3日後に調査された。PI遺伝子発現をアッセイする場合、抑制はもはや検出されず、代わりに、PI遺伝子の活性化が有意に観察された(図6)。
【0078】
脾臓細胞を、図1に記載されるように6ウェルプレートで培養した。細胞を3日目に回収し、図1に示したものと同じ方法により左に列記された多能性幹細胞転写因子の発現についてアッセイした。類似の方法において、EF細胞におけるPI遺伝子の発現は、GsMTX4処理後の3日後に活性化されることが認められた(図7)。EF細胞を、図1に記載されるように6ウェルプレートで培養した。細胞を3日目に回収し、図1に示したものと同じ方法により左に列記されたPIFの発現についてアッセイした。
【0079】
データは、MSAIC阻害剤に応答したPI遺伝子の抑制が一過性であったことを示した。したがって、細胞の起源は、PI遺伝子の発現により測定された機械的ストレスに対する初期応答に影響するように見えた。結果は、先例のない受容体メカニズムを明らかにしたように見え、その刺激の同じ入力は、おそらく細胞分化の異なる段階のために、細胞の種類に応じて完全に異なる結果を引き起こす。
【0080】
結果は、MSAICシグナル伝達の減衰に続く、別個の種類の体細胞の存在を示唆した;1つは、PI遺伝子を即座に活性化し、2番目は、一過性の抑制後にPI遺伝子を活性化する遅延モードで応答する。データはまた、MSAICシグナル伝達の長期的な減衰が、両方の体細胞型をリプログラムして、高レベルのPI遺伝子を保持する幹細胞様表現型を獲得する可能性があることも示した。
【0081】
脾臓細胞からのコレステロール枯渇は、骨髄細胞と類似の方法でGsMTX4に対して応答するように細胞を修飾した。
【0082】
MSAIC阻害後に脾臓細胞を骨髄細胞から識別する分子メカニズムへの洞察を得るため、異なる剛性率の役割および細胞膜のシグナル伝達の可能性を調べた。安定した温度の生理学的条件において、骨髄よりも脾臓で高いと知られているコレステロールレベルは、細胞膜の剛性率を変更する[Los and Murata,Biochim.Biophys.Acta.1666:142(2004);Simons and Sampaio,Cold Spring Harb.Perspect Biol.3(10)(2011)]。コレステロールはまた、MSAICが存在し、機械感覚シグナルを開始する脂質ラフトを形成することにより膜受容体シグナル伝達の中心的な役割を果たす[Szoke et al.,Eur.J.Pharmacol.628:67(2010)]。脾臓細胞は、細胞膜からコレステロールを枯渇させるMβCDでの処理後のPI遺伝子の発現について調査された[Mahammad and Parmryd,Methods Mol.Biol.1232:91(2015)]。驚いたことに、MβCDで処理された脾臓細胞は、O/Nの培養におけるGsMTX4処理に応答してPI遺伝子の活性化を示した(図8)。
【0083】
図1に記載されるように、GsMTX4を用いたインビトロ培養の前に、MβCDを用いて脾臓細胞を37℃で処理した。左に列記された遺伝子発現を、図1に示したものと同じ方法により評価した。ND:検出されず。
【0084】
結果は、細胞膜におけるコレステロールのレベルが、MSAIC阻害剤に応答して得られるPI遺伝子発現を決定したことを示した。
【0085】
細胞脂質および/または軟質細胞外マトリックスの枯渇によるEF細胞の多能性幹細胞様細胞への変換。
【0086】
PI遺伝子で遺伝子トランスフェクトされたEF細胞で見られたように、細胞が多能性幹細胞活性を獲得する細胞培養方法を開発した[Takahashi and Yamanaka,Cell,126:663(2006)]。細胞をMβCDで処理し、その後、低パスカルのヒドロゲル(1.7kpa、3.2kpaおよび7.4kpa)上に播種した。60分以内で、培養の開始後、細胞は、ヒドロゲルにしっかりと付着し、その後、種々のサイズの球体の形成が、O/Nの培養で観察された(図9A)。
【0087】
PI遺伝子の発現を調べるため、球体およびウェルの底に付着した細胞(播種手順中にゲル表面からこぼれた)からの全RNAを、1.5%アガロースゲル電気泳動法によりRT-PCRで特徴づけた。
【0088】
EF細胞をMβCDで処理し、RNA抽出の前の7日間、ヒドロゲルをキャストしたペトリ皿で培養した。ヒドロゲルの剛性率を、各レーンの上に列記した。球体およびディッシュに付着した細胞からの全RNAを、RT-PCRによりPI遺伝子の発現について分析した。PCR増幅したフラグメントを、1.5%アガロースゲルに溶解し、エチジウムブロマイドで染色した。マウス胚性幹(mES)細胞の全RNAを陽性対照として使用した。左から右に、a;Oct4分析、b;Nanog分析、c;Sox2分析である。
【0089】
図10に示すように、1週間の培養では、予測されたサイズで底に付着した細胞において、Oct4、Nanog、およびSox2について有意なメッセージを示したが、球体から得られたRNAは、Oct4に特異的な予測されたバンドを示さず、代わりに、約1000bpsで目立ったバンドを示した(図10A)。しかし、これらのバンドは、予測されたサイズのバンドが出現したときに完全に消失した。また、Nanog発現についてのアッセイにおいて、同様の結果が観察された(図10B)。しかし、イントロンを含まない遺伝子であるSox2は、大きいサイズのバンドを示さなかった[Nagai,Jpn.J.Hum.Genet.41:363(1996)](図10C)。Oct4およびNanogの特異的RT-PCR研究におけるこれらの約1000bpsのバンドが、スプライシングされていないメッセージに由来するフラグメントを表したと仮定された。精製した約1000bpsのフラグメントの配列決定からの結果(図11)(配列番号1)は、実際に、イントロン(図14)(配列番号4)を含むOct4のエクソン3およびエクソン5(図12)(配列番号2)ならびにNanogのエクソン2およびエクソン3(図13)(配列番号3)を包含する報告された配列と一致した。それに対応して、癌細胞におけるマウスのスプライシングされていないOct4前駆体mRNAの存在は、以前の報告[Liu et al.,J.Cell.Physiol.233:5468(2018)]においてOct4と指定された。
【0090】
ウェルの底面に付着した細胞において誘導されたPIFメッセージの活性化動態を調べることにより、研究を拡大した(図15A図15B)。
【0091】
EF細胞をMβCDで処理し、ペトリ皿で培養した。実験の開始後1日目、4日目および7日目の顕微鏡形態学的観察をAに示した。全RNAを上に列記した時点で抽出した。各PI遺伝子についてのメッセージを図1に記載されるように分析し、Bに示した。
【0092】
驚いたことに、コレステロール枯渇後24時間以内にスプライシングされていないメッセージを検出した。スプライシングされたメッセージは、7日間培養した細胞にのみ存在した。結果は、1)コレステロール枯渇が、24時間以内にPI遺伝子前駆体転写を活性化したこと、2)スプライシングされたメッセージの発現が、4日後であるが、7日前に開始されること、および3)軟質ヒドロゲルが、PI遺伝子の前駆体メッセージのスプライシングを防止したことを示唆した。したがって、細胞外マトリックスの柔軟性は、体細胞におけるPI遺伝子の活性化およびスプライシングメカニズムを大きく制御した。
【0093】
新規表現型の細胞の分化がそれらのPI遺伝子活性化多能性幹細胞様細胞からの継続的な培養で続くかを調べるため、細胞を長期間培養した。14日以内に、ゲル上のほとんどの球体は、丸い細胞のクラスターに溶解した(図9B)。同時に、細胞のヒドロゲルへの付着は弱くなり、細胞が、ディッシュの底に放出されたように見えた。驚いたことに、1週間以内に培養ディッシュの底で特有の表現型細胞の分化が観察された。EF細胞研究において、ヒドロゲル付着細胞の増殖または形態学的変化は、ほとんど観察されなかった。したがって、結果は、ペトリ皿表面に播種された細胞およびアクリルアミドゲルからペトリ皿表面にこぼれた細胞が特有の表現型の細胞に分化したことを示唆した。ディッシュの底に現れた特有の表現型細胞の例を、図17から図27に示した。
【0094】
具体的には、EF細胞をMβCDで処理し、3.2kpaのヒドロゲルをキャストしたペトリ皿で培養した。ディッシュの底で分化した細胞を観察しながら写真撮影した。報告された異なる系統の細胞の表現型に基づいて、元のEF細胞に特有の各細胞(図16)は、写真の上に示すように暫定的に標識された。元のEF細胞とは明らかに異なるが、特定の細胞型名を割り当てることができなかった細胞は、「分類されない」として標識された。パネルの白色バーは、100μmのサイズ参照を示す。
【0095】
細胞のクラスターは、未成熟脂肪細胞に類似しており、それらの細胞は、数日内に成熟脂肪細胞に変形した(図17A図17B)。それらの細胞は、脂質特異的色素、オイルレッドOで陽染された(図17C図17E)。
【0096】
褐色脂肪細胞(図17A)および白色脂肪細胞(図17B)は、10日後の培養を通して頻繁に観察された。それらを脂肪細胞として特徴づけるため、細胞をオイルレッドOで染色した(図17C図17E)。
【0097】
他方で、アリザリンでの染色は、培養の特定の領域におけるカルシウム沈着および骨芽細胞を示した(図18A図18C)。
【0098】
骨芽細胞/骨細胞の存在は、アリザリン染色で示され、図18A図188Cに示した。
【0099】
100~500μmのサイズの神経細胞様細胞(図19A図19D)および内皮細胞様細胞(図20)を観察した。
【0100】
多くの場合、皮質ニューロン様細胞(図19A)、星状細胞様細胞(図19B)、ミクログリア様細胞(図19C)およびオリゴデンドロサイト様細胞(図19D)を含む神経細胞が10日以内に観察された。円で接続された内皮細胞様細胞も、同じタイミングで観察された(図20)。
【0101】
類似の表現型細胞は、底面の特定の領域でクラスター化する傾向があった(図21A図21F)。
【0102】
図21A図2Fは、MβCDおよびヒドロゲルで処理されたマウスEF細胞から分化した類似の表現型細胞のコロニーを示す。
【0103】
3週間後、充分に発達した神経細胞クラスター(図22A図22C)および独自に凝集した非分類の細胞クラスターが顕著になった(図23)。充分に成熟した脂肪細胞塊も同様に明らかになった(図24)。4週間後、筋芽細胞様細胞(図25)、および腱細胞/前駆細胞様細胞が目立つようになった(図26A図26B)。また、培養の4週間後に、細胞の鎖が相互作用して微細構造を構築することも観察された(図27A図27E)。
【0104】
相互作用し、アラインメントを形成した細胞の5つの実施例を示した。
【0105】
したがって、結果は、EF細胞に由来する多能性幹細胞様細胞が、インビトロで種々の系統の細胞に活発に分化したことを示唆した。
【0106】
図9に記載されるように、3.2kpaのアクリルアミドゲルの表面からトリプシン処理で球体を回収した。細胞を洗浄し、24ウェル組織培養プレート中、ポリスチレン表面に再播種した。
【0107】
ヒドロゲル単独では、EFにおいてPI遺伝子を活性化して幹細胞様細胞を生成することができるが、効率は低く、リプログラムされ分化された細胞がペトリ皿の底面で増殖し始める前に、長いインキュベーション時間がかかる。
【0108】
MβCDのみの処理では、ヒドロゲルのみの場合より高い効率で1週間以内に幹細胞様細胞を誘導する。
【0109】
MβCDおよびヒドロゲルの併用処理では、結果として、ペトリ皿の底での分化した細胞の発生が最も高い効率となった。
【0110】
上記で提示された実施例は、本発明が、体細胞を、異なる機能を有する種々の表現型細胞に分化する機能を保持する多能性幹細胞様細胞にリプログラムすることができることを示唆した。発見は、MSAICシグナルが、PI遺伝子発現を抑制し、MSAICシグナルの阻害により、体細胞がPI遺伝子を発現し、多能性を獲得することである。発見は、体細胞におけるMSAICシグナル伝達を減衰させる複数の方法:特異的阻害剤、GsMTX4、軟質ポリアクリルアミドゲルおよびMβCDを用いるコレステロール枯渇を教示した。すべての方法は、PI遺伝子を活性化することができ、体細胞をリプログラムすることができる。発見はまた、異なる方法の併用が体細胞のリプログラミングを増強することも教示した。発見は、多能性幹細胞様細胞の再分化が体細胞の大きなレパートリーを生成することも教示した。それらの分化した細胞はすべて、再生療法に有用であると期待されている。その中でも、例えば、骨細胞は、骨折を再構成するのに有用であり、神経細胞は、神経損傷および脳疾患、パーキンソン病およびアルツハイマー病を回復することが期待されている。これらの実施例に基づいて、本発明は、細胞再生を強化または抑制する疾患の処置の新規方法を提供することも予想される。本発明は、特定の種類の体細胞の存在の増強が望ましい、疾患の処置または予防のためのPS様細胞および再分化した細胞の使用を広く包含するであろう。
【0111】
本発明が、上述した実施形態に限定されず、権利が、例示された実施形態および以下の特許請求の範囲の範囲内に入るすべての修正に保有されることが理解されるべきである。
【0112】
本明細書で引用されるジャーナル、特許、および他の刊行物への種々の参照は、最先端技術を含み、完全に記載されているかのように参照することにより組み込まれる。
図1
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【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2022-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
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【国際調査報告】