(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(54)【発明の名称】二重針を用いた細胞注射印刷
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20230203BHJP
【FI】
A61M5/158 500F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531031
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 US2020062805
(87)【国際公開番号】W WO2021113301
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514005652
【氏名又は名称】スクリップス ヘルス
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ディリーマ,ダリル,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コールウェル,クリフォード,ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC10
4C066FF05
4C066KK04
4C066KK15
4C066KK16
4C066QQ25
(57)【要約】
【解決手段】基質に流体を注射するための器具および方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている器具または方法は、組織の欠損部の修復を促進するために、組織足場、移植片、または組織損傷部位に細胞を送達する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重針であって、該二重針は、
(a)近位端、
(b)遠位端、ならびに、
(c)同心に配置された第1の細長い管状体および第2の細長い管状体
を含み、前記第1の細長い管状体および前記第2の細長い管状体は、
(i)前記近位端と前記遠位端の間にある長手方向軸に沿って延在する、内腔を形成する円筒状の側壁、および、
(ii)前記円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部
を含み、複数の構成を形成するように、前記第2の細長い管状体は、前記第1の細長い管状体に対して可動であり、前記複数の構成のうちの少なくとも1つは、前記第1の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つと、前記第2の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つとの重なり合いによって形成された、対になった開口部を含む、二重針。
【請求項2】
前記対になった開口部は、前記第1の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの1つと、前記第2の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの1つとによって形成される、請求項1に記載の二重針。
【請求項3】
前記第2の細長い管状体は、前記第1の細長い管状体の前記内腔内に同心に配置される、請求項1または2に記載の二重針。
【請求項4】
前記第1の細長い管状体の前記内腔の直径は、0.5mmから500mmである、請求項3に記載の二重針。
【請求項5】
前記第2の細長い管状体の前記内腔の直径は、約0.1mmから約400mmである、請求項3または4に記載の二重針。
【請求項6】
前記第1の細長い管状体に取り付けられた、前記遠位端に位置した穿刺部材をさらに含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項7】
前記第2の細長い管状体に取り付けられた、前記遠位端に位置した穿刺部材をさらに含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項8】
前記第1の細長い管状体は、前記第2の細長い管状体の前記内腔内に同心に配置される、請求項1または2に記載の二重針。
【請求項9】
前記第1の細長い管状体の前記内腔の直径は、0.1mmから400mmである、請求項8に記載の二重針。
【請求項10】
前記第2の細長い管状体の前記内腔の直径は、0.5mmから500mmである、請求項8または9に記載の二重針。
【請求項11】
前記第1の細長い管状体に取り付けられた、前記遠位端に位置した穿刺部材をさらに含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項12】
前記第2の細長い管状体に取り付けられた、前記遠位端に位置した穿刺部材をさらに含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項13】
前記第1の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、請求項1~12のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項14】
前記第1の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、あるパターンで配置され、前記パターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、請求項1~12のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項15】
前記第2の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、請求項1~14のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項16】
前記第2の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、あるパターンで配置され、前記パターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、請求項1~14のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項17】
前記対になった開口部の面積は、最大で80mm
2である、請求項1~16のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項18】
前記第1の細長い管状体の長さは、0.5cmから200cmである、請求項1~17のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項19】
前記第2の細長い管状体の長さは、0.5cmから200cmである、請求項1~18のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項20】
前記第1の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つは、楕円形状、円形状、長方形状、三角形状、またはティアドロップ形状を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項21】
前記第2の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つは、楕円形状、円形状、長方形状、三角形状、またはティアドロップ形状を有する、請求項1~20のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項22】
前記第1の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つ、または前記第2の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つの面積は、0.1mm
2から80mm
2である、請求項1~21のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項23】
前記遠位端に位置した開口部をさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項24】
前記二重針は、前記二重針の遠位端に位置した、あるいはそれに隣接した拡張部材をさらに含み、
-前記拡張部材は、金属材料であり、
-前記金属材料は、形状記憶合金を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項25】
前記第1の細長い管状体の前記円筒状の側壁および前記第2の細長い管状体の前記円筒状の側壁は、金属材料であり、金属材料は、形状記憶合金を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項26】
前記形状記憶合金は、ニチノールである、請求項24または25に記載の二重針。
【請求項27】
前記第2の細長い管状体は、軸方向に可動である、請求項1~26のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項28】
前記第2の細長い管状体は、前記第2の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転することができる、請求項1~27のいずれか1項に記載の二重針。
【請求項29】
基質に流体を注射する方法であって、該方法は、
(a)前記基質に二重針を刺入する工程であって、前記二重針は、
(I)近位端、
(II)遠位端、ならび、
(III)同心に配置された内側の細長い管状体および外側の細長い管状体
を含み、前記内側の細長い管状体および前記外側の細長い管状体はそれぞれ、
(i)前記近位端と前記遠位端の間にある長手方向軸に沿って延在する、内腔を形成する円筒状の側壁、および、
(ii)前記円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部
を含み、複数の構成を形成するように、前記内側の細長い管状体または前記外側の細長い管状体のうちの少なくとも一方は、他方に対して可動であり、前記複数の構成のうちの少なくとも1つは、前記内側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つと、前記外側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つとの重なり合いによって形成された、対になった開口部を含む、刺入する工程と、
(b)前記内側の細長い管状体の前記内腔に流体を流す工程であって、それによって、前記流体が、前記対になった開口部を通って前記基質へと通過する、流す工程と、
を含む、方法。
【請求項30】
前記対になった開口部は、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つと、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つとによって形成される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記内側の細長い管状体は、前記外側の細長い管状体に対して可動である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記外側の細長い管状体に対して前記内側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記内側の細長い管状体は、前記外側の細長い管状体に対して軸方向に移動する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記内側の細長い管状体は、前記内側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記外側の細長い管状体は、前記内側の細長い管状体に対して可動である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項36】
前記内側の細長い管状体に対して前記外側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記外側の細長い管状体は、前記内側の細長い管状体に対して軸方向に移動する、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記外側の細長い管状体は、前記外側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する、請求項35~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記内側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、請求項29~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記内側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、あるパターンで配置され、前記パターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、請求項29~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記外側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、請求項29~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記外側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、あるパターンで配置され、前記パターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、請求項29~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記対になった開口部の面積は、最大で80mm
2である、請求項29~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記流体は、複数の細胞を含む、請求項29~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記複数の細胞は、軟骨形成細胞、軟骨形成前駆体、多分化能性細胞、または多能性細胞を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記流体は、前記二重針の前記遠位端に位置した開口部を通って流れる、請求項29~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記二重針の前記遠位端に位置した前記開口部は、前記基質に刺入された後に大きさが大きくなる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記二重針は、前記基質に刺入された後に形状が変化する、請求項29~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記基質は、生物組織である、請求項29~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記生体組織は、ヒト組織、整形外科組織、軟骨、または壊死組織である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記基質は、無細胞足場である、請求項29~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
損傷組織を修復する方法であって、該方法は、
(a)前記損傷組織に無細胞組織足場を移植する工程と、
(b)前記無細胞組織足場に二重針を刺入する工程であって、前記二重針は、
(I)近位端、
(II)遠位端、ならび、
(III)同心に配置された内側の細長い管状体および外側の細長い管状体
を含み、前記内側の細長い管状体および前記外側の細長い管状体はそれぞれ、
(i)前記近位端と前記遠位端の間にある長手方向軸に沿って延在する、内腔を形成する円筒状の側壁、および、
(ii)前記円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部
を含み、複数の構成を形成するように、前記内側の細長い管状体または前記外側の細長い管状体のうちの少なくとも一方は、他方に対して可動であり、前記複数の構成のうちの少なくとも1つは、前記内側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つと、前記外側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つとの重なり合いによって形成された、対になった開口部を含む、刺入する工程と、
(c)前記内側の細長い管状体の前記内腔に流体を流す工程であって、それによって、前記流体が、前記対になった開口部を通って前記無細胞組織足場へと通過する、流す工程と、
を含む、方法。
【請求項53】
前記対になった開口部は、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つと、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つとによって形成される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記内側の細長い管状体は、前記外側の細長い管状体に対して可動である、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
前記外側の細長い管状体に対して前記内側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記内側の細長い管状体は、前記外側の細長い管状体に対して軸方向に移動する、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
前記内側の細長い管状体は、前記内側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する、請求項54~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記外側の細長い管状体は、前記内側の細長い管状体に対して可動である、請求項52~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記内側の細長い管状体に対して前記外側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記外側の細長い管状体は、前記内側の細長い管状体に対して軸方向に移動する、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
前記外側の細長い管状体は、前記外側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する、請求項58~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記内側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、請求項52~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記内側の細長い管状体にある前記複数の開口部は、あるパターンで配置され、前記パターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、請求項52~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記外側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、請求項52~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記外側の細長い管状体にある前記複数の側壁開口部は、あるパターンで配置され、前記パターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、請求項52~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記対になった開口部の面積は、最大で80mm
2である、請求項52~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記流体は、複数の細胞を含む、請求項52~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記複数の細胞は、軟骨形成細胞、多能性細胞、多分化能性細胞、または軟骨形成前駆体を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記流体は、前記二重針の前記遠位端に位置した開口部を通って流れる、請求項52~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記二重針の前記遠位端に位置した前記開口部は、前記基質に刺入された後に大きさが大きくなる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記二重針は、前記基質に刺入された後に形状が変化する、請求項52~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記無細胞組織足場は、壊死組織同種移植片である、請求項52~71のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月3日に出願された米国仮特許出願第62/943,081号の利益を主張するものであり、当該出願の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
軟骨は、結合間接表面で一般に見られる柔軟な結合組織の一種である。軟骨に過度の力がかけられると、裂け目が生じる可能性がある。軟骨組織は、血管新生が限定的であり、細胞が軟骨に浸潤することができないことに起因して、最小限の癒合しか示さない。細胞を直接注射することによって軟骨を再細胞化することを目的とした現在の治療方法は、従来の注射法の欠点に起因して、多くの場合、効果がない。
【0003】
従来の注射法の多くは、針の遠位端に位置した単一の静的開口部から流体を吐出する。単一の静的開口部を通して吐出することによって、流体の流れは、針を通る流体の流量の調整にほぼ完全に左右されている可能性がある。従来の方法を使用して、緻密な圧縮基質に流体を注射すると、基質の圧縮力によって、注射部位から流体を押し出し、基質への流体の送達を効果がないものにする可能性がある。従来の方法を介して注射した流体が基質内に残っていたとしても、このような流体は、小さな領域に閉じ込められる傾向があり、その結果、流体の送達は、大きな創傷の治癒には効果がない。よって、治癒過程を進めるために、裂け目の領域の軟骨組織を再細胞化するために、改善された送達方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において、緻密な基質に細胞を送達するための機器および方法が提供されている。一態様では、本開示は、二重針(coaxial needle)を提供し、該二重針は、近位端、遠位端、ならびに、同心に配置された第1の細長い管状体および第2の細長い管状体を含み、第1の細長い管状体および第2の細長い管状体は、近位端と遠位端の間にある長手方向軸に沿って延在する、内腔を形成する円筒状の側壁、および、円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部を含み、複数の構成を形成するように、第2の細長い管状体は、第1の細長い管状体に対して可動であり、複数の構成のうちの少なくとも1つは、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つと、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つとの重なり合いによって形成された、対になった開口部を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、対になった開口部は、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つと、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つとによって形成される。いくつかの実施形態では、第2の細長い管状体は、第1の細長い管状体の内腔内に同心に配置される。いくつかの実施形態では、第1の細長い管状体は、第2の細長い管状体の内腔内に同心に配置される。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1の細長い管状体の内腔の直径は、0.5mmから500mmである。いくつかの実施形態では、第1の細長い管状体の内腔の直径は、0.1mmから400mmである。いくつかの実施形態では、第2の細長い管状体の内腔の直径は、約0.1mmから約400mmである。いくつかの実施形態では、第2の細長い管状体の内腔の直径は、0.5mmから500mmである。いくつかの実施形態では、第1の細長い管状体の長さは、0.5cmから200cmである。いくつかの実施形態では、第2の細長い管状体の長さは、0.5cmから200cmである。
【0007】
いくつかの実施形態では、二重針は、第2の細長い管状体に取り付けられた、遠位端に位置した穿刺部材をさらに含む。いくつかの実施形態では、二重針は、第1の細長い管状体に取り付けられた、遠位端に位置した穿刺部材をさらに含む。いくつかの実施形態では、二重針は、遠位端に位置した開口部をさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される。いくつかの実施形態では、第1の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前述のパターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している。いくつかの実施形態では、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される。いくつかの実施形態では、第2の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前述のパターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している。
【0009】
いくつかの実施形態では、対になった開口部の面積は、最大で80mm2である。いくつかの実施形態では、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つ、または第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つの面積は、0.1mm2から80mm2である。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つは、楕円形状、円形状、長方形状、三角形状、またはティアドロップ形状を有する。いくつかの実施形態では、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つは、楕円形状、円形状、長方形状、三角形状、またはティアドロップ形状を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、二重針は、二重針の遠位端に位置した、あるいはそれに隣接した拡張部材をさらに含み、前述の拡張部材は、金属材料であり、金属材料は、形状記憶合金を含む。いくつかの実施形態では、第1の細長い管状体の円筒状の側壁および第2の細長い管状体の円筒状の側壁は、金属材料であり、金属材料は、形状記憶合金を含む。いくつかの実施形態において、形状記憶合金は、ニチノールである。
【0012】
いくつかの実施形態では、第2の細長い管状体は、軸方向に可動である。いくつかの実施形態では、第2の細長い管状体は、第2の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転することができる。
【0013】
また、本明細書において、基質に細胞を注射する方法が提供され、該方法は、基質に二重針を刺入する工程であって、二重針は、近位端、遠位端、ならび、同心に配置された内側の細長い管状体および外側の細長い管状体を含み、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体は、近位端と遠位端の間にある長手方向軸に沿って延在する、内腔を形成する円筒状の側壁、および、円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部を含み、複数の構成を形成するように、内側の細長い管状体または外側の細長い管状体のうちの少なくとも一方は、他方に対して可動であり、複数の構成のうちの少なくとも1つは、内側の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つと、外側の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つとの重なり合いによって形成された、対になった開口部を含む、刺入する工程と、内側の細長い管状体の内腔に、複数の細胞を含む流体を流す工程であって、それによって、流体が、対になった開口部を通って基質へと通過する、流す工程と、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、対になった開口部は、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つと、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つとによって形成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体は、外側の細長い管状体に対して可動である。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体は、外側の細長い管状体に対して軸方向に移動する。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体は、内側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する。
【0016】
いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体は、内側の細長い管状体に対して可動である。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体は、内側の細長い管状体に対して軸方向に移動する。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体は、外側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する。
【0017】
いくつかの実施形態では、前述の方法は、内側の細長い管状体に対して外側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、前述の方法は、外側の細長い管状体に対して内側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前述のパターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前述のパターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している。
【0019】
いくつかの実施形態では、対になった開口部の面積は、最大で80mm2である。
【0020】
いくつかの実施形態では、流体は、複数の細胞を含む。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、軟骨形成細胞、軟骨形成前駆体、多分化能性細胞、または多能性細胞を含む。いくつかの実施形態では、流体は、二重針の遠位端に位置した開口部を通って流れる。いくつかの実施形態では、二重針の遠位端に位置した開口部は、基質に刺入された後に大きさが大きくなる。いくつかの実施形態では、二重針は、基質に刺入された後に形状が変化する。
【0021】
いくつかの実施形態では、基質は、生物組織である。いくつかの実施形態では、生体組織は、ヒト組織、整形外科組織、軟骨、または壊死組織である。いくつかの実施形態では、基質は、無細胞足場である。
【0022】
また、本明細書において、損傷組織を修復する方法が提供され、該方法は、損傷組織に無細胞組織足場を移植する工程と、無細胞組織足場に二重針を刺入する工程であって、二重針は、近位端、遠位端、ならび、同心に配置された内側の細長い管状体および外側の細長い管状体を含み、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体は、近位端と遠位端の間にある長手方向軸に沿って延在する、内腔を形成する円筒状の側壁、および、円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部を含み、複数の構成を形成するように、内側の細長い管状体または外側の細長い管状体のうちの少なくとも一方は、他方に対して可動であり、複数の構成のうちの少なくとも1つは、内側の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つと、外側の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つとの重なり合いによって形成された、対になった開口部を含む、刺入する工程と、内側の細長い管状体の内腔に、複数の細胞を含む流体を流す工程であって、それによって、流体が、対になった開口部を通って無細胞組織足場へと通過する、流す工程と、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、対になった開口部は、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つと、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つとによって形成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体は、外側の細長い管状体に対して可動である。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体は、外側の細長い管状体に対して軸方向に移動する。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体は、内側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する。
【0025】
いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体は、内側の細長い管状体に対して可動である。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体は、内側の細長い管状体に対して軸方向に移動する。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体は、外側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する。
【0026】
いくつかの実施形態では、前述の方法は、内側の細長い管状体に対して外側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、前述の方法は、外側の細長い管状体に対して内側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前述のパターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前述のパターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している。
【0028】
いくつかの実施形態では、対になった開口部の面積は、最大で80mm2である。
【0029】
いくつかの実施形態では、流体は、複数の細胞を含む。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、軟骨形成細胞、多能性細胞、多分化能性細胞、または軟骨形成前駆体を含む。いくつかの実施形態では、流体は、二重針の遠位端に位置した開口部を通って流れる。いくつかの実施形態では、二重針の遠位端に位置した開口部は、基質に刺入された後に大きさが大きくなる。いくつかの実施形態では、二重針は、基質に刺入された後に形状が変化する。
【0030】
いくつかの実施形態では、無細胞組織足場は、壊死組織同種移植片である。
【0031】
引用による組み込み
本明細書で言及されるすべての出版物、特許、および特許出願は、あたかも個々の出版物、特許、または特許出願がそれぞれ参照により具体的かつ個別に組み込まれるのと同じ程度にまで、参照により本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の態様の新規な特徴は、特に添付の特許請求の範囲に記述されている。本発明の特徴と利点をより良く理解するには、本発明の原理が用いられる例示的実施形態を記述する以下の詳細な説明と添付の図面とを参照されたい。
【
図2】温度の変化に伴って形状が変化する、本開示の形状記憶合金二重針の描写を示している。
【
図3】裂け目のある組織に細胞を送達するために使用される、本開示の二重針の例を図示している。
【
図4】本開示の二重針を用いて組織欠損部に無細胞基質を充填し、その後、基質を細胞化する過程の概略を示している。
【
図5】本開示の二重針のいくつかの構成を図示している。
【
図6】温度変化時に形状が変化する、遠位端にある拡張部材を備えた、本開示の二重針の描写を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書において、組織治癒を進めるのに役立つ機器および方法が提供されている。いくつかの実施形態では、本開示の機器および方法は、創傷部位で細胞外マトリックスの産生を進めることによって、創傷治癒過程を促進する。
【0034】
本明細書において、基質に、細胞などの物質を含有する流体を送達するのを促進する送達機器およびその使用方法が開示されている。本開示の実施を通して、緻密な基質に、基質全体にわたって細胞を正確に分布することができるように細胞を効果的に送達することができる。いくつかの実施形態では、機器および方法は、例えば、創傷組織、あるいは創傷部位に移植することができる無細胞組織足場に、細胞などの物質を送達する。
【0035】
損傷組織の細胞化は、治癒過程において重要な役割を果たす。創傷治癒過程中に、細胞は、創傷部位で集積し、細胞外マトリックス(ECM)を産生する。ECMの産生によって、創傷の閉鎖および修復を促進する。しかし、軟骨組織は、治癒性が悪いことを示している。組織損傷によって、軟骨にある主な細胞型、軟骨細胞を損傷または死滅させる可能性がある。軟骨は、脈管が限定的であることと、密度が高いことが組み合わさり、それによって、新たな軟骨細胞が損傷部位に到達する能力が限定されている。こうして、無細胞の創傷部位になり、最終的には、修復されない、ほつれた組織や断片化した組織が残る。よって、創傷部位を細胞化することで、創傷中でECMを産生し、創傷の閉鎖や修復を促進することができる。
【0036】
組織に細胞を送達する方法の1つは、細胞の直接注射によるものである。細胞を使用して創傷治癒過程を促進する方法のいくつかは、損傷部位の周りに細胞を均一に分布する。残念ながら、軟骨などの緻密な組織の損傷部位の周りに細胞を均一に分布することは困難な可能性があり、これは、組織の緻密さによって、細胞が注射された後にほぼ不動になる可能性があるからである。さらに、組織(例えば、軟骨)への圧縮力によって、注射された細胞は組織から一緒に押し出され、その結果、注射された細胞は組織内に安定させられることができない。
【0037】
損傷組織を細胞化する代わりの方法は、細胞化足場または細胞化組織移植片の移植によるものである。組織移植片または足場は、移植されると、周囲組織と一体化することで創傷治癒を促進することができる。組織移植片および足場と、天然の組織の一体化は、足場または移植片内に含有されている細胞によるECMの産生によって促進することができる。ECMを産生する細胞を足場または組織移植片全体にわたって均質に分布することは、多くの場合、組織と一体化するために有益であり、これは、そのような分布によって、足場または移植片の表面積全体における一体化を促進するからである。しかし、組織移植片および足場は、しばしば、意図した移植部位のものと一致した機械的特性を所有するように設計されている。よって、軟骨などの緻密な圧縮組織に存在する、細胞の送達における困難の多くは、このような組織への移植を意図した、組織移植片や足場にも存在している。
【0038】
本開示の方法または機器の使用によって、針から流体(および、流体に含まれる、細胞などの物質)を制御して吐出することができ、以上で言及した従来の注射法の欠点に対処している。前述の方法および機器は、1つ以上の側壁開口部を備えた二重針を利用することによって細胞の吐出制御を実現することができるが、この1つ以上の側壁開口部は、
図1に示されるように、同心に配置された内側の細長い管状体および外側の細長い管状体の長さに沿って位置していてもよい。二重針の管状体は、その長手方向軸を中心に回転してもよい。代わりに、あるいはそれに加えて、二重針の管状体は、軸方向に移動するように構成されてもよい。細長い管状体の相対移動を通して、側壁開口部の配置が制御可能であってもよい。内側の細長い管状体にある側壁開口部と、外側の細長い管状体にある側壁開口部との重なり合いによって、対になった開口部が生じ、二重針の内側内腔から外部環境までの流体連通をもたらす。二重針の対になった開口部は、針の長さに沿って複数の位置で同時に流体を吐出するために使用されることができる。さらに、対になった開口部を利用することによって、特定方向、あるいは特定位置(複数可)で流体を吐出するように制御することができる。本開示の二重針から出る流体の流れは、針への流体の流量を調整したり、細長い管状体の移動制御によって対になった開口部の大きさを調整したり、および、注射部位に対する対になった開口部の位置を調整したりすることによって制御可能であってもよい。
【0039】
本明細書に記載されている二重針を利用することによって、本開示の機器および方法は、組織損傷の長さに沿って、あるいは組織足場または移植片全体にわたって細胞を均質に、かつ制御して注射することができる。針の側面にある対になった開口部から細胞を出すことによって、針を抜いたり、流体に圧縮力を及ぼしたりするのに先立って、細胞を基質に一体化させることができる。このように細胞を送達することによって、細胞を、組織損傷部位の周り、あるいは足場または移植片全体にわたって均質に一体化させ、創傷治癒過程を補助することができる。
【0040】
I.二重針
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている二重針は、同心に配置された2つ以上の細長い管状体を含む。細長い管状体は、近位端から遠位端まで延在し、かつ、内腔を形成する円筒状の側壁を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ある細長い管状体が別の細長い管状体の内腔内に同心に配置されて、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体が形成される。内側の細長い管状体および外側の細長い管状体のそれぞれは、その円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部を含んでもよい。側壁開口部を備えた、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体は、互いに対して可動であるように構成されてもよい。いくつかの構成では、内側の細長い管状体にある側壁開口部と、外側の細長い管状体にある側壁開口部とは、重なり合って、対になった開口部を形成する。対になった開口部は、内側の細長い管状体の内腔から外部環境への流路をもたらすことができる。内側の細長い管状体および/または外側の細長い管状体の相対移動を制御することによって、二重針の使用者は、対になった開口部の数、大きさ、および/または位置を制御することによって二重針から出る流体の流れを制御することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体のうちの少なくとも1つに取り付けられた、遠位端に位置した穿刺部材を含む。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、二重針の遠位端に位置した開口部を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、二重針は、拡張部材を含む。拡張部材は、周辺環境の状態(例えば、温度、剛性、圧力など)に左右されて大きさが大きくなっても、あるいは小さくなってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、二重針および/または二重針の構成要素部品は、消毒または殺菌される。いくつかの事例では、二重針および/または二重針の構成要素部品は、例えば、化学薬品での洗浄、石鹸での洗浄、オートクレーブへの設置、加熱殺菌、紫外線での殺菌、あるいは前述のいずれかの組み合わせによって殺菌または消毒される。
【0044】
A.管状体
二重針は、第1の細長い管状体であって、第2の細長い管状体に対して可動である、第1の細長い管状体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、i)可動である内側の細長い管状体、および静止状態である外側の細長い管状体、ii)可動である外側の細長い管状体、および静止状態である内側の細長い管状体、あるいはiii)それぞれ独立して可動である、外側の細長い管状体および内側の細長い管状体を有する。細長い管状体は、例えば、軸方向(すなわち、管状体の近位端と遠位端の間の縦方向)、または径(すなわち、管状体の回転)方向で移動が生じる。いくつかの事例では、本明細書に開示されている二重針の細長い管状体の移動は、例えば、使用者またはコンピュータプログラムによって制御可能である。
【0045】
外側の細長い管状体に対する内側の細長い管状体の配置は、二重針の構造によって決定されてもよい。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体はそれぞれ独立して、管状体の近位端でカプラと連結されている。内側の細長い管状体および外側の細長い管状体はそれぞれ、独立したカプラと連結されてもよく、あるいは内側の細長い管状体および外側の細長い管状体は両方とも、共通のカプラと連結されてもよい。カプラは、例えば、管状体を流体注射システムと連結していてもよい。細長い管状体は、カプラの第1の端部に嵌合してもよく、一方、カプラの第2の端部は、流体注射システムの端部に嵌合する。カプラの非限定的な例には、針ハブ、ルアーロック継手(雄型または雌型)、フランジ、速結継手、およびねじ部品が含まれる。いくつかの実施形態では、細長い管状体は、ねじ継手またはルアーロック継手(雄型または雌型)を含み、カプラと連結するのを促進する。いくつかの実施形態では、細長い管状体の位置は、カプラを介して制御されてもよい。例えば、使用者またはコンピュータによってカプラの移動を制御することによって、内側の細長い管状体または外側の細長い管状体を軸方向または径方向に移動させてもよい。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体は、摺動嵌合部を有する。例えば、内側の細長い管状体は、管状体の円筒状の側壁の間の摩擦に起因して外側の細長い管状体内に留まってもよい。いくつかの実施形態では、摺動嵌合部と連結した管状体は、他方の管状体に対して移動してもよい。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体は、ベアリング(例えば、回転ベアリング、ボールベアリング、ローラベアリング、またはプレーンベアリング)を介して所定の位置に保持される。
【0046】
いくつかの実施形態では、二重針は、ニチノール(ニッケルとチタンの金属合金)などの形状記憶合金を含む金属材料でできている、内側の細長い管状体、外側の細長い管状体、あるいは内側の細長い管状体および外側の細長い管状体の両方を有する。ニチノールなどの形状記憶合金は、変態温度以下で変形することができ、変態温度を超えるまで加熱されると、元のあるいは変形前の形状に回復することができる。形状記憶合金で構成されている、あるいは形状記憶合金を含む管状体を備えた二重針(すなわち、形状記憶合金二重針)は、直針が容易に届かない領域に流体を送達するのを促進することができる。例えば、形状記憶合金二重針は、初期温度で、真っすぐの向きで基質に注射されてもよい。針を基質に刺入することによって、その後、針の温度変化を生じさせ、
図2に示されているように針を新たな形状に屈曲させる。針の形状変化によって、針が元の形状を維持していたら液体が送達されたであろう領域とは異なる基質の領域に液体を送達することができる。
【0047】
形状記憶合金二重針は、二重針が基質に刺入されると、基質に刺入される前の外側の細長い管状体または内側の細長い管状体の向きと比べて、基質に刺入された後に異なる角度に(例えば、180度、150度、130度、120度、90度、60度、30度、または10度)、あるいは異なる方向に(例えば、左、右など)屈曲するように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、形状記憶合金二重針は、0度から180度の間、0度から150度の間、0度から120度の間、0度から90度の間、0度から60度の間、0度から10度の間、10度から180度の間、10度から150度の間、10度から120度の間、10度から90度の間、10度から60度の間、10度から30度の間、30度から180度の間、30度から150度の間、30度から120度の間、30度から90度の間、30度から60度の間、60度から180度の間、60度から150度の間、60度から120度の間、60度から90度の間、90度から180度の間、90度から150度の間、90度から120度の間、120度から180度の間、120度から150度の間、または150度から180度の間屈曲するように設計される。いくつかの実施形態では、形状記憶合金二重針は、温度の上昇に応じて形状が変化する。いくつかの実施形態では、形状記憶合金二重針は、温度の低下に応じて形状が変化する。
【0048】
いくつかの実施形態では、二重針は、形状記憶合金を含む内側の細長い管状体を含み、これによって、可撓性の外側の細長い管状体の移動を引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、二重針は、形状記憶合金を含む外側の細長い管状体を含み、これによって、可撓性の内側の細長い管状体の移動を引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、二重針は、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体を含み、その両方が、ニチノールなどの形状記憶合金で構成されている。
【0049】
ニチノールの温度依存特性は、ニッケル・チタンの比率に影響を受けてもよい。いくつかの実施形態では、二重針は、ニッケル:チタンの比率が0.8:1から1.2:1の間であるニチノールを含む。いくつかの実施形態では、ニチノールのニッケル:チタンの比率は、約0.8、約0.81、約0.82、約0.83、約0.84、約0.85、約0.86、約0.87、約0.88、約0.89、約0.9、約0.91、約0.92、約0.93、約0.94、約0.95、約0.96、約0.97、約0.98、約0.99、約1、約1.01、約1.02、約1.03、約1.04、約1.05、約1.06、約1.07、約1.08、約1.09、約1.1、約1.11、約1.12、約1.13、約1.14、約1.15、約1.16、約1.17、約1.18、約1.19、または約1.2である。
【0050】
B.側壁開口部
いくつかの実施形態では、本開示の細長い管状体は、細長い管状体の円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部を含む。側壁開口部は、円筒状の側壁の全長に沿って、あるいは側壁の一部に沿って配置されてもよい。例えば、細長い管状体は、管状体の近位側半分に沿ってではなく、管状体の遠位側半分に沿って、遠位側半分に沿ってではなく、管状体の近位側半分に沿って、あるいは、側壁開口部を備えたものと備えていないものとが交互する領域などのパターンにしたがって、側壁開口部を有してもよい。
【0051】
側壁開口部の特徴のいくつかは、二重針からの流体の送達に影響を及ぼす。特徴には、例えば、側壁開口部の数、形状、大きさ、および配置が含まれる。
【0052】
いくつかの実施形態では、円筒状の側壁に沿って配置された側壁開口部はすべて、同じ形状のものであるが、さらなる実施形態では、円筒状の側壁は、複数の形状の側壁開口部を有する。側壁開口部の形状の非限定的な例には、楕円形状、円形状、三角形状、長方形状、およびティアドロップ形状が含まれる。
【0053】
側壁開口部は、円筒状の側壁に沿って様々な密度や配置で配置されてもよい。細長い管状体の円筒状の側壁に沿った側壁開口部の配置および/または密度は、本明細書に開示されている二重針からの流体の吐出に影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施形態では、本開示の側壁開口部は、円筒状の側壁に沿って無作為に配置されるが、他の実施形態では、側壁開口部は、パターンで配置される。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の側壁開口部は、直線状パターン、放射線状パターン、ジグザグ状パターン、市松模様状パターン、螺旋状パターン、フィボナッチ螺旋状、アルキメデス螺旋状、対数螺旋状などの数列パターン、あるいは前述のパターンのうちのいずれかの組み合わせで配置される。
【0054】
いくつかの実施形態では、側壁開口部が配置されるパターンは、円筒状の側壁の長さ全体にわたって変化する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の側壁開口部は、軟骨などの生体組織の細胞の配列を再現するように配置される。軟骨組織において、(軟骨と骨の間の接合部の真上に位置した)深部領域にある細胞は、互いに接するか、あるいはほぼ接して列に並んでおり、(深部領域の上に位置した)中部領域にある細胞は、無作為に、あるいはある程度無作為に並んでおり、そして、表面領域にある細胞は、深部領域にある細胞の列に対してほぼ垂直に並んでいる。さらなる実施形態では、本開示の側壁開口部は、筋肉、靭帯、腱、骨、皮膚、肝臓、腎臓、脾臓、肺、心臓、胃、または腸組織にある細胞の並びに似せるように配置される。
【0055】
いくつかの二重構成では、内側の細長い管状体にある側壁開口部の配置は、外側の細長い管状体にある側壁開口部の配置と異なっていても、あるいは同じでもよい。このような配置は、操作中に、対になった開口部の様々なパターンが可能になるように調整されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、二重針の内側の細長い管状体にある側壁開口部の数は、二重針の外側の細長い管状体にある側壁開口部の数と同じである。いくつかの実施形態では、二重針の内側の細長い管状体にある側壁開口部の数は、二重針の外側の細長い管状体にある側壁開口部の数と異なる。
【0057】
いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、50、75、100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、または1,000の側壁開口部を有する。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、または少なくとも1,000の側壁開口部を有する。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体は、最大1、最大2、最大3、最大4、最大5、最大6、最大7、最大8、最大9、最大10、最大11、最大12、最大13、最大14、最大15、最大16、最大17、最大18、最大19、最大20、最大21、最大22、最大23、最大24、最大25、最大50、最大75、最大100、最大125、最大150、最大200、最大250、最大300、最大350、最大400、最大450、最大500、最大600、最大700、最大800、最大900、または最大1,000の側壁開口部を有する。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体は、1から1,000の間、1から500の間、1から250の間、1から100の間、1から50の間、1から25の間、25から1,000の間、25から500の間、25から250の間、25から100の間、25から50の間、50から1,000の間、50から500の間、50から250の間、50から100の間、100から1,000の間、100から500の間、100から250の間、250から1,000の間、250から500の間、または500から1,000の間の側壁開口部を有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、50、75、100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、または1,000の側壁開口部を有する。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、または少なくとも1,000の側壁開口部を有する。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体は、最大1、最大2、最大3、最大4、最大5、最大6、最大7、最大8、最大9、最大10、最大11、最大12、最大13、最大14、最大15、最大16、最大17、最大18、最大19、最大20、最大21、最大22、最大23、最大24、最大25、最大50、最大75、最大100、最大125、最大150、最大200、最大250、最大300、最大350、最大400、最大450、最大500、最大600、最大700、最大800、最大900、または最大1,000の側壁開口部を有する。いくつかの実施形態では、外側の細長い管状体は、1から1,000の間、1から500の間、1から250の間、1から100の間、1から50の間、1から25の間、25から1,000の間、25から500の間、25から250の間、25から100の間、25から50の間、50から1,000の間、50から500の間、50から250の間、50から100の間、100から1,000の間、100から500の間、100から250の間、250から1,000の間、250から500の間、または500から1,000の間の側壁開口部を有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、円筒状の側壁に沿って配置された側壁開口部はすべて、同じ大きさであるが、さらなる実施形態では、円筒状の側壁は、複数の大きさの開口部を有する。側壁開口部の大きさは、様々な設計考慮事項に基づいて選択されてもよい。例えば、側壁開口部の大きさは、二重針から出る細胞の流量を制限するのに十分なほど小さいが、細胞が開口部を通って流れる上で細胞が機械的な力にさらされるのを最小限にするのに十分なほど大きいように選択されてもよい。場合によっては、側壁開口部は、細胞を含む、関心対象の物質を通過させるのに十分なほど大きいが、異物などの他の物質が通過するのを防止するのに十分なほど小さい。側壁開口部の大きさは、細長い管状体間で同じでもよく、あるいは変わってもよい。例えば、内側の細長い管状体の側壁開口部は、外側の細長い管状体の側壁開口部と異なる大きさを有してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示の側壁開口部の面積は、0.1mm2から80mm2である。いくつかの実施形態では、本開示の側壁開口部の面積は、0.1mm2から0.5mm2、0.1mm2から1mm2、0.1mm2から5mm2、0.1mm2から10mm2、0.1mm2から20mm2、0.1mm2から30mm2、0.1mm2から40mm2、0.1mm2から50mm2、0.1mm2から60mm2、0.1mm2から70mm2、0.1mm2から80mm2、0.5mm2から1mm2、0.5mm2から5mm2、0.5mm2から10mm2、0.5mm2から20mm2、0.5mm2から30mm2、0.5mm2から40mm2、0.5mm2から50mm2、0.5mm2から60mm2、0.5mm2から70mm2、0.5mm2から80mm2、1mm2から5mm2、1mm2から10mm2、1mm2から20mm2、1mm2から30mm2、1mm2から40mm2、1mm2から50mm2、1mm2から60mm2、1mm2から70mm2、1mm2から80mm2、5mm2から10mm2、5mm2から20mm2、5mm2から30mm2、5mm2から40mm2、5mm2から50mm2、5mm2から60mm2、5mm2から70mm2、5mm2から80mm2、10mm2から20mm2、10mm2から30mm2、10mm2から40mm2、10mm2から50mm2、10mm2から60mm2、10mm2から70mm2、10mm2から80mm2、20mm2から30mm2、20mm2から40mm2、20mm2から50mm2、20mm2から60mm2、20mm2から70mm2、20mm2から802mm、30mm2から402mm、30mm2から50mm2、30mm2から60mm2、30mm2から70mm2、30mm2から80mm2、40mm2から50mm2、40mm2から60mm2、40mm2から70mm2、40mm2から80mm2、50mm2から60mm2、50mm2から70mm2、50mm2から80mm2、60mm2から70mm2、60mm2から80mm2、または70mm2から80mm2である。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示の側壁開口部の面積は、0.1mm2、0.5mm2、1mm2、5mm2、10mm2、20mm2、30mm2、40mm2、50mm2、60mm2、70mm2、または80mm2である。いくつかの実施形態では、本開示の側壁開口部の面積は、少なくとも0.1mm2、少なくとも0.5mm2、少なくとも1mm2、少なくとも5mm2、少なくとも10mm2、少なくとも20mm2、少なくとも30mm2、少なくとも40mm2、少なくとも50mm2、少なくとも60mm2、または少なくとも70mm2である。いくつかの実施形態では、本開示の側壁開口部の面積は、最大0.5mm2、最大1mm2、最大5mm2、最大10mm2、最大20mm2、最大30mm2、最大40mm2、最大50mm2、最大60mm2、最大70mm2、または最大80mm2である。
【0062】
C.対になった開口部
いくつかの実施形態では、本開示の二重針の内側の細長い管状体および外側の細長い管状体は、可動であり、それによって、内側の細長い管状体にある側壁開口部と、外側の細長い管状体にある側壁開口部とが重なり合って、対になった開口部を形成する構成を形成する。形成された対になった開口部の数、大きさ、および位置によって、例えば、本開示の二重針から出る流体および/または物質(例えば、細胞)の流れを制御してもよい。いくつかの実施形態では、対になった開口部の数、大きさ、および位置は、内側の細長い管状体の移動、外側の細長い管状体の移動、あるいは内側の細長い管状体および外側の細長い管状体の両方の移動を介して制御される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている二重針は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、50、75、100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、または1,000の対になった開口部を有するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている二重針は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、または少なくとも1,000の対になった開口部を有するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている二重針は、最大1、最大2、最大3、最大4、最大5、最大6、最大7、最大8、最大9、最大10、最大11、最大12、最大13、最大14、最大15、最大16、最大17、最大18、最大19、最大20、最大21、最大22、最大23、最大24、最大25、最大50、最大75、最大100、最大125、最大150、最大200、最大250、最大300、最大350、最大400、最大450、最大500、最大600、最大700、最大800、最大900、または最大1,000の対になった開口部を有するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている二重針は、1から1,000の間、1から500の間、1から250の間、1から100の間、1から50の間、1から25の間、25から1,000の間、25から500の間、25から250の間、25から100の間、25から50の間、50から1,000の間、50から500の間、50から250の間、50から100の間、100から1,000の間、100から500の間、100から250の間、250から1,000の間、250から500の間、または500から1,000の間の対になった開口部を有するように構成されてもよい。
【0063】
対になった開口部の面積は、多くの場合、側壁開口部の大きさ、形状、および配置の関数である。対になった開口部を形成する側壁開口部は、同じ、あるいは異なる大きさであってもよい。対になった開口部の面積は概して、最も小さな構成要素の側壁開口部の面積と同じくらいの大きさがあってもよい。いくつかの実施形態では、本開示の対になった開口部の面積は、0.1mm2から80mm2である。いくつかの実施形態では、本開示の対になった開口部の面積は、0.1mm2から0.5mm2、0.1mm2から1mm2、0.1mm2から5mm2、0.1mm2から10mm2、0.1mm2から20mm2、0.1mm2から30mm2、0.1mm2から40mm2、0.1mm2から50mm2、0.1mm2から60mm2、0.1mm2から70mm2、0.1mm2から80mm2、0.5mm2から1mm2、0.5mm2から5mm2、0.5mm2から10mm2、0.5mm2から20mm2、0.5mm2から30mm2、0.5mm2から40mm2、0.5mm2から50mm2、0.5mm2から60mm2、0.5mm2から70mm2、0.5mm2から80mm2、1mm2から5mm2、1mm2から10mm2、1mm2から20mm2、1mm2から30mm2、1mm2から40mm2、1mm2から50mm2、1mm2から60mm2、1mm2から70mm2、1mm2から80mm2、5mm2から10mm2、5mm2から20mm2、5mm2から30mm2、5mm2から40mm2、5mm2から50mm2、5mm2から60mm2、5mm2から70mm2、5mm2から80mm2、10mm2から20mm2、10mm2から30mm2、10mm2から40mm2、10mm2から50mm2、10mm2から60mm2、10mm2から70mm2、10mm2から80mm2、20mm2から30mm2、20mm2から40mm2、20mm2から50mm2、20mm2から60mm2、20mm2から70mm2、20mm2から802mm、30mm2から402mm、30mm2から50mm2、30mm2から60mm2、30mm2から70mm2、30mm2から80mm2、40mm2から50mm2、40mm2から60mm2、40mm2から70mm2、40mm2から80mm2、50mm2から60mm2、50mm2から70mm2、50mm2から80mm2、60mm2から70mm2、60mm2から80mm2、または70mm2から80mm2である。いくつかの実施形態では、本開示の対になった開口部の面積は、0.1mm2、0.5mm2、1mm2、5mm2、10mm2、20mm2、30mm2、40mm2、50mm2、60mm2、70mm2、または80mm2である。いくつかの実施形態では、本開示の対になった開口部の面積は、少なくとも0.1mm2、少なくとも0.5mm2、少なくとも1mm2、少なくとも5mm2、少なくとも10mm2、少なくとも20mm2、少なくとも30mm2、少なくとも40mm2、少なくとも50mm2、少なくとも60mm2、または少なくとも70mm2である。いくつかの実施形態では、本開示の対になった開口部の面積は、最大0.5mm2、最大1mm2、最大5mm2、最大10mm2、最大20mm2、最大30mm2、最大40mm2、最大50mm2、最大60mm2、最大70mm2、または最大80mm2である。
【0064】
D.拡張部材
いくつかの実施形態では、二重針は、拡張部材を含む。拡張部材は、周辺環境の状態(例えば、温度、剛性、圧力など)に左右されて大きさが大きくなっても、あるいは小さくなってもよい。例えば、拡張部材は、組織への注射後に温度変化を経て拡張し、流体を注射できる容積の増加をもたらしてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の拡張部材は、ニチノールなどの形状記憶合金形で構成されているか、あるいは形状記憶合金を含む。いくつかの実施形態では、内側の細長い管状体、外側の細長い管状体、あるいは内側の細長い管状体および外側の細長い管状体の両方は、ニチノールなどの形状記憶合金形を含む金属材料で構成されているか、あるいは金属材料を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、拡張部材は、本明細書に開示されている二重針の遠位端に位置しているか、あるいはそれに隣接している。いくつかの実施形態では、ニチノールの比率は、0.8:1から1.2:1の間である。いくつかの実施形態では、ニチノールのニッケル・チタンの比率は、約0.8、約0.81、約0.82、約0.83、約0.84、約0.85、約0.86、約0.87、約0.88、約0.89、約0.9、約0.91、約0.92、約0.93、約0.94、約0.95、約0.96、約0.97、約0.98、約0.99、約1、約1.01、約1.02、約1.03、約1.04、約1.05、約1.06、約1.07、約1.08、約1.09、約1.1、約1.11、約1.12、約1.13、約1.14、約1.15、約1.16、約1.17、約1.18、約1.19、または約1.2である。
【0066】
E.針の寸法
管状体の設計考慮事項:二重針は、様々な寸法の内側の細長い管状体および外側の細長い管状体を含んでもよく、これには、管状体の長さおよび内腔の直径が含まれてもよい。二重針の寸法は、例えば、針の機械的強度、意図した基質の表面剛性、意図した注射部位の位置、注射流体の組成物、および、意図した基質の識別情報(例えば、生体組織)を含む設計考慮事項に基づいて選択されてもよい。内側の細長い管状体は、外側の細長い管状体の内側に嵌合するように、外側の細長い管状体よりも小さい直径を有する。内側の細長い管状体および外側の細長い管状体は、同じ長さのもの、あるいは異なる長さのものであってもよい。二重針の内側の細長い管状体は、二重針の外側の細長い管状体よりも長くても、あるいは短くてもよい。
【0067】
内部の管状体の直径:いくつかの事例では、内側の細長い管状体の内腔の直径は、バーミンガムゲージ法を使用して表される。いくつかの実施形態では、二重針は、内腔の直径が7ゲージ、8ゲージ、9ゲージ、10ゲージ、11ゲージ、12ゲージ、13ゲージ、14ゲージ、15ゲージ、16ゲージ、17ゲージ、18ゲージ、19ゲージ、20ゲージ、21ゲージ、22ゲージ、22sゲージ、23ゲージ、24ゲージ、25ゲージ、26ゲージ、26sゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ、30ゲージ、31ゲージ、32ゲージ、または33ゲージである、内側の細長い管状体を有する。
【0068】
いくつかの事例では、細長い管状体によって形成された内腔の直径は、メートル法によって表される。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、内腔の直径が0.1mmから400mmの間である、内側の細長い管状体を有する。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、内腔の直径が0.1mmから0.5mmの間、0.1mmから1mmの間、0.1mmから10mmの間、0.1mmから20mmの間、0.1mmから30mmの間、0.1mmから40mmの間、0.1mmから50mmの間、0.1mmから100mmの間、0.1mmから200mmの間、0.1mmから300mmの間、0.1mmから400mmの間、0.5mmから1mmの間、0.5mmから10mmの間、0.5mmから20mmの間、0.5mmから30mmの間、0.5mmから40mmの間、0.5mmから50mmの間、0.5mmから100mmの間、0.5mmから200mmの間、0.5mmから300mmの間、0.5mmから400mmの間、1mmから10mmの間、1mmから20mmの間、1mmから30mmの間、1mmから40mmの間、1mmから50mmの間、1mmから100mmの間、1mmから200mmの間、1mmから300mmの間、1mmから400mmの間、10mmから20mmの間、10mmから30mmの間、10mmから40mmの間、10mmから50mmの間、10mmから100mmの間、10mmから200mmの間、10mmから300mmの間、10mmから400mmの間、20mmから30mmの間、20mmから40mmの間、20mmから50mmの間、20mmから100mmの間、20mmから200mmの間、20mmから300mmの間、20mmから400mmの間、30mmから40mmの間、30mmから50mmの間、30mmから100mmの間、30mmから200mmの間、30mmから300mmの間、30mmから400mmの間、40mmから50mmの間、40mmから100mmの間、40mmから200mmの間、40mmから300mmの間、40mmから400mmの間、50mmから100mmの間、50mmから200mmの間、50mmから300mmの間、50mmから400mmの間、100mmから200mmの間、100mmから300mmの間、100mmから400mmの間、200mmから300mmの間、200mmから400mmの間、または300mmから400mmの間である、内側の細長い管状体を有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、二重針は、内腔の直径が0.1mm、0.5mm、1mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、100mm、200mm、300mm、または400mmである、内側の細長い管状体を有する。いくつかの実施形態では、二重針は、内腔の直径が少なくとも0.1mm、少なくとも0.5mm、少なくとも1mm、少なくとも10mm、少なくとも20mm、少なくとも30mm、少なくとも40mm、少なくとも50mm、少なくとも100mm、少なくとも200mm、または少なくとも300mmである、内側の細長い管状体を有する。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、内腔の直径が最大0.5mm、最大1mm、最大10mm、最大20mm、最大30mm、最大40mm、最大50mm、最大100mm、最大200mm、最大300mm、または最大400mmである、内側の細長い管状体を有する。
【0070】
内側の管状体の長さ:いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、長さが0.5cmから200cmである、内側の細長い管状体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、長さが0.5cmから1cm、0.5cmから5cm、0.5cmから10cm、0.5cmから20cm、0.5cmから40cm、0.5cmから60cm、0.5cmから80cm、0.5cmから100cm、0.5cmから150cm、0.5cmから200cm、1cmから5cm、1cmから10cm、1cmから20cm、1cmから40cm、1cmから60cm、1cmから80cm、1cmから100cm、1cmから150cm、1cmから200cm、5cmから10cm、5cmから20cm、5cmから40cm、5cmから60cm、5cmから80cm、5cmから100cm、5cmから150cm、5cmから200cm、10cmから20cm、10cmから40cm、10cmから60cm、10cmから80cm、10cmから100cm、10cmから150cm、10cmから200cm、20cmから40cm、20cmから60cm、20cmから80cm、20cmから100cm、20cmから150cm、20cmから200cm、40cmから60cm、40cmから80cm、40cmから100cm、40cmから150cm、40cmから200cm、60cmから80cm、60cmから100cm、60cmから150cm、60cmから200cm、80cmから100cm、80cmから150cm、80cmから200cm、100cmから150cm、100cmから200cm、または150cmから200cmである、内側の細長い管状体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、長さが0.5cm、1cm、5cm、10cm、20cm、40cm、60cm、80cm、100cm、150cm、または200cmである、内側の細長い管状体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、長さが少なくとも0.5cm、少なくとも1cm、少なくとも5cm、少なくとも10cm、少なくとも20cm、少なくとも40cm、少なくとも60cm、少なくとも80cm、少なくとも100cm、または少なくとも150cmである、内側の細長い管状体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、長さが最大1cm、最大5cm、最大10cm、最大20cm、最大40cm、最大60cm、最大80cm、最大100cm、最大150cm、または最大200cmである、内側の細長い管状体を含む。
【0071】
外側の管状体の直径:いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、内腔の直径が8ゲージ、9ゲージ、10ゲージ、11ゲージ、12ゲージ、13ゲージ、14ゲージ、15ゲージ、16ゲージ、17ゲージ、18ゲージ、19ゲージ、20ゲージ、21ゲージ、22ゲージ、22sゲージ、23ゲージ、24ゲージ、25ゲージ、26ゲージ、26ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ、30ゲージ、31ゲージ、32ゲージ、33ゲージ、または34ゲージである、外側の細長い管状体を有する。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、内腔の直径が0.5mmから500mmである、外側の細長い管状体を有する。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、内腔の直径が0.5mmから1mm、0.5mmから10mm、0.5mmから20mm、0.5mmから30mm、0.5mmから40mm、0.5mmから50mm、0.5mmから100mm、0.5mmから200mm、0.5mmから300mm、0.5mmから400mm、0.5mmから500mm、1mmから10mm、1mmから20mm、1mmから30mm、1mmから40mm、1mmから50mm、1mmから100mm、1mmから200mm、1mmから300mm、1mmから400mm、1mmから500mm、10mmから20mm、10mmから30mm、10mmから40mm、10mmから50mm、10mmから100mm、10mmから200mm、10mmから300mm、10mmから400mm、10mmから500mm、20mmから30mm、20mmから40mm、20mmから50mm、20mmから100mm、20mmから200mm、20mmから300mm、20mmから400mm、20mmから500mm、30mmから40mm、30mmから50mm、30mmから100mm、30mmから200mm、30mmから300mm、30mmから400mm、30mmから500mm、40mmから50mm、40mmから100mm、40mmから200mm、40mmから300mm、40mmから400mm、40mmから500mm、50mmから100mm、50mmから200mm、50mmから300mm、50mmから400mm、50mmから500mm、100mmから200mm、100mmから300mm、100mmから400mm、100mmから500mm、200mmから300mm、200mmから400mm、200mmから500mm、300mmから400mm、300mmから500mm、または400mmから500mmである、内側の細長い管状体を有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、内腔の直径が0.5mm、1mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、100mm、200mm、300mm、400mm、または500mmである、外側の細長い管状体を有する。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、内腔の直径が少なくとも0.5mm、少なくとも1mm、少なくとも10mm、少なくとも20mm、少なくとも30mm、少なくとも40mm、少なくとも50mm、少なくとも100mm、少なくとも200mm、少なくとも300mm、または少なくとも400mmである、内側の細長い管状体を有する。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、直径が最大1mm、最大10mm、最大20mm、最大30mm、最大40mm、最大50mm、最大100mm、最大200mm、最大300mm、最大400mm、または最大500mmである、内側の細長い管状体を有する。
【0073】
外側の管状体の長さ:いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、長さが0.5cmから200cmである、外側の細長い管状体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、長さが0.5cmから1cm、0.5cmから5cm、0.5cmから10cm、0.5cmから20cm、0.5cmから40cm、0.5cmから60cm、0.5cmから80cm、0.5cmから100cm、0.5cmから150cm、0.5cmから200cm、1cmから5cm、1cmから10cm、1cmから20cm、1cmから40cm、1cmから60cm、1cmから80cm、1cmから100cm、1cmから150cm、1cmから200cm、5cmから10cm、5cmから20cm、5cmから40cm、5cmから60cm、5cmから80cm、5cmから100cm、5cmから150cm、5cmから200cm、10cmから20cm、10cmから40cm、10cmから60cm、10cmから80cm、10cmから100cm、10cmから150cm、10cmから200cm、20cmから40cm、20cmから60cm、20cmから80cm、20cmから100cm、20cmから150cm、20cmから200cm、40cmから60cm、40cmから80cm、40cmから100cm、40cmから150cm、40cmから200cm、60cmから80cm、60cmから100cm、60cmから150cm、60cmから200cm、80cmから100cm、80cmから150cm、80cmから200cm、100cmから150cm、100cmから200cm、または150cmから200cmである、外側の細長い管状体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、長さが0.5cm、1cm、5cm、10cm、20cm、40cm、60cm、80cm、100cm、150cm、または200cmである、外側の細長い管状体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、長さが少なくとも0.5cm、少なくとも1cm、少なくとも5cm、少なくとも10cm、少なくとも20cm、少なくとも40cm、少なくとも60cm、少なくとも80cm、少なくとも100cm、または少なくとも150cmである、外側の細長い管状体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、長さが最大1cm、最大5cm、最大10cm、最大20cm、最大40cm、最大60cm、最大80cm、最大100cm、最大150cm、または最大200cmである、外側の細長い管状体を含む。
【0074】
II.液体注射システム
本開示の二重針は、注射システムに内蔵されることができる。いくつかの事例では、この機器は、リザーバと流体連通していてもよい。流体の流れは、リザーバから二重針を通って基質へと向かってもよい。二重針は、リザーバに直接または間接的に連結されてもよい。例えば、注射される流体を含有しているリザーバは、パイプまたはチューブなどの管を連結することによって、本明細書に記載されている二重針と連結されてもよい。いくつかの実施形態では、二重針は、シリンジなどのリザーバに直接連結されてもよい。
【0075】
流体注射システムによって、例えば、二重針を通る流体の流量や、流体の送達位置を制御することができる。流体の流量は、例えば、リザーバから二重針への流体の流量を制御することによって調節することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている流体注射システムは、1つ以上の流れ調整要素(flow modulation component)を含んでもよい。流れ調整要素の非限定的な例には、ポンプ(例えば、空気圧ポンプまたは蠕動運動ポンプ)、真空、加圧チャンバ、ピストン、プランジャ、ならびに、ボールバルブ、バタフライバルブ、チョークバルブ、ダイアフラム、グローブバルブ、ゲートバルブ、ナイフバルブ、ニードルバルブ、ピンチバルブ、ピストンバルブ、プラグバルブ、ソレノイドバルブ、およびスプールバルブなどのバルブが含まれる。本明細書に開示されている流体注射システムおよび流れ調整要素は、手動で、または電子的に制御されてもよい。いくつかの実施形態では、流体の流れは、空気圧、または使用者によってプランジャに与えられる力によって駆動される。いくつかの実施形態では、流体注射システムまたは流れ調整要素は、1つ以上の流れ調整要素と通信状態であるコンピュータシステムによって制御される。
【0076】
さらに、流体注射システムは、1つ以上の細長い管状体の移動を介して、二重針を通る流量を調節してもよい。細長い管状体の移動によって、二重針に存在する対になった開口部の数および大きさを調整して、流量や、流体注射深さを制御することができる。細長い管状体の移動は、手動で、または電子的に制御されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の細長い管状体の移動は、1つ以上の細長い管状体と通信状態であるコンピュータシステムを介して制御されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の細長い管状体の移動は、細長い管状体と連結したハンドルを介して手動で制御されてもよい。細長い管状体と連結したハンドルによって、例えば、管状体の軸方向または径方向の移動を手動で制御することができてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、流体注射システムは、注射される物質(注射物質)に対する二重針の位置を制御することができる。例えば、流体注射システムは、二重針のX、Y、またはZ(注射深さ)方向の移動を制御することができる。いくつかの実施形態では、コンピュータは、注射物質に対する二重針の移動を制御する。
【0078】
III.使用方法
A.損傷組織の修復
本明細書に開示されている機器およびシステムは、基質に、流体や粒子を含む物質を導入するために使用することができる。いくつかの実施形態では、物質は、細胞を含む。物質の例には、生体組織および組織移植片が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの事例では、本明細書に開示されている機器およびシステムは、損傷組織の修復を補助する方法において使用することができる。いくつかの事例では、前述の方法は、基質に細胞を導入する工程を含む。例えば、前述の機器およびシステムは、軟骨にある主な細胞型、軟骨細胞を用いて、軟骨の細胞化を促進することによって、軟骨組織の治癒を促進することができる。損傷、疾患、年齢、あるいは他の要因に起因して消失した軟骨細胞は、無血管であるという軟骨の性質に起因して、多くの場合、生細胞と取り替えられない。さらに、細胞は、緻密な軟骨を通って遊走するのに困難を有する。よって、細胞死によって、軟骨組織は虚弱になり、断片化したり、ほつれたりし始める。軟骨組織を再細胞化することで、組織修復過程を補助する。
【0079】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、
図3に示されているように組織の裂け目または欠損部の縁の周りに細胞を注射することによって、軟骨組織を直接再細胞化する。いくつかの実施形態では、
図4に示されているように、本開示の方法を用いて組織の欠損部に基質(例えば、組織移植片)を移植して、その後、細胞化する。本開示の方法を用いて注射する組織移植片は、例えば、同種異系組織移植片(同種移植片)または自己組織移植片であってもよい。自己組織移植片の利点として、免疫原性の懸念を低減することが挙げられるが、同種異系組織移植片は、利用可能性がより広いという利点を備えている。いくつかの実施形態では、基質は、細胞を注射され、その後、対象に移植される。本明細書に開示されている方法は、対象に移植する工程に先立って、注射される基質に細胞を培養する工程またはこれを増加する工程も含んでもよい。いくつかの実施形態では、脱細胞化同種異系移植片などの基質は、本開示の方法を介して細胞を注射される前に組織の欠損部に移植される。いくつかの実施形態では、脱細胞化同種異系移植片は、対象に移植されるのに先立って照射および/または殺菌されてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、同種異形移植片は、本明細書に開示されている二重針を使用して注射されるのに先立って脱細胞化される。同種異形移植片が脱細胞化されることによって、免疫原性を低減することができる。移植される脱細胞化同種異系移植片は、細胞を注射されることによって、移植片の取り込みを促進し、治癒を促すことができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、基質に流体を注射することによって組織修復を補助するが、この流体は、細胞、成長因子、接着分子、細胞外マトリックス(ECM)成分、合成高分子、天然高分子、生化学的因子、タンパク質、酵素、治療剤、架橋剤、光重合開始剤、添加剤、あるいはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、基質によって及ぼされる、注射流体に対する圧縮力の影響を軽減する。二重針の側壁に沿って、対になった開口部を通して流体を送達することによって、針の移動や抜き取りを必要とすることなく、基質の複数の位置で注射が行われることができる。複数の位置で注射される間、基質内に針が存在することによって、基質によって及ぼされる、流体に対する圧縮力の影響を軽減することができる。圧縮力の影響を軽減することによって、本開示の方法は、圧縮力によって流体が基質から放出されるのを防止することによって、注射流体を基質に送達するのを促進することができる。圧縮力を軽減することによって、細胞を基質に効果的に送達するのを促進することができる。
【0082】
B.流体の流れの制御
本明細書に開示されている方法は、本開示の二重針を通る流体の流れを制御する工程を含んでもよい。例えば、使用者は、二重針を通る流体の流量や、流体が針から出る位置を制御することができる。二重針を通る流体の流れを制御する工程は、細長い管状体の構成を変化させることによって調整することができる。前述の方法は、内側の細長い管状体に対する外側の細長い管状体の位置、あるいはその逆を制御する工程を含んでもよい。いくつかの態様では、前述の方法は、一方の細長い管状体を、別の細長い管状体に対して移動させることによって、細長い管状体の位置を制御する工程を含む。一方の細長い管状体を、別のものに対して相対移動させることによって、二重針の円筒状の側壁に沿って位置した対になった開口部の数、大きさ、および配置を変化させることができる。この一例が、
図5に示されている。対になった開口部の数、大きさ、および配置はそれぞれ、二重針の対になった開口部を通る流体の流量や、基質内の流体注射位置に影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施形態では、上述の方法は、二重針の内側の細長い管状体、外側の細長い管状体、あるいは内側の細長い管状体および外側の細長い管状体の両方を移動する工程を含む。本開示の方法は、内側の細長い管状体および/または外側の細長い管状体を軸方向に移動する工程を含んでもよい。さらに、または代わりに、上述の方法は、内側の細長い管状体および/または外側の細長い管状体を、内側の細長い管状体または外側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する工程(すなわち、径方向の移動)を含んでもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、細長い管状体を移動する工程は、コンピュータを含む流動注射システムによって制御される。例えば、使用者は、注射に使用される対になった開口部の配置を入力することができる。その後、使用者は、所望の基質に二重針を配置し、注射を進めるようにコンピュータに命令することができる。流動注射システムは、アクチュエータおよびポンプを通して二重針の様々な部分および機能を制御することができる。その後、流動注射システムは、二重針の細長い管状体の移動を調節して、対になった開口部の配置を実現することができる。例えば、アクチュエータは、二重針の内側の細長い管状体、外側の細長い管状体、あるいは内側の細長い管状体および外側の細長い管状体の両方の位置ならびに軸方向または径方向の移動を制御することができる。対になった開口部の配置によって、二重針を通る流体の流量ならびに基質内の流体注射位置を指示することができる。いくつかの実施形態では、流体は、二重針の遠位端にある開口部を通って流れる。
【0084】
いくつかの実施形態では、二重針を通る流体の流れは、本開示の流体注射システムを介して制御される。流体の流量は、本明細書に開示されている流れ調整要素を制御することによって調節することができる。例えば、使用者は、リザーバから二重針に流体を動かすプランジャに及ぼされる力量を増加することによって、二重針を通る流量を増加することができる。いくつかの実施形態では、流体の流量は、流体注射システムに存在する1つ以上のバルブの構成を変更することによって調整される。いくつかの実施形態では、流体の流量は、流体注射システムに存在するポンプによって制御される。使用者は、本明細書に開示されている流体注射システムおよび流れ調整要素を手動で、または電子的に制御することができる。例えば、流体注射システムを通る流量は、コンピュータシステムによって検出して自動的に調節することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている方法は、複数のパルスで二重針から流体を吐出する工程を含む。いくつかの事例では、パルスはそれぞれ、基質に同じまたは異なる細胞型を送達することができる。例えば、針は、基質に刺入されることができ、関心対象の第1の対になった開口部は、内側の細長い管状体または外側の細長い管状体が移動されることによって形成されることができる。その後、第1の細胞型を含む流体は、針を通って吐出され、基質に入れられることができる。いくつかの事例では、第2の対になった開口部が形成されるか、および/または、第1の対になった開口部が閉じられることができる。第2の対になった開口部は、第1の対になった開口部と異なる位置にあってもよい。場合によっては、第1の細胞型を含む第1の流体は、第2の対になった開口部を通って吐出されることができる。代わりに、あるいはそれに加えて、第2の細胞型は、第2の対になった開口部を通って基質に吐出されることができる。いくつかの事例では、本開示の方法によって複数の対になった開口部を通して1つ以上の流体を流すことによって、基質にある複数の位置に細胞を送達し、針が基質を刺通する回数を減少させることができる。いくつかの事例では、対になった開口部を開閉すると、基質に対する二重針の位置を変化させることができる。例えば、注射部位内の針の深さを変化させて、基質の異なる位置で流体を吐出させながら、対になった開口部を開閉することができる。さらに、または代わりに、対になった開口部の配置を変化させることによって、基質から針を抜く必要なく、針の周辺の周りの異なる位置に流体を吐出することができる。いくつかの事例では、対になった開口部を開閉しても、基質に対する二重針の位置は変化しない。
【0086】
前段落の過程は、繰り返されてもよい。いくつかの事例では、前述の過程が繰り返される度に異なる細胞型が注射される。いくつかの事例では、前述の過程が繰り返される度に同じ細胞型が注射される。例えば、前述の過程は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上の回数繰り返され、繰り返しの度に同じまたは異なる流体または細胞型が注射されてもよい。いくつかの事例では、基質に流体を吐出するのに先立って、針が基質から抜かれ、基質の異なる位置に挿入されてもよい。
【0087】
C.形状記憶合金の利用
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、流体を送達するのを促進するために、拡張部材を含む二重針を用いて基質に注射する工程を含む。例えば、二重針は、初期温度で拡張部材を用いて基質に刺入してもよい。基質に針を刺入することによって、温度変化に起因して拡張部材の大きさが大きくなるように、拡張部材の初期温度を設定してもよい。いくつかの例では、上述の方法は、基質の拡張を含む。基質の拡張は、
図6に見られるように拡張部材の大きさが大きくなるのに起因してもよい。基質を拡張することによって、基質からの圧縮力の影響を軽減することができ、二重針を介して流体を送達するのを促進する。外側の管状体にある拡張部材の拡張は、外側の部材と基質との間の摩擦係数を増加させるために使用することもできる。いくつかの実施形態では、上述の方法は、基質に刺入中または刺入後に拡張部材の温度を上昇させる工程(例えば、予め定めた閾値変形温度以上)を含む。いくつかの実施形態では、上述の方法は、基質への刺入に伴って拡張部材の温度を低下させる工程(例えば、予め定めた閾値変形温度以下)を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、形状記憶合金を含む金属材料でできている、内側の細長い管状体、外側の細長い管状体、あるいは内側の細長い管状体および外側の細長い管状体の両方を備えた二重針を利用して、直針では容易に届かない基質内の位置に流体を送達する。例えば、形状記憶合金二重針は、初期温度で、真っすぐの向きで基質に刺入されてもよい。針が基質に刺入されることによって、針の温度変化を引き起こし、
図2に示されているように新たな形状に屈曲させることができる。針の形状変化によって、針が元の形状を維持していたら液体が送達されたであろう領域とは異なる基質の領域に液体を送達することができる。代わりにおよび/またはさらに、針の形状変化によって、基質の様々な位置に流体を制御して送達することができる。例えば、上述の方法は、基質内の異なる位置に細胞を注射するために、管状体が基質を穿通すると、外側の細長い管状体または内側の細長い管状体の向きに対して異なる方向(例えば、左、右など)または角度(例えば、90度、60度、30度、または10度)で針を屈曲する工程を含んでもよい。いくつかの事例では、上述の方法は、針が予め定められた角度(例えば、元の形状から90度)で屈曲し、基質に刺入されると、元の形状に戻ることができるように、針を変形する工程を含む。いくつかの実施形態では、流体は、基質内の第1の位置に注射され(例えば、90度屈曲した針によって指される)、そして、他の位置にさらに注射されることができる(例えば、針が元の形状に戻るに伴って、針が60度、30度、または10度の屈曲を有する際に注射される)。いくつかの実施形態では、流体は、基質の第1の位置に注射され、そして、針が元の形状に戻るに伴って、針が0度から180度の間、0度から150度の間、0度から120度の間、0度から90度の間、0度から60度の間、0度から10度の間、10度から180度の間、10度から150度の間、10度から120度の間、10度から90度の間、10度から60度の間、10度から30度の間、30度から180度の間、30度から150度の間、30度から120度の間、30度から90度の間、30度から60度の間、60度から180度の間、60度から150度の間、60度から120度の間、60度から90度の間、90度から180度の間、90度から150度の間、90度から120度の間、120度から180度の間、120度から150度の間、または150度から180度の間の屈曲を有する際に他の位置にさらに注射されることができる。いくつかの実施形態では、上述の方法は、形状変化を引き起こすために形状記憶合金針の温度の上昇を誘発する工程を含む。いくつかの実施形態では、上述の方法は、形状変化を引き起こすために形状記憶合金針の温度の低下を誘発する工程を含む。
【0089】
IV.注射流体の成分
いくつかの実施形態では、本開示の二重針は、生体組織などの基質に流体を注射するために使用される。いくつかの実施形態では、流体は、本開示の二重針に、二重針と流体連通しているリザーバを介して送達される。いくつかの非限定的な例では、本開示の二重針を介して注射される流体は、複数の細胞、成長因子、接着分子、細胞外マトリックス(ECM)成分、合成高分子、天然高分子、生化学的因子、タンパク質、酵素、治療剤、架橋剤、光重合開始剤、添加剤、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0090】
いくつかの例において本開示の二重針を介して基質に注射される細胞の非限定的な例には、軟骨形成細胞、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、軟骨形成前駆体、ケラチノサイト、毛根細胞、毛幹細胞、毛母細胞、外分泌腺分泌上皮細胞(exocrine secretory epithelial cell)、ホルモン分泌細胞、上皮細胞、神経細胞または感覚細胞、光受容細胞、筋細胞、細胞外マトリックス細胞、血液細胞、心血管細胞、内皮細胞、血管平滑筋細胞、腎臓細胞、膵細胞、免疫細胞、幹細胞、胚細胞、間質細胞(interstitial cell)、星細胞 肝細胞、消化管細胞、肺細胞、気管細胞、血管細胞、骨格筋細胞、心細胞、皮膚細胞、平滑筋細胞、結合組織細胞、角膜細胞、泌尿生殖器系細胞、乳房細胞、生殖細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、シュワン細胞、脂肪細胞、骨細胞、骨髄細胞、軟骨細胞、周皮細胞、中皮細胞、内分泌組織由来細胞、間質細胞(stromal cell)、前駆細胞(progenitor cell)、リンパ細胞、内胚葉由来細胞、外胚葉由来細胞、中胚葉由来細胞、周皮細胞、軟骨芽細胞、間葉系幹細胞、結合組織線維芽細胞、腱線維芽細胞、骨髄細網組織線維芽細胞、非上皮性線維芽細胞、周皮細胞、骨原性細胞、骨芽細胞、破骨細胞、関節軟骨細胞、幹細胞、前駆細胞、全能性細胞、多能性細胞、多分化能性細胞、および人工多能性幹細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、注射される細胞は、幹細胞、前駆細胞、全能性細胞、多能性細胞、多分化能性細胞、または人工多能性細胞に由来する。いくつかの実施形態では、本開示の二重針を介して注射される細胞は、遺伝子組み換えされている。いくつかの例では、注射される細胞は、互いに付着性の細胞の集合体として注射され、マイクロスフェロイドまたは細胞ペーストを形成する。いくつかの実施形態では、細胞を組み合わせたものが注射される。例えば、間葉系幹細胞と軟骨細胞の組み合わせ、あるいは間葉系幹細胞と骨芽細胞の組み合わせが注射されてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、本開示の流体の細胞密度は、約1細胞/pL、約10細胞/pL、約100細胞/pL、約1細胞/nL、約10細胞/nL、約100細胞/nL、約1細胞/μL、約10細胞/μL、約100細胞/μL、約1000細胞/μL、約10,000細胞/μL、約100,000細胞/μLである。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液の細胞密度は、約2×106細胞/mL、約3×106細胞/mL、約4×106細胞/mL、約5×106細胞/mL、約6×106細胞/mL、約7×106細胞/mL、約8×106細胞/mL、約9×106細胞/mL、約10×106細胞/mL、約15×106細胞/mL、約20×106細胞/mL、約25×106細胞/mL、約30×106細胞/mL、約35×106細胞/mL、約40×106細胞/mL、約45×106細胞/mL、または約50×106細胞/mLである。さらなる実施形態では、本開示の流体は、1種以上の細胞型を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の流体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、または20種の細胞型を含有する。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、20種を超える細胞型を含む。
【0092】
いくつかの例では、本開示の二重針を介して注射される細胞は、自己組織、同種異系組織、または異種異系ドナー組織から採取されたものか、それらの組織に由来するものか、あるいはそれらの組織から単離されたものである。いくつかの実施形態では、ドナー組織は、ヒト、サル、類人猿、ゴリラ、チンパンジー、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、ニワトリ、七面鳥、モルモット、ラット、またはマウスに由来する。いくつかの事例では、注射に先立って、細胞を得て、インビトロで培養する。いくつかの事例では、注射に先立って、細胞を得て、インビトロで分化させる。
【0093】
いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、成長因子を含む。いくつかの実施形態では、成長因子は、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、エンドセリン-1、血小板由来成長因子(PDGF)、GDF-1、GDF-5、GDF-9、およびGDF-8などの成長因子/分化因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、コロニー刺激因子(CSF)、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、神経膠細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、顆粒球コロニー形成刺激因子(g-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、成長分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝細胞癌由来成長因子(HDGF)、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、移動刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、神経成長因子(NGF)と他の神経栄養因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポイエチン(TPO)、形質転換増殖因子α(TGF-α)、形質転換増殖因子β(TGF-β)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤成長因子(P1GF)、ウシ胎児ソマトトロピン、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、およびIL-7などのインターロイキン(IL)、あるいは前述のいずれかの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、TGF-β1およびFGF2を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、注射される流体は、治療剤を含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗生物質および/または抗真菌剤から選択される。いくつかの実施形態では、抗生物質は、ペニシリン、ストレプトマイシン、アクチノマイシンD、アンピシリン、ブラストサイジン、カルベニシリン、セフォタキシム、ホスミドマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ポリミキシンB、あるいはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、抗真菌剤は、アムホテリシンB、ナイスタチン、ナタマイシン、あるいはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗炎症治療剤から選択される。いくつかの実施形態では、抗炎症治療剤は、非ステロイド性抗炎症治療剤である。いくつかの実施形態では、非ステロイド性抗炎症治療剤は、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤である。いくつかの実施形態では、COX阻害剤は、COX1阻害剤、COX2阻害剤、あるいはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、抗炎症治療剤は、ステロイドを含む。いくつかの実施形態では、ステロイドは、グルココルチコイドである。いくつかの実施形態では、グルココルチコイドは、デキサメタゾンである。
【0095】
V.注射基質
いくつかの実施形態において本開示の二重針を使用して注射される基質の非限定的な例には、アルギン酸足場、コラーゲン足場、ポリエチレングリコール足場またはシルク足場などの無細胞足場または細胞化足場、あるいは、整形外科組織、骨軟骨組織、軟骨組織、筋組織、結合組織、表皮組織、腸組織、神経組織、生殖組織、膵組織、眼組織、乳房組織、心組織、骨組織、靭帯、腱、肝組織、脾組織、および腎組織などの生体組織が含まれる。いくつかの実施形態では、前述の足場は、ヒドロゲル足場であるか、あるいはヒドロゲル足場を含む。いくつかの実施形態では、前述の足場は、繊維足場であるか、あるいは繊維足場を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている方法は、壊死組織を注射することを含む。例えば、本明細書に開示されている方法は、脱細胞化、殺菌、および/または照射した組織同種移植片を注射してもよい。同種移植片を殺菌、照射、および脱細胞化することによって、同種移植片を対象に移植したときの免疫応答を防止することができる。いくつかの実施形態では、本開示の二重針を用いて注射される組織は、ヒト、サル、類人猿、ゴリラ、チンパンジー、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、ニワトリ、七面鳥、モルモット、ラット、またはマウスから得られるものである。いくつかの例では、本明細書に開示されている方法を用いて注射される基質は、
図4に示されるように最初に組織の欠損部に移植される。代わりにおよび/またはさらに、本明細書に開示されている方法を用いて注射される基質は、続いて基質を組織の欠損部に移植するのに先立って、基質に注射されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている方法を用いて注射される基質は、欠損部を含有した組織である。
【0096】
例示的な実施形態
例示的な実施形態の中には、以下がある。
実施形態1)二重針であって、該二重針は、(a)近位端、(b)遠位端、ならびに、(c)同心に配置された第1の細長い管状体および第2の細長い管状体を含み、第1の細長い管状体および第2の細長い管状体は、(i)近位端と遠位端の間にある長手方向軸に沿って延在する、内腔を形成する円筒状の側壁、および、(ii)円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部を含み、複数の構成を形成するように、第2の細長い管状体は、第1の細長い管状体に対して可動であり、複数の構成のうちの少なくとも1つは、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つと、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つとの重なり合いによって形成された、対になった開口部を含む、二重針。
実施形態2)対になった開口部は、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つと、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つとによって形成される、実施形態1に記載の二重針。実施形態3)第2の細長い管状体は、第1の細長い管状体の内腔内に同心に配置される、実施形態1または2に記載の二重針。実施形態4)第1の細長い管状体の内腔の直径は、0.5mmから500mmである、実施形態3に記載の二重針。実施形態5)第2の細長い管状体の内腔の直径は、約0.1mmから約400mmである、実施形態3または4に記載の二重針。実施形態6)第1の細長い管状体に取り付けられた、遠位端に位置した穿刺部材をさらに含む、実施形態3~5のいずれか1つに記載の二重針。実施形態7)第2の細長い管状体に取り付けられた、遠位端に位置した穿刺部材をさらに含む、実施形態3~5のいずれか1つに記載の二重針。実施形態8)第1の細長い管状体は、第2の細長い管状体の内腔内に同心に配置される、実施形態1または2に記載の二重針。実施形態9)第1の細長い管状体の内腔の直径は、0.1mmから400mmである、実施形態8に記載の二重針。実施形態10)第2の細長い管状体の内腔の直径は、0.5mmから500mmである、実施形態8または9に記載の二重針。実施形態11)第1の細長い管状体に取り付けられた、遠位端に位置した穿刺部材をさらに含む、実施形態8~10のいずれか1つに記載の二重針。実施形態12)第2の細長い管状体に取り付けられた、遠位端に位置した穿刺部材をさらに含む、実施形態8~10のいずれか1つに記載の二重針。実施形態13)第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、実施形態1~12のいずれか1つに記載の二重針。実施形態14)第1の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前述のパターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、実施形態1~12のいずれか1つに記載の二重針。実施形態15)第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の二重針。実施形態16)第2の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前述のパターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、実施形態1~14のいずれか1つに記載の二重針。実施形態17)対になった開口部の面積は、最大で80mm2である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の二重針。実施形態18)第1の細長い管状体の長さは、0.5cmから200cmである、実施形態1~17のいずれか1つに記載の二重針。実施形態19)第2の細長い管状体の長さは、0.5cmから200cmである、実施形態1~18のいずれか1つに記載の二重針。実施形態20)第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つは、楕円形状、円形状、長方形状、三角形状、またはティアドロップ形状を有する、実施形態1~19のいずれか1つに記載の二重針。実施形態21)第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つは、楕円形状、円形状、長方形状、三角形状、またはティアドロップ形状を有する、実施形態1~20のいずれか1つに記載の二重針。実施形態22)第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つ、または第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つの面積は、0.1mm2から80mm2である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の二重針。実施形態23)遠位端に位置した開口部をさらに含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の二重針。実施形態24)二重針は、二重針の遠位端に位置した、あるいはそれに隣接した拡張部材をさらに含み、前述の拡張部材は、金属材料であり、金属材料は、形状記憶合金を含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の二重針。実施形態25)第1の細長い管状体の円筒状の側壁および第2の細長い管状体の円筒状の側壁は、金属材料であり、金属材料は、形状記憶合金を含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の二重針。実施形態26)形状記憶合金は、ニチノールである、実施形態24または25に記載の二重針。実施形態27)第2の細長い管状体は、軸方向に可動である、実施形態1~26のいずれか1つに記載の二重針。実施形態28)第2の細長い管状体は、第2の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転することができる、実施形態1~27のいずれか1つに記載の二重針。
実施形態29)基質に流体を注射する方法であって、該方法は、(a)基質に二重針を刺入する工程であって、二重針は、(I)近位端、(II)遠位端、ならび、(III)同心に配置された内側の細長い管状体および外側の細長い管状体を含み、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体は、(i)近位端と遠位端の間にある長手方向軸に沿って延在する、内腔を形成する円筒状の側壁、および、(ii)円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部を含み、複数の構成を形成するように、内側の細長い管状体または外側の細長い管状体のうちの少なくとも一方は、他方に対して可動であり、複数の構成のうちの少なくとも1つは、内側の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つと、外側の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つとの重なり合いによって形成された、対になった開口部を含む、刺入する工程と、(b)内側の細長い管状体の内腔に流体を流す工程であって、それによって、流体が、対になった開口部を通って基質内へと通過する、流す工程と、を含む、方法。
実施形態30)対になった開口部は、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つと、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つとによって形成される、実施形態29に記載の方法。実施形態31)内側の細長い管状体は、外側の細長い管状体に対して可動である、実施形態29または30に記載の方法。実施形態32)外側の細長い管状体に対して内側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む、実施形態31に記載の方法。実施形態33)内側の細長い管状体は、外側の細長い管状体に対して軸方向に移動する、実施形態31または32に記載の方法。実施形態34)内側の細長い管状体は、内側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する、実施形態31~33のいずれか1つに記載の方法。実施形態35)外側の細長い管状体は、内側の細長い管状体に対して可動である、実施形態29または30に記載の方法。実施形態36)内側の細長い管状体に対して外側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む、実施形態35に記載の方法。実施形態37)外側の細長い管状体は、内側の細長い管状体に対して軸方向に移動する、実施形態35または36に記載の方法。実施形態38)外側の細長い管状体は、外側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する、実施形態35~37のいずれか1つに記載の方法。実施形態39)内側の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、実施形態29~38のいずれか1つに記載の方法。実施形態40)内側の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前述のパターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、実施形態29~38のいずれか1つに記載の方法。実施形態41)外側の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、実施形態29~40のいずれか1つに記載の方法。実施形態42)外側の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前記パターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、実施形態29~40のいずれか1つに記載の方法。実施形態43)対になった開口部の面積は、最大で80mm2である、実施形態29~42のいずれか1つに記載の方法。実施形態44)流体は、複数の細胞を含む、実施形態29~43のいずれか1つに記載の方法。実施形態45)複数の細胞は、軟骨形成細胞、軟骨形成前駆体、多分化能性細胞、または多能性細胞を含む、実施形態44に記載の方法。実施形態46)流体は、二重針の遠位端に位置した開口部を通って流れる、実施形態29~45のいずれか1つに記載の方法。実施形態47)二重針の遠位端に位置した開口部は、基質に刺入された後に大きさが大きくなる、実施形態46に記載の方法。実施形態48)二重針は、基質に刺入された後に形状が変化する、実施形態29~47のいずれか1つに記載の方法。実施形態49)基質は、生物組織である、実施形態29~48のいずれか1つに記載の方法。実施形態50)生体組織は、ヒト組織、整形外科組織、軟骨、または壊死組織である、実施形態49に記載の方法。実施形態51)基質は、無細胞足場である、実施形態29~48のいずれか1つに記載の方法。
実施形態52)損傷組織を修復する方法であって、該方法は、(a)損傷組織に無細胞組織足場を移植する工程と、(b)無細胞組織足場に二重針を刺入する工程であって、二重針は、(I)近位端、(II)遠位端、ならび、(III)同心に配置された内側の細長い管状体および外側の細長い管状体を含み、内側の細長い管状体および外側の細長い管状体は、(i)近位端と遠位端の間にある長手方向軸に沿って延在する、内腔を形成する円筒状の側壁、および、(ii)円筒状の側壁に沿って配置された複数の側壁開口部を含み、複数の構成を形成するように、内側の細長い管状体または外側の細長い管状体のうちの少なくとも一方は、他方に対して可動であり、複数の構成のうちの少なくとも1つは、内側の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つと、外側の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの少なくとも1つとの重なり合いによって形成された、対になった開口部を含む、刺入する工程と、(c)内側の細長い管状体の内腔に流体を流す工程であって、それによって、流体が、対になった開口部を通って無細胞組織足場へと通過する、流す工程と、を含む、方法。
実施形態53)対になった開口部は、第1の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つと、第2の細長い管状体にある複数の側壁開口部のうちの1つとによって形成される、実施形態52に記載の方法。実施形態54)内側の細長い管状体は、外側の細長い管状体に対して可動である、実施形態52または53に記載の方法。実施形態55)外側の細長い管状体に対して内側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む、実施形態54に記載の方法。実施形態56)内側の細長い管状体は、外側の細長い管状体に対して軸方向に移動する、実施形態54または55に記載の方法。実施形態57)内側の細長い管状体は、内側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する、実施形態54~56のいずれか1つに記載の方法。実施形態58)外側の細長い管状体は、内側の細長い管状体に対して可動である、実施形態52~57のいずれか1つに記載の方法。実施形態59)内側の細長い管状体に対して外側の細長い管状体の位置を制御する工程をさらに含む、実施形態58に記載の方法。実施形態60)外側の細長い管状体は、内側の細長い管状体に対して軸方向に移動する、実施形態58または59に記載の方法。実施形態61)外側の細長い管状体は、外側の細長い管状体の長手方向軸を中心に回転する、実施形態58~60のいずれか1つに記載の方法。実施形態62)内側の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、実施形態52~61のいずれか1つに記載の方法。実施形態63)内側の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前記パターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、実施形態52~61のいずれか1つに記載の方法。実施形態64)外側の細長い管状体にある複数の側壁開口部は、ランダム状、直線状、螺旋状、放射線状、フィボナッチ螺旋状、対数螺旋状、アルキメデス螺旋状、ジグザグ状、または市松模様状のパターンで配置される、実施形態52~63のいずれか1つに記載の方法。実施形態65)外側の細長い管状体にある複数の開口部は、あるパターンで配置され、前記パターンは、生体組織の細胞の間隔を再現している、実施形態52~63のいずれか1つに記載の方法。実施形態66)対になった開口部の面積は、最大で80mm2である、実施形態52~65のいずれか1つに記載の方法。実施形態67)流体は、複数の細胞を含む、実施形態52~66のいずれか1つに記載の方法。実施形態68)複数の細胞は、軟骨形成細胞、多能性細胞、多分化能性細胞、または軟骨形成前駆体を含む、実施形態67に記載の方法。実施形態69)流体は、二重針の遠位端に位置した開口部を通って流れる、実施形態52~68のいずれか1つに記載の方法。実施形態70)二重針の遠位端に位置した開口部は、基質に刺入された後に大きさが大きくなる、実施形態69に記載の方法。実施形態71)二重針は、基質に刺入された後に形状が変化する、実施形態52~70のいずれか1つに記載の方法。実施形態72)無細胞組織足場は、壊死組織同種移植片である、実施形態52~71のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
定義
他に定義されていない限り、本明細書で使用されている技術分野の用語、表記、および他の技術用語または科学用語はすべて、特許請求される主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有することが意図されている。場合によっては、一般的に理解されている意味を有する用語を、明確化するために、および/または、参照を容易にするために本明細書に定義するが、本明細書にそのような定義を含めることが、当該技術分野において通常理解されているものに対して実質的な差異を表わすものと必ずしも解釈されるべきでない。
【0098】
本出願の全体を通して、様々な実施形態が範囲形式で提示されている場合がある。範囲形式で記載されているのは、単に利便性と簡潔さのためであって、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解される必要がある。したがって、範囲の記載は、その範囲内におけるすべての可能性がある部分的範囲とともに、個々の数値も具体的に開示されていると考慮されるべきである。例えば、1から6などの範囲の記載は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などの部分的範囲とともに、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6も具体的に開示されていると考慮されるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0099】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明確に示していない限り、複数の言及を含む。例えば、「試料(a sample)」という用語は、複数の試料を含み、その混合物も含む。
【0100】
本明細書で使用される場合、「約」という用語が付く数字は、その数字のプラスまたはマイナス10%の数字を指す。「約」という用語が付く範囲は、その最低値のマイナス10%と、その最大値のプラス10%の範囲を指す。
【0101】
本明細書で使用される節の見出しは、単なる編成上の目的にすぎず、記載されている主題を限定するものとして解釈されるものではない。
【実施例】
【0102】
以下の実施例は、説明目的のために含まれたものにすぎず、本開示の範囲を制限することは意図されていない。
【0103】
実施例1:注射用に軟骨細胞を調製
軟骨細胞を採取し、注射用に調製する。
【0104】
具体的には、健康なヒトの関節軟骨から軟骨細胞を単離する。殺菌したメスを使用して、無菌状態下で大腿顆や脛骨プラトーから関節軟骨を切除する。採取した軟骨試料を細切し、緩速撹拌しながらプロナーゼにより37℃で30分間処理する。プロナーゼ溶液を取り除いた後、PBSを用いて細胞を2回洗浄する。洗浄した試料を、コラゲナーゼPにより37℃で一晩処理するか、あるいは、軟骨マトリックスが完全に消化し、細胞が懸濁液中で遊離するまで処理する。細胞集塊は、懸濁液の吸引を繰り返すことによって分解する。細胞懸濁液を、40~70μmのフィルターに通して、殺菌済みの50mLのコニカルポリプロピレンチューブに移す。チューブを400×gで5分間遠心分離にかけ、細胞をペレット化する。遠心分離後、結果として生じる上清を吸引し、ペレット化した細胞を、PBSを使用して2回洗浄し、そして、10%ウシ胎児血清(FCS)含有DMEM/F12を使用して1回洗浄する。その細胞を、10%FCS含有DMEM/Ham’s F-12中で再浮遊させる。その後、細胞を計数する。再浮遊させた細胞を、10%FCS含有DMEM/F12で希釈することで、1×106細胞/mLの細胞懸濁液を得る。
【0105】
実施例2:標準的な針を用いて軟骨細胞を注射することによって、裂け目のある軟骨を処置。
軟骨の裂け目に接近した位置に軟骨細胞を注射し、ここで、軟骨細胞が、細胞外マトリックスを出し、裂け目の処置を補助する。
【0106】
実施例1に記載されているように、軟骨細胞懸濁液を調製する。調製した軟骨細胞懸濁液を、標準的なベベル針を備えたシリンジに充填する。軟骨細胞懸濁液は、裂け目のある軟骨の領域に単一の深さで単回ボーラス注射する。投与した軟骨細胞は、注射部位に極めて近接した位置内の領域に閉じ込められるため、新たに生成された細胞外マトリックスによる利益が局所領域に限定されてしまう。さらに、2回目の軟骨細胞懸濁液の注射を行う。2回目の注射中に、軟骨細胞懸濁液を一定の流量で放出しながら、組織から外に上方に向かって針を徐々に移動させる。上方に向かって針を徐々に移動させるに伴って、組織が圧縮して、針によって生じた空隙を埋める。これによって、針を抜くと、2回目の注射で注射された軟骨細胞が組織から押し出される。その結果、組織には、2回目の注射で注射された細胞のうちのごく少量しか留まらない。
【0107】
実施例3:本開示の針を用いて軟骨細胞を注射することによって、裂け目のある軟骨を処置。
軟骨の裂け目の周辺の周りに均一に軟骨細胞を注射し、ここで、軟骨細胞が、細胞外マトリックスを出し、裂け目の処置を補助する。
【0108】
具体的には、実施例1で前述したように健康なヒトの関節軟骨から軟骨細胞を単離する。単離した後に、採取した軟骨細胞懸濁液を、
図1に示されているように複数の側壁開口部を備えた二重針を装備したシリンジに充填する。二重針は、裂け目に直接隣接した、裂け目のある軟骨に刺入されるものであり、この二重針の内側部分と外側部分は、二重針の内側内腔と周囲組織との間の流体連通を防止するように構成されている。刺入すると、シリンジのプランジャが下方に向かって押され、シリンジから二重針の内側内腔に流体の流れが生じる。シリンジのプランジャに力がかかるとともに、二重針の内側部分が回転すると、軟骨細胞溶液が側壁開口部を通って損傷軟骨に制御して注射される。二重針の側壁開口部を通って軟骨細胞溶液が注射されると、裂け目の長さに沿って軟骨細胞を均一に分布させることができる。その後、二重針を軟骨から抜き、軟骨の裂け目の他の側に隣接させて、注射過程を繰り返す。二重針を用いて注射を繰り返すことで、軟骨の裂け目の周辺の周りに軟骨細胞を均一に分布させる。新たに生成された細胞外マトリックスによる利益が局所領域に限定されてしまう実施例2とは異なり、この実施例(実施例3)で注射された軟骨細胞は、裂け目の全域にわたって細胞外マトリックスを産生し、その修復を促進する。
【0109】
実施例4:本開示の形状記憶合金針を用いて軟骨細胞を注射することによって、裂け目のある軟骨を処置。
従来の針が届かない領域に位置した軟骨の裂け目に近接した位置に、軟骨細胞を均一に注射する。
【0110】
実施例1で前述したように健康なヒトの関節軟骨から軟骨細胞を単離する。調製した軟骨細胞懸濁液を、
図1に示されているように側壁開口部を備えたニチノール二重針を装備したシリンジに充填する。直針が届かない軟骨の裂け目に近接した位置に隣接した軟骨の領域に、針を刺入する。一定の時間にわたってニチノール二重針を軟骨に刺入したままにして、ニチノールの温度を上昇させる。
図2に示されているように、温度の上昇によって、針の形状が変化し、以前は届かなかった裂け目の周辺の近接した位置に針を位置付ける。その後、軟骨の裂け目の周りに軟骨細胞を均一に注射する。新たに注射した軟骨細胞によって細胞外マトリックスを産生し、それによって、組織修復を促進する。
【0111】
実施例5:本開示の拡張型形状記憶合金針を用いて軟骨細胞を注射することによって、裂け目のある軟骨を処置。
本開示の拡張型形状記憶合金針は、組織圧縮の影響を軽減することによって、軟骨修復をさらに促進する。
【0112】
実施例1で前述したように健康なヒトの関節軟骨から軟骨細胞を単離する。調製した軟骨細胞懸濁液を、
図1に示されているように側壁開口部を備えたニチノール二重針を装備したシリンジに充填する。ニチノール二重針は、裂け目に直接隣接した、裂け目のある軟骨に刺入されるものであり、この二重針の内側部分と外側部分は、二重針の内側内腔と周囲組織との間の流体連通を防止するように構成されている。一定の時間にわたって針を軟骨に刺入したままにして、針の温度を上昇させる。
図6に示されているように、温度の上昇によって針を拡張させ、組織の拡張を促進する。組織の拡張後、シリンジのプランジャが下方に向かって押され、シリンジから二重針の内側内腔に流体の流れが生じる。シリンジのプランジャに力がかかるとともに、二重針の内側部分が回転すると、軟骨細胞溶液が側壁開口部を通って損傷軟骨に制御して注射される。二重針の拡張によって生じた組織の拡張によって、針を抜く際の組織圧縮の影響を軽減し、軟骨細胞溶液の注射量を増加することができる。新たに注射した軟骨細胞によって細胞外マトリックスを産生し、それによって、組織修復を促進する。
【0113】
実施例6:足場を使用して組織の欠損部を処置。
まず、組織の欠損部に、無細胞足場を充填する。足場の生着後、軟骨細胞を均一に注射することによって、足場を細胞化する。
【0114】
例えば、
図4に示されているように組織の欠損部にMatrigel(登録商標)などの無細胞足場を適用する。
図1に示されているような二重針を、実施例1に記載されているように調整した細胞懸濁液を含有したシリンジと流体連通させる。二重針は、足場に刺入するが、この二重針の内側部分と外側部分は、二重針の内側内腔と周辺環境との間の流体連通を防止するように構成されている。刺入すると、シリンジのプランジャが下方に向かって押され、シリンジから二重針の内側内腔に流体の流れが生じる。シリンジのプランジャに力がかかるとともに、二重針の内側部分が回転すると、軟骨細胞溶液が側壁開口部を通って足場に制御して注射される。足場全体にわたって軟骨細胞の注射を繰り返すことで、軟骨細胞が確実に足場を均一に占有するようにする。その後、軟骨細胞は、細胞外マトリックスの産生を開始し、それによって、新たに細胞化された足場が、既存の軟骨組織と一体化することができる。
【0115】
実施例7:活性化した組織同種移植片を用いて、組織の欠損部を処置。
ドナーから組織同種移植片を採取し、脱細胞化する。その後、脱細胞化した同種移植片を使用して、患者の組織の欠損部を充填する。
図1に示されているような二重針は、患者から採取した間葉系幹細胞を含有したシリンジと流体連通させる。その後、細胞溶液は、実施例6に記載されている組織足場に注射するのと同様の様式で、同種移植片全体にわたって注射する。時間が経つにつれて、間葉系幹細胞は軟骨細胞に分化し、細胞外マトリックスを産生する。注射した分化細胞は、自己由来であるため、患者に免疫応答を誘発しない。
【0116】
本発明の好ましい実施形態が本明細書において示され、記載されてきたが、当業者には、このような実施形態がほんの一例として提供されているに過ぎないことが明らかであろう。当業者であれば、多くの変形、変更、および置き換えが、本発明から逸脱することなく思いつくであろう。本明細書に記載されている本発明の実施形態の様々な代替案が、本発明の実施に際して利用され得ることを理解されたい。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその均等物の範囲内の方法および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。
【国際調査報告】