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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】電力効率の良いデータ送信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20230202BHJP
【FI】
H04W52/02 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534858
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(85)【翻訳文提出日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2020084977
(87)【国際公開番号】W WO2021116056
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】19214520.9
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521196512
【氏名又は名称】タレス ディアイエス エイアイエス ドイツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100086368
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 誠
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ブロイアー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン デンジン
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067CC21
5K067EE02
5K067EE10
5K067GG04
5K067HH22
(57)【要約】
本発明は、セルラネットワークの基地局によるユーザ装置からリモートサーバへのデータ送信方法であって、ユーザ装置が上記リモートサーバへのペイロードデータ送信を実行するように構成され、方法が、‐基地局への第1のシグナリングデータ送信を実行するステップ、‐上記第1のシグナリングデータ送信に費やされた電力を表す第1の電力値を決定するステップ、‐第1の電力値を基準値として保持するステップ、‐基地局への第2のシグナリングデータ送信を実行するステップ、‐上記第2のシグナリングデータ送信に費やされた電力を表す第2の電力値を決定するステップ、上記第2の電力値が上記第1の電力値を所定の閾値だけ上回る場合に、次のペイロードデータ送信を所定の時間遅らせるステップを含む方法に関する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラネットワークの基地局(2)によるユーザ装置(1)からリモートサーバへのデータ送信方法であって、前記ユーザ装置(1)が前記リモートサーバへのペイロードデータ送信を実行するように構成され、
前記方法が、
‐前記基地局(2)への第1のシグナリングデータ送信(TAU1)を実行するステップ、
‐前記第1のシグナリングデータ送信(TAU1)に費やされた電力を表す第1の電力値を決定するステップ、
‐前記第1の電力値(PV1)を基準値として保持するステップ、
‐前記基地局(2)への第2のシグナリングデータ送信(TAU2)を実行するステップ、
‐前記第2のシグナリングデータ送信(TAU2)に費やされた電力を表す第2の電力値(PV2)を決定するステップ、
前記第2の電力値(PV2)が前記基準電力値を所定の閾値だけ上回る場合に、次のペイロードデータ送信(DP1)を所定の時間遅らせるステップを含む方法。
【請求項2】
前記第1の電力値(PV1)を決定するステップの後に、前記ユーザ装置(1)において節電モードをアクティブ化し、前記第2のシグナリングデータ送信(TAU2)を実行するステップの前に前記節電モードを非アクティブ化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記次のペイロードデータ送信(DP1)の前記遅延が、少なくとも前記基地局(2)への第3のシグナリングデータ送信(TAU3)を行った後まで続く、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記遅延が、次の節電モードがアクティブ化されるまでは続かない、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
‐前記ペイロードデータ送信(DP1)を実行すること、
‐前記ペイロードデータ送信(DP1)を遅らせること
のグループのうち少なくとも1つを考慮して、前記所定の閾値を修正するステップをさらに含む、請求項1乃至4の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シグナリングデータ送信に費やされた電力を示す少なくとも2つの決定された電力値を考慮して、前記基準電力値を修正するステップをさらに含む、請求項1乃至5の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ユーザ装置(1)が最大遅延許容値をさらに保持しており、
前記方法が、期限切れの遅延が前記最大遅延許容値を上回る場合に前記次のペイロードデータ送信(DP1)を実行するステップを含む、請求項1乃至6の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ペイロードデータ送信(DP1)が、前記最大遅延許容値を上回るために実行される場合に、
‐前記遅延許容値、
‐前記所定の閾値、及び
‐節電モード持続時間
のグループのうち少なくとも1つを修正するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
セルラネットワークの基地局(2)によりリモートサーバにデータ送信するユーザ装置(1)であって、前記ユーザ装置(1)が、前記リモートサーバへのペイロードデータ送信(DP1)を定期的に実行するように構成され、
‐前記基地局(2)への第1のシグナリングデータ送信(TAU1)を実行し、
‐前記第1のシグナリングデータ送信(TAU1)に費やされた電力を表す第1の電力値(PV1)を決定し、
‐前記第1の電力値(PV1)を基準電力値として保持し、
‐前記基地局(2)への第2のシグナリングデータ送信(TAU2)を実行し、
‐前記第2のシグナリングデータ送信(TAU2)に費やされた電力を表す第2の電力値(PV2)を決定し、
前記第2の電力値(PV2)が前記基準電力値を所定の閾値だけ上回る場合に、次のペイロードデータ送信(DP1)を所定の時間遅らせるようにさらに構成されたユーザ装置(1)。
【請求項10】
前記第1の電力値(PV1)を決定するステップの後に、前記ユーザ装置において節電モードをアクティブ化し、
前記第2のシグナリングデータ送信(TAU2)を実行するステップの前に前記節電モードを非アクティブ化するようにさらに構成された、請求項9に記載のユーザ装置(1)。
【請求項11】
前記次のペイロードデータ送信(DP1)の前記遅延が、少なくとも前記基地局(2)への第3のシグナリングデータ送信(TAU3)を行った後まで続くようにさらに構成された、請求項9又は10に記載のユーザ装置(1)。
【請求項12】
‐前記ペイロードデータ送信(DP1)を実行すること、
‐前記ペイロードデータ送信(DP1)を遅らせること
のグループのうち少なくとも1つを考慮して、前記所定の閾値を修正するようにさらに構成された、請求項9乃至11の少なくとも一項に記載のユーザ装置(1)。
【請求項13】
前記シグナリングデータ送信に費やされた電力を示す少なくとも2つの決定された値を考慮して前記基準電力値を修正するようにさらに構成された、請求項9乃至12の少なくとも一項に記載のユーザ装置(1)。
【請求項14】
最大遅延許容値を保持し、
期限切れの遅延が前記最大遅延許容値を上回る場合に、前記次のペイロードデータ送信(DP1)を実行するようにさらに構成された、請求項9乃至13の少なくとも一項に記載のユーザ装置(1)。
【請求項15】
前記ペイロードデータ送信(DP1)が、前記最大遅延許容値を上回るために実行される場合に、
‐前記遅延許容値、
‐前記所定の閾値、及び
‐節電モード持続時間
のグループのうち少なくとも1つを修正するようにさらに構成された、請求項14に記載のユーザ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ装置のデータ送信方法に関する。本発明は上記方法を用いるユーザ装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、マシンタイプデバイスの無線通信、すなわちIoT(モノのインターネット)の分野では、ユーザ装置が厳しい電力消費要件下で動作していることが知られている。通常、現場で稼働するIoTデバイスは、潜在的に何年間も持続する必要があるバッテリによって駆動される。これは、スマートフォンのような通常の携帯電話器と比べて無線信号の送受信量を減らすことによってのみ可能である。
【0003】
第1のアプローチは、CAT‐M及びCAT‐NB‐IoTのようなサブ規格で動作する低カテゴリデバイス用の4G(ロングタームエボリューションLTE)又は5G(新無線NR)の規格化において既に定義されている。かかるアプローチは、最大24時間の拡張不連続受信サイクル(eDRX)、又は一定時間のユーザ装置のディープスリープを可能にする節電モード(PSM)を含む。
【0004】
しかしながら、一定時間後、ユーザ装置は、ユーザ装置が動作しているセルラネットワークが、ユーザ装置がどんな種類の信号も送信しない場合に、ユーザ装置を電源が入っていないものとしてマークすることを避けるために、まだ作動していることをセルラネットワークに示す必要がある。
【0005】
これは、リモートデバイス又はサーバに少量のデータをまれにしか送信していない、また着信を期待しないIoTデバイスに特に適用されるアプローチである。これは、例えば電力計量装置に適用される。これらの装置は、例えば1日に1回、測定値が送信される限りにおいて、データ送信がある時点に実行される場合に、受信側にとって大きな役割を果たさない測定値を、1日のようなある期間のうちに1回送信することが期待される。このタイプの通信は非一時的であるといわれる。
【0006】
しかしながら、PSMのような利用可能なアプローチでは、送信用の測定値が保留中の後、PSMフェーズが終了する次の機会に、データ伝送条件がそれほど悪く、測定値の送信がデータ送信ごとに計算されるよりもはるかに多くの電力を消費することになることがある。これは特に、受信基地局が信号を復号するために十分な電力を蓄積できるまで、ユーザ装置が、例えば同じ無線送信の繰り返しにより克服される悪いカバレッジ条件で住宅の地階に固定設置されている場合に、拡張されたカバレッジモードで動作している場合である。そのような繰り返しは、悪条件では1000回にまでなることがある。
【0007】
データ送信の予定時点において、例えばトラックが住宅の前のサービング基地局への視線上に駐車していること、又は他の外乱によって一時的に無線状態がそれほど悪い場合に、PSM又はeDRXを用いてユーザ装置において電力を節約するための全てのアプローチがカニバライズされる(cannibalized)ことは明らかである。
【0008】
したがって、上述の問題を克服するために、ユーザ装置が非一時的なデータ送信における電力消費を制御するにはより複雑なアプローチが必要である。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ユーザ装置からリモートサーバへの非一時的なデータ送信の改善された電力消費を意識したスキームの解決策を提案することである。
【0010】
したがって、さらなる代替的かつ有利な解決策が当該技術分野で望ましいであろう。
【発明の概要】
【0011】
このため、本発明の第1の態様によれば、請求項1に記載のユーザ装置を動作させる方法が提案される。本発明の第2の態様によれば、請求項9に記載のユーザ装置がさらに提案される。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、セルラネットワークの基地局によるユーザ装置からリモートサーバへのデータ送信方法であって、ユーザ装置が上記リモートサーバへのペイロードデータ送信を実行するように構成され、方法が、
‐基地局への第1のシグナリングデータ送信を実行するステップ、
‐上記第1のシグナリングデータ送信に費やされた電力を表す第1の電力値を決定するステップ、
‐第1の電力値を基準値として保持するステップ、
‐基地局への第2のシグナリングデータ送信を実行するステップ、
‐上記第2のシグナリングデータ送信に費やされた電力を表す第2の電力値を決定するステップ、
上記第2の電力値が上記第1の電力値を所定の閾値だけ上回る場合に、次のペイロードデータ送信を所定の時間遅らせるステップを含む方法が提案される。
【0013】
本発明は、複数の基地局を含むセルラネットワークで動作するユーザ装置に関する。ユーザ装置は、基地局の1つ(以後サービング基地局という)によってセルラネットワークで動作している。具体的には、ユーザ装置は、具体的にはインターネットを介してセルラネットワークに接続的に結合されたリモートサーバへのペイロードデータ送信を実行するように構成されている。
【0014】
ユーザ装置及び基地局すなわちセルラネットワークは、具体的には4G(LTE)及び/又は5G(新無線NR)以降の技術標準を実装する。
【0015】
好ましくは、かかるペイロードデータ送信はユーザ装置が取得したデータに関連する。これは特に、具体的にはペイロード送信を定期的に、すなわちスケジュールに従って実行する計量装置の場合である。
【0016】
さらに、かかるデバイスのトラフィックは大抵の場合、遅延耐性がある、すなわち送信又は受信が行われる正確な時間は、一定の時間内に転送が行われない限りそれほど重要でないことに留意する必要がある。ダウンリンク(DL)トラフィックは、ユーザ装置がリスンしていない又はセルラネットワークと再び対話していない限り、eDRX及びPSMの適用を待つ必要があり、アップリンク(UL)トラフィックは、好ましくはスリープ期間を中断しないこれらのポイントで実行される。しかしながら、データ送信を正確にいつ実行するかは決定されない。
【0017】
したがって、リモートサーバ及び/又はユーザ装置にとって、データがスケジュールに従っている時間通りであるが一定の期間内に送信されることは重要ではない。
【0018】
好ましくは、計量装置の場合のように、ユーザ装置は、静止して動作している、すなわち、セルエリアを空間的に移動しているのではなく、例えば壁に固定されている。
【0019】
かかるユーザ装置は特に、典型的には定められた期間、具体的には数年間持続することになっているバッテリで動作するため、厳しい電力バジェットで動作している。
【0020】
そうするために、エネルギー事情の最適化が必要であり、PSM、eDRX及びその他のメカニズムを適用することなどが既に規格で定義されている。
【0021】
問題は、好ましくは拡張されたカバレッジモードで動作するユーザ装置の場合に、データ送信条件がスケジュールされたデータ送信時にあまりに悪く、かかるペイロードを送出するために驚くべき量の電力を要する場合があることである。これは、例えばサービング基地局への経路方向に、駐車しているトラックなどの障害物がある場合に該当し得る。
【0022】
実際、そのようなまれなデータ送信を実行する前に、ユーザ装置はULシグナリングのデータ送信条件が全く分からない。
【0023】
さらに、特に(計量装置のようなユーザ装置向けに設計されている)NB‐IoT又はCat-Mのような狭帯域技術で動作しているとき、フェーディングがもともと周波数選択的であるために、基地局からのダウンリンク信号が十分に信頼できるものでないと考えられ、データ送信に必要とされる電力レベルの正確な導出は、純粋なダウンリンク測定において正確には不可能である。
【0024】
したがって、無線状態が悪い場合にもユーザ装置のペイロードデータの電力消費を意識した送信を保証するより複雑なアプローチが求められる。
【0025】
ここで本発明が役に立つ。一般に、本発明の方法のアプローチは、可能な限りペイロードトラフィックを遅らせることである。これは、遅延が重要でないデータ送信については問題がないが、問題の解決策は、データ送信を常に遅らせることができないことを考慮する必要がある。
【0026】
したがって、本発明の解決策は遅延が必要かどうかを確認する新しい方法を提案する。このため、本発明の第1の態様に係るユーザ装置は、サービング基地局への第1のシグナリングデータ送信を実行する。ペイロードデータ送信と異なり、シグナリングデータ送信は、基地局とキャンプオンしているユーザ装置との通信リンクを促進することになる、ユーザ装置と基地局の間のみの送信である。
【0027】
1つの特に好ましいシグナリングデータ送信は、いわゆるトラッキングエリア更新(TAU)である。その目的は、依然として基地局で、すなわち現在動作しているトラッキングエリアにおいてセルラネットワークで動作していることを基地局に定期的に通知することである。重要なことは、セルラネットワークが、第1にユーザ装置が依然として作動していること、及び第2に着信の場合に(たとえ計量装置には可能性が低くても)、どこから呼び出されたかを知っていることである。セルラネットワーク、具体的にはMME又はAMFは、TAUに大体約1時間の範囲内のような、2つのTAUメッセージ間の一定の時間を定める。
【0028】
また、TAUを行い、DLデータがMMEで待機しているとき、MMEは、上記DLデータを、かなり可能性が低いがまれに起こることがあるため、すぐに配送し始める可能性がある。
【0029】
TAUはRACH要求によって実行され、RACH要求のエネルギーは、基地局が応答を送信するまで、開ループ電力測定に基づいて増加する。そしてユーザ装置は、どの電力でTAUメッセージが送信されたかを知る。
【0030】
TAUメッセージの場合のように、各シグナリングデータ送信では、かかる全てのシグナリングデータ送信が同じサイズを有する場合に有利である。したがって、それらは比較可能である。
【0031】
代替的又は付加的に、RACHメッセージングはシグナリングデータ送信と見なされることがある。これは特にTAUの作成におけるRACH送信にあてはまる。無線状態に依存して、基地局が応答するまでのRACH手順は、ペイロードデータ送信に必要な電力に関する表示を与え得る、同様のサイズの信号化データにも関連する。
【0032】
本発明の方法の一部として、第1のシグナリングデータ送信について、上記第1のシグナリングデータ送信を実行するためにユーザ装置が費やした電力を表す第1の電力値が決定される。
【0033】
これはシグナリング条件、すなわち基地局に到達するためにトランシーバの出力をどれくらい高く上げる必要があったかに起因して変化することがあるため、第1の電力値は、次のステップの基準値として局所的に格納されている。このような格納は、ユーザ装置の揮発性メモリ又は永久メモリのいずれかに行われる。
【0034】
好ましくは、本発明の有利な実施形態によれば、第1の電力値を決定するステップの後に、ユーザ装置において節電モードをアクティブ化し、第2のシグナリングデータ送信を実行するステップの前に上記節電モードを非アクティブ化するステップが提案される。
【0035】
この実施形態は、ユーザ装置が、2つのシグナリングデータ送信間、具体的には2つのTAUメッセージ間でPSMモードをアクティブ化することを含む。
【0036】
TAUメッセージによって、ユーザ装置は、PSMが持続し得る最大時間を追加的に要求することができる。好ましくは、ユーザ装置は、2つのTAUメッセージ間の予想時間を考慮に入れる応答を得る。
【0037】
この実施形態によって、ユーザ装置がそのトランシーバの電源を切ることによって経時的に非常に低い電力消費をもたらすことができるため、さらなる電力消費最適化が達成される。
【0038】
第1及び第2のシグナリング間で、追加のTAUが通知されることがある。
【0039】
そして基地局への第2のシグナリングデータ送信がユーザ装置によって実行されるとき、本発明の方法によれば、上記第2のシグナリングデータ送信に費やされた電力を表す第2の電力値を決定することが提案される。
【0040】
TAUメッセージが同一であるという事実によって、特にユーザ装置が移動していないときに、第1及び第2の電力値は比較可能である。
【0041】
この観察について、本発明の方法は、基準電力値と第2の電力値の比較を提案し利用する。
【0042】
ユーザ装置が、遅延耐性があるペイロードとして送信されるデータパッケージを有する場合、この比較は、データ送信が許容電力量の範囲内であるか、かかる定期的なペイロードデータ送信の想定される電力バジェットを上回るかを決定するために用いることができる。
【0043】
したがって、第2の電力値が基準電力値を所定の閾値だけ上回るかどうかが評価される。
【0044】
かかる所定の閾値は、絶対単位、パーセンテージ値又はこれらの組み合わせである場合がある。所定の閾値を上回る場合、ペイロードデータ送信を所定の時間だけ遅らせる。
【0045】
かかる所定の時間は、一定の時間、又は規格で定義されたタイマから得られる時間である場合がある。
【0046】
例示的な実施形態によれば、次のペイロードデータ送信のための遅延が、少なくとも基地局への第3のシグナリングデータ送信を行なった後に続くことが提案される。
【0047】
この実施形態によって、遅延が、少なくとも次のTAUが実行されるまで、すなわち特に別のPSMフェーズを実施した後に続いていることが提案される。これは、例えば1日に1回行われるものとされるペイロードデータ送信には完全に十分であり、1時間未満のPSM期間で、ペイロードデータ送信は、より良いトラフィック条件が満たされるまで数回遅延されることがある。
【0048】
この場合、好ましくは、基準電力値はデータ送信の実行が成功するまで保持される。
【0049】
そうではなく、あまりに悪いトラフィック条件を表すものと分かっていた第2の電力値が基準値として使用され、第3のTAUが第2の電力値と等しい第3の電力値をもたらした場合、ペイロードデータ送信は、以前に電力を消費し過ぎるとものとされていた条件下で行われることになる。
【0050】
さらに、別の実施形態では、遅延が次の節電モードがアクティブ化されるまでは続かないことが提案される。
【0051】
この変形例は、遅延が、PSMが再びアクティブ化された後のほんの数秒間又は数分間であることを提案する。これは、例えばデータが1時間ごとに送信される場合に、好ましくは短時間遅延である。この実施形態によって、基地局への無線リンクの一時的な外乱を避けることができる。
【0052】
これは、ユーザ装置のアプリケーション部が追加知識を有する、又はユーザ装置の通信ユニットの提案を却下する場合に特に有利である。トラフィック条件がTAU後に良くなったかどうかのチェックができないため、数秒又は数分だけ遅延されるペイロードデータ送信がより良い電力消費で行われるかどうかは不明となる。
【0053】
フェーディング及び結合損失も経時的に変化し得るという事実があるため、TAUシグナリング後の、データを送信するか否かの早期の決定が好ましい。
【0054】
RACHランピングが、前の試みと比較して基地局からの早期応答をもたらす場合、規格に定義されるように、データパケットがTAU更新と組み合わせて、すなわちTAU更新メッセージフローの第3のメッセージで送信される早期データ送信(EDT)のモードが適用される。
【0055】
RACHランピングが成功につながらない場合、ユーザ装置は、そのCEクラスすなわち実行される繰り返しの数を変更することもできる。
【0056】
前の試みよりも下位のCEクラスが利用可能であると判断するとき、UEはまたデータ伝送を実行することになる。
【0057】
本発明の方法の一般的なアプローチは、ダウンリンク信号測定などではないアップリンクデータ送信を実行するための電力が考慮されるだけでなく、さらに基準値も周りの実際の状況から得られるため特に有利である。つまり、ユーザ装置が住宅の地階にある計量装置として動作しており、拡張されたカバレッジ動作をもたらす場合、各ペイロードデータ送信が、基地局タワーがよく見える状態で外に設置されている場合よりも多くの電力を必要とすることは当然である。しかし、これは「良好な無線状態」と見なされる状況の基準とされる。これらの条件が悪化しても、データパケットでのペイロードデータ送信に過度のエネルギーを注ぐことを避けるために遅延を適用することができる。
【0058】
別の好適な実施形態によれば、
‐上記ペイロードデータ送信を実行すること、
‐上記ペイロードデータ送信を遅らせること
のグループのうち少なくとも1つを考慮して、所定の閾値を修正するステップが提案される。
【0059】
この実施形態によって、データ送信のためのパラメータの第1の修正が提案される。第1のパラメータは所定の閾値である。
【0060】
この値をペイロードデータ送信が実行されたかどうかの決定を考慮して修正することが提案される。少なくとも数回遅延が行われた場合、好ましくは所定の閾値を大きくする。これは、次の試みについて第2のシグナリングデータ送信の電力値が以前よりも高くなることを許容できる状況をもたらす。
【0061】
特に、どのくらいの頻度で遅延が起こることになるかを示す最大遅延許容値を考慮する場合、この最大遅延許容値に達し、無線状態に関係なくデータ送信を実行することを回避することが有利である場合がある一方、この実施形態ではまた、たとえ最適な条件でなくても、ペイロードデータ送信が実行されるときに少なくとも許容条件が存在する。
【0062】
反対に、具体的には遅延後にペイロードデータ送信が実行される場合、所定の閾値は再び小さくなる場合がある。
【0063】
この実施形態によって、ユーザ装置のデータ送信挙動のさらなる最適化をもたらす、本発明の手順のきめ細かい調整を適用することができる。
【0064】
別の好適な実施形態では、上記のシグナリングデータ送信に費やされた電力を示す少なくとも2つの決定された電力値を考慮して基準電力値を修正するステップが提案される。
【0065】
この実施形態は基準電力値に関連する。基準電力値の妥当性を向上させるために、具体的には、実行されたTAUにより決定される少なくとも2つの電力値を考慮することが提案される。
【0066】
具体的には、基準電力値について少なくとも2つの連続的TAUを考慮して平均電力値を得る。
【0067】
好ましくは、移動平均電力値を得るために一定の数の連続的TAUが考慮される。
【0068】
この実施形態は、一方又は他方の方向にシグナリングデータ送信を送出するための電力値に影響を及ぼす特異なイベントの影響を減らすことによって、基準値の妥当性を向上させる。したがって、ユーザ装置の挙動を、必要に応じ遅延のみを行う方向に改善し、無線状態が悪すぎる場合にペイロードデータ送信を実行しない、より信頼できる基準電力値が得られる。
【0069】
別の好適な実施形態では、ユーザ装置が最大遅延許容値をさらに保持しており、方法が、期限切れの遅延が最大遅延許容値を上回る場合に次のペイロードデータ送信を実行するステップを含むことが提案される。
【0070】
この実施形態によって、基準電力値と第2の電力値の比較、又はTAUのような次に続くシグナリングデータ送信のための任意の電力値に基づいて、ペイロードデータ送信を遅らせることを繰り返し決定する状況をもたらす現在進行中の悪い無線状態の状況がカバーされる。
【0071】
遅延耐性があるデータ送信の場合にも、これは一定の範囲でのみ許容可能である。したがって、ユーザ装置が、どれくらい長く又はどれくらい頻繁に遅延が行われ得るかを示す最大遅延許容値を保持することが提案される。
【0072】
例えばそのリモートサーバにより測定結果を1日に1回送信することが期待されているユーザ装置では、予定データ送信時間が設定されたタイミングに応じて、1時間内に最大24回のPSMによって遅延が行われることがある。
【0073】
この閾値に達するとき、この実施形態によればペイロードデータ送信は、たとえ遅延決定が基準電力値と最後のTAUメッセージについて決定された最新の第2の電力値との比較に基づいてなされることになるとしても、実行される必要がある。
【0074】
この実施形態は、ユーザ装置が予想されるデータ送信要件に沿って行動することを保証するが、このデータ送信にとって故意に悪い電力消費をもたらすことがある。
【0075】
この例外的状況の発生数を低く抑えるために、あらかじめ対抗措置を講じることが有利である。したがって、別の好適な実施形態では、最大遅延許容値を上回るゆえにペイロードデータ送信が実行される場合に、
‐遅延許容値、
‐所定の閾値、及び
‐節電モード持続時間
のグループのうち少なくとも1つを修正するステップが提案される。
【0076】
この実施形態によって、最大遅延許容値に達することに応答して、本発明の方法のパラメータを修正することが可能である。
【0077】
いずれかのパラメータを用いて、最大遅延許容値に達したことによって、ペイロードデータを送信するのではなく良好な無線状態が満たされる状況を達成することが試される。
【0078】
したがって、可能なら最大遅延許容値が大きくなる場合がある。これは、ユーザ装置がペイロードデータを送信しているリモートサーバの要件に沿っていることが必要である。
【0079】
代替的に、所定の閾値は修正される。好ましくは小さくなる。これによって、最大遅延許容値に達する前に、無線状態が前よりも悪化する可能性がある場合に、ペイロードデータ送信を実行するために、良くはないが許容できる状況、ひいては電力消費が検出される状況をもたらす可能性がある。
【0080】
最後に、節電モード持続時間が修正されることがある。2つのオプションがある。すなわち、増加によって経時的な電力消費が抑えられ、その結果、ペイロードデータ送信のために消費されたより多くの電力を補償する可能性がある。
【0081】
減少によって、これが特に定期的に頻繁に変化している場合に、より良好な無線状況を見つけることが可能である。
【0082】
好ましくは、節電モード持続時間適応によって、特に遅延数の単なる数に関連する場合に、遅延許容値も修正される。
【0083】
本発明の第2の態様によれば、セルラネットワークの基地局によりリモートサーバにデータ送信するユーザ装置であって、ユーザ装置が、上記リモートサーバへのペイロードデータ送信を定期的に実行するように構成され、
‐基地局への第1のシグナリングデータ送信を実行し、
‐上記第1のシグナリングデータ送信に費やされた電力を表す第1の電力値を決定し、
‐第1の電力値を基準電力値として保持し、
‐基地局への第2のシグナリングデータ送信を実行し、
‐上記第2のシグナリングデータ送信に費やされた電力を表す第2の電力値を決定し、
上記第2の電力値が上記基準電力値を所定の閾値だけ上回る場合に、次のペイロードデータ送信を所定の時間遅らせるようにさらに構成されたユーザ装置が提案される。
【0084】
本発明のこの態様は、セルラネットワークで動作するユーザ装置に関する。ユーザ装置は、技術標準4G、5G又はより高度なもののうち少なくとも1つを実装している。
【0085】
ユーザ装置は、具体的には、セルラネットワークのサービング基地局との全ての通信を行う、無線モジュールのような通信ユニットと、通信ユニット、並びに/又はユーザインタフェース及びユーザ装置のその他のタスクを制御するアプリケーション部とを備える。
【0086】
具体的にはユーザ装置は、IoTデバイス、例えば家屋接続の電力消費を測定し、セルラ通信を介してリモートサーバに送信するための計量装置である。かかるデータ送信は特に遅延耐性がある、すなわち非一時的である。つまりリモートサーバは、測定情報が利用可能であるが定義された時間ウィンドウにある場合にこれを有している必要がない。
【0087】
ユーザ装置、具体的には通信ユニットは、少なくとも1つのアンテナと接続される送受信回路、典型的にはトランシーバをさらに備える。
【0088】
ユーザ装置は、トランシーバを制御するためのプロトコルスタックソフトウェアを実行し、技術標準プロトコルで定義されるプロトコルに従うことを保証するための処理回路をさらに備える。
【0089】
また、ユーザ装置は、プロトコルスタックソフトウェア、並びに所定の閾値のような構成データ、及びペイロードデータ送信手順の他のパラメータを記憶するための揮発性及び/又は永久メモリを備える。
【0090】
典型的には、ユーザ装置は静止して動作している、つまり具体的には固定設置されている。この設置は、例えば計量装置について住宅の地階において行われることが多い。
【0091】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の利点を共有する。
【0092】
示されているように、この発明は、有利には示された課題を解決し、具体的には非一時的なデータのための電力消費を意識したペイロードデータ送信スキームを保証するための解決策を提案する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
以下の記述及び添付図面はいくつかの例示的な態様を詳細に示しているが、実施形態の原理を用いることができる種々の方法のほんの一部しか示していない。本発明の特徴及び利点は、限定的ではなく例示的な例として与えられる有利な実施形態の以下の記述及び添付図面を読むときに現れるだろう。
【0094】
図1】本発明が実施形態として適用されるタイプのユーザ装置。
図2】本発明の例示的な実施形態を示すフローチャート。
図3】本発明の例示的な実施形態を適用する場合の時間と電力を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1は、本発明が実施形態として適用されるタイプのユーザ装置1を模式的に示している。ユーザ装置は、4G、5G以上の技術標準をサポートするセルラネットワークの基地局2と動作することができる。
【0096】
ユーザ装置は、具体的には消費された電流を測定する計量装置のようなIoTデバイスである。したがって、ユーザ装置1は、ユーザインタフェース8と結合されたアプリケーション部9と、通信部とから構成される。通信部は、具体的には中央処理装置(CPU)のような処理回路10を備える。ユーザ装置1のアーキテクチャに応じて、アプリケーション用の1つの処理回路(アプリケーションプロセッサ)及び通信ユニット用の1つの処理回路(ベースバンドプロセッサ)が利用可能である、又は両方のタスクに同じ処理回路が共有される。
【0097】
好ましくは、ユーザ装置1はバッテリ又は他の電源を備える。ユーザ装置1は、再充電することなくバッテリの所与の寿命を達成するために、定期動作の電力バジェットに従う必要がある。
【0098】
ユーザ装置、すなわち通信ユニットは、送受信回路を内蔵し、基地局2への無線周波数(RF)タスクを実行するために必要とされる全てのハードウェアコンポーネントを結合するトランシーバ6をさらに備える。このタスクを遂行するために、トランシーバ6は少なくとも1つのアンテナ7に結合されている。好ましくはユーザ装置が狭帯域モードで動作しているとき、通常は1つのアンテナで十分なはずであり、これは節電の理由からも有利である。
【0099】
また、例示的なユーザ装置1は、プロトコルスタックソフトウェア、潜在的に通信ユニット及び/又はアプリケーション部9が必要とする他のタイプのソフトウェアを記憶するための永久及び揮発性両方のメモリ5を備える。
【0100】
最後に、基地局2のセルラネットワークにアクセスするためのアクセスクレデンシャルを記憶するためのUSIM4がユーザ装置1に通信可能に結合されている。これは、具体的には取り外し可能なUSIM(又はUICCなど)であるが、半田付けされた変種もこのタイプのユーザ装置の可能な選択肢である。
【0101】
図2には、提案する本発明の方法の例示的な実施形態のフローチャートが示されている。
【0102】
ステップS1において、ユーザ装置1のアプリケーション9が、具体的にはユーザインタフェース8の対話によって、基本的に本発明の方法により組み込まれているPO(電力最適化)モードをアクティブ化する初期化ステップから始まる。
【0103】
次いでプロセスフローは、ユーザ装置、具体的には通信ユニットがPOモードの実行を支配するパラメータの初期値を設定するステップS2に続く。
【0104】
これは、具体的にはTAU要求を実行するために必要とされるTX電力を表す初期基準電力値を含む。この基準電力値は、具体的にはTAU要求を実行し、このTAUに費やされたTX電力値を決定することによってあらかじめ設定される。
【0105】
さらに遅延時間などがステップS2において設定される。
【0106】
TAUが実行された後、ユーザ装置は、ステップS3において電力削減モードで定められた期間動作している。これはアイドルモードである場合があるが、好ましくは、LTE Cat-Mなどの技術標準に定義されているPSM(節電モード)のようなスリープモードである。
【0107】
この間、ペイロード送信用のデータパケットがユーザ装置1のアプリケーション9から通信ユニットに利用可能になる。
【0108】
PSMは、具体的にはステップS3からTAU要求と共に要求された一定の期間続く。
【0109】
この期間が満了したとき、プロセスフローはステップS4にジャンプする。このステップにおいてユーザ装置は目覚め、第2のTAU要求を実行し、この第2のTAU要求のTX電力を再度測定する。各TAUの第1(前回)及び第2(今回)のTX電力値は比較される。
【0110】
プロセスフローはこの比較に従ってステップS5又はS7に分岐する。第2のTX電力値が所定の閾値XdBだけ高い場合、データパケットの送信は遅延されるものとし、プロセスフローはステップS5にジャンプする。
【0111】
そうでない場合、つまり両TX電力値がほぼ同じ値を有する場合、プロセスフローはステップS7に分岐する。
【0112】
一方ステップS5において、まずは遅延データ送信の最大遅延許容値に達しているかどうかがチェックされる。このために、好ましくは遅延が実行されると増加するカウンタが保持される。
【0113】
代替的に、最大遅延許容値は、例えば成功した最後のペイロードデータ送信から時間で測定される。そのためタイマは必要がない。
【0114】
これが最初の遅延であるとき、プロセスフローは分岐してステップS3に戻り、ユーザ装置1は別のアイドル/PSMフェーズをアクティブ化する。基準電力値は同じままである。さらに、必要なら遅延カウンタは増加する。
【0115】
一方、最大遅延許容値を上回った場合、プロセスフローはステップS6に分岐する。ここで、フローのパラメータ、例えば所定の閾値xDB、最大遅延許容値又はPSM持続時間の考えられる適応が予測される。
【0116】
その後、プロセスフローはステップS7に分岐し、基地局2を介したリモートサーバへのペイロードデータ送信を実行する。
【0117】
次いで、任意的なステップS8において、現在発生しているTX電力量がTAU及びペイロードデータ送信に必要とされる場合に、バッテリの予想寿命を達成できるかどうかが、具体的にはデータ送信に必要とされるTX電力に基づいてチェックされる。達成できない場合、さらなるパラメータ修正やアプリケーションへの指示が行われ、その結果、オペレータはユーザインタフェースを介して情報を得て、時間内に、すなわちバッテリが空になるだいぶ前に行動するための適切な措置を講じることができる。
【0118】
図3の時間/電力図は、本発明の方法の例示的な実施形態を適用することがユーザ装置に与える影響を示している。
【0119】
時間は横軸に、単一動作に必要とされる電力は縦軸に示されている。時点T1~T10は、以下に説明されるいくつかのイベントを示す。イベントの下方のハッチング領域は、例示的なユーザ装置がタスクを実行するのに必要とされるTX電力を示す。領域が高ければ高いほど、多くの電力が同じ時間単位に注ぎ込まれる。領域の面積は、注ぎ込まれた総TX電力を表す。
【0120】
時点T1に示された最初のイベントは、ユーザ装置1により基地局2に送信された第1のTAU要求TAU1である。これは、ユーザ装置がまだ動作しており、依然として基地局2にキャンプオンしていることを少しの(予め定められた)時間の後に基地局2に示す、TAUの定期動作である。
【0121】
ユーザ装置は、第1のTAU要求を実行するために必要とされるTX電力を測定し、その値を第1の電力値PV1として記憶する。
【0122】
TAUの後、ユーザ装置1は少しの間アイドルモードにとどまる。この時間は4G規格に従って持続時間T3324を有する。アイドルモードにおいて、ユーザ装置は、(e)DRXサイクル後にページングをリスンし、したがって、DLにおいてページングをリスンするために各DRXサイクル後にいくらか多くの電力を必要とする。
【0123】
一方、時点T2においてPSMモードがアクティブ化される。ユーザ装置1は、ページングメッセージさえもリスンされない深いスリープモードに落ちている。PSMフェーズの間は、電力消費がアイドルモード動作中よりも著しく低いことが視認できる。モジュールはまた、この期間内にメインプロセッサをシャットダウンし、ソフトウェアを一時停止し、やがて復帰するための計時のみを行うことがある。
【0124】
いかなる時点T3においても、データパケットDP1がアプリケーションによって利用可能になる。これは具体的には、例えば現在の測定の測定結果であるが、任意の他の、具体的には定期的なメッセージがこれによって意味される可能性がある。例えばIoTデバイスも現在の動作状態を示すメッセージをリモートサーバに定期的に送信することがある。何かが上手く動作していない場合、何らかの措置、例えばその問題を解決するために保守オペレータを派遣することなどが講じられる可能性がある。
【0125】
いずれにせよ、データパケットはユーザ装置1によってリモートサーバに送信されることになっているが、これは一時的データではなく、遅延耐性がある。つまり、具体的にはPSMフェーズが終了した後、できるだけ早く送信される必要がない。
【0126】
その結果、時点T4においてPSMフェーズは終了し、これは標準に従って持続時間T3412によって支配される。ユーザ装置の復帰後の最初の動作は、時点T5において次のTAU要求TAU2を実行することである。
【0127】
TAUを送信する前に、電力は、具体的には各TAUに先行するRACH手順のために増加する。しかし、このときTAU自体が送出される。
【0128】
再び第2のTAU TAU2に必要とされるTX電力が決定され、第2の電力値PV2として記憶される。
【0129】
図から分かるように、第2のTAU TAU2は第1のTAUよりも高いバーを有する。その結果、第1の電力値PV1は第2の電力値PV2よりも大幅に低い。
【0130】
この差が所定の閾値を上回るとき、結果としてデータパケットDP1のペイロードデータ送信を実行しないことが決定される。
【0131】
その結果、TAUの後、ペイロードデータ送信を伴わずにアイドルフェーズのみが続いている。時点T6において、別のPSMフェーズが開始する。
【0132】
このPSMフェーズが時点T7で終了したとき、再びTAU、今度は第3のTAUが実行される。
【0133】
第3のTAU TAU3に必要とされるTX電力は、第3の電力値PV3として記憶される。これは、第2のTAUの後に遅延が決定された、すなわち第2の電力値が高すぎると認められたという事実によって依然として基準電力値のままである第1の電力値PV1と再び比較される。
【0134】
ハッチングされたバーから分かるように、第3のTAUは第2のTAUよりも少ない電力を必要としていた。その理由は広がることがある。好ましくは、ユーザ装置のアンテナと基地局の間の経路が妨げられる。これによって、明らかにTAU要求を送信するためのTX電力の著しい増加をもたらす、繰り返しの多いより悪いカバレッジ拡張状況をもたらす可能性がある。
【0135】
第3の電力値PV3を、基準電力値である第1の電力値PV1と比較するとき、ほとんど差がないことが分かる。したがって、ペイロードデータ送信を遅らせないことが決定される。
【0136】
その結果、時点T9においてデータパケットDP1の送信が実行される。この動作についても電力が示されている。これが第2のTAUの後に実行されていて、無線状態がそれ以来変化しなかったとしたら、ハッチングされたボックスはより高かったであろうが、かかる時間は同じである可能性が高い。面積差は、データパケット送信が遅延されなかったとしたら、このデータパケット送信にどれだけより多くの時間がかかったかを示す。
【0137】
代替的に、データパケットDP1は、早期データ送信(EDT)コンセプトの一環として想定されるTAUと共に直接送出される可能性もある。これは、具体的には遅延許容値に達したためにそれ以上遅延が不可能な場合であるがこれだけに限らない。
【0138】
データパケットDP1の送信後、ユーザ装置は時点T10において再度PSMモードをアクティブ化する。今のところ待機しているデータパケットはない。
【0139】
ここで第3の電力値PV3は次のTAUの基準電力値になる。次のデータパケットが送信されることになるとき、同じ手順が適用される。
【0140】
以上の詳細な説明において、例示により、本発明が実施される特定の実施形態を示す添付図面が参照される。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することができるように十分詳細に記載される。異なっていたとしても、本発明の様々な実施形態は必ずしも互いに排他的ではないことが理解されるべきである。例えば、一実施形態と関連して本明細書に記載される特定の特徴、構造、又は特性は、本発明の範囲を逸脱することなく、別の実施形態において実現されることがある。加えて、開示された各実施形態の範囲内の個別要素の位置又は配置は、本発明の範囲を逸脱することなく変更され得ることは理解されるべきである。したがって、以上の詳細な説明は、限定的な意味で受け取られるべきではなく、本発明の範囲は、請求項が権利を得ることができる全範囲の同等物とともに、適切に解釈された、添付の請求項によってのみ定義される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】