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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(54)【発明の名称】半固体状態での核酸操作
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230203BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20230203BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230203BHJP
   C40B 40/06 20060101ALN20230203BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6869 Z
C40B40/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535625
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2020085694
(87)【国際公開番号】W WO2021116371
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】19215708.9
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508186875
【氏名又は名称】キージーン ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ハルジンク, レイモンド ヨゼフ マウリヌス
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト, ステファン ジョン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR82
4B063QS10
4B063QS15
4B063QS39
4B063QX04
(57)【要約】
本発明は、核酸を単離する方法に関係し、該核酸はヒドロゲル内で安定化している。ヒドロゲルは、溶解して(dissolved)分子を破壊することなく核酸を放出し得る。好ましいヒドロゲルはアルギネートである。本発明は、核酸をシークエンシングするための方法、並びにヒドロゲル及び核酸を含む組成物と更に関係する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作された長鎖核酸を含むヒドロゲルを取得するための方法であって、
a)核酸を水性ポリマー溶液と組み合わせるステップと、
b)前記ポリマー溶液をゲル化させて、前記核酸を含むヒドロゲルを形成するステップと、
c)前記ヒドロゲル内で前記核酸を操作するステップと
を含み、前記ヒドロゲルが45℃未満の温度で溶解し得る、方法。
【請求項2】
前記核酸が担体に含まれ、並びに好ましくは、前記担体がオルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つであり、並びに好ましくは、オルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つが、ステップc)において溶解されて前記核酸を放出する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水溶液内のポリマーが、
イオン性ポリマー、好ましくはカルボキシペンダント基を有するアニオン性ポリマー;及び
多糖類又はその誘導体、好ましくはウロン酸を含む多糖類又はその誘導体
のうちの少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記多糖類又はその誘導体がアルギネート又はその誘導体であり、好ましくは前記多糖類又はその誘導体がアルギネートである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記担体が、ミトコンドリア、葉緑体、若しくは核であり、好ましくは前記担体が核であり、及び/又は前記担体が植物細胞であり、好ましくは前記植物細胞がプロトプラストである、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記核酸が、DNA分子、好ましくはゲノムDNA分子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記操作された長鎖核酸が、単離された超高分子量(uHMW)核酸であり、及び/又は好ましくは前記操作された長鎖核酸が、ヒドロゲルミクロスフェア内で安定化している、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
シークエンシングライブラリー、好ましくはロングリード・シークエンシングライブラリーを調製するための方法であって、
請求項1~7のいずれか一項で定義される操作された長鎖核酸を含むヒドロゲルを取得するステップと、
前記ヒドロゲル内で前記核酸を改変してシークエンシングライブラリーを取得するステップと
を含む方法。
【請求項9】
請求項8で定義されるシークエンシングライブラリーを取得するステップと、
ヒドロゲルを、好ましくは45℃未満の温度で溶解させるステップと、
前記ライブラリーをシークエンシングするステップと
を含み、
好ましくは前記シークエンシングライブラリーが、前記ヒドロゲルを溶解させる前にシークエンサーフローセルに負荷され、及び好ましくは前記フローセルが、ロングリード・シークエンサー、好ましくはナノポアシークエンサーのフローセルである、
シークエンシング法、好ましくはディープシークエンシング法、より好ましくはロングリード・ディープシークエンシング法。
【請求項10】
前記ヒドロゲルが、
シークエンシングバッファーを添加すること、
1価カチオン、好ましくはナトリウムカチオンを含むバッファーを添加すること、
前記温度を約20℃~40℃から約2℃~10℃まで低下させること、及び
pHを約5~6から約7~8、又は約7~8から約5~6に調整すること
のうちの少なくとも1つにより、溶解する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
核酸含有担体を含むヒドロゲルを取得するための方法であって、
前記核酸含有担体を水性ポリマー溶液と組み合わせるステップと、
前記ポリマー溶液をゲル化させて前記核酸含有担体を含むヒドロゲルを形成するステップと
を含み、前記ヒドロゲルが、請求項1~4のいずれか一項で定義されるヒドロゲルであり、及び好ましくは前記核酸含有担体がオルガネラであり、及び細胞を溶解して前記オルガネラを取得するステップを更に含む方法。
【請求項12】
請求項1~7及び11のいずれか一項に記載の方法により取得可能なヒドロゲル。
【請求項13】
核酸含有担体、オルガネラ、及び操作された長鎖核酸、好ましくは単離されたuHMW核酸のうちの少なくとも1つを含むヒドロゲルであって、請求項1~4のいずれか一項で定義されるヒドロゲルであり、好ましくはアルギネートを含むヒドロゲル。
【請求項14】
ゲノムシークエンシング、
ロングレンジゲノム分析、
トランスクリプトーム分析、
マップに基づくクローニング、
ゲノム物理マッピング、
ラージインサートBACライブラリーの構築、及び
ラージインサートBIBACライブラリーの構築
のうちの少なくとも1つのための、請求項12又は13で定義されるヒドロゲルの使用。
【請求項15】
操作された長鎖核酸を含むヒドロゲルを取得するためのパーツキットであって、
i)請求項1~4のいずれか一項で定義されるヒドロゲルを形成するためのポリマーと、
ii)細胞及び/又はオルガネラ溶解バッファーと、
iii)任意選択的に、シークエンシングライブラリーを調製するための1つ又は複数のコンポーネントであって、好ましくは少なくとも1つ又は複数のアダプターを含むコンポーネントと
を含むパーツキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学の分野、より具体的にはゲノミクスの分野を対象とする。特に、本発明は、シークエンシングの分野、好ましくはロングリード・シークエンシングライブラリーの生成及びシークエンシングを対象とする。
【背景技術】
【0002】
超高分子量(uHMW)DNA及びロングリード・シークエンシングライブラリーを取得する能力は、特にロングレンジゲノム及び遺伝情報が必須である用途(例えば、全ゲノムマッピング及びシークエンシング)にとって益々重要となっている。特に、ロングシークエンスリードが、特に大型及び/又は複雑なゲノムを内包する種について、新規ゲノムアセンブリの質を有意に改善することが明白となった。それに加えて、ロングリード・シークエンシング技術は、ロングリピート、倍数性、及びハプロタイプを解明する可能性を秘めており、またCNV検出を通じて複雑な形質と関連する遺伝要素の特定を促進する。
【0003】
今日、ロングリード・シークエンシング技術は、サイズ数百キロベースのリード(read)を生み出すことが可能であり、リード長はメガベースサイズを超える可能性がある。従って、DNA分子の長さが、(例えば、ナノポアに基づく)ロングリード・シークエンシング技術のリード長を主に制限する。現行のライブラリー調製プロトコールは、インプットとして溶解した(dissolved)ゲノムDNAを必要とするので、DNA単離がなおも必要である。しかしながら、ゲノムDNAは、水溶液内で取り扱う際にきわめて破断しやすく、その結果、現行の最新DNA単離法及びライブラリー調製プロトコールを使用する場合、ロングリード・シークエンシングからサイズがおよそ100kbよりも長い配列が得られることはほとんどない。
【0004】
最近数年間において、高品質uHMW DNAの単離及び(超)ロングシークエンスリードの生成と関連する課題に対処するために、いくつかの新構想が世界的に検討されている。いくつかのこれらの新構想から、商品化された技術がすでに生み出されており、またその他の技術も現在開発中又は商品化用に準備中である。例として、ボレアルゲノミクス(Boreal Genomics)社及びセージサイエンス(Sage Science)社のuHMW DNA単離及び精製システム、サーキュロミクス(Circulomics)社及びエブロゲン(Evrogen)社のuHMW DNA単離及び精製キット、及びオックスフォードナノポアテクノロジーズ(Oxford Nanopore Technologies)社の自動化されたDNA単離及びライブラリー調製システム(すなわち、Voltrax)が挙げられる。これらの開発にもかかわらず、ロングリード・シークエンシング法からサイズがおよそ100kbよりも長い配列が得られることは現在のところほとんどなく、またメガベースサイズのリードが優位を占める配列統計量への展望はいまだ開けていない。現在利用可能なシークエンシング法は、水溶液中に溶解した(dissolved)DNA分子の単離及び/又は操作(とりわけ、ライブラリー合成)に主に立脚する。上記したように、物理化学力に起因して、溶解した(dissolved)DNAは取り扱う際にきわめて剪断されやすく、超長鎖(ultra-long)メガベースサイズのDNA分子を含有するシークエンシングライブラリーの合成を妨害する。
【0005】
ゲノムDNA分子を捕捉するためにアガロースヒドロゲルを使用することが当技術分野においてこれまでに提案されている(例えば、Zhang et al,“Preparation of megabase-sized DNA from a variety of organisms using the nuclei method for advanced genomics research”(2012),Nature protocols,vol.7(3):467-478を参照)。しかしながら、(超)長鎖(long)DNA分子をヒドロゲルから抽出すると、長鎖核酸分子の剪断を引き起こすことが公知である。
【0006】
このDNAの剪断は、例えばDNAを細胞環境から単離した後又は酵素反応を実施した後に、長鎖DNA分子をすすぎ洗いする際にも問題である。
【0007】
従って、例えば核酸を細胞及びオルガネラ分子から精製又は単離する際に、(超)高分子量核酸分子の破断又は剪断を防止する必要性が当技術分野においてなおも存在する。それに加えて、超長鎖核酸分子をシークエンシングするための方法に対する必要性が当技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、下記の番号付きの実施形態において要約され得る:
実施形態1.操作された核酸を含むヒドロゲルを取得する方法であって、
a)核酸を水性ポリマー溶液と組み合わせるステップと、
b)前記ポリマー溶液をゲル化させて、前記核酸を含むヒドロゲルを形成するステップと、
c)前記ヒドロゲル内で前記核酸を操作するステップと
を含み、前記ヒドロゲルが45℃未満の温度で溶解し(dissolved)得る、方法。
【0009】
実施形態2.前記核酸が担体に含まれ、並びに好ましくは、前記担体がオルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つであり、並びに前記オルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つが、ステップcにおいて溶解されて(lysed)前記核酸を放出する、実施形態1に記載の方法。
【0010】
実施形態3.水溶液中のポリマーが、イオン性ポリマー、好ましくはカルボン酸ペンダント基を有するアニオン性ポリマーである、実施形態1又は2に記載の方法。
【0011】
実施形態4.水溶液中のポリマーが、多糖類又はその誘導体であり、好ましくは前記多糖類又はその誘導体がウロン酸を含む、実施形態1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0012】
実施形態5.前記多糖類又はその誘導体が、アルギネート又はその誘導体であり、好ましくは前記多糖類又はその誘導体がアルギネートである、実施形態4に記載の方法。
【0013】
実施形態6.前記担体が、ミトコンドリア、葉緑体、又は核であり、好ましくは前記担体が核である、実施形態2~5のいずれか一項に記載の方法。
【0014】
実施形態7.前記核酸が、DNA分子、好ましくはゲノムDNA分子である、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0015】
実施形態8.前記操作された核酸が、単離された超高分子量(uHMW)核酸である、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
実施形態9.前記細胞が植物細胞であり、好ましくは前記植物細胞がプロトプラストである、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0017】
実施形態10.前記操作された核酸が、ヒドロゲルミクロスフェア内で安定化している、実施形態1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0018】
実施形態11.シークエンシングライブラリー、好ましくはロングリード・シークエンシングライブラリーを調製する方法であって、
実施形態1~10のいずれか一項で定義されるような操作された核酸を含むヒドロゲルを取得するステップと
前記ヒドロゲル内で前記核酸を改変してシークエンシングライブラリーを取得するステップと
を含む方法。
【0019】
実施形態12.
実施形態11で定義されるようなシークエンシングライブラリーを取得するステップと、
前記ヒドロゲルを、好ましくは45℃未満の温度で溶解させる(dissolving)ステップと、
前記ライブラリーをシークエンシングするステップと
を含むシークエンシング法、好ましくはディープシークエンシング法、より好ましくはロングリード・ディープシークエンシング法。
【0020】
実施形態13.前記シークエンシングライブラリーが、前記ヒドロゲルを溶解させる(dissolving)前にシークエンサーフローセルに負荷され、好ましくは前記フローセルが、ロングリード・シークエンサーのフローセルである、実施形態12に記載の方法。
【0021】
実施形態14.前記シークエンサーが、ナノポアシークエンサーである、実施形態13に記載の方法。
【0022】
実施形態15.前記ヒドロゲルが、
シークエンシングバッファーを添加すること、
1価のカチオン、好ましくはナトリウムカチオンを含むバッファーを添加すること、
前記温度を約20℃~40℃から約2℃~10℃に低下させること、及び
pHを約5~6から約7~8、又は約7~8から約5~6に調整すること
のうちの少なくとも1つにより溶解する(dissolved)、実施形態12~14のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
実施形態16.核酸含有担体を含むヒドロゲルを取得するための方法であって、
前記核酸含有担体を水性ポリマー溶液と組み合わせるステップと、
前記ポリマー溶液をゲル化させて、前記核酸含有担体を含むヒドロゲルを形成するステップと
を含み、
前記ヒドロゲルが、実施形態1~5のいずれか一項で定義されるようなヒドロゲルである、方法。
【0024】
実施形態17.前記核酸含有担体がオルガネラであり、及び細胞を溶解して(lysing)前記オルガネラを取得するステップを更に含む、実施形態16に記載の方法。
【0025】
実施形態18.実施形態1~10、16、及び17のいずれか一項に記載の方法により取得可能なヒドロゲル。
【0026】
実施形態19.核酸含有担体、オルガネラ、及び操作された核酸のうちの少なくとも1つ、好ましくは単離されたuHMW核酸を含むヒドロゲルであって、実施形態1~5のいずれか一項で定義されるようなヒドロゲル。
【0027】
実施形態20.前記ヒドロゲルが、アルギネートを含む、実施形態19に記載のヒドロゲル。
【0028】
実施形態21.
ゲノムシークエンシング、
ロングレンジゲノム分析、
トランスクリプトーム分析、
マップに基づくクローニング、
ゲノム物理マッピング、
ラージインサートBACライブラリーの構築、及び
ラージインサートBIBACライブラリーの構築
のうちの少なくとも1つのための、実施形態18~20のいずれか一項で定義されるようなヒドロゲルの使用。
【0029】
実施形態22.操作された核酸を含むヒドロゲルを取得するためのパーツキットであって、
i)実施形態1~5のいずれか一項で定義されるようなヒドロゲルを形成するためのポリマーと、
ii)細胞及び/又はオルガネラ溶解(lysis)バッファーと、
iii)任意選択的に、シークエンシングライブラリーを調製するための1つ又は複数のコンポーネントと
を含むパーツキット。
【0030】
実施形態23.シークエンシングライブラリーを調製するための前記コンポーネントが、少なくとも1つ以上のアダプターを含む、実施形態22に記載のパーツキット。
【0031】
定義
本発明の方法、組成物、使用、及びその他の態様に関係する様々な用語が、本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて使用される。そのような用語には、別途表示されない限り、本発明が関係する技術分野におけるその通常の意味が付与される。その他の特別に定義される用語は、本明細書に提示される定義と整合するように解釈される。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料が、本発明をテストするための実践において使用可能であるものの、好ましい材料及び方法が本明細書に記載されている。
【0032】
本発明の方法で使用される従来技術を実施する方法は、当業者にとって明白であろう。分子生物学、生化学、計算化学、細胞培養物、組換えDNA、バイオインフォマティクス、ゲノミクス、シークエンシング、及び関連する分野における従来技術の実践法は、当業者に周知されており、また例えば、下記の引用文献:Sambrook et al.Molecular Cloning.A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;Ausubel et al..Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,1987、及び定期的更新版;並びにthe series Methods in Enzymology,Academic Press,San Diegoにおいて議論されている。
【0033】
「A」、「an」、及び「the」:これら単数形の用語は、記載内容が別途明確に規定しない限り複数形の指示物を含む。従って、例えば、「a cell(一細胞)」と記載する場合、2つ以上の細胞の組合せ等が含まれる。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「約」が、小さな変動を記載及び説明するのに使用される。例えば、該用語は、±10%以下、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下等を指し得る。更に、量、比、及びその他の数値は、範囲形式で本明細書に提示される場合がある。そのような範囲形式は、利便性及び簡便性のために使用されると理解され、また範囲の限定として明示的に特定される数値が含まれるだけでなく、当該範囲内に包含されるすべての個々の数値又は部分範囲も、各数値及び部分範囲が明示的に特定されるかのように含まれると柔軟に理解すべきである。例えば、約1~約200の範囲内の比には、約1及び約200の明示的に列挙した限界値が含まれるだけでなく、個々の比、例えば約2、約3、及び約4等、及び部分範囲、例えば約10~約50、約20~約100等も含まれると理解すべきである。
【0035】
「及び/又は」:用語「及び/又は」とは、記載されたいくつかのケースのうちの1つ又は複数が、単独で、又は記載されたいくつかのケースの少なくとも1つ、最大記載されたいくつかのケースのすべてと組み合わさって生じ得る状況を指す。
【0036】
「~を含むこと(comprising)」:この用語は、包含的及び非限定的であり、非排他的であると解釈される。特に、該用語及びその変形形態は、所定の特性、ステップ、又はコンポーネントが含まれることを意味する。これらの用語は、その他の特性、ステップ、又はコンポーネントの存在を除外するとは解釈されない。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「アダプター」は、他の核酸、例えば二本鎖DNA分子の一方又は両方の鎖の末端部に連結し得る、好ましくはライゲートし得る一本鎖、二本鎖、部分的に二本鎖、Y字形、又はヘアピン核酸分子であり、また好ましくは限定された長さ、例えば長さ約10~約200、又は約10~約100塩基、又は約10~約80、又は約10~約50、又は約10~約30塩基対を有し、好ましくは化学的に合成される。アダプターの二本鎖構造は、互いに対をなす塩基である2つの異なるオリゴヌクレオチド分子により、又は単一のオリゴヌクレオチド鎖のヘアピン構造により形成され得る。明白なように、アダプターの連結可能な末端部は、制限酵素及び/又はプログラム可能なヌクレアーゼによる切断により生み出されたオーバーハングに適合性を有するように、及び任意選択的にライゲート可能なように設計され得る、非テンプレート伸長反応の付加(例えば、3’-Aの付加)後に創出されたオーバーハングに適合性を有するように設計され得る、又は平滑末端を有し得る。
【0038】
核酸又は核酸反応と関連して使用される「増幅」とは、特定の核酸、例えば標的核酸又はタグ化された核酸等のコピーを作るin vitro法を指す。核酸を増幅する非常に多くの方法が当技術分野において公知であり、また増幅反応には、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、ストランド置換増幅反応、ローリングサークル増幅反応、転写媒介式の増幅法、例えばNASBA等(例えば、米国特許第5,409,818号)、ループ媒介式の増幅法(例えば米国特許第6,410,278号に記載されるような、例えばループ形成配列を使用する「LAMP」増幅法)、及び等温増幅反応が含まれる。増幅される核酸は、改変されたDNA及び/又はRNAを含む、DNA若しくはRNA、又はDNA及びRNAの混合物を含む、それらからなる、又はそれらに由来するDNAであり得る。核酸分子(単数)又は核酸分子(複数)の増幅に起因する生成物(すなわち、「増幅産物」)は、開始核酸がDNA、RNAであるか、又はその両方であるかを問わず、DNA若しくはRNA、又はDNA及びRNAヌクレオシド若しくはヌクレオチドの両方の混合物であり得るか、或いは改変されたDNA又はRNAヌクレオシド又はヌクレオチドを含み得る。
【0039】
「コピー」は、特定の配列に対して完全な配列相補性又は完全な配列同一性を有する配列であり得るが、但しこれに限定されない。或いは、コピーは、この特定の配列に対して完全な配列相補性又は同一性を必ずしも有さず、例えばある程度の配列変動が許容される。例えば、コピーは、ヌクレオチドアナログ、例えばデオキシイノシン又はデオキシウリジン等、意図的な配列変化(例えば、特定の配列に対してハイブリダイズ可能であるが、しかし相補的ではない配列を含むプライマーを通じて導入される配列変化等)、及び/又は増幅法期間中に生ずる配列エラーを含み得る。
【0040】
用語「相補性」は、本明細書においては、完全に相補的な鎖(例えば、第二又は逆の鎖)に対する配列の配列同一性として定義される。例えば、100%相補的(又は完全に相補的)である配列は、本明細書では、相補鎖と100%の配列同一性を有すると理解され、また例えば80%相補的である配列は、本明細書では、(完全に)相補的な鎖に対して80%の配列同一性を有すると理解される。
【0041】
「コンストラクト」又は「核酸コンストラクト」又は「ベクター」:この用語は、組換えDNA技術の使用に起因する人工核酸分子(宿主細胞中に外因性DNAを送達するのに使用可能であり、多くの場合、コンストラクトに含まれるDNA領域を宿主細胞内で発現させる目的を有する)を指す。コンストラクトのベクターバックボーンは、例えば(キメラ)遺伝子が組み込まれているプラスミドであり得る、又は適する転写制御配列(例えば、(誘導可能な)プロモーター)がすでに存在する場合には、所望のヌクレオチド配列(例えば、コーディング配列)のみが転写制御配列の下流に組み込まれる。ベクターは、分子クローニングにおけるその使用を促進する更なる遺伝要素、例えば選択マーカー、複数のクローニング部位等を含み得る。
【0042】
用語「二本鎖(double-strand)」及び「二重鎖(duplex)」は、本明細書で使用される場合、塩基対をなす、すなわち共にハイブリダイズする2つの相補的なポリヌクレオチドについて記載する。相補的なヌクレオチド鎖も、逆相補体として当技術分野において公知である。
【0043】
用語「有効量」とは、本明細書で使用される場合、所望の生物学的効果を誘発するのに十分である生物学的に活性な薬剤の量を指す。例えば、いくつかの実施形態では、エキソヌクレアーゼの有効量は、保護されていない核酸の切断を誘発するのに十分であるエキソヌクレアーゼの量を意味し得る。当業者により認識されるように、薬剤の有効量は、様々な要因、例えば使用される薬剤、薬剤が使用される条件、及び所望の生物学的効果、例えば検出されるヌクレアーゼ切断の程度等に応じて変化し得る。
【0044】
「代表的な」:この用語は、「例、事例、又は例証としての役目を果たすこと」を意味し、また本明細書で開示されるその他の構成を排除すると解釈してはならない。
【0045】
「発現」:この用語は、DNA領域(適する制御領域、特にプロモーターと作動可能にリンクしている)が、RNAに転写され、ひいてはタンパク質又はペプチドに翻訳され得るプロセスを指す。
【0046】
「同一性」及び「類似性」は、公知の方法により容易に計算され得る。「配列同一性」及び「配列類似性」は、2つの配列の長さに応じてグローバル又はローカルアライメントアルゴリズムを使用して、2つのペプチド又は2つのヌクレオチド配列をアライメントすることにより決定可能である。類似した長さの配列は、配列を全長にわたり最適にアライメントするグローバルアライメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch法)を使用して好ましくはアライメントされる一方、実質的に異なる長さの配列は、ローカルアライメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman法)を使用して好ましくはアライメントされる。配列が(例えば、デフォルトパラメーターを使用しながら、プログラムGAP又はBESTFITにより最適にアライメントされたとき)、少なくともある最低限度のパーセントの配列同一性(下記で定義される通り)を共有するとき、配列は「実質的に同一」又は「本質的に類似」と呼ぶことができる。GAPは、一致する数を最大化し、且つギャップの数を最低限に抑えながら、2つの配列をその全長(完全長)にわたりアライメントするために、Needleman及びWunschグローバルアライメントアルゴリズムを使用する。グローバルアライメントは、2つの配列が類似した長さを有するとき、配列同一性を決定するのに好適に使用される。一般的に、ギャップクリエイションペナルティ=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)、及びギャップエクステンションペナルティ=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)といったGAPデフォルトパラメーターが使用される。ヌクレオチドの場合、使用されるデフォルトスコアリングマトリックスは、nwsgapdnaであり、またタンパク質の場合、デフォルトスコアリングマトリックスは、Blosum62である(Henikoff & Henikoff、1992、PNAS 89、915-919)。配列同一性の割合(%)に関する配列アラインメント及びスコアは、コンピュータープログラム、例えばアクセルリル(Accelrys Inc.)社、9685 Scranton Road、San Diego、CA92121-3752、米国から入手可能なGCG Wisconsinパッケージ、バージョン10.3等を使用して、又は上記GAPの場合と同じパラメーターを使用しながら、若しくはデフォルト設定(「Needle」及び「water」の両方、並びにタンパク質及びDNAアライメントの両方について、デフォルトギャップオープニングペナルティは10.0であり、及びデフォルトギャップエクステンションペナルティは0.5であり;デフォルトスコアリングマトリックスは、タンパク質についてBlosum62であり、及びDNAについてDNAFullである)を使用しながら、オープンソースソフトウェア、例えばEmbossWINバージョン2.10.0内のプログラム「needle」(グローバルNeedleman Wunschアルゴリズムを使用)、又は「water」(ローカルSmith Watermanアルゴリズムを使用)等を使用して決定され得る。配列が、実質的に異なる全体長を有する場合、ローカルアライメント、例えばSmith Watermanアルゴリズムを使用するもの等が好ましい。
【0047】
或いは、類似性又は同一性の割合(%)は、FASTA、BLAST等のアルゴリズムを使用しながら、公開データベースに照らして検索することにより決定され得る。従って、本発明の核酸及びタンパク質配列は、公開データベースに照らして検索を実施して、例えばその他のファミリーメンバー又は関連する配列を同定するための「問い合わせ配列」として更に使用することができる。そのような検索は、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のBLASTn及びBLASTxプログラム(バージョン2.0)を使用して実施可能である。本発明の核酸分子と相同であるヌクレオチド配列を取得するために、BLASTヌクレオチド検索が、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施可能である。本発明のタンパク質分子と相同であるアミノ酸配列を取得するために、BLASTタンパク質検索が、BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施可能である。比較目的でギャップ付きアライメントを取得するためには、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されるように、ギャップ付きBLASTが利用可能である。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、BLASTx及びBLASTn)のデフォルトパラメーターが使用可能である。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/の国立生物工学情報センターのホームページを参照。
【0048】
用語「ヌクレオチド」には、グアニン、シトシン、アデニン、及びチミン(それぞれG、C、A、及びT)を含む自然発生的なヌクレオチドが含まれるが、但しこれらに限定されない。用語「ヌクレオチド」には、公知のプリン及びピリミジン塩基だけでなく、改変されたその他の複素環式塩基も含有する部分が含まれるように更に意図される。そのような改変体として、メチル化されたプリン若しくはピリミジン、アシル化されたプリン若しくはピリミジン、アルキル化されたリボース、又はその他の複素環が挙げられる。それに加えて、用語「ヌクレオチド」には、ハプテン又は蛍光標識を含有する部分が含まれ、また従来のリボース及びデオキシリボース糖だけでなく、その他の糖もやはり含まれる場合もある。改変されたヌクレオシド又はヌクレオチドには、例えば、いくつかのヒドロキシル基のうちの1つ若しくは複数がハロゲン原子若しくは脂肪族基と置換され、又はエーテル、アミン等として機能化されている、糖部分の改変も含まれる。
【0049】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「核酸分子」は、本明細書ではヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドから構成される、任意の長さ、例えば約2塩基を上回る、約10塩基を上回る、約100塩基を上回る、約500塩基を上回る、1000塩基を上回る、最大約10,000又はそれを上回る塩基からなるポリマーを記載するのに交換可能に使用され、また酵素的に又は合成により生成され得る(例えば、米国特許第5,948,902号及びその中で引用された参考資料に記載されるようなPNA)。核酸は、2つの自然発生的な核酸が、例えばワトソン・クリック塩基対形成相互作用に関与し得るのと類似して、自然発生的な核酸と配列特異的にハイブリダイズし得る。それに加えて、核酸及びポリヌクレオチドは、細胞、組織、及び/又は体液から単離され得る(及び任意選択的にその後断片化され得る)。核酸は、例えば、ゲノムDNA(gDNA)、ミトコンドリア若しくは葉緑体DNA、RNA、例えばmRNA等、ライブラリー由来のDNA、及び/又はライブラリー由来のRNAであり得る。本発明で使用される核酸は、例えば、細胞、組織、生検、又は体液から単離され得る。
【0050】
本発明の方法で使用される核酸は、任意の起源、例えば全ゲノム、染色体の集合、単一の染色体、1つ若しくは複数の染色体、又は転写された遺伝子に由来する1つ若しくは複数の領域に由来し得るが、また生物起源から、又はラボ起源、例えば核酸ライブラリーから直接単離され得る。
【0051】
本発明の方法で使用するための核酸は、DNA、RNA、BNA(架橋型核酸)、LNA(ロックド核酸)、PNA(ペプチド核酸)、モルホリノ核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、エピジェネティックに改変されたヌクレオチド、例えばメチル化されたDNA等、並びにその模倣体及び組合せを含む、但しこれらに限定されない、天然及び非天然ヌクレオチドの両方、人工的又は非標準的なヌクレオチドを含み得る。
【0052】
用語「目的とする配列」、「目的とする標的ヌクレオチド配列」、及び「標的配列」は、本明細書では交換可能に使用され、好ましくは細胞内に存在する任意の遺伝子配列、例えば遺伝子、遺伝子の一部分、又は遺伝子内若しくはそれに隣接したノンコーディング配列等が挙げられるが、但しこれらに限定されない。目的とする配列は、染色体、エピソーム、オルガネラゲノム、例えばミトコンドリア若しくは葉緑体ゲノム等、又は遺伝物質の本体とは無関係に存在し得る遺伝物質、例えば感染性ウイルスゲノム、プラスミド、エピソーム、トランスポゾン等内に存在し得る。目的とする配列は、遺伝子のコーディング配列内、転写されたノンコーディング配列、例えばリーダー配列、トレーラー配列、又はイントロン等内にあり得る。前記目的とする核酸配列は、二本鎖又は一本鎖核酸内に存在し得る。目的とする配列は、核酸、例えば遺伝子、遺伝子複合体、遺伝子座、偽遺伝子、制御領域、きわめて反復性の領域、多型領域、又はその一部分に含まれる任意の配列であり得る。目的とする配列は、表現型又は疾患を示唆する遺伝的又はエピジェネティックな変化を含む領域でもあり得る。目的とする配列は、多型、例えばSNPを有し又は有すると疑われる配列であり得るが、但しそれに限定されない。
【0053】
「植物」とは、植物全体又は植物の一部分、例えば、植物から取得可能な細胞、プロトプラスト、カルス、組織、器官等(例えば、胚、花粉、胚珠、種子、配偶子、根、葉、花、花芽、葯、果実等)、並びにこれらのいずれかの派生体、及び自家受粉又は交配による植物由来の子孫を指す。植物の非限定的な例として、作物植物及び培養植物、例えばアフリカンエッグプラント(African eggplant)、ネギ類、アーティチョーク、アスパラガス、大麦、ビート、ピーマン、ゴーヤー、ホオズキ、ヒョウタン(bottle gourd)、キャベツ、キャノーラ、ニンジン、キャッサバ、カリフラワー、セロリ、チコリー、インゲンマメ、コーンサラダ(corn salad)、綿花、キュウリ、ナス、エンダイブ、ウイキョウ、ガーキン、ブドウ、トウガラシ、レタス、トウモロコシ、メロン、アブラナ、オクラ、パセリ、パースニップ、ペピーノ、コショウ、ジャガイモ、カボチャ、ラディッシュ、米、リッジガード(ridge gourd)、ロケット、ライ麦、カラスウリ、ソルガム、ホウレンソウ、ヘチマ(sponge gourd)、カボチャ、サトウダイコン、サトウキビ、ヒマワリ、トマティーヨ、トマト、トマト台木、アブラナ属の野菜、スイカ、トウガン、小麦、及びズッキーニ等が挙げられる。
【0054】
「植物細胞(複数可)」として、単離物内、又は組織、器官、若しくは生物内のプロトプラスト、配偶子、懸濁培養物、小胞子、花粉粒等が挙げられる。植物細胞は、例えば多細胞構造、例えばカルス、分裂組織、植物器官、又は外植片等の一部分であり得る。
【0055】
「エンドヌクレアーゼ」は、その標的又は認識部位と結合すると、二重鎖DNAの少なくとも一方の鎖又はRNA分子の鎖を加水分解する酵素である。エンドヌクレアーゼは、本明細書においては部位特異的エンドヌクレアーゼとして理解され、及び用語「エンドヌクレアーゼ」及び「ヌクレアーゼ」は、本明細書において交換可能に使用される。制限エンドヌクレアーゼは、本明細書においては、DNAに二本鎖切断を導入すると同時に、二重鎖の両方の鎖を加水分解するエンドヌクレアーゼとして理解される。「ニッキング」エンドヌクレアーゼは、二重鎖の一方の鎖のみを加水分解して、切断ではなくニッキングされたDNA分子を生成するエンドヌクレアーゼである。
【0056】
「エキソヌクレアーゼ」は、本明細書においては、1つ又は複数のヌクレオチドをポリヌクレオチドの末端部(エキソ)から切断する任意の酵素として定義される。
【0057】
「複雑性を低下させること」又は「複雑性の低下」とは、本明細書においては、複雑な核酸サンプル、例えばゲノムDNAに由来するサンプル、単離されたRNAサンプル等の低下として理解される。複雑性の低下は、複雑な出発物質に含まれる1つ若しくは複数の特定の標的配列又は標的核酸断片(本明細書では標的断片とも命名される)の富化、及び/又はサンプルのサブセットの生成を引き起こし、その場合、サブセットは、複雑な出発物質内に含まれる1つ若しくは複数の特定の標的配列又は断片を含む又はそれから構成される一方、非標的配列又は断片の量は、出発物質内、すなわち複雑性が低下する前の非標的配列又は断片の量と比較して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%低下する。複雑性の低下は、更なる分析又は方法ステップ、例えば増幅、バーコーディング、シークエンシング、エピジェネティックな変化の決定等の前に一般的に実施される。好ましくは、複雑性の低下は、再現性のある複雑性低下であり、それは、同一のサンプルについて同一の方法を使用して複雑性を低下させたとき、ランダムな複雑性低下とは反対に、同一又は少なくとも同等のサブセットが得られることを意味する。複雑性低下法の例として、例えば、AFLP(登録商標)(Keygene N.V.、オランダ;例えば、欧州特許第0 534 858号を参照)、任意プライムPCR増幅法、キャプチャープローブハイブリダイゼーション、Dong(例えば、国際公開第03/012118号、同第00/24939号を参照)及びインデックスリンキング(Unrau P.and Deugau K.V.(1994)Gene 145:163-169)により記載される方法、国際公開第2006/137733号;同第2007/037678号;同第2007/073165号;同第2007/073171号、米国特許出願公開第2005/260628号、国際公開第03/010328号、米国特許出願公開第2004/10153号に記載されている方法、ゲノムポーショニング(genome portioning)(例えば、国際公開第2004/022758号を参照)、遺伝子発現連鎖解析法(SAGE;例えば、Velculescu et al.,1995、上記参照、及びMatsumura et al.,1999,The Plant Journal,vol.20(6):719-726を参照)、及びSAGEの改変法(例えば、Powell,1998,Nucleic Acids Research,vol.26(14):3445-3446;及びKenzelmann and Muhlemann,1999,Nucleic Acids Research,vol.27(3):917-918を参照)、MicroSAGE法(例えば、Datson et al.,1999,Nucleic Acids Research,vol.27(5):1300-1307を参照)、超並列シグネチャーシークエンシング(Massively Parallel Signature Seguencing)(MPSS;例えば、Brenner et al.,2000,Nature Biotechnology,vol.18:630-634、及びBrenner et al.,2000,PNAS,vol.97(4):1665-1670を参照)、自己減算型cDNAライブラリー(self-subtracted cDNA libraries)(Laveder et al.,2002,Nucleic Acids Research,vol.30(9):e38)、リアルタイムマルチプレックスライゲーション依存性プローブ増幅法(Real-Time Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)(RT-MLPA;例えば、Eldering et al.,2003,vol.31 (23):el53を参照)、高カバー率発現プロファイリング法(High Coverage Expression Profiling)(HiCEP;例えば、Fukumura et al.,2003,Nucleic Acids Research,vol.31(16):e94を参照)、Rothら(Roth et al.,2004,Nature Biotechnology, vol.22(4):418-426)で開示されるようなユニバーサルマイクロアレイシステム、トランスクリプトーム減算法(transcriptome subtraction method)(例えば、Li et al.,Nucleic Acids Research,vol.33(16):el36を参照)、及びフラグメントディスプレイ法(例えば、Metsis et al.,2004,Nucleic Acids Research,vol.32(16):el27を参照)が挙げられる。
【0058】
「配列」又は「ヌクレオチド配列」:この用語は、核酸の又は核酸内のヌクレオチドの順番を指す。換言すれば、核酸内のヌクレオチドのあらゆる順番が、配列又は核酸配列と呼ばれ得る。例えば、標的配列は、DNA二重鎖のうちの一本の鎖に含まれるヌクレオチドの順番である。
【0059】
用語「シークエンシング」とは、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドの少なくとも10個の連続したヌクレオチドの同一性(例えば、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、又は少なくとも200個、又はそれを上回る連続したヌクレオチドの同一性)が取得される方法を指す。用語「次世代シークエンシング」とは、例えばイルミナ(Illumina)社、ライフテクノロジーズ(Life technologies)社、パックバイオ(PacBio)社、及びロッシュ(Roche)社等により現在採用されているような、いわゆる並列化された合成によるシークエンシング法、又はライゲーションによるシークエンシング法プラットフォームを指す。次世代シークエンシング法には、ナノポアシークエンシング法、例えばオックスフォードナノポアテクノロジーズ社により商品化されている方法、又は電子検出に基づく方法、例えばライフテクノロジーズ社により商品化されているIon Torrent技術等も含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の代表的な実施形態を示す図である。(A)ヒドロゲルビーズ中への核のカプセル化と後続する核の溶解(lysis)、及びヒドロゲルのゲル化後の核酸の精製を図示する実施形態。ステップ1)生物学的担体、例えば細胞又は核等内の核酸、2)生物学的担体のヒドロゲル中へのカプセル化、3)ヒドロゲルの可逆的ゲル化及び生物学的担体の溶解(lysis)、4)核酸の精製及び操作(例えば、配列ライブラリーの調製)、5)核酸の脱ゲル化及び回収、6)核酸の更なる処理(例えば、シークエンシング)(B)別の代表的な実施形態では、核酸(1)はヒドロゲル中に直接カプセル化することができ(2)、ポリマーの可逆的ゲル化及び核酸の操作が後続する(3)。ステップ4)は、核酸の脱ゲル化及び回収であり、並びに5)核酸の更なる処理である。(C)核酸は、細胞又はオルガネラ以外の担体、例えば人工ビーズ又はスキャフォールド内で又はそれともやはり会合し得る。ステップ1)生体細胞又はオルガネラ以外の担体中への又はそれに対する核酸の提示、2)ヒドロゲル内への核酸-担体複合体のカプセル化、3)ヒドロゲルの可逆的ゲル化及び核酸の操作、4)核酸の脱ゲル化及び回収、並びに5)核酸の更なる処理。表示の代表的な実施形態において、トラップされた核酸は、半固体状態で(酵素的に)操作可能であり(例えば、ライブラリーの調製)、ヒドロゲルが脱ゲル化されたとき又はその後に更なる処理が後続する。配列ライブラリーを含有するミクロスフェアは、フローセル内に直接「負荷」可能であり、それに粒子の溶解(dissolving)が後続する。放出されたライブラリーDNA分子は、シークエンシングプロセスにアクセス可能となる。
図2】実施例1及び2で半固体状態ナノポアライブラリーを調製する際に使用したいくつかの異なるバッファーにおいて、ヒドロゲルビーズからの拡散により失われたゲノムDNAの割合(%)を示す図である。ナノポアライブラリー調製インキュベーション期間中に使用され、その後廃棄される各バッファー、すなわちDNA修復及び末端部調製前に洗浄用として使用されたバッファー溶液(1)、DNA修復及び末端部調製用の酵素を含むバッファー(2)、DNA修復及び末端部調製後の洗浄用のMQ(3)、ライゲーション前の洗浄用ライゲーションバッファー(4)、アダプターライゲーション用のリガーゼ及びアダプターを含むライゲーションバッファー(5)、及び平衡化用の溶出バッファー(6)から回収されたDNAの相対的な量を示す。カプセル化に使用されたインプットDNAの量を100%に設定する。すべての分画において、及びすべての実施例について、水溶液中に失われたDNAがほとんどないことから、ライブラリーの調製全体を通じて、カプセル化されたDNAのヒドロゲルから溶液中への拡散はなかった、又は非常に低レベルであったことを示しており、アダプターライゲーションのステップ期間中の喪失割合(%)が最高であったが(挿入されたグラフを参照)、しかしながら、サイズ測定より、これは未ライゲートアダプターDNAであることが明らかとなった(データ図示せず)。
図3】参照ゲノムに対してマップ化したすべてのリードのリード長分布を示す図である。x軸は、参照に対してマップ化する個々のリードすべてを示す。y軸は、リード長を塩基数で示す。
図4】核酸含有担体を含むヒドロゲルミクロスフェアのマイクロ流体に基づく合成の概略図を示す図であり、第1の反応物質は核酸含有担体を含み、及び第2の反応物質は水性ポリマー溶液を含む。任意選択的な第3の反応物質はゲル化誘発物質を含み得る。1A)分散段階、例えば、細胞、オルガネラ、核酸、生体分子、1B)分散段階、水性ポリマー溶液、2)連続段階、例えばオイル-界面活性剤エマルジョン、3)収集段階。
図5】uHMWゲノム植物DNAのパルスフィールドゲル電気泳動を示す図である。A)レーン1:サトウダイコン核を溶解(lysis)した後に単離し、水性環境において更に精製した核DNA。レーン2:染色体のサイズをkbで表した、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)染色体のパルスフィールドマーカー。個々の断片の分子量をゲルに隣接して示す。B)レーン1:サッカロマイセス・セレビシエ染色体のパルスフィールドマーカー。レーン2、4、及び5:アルギネート球体内でカプセル化及び溶解された(lysed)サトウダイコンの核に由来するゲノムDNA。レーン3:アルギネート球体内でカプセル化及び溶解された(lysed)インパチェンスの核に由来するゲノムDNA。レーン2及び3では、uHMW DNAを含有するアルギネート球体を、電気泳動前にパルスフィールドゲル内に直接負荷した。レーン4及び5では、uHMW DNAを、ウェルにクエン酸ナトリウムを添加することによりアルギネート球体から放出させた。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明者らは、核酸分子の剪断を最低限に抑え、且つ考え得る酵素的操作ステップの有効性を高めつつ、細胞及び/又はオルガネラから好ましくは単離された、操作された核酸分子を取得するための新規方法を発見した。本明細書において詳記される方法は、水溶液中でDNAを単離及び操作する必要性を回避する。本発明の代表的な実施形態を図1に示す。本発明は、ヒドロゲル粒子内での(長い)核酸の安定化に基づく(例えば、図1Bに例示する)。1つの実施形態(例えば、図1Aに例示する)では、本発明は、架橋したヒドロゲル粒子内にカプセル化された組織、細胞、又はオルガネラから核酸を抽出し、任意選択的に操作すること(例えば、ライブラリーの調製)と関係する。組織、細胞、又はオルガネラの溶解(lysis)後、遊離したuHMW DNAは、ヒドロゲルマトリックスにおいてトラップされることとなり、(酵素的)操作、例えば配列ライブラリーの調製等のためにアクセス可能となる。最終的に、操作されたDNA(例えば、配列ライブラリー)を含有するヒドロゲルは、更に処理可能である(例えば、ナノポアフローセル内への負荷)。すべてのステップは、物理的に固定されたDNAにおいて実施されるので、DNA(又はライブラリー)に対するダメージの影響は、伝統的な溶液内の方式に基づく方法と比較してかなり低い。更に、DNAの固定化は、汚染物質及び酵素からの分子のより効率的な精製を可能にする。しかしながら、本発明は生物学的担体に限定されない。図1Cに例示するように、長い核酸分子を安定化及び/又は沈殿させる非生物学的担体も、同様にカプセル化された状態になり得る。放出された核酸分子は、その後本発明のヒドロゲルにおいて精製及び/又は操作され得る。
【0062】
従って第1の態様では、本発明は、操作された核酸分子を含むヒドロゲルを取得するための方法であって、
a)核酸を水性ポリマー溶液と組み合わせるステップと、
b)前記ポリマー溶液をゲル化させて、前記核酸を含むヒドロゲルを形成するステップと、
c)前記ヒドロゲル内で前記核酸を操作するステップと
を含む方法と関係する。
【0063】
ステップcの「~を操作するステップ」は、本明細書では、洗浄、単離、又は放出、酵素的改変(例えば、分解、断片化、二本鎖切断又は一本鎖切断の導入、及び脱アミノ化等、但しこれらに限定されない)、タグ化、アダプターライゲーション、伸張、末端修復、平滑末端の創出、増幅、及び任意のこれらの組合せのうちの少なくとも1つとして理解される。ヒドロゲルは、好ましくは本明細書で定義されるようなヒドロゲルである。
【0064】
好ましくは、核酸は、担体に含まれ又はそれに連結しており、本明細書では、核酸を含む担体又は核酸含有担体として表示される。
従って、一実施形態では、本発明は、操作された核酸分子を含むヒドロゲルを取得するための方法であって、
a)核酸含有担体を水性ポリマー溶液と組み合わせるステップと、
b)前記ポリマー溶液をゲル化させて、前記核酸含有担体を含むヒドロゲルを形成するステップと、
c)前記ヒドロゲル内で前記核酸含有担体の核酸を操作するステップと
を含む方法を提供する。
【0065】
ヒドロゲルは、好ましくは本明細書で定義されるようなヒドロゲルである。核酸含有担体は、天然又は非天然の核酸含有担体、すなわち本明細書において更に詳記されるような自然界で生ずる担体又は人工的な核酸含有担体であり得る。考え得る天然の核酸含有担体は、細胞及び/又はオルガネラである。
【0066】
核酸含有担体が細胞である場合、方法は、細胞を溶解して(lysing)オルガネラを取得するステップを更に含み得る。細胞は、オルガネラを水性ポリマー溶液と組み合わせる前に溶解され(lysed)得る。或いは、細胞は、細胞を水性ポリマー溶液と組み合わせた後、及びポリマー溶液をゲル化させる前に溶解(lysed)され得る。或いは、細胞は、ポリマー溶液をゲル化させてオルガネラを含むヒドロゲルを形成した後に溶解され(lysed)得る。好ましくは、オルガネラを含むヒドロゲルは、無処理の細胞を含まない又は実質的に含まない。
【0067】
担体が細胞である場合、操作ステップcは、好ましくは担体から核酸を放出させ、これにより単離された核酸を含むヒドロゲルを取得するステップである。本発明は、従って単離された核酸を含むヒドロゲルを取得するための方法にも関係する。用語「単離された」及び「抽出された」は、本明細書では交換可能に使用可能であり、また担体からの、任意選択的にその細胞内の場所からの核酸の放出を指す。従って、本発明は、単離された核酸を含むヒドロゲルを取得するための方法であって、
a)核酸を含む担体を水性ポリマー溶液と組み合わせるステップと
b)前記ポリマー溶液をゲル化させて、前記担体を含むヒドロゲルを形成するステップと
c)前記担体から前記核酸を放出させて、単離された核酸を含むヒドロゲルを取得するステップと
を含む方法も提供する。
【0068】
好ましくは、ヒドロゲルは、45℃未満の温度で溶解し(dissolved)得る。
一実施形態では、担体はオルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つである。核酸は、好ましくは細胞又はオルガネラから単離される。オルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つは、核酸を放出するために溶解(lysed)され得る。従って本実施形態では、方法は、
a)核酸を含むオルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つを、水性ポリマー溶液と組み合わせるステップと、
b)前記ポリマー溶液をゲル化させて、オルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つを含むヒドロゲルを形成するステップと、
c)前記オルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つを溶解して(lysing)、単離された核酸を含むヒドロゲルを取得するステップと
を好ましくは含む。
【0069】
好ましくは、核酸はヒドロゲル内で安定化している。用語「安定化」及び「固定化」は、本明細書では交換可能に使用可能である。ヒドロゲル内での核酸の安定化は、核酸の破断又は剪断を防止する。
【0070】
核酸含有担体、好ましくはオルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つは、水性ポリマー溶液と最初に組み合わされ、ポリマー溶液をゲル化させるステップが後続し得る。
【0071】
代替的又は付加的に、核酸含有担体、好ましくはオルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つは、水性ポリマー溶液をゲル化させる期間中に組み合わされ得る。
【0072】
細胞及びオルガネラのうちの少なくとも1つを溶解すること(lysing)で、核酸がヒドロゲル中に放出される。従って、本発明の方法は、単離された核酸を取得するための方法であって、ヒドロゲル内でオルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つを溶解して(lysing)単離された核酸を取得するステップを含み、単離された核酸が、ヒドロゲル、好ましくは本明細書において下記で定義されるようなヒドロゲル内で安定化している方法と更に関係する。
【0073】
任意選択的に、上記ステップa~cに付加して、本発明の方法は、d)(単離された)核酸及び/又は核酸含有担体を含むヒドロゲルを溶解させる(dissolving)ステップを更に含み得る。
【0074】
核酸
本発明の方法により取得可能な核酸は、少なくとも約10kb(キロベース)、20kb、30kb、40kb、50kb、60kb、70kb、80kb、90kb、100kb、150kb、200kb、300kb、400kb、500kb、600kb、700kb、800kb、900kb、又は少なくとも約1000kb(1Mb)のサイズを好ましくは有する。好ましくは、少なくとも約400kb、500kb、600kb、700kb、800kb、900kb、又は少なくとも約1000kb(1Mb)。
【0075】
核酸は、本発明の方法により取得可能な核酸である。従って、核酸のサイズは、本明細書で定義されるような(長鎖の)操作された核酸のサイズとして本明細書では理解され得る。
【0076】
好ましくは、本明細書に詳記されるような本発明の方法は、長鎖、ロングレンジ、又は高分子量(HMW)核酸、すなわち上記したようなサイズを有する核酸を取得するのに使用可能である。好ましくは、本明細書に詳記されるような本発明の方法は、超高分子量(uHMW)核酸を取得するのに使用可能である。uHMW核酸は、好ましくは長鎖核酸のサブセットであり、少なくとも1Mbの長さを有し得る。好ましくは、本発明の方法により取得可能な核酸は、少なくとも1.1Mb、1.3Mb、1.5Mb、1.7Mb、2Mb、2.5Mb、3Mb、4Mb、5Mb、6Mb、7Mb、8Mb、9Mb、又は少なくとも約10Mb(メガベース)のサイズを有する。
【0077】
本発明の方法により取得可能な核酸は、核ゲノム又はサイトプラストオルガネラゲノムであり得る、又はそれから取得可能であり得る。核酸分子は、自然発生的な核酸又は人工的な核酸であり得る。核酸は、DNA、RNA、又はその混合物であり得る。核酸には、DNA、RNA、BNA(架橋型核酸)、LNA(ロックド核酸)、PNA(ペプチド核酸)、モルホリノ核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、エピジェネティックに改変されたヌクレオチド、例えばメチル化されたDNA等、並びにその模倣体及び組合せを含む、但しこれらに限定されない、天然及び非天然の両方のヌクレオチド、人工的又は非標準的なヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、部分的に又は完全に一本鎖、二本鎖、又は三本鎖分子であり得る。
【0078】
本発明の方法により取得可能な核酸は、任意の起源、例えばヒト、動物、植物、微生物に由来し得るが、また任意の種類、例えば、細胞に対して内因性又は外因性、例えばゲノムDNA、染色体DNA、人工染色体、プラスミドDNA、又はエピソームDNA、cDNA、RNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、又はBAC若しくはYAC等の人工的ライブラリーのDNAであり得る。DNAは、核DNA又はオルガネラDNAであり得る。好ましくは、DNAは、ゲノムDNA、好ましくは細胞に対して内因性である。
【0079】
本発明の方法で得られた核酸は、目的とする配列、好ましくは本明細書において上記で定義されるような目的とする配列を含み得る。
【0080】
好ましくは、核酸分子は、DNA分子、好ましくはゲノムDNA分子である。
核酸含有担体
好ましくは、核酸は核酸含有担体から単離される。核酸含有担体は、DNA担体であり得る。核酸含有担体は、天然又は非天然の核酸含有担体、すなわち天然において生ずる担体又は人工核酸含有担体であり得る。
【0081】
非天然の核酸含有担体の非限定的な例は、1つ又は複数の単離された染色体を含む担体である。単離された染色体は、染色体をペレット化した形態で維持するために、例えば追加の化合物又は化学的処理を伴う又は伴わない沈降した染色体であり得る。非天然核酸を含む担体は、核酸を含む、又は核酸が連結した固体又は半固体であり得る。
【0082】
好ましくは、核酸含有担体は天然の核酸含有担体である。天然の核酸含有担体は、好ましくは細胞及びオルガネラのうちの少なくとも1つである。従って、好ましくは、核酸は、細胞及びオルガネラのうちの少なくとも1つから単離される。オルガネラは、好ましくは細胞に含まれ、核酸、好ましくは本明細書で定義されるような核酸を含む。本明細書において定義され得る本発明の方法で使用するためのオルガネラは、膜結合型又は非膜結合型オルガネラであり得る。
【0083】
オルガネラは、膜結合型オルガネラであり得るが、例えばオルガネラは、脂質二重層、好ましくはリン脂質二重層を含む。脂質二重層、好ましくは、リン脂質二重層は核酸を取り巻く。従って、好ましいオルガネラは、核酸、好ましくは本明細書で定義されるような核酸を含む。好ましい膜結合型オルガネラは、核、葉緑体、ミトコンドリア、小胞体、鞭毛、ゴルジ装置、及び液胞のうちの少なくとも1つである。好ましいオルガネラは、核、葉緑体、及びミトコンドリアのうちの少なくとも1つである。好ましい膜結合型オルガネラは核である。本発明の方法で使用するための好ましいオルガネラは、核である。
【0084】
本発明の方法で使用するためのオルガネラは、非膜結合型オルガネラであり得る、すなわち脂質二重層を含まない。本発明の方法で使用するための好ましい非膜結合型オルガネラは、ヌクレオソーム、リボソーム、スプライセオソーム、核小体、ストレス顆粒、TIGERドメイン、又はヴォールトのうちの少なくとも1つである。
【0085】
本発明の方法で使用するための核酸は、オルガネラからの核酸の単離を更に必要とすることなく、特に膜結合型オルガネラからの核酸の単離を必要とすることなく、細胞から単離され得る。非限定的な例として、核酸は細胞の細胞質から単離され得る。そのような核酸は、例えば、RNA分子又は原核生物のDNA分子を構成し得る。
【0086】
本発明で使用するための核酸は、任意の種類の細胞から取得可能と考えられる。細胞は、ウイルス粒子、原核細胞、又は真核細胞であり得る。原核細胞は、古細菌細胞又は細菌細胞であり得る。細胞は細菌細胞であり得る。好ましい細菌細胞は、大腸菌属及びアグロバクテリウム属のうちの少なくとも1つ、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)及びアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のうちの少なくとも1つであり得る。
【0087】
細胞は、動物細胞、植物細胞、及び真菌細胞からなる群から選択される真核細胞であり得る。本発明の方法で使用するための細胞は、動物細胞であり得る。動物細胞は、齧歯類、ネコ、イヌ、ウシ、ヤギ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ウサギ、マウス、ラット、ヒト以外の霊長類、及びヒトからなる群から取得可能と考えられる。
【0088】
本発明の方法で使用するための細胞は、植物細胞であり得る。植物細胞は、植物プロトプラストであり得る。当業者は、植物プロトプラストを調製及び繁殖させるための方法及びプロトコールについて認識しており、例えば、Plant Tissue Culture(ISBN:978-0-12-415920-4、Roberta H.Smith)を参照されたい。現行の本発明の方法で使用するための植物プロトプラストは、植物細胞プロトプラストの生成で使用される一般的手順を使用して提供可能であり、例えば細胞壁は、細胞を本明細書で定義されるような水性ポリマー溶液と組み合わせる前又は後に、セルロース、ペクチナーゼ、及び/又はキシラナーゼを使用して分解され得る。
【0089】
植物細胞プロトプラスト系は、例えばトマト、タバコ、及びほか多数(セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ニンジン(Daucus carota)、レタス(Lactucca sativa)、トウモロコシ(Zea mays)、ニコチアナ・ベンタミアーナ(Nicotiana benthamiana)、ペチュニア・ハイブリダ(Petunia hybrida)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、イネ(Oryza sativa))について記載されている。本発明は、本明細書において参照により組み込まれている下記の参考資料:Barsby et al.1986,Plant Cell Reports 5(2):101-103;Fischer et al.1992,Plant Cell Rep.11(12):632-636;Hu et al.1999,Plant Cell,Tissue and Organ Culture 59:189-196;Niedz et al.1985,Plant Science 39:199-204;Prioli and Sondahl,1989,Nature Biotechnology 7:589-594;S.Roest and Gilissen 1989,Acta Bot.Neerl.38(1):1-23;Shepard and Totten,1975,Plant Physiol.55:689-694;Shepard and Totten,1977,Plant Physiol.60:313-316のいずれか一報に記載されている系を含む、但しこれらに限定されない、任意のプロトプラスト系に一般的に適用可能である。
【0090】
好ましくは、本発明の方法で使用するための植物細胞は、作物植物又は培養植物、すなわちヒトにより培養及び育成される植物種から取得可能な細胞であり得る。作物植物は、食料又は飼料目的(例えば、農作物)、又は装飾目的(例えば、切り花用の花、芝生用の草の生産等)で培養され得る。本明細書で定義されるような作物植物には、非食品製品、例えば燃料用のオイル、プラスチックポリマー、医薬製品、コルク、繊維(例えば、綿等)等が採取される植物も含まれる。好ましくは、本明細書において教示されるような細胞は、作物植物由来である。
【0091】
植物細胞は、単子葉植物又は双子葉植物から取得され得る。単子葉植物は、イネ科に属する場合がある。双子葉植物は、ナス属、トウガラシ属、タバコ属、ウリ科、オクラ(Abelmoschus esculentus)、マメ科、キク科、ヒユ科、アブラナ科、シソ科、及びバラ科からなる群から選択され得る。
【0092】
水性ポリマー溶液
水性ポリマー溶液は、1つ又は複数のポリマーを含む水溶液として本明細書では定義される。特定の条件下では、水性ポリマー溶液は、好ましくは核酸含有担体と組み合わさって、ヒドロゲル(本明細書では水性環境に埋め込まれた三次元親水性ネットワークとして定義される)を形成し得る。
【0093】
ゲル化とは、好ましくは核酸含有担体の存在下での、水性ポリマー溶液からのヒドロゲルの形成として本明細書では定義される。本明細書において、ゲル化(gelation)は、ゲル化(gelling)に対する同意語として使用される。ゲル化期間中に、水性ポリマー溶液に含まれるポリマーの間で、好ましくは前記ポリマーと核酸含有担体の間でも架橋が形成される。
【0094】
前記架橋は、共有結合、イオン性結合、分子の絡み合い、水素結合、疎水的相互作用、ファンデルワールス力、及び/又は双極子-双極子相互作用を含み得る。好ましくは、前記架橋は、共有結合及び/又はイオン性結合を含む。これらの架橋の性質は、ポリマー及び核酸含有担体の化学構造により主に決定される。例えば、イオン性ペンダント基を有するポリマーを含む水溶液は、ゲル化する際にイオン性結合を形成し得る。架橋は、1つ又は複数のリンキング化合物、例えばイオン等を含み得る。
【0095】
ゲル化は可逆的プロセスであり得る。溶解(Dissolution)は、ゲル化の逆のプロセスとして定義される。換言すれば、溶解(Dissolution)期間中に、水性ポリマー溶液は、好ましくは1つ又は複数の追加化合物と組み合わさって、ヒドロゲルから形成される。本明細書において、溶解すること(dissolving)は、溶解(dissolution)の同意語である。ゲル化の可逆性にもかかわらず、ヒドロゲル(第1の水溶液から形成された)が溶解(dissolution)すると、第2の水溶液となるが、その場合、前記第1の水溶液及び第2の水溶液は同一である必要はない。
【0096】
溶解(dissolution)には、ヒドロゲルを部分的に溶解させること(dissolving)、例えば、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は約100%のヒドロゲルを溶解させること(dissolving)が含まれると本明細書では理解される。
【0097】
ゲル化及び溶解(dissolution)は、特定の条件下(1つ又は複数のパラメーター、例えば温度、pH、特定イオンの濃度等により特徴づけられ得る)、及びゲル化又は溶解誘発物質(dissolution inducer)の存在下、単独で又はそれらが組み合わされて生ずる。
【0098】
水性ポリマー溶液は、下限臨界ゲル化温度(加熱した際にゲル化が生ずる温度)(LCGT)を有し得る。例えば、Polaxamer又はMeBiolの水溶液はLCGTを有する。LCGTを有するヒドロゲルは、LCGTを有する水性ポリマー溶液から形成されたヒドロゲルとして本明細書では定義される。逆に、LCGTを有するヒドロゲルは、LCGT付近で冷却すると溶解する(dissolve)。
【0099】
水性ポリマー溶液は、上限臨界ゲル化温度(冷却した際にゲル化が生ずる温度)(UCGT)を有し得る。例えば、アガロースの水溶液はUCGTを有する。従って、アガロースの水溶液並びに1つ若しくは複数のオルガネラ及び/又は細胞から形成されたヒドロゲルは、溶解させる(dissolve)ために加熱されなければならない。UCGTを有するヒドロゲルは、UCGTを有する水性ポリマー溶液から形成されたヒドロゲルとして定義される。逆に、UCGTを有するヒドロゲルは、UCGT付近で加熱すると溶解する(dissolve)。
【0100】
温度の他に、ゲル化/溶解(dissolution)を誘発するための特定の条件には、特定イオンの濃度が含まれ得る。例えば、1つ又は複数のオルガネラと組み合わせたアルギネートの水溶液のゲル化は、カルシウムイオンの存在下で生ずる。この理論に拘泥するものではないが、カルシウムイオンはリンキング化合物として作用するので、このイオンはアルギネート鎖のカルボキシペンダント基の間でイオン性架橋の形成を可能にする。
【0101】
それに加えて、ゲル化又は溶解(dissolution)を誘発するための特定の条件には、ゲル化誘発物質又は溶解誘発物質(dissolution inducer)の存在がそれぞれ含まれ得る。ゲル化誘発物質は、水性ポリマー溶液のゲル化が発生可能となるように、前記水性ポリマー溶液中に最低濃度で存在しなければならない化合物又は組成物である。溶解剤(dissolution agent)は、ヒドロゲルの溶解(dissolution)が発生可能となるために、前記ヒドロゲル中に最低濃度で存在しなければならない化合物又は組成物である。
【0102】
所与の温度より低い又は高い温度でゲル化し得る水性ポリマー溶液が本明細書において記載される場合、又は所与の温度より低い又は高い温度で溶解(dissolved)し得るヒドロゲルが本明細書において記載される場合は常に、ゲル化又は溶解(dissolution)に関するこれらの温度要件は必要条件と解釈され得るが、しかし必ずしも十分条件として解釈されない。例えば、アルギネート並びに1つ若しくは複数のオルガネラ及び/又は細胞の水溶液から形成されたヒドロゲルは、45℃未満の温度において溶解可能(dissolvable)であると考えることも可能であるが、但しこの場合であっても、前記ヒドロゲルの溶解(dissolution)を誘発するためには、前記温度においてカルシウム濃度を有意に低下させる必要がある。
【0103】
ヒドロゲルの溶解(dissolution)は、溶解誘発物質(dissolution inducer)の存在下で起こり得る。溶解誘発物質は、好ましくは溶解(dissolution)の前にヒドロゲルと接触する、又はそれと組み合わされる水溶液である。好ましくは、溶解誘発物質の導入は、溶解(dissolution)に必要とされる特定の条件を確立又は誘発するのに役立つ。例えば、溶解誘発物質を、アルギネートの水性ポリマー溶液から形成されたヒドロゲルと組み合わせることで、ヒドロゲルの溶解(dissolution)(又は溶解(dissolving)が実現可能となる。
【0104】
本発明の文脈において、用語ポリマーは、ヒドロゲルを形成可能である水性ポリマー溶液に含まれるポリマーについて好ましくは使用され、好ましくは、前記ヒドロゲルは特定の条件下で溶解し(dissolved)得る。
【0105】
好ましくは、本発明の水性ポリマー溶液は、上限臨界ゲル化温度(UCGT)を有し、及び/又は水性ポリマー溶液に含まれるもう1つ別の特定イオンの濃度が増加又は減少するとゲル化し得る。同様に、ヒドロゲルは、上限臨界ゲル化温度(UCGT)を好ましくは有し、及び/又はヒドロゲルに含まれるもう1つ別の特定イオンの濃度が増加又は減少すると溶解し(dissolved)得る。
【0106】
好ましくは、本発明の水性ポリマー溶液は、約60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃未満の上限臨界ゲル化温度を有する。同様に、ヒドロゲルは、約60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃未満の上限臨界ゲル化温度を好ましくは有する。
【0107】
好ましくは、発明の水性ポリマー溶液は、下限臨界ゲル化温度(LCGT)を有し、及び/又は水性ポリマー溶液に含まれるもう1つ別の特定イオンの濃度が増加又は減少するとゲル化し得る。同様に、ヒドロゲルは、下限臨界ゲル化温度(LCGT)を好ましくは有し、及び/又はヒドロゲルに含まれるもう1つ別の特定イオンの濃度が増加又は減少すると溶解し(dissolved)得る。
【0108】
好ましくは、本発明の水性ポリマー溶液は、約25℃、30℃、40℃、45℃を上回る下限臨界ゲル化温度を有する。同様に、ヒドロゲルは、約25℃、30℃、40℃、45℃未満の下限臨界ゲル化温度を好ましくは有する。
【0109】
好ましくは、本発明の水性ポリマー溶液及び/又はヒドロゲルは、LCGT及び/又はUCGT、好ましくは本明細書で定義されるようなLCGT又はUCGTを有する。
【0110】
好ましくは、本発明の水性ポリマー溶液は、多価イオン、好ましくは多価カチオン、好ましくはカルシウムの濃度が増加するとゲル化し得る。前記濃度の増加は、好ましくは、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%、又はそれ超の増加である。前記濃度の増加は、好ましくは、約60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃未満の温度でゲル化を誘発することができる。同様に、ヒドロゲルは、多価イオン、好ましくは多価カチオン、好ましくはカルシウムの濃度が減少すると溶解し(dissolved)得る。前記濃度の減少は、好ましくは、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%、又はそれ超の減少である。前記濃度の減少は、好ましくは、約60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃未満の温度で溶解(dissolution)を誘発することができる。
【0111】
好ましくは、本発明の水性ポリマー溶液は、1価のイオン、好ましくは1価のカチオン、好ましくはナトリウム又はカリウム、好ましくはナトリウムの濃度が減少するとゲル化し得る。前記濃度の減少は、好ましくは、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%、又はそれ超の減少である。前記濃度の減少は、好ましくは、約60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃未満の温度でゲル化を誘発することができる。同様に、ヒドロゲルは、1価のイオン、好ましくは1価のカチオン、好ましくはナトリウム又はカリウム、好ましくはナトリウムの濃度が増加すれば溶解し(dissolved)得る。前記濃度の増加は、好ましくは、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%、又はそれ超の増加である。前記濃度の増加は、好ましくは、約60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃未満の温度で溶解(dissolution)を誘発することができる。
【0112】
好ましくは、本発明の水性ポリマー溶液は、イオン性ポリマー、好ましくはアニオン性ポリマー、好ましくはカルボキシペンダント基を備えたアニオン性ポリマーを含む。同様に、ヒドロゲルは、イオン性ポリマー、好ましくはイオン性ポリマー、好ましくはカルボキシペンダント基を備えたアニオン性ポリマーを含む水性ポリマー溶液から好ましくは形成され、前記ヒドロゲルは、イオン性架橋を含む。そのようなイオン性架橋は、リンキング化合物としてイオン、好ましくはカルシウムを含む。
【0113】
本出願の文脈において、アニオン性の化合物又は基とは、前記化合物又は基は異なる条件下において中性又は正に荷電し得るにもかかわらず、対応する水性ポリマー溶液又はヒドロゲル中に存在する条件下では負に荷電している化合物又は基を指すと理解されよう。対応する定義は、中性及びカチオン性の化合物及び基についても当てはまる。
【0114】
好ましくは、本発明の水性ポリマー溶液は、多糖類又はその誘導体を含む。より好ましくは、前記多糖類又はその誘導体は、1つ又は複数の糖酸、好ましくはウロン酸を含む。好ましくは、本発明の水性ポリマー溶液は、アルギネート又はその誘導体を含む。同様に、ヒドロゲルは、多糖類又はその誘導体を含む水溶液から好ましくは形成され、より好ましくは前記多糖類又はその誘導体は、1つ又は複数の糖酸、好ましくはウロン酸を含む。
【0115】
アルギネートは、(1,4)連結型β-D-マンヌロネート(M)及びα-L-グルロネート(G)残基又はモノマーからなる直鎖状コポリマーのファミリーである。前記M及びGモノマーは、アルギネート内で連続したG残基、連続したM残基として、又はM残基とG残基が交互に繰り返す配置で構成される。アルギネート内のM残基の数とG残基の数との比、並びにG残基のブロック、M残基のブロック、及びMG残基のブロックの長さは、前記アルギネートが取得される起源に依存する。好ましいアルギネートの起源は、褐藻(褐藻類)の綱に含まれる種に由来する。アルギネートは、マクロシスチス属、サルガッスム属、及びラミナリア属のうちの少なくとも1つの種から取得可能と考えられる。好ましくは、ラミナリア属は、ラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitate)、ラミナリア・ハイパーボレア(Laminaria hyperborea)、及びラミナリア・ダービリア(Laminaria Durvillaea)のうちの少なくとも1つである。
【0116】
好ましくは、G/M比は≧1.5である。好ましくは、M/G比は、少なくとも約0.7、又は0.8、好ましくは約0.7~1.4、又は約0.8~1.6である。
【0117】
水に溶解したときのアルギネートの粘度は、高、中、又は低であり得る。好ましくは、粘度(mPa/s)は、約4~12、又は約20~200である。好ましいアルギネート誘導体は、両親媒性アルギネート及びオリゴペプチドに共有結合的に連結しているアルギネートである。両親媒性アルギネートは、疎水基、例えばアルキル等をカルボキシペンダント基に共有結合的に連結させることにより、アルギネートから誘導可能である。
【0118】
本出願の文脈において、多糖類とは、別途明記されない限り、多糖類の誘導体も指す。本出願の文脈において、アルギネートとは、別途明記されない限り、アルギネートの誘導体も指す。
【0119】
好ましくは、核酸はヒドロゲル内で捕捉され、ヒドロゲルの外部には拡散しない、又は実質的に拡散しない。好ましくは、ヒドロゲルを室温で少なくとも約60分間維持するとき、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸分子が、ヒドロゲル内に留まる。 好ましくは、ヒドロゲルを室温で少なくとも約8時間維持するとき、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸分子が、ヒドロゲル内に留まる。
【0120】
好ましくは、ヒドロゲルは、下流処理のいずれも妨害しない又は実質的に妨害しない。好ましくは、ヒドロゲルのポリマーは、核酸分子のシークエンシング、好ましくはディープシークエンシングを妨害しない又は実質的に妨害しない。
【0121】
オルガネラ/細胞及びヒドロゲルを組み合わせること
現行の本発明で使用するためのオルガネラ及び/又は細胞は、核酸、好ましくは本明細書で定義されるような核酸を好ましくは含むと本明細書では理解される。本発明の方法において、細胞は最初に溶解して(lysed)オルガネラを放出し得るが、またオルガネラは、その後本明細書で定義されるような水性ポリマー溶液と組み合わされる。ポリマーは、その後、(相互に)リンクしたネットワークを形成して、オルガネラを含むヒドロゲルを取得することができる。
【0122】
代替的又は付加的に、無処理の細胞は水性ポリマー溶液と組み合わされ得るが、また核酸を含むオルガネラは、ポリマーを(相互に)リンクさせてヒドロゲルを形成する前に、細胞から放出され得る。
【0123】
代替的又は付加的に、無処理又は実質的に無処理の細胞は、水性ポリマー溶液と組み合わされ得るが、また核酸を含むオルガネラは、ヒドロゲル形成後に細胞から放出され得る。
【0124】
オルガネラ/細胞の溶解(lysing)
無処理の細胞は、水性ポリマー溶液と組み合わされ得るが、またポリマーは、その後(相互に)リンクしてヒドロゲルを形成し得る。ヒドロゲル内で細胞を溶解すること(lysing)で、1つ又は複数のオルガネラを更に分解する必要もなく、核酸を単離又は放出することができる。例えば、核酸は、例えば原核細胞の場合、細胞の細胞質内に存在し得るが、及び/又は核酸分子は細胞質RNA分子である場合もある。従って、核酸の細胞内の場所に応じて、方法は、核酸を含むオルガネラを溶解する(lysing)ステップを含み得る。
【0125】
核酸の単離は、細胞を溶解し(lysing)、及びオルガネラを溶解する(lysing)ステップを必要とし得る。用語「細胞を溶解すること(lysing)」とは、本明細書では、細胞膜を破壊すること又は分解すること、及び任意選択的に細胞壁も分解することとして理解される。同様に、用語「オルガネラを溶解すること(lysing)」とは、本明細書では、オルガネラ膜を破壊すること又は分解することとして理解される。
【0126】
細胞溶解(Cell lysis)は、好ましくはオルガネラの放出を引き起こす。オルガネラを細胞から放出することは、当技術分野において公知の任意の従来法を使用して実現可能である。任意選択的に、細胞はゲル化させる前に溶解される(lysed)。或いは、細胞は、ヒドロゲル形成後に溶解される(lysed)。好ましくは、オルガネラは、ヒドロゲル形成後に溶解される(lysed)。
【0127】
細胞膜、及び任意選択的に細胞壁は、任意の従来法、例えば機械的な力、酵素的処理、化学的処理、又は浸透圧処理等、但しこれらに限定されない方法を使用して破壊され得る。任意選択的に、オルガネラは、核酸を含むオルガネラを水性ポリマー溶液と組み合わせる前に、無処理の細胞、細胞デブリ、及びその他の種類のオルガネラのうちの少なくとも1つから分離可能である。或いは、溶解した(lysed)細胞は、本明細書に記載されるような水性ポリマー溶液と組み合わされる。また細胞溶解(Cell lysis)は、核酸含有オルガネラの溶解(lysis)を同時に引き起こす場合もある。或いは、細胞溶解のステップが最初に存在し、別のオルガネラの溶解(lysis)ステップが後続する。
【0128】
オルガネラ、好ましくは本明細書で定義されるようなオルガネラの溶解(lysis)は、核酸、好ましくは本明細書で定義されるような核酸の放出を好ましくは引き起こす。オルガネラの溶解(lysis)は、当技術分野において公知の任意の慣習法、例えば機械的な力、酵素的処理、化学的処理、及び浸透圧処理等のうちの少なくとも1つを使用して実現可能である。酵素的処理の非限定的な例は、プロテイナーゼK処理である。
【0129】
ミクロスフェア
形成されるヒドロゲルは、任意の適するサイズ又は形状を有し得る。好ましくは、ヒドロゲルのサイズは、45℃未満の温度でヒドロゲルを溶解させる(dissolve)のに適する。ヒドロゲルのサイズは、ゲノムシークエンシング、ロングレンジゲノム分析、トランスクリプトーム解析、マップに基づくクローニング、ゲノム物理マッピング、ラージインサートBACライブラリーの構築、及びラージインサートBIBACライブラリーの構築のうちの少なくとも1つからなる後続するステップを実施するのに適する方式及び量でヒドロゲルを溶解させる(dissolve)のに、好ましくは適する。好ましくは、ヒドロゲルのサイズは、ディープシークエンシング、好ましくはロングリード・ディープシークエンシングといった後続ステップを実施しやすくする条件下でヒドロゲルを溶解させる(dissolve)のに適する。
【0130】
ヒドロゲルのサイズ又は形状は、粒子であり得る。好ましくは、ヒドロゲルは微粒子であり得る。好ましくは、ヒドロゲルはミクロスフェアであり得る。好ましくは、操作された、好ましくは単離された、本明細書で定義されるような核酸は、ヒドロゲルミクロスフェア内で安定化している。本明細書で使用される場合、用語「ミクロスフェア」とは、形状が実質的に球形であり、且つ直径が約2mmに等しい又はそれ未満である微粒子を指す。例えば、微粒子は、形状が実質的に球形であり、且つ直径は約1mmに等しい又はそれ未満であり得る。
【0131】
本明細書で使用される場合、「実質的に球形」とは、最低の外部表面積を示す容積として定義される、完全な球体に近い形状を一般的に意味する。例えば、「実質的に球形」とは、ミクロスフェアの任意の断面を見たときに、大きい方の直径(又は最大直径)と小さい方の直径(又は最低直径)との間の差異は、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満であるミクロスフェアを指し得る。用語「実質的に球形」とは、大きい方の直径/小さい方の直径の比として約1.0~約2.0、約1.0~約1.5、又は約1.0~約1.2を有するミクロスフェアを指す場合もある。
【0132】
好ましくは、ミクロスフェアは、形状において球形又は実質的に球形である。ミクロスフェアの直径は変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、ミクロスフェアは、約10μm~約2,000μm、約30μm~約1,500μm、約35μm~約1,000μm、約40μm~約900μm、約45μm~約500μm、又は約20μm~約200μmの平均直径を有する。
【0133】
ミクロスフェアは、サイズにおいても実質的に均一であり得る。例えば、個々のミクロスフェア間の直径の差異は、約0μmm~約250μm、約0μm~約200μm、約0μm~約150μm、約0μm~約100μm、又は約0μm~約50μmであり得る。更なる実施形態では、個々のミクロスフェアは、直径において200μm以下、150μm以下、100μm以下、約50μm以下、約25μm以下、約10μm以下、又は約5μm以下の差異を有する。
【0134】
好ましくは、ミクロスフェアは、50%より多くが、平均直径±20%、平均直径±10%、又は平均直径±5%の直径を有するような集団内にある。1つの実施形態では、ミクロスフェアは、75%より多くが、平均直径±20%、平均直径±10%、又は平均直径±5%の直径を有するような集団内にある。
【0135】
好ましくは、本明細書で定義されるような核酸を含む、好ましくは本明細書で定義されるようなシークエンシングライブラリーを含むヒドロゲルミクロスフェアをシークエンサーフローセルに負荷した後に、ヒドロゲルを溶解し(dissolving)、核酸を放出させる。
【0136】
本明細書で定義されるようなヒドロゲルミクロスフェアは、当技術分野において公知の任意の従来法を使用して製造され得る。非限定的な例として、例えば、第1の反応物質が細胞及びオルガネラのうちの少なくとも1つを含み、並びに第2の反応物質が水性ポリマー溶液を含むような、マイクロ流体に基づく合成法(例えば、図4に例示の通り)を使用して、ミクロスフェアが製造可能である。任意選択的な第3の反応物質がゲル化誘発物質を含み得る。
【0137】
シークエンシングライブラリー
ヒドロゲル内に捕捉された、操作された、好ましくは単離された核酸は、核酸の断片化を生じさせることなく容易に改変及び/又は精製可能である。驚くべきことに、ヒドロゲル内で酵素反応を実施すると、水性環境において同一の反応を実施した場合と比較して、インプット材料として必要とされる核酸の量は有意に低下する。
【0138】
例えば、酵素反応混合物のコンポーネントは、形成されたヒドロゲルマトリックス中に拡散する可能性がある。そのようなコンポーネントは、酵素、アダプター、抗体、オリゴヌクレオチド、及びプライマーのうちの少なくとも1つを含み得る。核酸を改変するための好ましい酵素として、特異的DNA標的酵素、リガーゼ、エンドヌクレアーゼ、及びエキソヌクレアーゼが挙げられるが、但しこれらに限定されない。好ましい特異的DNA標的酵素は、CRISPRヌクレアーゼ複合体である。
【0139】
付加的又は代替的に、酵素反応は、例えば、核酸に結合しているタンパク質を取り除くためのタンパク質消化であり得る。好ましい酵素反応は、プロテイナーゼKのような、但しこれに限定されない1つ又は複数のプロテアーゼの添加である。
【0140】
方法は、酵素を不活性化するステップ、例えば、核酸改変酵素の不活性化及び/又はプロテイナーゼの不活性化を更に含み得る。
【0141】
付加的又は代替的に、核酸は、ヒドロゲルをすすぎ洗いし、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5回、又はそれを上回る回数ヒドロゲルをすすぎ洗いすることにより精製され得る。核酸、任意選択的に改変された核酸は、例えば、細胞デブリ、酵素、未結合アダプター、及び汚染物質のうちの少なくとも1つを取り除くために精製され得る。
【0142】
一実施形態では、オルガネラ、好ましくは、核はオルガネラから核酸を放出させる前にすすぎ洗いされ得る。オルガネラをすすぎ洗いすることで、例えば、そうしなければ核酸に結合し、シークエンシングプロセスを妨害するおそれがある細胞質汚染物質が取り除かれ得る。
【0143】
1つの態様では、本明細書において上記で定義されるような方法により取得される操作された核酸分子が改変され得る。一実施形態では、本発明は、シークエンシングライブラリーを調製する方法に関係する。シークエンシングライブラリーは、好ましくはロングリード・シークエンシングライブラリーである。好ましくは、シークエンシングライブラリーは、ディープシークエンシングライブラリーである。好ましくは、シークエンシングライブラリーは、次世代及び/又は第3世代シークエンシングに使用され得る。好ましくは、シークエンシングライブラリーは、ロングリード・シークエンシングに使用され得る。
【0144】
好ましくは、シークエンシングライブラリーは、本明細書で定義されるような核酸を含む。好ましくは、シークエンシングライブラリー内の核酸分子の少なくとも一部分は、少なくとも約10kb、20kb、30kb、40kb、50kb、100kb、150kb、200kb、300kb、400kb、500kb、600kb、700kb、800kb、900kb、又は少なくとも約1000kb(1Mb)のサイズを有する。好ましくは、シークエンシングライブラリー内の核酸分子の少なくとも一部分は、少なくとも1.1Mb、1.3Mb、1.5Mb、1.7Mb、2Mb、2.5Mb、3Mb、4Mb、5Mb、6Mb、7Mb、8Mb、9Mb、又は少なくとも約10Mbのサイズを有する。
【0145】
好ましくは、シークエンシングライブラリー内の核酸分子のN50、又はリードN50は、少なくとも約10kb、20kb、30kb、40kb、50kb、100kb、150kb、200kb、300kb、400kb、500kb、600kb、700kb、800kb、900kb、又は少なくとも約1000kb(1Mb)である。好ましくは、シークエンシングライブラリー内の核酸分子のN50は、少なくとも1.1Mb、1.3Mb、1.5Mb、1.7Mb、2Mb、2.5Mb、3Mb、4Mb、5Mb、6Mb、7Mb、8Mb、9Mb、又は少なくとも約10Mbのサイズを有する。N50は、データの半分が、これを上回るアライメント可能な長さを有するリード内に含まれる数値として本明細書において定義される。
【0146】
好ましくは、シークエンシングライブラリーの核酸分子の少なくとも一部分は、高分子量(HMW)又は超高分子量(uHMW)核酸である。
好ましくは、シークエンシングライブラリーを調製するための本発明の方法は、
本明細書で定義されるような、操作された、好ましくは単離された核酸を含むヒドロゲルを取得するステップと、
ヒドロゲル内の核酸を改変してシークエンシングライブラリーを取得するステップと
を含む。
【0147】
シークエンシングライブラリーを取得するために、分子をヒドロゲル内に維持しつつ、核酸が改変され得る。シークエンシングライブラリーを調製するプロセスの期間中にヒドロゲル内の核酸を安定化/固定化することで、従来の水溶液内でシークエンシングライブラリーを調製する場合と比較して、長い核酸分子の破断を実質的に低下させ、及び/又は防止することができる。
【0148】
シークエンシングライブラリーは、シークエンシングライブラリーを調製するための当技術分野において公知の任意の従来法を使用して調製可能である。シークエンシングライブラリーを調製するための試薬は、核酸がヒドロゲル内で固定した状態に留まっている間に核酸にアクセスすることができる。好ましくは、シークエンシングライブラリーは、1つ又は複数のアダプターを、核酸の一方又は両方の末端部に連結することにより調製可能である。好ましくは、1つ又は複数のアダプターは、核酸分子の1つ又は複数の末端部にライゲートされる。単数のアダプター又は複数のアダプターは、一本鎖、二本鎖、部分的二本鎖、Y字形、環状化可能、又はヘアピンアダプターであり得る。
【0149】
1つ又は複数のアダプターは、保護性のアダプターであり得る。この文脈において、保護性のアダプターとは、アダプターにより捕捉された核酸をエキソヌクレアーゼに対して保護するように特別に設計されたアダプターとして、本明細書では理解される。そのようなアダプターは、化学的部分又はブロッキング基(例えば、ホスホロチオエート)の組み入れにより、又は末端部ヌクレオチドの欠損により(ヘアピン又はステムループアダプター、又は環状化可能アダプター)、エキソヌクレアーゼ分解に対し好ましくは保護する。
【0150】
これら1つ又は複数のアダプターは、制限部位ドメイン、捕捉ドメイン、シークエンシングプライマー結合部位、増幅プライマー結合部位、検出ドメイン、バーコード配列、転写プロモータードメイン、及びPAM配列、又は任意のこれらの組合せからなる群から好ましくは選択される機能的ドメインを含み得る。バーコードは、サンプルバーコード又は固有の分子識別子(UMI)であり得るが、但しこれに限定されない。
【0151】
好ましくは、1つ又は複数のアダプターはシークエンシングアダプターであり、例えばロッシュ社の454A及び454Bシークエンシング、イルミナ(ILLUMINA)(商標)ソレクサ(SOLEXA)(商標)シークエンシング、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社のソリッド(SOLID)(商標)シークエンシング、パシフィックバイオサイエンス(Pacific Biosciences)社のSMRT(商標)シークエンシング、ポロネーターポロニー(Pollonator Polony)社のシークエンシング、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社又はコンプリートゲノミクス(Complete Genomics)社のシークエンシングを可能にする機能的ドメインを含む。好ましくは、機能的ドメインは、ナノポアシークエンシング及び一分子リアルタイム(SMRT(商標))シークエンシングのうちの少なくとも1つを可能にする。好ましくは、機能的ドメインは、ナノポアシークエンシングを可能にする。
【0152】
アダプターデザインに応じて、単数のアダプター又は複数のアダプターは、一本鎖の、二本鎖、部分的二本鎖、Y字形、ヘアピン、又は環状化可能アダプターであり得る。任意選択的に、1つ又は複数のアダプターが使用され得る。任意選択的に、2つのアダプターからなる1つ又は複数のセットが使用され得るが、その場合、あるセットの第1のアダプターは、核酸の5’末端側にライゲートされるように意図され、あるセットの第2のアダプターは、核酸の3’末端側にライゲートされるように意図される。
【0153】
好ましくは、あるセット内の第1及び第2のアダプターそれぞれは、アダプターがライゲートした核酸が、適合性を有するプライマーの対を使用して容易に増幅され、又は配列決定されるように、適合性を有するプライマー結合配列を含む。
【0154】
好ましくは、本発明のシークエンシングライブラリー調製法は、増幅及び/又はクローニングステップを含まない。ヌクレオチド改変情報(例えば、5-mC、6-mA等)はアンプリコンでは失われてしまうので、増幅ステップを減らすことが有益である。更なる増幅は、アンプリコン内に変動を呼び込むおそれがあり(例えば、増幅期間中のエラーにより)、そのヌクレオチド配列はオリジナルサンプルを反映しない。同様に、核酸を別の生物中にクローニングする場合、オリジナルのサンプル核酸中に存在する改変を多くの場合維持せず、従って好ましい実施形態では、本発明のシークエンシングライブラリーの調製法は、増幅又はクローニングステップを一般的に含まない。
【0155】
ステムループ又はヘアピンアダプターは一本鎖であるが、しかしその末端部は、アダプターがその上で折り返されて二本鎖部分及び一本鎖ループを生成するように相補的である。ステムループアダプターは、直鎖状の二本鎖核酸の末端部とリンクし得る。例えば、末端部ヌクレオチドが存在しないように(例えば、ポリメラーゼ及びリガーゼをそれぞれ使用して、すべてのギャップが埋められ、及びライゲートされている)、ステムループアダプターが二本鎖核酸の末端部に接続する場合、得られた分子は、末端部ヌクレオチドを欠いており、代わりに各末端部に一本鎖ループを担持する。
【0156】
核酸は、環状化可能なアダプターにライゲートされ得る。この場合、ヒドロゲル内の核酸は、断片(アダプターライゲーションに起因し得る、又はライゲートしたアダプターの制限酵素消化の結果として)のいずれかの側において適合性を有する構造が自己環状化することにより環状化し得る、又は所望の断片の末端部に対して相補的であるセレクタープローブにハイブリダイズすることにより環状化し得る。伸長及びライゲーションの最終ステップは、共有結合的に閉じた環、任意選択的に二本鎖核酸を創出する。
【0157】
任意選択的に、好ましくは、Tオーバーハングを含む部分的又は完全に二本鎖のアダプターへのライゲーションを促進するために、核酸の断片はAテールを含むように改変され得る。従って、アダプターを核酸にアニーリングする前に、本発明の方法は、任意選択的に核酸をAテール化するステップを含み得る。Aテール化反応は当技術分野において周知されており、また当業者はAテール化反応を、例えばKlenow断片(エキソ-)を使用するなどして実施する方法を容易に理解する。
【0158】
本明細書で定義されるようなシークエンシングライブラリーを調製する方法は、任意選択的に複雑性を低下させるステップを含み得る。当業者は複雑性を低下させるステップを実施する方法を容易に理解する一方、本発明は、複雑性低減の方法ステップのいずれにも限定されない。
【0159】
非限定的な例として、ヒドロゲル内で安定化している核酸は、1つ又は複数のエンドヌクレアーゼにより消化され得る。
【0160】
核酸を断片化するための酵素消化として、エンドヌクレアーゼ制限が挙げられるが、但しこれに限定されない。例えばAFLP(登録商標)技術で使用されるような酵素消化は、核酸の複雑性低下を更に引き起こす可能性がある。当業者は、DNA制限用としてどの酵素を選択すべきか知っている。非限定的な例として、少なくとも1つの高頻度カッター(frequent cutter)、及び少なくとも1つのレアカッター(rare cutter)が、核酸サンプルの断片化に使用可能である。例えば、MseI等、但しこれに限定されない高頻度カッターは、好ましくは約3~5bpの認識部位を有する。例えば、EcoRI等、但しこれに限定されないレアカッターは、好ましくは>5bpの認識部位を有する。
【0161】
好ましい方法では、エンドヌクレアーゼはレアカッターである。
【0162】
本発明の方法は、特定の制限エンドヌクレアーゼのいずれにも限定されない。エンドヌクレアーゼは、II型エンドヌクレアーゼ、例えばEcoRI、Msel、Pstl等であり得る。ある特定の実施形態では、IIS型又はIII型エンドヌクレアーゼ、すなわちその認識配列が制限部位から離れて位置するエンドヌクレアーゼ、例えば、非限定的にAceIII、AIwI、AIwXI、AIw26I、BbvI、BbvII、BbsI、Bed、Bce83I、BcefI、BcgI、BinI、BsaI、BsgI、BsmAI、BsmFI、BspMI、EarI、EciI、Eco3II、Eco57I、Esp3I、FauI、FokI、GsuI、HgaI、HinGUII、HphI、Ksp632I、MboII、MmeI、MnII、NgoVIII、PIeI、RIeAI、SapI、SfaNI、TaqJI、及びZthll III等が使用され得る。制限断片は、使用されるエンドヌクレアーゼに応じて、末端部が平滑末端化され、又はオーバーハング末端部を有し得る。
【0163】
高頻度カッター及びレアカッターのうちの少なくとも1つの認識部位は、目的とする配列バリアント内又はその直近に位置し、例えば、高頻度カッター又はレアカッターの認識部位は、目的とする配列バリアントから約0~10000、10~5000、50~1000、又は約100~500塩基離れて位置する。
【0164】
本明細書に開示する現行法は、AFLP(登録商標)技術においても使用可能である。AFLP(登録商標)技術は、例えば、本明細書において参照により組み込まれている国際公開第2007/114693号、同第2006/137733号、及び同第2007/073165号においてより詳細に記載されている。当技術分野に記載されるようなAFLP(登録商標)技術は、制限された核酸サンプルにUMIを連結することにより改変され得る。
【0165】
付加的又は代替的に、核酸は、プログラム可能なヌクレアーゼを使用して、好ましくはCRISPR-Cas技術、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、及びメガヌクレアーゼのうちの少なくとも1つを使用して消化され得る。
【0166】
富化又は複雑性の低下は、本明細書において上記で定義されており、好ましくは複雑性の低下は、再現性のある複雑性の低下である。1つ又は複数の複雑性低下ステップ、例えば任意プライムPCR増幅法、キャプチャープローブハイブリダイゼーション、Dong(例えば、国際公開第03/012118号、同第00/24939号を参照)により記載される方法及びインデックスリンキング(Unrau P.and Deugau K.V.(1994)Gene 145:163-169)、国際公開第2006/137733号;同第2007/037678号;同第2007/073165号;同第2007/073171号、米国特許出願公開第2005/260628号、国際公開第03/010328号、米国特許出願公開第2004/10153号に記載されている方法、ゲノムポーショニング(genome portioning)(例えば、国際公開第2004/022758号を参照)、遺伝子発現連鎖解析法(SAGE;例えば、Velculescu et al.,1995、上記参照、及びMatsumura et al.,1999,The Plant Journal,vol.20(6):719-726を参照)、及びSAGEの改変法(例えば、Powell,1998,Nucleic Acids Research,vol.26(14):3445-3446;及びKenzelmann and Muhlemann,1999,Nucleic Acids Research,vol.27(3):917-918を参照)、MicroSAGE法(例えば、Datson et al.,1999,Nucleic Acids Research,vol.27(5):1300-1307を参照)、超並列シグネチャーシークエンシング(Massively Parallel Signature Sequencing)(MPSS;例えば、Brenner et al.,2000,Nature Biotechnology,vol.18:630-634、及びBrenner et al.,2000,PNAS,vol.97(4):1665-1670を参照)、自己減算型cDNAライブラリー(self-subtracted cDNA libraries)(Laveder et al.,2002,Nucleic Acids Research,vol.30(9):e38)、リアルタイムマルチプレックスライゲーション依存性プローブ増幅法(Real-Time Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)(RT-MLPA;例えば、Eldering et al.,2003,vol.31 (23):el53を参照)、高カバー率発現プロファイリング法(High Coverage Expression Profiling)(HiCEP;例えば、Fukumura et al.,2003,Nucleic Acids Research,vol.31(16):e94を参照)、Rothら(Roth et al.,2004,Nature Biotechnology, vol.22(4):418-426)で開示されるようなユニバーサルマイクロアレイシステム、トランスクリプトーム減算法(transcriptome subtraction method)(例えば、Li et al.,Nucleic Acids Research,vol.33(16):el36を参照)、及びフラグメントディスプレイ法(例えば、Metsis et al.,2004,Nucleic Acids Research,vol.32(16):el27を参照)からなる群から選択されるステップ等が使用可能であるが、但しこれらに限定されない。
【0167】
ヒドロゲル内で安定化している核酸は、好ましくは、本明細書において参照により組み込まれている国際出願PCT/EP2019/082791号に記載されるように、標的核酸断片を富化するための方法で使用され得る。従って、本発明は、単離された核酸を含むヒドロゲルから標的核酸断片を富化させるための方法であって、前記標的核酸断片が目的とする配列を含み、並びに
i)本明細書で定義されるような単離された核酸を含むヒドロゲルを提供するステップであって、前記単離された核酸が目的とする配列を含むステップと、
ii)少なくとも第1及び第2のgRNA-CAS複合体を用いてヒドロゲル内の単離された核酸を切断し、これにより目的とする配列を含む標的核酸断片、及び少なくとも1つの非標的核酸断片を含むヒドロゲルを生成するステップと、
iii)ステップb)で得られた、前記ヒドロゲル内の切断された核酸分子を、エキソヌクレアーゼと接触させ、前記エキソヌクレアーゼが前記ヒドロゲル内の前記少なくとも1つの非標的核酸断片を消化するのを可能にするステップと、
iv)任意選択的に、前記目的とする配列を含む前記ヒドロゲル内の前記標的核酸断片を、ステップc)で得られた消化物から精製するステップと
を含む方法と関係し得る。
【0168】
ステップd)が、標的核酸断片を含むヒドロゲルを溶解(dissolution)させるステップを付加的又は代替的に含み得る。
【0169】
シークエンシング
1つの態様では、本発明は、シークエンシング法に関係し、特に本発明は、本明細書で定義されるような、操作された、好ましくは単離された核酸をシークエンシングするための方法に関する。
【0170】
好ましくは、シークエンシングライブラリーは、本明細書において上記で定義されるような核酸から調製され、すなわちシークエンシングライブラリーは、ヒドロゲル内で調製される。好ましくは、シークエンシングライブラリーは、シークエンシングプロセスの前又は期間中にヒドロゲルから放出される。好ましくは、シークエンシングライブラリーは、シークエンシングプロセスの前にヒドロゲルから放出される。好ましくは、シークエンシングライブラリーは、ヒドロゲルを溶解させること(dissolving)により、ヒドロゲルから放出される。
従って、好ましくは、本発明のシークエンシング法は、
本明細書で定義されるようなシークエンシングライブラリーを取得するステップと、
ヒドロゲルを溶解させる(dissolving)ステップと、
ライブラリーをシークエンシングするステップと
を含む。
【0171】
ヒドロゲルは、45℃未満の温度で好ましくは溶解する(dissolved)。温度が低いほど、核酸の破断が防止又は実質的に防止される。ヒドロゲルを溶解させ(dissolving)及び核酸を放出させるのを更に促進するために、ヒドロゲルは、有益な表面積対容積比(SA/V比)を有し得るが、例えばヒドロゲルは、ヒドロゲルと溶解誘発物質(dissolution inducer)との間の接触を促進する小粒子を含む又はそれから構成される。好ましくは、ヒドロゲルは、小粒子を含み又はそれから実質的に構成され得るが、好ましくは微粒子を含み又はそれから実質的に構成される。好ましくは、ヒドロゲルは、ミクロスフェア、好ましくは本明細書において上記で定義されるようなミクロスフェアを含み、又はそれから実質的に構成される。
【0172】
シークエンシングライブラリーは、当業者にとって公知の任意の従来法を使用して配列決定され得る。好ましくは、シークエンシングは、ディープシークエンシング、好ましくはロングリード・ディープシークエンシングである。好ましくは、シークエンシングは、第3世代シークエンシングである。好ましくは、シークエンシングは、ロッシュ社の454A及び454Bシークエンシング、イルミナ(商標)ソレクサ(商標)シークエンシング、アプライドバイオシステムズ社のソリッド(商標)シークエンシング、パシフィックバイオサイエンス社のSMRT(商標)シークエンシング、ポロネーターポロニー社のシークエンシング、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社又はコンプリートゲノミクス社のシークエンシングのうちの少なくとも1つを使用して実施され得る。好ましくは、シークエンシングは、ナノポアシークエンシング及び一分子リアルタイム(SMRT(商標))シークエンシングのうちの少なくとも1つを使用して実施され得る。好ましくは、シークエンシングは、ナノポアシークエンシングのステップを含み得る。
【0173】
好ましくは、シークエンシングライブラリーは、シークエンシングプロセスの前又は実質的に前にヒドロゲルから放出される。シークエンシングライブラリーは、ヒドロゲルからシークエンサーフローセル内に放出され得る。従って、シークエンシングライブラリーを含むヒドロゲルは、シークエンサーフローセルに最初に負荷される可能性があり、好ましくは、ヒドロゲルは、微粒子、好ましくはミクロスフェアを含む、又はそれから実質的に構成される。シークエンサーフローセル内でヒドロゲルは溶解し(dissolved)得るが、これにより後続するシークエンシング、好ましくはロングリード・ディープシークエンシングのためのシークエンシングライブラリーを放出する。好ましくは、フローセルは、ロングリード・ディープシークエンサー、好ましくは第3世代シークエンサーのフローセルである。好ましくは、フローセルは、一分子リアルタイム(SMRT(商標))シークエンシング用のフローセル、又はナノポアシークエンシング用のフローセルである。好ましくは、フローセルは、ナノポアシークエンシング用である。
【0174】
好ましくは、シークエンシングライブラリーは、ヒドロゲルを溶解させること(dissolving)、好ましくはヒドロゲルをフローセル内で溶解させること(dissolving)によりヒドロゲルから放出される。
【0175】
好ましくは、ヒドロゲルは、シークエンシングバッファー、好ましくはナノポアシークエンシングに適するシークエンシングバッファーを添加することにより溶解する(dissolved)。
【0176】
好ましくは、1価のカチオン、好ましくはカリウム又はナトリウムカチオン、好ましくはナトリウムを含むバッファーを添加することによりヒドロゲルは溶解する(dissolved)。
【0177】
好ましくは、ヒドロゲルは、温度を約20℃~40℃から約2℃~10℃まで下げることにより溶解する(dissolved)。好ましくは、核酸は、酵素反応が起きるのに必要とされる温度でヒドロゲル内に留まる。好ましくは、ヒドロゲルは、効率的な酵素反応、好ましくはシークエンシングライブラリーを調製するための酵素反応、例えば約37℃の温度での酵素反応に必要とされる温度では溶解し(dissolve)ない。好ましくは、ヒドロゲルは、低めの温度、例えば酵素反応、好ましくは効率的な酵素反応に要する温度よりも低い温度で溶解する(dissolved)。非限定的な例として、ヒドロゲルを約4℃の温度に配置したとき、ヒドロゲルは溶解し(dissolved)得る。
【0178】
ヒドロゲルは、pH応答性ヒドロゲルであり得る。ヒドロゲルは、pHを調整すること、すなわちpHを下げたり上げたりすることにより溶解し得る(dissolved)。核酸は、好ましくは約5~8のpHにおいて安定に留まる。従って、一実施形態では、ヒドロゲルは、pHを増加させることにより、例えばpHを約5~6から約7~8に調整することにより溶解し(dissolved)得る。代替的実施形態では、ヒドロゲルは、pHを減少させることにより、例えばpHを約7~8から約5~6に調整することにより溶解し(dissolved)得る。
【0179】
組成物
1つの態様では、本発明は、本明細書において上記で定義されるような核酸及びヒドロゲルを含む組成物に関する。核酸は、ヒドロゲル内で安定化していると考えられ、核酸の破断しやすい傾向を低下させる。ヒドロゲルは、好ましくは45℃未満の温度で溶解し(dissolved)得る。好ましくは、ヒドロゲルは、pH感受性ヒドロゲルであり、好ましくはアルギネートを含む。好ましくは、ヒドロゲルは、微粒子、好ましくはミクロスフェアを含む。好ましくは、ヒドロゲルは、本明細書において上記で定義されるようなヒドロゲルである。
【0180】
更なる態様では、本発明は、本明細書において上記で定義されるような細胞及び水性ポリマー溶液を含む組成物に関係する。本発明は、特定の種類の細胞のいずれかに限定されず、好ましくは、細胞は本明細書において上記で定義されるような細胞である。好ましくは、細胞は、植物細胞、好ましくは植物プロトプラストである。
【0181】
1つの態様では、本発明は、本明細書において上記で定義されるようなオルガネラ及び水性ポリマー溶液を含む組成物に関係する。オルガネラは、好ましくは核酸を含む。オルガネラは、好ましくは本明細書において上記で定義されるようなオルガネラである。好ましいオルガネラは、核、ミトコンドリア、及び葉緑体のうちの少なくとも1つである。好ましいオルガネラは、核である。オルガネラは、任意の細胞、好ましくは本明細書において上記で定義されるような細胞から取得可能であると考えられる。好ましくは、オルガネラは、植物細胞から取得可能である。
【0182】
ヒドロゲル
1つの態様では、本発明は、本発明の方法により取得可能なヒドロゲルに関係する。好ましくは、ヒドロゲルは、
核酸含有担体、好ましくは本明細書で定義されるような核酸含有担体、
オルガネラ、好ましくは本明細書で定義されるようなオルガネラ、
操作された核酸、好ましくは本明細書で定義されるような単離された核酸、好ましくはμHMW核酸、及び
シークエンシングライブラリー、好ましくは本明細書で定義されるようなシークエンシングライブラリー
のうちの少なくとも1つを含む。
【0183】
ヒドロゲルは、好ましくは本明細書で定義されるようなヒドロゲルである。ヒドロゲルは、好ましくはアルギネートを含む。
パーツキット(Kit of parts)
1つの態様では、本発明は、好ましくは本明細書で定義されるような方法で使用するためのパーツキットに関係する。パーツキットは、本明細書で定義されるようなヒドロゲルを形成するためのポリマーを含み得る。パーツキットは、
細胞及びオルガネラのうちの少なくとも1つを溶解する(lysing)ための溶解バッファー(lysis buffer);及び
シークエンシングライブラリー、好ましくはディープシークエンシングライブラリーを調製するための1つ又は複数のコンポーネント
のうちの少なくとも1つを更に含み得る。
【0184】
ポリマーは水溶液であり得る。或いは、ポリマーは真空凍結乾燥形態にあり、また本発明の方法で使用するために、水溶液を用いて再構成され得る。
【0185】
細胞及びオルガネラのうちの少なくとも1つを溶解する(lysing)ための溶解バッファーは、細胞及び/又はオルガネラの溶解(lysis)に適する、当技術分野において公知の溶解バッファーのいずれかを構成し得る。好ましくは、溶解バッファーは、ヒドロゲルの形成を破壊しない又は実質的に破壊しない。細胞溶解バッファーの非限定的な例は、NP-40溶解バッファー、RIPA溶解バッファー、SDS溶解バッファー、及びACK溶解バッファーである。
【0186】
シークエンシングライブラリーを調製するための1つ又は複数のコンポーネントは、酵素及びアダプターのうちの少なくとも1つを含み得る。酵素はリガーゼであり得る。アダプターは、本明細書において上記で定義されるようなアダプターであり得る。
【0187】
代替的又は付加的に、パーツキットは、ヒドロゲル、好ましくは本明細書で定義されるようなヒドロゲルを含み得る。ヒドロゲルは、核酸、核酸含有担体、細胞、オルガネラ、及び単離された核酸のうちの少なくとも1つ、好ましくは本明細書で定義されるような核酸含有担体、細胞、オルガネラ、及び単離された核酸のうちの少なくとも1つを含み得る。キットは、シークエンシングライブラリー、好ましくはディープシークエンシングライブラリーを調製するための1つ又は複数のコンポーネントを更に含み得る。シークエンシングライブラリーを調製するための1つ又は複数のコンポーネントは、酵素及びアダプターのうちの少なくとも1つを含み得る。酵素はリガーゼであり得る。アダプターは、本明細書において上記で定義されるようなアダプターであり得る。
【0188】
好ましくは、キットに含まれる任意のバイアルの容積は、100mL、50mL、20mL、10mL、5mL、4mL、3mL、2mL、又は1mL以下である。
【0189】
試薬は、真空凍結乾燥された形態で、又は適するバッファー中に存在し得る。キットは、本発明を実施するのに必要な任意のその他のコンポーネント、例えばバッファー、ピペット、マイクロタイタープレート、及び指示書等も含み得る。本発明のキットのためのそのようなその他のコンポーネントは、当業者にとって公知である。
【0190】
更なる態様
1つの態様では、本発明は、本明細書において上記で定義されるような組成物の使用と関係する。本発明は、本明細書で定義されるような単離され及び安定化した核酸の(ディープ)シークエンシングに限定されないことは当業者にとって明白である。本明細書で定義されるような安定化した核酸は、非常に多くの用途を見出すことができる。好ましくは、本発明は、ゲノムシークエンシング、ロングレンジゲノム分析、トランスクリプトーム解析、マップに基づくクローニング、ゲノム物理マッピング、ラージインサートBACライブラリーの構築、及びラージインサートBIBACライブラリーの構築のうちの少なくとも1つのための、本明細書で定義されるような組成物の使用に関係する。
【0191】
同様に、更なる態様では、本発明は、ゲノムシークエンシングに関する方法、ロングレンジゲノム分析に関する方法、トランスクリプトーム解析に関する方法、マップに基づくクローニングに関する方法、ゲノム物理マッピングに関する方法、ラージインサートBACライブラリーの構築に関する方法、及びラージインサートBIBACライブラリーの構築に関する方法のうちの少なくとも1つに関し、方法は、好ましくは
a)核酸、好ましくはオルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つを含む担体を、水性ポリマー溶液と組み合わせるステップと、
b)前記ポリマー溶液をゲル化させて、前記オルガネラ及び細胞のうちの少なくとも1つを含むヒドロゲルを形成するステップと、
c)前記担体から前記核酸を放出させて単離された核酸を取得するステップと
を含み、前記単離された核酸は、前記ヒドロゲル内で安定化している。
【0192】
好ましくは、核酸は、本明細書において上記で定義されるような核酸である。好ましくは、ヒドロゲルは、本明細書において上記で定義されるようなヒドロゲルである。
【実施例
【0193】
実施例1a及びb:高分子量バクテリオファージラムダDNAのアルギネート内カプセル化と、後続する半固体状態でのライブラリー調製及びナノポアシークエンシング。
実施例1a
メジアンサイズ45Kb及び濃度82.4ng/μLの大腸菌属ウイルスラムダ(λ)DNA(DNAの総量:883ng)、10μLを、1.5%のプロノバ(Pronova)(登録商標)UP LVGアルギネート(ノバマトリックス(NovaMatrix)(商標))、10μLと、ロータリープラットフォーム上にて、4℃、一晩混合した。インキュベーション後、DNAの剪断を避けるために200μL大孔径ピペットチップを使用しながら、アルギネート溶液を、2ml BDプラスティパック(Plastipak)(商標)シリンジ(BD社)中にピペット採取した。0.45×13mmマイクロランス(BD社)をシリンジに取り付け、アルギネート溶液を、200mMのCaCl溶液、20mLを含有する100mLガラスビーカー中にゆっくりと滴下した。ミリメートルサイズの球形ビーズを取得するために、アルギネート溶液を滴下する前に、ガラスビーカーを磁気ロッドと共にマグネチックスターラープレート上に配置して、CaCl溶液を激しく撹拌した。この滴下法を用いた場合、0.7%のアルギネート-DNA混合物、20μLを使用して約1~2個のビーズが生成可能であった。
【0194】
ゲル化した後、カプセル化されたλ DNAを含有するビーズを、2mLエッペンドルフチューブに移し、DNA修復及び末端調製に先立ち洗浄するために、17.1倍稀釈したNEBNext(登録商標)FFPE repair及びウルトラII End-prep反応バッファー(オックスフォードナノポアテクノロジーズ(Oxford Nanopore Technologies)(登録商標)Ligation Sequencing、ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs Inc.)社用のNEBNext(登録商標)Companion Module)を含有するDNA修復及び末端調製混合物(酵素を含まない)、60μL内で30分間インキュベートした。NEBNext(登録商標)バッファー溶液をピペッティングにより廃棄した。
【0195】
その後、DNA修復及び末端調製するために、17.1倍稀釈したNEBNext(登録商標)FFPE repair及びウルトラII End-prep反応バッファー、30倍稀釈したNEBNext(登録商標)FFPE DNA Repair Mix、及び20倍稀釈したNEBNext(登録商標)ウルトラII End-prep Enzyme Mix(オックスフォードナノポアテクノロジーズ(登録商標)Ligation Sequencing、ニューイングランドバイオラボ社用のNEBNext(登録商標)Companion Module)を含有するNEBNext(登録商標)FFPE repair及びウルトラII End-prep反応混合物、60μL内で、ビーズを20℃で30分間及び65℃で10分間インキュベートした。
【0196】
DNA修復及び末端調製後、ヌクレアーゼを含まない水、500μL中でビーズを洗浄し、その後、新鮮なバッチのヌクレアーゼを含まない水、500μL内、20℃で30分間インキュベートした。水をピペッティングにより廃棄し、アダプターライゲーション前に、4倍稀釈したLigation Buffer(SQK-LSK109 Ligation Sequencing Kit、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)を含有するアダプターライゲーション混合物(酵素を含まず且つアダプターを含まない)、100μL内で、ビーズを30分間インキュベートした。ライゲーションバッファー溶液をピペッティングにより廃棄し、アダプターライゲーションするために、4倍稀釈したLigation Buffer(SQK-LSK109 Ligation Sequencing Kit、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)、10倍稀釈したNEBNext(登録商標)Quick T4 DNAリガーゼ(Oxford Nanopore Technologies Ligation Sequencing、ニューイングランドバイオラボ社用のNEBNext(登録商標)Companion Module)、及び20倍稀釈したAdapter Mix(SQK-LSK109 Ligation Sequencing Kit、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)を含有するアダプターライゲーション混合物、100μL内、4℃で2時間、ビーズをインキュベートした。
【0197】
アダプターライゲーションした後、Elution Buffer(SQK-LSK109 Ligation Sequencing Kit、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)、50μL内、室温で、ビーズを30分間平衡化した。一方、R9.4.1フローセル(オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)を、製造業者の指示に従いプライミングした(Nanopore protocol Genomic DNA by Ligation、バージョンGDE_9063_v109_revN_14Aug2019、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)。ビーズを平衡化した後、Elution Bufferを廃棄し、2倍稀釈したSequencing Buffer(SQK-LSK109 Ligation Sequencing Kit、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)、75μL内、氷上において30分間、ビーズをインキュベートした。
【0198】
Sequencing Buffer内でアルギネートビーズをインキュベートすると、アルギネートビーズの脱ゲル化を引き起こした。λ DNA 1Dシークエンシングライブラリーを含有するアルギネートスラリーを、SpotONサンプルポート経由でR9.4.1フローセル(FAL16833)に負荷し、シークエンシング測定をGridIONシークエンサー(MinKNOWバージョン3.4.8)上で開始した。生の配列データを、Guppyバージョン3.0.6(オックスフォードナノポアテクノロジーズ(登録商標))を用いてベースコールし、ベースコールされた配列データを、NanoPackツールを用いて更に処理した(De Coster et al.,2018.NanoPack:visualizing and processing long-read sequencing data.Bioinformatics 34-15)。
【0199】
実施例1b
実施例1bでは、200mMのクエン酸ナトリウムをシークエンシングバッファーに添加したこと、すなわち、最後のステップにおいて、2倍稀釈したSequencing Buffer(SQK-LSK109 Ligation Sequencing Kit、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)及び200mMのクエン酸ナトリウム、75μL中でビーズをインキュベートしたことを除き、半固体状態のライブラリーを上記したように調製した。λ DNAライブラリーを含む脱ゲル化したアルギネートスラリーを新しいR9.4.1フローセル(FAL02990)に負荷し、シークエンシングをGridIONシークエンサー上で実施した。
【0200】
2回の42時間λ DNA配列測定の要約統計量を表1に示す。
【0201】
【表1】
【0202】
半固体状態で調製された実施例1aのλ DNAライブラリーのシークエンシングでは、約98,000リードにより表される1ギガベースより多くのデータが生成した。メジアンリード長は3.3Kbであり、メジアンリードクオリティは7.3である。対照的に、実施例1bのλ DNA配列測定の配列収率は、1/4よりも低く(約325メガベース)、またメジアンリード長は1kb(702塩基)よりも短い。両方の実施例の間の配列メトリクスの差異は、大型ビーズのライブラリー調製後の処理における差異;すなわち、シークエンスバッファー(実施例1a)、又は200mMのクエン酸ナトリウムが添加されたシークエンスバッファー(実施例1b)中でのアルギネートの脱ゲル化及び負荷に起因する。
【0203】
捕捉されたDNAに由来し、且つライブラリー調製ステップ期間中にビーズから水溶液中に拡散したDNAには由来しないラムダ配列リードを調査するために、DNA量を各インキュベーションステップ後に測定した。図2は、ライブラリー調製期間中に異なるいくつかの洗浄ステップ及び酵素的ステップを実施し、その際に生じた拡散による相対的なDNA喪失量を示す。使用したバッファー及び酵素ミックスから、Ampure XPビーズを用いてDNAを単離し、Qubit蛍光光度計(High Sensitive dsDNA Assay kit、サーモフィッシャーサイエンティフィック(ThermoFisher Scientific)社)を用いて量を決定した。図2に示すように、ナノポアライブラリー調製手順全体を通じて、異なる水溶液においてDNAは検出できなかった。シークエンスアダプターも含有するライゲーション酵素混合物中でインキュベートした後、少量の低分子量(~約200bp)DNAが観測可能であった。しかしながら、断片のサイズ及びライゲーション混合物の組成に基づき、回収されたDNAは、非ライゲートナノポアアダプターであると結論付けられる。
【0204】
まとめとして、結果より、本発明は、半固体状態のカプセル化されたHMW DNAから開始するロングリードシークエンスライブラリーの調製に対して有用なプラットフォームを提供することが明らかである。
【0205】
実施例2:高分子量植物DNAのアルギネート内カプセル化と、後続する半固体状態でのライブラリー調製及びナノポアシークエンシング。
【0206】
実施例2では、実施例1aに記載される手順と同一の実験手順に従ったが、但しメジアンピークサイズ約80kb及びサイズ範囲10~128kbを有するゲノム植物DNA、993ng(10μL)をアルギネートと混合する点が異なった。植物DNA 1Dシークエンシングライブラリーを含有するアルギネートスラリーを、SpotONサンプルポート経由でR9.4.1フローセル(FAK94960)に負荷した。シークエンシングをGridION(MinKNOWバージョン3.4.8)上で実施し、生の配列データを、Guppyバージョン3.0.6(オックスフォードナノポアテクノロジーズ(登録商標))を用いてベースコールした。ベースコールされたシークエンスデータの更なる分析を、NanoPackツールを用いて実施した(De Coster et al.,2018.NanoPack:visualizing and processing long-read sequencing data.Bioinformatics 34-15)。42時間配列測定の要約統計量を表2に示す。
【0207】
【表2】
【0208】
半固体状態で調製した植物DNAライブラリーのシークエンシングでは、55,165リードにより表される222Mbよりも若干多いデータがもたらされた。これらの結果は、半固体状態のカプセル化された超HMW DNAから開始するロングリードシークエンスライブラリーの調製及びシークエンシングの可能性を実証する。
【0209】
ライブラリー調製期間中に異なる水溶液中に含まれるレタスDNAの量を定量化すると、ラムダDNAの実施例と同様に、ヒドロゲルビーズのインキュベーション期間中に拡散は生じなかったことが明らかとなった。従って、得られたシークエンスリードは、カプセル化されたDNAに由来し、また半固体状態でのライブラリー調製によって生み出されたと結論付けられる。ラムダの実施例の場合と同様に、ステップ5において回収された少量のDNAは、アダプターDNAであった。
【0210】
実施例3:アルギネート内での植物核のカプセル化及び溶解(lysis)と、後続する半固体状態でのライブラリー調製及び埋め込まれたDNAのナノポアシークエンシング
Zhangら、2012年(Preparation of megabase-sized DNA from a variety of organisms using the nuclei method for advanced genomics research,Nature Protocols,vol.7(3):467-478)において、植物、藻類、又は真菌組織について記載されている指示に本質的に従って、核を若い葉の組織から単離した。最終洗浄ステップの後、0.5×リン酸緩衝生理食塩水(PBS;69mMのNaCl、5mMのリン酸、1.4mMのKCl、pH7.4)、1mMのCaCl、及び5mMのMgClを含有する1%アルギネート(褐藻類由来のアルギン酸ナトリウム塩A0682、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社)溶液内で、核を再懸濁した。
【0211】
核を完全に再懸濁した後、核の損傷を避けるために、200μL大孔径ピペットチップを使用しながら、0.45×13mmマイクロランス(BD社)が取り付けられた2ml BDプラスティパック(商標)シリンジ(BD社)中に、懸濁物をピペット採取した。その後、アルギネート溶液を、200mMのCaCl溶液、20mLを含有する100mLガラスビーカー中に撹拌条件下でゆっくりと滴下した。得られた植物核を含有するミリメートルサイズのアルギネートビーズを、アルギネートの更なるゲル化を促進するために撹拌を行わずに、200mMのCaCl溶液中で30分間、更にインキュベートした。ヨウ化プロピジウム内でビーズをインキュベートした後、多数の蛍光性の核が観測可能であった。
【0212】
アルギネートを完全にゲル化させた後、500μm Pluristrainer(プルリセレクトライフサイエンス(PluriSelect Life Science)社)を使用してビーズを収集し、新しい50mLポリプロピレンチューブ(TEバッファー(10mMのトリス-HCl及び1mMのEDTA、pH8.0)、50mMのCaCl、及び300μg/mLのプロテイナーゼKを含有する溶解溶液(lysis solution)、20mLを収納する)に移し、75rpmでの軌道撹拌設定を用いながら、振盪インキュベーター内、50℃、核を一晩溶解した(lysed)。
【0213】
溶解(lysis)後、捕捉されたゲノムDNAを含有するビーズを、新鮮な洗浄溶液(TEバッファー及び50mMのCaCl)、20mL中で、30分間、2回洗浄した。プロテイナーゼKの完全不活性化は、TEバッファー及び2mMのペファブロック(Pefabloc)(登録商標)SC(シグマ-アルドリッチ社)を含有する溶液、20mL中、37℃、一晩インキュベーションすることにより達成された。TEバッファー及び50mMのCaCl溶液、20mL中でビーズを2回インキュベートすることにより、ペファブロック(登録商標)SCを除去し、カプセル化されたゲノムDNAを含有するビーズを同一の溶液中に4℃で使用まで保管した。
【0214】
ナノポアライブラリー調製では、8.6倍稀釈したNEBNext(登録商標)ウルトラII End-prep反応バッファー(NEBNext(登録商標)ウルトラ(Ultra)(商標)II End Repair/dA-Tailing Module、ニューイングランドバイオラボ社)、0.83×NAD+(PreCR(登録商標)Repair Mix、ニューイングランドバイオラボ社)、及び5mMのCaClを含有するDNA修復及び末端調製混合物、30μL中で、4つのビーズを30分間インキュベートした。溶液をピペッティングにより廃棄し、8.6倍稀釈したNEBNext(登録商標)ウルトラII End-prep反応バッファー(NEBNext(登録商標)ウルトラ(商標)II End Repair/dA-Tailing Module、ニューイングランドバイオラボ社)、0.83×NAD+(PreCR(登録商標)Repair Mix、ニューイングランドバイオラボ社)、5mMのCaCl、20倍稀釈したNEBNext(登録商標)FFPE DNA Repair Mix(ニューイングランドバイオラボ社)、及び1.3倍稀釈したNEBNext(登録商標)ウルトラII End-prep Enzyme Mix(NEBNex(登録商標)ウルトラ(商標)II End Repair/dA-Tailing Module、ニューイングランドバイオラボ社)を含有するNEBNext(登録商標)FFPE repair及びウルトラII End-prep反応混合物、60μL中、20℃で1時間及び65℃で20分間、ビーズをインキュベートした。
【0215】
DNA修復及び末端調製後、ビーズを、10mMのトリス-HCl及び5mMのCaCl溶液、1mLで洗浄し、その後新鮮なバッチの10mMのトリス-HCl及び5mMのCaCl溶液中、20℃で15分間インキュベートした。このインキュベーションステップを1回繰り返した。2回目のインキュベーションステップの後、溶液を廃棄し、2倍稀釈したNEBNext(登録商標)ウルトラII Ligation Master Mix(NEBNext(登録商標)ウルトラ(商標)II Ligation Module、ニューイングランドバイオラボ社)、50倍稀釈したNEBNext(登録商標)Ligation Enhancer(NEBNext(登録商標)ウルトラ(商標)II Ligation Module、ニューイングランドバイオラボ社)、10μLのOxford Nanopore Technologies Adaptor Mix(SQK-LSK108 Ligation Sequencing Kit 1D、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)、及び5mMのCaClを含有するアダプターライゲーション混合物、50μL中、20℃で30分間、ビーズをインキュベートした。インキュベーション後、ライゲーション混合物を廃棄し、ライゲーションステップを、新鮮なライゲーション混合物を用いて繰り返した。
【0216】
アダプターライゲーションの後、ビーズを、25μL及び50μLのElution Buffer(SQK-LSK108 Ligation Sequencing Kit 1D、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)において、室温で30分間2回、それぞれ平衡化した。一方、R9.4フローセル(ID FAH05684、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)を、製造業者の指示(1D gDNA selecting for long reads、SQK-LSK108、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)に従いプライミングした。溶出バッファー中での平衡化後に、35μLのRunning Buffer Fuel(RBF;SQK-LSK108 Ligation Sequencing Kit 1D、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)、4μLのElution Buffer(SQK-LSK108 Ligation Sequencing Kit 1D、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)、25.5μLのLibrary Loading Beads(EXP-LLB001 Library Loading Beads Kit、オックスフォードナノポアテクノロジーズ社)、及び10μLの1.5Mクエン酸ナトリウムを含有するシークエンシング前混合物、75μL中、20℃で30分間、ビーズをインキュベートした。ビーズを20℃で30分間インキュベートし、スラリーを、大孔径ピペットを使用しながら、SpotONサンプルポート経由でR9.4フローセルに負荷し、シークエンシング測定を、MinION MK 1bシークエンサー上で開始した。
【0217】
半固体状態で調製した植物DNAライブラリーについてシークエンシングした結果、参照全ゲノム配列に対してマッピング可能な(Minimap2)1,448個のリードがもたらされた(図3)。10パーセントを超えるリードが90%以上の類似性を有してマッピングされた。これらの結果は、カプセル化された植物核から開始して、半固体状態の方式でロングリードシークエンスライブラリーを調製及びシークエンシングする可能性を示す。
【0218】
実施例4:DNAサイズに対するアルギネート内での植物核のカプセル化及び溶解(lysis)の効果
アルギネート球体内で核DNAを保護する効果について更に分析した。このために、サトウダイコン核の溶解(lysis)後にゲノムDNAを取得し、水性環境において更に精製した。この従来式に単離したDNAの断片サイズを、アルギネート包埋核から単離されたゲノムDNAの断片サイズと比較した。
【0219】
アルギネート包埋サンプルでは、実施例3に記載されている手順に従い、サトウダイコン及びインパチェンスの核をアルギネート球体中にてカプセル化及び溶解(lysed)した。アルギネート包埋μHMW DNAをゲル上に直接負荷するか、又はアルギネート球体から最初に放出させ、その後ゲル上に負荷した。
【0220】
図5に示すように、溶液内での穏和な単離手順は、50~300kbのサイズ範囲のゲノムDNAを一般的にもたらす。まったく対照的に、サトウダイコン又はインパチェンスの核をアルギネート球体内で溶解する(lysing)と、大部分の断片は200~800kbである200kb~メガベースサイズの範囲のDNAをもたらす。従って、核をアルギネート内で溶解する(lysing)ことで、ゲノムDNAが分解から有意に保護される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】