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特表2023-505831眼内レンズ用の流体レンズ部品及びその作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(54)【発明の名称】眼内レンズ用の流体レンズ部品及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535195
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 US2020064083
(87)【国際公開番号】W WO2021119174
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/946,939
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313005019
【氏名又は名称】レンスゲン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シルベストリーニ、トーマス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】グエン、キム バン トゥイ
(72)【発明者】
【氏名】リリー、リチャード エス.
(72)【発明者】
【氏名】イングラム、リチャード ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイディ、ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC01
4C097SA03
4C097SA05
4C097SA08
(57)【要約】
流体レンズを有する眼内装置が提供される。流体レンズは、互いに連結されて間に閉鎖キャビティを形成している前側部及び後側部を有し、閉鎖キャビティには液体材料が充填され得る。後側部に前側部を結合する結合物質を受容するとともに、結合物質の意図しない拡散を抑制するように構成されたチャネルが後側部に形成され得る。流体レンズのポート内をシリンジが貫通して、閉鎖キャビティ内に液体材料を流し得る。次いで、液体材料の漏れを防止するために、プラグがポートに挿入され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズ部品であって、
前記レンズ部品の光軸と交差している前側光学面を有する前側部と、
前記光軸と交差している後側光学面を有する後側部と、
前記前側部に接続している前部と、前記後側部に接続している後部と、前記前部及び前記後部の一方又は両方に設けられた結合チャネルとを有している外周部と、
前記結合チャネル内に配置されて、前記外周部の前記後部を前記外周部の前記前部に結合している結合物質と、を備えた眼内レンズ部品。
【請求項2】
前記結合物質が、眼内レンズの向きの視覚化を容易にするように構成された顔料又は染料を含んでいる、請求項1に記載の眼内レンズ部品。
【請求項3】
前記顔料又は染料が前記前側部又は後側部により近い、請求項2に記載の眼内レンズ部品。
【請求項4】
前記結合物質が、前側から見て眼内レンズの組み付けを視覚的に確認するために構成された連続的な機能部を前記外周部において形成している、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の眼内レンズ部品。
【請求項5】
前記連続的な機能部が、前記レンズ部品の前記光軸を取り囲む環状構造である、請求項4に記載の眼内レンズ部品。
【請求項6】
前記連続的な機能部が、前側から見て前記眼内レンズの組み付けを視覚的に確認するために、前記眼内レンズの保持機能部の下側で分断されて見えるように構成されている、請求項4に記載の眼内レンズ部品。
【請求項7】
前記外周部の前記後部と前記前部との間に位置している傾斜状接合部をさらに備えている、請求項1に記載の眼内レンズ部品。
【請求項8】
前記傾斜状接合部が、前側傾斜面及び後側傾斜面を有しており、前記結合チャネルと閉鎖キャビティとの間に位置している、請求項7に記載の眼内レンズ部品。
【請求項9】
前記閉鎖キャビティが前記前側光学面と前記後側光学面との間に位置している、請求項8に記載の眼内レンズ部品。
【請求項10】
前記眼内レンズ部品が、接触時にベース部材の表面に接着するように構成された材料を有している、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の眼内レンズ部品。
【請求項11】
前記前部の前面、前記後部の後面及び前記外周部の外周面が、前記ベース部材の前記表面に対する接触時の接着の向上を容易にするために粗面である、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の眼内レンズ部品。
【請求項12】
前記外周部の前記外周面が、前記ベース部材の前記表面に対する接触時の接着の向上を容易にするために粗面である、請求項11に記載の眼内レンズ部品。
【請求項13】
眼内レンズ(IOL)装置であって、
請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の前記眼内レンズ部品と、
患者の眼球の水晶体嚢と係合するように構成されたハプティックと、1つ又は複数の保持機能部とを有しているベース部材と、を備え、
前記ベース部材が、接触時に前記IOL部品の表面に接着するように構成された材料を有している、IOL装置。
【請求項14】
前記ベース部材が、径方向内向きの壁部、前記1つ又は複数の保持部材の後面、及び1つ又は複数の台部の少なくとも1つを有しており、
受容スペースが、前記径方向内向きの壁部の近傍、及び前記1つ又は複数の保持部材と1つ又は複数の台部との間の少なくとも一方に位置しており、
前記受容スペースが、前記IOL部品を受容するように構成されており、
前記径方向内向きの壁部、前記1つ又は複数の保持部材の後面、及び1つ又は複数の台部の少なくとも1つが、前記IOL部品の表面に対する接触時の接着の向上を容易にするために粗面である、請求項13に記載のIOL装置。
【請求項15】
流体レンズを組み立てる方法であって、
前側光学面及び第1の外周部を有している前側部材を提供することと、
後側光学面及び第2の外周部を有している後側部材を提供することと、
前記第2の外周部の前面及び前記第1の外周部の後面の一方又は両方に結合物質を塗布することと、
前記結合物質を用いて、前記第2の外周部の前記前面と前記第1の外周部の前記後面とを連結することと、
前記第1の外周部と前記第2の外周部との間を封止することによって、前記前側光学面と前記後側光学面との間に閉鎖キャビティを形成することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記結合物質を塗布することが、前記第2の外周部の前記前面に形成されたチャネル又は前記第1の外周部の前記後面に形成されたチャネルに液体材料を流すことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記結合物質を塗布することが、前記第2の外周部の前記前面に形成されたチャネルに液体材料を流すことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記閉鎖キャビティへの前記結合物質の流れを遮断するために前記チャネルを密閉することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記チャネルを密閉することが、前記第2の外周部の第2の傾斜面と前記第1の外周部の第1の傾斜面との間に形成される傾斜状接合部を係合させることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記閉鎖キャビティに前記結合物質が実質的に存在していないことを確認することをさらに含む、請求項15~請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記結合物質に混合された可視色を検出することをさらに含む、請求項15~請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
流体レンズ部品を作製する方法であって、
前側光学部材、後側光学部材及び外周部の間に設けられている閉鎖キャビティを有する流体レンズ部品を提供することであって、前記外周部が、前記閉鎖キャビティに向かって延びているポートを有する外周面を有しており、前記前側光学部材が、前記流体レンズの前側の第1の表面と、前記第1の表面の反対側の第2の表面とを有しており、前記第2の表面が少なくとも部分的に前記閉鎖キャビティの境界を定めている、流体レンズ部品を提供することと、
管状部材が前記閉鎖キャビティ内に延びるように、前記管状部材をポートに貫通させて前進させることと、
前記前側光学部材の前記第2の表面の近傍に光学流体が連続的に広がる区域を設けるために前記閉鎖キャビティ内に前記光学流体を注入することと、
前記管状部材を前記ポートから後退させることと、を含む、方法。
【請求項23】
前記流体レンズ部品が、前記ポートの内側端部と前記閉鎖キャビティとの間に設けられた固体壁部を有しており、
前記管状部材を前進させることが、前記ポートを介して前記閉鎖キャビティに到達するために、前記固体壁部を突き抜けることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記光学流体を注入することが、前記閉鎖キャビティにおいて前記ポートの反対側に前記管状部材の先端を配置することと、前記閉鎖キャビティ内に前記流体が流入するにつれて前記先端を後退させることと、を含む、請求項22又は請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記管状部材を前記ポートから後退させた後に、前記ポートにプラグを形成することをさらに含む、請求項22~請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
眼内レンズ部品であって、
前記レンズ部品の光軸と交差している前側光学面を有する前側部と、
前記光軸と交差している後側光学面を有する後側部と、
前記前側部及び前記後側部に接続している外周部であって、前記外周部、前側部及び後側部によってこれらの間に閉鎖キャビティが形成されている外周部と、
前記外周部の外周面に設けられている第1の端部と、前記第1の端部と前記閉鎖キャビティとの間において前記外周部内に設けられている第2の端部とを有しているポートと、を備えた眼内レンズ部品。
【請求項27】
前記ポートの前記第2の端部と前記閉鎖キャビティとの間に、固体材料が連続的に広がる区域が延在している、請求項26に記載の眼内レンズ部品。
【請求項28】
シリンジを前記閉鎖キャビティに到達させるために前記ポートの前記第2の端部と前記閉鎖キャビティとの間に形成されたチャネルをさらに備え、前記チャネルは、前記シリンジが存在しない状態では自ら封止するように構成されている、請求項26又は請求項27に記載の眼内レンズ部品。
【請求項29】
前記閉鎖キャビティ内に配置された光学流体をさらに備えている、請求項26~請求項28のいずれか一項に記載の眼内レンズ部品。
【請求項30】
前記ポートに配置されたプラグ部材をさらに備えている、請求項26~請求項29のいずれか一項に記載の眼内レンズ部品。
【請求項31】
眼内レンズ装置であって、
眼内レンズ(IOL)部品の光軸と交差している前側光学面を有する前側部と、前記光軸と交差している後側光学面を有する後側部と、前記前側部及び前記後側部に接続している外周部とを有し、前記前側光学面、後側光学面及び外周部の間に流体が充填されたキャビティが延在している、IOL部品と、
患者の眼球の水晶体嚢と係合するように構成されたハプティックと、前記(IOL)部品を受容するように構成された受容スペース内に入るように後方に付勢されている内側端部を有する1つ又は複数の弾性保持機能部とを有しているベース部材と、を備え、
前記1つ又は複数の弾性保持機能部が、前記ベース部材の前記受容スペース内への前記IOL部品の配置を容易にするために前方に移動されるとともに、前記IOL部品の前記外周部の前面に向かって移動されるように解放されるように構成されている、眼内レンズ装置。
【請求項32】
前記弾性保持機能部は、前記IOL部品が前記ベース部材に配置された後に解放されると、前記IOL部品の前記外周部の前記前面に垂直力を加えるように構成されている、請求項31に記載の眼内レンズ。
【請求項33】
前記IOL部品が、前記ベース部材に対して予め定められた回転位置に前記IOL部品があるときに前記1つ又は複数の弾性保持機能部を受容するように構成された切り欠き部を有している、請求項31又は請求項32に記載の眼内レンズ。
【請求項34】
前記IOL部品の前後方向の厚みが、前記受容スペースの前後方向の厚みよりも大きく、前記ベース部材内に前記IOL部品が組み付けられると、前記IOL部品によって前記1つ又は複数の弾性保持機能部が前方に曲げられている、請求項31~請求項33のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項35】
患者の眼球内において眼内レンズ(IOL)装置を組み立てる方法であって、
ベース光学部品と、前記ベース光学部品に向かって後方に付勢されている内側端部を有する1つ又は複数の弾性保持機能部とを備えたベース部材を患者の眼球に挿入することと、
前記1つ又は複数の弾性保持機能部の自由状態よりも前方に前記弾性保持機能部を移動させることと、
眼内レンズ(IOL)部品を、前記1つ又は複数の弾性保持機能部と前記ベース部材の反対側の部分との間の受容スペースに挿入することと、
前記1つ又は複数の弾性保持機能部が前記IOL部品の前面に接触するように、前記1つ又は複数の弾性保持機能部を解放することと、を含む、方法。
【請求項36】
前記1つ又は複数の弾性保持機能部が解放されることによって、前記1つ又は複数の弾性保持機能部が前記IOL部品の切り欠き部内に移動する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ又は複数の弾性保持機能部が、前記IOL部品の前記前面に垂直力を加える、請求項35又は請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記IOL部品の外周面を前記ベース部材の径方向内向きの面に接触させることをさらに含む、請求項35~請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記IOL部品の前記前面が、前記1つ又は複数の弾性保持機能部を前方に反らせる、請求項35~請求項38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、眼内レンズ装置に連結するように構成された流体レンズ部品及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の進歩によって、眼の様々な症状に対処するための高度な治療が可能となり、眼の外科手術が増加している。このような手術は概して安全であり、患者の生活の質を大幅に改善する結果をもたらすことが証明されているため、患者の受け入れは過去20年間で増加している。
【0003】
白内障手術は最も一般的な外科手術の1つであり、毎年世界中で2800万を超える白内障手術が行われている。平均寿命が伸び続けるにつれて、この数は今後も増加すると予想される。一般的に、白内障の治療においては、眼球から水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズ(「IOL」)が移植される。従来のIOL装置は、遠距離に焦点が合うように設計されているため、老眼の矯正はできない。このため、老眼鏡を使い続ける必要がある。このように、一般的なIOL移植を受けた患者は、白内障による視界の濁りは解消されるが、焦点を遠距離から近距離に変えることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体レンズを用いたIOLを患者の眼に移植することによって、患者は焦点を遠くから近くに変えることができ、患者の視力の適応性を改善することができる。このようなレンズを作製する際には、遠近調節機能、適切な柔軟性及び光学的透明度を維持するために注意を払う必要があり、光軸に沿った汚れ及び/又は光学流体の漏れによってこれらが損なわれる可能性がある。
【0005】
このため、嚢切開後に水晶体嚢内に作製された流体レンズが配置されるIOL装置であって、向上した成果を患者に提供するIOL装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
向上した成果は、様々な形態で提供される。例えば、本明細書に開示する遠近調節IOL部品(例えば、流体レンズ)は、IOL部品の前側部材及び後側部材を互いに連結する結合物質を受容するチャネルを有している。チャネルと、近傍に位置する前側部材と後側部材との間の傾斜状接合部とによって、結合物質が所定の領域内に制限され得る。結合物質を所定の領域内に制限することによって、光軸に沿った患者の視覚を低下させる可能性のある光学流体の汚れを低減、最小化又は排除できる。さらに、結合物質を所定の領域内に制限することによって、遠近調節部品及び光学流体の柔軟性を維持することができ、結合物質が制限されずに広がった場合に起こる剛性の増加を回避できる。別の向上した成果は、IOL部品の閉鎖キャビティに光学流体を流入させるポートを塞ぐプラグを使用することである。プラグは、IOL部品の流体スペースを充填するためのシリンジを受容するように構成され得る。プラグによって、遠近調節機能を低下させる可能性のある、IOL部品からの光学流体の漏れを低減、最小化又は排除できる。
【0007】
いくつかの変形例では、流体レンズを組み立てる方法が提供される。前側光学面及び第1の外周部を有している前側部材が提供される。後側光学面及び第2の外周部を有している後側部材が提供される。第2の外周部の前面及び第1の外周部の後面の一方又は両方に結合物質が塗布される。結合物質を用いて、第2の外周部の前面と第1の外周部の後面とが連結される。第1の外周部と第2の外周部との間を封止することによって、前側光学面と後側光学面との間に閉鎖キャビティが形成されている。
【0008】
いくつかの変形例においては、結合物質を塗布することが、第2の外周部の前面に形成されたチャネル又は第1の外周部の後面に形成されたチャネルに液体材料を流すことを含み得る。
【0009】
いくつかの変形例においては、結合物質を塗布することが、第2の外周部の前面に形成されたチャネルに液体材料を流すことを含む。
いくつかの変形例においては、方法には、閉鎖キャビティへの結合物質の流れを遮断するためにチャネルを密閉することが含まれ得る。いくつかの変形例においては、チャネルを密閉することが、第2の外周部の第2の傾斜面と第1の外周部の第1の傾斜面との間に形成される傾斜状接合部を係合させることを含み得る。
【0010】
いくつかの変形例においては、方法には、閉鎖キャビティに結合物質が実質的に存在していないことを確認することが含まれ得る。いくつかの変形例においては、方法には、結合物質に混合された可視色を検出することが含まれ得る。
【0011】
いくつかの変形例では、眼内レンズ部品が提供される。眼内レンズ部品は、レンズ部品の光軸と交差している前側光学面を有する前側部を備えている。眼内レンズ部品は、光軸と交差している後側光学面を有する後側部を備えている。眼内レンズ部品は、前側部に接続している前部を有している外周部を備えている。眼内レンズ部品は、後側部に接続している後部を備えている。眼内レンズ部品は、前部及び後部の一方又は両方に設けられた結合チャネルを備えている。眼内レンズ部品は、結合チャネル内に配置されて、外周部の後部を外周部の前部に結合している結合物質を備えている。
【0012】
いくつかの変形例においては、結合物質は、眼内レンズの向きの視覚化を容易にする顔料又は染料を含んでいる。いくつかの変形例においては、顔料又は染料は、前側部又は後側部により近い。
【0013】
いくつかの変形例においては、結合物質は、前側から見て眼内レンズの組み付けを視覚的に確認するために構成された連続的な機能部を外周部において形成している。いくつかの変形例においては、連続的な機能部は、レンズ部品の光軸を取り囲む環状構造である。いくつかの変形例においては、連続的な機能部は、前側から見て眼内レンズの組み付けを視覚的に確認するために、眼内レンズの保持機能部の下側で分断されて見えるように構成されている。
【0014】
いくつかの変形例においては、眼内レンズ部品は、外周部の後部と前部との間に位置している傾斜状接合部を備えている。いくつかの変形例においては、傾斜状接合部は、前側傾斜面及び後側傾斜面を有しており、結合チャネルと閉鎖キャビティとの間に位置している。いくつかの変形例においては、閉鎖キャビティが前側光学面と後側光学面との間に位置している。
【0015】
いくつかの変形例においては、眼内レンズ部品が、接触時にベース部材の表面に接着可能な材料を有している。いくつかの変形例においては、前部の前面、後部の後面及び外周部の外周面が、ベース部材の表面に対する接触時の接着の向上を容易にするために粗面である。いくつかの変形例においては、外周部の外周面は、ベース部材の表面に対する接触時の接着の向上を容易にするために粗面である。
【0016】
いくつかの変形例では、眼内レンズ装置は、眼内レンズ部品と、ベース部材とを備えている。ベース部材は、患者の眼球の水晶体嚢と係合可能なハプティックを有し得る。ベース部材は、1つ又は複数の保持機能部を有し得る。ベース部材は、接触時にIOL部品の表面に接着可能な材料を有し得る。いくつかの変形例においては、ベース部材は、径方向内向きの壁部、1つ又は複数の保持部材の後面、及び/又は1つ又は複数の台部を有し得る。ベース部材は、径方向内向きの壁部の近傍、及び/又は1つ又は複数の保持部材と1つ又は複数の台部との間、に位置している受容スペースを有し得る。受容スペースは、IOL部品を受容し得る。径方向内向きの壁部、1つ又は複数の保持部材の後面、及び/又は1つ又は複数の台部が、IOL部品の表面に対する接触時の接着の向上を容易にするために粗面である。
【0017】
いくつかの変形例においては、流体レンズ部品を作製する方法が提供される。前側光学部材、後側光学部材及び外周部の間に設けられている閉鎖キャビティを有する流体レンズ部品が提供される。外周部は、閉鎖キャビティに向かって延びているポートを有する外周面を備えている。前側光学部材は、流体レンズの前側の第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面とを有している。第2の表面が少なくとも部分的に閉鎖キャビティの境界を定めている。管状部材が閉鎖キャビティ内に延びるように、管状部材がポートに貫通されて前進される。前側光学部材の第2の表面の近傍に光学流体が連続的に広がる区域を設けるために閉鎖キャビティ内に光学流体が注入される。管状部材はポートから後退される。
【0018】
いくつかの変形例においては、流体レンズ部品は、ポートの内側端部と閉鎖キャビティとの間に設けられた固体壁部を有している。いくつかの変形例では、管状部材を前進させることが、ポートを介して閉鎖キャビティに到達するために、固体壁部を突き抜けることを含む。
【0019】
いくつかの変形例においては、光学流体を注入することは、閉鎖キャビティにおいてポートの反対側に管状部材の先端を配置することと、閉鎖キャビティ内に流体が流入するにつれて先端を後退させることと、を含む。いくつかの変形例においては、本方法は、管状部材をポートから後退させた後に、ポートにプラグを形成することを含む。
【0020】
いくつかの変形例では、眼内レンズ部品が提供される。眼内レンズ部品は、レンズ部品の光軸と交差している前側光学面を有する前側部を備えている。眼内レンズ部品は、光軸と交差している後側光学面を有する後側部を備えている。眼内レンズ部品は、前側部に接続している外周部を備えている。後側部、外周部及び前側部によってこれらの間に閉鎖キャビティが形成されている。ポートは、外周部の外周面に設けられている第1の端部と、第1の端部と閉鎖キャビティとの間において外周部内に設けられている第2の端部とを有している。
【0021】
いくつかの変形例においては、ポートの第2の端部と閉鎖キャビティとの間に、固体材料が連続的に広がる区域が延在している。いくつかの変形例においては、眼内レンズ部品は、シリンジを閉鎖キャビティに到達させるためにポートの第2の端部と閉鎖キャビティとの間に形成されたチャネルを備えている。このチャネルは、シリンジが存在しない状態では自ら封止するように構成されている。いくつかの変形例では、眼内レンズ部品は、閉鎖キャビティに配置された光学流体を有している。いくつかの変形例では、眼内レンズ部品は、ポートに配置されたプラグ部材を備えている。
【0022】
いくつかの変形例では、眼内レンズ部品が提供される。眼内レンズ部品は、眼内レンズ部品の光軸と交差している前側光学面を有する前側部を備えている。眼内レンズ部品は、光軸と交差している後側光学面を有する後側部を備えている。眼内レンズ部品は、前側部及び後側部に接続している外周部を備えている。流体が充填されたキャビティが前側光学面、後側光学面及び外周部の間に延びている。眼内レンズ部品は、患者の眼球の水晶体嚢と係合可能なハプティックと、(IOL)部品を受容するように構成された受容スペース内に入るように後方に付勢されている内側端部を有する1つ又は複数の弾性保持機能部とを有するベース部材を備えている。1つ又は複数の弾性保持機能部は、ベース部材の受容スペース内へのIOL部品の配置を容易にするために前方に移動され得るとともに、IOL部品の外周部の前面に向かって移動されるように解放され得る。
【0023】
いくつかの変形例においては、弾性保持機能部は、IOL部品がベース部材に配置された後に解放されると、IOL部品の外周部の前面に垂直力を加え得る。
いくつかの変形例においては、IOL部品は、ベース部材に対して予め定められた回転位置にIOL部品があるときに1つ又は複数の弾性保持機能部を受容可能な切り欠き部を有している。
【0024】
いくつかの変形例においては、IOL部品の前後方向の厚みが、受容スペースの前後方向の厚みよりも大きく、ベース部材内にIOL部品が組み付けられると、IOL部品によって1つ又は複数の弾性保持機能部が前方に曲げられている。
【0025】
いくつかの変形例においては、患者の眼球内において眼内レンズ(IOL)装置を組み立てる方法が提供される。ベース光学部品と、ベース光学部品に向かって後方に付勢されている内側端部を有する1つ又は複数の弾性保持機能部とを備えたベース部材が患者の眼球に挿入される。1つ又は複数の弾性保持機能部の自由状態よりも前方に弾性保持機能部が移動される。眼内レンズ(IOL)部品は、1つ又は複数の弾性保持機能部とベース部材の反対側の部分との間の受容スペースに挿入される。1つ又は複数の弾性保持機能部がIOL部品の前面に接触するように、1つ又は複数の弾性保持機能部が解放される。
【0026】
いくつかの変形例においては、1つ又は複数の弾性保持機能部が解放されることによって、1つ又は複数の弾性保持機能部がIOL部品の切り欠き部内に移動し得る。
いくつかの変形例においては、1つ又は複数の弾性保持機能部が、IOL部品の前面に垂直力を加える。
【0027】
いくつかの変形例においては、本方法は、IOL部品の外周面をベース部材の径方向内向きの面に接触させることをさらに含む。
いくつかの変形例においては、IOL部品の前面は、1つ又は複数の弾性保持機能部を前方に反らせる。
【0028】
上記又は他の特徴、態様及び効果は図面を参照して以下に説明される。図面は、実施形態の範囲を限定するものではなく例示を目的とする。また、開示された複数の実施形態の様々な特徴を組み合わせて、本開示の一部である追加の実施形態を形成できる。図面において、類似の実施形態の同様の特徴には、同様の符号が付されている。各図面の簡単な説明を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示の一実施形態による眼内レンズ(IOL)装置が配置された眼球の前側の斜視断面図である。
図2図1に示すIOL装置の前側斜視図である。
図3図2のIOL装置の分解図である。
図4】IOL部品の前側斜視図である。
図5図4に示すIOL部品の上面図である。
図6図1に示すIOL装置のIOL部品の断面図である。
図7図6に示すIOL部品の一部の拡大図である。
図7-1】アームと連結するための凹部を有している、図6及び図7に示すIOL部品の一部の拡大図である。
図7-2】図7-1と同様の拡大図であり、IOL部品の前側部材の実質的に平坦な後面と係合するアームを有しているIOL部品の一部を示す拡大図である。
図7-3】図7-2と同様の拡大図であり、IOL部品の外周面から例えば径方向内側に離れた位置において、前側部材の後面に係合する後側部材のアームを示す拡大図である。
図7A図6に示すIOL部品の前側分解斜視図である。
図7B図6に示すIOL部品の後側分解斜視図である。
図7C】後側部の前面のチャネルに結合物質が充填された状態の、図6に示すIOL部品の分解図である。
図7D】チャネルに結合物質が入った状態の、図6に示すIOL部品の断面図である。
図8】管状部材とともに示すIOL部品の断面図である。
図8A】IOL部品が圧縮され、管状部材がポートを貫通して閉鎖キャビティの奥側まで前進した状態の、図8のIOL部品の断面図である。
図8B】IOL部品が圧縮され、管状部材が、閉鎖キャビティ内に液体材料を流しながら後退している状態の、図8のIOL部品の断面図である。
図8C】IOL部品が圧縮され、管状部材が、閉鎖キャビティ内に液体材料を流しながら後退している状態の、図8のIOL部品の断面図である。
図8D】IOL部品が圧縮され、閉鎖キャビティ内に液体材料が充填されて管状部材がポートから後退している状態の、図8のIOL部品の断面図である。
図9】IOL部品のポートにプラグが挿入された状態の、図8のIOL部品の断面図である。
図10A図8のIOL部品がベース部材に挿入された状態の、図1及び図2に示すIOLの部分断面図である。
図10B】荷重の変化によって位置の異なる弾性保持機能部を備えた図10Aのベース部材の分解断面図である。
図10C】回転位置決めを容易にするための切り欠き部を有するIOL部品を備えたIOLの一部の前面図である。
図10D】回転位置決めを容易にするための切り欠き部を有するIOL部品を備えたIOLの一部の断面図である。
図10E】ベース部材の弾性保持機能部を前方に反らせているIOL部品の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願では、多部品IOL装置100(例えば、遠近調節IOL装置、遠近調節IOL)が開示される。多部品IOL装置100は、IOL部品200(例えば、流体レンズ、屈折力変化レンズ)を有している。IOL部品200は、結合物質204によって互いに結合された前側部材300及び後側部材400を有している。前側部材300と後側部材400との間には、液体材料230を受容可能な閉鎖キャビティ208が設けられている。IOL部品200の様々な構成及びその作製方法を以下に開示する。
【0031】
I.眼内レンズ装置の実施形態
前眼部の手術の主な目的の1つは、焦点を合わせることである。本明細書に記載のIOL装置100は、この目的を達成し、さらに、様々な実施形態において、遠距離だけでなく、間近や、例えば近距離から遠距離まで焦点を合わせることを達成するように構成されている。このため、IOL装置100は、患者に高い機能を提供するように独自に構成されている。
【0032】
A.眼球の解剖学的構造と遠近調節
図1に、IOL装置100が配置された眼球10を示す。眼球10の元来のレンズは、嚢切開術によって改変されている。この嚢切開術においては、元来の水晶体に開口20が形成され、水晶体嚢30の中身が開口20を介して取り除かれている。開口20によって、眼球10の外部からのアクセス経路が形成され、水晶体嚢30内にIOL装置100を配置するためのアクセスが可能となる。
【0033】
水晶体嚢30の赤道部32は、小帯40によって毛様体筋50に連結されている。小帯40は、水晶体嚢30を伸張可能な結合組織である。毛様体筋50が静止状態にあるときには、小帯40が伸張されて水晶体嚢30に張力を加える。眼球10が遠近調節を行う際には、毛様体筋50が収縮し、小帯40の張力が減少する。この遠近調節プロセスによってIOL装置100のベース部材500に圧縮力が加えられるが、これについては後述する。特定の理論には限定されないが、水晶体嚢30は、小帯40の張力が低下すると収縮し、この収縮によってベース部材500に圧縮力が加わることによってベース部材500内のIOL部品200の遠近調節が行われると考えられている。眼球10の力によってIOL部品200の1つ又は複数の光学面の形状を変化させることができ、その結果、遠近調節がもたらされる。
【0034】
B.個別部品眼内レンズ構造
図2及び図3に、眼球10から離れた状態の図1のIOL装置100の、組み立てられた状態及び分解された状態を示す。IOL装置100は、ベース部材500及びIOL部品200を有している。図3に示すように、IOL部品200は、ベース部材500とは別体であるため、ベース部材500及びIOL部品200は別々に患者の眼球10に配置することができ、例えば、順に配置することが可能である。ベース部材500は、IOL部品200を配置する前に配置してもよい。次いで、IOL部品200がベース部材500内に配置され、ベース部材500が眼球10の水晶体嚢30内にある状態で、ベース部材500内でIOL部品200を展開できる。いくつかの実施形態では、IOL部品200及び/又はベース部材500は、接着性(粘着性、粘り気等)を有する材料から形成されてもよく、この材料によってIOL部品200の表面が、部品200の外側に配置された構造、例えばベース部材500の表面に接触すると接着する。これによって、ベース部材500や、部品200を保持するように構成又は配置された他の構造に対するIOL部品200の保持が容易になる。いくつかの実施形態では、ベース部材500と接合するIOL部品200の表面及び/又はIOL部品200と接合するベース部材500の表面が、接着性(粘着性、粘り気等)を有してもよく、これによって、接触時にベース部材500の表面にIOL部品200の表面が接着する。いくつかの実施形態では、材料が粘着性を有している。
【0035】
図3に示すように、ベース部材500はベースレンズ508及びハプティック510を有している。ベースレンズ508は、IOL装置100の焦点を合わせる能力の一部を担い、この能力には、固定又は静的な焦点合わせ能力が含まれ得る。ハプティック510は、水晶体嚢30の赤道部32内に延在し、IOL部品200の装着位置を確立し得る。ベース部材500は、ベース部材500のベースレンズ508とは反対側の端部に開口506を有している。IOL部品200は、開口506を介して挿入されて、図2に示すように、保持機能部502(例えば、レンズ保持部材、タブ、突起、保持部等)の後ろに配置され得る。これによって、IOL部品200が、ベース部材500に対して組み付け及び/又は連結される。保持機能部502は、ベース部材500のベースレンズ508の前側に設けられ得る。IOL部品200がベース部材500に対して組み付け及び/又は連結された状態においては、保持機能部502は、前方から見てIOL部品200の前側に配置され得る。図2に示すように、IOL装置100では、IOL装置100の前側部と後側部との間、及び/又は、ベースレンズ508とIOL部品200の後側部との間の流体経路504を通って組み立て後においても流体が流れることができるように構成されている。
【0036】
II.眼内レンズ部品
図4及び図5に、IOL部品200の一実施形態を示す。IOL部品200は、結合物質204(例えば、接着剤等の結合材料)によって互いに結合される少なくとも2つの側部である前側部301(第1の側部とも称される)及び後側部401(第2の側部とも称される)(図6図7Dにも示す)を有している。前側部301及び後側部401は、IOL部品200の光軸AAと交差して配置されている。結合物質204は、IOL部品200と同じ材料及び/又は他の適切な材料からなっていてもよい。
【0037】
結合物質204は、目に見える色(黄色等)を有するように、顔料及び/又は染料を含んでいてもよい。色の強度は可視性に影響を与え、強度の高い色は強度の低い色よりも見やすい。いくつかの実施形態では、結合物質204は不透明であってもよく、受けた光の10%未満、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は90%より多くを透過させない。いくつかの実施形態では、結合物質204は反射性であってもよく、受けた光の10%未満、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は90%より多くを反射する。いくつかの実施形態では、結合物質204は蛍光性を有してもよく、特定の波長の光を吸収した後に、別の波長の光を放出する。いくつかの実施形態では、結合物質204は、特定の波長を受けると発光し、光源が除かれると、発光を停止するか又は略瞬時に発光を停止する。これにより、特定の光源に対して露出させることによって、可視性又は可視性の強度を選択できるという効果が得られる。このため、結合物質204を特定の光源に対して露出させることによって、IOL部品200又はIOL装置100の組み立て中には光が選択的に放出されるが、患者の眼への移植後の通常の使用時には、上記特定の光源が存在しないため光を放出しない。例えば、結合物質204の蛍光は、紫外線(人の目には見えない)を吸収して、可視領域の顕著な色を有する光を発し得るように構成される。紫外線源を取り除くと、結合物質204の蛍光は略瞬時に停止し得る。いくつかの実施形態では、結合物質204は燐光性であり、放射線源が取り除かれた後も一定時間発光し続ける。
【0038】
顔料及び/又は染料を用いることによって、IOL装置100及び/又はIOL部品200の向きや、ベース部材500又はIOL部品200の各部品の相対位置の視覚化が容易になる。結合物質204の顔料及び/又は染料は、前側部301により近い位置に配置してもよいし、後側部401により近い位置に配置してもよい。換言すると、結合物質204は、前側部301により近い位置に配置してもよいし、後側部401により近い位置に配置してもよい。例えば、図4に示すように、結合物質204の顔料及び/又は染料は、IOL部品200の前側部301よりも後側部401の近くに位置され、これによって、横から見たときにIOL部品200の向きを容易に把握できる。IOL部品200の結合物質204は、色(黄色)によって可視化されているため、例えば、IOL部品200の中央平面の後側に位置していることを確認することができる。一変形例では、結合物質は、後側部401よりも前側部301の近くに位置しており、このため、IOL部品200が意図したとおりに配向されていることを確認する際には、IOL部品200の結合物質204によって着色された(例えば黄色の)部分が中央平面の前側に位置することを確認できる。
【0039】
いくつかの態様では、結合物質204はIOL部品200の外周部206において連続的な機能部を形成してもよく、これによって、前側部301側から見たときにIOL装置100の組立体を視覚的に確認できるように構成されている。連続的な機能部は、IOL部品200の光軸AAを取り囲む環状構造であってもよい。連続的な構造は、IOL部品200とベース部材500との適切な結合を確認するために役立ち得る。例えば、IOL装置100の前側から見ると、連続的な機能部は、ベース部材500の保持機能部502の下側で分断されて見えるため、ベース部材500内にIOL部品200が適切に組み付けられていることを視認できる。換言すると、適切に組み立てられたIOL装置100を目視検査した場合、ベース部材500の保持機能部502の少なくとも2つ(例えば3つ)の比較的短い周方向領域によって中断されている、少なくとも2つ(例えば3つ)の着色(黄色等)された長尺状の弧状部が確認される。
【0040】
IOL部品200は、液体材料(流体、光学流体、レンズオイル等)及び/又はゲル材料を収容する閉鎖キャビティ208(図6及び図7に示す)を有し得る。流体は、任意の適切な方法で閉鎖キャビティ208に入れることができ、例えば、IOL部品200の外周部のポートを介して入れられる。場合によっては、このようなポートは、閉鎖キャビティ200からの流体又はゲルの流出を防止するために、充填後に追加され得るプラグ202等の封止部品によって封止してもよい。
【0041】
図6に、IOL部品200の断面を示す。IOL部品200の前側部材300及び後側部材400は、互いに接合している。前側部301は、前側部材300の前面である。後側部401は後側部材400の後面である。前側部材300は、前側光学部材303(例えば、膜、可撓性膜、変形可能膜、第1の光学部材)を有している。前側光学部材303は、流体レンズ部品200、前側部材300及び前側光学部材303の前側に前側光学面302(例えば、第1の光学面、第1の表面)を有している。前側光学部材303は、前側光学面302の反対側に第2の表面305(例えば、前側光学部材303の後側光学面)を有している。第2の表面305は、前側光学部材303の後面である。
【0042】
後側部材400は、後側光学部材403(例えば、後側光学部品、第2の光学部材、レンズ本体)を有している。一実施形態では、後側光学部材403は、固定された屈折力を有し得る両凸レンズである。後側光学部材403は、流体レンズ部品200、後側部材400及び後側光学部材403の後側に後側光学面402(例えば、第2の光学面)を有している。後側光学部材403は、後側光学面402の反対側に第1の表面405(例えば、後側光学部材403の前側光学面)を有している。第1の表面405は、後側光学部材403の前面である。
【0043】
前側光学部材303は、後側光学部材403から離間している。前側光学面302は、後側光学面402から離間している。前側光学面302は、自由状態で後側光学面402から離れて配置される。IOL部品200の外周部206に圧縮力が加えられると、IOL部品200の構成が変化して、屈折力が高くなり得る。例えば、前側光学面302は、表面が急な傾斜を有するように屈曲することによって、さらに屈折力が高くなり得る。いくつかの実施形態では、後側光学面402に対して前側光学面302が動くことによって屈折力が変化し得る(例えば高くなる)。いくつかの例では、光学面302及び402の相対移動と、光学面302の屈曲との組み合わせによって屈折力が変化する(例えば高くなる)。いくつかの変形例では、IOL部品200の外周部206に圧縮力が加えられると、後側光学面402が前方に移動する。いくつかの変形例では、第2の光学面402は、圧縮されても実質的に移動しない。
【0044】
IOL部品200の圧縮は、外周部206の外周面210がベース部材500と係合し、ハプティック510に加えられる圧縮力によって外周面210に圧縮力が加わることによって発生し得る。その結果、IOL部品200の遠近調節が行われる。
【0045】
前側光学面302を含む前側部材300は、液体又はゲル材料が充填され得る閉鎖キャビティ208によって、後側光学面402を含む後側部材400から離間されている。換言すると、閉鎖キャビティ208は、前側光学面302と後側光学面402との間に位置している。閉鎖キャビティ208は、前側光学部材303と後側光学部材403との間に位置している。さらに、閉鎖キャビティ208は、後側部材400の前側光学面と前側部材300の後側光学面との間に位置している。いくつかの変形例では、前側光学面302及び後側光学面402は、遠近調節をしていない状態と遠近調節をしている状態の両方において、互いから離間している。閉鎖キャビティ208内の液体又はゲル材料は、閉鎖キャビティ208及び前側光学面302の形状及び/又は曲率が遠近調節中に変化するにつれて、閉鎖キャビティ208の中央領域及び外周領域に近づく方向又は離れる方向に移動し得る。いくつかの実施形態では、液体又はゲル材料は、前側部材300に対する作用(例えば、光学面302の屈曲)又は後側部材400に対する作用(光軸OAに沿った後面402の位置の移動)の結果として変位する。
【0046】
前側部材300及び後側部材400は、図6及び図7に示すように、外周部206において互いに結合されている。前側部材300は、外周部206の一部を形成している第1の外周部306(例えば、前側外周部)を有している。後側部材400は、外周部206の一部を形成している第2の外周部406(例えば、後側外周部)を有している。換言すると、IOL部品200の外周部206は、第1の外周部306及び第2の外周部406からなる。
【0047】
図7に示すように、前側光学面302は、外周部206及び第1の外周部306に接続し得る。前側光学面302は、外周部206に直接接続し得るため、外周部206に加えられた力が前側光学面302に伝わり、その形状及び/又は曲率が変化しる。後側光学面402は、後側接続部404を介して外周部206及び第2の外周部406に接続し得る。後側接続部404は、後側部材400のレンズ本体403が前側部材300のキャビティ307(例えば、窪んだ凹部)内に配置されるように、前側光学面302に向かって斜めに延び得る。レンズ本体403は、キャビティ307内に部分的及び/又は完全に配置され得る。後側接続部404は、後側光学部材403の後側光学面402よりも前面405に近い位置で後側光学部材403に接続し得る。いくつかの実施形態では、後側接続部404は、後側光学面402により近い位置か、又は、後側光学部材403の前面405と後側光学面402との間の中間点において、後側光学部材403に接続し得る。
【0048】
前側部材300のキャビティ307は、前側光学部材303の後面305及び内周面309によって境界が定められている。内周面309は、湾曲しており、後方に延びるにつれて光軸OAから外側に広がっていてもよい。内周面309は、後側光学部材403の前側において、前側光学面302が外周部206に接続している箇所に対して径方向外側に離れた位置で、前側光学部材303の後面305に接続していてもよい。IOL部品200が遠近調節していない状態では、内周面309は、後側光学部材403の前面405よりも前方に延びるとともに、後側接続部404が後側光学部材403に接続している箇所及び/又は後側光学部材403の中央平面よりも後方に延びている。いくつかの実施形態において、遠近調節状態では、内周面309は後側光学面402よりも後方に延びる。内周面309は、後方に延びて、後側部材400の第2の傾斜面410と係合するが、これについては詳細を後述する。
【0049】
IOL部品200が組み立てられると、内周面309は、後側接続部404からずれた位置に配置される。内周面309、後側接続部404の前面又は表面407、及び第2の傾斜面410によって、閉鎖キャビティ208の外周領域211が画定されている。外周領域211は、前側光学部材303及び後側光学部材403に対して径方向外側に配置されている。
【0050】
IOL部品200は、いくつかの方法で構成可能である。一実施形態では、外周部206の圧縮により、前側光学面302が屈曲する。このとき、この圧縮によってレンズ本体403が直接的に操作される程度は比較的低いことがある。例えば、レンズ本体403は、外周部206に対してより緩く接続しているため、前側光学面302の前方への屈曲に伴ってレンズ本体403が前方に移動し得る。レンズ本体403は、前側光学面302が弛緩すると後方に移動し得る。いくつかの実施形態では、前側光学面302の屈曲によって引き起こされる閉鎖キャビティ208内の流体の動きによって、レンズ本体403が前方及び後方に移動する(例えば、引っ張られたり、押されたり、又は単に従動する)。別の実施形態では、外周部206の圧縮によって、直接的に、第2の光学面402が前方に移動される。例えば、いくつかの実施形態においては、後側接続部404は、第2の光学面402及び後側光学部材403が前方に移動するように、外周部206に加えられた圧縮力を伝達し得る。逆に、外周部206の圧縮力が取り除かれると、第2の光学面402及び後側光学部材403は、後方に戻る。
【0051】
IOL部品200は、結合物質204を受容可能なチャネル408を有している。チャネル408は、IOL部品200の外周部206に形成されている。図7に示すように、一実施形態においては、チャネル408は後側部材400の第2の外周部406に形成される。具体的には、チャネル408は、後側部材400の第2の外周部406の前面に形成される。いくつかの変形例では、チャネル408は、前側部材300の第1の外周部306に形成される。具体的には、チャネル408は、前側部材300の第1の外周部306の後面に形成され得る。チャネル408は、後側部材400の第2の外周部406の環状の凹部であってもよい。チャネル408は、前側部材300の第1の外周部306の環状の凹部であってもよい。チャネル408は、後側部材400の第2の外周部406及び前側部材300の第1の外周部306に形成された環状の凹部であってもよい。チャネル408の位置によって、可視色構造(視認可能な結合物質204等)の位置が決定され得、これによって、IOL部品200の向きを確認できる。例えば、図7に示すように、チャネル408は、IOL部品200を横から見たときに、視認可能な結合物質204が後側部材400(後側部401)の後面により近くなるように、第2の外周部406に配置される。結合物質204は、結合機能と、IOL部品200の向きの可視化機能とを組み合わせて有しているが、変形例においては、これらの機能は、別々に設けられてもよい。例えば、チャネル408は、可視色を有するように改変された壁部を備え、結合物質204は略透明に構成してもよい。
【0052】
図7に示すように、チャネル408の断面は台形である。いくつかの変形例では、チャネル408の断面は、多角形、丸みを帯びた形状、湾曲状、不規則な形状及び/又は他の形状を有している。チャネル408は、側面を3つ有し、チャネル408への結合物質204の注入又は流入を可能にする開放側を有してもよい。チャネル408は、互いに対して角度をなす2つの面と、これらの間を延びる第3の面を有してもよい。2つの面の角度は、例えば20度未満、20~30度、30~40度、40~50度、50~60度、60~70度、70~80度、80~90度、90~100度、100~110度、110~120度、120~130度、130~140度、140~150度、150~160度又は160度を超える角度であり得る。前側部材300が後側部材400に接合した状態では、チャネル408は、前側部材300の第1の外周部306の後面(例えば、蓋部315)によって密閉され得、その結果、結合物質204がチャネル408から出たり、閉鎖キャビティ208に入ったりすることが阻止され得る。
【0053】
後側部材400のアーム412は、光軸OAに対して角度をなして後側部401から離れるように前方に延びている。光軸OAとアーム412との間の角度は、例えば、10度未満、10~20度、20~30度、30~40度、40~50度、50~60度、60~70度又は70度を超える角度であり得る。アーム412は、チャネル408の一部を画定している。具体的には、アーム412は、チャネル408の外面を画定し得る。図7に示すように、アーム412は、アーム412が後側部400から離れて延びるにつれて厚みが小さくなり、先端で終端している。いくつかの変形例では、アーム412は均一な厚みを有している。
【0054】
アーム412の外面は、IOL部品200がベース部材500に配置されたときに、後側部材400のアーム412がベース部材500と接触しないように、光軸OAに向かって後方に角度を有していてもよい。ベース部材500と接触していないことによって、後側部材400を介して直接加えられる荷重が減少する。毛様体の圧縮によって加えられた荷重は、外周面210に伝達されてから、前側光学面302に伝達される。この構成では、上記のように伝達された荷重を増強又は集中させて、表面302を屈曲させる。
【0055】
図7-1に示すように、前側部材300が後側部材400に接合するときに、アーム412は、溝314(例えば、環状溝、凹部)内に延びてもよい。溝314は、前側部材300に設けられている。具体的には、溝314は、前側部材300の第1の外周部306の後面に設けられている。図7-1に示す溝314は角度の付いた断面を有しているが、溝314は、多角形、湾曲状(図7)、不規則形状等の他の断面形状を有していてもよい。溝314と外周面210との間には、これらによってリップ部308(例えば、周方向リップ部)が画定され得る。リップ部308は、前側部材300から離れるように後方に延びている。リップ部308は、外周面210の延長部であり得る。アーム412は、アーム412が外周面210を越えて延びないように、リップ部308によって係止され得る。
【0056】
いくつかの変形例では、図7-2又は図7-3に示すように、溝314及び/又は周方向リップ部308が存在しない。代わりに、アーム412は、前側部材400の外周部306の実質的に平坦な後面と係合する。結合物質204はアーム412によって留められ得るが、余分な結合物質204が押し出された場合は後処理で除去し、外周面210及びIOL部品200のバリを最小限にするか、実質的にバリが残らないようにする。その結果、外周面210を滑らかな円柱状に形成できる。図7-3に示すように、アーム412の先端は、前側部材300の後面317がアーム412と外周面210との間を延びるように、外周面210から離間して又は間隔を空けて配置され、例えば、外周面210の内側(径方向内側等)に位置させてもよい。この場合、チャネル408から押し出された余分の結合物質204が、アーム412の後面317及び/又は外面413に流れることができるという利点がある。結合物質204の余剰分が後面317によって受容され得るため、余剰分が外周面210まで延びることがない。この構成によって、IOL部品200における外周面210のバリを抑制又は防止できる。余剰分の一部又は全部が後面317に残った状態で除去されなくても、外周面210には実質的にバリが形成されないようにできる。いくつかの例では、余剰分は後面317から除去される。外周面210上に流れる可能性のある結合物質204は、上記のように後処理で除去してもよい。外周面210上に結合物質204が存在していた場合、剛性が増加し、かつ、外周面210が不均一になるため、IOL部品200の遠近調節の応答性が損なわれるおそれがある。したがって、外周面210に結合物質204が存在しない又は実質的に存在しない状態に保つことにより、IOL部品200の適切な遠近調節を促進できる。さらに、アーム412の先端は、外周面210よりも内側に位置しているか、外面に沿って内側に延びているため、外周面210に加えられた圧縮力が前側光学面302に伝わり、後側光学面402に伝わる圧縮力を小さくできるという利点を有している。
【0057】
図7に示すように、IOL部品200は、前側部材300が後側部材400と係合した状態で、外周部206において第1の外周部306と第2の外周部406との間に位置する傾斜状接合部212を有し得る。傾斜状接合部212は、第1の傾斜面310(例えば、前側傾斜面)及び第2の傾斜面410(例えば、後側傾斜面)を有してもよく、これらの面は相補的であり、前側部材300及び後側部材400が接合及び/又は連結したときに同一平面上に位置する。傾斜状接合部212は、チャネル408と閉鎖キャビティ208との間に位置してもよく、結合物質204が閉鎖キャビティ208へ移動することを防止し、光軸に沿った視界の汚濁を抑制できる。第1の傾斜面310及び第2の傾斜面410は、光軸OAに対して同等の又は等しい角度をなし得る。第2の傾斜面410は、チャネル408の最も内側の表面に対して角度をなして設けられてもよく、この角度は、60度未満、60~70度、70~80度、80~90度、90~100度、100~110度、110~120度又は120度を超える角度であり得る。第1の傾斜面310は、第2の傾斜面410の一部に接してもよく、例えば、第2の傾斜面410の半分未満、半分又は半分より大きい部分と接合してもよい。
【0058】
前述した内周面309は、後方に延びて第2の傾斜面410と係合する。第2の傾斜面410は後側接続部404に接続しており、この接続箇所は、内周面309が第2の傾斜面410と係合する箇所の後方及び/又は径方向内側に位置している。後側接続部404及び第2の傾斜面410は、後側光学面402の後側又は後方の位置において接続していてもよい。第2の傾斜面410及び後側接続部404は、互いに対して、50度未満、50~60度、60~70度、70~80度、80~90度、90~100度、100~110度、110~120度、120~130度又は130度を超える角度をなして設けられ得る。角部415は、後側接続部404と第2の傾斜面410との間の内側移行部を画定し得る。曲線部413は、後側接続部404と第2の傾斜面410との間の外側移行部を画定し得る。
【0059】
傾斜状接合部212は、凹部311(例えば、湾曲した凹部、溝)を含んでいてもよい。前側部300の第1の傾斜面310は、凹部311から離れる方向に延びていてもよい。図7に示す凹部311は湾曲した断面形状を有しているが、いくつかの変形例では、凹部311は、他の形状の断面(例えば、角度を付けられた形状)を有していてもよい。凹部311は、光軸OAを周方向に取り囲む環状の凹部であってもよい。後側部400の第2の傾斜面410は、頂部411(例えば、曲部、頂点、角頂)まで延びていてもよい。図7に示す頂部411は湾曲した断面形状を有しているが、いくつかの変形例では、頂部411の断面は他の形状を有していてもよい。頂部411は、第2の傾斜面410とチャネル408の最も内側の表面との間に設けられてもよい。頂部411及び凹部311は相補的であり、前側部材300と後側部材400とが接合しているときに互いに係合する。これによって、結合物質204が閉鎖キャビティ208へ移動することを防止できる。頂部411と凹部311は、蓋部315及びチャネル408よりも前方の位置で互いに接合していてもよい。IOL部品200が組み立てられると、第1の傾斜面310は、蓋部315及びチャネル408(例えば、チャネル408の最も前側の部分)よりも前方に延びる。IOL部品200が組み立てられると、第1の傾斜面310は、チャネル408(例えば、チャネル408の最も後側の部分)よりも後方に延びる。チャネル408は、結合物質が閉鎖キャビティ208に入ることを防ぐために、蓋部315(例えば、前側部材300の後面)によって閉じられていてもよい。IOL部品200が組み立てられると、蓋部315は、凹部311及び頂部411よりも後方に位置していてもよい。蓋部315は、後側光学部材403の外周側に配置されていてもよい。蓋部315は、後側光学部材403の前面405よりも後方に位置し、後側光学面402よりも前方に位置していてもよい。蓋部315は、凹部311、頂部411、第1の傾斜面310及び第2の傾斜面410の径方向外側に位置していてもよい。
【0060】
III.眼内レンズ部品の作製
IOL部品200は、以下に説明するように、前側部材300及び後側部材400の形成及び組み立てを行い、次いで、閉鎖キャビティ208を充填することによって作製できる。
【0061】
A.前側部及び後側部の形成と連結
図7A及び図7BはIOL部品200の分解図であり、互いに接続される前の前側部材300及び後側部材400を示している。前側部材300及び後側部材400は、別々に形成されてから、互いに結合されてIOL部品200の筐体を形成し得る。前側部材300及び後側部材400は、材料を外殻部(例えば、型)内に流すことによって形成できる。具体的には、前側部材300及び後側部材400はそれぞれ、2つの対向する外殻部の間に材料を流すことによって形成される。前側部材300が形成されると、前側部材300の後面に連結された外殻部が取り除かれ、前側部材300が、前側部材300の前面に係合した外殻部に連結された状態で残り得る。同様に、後側部材400が形成されると、後側部材400の前面に連結された外殻部(例えば、型)が取り除かれ、後側部材400が、後側部材400の後面に係合した外殻部に連結された状態で残る。前側部材300又は後側部材400に余分な材料が連結している場合は、前側部材300及び後側部材400がそれぞれの外殻部に連結されている状態で除去され得る。前側部材300又は後側部材400の形成時にこれらの部材300及び400に連結された余分な材料は、前側部材300及び後側部材400を互いに連結してIOL部品200を形成した後に除去してもよい。このプロセスでは、後述するように、余分な結合物質204も除去できる。
【0062】
前側部材300及び後側部材400の形成後、結合物質204を用いて前側部材300が後側部材400に結合される(例えば、継ぎ目に沿って連結、接着又は固定される)。連結するためには、結合物質204が、第2の外周部406の前面又は第1の外周部306の後面の一方又は両方に塗布され得る。いくつかの変形例では、第1の外周部306及び第2の外周部406の一方又は両方に配置及び/又は形成されたチャネル408(例えば、結合チャネル、環状凹部)に、結合物質204が充填されるか又は部分的に充填される。チャネル408は、IOL部品200の向きを確認し、IOL部品200とベース部材500とが適切に結合されていることを確認しやすくするための連続的構造であってもよい。図7Cに示すように、結合物質204は、後側部400の第2の外周部406の前面に形成されたチャネル408に流してもよい。染料及び/又は顔料を結合物質204に添加することによって、結合物質204に、可視色(黄色等)を混ぜることができ、その結果、IOL部品200の向きの確認が可能になるという効果が奏される。いくつかの方法においては、チャネル408の1つ又は複数の壁部が着色されてもよく、結合物質204は透明に構成される。また、チャネル408の1つ又は複数の壁部が第1の色を有するように構成し、結合物質204が第2の色を有するように構成してもよい。
【0063】
図7Dに示すように、第1の部材300(例えば、後側部材)及び第2の部材400(例えば、後側部材)は、互いに結合(例えば、接合、接着、連結)されて、結合物質204が塗布された後にIOL部品200の筐体を形成する。好適な変形例では、前側部材300の前面と係合している外殻部と、後側部材400の後面と係合している外殻部とが互いに係合(例えば、嵌合、連結、接合)して第1の部材300と第2の部材400とが互いに結合される。これによって、第1の部材300と第2の部材400とを正しく位置合わせしやすくなり、また、接合状態も向上する。いくつかの変形例では、接合時には外殻部の外周部が係合し、前側部材300及び後側部材400が外殻部の中心部分を占める。
【0064】
チャネル408は、閉鎖キャビティ208への結合物質204の流れを遮断するために密閉されている。より詳細には、チャネル408を密閉させることには、第2の外周部406の第2の傾斜面410と第1の外周部306の第1の傾斜面310との間に形成される傾斜状接合部212を係合させることが含まれ得る。第1の外周部306の後面の蓋部315は、チャネル408の開放側を覆い、チャネル308をさらに密閉している。いくつかの変形例では、チャネル408と閉鎖キャビティ208との間において、頂部411と凹部311とが係合することによって、結合物質204が閉鎖キャビティ208に流入することがさらに防止されている。頂部411及び凹部311は、チャネル306を覆う第1の外周部306の後面の蓋部315よりも前方の位置で係合していてもよい。
【0065】
凹部311及び頂部411の組み合わせと、傾斜状接合部212とによって、閉鎖キャビティ208への結合物質204の移動又は流動に対する複数の障壁が形成されている。IOL部品200の筐体は、後側部材400が前側部材300の下に位置した状態で、前側部材300を後側部材400に連結することによって形成され得る。したがって、結合物質204が閉鎖キャビティ208に向かって流れようとした場合、頂部411に向かって上向きに流動する必要がある。このような流れは、頂部411を覆う凹部311によって阻止される。さらに、接合部212においては、傾斜面310と傾斜面410とが互いに直接的に接触している。このような直接的な接触によって、凹部311によって覆われた頂部411から閉鎖キャビティ208に向かう流路が低減、最小化又は排除されている。
【0066】
閉鎖キャビティ208は、前側部材300の第1の外周部306と後側部材400の第2の外周部406との間を封止することによって、前側光学面302と後側光学面402との間に形成される。閉鎖キャビティ208は、前側部材300の後面305及び後側部材400の前面405によって境界が定められ得る。後面305及び第1の外周部306の傾斜した内周面309によって窪んだ凹部307が形成されており、静止状態においては、後側部材400の一部、例えば、後側部材400の前面405、場合によっては後側部材400の両凸光学部品の大部分が、この凹部307内に配置され得る。閉鎖キャビティ208は、後側接続部404の前面407と、後側部材400の前面405とによって境界が定められ得る。後側接続部404の前面407及び後側部材400の前面405は凸状の突出部を形成してもよく、この凸状突出部の少なくとも一部、場合によっては大部分が、前側部材300の窪んだ凹部307に受容される。結合物質204が、第1の外周部306及び第2の外周部406を互いに連結することによって、傾斜状接合部212と協働して封止を達成し、この封止によって、閉鎖キャビティ208(前述)に配置される流体及び/又はゲルがIOL部品200から流れ出ることが防止される。また、結合物質204が視認できる特徴を有しているため、閉鎖キャビティ内に結合物質204が実質的に又は全く存在していないことを視覚的に確認できる。
【0067】
前側部材300及び第2の部材400の形成に余分な結合物質204及び/又は材料が使用された場合、形成されたIOL部品200の外周部206上にバリが形成される可能性がある。外周部206からバリを除去(例えば、切断、研磨、平滑化)することによって、外周面210を滑らかにすることができる。例えばバリのない滑らかな外周面210を形成することによって、比較的小さい場合もある眼球の力に対するIOL部品200の応答性を向上又は確保することができる。例えば、バリのない滑らかな外周面210を形成することによって、眼球の力によってもたらされる前側光学面302の変形に対する抵抗を低減、最小化又は排除できる。
【0068】
B.閉鎖キャビティを充填及び閉鎖する方法
図8に、後側部材400に前側部材300を連結した状態で組み立てられたIOL部品200の密閉されたチャンバを示す。閉鎖キャビティ208は、前側光学面302、後側光学面402及び外周部206の間に設けられている。換言すると、前側部材300の第1の外周部306を後側部材400の第2の外周部406に連結することによって形成される外周部206によって、液体材料(例えば、光学流体、流体、レンズオイル)又はゲルを収容可能な空の閉鎖キャビティ208が形成される。
【0069】
密閉されたチャンバ208には、例えば、閉鎖キャビティ208に向かって延びるポート220を介して、外周部206の外周面210から到達できる。他の実施形態では、ポート220が、IOL部品200の別の光学外周構造に設けられてもよい。ポート220は、外周面210に設けられた第1の端部222(例えば、開口、外側端部)と、外周部206において第1の端部222と閉鎖キャビティ208との間に設けられた第2の端部224(例えば、壁部、固体壁部)とを有している。ポート220の第2の端部224と閉鎖キャビティ208との間には、固体材料が連続的に広がる区域が延在し得る。ポート220の端部は、任意の形状を有することができ、例えば、円形である。いくつかの変形例では、他の形状の端部が用いられてもよい。ポート220は、第1の端部222から第2の端部224まで均一的な寸法(例えば、直径)を有していてもよいが、いくつかの変形例では、ポート220の寸法が変化していてもよい(例えば、直径が第1の端部222から第2の端部224に向かって減少している)。いくつかの例では、第2の端部224と閉鎖キャビティ208との間にアクセス経路が設けられ、例えば、自己封止構造や、インジェクタを封止可能な構造等が設けられる。
【0070】
1つの方法においては、管状部材700がポート220に挿入され、ポート220を貫通して前進して閉鎖キャビティ208内に延び得る。管状部材700をポート220に貫通させて前進させることには、閉鎖キャビティ208に到達するために、第2の端部224を突き抜けることが含まれ得る。図8に示すように、静止状態においては、IOL部品200の両凸光学部品403はポート220と整列されている。これは、構成をコンパクトにするために両凸光学部品が窪んだ凹部307に受容されている構造に起因している。IOL部品200が移植される際には、眼の光軸に沿った構成がコンパクトであることが望ましいが、一方、管状部材700の鋭い端部を両凸光学部品403の前面405に接触させないことが好ましい。このため、図8Aに示すように、外周面210に圧縮力を加えて第1の光学面302及び/又は第2の光学面402(例えば、後側部材400の前面405)をさらに離間及び/又は移動させ、前側部材300の後面305及び/又は後側部材400の前面405が、管状部材700の挿入経路704上に位置していないようにする。その結果、IOL部品200の品質を低下させるおそれのある孔や擦り傷を第1の光学面302、前側部材300の後面305、後側部材400の前面405及び/又は第2の光学面402に作ることなく管状部材700を閉鎖キャビティ208に挿入することができる。いくつかの変形例では、閉鎖キャビティ208、第1の光学面302、前側部材300の後面305、後側部材400の前面405及び/又は第2の光学面402は、圧縮力が加えられていない場合でも、これらの表面が管状部材700の挿入経路704には位置しないように寸法及び形状が構成される。
【0071】
液体材料230(例えば、光学流体、流体、レンズオイル)又はゲルは、管状部材700を介して閉鎖キャビティ208内に注入され、前側光学面302と後側光学面402との間、又は、前側部材300の後面305と後側部材400の前面405との間において液体材料230が連続的に広がる範囲が設けられる。図8Aに示すように、管状部材700の先端702は、閉鎖キャビティ208内においてポート200の反対側に配置される。図8B及び図8Cに示すように、先端702は、液体材料230が閉鎖キャビティ208に流入している間に後退される(例えば、ポート220側に移動される)。図8Dに示すように、管状部材700は、ポート220を通って閉鎖キャビティ208から引き出される。いくつかの変形例では、管状部材700は、閉鎖キャビティ208全体が液体材料230で満たされるまで、閉鎖キャビティ208から引き出されない。管状部材700をポート220から後退させた後、プラグ202がポート220に形成及び/又は配置される。いくつかの変形例では、図9に示すように、管状部材700によって外周部206を貫通して形成された導管226は、管状部材700の除去後に封止される。いくつかの変形例では、液体材料230が閉鎖キャビティ208から漏れないように導管226がプラグ202によって封止される。いくつかの例では、導管226自体が閉じることによって封止され、プラグ202は、閉鎖キャビティ208に流入した材料の保持の確実性をさらに向上させる手段として機能する。
【0072】
いくつかの変形例では、管状部材300が挿入される前に、ポート220の第2の端部224と閉鎖キャビティ208との間にチャネルが形成される。予めチャネルを形成しておくことによって、管状部材700(例えば、シリンジ)を閉鎖キャビティ208に到達させる際の抵抗を減らすことができ、また、精度及び制御が向上する。管状部材700は、液体材料(例えば、流体、光学流体、ゲル)が管状部材700を介して閉鎖キャビティ208に流入するように、チャネルを通って閉鎖キャビティ208に挿入され得る。チャネルは、管状部材700が存在しない状態では自ら封止できるように構成されており、その結果、管状部材700が存在しない状態では、液体材料が閉鎖キャビティ208から流出しないようにチャネルが閉じる。前述したように、プラグ202でチャネルを封鎖してもよい。
【0073】
いくつかの変形例では、図8Dに示すように、管状部材700上にマーカー240が配置されており、管状部材700の先端702が、閉鎖キャビティ208内においてポート220の反対側に適切に配置されているため管状部材700の前進を停止すべきタイミングがわかるように構成されている。これによって、ポート220の反対側の外周部206に先端702が突き刺さる前に前進を停止すべき位置がわかるという効果が奏される。いくつかの変形例では、マーカー240は、管状部材700の先端702がポート220から後退されるときに、ポート220に配置され得るプラグである。組み合わされたプラグ/マーカーは、シリンジの管状部材700に予め装着できる。予め装着されたマーカー/プラグの開口は、管状部材700が取り外されると封止し、ポート220を効果的に完全に密閉できる。
【0074】
IV.眼内装置の組み立て
図10Aに、ベース部材500に組み付けられたIOL部品200を示す。本明細書に記載されているように、IOL部品200は、患者の眼の内側又は外側でベース部材500に組み付けることができる。組み付けられた状態では、IOL部品200の外周部が保持機能部502の後ろに配置されることによって、ベース部材500内にIOL部品200が保持され得る。保持をさらに確実にするために、遠近調節IOLとして形成可能な組立体は、接着を強化するように構成された1つ又は複数の表面を有していてもよい。例えば、IOL部品200は、ベース部材500の表面に接着する1つ又は複数の表面を有していてもよい。例えば、第1の外周部306の前面、第2の外周部406の後面及び/又はIOL部品200の外周面210は、ベース部材500の表面に接触すると当該表面に接着する接着性(例えば、粘着性)を有していてもよい。いくつかの実施形態では、ベース部材500は、IOL部品200の表面に接着する1つ又は複数の表面を有していてもよい。例えば、保持機能部502の後面503、径方向内向きの面507及び/又はベース部材500の台部505は、IOL部品200の表面に接触すると当該表面に接着する接着性(例えば、粘着性)を有していてもよい。いくつかの例では、ベース部材500及びIOL部品200の上記又は他の面が、本明細書に記載されるような接着性を有していてもよい。
【0075】
図に示すように、IOL部品200がベース部材500に組み付けられると、第1の外周部306は保持機能部502の後面503と接合し、径方向内向きの面507は外周面210と接合し、及び/又は、台部505は第2の外周部406の後面と接合する。上記の面のすべて又は一部が、ベース部材500内のIOL部品200の保持を向上させる接着性を有していてもよい。
【0076】
一実施形態では、第1の外周部306の前面、第2の外周部406の後面及び/又はIOL部品200の外周面210は、その全体にわたって接着性を有していてもよい。一変形例では、1つ又は複数の上記面の接着性は、部品200の周囲において間隔を空けて施されてもよい。接着性が間隔を空けて施される場合、表面において接着領域同士の間の区域は、接着性が少ないか、非接着性となり得る。接着性の高い又は比較的高い面同士の間に、非接着面又は低接着面を設けることによって、IOL部品200は、ベース部材500内で予め定められた位置まで回転可能に構成できる。この場合、IOL部品200は、ベース部材500内に配置されてから、IOL部品200の接着性の比較的高い面が保持機能部502の位置に到達するまで回転することができる。これにより、IOL部品200とベース部材500との間の予め定められた回転位置を容易に達成できる。この構成は、乱視の矯正や、回転による屈折力の変化をもたらすために役に立ち得る。
【0077】
ベース部材500の接合面の接着性をより高くし、IOL部品の表面の接着性をより低くすることによって、これらの部品を移植する特定の方法において利点がある。具体的には、手術の侵襲性を最小限に抑えることが望まれており、各部品の移植にはインジェクタが使用される場合がある。この場合、上記の保持機能部502の表面、径方向内向きの面507及び台部505は、インジェクタの管腔から離れて中心位置に折り畳まれ得る。任意で接着性を高くしてもよいと説明されているIOL部品200の表面は、インジェクタの管腔の壁に露出される。したがって、IOL部品200に接着性の高い表面を設けた場合、より大きな射出力が必要となる可能性がある。このように、いくつかの実施形態では、IOL部品200の外面上の摩擦を小さく維持することが有益であり得る。
【0078】
IOL部品200及び/又はベース部材500の接合面の表面積は、IOL部品200の表面とベース部材500の表面との間の接着を向上させるために増加させてもよい。具体的には、第1の外周部306の前面、第2の外周部406の後面及び/又はIOL部品200の外周面210の表面積を増加させて、接着性の向上をもたらすことができる。同様に、保持機能部502の後面503、径方向内向きの面507及び/又はベース部材500の台部505の表面積を増加させることによって、接着性の向上をもたらすことができる。
【0079】
IOL部品200及び/又はベース部材500の表面の表面積は、粗面化によって増加させることもできる。粗面化は、IOL部品200及び/又はベース部材500の成形時に実行できる。粗面化は、IOL部品200及び/又はベース部材500の成形後に実行してもよい。いくつかの実施形態では、IOL部品200及び/又はベース部材500の表面は、所望のレベルの粗さ(例えば、表面積)を有するように成形後に処理される。いくつかの実施形態では、IOL部品200及び/又はベース部材500の表面を形成する型の表面が、所望のレベルの粗さ(例えば、表面積)を有する表面を形成するように粗面化されている。型の表面は、放電加工(EDM)、機械加工(切削加工及び旋盤加工)、サンドブラスト、プレス加工及び/又はその他の好適な手法によって粗面化できる。
【0080】
図10Bに示すように、保持を向上させるために、組み立て完了状態において、1つ又は複数の保持機能部502(例えば、レンズ保持部材、タブ、突起、保持部等)によるIOL部品200に対する垂直力(矢印Nで示す)を発生又は増強させてもよい。例えば、1つ又は複数の保持機能部502は弾性を有し、組み立て完了前の状態においては、その径方向内側部分又は端部が後方に付勢され、組み立て完了時にIOL部品200を受容する受容スペース511内に延在し得る。受容スペース511は、保持機能部502(例えば、保持機能部502の後面503)と台部505(例えば、台部505の前面)との間に位置し得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の保持機能部502は、持ち上げ力L等の前方への力を受けていない状態では、傾斜又は湾曲していること等によって後方に位置し得るように構成される。
【0081】
組み立て時には、1つ又は複数の保持機能部502は、矢印Lの持ち上げ力に示すように、前方に持ち上げられ(例えば、反らされ、又は回転され)、新たな位置502’に配置され得る。これによって、IOL部品200を1つ又は複数の保持機能部502の後方の受容スペース511に容易に配置できる。持ち上げ力Lが取り除かれると、1つ又は複数の保持機能部502によって、垂直力NをIOL部品200に加えることができる。具体的には、1つ又は複数の保持機能部によって、第1の外周部306の前面に垂直力Nを加えることができる。垂直力Nは第2の外周部406の後面にも加わり得る。この垂直力Nによって、IOL部品200とベース部材500との間の摩擦が大きくなるため、保持が向上する。いくつかの実施形態では、垂直力Nが作用することによって、IOL部品202の遠近調節の応答性に悪影響を及ぼすことなく、1つ又は複数の保持部材502と1つ又は複数の台部505との間でIOL部品200の外周部206が圧縮される(例えば、締付け又は挟持される)。
【0082】
後方に付勢された弾力性のある保持機能部502を設けることによって、IOL部品200及びベース部材500を含むIOLが予め定められた回転位置に組み立てられていることを容易に確認できる。例えば、IOL部品200及びベース部材500を含むIOLが乱視を矯正するように構成される場合、IOL部品200は、予め定められた回転位置に配置する必要がある。IOL部品200は、その一部が弾性保持機能部502の位置に到達したときに回転を停止するように構成してもよい。例えば、図10C及び図10Dに示すように、IOL部品200の前側部材300の前面に、径方向に配向された切り欠き部300Nを設けることができる。切り欠き部300Nは、外周部206(例えば、第1の外周部306’)の前面に設けてもよい。切り欠き部300Nは、弾性保持機能部502の周方向の幅より広くてもよい。このため、IOL部品200が回転されて弾性保持機能部502と位置合わせされると、保持機能部502が切り欠き部300Nの中に入り得る。弾性保持機能部502は切り欠き部300Nの壁部によって拘束され得、切り欠き部300N内において最小限の回転以上の回転が発生しないように構成されている。
【0083】
図10Eに示すように、保持機能部(例えば、タブ、突起)502”は、IOL部品200を受容スペース511に挿入できるように曲げられ(例えば、反らされ)、受容スペース511内にIOL部品200が配置された状態でも、前方に曲げられた(例えば、反らされた)状態に留まり得る。IOL部品200の厚みは、受容スペース511の厚みよりも大きくしてもよく、その結果、IOL部品200の前面が保持機能部502”を押すため、受容スペース511内にIOL部品200が配置された状態において、保持機能部502”が前方に曲げられた(例えば、反らされた)位置に保持される。より具体的には、IOL部品200の外周部206の前後方向の厚み207が、受容スペース511の前後方向の厚み513よりも大きいため、受容スペース511内にIOL部品200が配置された状態では、保持機能部502”は前方に反っている。前後方向の厚み207は、外周部206の前面と後面との間の距離であり得る。前後方向の厚み511は、保持機能部502”の後面503と台部505との間の距離であり得る。いくつかの実施形態では、IOL部品200の前後方向の厚み207がより大きく形成されていることによって、外周面210と径方向内向きの面507との間の接触が抑制され得る。いくつかの実施形態では、IOL部品200の前後方向の厚み207がより大きく形成されていても、外周面210と径方向内向きの面507との間の接触が抑制されない。前述したように、保持機能部502”は組み立て工程において前方に反らされ、これによって、1つ又は複数の保持機能部502”の後方の受容スペース511に対するIOL部品200の配置が容易になる。組み立て完了後には、IOL部品200が1つ又は複数の保持機能部502”を押すため、保持機能部502”が前方に反らされた位置に留まり得る。
【0084】
用語
本明細書において用いられる「近位」及び「遠位」という相対的な用語は、医療従事者の視点から定義される。したがって、近位は医師の方向を指し、遠位は外科医が手術しているときの目の方向を指す。
【0085】
説明のために本明細書で使用される「横方向」という用語は、特に明記しない限り、アセンブリの長手方向軸線に概して垂直な方向として定義される。
「できる(得る)」、「可能である」、「してもよい」又は「あってもよい」等の条件文は、特に明記しない限り、又は使用される文脈内で他に理解されない限り、概して、特定の実施形態が特定の特徴、要素及び/又はステップを含み、他の実施形態はこれらを含まないと解釈されることを意図している。したがって、そのような条件文は、概して、特徴、要素及び/又はステップが1つ又は複数の実施形態に何らかの形で必要とされることを意味することを意図していない。
【0086】
「からなる」、「含む」、「有している」等の用語は同義であり、包括的かつ非限定的に用いられ、追加の要素、特徴、行為、操作等を除外しない。さらに、「又は」という用語は包括的(非排他的)な意味で用いられ、例えば、要素の列挙に用いられた場合、列挙された要素のうちの1つ、複数又はすべてを意味する。
【0087】
本明細書において、「略」、「約」、「概して」及び「実質的に」という用語は、記載された量に近く、所望の機能を実行するか、所望の結果を達成する量を指す。例えば、「略」、「約」、「概して」及び「実質的に」という用語は、文脈に応じて、記載された量の10%未満の量を指す場合がある。
【0088】
本明細書に開示する範囲は、重複、下位範囲及びこれらの組み合わせを包含する。「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」、「間」等の表現には、列挙された数値が含まれる。「約」又は「およそ」等の表現の後に続く数字には、列挙された数字が含まれる。例えば、「約4」は「4」を含む。
【0089】
本明細書に開示するいかなる方法も、記載された順序で実施する必要はない。本明細書に開示の方法は、医療従事者が行う特定の行為を含むが、明示的又は暗示的にそれらの行為の第三者による指示も含み得る。例えば、「ロック要素を遠位側に移動させる」等の行為には、「ロック要素の遠位側への移動を指示する」が含まれる。
【0090】
特定の実施形態及び実施例が本明細書に記載されているが、本開示に記載されるアセンブリの多くの態様を別の状態で組み合わせ及び/又は改変することによって、さらに別の実施形態や実施例を構成できることが当業者によって理解される。このような修正及び変形は、本開示の範囲内において本明細書に含まれることが意図されている。様々な設計及びアプローチが実施可能である。本明細書に開示する特徴、構造又はステップは、必須又は不可欠ではない。
【0091】
添付の図面を参照していくつかの実施形態について説明したが、図面は寸法比率が等しいものではない。距離、角度等は単なる例示であり、図示された装置の実際の寸法及び配置と正確に対応していない場合もある。部品は、追加、削除及び/又は移動可能である。さらに、様々な実施形態に関連する任意の特定の特徴、態様、方法、性質、特性、品質、属性、要素等の本明細書の開示は、本明細書に記載される他のすべての実施形態で使用できる。また、本明細書に記載の任意の方法は、記載されたステップの実行に適した任意の装置を使用して実施できる。
【0092】
開示を目的として、特定の態様、効果及び新規の特徴が本明細書に記載されている。特定の実施形態で、すべての効果が必ずしも達成されるわけではないことが理解される。つまり、当業者であれば、本開示の具体化及び実施によって、記載された1つの効果又は複数の効果が達成されるが、必ずしも、記載されている他の効果が達成されるわけではないことを理解できる。
【0093】
さらに、本明細書には例示的な実施形態が記載されているが、本開示に基づいて、同等の要素、修正、省略、組み合わせ(例えば、様々な実施形態における態様の組み合わせ)、適合及び/又は変更を有している任意の又はすべての実施形態の範囲が当業者によって理解される。特許請求の範囲の限定は、特許請求の範囲で用いられている文言に基づいて広く解釈され、本明細書又は本出願の審査において説明された例に限定されるものではなく、これらの例は、非排他的であると解釈されるべきである。さらに、開示されたプロセス及び方法の動作は、動作の順序変更及び/又は追加動作の挿入及び/又は動作の削除を含め、任意の方法で変更可能である。したがって、明細書及び実施例は例示としてのみ考慮され、真の範囲及び趣旨は、特許請求の範囲及びその均等例の全範囲によって示されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
【国際調査報告】