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<図1A>
  • 特表-カスケード式共振器光子対源 図1A
  • 特表-カスケード式共振器光子対源 図1B
  • 特表-カスケード式共振器光子対源 図2A
  • 特表-カスケード式共振器光子対源 図2B
  • 特表-カスケード式共振器光子対源 図3
  • 特表-カスケード式共振器光子対源 図4
  • 特表-カスケード式共振器光子対源 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(54)【発明の名称】カスケード式共振器光子対源
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/365 20060101AFI20230203BHJP
【FI】
G02F1/365
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530322
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 US2020062496
(87)【国際公開番号】W WO2021108763
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/941,407
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/042,438
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521552936
【氏名又は名称】プサイクォンタム,コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【弁理士】
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ビドリギン,ミハイ ドリアン
(72)【発明者】
【氏名】サンダース,ディラン
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA02
2K102AA03
2K102AA06
2K102AA09
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC01
2K102DA04
2K102DB02
2K102DC07
2K102DD01
2K102DD03
2K102DD10
(57)【要約】
光子源は、バス導波路と、バス導波路に結合された光子源ポンプレーザと、バス導波路に結合された複数の光共振器とを含む。複数の光共振器の各光共振器は、それぞれの共振線幅及びそれぞれの共振周波数を有し、複数の光共振器の共振中心周波数の帯域幅は、光子源ポンプレーザの帯域幅よりも大きい。バス導波路は、ポンプレーザからのレーザパルスの受信に応答して光子を作成する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バス導波路と、
前記バス導波路に結合されたポンプレーザと、
前記バス導波路に結合された複数の光共振器であって、前記複数の光共振器の各光共振器が、それぞれの共振線幅及びそれぞれの共振周波数を有し、前記複数の光共振器の共振中心周波数の周波数スパンが、光子源ポンプレーザである前記ポンプレーザの帯域幅よりも大きい、複数の光共振器と、
を備える、光子源。
【請求項2】
前記バス導波路に結合された複数の分散素子をさらに備え、前記複数の分散素子のうちの1つの分散素子が、前記複数の光共振器の各隣接する対の光共振器の間に位置付けられる、請求項1に記載の光子源。
【請求項3】
隣接する光共振器間の共振中心周波数の変化が、前記複数の光共振器の各々の共振線幅よりも小さい、請求項1に記載の光子源。
【請求項4】
前記複数の光共振器の数が2である、請求項1に記載の光子源。
【請求項5】
前記複数の光共振器の数が10より大きい、請求項1に記載の光子源。
【請求項6】
前記複数の光共振器が、第1の複数の第1の光共振器であり、各第1の光共振器が、第2の複数の光共振器のそれぞれの第2の光共振器に結合される、請求項1に記載の光子源。
【請求項7】
前記第2の複数の光共振器が、光子を放射する第2の導波路に結合される、請求項6に記載の光子源。
【請求項8】
前記バス導波路が光共振器である、請求項1に記載の光子源。
【請求項9】
前記複数の光共振器内の共振器について、
第1の共振器の共振周波数が、第2の共振器の共振周波数よりも大きく、第3の共振器の共振周波数が、前記第1の共振器の共振周波数よりも小さく、
前記第2の共振器が、前記第1の共振器に直接隣接して位置付けられ、前記第3の共振器が、前記第2の共振器に直接隣接して位置付けられる、請求項1に記載の光子源。
【請求項10】
入力領域と出力領域とを有するバス導波路と、
前記入力領域と前記出力領域との間で前記バス導波路に直列に結合された複数の光共振器であって、前記出力領域が、前記入力領域がレーザパルスを受信することに応答して前記複数の光共振器内で生成される光子対を伝送するように構成される、複数の光共振器と、
を備える、光子源。
【請求項11】
前記複数の光共振器の各光共振器が、それぞれの共振線幅及びそれぞれの共振周波数を有する、請求項10に記載の光子源。
【請求項12】
前記複数の光共振器の共振中心周波数の周波数スパンが、前記入力領域で受信された前記レーザパルスの帯域幅よりも大きい、請求項11に記載の光子源。
【請求項13】
前記バス導波路に結合された複数の分散素子をさらに備え、前記複数の分散素子のうちの1つの分散素子が、前記複数の光共振器の各隣接する対の光共振器の間に位置付けられる、請求項12に記載の光子源。
【請求項14】
隣接する光共振器間の共振中心周波数の変化が、前記複数の光共振器の各々の共振線幅よりも小さい、請求項13に記載の光子源。
【請求項15】
前記複数の光共振器内の共振器について、
第1の共振器の共振周波数が、第2の共振器の共振周波数よりも大きく、第3の共振器の共振周波数が、前記第1の共振器の共振周波数より小さく、
前記第2の共振器が、前記第1の共振器に直接隣接して位置付けられ、前記第3の共振器が、前記第2の共振器に直接隣接して位置付けられる、請求項11に記載の光子源。
【請求項16】
前記複数の光共振器の数が10より大きい、請求項10に記載の光子源。
【請求項17】
前記複数の光共振器が、第1の複数の第1の光共振器であり、各第1の光共振器が、第2の複数の光共振器のそれぞれの第2の光共振器に結合されている、請求項10に記載の光子源。
【請求項18】
前記バス導波路が、前記レーザパルスを再循環させる光共振器バス導波路である、請求項10に記載の光子源。
【請求項19】
それぞれの複数の共振光共振器にそれぞれ光学的に結合された複数の光共振器バス導波路をさらに備える、請求項18に記載の光子源。
【請求項20】
前記複数の光共振器のうちの任意の2つの共振器の前記共振周波数の差が、前記2つの共振器のうちの一方の前記共振線幅の2倍以下である、請求項10に記載の光子源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2019年11月27日出願の米国仮特許出願第62/941,407号、及び2020年6月22日出願の米国仮特許出願第63/042,438号の優先権を主張し、それらの開示はすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]光子対源は、様々な技術に有用である。例えば、フォトニック量子技術は、改善された輝度、スペクトル純度、再現性及び製造可能性を有する光子対源から利益を得る。
【発明の概要】
【0003】
[0003]いくつかの実施形態では、光子源は、バス導波路と、バス導波路に結合されたポンプレーザと、バス導波路に結合された複数の光共振器とを含む。複数の光共振器の各光共振器は、それぞれの共振線幅及びそれぞれの共振周波数を有し得る。いくつかの実施形態では、複数の光共振器の共振中心周波数の周波数スパンは、光子源ポンプレーザの帯域幅よりも大きい。
【0004】
[0004]いくつかの実施形態では、光子源は、バス導波路に結合された複数の分散素子をさらに含み、複数の分散素子のうちの1つの分散素子は、複数の光共振器の各隣接する対の光共振器の間に位置付けられる。
【0005】
[0005]いくつかの実施形態では、隣接する光共振器間の共振中心周波数の変化は、複数の光共振器の各々の共振線幅よりも小さい。
【0006】
[0006]いくつかの実施形態では、複数の光共振器の数は2である。他の実施形態では、複数の光共振器の数は10より大きい。
【0007】
[0007]いくつかの実施形態では、複数の光共振器は、第1の複数の第1の光共振器であり、各第1の光共振器は、第2の複数の光共振器のそれぞれの第2の光共振器に結合される。
【0008】
[0008]いくつかの実施形態では、第2の複数の光共振器は、光子を放射する第2の導波路に結合される。
【0009】
[0009]いくつかの実施形態では、バス導波路は光共振器である。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態では、光子源は、入力領域及び出力領域を有するバス導波路と、入力領域と出力領域との間でバス導波路に直列に結合された複数の光共振器とを含む。出力領域は、レーザパルスを受信する入力領域に応答して複数の光共振器内で生成された光子対を伝送するように構成され得る。いくつかの実施形態では、複数の光共振器の各光共振器は、それぞれの共振線幅及びそれぞれの共振周波数を有する。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態では、複数の光共振器の共振中心周波数の周波数スパンは、入力領域で受信されたレーザパルスの帯域幅よりも大きい。
【0012】
[0012]いくつかの実施形態では、バス導波路に結合された複数の分散素子をさらに含み、複数の分散素子のうちの1つの分散素子は、複数の光共振器の各光共振器の間に位置付けられる。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態では、隣接する光共振器間の共振中心周波数の変化は、複数の光共振器の各々の共振線幅よりも小さい。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態では、複数の共振光共振器の数は10より大きい。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態では、複数の光共振器は、第1の複数の第1の光共振器であり、各第1の光共振器は、第2の複数の光共振器のそれぞれの第2の光共振器に結合される。
【0016】
[0016]いくつかの実施形態では、バス導波路は、レーザパルスを再循環させる光共振器バス導波路である。いくつかの実施形態では、光子源は、それぞれの複数の共振光共振器にそれぞれ光学的に結合された複数の光共振器バス導波路をさらに含む。
【0017】
[0017]いくつかの実施形態では、複数の共振器内の共振器について、第2の共振器が第1の共振器に直接隣接して位置決めされ、第3の共振器が第2の共振器に直接隣接して位置付けられる。第1の共振器の共振周波数は、第2の共振器の共振周波数よりも大きい。追加で、第3の共振器の共振周波数は、第1の共振器の共振周波数より小さくてもよい。
【0018】
[0018]本開示の性質及び利点をよりよく理解するために、以下の説明及び添付の図面を参照すべきである。しかしながら、各図は例示のみを目的として提供されており、本開示の範囲の限定の定義として意図されていないことを理解されたい。また、原則として、説明からそうでないことが明らかでない限り、異なる図の要素が同一の参照符号を使用する場合、要素は、一般に、機能又は目的において同一又は少なくとも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本開示の実施形態による、単一のバスを使用するカスケード式共振器光子対源の図である。
図1B】本開示の実施形態による、一連の共振スペクトル増強の図である。
図2A】本開示の実施形態による、カスケード式共振器光子対源から生成された光子のジョイントスペクトル振幅の概略図である。
図2B】本開示の実施形態による、カスケード式共振器光子対源から生成された光子のジョイントスペクトル振幅の概略図である。
図3】本開示の実施形態による、結合された光共振器を有する別個のポンプ及び光子バスを含むカスケード式共振器光子対源の図である。
図4】本開示の実施形態による、カスケード式共振器光子対源用のポンプリサイクル設計の簡略図を示す。
図5】いくつかの実施形態によるカスケード式共振構造を採用する周波数変換システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0025]本明細書に開示される技術は、一般に、光子対源に関する。そのような光源は、それぞれが一般に信号光子及びヘラルド光子と呼ばれる光子を含む相関光子対を作成する。ヘラルド光子を検出することにより、信号光子の存在が使用のために知らされる。
【0021】
[0026]いくつかの実施形態では、光子対源は、3次又は2次非線形光学材料(例えば、ケイ素、窒化ケイ素、ケイ素に富む窒化ケイ素、ゲルマニウム化合物、ケイ素に富むゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、有機化合物、PZT、BTO、LiNbなど)の集積導波路構造から構築される。ポンプレーザは、これらの導波路構造に結合され、それにより、自発的な四光波混合(SFWM)又は自発的なパラメトリック下方変換(SPDC)が生じ得る。SFWMプロセスでは、2つのポンプレーザ光子は、非線形光学材料内で一対の娘光子(例えば、信号光子及びヘラルド光子)に変換され得る。エネルギー保存のために、生成される信号光子及びヘラルド光子は、ポンプ周波数の周りに対称的に分布する周波数にあり得る。一般に、このようなスペクトル相関により、伝令付き信号光子は混合状態になる可能性があり、その場合、光源は後続の試行で同一の光子を作成しない。生成された対の周波数分布(ジョイントスペクトル振幅(JSA)によって定義される)は、自発的な対生成プロセスにおけるエネルギー保存と運動量保存との間の相互作用によって制御される。
【0022】
[0027]いくつかの実施形態は、光共振器を使用する。そのような実施形態では、光共振器は、光子対生成が共振周波数付近で強化されるように、(スペクトル共振増強によって定義される)状態のスペクトル密度を再成形する。光共振器は、進行波共振構造として実装されてもよい。一実施態様は、バス導波路に結合されたリング、レーストラック、又は他の閉曲線として成形された導波路内のループである。別の実施態様は、閉じたビーム経路を形成するためにミラー及び半透明ミラーを使用する。光共振器はまた、ファブリペローキャビティ、フォトニック結晶キャビティの分布ブラッググレーティングなどの定在波共振構造として実装されてもよい。
【0023】
[0028]集積光学において光共振器を使用する光子対源を使用して、非共振器バージョンと比較してSFWM光子対生成の輝度を増加させることができ、輝度はポンプ光子あたりの光子対を生成する確率である。輝度の増加は、ポンプ、信号、及び共振周波数付近の先読みのスペクトル共振増強によって引き起こされる。輝度を高めるために、v=vres 、v=vres M-n、v=vres M+nという共振条件を満たすことができる。式中、v、v、vは、それぞれポンプ、信号、及びヘラルドフィールドの周波数である。また、vresにおいて、上部スクリプトは、共振数を示す。Mは正の整数であり、nは任意の整数である。次数Mの共振条件は
【数1】
であり、式中、leffは共振器の有効光往復長であり、cは光速である。光共振器は、複数の共振周波数を有する。2つの隣接する共振M&M+1間の周波数差は、自由スペクトル範囲(FSR)である。共振増強は、共振周波数を中心とし、分布の半値全幅(FWHM)によって定義される帯域幅(本明細書では共振線幅とも呼ばれる)を有する状態のスペクトル密度のローレンツ分布である。比FSR/FWHMは、共振器のフィネスである。光共振器を使用する光子対源の輝度は、フィネスが増加すると増加する。
【0024】
[0029]単一の光共振器に基づくいくつかの実施形態では、光源の輝度は、光源の帯域幅とのトレードオフであり得る。しかしながら、例えば線形光量子コンピューティングのために多くの単一光子源を使用する多くのシステムは、異なる源からの伝令付き光子がビームスプリッタに干渉して光子のもつれ状態を作成することを必要とする。しかしながら、2つの光源によって作成された伝令付き光子が十分に干渉するためには、各光源は互いにほぼ同一でなければならない(例えば、共振はほぼ同一でなければならない)。これは、単一の共振器のみが使用される場合、各共振器源の共振周波数のアラインメントに厳しい制約を課す。
【0025】
[0030]JSAがヘラルドスペクトル分布と信号スペクトル分布との積として表わされ得る場合、光源はスペクトル的に純粋である(JSAは分離可能である)。単一の光共振器に基づく光子対源のいくつかの実施形態では、スペクトル純度は、ヘラルド、信号、及びポンプ共振でシステムの共振帯域幅を調整することによって最適化され得る。
【0026】
[0031]本明細書に開示される技術は、いくつかの光共振器で生成された光子対がコヒーレントに加算され、その結果、スペクトル純度及び輝度が向上するカスケード式共振器源に関する。単一のバス上に複数の共振器源をカスケード接続し、それらをコヒーレントに組み合わせることによって、共振の輝度と帯域幅との間の典型的なトレードオフを改善することができる。いくつかの実施形態では、それらが構成される共振器がシフトされた共振周波数を有する場合でも、実質的に同一の光子を作成することができるカスケード式源が開示される。
【0027】
[0032]本明細書に記載及び開示されるカスケード式共振器源は、量子コンピューティング、量子通信、量子計測、分光法、LiDAR、及び他の用途を含むがこれらに限定されない任意の光学デバイスで使用することができる。
【0028】
[0033]単一のバス上の複数の共振器をコヒーレントに組み合わせる光源の特徴及び態様をより良好に理解するために、本開示の実施形態によるカスケード式光源の実施態様を説明することによって、本開示のさらなる文脈が提供される。これらの実施形態は、例えば単なる例であり、他の実施形態は、他の光子源及びフォトニックデバイスに使用することができる。
【0029】
[0034]図1Aは、本開示の実施形態による、カスケード式共振器光子対源100を示す。カスケード式共振器光子対源100は、導波路105と、それぞれ異なる共振周波数を有する一連の光共振器110_1、110_2、...、110_nとを含むことができる。例えばレーザポンプ122からのポンピング光は、導波路105の入力領域130に結合することができ、各リング共振器110_1、110_2、...、110nに結合することができる。ポンプレーザは、プログラムされたパワースペクトル密度及びスペクトルチャープを有することができる。各光共振器110_1、110_2、...、110_nは、リング共振器の光路長が光の波長の整数であるときに、ある波長を有する光に対する共振が生じ得るように導波路ループを含むことができる。各光共振器は、共振条件を満たす複数の波長で複数の共振を支持することができる。
【0030】
[0035]図1Bは、いくつかの実施形態による、複数の共振器に対する状態のスペクトル密度及び波長の関数の共振増強のプロットを示す。示されている各分布(本明細書では共振曲線、又は単に共振とも呼ばれる)は、それぞれの共振器の「共振周波数」を中心とし、曲線は本明細書では「共振器共振」と呼ばれる。各共振器共振は、分布の半値全幅(FWHM)であるように定義されたスペクトル幅を有する。この幅を、本明細書では「共振線幅」と呼ぶ。ポンプ、信号、及びヘラルドの共振周波数は、vp、j、vs、j、vh、jによって得られ、jは、共振器構造自体、例えば図1Aに示すリングをラベル付けする。しかしながら、インデックスj(図1Bの共振周波数が低い方から順に共振を数える)は、上記のインデックスn(バス上の共振器の物理的位置を表わす)に結合されていないこと、すなわち、入力端から出力端まで移動するときに共振器の共振周波数は、単調に増加する必要はなく、又は低い順(又は高い順)である必要さえないことに留意することが重要である。図1Bでは、5つの光共振器(バスに沿ってどこにでも位置付けられ得る)の共振器共振(3つのフィールドのいずれかに対して)が示されており、インデックスjは150a~150eに対応する1~5からなる。異なる共振器間の共振周波数のシフト(本明細書では共振シフトとも呼ばれる)は、光共振器導波路幅又は光共振器長又は別の共振器特性のわずかな変化によって得ることができる。
【0031】
[0036]図1Aに戻ると、一連の光共振器がバスに任意に光学的に結合され、一連の共振器の個々の共振周波数は、光源によって生成される対の光子の輝度及び純度を改善するように選択され得る。図では、共振器は、110_1、110_2、...、110_nとラベル付けされており、インデックスnは、デバイスの入力側(110_1は第1の入力共振器であり、110_2は共振器110_1に直接隣接して位置付けられた第2の共振器である、などである)に対する共振器の物理的位置を示す。いくつかの実施形態では、デバイスに沿った一連の共振器の一連の共振周波数(入力から出力へ、又はその逆も同様)は、(低い順、高い順に)順序付けられ、等間隔に間隔を空けられ得る。他の実施形態では、nでインデックス付けされた共振器の共振周波数は、デバイスを下に移動するにつれてnの単調な増加又は減少関数でなくてもよく、すなわち、第1の共振器の共振周波数は、第2の共振器(第2の共振器が第1の共振器に直接隣接して位置付けられる)の共振周波数よりも大きくてもよく、第3の共振器(第3の共振器が第2の共振器に直接隣接して位置付けられる)の共振周波数は、第1の共振器の共振周波数よりも小さくてもよい。いくつかの実施形態では、第1の共振周波数よりも小さい第2の共振周波数及び第1よりも大きい第3の共振周波数を有することにより、光源のスペクトル純度を改善することができる。本明細書で使用される場合、共振周波数
【数2】

の「周波数スパン」という用語は、これらの周波数の最大と最小との間の差である。
【0032】
[0037]いくつかの実施形態は、2つの光共振器間のポンプ、信号、及びアイドラの間の光位相を調整する追加の任意選択の分散素子を使用することができる。図1は、Δk 115aがポンプ、信号、及びアイドラの間の運動量不一致であるようなデバイス100を示す。いくつかの実施形態では、分散素子は、これらに限定されないが、異なる幾何学的形状を有する導波路、多モード分散工学によるチャープ格子、又はチャープミラーを含む任意のタイプの分散構造を使用して実装され得る。分散素子は、任意の方法でバスに結合することができ、例えば、バス導波路から直接形成及び/又はバス導波路に統合することができか、あるいは任意に(直接結合又はエバネッセント結合などを介して)バスに光学的に結合することができる。
【0033】
[0038]いくつかの実施形態によれば、共振器の共振器共振は、図1Bに示すように、重なり合うことができる。すなわち、共振器共振を波長(又は同等に、周波数)の関数としてプロットすると、曲線の下の領域は実質的に重なり合う。いくつかの実施形態では、それぞれの共振周波数間の差が2つの共振のうちの1つの共振線幅の2倍よりも小さい場合、2つの共振器共振が重なり合うように定義される。いくつかの実施形態では、重複すると定義される共振周波数間の差は、数百ピコメートル、例えば100ピコメートル、又は50~400ピコメートル(周波数の単位を使用する場合は5~50GHz)の範囲内であり得る。
【0034】
[0039]いくつかの実施形態では、ポンプパルススペクトルは、制御された帯域幅を有するガウス分布である。ここで、帯域幅という用語は、ポンプ電力スペクトル密度のFWHMを指す。いくつかの実施形態では、ポンプスペクトルは、制御されたスペクトルチャープ(非ゼロの二次スペクトル位相)を有する。ポンプスペクトルのFWHMは、共振の周波数スパン
【数3】

より小さくてもよい。
【0035】
[0040]図2Aは、カスケード式共振器光子対源100のJSAのグラフ200を示す。領域205はポンプ関数を示し、ポンプパルスからの光子対生成のエネルギー保存を説明する。領域210は、カスケード式共振器源内の多数の共振器による集合的なスペクトル共振増強を示す。この領域は、ポンプ、信号、及びヘルドのスペクトル増強が1つの共振器から別の共振器に一緒にシフトされるとき、ポンプ関数にほぼ直交する。ポンプ関数と集合的なスペクトル増強との相互作用は、領域215によって示されるほぼ二次元ガウス分布であるJSAをもたらすことができる。このJSAは、ほぼ分離可能にすることができ、高いスペクトル純度をもたらす。カスケード式共振器源100は、比較的明るく、スペクトル的に純粋な光子対源であってよい。高純度は>99%を意味し、低又は標準純度は約90%である。いくつかの実施形態では、例えば、領域215に示されるJSAの純度は99.9%であり得るが、他の実施形態では、純度は異なっていてもよい。
【0036】
[0041]カスケード式共振器源100は、長距離プロセス変動に対して堅牢であり得る。より具体的には、製造上の欠陥により、すべてのvp、j、vs、j、vh、jが多くの場合一緒にシフトする。カスケード式共振器源のすべての共振周波数が一緒にシフトされる場合、ポンプは、相互作用する共振器110_1、...、110_nのサブセットを「選択」する。結果として得られたJSAは、公称光源のJSAとほぼ同一であり得る。
【0037】
[0042]図2Bは、JSAに対するプロセス変動の影響を示すカスケード式共振器源のグラフを示す。図2Aは、公称光源の集合的なスペクトル増強を示し、図2Bは、プロセス変動、例えば導波路膜厚の変化によるすべての共振周波数のシフトによって影響を受ける光源を示す。この構成では、プロセス変動の結果は、単に集合的なスペクトル共振増強を新しい位置210’にシフトさせることである。しかしながら、集合的なスペクトル共振増強の周波数スパンはプロセス変動によって引き起こされるシフトよりも大きいため、領域215はほとんど影響を受けない。これにより、システムを製造プロセスの変動に対して堅牢にすることができる。
【0038】
[0043]特性及び動作の上記の説明は、近似及び/又は単純化と考えることができ、本開示はこれらの説明によって決して限定されない。いくつかの実施形態では、完全なシミュレーションインフラストラクチャは、ポンプ伝搬、分散、非線形性、損失、多光子、非摂動的効果、及び他の考慮事項を含む。
【0039】
[0044]図3は、本開示の実施形態による、カスケード式光源300の一実施形態を示す。この実施形態では、一連の光共振器303は、一列の光共振器310a...310n及び別の列の光共振器320a...320nを含むが、他の実施形態では、一連の光共振器は、この例証以外の他の適切な形状を有することができる。一連の光共振器303は、第1の導波路305と第2の導波路325との間に配置されている。レーザポンプ源は、光を各光共振器320a...320nに結合するように位置付けられた第1の導波路305に結合されている。各光共振器320a...320nは、それぞれの位相シフト315a...315n(φとラベル付けされている)によって分離されている。各光共振器320a...320nは、光を第2の導波路325に結合するそれぞれの光共振器310a...310nに光を結合するように位置付けられる。
【0040】
[0045]他の実施形態では、単一の光共振器の代わりに結合光共振器を使用することができる。さらなる実施形態では、空間的に変調された非線形特性を使用して対生成プロセスにおける運動量整合を操作する準位相整合技術を使用することができる。
【0041】
[0046]上記の光子対源は、以下を含むがこれらに限定されない、性能の無数の改善をもたらし得る。第1に、開示された構造は、伝令付き光子の帯域幅を光源輝度から切り離すことができる。比較すると、以前の光共振器光子対源は、共振周波数を狭めることによってより高い輝度を達成する。本明細書に開示されるカスケード式共振器源では、この制約が取り除かれ、それによって設計空間が大幅に増大する。例えば、帯域幅は、他のシステム考慮事項を考慮して選択されてもよい。
【0042】
[0047]本明細書に記載の光子対源による第2の改善点は、2つの光子対源が実質的に同一のポンプを共有する場合、長距離プロセス変動によってすべての光共振器に与えられる共振周波数シフトとは無関係に、2つの別個の光子対源が実質的に同一の伝令付き光子を作成できることである。この特徴は、異なる光子対源が実質的に同一の伝令付き光子を作成することを可能にする。これにより、異なる光子対源の周波数アライメントを達成するために必要なトリミング及び/又は調整を桁違いに低減することができる。
【0043】
[0048]第3の改善点は、本明細書に記載の光子対源がガウス光子を作成できることである。いくつかの実施形態では、ガウス分布は、分散、タイミングジッタなどに対して堅牢であるため、望ましい単一光子波パケット形状である。比較すると、典型的な単一光共振器源はガウス光子を作成しない。
【0044】
[0049]別の利点は、本明細書に記載の光子対源が高いスペクトル純度を達成できることである。
【0045】
[0050]図4は、カスケード式光源400をリサイクルする小型ポンプの一実施形態の簡略図を示す。図4に示すように、カスケード式共振器源400をリサイクルすることは、それぞれの共振バス415に結合された複数のリング410をそれぞれが含む複数の再循環共振構造405a...405nを含む。いくつかの実施形態では、カスケード式光源400は、ポンプが光源を出るときにスペクトル的に変化せず、単に遅延するという追加の利点を提供する。バス導波路が共振器に変換される場合、カスケード式共振器源によって誘発されるこの追加の遅延は、光源を同期的にポンピングするためのキャビティ長を整合させることを可能にし得る。より具体的には、ポンプレーザ繰返し率がカスケード式共振器源に蓄積された遅延と整合する場合、ポンプパルスはキャビティによって増強されることができ、したがって必要な外部ポンプ力を大幅に低減することができる。いくつかの実施形態では、臨界的に結合されると、最大2桁の係数によるさらなる増強が生成され得る。
【0046】
[0051]カスケード式光源は、1つの特定のタイプの光源として説明及び図示されているが、本開示の実施形態は、量子コンピュータ及びLiDARシステムを含むがこれらに限定されない多数のシステムとの使用に適している。カスケード式共振器を介して作成された集合的なスペクトル増強は、任意のパラメトリック波混合プロセス(例えば、単一高調波発生、差周波数発生(DFG)、及び/又は光パラメトリックオシレーション)によって使用することができるが、これに限定されない。
【0047】
[0052]図5は、いくつかの実施形態によるカスケード式共振器構造に基づく周波数変換システム500を示す。構造は、図1に関して詳細に上述した光子対源構造と同様であり、明確にするために、ここでは繰り返し要素を説明しない。いくつかの実施形態では、カスケード式共振器周波数変換システムへの入力は、各々が異なる周波数を有する2つのレーザFREQ.2及びFREQ.1を含み得る。これらのレーザは、ここではWDM505として示されている波長分割多重デバイスなどの光結合デバイスに入力することができる。この場合、カスケード式共振器構造は、差又は和周波数発生などの入力間の周波数混合を生成することができる。いくつかの実施形態では、出力WDM515を使用して、変換された周波数(例えば、和及び/又は差周波数)を、レーザFREQ.2及びFREQ.1によって生成された入力レーザ光から分離することができる。この周波数変換は、FREQ.2及びFREQ.1が変換された周波数ほど有用ではない場合に、FREQ.2及びFREQ.1から新しい周波数を生成するのに有用であり得る。例えば、おそらくFREQ.2及びFREQ.1は容易に検出されないが、変換された周波数は利用可能な検出器によってかなり又は容易に検出される。カスケード式共振器周波数変換構造は、導波路又は単一の光共振器を含む周波数変換のための他の方法と比較された場合、周波数混合の輝度を改善することができる。
【0048】
[0053]前述の明細書では、本開示の実施形態は、実装ごとに異なり得る多数の特定の詳細を参照して説明されている。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきである。本開示の範囲の唯一かつ排他的な指標、及び本出願人によって本開示の範囲であることが意図されているものは、その後の修正を含む、そのような特許請求の範囲が発行する特定の形態で、本出願から発行される特許請求の範囲の文字通りの同等の範囲である。特定の実施形態の特定の詳細は、本開示の実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0049】
[0054]さらに、例えば図に示すように、要素及び/又は特徴と別の要素(複数可)及び/又は特徴(複数可)との関係を記述するために、「底部又は上部」などの空間的に相対的な用語を使用することができる。空間的に相対的な用語は、図に示された向きに加えて、使用及び/又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することが意図されていることが理解されよう。例えば、図中の装置がひっくり返された場合、「底部」表面として記載された要素は、他の要素又は特徴の「上方」に向けられることができる。デバイスは、他の方向に向けられる(例えば、90度又は他の向きに回転される)ことができ、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
【国際調査報告】