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特表2023-505577((2S)-3-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンの二ナトリウム塩を工業的に製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】((2S)-3-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンの二ナトリウム塩を工業的に製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/30 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
C07F9/30 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535660
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 FR2020052385
(87)【国際公開番号】W WO2021116617
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】1914158
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508125896
【氏名又は名称】ファルマリーズ
【氏名又は名称原語表記】PHARMALEADS
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ・ポラ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・プリウール
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・グラシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ファネッリ
(72)【発明者】
【氏名】シンジュン・ジャオ
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB20
4H050AC80
(57)【要約】
本発明は、(S)-1-フェニルエチルアミンから出発する、多段階合成を介した、下の式(E)の酸、((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((((R)-1-アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンの工業的製造方法に関係する。本発明は、上に定義されたような化合物(E)から出発する、2つの更なる工程における、下の式(I)の((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンの二ナトリウム塩の工業的製造方法に関する。本発明はまた、本発明の式(E)の化合物の工業的製造方法における中間体を、ジアステレオ異性体的に濃縮する方法にも関連する。
【化1】
【化2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(E)
【化1】
の((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((((R)-1-アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニン酸を工業的に製造する方法であって、
(1)以下の式(A)
【化2】
の化合物を、
(1a)(S)-1-フェニルエチルアミンを、極性且つプロトン性の溶媒中において、(S)-1-フェニルエチルアミンに対してモル当量の塩酸の存在下で、次亜リン酸H3PO2の水溶液及びアセトアルデヒドと反応させる工程、その後、
(1b)工程(1a)から結果として得られる塩を、プロピレンオキシドで処理する工程、その後
(1c)極性且つプロトン性の溶媒を使用して結晶化させ、濾過によって式(A)の化合物を回収する工程
によって、製造する工程と、
(2)以下の式(B)
【化3】
の化合物を、
(2a)工程(1)に由来する式(A)の化合物を、トリメチルシリル基の供給源の存在下で、(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルと反応させる工程、その後、
(2b)式(B)の化合物を、
(2b.1)無極性非プロトン性溶媒及び水の混合物を使用して結晶化させ、その後濾過する工程、又は
(2b.2)アセトン中でトリチュレートし、濾過し、濾液を蒸発させる工程
によって回収する工程
によって、製造する工程と、
(3)以下の式(C)
【化4】
(式中、P'はアミン官能基の保護基である)
の化合物を、
(3a)式(B)の化合物を、水素雰囲気下、式(B)の化合物の質量と比較して10質量%のPd/Cの存在下で、水素化分解する工程、その後、
(3b)工程(3a)から結果として得られるアミンを、保護基P'で保護し、式(C)の化合物を回収する工程
によって、製造する工程と、
(4)式(E)の化合物を、
(4a)式(C)の化合物を、(L)-アラニンのtert-ブチルエステルとペプチドカップリングさせ、以下の式(D)
【化5】
の化合物を回収する工程、
(4b)N末端位置における保護基P'及びC末端位置におけるtert-ブチル基を脱保護し、式(E)の化合物を回収する工程
によって、製造する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
工程(1a)及び工程(1c)において、極性且つプロトン性の溶媒が、アルコールの中から選択され、好ましくはそれがエタノールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(2b)において、無極性非プロトン性溶媒が、MTBEであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(3a)が、以下の逐次工程:
(3a.1)プロトン性溶媒又はプロトン性溶媒の混合物中に式(B)の化合物を含む懸濁液を調製する工程、
(3a.2)工程(3a.1)において調製した懸濁液に、塩基を添加する工程、
(3a.3)工程(3a.2)から結果として得られる懸濁液に、式(B)の化合物の質量に対して10質量%のPd/Cを添加し、結果として得られる反応混合物をH2でパージする工程、
(3a.4)反応混合物を濾過及び濃縮する工程
を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
保護工程(3b)が、塩基性媒体中で、好ましくはNaOH、LiOH、KOH、Ba(OH)2、Ca(OH)2、及びCsOH等の強塩基を添加することによって実行されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
P'が、CBz基及びBoc基で構成される群の中から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(4a)が、以下の逐次工程:
(4a.1)DMF又はTHF/DMF混合物中に溶解された式(C)の化合物を含む溶液に、(L)-アラニンのtert-ブチルエステル及びペプチドカップリング剤を添加する工程、
(4a.2)工程(4a.1)から結果として得られる反応混合物に、塩基を添加する工程、
(4a.3)請求項1に規定されたような式(D)の化合物を回収する工程
を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
以下の式(I)
【化6】
の((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンの二ナトリウム塩を工業的に製造する方法であって、
請求項1から7のいずれか一項に規定されたような工程(1)から工程(4)、並びに工程(4)の直後に、以下の逐次工程(5)及び工程(6):
(5)以下の式(F)
【化7】
の化合物を、式(E)の化合物を塩基の存在下でアシルオキシアルキルN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させることによって、製造する工程、
(6)式(I)の化合物を、弱塩基のナトリウム塩の存在下で無極性非プロトン性溶媒中に沈殿させることによって、回収する工程
を含む、方法。
【請求項9】
工程(5)が、以下の逐次工程:
(5a)式(E)の化合物を、極性非プロトン性溶媒中において、塩基の存在下で、アシルオキシアルキルN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させる工程、
(5b)非プロトン性無極性溶媒を使用して結晶化させ、濾過によって式(F)の化合物を回収する工程
を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
以下の式(B)
【化8】
の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(S)-1-フェニルエチルアミンから、((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンの二ナトリウム塩を製造する、新規な工業的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の式の指定化合物(I)
【0003】
【化1】
【0004】
である、((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンの二ナトリウム塩は、((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((((R)-1-アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンアミノホスフィン酸(本明細書における指定化合物(E))のプロドラッグであり、これは、中性アミノペプチダーゼ(NAP)及びネプリライシン(NEP)の選択的二重阻害剤である。
【0005】
化合物(I)は、Bonnardらによって、Pharmacol. Res. Perspect.、2015年、3(2)、e00116において、有力な鎮痛効果を有するものとして記載されている。
【0006】
化合物(I)及びその鎮痛剤としての使用は、特許出願WO 2010/010106において初めて記載された。この出願において示された方法によると、ジフェニルメチルアミン塩酸塩から、((R)-1-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスフィン酸(実施例1、工程3)を、4つの工程で製造することが可能である。次に、このアミノホスフィン酸を、2-([1,1'-ビフェニル]-4-イルメチル)アクリル酸と反応させて、更なる6つの工程で化合物(I)が得られる。この合成方法は、とりわけ最終工程において凍結乾燥を行う必要がある。
【0007】
この合成と特に関連する技術的側面、とりわけ、凍結乾燥、当量数、この方法に関与する特定の取り扱い困難な試薬及び/又は精製技術の使用は、WO 2010/010106に記載されている合成経路を工業的規模に移行させることを可能にするものではない。とりわけ、
- この方法の第2の工程で得られたラセミ化合物を、(R)-メチルベンジルアミンで化学分割する工程(実施例1、工程3を参照のこと)は、Baylisらの刊行物、J. Chem. Soc.、Perkin trans. I、1984年、2846~2853頁に記載されているように、生成物の少なくとも半分が失われる(出発ラセミ混合物の50%に相当する正しい立体異性体のうち、86%が回収される、すなわち、この工程の正しい立体異性体の全収率は、43%である)ため、この工程の収率に強く影響を及ぼす。
- けん化の工程もまた実行される(実施例3、工程2を参照のこと)。この特定の反応は、とりわけ、相当量のベンジルアルコールが生成されるため、単離が困難なものとなり、大量の不純物の形成がもたらされることに起因して、工業的規模での実施が困難である。
- 実施例3、工程2に記載されている化合物を得るための脱保護には、強酸性媒体(酢酸中33%のHBr)中での脱保護が必要である。この脱保護は、腐食性の酸を大量に必要とするが、その除去は困難である。
- シリカカラムでの精製によって、工程3の副生成物(4-ニトロフェノール)を除去することで、実施例3、工程3に記載されている化合物を得る。
- 最後から2番目の工程中に、実施例3、工程4の化合物を脱保護して、実施例4の化合物を得る必要があり、次いでこれを最終工程中に塩化することで、化合物(I)が得られる。
- 加えて、この合成では、ジフェニルメチルアミンを出発品として使用する必要があるため、原材料のコストに対して非常に重大な影響を及ぼすことになる。
【0008】
大規模な有機合成の開発にとって重要な目的は、工業的な条件に完全に移行可能である合成方法を見付けることである。この点から、合成の種々のパラメーターは最適化されているとよく、特に例を挙げると、溶媒は、容易に回収することができるように、できるだけ揮発性の低いものが好ましく、使用温度は、容易にアクセスすることができる温度範囲であることが好ましい。また、種々の中間体及び生成物の精製を、簡単な様式で且つ大規模に適合する条件で実行することができることも有利である。最後に、混合物及び反応の生成物は、単離され、熱的に安定であることが好ましい。
【0009】
ヒト又は動物に投与される可能性がある医薬製品の製造については、優良製造規範(GMP: Good Manufacturing Practice)が定められている。GMPの規定では、製造に関して品質への取り組みが必要であり、これにより企業は、汚染、混乱、及びエラーの事例を最小限に抑える、又は排除することができる。
【0010】
本発明者らの知る限り、化合物(I)を合成することを可能とする工業的な方法は、これまで説明されていない。結果として、簡単且つ効率的に工業的規模に適合させることができる、化合物(I)を合成する方法、とりわけ、毒性溶媒、カラムクロマトグラフィー、及び凍結乾燥を使用しない方法の開発に対するニーズが存在する。加えて、この合成方法が、工程の数及び関連する原材料のコストを低減することを可能にすることも興味深く思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 2010/010106
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Bonnardら、Pharmacol. Res. Perspect.、2015年、3(2)、e00116
【非特許文献2】Baylisら、J. Chem. Soc.、Perkin trans. I、1984年、2846~2853頁
【非特許文献3】T. W. Greene、「Protective Groups In Organic synthesis」、(John Wiley & Sons、New York (1981年))
【非特許文献4】Harrisonら、「Compendium of Synthetic Organic Methods」、1巻から8巻、(J. Wiley & sons、1971年から1996年)
【非特許文献5】Hamiltonら、Tet. Lett.、1995年、36、4451~4454頁
【非特許文献6】Organic Synthesis Coll.、3巻、337頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の式(I)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、(1R)及び(2S)という表記は、それらが指す原子の分子内における位置と、それらの絶対配置とを表している。*という表記は、キラル炭素を示している)
の((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンの二ナトリウム塩を工業的に製造する方法に関連する。
【0016】
本発明の方法は、以下の逐次工程:
(1)以下の式(A)の化合物を、
【0017】
【化3】
【0018】
(1a)(S)-1-フェニルエチルアミンを、極性且つプロトン性の溶媒中において、(S)-1-フェニルエチルアミンに対してモル当量、それより多くても少なくても0.1当量の範囲の塩酸の存在下で、次亜リン酸H3PO2の水溶液及びアセトアルデヒドと反応させる工程、
(1b)その後、工程(1a)から結果として得られる塩を、プロピレンオキシドで処理する工程、
(1c)その後、極性且つプロトン性の溶媒を使用して結晶化させ、濾過によって式(A)の化合物を回収する工程
によって、製造する工程と、
(2)以下の式(B)の化合物を、
【0019】
【化4】
【0020】
(2a)工程(1)に由来する式(A)の化合物を、トリメチルシリル基の供給源の存在下で、(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルと反応させる工程、
(2b)その後、式(B)の化合物を、
(2b.1)無極性非プロトン性溶媒及び水の混合物を使用して結晶化させ、濾過する工程、又は
(2b.2)アセトン中でトリチュレートし、濾過し、濾液を蒸発させる工程
によって回収する工程
によって、製造する工程と、
(3)以下の式(C)の化合物を、
【0021】
【化5】
【0022】
(式中、P'はアミン官能基の保護基である)
(3a)式(B)の化合物を、水素雰囲気下、式(B)の化合物の質量に対して10質量%のPd/Cの存在下で、水素化分解する工程、
(3b)その後、工程(3a)から結果として得られるアミンを、保護基P'で保護し、式(C)の化合物を回収する工程
によって、製造する工程と、
(4)以下の式(E)の化合物を、
【0023】
【化6】
【0024】
(4a)式(C)の化合物を、(L)-アラニンのtert-ブチルエステルとペプチドカップリングさせ、以下の式(D)の化合物を回収する工程、
【0025】
【化7】
【0026】
(4b)N末端位置における保護基P'及びC末端位置におけるtert-ブチル基を脱保護し、式(E)の化合物を回収する工程
によって、製造する工程と、
(5)以下の式(F)の化合物を、
【0027】
【化8】
【0028】
式(E)の化合物を、塩基の存在下で、アシルオキシアルキルN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させることによって、製造する工程と、
(6)その後、式(I)の化合物を、弱塩基のナトリウム塩の存在下で、無極性非プロトン性溶媒中に沈殿させることによって、回収する工程と
を含む。
【0029】
本発明の別の目的は、上に定義されたような逐次工程(1)から工程(4)を含む、式(E)の((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((((1R)-1-アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニン酸を工業的に製造する方法に関連する。
【0030】
本発明はまた、本発明の式(E)の化合物を工業的に製造する方法の中間体を、ジアステレオ異性体的に濃縮する方法にも関連する。
【0031】
本発明の別の目的は、上に記載されたような式(B)の合成中間体に関する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
後に続く説明において、特に断りのない限り、すべての百分率はモル百分率で表される。
【0033】
本発明は、式(E)の((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((((1R)-1-アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニン酸、更には式(I)の((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンの二ナトリウム塩を工業的に製造するための多段階合成に関する。
【0034】
「本発明の第1の代替形態」は、式(B)の化合物の合成が、有利なことには工程(2a)の直後に工程(2b.1)を実行することを伴う、代替形態を表す。したがって、工程(2b.2)は実行されない。この代替形態によれば、工程(2b)に由来する式(B)の化合物は、95/5以上の光学純度(2S/2R)を有する。この鏡像異性的濃縮は、次に、化合物(C)、化合物(D)、及び化合物(E)を合成するための工程(3)及び工程(4)のそれぞれの過程においても保存される。したがって、この第1の代替形態によれば、化合物(B)、化合物(C)、化合物(D)、及び化合物(E)のそれぞれは、対応する式において、厳密には95%超、より好ましくは99%超のジアステレオ異性体過剰率で表されるようなジアステレオ異性体に対応するものである。
【0035】
「本発明の第2の代替形態」は、式(B)の化合物の合成が、有利なことには工程(2a)の直後に工程(2b.2)を実行することを伴う、代替形態を表す。したがって、工程(2b.1)は実行されない。この代替形態によれば、工程(2b)に由来する式(B)の化合物は、厳密には50/50超且つ95/5以下、とりわけ51/49から60/40の間に含まれる光学純度(2S/2R)を有する。この第2の代替形態によれば、化合物(C)及び化合物(E)のそれぞれのジアステレオ異性体過剰率を上昇させるために、工程(3)及び工程(4)のそれぞれに続いて、ジアステレオ異性体的濃縮工程が実行されてもよい。
【0036】
本発明によれば、特に断りのない限り、化合物(A)、化合物(F)、及び化合物(I)は、対応する式において、有利なことには厳密には95%超、より好ましくは99%超のエナンチオマー過剰率又はジアステレオ異性体過剰率で表されるようなエナンチオマー又はジアステレオ異性体に対応するものである。
【0037】
「エナンチオマー過剰率」又は「ジアステレオ異性体過剰率」という用語は、「光学純度」及び「キラル純度」という用語と交換可能であることが留意されるべきである。「Y/Z超の光学純度(XR/XS)」とは、本発明の意味において、位置Xにおける原子が、Y%はR体で、Z%はS体で見出されるキラル中心であることを意味するものと解釈される。
【0038】
「厳密には50/50超の光学純度XR/XS」とは、本発明の意味において、エナンチオマーXRが、厳密にはエナンチオマーXSよりも大きい割合で見出されることを意味するものと解釈される。
【0039】
「濃塩酸」とは、本発明の意味において、33質量%から37質量%の間の塩酸を含む塩酸の水溶液を意味するものと解釈され、好ましくは、37質量%の濃縮溶液である。
【0040】
「トリメチルシリル基の供給源」とは、本発明の意味において、式-Si(CH3)3の1つ又は複数のトリメチルシリル(TMS)基を提供することができる化学化合物を意味するものと解釈される。換言すれば、それを別の化合物と反応させた場合、TMS供給源化合物は、1つ又は複数のTMS基を当該化合物に送り届けることができる。これらのTMS供給源化合物は、一般的に、ヒドロキシル又はアミン等の官能基をTMS基で保護するための試薬として使用される。TMS供給源化合物の例としては、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)、TMSクロリド(TMSCl)、TMSトリフレート(TMSOTf)、及びヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
【0041】
「室温」とは、本発明の意味において、15℃から30℃の間、好ましくは18℃から25℃の間に含まれる温度を意味するものと解釈される。
【0042】
本明細書における「当量」という語は、特に断りのない限り、モル当量を表す。
【0043】
「保護基」とは、本発明の意味において、T. W. Greene、「Protective Groups In Organic synthesis」、(John Wiley & Sons、New York (1981年))及びHarrisonら、「Compendium of Synthetic Organic Methods」、1巻から8巻、(J. Wiley & sons、1971年から1996年)によって記載されている基等の、望ましくない反応から反応性の化学官能基を保護することを可能にする基を意味するものと解釈される。
【0044】
「部分ラセミ化」とは、本発明の意味において、いわゆる「純粋な」エナンチオマー、すなわち少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%のエナンチオマー過剰率を有するエナンチオマーが、同じ化合物の2つのエナンチオマーの混合物へと変換されることを意味するものと解釈され、ここで、これら2つのエナンチオマーは、一方のエナンチオマーが他方と比較して優勢である不均等な量であり、2つのエナンチオマーが同一の量で見出されることになる全ラセミ化とは異なる。
【0045】
本発明において、「2位の炭素上」という表現は、上記式(B)、式(C)、式(D)、式(E)、式(F)、及び式(I)において表されるような、メチルビフェニル基を有する、IUPAC表記法に従って2位に記される炭素のことを指す。
【0046】
本明細書においては、以下の略語が使用される。
Bn: ベンジル、
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー、
TMS: トリメチルシリル、
BSA: N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、
TMSOTf: TMSトリフレート、
HMDS: ヘキサメチルジシラザン、
MTBE: メチルtert-ブチルエーテル、
THF: テトラヒドロフラン、
DMF: ジメチルホルムアミド、
Boc: tert-ブトキシカルボニル、
CBz: ベンジルオキシカルボニル、
TBTU: 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムのテトラフルオロホウ酸塩、
HATU: (ジメチルアミノ)-N,N-ジメチル(3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-イルオキシ)メタニミニウムのヘキサフルオロリン酸塩、
BOP: ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムのヘキサフルオロリン酸塩、
PyBOP: ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムのヘキサフルオロリン酸塩、
HOBt: ヒドロキシベンゾトリアゾール、
DCC: ジシクロヘキシルカルボジイミド、
EDC: 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、
DIPEA: ジイソプロピルエチルアミン、
Pd/C: パラジウム/炭素。
【0047】
式(E)の化合物を製造する方法
本発明の目的は、以下の式(E)
【0048】
【化9】
【0049】
の((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((((R)-1-アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニン酸を工業的に製造する方法であって、以下の工程:
【0050】
【化10】
【0051】
工程(1): (S)-1-フェニルエチルアミンを、モル当量の濃塩酸の存在下で、次亜リン酸H3PO2の溶液及びアセトアルデヒドと反応させ、その後、プロピレンオキシドで処理することによって、化合物(A)を合成する工程、
工程(2): 式(A)の化合物を、(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルと反応させることによって、式(B)の化合物を合成する工程、
工程(3): 式(B)の化合物を、Pd/Cの存在下で水素化分解し、結果として得られるアミンを、基P'で保護することによって、式(C)の化合物を合成する工程、
工程(4): 式(C)の化合物を、(L)-アラニンのtert-ブチルエステルとペプチドカップリングさせ、その後、保護基を脱保護することによって、式(E)の化合物を合成する工程
を含む、方法に関連する。
【0052】
工程(1)
式(A)の化合物は、Hamiltonらの刊行物、Tet. Lett.、1995年、36、4451~4454頁において、アミノホスホン酸の一般的合成内で言及されているが、当該刊行物において例として記載されてはいない。したがって、本発明者らの知る限り、式(A)の化合物はこれまで一度も特性評価されたことがない。この刊行物の著者らは、この特定の例に関して、使用した反応条件から「濃い色の溶液が得られ、そこから生成物を単離することはできなかった」と指摘している。この刊行物には、本出願のようなアミノホスフィン酸ではなく、α-アミノホスホン酸を合成するための加水分解-酸化方法が記載されている。また、有機リン化合物のアミン官能基上の保護基の水素化分解による除去が、問題になる可能性も指摘されている。
【0053】
本発明者らは、驚くべき様式で、工程(1a)中に1当量のHClを使用することにより、反応混合物の分解を回避することが可能になることを発見した。
【0054】
1当量、それより多くても少なくても0.1当量の範囲のHClの存在は、本発明の合成にとって必須のパラメーターである。それが存在しない場合、分解が観察される。
【0055】
本発明の方法の工程(1)は、上に記載され、以下の図に記載されるような工程(1a)から工程(1c)を含む。
【0056】
【化11】
【0057】
出願WO 2010/010106においては、(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルとの反応が意図される、(1R)(1-ベンジルオキシカルボニルアミノ-エチル)-ホスフィン)酸キラル前駆体は、(R)(+)α-メチルベンジルアミンの存在下におけるラセミ体ホスフィン酸の分割を介して4つの工程で得られ、全収率は28%である(実施例1を参照のこと)。ラセミ化合物を、(R)(+)α-メチルベンジルアミンの存在下で再結晶化することによって分割する工程は、定義上、所望されないエナンチオマーに相当する生成物の50%が回収されないため、この全収率の低さの顕著な原因となっている。加えて、この種のキラル分解を工業規模に移行しても、収率を向上させることはできない。
【0058】
本発明においては、工程(1a)において、出発試薬である(S)-1-フェニルエチルアミンによって、合成開始時に直接キラリティーが誘導される。本発明において使用される(S)-1-フェニルエチルアミンは、少なくとも98%、好ましくは99%のキラル純度を有する商業的に入手可能な製品(例えば、Sigma-Aldrich社から販売されている)である。また、本発明によれば、少なくとも90%のキラル純度を有する(S)-1-フェニルエチルアミンを使用してキラリティーを導入してもよい。
【0059】
(S)-1-フェニルエチルアミンを、極性且つプロトン性の溶媒中において、(S)-1-フェニルエチルアミンの量に対してモル当量の塩酸の存在下で、次亜リン酸H3PO2の水溶液及びアセトアルデヒド無水物、すなわち化学純度が99%以上のものと反応させる。
【0060】
ステップ(1a)において使用される塩酸は、有利なことには濃塩酸の水溶液に相当し、これにより、特に、反応混合物の希釈を回避することが可能になる。好ましくは、この溶液は37質量%の濃塩酸である。
【0061】
好ましい実施形態によれば、工程(1a)の極性且つプロトン性の溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール、及びそれらの混合物の中から選択される。好ましくは、極性且つプロトン性の溶媒はエタノールである。
【0062】
好ましくは、工程(1a)は、第一に、有利なことには濃縮された塩酸溶液を、上に定義されたような極性且つプロトン性の溶媒中において、(S)-1-フェニルエチルアミンの溶液に添加すること、その後、第二に、(S)-1-フェニルエチルアミンの塩酸との混合物に、次亜リン酸の溶液を添加すること、最後に、第三に、(S)-1-フェニルエチルアミン、塩酸、及び次亜リン酸の混合物に、アセトアルデヒド無水物を添加することを含む。
【0063】
有利なことには、次亜リン酸水溶液は、50質量%の溶液である。有利なことには、次亜リン酸は、(S)-1-フェニルエチルアミンに対して、1当量から2当量の間、好ましくは1.1当量から1.5当量の間に含まれる量、より好ましくは1.1当量で添加される。
【0064】
アセトアルデヒドは、好ましくは、(S)-1-フェニルエチルアミンに対して、1当量から2当量の間、好ましくは1.2当量から1.5当量の間に含まれる量、より好ましくは1.2当量で添加される。典型的には、アセトアルデヒド無水物が使用される。
【0065】
有利な実施形態においては、(S)-1-フェニルエチルアミンの溶液は、濃塩酸溶液及び次亜リン酸溶液の添加中、-5℃から5℃の間に含まれる温度、好ましくは0℃である。
【0066】
結果として得られる反応混合物を、(S)-1-フェニルエチルアミンの転化率が90%以上となるように、十分な時間撹拌する。反応のモニタリングは、特にHPLCによって確実に行われる。好ましくは、この時間は、1時間から8時間の間、好ましくは3時間から6時間の間、より好ましくは3時間から4時間の間に含まれる。前記撹拌は、有利なことには、使用される溶媒の沸騰温度、それより高くても低くても5℃の範囲において実行される。
【0067】
工程(1a)は、好ましくは、不活性雰囲気下、例えば窒素雰囲気下又はアルゴン雰囲気下で実行される。
【0068】
工程(1b)において、プロピレンオキシドが、工程(1a)から結果として得られる反応混合物に添加される。したがって、工程(1b)は、典型的には、以下の逐次工程:
(1b.1)工程(1a)に由来する反応混合物にプロピレンオキシドを添加し、懸濁液を得る工程、
(1b.2)工程(1b.1)に由来する懸濁液を撹拌する工程、
(1b.3)工程(1b.2)に由来する懸濁液を濾過することによって、固形物を回収する工程
を含む。
【0069】
プロピレンオキシドは、有利なことには、(S)-1-フェニルエチルアミンに対して、1当量から4当量の間、好ましくは1.5当量から3当量の間に含まれる量、より好ましくは2当量で添加される。この添加は、好ましくは、0℃から15℃の間に含まれる温度、とりわけ10℃で実行される。結果として得られる混合物は、典型的には、特に室温において、5時間から25時間の間、好ましくは8時間から18時間の間、とりわけ10時間から14時間の間に含まれる時間撹拌される。
【0070】
工程(1b)の最後に、濾過によって固形物が回収される。前記固形物は、次に、極性且つプロトン性の溶媒中に懸濁させることによって結晶化される。典型的には、極性且つプロトン性の溶媒は、工程(1a)において使用されるものと同じ溶媒である。
【0071】
有利なことには、結晶化工程(1c)は、以下の逐次工程:
(1c.1)工程(1b)に由来する固形物を、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール、及びそれらの混合物の中から優先的に選択される極性且つプロトン性の溶媒、有利なことにはエタノール中において希釈する工程、
(1c.2)工程(1c.1)から結果として得られる混合物を、10℃から20℃の間に含まれる温度まで冷却する工程、
(1c.3)濾過後に化合物(A)を回収し、特に真空下で乾燥させる工程
を含む。
【0072】
特定の実施形態においては、化合物(A)は、工程(1c)を必要とすることなく、工程(1b)の最後に濾過によって直接回収される。
【0073】
別の実施形態においては、工程(1c)が、特に1回、任意選択で繰り返される。
【0074】
別の特定の実施形態においては、工程(1b)に由来する固形物を、極性且つプロトン性の溶媒で洗浄し、その後、特に真空下で乾燥させて、式(A)の化合物の第1のフラクションを得る。この実施形態によれば、工程(1b)の濾過に由来する濾液を、特に真空下で濃縮して湿ったスラリーを得、このスラリー自体を、上に記載した工程(1c.1)から工程(1c.3)に従って結晶化させる。
【0075】
(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルとの反応が意図される、キラル前駆体(1R)(1-ベンジルオキシカルボニルアミノ-エチル)-ホスフィン)酸が、4つの反応工程の後、28%の全収率で得られる、WO 2010/010106に記載されている方法と比較して、本発明によれば、(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルとの反応が意図される、ホスフィン酸のキラル前駆体誘導体は、反応において38から40%の平均収率で得られる。
【0076】
工程(1)の最後に得られる式(A)の化合物は、95/5超、好ましくは96/4超、より好ましくは97/3超、更により好ましくは98/2超、更により好ましくは99/1超の光学純度(1R/1S)を有する。
【0077】
工程(2)
本発明の方法の工程(2)は、上に記載され、以下の図に記載されるような工程(2a)及び工程(2b)を含む。
【0078】
【化12】
【0079】
したがって、工程(2a)においては、工程(1)に由来する式(A)の化合物を、トリメチルシリル基の供給源の存在下で、(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルと反応させる。有利なことには、このトリメチルシリル基の供給源は、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)、TMSクロリド(TMSCl)、TMSトリフレート(TMSOTf)、及びヘキサメチルジシラザン(HMDS)の中から選択され、好ましくは、トリメチルシリル基の供給源はN,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)である。トリメチルシリル基の供給源は、リン原子が(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルのアクリレート官能基と反応する唯一の原子となるように、式(A)の化合物の第二級アミン及びヒドロキシル官能基上にTMS基を導入することを可能にするものである。
【0080】
(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルは、Organic Synthesis Coll.、3巻、337頁に記載されているプロトコルを使用する、出願WO 2010/010106に記載されている方法(実施例2を参照のこと)に従って得られる。
【0081】
好ましくは、工程(2a)は、第一に、式(A)の化合物を、(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルと混合すること、その後、第二に、前記混合物にトリメチルシリル基の供給源を添加することを含む。
【0082】
有利なことには、トリメチルシリル基の供給源は、式(A)の化合物に対して、2当量から6当量の間、好ましくは3当量から4.5当量の間に含まれる量、より好ましくは3.2当量で添加される。したがって、本発明によれば、使用されるトリメチルシリル基の供給源、典型的にはBSAの量が限定され、このことは、BSAが溶媒として使用されるため大過剰となる出願WO 2010/010106とは異なり、コスト、及び大量の反応していない試薬又はそのような量で発生する不純物の除去の点において有利である。
【0083】
(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルは、好ましくは、式(A)の化合物に対して、1当量から2当量の間、好ましくは1当量から1.5当量の間に含まれる量、より好ましくは1当量で添加される。
【0084】
式(A)の化合物、(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステル、及びトリメチルシリル基の供給源を含む反応混合物を、式(A)の化合物の転化率が90%以上となるように、十分な時間撹拌する。反応のモニタリングは、特にHPLCによって確実に行われる。好ましくは、この時間は、1時間から8時間の間、好ましくは3時間から6時間の間、より好ましくは3時間から4時間の間に含まれる。前記撹拌は、有利なことには、40℃から120℃の間、好ましくは60℃から100℃の間、より好ましくは75℃から85℃の間に含まれる温度で実行される。
【0085】
工程(2a)は、好ましくは、不活性雰囲気下、例えば窒素雰囲気下又はアルゴン雰囲気下で実行される。
【0086】
式(B)の化合物は、次に、工程(2b)中に回収される。
【0087】
本発明の第1の代替形態によれば、工程(2b)は、結晶化の工程(2b.1)に相当する。したがって、この代替形態によれば、有利なことには、工程(2b.1)が工程(2a)の後に直接続いて行われる。この第1の代替形態においては、工程(2b.2)は実行されない。
【0088】
結晶化の工程(2b.1)は、典型的には、以下の逐次工程:
(2b.1.1)工程(2a)に由来する反応混合物を、20℃から40℃の間に含まれる温度まで冷却する工程、
(2b.1.2)前記反応混合物を、無極性非プロトン性溶媒及び水の混合物で希釈し、懸濁液を形成する工程、
(2b.1.3)工程(2b.1.2)に由来する懸濁液の濾過によって、式(B)の化合物を回収し、特に真空下で乾燥させる工程
を含む。
【0089】
したがって、この代替形態によれば、式(B)の化合物は、無極性非プロトン性溶媒及び水の混合物中において結晶化される。無極性非プロトン性溶媒は、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、及びテトラヒドロフラン(THF)等のエーテル、並びにそれらの混合物の中から特に選択される。とりわけ、無極性非プロトン性溶媒はMTBEである。したがって、工程(2b.1.2)の結晶化溶媒は、好ましくはMTBE/水の混合物であり、特に5/3の比率のものである。
【0090】
反応混合物中に水が存在することによって、とりわけ、TMS官能基の脱保護が可能になる。沈殿工程の前、溶液中の化合物(B)は、濃縮されていないか、或いはジアステレオ異性体(1R, 2S)がわずかに濃縮されている。2位の炭素上におけるジアステレオ異性体(1R, 2S/1R, 2R)の比率は、13P NMRで測定した場合、例えば60/40である。
【0091】
工程(2b.1.2)の間、無極性非プロトン性溶媒及び極性溶媒の混合物中において希釈した後の前記反応混合物を、化合物(B)が沈殿するように、十分な時間撹拌するが、この時間は、典型的には2時間から24時間の間に含まれ、好ましくは12時間である。
【0092】
記載した条件において、工程(2b.1.2)の結晶化はジアステレオ選択的であるが、これは、立体配置(1R, 2S)の所望されるジアステレオ異性体が、ジアステレオ異性体(1R, 2R)と比較して優勢な様式で沈殿することを意味している。したがって、工程(2)の最後に得られる式(B)の化合物は、立体配置(1R, 2S)が優勢である。
【0093】
「優勢」又は「優勢な様式」とは、本発明の意味において、ジアステレオ異性体(1R, 2S)が、ジアステレオ異性体(1R, 2R)と比較して、厳密には50%超の割合で得られることを意味するものと解釈される。
【0094】
本発明の第1の代替形態によれば、工程(2b.1)に由来する式(B)の化合物は、95/5超、好ましくは96/4超、より好ましくは97/3超、更により好ましくは98/2超、更により好ましくは99/1超の、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0095】
本発明によれば、(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルとの反応に由来する式(B)の化合物は、54%の平均収率で得られる。工程(2a)の最後に得られる、60/40程度の2位の炭素上におけるジアステレオ異性体比(2S/2R)を考慮すると、結晶化工程(2b.1)の平均収率は、出願WO 2010/010106に記載されている(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステルとの反応に由来する化合物の結晶化の工程(実施例3、工程1を参照のこと)の79%と比較して、90%程度である。
【0096】
本発明の第2の代替形態によれば、工程(2b)は、工程(2b.2)に相当する。したがって、有利なことには、工程(2b.2)が工程(2a)の後に直接続いて行われる。この第2の代替形態においては、工程(2b.1)は実行されない。
【0097】
工程(2b.2)は、典型的には、以下の逐次工程:
(2b.2.1)工程(2a)に由来する反応混合物を蒸発させ、固形物を回収する工程、
(2b.2.2)工程(2b.2.1)に由来する固形物をアセトン中でトリチュレートし、濾過し、蒸発させることによって濾液中の式(B)の化合物を回収する工程
を含む。
【0098】
典型的には、工程(2b.2.1)に由来する固形物は、いわゆる「生」の式(B)の化合物に相当し、すなわち、有利なことには厳密には50/50超且つ95/5以下、典型的には51/49から70/30の間に含まれ、とりわけ57/43である、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0099】
工程(2b.2.2)は、式(B)の化合物の、ジアステレオ異性体的濃縮の工程に相当する。
【0100】
好ましい実施形態によれば、工程(2b.2.2)のトリチュレーションは、30分から2時間の間に含まれる期間、典型的には1時間実行される。前記工程の温度は、特に、室温に等しい。
【0101】
このトリチュレーション工程の間、立体配置(1R, 2R)のジアステレオ異性体が優勢な様式で沈殿し、所望される立体配置(1R, 2S)のジアステレオ異性体が、濾液中において優勢な様式で回収される。
【0102】
典型的には、工程(2b.2.2)の最後に濾液中において得られる式(B)の化合物は、70/30から90/10の間、好ましくは80/20から90/10の間に含まれ、とりわけ81/19である、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0103】
工程3
本発明の方法の工程3は、上に記載され、以下の図に記載されるような工程(3a)及び工程(3b)を含む。
【0104】
【化13】
【0105】
工程(3a)は、パラジウム炭素(Pd/C)の存在下で水素化分解を行い、式(B)の化合物上に存在するベンジル基及び1-フェニルエチル基を脱保護できるようにすることで構成される。出願WO 2010/010106においては、3-[(2-ベンジルオキシカルボニル-3-ビフェニル-4-イル-プロピル)-ヒドロキシ-ホスフィノイル]酪酸のベンジルエステルのベンジル基及びカルボキシベンジル基の脱保護は、大量の水酸化ナトリウムの存在下でのけん化によって行われる(実施例3、工程2を参照のこと)。しかしながら、このけん化は、生成される大量のベンジルアルコールが三相媒体を作り出すことで、反応中間体の単離が困難なものとなり、結果として不純物が大量に生成される可能性があるため、工業的規模での実施が困難である。
【0106】
本発明によれば、水素化分解による脱保護では、ベンジル型アルコールは生成されず、トルエン及びエチルベンゼン等の、減圧下で蒸発させることによって簡単に除去することができる副生成物が生成されるため、工業的規模での合成により適していることが証明される。
【0107】
本発明による、ベンジル基及び1-フェニルエチル基の逐次的脱保護を、以下の図に示す。
【0108】
【化14】
【0109】
ここで、X+は、使用される塩基に由来する対イオンを表す。
【0110】
有利なことには、工程(3a)は、以下の逐次工程:
(3a.1)プロトン性溶媒又はプロトン性溶媒の混合物中に式(B)の化合物を含む懸濁液を調製する工程、
(3a.2)工程(3a.1)において調製した懸濁液に、塩基を添加する工程、
(3a.3)工程(3a.2)から結果として得られる懸濁液に、式(B)の化合物の質量に対して10質量%のPd/Cを添加し、結果として得られる反応混合物をH2でパージする工程、
(3a.4)反応混合物を濾過及び濃縮する工程
を含む。
【0111】
好ましい実施形態によれば、工程(3a.1)は、水、酢酸、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、及びtert-ブタノール等のアルコール、並びにそれらの混合物の中から選択される、プロトン性溶媒中において実行される。好ましくは、プロトン性溶媒は水/アルコールの混合物であり、特に水/エタノールである。
【0112】
有利なことには、工程(3a.2)における塩基は、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、二水酸化バリウム(Ba(OH)2)、二水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、及び二水酸化セシウム(Cs(OH)2)の中から選択され、好ましくは、塩基は水酸化ナトリウム、特に1Nの水酸化ナトリウムである。
【0113】
好ましい実施形態によれば、前記強塩基を添加している間、工程(3a.1)に由来する懸濁液は、-10℃から10℃の間、好ましくは-5℃から5℃の間に含まれる温度、より好ましくは0℃である。
【0114】
強塩基は、有利なことには、式(B)の化合物に対して、1当量から2当量の間、好ましくは1当量から1.5当量の間に含まれる量、より好ましくは1当量で、工程(3a.1)に由来する懸濁液に添加される。
【0115】
工程(3a.2)から結果として得られる混合物は、典型的には、完全な可溶化を観察するのに十分な期間、とりわけ1時間から5時間の間に含まれる時間、室温において撹拌される。
【0116】
反応混合物にPd/Cを添加した後、前記混合物は、有利なことには、H2でパージされる前に、窒素又はアルゴンでパージされる。
【0117】
ある実施形態によれば、工程(3a.3)から結果として得られる反応混合物は、15時間から30時間の間、好ましくは18時間から25時間の間に含まれる時間、より好ましくは18時間、15℃から40℃の間、好ましくは20℃から30℃の間に含まれる温度で撹拌される。この撹拌は、典型的には、H2の1バールの圧力下で実行される。
【0118】
特定の実施形態においては、工程(3a.3)から結果として得られる反応混合物の撹拌が停止されるのは、ベンジル基を脱保護するのに十分な時間の後であるが、フェニルエチル基の脱保護が行われる前である。この場合、アミン官能基はフェニルエチル基によって保護されたままであり、工程(3b)は不要である。
【0119】
工程(3a.4)の間、反応混合物を濾過して、Pd/Cを除去する。次に、例えば真空下で濾液を濃縮して、溶媒、特にアルコールの一部を除去する。
【0120】
ホスフィン酸はPd触媒毒であるということが、文献、例えばBaylisらの刊行物、J. Chem. Soc.、Perkin trans. I、1984年、2846~2853頁等に記載されている。このため、実施例4(PL265)の合成に関してWO 2010/010106に記載されているように、大量のPd/Cを使用することが必要であり、ここでは、50質量%の10%Pd/Cが使用されている。このように量が多いと、P-C結合の水素化につながる場合がある。本発明の場合、式(C)の化合物の合成に関して、工程(3a.2)について上に記載したように、塩基を使用してpHを塩基性に制御することによって、使用するPd/Cを10質量%のみとすることができる。
【0121】
工程(3b)は、工程(3a)に由来する反応中間体上に存在する第一級アミン官能基を、P'で示される保護基を使用して保護することで構成される。この保護は、当業者に公知の方法に従って行われる。
【0122】
好ましい実施形態によれば、保護工程(3b)は、塩基性媒体中で、好ましくはNaOH、LiOH、KOH、Ba(OH)2、Ca(OH)2、又はCsOH等の強塩基を添加することによって実行される。とりわけ、反応のpHは、10から11の間に含まれる。pHが酸性過ぎると、極性不純物の形成につながる可能性があり、pHが11を上回ると、試薬が分解して、保護基P'を導入することができるようになる。
【0123】
有利なことには、基P'は、ベンジルオキシカルボニル(CBz)基及びtert-ブトキシカルボニル(Boc)基で構成される群の中から選択され、それぞれ、以下の式(C-a)及び式(C-b)
【0124】
【化15】
【0125】
の化合物がもたらされる。CBz基は、特に、対応する塩化物CBzClを使用することで式(B)の化合物上に導入される。Boc基は、特に、無水物Boc2Oを使用することで式(B)の化合物上に導入される。
【0126】
本発明によれば、式(C)の化合物は、50%から85%の間に含まれる収率で得られる。とりわけ、式(C-a)の化合物は、73%の平均収率で得られ、式(C-b)の化合物は、84%の平均収率で得られる。
【0127】
上に記載したような本発明の第1の代替形態によれば、すなわち、この第一の代替形態により、上に記載したような工程(3a)及び工程(3b)が、工程(2b.1)に続いて得られ、95/5超の光学純度(2S/2R)を有する式(B)の化合物を工程(3a)において使用しながら、実行される。この第1の代替形態によれば、工程(3b)の直後に得られる、立体配置(1R, 2S)の式(C)の化合物は、95/5超、好ましくは96/4超、より好ましくは97/3超、更により好ましくは98/2超、更により好ましくは99/1超の、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0128】
本発明のこの第1の代替形態によれば、式(C)の化合物は、特に、70%から85%の間に含まれる収率で得られる。とりわけ、式(C-a)の化合物は、73%の平均収率で得られ、式(C-b)の化合物は、84%の平均収率で得られる。
【0129】
この第1の代替形態によれば、式(C)の化合物は、工程(3b)の最後に回収され、精製されることなく、他の中間工程を経ることなく、続く工程(4)において直接使用される。
【0130】
本発明の第2の代替形態によれば、上に記載したような工程(3a)及び工程(3b)が、工程(2b.2)の最後に得られ、厳密には50/50超且つ95/5未満、典型的には70/30から90/10の間に含まれ、とりわけ81/19である、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する式(B)の化合物を工程(3a)において使用した上で、実行される。
【0131】
この第2の代替形態によれば、追加的な、式(C)の化合物のジアステレオ異性体濃縮の工程が、工程(3b)に続いて実行される。したがって、本発明の方法は、工程(3b)の直後に、以下の追加的な工程(3c):
(3c)式(C)の化合物を、水/MTBEの混合物中においてトリチュレートし、その後、濾過し、乾燥させる工程、
を含んでいてもよい。
【0132】
好ましい実施形態によれば、工程(3c)のトリチュレーションは、30分から2時間の間に含まれる期間、典型的には1時間実行される。前記工程の温度は、特に、室温に等しい。
【0133】
工程(3c)の間の水/MTBEの混合物の容量比率は、典型的には1/5から1/1の間に含まれ、好ましくは3/5である。
【0134】
典型的には、本発明の第2の代替形態によれば、工程(3c)の最後に得られる式(C)の化合物は、80/20から99/1の間、好ましくは90/10から95/5の間に含まれ、とりわけ93/7である、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。本発明のこの第2の代替形態によれば、式(C)の化合物は、53%程度の収率で得られる。
【0135】
工程4
本発明の方法の工程4は、上に記載され、以下の図に記載されるような工程(4a)及び工程(4b)を含む。
【0136】
【化16】
【0137】
有利なことには、工程(4a)は、以下の逐次工程:
(4a.1)DMF又はTHF/DMF混合物中に溶解された式(C)の化合物を含む溶液に、(L)-アラニンのtert-ブチルエステル及びペプチドカップリング剤を添加する工程、
(4a.2)工程(4a.1)から結果として得られる反応混合物に、塩基を添加する工程、
(4a.3)以下の式(D)
【0138】
【化17】
【0139】
(式中、P'は、上に定義されたようなものであるか、或いはフェニルエチル基に相当する)
の化合物を回収する工程
を含む。
【0140】
工程(4a.1)において導入されるペプチドカップリング剤は、典型的には、TBTU、HATU、EDC、HOBt、BOP、PyBOP、DCC、及びそれらの組み合わせの中から選択される。
【0141】
工程(4a.1)は、好ましくは室温において実行される。工程(4a.1)の間、THF/DMFの混合物が使用される場合、THF/DMFの混合物は好ましくは容量比率1/1の混合物である。
【0142】
工程(4a.2)において導入される塩基は、好ましくは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、及び2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの中から選択され、好ましくは、塩基はDIPEAである。
【0143】
好ましい実施形態によれば、工程(4a.2)において塩基を添加している間、工程(4a.1)に由来する反応混合物は、0℃から15℃の間、好ましくは5℃から10℃の間に含まれる温度である。前記温度は、一般的に発熱性である塩基を添加している間、維持される。
【0144】
有利な実施形態によれば、工程(4a.2)から結果として得られる反応混合物を、式(C)の化合物の転化率が95%以上となるように、十分な時間撹拌する。反応のモニタリングは、特にHPLCによって確実に行われる。好ましくは、この時間は、0℃から15℃の間、好ましくは5℃から10℃の間に含まれる温度において、30分から2時間の間、好ましくは30分から1時間の間に含まれ、より好ましくは45分間である。
【0145】
式(D)の化合物は、当業者に公知である、酸性-塩基性洗浄、有機相における抽出、及び濾過の操作に従って、回収される。
【0146】
好ましい様式においては、式(D)の化合物は、以下の化合物(D-a)及び化合物(D-b)
【0147】
【化18】
【0148】
に相当する。式(D)の化合物は、60%から90%の間に含まれる収率で得られる。
【0149】
基P'の脱保護の工程(4b)は、好ましくは、不活性雰囲気下、例えば窒素雰囲気下又はアルゴン雰囲気下で実行される。
【0150】
特定の実施形態においては、P'がCBz基である場合、工程(4b)は、以下の逐次工程:
(4b.1)以下の式
【0151】
【化19】
【0152】
の化合物(D-a)を、酢酸中において、HBrと反応させる工程、
(4b.2)その後、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エーテル、及びそれらの混合物の中から選択される溶媒を使用して沈殿させ、濾過によって式(E)の化合物を回収する工程
を含む。
【0153】
好ましい様式においては、工程(4b.1)は、以下の逐次工程:
(4b.1.1)式(D-a)の化合物を、酢酸と混合する工程、
(4b.1.2)HBrの酢酸溶液の形態での、臭化水素酸を添加する工程、
(4b.1.3)結果として得られる混合物を、式(D-a)の化合物の転化率が95%以上となるように、十分な時間撹拌する工程
を含む。
【0154】
臭化水素酸HBrは、好ましくは、化合物(D-a)に対して、6当量から10当量の間、好ましくは6当量から8当量の間に含まれる量、より好ましくは6当量で添加される。臭化水素酸の量が10当量超である場合、濃縮時に、生成物の部分ラセミ化につながる。脱保護が完全に行われるように、最小限6当量が必要である。比較すると、出願WO 2010/010106における、酢酸中のHBrを使用する同様の脱保護の工程(実施例3、工程2を参照のこと)では、28当量のHBrが使用されていた。本発明において使用される量は、特に、とりわけ蒸発によって、残留する酸をより簡単に除去することを可能にする。
【0155】
好ましい実施形態においては、臭化水素酸を添加している間、工程(4b.1.1)から結果として得られる混合物は、5℃から20℃の間、好ましくは10℃から15℃の間に含まれる温度である。HBrを添加している間及び工程(4b.1.3)の間、温度は、20℃未満、好ましくは15℃から20℃の間で維持される。温度が20℃を超えると、結果として得られる生成物の部分ラセミ化につながる可能性がある。
【0156】
工程(4b.1.2)から結果として得られる反応混合物を、(S)-1-フェニルエチルアミンの転化率が95%以上となるように、十分な時間撹拌する。反応のモニタリングは、特にHPLCによって確実に行われる。好ましくは、この時間は、2時間から8時間の間、好ましくは3時間から6時間の間、より好ましくは5時間から6時間の間に含まれる。
【0157】
工程(4b.2)におけるエーテルは、好ましくは、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル-tert-ブチルエーテル、ジオキサン、ジエチルエーテル、石油エーテル、及びそれらの混合物の中から選択される。
【0158】
好ましくは、工程(4b.2)の溶媒は、ジイソプロピルエーテルに相当する。
【0159】
別の特定の実施形態においては、P'がBoc基である場合、工程(4b)は、以下の逐次工程:
(4b.1')以下の式
【0160】
【化20】
【0161】
の化合物(D-b)を、ギ酸と反応させて、油状物を得る工程、
(4b.2')工程(4b.1')から結果として得られる油状物を、無極性非プロトン性溶媒中においてトリチュレートし、濾過によって式(E)の化合物を回収する工程
を含む。
【0162】
好ましい様式においては、工程(4b.1')は、以下の逐次工程:
(4b.1'.1)式(D-b)の化合物を、ギ酸と混合する工程、
(4b.1'.2)結果として得られる溶液を、1時間から4時間の間に含まれる時間、好ましくは2時間、40℃から60℃の間に含まれる温度で、好ましくは50℃で撹拌する工程、
(4b.1'.3)溶液を、特に真空下で、油状物が得られるまで濃縮する工程
を含む。
【0163】
工程(4b.1'.1)においては、ギ酸は、好ましくは、式(D-b)の化合物に対して、20当量から40当量の間、好ましくは20当量から30当量の間に含まれる割合、より好ましくは26当量で添加される。使用されるギ酸は、典型的には、ギ酸の88容量%水溶液である。
【0164】
ギ酸には、酸性度がそれ程高くなく、腐食性もそれ程強くないという利点があり、簡単に除去することができるため、工業的規模での合成に特に適している。
【0165】
有利な様式においては、工程(4b.2')の無極性非プロトン性溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、ジイソプロピルエーテル、MTBE、及びそれらの混合物の中から選択され、好ましくは、無極性非プロトン性溶媒はMTBEである。
【0166】
式(E)の化合物は、典型的には、90%から95%の間に含まれる収率で得られる。
【0167】
上に記載したような、工程(2b.1)を実行することを伴い、工程(2b.2)及び工程(3c)は実行されない、本発明の第1の代替形態によれば、ここでは、上に記載したような工程(4a)及び工程(4b)が、工程(3b)に由来し、95/5超、好ましくは96/4超、より好ましくは97/3超、更により好ましくは98/2超、更により好ましくは99/1超の、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する式(C)の化合物を工程(4a)において使用した上で、実行される。この第1の代替形態によれば、立体配置(1R, 2S、L-Ala)の式(D)の化合物は、95/5超、好ましくは96/4超、より好ましくは97/3超、更により好ましくは98/2超、更により好ましくは99/1超の、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有し、立体配置(1R, 2S、L-Ala)の式(E)の化合物もまた、95/5超、好ましくは96/4超、より好ましくは97/3超、更により好ましくは98/2超、更により好ましくは99/1超の、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0168】
上に記載したような、工程(2b.2)及び追加的な工程(3c)を実行することを伴い、そのため工程(2b.1)は実行されない、本発明の第2の代替形態によれば、ここでは、上に記載したような工程(4a)及び工程(4b)が、工程(3c)に由来し、50/50超且つ95/5以下、好ましくは90/10から95/5の間に含まれ、とりわけ93/7である、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する式(C)の化合物を工程(4a)において使用した上で、実行される。この第1の代替形態によれば、立体配置(1R, 2S、L-Ala)の式(D)の化合物は、80/20から99/1の間、好ましくは90/10から95/5の間に含まれる光学純度を有する。
【0169】
この第2の代替形態によれば、追加的な、式(E)の化合物のジアステレオ異性体濃縮の工程が、工程(4b)に続いて実行される。したがって、本発明の方法は、工程(4b)の直後に、以下の追加的な工程(4c) :
(4c)式(E)の化合物を、ジクロロメタン中においてトリチュレートする工程、
を含んでいてもよい。
【0170】
好ましい実施形態によれば、工程(4c)のトリチュレーションは、30分から2時間の間に含まれる期間、典型的には1時間実行される。前記工程の温度は、特に、室温に等しい。
【0171】
典型的には、工程(4c)の最後に得られる式(E)の化合物は、90/10から99/1の間に含まれ、とりわけ94/6である、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0172】
式(I)の化合物を製造する方法
本発明の別の目的は、以下の式(I)
【0173】
【化21】
【0174】
の((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニンの二ナトリウム塩を工業的に製造する方法であって、以下の工程:
【0175】
【化22】
【0176】
先に記載したような工程(1)から工程(4)と、
工程(5):式(E)の化合物を、塩基の存在下で、アシルオキシアルキルN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させることによって、式(F)の化合物を合成する工程と、
工程(6):式(I)の化合物を、弱塩基のナトリウム塩の存在下で、無極性非プロトン性溶媒中に沈殿させることによって、回収する工程と
を含む、方法に関する。
【0177】
したがって、式(I)の化合物を工業的に製造する方法は、上に記載した第1及び第2の代替形態のうち一方又は他方に従う、上に定義されたような逐次工程(1)から工程(4)、並びに以下において詳細に報告される、工程(4)の直後に行われる工程(5)及び工程(6)を含む。
【0178】
工程5
本発明による工程5は、式(E)の化合物を塩基の存在下でアシルオキシアルキルN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させて、以下の図に記載されるような式(F)の化合物を得ることを含む。
【0179】
【化23】
【0180】
工程(5)は、有利なことには、以下の逐次工程:
(5a)式(E)の化合物を、極性非プロトン性溶媒中において、塩基の存在下で、アシルオキシアルキルN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させる工程、
(5b)非プロトン性無極性溶媒を使用して結晶化させ、濾過によって式(F)の化合物を回収する工程
を含む。
【0181】
好ましい様式においては、工程(5a)は、以下の逐次工程:
(5a.1)式(E)の化合物を、極性非プロトン性溶媒中に溶解させる工程、
(5a.2)工程(5a.1)から結果として得られる溶液に、アシルオキシアルキルN-ヒドロキシスクシンイミドを添加する工程、
(5a.3)工程(5a.2)から結果として得られる溶液に、塩基を添加する工程
を含む。
【0182】
式(E)の化合物の、アシルオキシアルキルN-ヒドロキシスクシンイミド(CAS 860035-3-10-5)との反応によって、副生成物としてN-ヒドロキシスクシンイミドが生成されるが、これは水洗で簡単に除去できる。アシルオキシアルキル基の導入は、4-ニトロフェノールが生成されるため、シリカゲルでの精製が必要とされる、出願WO 2010/010106に記載されている合成とは異なり、工業的規模での合成にはほとんど適していない、シリカカラムによる精製を必要としない。
【0183】
工程(5a.1)において、式(E)の化合物の溶解は、好ましくは室温において実行される。
【0184】
極性非プロトン性溶媒は、DMF、DMSO、アセトン、及び酢酸エチルの中から特に選択され、好ましくは、極性非プロトン性溶媒はDMFである。
【0185】
有利なことには、アシルオキシアルキルN-ヒドロキシスクシンイミドは、式(E)の化合物に対して、1当量から2当量の間、好ましくは1当量から1.5当量の間に含まれる量、より好ましくは1当量で、工程(5a.1)から結果として得られる溶液に添加される。
【0186】
好ましくは、アシルオキシアルキルN-ヒドロキシスクシンイミドを添加している間、工程(5a.1)から結果として得られる溶液は、0℃から15℃の間、好ましくは5℃から10℃の間に含まれる温度である。
【0187】
工程(5a.3)の間に導入される塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、及び2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの中から特に選択され、とりわけトリエチルアミンである。
【0188】
塩基を添加している間、反応混合物の温度は、15℃未満、好ましくは10℃から15℃の間で維持される。
【0189】
好ましくは、塩基は、式(E)の化合物と比較して、1当量から4当量の間、好ましくは2当量から3当量の間、特に2当量から2.5当量の間に含まれる量で、工程(5a.2)から結果として得られる溶液に添加される。
【0190】
工程(5a.3)から結果として得られる反応混合物を、式(F)の化合物の転化率が95%以上となるように、十分な時間撹拌する。反応のモニタリングは、特にHPLCによって確実に行われる。好ましくは、この時間は、1時間から8時間の間、好ましくは4時間から6時間の間、より好ましくは4時間から5時間の間に含まれる。前記撹拌は、有利なことには、10℃から20℃の間、好ましくは15℃から20℃の間に含まれる温度で実行される。
【0191】
当業者に公知である、酸性-塩基性洗浄、特に酸性洗浄、及び有機相における抽出の操作が、工程(5a)から工程(5b)の間に実行されてもよい。
【0192】
工程(5b)における結晶化のために使用される無極性非プロトン性溶媒は、典型的には、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、及びテトラヒドロフラン(THF)等のエーテル、並びにそれらの混合物の中から選択される。とりわけ、無極性非プロトン性溶媒はジイソプロピルエーテルである。
【0193】
典型的には、結晶化は室温において実行される。
【0194】
特に有利な様式においては、工程(5b)に先立って、DMF、DMSO、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、及びそれらの混合物等の極性非プロトン性溶媒、好ましくは酢酸エチル又は酢酸イソプロピル、とりわけ酢酸イソプロピルを、工程(5b)から結果として得られる混合物に添加することで、結晶化を開始することが可能になる。この実施形態によれば、30分から1時間の間に含まれる期間、好ましくは30分間、典型的には室温において反応混合物を撹拌した後、前記極性非プロトン性溶媒を、例えば真空下で濃縮することによって、80%、それより多くても少なくても5%の範囲まで除去し、結果として得られる残留物を、上に定義されたような無極性非プロトン性結晶化溶媒と混合する。
【0195】
立体配置(1R, 2S、L-Ala)の式(F)の化合物は、有利なことには、95/5以上、好ましくは96/4超、より好ましくは97/3超、更により好ましくは98/2超、更により好ましくは99/1超の、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0196】
式(F)の化合物は、典型的には、89%の平均収率で得られる。
【0197】
工程(6)
工程(6)は、式(F)の化合物をナトリウムによって塩化して、式(I)の二ナトリウム塩を得ることに相当する。
【0198】
弱塩基のナトリウム塩は、ヒドロキシル官能基をイオン化し、ナトリウム対イオンを提供して式(I)の塩を得るという役目を有する。弱塩基のナトリウム塩は、好ましくは、炭酸水素ナトリウムである。
【0199】
有利なことには、弱塩基のナトリウム塩は、式(F)の化合物に対して、2当量から、それより多くても少なくても0.2当量の範囲の間に含まれる量で添加される。
【0200】
好ましい実施形態によれば、工程(6)は、以下の逐次工程:
(6a)式(F)の化合物を、例えばエーテル等の、水と混和可能であり、低い沸点を有する溶媒、とりわけTHF又はジオキサン、好ましくはTHF中に溶解させる工程、
(6b)工程(6a)から結果として得られる溶液に、水及び弱塩基のナトリウム塩を添加する工程、
(6c)特に真空化で濃縮することによって、工程(6a)の溶媒を除去する工程、
(6d)式(I)の化合物を沈殿させるのに有用である、無極性非プロトン性溶媒を添加する工程、
(6e)濾過及び乾燥によって、式(I)の化合物を回収する工程
を含む。
【0201】
工程(6b)から結果として得られる混合物は、特に15分から1時間の間に含まれる期間撹拌され、好ましくは、この時間は30分間である。ナトリウムイオン供給源として、炭酸水素ナトリウムが使用される場合、前記混合物は、炭酸水素ナトリウムを添加することによって生じるガス状放出物が消失するように、十分な時間撹拌される。このガス状放出物は、NaHCO3の、式(F)の化合物との反応の間に、CO2が形成されることによって生じる。
【0202】
好ましくは、工程(6c)に続いて、工程(6d)の前に、共沸蒸留によって水を除去するために、THFの添加-除去の操作が数回実行される。
【0203】
好ましくは、工程(6d)の無極性非プロトン性溶媒は、エーテルの中から選択され、とりわけジイソプロピルエーテル及びジエチルエーテルの中から選択される。より好ましくは、無極性非プロトン性溶媒はジイソプロピルエーテルである。
【0204】
好ましい様式においては、工程(6d)は、二段階で実行される。第一に、前記無極性非プロトン性溶媒の容量の1/4を、工程(6c)から結果として得られる残留物に添加し、その後、結果として得られる混合物を、特に真空下で濃縮して、有機相を除去する。第二に、前記無極性非プロトン性溶媒の容量の残存する3/4を、1回目の濃縮から結果として得られる残留物に添加する。結果として得られる懸濁液を、典型的には、30分から2時間の間に含まれる時間、好ましくは1時間、とりわけ室温において撹拌した後、濾過する。
【0205】
立体配置(1R, 2S、L-Ala)の式(I)の化合物は、有利なことには、95/5以上、好ましくは96/4超、より好ましくは97/3超、更により好ましくは98/2超、更により好ましくは99/1超の、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0206】
式(I)の化合物は、典型的には、91%の工程(6)の平均収率で得られる。
【0207】
したがって、本発明によれば、式(I)の化合物は、WO 2010/010106に記載されているような、工業規模での合成にはほとんど適していない凍結乾燥によってではなく、非プロトン性無極性溶媒中における沈殿によって得られる。
【0208】
ジアステレオ異性体的に濃縮する方法
本発明はまた、本発明の式(E)の化合物を工業的に製造する方法の中間体を、ジアステレオ異性体的に濃縮する方法にも関連する。
【0209】
前記ジアステレオ異性体濃縮方法は、式(B)、式(C)、及び式(E)の化合物のそれぞれについて、それらが95/5以下の2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する場合に、ジアステレオ異性体濃縮を実行することで構成される。そのようにするためには、式(B)、式(C)、及び式(E)の化合物が、95/5以下の2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する場合、上に記載したような工程(2)、工程(3)、及び工程(4)のそれぞれにおいて、好適な溶媒中においてトリチュレーション工程が実行される。
【0210】
したがって、本発明によるジアステレオ異性体的に濃縮する方法を伴う、式(E)の化合物を製造する方法は、上に記載した工程(2b.2.1)に由来し、厳密には50/50超且つ95/5以下、典型的には51/49から60/40の間、とりわけ57/43である、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する固形物に相当する、上に記載したような、いわゆる「生」の式(B)の化合物から実行され、ジアステレオ異性体濃縮方法を伴う、式(E)の化合物を製造する方法は、以下の工程:
(2b.2.2)工程(2b.2.1)に由来する固形物をアセトン中でトリチュレートし、濾過し、蒸発させることによって濾液中の式(B)の化合物を回収する工程、
(3c)上に記載したような工程(3b)に従い、式(C)の化合物を、水/MTBEの混合物中においてトリチュレートし、その後濾過及び乾燥させる工程、
(4c)上に記載したような工程(4b)に従い、式(E)の化合物を、ジクロロメタン中においてトリチュレートし、その後濾過及び乾燥させる工程
を含む。
【0211】
典型的には、工程(2b.2.2)の最後に得られる式(B)の化合物は、70/30から90/10の間、好ましくは80/20から90/10の間に含まれ、とりわけ81/19である、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0212】
典型的には、工程(3c)の最後に得られる式(C)の化合物は、80/20から99/1の間、好ましくは90/10から95/5の間に含まれ、とりわけ93/7である、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0213】
典型的には、工程(4c)の最後に得られる式(E)の化合物は、90/10から99/1の間に含まれ、とりわけ94/6である、2位の炭素上における光学純度(2S/2R)を有する。
【0214】
好ましい実施形態によれば、工程(2c)、工程(3c)、及び工程(4c)のトリチュレーションは、30分から2時間の間に含まれる期間、典型的には1時間実行される。前記工程の温度は、特に、室温に等しい。
【0215】
本発明によるジアステレオ異性体濃縮方法を伴う、式(E)の化合物を製造する方法においては、上に記載したような工程(2b.1)は実行されず、工程(2b.2)によって置き換えられる。
【0216】
これらのトリチュレーション工程(2b.2.2)、(3c)、及び(4c)は、化合物(B)、化合物(C)、及び化合物(D)が、それぞれの工程(2b)、工程(3b)、及び工程(4b)の最後に、95/5超の2位の炭素上における光学純度(2S/2R)で得られる場合、実行されない。
【0217】
式(B)の化合物
本発明はまた、立体配置(1R, 2S)の、以下の式(B)
【0218】
【化24】
【0219】
の化合物にも関する。
【実施例
【0220】
以下の実施例は、本発明の例示を可能にするものであるが、それを限定するものではない。以下の略語が使用されている。
TLC 薄層クロマトグラフィー
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
DMSO ジメチルスルホキシド
eq. 当量
ESI エレクトロスプレーイオン化
min 分
NMR 核磁気共鳴
TFA トリフルオロ酢酸
【0221】
[1R-[(1S-フェニルエチル)アミノ]エチル]-ホスフィン酸(化合物A)
濃HCl(8.14g、1当量)、続いてH3PO2の50%水溶液(12.1g、1,1当量)を、氷冷した(S)-1-フェニルエチルアミン(10g、82.5mmol)のEtOH(40mL、4容量)溶液に、逐次添加する。N2でパージした後、アセトアルデヒド無水物(4.36g、1.2当量)を添加する。混合物を加熱して、80℃で還流させる。3時間後、混合物をHPLCで分析し、アミンの化合物(A)への転化率が90%未満である場合、0.2当量のアセトアルデヒドを添加し、混合物を再び1時間還流させる。次に、溶液を10℃まで冷却し、プロピレンオキシド(9.57g、2当量)によって処理し、室温に戻るまで放置する。
【0222】
懸濁液を20℃で一晩撹拌した後、濾過する。固形物をEtOH(5mL、0.5容量)で洗浄し、その後、真空下で乾燥させて白色固形物を得る(1級、収率: 20.5%、1R/1S=98/2)。濾液をiBuOAc(水との共沸混合物を形成するよう、10容量)で希釈し、その後、濃縮して濃厚な白色スラリーにし、EtOH(4容量)で希釈し、20℃で1時間撹拌する。2級物を濾過し、EtOH(5mL、0.5容量)で洗浄し、その後、乾燥させることで白色固形物(収率: 17.8%、1R/1S=92/8)が得られ、これにより、38~40%の全収率及び95/5超の光学純度(1R/1S)が得られる。
NMR (DMSO D6+TFA), 1H (400 MHz): 1.27 (dd, 3H, CH3); 1.57 (d, 3H, NCHCH3); 3.06 (m,1H); 4.72 (m, 1H, NCH); 6.33及び7.72 (2s, 1H, PH); 7.44 (m, 3H, 芳香族)及び7.55 (m, 2H, 芳香族). 31P 19.91 (0.02 P) ; 20.89 (0.98 P).
【0223】
[(1S)-1-[[(1R)-1-[[(2S)-3-ベンジルオキシ-3-オキソ-2-[(4-フェニルフェニル)メチル]プロピル]-ヒドロキシ-ホスホリル]エチル]アミノ]エチル]化合物(B)
N2でパージした反応器において、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)(10.67g、3.2当量)を、化合物(A)(3.5g、16.4mmol、1当量)及び(2-(4-ビフェニル)メチル)アクリレートのベンジルエステル(5.38g、1当量)に添加する。濃厚な懸濁液を、40℃(最小撹拌能力)から80℃(75℃において完全可溶化)まで加熱し、3時間撹拌する。溶液をHPLCによって分析し(90/10超の転化率)、その後、20~40℃まで冷却し、MTBE(20容量)及びH2O(3.5mL、12当量、発熱反応)で希釈する。懸濁液が、数時間で形成される。これを、最短でも2時間から3時間(好ましくは一晩、ゆっくりと沈殿させる)撹拌した。懸濁液を濾過し、乾燥して、立体配置(1R, 2S)の白色固形物を得る(5.11g、収率: 54%、(2S/2R=96/4))。
NMR (DMSO D6+TFA) 1H (400 MHz): d 1.24 (dd, 3H, C(2)CH3); 1.54 (d, 3H, NCHCH3); 1.91及び2.18 (2 m, 2H, C(4)H2); 2.89 (m, 1H, C(2)H); 3.0 (m, 2H, C(5)CH2); 3.09 (m, 1H, C(5)H); 4.71 (m,1H, NCH); 5.0 (m, 2H, OCH2Bn); 7.15-7.66 (m, 19H, 芳香族). 31P 39.61 (0.96 P、2Sジアステレオ異性体)及び39.87 (0.04 P、2Rジアステレオ異性体)。
【0224】
(2S)-2-[[[(1R)-1-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)エチル]-ヒドロキシ-ホスホリル]メチル]-3-(4-フェニルフェニル)プロパン酸(化合物C-a)
1NのNaOH(2.77mL、1当量)を、氷浴で冷却した、化合物(B)(1.5g、2.77mmol)の、EtOH(22.5mL、15容量)及びH2O(18mL、12容量)中の懸濁液に添加した(pHを、参考目的でモニタリングする、11未満)。混合物を、完全に可溶化するまで室温で撹拌した。10% Pd/C(0.15g、化合物(B)に対して10質量%であり、50%湿潤)を添加した。反応混合物をN2、続いてH2でパージし(3サイクルの真空/N2、続いて3サイクルの真空/H2)、1バールのH2下において、20~30℃で18時間撹拌した。参考までにpHを記録する(7~8程度のpH)。反応混合物を0.45μmで濾過し、その後、部分的に濃縮してEtOHを除去する。1NのNaOH(2.77mL、1当量、10超のpH)、続いてCbzCl(0.472g、1当量)、続いて1NのNaOH(2.77mL、1当量)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌する。反応はHPLCによって定量し、酸性-塩基性洗浄後の化合物を、そのまま後続の工程に使用する(0.975g、収率: 73%、(2S/2R)=95/5)。
NMR (DMSO D6 +TFA) 1H (400 MHz) d 1.21 (dd, 3H, C(2)-CH3), 1.75及び1.98 (2 m, 1H+1H, C(4)H2); 2.89-3.02 (m, 3H, C(5)H及びC(5)-CH2); 3.76 (m, 1H, C(2)H); 5.03 (m, 2H, OCH2Bn); 7.25-7.63 (m, 15H, 芳香族及びNH). 31P 45.04 (0.05 P、2Rジアステレオ異性体)及び45.70 (0.95 P、2Sジアステレオ異性体)。
【0225】
[(1R)-1-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)エチル]-[(2S)-3-[[(1S)-2-tert-ブトキシ-1-メチル-2-オキソ-エチル]アミノ]-3-オキソ-2-[(4-フェニルフェニル)メチル]プロピル]ホスフィン酸(化合物D-a)
8.4LのDMF中の1.685kgの化合物(C-a)を、室温(20~25℃)において清澄な溶液が得られるまで撹拌し、その後、763g(4.2モル)のH-Ala-OtBu.HCl及び3372g(10.5モル)のTBTUを、室温で添加する。混合物をおよそ5℃まで冷却し、温度を5~10℃に維持しながら、2263g(17.5モル)のDIEPAを添加する。添加後、混合物を5~10℃で45分間撹拌する。8.4Lの酢酸エチルを5℃で添加し、10Lの1NのHCl水溶液も添加する。混合物を室温で10分間撹拌する。酢酸エチル(1回×8.4L)で水相を抽出し、有機相を合わせ、NaHCO3の10%水溶液(3回×6L)、3Lの1NのHCl溶液、及び3Lのブラインで洗浄する。有機相において沈殿した生成物を、清澄な溶液が得られるまで、8Lの酢酸エチル中で撹拌しながら45から50℃に加熱する。それを冷却した後、逐次沈殿によって、白色固形物の形態で正しいジアステレオ異性体を得る(1.314kg)(収率: 62%、HPLCによる純度100%)。
NMR (DMSO D6 + TFA): 1H (400 MHz) d 1.17 (m, C(2)CH3, 3H); 1.22 (d, 3H, C(8)H3); 1.36 (s, 9H, tBu); 1.61及び1.93 (2 m, 1H+1H, C(4)H2); 2.79 (m, 1H, C(5)H); 2.98 (m, 2H, C(5)CH2); 3.72 (m, 1H, C(2)H); 4,11 (m, 1H, C(8)H); 5,01 (m, 2H, OCH2Bn); 7.25-7.63 (m, 15H, 芳香族及びN(1)H)及び8.29 (d, 1H, N(7)H). 31P 45.95 (0.96 P、2Sジアステレオ異性体)及び46.22 (0.04 P、2Rジアステレオ異性体)。
【0226】
((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((((R)-1-アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニン酸 (化合物E(PL254.HBr))
1250g(2.054モル)の化合物(D-a)を、窒素流下で、2.5Lの酢酸と混合する。混合物を、室温(15~20℃)において、すべての固形物が溶解するまで撹拌し、その後10~15℃まで冷却し、2.99kg(33%、12.32モルのHBr)のHBrの酢酸溶液を、温度を16~20℃に維持しながらゆっくりと添加する。5時間かけて添加した後、反応の進行をHPLCによってモニタリングしながら、混合物を真空下、18~20℃で濃縮して、大体400~500mLの酢酸を除去し、6Lの酢酸エチルを添加する。混合物を、室温(15~20℃)において30分間撹拌し、その後、濾過して固形生成物を単離する。これを酢酸エチル(3回×2L)及びジイソプロピルエーテル(1回×3L)で洗浄し、その後空気流の下、35℃で一晩乾燥させて、950gの固形生成物を得る(収率: 92.7%、HPLC純度: 99.5%)。
NMR (DMSO D6 + TFA): 1H (400 MHz) d 1.22 (dd, 3H, C(2)CH3); 1.30 (d, 3H, C(8)H3); 1.64及び2.19 (2 m, 1H+1H, C(4)H2); 2.74 (m, 1H, C(5)H); 3.06 (m, 2H, C(5)CH2); 3.26 (m, 1H, C(2)H); 4.23 (m, 1H, C(8)H); 7.36 (m, 3H, 芳香族); 7.45 (m, 2H, 芳香族); 7.60 (d, 2H, 芳香族); 7.66 (d, 2H, 芳香族); 7.70 (m, 9H, 芳香族); 8.07 (br s, 3H, N(1)H3 +)及び8.53 (d, 1H, N(9)H). 31P 41.51 (0.98 P、2Sジアステレオ異性体)及び42.13 (0.02 P、2Rジアステレオ異性体)。
HPLC純度(254nm、Kromasil C18. 250mm×4.6mm、5μm)、H2O(0.01% TFA)-CH3CN(0.01% TFA) 90/10で2分間、その後14分間かけて10/90にし、10/90で4分間: 99.5%、tR 10.31及び11.25分。
【0227】
(2S)-2-[[[(1R)-1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エチル]-ヒドロキシ-ホスホリル]メチル]-3-(4-フェニルフェニル)プロパン酸(化合物C-b)
1NのNaOH(2.2mL、1当量)を、氷浴で冷却した、化合物(B)(1g、2.21mmol、2R/2S 4/96)の、EtOH(15mL、15容量)及びH2O(12mL、12容量)中の懸濁液に添加する。混合物を、完全に可溶化するまで室温で撹拌する。10% Pd/C(0.15g、化合物(B)に対して10質量%であり、50%湿潤)を添加した。反応混合物をN2、続いてH2でパージし(3サイクルの真空/N2、続いて3サイクルの真空/H2)、1バールのH2下において、20~30℃で18時間撹拌した。参考までにpHを記録する(7~8程度のpH)。反応混合物を0.45μmで濾過する。1NのNaOH(2.2mL、1当量)、Boc2O(0.5g、1当量)、続いて1NのNaOH(2.2mL、1当量)を逐次添加する。混合物を室温において2時間撹拌し、その後、部分的に濃縮してEtOHを除去する。水相を、1NのHCl(0.655g、3当量)で、pHが1未満になるまで処理する。懸濁液をiBuOAc(1.28g、5当量)で処理し、2時間混合して固形物を得る。固形物を濾過し、その後、減圧下で乾燥させて化合物(C-b)を得る(0.837g、84%)。
NMR (DMSO D6+TFA): 1H (400 MHz) d 1.17 (m, 3H, C(2)-CH3); 1.36 (s, 9H, tBu); 1.71及び1.97 (2m, 1H+1H, C(4)H2); 2.9-3.1 (m, 3H, C(5)H及びC(5)-CH2); 3.70 (m, 1H, C(2)H); 7.01 (d, 1H, NH); 7.27 (d, 2H, 芳香族); 7.34 (m, 1H, 芳香族); 7.45 (m, 2H, 芳香族); 7.57 (d, 2H, 芳香族)及び7.64 (d, 2H, 芳香族). 31P 46.4 (2Sのみジアステレオ異性体を検出)。
【0228】
[(1R)-1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エチル]-[(2S)-3-[[(1S)-2-tert-ブトキシ-1-メチル-2-オキソ-エチル]アミノ]-3-オキソ-2-[(4-フェニルフェニル)メチル]プロピル]ホスフィン酸(化合物D-b)
TBTU(0.862g、3当量)、続いてDIPEA(0.578g、5当量)を、化合物(C-b)(0.4g、0.895mmol)に対して、更にDMF(2mL、5容量)中のAlaOtBu・HCl塩(0.195g、1.2当量)に対して0℃で逐次添加する。反応混合物を1時間撹拌し、その後、AcOEt(5mL、10容量)及び1NのHCl(2.55mL、2.85当量)を添加し、混合物を室温に戻るまで放置する。水相をiBuOAcで抽出する(2回×2mL、2回×5容量)。有機相を合わせ、10%のNaHCO3(3回×2mL、3回×5容量)、1NのHCl(2mL、5容量)、及び10%のNaCl(2mL、5容量)で洗浄し、その後、減圧下で濃縮及び乾燥させて、固形物の形態の化合物(D-b)を得る(0.356g、0.62mmol、69%)。
NMR (DMSO D6 + TFA): 1H (400 MHz) d 1.13 (m, C(2)CH3, 3H); 1.23 (d, 3H, C(8)H3); 1.36 (br s,18H, 2 x tBu); 1.59及び1.91 (2 m, 1H+1H, C(4)H2); 2.8 (m, 1H, C(5)H); 3.0 (m, 2H, C(5)CH2); 3.65 (m, 1H, C(2)H); 4.11 (m, 1H, C(8)H); 6.80 (d, 1H, N(1)H); 7.31及び7.34 (m, 3H, 芳香族); 7.45 (m, 2H, 芳香族); 7.54 (d, 2H, 芳香族); 7.62 (d, 2H, 芳香族)及び8.30 (d, 1H, N(7)H). 31P 46.5 (2Sのみジアステレオ異性体を検出)。
【0229】
((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((((R)-1-アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニン酸(化合物E(PL254))
88%のHCO2H(1mL、12容量)を、化合物(D-b)(85mg、0.148mmol)に添加する。溶液を、2時間撹拌しながら50℃まで加熱し、その後、濃縮して油状物を得て、この油状物をMTBE(2mL、24容量)中においてトリチュレートする。生成物を濾過し、その後、減圧下で乾燥させて化合物(E)を得る(58mg、94%)。
NMR (DMSO D6 + TFA): 1H (400 MHz) d 1.22 (dd, 3H, C(2)CH3); 1.30 (dd, 3H, C(8)H3); 1.64及び2.18 (2 m, 1H+1H, C(4)H2); 2.73 (m, 1H, C(5)H); 3.06 (m, 2H, C(5)CH2); 3.25 (m, 1H, C(2)H); 4.23 (m, 1H, C(8)H); 7.30-7.70 (m, 9H, 芳香族); 8.08 (br s, 3H, N(1)H3 +)及び8.52 (d, 1H, N(9)H). 31P 41.2 (2S 1のみジアステレオ異性体を検出)。
HPLC純度(254nm、Kromasil C18、250mm×4.6mm、5μm)、H2O(0.01% TFA)-CH3CN(0.01% TFA) 90/10で2分間、その後14分間かけて10/90にし、10/90で4分間: 97.70%、tR: 10.29分。
【0230】
種々の工程の間の逐次濃縮による、化合物(E)の合成
例えば、上に記載したような工程(2b.2.1)に由来する、「生」化合物(B)(2S/2R)57/43から出発して、種々の工程の間に、所望されるジアステレオ異性体を濃縮できることが示されている。
【0231】
化合物(B)(2S/2R: 81/19)
「生」化合物(B)(2S/2R)57/43を、iBuOAc(50mL、5容量)及び水(50mL、5容量)中に懸濁させ、2時間撹拌する。懸濁液を濾過して、湿潤ケーキ(12g)を得る。固形物をアセトン(50mL、5容量)で処理し、数分間フィルター上で懸濁させ、その後濾過し、真空下で乾燥させて、正しくないジアステレオ異性体(1R, 2R)を得る(1.26g、収率: 24%、2R/2S比: 31P 79/21)。濾液を濃縮乾固して、固形物形態の正しいジアステレオ異性体(B)を得る(3.18g、収率: 60%、(2S/2R): 81/19)。
NMR D6 DMSO+TFA、31P 39.37 (0.81 P、ジアステレオ異性体2S)及び39.60 (0.19 P、ジアステレオ異性体2R)。
【0232】
化合物(C-b)(2S/2R: 93/7)
1NのNaOH(4.43mL、1当量)を、氷浴で冷却した、先に得た化合物(B)(2g、4.43mmol、2S/2R 81/19)の、EtOH(30mL、15容量)及びH2O(15mL、7.5容量)中の懸濁液に添加する。混合物を、完全に可溶化するまで室温で撹拌する。10% Pd/C(0.20g、化合物(B)に対して10質量%であり、50%湿潤)を添加した。反応混合物をN2、続いてH2でパージし(3サイクルの真空/N2、続いて3サイクルの真空/H2)、1バールのH2下において、20~30℃で18時間撹拌した。参考までにpHを記録する(7~8程度のpH)。反応混合物を0.45μmで濾過する。1NのNaOH(4.4mL、1当量)、Boc2O(1.05g、1当量)、続いて1NのNaOH(4.4mL、1当量)を逐次添加する。混合物を室温において2時間撹拌し、その後、部分的に濃縮してEtOHを除去する。水相を、MTBE(10mL、5容量)、続いて1NのHCl(1.75mL、4当量)で洗浄する。有機相を分離し、濃縮乾固して、固形物を得る。これを、MTBE(10mL、5容量)及びH2O(0.24mL、3容量)中において1時間懸濁させる。懸濁液を濾過し、その後、真空下で乾燥させて化合物(C-b)を得る(1.05g、収率: 53%、2S/2R=93/7)。
NMR D6 DMSO+TFA、31P 46.20 (ジアステレオ異性体2R、0.07P)及び46.37 (ジアステレオ異性体2S、0.93P)。
【0233】
化合物(D-b)(2S/2R 92/8)
TBTU(1.96g、3当量)、続いてDIPEA(1.316g、5当量)を、先に得た化合物(C-b)(0.91g、2.04mmol)に対して、更にDMF(5mL、5容量)中のAlaOtBu・HCl塩(0.44g、1.2当量)に対して0℃で逐次添加する。反応混合物を1時間撹拌し、その後、EtOAc(5mL、5容量)及び1NのHCl(6mL、3当量)を添加し、混合物を室温に戻るまで放置する。水相をEtOAcで抽出する(4mL、2容量)。有機相を合わせ、その後、10%のNaHCO3(3回×4mL、3回×2容量)、1NのHCl(4mL、2容量)、及び10%のNaCl(4mL、2容量)で洗浄する。溶液を濃縮し、真空下で乾燥させて、固形物形態の化合物(C-b)を得る(1.058g、1.84mmol、収率: 90%、2S/2R=92/8)。
NMR D6 DMSO+TFA、31P 46.56 (0.92 P、ジアステレオ異性体2S)及び46.88 (0.08 P、ジアステレオ異性体2R)。
【0234】
化合物(E)(2S/2R 93/7)
88%のHCO2H(5mL、12容量)を、先に得た化合物(D-b)(1.06、1.84mmol)に添加する。溶液を、2時間撹拌しながら50℃まで加熱し、その後、濃縮して油状物を得て、この油状物をMTBE(8mL、8容量)中においてトリチュレートする。混合物を濃縮し、真空下で乾燥させて化合物(E)を得る(0.62g、収率: 80%、(2S/2R): 93/7)。
NMR D6 DMSO+TFA、31P 41.33 (ジアステレオ異性体2S、0.93P)及び41.97 (ジアステレオ異性体2R、0.07P)
【0235】
化合物(E)(0.5g)をCH2Cl2(4mL、8容量)中に懸濁させ、これを1時間撹拌する。希薄な懸濁液を濾過し、真空下で乾燥させて化合物(E)を得る(0.45mg、収率: 72%、(2S/2R): 94/6)。
HPLC(254nm、Kromasil C18、250mm×4.6mm、5μm)、H2O(0.01% TFA)-CH3CN(0.01% TFA) 90/10で2分間、その後14分間かけて10/90にし、10/90で4分間)純度98.2%、tR: 10.31分。
【0236】
((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニン酸(化合物F)
900g(1.8モル)の化合物(E)を、2.7LのDMF中において可溶化し、混合物を、清澄な溶液が得られるまで室温(15~20℃)において撹拌する。次に、これを5~10℃まで冷却し、492.4g(1.8モル)のアシルオキシアルキルカルバメートを少量ずつ添加し、混合物を、清澄な溶液が得られるまで5~10℃において撹拌する。温度を15℃未満に維持しながら、382.3g(3.79モル)のトリエチルアミンをゆっくりと添加する。添加後、反応をHPLCによってモニタリングしながら、混合物を15~20℃において4時間撹拌する。4.5Lの酢酸エチルを添加し、混合物を5~10℃まで冷却して、温度を25℃未満に維持しながら、pHを2から3に調整するために1NのHCl水溶液をゆっくりと添加する(注:大体2.2Lの1NのHCl水溶液を使用した)。3.2Lの水を添加し、混合物を室温において10分間撹拌する。生成物の有機相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出する(1回×4.5L)。有機相を混合し、水(4回×3.6L)及びブライン(1回×3.6L)で洗浄する。有機相を、減圧下40~45℃で濃縮して、大体90%の酢酸エチルを除去する。2.7Lの酢酸エチルを残留物に添加し、混合物を45~50℃で30分間撹拌する。混合物を、真空下40~45℃で濃縮して、大体80%の酢酸エチルを除去する。2.7リットルのジイソプロピルエーテルを残留物に添加し、混合物を引き続き濃縮して、残留する酢酸エチルを追い出す。その後、9Lのジイソプロピルエーテルを添加し、混合物を室温(およそ20℃)において1時間撹拌する。固形生成物を単離し、空気流の下、30~35℃で一晩乾燥させて、淡黄色固形物の形態の、925gの化合物(F)を得る(HPLC純度98.1%)。
【0237】
((2S)-3-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-((ヒドロキシ((1R)-1-(((1-(イソブチリルオキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)ホスホリル)メチル)プロパノイル)-L-アラニン酸の二ナトリウム塩(化合物(I))
136.27g(0.24モル)の化合物(F)を、683mLのTHF中において可溶化し、混合物を、清澄な溶液が得られるまで室温(15~25℃)において撹拌する。溶液に137mLの水を添加し、次に、これをN2下で室温(15~25℃)において濾過し、その後、炭酸水素ナトリウム(39.71g)を室温(15~25℃)において添加する。混合物を、室温(15~25℃)において、ガス状放出物が消失するまで少なくとも30分間撹拌する。溶液を、減圧下20~25℃において濃縮する。残留物を1.0LのTHFによって希釈し、その後、減圧下20~25℃において濃縮する操作を数回行って、水を除去する。1.4Lのジイソプロピルエーテルを残留物に添加する。懸濁液を、機械的撹拌で、15~25℃において1時間撹拌し、その後、得られた固形物を濾過し、洗浄した後乾燥して、灰白色固形物の形態の、133.9gの化合物(I)を得る(収率: 91%、HPLC純度: 98.6%)。
【国際調査報告】