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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】高炉プラントの改装方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/00 20060101AFI20230202BHJP
   C21B 5/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C21B7/00 304
C21B5/00 314
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532679
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2020083474
(87)【国際公開番号】W WO2021110528
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】LU101514
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500173376
【氏名又は名称】ポール ヴルス エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100099472
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】キンゼル、クラウス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】カス、ジル
(57)【要約】
本発明は、高炉プラント(1)の改装方法であって、これは、当初に、少なくとも1つの高炉(10,50)と、熱風の発生に適合した複数の当初の炉(31~36)と、少なくとも1つの高炉(10,50)から各当初の炉(31~36)にトップガスを供給するトップガス供給系統(11,51)と、各当初の炉(31~36)に冷風を供給する冷風供給系統(14)と、各当初の炉(31~36)から、少なくとも1つの高炉(10,50)に羽口高さ(10.1,50.1)のところでガスを注入するように適合した熱風注入系統(16,56)に熱風を供給する熱風供給系統(15,55)と、を含む、高炉プラント(1)の改装方法に関する。合成ガス利用のための高炉プラントの効果的な改装を可能にするため、本発明は、熱風を発生させるために当初の炉(31~36)が操業している状態で、CO含有産業ガスと炭化水素含有燃料ガスの複合ガスを改質することによって合成ガスを生成するのに適合した、少なくとも1つの合成ガス炉(40,41)を構築し、かつ少なくとも1つの合成ガス炉(40,41)を少なくとも1つの高炉(10,50)に接続するのに適合した、合成ガス供給系統(18)を構築し;第1の合成ガス炉(40)をトップガス供給系統(11,51)、冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)に接続し、かつ熱風発生のために第1の合成ガス炉(40)を操業し;第1の当初の炉(31)を、トップガス供給系統(11,51)、冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)から切り離し;第1の当初の炉(31)を、必要に応じて、その耐火ライニング及び/又はその耐火ライニングの支持体及び/又はその機械的要素を交換することによって、合成ガスを生成するのに適合するように改装し;第1の当初の炉(31)をトップガス供給系統(11,51)に接続し;第1の合成ガス炉(40)を冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)から切り離し、第1の当初の炉(31)及び第1の合成ガス炉(40)を、複合ガスを供給するための複合ガス供給系統(19)に、かつ合成ガス供給系統(18)を介して少なくとも1つの高炉(10,50)に接続し;かつ、合成ガスを生成するために第1の当初の炉(31)及び第1の合成ガス炉(40)を操業し、かつ合成ガスを合成ガス供給系統(18)を介して少なくとも1つの高炉(10,50)に供給する、ことを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
当初に、少なくとも1つの高炉(10,50)と、熱風の発生に適合した複数の当初の炉(31~36)と、少なくとも1つの高炉(10,50)から各当初の炉(31~36)にトップガスを供給するトップガス供給系統(11,51)と、各当初の炉(31~36)に冷風を供給する冷風供給系統(14)と、各当初の炉(31~36)から、少なくとも1つの高炉(10,50)に羽口高さ(10.1,50.1)のところでガスを注入するように適合した熱風注入系統(16,56)に熱風を供給する熱風供給系統(15,55)と、を含む高炉プラント(1)の改装方法であって、
熱風を発生させるために当初の炉(31~36)が少なくとも部分的に操業している状態で、CO含有産業ガスと炭化水素含有燃料ガスの複合ガスを改質することによって合成ガスを生成するのに適合した、少なくとも1つの合成ガス炉(40,41)を構築し、かつ少なくとも1つの合成ガス炉(40,41)を少なくとも1つの高炉(10,50)に接続するのに適合した、合成ガス供給系統(18)を構築し;
第1の合成ガス炉(40)をトップガス供給系統(11,51)、冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)に接続し、かつ熱風発生のために第1の合成ガス炉(40)を操業し;
第1の当初の炉(31)を、トップガス供給系統(11,51)、冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)から切り離し;
第1の当初の炉(31)を、必要に応じて、その耐火ライニング及び/又はその耐火ライニングの支持体及び/又はその機械的要素を交換することによって、合成ガスを生成するのに適合するように改装し;
第1の当初の炉(31)をトップガス供給系統(11,51)に接続し;
第1の合成ガス炉(40)を冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)から切り離し、第1の当初の炉(31)及び第1の合成ガス炉(40)を、複合ガスを供給するための複合ガス供給系統(19)に、かつ合成ガス供給系統(18)を介して少なくとも1つの高炉(10,50)に接続し;かつ、
合成ガスを生成するために第1の当初の炉(31)及び第1の合成ガス炉(40)を操業し、かつ合成ガスを合成ガス供給系統(18)を介して少なくとも1つの高炉(10,50)に供給する、ことを含む前記方法。
【請求項2】
少なくとも1つの高炉(10,50)にガスを注入するのに適合した合成ガス注入系統(22,23,62,63)を構築し、かつ合成ガス供給系統(18)を合成ガス注入系統(22,23,62,63)に接続すること、を特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
合成ガス注入系統(22,23,62,63)を構築することが、熱風注入系統(16,56)を合成ガス注入に適合するように少なくとも部分的に改装することを含むこと、を特徴とする請求項2に記載された方法。
【請求項4】
合成ガス注入系統(22,23,62,63)が、羽口高さ(10.1,50.1)及び/又は羽口高さ(10.1,50.1)のところより上のシャフト高さ(10.2,50.2)のところで、ガスを注入するのに適合していること、を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された方法。
【請求項5】
合成ガス注入系統(22,23,62,63)が、少なくとも1つの高炉(10,50)の操業中に少なくとも部分的に構築される、ことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載された方法。
【請求項6】
合成ガス炉(40,41)をトップガス供給系統(11,51)、冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)に接続し;
炉(31~36,40,41)を合成ガス供給系統(18)に接続し;かつ
合成ガス注入系統(22,23,62,63)を少なくとも1つの高炉(10,50)に接続する;
以上の工程の少なくとも1つが少なくとも1つの高炉(10,50)の停止中に行われること、を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載された方法。
【請求項7】
第2の合成ガス炉(41)を、トップガス供給系統(11,51)、冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)に接続し;かつ
合成ガスを生成するために、第1の合成ガス炉(40)及び第1の当初の炉(31)とともに、第2の合成ガス炉(41)を操業し、かつ合成ガスを合成ガス供給系統(18)を介して少なくとも1つの高炉(10,50)に供給する、
以上の工程を含むこと、を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載された方法。
【請求項8】
第2の合成ガス炉(41)が、第1の合成ガス炉(40)の熱風発生のための操業が開始された後に構築されること、を特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1の当初の炉を改装した後(31)に:
第1の当初の炉(31)をトップガス供給系統(11,51)、冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)に接続し;
第2の当初の炉(32)をトップガス供給系統(11,51)、冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)から切り離し;
第2の当初の炉(32)を合成ガスの生成に適合するように改装し;
少なくとも第2の当初の炉(32)が改装されている間に、熱風を発生させるために、第1の当初の炉(31)及び第1の合成ガス炉(40)を操業し;
第1の合成ガス炉(40)及び第1の当初の炉(31)を冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)から切り離し、第1の当初の炉(31)、第2の当初の炉(32)及び第1の合成ガス炉(40)を複合ガス供給系統(19)に、かつ合成ガス供給系統(18)を介して少なくとも1つの高炉(10,50)に、接続し;かつ
合成ガスを生成するため、第1の当初の炉(31)、第2の当初の炉(32)及び第1の合成ガス炉(40)を操業し、かつ合成ガスを合成ガス供給系統(18)を介して少なくとも1つの高炉(10,50)に供給すること、を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載された方法。
【請求項10】
第3の当初の炉(33)をトップガス供給系統(11,51)、冷風供給系統(14)及び熱風供給系統(15,55)から切り離し;
第3の当初の炉(33)を合成ガスの生成に適合するように改装し;
第3の当初の炉(33)を、複合ガス供給系統(19)にかつ合成ガス供給系統(18)を介して少なくとも1つの高炉(10,50)に、接続し;かつ
合成ガスを生成するために第3の当初の炉(33)を操業し、かつ合成ガスを合成ガス供給系統(18)を介して少なくとも1つの高炉(10,50)に供給する:
以上の工程を含むこと、を特徴とする請求項1から9のいずれかに記載された方法。
【請求項11】
混合チャンバ(21)を構築し、混合チャンバ(21)を燃料ガスを供給するための燃料ガス供給系統(20)及び複合ガス供給系統(19)に接続することを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載された方法。
【請求項12】
トップガス供給系統(11,51)を混合チャンバ(21)に接続し、かつトップガスを産業ガスとして高炉(10,50)から混合チャンバ(21)に供給すること、を特徴とする請求項11に記載された方法。
【請求項13】
全ての当初の炉(31~36)が合成ガスを生成するのに適合するように改装されること、を特徴とする請求項1から12のいずれかに記載された方法。
【請求項14】
高炉プラント(1)が、第1の熱風供給系統(15)及び第1のトップガス供給系統(11)を介して第1のグループ(30)の当初の炉(31~36)に接続された第1の高炉(10)と、第2の熱風供給系統(55)と第2のトップガス供給系統(51)を介して第2のグループ(37)の当初の炉(31~36)に接続された第2の高炉(50)とを含み:
第1の合成ガス炉(40)を第1のトップガス供給系統(11)及び第2のトップガス供給系統(51)の少なくとも一方に接続し;
第1のグループ(30)の全ての当初の炉(31~33)を改装し、かつそれらを複合ガス供給系統(19)及び合成ガス供給系統(18)に接続し;
第2の熱風供給系統(55)を第1の高炉(10)に接続し;
合成ガス供給系統(18)を第1の高炉(10)及び第2の高炉(50)に接続する、ことを含むこと、を特徴とする請求項1から13のいずれかに記載された方法。
【請求項15】
改装を終えた後、合成ガスを生成するために第1のグループ(30)の全ての当初の炉(31~33)が操業し、一方、熱風を発生させるために第2のグループ(37)の全ての当初の炉(34~36)が操業する、ことを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉プラントの改装(converting)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気アーク炉内での直接還元やスクラップ溶解などの代替方法があるにもかかわらず、高炉は今日でも鉄鋼生成に最も広く使用されるプロセスを代表している。高炉設備の懸念事項の1つは、高炉から出る高炉ガスである。このガスは高炉頂部から出るので、一般に「トップガス」とも呼ばれる。初期の頃は、この高炉ガスは単に大気中に逃がすことが許されていたが、これは長い間資源の浪費と環境への過度の負荷と考えられてきている。高炉ガス中の1つの成分はCOであり、これは環境に有害であり、主に産業用途には役に立たない。実際、高炉から出る高炉ガスは、典型的には、20vol%~30vol%という高い濃度のCOを含んでいる。このこととは別に、高炉ガスは通常、かなりの量のN、CO、HO及びHを含む。しかし、N含有量は、高炉に熱い空気(hot air)又は(純粋な)酸素が使用されるかどうかに大きく依存している。
【0003】
主にコークスの使用量を削減するために、高炉から高炉ガスを回収し、それを還元能力(reduction potential)向上のために処理し、還元プロセスを支援するために高炉に注入することが提案された。これを行う一つの方法は、圧力スイング吸着(Vacuum Pressure Swing Adsorption;PSA)又は真空圧力スイング吸着(Vacuum Pressure Swing Adsorption;VPSA)によって、高炉ガス中のCO含有量を低減することである。PSA/VPSA設備は、COとHを富化した第1のガス流と、CO及びHOを富化した第2のガス流を生成する。第1のガス流は還元ガスとして使用され、高炉に戻すことができる。このアプローチの一例がULCOS(超低CO製鋼)プロセスで、リサイクルされた第1のガス流とは別に、微粉炭と冷酸素(cold oxygen)が高炉に供給される。このタイプの炉は、「トップガスリサイクルOBF」(酸素高炉)とも呼ばれる。第2のガス流は設備から除去して、残った発熱量を抽出した後、廃棄することができる。この廃棄処分はCO富化ガスを地下のポケットにポンプで送り込んで貯蔵するもので異論が多い。さらに、PSA/VPSAの設置により、高炉ガス中のCO含有量を約35vol%から約5vol%に大幅に低減することができるが、取得、維持、運用に非常にコストが掛かり、大きなスペースが必要である。
【0004】
幾つかの産業目的に使用できる合成ガス(シンガス;syngasとも言う)を得るために、高炉ガスを改質することも提案されている。最も一般的な改質プロセスによれば、高炉ガスが、少なくとも1つの炭化水素(例えばCH及び可能性としてはより高い分子量の炭化水素)を含む燃料ガスと混合される。いわゆる乾式改質反応では、燃料ガス中の炭化水素が高炉ガス中のCOと反応してHとCOを生成する。いわゆる湿式改質反応では、炭化水素が高炉ガス中のHOと反応してHとCOをも生成する。いずれにしても、HとCOの濃度が著しく増加した合成ガスが得られる。また、この合成ガスを還元ガスとして用いることも提案されており、これをリサイクル、すなわち高炉に再導入することができる。
【0005】
1つのプロセスによれば、合成ガスは、熱風(hot blast)(即ち熱い空気(hot air))及び/又は冷酸素(cold oxygen)及び例えば微粉炭、天然ガス、コークス炉ガスなどの補助燃料と共に羽口高さ(tuyere level)のところで高炉に供給される。このタイプの炉は、「合成ガス高炉(syngas blast furnace)」と呼ぶこともできる。熱風を、一般的にカウパー(Cowpers)として知られる熱風炉(hot blast stoves)で発生させる。また、熱風炉に伝達されると共に炉(stove)から熱風に伝達される熱を発生させるためにトップガスを燃焼させることも提案されている。如何にして合成ガスを導入するかについては、他にも可能性がある。「従来の」熱風は羽口高さのところで導入されるが、例えば、それを羽口高さより上のシャフト高さのところで導入することができる。一般的には、合成ガスを採用することで、高炉の効率的な操業に必要な熱風の量が減少する。
【0006】
高炉プラントを合成ガスの利用に適合させる場合、改質プロセス用の反応容器、合成ガスを高炉に移送するための配管及び注入系統(injection systems)を提供するなど、さまざまな変更が必要である。このような変更は非常にコストが掛かるため、可能であれば回避すべきである。一方、以前に必要とされた熱風炉の数又は容量は減少し、そのため、これらの少なくとも一部は停止できる。これら全ての変更を行うには、高炉をかなりの時間停止する必要があり、これは非常に望ましくない。
【技術的課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、合成ガス利用のための高炉プラントの効率的な改装を可能とすることである。この目的は、請求項1に記載された方法により解決される。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、高炉プラントの改装方法を提供する。特に、高炉プラントを、高炉内で合成ガスの利用を促進しない状態から、そのような利用を促進する状態に改装する。一般に、これは、プラントの一部の要素を改装又は適合させるだけでなく、新しい要素を構築し、かつ可能性としては古い要素を解体することを要する。
【0009】
当初、即ち改装を始める前は、高炉プラントは、少なくとも1つの高炉と、熱風の発生に適合した複数の当初の炉(original stoves)と、少なくとも1つの高炉から各当初の炉にトップガスを供給するトップガス供給系統と、各当初の炉に冷風(cold blast)を供給する冷風供給系統と、各当初の炉から、少なくとも1つの高炉に羽口高さのところでガスを注入するように適合した熱風注入系統に熱風を供給する熱風供給系統を含んでいる。ここ及び以下において、「1つ(a)」及び「少なくとも1つ」という用語は、同じ意味を持つ。当初の炉は、高炉用熱風炉(blast furnace hot stoves)、高炉用炉(blast furnace stoves)又はカウパーと呼ばれることもある。用語「当初の炉」とは、単純に、これらの炉が本発明方法の開始時に存在していることを意味する。当技術分野で知られているように、これらの炉は、再生熱交換器(regenerative heat exchanger)又は再生器(regenerator)の一種である。
【0010】
各当初の炉は、トップガス供給系統によって高炉に接続され、それを介してトップガスを当初の炉に供給することができる。高炉ガス又はBFGとも呼ばれるトップガスは、高炉から回収されるCO含有ガスである。トップガスには、COとは別に通常、CO、HO、H等の他の成分が含まれている。特に、それは多分HO含有ガスである。多分Nを一部含んでいる。従来のトップガスの場合、N濃度は一般に35と50vol%の間である。富化されたトップガス、即ち使用する合成ガスに対する、N濃度は一般に低く、例えば20vol%未満、10vol%未満又は5vol%未満である。通常、トップガスは粉塵含有量を減らすために洗浄する必要がある。また、そのHO含有量は凝縮により急激に低減することが好ましい。これは、例えば、ガスの温度が低下し、水が凝縮するガス洗浄プラントで行うことができる。トップガスは、トップガス供給系統を介して各当初の炉に供給される。ここ及び以下において、「供給系統」は、分岐又は非分岐の、単一パイプ又はパイプ系統を含む系統を指す。さらに、供給系統は、互いに直接接続されていない複数の部分を含んでいてもよい。例えば、トップガス供給系統は、第1の高炉から第1のグループの当初の炉にトップガスを供給するための第1の部分と、第2の高炉から第2のグループの当初の炉にトップガスを供給するための第2の部分とを有することができる。この場合、各々の第1の部分及び第2の部分はそれぞれ第1又は第2のトップガス供給系統と呼ぶこともできる。供給系統は、少なくとも1つのパイプとは別に、パイプではない少なくとも1つの装置又は設備、例えば、ガス洗浄プラント、ガスホルダ、凝縮器又はガスの圧力を増大するためのコンプレッサを含んでもよい。そのような装置が供給系統内に介在し得ることが理解されよう。例えば、トップガスは、高炉から直接ではなく、少なくとも1つの介在装置を介してトップガス供給系統によって供給され得る。供給系統は、「分配系統」又は「供給」と呼ぶこともできる。場合によっては、介在する装置が存在せず、そのため供給系統は「配管」とも呼び得る。
【0011】
トップガスは、それぞれの当初の炉を加熱するために使用される。一方、高炉で生成されるトップガス中の残留熱が用いられてもよい。さらに、熱発生のため、トップガスを当初の炉のバーナーで燃焼させてもよい。いずれの方法でも、熱は当初の炉(通常は炉内のチェッカーレンガ)に伝達される。続いて、この熱は、少なくとも部分的には冷風供給系統を介して受領した冷風に伝達され、それによって熱風が発生する。この熱風は、次に、熱風供給系統を介して少なくとも1つの高炉、より具体的には、少なくとも1つの高炉に羽口高さのところでガスを注入するように適合した熱風注入系統に移送される。羽口高さは通常、高炉の溶融領域に対応している。典型的な実施形態では、熱風注入系統(hot-blast injection system)は、高炉を囲繞するバッスルパイプ(bustle pipe)と、バッスルパイプを起点として高炉内に延びる複数の羽口を含む。
【0012】
通常、本来熱い空気である熱風は、酸素供給系統を介して熱風注入系統に供給される酸素富化ガスと組み合わされる(複合化される)。代替的には、酸素富化ガスは、冷風の一部として、又は冷風と一緒に当初の炉に供給することができる。即ち、酸素富化ガスを供給する酸素供給系統を冷風供給系統に接続することができる。酸素富化ガスとは、一般に空気よりも有意に高いO濃度のガスである。通常、酸素富化ガスは主にOからなり、すなわち50vol%を超えるO濃度を有する。好ましくは、少なくとも60vol%、好ましくは少なくとも80vol%、より好ましくは少なくとも90vol%のOを有する。場合によっては、酸素富化ガスは「酸素」と呼ばれることさえあるが、微量濃度(例えば<5vol%)のNのような他の成分は殆ど回避できないことが理解されよう。必要に応じて、微粉炭、石油、天然ガス、コークス炉ガス等の補助燃料を熱風と共に注入することもできる。
【0013】
本発明の方法は、以下に記載する工程を少なくとも含む。特に、各工程は、それらが言及される順序で行われる。しかしながら、幾つかの工程は、異なる順序で、又は同時に実行してもよいと考えられる。
【0014】
本方法の1工程、即ち、熱風を発生させるために、(完全にではないにしても)少なくとも部分的には当初の炉の操業中に行われる1工程により、少なくとも1つの合成ガス炉が構築される。この合成ガス炉は、CO及び/又はHO含有産業ガスと炭化水素含有燃料ガスの複合ガス(gas combination)を改質して合成ガスを生成するよう適合しており、少なくとも1つの合成ガス炉を少なくとも1つの高炉に接続するのに適合した合成ガス供給系統を構築する。換言すれば、少なくとも1つの合成ガス炉は、高炉プラントのもともとの操業(operation)を中断することなく構築される。合成ガス炉は、当初の炉と同じ原理で動作する再生器でもある。しかし、当初の炉とは対照的に、合成ガス炉は、最初から、複合ガスの改質反応から生じる合成ガス又はシンガスを生成するように適合している。この改質反応は、当初の要素(original components)によっては、従来の熱風炉に深刻な損傷を与える可能性がある。合成ガス炉と当初の炉の主な違いは、実際には一般的に耐火ライニング及び可能性としては機械的要素に関係している。
【0015】
複合ガスは、CO及び/又はHO含有産業ガスと炭化水素含有燃料ガスとを含む。燃料ガスは、例えばコークス炉ガス(COG)、天然ガス、バイオガス、又はこれらのガスのいずれかの組合せ又は混合物であり得る。それは通常、高濃度の低分子炭化水素、特にCHを有する。産業ガスと燃料ガスは、別々に又は一緒に供給されてもよい。複合ガスにおいては、産業ガスと燃料ガスが多かれ少なかれ良好に混合可能である。通常、この複合ガスは混合ガスと呼ぶこともできる。場合によっては、例えば、2つのガスを炉に注入して、対流及び/又は拡散によって混合が多かれ少なかれ受動的に起こるようにすれば十分であろう。しかし、化学反応はより高度な混合によって増強されることが理解されよう。
【0016】
合成ガス炉の内部では、ガスに改質プロセスが施され、それによって、通常はかなりの量のCO及びHが含まれる合成ガスが生成される。改質プロセスの化学的機構は、本発明の範囲内で限定されないが、通常、少なくとも産業ガスのCO含有量が燃料ガス中の炭化水素と反応することを含む、例えば以下の反応による:CO+CH→2H+2CO。これは乾式改質とも呼ばれることもある。また、高炉ガス中のHO含有量は、例えば以下の反応により燃料ガス中の炭化水素と反応する:HO+CH→3H+CO。これは湿式改質とも呼ばれることもある。改質プロセスには、通常、高温、例えば800℃超の温度が必要である。これらの温度は合成ガス炉を予め加熱することによって提供される。当初の炉と同様に、加熱は、トップガスを燃焼させることによって及び/又はトップガス中の残留熱を使用することによって行い得る。改質プロセスは高圧下で行うこともできる。この場合、混合ガス(gas mixture)を圧縮してもよいし、高炉ガスと燃料ガスとを個別に圧縮して混合できる。改質プロセスは、通常炉に導入される触媒によって任意に支援できる。
【0017】
しかしながら、新しく構築された合成ガス炉は、合成ガスの生成に直ぐには使用されない。本方法の別の工程では、第1の合成ガス炉が、トップガス供給系統、冷風供給系統及び熱風供給系統に接続され、熱風発生のために操業する。換言すれば、第1の合成ガス炉は、(一時的に)熱風発生のために使用される、即ち、当初の炉のように操業される。このことは、熱風を発生させるために冷風を加熱することの方が、改質プロセスをサポートするよりも炉の内部に対する有害性が低いことから可能となっている。さらに、高炉で使用される合成ガスの流量は、一般に熱風の流量よりも遥かに少ない。しかしながら、合成ガスの生成は、熱風の生成と同様に合成ガスのNm当たりで遥かに高いエネルギー入力を必要とする。このため、合成ガス炉と熱風炉のサイズは類似しており、特に熱容量とバーナー部は同様のサイズとすることとなろう。
【0018】
熱風を発生させるために第1の合成ガス炉を操業開始した後、通常行われる別の工程では、第1の当初の炉がトップガス供給系統、冷風供給系統及び熱風供給系統から切り離される。第1の当初の炉は、上記の供給系統から切り離される前に停止されることが理解されよう。ここで及び以下において、「切り離す」とは、一般的に、弁を閉じることによって実施され、如何なるガスの交換も防止することを指す。しかしながら、一般的には、それぞれの炉が供給系統に接続されているその供給系統の一部を解体することを指す。
【0019】
それの切離しが完了した後、第1の当初の炉は、合成ガスの生成に適合するように改装される。既に以上で示したように、この適合のために第1の当初の炉の全体構造を変更する必要はない。むしろ、この改装は、耐火ライニングの品質/交換及び/又は耐火ライニングの支持体及び/又は例えば弁等の、その機械的要素を適合させることを言う。ここで、及び以下で、当初の炉を「改装する」とは、常に合成ガスを生成するようにそれを適合させることを言う。
【0020】
第1の当初の炉が改装された後、それはトップガス供給系統に接続される。以下で明らかになるように、現時点で合成ガス生成に適合している第1の当初の炉は、合成ガスを生成するために直接的に又は熱風を発生させるために一時的に、そのいずれにも使用される。
【0021】
いずれにしても、本方法はさらに、第1の合成ガス炉を冷風供給系統及び熱風供給系統から切り離し、第1の当初の炉及び第1の合成ガス炉を、複合ガスを供給するための複合ガス供給系統に、かつ合成ガス供給系統を介して高炉に接続することを含む。換言すれば、第1の合成ガス炉による熱風発生が停止され、したがってそれを冷風供給系統及び熱風供給系統から切り離すことができる。必要に応じて、それをトップガス供給系統から一時的に切り離すこともできる。第1の合成ガス炉及び第1の当初の炉は、複合ガスを供給する複合ガス供給系統に接続される。通常、両ガスは一緒に供給される、即ち、それらは通常、炉に到達する前に少なくともある程度混合される。しかし、複合ガス供給系統は、2つのガスのための別々のパイプを含むことが考えられる。上記のように複合ガスを圧縮するために、複合ガス供給系統は、少なくとも1つのコンプレッサを備えてもよい。さらに、第1の合成ガス炉及び第1の当初の炉は、合成ガス供給系統を介して高炉に接続される。一方、このことは炉(stove)を合成ガス供給系統に接続することを言うことになる;一方、高炉への合成ガスの注入が容易になるように、合成ガス供給系統を高炉に接続することを言うことになる。
【0022】
上述の工程が一度実行されると、第1の当初の炉及び第1の合成ガス炉が操業して合成ガスが生成され、合成ガスが合成ガス供給系統を介して高炉に供給される。本発明の範囲を限定するものではないが、合成ガスは、通常、還元ガスとして高炉内に導入される。特に、それは可能性として酸素富化熱風を供給する酸素富化ガスと共に導入することができる。トップガスをリサイクル、すなわち改質して再導入することにより、高炉のCO排出量を大幅に削減できることが理解されよう。また、酸素富化ガスは空気に比べてNが著しく少ないため、COやHなどの還元ガスの濃度が高くなり、高炉の生産性を高めるのに役立つことになる。
【0023】
上述のように熱風とともに補助燃料が注入される場合、この燃料注入は通常、改装中及び改装後も継続することができる。しかしながら、場合によっては、補助燃料注入を減らしたり、停止させたりすることができる(又はその必要がある)。例えば、トップガスの増加量を合成ガスに転換可能であり、かつ大量の合成ガスが炉内に注入されると、これによって補助燃料(例えば微粉炭)を廃れさせる可能性がある。
【0024】
熱風を発生させるための「バックアップ」として第1の合成ガス炉を一時的に採用することで、高炉の必要な停止時間(又は効率低下時間)が最小限に抑えられることが理解されよう。また、第1の合成ガス炉がバックアップとして機能した後に廃れた状態にはならず、合成ガスの生成に使用できることも有益である。
【0025】
高炉外での熱風と合成ガスの望ましくない相互作用を回避するために、本方法は、高炉内にガスを注入するように適合した合成ガス注入系統を構築すること、及び合成ガス供給系統を合成ガス注入系統に接続することを含み得る。合成ガス注入系統は、合成ガス供給系統の構築の前、後又はその最中に構築される。熱風注入系統と同様に、高炉を囲繞する(第2の)バッスルパイプ、ならびにバッスルパイプを起点として高炉内に延びる複数の羽口、ランス(lances)又はインジェクタを含む。合成ガスが合成ガス供給系統を介して供給されるとき、それは熱風とは別に注入される。
【0026】
実施形態によっては、例えば高炉プラントの操業が純酸素注入(即ち、酸素富化ガス、特に純酸素の注入)に変更されると、熱風注入系統を廃させる。このような場合、合成ガス注入系統を構築することは、熱風注入系統を合成ガス注入に適合するように少なくとも部分的に改装することを含むことになる。例えば、既存のバッスルパイプを、耐火物を変更することで改装することができ、新しい合成ガス羽口を設置することができる。各合成ガス羽口の内部には、純酸素を注入することができる別のランスを配置することができる。
【0027】
合成ガス注入系統は熱風注入系統とは別であるが(依然として存在する場合には)、羽口高さのところでガスを注入するように適合させてもよい。大まかに言えば、熱風注入系統と合成ガス注入系統は両方とも羽口高さのところに配置することができるので、合成ガスと熱風を別々に、しかし高炉の同じ領域に注入することができる。合成ガス注入系統は、熱風注入系統の羽口と代替的に配置される専用の羽口ストック(tuyere stock)を持つことができる。合成ガス注入系統は、羽口高さのところより上のシャフト高さのところで、代替的に又は付加的にガスを注入するように適合させることができる。シャフト高さは、通常、溶融領域よりも大幅に低い温度を有する高炉の還元領域に大部分が対応している。例えば、シャフト高さのところの温度は、800℃~1100℃の間であり得る。任意選択により、合成ガスは、合成ガス注入系統を通して導入される前に冷却してもよいし、又は、より低い温度を有ししかし例えば類似の組成を有する別のガスと混合してもよい。合成ガスと混合するのに好適なガスとしては、BOF(塩基性酸素炉;basic oxygen furnace)ガス及び高炉ガスが含まれる。これらの対策により、高炉内の温度分布に対する合成ガスの有害な影響を防止することができる。
【0028】
好ましくは、合成ガス注入系統は、少なくとも1つの高炉の操業中に少なくとも部分的に構築される。換言すれば、高炉は、合成ガス注入系統の構築時間全体にわたって停止する必要はない。例えば、合成ガス注入系統のバッスルパイプは、高炉の完全に外側に配置されているため、高炉の操業中に構築することができる。高炉の内部に突出する注入系統の要素(上述の羽口、ランス、インジェクタ等)は、設置又は構築のために高炉の一時的な停止を必要とする。但し、これは通常比較的短時間である。
【0029】
本発明方法は、既存の設備を合成ガス生成を伴う設備に改装するための投資コストを最小限に抑えることを目的としているが、高炉の停止時間を最小限に抑えることも目的としている。しかしながら、本方法の一部の工程は、通常、少なくとも1つの高炉の停止中に実行しなければならない。例えば、合成ガス炉をトップガス供給系統、冷風供給系統、熱風供給系統に接続するには、停止が必要になろう。この停止は、第1の合成ガス炉を接続するため、及び以下で述べる他の合成ガス炉を接続するために行われる。停止を必要とする可能性があるもう1つの工程は、炉(stove)を合成ガス供給系統に接続することである。このことは、(改装された)当初の炉及び合成ガス炉についても言える。同様に、既に以上で述べたように、合成ガス注入系統を高炉に接続するには、高炉を停止する必要がある。このことは、高炉の内部に導入される合成ガス注入系統の任意の要素を設置及び/又は構築することにも言える。また、熱風注入系統が合成ガス注入に適合するように改装される場合、これは殆どの場合、停止中にのみ可能である。停止を必要とする工程が、間にいかなる他の工程も介さずに逐次的に実行されるのでない限り、高炉の操業の再開は各工程後になされるのが好ましい。
【0030】
好ましい実施形態では、この方法は、第1の合成ガス炉を冷風供給系統及び熱風供給系統から切り離した後に実行される以下の工程を含む。1つの工程において、第2の合成ガス炉は、トップガス供給系統、合成ガス供給系統及び複合ガス供給系統に接続される。この第2の合成ガス炉もまた合成ガス生成に適合しており、任意選択的に、第1の合成ガス炉と同じサイズ及び構成を有し得ることが理解されよう。第1の合成ガス炉の1つの重要な機能は、第1の当初の炉の改装中に十分な熱風発生を維持することであるが、これは第2の合成ガス炉には適用されない。むしろ、それは合成ガスの生成及び第2の合成ガス炉として十分な生成速度を保証することのみを目的としており、第1の合成ガス炉及び少なくとも1つの改装された当初の炉は合成ガスを生成するために操業される。したがって、第2の合成ガス炉は、冷風供給系統又は熱風供給系統に接続されない。別の工程では、第2の合成ガス炉は、第1の合成ガス炉及び第1の当初の炉と共に、合成ガスを生成するように操業され、合成ガスは、合成ガス供給系統を介して少なくとも1つの高炉に供給される。換言すれば、たとえ幾つかの当初の炉が依然として熱風を発生させるために使用されている(したがって改装されていない)としても、少なくとも上記の3つの炉は合成ガス生成に使用することができる。なお、第2の合成ガス炉は、第1の合成ガス炉及び第1の当初の炉の直前、直後又は同時に、合成ガス供給系統及び複合ガス供給系統に接続することができる。本実施形態では3つ全てが同時に合成ガス生成を開始することが好ましい。したがって、第2の合成ガス炉は、通常、第1の合成ガス炉及び第1の当初の炉が合成ガスの生成を開始する前に、合成ガス供給系統及び複合ガス供給系統に接続される。
【0031】
第2の合成ガス炉は、第1の合成ガス炉が構築されると同時に、又は構築される前に構築されることが考えられる。しかしながら、もし第2の合成ガス炉が、第1の合成ガス炉の熱風発生のための操業が開始された後に構築されるのであれば、高炉プラントの全体改装スケジュールにとっては一般的により効率的である。この段階では、第1の合成ガス炉の操業によって十分な熱風発生が維持される。特に、第2の合成ガス炉は、第1の当初の炉の改装と同時に構築されてもよい。
【0032】
特に第2の合成ガス炉が構築され、操業されるのであれば、第1の当初の炉のみを改装すれば十分であろう。他の場合には、第2の当初の炉を改装することが必要又は望ましい場合がある。このような実施形態によれば、この方法は、以下の工程を含み、これらは、第1の当初の炉を改装した後に行われる。1つの工程で、第1の当初の炉は、トップガス供給系統、冷風供給系統、及び熱風供給系統に接続される。これらの接続は、第1の当初の炉による熱風発生を容易にすることが理解されよう。別の工程では、第2の当初の炉がトップガス供給系統、冷風供給系統及び熱風供給系統から切り離される。その後、第2の当初の炉は、合成ガスの生成に適合するよう改装される。少なくとも第2の当初の炉が改装されている間、第1の当初の炉及び第1の合成ガス炉は、熱風を発生させるように操業される。この操業は、第2の当初の炉の改装の前に開始されてもよく、及び/又は改装が完了した後に終了してもよい。さらに別の工程では、第1の合成ガス炉及び第1の当初の炉は、冷風供給系統及び熱風供給系統から切り離され、第1の当初の炉、第2の当初の炉及び第1の合成ガス炉は、複合ガス供給系統、及び合成ガス供給系統を介して少なくとも1つの高炉に接続される。この工程の後、全ての必要な接続が完了する。その後、第1の当初の炉、第2の当初の炉及び第1の合成ガス炉が操業して合成ガスを生成し、合成ガスが合成ガス供給系統を介して少なくとも1つの高炉に供給される。
【0033】
上述の実施形態の最終工程の後、3つの炉が操業して合成ガスが生成され、これは通常、(少なくとも1つの)高炉の効果的な操業に十分である。共通の構成により、高炉プラントは最初から3つの当初の炉を含み得る。第1及び第2の当初の炉を改装した後、残った未改装の当初の炉では、通常高炉に対する熱風供給を維持するには能力不足である。殆どの場合、第2の当初の炉は、熱風発生が高炉の将来の操業を意図するためではない場合にのみ改装される。一方、残った当初の炉を解体することができる。代わりに、合成ガス生成にも使用することができる。1実施形態によれば、この方法は、以下の工程を含む。1つの工程において、第3の当初の炉がトップガス供給系統、冷風供給系統、及び熱風供給系統から切り離される。別の工程では、第3の当初の炉は、それを合成ガスを生成するように適合させるために改装される。その後、第3の当初の炉は、複合ガス供給系統に、かつ合成ガス供給系統を介して少なくとも1つの高炉に、接続される。一度これらの接続の適用が完了すると、第3の当初の炉が操業して合成ガスを生成し、合成ガスが合成ガス供給系統を介して少なくとも1つの高炉に供給される。この工程は、第1の当初の炉、第2の当初の炉及び第1の合成ガス炉が合成ガスの生成を開始した後に実行されてもよい。可能な限り、それらは、合成ガスを生成するために、第1の当初の炉、第2の当初の炉及び第1の合成ガス炉の操業中に実行される。しかし、幾つかの工程は高炉プラントの一時的な停止を必要とすることが理解されよう。しかしながら、第3の当初の炉は別として、炉を接続又は切り離す必要はない、即ち、上記の工程の間、他の炉の接続は維持することができる。
【0034】
産業ガスと燃料ガスを別々の炉に供給したり、或いは複合ガス供給システム内でこれらのガスをある程度混合させたりすることも考えられるが、炉に導入する前に複合ガスを混合して混合ガスを形成する専用の混合チャンバを用いることが多くの場合有益である。したがって、本方法は、好ましくは、混合チャンバを構築し、かつ混合チャンバを、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給系統及び複合ガス供給系統に接続することを含む。用語「混合チャンバ」は、チャンバ内で2つのガスの能動的混合が行われるとの意味に解すべきではない。むしろ、ガスは、対流、拡散又は他のプロセスにより受動的混合が許容される。混合チャンバは、以下で論じるように、産業ガスを受け取るためにさらなる接続を必要とすることが理解されよう。
【0035】
通常、産業ガスとしてはトップガスが用いられる。それは高炉プラント内部で豊富に得られるCO含有ガスである。したがって、この方法は、好ましくは、トップガス供給系統を混合チャンバに接続し、かつトップガスを産業ガスとして高炉から混合チャンバに供給することを含む。「トップガス」について述べているが、高炉の上部から回収されたトップガスは、さらなる目的に使用する前に洗浄する必要があることが理解されよう。これに関連して、トップガスは混合チャンバに導入される前に圧縮することができる。このような場合、トップガス供給系統を混合チャンバに接続することは、少なくとも1つのコンプレッサを構築することを含み、かつトップガスを供給することは、トップガスを圧縮することを含む。代替的には、複合ガス供給系統は、少なくとも1つのコンプレッサを備えてもよい。
【0036】
3つの当初の炉の(共通の)構成と関連して既に述べたように、全ての当初の炉は、合成ガスを生成するのに適合するよう改装できる。これは勿論、当初の炉が3つ以上又は3つ未満存在する場合にも当てはまる。代替的には、一部の当初の炉を、他が熱風発生に適合したままの状態で、改装することができる。
【0037】
高炉プラントは単一の高炉を含み、全ての合成ガス炉及び全ての当初の炉が(改装の前後で)1つの同じ高炉に接続されるようにする。しかしながら、この方法は、複数の高炉を有する高炉プラントにも適用可能である。1実施形態によれば、高炉プラントは、第1の熱風供給系統及び第1のトップガス供給系統を介して第1のグループの当初の炉に接続された第1の高炉と、第2の熱風供給系統及び第2のトップガス供給系統を介して第2のグループの当初の炉に接続された第2の高炉とを含む。第1及び第2のグループの各々の当初の炉は、(それぞれ第1又は第2の)冷風供給系統に接続することができることが理解されよう。1つのグループ内の当初の炉は、比較的近接配置されてもよいが、「グループ」という用語は、当初の炉の空間的配置に関して限定的に解釈されるべきではない。
【0038】
本実施形態において、本方法は、少なくとも以下の工程を含む。1つの工程において、第1の合成ガス炉は、第1及び第2のトップガス供給系統の少なくとも一方に接続される。特に、それは第1のトップガス供給系統に接続してもよい。上述のように、第1の合成ガス炉は、少なくとも1つの熱風供給系統及び少なくとも1つの冷風供給系統にも接続される。特にこれは、第1の熱風供給系統及び第1の冷風供給系統でもよい。その後、第1のグループの全ての当初の炉が改装され、かつ複合ガス供給系統及び合成ガス供給系統に接続される。換言すれば、第1の当初の炉、及び該当する場合は、第2及び第3の当初の炉は第1のグループから選択される。これらの当初の炉は、上記のように次々と改装される。これは通常、第2の合成ガス炉の構築を必要としない。第1のグループの全ての当初の炉が改装された後では、それらは合成ガス生成に適合している。上述のように、それらを依然として熱風を発生させるよう操業することができるが、これはそれらの主たる機能ではない。したがって、第1の熱風供給系統は第1の高炉に熱風を供給する目的を失う。したがって、第2の熱風供給系統が第1の高炉に接続される。第2の熱風供給系統は、通常、第1の高炉及び第2の高炉に熱風を供給できるように分岐している。この段階で、第1の熱風供給系統と第1の冷風供給系統を解体することができる。本方法のさらなる工程において、合成ガス供給系統は第1の高炉及び第2の高炉に接続される。合成ガス供給系統は、(それぞれ第1又は第2の)熱風注入系統によって、又は専用の(それぞれ第1又は第2の)合成ガス注入系統によって、いずれかの高炉に接続される。
【0039】
改装を終えた後は、第2のグループの全ての当初の炉が熱風を発生させるように操業している状態で、第1のグループの全ての当初の炉が合成ガスを生成するように操業することが好ましい。換言すれば、第2のグループの全ての当初の炉が熱風発生に適合しかつ両方の高炉に熱風を供給している状態で、第1のグループの全ての当初の炉が改装され、今や両方の高炉に合成ガスを供給するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
ここで、本発明の好ましい実施形態を、添付図面を参照して、例により説明する:
図1】本発明方法を適用前の第1の高炉プラントの概略図である。
図2】本発明方法の第1の実施形態の異なる段階を示す。
図3】本発明方法の第1の実施形態の異なる段階を示す。
図4】本発明方法の第1の実施形態の異なる段階を示す。
図5】本発明方法の第2の実施形態の異なる段階を示す。
図6】本発明方法の第2の実施形態の異なる段階を示す。
図7】本発明方法の第2の実施形態の異なる段階を示す。
図8】本発明方法の第2の実施形態の異なる段階を示す。
図9】本発明方法の第2の実施形態の異なる段階を示す。
図10】本発明方法を適用前の第2の高炉プラントの概略図である。
図11】本発明方法の第3の実施形態の異なる段階を示す。
図12】本発明方法の第3の実施形態の異なる段階を示す。
図13】本発明方法の第3の実施形態の異なる段階を示す。
図14】本発明方法の第3の実施形態の異なる段階を示す。
図15】本発明方法の第3の実施形態の異なる段階を示す。
【好ましい実施形態の説明】
【0041】
図1は高炉プラント1の概略図を示す。それは高炉10を含み、その一般的な操業は当該技術分野において公知であり、したがってここでは説明を省略する。高炉10の羽口高さ10.1のところには、熱風注入系統16が配置されている。熱風注入系統16は、熱風供給系統15及び酸素供給系統17に接続されている。酸素供給系統17は酸素富化ガスを提供し、これは、例えば、95vol%のO濃度及び5vol%のN濃度を有するであろう。ここに示す実施形態の代替として、酸素供給系統17は冷風供給系統14に接続可能で、それにより酸素富化された冷風が当初の炉31~33に供給され、酸素富化された熱風が熱風注入系統16に供給される。実際、一般的に言えば、高炉プロセスで熱風が使用される場合は、酸素供給系統は酸素を冷風中に、即ち炉の上流で供給する。一方、高炉を純酸素炉として操業する場合には、供給系統は、図1に示すように、羽口高さのところで高炉に酸素を直接供給する。
【0042】
さらに、微粉炭や油などの補助燃料を熱風で注入することもでき、これは後述する第2及び第3の実施形態にも適用される。熱風供給系統15は、冷風供給系統14から冷風を受けて加熱して熱風を発生させる熱風炉として構成された3つの当初の炉31~33に接続されている。当初の炉31~33は各々、高炉10の上部からトップガス(又は高炉ガス)を受け取るトップガス供給系統11に接続されている。熱風を用いた高炉の従来の操業において回収されたトップガスは、50vol%未満のN濃度、それぞれ約23vol%のCO及びCO濃度及び約6vol%のHを有する。合成ガスを用いて操業する高炉の場合、回収されたトップガスは、5vol%未満のN濃度、それぞれ約40vol%のCO及びCO濃度及び約15vol%のHを有し得る。回収されたトップガスは、トップガス供給系統11に供給され、かつガス洗浄プラント13で洗浄されるが、これは主にガスから粒子状物質を除去するためであり、可能性としてはトップガスに含まれる蒸気の一部を凝縮させるためである。トップガスは、当初の炉31~33を加熱するために使用される。
【0043】
図2図4は、高炉プラント1を合成ガスの利用に適合させるための本発明方法の第1の実施形態を示す。図2に示すように、第1の合成ガス炉40が構築され、これは当初の炉31~33と基本的に同じ構成を有し、改質プロセスを支持するように適合されており、そのプロセスにおいて、CO含有産業ガス(この場合はトップガス)と炭化水素含有燃料ガス(この場合はコークス炉ガス、必要に応じて天然ガスと混合又は複合したもの)の複合ガスが反応してシンガス(syngas即ち合成ガス)を生成する。改質プロセスの化学的機構は、本発明の範囲内で限定されないが、通常、少なくとも産業ガスのCO含有量が燃料ガス中の炭化水素と反応することを含む、例えば以下の反応による:CO+CH→2H+2CO。これは乾式改質とも呼ばれる。また、産業ガス中のHO含有量も、例えば以下の反応により燃料ガス中の炭化水素と反応する:HO+CH→3H+CO。これは湿式改質とも呼ばれる。改質プロセスには、通常、高温、例えば800℃超の温度が必要である。改質プロセスに関与する物質の高温及び化学的性質如何により、当初の炉31~33のいずれかに当初の構成/品質如何による重大な損傷が生じる可能性がある。一方、第1の合成ガス炉40は、最初から改質プロセスの条件に耐えるように適合しており、これは一般に、異なるタイプの耐火ライニング及び多分チェッカーレンガのための異なるタイプの支持体(support)に依るものである。
【0044】
図2からも明らかなように、第1の合成ガス炉40を高炉10に接続するのに適合した合成ガス供給系統18が構築されている。また、羽口高さ10.1のところより上のシャフト高さ10.2のところに上部合成ガス注入系統22が構築され、羽口高さ10.2のところに下部合成ガス注入系統23が構築されている。合成ガス注入系統22,23は、それぞれ、高炉10内に突出するバッスルパイプ及びインジェクタを含み、このために、インジェクタの設置中は高炉10を一時的に停止する必要がある。この一時的な停止を除けば、高炉10の操業は中断されない。図2に示す段階では、合成ガス供給系統18は、合成ガス注入系統22,23にも、炉31~33,40のいずれにも接続されていない。
【0045】
図3は、第1の当初の炉31をトップガス供給系統11、冷風供給系統14及び熱風供給系統15から切り離し、一方、第1の合成ガス炉40をこれらの供給系統11,14,15に接続する方法の別の段階を示している。この場合も、高炉10の一時的な停止が必要になる場合があるが、これは限られた時間だけである。第1の合成ガス炉40は、今や熱風を発生させるように操業するが、このことは、熱風発生の条件が改質プロセスのための条件よりも厳しくないために可能である。その間に、第1の当初の炉31は、それを合成ガス生成に適合するように改装される。この改装は必要に応じて、とりわけ耐火ライニングの交換及び/又は可能性としては耐火ライニングの支持体の適合及び/又は機械的要素の交換/適合に関連する。また、合成ガス生成に適合した第2の合成ガス炉41も構築され、それは第1の合成ガス炉40と同一であり得る。
【0046】
図4は、高炉プラント1の改装方法の最終段階を示している。第1の当初の炉31及び第2の合成ガス炉41は、トップガス供給系統11に接続されており、第1の当初の炉31、第1の合成ガス炉40及び第2の合成ガス炉41は、これまた合成ガス注入系統22,23に接続された合成ガス供給系統18に接続されている。さらに、これらは、トップガスとコークス炉ガス(及び、必要に応じて天然ガス)の混合ガスを供給する複合ガス供給系統19に接続される。混合チャンバ21が構築され、これに複合ガス供給系統19が接続される。さらに、混合チャンバは、トップガスを受け取るトップガス供給系統11、燃料ガス供給系統20に接続され、それを通してコークス炉ガス(及び、必要に応じて、破線矢印で示す天然ガス)を受け取る。改質反応は通常、高圧を必要とするので、複合ガス供給系統19は、コンプレッサを含んでもよい。或いは、トップガス供給系統11及び燃料ガス供給系統20が各々コンプレッサを備えてもよく、その結果、トップガス及び燃料ガスが高圧下で混合チャンバ21内に導入される。単純化するために、コンプレッサはここ及び以下では示していない。
【0047】
高炉プラント1は、変更された形態でその操業を再開することができ、そこでは、第2及び第3の当初の炉32,33が操業して熱風を発生させ、これを羽口高さ10.1のところで高炉10に供給し、一方、第1の当初の炉31及び合成ガス炉40,41を操業して合成ガスを生成し、これは、合成ガス供給系統18を介して供給され、かつシャフト高さ10.2のところで上部合成ガス注入系統22を介して、及び羽口高さ10.1のところでは下部合成ガス注入系統23を介して、注入される。
【0048】
図2~4に示す実施形態では、上部合成ガス注入系統22がシャフト高さ10.2のところに構築され、さらに下部合成ガス注入系統23が羽口高さ10.1のところに構築されているが、高炉10の羽口高さ10.1又はシャフト高さ10.2のところのいずれかに単一の注入系統22,23のみが構築されるように、本実施形態を変更することができる。
【0049】
上述のように、補助燃料が羽口高さ10.1のところで注入される場合、この燃料注入は通常、改装中及び改装後も継続することができる。しかしながら、場合によっては、生成される合成ガス量に応じて、補助燃料注入を減少させるか又は停止させる必要がある。例えば、コークス炉ガスが天然ガスによって補完されるならば、トップガスの増加量を合成ガスに転換することができ、補助燃料(例えば微粉炭)を廃れた状態にする可能性がある。このことは、以下で論じる第2及び第3の実施形態にも当てはまる。
【0050】
図5図9は、図1に示す高炉プラント1の改装方法の第2の実施形態を示す。図5は改装の第1段階を示しており、それは図2に示す段階と同様であり、ここまでは再度説明しない。しかし、この場合シャフト高さ10.2のところに上部合成ガス注入系統22のみが構築される。図6に示す第2段階では、第1の合成ガス炉40がトップガス供給系統11、冷風供給系統14及び熱風供給系統15に接続され、かつ熱風を発生させるように操業される。その間に、第1の当初の炉31は、トップガス供給系統11、冷風供給系統14及び熱風供給系統15から切り離され、その後、合成ガス生成に適合するように改装される。
【0051】
図7に示す第3段階では、改装が完了した第1の当初の炉31が、トップガス供給系統11、冷風供給系統14及び熱風供給系統15に再接続され、熱風を発生させるように操業される。その間に、第2の当初の炉32は、トップガス供給系統11、冷風供給系統14及び熱風供給系統15から切り離され、その後、合成ガス生成に適合するように改装される。
【0052】
第4段階(図8に示す)では、改装が完了した第2の当初の炉32がトップガス供給系統11に再接続される。混合チャンバ21が構築され、かつトップガス供給系統11及び燃料ガス供給系統20に接続される。熱風注入系統16は下部合成ガス注入系統23に改装され、そのことは、バッスルパイプと羽口ストックの適合化及び酸素供給系統17からの酸素富化ガスが注入される別々のランスの設置を含む。同様に、第1の当初の炉31、第2の当初の炉32及び第1の合成ガス炉40は、合成ガス供給系統18及び複合ガス供給系統19を介して混合チャンバ21に接続される。合成ガス供給系統18は、上部合成ガス注入系統22及び下部合成ガス注入系統23に接続される。第1及び第2の当初の炉31,32及び第1の合成ガス炉40は、合成ガス供給系統18及び合成ガス注入系統22,23を介してシャフト高さ10.2のところで高炉に供給される合成ガスを生成するように操業される。その間に、第3の当初の炉33は、トップガス供給系統11から切り離されている。冷風供給系統14及び熱風供給系統15は解体される。第3の当初の炉33は、それを合成ガス生成のために適合させるべく改装される。
【0053】
図9は、改装プロセスの最終段階を示している。第3の当初の炉33は、トップガス供給系統11、合成ガス供給系統18及び複合ガス供給系統19に接続される。その後、合成ガスを生成するために操業される。図4図9の比較から明らかなように、第2の実施形態では、酸素供給系統17及び下部合成ガス注入系統23を介して、酸素富化ガスのみが羽口高さ10.1のところで注入されるように、熱風発生を完全に排除している。全ての当初の炉31~33は改装されかつ操業されて合成ガスを生成する、合成ガスは、シャフト高さ10.2のところの合成ガス供給系統18及び上部合成ガス注入系統22及び羽口高さ10.1のところの下部合成ガス注入系統23を介して注入される。
【0054】
図10は、図1に示す高炉プラント2つを基本的に含む高炉プラント1の第2の実施形態を示している。それは第1の高炉10と第2の高炉50とを含んでいる。第1の高炉10の羽口高さ10.1のところには、第1の熱風注入系統16が配置されている。第1の熱風注入系統16は、第1の熱風供給系統15及び第1の酸素供給系統17に接続されている。第1の熱風供給系統15は第1のグループ30の当初の炉31~33に接続されており、第1の冷風供給系統(明確化のために図示しない)から冷風を受け取り、それを加熱して熱風を発生させる。有利にも、熱風は酸素富化される。第1のグループ30の各々の当初の炉31~33は、第1の高炉10からトップガスを受け取る第1のトップガス供給系統11に接続されている。さらに、第2の高炉50の羽口高さ50.1のところには、第2の熱風注入系統56が配置されている。第2の熱風注入系統56は、第2の熱風供給系統55及び第2の酸素供給系統57に接続されている。第2の熱風供給系統55は、第2のグループ37の当初の炉34~36に接続されており、図示しない第2の冷風供給系統から冷風を受け取ってそれを加熱して熱風を発生させる。各々の当初の炉34~36は、第2の高炉50からトップガスを受け取る第2のトップガス供給系統51に接続されている。
【0055】
図11図15は、それによって図10に示す高炉プラント1を改装可能な本発明方法の第3の実施形態を示す。図11からも明らかなように、第1の合成ガス炉40を第1の高炉10及び第2の高炉50に接続するための合成ガス供給系統18が構築されている。また、第1の高炉10のシャフト高さ10.2のところに第1の上部合成ガス注入系統22が構築され、第1の高炉10の羽口高さ10.1のところに第1の下部合成ガス注入系統23が構築され、第2の上部合成ガス注入系統62は第2の高炉50のシャフト高さ50.2のところに構築され、かつ第2の下部合成ガス注入系統63が第2の高炉50の羽口高さ50.1のところに構築されている。図11に示す段階では、合成ガス供給系統18は、いずれの合成ガス注入系統22,23,62,63にも、いずれの炉31~36,40にも接続されていない。
【0056】
図12に示す第2段階では、第1の合成ガス炉40は、第1のトップガス供給系統11、第1の冷風供給系統及び第1の熱風供給系統15に接続されて熱風を発生させるように操業される。その間に、第1のグループ30の一部である第1の当初の炉31は、第1のトップガス供給系統11、第1の冷風供給系統及び第1の熱風供給系統15から切り離され、その後、それを合成ガス生成のために適合するように改装される。
【0057】
図13に示す第3段階では、改装が完了した第1の当初の炉31が、第1のトップガス供給系統11、第1の冷風供給系統及び第1の熱風供給系統15に再接続され、かつ操業されて熱風を発生させる。その間に、これも第1のグループ30の一部である第2の当初の炉32は、第1のトップガス供給系統11、第1の冷風供給系統及び第1の熱風供給系統15から切り離され、その後、それが合成ガス生成に適合するように改装される。
【0058】
第4段階(図14に示す)では、改装が完了した第1の当初の炉31が、第1のトップガス供給系統11、第1の冷風供給系統及び第1の熱風供給系統15に再接続される。その間、第3の当初の炉33は、トップガス供給系統11、第1の冷風供給系統及び第1の熱風供給系統15から切り離され、それが合成ガス生成に適合するように改装される。
【0059】
図15は、改装プロセスの最終段階を示す。混合チャンバ21は、第1及び第2のトップガス供給系統11,51及び燃料ガス供給系統20に接続されて構築される。また、第1の当初の炉31、第2の当初の炉32、第3の当初の炉33及び第1の合成ガス炉40は合成ガス供給系統18に、また複合ガス供給系統19を介して混合チャンバ21に、接続される。合成ガス供給系統18は、第1の上下部の合成ガス注入系統22,23及び第2の上下部の合成ガス注入系統62,63に接続される。第1、第2及び第3の当初の炉31~33及び第1の合成ガス炉40は、合成ガスを生成するように操業され、合成ガス供給系統18及びそれぞれの合成ガス注入系統22,23,62,63を介して羽口高さ10.1,50.1のところで両方の高炉10,50に供給される。第1の冷風供給系統14及び第1の熱風供給系統15は解体される。第1の熱風供給系統15の代わりに、第2の熱風供給系統55が第1の熱風注入系統16に接続される。第1のグループ30の全ての当初の炉31~33は改装が完了し、合成ガスを生成するように操業し、一方、第2のグループ37の全ての当初の炉34~36は変化しない状態のままで操業して熱風を発生させる。
【0060】
図11~15に示す実施形態では、シャフト高さ10.2,50.2のところに配置されたそれぞれの上部合成ガス注入系統22,62があり、さらに、羽口高さ10.1,50.1のところに配置されたそれぞれの下部合成ガス注入系統23,63があるが、少なくとも1つの高炉10,50が単一の注入系統22,23,62,63のみを有するようにして、それがそれぞれの高炉10,50の羽口高さ10.1,50.1のところ、又はシャフト高さ10.2,50.2のところのいずれかに配置されるように、この実施形態を変更することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 高炉プラント
10,50 高炉
10.1,50.1 羽口高さ
10.2,50.2 シャフト高さ
11,51 トップガス供給系統
13,53 ガス洗浄プラント
14 冷風供給系統
15,55 熱風供給系統
16,56 熱風注入系統
17,57 酸素供給系統
18 合成ガス供給系統
19 複合ガス供給系統
20 燃料ガス供給系統
21 混合チャンバ
22,23,62,63 合成ガス注入系統
30 第1のグループ
31~36 当初の炉
37 第2のグループ
40,41 合成ガス炉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】