(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】マルチチャネルマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
H03K 17/693 20060101AFI20230202BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H03K17/693 A
H03K17/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533153
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 US2020062768
(87)【国際公開番号】W WO2021113276
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】ナイティン アガワル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタ ラマナン アール
(72)【発明者】
【氏名】クナル スレシュ カランジカール
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX28
5J055BX03
5J055CX24
5J055DX22
5J055EX07
5J055EY21
5J055EY29
5J055EZ03
5J055EZ09
5J055EZ53
5J055GX01
(57)【要約】
回路(400)は、第1の入力ノード及び第1の出力ノードを有する第1のスイッチアセンブリ(111)と、第2の入力ノード及び第2の出力ノードを有する第2のスイッチアセンブリ(112)とを含む。この回路はさらに、第3のスイッチアセンブリ(430)、演算増幅器(130)、及びバッファ(410)を含む。第3のスイッチアセンブリ(430)は、第3の入力ノード及び第3の出力ノードを有する。第3の入力ノードは第2の出力ノードに結合され、第3の出力ノードは第1の出力ノードに結合される。バッファ(410)は、バッファ入力及びバッファ出力を有する。バッファ入力は、演算増幅器(130)の入力段に結合される。バッファ出力は、第3のスイッチアセンブリ(430)に結合される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路であって、
第1の入力ノード及び第1の出力ノードを有する第1のスイッチアセンブリと、
第2の入力ノード及び第2の出力ノードを有する第2のスイッチアセンブリと、
第3の入力ノード及び第3の出力ノードを有する第3のスイッチアセンブリであって、前記第3の入力ノードが前記第2の出力ノードに結合され、前記第3の出力ノードが前記第1の出力ノードに結合される、前記第3のスイッチアセンブリと、
入力段を有する演算増幅器と、
バッファ入力及びバッファ出力を有するバッファと、
を含み、
前記バッファ入力が前記演算増幅器の前記入力段に結合され、前記バッファ出力が前記第3のスイッチアセンブリに結合される、
回路。
【請求項2】
請求項1に記載の回路であって、前記バッファがユニティゲインバッファを含む、回路。
【請求項3】
請求項2に記載の回路であって、前記第3のスイッチアセンブリが、
第1のスイッチと、
中間ノードにおける前記第1のスイッチと前記第2の出力ノードとの間に結合される第2のスイッチと、
前記中間ノードと前記バッファ出力との間に結合される第3のスイッチと、
を含む、回路。
【請求項4】
請求項1に記載の回路であって、前記バッファが、
第1のバイアス電圧ノードに結合される第1のゲートを有する第1のトランジスタと、
第2のバイアス電圧ノードに結合される第2のゲートを有する第2のトランジスタと、
前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間に結合され、第3のゲートとドレインとを有する第3のトランジスタであって、前記第3のゲートが前記バッファ出力において前記ドレインに結合される前記第3のトランジスタと、
を含む、回路。
【請求項5】
請求項1に記載の回路であって、前記第3のスイッチアセンブリが、バルクと、ソースと、ドレインとを有する第1のトランジスタを含み、前記回路が、前記第1のトランジスタの前記バルクに結合されるバルクバイアス回路をさらに含む、回路。
【請求項6】
請求項5に記載の回路であって、前記第1のトランジスタがp型金属酸化物半導体電界効果トランジスタである、回路。
【請求項7】
請求項5に記載の回路であって、前記バルクバイアス回路が、
前記第3の入力ノード上の電圧が第1の電圧レベルを上回ることに応答して、前記第1のトランジスタの前記バルクを第1のバイアス電圧でバイアスし、
前記第3の入力ノード上の電圧が第2の電圧レベルを下回ることに応答して、前記第1のトランジスタの前記バルクを第2のバイアス電圧でバイアスする、
ように構成され、
前記第1の電圧レベルが前記第2の電圧レベルより大きく、前記第2のバイアス電圧が前記第1のバイアス電圧より小さい、回路。
【請求項8】
請求項5に記載の回路であって、
前記第3のスイッチアセンブリが、第1のゲート、第1のソース、第1のドレイン、及びバルクを有する第1のトランジスタを含み、
前記バルクバイアス回路が、
第2のゲート、第2のソース、及び第2のドレインを含む第2のトランジスタと、
第3のゲート、第3のソース、及び第3のドレインを含む第2のトランジスタと、
を含み、
前記第3のソースが前記第2のドレイン及び前記バルクに結合される、
回路。
【請求項9】
請求項8に記載の回路であって、前記第3のゲートが前記第1の出力ノードに結合される、回路。
【請求項10】
回路であって、
第1の入力ノード及び第1の出力ノードを有する第1のスイッチアセンブリと、
第2の入力ノード及び第2の出力ノードを有する第2のスイッチアセンブリと、
第3の入力ノード及び第3の出力ノードを有する第3のスイッチアセンブリであって、前記第3の入力ノードが前記第2の出力ノードに結合され、前記第3の出力ノードが前記第1の出力ノードに結合され、前記第3のスイッチアセンブリが、バルクを有する第1のトランジスタを含む、前記第3のスイッチアセンブリと、
入力段を有する演算増幅器であって、前記入力段が前記第1の出力ノードに結合されている、前記演算増幅器と、
前記第1のトランジスタの前記バルクに結合されるバルクバイアス回路と、
を含み、
前記バルクバイアス回路が、前記入力ノード上の電圧が第1の電圧レベルを上回ることに応答して前記第1のトランジスタの前記バルクを第1のバイアス電圧でバイアスし、前記入力ノード上の前記電圧が第2の電圧レベルを下回ることに応答して前記第1のトランジスタの前記バルクを第2のバイアス電圧でバイアスするように構成される、
回路。
【請求項11】
請求項10に記載の回路であって、前記第1の電圧レベルが前記第2の電圧レベルより大きく、前記第2のバイアス電圧が前記第1のバイアス電圧より小さい、回路。
【請求項12】
請求項10に記載の回路であって、
バッファ入力及びバッファ出力を有するバッファを更に含み、
前記バッファ入力が前記演算増幅器の前記入力段に結合され、前記バッファ出力が前記第3のスイッチアセンブリに結合される、回路。
【請求項13】
請求項12に記載の回路であって、前記バッファがユニティゲインバッファを含む、回路。
【請求項14】
請求項13に記載の回路であって、前記第3のスイッチアセンブリが、
第1のスイッチと、
中間ノードにおける前記第1のスイッチと前記第2の出力ノードとの間に結合される第2のスイッチと、
前記中間ノードと前記バッファ出力との間に結合される第3のスイッチと、
を含む、回路。
【請求項15】
請求項12に記載の回路であって、
前記バッファが、
第1のバイアス電圧ノードに結合される第1のゲートを有する第2のトランジスタと、
第3のゲートとドレインを有する第3のトランジスタと、
を含み、
前記第3のゲートが、前記第2のトランジスタに及び前記バッファ出力において前記ドレインに結合されている、
回路。
【請求項16】
回路であって、
第1の入力ノード及び第1の出力ノードを有する第1のスイッチアセンブリと、
第2の入力ノード及び第2の出力ノードを有する第2のスイッチアセンブリと、
第3の入力ノード及び第3の出力ノードを有する第3のスイッチアセンブリであって、前記第3の入力ノードが前記第2の出力ノードに結合され、前記第3の出力ノードが前記第1の出力ノードに結合され、前記第3のスイッチアセンブリが、バルクを有する第1のトランジスタを含む、前記第3のスイッチアセンブリと、
バッファ入力及びバッファ出力を有するバッファであって、前記バッファ入力が第1の出力ノードに結合され、前記バッファ出力が第3のスイッチアセンブリに結合される前記バッファと、
前記第1のトランジスタの前記バルクに結合されるバルクバイアス回路と、
を含み、
前記バルクバイアス回路が、前記入力ノード上の電圧が第1の電圧レベルを上回ることに応答して前記第1のトランジスタの前記バルクを第1のバイアス電圧でバイアスし、前記入力ノード上の前記電圧が第2の電圧レベルを下回ることに応答して前記第1のトランジスタの前記バルクを第2のバイアス電圧でバイアスするように構成される、
回路。
【請求項17】
請求項16に記載の回路であって、前記バッファがユニティゲインバッファを含む、回路。
【請求項18】
請求項16に記載の回路であって、前記バッファが、
第1のバイアス電圧ノードに結合される第1のゲートを有する第2のトランジスタと、
第3のゲートとドレインを有する第3のトランジスタと、
を含み、
前記第3のゲートが、前記第2のトランジスタに及び前記バッファ出力において前記ドレインに結合される、
回路。
【請求項19】
請求項16に記載の回路であって、前記第3のスイッチアセンブリが、
第1のトランジスタを含む第1のスイッチと、
中間ノードにおける前記第1のスイッチと前記第2の出力ノードとの間に結合される第2のスイッチと、
前記中間ノードと前記バッファ出力との間に結合される第3のスイッチと、
を含む、回路。
【請求項20】
請求項16に記載の回路であって、前記第1の電圧レベルが前記第2の電圧レベルより大きく、前記第2のバイアス電圧が前記第1のバイアス電圧より小さい、回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
応用例には、センサ処理システム及びマルチプレクサを含むものがある。マルチプレクサに1つ又は複数のセンサが結合され得る。センサは、マルチプレクサを介して処理システムに結合される。マルチプレクサは複数のチャネルを含み、各チャネルは潜在的に別個のセンサに結合される。処理システムは、1つのセンサからの信号を一度に処理する。複数チャネルの1つに結合される所与のセンサからの信号を受信して処理するために、マルチプレクサへの制御信号は、マルチプレクサの残りのチャネルをディセーブルする一方で、所望のセンサに対応するチャネルをイネーブルにする。
【発明の概要】
【0002】
一例では、回路が、第1、第2、及び第3のスイッチアセンブリ、バッファ、及びバルクバイアス回路を含む。第1のスイッチアセンブリは、第1の入力ノード及び第1の出力ノードを有する。第2のスイッチアセンブリは、第2の入力ノード及び第2の出力ノードを有する。第3のスイッチアセンブリは、第3の入力ノード及び第3の出力ノードを有する。第3の入力ノードは、第2の出力ノードに結合される。第3の出力ノードは、第1の出力ノードに結合される。第3のスイッチアセンブリは、バルクを含む第1のトランジスタを含む。バッファは、バッファ入力とバッファ出力を有する。バッファ入力は第1の出力ノードに結合され、バッファ出力は第3のスイッチアセンブリに結合される。バルクバイアス回路は、第1のトランジスタのバルクに結合される。バルクバイアス回路は、入力ノード上の電圧が第1の電圧レベルを上回ることに応答して第1のバイアス電圧で第1のトランジスタのバルクをバイアスし、入力ノード上の電圧が第2の電圧レベルを下回ることに応答して第2のバイアス電圧で第1のトランジスタのバルクをバイアスするように構成される。
【0003】
種々の例の詳細な説明のため、ここで、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【0005】
【
図2】マルチチャネルシステム内に含まれるスイッチの例示の実装を示す。
【0006】
【
図3】オフであるチャネルを介する漏れ電流を低減するためにバッファを含むマルチチャネルシステムの別の例を図示する。
【0007】
【
図4】オフであるチャネルを介する漏れ電流を低減するためにバッファを含むマルチチャネルシステムの別の例を図示する。
【0008】
【0009】
【
図6】マルチチャネルシステムの一部を含み、オフであるチャネルを介する漏れ電流を低減するためのバッファとバルクバイアス回路とを含む回路の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
マルチプレクサは、それぞれの入力から単一の出力にデータを渡すいくつかの独立したチャネルを含み得、感知応用例では、マルチプレクサは、入力に結合される1セットのセンサからのデータを、出力に結合されるプロセッサに渡すことができる。マルチプレクサコントローラからの制御信号は、チャネルの1つをイネーブルにし、一方、所与の時点でセンサ処理システムによって処理されることを意図しないセンサに対応するチャネルはディセーブルされる。マルチプレクサの各チャネルは、チャネルをイネーブル及びディセーブルするために用いられるソリッドステートスイッチ(トランジスタ)を含む。或るトランジスタが「オン」であるとき、そのトランジスタを介して電流が導通され得る。トランジスタが「オフ」であるとき、主要導電経路(例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタのチャネル)は、オフであり、概して電流は導通しない。ただし、トランジスタがオフであるとき、そのトランジスタを介して漏れ電流が導通する場合がある。
【0011】
多くの応用例では、トランジスタの漏れ電流は問題ではない。しかしながら、他の応用例において漏れ電流が問題となる場合がある。例えば、マルチプレクサを介して複数のセンサが処理システムに結合されている上述の応用例では、ディセーブルされているチャネルに対してトランジスタがオフである場合でも、漏れ電流がそのチャネルのトランジスタを介して依然として流れる可能性がある。そのチャネルに接続されているセンサの出力インピーダンスが大きい場合、そのセンサの大きな出力インピーダンスのために、わずかな漏れ電流でも、センサ全体にかなりの電圧が生じる可能性がある。ディセーブルされたチャネルにおいて望ましくなく生成された電圧は、そのチャネルがイネーブルされたセンサによって生成された電圧を改変(例えば、その電圧に追加)し得、それによって、処理されることが意図されたセンサ信号を望ましくなく変更し得る。
【0012】
本明細書に記載される例は、マルチプレクサの各チャネルが複数の金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSトランジスタ)を含むマルチプレクサに関する。マルチプレクサのチャネルの1つ又は複数が、そのMOSトランジスタのうちの少なくとも1つのMOSトランジスタのバルクをバイアスして、イネーブルされたチャネル上のセンサによって生成される低振幅電圧のためにさもなければ存在し得る漏れ電流を低減する。また、入力がマルチプレクサの出力に結合されているバッファが設けられる。バッファの出力は、マルチプレクサのチャネルの1つ又は複数に結合される。所与のチャネルがオフである場合、その所与のチャネルの内部ノードを接地するのではなく、内部ノードがバッファを介してマルチプレクサの出力電圧レベルに結合される。したがって、各「オフ」チャネルにおけるMOSトランジスタの両端のドレイン‐ソース間電位差は約0Vであり、そのため、トランジスタのドレインとソースとの間に漏れ電流が流れることがあったとしても、非常にわずかである。
【0013】
図1は、演算増幅器(「オペアンプ」)130に結合されるマルチプレクサ(「mux」)回路110を含むシステム100の一例を示す。マルチプレクサ回路110は複数チャネルを含む。この例では、マルチプレクサ回路110は、101、102、103、104、及び105で示される5つのチャネルを含む。各チャネルはそれぞれの入力に結合され、チャネル101~105の入力は、それぞれ、inp1、inp2、inp3、inp4、及びinp5で示される。各チャネル入力には、センサなどのデバイスを接続することができる。この例では、5つのセンサ(S1、S2、S3、S4、S5)を、マルチプレクサ回路110を介してオペアンプ130に結合することができる。(チャネル選択信号139に応答して)コントローラ140からマルチプレクサ回路110への制御信号を介して、一度に1つのチャネルがイネーブル(オン)され、残りの4つのチャネルがディセーブル(オフ)される。チャネルがイネーブルされたセンサからの信号は、マルチプレクサ回路110を介してノードN1に提供され、そのためオペアンプ130の非反転(+)入力に提供される。オペアンプ130は、その出力がその反転(-)入力に接続されており、そのためオペアンプ130は、ユニティゲインのために構成されている。オペアンプのその他の構成(利得が1より大きいなど)も可能である。オペアンプ130からの出力は、処理システム150に結合されてオペアンプの出力信号を処理する。処理システム150は、マイクロプロセッサ、フィルタ、又は他のタイプの処理エレクトロニクスを含み得る。
【0014】
マルチプレクサ回路110は、各チャネルのためのスイッチアセンブリを含む。チャネル101はスイッチアセンブリ111を有し、チャネル102~105は、それぞれ、スイッチアセンブリ112~115を有する。入力inp1は、スイッチアセンブリ111が「オン」であるときノードN1に結合され得る。同様に、入力inp2~inp5のいずれも、それぞれのスイッチアセンブリ111~115がオンであるときノードN1に結合され得る。ノードN1は、オペアンプの非反転入力に接続される。この例では、一度にスイッチアセンブリ111~115の1つのみがオンになり、残りのスイッチアセンブリはオフである。
【0015】
図1の例では、各スイッチアセンブリ111~115は、3つのスイッチS1、S2、及びS3を含む。S1及びS2は、それらに関連するチャネル入力とノードN1との間に直列に接続される。マルチプレクサコントローラ140は、スイッチアセンブリ111~115のスイッチS1~S3への制御信号を生成して、各それぞれのスイッチをオン又はオフにする。S1とS2との間のノードはノードN2と示される。各スイッチアセンブリのS3は、ノードN2と接地との間に結合される。S3がオンであるとき、それぞれのノードN2は接地電位に結合される。スイッチアセンブリをオンにし、それによってチャネルをイネーブルするために、そのスイッチS1及びS2はオンにされ、そのスイッチS3はオフにされる。スイッチアセンブリをオフにし、それによってチャネルをディセーブルするために、そのスイッチS1及びS2はオフにされ、そのスイッチS3はオンにされる。
図1の例に示されるように、スイッチアセンブリ111のS1及びS2はオンであり、対応するスイッチS3はオフである。残りの4つのスイッチアセンブリ112~115のS1及びS2はオフであり、それらのスイッチS3はオンである。このように、この例では、チャネル101はイネーブルされ、チャネル102~105はオフである。
【0016】
チャネルのスイッチアセンブリがオフ(そのS1及びS2がオフで、そのS3がオン)となるように構成されている場合でも、漏れ電流がS2を流れる可能性がある。オフスイッチアセンブリ112~115のS2を介する漏れ電流を表すために、
図1において漏れ電流Ileak1、Ileak2、Ileak3、及びIleak4が示されている。漏れ電流の理由の一部は、オンであるチャネル(この例ではチャネル101)がその入力inp1からスイッチアセンブリ111を介してノードN1に電圧を提供し、スイッチアセンブリ111~115の全てが、図示のようにノードN1に結合されるという事実に由来する。そのため、チャネル101からのノードN1上の電圧も、4つのオフスイッチアセンブリ112~115のS2の1つの端子に提供される。チャネル入力に接続されるセンサの出力インピーダンスは比較的高くする(例えば、数百メガオーム)ことができるので、少量の漏れ電流であっても、そのチャネルの出力インピーダンスにわたって電圧を生成し得る。オフチャネルからの漏れ電流に起因する電圧は、オンチャネルからセンサによって生成された電圧に付加的(又は漏れ電流の指示に応じて減算的)であり、そのためそのセンサの信号を歪ませる。
【0017】
図2は、スイッチアセンブリ111~115の各々のスイッチS2の例示の実装を示す。漏れ電流の理由は、
図2の記述を介して確認できる。
図2を参照すると、各スイッチアセンブリ111~115のS2は、n型MOSトランジスタMN1に結合されるp型MOSトランジスタMP1を含む。MP1及びMN1のドレインはノードN1で共に接続され、MP1及びMN1のソースはノードN2で共に接続される。MP1及びMN1のゲートは制御信号によって駆動されて、S2のトランジスタをオン及びオフにする。S2をオンにするには、MP1及びMN1の両方をオンにする。S2をオフにするには、MP1及びMN1の両方をオフにする。
図2に示されている例示の構成では、MN1のゲートは、低(例えば接地)制御信号によって駆動され、MP1のゲートは、高制御信号(供給電圧であるVddaとして示されている)によって駆動される。MN1のゲートを低に、MP1のゲートを高に駆動すると、MP1及びMN1の両方がオフになる。このように、
図2はS2についてオフ状態を示している。
【0018】
MOSトランジスタには寄生バルクダイオードがある。
図2は、MP1のドレイン‐バルク間ダイオードD1及びバルク‐ソース間ダイオードD2を示す。上述のように、ノードN1上の電圧は、スイッチアセンブリがオンであるセンサによって駆動される。
図2におけるS2は、オフであるスイッチアセンブリのS2スイッチを表す。Vinと表示された電圧は、オンである別のチャネル(例えば、チャネル101)のセンサからのノードN1上の電圧を表す。
図2におけるS2のノードN2は、それぞれのスイッチアセンブリのS3(これはオンである)を介して接地電位を受け取る。S2のMP1のバルクはVddaにバイアスされる。
【0019】
S2がオフであるとき、S2は複数の漏れ電流源を有する。第1に、Vinが0Vである場合(例えば、オンチャネル101に結合されるセンサからの電圧)、D1は逆バイアスされ、それによって、電流Ib1がDlを介して流れる。したがって、漏れ電流Ileak(Vinが低であるとき、例えば0V)は、-Ib1+Idsnに等しい(IdsnはMN1を介する漏れ電流である)。しかし、IdsnはIb1よりも実質的に小さくてもよく、そのため、Ileakは-Ib1にほぼ等しい。第2に、Vinがより高い(例えば、Vdda)場合、Ileakは、MP1及びMN1のドレイン‐ソース漏れ電流の合計(Idsp+Idsn)に等しい。Idsp及びIdsnの両方はVinに比例する(例えば、Vinが大きいほど、Idsp及びIdsnが大きくなる)。本明細書に記載される幾つかの例は、そのようなスイッチアセンブリがオフである場合、バルクバイアス回路610(
図6)及びバッファ(例えば、
図3におけるバッファ310及び
図4におけるバッファ410)の使用によって、スイッチアセンブリのS2を介する漏れ電流Ileakを低減する。
【0020】
図3は、マルチプレクサ回路110と、オペアンプ130と、バッファ310とを含むシステム300の例を示す。センサS1~S5、マルチプレクサコントローラ140、及び処理システム150は、簡略化のために図示していない。システム300のアーキテクチャは、バッファ310を含むことを除いて、
図1のシステム100のアーキテクチャとほぼ同じである。
図1のシステムでは、各スイッチS3が、それぞれのノードN2と接地との間に結合されている。
図1においてS3がオンであるとき、それぞれのノードN2は接地される。ノードN2を接地することは、ノードN1が接地に対して十分に高い電圧であるとき、S2のMP1及びMN1トランジスタを介する漏れ電流をもたらす。
図3のバッファ310は、ノードN1と、ノードN3におけるスイッチアセンブリ112~115のスイッチS3との間に結合される。バッファ310はユニティゲインのために構成され、そのため、バッファの出力電圧(ノードN3)はその入力電圧(ノードN1)に等しい。N1上の電圧は、スイッチアセンブリがオンであるセンサによって生成される電圧にほぼ等しい(
図3の例ではスイッチアセンブリ111)。このように、N3上の電圧もN1上の電圧に等しい。
【0021】
図2の例では、S3がオンになるとN2は接地に結合される。N2を接地することによって、MP1及びMN1の両端には、十分に大きいドレイン‐ソース電圧が発生し、漏れ電流Idsp及びIdsnがMP1及びMN1を介して流れるようになる。
図3において、スイッチアセンブリ112~115におけるN2を接地させる代わりに、N2は、N1上の電圧とほぼ同じ電圧を有するN3に結合される。そのようにして、はるかに低いドレイン‐ソース間電圧(およそ0V)が、スイッチアセンブリ112~115のS2についてのMP1及びMN1を横切って生成される。有利なことに、チャネル101がイネーブルされ、チャネル102~105がディセーブルされるとき、Vinが0Vより著しく大きいとき(イネーブルされたチャネル101の使用によって引き起こされ得るように)バッファ310の使用によって、スイッチアセンブリ112~115のS2のMP1及びMN1を介する漏れ電流がはるかに少なくなる。
【0022】
バッファ310はスイッチアセンブリ112、113、114、及び115の全てのスイッチS3を駆動するので、バッファ310は、スイッチアセンブリ112、113、114、及び115の全ての4つのスイッチS3に給電するのに十分な大きさになるようなサイズとされる。
【0023】
図4は、マルチプレクサ回路402と、オペアンプ130と、バッファ410と、スイッチアセンブリ430と、スイッチS4とを含む例示のシステム400を示す。センサS1~S5、マルチプレクサコントローラ140、及び処理システム150は、簡略化のために図示していない。マルチプレクサ回路402は、上述したマルチプレクサ回路110のアーキテクチャに類似したアーキテクチャを有する。マルチプレクサ回路402は、スイッチアセンブリ111~115を含む。スイッチアセンブリ112~115のすべてのスイッチS2を相互接続するノードは、
図4においてN4で示されている。スイッチアセンブリ430は、ノードN4とバッファ410の出力との間に結合される。スイッチアセンブリ430は、スイッチアセンブリ111~115のものと同様のアーキテクチャを有する。スイッチアセンブリ430は、図示のように、スイッチS5、S6、及びS7を含む。スイッチS5及びS6は、ノードN1とN4との間に直列に結合される。S5とS6との間のノードは、中間ノード(INT)と示されている。S7は、INTとバッファ410の出力との間に結合される。
【0024】
バッファ410は、その入力電圧(ノードN1上の電圧)にほぼ等しい出力電圧を生成する。
図4におけるバッファ410は、スイッチアセンブリ112~115を直接駆動するのではなく、スイッチアセンブリ430を駆動する。1つのスイッチアセンブリ430を駆動する結果、バッファ410は、より低い出力電流要求を有することができ、そのため、
図3のバッファ310より小さくすることができる。
【0025】
スイッチアセンブリ111がオンにされるとき(
図4の例の場合と同様に)、スイッチアセンブリ112~115及び430はオフにされ、スイッチS4はオンにされる。S4は、ノードN4と接地との間に結合される。S4をオンにすることによって、ノードN4は接地される。スイッチアセンブリ111がイネーブルされ、スイッチアセンブリ112~115、430がオフであるとき、漏れ電流は、スイッチアセンブリ112~115、並びに430を介してほとんど流れないか又はまったく流れない。バッファ410は、バッファ310に関して上述したように、その漏れ電流を減少させるためにスイッチアセンブリ430に同じ利点を提供する。inp2~inp4のいずれかを用いる場合、その特定の入力のスイッチアセンブリがオンにされ、スイッチアセンブリ111~115のうちの残りのスイッチアセンブリ、並びにS4がオフにされ、スイッチアセンブリ430がオンにされる。
【0026】
図5は、オペアンプ130の入力段510に結合されるバッファ410(又は310)の例示の実装を示す。入力段510は、トランジスタM1~M5を含む。この例の入力段では、M1、M2、M5はPMOSトランジスタであり、M3、M4はNMOSトランジスタである。M5は電流源デバイスであり、そのゲートはBIAS1と記される電圧でバイアスされ、テール電流Itailを生成する。M1及びM2は、差動トランジスタ対を含む。M1及びM2のソースは共にM5のドレインに接続される。オペアンプ130の正(+)入力は、M1のゲートに結合され、IN_Pと示される。オペアンプ130の負(-)入力は、M2のゲートに結合され、IN_Mと示される。トランジスタM3及びM4のゲートは、BIAS2と記される電圧でバイアスされる。
【0027】
バッファ410は、トランジスタM6、M7、及びM8を含む。この例では、M6及びM8はPMOSトランジスタを含み、M7はNMOSトランジスタを含む。M8のゲートにはBIAS3と表記される電圧がバイアスされており、M8のソースは供給電圧Vddaに接続されている。一例では、BIAS3はBIAS1に等しい。M8のドレインは、M6のソース及びノードN5に接続される。そのようにして、M8のドレイン及びM6のソースは、ノードN5でオペアンプ入力段510に接続される。M6及びM7のドレインは共に、ノードN6でM6のゲートに接続される。ノードN6はバッファ410の出力を表し、これは
図3のノードN3に接続され、バッファ410の場合、
図4でスイッチアセンブリ430のスイッチS3に接続される。M7のゲートはBIAS4と表記される電圧でバイアスされ、M7のソースは接地に接続される。一例では、BIAS4はBIAS2に等しい。
【0028】
M8を流れる電流はI1と記されている。電流I1は、或る程度、M8の大きさ(そのチャネル幅(W)とチャネル長(L)の比)とM8のゲートソース電圧(Vgs)との関数である。M8のソースはVddaに結合され、M8のゲートはBIAS3である。このように、BIAS3、及びM8のチャネル幅と長さの比が、電流I1の大きさを規定する。BIAS3がBIAS1に等しい場合、M8のW/LがM5の16分の1W/Lであれば、I1はItailの16分の1となる。一例では、BIAS3、及びM8のチャネル幅と長さの比が、Itailの大きさの16分の1であるI1の大きさをもたらし、その割合は他の例では16分の1と異なっていてよい。さらに、M6の長さに対するチャネル幅の比は、M1又はM2の長さに対するチャネル幅の比の8分の1である(それら自体は等しいサイズである)。M1、M2、及びM6のソースはノードN5で共に接続される。M6を流れる電流密度は、M1及びM2の電流密度と同じである。したがって、M6を介するI1はItailの16分の1であるが、M6のW/Lは、M1又はM2のW/Lの8分の1である。
図4に示すように、オペアンプ130の出力がその負の入力(IN_M)に接続されているので、IN_Pは概してIN_Mに等しいままである。M6のソース電圧はM1及びM2のソース電圧に等しく、電流密度は同じであるため、M6のゲート電圧は、それぞれ、M1及びM2のゲート電圧IN_P又はIN_Mに等しくなる。このように、ノードN6上のバッファ410の出力電圧はIN_Pにほぼ等しくなる。
【0029】
図2に関して上述したように、Vinが比較的低い電圧であるとき、MP1トランジスタのバルクが供給電圧(Vdda)でバイアスされる場合、スイッチアセンブリ112~115のスイッチS2のドレイン‐バルク寄生ダイオードD1は逆バイアスされ、それによって、そのようなスイッチS2の各々を介して漏れ電流が流れる。
【0030】
図6はVinが低電圧であるとき、スイッチS2のPMOSトランジスタのバルクがVddaより低い電圧でバイアスされるシステム600を示す。
【0031】
図6における例示のシステム600は、オペアンプ130の入力段510と、バッファ410と、バルクバイアス回路610と、スイッチS1、S2、及びS4と、スイッチアセンブリ430とを含む。バッファ410におけるISRC1は
図5におけるM8を表す。この例では、スイッチアセンブリ430のスイッチS6がトランジスタM10及びM11を含む。また、スイッチS5はトランジスタM12及びM13を含む。スイッチアセンブリ430は、そのオフ状態で示され、そのためスイッチS7はオンである。S7はその記号形式で示されている。幾つかの実装において、S7は単一のトランジスタ又は一対のPMOS/NMOSトランジスタを含む。M10及びM12はPMOSトランジスタを含み、M11及びM13はNMOSトランジスタを含む。M10及びM11のソースは、共に接続されており、オペアンプの入力段510のIN_P入力(M1のゲート)に接続する。M10及びM11のドレインは、ノードINTで共に接続されている。S7は、その閉(オン)状態で示されており、INTをバッファ410(ノードN6)の出力に結合する。M12及びM13のソースもINTに接続されている。M12及びM13のドレインは、
図4に示すように、スイッチアセンブリ112~115に提供されるノードN4で共に接続される。スイッチS4は、ノードN4と接地との間に結合され、スイッチアセンブリ430がオフであるときに閉じられる(オン)。スイッチアセンブリ430がオフであるときS5及びS6はオフである。S5及びS6がオフになるために、PMOSトランジスタM10及びM12のゲートには、図示のような供給電圧(Vdda)が提供され、NMOSトランジスタM11及びM13には、図示のような接地電圧が提供される。
【0032】
S1はトランジスタM14及びM15を含み、S2は、トランジスタM16及びM17を含む。この例では、M14及びM16はPMOSトランジスタを含み、M15及びM17はNMOSトランジスタを含む。M15及びM16のドレインは、チャネル101の入力inp1で共に接続されている。M16及びM17のソースは、オペアンプの入力段510内のM1のゲートが接続されているノードN1で共に接続されている。
図6の構成はスイッチアセンブリ111のオン状態を図示し、そのため、PMOSトランジスタM14及びM16のゲートは、M14及びM1、6をオンにするために接地され、NMOSトランジスタM15及びM17のゲートは、M15及びM17をオンにするために供給電圧Vddaを受け取る。また、スイッチアセンブリ111のスイッチS3(
図4)はオフにされ、そのためノードN2は接地にプルされない。S3は
図5には示されていない。
【0033】
例示のバルクバイアス回路610は、トランジスタM18及びM19を含む。この実装では、M18及びM19はPMOSトランジスタである。M18のソースはVddaに接続され、M18のドレインはノードN7でM19のソースに接続される。M19のドレインは接地に接続されている。M19のバルクは、M19のソースに接続される。M19がソースフォロワとして構成される場合、電流I2がVddaからM18及びM19を介して接地に分岐して流れる。M19のソース上の電圧は、M19のゲート電圧よりも1閾値電圧(約1V)高くなる。M19のゲート上の信号はノードN1上の電圧である。スイッチアセンブリ111がオン(S1及びS2がオン)であり、かつinp1上の電圧が低であるとき、N1上の電圧は低くなり、電流I2がM19を介して流れ、その結果、M19のソース上の電圧は、そのゲート電圧(N1)より約1V大きい。ノードN7は、オペアンプの入力段内のM1及びM2のバルク、並びにスイッチS6内のM10のバルク、並びにスイッチアセンブリ111内のS2のM16のバルクに結合される。他のスイッチアセンブリ112~115のS2のPMOSトランジスタの対応するバルクも、同様にノードN7に結合され得る。ノードN7上の電圧は、M1、M2、及びM10のバルクをバイアスするために用いられる。入力inp1がM10をオンするように十分低い場合、ノードN7上の電圧はinp1上の電圧より約1V上までプルダウンされ、そのため、M1、M2、及びM10のバルクは、Vddaよりもはるかに低い電圧(例えば1V)にバイアスされる。M10のバルクをVddaよりも実質的に低い電圧にバイアスすると、M10のバルク‐ソース寄生ダイオードD3は、M10のバルクをVddaにバイアスした場合よりもずっと0Vに近い電圧でバイアスされることになる。D3を0V又は比較的小さな電圧にバイアスした場合、D3を介する漏れ電流は、D3をより大きな電圧でバイアスした場合よりもはるかに小さくなる。スイッチアセンブリ430内のPMOSM10のバルクを、inp1上の電圧が小さいとき(inp1がより大きな電圧を有するときよりも)より低い電圧にバイアスすることによって、スイッチアセンブリ430を介する漏れ電流は、VddaでM10のバルクを永続的にバイアスする場合と比較して低減される。
【0034】
「結合する」という用語は、本明細書を通して用いられている。この用語は、本明細書の説明と一貫した機能的関係を可能にする接続、通信、又は信号経路を網羅し得る。例えば、デバイスAが或る行為を行なうためにデバイスBを制御するための信号を生成する場合、第1の例において、デバイスAはデバイスBに結合されるか、又は第2の例において、介在構成要素CがデバイスAとデバイスBとの間の機能関係を実質的に変化させない場合にデバイスBがデバイスAによって生成される制御信号を介してデバイスAによって制御されるように、デバイスAは介在構成要素Cを介してデバイスBに結合される。
【国際調査報告】