(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(54)【発明の名称】透過性の評価に有用な技術
(51)【国際特許分類】
G01N 33/15 20060101AFI20230203BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20230203BHJP
C12Q 1/48 20060101ALI20230203BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20230203BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
C12Q1/34 ZNA
C12Q1/48
G01N27/62 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535122
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 US2020064685
(87)【国際公開番号】W WO2021119537
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520079027
【氏名又は名称】フォグ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャンドク, アムリタ シン
(72)【発明者】
【氏名】マドセン, ジェイムズ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ユエ-メイ
(72)【発明者】
【氏名】マギー, ジョン ハニー
(72)【発明者】
【氏名】フェッケス, マルコ ピーター
【テーマコード(参考)】
2G041
4B063
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA10
2G041GA09
2G041JA02
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ61
4B063QR06
4B063QR10
4B063QR58
4B063QR77
4B063QX02
(57)【要約】
一部の実施形態では、本発明は、動物細胞の細胞膜を横断する化合物の同定のための方法および試薬に関する。一部の実施形態では、本発明は、動物細胞膜を横断する候補化合物が、細胞内標的をモジュレートすることができるか決定するための追加的な方法、ならびに開示されている方法を行うための試薬およびキットを提供する。とりわけ、本開示は、本明細書に記載されている様々な技術、例えば、薬剤、方法、複合体等を提供する。一部の実施形態では、提供される技術は、薬剤によるバリア通過の評価に有用である。一部の実施形態では、提供される技術は、バリア、例えば、細胞膜を越えた薬剤の透過性の評価に有用である。一部の実施形態では、提供される技術は、薬剤の膜浸透の評価に有用である。一部の実施形態では、提供される技術は、バリア、例えば、細胞膜を通過することができる薬剤、例えば、候補化合物の同定に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤をバリアと接触させるステップと、
前記バリアを通過した薬剤から形成された生成物薬剤を検出するステップと
を含む方法であって、前記薬剤および前記生成物薬剤のそれぞれが独立して、足場薬剤部分を含む、方法。
【請求項2】
足場薬剤が、ステープル留めされたペプチドであるまたはこれを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
薬剤が、R
B-L-FG2またはその塩の構造を有し、ここで、R
Bが、足場薬剤部分であり、FG2が、官能基であり、Lが、共有結合であるか、または1もしくは複数の脂肪族部分、アリール部分、それぞれ独立して1~10個のヘテロ原子を有するヘテロ脂肪族部分、それぞれ独立して1~10個のヘテロ原子を有するヘテロ芳香族部分またはそのような部分の1もしくは複数の組合せを含む二価の必要に応じて置換された直鎖状または分岐状C
1~30基であり、前記基の1または複数のメチレン単位は、C
1~6アルキレン、C
1~6アルケニレン、1~5個のヘテロ原子を有する二価C
1~6ヘテロ脂肪族基、-C≡C-、-N=N-、-Cy-、-C(R’)
2-、-O-、-S-、-S-S-、-N(R’)-、-Si(R’)
2-、-C(O)-、-C(S)-、-C(NR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)C(R’)
2N(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)-、-S(O)
2-、-S(O)
2N(R’)-、-C(O)S-、-C(O)O-、アミノ酸残基または-[(-O-C(R’)
2-C(R’)
2-)
n]-(式中、nは、1~20である)により必要に応じてかつ独立して置き換えられており、
各-Cy-は独立して、必要に応じて置換された二価単環式、二環式または多環式基であり、各単環式環は、C
3~20脂環式環、C
6~20アリール環、1~10個のヘテロ原子を有する5~20員のヘテロアリール環、および1~10個のヘテロ原子を有する3~20員のヘテロシクリル環から独立して選択され、
各R’は独立して、-R、-OR、-C(O)R、-CO
2Rまたは-SO
2Rであり、
各Rは独立して、-H、あるいはC
1~20脂肪族、1~10個のヘテロ原子を有するC
1~20ヘテロ脂肪族、C
6~20アリール、C
6~20アリール脂肪族、1~10個のヘテロ原子を有するC
6~20アリールヘテロ脂肪族、1~10個のヘテロ原子を有する5~20員のヘテロアリール、および1~10個のヘテロ原子を有する3~20員のヘテロシクリルから選択される必要に応じて置換された基であるか、または
2個のR基は、必要に応じてかつ独立して、一緒になって、共有結合を形成するか、または
同じ原子上の2個もしくはそれよりも多いR基は、必要に応じてかつ独立して、前記原子と一緒になって、前記原子に加えて0~10個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された3~20員の単環式、二環式または多環式環を形成するか、または
2個もしくはそれよりも多い原子上の2個もしくはそれよりも多いR基は、必要に応じてかつ独立して、それらの介在原子と一緒になって、前記介在する原子に加えて0~10個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された3~30員の単環式、二環式または多環式環を形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
R
Bが、ステープル留めされたペプチド部分であるまたはこれを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
FG2が、-Clである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Lが、-(CH
2)
4-であるまたはこれを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
-L-FG2が、Cl-(CH
2)
6O(CH
2)
2O(CH
2)2NHC(O)(CH
2)
2C(O)-である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
バリアが、細胞膜であるまたはこれを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
バリアが、細胞の単層であるまたはこれを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
生成物薬剤および薬剤が、同じ足場部分またはその特徴的な一部分を共有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記生成物薬剤が、R
P-L-FG3またはその塩の構造を有し、R
Pが、ステープル留めされたペプチド部分であるまたはこれを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
FG3が、-OHであるまたはこれを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Lが、-(CH
2)
4-であるまたはこれを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
-L-FG3が、HO-(CH
2)
6O(CH
2)
2O(CH
2)2NHC(O)(CH
2)
2C(O)-である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の薬剤をバリアと接触させるステップ;および/または
前記バリアを通過した薬剤から形成された複数の生成物薬剤を検出するステップ
を含む方法。
【請求項16】
前記複数の薬剤が、ライブラリーの薬剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のうちの各薬剤が独立して、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のうちの各生成物薬剤が独立して、請求項11~14のいずれか一項に記載の生成物薬剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項5~7または12~14のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項20】
請求項6~7または13~14のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項21】
動物細胞膜を横断する1または複数の候補化合物を同定するための方法であって、
第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層を用意するステップであって、前記第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、
別個の候補化合物のそれぞれが結合部分に取り付けられた複数の別個の候補化合物を、前記リン脂質二重層を横断する前記複数のうちの別個の候補化合物のそれぞれが、前記第1の領域に進入し、前記第1の領域において前記別個の候補化合物に取り付けられた前記結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により前記捕捉分子と複合体を形成する条件下で、前記リン脂質二重層の前記第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップであって、1または複数の複合体が形成される、ステップと、
前記1または複数の複合体を破壊して、それぞれ放出部分に取り付けられた、1または複数の別個の候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、前記結合部分とは異なる、ステップと、
前記放出部分に取り付けられた前記1または複数の別個の候補化合物を、動物細胞膜を横断する1または複数の候補化合物であると同定するステップと
を含む方法。
【請求項22】
候補化合物が動物細胞膜を横断するか決定するための方法であって、
第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層を用意するステップであって、前記第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、
結合部分に取り付けられた前記候補化合物を、前記リン脂質二重層を横断する前記候補化合物が、前記第1の領域に進入し、前記第1の領域において前記候補化合物に取り付けられた前記結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により前記捕捉分子と複合体を形成する条件下で、前記リン脂質二重層の前記第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップと、
前記複合体を破壊して、放出部分に取り付けられた前記候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、前記結合部分とは異なる、ステップと、
前記放出部分に取り付けられた前記候補化合物を、動物細胞膜を横断する化合物であると同定するステップと
を含む方法。
【請求項23】
前記リン脂質二重層が、動物細胞の細胞膜であり、前記第1の領域が、前記動物細胞のサイトゾルである、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記リン脂質二重層が、連続的であり、前記第1の領域が、リポソームの内部である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項25】
前記リン脂質二重層が、連続的であり、前記第1の領域が、動物細胞のサイトゾルである、請求項21または22に記載の方法。
【請求項26】
前記動物細胞が、脊椎動物の細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記脊椎動物が、哺乳動物である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記動物細胞が、核を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記リン脂質二重層が、平面状である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の領域における複合体形成後に、前記第1の領域および前記第2の領域が組み合わされて混合領域が創出されるように、前記リン脂質二重層を破壊するステップをさらに含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項32】
前記結合部分が、前記放出部分よりも質量が大きい、請求項21または22に記載の方法。
【請求項33】
前記結合部分が、前記放出部分よりも質量が小さい、請求項21または22に記載の方法。
【請求項34】
前記放出部分が、前記結合部分の少なくとも1個の原子を少なくとも1個の異なる原子に置き換えることによって創出される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項35】
前記複合体が、11.0またはそれよりも高いpHを有する環境に前記複合体を曝露することによって破壊される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項36】
前記同定ステップが、質量分析による解析によるものである、請求項21または22に記載の方法。
【請求項37】
前記同定ステップが、エドマン分解解析によるものである、請求項21または22に記載の方法。
【請求項38】
前記候補化合物が、ペプチドを含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項39】
前記ペプチドが、ステープル留めされたペプチド、合成ペプチド、縫合されたペプチド、および前述のうち2種またはそれよりも多くの組合せからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ペプチドが、アルファヘリックスターンを含む、これから本質的になるまたはこれからなる、請求項37または38に記載の方法。
【請求項41】
前記候補化合物が、前記ペプチドにおけるアルファヘリックスターンを安定化する小分子足場をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記捕捉分子が、化学的に切断可能なリンカーおよび官能基を含むリンカーを含み、前記官能基が、候補化合物に取り付けられた結合部分の少なくとも一部分に共有結合により結合することができる、請求項21または22に記載の方法。
【請求項43】
前記捕捉分子が、ハロアルカンデハロゲナーゼの変異体形態を含み、これから本質的になりまたはこれからなり、前記変異体形態が、ヒドロラーゼ活性を欠く、請求項21または22に記載の方法。
【請求項44】
前記捕捉分子が、ベンジルグアニン誘導体およびO
2-ベンジルシトシン誘導体からなる群から選択される基と共有結合を形成する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項45】
前記捕捉分子が、O
6-アルキルグアニン-DNAアルキルトランスフェラーゼの変異体形態を含む、これから本質的になるまたはこれからなる、請求項21または22に記載の方法。
【請求項46】
候補化合物が動物細胞膜を横断するか同定するためのキットであって、
第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層であって、前記第1の側面が、第1の領域を画定する、リン脂質二重層、
前記第1の領域に配備するための1種もしくは複数の捕捉分子、
候補化合物に共有結合により取り付けるための結合部分であって、前記小分子リンカーが、前記第1の領域において前記捕捉分子と共有結合を形成して、複合体を形成することができる、結合部分、
前記複合体を破壊して、前記候補化合物に取り付けられた放出部分を創出するための試薬、および/または
前記結合部分を前記候補化合物に取り付け、前記放出部分に取り付けられた前記候補化合物を同定することについての使用説明書
を含むキット。
【請求項47】
本開示の、または実施形態1~229のいずれか一つの、方法、薬剤、組成物、システム、化合物、タンパク質、ポリペプチド、細胞またはステープル留めされたペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年12月11日に出願された米国特許仮出願第62/946,736号に対する優先権を主張するものであり、この仮出願の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
本発明は、生物学および化学、特に、細胞生物学および生化学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
過去30年間にわたり、細胞内機構について、また、このような機構がどのように、細胞の作用を促すシグナルを伝達するかについての理解が深まった。例えば、細胞内シグナル伝達は、細胞表面から核へと、およびその逆もまた同様に、シグナルを迅速に伝達し、細胞増殖、アポトーシス、分化、および遺伝子発現の変化を含む細胞活性をもたらすことができる。このような理解の深まりによって、刺激および/または阻害されることにより、細胞が作用する様式を変化させ得る細胞内分子(例えば、タンパク質)の同定が為された。時として、細胞内標的の刺激は、当該標的に対する変異または他の損傷の結果となることがある。例えば、細胞内分子β-カテニンの変異および過剰発現は、多くのがんに関連する。
【0004】
細胞内のシグナル伝達における細胞内分子の重要性は、数十年来公知であったが、特定の細胞内分子を特異的に標的化して、当該分子の挙動に影響を与え、よって、細胞の活性に影響を与えることができる薬剤を同定することは困難な課題であった。斯かる薬剤を同定することの困難な課題の1つは、特定の標的(例えば、Rasタンパク質)に特異的に結合する薬剤が、自身の標的が存在する細胞内空間にアクセスするために、細胞の膜を横断することができるようになるか否か予測することが困難であることであった。
【0005】
非植物真核細胞の細胞膜は、時として、原形質膜と呼ばれる。細胞膜は、細胞の内部を細胞外環境(例えば、間質性空間、およびその中に存在する流体)から分離する、脂質の二重層である。細胞膜における脂質は、典型的に、リン脂質である。リン脂質は、疎水性(水をはじく)脂肪酸尾部と共に、親水性(水を好む)リン酸頭部を有する。二重層において、リン脂質分子は、疎水性尾部が内側に向かい、親水性頭部が外側に面するように配置される。リン脂質のこの二重層は、リン脂質二重層と呼ばれる(
図1を参照)。
図1における細胞膜は、描写されている膜の細胞内側において細胞の細胞質を取り囲み、膜の細胞外側は、それに応じて標識されることになる。細胞膜は、二重層膜の全体または一部を貫通するタンパク質等の分子と共にリン脂質二重層で構成される。例えば、イオンチャネル等のいくつかの分子は、膜全体にまたがり、一部分は細胞の内部に曝露され、他の部分は細胞外表面に曝露される。他の分子は、原形質膜の内部層に取り付けられ、その中に部分的に含有されることがあり、しかし膜を貫通せず、よって、細胞外空間に突出しない。
【0006】
その複雑さを考慮すると、分子が、当該分子が特異的に結合するであろう細胞内標的に到達するために細胞膜を横断することができるようになるか知ることは困難である。
【0007】
よって、細胞膜を横断して細胞内標的にアクセスすることができる、細胞内標的特異的薬剤を同定するための方法を発見する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
とりわけ、本開示は、薬剤によるバリア通過(例えば、細胞膜通過)を評価するための技術を提供する。一部の実施形態では、本開示は、第1の薬剤(例えば、本明細書に記載されている捕捉分子)と第2の薬剤(例えば、本明細書に記載されている結合部分に連結された候補化合物)との相互作用を評価するための技術を提供する。一部の実施形態では、第1の薬剤、例えば、捕捉分子は、バリア(本明細書に記載されている膜、層等)によって領域(例えば、本明細書に記載されている第1の領域)中に限定される。一部の実施形態では、第1の薬剤は、細胞内にある。一部の実施形態では、第1の薬剤は、リポソーム内にある。様々な実施形態では、第1の薬剤は、バリアを通過しない、または非常に低レベルで通過して、第1の薬剤と接触する。一部の実施形態では、バリアの通過後に、第2の薬剤等の薬剤は、一部の実施形態では、共有結合による連結によって、第1の薬剤と複合体を形成する。斯かる複合体は、多くの伝統的な技術の場合と同様に、第2の薬剤のバリア通過、ならびに/または第1および第2の薬剤の間の相互作用の評価に利用することができる。一部の実施形態では、バリアの通過後に、薬剤、例えば、第2の薬剤は、検出に利用され得る異なる特性および/または構造を保有する対応する生成物薬剤(例えば、第2の薬剤の生成物薬剤)に変換される。とりわけ、本開示は、第2の薬剤の斯かる生成物薬剤の利用が、検出および/または評価の感度、精度および/または効率を大幅に改善することができることを実証する。一部の実施形態では、複数の薬剤(例えば、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、100、150、200種またはそれよりも多く)を同時にハイスループットで評価することができ、一部の実施形態では、例えば、本明細書に記載されている質量分析と組み合わされる場合、同時に、必要に応じて単一の組成物において投与することができる。
【0009】
一部の実施形態では、第1の薬剤は、本明細書に記載されている捕捉分子であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、第1の薬剤は、本明細書に記載されている捕捉分子である。一部の実施形態では、第1の薬剤、例えば、捕捉分子は、巨大分子薬剤、例えば、タンパク質であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、第1の薬剤は、ポリペプチド部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、酵素である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、結合部分、例えば、第2の薬剤の結合部分の標的である。一部の実施形態では、第1の薬剤は、リンカーを介して第1の薬剤の残りに必要に応じて連結された官能基であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、官能基は、例えばポリペプチドの、アミノ酸残基(例えば、Asp、Glu等の酸性アミノ酸(acid amino)残基)である。一部の実施形態では、第1の薬剤は、官能基およびリンカーを含む。一部の実施形態では、第1の薬剤におけるリンカーは、化学的に切断可能なリンカー(CCL)であるまたはこれを含む。様々な第1の薬剤およびその組成物が、本明細書に記載されている。一部の実施形態では、提供される薬剤は、第1の薬剤である。
【0010】
一部の実施形態では、第2の薬剤は、本明細書に記載されている候補化合物であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、第2の薬剤は、本明細書に記載されている結合部分に連結された候補化合物である。一部の実施形態では、第2の薬剤は、第1の薬剤と相互作用することができる結合部分を含む。一部の実施形態では、結合部分は、接触後に第1の薬剤に結合する。一部の実施形態では、結合部分は、接触後に第1の薬剤と共有結合による連結を形成することができる。一部の実施形態では、結合部分は、官能基および必要に応じてリンカーであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、結合部分は、官能基およびリンカーであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、結合部分は、官能基および必要に応じてリンカーであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、結合部分は、官能基およびリンカーであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、例えば第2の薬剤における、リンカーは、化学的に切断可能なリンカー(CCL)であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、第2の薬剤における官能基は、第1の薬剤における官能基に結合する。一部の実施形態では、第1および第2の薬剤における官能基は、第1および第2の薬剤が共有結合により連結されるように互いと反応する。一部の実施形態では、第1および第2の薬剤における官能基の間の反応は、生体直交型反応である。本開示を読んでいる当業者は、本開示に従って様々な生体直交型反応および/または官能基を利用することができることを認めるであろう。一部の実施形態では、第2の薬剤は、足場薬剤部分および結合部分からなるまたはこれを含む。一部の実施形態では、第2の薬剤は、足場薬剤部分、官能基および必要に応じてリンカーからなるまたはこれを含む。一部の実施形態では、第2の薬剤は、足場薬剤部分、第2の官能基およびリンカーからなるまたはこれを含む。一部の実施形態では、足場薬剤は、小分子であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、足場薬剤は、ポリペプチドであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、足場薬剤は、ステープル留めされた(stapled)ペプチドであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、足場薬剤は、核酸であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、足場薬剤は、オリゴヌクレオチドであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、第2の薬剤は、足場薬剤から調製される。多くの実施形態では、第2の薬剤は、足場薬剤から調製されない。例えば、一部の実施形態では、足場薬剤は、ペプチド部分でありまたはこれを含み、その対応する第2の薬剤は、足場薬剤における少なくとも1個のアミノ酸残基を、官能基を含むアミノ酸残基にまたはペプチド合成の際に必要に応じてリンカーを介して官能基に接続され得るアミノ酸残基に置き換えることにより調製される。様々な第2の薬剤およびその組成物が、本明細書に記載されている。一部の実施形態では、提供される薬剤は、第2の薬剤である。
【0011】
様々な薬剤におけるリンカーは独立して、CCLであり得るまたはこれを含むことができる。一部の実施形態では、例えば、-C(O)O-であるまたはこれを含むCCLは、化学的条件、例えば、アルカリ性条件で切断される。一部の実施形態では、切断は、触媒による切断(例えば、金属触媒によって促進される)、酸性切断(例えば、TFAによる
図8Cまたは10%ギ酸による
図8Dに示す通り)、酸化切断、還元切断、光促進性切断(例えば、UV光によってもたらされる切断)等を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2の薬剤におけるCCLの切断は、酵素によって促進される。一部の実施形態では、CCLは、酵素によって切断可能な部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、酵素は、プロテアーゼであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、酵素は、ペプチダーゼであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、酵素は、ヒドロラーゼであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、エステラーゼによって切断可能なエステル基であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、酵素によって認識可能および切断可能なポリペプチド部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、第1の薬剤は、CCLを含み、第2の薬剤は、CCLを含まない。一部の実施形態では、第2の薬剤は、CCLを含み、第1の薬剤は、CCLを含まない。一部の実施形態では、第1および第2の薬剤の両方が独立して、CCLを含む。一部の実施形態では、第1および第2の薬剤のどちらも、CCLを含まない。一部の実施形態では、CCLは、-C(O)-O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、近接ジオールであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、-N=N-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、-Ar-N=N-Ar-でありまたはこれを含み、各Arは独立して、芳香族部分である。一部の実施形態では、CCLは、
図8A~
図8Eに記載されているCCL部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、第1および第2の薬剤の反応によって形成される。例えば、一部の実施形態では、CCLは、第1の薬剤の-COOH官能基(またはその塩もしくは活性化形態)と、第2の薬剤の官能基、例えば、-Cl等の脱離基によって形成される-C(O)-O-であるまたはこれを含む。
【0012】
一部の実施形態では、リンカーは、共有結合である。
【0013】
一部の実施形態では、本開示の薬剤は、接触の際に複合体を形成する。例えば、様々な実施形態では、第1の薬剤および第2の薬剤は、複合体を形成することができる。一部の実施形態では、第1の薬剤および第2の薬剤は、共有結合により連結される。一部の実施形態では、第1の薬剤および第2の薬剤は、共有結合により連結されないが、非共有結合相互作用により複合体を形成する。一部の実施形態では、非共有結合相互作用は、ビオチンとビオチン結合実体、例えば、アビジン、ストレプトアビジン等との相互作用を含む。一部の実施形態では、提供される技術は、斯かる複合体の濃縮を含む。一部の実施形態では、斯かる複合体の濃縮は、ある特定の薬剤、例えば、本明細書に記載されている放出部分を含む薬剤の検出を改善することができる。一部の実施形態では、複合体は、1個のCCLを含む。一部の実施形態では、複合体は、2個のCCLを含む。一部の実施形態では、複合体は、第1の薬剤部分におけるCCLを含む。一部の実施形態では、複合体は、第2の薬剤部分におけるCCLを含む。一部の実施形態では、複合体は独立して、第1の薬剤部分および第2の薬剤部分におけるCCLを含む。
【0014】
本明細書に記載されている通り、様々な実施形態では、薬剤、例えば、第1の薬剤、第2の薬剤等は、例えば、バリア(例えば、細胞膜等の層)の通過後に転換される。一部の実施形態では、第1の薬剤は、生成物薬剤へと転換される。一部の実施形態では、第2の薬剤は、生成物薬剤へと転換される。一部の実施形態では、生成物薬剤は、第1の薬剤の生成物薬剤である。一部の実施形態では、生成物薬剤は、第2の薬剤の生成物薬剤である。一部の実施形態では、生成物薬剤は、第1および/または第2の薬剤における1または複数の基を転換することによって形成される。
【0015】
一部の実施形態では、第1の薬剤の生成物薬剤は、例えば、第1および第2の部分の官能基の反応生成物部分を含む、第2の部分の部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、第1の薬剤の生成物薬剤は、第1の薬剤とは異なる分子質量を有する。一部の実施形態では、第1の薬剤の生成物薬剤は、第1の薬剤とは異なる分子質量を有する。一部の実施形態では、斯かる差は、質量分析によって検出される。
【0016】
一部の実施形態では、第2の薬剤の生成物薬剤は、例えば、第1および第2の部分の官能基の反応生成物部分を含む、第1の部分の部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、第2の薬剤の生成物薬剤は、第2の薬剤とは異なる分子質量を有する。一部の実施形態では、第2の薬剤の生成物薬剤は、第2の薬剤とは異なる分子質量を有する。一部の実施形態では、斯かる差は、質量分析によって検出される。例えば、様々な実施形態では、第2の薬剤の-Clは、生成物薬剤における-OHへと変換される。
【0017】
一部の実施形態では、生成物薬剤は、放出部分を含む。一部の実施形態では、生成物薬剤は、本明細書に記載されている複合体におけるCCLの切断によって形成される。一部の実施形態では、生成物薬剤は、切断後の第1および/または第2の薬剤部分であるまたはこれを含む。
【0018】
一部の実施形態では、生成物薬剤、例えば、第2の薬剤の生成物薬剤は、本明細書に記載されている足場薬剤部分、放出部分、および必要に応じてリンカーからなるまたはこれを含む。一部の実施形態では、生成物薬剤の足場薬剤は、第2の薬剤の足場薬剤と特徴的な構造エレメント(例えば、足場、ペプチド配列、ステープル、またはそれらの1種もしくは複数の特徴的な一部分等)を共有する。一部の実施形態では、生成物薬剤の足場薬剤は、第2の薬剤の足場薬剤と共通足場を共有する。一部の実施形態では、生成物薬剤の足場薬剤は、第2の薬剤の足場薬剤と同じである。一部の実施形態では、放出部分は、官能基とは異なる。例えば、一部の実施形態では、第2の薬剤の生成物の放出部分は、第2の薬剤の官能基とは異なる。一部の実施形態では、放出部分は、-OHである。一部の実施形態では、第2の薬剤の官能基は、-Clである。一部の実施形態では、放出部分は、第1の薬剤の部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、放出部分は、第1および第2の薬剤の反応生成物の部分(例えば、第1および第2の部分における官能基の生成物部分の部分)であるまたはこれを含む。
【0019】
一部の実施形態では、第2の薬剤の生成物薬剤および第2の薬剤は、同じ足場薬剤部分または特徴的な構造エレメント、および必要に応じて同じリンカーを共有する。一部の実施形態では、足場薬剤は、ペプチドであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、足場薬剤は、ステープル留めされたペプチドであるまたはこれを含む。
【0020】
本開示に従って様々なステープルペプチドを利用することができ、例えば、US8,957,026、WO2005/044839、WO2008/061192、WO2008/095063、WO2008/121767、WO2010/011313、WO2011/008260、WO2012/174423、WO2012/174409、WO2014/197821、WO2008/137633、WO2009/042237、WO2009/108261、WO2010/042225、WO2010/068684、WO2010/148335、WO2011/094708、WO2012/006598、WO2012/065181、WO2012/142604、WO2013/055949、WO2013/102211、WO2013/142281、WO2014/144768、WO2014/144148、WO2014/151369、WO2016/149613、WO2017/004591、WO2017/040323、WO2017/040329、US8,592,377、US9,556,227、US10,301,351、US9,163,330、US2018/010001、US9,617,309、US2018/0009847、US2015/0225471、US10,081,654、US2019/0202862、WO2014/201370、WO2015/051030、US10,533,039、US2020/0247858およびWO2020/041270に記載されているステープル留めされたペプチドを利用することができ、これらの文献それぞれのステープル留めされたペプチドおよびステープルの記載は独立して、参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、ステープル留めされたペプチドは、唯一のステープルを含む。一部の実施形態では、ステープル留めされたペプチドは、2個またはそれよりも多いステープルを含む。一部の実施形態では、ステープルは、炭化水素ステープルである。一部の実施形態では、ステープルは、カルバメート基を含む。一部の実施形態では、ステープルは、アミン基を含む。一部の実施形態では、ステープルは、その骨格が環状構造体を含む残基、例えば、プロリン残基に結合される。一部の実施形態では、ステープルは、アミノ酸残基のアルファ-炭素に結合される。一部の実施形態では、ステープル留めされたペプチドは、縫合された(stitched)ペプチドである。
【0021】
一部の実施形態では、第2の薬剤の生成物薬剤および第2の薬剤は、同じ足場薬剤部分を含み、足場薬剤は、ステープル留めされたペプチドである。
【0022】
一部の実施形態では、提供される薬剤は、第1の薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、提供される薬剤は、第2の薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、提供される薬剤は、例えば、第1および第2の薬剤の、複合体薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、提供される薬剤は、生成物薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、提供される薬剤は、第1の薬剤の生成物薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、提供される薬剤は、第2の薬剤の生成物薬剤であるまたはこれを含む。
【0023】
一部の実施形態では、リンカー、官能基、放出部分等は、様々な場所において足場薬剤部分に取り付けることができる。例えば、一部の実施形態では、足場薬剤は、ペプチドでありまたはこれを含み、これは、N末端、C末端、側鎖(複数可)および/またはステープル(複数可)(ステープル留めされたペプチドの場合)において接続することができる。
【0024】
当業者によって認められる通り、提供される技術、例えば、薬剤、化合物等は、様々な薬学的に許容される塩形態等、様々な塩形態を含む様々な形態で提供することができる。一部の実施形態では、薬剤または化合物は、薬学的に許容される塩として提供される。
【0025】
一部の実施形態では、本開示は、薬剤の生成物薬剤を検出するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、生成物薬剤の形成は、薬剤が、バリアを通過すること、例えば、バリアを通過して領域に入り、そこで生成物薬剤またはその前駆体が形成されることを含む。一部の実施形態では、本開示は、薬剤が、バリアを通過することにより領域に進入し、領域において薬剤の生成物薬剤またはその前駆体を形成する場合、領域における薬剤の生成物薬剤またはその前駆体を検出するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、薬剤は、本明細書に記載されている第2の薬剤である。一部の実施形態では、バリアは、層であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、脂質層であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、二重層であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、リン脂質二重層であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、膜であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、細胞膜であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、領域は、細胞内にある。一部の実施形態では、薬剤は、第2の薬剤であり、生成物薬剤は、第2の薬剤の生成物薬剤である。一部の実施形態では、第2の薬剤の生成物薬剤またはその前駆体は、第1の領域において形成され、第1の領域および第2の領域は、バリアによって分離される。一部の実施形態では、第1の領域は、第1の薬剤、例えば、本明細書に記載されている捕捉分子を含む。一部の実施形態では、第1の薬剤は、第2の領域には存在しない。一部の実施形態では、第1および第2の薬剤は、第1の領域において互いに結合して、複合体を形成する。一部の実施形態では、第1および第2の薬剤は、第1の領域において互いと反応して、複合体を形成する。一部の実施形態では、第1および第2の薬剤は、第1の領域において共有結合により連結されて、複合体を形成する。一部の実施形態では、生成物薬剤、例えば、第1および/または第2の薬剤の生成物薬剤の前駆体は、複合体である。一部の実施形態では、複合体の切断は、第2の薬剤の生成物薬剤を形成する。一部の実施形態では、CCLの切断は、第2の薬剤の生成物薬剤を形成する。
【0026】
一部の実施形態では、複合体は、例えば、本明細書に記載されている親和性精製により濃縮される。一部の実施形態では、濃縮は、第2の薬剤の生成物薬剤の検出を改善する。一部の実施形態では、生成物薬剤の産生は、複合体の濃縮後に行われる。一部の実施形態では、生成物薬剤の生成物は、複合体の化学的消化および/または酵素による消化を経て、第1および/または第2の薬剤の生成物薬剤を生じる。一部の実施形態では、生成物薬剤の生成物は、CCLの化学的切断(例えば、本明細書に記載されている塩基性条件)および/または酵素による切断を経て、第1および/または第2の薬剤の生成物薬剤を生じる。例えば、一部の実施形態では、-CO(O)-を切断するためにエステラーゼ等の酵素が利用される。一部の実施形態では、有用な酵素は、プロテアーゼ、ペプチダーゼおよび/またはヒドロラーゼであるまたはこれを含む。様々な実施形態では、利用される条件は、CCLの切断において有効であり、1または複数の他の部分、例えば、足場薬剤部分、候補化合物部分等、またはそれらの特徴的な一部分を著しく損傷しないように十分に穏和である。一部の実施形態では、条件は、ステープル留めされたペプチド部分またはその特徴的な一部分を著しく損傷しない程度に十分に穏和である。
【0027】
一部の実施形態では、複合体が検出され、そのレベルが評価される。一部の実施形態では、例えば、第1の薬剤および/または第2の薬剤の、生成物薬剤が検出され、それらのレベルが評価される。特に、多くの実施形態では、第2の薬剤の生成物薬剤が検出され、そのレベルが評価される。一部の実施形態では、薬剤のバリア通過は、生成物薬剤の存在および/またはレベル(例えば、参照薬剤のものと比較した)によって評価される。一部の実施形態では、薬剤は、その生成物薬剤の存在および/またはそれがある特定のレベルを上回ることによって、バリアを通過すると決定される。一部の実施形態では、参照薬剤は、バリアを通過しないか、または非常に低レベルで通過する(陰性参照薬剤)。一部の実施形態では、参照薬剤は、高レベルでバリアを通過する(陽性参照薬剤)。一部の実施形態では、(薬剤の生成物薬剤のレベル/量 - 陰性参照薬剤の生成物薬剤のレベル/量)/(陽性参照薬剤の生成物薬剤のレベル/量 - 陰性参照薬剤の生成物薬剤のレベル/量)として計算される薬剤の相対的透過性因数を利用して、バリア、例えば、細胞膜等の膜を越えた透過性を評価する。一部の実施形態では、(薬剤の生成物薬剤のレベル/量)/(陽性参照薬剤の生成物薬剤のレベル/量)として計算される生成物薬剤比を利用して、バリア、例えば、細胞膜等の膜を越えた透過性を評価する。一部の実施形態では、評価されるべき参照薬剤および薬剤は、例えば、本明細書に例証されている通りに別々に投与され、一部の実施形態では、別々のウェルにおいて投与されており、参照薬剤は、同じウェルにおいて投与されなかった。一部の実施形態では、評価されるべき参照薬剤および薬剤は、同時的に投与され、一部の実施形態では、必要に応じて、同じ組成物中で投与される。一部の実施形態では、評価されるべき参照薬剤および薬剤は、同じバリアに接触する。一部の実施形態では、本明細書に例証されている参照薬剤および薬剤は、同じウェルにおいて投与される。一部の実施形態では、システムは、薬剤および参照薬剤(陽性または陰性)、ならびにバリア(例えば、細胞の細胞膜)を含む。一部の実施形態では、システムは、薬剤、陽性参照薬剤および陰性参照薬剤、ならびにバリアを含む。一部の実施形態では、システムは、薬剤および参照薬剤(陽性または陰性)、ならびに複数の細胞を含む。一部の実施形態では、システムは、薬剤、陽性および陰性参照薬剤、ならびに複数の細胞を含む。一部の実施形態では、陽性参照薬剤は、複数の細胞の膜を通過する。一部の実施形態では、細胞は、第2の薬剤としての検査されるべき薬剤が、本明細書に記載されている通りに結合するまたは反応することができる、第1の薬剤を含む。例えば、一部の実施形態では、細胞は、本明細書に記載されている捕捉分子を含む。一部の実施形態では、システムは、本明細書に記載されているプレートのウェルにおける、構成成分をその中に含む組成物であるまたはこれを含む。
【0028】
本明細書に記載されている通り、ある特定の提供される技術の利点の1つは、マルチプレックス化評価を行うことができることである。一部の実施形態では、複数の薬剤、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、500種またはそれよりも多い化合物が、組成物(一部の実施形態では、単一の組成物として投与され;一部の実施形態では、1または複数の別々の組成物として添加される)において同時的に評価される。一部の実施形態では、複数の薬剤は、ライブラリーのメンバーであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、薬剤のライブラリーは、同時に評価することができ;一部の実施形態では、精製なしで合成から直接的に評価することができる。本明細書に例証されている通り、一部の実施形態では、複数の薬剤をウェルにおいて一緒に評価することができる。本明細書に記載されている通り、典型的には、陽性および/または陰性参照薬剤も投与される。一部の実施形態では、複数のうちの薬剤は、同じ結合部分を共有し;一部の実施形態では、複数における1または複数の薬剤の結合部分は、1または複数の他の薬剤とは異なる。一部の実施形態では、複数のうちの薬剤は、同じ官能基を共有し;一部の実施形態では、複数における1または複数の薬剤の官能基は、1または複数の他の薬剤とは異なる。一部の実施形態では、複数のうちの薬剤は、同じリンカーを共有し;一部の実施形態では、複数における1または複数の薬剤のリンカーは、1または複数の他の薬剤とは異なる。一部の実施形態では、複数のうちの薬剤は、同じ型の薬剤(例えば、本明細書に記載されている捕捉分子)に結合するまたはこれと反応し;一部の実施形態では、異なる型の薬剤(例えば、本明細書に記載されている捕捉分子)に結合するまたはこれと反応する。一部の実施形態では、複数のうちの薬剤毎に、反応は同じであり;一部の実施形態では、反応は異なる。一部の実施形態では、複数のうちの薬剤の生成物薬剤(例えば、複数のうちの薬剤と、他の薬剤、例えば、捕捉分子によって形成された複合体の消化/切断から得られる、または代わりに複数のうちの薬剤から変換された)は、同じ放出部分を共有し;一部の実施形態では、複数における薬剤の1または複数の生成物薬剤の放出部分は、1または複数の他の薬剤とは異なる。一部の実施形態では、複数のうちの薬剤の生成物薬剤は、同じリンカーを共有し;一部の実施形態では、複数における薬剤の1または複数の生成物薬剤のリンカーは、1または複数の他の薬剤とは異なる。一部の実施形態では、複数における薬剤毎に、その分子質量は、薬剤の生成物薬剤とは異なる。一部の実施形態では、各薬剤は独立して、異なる分子質量を有する。一部の実施形態では、複数のうちの各薬剤の生成物薬剤は独立して、異なる分子質量を有する。一部の実施形態では、分子質量の差は、例えば、質量分析を利用した生成物薬剤のレベルの評価による、バリア通過の評価に利用することができる。
【0029】
一部の実施形態では、薬剤、例えば、本明細書に記載されている捕捉分子等の第1の薬剤は、タグを含む。一部の実施形態では、斯かる薬剤と、別の薬剤、例えば、本明細書に記載されている結合部分に連結された候補化合物等の第2の薬剤によって形成された複合体は、タグを含む。一部の実施形態では、タグは、Hisタグ(例えば、ヘキサヒスチジンタグ)、GSTタグ、FLAGタグ等であるまたはこれを含む。とりわけ、タグを利用して、生成物薬剤の産生に利用することができる、複合体および/または薬剤を濃縮することができる。当業者によって認められる通り、タグを含む薬剤および/または複合体の濃縮は、本明細書に記載されている様々な技術を使用して行うことができる。例えば、一部の実施形態では、薬剤、例えば、薬剤が結合された捕捉タンパク質(例えば、形成された複合体)等の捕捉分子は、細胞を溶解し、次いで捕捉タンパク質に融合されたヘキサヒスチジンタグまたはGSTタグまたはFLAGタグ等の親和性タグの使用により捕捉分子複合体を単離することにより、処置された細胞から濃縮/精製することができる。本明細書に記載されている通り、斯かるステップは、細胞の他の内容物およびいずれか捕捉されていない薬剤からの捕捉分子複合体の分離を可能にすることができ、とりわけ、アッセイのシグナルを改善することができる、および/または捕捉されていない薬剤もしくは他の細胞内容物による偽陽性を低下させることができる。次に、生成物薬剤は、本明細書に記載されている様々な方法を使用して、精製された捕捉分子複合体から放出することができる。
【0030】
一部の実施形態では、本開示は、細胞単層を横断する1または複数の候補化合物を同定するための方法であって、
第1の側面および第2の側面を含む細胞単層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップ、
細胞単層を横断する複数のうちの別個の候補化合物のそれぞれが、第1の領域に進入し、第1の領域において、別個の候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、別個の候補化合物のそれぞれが結合部分に取り付けられた、複数の別個の候補化合物を、細胞単層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップであって、1または複数の複合体が形成される、ステップ、
1または複数の複合体を破壊して、それぞれ放出部分に取り付けられた、1または複数の別個の候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップ、ならびに/または
放出部分に取り付けられた1または複数の別個の候補化合物を、動物細胞単層を横断する1または複数の候補化合物であると同定するステップ
を含む方法を提供する。
【0031】
一部の実施形態では、本開示は、候補化合物が動物細胞単層を横断するか決定するための方法であって、
第1の側面および第2の側面を含む細胞単層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップ、
細胞単層を横断する候補化合物が、第1の領域に進入し、第1の領域において、候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、結合部分に取り付けられた候補化合物を、細胞単層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップ、
複合体を破壊して、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップ、ならびに/または
放出部分に取り付けられた候補化合物を、動物細胞単層を横断する化合物であると同定するステップ
を含む方法を提供する。
【0032】
ある態様では、本発明は、動物細胞膜を横断する1または複数の候補化合物を同定するための方法であって、第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、リン脂質二重層を横断する結合部分に取り付けられた別個の候補化合物のそれぞれが、第1の領域に進入し、第1の領域において、別個の候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、別個の候補化合物のそれぞれが結合部分に取り付けられた、複数の別個の候補化合物を、リン脂質二重層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップであって、1または複数の複合体が形成される、ステップと、1または複数の複合体を破壊して、それぞれ放出部分に取り付けられた、1または複数の別個の候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップと、放出部分に取り付けられた1または複数の別個の候補化合物を、動物細胞膜を横断する1または複数の候補化合物であると同定するステップとを含む方法を提供する。一部の実施形態では、同定するステップは、候補化合物のアミノ酸配列を同定する。一部の実施形態では、同定するステップは、候補化合物の構造を同定する。
【0033】
別の態様では、本発明は、候補化合物が動物細胞膜を横断するか決定するための方法であって、第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、リン脂質二重層を横断する結合部分に取り付けられた候補化合物が、第1の領域に進入し、第1の領域において、候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、結合部分に取り付けられた候補化合物を、リン脂質二重層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップと、複合体を破壊して、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップと、放出部分に取り付けられた候補化合物を、動物細胞膜を横断する化合物であると同定するステップとを含む方法を提供する。一部の実施形態では、同定するステップは、候補化合物のアミノ酸配列を同定する。一部の実施形態では、同定するステップは、候補化合物の構造を同定する。
【0034】
本発明の様々な態様の一部の実施形態では、リン脂質二重層は、連続的である。本発明の様々な態様の一部の実施形態では、リン脂質二重層は、動物細胞の細胞膜である。一部の実施形態では、第1の領域は、リポソームの内部である。一部の実施形態では、第1の領域は、動物細胞のサイトゾルである。動物細胞は、脊椎動物の細胞であり得る。一部の実施形態では、脊椎動物は、哺乳動物である。一部の実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。一部の実施形態では、哺乳動物は、マウス、ラット、ハムスター、サル、ウサギまたはイヌである。一部の実施形態では、動物細胞は、昆虫の細胞である。一部の実施形態では、動物細胞は、鳥類の細胞である。一部の実施形態では、動物細胞は、魚類の細胞である。一部の実施形態では、動物細胞は、核を有する。
【0035】
一部の実施形態では、リン脂質二重層は、平面状である。
【0036】
本発明の様々な態様の一部の実施形態では、方法は、第1の領域における複合体形成後に、第1の領域および第2の領域が組み合わされて混合領域が創出されるように、リン脂質二重層を破壊するステップをさらに含む。
【0037】
一部の実施形態では、結合部分は、放出部分よりも質量が大きい。一部の実施形態では、結合部分は、放出部分よりも質量が小さい。
【0038】
一部の実施形態では、放出部分は、結合部分の少なくとも1個の原子を少なくとも1個の異なる原子に置き換えることによって創出される。
【0039】
一部の実施形態では、複合体は、11.0またはそれよりも高いpHを有する環境に複合体を曝露することによって破壊される。例えば、pHは、11.5もしくはそれよりも高くなることができる、またはpHは、12.0もしくはそれよりも高くなることができる。
【0040】
一部の実施形態では、1または複数の複合体を破壊するステップは、中間体の崩壊および/または捕捉分子による生成物の放出であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、斯かるプロセスは、酵素によって自動的に行われる。
【0041】
一部の実施形態では、放出部分に取り付けられた候補化合物の同定は、質量分析による解析によって為される。
【0042】
様々な実施形態では、候補化合物は、ペプチドを含む。一部の実施形態では、ペプチドは、アルファヘリックスターンを含む、これから本質的になるまたはこれからなる。一部の実施形態では、ペプチドは、ペプチドにおけるアルファヘリックスターンを安定化する小分子足場をさらに含む。一部の実施形態では、ペプチドは、合成である。
一部の実施形態では、捕捉分子は、化学的に切断可能なリンカーを含むリンカーおよび官能基を含み、前記官能基は、候補化合物に取り付けられた結合部分の少なくとも一部分に共有結合により結合することができる。
【0043】
一部の実施形態では、捕捉分子は、ハロアルカンデハロゲナーゼの変異体形態を含み、これから本質的になりまたはこれからなり、前記変異体形態は、ヒドロラーゼ活性を欠く。一部の実施形態では、捕捉分子は、ベンジルグアニン誘導体およびO2-ベンジルシトシン(cystosine)誘導体からなる群から選択される基と共有結合を形成する。一部の実施形態では、捕捉分子は、O6-アルキルグアニン-DNAアルキルトランスフェラーゼの変異体形態を含む、これから本質的になるまたはこれからなる。
【0044】
一部の実施形態では、方法は、第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、リン脂質二重層を横断する複数のうちの別個の候補化合物のそれぞれが、第1の領域に進入し、第1の領域において、別個の候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、別個の候補化合物のそれぞれが結合部分に取り付けられた、複数の別個の候補化合物を、リン脂質二重層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップであって、1または複数の複合体が形成される、ステップと、1または複数の複合体を破壊して、それぞれ放出部分に取り付けられた、1または複数の別個の候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップと、放出部分に取り付けられた1または複数の別個の候補化合物を、動物細胞膜を横断する1または複数の候補化合物であると同定するステップとを含む。
【0045】
一部の実施形態では、本発明は、細胞膜を横断することができる標的特異的薬剤を同定するための方法および試薬を提供する。
【0046】
本発明の追加的な態様および実施形態は、本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、リン脂質二重層を示す図であり、その親水性尾部が互いに向かい合い、その親水性頭部が互いに背けるように、個々のリン脂質分子が方向付けられる様子を示す。
【0048】
【
図2】
図2は、どのように、ペプチドである非限定的な候補化合物を生成し、結合部分に取り付けることができるかについての非限定的な例を示す概略図である。
【0049】
【
図3-1】
図3A~
図3Cは、本発明の非限定的な実施形態を示す図である。
図3Aに示す通り、リン脂質二重層は、第1の領域を第2の領域から分離し、第1の領域は、捕捉分子を含有し、第2の領域は、結合部分に取り付けられた候補化合物を含有する。
図3Bにおいて、候補化合物が、リン脂質二重層を横断することができる場合、結合部分は、捕捉分子に共有結合により結合するであろう。
図3Cにおいて、このような、捕捉分子:結合部分:候補化合物の複合体が破壊され、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出する。
【
図3-2】
図3A~
図3Cは、本発明の非限定的な実施形態を示す図である。
図3Aに示す通り、リン脂質二重層は、第1の領域を第2の領域から分離し、第1の領域は、捕捉分子を含有し、第2の領域は、結合部分に取り付けられた候補化合物を含有する。
図3Bにおいて、候補化合物が、リン脂質二重層を横断することができる場合、結合部分は、捕捉分子に共有結合により結合するであろう。
図3Cにおいて、このような、捕捉分子:結合部分:候補化合物の複合体が破壊され、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出する。
【
図3-3】
図3A~
図3Cは、本発明の非限定的な実施形態を示す図である。
図3Aに示す通り、リン脂質二重層は、第1の領域を第2の領域から分離し、第1の領域は、捕捉分子を含有し、第2の領域は、結合部分に取り付けられた候補化合物を含有する。
図3Bにおいて、候補化合物が、リン脂質二重層を横断することができる場合、結合部分は、捕捉分子に共有結合により結合するであろう。
図3Cにおいて、このような、捕捉分子:結合部分:候補化合物の複合体が破壊され、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出する。
【0050】
【
図4-1】
図4Aおよび
図4Bは、本発明の非限定的な実施形態を示す図であり、それによると、リン脂質二重層は、第1の領域を第2の領域から分離し、第1の領域は、複数の捕捉分子を含有し、第2の領域は、それぞれ結合部分に取り付けられた、複数の別個の候補化合物を含有する。
図4Aに示す通り、候補化合物Aは、リン脂質二重層を横断しない一方、候補化合物Bおよび候補化合物Cは、リン脂質二重層を横断し、候補化合物Bおよび候補化合物Cに取り付けられた結合部分は、捕捉分子に結合して、第1の領域において複合体を形成する。
図4Bにおいて、複合体の破壊は、放出部分に取り付けられた候補化合物Bおよび放出部分に取り付けられた候補化合物Cをもたらす。
【
図4-2】
図4Aおよび
図4Bは、本発明の非限定的な実施形態を示す図であり、それによると、リン脂質二重層は、第1の領域を第2の領域から分離し、第1の領域は、複数の捕捉分子を含有し、第2の領域は、それぞれ結合部分に取り付けられた、複数の別個の候補化合物を含有する。
図4Aに示す通り、候補化合物Aは、リン脂質二重層を横断しない一方、候補化合物Bおよび候補化合物Cは、リン脂質二重層を横断し、候補化合物Bおよび候補化合物Cに取り付けられた結合部分は、捕捉分子に結合して、第1の領域において複合体を形成する。
図4Bにおいて、複合体の破壊は、放出部分に取り付けられた候補化合物Bおよび放出部分に取り付けられた候補化合物Cをもたらす。
【0051】
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、本発明の様々な実施形態内で使用することができる平面状リン脂質二重層の非限定的な型を描写する図である。
図5Bは、リン脂質二重層を示す、
図5Aにおける指し示されているセクションの拡大図である。
【0052】
【
図6】
図6は、本発明の非限定的な実施形態を示す図であり、それによると、リン脂質二重層は、球状であり、内側領域(第1の領域)および外側領域(第2の領域)を有するリポソームを形成する。
図6に示す通り、捕捉分子は、第1の領域内にあり、結合部分に取り付けられた候補化合物は、第2の領域にある。
【0053】
【
図7-1】
図7A~
図7Bは、結合部分および捕捉分子の非限定的な実施形態を示す図である。
図7Aにおいて、結合部分に取り付けられた候補化合物(R)は、HaloTagタンパク質である捕捉分子と反応し、HaloTagタンパク質、結合部分の一部分および候補化合物を含む複合体を形成する。
図7A~
図7Bにおける丸で囲まれた原子によって示される通り、結合部分におけるCl原子は、複合体におけるエステル連結によって置き換えられ、これは次いで、塩基加水分解による破壊後に、放出部分におけるヒドロキシル基(-OH)によって置き換えられる。
【
図7-2】
図7A~
図7Bは、結合部分および捕捉分子の非限定的な実施形態を示す図である。
図7Aにおいて、結合部分に取り付けられた候補化合物(R)は、HaloTagタンパク質である捕捉分子と反応し、HaloTagタンパク質、結合部分の一部分および候補化合物を含む複合体を形成する。
図7A~
図7Bにおける丸で囲まれた原子によって示される通り、結合部分におけるCl原子は、複合体におけるエステル連結によって置き換えられ、これは次いで、塩基加水分解による破壊後に、放出部分におけるヒドロキシル基(-OH)によって置き換えられる。
【0054】
【
図8-1】
図8A~
図8Eは、捕捉分子および候補化合物の複合体を破壊するための、本発明の様々な実施形態において使用することができる、化学的に切断可能なリンカー(CCL)(
図7A~
図7Bに描写されているエステル結合に加えたまたはその代わりの)の非限定的な例の図である。
【
図8-2】
図8A~
図8Eは、捕捉分子および候補化合物の複合体を破壊するための、本発明の様々な実施形態において使用することができる、化学的に切断可能なリンカー(CCL)(
図7A~
図7Bに描写されているエステル結合に加えたまたはその代わりの)の非限定的な例の図である。
【0055】
【
図9-1】
図9A~
図9Cは、本発明の非限定的な実施形態を示す図であり、それによると、捕捉分子は、複数の構成成分を含む。捕捉分子は、第1の領域における官能基FG1を含有する小型のリンカーによる、第1の領域におけるHaloTagタンパク質の共有結合による取付けによって構築されて、捕捉分子を創出する(
図9Aを参照)。リン脂質二重層を横断する、官能基FG2(FG1と相補的である)を含有する結合部分に取り付けられた候補化合物は、第1の領域に進入し、そこで、官能基FG2は、捕捉分子の官能基FG1と反応して、捕捉分子、候補化合物、ならびにFG1およびFG2の反応による1または複数の共有結合を含む生成物を含む複合体を形成する(
図9B)。複合体は、CCLを化学的に切断することによって破壊されて、放出部分に取り付けられた候補化合物を産生する(
図9C)。
【
図9-2】
図9A~
図9Cは、本発明の非限定的な実施形態を示す図であり、それによると、捕捉分子は、複数の構成成分を含む。捕捉分子は、第1の領域における官能基FG1を含有する小型のリンカーによる、第1の領域におけるHaloTagタンパク質の共有結合による取付けによって構築されて、捕捉分子を創出する(
図9Aを参照)。リン脂質二重層を横断する、官能基FG2(FG1と相補的である)を含有する結合部分に取り付けられた候補化合物は、第1の領域に進入し、そこで、官能基FG2は、捕捉分子の官能基FG1と反応して、捕捉分子、候補化合物、ならびにFG1およびFG2の反応による1または複数の共有結合を含む生成物を含む複合体を形成する(
図9B)。複合体は、CCLを化学的に切断することによって破壊されて、放出部分に取り付けられた候補化合物を産生する(
図9C)。
【
図9-3】
図9A~
図9Cは、本発明の非限定的な実施形態を示す図であり、それによると、捕捉分子は、複数の構成成分を含む。捕捉分子は、第1の領域における官能基FG1を含有する小型のリンカーによる、第1の領域におけるHaloTagタンパク質の共有結合による取付けによって構築されて、捕捉分子を創出する(
図9Aを参照)。リン脂質二重層を横断する、官能基FG2(FG1と相補的である)を含有する結合部分に取り付けられた候補化合物は、第1の領域に進入し、そこで、官能基FG2は、捕捉分子の官能基FG1と反応して、捕捉分子、候補化合物、ならびにFG1およびFG2の反応による1または複数の共有結合を含む生成物を含む複合体を形成する(
図9B)。複合体は、CCLを化学的に切断することによって破壊されて、放出部分に取り付けられた候補化合物を産生する(
図9C)。
【0056】
【
図10】
図10は、本発明の非限定的な実施形態を示す図であり、それによると、捕捉分子および候補化合物に取り付けられた結合部分のそれぞれは、互いに相補的である官能基を持つ。
【0057】
【
図11】
図11は、互いに相補的であり、よって、本発明の様々な実施形態内でFG1(捕捉分子の一部分として)および/またはFG2(候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分として)として使用することができる、一部の非限定的な官能基を示す図である。
【0058】
【
図12-1】
図12A~
図12Bは、本発明の非限定的な実施形態を示す図であり、それによると、捕捉分子は、SNAPタグタンパク質の修飾を含む。
図10Aに示す通り、捕捉分子は、第1の領域において、リン脂質二重層を横断することにより第1の領域に進入する小型のリンカーへのSNAPタグタンパク質の共有結合による取付けによって創出される。リン脂質二重層を横断する、結合部分に取り付けられた候補化合物(第2の官能基(FG2)を含む)は、第1の領域に進入し、FG1基へのFG2基結合により、捕捉分子に共有結合により結合して、複合体を形成し、複合体は次いで化学的に切断されて、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出するであろう(
図10Bの下部を参照)。
【
図12-2】
図12A~
図12Bは、本発明の非限定的な実施形態を示す図であり、それによると、捕捉分子は、SNAPタグタンパク質の修飾を含む。
図10Aに示す通り、捕捉分子は、第1の領域において、リン脂質二重層を横断することにより第1の領域に進入する小型のリンカーへのSNAPタグタンパク質の共有結合による取付けによって創出される。リン脂質二重層を横断する、結合部分に取り付けられた候補化合物(第2の官能基(FG2)を含む)は、第1の領域に進入し、FG1基へのFG2基結合により、捕捉分子に共有結合により結合して、複合体を形成し、複合体は次いで化学的に切断されて、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出するであろう(
図10Bの下部を参照)。
【0059】
【
図13】
図13は、本発明の非限定的な実施形態を示す図であり、それによると、捕捉分子は、CLIPタグタンパク質の修飾を含む。捕捉分子は、官能基(FG1)、化学的に切断可能なリンカー(CCL)およびベンジルシトシン基を含む小型のリンカー(例えば、小分子リンカー)へのCLIPタグタンパク質の共有結合によって創出される(これにより、シトシン分子を放出する)。次に、FG1に相補的である第2の官能基(FG2)を含む、結合部分に取り付けられた候補化合物への捕捉分子の共有結合によって、複合体を創出することができる。CCLの切断による複合体の破壊は、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出する。
【0060】
【
図14】
図14Aおよび
図14Bは、NanoBRET(
図14B)および質量分析透過(14A)における、細胞膜横断化合物である化合物1と、細胞膜を横断しない化合物11のサイド・バイ・サイドの比較を示す棒グラフである。
【0061】
【
図15】
図15Aおよび
図15Bは、本発明の非限定的な候補化合物、具体的には、(a)非限定的な結合部分(
図15A)および(b)非限定的な放出部分(
図15B)に取り付けられた、ステープル留めされたペプチド化合物1を示す図である。
【0062】
【0063】
【
図17】
図17Aおよび
図17Bは、各化合物を個々に(
図17A)または一緒に同時的に(
図17B)検査した後に決定された、陽性対照のステープル留めされたペプチドである化合物1に対して正規化された、全てステープル留めされたペプチドである候補化合物2~10のサイトゾル曝露(すなわち、サイトゾル存在)を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
好適な実施形態の詳細な説明
とりわけ、本開示は、本明細書に記載されている様々な技術、例えば、薬剤、方法、複合体等を提供する。一部の実施形態では、提供される技術は、薬剤によるバリア通過の評価に有用である。一部の実施形態では、提供される技術は、バリア、例えば、細胞膜を越えた薬剤の透過性の評価に有用である。一部の実施形態では、提供される技術は、薬剤の膜浸透の評価に有用である。一部の実施形態では、提供される技術は、バリア、例えば、細胞膜を通過することができる薬剤、例えば、候補化合物の同定に有用である。
【0065】
一般に、用語「薬剤」は、本明細書で使用される場合、例えば、ポリペプチド、核酸、糖類、脂質、小分子、金属またはそれらの組合せもしくは複合体を含む、いずれかの化学的クラスの化合物または実体を指すように使用することができる。適切な状況において、当業者には文脈から明らかな通り、この用語は、細胞もしくは生物、またはその画分、抽出物もしくは構成成分であるまたはこれを含む実体を指すように利用することができる。その代わりにまたはその上、文脈が明らかにする通り、この用語は、自然界に見出されるおよび/または自然界から得られるという点において、天然の生成物を指すように使用することができる。一部の例では、やはり文脈から明らかな通り、この用語は、人の手の作用を介して設計、操作および/もしくは産生されるならびに/または自然界には見出されないという点において、人造である1または複数の実体を指すように使用することができる。一部の実施形態では、薬剤は、単離されたまたは純粋な形態で利用することができ;一部の実施形態では、薬剤は、粗製形態で利用することができる。一部の実施形態では、潜在的な薬剤は、例えば、スクリーニングして、その中から活性薬剤および/またはある特定の特性(例えば、細胞透過性)の薬剤を同定または特徴付けすることができる、収集物またはライブラリーとして提供することができる。一部の場合では、用語「薬剤」は、ポリマーであるまたはこれを含む化合物または実体を指すことができ;一部の場合では、この用語は、1または複数のポリマー部分を含む化合物または実体を指すことができる。一部の実施形態では、用語「薬剤」は、ポリマーではないおよび/またはいかなるポリマーも実質的に含まないおよび/または1もしくは複数の特定のポリマー部分を実質的に含まない化合物または実体を指すことができる。一部の実施形態では、この用語は、いかなるポリマー部分も欠くまたはいかなるポリマー部分も実質的に含まない化合物または実体を指すことができる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって典型的に連結された、残基(例えば、アミノ酸)のいずれかのポリマー鎖を指す。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に発生するアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に発生しないアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、人の手の作用を介して設計および/または産生されたという点において、操作されたアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸またはこれらの両方を含むまたはこれからなることができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸のみまたは非天然アミノ酸のみを含むまたはこれからなることができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、D-アミノ酸、L-アミノ酸またはこれらの両方を含むことができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、D-アミノ酸のみを含むことができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、L-アミノ酸のみを含むことができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端またはこれらのいずれかの組合せにおいて、1または複数のアミノ酸側鎖を修飾するまたはこれに取り付けられた、1または複数のペンダント基または他の修飾を含むことができる。一部の実施形態では、斯かるペンダント基または修飾は、アセチル化、アミド化、脂質化、メチル化、ペグ化等(これらの組合せを含む)からなる群から選択することができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、環状であり得る、および/または環状の一部分を含むことができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、環状ではない、および/またはいかなる環状の一部分も含まない。一部の実施形態では、ポリペプチドは、直鎖状である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、ステープル留めされたポリペプチドであり得るまたはこれを含むことができる。一部の実施形態では、用語「ポリペプチド」は、参照ポリペプチドの名称、活性または構造に付け加えることができ;斯かる例では、関連する活性または構造を共有するポリペプチドを指すように本明細書において使用され、よって、ポリペプチドの同じクラスまたはファミリーのメンバーであると考えることができる。斯かるクラス毎に、本明細書は、そのアミノ酸配列および/もしくは機能が公知であるクラス内の例示的なポリペプチドを提供する、ならびに/または当業者は、それに気づくであろう;一部の実施形態では、斯かる例示的なポリペプチドは、ポリペプチドクラスまたはファミリーのための参照ポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリペプチドクラスまたはファミリーのメンバーは、クラスの参照ポリペプチドと(一部の実施形態では、クラス内の全ポリペプチドと)有意な配列相同性もしくは同一性を示す、それと共通配列モチーフ(例えば、特徴的な配列エレメント)を共有する、および/またはそれと共通活性(一部の実施形態では、匹敵するレベルでまたは指名の範囲内で)を共有する。例えば、一部の実施形態では、メンバーポリペプチドは、少なくとも約30~40%であり、多くの場合、約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%超もしくはそれよりも多い、参照ポリペプチドとの配列相同性もしくは同一性の全体的な程度を示す、および/または非常に高い配列同一性、多くの場合、90%超もしくはさらには95%、96%、97%、98%もしくは99%を示す少なくとも1個の領域(例えば、一部の実施形態では、特徴的配列エレメントであり得るまたはこれを含むことができる、保存された領域)を含む。斯かる保存された領域は通常、少なくとも3~4、多くの場合、最大で20個またはそれよりも多いアミノ酸を包含し;一部の実施形態では、保存された領域は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個またはそれよりも多い連続的アミノ酸の少なくとも1個のストレッチを包含する。一部の実施形態では、有用なポリペプチドは、親ポリペプチドの断片を含むまたはこれからなることができる。一部の実施形態では、有用なポリペプチドは、目的のポリペプチドが、その親ポリペプチドの誘導体となるように、目的のポリペプチドにおいて見出されるものとは異なる、互いに対する空間的配置で同じ親ポリペプチドにおいてそれぞれ見出される、複数の断片を含むまたはこれからなることができる(例えば、親において直接的に連結されている断片は、目的のポリペプチドにおいて空間的に分離され得る、もしくはその逆もまた同じである、および/または断片は、目的のポリペプチドにおいて、親とは異なる順序で存在することができる)。
【0067】
用語「ペプチド」は、本明細書で使用される場合、典型的に相対的に短い、例えば、約100個未満のアミノ酸、約50個未満のアミノ酸、約40個未満のアミノ酸、約30個未満のアミノ酸、約25個未満のアミノ酸、約20個未満のアミノ酸、約15個未満のアミノ酸または10個未満のアミノ酸の長さを有するポリペプチドを一般に指す。一部の実施形態では、ペプチド、例えば、ステープル留めされたペプチドは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれよりも多いアミノ酸の長さを有する。
【0068】
一部の実施形態では、ペプチド、ポリペプチドまたはそれらの特徴的な一部分の長さは、5個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、6個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、7個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、8個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、9個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、10個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、11個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、12個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、13個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、14個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、15個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、16個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、17個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、18個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、19個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、長さは、20個またはそれよりも多いアミノ酸である。一部の実施形態では、ペプチドまたはその特徴的な一部分は、ステープル留めされている。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「特徴的な一部分」は、最も広い意味において、その存在(または非存在)が、物質の特定の特色、特質または活性の存在(または非存在)と相関する、物質の一部分を指す。一部の実施形態では、物質の特徴的な一部分は、当該物質、および特定の特色、特質または活性を共有する関連物質において見出されるが、特定の特色、特質または活性を共有しない物質においては見出されない、一部分である。ある特定の実施形態では、特徴的な一部分は、インタクトな物質と少なくとも1種の機能的特徴を共有する。例えば、一部の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドの「特徴的な一部分」は、一緒になることによりタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドに特徴的となる、アミノ酸の連続したストレッチ、またはアミノ酸の連続したストレッチの収集物を含有する一部分である。一部の実施形態では、斯かる連続したストレッチのそれぞれは一般に、少なくとも2、5、10、15、20、50個またはそれよりも多いアミノ酸を含有する。一般に、物質(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド等)の特徴的な一部分は、上で指定されている配列および/または構造的同一性に加えて、関連するインタクトな物質と少なくとも1種の機能的特徴を共有する一部分である。一部の実施形態では、特徴的な一部分は、生物学的に活性であり得る。一部の実施形態では、物質の特徴的な一部分は、物質を他の物質から区別する。
第1の薬剤/捕捉分子として有用なある特定の薬剤
【0070】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されている結合部分に結合することができる薬剤を含む薬剤を提供する。一部の実施形態では、斯かる薬剤は、本明細書に記載されている第1の薬剤である。一部の実施形態では、斯かる薬剤は、本明細書に記載されている捕捉分子であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、斯かる薬剤は、タンパク質またはポリペプチドであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは、例えば、本明細書に記載されている第2の薬剤の別の官能基と反応することができる官能基を含む。一部の実施形態では、官能基は、-COOH、またはその塩もしくは活性化形態であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、斯かる官能基は、例えば、脱離基が取り付けられる炭素を含む、別の官能基と反応することができる。一部の実施形態では、反応において、-C(O)-O-は、脱離基を移動させる。一部の実施形態では、脱離基は、-Clである。一部の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは、デハロゲナーゼであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは、ハロアルカンデハロゲナーゼであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、アミノ酸(acid)残基の-COOHは、他の官能基、例えば、他の薬剤の官能基との反応のための官能基として働く。一部の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは、細胞において発現される。
【0071】
一部の実施形態では、薬剤は、必要に応じてリンカーを介して官能基に連結される足場薬剤部分からなるまたはこれを含む。一部の実施形態では、リンカーは、CCLであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、斯かる官能基は、別の薬剤、例えば、第2の薬剤の官能基と反応することができる。一部の実施形態では、足場薬剤は、タンパク質またはポリペプチドであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、斯かる薬剤は、タンパク質またはポリペプチドを、官能基を含む薬剤と反応させることによる、タンパク質またはポリペプチド、例えば、細胞において発現されたタンパク質またはポリペプチドの修飾によって構築される。例えば、一部の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは、SNAPタグタンパク質またはその特徴的な一部分でありまたはこれを含み、SNAPタグタンパク質またはその特徴的な一部分への官能基の導入に適した試薬は、
図12Aにおいて本明細書に記載されている薬剤である。一部の実施形態では、斯かる薬剤は、
R
F-L-FG1
またはその塩(式中、FG1は、官能基であり、Lは、リンカーであり、R
Fは、
【化1】
またはClである)の構造を有する。一部の実施形態では、R
Fは、-Clである。一部の実施形態では、R
Fは、
【化2】
である。一部の実施形態では、斯かる薬剤は、Cl-L-FG1またはその塩(式中、FG1は、官能基である)の構造を有する。一部の実施形態では、リンカーは、CCLであるまたはこれを含む。
【0072】
一部の実施形態では、各リンカー、例えば、Lは独立して、共有結合、または1もしくは複数の脂肪族部分、アリール部分、それぞれ独立して1~10個のヘテロ原子を有するヘテロ脂肪族(heteroaliphatic)部分、それぞれ独立して1~10個のヘテロ原子を有するヘテロ芳香族(heteroaromatic)部分または斯かる部分の1もしくは複数の組合せを含む二価の必要に応じて置換された直鎖状または分岐状C1~30基であり、この基の1または複数のメチレン単位は、C1~6アルキレン、C1~6アルケニレン、1~5個のヘテロ原子を有する二価C1~6ヘテロ脂肪族基、-C≡C-、-N=N-、-Cy-、-C(R’)2-、-O-、-S-、-S-S-、-N(R’)-、-Si(R’)2-、-C(O)-、-C(S)-、-C(NR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)C(R’)2N(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2N(R’)-、-C(O)S-、-C(O)O-、アミノ酸残基または-[(-O-C(R’)2-C(R’)2-)n]-(式中、nは、1~20である)に必要に応じてかつ独立して置き換えられており、
各-Cy-は独立して、必要に応じて置換された二価単環式、二環式または多環式基であり、各単環式環は、C3~20脂環式環、C6~20アリール環、1~10個のヘテロ原子を有する5~20員のヘテロアリール環および1~10個のヘテロ原子を有する3~20員のヘテロシクリル(heterocyclyl)環から独立して選択され、
各R’は独立して、-R、-OR、-C(O)R、-CO2Rまたは-SO2Rであり、
各Rは独立して、-H、もしくはC1~20脂肪族、1~10個のヘテロ原子を有するC1~20ヘテロ脂肪族、C6~20アリール、C6~20アリール脂肪族、1~10個のヘテロ原子を有するC6~20アリールヘテロ脂肪族、1~10個のヘテロ原子を有する5~20員のヘテロアリールおよび1~10個のヘテロ原子を有する3~20員のヘテロシクリルから選択される必要に応じて置換された基であるか、または
2個のR基は、必要に応じてかつ独立して一緒になって、共有結合を形成するか、または
同じ原子上の2個もしくはそれよりも多いR基は、この原子と必要に応じてかつ独立して一緒になって、この原子に加えて0~10個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された3~20員の単環式、二環式もしくは多環式環を形成するか、または
2個もしくはそれよりも多い原子上の2個もしくはそれよりも多いR基は、それらの介在原子と必要に応じてかつ独立して一緒になって、介在する原子に加えて0~10個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された3~30員の単環式、二環式もしくは多環式環を形成する。
【0073】
一部の実施形態では、ヘテロ原子は、水素または炭素ではない原子である。一部の実施形態では、各ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素(これらの酸化形態を含む)から独立して選択される。
【0074】
一部の実施形態では、Lは、CCLを含む。一部の実施形態では、Lは、-L1-CCL-L2-(式中、L1、CCLおよびL2のそれぞれは独立して、共有結合、または1もしくは複数の脂肪族部分、アリール部分、それぞれ独立して1~10個のヘテロ原子を有するヘテロ脂肪族部分、それぞれ独立して1~10個のヘテロ原子を有するヘテロ芳香族部分または斯かる部分の1もしくは複数の組合せを含む二価の必要に応じて置換された直鎖状または分岐状C1~20(例えば、C1~5、C1~10、C1~15)基であり、この基の1または複数のメチレン単位は、C1~6アルキレン、C1~6アルケニレン、1~5個のヘテロ原子を有する二価C1~6ヘテロ脂肪族基、-C≡C-、-N=N-、-Cy-、-C(R’)2-、-O-、-S-、-S-S-、-N(R’)-、-Si(R’)2-、-C(O)-、-C(S)-、-C(NR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)C(R’)2N(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2N(R’)-、-C(O)S-、-C(O)O-、アミノ酸残基または-[(-O-C(R’)2-C(R’)2-)n]-(式中、nは、1~20である)に必要に応じてかつ独立して置き換えられる)である。
【0075】
一部の実施形態では、L1は、-RFに結合される。一部の実施形態では、L1は、-Clに結合される。一部の実施形態では、L1は、直鎖状C1~10二価アルキレン基であり、1または複数のメチレン単位は、-CH2-O-CH2-または-O-に必要に応じてかつ独立して置き換えられる。一部の実施形態では、L1は、直鎖状C1~10二価アルキレン基である。一部の実施形態では、L2は、直鎖状C1~10二価アルキレン基であり、1または複数のメチレン単位は、-CH2-O-CH2-または-O-に必要に応じてかつ独立して置き換えられる。一部の実施形態では、L2は、直鎖状C1~10二価アルキレン基である。
【0076】
当業者であれば認めるであろうが、本開示の様々な薬剤において、本開示に従って様々なCCLを利用することができる。一部の実施形態では、CCLは、-C(O)O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化3】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化4】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化5】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化6】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化7】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化8】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化9】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化10】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化11】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化12】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、
【化13】
であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、斯かるCCL部分のそれぞれは、必要に応じて置換されていてよい(例えば、必要に応じて置換された
【化14】
)。一部の実施形態では、CCLは、-C(O)-O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、近接ジオールであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、-N=N-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、CCLは、-Ar-N=N-Ar-(式中、各Arは独立して、必要に応じて置換された芳香族部分である)であるまたはこれを含む。ある特定のCCLおよびその使用は、例として
図8A~
図8Eに記載されている。
【0077】
一部の実施形態では、Lは、共有結合である。一部の実施形態では、L1は、共有結合である。一部の実施形態では、L2は、共有結合である。
【0078】
一部の実施形態では、リンカーは、単離、溶解および/または濃縮条件下で安定な構造的リンカーを含む。
【0079】
一部の実施形態では、薬剤、例えば、捕捉薬剤、第1の薬剤等として有用な薬剤は、
RC-L-FG1、
またはその塩(式中、RCは、足場薬剤部分であり、FG1は、官能基であり、Lは、本明細書に記載されている通りである)の構造を有する。一部の実施形態では、RCは、タンパク質またはポリペプチド部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、RCは、細胞において発現されたタンパク質またはポリペプチドであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、RCは、halotagタンパク質部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、RCは、SNAPタグタンパク質部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、Lは、共有結合であり、FG1は、アミノ酸残基のアミノ酸の官能基である。一部の実施形態では、FG1は、-COOHまたはその塩形態である。一部の実施形態では、FG1は、-N3であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG1は、アルキンであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、アルキンは、末端アルキンである。一部の実施形態では、アルキンは、環におけるアルキンである。一部の実施形態では、アルキンは、ひずんだ(strained)環にある。一部の実施形態では、FG1は、アルケンであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、アルケンは、ひずんだ環にある。一部の実施形態では、FG1は、双極子であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG1は、ジエンまたはヘテロジエンであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、双極子またはジエンまたはヘテロジエンは、アルケンまたはアルキンによる環化付加反応に適する。
【0080】
一部の実施形態では、参照として、足場薬剤部分は、1または複数の変異を含む。一部の実施形態では、
【0081】
一部の実施形態では、足場薬剤部分は、別の薬剤、例えば、第2の薬剤に著しく結合せず;むしろ、薬剤は、その官能基の、別の薬剤、例えば、第2の薬剤の官能基との反応を介して別の薬剤、例えば、第2の薬剤に結合する。当業者であれば、多くの生体直交型のものを含む様々な反応および官能基を入手することができ、本開示に従って利用することができることを認める。例えば、一部の実施形態では、反応は、環化付加反応、例えば、[3+2]または[4+2]反応である。一部の実施形態では、反応は、クリック反応であり、一方の官能基は、アジドであり、他方の官能基は、アルキン、例えば、末端アルキン、ある特定のレベルの環ひずみを含むことができる環系における活性化アルキン等である。ある特定の例は、
図11に記載されている。
【0082】
一部の実施形態では、官能基は、CCLであるまたはこれを含むリンカーを介して足場薬剤部分に接続される。一部の実施形態では、例えば、純粋に化学的なおよび/または酵素によるプロセスを介したCCLの切断後に、薬剤(例えば、第1の薬剤)の官能基と別の薬剤(例えば、第2の薬剤)の官能基との間の反応によって形成された生成物部分は、例えば、生成物薬剤(例えば、第2の薬剤の生成物薬剤)の、放出部分またはその特徴的な一部分となる。一部の実施形態では、放出部分は、必要に応じてリンカーを介して、足場薬剤部分または候補化合物部分に取り付けられる。一部の実施形態では、必要に応じてリンカーを介して放出部分に連結された足場薬剤または候補化合物は、本明細書に記載されているステープル留めされたペプチド部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、生成物薬剤におけるリンカーは典型的に、安定したリンカーである。一部の実施形態では、生成物薬剤におけるリンカーは、CCLを含有しない。とりわけ、斯かるリンカーは、生成物薬剤の単離および/または特徴付けのために所望の安定性を提供することができる。
【0083】
一部の実施形態では、提供される薬剤、例えば、第1の薬剤として有用な薬剤は典型的に、バリアを通過しない。一部の実施形態では、他の薬剤が斯かる薬剤と反応するには、斯かる他の薬剤は、バリアを通過して、斯かる薬剤に接触することが要求される。
【0084】
一部の実施形態では、第1の薬剤として利用される薬剤は、第1の領域にあり、バリア通過について検査されるべき薬剤は、第2の領域において直接的に投与され、第1の領域は、バリアによって第2の領域から分離されている。一部の実施形態では、バリアは、細胞膜であり、第1の領域は、細胞内である。一部の実施形態では、第1の領域における第1の薬剤である薬剤に接触するために、第2の領域に投与された薬剤、例えば、第2の薬剤は、バリアを通過、例えば、細胞膜を透過する必要があるであろう。一部の実施形態では、第1の薬剤として利用される薬剤は、バリアを通過しない(または非常に低レベルで通過する)。一部の実施形態では、膜透過またはバリア通過は、拡散を含むがこれに限定されない、いくつかの機構を介して発生することができる。
【0085】
一部の実施形態では、薬剤は、本明細書に記載されている捕捉分子であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、薬剤は、本明細書に記載されている捕捉分子である。
第2の薬剤として有用な、またはバリアを通過することができる、結合部分を含むある特定の薬剤
【0086】
とりわけ、本開示は、バリア、例えば、細胞膜、または様々な型の薬剤を評価するための技術を提供する。一部の実施形態では、斯かる薬剤は、足場薬剤と称される。一部の実施形態では、薬剤は、小分子化合物であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、薬剤は、核酸薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、薬剤は、オリゴヌクレオチド薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、薬剤は、タンパク質薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、薬剤は、ポリペプチド薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、薬剤は、ペプチド薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、薬剤は、ステープル留めされたペプチド薬剤であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、薬剤は、本明細書に記載されている候補化合物である。
【0087】
一部の実施形態では、足場薬剤、例えば、上に記載されている足場薬剤は、薬剤がバリアを通過した後に、別の薬剤、例えば、第1の薬剤に結合することができるおよび/またはこれと反応することができる結合部分を含む薬剤を提供するように修飾される。
【0088】
一部の実施形態では、提供される薬剤は、必要に応じてリンカーを介して官能基に連結された足場薬剤部分またはその特徴的な一部分を含む。一部の実施形態では、足場薬剤またはその特徴的な一部分は、アミノ酸配列でありまたはこれを含み、官能基は、この配列のN末端に連結される。一部の実施形態では、足場薬剤は、アミノ酸配列でありまたはこれを含み、官能基は、この配列のC末端に連結される。一部の実施形態では、足場薬剤は、アミノ酸配列でありまたはこれを含み、官能基は、側鎖に連結される。一部の実施形態では、2個またはそれよりも多いアミノ酸残基が、ステープル留めされている。
【0089】
一部の実施形態では、足場薬剤は、ステープル留めされたペプチドであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、ステープル留めされたペプチドは、縫合されたペプチドである。一部の実施形態では、ステープル留めされたペプチドは、US8,957,026、WO2005/044839、WO2008/061192、WO2008/095063、WO2008/121767、WO2010/011313、WO2011/008260、WO2012/174423、WO2012/174409、WO2014/197821、WO2008/137633、WO2009/042237、WO2009/108261、WO2010/042225、WO2010/068684、WO2010/148335、WO2011/094708、WO2012/006598、WO2012/065181、WO2012/142604、WO2013/055949、WO2013/102211、WO2013/142281、WO2014/144768、WO2014/144148、WO2014/151369、WO2016/149613、WO2017/004591、WO2017/040323、WO2017/040329に記載されており、これら文献のそれぞれのステープル留めされたペプチドの記載は独立して、参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、ステープル留めされたペプチドは、US8,592,377、US9,556,227、US10,301,351、US9,163,330、US2018/010001、US9,617,309、US2018/0009847、US2015/0225471、US10,081,654、US2019/0202862、WO2014/201370、WO2015/051030、US10,533,039、US2020/0239533に記載されており、これら文献のそれぞれのステープル留めされたペプチドの記載は独立して、参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、ステープル留めされたペプチドは、US2020/0247858およびWO2020/041270に記載されており、これら文献のそれぞれのステープル留めされたペプチドの記載は独立して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
一部の実施形態では、官能基は、脱離基であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、脱離基は、別の官能基と反応するときに移動される。一部の実施形態では、脱離基は、-Clである。一部の実施形態では、例えば、
図7Aに記載されている通り、-Clは、求核基、例えば、-COO
-によって移動される。
【0091】
一部の実施形態では、薬剤、例えば、バリア通過について評価されるべき薬剤、バリア通過のためのシステムへと投与される薬剤等は、
RB-L-FG2、
またはその塩(式中、RBは、足場薬剤部分であり、FG2は、官能基であり、Lは、本明細書に記載されている通りである)の構造を有する。例えば、一部の実施形態では、足場薬剤部分は、ペプチド部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、足場薬剤部分は、ステープル留めされたペプチド部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、Lは、RBのN末端に接続される。一部の実施形態では、Lは、RBのC末端に接続される。一部の実施形態では、Lは、RBの側鎖に接続される。一部の実施形態では、FG2は、FG1と反応することができる官能基である。一部の実施形態では、FG2は、-N3であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、アルキンであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、アルキンは、末端アルキンである。一部の実施形態では、アルキンは、環におけるアルキンである。一部の実施形態では、アルキンは、ひずんだ環にある。一部の実施形態では、FG2は、アルケンであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、アルケンは、ひずんだ環にある。一部の実施形態では、FG2は、双極子であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、ジエンまたはヘテロジエンであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、双極子またはジエンまたはヘテロジエンは、アルケンまたはアルキンによる環化付加反応に適する。様々な実施形態では、FG1は、環化付加反応の一方のパートナー(例えば、-N3)であり、FG2は、環化付加反応の他方のパートナー(例えば、アルキンを含む部分)である。一部の実施形態では、FG2は、脱離基(例えば、-Cl)であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、脱離基であり、FG1は、脱離基を移動させることができる求核試薬(例えば、-COO-)であるまたはこれを含む。
【0092】
一部の実施形態では、Lは、共有結合である。一部の実施形態では、Lは、本明細書に記載されているCCLであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、Lは、本明細書に記載されている-L1-CCL-L2-である。一部の実施形態では、Lは、CCLを含有しない。一部の実施形態では、Lは、必要に応じて置換された二価C1~30アルキレンであり、1または複数のメチレン単位は、-O-に必要に応じてかつ独立して置き換えられる。一部の実施形態では、Lは、必要に応じて置換された直鎖状二価C1~30アルキレンであり、1または複数のメチレン単位は、-O-に必要に応じてかつ独立して置き換えられる。一部の実施形態では、Lは、直鎖状二価C1~30アルキレンであり、1または複数のメチレン単位は、-O-に必要に応じてかつ独立して置き換えられる。一部の実施形態では、Lは、直鎖状二価C1~30アルキレンである。
【0093】
Lは、式におけるLまたはリンカーまたは別の部分、例えば、Lであり得るLPのいずれかとして、本開示の様々な薬剤において利用することができる。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)3-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)4-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)5-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)6-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)2-O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)2-O-(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)2-O-(CH2)2O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)6O(CH2)2O(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-は、-(CH2)n-(式中、nは、1~20である)であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である。
【0094】
一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)3-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)4-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)5-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)6-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)2-O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)2-O-(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)2-O-(CH2)2O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)6O(CH2)2O(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG2は、Cl-(CH2)n-(式中、nは、1~20である)であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である。
【0095】
一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)3-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)4-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)5-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)6-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)2-O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)2-O-(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)2-O-(CH2)2O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)6O(CH2)2O(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG2は、Cl-(CH2)n-(式中、nは、1~20である)であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である。
【0096】
一部の実施形態では、結合部分は、官能基および必要に応じて、本明細書に記載されているリンカーであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、結合部分は、-L-FG2(式中、LおよびFG2のそれぞれは、本明細書に記載されている通りである)であるまたはこれを含む。
【0097】
一部の実施形態では、リンカーによって必要に応じて連結された足場薬剤部分および官能基を含む薬剤、または足場薬剤部分および結合部分を含む薬剤は、対応する足場薬剤(例えば、候補化合物)の特性を著しく変化させない。一部の実施形態では、斯かる薬剤は、対応する足場薬剤のサイズおよび/または分子量を、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%または30%以下しか変化させない。一部の実施形態では、結合部分、官能基および/またはリンカーは、足場薬剤の極性、溶解性および/またはLogP等を、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%または30%以下しか変化させない。
【0098】
ある特定の有用な薬剤について下に記載する:
【化15】
(式中、HaloTagO2は、-L-FG2であり、ペプチドのN末端に結合され、-L-FG2は、Cl-(CH
2)
6O(CH
2)
2O(CH
2)2NHC(O)(CH
2)
2C(O)-であり、ペプチド鎖は、足場薬剤部分である)。一部の実施形態では、足場薬剤は、
【化16】
(式中、R
Nは、-Hまたは-Ac)である。一部の実施形態では、R
Nは、-Hである。一部の実施形態では、R
Nは、-Acである。当業者によって認められる通り、R8およびS5ならびにReNおよびAzは、オレフィンメタセシスによってステープル留めすることができる。一部の実施形態では、足場薬剤のバリア通過特性は、バリアに接触させるために投与される薬剤(例えば、HaloTagO2を含む薬剤等、-L-FG2を含む薬剤)のバリア通過特性に基づき、これに関連付けて、これに関係付けておよび/またはこれから推論されて決定される。
【0099】
薬剤は、バリア通過を評価するためにバリアに接触させるために投与される場合、典型的に、第1の薬剤/捕捉分子として利用される薬剤が存在しない領域に投与される。一部の実施形態では、有意なレベルで第1の薬剤/捕捉分子に結合するまたはこれと反応するために、斯かる薬剤は、バリアを通過することが要求される。
ある特定の複合体
【0100】
一部の実施形態では、本開示は、複合体を提供する。一部の実施形態では、複合体は、別の薬剤(例えば、第2の薬剤)に結合するある1種の薬剤(例えば、第1の薬剤)によって形成される。一部の実施形態では、複合体は、別の薬剤と反応するある1種の薬剤によって形成される。一部の実施形態では、2種の薬剤は、共有結合により連結されて、複合体を形成する。一部の実施形態では、2種の薬剤のFG1およびFG2は、複合体が形成されるように反応する。
【0101】
一部の実施形態では、複合体は、薬剤、例えば、第2の薬剤が、バリアを通過し、別の薬剤、例えば、第1の薬剤と接触した後に形成される。
【0102】
一部の実施形態では、複合体を形成する反応は、生体直交型反応である。斯かる反応は、当技術分野で広く公知であり、本開示に従って利用することができる。一部の実施形態では、斯かる反応は、第2の領域において発生する。一部の実施形態では、斯かる反応は、細胞の内側で発生する。
【0103】
一部の実施形態では、複合体は、1または複数のCCLを含む。一部の実施形態では、1または複数のCCLは独立して、複合体を形成する薬剤に由来する(例えば、
図9Bを参照)。一部の実施形態では、CCLは、2個の官能基、例えば、FG1およびFG2の反応生成物である(例えば、
図7Aを参照)。
【0104】
一部の実施形態では、複合体薬剤は、
RC-L-LP-L-RB、
またはその塩(式中、LPは、Lであり、他の変数のそれぞれは独立して、本明細書に記載されている通りである)の構造を有する。一部の実施形態では、RC-L-は、RC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤について記載されている通りである。一部の実施形態では、RC-L-は、RC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤に由来する。一部の実施形態では、RB-L-は、RB-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤について記載されている通りである。一部の実施形態では、RC-L-は、RB-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤に由来する。一部の実施形態では、LPは、互いと反応するFG1およびFG2によって形成された生成物部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG1は、-COOHまたは塩もしくは活性化形態でありまたはこれを含み、FG2は、-Cl等の脱離基であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、LPは、-C(O)-O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG1およびFG2は、環化付加反応、例えば、クリックケミストリー反応の2種の反応パートナーであり、LPは、環化付加生成物部分、例えば、トリアゾール部分、6員環部分等であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、LPは、-Cy-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-Cy-は、少なくとも1個の部分的に不飽和または芳香族単環式環を含む。一部の実施形態では、-Cy-は、部分的に不飽和である。一部の実施形態では、-Cy-は、芳香族である。
【0105】
一部の実施形態では、RCに結合されたLは、CCLであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、RBに結合されたLは、CCLであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、両方のLは独立して、CCLであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、RBに結合されたLは、切断されて、生成物薬剤、例えば、RB-L-FG2とは異なるRP-L-FG3またはその塩の構造を有する薬剤をもたらす。一部の実施形態では、RCに結合されたLは、切断されて、RB-L-FG2とは異なる生成物薬剤をもたらす。一部の実施形態では、生成物薬剤は、H-L-LP-L-RB(式中、Hに結合されたLは、RCに結合されたLと同じである、または多くの実施形態では、これとは異なる)の構造を有する。一部の実施形態では、生成物薬剤におけるFG3または放出部分は、H-L-LP-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、本明細書に記載されている-Cy-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、-Cy-L-Hである。
【0106】
一部の実施形態では、RC-L-LP-L-RBにおける各Lは、生成物薬剤の産生中に切断されるCCLを含有しない。一部の実施形態では、LPは、切断されるCCLであるまたはこれを含む。例えば、一部の実施形態では、LPは、切断されて、生成物薬剤、例えば、RP-L-FG3またはその塩の構造を有する薬剤をもたらす、-C(O)O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、生成物薬剤は、RC-L-COOHまたはその塩(式中、RC-L-は、RC-L-FG1またはその塩におけるRC-L-と同じまたは異なる)の構造を有する。一部の実施形態では、生成物薬剤は、RP-L-OHまたはその塩(式中、RP-L-は、RB-L-FG2またはその塩におけるRB-L-と同じまたは異なる)の構造を有する。一部の実施形態では、これらは同じである。一部の実施形態では、これらは異なる。
【0107】
一部の実施形態では、複合体は、濃縮される。例えば、一部の実施形態では、複合体は、組成物、例えば、細胞ライセートから、親和性濃縮により濃縮することができる。一部の実施形態では、濃縮は、抗体を利用して達成される。一部の実施形態では、抗体は、複合体を認識および結合する。一部の実施形態では、抗体は、複合体における薬剤(例えば、第1の薬剤または捕捉分子)のタンパク質またはポリペプチド部分を認識および結合する。一部の実施形態では、複合体は、タグを使用して濃縮される。一部の実施形態では、複合体における薬剤、例えば、第1の薬剤/捕捉分子として利用される薬剤は、タグを含む。一部の実施形態では、タグは、Hisタグ(例えば、ヘキサヒスチジンタグ)であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、タグは、ヘキサヒスチジンタグであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、タグは、GSTタグであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、タグは、FLAGタグであるまたはこれを含む。
【0108】
とりわけ、濃縮は、精度、感度、シグナル・ノイズ比等を増加させることができる。
【0109】
一部の実施形態では、複合体は、濃縮されない。
【0110】
一部の実施形態では、複合体は、例えば、CCLの切断によって生成物薬剤に変換される。一部の実施形態では、CCLは、化学的条件、例えば、塩基性条件によって切断される。一部の実施形態では、塩基性条件は、CCL、例えば、-CO(O)-であるまたはこれを含むCCLを切断するのに十分に強いが、例えば、ペプチド部分であるまたはこれを含む足場薬剤部分を著しくは損傷しないであろう。一部の実施形態では、条件は、アミン塩基等の塩基を利用する。一部の実施形態では、条件は、約9、10、11、12、13または14のpHを有する。一部の実施形態では、pHは、9であるまたは約9である。一部の実施形態では、pHは、10であるまたは約10である。一部の実施形態では、pHは、11であるまたは約11である。一部の実施形態では、pHは、12であるまたは約12である。一部の実施形態では、pHは、13であるまたは約13である。一部の実施形態では、pHは、14であるまたは約14である。一部の実施形態では、切断は、触媒による切断(例えば、金属触媒によって促進される)、酸性切断、酸化切断、還元切断、光促進性切断(例えば、UV光によってもたらされる切断)等を含む。
【0111】
一部の実施形態では、CCLは、1または複数の酵素を利用して切断される。例えば、一部の実施形態では、-C(O)O-であるまたはこれを含むCCLは、エステラーゼ等のヒドロラーゼによって切断することができる。一部の実施形態では、切断は、触媒による切断(例えば、金属触媒によって促進される)、酸性切断、塩基性切断、酸化切断、還元切断、光促進性切断(例えば、UV光によってもたらされる切断)等であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、切断は、酸性切断であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、切断のための酸は、10%ギ酸であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、切断は、塩基性切断、例えば、実施例に記載されている条件であるまたはこれを含む。
【0112】
当業者であれば、本開示に従って他の酵素を利用することもできることを認めるであろう。
【0113】
一部の実施形態では、複合体は、一過性に形成することができる。一部の実施形態では、複合体は、転換プロセス、例えば、デハロゲナーゼによる-Clから-OHへの変換プロセス中の中間体であり得る。一部の実施形態では、例えば、RB-L-FG2もしくはその塩の構造を有する薬剤、または第2の薬剤は、切断マニピュレーションなしで、例えば、RP-L-FG2またはその塩の構造を有する生成物薬剤へと変換することができる。斯かる例の1種は、デハロゲナーゼによるRB-L-Clまたはその塩からRP-L-OHまたはその塩への変換である。一部の実施形態では、酵素は、変異体酵素、例えば、2種の薬剤の複合体が安定に形成、濃縮および/またはさらに処理されて、生成物薬剤がもたらされ得るような、そのヒドロラーゼ活性が大幅に低下または除去された変異体デハロゲナーゼである。
ある特定の生成物薬剤
【0114】
様々な実施形態では、本開示の反応は、生成物薬剤をもたらす。特に、一部の実施形態では、薬剤がバリアを通過した後に、これは、1種もしくは複数のステップを介して、および/または1種もしくは複数の他の薬剤により、検出することができる生成物薬剤をもたらし、薬剤のバリア通過を決定する。一部の実施形態では、生成物薬剤は、複合体の切断後に形成される。
【0115】
一部の実施形態では、生成物薬剤、例えば、検出に利用される薬剤は、必要に応じてリンカーを介して放出部分に連結された、本明細書に記載されている足場薬剤部分を含む。一部の実施形態では、リンカーは、Lである。一部の実施形態では、足場薬剤は、そのバリア通過が決定されるべき薬剤である。様々な足場薬剤が本明細書に記載されており、例えば、一部の実施形態では、足場薬剤は、ステープル留めされたペプチドであるまたはこれを含む。
【0116】
一部の実施形態では、生成物薬剤、および結合部分またはFG2等の官能基を含む薬剤は、同じ足場薬剤部分またはその特徴的な一部分を共有する。一部の実施形態では、生成物薬剤は、
RP-L-FG3、
またはその塩(式中、各変数は独立して、本明細書に記載されている通りである)の構造を有する。一部の実施形態では、RPは、足場薬剤部分である。一部の実施形態では、RPは、RBと同じであるか、またはそれと同じ特徴的な一部分を共有する。一部の実施形態では、RPは、RCと同じであるか、またはそれと同じ特徴的な一部分を共有する。一部の実施形態では、検出に利用される生成物薬剤は独立して、RBと同じであるか、またはそれと同じ特徴的な一部分を共有するRPを含む。一部の実施形態では、FG3は、-LP-L-Hまたは-OHであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、-Cy-L-Hまたは-OHであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、放出部分は、FG3であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、放出部分は、-L-FG3であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、薬剤の-L-FG2および生成物薬剤の-L-FG3は、異なる一方で、薬剤および生成物薬剤は、同じ足場薬剤部分またはその特徴的な一部分を共有する。
【0117】
一部の実施形態では、FG3は、-OHである。一部の実施形態では、FG3は、FG1およびFG2の反応生成物部分であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、捕捉薬剤としての薬剤のCCLは、切断される。一部の実施形態では、FG3は、Hである。
【0118】
一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)3-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)4-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)5-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)6-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)2-O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)2-O-(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)2-O-(CH2)2O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)6O(CH2)2O(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、-L-FG3は、HO-(CH2)n-(式中、nは、1~20である)であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である。
【0119】
一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)3-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)4-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)5-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)6-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)2-O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)2-O-(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)2-O-(CH2)2O-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)6O(CH2)2O(CH2)2-であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、FG3は、HO-(CH2)n-(式中、nは、1~20である)であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である。
【0120】
一部の実施形態では、生成物薬剤および投与される薬剤(例えば、バリア通過の評価のためにシステムに投与され、バリアに接触する)は、同じリンカーを含む。
【0121】
一部の実施形態では、生成物薬剤および投与される薬剤は、1または複数の特性が異なり、これらの特性を生成物薬剤の検出および識別に利用することができる。一部の実施形態では、生成物薬剤および投与される薬剤は、分子質量が異なり、質量分析によって検出および識別することができる。
【0122】
一部の実施形態では、生成物薬剤は、
【化17】
(式中、R
P-L-は、HO-(CH
2)
6O(CH
2)
2O(CH
2)2NHC(O)(CH
2)
2C(O)-である)である。当業者によって認められる通り、R8およびS5ならびにReNおよびAzは、オレフィンメタセシスによってステープル留めすることができる。対応する足場薬剤および投与される薬剤は、上に記載されている。
【0123】
とりわけ、提供される技術は、投与されて、バリアを通過する足場薬剤と同じであるまたは足場薬剤と同じ特徴的な一部分を共有する生成物薬剤を検出するという点において、様々な他の技術とは異なる。斯かるアプローチは、著しく改善された感度、精度、効率および/またはスループットを提供することができる。本明細書に記載されている通り、一部の実施形態では、複数の薬剤を同時的に評価することができる(例えば、バリアに接触させるために同じ溶液において投与される(例えば、細胞透過性を評価するために単一のウェルに投与される))。
マルチプレックス化
【0124】
とりわけ、提供される技術は、驚くべき効率および/またはスループットを提供する。一部の実施形態では、複数の薬剤は、必要に応じて単一の溶液として、バリア通過を評価するための単一のシステムへと同時的に投与される、例えば、細胞膜通過を評価するための細胞を有する単一のウェルへと投与される。一部の実施形態では、複数の薬剤は、同じ官能基、リンカーおよび/または結合部分を共有するが、異なる足場薬剤部分を有する(よって、とりわけ、様々な足場薬剤のバリア通過の評価に有用である)。一部の実施形態では、複数の薬剤は、同じ官能基を共有する。一部の実施形態では、複数のうちの薬剤は、同じ結合部分を共有するが、同じ基礎部分を共有しない。一部の実施形態では、各薬剤は独立して、異なる基礎部分を含む。一部の実施形態では、複数のうちの各薬剤は独立して、RB-L-FG2またはその塩の構造を有する。一部の実施形態では、RB-L-FG2またはその塩の構造を有する薬剤の1または複数の特性を評価することによって、RBまたはその特徴的な一部分を含むが、-L-FG2を含まない足場薬剤の1または複数の特性(例えば、細胞膜浸透等のバリア通過)を評価することができる。
【0125】
一部の実施形態では、複数の薬剤は、ライブラリー、例えば、ペプチドまたはステープル留めされたペプチドライブラリーのメンバーである。一部の実施形態では、粗製ライブラリーが、細胞膜の通過について評価される。ライブラリーを調製するための様々な技術は、当技術分野で公知であり(例えば、Shin et al., Combinatorial Solid Phase Peptide Synthesis and Bioassays, Journal of Biochemistry and Molecular Biology, 38 (5), September 2005, pp. 517-525)、本開示に従って利用することができる。
【0126】
複数の薬剤が、投与され、バリアに接触すると、一部または全てが、バリアを通過することができる。一部の実施形態では、複数の薬剤のいずれも、バリアを通過することができない。一部の実施形態では、バリアを通過する薬剤は、そこにある別の複数の薬剤、例えば、捕捉薬剤に結合するおよび/またはこれと反応して、複数の複合体をもたらす。
【0127】
一部の実施形態では、別の複数のうちの薬剤は、同じである。一部の実施形態では、これらは異なる。
【0128】
一部の実施形態では、別の複数のうちの薬剤のそれぞれは独立して、RF-L-FG1またはその塩の構造を有する。一部の実施形態では、RFは、複数のうちの薬剤で同じである。一部の実施形態では、RFは、異なる。一部の実施形態では、Lは、同じである。一部の実施形態では、Lは、異なる。一部の実施形態では、FG1は、同じである。一部の実施形態では、FG1は、異なる。
【0129】
一部の実施形態では、別の複数のうちの薬剤のそれぞれは独立して、RC-L-FG1またはその塩の構造を有する。一部の実施形態では、RCは、複数のうちの薬剤で同じである。一部の実施形態では、RCは、異なる。一部の実施形態では、Lは、同じである。一部の実施形態では、Lは、異なる。一部の実施形態では、FG1は、同じである。一部の実施形態では、FG1は、異なる。一部の実施形態では、別の複数のうちの各薬剤は、同じである。
【0130】
一部の実施形態では、複数における複合体は、同じ反応生成物部分を共有する。一部の実施形態では、これらは、異なる反応生成物部分を共有する。一部の実施形態では、これらは、同じリンカーを有する。一部の実施形態では、リンカーは、異なる。一部の実施形態では、これらは、共通CCLを共有する。一部の実施形態では、共通CCLは共有されない。一部の実施形態では、これらは、同じ条件で切断することができるCCLを共有する。
【0131】
一部の実施形態では、バリアを通過するこれらの薬剤のそれぞれは、例えば、1または複数の反応を介して、生成物薬剤を形成する。一部の実施形態では、例えば、CCLの切断後に、複数の生成物薬剤が提供される。一部の実施形態では、複数のうちの生成物薬剤は、同じ放出部分を共有する。一部の実施形態では、放出部分は、異なる。一部の実施形態では、リンカーは、同じである。一部の実施形態では、リンカーは、異なる。一部の実施形態では、複数のうちの生成物薬剤は、適した条件下で評価される。
【0132】
当業者であれば、望むのであれば、複数のうちの薬剤を個々に評価することができることを認める。
検出およびデータ解析
【0133】
当業者であれば認めるであろうが、本開示に従って様々な方法を利用して、生成物薬剤のレベルを検出および評価することができる。一部の実施形態では、生成物薬剤は、質量分析を使用して評価される。一部の実施形態では、質量分析は、高い効率をもたらす。
【0134】
多くの技術をデータ処理および解析に利用できる。ある特定の有用な技術が本明細書に記載されている。一部の実施形態では、RPFが利用される。一部の実施形態では、CORが利用される。
【0135】
一部の実施形態では、1または複数の参照薬剤が対照として利用される。一部の実施形態では、参照薬剤は、陽性参照薬剤であり、高い効率でバリアを通過することができる。一部の実施形態では、参照薬剤は、陰性参照薬剤であり、仮にあるとしても非常に低レベルでバリアを通過することができる。
【0136】
一部の実施形態では、陽性および/または陰性参照薬剤は、評価されるべき薬剤と一緒に同じシステムへと、例えば、バリアを含むウェル、薬剤が細胞膜通過について評価される複数の細胞を含むウェルへと投与される。一部の実施形態では、陽性および/または陰性参照薬剤は、評価されるべき薬剤とは別々に投与され、例えば、一部の実施形態では、評価されるべき薬剤を含有しない別々のウェルにおいて投与される。
バリア
【0137】
当業者によって認められる通り、提供される技術を利用して、様々な型のバリアを評価することができる。一部の実施形態では、バリアは、層であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、二重層であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、リン脂質二重層であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、膜であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、細胞膜であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、人工バリアであるまたはこれを含む。
【0138】
一部の実施形態では、バリアは、生物学的バリアであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、薬物送達に関連するバリアであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、治療剤が、その標的場所に吸収および/または送達されるためには通過することを必要とするバリアであるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、細胞の1または複数の層であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリアは、単層、例えば、単層アッセイにおいて利用される単層である。一部の実施形態では、バリアは、細胞(例えば、CaCo-2、RRCK、MDCK等)の単層であるまたはこれを含む。一部の実施形態では、バリア(例えば、細胞の単層)の通過について評価される薬剤は、一方の側面においてバリアと接触し、捕捉薬剤および/または形成されるのであれば生成物薬剤は、バリアの他方の側面にある。
【0139】
とりわけ、本開示は、本明細書に記載されている様々な薬剤の細胞膜通過の評価に特に有用な技術を提供する。一部の実施形態では、薬剤は、細胞を含むシステムに投与される。細胞膜を通過することができる薬剤は、細胞の内側で薬剤、例えば、捕捉分子に結合しておよび/またはこれと反応して、複合体を形成する。複合体は、必要に応じて濃縮および切断されて、例えば、質量分析を使用した検出および/または評価に利用することができる生成物薬剤をもたらす。
【0140】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されている薬剤および本明細書に記載されているバリアを含む組成物またはシステムを提供する。一部の実施形態では、薬剤は、本明細書に記載されている第1の薬剤である。一部の実施形態では、薬剤は、RC-L-FG1またはその塩の構造を有する。一部の実施形態では、薬剤は、RB-L-FG2またはその塩の構造を有する。一部の実施形態では、薬剤は、RP-L-FG3またはその塩の構造を有する。一部の実施形態では、薬剤は、RC-L-LP-L-RBまたはその塩の構造を有する。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、バリア、ならびに第1の薬剤、第2の薬剤、複合体薬剤および生成物薬剤のうち1または複数または全てを含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、バリア、第1の薬剤、第2の薬剤および複合体薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、バリア、第1の薬剤、第2の薬剤および生成物薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、バリア、第2の薬剤および生成物薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、バリア、RC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤、およびRP-L-FG3またはその塩の構造を有する(has)薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、バリア、RC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤、およびRB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、バリア、RP-L-FG3またはその塩の構造を有する薬剤、およびRB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、バリア、RP-L-FG3またはその塩の構造を有する薬剤、RB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤、およびRC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、バリア、RC-L-LP-L-RBまたはその塩の構造を有する薬剤、RB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤、およびRC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、バリア、ならびにRC-L-LP-L-RBまたはその塩の構造を有する薬剤、RB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤、RP-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤、およびRC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤のうち1または複数または全てを含む。一部の実施形態では、斯かる組成物またはシステムは、複数の細胞を含む。一部の実施形態では、RC-L-LP-L-RBまたはその塩の構造を有する薬剤、RB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤、RP-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤、およびRC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤のうち1または複数または全ては、1または複数の細胞内にある。
【0141】
一部の実施形態では、組成物またはシステムは、第1の薬剤、第2の薬剤、複合体薬剤および生成物薬剤のうち1または複数または全てを含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、第1の薬剤、第2の薬剤および複合体薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、第1の薬剤、第2の薬剤および生成物薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、第2の薬剤および生成物薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、RC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤、およびRP-L-FG3またはその塩の構造を有する(has)薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、RC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤、およびRB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、RP-L-FG3またはその塩の構造を有する薬剤、およびRB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、RP-L-FG3またはその塩の構造を有する薬剤、RB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤、およびRC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、RC-L-LP-L-RBまたはその塩の構造を有する薬剤、RB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤、およびRC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤を含む。一部の実施形態では、組成物またはシステムは、RC-L-LP-L-RBまたはその塩の構造を有する薬剤、RB-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤、RP-L-FG2またはその塩の構造を有する(has)薬剤、およびRC-L-FG1またはその塩の構造を有する薬剤のうち1または複数または全てを含む。一部の実施形態では、本開示は、斯かる組成物またはシステムを含む細胞を提供する。一部の実施形態では、本開示は、斯かる組成物またはシステムを含む細胞培養物を提供する。
【0142】
一部の実施形態では、本発明は、候補化合物が、動物細胞膜を横断することができるか決定するための方法および試薬を提供する。動物細胞膜を横断することができる斯かる候補化合物は、細胞浸透性化合物である。
【0143】
本明細書で参照される公開特許、特許出願、ウェブサイト、会社名および科学文献は、当業者が利用できる知識を確立し、それらの全体は、あたかもそれぞれが参照により本明細書に組み込まれると特にかつ個々に指し示されるのと同じ程度まで、これにより参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用されているいずれかの参考文献と、本明細書の具体的な教示との間のいかなる矛盾も、後者を支持して解決されるものとする。
【0144】
本明細書および特許請求の範囲において定義または使用されている用語は、文脈がそれ以外のことを要求しない限り、指し示されている意義を有するものとする。本明細書で使用されている技術および科学用語は、他に定義されていなければ、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意義を有する。単語または語句の当技術分野で理解される定義と、本明細書で特に教示されている単語または語句の定義との間のいかなる矛盾も、後者を支持して解決されるものとする。本明細書で使用される場合、次の用語は、指し示されている意義を有する。本明細書において使用される場合、内容がそれ以外のことを明らかに指示しない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は特に、それらが参照する用語の複数形も包含する。用語「約」は、およそ、辺り、ほぼまたは前後を意味するように本明細書で使用される。用語「約」は、数値的範囲と併せて使用される場合、示される数値の上および下に境界を拡張することにより、この範囲を修飾する。一般に、用語「約」は、20%の分散で、記述される値の上および下に数値を修飾するように本明細書で使用される。
【0145】
したがって、第1の態様では、本発明は、動物細胞膜を横断する1または複数の候補化合物を同定するための方法を提供する。方法は、第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、リン脂質二重層を横断する複数のうちの別個の候補化合物のそれぞれが、第1の領域に進入し、第1の領域において、別個の候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、別個の候補化合物のそれぞれが結合部分に取り付けられた、複数の別個の候補化合物を、リン脂質二重層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップであって、1または複数の複合体が形成される、ステップと、1または複数の複合体を破壊して、それぞれ放出部分に取り付けられた、1または複数の別個の候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップと、放出部分に取り付けられた1または複数の別個の候補化合物を、動物細胞膜を横断する1または複数の候補化合物であると同定するステップとを含む。一部の実施形態では、同定するステップは、候補化合物のアミノ酸配列を同定する。一部の実施形態では、同定するステップは、候補化合物の構造を同定する。
【0146】
別の態様では、本発明は、候補化合物が動物細胞膜を横断するか決定するための方法であって、第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、リン脂質二重層を横断する候補化合物が、第1の領域に進入し、第1の領域において、候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分(例えば、結合部分における官能基)および捕捉分子の間の1または複数の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、結合部分に取り付けられた候補化合物を、リン脂質二重層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップと、複合体を破壊して、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップと、放出部分に取り付けられた候補化合物を、動物細胞膜を横断する化合物であると同定するステップとを含む方法を提供する。一部の実施形態では、同定するステップは、候補化合物のアミノ酸配列を同定する。一部の実施形態では、同定するステップは、候補化合物の構造を同定する。
【0147】
本開示の化合物は、本明細書で全般的に記載されている化合物を含み、本明細書に開示されている綱(class)、亜綱(subclass)および種(species)によってさらに説明される。本明細書で使用される場合、他に指し示されなければ、次の定義が適用されるものとする。本開示の目的のため、化学元素は、the Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed.に従って同定される。その上、有機化学の一般原則は、”Organic Chemistry”, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999および”March’s Advanced Organic Chemistry”, 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001に記載されている。
【0148】
本明細書で使用される場合、「脂肪族」は、完全に飽和したまたは1もしくは複数の不飽和単位を含有する、直鎖(すなわち、非分岐状)または分岐状、置換または未置換の炭化水素鎖、あるいは完全に飽和したまたは1もしくは複数の不飽和単位を含有する、置換もしくは未置換の単環式、二環式または多環式炭化水素環(ただし芳香族ではない)、あるいはこれらの組合せを意味する。一部の実施形態では、脂肪族基は、1~50個の脂肪族炭素原子を含有する。一部の実施形態では、脂肪族基は、1~20個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態では、脂肪族基は、1~10個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態では、脂肪族基は、1~9個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態では、脂肪族基は、1~8個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態では、脂肪族基は、1~7個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態では、脂肪族基は、1~6個の脂肪族炭素原子を含有する。また他の実施形態では、脂肪族基は、1~5個の脂肪族炭素原子を含有し、さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1、2、3または4個の脂肪族炭素原子を含有する。適した脂肪族基は、直鎖状または分岐状、置換または未置換のアルキル、アルケニル、アルキニル基、およびこれらのハイブリッド、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルを含むがこれらに限定されない。
【0149】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、1または複数の二重結合を有する、本明細書に定義されている脂肪族基を指す。
【0150】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、当技術分野におけるその通常の意義を与えられ、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基を含むことができる。一部の実施形態では、アルキルは、1~100個の炭素原子を有する。ある特定の実施形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に約1~20個の炭素原子(例えば、直鎖ではC1~C20、分岐鎖ではC2~C20)を、その代わりに、約1~10個を有する。一部の実施形態では、シクロアルキル環は、その環構造に約3~10個の炭素原子を有し、斯かる環は、単環式、二環式または多環式であり、その代わりに、環構造に約5、6または7個の炭素を有する。一部の実施形態では、アルキル基は、低級アルキル基であり得、低級アルキル基は、1~4個の炭素原子を含む(例えば、直鎖低級アルキルではC1~C4)。
【0151】
本明細書で使用される場合、用語「アルキニル」は、1または複数の三重結合を有する、本明細書に定義されている脂肪族基を指す。
【0152】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ(aralkoxy)」もしくは「アリールオキシアルキル」にあるようなより大きい部分の一部として使用される、用語「アリール」は、本明細書で使用される場合、総計5~30個の環員(ring member)を有する単環式、二環式または多環式環系を指し、系における少なくとも1個の環は、芳香族である。一部の実施形態では、アリール基は、総計5~14個の環員を有する単環式、二環式または多環式環系であり、系における少なくとも1個の環は、芳香族であり、系における各環は、3~7個の環員を含有する。一部の実施形態では、アリール基は、ビアリール基である。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に使用することができる。本開示のある特定の実施形態では、「アリール」は、1または複数の置換基を持つことができる、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ビナフチル、アントラシル(anthracyl)その他を含むがこれらに限定されない芳香族環系を指す。本明細書において使用される場合の用語「アリール」の範囲内には、インダニル、フタルイミジル、ナフチミジル(naphthimidyl)、フェナントリジニル(phenanthridinyl)またはテトラヒドロナフチルその他等、1または複数の非芳香族環に芳香族環が融合された基も含まれる。
【0153】
用語「脂環式」、「炭素環」、「カルボシクリル(carbocyclyl)」、「炭素環式遊離基」および「炭素環式環」は、互換的に使用されており、本明細書で使用される場合、他に指定がなければ3~30個の環員を有する、本明細書に記載されている飽和または部分的に不飽和だが非芳香族の、環状脂肪族単環式、二環式または多環式環系を指す。脂環式基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、ノルボルニル、アダマンチルおよびシクロオクタジエニルを限定することなく含む。一部の実施形態では、脂環式基は、3~6個の炭素を有する。一部の実施形態では、脂環式基は、飽和しており、シクロアルキルである。用語「脂環式」は、デカヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチル等、1または複数の芳香族または非芳香族環に融合された脂肪族環を含むこともできる。一部の実施形態では、脂環式基は、二環式である。一部の実施形態では、脂環式基は、三環式である。一部の実施形態では、脂環式基は、多環式である。一部の実施形態では、「脂環式」は、完全に飽和したまたは1もしくは複数の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない、分子の残りへの単一の取付け点を有する、C3~C6単環式炭化水素、またはC8~C10二環式もしくは多環式炭化水素、あるいは完全に飽和したまたは1もしくは複数の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない、分子の残りへの単一の取付け点を有する、C9~C16多環式炭化水素を指す。
【0154】
用語「ヘテロ脂肪族」は、本明細書で使用される場合、当技術分野におけるその通常の意義を与えられ、1または複数の炭素原子が独立して1または複数のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンその他)に置き換えられた、本明細書に記載されている脂肪族基を指す。一部の実施形態では、C、CH、CH2およびCH3から選択される1または複数の単位は独立して、1または複数のヘテロ原子(その酸化および/または置換形態を含む)によって置き換えられる。一部の実施形態では、ヘテロ脂肪族基は、ヘテロアルキルである。一部の実施形態では、ヘテロ脂肪族基は、ヘテロアルケニルである。
【0155】
単独で、またはより大きい部分、例えば、「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアラルコキシ」の一部として使用される、用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ/リ/ル/レ/ロ~(heteroar-)」は、本明細書で使用される場合、総計5~30個の環員を有する単環式、二環式または多環式環系を指し、系における少なくとも1個の環は、芳香族であり、少なくとも1個の芳香族環原子は、ヘテロ原子である。一部の実施形態では、ヘテロアリール基は、5~10個の環原子を有する基であり(すなわち、単環式、二環式または多環式)、一部の実施形態では、5、6、9または10個の環原子を有する。一部の実施形態では、ヘテロアリール基は、環状アレイで共有される6、10または14個のπ電子を有し;炭素原子に加えて、1~5個のヘテロ原子を有する。ヘテロアリール基は、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル(indolizinyl)、プリニル(purinyl)、ナフチリジニル(naphthyridinyl)およびプテリジニルを限定することなく含む。一部の実施形態では、ヘテロアリールは、ビピリジルその他等、ヘテロビアリール基である。用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ/リ/ル/レ/ロ~」は、本明細書で使用される場合、ヘテロ芳香族環が1または複数のアリール、脂環式またはヘテロシクリル環に融合された基も含み、遊離基または取付け点は、ヘテロ芳香族環上にある。非限定的な例は、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル(indazolyl)、ベンズイミダゾリル(benzimidazolyl)、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル(cinnolinyl)、フタラジニル(phthalazinyl)、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル(quinolizinyl)、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル(phenoxazinyl)、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンを含む。ヘテロアリール基は、単環式、二環式または多環式であり得る。用語「ヘテロアリール」は、いずれも必要に応じて置換された環を含む、用語「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」または「ヘテロ芳香族」と互換的に使用することができる。用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール基によって置換されたアルキル基を指し、アルキルおよびヘテロアリール一部分は独立して、必要に応じて置換されている。
【0156】
用語「ヘテロ原子」は、本明細書で使用される場合、炭素でも水素でもない原子を意味する。一部の実施形態では、ヘテロ原子は、ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素(酸化形態(例えば、窒素、硫黄、リンまたはケイ素の)、複素環式環の塩基性窒素または置換可能な窒素の四級化された形態(例えば、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおけるような)、NH(ピロリジニルにおけるような)またはNR+(N-置換ピロリジニルにおけるような)等)等、斯かる原子の様々な形態を含む)である。一部の実施形態では、ヘテロ原子は、酸素、硫黄または窒素である。
【0157】
本明細書で使用される場合、用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式遊離基」および「複素環式環」は、本明細書で使用される場合、互換的に使用され、飽和または部分的に不飽和であり、1または複数のヘテロ原子環原子を有する、単環式、二環式または多環式環部分(例えば、3~30員の)を指す。一部の実施形態では、ヘテロシクリル基は、飽和または部分的に不飽和のいずれかであり、炭素原子に加えて、上に定義されている1または複数の、好ましくは1~4個のヘテロ原子を有する、安定した5~7員の単環式または7~10員の二環式複素環式部分である。複素環の環原子を参照しながら使用される場合、用語「窒素」は、置換された窒素を含む。例として、酸素、硫黄および窒素から選択される0~3個のヘテロ原子を有する飽和または部分的に不飽和の環において、窒素は、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおけるような)、NH(ピロリジニルにおけるような)または+NR(N-置換ピロリジニルにおけるような)であり得る。複素環式環は、いずれかのヘテロ原子または炭素原子においてそのペンダント基に取り付けることができ、これにより、安定した構造がもたらされ、環原子のいずれかは、必要に応じて置換されていてよい。斯かる飽和または部分的に不飽和の複素環式遊離基の例は、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル(dioxanyl)、ジオキソラニル(dioxolanyl)、ジアゼピニル(diazepinyl)、オキサゼピニル(oxazepinyl)、チアゼピニル(thiazepinyl)、モルホリニルおよびキヌクリジニルを限定することなく含む。用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環式基」、「複素環式部分」および「複素環式遊離基」は、本明細書で互換的に使用され、インドリニル(indolinyl)、3H-インドリル、クロマニル、フェナントリジニルまたはテトラヒドロキノリニル等、ヘテロシクリル環が、1または複数のアリール、ヘテロアリールまたは脂環式環に融合された基も含む。ヘテロシクリル基は、単環式、二環式または多環式であり得る。用語「ヘテロシクリルアルキル」は、ヘテロシクリルによって置換されたアルキル基を指し、アルキルおよびヘテロシクリル一部分は独立して、必要に応じて置換されている。
【0158】
本明細書に記載されている通り、薬剤、化合物およびそれらの部分は、必要に応じて置換されたおよび/または置換された部分を含有することができる。一般に、用語「置換された」は、用語「必要に応じて」が先行するか否かにかかわらず、指名された部分の1または複数の水素が、適した置換基に置き換えられていることを意味する。他に指し示されなければ、「必要に応じて置換された」基は、基の置換可能な位置のそれぞれに適した置換基を有することができ、いずれか所与の構造における2個以上の位置が、指定の基から選択される2個以上の置換基に置換され得る場合、置換基は、全ての位置で同じであっても異なっていてもよい。一部の実施形態では、必要に応じて置換された基は、未置換である。本開示によって想定される置換基の組合せは、好ましくは、安定したまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらす組合せである。用語「安定した」は、本明細書で使用される場合、本明細書に開示されている目的のうち1または複数のための、その産生、検出ならびにある特定の実施形態では、その回収、精製および使用を可能にする条件に付されたときに、実質的に変更されない化合物を指す。ある特定の置換基を下に記載する。
【0159】
置換可能な原子、例えば、適した炭素原子における適した一価置換基は独立して、ハロゲン;-(CH2)0~4R°;-(CH2)0~4OR°;-O(CH2)0~4R°、-O-(CH2)0~4C(O)OR°;-(CH2)0~4CH(OR°)2;R°で置換されていてよい-(CH2)0~4Ph;R°で置換されていてよい-(CH2)0~4O(CH2)0~1Ph;R°で置換されていてよい-CH=CHPh;R°で置換されていてよい-(CH2)0~4O(CH2)0~1-ピリジル;-NO2;-CN;-N3;-(CH2)0~4N(R°)2;-(CH2)0~4N(R°)C(O)R°;-N(R°)C(S)R°;-(CH2)0~4N(R°)C(O)NR°2;-N(R°)C(S)NR°2;-(CH2)0~4N(R°)C(O)OR°;-N(R°)N(R°)C(O)R°;-N(R°)N(R°)C(O)NR°2;-N(R°)N(R°)C(O)OR°;-(CH2)0~4C(O)R°;-C(S)R°;-(CH2)0~4C(O)OR°;-(CH2)0~4C(O)SR°;-(CH2)0~4C(O)OSiR°3;-(CH2)0~4OC(O)R°;-OC(O)(CH2)0~4SR°、-SC(S)SR°;-(CH2)0~4SC(O)R°;-(CH2)0~4C(O)NR°2;-C(S)NR°2;-C(S)SR°;-(CH2)0~4OC(O)NR°2;-C(O)N(OR°)R°;-C(O)C(O)R°;-C(O)CH2C(O)R°;-C(NOR°)R°;-(CH2)0~4SSR°;-(CH2)0~4S(O)2R°;-(CH2)0~4S(O)2OR°;-(CH2)0~4OS(O)2R°;-S(O)2NR°2;-(CH2)0~4S(O)R°;-N(R°)S(O)2NR°2;-N(R°)S(O)2R°;-N(OR°)R°;-C(NH)NR°2;-Si(R°)3;-OSi(R°)3;-B(R°)2;-OB(R°)2;-OB(OR°)2;-P(R°)2;-P(OR°)2;-P(R°)(OR°);-OP(R°)2;-OP(OR°)2;-OP(R°)(OR°);-P(O)(R°)2;-P(O)(OR°)2;-OP(O)(R°)2;-OP(O)(OR°)2;-OP(O)(OR°)(SR°);-SP(O)(R°)2;-SP(O)(OR°)2;-N(R°)P(O)(R°)2;-N(R°)P(O)(OR°)2;-P(R°)2[B(R°)3];-P(OR°)2[B(R°)3];-OP(R°)2[B(R°)3];-OP(OR°)2[B(R°)3];-(C1~4直鎖または分岐状アルキレン)O-N(R°)2;または-(C1~4直鎖または分岐状アルキレン)C(O)O-N(R°)2であり、各R°は、本明細書に定義されている通りに置換されていてよく、独立して、水素、C1~20脂肪族、窒素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンから独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有するC1~20ヘテロ脂肪族、-CH2-(C6~14アリール)、-O(CH2)0~1(C6~14アリール)、-CH2-(5~14員のヘテロアリール環)、窒素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンから独立して選択される0~5個のヘテロ原子を有する5~20員の単環式、二環式もしくは多環式の、飽和、部分的に不飽和のもしくはアリール環であるか、または上の定義にもかかわらず、R°の2個の独立した出現は、それらの介在原子(複数可)と一緒になって、下に定義される通りに置換されていてよい、窒素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンから独立して選択される0~5個のヘテロ原子を有する5~20員の単環式、二環式もしくは多環式の、飽和、部分的に不飽和のもしくはアリール環を形成する。
【0160】
R°(またはR°の2個の独立した出現を、それらの介在原子と一緒にすることによって形成された環)における適した一価置換基は独立して、ハロゲン、-(CH2)0~2R●、-(ハロR●)、-(CH2)0~2OH、-(CH2)0~2OR●、-(CH2)0~2CH(OR●)2;-O(ハロR●)、-CN、-N3、-(CH2)0~2C(O)R●、-(CH2)0~2C(O)OH、-(CH2)0~2C(O)OR●、-(CH2)0~2SR●、-(CH2)0~2SH、-(CH2)0~2NH2、-(CH2)0~2NHR●、-(CH2)0~2NR●
2、-NO2、-SiR●
3、-OSiR●
3、-C(O)SR●、-(C1~4直鎖または分岐状アルキレン)C(O)OR●または-SSR●であり、各R●は、未置換であるか、または「ハロ」が先行する場合、1もしくは複数のハロゲンでのみ置換されており、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、ならびに窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分的に不飽和のまたはアリール環から独立して選択される。R°の飽和炭素原子における適した二価置換基は、=Oおよび=Sを含む。
【0161】
例えば、適した炭素原子における適した二価置換基は独立して、次の:=O、=S、=NNR*
2、=NNHC(O)R*、=NNHC(O)OR*、=NNHS(O)2R*、=NR*、=NOR*、-O(C(R*
2))2~3O-または-S(C(R*
2))2~3S-であり、R*の各独立した出現は、水素、下に定義される通りに置換されていてよいC1~6脂肪族、ならびに窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する未置換の5~6員の飽和、部分的に不飽和のまたはアリール環から選択される。「必要に応じて置換された」基の近接した置換可能な炭素に結合される適した二価置換基は、-O(CR*
2)2~3O-を含み、R*の各独立した出現は、水素、下に定義される通りに置換されていてよいC1~6脂肪族、ならびに窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する未置換の5~6員の飽和、部分的に不飽和のおよびアリール環から選択される。
【0162】
R*の脂肪族基における適した置換基は独立して、ハロゲン、-R●、-(ハロR●)、-OH、-OR●、-O(ハロR●)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR●、-NH2、-NHR●、-NR●
2または-NO2であり、各R●は、未置換であるか、または「ハロ」が先行する場合、1もしくは複数のハロゲンでのみ置換されており、独立して、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分的に不飽和のもしくはアリール環である。
【0163】
一部の実施形態では、置換可能な窒素における適した置換基は独立して、-R†、-NR†
2、-C(O)R†、-C(O)OR†、-C(O)C(O)R†、-C(O)CH2C(O)R†、-S(O)2R†、-S(O)2NR†
2、-C(S)NR†
2、-C(NH)NR†
2または-N(R†)S(O)2R†であり、各R†は独立して、水素、下に定義される通りに置換されていてよいC1~6脂肪族、未置換の-OPh、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する未置換の5~6員の飽和、部分的に不飽和のもしくはアリール環であるか、または上の定義にもかかわらず、R†の2個の独立した出現は、それらの介在原子(複数可)と一緒になって、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する未置換の3~12員の飽和、部分的に不飽和のもしくはアリール単環または二環式環を形成する。
【0164】
R†の脂肪族基における適した置換基は独立して、ハロゲン、-R●、-(ハロR●)、-OH、-OR●、-O(ハロR●)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR●、-NH2、-NHR●、-NR●
2または-NO2であり、各R●は、未置換であるか、または「ハロ」が先行する場合、1もしくは複数のハロゲンでのみ置換されており、独立して、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、もしくは窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分的に不飽和のもしくはアリール環である。
【0165】
本明細書で使用される場合、用語「部分的に不飽和」は、少なくとも1個の二重または三重結合を含む環部分を指す。用語「部分的に不飽和」は、不飽和の複数の部位を有する環を包含することが意図されるが、本明細書に定義されているアリールまたはヘテロアリール部分を含むことは意図されない。
【0166】
用語「不飽和」は、本明細書で使用される場合、部分が、1または複数の不飽和単位を有することを意味する。
【0167】
他に記述がなければ、本明細書に描写されている構造はまた、構造のあらゆる異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマーおよび幾何的(または高次構造))形態;例えば、不斉中心毎のRおよびS立体配置、ZおよびE二重結合異性体、ならびにZおよびE高次構造異性体を含むことが企図される。したがって、本化合物の単一の立体化学的異性体と共に、鏡像異性体、ジアステレオマーおよび幾何的(または高次構造)混合物が、本開示の範囲内にある。他に記述がなければ、化合物のあらゆる互変異性体形態が、本開示の範囲内にある。その上、他に記述がなければ、本明細書に描写されている構造はまた、1または複数の同位体的に濃縮された原子の存在のみが異なる化合物を含むことが企図される。例えば、重水素もしくはトリチウムによる水素の置換え、または13Cもしくは14C濃縮炭素による炭素の置換えを含む本構造を有する化合物は、本開示の範囲内にある。斯かる化合物は、例えば、本開示に従った、解析ツールとして、生物学的アッセイにおけるプローブとして、または治療剤として有用である。
【0168】
本明細書で使用される場合、「候補化合物」とは、単に、動物細胞の細胞膜を横断することができると疑われるいずれかの型の分子を意味する。候補化合物は、限定することなく、小分子化学物質(例えば、約900ダルトン未満の質量または約1nm未満のサイズを有する)、より大きな化学物質、アミノ酸、1もしくは複数の合成アミノ酸(例えば、ロイシンの代わりに合成アミノ酸Cba)を含有するおよび/または合成により作製された(例えば、FMOC固相合成またはBoc化学合成による)ペプチド等の合成ペプチドを含むペプチド、ステープル留めされたまたは縫合されたペプチドまたはペプチドミメティック、大環状ペプチドまたはペプチドミメティック、グリコシル化またはパルミトイル化等の二次修飾を有するタンパク質を含むタンパク質、メチル化等の二次修飾を有する核酸を含む核酸、脂質、糖脂質、ならびに炭水化物であり得る。
【0169】
一部の実施形態では、ペプチドは、ペプチド合成機において調製することができる。例えば、一部の実施形態では、ペプチド候補化合物は、CEM ProTide Rinkアミド樹脂(ローディング0.55~0.8mmol/g)におけるFmoc固相ペプチド化学を使用して、Intavis Multipep RSiペプチド合成機において合成することができる。
【0170】
一部の実施形態では、候補化合物は、ステープル留めされたまたは縫合されたペプチドまたはペプチドミメティックである。一部の実施形態では、候補化合物は、大環状ペプチドまたはペプチドミメティックである。
【0171】
環状、ステープル留めされたまたは縫合されたペプチドまたはペプチドミメティック(または合成ペプチド)は、周知のものである。例えば、例えば、米国特許第7,192,713号;同第8,957,026号;同第9,617,309号;同第9,163,330号;同第9,169,295号;同第10,081,654号;PCT特許公開番号WO2011/008260;WO2014/052647;WO2014/159969;WO2015/179635;WO2019/051327;および欧州特許公開第3559020号に記載されている化合物のいずれかを参照されたい。一部の実施形態では、ペプチドは、合成により作製される。一部の実施形態では、ペプチドは、ペプチド合成の際の一時的N末端α-アミノ保護基としてtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)を使用して作製される。簡潔に説明すると、トリフルオロ酢酸(TFA)等の酸によるBoc基の除去は、次のアミノ酸が、伸びているペプチドに付加されることを可能にする。
【0172】
一部の実施形態では、ペプチドは、ペプチド合成の際にN末端を保護するためのフルオレニルメトキシカルボニル保護基(FMOC)を使用して作製される(例えば、Chan and White, Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis - A Practical Approach. Oxford University Press, 2000;PCT公開番号WO2019/051327を参照)。簡潔に説明すると、Fmoc固相ペプチド合成において、アミノ酸は、そのN末端においてFmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)基によって保護され、カルボン酸末端の活性化後に、伸びているペプチド鎖にカップルされる。次に、Fmoc基は、ピペリジン処置によって除去され、プロセスが反復される。次に、トリフルオロ酢酸(TFA)による処置によって、樹脂から完了されたペプチドを除去し、ペプチドを精製することができる(例えば、逆相HPLCを使用して)。
【0173】
一部の実施形態では、候補化合物は、結合部分に取り付けられる。一部の実施形態では、「取り付けられる」とは、共有結合により結合されることを意味する(例えば、候補化合物は、結合部分に共有結合により結合される)。「結合部分」とは、候補化合物に取り付けることができるいずれかの分子を意味し、結合部分(例えば、リンカーまたはプローブ)は、候補化合物に取り付けられていない場合、リン脂質二重層を横断することができる。一部の実施形態では、結合部分に取り付けられていない候補化合物が、リン脂質二重層を横断することができないのであれば、結合部分が、候補化合物に取り付けられる場合、結合部分は、このリン脂質二重層を横断することができない。よって、一部の実施形態では、結合部分は、結合部分が取り付けられている候補化合物が、リン脂質二重層を横断することを助けない。一部の実施形態では、結合部分は、結合部分が取り付けられている候補化合物が、リン脂質二重層を横断することを阻害も妨害もしない。
【0174】
合成によりペプチドを生成するための方法は、N末端、C末端または内側においてペプチドにリンカーを取り付けるための方法と同様に周知である。PCT公開番号WO2019/051327は、合成によりペプチドを生成するための非限定的な方法について記載する。
【0175】
特定の理論に制約されることは望まないが、
図2は、どのように、結合部分に取り付けられた非限定的なステープル留めされたペプチドを合成することができるかを示す概略図について描写する。
図2に示す通り、ペプチドは、標準方法に従ったFMOC固相ペプチド合成の使用により生成される。「R8」および「S5」が、ペプチドが、合成後に、グラブス(Grubb’s)触媒閉環反応等の標準方法を使用してステープル留めされるであろう位置を示すことに留意されたい。例えば、グラブス触媒反応のために、ペプチドは、絶え間なくボルテックスにかけつつ、30mol%の新鮮に調製された5mMのビス(トリシクロヘキシルホスフィン(tricylcohexhylphosphine))ベンジリデンルテニウム(IV)二塩化物(グラブスI)の1,2-ジクロロエタン(DCE)中溶液で1時間処置することができる。
図2に示す通り、次に、構造:
【化18】
(式中、Zは、例えば、
【化19】
である)を有する結合部分を、HATU/DIEAアミドカップリング反応(HATUは、HATU(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロホスフェートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(Uronium))であり、DIEAは、N,N-ジイソプロピルエチルアミンまたはヒューニッヒ塩基である等の標準方法(例えば、Dunetz JR et al., ”Large-Scale Applications of Amide Coupling Reagents for the Synthesis of Pharmaceuticals”. Organic Process Research & Development. 20 (2): 140-177, 2016を参照)により、ペプチドのN末端に付加することができる。
【0176】
次に、樹脂に共有結合により結合されたペプチドに取り付けられた結合部分は、樹脂からペプチドを切断するためのカクテルに曝露される。カクテルは、例えば、カクテル(cocktail)を切断するためのトリフルオロ酢酸(TFA)を含有することができる。樹脂から放出されたペプチドに取り付けられた結合部分を
図2の下部に示す。
【0177】
図3A~
図3Cは、本発明の一実施形態を概略的に描写する。
図3Aに示す通り、リン脂質二重層は、第1の領域を第2の領域から分離し、捕捉分子は、第1の領域にあり、結合部分に取り付けられた候補化合物は、第2の領域にある。
図3Bに示す通り、候補化合物は、リン脂質二重層を横断する(よって、第2の領域から第1の領域へと移動する)ことができる場合、候補化合物に取り付けられた結合部分を介して捕捉分子と共有結合により結合して、第1の領域において複合体を形成するであろう。最後に、
図3Cにおいて描写される通り、複合体は破壊され、今度は放出部分に取り付けられている候補化合物を遊離させる。放出部分は、結合部分とは異なるため、放出部分に取り付けられた候補化合物は、リン脂質二重層を横断することができる候補化合物であると同定される。
【0178】
図3A~
図3Cに概略的に描写されている方法が、単一の別個の候補化合物に限定されないことに留意されたい。
図4A~
図4Bが描写する通り、複数の別個の候補化合物を同時にスクリーニングすることができる。
図4Aに示す通り、リン脂質二重層は、第1の領域を第2の領域から分離し、第1の領域は、複数の捕捉分子を含有し、第2の領域は、それぞれ結合部分に取り付けられた、複数の別個の候補化合物を含有する。
図4Aに描写されている3種の別個の候補化合物のうち、別個の候補化合物Aは、リン脂質二重層を横断しない一方で、別個の候補化合物Bおよび別個の候補化合物Cは、リン脂質二重層を横断する。
図4Aの下部において、候補化合物Bの結合部分は、捕捉分子に共有結合により取り付き、候補化合物Cの結合部分は、捕捉分子に共有結合により取り付く。
図4Bに示す通り、複合体の破壊は、放出部分に取り付けられた別個の候補化合物B、および放出部分に取り付けられた別個の候補化合物Cをもたらす。この非限定的な
図4A~
図4Bに示す実施形態では、放出部分は、結合部分よりも小さい。「より小さい」とは、質量がより小さい、物理的サイズがより小さい、または原子の数がより小さいことを意味する。
【0179】
よって、リン脂質二重層を横断することができる候補化合物のみが、捕捉分子と複合体を形成するであろう。複合体の破壊後に、リン脂質二重層を横断した候補化合物は、放出部分に取り付けられた候補化合物となるであろう。
【0180】
用語「複数」が、「複数の別個の候補化合物」等、別個の候補化合物について記載している場合、複数において2種以上の別個の候補化合物が存在することに留意するべきである。複数において1または複数コピーの同じ候補化合物が存在し得るが、複数は、2種以上の異なる別個の候補化合物を含む。一部の実施形態では、複数の別個の候補化合物において少なくとも2種の異なる別個の候補化合物が存在する。一部の実施形態では、複数の別個の候補化合物において少なくとも3種の異なる別個の候補化合物が存在する。一部の実施形態では、複数の別個の候補化合物において少なくとも5種の異なる別個の候補化合物が存在する。一部の実施形態では、複数の別個の候補化合物において少なくとも10種の異なる別個の候補化合物が存在する。一部の実施形態では、複数の別個の候補化合物において少なくとも20種の異なる別個の候補化合物が存在する。一部の実施形態では、複数の別個の候補化合物において少なくとも50種の別個の候補化合物が存在する。一部の実施形態では、複数の別個の候補化合物において少なくとも100種の別個の候補化合物が存在する。一部の実施形態では、複数の別個の候補化合物において少なくとも150種の別個の候補化合物が存在する。一部の実施形態では、複数の別個の候補化合物において少なくとも200種の別個の候補化合物が存在する。一部の実施形態では、複数の別個の候補化合物において少なくとも250種の別個の候補化合物が存在する。別個の分子のそれぞれが、複数内で1回または2回以上発生し得ることが理解されるであろう。例えば、複数の別個の候補化合物が、3種の別個の候補化合物を含む場合、1コピーの第1の別個の候補化合物、3コピーの第2の別個の候補化合物、および10コピーの第3の別個の候補化合物が存在し得る。
【0181】
本明細書で使用される場合、「リン脂質二重層」とは、疎水性尾部が互いに向かい合い、親水性頭部が互いに背けた、リン脂質の二重層を意味する(例えば、
図1を参照)。細胞膜は、リン脂質二重層を含むが、リン脂質二重層が、細胞膜に存在している必要はないことに留意されたい。例えば、リン脂質二重層は、リポソームに存在することができる。リン脂質二重層はまた、球状(またはほぼ球状)、またはさらには円形や楕円形である必要はない。例えば、平坦なリン脂質二重層が、本発明の様々な実施形態内で企図される。
【0182】
一部の実施形態では、リン脂質二重層は、平坦または平面状である。平坦なリン脂質二重層の非限定的な一例は、黒膜(black lipid membrane)(BLM)モデルに基づくことができる(例えば、Mueller P. et al., Nature 194 (4832):979-980, 1962;Montal and Mueller, Proc. Natl. Acad. Sci USA 69: 356103566, 1972を参照)。これは、標準方法によって形成することができる。例えば、リン脂質を炭化水素溶媒に溶解し、第1の領域を第2の領域から分離する小さい開口部(例えば、1~5mmの直径)にわたり塗布することができる。リン脂質二重層が形成されたら、1または複数の捕捉分子を第1の領域に添加し、1または複数の候補化合物を第2の領域に添加することができる(
図5Aを参照)。
図5Bは、開口部にまたがるリン脂質二重層を示す
図5Aの開口部の断面の引き伸ばし図である。
図5A~
図5Bに示す通り、リン脂質二重層の第1の側面は、第1の領域に接触し、前記第1の領域は、1または複数の捕捉分子を含有する。リン脂質二重層の第2の側面は、第2の領域に接触する。候補化合物(複数可)は、第2の領域に添加され、候補化合物が、リン脂質二重層を横断することができる場合、候補化合物に取り付けられた結合部分は、捕捉分子に共有結合により結合し、複合体を形成するであろう。次に、複合体を
図3Cに示す通り破壊して、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出することができる。
【0183】
一部の実施形態では、リン脂質二重層の内層が連続的となり、リン脂質二重層の外層が連続的となるように、リン脂質二重層は、球状(またはほぼ球状)である。一部の実施形態では、球状(またはほぼ球状)リン脂質二重層は、リン脂質二重層の内層内に第1の領域を完全に囲い込んで画定し、リン脂質二重層の外層は、リン脂質二重層の外側である第2の領域に向かう。
【0184】
一部の実施形態では、球状(またはほぼ球状)リン脂質二重層は、リポソームの膜である。リポソームの製造は、周知のものである。例えば、Akbarzadeh A. et al., Nanoscale Res. Lett. 8(1): 102, 2013;米国特許公開番号US20120171280;ならびに米国特許第3,932,657号、同第4,311,712号および同第5,013,556号を参照されたい。
図6に示す通り、リポソームは、1または複数の捕捉分子を内側に持つように製造することができる。換言すると、リポソームの内部は、第1の領域である。このような捕捉分子含有リポソームは、本明細書に記載されている本発明の様々な実施形態において使用することができる。
【0185】
一部の実施形態では、球状(またはほぼ球状)リン脂質は、細胞(例えば、動物細胞)の細胞膜である。一部の実施形態では、リン脂質二重層の内層内の第1の領域は、細胞のサイトゾルであり、リン脂質二重層の外層の外側の第2の領域は、細胞外である。斯かる細胞がin vivoにある場合、細胞外空間の構成成分は、細胞の型によって異なるであろう。例えば、細胞が精子細胞である場合、細胞外空間は、精漿であり得る。細胞が血液細胞である場合、細胞外空間は、血漿またはリンパ液であり得る。当然ながら、細胞がex vivoにある場合、細胞外空間は、それがいかなるものであっても、細胞が育成または貯蔵されている培地(例えば、組織培養培地、生理食塩水等)となるであろう。
【0186】
一部の実施形態では、リン脂質二重層が細胞膜である場合、細胞は、動物細胞である。一部の実施形態では、動物細胞は、その細胞膜が候補化合物によって横断されると決定されている動物細胞と同じ動物種に由来する。
【0187】
本明細書で使用される場合、「動物細胞」とは、動物界由来の生物の細胞を意味する。一部の実施形態では、動物細胞は、脊椎動物に由来する。一部の実施形態では、脊椎動物は、哺乳動物である。一部の実施形態では、動物は、ヒトであり、どちらかの性別のいずれかの発生ステージのヒトを含む。ある特定の実施形態では、動物は、どちらかの性別のいずれかの発生ステージの非ヒト哺乳動物(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類および/またはブタ)である。一部の実施形態では、動物は、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫および/または虫を限定することなく含む。一部の実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物および/またはクローンであり得る。
【0188】
本明細書で使用される場合、「細胞膜」または「原形質膜」とは、細胞の内側(細胞内空間)を細胞の外側(細胞外空間)から分離する膜を意味する。一部の実施形態では、細胞膜は、リン脂質二重層を含む。
【0189】
一部の実施形態では、リン脂質二重層の第1の側面によって画定された領域は、領域内に、1または複数の捕捉分子を含有する。
【0190】
一部の実施形態では、リン脂質二重層が、細胞(例えば、動物細胞)の細胞膜である場合、捕捉分子は、細胞内で捕捉分子が発現される条件下で、捕捉分子をコードする核酸(例えば、DNA)を細胞に導入することにより作製される。
【0191】
「導入すること」または「導入された」とは、核酸が、細胞の細胞質に挿入されていることを意味する。一部の実施形態では、導入された核酸は、細胞の核に挿入されている。一部の実施形態では、導入された核酸は、細胞のサイトゾルに挿入されている。化学的トランスフェクション、電気穿孔トランスフェクション、注入、感染(例えば、組換えウイルスによる)等を限定することなく含む、核酸分子を細胞に導入するためのいずれかの手段を使用することができる。一部の実施形態では、捕捉分子をコードする核酸は、細胞内で捕捉分子が発現される様式で、細胞に導入される。核酸を導入し、導入された核酸を発現させるための標準方法は、公知のものである(例えば、DNA Recombination: Methods and Protocols, Springer-Verlag New York LLC. (Hideo Tsubouchi), 2011;Current Protocols in Molecule Biology, John Wiley & Sons, Inc. (Ausubel et al.), Dec. 4, 2003)を参照)。その上、Promega(Madison、Wisconsin)、New England Biolabs(NEB)(Ipswich、MA)およびInvitrogen(Thermo Fisher Scientific社)(Carlsbad、CA)を含む様々な会社が、細胞に核酸を導入し、これを発現させるための試薬およびベクター(例えば、発現プラスミド)を販売する。例えば、捕捉分子をコードする核酸がタンパク質として発現される(例えば、転写されるおよび/または翻訳される)ように、捕捉分子をコードする核酸は、より大きい核酸分子(例えば、発現プラスミド)内に位置することができる。換言すると、捕捉分子をコードする核酸は、捕捉分子の発現を方向付けるための適切な調節配列(例えば、プロモーター、ポリAテイル、エンハンサー等)と共に、より大きい核酸分子内に設置することができる。別の例では、捕捉分子をコードする挿入された核酸が、特定の場所において調節配列から利益を得て、これにより、捕捉分子を発現させることができるように、捕捉分子をコードする核酸は、細胞のゲノムまたは他のDNAもしくはRNA(例えば、ミトコンドリアDNA)内のその場所に挿入することができる。
【0192】
本明細書に記載されている様々な実施形態の範囲内で、捕捉分子をコードする核酸を導入されるのに適切な細胞は、細菌細胞または動物細胞等、いずれかの型の細胞を含む。アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)(Manassas、VA)は、昆虫(例えば、SF9細胞)、鳥類(例えば、ウズラ(Quail)筋肉クローン7(QM7)細胞)、イヌ(例えば、MDCK細胞)、カエル(例えば、Xenopus A6細胞)、魚類(例えば、ゼブラフィッシュZF4細胞)、ハムスター(例えば、CHO細胞)、ヒト(例えば、HEK 293細胞)、サル(例えば、COS細胞)およびマウス(例えば、Py230細胞)由来の細胞を限定することなく含む、様々な異なる細菌細胞(例えば、E.coli)および様々な異なる動物細胞を販売する。細胞は、様々なベンダー(例えば、Promega;Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)等)から購入することができる。
【0193】
一部の実施形態では、リン脂質二重層は、球状であり、リポソームを形成する。このような実施形態では、1または複数の捕捉分子は、その内部に1または複数の捕捉分子を含有するリポソームが形成することになる条件下で、リン脂質と混合することができる。
【0194】
一部の実施形態では、リン脂質二重層が相対的に平坦である場合、1または複数の捕捉分子は、リン脂質二重層の一方の側面に単純に添加することができる。
【0195】
本明細書で使用される場合、「捕捉分子」とは、別の分子に共有結合により結合して、複合体を形成することができるいずれかの分子を意味する。
【0196】
当技術分野で公知の多数の捕捉分子が存在する。捕捉分子は、別の分子に共有結合により結合して、複合体を形成することができるいずれかの型の分子であり得る。よって、非限定的な型の捕捉分子は、小さい化学分子、核酸(例えば、DNA、RNA等)、アミノ酸(天然または合成)、ペプチド(天然および/または合成アミノ酸で構成される)、タンパク質、脂質、糖および炭水化物を含む。
【0197】
一部の実施形態では、捕捉分子が産生され、その後に、リン脂質二重層の第1の領域に添加される。例えば、リン脂質二重層がリポソームの膜である場合、1または複数の捕捉分子が、形成されたリポソームに被包されることになるように、捕捉分子は、リポソームの形成の際にリン脂質と混合することができる。
【0198】
一部の実施形態では、捕捉分子は、タンパク質である。一部の実施形態では、リン脂質二重層が細胞の細胞膜である場合、捕捉分子は、細胞それ自体によって合成される。例えば、捕捉分子がタンパク質である場合、細胞が、そのサイトゾルにおいて捕捉分子タンパク質を発現するように、細胞は、標準組換え方法によって操作することができる。
【0199】
一部の実施形態では、結合部分は、候補化合物の全体的なサイズまたは質量と比較して非常に小さい。例えば、結合部分の質量は、候補化合物の質量の33%未満であり得る。一部の実施形態では、結合部分の質量は、候補化合物の質量の25%未満であり得る。一部の実施形態では、結合部分の質量は、候補化合物の質量の20%未満であり得る。一部の実施形態では、結合部分の質量は、候補化合物の質量の10%未満であり得る。一部の実施形態では、結合部分の質量は、候補化合物の質量の5%未満であり得る。一部の実施形態では、結合部分は、リン脂質二重層を横断する候補化合物の能力に干渉しない(プラスにもマイナスにも)。
【0200】
一部の実施形態では、候補化合物は、結合部分よりも少なくとも2倍質量が大きい。一部の実施形態では、候補化合物は、結合部分よりも少なくとも5倍質量が大きい。一部の実施形態では、候補化合物は、結合部分よりも少なくとも10倍質量が大きい。一部の実施形態では、候補化合物は、結合部分よりも少なくとも15倍質量が大きい。
【0201】
非限定的な一例では、Promega Corp.(Madison、WI)によってHaloTag(登録商標)の名称で販売されている修飾ハロアルカンデハロゲナーゼタンパク質が、斯かる捕捉分子である。HaloTagタンパク質は、細菌デハロゲナーゼの34kDa変異バージョンである(DhaA.K175M/C176G/H272F/Y273L)。HaloTag技術は、周知のものであり、例えば、Los et al., ACS Chem Biol. 3(6):73-82, 2008;Urh and Rosenberg, Curr. Chem. Genomics 6: 72-78, 2012;ならびに米国特許第7,112,552号;同第7,354,750号;同第7,429,472号;および同第7,888,086号;ならびにPCT公開番号WO2006093529に記載されている。HaloTag(登録商標)ハロアルカンデハロゲナーゼタンパク質は、クロロアルカンリンカーを持つ分子に結合し、これと共有結合を形成する。斯かるクロロアルカンリンカー(クロロアルカン基とも呼ばれる)は、次の構造を有する結合部分に含まれてよい:
【化20】
(式中、「R」(上記に太字フォントで示す)は、別個の候補化合物である)。上記に従って、「R」は、候補化合物であり、
【化21】
は、候補化合物に取り付けられた結合部分である。
【0202】
当然ながら、クロロアルカンリンカーを含む他の結合部分をHaloTagタンパク質に取り付けることができることが理解されるであろう。例えば、結合部分は、次の非限定的な構造を有することができる:
【化22】
#1 リンカー
(Rは、候補化合物である)。
【0203】
結合部分に取り付けられた候補化合物が、リン脂質二重層を横断する場合、候補化合物に取り付けられた結合部分のクロロアルカンリンカー一部分は、HaloTagタンパク質におけるカルボキシル基と反応して、
図6に示す複合体を創出し、この複合体は、HaloTag、候補化合物および結合部分の一部分を含む。
図7Aから分かる通り、不可逆的反応は、複合体を創出し、この反応から塩化水素(HCl)が遊離する。
図7Aが示す通り、複合体形成後に、結合部分におけるCl原子は、除去され(放出されるHClを形成する)、HaloTagタンパク質におけるカルボキシル基からエステル結合が形成されて、HaloTagタンパク質、結合部分の一部分および候補化合物の複合体が創出される。
【0204】
図7Bに示す通り、次に、HaloTag、候補化合物(R)および結合部分の一部分を含む複合体を、本発明の非限定的な実施形態に従って破壊して、放出部分に取り付けられた候補化合物(
図7Bにおける「R」)を産生することができる。この場合、複合体は、pHが11よりも大きいまたはこれに等しい環境に複合体を曝露することによる、塩基加水分解を使用して破壊される。一部の実施形態では、複合体は、pHが11.5よりも大きいまたはこれに等しい環境に複合体を曝露することによる、塩基加水分解を使用して破壊される。一部の実施形態では、複合体は、pHが12.0よりも大きいまたはこれに等しい環境に複合体を曝露することによる、塩基加水分解を使用して破壊される。一部の実施形態では、複合体は、pHが12.5よりも大きいまたはこれに等しい環境に複合体を曝露することによる、塩基加水分解を使用して破壊される。
図7Bに示す通り、非限定的な一実施形態では、捕捉分子がHaloTagタンパク質であり、結合部分がクロロアルカンリンカーを含む場合、放出部分は、ヒドロキシル(-OH)基を含む。放出部分は、結合部分とは異なるため、放出部分に取り付けられた(例えば、共有結合によって)いかなる候補化合物も、動物細胞の細胞膜として働くリン脂質二重層等のリン脂質二重層を横断することができる候補化合物として同定される。
【0205】
一部の実施形態では、捕捉分子は、候補化合物に取り付けられた結合部分と共有結合(または2個以上の共有結合)を形成することができる官能基を含む。一部の実施形態では、1または複数の共有結合は、ひずみ促進コンジュゲーション(strain-promoted conjugation)によって形成される。一部の実施形態では、1または複数の共有結合は、生体直交型化学反応によって形成される。
【0206】
候補化合物に取り付けられた結合部分は、ひずみ促進コンジュゲーションにより捕捉分子と反応することができる別の官能基を含有することができる。「ひずみ促進コンジュゲーション」または「ひずみ促進反応」とは、2種の反応パートナー以外の触媒または試薬を要求しない化学反応を意味する。一部の実施形態では、ひずみ促進反応は、生体直交型化学反応である。
【0207】
生体直交型化学反応は、生物系(例えば、動物細胞)の内側で、系内(例えば、動物細胞内)の生化学的プロセスに干渉することなく典型的に発生する反応である。アジドおよびシクロオクチン(cyclooctyne)の間の(銅不含クリックケミストリーとも命名される)(例えば、Baskin JM et al., Proc. Natl. Acad. Sci US 104(43): 16793016797, 2007;および米国特許第8,431,558号を参照);ならびにニトロンおよびシクロオクチンの間の(例えば、Ning X. et al., Angewandte Chemie International Edition. 49 (17): 3065-3068, 2010を参照)1,3-双極性環化付加、アルデヒドおよびケトンからのオキシム/ヒドラゾン形成(Yarema KJ et al., J. Biol. Chem. 273(47): 31168-31179, 1998)、テトラジンライゲーション(Blackman et al., J. Amer. Chem. Soc. 130(41): 135-18-13519, 2008)、イソシアン化物に基づくクリック反応(Stockmann H. et al., Org. & Biomol. Chem. 9(21): 7303, 2011)、ならびにクアドリシクラン(quadricyclane)ライゲーション(例えば、Sletten EM, et al. J. Amer. Chem. Soc. 133(44): 17570-17573, 2011を参照)を含む、生体直交性の要求を満たす、いくつかの化学的ライゲーション戦略が開発されてきた。
【0208】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている本発明の様々な態様における生体直交型化学(例えば、生体直交型(biorthogonal)化学反応)の使用は、複数のステップで行われる。第1のステップにおいて、基質(例えば、HaloTagタンパク質)が、第1の領域(例えば、動物細胞のサイトゾル)に導入され、例えば、捕捉分子を創出する。第二に、捕捉分子に相補的な官能基を含む結合部分に取り付けられた候補化合物が、第2の領域に導入される。候補化合物が、リン脂質二重層を横断し、第1の領域に達することができる場合、官能基は、捕捉分子と反応し、これに結合して、複合体を創出するであろう。いずれかの型の化学(例えば、生体直交型または非生体直交型化学)を使用して、複合体は、放出部分に取り付けられた候補化合物が創出されるように破壊され、放出部分に取り付けられたいかなる候補化合物も、リン脂質二重層を横断することができると同定される。
【0209】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている本発明の様々な態様における生体直交型化学の使用は、3ステップで行われる。第1のステップにおいて、基質(例えば、HaloTagタンパク質)が、第1の領域に導入される。第二に、官能基を含有する小型のリンカー(またはプローブ)が、第1の領域に導入され、そこで、基質と反応し、これに結合して、捕捉分子を創出する。換言すると、捕捉分子は、官能基と共に基質を含む。最後に、捕捉分子の官能基に相補的な第2の官能基を含む結合部分に取り付けられた候補化合物が、第2の領域に導入される。候補化合物が、リン脂質二重層を横断し、第1の領域に達することができる場合、候補化合物に取り付けられた結合部分における第2の官能基は、捕捉分子と反応して、複合体を創出するであろう。いずれかの手段(例えば、化学反応(例えば、生体直交型または非生体直交型化学)、pHの変化または物理的手段)を使用して、複合体は、放出部分に取り付けられた候補化合物が創出されるように破壊され、放出部分に取り付けられたいかなる候補化合物も、リン脂質二重層を横断することができると同定される。
【0210】
「放出部分」とは、候補化合物、結合部分(またはその一部分)および捕捉分子の複合体が破壊された後に、候補化合物に取り付けられている(例えば、共有結合により結合されている)いずれかの原子または原子団を意味し、放出部分は、結合部分とは異なる。一部の実施形態では、放出部分は、結合部分よりも質量が小さい。一部の実施形態では、放出部分は、結合部分よりも質量が大きい。一部の実施形態では、放出部分は、結合部分よりも大きい原子の数を含有する。一部の実施形態では、放出部分は、結合部分よりも小さい原子の数を含有する。一部の実施形態では、放出部分および結合部分は、少なくとも1個の原子が異なる。
【0211】
本発明の様々な態様では、捕捉分子は、細胞内で、ひずみ促進コンジュゲーション(例えば、生体直交型化学反応)により、候補化合物に取り付けられた結合部分における相補的官能基と反応することができる官能基を有することができる。この様式で、捕捉分子は、候補化合物に取り付けられるようになる。斯かる非限定的な結合部分の1つは、次の構造として示される:
【化23】
【0212】
一部の実施形態では、捕捉分子は、化学的に切断され得るリンカーを含む。化学的に切断可能なリンカーは、当技術分野で周知のものである(例えば、Yang Y., Fonovic M., Verhelst S.H.L. (2017) Cleavable Linkers in Chemical Proteomics Applications. In: Overkleeft H., Florea B. (eds) Activity-Based Proteomics. Methods in Molecular Biology, vol 1491. Humana Press, New York, NY;Stenton B.J., et al., ”A thioether-directed palladium cleavable linker for targeted biorthogonal drug decaging,” Chemical Science 9: 4185-4189, 2018;Rabalski AJ et al., bioRXiv pre-print of https://doi.org/10.1101/654384, May 2019;Szychowski J. et al., J. Amer. Chem. Soc. 132: 18351-18360, 2010;Yang Y. et al., Molecular & Cellular Proteomics 12: 10.1074/ mcp.M112.021014, 237-244, 2013;Verhelst SH et al, Angewandte Chemie Intl Ed. Engl. 46 (8): 1284-1286, 2007;米国特許第8,314,215号;米国特許公開第20090181860号;PCT公開番号WO2010014236を参照)。
【0213】
化学的に切断可能なリンカーは、
図8A~
図8Eに描写される非限定的な結合部分に示すリンカーを限定することなく含む。
図8Aにおいて、描写される結合部分における切断可能リンカーは、水溶性パラジウム触媒(例えば、1.0mM Pd-o-DANPHOS触媒で30分間)によって特異的に切断され得るカルバメート連結を含む(例えば、R. Friedman Ohana et al., ACS Chem. Biol., 2016, 11, 2608-2617, 2016;Stenton B.J. et al.、上記参照を参照)。この切断可能連結のため、
図8Aに指し示される通り、パラジウム触媒(例えば、ホスフィン由来パラジウム触媒)は、炭素-窒素結合の破損を引き起こすであろう。
【0214】
図8Bに描写される切断可能リンカーにおいて、切断は、標準方法に従ったNaIO
4への曝露(例えば、リン酸ナトリウム緩衝剤(100mMリン酸ナトリウム緩衝剤、pH7.4)における1mM NaIO4(50ul)で1時間)後に、図中に指し示される部位で発生するであろう。例えば、Yang Y. et al., Molecular & Cellular Proteomics 12: 10.1074/ mcp.M112.021014, 237-244, 2013も参照されたい。
【0215】
図8C、
図8Dおよび
図8Eは、非限定的な切断可能リンカーを含む追加的な非限定的な結合部分を示す。指し示される通り、
図8Cにおける切断可能リンカーは、指し示される部位でトリフルオロ酢酸(TFA)によって切断され、
図8Dにおける切断可能リンカーは、指し示される部位でギ酸(FA)(例えば、10%の)によって切断され、
図8Eにおける切断可能リンカーは、指し示される部位でNa
2S
2O
4によって切断されるであろう。
【0216】
一部の実施形態では、化学的に切断可能なリンカーの切断は、切断生成物の妥当な収率を達成する。例えば、切断収率は、少なくとも70%または少なくとも80%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%である。一部の実施形態では、化学的に切断可能なリンカーの切断のための条件は、細胞に基づくアッセイと適合性である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化学的に切断可能なリンカーの切断反応は、生体直交型化学反応である。
【0217】
リン脂質二重層が、動物細胞の細胞膜である一部の実施形態では、動物細胞は、捕捉分子の少なくとも一部分を安定に発現する。
【0218】
本明細書で使用される場合、「安定に発現する」または「安定した発現」は、細胞およびその後代が、導入された核酸によってコードされる分子を発現することを意味する。一部の細胞および/またはそれらの後代が、正常な変異率により分子の発現を停止するであろうことが理解されるであろうが、「安定した発現」は、細胞およびその後代が、少なくとも3回の細胞分裂の後に、導入された核酸によってコードされる分子を発現し続けるであろうことを意味する。安定した発現を達成するために、細胞が分裂する際に、導入された核酸が複製されて、各娘細胞が、導入された核酸のコピーを有することを可能にするように、導入された核酸は、細胞の染色体またはミトコンドリアDNAに挿入することができる。導入された核酸(nucleic)が、導入されたときに、例えば、プラスミドまたはベクターが細胞の染色体またはミトコンドリア核酸に組み込まれていない場合であっても複製することができるエピソームプラスミドまたはベクターに含まれる場合、導入された核酸は、導入された核酸によってコードされる分子の安定した発現をもたらすこともできる。例えば、エプスタイン・バーウイルスに基づくベクターは、EBNA1タンパク質(例えば、EBNA1タンパク質は、細胞によって既に発現されていてよい、またはエプスタイン・バーウイルスに基づくベクターそれ自体によってコードされてよい)へのアクセスを得ることができる複製起点を含有する場合、細胞のゲノムに組み込むことなく複製することができる。
【0219】
対照的に、「一過性発現」は、核酸が細胞のゲノムもしくはミトコンドリア核酸に組み込まれないように、導入された核酸が細胞に導入されること、または導入された核酸が、エピソームプラスミドもしくはベクターに含まれなかったことを意味する。結果として、導入された核酸によってコードされるタンパク質を一過性に発現する細胞それ自体は、当該タンパク質を発現することができるが、この発現は、細胞またはその後代のいずれにおいても7日間を超えて続かない。
【0220】
非限定的な一例では、HaloTagタンパク質は、捕捉分子の一部であり得る。例えば、細胞(例えば、ATCCから市販されているヒト結腸直腸細胞系HCT116等のヒト細胞)は、Promegaから市販されているpHTC HaloTag CMV-neoベクター等のHaloTagコードベクターを安定にトランスフェクトすることができる。ベクターは、直鎖化し(例えば、アンピシリンコード領域においてベクターを切断することにより)、HCT116細胞に導入することができ(例えば、リポフェクチントランスフェクションにより)、安定にトランスフェクトされた細胞は、G418含有細胞培養培地において成長するその能力によって同定される。捕捉分子を完成させるために、クロロアルカン基およびひずみ促進コンジュゲーションのための官能基を含むいずれかの数の小型のリンカーを、細胞培養培地に添加することができる。このような小型のリンカーは、細胞膜を容易に横断することから、これはサイトゾルに進入し、そこで、HaloTagタンパク質と不可逆的に反応して、捕捉分子を形成するであろう。
【0221】
複数構成成分を含む非限定的な捕捉分子の1つが、
図9A~
図9Cに描写されている。
図9Aにおいて、捕捉分子の構成成分は、基質としてのHaloTagタンパク質、ならびに化学的に切断可能なリンカー(「CCL」)、クロロアルカン基および官能基1(FG1)を含む、小型のリンカーを含む。
図9Aに示す通り、HaloTagタンパク質は、第1の領域にあり(例えば、動物細胞のサイトゾルにおいて安定にまたは一過性に発現される)、クロロアルカン基、CCL基および官能基(FG1)を含む小型のリンカー(プローブとも称される)は、第2の領域(例えば、動物細胞が培養されている培養培地)に添加される。一部の実施形態では、小型のリンカーは、小分子である(例えば、約900ダルトン未満の質量または約1nmもしくはそれ未満のサイズを有する)。非常に小さいため、小型のリンカーは、リン脂質二重層を横断し、よって、第1の領域に進入する。第1の領域において、小型のリンカーは、リンカーにおけるクロロアルカン基を介してHaloTagタンパク質に共有結合により結合して、複数構成成分捕捉分子を創出し、構成成分は、HaloTagタンパク質、結合部分の一部分および捕捉分子の反応に起因する基(この
図9Aにおいては、クロロアルカン基およびHaloTagタンパク質におけるアスパラギン酸の反応から創出されたエステル基)、CCL、ならびにFG1(
図9Aの下部を参照)である。一部の実施形態では、第2の領域に添加された小型のリンカーの数は、第1の領域におけるHaloTagタンパク質の数よりも小さい。一部の実施形態では、第1の領域には、HaloTagタンパク質にカップルされていない小型のリンカーが、あるとしても少数存在する。一部の実施形態では、第1の領域には、HaloTagタンパク質にカップルされていない小型のリンカーが5個未満存在する。一部の実施形態では、第1の領域には、HaloTagタンパク質にカップルされていない小型のリンカーが3個未満存在する。一部の実施形態では、第1の領域には、HaloTagタンパク質にカップルされていない小型のリンカーは存在しない。
【0222】
図9Bに示す通り、次に、結合部分に取り付けられた候補化合物を第2の領域に添加することができる。結合部分に取り付けられた候補化合物が、リン脂質二重層を横断することができる場合、結合部分は、捕捉分子と反応して、候補化合物に取り付けられた結合部分の少なくとも一部分に取り付けられた捕捉分子を含む複合体を形成するであろう。
図9Cにおいて、複合体は、CCLを切断する薬剤(例えば、ギ酸)で複合体を処置することによって破壊される。
図9Cの下部に示す通り、放出部分に取り付けられた新たに創出された候補化合物が産生される。この非限定的な例では、放出部分が、結合部分よりも大きく、よって、結合部分から識別することができることに留意されたい。この非限定的な
図9A~
図9Cに示す実施形態では、放出部分は、結合部分よりも大きい。「より大きい」とは、質量がより大きい、物理的サイズがより大きい、または原子の数がより大きいことを意味する。放出部分に取り付けられたいかなる候補化合物も、リン脂質二重層を横断することができる化合物であり、よって、動物細胞の細胞膜を横断することができる化合物である。
【0223】
結合部分の全体が、捕捉分子における官能基FG1と反応する必要はないことが理解されるであろう。よって、一部の実施形態では、結合部分の一部分が、捕捉分子と反応する。
図10に示す通り、捕捉分子と反応し、これに結合する結合部分の一部分は、官能基であり得る。例えば、結合部分における官能基が官能基2(FG2)と標識された、
図10を参照されたい。
【0224】
図10において、捕捉分子におけるFG1は、候補化合物に取り付けられた結合部分におけるFG2に相補的であることに留意されたい。「相補的」とは、2個の分子(例えば、官能基、タンパク質、ペプチド、小分子等)が、互いと1または複数の共有結合を形成することができ、よって、互いに取り付けることができることを意味することに留意されたい。2個の相補的分子の取付けにおいて、2個の分子のそれぞれにおける1または複数の原子が放出され得ることに留意されたい。また、2個の相補的分子の取付けにおいて、2個の分子を繋ぐ1または複数の共有結合は、単一の共有結合(例えば、エステル結合)を形成することができる、または2個以上の共有結合と環状の環(例えば、複素環式基)を形成することができることにも留意されたい。Halo-tagタンパク質は、例えば、結合部分における、クロロアルカン基に相補的である。2個の相補的官能基の間に1または複数の共有結合を形成する反応(例えば、生体直交型反応)の際に放出される原子または原子団が存在し得ることに留意されたい。本発明の様々な実施形態では、他の結合部分における相補的官能基と一緒に、他の官能基を含む捕捉分子を使用することができることが理解されるであろう。
図11は、FG1として(捕捉分子の一部分として)および/またはFG2として(結合部分の一部分として)使用することができる一部の非限定的な官能基を示す。
図11に示す通り、FG1およびFG2は、互換的である。
図11において、FG1またはFG2を含むリンカーのいずれかは、化学的に切断可能なリンカーをさらに含むことができることに留意されたい。
【0225】
さらに、本発明の様々な実施形態の内で、様々な他の構成成分または基質を含む捕捉分子を使用することができることが理解されるであろう。例えば、捕捉分子の構成成分の追加的な非限定的な例は、New England Biolabs(NEB)(Ipswich、MA)によって販売されているSNAPタグタンパク質およびCLIPタグタンパク質、またはこれらの修飾等、小分子リンカーと共有結合を形成するタンパク質を含む。SNAPタグタンパク質およびCLIPタグタンパク質の両方が、システイン残基由来の遊離硫黄イオンを含む。
【0226】
例えば、SNAPタグタンパク質は、ひずみ促進コンジュゲーションによりベンジルグアニン誘導体と共有結合を形成し、共有結合の形成は、グアニンを放出するであろう。換言すると、SNAPタグタンパク質は、例えば、小型のリンカーにおける、ベンジルグアニジン基等のベンジルグアニン誘導体に相補的である。
図12A~
図12Bに示す非限定的な例では、SNAPタグタンパク質は、第1の領域において発現され、官能基(FG1)、化学的に切断可能なリンカー(CCL)およびベンジルグアニジン基を含む小型のリンカーは、第2の領域に添加される。一部の実施形態では、小型のリンカーは、小分子である(例えば、約900ダルトン未満の質量または約1nm未満のサイズを有する)。非常に小さいため、小型のリンカーは、リン脂質二重層を横断し、第1の領域に進入し、そこで、ベンジルグアニジン基を介して、SNAPタグタンパク質に共有結合により結合し、捕捉分子を形成し、グアニンを遊離させる(
図12Aの下部を参照)。
図12Bに示す通り、結合部分に取り付けられた候補化合物(結合部分は、第2の官能基(FG2)を含む)は、第2の領域に添加される。候補化合物は、リン脂質二重層を横断することができる場合、第1の領域に進入し、FG1およびFG2は相補的であるため、FG1基へのFG2基結合により捕捉分子に共有結合により結合するであろう。次に、その結果得られる複合体は、当該CCLに適切な薬剤(例えば、
図8Bに描写されているCCLにはNaIO4)により化学的に切断されて、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出する(
図12Bの下部を参照)。この非限定的な例では、放出部分は、結合部分よりも大きいことに留意されたい。
【0227】
捕捉分子のさらに別の非限定的な構成成分は、CLIPタグタンパク質の修飾である。CLIPタグタンパク質は、
図13の小型のリンカーにおけるベンジルシトシン基等のO
2-ベンジルシトシン(BC)誘導体に相補的であり、よって、これと共有結合を形成する。
図13に示す通り、捕捉分子は、CLIPタグタンパク質を、官能基(FG1)、化学的に切断可能なリンカー(CCL)およびベンジルシトシン基を含む小分子リンカーに共有結合により結合させることにより創出することができ(例えば、第1の領域において)、捕捉分子を創出する反応は、シトシンを放出するであろう。存在する場合(例えば、第1の領域に)、FG1に相補的である第2の官能基(FG2)を含む、結合部分に取り付けられた候補化合物は、捕捉分子に共有結合により結合して、複合体を創出するであろう。適切な薬剤(例えば、
図8Cに描写されているCCLにはTFA)でCCLを化学的に切断することによる複合体の破壊は、放出部分に取り付けられた候補化合物をもたらすであろう(
図13の下部を参照)。
【0228】
周知の通り、本発明の様々な実施形態で使用することができる、様々な他の結合部分を有する様々な他の捕捉分子が存在する。例えば、小分子ペニシリンは、D-アラニンカルボキシペプチダーゼの活性部位に共有結合により取り付けて、エステル結合を形成することができる。よって、さらに別の非限定的な捕捉分子は、D-アラニンカルボキシペプチダーゼであり得、結合部分は、D-アラニンカルボキシペプチダーゼに結合する部位を保持するペニシリンまたはその誘導体であり得る。他の例は、多くの場合では共有結合により小分子+タンパク質ペアを形成することが報告された、アスピリン(asprin)、オメプラゾール、クロピドグレル、ネラチニブ、アファチニブ、カルフィルゾミブ、イブルチニブまたは他の小分子を含む。斯かる化合物は、評価されるべき薬剤がバリアを通過して達することになる領域において、官能基および必要に応じてリンカーを、薬剤、例えば、細胞タンパク質に接続するために利用することができる。一部の実施形態では、斯かる化合物は、RF部分として有用である。候補化合物が、リン脂質二重層を横断して、捕捉分子を含有する領域にアクセスすることができる場合、エステル結合を含有する形成された複合体は、塩基加水分解によって破壊され、結合部分とは異なるであろう放出部分に取り付けられた候補化合物を遊離させることができ、よって、候補化合物は、動物細胞膜を横断することができる化合物として同定可能となるであろう。
【0229】
リン脂質二重層を横断することができる(よって、動物細胞膜を横断することができる)候補化合物は、結合部分の代わりに放出部分に取り付けられているため、識別可能である。換言すると、結合部分に取り付けられた1または複数の候補化合物の構造を得る必要はない。むしろ、放出部分に取り付けられた候補化合物を同定および解析して、その構造を決定することができる。このようにして、リン脂質二重層を横断することが可能な化合物の特性を決定することができる。斯かる特性は、当然ながら、化合物が、特定の標的(例えば、b-カテニン)に特異的に結合することができるか否か、ならびに化合物のその標的への特異的結合が、標的および/または標的を発現する動物細胞に何らかの効果を有するか否かを含む。
【0230】
候補化合物を同定するための方法は、公知のものである。例えば、候補化合物が、アミノ酸(例えば、ペプチド、ステープル留めされたペプチド、合成ペプチド、タンパク質等)を含む場合、アミノ酸配列を決定するための方法は、周知のものである。例えば、米国特許第5,240,859号;同第5,665,037号;同,863,870号;欧州特許番号EP0257735;Edman and Begg, Eur. J. Biochem. 1 (1):80-91, 1967;ならびにPCT公開番号WO2012178023およびWO2016069124A1を参照されたい。
【0231】
放出部分に取り付けられた候補化合物を同定するための非限定的な方法において、質量分析を使用することができる。別の実施形態では、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)を使用して、放出部分に取り付けられた候補化合物を同定する。放出された化合物(すなわち、放出部分に取り付けられた候補化合物)は、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)によって同定および定量化される。化合物は、LCによって分離され、次いで、質量分析器に導入される。インタクトな化合物の高分解能質量スペクトルは、同定および定量化のために収集される。化合物は、その後に化合物の配列決定および同定の検証に使用される、より小さいプロダクトイオンへのインタクト種の気相解離により、質量分析器においてMS/MSまたはMSnによってさらに評価される。ペプチド配列決定のため、それぞれN末端およびC末端を含有するb-およびy-型プロダクトイオンが生成される。次に、インタクトMSおよび断片化MSnスペクトルを使用して公知化合物の理論的データベースに対して検索して、放出された化合物を同定および定量化する。一部の場合では、スペクトルは、スペクトルから直接的にde novo配列決定することができ、化合物データベースの必要はない。
【0232】
放出部分に取り付けられた化合物を同定するための別の非限定的な方法において、候補化合物がペプチドである場合、エドマン分解を使用することができる。例えば、エドマン分解は、タンパク質シークエネーターにおいて行うことができる。例えば、Edman and Begg, Eur. J. of Biochem. 1(1): 80-91, 1967を参照されたい。タンパク質シークエネーター(またはタンパク質シーケンサー)は、広く市販されている。例えば、PPOSQ-51Aタンパク質シーケンサーは、Shimadzu Corp.、Kyoto、Japanから市販されている。
【0233】
様々な実施形態では、本明細書に記載されている方法は、(a)細胞内標的に特異的に結合し、および/またはこれをモジュレートし、(b)細胞膜を横断して、サイトゾルへのアクセスを得ることができる薬剤を同定する試みにおける様々なステージで使用することができる。例えば、一部の実施形態では、様々な候補化合物をスクリーニングして、所望の細胞内標的分子に特異的に結合するおよび/またはこれをモジュレートする1または複数を見出すことができる。このスクリーニングは、例えば、細胞全体を使用することなく行うことができる。例えば、細胞ライセートを使用した免疫沈降アッセイまたは3-Dモデリングを使用することができる。細胞内標的に特異的に結合するおよび/またはこれをモジュレートする斯かる分子が同定されたら、例えば、本明細書に記載されている方法を使用して、分子をスクリーニングして、分子が、細胞膜を横断することができるか決定することができる。
【0234】
一部の実施形態では、本発明は、候補化合物が、細胞膜を横断することができるか決定し、次いで、当該候補化合物が、細胞内標的に特異的に結合するおよび/またはこれをモジュレートすることができるか否か決定するための方法を提供する。例えば、いずれかの程度の親和性でいずれかの細胞内標的分子に結合しても結合しなくてもよい、分子の初期シリーズ(例えば、小分子化学物質、ペプチド、ステープル留めされたペプチド等のシリーズ)を生成することができる。次に、例えば、本明細書に記載されている方法および試薬を使用して、これらの分子を先ずスクリーニングして、細胞膜を通過することができるか決定することができる。次に、細胞膜を通過することができると同定される分子を、細胞内標的分子に特異的に結合するおよび/またはこれをモジュレートする能力についてスクリーニングすることができる。
【0235】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」とは、分子(例えば、化合物または薬剤)が、高い親和性で意図される標的(例えば、細胞内分子)に結合することができることを意味する。一部の実施形態では、その標的に特異的に結合する分子は、500uM以下の親和性(KD)で結合する。一部の実施形態では、その標的に特異的に結合する分子は、50uM以下の親和性(KD)で結合する。一部の実施形態では、その標的に特異的に結合する分子は、5uM以下の親和性(KD)で結合する。一部の実施形態では、その標的に特異的に結合する分子は、500nM以下の親和性(KD)で結合する。一部の実施形態では、その標的に特異的に結合する分子は、50nM以下の親和性(KD)で結合する。一部の実施形態では、その標的に特異的に結合する分子は、5nM以下の親和性(KD)で結合する。
【0236】
本明細書で使用される場合、「モジュレートする」とは、分子(例えば、化合物または薬剤)が、それがモジュレートしている細胞内分子の遺伝子発現および/または活性を変化させることを意味する。例えば、分子は、細胞内分子の活性および/もしくは発現を阻害することにより、または分子の活性および/もしくは発現を増加させることにより、細胞内分子をモジュレートすることができる。一部の実施形態では、候補化合物は、細胞内分子の活性および/または発現を増加させる。一部の実施形態では、候補化合物は、細胞内分子の活性および/または発現を増加させる。
【0237】
本明細書で使用される場合、「細胞内標的分子」または「細胞内標的」とは、動物細胞のサイトゾル内に部分的にまたは全体的に設置されるいずれかの型の分子を意味する。細胞内分子は、サイトゾル中を自由に浮遊することができる、細胞膜の内側表面に取り付けることができる、および/またはオルガネラの表面に取り付ける(例えば、核膜またはオルガネラの表面に取り付ける)ことができる。よって、膜貫通分子(例えば、VEGFR-1等の受容体チロシンキナーゼ)の細胞内一部分は、この用語が本明細書で使用される場合の非限定的な細胞内標的分子である。細胞内分子は、別の分子に共有結合によりまたは非共有結合により結合されてもよい。細胞内分子は、タンパク質、ペプチド、核酸分子、脂質、糖等を含むいずれかの型の分子であり得る。細胞内分子は、いずれかの型のタンパク質の修飾であり得る(例えば、細胞内分子は、メチル化核酸分子または糖タンパク質であり得る)。
【0238】
別の態様では、本発明は、候補化合物が動物細胞膜を横断するか同定するためのキットであって、第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層であって、第1の側面が第1の領域を画定する、リン脂質二重層と、第1の領域における配備のための捕捉分子と、候補化合物に共有結合により取り付けるための結合部分であって、前記結合部分の一部分が、第1の領域において捕捉分子と共有結合を形成して、複合体を形成することができる、結合部分と、複合体を破壊して、候補化合物に取り付けられた放出部分を創出するための試薬と、結合部分を候補化合物に取り付け、放出部分に取り付けられた候補化合物を同定するための使用説明書とを含むキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、候補化合物のアミノ酸配列を同定するための使用説明書を含む。一部の実施形態では、キットは、候補化合物の構造を同定するための使用説明書を含む。
【0239】
別の態様では、本発明は、候補化合物が動物細胞膜を横断するか同定するキットであって、そのサイトゾルにおいて捕捉分子を発現する動物細胞と、候補化合物に共有結合により取り付けるための結合部分であって、前記結合部分の一部分が、捕捉分子と共有結合を形成して、複合体を形成することができる、結合部分と、複合体を破壊して、候補化合物に取り付けられた放出部分を創出するための試薬と、結合部分を候補化合物に取り付け、放出部分に取り付けられた候補化合物を同定するための使用説明書とを含むキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、候補化合物のアミノ酸配列を同定するための使用説明書を含む。一部の実施形態では、キットは、候補化合物の構造を同定するための使用説明書を含む。
【0240】
とりわけ、本開示は、次の実施形態を提供する:
1.薬剤をバリアと接触させるステップ、および/または
バリアを通過した薬剤から形成された生成物薬剤を検出するステップ
を含む方法。
2.薬剤が、本明細書に記載されている第2の薬剤である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
3.薬剤が、本明細書に記載されている結合部分に連結された候補化合物である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
4.薬剤が、足場薬剤部分を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
5.薬剤が、CCLを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
6.CCLが、-C(O)O-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
7.CCLが、近接ジオールであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
8.CCLが、
【化24】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
9.CCLが、必要に応じて置換された
【化25】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
10.CCLが、必要に応じて置換された
【化26】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
11.CCLが、必要に応じて置換された
【化27】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
12.CCLが、必要に応じて置換された
【化28】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
13.CCLが、必要に応じて置換された
【化29】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
14.CCLが、必要に応じて置換された
【化30】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
15.CCLが、必要に応じて置換された
【化31】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
16.CCLが、必要に応じて置換された
【化32】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
17.CCLが、-N=N-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
18.CCLが、-Ar-N=N-Ar-でありまたはこれを含み、各Arが独立して、必要に応じて置換された芳香族部分である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
19.薬剤が、結合部分を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
20.薬剤が、官能基(第2の官能基)を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
21.第2の官能基が、FG2であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
22.第2の官能基が、-Clであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
23.薬剤が、R
B-L-FG2またはその塩の構造を有し、R
Bが、足場薬剤部分であり、FG2が、官能基であり、Lが、共有結合、または1もしくは複数の脂肪族部分、アリール部分、それぞれ独立して1~10個のヘテロ原子を有するヘテロ脂肪族部分、それぞれ独立して1~10個のヘテロ原子を有するヘテロ芳香族部分または斯かる部分の1もしくは複数の組合せを含む二価の必要に応じて置換された直鎖状または分岐状C
1~30基であり、この基の1または複数のメチレン単位が、必要に応じてかつ独立して、C
1~6アルキレン、C
1~6アルケニレン、1~5個のヘテロ原子を有する二価C
1~6ヘテロ脂肪族基、-C≡C-、-N=N-、-Cy-、-C(R’)
2-、-O-、-S-、-S-S-、-N(R’)-、-Si(R’)
2-、-C(O)-、-C(S)-、-C(NR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)C(R’)
2N(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)-、-S(O)
2-、-S(O)
2N(R’)-、-C(O)S-、-C(O)O-、アミノ酸残基または-[(-O-C(R’)
2-C(R’)
2-)
n]-(式中、nは、1~20である)に置き換えられており、
各-Cy-が独立して、必要に応じて置換された二価単環式、二環式または多環式基であり、各単環式環は、C
3~20脂環式環、C
6~20アリール環、1~10個のヘテロ原子を有する5~20員のヘテロアリール環および1~10個のヘテロ原子を有する3~20員のヘテロシクリル環から独立して選択され、
各R’は独立して、-R、-OR、-C(O)R、-CO
2Rまたは-SO
2Rであり、
各Rは独立して、-H、もしくはC
1~20脂肪族、1~10個のヘテロ原子を有するC
1~20ヘテロ脂肪族、C
6~20アリール、C
6~20アリール脂肪族、1~10個のヘテロ原子を有するC
6~20アリールヘテロ脂肪族、1~10個のヘテロ原子を有する5~20員のヘテロアリールおよび1~10個のヘテロ原子を有する3~20員のヘテロシクリルから選択される必要に応じて置換された基であるか、または
2個のR基は、必要に応じてかつ独立して一緒になって、共有結合を形成するか、または
同じ原子上の2個もしくはそれよりも多いR基は、この原子と必要に応じてかつ独立して一緒になって、この原子に加えて0~10個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された3~20員の単環式、二環式もしくは多環式環を形成するか、または
2個もしくはそれよりも多い原子上の2個もしくはそれよりも多いR基は、それらの介在原子と必要に応じてかつ独立して一緒になって、介在する原子に加えて0~10個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された3~30員の単環式、二環式もしくは多環式環を形成する、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
24.Lが、CCLであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
25.Lが、-(CH
2)
n-(式中、nは、1~20である)であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
26.Lが、-(CH
2)
4-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
27.FG2が、-Clである、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
28.-L-FG2が、Cl-(CH
2)
6O(CH
2)
2O(CH
2)2NHC(O)(CH
2)
2C(O)-である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
29.足場薬剤が、ステープル留めされたペプチドであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
30.足場薬剤が、ステープル留めされたペプチドでありまたはこれを含み、-L-FG2が、そのN末端において、必要に応じてリンカーを介して、ステープル留めされたペプチド部分に結合される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
31.バリアが、二重層であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
32.バリアが、リン脂質二重層であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
33.バリアが、生物学的バリアであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
34.バリアが、細胞膜であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
35.バリアが、細胞の単層であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
36.生成物薬剤が、足場薬剤部分および放出部分および必要に応じてリンカーを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
37.生成物薬剤が、足場薬剤部分、官能基および必要に応じてリンカーを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
38.生成物薬剤が、足場薬剤部分、FG3および必要に応じてリンカーを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
39.生成物薬剤および薬剤が、同じ足場部分またはその特徴的な一部分を共有する、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
40.生成物薬剤および薬剤が、同じ足場部分を共有する、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
41.生成物薬剤が、R
P-L-FG3またはその塩の構造を有する、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
42.生成物薬剤のLが、-(CH
2)
n-(式中、nは、1~20である)であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
43.生成物薬剤のLが、-(CH
2)
4-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
44.FG3が、-OHであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
45.FG3が、-Cy-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
46.FG3が、必要に応じて置換された部分的に飽和したまたは芳香族環であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
47.FG3が、-OHである、先行する実施形態1~44のいずれか一実施形態に記載の方法。
48.-L-FG3が、HO-(CH
2)
6O(CH
2)
2O(CH
2)2NHC(O)(CH
2)
2C(O)-である、先行する実施形態1~44のいずれか一実施形態に記載の方法。
49.足場薬剤が、ステープル留めされたペプチドでありまたはこれを含み、-L-FG3が、そのN末端において、必要に応じてリンカーを介して、ステープル留めされたペプチド部分に結合される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
50.薬剤が、バリアの一方の側面(第2の領域)に直接的に投与される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
51.バリアの他方の側面(第1の領域)が、第1の薬剤を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
52.第1の領域が、細胞の内側である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
53.第1の領域が、本明細書に記載されている第1の薬剤を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
54.第1の薬剤が、本明細書に記載されている捕捉分子であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
55.第1の薬剤が、CCLを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
56.第1の薬剤が、官能基(第1の官能基)を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
57.第1の官能基が、薬剤の官能基(第2の官能基)と反応する、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
58.第1の薬剤のCCLが、-C(O)O-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
59.第1の薬剤のCCLが、近接ジオールであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
60.第1の薬剤のCCLが、
【化33】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
61.第1の薬剤のCCLが、必要に応じて置換された
【化34】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
62.第1の薬剤のCCLが、必要に応じて置換された
【化35】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
63.第1の薬剤のCCLが、必要に応じて置換された
【化36】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
64.第1の薬剤のCCLが、必要に応じて置換された
【化37】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
65.第1の薬剤のCCLが、必要に応じて置換された
【化38】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
66.第1の薬剤のCCLが、必要に応じて置換された
【化39】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
67.第1の薬剤のCCLが、必要に応じて置換された
【化40】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
68.第1の薬剤のCCLが、必要に応じて置換された
【化41】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
69.第1の薬剤のCCLが、-N=N-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
70.第1の薬剤のCCLが、-Ar-N=N-Ar-であるまたはこれを含み、各Arが独立して、必要に応じて置換された芳香族部分である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
71.第1の官能基が、-COOHである、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
72.第1の薬剤が、ポリペプチド薬剤であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
73.第1の薬剤が、ポリペプチド薬剤でありまたはこれを含み、ペプチド薬剤が、酵素であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
74.第1の薬剤が、ポリペプチド薬剤でありまたはこれを含み、ペプチド薬剤が、デハロゲナーゼであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
75.第1の薬剤が、ポリペプチド薬剤でありまたはこれを含み、ペプチド薬剤が、DhaAであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
76.第1の官能基が、アミノ酸残基の-COOHまたは塩形態である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
77.第1の薬剤が、タグを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
78.タグが、Hisタグであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
79.タグが、GSTタグであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
80.タグが、FLAGタグであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
81.タグが、SNAPタグであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
82.第1の薬剤が、R
C-L-FG1またはその塩の構造を有し、RCが、足場薬剤部分であり、FG1が、官能基であり、Lが、リンカーである、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
83.第1の薬剤の足場薬剤が、細胞において発現されたタンパク質またはポリペプチドである、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
84.FG1およびFG2が、接触したときに互いと反応することができる、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
85.FG1およびFG2の間の反応が、生体直交型反応である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
86.FG1およびFG2の間の反応が、環化付加反応である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
87.FG1およびFG2の一方が、双極子またはジエンでありまたはこれを含み、他方が、アルケンまたはアルキンであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
88.FG1およびFG2の一方が、-N
3でありまたはこれを含み、他方が、アルキンであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
89.FG1およびFG2の一方が、-COOHまたはその塩もしくは活性化形態でありまたはこれを含み、他方が、脱離基であるまたはこれを含む、実施形態1~85のいずれか一実施形態に記載の方法。
90.FG1およびFG2の一方が、-COOHまたはその塩もしくは活性化形態でありまたはこれを含み、他方が、脱離基でありまたはこれを含み、FG1およびFG2の間の反応が、-C(O)O-による脱離基の置換えであるまたはこれを含む、実施形態1~85のいずれか一実施形態に記載の方法。
91.第1の薬剤が、バリアを著しく通過する訳ではない、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
92.第1の薬剤が、ポリペプチドまたはタンパク質と、R
F-L-FG1またはその塩の構造を有する化合物との間の反応によって形成される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
93.ポリペプチドまたはタンパク質が、変異体酵素である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
94.ポリペプチドまたはタンパク質が、著しく低下または除去されたヒドロラーゼ活性を有する、変異体デハロゲナーゼである、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
95.薬剤が、第1の薬剤に共有結合により結合されて、複合体を形成する、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
96.複合体が、濃縮される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
97.複合体が、第1の薬剤のタグに基づき濃縮される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
98.複合体が、細胞において形成される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
99.複合体が、細胞ライセートから濃縮される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
100.複合体が、CCLを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
101.複合体のCCLが、-C(O)O-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
102.複合体のCCLが、近接ジオールであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
103.複合体のCCLが、
【化42】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
104.複合体のCCLが、必要に応じて置換された
【化43】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
105.複合体のCCLが、必要に応じて置換された
【化44】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
106.複合体のCCLが、必要に応じて置換された
【化45】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
107.複合体のCCLが、必要に応じて置換された
【化46】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
108.複合体のCCLが、必要に応じて置換された
【化47】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
109.複合体のCCLが、必要に応じて置換された
【化48】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
110.複合体のCCLが、必要に応じて置換された
【化49】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
111.複合体のCCLが、必要に応じて置換された
【化50】
であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
112.複合体のCCLが、-N=N-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
113.複合体のCCLが、-Ar-N=N-Ar-でありまたはこれを含み、各Arが独立して、必要に応じて置換された芳香族部分である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
114.複合体薬剤が、R
C-L-L
P-L-R
Bまたはその塩の構造を有する、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
115.L
Pが、薬剤の官能基および第1の薬剤の官能基の反応生成物部分を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
116.L
Pが、-C(O)O-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
117.L
Pが、-Cy-であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
118.L
Pが、必要に応じて置換された部分的に飽和したまたは芳香族環であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
119.R
Cに結合されたLおよび/またはR
Bに結合されたLが独立して、本明細書に記載されているCCLを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
120.複合体が、酵素反応の一過性中間体である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
121.複合体が、濃縮、単離および/または精製のために十分に安定している、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
122.複合体が、バリアを著しく通過する訳ではない、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
123.複合体が、生成物薬剤に変換される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
124.複合体が、塩基加水分解によって生成物薬剤に変換される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
125.複合体が、CCLの切断によって生成物薬剤に変換される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
126.複合体が、CCLの酵素による切断によって生成物薬剤に変換される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
127.生成物薬剤が、第2の官能基とは異なる放出部分を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
128.生成物薬剤が第2の官能基ではない放出部分を含むという点において、薬剤の生成物薬剤が薬剤とは異なる、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
129.生成物薬剤が放出部分を含み、薬剤が第2の官能基を含むことを除いて、薬剤の生成物薬剤および薬剤が同じである、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
130.放出部分が、CCLの切断後に形成される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
131.放出部分が、部分またはその一部分でありまたはこれを含み、部分が、第1および第2の官能基の間の反応によって形成される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
132.放出部分が、-OHであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
133.生成物薬剤が、質量分析によって検出される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
134.薬剤が、陽性および/または陰性参照薬剤と一緒にバリアに接触する、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
135.複数の薬剤をバリアと接触させるステップ;および/または
バリアを通過した薬剤から形成された複数の生成物薬剤を検出するステップ
を含む方法。
136.複数の薬剤が、ライブラリーの薬剤である、実施形態135に記載の方法。
137.複数の薬剤が、ペプチドライブラリーのペプチド薬剤である、実施形態135に記載の方法。
138.複数の薬剤が、ステープル留めされたペプチドライブラリーのステープル留めされたペプチド薬剤である、実施形態135に記載の方法。
139.ライブラリーが、精製なしで評価される、実施形態135~138のいずれか一実施形態に記載の方法。
140.複数のうちの各薬剤が独立して、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載されている薬剤である、実施形態135~139のいずれか一実施形態に記載の方法。
141.複数のうちの各生成物薬剤が独立して、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載されている生成物薬剤である、実施形態135~140のいずれか一実施形態に記載の方法。
142.複数の薬剤が、接触されると複数の第1の薬剤と反応することができる、実施形態135~141のいずれか一実施形態に記載の方法。
143.複数のうちの各薬剤が独立して、接触されると複数のうちの第1の薬剤と反応することができる、実施形態135~142のいずれか一実施形態に記載の方法。
144.複数のうちの各薬剤が独立して、官能基(第2の官能基)を含む、実施形態135~143のいずれか一実施形態に記載の方法。
145.複数のうちの各薬剤が独立して、同じ官能基(第2の官能基)を含む、実施形態135~144のいずれか一実施形態に記載の方法。
146.複数のうちの薬剤が独立して、異なる官能基(第2の官能基)を含む、実施形態135~144のいずれか一実施形態に記載の方法。
147.複数のうちの各第1の薬剤が独立して、官能基(第1の官能基)を含む、実施形態135~146のいずれか一実施形態に記載の方法。
148.複数のうちの各第1の薬剤が独立して、同じ官能基(第1の官能基)を含む、実施形態135~147のいずれか一実施形態に記載の方法。
149.複数のうちの第1の薬剤が独立して、異なる官能基(第1の官能基)を含む、実施形態135~147のいずれか一実施形態に記載の方法。
150.バリアを通過する複数のうちの薬剤が、複数の第1の薬剤と複数の複合体を形成する、実施形態135~149のいずれか一実施形態に記載の方法。
151.複数のうちの1または複数または全ての複合体が独立して、タグを含む、実施形態135~150のいずれか一実施形態に記載の方法。
152.複数のうちの1または複数または全ての複合体が独立して、同じタグを含む、実施形態135~151のいずれか一実施形態に記載の方法。
153.複数のうちの1または複数または全ての複合体が独立して、CCLを含む、実施形態135~152のいずれか一実施形態に記載の方法。
154.複数のうちの1または複数または全ての複合体が独立して、同じCCLを含む、実施形態135~153のいずれか一実施形態に記載の方法。
155.複数の複合体が、複数の生成物薬剤に変換される、実施形態135~154のいずれか一実施形態に記載の方法。
156.複数の複合体が、塩基加水分解によって複数の生成物薬剤に変換される、実施形態135~155のいずれか一実施形態に記載の方法。
157.複数の複合体が、1または複数の複合体における1または複数のCCLの塩基加水分解によって複数の生成物薬剤に変換される、実施形態135~156のいずれか一実施形態に記載の方法。
158.複数の複合体が、1または複数の複合体における1または複数のCCLの酵素による切断によって複数の生成物薬剤に変換される、実施形態135~155のいずれか一実施形態に記載の方法。
159.複数の複合体が、質量分析を使用して検出される、実施形態135~158のいずれか一実施形態に記載の方法。
160.各生成物薬剤が独立して、対応する薬剤と同じ足場薬剤部分を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
161.足場薬剤が、ペプチドであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
162.足場薬剤が、ステープル留めされたペプチドであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
163.足場薬剤部分が、足場薬剤のアミノ酸配列またはその特徴的な一部分であるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
164.足場薬剤部分が、足場薬剤の1または複数または全てのステープルであるまたはこれを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
165.生成物薬剤が検出される場合、薬剤がバリアを通過することが決定される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
166.生成物薬剤が、ある特定のレベルに達すると検出される場合、薬剤がバリアを通過することが決定される、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
167.レベルが、陰性参照薬剤のための匹敵する条件下で観察されるレベルの2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、200、300、400または500倍である、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
168.陰性参照薬剤が、バリアを通過しない、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
169.足場薬剤が、を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の方法。
170.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の薬剤。
171.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の第1の薬剤。
172.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複合体。
173.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の生成物薬剤。
174.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の薬剤。
175.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の第1の薬剤。
176.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の第2の薬剤。
177.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の複合体。
178.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の生成物薬剤。
179.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の薬剤、第1の薬剤、複合体および生成物薬剤のうち1または複数または全てを含むシステムまたは組成物。
180.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の薬剤および第1の薬剤を含むシステムまたは組成物。
181.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の薬剤および複合体薬剤を含むシステムまたは組成物。
182.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の薬剤および生成物薬剤を含むシステムまたは組成物。
183.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の薬剤、第1の薬剤、生成物薬剤を含むシステムまたは組成物。
184.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の薬剤、第1の薬剤、生成物薬剤を含むシステムまたは組成物。
185.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の薬剤、第1の薬剤、複合体および生成物薬剤を含むシステムまたは組成物。
186.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の薬剤、複数の第1の薬剤、複数の複合体および複数の生成物薬剤のうち1または複数または全てを含むシステムまたは組成物。
187.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の薬剤および複数の第1の薬剤を含むシステムまたは組成物。
188.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の薬剤および複数の複合体を含むシステムまたは組成物。
189.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の薬剤および複数の生成物薬剤を含むシステムまたは組成物。
190.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の薬剤、複数の第1の薬剤、複数の生成物薬剤を含むシステムまたは組成物。
191.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の薬剤、複数の第1の薬剤、複数の生成物薬剤を含むシステムまたは組成物。
192.先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の複数の薬剤、複数の第1の薬剤、複数の複合体および複数の生成物薬剤を含むシステムまたは組成物。
193.バリアを含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載のシステムまたは組成物。
194.実施形態170~192のいずれか一実施形態に記載の薬剤、複数の薬剤または組成物もしくはシステムを含む細胞。
195.そのうち1または複数または全てが独立して、実施形態170~192のいずれか一実施形態に記載の薬剤、複数の薬剤または組成物もしくはシステムを含む、複数の細胞。
196.複数の細胞を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載のシステムまたは組成物。
197.それぞれ独立して実施形態194に記載の細胞である複数の細胞を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載のシステムまたは組成物。
198.実施形態195に記載の複数の細胞を含む、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載のシステムまたは組成物。
199.細胞単層を横断する1または複数の候補化合物を同定するための方法であって、
第1の側面および第2の側面を含む細胞単層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、
細胞単層を横断する複数のうちの別個の候補化合物のそれぞれが、第1の領域に進入し、第1の領域において、別個の候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、別個の候補化合物のそれぞれが結合部分に取り付けられた、複数の別個の候補化合物を、細胞単層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップであって、1または複数の複合体が形成される、ステップと、
1または複数の複合体を破壊して、それぞれ放出部分に取り付けられた、1または複数の別個の候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップと、
放出部分に取り付けられた1または複数の別個の候補化合物を、動物細胞単層を横断する1または複数の候補化合物であると同定するステップと
を含む方法。
200.候補化合物が動物細胞単層を横断するか決定するための方法であって、
第1の側面および第2の側面を含む細胞単層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、
細胞単層を横断する候補化合物が、第1の領域に進入し、第1の領域において、候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、結合部分に取り付けられた候補化合物を、細胞単層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップと、
複合体を破壊して、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップと、
放出部分に取り付けられた候補化合物を、動物細胞単層を横断する化合物であると同定するステップと
を含む方法。
201.動物細胞膜を横断する1または複数の候補化合物を同定するための方法であって、
第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、
リン脂質二重層を横断する複数のうちの別個の候補化合物のそれぞれが、第1の領域に進入し、第1の領域において、別個の候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、別個の候補化合物のそれぞれが結合部分に取り付けられた、複数の別個の候補化合物を、リン脂質二重層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップであって、1または複数の複合体が形成される、ステップと、
1または複数の複合体を破壊して、それぞれ放出部分に取り付けられた、1または複数の別個の候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップと、
放出部分に取り付けられた1または複数の別個の候補化合物を、動物細胞膜を横断する1または複数の候補化合物であると同定するステップと
を含む方法。
202.候補化合物が動物細胞膜を横断するか決定するための方法であって、
第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層を用意するステップであって、第1の側面が、第1の領域を画定し、前記第1の領域が、1または複数の捕捉分子を含む、ステップと、
リン脂質二重層を横断する候補化合物が、第1の領域に進入し、第1の領域において、候補化合物に取り付けられた結合部分の一部分および捕捉分子の間の共有結合により捕捉分子と複合体を形成する条件下で、結合部分に取り付けられた候補化合物を、リン脂質二重層の第2の側面によって画定された第2の領域に添加するステップと、
複合体を破壊して、放出部分に取り付けられた候補化合物を創出するステップであって、前記放出部分が、結合部分とは異なる、ステップと、
放出部分に取り付けられた候補化合物を、動物細胞膜を横断する化合物であると同定するステップと
を含む方法。
203.リン脂質二重層が、動物細胞の細胞膜であり、第1の領域が、動物細胞のサイトゾルである、実施形態201または202に記載の方法。
204.リン脂質二重層が、連続的であり、第1の領域が、リポソームの内部である、実施形態201または202に記載の方法。
205.リン脂質二重層が、連続的であり、第1の領域が、動物細胞のサイトゾルである、実施形態201または202に記載の方法。
206.動物細胞が、脊椎動物の細胞である、実施形態205に記載の方法。
207.脊椎動物が、哺乳動物である、実施形態206に記載の方法。
208.哺乳動物が、ヒトである、実施形態207に記載の方法。
209.動物細胞が、核を有する、実施形態205に記載の方法。
210.リン脂質二重層が、平面状である、実施形態201または202に記載の方法。
211.第1の領域における複合体形成後に、第1の領域および第2の領域が組み合わされて混合領域が創出されるように、リン脂質二重層を破壊するステップをさらに含む、実施形態201または202に記載の方法。
212.結合部分が、放出部分よりも質量が大きい、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
213.結合部分が、放出部分よりも質量が小さい、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
214.放出部分が、結合部分の少なくとも1個の原子を少なくとも1個の異なる原子に置き換えることによって創出される、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
215.複合体が、11.0またはそれよりも高いpHを有する環境に複合体を曝露することによって破壊される、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
216.pHが、11.5またはそれよりも高い、実施形態215に記載の方法。
217.pHが、12.0またはそれよりも高い、実施形態216に記載の方法。
218.同定ステップが、質量分析による解析によるものである、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
219.同定ステップが、エドマン分解解析によるものである、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
220.候補化合物が、ペプチドを含む、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
221.ペプチドが、ステープル留めされたペプチド、合成ペプチド、縫合されたペプチド、および前述のうち2種またはそれよりも多くの組合せからなる群から選択される、実施形態220に記載の方法。
222.ペプチドが、アルファヘリックスターンを含む、これから本質的になるまたはこれからなる、実施形態219または220に記載の方法。
223.候補化合物が、ペプチドにおけるアルファヘリックスターンを安定化する小分子足場をさらに含む、実施形態219に記載の方法。
224.捕捉分子が、化学的に切断可能なリンカーを含むリンカーおよび官能基を含み、前記官能基が、候補化合物に取り付けられた結合部分の少なくとも一部分に共有結合により結合することができる、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
225.捕捉分子が、ハロアルカンデハロゲナーゼの変異体形態を含み、これから本質的になりまたはこれからなり、前記変異体形態が、ヒドロラーゼ活性を欠く、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
226.捕捉分子が、ベンジルグアニン誘導体およびO
2-ベンジルシトシン誘導体からなる群から選択される基と共有結合を形成する、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
227.捕捉分子が、O
6-アルキルグアニン-DNAアルキルトランスフェラーゼの変異体形態を含む、これから本質的になるまたはこれからなる、実施形態199~202のいずれか一実施形態に記載の方法。
228.1または複数の複合体を破壊するステップが、中間体の崩壊および/または捕捉分子による生成物の放出であるまたはこれを含む、実施形態199~227のいずれか一実施形態に記載の方法。
229.候補化合物が動物細胞膜を横断するか同定するためのキットであって、
第1の側面および第2の側面を含むリン脂質二重層であって、第1の側面が、第1の領域を画定する、リン脂質二重層、
第1の領域における配備のための1種もしくは複数の捕捉分子、
候補化合物に共有結合により取り付けるための結合部分であって、前記小分子リンカーが、第1の領域において捕捉分子と共有結合を形成して、複合体を形成することができる、結合部分
複合体を破壊して、候補化合物に取り付けられた放出部分を創出するための試薬、ならびに/または
結合部分を候補化合物に取り付け、放出部分に取り付けられた候補化合物を同定するための使用説明書
を含むキット。
【0241】
次の実施例は、本発明を決して限定しない。
【実施例】
【0242】
例証
提供される技術のある特定の実施形態が、下の1または複数の実施例において例証されている。当業者であれば、斯かる実施例に記載されている条件、薬剤等を適宜調整および/または修正することができることを認める。
【0243】
(実施例1)
【0244】
本実施例は、本発明の様々な実施形態において使用される標準方法について記載する。
【0245】
動物細胞(例えば、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関、Manassas、VAから市販されているヒトHEK 293細胞)を組織培養プレートに播種し、10%FBSおよび1%PenStrepを補充したMEM(基礎(Minimal Essential)培地)において培養し、捕捉分子をコードする発現ベクターを、標準方法を使用してトランスフェクトした。トランスフェクション後に、トランスフェクトされた細胞を、細胞培養インキュベーター(例えば、37℃、5%CO2)に戻した。対照細胞は、空ベクターをトランスフェクトした。トランスフェクションは、Thermo Fisher Scientificによって販売されているTurbofect試薬(Waltham、MA;カタログ番号R0532)を使用して製造業者の使用説明書に従って行った。
【0246】
トランスフェクションの48時間後に、トランスフェクトされた細胞を、96ウェルまたは12ウェル組織培養プレートに分割した。プレートへの細胞接着後に(インキュベーター内でおよそ6時間)、細胞を、DMSO(ジメチルスルホキシド)か、または細胞膜を横断する能力について検査されているクロロアルカンタグ付けされたペプチドのいずれかで24時間インキュベーション処置した。
【0247】
24時間のインキュベーション後に、培地画分および細胞画分を次の通りに収集した:
【0248】
培地画分のため、各試料から50uLの細胞培養培地(すなわち、馴化培地)を収集し、Eppendorfによって販売されているProtein Lo-Bindプレート、カタログ番号0030504305、951031305および951031704(Eppendorf North America、Hauppauge、NY)等、タンパク質に対する低い結合性を有する組織培養プレートに移した。
【0249】
細胞性画分のため、細胞をトリプシン処理してプレートから剥離し、続いて、培地を添加して、トリプシンをクエンチした。このトリプシン-培地-細胞懸濁液を96ウェルV字底プレートに移し、続いて遠心分離することにより、細胞がウェルの底でペレットになり、上清の液体を除去して、次の(other)洗浄を可能にすることができた。細胞を、第1にリン酸緩衝食塩水(PBS)、第2にウシ胎仔血清(熱失活、完全(complete)FBS)、第3に培地である一連の洗浄に付した。逐次洗浄を行って、外側細胞膜に緩く接続されている可能性があるが細胞によって内部移行されていない、いかなる残渣ペプチドも除去した。次に、最終洗浄された細胞ペレットをPBSに再懸濁した。等しい体積(すなわち、細胞の体積に等しい)の水酸化アンモニウム塩基を、再懸濁された細胞に添加した。12.0のpHを有する水酸化アンモニウムとの細胞混合物を次いで、1時間にわたり37℃インキュベーター(3000rpmで振盪)に戻した。この1時間インキュベーションの間に、細胞は、塩基加水分解を受けた。
【0250】
塩基加水分解後に、細胞試料を、SpeedVac(例えば、Thermo-Fisherから市販)において一晩乾燥させた。
【0251】
翌日、乾燥された試料を50ul PBSに再懸濁して、最終細胞性画分を創出した。次に、この最終細胞性画分を、Protein Lo-Bindプレートに移した。メタノールおよび1%ギ酸の新鮮溶液を作製し、4℃に冷やした。100ulの冷やしたメタノール1%ギ酸(FA)を、培地画分および最終細胞性画分の両方(Protein Lo-Bindプレートにおける各画分)に添加し、プレートを、-20℃で4~5時間貯蔵して、画分のそれぞれからタンパク質およびペプチドを放出させた。次に、プレートを-20℃から出し、その内容物を質量分析によって解析して、培地画分における出発ペプチドおよび細胞性画分におけるその塩基加水分解アナログを特異的に探索した。
【0252】
質量分析による解析のため、次の方法を用いた:
【0253】
Dionex Ultimate 3000 RSLCnano(Santa Clara、CA)システムを使用して50℃に加熱した2.1×50mm(1.7μm粒径)AQUITY BEH C18カラム(Waters、Milford、MA)により化合物を分離した。分離に使用した溶離液は、次の通りであった:溶離液Aは、水における0.1%ギ酸であり、溶離液Bは、アセトニトリルにおける0.1%ギ酸であった。ゼロ時点の15%溶離液B、10~11.5分目の98%溶離液B、および11.6~14分目の15%溶離液Bの直線勾配を使用して、200μL/分の流速で勾配を実行した。分離後に、質量分析的解析のためにThermo Scientific Q Exactive HF-X(Bremen、Germany)に化合物を導入した。データ依存取得(DDA)を次の通りに行った:MS1イベントは、500~1300m/zの範囲におけるポジティブ質量スキャンと、それに続く、MS1スキャンからの最も豊富なイオンにおける25、35および45%段階的正規化衝突エネルギー(NCE)における5つのHCDイベントで構成された;単離ウィンドウは、1.4m/zに設定された。動的排除期間は、2.0秒間であり、2+および3+荷電種のみが解離のために採集された。ESI電圧は3.5kVに設定され、キャピラリー温度は250℃であり、シースガスは35であり、補助装置(aux)ガスは10であり、漏斗RFレベルは、40に設定された。分解能は、MS1スキャンでは45,000、MS/MSスキャンでは15,000であった。AGCは、MS1では250ミリ秒の最大注射時間による3E6に設定され、AGCは、MS/MSスキャンでは250ミリ秒の最大注射時間による1E5であった。全MS1およびMS/MSスペクトルは、1マイクロスキャン(microscan)から産生された。
【0254】
(実施例2)
【0255】
本実施例2において、Promegaによって販売されているHaloTagタンパク質を捕捉分子の一部分として使用して、実施例1の方法に従った。候補化合物(例えば、ステープル留めされたペプチド)が細胞膜を横断することができるか決定するためのいくつかの公知方法は、細胞内標的をモジュレートする化合物の細胞効果の観察を要求する。他の公知方法は単純に、小さい検出可能マーカー(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)で候補化合物を標識するステップと、化合物が細胞膜を横断するのに適当な時間にわたり、細胞を標識された化合物と共にインキュベートするステップと、新鮮培地またはPBSで細胞をリンスするステップと、細胞を点検(例えば、蛍光顕微鏡下で)して、マーカーが細胞内に(例えば、サイトゾル内に)含有されているか観測するステップとを伴うことがある。例えば、Y.S. Chang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110(36):E3445-54, 2013(および補足材料);米国特許第7,960,506号;Chandra et al., J. Biochem Biophys Methods 70(3): 329-333, 2007;PCT公開番号WO2015179691A2に記載されている方法を参照されたい。
【0256】
標準方法を使用して、FMOCペプチド合成を使用してペプチドを生成し、炭化水素リンカー(例えば、米国特許第7,192,713号を参照)をステープル留めし、解析して、標準方法を使用してヒト細胞の細胞膜を横断することができるか否か決定した。化合物1および11を生成し、これらはそれぞれ、K
D 11nM(化合物1)およびK
D 20nM(化合物11)の親和性で、同じ標的分子に特異的に結合する。
図14Aおよび
図14Bは、これらの標準アッセイのうち2つの結果を示す。化合物1または化合物11を細胞と共にインキュベートし、細胞の厳密な洗浄を適用して、外膜に結合した化合物を除去し、次いで、細胞を溶解して、質量分析により内部移行した化合物の量を定量化することにより、質量分析透過実験を行った。
図14Aに示す通り、化合物1について有意なシグナルが観察され、細胞内部移行を確認し、化合物11について非常に低いシグナルが観察された。これらの結果は、化合物1が細胞膜を横断するが、化合物11が横断しないことを示す。第2の標準方法は、生物発光共鳴エネルギー転移を利用して、生細胞におけるタンパク質相互作用の阻害または誘導を定量化する、NanoBRET(商標)アッセイ(Promega Corp.、Madison、WIから市販)であった。化合物1および化合物11はどちらも、同じ標的に特異的に結合し、in vitroで特異的タンパク質ペアを破壊することが公知であるため、NanoBRET(商標)システム(製造業者の使用説明書に従って)を使用して、タンパク質ペアを生細胞にトランスフェクトしたところ、細胞に化合物1を投薬した後に、タンパク質相互作用の有意な阻害が観察された(
図14B)一方で、細胞に化合物11を投薬した後に、タンパク質相互作用の非常に少ない阻害が観察された。換言すると、化合物11は、細胞のサイトゾルに入ることができなかったため、少ない阻害を示し、一方、化合物1は、細胞のサイトゾルに入ることができ、よって、タンパク質相互作用を阻害した。
図14Aおよび
図14Bに示すデータ結果は、化合物1が、細胞膜を容易に横断し、その標的タンパク質および相互作用を阻害することができるが、化合物11がそれを行わないことを示す。
【0257】
よって、化合物1は、質量分析透過実験(
図14B)および直交型NanoBRET(商標)(
図14A)、ならびに図示していない他のデータに基づき、細胞膜透過性であることが決定された。本明細書に記載されている方法において、化合物1を陽性対照として使用した。
【0258】
【0259】
を有する結合部分を、化合物1のC末端に共有結合により取り付けて、
図15Aに描写されている化合物1-Cl分子を創出した。
【0260】
実施例1に記載されている方法に従って、HaloTag分子をコードする発現ベクターを以前にトランスフェクトしたHEK 293細胞(ATCC由来)を、培養培地に3uM化合物1-Clを添加することにより処置し、処置された細胞をインキュベーター(すなわち、37℃、5%CO2で)に24時間戻した。この24時間インキュベーションの間に、細胞膜を横断することができることが公知である化合物1-Clは、細胞の細胞質に進入し、化合物1-Cl分子における結合部分およびHaloTagタンパク質の間の共有結合により、細胞質においてHaloTagタンパク質に共有結合により取り付けられた。24時間インキュベーション後に、インキュベートされた細胞を、実施例1に記載されている通りに処置し、培地および細胞性画分を、実施例1に記載されている通りに分離および解析した。解析の一部として、水酸化アンモニウムにおいて(すなわち、塩基加水分解により)細胞を溶解し、これは、候補化合物:結合部分およびHaloTagの生成物:HaloTagタンパク質の複合体も破壊し、
図15Bに描写されている化合物1-OH分子、すなわち、放出部分に共有結合により取り付けられた候補化合物1を創出した。
【0261】
図15Aおよび
図15Bに示す通り、創出された化合物1-OH分子(例えば、放出部分に取り付けられた候補化合物;
図15B)は、化合物1-Cl分子(例えば、結合部分に取り付けられた候補化合物;
図15A)とは異なる。
【0262】
化合物1-Cl分子および化合物1-OH分子のこのような差は、質量分析によって識別可能であった。
図16Aに示す通り、化合物1-Cl分子(すなわち、本実施例では、結合部分に取り付けられた候補化合物)は、およそ7.375分目に溶出ピークを示した。対照的に、
図16Bに示す通り、化合物1-OH分子(すなわち、本実施例では、放出部分に取り付けられた候補化合物)は、およそ6.7分目に溶出ピークを示した。このようなピークシフトは、本明細書に記載されている方法が、動物細胞の細胞膜を横断することができる化合物として化合物1(すなわち、結合部分にも放出部分にも取り付けられていない候補化合物)を同定することができたことを示した。
【0263】
(実施例3)
【0264】
本実施例3において、実施例1および2に記載されている方法を反復して、複数の候補化合物を同時に検査して、それらのうち1または複数が、動物細胞の細胞膜を横断することができるか観測することができるか決定した。
【0265】
このような研究のため、ヒト293F懸濁細胞(ThermoFisher Scientific、Waltham、MAから市販されているFreeStyle(商標)293-F細胞)を使用した。このような細胞を、バッフル(baffled)底を備えるエルレンマイヤーフラスコ(バッフル底を備えるNalgene(商標)使い捨てPETGエルレンマイヤーフラスコ:無菌)に播種し、FreeStyle(商標)293発現培地において培養し、捕捉分子をコードする発現ベクターを、標準方法を使用してトランスフェクトした。本実施例において、HaloTagタンパク質は、捕捉分子の一部分であった。トランスフェクション後に、トランスフェクトされた細胞を、細胞培養インキュベーター(例えば、37℃、5%CO2)に戻した。対照細胞は、空ベクターをトランスフェクトした。懸濁FreeStyle 293-F細胞におけるトランスフェクションは、Thermo Fisher Scientificから得た293fectin試薬および使用説明書を使用して行った。293fectinは、DNAと相互作用して、拡散性でありかつ細胞内にエンドサイトーシスされ得る小さい複合体を形成する、カチオン性ポリマーの溶液である。
【0266】
トランスフェクションの48~72時間後に、トランスフェクトされた細胞を、タンパク質に対する低い結合性を有する96ウェルのディープ(deep)ウェル組織培養プレート(例えば、Eppendorfによって販売されているProtein Lo-Bindプレート)に分割した。次に、クリック可能(clickable)リンカー(PEG2)で細胞を2時間処置した。PEG2クリック可能リンカーは、次の構造を有した:
【化52】
【0267】
次に、PEG2含有培地を除去し、新鮮培地に置き換えた。次に、24時間インキュベーションにわたり、DMSO、または細胞膜を横断する能力について検査されている10種のクロロアルカン-ペプチドのいずれかを含有する培地で細胞を処置した。本実施例3において、10種のペプチド(すなわち、候補化合物)は、個々に添加した(すなわち、ウェル当たり1uMの1種の別個のペプチド)か、またはマルチプレックス化方法において細胞の同じ群に同時に添加した(すなわち、総計10uMのペプチドの、1uMの別個のペプチドのそれぞれを同時に)ことに留意されたい。本実施例において検査された10種の候補化合物は、次の通りであった:化合物1(対照)、化合物2、化合物3、化合物4、化合物5、化合物6、化合物7、化合物8、化合物9および化合物10。
【0268】
24時間のインキュベーションの後に、次の通りに、対照プレート、1種のみの別個の候補化合物を有するプレート、および10種の別個の候補化合物を有するマルチプレックス化プレートから、培地画分および細胞画分を収集した:
【0269】
培地画分のため、各試料から50ulの細胞培養培地(すなわち、馴化培地)を収集し、タンパク質に対する低い結合性を有する組織培養プレート(例えば、Eppendorfによって販売されているProtein Lo-Bindプレート)に移した。
【0270】
細胞性画分のため、細胞を含有する組織培養プレートを遠心分離し、続いて、上清の大部分を除去した。次に、100ulの残渣培地に細胞を再懸濁し、96ウェルV字底プレートに移した。プレートを遠心分離し、続いて、上清を全て除去した。細胞ペレットを、第1にウシ胎仔血清(熱失活、完全FBS)および培地、第2にリン酸緩衝食塩水(PBS)ならびに第3にトリプシンとそれに続く培地によるクエンチによる、一連の洗浄に付した。逐次洗浄を行って、外側細胞膜に緩く接続されている可能性があるが細胞によって内部移行されていない、いかなる残渣ペプチドも除去した。トリプシン-培地-細胞懸濁液を、新たな組織培養プレートに移した。等しい体積の水酸化アンモニウム塩基を、再懸濁された細胞に添加した。12.0のpHを有する水酸化アンモニウムとの細胞混合物を次いで、37℃インキュベーター(300rpmで振盪)に1時間戻した。この1時間インキュベーションの間に、細胞は、塩基加水分解を受けた。
【0271】
塩基加水分解後に、細胞試料を、SpeedVac(例えば、ThermoFisher Scientificから市販)において一晩乾燥させた。
【0272】
翌日、乾燥された試料を、50ul PBSに再懸濁して、最終細胞性画分を創出した。次に、この最終細胞性画分を、Protein Lo-Bindプレートに移した。
【0273】
次に、100ulの冷やしたメタノール1%FAギ酸を、培地画分(冷溶液は、細胞および培地画分の分離、ならびに細胞内容物の抽出を改善するため、1%ギ酸を4℃に冷やしたことに留意されたい)および最終細胞性画分(Protein Lo-Bindプレートにおける各画分)の両方に添加し、プレートを-20℃で4~5時間貯蔵して、画分のそれぞれからタンパク質およびペプチドを放出させた。次に、プレートを-20℃から出し、その内容物を、質量分析によって解析して、培地画分における出発ペプチドおよび細胞性画分におけるその塩基加水分解アナログを特異的に探索した。
【0274】
結果は、実施例1および2に記載されている方法が、複数の方法において、個々におよび一緒に検査された10種の候補化合物について再現可能であったことを示した。
図17Aおよび
図17Bは、MSシグナルの観点から、放出部分に取り付けられている(すなわち、本実施例において-Clの代わりに-OHに取り付けられている)ことが見出された特定のペプチドの量を示す。
図17Aおよび
図17Bにおけるデータが、細胞膜を横断することができると示された、実施例2に記載されている陽性対照化合物1に対して正規化されていることに留意されたい(
図14A~
図14Bを参照、また、図示されていないデータあり)。データは、10種の検査されたペプチドのサイトゾル曝露パターンが、ペプチドが個々に検査されたか(
図17A)またはマルチプレックスにおいて一緒に検査されたか(
図17B)に関係なく、非常に類似していることを示す。化合物2、7および9が、対照化合物1とほぼ同様に細胞膜を通過することができたことに留意されたい。これら3種の化合物(および他の化合物も同様に)のこれらのスペクトルをさらに審査して、標準質量分析配列決定方法に従ってまたはエドマン分解配列決定によってアミノ酸配列を同定することができる。
【0275】
(実施例4)
【0276】
この仮想実施例では、ATCCからヒトJurkat T細胞を得て、トランスフェクトされた細胞がHaloTag タンパク質を構成的に発現するように、HalogTagをコードする発現ベクターをトランスフェクトする。例えば、Jurkat細胞は、pHTC HaloTag CMV-neoベクター(G7711)またはPFC14A HaloTag CMV Flexiベクター(G9651)をトランスフェクトすることができ(例えば、電気穿孔またはリポフェクチンによって)、これらベクターはどちらも、Promegaによって販売されている。
【0277】
トランスフェクション後に(一過性であっても、またはpHTC HaloTag CMV-neoベクターが使用される場合は、G418の存在下で育成された細胞において安定していてもよい)、HaloTagタンパク質を発現する細胞が同定される(例えば、Promegaによってカタログ番号G9211として販売されている抗体等の抗HaloTag抗体を使用したJurkat細胞ライセートのウエスタンブロッティングによって)。
【0278】
HaloTagを発現する細胞は次に、それぞれ結合部分に取り付けられた256種の別個の候補化合物を含有する細胞培養培地においてインキュベートし、各結合部分は、クロロアルカンリンカーを含有する。
【0279】
換言すると、256種の別個の候補化合物を同時にスクリーニングして(例えば、マルチプレックススクリーニングアッセイにおいて)、動物細胞膜を横断することができる別個の候補化合物を同定することができる。
【0280】
各候補化合物の複数コピーをHaloTag発現細胞に添加することができることに留意するべきである。例えば、同時にスクリーニングされている256種の別個の候補化合物が存在する場合、細胞は、256種の別個の候補化合物のそれぞれの10,000コピー(すなわち、2,560,000個の化合物)と共にインキュベートすることができ、各候補化合物は、クロロアルカンリンカーを含む結合部分に共有結合により取り付けられる。
【0281】
この仮想実施例では、256種の別個の候補化合物がスクリーニングされるであろう。それぞれ結合部分に取り付けられた256種の別個の候補化合物のそれぞれが、質量分析によって解析され、それらのデータが保持されるであろう。
【0282】
細胞は、それぞれ結合部分に取り付けられた候補化合物を含有する培養培地(例えば、RPMI 1640)において、細胞膜を横断することができる化合物が、細胞膜を横断し、細胞の細胞質内で結合部分を介してHaloTagと複合体を形成するのに十分な時間にわたり、インキュベートされるであろう。この時間は細胞型に応じて変動し得るが、時間は、ルーチン技法を使用して判別することができる。
【0283】
質量分析による解析は、結合部分に取り付けられた候補化合物において、これを培養培地に添加する前に既に行われているため、このインキュベーション時間の後に、培養培地は、除去され、廃棄され得る。
【0284】
次に、細胞は、pHを11.0またはそれよりも高く(例えば、12.0のpH)に変化させることによる塩基加水分解において溶解されるであろう。候補化合物に取り付けられた結合部分の少なくとも一部に共有結合により取り付けられたHaloTagを含む複合体も、塩基加水分解によって破壊され、複合体から遊離した(すなわち、剥離した)候補化合物は、結合部分の代わりに取り付けられた放出部分を有するであろう。
【0285】
溶解された細胞から得た別個の候補化合物のそれぞれを、質量分析によって解析して、候補化合物に取り付けられた放出部分の存在を検出することができる。放出分子に取り付けられた別個の候補化合物のそれぞれは、その質量分析スペクトルを、それぞれ結合部分に取り付けられた出発候補化合物の質量分析スペクトルと比較することにより同定することができる。
【0286】
この様式で、256種の候補化合物を、非接着性動物細胞の細胞膜を横断するその能力について同時にスクリーニングすることができる。
【0287】
(実施例5)
【0288】
動物細胞(例えば、Expi293細胞またはヒトHEK293細胞)を、組織培養プレートに播種し、Opti-MEM培地において培養した。PETGフラスコに、6×105個の細胞/mLの濃度および30mLの体積で細胞を設けた。細胞生存率は、90~93%を上回ることをチェックした。Expi293細胞を含有する2個のフラスコを調製し、そのうち1個は対照に、1個はhalotagトランスフェクションに用いた。フラスコを、300rpmで8%CO2の振盪インキュベーター内に置いた。
【0289】
24時間のインキュベーションの後に、4本の2-mL Lo-Bind管を調製し、管1aは、100μLのOpti-MEMを含有し、管2aは、990μLのOpti-MEMにおける10μL(30μg)のhalotagプラスミドを含有し、管1bおよび2bはそれぞれ、940μLのOpti-MEMにおける60μLのExpiFectamine 293を含有し、これらを室温で5分間インキュベートした。管1aにおける混合物を管1bに添加し、管2aにおける混合物を管2bに添加した。組み合わせた混合物を室温で20分間インキュベートし、その後、細胞に添加した。細胞を振盪インキュベーターに72時間置き、その間、培地は交換しなかった。
【0290】
48時間のトランスフェクションの後に、トランスフェクトされた細胞を、生存率(90%またはそれよりも高い)についてチェックした。トランスフェクトされた細胞を、Protein Lo-Bind Eppendorf 96ウェルのディープウェルプレート(1000μL)に移し、各ウェルは、500μLのExpi293培地に百万個の細胞を含有した。PEG2(クロロアルカンタグを含有するリンカー分子)の2μM溶液を調製した。500μLのPEG2溶液を各ウェルに添加した。96ウェルプレートを、振盪インキュベーターに2時間置いた。インキュベーション後に、プレートを、300gで5分間の遠心分離機に置いた。細胞ペレットを乱すことなく、850μLの上清を除去した。最終スピン後にプレートから培地を除去することが容易ではない場合、その代わりに800μLの上清を除去した。細胞を、残渣培地(200μL)に再懸濁し、懸濁液を、V字底96ウェルプレートに移した。V字底プレートを、300gで5分間の遠心分離機に置いた。全ての残渣培地をその後に除去した。細胞を、200μLの新鮮培地に再懸濁した。懸濁液を、新たな96ウェルのディープウェルプレートに移した。さらに300μLの培地を添加し、細胞を休ませた。
【0291】
ペプチドライブラリーから得た候補化合物(化合物1~30)の新たなセットの溶液を、20μMに希釈した。500μLの各候補化合物溶液を、96ウェルプレートに2回繰り返して添加し、単一のウェルにおける最終濃度10μMの各候補化合物をもたらした。各ウェルは、陽性および陰性対照をさらに含有した。ウェルを計数するため、500μLのプレーン(plain)培地を添加した。細胞を、300rpmで8%CO2の振盪インキュベーター内に一晩、約18~20時間維持した。
【0292】
翌日、96ウェルプレートを、300gで5分間の遠心分離機に置いた。培地画分のため、50μLの培地を、Lo-Bind 96ウェルのディープウェルEppendorfプレート(500μL)に移した。
【0293】
細胞性画分のため、96ウェルプレートを、300gの遠心分離機にさらに5分間置いた。750μLの上清を除去した。細胞を、残渣200μLの培地に再懸濁した。懸濁液を、96ウェルV字底プレートに移し、これを、300gの遠心分離機に追加的な5分間置いた。残っている培地を全て除去した。細胞ペレットを、第1にウシ胎仔血清(熱失活、完全FBS)および培地、第2にリン酸緩衝食塩水(PBS)ならびに第3にトリプシンとそれに続く培地によるクエンチによる、一連の洗浄に付した。プレートを遠心分離し、続いて、上清を全て除去した。細胞ペレットを、第1にウシ胎仔血清(熱失活、完全FBS)および培地、第2にリン酸緩衝食塩水(PBS)ならびに第3にトリプシンとそれに続く培地によるクエンチによる、一連の洗浄に付した。逐次洗浄を行って、外側細胞膜に緩く接続されている可能性があるが細胞によって内部移行されていない、いかなる残渣ペプチドも除去した。トリプシン-培地-細胞懸濁液を、新たな組織培養プレートに移した。等しい体積の水酸化アンモニウム塩基を、再懸濁された細胞に添加した。12.0のpHを有する水酸化アンモニウムとの細胞混合物を次いで、37℃インキュベーター(300rpmで振盪)に1時間戻した。この1時間インキュベーションの間に、細胞は、塩基加水分解を受けた。
【0294】
塩基加水分解後に、細胞試料を、SpeedVac(例えば、ThermoFisher Scientificから市販)において一晩乾燥させた。
【0295】
翌日、乾燥された試料を、50μLのPBSに再懸濁して、最終細胞性画分を創出した。次に、この最終細胞性画分を、Protein Lo-Bindプレートに移した。100μLの冷やしたメタノール/1%ギ酸(FA)をその後、培地画分(注記:冷溶液は、細胞および培地画分の分離、ならびに細胞内容物の抽出を改善するため、1%ギ酸を4℃に冷やした)および最終細胞性画分(Protein Lo-Bindプレートにおける各画分)の両方に添加した。プレートを4℃で24時間または-20℃で4~5時間貯蔵して、画分のそれぞれからタンパク質およびペプチドを放出させた。4000rpmで8~10分間の4℃に冷却した遠心分離機にプレートを置いた。およそ90μLの溶液をGreiner 96ウェルプレートに移し、これを4℃に維持し、封着し、質量分析器のオートサンプラーに置いた。一部の実施形態では、試料は、必要に応じて、ある特定の添加物と混合して、試料の安定性を確実にする、および/または試料の分解または例えば、プラスチック結合に対する損失を防止することができる。有用な添加物は、BSA等のタンパク質、脱脂粉乳、ペプチドまたはペプチドの混合物、質量分析適合性洗剤、DMSO、およびグアニジン塩酸塩を含む。
【0296】
ある特定のデータを下の表に提示する。数は、MSイオン強度である。-Cl(FG2)を含む投与された薬剤は、-OH(FG3、-Clに置き換わる)を含む生成物薬剤に変換される。
無細胞OH(halotag基質(-L-Cl)を含む薬剤を、in vitroで触媒により-Clを-OHに変換する酵素(例えば、Rhodococcus rhodochrous由来のDhaA、別名ハロアルカンデハロゲナーゼ)と混合した。とりわけ、これは、その-OH形態の各薬剤のために理論的100%シグナルがかくあるべきものをもたらすことができる。一部の薬剤、例えば、ライブラリー/プールメンバーは、異なる開始レベルで提示され得るため、斯かる試料は、例えば、細胞において観察される値を正規化するための「インプット」として使用することができる):
【表1-1】
【表1-2】
細胞OH(細胞において見出される-OH含有生成物薬剤のイオンシグナル。一部の実施形態では、CORは、無細胞OHで割った細胞OHに等しい。一部の実施形態では、RPFは、同様に計算されるが、データを正規化するために陽性および陰性対照も使用する):
【表2-1】
【表2-2】
【0297】
一部の実施形態では、生成物薬剤の被験薬剤に対するパーセンテージ(例えば、細胞OHの無細胞OHに対する)が計算され、被験薬剤の透過性の評価に利用される。一部の実施形態では、RPFが利用される。一部の実施形態では、CORが利用される。上のデータを使用して、ある特定のデータを下に提示した(RPFについて、ネガティブデータは図示せず):
RPF:
【表3-1】
【表3-2】
COR:
【表4-1】
【表4-2】
【0298】
(実施例6)
【0299】
とりわけ、提供される技術は、高い効率を提供することができる。一部の実施形態では、提供される技術は、複数の薬剤のハイスループット評価を提供することができる。例えば、一部の実施形態では、複数のメンバー薬剤を含む粗製ライブラリー生成物を、本明細書に記載されている通りに、単一のシステム、例えば、単一のウェルにおいて評価することができる。
【0300】
動物細胞(例えば、Expi293細胞またはヒトHEK293細胞)を、組織培養プレートに播種し、Opti-MEM培地において培養した。PETGフラスコに、6×105個の細胞/mLの濃度および30mLの体積で細胞を設けた。細胞生存率は、90~93%を上回ることをチェックした。フラスコを、300rpmで8%CO2の振盪インキュベーター内に置いた。
【0301】
24時間のインキュベーションの後に、フラスコ毎に、1本の1.5-mL Lo-Bind管および1本の2-mL Lo-Bind管を調製した。1.5-mL管において、30μgのポリヒスチジンタグ付けされたhalotag(His-Halotag)プラスミドおよびOpti-MEM培地を添加して、1-mL混合物をもたらした。2-mL Lo-Bind管において、60μLのExpiFectamineおよび940μLのOpti-MEMを添加した。5分後に、プラスミド/Opti-MEM混合物を、ExpiFectamine/Opti-MEM混合物に添加した。組み合わせた混合物を、室温のインキュベーターに20分間置き、これをその後、フラスコに添加した。
【0302】
48時間のトランスフェクションの後に、トランスフェクトされた細胞を、生存率(90%またはそれよりも高い)についてチェックした。トランスフェクトされた細胞を、Protein Lo-Bind Eppendorf 96ウェルのディープウェルプレート(1000μL)に移し、各ウェルは、500μLのExpi293培地に百万個の細胞を含有した。
【0303】
個々のペプチド、またはペプチドライブラリー由来のペプチド(DPL)のいずれかである候補化合物の溶液は、10mMのストック濃度で受け取り、DMSOに希釈し、「ソース(Source)プレート」において維持した。DPLのため、「ソースプレート」におけるペプチド濃度は、1mMであり、一方、個々のペプチドのため、濃度は、100μM(最終濃度100nMのため)または10μM(最終濃度10nMのため)のいずれかであった。500μLのDPLまたは個々のペプチド溶液を、96ウェルプレートに3回繰り返して添加した。細胞を、300rpmおよび37℃、8%CO2の振盪インキュベーター内に一晩、約18~20時間維持した。
【0304】
翌日、次の2種の方法の一方を行った:i)捕捉ビーズ法またはii)細胞破砕法。
【0305】
捕捉ビーズ法:96ウェルプレートを、300gで5分間の遠心分離機に置いた。720μLの上清を除去した。細胞を、残渣200μLの培地に再懸濁した。懸濁液を、96ウェルV字底プレートに移し、これを、300gで追加的な5分間の遠心分離機に置いた。残っている培地を全て除去した。細胞ペレットを200μLのPBSで洗浄し、混合し、300gおよび4℃の遠心分離機に追加的な5分間戻した。上清を除去した。100μLの5μM HaloTag TMRリガンド(PromegaのHaloTag(登録商標)TMRリガンド(555Ex/585Em):カタログ番号:G825A)を各ウェルに添加した。プレートを、300rpmおよび37℃、8%CO2の振盪インキュベーターに30分間置いた。次に、細胞を200μLのPBSで2回洗浄し、混合し、300gおよび4℃の遠心分離機に追加的な5分間戻した。冷溶解緩衝剤(EasyPep(商標)溶解緩衝剤、100×のプロテアーゼ阻害剤あり、EDTAなし、0.1μL/mLのThermofisherユニバーサルヌクレアーゼ)を調製した。200μLの溶解緩衝剤を各ウェルに添加し、試料をKingFisher DeepWellプレート(1000μL)に移した。追加的な300μLの溶解緩衝剤を添加した。低温室において混合物を4℃に維持して、20~30分間振盪した。
【0306】
次のプロトコールをKingFisher精製に使用した。
【0307】
次の通りに7種のプレートを調製した:(i)Tipプレート(プレート型96標準プレート)、(ii)各試料ウェルにおいて50μLのHisビーズ(Dynabeads Hisタグ単離&プルダウン(Invitrogen、thermofisher REF10104Dによる))を含有した、His磁気ビーズプレート(プレート型96標準プレート)、(iii)各試料ウェルにおいてPI/ヌクレアーゼなしの100μLの溶解緩衝剤を有する、Hisビーズ洗浄プレート(プレート型96標準プレート)、(iv)500μLの細胞ライセートを含有する、Halo His溶解プレート(プレート型96ディープウェルプレート)、(v)100μLの洗浄緩衝剤I(HEPES pH7.5+200mM NaCl)を含有する、ビーズ洗浄プレートI(プレート型96標準プレート)、(vi)100μLの洗浄緩衝剤II(HEPES pH7.5+200mM NaCl)を含有する、ビーズ洗浄プレートII(プレート型96標準プレート)、および(vii)100μLの溶出緩衝剤(HEPES pH7.5+150mMイミダゾール)を含有する、ビーズ溶出プレート(プレート型96標準プレート)。KingFisherによって指示される通りに、各プレートをロードした。全7種のプレートをロードしたら、精製プロセスを始めた。溶出液の収集後に、装置から全プレートを除去した。
【0308】
細胞破砕法:96ウェルプレートを、300gで5分間の遠心分離機に置いた。720μLの上清を除去した。細胞を、残渣200μLの培地に再懸濁した。懸濁液を、96ウェルV字底プレートに移し、これを、300gで追加的な5分間の遠心分離機に置いた。残っている培地を全て除去した。細胞ペレットを200μLのPBSで洗浄し、混合し、300gおよび4℃の遠心分離機に追加的な5分間戻した。上清を除去し、80μLのPBSを添加した。
【0309】
捕捉ビーズ法から得た80μLの溶出タンパク質/ペプチド、または細胞破砕法から得たPBD溶液を、ディープウェルの低い結合性プレート(500μL)に移した。80μLの水酸化アンモニウムを添加した。37℃の振盪機においてプレートを3時間維持した。speedvacにおいてプレートを一晩乾燥させた。
【0310】
翌日、乾燥された細胞ペレットを、70μLの47.5%水と0.1%FA/47.5%ACNと0.1%FA/10μM pepmix(10mMストック)/5%新鮮DMSOに再懸濁した。プレートにおいて混合物を1時間静置して、ペレットを溶解させた。試料が濁って見えた場合、より多くの再懸濁溶液を添加した(一度に50μL)。50μLを、質量分析(spec)プレートに直接移し、プレートを384ウェルプレートシールで封着した。
【0311】
無細胞系のため、500μL DPWプレート(ライブラリー希釈プレート)においてDPLを希釈した。PBSにおいて最終作業希釈物を作製するまで、個々のペプチドを、低結合管において個々に希釈した。この時点で、個々のペプチドを、ライブラリー希釈プレートに移した。1枚のプレートに全ての最終希釈物を得ることにより、マルチチャネルを使用して、希釈ペプチドを無細胞プレートに移した。細胞アッセイのために「ソースプレート」と同じ設計を使用した。ペプチドのみのプレートのため、45μLのPBSを各ウェルに添加し、5μLの希釈ライブラリー/ペプチドを3回繰り返して添加した。ペプチド/DhaAプレートのため、5μLの50μM DhaA酵素を添加し、続いて40μLのPBSおよび5μLの希釈ライブラリー/ペプチドを添加した。350rpmおよび37℃の卓上thermomixerにおいて両方のプレートを一晩維持した。次の日に、1mLのDMSO、20μLのPepMixならびに980μLの1:1比のACN/0.1%FAおよびH2O/0.1%FAにより、2mLの無細胞溶液を調製した。5μLの無細胞溶液を384ウェルプレートに添加し、続いて、45μLの無細胞試料を添加した。
【0312】
全試料を添加したら(無細胞を含む)、プレートを、質量分析器のオートサンプラーに置いた。質量分析による解析のため、実施例1の方法を用いた。
【0313】
ある特定の評価の結果を下に提示した。細胞破砕法を利用した。質量シフトペプチド理論的最大シグナルは、細胞が関与することなく-Clを含むインプット薬剤を-OH形態を含む生成物薬剤に変換するためのDhaAを使用したときに得られた-OHを含む薬剤のシグナルである(複数の薬剤を同時的に変換させることができる;一部の実施形態では、ライブラリー毎に(library by library)行うことができる)。一部の実施形態では、一部の場合では、約百万個前後の細胞を含有する単一のウェルにおいて、各ライブラリープールプラス陽性および陰性参照を検査した。各ライブラリープールは、精製なしの個々に調製されたライブラリーであり、副生物等と共に全メンバーが一緒に混合された。「細胞浸透スコア」は、複製のペア毎に「細胞における質量シフトペプチドシグナル」を「質量シフトペプチド理論的最大シグナル」で割り、次いで、複製にわたりこれらの値を平均することにより計算される;その上またはその代わりに、CORおよび/またはRPFを利用することもできる。
B:ペプチドの保持時間(秒)(-Clを含む薬剤)
C:ペプチドインプットシグナル(ライブラリー混合物を直接的に使用;-Clを含む薬剤)
D:ペプチドインプットシグナル(SD)
E:細胞におけるペプチドシグナル(細胞由来;-Clを含む薬剤)
F:細胞におけるペプチドシグナル(SD)
G:質量シフトペプチドの保持時間(秒)(-OHを含む薬剤)
H:質量シフトペプチド理論的最大シグナル
I:細胞における質量シフトペプチドシグナル
J:細胞における質量シフトペプチドシグナル(SD)
K:実験型。個々の=個々のペプチド
L:ライブラリー(ライブラリープールA-I)
M:細胞浸透スコア。(N/A - 特定のラン(複数可)においてシグナル検出されず)。
N:細胞浸透スコア(SD)
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【0314】
PEP000116-126は、ATSP-7041に基づくライブラリーであり、細胞浸透性であった。PEP000127-137は、ATSP-7041の非浸透性バリアントに基づくライブラリーであった。PEP000181-184は、ある特定の陽性対照ペプチドであり、PEP000185は、陰性対照ペプチドである。
【0315】
確認される通り、提供される技術は、とりわけ、高い効率での複数の薬剤の透過性の評価に利用することができる。
【0316】
ある特定の薬剤の構造を下に記載する。様々な実施形態では、斯かる薬剤は、ステープル留めされたペプチド部分を含む。一部の実施形態では、ステープルは、オレフィンメタセシスによりR8およびS5によって形成される。一部の実施形態では、ステープルは、オレフィンメタセシスによりReNおよびAzによって形成される。
【化53】
HaloTagO2の構造を下に記載する。ペプチドにおいて利用される場合、その-COOHは、-NH
2基(例えば、N末端アミノ基)とアミド結合を形成する。一部の実施形態では、HaloTagO2を含む薬剤の生成物薬剤は、-Clが-OHに置き換えられていることを除いて薬剤と同じ構造を有する。
【化54】
【0317】
上に記載されている本発明の実施形態は、単に例示的であることが意図される;多数の変種および修正が、当業者には明らかであろう。あらゆる斯かる変種および修正は、いずれかの添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲内にあると意図される。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】