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  • 特表-患者のリスクスコアを判定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】患者のリスクスコアを判定する方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20230202BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532636
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 SE2020051160
(87)【国際公開番号】W WO2021112748
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】1951381-1
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ブリアン アンドレブス
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
5L099AA04
(57)【要約】
本開示は、患者の治療モデルを更新する、コンピュータにより実施される方法に概ね関する。本開示はこのほか、対応するコンピュータシステム及びコンピュータプログラム製品に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のリスクスコアを判定するために制御ユニットによって実施される、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法は、
-前記制御ユニットにて、前記患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを受信するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、個人のパラメータの前記第1のセットに基づいて個人の患者モデルを形成するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、個人の患者モデルと複数の異なる事前定義された一般的患者モデルのそれぞれとの間の合致度を判定するステップであって、前記一般的患者モデルのそれぞれは事前定義された患者リスクスコアを有する、ステップと、
-前記制御ユニットを使用して、所定の閾値を超える合致度を有する少なくとも1つの一般的患者モデルを選択するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、前記少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに基づいて前記患者の前記リスクスコアを判定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記選択するステップは、最高の合致度を有する前記一般的患者モデルを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リスクスコアは、少なくとも2つの選択された一般的患者モデルの組み合わせに基づいて判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つの選択された一般的患者モデルのそれぞれが、前記リスクスコアを判定するときに適用される重みを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記個人のパラメータは、所定の期間にわたって収集された複数の前記患者の臨床データを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記臨床データは、少なくとも患者のバイタル、入院回数、検査結果及び処方薬を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者のバイタルは、心拍数データ、心電計(EKG/ECG)データ、呼吸数データ、患者の体温データ、パルスオキシメトリデータ及び血圧データのうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
-前記制御ユニットを使用して、低リスク、中リスク、高リスクのカテゴリを定義するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、前記患者の前記判定されたリスクスコアをさまざまな前記カテゴリの事前定義されたリスクスコア範囲と比較することにより、リスクカテゴリを前記患者に割り当てるステップと、をさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
-前記制御ユニットを使用して、前記選択された患者リスクカテゴリに基づいて前記患者に対して提案される治療を形成するステップであって、前記提案される治療は、前記リスクカテゴリごとに異なる、ステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者に対する前記治療は、前記患者が前記高リスクのカテゴリに割り当てられた場合にのみ形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
-前記制御ユニットにて、前記提案された治療を受けた後の前記患者の状態を示す個人のパラメータの第2のセットを受信するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、個人のパラメータの前記第1及び前記第2のセットに基づいて患者の健康状態を判定するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、前記判定された患者の健康の増進を、前記少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに対して定義された事前定義の健康の増進と比較するステップと、をさらに含む、請求項9及び10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
-前記判定された個人の患者モデルと前記健康の増進の比較の結果との組み合わせに基づいて、前記一般的患者モデルのうちの少なくとも1つを更新するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記一般的患者モデルのうちの前記少なくとも1つを更新する前記ステップは、機械学習プロセスを適用するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記機械学習プロセスは、教師なし機械学習プロセスである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記機械学習プロセスは、教師あり機械学習プロセスである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記機械学習プロセスは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)又は再帰型ニューラルネットワーク(RNN)に基づくものである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
患者のリスクスコアを判定するために制御ユニットによって実施される、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法は、
-前記制御ユニットにて、前記患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを受信するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、個人のパラメータの前記第1のセットを複数の異なる事前定義された一般的患者モデルと照合するステップであって、前記一般的患者モデルのそれぞれは、事前定義された患者リスクスコアを有する、ステップと、
-前記制御ユニットを使用して、少なくとも前記個人のパラメータに最適な前記一般的患者モデルを選択するステップと、
-少なくとも前記選択された一般的患者モデルに基づいて、前記患者の前記リスクスコアを判定するステップと、を含む、方法。
【請求項18】
患者に関連する医療費を削減するために制御ユニットによって実施される、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法は、
-前記制御ユニットにて、前記患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを受信するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、個人のパラメータの前記第1のセットに基づいて個人の患者モデルを形成するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、前記個人の患者モデルと複数の異なる事前定義された一般的患者モデルのそれぞれとの間の合致度を判定するステップであって、前記一般的患者モデルのそれぞれは、事前定義された患者リスクスコアを有する、ステップと、
-前記制御ユニットを使用して、所定の閾値を超える合致度を有する少なくとも1つの一般的患者モデルを選択するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、前記少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに基づいて前記患者の前記リスクスコアを判定するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、低リスク、中リスク及び高リスクのカテゴリを定義するステップと、
-前記制御ユニットを使用して、前記患者の前記判定されたリスクスコアを、前記さまざまなカテゴリの事前定義されたリスクスコア範囲と比較することにより、前記患者にリスクカテゴリを割り当てるステップと、
-前記制御ユニットを使用して、前記患者が前記高リスクのカテゴリに割り当てられた場合にのみ、前記患者に対して治療を提案するステップと、を含む、方法。
【請求項19】
患者のリスクスコアを判定するように構成されたコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは制御ユニットを具備し、前記制御ユニットは、
-前記患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを受信するステップと、
-個人のパラメータの前記第1のセットに基づいて、個人の患者モデルを形成するステップと、
-前記個人の患者モデルと複数の異なる事前定義された一般的患者モデルのそれぞれとの間の合致度を判定するステップであって、前記一般的患者モデルのそれぞれは事前定義された患者リスクスコアを有する、ステップと、
-所定の閾値を超える合致度を有する少なくとも1つの一般的患者モデルを選択するステップと、
-前記少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに基づいて、前記患者の前記リスクスコアを判定するステップと、を実施するように構成される、コンピュータシステム。
【請求項20】
患者のリスクスコアを判定するように構成されたコンピュータシステムを操作するためのコンピュータプログラム手段を保存した非一時的コンピュータ可読媒体を具備するコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータシステムは、制御ユニットを具備する、コンピュータプログラム製品において、前記コンピュータプログラム製品は、
-前記制御ユニットにて、前記患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを受信するためのコードと、
-前記制御ユニットを使用して、個人のパラメータの前記第1のセットに基づいて個人の患者モデルを形成するためのコードと、
-前記制御ユニットを使用して、前記個人の患者モデルと複数の異なる事前定義された一般的患者モデルのそれぞれとの間の合致度を判定するためのコードであって、前記一般的患者モデルのそれぞれは、事前定義された患者リスクスコアを有する、コードと、
-前記制御ユニットを使用して、所定の閾値を超える合致度を有する少なくとも1つの一般的患者モデルを選択するためのコードと、
-前記制御ユニットを使用して、前記少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに基づいて前記患者の前記リスクスコアを判定するためのコードと、を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者のリスクスコアを判定するためにコンピュータにより実施する方法に概ね関する。本開示はこのほか、対応するコンピュータシステム及びコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年にわたって、医療費が急速に増大し、少なくともその医療費の増大を遅らせるためにさまざまな計画が提案されてきた。そのような計画は、例えば、個人が適切な治療を受ける場合の閾値よりも高い閾値を実施し、それにもかかわらず医療システム内の医療の質を望ましいレベルに維持しようとすることに焦点を合わせる場合がある。
【0003】
これとは別に、医師、看護師又は任意の他の形態の熟練したセラピスト又は医療コンサルタントが、個人に有益な健康への影響を及ぼす可能性のある状況変化を発生させることを目的として、個人に推奨を提供しようとする場合があり、これにより、個人が医療システム内で治療を探し求めなければならないリスクを低減する。
【0004】
いつ患者に治療を施すか、いつ施さないかを判定できるようにするために、何らかの形態の個人の事前評価が必要である。
【0005】
個人、例えば、医師、看護師、あるいは患者を支援するあらゆる人を評価する際には、個人の経験、ガイドライン及び最良の実践を用いて、個人の現在の状態と、場合によっては、個人に対して提案された治療法の推奨される状況変化とを可能な限り客観的に規定する。例えば、医師又はセラピストは、高度な知識ベースを維持しているが、人間であり、地域内の最近の発展に気付いていない場合があり、個人に関連するあらゆる医療情報など、個人の全体的な状況を理解していない場合がある。さらに、現在利用可能な最良の実践は、状況によっては、個人に個別の治療を提供することを控えることである場合がある。
【0006】
最近、医師又はセラピストを支援するためのデジタル化された解決策が導入され、医師又はセラピストの意思決定に関する主観性が大幅に低減すると同時に、利用可能な最良の実践の「解決」を向上させ、医師又はセラピストが多めのデータに基づいて決定することができるようになる。そのようなデジタル化された解決策ではこのほか、個人の現在の状態を規定するときに、個人に関連するあらゆる医療情報を含めることができる。
【0007】
状況変化を推奨するために利用可能なデジタル化された解決策の一例が、特許文献1(米国特許出願公開第2018/0165418号明細書)に提示されている。特許文献1は、個人の健康を直接特徴付けるデータのほか、個人の健康に影響を及ぼす可能性を否定できない要因に関連する状況データを収集するシステムを具体的に開示している。収集された要因データは、時間の経過に伴う個人の健康状態を示し、反映する特性のベクトル(「健康ベクトル」)を構築するためにシステムによって使用される。システムはこのほか、個人の健康ベクトルが異なる時点で存在して健康ベクトルの変化を生成するとき、個人の健康ベクトルの差を評価してもよい。システムは、個人の健康ベクトルと健康ベクトルの変化とを使用して、個人の現在の健康スコアを判定する。これは、その時点での個人の全体的な健康(例えば、非常に健康な状態から非常に不健康な状態までのスペクトル)を特徴づける。システムはこのほか、さらに最近の健康ベクトル情報に基づいて定期的に健康スコアを生成することにより、個人の健康スコアが時間とともに変化するときの個人の健康変化の傾向(「健康スコア傾向」)を構築する。システムは、個人の健康スコア傾向データを、ほぼ同じ場所にいる人々(即ち、1つ以上の人口コホート)の健康スコア傾向を反映するデータと比較し、その比較と、比較されたコホートの行動パターンとに基づいて、個人の健康を改善する可能性が高いだけでなく、個人に採用される可能性が高い、個人が実施することができる動作又は変化に対する推奨事項を生成する。
【0008】
しかし、特許文献1に提示された解決策には、いくつかの一般的な欠点がある。第一に、特許文献1に提示された解決策は、個人の評価の点では精度が低く、最終的に、医師/セラピストは、デジタル化された解決策による可能性のある推奨を迂回して、「安全を期す」ようになり、個人が満足している状態を確実なものにすることを決定する可能性がある。
【0009】
第二に、特許文献1に提示された解決策は、個人に対する一般的な推奨事項にのみ適用可能であり、個人が入院しているか医療システム内で実際の治療が必要なときに実施する必要のある行動に全く焦点を当てていない。このため、特許文献1に提示された解決策は、特に個人が医療システム内で実際の治療を受けなければならない場合、医療費の増大の問題を解決しないことになる。
【0010】
上記を念頭に置くと、医師向けのデジタル化された解決策をさらに改善する余地があると思われ、個人の現在の健康/状況に最も適した種類の治療を個人に提供するということを全体の意図として、評価の信頼性と医療の質の均衡を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0165418号明細書
【発明の概要】
【0012】
本開示の一態様によれば、上記は、患者のリスクスコアを判定するために制御ユニットによって実施される、コンピュータにより実施される方法によって軽減される。ここで、この方法は、制御ユニットにて、患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを受信するステップと、制御ユニットを使用して、個人のパラメータの第1のセットに基づいて個人の患者モデルを形成するステップと、制御ユニットを使用して、個人の患者モデルと複数の異なる事前定義された一般的患者モデルのそれぞれとの間の合致度を判定するステップであって、一般的患者モデルのそれぞれは事前定義された患者リスクスコアを有する、ステップと、制御ユニットを使用して、所定の閾値を超える合致度を有する少なくとも1つの一般的患者モデルを選択するステップと、制御ユニットを使用して、少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに基づいて患者のリスクスコアを判定するステップと、を含む。
【0013】
本開示の全体的な考え方は、患者のリスクスコアを判定することであり、患者の事前評価が主な入力として使用される。次に、リスクスコアは、患者に最も適切な治療を提供するために医療システム内で使用される場合がある。本開示に沿って、患者のリスクスコアの判定は、従来技術と比較して、単に患者の事前評価に基づくのではなく、患者に関するデータが複数の異なる一般的患者モデルと照合されるプロセスを含む。異なる一般的患者モデルは、場合によっては異なる分野の専門家と緊密に協力して事前に形成されたものである。ここで、異なる一般的患者モデルは、一般に、例えば、適切に治療されていない場合など、異なる患者の行動及び結果に関連していると考えられる場合がある。さらに、異なる一般的患者モデルは、典型的には、1人の患者に関する知識に基づくものではなく、多数の患者に関する一般的な(典型的には匿名化された)知識と、そのような患者に予想される(組み合わせた)結果に基づくものである。
【0014】
このため、本開示に沿って、(患者に対して収集されたデータに依存する)患者の個人のモデルが、複数の異なる一般的患者モデルと照合され、所定の閾値を超える合致度を有する少なくとも1つの一般的患者モデルが選択される。このため、本スキームは、患者の直接評価に基づいて患者のリスクスコアを単に判定する代わりに、患者の特定の行動を、ほぼ同じ方法で出現/行動した患者の「集団」と照合することによって、患者の評価を「全体像」に入れることを確実なものにする。
【0015】
このため、本開示により、患者のリスクスコアを判定するために、個人の患者に依存するだけではなく、一般的な患者の行動に依存することが可能である。このため、本スキームに従う利点には、患者の予想される将来の行動を確実に予測する可能性と、患者の合併症を最小限に抑えるために、この可能性のある行動を最適に処理する方法とが挙げられる。異なる事前規定された一般的患者モデルとの照合はこのほか、患者に対する個人のパラメータの可能性のある変動を除外する方法と考えられる場合がある。そのような変動は、患者の将来に及ぼす影響が少ないと以前に判定された可能性があるためである。
【0016】
このため、本開示は、患者に提供される治療の質が改善されることを確実なものにすると同時に、「過剰治療」が低減することを確実なものにし、これにより、医療システムの全体的な負担を軽減することを目的としてもよい。さらに、本開示は、非常に柔軟な方法で実施されてもよく、場合によっては、新たに特定された「最良の実践」を考慮に入れて、「新たな」又は「更新された」一般的患者モデルを途中で導入し得ることを確実なものにする。
【0017】
本開示の文脈内で、「患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータのセット」という表現は、広く解釈される必要があり、患者に関して収集されていたか、収集された任意のタイプの関連情報を含む必要がある。そのような情報は、例えば、患者のバイタル、入院回数、検査結果、処方薬を含むが、ここに挙げたものに限定されない(例えば、異なる医師の診察及び/又は入院にて、数秒/数時間から患者の生涯にわたって、収集されたデータを含む)所定の期間にわたって収集された患者の臨床データを含んでもよい。使用に関連する可能性のある追加の情報には、例えば、心拍数データ、心電計(EKG/ECG)データ、呼吸数データ、患者の体温データ、パルスオキシメトリデータ及び血圧データが含まれる。
【0018】
もちろん、患者に関連する他のパラメータが可能である。例えば、BMI、排泄抑制能力、失禁、皮膚タイプの視覚的リスク領域、性別と年齢、栄養失調スクリーニング(MTS)、可動性、他の身体的状態、精神的状態、活動、知覚、患者の身体部分の水分、栄養摂取、患者の身体部分の摩擦とせん断、体温、以前の褥瘡に関する情報、灌流(血流)、糖尿病、組織の灌流と酸素化、衛生、血行動態などが挙げられる。
【0019】
好ましくは、個人のパラメータのセットは、いくつかの実施形態では、患者の画像及び動画シーケンスのうちの少なくとも1つを含んでもよい。しかし、上記に列挙したパラメータに関連する情報など、患者に関連する他の情報を介護者が入力することができるようにすることは適切である。画像及び/又は動画は、好ましくは、例えば、制御ユニットと通信するように配置されたカメラを使用して収集されてもよい。ここで、制御ユニットは、例えば、上記に列挙したパラメータを抽出するための画像処理スキームを適用してもよい。画像処理スキームは、いくつかの実施形態では、以前に収集された患者のデータを用いて正規化を実施するように構成されてもよい。
【0020】
さらに、一実施形態では、患者に対する個人のパラメータのセットの集合体の判定を含む「個人の患者モデル」という表現も、広く解釈される必要がある。しかし、別の実施形態では、個人の患者モデルは、患者の個人のパラメータの「受け皿」として定義されてもよく、例えば、個人のパラメータの文字列として定義され、場合によっては、事前定義された標準に従って編成されて、一般的患者モデルとの照合を改善してもよい。
【0021】
さらにまた、「制御ユニット」という表現は、広く解釈される必要があり、本開示によるスキームを実行するための計算能力を提供するための任意の手段を含んでもよい。そのため、本開示の詳細な説明にてさらに考察するように、(処理能力を提供するための任意の手段に対応する)制御ユニットは、場合によっては、サーバ内、クライアント装置(例えば、コンピュータ又は携帯型装置)内に実装されても、サーバとクライアント装置と間で共有されてもよい。
【0022】
好ましくは、本開示の一実施形態では、選択するステップは、最高の合致度を有する一般的患者モデルを選択するステップを含む。このため、1つの特定の一般的患者モデルを、いくつかの実施形態では、最も関連性のあるモデルとして特定してもよく、リスク採点は、それ自体、この合致に基づくものである。そのような実施は、いくつかの実施形態では、例えば、患者のリスクスコアを迅速に判定することが望ましい場合に好ましい場合がある。
【0023】
しかし、これとは別に、複数の単一の一般的患者モデルの選択に基づいて、例えば、少なくとも2つの選択された一般的患者モデルの組み合わせに基づいて、リスクスコアを判定することが可能であってもよい。そのような実施形態では、選択された一般的患者モデルのそれぞれに重みを付与することが望ましい場合がある。ここで、重みは、例えば、合致度に依存してもよい。明らかなように、そのような実施は、判定されたリスクスコアの信頼性に関してさらに改善をもたらす可能性があるが、一方で、単一の一般的患者モデルのみが選択された場合と比較して、わずかに多くの処理を必要とするため、わずかに遅くなる可能性がある。
【0024】
所定の閾値は、いくつかの実施形態では、合致が少なくとも特定の基本レベルを保持することを確実なものにするために、使用されてもよい。即ち、合致が不充分に低い場合、即ち、個人の患者モデルを複数の異なる事前定義された一般的患者モデルと比較したときに実際の合致が生成されない場合、この情報は、本スキームに依存することなく、身体検査にて手動で患者のリスクスコアを評価する必要があることを示すものとして使用されてもよい。とはいえ、低い合致度をこのほか、患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータが正しくないか、そうでなければ信頼できず、リスクスコアの判定に進む前に、患者に関する追加の/新たな情報を収集することが適切であろうことの指標として考えてもよい。
【0025】
本開示の一実施形態では、方法は、制御ユニットを使用して、低リスク、中リスク及び高リスクのカテゴリを定義するステップと、制御ユニットを使用して、患者の判定されたリスクスコアを、さまざまなカテゴリに対して事前定義されたリスクスコア範囲と比較することによって、リスクカテゴリを患者に割り当てるステップと、をさらに含む。もちろん、追加のカテゴリを含めることができ、追加のカテゴリは本開示の範囲内にある。そのような追加のカテゴリは、例えば、中リスクカテゴリと高リスクカテゴリとの間の中間の「上昇リスクカテゴリ」を含む場合がある。リスクカテゴリの使用は、例えば、患者に関連して行動する方法に関する迅速な情報を介護者が取得できるようにするために有用である場合がある。ここで、例えば、さまざまなカテゴリは、以前に(例えば、訓練中に)、「リスクスコア番号」を解釈する必要のない、(例えば、0~100の間、あるいは他の方法で定義されている)さまざまな行動に割り当てられている場合がある。このため、患者が高リスクカテゴリにあると判定された場合、介護者は患者に対処するために迅速に行動することができる。
【0026】
そのため、本開示の一実施形態では、スキームは、制御ユニットを使用して、選択された患者リスクカテゴリに基づいて患者に提案された治療を形成するステップであって、提案された治療は、リスクカテゴリごとに異なる、ステップをさらに含んでもよい。即ち、本スキームでは、全リスクカテゴリに対して治療を提案するのではなく、「本当に」必要な場合にのみ提案された治療を提供するために除外を実施し、場合によっては、本当に必要としている患者にのみ治療を提供することが治療のための全体的なコストを大幅に削減することになるため、医療システムの全体的な負担を軽減する可能性がある。さまざまなカテゴリに対するリスクスコアの範囲は動的なものである可能性がある、即ち、時間の経過とともに、あるいは患者に最適な治療を提供するための全体的なコストを平均化する目的で、リスクスコアの範囲が変化する可能性があることを理解されたい。
【0027】
好ましくは、提案された治療は、患者のための「前治療」又は患者のための治療製品/スキームのうちの少なくとも一方を含んでもよい。本開示の文脈内で、「前治療」という表現は、例えば、困難な状況が始まる前に患者に提供される任意の形態の治療であってもよい。そのような前治療には、栄養に関する推奨事項から衛生上の指示まで、あらゆるものが含まれる。同じように、「治療製品/スキーム」という表現は、例えば、患者の創傷を治療するなどの患者の積極的な治療に関連して使用するのに適したあらゆる形式又は手段を含め、広く解釈する必要がある。創傷製品に関して、一例として、創傷製品には、例えば、創傷被覆材、包帯、局所適用物、特定の種類の創傷被覆材と組み合わせた治療方法などが含まれてもよい。さらに、現在又は将来の治療製品/スキームが可能であり、本開示の範囲内にある。
【0028】
いくつかの実施形態では、この方法は、制御ユニットにて、提案された治療を受けた後の患者の状態を示す個人のパラメータの第2のセットを受信するステップと、制御ユニットを使用して、個人のパラメータの第1及び第2のセットに基づいて患者の健康の増進を判定するステップと、制御ユニットを使用して、判定された患者の健康の増進を、少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに対して定義された事前定義の健康の増進と比較するステップと、をさらに含む。
【0029】
本開示によれば、個人のパラメータの第1のセットの収集と第2のセットの収集との間の時間差、例えば、1時間から90日の間を許容することが可能であってもよい。しかし、前述の時間差は単なる例であり、時間差はもちろん、これより短くても長くてもよい。一実施形態では、時間差が提案された治療に依存することを可能にすることが可能であってもよい。さらに、個人のパラメータの第3のセットなど、個人のパラメータの第1及び第2のセットよりも多くのセットがシステムによって使用されてもよく、場合によっては、データが収集される時点の間の時間差を固定するか可変にすることができることをさらに理解されたい。
【0030】
さらに、一般的患者モデルの少なくともいくつかが、関連する健康の増進を備えてもよい。即ち、関連する治療の推奨事項/提案がある(あるいはない)一般的患者モデルでは、患者に対する予想が定義されている可能性がある。この実施形態に沿って、(選択された一般的患者モデルに応じて)予想される反応と比較して、提案された治療に対して患者が実際にどのように反応したかを比較することが可能であってもよい。次に、比較は、本開示によるスキームをさらに発展させるために使用されてもよい。即ち、いくつかの実施形態では、例えば、患者の健康の増進が、選択された一般的患者モデルの事前定義された健康の増進に実質的に対応する場合など、選択された一般的患者モデルを「検証」することが可能であってもよい。検証には、場合によっては、選択された一般的患者モデルを、追加のデータ又は微調整を用いて更新するステップが含まれる場合がある。
【0031】
しかし、患者の健康の増進が、選択された一般的患者モデルの事前定義された健康の増進から(充分に)逸脱している状況でも、患者の増進状況を収集して保存することが同じように有用である場合がある。そのような状況では、例えば、出発点(又は新たな一般的患者モデル)を形成することが可能である場合がある。ここで、逸脱した健康の増進は、以前に予想されたものと比較して新たな状況と考えられてもよい。
【0032】
患者に関して収集された後の情報は、一般的患者モデルの更新/調整/検証に使用されるだけではない場合がある。むしろ、本開示による全体的なスキームは、異なる機関及び/又は組織が他を基準として評価することを可能にするために使用されてもよい。そのため、いくつかの実施形態では、患者に関して収集された情報が厳密に匿名に保たれることを確実にすることが望ましい場合がある。
【0033】
一般的患者モデルを更新/調整するステップには、一実施形態では、機械学習プロセスを適用するステップが含まれてもよい。即ち、医師(又は技術者)に新たな一般的患者モデルを形成させるのではなく、システム自体がそのようなモデル、あるいはすでに利用可能性のある一般的患者モデルのモデル反復を形成してもよい。例えば、状況によっては、異なる評価が異なる状況で下される可能性があることを示唆する追加のデータが提供される場合、1つの一般的患者モデルが2つ(又はそれより多く)のサブモデルに細分されてもよい。機械学習プロセスは、場合によっては、教師なし機械学習プロセス、教師あり機械学習プロセスであったり、及び/又は畳み込みニューラルネットワーク(CNN)又は再帰型ニューラルネットワーク(RNN)に基づくものであったりしてもよい。追加の実装が可能であり、本開示の範囲内である。
【0034】
本開示の別の態様によれば、患者のリスクスコアを判定するために制御ユニットによって実施される、コンピュータにより実施される方法がさらに提供される。ここで、この方法は、制御ユニットにて、患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを受信するステップと、制御ユニットを使用して、個人のパラメータの第1のセットを複数の異なる事前定義された一般的患者モデルと照合するステップであって、一般的患者モデルのそれぞれは、事前定義された患者リスクスコアを有する、ステップと、制御ユニットを使用して、少なくとも個人のパラメータに最適な一般的患者モデルを選択するステップと、少なくとも選択された一般的患者モデルに基づいて、患者のリスクスコアを判定するステップと、を含む。本開示のこの態様は、本開示の以前の態様に関連して上記で考察したのとほぼ同じ利点を提供する。とはいえ、本開示の態様によれば、個人のパラメータを、個人の患者モデルを含めることなく、複数の異なる事前定義された一般的患者モデルと直接照合する、わずかに異なるアプローチが提示される。そのような実施は、例えば、個人のパラメータのタイプが収集の全例で同じ/ほぼ同じであると予想される場合など、状況によっては好ましい場合がある。
【0035】
本開示のさらに別の態様によれば、患者に関連する医療費を削減するために制御ユニットによって実施される、コンピュータにより実施される方法が提供される。ここで、この方法は、制御ユニットにて、患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを受信するステップと、制御ユニットを使用して、個人のパラメータの第1のセットに基づいて個人の患者モデルを形成するステップと、制御ユニットを使用して、個人の患者モデルと複数の異なる事前定義された一般的患者モデルのそれぞれとの間の合致度を判定するステップであって、一般的患者モデルのそれぞれは、事前定義された患者リスクスコアを有する、ステップと、制御ユニットを使用して、所定の閾値を超える合致度を有する少なくとも1つの一般的患者モデルを選択するステップと、制御ユニットを使用して、少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに基づいて患者のリスクスコアを判定するステップと、制御ユニットを使用して、低リスク、中リスク及び高リスクのカテゴリを定義するステップと、制御ユニットを使用して、患者の判定されたリスクスコアを、さまざまなカテゴリの事前定義されたリスクスコア範囲と比較することにより、患者にリスクカテゴリを割り当てるステップと、制御ユニットを使用して、患者が高リスクカテゴリに割り当てられた場合にのみ、患者に対して治療を提案するステップと、を含む。このほか、本開示のこの態様は、本開示の以前の態様に関連して上記で考察したのとほぼ同じ利点を提供する。
【0036】
さらに、本開示の別の態様によれば、患者のリスクスコアを判定するように構成されたコンピュータシステムが提供され、コンピュータシステムは制御ユニットを備え、制御ユニットは、患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを受信するステップと、個人のパラメータの第1のセットに基づいて、個人の患者モデルを形成するステップと、個人の患者モデルと複数の異なる事前定義された一般的患者モデルのそれぞれとの間の合致度を判定するステップであって、一般的患者モデルのそれぞれは事前定義された患者リスクスコアを有するステップと、所定の閾値を超える合致度を有する少なくとも1つの一般的患者モデルを選択するステップと、少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに基づいて、患者のリスクスコアを判定するステップと、を実施するように構成される。本開示のこの態様は、本開示の以前の態様に関連して上記で考察したのとほぼ同じ利点を提供する。
【0037】
本開示の可能性のある実施形態では、コンピュータシステムは、例えば、「専用電子装置」、携帯電話、タブレットなどのうちの少なくとも1つなどの携帯型電子装置である。これとは別に、コンピュータシステムは、例えば、患者の創傷の画像又は動画シーケンスを取得するための上記で考察したカメラを備えたコンピュータ(例えば、ラップトップ)であってもよい。コンピュータシステムは、例えば、介護者によって操作されるように配置されてもよい。
【0038】
本開示の好ましい実施形態では、コンピュータシステムは、患者のパラメータの第1のセットを取得するための命令を介護者に提供するように構成されたグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を備える。次に、GUIは、上記で考察された処理ステップに従って、リスクスコア及び/又はリスクカテゴリを示す情報を提示するように構成されてもよい。
【0039】
本開示のさらに別の態様によれば、患者のリスクスコアを判定するように構成されたコンピュータシステムを操作するためのコンピュータプログラム手段を保存した非一時的コンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータシステムは、制御ユニットを備える。ここで、コンピュータプログラム製品は、制御ユニットにて、患者の現在又は以前の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを受信するためのコードと、制御ユニットを使用して、個人のパラメータの第1のセットに基づいて個人の患者モデルを形成するためのコードと、制御ユニットを使用して、個人の患者モデルと複数の異なる事前定義された一般的患者モデルのそれぞれとの間の合致度を判定するためのコードであって、一般的患者モデルのそれぞれは、事前定義された患者リスクスコアを有する、コードと、制御ユニットを使用して、所定の閾値を超える合致度を有する少なくとも1つの一般的患者モデルを選択するためのコードと、制御ユニットを使用して、少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに基づいて患者のリスクスコアを判定するためのコードと、を含む。このほか、本開示のこの態様は、本開示の以前の態様に関連して上記で考察したのとほぼ同じ利点を提供する。
【0040】
制御ユニットは、好ましくはマイクロプロセッサである。同じように、コンピュータ可読媒体は、リムーバブル不揮発性ランダムアクセスメモリ、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ、SDメモリカード、あるいは当技術分野で知られている類似のコンピュータ可読媒体のうちの1つを含む、任意のタイプのメモリ装置であってもよい。
【0041】
本開示の追加の特徴及び利点が、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討するときに明らかになるであろう。当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の異なる特徴を組み合わせて、以下に記載するもの以外の実施形態を作成し得ることを理解している。
【0042】
本開示のさまざまな態様であって、その特定の特徴及び利点を含む態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面から容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、本開示の現在の好ましい実施形態によるコンピュータシステムを概念的に示す。
図2図2は、本概念を適用するためのグラフィカルユーザインターフェースを備える、可能性のあるクライアント装置を開示する。
図3図3は、本開示の現在の好ましい実施形態による方法を実施するステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
ここで、本開示の現在の好ましい実施形態が示されている添付の図面を参照して、本開示を以下でさらに全体的に説明する。しかし、本開示は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、このような実施形態は、全体性及び完全性のために提供され、本開示の範囲を当業者に全体的に伝える。類似の参照文字は、全体を通して類似の要素を参照する。
【0045】
ここで、図面、特に図1に目を向けると、患者のリスクスコアを判定するように構成されたコンピュータシステム100が概念的に示されている。
【0046】
コンピュータシステム100は、計算能力を提供し、データベース110と通信して配置された何らかの形態の制御ユニット108を備えるサーバ106と、インターネットを使用するなど、サーバ106とのネットワーク通信で配置されたクライアント装置112とを備える。図1では、クライアント装置112は、(図示しない)介護者によって操作される。しかし、例えば、任意の形態の介護者などの任意のユーザが、クライアント装置112を操作することを許可されてもよい。
【0047】
ネットワーク通信は、例えば、建物のLAN、WAN、イーサネット(登録商標)ネットワーク、IPネットワークなどの有線接続と、WLAN、CDMA、GSM(登録商標)、GPRS、3Gモバイル通信、4Gモバイル通信、5Gモバイル通信、Bluetooth(登録商標)、赤外線などの無線接続とが含まれる、有線通信又は無線通信であってもよい。
【0048】
図2でさらに詳述し、携帯電話として示すクライアント装置112は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)及びカメラ204を備える。クライアント装置112はこのほか、計算能力を提供する何らかの形態の制御ユニット206を備える。GUIは、好ましくは、例えば、カメラ204を使用して患者106の画像を取得するため、介護者によって入力された追加の患者データを受信するため、患者のリスクスコア及び/又は患者のリスクカテゴリに関する情報を表示するために、例えば、介護者に指示及び情報を提示するように構成される。
【0049】
制御ユニット108のほか、制御ユニット206は、汎用プロセッサ、アプリケーション固有のプロセッサ、処理コンポーネントを含む回路、分散処理コンポーネントのグループ、処理用に構成された分散コンピュータのグループなどを含んでもよい。プロセッサは、データ処理又は信号処理を実行するため、あるいはメモリに保存されたコンピュータコードを実行するための任意の数のハードウェアコンポーネントであっても、同ハードウェアコンポーネントを含んでもよい。メモリは、この説明に記載したさまざまな方法を完了するか容易にするためのデータ及び/又はコンピュータコードを保存するための1つ又は複数の装置であってもよい。メモリは、揮発性メモリ又は不揮発性メモリを含んでもよい。メモリは、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、あるいはこの説明のさまざまな活動を支援するための任意の他のタイプの情報構造を含んでもよい。例示的な実施形態によれば、任意の分散型メモリ装置又はローカルメモリ装置を、この説明のシステム及び方法を用いて利用してもよい。例示的な実施形態によれば、メモリは、(例えば、回路又は任意の他の有線接続、無線接続又はネットワーク接続を介して)プロセッサに通信可能に接続され、本明細書に記載の1つ又は複数のプロセスを実行するためのコンピュータコードを含む。
【0050】
さらに、一実施形態では、コンピュータシステム100をクラウドベースの計算システムとして実装することが好ましい。ここで、サーバ106はクラウドサーバである。このため、計算能力は、(図示しない)複数の異なるサーバの間で分割されてもよく、サーバの場所を明示的に定義してはならない。上記のように、計算能力はこのほか、サーバとクライアント装置との間で分散されてもよい。
【0051】
クラウドベースの解決策の使用に従う利点にはこのほか、固有の冗長性の実現が挙げられる。即ち、分散型アプローチをサーバのほか、ユーザ/操作者に適用することによって、セキュリティを向上させることができる。これは、通常、従来技術の解決策によってサーバとユーザ/操作者の両方を保持するであろう特定の運用サイトを攻撃する(物理的に攻撃するかコンピュータによって攻撃する)ことができないことになるためである。
【0052】
コンピュータシステム100の動作中、図3をさらに参照すると、プロセスは、例えば、クライアント装置112のGUIを使用して、例えば、サーバの制御ユニット108及び/又はクライアント装置112の制御ユニット206によって順番に受信された(S1)現在又は以前の患者の状態を示す個人のパラメータの第1のセットを提供する介護者によって開始される。
【0053】
制御ユニット108/206は、その後、個人のパラメータの第1のセットに基づいて、個人の患者モデルを形成してもよい(S2)。上記のように、個人の患者モデルは、いくつかの実施形態では、患者の事前評価であってもよく、あるいは別の実施形態では、単に、個人のパラメータの第1のセットを保持するデータ文字列又はベクトルであってもよい。
【0054】
次に、個人の患者モデルは、複数の異なる事前定義された一般的患者モデルと照合されることになる(S3)。ここで、一般的患者モデルのそれぞれは、事前定義された患者リスクスコアを有する。複数の異なる事前定義された一般的患者モデルは、いくつかの実施形態では、データベース110を用いて保存されたり、及び/又はクライアント装置112を含むメモリモジュールを用いて保存されたりしてもよい。
【0055】
個人の患者モデルと複数の異なる事前定義された一般的患者モデルとの間の照合により、合致度が判定されることになる。照合は、いくつかの実施形態では、多次元照合であってもよい。ここで、個人のパラメータの第1のセットは、複数の異なる事前定義された一般的患者モデルに関連する多数の異なるパラメータと照合される。場合によっては、個人のパラメータの第1のセットは、複数の異なる事前定義された一般的患者モデルのパラメータに必ずしも対応しない可能性があり、複数の異なる事前定義された一般的患者モデルは、必ずしも同じタイプのパラメータを保持しない可能性がある。このため、合致を見つけるには、複数の次元でパラメータを照合する必要がある場合がある。合致度は、好ましくは、これを考慮に入れるべきであり、いくつかの実施形態では、異なるパラメータのユークリッド距離を判定することを含んでもよい。
【0056】
合致度が判定された時点で、少なくとも1つの一般的患者モデルが選択される(S4)。とはいえ、所定の閾値を超える合致度を有する1つ又は複数の一般的患者モデルのみを選択するための前提条件がある。上記のように、そのような閾値は動的なものであり、目下の実施に依存する可能性がある。そのため、閾値の範囲は、(合致度がほぼ同じ範囲の場合)0~100である。
【0057】
少なくとも1つの一般的患者モデルを選択した後、患者のリスクスコアを判定することができる(S5)。リスクスコアの判定は、少なくとも1つの選択された一般的患者モデルに基づいて実施されることになるが、複数の選択された一般的患者モデルの組み合わせも可能になる場合がある。そのような実施では、異なる一般的患者モデルは、その個々の合致度に基づいて、異なる重みを有する可能性がある。
【0058】
リスクスコアは、場合によっては、0~100の間で正規化されてもよい。もちろん、他の範囲が可能であり、本開示の範囲内である。さらに、リスクスコアは、場合によっては、リスクスコアの全範囲のなかの異なる範囲が異なるリスクカテゴリに対応することを可能にすることによって、患者のリスクカテゴリを判定するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、0~50の間のリスクスコアが低リスクカテゴリに対応し、51~75の間のリスクスコアが中リスクカテゴリに対応し、76~100の間のリスクスコアが高リスクカテゴリに対応してもよい。提供された範囲は、例示のみを目的としている。高リスクカテゴリの患者に何らかの形態の治療を少なくとも提供することが望ましい場合がある。
【0059】
本開示は、効率的な方法で、患者に関連するデータに依存するだけでなく、複数の事前定義された一般的患者モデルとの照合スキームを含む、患者のリスクスコアの迅速かつ効果的な判定を可能にすることになる。本スキームに従う利点には、患者の予想される将来の行動を確実に予測する可能性と、患者の合併症を最小限に抑えるために、この可能性のある行動に最適に対処する方法とが含まれる。異なる事前定義された一般的患者モデルとの照合はこのほか、患者に対する個人のパラメータの可能性のある変動を除外する方法と考えてもよい。そのような変動は、場合によっては、患者の将来への影響が少ないと以前に判定された可能性があるためである。
【0060】
本開示の制御機能は、既存のコンピュータプロセッサを使用して、あるいは適切なシステム用の特殊目的のコンピュータプロセッサであって、この目的又は別の目的のために組み込まれたコンピュータプロセッサによって、あるいはハードワイヤシステムによって、実装されてもよい。本開示の範囲内の実施形態には、機械可読媒体であって、その媒体自体に保存された機械実行可能命令又はデータ構造を担持するか、有する機械可読媒体を含むプログラム製品が含まれる。そのような機械可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータ又はプロセッサを備えた他の機械によってアクセスすることができる任意の利用可能性のある媒体であることがある。例として、そのような機械可読媒体には、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、あるいは機械実行可能命令又はデータ構造の形式の所望のプログラムコードを担持するか保存するために使用することができ、汎用又は専用のコンピュータ又はプロセッサを備えた他の機械からアクセスすることができる任意の他の媒体を挙げることができる。
【0061】
図は順序を示している場合があるが、ステップの順序は表示されているものとは異なる場合がある。このほか、2つ以上のステップを同時に実行しても、部分的に同時に実行してもよい。そのような変動は、選択したソフトウェアシステムとハードウェアシステム及び設計者の選択に依存することになる。そのような変動はいずれも、本開示の範囲内にある。同じように、ソフトウェアの実装を、さまざまな接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ及び決定ステップを実行するために、規則に基づくロジック及び他のロジックを用いた標準のプログラミング技術を用いて達成することがあり得る。さらに、本開示を、その特定の例示的な実施形態を参照して説明したとしても、多くの異なる変更、修正などが当業者にとって明らかになるであろう。
【0062】
さらに、開示した実施形態の変形を、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、本開示を実施する際に、当業者が理解し、達成することができる。さらに、特許請求の範囲では、「含む」という語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】