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特表2023-505713全身性炎症を検出および監視するための非侵襲的アッセイ
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  • 特表-全身性炎症を検出および監視するための非侵襲的アッセイ 図1A
  • 特表-全身性炎症を検出および監視するための非侵襲的アッセイ 図1B
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  • 特表-全身性炎症を検出および監視するための非侵襲的アッセイ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(54)【発明の名称】全身性炎症を検出および監視するための非侵襲的アッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230203BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230203BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230203BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230203BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230203BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230203BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/68 ZNA
C07K16/18
C07K14/47
C12N15/12
C12P21/08
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535641
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 IL2020051278
(87)【国際公開番号】W WO2021117045
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/946,438
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522230750
【氏名又は名称】イチロフ テック リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】503202608
【氏名又は名称】イエダ リサーチ アンド ディベロプメント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シェンハー-ツァールファティ,シャニ
(72)【発明者】
【氏名】ベルリナー,シュロモ アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ロゴースキ,オリ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,エヤル
(72)【発明者】
【氏名】シルバーマン,アディ
(72)【発明者】
【氏名】レビン,イシャイ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB03
2G045DA36
2G045FB01
2G045FB03
2G045FB15
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QS32
4B063QS33
4B063QX02
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA13
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、全身性炎症を検出および監視するためのアッセイおよび方法を提供する。特に、その実施形態における本発明は、炎症のレベルの非侵襲的な決定のための尿中バイオマーカーの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2歳のヒト被験者における重度の全身性炎症の有無を検出する方法であって:
a.前記被験者の尿試料中で、SAA2、SAA1、およびGUCA2B遺伝子産物からなる群より選択される1個または複数の遺伝子産物のレベルを決定すること、ならびに
b.各遺伝子産物の前記レベルを健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較すること
を含み、
前記1個または複数の遺伝子産物の健康な対照のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルが、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する、方法。
【請求項2】
少なくとも2個の遺伝子産物のそれぞれの健康な対照のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルが、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2個の遺伝子産物が、SAA2およびSAA1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
SAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物のそれぞれの健康な対照のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルが、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子産物がSAA2遺伝子産物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子産物が、アミノ酸配列GNYDAAKRGPGGAW(配列番号1)を有するペプチドである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
健康な対照の被験者におけるSAA1のレベルと比較して前記試料中のその前記レベルにおける少なくとも50%の増加が、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子産物の前記レベルを決定することが、イムノアッセイにより実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記イムノアッセイが、ディップスティック、ELISA、抗体アレイ、抗体チップ、ラテラルフローテスト、およびマルチプレックスビーズイムノアッセイからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記被験者が、感染症に罹患している、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記被験者が、自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、慢性炎症性疾患、および癌からなる群より選択される状態に罹患している、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
さらに、重度の全身性炎症を有すると検出された被験者に処置を提供することを含み、前記処置は、抗生物質、抗炎症剤、免疫抑制剤、およびコルチコステロイドからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記被験者が成人である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
尿試料中で、表1および表4~表6に列記されている遺伝子産物からなる群より、または表9~表14のいずれか1つから選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを特異的に検出および/または決定する手段を含む、製造品。
【請求項15】
前記遺伝子産物が、表1、表4、表5、表6、および表9~表14の少なくとも1つに記載されているすべての前記遺伝子産物である、請求項14に記載の製造品。
【請求項16】
ディップスティック、抗体アレイ、抗体チップ、またはラテラルフローテストの形態である、請求項14または15に記載の製造品。
【請求項17】
請求項13から16のいずれか一項に記載の製造品を含む、診断キット。
【請求項18】
さらに、前記尿試料を回収するための容器および/または前記試料中の各遺伝子産物の前記レベルを、健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較するための手段を含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記手段が、前記遺伝子産物に特異的な抗体を含む、請求項17に記載のキット。
【請求項20】
前記遺伝子産物が、SAA2、SAA1、およびGUCA2Bからなる群より選択される1個または複数の遺伝子産物を含む、請求項17に記載のキット。
【請求項21】
配列番号1(GNYDAAKRGPGGAW)のSAA2遺伝子産物に対する抗体を含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
アミノ酸配列GNYDAAKRGPGGAW(配列番号1)の単離ペプチド。
【請求項23】
請求項22に記載の単離ペプチドおよび異種部分を含む、コンジュゲート。
【請求項24】
請求項22に記載の単離ペプチドをコードする、核酸分子。
【請求項25】
請求項22に記載のペプチドに対する抗体を生産する方法であって、前記ペプチドを用いる免疫性付与および得られる抗体の単離を含む、方法。
【請求項26】
それを必要とする被験者における全身性炎症の有無を検出する方法であって:
a.前記被験者の尿試料中で、表6および表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記少なくとも3個の遺伝子産物に関して前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること、ならびに
b.各遺伝子産物の前記レベルを参照の対照尿試料中のそのレベルに対応する各値と比較し、それによって、前記参照の対照試料の前記尿中プロテオミクスシグネチャと比較して前記被験者の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ること
を含む、方法。
【請求項27】
前記参照の対照試料が、健康な対照の被験者に対応し、前記健康な対照の前記尿中プロテオミクスシグネチャとは実質的に異なる尿中プロテオミクスシグネチャが、前記被験者が全身性炎症を有していることを示唆する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記参照の対照試料が、健康な対照の被験者に対応し、前記対照試料中の前記遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャが、前記被験者が全身性炎症を有していることを示唆する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
さらに、前記被験者における全身性炎症のレベルを決定することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記炎症が、軽度、中等度および重度からなる群より選択される、請求項26または29に記載の方法。
【請求項31】
前記被験者の前記尿試料が、第1の時点で前記被験者から得られる第1の尿試料であり、前記参照の対照試料が、前記被験者から前記第1の尿試料を得る時点よりも前の時点で前記同じ被験者から得られた第2の尿試料であり、前記方法が、前記被験者の炎症状態における変化を監視するために使用される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記前の時点での少なくとも3個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャが、前記被験者における全身性炎症の悪化を示唆し、前記前の時点での前記少なくとも3個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に低下したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャが、前記被験者における全身性炎症の改善を示唆する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
さらに、前記被験者に提供された処置を調節することを含み、前記被験者における全身性炎症の悪化は、前記処置が調節される必要があることを示唆する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
さらに、決定された全身性炎症の前記レベルに基づいて前記被験者のための処置を決定することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
さらに、前記処置を前記被験者に提供することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記処置が、抗生物質、抗炎症剤、免疫抑制剤、およびコルチコステロイドからなる群より選択される、請求項33または35に記載の方法。
【請求項37】
前記試料中の表6および表10~表14のいずれか1つに列記されている前記遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも5個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記少なくとも5個の遺伝子産物に関して前記被験者の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む、請求項26から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも3個の遺伝子産物が、表6に列記されている前記遺伝子産物からなる群より選択される、請求項26から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記試料中の表6に列記されているすべての前記遺伝子産物の前記レベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して前記被験者の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも3個の遺伝子産物が、表10~表14のいずれか1つに列記されている前記遺伝子産物からなる群より選択される、請求項26から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記試料中で、表10、表11、表12、表13または表14に列記されているすべての前記遺伝子産物の前記レベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して前記被験者の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
SAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物の有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャが、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する、請求項26に記載の方法。
【請求項43】
重度の全身性炎症の有無を検出する方法であって:
a.被験者の尿試料中で、表4、表5および表9のいずれか1つに列記されている前記遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記少なくとも3個の遺伝子産物に関して前記被験者の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ること、ならびに
b.各遺伝子産物の前記レベルを健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較し、それによって、前記健康な対照の被験者の前記尿中プロテオミクスシグネチャと比較して前記被験者の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ること
を含む、方法。
【請求項44】
前記健康な対照の尿中プロテオミクスシグネチャとは実質的に異なる前記尿中プロテオミクスシグネチャが、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記遺伝子産物の対照のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルによって特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャが、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記炎症が、>100mg/Lの血中CRPレベルに関連付けられており、前記遺伝子産物が、表5または表9に列記されている前記遺伝子産物からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記試料中の表9に列記されているすべての前記遺伝子産物の前記レベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して前記被験者の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記試料中の表5に列記されているすべての前記遺伝子産物の前記レベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して前記被験者の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記炎症が、>120mg/Lの血中CRPレベルに関連付けられており、前記遺伝子産物が、表4に列記されている前記遺伝子産物からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記試料中の表4に列記されているすべての前記遺伝子産物の前記レベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して前記被験者の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
尿試料を分析するための方法であって:
a.試料中の表1から選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記少なくとも3個の遺伝子産物に関して前記試料の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ること、ならびに
b.各遺伝子産物の前記レベルを参照の対照尿試料中のその尿中レベルに対応する前記各値と比較し、それによって、前記対照試料の前記尿中プロテオミクスシグネチャと比較して前記試料の前記尿中プロテオミクスシグネチャを得ること
を含む、方法。
【請求項52】
ステップbが、学習およびパターン認識アルゴリズムを使用して実行される、請求項26から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記被験者がヒトである、請求項26から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記被験者が成人である、請求項26から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記遺伝産物の前記レベルを決定することが、イムノアッセイにより実行される、請求項26から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記イムノアッセイが、ディップスティック、ELISA、抗体アレイ、抗体チップ、ラテラルフローテスト、およびマルチプレックスビーズイムノアッセイからなる群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記被験者が、自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、慢性炎症性疾患、および癌からなる群より選択される感染症または状態に罹患している、請求項26から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
さらに、前記炎症を有すると検出された前記被験者のために疾患の予後および/または対応する処置を提供することを含む、請求項26から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記被験者が、免疫賦活処置を受けており、前記方法が、サイトカイン放出症候群(CRS)の存在、またはその発症のリスクを評価するために使用される、請求項26または43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記被験者が、免疫賦活処置を受けており、前記方法が、処置の有効性を決定するために使用される、請求項26または43のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身性炎症を検出および監視するためのアッセイおよび方法を提供する。特に、その実施形態における本発明は、炎症のレベルの非侵襲的評価のための尿中バイオマーカーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
傷害、感染または刺激に対する体組織の生物学的応答は、典型的に、炎症、細胞および微小血管イベントのカスケードが感染を根絶し、損傷した組織を除去して新たな組織を生成するのに役立つ自然免疫応答により特徴づけられる。このプロセス中、微小血管における向上した透過性により、好中球および単核細胞が血管内コンパートメントを離れ、種々の抗菌活性を実行して損傷を根絶することを可能にする。炎症は、その特定の病因および経過に応じて、局所的または全身的、および急性または慢性として特徴づけることができる。
【0003】
敗血症は、調節不全の全身性炎症により特徴づけられる重度の感染症を複雑にする臨床症候群であり、さらに一層、重度の組織傷害、臓器不全および死に進行する可能性がある。敗血症性ショックは、敗血症の重症型であり、循環および/または細胞代謝の異常が増加することにより死亡率が有意に増加する。ほとんどの場合細菌である感染源を可能な限り早期に制御する必要があるので、敗血症の早期の認識および処置は、生存率を改善するための鍵となる。
【0004】
バイタルサインおよび検査結果の特定の異常により定義される全身性炎症反応症候群(SIRS)の概念は、非特異的損傷に対する臨床的応答を定義するために1992年に導入され、文書化されているか推定される感染症を伴うSIRSは、敗血症として定義されている。しかし、SIRS基準は、そのような概念モデルを使用するための主な考慮事項である、増加した死亡リスクに対する感受性および特異性が欠落していると認められている。特定のサイトカインおよび急性期タンパク質(APP)、特にC反応性タンパク質(CRP)の血中レベルもまた、全身性炎症のレベルを評価するために使用される。
【0005】
APPは、血漿タンパク質であり、その合成および循環濃度は、炎症、感染および組織傷害のほとんどの形態に応じて、適応的に調節される。急性期応答は、自然免疫系の一部とみなされ、APPは、発熱、白血球増加症、増加したコルチゾール、減少したチロキシン、減少した血清鉄、およびその他多くのそのような全身的影響を媒介する役割を果たす。APPは、陽性(血清濃度の上昇、例えばCRP、補体因子、血清アミロイドAおよびフェリチン)または陰性(血清濃度の低下、例えばアルブミン、トランスフェリン、およびトランスサイレチン)に分類することができる。
【0006】
血液試料中のタンパク質マーカーレベルを調べるイムノアッセイを含む、被験者における炎症負荷を評価するための方法の開発は、進行中の取り組みであり、種々の診断アッセイが開発中である。
【0007】
国際公開第2019/027910号は、特に関節リウマチにおいて炎症性疾患評価のために調節されたマルチバイオマーカー疾患活動性スコアを示唆する。特に、炎症性疾患療法に対する応答を評価するための方法が提供される。方法は、イムノアッセイを実行して炎症性バイオマーカーの発現についての定量的データに基づいてスコアを生成し、関節リウマチなどの炎症性疾患における疾患活動性を評価することを含む。
【0008】
米国特許第9,200,324号明細書は、それらの発現を測定するためのキットに加えて、炎症性疾患、特に関節リウマチの診断および評価に有用なバイオマーカーを対象とする。また、バイオマーカーに基づく予測モデル、ならびにコンピュータシステム、および試料のスコアリングおよび場合によっては分類するためのモデルのソフトウェアの実施形態も提供される。
【0009】
欧州特許第1836493号明細書は、SIRS、敗血症、重度の敗血症、敗血症ショック、またはMODSと診断された、またはそれらに罹患している疑いがある被験者に治療レジメンを割り当てる、および/または予後を割り当てる方法に関し、1つまたは複数の被験者由来のマーカーの存在または量に関連する1つまたは複数の検出可能な信号を提供する前記被験者からの試料に対してアッセイ方法を実行すること、ならびに前記アッセイ方法から得られる信号(複数を含む)を、前記被験者の治療レジメンに従うか、除外するかに相関させること、および/または前記被験者に予後を割り当てることを含む。特に、刊行物は、血液マーカーの種々のパネルの評価を開示する。
【0010】
Ashkenazi-Hoffnung et al.2018(Eur J Clin Microbiol Infect Dis.Jul;37(7):1361-1371)は、3個の血液タンパク質:腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL)、インターフェロンガンマ誘導タンパク質-10(IP-10)、およびC反応性タンパク質(CRP)の組み合わせに基づいて、呼吸器感染症および原因がない発熱がある患者の細菌性疾患およびウイルス性疾患の間を識別するための宿主タンパク質シグネチャを開示する。米国特許出願公開第2017/0269081号明細書は、被験者に由来する試料において第1群の決定因子から選択された第1決定因子および第2群の決定因子から選択された第2決定因子の濃度を測定することを含む、被験者における感染症のタイプを決定する方法に関し、前記濃度は、感染症のタイプを示唆する。特に、刊行物は、TRAIL、IP-10およびCRPを含む血清試料中で測定された複数の決定因子の発現プロファイルの同定を開示する。
【0011】
尿中バイオマーカーは、診断用途、特に腎損傷または腎疾患を検出または評価するためにも調査されている。例えば、米国特許出願公開第2015/0038595号明細書は、腎損傷および腎不全の診断および予後のための方法および組成物に関し、Rodriguez-Ortiz et al.,(2018,Sci Rep 8(1):15940)は、慢性腎臓病の尿中バイオマーカーに関する。ある特定の尿中タンパク質も、例えば、欧州特許第2711710号明細書、Jortani et al.(2004,J Clin Lab Anal.;18(6):289-95)、Denz et al.(1990,Klin Wochenschr.Feb 15;68(4):218-22)、およびWhetton et al.(2020,J Proteome Res acs.jproteome.0c00326)において、感染症の状況でマーカーとして評価された。新生児における潜在的なバイオマーカーとしての尿中タンパク質の評価は、例えばReisinger et al.(PLoS One 9.3(2014))により報告されており、特に血清血小板数と組み合わせた場合、新生児における中等度のNECから重度の壊死性腸炎(NEC)を区別する際のマーカーとして尿中SAAを示唆する。新生児NECおよび機能的に未熟な新生児腎臓の状況以外でのこれらの知見の重要性は不明である。
【0012】
しかし、単純で非侵襲的な診断アッセイを開発する必要性にも関わらず、現在、臨床診療における成人被験者の尿中タンパク質の同定に基づく炎症の評価についての試験はない。特に、炎症状態についてのバイオマーカーとして提案されているものを含む、血液タンパク質のレベルは、尿中のそれらのレベルと緊密には相関していない。これは、成熟腎臓における糸球体濾過および尿細管吸収などのプロセスに起因する可能性があり、ほとんどの血漿タンパク質の血液への放出を制限する原因となる。
【0013】
被験者における全身性炎症のレベルを確認するための、非侵襲的で迅速な方法について満たされていない必要性が残っている。処置の緊急性を決定し、治療が緊急に必要な患者を即座に処置する能力、ならびに自己使用に適した単純なアッセイにより処置中の治療有効性を判断する能力は、非常に有利であろう。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、全身性炎症を検出および監視するためのアッセイおよび方法を提供する。特に、その実施形態における本発明は、炎症の重症度または強度の早期の非侵襲的決定のため、およびそれに伴うリスクの評価のための尿中バイオマーカーの使用に関する。
【0015】
本発明は、部分的に、全身性炎症を評価するために予想外に有効であると決定された、尿中のタンパク質バイオマーカーの測定に基づく独特のプロテオミクスシグネチャの驚くべき発見に基づく。驚いたことに、本明細書に示されるように、重度の全身性炎症を同定することができる診断マーカーおよび分類子を開発した。さらに、本明細書に示されるように、高度な予測モデルが構築され、高悪性度の重症例だけでなく、軽度および中等度の炎症の兆候を示す患者の全身性炎症のレベルを評価することができる。対比において、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)およびCXCL10(IP-10)を含む血液マーカーとして、これまで使用されるか提案されている他のタンパク質は、尿中マーカーとしての使用に適していないことが認められた。
【0016】
本発明はさらに、部分的に、血液などの他の試料中に認めることが可能である全長ポリペプチドよりもむしろ、ある特定の遺伝子産物が内因性ペプチドの形で尿試料中に存在するという発見に基づく。驚いたことに、全身性炎症のレベルを高精度で反映することができる血清アミロイドA2(SAA2)由来ペプチドが同定された。
【0017】
したがって、結果は、例えば、疾患の予後、疾患の合併症を発症するリスクが高い被験者の早期同定、および処置の有効性の評価に有用である全身性炎症のレベルにおける変化の検出および監視を提供する。本明細書で提示された結果は、敗血症患者などの急性期炎症反応を進行させるリスクがある患者、ならびに、例えば、炎症の発生および疾患の再発を進行させるリスクがある、リウマチ性疾患および自己免疫性疾患を有する患者の自己検出を、採血する必要性なしで可能にする。
【0018】
したがって、全身性炎症およびそれに関連する状態の診断、予後、監視および管理に有用である、非侵襲的診断アッセイおよび方法が、本明細書に開示される。
【0019】
本発明の実施形態によれば、尿試料を分析する方法が提供される。いくらかの実施形態において、本発明の方法は、以下で詳述するように、被験者の尿試料中で、表1から選択されるタンパク質マーカー(例えば、3個またはそれ以上の遺伝子産物)の少なくとも1個、典型的には複数のレベルを決定するステップを含む。表4~6および表9~14は、以下の実施例セクションにおいて詳述するように、表1の遺伝子産物から選択される特異的バイオマーカーの組み合わせの詳細を提供する。
【0020】
【表1】
【0021】
複数のマーカーのレベルは、本発明の実施形態において決定され、それによって、前記複数のマーカーに関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定する。その後、各マーカーのレベルを参照値と比較することができ、それによって、前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを対照の被験者の尿中プロテオミクスシグネチャと比較することができる。
【0022】
したがって、いくらかの実施形態において:
a.試料中の表1から選択される少なくとも3個(例えば、3個~5個、5個~10個または10個~15個)の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも3個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること、および
b.各遺伝子産物のレベルを健康な対照の尿試料中のそのレベルに対応する各値と比較し、それによって、対照試料の尿中プロテオミクスシグネチャと比較して前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること
を含む、尿試料を分析するための方法が提供される。
【0023】
代表的な実施形態によれば、遺伝子産物は、表4~表6または表9~表14のいずれか1つから選択され、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態において、前記遺伝子産物は、SAA2、SAA1、およびGUCA2B遺伝子産物である。
【0024】
一態様において:
a.被験者の尿試料中で、表6および表10~表14のいずれか1つで提示されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも3個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること、
b.各遺伝子産物のレベルを参照の対照尿試料中のそのレベルに対応する各値と比較し、それによって、参照の対照試料の尿中プロテオミクスシグネチャと比較して前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること
を含む、それを必要とする被験者における全身性炎症の有無を検出する方法が提供される。
【0025】
一実施形態において、対照試料は、健康な対照の被験者に対応する。別の実施形態において、健康な対照の尿中プロテオミクスシグネチャとは実質的に異なる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、対照試料は、健康な対照の被験者に対応し、前記対照試料中の前記遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、対照試料は、炎症の所定のレベル(例えば、軽度、中等度または重度)を有する被験者に対応する。別の実施形態において、対照試料は、前記被験者から尿試料を得る時点(例えば、前記被験者の炎症状態における変化を監視するため)より前の時点で前記被験者から得ている。別の実施形態において、方法は、試料中の表6および表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも5個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも5個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む。別の実施形態において、方法は、試料中の表6に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む。別の実施形態において、少なくとも3個の遺伝子産物は、表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される。別の実施形態において、方法は、試料中で、表10、表11、表12、表13または表14に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む。別の実施形態において、SAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物の有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。
【0026】
別の実施形態において、方法は、前記被験者における全身性炎症のレベルを決定することをさらに含む。種々の実施形態において、炎症は、軽度、中等度および重度からなる群より選択される。別の実施形態において、方法は、決定された全身性炎症のレベルに基づいて前記被験者のための処置を決定することをさらに含む。例えば、本発明の方法は、入院または他のタイプの処置または医学的介入の必要性を評価するために使用される可能性がある。別の実施形態において、方法は、決定された全身性炎症のレベルに適した処置を前記被験者に提供することをさらに含む。ある特定の非限定例によれば、処置は、抗生物質、抗炎症剤、免疫抑制剤、またはコルチコステロイドを含む可能性がある。例えば、限定されないが、処置を決定することには、適切な投与量を決定することが含まれる可能性があり、例えば、より高い投与量は、中等度の炎症と比較して重度の炎症において使用され、投与量は、軽度の炎症の場合、さらに低減される可能性がある。別の非限定例において、重症度の低い場合と比較して重度の場合に、より強力な免疫抑制薬が使用される。
【0027】
別の実施形態において、本発明の方法は、前記被験者に疾患の予後を提供するために使用される可能性がある。別の実施形態において、本発明の方法は、炎症関連合併症(例えば、脳卒中または心血管疾患)を発症するリスクを評価するために使用される可能性がある。別の実施形態において、本発明の方法は、前記被験者における処置の有効性および/または安全性を評価するために使用される。例えば、一実施形態において、被験者は、免疫賦活処置を受けており、その方法は、サイトカイン放出症候群(CRS)の存在、またはその発症のリスクを評価するために使用される。別の実施形態において、被験者は、免疫抑制処置を受けており、その方法は、処置の有効性(例えば、炎症または自己免疫性の阻害)を決定するために使用される。別の実施形態において、方法は、例えば、放射線療法または化学療法を受けている癌患者において、感染の早期検出のために使用される。
【0028】
別の態様において:
a.被験者から、第1の時点で第1の尿試料、および第2の時点で第2の尿試料を得ること(第1の時点は、第2の時点に先行する)、
b.各試料中の表6および表10~表14のいずれか1つに提示されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記第1および第2の時点での少なくとも3個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定すること、
c.前記第1の時点での各遺伝子産物のレベルを前記第2の時点でのそのレベルに対応する各値と比較し、それによって、前記第1および第2の時点での前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを比較すること
を含む、それを必要とする被験者における全身性炎症を監視する方法が提供され、
第1の時点での少なくとも3個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる第2の時点での尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者における全身性炎症の悪化を示唆し、第1の時点での少なくとも3個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に低下したレベルにより特徴づけられる第2の時点での尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者における全身性炎症の改善を示唆する。
【0029】
別の実施形態において、本発明の方法は、上昇した血中CRPレベルに関連付けられている状態に罹患している被験者の疾患の進行を非侵襲的に予測し、評価し、そのための処置を決定および/または調節するために使用される。
【0030】
別の態様において、
a.被験者から、第1の時点で第1の尿試料、および第2の時点で第2の尿試料を得ること(第1の時点は、第2の時点に先行する)、
b.各試料中の表6および表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記第1および第2の時点での少なくとも3個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定すること、
c.前記第1の時点での各遺伝子産物のレベルを前記第2の時点でのそのレベルに対応する各値と比較し、それによって、前記第1および第2の時点での前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを比較すること
を含む、それを必要とする被験者における上昇した血中CRPレベルに関連付けられている状態の進行を非侵襲的に監視する方法が提供され、
第1の時点での少なくとも3個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる第2の時点での尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者における状態の悪化を示唆し、第1の時点での少なくとも3個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に低下したレベルにより特徴づけられる第2の時点での尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者における前記状態の改善を示唆する。
【0031】
別の態様において、本発明は:
a.被験者の尿試料中で、表4、表5および表9のいずれか1つに提示されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも3個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること、
b.各遺伝子産物のレベルを健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較し、それによって、健康な対照の被験者の尿中プロテオミクスシグネチャと比較して前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること
を含む、重度の全身性炎症の有無を検出する方法を提供する。
【0032】
別の実施形態において、健康な対照の尿中プロテオミクスシグネチャとは実質的に異なる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、前記遺伝子産物の対照のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。一実施形態において、遺伝子産物は、表4に提示されている遺伝子産物、例えば、少なくとも3個、4個または5個の表4に提示されている遺伝子産物からなる群より選択される。別の実施形態において、遺伝子産物は、表5に提示されている遺伝子産物、例えば、少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の表5に提示されている遺伝子産物からなる群より選択される。特定の実施形態において、前記遺伝子産物はSAA2を含む。別の特定の実施形態において、前記遺伝子産物はSAA1を含む、別の特定の実施形態において、前記遺伝子産物は、SAA1およびSAA2を含む。別の実施形態において、遺伝子産物は、CHGA、PLAU、SAA1およびSAA2遺伝子産物からなる群より選択される。別の実施形態において、遺伝子産物は、CHGA、PLAU、SAA1およびSAA2遺伝子産物を含む。別の実施形態において、遺伝子産物は、CHGA、PLAU、およびSAA1遺伝子産物を含む。
【0033】
別の実施形態において、前記炎症は、>120mg/Lの血中CRPレベルに関連付けられており、遺伝子産物は、表4に提示されている遺伝子産物からなる群より選択される。別の実施形態において、方法は、試料中の表4に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む。別の実施形態において、前記炎症は、>100mg/Lの血中CRPレベルに関連付けられており、遺伝子産物は、表5に提示されている遺伝子産物からなる群より選択される。別の実施形態において、方法は、試料中の表5に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む。別の実施形態において、前記炎症は、>100mg/Lの血中CRPレベルに関連付けられており、遺伝子産物は、表5または表9に列記されている遺伝子産物からなる群より選択される。別の実施形態において、方法は、試料中の表9に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0034】
本発明の方法の他の実施形態において、被験者には、少なくとも2つの全身性炎症反応症候群(SIRS)基準が提示される。別の実施形態において、被験者は、敗血症を有する疑いがある。別の実施形態において、炎症は急性である。別の実施形態において、炎症は慢性である。別の実施形態において、被験者は、感染症(例えば、細菌性またはウイルス性)に罹患している。別の実施形態において、前記被験者は、自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、慢性炎症性疾患、および癌からなる群より選択される状態に罹患している。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0035】
本発明の方法の別の実施形態において、前記遺伝子産物のレベルを決定することは、イムノアッセイにより実行される。種々の実施形態において、イムノアッセイは、ディップスティック、ELISA(種々のマルチプレックスELISA技術を含む)、抗体アレイ、抗体チップ、ラテラルフローテスト、およびマルチプレックスビーズイムノアッセイからなる群より選択される。別の実施形態において、前記遺伝子産物のレベルを決定することは、質量分析により、または分光光度計を使用して実行される。
【0036】
本発明の方法の別の実施形態において、ステップb.は、学習およびパターン認識アルゴリズムを使用して実行される。例えば、アルゴリズムには、勾配ブースティングツリー、ランダムフォレスト、正則化回帰、多重線形回帰(MLR)、主成分回帰(PCR)、部分的最小二乗(PLS)、線形判別分析(LDA)を含む判別関数分析(DFA)、最近傍探索、人工ニューラルネットワーク、多層パーセプトロン(MLP)、一般回帰ニューラルネットワーク(GRNN)、およびそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない教師付き分類アルゴリズム、または、K平均法、スペクトラルクラスタリング、階層的クラスタリング、ガウス混合モデル、およびそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない教師なしクラスタリングアルゴリズムが含まれ得るが、それらに限定されない。特定の実施形態において、アルゴリズムは、勾配ブースティングツリー、ランダムフォレスト、正則化回帰、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。別の実施形態において、ステップb.は、例えば、本明細書に開示されるようなアルゴリズムを使用するデータ解析のために提供されているシステムを使用して、コンピュータ実装方法により実行される。
【0037】
本発明の方法の別の実施形態において、ステップb.は、各遺伝子産物のレベルを所定のカットオフと比較することを含む。別の実施形態において、対照レベルは、関連する状態と診断された少なくとも1人の被験者(例えば、健康な被験者または特定の重症度の炎症にある被験者)の尿試料から、前記状態と診断された一連の被験者から得られた対照試料のパネルから、または前記状態と診断された被験者からの保存された一連のデータから決定される。
【0038】
典型的に、本発明の方法による被験者はヒトである。別の実施形態において、前記被験者は、少なくとも2歳である。別の実施形態において、前記被験者は成人である。
【0039】
別の態様において、本発明は:
a.被験者の尿試料中で、SAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物からなる群より選択される1個または複数の遺伝子産物のレベルを決定すること、ならびに
b.各遺伝子産物のレベルを健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較すること
を含む、少なくとも2歳のヒト被験者における重度の全身性炎症の有無を決定する方法を提供し、健康な対照の被験者における1個または複数の遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。
【0040】
特定の実施形態において、遺伝子産物はSAA2である。さらなる特定の実施形態において、前記遺伝子産物は、アミノ酸配列GNYDAAKRGPGGAW(配列番号1)を有するペプチドである。別の特定の実施形態において、遺伝子産物はSAA1である。さらに別の特定の実施形態において、遺伝子産物はGUCA2Bである。別の実施形態において、健康な対照における少なくとも2個の遺伝子産物の各レベルと比較して、それらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。別の特定の実施形態において、前記少なくとも2個の遺伝子産物はSAA2を含む。別の特定の実施形態において、少なくとも2個の遺伝子産物はSAA1を含む。別の特定の実施形態において、少なくとも2個の遺伝子産物はSAA1およびSAA2である。さらに別の実施形態において、健康な対照におけるSAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に増加したレベル(例えば、少なくとも30%~50%の増加)は、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0041】
別の実施形態において、前記遺伝子産物のレベルを決定することは、イムノアッセイにより実行される。別の実施形態において、イムノアッセイは、ディップスティック、ELISA、抗体アレイ、抗体チップ、ラテラルフローテスト、およびマルチプレックスビーズイムノアッセイからなる群より選択される。別の実施形態において、被験者は、感染症に罹患している。別の実施形態において、被験者は、自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、慢性炎症性疾患、および癌からなる群より選択される状態に罹患している。別の実施形態において、方法は、重度の全身性炎症を有すると検出された被験者に処置を提供することをさらに含み、処置は、抗生物質、抗炎症剤、免疫抑制剤、およびコルチコステロイドからなる群より選択される。別の実施形態において、前記被験者は成人である。
【0042】
本明細書に開示されるように、本発明の実施形態による方法は、確認テストの結果を待つ必要なしで、症状の発症から数時間以内に正確な診断および処置の割り当てを行うことができるように、炎症状態のための早期処置を提供する。例えば、全身性炎症または本明細書に開示されるような状態の兆候または症状を提示している被験者は、迅速な回答を(例えば、数分以内に)好都合に提供する可能性がある本発明の実施形態によるアッセイおよび方法を用いて試験することができる。したがって、正確な処置の割り当ては、疾患がより重度で生命を脅かす可能性のある段階に進行する前、疾患の経過の初期(例えば、疾患の症状の発症の1時間~4時間以内または1時間~24時間以内)に好都合に提供される可能性がある。
【0043】
別の態様において、本発明は、尿試料中で、表1および表4~表6に列記されている遺伝子産物からなる群より、または表9~表14のいずれか1つから選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを特異的に検出および/または決定するための手段を含む製造品を提供する。一実施形態において、手段は、遺伝子産物に特異的な抗体を含む。別の実施形態において、前記遺伝子産物は、表1、表4、表5、表6、および表9~表14の少なくとも1つに記載されているすべての遺伝子産物であり、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態において、前記遺伝子産物は、SAA2、SAA1、およびGUCA2B遺伝子産物である。別の特定の実施形態において、手段は、配列番号1のペプチドに対する抗体を含む。種々の実施形態において、製造品は、ディップスティック、抗体アレイ、抗体チップ、ラテラルフローテストなどの形態である。
【0044】
別の態様において、製造品を含む診断キットが提供される。一実施形態において、手段は、遺伝子産物に特異的な抗体を含む。別の実施形態において、キットは、尿試料を回収するための容器をさらに含む。別の実施形態において、前記キットは、試料中の各遺伝子産物のレベルを、対照試料中のその尿中レベルに対応する各値と比較するための手段をさらに含む。別の実施形態において、前記キットは、取扱説明書、例えば、各遺伝子産物のレベルを対照の尿試料中のそのレベルに対応する各値と比較し、それによって、前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを対照試料の尿中プロテオミクスシグネチャと比較し、全身性炎症を検出、評価または監視するための指示書をさらに含む。別の実施形態において、キットは、参照の対照をさらに含む。別の実施形態において、キットは、例えば本明細書に記載されるように、適切な処置をさらに含む。別の実施形態において、キットは、SAA2、SAA1、およびGUCA2Bからなる群より選択される1個または複数の遺伝子産物に対する抗体を含む。別の実施形態において、キットは、配列番号1のSAA2遺伝子産物に対する抗体を含む。
【0045】
別の態様において、アミノ酸配列GNYDAAKRGPGGAW(配列番号1)の単離ペプチドが提供される。別の実施形態において、単離ペプチドおよび異種部分(例えば、担体タンパク質または標識)を含むコンジュゲートが提供される。別の実施形態において、単離ペプチドをコードする核酸分子が提供される。別の実施形態において、ペプチドを用いる免疫性付与および得られる抗体の単離を含む、ペプチドに対する抗体を生産する方法が提供される。
【0046】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の説明および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1A-図1C図1A図1Cは、>120mg/Lの血中CRPにより特徴づけられる重度の全身性炎症を同定することができる尿タンパク質のユニパラメトリック分析を示す。結果は、各被験者において測定された尿中レベルの2を底とする対数(log2(強度))として表された。図1A-GUCA2B;図1B-SAA1;図1C-SAA2。
図2図2は、>120mg/Lの血中CRPにより特徴づけられる重度の全身性炎症を同定することができるXGBOOSTアルゴリズムを使用するマルチパラメータ分析を示す。モデルにおける各尿中バイオマーカーの相対的重要性を示唆する。
図3図3は、>100mg/Lの血中CRPにより特徴づけられる重度の全身性炎症を同定することができるXGBOOSTアルゴリズムを使用するマルチパラメータ分析を示す。モデルにおける各尿中バイオマーカーの相対的重要性を示唆する。
図4図4は、測定した血中CRPレベルと尿中バイオマーカーシグネチャにより予測された血中CRPレベルとの相関曲線を示す。
図5図5は、尿中タンパク質マーカーSRGN、IGLV3-12、およびASGR1を使用する、>100mg/Lの血中CRPにより特徴づけられる重度の全身性炎症の同定のための受信者操作特性(ROC)曲線を表す。
図6図6は、尿中タンパク質マーカーSRGN、IGLV3-12、およびASGR1を使用する、>100mg/Lの血中CRPにより特徴づけられる重度の全身性炎症の同定のための決定木分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、全身性炎症を検出および監視するためのアッセイ、キットおよび方法を提供する。特に、本発明は、いくらかの実施形態において、炎症のレベルの非侵襲的評価のための尿中バイオマーカーの使用に関する。本発明はさらに、いくらかの実施形態において、炎症性合併症を発症するレベルおよび/またはリスクの非侵襲的評価に基づいて被験者への処置を決定および調節する手段に関する。
【0049】
一態様において:
a.被験者からの尿試料中で、表6よび表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも3個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること、ならびに
b.各遺伝子産物のレベルを参照の対照尿試料中のそのレベルに対応する各値と比較し、それによって、参照の対照試料の尿中プロテオミクスシグネチャと比較して前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること
を含む、それを必要とする被験者における全身性炎症の有無を検出する方法が提供される。
【0050】
いくらかの実施形態において、それを必要とする被験者における全身性炎症を決定する方法は:
a.被験者から尿試料を得ること、
b.試料中の表6および表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも3個の遺伝子産物に対する被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定すること、ならびに
c.各遺伝子産物のレベルを参照の対照尿試料中のそのレベルに対応する各値と比較し、それによって、前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを参照の対照試料の尿中プロテオミクスシグネチャと比較すること
を含む。
【0051】
一実施形態において、参照の対照試料は健康な対照の被験者に対応し、健康な対照の尿中プロテオミクスシグネチャとは実質的に異なる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、参照の対照試料は健康な対照の被験者に対応し、前記対照試料中の前記遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が全身性炎症を有していることを示唆する。
【0052】
別の実施形態において、方法は、前記被験者における全身性炎症のレベルを決定することをさらに含む。別の実施形態において、炎症は、軽度、中等度および重度からなる群より選択される。別の実施形態において、参照の対照試料は、前記被験者からの尿試料を得る時点より前の時点で前記被験者から得られており、方法は、前記被験者の炎症状態における変化を監視するために、さらに使用される。別の実施形態において、被験者の尿試料は、第1の時点で前記被験者から得られる第1の尿試料であり、参照の対照試料は、前記被験者から第1の尿試料を得る時点よりも前の時点で同じ被験者から得られる第2の尿試料であり、方法は、前記被験者の炎症状態における変化を監視するために使用される。別の実施形態において、前の時点での少なくとも3個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者における全身性炎症の悪化を示唆し、前の時点での少なくとも3個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に低下したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者における全身性炎症の改善を示唆する。
【0053】
別の実施形態において、方法は、前記被験者に提供される処置を調節することをさらに含み、前記被験者における全身性炎症の悪化は、処置を調節する必要があることを示唆する。別の実施形態において、方法は、決定された全身性炎症のレベルに基づいて前記被験者のための処置を決定することをさらに含む。別の実施形態において、方法は、前記被験者に処置を提供することをさらに含む。別の実施形態において、前記処置は、抗生物質、抗炎症剤、免疫抑制剤、およびコルチコステロイドからなる群より選択される。
【0054】
別の実施形態において、方法は、試料中の表6に列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも5個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも5個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定することを含む。別の実施形態において、方法は、試料中の表6に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定することを含む。別の実施形態において、方法は、試料中の表6および表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも5個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも5個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む。別の実施形態において、少なくとも3個の遺伝子産物は、表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される。別の実施形態において、方法は、試料中で、表10、表11、表12、表13または表14に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定することを含む。別の実施形態において、SAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物の有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。
【0055】
別の実施形態において、ステップbは、学習およびパターン認識アルゴリズムを使用して実行される。別の実施形態において、前記被験者はヒトである。別の実施形態において、前記被験者は成人である。別の実施形態において、前記遺伝子産物のレベルを決定することは、イムノアッセイにより実行される。別の実施形態において、イムノアッセイは、ディップスティック、ELISA、抗体アレイ、抗体チップ、ラテラルフローテスト、およびマルチプレックスビーズイムノアッセイからなる群より選択される。別の実施形態において、被験者は、感染症に罹患している。別の実施形態において、前記被験者は、自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、慢性炎症性疾患、および癌からなる群より選択される状態に罹患している。別の実施形態において、方法は、前記被験者に疾患の予後を提供することをさらに含む。別の実施形態において、被験者は、免疫賦活処置を受けており、その方法は、サイトカイン放出症候群(CRS)の存在、またはその発症のリスクを評価するために使用される。別の実施形態において、被験者は、免疫抑制処置を受けており、その方法は、処置の有効性を決定するために使用される。別の実施形態において、方法は、前記炎症が検出された前記被験者のための疾患の予後および/または対応する処置を提供することを含む。
【0056】
別の態様において:
a.被験者の尿試料中で、表4、表5および表9のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも3個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること、ならびに
b.各遺伝子産物のレベルを健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較し、それによって、健康な対照の被験者の尿中プロテオミクスシグネチャと比較して前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること
を含む、重度の全身性炎症の有無を検出する方法が提供される。
【0057】
いくらかの実施形態において、重度の全身性炎症を検出する方法は:
a.被験者から尿試料を得ること、
b.試料中の表4、表5および表9のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも3個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定すること、ならびに
c.各遺伝子産物のレベルを健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較し、それによって、前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを健康な対照の被験者の尿中プロテオミクスシグネチャと比較すること
を含む。
【0058】
別の実施形態において、健康な対照の尿中プロテオミクスシグネチャとは実質的に異なる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、前記対照試料中の前記遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、前記炎症は、>120mg/Lの血中CRPレベルに関連付けられており、遺伝子産物は、表4に列記されている遺伝子産物からなる群より選択される。特定の実施形態において、方法は、試料中の表4に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定する(または得る)ことを含む。別の実施形態において、前記炎症は、>100mg/Lの血中CRPレベルに関連付けられており、遺伝子産物は、表5または表9に列記されている遺伝子産物からなる群より選択される。特定の実施形態において、方法は、試料中の表5に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定する(または得る)ことを含む。別の実施形態において、方法は、試料中の表9に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む。別の実施形態において、方法は、試料中の表5に列記されているすべての遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む。
【0059】
別の実施形態において、ステップb.は、学習およびパターン認識アルゴリズムを使用して実行される。別の実施形態において、前記被験者はヒトである。別の実施形態において、前記被験者は成人である。別の実施形態において、前記遺伝子産物のレベルを決定することは、イムノアッセイにより実行される。別の実施形態において、イムノアッセイは、ディップスティック、ELISA、抗体アレイ、抗体チップ、ラテラルフローテスト、およびマルチプレックスビーズイムノアッセイからなる群より選択される。別の実施形態において、被験者は、感染症に罹患している。別の実施形態において、前記被験者は、自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、慢性炎症性疾患、および癌からなる群より選択される状態に罹患している。別の実施形態において、方法は、前記被験者に疾患の予後を提供することをさらに含む。別の実施形態において、被験者は、免疫賦活処置を受けており、その方法は、CRSの存在、またはその発症のリスクを評価するために使用される。別の実施形態において、被験者は、免疫抑制処置を受けており、その方法は、処置の有効性を決定するために使用される。別の実施形態において、方法は、前記炎症で検出された前記被験者のための疾患の予後および/または対応する処置を提供することを含む。
【0060】
別の態様において:
a.被験者の尿試料中で、SAA2、SAA1、およびGUCA2B遺伝子産物からなる群より選択される1個または複数の遺伝子産物のレベルを決定すること、ならびに
b.各遺伝子産物のレベルを健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較すること
を含む、少なくとも2歳のヒト被験者における重度の全身性炎症の有無を検出する方法が提供され、
1個または複数の遺伝子産物の健康な対照のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。
【0061】
いくらかの実施形態において、少なくとも2歳のヒト被験者における重度の全身性炎症を決定する方法は:
a.被験者から尿試料を得ること、
b.試料中のSAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物からなる群より選択される1個または複数の遺伝子産物のレベルを決定すること、ならびに
c.各遺伝子産物のレベルを健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較すること
を含み、
健康な対照の被験者における1個または複数の遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。
【0062】
別の実施形態において、健康な対照における少なくとも2個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、少なくとも2個の遺伝子産物の各健康な対照のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、少なくとも2個の遺伝子産物は、SAA1およびSAA2である。別の実施形態において、健康な対照におけるSAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、SAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物の各健康な対照のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、前記遺伝子産物はSAA2遺伝子産物である。別の実施形態において、前記遺伝子産物は、アミノ酸配列GNYDAAKRGPGGAW(配列番号1)を有するペプチドである。別の実施形態において、前記遺伝子産物はSAA1遺伝子産物である。別の実施形態において、前記遺伝子産物はGUCA2B遺伝子産物である。別の実施形態において、健康な対照の被験者における前記マーカー(例えば、SAA1)のレベルと比較して前記試料中のそのレベルにおける少なくとも50%の増加は、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、前記遺伝子産物のレベルを決定することは、イムノアッセイにより実行される。別の実施形態において、イムノアッセイは、ディップスティック、ELISA、抗体アレイ、抗体チップ、ラテラルフローテスト、およびマルチプレックスビーズイムノアッセイからなる群より選択される。別の実施形態において、被験者は、感染症、または自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、慢性炎症性疾患、および癌からなる群より選択される状態に罹患している。別の実施形態において、方法は、前記被験者に疾患の予後を提供することをさらに含む。別の実施形態において、前記被験者は成人である。別の実施形態において、方法は、重度の全身性炎症を有すると検出された被験者に処置を提供することをさらに含み、処置は、抗生物質、抗炎症薬、免疫抑制剤、およびコルチコステロイドからなる群より選択される。
【0063】
別の態様において:
a.試料中の表1から選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも3個の遺伝子産物に関して試料の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること、および
b.各遺伝子産物のレベルを参照の対照尿試料中のその尿中レベルに対応する各値と比較し、それによって、対照試料の尿中プロテオミクスシグネチャと比較して前記試料の尿中プロテオミクスシグネチャを得ること
を含む、尿試料を分析する方法が提供される。
【0064】
一実施形態において、ステップbは、学習およびパターン認識アルゴリズムを使用して実行される。別の実施形態において、前記被験者はヒトである。別の実施形態において、前記被験者は成人である。別の実施形態において、前記遺伝子産物のレベルを決定することは、イムノアッセイにより実行される。別の実施形態において、イムノアッセイは、ディップスティック、ELISA、抗体アレイ、抗体チップ、ラテラルフローテスト、およびマルチプレックスビーズイムノアッセイからなる群より選択される。別の実施形態において、被験者は、感染症、または自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、慢性炎症性疾患、および癌からなる群より選択される状態に罹患している。別の実施形態において、方法は、前記炎症が検出された前記被験者のための疾患の予後および/または対応する処置を提供することをさらに含む。
【0065】
別の態様において、本発明は、尿試料中で、表1および表4~表6に列記されている遺伝子産物からなる群または表9~表14のいずれか1つから選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを特異的に検出および決定するための手段を含む、製造品を提供する。別の実施形態において、前記遺伝子産物は、表1、表4、表5および表6の少なくとも1つに記載されているすべての遺伝子産物である。別の実施形態において、前記遺伝子は、表9~表14の少なくとも1つに記載されているすべての遺伝子産物である。別の実施形態において、前記製造品は、ディップスティック、抗体アレイ、抗体チップ、またはラテラルフローテストの形態である。
【0066】
別の実施形態において、製造品を含む診断キットが提供される。別の態様において、尿試料中で、表1および表4~表6に列記されている遺伝子産物からなる群、または表9~表14のいずれか1つから選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを特異的に検出および決定するための手段を含む、診断キットが提供される。別の実施形態において、手段は、遺伝子産物に特異的な抗体を含む。別の実施形態において、前記遺伝子産物は、表1、表4、表5および表6の少なくとも1つまたは表9~表14の少なくとも1つに記載されているすべての遺伝子産物である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0067】
別の実施形態において、キットは、尿試料を回収するための容器および/または試料中の各遺伝子産物のレベルを健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較するための手段をさらに含む。別の実施形態において、遺伝子産物は、SAA2、SAA1、およびGUCA2Bからなる群より選択される1個または複数の遺伝子産物を含む。別の実施形態において、キットは、配列番号1のSAA2遺伝子産物に対する抗体を含む。
【0068】
別の態様において、アミノ酸配列GNYDAAKRGPGGAW(配列番号1)の単離ペプチドが提供される。別の実施形態において、単離ペプチドおよび異種部分を含むコンジュゲートが提供される。別の実施形態において、単離ペプチドをコードする核酸分子が提供される。別の実施形態において、ペプチドを用いる免疫性付与および得られる抗体の単離を含む、ペプチドに対する抗体を生産する方法が提供される。
【0069】
被験者および試料
本発明の方法およびアッセイの種々の実施形態によれば、尿試料は、被験者から得られる。本発明の方法による被験者は、典型的にはヒト被験者である。いくらかの実施形態によれば、被験者は少なくとも2歳であるか、他の実施形態においては、成人被験者である。
【0070】
本発明の実施形態によれば、本明細書に開示されるような方法およびアッセイは、炎症に関連付けられている可能性がある種々の状態と診断されているか罹患している被験者における全身性炎症を検出、定量または監視するために使用することができる。一実施形態において、被験者は、感染症に罹患している。別の実施形態において、被験者は、非感染性炎症状態に罹患している可能性がある。例えば、被験者は、自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、または慢性炎症性疾患に罹患している(またはそれを有している疑いがある)可能性がある。別の実施形態において、被験者は癌に罹患している。
【0071】
種々の実施形態において、感染症は、細菌性、ウイルス性または寄生虫によるものであり得、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。例えば、限定されないが、被験者は、エプスタイン-バーウイルス(EBV)感染症、サイトメガロウイルス(CMV)感染症、麻疹、パラインフルエンザ型気管支炎、上気道感染症(URTI)、下気道感染症、発疹、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)感染症、胸骨炎、腹膜炎、肺炎、リケッチア感染症、蜂窩織炎、毛嚢炎、憩室炎、大腸炎、歯牙感染症、細菌性心内膜炎、筋肉炎、菌血症、上行性胆管炎、膿瘍(例えば、腹部、肝臓、肺または肛門周囲膿瘍)、細菌性咽頭炎、胆嚢炎、(例えば、壊疽性胆嚢炎)、蓄膿症、骨髄炎、耳下腺炎、喘息憎悪を伴うウイルス感染症、気管支炎、デング熱感染症、帯状疱疹感染症、感染性単核球症、インフルエンザ、髄膜炎、およびそれらに組み合わせからなる群より選択される細菌感染症またはウイルス感染症に罹患している可能性がある。他の代表的な実施形態において、被験者は、EBV感染症、CMV感染症、麻疹、パラインフルエンザ型気管支炎、URTI、下気道感染症、発疹、VZV感染症、胸骨炎、腹膜炎、肺炎、リケッチア感染症、蜂窩織炎、毛嚢炎、憩室炎、大腸炎、歯牙感染症、細菌性心内膜炎、筋肉炎、菌血症、上行性胆管炎、膿瘍、細菌性咽頭炎、胆嚢炎、蓄膿症、骨髄炎、耳下腺炎、気管支炎、デング熱感染症、帯状疱疹感染症、感染性単核球症、インフルエンザ、髄膜炎、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される細菌感染症またはウイルス感染症に罹患している可能性がある。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。したがって、感染の病因よりもむしろ炎症のレベルは、本発明による方法によって決定される。さらに他の実施形態において、被験者は、本明細書に開示されるように感染症に罹患していない。
【0072】
別の実施形態において、状態は自己免疫性疾患であり、被験者の免疫系が被験者自身の組織を攻撃する。代表的な自己免疫性疾患には、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、および炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)が含まれるが、それらに限定されない。これらの状態は、疾患の重症度と相関する宿主特異的抗体および/またはT細胞の存在により特徴づけられる自己免疫性炎症反応により典型的に媒介される。
【0073】
別の実施形態において、状態は、炎症性関節疾患であるリウマチ性疾患を含む。炎症性関節疾患は、結合組織および軟骨を含む、1つまたは複数の関節の任意の部分での損傷または部分的もしくは完全な破壊を指し、損傷は、任意の原因の構造的および/または機能的損傷を含み、関節における炎症により特徴づけられ、関節の痛み(関節痛)を引き起こす可能性があるか、可能性がない。一例において、炎症性関節損傷は、関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、または乾癬性関節炎などの関節炎により引き起こされる。
【0074】
別の実施形態において、前記障害は、慢性炎症性疾患である。慢性炎症性疾患は、病理学的後遺症を伴う持続的な炎症反応により特徴づけられる。この状態は、典型的に、単核細胞の浸潤、線維芽細胞および小血管の増殖、増加した結合組織、および組織破壊を伴う。非限定例には、特発性または非感染性慢性状態、例えば心膜炎または歯周炎が含まれる。
【0075】
他の実施形態において、状態は、新生物疾患(癌)である。種々の実施形態において、癌は、神経膠腫、白血病、子宮癌、リンパ腫、神経芽腫、膵癌、前立腺癌、腎明細胞癌、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、および乳腫瘍、ならびにメラノーマから選択される。そのような状態において、被験者は、化学療法、照射処置または他の免疫抑制処置のために感染症を発症する傾向がある可能性があるか、他の免疫調節処置のために炎症症状を示す傾向がある可能性がある。例えば、免疫療法(例えばCAR T細胞による)または免疫賦活処置は、サイトカイン放出症候群(CRS)の発症に関連付けられている可能性がある。
【0076】
いくらかの実施形態において、被験者は、腎損傷または疾患、例えば慢性腎臓病に罹患していない。いくらかの実施形態において、被験者は、尿路感染症に罹患していない(またはそれを有すると診断されていない)。他の実施形態において、被験者は、白血球尿を提示していない。他の実施形態において、被験者は、腎臓または泌尿生殖器の症状または兆候を提示していない。他の実施形態において、被験者は、糸球体濾過の障害または糸球体濾過の進行性の悪化を提示していない。他の特定の実施形態において、被験者は、結核または壊死性腸炎と診断されていないか、またはそれを有している疑いがない。別の特定の実施形態において、被験者は、COVID-19と診断されていないか、またはそれを有している疑いがない。さらに別の実施形態において、前記被験者は、COVID-19に罹患しているか、それを有している疑いがある。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0077】
本発明の実施形態において使用される尿試料は、当技術分野において既知であるように被験者から得られるか回収される。典型的には、尿試料は、本明細書に開示されるように、非侵襲的に得られる。一実施形態において、尿試料は、排尿試料である。特定の実施形態において、試料は、膀胱を擦るか、洗浄する前のステップなしで被験者から回収される。別の実施形態において、方法は、得られた尿試料を凍結し、遺伝子産物のレベルを決定するステップの前に試料を解凍するステップをさらに含む。便利には、尿試料は、分析を実行するまで-20℃または-80℃で維持することができる。さらに別の実施形態において、本発明は、回収から数時間以内(例えば、1時間~4時間または24時間以内)または数分以内(例えば、最大15分間、30分間または45分間)に試料がアッセイされる迅速な診断および予後の方法に関する。一実施形態において、試料は、沈殿がない尿試料である。別の実施形態において、尿試料は、実質的に残留の細胞がない。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0078】
種々の実施形態において、本発明の方法は、マーカー(複数を含む)のレベルを決定する前に尿試料を希釈することをさらに含む。一実施形態において、試料は、1:2から1:20の範囲内で、例えばPBSを使用して希釈される。別の実施形態において、試料は、例えば試料をイムノアッセイに供する前に1:4、1:6、1:8、1:10、1:15または1:20に希釈される。別の実施形態において、尿試料は、濃縮または濾過される。好ましい実施形態において、試料は、例えばミリポアのアミコンウルトラを使用して限外濾過される。当技術分野において既知であるように、限外濾過は、静水圧が液体を半透膜に対して押し付ける多様な膜濾過に関連する。膜のカットオフは、3KD、10KD、30KDまたはそれ以上から選択され得る。別の実施形態において、試料は、(例えばPBSを用いて)再構成される。別の実施形態において、再構成に続いて、尿試料は、(例えば試料をイムノアッセイに供する前に)2倍~10倍の範囲内で希釈される。さらに他の代表的な実施形態(例えば、質量分析を使用する分析のため)において、試料は、(例えば3kDaの分子量のカットオフフィルタを使用する)濾過により濃縮され、その後、溶液中のトリプシン消化に供され、続いて脱塩ステップに供される可能性がある。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0079】
アッセイおよびキット
種々の実施形態によれば、本発明の方法およびアッセイは、尿試料中の本明細書に開示されるような遺伝子産物のレベルを決定することを含む。
【0080】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、本発明の遺伝子産物に特異的な抗体を使用して、イムノアッセイにより実行される。
【0081】
本明細書で使用されるように、抗原に対する(または特異的な)抗体は、抗原に特異的に結合することができる抗体である。本明細書で使用されるような用語「特異的に結合する」は、抗体の抗原プローブへの結合が、非関連分子の存在により競合的に阻害されないことを意味する。
【0082】
用語「抗体」または「複数の抗体」が使用される場合、これは、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(mAb)などのインタクト抗体、ならびにFabまたはF(ab’)フラグメントなどのそのタンパク質分解フラグメントを含むことを意図すると理解されるべきである。本発明の範囲内にさらに含まれるものは、キメラ抗体;組換えまたは改変抗体、およびそれらのフラグメントである。
【0083】
軽鎖および重鎖の両方の全体または本質的に全体の可変領域を含む代表的な機能的抗体フラグメントは、以下のように定義される:
(i)2本の鎖として表される軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域からなる遺伝子改変されたフラグメントとして定義された、Fv;
(ii)適切なポリペプチドリンカーにより結合された、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む遺伝子改変された単鎖分子、単鎖Fv(「scFv」)、
(iii)酵素パパインで抗体全体を処理して、その可変およびCH1ドメインからなるインタクトな軽鎖および重鎖のFdフラグメントを生じることにより得られる抗体分子の一価抗原結合部分を含む抗体分子のフラグメント、Fab;
(iv)酵素ペプシンで抗体全体を処理し、続いて還元することにより得られる(抗体1分子あたり2個のFab’フラグメントが得られる)抗体分子の一価抗原結合部分を含む抗体分子のフラグメント、Fab’;ならびに
(v)酵素ペプシンで抗体全体を処理することにより得られる抗体分子の一価抗原結合部分を含む抗体分子のフラグメント(すなわち、2個のジスルフィド結合により一緒に保持されたFab’フラグメントの二量体)、F(ab’)2。
【0084】
本明細書で使用される用語「抗原」は、抗体により結合することができる分子または分子の一部である。抗原は、典型的に、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生するように動物を誘導することができる。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有する可能性がある。上記で言及された特異的反応は、抗原が、高い選択的方法で対応する抗体と反応するが、他の抗原により誘起され得る多くの他の抗体とは反応しないことを示唆することを意味する。
【0085】
いくらかの実施形態において、試料中の本発明の遺伝子産物のレベルを決定することは、特異的抗原抗体複合体を形成することができる条件下で、目的の遺伝子産物に対する抗体と試料を接触させ、各遺伝子産物について形成された抗原抗体複合体の量を定量し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定する(または含む)ことを含むプロセスにより実行される。
【0086】
種々の実施形態において、イムノアッセイは、ディップスティック、ELISA(種々のマルチプレックスELISA技術を含む)、抗体アレイ、抗体チップ、ラテラルフローテスト、およびマルチプレックスビーズイムノアッセイからなる群より選択される。
【0087】
本発明の原理によれば、任意の適切なイムノアッセイを使用することができる。そのような技術は当業者に周知であり、多くの標準的な免疫学のマニュアルおよびテキストに記載されている。ある特定の実施形態において、遺伝子産物を特異的に結合する抗体の能力を決定することは、抗体アレイまたは抗体チップを含むがそれらに限定されない抗体アレイベースの方法を使用して実行される。いくらかの実施形態において、アレイは、試料中に含まれる遺伝子産物と固定化された抗体との間の特異的結合を可能にするように、場合によっては被験者の希釈された尿試料とインキュベートされ、アレイから未結合の成分を洗い流し、洗浄したアレイを所望のアイソタイプの検出可能な標識と共役した抗体とインキュベートし、未結合の標識をアレイから洗浄し、各遺伝子産物に結合した標識のレベルを測定する。
【0088】
追加の代表的なアッセイは、例えば、米国特許第4,632,901号明細書、第4,313,734号明細書および第4,786,589号明細書、第5,656,448号明細書、ならびに欧州特許第0125118号明細書に示されるように、ディップスティック技術に基づいている可能性がある。例えば、米国特許第4,632,901号明細書は、液体試料を添加する多孔質膜またはフィルタに結合した抗体(標的抗原分析物に特異的である)を含むフロースルー型イムノアッセイ装置を開示する。液体が膜を通って流れると、標的分析物は、抗体に結合する。試料の添加の後に、標識抗体を添加する。標識抗体の視覚的検出は、試料中の標的抗原分析物の存在の指標を提供する。欧州特許第0125118号明細書は、抗体などの免疫化学的成分が固相に結合するサンドイッチ型ディップスティックイムノアッセイを開示している。アッセイ装置は、未知の抗原分析物を含む疑いのある試料にインキュベーションのために「浸漬」される。その後、酵素標識抗体を、インキュベーション期間と同時またはその後のいずれかで添加する。次に装置を洗浄し、その後、酵素用の基質を含む第2の溶液に挿入する。存在する場合、酵素標識は、基質と相互作用し、沈殿物として固相に沈着するか、または基質溶液に目に見える色の変化を生じさせる、着色生成物の形成を引き起こす。
【0089】
ある特定の実施形態において、バイオマーカー(遺伝子産物)の検出は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)試験キットなどの他のイムノアッセイを使用して実行することができる。そのようなアッセイにおいて、例えば、試料は、典型的には、固定化された、バイオマーカーを特異的に結合することができる第1の特異的結合剤(例えば抗体)の存在下でインキュベートされる。バイオマーカーの前記第1の特異的結合剤への結合は、多様な既知の方法のいずれか1つを使用して、例えば、バイオマーカー(異なるエピトープで)または第1の特異的結合剤を特異的に結合することができる標識された第2の特異的結合剤を使用して測定することができる。代表的な特異的結合剤には、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および組換え抗体フラグメントなどの抗体フラグメント、単鎖抗体(scFv)などが含まれる。いくらかの実施形態において、種々の従来のタグまたは標識、例えば放射性同位体、酵素、発色団または蛍光発色団を使用することができる。典型的な放射性同位体は、ヨウ素-125または硫黄-35である。この目的のための典型的な酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、西洋わさびガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼが含まれる。
【0090】
代わりに、他のイムノアッセイを使用することができる;そのような技術は当業者に周知であり、多くの標準的な免疫学のマニュアルおよびテキストに記載されている。いくらかの実施形態において、本発明の方法は、自動または半自動分析に適しており、複数の試料の臨床の、中スループットまたは高スループットのスクリーニングが可能になる場合がある。例えば、BiotestのQuickstep(登録商標)ELISAプロセッサ、Maxmat自動マイクロウェルELISAアナライザ(Maxmat S.A.、フランス)、またはDSX(商標)フォープレートシステム(Dynex Technologies)などの自動ELISAシステムは、マルチプレックスELISA法を含むがそれらに限定されない種々の方法で、便利に使用され、採用され得る。他の適切なアッセイには、例えば、フローサイトメトリアッセイ(シングルプレックスおよびマルチプレックスビーズベースLuminex(登録商標)アッセイ(インビトロジェン)など、または当技術分野において利用可能な他のマルチプレックスビーズイムノアッセイが含まれる。
【0091】
ラテラルフローテストは、上述したようなELISAアッセイと同じ原理で動作する。本質的に、これらのテストは、視覚的に陽性または陰性の結果を示す反応性分子を有するパッドの表面に沿って試料を走らせる。パッドは、多孔質紙片、微細構造ポリマー、または焼結ポリマーなどの一連の毛細管床に基づいている。これらのパッドのそれぞれは、自発的に流体(例えば尿)を輸送する能力を有している。試料パッドはスポンジとして機能し、過剰の試料液を保持する。一旦浸漬すると、流体は、コンジュゲートと呼ばれる凍結乾燥生物活性粒子が塩糖マトリックス内に貯蔵されている第2のコンジュゲートパッドに流れる。コンジュゲートパッドは、標的分子(例えば、本明細書に開示されるような遺伝子産物)と、粒子表面上に固定化されているその化学パートナー(例えば抗体)との間の最適化された化学反応に必要なすべての試薬を含む。これにより、標的粒子がパッドを通過してテストラインおよび対照ラインを超えて留まるときに標的粒子にマークがつけられる。テストラインは、信号、多くの場合色を示す。対照ラインは、試料が通過して流れ、コンジュゲートパッド内の生体分子が活性化されるかどうかを示すアフィニティリガンドを含む。これらの反応ゾーンを通過した後、流体は、廃棄物コンテナとして機能する最終の多孔質材料である芯に入る。
【0092】
別の実施形態において、前記遺伝子産物のレベルを決定することは、質量分析により、または顕微分光計を使用して実行される。例えば、質量分析に基づく標的化プロテオミクスを使用することができ、例えば、前記遺伝子産物のタンパク質分解ペプチドのための重い標識が付けられた合成内部標準を使用する。天然ペプチドおよび標準は、質量分析計を使用して測定することができ、内部標準からの信号は、尿試料中の元の遺伝子産物を表す天然ペプチドを参照する。非限定例において、SCIO近赤外線ミニ分光計などの適切な装置を使用することができる。
【0093】
本発明の追加の実施形態は、尿試料中の本明細書に開示されるような遺伝子産物のレベルを特異的に検出および/または決定するための手段を含む製造品を対象とする。種々の実施形態において、前記製造品は、本明細書に開示されるような遺伝子産物セットのレベルを特異的に検出および決定するための手段を含む。いくらかの実施形態において、手段は、本明細書に開示されるような遺伝子産物セットの遺伝子産物に特異的な抗体を含む、それからなる、または本質的に含む。いくらかの実施形態において、製造品は、ディップスティック、抗体アレイ、抗体チップ、またはラテラルフローテストを含むがそれらに限定されない、本明細書に開示されるようなイムノアッセイの形態で構成される。他の実施形態において、前記製造品は、ディップスティック、抗体アレイ、抗体チップ、またはラテラルフローテストを含むがそれらに限定されない、本明細書に開示されるようなイムノアッセイでの使用に適している。
【0094】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の方法における使用に適したキットを提供する。いくらかの実施形態において、製造品を含む診断キットが提供される。いくらかの実施形態において、キットは、尿試料を回収するための適切な容器または他の手段をさらに含む可能性がある。他の実施形態において、キットは、試料中の各遺伝子産物のレベルを対照試料中のその尿中レベルに対応する各値と比較するための手段をさらに含む。いくらかの実施形態において、i)被験者からの尿試料を回収するための手段およびii)試料中の本発明の遺伝子産物のレベルを決定するための手段を含む診断キットが提供される。
【0095】
他の実施形態において、キットは、本発明のマーカー抗原への抗体の特異的結合を測定するために使用することができる試薬、検出可能な標識および/または容器を含むがそれらに限定されない、遺伝子産物のレベルを決定するための追加の手段をさらに含む可能性がある。他の実施形態において、キットは、尿中プロテオミクスシグネチャを対照プロテオミクスシグネチャと比較するための手段をさらに含む可能性がある。いくらかの実施形態において、キットは、陰性および/または陽性の対照試料を含む。例えば、対照試料は、少なくとも1人の健康な個体からの試料を含む可能性がある。他の実施形態において、対照試料は、本明細書に開示されるような一連の健康な個体または罹患した個体からの対照試料のパネル、または対照の個体に対応する保存された一連のデータを含む可能性がある。場合によっては、キットは、マーカーレベルを測定する前に試料を調製または処理するための手段をさらに含む可能性がある。種々の実施形態において、対照試料は、全身性炎症、例えば本明細書に記載の重度の全身性炎症と診断された被験者に対応する。代表的な実施形態において、本明細書に開示されるような遺伝子産物(例えばペプチド)は、アッセイの感度および特異性を検証するための陽性対照としてキットに含まれる可能性がある。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0096】
さらなる実施形態において、キットは、例えば、本明細書に開示されるような診断または分析方法において前記キットを使用するための取扱説明書をさらに含む。他の実施形態において、キットは、本明細書に開示されるような方法にしたがって処置を割り当てるか被験者を処置するための説明書をさらに含む。いくらかの実施形態において、キットは、診断された被験者に対する使用のための処置、例えばコルチコステロイドまたは他の抗炎症剤もしくは免疫抑制剤をさらに含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0097】
種々の実施形態において、本発明は、尿試料中で検出または定量されるマーカーセットまたはサブセットとも本明細書で呼ばれる遺伝子産物の組み合わせに関する。いくらかの実施形態において、尿中プロテオミクスシグネチャは、本明細書に開示されるようなマーカーセットに関して決定される。種々の実施形態において、マーカーセットは、本明細書の表1に列記されている遺伝子産物、または本明細書に開示されるようなそれらのサブセットを含む。種々の実施形態において、マーカーセットは、少なくとも3個の遺伝子産物、例えば、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、15個を含むか、他の実施形態において、本明細書の表1に列記されているものの最大約9個、10個、12個、13個、15個または20個の遺伝子産物を含む。本明細書に例示されているように、マーカーセットは、3個~15個の遺伝子産物、例えば3個~5個(表4、表9、表12、表14ならびに実施例1および実施例3)、5個~10個(表4、表5、表12、表14ならびに実施例1および実施例3)、または10個~15個(表5、表6、表10、表11,実施例1~実施例3)遺伝子産物を含む可能性があり、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくらかの実施形態において、遺伝子産物は、表4、表5、表6、表9、表10、表11、表12、表13または表14に記載されているものを含むか、それらからなる群より選択されるか、SAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0098】
特定の実施形態において、遺伝子産物には、SAA遺伝子産物、例えば、SAA2遺伝子産物が含まれる。別の特定の実施形態において、SAA2遺伝子産物は、本明細書に開示されるようなSAA2ペプチドまたはフラグメントである。さらに別の実施形態において、前記遺伝子産物は、SAA2遺伝子産物を含まない。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0099】
いくらかの実施形態において、遺伝子産物は、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL)および/またはCXCL10(IP-10)遺伝子産物を含まない。別の実施形態において、前記遺伝子産物は、C反応性タンパク質(CRP)を含まない。他の実施形態において、遺伝子産物は、ヒト好中球リポカリン(HNL)、sCD14-ST(可溶性C14抗原サブタイプ;プレセプシン)、尿中トリプシン阻害剤(uTi)、および/またはネオプテリンを含まない。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0100】
別の実施形態において、本発明の製造品、キットおよびアッセイに関連して使用されるマーカー(遺伝子産物)は、本明細書に開示されるようなマーカーセットを含む、それらからなるまたは本質的にそれらを含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0101】
診断用途
本発明の方法およびアッセイの種々の実施形態によれば、各遺伝子産物のレベルは、対照尿試料に対応する各値と比較される。いくらかの実施形態において、対照尿試料は、健康な対照の被験者と対応する。別の実施形態において、対照尿試料は、前記被験者からの尿試料を得る時点よりも前の時点で前記被験者から得られた試料に対応する(例えば、前記被験者の炎症状態における変化を監視するために使用することができる)。他の実施形態において(例えば、全身性炎症のレベルを決定するための方法において)、対照尿試料は、所定のレベルの炎症を有する被験者に対応する。そのような対照試料はまた、本明細書では集合的に参照の対照試料とも呼ばれる。
【0102】
一実施形態において、検出すること(診断すること)、レベルを決定すること(採点することまたは定量化すること)、および炎症状態における変化を監視すること(患者における全身性炎症のレベルを以前の時点でのそのレベルと比較すること)を含む本発明の方法は、それを必要とする被験者における全身性炎症の評価のために使用される。
【0103】
一実施形態において、本発明の方法は、それを必要とする被験者における全身性炎症を検出するために使用される(または含む)。本明細書で使用されるように、用語「全身性炎症」は、体の複数の部分または臓器に影響する免疫介在性炎症状態を指す。対比において、局所炎症は、特定の位置または臓器に限定される。全身性炎症は、感染性炎症(例えば、被験者が本明細書に開示されるような感染症に罹患している場合)または無菌性炎症(無菌性全身性炎症、例えば、被験者が、自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、または他のタイプの慢性炎症性疾患などの非感染性炎症状態に罹患している場合)であり得る。
【0104】
全身性炎症の症状の非限定例には:変更された体温(例えば、36℃未満または38℃を超える)、増加した心拍数(例えば、毎分90回を超える)、頻呼吸(例えば、毎分20回の呼吸を超える)、COの低下した動脈圧(例えば、4.3kPa未満)、変更された白血球数(例えば、4,000細胞/mm未満または12,000細胞/mmを超える)、上昇したヒスタミンレベル(例えば、血液中で60ng/mLを超える)、増加したロイコトリエンB4レベル(例えば、血液中で30pg/mLを超えるか、35pg/mLを超える)、上昇したプロスタグランジンレベル(例えば、血液中で3.0ng/mLを超える)、炎症性サイトカインの上昇したレベル(例えば、20ng/mLを超えるTNF-αおよび/または10pg/mLを超えるIL-6)が含まれる。
【0105】
別の実施形態において、方法は、それを必要とする被験者における全身性炎症のレベルを決定するために使用される(または含む)。種々の実施形態において、炎症は、軽度(低悪性度または慢性)、中等度および重度からなる群より選択される。急性全身性炎症は、典型的には中等度(中悪性度)または重度(高悪性度、典型的には、より多くの臓器および全身に広がっている)のいずれかである。高悪性度の全身性炎症の1つのタイプは、全身性炎症反応症候群(SIRS)である。SIRSの症状には、異常に高いまたは低い体温、増加した心拍数、高い呼吸数、および異常な白血球数が含まれる。一般に、SIRSは、以下の基準(この後、「SIRS」基準):>38℃または<36℃の熱;毎分>90回の心拍数;毎分>20回の呼吸数または<32mmHgのPaCO;および異常な白血球数(>12,000/mmまたは<4,000/mmまたは>10%バンド)の少なくとも2つを満たす状態として定義される。
【0106】
全身性炎症は、伝統的に赤血球沈降速度(ESR)およびCRPなどの血液マーカーを測定することにより評価され、上昇したCRPレベルは、より重度の悪性度の炎症を示唆する。例えば、全身性炎症のレベルは、それぞれ10~39mg/L、40~100mg/L、または100mg/Lを超える血中CRPレベルにより特徴づけられる、軽度、中等度または重度であると決定することができる。対比において、健康な被験者(または適切な処置により炎症が阻害される被験者)は、最大10mg/Lの血中CRPレベルにより特徴づけられるが、同じ個体の被験者は、有意な臨床症状なしで、最大30mg/Lの血中CRPレベルを示す可能性がある。特定の実施形態において、方法は、(例えば、100mg/Lまたは120mg/Lを超える血中CRPレベルにより特徴づけられる)重度の全身性炎症を検出するために使用される(または含む)。
【0107】
いくらかの実施形態において、対照尿試料は、所定のレベル(例えば、本明細書に開示されるように軽度、中等度または重度)の炎症を有する被験者に対応し、全身性炎症のレベルを決定することは、各遺伝子産物のレベルを1つまたは複数のそのような参照試料中のそのレベルに対応する各値、または健康な対照の被験者および全身性炎症を有する被験者における前記遺伝子産物の尿中レベルの間、および/または全身性炎症の所定のレベルの間を区別する所定のカットオフと比較することを含む。
【0108】
別の実施形態において、方法は、(例えば、参照の対照試料が前記被験者から尿試料を得る時点より前の時点で前記被験者から得られている場合)それを必要とする被験者の炎症状態における変化を監視するために使用される(または含む)。したがって、全身性炎症の悪化(増強)または改善(低下)(例えば、それぞれ有意に増強または有意に低下した血中CRPレベルと相関する)を決定することができる。いくらかの実施形態において、被験者の炎症状態における悪化または改善は、典型的には、それぞれ本明細書に開示されるような全身性炎症の1つまたは複数の症状の悪化または改善となるであろう。本発明の実施形態の方法およびアッセイは、炎症状態の迅速な評価を提供し、それによって、症状の変化を臨床的に観察することができる前であっても、炎症のレベルの変化を予測する。
【0109】
別の実施形態において、方法は、前記被験者の疾患の予後を提供するために使用される(または含む)。代表的な実施形態によれば、高悪性度の炎症または炎症状態における悪化は、予後不良を示唆している可能性があるが、軽度もしくは非感染、または炎症状態の改善は、好ましい疾患の状態または予後を示唆する可能性がある。
【0110】
別の実施形態において、方法は、サイトカイン放出症候群(CRS)の存在、またはその発症のリスクを評価するために使用される(または含む)。CRSは、感染症および特定の薬物などの多様の因子により引き起こされる可能性がある全身性炎症反応症候群(SIRS)の形態である。CRSは、多数の白血球が活性化され、炎症性サイトカインを放出し、順にさらに多くの白血球を活性化する場合に発生する。治療(例えば、ある特定のモノクローナル抗体薬、養子T細胞療法または他の免疫賦活処置)の結果として発生する場合、CRS症状は、処置後数日間または数週間遅れることがある。即時発症のCRSおよびCRSの重症例はまた、サイトカインストーム(CSS)と呼ばれる場合がある。代表的な実施形態によれば、高悪性度の炎症または炎症状態における悪化は、CRSの存在またはリスクを示唆する可能性がある。
【0111】
別の実施形態において、方法は、以下でさらに詳細に説明するように、処置の有効性を決定するために使用される(または含む)。別の代表的な実施形態において、方法は、例えば、放射線療法または化学療法を受けている癌患者において、感染に関連する炎症の早期検出のために使用される(または含む)。
【0112】
他の実施形態において、本発明の方法は、上昇した血中CRPレベルに関連付けられている状態に罹患している被験者の非侵襲的予後判定、疾患進行の評価、処置の決定および/または調節のために使用される。
【0113】
別の態様において、それを必要とする被験者における上昇した血中CRPレベルに関連付けられている状態の進行を非侵襲的に監視する方法が提供される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0114】
いくらかの実施形態において、健康な対照の尿中プロテオミクスシグネチャとは実質的に異なる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が全身性炎症を有していることを示唆する。他の実施形態において、健康な対照の尿中プロテオミクスシグネチャとは実質的に異なる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。
【0115】
他の実施形態において、前記対照試料中の遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、前記対照試料中の遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。
【0116】
別の実施形態において、前の時点での少なくとも3個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に増加したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者における全身性炎症の悪化を示唆し、前の時点での少なくとも3個の遺伝子産物の各レベルと比較してそれらの有意に低下したレベルにより特徴づけられる尿中プロテオミクスシグネチャは、前記被験者における全身性炎症の改善を示唆する。別の実施形態において、健康な対照の被験者における本明細書に開示されるような1個または複数の遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。
【0117】
全身性炎症を検出、そのレベルを決定、および監視する方法のいくらかの実施形態において、遺伝子産物は、表6および表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択することができ、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態において、決定するステップは、試料中の表6および表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも5個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも5個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含み、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態において、決定するステップは、試料中の表6に列記されている遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含む。別の実施形態において、決定するステップは、試料中で、表10、表11、表12、表13または表14に列記されている遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを得ることを含み、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0118】
別の実施形態において、本明細書で示されるように、表11および表12に列記されている遺伝子産物は、血中CRPレベルが30mg/Lより高い被験者における炎症のレベルを検出および決定するのに特に適しており、したがって、中等度および重度の全身性炎症に関連して特に有用である。特定の実施形態において、遺伝子産物は、LRG1、UMOD、DDT;DDTL、およびFCN2遺伝子産物を含むか、それらから選択される。
【0119】
別の実施形態において、本明細書で示されるように、表13および表14の遺伝子産物は、尿試料中のそれらの有無に基づく炎症状態の正確な同定を可能にし、それらのレベルの正確な定量を必要としない。したがって、これらの遺伝子産物は、ディップスティックアッセイなどの患者による自己診断を意図するイムノアッセイに関連して特に有用である。特定の実施形態において、遺伝子産物は、MATN4、LGALS1、CRHBP、およびDLK1遺伝子産物を含むか、それらから選択される。
【0120】
重度の全身性炎症を検出する方法のいくらかの実施形態において、遺伝子産物は、表4、表5および表9のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択され、それぞれの可能性は、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。重度の全身性炎症を検出する方法の他の実施形態において、遺伝子産物は、SAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物からなる群より選択される1個または複数の遺伝子産物を含む。重度の全身性炎症を検出する方法の他の実施形態において、遺伝子産物は、SRGN、ASGR1およびIGLV3-12遺伝子産物からなる群より選択される1個または複数の遺伝子産物を含む。
【0121】
別の実施形態において、前記炎症は、>120mg/Lの血中CRPレベルに関連付けられており、遺伝子産物は、表4に列記されている遺伝子産物からなる群より選択される。別の実施形態において、決定するステップは、試料中の表4に列記されている遺伝子産物のレベルを決定し、それによって前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定することを含む。別の実施形態において、前記炎症は、>100mg/Lの血中CRPレベルに関連付けられており、遺伝子産物は、表5または表9に列記されている遺伝子産物からなる群より選択され、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態において、決定するステップは、試料中の表5に列記されている遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定することを含む。別の実施形態において、決定するステップは、試料中の表9に列記されている遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、前記遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定することを含む。別の実施形態において、決定するステップは、試料中の表9に列記されている1個または複数の遺伝子産物のレベルを決定することを含み、1個または複数の遺伝子産物の有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。別の実施形態において、健康な対照の被験者におけるSAA1、SAA2およびGUCA2B遺伝子産物からなる群より選択される1個または複数の遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆し、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0122】
本発明の実施形態によれば、プロテオミクスシグネチャの実質的な差異または類似性は、シグネチャの遺伝子産物の集合的なレベルを考慮して決定される。いくらかの実施形態において、対照と比較して実質的に異なる尿中プロテオミクスシグネチャは、本明細書に開示されるような一連の遺伝子産物の各対照レベルと比較してそれらの有意に増加したレベルを含む。他の実施形態において、対照と比較して実質的に異なる尿中プロテオミクスシグネチャは、本明細書に開示されるような一連の遺伝子産物の各対照レベルと比較してそれらの有意に低下したレベルを含む。さらに他の実施形態において、対照と比較して実質的に異なる尿中プロテオミクスシグネチャは、本明細書に開示されるような1個または複数のマーカーの有意に増加したレベルおよび本明細書に開示されるような1個または複数の追加のマーカーの各対照レベルと比較してそれらの有意に低下したレベルの両方を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。本明細書で使用されるように、「有意に増加した」および「有意に低下した」レベルは、それぞれ実質的に有意な増加/低下を指す。
【0123】
いくらかの実施形態において、プロテオミクスシグネチャを比較することは、学習およびパターン認識アルゴリズム、教師付き分類子などを含むがそれらに限定されない、適切な分類子またはアルゴリズムを使用して実行することができる。対照のレベルからの有意な差異は、典型的に、そして便利に、陰性対照群および陽性対照群の両方(例えば、それぞれ健康な対照の被験者および全身性炎症に罹患している被験者)の各値を考慮して実行することができる。本発明の実施形態による方法は、陽性および/または陰性対照試料中の本明細書に開示されるような遺伝子産物の各レベルを決定するステップを含む可能性があるか、試験試料中で測定された値の、それぞれ所定の値または保存されたデータとの比較を使用する可能性がある。それによって、試験試料は、本明細書に開示されるように、陽性対照群または陰性対照群のいずれかに対応する(実質的に類似であるか、実質的に異なっていない)と分類することができる。本明細書で言及される陽性対照および陰性対照は、典型的に、そして便利に、一連の健康もしくは同様に診断された個体からの対照試料のパネル、または健康もしくは同様に診断された個体から得られた保存された一連のデータなどの対照のセットを表す。
【0124】
したがって、本発明の方法のいくらかの実施形態において、比較するステップは、本明細書に開示される学習およびパターン認識アルゴリズムを使用して実行される。特定の実施形態において、アルゴリズムは、勾配ブースティングツリー、ランダムフォレスト、正則化回帰、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0125】
本発明の方法の別の実施形態において、比較するステップは、各遺伝子産物のレベルを健康な対照の被験者および全身性炎症を有する被験者における前記遺伝子産物の尿中レベル間(または全身性炎症の所定のレベル間)を区別する所定のカットオフと比較することを含む。
【0126】
いくらかの実施形態において、決定および比較するステップは、試料中の各マーカーの有無を決定することを含み、尿中プロテオミクスシグネチャは、前記試料中の各マーカーの前記有無を反映する。追加の実施形態によれば、尿中プロテオミクスシグネチャを比較することは、各遺伝子産物のレベル(前記遺伝子産物の有無を含む)を、特定の順序または階層でのその対照の尿中レベルと比較し、それによって、前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを対照の尿中プロテオミクスシグネチャと比較することをさらに含む。例えば、本明細書における実施例3は、マーカー(SRGN、IGLV3-12、およびASGR1)の有無が、特定の階層において考慮される、決定木アルゴリズムを使用する尿中プロテオミクスシグネチャの比較を示す。
【0127】
種々の実施形態において、本発明は、既存のアッセイがないか、時間がかかるか、そうでなければ不適切であるか推奨されない場合における炎症の評価において有用な方法に関する。その実施形態において、本発明は、迅速で非侵襲的な方法で、前記被験者の尿試料をアッセイすることにより、本明細書に開示されるようなこれらおよび他の課題を克服する。いくらかの実施形態において、正確な診断および処置の割り当て(特に抗生物質処置)など、感染性疾患の早期処置のための本発明の方法は、症状の発症から数時間以内(例えば、1時間~4時間または24時間未満)で行うことができる。本発明の方法のいくらかの実施形態において、決定および比較するステップは、15分以内、30分間、60分間、1時間~4時間、3時間~6時間または最長24時間で集合的に実行され、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0128】
処置の評価および割り当て
いくらかの実施形態において、本発明の方法は、例えば、処置を調節、決定および/または提供することを含む、処置の割り当て方法および治療方法を提供し、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。処置の割り当て方法の種々の実施形態において、被験者は、本明細書に開示されるような感染性または非感染性の炎症状態に罹患している可能性がある。したがって、調節、決定および/または被験者に提供される処置は、対応する状態(関連する炎症反応を含む)のための処置である。
【0129】
一実施形態において、本発明の方法は、被験者に提供された処置(例えば、本明細書に開示されるような薬物または薬剤)を調節することを含む。別の実施形態において、被験者における全身性炎症の悪化は、処置を調節するべきであることを示唆する。処置を調節することは、いくらかの実施形態において、調節された処置が、疾患のより重度の形態または重症度に対応するように、処置を置き換えること、追加の処置を提供すること、および/または前記処置の投与される投与量または期間を変更すること(典型的には増加すること)を含む可能性がある。
【0130】
別の実施形態において、本発明の方法は、被験者において決定された全身性炎症のレベルに基づいて被験者のための処置を決定する(選択する)ことを含む。例えば、限定されないが、処置を決定することは、適切な投与量を決定することを含む可能性があり、例えば、より高い投与量は、中等度の炎症と比較して重度の炎症において使用され、投与量は、軽度の炎症の場合、さらに低減することができる。別の非限定例において、より強力な免疫抑制薬は、重症度の低い場合と比較して重度の場合に使用される。代表的な投与量および種々の有効性を有する薬物を、以下に与える。
【0131】
別の実施形態において、本発明の方法は、処置を前記被験者に提供することをさらに含む。したがって、いくらかの実施形態において:
a.被験者から尿試料を得ること、
b.試料中の表6および表10~表14のいずれか1つに列記されている遺伝子産物からなる群より選択される少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、それによって、少なくとも3個の遺伝子産物に関して被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを決定すること、ならびに
c.各遺伝子産物のレベルを参照の対照尿試料中のそのレベルに対応する各値と比較し、それによって、前記被験者の尿中プロテオミクスシグネチャを参照の対照試料の尿中プロテオミクスシグネチャと比較すること、
d.前記被験者における全身性炎症のレベルを(例えば、軽度、中等度または重度として)決定すること、
e.決定された全身性炎症のレベルに基づいて前記被験者のための処置を決定すること、ならびに
f.前記被験者に処置を提供すること
を含む、それを必要とする被験者を処置する方法が提供される。
【0132】
種々の実施形態において、本発明の方法において(例えば非感染性炎症状態の場合において)調節、決定および/または提供される処置は、抗炎症剤、免疫抑制剤、またはコルチコステロイドであり得る。例えば、抗炎症剤には、非ステロイド性抗炎症剤NSAID)および抗IL6mAb(例えばアクテムラ)、抗IL-1mAb(例えばアナキンラ)および抗TNFmAb(例えばレミケード)などの抗サイトカイン剤が含まれるが、それらに限定されない;免疫抑制剤または免疫抑制物質は、負の免疫調節活性を有しており、例えば、シクロスポリンおよびメトトレキサートを含む。コルチコステロイドは、抗炎症活性および免疫調節活性の両方を有しており、例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン、およびヒドロコルチゾンを含む。
【0133】
したがって、代表的な実施形態において(例えば、IBDまたは類似の状態の処置において)、コルチコステロイドまたは他の強力な処置は、重度の全身性炎症を有すると決定された被験者に提供することができ、効力が低い免疫抑制剤は、中等度の全身性炎症を有する被験者に提供することができ、NSAIDなどの穏やかな抗炎症剤は、軽度の炎症を有する被験者に提供することができるか、中等度および重度の場合には他の処置と組み合わせることができる。
【0134】
別の実施形態において、処置は、(例えば、感染状態における炎症の存在またはそのレベルが決定される場合)抗生物質であり得る。例えば、抗生物質処置は、例えば広域スペクトルグラム陽性抗生物質、広域スペクトルグラム陰性抗生物質、およびそれらの組み合わせを含むことができる。例えば、広域スペクトルグラム陽性抗生物質には、バンコマイシンまたはリネゾリドが含まれ得るが、それらに限定されない。広域スペクトルグラム陰性抗生物質には、ピペラシリンおよびタゾバクタムなどの広域スペクトルペニシリン、第3世代または第4世代セファロスポリン、イミペネム、およびアミノグリコシドが含まれ得るが、それらに限定されない。さらに別の実施形態において、処置は、抗生物質を除外する。
【0135】
例えば、上に列記されている疾患に特異的な処置のための投与量および治療計画は当技術分野において既知であり、患者の特徴および疾患の症状にしたがって当業者(例えば治療医)により決定および調節することができる。
【0136】
例えば、NSAIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素であるCOX-1およびCOX-2を遮断することによりプロスタグランジンの生成を阻害する。これらの薬剤の主要な効果は、急性炎症を低減することであり、それによって、疼痛を軽減し、機能を改善する。これらの薬物はすべて、それらの抗炎症効果とは関係なく、軽度から中等度の鎮痛作用も有している。多数のNSAIDがあり、いくらかは、イブプロフェンおよびナプロキセンを含む市販薬であり、メロキシカム、エトドラク、ナブメトン、スリンダク、トレメンチン(tolementin)、サリチル酸コリンマグネシウム、ジクロフェナク、ジフルシナル、インドメタシン)、ケトプロフェン、メロキシカム、オキサプロジン、およびピロキシカムを含むその他の多くは、処方箋で入手可能である。1日1回または1日2回の投与を可能にする長時間作用のNSAIDは、コンプライアンスを改善する可能性がある、NSAIDクラスはまた、炎症を制御するのにも効果的であるCOX-2阻害剤として既知の薬物、例えばセレコキシブ、エトリコキシブ、およびルミラコキシブも含む。種々の自己免疫状態および炎症状態の処置のためのNSAID投与量は、当技術分野において既知である。例えば、SLEの処置では、イブプロフェンは、必要に応じてまたは1日最大3000mgの用量で使用することができ、ナプロキセンは、典型的に1日2回500mgとして使用される。
【0137】
コルチコステロイド(プレドニゾン;メチルプレドニゾロンを含むが、それらに限定されない)は、抗炎症活性および免疫調節活性の両方を有する。それらは、経口、静脈内、筋肉内に与えることができるか、関節に直接注射することができる。軽度のSLEの場合、例えば、プレドニゾロンは、0.1~0.3mg/kg/日で開始する投与量、続いて臨床反応に応じて段階的に漸減する投与計画で与えられる。投与量は中等度の疾患において0.4~0.6mg/kg/日まで、非常に重度の疾患の場合には0.7~1.5mg/kg/日の高用量まで上昇する。そのような高用量では、静脈内(IV)メチルプレドニゾロン(MP;1回から3回で500~1000mg)を用いるパルス療法は、多くの医師により、関連する副作用が少なく、より安全であると見なされている。IV療法は、経口療法に反応しなかった患者および/またはループス腎炎、神経精神疾患、重度の不応性血小板減少症、溶血性貧血、重度の血管炎および心肺疾患などのSLEの重篤な症状を有する患者において考慮される。
【0138】
アザチオプリンは、寛解の誘導のためおよび軽度から中等度の自己免疫性疾患におけるステロイド節約剤として一般に使用されている免疫抑制物質である。それは、リンパ球増殖の阻害、抗体産生の低下およびナチュラルキラー細胞活性の抑制を介して、細胞性および体液性の免疫応答に影響することにより機能する。重度の疾患において、それは維持療法として使用され、ループス腎炎試験からのデータは、シクロホスファミドまたはミコフェノール酸モフェチルを用いる導入療法後の疾患活性における有意な改善を示す。
【0139】
他の生物学的薬剤および免疫抑制物質は、例えば、自己抗体の形成を低減するためにB細胞上のいくらかの表面分子を標的とするモノクローナル抗体を含む。そのような代表的な薬物は、リツキシマブ(抗CD20)、オクレリズマブ(ヒト化抗CD20)、ベリムマブ(抗BAFF/BLyS)、アタシセプト(抗BLys/APRIL)およびエプラツズマブ(ヒト化抗CD22)を含む。加えて、他の重要な細胞表面マーカーは、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(アバタセプト)などの同時刺激分子を妨害するために開発されている。加えて、レフルノミド(オリジナルブランド名、アラバ)は、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼを阻害することにより機能する免疫抑制ピリミジン合成阻害剤である。レフルノミドは、迅速に分裂する細胞、特にリンパ球の再生を阻害する免疫調節薬である。加えて、TNF-α阻害剤、例えばエタネルセプトまたはインフリキシマブは、同じ場合において使用することができる。
【0140】
他の実施形態において、本発明の方法は、種々の処置、例えば免疫賦活処置または免疫抑制処置に対する被験者の反応を評価するために使用することができる。
【0141】
いくらかの実施形態において、方法は、免疫賦活処置に関連付けられている有害作用を評価するために使用される。そのような処置は、CAR T細胞および養子移入細胞療法、ならびにチェックポイント阻害剤(例えばPD-1およびPDL-1阻害剤)が含まれるが、それらに限定されない種々の癌免疫療法を含む。代表的な実施形態において、被験者は、免疫賦活処置を受けており、方法は、サイトカイン放出症候群(CRS)の存在、またはその発症のリスクを評価するために使用される。
【0142】
他の実施形態において、本発明の方法は、免疫抑制処置、例えば、負の免疫調節効果を示す、本明細書に開示されるような1つまたは複数の薬物または薬剤の治療効果を評価するために使用される。いくらかの実施形態において、被験者は、免疫抑制処置を受けており、方法は、処置の有効性(例えば、本明細書に開示されるような炎症状態における低減として現れる炎症または自己免疫の阻害)を決定するために使用される。
【0143】
SAA遺伝子産物
血清アミロイドA(SAA)タンパク質は、異なる、構成的に発現され誘導可能なアイソフォームを含む、血漿中の高密度リポタンパク質(HDL)に関連付けられているアポリポタンパク質のファミリーである。これらのタンパク質は、主に肝臓により産生される。本明細書の表1および表4~表6に列記されているSAA1およびSAA2は、高度に相同である。本明細書に開示されるように、SAA1およびSAA2は、特に有用な予後診断マーカーであり、本明細書でさらに詳細に説明されるように、本発明の種々の実施形態において使用することができる。
【0144】
本明細書でさらに開示されているように、本発明の遺伝子産物は、ヒト尿試料中で、インタクトなポリペプチドとしてよりもむしろフラグメントまたはペプチドの形状で認められる可能性がある。したがって、本明細書で開示されているような尿由来遺伝子産物は、対応する天然ポリペプチドの一部を欠いているので、血液または体組織において認められる可能性がある対応する遺伝子産物とは構造的に異なる可能性がある。本明細書で言及されるような用語「遺伝子産物」は、これらの部分的フラグメントおよびペプチド、例えば、C末端切断および/またはN末端切断フラグメントを明示的に含むことが理解される。本明細書でさらに開示されるように、これらのペプチドは、特にSAA遺伝子産物のN末端切断フラグメントを含む可能性がある。他の実施形態において、本明細書で言及される遺伝子産物は、インタクトな(または実質的にインタクトな)ポリペプチドである。
【0145】
例えば、本明細書の実施例5に記載されるように、SAA1およびSAA2が両方とも、内因性ペプチドとして炎症中に尿試料中に存在することが予想外に認められていた。特に、SAA2由来ペプチド、GNYDAAKRGPGGAW(配列番号1)は、血中CRPレベルと顕著な相関(0.78)を示し、炎症のためのマーカーとして特に有用であると認められた。
【0146】
したがって、本発明の別の態様は、配列番号1のアミノ酸配列を有する単離ペプチドに関する。
【0147】
本発明のペプチドは、固相(例えば、Bocまたはf-Moc化学)および液相合成法を含むが、それらに限定されない、当技術分野において既知である任意の組換えまたは合成方法を使用して単離または合成することができる。例えば、ペプチドは、Merrifield(1963 J.Amer.Chem.Soc.85:2149-2156)の固相ペプチド合成法により合成することができる。代わりに、本発明のペプチドは、当技術分野において周知である標準溶液法(例えば、Bodanszky,1984 The Principles of Peptide Synthesis,Springer-Verlag,New Yorkを参照されたい)またはペプチド合成のための当技術分野に既知である任意の他の方法を使用して合成することができる。
【0148】
代替の実施形態において、ペプチドは、組換え技術により生産することができる。タンパク質およびペプチドを設計、発現および精製するための組換え方法は、当技術分野において既知である(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York,2001を参照されたい)。本発明による核酸分子は、DNA、RNA、またはDNAもしくはRNAのいずれかの誘導体を含む可能性がある。ペプチドをコードする単離核酸配列は、その天然の供給源から、遺伝子全体(すなわち、完全な遺伝子)またはその一部のいずれかとして得ることができる。核酸分子はまた、組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)または化学合成を使用して生産することもできる。核酸配列は、そのような修飾が、天然の対立遺伝子変異体と、ヌクレオチドが本発明の機能性ペプチドをコードする核酸分子の能力を実質的に妨害しないような方法で挿入、欠失、置換、および/または反転されている修飾核酸配列とを含むが、それらに限定されない天然の核酸配列およびそのホモログを含む。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド配列は、タンパク質の遺伝暗号から推定することができるが、いわゆる「Wobbleルール」により与えられるように、暗号の縮重は、コドンの3番目の位置での古典的塩基対の例外の許容と同様に考慮に入れる必要がある。さらに、より多いまたはより少ないヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、結果として同じまたは等価のタンパク質となり得る。したがって、他の実施形態によれば、本発明は、本発明のペプチドをコードする核酸、および当技術分野において既知であるような組換え構築物、発現ベクターおよびそれらの医薬組成物を提供する(例えば、Sambrook et al.,2001を参照されたい)。
【0149】
本発明の方法において、用語「ペプチド」は、ペプチド結合により結合した7~40、好ましくは10~20の隣接アミノ酸の配列を指す。ペプチドは、「L」および「D」アミノ酸の両方ならびに非天然アミノ酸および当技術分野において既知である化学的に誘導体化されたアミノ酸を含む可能性がある。好ましくは、本発明のペプチドは、長さが12~18のアミノ酸(aa)であり、より好ましくは、長さが約14のaaである。
【0150】
本明細書で使用されるように、用語「単離ペプチド」は、合成ペプチドまたは「人の手により変更」され、その天然の状態の共存する物質から分離されているペプチドのいずれかを指す。単離ペプチドは、合成的に生産されるか、その元の環境から変更または取り除かれており、典型的にはその両方である。
【0151】
ペプチドが本発明で言及されるときはいつでも、対応する免疫活性を保持している限り、塩およびその機能的誘導体も企図される。したがって、本発明は、非天然アミノ酸誘導体または非タンパク質側鎖を含むペプチドを包含する。本発明のペプチドは、末端カルボン酸を有し、カルボキシルアミドとして、還元末端アルコールとして、または任意の医薬適合性のある塩として、例えばナトリウム、カリウム、リチウムもしくはカルシウム塩を含む金属塩として、または有機塩基との塩として、または硫酸、塩酸もしくはリン酸を含む鉱酸、または酢酸もしくはマレイン酸などの有機酸との塩として使用することができる。
【0152】
本明細書に記載のアミノ酸残基は、「L」型異性体であることが好ましい。しかし、「D」異性体型の残基は、ペプチドが所望の機能的特性(例えば免疫応答性)を実質的に保持している限り、L-アミノ酸残基に置き換えられる可能性がある。ペプチドのN’およびC’は、場合によっては、例えば、アミド化、アセチル化、脂肪酸の共役などにより、実質的にペプチドの構造または配座に影響しない、当技術分野において既知であるような化学基を安定化することにより誘導体化することができる。
【0153】
本発明の実施形態によりさらに包含されるものは、配列へのアミノ酸残基の置換、欠失または追加により得られる類縁体ペプチドであり、場合によっては、非誘導体化残基の代わりに化学的に誘導体化された残基の使用を含む。これらの類縁体は、それらが高い配列相同性(少なくとも70%および典型的には80%、90%またはそれ以上)を保持しており、対応する免疫応答性を保持している(すなわち、生理学的条件下で配列番号1に対する抗体と交差反応性である)限り、配列番号1に対応するペプチドと等価であると見なすことができる。
【0154】
いくらかの実施形態において、本発明のキットおよびアッセイは、本明細書に開示されるようなSAA2フラグメントに対する抗体の使用を有利に組み込む。
【0155】
他の実施形態において、被験者(例えば、非ヒト動物)をペプチドで免疫性を付与することを含む、本発明のSAAフラグメントに対する抗体を生産する方法が提供される。ペプチドは、単離ペプチドが(例えば、直接共有結合によるかリンカーを介して)担体タンパク質などの異種配列に結合している、免疫原性コンジュゲートの形状で免疫性付与に使用することができる。
【0156】
他の実施形態において、本発明は、異種部分、例えば担体または標識を有する単離ペプチドのコンジュゲートに関する。いくらかの実施形態において、コンジュゲートはまた、直接またはリンカーを介して結合したペプチドの複数のコピーを含む多量体コンジュゲートの形状で提供することもできる。その後、抗体は、単離することができる、例えば、免疫性付与された動物の血清から直接得られるか、当技術分野において既知である方法によりさらに単離することができる。
【0157】
別の態様において、本発明は、配列番号1のペプチドに特異的な抗体、またはその抗原結合部分に関する。種々の実施形態において、抗体は、本明細書に記載されるように、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、またはそれらのフラグメントである。別の実施形態において、抗体は、ペプチドを用いる免疫性付与および得られる抗体の単離を含む方法により生産されている。
【0158】
モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を生成する方法は、当技術分野において周知である。抗体は、抗体分子のインビボ産生の誘導、免疫グロブリンライブラリのスクリーニング、または培養中の連続細胞株によるモノクローナル抗体分子の生成を使用することができる、いくらかの既知の方法のいずれか1つを介して生成することができる。これらには、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびエプスタイン-バーウイルス(EBV)ハイブリドーマ技術が含まれるが、それらに限定されない。
【0159】
インビボで抗体を生成する際に、標的抗原が適切な免疫原性応答を誘発するにはあまりにも小さい場合、そのような抗原(「ハプテン」と呼ばれる)は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または血清アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA))担体などの抗原的に中性の担体に結合することができる(例えば、米国特許第5,189,178号明細書および第5,239,078号明細書を参照されたい)。得られた抗血清は、直接使用することができる(例えば、希釈された血清または精製されたポリクローナル抗体)か、本明細書に記載されるように、モノクローナル抗体を得ることができる。
【0160】
モノクローナル抗体(mAb)は、特定の抗原に対する抗体の実質的に均一な集団である。本明細書で使用されるような用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られた(典型的には完全な)抗体を指す、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在する可能性がある可能な自然発生の突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一抗原に対して向けられている。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。修飾語「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるべきではない。mAbは、当業者に既知の方法により得ることができる。例えば、本発明にしたがって使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法により製造することができるか、組換えDNA法により製造することができる(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)。「モノクローナル抗体」はまた、ファージ抗体ライブラリから単離することもできる。例えば、米国特許第4,376,110号明細書;Ausubel et al(「Current Protocols in Molecular Biology」、I~III巻、ジョン・ウィリー&サンズ,ボルチモア,メリーランド州,1994)を参照されたい。
【0161】
抗体フラグメントは、当技術分野において周知の方法を使用して得ることができる。(例えば、Harlow,E.およびLane,D.(1988).Antibodies:A Laboratory Manual,コールド・スプリング・ハーバー研究所,ニューヨーク)を参照されたい)。例えば、本発明による抗体フラグメントは、抗体のタンパク質加水分解により、またはそのフラグメントをコードするDNAの大腸菌(E.coli)もしくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養物もしくは他のタンパク質発現系)における発現により調製することができる。
【0162】
インビボで抗体を増やす従来の方法の他にも、ファージディスプレイ技術を使用して抗体をインビトロで生成することができる。バクテリオファージライブラリ構築および組換え抗体の選択のためのプロトコルは、周知の参照テキスト、Current Protocols in Immunology,Colligan et al(Eds.),ジョン・ウィリー&サンズ社(1992~2000),チャプター17,セクション17.1に与えられている。
【0163】
別の態様において、試料中のSAA2遺伝子産物のレベルを決定し、前記レベルを健康な対照の被験者における尿中レベルに対応する各値、または前記被験者からの尿試料を得る時点よりも前の時点で前記被験者から得られた対照試料と比較することを含む、被験者の尿試料を分析する方法が提供される。特定の実施形態において、前記遺伝子産物は、配列番号1のアミノ酸配列を有する。別の実施形態において、方法は、前記試料中の少なくとも1個の追加の遺伝子産物、例えば、表1、表4、表5または表6に記載されている1個または複数の遺伝子産物(例えば、SAA1およびGUCA2B)のレベルを決定し、それらのレベルを前記対照試料中の各レベルと比較することをさらに含む。
【0164】
別の態様において:
a.被験者から尿試料を得ること、
b.試料中のSAA2遺伝子産物のレベルを決定すること、および
c.前記レベルを健康な対照の被験者におけるその尿中レベルに対応する各値と比較すること
を含む、それを必要とする被験者における全身性炎症を検出する方法が提供され、健康な対照の被験者における1個または複数の遺伝子産物のレベルと比較してそれらの有意に増加したレベルは、前記被験者が重度の全身性炎症を有していることを示唆する。特定の実施形態において、前記遺伝子産物は、配列番号1のアミノ酸配列を有する。別の実施形態において、方法は、前記試料中の少なくとも1個の追加の遺伝子産物、例えば、表1、表4、表5または表6に記載されている1個または複数の遺伝子産物(例えば、SAA1および/またはGUCA2B)のレベルを決定し、それらのレベルを前記対照の試料中の各レベルと比較することをさらに含む。
【0165】
データ解析
いくらかの実施形態において、本発明の方法は、本明細書に開示されるように、試料または被験者のプロテオミクスシグネチャと対照のプロテオミクスシグネチャとを区別するために、学習およびパターン認識アナライザ、クラスタリングアルゴリズムなどの使用を用いることができる。例えば、方法は、尿試料中の本明細書に開示されるような少なくとも3個の遺伝子産物のレベルを決定し、そのようなアルゴリズムおよび/またはアナライザを使用して、得られる尿中プロテオミクスシグネチャを健康な対照の尿中プロテオミクスシグネチャと比較することを含むことができる。
【0166】
特定の実施形態において、1つまたは複数のアルゴリズムまたはコンピュータプログラムは、所定のカットオフに対して(または多くの所定のカットオフに対して)尿試料中で定量された各遺伝子産物の量を比較するために使用することができる。代わりに、人間により必要なステップを手動で実行するための1つまたは複数の指示を提供することができる。
【0167】
尿中プロテオミクスシグネチャを決定および比較するためのアルゴリズムには、勾配ブースティングツリー、ランダムフォレスト、正則化回帰、多重線形回帰(MLR)、主成分回帰(PCR)、部分的最小二乗(PLS)、線形判別分析(LDA)を含む判別関数分析(DFA)、最近傍探索、人工ニューラルネットワーク、多層パーセプトロン(MLP)、一般回帰ニューラルネットワーク(GRNN)、およびそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない教師付き分類アルゴリズム、または、K平均法、スペクトラルクラスタリング、階層的クラスタリング、混合ガウスモデル、およびそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない教師なしクラスタリングアルゴリズムが含まれるが、それらに限定されない。特定の実施形態において、アルゴリズムは、勾配ブースティングツリー、ランダムフォレスト、正規化回帰、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0168】
多くのアルゴリズムは、ニューラルネットワークに基づくアルゴリズムである。ニューラルネットワークは、入力層、処理層および出力層を有する。ニューラルネットワークにおける情報は、処理層全体に分散される。処理層は、ノードへの相互接続により、ニューロンを刺激するノードで構成される。データの収集における基礎となるパターンを明らかにする統計分析と同様に、ニューラルネットワークは、所定の基準に基づいて、データの収集における一貫したパターンの場所を示す。
【0169】
他の実施形態において、主成分分析が使用される。主成分分析(PCA)は、多数の相関変数を少数の無相関変数に変換する数学的技術を含む。少数の無相関変数は、主成分として既知である。第1の主成分または固有ベクトルは、できるだけ多くのデータ内の変数を説明し、後に続く各成分は、できるだけ多くの残りの変数を説明する。PCAの主目的は、データセットの次元を下げること、および新規の基礎となる変数を同定することである。
【0170】
別の実施形態において、アルゴリズムは分類子である。1つのタイプの分類子は、訓練セットからのデータを用いてアルゴリズムを「訓練する」ことにより作成され、その性能は、試験セットデータを用いて評価される。本発明に関連して使用される分類子の例は、判別分析、決定木分析、受信者操作曲線または分割およびスコア分析である。
【0171】
用語「決定木」は、分類のために使用されるフローチャート様のツリー構造を用いる分類子を指す。決定木は、データセットをサブセットに繰り返し分割することからなる。各分割は、1つの変数に適用される単純なルールからなり、例えば、「「変数1」の値が「閾値1」よりも大きい場合、左に行き、そうでなければ右に行く」。したがって、所与の特徴空間は、一連の長方形に分割され、各長方形は、1つのクラスに割り当てられる。
【0172】
用語「試験セット」または「不明」または「検証セット」は、訓練セットに含まれないエントリからなる利用可能なデータセット全体のサブセットを指す。試験データは、分類子性能を評価するために適用される。
【0173】
用語「訓練セット」または「既知のセット」または「参照セット」は、それぞれ利用可能なデータセット全体のサブセットを指す。このサブセットは、典型的には無作為に選択され、分類子の構築の目的のみで使用される。
【0174】
以下の実施例は、本発明のいくらかの実施形態をより完全に説明するために提示される。しかし、それらは、本発明の幅広い目的を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0175】
実施例
実施例1.重度の全身性炎症を検出するための尿中バイオマーカー
A.患者および方法
患者の特徴
研究は、急性感染症を有する患者56人および対照群として健康な有志20人を含む成人の参加者全76人を含んでいた。感染した患者のうち、25人が細菌感染症と診断され、9人の患者が、ウイルス性の診断を確認し、7人が、不確定な病因として標識され、15人が除外された)。除外基準は、白血球尿症(n=7)、尿路感染症の診断(UTI;n=2)、発熱患者(n=3)および非感染性病因の患者(n=3)を含んでいた。
【0176】
細菌感染症と診断された患者は、ウイルス性の患者および対照と比較して年齢が高く、脂質異常症の頻度が高かった。患者コホートは、性別、BMIおよび高血圧の事前診断に関してバランスが取れていた。
【0177】
患者の特徴を以下の表2に要約する。患者の感染病因および臨床診断は、診断が確認された試験の要約と一緒に、以下の表3に列記されている。
【0178】
【表2】
【0179】
【表3】
【0180】
試料調製
血液および尿を入院時に患者から採取した。慣例の化学的性質を直ちに分析し、血清および尿のアリコートを-80℃で凍結した。プロテオミクス分析のため、3kDaの分子量カットオフフィルタを使用して試料を濃縮し、その後、溶液中のトリプシン消化に供し、続いて、脱塩ステップに供した。
【0181】
液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)
高分解能、高質量精度の質量分析(Fusion Lumos)と連結したナノフロー液体クロマトグラフィ(nanoAcquity)を使用して、得られるペプチドを分析した。各試料は、探索モードにおいてランダムな順序で個別に分析された。
【0182】
データ処理
生データをMaxQuant v1.6.6.0で処理した。アンドロメダ検索エンジンを用いて、一般的なラボタンパク質汚染物質が加えられたヒトプロテオームデータベースに対してデータを検索した。定量化は、独特のペプチドに基づくラベルフリー定量化(LFQ)法に基づいていた。
【0183】
差次的発現分析は、limmaソフトウェアパッケージを使用して算出された。欠測値は、多数決ルールに基づいて処理された。3つの反復のうち1つがゼロであった場合、それはNaとして処理され(すなわち、統計に含まれない)、3つの反復のうち2つがゼロであった場合、一定の低値に変更された(すなわち、統計に含めた)。偽陽性率(padj)は、ベンジャミーニ-ホッホベルク(BH)を使用して実行された。有意性は、+/-2倍変化およびp.adj<0.05に基づいていた。
【0184】
広範囲のC反応性タンパク質(wrCRP)測定を、ADVIA、シーメンスヘルスケアダイアグノスティクス社、タリータウン、NY10591-5097USAにより行った。ADVIA(登録商標)Chemistry wrCRP法は、血清中および血漿中のCRPをラテックス増強免疫比濁アッセイにより測定する。
【0185】
B.結果
細菌感染症またはウイルス感染症と診断された被験者、および感染なしの被験者を含む54人のヒト被験者の尿試料に対してプロテオーム解析を実行した(表3に列記されている)。全体として、1307個のタンパク質が尿試料中で検出された。年齢および性別について調節した後、感染群の患者(細菌性およびウイルス性)は、170個のタンパク質の尿中レベルにおいて健康な対照群とは異なることが認められた。血中CRPレベルをさらに測定し、全身性炎症のレベルを評価するための参照バイオマーカーとして使用した。
【0186】
驚いたことに、>120mg/Lの血中CRPにより特徴づけられる重度の(生命を脅かす可能性がある)全身性炎症を有する患者と残りの被験者との間を区別することができた3個のタンパク質が同定された。図1A図1Cは、これらのタンパク質、つまりそれぞれグアニル酸シクラーゼ活性化因子2B、血清アミロイドA-1および血清アミロイドA-2の2つの群における尿中レベルの分布を示す(ユニパラメトリック分析、2を底とする対数として表された)。さらに、10分割交差検証で予測誤差を最小化するように選択された正則化パラメータを用いて、Rパッケージのglmnetを使用するL1正則化を用いる線形回帰を使用したマルチパラメータ解析が実行された。分析は、これらの3個のタンパク質の組み合わせが、重度の全身性炎症の症例の約75%を認識することを明らかにした。
【0187】
重度の全身性炎症を有する被験者と重度ではないまたは炎症がない被験者とを充分に識別する尿タンパク質の追加の組み合わせを同定するために、XGBOOSTアルゴリズムを使用するマルチパラメータ解析を実行した。解析は、深さ2のツリーを用いるRパッケージのxgboost、および試料外の予測誤差を評価するための一つ抜き交差検証を使用して行われた。
【0188】
解析は、改善された精度で、>120mg/Lの血中CRPにより特徴づけられる重度の全身性炎症を同定することができるタンパク質シグネチャを明らかにした。これらのタンパク質の詳細を表4に与える。図2は、モデルの各尿中バイオマーカーの相対的重要性を示す。
【0189】
【表4】
【0190】
参照マーカーとして>100mg/Lの血中CRPのカットオフで解析を繰り返した。残りの被験者からこの患者群を識別することができるタンパク質シグネチャを、表5に提示するように同定した。図3は、モデルにおける各尿中バイオマーカーの相対的重要性を示す。
【0191】
【表5】
【0192】
したがって、結果は、非侵襲的方法で医学的介入を必要とする高悪性度の全身性炎症を有する患者を同定する能力を示す。
【0193】
実施例2.炎症状態を監視するための尿タンパク質シグネチャ
ラッソアルゴリズムを使用して、実施例1において尿中で同定されたすべてのタンパク質を、血清CRPレベルと高い相関を示す予測モデルを構築するそれらの能力について試験した。アルゴリズムが1つを除くすべての試料に対して順次訓練され、除外された試料を予測するために使用された、一つ抜き交差検証を使用して評価を行った。第2の入れ子構造の10分割交差検証を使用して正則化パラメータを選択した。
【0194】
注目すべきことに、試験被験者において測定された血清CRPレベルを0.8の相関(R二乗0.64)で正確に予測することができるタンパク質シグネチャが同定された。シグネチャタンパク質の詳細を表6に列記している。測定された血中CRPレベルと尿中バイオマーカーシグネチャにより予測された血中CRPレベルとの間の相関曲線を図4に示す。
【0195】
【表6】
【0196】
結果は、高悪性度の重症例だけでなく、軽度および中等度の炎症の兆候を示す患者においても全身性炎症のレベルを評価することができる、高度に予測可能なモデルの構築を示す。したがって、結果は、例えば疾患の予後、疾患の合併症の発症のリスクが高い被験者の早期同定および処置の効果を評価するのに有用な、全身性炎症のレベルにおける変更の検出および監視を提供する。
【0197】
実施例3.重度の全身性炎症のための追加の尿中バイオマーカー
健康なヒト対照の被験者ならびに種々の炎症および感染状態を有する患者を含む380人の個体の第2のコホートに対して追加の研究を実行した。診断(ウイルス感染症または細菌感染症)は、3人または4人の独立した医師によるデータレビューの後に行われた。傾向スコア法を使用してプロテオーム解析のために患者を選択した。年齢、性別および推定糸球体濾過(eGFR)に基づいて群の最良のマッチングが行われた後、ウイルス群および対照群の被験者は、細菌群の被験者と比較して10~16歳若かった。したがって、質量分析ベースのプロテオミクスを使用して、発見モードで90個の試料を調製および分析し、1,879個のタンパク質のレベルを本質的に実施例1に記載されるように測定した。
【0198】
患者の特徴を以下の表7に要約する。患者の感染病因および臨床診断を、診断が確認された試験の要約とともに、以下の表8に列記している。
【0199】
【表7】
【0200】
【表8】
【0201】
各タンパク質の検出可能なレベルを有していた各群の試料の割合に基づいて、(LC-MSにおいて3個未満のペプチドを有するタンパク質を濾過した後)検出割合において差異が最も有意であった遺伝子産物は、さらなる分析のために選択された。分析のため、Rパッケージのglmnetに実装されているように、L-1ペナルティ(アルファ=1)を用いて、ラッソアルゴリズムを使用した。収縮パラメータ(ラムダ)は、交差検証を使用して選択された。
【0202】
注目すべきことに、3個のタンパク質、つまりSRGN、IGLV3-12、およびASGR1遺伝子産物(以下の表9)のタンパク質シグネチャは、>100mg/Lの血中CRPにより特徴づけられる重度の全身性炎症を有する患者および残りの被験者を区別することができた。図5において確認することができるように、シグネチャは、>100の血中CRPを有する患者すべてを、わずかに5%の偽陽性測定値で同定することができた。
【0203】
【表9】
【0204】
さらに、図6は、表9に列記されている遺伝子産物を使用して>100mg/Lの血中CRPにより特徴づけられる重度の全身性炎症の検出を示す決定木分析を表す。図6において、各分割は、ノードの下のテキストで説明されるように、決定基準を表す。各ノードの色は、この基準に含まれる>100の血中CRPを有する患者の比を表し、白色(重度の全身性炎症)から暗色(本明細書では「低炎症」とも呼ばれる残りの試験被験者を表す)になる。各ボックスにおいて、上側のテキストは、このリーフのほとんどの人がいる場所を示唆している(偽-リーフのほとんどの人が炎症を起こしていない、真-ほとんどの人が炎症を起こしている)。2つの10進数は、ノード内の人口全体の健康/低炎症の割合(左側)、または重度の全身性炎症(右側)をそれぞれ表す。最も小さい数値は、このノードに該当する人口全体の割合を表す。ブランチは、高いほうがより重要であるように、階層的に編成されていた。
【0205】
図6において確認することができるように、上のボックスは、被験者の78%が>100mg/Lの血中CRPレベルを有しており、被験者の22%が<100mg/Lの血中CRPを有しているコホート全体を説明する。第1のリーフ基準は、尿中SRGNの不在に基づいており、左側は、検出可能なレベルのSRGNを有していない人口全体の75%を表す。この群において、被験者の95%は、低炎症群に属している。別のサイズ(右)では、検出可能な尿中SRGNを有する被験者であり、重度の全身性炎症を有する71%の可能性を表す。最後のリーフは、IGLV3-12またはASGR1の不在に基づいて群を分割する。
【0206】
確認することができるように、尿中のこれらの遺伝子産物、つまりSRGN、IGLV3-12およびASGR1の存在は、重度の全身性炎症と正の相関がある。さらに確認することができるように、最高ランクのパラメータとしてSRGNで開始する、尿中マーカーによる階層的クラスタリングは、血中CRPレベルに基づいた分析と高い相関があった。まとめると、結果は、尿中マーカーSRGN、IGLV3-12およびASGR1の決定木分析を使用して、患者が重度の全身性炎症を有しているか有していないかを高い正確性で正確に同定することができることを示す。
【0207】
実施例4-炎症状態を監視するための追加のプロテオミクスシグネチャ
実施例3において尿中で同定されたすべてのタンパク質に対して正則化回帰(glmnet)を適用した。この最後に、尿タンパク質値に対する血中CRP値のラッソ回帰を実行し、タンパク質の小さいサブセットが残るまで収縮パラメータを高めた。
【0208】
表10~表14は、以下に詳述するように、連続的な方法で試験被験者において測定された血清CRPレベルを正確に予測することができると同定された遺伝子産物シグネチャの詳細を示す。予測されたCRPレベルに対する各マーカーの寄与を表すベータ係数も提示されている。
【0209】
特に、表10に列記されている遺伝子産物は、12個の遺伝子産物の尿中シグネチャを表し、すべての試験被験者における血中CRPとの線形相関を与える(r=0.92)。
【0210】
【表10】
【0211】
次に、30mg/Lよりも高い血中CRPレベルにより特徴づけられる全身性炎症を有する患者群をさらなる分析のために選択した。表11および表12に列記されている遺伝子産物は、それぞれ15個および5個の遺伝子産物の尿中シグネチャを表し、これらの患者における血清CRPレベルを、高い相関(それぞれr=0.95および0.83)で、正確に予測することができる。したがって、これらのマーカーは、中等度および重度の全身性炎症を評価するためにこのように特に有用である。
【0212】
【表11】
【0213】
【表12】
【0214】
さらに、マーカーの量ではなく、マーカーの有無に基づいて炎症のレベルを予測する能力を評価した。以下の表13および表14は、それぞれ9個および5個の遺伝子産物の尿中シグネチャを表しており、この方法論を使用して血清CRPレベルを高い相関(それぞれr=0.94および0.8)で、正確に予測することができる。
【0215】
【表13】
【0216】
【表14】
【0217】
実施例5.炎症のための尿中マーカーとして新たに同定されたSAAフラグメント
尿試料中で同定されたSAA1およびSAA2遺伝子産物のアミノ酸配列を特徴づけるための一連の実験。この最後に、ペプチド模倣分析を、実施例3に記載の患者からの尿試料に対して実行した。試料を、10kDa分子量カットオフ膜で濾過し、低分子量画分を回収した。その後、C18カートリッジを使用して脱塩し、質量分析により分析した。
【0218】
予期せず、SAA1およびSAA2の両方が、タンパク質全体ではなく外因性ペプチドとして試料中に存在していることが認められた。SAA1およびSAA2フラグメントは、シグナルペプチドを超えた範囲のN’短縮により特徴づけられた。
【0219】
注目すべきことに、ペプチドの1つ、つまりSAA2由来ペプチドGNYDAAKRGPGGAW(配列番号1)は、血中CRPレベルと高い相関(0.78)を示した。したがって、この独特で新たに同定されたペプチドは、炎症のマーカーとして本発明の実施形態において使用することができる。
【0220】
実施例6.既知の血液マーカーは、尿中で同定されない
本質的に実施例3に記載されるように、TRAIL、CXCL10(IP-10)およびCRPのレベルを、健康な被験者の尿試料および種々の感染症に罹患している被験者の尿試料中でさらに測定した。標的化プロテオミクス実験を全91個の試料:32個の健康な対照、および炎症状態を有する患者からの59個の試料(30個はウイルス感染症、および29個は細菌感染症)に対して実行した。
【0221】
CRPに対応する遺伝子産物を以下のように尿試料中で検出した:32個の対照試料のうち14個(43.8%)、30個のウイルス性の試料のうち26個(86.7%)および29個の細菌性の試料のうち28個(96.6%)が、CRP遺伝子産物を含んでいた。健康な被験者と比較して炎症状態を有する患者における増加した多量の尿中CRPは、統計的有意に到達した(カイ二乗<0.001);ウイルス感染症の被験者を細菌感染症の被験者と比較した場合、統計的有意に到達しなかった(カイ二乗p=0.173)。3つの群で尿中CRPのレベルを比較した場合、炎症状態を有する患者と健康な対照との間に有意差が同定された(対照における中央IQR:0[0~1,771,063]、ウイルス感染症:6,191,530[1,742,375~14,390,560]および細菌感染症では15,081,115[2,886,969~47,985,575]、p<0.001、クラスカル-ウォリスH検定)。ウイルス性の患者と細菌性の患者との間の差異は、多重比較の補正後に有意なままではなかった(p=0.011、ウイルス性と対照との間の比較のためのマン-ホイットニー検定)。
【0222】
印象的な対比において、TRAILおよびCXCL10遺伝子産物は両方とも、いずれの尿試料中でも検出可能ではなかった。換言すると、種々の感染症を有する被験者を含めて、血液試料中で豊富であると報告されているにも関わらず、TRAILまたはCXCL10遺伝子産物は、健康な被験者またはいずれかの患者群の尿中で測定することができなかった。
【0223】
したがって、結果は、血液中で測定される場合の診断バイオマーカーとしてこれまで提案または認識されたものを含む、血液タンパク質のレベルとそれらの尿の対応物のレベルとの間に典型的に観察される相関がないことを例示する。対比において、尿中バイオマーカーとしての使用と一致した検出可能で一貫したレベルは、予想外に、本発明の選択された遺伝子産物および診断シグネチャに特徴的であった。
【0224】
特定の実施形態の前述の説明は、本発明の一般的な性質をそのように完全に明らかにするので、他は、現在の知識を適用することにより、過度の実験なしで、また類概念から逸脱することなく、そのような特定の実施形態で、種々の用途について、容易に修正および/または適応することができ、そのため、そのような適応および修正は、開示された実施形態の等価の意味および範囲の中で理解されるべきであり、理解されるように意図される。本明細書で使用される表現または用語が、説明を目的とするものであり、限定するものではないことが理解されるべきである。種々の開示された機能を実行するための手段、材料、およびステップは、本発明から逸脱することなく、多様な代替の形態を取ることができる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023505713000001.app
【国際調査報告】