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特表2023-505400ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum) LF-SCHY34とその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum) LF-SCHY34とその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20230202BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20230202BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
A61P39/02
A61P39/06
A61K35/747
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550088
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 CN2021074767
(87)【国際公開番号】W WO2022160360
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110123212.9
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521377546
【氏名又は名称】重慶第二師范学院
【氏名又は名称原語表記】Chongqing University of Education
【住所又は居所原語表記】No. 1 Chongjiao Road, Nanshan Street, Nan ’an District Chongqing 400065, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 欣
(72)【発明者】
【氏名】龍 興瑶
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA30X
4B065AC15
4B065AC20
4B065BC03
4B065BC11
4B065BC26
4B065BD15
4B065BD16
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087NA14
4C087ZC37
(57)【要約】
本発明は、ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34とその応用を開示している。前記ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34は、中国一般微生物菌株収集管理センターに保存されており、保存番号がCGMCC第14957号で、微生物技術の分野に属している。ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34は、体内および体外の鉛イオンを吸着し、血中および臓器中の鉛のレベルを低下させ、肝臓、腎臓および脳組織を保護することができる。また、ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34は、フリーラジカルを消去し、Keap1/Nrf2/AREシグナル伝達経路を活性化して、より多くの抗酸化物質を分泌することができ、鉛による体内の酸化損傷をよりよく緩和することができる。したがって、ラクトバチルス・ファーメンタム LF-SCHY34は、強い鉛吸着能力と抗酸化能力を持つ優れた菌株であり、人体に鉛イオンによる酸化ストレスや、他の重金属の毒性を緩和するための大きな可能性と研究価値があると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LF-SCHY34と命名され、中国一般微生物菌株収集管理センターに保存され、保存番号がCGMCC 第18795号である、ことを特徴とするラクトバチルス・ファーメンタム。
【請求項2】
重金属中毒を治療または予防のための製品の調製における請求項1に記載のラクトバチルス・ファーメンタムの応用。
【請求項3】
重金属中毒を治療または予防するための製品が、重金属を吸着するために使用される、ことを特徴とする請求項2に記載のラクトバチルス・ファーメンタムの応用。
【請求項4】
当該ラクトバチルス・ファーメンタムが重金属中毒による病症を治療または予防するための製品の調製における請求項1に記載のラクトバチルス・ファーメンタムの応用。
【請求項5】
前記重金属中毒による病症が肝臓損傷、腎臓損傷、脳組織損傷である、ことを特徴とする請求項4に記載のラクトバチルス・ファーメンタムの応用。
【請求項6】
前記重金属が重金属鉛であり、前記ラクトバチルス・ファーメンタムの有効量が1回あたり10CFUである、ことを特徴とする請求項2ー5のいずれか1項に記載のラクトバチルス・ファーメンタムの応用。
【請求項7】
当該ラクトバチルス・ファーメンタムが酸化的損傷を治療または予防のための製品の調製である請求項1に記載のラクトバチルス・ファーメンタムの応用。
【請求項8】
当該ラクトバチルス・ファーメンタムの有効量が1回あたり10CFUである、ことを特徴とする請求項7に記載のラクトバチルス・ファーメンタムの応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物学の技術分野に関し、特にラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34とその応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重金属は食物連鎖を通じて濃縮され、生物分解されず、より毒性の高い有機金属化合物に変化する可能性がある。近年、重金属汚染は広く注目されている。重金属鉛は、親和性と蓄積性がある重金属で、その毒性は高い。工業化の加速に伴い、印刷、塗料、セラミックス、合金、ガソリンなどの産業で広く使用されている鉛は、分解されにくく、強い毒性を持つため、最も深刻な一般汚染物質の一つとなっている。鉛は、主に食事と呼吸の2つの経路で人体に摂取され、体内に一定量まで蓄積されると、脳や神経組織を損傷したり、腎臓や肝臓に蓄積されて、急性または慢性の腎疾患や肝疾患を引き起こし、最終的には体内の多くの器官に全身損傷をもたらす。現在、重金属中毒の治療にはキレート剤が使用されているが、この治療法は体に損傷を与える可能性があり、また、解毒が不完全であるという欠点がある。
【0003】
酸化的損傷は、鉛がその毒性を発揮する重要な作用のメカニズムの一つと考えられている。数多くの研究により、鉛は細胞の酸化還元状態に変化をもたらし、酸化ストレスを引き起こすから活性酸素(ROS)や活性窒素(RNS)が過剰に生成されると、抗酸化酵素の活性低下を招き、組織や細胞内でのフリーラジカルの生成を促進することが明らかになっている。フリーラジカルによる損傷に対応する時に、体内では複雑な酸化ストレス応答システムが形成され、体自体も一連の保護タンパク質を誘導して細胞への損傷を軽減しているのである。核因子E2関連因子2(Nrf2)は、酸化ストレスのエクスプレッションに重要な転写因子であり、多数のROSやRNSを介して細胞の損傷に対応している。生理的状態では、ほとんどのNrf2はKeap1と結合しており、ユビキチンを介したタンパク質分解システムによって細胞質内のNrf2の不活性な基礎レベルを維持している。体内が酸化ストレスによって刺激されると、MAPKやホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PIK3)などのプロテインキナーゼがNrf2を直接リン酸化し、Keap1ーNrf2の結合体が解けて、Nrf2が活性化し、集積して核内に移動し、Mafと結合してヘテロ二量体を形成し、下流の抗酸化オリジナルであるAREを認識して結合する。AREは、体の酸化ストレス応答システムによって分泌される保護タンパク質の遺伝子の上流に位置している。Nrf2はAREの活性化因子である。Nrf2をAREと組み合わせると、下流の保護抗酸化遺伝子のエクスプレッションを仲介しスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、キノンオキシドレダクターゼ1(NQO1)、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)、γ-グルタミルシステインシンテターゼ(γ-GCS)のような保護タンパク質を生成する。これらはすべて細胞の酸化的損傷の面で重要な抑制効果を果たし、酸化的損傷に対する体内の最初の防御線として使用される。Nrf2-ARE経路は、これまでに発見された最も重要な内因性抗酸化ストレス経路である。
【0004】
乳酸菌は、発酵可能な糖(炭水化物)を利用して多量の乳酸を産生するナンスポリング(non-sporing)、グラム(gram)染色陽性菌群の総称で、体内の腸内フローラの改善、消化管運動の促進、消化性の向上、腐敗菌の増殖抑制などの効果がある。また、乳酸菌には、免疫力を高める、抗酸化作用、老化を遅らせるなどの機能もある。伝統的な発酵キムチは、主に野菜そのものの乳酸菌を使って発酵させるので、出来上がったキムチには様々な種類の乳酸菌が含まれている。研究の結果、中国のキムチに含まれる発酵菌はラクトバチルスを主として、例えばラクトバチルス・プラント・アルム(Lactobacillusplantarum)、ラクトバチルス・ペントサス(Lactobacilluspentosus)、ラクトバチルス・サケ(Lactobacillussake)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillusbrevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacilluscasei)とラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)であることがわかる。発酵食品に含まれる乳酸菌は、食品中の亜硝酸塩を分解するだけでなく、コレステロール低下作用、抗酸化作用、腸の健康を調節する作用など、さまざまな効果を発揮する。
【0005】
乳酸菌の継続的な研究により、いくつかの乳酸菌が重金属に対して良好な抵抗性と吸着性を持つことがわかってきた。乳酸菌が鉛の毒性を緩和する役割も、2つに分けられる。1つ目は、乳酸菌が重金属を吸着する優れた能力を持っていること。2つ目は、乳酸菌がフリーラジカルによる損傷に対抗するために体内で抗酸化的な役割を果たすことである。バイオレメディエーションを利用し重金属中毒を修復するのは多くの利点がある。例えば、原料の種類が豊富で、低コスト、操作が簡単、環境保護など、それに二次的な危険性を生じない。しかし、乳酸菌をバイオ吸着剤として使用することは、現在の研究ではまだ比較的少ない。主な理由は、ほとんどの乳酸菌は吸着効果が低く、吸着能力の高い乳酸菌は食品製造に使用することが困難であるため、食品に使用でき、重金属鉛イオンに対して良好な吸着能力を持つ乳酸菌の菌株を探すことが、現在盛んに行われている研究である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、上記のような先行技術の問題点を解決するための、ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34とその応用例を提供することである。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の解決策を提供する:本発明は、ラクトバチルス・ファーメンタムを提供し、前記ラクトバチルス・ファーメンタムはLF-SCHY34と命名され、中国一般微生物菌株収集管理センターに保存され、保存番号CGMCC第18795号である。
【0008】
また、本発明は、前記ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34が重金属中毒の治療または予防のための製品の調製における応用を提供する。
【0009】
さらに、重金属中毒の治療または予防のための前記製品は、重金属を吸着するために使用される。
【0010】
本発明はさらに、重金属中毒に起因する病症の治療または予防のための製品の調製における、前記ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の応用を提供する。
【0011】
さらに、重金属中毒による前記症状は、肝臓損傷、腎臓損傷または脳組織損傷である。
【0012】
さらに、前記重金属は重金属鉛であり、前記ラクトバチルス・ファーメンタムの有効量は1回あたり10CFUである。
【0013】
本発明はまた、酸化的損傷の治療または予防のための製品の調製における、前記ラクトバチルス・ファーメンタムに従った応用を提供する。
【0014】
さらに、前記ラクトバチルス・ファーメンタムの有効量は1回あたり10CFUである。
【0015】
本発明は、以下の技術的効果を開示している:(1)本発明で開示されたラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34による鉛イオンの吸着は、生体吸着と蓄積の両方を含み、高品質の鉛吸着乳酸菌である。(2)本発明で開示されたラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34は、体外および体内の抗酸化能力が高く、より優れた接着能力を持ち、人体の腸内でより良くコロニー化してプロバイオティクスを果たすことができる。(3)ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34は、鉛イオンによるSDラットの肝臓と腎臓の損傷を緩和し、肝臓と腎臓の炎症の発生を抑え、肝臓と腎臓の細胞の完全性を保護することができる。(4)ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34は、Keap1/Nrf2/AREシグナル経路の反応を増強し、より多くの下流遺伝子が抗酸化能力を持つことをエクスプレスするHO-1を刺激し、NQO1、γ-GCSを生成し、SDラットの鉛による酸化ストレスをより緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施例または先行技術の技術的解決策をより明確に説明するために、以下に、実施例に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明の図面は、本発明の一部実施例にすぎない。当業者にとって、創造的な労力なしで、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1】鉛イオンの吸着前後のLF-SCHY34乳酸菌の走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡画像である。aは吸着前のLF-SCHY34の走査型電子顕微鏡画像、bは吸着前のLF-SCHY34透過型電子顕微鏡画像で、cは吸着後のLF-SCHY34の走査型電子顕微鏡画像、dは吸着後のLF-SCHY34の透過型電子顕微鏡画像である。
図2】鉛イオン吸着前後のLF-SCHY34乳酸菌のエネルギースペクトル検出形状と走査エネルギースペクトルを示した画像で、aは吸着前のLF-SCHY34のエネルギースペクトル検出形状画像、bは吸着前のLF-SCHY34の走査エネルギースペクトル画像、cは吸着後のLF-SCHY34のエネルギースペクトル検出形状画像、dは吸着後のLF-SCHY34の走査エネルギースペクトル画像である。
図3】SDラットの肝臓の切片で、aは正常群、bは鉛誘導群、cはEDTA群、dはLF-SCHY34群である。
図4】SDラットの腎臓の切片で、aは正常群、bは鉛誘導群、cはEDTA群、dはLF-SCHY34群である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例における技術的解決策を、本発明の実施例における添付図面と併せて明確かつ完全に説明するが、説明された実施例は、本発明の実施例の一部に過ぎず、その全てではないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働力を用いずに得た他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に入る。
【0018】
本発明の上述の目的、特徴、および利点をより明白かつ理解しやすくするために、添付の図面および具体的な実施例と併せて、以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
乳酸菌の分離と識別:重慶のキムチから乳酸菌1株を分離し、抽出したDNAをPCR増幅し、上流側プライマー27F(5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’)1μL、下流側プライマー1495R(5’-CTACGGCTACCTTGTTACGA-3’)1μL、2×TaqplusBuffer12.5μL、テンプレートDNA1μLで、滅菌したddH2Oを用いてシステムをwp25μLまで補充し、テンプレートDNAの代わりに滅菌した超純水をネガティブコントロールとして使用した。増幅条件は、94℃×5分間、94℃×30秒s、55℃×30s、72℃×1分間、共に29サイクル、最終は72℃で5分間とし伸長した。増幅産物5μLをアガロースゲル電気泳動検測を行い、アガロース濃度が1.5%で、電気泳動条件は110V、45分間である。検測で成功したPCR産物を北京キングテック・バイオテクノロジー社にシーケンスを行い、16SrDNA配列をSEQIDNO:1に示すように配列決定し、配列決定に成功した配列をNCBIでBLAST比較をしたところ、記載された乳酸菌は乳酸桿菌科、ラクトバシラス属で、99.9%の類似性を持ち、LF-SCHY34と命名され、令和一年11月4日に中国総合微生物種保存管理センター(CGMCC、北京)に保存されており、保存番号はCGMCCNo.18795である。
【0020】
実施例1 ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の体外性能テスト試験
1.1人工胃液中のラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の生存率の測定
この人工胃液が0.2%のNaCl、0.35%ペプシンからなった。1mol/LHClでpHを3.0に調整した後、0.22μmの滅菌フィルターでろ過して滅菌した。5mlのMRS液体培地に入れて2回活性化したLP-KFY04を3000rpmで10分間遠心分離して菌体を回収した。滅菌生理食塩水で2回洗浄し、5mLの生理食塩水に入れた。この菌液と滅菌した人工胃液を1:1(v/v)で混合し、よく振って37℃の恒温器で培養し、それぞれ0hと3hに生菌の数を測定し、式(1)に従って人工胃液中のLF-SCHY34の生存率を算出した。
【0021】
1.2胆汁酸塩中でのラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の成長効率の測定
2%(v/v)接種物で2回活性化したLP-KFY04を0.0%および0.3%のブタ胆汁酸塩を含むMRS-THIO培地に接種し(MRS培地には0.2%チオグリコレートナトリウムを添加し、121℃で15分間滅菌)、37℃の恒温振とう機で24時間、ブランク培地(未接種MRS-THIO培地)を対照し、ブランク培地と接種した培地を96ウェルプレートに加える。各穴は200mlで、波長が600nmのとことで吸光度を測定され、成長効率は式(2)に従って計算された。
【0022】
1.3 ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の体外の鉛イオン吸着能力試験
ラクトバチルス・ファーメンタムSCHY34の懸濁液を1500xgで10分間遠心分離して菌体を収集し、生理食塩水で2回洗浄した後、遠心分離して菌体を収集した。バクテリアをpH6.3の50mg/L硝酸鉛溶液に加え、バクテリアの最終濃度は1g/Lで、37℃で24時間培養し、8000xgで20分間遠心分離して上澄みを収集し、火炎原子吸着法を使用して元の溶液の鉛イオン濃度C0、吸着後の鉛イオン濃度C1を測定し、式(3)に従って鉛イオン吸着率を計算した。
【0023】
1.4 ラクトバチルス・ファーメンタムF-SCHY34の表面疎水性の測定
ラクトバチルス・ファーメンタムSCHY34の懸濁液を1500xgで10分間遠心分離して菌体を収集し、生理食塩水で2回洗浄した後、遠心分離して菌体を収集した。波長580nmでの吸光度が1.000になるように生理食塩水で細胞濃度を調整した。細菌懸濁液の調整された吸光度2mlを取り、2mlのキシレンと混合し、120分間ボルテックスし、室温で30分間置き、1mlの上部水相を吸収し、生理食塩水をブランクコントロールとして、580nmでの吸光度値A0とサンプル吸光度値A1を測定した。式(4)に従って乳酸菌の表面疎水性を計算した。
【0024】
1.5 ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の体外抗酸化力測定法
1.5.1ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の体外ヒドロキシルラジカルの消去能力の測定
ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34を10cfu/mLの懸濁液にして使用するサンプルとして用意した。試験管に1mLの0.05mol/LpH7.4リン酸緩衝液と0.5mLの6mmol/Lo-diazafilを加えて十分に混合した後、0.5mLの6mmol/LFeSO溶液を加えて直ちに混合した。試験管は、サンプル管、ブランク管、コントロール管に分けて使用した。サンプルチューブに細菌懸濁液のサンプル溶液を0.5mL、コントロールチューブに0.1%H溶液を0.5mL加えてよく混合し、0.5mLの0.1%H溶液を入れて、最後に4mLに補充し、37℃で1時間保持し、536nmでの吸光度をAiおよびAとして測定した。ブランク管にはサンプル溶液とH溶液を添加せず、リン酸緩衝液を直接使用して、後続の実験のために容量を4mLに補充し、最終的に測定された吸光度はA0とした。式(5)に従ってヒドロキシルラジカル消去率を計算した。
【0025】
1.5.2 体外でのラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34のDPPHフリーラジカル消去能力の測定
1mLの2mmol/LDPPHエタノール溶液を1mLのラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34懸濁液(10cfu/mL)に追加した。1mLのラクトバチルス・ファーメンタムSCHY34懸濁液(10cfu/mL)を1mLの無水エタノールに追加した。1mLの2mmol/LDPPHエタノール溶液に1mLの無水エタノールを加えて室温で30分間静置し、517nmの波長で測定した吸光度をAi、Aj、A0とし、DPPHフリーラジカル消去率を式(6)で計算した。
【0026】
1.5.3ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の体外スーパーオキシドアニオン消去能力の測定
0.1mLのラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34懸濁液(10cfu/mL)を4.5mLのpH8.0のTris-HCl緩衝液に加え、25℃の水浴で20分間予熱した後、0.4mLの25mmol/Lo-トリフェノールを加え、25℃の水浴で5分間反応させ、直ちに8mol/LのHClを2滴滴下して反応を終了させ、325nmの波長で吸光度をAとして測定し、ブランク群はA0として試料を0.1mLHOに置き換えて、スーパーオキサイドアニオン消去率を式(7)で算出した。
【0027】
1.5.4ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の体外還元力の測定
0.5mLのラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34細菌懸濁液(10cfu/mL)を取り、0.5mLの0.2mol/L、pH7.2のリン酸緩衝液と0.5mLの1%フェリシアン化カリウムを加え、50°の水浴で培養し、急冷した。次に、0.5mLの10%トリクロロ酢酸を加え、1500xgで10分間遠心分離し、1mLの上清を取り、1mLの蒸留水と1mLの0.1%塩化第二鉄を加えてよく混合した。10分間後、700nmの波長で吸光度を測定した。システイングループの異なる用量を標準として設定し、サンプルグループの吸光度を標準グループの測定単位(μmol/L)に変換して比較した。
【0028】
1.6ラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の能力測定結果
人工胃液中のLF-SCHY34の生存率は88.71%±0.23%、人工胆汁酸塩での増殖効率は85.32%±0.41%、表面疎水性率は43.78%±0.75%、鉛イオン吸着率は69.58%±0.56%、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオンおよびDPPHの除去率はそれぞれ44.15%±0.41%、66.11%±0.97%および79.49%±0.87%であり、還元力は111.66±1.18μmol/Lである。データの各グループは、LF-SCHY34がinvitroで強力な抗酸化能力を持ち、フリーラジカルを効果的に除去できることを示していた。
【0029】
実施例2
鉛イオンの吸着前後のラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34菌体の走査型電子顕微鏡法、走査型エネルギースペクトル分析および透過型電子顕微鏡法分析
2.1走査型電子顕微鏡と走査型エネルギースペクトル分析
鉛イオン溶液を含まない菌体と50mg/Lの鉛イオンを吸着した菌体を取り、8000xgで20分間遠心分離し、滅菌超純水で3回洗い、上記と同じ条件で遠心分離し、次にジアルデヒドに注ぎ、1.5hで固定し、リン酸緩衝液で3回洗浄し、6000xgで10分間遠心分離し、次に異なる濃度(50%、70%、90%、100%)のエタノールで1回脱水し、次に6000xgで10分間遠心分離し、その後エタノールとtert-ブタノールの混合物(v/v=1/1)と純粋なtert-ブタノールで1回洗浄し、6000xgで10分間遠心分離し、菌体を-20℃で30分間凍結し、凍結乾燥機で4時間乾燥し、最後にサンプルの表面に厚さ100~150Aの金属膜をイオンスパッタリングコーターでプレーティングし、観察室に置いて観察し、エネルギー分散分光計で素子組成を分析した。
【0030】
2.2透過型電子顕微鏡分析
鉛イオン溶液のない菌体と50mg/Lの鉛イオンを吸着した菌体を取り、8000xgで20分遠心分離し、2.5%グルタルアルデヒド溶液で4℃で固定し一夜を過ごし、固定液をぶちまけて、0.1M、pH7.0のリン酸緩衝液でサンプルを3回(15分間/回)洗い、1%オスミウム酸溶液で1~2時間固定し、オスミウム酸廃液を丁寧に取り除き、0.1M、pH7.0のリン酸緩衝液でサンプルを3回(15分間/回)洗った。濃度の異なるエタノール溶液(30%、50%、70%、80%、90%、95%)でサンプルに15分間/回で脱水した後、100%エタノールで20分間処理した。埋込剤とアセトンの混合液(v/v=1/1)で1時間処理し、埋込剤とアセトンの混合液(v/v=3/1)で3時間処理し、純粋な包埋剤で一夜処理し、浸透処理した試料を包埋し、70℃で一夜加熱して包埋試料を得た。試料は切片にして、クエン酸鉛溶液と50%エタノール飽和酢酸ウラニル溶液でそれぞれ5~10分間染色し、乾燥させて透過型電子顕微鏡での観察に備えた。
【0031】
2.3結果
図1は、鉛イオン吸着前後のLF-SCHY34乳酸菌の走査型電子顕微鏡像と透過型電子顕微鏡像である。図1-aは、吸着前の正常群のLF-SCHY34菌体の走査型電子顕微鏡像であり、観察により、乳酸菌細胞は形態的に無傷であり、輪郭がはっきりしていて、清潔で充実しており、表面が滑らかで、エッジの境界がはっきりしており、表面に粒子状物質や付着物がないことがわかる。図1-cは、鉛吸着後のLF-SCHY34菌体の走査型電子顕微鏡像であり、菌体の走査型電子顕微鏡像を見ると、乳酸菌の菌株細胞の変形は深刻で、細胞は扁平に凹み、粗い外観になり、細胞の縁の輪郭はぼやけ、さらにはピースに付着して不規則に凝集するような現象が見られ、同時に細胞の便の表面が微粒子で覆われていることもわかった。
【0032】
図1-bは吸着前の正常群のLF-SCHY34菌の透過型電子顕微鏡像で、正常群の菌株細胞の断面には沈着物が現れず、表面がクリアで付着物がないことがわかった。図1-dは吸着後のLF-S CHY34菌体の透過型電子顕微鏡像で、正常群の菌体と比較して、鉛吸着後の乳酸菌の細胞断面には黒い沈着物が多く見られ、細胞内には空白部分が現れている。
【0033】
図2はLF-SCHY34乳酸菌の鉛イオン吸着前後のエネルギースペクトル検出形状図と走査エネルギースペクトル図を示し、表2に鉛イオン吸着前後の乳酸菌の走査エネルギースペクトルの素子変化を示す。図2と表1から、正常群と比べると、鉛吸着後の乳酸菌菌体の表面のOおよびN素子の含有量は減少し、C、P、およびPb素子の含有量は増加したとわかる。
【0034】
表1 鉛イオン吸着前後の乳酸菌の走査エネルギースペクトルにおける素子変化の表
【0035】
実施例3
ラットにおける酢酸鉛誘導性酸化ストレスに対するラクトバチルス・ファーメンタムLF-SCHY34の緩和効果
【0036】
以下の実験は、血清および組織サンプルの3回の並行測定を実行し、次に平均値を計算した。SPSSソフトウェア(SPSSv.25forWindows、IBMSoftwareGroup、シカゴ、イリノイ、米国)を使用して、データを平均化および分析した。Duncanの多重範囲検定を使用して、1因子ANOVAによって各グループの平均値の差を評価した。p<0.05の差は、統計学的意義があると見なされた。
【0037】
3.1動物実験
6週齢のSPF雄性SDラット48匹を、1週間の馴化給餌後、正常群を12匹、鉛誘導群を12匹、EDTA(Sigma-Aldrich,StLouis,MO,USA)群を12匹、LF-SCHY34群を12匹の計4群にランダムに分けた。正常群のラットには,実験期間中,AIG-93G飼料を与え、酢酸鉛を含まない水を自由に飲ませた。他の3群のラットは、AIG-93Gの餌を与えながら、1週目から12週目まで、飲料水の代わりに200mg/Lの濃度の酢酸鉛溶液を自由に飲ませた。EDTA群のラットには8週目から12週目まで、1日あたり50mg/kgの濃度のEDTAを注射し、LF-SCHY34群のラットには、1週目から12週目まで毎日1×10CFU/kg(b.w)のLF-SCHY34を経口投与した。
【0038】
12週間後、すべてのラットを12時間絶食させた後、エーテルで麻酔し、眼窩静脈から採血して犠牲にした。ラットの心臓、肝臓、腎臓、脳組織を液体窒素で採取し、-80°で保存し後で使用するためのものであった。この研究はヘルシンキ宣言に従って実施され、この方案は2019年6月8日(中国、重慶)に重慶機能性食品共同イノベーションセンターの倫理委員会によって承認された(201906008A)。
【0039】
3.2 SDラットの血液、肝臓、腎臓、脳の組織中の鉛の測定
それぞれ0.0,0.4,0.8,1.2,1.6,2.0mLの鉛標準液を正確に計量し50mLのメスフラスコに入れた後、12.5%のリン酸二水素アンモニウムと2.5%の硝酸マグネシウムの混合物をそれぞれ2mL加え、2%の硝酸で溶液を定容した。グラファイトファーネスアトマイザーに、上記の異なる濃度の標準液をそれぞれ20μL取り、吸光度を測定し、標準曲線を作成した。
【0040】
採取した血液500μLと各組織50mgをテトラフルオロエチレン消化タンクに入れ、5mLの硝酸を加えて消化し、冷却後、12.5%のリン酸二水素アンモニウムと2.5%の硝酸マグネシウムを含む1mLの混合溶液を加え、硝酸を使用し25mLまで定容し、20μLの定容した溶液を加えて、グラファイトファーネスアトマイザーに吸光度を測定し、標準曲線から血中の鉛含有量を計算した。
【0041】
a-dは、Duncanの新しいMRTによると、同じテーブル内の異なる文字の平均数値に重要な差異があることを示している(p<0.05)。
【0042】
表2のデータによると、酢酸鉛で誘導していない正常群のラットは、血液、肝臓、腎臓、脳組織における鉛の濃度がすべての群の中で最も低かった。一方、鉛を誘導したグループでは、血液、肝臓、腎臓、脳組織における鉛の濃度が全グループの中で最も高かった。血液中の鉛濃度は正常群の20倍、腎臓中の鉛濃度は正常群の17倍だった。EDTA薬とLF-SCHY34の介入を使用した後、ラットの血液、肝臓、腎臓、脳組織中の鉛濃度は特に低下され、特にLF-SCHY34の介入後のラットの血液と腎臓中の鉛濃度は、正常群の約7倍と10倍で、介入効果はEDTA製剤よりも優れていた。
【0043】
それだけでなく、データを比較すると、酢酸鉛で誘導されたマウスの血液中の鉛濃度が最も高く、組織や臓器中の鉛濃度よりもはるかに高いこともわかった。3つの組織・器官の中では、腎臓が最も鉛含有量が高く、次いで肝臓、最後に脳組織だった。
【0044】
3.3 SDラットの肝臓および腎臓組織の形態学的分析
SDラットの各群の肝臓および腎臓の同一部位の組織を10%ホルマリン(v/v)で24時間固定し、脱水、除去、ワックス掛け、埋め込み、セクショニング、染色の各ステップを経て、光顕微鏡(BX43;オリンパス、東京、日本)で組織形態を観察し、写真撮影を行った。
【0045】
SDラットの肝臓切片を図4に示す。図4から、正常群のラットの肝小葉(図4a)が順番に構造化されており、中心静脈と肝類洞が透明であることがわかる。酢酸鉛で誘導されたラット(図4b)の肝小葉はぼやけ、肝索は無秩序に配置され、単球は異なる各隙間に凝集し、肝細胞の限局性壊死および大きな炎症細胞の浸潤、核間封入体および核の破砕がある。EDTA薬(図4c)およびLF-SCHY34(図4d)による介入した酢酸鉛は、ラットの肝細胞をより整然とした配置、より少ない炎症性細胞浸潤、および肝細胞のより少ない損傷および壊死を誘導した。
【0046】
SDラットの腎臓切片を図5に示す。図5から、正常群(図5a)のラットの糸球体と尿細管の構造は正常であり、細胞は密に配置されており、細胞は正常である。酢酸鉛によって誘導された(図5b)SDラットの腎臓切片では、尿細管と糸球体が大きくなって、細胞も過剰で、毛細血管拡張症、うっ血で拡大し、腎臓の尿細管内腔は拡張し、空胞化しているように見え、上皮細胞の顆粒状変性、細胞の破砕、リンパ球の浸潤が見られた。鉛誘導群と比較して、EDTA群(図5c)およびLF-SCHY34群(図5d)のSDラットの腎臓切片は、糸球体および尿細管の損傷が少なく、細胞の完全性が高く、炎症細胞浸潤の現象が少なかった、深刻な腎尿細管の拡張と空胞化はなかった。LF-SCHY34で介入したSDラットの肝臓と腎臓の形態は正常群のものに近かった。
【0047】
3.4 SDラットの血清、肝臓、腎臓、脳組織の酸化レベルの測定
100 mgのさまざまな臓器や組織の重さを量り、生理食塩水でホモジナイズした後、血液を遠心分離し、実験のために上澄み液を採取した。キットの操作方法(中国の南京江城生物工学研究所)に従って、臓器生化学的指標カタラーゼ(CAT)、活性酸素種(ROS)、総スーパーオキシドジスムターゼ(T-SOD)、マロンジアルデヒド(MDA)およびグルタチオン(GSH)レベルを測定した。
【0048】
SDラットの血清、肝臓、腎臓、脳組織における酸化指標のデータを表3に示す。表3から、正常群のラットの血液、肝臓、腎臓、脳組織におけるCAT、T-SOD、GSHが4群の中で最も高く、MDA、ROSが4群の中で最も低いことがわかる。鉛誘導群の血液、肝臓、腎臓、脳組織の傾向は正常群とは全く逆で、CAT、T EDTA群とLF-SCHY34群の酸化指標の傾向は正常群と似ており、LF-SCHY34の酸化指標の値はより正常群に近いものであった。
【0049】
【0050】
3.5 SDラットの血清、肝臓、腎臓の炎症性因子レベルの測定
ラット血清および組織ホモジネート上清を採取し、キットの操作方法(Shanghai Yaji Biotechnology Co. Ltd. Shanghai)に従って、血清中のIL-6,IL-10,IL-1β,TNF-α,IFN-γのレベルを測定した。
【0051】
表4は、SDラットの血清、肝臓、腎臓の炎症指標のデータを示す。正常群の血清、肝臓、腎臓のIL-1β、IL-6、TNF-α、IFN-γのレベルは4つのグループの中で最低であった。IL-10レベルは4つのグループの中で最高であった。鉛誘導性のIL-10レベルは4つのグループの中で最も低く、IL-1β、IL-6、TNF-α、およびIFN-γのレベルは4つのグループの中で最も高かった。EDTA群およびLF-CQPC群のIL-1β、IL-6、TNF-αおよびIFN-γのレベルはすべて、鉛誘導群と比較して減少傾向を示し、IL-10レベルは鉛誘導群と比較しすべて増加を示す。LF-SCHY34群の下降傾向と上昇傾向はEDTA群よりも明らかである。
【0052】
【0053】
3.6 SDラットの血清δ-ALAD、ALT、AST、CREおよびBUNレベルの測定
ラット血清を採取し、キットの操作方法(Shanghai Yaji Biotechnology Co. Ltd.、Shanghai、China)に従って、血清中のδ-アミノレブリン酸デヒドラターゼ(δ-ALAD)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),血清クレアチニン(CRE)および血清尿素窒素(BUN)レベルを測定した。
【0054】
表5は、SDラットの血清中のALT、AST、δ-ALADの活性とBUNおよびCREの含有量を示す。ラットの4つのグループの中で、正常群のSDラットはATLおよびAST酵素活性が最も低く、δ-ALADは酵素活性が最も高く、BUNおよびCRE含有量は最も低かった。肝臓関連のATLとASTの酵素活性は鉛誘導群で最も低く、δ-ALADの酵素活性と腎臓関連のBUNとCREの含有量は鉛誘導群で最も高かった。EDTA群とLF-SCHY34群の3つの酵素活性傾向とBUNとCREの含有量は正常群と同様である。酵素活性とBUNとCRE含有量の値から、LF-SCHY34の介入効果EDTAよりも良かった。
【0055】
【0056】
3.7 SDラットの肝・腎組織のmRNA解析
肝臓組織からTRIzol(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いてRNAを抽出し、RNAの濃度を1 μg/μLに調整した。cDNA逆転写キット(Thermo Fisher Scientific)を用いてRNAをcDNAとして合成した。続いて、合成したcDNAと10 μLの SYBR Green PCR Master Mix(Thermo Fisher Scientific)、2 μLのプライマー(表6)、および蒸留水を混合させ、qPCR装置に入れた。qPCRプログラム:95℃ 60秒; 95℃ 15秒,55℃ 30秒,72℃ 35秒、40サイクル; 95℃ 30秒; 55℃ 35秒。3-ホスホグリセルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(GAPDH)を内部参照遺伝子として用い、2-ΔΔCt式を用いて相対的なmRNA転写レベルを算出した。
【0057】
【0058】
この実験では、肝臓と腎臓のKeap1/Nrf2ARE経路に関連するKeap1、Nrf2、HO-1、SOD、GSH、NQO1、およびγ-GCSのmRNAエクスプレッションが検出された。表7は、SD肝臓および腎臓におけるKeap1、Nrf2、HO-1、SOD1、SOD2、GSH、NQO1、およびγ-GCSのmRNAエクスプレッションのデータを示す。
【0059】
表7から、正常群と比較して、SODおよびGSHのエクスプレッション量に加えて、残りの4つの群のラットのKeap1、Nrf2、HO-1、SOD、GSH、NQO1、およびγ-GCSのmRNAのエクスプレッション量が増加の程度が異なった。正常群のSODとGSHのmRNAエクスプレッション量は4群の中で最も高かった。鉛誘導群のKeap1、Nrf2、HO-1、NQO1およびγ-GCSのmRNAエクスプレッションレベルは正常群よりも高かったが、有意差はなかった(p <0.05)。鉛誘導群と比較して、EDTA群およびLF-SCHY34群におけるKeap1、Nrf2、HO-1、SOD1、SOD2、GSH、NQO1およびγ-GCSmRNAエクスプレッション量が特に増加した。LF-SCHY34群の関連遺伝子のmRNAエクスプレッション量はEDTA群のそれより高かった。
【0060】
【0061】
3.8 SDラットの肝臓および腎臓組織のWestern blot解析
肝組織100mgを1mLのRIPA(Thermofisher, Waltham, MA, USA)と10μLのPMSF(Thermofisher)でホモジナイズし、12,000×gで5分間、4℃で遠心分離した。BCA プロテインアッセイキット (Thermofisher)を用いてタンパク質を定量した。タンパク質サンプルをサンプルバッファー(Thermofisher)と4:1で混合し、95℃で5分間加熱した後、サンプルをSDS-PAGEゲルのゲルウェルにスポットし、100Vで泳がせた。SDS-PAGEゲル上のバンドをPVFD膜に転写し、PVDF膜を5%脱脂乳で1時間封入した後、一次抗体(Thermofisher)と4℃で一夜培養し、洗浄後、抗体(Thermofisher)を加えて1時間培養した。Western ECL基板(Thermofisher)を用いて化学発光させた後、iBright(Thermofisher)で画像を取得した(図7)。
【0062】
3.9結果分析
10CFUの生菌が腸や胃に到達してプロバイオティクス効果を高めることができることを示す文書がある。人間の胃液のpHは通常約3.0で、小腸の胆汁酸塩含有量は0.03~0.30%である。酸や胆汁酸塩に対する耐性が低い乳酸菌はこの環境では生き残ることはできない。この環境に適応できる乳酸菌は消化管で生き残ることができる。LF-SCHY34が胃酸中の生存能力は88.71%で、胆汁酸塩中の増殖効率は85.32%であり、10CFUのLF-SCHY34を摂取することで腸のプロバイオティクス効果をスムーズに達成できることを示す。
【0063】
乳酸菌による重金属の吸着は、一般に、生体吸着と生体蓄積の2つの段階に分けられる。生体吸着には、細胞外沈殿、表面錯化、イオン交換が含まれる。これは主に、タンパク質、多糖類、脂質などの微生物の表面にある化学基及び細胞表面に含まれる一部のイオンは金属と相互作用して金属錯体を形成する。生体蓄積には、膜貫通型輸送、細胞内蓄積、細胞の生理的代謝、自己調節機構などがある。実験の結果として、LF-SCHY34の鉛イオンへの体外吸着率は74.8%であり、吸着容量は、39.70%から69.60%の範囲の鉛吸収率を持つHalttunenらによって発見されたものよりもはるかに高いことがわかる。動物実験の結果は、LF-SCHY34がSDラットの血液、肝臓、腎臓、脳組織の鉛含有量を減らすことができることも明確に示している。走査型電子顕微鏡法、透過型電子顕微鏡法、走査型エネルギー分光法の実験的分析により、LF-SCHY34は、鉛吸着に関与する過程で溶液中の鉛イオンをよりよく吸収できることがわかる。吸着の過程では、菌体の表面にCがあり、Pの基が関与している。大量のPbイオンを吸着した後、乳酸菌の一部が形態的に損傷したり、内部が変化したり、さらには破裂したりして、細胞内のO,N含有物質が溶出し、O,N素子の含有量が大幅に増加したという。従って、LF-SCHY34によるPbイオンの吸着は、生体吸着と蓄積の両方を含んでおり、高品質のPb吸着性乳酸菌株であることが推察される。
【0064】
一方、人体や動物の組織や臓器が鉛に長期間さらされると、活性酸素種(ROS)レベルが上昇し、グルタチオン(GSH)レベルやSODやCATなどの重要な抗酸化酵素の活性が低下または不活性化し、マロンジアルデヒド(MDA)レベルが上昇して、細胞膜の脂質過酸化のプロセスが加速される。活性酸素種(ROS)には、主に過酸化物、酸素イオン、酸素を含むフリーラジカルなどがある。乳酸菌は、細胞周辺の活性酸素ラジカルを消去することで、酸化損傷や脂質過酸化を緩和し、また、宿主細胞の抗酸化関連のシグナル経路を調節することで、生物の酸化ストレスをさらに防御することができる。今回の体外データによると、 LF-SCHY34は、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオン、DPPHをそれぞれ44.15%±0.41%、66.11%±0.97%、79.49%±0.87%の消去率で、還元力は111.66±1.18μmol/Lである。Takashi Kudaらは、異なる乳酸菌のDPPHの消去率およびスーパーオキシドアニオンの消去率はおおよそ78%~90%と45%~62%で、Ramila AZATらの実験結果では乳酸菌のヒドロキシルラジカル消去率が45.79%と最も高く、Zhaiらの実験結果では乳酸菌の還元力が最も高く、99.41μmol/LのL-システインに相当することが分る。上記の実験結果は本実験のデータと比較すると、LF-SCHY34はフリーラジカルの消去効率が高く、体外抗酸化力が高いことがわかる。動物実験では、LF-SCHY34群は鉛誘導群と比較して、血清、肝臓、腎臓、脳組織のSOD、CAT活性、GSHレベルが高く、ROS、MDAレベルが低いことが判明したことから、LF-SCHY34’sは体外および体内の抗酸化力が高い優れた株であると推察された。
【0065】
疎水性は、乳酸菌細胞の腸上皮細胞への付着を示す重要な指標の1つであり、疎水性が高いほど、乳酸菌の付着性が高くなる。この実験でのLF-SCHY34の疎水性は43.78%±0.75%であり、LF-SCHY34が良好な接着能力を持ち、人体の腸内にうまくコロニーを作ってプロバイオティクスの役割を果たすことができることを示していると、Nadia S. AlKalbaniらは、実験を通じてそれを発現した。
【0066】
鉛はまず腎臓から排泄されるが、腎臓の排泄能力が最大になると、鉛が近位尿細管の上皮細胞に濃縮されて沈着し、細胞の代謝に影響を与え、腎臓の構造と機能の損傷につながる。細胞の損傷や壊死が起こると、腎尿細管の再吸収能力が低下につれてクレアチニンや尿素が血中に残るため、血中クレアチニン濃度や尿素濃度は腎損傷の有無を反映できる。鉛は体内のδ-アミノケトバレレートデヒドラターゼ(δ-ALAD)活性を阻害し、血中のALAを増加させ、δ-ALAは尿中に排泄されるため、血中δ-ALA濃度が低下する。肝臓は、体内で最も重要な解毒器官であり、消化器系から体内に入ってきたさまざまな毒素を、生化学反応によって毒性の低い物質に変えて排泄する。鉛は様々な重症度の肝臓病変を引き起こし、激しい炎症反応を起こし、肝臓関連酵素の活性に影響を与え、最終的には肝損傷を引き起こすことが明らかになった。ALTとASTは肝細胞に分布しており、肝細胞が損傷を受けると細胞質内のALTとASTが血液中に放出されるため、血液中のALTとASTの濃度は肝細胞の損傷の程度を示すことができる。血清や臓器組織中の炎症性因子は、体内の炎症性損傷の程度を反映した。血清、肝臓、腎臓の炎症因子レベル、血清δ-ALAD、ALT、AST、CRE、BUN、肝臓と腎臓の切片のケーススタディを行った結果、LF-SCHY34はSDラットの肝臓と腎臓の鉛イオンによる損傷を緩和し、肝臓と腎臓の炎症を抑え、肝臓と腎臓の細胞の完全性を保護することがわかった。
【0067】
体内には有害な環境因子に対する自己防衛システムがあり、それによって組織や細胞の形態や機能に対する有害な影響を軽減し、細胞の生存を促進する。核内因子E2関連因子2(Nrf2)は、生体の自己防衛システムの重要なメンバーである。Nrf2は細胞内の抗酸化反応に主に関与する酸化還元感受性転写因子であり、生体内の重要な抗酸化因子である。正常な状態では、Kelch like epichlorohydrin関連タンパク質1 (Keap1)は、細胞質内で細胞質状態のNrf2に結合し、Nrf2を不活性化し、ユビキチン化を進行させる。生体が酸化ストレスにさらされると、細胞質のNrf2はKeap1から解離して核に移動し、特定の遺伝子の上流にある抗酸化応答要素(ARE)領域に結合して遺伝子エクスプレッションを開始する(図X)。遺伝子コードはNQO1、HO-1、γ-GCSなどが含まれる。これらの細胞保護遺伝子のエクスプレッションは、有害な刺激に対する細胞の自己防衛能力を高め、細胞の生存を促進することができる。HO-1は、線維芽細胞、肝細胞、腎上皮細胞などに対して抗酸化、抗炎症、抗アポトーシス保護効果がある。また、ヘムの酸化促進分解を触媒する最初の律速酵素であり、最終分解産物が一酸化炭素、ビリベルジン、イオンであり、抗酸化作用と抗炎症作用の二重の効果があり、さまざまな心血管疾患、肝臓や腎臓の機能損傷、中枢神経系疾患において重要な保護的役割を果たしている。HO-1タンパク質とmRNAの含有量の増加は、一般的に酸化ストレスと細胞損傷に抵抗する体の能力を向上させる。NQO1は、ほぼすべての動物種に共通して存在する可溶性フラボノイド酵素で、脂肪細胞、血管内皮細胞、上皮細胞などのエクスプレッションレベルが高い。NQO1は、NADPHをドナーとして安定したハイドロキノンを生成することで、毒性のあるセミキノンラジカルの生成や活性酸素の一電子還元、細胞内のスルフヒドリル基の直接反応を回避した。NQO1は活性の強いキノン類を解毒し、脂溶性酸化防止剤の還元形態を維持し、それによって生体の酸化ストレスを避けた。γ-GCSは、Keap1/Nrf2/AREシグナル伝達経路の下流の抗酸化因子でもあり、GSH生合成の律速酵素である。エクスプレッションレベルが上昇すると、多数のフリーラジカルを除去して細胞の酸化的損傷を軽減できた。Fang Ye とMiaoLongらは、鉛誘導酸化ストレスモデルにおいて、Nrf2が細胞質内のKeap1、SOD1、SOD2、GSH、HO-1、NQO1、およびγ-GCSのエクスプレッション程度と有意に正の相関があることを発見した。細胞質核内のKeap1と負の相関がある。この実験では、肝臓と腎臓のKeap1/Nrf2/AREシグナル伝達経路で関連する遺伝子とタンパク質のエクスプレッションを検出することにより、鉛によって誘導されたすべてのSDラットが酸化ストレスを生成し、Keap1/Nrf2/AREの活性化につながり、生物の保護メカニズムを形成するが、下流のタンパク質エクスプレッションの活性化の程度は異なることがわかった。鉛誘導群の抗酸化タンパク質のエクスプレッションは増加したが、正常群と有意差はなく、鉛誘導の酸化ストレスが最初に細胞内のSODやGSHなどの抗酸化物質を減少させるためと考えられる。体は後の自己調節によって少量の抗酸化物質を生成することができるが、鉛イオンの継続的な損傷による損傷は体の修復能力よりも大きいため、生成された抗酸化物質は鉛による酸化的損傷にほとんど抵抗できなかった。LF-SCHY34は、Keap1/Nrf2/AREシグナル伝達経路の応答を強化し、より下流の遺伝子のエクスプレッションを刺激して、SDラット反応で鉛によって誘導される酸化ストレスを軽減する抗酸化能を持つHO-1、NQO1、およびγ-GCSを生成させた。
【0068】
この実験では、自然発酵させたキムチから分離した乳酸菌を用いて、体内および体外の鉛イオンに対する吸着能力と抗酸化能力を調べ、LF-SCHY34が一方では鉛イオンを効果的に吸着し、他方ではフリーラジカルを消去して抗酸化能力を高めることができることを確認し、両方同時に、鉛による酸化ストレスによる損傷から両方で体を保護し、鉛中毒を緩和するための食品グレードの乳酸菌に関する後の研究のための理論的およびデータサポートを提供した。
【0069】
要約すると、LF-SCHY34は、体の内外で鉛イオンを吸収し、血液や臓器の鉛含有量を減らし、肝臓、腎臓、脳組織を保護することができる。さらに、LF-SCHY34はフリーラジカルを除去し、Keap1/Nrf2/AREシグナル伝達経路を活性化して、より多くの抗酸化物質を分泌させ、鉛によって引き起こされる体への酸化的損傷をよりよく軽減できる。この観点から、LF-SCHY34は強力な鉛吸着能力と抗酸化能力を備えた優れた菌株である。LF-SCHY34は今後も研究価値が高く、人体の鉛イオンによる酸化ストレスや他の重金属の毒性緩和など、大きな可能性と研究価値がある。
【0070】
上記の実施例は、本発明の好ましい方式を説明するだけであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の設計の精神から逸脱することなく、当業者が本発明の技術的解決策に加えたあらゆる種類の変形および改良は、本発明の請求項によって決定される保護の範囲に入るものとする。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】