(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】着色された合成繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 6/62 20060101AFI20230202BHJP
C08G 63/199 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
D01F6/62 306A
C08G63/199
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529107
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 FR2020052381
(87)【国際公開番号】W WO2021116614
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】アメドロ、エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジャケル、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】サン-ルー、レネ
【テーマコード(参考)】
4J029
4L035
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB07
4J029AC02
4J029AE02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BD07
4J029BF30
4J029CB06A
4J029HA01
4J029HB01
4J029JF321
4J029JF361
4J029KE02
4J029KE08
4L035AA05
4L035BB31
4L035EE07
4L035EE20
4L035JJ28
(57)【要約】
本発明は、ポリマーの分野、特に、ポリエステル繊維の分野に関し、より具体的には、着色された合成繊維を製造するためのプロセス、及びその使用に関する。更に特に、本発明は、着色された合成繊維をイソソルビド系半結晶性熱可塑性ポリエステルから製造するためのプロセスに関し、当該繊維は、少なくとも1つの分散染料の水溶液によって着色される。本発明はまた、分散染料によって着色された繊維、及び服飾品、織物、又はスポーツ用品の分野におけるその使用にも関する。本発明によるプロセスにより、改善された品質及び改善された染色の安定性を有する着色された合成繊維を得ることが可能になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色された合成繊維を製造するためのプロセスであって、以下のステップ、すなわち、
1)少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)と、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1つの脂肪族ジオール単位(B)と、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸単位(C)とを含む半結晶性熱可塑性ポリエステルを提供するステップであって、(A)/[(A)+(B)]モル比が、少なくとも0.05であり、最大でも0.30であり、溶液の還元粘度(35℃、オルト-クロロフェノール、5g/Lのポリエステル)が50mL/g超である、ステップと、
2)前記半結晶性熱可塑性ポリエステルから前記合成繊維を調製するステップと、
3)前記合成繊維を、少なくとも1つの分散染料の水溶液で染色するステップと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記分散染料が、アゾ型染料、アントラキノン型分散染料、メチン型染料、ニトロ型染料、ナフトキノン型染料、アミノケトン型染料、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記分散染料が、アゾベンゼンから誘導されたジアゾ染料又はモノアゾ染料から選択されるアゾ染料であることを特徴とする、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記染色ステップのために使用される分散染料の水溶液が、120℃~140℃、好ましくは130℃の温度、及び3.5~5.5、好ましくは4~5のpHを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)が、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、又はそれらの混合物のうちの1つから選択され、好ましくは、前記単位(A)がイソソルビドであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記脂肪族ジオール単位(B)が、1,4-シクロヘキサンジメタノールであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記芳香族ジカルボン酸単位(C)が、テレフタル酸であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記半結晶性熱可塑性ポリエステルが、非環式脂肪族ジオール単位を含まない、又は前記ポリエステルのモノマー単位の総数に対して、1%未満のモル量の非環式脂肪族ジオール単位を含み、好ましくは、前記ポリエステルが非環式脂肪族ジオール単位を含まないことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記合成繊維の前記調製ステップが、溶融紡糸法又は湿式若しくは乾式溶液プロセスによって行われることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
分散染料によって着色された合成繊維であって、前記合成繊維が、少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)と、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1つの脂肪族ジオール単位(B)と、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸(C)とを含む半結晶性熱可塑性ポリエステルから実質的になっており、(A)/[(A)+(B)]モル比が、少なくとも0.05であり、最大でも0.30であり、溶液の還元粘度(35℃、オルト-クロロフェノール、5g/Lのポリエステル)が50mL/g超である、合成繊維。
【請求項11】
服飾品、織物又はスポーツ用品の分野における、請求項10に記載の合成繊維の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの分野、特にポリエステル繊維の分野に関し、より具体的には、着色された合成繊維を製造するためのプロセス、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック素材は、熱可塑性であり、特にあらゆる種類のオブジェクト又は物品へと高速で変換できることから、長年にわたり大量生産には不可欠となっている。この観点から、合成繊維に関してはかなりの開発が行われている。
【0003】
合成繊維は、主に石油から誘導され、それらの低い生産コスト及び製造の容易さ故に一般に好ましい。主な既知の合成繊維は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、エラスタン、又はアクリルの繊維である。
【0004】
改善された特性を有するポリエステル繊維を提供し、当該繊維中の石油化合物の割合を低減するために、仏国特許出願公開第1657031号は、出願人名義で、イソソルビドを含む半結晶性熱可塑性ポリエステルから得られた合成繊維を開示している。
【0005】
米国特許第6063495号は、イソソルビド単位、テレフタル酸単位、及びエチレングリコール単位を有するポリマーから製造されたポリエステル繊維を開示している。得られた繊維は、織物での商業的又は工業的使用に特に好適である。
【0006】
合成繊維の用途の多様性を考慮すると、可能な限り広いカラーパレットを有する必要がある。
【0007】
しかしながら、これらの材料は高度に結晶性であり、水をほとんど吸収せず、膨潤しないため、合成ポリエステル繊維を染色することは、非常に難しいことが知られている。結果として、繊維内への染料の浸透及び移動は非常に限定され、得られる着色は一般に満足のいくものではない。
【0008】
国際公開第2018/222017号は、ポリエステル繊維及びそれを調製するための方法を開示している。ポリエステル繊維は、ジカルボン酸及びジオールが重合される構造を有するポリエステル樹脂から形成される。ポリエステル樹脂は、特に、イソソルビド由来の1~20モル%のジオール単位及びエチレングリコール由来の2~5モル%のジオール単位を含み、また1.3重量%のオリゴマーも含む。
【0009】
実際の樹脂の製造のために、調製中に添加剤を添加することができることが開示されている。黄変を制限するために、添加される添加剤は、酢酸コバルトなどのコバルトから誘導される化合物、又は、必要に応じて、アントラキノン化合物、ペリノン化合物、アゾ化合物、又はメチン化合物などの有機化合物であることができる。有機化合物の場合、物理的特性を改変することなく黄変を十分にマスクするために、1~50ppmの量を必ず守る必要がある。
【0010】
したがって、これらの有機化合物をポリマー合成中の添加剤として添加することは、ポリマーの黄変を補正することのみを可能にし、ポリエステルを、及び結果として生成され得る繊維を、実際に着色又は染色することを可能にするものではない。
【0011】
ポリエステル合成中の着色化合物の使用は、いくつもの欠点を有する。確かに、国際公開第2018/222017号に開示されているように得られるポリエステルの物理的特性を変化させる危険があるのみならず、重合反応器において望ましくない着色を発生させる危険もあり、それは、バッチ又は連続であるかどうかにかかわらず合成プロセスには望ましくなく、追加の洗浄操作が必要になるため、大量の化合物を使用することはできない。
【0012】
したがって、合成段階におけるいわゆる「着色」化合物の使用により、ポリエステルの黄変を補正することが最も可能であるが、最終的には前述の理由で、当該ポリエステルの特定の着色又は色相を得ることはできない。
【0013】
米国特許第3223752号は、染色性及び紡糸性を改善するために変性されたポリオレフィンに関する。特に、当該文書は、改善された繊維形成ポリオレフィン組成物、並びに、ポリオレフィンの繊維及びフィラメントを開示しており、それらは、物理的特性を有意に変化させることなく、改善された染料親和性、特に分散染料について改善された染料親和性を有する。その改善は、ポリオレフィンと、最大1重量%~20重量%の変性ポリエステルとを組み合わせることによって、得られる。当該文書による変性ポリエステルは、ジカルボン酸及びグリコールから調製されたポリエステルを指し、この変性は、酸又はグリコールの混合物を使用して行われる。
【0014】
合成繊維の分野では、多様かつ様々な、均一で高品質な色を有する繊維を供給することが依然として必要とされている。
【0015】
したがって、出願人が、着色された合成繊維を製造するためのプロセスを提案することによって、この必要に応えたことは、出願人の功績であり、当該プロセスは既知の解決策が有する欠点を有さない。
【発明の概要】
【0016】
本発明の第1の目的は、着色された合成繊維を製造するためのプロセスに関し、以下のステップ、すなわち、1)少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)と、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1つの脂肪族ジオール単位(B)と、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸単位(C)とを含む半結晶性熱可塑性ポリエステルを提供するステップであって、(A)/[(A)+(B)]モル比が、少なくとも0.05であり、最大でも0.30であり、溶液の還元粘度(35℃、オルト-クロロフェノール、5g/Lのポリエステル)が50mL/g超である、ステップと、
2)当該半結晶性熱可塑性ポリエステルから合成繊維を調製するステップと、
3)当該合成繊維を、少なくとも1つの分散染料の水溶液で染色するステップと、を含む。
【0017】
本発明の別の目的は、分散染料によって着色された合成繊維に関し、当該合成繊維は、少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)と、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1つの脂肪族ジオール単位(B)と、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸(C)とを含む半結晶性熱可塑性ポリエステルから実質的になっており、(A)/[(A)+(B)]モル比は、少なくとも0.05であり、最大でも0.30であり、溶液の還元粘度(35℃、オルト-クロロフェノール、5g/Lのポリエステル)は50mL/g超である。
【0018】
本発明の別の目的は、服飾品(furnishing)、織物、又はスポーツ用品の分野における、先に開示した着色された合成繊維の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
したがって、本発明は、着色された合成繊維を製造するためのプロセスに関し、以下のステップ、すなわち、
1)少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)と、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1つの脂肪族ジオール単位(B)と、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸(C)とを含む半結晶性熱可塑性ポリエステルを提供するステップであって、(A)/[(A)+(B)]モル比が、少なくとも0.05であり、最大でも0.30であり、溶液の還元粘度(35℃、オルト-クロロフェノール、5g/Lのポリエステル)が50mL/g超である、ステップと、
2)当該半結晶性熱可塑性ポリエステルから合成繊維を調製するステップと、
3)当該合成繊維を、少なくとも1つの分散染料の水溶液で染色するステップと、を含む。
【0020】
前述のように、合成ポリエステル繊維の着色は、これらの材料の結晶性に起因して非常に難しいことが一般に認められている。したがって、それらが吸収する水は非常に少量であり、膨潤しない。結果として、これらの繊維への染料の浸透及び移動は非常に限定され、一般に、均一かつ高品質の結果を得るためには十分ではない。
【0021】
驚くべきことに、本発明によるプロセスは、イソソルビド系熱可塑性ポリエステル及び少なくとも1つの分散染料の水溶液を使用することによって、改善された染色品質を有する着色された合成繊維を得ることを可能にする。
【0022】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明によるポリエステル中のイソソルビドの存在によって、イソソルビドを含まないポリエステル系合成繊維に関する合成繊維の色素親和性が改善され、同等の洗浄堅牢度も維持される。
【0023】
本発明で使用される「繊維」という用語は、フィラメント及び糸という用語と同義であり、したがって、連続又は不連続のモノ-又はマルチ-フィラメント、無撚又は織り合わされたマルチフィラメント、及びベース糸を含む。この用語はまた、合成由来の繊維のみも指し、したがって天然繊維を含まない。
【0024】
本発明によるプロセスの第1のステップは、少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)と、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1つの脂肪族ジオール単位(B)と、少なくとも1つのテレフタル酸単位(C)とを含む半結晶性熱可塑性ポリエステルを提供するステップであり、(A)/[(A)+(B)]モル比は0.05~0.30である。
【0025】
「(A)/[(A)+(B)]モル比」は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)と1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂肪族ジオール単位(B)との合計、のモル比を意味することを意図している。
【0026】
1つの特定の実施形態によれば、(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.10~0.28であり、好ましくは0.15~0.25である。
【0027】
モノマー又は単位(A)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールであり、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、又はそれらの混合物から選択され得る。イソソルビド、イソマンニド、及びイソイジドは、それぞれソルビトール、マンニトール、及びイジトールの脱水によって得ることができる。
【0028】
好ましい実施形態によれば、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)は、イソソルビドである。例えば、POLYSORB(登録商標)の商品名で出願人によって市販されている。
【0029】
脂肪族ジオール単位(B)は、直鎖状、分岐状、又は環状の脂肪族ジオールであり得る。それはまた、飽和又は不飽和脂肪族ジオールでもあり得る。
【0030】
1つの特定の実施形態によれば、脂肪族ジオールは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、及び/又は1,10-デカンジオールから選択される直鎖ジオールである。
【0031】
別の特定の実施形態によれば、脂肪族ジオール単位(B)は、飽和分岐鎖非環式脂肪族ジオールである。飽和分岐鎖非環式脂肪族ジオールとしては、例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、及び/又はネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0032】
一実施形態によれば、半結晶性熱可塑性ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含まない、又はポリエステルのモノマー単位の総数に対して、1%未満のモル量の非環式脂肪族ジオール単位を含み、好ましくは、ポリエステルは非環式脂肪族ジオール単位を含まない。
【0033】
別の特定の実施形態によれば、脂肪族ジオール単位(B)は、環状脂肪族ジオールである。環状脂肪族ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(TCDDM)、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、テトラヒドロフラン-ジメタノール(THFDM)、フランジメタノール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、ジオキサングリコール(DOG)、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、又はこれらのジオールの混合物が挙げられる。
【0034】
好ましくは、この特定の実施形態によれば、脂肪族ジオール単位(B)は1,4-シクロヘキサンジメタノールである。脂肪族ジオール単位(B)は、シス配置であってもトランス配置であってもよく、又はシス及びトランス配置のジオールの混合物であってもよい。
【0035】
1つの特定の実施形態によれば、脂肪族ジオール単位(B)は、例えば、シス-2-ブテン-1,4-ジオールなどの不飽和脂肪族ジオールである。
【0036】
芳香族ジカルボン酸単位(C)は、当業者に既知の芳香族ジカルボン酸から選択され得る。芳香族ジカルボン酸は、ナフタレート、テレフタレート、フラノエート、チオフェンジカルボキシレート、ピリジンジカルボキシレート、若しくはそうでなければイソフタレート、又はこれらの混合物の誘導体であり得る。有利には、芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸の誘導体であり、好ましくは、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸である。
【0037】
当該半結晶性熱可塑性ポリエステルの溶液の還元粘度は50mL/g超である。溶液の還元粘度は、130℃で撹拌しながらポリマーを溶解した後、35℃でUbbelohdeキャピラリー粘度計を使用して測定する。導入するポリマーの濃度は5g/Lである。
【0038】
1つの特定の実施形態によれば、半結晶性熱可塑性ポリエステルは、50mL/g~120mL/g、好ましくは60mL/g~100mL/gの溶液の還元粘度を有する。
【0039】
本発明によるプロセスに特に好適な半結晶性熱可塑性ポリエステルは、2.5~14モル%の範囲の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)のモル量、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の31~42.5モル%の範囲の脂肪族ジオール単位(B)のモル量、及び45~55モル%の範囲のテレフタル酸単位(C)のモル量を含む。
【0040】
ポリエステル中の異なる単位の量は、ポリエステルの完全な加水分解若しくはメタノリシスから生じるモノマーの混合物の1H NMRによって又はクロマトグラフィー分析によって、好ましくは1H NMRによって、決定され得る。
【0041】
当業者は、ポリエステルの単位の各々の量を決定するための分析条件を容易に見出すことができる。例えば、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビドテレフタレート)のNMRスペクトルから、1,4-シクロヘキサンジメタノールに関する化学シフトは、0.9~2.4ppmであり、4.0~4.5ppmであり、テレフタレート環に関する化学シフトは7.8~8.4ppmであり、イソソルビドに関する化学シフトは4.1~5.8ppmである。各シグナルの積分により、ポリエステルの各単位の量を決定することができる。
【0042】
本発明に従って使用される半結晶性熱可塑性ポリエステルは、200~295℃、例えば、220~285℃の範囲の溶融温度を有する。加えて、半結晶性熱可塑性ポリエステルは、40~120℃、例えば、50~115℃の範囲のガラス転移温度を有する。
【0043】
ガラス転移温度及び融点は、特に、10℃/分の加熱速度を用い、示差走査熱量測定(DSC)を使用して、従来の方法によって測定される。
【0044】
この方法によれば、試料は、最初に、10~320℃(10℃/分)の開放るつぼ内で窒素雰囲気下で加熱され、10℃(10℃/分)に冷却され、次いで、第1のステップと同じ条件下で再び320℃に加熱される。次いで、ガラス転移温度を、2回目の加熱の中間点で取得する。任意の融点は、最初の加熱時の吸熱ピーク(ピーク開始)で決定される。
【0045】
有利には、半結晶性熱可塑性ポリエステルが10J/gを超える、好ましくは20J/gを超える融解熱を有するとき、この融解熱の測定は、このポリエステルの試料を170℃で16時間熱処理し、次いで10℃/分で試料を加熱することによりDSCによって融解熱を測定することからなる。
【0046】
プロセスの第1のステップに従って提供される半結晶性熱可塑性ポリエステルは、ペレット又は顆粒の形態で提供され得る。
【0047】
1つの特定の実施形態によれば、半結晶性熱可塑性ポリエステルは、顆粒形態で調整され、当該顆粒は、300ppm未満、好ましくは200ppm未満、例えば、約75ppmの残留含水率を有する。これらのポリエステルは、合成繊維の製造に特によく適しており、分散染料とより良好な染料親和性を有し、良好な洗浄安定性を有する繊維を得ることを可能にする。
【0048】
1つの特定の実施形態によれば、本発明に従うプロセスの第1のステップは、少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)と、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1つの脂肪族ジオール単位(B)と、少なくとも1つの芳香族カルボン酸(C)とを含む半結晶性熱可塑性ポリエステルを提供するステップを含み、(A)/[(A)+(B)]モル比は、少なくとも0.05であり、最大でも0.30であり、溶液の還元粘度(35℃、オルト-クロロフェノール、5g/Lのポリエステル)は50mL/g超である。この実施形態によれば、合成繊維を調製するステップは、当該混合物から行われる。
【0049】
本発明のプロセスに従って好適な半結晶性熱可塑性ポリエステルを調製するために、当業者は、詳細に調製プロトコルを開示しているこれも本出願人名義の出願仏国特許出願公開第1657031号を参照することができる。この出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
本発明に従うプロセスの第2のステップは、前のステップで提供された半結晶性熱可塑性ポリエステルから合成繊維を調製することからなる。
【0051】
合成繊維は、当業者に既知の方法に従って得ることができる。例えば、合成繊維は、溶融紡糸又は溶液プロセス(湿式もしくは乾式)を介して得ることができる。
【0052】
1つの特定の実施形態によれば、合成繊維は、溶融紡糸法によって製造される。
【0053】
溶融紡糸法による合成繊維の製造は、最初に押出機中でポリエステルを溶融することを必要とする。次いで、溶融材料は、多数の孔からなるダイを通して圧力下で送られる。ダイの出口では、フィラメントは、空冷され、延伸され、巻き取られる。一般に、サイジング用製品は、紡糸経路の下部で適用される。
【0054】
1つの特定の実施形態によれば、本発明のプロセスの第2のステップに従って得られた合成繊維は、染色ステップの前に織られ又は編まれ得る。
【0055】
本発明によるプロセスの第3のステップは、合成繊維を少なくとも1つの分散染料の水溶液で染色することからなる。
【0056】
本発明の意味では、分散染料の水溶液は「染浴」とも呼ばれる。
【0057】
分散染料は、10マイクロメートル程度の比較的小さいサイズの弱極性染料である。この染料は、可溶化基がないことに起因して、実際には水に不溶性であり、すなわち、染料粒子を主に含有する水性分散液として適用されなければならないことを意味している。
【0058】
水溶液中に置く前に、この種の染料は、一般に、ペースト又は粉末形態であることができる。
【0059】
本発明による分散染料は、アゾ型分散染料、アントラキノン型分散染料、メチン型染料、ニトロ型染料、ナフトキノン型染料、アミノケトン型染料、及びそれらの混合物から選択される。
【0060】
1つの特定の実施形態によれば、分散染料は、アゾ型染料である。アゾ型染料は、例えば、参考として、ディスパースブルー165(Dispersed blue 165)、C.I.ディスパースオレンジ5(C.I. Disperse Orange 5)、C.I.ディスパースレッド19、又はC.I.ディスパースブルー183などのアゾベンゼンから誘導されるジアゾ又はモノアゾ染料から特に選択することができる
【0061】
1つの特定の実施形態によれば、分散染料は、アントラキノン型染料である。例として、アントラキノン型染料は、カーマイン、アリザリン、プルプリン、インダンスレンブルー、アントラキノンイエロー、又はアントラキノンレッドから選択することができる。
【0062】
1つの特定の実施形態によれば、分散染料は、下記で定義されるアゾ型染料と、上記で定義したアントラキノン型染料との混合物である。
【0063】
典型的には、アントラキノン型染料は、アゾ型染料よりも小さい分子サイズを有するため、より均一な染色を得ることが可能である。したがって、アントラキノン染料は、明るい色合いを得るのに好ましく、アゾ染料は、暗い色合いを得るのに好ましい。
【0064】
1つの特定の実施形態によれば、水溶液は、0.01%~15%の分散染料の量、好ましくは1~10%、特に3~5%の分散染料の量を含み得る。百分率は、溶液の総重量に対する染料の重量によって表される。
【0065】
別の特定の実施形態によれば、本発明による染色ステップに使用される分散染料の水溶液は0.1g/L~10g/Lの分散剤を含み得る。分散剤は、良好な湿潤性を有し、したがって、水中での染料の分散を促進するが、とりわけ、染色プロセス中に安定した分散を維持することを可能にする。
【0066】
分散剤は、2通りの化合物に属し得る。第1には、スルホン化基を含有する芳香族化合物の縮合生成物に関するものであり、第2には、リグニンスルホネートに関するものである。
【0067】
本発明のプロセスによれば、染色ステップは、分散染料の水溶液に浸漬することによって行われる。
【0068】
1つの特定の実施形態によれば、染色ステップに使用される分散染料の水溶液は、高温、すなわち、120℃~140℃の温度、好ましくは130℃の温度を有する。
【0069】
この特定の実施形態によれば、使用される分散染料の水溶液は酸性である。「酸性」とは、本発明では、当該溶液が3.5~5.5、好ましくはpH4~5を有することを意図している。
【0070】
また、この実施形態によれば、浸漬は、有利には、10~120分間、好ましくは20~90分間、より好ましくは30~60分間、行うことができる。
【0071】
1つの特定の実施形態によれば、合成繊維を染色するステップは、次の順序に従って行われる、すなわち、60℃で10分間保持し、温度を1.5℃/分の速度で最大80℃まで上げ、次いで1℃/分の速度で最大130℃まで上げ、130℃で45分間保持し、最後に、2.5℃/分の速度で60℃まで温度を下げる。
【0072】
この実施形態によれば、この時間/温度サイクルの選択は、分散染料による合成繊維の最適な染色を可能にする。
【0073】
1つの特定の実施形態によれば、染色ステップ後、プロセスは、当該繊維に固定されていない分散染料を除去するために、染色された合成繊維をストリップするステップを含む。
【0074】
この特定の実施形態によれば、ストリッピングは、合成繊維を65℃~80℃の範囲の温度の浴中で15~20分間浸漬することによって行うことができ、当該浴は、例えば、水酸化ナトリウムとヒドロ亜硫酸ナトリウムとの混合物を含む。任意選択で、ストリッピングに続いて、ホットリンス及びコールドリンスを行うことができる。
【0075】
この実施形態によれば、本発明のプロセスに従って得られた着色された合成繊維は、第1のステップに従って提供されるもの以外の任意のポリマーを含まない。
【0076】
本発明の第2の目的は、分散染料によって着色された合成繊維に関し、当該合成繊維は、少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)と、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1つの脂肪族ジオール単位(B)と、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸(C)とを含む半結晶性熱可塑性ポリエステルから実質的になっており、(A)/[(A)+(B)]モル比は、少なくとも0.05であり、最大でも0.30であり、溶液の還元粘度(35℃、オルト-クロロフェノール、5g/Lのポリエステル)は50mL/g超である。
【0077】
本発明による染色された合成繊維は、先に開示したプロセスに従って得られると考えられる。
【0078】
半結晶性熱可塑性ポリエステル及び分散染料は、以前に開示したとおりである。
【0079】
「実質的に~からなる」とは、本発明では、合成繊維の総重量に対して98重量%、好ましくは99重量%、特に100重量%が、当該半結晶性熱可塑性ポリエステルからなることを意味することが意図されている。
【0080】
本発明の別の目的は、織物服飾品、又はスポーツ用品の分野で使用するために先に定義したような染色された合成繊維である。
【0081】
1つの特定の実施形態によれば、繊維は、織物及び不織布の製造に使用され得る。織物は、特に、織り又は編みによって得ることができる。
【0082】
不織布は、方向的に若しくはランダムに分布した繊維のウェブ、布、ラップ、又はマットからなる製造製品であり、その内部凝集は、機械的、物理的、又は化学的方法によって、又はこれらの方法の組み合わせによって、提供される。内部凝集の例は、接着剤結合であることができ、これにより不織布を得て、次いで当該不織布から繊維製マットの形態を作製することもできる。
【0083】
繊維は、乾燥経路、溶融経路、湿潤経路、又はフラッシュ紡糸など当業者に知られている技術よって不織布に変換され得る。
【0084】
例として、乾燥経路による不織布の形成は、特に、カレンダー加工によって、又はエアレイドプロセスによって行われ得る。溶融経路による製造に関して、それは押出(スピンボンディング技術又はスパンボンド布地)又は押出ブロー成形(溶融ブロー成形)によって行うことができる。
【0085】
本発明は、以下の実施例及び図面によってより明確に理解され、これらの実施例及び図面は純粋に例示的なものであることが意図され、保護の範囲を決して限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1】明るい色相の浴で着色された合成繊維である。左から右へ:合成繊維F(PET)、合成繊維D(PEI10T)、合成繊維A(PTI5T)、合成繊維B(PTI10T)、合成繊維C(PTT)。
【0087】
【
図2】中間色相の浴で着色された合成繊維である。左から右へ:合成繊維F(PET)、合成繊維D(PEI10T)、合成繊維A(PTI5T)、合成繊維B(PTI10T)、合成繊維C(PTT)。
【0088】
【
図3】暗い色相の浴で着色された合成繊維。左から右へ:合成繊維F(PET)、合成繊維D(PEI10T)、合成繊維A(PTI5T)、合成繊維B(PTI10T)、合成繊維C(PTT)。
【0089】
【
図4】合成繊維E及びFで編まれた布地の染浴1~3で得られた着色を比較している。左から右へ:合成繊維Fで編まれ、浴1で染色された布地;合成繊維Eで編まれ、浴1で染色された生地;合成繊維Fで編まれ、浴2で染色された布地;合成繊維Eで編まれ、浴2で染色された生地;合成繊維Fで編まれ、浴3で染色された生地;合成繊維Eで編まれ、浴3で染色された生地。
【実施例】
【0090】
材料及び方法
【0091】
A:ポリエステルの合成
【0092】
異なるポリエステルを、合成繊維の製造のために調製した。
【0093】
ポリマーA(PTIT):ポリ(トリメチレン-コ-イソソルビドテレフタレート)
【0094】
ポリマーは、本発明による半結晶性熱可塑性ポリエステルである。
【0095】
このポリマーの合成は、エステル交換及び重縮合ステップを介して、2ステップでの溶融経路によって行われる。この合成は、トルク測定を有する撹拌機、蒸留塔、真空ライン、及び窒素入口を備えた60L反応器で行う。
【0096】
最初に、予め調製した反応混合物で充填する前に、反応器を100℃に予熱する。
【0097】
反応混合物は、
18.7kgのジメチルテレフタレート、
0.915kgのイソソルビド、
9.049kgの1,3-プロパンジオール、
触媒として使用される18.66gのチタンブトキシド、
エーテル化阻害剤として使用される6.32gのテトラヒドロキシルアンモニウム、
酸化防止剤として使用される9.5gのHostanox PEPQ、
酸化防止剤として使用される9.5gのIrganox 1010
からなる。
【0098】
次いで、反応器を4回の真空/窒素サイクルによって不活性化する。
【0099】
次いで、反応媒体を、220℃に1:30時間加熱し、次いで、エステル交換反応の終了まで245℃に加熱する。この第1のステップは、1.5バールの窒素下で行う。
【0100】
目標変換率に達したら、1:40時間で最大真空を得るために減圧傾斜を適用し、80分の真空傾斜後に温度を255℃に上げる。
【0101】
目標トルクに達したら、ポリマーを水浴に注ぎ、次いで造粒する。
【0102】
このようにして得られたポリマーは、73.7mL/gの溶液の還元粘度(IV)を有する。
【0103】
次いで、ポリマーペレットを、50Lのガラスフラスコ中で油浴により加熱し、撹拌し、窒素流下で固体状態での後縮合処理にかける。
【0104】
結晶化ステップでは、油浴を150℃に加熱する。フラスコを撹拌し、顆粒は窒素流(流量=10L/分)下にある。約8時間後に結晶化を停止する。
【0105】
次いで、ペレットを窒素下で40℃に冷却して、必要に応じてフラスコの壁に付着したペレットを分離する。次いで、後縮合ステップのために、撹拌しながら窒素流(10L/分)下で210℃に油浴を再加熱する。これらの条件を15時間維持する。
【0106】
ポリマーAと表示した最終ポリマーは、最終溶液中の最終還元粘度IVが102mL/g、イソソルビドのジオールに対するモル比が5.2モル%、ガラス転移温度Tgが58℃、及び溶融温度Tmが222℃である。
【0107】
ポリマーB(PTIT)及びポリマーC(PTT)
【0108】
ポリマーBは、本発明による半結晶性熱可塑性ポリエステルであり、ポリマーCは、比較として役立ち、イソソルビドを含有していない。これらの2つのポリマーは、ポリマーAと同様のプロセスに従って得られ、下記表1に記載されている最終特性を有する。
【0109】
【0110】
ポリマーD(PEIT):ポリ(エチレン-コ-イソソルビドテレフタレート)(PEIT)
【0111】
ポリマーDの合成は、エステル化及び重縮合ステップを介して、2ステップでの溶融経路によって行う。この合成は、トルク測定を有する撹拌機、蒸留塔、真空ライン、及び窒素入口を備えた100L反応器で行う。
【0112】
反応器を最初に100℃に予熱した後、以下の試薬を充填する:
29kgのテレフタル酸、
3.67kgのイソソルビド、
11.44kgのエチレングリコール、
触媒として使用される11.59gの酸化ゲルマニウム、
2.65gの酢酸コバルト、
酸化防止剤として使用される17.65gのHostanox、
酸化防止剤として使用される17.65gのIrganox 1010、
抗DEGとして使用される4.33gの水酸化テトラエチルアンモニウム。
【0113】
次いで、反応器を4回の真空/窒素サイクルによって不活性化する。
【0114】
エステル化ステップでは、反応媒体を2.5バール下で250℃に加熱する。約80%の変換率が得られるまでエステル化を続ける。
【0115】
次いで、添加瓶(50gのエチレングリコール中に溶解した3.53gのリン酸)を介してリン酸を添加するために、圧力を大気圧(1024hPa)まで15分間で減少させる。
【0116】
次いで、真空ランプを適用して、25分で3mbarに到達させる。反応器の温度を265℃に上げる。重縮合はトルク測定によってモニターする。
【0117】
目標トルクに達したら、ポリマーを水皿に注ぎ、次いで造粒する。
【0118】
得られたポリマーは、54mL/gの溶液中還元粘度(IV)を有する。
【0119】
次いで、ポリマーペレットを、50Lのガラスフラスコ中で油浴により加熱し、撹拌し、窒素流下で固体状態での後縮合処理にかける。
【0120】
結晶化ステップでは、油浴を150℃に加熱する。フラスコを撹拌し、顆粒は窒素流(流量=10L/分)下にある。約8時間後に結晶化を停止する。次いで、ペレットを窒素下で40℃に冷却して、必要に応じてフラスコの壁に付着したペレットを除去する。次いで、後縮合ステップのために、撹拌しながら窒素流(10L/分)下で220℃に油浴を再加熱する。これらの条件を90時間維持する。
【0121】
ポリマーDと表示した最終ポリマーは、溶液中の最終還元粘度(IV)が106mL/g、イソソルビドのジオールに対するモル比が11.9モル%、Tgが91℃、及びTmが225℃である。
【0122】
ポリマーE:(シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビドテレフタレート)(PITg)
【0123】
ポリマーEの合成は、国際公開第2016/189239(A1)号の実施例3aに従って行った。ポリマーは、次の特性を有する、すなわち、イソソルビドのジオールに対するモル比は15.2モル%、溶液の還元粘度(IV)は85mL/g、Tgは109℃、Tmは263℃である。
【0124】
ポリマーF(PET):
【0125】
ポリマーFは、比較として使用し、イソソルビドを含有していない。ポリマーFは、Invistaから市販のポリ(エチレンテレフタレート)である。
【0126】
B:合成繊維の調製
【0127】
本発明による合成繊維A、B、D及びEは、それぞれポリマーA(PTIT)、B(PTIT)、D(PEIT)、及びE(PITg)からパイロットライン上で溶融紡糸することによって作製した。
【0128】
比較合成繊維C及びFもまた、それぞれイソソルビドを含まないポリマーC(PTT)及びF(PET)から作製した。
【0129】
押出温度は、ポリマーA(PTIT)、B(PTIT)及びC(PTT)の場合は260℃であり、ポリマーD(PEIT)、E(PITg)及びF(PET)の場合は300℃である。
【0130】
使用されるダイは、各々25μmの直径の孔を48個有するヘッドを備え、材料の流量は2kg/時であり、延伸速度は1200m/分である。
【0131】
ダイの出口で、室温(約23℃)の空気ジェットによって冷却を行い、次いでサイジングを繊維の表面に適用する。
【0132】
次いで、機械的特性を調整するために、繊維束を、異なる温度(30℃~115℃)に加熱した4対のバケット上に通し、次いで、アセンブリを巻き取る。
【0133】
次いで、ポリエステルA~Fの各々得られた合成繊維を、染浴に浸漬する。
【0134】
C:染浴の調製
【0135】
使用される分散染料は、Huntsmanによって販売されているものであり、以下に列挙する:
黄色:基準Teratop GWL-01(アントラキノン型)及びTerasil W6GS(アゾ型)
赤色:基準Terasil 3BL-01(アゾ型)及びTerasil W4BS(アゾ型)
青色:基準Terasil 3RL-02(アントラキノン型)及びTerasil WBLS(アゾ型)。
【0136】
各染浴について、3つの染料を、水、分散剤(Univadine DIF、1g/L)及び防しわ剤(Albafluid CD、1g/L)と混合する。
【0137】
その混合物は、各分散染料の染浴を得るために酢酸を添加することによって、5のpHを有する。
【0138】
したがって、3つの染浴は、明色、中間色、及び暗色を得るために、染料の量を変えることによって、準備される。使用した各染料の量を、以下の表2に提示する。
【0139】
【0140】
D:合成繊維の染色
【0141】
ポリエステル合成繊維は、明るい色相、中間色相、暗い色相で着色した。染浴の各々について、全ての異なる繊維を、染色するために同じボトルに入れた。
【0142】
ボトルを、Datacolorによって販売されているAhiba Nuance トップスピードボトル-ターナーに配置する。
【0143】
染色は、以下の連続するステップ、すなわち、
繊維を室温(約23℃)の染色溶液に挿入し、次いで全体を60℃に加熱するステップと、
60℃で10分間保持するステップと、次いで
最大80℃まで1.5℃/分の速度で温度を上昇させるステップと、次いで
最大130℃まで1℃/分の速度で温度を上昇させるステップと、次いで
130℃で45分間保持するステップと、最後に、
60℃まで2.5℃/分の速度で温度を低下させるステップと、を有する時間/温度サイクルに従って行う。
【0144】
次いで、様々な合成繊維を回収する。浴2及び3で染色されたそれらの繊維を、過剰な分散染料を除去するために、追加のストリッピングステップにかける。
【0145】
ストリッピングは、
4g/Lの苛性ソーダ、及び
2g/Lの水素化ナトリウム
を含む浴中で20分間70℃で行う。
【0146】
20分後に、合成繊維をホットリンス及びコールドリンスする。
【0147】
E:染料の洗浄堅牢度の試験
【0148】
合成繊維E(PITg)を使用して、3枚の織物を作製し、明るい色相、中間色相、及び暗い色相の浴それぞれで染色する。染色は、先に開示したプロトコルに従って行う。
【0149】
同じことを、合成繊維のF(PET)を使用して行う。
【0150】
織物の各々について、洗浄堅牢度は、標準ISO105-C06:2010に従って行われる色堅牢度試験によって評価される。
【0151】
試験は、織物を40℃で30分間、150mLの洗剤中で洗浄し、続いて40℃で2つの水浴においてリンスするステップを含む。
【0152】
各織物を、6つの異なる材料で作製された白色の布地のストリップ、すなわちウール、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、綿及び酢酸で洗浄する。この白い布地のストリップは対照として用い、必要に応じて、染料が織物から滲み出したかどうかを確認し、どのタイプ(複数可)の素材で染み出したかを知ることができる。
【0153】
結果
異なる浴で得られた着色された合成繊維を
図1~3に示す。
【0154】
試験した3つの色相について、本発明による半結晶性熱可塑性ポリエステルで得られた合成繊維A、B、D、Eは、非常に急速に染料の大部分を吸収する。得られた着色は、完全に均一であり、高品質の視覚的外観を有する。
【0155】
更に、染色速度は、本発明による合成繊維の方が、それぞれPTT及びPETにおけるイソソルビドを含まない比較の合成繊維C及びFよりもはるかに速い。
【0156】
これらの結果を確認するために、Konica Minolta分光計を使用して色測定を行った。試料をセル上に置き、測定を反射モードで行う。
【0157】
デルタLは、明度(明るい又は暗い)の差に対応する。デルタaは、緑と赤の差に対応し、最後のデルタbは、青と黄の差に対応している。
【0158】
比色測定の結果を以下の表3に示す。
【0159】
【0160】
これらの結果は、合成繊維D(PEI10T)については、使用される色相に関係なく、染色速度が非常に速いことを示している。更に、赤色顔料は、他のエレメントよりもはるかに良好に固定される。
【0161】
合成繊維A及びB(PTIT)を用いて得られた結果は、参照合成繊維C(PTT)と比較して、特に、赤色及び黄色の顔料に関してわずかに高い染色性を示している。
【0162】
合成繊維E(PITg)及びF(PET)の染色挙動を、当該繊維から編んだ布について比較した。その結果は
図4に示してある。ポリマー合成繊維Eを用いて得られた編地(knitted fabrics)は、イソソルビドを含まない合成繊維Fを用いて得られた編地よりも良好な染色性を有することを示している。実際に、染色を比較すると、本発明による合成繊維Eで編まれた布地で得られた染色より暗い。
【0163】
合成繊維Eを用いて得られた編地は、イソソルビドを含まない合成繊維Fを用いて得られた染色性よりも良好な染色性を有する。
【0164】
更に、染色の洗浄堅牢度の試験によれば、合成繊維Eの織物又は合成繊維Fの織物のいずれについても、対照ストリップで滲みは観察されなかった。
【0165】
したがって、この結果は、本発明による合成繊維が、一般に使用される合成繊維の洗浄堅牢度と同程度の洗浄堅牢度を有し、イソソルビド系熱可塑性ポリエステルの組み込みがこの堅牢性を変えないことを示している。
【国際調査報告】