(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(54)【発明の名称】改善されたブッシングアセンブリ及び当該ブッシングアセンブリを備えるポジティブディスプレイスメント回転ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/18 20060101AFI20230206BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
F04C2/18 311D
F04C15/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535078
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2020085712
(87)【国際公開番号】W WO2021116378
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】102019000023832
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522227864
【氏名又は名称】セッティマ メッカニカ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ、マヌエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ピッチョッティ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】セルティ、アンドレア
【テーマコード(参考)】
3H041
3H044
【Fターム(参考)】
3H041AA02
3H041BB02
3H041CC08
3H041CC13
3H041DD04
3H041DD07
3H041DD13
3H041DD38
3H044AA02
3H044BB02
3H044CC08
3H044CC12
3H044DD04
3H044DD06
3H044DD13
3H044DD28
(57)【要約】
ジャミングを回避するポジティブディスプレイスメント回転ポンプの噛合したロータのシャフトを支持するための改善されたブッシングアセンブリ(10)であって、その側面(13)に、ポンプの吸引側に面する少なくとも1つの補償タンク(15、16)と、当該補償タンク(15、16)を排出側に接続する少なくとも1つのブリードチャネル(14)とを備える当該ブッシングアセンブリ(10)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジティブディスプレイスメント回転ポンプのブッシングアセンブリであって、
ポジティブディスプレイスメント回転ポンプの内部空洞に挿入されてその内部で軸方向にフロートするとともに、前記ポジティブディスプレイスメント回転ポンプのロータを支えるシャフトのペアの端部を支持するよう配置されており、前記ブッシングアセンブリは、使用中、前記ロータに面する内表面、反対の外表面を備え、使用中、前記ブッシングアセンブリは、前記内表面及び外表面に作用する流体圧力に起因して、前記内部空洞内で軸方向に自由にスライドし、前記ブッシングアセンブリは、前記内表面及び外表面の2つを接続する側面であって、前記内部空洞内で、第1の部分が吸引側に面し、第2の部分が排出側に面するように連結されるよう配置されている前記側面と、前記側面の前記第1の部分において前記外表面よりも前記内表面に近い位置にある少なくとも1つの補償タンクと、前記補償タンクを前記側面の前記第2の部分に接続する少なくとも1つのブリードチャネルとをさらに備え、前記少なくとも1つの補償タンクは、両側において側方が閉じている、すなわち、前記ブッシングアセンブリの前記内表面においても前記外表面においても開かない、ブッシングアセンブリ。
【請求項2】
互いに連結された2つのスリーブ形状のセミグループとして成形され、前記セミグループは、ワンピース又は互いから分離した状態で作製されている、請求項1に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項3】
前記側面は、それぞれ前記排出側及び前記吸引側にある、前記セミグループの2つの連結エリアにおいて接続又は並置された、2つの円筒状部分を有する、請求項2に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項4】
前記ブリードチャネルは、使用中、前記排出側の前記連結エリアを前記少なくとも1つの補償タンクと接続し、前記ブリードチャネルは、前記吸引側の前記連結エリアに達していない、請求項3に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項5】
前記ブリードチャネルは、前記側面の前記円筒状部分のうちの少なくとも1つに形成された外周方向溝の形態を取る、請求項3又は4に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの補償タンクは、前記ブリードチャネルを画定する前記外周方向溝の前記軸方向に広がる形態を取る、請求項5に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの補償タンクは、前記ブリードチャネルに対して前記内表面の方に軸方向に延びている、請求項6に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの補償タンクは、実質的に平行六面体の形態を有する、請求項6又は7に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項9】
前記補償タンク及び前記ブリードチャネルは、同じ奥行きを有する、請求項6から8のいずれか1項に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項10】
前記補償タンクは、各セミグループに対して少なくとも2つある、請求項6から9のいずれか1項に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項11】
各セミグループの前記2つの補償タンクは、同じ前記ブリードチャネルによって接続されている、請求項10に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項12】
前記補償タンクは、前記ブリードチャネルの延長部に交わる少なくとも1つの中間補償タンク、及び前記ブリードチャネルが終了する箇所である少なくとも1つの末端側補償タンクである、請求項11に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項13】
2つの内側ブッシングと結合していてもよい、一体型又はツーピースのブッシングリングを備え、前記ブリードチャネル及び前記少なくとも1つの補償タンクは、前記ブッシングリング上に作製されている、請求項1から12のいずれか1項に記載のブッシングアセンブリ。
【請求項14】
ポジティブディスプレイスメント回転ポンプであって、排出側で開いている排出ポート及び反対の吸引側で開いている吸引ポートをもつ内部空洞が設けられたケーシングと、流体を前記排出ポートから前記吸引ポートにポンピングするための前記内部空洞内で回転する同数の噛合ロータを中間部で支えるシャフトのペアと、請求項1から13のいずれか1項に記載のブッシングアセンブリを2つとを備え、前記ブッシングアセンブリは、前記シャフトを支持するために前記ロータの両端に配置されており、前記ロータに面する前記内表面と、前記内部空洞内で連結されている前記側面と、前記内部空洞の前記吸引側に面する前記補償タンクと、前記補償タンクを前記排出側に面する前記側面の一部分に接続する前記少なくとも1つのブリードチャネルとを有し、使用中、前記補償タンクは、前記それぞれのブッシングアセンブリに対する矯正トルクを定義する圧力下の流体で充填される、ポジティブディスプレイスメント回転ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブッシングアセンブリ、及び、当該ブッシングアセンブリを備えるポジティブディスプレイスメント回転ポンプ、好ましくはギアポンプ又はローブポンプに関する。
【0002】
ポジティブディスプレイスメント回転ポンプは、様々な技術分野において有用な用途を見出し得る。特に、本発明のポンプは、回転速度を経時的に変化させることが必要な高圧用途に特に適応されると思われる。
【背景技術】
【0003】
上記で言及したように、本発明は、ギア又はローブのポジティブディスプレイスメント回転ポンプに関する技術分野において有用な用途を見出す。このタイプのポンプは、一般的に、2つのロータを備えており、その一方は駆動ロータと呼ばれ、駆動シャフトに接続しており、被動ロータと呼ばれる他方を回転させる。
【0004】
2つのロータは、一般的にブッシングリング及び実際のブッシングによって構成されているブッシングアセンブリによって支持された、それぞれのシャフトによって支えられている。ブッシングアセンブリは、ケーシング又はポンプボディの内部空洞において連結されており、その内部を軸方向にフロートすることで、アセンブリ自体の対向する平坦面に作用する圧力に起因する構成要素のパッキングが可能になっている。
【0005】
現在使用されているブッシングリングは、ロータの方に面する平坦面上のポケット、又はケーシングの閉止フランジの方に面する平坦面上のガスケット用シートを有し得る。これらのポケット又はシートは、ブッシングを潤滑する油の排出を容易にするために有用であり、また、上記で言及したように、圧力下の流体に起因する軸方向の推力を補償するため、すなわち、油膜を除いてロータ及びブッシングの表面を直接接触した状態に保持するために有用である。他のタイプのポケットは、ギア歯間に封じ込められた流体が排出エリアで再循環するのを可能にすることによって、振動及びノイズを低減させる。
【0006】
先行技術によるブッシングリングの部分的要素10aを示す添付の
図2と、その代わりに先行技術による一体型ブッシングリング10を示す添付の
図3とにおいて、様々な形状及び機能をもつポケット100が確認できる。
【0007】
これまで、ブッシングリングの設計は常に、平坦面に作用する圧力の中心を制御する試みにおいて、一方では軸方向のバランス調整を達成することを対象とし、他方ではロータの軸に対するリング自体のずれを制限することを対象としてきた。
【0008】
その一方で、ロータにかかり、リング自体(これらは、言及したとおり、ポンプケーシングの孔内で自由にスライドする)に解放される負荷の分散に起因する摩擦及び摩滅現象を回避するためのリングの円筒面への介入は、これまで行われていない。
【0009】
これまでに採用されている構造に関する解決策は、実質的には目的に適しているが、それにもかかわらず、高負荷用途の対象となるポンプの場合には大きな欠点を有する。
【0010】
実際、これらの場合には、ブッシングリングの力が、ボディ孔の表面と、それに応じてブッシングリング自体に解放され、ボディ孔の表面の摩耗が起こる。2つの接触面間の微小滑りにより、ピースの粗さ劣化が生じ、比負荷の高いエリアにおいて局所的な加熱の現象が誘発される。次に材料が局所的に可塑化し、滑らかさが低下する。これは、過渡事象中のブッシングリングのジャミングと、対応するポンプ性能の劣化を伴う。
【0011】
【0012】
図4は、公知のタイプのギアポンプの一例を概略的に示す。このポンプは、断面の下側部分に吸引側Sがあり、上側部分に排出側Dがあるように、2つのロータの軸を通る平面に直交する平面によって長手方向に分割された状態で示されている。ポンプケーシング3の吸引側Sの壁に加えて、駆動ロータ2、駆動シャフト5、及び2つのブッシングアセンブリ10が示されている。ポンプ動作中に発生する超過圧力に起因して、分散荷重Fが、排出側Dから、ベアリングリング10とロータ2との両方に作用する。この図は、ジャミングが起こるブッシングリング10の微小滑りエリアZ1及び摩耗エリアZ2をハイライトしている。
【0013】
図5及び5aは、出願人によって実行された、上述の現象の根拠を示す静的解析を提案する。
図5では、ブッシングリング10及びロータ2により構成された構造が、4つのキャリッジ拘束点a、b、c、dとともにモデル化されている。
図5aは、構造の荷重F、モーメントT、及び対応するひずみDを示すグラフを示している。確認できるように、点b及びcにおいて、最大の拘束反応と最大のモーメントの両方があり、これらは、それぞれ点a及びdで低減する。したがって、ブッシングリング全体に沿って反応を線形化することにより、台形状分布Sjが得られる。したがって、このセットアップ条件は最適ではなく、上記の問題につながる。
【0014】
図6では、システムのさらなる解析が紹介され、モデリングソフトウェアによって計算された、ブッシングリング・ロータアセンブリの二次元モデルにおいて生成された力線が示されている。確認できるように、最大の応力集中は、ブッシングリングの内縁部において、前述の摩耗ゾーンZ2で起こる。この集中は、外縁部の方に移動すると迅速に減少する。
【0015】
米国特許文献第4,087,216号は、先行技術による回転流体ポンプを開示している。このポンプは、ニードルベアリングを用いるものであり、軸方向にフロートするブッシングを使用するものではない。
【0016】
フランス特許文献第1343908号Aは、先行技術によるさらなる回転流体ポンプを開示している。
【0017】
上記のことを考慮すると、本発明の根底にある技術的課題は、申し立てられた先行技術の上記欠陥を少なくとも部分的に解決し、従って改善された性能及び耐用寿命を有し、過渡事象における応答時間が低下した、ブッシングアセンブリ及び対応するポジティブディスプレイスメント回転ポンプを考案することである。
【発明の概要】
【0018】
本発明の根底にある解決策は、応力の大きいエリアにおける比圧を低減させるために、使用中、ブッシングアセンブリのうちポンプケーシングと直接接触する部分、すなわち、吸引側の内縁部にある部分の下方に位置決めされた加圧タンクを創出することにある。
【0019】
この解決策に鑑み、先程特定した技術的課題は、ポジティブディスプレイスメント回転ポンプであって、排出側で開いている排出ポート及び反対の吸引側で開いている吸引ポートをもつ内部空洞が設けられたケーシングと、流体を排出ポートから吸引ポートにポンピングするための内側チャンバ内で回転する同数の噛合ロータを中間部で支えるシャフトのペアと、シャフトを支持するためにロータの両端に配置された2つのブッシングアセンブリとを備え、当該ブッシングアセンブリは、ロータに面する内表面、反対の外表面、並びに内表面及び外表面の2つを接続する側面を有し、側面は、内側チャンバ内で連結しており、ブッシングアセンブリは、その側面に、外表面よりも内表面に近い位置にある、内部空洞の吸引側に面する少なくとも1つの補償タンクと、当該補償タンクを排出側に面する側面の一部分に接続する少なくとも1つのブリードチャネルとを有する、ポジティブディスプレイスメント回転ポンプによって解決される。
【0020】
また、技術的課題は、ポジティブディスプレイスメント回転ポンプ全体との関連における、上記で特定したタイプのブッシングアセンブリによって解決される。
【0021】
本発明によるブッシングアセンブリは、一体型又はツーピースのブッシングリングを備えていてもよく、この場合、ブリードチャネル及び少なくとも1つの補償タンクは、2つの内側ブッシングを支えるよう配置されたブッシングリング上に作製されている。その一方で、支持するブッシングとは異なるブッシングリングが存在せず、ブッシングアセンブリが単一の要素として作製されてもよく、又は2つの並置された要素として作製されてもよいことは除外されない。
【0022】
上述の構造に起因して、当該補償タンクは、使用中、排出ポンプから来る圧力下の流体で充填される。よって、それぞれのブッシングアセンブリに対する矯正トルクが定義され、これは、先行技術によるポンプにおいて摩耗する傾向にある最大応力エリアを解放するのに役立つ。
【0023】
換言すると、本発明による構造は、排出液をブリードさせ、これを前述の補償タンク内に運ぶことで、それぞれのブッシングアセンブリの支持を容易にすることを目的とする。
【0024】
本質的に公知の方式において、当該ブッシングアセンブリは、互いに連結された2つのスリーブ形状のセミグループとして成形され、当該セミグループは、ワンピース又は互いから分離した状態で作製されている。
【0025】
よって、側面は、それぞれ排出側及び吸引側にある、セミグループの2つの連結エリアにおいて接続された、又は何れかの方法で並置された、2つの円筒状部分を備える。
【0026】
ブリードチャネルは、好ましくは、排出側の連結エリアを少なくとも1つの補償タンクと接続し、好ましくは、反対の吸引側の連結エリアに達する前に遮断される。
【0027】
好ましくは、ブリードチャネルは、側面の円筒状部分の少なくとも1つ、好ましくは両方に作製された、奥行きが限定された外周方向溝の形態を取る。
【0028】
好ましい実施形態において、補償タンクは、ブリードチャネルを画定する周方向溝の、軸方向に広がる形態、例えば、実質的に平行六面体の形状を取る。
【0029】
好ましくは、補償タンクは、ブリードチャネルに対して内表面の方に軸方向に延びている。
【0030】
好ましくは、補償タンク及びブリードチャネルは、同じ奥行きを有する。
【0031】
好ましい実施形態において、当該補償タンクは、各ブッシングアセンブリの各セミグループに対して少なくとも2つあり、これらは、ブリードチャネル自体によって接続されていてもよい。例えば、補償タンクは、ブリードチャネルの延長部に交わる少なくとも1つの中間補償タンクと、ブリードチャネルが終了する箇所である少なくとも1つの末端側補償タンクとを含み得る。
【0032】
本発明によるポンプの特徴及び利点は、添付図面の参照とともに、非限定的な例として示される実施形態例の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
添付の
図1~12は、以下を示す。
【
図1】本発明の主要な態様を詳解するものではない、汎用ポジティブディスプレイスメント回転ポンプの分解された部分、特に、ギアポンプを含む、斜視図を示す。
【
図2】前述のように、先行技術によるブッシングアセンブリの要素の斜視図を示す。
【
図3】前述のように、先行技術による別のブッシングアセンブリの斜視図を示す。
【
図4】前述のように、先行技術のポジティブディスプレイスメント回転ポンプにおける力の分布の第1の概略表現を示す。
【
図5】前述のように、先行技術のポジティブディスプレイスメント回転ポンプにおける力の分布の第2の概略表現を示す。
【
図5a】前述のように、
図5に示したポンプにおけるロータ及びブッシングアセンブリによって構成された構造の荷重F、モーメントT、及び対応するひずみDのグラフを示す。
【
図6】前述のように、
図5に示したポンプにおけるブッシングアセンブリとロータのグループの二次元モデルにおいて生成された力線を示す。
【
図7】本発明によるポジティブディスプレイスメント回転ポンプのブッシングアセンブリの斜視図を示す。
【
図8】
図7のブッシングアセンブリの、異なる角度による斜視図を示す。
【
図9】
図7の負荷がより大きく集中しているエリアをハイライトする斜視図を更に示す。
【
図10】
図7のブッシングアセンブリの側面図を示す。
【
図11】本発明によるポジティブディスプレイスメント回転ポンプにおける力の分布の概略表現を示す。
【
図11a】
図11に示したポンプにおけるロータ及びブッシングアセンブリによって構成された構造の荷重F、モーメントT、及び対応するひずみDのグラフを示す。
【
図12】
図11に示したポンプにおけるブッシングアセンブリとロータのグループの二次元モデルにおいて生成された力線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、参照番号1は、ギアの歯車とともに本発明によって作製されたポジティブディスプレイスメント回転ポンプを全体的かつ概略的に示している。
【0035】
ポジティブディスプレイスメント回転ポンプ1は、それぞれのシャフト5によって支持されるとともにケーシング3に囲まれた、ロータ2の、特に歯車のペアを備える。第1の駆動歯車がケーシング3に対して突出する端部で駆動シャフトに接続され、第2の被動歯車が被動輪によって回転される。本発明の好ましい実施形態において、2つのロータ2は、はすばを有する歯車である。
【0036】
ケーシング3は、公知のタイプであるために図示されていない2つのカバー又はフランジによって、前方及び後方が閉じられている。ケーシングの片側には、添付の図には図示されていない流体の吸引ポートがあり、他方には排出ポート4がある。さらに、ケーシングは、吸引側Sに吸引口を有し、反対の排出側に排出口Dを有する、ロータ2及びブッシングアセンブリ10が導入される内部空洞を画定する。
【0037】
ケーシング3内では、ロータ2のシャフト5が2つの端部において2つのブッシングアセンブリ10(
図1にはその一方のみが示されている)によって支持されている。ブッシングアセンブリ10の各々は、図示されているようにワンピースで作製されてもよく、又は、
図2の先行技術において提示されているものと同様に、分離して並置された2つのセミグループ10aで作製されてもよい。好ましくは、ブッシングアセンブリ10の各々が、ブッシングリングと、それにマウントされた2つのブッシング19とを備える。
【0038】
図1は、本発明によるブッシングアセンブリ10の特性を例示するものではなく、その特性は、後続の
図7~10において代わりに確認できることに留意されたい。
【0039】
確認され得るように、各ブッシングアセンブリ10は、油膜を除いてロータ2に接触するよう配置された内表面11と、第1の面の反対にあり、ケーシング3のカバー又はフランジの側に面する外表面12とを有する。2つの面は、排出側Dの連結エリア17及び吸引側Sの連結エリア18において互いに接続された2つの円筒面13aによって構成されている側面13によって接続されている。
【0040】
ブッシングアセンブリ10には、それぞれの円筒面13a上に周方向溝として作製された2つのブリードチャネル14が設けられている。ブリードチャネル14は、排出側Dの連結エリア17から、吸引側Sで2つの補償タンク15、16に達するまで延びている。補償タンク15、16は、吸引側Sにおいて内表面11に対して近いエリアに位置する、ブッシングアセンブリ10の最大応力Hエリアに有利に配置されている。
【0041】
図10において明らかに確認できるように、ブリードチャネル14に交わる中間補償タンク15と、それに続いて、ブリードチャネル14を遮断する末端側補償タンク16とが設けられている。
【0042】
補償タンク15、16は、異なる形状でもよく、本明細書で例示される好ましい実施形態では、実質的に平行六面体であり、ブリードチャネル14の奥行きと実質的に等しい奥行きを有し、ブッシングアセンブリ10の内表面11の方に延びている。
【0043】
当該の好ましい構成から始めると、ブリードチャネル14及び補償タンク15、16の位置及び形態は、以下の基準によって特定され得る:
- ブリードチャネル14の軸幅、
- 各補償タンク15、16の軸幅(好ましくは同じだが、必ずしもそうではない)、
- ブッシングアセンブリ10の内表面11からのブリードチャネル14の距離、
- 各補償タンク15、16の周長(好ましくは、末端側タンク16は、中間タンク15よりも小さい長さを有するが、必ずしもそうではない)、
- 2つの後続の補償タンク16間の円周距離(好ましくは、中間タンク15の周長とおよそ等しいが、必ずしもそうではない)、
- ベアリング中央の軸に対するタンクの位置。
【0044】
上記の基準は、ポンプのサイズ及び使用目的に依存して、最大の負荷の再分散、すなわち、上記の最大応力Hのエリアにおける最小表面圧力を得るように、数値モデリングによって特定され得る。
【0045】
上述のブッシングアセンブリ10の形態は、ポンプの使用中、補償タンク15、16内の圧力下の流体のブリードに有利である。このようにして、ブッシングアセンブリ10の最大応力のエリアにおいて再整合力Frが得られ、対応する再整合モーメントTrが生成され、これが、ブッシングアセンブリ10をポンプ軸と再整合すること、及びそれに作用する負荷をリバランスすることに役立ち、よって、局所的な摩耗及び動作時の過渡事象において結果として生じるジャミングの現象が排除されるか、又は少なくとも低減する。
【0046】
図11は、
図5の図中の補償タンク15、16によって決定される再整合力Fr及び再整合モーメントTrを紹介する。
図11aは、構造の荷重F、モーメントT、及び対応するひずみDを示すグラフを示している。ブッシングアセンブリ10に沿って応力が大きく再分散されており、縁部で内表面11との拘束反応が減少している。
【0047】
図12は、モデリングソフトウェアによって計算された、ブッシングリングとロータのグループの二次元モデルにおいて生成された力線を示す。
図6の先行技術のモデルと比較すると、残りの表面部分における平均圧力は一定のままであるが、ブッシングアセンブリ10を支持するのに最も協同する表面の部分を広げることによって動力がより良好に分散されることが分かる。
【0048】
上記で説明した理由のために、更なる計算により、最大動力は約40%低減し得る。
【0049】
当然ながら、当業者は、条件及び具体的なニーズを満たすために、すべてが以下の特許請求の範囲によって定義される発明の保護範囲に含まれるやり方で、上述の発明に幾つかの変更及び変形を行うことができる。
[他の可能な項目]
[項目1]
ポジティブディスプレイスメント回転ポンプ(1)のブッシングアセンブリ(10)であって、ポジティブディスプレイスメント回転ポンプ(1)の内部空洞(30)に挿入されてその内部で軸方向にフロートするとともに、前記ポジティブディスプレイスメント回転ポンプ(1)の前記ロータ(2)を支えるシャフト(5)のペアの端部を支持するよう配置されており、
前記ブッシングアセンブリ(10)は、
使用中、前記ロータ(2)に面する内表面(11)、
反対の外表面(12)を備え、
使用中、前記ブッシングアセンブリ(10)は、前記内表面及び外表面(11、12)に作用する流体圧力に起因して、前記内部空洞(30)内で軸方向に自由にスライドし、
前記ブッシングアセンブリ(10)は、
前記内表面(11)及び外表面(12)の2つを接続する側面(13)であって、前記内側チャンバ(30)内で、第1の部分が吸引側(S)に面し、第2の部分が排出側(D)に面するように連結されるよう配置されている前記側面(13)をさらに備え、
前記側面(13)の前記第1の部分において前記外表面(12)よりも前記内表面(11)に近い位置にある少なくとも1つの補償タンク(15、16)と、
前記補償タンク(15、16)を前記側面(13)の前記第2の部分に接続する少なくとも1つのブリードチャネル(14)と
を備えることを特徴とする、ブッシングアセンブリ。
[項目2]
前記少なくとも1つの補償タンク(15、16)は、両側において側方が閉じている、すなわち、前記ブッシングアセンブリ(10)の前記内表面(11)においても前記外表面(12)においても開かない、項目1に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目3]
互いに連結された2つのスリーブ形状のセミグループ(10a)として成形され、前記セミグループ(10a)は、ワンピース又は互いから分離した状態で作製されている、項目1又は2に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目4]
前記側面(13)は、それぞれ前記排出側(D)及び前記吸引側(S)にある、前記セミグループ(10a)の2つの連結エリア(17、18)において接続又は並置された、2つの円筒状部分(13a)を有する、項目3に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目5]
前記ブリードチャネル(14)は、使用中、前記排出側(D)の前記連結エリア(17)を前記少なくとも1つの補償タンク(15、16)と接続し、前記ブリードチャネル(14)は、前記吸引側(D)の前記連結エリア(18)に達していない、項目4に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目6]
前記ブリードチャネル(14)は、前記側面(13)の前記円筒状部分(13a)のうちの少なくとも1つに形成された外周方向溝の形態を取る、項目4又は5のいずれか1項に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目7]
前記少なくとも1つの補償タンク(15、16)は、前記ブリードチャネル(14)を画定する前記周方向溝の前記軸方向に広がる形態を取る、項目6に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目8]
前記少なくとも1つの補償タンク(15、16)は、前記ブリードチャネル(14)に対して前記内表面(11)の方に軸方向に延びている、項目7に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目9]
前記少なくとも1つの補償タンク(15、16)は、実質的に平行六面体の形態を有する、項目7又は8に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目10]
前記補償タンク(15、16)及び前記ブリードチャネル(14)は、同じ奥行きを有する、項目7から9のいずれか1項に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目11]
前記補償タンク(15、16)は、各セミグループ(10a)に対して少なくとも2つある、項目7から10のいずれか1項に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目12]
各セミグループ(10a)の前記2つの補償タンク(15、16)は、同じ前記ブリードチャネル(14)によって接続されている、項目11に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目13]
前記補償タンク(15、16)は、前記ブリードチャネル(14)の前記延長部に交わる少なくとも1つの中間補償タンク(15)、及び前記ブリードチャネルが終了する箇所である(14)少なくとも1つの末端側補償タンク(16)である、項目12に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目14]
2つの内側ブッシング(19)と結合していてもよい、一体型又はツーピースのブッシングリングを備え、前記ブリードチャネル(14)及び前記少なくとも1つの補償タンク(15、16)は、前記ブッシングリング上に作製されている、先行項目のいずれか1項に記載のブッシングアセンブリ(10)。
[項目15]
ポジティブディスプレイスメント回転ポンプ(1)であって、
排出側(D)で開いている排出ポート(4)及び反対の吸引側(S)で開いている吸引ポートをもつ内部空洞(30)が設けられたケーシング(3)と、
流体を前記排出ポート(4)から前記吸引ポートにポンピングするための前記内側チャンバ(30)内で回転する同数の噛合ロータ(2)を中間部で支えるシャフト(5)のペアと、
先行項目のいずれか1項に記載の2つのブッシングアセンブリ(10)とを備え、
前記ブッシングアセンブリ(10)は、前記シャフト(5)を支持するために前記ロータ(2)の両端に配置されており、
前記ロータ(2)に面する前記内表面(11)と、
前記内部チャンバ(30)内で連結されている前記側面(13)と、
前記内部空洞(30)の前記吸引側(S)に面する前記補償タンク(15、16)と、
前記補償タンク(15、16)を前記排出側(D)に面する前記側面(13)の一部分に接続する前記少なくとも1つのブリードチャネル(14)とを有し、
使用中、前記補償タンク(14)は、前記それぞれのブッシングアセンブリ(10)に対する矯正トルクを定義する圧力下の流体で充填される、ポジティブディスプレイスメント回転ポンプ。
【国際調査報告】