(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】複合セラミック体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C04B 35/599 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
C04B35/599
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532684
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 US2020057310
(87)【国際公開番号】W WO2021112971
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594027476
【氏名又は名称】ケンナメタル インコ-ポレイテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドスミス、ジェイソン
(57)【要約】
一態様では、セラミック体は、本明細書で複合構造を呈して記述される。簡潔に述べると、複合セラミック体は、アルファ-SiAlONとベータ-SiAlONとの混合物を含むバルク領域と、バルク領域を覆う表面領域とを備え、表面領域は、-500MPa~500MPaの残留応力と、少なくとも5μmの厚さとを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合セラミック体であって、
アルファ-SiAlONとベータ-SiAlONとの混合物を含むバルク領域と、
前記バルク領域を覆う表面領域であって、前記表面領域が、アルファ-SiAlONとベータ-SiAlONとの混合物を含み、かつ-100MPa~300MPaの残留応力および少なくとも5μmの厚さを有する表面領域と、を備え、
前記複合セラミック体が、焼結されたままの状態である、
複合セラミック体。
【請求項2】
アルファ-SiAlONが、前記表面領域の95重量パーセント超の量で前記表面領域中に存在する、請求項1に記載の複合セラミック体。
【請求項3】
アルファ-SiAlONが、前記表面領域の98重量パーセント超の量で前記表面領域中に存在する、請求項1に記載の複合セラミック体。
【請求項4】
前記バルク領域が、70重量パーセント超の量でベータ-SiAlONを含む、請求項1に記載の複合セラミック体。
【請求項5】
前記表面領域が、混合金属酸化物を含む、請求項1に記載の複合セラミック体。
【請求項6】
前記バルク領域が、20重量パーセント未満のアルファ-SiAlONを含む、請求項1に記載の複合セラミック体。
【請求項7】
前記バルク領域が、金属酸化物、金属オキシ窒化物、金属ホウ化物、またはそれらの混合物を含む添加物相をさらに含む、請求項1に記載の複合セラミック体。
【請求項8】
前記金属酸化物、金属オキシ窒化物、および金属ホウ化物が、周期表のIIIB族~VIB族のアルミニウム、ケイ素、および金属元素からなる群から選択される一つ以上の金属元素を含む、請求項7に記載の複合セラミック体。
【請求項9】
前記金属酸化物が、一つ以上のランタニド系列元素を含む、請求項8に記載の複合セラミック体。
【請求項10】
前記添加物相が、Y
2Si
3N
4O
3を含む、請求項7に記載の複合セラミック体。
【請求項11】
前記添加物相が、SiAlON粒界に位置する、請求項7に記載の複合セラミック体。
【請求項12】
前記添加物相が、アルファ-SiAlON、ベータ-SiAlON、または窒化ケイ素を有する一つ以上の固溶体を形成する、請求項7に記載の複合セラミック体。
【請求項13】
前記一つ以上の添加物相が、0.1~15重量パーセントの合計量で存在する、請求項7に記載の複合セラミック体。
【請求項14】
前記添加物相が、2~5重量パーセントの量で存在する、請求項7に記載の複合セラミック体。
【請求項15】
前記表面領域が、少なくとも15.5GPaのビッカース硬度を有する、請求項1に記載の複合セラミック体。
【請求項16】
前記バルク領域が、少なくとも4.5MPa・m
0.5の破壊靭性を有する、請求項1に記載の複合セラミック体。
【請求項17】
600nm未満の表面粗さを有する、請求項1に記載の複合セラミック体。
【請求項18】
300~600nmの表面粗さを有する、請求項1に記載の複合セラミック体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年12月4日に出願された米国特許出願第16/703,205号に対する特許協力条約第8条に基づく優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、焼結セラミック体に関し、特に、様々なツーリング用途のための焼結SiAlON系セラミック体に関する。
【背景技術】
【0003】
SiAlON材料は、多数の用途を有し、例えば、様々な金属切削用途のための切削用インサート、および様々な摩耗用途(例えば、ポンプ用のプランジャーロッド、プランジャーボールブランク、坑井内ポンプ逆止め弁ブランク、ブッシング、ブラストノズル、およびその他の摩耗用途および衝撃用途)のための摩耗部品が挙げられる。セラミック材料はまた、マイクロタービンなどの構造物における高温摩耗用途にも使用される。マイクロタービン用途では、セラミック材料は、ステーター(すなわち、静翼)、ローター(動翼を含む)、燃料噴射ノズル、および/またはシュラウドを含んでもよい。マイクロタービンのこれらの構成要素は、適切な高温クリープ抵抗および適切な高温変形抵抗を必要とする。現在のSiAlON材料はその性能限界にますます到達し、それによって新しいセラミック材料の開発が求められている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、セラミック体は、本明細書で複合構造を呈して記述される。簡潔に述べると、複合セラミック体は、アルファ-SiAlONとベータ-SiAlONとの混合物を含むバルク領域と、バルク領域を覆う表面領域とを備え、表面領域は、-500MPa~500MPaの残留応力と、少なくとも5μmの厚さとを有する。一部の実施形態では、表面領域は、焼結されたままの状態で前述の残留応力状態を呈する。別の方法として、表面領域は、一つ以上の機械的表面処理に晒されうる。さらに、複合セラミック体は、金属酸化物、金属ホウ化物、またはそれらの混合物を含む添加物相をさらに含みうる。
【0005】
これらおよび他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態でさらに記述される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に記述される実施形態は、以下の詳細な記述および実施例、ならびにそれらの前および後の記述を参照することによって、より容易に理解することができる。しかしながら、本明細書に記述される要素、装置、および方法は、発明を実施するための形態および実施例に提示される特定の実施形態に限定されない。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示に過ぎないことが認識されるべきである。当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多数の修正および適合が容易に明らかとなるであろう。
【0007】
本明細書に記述されるように、セラミック体は、アルファ-SiAlONとベータ-SiAlONとの混合物を含むバルク領域と、バルク領域を覆う表面領域とを備え、表面領域は、-500MPa~500MPaの残留応力と、少なくとも5μmの厚さとを有する。一部の実施形態では、表面領域は、5~50μmまたは10~30μmの厚さを有する。表面領域の厚さは、複合体を形成する粉末の組成物パラメータ、ならびに焼結時間、温度、および/または雰囲気などの焼結条件を含むがこれらに限定されない、いくつかの考慮事項に依存する可能性がある。追加的に、表面領域の残留応力は、表Iから選択される値を有してもよい。
【0008】
【0009】
当業者には公知であるように、残留応力の負の値は、応力が圧縮応力であることを示す。逆に、残留応力の正の値は、応力が引張応力であることを示す。表面領域は、焼結されたままの状態で本明細書に記述される残留応力値を呈する場合がある。焼結されたままの状態にある場合、表面領域は、層の残留応力状態を変化させるような、ブラスト処理または研磨などの、いかなる機械的な焼結後処理にも供されていない。焼結されたままの状態は、焼結セラミック体上で実施される熱間等静水圧圧縮工程を含む。別の方法として、表面領域は、ブラスト処理および/または研磨などの一つ以上の機械的処理に供された後、本明細書に記述される残留応力値を呈する場合がある。
【0010】
表面領域の残留応力および剪断応力は、アルファ-SiAlON結晶相の(322)反射を参照して、χチルトSin2ψ法を使用したX線回折によって決定される。ブラッグ集束回折計でデータを収集した。
【0011】
入射光学系として含まれるもの:
45KVおよび40MAで動作する、高精度長焦点X線管。
分析全体を通して一定の照射サンプル体積を保証するために、自動モードで動作する可変発散光学素子。
固定型散乱防止スリット
【0012】
受信光学系として含まれるもの:
スキャンモードで動作する自動発散スリットMultistripソリッドステート検出器と一致するように、自動モードで動作する可変散乱防止スリット。
【0013】
スキャンパラメータ(速度およびカウント時間)は、最も強いピークについて、ピークの半値全幅(FWHM)、および合計約10,000個のカウントのなかから最小10個のデータステップを保証するように選択される。収集されたデータは、まず、可変モードから分析のために使用可能な固定モードに変換される。この変換は、次式を使用して完了する。
【0014】
【0015】
式中、a=発散角であり、またL=サンプル上の照射された長さである。補正された強度は、収集されたデータ内のすべてのピークのピーク位置を特定するために、ピーク検出ソフトウェアを使用して分析される。次いで、ピークをプロファイル機能を使用して精密化して、ピーク位置およびピーク高さを正確に特定する。
【0016】
次いで、ピークデータを、次の方程式を使用して吸収および透明性について補正した。
【0017】
吸収補正
【0018】
【0019】
透明性補正
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
式中、
t=層の厚さ
μ=線吸収係数(cm-1)
θ=2θ/2(度)
(ω-θ)=ωオフセット角(度)
ψ=傾斜角(ψ応力)(度)
τ=情報の深さ(マイクロメートル)
R=ゴニオメーターの半径(mm)
【0024】
ピークデータを、次式を使用して、ローレンツ偏光に対して補正した:
【0025】
偏光補正
【0026】
【数6】
2θ
mon=グラファイトモノクロメーターの回折角
【0027】
Kα2ピークを、Ladellモデルを使用して除去した。ピーク位置を、Pearson形状プロファイル関数を使用して精密化した。
【0028】
残留応力を一般式から計算した。
【0029】
【0030】
【0031】
dφψ=角度φおよび傾斜ψでの格子定数
d0=歪みのない格子定数
φ=回転角度
ψ=試料の傾斜
σ1およびσ2=試料表面における一次応力テンソル
σφ=回転角度φでの応力
S1および(1/2)S2=X線弾性定数
【0032】
【0033】
提示されるアルファ-SiAlON解析では、ポアソン比(υ)を0.2に設定し、弾性率(E、単位GPa)は305であった。
【0034】
本明細書に記述されるように、表面領域を、一つ以上の焼結後処理に供することができる。例えば、表面領域は、様々な湿潤および/または乾燥の粒子組成物を用いてブラスト処理することができる。表面ブラスト処理は、任意の所望の様態で施行することができる。一部の実施形態では、ブラスト処理は、ショットブラスト処理または加圧ブラスト処理を含む。加圧ブラスト処理は、圧縮空気ブラスト処理、湿式圧縮空気ブラスト処理、加圧液体ブラスト処理、湿式ブラスト処理、および蒸気ブラスト処理を含む様々な形態で施行することができる。例えば、湿式ブラスト処理は、アルミナなどの無機粒子および/またはセラミック粒子と水とのスラリーを使用して達成される。粒子スラリーは、複合セラミック体の表面に空気圧で発射することができる。無機粒子および/またはセラミック粒子は、一般的に、約20μm~約100μmのサイズの範囲とすることができる。
【0035】
ブラスト処理パラメータとしては、圧力、衝突角、部品表面までの距離、および持続時間が挙げられる。一部の実施形態では、衝突角は、約10度~約90度の範囲とすることができ、すなわち、粒子は、約10度~約90度の範囲の角度でセラミック表面に衝突することができる。一部の実施形態では、適切な圧力は、1~6インチのセラミック表面までの距離で、30~55ポンド/平方インチ(psi)の範囲とすることができる。さらに、ブラスト処理の持続時間は、一般的に1~10秒以上の範囲とすることができる。ブラスト処理は、一般的に、複合セラミック体の表面積全体にわたって施行することができ、または切削工具の工作物接触域など、選択された場所に適用することができる。工作物接触域は、切削工具のホーニング仕上げ領域とすることができる。
【0036】
他の実施形態では、表面領域は、研磨処理に供される。研磨は、適切なダイヤモンドまたはセラミックのグリットサイズのペーストを用いて施行することができる。一部の実施形態では、ペーストのグリットサイズは、1μm~10μmの範囲である。一実施形態では、5~10μmのダイヤモンドグリットペーストを使用して、複合セラミック体の表面を研磨する。さらに、グリットペーストは、刷毛などの、本発明の目的と矛盾しない任意の装置によってセラミック体に塗布することができる。一実施形態では、複合セラミック体の表面にグリットペーストを塗布するために、例えば、平刷毛が使用される。
【0037】
表面領域は、表面領域の所望の表面粗さ(Ra)および/または残留応力を達成するために十分な期間の間、ブラスト処理または研磨することができる。一部の実施形態では、被覆後処理に供される表面領域は、表IIから選択される表面粗さ(Ra)を有する。
【0038】
【0039】
被覆表面粗さは、Veeco Instruments, Inc.(米国ニューヨーク州プレインビュー)から市販されているWYKO(登録商標)NTシリーズ光学プロファイラーを使用して光学プロフィロメトリーによって決定することができる。一部の実施形態では、表面領域は、焼結されたままの状態で本明細書に記述される表面粗さ値を呈することができる。
【0040】
一部の実施形態では、表面領域は、アルファ-SiAlON単独、またはアルファ-SiAlONとベータ-SiAlONとの混合物を含むことができる。例えば、表面領域は、少なくとも90重量パーセントまたは少なくとも95重量パーセントがアルファ-SiAlONとすることができる。一部の実施形態では、表面領域は、97~99.5重量パーセントがアルファ-SiAlONである。表面領域はまた、一つ以上の金属酸化物および/または金属オキシ窒化物もさらに含んでもよい。表面領域の金属酸化物および金属オキシ窒化物は、アルミニウム、ケイ素、および周期表のIIIB族~VIB族の金属元素からなる群から選択される一つ以上の金属元素を含んでもよい。表面領域金属酸化物はまた、一つ以上のランタニド系列元素を含んでもよい。一部の実施形態では、例えば、表面領域は、アルファ-SiAlON、またはアルファ-SiAlONとベータ-SiAlONの混合物に加えて、アルミニウムイッテルビウムオキシ窒化ケイ素を含む。
【0041】
本明細書に記述される複合セラミック体は、表面領域に加えてバルク領域を備え、バルク領域は、アルファ-SiAlONとベータ-SiAlONとの混合物を含む。バルク領域は、本発明の目的と矛盾しない任意の量のアルファ-SiAlONおよびベータ-SiAlONを含むことができる。一部の実施形態では、バルク領域は、60重量パーセント超の量または70重量パーセント超の量でベータ-SiAlONを含む。バルク領域は、例えば、50~90重量パーセントのベータ-SiAlONを含むことができる。バルク領域は、一般的に、30重量パーセント未満の量でアルファ-SiAlONを含む。一部の実施形態では、バルク領域は、5~25重量パーセントの量でアルファ-SiAlONを含む。一部の実施形態では、バルク領域は、20重量パーセント未満の量で、または10重量パーセント未満の量でアルファ-SiAlONを含む。
【0042】
バルク領域はまた、ベータ-SiAlON相およびアルファ-SiAlON相に加えて添加物相も含むことができる。一部の実施形態では、添加物相は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物、金属オキシ窒化物、金属ホウ化物、またはそれらの混合物を含む。酸化物、窒化物、オキシ窒化物、ホウ化物、炭化物、および/または炭窒化物の金属元素は、アルミニウム、ケイ素、および周期表のIIIB族~VIB族の金属元素からなる群から選択することができる。添加物相の金属元素はまた、一つ以上のランタニド系列元素も含むことができる。一部の実施形態では、添加物相は、表IIIから選択される一つ以上の種を含む。
【0043】
【0044】
一部の実施形態では、添加物相は、アルファ-SiAlONとベータ-SiAlONとの粒界に存在する。他の実施形態では、添加物相の一つ以上の種は、アルファ-SiAlON、ベータ-SiAlON、または窒化ケイ素を有する固溶体を形成することができる。添加物相は、粒界の場所に存在し、そして一部の実施形態では、固溶体を形成することができる。添加物相は、本発明の目的と矛盾しない任意の量で、複合セラミック体中に存在することができる。添加物相は、例えば、一般的に、複合セラミック体の0.1~15重量パーセントの量で存在することができる。一部の実施形態では、添加物相は、表IVから選択される量で複合セラミック体中に存在する。
【0045】
【0046】
複合セラミック体の様々な相(例えば、アルファ-SiAlON、ベータ-SiAlON、添加物)の定量分析は、リートベルト法を使用して施行される。データは、ブラッグ回折計を使用して収集され、そして上記のように処理される。収集されたパターンにおけるすべての相が特定され、そして構造データが、リートベルト分析の各相に対して選択される。リートベルト分析の一貫性を保持するために、複合セラミック体のすべての分析に同じ構造データが使用される。使用される構造データは、ICDD PDF4 2015データベースから取り出される。バルクの相組成を決定するために、複合セラミック体の表面領域は、研削などの一つ以上の機械的処理によって除去することができる。表面領域の完全な除去を確実にするために、複合セラミック体を100μmの最小深さまで研削することができる。
【0047】
本明細書に記述される組成および構造を有する複合セラミック体は、少なくとも15.5GPaのビッカース硬度を呈する可能性がある。一部の実施形態では、複合セラミック体は、16~20GPaの硬度を有する。ビッカース硬度の値は、18.5kgの荷重を使用して測定される。本明細書に記述される複合セラミック体はまた、少なくとも4MPa・m0.5の破壊靭性(KIC)を呈してもよい。一部の実施形態では、複合セラミック体は、4.5~8MPa・m0.5または6~7.5MPa・m0.5の破壊靭性を有する。破壊靭性の値は、Evans and Charles, Fracture Toughness Determination by Indentation, J. American Ceramic Society, Vol. 59, Nos. 7-8, pp. 371-372に記載されるように、研磨した表面上でビッカース圧子上の18.5kgの負荷を使用するPalmqvist圧入技法を採用して決定される。
【0048】
複合セラミック体は、粉末窒化ケイ素(Si3N4)および表IIIに列挙された添加物構成要素のいずれかを含む任意の粉末添加物構成要素を提供することによって製造することができる。粉末構成要素を混合し、そして所望の幾何学的形状の圧粉体へとプレス加工する。混合した粉末組成物を、圧粉体へとプレス加工することは、一般的に、ポリエチレングリコールまたはパラフィンワックスなどの有機結合剤を含む。次いで、圧粉体を、窒素雰囲気下で45~90分の間、1800~1850℃の温度で焼結する。一部の実施形態では、焼結された圧粉を、1825-1875℃の温度で15分~1時間の間、熱間静水圧プレス(HIP)に供することができる。HIP中に加えられる圧力は、一般的に、10ksi~20ksiの範囲である。一部の実施形態では、HIPは、焼結プロセスの間に適用することができる。
【0049】
これらおよび他の実施形態は、以下の非限定的な実施例においてさらに例示される。
【実施例1】
【0050】
複合セラミック体
3重量パーセントのMgOと、3重量パーセントのY2O3と、残余のSi3N4を含む粉末混合物をプレス加工して、ANSI幾何形状CNMX334T0820SB4を有する圧粉にした。圧粉体を、窒素雰囲気下で1800℃で1時間の間、焼結し、その後アルゴン雰囲気下で1850℃で1時間の間、HIPした。結果として得られる焼結複合セラミック体は、5~20μmの厚さを有する表面領域を含み、そして少なくとも97重量パーセントのアルファ-SiAlONと、残りの部分はベータ-SiAlONを含む。表面領域は、焼結されたままの状態で250~300MPaの引張応力を呈した。追加的に、バルク領域は、70重量パーセント超の量のベータ-SiAlONと残りの部分はアルファ-SiAlON(17~20重量パーセント)および添加物相(5~7重量パーセント)を含んだ。焼結複合セラミック体は、15.9~16.5GPaのビッカース硬度と、6.6~7.2MPa・m0.5の破壊靭性を呈した。
【実施例2】
【0051】
金属切削試験
実施例1による複合セラミック体を、以下のパラメータに従って連続旋削試験に供した。同じツール幾何形状の比較焼結セラミック体も、連続旋削試験に供した。比較セラミック体は、100重量パーセントのベータ-SiAlONからなる。比較セラミック体は、15.4~15.6GPaのビッカース硬度、および5.6~6MPa・m0.5の破壊靭性を呈するグレードから調達された。
【0052】
旋削パラメータ
工作物:クラス30 GCI30チューブ(ODスケール付き)
速度:3000sfm
送り速度:0.012ipr
切削深さ:1.5mm
リード角:-5°
【0053】
連続旋削試験の結果を表Vに示す。
【0054】
【0055】
実施例1の複合セラミック体は、比較セラミック体と比較して、切削寿命が32%の増加を呈した。
【0056】
本発明の様々な実施形態が、本発明の様々な目的の達成として記述されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示に過ぎないことが認識されるべきである。当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、その多数の修正および適合が容易に明らかとなるであろう。
【国際調査報告】