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特表2023-505816延長された寿命を有するリチウムイオンバッテリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(54)【発明の名称】延長された寿命を有するリチウムイオンバッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/317 20210101AFI20230206BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20230206BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20230206BHJP
   H01M 50/308 20210101ALI20230206BHJP
   H01M 50/636 20210101ALI20230206BHJP
   H01M 50/645 20210101ALI20230206BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20230206BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230206BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20230206BHJP
【FI】
H01M50/317 101
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/308
H01M50/636
H01M50/645
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/0567
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535066
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2020081469
(87)【国際公開番号】W WO2021121771
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019134427.1
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ギャラガー・ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】フクス・フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ソクユン
(72)【発明者】
【氏名】モーゲンスターン・フレデリック
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
5H023
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011BB03
5H012AA07
5H012BB02
5H012CC08
5H012DD01
5H012EE01
5H012JJ03
5H023AS01
5H023CC11
5H023CC15
5H029AJ05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029DJ02
(57)【要約】
【課題】バッテリの加速的な劣化を防止して寿命延長を図ること。
【解決手段】電気化学的な基礎において電気エネルギーを蓄えるバッテリであって、ハードケースとして形成され、密封してシールされたハウジングと、有機電解物に基づく、ハウジングに含まれる少なくとも1つの電気化学的なセルとを備え、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所がハウジングの壁部204に設けられており、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所が、ハウジング内部へのアクセス部を得るように、及び得られたハウジング内部へのアクセス部を再び密閉するように構成されており、ハウジング内部へのアクセス部が、開放された状態で、電気化学的なセルの抜気をするように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的な基礎において電気エネルギーを蓄えるバッテリであって、
ハードケースとして形成され、密封してシールされたハウジング(241,301)と、
有機電解物に基づく、ハウジング(241,301)に含まれる少なくとも1つの電気化学的なセルと
を備え、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所(210,305)がハウジングの壁部(204,304)に設けられており、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所(210,305)が、ハウジング内部へのアクセス部(212,308)を得るように、及び得られたハウジング内部へのアクセス部を再び密閉するように構成されており、ハウジング内部へのアクセス部(212,308)が、開放された状態で、電気化学的なセルの抜気をするように構成されていることを特徴とするバッテリ。
【請求項2】
ハウジング内部へのアクセス部が、開放された状態において、更に、追加的な電解物で電気化学的なセルを充填するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項3】
ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所(210)が、閉鎖手段(207a,207b,207c,207d)によって密封される開口部(205’)としてハウジング(201)の壁部(204)に形成されているとともに、更にハウジング内部へのアクセス部を、閉鎖手段を貫通することで得るように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリ。
【請求項4】
閉鎖手段(207a,207b,207c,207d)によって密封される開口部(205’)の開口断面が、外方へ向けて徐々に、又は段状に拡大しており、
開口部(205’)が、異なる大きさの開口断面を有する少なくとも2つの開口部分(208,209)を備えており、
閉鎖手段(207a,207b,207c,207d)が、開口部(205,205’)のハウジング外側の端部に関して埋没して配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載のバッテリ。
【請求項5】
ハウジング(201)の壁部(204)に形成された開口部(205,205’)の区画部(206)が階段状又は円すい状であることを特徴とする請求項3又は4に記載のバッテリ。
【請求項6】
閉鎖手段(207a,207b,207c,207d)が開口部(205,205’)の開口部分(208)に配置されており、該開口部分の形状が、閉鎖手段の外縁部の形態に本質的に適合して対応しており、閉鎖手段(207a,207b,207c,207d)の外縁部が、該外縁部を包囲するハウジングの壁部と密封して結合されていることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載のバッテリ。
【請求項7】
閉鎖手段が、
-平坦な薄板又はプレート(207a)、
-ハウジング内部へ向いた表面側がポリマ層(213)で覆われている平坦な薄板又はプレート(207d)、
-閉鎖手段の少なくとも表面側で、内側の範囲に凹部215を備えた薄板又はプレート(207b)、
-閉鎖手段の少なくとも表面側で、内側の範囲に凹部を備えているとともに、ハウジング内部へ向いた凹部がポリマ層(211)で覆われている薄板又はプレート(207c)
のうちいずれかとして形成されていることを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載のバッテリ。
【請求項8】
ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所が、ネジ閉鎖部(305)として形成されており、該ネジ閉鎖部が、ネジキャップ(306)を回して開けることでハウジング内部へのアクセス部(308)を得るように、及びネジキャップ(306)を回して閉めることでハウジング内部への得られたアクセス部(308)を再び閉鎖するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリ。
【請求項9】
ハードケースとして形成され、有機電解物に基づく少なくとも1つの電気化学的なセルを含む、密封してシールされたハウジング(201,301)を有する、バッテリ(241,301)を動作させる方法であって、
少なくとも1つのセルの抜気をするために、ハウジングにこのために構成された、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所(210,305)においてハウジング(201,301)を開放すること、及び
ハウジング(201,301)の開放によって生じるハウジング内部へのアクセス部(212,308)を再密閉すること
を有する方法。
【請求項10】
セルに追加的な電解物を補充するために、ハウジングの開放時に生じるアクセス部(212,308)を通してハウジング内部へ追加的な電解物を充填することを更に有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アクセス部をあらかじめ閉鎖する第1の閉鎖手段(207a,207b,207c,207d)の貫通によって、このために構成された箇所(210)においてハウジング(201)の開放が行われることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所(210)が、開放前に密封された開口部(205’)としてハウジング(201)の壁部(204)に形成されており、開口部の開口断面が、ハウジング内部から外方へ向けて徐々に、又は段状に拡大しており、
開口部(205’)が、開放前に、第1の閉鎖手段(207a,207b,207c,207d)によって密封されており、
第1の閉鎖手段(207a,207b,207c,207d)が、アクセス部のハウジング外側の端部に関して埋没して配置されており、
アクセス部(212)の再密閉が、埋没して配置された第1の閉鎖手段の上方において、開口部(205)に第2の閉鎖手段(216)を取り付けることによって行われる
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2の閉鎖手段(216)が開口部(205)の開口断面(209)へ配置され、該開口断面の形状が、第2の閉鎖手段(216)の外縁部の形状に本質的に適合して対応しており、第2の閉鎖手段(216)の外縁部が、該外縁部を包囲するハウジング(201)の壁部(204)と密封して結合されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
貫通が、管状の部分を有する貫通工具(214)を用いて行われ、追加的な電解物の充填が、貫通工具(214)の管状の部分を用いて行われることを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ハウジング内部へのアクセス部(308)を得るための箇所がネジ閉鎖部(305)として形成されており、ハウジングの開放がネジ閉鎖部(305)の開放によって行われ、ハウジングの密閉がネジ閉鎖部(305)の閉鎖によって行われることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項16】
-追加的な電解物が、セルに含まれる電解物と同一のタイプであり、
-追加的な電解物が、寿命を延長するようにセルへ作用し、及び/又はセルの電極との電解物の副反応を抑制又は防止する1つ又は複数の添加物を含み、
追加的な電解物が、追加的な電解物の充填につづくセルのサイクルにおいて追加的な電気化学的に活性なリチウムを提供するリチウムを含む分子、特にリチウムを含む塩類を含むことを特徴とする請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードケースとして形成され、有機電解物に基づく少なくとも1つの電気化学的なセルを含む、密封してシールされたハウジングを有するバッテリを動作させる方法と、当該方法により動作され得るバッテリとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1a~図1cには、電気化学的な基礎において電気エネルギーを貯蔵するバッテリを製造する方法ステップが示されており、バッテリには、少なくとも1つの、有機電解物に基づく電気化学的なリチウムイオンセル(リチウムイオン電池)が含まれている。第1の方法ステップでは、図1aに概略的に示された閉鎖されていないバッテリ100が提供される。当該バッテリはハードケースとして形成されたハウジング101を備えており、当該ハウジングは、その壁部104のうち1つにおいて、異なる極性の2つの端子クランプ(102,103)と、ハウジング内部へのアクセス部とを有している。電気化学的なセルの電極、集電装置及びアレスタはハウジング101に含まれており、アレスタは、それぞれ両端子クランプ102,103のうち1つに電気的に接続されている。ハウジング内部へのアクセス部は、ハウジング壁部104における開口部105として形成されているとともに、壁部104の符号106で示される部分によって画定される/区切られる。破線で示される円内に含まれる壁部104の一部が図1bに概略的に図示されている。当該図1bには、ハウジング外側における開口部105が開口部分を有しており、当該開口部分の開口断面は、開口部の残りの部分の開口断面よりも大きいことが示されている。図1bに示された矢印は、第2の方法ステップ、すなわち、セル(図においては示されていない)を有機電解物で充填(補充)するために、ハウジング内部へのアクセス部105を通して有機電解物を充填することが示唆されている。その後、第3の方法ステップでは、ハウジング内部へのアクセス部105が、金属から成る閉鎖手段113で密封してシールされる。このとき、本質的に開口部105のハウジング外側の端部に位置する開口部分の形状を有する閉鎖手段113は、当該開口部分へ入れられ、ハウジング壁部104に溶接されるため、閉鎖手段113によって閉鎖される開口部105’は、永続的に密封してシールされている。当該方法により製造されるバッテリのハウジングは、中にあるセルの有機電解物を化学的に汚染されることなく再び開放されることができない。第3の方法ステップが図1cに概略的に図示されている。
【0003】
このように製造されるバッテリの寿命は、本質的に、リチウムイオンセル(リチウムイオン電池)において進行する劣化プロセスによって決定される。当該プロセスにより、一方では有機電解物及び循環可能なリチウムの消費につながり、他方では、セルにおける気体圧力を増大させる気体の発生に至る。特に、セルにおける気体圧力の増大は、電極間の接触の低減に関連している。加えて、電極間の接触を低減が始まる気体圧力は、セルハウジングの機械的な特性と、セルハウジングにおける、ジェリーロール又はスタックとして形成される電極の配置と、セルハウジングのデザインとに依存し得る。例えば、リチウムイオンセルの加速的な劣化は、標準のPHEV2プリズムハードケースにおいて、約3barの内部の気体圧力から生じることがある。
【0004】
これまで説明した方法により製造されるバッテリでは、内部の気体圧力は徐々に増大し、所定の内部の気体圧力の到達後、セルの加速的な劣化が始まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、気体の発生に起因するセルの加速的な劣化を防止することが可能な、又は当該劣化を少なくとも緩和することが可能な、ハードケースとして形成され、密封してシールされるハウジングと、有機電解物に基づく電気化学的なリチウムイオンセルとを含むバッテリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該課題の解決手段は、請求項1の示唆により達成される。当該示唆の様々な実施形態及び発展形態は、請求項2~7の対象である。
【0007】
また、本発明の課題は、本発明によるバッテリに適用され、気体の発生によるセルの加速的な劣化を防止し、又は当該劣化を少なくとも緩和する方法を提供することにある。
【0008】
当該課題の解決手段は、請求項8の示唆により達成される。当該示唆の様々な実施形態及び発展形態は、請求項9~15の対象である。
【0009】
本発明の第1の態様は、電気化学的な基礎において電気エネルギーを蓄えるバッテリに関するものであり、当該バッテリは、
ハードケースとして形成され、密封してシールされたハウジングと、
有機電解物に基づく、ハウジングに含まれる少なくとも1つの電気化学的なセルと
を備え、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所がハウジングの壁部に設けられており、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所が、ハウジング内部へのアクセス部を得るように、及び得られたハウジング内部へのアクセス部を再び密閉するように構成されており、ハウジング内部へのアクセス部が、開放された状態で、電気化学的なセルの抜気をするように構成されている。
【0010】
これにより、本発明による方法をバッテリに適用することができ、その適用により、通常圧力(地表における気圧)に低減された内部の気体圧力を有するバッテリを提供することができ、これにより、バッテリの寿命が本質的に延長される。
【0011】
ハウジングに含まれる1つ又は複数の電気化学的なセルは、好ましくはリチウムイオンセルである。
【0012】
有利な一実施形態では、ハウジング内部へのアクセス部が、開放された状態において、更に追加的な電解物で電気化学的なセルを充填するように構成されている。
【0013】
これにより、本発明による方法の適用によって、電解物が少なくとも部分的に新たにされることができ、したがって、バッテリの寿命を更に延長することが可能である。
【0014】
好ましい一実施形態では、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所は、閉鎖手段によって密封される開口部としてハウジングの壁部に形成されているとともに、ハウジング内部へのアクセス部を当該閉鎖手段を貫通することで得るように構成されている。
【0015】
これにより、ハウジング内部へのアクセス部を、容易に、迅速かつ確実に得ることが可能である。
【0016】
好ましい一実施形態では、閉鎖手段によって密封される開口部の開口断面が、外方へ向けて徐々に、又は段状に拡大しており、開口部が、異なる大きさの開口断面を有する少なくとも2つの開口部分を備えており、閉鎖手段が、開口部のハウジング外側の端部に関して埋没して配置されている。
【0017】
これにより、本発明による方法の適用によって、別の閉鎖手段を壁部の外面に対して埋没して(したがって外部からの機械的な影響に対して保護して)設けることができ、開口部を確実かつ効果的に密閉することが可能である。
【0018】
開口部が、異なる大きさの開口断面を有する2つよりも多くの開口部分を備えていれば、有利には、本発明による方法を少なくとも2回(又は複数回)任意の、及び同一のバッテリに適用することが可能である。
【0019】
本発明の意味合いでは、開口部分の開口断面は、(本質的に)開口部の深さ方向に対して垂直な加工部分の断面と理解されるべきである。開口部分の開口断面は、同一の大きさ及び形状を有することができる。これは、例えば、加工部分が円筒状の形状を有する場合である。
【0020】
好ましい一実施形態では、ハウジングの壁部に形成された開口部の区画部が階段状又は円すい状である。
【0021】
これにより、閉鎖手段の形状を、例えば円筒状あるいは円すい台状の薄板として容易に保持することができる。
【0022】
好ましい一実施形態では、閉鎖手段が開口部の開口断面に配置され、該開口断面の形状が、閉鎖手段の外縁部の形状に本質的に適合して(ぴったりと)対応しており、閉鎖手段の外縁部が、該外縁部を包囲するハウジングの壁部と密封して結合される。
【0023】
これにより、アクセス部/加工部の閉鎖を特に効率的かつ確実に実行することが可能である。
【0024】
閉鎖手段の厚さは、例えば、当該閉鎖手段が貫通工具の先端部によって貫通され得るように寸法設定されている。ハウジング内部へ至ることがあるとともにハウジング内部にある電気化学的なセルを不意に短絡させることがある粒子が貫通時に生じないように、先端部の表面が平滑であれば有利である。好ましくは、閉鎖手段及びハウジングは金属で形成されているとともに、閉鎖手段は、ハウジングの壁部に溶接又ははんだ付けされている。金属は、アルミニウムであってよい。
【0025】
開口部又は個別の開口部分の開口断面は、円形状、だ円状、矩形状、多角形状のうち1つ又はこれらの組合せであってよい。開口部は、それぞれ異なるように成形された回大断面を有する開口部分を有することができる。例えば、開口部は、丸みのある開口部分と、その上に配置された矩形状の開口部分とを有することが可能である。
【0026】
好ましい一実施形態では、閉鎖手段が、
-平坦な薄板又はプレート、
-ハウジング内部へ向いた表面側がポリマ層で覆われている平坦な薄板又はプレート、
-閉鎖手段の少なくとも表面側で、内側の範囲に凹部を備えた薄板又はプレート、
-閉鎖手段の少なくとも表面側で、内側の範囲に凹部を備えているとともに、ハウジング内部へ向いた凹部がポリマ層で覆われている薄板又はプレート
のうちいずれかとして形成されている。
【0027】
これにより、ハウジング壁部との閉鎖手段の溶接時又ははんだ付け時になされるエネルギー入力に応じて、適合した閉鎖手段を選択することが可能である。例えば、場合によっては薄く平坦な閉鎖手段が損傷し得る大きなエネルギー入力の場合には、少なくとも1つの凹部を有する閉鎖手段を選択することができる。当該閉鎖手段は、内側の範囲のみが薄く構成されており、当該内側の範囲は、厚く構成された外側の縁部範囲によって周囲で包囲されている。このとき、外側の縁部範囲の厚さは、溶接時又ははんだ付け時になされるエネルギー入力によって閉鎖手段が損傷することがないように構成されている。閉鎖手段の貫通時に粒子がハウジング内部へ至るとともにそこで短絡を生じさせることを防止する閉鎖手段を選択することも可能である。例えば、ハウジング内部に向いた表面側にポリマ層を有するように閉鎖手段を選択することが可能である。
【0028】
好ましくは、閉鎖手段はアルミニウムで形成されている。
【0029】
好ましい一実施形態では、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所は、ネジ閉鎖部として形成されており、当該ネジ閉鎖部は、ネジキャップを回して開けることでハウジング内部へのアクセス部を得るように、及びネジキャップを回して閉めることでハウジング内部への得られたアクセス部を再び閉鎖するように構成されている。
【0030】
これにより、ハウジング内部へのアクセス部を任意に頻繁に開放し再び閉鎖することが可能であり、これにより、本発明による方法を任意に頻繁に1つの、及び同一のバッテリに適用することが可能である。
【0031】
本発明の第2の態様は、ハードケースとして形成され、有機電解物に基づく少なくとも1つの電気化学的なセルを含む、密封してシールされたハウジングを有する、バッテリを動作させる方法に関するものであり、当該方法は、
少なくとも1つのセルの抜気をするために、ハウジングにこのために構成された、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所においてハウジングを開放すること、及び
ハウジングの開放によって生じるハウジング内部へのアクセス部を再密閉すること
を有する。
【0032】
これにより、バッテリの抜気、すなわちその内部の気体圧力を通常圧力(地表における気圧)へ低減することができ、ハウジング内部への水の侵入を防止することが可能である。
【0033】
ハウジングに含まれる1つ又は複数の電気化学的なセルは、好ましくはリチウムイオンセルである。
【0034】
好ましい一実施形態では、方法は、セルに追加的な電解物を補充するために、ハウジングの開放時に生じるアクセス部を通してハウジング内部へ追加的な電解物を充填することを更に有する。
【0035】
これにより、消費された有機電解物を置換することができ、これにより、バッテリの寿命が更に延長される。有機電解物は、バッテリの動作中にセルにおける化学的な副反応によって消費されることがあり、このとき生じる反応生成物が時間の経過において蓄積される。
【0036】
好ましい一実施形態では、アクセス部をあらかじめ閉鎖する第1の閉鎖手段の貫通によって、このために構成された箇所においてハウジングの開放が行われる。
【0037】
これにより、ハウジング内部へのアクセス部を、容易に、迅速かつ確実に得ることが可能である。
【0038】
第1の閉鎖手段の貫通は、貫通工具の先端部によって行われることができる。このとき、第1の閉鎖手段の厚さは、当該第1の閉鎖手段が貫通工具によって貫通され得るように寸法設定されており、第1の閉鎖手段及び貫通工具は、ハウジング内部へ至り得るとともに当該ハウジング内にある電気化学的なセルを不意に短絡させ得る粒子が貫通時に生じないように構成されている。この意味合いでは、第1の閉鎖手段がアルミニウムから成り、先端部の表面が平滑であれば有利である。
【0039】
好ましい一実施形態では、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所が、開放前に密封された開口部としてハウジングの壁部に形成されており、開口部の開口断面が、ハウジング内部から外方へ向けて徐々に、又は段状に拡大しており、
開口部が、開放前に、第1の閉鎖手段によって密封されており、
第1の閉鎖手段が、アクセス部のハウジング外側の端部に関して埋没して配置されており、
アクセス部の再密閉が、埋没して配置された第1の閉鎖手段の上方において、開口部に第2の閉鎖手段を取り付けることによって行われる。
【0040】
これにより、第2の閉鎖手段が、壁部の外面に対して埋没して(したがって外部からの機械的な影響に対して保護されて)設けられているのみならず、得られるハウジング内部へのアクセス部も、確実かつ効果的に密封してシールされることが可能である。
【0041】
好ましくは、開口部は異なる大きさの開口断面を有する少なくとも2つの開口部分を備えており、第1の閉鎖手段は、より小さな開口断面を有する開口部分においてより大きな開口断面を有する開口部分に対して埋没して配置されており、第2の閉鎖手段は、より大きな開口断面を有する開口部分へ設けられている。このとき、第2の閉鎖手段の外縁部の形状は、第2の閉鎖手段と接触する壁部分の形状に適合して対応することが可能である。
【0042】
好ましい一実施形態では、第2の閉鎖手段が開口部の開口断面に配置され、該開口断面の形状が、第2の閉鎖手段の外縁部の形状に本質的に適合して対応しており、第2の閉鎖手段の外縁部が、該外縁部を包囲するハウジングの壁部と密封して結合される。
【0043】
これにより、特に第2の閉鎖手段の縁部を当該縁部を包囲する壁部分に溶接することで、アクセス部の再密閉を特に効果的かつ確実に行うことが可能である。
【0044】
第2の閉鎖手段が配置される開口部分の開口断面は、円形状、だ円状、矩形状、多角形状のうち1つ又はこれらの組合せであってよい。
【0045】
第2の閉鎖手段は、ハウジングの外面が開口部全体を覆うようにハウジングの外面に設けられることも可能であるとともに、ハウジングの外面に密封して結合されることが可能である。この場合、第2の閉鎖手段の外縁部の形状は、開口部の開口断面に依存せずに選択されることが可能である。
【0046】
好ましくは、ハウジング及び第2の閉鎖手段は、金属(例えばアルミニウム)から成り、第2の閉鎖手段は、溶接/はんだ付けによって当該第2の閉鎖手段を包囲するハウジングの壁部と密封して結合されている。
【0047】
第2の閉鎖手段によって再閉鎖されたハウジングを第2の閉鎖手段の貫通によって再び開口するために、第2の閉鎖手段の厚さが、当該第2の閉鎖手段が貫通工具によって貫通され得るように寸法設定されており、第2の閉鎖手段及び貫通工具が、ハウジング内部へ至り得るとともに当該ハウジング内にある電気化学的なセルを不意に短絡させ得る粒子が貫通時に生じないように構成されていることが有利である。第2の閉鎖手段がアルミニウムから成る場合には特に有利である。
【0048】
好ましい一実施形態では、貫通が、管状の部分を有する貫通工具を用いて行われ、追加的な電解物の充填が、貫通工具の管状の部分を用いて行われる。
【0049】
これにより、追加的な有機電解物の充填を、容易に、効果的かつ確実に達成することが可能である。
【0050】
好ましい一実施形態では、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所がネジ閉鎖部として形成されており、ハウジングの開放がネジ閉鎖部の開放によって行われ、ハウジングの密閉がネジ閉鎖部の閉鎖によって行われる。
【0051】
これにより、ハウジング内部へのアクセス部及びその再密閉を容易に達成できるのみならず、任意に頻繁に実行することも可能であり、したがって、本発明による方法は、原則的には、1つの、及び同一のバッテリに任意に頻繁に適用されることが可能である。
【0052】
好ましい一実施形態では、
-追加的な電解物が、セルに含まれる電解物と同一のタイプであり、
-追加的な電解物が、寿命を延長するようにセルへ作用し、及び/又はセルの電極との電解物の副反応を抑制又は防止する1つ又は複数の添加物を含み、又は
追加的な電解物が、追加的な電解物の充填につづくセルのサイクルにおいて追加的な電気化学的に活性なリチウムを提供するリチウムを含む分子、特にリチウムを含む塩類を含む。
【0053】
これにより、バッテリの寿命を更に延長することが可能である。
【0054】
本発明は、当該方法により動作され得るバッテリに関するものでもある。
【0055】
本発明の別の利点、特徴及び適用可能性は、図面に関連した以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1a】バッテリを製造するための公知の方法の1つのステップを概略的に示す図である。
図1b】バッテリを製造するための公知の方法の1つのステップを概略的に示す図である。
図1c】バッテリを製造するための公知の方法の1つのステップを概略的に示す図である。
図2a】本発明によるバッテリを製造するための方法の1つのステップを概略的に示す図である。
図2b】本発明によるバッテリを製造するための方法の1つのステップを概略的に示す図である。
図2c】本発明によるバッテリを製造するための方法の1つのステップを概略的に示す図である。
図2d】第1の実施形態による本発明によるバッテリを示す図である。
図2e】第1の実施形態によるバッテリを動作させるための本発明による方法の1つのステップを概略的に示す図である。
図2f】第1の実施形態によるバッテリを動作させるための本発明による方法の1つのステップを概略的に示す図である。
図2g】第1の閉鎖手段の2つの態様の高さ方向における断面を概略的に示す図である。
図2h】第1の閉鎖手段の2つの態様の高さ方向における断面を概略的に示す図である。
図2i】第1の閉鎖手段の一態様によるバッテリハウジングの密閉を概略的に示す図である。
図2j】第1の閉鎖手段の他の態様によるバッテリハウジングの密閉を概略的に示す図である。
図3a】第2の実施形態による本発明によるバッテリを示す図である。
図3b】第2の実施形態によるバッテリを動作させるための本発明による方法の1つのステップを概略的に示す図である。
図3c】第2の実施形態によるバッテリを動作させるための本発明による方法の1つのステップを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図2a~図2cには、電気化学的な基礎において電気エネルギーを貯蔵する本発明によるバッテリを製造する方法が概略的に示されており、バッテリには、少なくとも1つの、有機電解物に基づく電気化学的なリチウムイオンセル(リチウムイオン電池)が含まれている。
【0058】
第1の方法ステップでは、閉鎖されていないバッテリ200が提供される。当該バッテリ200は、図2aに概略的に図示されているとともに、異なる極性の2つの端子クランプ202,203及びハウジング内部へのアクセス部を有する壁部204をもった、ハードケースとして形成されたハウジング201と、当該ハウジング201に含まれる(したがって図では概略的に図示されていない)、少なくとも1つの電気化学的なセルの電極、集電装置(電流コレクタ)及びアレスタとを備えている。2つの端子クランプ202,203のそれぞれは、その各極性に対応するアレスタに電気的に接続されている。ハウジング201には、複数のセルの電極、集電装置及びアレスタを含むことが可能である。
【0059】
ハウジング内部へのアクセス部は、ハウジング壁部204における開口部205として形成されているとともに、壁部204の符号206で示される部分によって画定される/区切られる。図2bには、開口部206の長手断面が概略的に示されている。ここで、開口部の長手断面によって、断面が開口部205を通る深さ方向へ延びる切断部においてどのように生じるかという断面の図示が意図されている。図2bから容易に分かるように、開口部205は、異なる大きさの開口部断面を有する複数の開口部分を備えており、当該開口部分は外方へ向けて段状に拡大しており、開口部205を包囲する/区切るハウジング壁部204の一部が階段状に形成されている。しかし、開口部分が外方へ徐々に拡大し、ハウジング壁部を包囲するハウジング壁部の一部が円すい状に形成されることも可能である。開口部分の形状は、円形状、だ円状、矩形状又は多角形状であってよい。
【0060】
電気化学的な1つ又は複数のセルの動作に必要な電解物は、開口部205として形成された、ハウジング内部へのアクセス部を介してハウジング201へ充填される。ハウジングへの電解物の当該充填は、第2の方法ステップにおいて行われるとともに、図2bでは矢印で概略的に示唆されている。
【0061】
ハウジング201への電解物の充填後、第3の方法ステップでは、ハウジング内部への水の侵入を防止するために、ハウジング201が密封してシールされる。図2cに示されているように、当該密封したシールは、第1の閉鎖手段207aによって開口部を密閉することによって行われる。第1の密封手段207aは、薄板又はプレートとして形成されることができるとともに、開口部分208の開口断面に(本質的に適合して)対応する形状を有し得る。第1の閉鎖手段207aが、開口部分208へ入れられるとともに、第1の閉鎖手段207aの外側の側縁部を(本質的に)接触するように包囲するハウジング壁部の一部において溶接又ははんだ付けによって密封して結合されることで、開口部の密閉が行われる。このようにして実現される密封された開口部205’により、ハウジング内部への水の侵入が防止される。第1の閉鎖手段207aは、貫通工具によって貫通され、これにより、ハウジング内部へのアクセス部を再び得ることができる。有利には、第1の閉鎖手段207aは、アルミニウムで構成されており、平坦であり、0.2~0.4mmの範囲にある厚さdを有している。
【0062】
図2dには本発明の第1の実施形態によるバッテリ240が示されており、当該バッテリは、図2a~図2cに関連して説明した方法により製造されることが可能である。電気化学的な基礎において電気エネルギーを蓄えるバッテリ240は、ハードケースとして形成され、密封してシールされたハウジング241と、当該ハウジング241に含まれ、当該ハウジング241に配置された異なる極性の端子クランプ202,203に接続された、有機電解物に基づく電気化学的な1つ又は複数のセルとを備えている。また、ハウジングの壁部204には、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所210が設けられており、当該箇所は、ハウジング内部へのアクセス部を得るように、及び得られたアクセス部をハウジング内部に対して再び密閉するように構成されている。さらに、ハウジング内部へのアクセス部は、1つ若しくは複数の電気化学的なセルを抜気するために、及び/又は1つ若しくは複数の電気化学的なセルを追加的な電解物で満たす(補充する)ために、開放された状態で設置されている。
【0063】
第1の実施形態によれば、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所210は、第1の閉鎖手段207aによって密封される開口部205’としてハウジング241の壁部204に形成されているとともに、ハウジング内部へのアクセス部を当該第1の閉鎖手段207aを貫通することで得るように設置/構成されている。箇所210の長手断面が図2cに概略的に図示されている。
【0064】
特に、第1の閉鎖手段207aは、貫通工具の先端部で貫通され得るように構成されており、貫通工具の先端部は、ハウジング内部へ至ることがないとともにその内部にある電気化学的なセルを不意に短絡させる粒子が第1の閉鎖手段207aの貫通時に生じないように形成されている。図2cに示されているように、第1の閉鎖手段207aは、厚さdを有する薄板又はプレートとして形成されることができる。有利には、第1の閉鎖手段207aは、アルミニウムで構成されており、平坦であり、0.2~0.4mmの範囲にある厚さdを有している。
【0065】
図2cから容易に分かるように、閉鎖手段207aによって密封される開口部205’の開口断面はハウジング内部から外方へ向けて段状に拡大しており、ハウジング壁部における開口部205’を画定する部分は階段状に形成されている。また、開口部205’は、異なる大きさの開口断面を有する2つの開口部分を備えており、閉鎖手段207aは、開口部205’のハウジング外側の端部に関して埋没して中央の開口部分208に配置されている。閉鎖手段207aの(外側の)縁部の形状も、開口部分208の形状に適合して対応している。開口部205’は、異なる大きさの開口断面を有する2つより多くの開口部分を備えることが可能である。開口部分が外方へ徐々に拡大し、ハウジング壁部を包囲するハウジング壁部の一部が円すい状に形成されることも可能である。開口部分の形状は、円形状、だ円状、矩形状又は多角形状であってよい。
【0066】
図2e及び図2fには、第1の実施形態によるバッテリを動作させる本発明による方法が概略的に示されている。当該方法は、バッテリの寿命を延長させるものの特にバッテリの加速的な経年劣化を防止し、又は少なくとも和らげるために、第1の実施形態によるバッテリに適用される。バッテリの加速的な経年劣化は、バッテリのハウジング内部における所定の気体圧力に達すると開始され得る。バッテリの経年劣化は、循環可能なリチウムの消費によって加速されることがある。
【0067】
第1の実施形態によるバッテリ(240)を動作させる方法の第1のステップでは、ハウジングを開放するために構成された、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所210においてハウジング241の開放がなされる。図2eには、ハウジング241の開放中の当該箇所210の長手断面が概略的に示されている。また、当該図には、ハウジング241の開放が、貫通工具214による第1の閉鎖手段207aの貫通によってなされることが示唆されている。このとき用いられる貫通工具214は、平滑な表面を有する先端部を備えているため、一方では、貫通工具は、第1の閉鎖手段207aを容易に貫通することができ、他方では、ハウジング内部に至ることがある、電気化学的なセルを不意に短絡させる粒子が貫通時に生じない。
【0068】
貫通工具214は、管又は管状の針として形成されることが可能である。図2eに示されているように、この場合、ハウジング内部の外部に位置する管又は管状の針241の端部を、ハウジング内部へのアクセス部とみなすことができる。そのため、閉鎖手段207a’の貫通によって得られるハウジング内部へのアクセス部212は、管214の上側の端部に位置する双方向矢印によって象徴化されている。
【0069】
ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所210は、閉鎖手段207aの貫通によって得られるアクセス部212を用いて電気化学的なセルが一方では抜気され、他方では追加的な電解物で満たされることができるように、ハウジング210に位置する電気化学的なセルに対して配置されている。
【0070】
ハウジング内部へのアクセス部212を得ることで、自動的にセルの抜気につながり、追加的な電解物でのセルの充填は、別の1つのステップにおいて、ハウジング241の開放時に生じるアクセス部212を通した追加的な電解物の注入によって行われることが可能である。
【0071】
第1の実施形態によるバッテリ(240)を動作させる方法の第2のステップでは、ハウジング241の開放により生じるアクセス部212の再密閉がなされる。図2fには、当該再密封された、ハウジング内部へのアクセス部の長手断面が概略的に示されている。また、当該図には、貫通された第1の閉鎖手段207a’の上方において、開口部205へ第2の閉鎖手段216を設けることでアクセス部の再密閉がなされることが示唆されている。第2の閉鎖手段216の外縁部は、開口部205のハウジング外側の端部に位置する開口部分209の形状に本質的に対応した形状を有することが可能である。このように形成される第2の閉鎖手段216は、図2fに示されているように、開口部分209へ入れられ、当該第2の閉鎖手段を包囲するハウジング壁部204と密閉して結合されることが可能である。ハウジング壁部204との第2の閉鎖手段216の結合は、溶接又ははんだ付けによって行われることが可能である。
【0072】
アクセス部の再密閉によって、開口部205’(ひいてはハウジング241)は、再び密閉してシールされ、ハウジング内部への水の侵入が防止される。
【0073】
第2の閉鎖手段216は、(第1の閉鎖手段207aと類似して)貫通工具の先端部で貫通され得るように構成されることができ、貫通工具の先端部は、ハウジング内部へ至ることがないとともにその内部にある電気化学的なセルを不意に短絡させる粒子が第2の閉鎖手段216の貫通時に生じないように形成されている。有利には、第2の閉鎖手段216は、第1の閉鎖手段のように構成されている。この場合、第1の実施形態によるバッテリを動作させる方法は、二回目にも任意の1つのバッテリ、あるいは同一のバッテリに適用されることができるとともに、当該バッテリの寿命を更に延長させることが可能である。
【0074】
第2の閉鎖手段216は、(第1の閉鎖手段113と類似して)貫通工具によって貫通されることがないか、又はハウジング内部へ至ることがある粒子が第2の閉鎖手段216の貫通時に生じないようにのみ貫通されることができるように構成されることも可能である。この場合、第1の実施形態によるバッテリを動作させる方法は、二回目には当該バッテリには適用されることができない。
【0075】
第1の閉鎖手段の別の態様が図2g~図2jに示されている。当該各第1の閉鎖手段は、本発明によるバッテリを製造する方法において、開口部205の密閉時に第1の閉鎖手段207aに代えて用いられる/使用されることが可能である。図2g~図2jに示された第1の閉鎖手段のうち1つで開口部205が密封されている(複数の)バッテリも本発明による方法によって動作されることが可能である。
【0076】
図2gには、第1の閉鎖手段207bの高さ方向における断面が概略的に示されている。当該第1の密封手段は、第1の閉鎖手段207aのように薄板状又はプレート状に形成されることができるとともに、開口部分208の開口断面に(本質的に適合して)対応する形状を有し得る。しかし、閉鎖手段207bの少なくとも1つの表面側は、その縁部の各点からの最小距離Lにおいて位置する内側の凹部215を備えている。当該凹部は、より厚く構成された縁部範囲217によって周囲で包囲されている。有利には、閉鎖手段207bの両表面側がそれぞれ1つの凹部を備えており、当該凹部は、互いに対向するとともに、より厚く構成された縁部範囲217によって周囲で包囲されている。凹部215又は互いに対向する凹部215,215によって、閉鎖手段207bにおける内側に位置する範囲は、縁部範囲217の厚さdよりも薄い厚さdを少なくとも部分的に有している。
【0077】
有利には、第1の閉鎖手段207bはアルミニウムから成り、アルミニウムで形成される閉鎖手段207bについての厚さdは、0.05~0.3mmの範囲にあり、アルミニウムで形成される閉鎖手段についての厚さdは、0.2~0.8mmの範囲にある。
【0078】
図2hには、第1の閉鎖手段207cの高さ方向における断面が概略的に示されている。当該第1の閉鎖手段は、凹部がポリマ層211で覆われているか、又はポリマでコーディングされている点で閉鎖手段207bとは異なっている。ポリマは、例えばポリプロピレン又はポリエチレンであってよい。
【0079】
図2iには、第1の閉鎖手段207bを用いたバッテリハウジング201の閉鎖が概略的に示されている。ここで、当該第1の閉鎖手段が開口部分208へ入れられるとともに、第1の閉鎖手段207bの外側の側縁部を(本質的に)接触するように包囲するハウジング壁部の一部は、縁部範囲217に溶接又ははんだ付けによって密封して結合される。有利には、縁部範囲217の最小距離Lひいては幅は、縁部範囲217とハウジング壁部の間の接触面積が最大となるように選択される。縁部範囲217のより厚い構成及び/又は当該縁部範囲とハウジング壁部の間の大きな接触面積によって、溶接時又ははんだ付け時になされた入熱によって、より薄く構成された内側範囲の損傷を防止することが可能である。他方では、閉鎖手段207bの内側範囲がより薄く構成されていれば、当該内側範囲の貫通をより容易に行うことが可能である。
【0080】
第1の閉鎖手段207cを用いたバッテリハウジング201の閉鎖は、第1の閉鎖手段207bを用いたバッテリハウジングの閉鎖のように行われるが、第1の閉鎖手段207cを用いる場合には、当該第1の閉鎖手段は、ポリマ層211を有する凹部がハウジング内部へ向くように開口部分208へ入れられる。ポリマ層211及びハウジング壁部が互いに接触しなければ有利である。ポリマ層211は、閉鎖手段207cの貫通時に生じることがある粒子がハウジング内部へ至るとともに電気化学的なセルにおける短絡を引き起こすことを防止することが可能である。
【0081】
図2jには、第1の閉鎖手段207dを用いたバッテリハウジング201の閉鎖が概略的に示されている。当該第1の閉鎖手段は、閉鎖手段207aのように平坦な薄板又はプレートとして形成されているが、ハウジング内部へ向いた表面側には、例えばポリプロピレン又はポリエチレンを含み得るポリマコーティング213を備えている。第1の閉鎖手段207dを用いたバッテリハウジング201の閉鎖は、第1の閉鎖手段207aを用いたバッテリハウジングの閉鎖のように行われるが、第1の閉鎖手段207dを用いる場合には、当該第1の閉鎖手段は、ポリマ層213を有する表面側がハウジング内部へ向くように開口部分208へ入れられる。ポリマ層213及びハウジング壁部が互いに接触しなければ有利である。ポリマ層213は、閉鎖手段207dの貫通時に生じることがある粒子がハウジング内部へ至ることを防止することが可能である。
【0082】
図3aには、本発明の第2の実施形態による、電気化学的な基礎において電気エネルギーを蓄えるバッテリ300が示されている。バッテリ300は、ハードケースとして形成され、密封してシールされたハウジング301と、当該ハウジング301に含まれ、当該ハウジング301に配置された異なる極性の端子クランプ302,303に接続された、有機電解物に基づく電気化学的な1つ又は複数のセルとを備えている。また、ハウジングの壁部304には、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所310が設けられており、当該箇所は、ハウジング内部へのアクセス部308を得るように、及び得られたアクセス部をハウジング内部に対して再び密閉するように構成されている。さらに、ハウジング内部へのアクセス部308は、1つ若しくは複数の電気化学的なセルを抜気するために、及び/又は1つ若しくは複数の電気化学的なセルを追加的な電解物で満たす(補充する)ために、開放された状態で設置されている。
【0083】
第2の実施形態によれば、ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所310は、ネジ閉鎖部305として形成されており、当該ネジ閉鎖部は、ネジキャップ306を回して開けることでハウジング内部へのアクセス部308を得るように、及びネジキャップ306を回して閉めることでハウジング内部への得られたアクセス部308を再び閉鎖するように構成されている。箇所210は、図3b及び図3cにおいても概略的に図示されている。
【0084】
図3b及び図3cには、第2の実施形態によるバッテリを動作させる本発明による方法が概略的に示されている。当該方法は、バッテリの寿命を延長させるものの特にバッテリの加速的な経年劣化を防止し、又は少なくとも和らげるために、第2の実施形態によるバッテリに適用される。
【0085】
第2の実施形態によるバッテリ(300)を動作させる方法の第1のステップでは、ハウジング301の開放がネジ閉鎖部305の開放によってなされる。図3bには、当該ステップが概略的に示唆されている。
【0086】
ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所310は、ネジ閉鎖部305の開放を用いて電気化学的なセルが一方では抜気され、他方では追加的な電解物で満たされることができるように、ハウジング301に位置する電気化学的なセルに対して配置されている。
【0087】
ネジ閉鎖部305の開放は、自動的にセルの抜気につながり、追加的な電解物でのセルの充填は、別の1つのステップにおいて、生じたハウジング内部308へのアクセス部を通した追加的な電解物の注入によって行われることが可能である。
【0088】
第2の実施形態によるバッテリ(300)を動作させる方法の第2のステップでは、ハウジング内部へのアクセス部308の再密閉がネジ閉鎖部305の閉鎖によってなされる。図3bには、当該ステップが概略的に示唆されている。ネジ閉鎖部305を閉鎖することによって、ハウジング301は、再び密閉してシールされ、ハウジング内部への水の侵入が防止される。
【0089】
本発明による両方法では、充填される追加的な電解物は、セルに含まれる電解物と同一のタイプであってよく、寿命を延長するようにセルへ作用し、及び/又はセルの電極との電解物の副反応を抑制又は防止する1つ又は複数の添加物を含むことができ、追加的な電解物の充填につづくセルの充電サイクルにおいて追加的な電気化学的に活性なリチウムを提供するリチウムを含む分子、特にリチウムを含む塩類を含むことができる。
【0090】
少なくとも1つの例示的な実施形態を上述したが、多数の態様が更に存在することに留意すべきである。このとき、上述の例示的な実施形態は、非限定的な例のみを示すものであり、これにより、ここで説明される装置及び方法の範囲、適用可能性又は構成を制限することを意図するものではない。むしろ、上述の説明は、少なくとも1つの例示的な実施形態の実施のための手引きを当業者に提供するものであり、添付の特許請求の範囲にそれぞれ規定される対象から、及びその法的な等価性から逸脱することなく、その例示的な実施形態において説明される要素の機能及び配置における様々な変更を行うことができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0091】
100 閉鎖されていないバッテリ
101 バッテリハウジング
102,103 異なる極性の電極
104 ハウジングの壁部
105,105’ 密封されていないか、あるいは密封されている開口部
106 開口部の区画部/区切り部
113 閉鎖手段
200 閉鎖されていないバッテリ
201 バッテリハウジング
202,203 異なる極性の電極
204 ハウジングの壁部
205,205’ 密封されていないか、あるいは密封されている開口部
206 開口部の区画部/区切り部
207a~207d 第1の閉鎖手段の態様
207’ 第1の閉鎖手段の貫通部
208 開口部の第1の開口部分
209 開口部の第2の開口部分
210 ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所
211 ポリマコーティング
212 ハウジング内部へのアクセス部
213 ポリマコーティング
214 貫通工具
215,215 第1の閉鎖手段の内側範囲における凹部
216 第2の閉鎖手段
217 第1の閉鎖手段の縁部範囲
240 密封されたバッテリ
241 バッテリハウジング
300 閉鎖されたバッテリ
301 バッテリハウジング
302,303 異なる極性の電極
304 ハウジングの壁部
305 ハウジング内部へのアクセス部を得るための箇所(ネジ閉鎖部)
306 ネジキャップ
307 開口カラー部
308 ハウジング内部へのアクセス部
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図2h
図2i
図2j
図3a
図3b
図3c
【国際調査報告】