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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】インターロイキン2キメラ構築物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/26 20060101AFI20230202BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230202BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230202BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230202BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 38/33 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C12N15/26
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C07K14/47
C07K14/55
A61K38/20
A61K38/33
A61K47/68
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535727
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2020085830
(87)【国際公開番号】W WO2021116444
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】19306637.0
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518083571
【氏名又は名称】イルトゥー・ファルマ
【氏名又は名称原語表記】ILTOO PHARMA
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】591049848
【氏名又は名称】アンセルム
【氏名又は名称原語表記】INSERM
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】クラッツマン,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ビリアル,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】バスケス,トマ
(72)【発明者】
【氏名】マリオー,ジェレミー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC15
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084DA14
4C084NA14
4C084ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA04
4H045EA22
4H045FA74
4H045GA22
4H045GA23
(57)【要約】
本発明は、i)インターロイキン2(IL2)部分およびii)二量体タンパク質の形成ができるC4b結合タンパク質のベータ鎖(C4BPβ)またはその少なくとも1個のフラグメントもしくは機能的バリアントを含むキメラ構築物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも1個のインターロイキン2(IL2)部分およびii)二量体タンパク質の形成ができるC4b結合タンパク質のベータ鎖(C4BPβ)またはその少なくとも1個のフラグメントもしくは機能的バリアントを含む、キメラ構築物。
【請求項2】
C4BPβのフラグメントがC4BPβのアミノ酸残基194~252または最大アミノ酸135までN末端で伸長するC4BPβのより長いフラグメントを含むまたはそれからなる、請求項1のキメラ構築物。
【請求項3】
a)C4BPβのフラグメントの修飾配列であって、ここで、フラグメントのアミノ酸の25パーセント未満、好ましくは10パーセント未満が除去または置換されており、そこで、202位および216位に位置するシステインならびに各システインの少なくとも3アミノ酸上流および下流が保存されている、修飾配列;または
b)C4BPβのフラグメントの修飾配列であって、ここで、二量体化を担うシステインが、好ましくはアラニン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシンおよびトリプトファンから選択されるアミノ酸で置換され、フラグメントの他のアミノ酸がシステインで置換されている、修飾配列;または
c)二量体化を担うシステインの間のベータ鎖に異種である配列の挿入により修飾されているC4BPβのフラグメントの配列;または
d)二量体化を担うシステイン間のアミノ酸の除去により修飾されているC4BPβのフラグメントの配列
を含む、C4BPβの機能的バリアントを含む、請求項1または2のキメラ構築物。
【請求項4】
該IL-2部分がヒトIL-2またはその相同バリアントであり、ここで、バリアントがヒト野生型IL-2と少なくとも85%アミノ酸同一性を有し、好ましくは、バリアントがヒト野生型IL-2と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するヒトIL-2の活性アナログであり、ここで、該IL-2部分が好ましくは配列番号2のN88位置に置換、なお好ましくは置換N88Rを含むIL2ムテインである、請求項1~3の何れかのキメラ構築物。
【請求項5】
IL2部分およびC4BPβまたは該そのフラグメントがフレーム内でまたはアミノ酸リンカー、好ましくはポリGリンカーを介して融合する、請求項1~4の何れかのキメラ構築物。
【請求項6】
IL2部分がC4BPβのN末端または該そのフラグメントで融合し、好ましくはキメラタンパク質が融合タンパク質であり、一方のIL2部分がC4BPβまたは該そのフラグメントのN末端で融合し、他方のIL2部分がC4BPβまたは該そのフラグメントのC末端またはで融合する、請求項1~5の何れかのキメラ構築物。
【請求項7】
各々請求項1~6の何れかのキメラ産物からなる2個の融合ポリペプチドを含む、ホモ二量体タンパク質。
【請求項8】
請求項6に定義する組み換え二量体タンパク質を産生する方法であって:
a)請求項1~6の何れかに定義するキメラ構築物である融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現可能とするベクターで宿主細胞をトランスフェクトし;
b)トランスフェクト細胞を、融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現および二量体タンパク質の形成のためにインビボでの2個の融合ポリペプチドの共有結合的結合に適する条件下で培養し;
c)形成された二量体タンパク質を回収する
ことを含む、方法。
【請求項9】
2個の融合ポリペプチドを含むヘテロ二量体タンパク質であって、ここで、第一融合ポリペプチドが請求項1~6の何れかのキメラ産物からなり、第二が、i)少なくとも1個の異種ポリペプチドおよびii)二量体タンパク質の形成ができるC4b結合タンパク質のベータ鎖(C4BPβ)またはその少なくとも1個のフラグメントもしくは機能的バリアントを含み、ここで、異種ポリペプチドが第一融合ポリペプチドのIL-2部分と異なり、好ましくは、ここで、異種ポリペプチドが自己抗原または腫瘍抗原である、ヘテロ二量体タンパク質。
【請求項10】
請求項9に定義する組み換えヘテロ二量体タンパク質を産生する方法であって:
a.
i. 請求項1~6の何れかに定義するキメラ構築物である第一融合ポリペプチド;および
ii. i)少なくとも1個の異種ポリペプチドおよびii)二量体タンパク質の形成ができるC4b結合タンパク質のベータ鎖(C4BPβ)を含み、ここで、異種ポリペプチドが第一融合ポリペプチドのインターロイキン2部分と異なる、第二融合ポリペプチドまたはその少なくとも1個のフラグメントもしくは機能的バリアント
をコードする1以上のヌクレオチド配列の発現を可能にする1以上のベクターで宿主細胞をトランスフェクトし;
b. トランスフェクト細胞を、第一および第二融合ポリペプチドをコードする1以上のヌクレオチド配列の発現およびヘテロ二量体タンパク質の形成のためにインビボでの2個の融合ポリペプチドの結合を可能にする条件下で培養し;
c. 形成されたヘテロ二量体タンパク質を回収する
ことを含む、方法。
【請求項11】
請求項1~6の何れかのキメラ構築物をコードする、核酸。
【請求項12】
請求項11の核酸を含む、ベクター。
【請求項13】
請求項11の核酸または請求項12のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項14】
対象における炎症性および/または自己免疫性障害の処置に使用するための、請求項7のホモ二量体タンパク質または請求項9のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項15】
対象における癌の処置に使用するための、請求項7のホモ二量体タンパク質または請求項9のヘテロ二量体タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物動態および/または薬力学が改善されたIL2構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インターロイキン-2(IL2またはIL-2)は、免疫系の重要な側面を制御するサイトカインである。IL2は、癌ならびに自己免疫性および/または炎症性疾患を有する患者における免疫応答をブーストする試みで使用されている。IL2は、抗原活性化T細胞のクローン性増殖を含む免疫応答を促進し、CD4+Tヘルパー(Th)1およびTh2細胞の進展を駆動し、CD8+細胞毒性Tリンパ球(CTL)を終末的に分化させ、そしてCD4+Thl7およびT濾胞性ヘルパー(Tfh)細胞の進展に対抗する、強力なT細胞増殖因子である。IL2はまたT細胞記憶リコール応答を形作る。
【0003】
低用量のIL2は、自己組織の自己免疫性様攻撃と関連する望まない免疫応答を抑制するための寛容を選択的にブーストするのに使用される。今日までの経験は、この治療が安全であり、自己攻撃的T細胞の再活性化の兆候はないが、臨床的改善に付随する制御T細胞(Treg)がほぼ全患者で増加するとのことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それにも関わらず、治療としてのIL2は、顕著にそのインビボでの短い半減期に関して改善の余地がある。これらの理由のため、新規IL2生物製剤は、薬物動態および/または薬力学が改善される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、i)インターロイキン2(IL2)部分およびii)二量体タンパク質の形成ができるC4b結合タンパク質のベータ鎖(C4BPβ)またはその少なくとも1個のフラグメントもしくは機能的バリアントを含む、キメラ構築物を提供する。
【0006】
このような構築物は、故にIL2部分の半減期が改善されている。さらに、本発明者らは、驚くべきことにこのようなキメラ構築物がTreg拡大の選択性を改善することを示している。
【0007】
特定の実施態様において、キメラ構築物は二量体形態であり、ここで、これら単量体は、C4BPβの2個のシステイン間の共有結合により結合する。ホモ二量体およびヘテロ二量体を、以下にさらに詳述する。
【0008】
好ましい実施態様において、C4BPβフラグメントは、C4BPβのアミノ酸残基194~252または最大アミノ酸135までN末端で伸長するC4BPβのより長いフラグメントを含むまたはそれからなる。
【0009】
好ましい実施態様において、該Il-2部分はヒトIL-2またはその相同バリアントであり、ここで、バリアントはヒト野生型IL-2と少なくとも85%アミノ酸同一性を有し、好ましくは、ここで、バリアントはヒト野生型IL-2と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するヒトIL-2の活性アナログであり、ここで、該IL-2部分は、好ましくは配列番号2のN88位置に置換、なお好ましくは置換N88Rを含むIL2ムテインである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】Treg(A)、Tconv(B)およびCD8 T細胞(C)におけるpSTAT5誘導の用量-応答を示す。Hi2はヒトIL-2(配列番号1)であり、Hi2cbはC4BPβのC末端領域に融合したヒトIL-2(配列番号6)であり、Hi2mcbはC4BPβのC末端領域に融合した変異IL-2(配列番号7)である。
【0011】
図2】1011ウイルスゲノムのIL-2構築物を発現するAAV注射後のマウスにおける、4個の異なるT細胞コンパートメントおよびNK細胞の増加倍率の反応速度曲線を示す。
【0012】
図3】1011ウイルスゲノムのIL-2構築物を発現するAAV注射後のマウスにおける経時的な血漿(A)および尿(B)ヒトIL-2の動態を示す。
【0013】
図4】1012ウイルスゲノムのIL-2構築物を発現するAAV注射後のマウスにおける4個の異なるT細胞コンパートメントおよびNK細胞の増加倍率の反応速度曲線を示す。
【0014】
図5】1012ウイルスゲノムのIL-2構築物を発現するAAV注射後のマウスの生存カプラン・マイヤー曲線を示す。
【0015】
図6】実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルにおける、Hi2と比較した融合タンパク質Hi2cbまたはHi2mcbの治療有効性を示す。
【0016】
図7】5日間連日の25000国際単位のHi2、Hi2cbまたはHi2mcbの1回注射に基づく実験的投与スケジュールを示す。免疫表現型検査を連日注射前に実施して、Treg動態を評価した。
【0017】
図8】各構築物Hi2、Hi2cbまたはHi2mcbの単回皮下注射後の薬物動態プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な記載
定義
処置する「対象」または「患者」は、あらゆる哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。ヒト対象は小児、成人または高齢者であり得る。
【0019】
用語「処置する」または「処置」は、疾患の何らかの改善を意味する。少なくとも1個の症状の軽減または疾患の重症度もしくは進展の低減を含む。疾患が炎症性および/または自己免疫性障害であるとき、本用語は、より具体的に急性エピソード(フレア)のリスク、発生または重症度の低減を含む。用語「処置する」または「処置」は、疾患の進行の低減を包含する。特に本発明は、疾患進行の予防または減速を包含する。用語「処置する」または「処置」は、さらに、特に無症候性であるが、「リスクがある」と診断されている対象における、リスクの低減または疾患発症遅延による、予防的処置を包含する。
【0020】
「制御T細胞」または「Treg」は、免疫抑制性活性を有するTリンパ球である。天然Tregは、CD4+CD25+Foxp3+細胞として特徴づけられる。Tregは炎症性疾患の制御に主要な役割を演ずるが、このような疾患における作用機序は十分には理解されていない。実際、大部分の炎症性疾患において、Treg枯渇は疾患を悪化させ、Treg付加は低減させる。大部分のTregはCD4+細胞であるが、抑制活性を有するCD8+Foxp3+Tリンパ球の稀な集団も存在する。
【0021】
本発明の状況の範囲内で、「エフェクターT細胞」(または「Teff」)は、1以上のT細胞受容体(TCR)を発現し、エフェクター機能(例えば、細胞毒性活性、サイトカイン分泌など)を発揮する、Treg以外の通常型Tリンパ球(文献ではTconvと称されることもある)を意味する。本発明のヒトTeffの主要集団は、CD4+Tヘルパーリンパ球(例えば、Th0、Th1、Th2、Th9、Th17、Tfh)およびCD4+またはCD8+細胞毒性Tリンパ球を含み、自己または非自己抗原に特異的であり得る。TeffはFoxp3+制御CD8+T細胞を含まない。
【0022】
本発明の状況の範囲内で、「T濾胞性ヘルパー細胞」(または「Tfh」)は、BcL6、CXCR5およびPD1を発現し、Foxp3-であり、B細胞を助けるT CD4+リンパ球を意味する。
【0023】
本発明の状況の中で、「T濾胞性制御性細胞」(または「Tfr」)は、CD4+CXCR5+PD-1+Bcl6+Foxp3+CD25-Tリンパ球を意味する。
【0024】
配列表は次の配列を示す:
配列番号1は野生型ヒトIL2(253アミノ酸、シグナルペプチドを含む)である
配列番号2は成熟野生型ヒトIL2(233アミノ酸、シグナルペプチドを含む)である
配列番号3はC4BPベータ鎖(1~252)である
配列番号4はC4BPベータ鎖のフラグメント194~252である
配列番号5はC4BPベータ鎖のフラグメント137~252である
配列番号6はHi2cbのアミノ酸配列(シグナルペプチドを含む)である
配列番号7は、シグナルペプチドを含むHi2mcb(N88R)のアミノ酸配列である
配列番号8はGGGGSパターン(リンカー)である
配列番号9はシグナルペプチドを有しないHi2cbのアミノ酸配列シグナルペプチドである
配列番号10はシグナルペプチドを有しないHi2mcb(N88R)のアミノ酸配列である
【0025】
IL-2部分
ここで使用するインターロイキン-2(IL-2)は、哺乳動物野生型インターロイキン-2およびそのバリアントを包含する。好ましくは、IL-2はヒトIL-2またはそのバリアントである。
【0026】
IL-2の活性バリアントは文献に開示されている。天然IL-2のバリアントは、そのフラグメント、アナログおよび誘導体であり得る。「フラグメント」は、ポリペプチド配列の一部しか含まないポリペプチドを意図する。「アナログ」は、1以上のアミノ酸置換、挿入または欠失を有する天然ポリペプチド配列を含むポリペプチドを意味する。ムテインおよびシュードペプチドは、アナログの具体例である。「誘導体」は、IL-2の性質(例えば、安定性、特異性など)を改善するためのグリコシル化、リン酸化、他のポリペプチドまたは分子への融合、重合化などまたは化学または酵素修飾もしくは付加を介するなど、あらゆる修飾天然IL-2ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくはアナログを含む。活性バリアントのIL-2部分は、一般に対象IL-2ポリペプチド、例えば成熟野生型ヒトIL-2のアミノ酸配列と少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、85%、より好ましくは少なくとも90%または少なくとも95%アミノ酸配列同一性を有する。
【0027】
ここで使用する「野生型IL-2」は、天然ヒトIL-2で通常現れる133のアミノ酸配列を含む、天然であれ、組み換えであれ、IL-2を意味し、そのアミノ酸配列は、Fujita, et. al., PNAS USA, 80,7437-7441 (1983)に記載される。配列番号2(133アミノ酸)は、さらなる20個のN末端アミノ酸からなるシグナルペプチドがないヒトIL-2配列である。配列番号1(153アミノ酸)は、シグナルペプチドを含むヒトIL-2配列である。
【0028】
ここで使用する「IL-2ムテイン」は、ヒト成熟インターロイキン-2タンパク質に特定のアミノ酸置換がなされているポリペプチドを意味する。アミノ酸の全ナンバリングは、特に断らない限り、配列番号2のヒト成熟インターロイキン-2タンパク質に対応してなされる。
【0029】
ある実施態様において、125位のシステインは、セリン(C125S)、アラニン(C125A)、スレオニン(C125T)またはバリン(C125V)などの中性アミノ酸に置換される。
【0030】
例えば、O-グルコシル化部位の除去は、活性バリアントがCHOまたはHEK細胞などの哺乳動物細胞で発現されたとき、より均質の産物をもたらす。
【0031】
ある実施態様において、活性バリアントは、ヒトIL-2の残基3に対応する位置でのIL-2のO-グルコシル化部位を除去するさらなるアミノ酸変異を含む。ある実施態様において、ヒトIL-2の残基3に対応する位置でIL-2のO-グルコシル化部位を除去する該さらなるアミノ酸変異はアミノ酸置換である。アミノ酸置換の例は、T3A、T3G、T3Q、T3E、T3N、T3D、T3R、T3KおよびT3Pを含む。特定の実施態様において、該さらなるアミノ酸変異はアミノ酸置換T3Aである。
【0032】
・T-reg細胞増殖、生存、活性化および/または機能を選択的に促進する活性バリアントは、炎症性および/または自己免疫性障害の処置に特に有用である。
【0033】
「選択的に促進」は、活性バリアントが、T-reg細胞における活性を促進するが、非制御T細胞における活性を促進する能力は限定的であるかまたはないことを意味する。ここにさらに記載されるのは、T-reg細胞増殖、生存、活性化および/または機能を選択的に促進する活性バリアントをスクリーニングするためのアッセイである。
【0034】
バリアントIL-2ポリペプチドが活性であるか否かを決定する方法は、当分野で利用可能である。例えばWO2016/014428参照。活性バリアントは、Tregを刺激する能力を示すバリアントとして定義され、Tregの刺激を超えてTeffを刺激しない限り、野生型IL-2またはアルデスロイキン(下に定義する)と比較して、Tregを刺激する能力が改善されたまたは類似の能力を有するまたは能力が低いバリアントを含む。候補分子がT細胞、特にTregまたはNK細胞を刺激するか否かを試験する方法は周知である。バリアントを、エフェクターT細胞(例えばCD8+T細胞)、CD4+Foxp3+TregまたはNK細胞を刺激する能力について試験し得る。好ましい実施態様において、活性バリアントは、野生型IL2またはアルデスロイキンと比較して、NK細胞を刺激する能力の低減を示す。STAT5リン酸化のモニタリングは、Yu et al, Diabetes 2015;64:2172-2183に記載のとおり、バリアントがTeffよりTregを優先的に刺激する能力を評価する単純な方法である。特定の実施態様において、バリアントは、Teffを含む他の免疫細胞より少なくとも10倍低い用量でTregであるレベルのSTAT5リン酸化が達成されるとき、特に有用である。
【0035】
該活性バリアントは、Treg細胞の生存、増殖、活性化および/または機能を優先的に誘導するシグナル伝達事象を誘導する。ある実施態様において、IL-2バリアントは、Treg細胞において、STAT5リン酸化および/またはIL-2Rの下流のシグナル伝達分子の1以上、例えば、p38、ERK、SYKおよびLCKのリン酸化を刺激する能力を保持する。他の実施態様において、IL-2バリアントは、Treg細胞において、Treg細胞生存、増殖、活性化および/または機能に重要であるFOXP3、Bcl-2、CD25またはIL-10などの遺伝子またはタンパク質の転写またはタンパク質発現を刺激する能力を保持する。他の実施態様において、IL-2バリアントは、CD25+T細胞表面でIL-2/IL-2R複合体のエンドサイトーシスを刺激する能力の低減を示す。他の実施態様において、IL-2バリアントは、AKTおよび/またはmTOR(ラパマイシンの哺乳動物標的)のリン酸化が非効率的である、低減しているまたは存在しないなどPI3-キナーゼシグナル伝達の刺激が非効率的である、低減しているまたは存在しない。さらに他の実施態様において、IL-2バリアントは、Treg細胞においてSTAT5リン酸化および/またはIL-2Rの下流のシグナル伝達分子の1以上のリン酸化を刺激する野生型IL-2の能力を保持し、なお、FOXP3-CD4+またはCD8+T細胞またはNK細胞においてSTAT5、AKTおよび/またはmTORまたはIL-2Rの下流の他のシグナル伝達分子のリン酸化が非効率的である、低減しているまたは存在しないことが示される。他の実施態様において、IL-2バリアントは、FOXP3-CD4+またはCD8+T細胞またはNK細胞の生存、増殖、活性化および/または機能の刺激が非効率的であるまたは不可能である。
【0036】
全ての場合、これらバリアントは、生物学的活性の決定に普遍的に使用され得るCTLL-2またはHT-2などの細胞株を刺激する能力を有する。
【0037】
例えば、IL-2の生物学的活性は、増殖がIL-2に依存するHT-2細胞株(クローンA5E、ATCC(登録商標)CRL-1841TM)で実施される細胞ベースのアッセイで決定され得る。一定範囲の試験インターロイキン-2産物の存在下の細胞増殖を、IL-2国際標準(WHO 2nd International Standard for INTERLEUKIN 2 (Human, rDNA derived) NIBSC code: 86/500)で記録された増殖と比較する。細胞増殖を、[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム(分子内塩、MTS)の添加および活性生存可能細胞によるホルマザンへの変換後に測定する。次いで、ホルマザン濃度を、490nmで分光測色法により測定する。
【0038】
IL-2バリアントの例は、例えば、EP109748、EP136489、US4,752,585;EP200280、EP118617、WO99/60128、EP2288372、US9,616,105、US9,580,486、WO2010/085495、WO2016/164937に開示される。
【0039】
例えば、ある変異は、IL-2受容体(IL-2Rβ/CD122および/またはIL-2Rγ/CD132)のシグナル伝達鎖に対する親和性を低減させおよび/またはIL-2受容体の一方または両方のサブユニットからシグナル伝達事象を誘導する能力を低減させる可能性がある。他の変異は、CD25(IL-2Rα)に高い親和性を付与し得る。何れの場合も、このような変異は、Tregの生存、増殖、活性化および/または機能を優先的に誘導する活性バリアントを規定する。この性質は、表面プラズモン共鳴によりモニターされ得る。
【0040】
有用なバリアントの特定の例は、選択アミノ酸が、そのアミノ酸が配列番号2の野生型IL-2の成熟配列で通常現れる位置を参照して同定されることを意味する、野生型IL-2に従う番号付けで、位置D20、N30、Y31、K35、V69、Q74、N88、V91またはQ126での少なくとも1個のアミノ酸置換を示すIL-2ムテインを含む。
【0041】
好ましいIL-2ムテインは、位置D20H、D20I、D20Y、N30S、Y31H、K35R、V69AP、Q74、N88R、N88D、N88G、N88I、V91KまたはQ126Lに少なくとも1個の置換を含む。
【0042】
ある実施態様において、IL-2ムテイン分子は、V91K置換を含む。ある実施態様において、IL-2ムテイン分子は、N88D置換を含む。ある実施態様において、IL-2ムテイン分子は、N88R置換を含む。ある実施態様において、IL-2ムテイン分子は、H16E、D84K、V91N、N88D、V91KまたはV91Rの置換、それらの何らかの組み合わせを含む。ある実施態様において、これらIL-2ムテイン分子は、ここに記載する125位の置換も含む。ある実施態様において、IL-2ムテイン分子は、T3N、T3A、L12G、L12K、L12Q、L12S、Q13G、E15A、E15G、E15S、H16A、H16D、H16G、H16K、H16M、H16N、H16R、H16S、H16T、H16V、H16Y、L19A、L19D、L19E、L19G、L19N、L19R、L19S、L19T、L19V、D20A、D20E、D20H、D20I、D20Y、D20F、D20G、D20T、D20W、M23R、R81A、R81G、R81S、R81T、D84A、D84E、D84G、D84I、D84M、D84Q、D84R、D84S、D84T、S87R、N88A、N88D、N88E、N88I、N88F、N88G、N88M、N88R、N88S、N88V、N88W、V91D、V91E、V91G、V91S、I92K、I92R、E95GおよびQ126からなる群から選択される1以上の置換を含む。ある実施態様において、IL-2ムテイン分子のアミノ酸配列は、成熟IL-2配列に示されるアミノ酸配列と、C125AまたはC125S置換およびT3N、T3A、L12G、L12K、L12Q、L12S、Q13G、E15A、E15G、E15S、H16A、H16D、H16G、H16K、H16M、H16N、H16R、H16S、H16T、H16V、H16Y、L19A、L19D、L19E、L19G、L19N、L19R、L19S、L19T、L19V、D20A、D20E、D20F、D20G、D20T、D20W、M23R、R81A、R81G、R81S、R81T、D84A、D84E、D84G、D84I、D84M、D84Q、D84R、D84S、D84T、S87R、N88A、N88D、N88E、N88F、N88I、N88G、N88M、N88R、N88S、N88V、N88W、V91D、V91E、V91G、V91S、I92K、I92R、E95G、Q126I、Q126LおよびQ126Fから選択される1個の置換で異なる。ある実施態様において、IL-2ムテイン分子は、成熟IL-2配列に示されるアミノ酸配列と、C125AまたはC125S置換およびD20H、D20I、D20Y、D20E、D20G、D20W、D84A、D84S、H16D、H16G、H16K、H16R、H16T、H16V、I92K、I92R、L12K、L19D、L19N、L19T、N88D、N88R、N88S、V91D、V91G、V91KおよびV91Sから選択される1個の置換で異なる。ある実施態様において、IL-2ムテインは、N88Rおよび/またはD20H変異を含む。
【0043】
これらの置換は、単独でまたは互いに組み合わせて使用され得る。ある実施態様において、ムテインはこれら置換の各々を含む。ある実施態様において、ムテインはこれら変異の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個を含む。
【0044】
ある実施態様において、IL-2ムテインは、N88RまたはN88D変異、好ましくはN88Rを含む。ある実施態様において、IL-2ムテインは、C125AまたはC125S変異を含む。これら置換は、単独でまたは互いに組み合わせて使用され得る。ある実施態様において、ムテインはこれら変異の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個を含む。ある実施態様において、ムテインはこれら置換の各々を含む。
【0045】
特定の実施態様において、IL-2部分はアルデスロイキンである。アルデスロイキンは、Proleukin(登録商標)の活性成分である。アルデスロイキンは、成熟ヒトIL-2の配列(配列番号2)と比較して、第一アミノ酸(アラニン)の欠失および125位のシステインのセリンでの置換の2個のアミノ酸修飾を含む、成熟ヒトIL-2のバリアントである。
【0046】
IL-2の保存的修飾および他の位置での置換(すなわち、ムテインの二次または三次構造に最小限に影響するもの)が包含される。このような保存的置換は、The Atlas of Protein Sequence and Structure 5 (1978), and by Argos in EMBO J., 8: 779-785 (1989)においてDayhoffにより記載されたものを含む。例えば、次の群の一つに属するアミノ酸は、保存的変化を表す:-ala、pro、gly、gln、asn、ser、thr;-cys、ser、tyr、thr;-val、ile、leu、met、ala、phe;-lys、arg、his;-phe、tyr、trp、his;および-asp、glu。
【0047】
IL-2Rのαサブユニットへの結合を妨害する変異を有するバリアントは、このような変異体がTregを刺激する能力を低減させ得るため、好ましくない。
【0048】
・Teff細胞増殖、生存、活性化および/または機能を促進する活性バリアントは癌の処置に有用であり得る。
【0049】
このようなIL-2の活性バリアントは、各々野生型IL-2ポリペプチドと比較において、異体IL-2ポリペプチドのIL-2受容体のα-サブユニット(CD25)に対する親和性を失くすかまたは低減させ、中間親和性IL-2受容体に対する変異体IL-2ポリペプチドに対する親和性を保持する少なくとも1個のアミノ酸変異を含む。この性質は、表面プラズモン共鳴を使用してモニターされ得る。
【0050】
好ましい活性バリアントは、F42A、K43N、Y45Aおよび/またはE62A置換を含むIL-2ムテインを含む。
【0051】
CD25に対する親和性が減少したヒトIL-2(hIL-2)の変異体のような活性バリアントは、例えばアミノ酸位置35、38、42、43、45、62または72またはそれらの組み合わせでのアミノ酸置換により産生され得る(ナンバリングは、配列番号2のヒトIL-2配列に対応する)。アミノ酸置換の例は、K35E、K35A、R38A、R38E、R38N、R38F、R38S、R38L、R38G、R38Y、R38W、F42L、F42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、F42K、K43E、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45R、Y45K、E62G、E62A、E62S、E62T、E62Q、E62E、E62N、E62D、E62R、E62K、L72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72RおよびL72Kを含む。本発明のキメラ構築物に有用な特定の活性バリアントは、ヒトIL-2の残基42、45または72に対応するアミノ酸位置またはそれらの組み合わせにアミノ酸変異を含む。ある実施態様において、該アミノ酸変異は、F42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、F42K、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45R、Y45K、L72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72RおよびL72Kの群から選択されるアミノ酸置換、より具体的にF42A、Y45AおよびL72Gの群から選択されるアミノ酸置換である。これら活性バリアントは、野生型形態のIL-2変異体と比較して、中間親和性IL-2受容体への実質的に類似する結合親和性を示し、IL-2受容体のα-サブユニットおよび高親和性IL-2受容体(IL2Rαβγ)への実質的に減少した親和性を有する。
【0052】
有用な活性バリアントの他の特徴は、IL-2受容体担持Tおよび/またはNK細胞の増殖を誘導する能力、IL-2受容体担持Tおよび/またはNK細胞におけるIL-2シグナル伝達を誘導する能力、NK細胞による二次サイトカインとしてインターフェロン(IFN)-γを産生する能力、末梢血単核細胞(PBMC)による二次サイトカイン - 特にIL-10およびTNF-α - の同化を誘導する能力の低減、制御T細胞を活性化する能力の低減、T細胞におけるアポトーシスを誘導する能力の低減およびインビボでの毒性プロファイルの低減を含み得る。
【0053】
特定の活性バリアントは、活性バリアントのIL-2受容体のα-サブユニットへの親和性を失くすかまたは低減させるが、活性バリアントの中間親和性IL-2受容体への親和性を保持する、3個のアミノ酸変異を含む。ある実施態様において、該3個のアミノ酸変異は、ヒトIL-2の残基42、45および72に対応する位置である。ある実施態様において、該3個のアミノ酸変異はアミノ酸置換である。ある実施態様において、該3個のアミノ酸変異は、F42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、F42K、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45R、Y45K、L72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72RおよびL72Kの群から選択されるアミノ酸置換である。特定の実施態様において、該3個のアミノ酸変異は、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72Gである(ナンバリングは配列番号2のヒトIL-2配列に対応する)。
【0054】
ある実施態様において、該アミノ酸変異は、変異体IL-2ポリペプチドのIL-2受容体のα-サブユニットへの親和性を、少なくとも5倍、特に少なくとも10倍、より具体的に少なくとも25倍低減させる。活性バリアントのIL-2受容体のα-サブユニットへの親和性を低減する1を超えるアミノ酸変異がある実施態様において、アミノ酸変異の組み合わせは、活性バリアントのIL-2受容体のα-サブユニットへの親和性を少なくとも30倍、少なくとも50倍または少なくとも100倍低減させ得る。ある実施態様において、該アミノ酸変異またはアミノ酸変異の組み合わせは、活性バリアントのIL-2受容体のα-サブユニットへの親和性を失くし、その結果結合が表面プラズモン共鳴で検出不可能である。
【0055】
中間親和性受容体への実質的に類似する結合、すなわち変異体IL-2ポリペプチドの該受容体への親和性の保存は、活性バリアントが、野生型形態のIL-2変異体の中間親和性IL-2受容体への親和性の約70パーセントを超える親和性を示すとき、達成される。本発明において有用な活性バリアントは、このような親和性を約80パーセントを超えておよびさらには約90パーセントを超えて示し得る。
【0056】
IL-2のO-グルコシル化の除去と組み合わせたIL-2のIL-2受容体のα-サブユニットに対する親和性の低減は、性質が改善されたIL-2タンパク質をもたらす。
【0057】
特定の実施態様において、活性バリアントは、活性化Tリンパ球細胞の増殖、活性化Tリンパ球細胞の分化、細胞毒性T細胞(CTL)活性、活性化B細胞の増殖、活性化B細胞の分化、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖、NK細胞の細胞毒性活性、NK細胞の分化、活性化T細胞またはNK細胞によるサイトカイン分泌およびNK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞毒性からなる群から選択される細胞応答の1以上を誘導できる。
【0058】
ある実施態様において、これら活性バリアントは、ここに記載する125位の置換も含む。
【0059】
C4BPβまたはC4BPβフラグメント
C4BPタンパク質は、凝血および補体系に関与する。C4BPの主要形態は、7個の同一75kDアルファ鎖および1個の45kDベータ鎖からなる。アルファ鎖およびベータ鎖は、それぞれ8個および3個のSCR(ショートコンセンサスリピート)ドメインを含み、これらモチーフは多くの補体制御タンパク質で見られ、ベータシートに組織化された50~70アミノ酸からなる。ヒトC4BPのベータ鎖のアミノ酸配列は、配列番号3として示す。
【0060】
このポリペプチド配列に対応する核酸配列も、Hillarp and Dahlback (1990, PNAS, vol 87, pp 1183-1187)により記載されている。
【0061】
C4BPタンパク質の重合におけるアルファ鎖の役割は、Kask et al (Biochemistry 2002, 41, 9349-9357)により試験されている。この著者らは、アルファ鎖のC末端部分、特にそのらせん構造および2個のシステインの存在が、アルファ鎖が異種系で発現されたとき、C4BPタンパク質の重合に必要であることを示している。
【0062】
欧州特許出願2227030は、目的のポリペプチドと融合したC4BPタンパク質のアルファ鎖およびベータ鎖のC末端フラグメントの使用による、ヘテロ多量体組み換えタンパク質の産生を記載する。
【0063】
US特許7,884,190は、その用途と無関係に、二量体タンパク質の産生のためにC4BPタンパク質のアルファ鎖と結合した、C4BPタンパク質のベータ鎖の使用を記載する。
【0064】
本発明の実施に際して使用するC4BPタンパク質は、有利にヒトC4BPタンパク質である。
【0065】
好ましい実施態様において、IL2部分は少なくともアミノ酸194~252(配列番号4)を含むまたはそれからなるC4BPβ鎖のフラグメントに融合される。
【0066】
ベータ鎖のより長いフラグメントまたはベータ鎖全体をコードする配列も使用され得る。ある適用について、凝血に参加するプロテインSに結合できるベータ鎖をコードする配列の使用を回避することが好ましい。選択配列がベータ鎖の2つの最初のSCRモチーフを含むフラグメントをコードするならば、これらは、好ましくは、プロテインSとの相互作用の可能性を排除するために、アミノ酸の付加、欠失または置換により変異されたバージョンである。SCRモチーフおよび/または[GS]ドメインは、得られた融合ポリペプチドの柔軟性を修飾、例えば増加する目的でまたはキメラタンパク質が多量体、特に二量体形成のために適当な配座を採ることを可能とするために加え得る。
【0067】
N末端で最大アミノ酸135まで伸張するC4BPβの長いフラグメントを使用し得る。
【0068】
特定の実施態様において、C4BPβ鎖のフラグメントは、少なくともアミノ酸185~252、180~252、175~252、170~252、165~252、160~252、155~252、150~252、145~252、140~252または135~252を含むまたはそれから成ることができる(配列番号3に対応して)。
【0069】
特定の実施態様において、C4BPβ鎖のフラグメントは、少なくともアミノ酸137~252(配列番号5)を含むまたはそれから成る。
【0070】
C4BPβの機能的バリアントを使用し得る。機能的バリアントは、少なくとも1個の二量体、例えばホモ二量体またはヘテロ二量体、三量体、四量体または種々の数のキメラタンパク質を含むあらゆる多量体を形成する能力が維持されている。
【0071】
本発明の状況の範囲内で、用語「C4BPβ鎖のフラグメントの機能的バリアント」は、ベータ鎖のフラグメントの配列に関して、1以上のアミノ酸の欠失、置換または付加により修飾されているポリペプチド配列を意味し、いずれにしても、該修飾配列は、本発明の方法を使用して、少なくとも二量体タンパク質を形成する能力を維持する。より厳密に、フラグメントの機能的バリアントをコードする配列を使用する二量体タンパク質の産生は、同一発現系で、該フラグメントをコードする天然配列(配列番号3またはそのフラグメント)で得られたものと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、なお好ましくは95%等しいものであり得る。好ましくは、バリアントは、含まれる融合ポリペプチドの80%超が、本発明により、真核生物発現系で二量体の形態で産生される。
【0072】
特定の実施態様において、ベータ鎖のフラグメントのバリアントは、Hillarp and Dahlback (1990, PNAS, Vol. 87, pp 1183-1187)により記載のとおり、ストリンジェントな条件下、フラグメントをコードする野生型配列とハイブリダイズできる核酸によりコードされる。
【0073】
用語「ストリンジェントな条件」は、約65℃で、例えば、6*SSC、0.5%SDS、5*デンハルト溶液および100μgの不特定のDNAの溶液または同等なイオン強度を有するあらゆる他の溶液で、および65℃で、例えば最大0.2*SSCおよび0.1%SDSの溶液または同等なイオン強度を有するあらゆる他の溶液で洗浄後、2個の一本鎖DNA配列の特定のハイブリダイゼーションを可能とする条件を意味する。
【0074】
好ましくは、該野生型フラグメントの機能的バリアントをコードし、該フラグメントをコードする配列とストリンジェントな条件下ハイブリダイズするヌクレオチド配列は、ハイブリダイゼーション部分において、フラグメントをコードする配列の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%の長さを有する。特定の実行において、該フラグメントの機能的バリアントをコードし、該フラグメントをコードする配列とストリンジェントな条件下ハイブリダイズするヌクレオチド配列は、ハイブリダイゼーション部分において、該フラグメントをコードする配列と実質的に同じ長さを有する。
【0075】
さらなる実行において、機能的バリアントは、二量体化機能に必須でない野生型フラグメント1以上のアミノ酸が除去または置換されているおよび/または二量体化に必須である1以上のアミノ酸が等価な官能基を有するアミノ酸で置き換えられている(保存的置換)、修飾配列を有する。201位および215位に位置する2個のシステインおよびこれらシステイン周囲のペプチド構造が、例えば、各システインの少なくとも3アミノ酸上流および下流の保存により、二量体化に必要なジスルフィド架橋を形成することが可能であるように保存されるのが特に推奨される。特に、機能的バリアントは、二量体化を担うシステインの間に、ベータ鎖の異種配列および特にC4BPのアルファ鎖のドメインを挿入することにより、または、対照的に、同システイン間に存在するあるアミノ酸を除去することによりまた得られ得る。あるいは、機能的バリアントを、あるアミノ酸の点修飾により産生でき、特に二量体化を担うシステインを、特に二量体化過程を考慮して、中性アミノ酸に置換し(例えばアミノ酸A、V、F、P、M、I、LおよびW)および同時にシステイン間のイントラカテナリーおよび/またはインターカテナリージスルフィド架橋を形成する能力を保存するために、他のアミノ酸をシステインで置換する。これら修飾は、故に、多量体化過程、特に二量体化に関与する種々のシステイン間の距離のバリエーションをもたらす。
【0076】
好ましくは、194~252フラグメントのアミノ酸の50%未満、好ましくは25%未満または10%未満(例えば5アミノ酸以下)または5%未満(例えば1または2アミノ酸)が除去または置換される。
【0077】

特定の実施態様において、機能的バリアントは、
a)C4BPβのフラグメント(好ましくは194~252フラグメント)の修飾配列であって、ここで、フラグメント(好ましくは194~252フラグメント)のアミノ酸の25パーセント未満、好ましくは10パーセント未満が除去または置換されており、そこで、202位および216位に位置するシステイン(配列番号3に対応して番号付け)ならびに各システインの少なくとも3アミノ酸上流および下流が保存されている、修飾配列;または
b)C4BPβのフラグメント(好ましくは194~252フラグメント)の修飾配列であって、ここで、二量体化を担うシステインが、好ましくはアラニン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシンおよびトリプトファンから選択されるアミノ酸で置換され、フラグメントの他のアミノ酸がシステインで置換されている、修飾配列;または
c)二量体化を担うシステインの間のベータ鎖に異種である配列の挿入により修飾されているC4BPβのフラグメント(好ましくは194~252フラグメント)の配列;または
d)二量体化を担うシステイン間のアミノ酸の除去により修飾されているC4BPβのフラグメント(好ましくは194~252フラグメント)の配列
を含むまたはそれからなる。
【0078】
キメラ構築物
好ましくは、IL2部分は、C4BPβのN末端または該そのフラグメントで融合する。
【0079】
好ましい実施態様において、キメラ構築物は、1個のIL2部分がC4BPβまたは該そのフラグメントのN末端で融合し、他のIL2部分がC4BPβまたは該そのフラグメントのC末端またはで融合する、融合タンパク質を含む。このような実施態様によると、融合タンパク質は、N末端→C末端で、次の配列を含む:IL2-C4BPβ-IL2。
【0080】
IL2部分およびC4BPβまたは該そのフラグメントは、フレーム内で(直接)またはアミノ酸リンカー、好ましくはポリGリンカーを介して融合し得る。
【0081】
用語「リンカー」は、5~80アミノ酸、好ましくは5~30、なお好ましくは10~20アミノ酸を含む、(ポリ)ペプチドをいう。適当なリンカーは当分野で知られる。ある実施態様において、リンカーはGGGGS(配列番号8)反復を含むが、当業者は、一般的推奨(Argos, 1990, J Mol Biol. 20;211(4):943-58; George R, Heringa J. An analysis of protein domain linkers: their classification and role in protein folding. Protein Eng. 2002;15:871-879)に従う他の配列も使用できることを認識する。小さい、非極性(例えばGly)または極性(例えばSerまたはThr)アミノ酸からなるリンカーは、柔軟性を提供し、機能的ドメイン接続の可動性を可能とする。
【0082】
特定の実施態様において、キメラ構築物は、配列番号9または配列番号10を含むまたはそれからなる。このようなキメラ構築物は、下記のとおり好ましくはホモ二量体を形成しまたはヘテロ二量体の産生に使用され得る。
【0083】
ホモ二量体およびヘテロ二量体構築物
a)i)少なくとも1個のインターロイキン2(IL2)部分およびii)二量体タンパク質の形成ができるC4b結合タンパク質のベータ鎖(C4BPβ)を含む融合ポリペプチドであるキメラ構築物をコードするヌクレオチド配列またはその少なくとも1個のフラグメントもしくは機能的バリアントの発現を可能とするベクターで宿主細胞をトランスフェクトし;
b)トランスフェクト細胞を、融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現および二量体タンパク質の形成のためにインビボでの2個の融合ポリペプチドの共有結合的結合に適する条件下で培養し;
c)形成された二量体タンパク質を回収し、好ましくは精製する
ことを含む、組み換え二量体タンパク質を産生する方法がここに記載される。
【0084】
トランスフェクト細胞は、好ましくはC4BPタンパク質の重合に関与するC4BPタンパク質のアルファ鎖のC末端フラグメントをコードするヌクレオチド配列の発現を可能とする如何なる核酸も含まない。
【0085】
特定の実施態様において、ヘテロ二量体を産生する方法であって:
a.
i. i)少なくとも1個のインターロイキン2(IL2)部分およびii)二量体タンパク質の形成ができるC4b結合タンパク質のベータ鎖(C4BPβ)を含む第一融合ポリペプチドまたはその少なくとも1個のフラグメントもしくは機能的バリアント;および
ii. i)少なくとも1個の異種ポリペプチドおよびii)二量体タンパク質の形成ができるC4b結合タンパク質のベータ鎖(C4BPβ)を含み、ここで、異種ポリペプチドが第一融合ポリペプチドのインターロイキン2(部分)と異なると定義される、第二融合ポリペプチドまたはその少なくとも1個のフラグメントもしくは機能的バリアント
をコードする1以上のヌクレオチド配列の発現を可能にする1以上のベクターで宿主細胞をトランスフェクトし;
b. トランスフェクト細胞を、第一および第二融合ポリペプチドをコードする1以上のヌクレオチド配列の発現およびヘテロ二量体タンパク質の形成のためにインビボでの2個の融合ポリペプチドの結合を可能にする条件下で培養し;
c. 形成されたヘテロ二量体タンパク質を回収し、好ましくは精製する
ことを含む、方法がここに記載される。
【0086】
好ましくは、第二融合ポリペプチドにおいて、C4BPβまたは該フラグメントは、異種ポリペプチドのC末端に融合する。
【0087】
異種ポリペプチドを引用するときの用語「異なる」は、第一融合ポリペプチドのインターロイキン2(部分)の一次配列と少なくとも1個のアミノ酸が異なる一次アミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。あるいは、用語「異なる」はまた同じ一次配列を有するが、例えば、アセチル化、アミド化、ビオチニル化、カルボキシル化、ヒドロキシル化、メチル化、リン酸化もしくは硫酸化の点でまたは脂質(イソプレニル化、パルミトイル化およびミリストイル化)、糖質(グルコシル化)もしくはポリペプチド(ユビキチン化)付加により、翻訳後修飾が異なる異種ポリペプチドも含む。
【0088】
好ましい実施態様において、異種ポリペプチドはIL2ではない。
【0089】
特定の実施態様において、異種ポリペプチドは、自己抗原、そのような自己抗原をターゲティングするものを含む抗体または抗体フラグメントおよび例えば、IL2Rのアルファ鎖または受容体リガンドを含む受容体からなる群から選択され得る。このような構築物は、自己免疫性および/または炎症性障害の処置に特に有用である。このような実施態様において、第一融合ポリペプチドのIL-2部分は、好ましくはTreg細胞増殖、生存、活性化および/または機能を促進する活性バリアントである。
【0090】
他の特定の実施態様において、異種ポリペプチドは、腫瘍抗原、微生物抗原、このような抗原をターゲティングするものを含む抗体または抗体フラグメントまたはIL2Rのアルファ鎖または受容体リガンドを含む受容体からなる群から選択され得る。このような構築物は、癌の処置に特に有用である。この場合、第一融合ポリペプチドのIL-2部分は、好ましくはTeff細胞増殖、生存、活性化および/または機能を促進する活性バリアントである。
【0091】
このようなヘテロ二量体タンパク質も本発明の一部である。
【0092】
特定の実施態様において、宿主細胞は、2個の融合ポリペプチド、i)少なくとも1個のインターロイキン2(IL2)部分およびii)二量体タンパク質の形成ができるC4b結合タンパク質のベータ鎖(C4BPβ)を含む第一融合ポリペプチドAまたはその少なくとも1個のフラグメントもしくは機能的バリアント;およびi)少なくとも1個の異種ポリペプチドおよびii)二量体タンパク質の形成ができるC4b結合タンパク質のベータ鎖(C4BPβ)を含み、ここで、異種ポリペプチドが第一融合ポリペプチドのインターロイキン2(部分)と異なると定義される、第二融合ポリペプチドBまたはその少なくとも1個のフラグメントもしくは機能的バリアントの共発現を可能とする。この特定の実施態様において、2個の融合ポリペプチドの共発現は、ホモ二量体A-AおよびB-Bの産生およびヘテロ二量体A-Bの産生も可能とし得る。
【0093】
上に定義する二量体またはヘテロ二量体タンパク質の合成を可能とするおよび上に定義する産生方法の工程a)の実施により得られる組み換え真核生物細胞も提供される。宿主細胞のより詳細な産生を下に記載する。
【0094】
産生方法
融合タンパク質の形態であり、ホモまたはヘテロ二量体であるキメラ構築物は、適当な発現ベクターでDNA組み換え技術により産生できる。
【0095】
発現ベクターは、構築物が導入される宿主細胞に応じて選択される。好ましくは、発現ベクターは、真核生物細胞における発現を可能とするベクター、特に染色体ベクターまたはエピソームベクターまたはウイルス誘導体、特にプラスミド、酵母染色体またはウイルス、例えばバキュロウイルス、パルボウイルスまたはSV40、レトロウイルスまたはそれらの組み合わせ由来のベクター、特にファージミドおよびコスミドから選択される。特定の実施態様において、バキュロウイルスの発現を可能とするベクターは、昆虫細胞に感染できる。
【0096】
必要であれば、融合ポリペプチドをコードする配列は、好ましくはその5’部分に、融合ポリペプチドの分泌のためのシグナルペプチドをコードする配列も含む。慣用的に、シグナルペプチドの配列は15~20アミノ酸で、疎水性アミノ酸(Phe、Leu、Ile、MetおよびVal)に富む配列である。
【0097】
ベクターは、融合ポリペプチドをコードする配列の発現に必要な配列全部を含む。特に、構築物が導入される宿主細胞に応じて選択される、適当なプロモーターを含む。
【0098】
本発明の状況の範囲内で、用語「宿主細胞」は、細胞に異種であり、トランスフェクション方法によりその細胞のゲノムに導入されている、核酸により運搬される遺伝子を発現できる細胞を意味する。
【0099】
好ましくは、宿主細胞は真核生物細胞である。真核生物宿主細胞は、特に出芽酵母などの酵母細胞、アスペルギルス属などの糸状菌細胞、ショウジョウバエのS2細胞またはスポドプテラ属のsf9などの昆虫細胞、哺乳動物細胞および植物細胞から選択される。特に言及され得る哺乳動物細胞は、CHO、COS、HeLa、C127、3T3、HepG2またはL(TK-)細胞などの哺乳動物細胞株である。好ましい実行において、該宿主細胞は、真核生物細胞株、好ましくはSf9昆虫細胞から選択される。sf9昆虫細胞で組み換え二量体タンパク質を調製する方法は、US特許7,884,190に記載される。
【0100】
異種核酸を発現する細胞の産生について当業者に知られるあらゆるトランスフェクション方法を、方法の工程a)の実施に使用し得る。トランスフェクション方法は、例えば、Sambrook et al, 2001, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載される。
【0101】
あるいは、キメラ構築物を、化学ペプチド合成により産生できる。例えば、タンパク質は、短いペプチドの平行合成により産生でき、それらは、その後組合わされて、正しいジスルフィド架橋を有するタンパク質の完全配列を産生する。IL-2の合成は、例えば引用により開示を本明細書に包含させるAsahina et al., Angewandte Chemie International Edition, 2015, Vol.54, Issue 28, 8226-8230に説明される。
【0102】
他の実施態様において、キメラタンパク質は、対象に該キメラタンパク質をコードする核酸を投与後、インビボで発現され得る。好ましい実施態様において、核酸は、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)などのウイルスベクターにより運搬される。
【0103】
製剤および投与経路
好ましくは薬学的に許容される媒体、担体または添加物と組み合わせた(例えば、溶液、懸濁液または混合物)、ここに記載する構築物、核酸、ベクターまたはタンパク質を含む医薬組成物も、提供される。
【0104】
適当な添加物は、何れかの等張溶液、食塩水溶液、緩衝化溶液、徐放性製剤などを含む。液体、凍結乾燥または噴霧乾燥組成物は当分野で知られ、水性または非水性溶液または懸濁液として製造され得る。好ましくは、医薬組成物は、適切な安定化剤、緩衝剤、増量剤または組み合わせを含む。
【0105】
医薬組成物はさらに他の活性成分を含んでよくまたは何らかの他の活性成分と組み合わせて投与してよい。
【0106】
医薬組成物は、非経腸、例えば皮内、皮下または鼻腔内経路を含む、あらゆる慣用の経路を使用して投与し得る。皮下経路が好ましい。経口、舌下またはバッカル投与も包含される。
【0107】
皮下注射に適する製剤の例は、国際特許出願WO2017/068031に記載される。
【0108】
自己免疫および/または炎症性障害の処置
ここに記載する医薬組成物は、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、HCV関連脈管炎、ブドウ膜炎、筋炎、全身性脈管炎、乾癬、アレルギー、喘息、クローン病、多発性硬化症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性甲状腺疾患、自己炎症性疾患、アルツハイマー病および筋萎縮性側索硬化症を含む神経変性疾患、急性および慢性移植片対宿主病、自然流産および同種移植片拒絶反応;固形臓器移植拒絶、脈管炎、炎症性腸疾患(IBD)およびアレルギー性喘息;脊椎関節炎または強直性脊椎炎;シェーグレン症候群、全身性硬化症、円形脱毛症または潰瘍性大腸炎などの自己免疫および/または炎症性障害を処置する方法に有用である。
【0109】
好ましい実施態様において、組成物を、週1回または2回または月1回または2回、好ましくは皮下経路により自己免疫および/または炎症性障害を処置する方法がここに記載される。ある実施態様において、30MIU/日未満、好ましくは20MIU/日未満、有利に10MIU/日未満または1MIU/日~8MIU/日の投与量が好ましい。他の特定の実施態様において、1~5MIU/日、好ましくは0.1~3.5MIU/日の用量が使用される。
【0110】
一般に言って、Treg数の1.5倍、2倍、3倍、4倍または5倍増加を可能とする用量が好ましい。IL-2の量の標準単位は国際単位(IU)であり、これは、世界保健機関(WHO)により決定されたとおり、技術的に重量を固定せず、特定の細胞増殖アッセイにおける一定の生物学的効果を産生する量である。i)重量が分子の正確な配列およびそのグルコシル化プロファイルにより変わることおよびii)重要なのは分子の重量ではなく、活性であることがその理由である。
【0111】
国際単位の原則は、あらゆるIL-2分子が比較できる標準を厳密に提供するためである(起源または野生型もしくは活性バリアント配列を含む配列に関係なく)。
【0112】
実際面では、WHOは、較正され、その効力により規定されたあるIL-2の調製物(同様に該IL-2の起源または配列に関係なく)の投与量を決定する対象として役立つ、IL-2分子のアンプルを提供する。例えば、あるIL-2の調製物の投与量を決定するために、候補IL-2調製物の生物学的活性を、CTLL-2などのIL-2依存的細胞株を使用する標準細胞増殖アッセイで測定し、標準の生物学的活性と比較する。細胞は種々の用量の標準の存在下で増殖する。IL-2の用量がIUとしてX軸に、増殖(pr)の指標がY軸にプロットされる、IL-2の用量-応答効果が確立される。未知活性の何らかのIL-2産物の活性を決定したいとき、該産物をIL-2依存的細胞の増殖に使用し、増殖を測定する。次いで、pr値をY軸にプロットし、その値から、X軸に平行な線を引く。この線と用量応答線の交差する点から、次いでY軸に平行な線を引く。X軸とのその交差点により、候補IL-2産物の活性がIUで提供される。
【0113】
WHO標準アンプルの何らかの変更は国際単位にも、何らかのIL-2調製物の投与量決定にも影響しない。
【0114】
1回目の標準(WHO国際標準コード86/504、1987年付け)は、Jurkat細胞由来の精製グリコシル化IL-2を含み、100IU/アンプルの効力が任意に割り当てられた。1回目の国際標準(IS)の原液が少なくなったため、WHOはそれを置き換えなければならなかった。WHOは、他の較正IL-2アンプルを提供し、今回は大腸菌を塩油して、産生された。2回目の標準アンプルは、アンプルあたり210IUの生物学的活性を含んだ。標準アンプルの変更は、IU変化を意味しない。故に、試験IL-2調製物の投与量の決定は、1回目の標準アンプルまたは2回目の標準アンプルまたはその後の標準アンプルを対象として使用しても、変わらない。
【0115】
ある実施態様において、例えば、3日毎に1回~3カ月に1回の投与を含む慢性投与が実行される。このような一連の投与を、必要に応じて繰り返し得る。
【0116】
他の実施態様において、IL-2を、3日間~3カ月、好ましくは1~4週間続き得る、投与の中断後繰り返し得るサイクルで、1~2週間、隔日投与する。
【0117】
他の実施態様において、処置は、誘導コースとも称される第一のコースおよび維持コースである第二のコースを含み得る。
【0118】
特定の実施態様において、処置は、医薬組成物を少なくとも連続約2日間または3日間、好ましくは連続3~7日間、なお好ましくは連続4~5日間1日1回投与する少なくとも第一のコースを含み、好ましくは、例えば約6日間または約1~約4週間後、維持用量が続く。
【0119】
維持用量は、概して少なくとも1カ月間、好ましくは少なくとも約3カ月間、なお好ましくは少なくとも約6カ月間投与される。好ましい実施態様において、維持用量は約3カ月~約12カ月、好ましくは約6カ月~約12カ月投与する。
【0120】
好ましい実施態様において、維持処置は、週1回もしくは2回または1週もしくは2週毎または1カ月に1回の医薬組成物の投与からなる。
【0121】
好ましい実施態様において、維持処置は、少なくとも1カ月、好ましくは約3カ月~約12カ月の期間、週1回もしくは2回、1週もしくは2週毎または1カ月に1回のインターロイキン-2の投与からなる。
【0122】
好ましくは、維持投与量は、第一のコースの投与量と実質的に同じでありまたは低もしくは高投与量であり得る。
【0123】
癌の処置
ここに記載する医薬組成物は、癌を処置する方法において有用である。ある実施態様において、対象は、局所進行または転移癌を有する。ある実施態様において、癌は固形腫瘍である。ある実施態様において、癌は結腸癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、乳癌、腎臓癌、食道癌または前立腺癌である。
【0124】
ある実施態様において、30MIU/日未満、好ましくは20MIU/日未満の投与量、有利に10MIU/日未満または3MIU/日~5MIU/日が好ましい。
【0125】
他の実施態様において、400,000~750,000IU/kgまたは550,000~750,000IU/kg、好ましくは600,000~700,000IU/kgのIL2が投与される。投与量は、PROLEUKIN(登録商標)で処方される量に類似し得るが、それより少ないことが予測される。
【0126】
組成物は、隔日に1回を含む、1日1回以上~週1回以上に投与され得る。当業者は、疾患重症度、先の処置、対象の一般的健康および/または年齢および存在する他の疾患を含む、ある因子が、対象を有効に処置するのに必要な投与量およびタイミングに影響し得ることを認識する。さらに、対象の処置は単回処置を含み得てまたは一連の処置を含み得る。
【0127】
自己免疫および/または炎症性障害に関連する上記プロトコールを、癌処置における使用に、同等にまたは類似して適用し得る。あるいは、他の例において、組成物を、5日間8時間毎に投与し、続いて2~14日間、例えば、9日間休薬し、続いてさらに5日間8時間毎に投与することができる。ある実施態様において、投与は、4日毎投与で3回である。
【0128】
実施例および図は、範囲を限定することなく、本発明を説明する。
【実施例
【0129】
実施例1:IL-2/C4BP融合タンパク質の産生および特徴づけ
レンチウイルスベクターを、IL-2融合タンパク質の産生に使用した。簡潔には、ヒトIL-2(Hi2、配列番号1)、C4BPβのC末端領域に融合したヒトIL-2(Hi2cb、配列番号6)または変異IL-2を有する同じ分子(N88Rバリアント;Hi2mcb、配列番号7)を、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーター下、レンチウイルスプラスミドに統合した。HEK 293T細胞を、70%コンフルエンスでポリエチレンイミン(PEI)を使用してレンチウイルスプラスミドでトランスフェクトし、48時間、無血清培地で培養した。次いで、上清を濾過し、超遠心分離法により濃縮し、適切な緩衝液に再懸濁し、その後-80℃で保存した。安定なトランスフェクト細胞を得るために、HEK 293T細胞を種々の感染効率(MOI)でレンチウイルスで感染させ、形質導入効率を選択マーカーとして産生された緑色蛍光タンパク質(GFP)を使用するフローサイトメトリーで評価した。少なくとも50%の形質導入効率および80%生存能の細胞を、1週間完全培地で培養し、その後ほぼ100%の細胞がIL-2融合タンパク質を産生することを隔日にするために、GFP+細胞の細胞選別をした。
構築物の機能的設計のインビトロ評価を実施するために(ウェスタンブロット、ヒト全血STAT5リン酸化)、安定な細胞株を48時間無血清培地で培養し、上清を回収し、濾過し、濃縮し、クロマトグラフィーにより精製して、その後利用した。
組み換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を、HEK 293T細胞における同じ目的の導入遺伝子および補助的プラスミドを有するAAV2/8ベクター(血清型8 AAVからのカプシドに封入された血清型2のゲノムを含むウイルス)のトランスフェクションにより産生した。AAVベクターを細胞上清から抽出し、それを遠心分離により浄化し、ウイルスを塩化セシウム勾配で精製し、透析した。
次いで、Hi2cbおよびHi2mcbを、一次抗ヒトIL-2抗体または一次抗ヒトC4BPβ抗体を使用するウェスタンブロットにより特徴づけした。還元条件下、Hi2cbおよびHi2mcbは、単量体に対応する約23kDaの分子量で検出される。通常条件下、2個のバンドが検出され、主要なシグナルは、二量体に対応する約46kDaの分子量であった。第二の弱シグナルは、約23kDaで単量体に対応する。
【0130】
実施例2:ヒト全血pSTAT5応答における融合タンパク質のTreg選択性
免疫表現型. 健常成人からの全血を、インフォームド・コンセントの上、集めた。STAT5リン酸化(pSTAT5)に対するHi2、Hi2cbまたはHi2mcbの効果を、フローサイトメトリーを使用して、ヒトCD4+制御T細胞(Treg;CD4+Foxp3+CD127lo/-)、CD4+通常型T細胞(Tconv;CD4+Foxp3-)およびCD8+T細胞で評価した。10倍希釈したHi2、Hi2cbおよびHi2mcbを100μlの全血と15分間、37℃で混合し、その後pSTAT5染色した。
図1は、目的の集団に対するpSTAT5誘導の用量-応答を示す。
Hi2は、Treg、TconvおよびCD8 T細胞でSTAT5リン酸化を誘導できる。IL-2-C4BPβタンパク質両者も、TregでSTAT5リン酸化を誘導できるが、TconvおよびCD8 T細胞ではできず、融合タンパク質が大きな治療ウィンドウでTregを選択的に標的とする能力を示す。
【0131】
実施例3:T細胞および糸球体濾過に対するIL-2-C4BPβコード化AAVのインビボ評価
マウス. 6~8週齢C57BL/6(Jrj)雌マウスに、Hi2、Hi2cbまたはHi2mcbをコードするAAVを、1011ウイルスゲノム(vg)で腹腔内経路で注射した。
免疫表現型. 血液サンプルを、週1回、血塊形成を避けるためにヘパリンチューブに集めた。溶血後、免疫細胞を染色し、をフローサイトメトリーにより分析して、Treg(CD4+CD25+Foxp3+)、Teff(CD4+CD25+Foxp3-)、CD8+Treg(CD8+CD25+Foxp3+)およびCD8+Teff(CD8+CD25+Foxp3-)のパーセンテージを決定した。
投与量. 血液および尿を、IL-2投与に対し種々の時点でヒトIL-2非被覆ELISAキット(ThermoFisher)を使用して採取した。
図2は、対照と比較した、4個の異なるT細胞コンパートメントの増加倍率の反応速度曲線を示す。制御T細胞に関して、3タンパク質は、Treg(図2A)およびCD8+Treg(図2C)の大きくかつ同等な増加を誘導し、融合タンパク質でわずかに良好な増加であり、Hi2と比較して高いプラトーである。一方Hi2は、1週間後Teff(3倍、図2B)およびCD8+Teff(10倍、図2D)の大きなピーク増大およびNK細胞の拡大(2倍、図2E)を示し、Hi2cbは、CD4+およびCD8+T細胞両者について約1.5倍のわずかな増加に阻止し、NK細胞の拡大の完全な制御をするように見える。変異形態の融合タンパク質、Hi2mcbは、CD4+およびCD8+T細胞両者のエフェクターコンパートメントの完全な制御ならびにNK細胞の一過性の増加にかかわらず制御を示し、この変異がTreg選択性を支持する能力を示す。
図3は、経時的な血漿(A)および尿(B)ヒトIL-2の動態を示す。血漿および尿両者におけるHi2とIL-2-C4BPβ融合タンパク質の動態間の重要な差異が観察される。Hi2は、1週間後、約20pg/mLの持続性プラトーを伴うピークを有する(図3A)。対照的に、融合タンパク質は、2週間後に、きわめて高く持続する約300pg/mLのプラトーを伴う遅いピークがある。尿において、ヒトIL-2は、hIL-2コード化AAV後しか検出されず、一方ヒトIL-2は、IL-2-C4BPβコード化AAV投与後尿で検出されない。これらの結果は、これらの融合タンパク質が腎臓により濾過されない能力を強調し、血漿におけるこれらIL-2-C4BPβ融合タンパク質の半減期の延長を示唆する。
【0132】
実施例4:AAV高用量投与後のHi2、Hi2cbまたはHi2mcbの毒性
マウス. 6~8週齢C57BL/6(Jrj)雌マウスに、Hi2、Hi2cbまたはHi2mcbをコードするAAVを1012vgで腹腔内経路で注射した。
免疫表現型. 血液サンプルを、週1回、血塊形成を避けるためにヘパリンチューブに集めた。溶血後、免疫細胞を染色し、をフローサイトメトリーにより分析して、Treg(CD4+CD25+Foxp3+)、Teff(CD4+CD25+Foxp3-)、CD8+Treg(CD8+CD25+Foxp3+)およびCD8+Teff(CD8+CD25+Foxp3-)のパーセンテージを決定した。
図4A~4E、対照と比較したのは、4個の異なるT細胞コンパートメントの増加倍率の反応速度曲線を示す。エフェクターおよび制御T細胞に対する3構築物の効果は、低用量のものに極めて類似した。簡潔には、Hi2mcbはCD4+およびCD8+Treg両者を増加させ、同時にエフェクターレベルおよびNK細胞両者を完全に制御する。この制御T細胞選択性は、良好な安全性プロファイルの根拠となる可能性が極めて高い。
Hi2cbコード化AAV後の動態は、CD4+(ピークで3倍増加、図4B)およびCD8+(ピークで9倍増加、図4D)エフェクターコンパートメント増加を一部のみ制御する能力を示す。しかしながら、両Tregコンパートメントは2週間後増加し、ほぼTregで4倍増加(図4A)およびCD8+Tregで7倍増加(図4C)に達した。最後に、Hi2処置マウス群において、全て1週間以内に死亡したが、CD4+およびCD8+Tregの大きな増加(図4A、C)およびTeff(25倍増加、図4B)、CD8+Teff(62倍増加、図4D)およびNK細胞(3倍増加、図4E)の劇的拡大があり、これが、おそらく急速な死亡に至る免疫恒常性の深刻なアンバランスを引き起こす。
図5は、AAV高用量投与後のマウスのカプラン・マイヤー曲線を示す。3タンパク質の高用量の毒性評価は、古典的Hi2と比較して、IL-2-C4BPβ融合タンパク質の極めて良好な安全性プロファイルを示す(図5)。実際、Hi2を注射したマウスは全て7日以内に死亡する。3匹のマウス中2匹が17日目になって初めて死亡したため、死亡の遅延がHi2cbで観察された。最後に、Hi2mcbで処置した全マウスは、実験開始後20週でなお生存しており、融合タンパク質の完全安全性を強調する。
【0133】
実施例5:実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルにおける融合タンパク質の治療有効性
マウス. 6~8週齢C57BL/6(Jrj)雌マウスに、実験的自己免疫性脳脊髄炎モデル(EAE)誘導7日前にHi2、Hi2cbまたはHi2mcbをコードするAAVを、1011vgで腹腔内経路により注射し、疾患開始時のTreg拡大を確実にした。全てのIL-2ベースの分子での予防的処置は臨床的発症を遅らせた(図6A)。しかしながら、疾患発症3~5日後、標準IL2処置マウス(黒色点)は、対照マウスと比較したとき(白抜き点、図6C)、類似する臨床症状の動態を示した。この結果は、全分析パラメータで確認および観察され、顕著な体重減少があり(図6B)、100%のマウスが臨床症状を発症した(図6A)。逆に、両融合タンパク質で処置したマウスは、同じ発症の遅延を示したが、臨床症状重症度の制御(それぞれ黒色四角および三角)、体重減少の完全制御(図6B)および何ら臨床症状がないマウスを意味する40%の完全疾患予防を伴った(図6A)。
【0134】
実施例6:融合タンパク質の産生および評価
6.1. 融合タンパク質の産生
精製融合タンパク質を、安定な細胞株産生から得た。詳しくは、HEK 293T細胞を培養し、上清を集め、精製AKTATM系を使用するサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。ELISAおよびウェスタンブロットを実施して、陽性フラクションを集めた。最後に、集めたサンプルをアニオン交換クロマトグラフィーを通した。
【0135】
6.2. 免疫表現型検査
マウス. 6~8週齢C57BL/6(Jrj)雌マウスに、5日間連日Hi2、Hi2cbまたはHi2mcb(25000UI)を皮下経路により注射した。
免疫表現型. 血液サンプルを1日1回注射前に、血塊形成を避けるためにヘパリンチューブに集めた。溶血後、免疫細胞を染色し、をフローサイトメトリーにより分析して、Treg(CD4+CD25+Foxp3+)のパーセンテージおよびTregのCD25平均蛍光強度を決定した。
図7Aは、5日間連日25000国際単位のタンパク質の1回注射に基づく実験的投与スケジュールを示す。免疫表現型検査を5日間、毎日、注射直前に実施した。
図7B~7Cは、対照と比較した、T細胞コンパートメントおよびNK細胞増加倍率の反応速度曲線を示す。制御T細胞拡大はHi2および融合タンパク質で極めて類似し、TregでCD25 MFIの1.6倍増加があった。
【0136】
6.3. 投与量
血液および尿を、IL-2投与に対し種々の時点でヒトIL-2非被覆ELISAキット(ThermoFisher)を使用して採取した。
6~8週齢C57BL/6(Jrj)雌マウスにHi2、Hi2cbまたはHi2mcb上清タンパク質を皮下経路により単回投与し、hIL-2の血漿濃度を種々の時点で決定した。主要な薬物動態差異がHi2および融合タンパク質間で見られた(図8)。実際、融合タンパク質は、Hi2と比較して血漿コンパートメントに長期に留まることができ、排泄が減少している。これらの結果は、これらの融合タンパク質が減少したクリアランス除去で、延長した半減期を有するとの事実を強調する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2023505590000001.app
【国際調査報告】