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特表2023-505716テラヘルツ信号又はピコ秒電気パルス用の3次元光伝導トランスデューサ
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  • 特表-テラヘルツ信号又はピコ秒電気パルス用の3次元光伝導トランスデューサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(54)【発明の名称】テラヘルツ信号又はピコ秒電気パルス用の3次元光伝導トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H01S 1/02 20060101AFI20230203BHJP
   H01L 31/0264 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
H01S1/02
H01L31/08 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535967
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2020085625
(87)【国際公開番号】W WO2021116339
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】19306646.1
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】509265302
【氏名又は名称】アンスティテュ・ポリテクニック・ドゥ・グルノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】522232329
【氏名又は名称】ユニベルシテ・サボア・モン・ブラン
(71)【出願人】
【識別番号】519077687
【氏名又は名称】ウニベルシテ グルノーブル アルプ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー,バウアリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ,ルー
(72)【発明者】
【氏名】ジオルゴ,ジョルジウ
【テーマコード(参考)】
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
5F149AB07
5F149BA01
5F149CB14
5F149DA34
5F149FA05
5F149HA15
5F149LA04
5F149XB18
5F149XB24
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(57)【要約】
本発明は、テラヘルツ周波数領域又はピコ秒パルス領域の波動を生成又は検出することを目的とした光伝導トランスデューサに関する。トランスデューサは、第1の平面電極(El)、レジスト(R)の層に埋め込まれたナノコラム(C)のアレイ、及び第1の平面電極に平行な第2の平面電極(E2)がこの順序で含まれる3次元構造を含む。トランスデューサの設計は、フォトニック共鳴及びプラズモン共鳴を用いて、及び高く均質な電界を用いて、光からテラヘルツへの変換効率を向上させる。ナノコラムの高さ及びレジストの厚さは、100nm~400nmの間の範囲にわたる。ナノコラムの幅は、100nm~400nmの間であり、2つの隣接するナノコラム間の距離は、300nm~500nmの間であり、ナノコラムは、III-V半導体で作られている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ周波数領域又はピコ秒パルス領域の波動を生成又は検出することを目的とした光伝導トランスデューサであって、光伝導トランスデューサは、第1の平面電極(E1)、前記第1の平面電極に平行な第2の平面電極(E2)、及び前記第1の平面電極と前記第2の平面電極との間に位置するレジスト(R)の層に埋め込まれた同一のナノコラム(C)のアレイを含む3次元構造を含み、前記レジスト及び前記第2の平面電極は、電磁スペクトルの可視又は近赤外領域内の所与の波長において透明であり、前記ナノコラムの高さ及び前記レジストの厚さは、100ナノメートル~400ナノメートルの間の範囲にわたり、前記ナノコラムの幅は、100ナノメートル~400ナノメートルの間であり、2つの連続するナノコラム間の距離は、300ナノメートル~500ナノメートルの間であり、前記ナノコラムは、III-V半導体で作られ、各ナノコラムの最上部は、前記第2の電極に電気的に接続された金属接点(CE)を含むことを特徴とする、光伝導トランスデューサ。
【請求項2】
前記コラムの前記幅、2つの隣接するコラムを隔てる前記距離、及び前記レジストの屈折率は、前記第2の平面電極を通して前記所与の波長において前記光伝導トランスデューサを照らすことが、ポリマーレジスト及びナノコラムの前記アレイからなる異種層を通って伝播するガイド光フォトニックモードと、前記構造の上面及び下面におけるプラズモン共鳴と、前記ナノコラム内部での前記2つの電極間の垂直方向の共振空洞モードと、を励起するように選択される、請求項1に記載の光伝導トランスデューサ。
【請求項3】
前記3次元構造の面積は、1μm~1000μmの間に含まれる、請求項1又は2に記載の光伝導トランスデューサ。
【請求項4】
前記第2の電極は、酸化インジウムスズで作られている、請求項1~3のいずれか一項に記載の光伝導トランスデューサ。
【請求項5】
前記ナノコラムの断面は、長方形又は円形又は多角形である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光伝導トランスデューサ。
【請求項6】
前記ナノコラムの材料は、ヒ化ガリウム又はヒ化ガリウムインジウム又はリン化インジウムの中で選択されるIII-V半導体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の光伝導トランスデューサ。
【請求項7】
前記レジストは、ネガ型エポキシフォトレジストである、請求項1~6のいずれか一項に記載の光伝導トランスデューサ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光伝導トランスデューサと、前記規定された波長で発光するレーザ(L)であって、前記レーザは、前記第2の電極を通してコラムの前記アレイを照射するように配置される、レーザ(L)と、前記第1及び第2の電極間の電位差を確立するための手段と、を含むテラヘルツエミッタ。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光伝導トランスデューサと、前記規定された波長で発光するレーザ(L)であって、前記レーザは、前記第2の電極を通してコラムの前記アレイを照射するように配置される、レーザ(L)と、前記レーザからの照射及び入来テラヘルツ放射(R)から生じる光発生電流から生じる出力信号を測定する電圧計(V)と、を含むテラヘルツレシーバ。
【請求項10】
テラヘルツ周波数領域の波動を放出するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の光伝導トランスデューサの使用。
【請求項11】
テラヘルツ周波数領域の波動を検出するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の光伝導トランスデューサの使用。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光伝導トランスデューサを製造するための方法であって、前記3次元構造の製造が、
- III-V半導体で作られた基板にナノコラム(C)の前記アレイをエッチングするステップと、
- 前記ナノコラムの上面、及び前記ナノコラムを支持する前記基板の下面に金属層(E1、CE)を堆積させるステップであって、前記ナノコラムの最上部は、したがって金属接点(CE)を含む、ステップと、
- ネガ型エポキシフォトレジスト(R)の層をスピンコーティングして、コラムの前記アレイを覆うステップと、
- レジストの前記層を電子ビーム又はUVリソグラフィで露光するステップと、
- 前記ナノコラムの上端の前記金属接点(CE)が出現するまで、レジストの前記層を研磨又はエッチングするステップと、
- 前記さまざまな金属接点(CE)を接続するように、レジストの前記層に透明な金属層(E2)を堆積させるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、ピコ秒のオーダ又はピコ秒よりも短い、非常に高い周波数の放射及び/又は非常に短い持続時間の電気パルスを生成又は検出するための源の分野である。本発明の好ましい応用の1つは、高効率テラヘルツ源の開発である。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ放射は、大抵の材料へのその高い透過力に特に関連した、さまざまな応用分野を有する。例えば、本発明の応用分野は、セキュリティ、検出、品質管理、通信及びナノテクノロジーを使う電子応用であり得る。これらの源を室温又は低温で使用することが可能である。
【0003】
この高効率テラヘルツ源の開発は、遭遇する困難の1つである。1つの可能な製造技術は、連続波又はパルスレーザによって生成された光放射をテラヘルツ放射及び/又は電気パルスに変換することを伴う。さまざまな変換手段が可能である。
【0004】
最も一般的な手段の1つは、光伝導スイッチとして知られる、光電子デバイスを使うことである。後者は、以下の機構を介して連続波テラヘルツ放射又はピコ秒電気パルスを生成することができる。
【0005】
レーザ光源が連続波放射又は超短パルスの形式の放射を放出する。いわゆる超短は、100フェムト秒より少ない持続時間を持つパルスを意味する。レーザ光源によって提供される放射は、電磁スペクトルの可視又は近赤外領域に位置している。レーザ光源によって提供される光は、ヒ化ガリウム(GaAs)又はヒ化ガリウムインジウム(InGaAs)などの半導体材料によって吸収される。光吸収を用いて、電荷キャリアが半導体内に生成され、その後、本明細書で電極と呼ぶ金属接点によって収集され、したがって電気信号を作成する。本明細書では、光吸収を用いた電荷キャリア発生のプロセスを光発生と呼ぶことにする。
【0006】
この信号の持続時間及び周波数は、レーザ光源によって提供される光の周波数及び持続時間に依存する。光電子デバイスの非常に高いダイナミックレンジにより、ギガヘルツ又はテラヘルツの周波数帯域で電気信号を生成することが可能になる。
【0007】
既存の技術の主な欠点は、変換効率が低いことであり、それにより、既存の技術は、ある特定のテラヘルツ電力を必要とする用途、又は低温環境での動作が必要とされるシステム及び用途に適さないものになる。
【0008】
変換効率は、レーザ光源によって供給される光強度と光電子デバイスによって供給されるテラヘルツ電力の比として定義される。この効率は、2つの要因の結果である。第1の要因は、半導体によるレーザ光の吸収効率と関連している。吸収効率は一般に低い。
【0009】
第2の要因は、光電子デバイスの電極による光発生電荷キャリアの収集効率に関連している。この効率も同様に低い。これらの2つの要因を改善するための一定数の技術的解決策が提案されている。
【0010】
IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology,Vol.5,N°2,March 2015,pp.223-229で公表された、“High-Power Terahertz Generation Using Large-Area Plasmonic Photoconductive Emitters”と題されたNezih T.Yardimciらによる公表文献、及び“Photoconductive device with plasmonic electrodes”と題された特許出願国際公開第2013/112608号パンフレットでは、以下の構成要素を含む光伝導デバイスについて説明している。半導体基板、アンテナアセンブリ、及び半導体基板上に位置付けられた1つ又は複数のプラズモン接触電極から作られた光伝導アセンブリである。この光伝導アセンブリは、プラズモン共鳴を通して半導体基板の光吸収領域でのレーザ吸収効率を高めることによって、光伝導体デバイスの全体的な効率を改善するように作られる。このデバイスは、レーザ吸収効率を改善するのみである。
【0011】
IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology,Vol.4,N°5,September 2014 pp.575-581で公表された、“7.5% Optical-to-Terahertz Conversion Efficiency Offered by Photoconductive Emitters With Three-Dimensional Plasmonic Contact Electrodes”と題されたShang-Hua Yangらによる公表文献では、プラズモン接触電極の平行列から構成されたアレイを含む類似の光伝導デバイスを提案している。
【0012】
Scientific Reports,7(1),pp.4166で公表された、“A High-Power Broadband Terahertz Source Enabled by Three-Dimensional Light Confinement in a Plasmonic Nanocavity”と題されたNezih Tolga Yardimciらによる公表文献では、前述のものと類似したデバイスについて説明しているが、それは、レーザ吸収のさらなる増加を容易にするために、光吸収半導体の一部として追加の分布ブラッグ反射器を含む。
【0013】
Journal of the Optical Society of America B,33(4),pp.748-759で公表された、“Computational modeling of plasmonic thin-film terahertz photoconductive antennas”と題されたBurfordらによる公表文献では、接触電極上に置かれたナノディスクの薄いプラズモンアレイを含む光伝導デバイスについて説明している。
【0014】
Applied Physics Express 4(2011)104101で公表された、“Low-Temperature-Grown GaAs Photoconductor with High Dynamic Responsivity in the Millimeter Wave Range”と題されたPeytavitらによる公表文献、及び同じ発明者による、“Photodetecteur,photomelangeur et leur application a la generation de rayonnement terahertz”(“Photodetector,photomixer and application thereof to generate terahertz radiation”)と題された仏国特許出願公開第2 949 905号明細書では、光学レーザ放射を吸収することができる光伝導材料の層を含む光検出器について説明している。いわゆる薄層は、光吸収材料内部のレーザ放射の吸収長よりも小さい厚さを有する。光吸収材料は、2つの電極の間に位置付けられる。上部電極と呼ばれる、少なくとも部分的に透明な電極と、下部電極と呼ばれる、反射する電極である。いわゆる下部電極及び上部電極は、レーザ放射のための共振空洞を形成する。この光検出器は、自由空間テラヘルツ放射を生成するためのアンテナに結合される。このデバイスは、上記のデバイスと異なり、金属電極による電荷キャリアの収集効率を高めることによって、変換効率を高めることを可能にする。
【0015】
米国特許出願公開第2014/175283号明細書は、誘電体マトリックス内に極性半導体で作られたスラブの1次元又は2次元アレイを含むテラヘルツ検出器を開示している。スラブの各面で、誘電体マトリックスとの界面は、界面フォノンポラリトンをサポートする。各スラブは、上部電気接点及び下部電気接点を有し、光アンテナを形成し、界面フォノンポラリトンと入射放射の共振結合を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2013/112608号パンフレット
【特許文献2】仏国特許出願公開第2 949 905号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/175283号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Nezih T.Yardimci et al.,“High-Power Terahertz Generation Using Large-Area Plasmonic Photoconductive Emitters”,IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology,Vol.5,N°2,March 2015,pp.223-229
【非特許文献2】Shang-Hua Yang et al.,“7.5% Optical-to-Terahertz Conversion Efficiency Offered by Photoconductive Emitters With Three-Dimensional Plasmonic Contact Electrodes”,IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology,Vol.4,N°5,September 2014,pp.575-581
【非特許文献3】Nezih Tolga Yardimci et al.,“A High-Power Broadband Terahertz Source Enabled by Three-Dimensional Light Confinement in a Plasmonic Nanocavity”,Scientific Reports,7(1),pp.4166
【非特許文献4】Burford et al.,“Computational modeling of plasmonic thin-film terahertz photoconductive antennas”,Journal of the Optical Society of America B,33(4),pp.748-759
【非特許文献5】Peytavit et al.,“Low-Temperature-Grown GaAs Photoconductor with High Dynamic Responsivity in the Millimeter Wave Range”,Applied Physics Express 4(2011)104101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これらの公表文献のいずれも、高いレーザ吸収効率と生成されたキャリアの満足できる収集効率の両方を達成することを可能にしない。本発明の1つの目的は、平行電極デバイスの利点とプラズモン/フォトニック構造の利点を組み合わせた単一且つ単純な構造を使用して、これらの2つの効率を著しく改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
より正確には、本発明の1つの主題は、請求項1に記載の、テラヘルツ周波数領域又はピコ秒パルス領域の波動及び信号を生成又は検出することを目的とした光伝導トランスデューサである。
【0020】
従属請求項2~7は、かかる光伝導トランスデューサの具体的な実施形態に対応する。
【0021】
本発明はまた、かかる光伝導トランスデューサを含む、請求項8に記載のテラヘルツエミッタに関する。
【0022】
本発明はまた、テラヘルツ周波数領域の波動を放出及び/又は検出するための、かかる光伝導トランスデューサの使用に関する。本発明はまた、かかる光伝導トランスデューサを製造するための請求項11に記載の方法に関する。
【0023】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、例として与えられ、それぞれ以下のものを示す、添付の図面を参照して与えられる説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による光伝導トランスデューサの構造の平面図の具体例を示す。
図2】本発明による光伝導トランスデューサを含むナノコラムの部分斜視図の具体例を示す。
図3】本発明によるナノコラムの断面図の具体例を示す。
図4】テラヘルツ放射の源として使われる、光伝導トランスデューサの第1の実施形態の具体例を示す。
図5】テラヘルツ放射の源として使われる、光伝導トランスデューサの第2の実施形態の具体例を示す。
図6】テラヘルツ放射のレシーバとして使われる、光伝導トランスデューサの第3の実施形態の具体例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による、光伝導トランスデューサは、テラヘルツ周波数領域又はピコ秒パルス領域の波動のエミッタ又はレシーバのいずれかとして動作し得る。少数の細部を除いて、これらの2つの用途に使用される構造は同じである。
【0026】
本発明による、光伝導トランスデューサはまた、マイクロ又はナノ電子回路用のTHz周波数波又はピコ秒持続時間の電気信号の源として動作し得る。
【0027】
トランスデューサのコアは、以下の3つの要素がこの順序で含まれる構造を含む。
- 第1の平面電極、
- 第1の電極によって画定される平面と垂直に置かれた同一のナノコラムのエンベッデドアレイを含むレジストの層。2つの隣接するコラム間の距離は一定である、
- 第1の平面電極に平行な第2の平面電極。
【0028】
構造の面積は、トランスデューサの使用に応じて、1μm~1000μmの間である。
【0029】
図1は、第1の電極E1の上に置かれたナノコラムアレイCの平面図を示す。図2は、本発明による光伝導トランスデューサのナノコラムCの部分斜視図を示す。図2の場合、コラムは長方形の断面を持っている。コラムの断面はまた、円形又は多角形であってもよい。
【0030】
トランスデューサがエミッタとして使用されるとき、それは、規定された波長で発光するレーザ光源と組み合わせて使用される。この波長は、一般に、電磁スペクトルの可視又は近赤外領域に位置している。この場合、構造のある特定の特性がこの波長に依存する。
【0031】
第1の電極は、金又はチタン又は銀又はアルミニウムで作ることができる導電性堆積物によって形成されている。
【0032】
第2の電極E2は、入射レーザ放射を構造へと透過させるように、前述の波長において透明でなければならない。この目的に向けて、第2の電極は、300ナノメートルよりも大きい波長に対して透明な、酸化インジウムスズの層を堆積させることによって形成され得る。
【0033】
第2の電極E2の厚さは、前述の波長に特有であり、特定の波長に対して反射防止コーティングを形成するようなものでなければならない。
【0034】
同じように、レジストRもまた、レーザ光源の波長において透明でなければならない。例えば、このタイプのマイクロシステムの加工で一般的に使用され、さまざまな変形形態がある、SU-8として知られるレジストなどのネガ型フォトレジストを使用することが可能である。もちろん、他のタイプの透明なレジストが可能である。レジストの層は、一般に、100ナノメートル~400ナノメートルの間に含まれる厚さを有する。
【0035】
ナノコラムの高さは、レジストの層の高さに等しい。コラムの幅及び2つの隣接するコラムを隔てる距離は、レーザの波長及びレジストの屈折率に適合される。
【0036】
レーザ波長の空間的寸法に対してナノコラムの空間的寸法を最適化することによって、レーザ光の吸収は最大化され、これが所望の目的である。各ナノコラムの長さ及び幅は、構造の上面及び下面におけるプラズモン共鳴の励起によってレーザが吸収されるようなものである。加えて、ポリマーレジスト及びナノコラムのアレイからなる異種層を通って伝播する、ガイド光フォトニックモードもまた、励起されることになる。さらに、共振空洞モードもまた、ナノコラム内部で2つの電極間の垂直方向に励起されることになる。一般に、コラムの幅は、100ナノメートル~400ナノメートルの間の範囲にある。
【0037】
ナノコラムのアレイのピッチは、2つの連続したコラム間の距離に対応し、上記の集合的なフォトニック共鳴の励起に関与している。これは、レーザ光を異種層の内部へと効率的に回折するナノコラムの周期的な配置に起因する。2つのコラム間の距離は、300ナノメートル~500ナノメートルの間である。プラズモン効果とフォトニック効果を組み合わせることによって、95%よりも高い吸収を得ることが可能である。
【0038】
コラムの材料は、可能な最良のピコ秒パルスを得るために最適化されなければならない。したがって、非常に速いキャリア応答時間を持つ、すなわち、非常に速いキャリア動特性を持つ材料が使用されなければならない。規模を与えるならば、この時間は10ピコ秒よりも短いことが好ましい。例えば、ナノコラムは、ヒ化ガリウム又はヒ化ガリウムインジウム又はリン化インジウムなどの特別に処理されたIII-V半導体で作ることができる。
【0039】
各コラムCは、第1の電極の導電材料と同一の導電材料で作られており、透明な第2の電極との電気的導通を保証する、上端の接点を支持する。
【0040】
図3は、本発明によるナノコラムCの断面図を示す。それはレジストRによって取り囲まれる。それは電気接点CEを含む。レジストRは、2つの電極E1とE2との間に位置している。
【0041】
図4は、テラヘルツ放射の源として動作する、本発明による光伝導トランスデューサを示す。それは、塗りつぶしの矢印で記号的に表されている、規定された波長で発光するレーザLを含み、第2の電極E2は、前述の波長において透明である。レーザは、レジストRに埋め込まれたナノコラムCのアレイを、第2の電極E2を通して照射するように配置され、前述のアレイは、図4ではR+Cで参照される。
【0042】
2つの平面的で平行な電極の間に置かれたレジスト層及びナノコラムのアレイから構成される変換媒体を備えた構造の配置により、2つの電極E1及びE2を数ボルトの電位差Vにさらすことによって、均一な電界の作成が可能になる。
【0043】
2つの電極を隔てる距離が非常に小さいため、この電位差は、非常に強い電界を作成することができる。これらの電界の大きさは、100kV/cmのオーダである。用途に応じて、印加電圧はDC又はACである。
【0044】
作成された電界は、レーザ放射の吸収によって生成された電荷キャリアを一様に加速する。均一な電界により、電極によって収集されるキャリアの数を最大化することが可能になり、したがって生成される信号を増加させることが可能になる。したがって、これらのキャリアの移動する距離が最小になるように、柱の高さを小さくすることが不可欠である。最小移動距離は、キャリアが再結合機構を通して失われないことを保証する。
【0045】
トランスデューサは、テラヘルツ放射又はピコ秒電気信号Rを生成する。前述のRは、図5に示すように、アンテナ素子の補助を通じて自由空間テラヘルツ放射に変換するか、又は導波路素子を通してマイクロ及びナノ電子回路へと導くことができる。図5の参照符号は、図4のものと同一である。生成される持続時間、強度及び周波数帯域幅は、レーザ光源の持続時間、その出力、その波長、及び電極E1とE2の間に印加される電位差Vに依存する。
【0046】
図6は、テラヘルツ放射の検出器として動作する、本発明による光伝導トランスデューサを示す。テラヘルツ放射は、2つの電極E1とE2の間を流れる電子を加速する。
【0047】
例えば、本発明による、トランスデューサ構造を製造するための方法は、下に説明するステップを含む。
【0048】
ステップ1:ヒ化ガリウム又はヒ化ガリウムインジウム又はリン化インジウムなどのIII-V半導体で作られた基板にコラムのアレイをエッチングする。
【0049】
ステップ2:コラムの上面、及びコラムを支持する基板の下面に金属層を堆積させる。金属層は、金属接点を構成することになる。この工程は、低圧で、すなわち10-6ミリバール未満の圧力で、遅い蒸着速度で、蒸着速度の大きさのオーダが0.5nm/sで、実行され得る。堆積される金属は、金又は銀又はアルミニウム又はチタンで作られていてもよい。この工程では、第1の電極として機能する最下部の金属層と、第2の電極に接続するナノコラムの上面の金属層との間に接触がないことが不可欠である。
【0050】
ステップ3:SU-8などのネガ型エポキシフォトレジストの層をスピンコーティングし、ナノコラムのアレイを完全に覆う。堆積される厚さは、均質性のために、ナノコラムの高さよりも3倍大きくすることができる。
【0051】
ステップ4:レジストの層を電子ビーム又はUVリソグラフィで露光する。
【0052】
ステップ5:ナノコラムの最上部の金属接点が出現するまで、レジストの層を研磨又はエッチングする。
【0053】
ステップ6:さまざまな金属接点を接続するように、レジストの層に透明な金属層を堆積させる。この層は、酸化インジウムスズで作ることができる。後者の層の厚さは、レーザ光源の波長に応じて、100ナノメートル~300ナノメートルの間の範囲にある。
【0054】
以下は、本発明による光伝導トランスデューサの主な利点である。
【0055】
その3次元構造により、従来技術のデバイスで得られるものよりもずっと高い、高効率を得ることが可能になる。したがって、現行のトランスデューサと比較して10倍の効率改善が得られる。
【0056】
そのうえ、2つの電極間に挟まれたナノコラムのアレイから構成されるその「垂直」構造により、この効率をさらに最適化することが可能になる。
【0057】
別の利点は、同じ構造が、テラヘルツ放射の源として、及び同じ放射のレシーバとして使用され得ることである。
【0058】
トランスデューサは、マイクロ及びナノ電子回路でオンチップに使用することができる。
【0059】
このトランスデューサは、セキュリティ、生物学的又は化学的検出、品質管理、電気通信、エレクトロニクス及び量子エレクトロニクスの分野をカバーする、広範囲の用途で使うことができる。
【0060】
そのアーキテクチャにより、このトランスデューサは、超高速電子スイッチング用途のために室温及び低温で動作することが可能になる。したがって、量子技術でそれを使用することが可能である。量子コンピュータの量子ビットを検査、トリガ又は駆動するための超高速源としてそれを使用することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】