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2023-505492TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド
<図1>
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図1
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図2
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図3
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図4
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図5
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図6
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図7
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図8
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図9
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図10
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図11
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図12
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図13
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図14
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図15
  • -TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド 図16
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】TNFαおよびIL-23を標的化する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230202BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230202BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230202BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P37/06
A61P29/00
A61P19/02
A61P17/06
A61P17/00 101
A61P1/04
C07K16/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533410
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2020084430
(87)【国際公開番号】W WO2021110816
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/944,619
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20305056.2
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20000090.9
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20305216.2
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517123807
【氏名又は名称】アブリンクス・エヌ・フェー
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ハイディ・ロメラエレ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・アスブラント
(72)【発明者】
【氏名】アン・ブリジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジーグリット・コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】エリク・ローレン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB17
4C085CC23
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本技術は、新規の種類の薬物を提供することを目的とする。特に、本技術は、少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、少なくとも1つのISVDがTNFαに結合し、少なくとも2つのISVDがIL-23に結合することを特徴とする、ポリペプチドを提供する。本技術はまた、核酸、ベクターおよび組成物を提供する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬としての使用のためのポリペプチド、該ポリペプチドを含む組成物、または該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物であって、該ポリペプチドはTNFαおよびIL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、該ポリペプチドは少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含みまたはからなり、前記ISVDの各々は、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み;
a)第1のISVDは、
i.配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
b)第2のISVDは、
iv.配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
c)第3のISVDは、
vii.配列番号9のアミノ酸配列または配列番号9と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
viii.配列番号13のアミノ酸配列または配列番号13と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
ix.配列番号17のアミノ酸配列または配列番号17と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含む、
前記使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【請求項2】
a)前期第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%より高い配列同一性を含み;
b)前記第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%より高い配列同一性を含み;
c)前記第3のISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%より高い配列同一性を含む、
請求項1に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【請求項3】
a)前記第1のISVDは配列番号2のアミノ酸配列からなり;
b)前記第2のISVDは配列番号3のアミノ酸配列からなり;
c)前記第3のISVDは配列番号5のアミノ酸配列からなる、
請求項1または2に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、
i.配列番号8のアミノ酸配列または配列番号8と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列または配列番号16と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むヒト血清アルブミンに結合するISVDをさらに含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【請求項5】
ヒト血清アルブミンに結合する前記ISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%より高い配列同一性を含む、請求項4に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【請求項6】
該ポリペプチドは配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはからなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【請求項7】
自己免疫または炎症性疾患の処置における使用のための、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【請求項8】
自己免疫または炎症性疾患は、(クローン病または潰瘍性大腸炎のような)炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎および化膿性汗腺炎から選択される、請求項7に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【請求項9】
ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含みまたはからなり、前記ISVDの各々は、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み;
a)第1のISVDは、
i.配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
b)第2のISVDは、
iv.配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
c)第3のISVDは、
vii.配列番号9のアミノ酸配列または配列番号9と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
viii.配列番号13のアミノ酸配列または配列番号13と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
ix.配列番号17のアミノ酸配列または配列番号17と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含む、
前記ポリペプチド。
【請求項10】
a)前記第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%より高い配列同一性を含み;
b)前記第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%より高い配列同一性を含み;
c)前記第3のISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%より高い配列同一性を含む、
請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
a)前記第1のISVDは配列番号2のアミノ酸配列からなり;
b)前記第2のISVDは配列番号3のアミノ酸配列からなり;
c)前記第3のISVDは配列番号5のアミノ酸配列からなる、
請求項9または10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
i.配列番号8のアミノ酸配列または配列番号8と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列または配列番号16と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むヒト血清アルブミンに結合するISVDをさらに含む、
請求項9~11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
ヒト血清アルブミンに結合する前記ISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%より高い配列同一性を含む、請求項12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはからなる、請求項9~13のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸を含む宿主または宿主細胞。
【請求項17】
請求項9~14のいずれか1項に記載のポリペプチドを製造する方法であって、少なくとも、
a)好適な宿主細胞もしくは宿主生物中または別の好適な発現系中で、請求項15に記載の核酸を発現させる工程;場合によりこれに続いて:
b)請求項9~14のいずれか1項に記載のポリペプチドを単離および/または精製する工程
を含む、前記方法。
【請求項18】
少なくとも1つの請求項9~14のいずれか1項に記載のポリペプチド、または請求項15に記載の核酸を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 本技術の分野
本技術は、TNFαおよびIL-23のp19サブユニットを標的化するポリペプチドに関する。本技術はまた、該ポリペプチドをコードする核酸分子および該核酸を含むベクター、ならびにこれらのポリペプチド、核酸またはベクターを含む組成物に関する。本技術はさらに、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎または化膿性汗腺炎を患う対象を処置する方法における使用のためのこれらの製造物に関する。さらに、本技術は、これらの製造物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2 技術的背景
自己免疫または炎症性疾患は、それ自身の組織に対して身体により生成される免疫応答の結果である。自己免疫または炎症性疾患は多くの場合に慢性であり、生命を脅かすものでさえあり得る。多くの中でも、自己免疫または炎症性疾患としては、炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎ならびに化膿性汗腺炎が挙げられる。炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎は、腸炎症および随伴的な上皮傷害を伴う慢性炎症性疾患である。他の慢性自己免疫疾患、例えば乾癬、乾癬性関節炎および化膿性汗腺炎は、赤い、乾燥した、痒いまたは鱗状の皮膚の斑点、関節の有痛性の炎症または皮膚上の炎症して腫れた塊により特徴付けられる。乾癬を患う患者は、糖尿病および炎症性腸疾患、例えばクローン病または潰瘍性大腸炎、およびがんを含めて、ある特定の併存症を有する可能性がより高いことが見出されている。
【0003】
インターロイキン23(IL-23)は、慢性炎症の誘導の間の様々な免疫細胞の活性化において重要なサイトカインである。IL-23は、サイトカインIL-6、IL-17、GM-CSFおよびIL-22の上流調節因子であり、p40サブユニット(p40サブユニットはサイトカインIL-12と共有され、IL-12ベータサブユニットとも呼ばれる)に共有結合的に連結したp19サブユニット(本明細書においてIL-23p19と称されることもあるIL-23アルファサブユニット)からなるヘテロ二量体である。追加的に、IL-23は、T細胞炎症性免疫応答の他に、自然リンパ球の炎症活性の調節において重要な役割を果たす。IL-23は、炎症性腸疾患および他の自己免疫疾患を含む炎症性疾患と結び付けられている。
【0004】
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)は、主に単球およびマクロファージにより産生されるが、CD4およびCD8末梢血Tリンパ球により分泌されることも公知のホモ三量体サイトカインである。TNFαは、可溶性形態または膜貫通タンパク質として存在することができる。TNFαの主要な役割は免疫細胞の調節にある。TNFαは内因性パイロジェンとして作用し、その産生の調節異常は、炎症性腸疾患および他の自己免疫疾患、例えば乾癬を含む様々なヒト疾患に結び付けられている。
【0005】
FDAにより現在承認されている炎症性腸疾患に対する処置としては、抗TNFα生物学的製剤(例えばSimponi(登録商標)[ゴリムマブ]、Enbrel(登録商標)[エタネルセプト]、Remicade(登録商標)[インフリキシマブ]およびHumira(登録商標)[アダリムマブ])が挙げられる。しかしながら、炎症性腸疾患に対する現行の抗TNFα処置は、大きいパーセンテージの患者が、現在利用可能な処置に対して非応答性であるということに直面しており、抗TNFα処置に対する応答の喪失が、12か月の処置後の患者の高いパーセンテージにおいて起こる。
【0006】
乾癬および乾癬性関節炎について、患者の少数のみが、生物学的製剤(REMICADE(登録商標)[インフリキシマブ]およびHUMIRA(登録商標)[アダリムマブ]の他に、サイトカインIL-12およびIL-23の共有されたp40サブユニットを標的化するSTELARA(登録商標)[ウステキヌマブ]を含む)で処置される。IL-23を標的化するさらなる抗体処置が開発途上であり、これには、グセルクマブ(Tremfya;乾癬において承認されており、炎症性腸疾患および乾癬性関節炎について臨床試験フェーズ3にある)ならびにリサンキズマブ(Skyrizi;乾癬において承認されており、乾癬性関節炎およびクローン病について臨床試験フェーズ3にある)が含まれる。p19標的化抗IL-23抗体のクラスは、乾癬における何らかの疾患抑制性の効能を付与し得るが、異なるおよび/または追加の自己免疫疾患を有する患者は、それらの処置から必ずしも同じ程度まで利益を得ない。例えば乾癬性関節炎において、抗IL23での処置は、炎症した関節の応答を改善しない。炎症性腸疾患において、患者の半数より多くは、TNF阻害剤に対して応答しないか、または応答を喪失する。同じことが化膿性汗腺炎に当てはまり、化膿性汗腺炎に対する唯一のこれまでに承認された処置はHUMIRA(登録商標)[アダリムマブ]であるが、患者の約50%しか応答しない。
【0007】
複数の疾患因子の標的化は、例えば、2つの別々の生物学的製剤、例えば異なる治療標的に結合する抗体の併用投与または組合せ使用により達成することができる。しかしながら、別々の生物学的製剤の併用投与または組合せ使用は、実際的観点および商業的観点の両方から、困難であり得る。例えば、別々の製造物の2つの注射は、患者にとってより不便かつより有痛性の処置レジームを結果としてもたらし、遵守に負に影響し得る。2つの別々の製造物の単一の注射に関して、両方の製造物の要求される濃度および好適な安定性で許容される粘度を可能とする製剤を提供することは困難または不可能であり得る。追加的に、併用投与および併用製剤は、2つの別々の薬物の製造を要求し、これは全体的なコストを増加させ得る。
【0008】
2つの異なる抗原に結合できる二特異性抗体は、別々の生物学的製剤、例えば抗体の併用投与または組合せ使用に関連するそのような制限に対処するための1つの戦略として示唆されている。
【0009】
二特異性抗体構築物が複数のフォーマットで提案されている。例えば、二特異性抗体フォーマットは、2つの抗体またはその断片の化学的共役を伴い得る(非特許文献1;非特許文献2)。ある特定のフォーマットで、特異的な抗原に結合する単鎖Fv(scFv)断片が、別々の抗原に結合するIgG抗体に連結される(例えば、抗TNFα/抗IL-23 IgG-scFv二特異性抗体を記載する特許文献1)。特許文献2は、重鎖および軽鎖可変領域の1つのペアがTNFαを標的化し、重鎖および軽鎖可変領域の他のペアがIL-23を標的化するヘテロ二量体IgG抗体を記載する。
【0010】
そのような二特異性抗体フォーマットの欠点としては、しかしながら、高濃度での高い粘度が挙げられ、これは例えば皮下投与を困難とし、また各結合単位は、特異的かつ高い親和性の結合のために2つの可変ドメインの相互作用を要求し、これはポリペプチド安定性および製造の効率に対する含意を含む。そのような二特異性抗体フォーマットはまた、軽鎖の誤対合または重鎖の誤対合に関する化学、製造および品質管理(CMC)の問題に潜在的に繋がり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2016/073406
【特許文献2】WO2019/027780
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Brennan, Mら、Science、1985.229(4708):第81~83頁
【非特許文献2】Glennie, M.J.ら、J Immunol、1987.139(7):第2367~2375頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
3 本技術の要約
一部の実施形態において、本技術は、TNFαおよびIL-23を特異的に標的化するポリペプチドまたは構築物に関する。TNFαおよびIL-23を同時に標的化することは、単一特異性抗TNFαまたは抗IL-23ポリペプチドと比較して炎症応答をモジュレートする効率の増加に繋がる。
【0014】
TNFαおよびIL-23(例えばヒトおよびカニクイザルTNFαおよびIL-23)に対して非常に強力であることが示された上記ポリペプチドは、(例えば微生物宿主、例えばピキア属、例えばP.パストリス(P.pastoris)において)効率的に製造することができ、高い濃度で低い粘度を示したが、これは皮下投与のために有利かつ好都合である。さらには、そのようなポリペプチドは、処置されるべき対象における既存の抗体(すなわち抗体構築物での最初の処置の前に対象中に存在する抗体)に対して制限された反応性を有することを示すことができた。他の実施形態において、そのようなポリペプチドは、処置されるべき対象において連続する処置を好都合に間隔を空けることができるように十分に長い半減期を呈する。
【0015】
本技術のポリペプチドは、少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含みまたはからなり、少なくとも1つのISVDはTNFαに特異的に結合し、少なくとも2つのISVDはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する。1つの実施形態において、TNFαに結合する少なくとも1つのISVDはヒトTNFαに特異的に結合し、IL-23に結合する少なくとも2つのISVDはヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する。
【0016】
1つの実施形態において、ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含み、上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有しない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する。例えば、結合単位は、(ヒト)血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンに結合するISVDであり得る。
【0017】
本技術のポリペプチドを発現する能力を有する核酸分子、該核酸を含むベクター、およびこれらのポリペプチド、核酸またはベクターを含む組成物もまた提供される。
【0018】
本技術のポリペプチド、該ポリペプチドを含む組成物、および該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物は、医薬として使用することができる。医薬としての使用のためのポリペプチドは、少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含みまたはからなり、上記ISVDの各々は、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み;
a)第1のISVDは、
i.配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
b)第2のISVDは、
iv.配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
c)第3のISVDは、
vii.配列番号9のアミノ酸配列または配列番号9と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
viii.配列番号13のアミノ酸配列または配列番号13と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
ix.配列番号17のアミノ酸配列または配列番号17と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
ISVDは、N末端から開始する順序である。
【0019】
本技術の組成物は、医薬としての使用のためのものである。組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤および/またはアジュバントをさらに含み、場合により1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に活性のポリペプチドおよび/または化合物を含む医薬組成物であり得る。
【0020】
そのようなポリペプチド(場合により組成物中に存在するまたは場合により核酸によりコードされる)は、少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含みまたはからなり、上記ISVDの各々は、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み;
a)第1のISVDは、
i.配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
b)第2のISVDは、
iv.配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
vi.配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
c)第3のISVDは、
vii.配列番号9のアミノ酸配列または配列番号9と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
viii.配列番号13のアミノ酸配列または配列番号13と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
ix.配列番号17のアミノ酸配列または配列番号17と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
ISVDは、N末端から開始する順序である。
【0021】
1つの実施形態において、ポリペプチドはTNFαおよびIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する。1つの実施形態において、ポリペプチドはヒトTNFαおよびヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する。1つの実施形態において、ポリペプチド中に存在する第1のISVDはTNFαに特異的に結合し、ポリペプチド中に存在する第2および第3のISVDはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する。1つの実施形態において、ポリペプチド中に存在する第1のISVDはヒトTNFαに特異的に結合し、ポリペプチド中に存在する第2および第3のISVDはヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する。
【0022】
本技術のポリペプチドは:
a)配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含む第1のISVD;
b)配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含む第2のISVD;ならびに
c)配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む第3のISVD
を含んでもよい。
【0023】
本技術のポリペプチドは:
a)配列番号2と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含むアミノ酸配列を有する第1のISVD;
b)配列番号3と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含むアミノ酸配列を有する第2のISVD;および
c)配列番号5と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含むアミノ酸配列を有する第3のISVD
を含んでもよい。
【0024】
本技術のポリペプチドは:
a)配列番号2のアミノ酸配列を含む第1のISVD;
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む第2のISVD;および
c)配列番号5のアミノ酸配列を含む第3のISVD
を含んでもよい。
【0025】
本技術のポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含んでもよく、上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有しない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する。増加した半減期を有するポリペプチドを提供する上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはその断片、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小さいタンパク質またはペプチドからなる群から選択することができる。増加した半減期を有するポリペプチドを提供する結合単位は、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)または血清免疫グロブリン(例えばIgG)、例えばヒト血清アルブミンに結合することができる結合単位からなる群から選択することができる。
【0026】
本技術のポリペプチドは:
i.配列番号8のアミノ酸配列または配列番号8と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列または配列番号16と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含む、ヒト血清アルブミンに結合するISVDを含んでもよい。
【0027】
1つの実施形態において、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含む。1つの実施形態において、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号4と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含む。1つの実施形態において、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは配列番号4のアミノ酸配列を含むまたはからなる。
【0028】
ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、本技術のポリペプチド中の任意の位置(すなわちN末端、2つのビルディングブロックの間、またはC末端)に配置することができる。1つの実施形態において、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、IL-23のp19サブユニットに特異的に結合する第2および第3のISVDの間に配置される。
【0029】
本技術のポリペプチドは、配列番号1と90%より高い(例えば95%)の配列同一性を含むアミノ酸配列を含んでもよい。1つの実施形態において、本技術のポリペプチドは配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはからなる。
【0030】
本技術のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸もまた提供される。
【0031】
そのような核酸を含む宿主または宿主細胞もまた提供される。
【0032】
本技術のポリペプチドを製造する方法もまた提供され、上記方法は、少なくとも:
a)好適な宿主細胞もしくは宿主生物中または別の好適な発現系中で、本技術のポリペプチドをコードする核酸を発現させる工程;場合によりこれに続いて:
b)ポリペプチドを単離および/または精製する工程
を含む。
【0033】
少なくとも1つの本技術のポリペプチド、または本技術のポリペプチドをコードする核酸を含む組成物もまた提供される。組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤および/またはアジュバントをさらに含み、場合により1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に活性のポリペプチドおよび/または化合物を含む医薬組成物であってもよい。
【0034】
本技術のポリペプチドは、処置において使用することができる。より特には、本技術のポリペプチドは、自己免疫または炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎ならびに化膿性汗腺炎から選択される疾患の処置において使用することができる。
【0035】
よって、本技術はまた、自己免疫または炎症性疾患を処置する方法を包含する。一部の実施形態において、本技術は、炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎ならびに化膿性汗腺炎から選択される疾患を処置する方法を包含し、上記方法は、それを必要とする対象に、薬学的に活性の量の本技術のポリペプチド、本技術のポリペプチドをコードする核酸またはそれを含む組成物を投与することを含む。
【0036】
よって、本技術はまた、自己免疫または炎症性疾患を処置するための医薬組成物の製造における本技術のポリペプチドの使用を包含する。一部の実施形態において、本技術はまた、炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎ならびに化膿性汗腺炎から選択される疾患を処置するための医薬組成物の製造における本技術のポリペプチドの使用を包含する。
【0037】
特に、本技術は以下の実施形態を提供する:
【0038】
実施形態1.医薬としての使用のための、ポリペプチド、該ポリペプチドを含む組成物、または該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物であって、該ポリペプチドは少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含みまたはからなり、上記ISVDの各々は、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み;
a)第1のISVDは、
x.配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
xi.配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
xii.配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
b)第2のISVDは、
xiii.配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
xiv.配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
xv.配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
c)第3のISVDは、
xvi.配列番号9のアミノ酸配列または配列番号9と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
xvii.配列番号13のアミノ酸配列または配列番号13と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
xviii.配列番号17のアミノ酸配列または配列番号17と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
ISVDは、N末端から開始する順序である、
前記使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0039】
実施形態2.少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤および/またはアジュバントをさらに含み、場合により1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に活性のポリペプチドおよび/または化合物を含む医薬組成物である、実施形態1に記載の使用のための組成物。
【0040】
実施形態3.該ポリペプチドはTNFαおよびIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する、実施形態1または2に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0041】
実施形態4.該ポリペプチドはヒトTNFαおよびヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0042】
実施形態5.第1のISVDはTNFαに特異的に結合し、第2および第3のISVDはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0043】
実施形態6.第1のISVDはヒトTNFαに特異的に結合し、第2および第3のISVDはヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0044】
実施形態7.a)上記第1のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
b)上記第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
c)上記第3のISVDは、配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
実施形態1~6のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0045】
実施形態8.a)上記第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含み;
b)上記第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含み;
c)上記第3のISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含む、
実施形態1~7のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0046】
実施形態9.a)上記第1のISVDは配列番号2のアミノ酸配列を含み;
b)上記第2のISVDは配列番号3のアミノ酸配列を含み;
c)上記第3のISVDは配列番号5のアミノ酸配列を含む、
実施形態1~8のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0047】
実施形態10.上記ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含み、上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有しない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有する該ポリペプチドを提供する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0048】
実施形態11.増加した半減期を有する該ポリペプチドを提供する上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはその断片、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小さいタンパク質またはペプチドからなる群から選択される、実施形態10に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0049】
実施形態12.増加した半減期を有する該ポリペプチドを提供する上記結合単位は、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)または血清免疫グロブリン(例えばIgG)に結合することができる結合単位からなる群から選択される、実施形態10または11に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0050】
実施形態13.増加した半減期を有する該ポリペプチドを提供する上記結合単位は、ヒト血清アルブミンに結合することができるISVDである、実施形態12に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0051】
実施形態14.ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、
i.配列番号8のアミノ酸配列または配列番号8と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列または配列番号16と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含む、実施形態13に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0052】
実施形態15.ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含む、実施形態13または14に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0053】
実施形態16.ヒト血清アルブミンに結合する上記ISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含む、実施形態13~15のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0054】
実施形態17.ヒト血清アルブミンに結合する上記ISVDは配列番号4のアミノ酸配列を含むまたはからなる、実施形態13~16のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0055】
実施形態18.該ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0056】
実施形態19.該ポリペプチドは配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはからなる、実施形態1~18のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0057】
実施形態20.自己免疫疾患または炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎ならびに化膿性汗腺炎から選択される疾患の処置における使用のための、実施形態1~19のいずれか1つに記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0058】
実施形態21.ポリペプチドであって、該ポリペプチドは少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含みまたはからなり、上記ISVDの各々は、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み;
a)第1のISVDは、
x.配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
xi.配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
xii.配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
b)第2のISVDは、
xiii.配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
xiv.配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
xv.配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
c)第3のISVDは、
xvi.配列番号9のアミノ酸配列または配列番号9と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
xvii.配列番号13のアミノ酸配列または配列番号13と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
xviii.配列番号17のアミノ酸配列または配列番号17と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含み、
ISVDは、N末端から開始する順序である、
前記ポリペプチド。
【0059】
実施形態22.TNFαおよびIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する、実施形態21に記載のポリペプチド。
【0060】
実施形態23.ヒトTNFαおよびヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する、実施形態21または22に記載のポリペプチド。
【0061】
実施形態24.第1のISVDはTNFαに特異的に結合し、第2および第3のISVDはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する、実施形態21~23のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0062】
実施形態25.第1のISVDはヒトTNFαに特異的に結合し、第2および第3のISVDはヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する、実施形態21~24のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0063】
実施形態26.a)上記第1のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
b)上記第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3
を含み;
c)上記第3のISVDは、配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む、
実施形態21~25のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0064】
実施形態27.a)上記第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含み;
b)上記第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含み;
c)上記第3のISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含む、
実施形態21~26のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0065】
実施形態28.a)上記第1のISVDは配列番号2のアミノ酸配列を含み;
b)上記第2のISVDは配列番号3のアミノ酸配列を含み;
c)上記第3のISVDは配列番号5のアミノ酸配列を含む、
実施形態21~27のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0066】
実施形態29.上記ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含み、上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有しない対応するポリペプチドと比較して、増加した半減期を有する該ポリペプチドを提供する、実施形態21~28のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0067】
実施形態30.増加した半減期を有する該ポリペプチドを提供する上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはその断片、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小さいタンパク質またはペプチドからなる群から選択される、実施形態29に記載のポリペプチド。
【0068】
実施形態31.増加した半減期を有する該ポリペプチドを提供する上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)または血清免疫グロブリン(例えばIgG)に結合することができる結合単位からなる群から選択される、実施形態29または30に記載のポリペプチド。
【0069】
実施形態32.増加した半減期を有する該ポリペプチドを提供する上記結合単位は、ヒト血清アルブミンに結合することができるISVDである、実施形態31に記載のポリペプチド。
【0070】
実施形態33.ヒト血清アルブミンに結合するISVDは:
i.配列番号8のアミノ酸配列または配列番号8と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列または配列番号16と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含む、実施形態32に記載のポリペプチド。
【0071】
実施形態34.ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含む、実施形態32または33に記載のポリペプチド。
【0072】
実施形態35.ヒト血清アルブミンに結合する上記ISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含む、実施形態32~34のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0073】
実施形態36.ヒト血清アルブミンに結合する上記ISVDは配列番号4のアミノ酸配列を含むまたはからなる、実施形態32~35のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0074】
実施形態37.該ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1と90%より高い(例えば95%)配列同一性を含む、実施形態21~36のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0075】
実施形態38.配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはからなる、実施形態21~37のいずれか1つに記載のポリペプチド。
【0076】
実施形態39.実施形態21~38のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【0077】
実施形態40.実施形態39に記載の核酸を含む宿主または宿主細胞。
【0078】
実施形態41.実施形態21~38のいずれか1つに記載のポリペプチドを製造する方法であって、少なくとも:
a)好適な宿主細胞もしくは宿主生物中または別の好適な発現系中で、実施形態39に記載の核酸を発現させる工程;場合によりこれに続いて:
b)実施形態21~38のいずれか1つに記載のポリペプチドを単離および/または精製する工程
を含む、前記方法。
【0079】
実施形態42.少なくとも1つの実施形態21~38のいずれか1つに記載のポリペプチド、または実施形態39に記載の核酸を含む、組成物。
【0080】
実施形態43.少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤および/またはアジュバントをさらに含み、場合により1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に活性のポリペプチドおよび/または化合物を含む医薬組成物である、実施形態42に記載の組成物。
【0081】
実施形態44.自己免疫疾患または炎症性疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、薬学的に活性の量の、実施形態21~38のいずれか1つに記載のポリペプチド、または実施形態42または43に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【0082】
実施形態45.自己免疫疾患または炎症性疾患は、炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎ならびに化膿性汗腺炎から選択される、実施形態44に記載の方法。
【0083】
実施形態45.自己免疫疾患または炎症性疾患を処置するための医薬組成物の製造における、実施形態21~38のいずれか1つに記載のポリペプチド、または実施形態42もしくは43に記載の組成物の使用。
【0084】
実施形態46.自己免疫疾患または炎症性疾患は、炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎ならびに化膿性汗腺炎から選択される、実施形態45に記載のポリペプチドまたは組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0085】
4 図面の簡単な説明
図1】ヒト血清アルブミン(HSA)を介して捕捉されたF027500069へのTNFαおよびIL-23の同時の結合を示すセンサーグラム。
図2】Glo response(商標) HEK293_NFκB-NLucPレポーターアッセイにおけるF027500069および抗hTNFα参照mAbによる可溶性ヒト(A)およびカニクイザル(B)TNFαの阻害。IRR00096は陰性対照VHHである。データ点は全体の平均値(n=2)であり、エラーバーは+/-SDを表す。
図3】Glo response(商標) HEK293_ヒトIL-23R/IL-12Rb1-Luc2PレポーターアッセイにおけるF027500069、抗hIL-23参照mAb1、抗hIL-23参照mAb2を使用したヒト(A)およびカニクイザル(B)IL-23の阻害。IRR00096は陰性対照VHHである。データ点は全体の平均値(n=2)であり、エラーバーは+/-SDを表す。
図4】対照F027301099と比較したF027500069に対する96のヒト血清試料中に存在する既存の抗体の結合を示すボックスプロット。
図5】対照ポリペプチドF027301099およびF027301186と比較したF027500069、F027500093、F027500095およびF027500096に対する96のヒト血清試料中に存在する既存の抗体の結合を示すボックスプロット。
図6】Tg197ヒトTNFトランスジェニックマウスモデルにおける多発性関節炎の阻害。異なる処置群(n=8マウス/群)における経時的な関節炎スコアをプロットしている。6週齢に開始して、週に2回の指し示される化合物の腹腔内注射を動物に与えた。平均の週毎の関節炎スコア±SEMを示す。統計は二元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図7】Tg197マウスモデルにおける経時的な関節炎スコアの曲線下面積の棒グラフ。個々の値(記号)および平均±SEM(バー)を示す。統計は一元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図8】Tg197マウスモデルの足の組織学スコアの棒グラフ。個々の値(記号)および平均±SEM(バー)を示す。統計は一元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図9】ヒトIL-23モデルにおける皮膚炎症の阻害。棒グラフは異なる処置群(n=10マウス/群)の耳皮膚腫脹を示す。1~4日目に組換えヒトIL-23またはPBSの1日毎の皮内注射を動物に与えた。1および3日目に指し示される化合物の腹腔内注射を動物に与えた。5日目におけるベースラインからの耳皮膚厚平均変化±SEMを示す。統計はANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図10】ヒトIL-23誘導性皮膚炎症モデルの5日目における皮膚生検からの組織IL-22濃度の棒グラフ。個々の値(記号)および平均±SEM(バー)を示す。統計はANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図11】腹腔内経路および皮下経路の両方により投与されたF027500069による皮膚炎症の阻害。棒グラフは異なる処置群(n=8マウス/群)の耳皮膚腫脹を示す。1~4日目に組換えヒトIL-23またはPBSの1日毎の皮内注射を動物に与えた。指し示される用量の腹腔内(IP)または皮下(SC)注射を1および3日目に投与した。5日目におけるベースラインからの耳皮膚厚平均変化±SEMを示す。統計はANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図12】腹腔内経路および皮下経路の両方により送達されたF027500069での5日目における皮膚生検からの組織IL-22濃度の棒グラフ。個々の値(記号)および平均±SEM(バー)を示す。統計はANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図13】ヒトTNFα/TNFR1ノックインマウスにおけるコラーゲン抗体誘導性関節炎(CAIA)モデルにおける関節炎スコアの抑制。異なる処置群(n=8マウス/群)における経時的な関節炎スコアを示す。1日目にLPS注射の6時間後に指し示される化合物の単回の腹腔内注射を動物に与えた。平均の1日毎の関節炎スコア±SEMを示す。統計は二元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図14】IL-23およびTNFαの二重阻害は、ヒトTNFαノックインマウス(n=4~10マウス/群)において行われたヒトIL-23皮膚注射モデルにおいて炎症を誘導した。1~4日目に組換えヒトIL-23またはPBSの1日毎の皮内注射を動物に与えた。1および3日目に指し示される化合物の腹腔内注射。5日目におけるベースラインからの耳皮膚厚平均変化±SEMを示す。統計はANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図15】サイトカインの一または二特異性阻害後の炎症した皮膚組織における差次的な皮膚組織遺伝子発現。差次的に発現された遺伝子(DEG、p<0.001で倍数変化>2)のベン図。F027500069において全769個のDEGのうちの199個はこの処置に対して特異的であった。
図16】ISVD構築物F027500069の図式的な表現であり、N末端からC末端へと、9GSリンカーを介して接続された、一価ビルディングブロック/ISVD 6C11、119A03/1、ALB23002、および81A12を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
5 本技術の詳細な説明
本技術は、炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎または化膿性汗腺炎を処置するための新規の種類の薬物を提供することを目的とする。
【0087】
本発明者らは、驚くべきことに、少なくとも3つのISVDを含むポリペプチドであって、少なくとも1つのISVDはTNFαに特異的に結合し、少なくとも2つのISVDはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する、ポリペプチドは、単一特異性抗TNFαまたは抗IL-23p19ポリペプチドと比較して自己免疫または炎症性疾患のより効率的な処置のために使用することができることを見出した。
【0088】
一部の実施形態において、本技術のポリペプチドは、TNFαおよびIL-23(例えばヒトまたはカニクイザルTNFαおよびIL-23)に対して高い効力を示す。一部の実施形態において、本技術のポリペプチドは(例えば微生物宿主、例えばピキア属、例えばP.パストリスにおいて)効率的に製造される。一部の実施形態において、本技術のポリペプチドは高い濃度で低い粘度を有し、これは皮下投与のために有利かつ好都合である。さらには、一部の実施形態において、本技術のポリペプチドは、処置されるべき対象における既存の抗体(すなわち抗体構築物での最初の処置の前に対象中に存在する抗体)に対して制限された反応性を有する。他の実施形態において、そのようなポリペプチドは、処置されるべき対象において連続する処置を好都合に間隔を空けることができるように十分に長い半減期を呈する。
【0089】
ポリペプチドは少なくとも二特異性であるが、例えば三特異性、四特異性または五特異性でもあり得る。さらに、ポリペプチドは少なくとも三価であるが、例えば四価または五価でもあり得る。
【0090】
「二特異性」、「三特異性」、「四特異性」または「五特異性」という用語は全て、「多特異性」という用語に含まれ、それぞれ2、3、4または5つの異なる標的分子に結合することを指す。「二価」、「三価」、「四価」または「五価」という用語は全て、「多価」という用語に含まれ、それぞれ2、3、4または5つの結合単位(例えばISVD)の存在を指し示す。例えば、ポリペプチドは三特異性-四価であってもよく、例えばポリペプチドは4つのISVDを含みまたはからなり、1つのISVDはヒトTNFαに結合し、2つのISVDはヒトIL-23に結合し、1つのISVDはヒト血清アルブミンに結合する。そのようなポリペプチドは、例えば2つのISVDがIL-23のp19サブユニット上の2つの異なるエピトープに結合する場合に、同時に二重パラトープ性であってもよい。「二重パラトープ性」という用語は、同じ標的分子の2つの異なる部分(すなわち、エピトープ)に結合することを指す。
【0091】
「第1のISVD」、「第2のISVD」、「第3のISVD」などの用語は、本明細書において使用される場合、互いに対するISVDの相対的な位置を指し示すに過ぎず、ナンバリングは本技術のポリペプチドのN末端から開始される。「第1のISVD」はそのため、「第2のISVD」よりもN末端に近い一方、「第2のISVD」は「第3のISVD」よりもN末端に近い、などである。よって、ISVDの並びは、C末端から考慮された場合に反対である。ナンバリングは絶対的なものではなく、少なくとも3つのISVDの相対的な位置を指し示すに過ぎないため、他の結合単位/ビルディングブロック、例えばTNFαもしくはIL-23のp19サブユニットに結合する追加のISVD、または別の標的に結合するISVDがポリペプチド中に存在し得ることは除外されない。さらに、それは、他の結合単位/ビルディングブロック、例えばISVDが間に位置し得る可能性を除外しない。例えば、以下にさらに記載されるように(特に、セクション5.3「(インビボ)半減期の延長」を参照)、ポリペプチドは、例えば、「第2のISVD」および「第3のISVD」の間に位置することさえ可能な、ヒト血清アルブミンに結合する別のISVDをさらに含み得る。
【0092】
上記に照らして、本技術は、少なくとも3つのISVDを含むまたはからなるポリペプチドであって、少なくとも1つのISVDはTNFαに特異的に結合し、少なくとも2つのISVDはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する、ポリペプチドを提供する。
【0093】
IL-23に特異的に結合する少なくとも2つのISVDは、IL-23のp19サブユニットに結合する。IL-23に特異的に結合する少なくとも2つのISVDはIL-23のp19サブユニット上の異なるエピトープに結合してもよい。IL-23に特異的に結合するISVDのうちの少なくとも1つは、IL-23の機能を遮断する能力、例えばIL-23およびIL-23Rの間の相互作用を遮断する能力ならびに/またはIL-22のIL-23誘導性放出を阻害する能力を有してもよい。
【0094】
ポリペプチドの構成要素、例えばISVDは、1つまたはそれ以上の好適なリンカー、例えばペプチド性リンカーにより、互いに連結することができる。
【0095】
2つまたはそれ以上の(ポリ)ペプチドを接続するためのリンカーの使用は当該技術分野において周知である。例示的なペプチド性リンカーは表A-5に示される。1つの多くの場合に使用されるペプチド性リンカーのクラスは「Gly-Ser」または「GS」リンカーとして公知である。これらは、グリシン(G)およびセリン(S)残基から本質的になり、通常、ペプチドモチーフ、例えばGGGGS(配列番号47)モチーフの1つまたはそれ以上の反復を含む(例えば、式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)nを有し、nは、1、2、3、4、5、6、7またはより大きくてもよい)リンカーである。一部の多くの場合に使用されるそのようなGSリンカーの例は、9GSリンカー(GGGGSGGGS、配列番号50)、15GSリンカー(n=3;配列番号52)および35GSリンカー(n=7;配列番号57)である。例えば、Chenら、Adv.Drug Deliv.Rev.2013 Oct 15; 65(10):第1357~1369頁;およびKleinら、Protein Eng.Des.Sel.(2014) 27 (10):第325~330頁を参照。本技術のポリペプチドの1つの実施形態において、ポリペプチドの構成要素を互いに連結するために9GSリンカーが使用される。
【0096】
1つの実施形態において、TNFαに特異的に結合するISVDはポリペプチドのN末端に配置される。本発明者らは、驚くべきことに、そのような構成は、ポリペプチドの製造収率を増加させ得ることを見出した。
【0097】
また、実施形態において、IL-23に特異的に結合するISVDのうちの1つはポリペプチドのC末端に配置される。
【0098】
よって、ポリペプチドは、以下を、ポリペプチドのN末端から開始する順序で含むまたはからなる:TNFαに特異的に結合するISVD、IL-23の機能を遮断し得るIL-23に特異的に結合する第1のISVD、本明細書において定義されるような増加した半減期を有するポリペプチドを提供する場合による結合単位、およびIL-23に特異的に結合する第2のISVD。1つの実施形態において、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する結合単位はISVDである。
【0099】
1つの実施形態において、ポリペプチドは、以下を、ポリペプチドのN末端から開始する順序で含むまたはからなる:TNFαに特異的に結合するISVD、リンカー、IL-23の機能を遮断し得るIL-23に特異的に結合する第1のISVD、リンカー、ヒト血清アルブミンに結合するISVD、リンカー、およびIL-23に特異的に結合する第2のISVD。1つの態様において、各リンカーは9GSリンカーである。
【0100】
ポリペプチドのそのような構成は、製造収率の増加、ならびに発現収率、粘度および他の生物物理学的特性を含めて、良好なCMCの特徴を提供し得る。
【0101】
1つの実施形態において、本技術のポリペプチドは、ヒト血清中の既存の抗体による低減された結合を呈する。この目的のために、1つの実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも1つのISVD中の(Kabatのナンバリングにしたがって)アミノ酸位置11におけるバリン(V)およびアミノ酸位置89におけるロイシン(L)を含む。1つの実施形態において、ポリペプチドは、各ISVD中の(Kabatのナンバリングにしたがって)アミノ酸位置11におけるバリン(V)およびアミノ酸位置89におけるロイシン(L)を含む。別の実施形態において、ポリペプチドは、C末端ISVDのC末端における、1~5個の(天然に存在する)アミノ酸の伸長、例えば単一アラニン(A)伸長を含む。ISVDのC末端は通常VTVSS(配列番号112)である。別の実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも1つのISVD中の(Kabatのナンバリングにしたがって)位置110におけるリジン(K)またはグルタミン(Q)を含む。別の実施形態において、ISVDは、少なくとも1つのISVD中の(Kabatのナンバリングにしたがって)位置112におけるリジン(K)またはグルタミン(Q)を含む。これらの実施形態において、ISVDのC末端は、VKVSS(配列番号113)、VQVSS(配列番号114)、VTVKS(配列番号146)、VTVQS(配列番号147)、VKVKS(配列番号148)、VKVQS(配列番号149)、VQVKS(配列番号150)、またはVQVQS(配列番号151)であり、その結果、単一のアラニンの付加後に、ポリペプチドのC末端は、例えば、配列VTVSSA(配列番号115)、VKVSSA(配列番号116)、VQVSSA(配列番号117)、VTVKSA(配列番号152)、VTVQSA(配列番号153)、VKVKSA(配列番号154)、VKVQSA(配列番号155)、VQVKSA(配列番号156)、またはVQVQSA(配列番号157)を含む。1つの実施形態において、C末端はVKVSSA(配列番号116)を含む。別の実施形態において、ポリペプチドは、各ISVD中の(Kabatのナンバリングにしたがって)アミノ酸位置11におけるバリン(V)およびアミノ酸位置89におけるロイシン(L)、場合により少なくとも1つのISVD中の(Kabatのナンバリングにしたがって)位置110におけるリジン(K)またはグルタミン(Q)を含み、C末端ISVDのC末端における、1~5個の(天然に存在する)アミノ酸の伸長、例えば単一アラニン(A)伸長を含み、その結果、ポリペプチドのC末端は、例えば、配列VTVSSA(配列番号115)、VKVSSA(配列番号116)またはVQVSSA(配列番号117)、例えばVKVSSA(配列番号116)を含む。これに関するさらなる情報について、例えばWO2012/175741およびWO2015/173325を参照。
【0102】
別の実施形態において、本技術のポリペプチドは、配列番号1と90%より高い、例えば95%より高いまたは99%より高い、配列同一性を含むアミノ酸配列を含みまたはからなり、4つのISVDのCDRは、それぞれ以下のセクション「5.1 免疫グロブリン単一可変ドメイン」および「5.3 (インビボ)半減期の延長」において記載される項目A~D(またはKabat定義を使用する場合はA’~D’)において定義される通りであり、特に:
・TNFαに特異的に結合するISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・IL-23のp19サブユニットに特異的に結合する第1のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・IL-23のp19サブユニットに特異的に結合する第2のISVDは、配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含み、
または代替的にKabat定義を使用する場合:
・TNFαに特異的に結合するISVDは、配列番号122のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号130のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号138のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・IL-23のp19サブユニットに特異的に結合する第1のISVDは、配列番号123のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号131のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号139のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・IL-23のp19サブユニットに特異的に結合する第2のISVDは、配列番号125のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号133のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号141のアミノ酸配列であるCDR3を含み;
・ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号124のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号132のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号140のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0103】
別の実施形態において、ポリペプチドは配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはからなる。別の実施形態において、ポリペプチドは配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0104】
1つの実施形態において、本技術のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドと比較してヒトTNFαおよびヒトIL-23に対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して測定される。
【0105】
5.1 免疫グロブリン単一可変ドメイン
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(ISVD)という用語は、「単一可変ドメイン」と交換可能に使用され、抗原結合性部位が単一の免疫グロブリンドメイン上に存在し、単一の免疫グロブリンドメインにより形成される、免疫グロブリン分子を定義する。これは、2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの可変ドメインが相互作用して抗原結合性部位を形成する「従来の」免疫グロブリン(例えばモノクローナル抗体)またはそれらの断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)、scFv、ジ-scFv)からISVDを隔てる。典型的には、従来の免疫グロブリンにおいて、重鎖可変ドメイン(V)および軽鎖可変ドメイン(V)が相互作用して抗原結合性部位を形成する。この場合、VおよびVの両方の相補性決定領域(CDR)が抗原結合性部位に寄与し、すなわち、全部で6個のCDRが抗原結合性部位の形成に関与する。
【0106】
上記の定義を考慮して、従来の4鎖抗体(例えばIgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE分子;当該技術分野において公知)の、またはそのような従来の4鎖抗体に由来するFab断片、F(ab’)断片、Fv断片、例えばジスルフィド連結FvもしくはscFv断片、もしくはダイアボディ(全て当該技術分野において公知)の抗原結合性ドメインは、通常、ISVDとはみなされず、これらの場合には、抗原の各々のエピトープへの結合は、1つの単一の免疫グロブリンドメインによっては通常起こらず、会合する免疫グロブリンドメイン、例えば軽鎖および重鎖可変ドメインのペアにより起こり、すなわち、一緒になって各々の抗原のエピトープに結合する免疫グロブリンドメインのV-Vペアにより起こる。
【0107】
対照的に、ISVDは、追加の免疫グロブリン可変ドメインと対合することなく抗原のエピトープに特異的に結合する能力を有する。ISVDの結合性部位は、単一のV、単一のVHHまたは単一のVドメインにより形成される。
【0108】
そのため、ISVDは、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)もしくはその好適な断片;または重鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列もしくはVHH配列)もしくはその好適な断片であってもよく;但し、それは、単一の抗原結合単位;すなわち、ISVDから本質的になる機能的な抗原結合単位を形成する能力を有し、その結果、単一の抗原結合性ドメインは、機能的な抗原結合単位を形成するために別の可変ドメインと相互作用する必要はない。
【0109】
ISVDは、例えば、重鎖ISVD、例えば、ラクダ化Vまたはヒト化VHHを含む、V、VHHであり得る。1つの実施形態において、それは、ラクダ化Vまたはヒト化VHHを含む、VHHである。重鎖ISVDは、従来の4鎖抗体または重鎖抗体に由来し得る。
【0110】
例えば、ISVDは、単一ドメイン抗体(もしくは単一ドメイン抗体としての使用のために好適なアミノ酸配列)、「dAb」もしくはdAb(もしくはdAbとしての使用のために好適なアミノ酸配列)もしくはNanobody(登録商標)(本明細書において定義される通りであり、VHHが挙げられるがそれに限定されない);他の単一可変ドメイン、またはこれらの任意の1つの任意の好適な断片であってもよい。
【0111】
特に、ISVDは、Nanobody(登録商標)(例えば、ヒト化VHHもしくはラクダ化Vを含む、VHH)またはその好適な断片であってもよい。Nanobody(登録商標)、Nanobodies(登録商標)およびNanoclone(登録商標)は登録商標である。
【0112】
HH、VHH抗体断片、およびVHH抗体としても公知の「VHHドメイン」は、「重鎖抗体」の;すなわち「軽鎖を欠いた抗体」の抗原結合性免疫グロブリン可変ドメインとして元々は記載された。Hamers-Castermanら、Nature 363:第446~448頁、1993を参照。「VHHドメイン」という用語は、本明細書において「Vドメイン」と称される従来の4鎖抗体中に存在する重鎖可変ドメインから、および本明細書において「Vドメイン」と称される従来の4鎖抗体中に存在する軽鎖可変ドメインからこれらの可変ドメインを区別するために選択された。VHHのさらなる説明について、Muyldermansによる総説論文(Reviews in Molecular Biotechnology 74:第277~302頁、2001)を参照。
【0113】
典型的には、免疫グロブリンの生成は、実験動物の免疫化、ハイブリドーマを作出するための免疫グロブリン産生細胞の融合および所望の特異性についてのスクリーニングを伴う。代替的に、免疫グロブリンは、例えばファージディスプレイによる、ナイーブ、免疫または合成ライブラリーのスクリーニングにより生成することができる。
【0114】
免疫グロブリン配列、例えばNanobodies(登録商標)の生成は様々な刊行物において大規模に記載されており、その中でもWO94/04678、Hamers-Castermanら、1993(Nature 363:第446~448頁、1993)およびMuyldermansら、2001(Reviews in Molecular Biotechnology 74:第277~302頁、2001)を例示することができる。これらの方法において、ラクダ科動物が、標的抗原に対する免疫応答を誘導するために上記標的抗原で免疫化される。上記免疫化から得られるNanobodies(登録商標)のレパートリーは、標的抗原に結合するNanobodies(登録商標)についてさらにスクリーニングされる。
【0115】
これらの事例において、抗体の生成は、免疫化および/またはスクリーニングのために精製された抗原を要求する。抗原は、天然の供給源から、または組換え製造の過程で精製することができる。
【0116】
免疫グロブリン配列についての免疫化および/またはスクリーニングは、そのような抗原のペプチド断片を使用して行うことができる。
【0117】
本技術は、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒトおよびラクダ科動物免疫グロブリン配列を含む、異なる起源の免疫グロブリン配列を使用してもよい。本技術はまた、完全ヒト、ヒト化またはキメラ配列を含む。例えば、本技術は、ラクダ科動物免疫グロブリン配列およびヒト化ラクダ科動物免疫グロブリン配列、またはラクダ化ドメイン抗体、例えばWardら(Nature 341: 544、1989)に記載されるようなラクダ化dAbを含む(例えばWO94/04678ならびにDaviesおよびRiechmann、Febs Lett.、339:第285~290頁、1994およびProt.Eng.、9:第531~537頁、1996を参照)。さらに、本技術はまた、例えば多価および/または多特異性構築物を形成する、融合した免疫グロブリン配列(1つまたはそれ以上のVHHドメインを含有する多価および多特異性ポリペプチドおよびそれらの製造について、Conrathら、J.Biol.Chem.、第276巻、10.第7346~7350頁、2001の他に、例えばWO96/34103およびWO99/23221も参照)、ならびに、本技術の免疫グロブリン配列から誘導可能な、タグまたは他の機能的部分、例えば毒素、標識、放射性化学物質などを含む免疫グロブリン配列を使用する。
【0118】
「ヒト化VHH」は、天然に存在するVHHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ヒト化」、すなわち、上記天然に存在するVHH配列(特にフレームワーク配列)のアミノ酸配列中の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を、(例えば上記に指し示される)ヒトからの従来の4鎖抗体からのVドメイン中の対応する位置において起こるアミノ酸残基の1つまたはそれ以上により置き換えることにより「ヒト化」された、アミノ酸配列を含む。これは、それ自体公知の方式で行うことができ、例えば本明細書中のさらなる記載および先行技術(例えばWO2008/020079)に基づいて、当業者に明らかであろう。さらに、そのようなヒト化VHHは、それ自体公知の任意の好適な方式で得ることができ、そのため、天然に存在するVHHドメインを含むポリペプチドを出発材料として使用して得られたポリペプチドに厳密に限定されないことが留意されるべきである。
【0119】
「ラクダ化V」は、天然に存在するVドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ラクダ化」、すなわち、従来の4鎖抗体からの天然に存在するVドメインのアミノ酸配列中の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を、重鎖抗体のVHHドメイン中の対応する位置において起こるアミノ酸残基の1つまたはそれ以上により置き換えることにより「ラクダ化」された、アミノ酸配列を含む。これは、それ自体公知の方式で行うことができ、例えば本明細書中のさらなる記載および先行技術(例えばWO2008/020079)に基づいて、当業者に明らかであろう。そのような「ラクダ化」置換は、通常、V-Vインターフェースを形成しかつ/もしくはそこに存在するアミノ酸位置において、ならびに/または、本明細書において定義されるような、いわゆるラクダ科ホールマーク残基において挿入される(例えばWO94/04678ならびにDaviesおよびRiechmann、1994および1996、上掲を参照)。1つの実施形態において、ラクダ化Vを生成または設計するための出発材料または出発点として使用されるV配列は、哺乳動物からのV配列、またはヒトのV配列、例えばV3配列である。しかしながら、そのようなラクダ化Vは、それ自体公知の任意の好適な方式で得ることができ、そのため、天然に存在するVドメインを含むポリペプチドを出発材料として使用して得られたポリペプチドに厳密に限定されないことが留意されるべきである。
【0120】
ISVD配列の構造は、当該技術分野および本明細書においてそれぞれ「フレームワーク領域1」(「FR1」);「フレームワーク領域2」(「FR2」);「フレームワーク領域3」(「FR3」);および「フレームワーク領域4」(「FR4」)と称される4つのフレームワーク領域(「FR」)から構成されると考えることができ;これらのフレームワーク領域は、当該技術分野および本明細書においてそれぞれ「相補性決定領域1」(「CDR1」);「相補性決定領域2」(「CDR2」);および「相補性決定領域3」(「CDR3」)と称される3つの相補性決定領域(「CDR」)を差し挟まれている。
【0121】
WO08/020079の第58および59頁のパラグラフq)においてさらに記載されるように、ISVDのアミノ酸残基は、RiechmannおよびMuyldermans、2000の論文(J.Immunol.Methods 240(1-2):第185~195頁;例えばこの文献の図2を参照)におけるラクダ科動物からのVHHドメインに適用されるような、Kabatら(「Sequence of proteins of immunological interest」、US Public Health Services、NIH Bethesda、MD、Publication No.91)により与えられるVドメインについての一般的ナンバリングにしたがってナンバリングすることができる。VドメインおよびVHHドメインについて当該技術分野において周知のように、CDRの各々におけるアミノ酸残基の総数は、変動することがあり、Kabatのナンバリングにより指し示されるアミノ酸残基の総数に対応しないことがあることが留意されるべきである。すなわち、Kabatのナンバリングによる1つまたはそれ以上の位置は実際の配列中で占有されないことがあり、または実際の配列は、Kabatのナンバリングにより許容される数よりも多くのアミノ酸残基を含有することがある。一般に、Kabatによるナンバリングは、実際の配列中のアミノ酸残基の実際のナンバリングに対応することもあるし、または対応しないこともあることをこれは意味する。VドメインおよびVHHドメイン中のアミノ酸残基の総数は、通常110~120、多くの場合に112~115の範囲内にある。しかしながら、より短いおよびより長い配列もまた、本明細書に記載の目的のために好適であり得ることが留意されるべきである。
【0122】
本出願において、他に指し示されなければ、CDR配列は、KontermannおよびDubel(編、2010、Antibody Engineering、第2巻、Springer Verlag Heidelberg Berlin、Martin、Chapter 3、第33~51頁)に記載されるようなAbMナンバリングにしたがって決定された。この方法によれば、FR1は位置1~25のアミノ酸残基を含み、CDR1は位置26~35のアミノ酸残基を含み、FR2は位置36~49のアミノ酸残基を含み、CDR2は位置50~58のアミノ酸残基を含み、FR3は位置59~94のアミノ酸残基を含み、CDR3は位置95~102のアミノ酸残基を含み、FR4は位置103~113のアミノ酸残基を含む。
【0123】
CDR領域の決定はまた、異なる方法にしたがって行うことができる。KabatによるCDRの決定において、ISVDのFR1は位置1~30のアミノ酸残基を含み、ISVDのCDR1は位置31~35のアミノ酸残基を含み、ISVDのFR2は位置36~49のアミノ酸残基を含み、ISVDのCDR2は位置50~65のアミノ酸残基を含み、ISVDのFR3は位置66~94のアミノ酸残基を含み、ISVDのCDR3は位置95~102のアミノ酸残基を含み、ISVDのFR4は位置103~113のアミノ酸残基を含む。
【0124】
そのような免疫グロブリン配列において、フレームワーク配列は任意の好適なフレームワーク配列であってもよく、好適なフレームワーク配列の例は、例えば標準的なハンドブックならびに本明細書において言及されるさらなる開示および先行技術に基づいて、当業者に明らかである。
【0125】
フレームワーク配列は、免疫グロブリンフレームワーク配列、または、例えばヒト化もしくはラクダ化により、免疫グロブリンフレームワーク配列から誘導されたフレームワーク配列の好適な組合せである。例えば、フレームワーク配列は、軽鎖可変ドメイン(例えばV配列)および/または重鎖可変ドメイン(例えばV配列もしくはVHH配列)に由来するフレームワーク配列であってもよい。1つの態様において、フレームワーク配列は、VHH配列から誘導されたフレームワーク配列であり、上記フレームワーク配列は場合により部分的もしくは完全にヒト化されており、または(本明細書において定義されるような)ラクダ化された従来のV配列である。
【0126】
特に、本技術において使用されるISVD配列中に存在するフレームワーク配列は、(本明細書において定義されるような)ホールマーク残基のうちの1つまたはそれ以上を含有してもよく、その結果、ISVD配列はNanobody(登録商標)、例えば、ヒト化VHHまたはラクダ化Vを含む、VHHである。そのようなフレームワーク配列の好適な組合せの一部の非限定的な例は、本明細書中のさらなる開示から明らかとなる。
【0127】
また、免疫グロブリン配列について本明細書に一般に記載されるように、以上の任意の好適な断片または断片の組合せを使用することも可能であり、これは例えば、好適には1つまたはそれ以上のフレームワーク配列により隣接されかつ/またはそれを介して連結された、1つまたはそれ以上のCDR配列を含有する断片であり;例えば、これらのCDRおよびフレームワーク配列は、断片の由来となる全長免疫グロブリン配列において起こり得るのと同じ順序にある。
【0128】
しかしながら、本技術は、ISVD配列の起源もしくはその発現のために使用されるヌクレオチド配列の起源に関しても、ISVD配列もしくはヌクレオチド配列が生成もしくは取得されるもしくは生成もしくは取得された方法に関しても、限定されないことが留意されるべきである。そのため、ISVD配列は、(任意の好適な種からの)天然に存在する配列または合成もしくは半合成配列であってもよい。特有であるが非限定的な態様において、ISVD配列は、(任意の好適な種からの)天然に存在する配列または合成もしくは半合成配列であり、これには、(本明細書において定義されるような)「ヒト化」免疫グロブリン配列(例えば部分的もしくは完全にヒト化されたマウスもしくはウサギ免疫グロブリン配列、特に部分的もしくは完全にヒト化されたVHH配列)、(本明細書において定義されるような)「ラクダ化」免疫グロブリン配列の他に、技術、例えば親和性成熟(例えば、合成、ランダムもしくは天然に存在する免疫グロブリン配列から開始する)、CDRグラフト、ベニア化、異なる免疫グロブリン配列に由来する断片の組合せ、オーバーラップするプライマーを使用するPCRアセンブリー、および当業者に周知の免疫グロブリン配列を操作するための類似した技術により得られた免疫グロブリン配列;または以上のいずれかの任意の好適な組合せが含まれるがこれらに限定されない。
【0129】
同様に、ヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド配列または合成もしくは半合成配列であってもよく、例えば、好適な天然に存在する鋳型、例えば細胞から単離されたDNAもしくはRNAからPCRにより単離された配列、ライブラリー(特に発現ライブラリー)から単離されたヌクレオチド配列、(それ自体公知の任意の好適な技術、例えばミスマッチPCRを使用して)天然に存在するヌクレオチド配列に突然変異を導入することにより製造されたヌクレオチド配列、オーバーラップするプライマーを使用してPCRにより製造されたヌクレオチド配列、またはそれ自体公知のDNA合成用の技術を使用して製造されたヌクレオチド配列であってもよい。
【0130】
上記のように、ISVDはNanobody(登録商標)またはその好適な断片であってもよい。Nanobodies(登録商標)の一般的記載について、以下のさらなる記載の他に、そこにおいて参照される先行技術を参照。これに関して、しかしながら、この記載および先行技術は、いわゆる「V3クラス」のNanobodies(登録商標)、すなわちV3クラスのヒト生殖系列配列、例えばDP-47、DP-51またはDP-29に対して高い程度の配列相同性を有するNanobodies(登録商標)を主に記載していることが留意されるべきである。しかしながら、その最も広い意味における本技術は、任意の種類のNanobody(登録商標)を一般に使用することができることが留意されるべきであり、例えばWO2007/118670に記載される、例えばいわゆる「V4クラス」に属するNanobodies(登録商標)、すなわちV4クラスのヒト生殖系列配列、例えばDP-78に対して高い程度の配列相同性を有するNanobodies(登録商標)も使用される。
【0131】
一般に、Nanobodies(登録商標)(特に(部分的に)ヒト化されたVHH配列およびラクダ化V配列を含む、VHH配列)は、(本明細書に記載されるような)フレームワーク配列のうちの1つまたはそれ以上における(再び、本明細書にさらに記載されるような)1つまたはそれ以上の「ホールマーク残基」の存在により特徴付けることができる。そのため、一般に、Nanobody(登録商標)は、(一般)構造
FR1 - CDR1 - FR2 - CDR2 - FR3 - CDR3 - FR4
を有する免疫グロブリン配列であって、FR1~FR4がそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3がそれぞれ相補性決定領域1~3を指し、ホールマーク残基のうちの1つまたはそれ以上が本明細書においてさらに定義される通りであるものとして定義することができる。
【0132】
特に、Nanobody(登録商標)は、(一般)構造
FR1 - CDR1 - FR2 - CDR2 - FR3 - CDR3 - FR4
を有する免疫グロブリン配列であって、FR1~FR4がそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3がそれぞれ相補性決定領域1~3を指し、フレームワーク配列が本明細書においてさらに定義される通りであるものであり得る。
【0133】
より特には、Nanobody(登録商標)は、(一般)構造
FR1 - CDR1 - FR2 - CDR2 - FR3 - CDR3 - FR4
を有する免疫グロブリン配列であって、FR1~FR4がそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3がそれぞれ相補性決定領域1~3を指し:
Kabatのナンバリングによる位置11、37、44、45、47、83、84、103、104および108におけるアミノ酸残基のうちの1つまたはそれ以上が、以下の表A-6に記載のホールマーク残基から選択されるものであり得る。
【0134】
【表1-1】
【表1-2】
【0135】
本技術は、とりわけ、TNFαまたはIL-23のp19サブユニットに結合することができるISVDを使用する。本技術の文脈において、ある特定の標的分子「に結合する」は、抗体およびそれらの各々の抗原の文脈において理解されるような当該技術分野における通常の意味を有する。
【0136】
本技術のポリペプチドは、TNFαに結合する1つまたはそれ以上のISVDおよびIL-23に結合する2つまたはそれ以上のISVDを含んでもよい。例えば、ポリペプチドは、TNFαに結合する1つのISVDおよびIL-23のp19サブユニットに結合する2つのISVDを含んでもよい。
【0137】
一部の実施形態において、少なくとも1つのISVDはその標的分子を機能的に遮断することができる。例えば、ISVDは、TNFαおよびTNFR(TNF受容体)の間の相互作用を遮断することができ、またはIL-23およびIL-23R(IL-23受容体)の間の相互作用を遮断することができる。本技術のポリペプチドにおいて、少なくとも1つのISVDは、例えばIL-23およびIL-23Rの間の相互作用を遮断することならびに/またはIL-22のIL-23誘導性放出を阻害することにより、IL-23を機能的に遮断することができる。よって、1つの実施形態において、本技術のポリペプチドは、TNFαに結合してTNFαを機能的に遮断する1つのISVD、および、その1つがIL-23を機能的に遮断することができる、IL-23に結合する2つのISVDを含む。
【0138】
本技術において使用されるISVDは、少なくとも3つのISVDを含むまたはからなる本技術のポリペプチドの部分を形成し、その結果、ポリペプチドは、TNFαおよびIL-23に特異的に結合することができる。
【0139】
よって、本技術のポリペプチドにおいて使用されるような少なくとも3つのISVDの標的分子はTNFαおよびIL-23である。例は哺乳動物TNFαおよびIL-23である。ヒトTNFα(UniprotアクセッションP01375)およびヒトIL-23(p19サブユニット、IL-23AについてのUniprotアクセッション:Q9NPF7)の他に、他の種からのバージョンもまた本技術に適用可能であり、例えばマウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、非ヒト霊長動物、例えばカニクイザル(cynomolgus monkeys)(本明細書において「カニクイザル」(cyno)と称されることもある)、またはラクダ科動物、例えばラマもしくはアルパカからのTNFαおよびIL-23がある。
【0140】
本技術において使用することができるTNFαまたはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合するISVDの特有の例は、以下の項目A~Cに記載される通りである:
【0141】
A.ヒトTNFαに特異的に結合し、
i.配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むISVD。
【0142】
1つの実施形態において、ISVDは、配列番号6のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号10のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号14のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0143】
ヒトTNFαに特異的に結合するそのようなISVDの例は、(先行する項目Aにおいて定義されるようなCDRに加えて)表A-2における構築物6C11について指し示されるような1つもしくはそれ以上の、または全ての、フレームワーク領域を有する。1つの実施形態において、それは、構築物6C11の全体アミノ酸配列(配列番号2、表A-1および表A-2を参照)を含むまたはからなるISVDである。
【0144】
別の実施形態において、ヒトTNFαに特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%より高い、例えば95%より高いまたは99%より高い、配列同一性を有してもよく、CDRは、先行する項目Aにおいて定義される通りである。1つの実施形態において、TNFαに特異的に結合するISVDは配列番号2のアミノ酸配列を含むまたはからなる。
【0145】
TNFαに特異的に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目A)と比べて少なくとも1つのCDR中に2または1個のアミノ酸差異を有する場合、ISVDは、構築物6C11(配列番号2)と比較してヒトTNFαに対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0146】
B.ヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、
i.配列番号7のアミノ酸配列または配列番号7と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むISVD。
【0147】
1つの実施形態において、ISVDは、配列番号7のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号11のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号15のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0148】
ヒトIL-23に特異的に結合するそのようなISVDの例は、(先行する項目Bにおいて定義されるようなCDRに加えて)表A-2における構築物119A03/1について指し示されるような1つもしくはそれ以上の、または全ての、フレームワーク領域を有する。1つの実施形態において、それは、構築物119A03/1の全体アミノ酸配列(配列番号3、表A-1および表A-2を参照)を含むまたはからなるISVDである。
【0149】
また、別の実施形態において、ヒトIL-23に特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%より高い、例えば95%より高いまたは99%より高い、配列同一性を有してもよく、CDRは、先行する項目Bにおいて定義される通りである。1つの実施形態において、IL-23に結合するISVDは配列番号3のアミノ酸配列を含むまたはからなる。
【0150】
IL-23に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目B)と比べて少なくとも1つのCDR中に2または1個のアミノ酸差異を有する場合、ISVDは、構築物119A03/1(配列番号3)と比較してヒトIL-23に対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0151】
1つの実施形態において、配列番号11(TIESGSRTN)と2または1個のアミノ酸差異を有するCDR2を含むISVDは、CDR2配列のアミノ酸位置3におけるEからNへの置換を有さず、かつ/またはCDR2配列のアミノ酸位置9におけるNからYへの置換を有しない。別の実施形態において、そのようなISVDは、CDR2配列のアミノ酸位置3におけるEからNへの置換を有さず、CDR2配列のアミノ酸位置9におけるNからYへの置換を有しない。配列番号11(TIESGSRTN)と2または1個のアミノ酸差異を有するCDR2を含むISVDのそのような実施形態において、Eは上記CDR2配列の位置3におけるアミノ酸として維持され、かつ/またはNは位置9におけるアミノ酸として維持される。別の実施形態において、上記CDR2配列のアミノ酸位置3におけるEおよびアミノ酸位置9におけるNの両方は維持される。上記CDR2配列のアミノ酸位置3におけるNを含むISVDの使用は、上記アミノ酸位置においてNを含まない同じポリペプチドと比較して、特に上記アミノ酸位置においてEを含む同じポリペプチドと比較して、例えば脱アミノ化に起因して、ポリペプチドの製造の間の低減されたアミノ酸配列安定性を結果としてもたらし得る。上記CDR2配列のアミノ酸位置9におけるYを含むISVDの使用は、上記アミノ酸位置においてYを含まない同じポリペプチドと比較して、特に上記アミノ酸位置においてNを含む同じポリペプチドと比較して、ポリペプチドの増加したタンパク質凝集を結果としてもたらし得る。
【0152】
C.ヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、
i.配列番号9のアミノ酸配列または配列番号9と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号13のアミノ酸配列または配列番号13と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号17のアミノ酸配列または配列番号17と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むISVD。
【0153】
1つの実施形態において、ISVDは、配列番号9のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号13のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号17のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0154】
ヒトIL-23に特異的に結合するそのようなISVDの例は、(先行する項目Cにおいて定義されるようなCDRに加えて)表A-2における構築物81A12について指し示されるような1つもしくはそれ以上の、または全ての、フレームワーク領域を有する。1つの実施形態において、それは、構築物81A12の全体アミノ酸配列(配列番号5、表A-1および表A-2を参照)を含むまたはからなるISVDである。
【0155】
また、別の実施形態において、ヒトIL-23に特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%より高い、例えば95%より高いまたは99%より高い、配列同一性を有してもよく、CDRは、先行する項目Cにおいて定義される通りである。1つの実施形態において、IL-23に結合するISVDは配列番号5のアミノ酸配列を含むまたはからなる。
【0156】
IL-23に特異的に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目C)と比べて少なくとも1つのCDR中に2または1個のアミノ酸差異を有する場合、ISVDは、構築物81A12(配列番号5)と比較してヒトIL-23に対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0157】
実施形態において、上記の項目A~Cの下で定義されるようなISVDの各々は、本技術のポリペプチドに含まれる。上記の項目A~Cの下で定義されるようなISVDの各々を含む本技術のそのようなポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドと比較してヒトTNFαおよびヒトIL-23に対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0158】
上記の項目A~Cにおいて参照される配列番号は、AbM定義によるCDR定義に基づく(表A-2を参照)。Kabat定義にしたがって同じCDRを定義する配列番号(表A-2.1を参照)は同様に上記の項目A~Cにおいて使用できることが留意される。
【0159】
よって、AbM定義を使用して上記のように本技術において使用することができるTNFαまたはIL-23のp19サブユニットに特異的に結合する特有のISVDはまた、以下の項目A’~C’において記載されるようにKabat定義を使用して記載することができる:
【0160】
A’.ヒトTNFαに特異的に結合し、
i.配列番号122のアミノ酸配列または配列番号122と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号130のアミノ酸配列または配列番号130と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号138のアミノ酸配列または配列番号138と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むISVD。
【0161】
1つの実施形態において、ISVDは、配列番号122のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号130のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号138のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0162】
ヒトTNFαに特異的に結合するそのようなISVDの例は、(先行する項目A’において定義されるようなCDRに加えて)表A-2.1における構築物6C11について指し示されるような1つもしくはそれ以上の、または全ての、フレームワーク領域を有する。1つの実施形態において、それは、構築物6C11の全体アミノ酸配列(配列番号2、表A-1および表A-2.1を参照)を含むまたはからなるISVDである。
【0163】
また、別の実施形態において、ヒトTNFαに特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%より高い、例えば95%より高いまたは99%より高い、配列同一性を有してもよく、CDRは、先行する項目A’において定義される通りである。1つの実施形態において、TNFαに特異的に結合するISVDは配列番号2のアミノ酸配列を含むまたはからなる。
【0164】
TNFαに特異的に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目A’)と比べて少なくとも1つのCDR中に2または1個のアミノ酸差異を有する場合、ISVDは、構築物6C11(配列番号2)と比較してヒトTNFαに対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0165】
B’.ヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、
i.配列番号123のアミノ酸配列または配列番号123と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号131のアミノ酸配列または配列番号131と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号139のアミノ酸配列または配列番号139と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むISVD。
【0166】
1つの実施形態において、ISVDは、配列番号123のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号131のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号139のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0167】
ヒトIL-23に特異的に結合するそのようなISVDの例は、(先行する項目B’において定義されるようなCDRに加えて)表A-2.1における構築物119A03/1について指し示されるような1つもしくはそれ以上の、または全ての、フレームワーク領域を有する。1つの実施形態において、それは、構築物119A03/1の全体アミノ酸配列(配列番号3、表A-1および表A-2.1を参照)を含むまたはからなるISVDである。
【0168】
また、別の実施形態において、ヒトIL-23に特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%より高い、例えば95%より高いまたは99%より高い、配列同一性を有してもよく、CDRは、先行する項目B’において定義される通りである。1つの実施形態において、IL-23に結合するISVDは配列番号3のアミノ酸配列を含むまたはからなる。
【0169】
IL-23に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目B’)と比べて少なくとも1つのCDR中に2または1個のアミノ酸差異を有する場合、ISVDは、構築物119A03/1(配列番号3)と比較してヒトIL-23に対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0170】
1つの実施形態において、配列番号131(TIESGSRTNYADSVKG)と2または1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列を含むまたはからなるCDR2を含むISVDは、上記CDR2配列のアミノ酸位置3におけるEからNへの置換を有さず、かつ/またはアミノ酸位置9におけるNからYへの置換を有しない。別の実施形態において、そのようなISVDは、CDR2配列のアミノ酸位置3におけるEからNへの置換を有さず、CDR2配列のアミノ酸位置9におけるNからYへの置換を有しない。配列番号131(TIESGSRTNYADSVKG)と2または1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列を含むまたはからなるCDR2を含むISVDのそのような実施形態において、Eは上記CDR2配列の位置3におけるアミノ酸として維持され、かつ/またはNは位置9におけるアミノ酸として維持される。別の実施形態において、上記CDR2配列のアミノ酸位置3におけるEおよびアミノ酸位置9におけるNの両方は維持される。上記CDR2配列のアミノ酸位置3においてNを含むISVDの使用は、上記アミノ酸位置においてNを含まない同じポリペプチドと比較して、特に上記アミノ酸位置においてEを含む同じポリペプチドと比較して、例えば脱アミノ化に起因して、ポリペプチドの製造の間の低減されたアミノ酸配列安定性を結果としてもたらし得る。上記CDR2配列のアミノ酸位置9においてYを含むISVDの使用は、上記アミノ酸位置においてYを含まない同じポリペプチドと比較して、特に上記アミノ酸位置においてNを含む同じポリペプチドと比較して、ポリペプチドの増加したタンパク質凝集を結果としてもたらし得る。
【0171】
C’.ヒトIL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、
i.配列番号125のアミノ酸配列または配列番号125と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号133のアミノ酸配列または配列番号133と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号141のアミノ酸配列または配列番号141と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むISVD。
【0172】
1つの実施形態において、ISVDは、配列番号125のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号133のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号141のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0173】
ヒトIL-23に特異的に結合するそのようなISVDの例は、(先行する項目C’において定義されるようなCDRに加えて)表A-2.1における構築物81A12について指し示されるような1つもしくはそれ以上の、または全ての、フレームワーク領域を有する。1つの実施形態において、それは、構築物81A12の全体アミノ酸配列(配列番号5、表A-1および表A-2.1を参照)を含むまたはからなるISVDである。
【0174】
また、別の実施形態において、ヒトIL-23に特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%より高い、例えば95%より高いまたは99%より高い、配列同一性を有してもよく、CDRは、先行する項目C’において定義される通りである。1つの実施形態において、IL-23に結合するISVDは配列番号5のアミノ酸配列を含むまたはからなる。
【0175】
IL-23に特異的に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目C’)と比べて少なくとも1つのCDR中に2または1個のアミノ酸差異を有する場合、ISVDは、構築物81A12(配列番号5)と比較してヒトIL-23に対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0176】
実施形態において、上記の項目A’~C’の下で定義されるようなISVDの各々は本技術のポリペプチドに含まれる。上記の項目A’~C’の下で定義されるようなISVDの各々を含む本技術のそのようなポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドと比較してヒトTNFαおよびヒトIL-23に対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0177】
第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列の間の「配列同一性」のパーセンテージは、[第2のアミノ酸配列中の対応する位置におけるアミノ酸残基と同一の第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の数]を[第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の総数]で割り、[100%]を掛けることにより算出することができ、第1のアミノ酸配列と比較した第2のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の各々の欠失、挿入、置換または付加は、単一のアミノ酸残基における(すなわち単一の位置における)差異として考慮される。
【0178】
通常、上記に概説される算出方法にしたがって2つのアミノ酸配列の間の「配列同一性」のパーセンテージを決定する目的のために、最大数のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を「第1」のアミノ酸配列とし、他のアミノ酸配列を「第2」のアミノ酸配列とする。
【0179】
「アミノ酸差異」は、本明細書において使用される場合、参照配列と比べた単一のアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を指す。1つの実施形態において、「アミノ酸差異」は置換である。
【0180】
1つの実施形態において、アミノ酸置換は保存的置換である。そのような保存的置換は、以下の群(a)~(e)内の1つのアミノ酸が同じ群内の別のアミノ酸残基で置換される置換である:(a)小さい脂肪族の、非極性または僅かに極性の残基:Ala、Ser、Thr、ProおよびGly;(b)極性の、負に荷電した残基およびそれらの(非荷電性)アミド:Asp、Asn、GluおよびGln;(c)極性の、正に荷電した残基:His、ArgおよびLys;(d)大きい脂肪族の非極性の残基:Met、Leu、Ile、ValおよびCys;ならびに(e)芳香族残基:Phe、TyrおよびTrp。
【0181】
1つの実施形態において、保存的置換は以下の通りである:AlaをGlyもしくはSerへ;ArgをLysへ;AsnをGlnもしくはHisへ;AspをGluへ;CysをSerへ;GlnをAsnへ;GluをAspへ;GlyをAlaもしくはProへ;HisをAsnもしくはGlnへ;IleをLeuもしくはValへ;LeuをIleもしくはValへ;LysをArg、GlnもしくはGluへ;MetをLeu、TyrもしくはIleへ;PheをMet、LeuもしくはTyrへ;SerをThrへ;ThrをSerへ;TrpをTyrへ;TyrをTrpへ;および/またはPheをVal、IleもしくはLeuへ。
【0182】
5.2 特異性
「特異性」、「特異的に結合する」または「特異的結合」という用語は、特定の結合単位、例えばISVDが十分に高い親和性(以下を参照)で結合できる、同じ生物からの異なる標的分子、例えば抗原の数を指す。「特異性」、「特異的に結合する」または「特異的結合」は、本明細書において「選択性」、「選択的に結合する」または「選択的結合」と交換可能に使用される。結合単位、例えばISVDは、それらの指定される標的に特異的に結合する。
【0183】
結合単位の特異性/選択性は、親和性に基づいて決定することができる。親和性は分子相互作用の強さまたは安定性を表す。親和性はKD、または解離定数により一般的に与えられ、これはmol/リットル(またはM)の単位を有する。親和性はまた会合定数、KAとして表すことができ、これは1/KDに等しく、(mol/リットル)-1(またはM-1)の単位を有する。
【0184】
親和性は、部分および標的分子上の結合性部位の間の結合強度の度合いであり:KDの値がより低いほど、標的分子および標的化部分の間の結合強度はより大きい。
【0185】
典型的には、本技術において使用される結合単位、例えばISVDは、10-5~10-12モル/リットルもしくはそれ未満、10-7~10-12モル/リットルもしくはそれ未満、または10-8~10-12モル/リットルの解離定数(KD)(すなわち10~1012リットル/モルもしくはより高い、10~1012リットル/モルもしくはより高い、または10~1012リットル/モルの会合定数(KA))でそれらの標的に結合する。
【0186】
10-4mol/リットルより高い任意のKD値(または10リットル/molより低い任意のKA値)は、非特異的結合を指し示すと一般に考えられる。
【0187】
特異的であると考えられる生物学的相互作用、例えば免疫グロブリン配列の抗原への結合についてのKDは、典型的には、10-5モル/リットル(10000nMもしくは10μM)~10-12モル/リットル(0.001nMもしくは1pM)またはそれ未満の範囲内である。
【0188】
よって、特異的/選択的結合は、同じ測定方法、例えばSPRを使用して、結合単位(またはそれを含むポリペプチド)が10-5~10-12モル/リットルまたはそれ未満のKD値でTNFαおよび/またはIL-23に結合し、10-4モル/リットルより高いKD値で関連するサイトカインに結合することを意味し得る。IL-23の関連するサイトカインの例はIL-12であり、それはIL-23とp40サブユニットを共有する。TNFαの関連するサイトカインの例は、TNFスーパーファミリーメンバーFASL、TNFβ、LIGHT、TL-1A、RANKLである。そのため、本技術の実施形態において、ポリペプチドに含まれる少なくとも1つのISVDは、10-5~10-12モル/リットルまたはそれ未満のKD値で(ヒト)TNFαに結合し、10-4モル/リットルより高いKD値で同じ種のFASL、TNFβ、LIGHT、TL-1A、RANKLに結合し、ポリペプチドに含まれる少なくとも2つのISVDは、10-5~10-12モル/リットルまたはそれ未満のKD値でIL-23に結合し、10-4モル/リットルより高いKD値で同じ種のIL-12に結合する。
【0189】
そのため、本技術のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドと比較してヒトTNFαおよびヒトIL-23に対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0190】
ある特定の種からのある特定の標的に対する特異的結合は、結合単位が異なる種からの類似の標的にも特異的に結合できることを除外しない。例えば、ヒトTNFαに対する特異的結合は、結合単位またはそれを含むポリペプチドがカニクイザルからのTNFαにも特異的に結合できることを除外しない。同様に、例えば、ヒトIL-23に対する特異的結合は、結合単位またはそれを含むポリペプチドがカニクイザル(「カニクイザル」(cyno))からのIL-23にも特異的に結合できることを除外しない。
【0191】
その指定される標的への結合単位の特異的結合は、それ自体公知の任意の好適な方式で決定することができ、該方式としては、例えば、スキャッチャード分析および/または競合結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)およびサンドイッチ競合アッセイ、ならびに当該技術分野においてそれ自体公知のその異なるバリアントの他に;本明細書において言及される他の技術が挙げられる。
【0192】
解離定数は、当業者に明らかであるように、実際のまたは見かけの解離定数であってもよい。解離定数を決定する方法は当業者に明らかであり、例えば以下に記載される技術が挙げられる。これに関して、10-4モル/リットルまたは10-3モル/リットルより高い(例えば10-2モル/リットルの)解離定数を測定することは不可能であり得ることもまた明らかである。場合により、これも当業者に明らかなように、(実際のまたは見かけの)解離定数は、関係性[KD=1/KA]によって、(実際のまたは見かけの)会合定数(KA)に基づいて算出してもよい。
【0193】
2分子間の分子相互作用の親和性は、それ自体公知の異なる技術、例えば周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー技術を介して測定することができる(例えばOberら、2001、Intern.Immunology 13:第1551~1559頁を参照)。「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書において使用される場合、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によりリアルタイム生体分子特異的相互作用の分析を可能とする光学的な現象を指し、1つの分子がバイオセンサーチップに固定化され、他の分子が、固定化された分子上を流れ条件下で通されて、kon、koff測定値およびそれゆえK(またはK)値が得られる。これは、例えば、周知のBIAcore(登録商標)システム(BIAcore International AB、GE Healthcare company、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、NJ)を使用して行うことができる。さらなる説明について、Jonssonら(1993、Ann.Biol.Clin.51:第19~26頁)、Jonssonら(1991 Biotechniques 11:第620~627頁)、Johnssonら(1995、J.Mol.Recognit.8:第125~131頁)、およびJohnnsonら(1991、Anal.Biochem.198:第268~277頁)を参照。
【0194】
生体分子相互作用の親和性を決定するための別の周知のバイオセンサー技術はバイオレイヤー干渉法(BLI)である(例えばAbdicheら、2008、Anal.Biochem.377:第209~217頁を参照)。「バイオレイヤー干渉法」または「BLI」という用語は、本明細書において使用される場合、2つの表面:内部参照層(参照ビーム)およびバイオセンサーチップ上の固定化されたタンパク質の層(シグナルビーム)から反射された光の干渉パターンを分析する標識フリーの光学技術を指す。バイオセンサーのチップに結合した分子の数における変化は、波長シフト(nm)として報告される、干渉パターンにおけるシフトを引き起こし、その大きさは、バイオセンサーチップ表面に結合した分子の数の直接的な度合いである。相互作用をリアルタイムで測定できるので、会合および解離速度ならびに親和性を決定することができる。BLIは、例えば、周知のOctet(登録商標)システム(ForteBio、Pall Life Sciencesの支部、Menlo Park、USA)を使用して行うことができる。
【0195】
代替的に、親和性は、KinExA(登録商標)プラットフォーム(Sapidyne Instruments Inc、Boise、USA)を使用して、速度論的排除アッセイ(Kinetic Exclusion Assay;KinExA)(例えばDrakeら、2004、Anal.Biochem.、328:第35~43頁を参照)において測定することができる。「KinExA」という用語は、本明細書において使用される場合、非修飾分子の真の平衡結合親和性および速度論を測定するための溶液ベースの方法を指す。抗体/抗原複合体の平衡化された溶液が、抗原(または抗体)を予備コーティングされたビーズを有するカラムに通され、遊離の抗体(または抗原)を、コーティングされた分子に結合させる。そのようにして捕捉された抗体(または抗原)の検出は、抗体(または抗原)に結合する蛍光標識されたタンパク質を用いて達成される。
【0196】
GYROLAB(登録商標)イムノアッセイシステムは、自動化された生物分析のためのプラットフォームおよび迅速な試料ターンアラウンドを提供する(Fraleyら、2013、Bioanalysis 5:第1765~74頁)。
【0197】
5.3 (インビボ)半減期の延長
ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチド性リンカーを介して連結された、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位をさらに含んでもよく、上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位を有しない対応するポリペプチドと比較して、増加した(インビボ)半減期を有するポリペプチドを提供する。インビボ半減期の延長は、例えば、ポリペプチドが、投与後に、哺乳動物、例えばヒト対象において増加した半減期を有することを意味する。半減期は例えばt1/2ベータとして表すことができる。
【0198】
基、残基、部分または結合単位の種類は一般に制約されず、例えば、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはその断片、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小さいタンパク質またはペプチドからなる群から選択することができる。
【0199】
より特には、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン、または血清免疫グロブリン、例えばIgGに結合することができる結合単位からなる群から選択することができる。1つの実施形態において、増加した半減期を有するポリペプチドを提供する上記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分または結合単位は、ヒト血清アルブミンに結合することができる結合単位である。1つの実施形態において、結合単位はISVDである。
【0200】
例えば、WO2004/041865は、タンパク質の半減期を増加させるために他のタンパク質(例えば所望の標的に結合する1つまたはそれ以上の他のISVD)に連結させることができる血清アルブミン(特にヒト血清アルブミン)に結合するISVDを記載する。
【0201】
国際出願WO2006/122787は、(ヒト)血清アルブミンに対する多数のISVDを記載する。これらのISVDは、Alb-1(WO2006/122787における配列番号52)およびそのヒト化バリアント、例えばAlb-8(WO2006/122787における配列番号62)と呼ばれるISVDを含む。また、これらは、治療用タンパク質およびポリペプチドならびに他の治療用の実体または部分の半減期を延長させるために使用することができる。
【0202】
さらに、WO2012/175400は、Alb-23と呼ばれる、Alb-1のさらなる改良されたバージョンを記載する。
【0203】
1つの実施形態において、ポリペプチドは、Alb-1、Alb-3、Alb-4、Alb-5、Alb-6、Alb-7、Alb-8、Alb-9、Alb-10(WO2006/122787)およびAlb-23から選択される血清アルブミン結合性部分を含む。1つの実施形態において、血清アルブミン結合性部分は、WO2012/175400の第7~9頁に示されるような、Alb-8もしくはAlb-23またはそのバリアントである。1つの実施形態において、血清アルブミン結合性部分は、WO2012/175741、WO2015/173325、WO2017/080850、WO2017/085172、WO2018/104444、WO2018/134235、およびWO2018/134234に記載されるアルブミンバインダーから選択される。一部の血清アルブミンバインダーはまた、表A-4に示される。1つの実施形態において、本技術のポリペプチドのさらなる構成要素は、以下の項目Dに記載される通りである:
【0204】
D.ヒト血清アルブミンに結合し、
i.配列番号8のアミノ酸配列または配列番号8と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号16のアミノ酸配列または配列番号16と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むISVD。
【0205】
1つの実施形態において、ISVDは、配列番号8のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号12のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号16のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0206】
ヒト血清アルブミンに結合するそのようなISVDの例は、(先行する項目Dにおいて定義されるようなCDRに加えて)表A-2における構築物ALB23002について指し示されるような1つもしくはそれ以上の、または全ての、フレームワーク領域を有する。1つの実施形態において、それは、構築物ALB23002の全体アミノ酸配列(配列番号4、表A-1および表A-2を参照)を含むまたはからなるISVDである。
【0207】
項目Dはまた、Kabat定義を使用して以下のように記載することができる:
D’.ヒト血清アルブミンに結合し、
i.配列番号124のアミノ酸配列または配列番号124と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR1;
ii.配列番号132のアミノ酸配列または配列番号132と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR2;および
iii.配列番号140のアミノ酸配列または配列番号140と2もしくは1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列であるCDR3
を含むISVD。
【0208】
1つの実施形態において、ISVDは、配列番号124のアミノ酸配列であるCDR1、配列番号132のアミノ酸配列であるCDR2および配列番号140のアミノ酸配列であるCDR3を含む。
【0209】
ヒト血清アルブミンに結合するそのようなISVDの例は、(先行する項目D’において定義されるようなCDRに加えて)表A-2.1における構築物ALB23002について指し示されるような1つもしくはそれ以上の、または全ての、フレームワーク領域を有する。1つの実施形態において、それは、構築物ALB23002の全体アミノ酸配列(配列番号4、表A-1および表A-2.1を参照)を含むまたはからなるISVDである。
【0210】
また、別の実施形態において、ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%より高い、例えば95%より高いまたは99%より高い、配列同一性を有してもよく、CDRは、先行する項目DまたはD’において定義される通りである。1つの実施形態において、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは配列番号4のアミノ酸配列を含むまたはからなる。
【0211】
ヒト血清アルブミンに結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目DまたはD’)と比べて少なくとも1つのCDR中に2または1個のアミノ酸差異を有する場合、ISVDは、構築物ALB23002(配列番号4)と比較してヒト血清アルブミンに対する少なくとも半分の結合親和性、または少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、同じ方法、例えばSPRを使用して測定される。
【0212】
1つの実施形態において、ヒト血清アルブミンに結合するそのようなISVDがC末端位置を有する場合、それはC末端伸長、例えばC末端アラニン(A)またはグリシン(G)伸長を呈する。1つの実施形態において、そのようなISVDは、配列番号:33、34、36、38、39、40、41、42、43、および45(以下の表A-4を参照)から選択される。別の実施形態において、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、C末端位置とは別の位置を有する(すなわち本技術のポリペプチドのC末端ISVDではない)。1つの実施形態において、そのようなISVDは、配列番号:4、31、32、35、および37(以下の表A-4を参照)から選択される。
【0213】
5.4 核酸分子
本技術のポリペプチドをコードする核酸分子もまた提供される。
【0214】
「核酸分子」(「核酸」と交換可能に使用される)は、リン酸骨格を介して互いに連結されてヌクレオチド配列を形成したヌクレオチド単量体の鎖である。核酸は、例えばポリペプチドの発現および/または製造のために、宿主細胞または宿主生物の形質転換/トランスフェクションのために使用することができる。製造目的のための好適な宿主または宿主細胞は当業者に明らかであり、例えば、任意の好適な真菌、原核もしくは真核細胞もしくは細胞系または任意の好適な真菌、原核もしくは真核生物であってもよい。本技術のポリペプチドをコードする核酸を含む宿主または宿主細胞もまた本技術に包含される。
【0215】
核酸は、例えば、DNA、RNA、またはそのハイブリッドであってもよく、PNAのような(例えば化学的に)修飾されたヌクレオチドも含むことができる。それは一本鎖または二本鎖であり得る。1つの実施形態において、それは二本鎖DNAの形態である。例えば、本技術のヌクレオチド配列はゲノムDNA、cDNAであってもよい。
【0216】
本技術の核酸は、それ自体公知の方式で製造もしくは取得することができ、かつ/または好適な天然の供給源から単離することができる。天然に存在する(ポリ)ペプチドをコードするヌクレオチド配列を例えば部位特異的突然変異誘発に供することができ、それにより、配列バリエーションを有するポリペプチドをコードする核酸分子が提供される。また、当業者に明らかなように、核酸を製造するために、いくつかのヌクレオチド配列、例えば標的化部分をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列および例えば1つまたはそれ以上のリンカーをコードする核酸を好適な方式で連結させることもできる。
【0217】
核酸を生成するための技術は当業者に明らかであり、例えば自動化されたDNA合成;部位特異的突然変異誘発;2つもしくはそれ以上の天然に存在するおよび/もしくは合成配列(もしくはその2つもしくはそれ以上の部分)の組合せ、切断された発現産物の発現に繋がる突然変異の導入;1つもしくはそれ以上の制限部位の導入(例えば好適な制限酵素を使用して容易に消化および/もしくはライゲーションが可能なカセットおよび/もしくは領域を作出するため)、ならびに/または1つもしくはそれ以上の「ミスマッチ」プライマーを使用するPCR反応による突然変異の導入を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0218】
5.5 ベクター
本技術のポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターもまた提供される。ベクターは、本明細書において使用される場合、遺伝材料を細胞中に運ぶために好適な媒体である。ベクターは、ネイキッドの核酸、例えばプラスミドもしくはmRNA、またはより大きい構造物に包埋された核酸、例えばリポソームもしくはウイルスベクターを含む。
【0219】
一部の実施形態において、ベクターは、場合により1つまたはそれ以上の調節エレメント、例えば1つまたはそれ以上の好適なプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどに連結された、少なくとも1つの核酸を含む。1つの実施形態において、ベクターは発現ベクター、すなわち好適な条件下で、例えばベクターが(例えばヒト)細胞に導入される場合に、コードされるポリペプチドまたは構築物を発現するために好適なベクターである。DNAベースのベクターは、転写(例えばプロモーターおよびポリAシグナル)ならびに翻訳(例えばKozak配列)のためのエレメントの存在を含む。
【0220】
1つの実施形態において、ベクターにおいて、上記少なくとも1つの核酸および上記調節エレメントは互いに「作動可能に連結して」おり、これにより、それらが互いと機能的な関係性にあることが一般に意味される。例えば、プロモーターは、コーディング配列の転写および/または発現を開始させることまたは他に制御/調節することができる場合に、コーディング配列に「作動可能に連結して」いると考えられる(この場合、上記コーディング配列は、上記プロモーターの「制御下」にあるとして理解されるべきである)。一般に、2つのヌクレオチド配列が作動可能に連結している場合、それらは同じ配向性にあり、通常はまた、同じリーディングフレームにある。それらはまた、通常、本質的に連続しているが、これは要求されないこともある。
【0221】
1つの実施形態において、ベクターの任意の調節エレメントは、意図される宿主細胞または宿主生物中でそれらの意図される生物学的機能を提供する能力を有するようなものである。
【0222】
例えば、プロモーター、エンハンサーまたはターミネーターは、意図される宿主細胞または宿主生物中で「作動可能」であるべきであり、これにより、例えば上記プロモーターが、それが作動可能に連結されたヌクレオチド配列、例えばコーディング配列の転写および/または発現を開始させる能力または他に制御/調節する能力を有するべきであることが意味される。
【0223】
5.6 組成物
本技術はまた、少なくとも1つの本技術のポリペプチド、本技術のポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子またはそのような核酸分子を含む少なくとも1つのベクターを含む、組成物を提供する。組成物は医薬組成物であってもよい。組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤および/またはアジュバントをさらに含んでもよく、場合により1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に活性のポリペプチドおよび/または化合物を含んでもよい。
【0224】
5.7 宿主生物
本技術はまた、本技術のポリペプチド、本技術のポリペプチドをコードする核酸、および/または本技術のポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターを含む、宿主細胞または宿主生物に関する。
【0225】
好適な宿主細胞または宿主生物は当業者に明らかであり、例えば、任意の好適な真菌、原核もしくは真核細胞もしくは細胞系または任意の好適な真菌、原核もしくは真核生物である。特有の例は、HEK293細胞、CHO細胞、大腸菌(Escherichia coli)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)を含む。1つの実施形態において、宿主はピキア・パストリスである。
【0226】
5.8 方法およびポリペプチドの使用
本技術はまた、本技術のポリペプチドを製造する方法を提供する。方法は、ポリペプチドをコードする核酸で宿主細胞または宿主生物を形質転換/トランスフェクトすること、宿主中でポリペプチドを発現させること、場合によりこれに続いて1つまたはそれ以上の単離および/または精製工程を含んでもよい。特に、方法は:
a)好適な宿主細胞もしくは宿主生物中または別の好適な発現系中で、ポリペプチドをコードする核酸配列を発現させること;場合によりこれに続いて:
b)ポリペプチドを単離および/または精製すること
を含んでもよい。
【0227】
製造目的のための好適な宿主細胞または宿主生物は当業者に明らかであり、例えば、任意の好適な真菌、原核もしくは真核細胞もしくは細胞系または任意の好適な真菌、原核もしくは真核生物であってもよい。特有の例は、HEK293細胞、CHO細胞、大腸菌またはピキア・パストリスを含む。1つの実施形態において、宿主はピキア・パストリスである。
【0228】
本技術のポリペプチド、記載されるような核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物は医薬として有用である。
【0229】
よって、本技術は、医薬としての使用のための本技術のポリペプチド、記載されるような核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物を提供する。
【0230】
(予防的および/または治療的)処置における使用のための本技術のポリペプチド、記載されるような核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物もまた提供される。
【0231】
自己免疫または炎症性疾患の(予防的および/または治療的)処置における使用のための本技術のポリペプチド、記載されるような核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物もまた提供される。
【0232】
炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎ならびに化膿性汗腺炎の(予防的および/または治療的)処置における使用のための本技術のポリペプチド、記載されるような核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物もまた提供される。
【0233】
自己免疫または炎症性疾患を処置する(予防および/または治療)方法がさらに提供され、上記方法は、それを必要とする対象に、薬学的に活性の量の本技術のポリペプチド、記載されるような核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物を投与することを含む。
【0234】
炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎ならびに化膿性汗腺炎を処置する(予防および/または治療)方法がさらに提供され、上記方法は、それを必要とする対象に、薬学的に活性の量の本技術のポリペプチド、記載されるような核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物を投与することを含む。
【0235】
自己免疫または炎症性疾患を処置するための医薬組成物の製造における本技術のポリペプチド、記載されるような核酸分子もしくはベクター、またはポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物の使用がさらに提供される。
【0236】
炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎、乾癬、乾癬性関節炎または化膿性汗腺炎を処置するための医薬組成物の製造における本技術のポリペプチド、記載されるような核酸分子もしくはベクター、またはポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物の使用がさらに提供される。
【0237】
炎症性腸疾患は、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎であってもよい。
【0238】
「対象」は、本技術の文脈において言及される場合、任意の動物であり得る。1つの実施形態において、対象は哺乳動物である。哺乳動物の中で、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の間で区別することができる。非ヒト動物は、例えば、伴侶動物(例えばイヌ、ネコ)、家畜動物(例えばウシ科、ウマ科、ヒツジ科、ヤギ科、もしくはブタ科動物)、または研究目的のためおよび/もしくは抗体を製造するために一般に使用される動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、非ヒト霊長動物、例えばカニクイザル、もしくはラクダ科動物、例えばラマもしくはアルパカ)であってもよい。
【0239】
予防および/または治療目的の文脈において、対象は任意の動物、より特には任意の哺乳動物であり得る。1つの実施形態において、対象はヒト対象である。
【0240】
ポリペプチド、核酸分子およびベクターを含めて、物質、または組成物は、対象に任意の好適な投与の経路により、例えば経腸(例えば経口もしくは直腸)または非経口(例えば皮膚上、舌下、頬側、経鼻、関節内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経皮、もしくは経粘膜)投与により、投与することができる。1つの実施形態において、物質は、非経口投与、例えば筋肉内、皮下または皮内投与により投与される。1つの実施形態において、皮下投与が使用される。
【0241】
有効量の記載されるようなポリペプチド、核酸分子もしくはベクター、またはポリペプチド、核酸分子もしくはベクターを含む組成物は、意図される処置結果を提供するために対象に投与することができる。
【0242】
1つまたはそれ以上の用量を投与することができる。1つより多くの用量が投与される場合、用量は、ポリペプチド、組成物、核酸分子またはベクターの効果を最大化するために好適な間隔で投与することができる。
【0243】
【表2】
【0244】
【表3】
【0245】
【表4】
【0246】
【表5】
【0247】
【表6-1】
【表6-2】
【0248】
【表7】
【0249】
6 実施例
6.1 実施例1:多特異性ISVD構築物の生成
TNFαおよびIL-23に結合するISVD含有ポリペプチドF027500069(配列番号1)の同定は、抗TNFα VHHビルディングブロック(TNF06C11(WO2017/081320)、TNF01C02(WO2015/173325、配列番号327)およびVHH#3E(WO2004/041862、配列番号4))、抗IL-23p19 VHHビルディングブロック(23IL37D05、23IL119A03および23IL81A12(WO2009/068627))ならびに抗HSA VHHビルディングブロックALB23002(WO2017085172、配列番号10)に基づくビルディングブロックが含まれるデータ駆動型多特異性操作およびフォーマット化キャンペーンの結果としてもたらされた。ビルディングブロックの異なる位置/配向性および異なるリンカー長さ(9GS対35GS)を適用したところ、これらは異なるパラメーター(効力、交差反応性、発現など)のために不可欠であることが判明した。この文脈における効力は、実施例6においてアッセイされたようなインビトロでのTNFα誘導性NFκB活性化の阻害ならびに実施例7および8においてアッセイされたようなエクスビボでのIL-23誘導性mIL-22産生の阻害の他に、インビトロでのIL-23誘導性SIEプロモーター活性化の阻害を指す。
【0250】
38の構築物を含むパネル(表1)について小スケール製造のためにピキア・パストリスにおいて形質転換を行った。ISVD構築物発現の誘導は、メタノールの段階的な添加により行った。ISVD構築物が分泌された清澄化された培地を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを介する精製、続いて脱塩のための出発材料として使用した。精製された試料を機能的な特徴付けおよび発現評価のために使用した。
【0251】
一部の構築物は、リンカー長さおよびISVDビルディングブロックの相対位置に依存して効力の障害を示した。例えば:カニクイザルTNFαに対する二価VHH#3Eの効力は、短い9GSリンカーを用いて連結された場合に強く障害された。別の例は、多特異性構築物中の抗IL-23 ISVDビルディングブロック、37D05の位置は、最大の効力を得るために不可欠であったことである。
【0252】
【表8-1】
【表8-2】
【0253】
その後に、両方の標的(ヒトおよびカニクイザル)に対して強力であることが判明し、事前の収率概算値に基づいて、高い発現レベルの潜在能力を含む、ISVD構築物F027500069、F027500093、F027500095およびF027500096からなる4つの多特異性構築物のパネルまで大きいパネルをトリミングした。
【0254】
ピキア・パストリスでのより大スケールの2Lでの製造を発現収率決定ならびに生物物理学的特性および既存の抗体の反応性の評価のために行った。表2は、ビルディングブロックの特有の配向性が、ピキア・パストリスにおいて高い発現レベルを得るために要求されたことを示す。同じビルディングブロックを有するが異なる配向性および異なるリンカー長さを有する4つのフォーマット化ISVD構築物について5mlの培養物から得られた発現収率は、ISVD 6C11は良好な発現のためにN末端位置を必要とすることを明確に指し示す。これはF027500069およびF027500070の2Lでの発酵で裏付けられ、それにおいて、N末端6C11を有するISVD構築物(F027500069)は6.4g/Lの力価に達し、これはC末端6C11を有するF027500070よりも3.2倍高かった。
【0255】
【表9】
【0256】
表3および実施例9は、既存の抗体の反応性は各々のISVD構築物の組成および価数により駆動されることを示す。
【0257】
【表10】
【0258】
最後に、効力、既存の抗体に対する低減された結合、優れた発現レベルおよびCMCの特徴、定義された緩衝液中での100mg/mLの濃度で3.3cP、146mg/mLで6.4cPの低い粘度に基づいて、ISVD構築物F027500069を選択した。
【0259】
6.2 実施例2:TNFα、IL-23および血清アルブミンに対する多特異性ISVD構築物の結合親和性
ヒトおよびカニクイザルTNFα、ヒトおよびカニクイザルIL-23ならびにヒトおよびカニクイザル血清アルブミンに対するF027500069の、平衡解離定数(K)として表される親和性を、Gyrolab xP Workstation(Gyros)での溶液中親和性測定によって定量化した。
【0260】
制御測定下で、TNFαもしくはIL-23(1μM~0.1pMの範囲内)または血清アルブミン(10μM~1pMの範囲内)の段階希釈液および固定量のF027500069(TNFαの場合は50pM、IL-23の場合は20pMまたは12.5pM、血清アルブミンの場合は1nM)を混合して相互作用させ、24もしくは48時間(IL-23およびTNFαの場合)または2時間(血清アルブミンの場合)インキュベートして平衡に到達させた。
【0261】
受容体制御測定下で、TNFαもしくはIL-23(1μM~0.1pMの範囲内)または血清アルブミン(10μM~1pMの範囲内)の段階希釈液および固定量のF027500069(TNFαの場合は5nM、IL-23の場合は1.25nM、血清アルブミンの場合は50nM)を混合して相互作用させ、24もしくは48時間(IL-23およびTNFαの場合)または2時間(血清アルブミンの場合)インキュベートして平衡に到達させた。
【0262】
ビーズのカラムを含有し、平衡化溶液からの遊離F027500069を捕捉するための分子プローブとして使用されるGyrolab Bioaffy 1000 CDの微細構造中にビオチン化ヒトTNFα/IL-23/血清アルブミンを捕捉させた。TNFα/IL-23/血清アルブミンおよびF027500069の混合物(遊離TNFα/IL-23/血清アルブミン、遊離F027500069およびTNFα/IL-23/血清アルブミン-F027500069複合体を含有する)をビーズを通じて流したところ、小さいパーセンテージの遊離F027500069が捕捉され、これは遊離ISVD濃度に比例する。蛍光標識された抗VHH抗体を次に注入して、任意の捕捉されたF027500069を標識し、過剰な蛍光プローブをリンスして除去した後に、蛍光における変化を決定した。Gyrolab Analysisソフトウェアを使用して希釈系列のフィッティングを行い、Kおよび受容体制御曲線を分析してK値を決定した。
【0263】
結果(表4)は、多特異性ISVD構築物はヒト/カニクイザルIL-23およびヒト/カニクイザルTNFαに高い親和性で結合することを実証する。
【0264】
【表11】
【0265】
6.3 実施例3:膜結合型TNFαに結合する多特異性ISVD構築物
ヒト膜TNFα発現HEK293H細胞、ならびに、PBMCから単離され、PMAおよびイオノマイシンで刺激された活性化CD4+細胞においてフローサイトメトリーを使用して膜結合型TNFαに対するF027500069の結合を実証した(TNFα発現HEK293H細胞についてのデータを示す)。簡潔に述べれば、細胞を1×10細胞/ウェルの密度で播種し、100nMから開始して0.5pMまでのF027500069の希釈系列と共に4℃で1時間インキュベートした。並行して、細胞をPBS中の4%パラホルムアルデヒドおよび0.1%グルタルアルデヒドで固定した後に播種し(膜結合型TNFαの検出を増加させるため)、ISVDの希釈系列と共に4℃で1時間または室温で24時間インキュベートした。細胞を3回洗浄した後に、抗VHH mAbと4℃で30分間インキュベートし、再び洗浄し、4℃でヤギ抗マウスPE標識化抗体と30分間インキュベートした。試料を洗浄し、FACS緩衝液(5nMのTOPRO3を補充した10% FBSおよび0.05%アジ化ナトリウムを含むD-PBS)に再懸濁した。細胞懸濁液を次にiQuescreenerで分析した。GraphPad Prismを使用してEC50値を算出した。F027500069のEC50値は、1時間のインキュベーション後に生存細胞および固定された細胞について同じ範囲内にあったが、細胞の固定は膜上のTNFαのより高い発現レベルを結果としてもたらした(表5)。24時間のインキュベーション後に、結合の平衡に達し、EC50の随伴的な6.6倍の向上があった。
【0266】
【表12】
【0267】
6.4 実施例4:TNFαおよびIL-23に選択的に結合する多特異性ISVD構築物
TNFαおよびIL-23関連ヒトサイトカインに対する結合の非存在をSPRを介して評価した。hIL-12はIL-23とp40サブユニットを共有するので、それを試験した。TNFスーパーファミリーメンバーヒトFASL、TNFβ、LIGHT、TL-1A、RANKLをTNFαの関連するサイトカインとして試験した。
【0268】
アミンカップリングを使用して標的を10μg/mLで600秒間固定化し、活性化のためにEDC/NHSの420秒の注入および失活のために1MのエタノールアミンHClの420秒の注入を行った(Sierra Sensors Amine Coupling Kit II、カタログ番号ACK-001-025)。活性化、失活およびリガンド注入のための流速は10μl/分に設定した。10mM酢酸固定化緩衝液のpHは、各リガンドのpIから約1.5を引くことにより選択した。
【0269】
次に、1μMのF027500069を2分間注入し、45μL/分の流速で900秒間解離させた。ランニングバッファーとして1×HBS-EP+ pH7.4を使用した。陽性対照として、0.2μM α-huIL-12 Abおよび0.5μM α-huFASL Ab、0.5μM α-huTNFβ Ab、0.5μM α-huLIGHT Ab、0.5μM α-huTL-1A Abおよび0.5μM α-huRANKL VHHを注入した。固定化された標的とのF027500069および陽性対照の間の相互作用を、結合でのチップ上の質量変化の結果として起こる抵抗性指数(refractory index)における増加の検出により測定した。
【0270】
全ての陽性対照はそれらの各々の標的に結合した。ヒトIL-12、FASL、TNFβ、LIGHT、TL-1A、RANKLに対するF027500069の結合は検出されなかった。
【0271】
6.5 実施例5:hIL-23およびhTNFαに対する多特異性ISVD構築物の同時の結合
ProteOn XPR36機器を使用して、F027500069はhTNFαおよびhIL-23に同時に結合できるのかどうかを決定した。このために、HSAをアミンカップリングを介してGLC ProteOnセンサーチップ上に固定化した。100nMのF027500069を10μl/分でHSA表面に2分間注入して、ALB23002ビルディングブロックを介してISVDを捕捉した。その後に100nMのhIL-23、hTNFαまたはhOX40Lのいずれかを注入するか、または100nM IL-23 + 100nM TNFα、100nM IL-23 + 100nM OX40Lもしくは100nM TNFα + 100nM IL-13の混合物を10μl/分の流速で2分間注入し、その後に600秒の解離工程を行った。HSA表面を45μl/分でのHCI(100mM)の2分の注入で再生させた。応答単位における増加:TNFαのみからの約500RUの増加、IL-23のみからの約880RUの増加、ならびにIL-23およびTNFα混合物についての約1300RUの増加により示されるように、F027500069はヒトIL-23およびヒトTNFαに同時に結合できることをセンサーグラム(図1)は実証する。
【0272】
6.6 実施例6:インビトロでのTNFα誘導性NFkB活性化の多特異性ISVD構築物による阻害
HEK293_NFkB-NLucP細胞は、NFkB依存性プロモーターの制御下のNanoルシフェラーゼをコードするレポーター構築物を安定的にトランスフェクトされたTNF受容体発現細胞である。可溶性ヒトおよびカニクイザルTNFαとの細胞のインキュベーションは、NFκB媒介性Nanoルシフェラーゼ遺伝子発現を結果としてもたらした。細胞に添加された1:50の比で溶解緩衝液と混合されたNano-Gloルシフェラーゼ基質を使用してNanoルシフェラーゼ発光を測定した。試料をシェーカー上で5分混合して完全な溶解を得た。
【0273】
透明底を有する白色組織培養(TC)処理96ウェルプレート中の通常の増殖培地中20000細胞/ウェルでGlo response(商標) HEK293_NFkB-NLucP細胞を播種した。F027500069または参照化合物(抗TNFα参照mAb)の希釈系列を25pMのヒトまたは70pMのカニクイザルTNFαに加え、30μMのHSAの存在下37℃で細胞と5時間インキュベートした。
【0274】
F027500069は、抗TNFα参照mAbと同等の38.8pM(ヒトTNFα)および128pM(カニクイザルTNFα)のIC50と共に濃度依存性の方式でヒトおよびカニクイザルTNFα誘導性NFκB活性化を阻害した(表6、図2)。
【0275】
【表13】
【0276】
6.7 実施例7:エクスビボでのIL-23誘導性mIL-22産生の多特異性ISVD構築物による阻害
ヒト(およびカニクイザル)IL-23は、マウス脾臓細胞からのmIL-17およびmIL-22分泌を刺激した(Aggarwalら、2003、J.Biol.Chem.278(3):第1910~4頁)。F027500069はエクスビボでmIL-22のIL-23誘導性発現を遮断することが実証された。5匹のC57BL/6マウスの脾臓を取り出し、脾臓細胞を収穫し、単一細胞懸濁液を調製した。細胞を20ng/mlの組換えmIL-2の存在下で培養し、400000細胞/ウェルで96ウェル平底プレートに播種した。F027500069または参照化合物(抗hIL-23参照mAb1および抗hIL-23参照mAb2)の段階希釈液を組換えhIL-23(36pM)またはカニクイザルからの組換えIL-23(36pM)と培養培地中、室温で30分間プレインキュベートし、次に脾臓細胞と30μM HSAの存在下37℃でさらに3日間インキュベートした。上清を収集し、ELISAを使用してmIL-22のレベルを測定した。
【0277】
表7に示される結果は、F027500069は43pM(ヒトIL-23)および31pM(カニクイザルIL-23)のIC50と共に濃度依存性の方式でhIL-23およびカニクイザルIL-23誘導性mIL-22産生を阻害したことを実証する。阻害は、参照化合物抗hIL-23参照mAb1および抗hIL-23参照mAb2による阻害よりも強力であった。
【0278】
6.8 実施例8:インビトロでのIL-23誘導性SIEプロモーター活性化の多特異性ISVD構築物による阻害
Glo response(商標) HEK293_ヒトIL-23R/IL-12Rb1-Luc2P細胞に、SIE応答性プロモーターの制御下のルシフェラーゼ遺伝子を含有するレポーター構築物を安定的にトランスフェクトした。追加的に、これらの細胞は、ヒトIL-23受容体の両方のサブユニット、すなわちIL-12Rb1およびIL-23Rを構成的に過剰発現した。IL-23によるこれらの細胞の誘導で、ルシフェラーゼレポータータンパク質が発現され、それを基質、5’-フルオロルシフェリン(Bio-Glo(商標) Luciferase Assay System)の添加によるその酵素活性に基づいて定量化する。
【0279】
細胞を通常の増殖培地中で培養し、透明底を有する96ウェル白色組織培養処理プレート中15000細胞/ウェルで播種した。F027500069または参照化合物(抗hIL-23参照mAb1および抗hIL-23参照mAb2)の段階希釈液を細胞に加え、続いて組換えhIL-23(10pM)またはカニクイザルIL-23(40pM)を加えた。細胞を30μM HSAの存在下37℃で4時間15分インキュベートした。その後にBio-Gloを各ウェルの細胞に加え、ルシフェラーゼ発光を測定した。F027500069は、ヒトおよびカニクイザルIL-23依存性のシグナル伝達をそれぞれ250pMおよび323pMのIC50と共に阻害した(表7および図3)。
【0280】
【表14】
【0281】
6.9 実施例9:既存の抗体に結合する多特異性ISVD構築物
ProteOn XPR36(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を使用してISVD構築物F027500069の既存の抗体の反応性を正常ヒト血清(n=96)において評価した。PBS/Tween(リン酸緩衝食塩水、pH 7.4、0.005% Tween20)をランニングバッファーとして使用し、25℃で実験を行った。
【0282】
チップ上に固定化されたHSAへのALB23002ビルディングブロックの結合を介してISVDをチップ上に捕捉させた。HSAを固定化するために、ProteOn GLCセンサーチップのリガンドレーンをEDC/NHS(流速30μl/分)で活性化させ、HSAをpH 4.5のProteOn酢酸緩衝液中100μl/mlで注入し、約3200RUの固定化レベルとした。固定化後に、エタノールアミンHCI(流速30μl/分)で表面を不活性化させた。
【0283】
その後に、ISVD構築物を45μl/分でHSA表面に2分間注入して約800RUのISVD捕捉レベルとした。既存の抗体を含有する試料を14,000rpmで2分間遠心分離し、上清をPBS-Tween20(0.005%)中1:10で希釈した後に、45μl/分で2分間注入し、その後に400秒の解離工程を行った。各サイクル後(すなわち新たなISVD捕捉および血液試料注入工程の前)に、45μl/分でのHCI(100mM)の2分の注入でHSA表面を再生させた。既存の抗体結合を示すセンサーグラムが、1)ISVD-HSA解離および2)参照リガンドレーンへの非特異的結合を引くことによる二重の照合後に得られた。既存の抗体の結合レベルを、報告点を125秒(会合の終了の5秒後)に設定することにより決定した。既存の抗体の結合における低減パーセンテージを、参照ISVDの125秒での結合レベルと比べて算出した。
【0284】
各ビルディングブロックにおける突然変異L11VおよびV89LならびにC末端アラニンの導入による既存の抗体の結合の低減のために最適化された四価ISVD構築物F027500069は、対照非最適化四価ISVD構築物F027301099と比較して既存の抗体に対する実質的により低い結合を示した(表8および図4)。
【0285】
【表15】
【0286】
既存の抗体の結合は多特異性構築物の価数および組成に依存した。表3および図5は、構築物F027500069は構築物F027500095およびF027500096よりも低い既存の抗体の反応性を示したことを実証する。
【0287】
6.10 実施例10:ヒトTNFαトランスジェニックTg197多発性関節炎モデルにおけるF027500069の評価。
F027500069をTNF駆動性の進行性多発性関節炎のTg197マウスモデル(Kefferら、1991、EMBO J.、10:第4025~4031頁)においてプロファイリングした。これらのマウスにおいて、改変されたヒトTNFα遺伝子を導入遺伝子としてマウスに挿入した。ヒト遺伝子は、転写されたmRNAがより安定となるように改変され、そのため100%の表現率で4つ全ての足においてTNFαの過剰発現および自発的な進行性関節炎に繋がった。徴候および症状は約6週齢時に見られるようになり、処置されない場合、常に増加して、約10週齢以降に重大な瀕死および死亡に繋がる。関節炎重症度を以下に詳述されるようなスコアリングシステムにより臨床的に評価した:
【0288】
【表16】
【0289】
関節炎は、ヒトTNFαの阻害に向けられた治療剤での処置に感受性であった(Shealyら、2002、Arthritis Res.4(5):R7)。
【0290】
用量依存的な効能を確立する目的のために、異なる用量のF027500069を週に2回の腹腔内注射により治療的な方式で関節炎の目に見える徴候および症状を有する6週齢の動物(n=8動物/群)に投与した。ヒト骨髄腫血清から精製されたヒトIgG1(BioXcell #BE0297)を陰性対照として使用し、抗hTNFα参照mAbを陽性対照として使用して関節炎を抑制した。F027500069をそれぞれ1.3mg/kg体重、4mg/kg、および13.5mg/kgの3つの異なる用量強度で投与した。処置を11週齢まで継続した。臨床的な関節炎スコアを週に1回決定した。図6に示されるように、F027500069での処置は、経時的な臨床的な関節炎スコアの用量依存的な抑制を結果としてもたらした。
【0291】
ヒトIgG1陰性対照抗体で処置された動物は、11週目までに1.099±0.1071の平均関節炎スコアとなった。抗hTNFα参照mAbは関節炎の進行を完全に抑制し、11週目までに0.4844±0.0594の平均スコアであった。F027500069は、11週目まで関節炎の進行を低減させ、0.8047±0.0929(1.3mg/kg)、0.7969±0.0585(4mg/kg)、および0.6016±0.0349(13.5mg/kg)の平均スコアであった。関節炎の全体的な抑制を曲線下面積(AUC、図7)により分析した。F027500069の全ての用量は、Tg197関節炎モデルにおいて抗hTNFα参照mAbと同等に関節炎の進行を有意に抑制した。
【0292】
処置の完了時に、後足首関節を組織学のために処理し、以下のスコアリングシステムを用いて切片を関節炎の構造的徴候について評価した:
【0293】
【表17】
【0294】
組織学的スコア付けの結果を図8に描写する。構造的関節炎および関節破壊がより高用量のF027500069により有意に抑制された。
【0295】
結論として、抗TNFα参照mAbと同等の程度までのF027500069による関節炎の徴候および症状の用量依存性の抑制の他に、構造的進行の阻害を結果は実証する。
【0296】
6.11 実施例11:ヒトIL-23誘導性皮膚炎症モデルにおけるF027500069の評価。
マウスにおける組換えIL-23の皮内注射は、注射部位の周囲の赤化および腫脹を伴う急性皮膚炎症に繋がった。組織学的に、乾癬性皮膚炎の特徴が見られ、これは例えばケラチノサイト過形成による上皮肥厚、角化、ならびにT細胞およびマクロファージのような免疫細胞浸潤であった。分子レベルで、モデルにおけるトランスクリプトームの変化は、正常な皮膚と比べてヒト乾癬損傷性皮膚において観察されるものと概しては重なった(Gauldら、2018、Journal of Dermatological Science 92:第45~53頁)。そのため、IL-23皮膚炎症モデルは乾癬の機構的モデルに似ている。
【0297】
IL-23媒介性炎症の阻害を調べるために、Rizzoら、2011、J Immunol; 186:第1495~1502頁から適合させた皮膚炎症モデルにおいてF027500069を試験した。20μlの総体積中の組換えヒトIL-23 1μgを雌C57BL/6マウスの右耳に1、2、3、および4日目に皮内注射した。PBSを1つの群のマウスの耳に対照として注射した。耳皮膚の肥厚を1日毎にキャリパーにより測定した。F027500069および対照化合物を腹腔内注射により1および3日目に投与した。5日目に、マウスを屠殺し、皮膚パンチ生検を採取した。プロテアーゼ阻害剤カクテルを補充したPBS中で生検をホモジナイズし、下流のエフェクターサイトカインIL-22レベルを決定した。
【0298】
用量依存的な効能を確立する目的のために、異なる用量のISVD構築物を週に2回の腹腔内注射により:治療的な方式で、関節炎の目に見える徴候および症状を有する6週齢の動物(n=10動物/群)に投与した。ヒト骨髄腫血清から精製されたヒトIgG1(BioXcell #BE0297)を陰性対照として使用し、抗hIL-23参照mAb1を陽性対照として使用して皮膚炎症を抑制した。F027500069をそれぞれ0.13mg/kg体重、0.4mg/kg、1mg/kg、および4mg/kgの4つの異なる用量強度で投与した。図9に示されるように、F027500069での処置は、5日目におけるベースラインからの耳厚における変化として描写される皮膚腫脹の用量依存的な抑制を結果としてもたらした。
【0299】
皮膚生検を5日目に採取し、組織ホモジネートを調製した。Mesoscale Discovery V-plex mouse IL-22 assay kitを利用してマウスIL-22レベルを測定した(#K152WVD、図10)。IL-23の投与は測定可能なレベルのIL-22に繋がり、PBSを注射した皮膚からの全ての試料は用いられたアッセイの定量限界未満(LLOQ)であった。全ての用量のF027500069の他に抗hIL-23参照mAb1は、IL-22組織レベルを有意に抑制した(1mg/kg用量群についてIL-22レベルは決定されなかった)。
【0300】
追加的に、皮下投与の実現可能性をIL-23誘導性皮膚炎症モデルにおける別の実験において評価した。2つの用量のF027500069(0.1mg/kgおよび1mg/kg)を1および3日目に腹腔内注射または皮下注射のいずれかとして投与し、耳厚変化を得た(図11)。この実験において、1mg/kgの用量の無関連VHHを陰性対照として使用し(Nab対照)、3mg/kgの用量の抗hIL-23参照mAb1(IP)を陽性対照として使用した。
【0301】
追加的に、組織IL-22レベルを5日目の皮膚生検ホモジネートから測定した(図12)。
【0302】
結論として、結果は、皮膚肥厚および組織エフェクターサイトカインレベルの両方においてIL-23誘導性皮膚炎症の抑制を実証する。腹腔内および皮下の両方の投与の経路が実現可能である。
【0303】
6.12 実施例12:ヒトTNFα/TNFR1ノックインマウスにおけるコラーゲン抗体誘導性関節炎モデルにおけるF027500069の評価。
TNFαおよびTNF受容体1(TNFR1)の両方の遺伝子座が各々のヒト遺伝子座に置き換えられた専売マウスにおけるコラーゲン抗体誘導性関節炎(CAIA)モデルにおいてF027500069をプロファイリングした。
【0304】
群当たり8匹の動物に0日目に軟骨のコラーゲン2に向けられたモノクローナル抗体のカクテル8mgを注射した(ArthritoMab、MDbioscience、CIA-MAB-2C)。1日目に、関節炎の発症を25μgの細菌リポ多糖(LPS)の注射により誘導した。試験化合物を単回注射として1回、LPS注射の6時間後に投与した。関節炎の徴候および症状の進展を1日毎に7日目まで、以下に詳述されるような関節炎スコアに基づいて評価した:
【0305】
【表18】
【0306】
F027500069を1.3mg/kg体重で投与し、抗hTNFα参照mAb陽性対照を0.5mg/kgで投与した。図13は、経時的な関節炎の徴候および症状の進展を示す。F027500069または抗hTNFα参照mAbの両方の単回の予防的な投与は関節炎発症の完全な抑制を結果としてもたらした。
【0307】
6.13 実施例13:ヒトTNFαノックインマウスにおけるヒトIL-23誘導性皮膚炎症モデルにおけるF027500069の評価。
F027500069はヒトまたは霊長動物標的(IL-23およびTNFαの両方)のみに結合して阻害するので、ヒトIL-23誘導性皮膚炎症をTNFαヒト化マウスにおいて繰り返した。この専売系統において、マウス中の全ゲノムTNFα座位をヒト遺伝子座で置き換えた。エクソン-イントロン構造および調節エレメントはマウスおよびヒトの間で保存される。忠実な発現の他に、マウスにおいて応答を誘発するヒトTNFαの機能的な能力は前もって評価した。
【0308】
hIL-23の皮内注射はTNFα発現における中程度の増加に繋がった(自身のデータおよびGauldら、2018、Journal of Dermatological Science 92:第45~53頁)。等モル用量のF027500069ならびに対応する単一特異性ISVDビルディングブロックF027500101(抗TNFα)およびF027500017(抗IL-23)をこのモデルにおいて投与して、二重標的化の潜在的な付加的効果を調べた。投与された用量強度は3.6nmol/kgであり、約0.1mg/kgに対応した。この低い用量は、ある程度の残存遊離IL-23およびそのため下流のTNFα分泌物を可能とするように選択した。追加的に、高用量のF027500069の他に抗hIL-23参照mAb1を陽性対照として投与した。耳厚における変化を高対照(Nab陰性対照)および低(無IL-23注射)対照に対して正規化した((試料-低対照)/(高対照-低対照))。図14は結果を図示する。3.6nmol/kgのF027500101での単一特異性TNFα阻害は皮膚腫脹を阻害せず、3.6nmol/kgのF027500017での単一特異性IL-23阻害は中等度であるが有意な効果を有した。3.6nmol/kgのF027500069でのTNFαおよびIL-23の両方の二重標的化は皮膚腫脹の数値的に優れた抑制に繋がった。
【0309】
皮膚生検を5日目に採取し、標準的な方法を使用してmRNAを調製した。mRNAをIlumina NovaSeq(商標) 6000プラットフォーム上のペアードエンド、バルクベースの全トランスクリプトームシークエンシングに供した。NAb対照と比べて差次的に発現された遺伝子(DEG、p<0.001で倍数変化>2)を処置群の間のオーバーラップについて分析した。図15に示されるように、多特異性処置群との単一特異性処置群の大きいオーバーラップにもかかわらず、依然として769のDEGのうちの199個はF027500069処置に特異的であった。このモデルにおけるTNFαおよびIL-23の両方の二重標的化は独特の分子応答および恐らくはヒト疾患の相乗的な寛解に繋がったことをこれは指し示す。
【0310】
結論として、IL-23誘導性皮膚炎症におけるIL-23およびTNFαの両方の多特異的阻害は、皮膚肥厚に対する数値的に付加的な効果に繋がり、独特のトランスクリプトームプロファイルを誘発したことを結果は実証する。
【産業上の利用可能性】
【0311】
7 産業上の利用可能性
本明細書に記載のポリペプチド、それをコードする核酸分子、核酸を含むベクターおよび組成物は、処置、例えば炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎または化膿性汗腺炎を患う対象の処置における例のために使用することができる。
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【配列表】
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【国際調査報告】