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特表2023-505813建築用途に使用するためのポリマーラテックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(54)【発明の名称】建築用途に使用するためのポリマーラテックス
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/08 20060101AFI20230206BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20230206BHJP
   C08F 2/30 20060101ALI20230206BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20230206BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230206BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
C08F212/08
C08F236/04
C08F2/30 Z
C04B24/26 G
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B28/02
C08F220/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535049
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2020084785
(87)【国際公開番号】W WO2021115978
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】1918102.3
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517189571
【氏名又は名称】シントマー ドイチェラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ベーム ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】アラウージョ オダイール
【テーマコード(参考)】
4G112
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4G112MD00
4G112PB31
4J011KA15
4J011KA23
4J011KA29
4J011KB05
4J011KB08
4J011KB14
4J011KB19
4J011KB29
4J011NA25
4J011NB04
4J100AB02P
4J100AJ02S
4J100AL09R
4J100AS02Q
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA47
4J100DA49
4J100EA07
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA20
4J100FA28
4J100GB01
4J100JA67
(57)【要約】
本発明は、下記成分を含むエチレン性不飽和モノマーの混合物の水性乳化重合によって得られるポリマーラテックスおよびそれを含む建築材料、好ましくはセメント性組成物に関する。(a)ビニル芳香族化合物、(b)共役ジエン、(c)モノマーの総重量を基準として2~10重量%の量のエチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル、および(d)モノマーの総重量を基準として0~0.15重量%の量のエチレン性不飽和カルボン酸またはその塩。ここで、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの重量比は少なくとも1.3:1であり、ポリマーラテックスは、17~19のHLBを有する非イオン性界面活性剤を、モノマーの総重量を基準にして2~10重量%の量で含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分を含むエチレン性不飽和モノマーの混合物の水性乳化重合によって得られるポリマーラテックス:
(a)ビニル芳香族化合物、
(b)共役ジエン、
(c)モノマーの総重量を基準として2~10重量%の量のエチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル、および
(d)モノマーの総重量を基準として0~0.15重量%の量のエチレン性不飽和カルボン酸またはその塩、
ここで、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの重量比は少なくとも1.3:1であり、ポリマーラテックスは、17~19のHLBを有する非イオン性界面活性剤を、モノマーの総重量を基準として2~10重量%の量で含む。
【請求項2】
ビニル芳香族化合物が、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-クロロスチレン、4-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、3,4-ジメチル-α-メチルスチレンおよびそれらの組み合わせから選択され、好ましくはビニル芳香族化合物がスチレンである、請求項1に記載のポリマーラテックス。
【請求項3】
ビニル芳香族化合物が、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして24~70重量%、好ましくは38~65重量%の量でモノマー混合物中に存在する、請求項1または2に記載のポリマーラテックス。
【請求項4】
共役ジエンが、1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、イソプレン、共役直鎖および分岐ペンタジエンおよびヘキサジエンならびにそれらの組み合わせから選択され、好ましくは、共役ジエンモノマーが1,3-ブタジエンである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマーラテックス。
【請求項5】
共役ジエンが、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして16~45重量%、好ましくは24~39重量%の量でモノマー混合物中に存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマーラテックス。
【請求項6】
エチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステルが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリマーラテックス。
【請求項7】
エチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステルが、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして2~9重量%、好ましくは2~7重量%の量でモノマー混合物中に存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマーラテックス。
【請求項8】
モノマー混合物が0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下のエチレン性不飽和カルボン酸またはその塩を含み、最も好ましくはエチレン性不飽和カルボン酸およびその塩を含まない、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリマーラテックス。
【請求項9】
モノマー混合物が、モノマー(a)~(d)と共重合可能でありかつそれらとは異なる(e)エチレン性不飽和モノマーをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリマーラテックス。
【請求項10】
エチレン性不飽和モノマー(e)が(e1)~(e3)から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマーラテックス:
(e1)エチレン性不飽和スルホン酸、好ましくはスチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸-3-スルホプロピルエステルおよび2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸から選択され、好ましくはエチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして0~10重量%、好ましくは0~6重量%の量でモノマー混合物中に存在する、
(e2)アクリル酸またはメタクリル酸のC1~C20アルキルエステル、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして0~25重量%、好ましくは0~10重量%の量である、
(e3)エチレン性不飽和ニトリル化合物、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして0~15重量%、好ましくは0~10重量%の量である。
【請求項11】
非イオン性界面活性剤が、アルキルエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、エチレングリコール-プロピレングリコールブロックコポリマーまたはトリスチリルフェノールエトキシレートから選択され、および/または非イオン性界面活性剤が、17~18.5、好ましくは17~18のHLB値を有し、および/または非イオン性界面活性剤が、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、2~9重量%、好ましくは2~8重量%、より好ましくは2~7重量%の量でポリマーラテックス中に存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリマーラテックス。
【請求項12】
アニオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリマーラテックス。
【請求項13】
ポリマーラテックスがコア/シェル粒子を含まない、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリマーラテックス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のポリマーラテックスを含む建築材料、好ましくはセメント性組成物。
【請求項15】
建築材料、好ましくはセメント性組成物における、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリマーラテックスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築用途に使用するポリマーラテックスに関し、特に、限定されるものではないが、ポリマーラテックスはセメント性組成物に適しており、さらに、建築材料、特に、そのようなポリマーラテックスを含むセメント性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,368,077号は、スチレンブタジエン系ラテックスおよびセメント性組成物におけるその使用に関する。SBRラテックスは、N-メチロールメタクリルアミドおよびアニオン性界面活性剤の存在下、1.5を超えるスチレン対ブタジエンの重量比での乳化重合によって調製される。
【0003】
国際公開第2003/27039号は、石こう接合壁板で使用可能なSBRラテックスに関するものである。そこに開示されているSBRラテックスは、好ましくは2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはその塩で官能化されている。好ましい実施形態では、ラテックスは、2~6重量%の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、65~80重量%のスチレン、15~13重量%のブタジエン、0~3重量%のヒドロキシエチルアクリレート、0~10重量%のアクリロニトリルを含むモノマー組成物から重合される。アニオン性界面活性剤の存在下での重合が開示されている。非イオン性界面活性剤はさらに存在してもよい。しかし、非イオン性界面活性剤の量に関する開示はない。
【0004】
EP1024154は、セメント性組成物に使用されるスチレンブタジエンゴムを開示している。スチレン対ブタジエンの重量比は1.5超であり、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸はラテックスの重合のためのシード中に存在する。実施例では、アニオン性界面活性剤が使用され、ヒドロキシエチルアクリレートは1.5重量パーセントの量で存在することができる。
【0005】
国際公開第2014/122031号は、セメント性組成物に使用することができ、コストを低減するために不飽和カルボン酸のエステルによるブタジエンの置換を目的とするSBRラテックスに関する。この参考文献は、コアがビニル芳香族化合物および不飽和カルボン酸のエステルを含むコア-シェルラテックス粒子を開示している。エチレン性不飽和酸および他の官能性モノマーは、とりわけヒドロキシアルキルアクリレートとして存在し得る。シェルは、ビニル芳香族モノマーおよび共役ジエン、ならびに10重量%までの追加のモノマー、例えばヒドロキシアルキルアクリレートを含む。一般的な説明は、界面活性剤およびそれらの量に関して言及していない。実施例では、ヒドロキシアルキルアクリレートを含有しないモノマー組成物が使用され、非イオン性界面活性剤の量はモノマーの総重量を基準にして0.33重量%である。
【0006】
引用された文献のいずれも、ポリマーラテックスの添加によって付与されるセメント性組成物の改善された特性、例えばセメント性組成物の広がり、硬化遅延および強度増進に取り組んでいない。したがって、本発明の一態様によれば、本発明の目的は、ポリマーラテックスを含有するセメント性組成物に、広がり、硬化遅延および強度増進のような特性の改善されたバランスを付与するポリマーラテックスを提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様によれば、この目的は驚くべきことに、下記成分を含むエチレン性不飽和モノマーの混合物の水性乳化重合によって得られるポリマーラテックスによって達成された:
(a)ビニル芳香族化合物、
(b)共役ジエン、
(c)モノマーの総重量を基準として2~10重量%の量のエチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル、および
(d)モノマーの総重量を基準として0~0.15重量%の量のエチレン性不飽和カルボン酸またはその塩、
ここで、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの重量比は少なくとも1.3:1であり、ポリマーラテックスは、17~19のHLBを有する非イオン性界面活性剤を、モノマーの総重量を基準にして2~10重量%の量で含む。
【0008】
他の態様によれば、本発明は、セメント性組成物における上記ポリマーラテックスの使用、および上記ポリマーラテックスを含有するセメント性組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
モノマー混合物:
本発明のポリマーラテックスは、下記成分を含むエチレン性不飽和モノマーの混合物の水性乳化重合によって得られる。
(a)ビニル芳香族化合物、
(b)共役ジエン、
(c)モノマーの総重量を基準として2~10重量%の量のエチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル、および
(d)モノマーの総重量を基準として0~0.15重量%の量のエチレン性不飽和カルボン酸、
ここで、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの重量比は、少なくとも1.3:1である。
【0010】
ビニル芳香族モノマーの代表例としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2-メチル-4,6-ジクロロスチレン、2,4-ジブロモスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ならびに1,1-ジフェニルエチレンおよび置換の1,1-ジフェニルエチレン、1,2-ジフェニルエテンおよび置換の1,2-ジフェニルエチレンが挙げられる。1種以上のビニル芳香族化合物の混合物も使用することができる。好ましいモノマーはスチレンおよびα-メチルスチレンであり、最も好ましくはスチレンである。ビニル芳香族化合物は、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、24~70重量%の範囲で使用することができ、好ましくは38~65重量%、より好ましくは40~60重量%である。したがって、ビニル芳香族化合物は、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、70重量%以下、68重量%以下、65重量%以下、63重量%以下、60重量%以下、58重量%以下の量で存在することができる。ビニル芳香族化合物は、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、少なくとも24重量%、少なくとも30重量%、少なくとも33重量%、少なくとも35重量%、少なくとも38重量%、少なくとも40重量%の量で存在することができる。当業者は、上記で開示された下限および上限のいずれかによって定義される任意の範囲が本明細書で開示されることを理解するであろう。
【0011】
本発明に適切な共役ジエンモノマーには、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、2-メチル-6-メチレン-1,7-オクタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-アミル-1,3-ブタジエン、3,7-ジメチル-1,3,7-オクタトリエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン、7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、ミルセン、オシメン、およびファルネセンから選択される共役ジエンモノマーが含まれる。1,3-ブタジエン、イソプレンおよびそれらの組み合わせは、好ましい共役ジエンである。1,3-ブタジエンは最も好ましいジエンである。典型的には、共役ジエンモノマーの量は、モノマーの総重量を基準にして、15~45重量%、好ましくは20~40重量%、より好ましくは24~39重量%の範囲であり得る。したがって、共役ジエンは、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも22重量%、少なくとも24重量%の量で存在してもよい。
【0012】
したがって、共役ジエンモノマーは、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、45重量%以下、43重量%以下、40重量%以下、39重量%以下、38重量%以下の量で使用することができる。当業者は、明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されていることを理解するであろう。
【0013】
モノマー混合物中の共役ジエンに対するビニル芳香族化合物の重量比は、少なくとも1.3:1、好ましくは少なくとも1.5:1、より好ましくは少なくとも1.6:1、さらにより好ましくは少なくとも1.8:1、さらにより好ましくは少なくとも1.9:1、最も好ましくは少なくとも2.0:1である。
【0014】
本発明によるポリマーラテックスを調製するために使用することができるエチレン性不飽和酸のヒドロキシアルキルエステルとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびより高級のアルキレンオキシドまたはそれらの混合物をベースとするヒドロキシアルキルアクリレートモノマーおよびヒドロキシアルキルメタクリレートモノマーが挙げられる。例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。好ましくは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたは2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、2~10重量%、好ましくは2~9重量%、より好ましくは2~7重量%、最も好ましくは2~6重量%の量で存在する。
【0015】
本発明によるモノマー混合物は、0.15重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらにより好ましくは0.01重量%以下のエチレン性不飽和カルボン酸またはその塩を含む。モノマー混合物はエチレン性不飽和カルボン酸およびその塩を含まないことが最も好ましい。
【0016】
エチレン性不飽和カルボン酸またはそれらの塩は、存在する場合、モノカルボン酸およびジカルボン酸のモノマーならびにそれらの無水物およびポリカルボン酸の部分エステルから選択され得る。モノカルボン酸モノマーの例としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸が挙げられ、ジカルボン酸モノマーの例としてはフマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シス-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、ジメチルマレイン酸、ブロモマレイン酸、2,3-ジクロロマレイン酸、および(2-ドデセン-1-イル)コハク酸が挙げられる。ポリカルボン酸部分エステルの例としては、モノメチルマレエート、モノメチルフマレート、モノエチルマレエート、モノエチルフマレート、モノプロピルマレエート、モノプロピルフマレート、モノブチルマレエート、モノブチルフマレート、モノ(2-エチルヘキシル)マレエート、モノ(2-エチルヘキシル)フマレートが挙げられる。他のエチレン性不飽和カルボン酸の例には、酢酸ビニル、乳酸ビニルおよびそれらの塩が含まれる。
【0017】
本発明によるモノマー混合物は、必要に応じて、モノマー(a)~(d)と共重合可能でありかつそれとは異なる(e)エチレン性不飽和モノマーをさらに含んでもよい。
【0018】
エチレン性不飽和モノマー(e)は、下記成分から選択され得る:
(e1)エチレン性不飽和スルホン酸、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、0~10重量%、好ましくは0~6重量%、より好ましくは0~4重量%、さらにより好ましくは0~2重量%、さらにより好ましくは0~1重量%の量でモノマー混合物中に存在する、
(e2)アクリル酸またはメタクリル酸のC1~C20アルキルエステル、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして0~25重量%、好ましくは0~10重量%の量である、
(e3)エチレン性不飽和ニトリル化合物、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして0~15重量%、好ましくは0~10重量%の量である。
【0019】
エチレン性不飽和スルホン酸(e1)は、好ましくはスチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸-3-スルホプロピルエステルおよび2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸から選択される。本発明によるモノマー混合物は、エチレン性不飽和スルホン酸を含まないことが最も好ましい。
【0020】
本発明に従って使用することができるエチレン性不飽和酸のアルキルエステル(e2)としては、アルキル基が1~20個の炭素原子を有するアクリル酸または(メタ)アクリル酸のn-アルキルエステル、イソ-アルキルエステルまたはtert-アルキルエステルが挙げられる。
【0021】
概して、(メタ)アクリル酸の好ましいアルキルエステルは、C1-C10アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC1-C8アルキル(メタ)アクリレートから選択することができる。このようなアクリレートモノマーの例としては、n-ブチルアクリレート、セカンダリーブチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートおよびセチルメタクリレートが挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびこれらの組み合わせが好ましい。
【0022】
典型的には、アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、25重量%以下、23重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で存在することができる。
【0023】
本発明に従って使用することができる不飽和ニトリルモノマー(e3)には、アセチルまたは追加のニトリル基のいずれかによって置換されていてもよい、直鎖または分岐配列で2~4個の炭素原子を含有する重合性不飽和脂肪族ニトリルモノマーが含まれる。このようなニトリルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル、フマロニトリルおよびそれらの組み合わせが挙げられ、アクリロニトリルが最も好ましい。これらのニトリルモノマーは、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、15重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で含まれ得る。
【0024】
本発明によれば、ポリマーラテックスはコア/シェル粒子を含まないことが好ましい。
【0025】
本発明のポリマーラテックスの調製方法:
本発明によるラテックスポリマー(I)は、本明細書に規定されるモノマー混合物が使用されることを条件として、当業者に公知の任意の乳化重合プロセスによって作製することができる。欧州特許出願公開第792891号明細書に記載されているプロセスが特に好適である。
【0026】
本発明のポリマーラテックスを調製するための乳化重合においては、シードラテックスを採用してもよい。シードラテックスは好ましくは別々に調製され、乳化重合は別々に調製されたシードラテックスの存在下で行われる。シードラテックス粒子は、好ましくはオキシラン官能性ラテックス粒子(b)のような、シード粒子を作製するためのものを含むポリマーラテックスに使用される全エチレン性不飽和モノマー100重量部に対して、0.01~10、好ましくは1~5重量部の量で存在する。したがって、シードラテックス粒子の量の下限は、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、または2.5重量部とすることができる。上記量の上限は、10、9、8、7、6、5.5、5、4.5、4、3.8、3.6、3.4、3.3、3.2、3.1または3重量部とすることができる。当業者は、明示的に開示された下限および上限のいずれかによって形成される任意の範囲が本明細書に明示的に包含されることを理解するであろう。
【0027】
上述のラテックスポリマー(I)の調製プロセスは、0~130℃、好ましくは0~100℃、特に好ましくは10~95℃、極めて特に好ましくは20~90℃の温度で、乳化剤の不存在下または1種以上の乳化剤の存在下、コロイドの不存在下または1種以上のコロイドの存在下、および1種以上の開始剤の存在下で行うことができる。温度はそれらの間の全ての値および下位値を含み、特に5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120および125℃を含む。
【0028】
本発明を実施する際に使用することができる開始剤には、重合の目的に有効な水溶性および/または油溶性開始剤が含まれる。代表的な開始剤は当該技術分野において周知であり、例えば、アゾ化合物(例えば、AIBN、AMBNおよびシアノ吉草酸)、無機ペルオキシ化合物(例えば、過酸化水素、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムのペルオキシジサルフェート、ペルオキシカーボネートおよびペルオキシボレート)、有機ペルオキシ化合物(例えば、アルキルヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、アシルヒドロペルオキシド、およびジアシルペルオキシド)、およびエステル(例えば、第三ブチルペルベンゾエート)、ならびに無機および有機開始剤の組み合わせが挙げられる。
【0029】
開始剤は、所望の速度で重合反応を開始するのに充分な量で使用される。一般に、開始剤の量は、全ポリマーの重量を基準にして、0.01~5重量%、好ましくは0.1~4重量%で充分である。開始剤の量は、ポリマーの総重量を基準にして0.01~2重量%であることが最も好ましい。開始剤の量は、それらの間の全ての値および下位値を含み、ポリマーの総重量を基準にして、特に0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4および4.5重量%が挙げられる。
【0030】
上記の無機および有機ペルオキシ化合物はまた、当技術分野で周知のように、単独で、または1種以上の適切な還元剤と組み合わせて使用され得る。言及され得るこのような還元剤の例は、二酸化硫黄、アルカリ金属ジサルファイト、アルカリ金属およびアンモニウムのヒドロゲンサルファイト、チオサルフェート、ジチオナイトおよびホルムアルデヒドスルホキシレート、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドラジンサルフェート、硫酸鉄(II)、銅ナフテネート、グルコース、メタンスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸化合物、ならびに、ジメチルアニリンおよびアスコルビン酸のようなアミン化合物である。Bruggolite(登録商標)FF6またはBruggolite(登録商標)FF6Mなどの有機スルフィン酸誘導体の独自のナトリウム塩の使用がより好ましい。還元剤の量は、重合開始剤の重量部当たり0.03~10重量部であることが好ましい。
【0031】
ラテックス粒子を安定化するのに適した界面活性剤または乳化剤には、重合プロセスのための従来の界面活性剤が含まれる。界面活性剤は、水相および/またはモノマー相に添加することができる。シード法における界面活性剤の有効量は、粒子のコロイドとしての安定化、粒子間の接触の最小化および凝集の防止をサポートするために選択された量である。非シード法では、界面活性剤の有効量は、粒径に影響を及ぼすために選択された量である。
【0032】
本発明のポリマーラテックスは、HLBが17~19の非イオン性界面活性剤を、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして2~10重量%で含有するため、乳化重合プロセスにおいて、このような量の非イオン性界面活性剤を使用することができる。もちろん、乳化重合プロセスにおいて、必要とされる総量の非イオン性界面活性剤を全く使用しないかまたはその一部のみを使用し、乳化重合プロセスの終了後に、残存量を最終ポリマーラテックスに添加することも可能である。非イオン性界面活性剤は反応後に添加することが好ましい。
【0033】
17~19のHLBを有する適切な非イオン性界面活性剤は、アルキルエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、エチレングリコール-プロピレングリコールブロックコポリマー、またはトリスチリルフェノールエトキシレートから選択することができる。好ましい非イオン性界面活性剤は、17~18.5、より好ましくは17~18のHLB値を有する。HLB値は、界面活性剤の親水性部分のモル質量と界面活性剤の総モル質量との商に20を掛けたものとして計算される。非イオン性界面活性剤は、本発明のポリマーラテックス中に、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、2~10重量%、好ましくは2~8重量%、より好ましくは2~7重量%の量で存在する。
【0034】
従って、本発明のポリマーラテックス中の非イオン性界面活性剤の量は、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、少なくとも2重量%であり、または少なくとも2.5重量%、少なくとも3重量%、少なくとも3.5重量%、少なくとも4重量%、少なくとも4.5重量%、または少なくとも5重量%であり得る。本発明のポリマーラテックス中の非イオン性界面活性剤の量は、エチレン性不飽和モノマーの総重量を基準にして、最大10重量%であり、または最大9.5重量%、最大9重量%、最大8.5重量%、最大8重量%、最大7.5重量%、最大7重量%、最大6.5重量%、最大6重量%であり得る。当業者は、上記規定の限度値のいずれかによって形成される全ての範囲が本明細書で開示されていることを理解するであろう。
【0035】
任意に、非イオン性界面活性剤に加えて、アニオン性界面活性剤を使用することもできる。代表的なアニオン性界面活性剤には、飽和およびエチレン性不飽和のスルホン酸またはそれらの塩、例えば、不飽和炭化水素スルホン酸(ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸およびメタリルスルホン酸など)およびそれらの塩;芳香族炭化水素酸(p-スチレンスルホン酸、イソプロペニルベンゼンスルホン酸およびビニルオキシベンゼンスルホン酸など)およびそれらの塩;アクリル酸およびメタクリル酸のスルホアルキルエステル(スルホエチルメタクリレートおよびスルホプロピルメタクリレートなど)およびそれらの塩、ならびに2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびそれらの塩;アルキル化ジフェニルオキシドジスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネートナトリウム、スルホサクシネートナトリウムのジヘキシルエステル、スルホン酸のナトリウムアルキルエステル、エトキシル化アルキルフェノールおよびエトキシル化アルコール;脂肪アルコール(ポリ)エーテルサルフェートが含まれる。重合プロセス中のアニオン界面活性剤の存在は、プロセス安定性およびラテックス安定性を補助するために有利であり得る。
【0036】
上記の界面活性剤の代わりに、またはそれに加えて、様々な保護コロイドを使用することもできる。好適なコロイドとしては、部分アセチル化ポリビニルアルコール、カゼイン、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、多糖類および分解多糖類、ポリエチレングリコールならびにアラビアゴムなどのポリヒドロキシ化合物が挙げられる。好ましい保護コロイドは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースである。一般に、これらの保護コロイドは、モノマーの総重量を基準にして、0~10、好ましくは0~5、より好ましくは0~2重量部の含有量で使用される。保護コロイドの量はそれらの間の全ての値および下位値を含み、モノマーの総重量を基準にして、特に1、2、3、4、5、6、7、8および9重量%を含む。
【0037】
乳化重合は、さらに緩衝物質およびキレート剤の存在下で実施することがしばしば推奨される。適切な物質は例えば、アルカリ金属炭酸塩および炭酸水素塩、アルカリ金属リン酸塩およびピロリン酸塩(緩衝物質)、ならびにキレート剤としてのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはヒドロキシル-2-エチレンジアミン三酢酸(HEEDTA)のアルカリ金属塩である。緩衝物質およびキレート剤の量は、通常、モノマーの総量を基準にして0.001~1.0重量%である。
【0038】
さらに、乳化重合において連鎖移動剤(調節剤)を使用することが有利であり得る。典型的な試薬は、例えば、チオエステル、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロピオン酸、イソ-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、およびC1-C12アルキルメルカプタンなどの有機硫黄化合物であり、n-ドデシルメルカプタンおよびt-ドデシルメルカプタンが好ましい。連鎖移動剤の量は、存在する場合、使用されるモノマーの総重量を基準にして、通常0.05~3.0重量%、好ましくは0.2~2.0重量%である。
【0039】
ポリマーラテックス:
本発明のポリマーラテックスは、上記のようなモノマー混合物を用いた水性乳化重合により調製される。乳化重合においてまだ充分な量で使用されていない場合、記載された好ましい界面活性剤を含む非イオン性界面活性剤を、乳化重合から得られたポリマーラテックスに添加して、好ましい量を含む非イオン性界面活性剤の上記必要量を提供することができる。
【0040】
本発明のポリマーラテックスを調製するために、種々の他の添加剤および成分を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、消泡剤、湿潤剤、増粘剤、可塑剤、充填剤、顔料、分散剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、殺生物剤および金属キレート剤が挙げられる。公知の消泡剤には、シリコーンオイルおよびアセチレングリコールが含まれる。通常知られている湿潤剤には、アルキルフェノールエトキシレート、アルカリ金属ジアルキルスルホサクシネート、アセチレングリコールおよびアルカリ金属アルキルサルフェートが含まれる。典型的な増粘剤には、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、キサンタンガム、変性セルロース、マイクロセルロース繊維またはナノセルロース繊維、ポリウレタンタイプの会合性増粘剤、またはシリカおよび粘土などの粒状増粘剤が含まれる。典型的な可塑剤には、鉱油、液体ポリブテン、液体ポリアクリレート、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、例えばアジピン酸、クエン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸またはトリメリット酸などのアルキルエステルのようなカルボン酸エステル、およびラノリンが含まれる。二酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウムおよび粘土は、典型的に使用される充填剤である。
【0041】
建築材料:
本発明のポリマーラテックスは、建築材料において、特に、建築材料の硬化挙動が本発明のポリマーラテックスによって影響され得る用途において使用され得る。
【0042】
本発明のポリマーラテックスは特に、建築材料、好ましくはセメント性組成物に改善されたバランスの特性を付与するのに適している。本発明によるセメント性組成物は、コンクリート、セメントベースの建築材料(例えば、スクリード、タイル接着剤またはセメントベースの界面剤)、およびモルタル(例えば、レンガ敷きモルタル、石こうモルタル、修復モルタル、防水モルタル、セルフレベリングモルタル、外部断熱接着モルタル、装飾モルタル、断熱モルタル、またはフローリングモルタル)から選択することができる。
【0043】
これらのセメント性組成物に使用されるポリマー対セメントの重量比は、0.02~0.4、概ね0.05~0.2である。
【0044】
セメント性組成物は、所望の最終用途に応じた各セメント性組成物中に存在する通例の成分を通例の量で含有してもよい。
【0045】
水以外のこのようなセメント系に使用される典型的な化合物は、通常のポルトランドセメント、特殊なポルトランドセメント、高アルミナセメントおよびブレンドセメント、ならびに川砂、砂利、砕けた砂および石、シリカ砂および飛散灰のような微細な集合体および粗大な集合体である。所望の色を達成するために、顔料を添加してもよい。セメント系を強化するために、天然または合成のガラス、炭素および金属繊維を添加することができる。添加剤は、加工または機械的性質を調整するために添加されてもよい。例としては、可塑剤、超可塑剤、流動剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、消泡剤または空気連行剤である。
【0046】
本発明のポリマーラテックスの他の好適な用途は、レンガ、ガラスまたは金属のための充填剤材料である。
【0047】
以下の実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【実施例
【0048】
実施例および比較例で使用したポリマーラテックス組成物は、初期装填物と供給物とを組み合わせたフリーラジカル乳化重合により製造した。総モノマーを基準にして1.2重量部(以下、pphmという)の量で36nmの平均粒径を有するポリスチレンシードを、水(30pphm)および錯化剤としてのHEEDTA(0.05pphm)と一緒に、初期装填物に使用した。連続撹拌下で初期装填物を85℃に加熱した後、アンモニウムペルサルフェート(1pphm)の供給を開始することによって重合反応を開始した。温度を85℃で一定に維持した。ペルサルフェート供給を開始して10分後、表1によるモノマー、アニオン性界面活性剤(0.5pphmのC13-C15アルキルアリールスルホネート)、連鎖移動剤としてのt-ドデシルメルカプタン0.8部、および水を、一定の供給速度で6時間かけて反応器に添加した。その後、残留モノマーを低減するために、0.25pphmのアンモニウムペルサルフェートによる後活性化を開始し、3時間継続した。生成物を周囲温度に冷却し、50μmメッシュ幅のフィルタークロス上で篩い分けし、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.5に調整した。次に、表1による非イオン性界面活性剤を添加し、5分間均質化した。最終ラテックスの全固形分を50重量%に調整し、最終pHを水酸化ナトリウム溶液で8.5に調整した。
【0049】
ラテックスの粒径は、Mastersizer2000(Malvern社製)で測定して、155~160nmであった。
【0050】
表1によるラテックスを使用して、ポリマー改質セメントモルタルを調製した。各モルタルについて、900gのCEM I 32.5ポルトランドセメント(Schwenk社製)を、EN196に従って1350gの基準砂と混合した。使用前に、0.6%消泡剤、Tego Antifoam2-89(Evonik社製)をラテックスに添加した。試験モルタルは、水およびラテックスを用いて調製され、140rpmで1分間、続いて280rpmで1分間、撹拌ブレードを備えた遊星ミキサー(Hobart N50)中で充分に混合することによって、0.075(乾燥対乾燥)のポリマー-セメント比および0.38の水-セメント比(合計で342gの水および67.5gのポリマー)を得た。
【0051】
モルタルを用いて、DIN EN 196-1:2016-11に準拠した密度、DIN EN 1015-3:200-5に準拠した混合後直後、20分後、40分後および60分後のスランプ挙動、ならびに、DIN EN 196-1:2016-11に準拠した48時間後、7日後および28日後の圧縮強度および曲げ強度を測定した。
【0052】
目標値:
モルタル密度>2g/mL。スランプ試験直後:>16cm、20分後:>14cm、40分後:>13cm、60分後:>12cm。48時間後の圧縮強度:>4.5MPa、7日後:>6MPa、28日後:>8.5MPa。48時間後の曲げ強度:>18MPa、7日後:>25MPa、28日後:>35MPa。
【0053】
結果を表2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【国際調査報告】