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  • 特表-PVD源のガスリング 図1
  • 特表-PVD源のガスリング 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(54)【発明の名称】PVD源のガスリング
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20230203BHJP
【FI】
C23C14/34 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536477
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2020081650
(87)【国際公開番号】W WO2021115703
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】01623/19
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518031387
【氏名又は名称】エヴァテック・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・マーク
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・リーネル
(72)【発明者】
【氏名】エドモンド・シュンゲル
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DA05
4K029DA06
4K029DC20
4K029DC28
4K029DC35
(57)【要約】
材料の堆積のためのターゲット(6)を有する陰極(24)を含むPVD源(1)のためのガスリングである。前記ガスリング(2)は、内側リム(3)と、外側リム(4)と、内側リムと外側リムとの間の少なくとも1つのフランジ(5、5´)とを備えている。ガスリング(2)は、- ガス入口(6)と、- 内側リム(3)内または付近に円周方向に配置されたガス開口部(7)と、- ガス入口および/またはガス開口部に連結された少なくとも1つの円周方向ガスチャネル(8、9)と、- 冷却ダクト(11)とをさらに備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の堆積のためのターゲット(6)を有する陰極(24)を備えたPVD源(1)のためのガスリングであって、
前記ガスリング(2)が、内側リム(3)と、外側リム(4)と、前記内側リムと前記外側リムとの間の少なくとも1つのフランジ(5、5´)とを備え、
- ガス入口(6)と、
- 前記内側リム(3)内または付近に円周方向に配置されたガス開口部(7)と、
- 前記ガス入口および/または前記ガス開口部に連結された少なくとも1つの円周方向ガスチャネル(8、9)と、
- 冷却ダクト(11)と
をさらに備えている、ガスリング。
【請求項2】
前記冷却ダクトが、水ダクト(10)である、請求項1に記載のガスリング。
【請求項3】
第1の円周方向ガスチャネル(8)と、第2の円周方向ガスチャネル(9)とを備え、前記第1の円周方向ガスチャネル(8)が、前記ガス入口(6)に連結され、前記第2の円周方向ガスチャネル(9)が、前記ガス開口部に連結され、両方のガスチャネル(8、9)が、円周方向の流れ変更部材(10)によって隔てられている、請求項1または2に記載のガスリング。
【請求項4】
前記流れ変更部材が、隔壁の円周上に均等に配置された小孔を有する隔壁である、請求項3に記載のガスリング。
【請求項5】
前記流れ変更部材が、グリッドまたはフリットである、請求項3に記載のガスリング。
【請求項6】
少なくとも1つの連続したリング、または互いに接合された少なくとも2つ以上のサブリングからなる、請求項1から5のいずれか一項に記載のガスリング。
【請求項7】
サブリングが、例えばガスコネクタであるガス入口、ガス入口チャネルの少なくとも第1の部分、流体ポート、ならびに流体入口および出口ダクトの少なくとも第1の部分を備える第1のリングと、円周方向のガスチャネルおよび少なくとも一部の円周方向の冷却ダクトを備える第2のリングとを備えている、請求項5に記載のガスリング。
【請求項8】
前記ガスリング、サブリング、または第1および第2のリングの材料は、第1の熱膨張係数を有する第1の材料である、請求項6または7に記載のガスリング。
【請求項9】
前記ターゲットの円周の方に向き前記内側リム上または付近に解放可能に取り付けられた円周方向陽極をさらに備えている、請求項1から8のいずれか一項に記載のガスリング。
【請求項10】
陽極が、第1の材料よりも高い熱膨張係数(CTE)を有する第2の材料から作られている、請求項9に記載のガスリング。
【請求項11】
前記第2の材料が、アルミニウムまたは銅のうちの1つである、請求項10に記載のガスリング。
【請求項12】
前記第1の材料が、ステンレス鋼であり、前記第2の材料が、アルミニウムである、請求項11に記載のガスリング。
【請求項13】
陽極が、第1のフランジ上に取り付けられ、前記第1のフランジが、前記内側リムから外方にオフセットされている、請求項9から12のいずれか一項に記載のガスリング。
【請求項14】
当該ガスリングの内壁の段上に第2のフランジをさらに備えている、請求項1から13のいずれか一項に記載のガスリング。
【請求項15】
当該ガスリングの外壁の段上に第3のフランジをさらに備えている、請求項1から14のいずれか一項に記載のガスリング。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のガスリングを備えている、PVD源。
【請求項17】
スパッタ源である、請求項16に記載のPVD源。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一項に記載のガスリング、または、請求項16もしくは17のいずれか一項に記載のPVD源を備えている、真空チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のガスリング、請求項16に記載のそのようなガスリングを備えるPVD源、および請求項18に記載のそのようなガスリングを備える真空チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
PVD源に取り付けられた平面ターゲットの前面近くのPVD源(PVDは、物理蒸着を表す)を取り囲むガスリングは、表面処理(engineering)適用例の広範な分野で頻繁に使用されている。したがって、スパッタリングもしくは蒸着されるべき領域である活性面領域全体にわたる、および/またはターゲットの前にありかつターゲットに対してセンタリングされた基板に対する、均一なガス分配が達成されなければならない。そのようなガスリングはしばしば、ターゲット使用を最適化するため、また前面における再堆積または不動態化領域の形成を回避するため、円形もしくは六角形のPVD源についての一例として回転磁界もしくは回転ターゲットのような他の測定(measurements)と組み合わされる、または、矩形の細長いターゲットについての一例として他のタイプの変動磁界と組み合わされる。そのような再堆積および不動態化領域は、任意のタイプの表面処理について、ダスト形成またはアーク放電(arcing)により有害であり得る。しかし、半導体産業および光学産業での依然として大きくなるプロセス要件により、例えば現況技術のガスリングのスパッタガス分配であるプロセスも、記載したような産業における特定の非常に複雑なプロセスのために改善されるべきであることが分かった。別の点は、特に絶縁または半導体の材料をもスパッタリングする、高周波(RF)スパッタ処理の普及である。そのようなプロセスはしばしば、RF供給源に電気的に接続されていない構成要素に対しても、特にそれらがスパッタ源付近にあるまたはガスリングが行うようにスパッタ源を取り囲むとき、高い誘導性熱負荷(inductive heat load)を発生させる。そのような問題は、例えばガスリングと真空チャンバまたはPVD源の隣接の構成要素との間における異なる表面電位の形成、および、ガスリングと陰極電位の構成要素との間の暗室距離の移動などを含む熱変形および/またはRF誘起効果により形成されることがある寄生プラズマによりさらに深刻化することがある。
【0003】
以下にあるスパッタ処理およびそれぞれのスパッタ源への注目にもかかわらず、現況技術のガスリングの改善は、ガス分配およびプロセスの信頼性における高い基準が満たされなければならない場合、陰極アーク源のような他のPVD源についても有益であることに言及しておかねばならない。
【0004】
定義
以下において、リング、円周方向および元来円形の幾何形状に用いられる他の用語の意味は、例えば楕円形、矩形または六角形のような多角形である他の幾何形状も包含し、したがって、例えばマグネトロンであり得る任意の平面スパッタ源内もしくはそれとともに、または陰極アーク蒸着装置であり得る他の平面PVD源とともに使用される楕円形または角のある陰極幾何形状の平面陰極のためのそれぞれのガスリングも包含する。
【0005】
「内方」および「外方」という用語の使用は、それぞれのターゲット/源の幾何形状の中心点/軸または中心線/面の方に向かうおよびそこから遠ざかる方向に言及する。上、上方および下、下方または下側という用語の使用は、図面に示されるような図に言及し、取り付けのときのガスリングまたはPVD源の可能な方向に言及するものではなく、したがってPVD源は例えば上部または底部または側壁である真空チャンバの様々な位置に取り付けられ得る。以下において参照するような標準的な陽極は、以下に詳細に述べるように接地された陽極である。しかし、発明の真空チャンバは、真空チャンバの他の場所に取り付けられ、例えば接地された陽極と陰極との間よりも高い電位差をもたらす他のタイプの陽極をも備えてもよい。そのような真空チャンバは、ガスリングおよびPVD源の特徴が以下に開示される発明の設計に適合する限り、本発明の範囲内に明示的に包含される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述のような現況技術の欠点を回避するガスリングを提供すること、ならびにガス分配およびプロセスの信頼性を向上させることである。さらなる副次的な目標は、PVDプロセス中の温度の安定化および熱膨張の最小化、RF適用例のための電気的なレイアウトの最適化、ならびに取り扱い易さである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ガスリングは、PVD源向けに設計される。PVD源は、例えばスパッタリングのための陰極または陰極アークプロセスのための陰極である陰極を備え、それによってプロセスのパラメータに応じて、基板表面におけるターゲット材料の堆積または基板表面のエッチングが実施され得る。前記ガスリングは、陽極ならびに/または、電力接続部およびスパッタリングもしくは蒸着されるべき材料から作られたターゲットを含む陰極ベースからなる陰極の外側マージンを少なくとも部分的に取り囲むように内側リムを有する。ガスリングはさらに、外側リムおよび内側リムと外側リムとの間の少なくとも1つのフランジを有し、それによって、陰極を支持する陰極ベースおよび/または陽極に対して真空チャンバのそれぞれの開口部内へと取り付けられ得る。前記ガスリングは、
- ガス入口と、
- 例えば円形もしくは六角形の幾何形状のPVD源の場合は中心軸の方に向けて径方向にまたは矩形の幾何形状のPVD源の場合は中心面に開いた内側リム内または付近に、例えば固定された間隔で円周方向に配置された、ガス開口部と、
- ガス入口および/またはガス開口部に連結された少なくとも1つの円周方向ガスチャネルと、
- 真空気密冷却ダクトと
をさらに備える。
【0008】
冷却ダクトは、任意の冷却流体を、ガスリング内、例えば流体入口ポートと流体出口ポートとの間に本質的に円周方向に輸送するように設計することができ、それによって、少なくとも高温の陽極および/または陰極の周りのガスリングの部分が十分に冷却され得るようになる。ほとんどの場合、ガスリングは、0.1から10barまでの内圧の冷却水を受けるように設計されることになる。
【0009】
2つのガスチャネルの組合せが、1つのチャネルの設計よりも本質的により良好なガス分配をもたらすことができることが分かった。そのような構造は、第1の円周方向ガスチャネルと、第2の円周方向ガスチャネルとを備えることができ、第1のガスチャネルが、ガス入口に連結され、第2のガスチャネルが、ガス流れ方向にガス開口部に連結される。両方のガスチャネルは、各ガスチャネル単独よりもその円周に沿って本質的に均一により高い流れ抵抗を有する円周方向流れ変更部材によって隔てられる。したがって、流れ変更部材は、隔壁の円周上に均等に配置された小孔を有する隔壁として設計され得る。一例として、隔壁は、0.5から2.5mmまで、例えば1から2mmまでの厚さを有し、10から150mmまで、例えば20から100mmまでの固定された間隔で、直径D≦2mmまたは≦1.0mm、例えば0.5±0.2mmを有する孔を有することができる。あるいは、流れ変更部材は、例えば、上述したような有孔隔壁のような同様の流れ抵抗を有する単一または多層の金属グリッドまたは金属フリット(frit)である、グリッドまたはフリットであってもよい。
【0010】
ガスリングは、少なくとも1つの連続した(solid)リング、または互いに接合された少なくとも2つ以上のサブリングからなり得る。分割されたサブリングを用いれば、例えばプロセスガスまたは冷却水のための流体チャネルおよびダクトおよびそれらのクロージャの製造が容易になり得る。そのようなサブリングは、ガス入口、ガス入口チャネルの少なくとも第1の部分、入口ポートおよび出口ポートを備える例えば流体継手である流体ポート、ならびに入口および出口ダクトの少なくとも第1の部分を備える第1のリングと、円周方向ガスチャネル、および円周方向冷却ダクトの少なくとも一部を備える第2のリングとを備えることができる。第1のリングは、第2のリングの外径を取り囲むおよび/または突出させる外側リングである。第2のリングは、陰極またはターゲットに近接する内側リングである。
【0011】
連続したリング、サブリング、または第1および第2のリングの材料は、第1の熱膨張係数(CTE)を有する第1の材料から作られ得る。一例として、材料は、標準的な適用例にはステンレス鋼、リングと陽極のとの間の熱膨張が大きく異なることが必要とされる適用例にはチタン、冷却パワーが最適化されるべき場合には銅とすることができる。ステンレス鋼の大きなサブリングは、WIG溶接によって接合され、流れ変更部材のようなそれぞれのより薄い構成要素と例えばクロージャまたはガスリングのキャビティを閉じる閉鎖部であるカバーとの接合には、レーザ溶接が使用され得る。
【0012】
ガスリングは、ターゲットの円周の方に向き内側リム上または付近に解放可能に取り付けられた円周方向陽極をさらに備えることができる。陽極は、第1の材料よりも高い熱膨張係数を有する第2の材料から作られ、また、一片の材料から陽極リングとして作られ得る。第2の材料は、アルミニウム、または、第1の材料がステンレス鋼もしくはチタンからであれば銅からであってもよい。第1の材料がステンレス鋼である場合、費用効果およびCTEの違いという観点から、第2の材料の良好な選択はアルミニウムである。陽極材料のより高いCTEおよびスパッタリング、したがって特にRFスパッタリングまたはターゲット表面からのアーク蒸着のようなPVDプロセスの間の熱負荷により、陽極は、陽極の外面に平行なリング壁によって形成される陽極座部内へと外方に押され得る。したがって、陽極座部と陽極との間の空隙サイズは、プロセス状況下で良好な熱コンダクタンスを確実にするほど十分に小さいが、サービス目的での陽極の手動による取り付け(外し)を可能にするほど十分に大きくなければならない。一例として円形のPVD源の場合に円筒形であり得る陽極座部は、加熱される陽極の膨張力を吸収するように軸Zに平行でなければならない。
【0013】
陽極は、例えば5から30mmまで、矩形のPVD源の中心面をも表すことができる軸Zの方に向けて内方に、陽極を担持する連続したリングまたはそれぞれのサブリングを延長することができる。これによって、陽極の内周は、ターゲットとガスリングの他の部分との間において、ターゲット表面に対して一直線の視野内にあり、それによって、これらの部分が直接的な放熱から遮蔽される、またはスパッタリングもしくは蒸着される材料がターゲット表面から遮蔽され、少なくとも部分的に、ターゲット表面またはターゲット固定具の上に内方に例えば5から20mmまで突出することができ、ここで、それぞれの暗室距離および/または絶縁は、陰極電位の部分と陽極電位の部分との間において遵守されなければならない。
【0014】
陽極は、内側リムから外方にオフセットされた第1のフランジ上に取り付けられ得る。フランジは、例えばターゲット表面に対して平行に、PVDチャンバ内に取り付けられると、PVD源の方に向けて軸方向に向けられるように設計され得る。ねじまたは他の押圧手段は、冷却されるリングと陽極との間に良好な熱的結合をもたらすように、第1のフランジ上に陽極を押し付けることに使用され得る。
【0015】
ガスリングは、リングの内壁の段上に第2のフランジをさらに備えることができる。第2のフランジは、例えばガスリングをPVD源または真空チャンバの取付レールに取り付けるように、第1のフランジから外方に設けられ得る。
【0016】
第3のフランジは、ガスリングをPVDチャンバの上またはそれに対して取り付けるようにリングの外壁の段上に設けられ得る。一般的に、第2および第3のフランジは、少なくともそれらが雰囲気から真空を隔てなければならないとき、ガスケットを備えることになる。少なくとも第2の内側フランジはさらに、例えば銅リングまたはメッシュなどの形態の、RFシールド構造を備えることができる。
【0017】
本発明はさらに、円形または例えば矩形もしくは六角形である多角であり得る平面ターゲット、および上述のガスリングを備える、PVD源を対象とする。PVDが物理蒸着を表すそのようなPVD源は、スパッタリングまたは陰極アーク蒸着によってターゲット材料を蒸着するように設計された源を備える。好ましい一実施形態では、PVD源は、スパッタ源である。
【0018】
本発明はさらに、本発明によるガスリング、または上述のようなPVD源を備える真空チャンバを対象とする。
【0019】
本発明によるガスリング、PVD源または真空チャンバのうちの2つ以上の実施形態を矛盾しない限り組み合わせることができることを強調しておく。
【0020】
次に、図面の助けにより本発明をさらに例示する。図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】現況技術のガスリングの概略図である。
図2】発明のガスリングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
軸Zの左である図1の左側には、真空チャンバ40´内に取り付けられ円形PVD源1´の陽極34を囲繞する現況技術によるガスリング2´が示され、後者は、電力接続部28およびスパッタリングまたは蒸着されるべきターゲット26を含む陰極ベース25を有する陰極24をさらに備える。図1の左下側には、ターゲット26の表面26およびターゲット表面26の方に向けて傾斜またはくぼんだ陽極の内面35の方への、PVD源1´の前面の四分円が示されている。ガスリング2´の前面にある開口部7´は、軸方向に向いている。図1の左上半分には、断面A-Aが示されている。ガスは、ガスリング2´内に分配されたガス入口6´に送り込まれ、矢印によって表されるような処理雰囲気へと排出される。処理雰囲気内において、プロセスガスの分子は、例えばArからArである正にイオン化されてから、不活性スパッタガスと反応性ガスの混合物が使用される反応プロセスの場合では、スパッタリングおよび/または表面合金化のためにターゲット表面26の方に向けて引き寄せされる。ガスリング2´は、圧入および封止のための2つのOリングを備える円筒形ガス入口6´に沿って真空チャンバ40´に差し込まれ得る。追加のねじまたはクランプ固定具(図示せず)は、一般的に、現況技術ガスリングとともに適用されることになる。したがって、陽極は、スパッタ源1´のためのアパーチャの周りの真空チャンバ40´の壁に直接取り付けられる。
【0023】
図1の右側には、ターゲットを取り囲み、PVD源1の表面または正面の方を見たときに陽極34の後ろに位置する、他の現況技術ガスリング2″が示されている。円筒形のガス入口6″およびガス開口部7″を有するという点で、リング2″は、左側に示されるようなリング2´と同様の構成をしている。絶縁リング31は、ターゲットとガスリングとの間の寄生プラズマの生成を回避するために、ターゲット26´とガスリング2″との間に取り付けられる。この状況において、陽極34は、スパッタ源1´について予想される真空チャンバ40″のアパーチャ内に取り付けられる。表面処理適用例の広範な分野の真空装置およびPVD源1´とともに図示されるような現況技術のガスリング2´、2″が幅広く使用されているにもかかわらず、特にRFスパッタリングに適用される場合、そのようなガスリングは、技術的な背景の節で述べたようなプロセス安定性およびガス分配の均一性に関して依然として問題がある傾向がある。
【0024】
図2には、真空筐体の部品によって表される真空チャンバ40内のPVD源1に取り付けられるような発明のガスリング2が示されている。図1と同様に、左下部には、それぞれのPVD源の前面の四分円が図示されている。この場合、図面の左上部および右上部に概略的に示されるような2つの断面、すなわち、左側には、冷却流体入口ダクト19cの領域においてガスリング2を横切る断面B-B、右側には、ガス入口6を横切る断面C-Cがある。ガス入口6は、下の四分円図に示されるようなコネクタ41を有することができる。ガス用のそれぞれの流体連結のための継手41および42は、Swagelok継手などのような工業標準継手とすることができる。
【0025】
図2を参照すると、例えばWIG溶接プロセスによって一緒に溶接される外側サブリング12と内側サブリング13とを備える一式のガスリング2(断面C-C参照)が示されている。2つのサブリングの代替の分割線15は、断面B-Bにおいて破線で図示される。そのような代替サブリングは、同じ寸法および特性のガスリングを製造することに使用され得る。図1と同じ参照番号は、同じ番号のそれぞれの部品が幾何形状および設計の特定の態様内で変化することができる場合も、図2の同じ部品を示す。ガス入口6またはガス入口と流体入口19とを備える領域は、リングインサートとして製造され、それぞれのガス入口チャネル6cまたは流体入口ダクト19cの簡単な製造のために例えばガスリングの1つの事前製造部品として挿入され得、左下四分円内の破線が参照される。
【0026】
ステンレスのガスリング2は、アルミニウムまたは一代替実施形態では銅から作られる陽極34の方に向けて外側リム4および内側リム3によって横方向に範囲が定められる。最適な接触およびプロセス安定性のため、陽極は、ガスリングに(例えば、ねじ29またはクランプにより)固定される。径方向に細長いスロットは、材料のCTEが異なることにより、ステンレスのガスリングの円筒形座部の方に向けたアルミニウムの陽極のそれぞれの動きを可能にするように、陽極34において使用され得る。この構造により、ガスリング2および陽極34は、予め組み立てられ、一緒にPVD源または真空チャンバに簡単に取り付けられ得る。
【0027】
断面B-Bでは、一般に、調合された(tempered)水に使用される、冷却流体供給部の詳細が見られる。流体システムは、冷却流体入口ポート19と、冷却流体入口ダクト19cと、入口ダクト19cからガスリング2を回って出口ダクト、したがって流体入口部と同じ設計特徴を有することができ、ともに外側閉鎖部22およびそれぞれの流体継手42を備える冷却流体出口ポート20まで延びる円周方向冷却ダクト21とを備える。内側閉鎖リング23は、ダクト21を覆い、外側閉鎖部22および内側閉鎖リング23はともに、ダクト内で例えば0.1から10barまでの水である流体圧力に耐えるように0.5から2.5mmまでの厚さのレーザ溶接されるステンレス鋼板から作られ得る。円周方向流体ダクト21の下には、流れ変更部材10によって隔てられる円周方向ガスチャネル8および9が見られる。真空チャンバに対して第2のチャネル9を隔てる流れ変更部材10および内側クロージャリング17はやはりまた、上述と同じ寸法のレーザ溶接されるステンレス鋼板から作られ得る。第1のガスチャネル8と第2のガスチャネル9との流体連通のため、流れ変更部材10の円周に沿って均等に0.5mmの直径の孔11が配置される。第2のガスチャネル9と真空チャンバ40との間の流体連通のため(それぞれの矢印も参照)、ガス開口部7が内側リム3内に設けられる。開口部7は、PVD源の表面を示す、ガスリング2の下側へと延在し、源面(source face)の断面C-C四分円も参照される。2つのチャネル構造、ならびに内側リム3および陽極34に対して接線方向に配置される矩形開口部7のそれぞれの設計によって、ターゲット表面および/またはターゲットの前にありかつターゲットに対してセンタリングされた基板に対する任意のガスまたはガス混合物の最適な均一分配が実現され得る。
【0028】
断面C-Cを参照すると、ガスシステムのさらなる詳細である、ガス入口6およびガス入口チャネル6c、ならびにガスチャネル8、9、流れ変更部材10およびガス開口部7が、矢印によって表されるガス流れとともに図示されている。第1のフランジ5上には、陽極34を取り付け易くするためのセンタリングピン18が見られる。第2のフランジ5´上には、ガスケット37および銅リング38が、それぞれRF防護として例えば真空チャンバ40の覆蓋に対する真空封止部として設けられる。リングはさらに、さらなるガスケット37を備えることができる(破線の)真空チャンバ40のフランジ上のガス入口チャネル6cの外側クロージャ16を含む第3のフランジに着座することができる。陽極34は、やはりまた、ターゲット表面26の方に向けて傾斜(実線)またはくぼんだ(破線)内面35を有することができる。
【0029】
断面B-Bでは、陰極24一式は、図1の現況技術一式の場合と同じとすることができ、外側陰極マージン27を形成する陰極ベース25に接着されるターゲット26を示すことができる。ここで、絶縁シリンダ30は、暗室距離で陰極的にバイアスされた(cathodically biased)部分25、26を囲繞することができる。しかし、断面C-Cにおいて、陰極一式24は、陰極ベース25に螺着されたクランプリング32およびディスタンスリング(distance ring)33によって陰極ベース25に機械的にクランプされたターゲット26を示す。そのような陰極一式は、機械強度が高いターゲット材料に使用することができ、高電力スパッタリングについてのより良好な安定性をもたらす。
【0030】
最後に、本発明の実施形態または例のうちの1つだけとの関連で図示または検討され、他の実施形態でさらに検討されていないようなすべての特徴が、そうした組合せが当業者に明らかに不適当であるとすぐに認識できない限り、本発明の他の実施形態の性能も向上させるために良好に適合される特徴になると考えることができることは、言及しておかなければならない。そのため、言及されたものを除いて、特定の実施形態の特徴のすべての組合せが、このような特徴が明示的に言及されていない他の実施形態と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 PVD源
2、2´、2″ ガスリング
3 内側リム
4 外側リム
5、5´ フランジ
6、6´、6″ ガス入口
6c ガス入口チャネル
7、7´ ガス開口部
8 第1の円周方向ガスチャネル
9 第2の円周方向ガスチャネル
10 流れ変更部材
11 孔
12 外側サブリング
13 内側サブリング
14 分割線
15 代替の分割線
16 外側クロージャ
17 内側クロージャリング
18 センタリングピン
19 冷却流体入口ポート
19c 冷却流体入口/出口ダクト
20 冷却流体出口ポート
21 円周方向冷却ダクト
22 外側閉鎖部
23 内側閉鎖リング
24 陰極
25 陰極ベース
26/26´ ターゲット/ターゲット表面
27 外側マージン
28 電力接続部
29 押圧手段(例えば、ねじ)
30 絶縁体
31 絶縁体
32 クランプリング
33 ディスタンスリング
34 陽極
35 内側陽極面
37 ガスケット
38 RF防護
39 シール(Oリング)
40、40´、40″ 真空チャンバ
41 ガスコネクタ
42 水継手(water fitting)
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の堆積のためのターゲット(6)を有する陰極(24)と、ガスリングとを備えたPVD源(1)であって、
前記ガスリング(2)が、内側リム(3)と、外側リム(4)と、前記内側リムと前記外側リムとの間の少なくとも1つのフランジ(5、5´)とを備え、
前記ガスリング(2)が、
- ガス入口(6)と、
- 前記内側リム(3)内または付近に円周方向に配置されたガス開口部(7)と、
- 前記ガス入口および/または前記ガス開口部に連結された少なくとも1つの円周方向ガスチャネル(8、9)と、
- 冷却ダクト(11)と
- 前記ターゲットの円周の方に向き、前記内側リム上またはその付近に解放可能に取り付けられた円周方向の陽極と、
をさらに備え
前記ガスリングの材料、任意選択のサブリングの材料、または、任意選択の第1および第2のリングの材料は、第1の熱膨張係数(CTE)を有する第1の材料であり、前記陽極は、前記第1の材料よりも高い熱膨張係数(CTE)を有する第2の材料からできている、PVD源(1)
【請求項2】
前記冷却ダクトが、水ダクト(10)である、請求項1に記載のPVD源
【請求項3】
第1の円周方向ガスチャネル(8)と、第2の円周方向ガスチャネル(9)とを備え、前記第1の円周方向ガスチャネル(8)が、前記ガス入口(6)に連結され、前記第2の円周方向ガスチャネル(9)が、前記ガス開口部に連結され、両方のガスチャネル(8、9)が、円周方向の流れ変更部材(10)によって隔てられている、請求項1または2に記載のPVD源
【請求項4】
前記流れ変更部材が、隔壁の円周上に均等に配置された小孔を有する隔壁である、請求項3に記載のPVD源
【請求項5】
前記流れ変更部材が、グリッドまたはフリットである、請求項3に記載のPVD源
【請求項6】
少なくとも1つの連続したリング、または互いに接合された少なくとも2つ以上のサブリングからなる、請求項1から5のいずれか一項に記載のPVD源
【請求項7】
サブリングが、例えばガスコネクタであるガス入口、ガス入口チャネルの少なくとも第1の部分、流体ポート、ならびに流体入口および出口ダクトの少なくとも第1の部分を備える第1のリングと、円周方向のガスチャネルおよび少なくとも一部の円周方向の冷却ダクトを備える第2のリングとを備えている、請求項5に記載のPVD源
【請求項8】
前記第2の材料が、アルミニウムまたは銅のうちの1つである、請求項1から7のいずれか一項に記載のPVD源
【請求項9】
前記第1の材料が、ステンレス鋼であり、前記第2の材料が、アルミニウムである、請求項1から8のいずれか一項に記載のPVD源
【請求項10】
前記陽極が、第1のフランジ上に取り付けられ、前記第1のフランジが、前記内側リムから外方にオフセットされている、請求項からのいずれか一項に記載のPVD源
【請求項11】
前記ガスリングの内壁の段上に第2のフランジをさらに備えている、請求項1から10のいずれか一項に記載のPVD源
【請求項12】
前記ガスリングの外壁の段上に第3のフランジをさらに備えている、請求項1から11のいずれか一項に記載のPVD源
【請求項13】
当該PVD源がスパッタ源である、請求項1から12のいずれか一項に記載のPVD源。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のガスリングを有するPVD源を備えている、真空チャンバ。
【国際調査報告】