IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイヤモンド イノヴェーションズ インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-505673多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法
<>
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図1
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図2
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図3A
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図3B
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図4
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図5A
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図5B
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図6
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図7
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図8
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図9
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図10
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図11A
  • 特表-多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法 図11B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(54)【発明の名称】多結晶質ダイヤモンド成形体における鉄の勾配、ブランク、カッター、及びそれらを含む切削ツール、並びに製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/528 20060101AFI20230203BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20230203BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20230203BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20230203BHJP
   B24D 3/10 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
C04B35/528
B23B27/20
B23B27/14 B
B23B27/14 A
B24D3/00 310A
B24D3/00 320B
B24D3/10
B24D3/00 340
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534752
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 US2020063129
(87)【国際公開番号】W WO2021118861
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/946,623
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516053969
【氏名又は名称】ダイヤモンド イノヴェーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アデパリ, キラン
【テーマコード(参考)】
3C046
3C063
【Fターム(参考)】
3C046FF03
3C046FF12
3C046FF27
3C046FF35
3C046FF39
3C046FF46
3C046HH04
3C063AA02
3C063AA10
3C063BA02
3C063BB02
3C063BB07
3C063BC02
3C063BC09
3C063BG01
3C063CC04
3C063CC05
3C063EE15
3C063EE20
3C063FF06
(57)【要約】
切削、ミリング、研削、削孔、及び他の研磨作業のための、特に、金属切削の用途又は地質学的形成層の削孔の用途での、多結晶質ダイヤモンド成形体、多結晶質ダイヤモンドブランク、多結晶質ダイヤモンドカッター、及びそれらを組み込むツールは、ダイヤモンドテーブルであって、その一塊のダイヤモンドテーブル内部への距離が伸びるとともに増える鉄含有量における勾配を有するダイヤモンドテーブルを含む。鉄の勾配は、断続ミリングテストなどにおける摩耗に対する耐性を上げる。本開示はさらに、ダイヤモンドテーブル内の鉄濃度における勾配を有する多結晶質ダイヤモンド成形体、多結晶質ダイヤモンド成形体を含むブランク及びカッター、並びに、そのような成形体、ブランク、及びカッターを組み込む切削ツールを製造する方法と、そのような成形体、ブランク、カッター、切削ツール、及びドリルビットを使用する、切削、ミリング、研削、及び削孔、特に、金属加工又は削岩の方法と、に関する。
【選択図】図3A及び図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンド間結合によりともに結合されてダイヤモンドボディを形成する一塊の結晶質ダイヤモンドグレインであって、前記ダイヤモンドボディが、前記結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域を含む、一塊の結晶質ダイヤモンドグレインと、
前記複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、
前記ダイヤモンドボディの外面から、前記ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している鉄濃度勾配と、
を含む、支持されていない多結晶質ダイヤモンド成形体。
【請求項2】
前記鉄濃度勾配は、前記ダイヤモンドボディの前記外面から、前記ダイヤモンドボディの前記塊内部へと直線的に変化する、請求項1に記載の、支持されていない多結晶質ダイヤモンド成形体。
【請求項3】
前記鉄濃度勾配は、前記ダイヤモンドボディの前記外面にて、Feが約0重量%から0.01重量%の間から、前記ダイヤモンドボディの前記外面から600から700ミクロンの距離にて、0.7から0.9重量%の間まで変化する、請求項1又は請求項2に記載の、支持されていない多結晶質ダイヤモンド成形体。
【請求項4】
前記結晶質ダイヤモンドグレインは、0.5から3ミクロンの平均グレインサイズを有する、請求項3に記載の、支持されていない多結晶質ダイヤモンド成形体。
【請求項5】
前記鉄濃度勾配は、前記ダイヤモンドボディの前記外面にて、Feが0.01から0.1重量%の間から、前記ダイヤモンドボディの前記外面から600から700ミクロンの距離にて、0.7から0.9重量%の間まで変化する、請求項1又は請求項2に記載の、支持されていない多結晶質ダイヤモンド成形体。
【請求項6】
前記鉄濃度勾配は、前記ダイヤモンドボディの前記外面にて、Feが約0重量%から0.01重量%の間から、前記ダイヤモンドボディの前記外面から600から700ミクロンの距離にて、約0.3から0.4重量%の間まで変化する、請求項1又は請求項2に記載の、支持されていない多結晶質ダイヤモンド成形体。
【請求項7】
前記結晶質ダイヤモンドグレインは、25から30ミクロンの平均グレインサイズを有する、請求項6に記載の、支持されていない多結晶質ダイヤモンド成形体。
【請求項8】
前記鉄濃度勾配は、前記ダイヤモンドボディの前記外面にて、Feが0.01から0.1重量%の間から、前記ダイヤモンドボディの前記外面から600から700ミクロンの距離にて、0.3から0.4重量%の間まで変化する、請求項1又は請求項2に記載の、支持されていない多結晶質ダイヤモンド成形体。
【請求項9】
ダイヤモンド間結合によりともに結合されてダイヤモンドボディを形成する一塊の結晶質ダイヤモンドグレインであって、前記ダイヤモンドボディが、前記結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域を含む、一塊の結晶質ダイヤモンドグレインと、
前記複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、
硬質金属基盤であって、前記ダイヤモンドボディが、前記硬質金属基盤に結合されて界面を形成する硬質金属基盤と、
前記界面から、前記ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している、前記ダイヤモンドボディ内の鉄濃度勾配と、
を含む、多結晶質ダイヤモンドブランク
【請求項10】
前記硬質金属基盤は、焼結炭化物又はコバルト焼結炭化タングステン(WC-Co)を含む組成を有する、請求項9に記載の多結晶質ダイヤモンドブランク。
【請求項11】
前記硬質金属基盤は、鉄を含んでいない組成を有する、請求項9に記載の多結晶質ダイヤモンドブランク。
【請求項12】
前記鉄濃度勾配は、前記ダイヤモンドボディの外面から、前記ダイヤモンドボディの前記塊内部へと直線的に変化する、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の多結晶質ダイヤモンドブランク。
【請求項13】
前記鉄濃度勾配は、前記硬質金属基盤に結合されて前記界面を形成する前記ダイヤモンドボディの前記外面にて、Feが0から0.01重量%の間から、前記外面から600から700ミクロンの距離にて、0.7から0.9重量%の間まで変化する、請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の多結晶質ダイヤモンドブランク。
【請求項14】
前記結晶質ダイヤモンドグレインは、0.5から3ミクロンの平均グレインサイズを有する、請求項13に記載の多結晶質ダイヤモンドブランク。
【請求項15】
前記鉄濃度勾配は、前記硬質金属基盤に結合されて前記界面を形成する前記ダイヤモンドボディの前記外面にて、Feが0.01から0.1重量%の間から、前記外面から600から700ミクロンの距離にて、0.7から0.9重量%の間まで変化する、請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の多結晶質ダイヤモンドブランク。
【請求項16】
前記鉄濃度勾配は、前記硬質金属基盤に結合されて前記界面を形成する前記ダイヤモンドボディの前記外面にて、Feが0重量%から、前記外面から600から700ミクロンの距離にて、0.3から0.4重量%の間まで変化する、請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の多結晶質ダイヤモンドブランク。
【請求項17】
前記結晶質ダイヤモンドグレインは、25から30ミクロンの平均グレインサイズを有する、請求項16に記載の多結晶質ダイヤモンドブランク。
【請求項18】
前記鉄濃度勾配は、前記硬質金属基盤に結合されて前記界面を形成する前記ダイヤモンドボディの前記外面にて、Feが0.01から0.1重量%の間から、前記外面から600から700ミクロンの距離にて、0.3から0.4重量%の間まで変化する、請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の多結晶質ダイヤモンドブランク。
【請求項19】
前端と、シャフト部位と、ツールホルダに載置されるよう適合されている後端と、を含む合金ボディであって、前記前端と、前記シャフト部位と、前記後端と、が、前記ボディの縦方向軸に沿って連続して配置されている、合金ボディと、
前記前端に取り付けられている、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の多結晶質ダイヤモンド成形体と、
を含む、金属切削ツール。
【請求項20】
前端と、シャフト部位と、ツールホルダに載置されるよう適合されている後端と、を含む合金ボディであって、前記前端と、前記シャフト部位と、前記後端と、が、前記ボディの縦方向軸に沿って連続して配置されている、合金ボディと、
前記前端に取り付けられている、請求項9から請求項18のいずれか一項に記載の多結晶質ダイヤモンドブランクと、
を含む、金属切削ツール。
【請求項21】
アセンブリを形成することであって、前記アセンブリは、ダイヤモンド触媒源と、前記ダイヤモンド触媒源と接触しているダイヤモンドフィードの層と、耐熱性容器と、を含み、前記耐熱性容器は、前記ダイヤモンド触媒源と、前記ダイヤモンドフィードの層と、を含む、アセンブリを形成することと、
前記アセンブリを、前記ダイヤモンドフィードをダイヤモンドボディへと焼結するのに十分な高温及び高圧にて処理することと、
を含む、多結晶質ダイヤモンド成形体を製造する方法であって、
前記ダイヤモンドフィードは、90から99重量%のダイヤモンド粒子と、1から10重量%のコバルト鉄合金と、を含み、
前記ダイヤモンドボディは、ダイヤモンド間結合によりともに結合されている一塊の結晶質ダイヤモンドグレインと、前記結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域と、前記複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、前記ダイヤモンドボディの外面から、前記ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している鉄濃度勾配と、を含む、
多結晶質ダイヤモンド成形体を製造する方法。
【請求項22】
前記コバルト鉄合金はCoFeであり、0.6≦x≦0.8、0.2≦y≦0.4、及びx+y=1.0である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記コバルト鉄合金はCoFeであり、0.68≦x≦0.72、0.28≦y≦0.32、及びx+y=1.0である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記コバルト鉄合金はCoFeであり、x=0.7及びy=0.3である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ダイヤモンド粒子の平均直径は、1ミクロン以上40ミクロン以下である、請求項21から請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ダイヤモンド粒子の平均直径は、3ミクロン以上40ミクロン以下である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ダイヤモンド粒子の平均直径は、1ミクロン以上25ミクロン以下である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ダイヤモンド粒子の平均直径は、3ミクロン以上25ミクロン以下である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ダイヤモンド粒子の平均直径は、1.5ミクロン以上3.0ミクロン以下である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記ダイヤモンド触媒源は、焼結炭化物又はコバルト焼結炭化タングステン(WC-Co)を含む組成を有する硬質金属基盤である、請求項21から請求項29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記組成は鉄を含んでいない、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ダイヤモンド触媒源は、焼結炭化物又はコバルト焼結炭化タングステン(WC-Co)を含む組成を有する粉末である、請求項21から請求項29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記組成は鉄を含んでいない、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記アセンブリを形成することは、
前記ダイヤモンド触媒源を前記耐熱性容器に配置することと、
ダイヤモンドフィードの層を、前記ダイヤモンド触媒源と接触している前記耐熱性容器に形成することと、
前記耐熱性容器の内容物上にキャップを配置してこれを密封することと、
を含む、請求項21から請求項33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ダイヤモンドボディの第1の部位は、作業面から、前記ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長する、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
アセンブリを形成することであって、前記アセンブリは、焼結炭化物又はコバルト焼結炭化タングステン(WC-Co)を含む組成を有する硬質金属基盤と、前記ダイヤモンド触媒源と接触しているダイヤモンドフィードの層と、耐熱性容器と、を含み、前記耐熱性容器は、前記ダイヤモンド触媒源と、前記ダイヤモンドフィードの層と、を含む、アセンブリを形成することと、
前記アセンブリを、前記ダイヤモンドフィードをダイヤモンドボディへと焼結するのに十分な高温及び高圧にて処理することと、
を含む、多結晶質ダイヤモンドブランクを製造する方法であって、
前記硬質金属基盤は、鉄を含んでおらず、焼結炭化物又はコバルト焼結炭化タングステン(WC-Co)を含む組成を有し、
前記ダイヤモンドフィードは、90から99重量%のダイヤモンド粒子と、1から10重量%のコバルト鉄合金と、を含み、
前記コバルト鉄合金はCoFeであり、0.6≦x≦0.8、0.2≦y≦0.4、及びx+y=1.0であり、
前記ダイヤモンド粒子の平均直径は、1ミクロン以上40ミクロン以下であり、
前記ダイヤモンドボディは、ダイヤモンド間結合によりともに結合されている一塊の結晶質ダイヤモンドグレインと、前記結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域と、前記複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、前記ダイヤモンドボディの外面から、前記ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している鉄濃度勾配と、を含む、
多結晶質ダイヤモンドブランクを製造する方法。
【請求項37】
前記ダイヤモンド粒子の平均直径は、3ミクロン以上25ミクロン以下である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ダイヤモンド粒子の平均直径は、1.5ミクロン以上3.0ミクロン以下である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記コバルト鉄合金はCoFeであり、0.68≦x≦0.72、0.28≦y≦0.32、及びx+y=1.0である、請求項36から請求項38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記コバルト鉄合金はCoFeであり、x=0.7及びy=0.3である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記アセンブリを形成する前に、前記ダイヤモンドフィードをボールミリングすることをさらに含む、請求項36から請求項40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記アセンブリを処理する前に、前記耐熱性容器の内容物上にキャップを配置してこれを密封することをさらに含む、請求項36から請求項41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
第1の基盤と、
前記第1の基盤の座面に取り付けられているチップと、
を含む切削ツールであって、
前記チップは、
ダイヤモンド間結合によりともに結合されてダイヤモンドボディを形成する一塊の結晶質ダイヤモンドグレインであって、前記ダイヤモンドボディが、前記結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域を含む、一塊の結晶質ダイヤモンドグレインと、
前記複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、
硬質金属から形成された第2の基盤であって、前記ダイヤモンドボディが前記第2の基盤に結合されて界面を形成する、第2の基盤と、
前記界面から、前記ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している、前記ダイヤモンドボディ内の鉄濃度勾配と、
を含む、切削ツール。
【請求項44】
前記ダイヤモンドボディは、外側作業層と、中間層と、を含み、前記中間層は、前記外側作業層と、前記ダイヤモンドボディと前記第2の基盤との間に形成されている界面と、の間に配置されている、請求項43に記載の切削ツール。
【請求項45】
前記界面を形成している前記第2の基盤の表面は、複数の突起を形成する波形であり、前記中間層は、前記第2の基盤の前記突起に挿入されて前記第2の基盤に結合されるよう構成されている、請求項44に記載の切削ツール。
【請求項46】
前記チップは、前記第1の基盤に、前記チップを前記第1の基盤の前記座面にろう付けすることにより取り付けられている、請求項43から請求項45のいずれか一項に記載の切削ツール。
【請求項47】
前記チップは円形又は楕円形である、請求項43から請求項46のいずれか一項に記載の切削ツール。
【請求項48】
前記チップは多角形である、請求項43から請求項46のいずれか一項に記載の切削ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、研磨構造体、特に、多結晶質ダイヤモンド成形体、ブランク、及びカッター、並びにそれらを含む切削ツールに関する。より具体的には、本開示は、多結晶質ダイヤモンドボディであって、そのダイヤモンドボディ内に鉄濃度における勾配を有し、これにより、例えば、多結晶質ブランクの場合に、ダイヤモンドボディ内の鉄の量が、外面から塊内部へと、基盤に向かって減少する、多結晶質ダイヤモンドボディに関する。そのようなFe勾配を持つダイヤモンドボディは、単独の支持されていない成形体にて具現化され得る、又は、ブランク若しくはカッターの実施形態において基盤により支持され得る。成形体、ブランク、及びカッターのそれぞれは、切削ツール上の切削エレメントとして採用され得る。本開示はさらに、ダイヤモンドテーブル内の鉄濃度における勾配を有する多結晶質ダイヤモンド成形体、ブランク、及びカッターと、そのような成形体、ブランク、及びカッターを組み込む切削ツールと、を製造する方法と、そのような成形体、ブランク、カッター、及び切削ツールを使用する、切削、ミリング、研削、及び削孔、特に、金属加工又は削岩の方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の考察では、特定の構造及び/又は方法について述べる。しかし、以下に述べることは、それらの構造及び/又は方法が従来技術を構成することを認めるものであると理解されるべきではない。出願人は、そのような構造及び/又は方法が、本発明に対して従来技術とみなされないことを明らかにする権利を明確に留保する。
【0003】
研磨成形体は、密着した多結晶質硬質集合体へと結合されているダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素粒子の塊からなる。特に、多結晶質ダイヤモンド(PCD)粒子ベースの研磨成形体は、様々な形状及びサイズで供給されるが、典型的には円筒状であり、基盤に密着して取り付けられている又は接合されている一塊の研磨粒子を含む。
【0004】
研磨成形体、特に、多結晶質ダイヤモンドベースの研磨成形体の1つの用途は、例えば、金属加工での用途のための、又は、地質学的形成層の削孔の用途での使用のための、切削ツールでのものである。密着した多結晶質硬質集合体の製造中に一体に形成される、又は、それに続いてともに載置される、のいずれかである、基盤に取り付けられている成形体は、ブランク及びカッターを形成する。成形体、ブランク、及びカッターは、例えば、ろう付けすることにより、又は、鋳造などにおいて一体に形成することにより、ツール上に載置され得る。切削、ミリング、研削、及び削孔での用途ではしばしば、一塊の研磨粒子の作業面の点又は切削エッジ上に、大きな力が作用する。その結果、切削エッジ若しくは接点において、又はその背後にクラックが進み、それらのクラックは、密着した多結晶質硬質集合体内に、これを通って伝播し得る。加えて、様々な研磨作業により生成された熱が、密着した多結晶質硬質集合体、特に、そのダイヤモンド粒子に、まず、ダイヤモンドの炭素への逆変換を引き起こさせることにより、これは研磨成形体の強度を下げる、そして次に、熱膨張を引き起こさせることにより、これは、研磨成形体における様々な材料の、特に、密着した多結晶質硬質集合体の部位内の、ダイヤモンド材と、いずれの触媒材料と、の間の熱膨張の係数における違いにより、研磨成形体にクラックが生じることとなり、悪影響を及ぼし得る。追加的に、研磨成形体は衝撃損傷を経て、密着した多結晶質硬質集合体を通って伝播する大きなクラックがもたらされ、これは、つまり、剥離又は欠けにより、材料の大きな損失を引き起こし得る。
【0005】
したがって、高温での少ない逆変換と、熱膨張によりクラックを減らす、熱膨張の係数における少ない違いと、衝撃損傷を最小限にする、向上した強靭性と、の1つ又はそれ以上を有した組成及び特徴を有する、密着した多結晶質硬質集合体、特に、多結晶質ダイヤモンド成形体、ブランク、又はカッターを有することが、好適となるであろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、切削、ミリング、研削、削孔、及び他の研磨作業のための、特に、金属加工での用途での、又は、地質学的形成層の削孔の用途での使用のための、多結晶質ダイヤモンド成形体、多結晶質ダイヤモンドブランク、多結晶質ダイヤモンドカッター、及びそれらを組み込むツールに向けられており、ここでは、ダイヤモンドテーブルが、その一塊のダイヤモンドテーブル内部への距離が伸びるとともに増える鉄含有量における勾配を有し、これが、改善された機械的特性をダイヤモンドテーブルに授ける。追加的な特徴及び利点を、以下の説明に明記し、これらはある程度、その説明から明確となるであろう、又は、本発明を実践することから学ぶことができるであろう。本開示の目的及び他の利点は、これらの構造により実現されて達成され、特に、記述された本明細書及びその特許請求の範囲、同様に、添付の図面において、指し示されるであろう。
【0007】
本開示は、ダイヤモンド間結合によりともに結合されてダイヤモンドボディを形成する一塊の結晶質ダイヤモンドグレインを含む多結晶質ダイヤモンド成形体の実施形態を含む。ダイヤモンドボディは、結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域と、複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、を含み、例えば、多結晶質ダイヤモンドブランクの場合は、鉄濃度勾配が、ダイヤモンドボディの外面から、ダイヤモンドボディの塊内部へと、界面に向かって伸長する、つまり、ダイヤモンドボディ内の鉄の量が、外面から、塊内部へと、界面に向かって減少する。
【0008】
本開示はまた、ダイヤモンド間結合によりともに結合されてダイヤモンドボディ及び硬質金属基盤を形成する一塊の結晶質ダイヤモンドグレインを含む多結晶質ダイヤモンドブランク又はカッターの実施形態を含む。ダイヤモンドボディは、結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域と、複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、を含み、ダイヤモンドボディが、硬質金属基盤に結合されて界面を形成する。ダイヤモンドボディ内の鉄濃度勾配は、界面から、ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長する。そのような場合では、鉄の濃度は、その界面にてより低く、外面に向かって増える。
【0009】
別の態様では、ドリルビット及びドラグビットなどの切削ツールの実施形態が開示される。ドリルビットでは、(前端と、シャフト部位と、ツールホルダに載置されるよう適合されている後端と、を含む)合金ボディが、前端に取り付けられている多結晶質ダイヤモンド成形体又はブランクを有する。ドラグビットでは、複数のそのような多結晶質ダイヤモンド成形体及び/又は複数のそのような多結晶質ダイヤモンドカッターが、複数のフィンの半径方向に外向きの外縁上に配置されており、これらに取り付けられており、これらは、ドラグビットボディの前端の外面に沿って配置されており、フィンのそれぞれが、連続して隣接するフィンから、後方に伸長する、らせん状に形成されているフルートにより分け隔てられている。
【0010】
別の態様では、切削ツールの1つの実施形態は、第1の基盤と、第1の基盤の座面に取り付けられているチップと、を含む。チップは、ダイヤモンド間結合によりともに結合されてダイヤモンドボディを形成する一塊の結晶質ダイヤモンドグレインであって、ダイヤモンドボディが、結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域を含む、一塊の結晶質ダイヤモンドグレインと、複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、硬質金属から形成された第2の基盤であって、ダイヤモンドボディが第2の基盤に結合されて界面を形成する、第2の基盤と、界面から、ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している、ダイヤモンドボディ内の鉄濃度勾配と、を含む。ここで再び、鉄濃度は、その外面にて、塊内部に向かうそれよりも大きく、界面に近接して最低となる。例示的な実施形態では、チップは、第1の基盤に、そのチップを第1の基盤の座面にろう付けすることにより取り付けられている。
【0011】
別の態様では、アセンブリを含む多結晶質ダイヤモンド成形体を製造する方法の1つの実施形態が提供され、アセンブリは、ダイヤモンド触媒源と、ダイヤモンド触媒源と接触しているダイヤモンドフィードの層と、耐熱性容器と、を含む。耐熱性容器は、ダイヤモンド触媒源と、ダイヤモンドフィードの層と、を含み、この方法は、アセンブリを、ダイヤモンドフィードをダイヤモンドボディへと焼結するのに十分な高温及び高圧にて処理する。ダイヤモンドフィードは、90から99重量%のダイヤモンド粒子と、1から10重量%のコバルト鉄合金と、を含み、ダイヤモンド間結合によりともに結合されている一塊の結晶質ダイヤモンドグレインと、結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域と、複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、ダイヤモンドボディの外面から、ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している鉄濃度勾配と、を含むダイヤモンドボディをもたらす。
【0012】
別の態様では、アセンブリを形成することを含む、多結晶質ダイヤモンドブランク又はカッターを製造する方法の1つの実施形態が提供され、アセンブリは、焼結炭化物又はコバルト焼結炭化タングステン(WC-Co)を含む組成を有する硬質金属基盤と、ダイヤモンド触媒源と接触しているダイヤモンドフィードの層と、耐熱性容器と、を含む。耐熱性容器は、ダイヤモンド触媒源と、ダイヤモンドフィードの層と、を含み、この方法は、アセンブリを、ダイヤモンドフィードをダイヤモンドボディへと焼結するのに十分な高温及び高圧にて処理する。硬質金属基盤は、鉄を含んでおらず、焼結炭化物又はコバルト焼結炭化タングステン(WC-Co)を含む組成を有する。ダイヤモンドフィードは、90から99重量%のダイヤモンド粒子を含み、ダイヤモンド粒子の平均直径は、0.5ミクロン以上40ミクロン以下である。ダイヤモンドフィードはまた、1から10重量%のコバルト鉄合金を含み、コバルト鉄合金はCoFeであり、0.6≦x≦0.8、0.2≦y≦0.4、及びx+y=1.0である。ダイヤモンドフィードを処理する高圧高温(HPHT)は、ダイヤモンド間結合によりともに結合されている一塊の結晶質ダイヤモンドグレインと、結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域と、複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、ダイヤモンドボディの外面から、ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している鉄濃度勾配と、を含むダイヤモンドボディをもたらす。
【0013】
例示的な実施形態では、ダイヤモンドフィードは、90から99重量%のダイヤモンド粒子と、100重量%のコバルト鉄合金に対するバランスと、からなる。
【0014】
他のシステム、方法、特徴、及び利点は、以下の図面及び発明を実施するための形態を精査することにより、当業者に明確であろうし、また、明確となるであろう。そのような追加的なシステム、方法、特徴、及び利点はすべて、この説明内及び本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲により保護されることが意図されている。このセクションにおけるものはどれも、それら特許請求の範囲を限定するものと見なされるべきではない。さらなる態様及び利点が、本開示の実施形態と併せて以下に考察される。本開示の、先の一般的な説明及び以下の発明を実施するための形態は双方とも例であって説明を目的とするものであり、これらは、特許請求の範囲にあるような本開示のさらなる説明を提供することが意図されていることが理解されるであろう。
【0015】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれており、この明細書の一部に組み込まれており、これを構成するする添付の図面は、本発明の実装を示し、それらの説明とともに、本開示の原理の説明の用に供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】多結晶質ダイヤモンド(PCD)粒子ベースの円筒状に形成されている研磨ブランクの模式的斜視図を示す。
図2】ダイヤモンド間結合によりともに結合されている結晶質ダイヤモンドグレインと、結合されている結晶質ダイヤモンドグレインの間に配置されている複数のグレイン間領域と、複数のグレイン間領域の少なくとも一部位に存在するコバルトベースの触媒材料と、を持つダイヤモンドボディの拡大された部位を模式的に表す。
図3A】多結晶質ダイヤモンドブランクの断面を、拡大された部位P1を用いて模式的に描く。
図3B】部位P1内のダイヤモンドテーブルにわたる鉄の勾配を模式的に描く。
図4】多結晶質ダイヤモンドブランクの一部位の断面の、走査型電子顕微鏡(SEM)による顕微鏡写真であり、この顕微鏡写真上に重ね合わせられている、基盤の一部位及びダイヤモンドテーブルの一部位が、ダイヤモンドテーブルにわたるラインスキャンからの、エネルギ分散型X線分光法(EDS)からもたらされたものであることを示す。
図5A】多結晶質ダイヤモンドブランクの一部位の断面の第2のSEM顕微鏡写真であり、それらの領域は、EDSエリアスキャンによる組成分析のためにマッピングされたエリアである。
図5B】その組成分析からの結果を示す表である。
図6】多結晶質ダイヤモンドカッターの3つのサンプルに対する、界面からの距離(ミクロン単位)に応じての、ダイヤモンドテーブル内のFe元素含有量(重量パーセント(重量%)単位)のグラフである。
図7】多結晶質ダイヤモンドカッターの3つのサンプルに対する、界面からの距離(ミクロン単位)に応じての、ダイヤモンドテーブル内のFe元素含有量(重量パーセント(重量%)単位)のグラフである。
図8】本発明の多結晶質ダイヤモンド成形体が載置されている、この場合はドリルビットである、金属加工産業において使用されている切削ツールの例を示す。
図9】本発明の多結晶質ダイヤモンドカッターが載置されている、この場合はドラグビットである、削孔産業において使用されている切削ツールの一例を示す。
図10】2つの本発明の多結晶質ダイヤモンドブランク及び1つの比較例の多結晶質ダイヤモンドブランク上での断続ミリングテストからの結果を示すグラフである。
図11A】開示するブランクから作成され得る切削ツールの追加的な例を示す。
図11B】開示するブランクから作成され得る切削ツールの追加的な例を示す。
【0017】
これらの図面及び発明を実施するための形態を通して、特に説明しない限り、同じ図面の参照符号は、同じエレメント、特徴、及び構造を指すものと理解すべきである。それらのエレメントの相対的なサイズ及び描写は、明確さ、説明、及び利便性のために誇張される場合がある。また、見やすさのために、いくつかの例では、図中において指し示している特徴のいくつかのみに参照符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、多結晶質ダイヤモンド(PCD)粒子ベースの円筒状に形成されている研磨ブランク10の模式的斜視図を示す。研磨ブランクはまた、多結晶質ダイヤモンドブランク(PDC)とも呼ばれる。ブランク10は、硬質金属、合金、又は複合材料、及び、最も典型的には、焼結炭化物又はコバルト焼結炭化タングステン(WC-Co)製の基盤20と、界面40に沿って基盤に密着して取り付けられている又は接合されている多結晶質ダイヤモンド複合材料の塊30(ダイヤモンドテーブル又はダイヤモンドボディとも呼ばれる)と、を有する。多結晶質ダイヤモンド複合材料の塊30において、ダイヤモンド粒子含有量が多く、ダイヤモンド粒子間には、非常に多くのダイヤモンド間結合、つまり、直接的な粒子間結合がある。コバルト金属又はその合金などの触媒がしばしば、ダイヤモンド結合形成助剤として、多結晶質ダイヤモンドカッター10の高圧高温(HPHT)製造において存在する。多結晶質ダイヤモンドブランク10は後に、所望する形状に、指定されている外径、高さ、及び(任意に)面取り又は傾斜面などのいずれの表面特徴の追加への加工を含めて、加工され得る。面取り又は傾斜面は、より典型的には、多結晶質ダイヤモンドブランクとは反対に、多結晶質ダイヤモンドカッターにおいて見られる。上面50及び側面60のすべて又は一部位は、多結晶質ダイヤモンドブランク10の作業面、つまり、切削、ミリング、研削、又は削孔中にワークピースと接触する、多結晶質ダイヤモンドブランク10の表面とされ得る。
【0019】
多結晶質ダイヤモンド複合材料の塊30はよく、焼結炭化物などの硬質金属の基盤などの、基盤又はサポートに結合されることにより支持され、この場合では、多結晶質ダイヤモンド複合材料の塊30及び基盤の一体に形成されている構造は、ここでは、多結晶質ダイヤモンドブランク若しくはブランク(金属加工での用途のため)、又は、多結晶質ダイヤモンドカッター若しくはカッター(地質学的形成層の削孔の用途のため)と呼ぶ。しかし、いくつかの例では、多結晶質ダイヤモンド複合材料の塊30は、支持され得ない、つまり、基盤がなく、この場合では、多結晶質ダイヤモンド複合材料の塊30は、ここでは、多結晶質ダイヤモンド成形体又は成形体と呼ぶことに留意されたい。
【0020】
多結晶質ダイヤモンドブランク又は多結晶質ダイヤモンドカッターとしての実施形態と、多結晶質ダイヤモンド成形体としての実施形態と、の双方では、ダイヤモンドボディは、ダイヤモンド間結合によりともに結合されている一塊の結晶質ダイヤモンドグレインから形成される。図2は、ダイヤモンドボディ100の拡大された部位を模式的に表すものである。ダイヤモンドボディにおいて、結晶質ダイヤモンドグレイン110が、ダイヤモンド間結合120によりともに結合されている。ダイヤモンドボディ100は、結合されている結晶質ダイヤモンドグレイン110の間に配置されている複数のグレイン間領域130を含む。コバルトベースの触媒材料140が、複数のグレイン間領域130の少なくとも一部位及び/又は個々のグレイン間領域130の一部位に存在する。ここに開示するように、任意の処理が、金属触媒をグレイン間領域から除去し得、金属触媒のないそのようなグレイン間領域をまた、図2に示す。
【0021】
加えて、成形体、ブランク、又はカッターのダイヤモンドボディは、ダイヤモンドボディの外面から、ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している鉄濃度勾配を有する。基盤に載置されている場合、そのような鉄濃度勾配は、ダイヤモンドボディと基盤との間の界面から伸長する。一般的に、鉄濃度勾配は、成形体の外面にて、又は、ブランクの場合は、界面にて、0から0.1重量%のFeから、外面/界面から約600から700ミクロンの距離での、ダイヤモンドボディ内の位置にて、0.7から1重量%のFeまで変化する。いくつかの実施形態では、鉄濃度勾配は、ダイヤモンドボディの外面(多結晶質ダイヤモンド成形体について)にて、又は、界面(多結晶質ダイヤモンドブランク又はカッターについて)から、0重量%のFe、代替的に、0.01から0.1重量%のFeから、その外面/界面から600から700ミクロンの距離にて、0.7から0.9重量%のFeまで変化する。他の実施形態では、鉄濃度勾配は、ダイヤモンドボディの外面(多結晶質ダイヤモンド成形体について)にて、又は、界面(多結晶質ダイヤモンドブランク又はカッターについて)から、0重量%のFe、代替的に、0.01から0.1重量%のFeから、その外面/界面から600から700ミクロンの距離にて、0.3から0.4重量%まで変化する。
【0022】
図3Aは、ブランク200の断面を、拡大された部位P1を用いて模式的に描く。図3Bは、部位P1内のダイヤモンドテーブルにわたる鉄の勾配を模式的に描く。図3Bに示すように、鉄濃度210は全体的に、ダイヤモンドテーブル230と基盤240(焼結WC基盤など)との間の界面220から、ダイヤモンドテーブル230の上面250までの距離とともに上がる。図3Bに示す模式図では、鉄濃度([Fe])は任意の単位(原子単位)である。
【0023】
図4は、ここに開示するそれらと一致するブランクの一部位の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真300である。顕微鏡写真300は、基盤310の一部位と、ダイヤモンドテーブル320の一部位と、を示す。基盤は炭化タングステンである。顕微鏡写真300は、その倍率が150Xであり、下部マージンのスケールバーは100ミクロンである。
【0024】
図4の顕微鏡写真300上に重ね合わせられているものは、エネルギ分散型X線分光法(EDS)からの結果である。これらの結果は、基盤/ダイヤモンドテーブルの界面330から始まって、ダイヤモンドテーブル320の表面に向かって、典型的には、作業面の一部位に向かって、代替的に、上面60に向かって伸長するダイヤモンドテーブル320にわたるEDSラインスキャンからのものである。EDSの結果は、ダイヤモンドテーブル320内の元素含有量を、界面からの距離(ミクロン)に応じての重量パーセント(重量%)としてグラフィカルに提示する。重量パーセント(重量%)は、対数スケール上のものであり、0.0重量%から100重量%まで広がり、界面330からの距離は、0から、600ミクロンを超えて広がる。図の最も右側は、680ミクロンの距離にある。EDSの結果に示す元素含有量は、炭素(C)340と、コバルト(Co)350と、タングステン(W)360と、鉄(Fe)370と、である。また、カーブフィット380を鉄含有量370に対して示す。重量パーセント(重量%)が対数スケール上のものであるため、鉄含有量370に対するカーブフィット380は、界面330からの距離に応じて直線的に伸びる、鉄含有量(Fe重量%)における勾配を表す。図4に示す、鉄含有量における実験的にわかっている線形勾配は、図3Bに模式的に表された鉄濃度([Fe])210と一致する。
【0025】
図4の顕微鏡写真300では、炭素340含有量は、ダイヤモンドテーブル320内のダイヤモンドからのものであり、100ミクロンより長い距離にて、90重量%より多い量にて、約60重量%から、界面330にて、又はこの付近にて増えた後に、実質的に一定である。ダイヤモンドテーブル320内のコバルト350及びタングステン360含有量は、HPHT処理中に基盤310からダイヤモンドテーブル320へと掃引されており、それぞれは、100ミクロンより長い距離にて実質的に一定となる前に、コバルト350については約13重量%の量にて、及び、タングステン360については約2.5重量%の量にて、界面330においてその最大にある。このサンプルにおいて、基盤は鉄を含んでおらず、鉄370含有量は、HPHT処理において使用されているダイヤモンドフィードに存在する鉄からのものである。鉄含有量はまた、ダイヤモンドテーブルへのコバルトの掃引により、コバルトの掃引とともに鉄が少なくとも部分的に掃引されているという点において、影響を受けている。したがって、鉄含有量は、界面330にて、ダイヤモンドテーブル320の内部部位でのそれよりも低い。図4では、鉄370含有量は、界面にて、約0.0重量%、代替的に、0.01から0.1重量%のFeから、界面から680ミクロンの距離にて、約0.8重量%まで変化する。
【0026】
図5Aは、ここに開示するそれらと一致するブランクの一部位の断面の第2の(SEM)顕微鏡写真400である。顕微鏡写真400は、その倍率が150Xであり、下部マージンのスケールバーは250ミクロンである。8つの領域が顕微鏡写真400において示されており、これらは、EDSエリアスキャンによる組成分析のためのエリアマッピングにより採取された領域に対応する。図5Bは、8つの領域における組成分析からの結果を示す表である。図5Bの表中の「スペクトル」のナンバリングは、図5Aのそれら領域のナンバリングに対応し、それら領域のそれぞれの位置上のいくつかの詳細(図5Aにおいて、基盤402又はダイヤモンドテーブル404であるか、及び、界面406(点線により注釈が付けられている)に対する距離)を、以下の表1に示す。
【0027】
表1-図5A及び図5Bに関する情報
【0028】
図5Bの結果から、基盤402はコバルト、タングステン、及び炭素の組成を有し、これは、コバルト炭化タングステン(Co-WC)の基盤と一致していることが観察される。さらに、スペクトル7及び8から見られるように、これらは双方とも、基盤402の内部にあり、基盤402の組成は鉄を含んでいない。図5Bの結果からはまた、ダイヤモンドテーブル404内の鉄の量が、0.08重量%(領域5に対応するスペクトル5を参照されたい)から0.70重量%(領域1に対応するスペクトル1を参照されたい)まで変化することが観察される。このダイヤモンドテーブル内の鉄の量における変化は、約630ミクロンにわたり、約0.001重量%/ミクロンの界面からの距離に応じての鉄の平均変化率について生じた。
【0029】
ここに記すように、鉄濃度勾配、つまり、ダイヤモンドテーブル内の鉄のその量におけるプロファイル又は変化は、ダイヤモンドボディの外面から(多結晶質ダイヤモンド成形体について)、又は、界面から(多結晶質ダイヤモンドブランク又は多結晶質ダイヤモンドカッターについて)、ダイヤモンドボディの塊内部へと直線的に変化する。鉄濃度勾配の傾斜が、ダイヤモンドフィード内の結晶質ダイヤモンドグレインの平均グレインサイズが変化するとともに変化することが、さらにわかっている。図6及び図7は、多結晶質ダイヤモンドブランクの3つのサンプル(サンプル1、サンプル2、及びサンプル3)に対する、界面からの距離(ミクロン単位)に応じての、ダイヤモンドテーブル内のFe元素含有量(重量パーセント(重量%)単位)のグラフである。
【0030】
図6では、サンプル1(四角形、510にて、リニアカーブフィット520とともに示されている)及びサンプル2(円形、530にて、リニアカーブフィット540とともに示されている)の双方が、0.5から3ミクロンの平均グレインサイズを有する結晶質ダイヤモンドグレインを用いたダイヤモンドフィードを使用した。図7では、図6からのサンプル2(円形、530にて、リニアカーブフィット540とともに示されている)が表されており、新たなサンプル3(三角形、550にて、リニアカーブフィット560とともに示されている)が提示されている。サンプル3は、30ミクロンの平均グレインサイズを有する結晶質ダイヤモンドグレインを用いたダイヤモンドフィードを使用した。したがって、サンプル3についての平均グレインサイズは、サンプル1及びサンプル2と比較して、10x(10倍)異なっていた。
【0031】
カーブフィット520に基づき、サンプル1についてのダイヤモンドテーブル内のFe元素含有量は、約0重量%(界面にて)から、660ミクロンの界面からの距離にて、約0.74重量%まで変化した。カーブフィット540に基づき、サンプル2についてのダイヤモンドテーブル内のFe元素含有量は、0重量%(界面にて)から、700ミクロンの界面からの距離にて、0.87重量%まで変化した。カーブフィット560に基づき、サンプル3についてのダイヤモンドテーブル内のFe元素含有量は、約0重量%(界面にて)から、700ミクロンの界面からの距離にて、約0.37重量%まで変化した。
【0032】
サンプル1、サンプル2、及びサンプル3のそれぞれについて、鉄組成物は、界面(約ゼロ重量%にて)から、一塊のダイヤモンドテーブル内へと、単調に増えた。さらに、グレインサイズを含むパラメータのすべてが同じであれば、鉄濃度勾配は同じであり(サンプル1をサンプル2と比較して)、これは、鉄濃度勾配が再現可能であることを示す。しかし、サンプル間でパラメータのすべてが同じであり、平均グレインサイズのみが異なれば、鉄濃度勾配は異なる(サンプル3をサンプル1及びサンプル2と比較して)。図7に示すサンプルでは、平均グレインサイズを10倍に大きくすることで、鉄濃度勾配の傾斜を半分未満に小さくすることがもたらされた(グレインサイズがより小さいサンプルについての傾斜と比較して)。
【0033】
図6及び図7は、3ミクロン又は30ミクロンの平均グレインサイズを有する結晶質ダイヤモンドグレインを用いたダイヤモンドフィードを使用して製造されたサンプルからの結果を報告するが、多結晶質ダイヤモンド成形体、多結晶質ダイヤモンドブランク、及び多結晶質ダイヤモンドカッターの他の実施形態が、他の平均グレインサイズを有する結晶質ダイヤモンドグレインを用いたダイヤモンドフィードを使用して製造され得る。例えば、結晶質ダイヤモンドグレインは、1から40ミクロン、代替的に、3から40ミクロン、代替的に、25から30ミクロン、代替的に、1から25ミクロン、代替的に、3から25ミクロン、代替的に、1.5から3.0ミクロンの平均グレインサイズを有し得る。図6及び図7より明らかにされるように、平均グレインサイズの選択は、製造時の製品における鉄濃度勾配に影響し得、平均グレインサイズは、所望する鉄濃度勾配を達成するよう選択され得る。
【0034】
他のパラメータを異ならせることがまた、鉄濃度勾配を異ならせるであろうことが考えられる。鉄濃度勾配及び方向に影響を及ぼすために異ならせ得る他のパラメータの例は、HPHT(高圧及び高温)設定、粒径分布(PSD)、炭化物基盤内の合計金属含有量、ダイヤモンドテーブル内の合計金属含有量、及び掃引方向、つまり、炭化物界面からPCDへの垂直方向の、PCDを保持している耐熱性カップ壁から水平方向の、又は、カップエンドから外部金属掃引源を介しての垂直方向の金属掃引を含む。
【0035】
多結晶質ダイヤモンド成形体及びブランクは、切削、ミリング、研削、削孔、及び他の研磨作業、並びに金属切削の用途において広く使用されており、多結晶質ダイヤモンド成形体及びカッターは、地質学的形成層の削孔の用途において広く使用されている。
【0036】
例えば、ドリルビットなどの、金属加工産業において使用されているツールは、多結晶質ダイヤモンド成形体又は多結晶質ダイヤモンドブランクを組み込み得る。図8に示すものは、次の3つのドリルビット例、つまり、中実シャフトのラウンドツール600aの斜視図と、らせん状のフルートのあるドリルビット600bの側面図と、らせん状のフルートのあるドリルビット600cの斜視図と、である。ドリルビットのそれぞれは、例えば、炭化タングステン製の合金ボディ610を含む。合金ボディ610は、前端620と、シャフト部位630と、ツールホルダに載置されるよう適合されている後端640と、を含む。前端620と、シャフト部位630と、後端640と、は、ボディの縦方向軸650に沿って連続して配置されている。ドリルビットは、前端620に取り付けられている多結晶質ダイヤモンド成形体660を含む。多結晶質ダイヤモンド成形体660は、ろう付け又はいくつかの他のアタッチメント技術により取り付けられ得る、又は、合金ボディ610と一体に形成され得る。ヘリカルフルート670が、ラウンドツール600b及び600cの例により見られるように、任意に提供され得る。それらのラウンドツールの例は、例えば、航空宇宙産業における、アルミニウム、チタン、及びそれらの合金製ワークピースの、並びに、複合材料のワークピースの加工のために使用される。
【0037】
また、例えば、ドラグビット700(図9を参照されたい)などの、削孔産業において使用されているツールはしばしば、複数の多結晶質ダイヤモンドカッター又は多結晶質ダイヤモンド成形体を組み込んでいる。例示的な実施形態では、ドラグビット700は、合金ボディ720であって、そのボディ720の縦方向軸760に沿って連続して配置されている、前端730と、ショルダ領域740と、スレッド状の後端750と、を含む合金ボディ720を有する。ドラグビット700は、前端730の外面に沿って配置されている複数のフィン770(ブレードとも時に呼ばれる)を有する。フィン770のそれぞれは、連続して隣接するフィン770から、後方に伸長する、らせん状に形成されているフルート780により分け隔てられている。追加的に、フィン770の外縁領域に沿って配置されているものは、複数の多結晶質ダイヤモンドカッター710である。図9には示していないが、多結晶質ダイヤモンドカッター710は、多結晶質ダイヤモンド成形体により置き換えられ得る。各例では、多結晶質ダイヤモンドカッター又は多結晶質ダイヤモンド成形体であろうとなかろうと、ダイヤモンドテーブルは、多結晶質ダイヤモンドカッターについては、界面からダイヤモンドボディの塊内部へと伸長しているダイヤモンドボディ内の鉄濃度勾配、及び、多結晶質ダイヤモンド成形体については、ダイヤモンドボディの外面からダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している鉄濃度勾配を含む、ここに説明する特徴及び性質を有する。
【0038】
断続ミリングテストが、フェイスミリングマシンと、Alと6%のSiとの合金のワークピースと、を使用して行われた。界面からダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している、ダイヤモンドボディ内の鉄濃度勾配を含む、ここに説明する特徴及び性質を有する多結晶質ダイヤモンドブランクのサンプルが、断続ミリングテストにてテストされた。界面からダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している、ダイヤモンドボディ内の鉄濃度勾配のない多結晶質ダイヤモンドブランクのサンプルが、断続ミリングテストにおけるコントロールとして使用された。断続ミリングテストについてのツールテスト条件の詳細を表2に示す。
【0039】
表2-断続ミリングテストについてのツールテスト条件の詳細
【0040】
断続ミリングテストが330パス行われ、その後、サンプルがミリングテストから取り出され、光学顕微鏡を使用してフランク摩耗が測定された。図10は、断続ミリングテストからの結果を示すグラフ800である。図10では、Y軸が、(a)界面からダイヤモンドボディの塊内部へと伸長している、ダイヤモンドボディ内の鉄濃度勾配を伴う2つの本発明の多結晶質ダイヤモンドツール810、820と、(b)ダイヤモンドボディ内の鉄濃度勾配のない、比較例の多結晶質ダイヤモンドブランクツールインサート830と、についてのツール摩耗を示す。本発明の多結晶質ダイヤモンドブランクツールインサート810、820、同様に、Feの勾配のないツールは、0.5から3ミクロンの平均グレインサイズを有する結晶質ダイヤモンドグレインを用いた、同じグレードのダイヤモンドフィードを使用して製造された。本発明の多結晶質ダイヤモンドツール810及び820についての図10の結果は、24から26ミクロンであり、比較例の多結晶質ダイヤモンドツール830についての図10の結果は、95ミクロンであった。
【0041】
図11A及び図11Bは、開示するブランクを組み込んで作成され得る切削ツールの追加的な例を模式的に示す。これらの切削ツールの例は、多結晶質ダイヤモンドブランク900(チップとも時に呼ばれる)と、多結晶質ダイヤモンドブランク900から形成された少なくとも一部を有する切削ツール970と、の形態にて示されている。例えば、ここに示す多結晶質ダイヤモンドブランク900は、炭化タングステンなどの材料から形成された基盤920と、外側作業層930とそれらの間に配置されている中間層940とを含むダイヤモンドボディ910と、を含む。ダイヤモンドボディ910、典型的には、中間層940は、基盤920に結合されている。好ましくは、外側作業層930は、0.4mmと0.6mmとの間の厚さを有することとなる。ここに示す例では、ダイヤモンドボディ910と基盤920との間の、多結晶質ダイヤモンドブランク900の界面950は平面ではなく、平面を含め、他の界面ジオメトリ及び表面が使用され得る。ここに示す例では、界面950は、アーチを含み、これらは、基盤920の波形表面を形成し、好ましくは、その高さが、0.4と0.6mmの間にある。アーチ960と外側作業層930との間に十分な間隔を維持するため、中間層940は、その最も薄い点(波形表面のピーク上)にて少なくとも0.15から0.2mmであるべきであり、典型的には、その最も厚い点にて、0.5と0.6mmとの間にあるべきである。図11Bは、切削ツール900の例、つまり、基盤960に取り付けられており、切削ツールインサート970を形成するチップを模式的に示す。チップは、例えば、そのチップを、基盤960の座面にろう付けすることにより取り付けられ得る。切削ツールの第1の側から切削ツールインサート970の第2の側まで伸長している孔980などの、任意の載置的特徴は、切削ツールインサート970を、ミリングツール(図示せず)などの加工ツールに載置するための、スクリュなどのファスナを受容するよう構成され得る。図11A及び図11Bでは、多結晶質ダイヤモンドブランク900、つまり、チップは、三角形の形状だが、円形、楕円形、及び多角形を含む他のジオメトリが使用され得る。
【0042】
特に、図4図5Aから図5B図6から図7、及び図10に関連する特性、画像、及び結果は、多結晶質ダイヤモンドブランクについてのものであることに留意されたい。しかし、ダイヤモンドテーブルの組成及び組成分析についての同様の結果が、多結晶質ダイヤモンド成形体についても得られることが予期されるであろう。それぞれの場合では、鉄含有量は、ダイヤモンドボディの表面からダイヤモンドボディの塊内部へと判定される。多結晶質ダイヤモンドブランクの場合については、表面は、ダイヤモンドテーブルと基盤との間の界面と一致しており、多結晶質ダイヤモンド成形体の場合については、表面は外面であり、そこからHPHT掃引が生じ、HPHT処理中にダイヤモンドテーブルがまとめられる。追加的に、多結晶質ダイヤモンドブランクに関する考察及び結果はまた、多結晶質ダイヤモンドカッターに当てはめることが可能であり、適用可能である。
【0043】
一般的に、ここに開示する多結晶質ダイヤモンド成形体、多結晶質ダイヤモンドブランク、及び多結晶質ダイヤモンドカッターのダイヤモンドテーブルは、金属触媒(コバルト、Coなど)が存在する高圧高温(HPHT)条件下にてダイヤモンド粒子を焼結することにより形成され得る。金属触媒は、ダイヤモンド粒子に混ぜ合わせた、又は、ダイヤモンド粒子に隣接する層内の金属触媒粉末などの、独立したソースから、又は、下記の基盤材料から生じ得る。典型的なHPHT条件は、約4GPa以上の圧力と、約1400℃以上の温度と、を含む。典型的には、HPHT処理条件下で、独立したソースに、又は、ダイヤモンドの粉末に隣接して配置されている基盤(典型的には、焼結炭化物基盤)に存在するバインダー材料は溶解し、ダイヤモンドの塊に掃引される。基盤が存在するのであれば、基盤のバインダー材料は、ダイヤモンドの粉末において金属触媒として作用し得る。金属触媒の存在下で、ダイヤモンドの結晶は、溶解沈殿プロセスによるダイヤモンド間結合において互いに結合し、焼結した成形体を形成し、ここでは、多結晶質ダイヤモンドの塊、つまり、ダイヤモンドテーブルが、基盤(存在する場合)に取り付けられて形成される。金属触媒の存在は、ダイヤモンド間結合の形成、及び、適用可能であれば、ダイヤモンドテーブルの基盤への付着を促進する。
【0044】
特定の実施形態では、ダイヤモンド粒子が、ダイヤモンドフィード内に含まれる。ダイヤモンドフィードは、90から99重量%のダイヤモンド粒子と、1から10重量%のコバルト鉄合金と、を含む。コバルト鉄合金は、例えば、ダイヤモンドフィードを、ダイヤモンド粒子とコバルト鉄合金との双方とともにボールミリングすることにより、ダイヤモンドフィードにおいて均質に分布している。いくつかの実施形態では、ダイヤモンドフィード内のダイヤモンド粒子は、3ミクロン又は30ミクロンの平均直径を有する。他の実施形態では、ダイヤモンドフィード内のダイヤモンド粒子は、他の平均直径を有する。例えば、ダイヤモンド粒子は、1から40ミクロン、代替的に、3から40ミクロン、代替的に、25から30ミクロン、代替的に、1から25ミクロン、代替的に、3から25ミクロン、代替的に、1.5から3.0ミクロンの平均直径を有し得る。代替的な実施形態では、平均直径はユニモーダル又はマルチモーダルであり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、コバルト鉄合金はCoFeであり、0.6≦x≦0.8、0.2≦y≦0.4、及びx+y=1.0である。代替的に、コバルト鉄合金はCoFeであり、0.68≦x≦0.72、0.28≦y≦0.32、及びx+y=1.0である。さらに他の代替的な実施形態では、コバルト鉄合金はCoFeであり、x=0.7及びy=0.3である。
【0046】
ダイヤモンドフィードは、アセンブリを形成するために使用され、これは続いて、ダイヤモンドフィードをダイヤモンドボディへと焼結するのに十分な高温及び高圧でのHPHT処理を経る。アセンブリは、ダイヤモンド触媒源と、耐熱性容器内に収められたダイヤモンド触媒源と接触しているダイヤモンドフィードの層と、を含む。アセンブリを形成することは、耐熱性容器の内容物上にキャップを配置して、圧着することなどによりこれを密封することにより継続する。
【0047】
多結晶質ダイヤモンド成形体を形成する場合、ダイヤモンド触媒源は、ダイヤモンド粒子に混ぜ合わせた金属触媒粉末、又は、ダイヤモンド粒子に隣接する金属触媒粉末の層とすることができる。金属触媒粉末の例は、Coベースの組成を有し、鉄を含んでいない。開示する多結晶質ダイヤモンド成形体を形成するための金属触媒粉末としての使用に適する、特定の鉄を含んでいないCoベースの組成は、金属コバルトを約0.1から5重量%のフィードにて添加した、焼結炭化物又はコバルト焼結炭化タングステン(WC-Co)である。
【0048】
多結晶質ダイヤモンドブランク又は多結晶質ダイヤモンドカッターを形成する場合、ダイヤモンド触媒源は、ダイヤモンド粒子に隣接して配置されている基盤材料とすることができる。基盤材料の例は、Coベースの組成を有し、鉄を含んでいない。開示する多結晶質ダイヤモンドブランク又はカッターを形成するための基盤としての使用に適する、特定の鉄を含んでいないCoベースの組成は、基盤内のコバルト含有量が5から15重量%に広がる焼結炭化物又はコバルト焼結炭化タングステン(WC-Co)の基盤である。
【0049】
HPHT焼結プロセス後にダイヤモンドテーブル内に残る金属触媒は、切削又は加工の用途において使用される場合に、又は、地下の地質学的形成層を削孔する場合に、多結晶質ダイヤモンドの性能を損なうものとなり得る。したがって、HPHT焼結プロセス後にダイヤモンドテーブル内に残る金属触媒は、任意に、後続の浸出プロセスにおいて除去され得る。浸出プロセスでは、ダイヤモンドボディの少なくとも一部位が、王水(硝酸及び塩酸の、最も好適には、1:3のモル比での混合物)などの、金属触媒の溶解に適している酸にさらされる。この酸にさらされる、ダイヤモンドボディの一部位内の触媒材料は、浸出プロセスにより除去され、ダイヤモンドボディの酸が浸出した部位において、実質的に触媒材料のないグレイン間領域が残る。当業者に知られるように、少なくとも部分的な触媒材料の除去は、熱安定性が向上した多結晶質ダイヤモンド材を提供し得、これはまた、多結晶質ダイヤモンド材の耐摩耗性に有益に作用し得る。ダイヤモンドボディに酸が浸出した部位がある場合、これは、作業面から、ダイヤモンドボディの塊内部へと伸長する。
【0050】
本発明を、その実施形態に関連付けて説明してきたが、ここに具体的に説明しない追加、削除、改変、及び置き換えが、添付の特許請求の範囲に画定する本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われてよいということが、当業者に理解されるであろう。例えば、核分裂性燃料物質、原子炉、及び関連付けられている構成要素に関連して説明したが、ここに説明する原理、組成、構造、特徴、構成、及びプロセスはまた、他の材料、他の組成、他の構造、他の特徴、他の構成、及び他のプロセス、同様に、それらの製造及び他の反応炉タイプにも適用できる。
【0051】
ここでの実質的な複数形及び/又は単数形のいずれかの使用に関して、当業者であれば、複数形から単数形に、及び/又は、単数形から複数形に、そのコンテキスト及び/又は用途に適切に変換できるであろう。単数形/複数形を様々に置き換えることは、明確さのために、ここでははっきりと明記していない。
【0052】
ここに説明する主題は時に、異なる他の構成要素内に含まれる異なる構成要素、又は、それらに関連する構成要素を示す。そのように描くアーキテクチャは単に例示的なものであり、事実、多くの他のアーキテクチャが実装されて、同じ機能を達成し得ることが理解されるであろう。概念的な意味では、同じ機能を達成するための構成要素のいずれの構成は、所望する機能が達成されるよう、効果的に「関連付けられる」。したがって、特定の機能を達成するためにここで組み合わされるいずれの2つの構成要素は、アーキテクチャ又は中間構成要素に関係なく、所望する機能が達成されるよう、互いに「関連付けられている」ものと見ることができる。同様に、そのように関連付けられているいずれの2つの構成要素はまた、所望する機能を達成するために、互いに「作動可能に接続されている(operably connected)」又は「作動可能に結合されている(operably coupled)」ものと見ることができ、そのように関連付けることが可能ないずれの2つの構成要素はまた、所望する機能を達成するために、互いに「作動可能に結合可能な(operably couplable)」ものと見ることができる。作動可能に結合可能なものの具体的な例は、物理的に結合可能及び/又は物理的に相互に作用する構成要素、及び/又は、無線により相互作用可能及び/又は無線により相互に作用する構成要素、及び/又は、論理的に相互に作用する及び/又は論理的に相互作用可能な構成要素を含むが、これらに限定されない。
【0053】
いくつかの例では、1つ又はそれ以上の構成要素はここでは、「よう構成されている(configured to)」、「より構成されている(configured by)」、「よう構成可能である(configurable to)」、「よう作動可能/作動する(operable/operative to)」、「適合されている/適合可能な(adapted/adaptable)」、「可能である(able to)」、「よう順応可能/順応されている(conformable/conformed to)」、などと表現されてよい。当業者であれば、そのような用語(例えば、「よう構成されている(configured to)」)は一般的に、アクティブな状態にある構成要素、及び/又は、アクティブでない状態にある構成要素、及び/又は、スタンバイ状態にある構成要素を、コンテキストが特に必要としない限り、包含できることを理解するであろう。
【0054】
ここに説明する本主題の特定の態様を示して説明してきた一方で、ここでの教示に基づき、ここに説明する本主題及びその広範な態様から逸脱しない変更及び改変が行われてよいことが、当業者には明白となり、したがって、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲内において、そのような変更及び改変のすべてを、それらが、ここに説明する本主題の精神及び範囲そのままの中にあるものとして、包含するものである。一般的に、ここで使用される、特に、添付の特許請求の範囲において使用される用語(例えば、特許請求の範囲の本文)は一般的に、「開かれた(open)」用語(例えば、用語「含む(including)」は、「含むが、限定されない(including but not limited to)」として解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する(having at least)」として解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「含むが、限定されない(includes but is not limited to)」として解釈されるべきである、など)として意図されていることが、当業者に理解されるであろう。導入されている特定の数の特許請求の範囲の記述が意図されている場合、そのような意図は、それらの特許請求の範囲において明示的に記述され、そのような記述がなければ、そのような意図がない、ということが、当業者にさらに理解されるであろう。例えば、理解を助けるものとして、以下に添付する特許請求の範囲は、前置きとしてのフレーズ「少なくとも1つ(at least one)」及び「1つ又はそれ以上(one or more)」の使用を含み、特許請求の範囲の記述を導入する場合がある。しかし、そのようなフレーズの使用は、不定冠詞「a」又は「an」による特許請求の範囲の記述の導入が、そのように導入された特許請求の範囲の記述を含むいずれの特定の特許請求の範囲を、1つのそのような記述のみを含む特許請求の範囲に、たとえ同特許請求の範囲が、前置きとしてのフレーズ「1つ又はそれ以上(one or more)」又は「少なくとも1つ(at least one)」及び、「a」又は「an」(例えば、「a」及び/又は「an」は典型的には、「少なくとも1つ(at least one)」又は「1つ又はそれ以上(one or more)」を意味するものと解釈されるべきである)などの不定冠詞を含んでも、限定することを暗示するものとして理解されるべきではない。これは、特許請求の範囲の記述を導入するために使用される定冠詞の使用についても、同じことが言える。加えて、導入されている特定の数の特許請求の範囲の記述が、明示的に記述されていても、当業者であれば、そのような記述は、典型的には、少なくとも記述されている数(例えば、他の修飾語句のない、「2つの記述」の単なる記述は、典型的には、少なくとも2つの記述、又は、2つ又はそれ以上の記述を意味する)を意味するものと解釈されるべきであることを理解するであろう。さらに、「A、B、及びC、などの少なくとも1つ(at least one of A, B, and C, etc.)」に類似する従来の表現が使用されるそれらの例では、一般的に、そのような構造が、当業者であれば、その従来の表現(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有するシステム(a system having at least one of A, B, and C)」は、Aを単体で、Bを単体で、Cを単体で、A及びBをともに、A及びCをともに、B及びCをともに、及び/又は、A、B、及びCをともに、など、を有するシステムを含むこととなるが、これに限定されない)を理解するであろうという意味において、意図されている。「A、B、又はC、などの少なくとも1つ(at least one of A, B, or C, etc.)」に類似する従来の表現が使用されるそれらの例では、一般的に、そのような構造が、当業者であれば、その従来の表現(例えば、「A、B、又はCの少なくとも1つを有するシステム(a system having at least one of A, B, or C)」は、Aを単体で、Bを単体で、Cを単体で、A及びBをともに、A及びCをともに、B及びCをともに、及び/又は、A、B、及びCをともに、など、を有するシステムを含むこととなるが、これに限定されない)を理解するであろうという意味において、意図されている。典型的には、2つ又はそれ以上の代替的な用語を提示する離接語及び/又はフレーズは、本明細書、特許請求の範囲、又は図面であっても、それらの用語の1つ、それらの用語のどちらか、又は、それらの用語の双方を含む可能性が、コンテキストが特に指示しない限り、考えられるものと理解されるべきであることが、当業者にさらに理解されるであろう。例えば、フレーズ「A又はB(A or B)」は、典型的には、「A」若しくは「B」又は「A及びB(A and B)」の可能性を含むものとして理解されるであろう。
【0055】
添付の特許請求の範囲に関して、ここに記述されている作動は一般的に、いずれの順序にて行われてよいことを、当業者は理解するであろう。また、様々な作動フローを単一又は複数の順序にて提示したが、これらの様々な作動は、ここに示すそれら以外の他の順序にて行われてよい、又は、同時に行われてよいことが理解されるべきである。そのような代替的な順序の例は、重複、交互、中断、並べ替え、増分、予備的、補助的、同時、反転、又は他の変形例の順序を、コンテキストが特に指示しない限り、含み得る。さらに、「対応する(responsive to)」、「関連する(related to)」、又は他の過去形の形容詞といった用語は一般的に、コンテキストが特に指示しない限り、そのような変形例を除外することが意図されていない。
【0056】
先の特定の例示的プロセス及び/又はデバイス及び/又は技術は、本明細書とともに出願される特許請求の範囲などの、本明細書中の該当箇所及び/又は本出願の該当箇所にて教示する、より一般的なプロセス及び/又はデバイス及び/又は技術を表すものであることを、当業者であれば理解するであろう。
【0057】
様々な態様及び実施形態をここに開示してきたが、他の態様及び実施形態を、当業者は理解するであろう。ここに開示する様々な態様及び実施形態は、以下の特許請求の範囲により示される範囲及び精神そのままに、説明を目的としており、制限を意図していない。
【0058】
発明を実施するための形態、図面、及び特許請求の範囲に説明する例示的実施形態は、制限を意味するものではない。ここに提示する主題の精神又は範囲を逸脱することなく、他の実施形態が利用されてよく、他の変更が行われてよい。
【0059】
ここに説明する構成要素(例えば、作動)、デバイス、対象物、及び、それらに付随する考察は、概念の明確さのために、例として使用され、様々な構成の改変が考えられることを、当業者は理解するであろう。その結果として、ここで使用するように、ここに明記する特定の例及び付随する考察は、それらのより一般的なクラスを表すものとなることが意図されている。一般的に、いずれの特定の例の使用は、そのクラスを表すものとなることが意図されており、特定の構成要素(例えば、作動)、デバイス、及び物体を含まないことは、限定とみなすべきではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
【国際調査報告】