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特表2023-505584駆動ユニットを動作させる方法および駆動ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】駆動ユニットを動作させる方法および駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/06 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
H02N2/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535716
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2020085465
(87)【国際公開番号】W WO2021116263
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】19216018.2
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505060288
【氏名又は名称】ミニスイス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】MINISWYS S.A.
【住所又は居所原語表記】Quai du Bas 31a, Biel / Bienne Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルマン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ホースリー,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】シーグリスト,マルティン
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681BB02
5H681BB13
5H681BB14
5H681DD23
5H681FF30
5H681FF38
(57)【要約】
方法は、共振器(2)と、共振器(2)内に振動を励起し、それによって受動要素(4)を駆動するための励起手段(23)とを有する能動要素(1)を備える駆動ユニットを動作させるのに役立つ。この方法は、●励起手段(23)を、励起周波数で繰り返される駆動パルスを含む周期的信号である駆動信号で駆動するステップと、●制御信号に応じて、駆動信号を、○制御信号が第1の範囲内にある場合は、励起周波数を変更することまたは駆動パルスの形状を変更すること、および○制御信号が第2の範囲内にある場合は、駆動パルスを繰り返し省略することによって、修正するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動要素(1)に対して受動要素(4)を駆動するための駆動ユニットを動作させるための方法であって、前記能動要素(1)は、
共振器(2)と、前記共振器(2)において振動を励起するための少なくとも1つの励起手段(23)とを含み、
前記共振器(2)は、前記共振器(2)の接続領域(20)から延びる少なくとも1つのアーム(21、22)を含み、
前記少なくとも1つのアーム(21、22)は、前記アームの外側端部に接触要素(31)を含み、
前記接触要素(31)は、前記少なくとも1つのアーム(21)の振動運動によって移動可能であり、
前記受動要素(4)は、これらの振動運動によって前記能動要素(1)に対して駆動および移動されるよう構成され、
前記受動要素(4)は、第1の接触領域(41)を含み、前記第1の接触領域(41)は、前記第1の接触要素(31)と接触するよう構成され、
前記能動要素(1)および前記受動要素(4)は、特に前記能動要素(1)が励起されていないときに、少なくとも前記第1の接触要素(31)を前記第1の接触領域(41)に向かって押す予応力と呼ばれる力のために構成され、
前記方法は、
●前記励起手段(23)を、励起周波数で繰り返される駆動パルスを含む周期的信号である駆動信号で駆動するステップと、
●制御信号に応じて、前記駆動信号を、
○前記制御信号が第1の範囲内にある場合は、各駆動パルスによって伝達されるエネルギーを非ゼロ最小パルスエネルギー値より上に保ちながら、前記励起周波数を変更することまたは前記励起周波数を同じに保ちながら前記駆動パルスの形状を変更することであって、特に、前記最小パルスエネルギー値はパルスの最大エネルギーの少なくとも5%であること、および、
○前記制御信号が第2の範囲内にある場合は、駆動パルスを繰り返し省略することによって、修正するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の範囲および前記第2の範囲は重複する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記駆動パルスの前記形状を変更することは、
●前記制御信号に応じて前記駆動パルスの振幅を変更することと、
●前記制御信号に応じて前記駆動パルスの幅を変更することとのうちの少なくとも1つによって行われる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
各駆動パルスによって伝達されるエネルギーを前記非ゼロ最小パルスエネルギー値より上に維持することは、前記駆動パルスのパルスデューティサイクルを最小パルスデューティサイクル値より上に維持すること、および前記駆動パルスの前記振幅を最小振幅値より上に維持することによって達成される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記最小パルスエネルギー値は、パルスの最大エネルギーの少なくとも5%または少なくとも10%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記制御信号に応じて前記励起周波数を変更することは、前記振動モードを変更しないが、前記振動モードにおいて前記励起周波数と前記駆動ユニットの固有振動数との間の整合を低減するだけの量だけ前記励起周波数を変更することを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
駆動パルスを繰り返し省略することは、前記制御信号に応じて駆動パルスが省略されるターンオフ期間の継続時間を変更することを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
駆動パルスを繰り返し省略する場合、駆動パルスが省略されるターンオフ期間中、前記予応力は、前記能動要素(1)に対する前記受動要素(4)の位置を保持する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記励起周波数は、50kHz~1000kHzの範囲にあり、前記駆動パルスの繰り返し省略は、前記励起周波数より10~100倍低い周波数で生じる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記制御信号は速度設定点に対応し、前記第1の範囲はより高速に対応し、前記第2の範囲はより低速に対応する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記制御信号は位置設定点に対応し、位置が1パルス周期で変化する位置ステップサイズが、前記駆動パルスの前記形状または前記励起周波数を変更することによって制御される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記駆動ユニットの速度を能動的に低減するために、
●前記駆動装置を第1の方向に駆動する第1の励起周波数を有する第1の駆動信号で前記励起手段(23)を駆動するステップと、
●前記駆動装置を前記第1の方向と反対の第2の方向に駆動する第2の励起周波数を有する第2の駆動信号で前記励起手段(23)を駆動することによって前記速度を低減するステップとを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記駆動装置の前記速度を低減することは、前記励起周波数を同じに保ちながら前記駆動パルスの前記デューティサイクルおよび/もしくは前記振幅を低減することによって、または前記駆動ユニットの振動モードを本質的に維持しながら前記励起周波数を前記駆動ユニットの固有振動数から離調することによって達成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記駆動装置の速度を低減することは、駆動パルスを省略することと、前記予応力によって前記駆動装置を制動することとによって達成される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2つの励起周波数の間で切り替えることによって前記駆動ユニットの移動を制御するために、
●第1の数のパルスに対して、第1の励起周波数を有する第1の駆動信号で前記励起手段(23)を駆動するステップ、
●第2の数のパルスに対して、第2の励起周波数を有する第2の駆動信号で前記励起手段(23)を駆動するステップ、の繰り返し実行を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記共振器(2)の所望の振動モードに応じて、特に前記能動要素(1)に対する前記受動要素(4)の相対移動の所望の方向に応じて、前記励起周波数を決定するステップを、
●異なる励起周波数で前記能動要素(1)を繰り返し駆動し、各励起周波数について、前記駆動ユニットの、関連付けられる応答、特に、前記能動要素(1)に対する前記受動要素(4)の移動速度または変位である前記応答を測定するステップと、
●前記駆動ユニットの将来の動作のために、前記応答を最適化する、特に前記応答を最大化する、最適な励起周波数を選択するステップとによって含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
評価される前記異なる励起周波数の各々について、ある数の駆動パルスが前記能動要素に印加され、結果として生じる線形変位もしくは回転変位または複合変位が測定され、前記応答を表す、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
評価される前記異なる励起周波数の各々について、駆動パルスが前記能動要素に印加され、到達される定常状態速度が測定され、前記応答を表す、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記励起周波数を決定するステップは、異なる動作モードについて、特に反対方向の移動を引き起こす動作モードについて、別々に実行される、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記駆動装置の反対方向における移動に対応する2つの振動モードに対応する2つの励起周波数について、前記2つについての最適な励起周波数は、前記駆動装置の応答が両方向で同じであるように決定される、請求項16~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
1つ以上の異なる動作モードの各1つについて、前記励起周波数を決定するステップは、前記駆動ユニットが組み立てられた後に1回実行され、前記最適な励起周波数は、前記駆動ユニットのコントローラ(90)に記憶され、前記駆動ユニットのその後の動作に使用される、請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
1つ以上の異なる動作モードの各1つについて、前記励起周波数を決定するステップは、前記駆動ユニットの寿命中に繰り返し実行され、その都度、前記最適な励起周波数は、前記駆動ユニットのコントローラ(90)に記憶され、前記駆動ユニットのその後の動作に使用される、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記共振器(2)の両側の励起手段(23)を、前記両側の励起手段(23)に印加される励起信号のパワー間に異なる関係がある状態で励起し、それによって、前記関係に応じて、前記受動要素(4)を、前記能動要素(1)に対して、異なる方向に駆動するステップを含み、これらの異なる方向は、共通の平面内にあり、互いに対してある角度にあり、前記角度は0°および180°とは異なる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記共振器(2)の両側の励起手段(23)を、互いに対して位相シフトされた励起信号で励起し、それによって、前記位相シフトに応じて、前記受動要素(4)を、前記能動要素(1)に対して、異なる方向に駆動するステップを含み、これらの異なる方向は、共通の平面内にあり、互いに対してある角度にあり、前記角度は0°および180°とは異なる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
駆動ユニットの励起手段(23)に接続され、前記励起手段(23)に電力を供給するよう構成されるコントローラ(90)であって、先行する請求項のいずれか1項による方法を実行するよう構成される、コントローラ(90)。
【請求項26】
能動要素(1)に対して受動要素(4)を駆動するための駆動ユニットであって、前記能動要素(1)は、
共振器(2)と、前記共振器(2)において振動を励起するための少なくとも1つの励起手段(23)とを含み、
前記共振器(2)は、前記共振器(2)の接続領域(20)から延びる少なくとも1つのアーム(21、22)を含み、
前記少なくとも1つのアーム(21、22)は、前記アームの外側端部に接触要素(31)を含み、
前記接触要素(31)は、前記少なくとも1つのアーム(21)の振動運動によって移動可能であり、
前記受動要素(4)は、これらの振動運動によって前記能動要素(1)に対して駆動および移動されるよう構成され、
前記受動要素(4)は、第1の接触領域(41)を含み、前記第1の接触領域(41)は、前記第1の接触要素(31)と接触するよう構成され、
前記能動要素(1)および前記受動要素(4)は、特に前記能動要素(1)が励起されていないときに、少なくとも前記第1の接触要素(31)を前記第1の接触領域(41)に向かって押す予応力と呼ばれる力のために構成され、
前記駆動ユニットは、前記駆動ユニットの前記励起手段(23)に接続され、前記励起手段(23)に電力を供給するよう構成されるコントローラ(90)を備え、前記コントローラ(90)は、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成され、
前記駆動ユニットは、圧電励起手段(23)と直列および/または並列のインダクタンスを含む、駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化された駆動装置、例えば圧電駆動装置の分野に関する。より詳細には、本発明は、対応する独立請求項の前文に記載されている駆動ユニットを動作させるための方法および駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
このような駆動装置は、例えば、本出願人のWO 2006/000118 A1またはUS 7’429’812B2およびWO 2019/068708 A1に開示されている。そのような駆動装置は、振動するように作製される1つ、2つまたはそれ以上のアームを備え、アームの端部における振動運動によって受動要素を駆動する。振動運動を駆動する励起手段の周波数は、アームに受動要素を第1の方向または反対の第2の方向のいずれかに移動させる振動モードを生成するように選択することができる。そのような駆動装置のさらなる改善、特に受動要素を動かすことができる速度の範囲を増大させる必要がある。
【0003】
US4 952 834は、圧電効果によって生成される進行波によってロータが駆動される超音波モータを駆動するための回路を開示している。PWM信号は、変調信号を鋸歯状信号と比較することによって生成される。変調信号が最大であるとき、PWM信号は、変調信号が最大である継続時間全体にわたってゼロに落ちることなく、同様に最大のままである。進行波モータの有効動作範囲は影響を受けない。
【0004】
したがって、本発明の目的は、最初に述べたタイプの駆動ユニットの、より大きな動作範囲を可能にする、当該駆動ユニットを動作させるための方法を創出することである。
【0005】
これらの目的は、請求項に係る、駆動ユニットを動作させる方法および駆動ユニットによって達成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この方法は、能動要素に対して受動要素を駆動するための駆動ユニットを動作させる役割を果たし、能動要素は、
共振器と、共振器において振動を励起するための少なくとも1つの励起手段とを含み、
共振器は、共振器の接続領域から延在する少なくとも1つのアームを含み、
少なくとも1つのアームは、アームの外側端部に接触要素を含み、
接触要素は、少なくとも1つのアームの振動運動によって移動可能であり、
受動要素は、これらの振動運動によって能動要素に対して駆動および移動されるよう構成され、
受動要素は、第1の接触領域を含み、第1の接触領域は、第1の接触要素と接触するよう構成され、
能動要素および受動要素は、特に能動要素が励起されていないときに、少なくとも第1の接触要素を第1の接触領域に向かって押す予応力のために構成される。
【0007】
この方法は、
●励起手段を、励起周波数で繰り返される駆動パルスを含む周期的信号である駆動信号で駆動するステップと、
●制御信号に応じて、駆動信号を、
○制御信号が第1の範囲内にある場合は、各駆動パルスによって伝達されるエネルギーを非ゼロ最小パルスエネルギー値より上に保ちながら、励起周波数を変更することまたは励起周波数を同じに保ちながら駆動パルスの形状を変更することであって、特に、最小パルスエネルギー値はパルスの最大エネルギーの少なくとも5%であること、および、
○制御信号が第2の範囲内にある場合は、駆動パルスを繰り返し省略することによって、修正するステップとを含む。
【0008】
本文書を通して、駆動ユニットの速度および位置が言及されるときは常に、それは、概して、能動要素に対する受動要素の運動の速度または位置を示す。この運動は、機械的構成および励起の態様に応じて、線形もしくは回転または組み合わせであり得る。
【0009】
本発明によれば、制御信号が第2の範囲内にある場合、駆動パルスを繰り返し省略するステップは実行されない。すなわち、以下で説明する方法ステップの1つ以上は、駆動パルスの省略が行われることなく実行される。
【0010】
実施形態では、本方法は、能動要素に対して受動要素を駆動するための駆動ユニットを動作させるためのものであり、能動要素は、
共振器と、共振器において振動を励起するための少なくとも1つの励起手段とを含み、
共振器は、共振器の接続領域から延在する少なくとも2つのアームを含み、
アームの各々は、アームの外側端部に、それぞれの接触要素を含み、
接触要素は、それぞれのアームの振動運動によって移動可能であり、
受動要素は、これらの振動運動によって能動要素に対して駆動および移動されるよう構成され、
受動要素は、第1および第2の接触領域を含み、各接触領域は、第1および第2の接触要素のそれぞれの1つと接触するよう構成され、
能動要素および受動要素は、特に能動要素が励起されていないときに、第1および第2の接触要素をそれぞれの第1および第2の接触領域に向かって押す予応力のために構成される。
【0011】
実施形態では、第1の範囲および第2の範囲は重複する。
実施形態では、駆動パルスの形状を変更することは、
●制御信号に応じて駆動パルスの振幅を変更することと、
●制御信号に応じて駆動パルスの幅を変更することとのうちの少なくとも1つによって行われる。
【0012】
実施形態では、各駆動パルスによって伝達されるエネルギーを非ゼロ最小パルスエネルギー値より上に維持することは、駆動パルスのパルスデューティサイクルを最小パルスデューティサイクル値より上に維持すること、および駆動パルスの振幅を最小振幅値より上に維持することによって達成される。
【0013】
実施形態では、最小パルスエネルギー値は、パルスの最大エネルギーの少なくとも5%または少なくとも10%である。
【0014】
実施形態では、制御信号に応じて励起周波数を変更することは、振動モードを変更しないが、振動モードにおける励起周波数と駆動ユニットの固有振動数との間の整合を低減するだけの量だけ励起周波数を変更することを含む。これは、機械的振動へのエネルギー伝達、ひいては機械的振動の振幅を低減する。
【0015】
実施形態では、駆動パルスを繰り返し省略することは、制御信号に応じて駆動パルスが省略されるターンオフ期間の継続時間を修正することを含む。
【0016】
これにより、受動要素を、準連続的に、比較的低速の平均速度で駆動することができる。
【0017】
実施形態において、駆動パルスを繰り返し省略する場合、駆動パルスが省略されるターンオフ期間中、予応力は、能動要素に対する受動要素の位置を保持する。
【0018】
実施形態において、駆動パルスを繰り返し省略する場合、駆動パルスが印加されるターンオン期間の継続時間は、能動要素の振動が、能動要素が受動要素を駆動する振幅を達成するのに充分である。
【0019】
実施形態では、励起周波数は、50kHz~1000kHzの範囲にあり、駆動パルスの反復省略は、励起周波数より10~100倍低い周波数で生じる。
【0020】
実施形態では、制御信号は速度設定点に対応し、第1の範囲はより高速に対応し、第2の範囲はより低速に対応する。
【0021】
結果、本方法は、制御信号が、より高い範囲内にある速度を表す場合は、各駆動パルスによって伝達されるエネルギーを非ゼロ最小パルスエネルギー値より上に保ちながら、励起周波数を変更することまたは励起周波数を同じに保ちながら駆動パルスの形状を変更すること、および、制御信号が、より低い範囲内にある速度を表す場合は、駆動パルスを繰り返し省略することを含み得る。
【0022】
これは、たとえ所与の速度設定点が、駆動パルスの形状のみを低減することによって達成され得、駆動パルスのエネルギーを、駆動装置が確実に動作するために必要とされる閾値を下回って低減するであろう速度を下回っている場合でも、所与の速度設定点を達成することを可能にする。
【0023】
実施形態では、制御信号は位置設定点に対応し、位置が1パルス周期で変化する位置ステップサイズが、駆動パルスの形状または励起周波数を変更することによって制御される。
【0024】
実施形態では、本方法は、駆動ユニットの速度を能動的に低減するために、
●駆動装置を第1の方向に駆動する第1の励起周波数を有する第1の駆動信号で励起手段を駆動するステップと、
●駆動装置を第1の方向と反対の第2の方向に駆動する第2の励起周波数を有する第2の駆動信号で励起手段を駆動することによって速度を低減するステップとを含む。
【0025】
実施形態では、駆動装置の速度を低減することは、励起周波数を同じに保ちながら駆動パルスのデューティサイクルおよび/もしくは振幅を低減することによって、または駆動ユニットの振動モードを本質的に維持しながら励起周波数を駆動ユニットの固有振動数から離調することによって達成される。
【0026】
実施形態では、駆動装置の速度を低減することは、駆動パルスを省略することと、予応力によって駆動装置を制動することとによって達成される。
【0027】
実施形態では、本方法は、少なくとも2つの励起周波数の間で切り替えることによって駆動ユニットの移動を制御するために、
●第1の数のパルスに対して、第1の励起周波数を有する第1の駆動信号で励起手段を駆動するステップ、
●第2の数のパルスに対して、第2の励起周波数を有する第2の駆動信号で励起手段を駆動するステップ、の繰り返し実行を含む。
【0028】
実施形態では、第1および第2の数のパルスは、共振器を振動の定常状態にするために必要とされるパルスの数より少ない。すなわち、第1および第2の駆動信号によって生成される振動は、ある過渡状態(第1の励起周波数から第2の励起周波数に切り替えた後)から別の過渡状態(第2の励起周波数から第1の励起周波数に切り替えた後)にシフトし、再び戻る。全体的な効果は、接触要素が受動要素を押して駆動する方向が変更されることである。これは、2つの励起周波数ならびに第1および第2の数のパルスを選択することによって制御することができる。使用される実際の値は、能動要素の幾何学形状に依存し、シミュレーションおよび/または実験によって決定することができる。
【0029】
2つ-またはそれより多い-励起周波数を切り替えるこの方法は、駆動パルスを繰り返し省略するステップとは無関係に、およびそのステップなしに、実行することができる。
【0030】
実施形態では、本方法は、共振器の所望の振動モードに応じて、特に能動要素に対する受動要素の相対移動の所望の方向に応じて、励起周波数を決定するステップを、
●異なる励起周波数で能動要素を繰り返し駆動し、各励起周波数について、駆動ユニットの、関連付けられる応答、特に、能動要素に対する受動要素の移動速度または変位である応答を測定するステップと、
●駆動ユニットの将来の動作のために、応答を最適化する、特に応答を最大化する、最適な励起周波数を選択するステップとによって含む。
【0031】
これは、駆動周波数を適合させ、それによって、励起信号からのエネルギーが能動要素の振動における機械的エネルギーに伝達される効率を適合させることを可能にする。
【0032】
実施形態では、評価される異なる励起周波数の各々について、ある数の駆動パルスが能動要素に印加され、結果として生じる線形変位、回転変位、または複合変位が測定され、応答を表す。
【0033】
実施形態では、評価されている異なる励起周波数の各々について、駆動パルスが能動要素に印加され、到達される定常状態速度(線形または回転または組み合わさった場合もあり得る)が測定され、応答を表す。
【0034】
実施形態では、励起周波数を決定するステップは、異なる動作モードについて、特に反対方向の移動を引き起こす動作モードについて、別々に実行される。
【0035】
励起周波数を決定するこのステップは、1つの動作モードに対応する。典型的には、それは、少なくともいくつかの異なる動作モードについて繰り返される。そのような異なるモードは、2つの反対方向における、直線または回転の運動に対応することができる。異なるモードは、特に共振器の両側の励起手段を異なる振幅で励起することによって、異なる方向の直線運動に対応することができる。
【0036】
実施形態では、駆動装置の反対方向における移動に対応する2つの振動モードに対応する2つの励起周波数を考慮して、それら2つについての最適な励起周波数は、駆動装置の応答が両方向で同じであるように決定される。
【0037】
これは、本質的に非対称である、駆動装置の特性の均衡をとり、両方向において、例えば駆動パルス当たりの速度または変位に関して、同じ性能を達成することを可能にする。
【0038】
実施形態では、1つ以上の異なる動作モードの各1つについて、励起周波数を決定するステップは、駆動ユニットが組み立てられた後に1回実行され、最適な励起周波数は、駆動ユニットのコントローラに記憶され、駆動ユニットのその後の動作に使用される。
【0039】
実施形態では、1つ以上の異なる動作モードの各1つについて、励起周波数を決定するステップは、駆動ユニットの寿命中に繰り返し実行され、その都度、最適な励起周波数は、駆動ユニットのコントローラに記憶され、駆動ユニットのその後の動作に使用される。
【0040】
実施形態では、本方法は、共振器の両側の励起手段を、両側の励起手段に印加される励起信号のパワー間に異なる関係がある状態で励起し、それによって、前記関係に応じて、受動要素を、能動要素に対して、異なる方向に駆動するステップを含み、これらの異なる方向は、共通の平面内にあり、互いに対してある角度にあり、その角度は0°および180°とは異なる。
【0041】
実施形態では、本方法は、共振器の両側の励起手段を、互いに対して位相シフトされた励起信号で励起し、それによって、位相シフトに応じて、受動要素を、能動要素に対して、異なる方向に駆動するステップを含み、これらの異なる方向は、共通の平面内にあり、互いに対してある角度にあり、その角度は0°および180°とは異なる。
【0042】
コントローラは、駆動ユニットの励起手段に接続され、駆動ユニットの励起手段に電力を供給するよう構成され、本明細書に記載の方法を実行するよう構成される。
【0043】
実施形態において、駆動ユニットは圧電駆動ユニットであり、励起手段は圧電素子である。他の実施形態では、駆動ユニットは、電磁アクチュエータ(ボイスコイル等)、磁歪アクチュエータ、または形状記憶合金系アクチュエータを用いることができる。
【0044】
典型的には、接触要素の移動は、間欠的に受動要素に接触し、毎回接触要素の移動に応じた方向に受動要素を押す働きをする。支持の態様によって、例えば線形に運動する、および/または回転する、受動要素の、結果として生じる移動方向は、本出願人の先行するWO 2006/000118 A1またはUS 7’429’812B2において説明されているように、励起手段の励起周波数によって制御することができる。
【0045】
実施形態では、共振器およびその部品は、シート材料、特にシートメタルの単一片から製造される。
【0046】
実施形態では、第2のアームは、第1のアームの振動運動と均衡する振動運動で動くよう構成される。
【0047】
すなわち、励起手段は、能動要素に対して受動要素を駆動するために、ある周波数で励起されると、第1のアームおよび第2のアームは、互いに均衡する運動で振動する。
【0048】
ここで提示される種類の共振器は、典型的には、共振器の幾何学的形状の対称軸に対応する共振器軸を有する。略平面形状の共振器の場合、共振器軸はそれの基準平面内にある。共振器軸に対する対称性は、アームの全体的形状に対応すると理解され、アームの形状の詳細に関しては完全でない場合がある。
【0049】
したがって、少なくとも2つのアームは、接続領域から実質的に対称に延在するが、それらは、それらの形状または輪郭の詳細は異なり得る。例えば、一方のアームは、アームが延在する方向に測定して、他方のアームよりも短くてもよい。例えば、それは、他方のアームよりも最大10%または最大20%または最大30%または最大40%短くてもよい。
【0050】
共振器軸または対称点に関して互いに対称に配置されるアームは、アームが振動するときにアームの移動が互いに均衡することを可能にする。その結果、共振器の振動運動を共振器軸に対して本質的に対称にすることができる。
【0051】
実施形態では、受動要素は、第1のアームによって駆動されると直線運動で運動するよう構成される。
【0052】
実施形態では、受動要素は、第1のアームによって駆動されると回転運動で運動するよう構成される。
【0053】
実施形態では、接続領域は実質的に矩形である。励起手段も、典型的には実質的に矩形である。接続領域の矩形近似に対応する矩形の辺は、励起手段の矩形近似に対応する矩形の辺と平行に整列させることができる。
【0054】
共振器およびその部品が一体成形されているとは、言い換えれば、共振器の部品、例えば接続領域、第1および第2のアーム、取付領域、および任意選択で軸受アームが、共振器と単一の部品として製造されることを意味する。これは、例えば、シートメタル片から共振器をスタンピングまたは切断することによって、または鋳造によって、または積層造形プロセスによって行うことができる。
【0055】
周波数に応じて、能動要素は、受動要素を、第1の方向に、または第1の方向と反対の第2の方向に移動させるように駆動することができる。実施形態では、受動要素による移動は並進運動である。他の実施形態では、これは回転運動である。
【0056】
さらなる実施形態は、従属請求項から明らかである。方法クレームの特徴は、デバイスクレームの特徴と組み合わせることができ、逆もまた同様である。
【0057】
本発明の主題は、以下を概略的に示す添付の図面に示される例示的な実施形態を参照して、以下の本文においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】振動駆動装置のための駆動ユニットを示す図である。
図2】振動駆動装置のための駆動ユニットを示す図である。
図3】振動駆動装置のための駆動ユニットを示す図である。
図4】駆動パルスの形状を変調するときの駆動信号および結果として生じる振動振幅を示す図である。
図5】駆動パルスの存在を変調するときの駆動信号および結果として生じる振動振幅を示す図である。
図6】パルスデューティサイクルdpに対する駆動速度vの依存性を示す図である。
図7】励起周波数fに対する駆動速度vの依存性を示す図である。
図8】時間にわたる速度軌道と、異なる励起周波数に対する定常状態値とを示す図である。
図9】異なる励起周波数について、固定数の励起パルスに対してカバーされる距離sを示す図である。
図10】2つの励起手段の非対称電力供給のための異なる動作モードを示す図である。
図11】駆動ユニットを動作させる方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
原則として、同一または機能的に同一の部分は、図面において同一の参照符号が付されている。
【0060】
図1は、能動要素1が、アームの対、第1のアーム21および第2のアーム22を有する共振器2を含む駆動装置を示し、アーム21、22および取付領域14は、共振器2の接続領域20に取り付けられる。取付領域14は、共振器2をベース要素などの別の部品に取り付ける役割を果たす。励起手段23は、例えば圧電素子であり、接続領域20に配置されている。コントローラ90は、励起手段23を駆動するための励起信号または励起電圧を生成するよう構成される。位置および/または速度および/または加速度センサ91は、能動要素1に対する受動要素4の位置および/または速度を測定するよう構成される。センサ91は、受動要素4の位置によって影響を受ける磁界の測定に基づくことができる。センサ91は、ホールセンサであってもよいし、MEMS(微小電気機械)デバイスであってもよい。励起手段23は、励起手段23の両側に配置された2つの別個の要素を含むことができる。共振器2および励起手段23は、互いに積み重ねられ、基準面基準面28(図3参照)と平行に延在する平坦な要素である。ある励起周波数で、ある交流電圧により励起されると、アーム21,22が振動し、周波数に応じて第1のアーム21の第1の接触要素31が略直線運動する。線形振動は直交成分を有することができ、したがって全体の運動は楕円形であると考えることができる。周波数に応じて、直線振動(前後)運動の方向は変化し得る。第1の接触要素31は、受動要素4の第1の接触領域41と繰り返し接触してそれを能動要素1に対して駆動する。第2の接触要素32および第2の接触領域42についても同様である。直線往復運動の方向に応じて、受動要素は、対応する方向に繰り返し押され、受動要素がどのように懸架されるかに応じて、それは、例えば、線形および/または回転運動を行うことになる。図1の実施形態では、受動要素4は能動要素1に対して回転することができる。
【0061】
部品の特定の幾何学的形状、および受動要素4が能動要素1に対して動くように構成される態様を考慮すると、所望の運動(回転または直線)方向について、各振動に対して、または各パルスおよび結果として生じる押し込み運動に対して、所望の運動のための最大のエネルギー伝達をもたらす励起周波数を決定することが可能である。パルス当たりのエネルギー伝達を低減するために、励起周波数をわずかに変化させて、全体的な振動運動の方向は同じに維持しながらもその方向をわずかに変化させるようにすることができる。これは、接触要素31、32がそれぞれの接触領域41、42に当たる入射角、ならびに振動の振幅を変化させ、パルスごとに伝達されるエネルギーは、最適な角度と比較して低減される。このようにして、励起周波数の小さな相対的変化を用いて、受動要素4が動かされる速度を制御することができる。
【0062】
第1の接触要素31と第1の接触領域41との間、および第2の接触要素32と第2の接触領域42との間に、それぞれ、予応力が作用する。予応力は、第1のアーム21および第2のアーム22の弾性によって発生させることができ、アームは、受動要素4が接触要素31、32の間に配置されるときに押し離される。
【0063】
第1のアーム21および第2のアーム22は、実質的に対称的に接続領域20から延在し、平坦な材料片から製造される場合、それらの形状、特にそれらの輪郭の詳細において異なり得る。共振器軸24は、上述のアームの詳細を除いて、共振器2、特に接続領域20およびアーム21、22を鏡像にすることができる対称軸に対応する。接続領域20およびアーム21、22の運動は、励起手段23によって励起されるとき、同じ対称軸で、概して対称であり得る。この運動の節、すなわち、最小限の運動の領域は、共振器軸24上に位置することができる。能動要素1を別の要素に取り付けるための取付領域14も、共振器軸24上に位置することができる。
【0064】
図2は能動要素1の変形例を示し、明確にするために受動要素4を省略している。a)は、図1にある通りの能動要素1である。b)において、能動要素1は、受動要素を、直線方向に、特に2つのアーム21、22が位置する平面内において、両矢印によって示すように、共振器軸24に対応して、駆動するのに適している。a)およびb)において、励起手段23は、共振器2の両側に取り付けられる。c)では、励起手段23は、第1および第2のアーム21、22が取り付けられる別々の面に取り付けられる。
【0065】
図3は、図1の駆動装置と本質的に同じ要素を伴い、アームの対も伴うが、第1のアーム21のみが受動要素4と接触し、それを駆動する、駆動装置を示す。受動要素の運動は、直線運動軸26に沿って行われる。
【0066】
これまで提示された実施形態では、受動要素4は、アーム21、22の間に配置され、アームの端部にある接触要素31、32は、互いに向かって内側を向いている。図示されていない他の実施形態では、アーム21、22は、接触要素31、32が互いから離れて外側を向く形状である。受動要素4は、接触要素31、32の一方または両方に外側から接触するように配置される。
【0067】
本明細書に提示される駆動方法を適用することができる駆動装置のさらなる実施形態は、上述のWO 2006/000118 A1またはUS 7’429’812B2およびWO 2019/068708 A1に開示されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
図4は、同じ時間軸tに沿って、3つの駆動信号D1、D2、D3と、能動要素1による振動の、対応する振幅A1、A2、A3とを示す。
【0069】
第1の駆動信号D1は、励起周波数fe=1/Teに対応する、パルス周期とも呼ばれる周期長Teを有し、最大パルス幅Te/2、すなわちデューティサイクルdpが50%である矩形信号である。D1のパルスシーケンスが開始時間t0で始まると仮定すると、励起手段23による後続のパルスが、能動要素1、特に共振器2およびそのアームの振動に機械的エネルギーを伝達し、振動の、対応する第1の振幅A1が上昇する。いくつかのパルスの後、振動は最大に達し、次いで、定常状態で、本質的に一定のままである。振幅が活性化閾値Atを下回る場合、アームは、受動要素4に駆動力を付与しない。振幅が閾値を上回る場合、アームは、受動要素4に駆動力を付与し、受動要素4は能動要素1に対して駆動される。
【0070】
第2の駆動信号D2は、第1の駆動信号D1の振幅変調から生じ、その最大値に対して振幅を低減する。第3の駆動信号D3は、第1の駆動信号D1のパルス幅変調から生じ、そのパルス幅またはパルスデューティサイクルをその最大値に対して低減する。第2および第3の駆動信号D2、D3の両方について、パルス毎に能動要素1に伝達される機械的エネルギーは、第1の駆動信号D1に対して低減される。これに対応して、第2および第3の振幅軌道A2、A3は、第1の振幅A1よりもゆっくりと上昇し、より低い一定または定常状態値で水平になる。活性化閾値を超えるのに要する時間は、第1駆動信号D1の場合よりも長い。
【0071】
能動要素による振動の振幅は、受動要素4が能動要素1に対して移動する速度に対応する。したがって、駆動ユニットの速度は、パルスごとに能動要素1に与えられるエネルギーを制御することによって制御することができ、エネルギーはパルスの形状の関数である。形状は、異なるタイプの変調によって制御することができ、パルス振幅および/またはパルス幅変調は、周知の例である。
【0072】
パルス毎に伝送されるエネルギーのさらなる低減は、振幅が活性化閾値Atを決して超えないとき、またはほんの時折、信頼できない態様で越えるときにその状況を生じさせ得る。このため、駆動ユニットの速度を速度閾値未満に低下させることは不可能である。一般に、速度閾値は振幅閾値に対応する。速度閾値は、駆動ユニットの物理的および電気的特性に応じて、最大速度の20%~40%の範囲であり得る。
【0073】
図6は、パルス幅またはパルスデューティサイクルdpと結果として生じる速度vとの関係に関して上記を図示し、パルスデューティサイクルを最大電力に対応する50%から減少させると、速度は、それがゼロに低下する閾値まで減少する。
【0074】
より低速度を達成するために、駆動信号の形状は、定常状態における能動要素による振動の振幅が安全マージンだけ活性化閾値を上回るように、維持される。駆動装置は、図5に示すように間欠的に作動される。この図は、同じ時間軸tに沿って、第4の駆動信号D4と、能動要素1による対応する振動振幅A4と、能動要素1に対する受動要素4の対応する変位Sとを示す。時間軸は、図4の時間軸と比較して圧縮されている。第4の駆動信号D4は、ターンオン時間Tonの間はパルスを含み、ターンオフ時間Toffの間はパルスを含まない。パルスありおよびなしのシーケンスは、Ton+Toffに等しくなり得るパルスブロック周期Tbで周期的に繰り返され得る。パルスブロック周期は、励起周期と呼ぶこともできる。パルスブロックが繰り返される対応する周波数fb=1/Tbを、パルスブロック周波数と呼ぶ。ターンオン時間Tonのパルスブロック周期Tbに対する関係、すなわちTon/Tbを、パルスブロックデューティ値dpbとする。その最大値は、最大出力に対応し、100%である。
【0075】
したがって、駆動装置は、ターンオン期間中にのみ駆動ユニットにパルスを印加し、ターンオフ期間中にパルスを省略または抑制することによって、間欠的に動作される。振幅が活性化閾値を超えるのに充分に長いターンオン期間中、および対応する遅延の後、受動要素4は能動要素1に対して駆動される。ターンオフ期間中、振動が減衰する遅延の後、予応力は、能動要素1に受動要素4を適所に保持させる。変位Sは、ステップおよび静止期間の反復シーケンスによって増加する。変位の平均勾配は、図5に示すように、能動要素1に対する受動要素4の平均速度を表す。
【0076】
一般に、この速度は、直線軸に沿って見た能動要素1と受動要素4との間の相対運動を指す。回転駆動の場合、角速度は、能動要素1が受動要素4を駆動する半径で割った速度に対応する。
【0077】
典型的な用途では、パルスブロック周期は、5kHz~100kHz、典型的には約25kHzのパルスブロック周波数fb=1/Tbに対応することができる。パルス自体は、50kHz~1000kHz、典型的には約500kHzの周波数を有することができる。
【0078】
結果として生じる最大速度は、約80mm/秒であり得る。各振動周期のステップは、0.01~1マイクロメートルの範囲であり得る。能動要素1によって受動要素4に付与される力は、100mNまで(すなわち、0.1Nまで)であり得る。励起手段23に印加される電圧は、約3Vとすることができる。
【0079】
駆動ユニットの、ある位置が達成される必要がある状況では、速度にかかわらず、コントローラは、例えば、位置が1パルス周期で変化する位置ステップサイズの変更を、たとえば、
●駆動パルスの形状を変更し、それによって、パルスごとに伝達されるエネルギーを低減し、したがって受動要素を駆動する機械的振動の振幅を低減することによって;
●または、励起周波数を変更し、それによって、機械的振動へのエネルギー伝達、したがって機械的振動の振幅を低減し、および/またはそれによって、機械的振動の方向、したがって受動要素4の移動方向に作用する駆動力への機械的振動の寄与を変化させることによって、行うことができる。
【0080】
図7は、励起周波数fと結果として生じる速度vとの関係を示し、第1の周波数f1において、共振器2は、第1の動作モードまたは振動モードにあり、受動要素4を最大速度で第1の方向に駆動する。第2の周波数f2において、共振器2は第2の動作モードにあり、受動要素4を最大速度で第1の方向と反対の第2の方向に駆動する。それぞれの振動モードにおける能動要素1の固有振動数に対する励起周波数の離調に対応する、それぞれf1またはf2の周りの小さな偏差に対して、それぞれの速度は減少する。
【0081】
励起周波数を離調することによる速度低下は、部分的にはエネルギー伝達の低下に起因し、部分的には移動方向における第1の接触要素の移動の寄与の低下に起因し得るので、エネルギー伝達の低下は、(パルスデューティサイクルがまだ最大ではないと仮定して、)パルスデューティサイクルを増加させることによって補償され得る。正味の効果は、機械的運動に変換される電力の量を、最適に同調された(離調されていない)励起と同じレベルに維持することができ、接触要素によって受動要素に及ぼされる機械的振幅および力も維持することができることである。
【0082】
2つの移動方向に対応する2つの機械的周波数および対応する励起周波数f1およびf2が与えられると、電気エネルギーを電気機械システムに効率的に伝達する問題が生じる。これは、両方の周波数において考えられるべきである。解決策は、圧電励起手段23と直列に直列インダクタンスを導入することである。第1の近似として、圧電励起手段23は、キャパシタンスCpとしてモデル化することができる。周波数f1およびf2が与えられると、直列インダクタンスの値Lは、対応する実施形態によれば、LおよびCpを含む共振回路の振動周波数f(ヘルツ単位で)
【0083】
【数1】
【0084】
が、f1とf2との間にあるように選択される。特に、振動周波数fは、f1とf2との間の中間周波数に置くことができる。直列インダクタンスLは、励起手段23が給電される2つの接続のうちの1つに集中させることができ、または2つの接続にわたって分割することができる。
【0085】
代替的にまたは追加的に、並列インダクタンスを用いることができ、振動周波数fは同じ態様で選択される。
【0086】
上記の例は、矩形パルスを有する駆動信号の観点から説明されている。同じ原理を、特に振幅およびパルス幅変調ならびにパルスの省略に関して、異なる形状のパルスで適用することができる。例えば、正弦波パルス、三角形パルス、台形パルスもしくは鋸歯状パルス、または任意の形状のパルスである。
【0087】
反対の移動方向に対する最適な励起周波数f1およびf2、ならびにおそらくは異なるモードおよび方向に対するさらなる励起周波数は、概して、駆動ユニット、特に共振器2および励起手段23の個々の機械的ならびに電気的特性に依存する。これらの特性は、温度、水分などの環境条件に応じて、および重力方向に対する駆動ユニットの向きにも応じて、摩耗およびパラメータドリフトに起因して経時的に変化し得る。これに対応して、励起周波数の最適値は変化し得る。最適値を決定するために、駆動装置を異なる周波数で動作させ、目標応答を測定し、目標応答が最適である周波数を決定することができる。
【0088】
図8は、速度測定が可能な設定においてこれを示す。異なる曲線は、励起周波数に依存して、駆動速度の経時的な展開を示す。周波数f1において、一方の方向における最大定常状態速度が達成され、周波数f2において、他方の方向におけるそれが達成される。それぞれf1およびf2から逸脱する非最適周波数f1’およびf2’は、より低速の定常状態速度をもたらす。最適な励起周波数を決定するこの方法は、駆動ユニットの組み立て後、較正環境において、駆動ユニットがその目的地環境に組み込まれるときに利用できない場合がある速度測定装置を用いて、実行することができる。
【0089】
図9は、位置測定のみに基づいて最適周波数を決定することを示す図であり、駆動ユニットは、固定数のステップまたは駆動パルス、例えば、様々な励起周波数で2000個の駆動パルスにわたって動作される。次に、sで示される位置の変化が測定される。2つの対向する方向に最も大きい変位を有する周波数が、最適周波数f1およびf2として選択される。この手順は、ある装置に搭載された、目的地環境における駆動ユニットの動作中に実行できる。例えば、これは、装置の起動毎に、および/または定期的な時間間隔で、および/または駆動ユニットの状態または性能の変化が検出されたときに、実行することができる。
【0090】
図10は、共振器2の両側に位置する2つの励起手段23を駆動することによって達成される異なる動作モードを示し、2つの励起手段23に印加される励起信号のパワー間の関係が異なる。共振器は、例えば、図1図2a)、図2b)および図3に示すものに対応する。各場合において、接触要素31、32が受動要素と接触しているときに受動要素がx-z平面内で押される方向は、矢印によって示される。中央の行は、同じ励起信号が2つの励起手段23に、2つの励起周波数f1およびf2で印加され、共振器2の平面内で、反対方向に移動を引き起こす場合を示す。他の行は、一方の励起手段23を駆動する信号のパワーP1,P2が他方よりも大きい影響を示している。各励起手段23を駆動するパワーは、次に、励起信号のパルスデューティサイクルおよび/またはパルスの振幅によって変調することができる。
【0091】
共振器2の厚みは、励起されることになる屈曲モードを決定し、したがって、それは、2つの励起手段23を駆動するパワーP1、P2の不均衡が、共振器面の外側の方向における第1および第2の接触要素31、32の移動の大きさにどの程度影響を及ぼすかを決定する。したがって、厚みは、移動方向の要件に従って選択することができる。
【0092】
図10におけるのと同様の動作モードおよび対応する移動パターンは、共振器2の両側で励起手段23を駆動する励起信号を位相シフトすることによって得ることができる。特に、位相シフトは90°とすることができる。
【0093】
図11は、一実施形態による駆動ユニットを動作させる方法のフロー図を示す。初期化ステップ10の後、制御ステップ11において、制御信号が決定される。分岐ステップ12において、制御信号の値に応じて、本方法は以下のステップのうちの1つに分岐する:
●制御信号が第1の範囲r1内にある場合、第1の分岐ステップ13において、駆動パルスの形状および/または周波数は修正され;
●制御信号が第2の範囲r2内にある場合、第3の分岐ステップ16において、駆動パルスは繰り返し省略され;
●制御信号が第1の範囲および第2の範囲の両方の範囲内にある場合、第2の分岐ステップ15において、駆動パルスの形状および/または周波数は変更され、駆動パルスは繰り返し省略される。
次いで、本方法は、制御ステップ11を続けることによって反復的に繰り返される。
【0094】
制御信号は、例えば、駆動ユニットの実際の速度の、速度設定点からの偏差である誤差信号、または駆動ユニットの実際の位置の、位置設定点からの偏差である誤差信号に基づくことができる。
【0095】
モータを駆動するために複数の方策を用いることができる。以下の時間離散コントローラの表現に示すように、PIDベースの解決策を用いることができる:
【0096】
【数2】
【0097】
式中、error(n)は時間ステップnにおける誤差信号の値を示し、target(n)は対応する設定点値を示し、feedback(n)は実際の値を示す。cmd(n)は駆動ユニットへの入力値を示し、P、I、DはPIDコントローラの比例係数、積分係数および微分係数を示す。
【0098】
駆動ユニットへの入力値は、駆動パルスの振幅、および/もしくは形状および/もしくは周波数、ならびに/または駆動パルスの省略を制御することができる。入力値は、駆動ユニットの応答の非線形特性を補償するように修正することができる。
【0099】
上で提示された基準公式から出発して、実施形態では、駆動ユニットを駆動するために以下の修正を実現することができる。
【0100】
目標とモータフィードバックとの間の誤差の範囲に応じて、所定の設定が適用される。例えば:
【0101】
【数3】
【0102】
そのようなセグメント化手法は、低い精度を必要とする用途には充分であり得る。
位置制御のための実施形態では、コントローラ速度を定義する異なる定数値の群、すなわち、位置誤差が上側閾値より大きい場合の高速値、中間位置誤差範囲に対する中間速度値、および位置誤差が下側閾値より小さい場合の低速値が使用される。
【0103】
高い位置精度および/または低い整定時間を必要とする用途では、線形手法は、より滑らかな遷移のため、セグメント手法よりも良好であり得る。この解決策は、固定された係数を伴う古典的なPIDコントローラに対応する。
【0104】
用途に応じて、PまたはIまたはD係数のコントローラへの影響を制限するために、個々の制限を適用することができる。例えば:
【0105】
【数4】
【0106】
フィードバック誤差または微分誤差または総和誤差に応じて個々のPまたはIまたはDパラメータの影響を増減させるために、PまたはIまたはD値を範囲領域に応じて変更することができる。これは利得スケジューリングコントローラに相当する。例えば:
【0107】
【数5】
【0108】
駆動ユニットの特性により、P-I-D係数は誤差値に応じて変動し得る。例えば:
【0109】
【数6】
【0110】
この解決策は、より滑らかな遷移を提供することができ、機械的非線形性またはフィードバック不正確性の場合に役立ち得る。
【0111】
本発明を本実施形態で説明してきたが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲内で別様に様々に具体化し実施することができることを明確に理解されたい。
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】