(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(54)【発明の名称】フィブリノゲン製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/75 20060101AFI20230206BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20230206BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230206BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230206BHJP
C07K 1/18 20060101ALN20230206BHJP
【FI】
C07K14/75
A61K38/36
A61K9/19
A61P7/04
C07K1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535244
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2020085094
(87)【国際公開番号】W WO2021116110
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595107379
【氏名又は名称】ビオテスト・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Biotest AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】オット,ヴェラ
(72)【発明者】
【氏名】メラー,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】マネーク,オリヴァー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076CC14
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA06
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA44
4C084DC11
4C084NA05
4C084NA20
4C084ZA53
4H045AA10
4H045AA20
4H045CA40
4H045DA65
4H045EA20
4H045GA23
(57)【要約】
本発明は、血漿由来フィブリノゲン含有ソースからフィブリノゲン製剤を製造することに関する。この方法は、血漿フィブリノゲンを含む液相を提供するステップ;前記液相を陽イオン交換クロマトグラフィー材料と、フィブリノゲンの結合をもたらす条件下に接触させるステップ;ここで、該液相は、フィブリノゲンのpIに近いまたはそれよりも高いpH5.6~pH7.0の範囲のpHを有する;場合により、未結合化合物を陽イオン交換クロマトグラフィー材料から洗い流すステップ;フィブリノゲンを陽イオン交換材料から溶離させるステップ、を含む。本発明の方法は、フォン・ヴィルブランド因子の低減のためにも適当である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血漿由来フィブリノゲン含有ソースからフィブリノゲン製剤を製造する、以下のステップを含む方法:
a)血漿フィブリノゲンを含む液相を提供するステップ;
b)前記液相を陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)材料と、フィブリノゲンの結合をもたらす条件下に接触させるステップ;ここで、該液相は、5.6~7.0の範囲のpHを有する;
c)場合により、未結合化合物を陽イオン交換クロマトグラフィー材料から洗い流すステップ;
d)溶離バッファーを用いてフィブリノゲンを陽イオン交換材料から溶離させるステップ。
【請求項2】
該プロセスが、前記ソースがフォン・ヴィルブランド因子(vWF)を含む場合にフォン・ヴィルブランド因子の量を低減するために用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該プロセスが、プリオンの量を低減するために用いられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)の液相のpHが6.3~6.9、より好ましくはpH6.4~6.8の範囲である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ステップb)の液相が、5~15mS/cm、好ましくは7~11mS/cm、より好ましくは8~10mS/cmのイオン強度を有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
陽イオン交換クロマトグラフィー材料が、強陽イオン交換クロマトグラフィー材料である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
陽イオン交換クロマトグラフィー材料がマクロポーラス材料である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
陽イオン交換クロマトグラフィー材料が、スルホネート官能基、好ましくはスルホプロピル基を含む材料である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
陽イオン交換クロマトグラフィー材料が、スルホネート官能基がポリヒドロキシル表面を介してスルホプロピルとして結合している架橋ポリスチレンジビニルベンゼンからなる樹脂骨格を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
洗い流しが、5.6~7.0の範囲のpH、および5~15mS/cmのイオン強度を有する洗浄バッファーを用いて行われる、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
溶離が、フィブリノゲンの結合をもたらす条件よりも少なくとも0.2単位高いpHを有する溶離バッファーを用いて行われる、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
溶離が、フィブリノゲンの結合をもたらす条件よりも少なくとも2mS/cm高いイオン強度を有する溶離バッファーを用いて行われる、請求項1~11のいずれか、特に請求項11に記載の方法。
【請求項13】
溶離バッファーが1つ以上の医薬製剤化合物を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
医薬製剤化合物が、少なくとも1つのアミノ酸、好ましくはアルギニンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該方法が、フィブリノゲンを医薬組成物に製剤化するステップe)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該製造方法が、下記ステップの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法:
出発材料としてのヒト血漿のクリオプレシピテートの使用;
Al(OH)
3吸着;
S/D処理;
陰イオン交換クロマトグラフィー、およびフロースルーの使用;
グリシン沈殿;
UV-C処理;
限外濾過;
凍結乾燥;
乾熱処理。
【請求項17】
請求項16に挙げられるステップが行われ、請求項1~14のいずれかに記載される陽イオン交換クロマトグラフィーステップが、UV-C処理と限外濾過との間に行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の方法、好ましくは請求項17に記載の方法によって得られるフィブリノゲン製剤。
【請求項19】
該フィブリノゲン製剤が、0.5~2.0FXIII:Ag(% of norm)のFXIII濃度、および/または16FXIII:Ac(% of norm)未満のFXIII活性を有する、請求項18に記載のフィブリノゲン製剤。
【請求項20】
該フィブリノゲン製剤が、検出可能な量のDダイマーを示さない、請求項18または19に記載のフィブリノゲン製剤。
【請求項21】
請求項18~20のいずれかに記載のフィブリノゲン製剤から得られる医薬組成物。
【請求項22】
凍結乾燥物である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
止血異常の処置、または出血の予防もしくは治療用である、請求項21または22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血漿由来のフィブリノゲン含有ソースからのフィブリノゲン製剤の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
フィブリノゲンは、血餅の形成に関与する血液中の主要な構造タンパク質である。これは止血異常の処置のために非常に重要である。
【0003】
フィブリノゲンの重要なソースは、血漿、特にヒト血漿からのその単離である。この精製中に、血漿のまたは製造法による他の成分は、特定の純粋な凝固血液プロダクトを得る目的のために除去されなければならない。そのような他の成分は通常、他の血漿タンパク質、特にフォン・ヴィルブランド因子(vWF)である。
【0004】
血漿からのフィブリノゲンの精製は通常、沈殿法とその後のクロマトグラフ法および溶媒/界面活性剤(S/D)のようなウイルス不活化ステップおよび/または濾過のようなウイルス除去ステップの組み合わせによって行われる。したがって、他の血漿タンパク質だけでなく、先のプロセスステップで使用された試薬または添加物も除去することが重要である。
【0005】
WO00/17234A1/EP1115742B1には、トランスジェニック動物の乳から、製剤から乳タンパク質カゼインを除去するために陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)を使用して、組換えフィブリノゲンを精製することが開示されている。
【0006】
WO98/38219A1には、陽イオン交換クロマトグラフィーの負に荷電したゲルマトリックスを使用して、vWF(等電点5.5~6)を精製することが開示されている。vWFは低塩濃度で陽イオン交換体に結合され、5.0~8.5の範囲のpHを有するバッファーで溶出される。
【0007】
WO91/01808A1には、全血、血漿または血清のような水性液体から、LDL、フィブリノゲンおよび/または尿素を選択的に除去することが開示されている。この方法は、グラフトコポリマーを形成するスルホネート基を含むモノマーのポリマー鎖で修飾されたFractogel(登録商標)材料(Merck, Germany)をベースとする吸着材料(テンタクル陽イオン交換材料)を使用する。該陽イオン交換材料の特異的吸着特性は、テンタクル様リガンド構造の存在に依存する。
【0008】
EP2267025A2には、フィブリノゲンの精製にCEXを使用することが記載されている。フィブリノゲンはCEXマトリックスに結合しない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の課題は、フィブリノゲンの容易かつ効率的な精製を、好ましくは性質の改善と共に可能にする、血漿由来フィブリノゲン含有ソースからフィブリノゲン製剤を製造する方法を提供することである。
【0010】
前記課題は、特許請求の範囲の独立請求項に記載される発明によって解決される。該目的は、血漿由来フィブリノゲン含有ソースからフィブリノゲン製剤を製造する、以下のステップを含む方法によって達成される:
a)血漿フィブリノゲンを含む液相を提供するステップ;
b)前記液相を陽イオン交換クロマトグラフィー材料と、フィブリノゲンの結合をもたらす条件下に接触させるステップ;ここで、該液相は、フィブリノゲンのpIに近いまたはそれよりも高いpH5.6~pH7.0の範囲のpHを有する;
c)場合により、未結合化合物を陽イオン交換クロマトグラフィー材料から洗い流すステップ;
d)フィブリノゲンを陽イオン交換材料から溶離させるステップ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の目的は、下記に説明する方法によっても達成される。下記において、方法の個々のステップをより詳細に説明する。ステップは、必ずしも本書に記載する順序で行う必要はない。また、明示的に記載していないさらなるステップが、方法の一部をなしうる。
【0012】
本書において、用語「フィブリノゲン」は、血漿中に存在する血餅形成に関与する主要な構造タンパク質をいい、好ましくは糖タンパク質形態のフィブリノゲン全体をいう。好ましくは、これは血漿フィブリノゲン、すなわち血漿由来のフィブリノゲンをさす。より好ましくは、これはヒト血漿フィブリノゲンである。
【0013】
タンパク質のpIまたは等電点(IEP)は、タンパク質が正味の電荷を持たないpHの値である。pIよりも高いpH値では、タンパク質は正味の負電荷を有し、pIよりも低いpH値では、タンパク質は正味の正電荷を有する。本書において、フィブリノゲンのpIは、例えばWO00/17234A1に記載されるとおりのpH5.5である。いくつかの他の文献によると、フィブリノゲンのpIは、トロンビンによる凝固反応における極性残基の切断に応じて、約pH5.5~6.0の範囲である(Guo et al. nature nanotechnology 2016, 11, 817-824)。
【0014】
本書において「陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)材料」は、負に荷電した基を含む固相である。タンパク質は、樹脂の負に荷電した基とタンパク質の正に荷電した基との相互作用に基づいて分離される。相互作用の強度は、バッファーのイオン強度(すなわち導電率)にも依存する。溶離は通常、バッファーのイオン強度を、陽イオン交換材料の荷電部位をタンパク質と競合するように高めることによってなされる。タンパク質を溶離させるもう1つの方法として、pHを変化させ、それによってタンパク質の電荷を変化させることがある。導電率および/またはpHの変化は、徐々に、または段階的に行いうる。
【0015】
CEX材料の電荷は、固相への1つ以上の荷電リガンドの、例えば共有結合による結合によって提供されうる。本発明において好ましいCEX材料は、強CEX材料である。これは、固相上の負電荷を、広いpH範囲にわたって維持する材料である。これは通常、スルホエチル、スルホプロピル、スルホブチルまたはスルホイソブチル基のようなスルホン酸誘導体を官能基として含む(例えば、スルホネート、S型、またはスルホプロピル基、SP型)。
【0016】
市販の陽イオン交換材料は、カルボキシ-メチル-セルロース、BAKERBOND ABX(商標)、アガロースにスルホプロピル(SP)が固定化されたもの(例えばSP-SEPHAROSE FAST FLOW(商標)、SP-SEPHAROSE FAST FLOW XL(商標)、またはSP-SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE(商標)、GE Healthcare)、CAPTO S(商標)(GE Healthcare)、アガロースにスルホニルが固定化されたもの(例えばS-SEPHAROSE FAST FLOW(商標)、GE Healthcare)、およびSUPER SP(商標)(Tosoh Biosciences)を包含する。本発明において好ましい陽イオン交換材料は、スルホプロピル基で官能化されたポリヒドロキシル化ポリマーでコーティングされた架橋ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)フロースルー粒子(固相)(例えばPOROS(商標)50 HSクロマトグラフィー樹脂、Thermo Fisher Scientific)、またはスルホン酸基を有するメタクリルコポリマー(例えばMacro-Prep(登録商標)High S、Bio-Rad)を包含する。特に好ましいCEX材料は、平均孔サイズが50nm以上、好ましくは100nm以上、例えば平均孔サイズが160nmの孔を有するものである。
【0017】
従来のプロセスによると、当業者はCEX基材を、関心のタンパク質がCEX基材に結合するように、分離を行うための媒体のpHを関心のタンパク質のpIよりも低くするようにして使用する。
【0018】
「固相」は、1つ以上の荷電リガンドを付けることができる、非水性のマトリックスを意味する。固相は、精製カラム(エクスパンデッド・ベッドおよび充填層カラムを包含するが、それに限定されない)、個々の粒子の不連続相、膜、またはフィルター等でありうる。固相を形成する材料の例は、多糖(例えばアガロースおよびセルロース)、および他の機械的に安定なマトリックス、例えばシリカ(例えば制御多孔質ガラス)、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、メタクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、セラミック粒子、ならびに上記の任意のものの誘導体を包含し、好ましくはポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)およびメタクリレートコポリマーである。
【0019】
本書において用語「血漿フィブリノゲンを含む液相」とは、陽イオン交換材料にロードされる組成物をいう。好ましくは、陽イオン交換材料は、精製すべき組成物のローディング前に平衡化バッファーで平衡化される。
【0020】
「バッファー」は、その酸-塩基共役成分の作用によってpH変化に抵抗する溶液である。所望のバッファーpHに応じてさまざまなバッファーを使用することができる。
【0021】
「平衡化バッファー」は、陽イオン交換材料を、フィブリノゲンを含む液相のローディング前に平衡化するために使用されるバッファーである。平衡化バッファーの組成は、使用されるCEX材料による。
【0022】
本書において用いられる用語「洗浄バッファー」とは、組成物のローディング後、CEX材料に結合したフィブリノゲンの溶離の前に、陽イオン交換材料上に流されるバッファーをいう。洗浄バッファーは、陽イオン交換材料から、結合したフィブリノゲンを実質的に溶離することなく1つ以上の汚染物を除去するのに役立ちうる。結合フィブリノゲンの溶離の前に、1つ以上の洗浄バッファーを使用することができる。
【0023】
「溶離バッファー」は、固相からのフィブリノゲンの溶離に用いられる。本発明において溶離バッファーは、陽イオン交換材料からフィブリノゲンが溶離されるように、最終の洗浄バッファーよりも実質的に高い導電率および/または高いpHを有する。好ましくは、溶離バッファーの導電率および/またはpHは、フィブリノゲンを含む液相、および先に使用されたバッファー、すなわち使用された平衡化バッファーおよびすべての洗浄バッファーのそれぞれと比べて実質的に高い。「実質的により高い導電率」とは、例えば、バッファーが、比較される組成物またはバッファーよりも、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10導電率単位(mS/cm)だけ高い導電率を有することを意味する。「実質的により高いpH」とは、例えば、バッファーが、比較される組成物またはバッファーよりも、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5pH単位だけ高いpHを有することを意味する。溶離のための条件は、使用されるCEX材料による。
【0024】
「再生バッファー」は、陽イオン交換材料を再使用可能とするよう再生するために用いられうる。再生バッファーは、陽イオン交換材料から、実質的にすべての汚染物および残留する可能性のあるフィブリノゲンを除去するのに必要な導電率および/またはpHを有する。
【0025】
用語「導電性」とは、水溶液が2つの電極間に電流を流す能力をいう。溶液中で、電流はイオンの輸送によって流れる。したがって、水溶液中に存在するイオンの量が多いほど、溶液は高い導電率を示しうる。導電率測定の基本単位は、通常mS/cmで測定される1メートル当たりのジーメンス(S/m)であり、導電率計を使用して測定しうる。導電性は電流を流す溶液中のイオンの能力であるから、溶液の導電率は、その中のイオン濃度の変化によって変化しうる。例えば、所望の導電率を達成するために、溶液中の緩衝剤の濃度および/または塩(例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウムまたは塩化カリウム)の濃度を変えうる。好ましくは、さまざまなバッファーの塩濃度が、所望の導電率の達成のために調節される。さらに、有機陽イオン、好ましくはカチオン性アミノ酸、好ましくはアルギニンの塩が、特に塩酸塩として存在するとき、導電性に寄与しうる。
【0026】
用語「血漿由来のフィブリノゲン含有ソース」は、フィブリノゲンのソースが、血漿または血漿画分、好ましくはヒト血漿であることを規定する。特に、これは組換えまたは合成フィブリノゲンではない。さらには、これは、他の生物または液体における組換え産生によって製造されるものではない。血漿ソースはまた、アルブミン、フィブロネクチン、IgG、vWFまたはフィブリノペプチドAのような、関連する汚染物の存在の可能性を規定する。
【0027】
本発明のアプローチによるフィブリノゲン製剤の製造方法は、純度および活性プロファイルの改善を伴った、フィブリノゲンプロダクトの精製を可能にする。本方法は、フィブリノゲン製剤からvWFを分離し、それによって得られる組成物中のvWF含量を低減するのに特に有用である。好ましくは、液相のpHがpH5.6~7.0、好ましくはpH6.0~6.9、より好ましくはpH6.3~6.9であるステップb)において、フィブリノゲンおよびvWFの両方が陽イオン交換クロマトグラフィー材料に結合する。ステップd)によってフィブリノゲンを材料から溶離させる際、vWFは陽イオン交換材料上に留まり、フィブリノゲンが選択的に溶離される。例えば、溶離は、クロマトグラフィーマトリックスへのvWFの結合を維持しフィブリノゲンの選択的溶離を可能にするpH7.0で行われる。
【0028】
一般論として、陽イオン交換クロマトグラフィーの方法的な理論に従えば、フィブリノゲンは、該関心のタンパク質のpIよりも高いpHでは、陽イオン交換クロマトグラフィー材料に結合しないはずである。したがって、例えばEP2267025A2は、フィブリノゲン精製方法における陽イオン交換クロマトグラフィーステップの適用を記載しているが、ここではフィブリノゲンは該マトリックスに結合しない。驚くべきことに、本発明者は、本発明において用いられる条件下に、特にフィブリノゲンのpI値よりも高いpH値において、フィブリノゲンが前記クロマトグラフィー材料に結合することを見出した。さらに、vWFも、フィブリノゲンと非常に近い等電点を示すにもかかわらず、前記クロマトグラフィー材料に結合する。WO98/38219A1によれば、vWFの等電点は5.5~6の範囲である。したがって、第1に、両タンパク質が前記材料に結合すること、第2に、両タンパク質、特にフィブリノゲンが、両タンパク質の等電点が非常に近いにもかかわらず選択的に溶離されうることは、驚くべきことである。本発明者は、適用する特定の条件下に、vWFがフィブリノゲンよりもわずかに強く結合することを見出した。したがって、本発明の方法により、フィブリノゲンを選択的にカラムから溶離することが可能であり、該クロマトグラフィーステップを、フィブリノゲン製剤中のvWF量を効果的に低減するために適用しうる。したがって、本発明は、本書に記載される陽イオン交換クロマトグラフィーの使用によって、フィブリノゲンを含む組成物中のvWF量を低減するための方法にも関する。
【0029】
したがって、本発明の好ましい態様において、フィブリノゲンを含む液相はvWFをさらに含む。本発明の方法は、OD280による総タンパク質測定で、vWFが少なくとも0.3U/mg総タンパク質(例えば、VWF抗原によるVWFレベルの評価)、例えば、少なくとも0.4U/mg総タンパク質以上の量で存在する液相に使用しうる。好ましい態様において、液相中のvWF含量は、約0.4~1.0U/mg総タンパク質である。vWF含量は、フィブリノゲンのソース、および先行の精製ステップによる。したがって、vWF含量は、より高いことがありうる。
【0030】
好ましい態様において、CEX材料にロードされる液相は、すでに部分的に精製されているフィブリノゲン製剤である。部分的に精製されたフィブリノゲン製剤は、フィブリノゲンを90%以上、好ましくは95%以上含みうる。好ましい態様において、液相はフィブリノゲン以外のタンパク質、好ましくは他の血漿タンパク質を、10%未満、好ましくは5%未満の量で含む。CEX材料にロードされる液相中のvWFの量は、例えば、0.4~1.0U/mg総タンパク質でありうる。好ましくは、ロード材料のvWF含量は、少なくとも0.5U/mg総タンパク質、好ましくは0.5~1.0U/mg総タンパク質である。
【0031】
さらに、本発明の方法は、フィブリノゲン製剤中のプリオンの量を低減するために特に有用である。本発明者は、本書に記載される陽イオン交換クロマトグラフィーステップによって、プリオンが検出限界未満まで効果的に除去されることを示すことができた。この効果を示すために、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の十分に確立された試験モデルであるハムスターのプリオンがスパイク実験に用いられている。したがって、本発明は、本書に記載される陽イオン交換クロマトグラフィーの使用によって、フィブリノゲンを含む組成物中のプリオンを除去または低減するための方法にも関する。
【0032】
フィブリノゲンを含む液相は、好ましくは水相である。液相は、1つ以上の、ポリソルベート80のような界面活性剤および/またはトリブチルホスフェート(TnBP)のような溶媒をさらに含みうる。そのような界面活性剤および溶媒は、先行のウイルス除去のためのS/D処理によって存在しうる。先行の製造ステップに由来しうる、製剤中のそのような他の望ましくない化合物の除去、例えば先行のS/D処理のような先行のウイルス不活化ステップに由来する界面活性剤および/または溶媒の除去も可能であることが、本発明の方法の大きな利点である。
【0033】
好ましい態様において、フィブリノゲン含有ソースを、ウイルス不活化プロセス、例えば溶媒界面活性剤プロセス(S/D処理)に付す。
【0034】
好ましい態様において、液相は、グリシン沈殿の沈殿物を再懸濁することによって調製する。
【0035】
液相は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料と、フィブリノゲンの結合をもたらす条件下に接触させ、ここで液相は、5.6~7.0のpHを有する。ローディング前に液相のpHおよび/または導電率を、対応する条件にさらに調節する必要がありうる。その後、液相を陽イオン交換クロマトグラフィー材料にロードする。
【0036】
特に好ましい態様において、液相は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料との接触の際、6.0~6.9、より好ましくは6.3~6.9、より一層好ましくは6.4~6.8、最も好ましくは6.5~6.7の範囲のpHを有する。
【0037】
陽イオン交換クロマトグラフィー材料との接触の際の液相のイオン強度は、好ましくは5~15mS/cm、より好ましくは7~11mS/cm、特に9.0±1.5mS/cm、好ましくは9.0±1.0mS/cmの範囲である。
【0038】
好ましい態様において、液相は、5.6~7.0の範囲のpH、および5~15mS/cmの範囲のイオン強度、より好ましくは6.0~6.9の範囲のpH、および5~15mS/cmの範囲のイオン強度、より一層好ましくは6.3~6.9の範囲のpH、および7~11mS/cmの範囲のイオン強度、最も好ましくは6.4~6.8の範囲のpH、および9.0±1.5mS/cmの範囲のイオン強度、より好ましくは6.4~6.8の範囲のpH、および9.0±1.0mS/cmの範囲のイオン強度、より一層好ましくは6.5~6.7の範囲のpH、および9.0±1.0mS/cmの範囲のイオン強度を有する。
【0039】
好ましい態様において、液相のpHをバッファー系の使用によって安定化する。これは、クエン酸、リン酸または酢酸バッファーでありうる。好ましいバッファーは、クエン酸バッファー、より好ましくはクエン酸三ナトリウムバッファーである。
【0040】
好ましい態様において、バッファーの濃度は、達成すべきイオン強度に応じて、50mM未満、より好ましくは30mM未満である。バッファーの濃度は、好ましくは5mMを超え、より好ましくは10mMを超える。好ましい態様において、バッファー物質の濃度は15mMである。
【0041】
要すれば、イオン強度を、1つ以上の塩、好ましくは液相に可溶のハロゲン化物の塩、より好ましくは塩化ナトリウムの添加によって調節しうる。
【0042】
好ましくは、タンパク質のロードは、22g/l陽イオン交換クロマトグラフィー材料以下、好ましくは21g/l以下、より好ましくは20g/l以下である。好ましい態様において、タンパク質のロードは、5~22g/l、好ましくは10~21g/l、より好ましくは10~20g/lである。
【0043】
陽イオン交換クロマトグラフィーのプロセスは、好ましくは16℃~28℃、より好ましくは18℃~26℃、より好ましくは22℃±4℃の温度で行う。
【0044】
陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、好ましくは強CEX材料である。
【0045】
CEX材料は好ましくは、孔を有する粒子を含む材料である。好ましくは、CEX材料は、マクロポーラス材料、特にマクロポーラスポリマー材料である。好ましい態様において、CEX材料は、孔直径の範囲が50nm~1000nm、好ましくは100~1000nmである粒子を含む。好ましくは、平均孔サイズは160nmである。特に好ましい態様において、クロマトグラフィー材料は、拡散がもはや制限的ではないように、小さい拡散孔、およびさらに、粒子を通る対流を少ないパーセンテージで可能にする比較的大きい流通孔を含む。そのような材料において好ましくは、クロマトグラフィー材料は、孔直径200nm~1000nmの大きい孔、および直径5~30nmの小さい孔、好ましくは直径250nm~600nmの大きい孔、および直径5~20nmの小さい孔を有する粒子を含む(測定は、Pirrung S.M. et al. Biotechnol. Prog. 2018, 34(4), 1006-1018の開示による)。
【0046】
好ましい態様において、CEX材料は、平均粒径サイズが30~100μm、好ましくは30~70μm、より好ましくは約50μmの粒子を含む。
【0047】
好ましい態様において、CEX材料は、官能基、特にスルホネート官能基(-SO3-)を含む。好ましくは、スルホネート基は、炭素原子数2~6、好ましくは炭素原子数2~4の直鎖または分枝アルキル基、より好ましくはエチル、プロピル、ブチル基、より好ましくはエチル、n-プロピルおよびイソブチルに結合したものであり得、より一層好ましくはスルホプロピル(好ましくはn-プロピルに対応する)でありうる。好ましい態様において、陽イオン交換材料上のスルホネート基は、CEX材料のポリマー鎖に結合されている。
【0048】
他の好ましい態様において、CEX材料は、テンタクル型の陽イオン交換材料(例えばMerck MilliporeのFractogel(登録商標))ではない。これは、SO3-基を含むモノマーのポリマー側鎖によるグラフトポリマーである。そのようなCEX材料は、フィブリノゲンおよび同様のタンパク質を、本発明の目的に関して、強く結合し過ぎる傾向を有する。
【0049】
好ましい態様において、材料は、スルホプロピル基を伴うポリヒドロキシル表面コーティングを含む。樹脂骨格は好ましくは、スルホネート官能基がポリヒドロキシル表面を介してスルホプロピルとして結合している架橋ポリスチレンジビニルベンゼンから形成される。好ましいCEX材料の一例はPOROS(商標)クロマトグラフィー樹脂、より好ましくはPOROS(商標)50 HS(ThermoFisher, USA)である。この材料も、前記のような大きい孔と小さい孔を有する粒子を含む。
【0050】
本発明の他の態様において、CEX材料は、スルホネート官能基を有するメタクリレートコポリマーである。この態様において、平均粒子サイズは50μm、平均孔直径は100nmでありうる。この態様における好ましいCEX材料の一例は、Macro-Prep(登録商標)、より好ましくはMacro-Prep(登録商標)High S(BioRad, USA)である。
【0051】
好ましい態様において、フィブリノゲンを含む液相をCEX材料に加える前に、CEX材料を平衡化させる。これは平衡化バッファーを使用して行う。平衡化バッファーのpH範囲は、好ましくは5.6~7.0、より好ましくは6.0~6.9、より一層好ましくは6.3~6.9、より好ましくは6.4~6.8、より一層好ましくは6.5~6.7である。
【0052】
平衡化バッファーのイオン強度は、好ましくは5~15mS/cm、より好ましくは7~12mS/cm、特に9.0±1.5mS/cmまたは9.0±1mS/cmである。
【0053】
好ましい態様において、平衡化バッファーは、pHが5.6~7.0の範囲でイオン強度が5~15mS/cmの範囲、より好ましくはpHが6.0~6.9の範囲でイオン強度が5~15mS/cmの範囲、より一層好ましくはpHが6.3~6.9の範囲でイオン強度が7~11mS/cmの範囲、最も好ましくはpHが6.4~6.8の範囲でイオン強度が9.0±1.5mS/cmの範囲、より好ましくはpHが6.4~6.8の範囲でイオン強度が9.0±1.0mS/cmの範囲、さらに好ましくはpHが6.5~6.7の範囲でイオン強度が9.0±1.0mS/cmの範囲である。
【0054】
好ましい態様において、平衡化バッファーのpHはバッファー系の使用により安定化される。好ましいバッファー系は、リン酸、酢酸またはクエン酸バッファー、好ましくはクエン酸バッファー、より好ましくはクエン酸三ナトリウムをベースとするものである。
【0055】
好ましい態様において、バッファーの濃度は、達成すべきイオン強度に応じて、50mM未満、より好ましくは30mM未満である。バッファーの濃度は好ましくは5mMを超え、より好ましくは10mMを超える。好ましい態様において、バッファー成分15mMの濃度である。
【0056】
好ましい態様において、平衡化バッファーは、塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む。塩の濃度は、好ましくは100mM未満、より好ましくは80mM未満、特に70mM未満である。塩の濃度は、低い方の範囲としては好ましくは40mMを超え、より好ましくは50mMを超え、より一層好ましくは60mMを超え、それぞれ上限は前記のとおりとし、好ましくは40mM~80mM、より好ましくは60mM~80mM、より好ましくは65mM±1~2mMである。バッファー系および塩の量は、好ましいイオン強度の平衡化バッファーが得られるように調節される。
【0057】
平衡化は好ましくは、CEX材料を、少なくとも2カラム体積の平衡化バッファーで洗うことによって行う。
【0058】
本発明の方法のステップb)にしたがってCEX材料に液相をロードした後、次の任意のステップとして、未結合化合物をCEX材料から洗い流す。そのようなステップのために、CEX材料を洗浄バッファーで洗う。好ましくは、洗浄バッファーのpHは、5.6~7.0、より好ましくは6.0~6.9、より一層好ましくは6.3~6.9、さらに好ましくは6.4~6.8、最も好ましくは6.5~6.7の範囲である。
【0059】
洗浄バッファーのイオン強度は、好ましくは5~15mS/cm、より好ましくは7~11mS/cm、特に9.0±1.5mS/cmまたは9.0+1.0mS/cmである。
【0060】
好ましい態様において、洗浄バッファーは、pHが5.6~7.0の範囲でイオン強度が5~15mS/cmの範囲、より好ましくはpHが6.0~6.9の範囲でイオン強度が5~15mS/cmの範囲、より一層好ましくはpHが6.3~6.9の範囲でイオン強度が7~11mS/cmの範囲、最も好ましくはpHが6.4~6.8の範囲でイオン強度が9.0±1.5mS/cmの範囲、より好ましくはpHが6.4~6.8の範囲でイオン強度が9.0±1.0mS/cmの範囲、さらに好ましくはpHが6.5~6.7の範囲でイオン強度が9.0±1.0mS/cmの範囲である。
【0061】
好ましい態様において、洗浄バッファーのpHは、バッファー系の使用により安定化される。好ましいバッファー系は、リン酸、酢酸またはクエン酸バッファー、好ましくはクエン酸バッファー、より好ましくはクエン酸三ナトリウムをベースとするものである。
【0062】
好ましい態様において、洗浄バッファーの濃度は、達成すべきイオン強度に応じて、50mM未満、より好ましくは30mM未満である。そしてバッファーの濃度は5mMを超え、好ましくは10mMを超え、好ましい態様において15mMのバッファー成分である。
【0063】
好ましい態様において、洗浄バッファーは、塩、好ましくは塩化物塩、より好ましくは塩化ナトリウムを含む。塩の濃度は、好ましくは100mM未満、より好ましくは80mM未満、特に70mM未満である。塩の濃度は、低い方の範囲としては好ましくは40mMを超え、より好ましくは50mMを超え、より一層好ましくは60mMを超え、それぞれ上限は前記のとおりとし、好ましくは40mM~80mM、より好ましくは60mM~80mM、より好ましくは65mM±1~2mMである。バッファー系および塩の量は、好ましいイオン強度の洗浄バッファーが得られるように調節される。
【0064】
好ましい態様において、ローディング後にCEX材料を、少なくとも1カラム体積の洗浄バッファー、好ましくは少なくとも2カラム体積の洗浄バッファーで洗浄する。
【0065】
本発明の好ましい態様において、平衡化バッファーおよび洗浄バッファーは少なくとも同じpHおよび/またはイオン強度、より好ましくは同じpHと同じイオン強度とを有する。より一層好ましい態様においては、両バッファーは同じ組成を有する。
【0066】
本発明の方法のステップb)およびc)にしたがうローディングおよび好ましくは洗浄の後、次のステップにおいて、本発明の方法のステップd)にしたがって陽イオン交換材料からフィブリノゲンを溶離する。このステップのために、溶離バッファーをCEX材料に流す。溶離バッファーは、CEX材料からフィブリノゲンが選択的に溶離され、好ましくはvWFはカラムに留まるように、最終の洗浄バッファー、または洗浄バッファーが使用されない場合には液相と比較して、高い導電率および/または高いpHを有する。条件は、使用されるCEX材料によりうる。
【0067】
好ましくは、溶離バッファーは、CEX材料へのフィブリノゲンの結合の際に用いた条件よりも少なくとも0.2、0.3、0.4または0.5単位高いpHを有する。好ましい態様において、pHは、結合条件よりも0.2~1pH単位高く、特に0.2~0.5単位高い。好ましい態様において、溶離バッファーのpHは、7.0±0.1である。
【0068】
溶離バッファーのイオン強度は、好ましくはCEX材料へのフィブリノゲンの結合の際に用いた条件よりも少なくとも2、3、4、5mS/cm高く、より好ましくは少なくとも5mS/cm高く、より一層好ましくは5~15mS/cm高く、特に10±1.5mS/cm高い。好ましい態様において、該イオン強度は、結合の際に用いた条件のイオン強度の少なくとも1.5~2.5倍、より好ましくは1.8~2.2倍である。好ましい態様において、該イオン強度は19.5±1.5mS/cmである。値はいずれも20℃における値である。
【0069】
好ましい態様において、溶離バッファーは、フィブリノゲンをCEX材料に結合させるために用いられる条件よりも少なくとも0.2、0.3、0.4または0.5単位高いpHを有し、フィブリノゲンをCEX材料に結合させるために用いられる条件よりも少なくとも5mS/cm超高いイオン強度を有し、好ましくはフィブリノゲンの結合のために用いられる条件よりも、pHが0.2~1pH単位高くイオン強度が5~15mS/cm、より一層好ましくはpHが0.2~0.5単位高くイオン強度が10±1.5mS/cm高い。
【0070】
好ましい態様において、溶離バッファーのpHは、バッファー系の使用により安定化される。好ましいバッファーは、リン酸、酢酸またはクエン酸バッファー、好ましくはクエン酸バッファー、より好ましくはクエン酸三ナトリウムに基づくものである。
【0071】
好ましい態様において、溶離バッファー系の濃度は、達成すべきイオン強度に応じて、30mM未満、より好ましくは10mM未満である。バッファーの濃度は、好ましくは5mM~30mM、より好ましくは5mM~10mMである。好ましい態様において、バッファーの濃度は7.5mMである。
【0072】
好ましい態様において、溶離バッファーは、塩、好ましくは塩化ナトリウムを含む。溶離バッファーの塩の濃度は、好ましくは100mMを超え、より好ましくは110mMを超え、特に120mMを超え、最も好ましくは150mMである。該濃度は好ましくは350mM未満、より好ましくは250mM未満である。バッファー系および塩の量は、好ましいイオン強度の平衡化バッファーが得られるように調節される。
【0073】
好ましい態様において、溶離バッファーは1つ以上の医薬製剤化合物、例えばアミノ酸、例えばグリシン、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、好ましくはカチオン性アミノ酸、好ましくはアルギニンを含む。アミノ酸は塩酸塩として加えることができる。好ましい態様において、溶離バッファーは、50mMを超える医薬製剤化合物を含む。医薬製剤化合物がイオン強度に寄与する場合は特に、溶離バッファー中の塩の濃度を低下することができる。したがって、カラム材料からのフィブリノゲン溶離のために十分なイオン強度を提供するために、溶離バッファーにおいて、例えば50~100mMの医薬製剤化合物、好ましくは70~80mM、より好ましくは75±2mMの医薬製剤化合物を、好ましくは100~200mMの塩化ナトリウム、好ましくは150±5mMの塩化ナトリウムと組み合わせて使用することが特に好ましい。それによって最終医薬プロダクトにとって不都合でありうる過剰な塩濃度が回避される。さらに、溶離の目的のために医薬製剤の成分を使用することによって、さらなるバッファー交換ステップを回避しうる。
【0074】
好ましい態様において、溶離バッファーは、50~100mMのアルギニン(好ましくは塩酸塩として加えられる)および100~200mMの塩化ナトリウム、好ましくは70~80mMのアルギニンおよび100~200mMの塩化ナトリウム、より好ましくは75±2mMのアルギニンおよび150±5mMの塩化ナトリウムを含む。
【0075】
溶離は、フィブリノゲンがカラムから溶離されるまで行う。これはUV吸収の測定によって検出することができる。
【0076】
本発明の方法を、精製プロセスの最終ステップの1つとして使用する場合、過剰な塩または他の望ましくない化合物を除去するためのダイアフィルトレーションステップを省略することができる。本発明の方法のプロダクトからの医薬物質組成物の調製の前に、タンパク質の濃縮のために限外濾過ステップを用いれば十分でありうる。
【0077】
フィブリノゲンの溶離後、カラムを再生バッファーの使用により再生しうる。この再生ステップ中に、vWFがカラムからストリップされうる。再生バッファーは、pHが5.5~7.5、好ましくは6.0~7.0、より好ましくは6.5~6.7でありうる。イオン強度は、好ましくは50mS/cmを超え、より好ましくは100mS/cmを超える。好ましい態様において、イオン強度は50~150mS/cm、より好ましくは100mS/cm~130mS/cmである。再生バッファーは、例えば1.5MのNaClを含みうる(高塩濃度)。
【0078】
好ましい態様において、カラムの材料は、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液、好ましくは少なくとも0.1Mの濃度、より好ましくは0.5M~1.5M水酸化ナトリウム濃度のもの、最も好ましくは1M水酸化ナトリウムを使用して、さらに洗浄することができる。洗浄後、クロマトグラフィー材料を、例えば0.1M NaOH中でさらなる使用まで保管しうる。
【0079】
本発明の方法は、組成物、特に血漿由来組成物中のvWF量を低減するために特に有用である。これは特に驚くべきことである。というのは、vWFとフィブリノゲンが同様のpI特性を有するからである。それにもかかわらず、発明者が示しているように、vWFがカラムに留まる陽イオン交換材料からフィブリノゲンを選択的に溶離することが可能なのである。したがって、本発明の方法は、フィブリノゲンからvWFを分離することができる。好ましいことに、本発明の方法による陽イオン交換クロマトグラフィーステップによって、vWFの量(U/mg総タンパク質)は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3,より好ましくは4まで、またはそれ以上のファクターで低減されうる。ここで、ファクターは、ローディング材料のvWF含量に直接依存する。好ましい態様において、溶離フィブリノゲンフラクション中のvWF量は、0.5U/mg総タンパク質未満、より好ましくは0.4U/mg総タンパク質未満、より好ましくは0.3U/mg総タンパク質未満、より一層好ましくは0.2U/mg未満まで低減される。典型的には、陽イオン交換ステップからの溶離フィブリノゲンフラクションは、約0.1~0.3U/mg総タンパク質の量のvWFを含みうる。フィブリノゲンフラクション中のvWF量を低減する陽イオン交換クロマトグラフィーステップの能力を、vWFをスパイクした試験材料でも試験した。本発明者は、スパイクした試験材料の陽イオン交換クロマトグラフィーステップについて、vWFの除去係数が10またはそれ以上にもなりうることを示すことができた。
【0080】
フィブリノゲンを含む溶離フラクションは、好ましくは、規定のフィブリノゲン含量のフィブリノゲン製剤が得られるように、さらに濃縮され、および/または希釈される。
【0081】
好ましい態様において、フィブリノゲンを含む溶離フラクションは、0.01mg/ml未満のポリソルベート80、および0.8μg/ml未満のTnBPを含む。
【0082】
好ましい態様において、本発明の方法は、フィブリノゲンを医薬組成物に製剤化するステップe)をさらに含む。
【0083】
血漿からのフィブリノゲン製造のための精製プロトコル中に本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーステップを用いることには、いくつもの利点がある。第一に、陽イオン交換ステップは、フィブリノゲンプロダクト中のvWF量を効果的に低減することができる。第二に、アルギニンのようなさらなる医薬プロダクト成分および/または他の製剤バッファー成分を、陽イオン交換クロマトグラフィーの溶離バッファー中にすでに含めることができ、それによって、費用および労力のかかるダイアフィルトレーションのようなさらなるバッファー交換ステップを回避することができる。第三に、陽イオン交換クロマトグラフィーステップは、プリオンの低減または除去に非常に有効であり、それによってプリオン低減または除去のためのさらなる余分なステップを回避することができる。陽イオン交換クロマトグラフィーステップの四つ目の利点は、ポリソルベート80およびTnBPのような溶媒/界面活性剤を非常に効率的に除去できることである。要するに、本発明者により提示される陽イオン交換クロマトグラフィーステップを含む製造方法は、フィブリノゲンの製造のために非常に効果的で経済的な優れた方法である。該製造方法は、比較的少なく比較的実施の容易なプロセスステップを含む。
【0084】
先に述べたとおり、陽イオン交換材料にロードされる液相は、すでに部分的に精製されたフィブリノゲン製剤でありうる。したがって、フィブリノゲン製剤の製造のための本発明の方法は、好ましくは1つ以上のウイルス不活化ステップを包含する、先行するおよび/または連続する精製および製造ステップを含みうる。特に好ましい態様において、製造方法は、下記ステップの少なくとも1つをさらに含む:
出発材料としてのヒト血漿のクリオプレシピテートの使用;
Al(OH)3吸着;
S/D処理;
陰イオン交換クロマトグラフィー、およびフロースルーのさらなるフィブリノゲン精製のための使用;
グリシン沈殿;
UV-C処理;
限外濾過;
凍結乾燥;
乾熱処理。
【0085】
好ましい態様において、血漿から出発する完全な製造方法は、陰イオン交換クロマトグラフィー、グリシン沈殿、および本書に記載する陽イオン交換クロマトグラフィーのステップを含む。好ましくは、S/D処理および/またはUV-C処理および/または乾熱処理のような、ウイルス不活化またはウイルス低減のさらなるステップを実施する。陰イオン交換クロマトグラフィーステップによって、約1~2のvWF除去係数が達成されうる。グリシン沈殿ステップによって、約4~5のvWF除去係数が達成されうる。陽イオン交換クロマトグラフィーステップによって、少なくとも3のvWF除去係数が達成されうる。完全な製造方法全体として、溶解クリオプレシピテートに対して約20またはそれ以上のvWF除去係数が達成されうる。
【0086】
好ましくは、最終プロダクトの精製フィブリノゲンの比活性は、総タンパク質に対して少なくとも95%凝固可能タンパク質活性、好ましくは98%±0.8である(凝固可能タンパク質およびOD280による測定活性)。
【0087】
特に好ましい態様において、製造方法は前記ステップのすべてを含み、ここで、本書に記載される陽イオン交換クロマトグラフィーステップは、前記UV-C処理と前記限外濾過との間に行われる。好ましくは、それ以外のステップは、前記に挙げた順序で行われる。
【0088】
好ましいステップの実施形態を、以下、より詳細に説明する:
【0089】
ヒト血漿のクリオプレシピテートは、本発明の方法において好ましいフィブリノゲンソースである。
【0090】
クリオプレシピテートは、適当なバッファー条件下に、特に中性pHにおいて、好ましくは溶液バッファー中で、再構成または可溶化し、吸着、特にAl(OH)3による吸着に付し、生じたゲルを除去、好ましくは遠心分離によって除去する。必要なら、上清を濾過しうる。次のステップとして、上清を、ウイルス不活化、好ましくは溶媒/界面活性剤(S/D)処理によりウイルス不活化しうる。ポリソルベート80およびTnBP(トリ-n-ブチルホスフェート)といったS/D化合物が好ましい。
【0091】
その後、得られた溶液をクロマトグラフ法を用いてさらに精製しうる。これは典型的には、S/D処理したタンパク質溶液を陰イオン交換材料と接触させることによって行いうる。そのために好ましい材料は、マトリックス材料にグラフトされた陰イオン交換基としてジエチルアミノエチル(EDAE)基を有する材料である。そのような材料の一例は、マトリックス材料としてヒドロキシル化メタクリルポリマービーズが使用されたToyopeal DEAEである。溶液を陰イオン交換材料と、フィブリノゲンが該弱陰イオン交換材料に結合しない条件下に接触させる。フィブリノゲンはフロースルー中に存在する。
【0092】
その後、得られたフィブリノゲン溶液を、グリシン沈殿、好ましくは1~1.5Mのグリシン、より好ましくは約1.2Mのグリシンによるグリシン沈殿に付しうる。好ましくは、グリシン沈殿のために、NaCl、好ましくは1~3MのNaCl、より好ましくは約2MのNaClをさらに使用する。グリシンおよび/またはNaClを溶液に直接加えることによって、前記濃度を達成しうる。溶液は、20~40mMのシトレートによって6.7~7.2の範囲に緩衝する。その後、フィブリノゲン含有沈殿を、遠心分離、好ましくはフロースルー遠心分離によって分離することができる。単回のフィブリノゲン沈殿で通常十分である。フィブリノゲンペーストを-70℃以下の温度で保存しうる。
【0093】
次のステップとして、沈殿を再懸濁し、その溶液をさらなるウイルス不活化、特にパルボウイルス不活化のためにUV-C処理に付しうる。好ましい態様において、UVivatecシステム(Sartorius Stedim Biotech GmbH, Germany)を使用する。バッファーとして、好ましくはクエン酸ナトリウムバッファーを使用する。好ましくは、得られる溶液は、本発明による陽イオン交換クロマトグラフィーにもう適している。
【0094】
次のステップとして、フィブリノゲン溶液を、前記方法による陽イオン交換クロマトグラフィーに付す。
【0095】
その後、得られたフィブリノゲン溶液を、限外濾過によって、好ましくは20~70g/l、好ましくは55±10g/lの濃度までさらに濃縮する。得られた濃縮物を、所望の終濃度まで、対応するバッファーを用いて希釈しうる。所望の終濃度は、好ましくは25~40g/l、好ましくは33±3g/lである。これらステップの間に、最終医薬プロダクトのためのさらなる成分を加えうる。溶液のpHを、例えばpH7.0±0.5に調節しうる。
【0096】
得られた溶液を濾過(0.2μm)して異なるバイアルに入れ、凍結乾燥しうる。その後、さらなるウイルス不活化ステップとして最後の乾熱処理(例えばオートクレーブにおいて100℃で30分間)を行いうる。最終溶液または凍結乾燥物において、総タンパク質は実質的にフィブリノゲンからなる。
【0097】
得られた凍結乾燥物を、好ましくは12~25g/lのフィブリノゲン、より好ましくは18~24g/lのフィブリノゲン、20~65mmol/lのアルギニン、より好ましくは25~55mmol/lのアルギニン、2~10mmol/lのシトレート、より好ましくは3~7mmol/lのシトレートを含む、pH6.5~7.5の溶液が得られるように、再構成しうる。
【0098】
本発明の製造方法にしたがって得られるフィブリノゲン製剤もまた、本発明の対象である。該フィブリノゲン製剤は、有利な純度および活性プロファイルによって特徴付けられる。特に、該フィブリノゲン製剤は、第XIII因子含量が非常に低いことによって特徴付けられる。好ましくは、該フィブリノゲン製剤は、0.5~2.0FXIII:Ag(% of norm)のFXIII濃度、および/または16FXIII:Ac(% of norm)未満のFXIII活性を有し、したがって、従来のフィブリノゲンプロダクトと比べて純度の改善を示す。これは、<0.008IU/mgフィブリノゲンのFXIII:Ac値に相当する(20mg/mlのフィブリノゲンにおいて)。5~2.0FXIII:Ag(% of norm)は、0.0003~0.0010IU/mgフィブリノゲンにほぼ相当する(20mg/mlのフィブリノゲンにおいて)。
【0099】
これにより、本発明のフィブリノゲン製剤を医療目的で使用するとき、共存物のより少ない因子が投与される。さらに、本発明のフィブリノゲン製剤は従来のフィブリノゲンプロダクトと比べて、良好またはより改善された血餅硬度を示す。さらに、本発明のフィブリノゲン製剤は、検出可能な量のDダイマーを示さず(<0.17mg/l)、これは、本発明のフィブリノゲン製剤が特に有利な生理学的活性および改善された純度を有することをさらに示すものである。
【0100】
本発明は、0.5~2.0FXIII:Ag(% of norm)のFXIII濃度を有する、および/または16FXIII:Ac(% of norm)未満のFXIII活性を有する、および/または検出可能な量のDダイマーを含まない(<0.17mg/l)、および/または最大血餅硬度が20~30mmである(2.5g/lのフィブリノゲンでFib-temアッセイ)、フィブリノゲンプロダクトにも関する。
【0101】
フィブリノゲン製剤から得られる医薬組成物もまた、本発明の対象である。好ましくは、本発明の医薬組成物は、記載される本発明の方法によって得られるフィブリノゲン製剤、および好ましくは少なくとも1つの医薬用担体を含む。
【0102】
医薬組成物は、適当なバイアルに充填することができる。
【0103】
得られる医薬組成物は、血餅硬度アッセイによって示される良好な生理学的性質および高い安定性を示す。これは、高分子物質の含量が低く、純度に優れている。医薬組成物は好ましくは、凍結乾燥物として供される。
【0104】
医薬組成物が、溶液として、好ましくは凍結乾燥フィブリノゲンプロダクトから提供されるとき、vWF含量は好ましくは0.5U/mg総タンパク質未満、より好ましくは0.4U/mg総タンパク質未満である。例えば、好ましい態様においてvWF含量は、0.35U/mg総タンパク質に相当する20g/lのフィブリノゲン量における7U/ml未満である。
【0105】
好ましい態様において、医薬組成物は、溶液として、好ましくは凍結乾燥物から調製されるとき、以下の成分を含む:12~25g/lの濃度のフィブリノゲン、pH6.5~7.5、20~65mmol/lのアルギニン、2~10mmol/lのシトレート。
【0106】
本発明の方法により得られる医薬組成物は好ましくは、静脈内使用のために、好ましくはヒトにおいて適当である。
【0107】
医薬組成物は実質的に、止血異常の処置、および/または出血の予防もしくは治療のために有用である。好ましい態様において、止血異常は、先天性フィブリノゲン欠乏、後天性フィブリノゲン欠乏、外傷性傷害、および出血の予防または治療である。本発明の医薬組成物の投与による出血の予防または治療は、手術中または手術後、特に脊髄手術中または婦人科手術中に行われうる。したがって、本発明は、本発明の医薬組成物の投与による止血異常の処置方法にも関する。
【実施例】
【0108】
実施例1
ヒト血漿のクリオプレシピテートをフィブリノゲンソースとして用いた。クリオプレシピテートは、凍結血漿を0~4℃で解凍し、沈殿物を分離することによって得る。
【0109】
クリオプレシピテート1kgにつき、2.91kgの水(WFI)、114gのエタノール25%(v/v)、および9000IUのヘパリンの混合物を調製する。WFI/エタノール/ヘパリン溶液にクリオプレシピテートを撹拌しながら加える。pH値を7.0に調節する。
【0110】
用いるクリオプレシピテート1kgにつき、108gの2%水酸化アルミニウム懸濁液を加え、混合物を22.5℃で撹拌する。pH値を6.55に調節し、その後、連続的に作動する遠心分離機によって遠心分離する。
【0111】
1%のポリソルベート80および0.3%のトリ-n-ブチルホスフェートを撹拌しながら加える。該タンパク質溶液を25.0℃で少なくとも8時間にわたり撹拌する。
【0112】
カラムクロマトグラフィーによるさらなる精製のために、陰イオン交換ゲルToyopearl TSK DEAE-650(ジエチルアミノエチル基を有するマトリックス材料としてのヒドロキシル化メタクリルポリマービーズ)を使用する。タンパク質のローディングは、陰イオン交換ゲル1ml当たり約50±10mgのタンパク質である。
【0113】
タンパク質溶液のクロリド含量を、NaCl溶液の添加によって120mmol/lに調節する。タンパク質溶液をカラムに適用し、フロースルーフラクションを収集する。
【0114】
10mMのクエン酸三ナトリウム、120mMのNaCl、120mMのグリシン、1mMのCaCl2、0.1%のポリソルベート80および0.3%のTnBPを含む、pH7.0~7.1の、得られるフィブリノゲン溶液を、グリシン沈殿に付す。フィブリノゲンを沈殿させるために、グリシンを終濃度1.2Mで加える。NaClを終濃度2Mで加える。次いで、フィブリノゲン含有沈殿を遠心分離によって分離する。フィブリノゲンペーストを-70℃以下で貯蔵しうる。
【0115】
沈殿物をバッファー(15mMクエン酸三ナトリウム二水和物、pH値6.9±0.1、導電率3.3±0.5mS/cm)に再懸濁する。該組成物は、他のタンパク質(例えば0.7~0.9U/mgのvWF)のほか、TnBP、ポリソルベート80、グリシンおよびNaClを含む。組成物を濾過し、UVivatecデバイス(Sartorius Stedim Biotech)のようなデバイスを使用するウイルス不活化のためのUV-C処理に付す。照射は好ましくは、254nm±1nmにおいて125~200J/m2で行う。
【0116】
次の陽イオン交換クロマトグラフィーステップのために、カラム(POROS(商標)50 HS)を平衡化バッファー(15mM無水クエン酸三ナトリウム、65mM塩化ナトリウム、pH値6.5±0.1、導電率9.0±1.5mS/cm、2~5カラム体積)で平衡化する。
【0117】
UV照射ステップからのフィブリノゲン含有液相を、該組成物を15mMクエン酸三ナトリウム、pH値6.5±0.1および導電率9.0±1.5mS/cmに調節することによって準備する。ゲル体積1リットル当たりのタンパク質量10~20g/lでカラムにロードする。
【0118】
カラムを洗浄バッファー(15mM無水クエン酸三ナトリウム、65mM塩化ナトリウム、pH値6.5±0.1、導電率9.0±1.0mS/cm、2~5カラム体積)で洗う。
【0119】
その後、溶離バッファー(7.5mM無水クエン酸三ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、75mM L-アルギニン一塩酸塩、pH値7.0±0.1、導電率19.5±1.5mS/cm)を用いてフィブリノゲンを溶離する。このステップにおいて、フィブリノゲンがカラムから溶離される。vWFの多くはカラムに結合して留まる。
【0120】
次いで、カラムを、塩濃度のより高いバッファー(15mM無水クエン酸三ナトリウム、1.5mM塩化ナトリウム、pH値6.5±0.1、導電率113.5±5.0mS/cm)で洗う。vWFがカラムから溶離される。その後、カラムを1M水酸化ナトリウムを用いて洗浄する。
【0121】
本方法において、アルブミンおよびIgGはCEX材料に結合しない。フィブリノゲンを含む液相中に存在するvWFの50%超を、本方法を用いて除去することができる。
【0122】
医薬物質の調製のために、溶離されたフラクションを限外濾過によって濃縮し、タンパク質濃度をクエン酸バッファーを用いて1リットル当たりフィブリノゲン33gに調節する。さらなる成分を加えて最終医薬物質を形成しうる。
【0123】
医薬物質を濾過(0.2μm)して異なるバイアルに入れ、凍結乾燥する。その後、さらなるウイルス不活化ステップとして、スチームオートクレーブ内で最終熱処理を行った(100℃、30分間)。プロダクトは驚くほど安定である。
【0124】
最終プロダクトは、標準ヒト血漿対照(27mm)および血漿プール(22mm)と比べて、最大血餅硬度(MCF)として測定される血餅安定性が良好である(2.5g/lのフィブリノゲンでFib-temアッセイ、25mm)。これは、生理学的活性が良好であることの強い証拠である。
【0125】
さらに、該フィブリノゲン製剤は、1.5FXIII:Ag(% of norm)以下のFXIII濃度および16FXIII:Ac(% of norm)以下のFXIII活性を有する。さらに、フィブリノゲン製剤は、検出可能な量のDダイマーを示さない。両パラメータは、本発明のフィブリノゲンプロダクトの純度が非常に良好であることを示している。データを表1に示す(サンプル1、2、3:本発明の実施例1の方法による製剤 - 可溶化最終プロダクト、タンパク質20mg/ml)。
【0126】
【0127】
市販フィブリノゲンプロダクトサンプルは、本発明プロダクトと比較して、はるかに高いFXIII活性および高いDダイマー量を示す(データを示さず)。
【0128】
実施例2
実施例1に記載のように調製したグリシン沈殿物25gを、UV-C処理し、実施例1に記載のように陽イオン交換クロマトグラフィー(POROS(商標)50 HS)を用いて精製した。表2に、ローディング溶液、フロースルーおよび溶離液の組成を示す。
【0129】
【0130】
総タンパク質が実質的にフィブリノゲンに対応するとすれば、OD280で測定されるタンパク質濃度に基づき、溶離液中のタンパク質収率は95.5%である。総vWFの37.9%がフィブリノゲン溶離液中に存在する。Fib:Agとしての測定でフィブリノゲンの100.3%が溶離液中に存在する。
【0131】
この具体例のロード中のvWF含量は比較的低いので、この例におけるvWFの除去係数は2.4である(0.45から0.19U/mgへ)。本発明者は他の例において、ロード材料中のvWF含量が0.6~0.9U/mg総タンパク質の範囲であるときにvWF除去係数が3~6の範囲であることを示している。
【0132】
実施例3
POROS(商標)50 HSの代わりに強陽イオン交換カラム材料としてMacro-Prep(登録商標)High Sを使用したことを除き、陽イオン交換クロマトグラフィーステップに関して実施例1に記載のものと同様のプロセスを行った。ローディングおよびウォッシング中のカラムへのフィブリノゲンの改善された結合のために、導電率を4.5mS/cmに設定し、pHをフィブリノゲンのpIよりも高い6.0に設定した。pH7および導電率19.5mS/cmの溶離条件下に、フィブリノゲンの94.8%のがカラムから溶離される。溶離フラクション中のvWF量は0.4U/mgタンパク質未満である。CEXカラムへのタンパク質ロード中のvWFの約18.3%だけを、溶離液中に検出することができた。溶離フラクション中にポリソルベート80またはTnBPは検出することができなかった。
【0133】
実施例4
溶離フィブリノゲンフラクション中のvWF量の低下における陽イオン交換クロマトグラフィーステップの能力を調べるために、vWF(スパイクした)に富むローディング材料を用いる陽イオン交換クロマトグラフィーを、実施例1に記載のようにPOROS(商標)50 HSを用いて行った。ロードのvWF含量は、1.09U/mg総タンパク質(スパイクしていない材料)ないしいくつかのスパイクサンプルにおける4.49U/mg総タンパク質であった(表3参照)。フィブリノゲンの選択的溶離(150mM NaCl、pH7.0)の後、vWFを高塩フラクション(1.5M NaCl、pH6.5)で溶離した。表3からわかるように、溶離フィブリノゲンフラクション(フィブリノゲン溶離液)中のvWF量は、ロードのvWF含量が増加しても、0.21U/mg総タンパク質(スパイクなしの材料)から0.35U/mg総タンパク質(4.49U/mg総タンパク質でロードにスパイクした場合)の範囲にあって実質的に一定であった。vWFの除去係数は、スパイクなしのロード材料の場合の5から、4.49U/mg総タンパク質でスパイクしたロード材料の場合の12まで、ロード材料のスパイクにしたがって増加した。
【0134】
表4に、より大きなスケールで典型的サンプルの溶解クリオプレシピテートと比較した除去係数を示す。プロセス全体で、溶解クリオプレシピテートとの比較で24.2の除去係数が達成される。
【0135】
【0136】
【0137】
実施例5
カラム(POROS(商標)50 HS)へのローディングの際のpH値および導電率に関して陽イオン交換クロマトグラフィーステップのロバスト性を示すために、実施例1にしたがうカラムへのローディングの際の6.3~6.7の範囲のpHを試験した。カラムへのローディングの際の導電率は7~11mS/cmであった。タンパク質ロードは、カラム材料1リットル当たり20g~22gタンパク質であった。試験したすべての条件において、vWFは、
図1からわかるように0.5U/mg総タンパク質未満まで除去された(
図1は、異なるタンパク質ロードについて、異なる値のローディング溶液導電率およびpHに対する、vWF量の関連を示す(上段はpH6.4~6.6および8~10mS/cm;下段はpH6.3~6.7および7~11mS/cm)。結果は、フィブリノゲン溶離液中のvWFの低減(ここで、vWFは0.4U/mg未満まで除去)のために6.4~6.6の範囲が特に有利であることを示している。結果はさらに、フィブリノゲン溶離液中のvWFの低減(0.4U/mg未満までのvWF除去をもたらす)のために8~10mS/cmの範囲の導電率が特に有利であることを示している。さらに、vWFの効果的な除去のために、総タンパク質ロードは21g/lカラム材料以下、特に20g/lカラム材料以下であることが有利である。
【0138】
実施例6
陽イオン交換クロマトグラフィーステップの、溶離フィブリノゲンフラクション中のポリソルベート80およびTnBP量を低下する能力を試験するために、ポリソルベート80およびTnBP(スパイクした)の両方に富むローディング材料を用いる陽イオン交換クロマトグラフィーを、UV-C照射ステップを省略したことを除いては実施例1に記載のようにPOROS(商標)50 HSを用いて行った。ロードのポリソルベート80およびTnBP含量は、1.11mg/mlおよび約20μg/ml(スパイクなしの材料)ないしいくつかのスパイクしたサンプルにおける10.74mg/mlおよび2590μg/mlであった(表5参照)。フィブリノゲンの選択的溶離(150mM NaCl、pH7.0)の後、vWFを高塩フラクション(1.5M NaCl、pH6.5)で溶離した。カラム溶離液中のフィブリノゲン収量はすべての実験にわたり一定であることが、クロマトグラムから推定された(データを示さず)。表5からわかるように、溶離フィブリノゲンフラクション(フィブリノゲン溶離液)中のポリソルベート80およびTnBPの含量は、TnBPを最も多くスパイクした場合に約30μg/mlのTnBPが溶離液中に検出されたことを除きポリソルベート80/TnBPスパイクを適用したすべての場合について、分析方法の検出限界未満である。したがって、フィブリノゲン含有サンプルのPOROS(商標)50 HSクロマトグラフィーを用いて、ポリソルベート80およびTnBPを1000のファクターまでで除去することができた。同時に、フィブリノゲン溶離液のvWF含量は、ポリソルベート80/TnBPを最も多くスパイクした場合にわずかな増加が見られただけで、ほとんど影響されないままであった。
【0139】
【0140】
実施例7
本発明者は、陽イオン交換クロマトグラフィーステップによってプリオンが検出限界未満まで効果的に除去されることを示すことができた。この効果を示すために、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の十分に確立された試験モデルであるハムスターのプリオン(株263K)を試験した。プリオンをスパイクした試験材料で除去能力を分析した。プリオン力価をウエスタンブロットによって測定した。陽イオン交換クロマトグラフィーステップの溶離液において、フィブリノゲンからプリオンは、≧3.27のlog10ないし検出限界未満まで除去され、陽イオン交換クロマトグラフィーステップによる信頼できるプリオン除去が示される。プリオンは1.5MのNaCl(高塩濃度)によってカラムからストリップされる。
【0141】
実験結果を表6にまとめる。試験材料はプリオン(ハムスター順化スクレイピー分離株、株263K、供給者:ViruSure GmbH, Austria)をスパイクし、該プリオンストックからサンプルを取り試験材料にスパイクし、プリオン力価をウエスタンブロットによって測定した。スパイクした試験材料を約94mlの体積でカラムにロードし、カラムを洗った。フロースルーおよび洗液を収集し、体積を測定した。フィブリノゲンを50mlの体積でカラムから溶離し、カラムを1.5MのNaClで洗った。各フラクションのサンプルを取り、プリオン力価を分析した。本試験の結果を下記表6に示す。フィブリノゲンからプリオンが≧3.27のlog10ないし検出限界未満まで除去されることが示される。
【0142】
【表6】
a)計算後、小数第1位に丸めた。
b)10倍濃縮サンプル(-1.0 log)は非反応性であった。
c)サンプルを希釈した。
【0143】
分析方法
タンパク質測定
タンパク質測定をUV吸収法によって行った(Spektralphotometer Genesys(商標)6、Spektralphotometer Genesys(商標)10)。溶液中でタンパク質は、芳香族アミノ酸、主としてチロシンおよびトリプトファンの存在のゆえに、280nmの波長のUV光を吸収する。この性質が、280nmでのタンパク質測定の根拠となっている。タンパク質のUV分光測定の精度は、試験標本による光の散乱によって低下しうる。この効果の補正のために、280nmにおける吸収から360nmにおける吸収を差し引く。
【0144】
フィブリノゲン(Fib:Ag)測定
Fib:Ag濃度はBN Prospec (Siemens) 比濁計による比ろう法によって測定する。フィブリノゲンは特異的抗体と複合体を形成する。この複合体は、照射された光の散乱を引き起こす。散乱の増加がフィブリノゲン濃度に相関する。
【0145】
凝固可能タンパク質によるフィブリノゲン活性の測定
フィブリノゲン活性(=凝固可能タンパク質)のアッセイのために、サンプル製剤を、十分なトロンビンを含む適当なバッファー溶液と混合し、37℃でインキュベートする。上清中の残留タンパク質を280/360nmにおけるUV分光測定によって測定し、その結果を総タンパク質量(前記参照)から差し引いて、凝固可能タンパク質を計算する。
【0146】
フィブリノゲンの比活性の決定
フィブリノゲンの比活性を、UV吸収(280nm)により測定された総タンパク質に対する凝固可能タンパク質活性によって決定する。
【0147】
血餅安定性測定
血餅安定性を、ROTEM全血アナライザー(Tem Innovations GmbH, Munich)を用いるFib-temアッセイによって測定する。これは、全血の止血試験のための確立された粘弾性的な方法である。
【0148】
製造者の指示にしたがって試験を行う。方法の妥当性を、コントロール製剤(Rotrol NおよびP)を用いて試験する。
【0149】
Fib-temの測定のために、フィブリノゲンサンプルを製造者の指示にしたがって溶解し、フィブリノゲン欠損血漿によるさらなる希釈を行って、フィブリノゲン濃度を1.5g/l、2.0g/lおよび2.5g/lとする。
【0150】
vWF活性(vWF:Ag)測定
テストキット「vWF Ag」は、Behring coagulation system (BCS XP) で測定される、ヒト血漿または血漿プロダクト中のフォン・ヴィルブランド因子抗原(vWF:Ag)の免疫比濁測定のための試薬を含む。
【0151】
提供される試薬ならびにcoagulation system BCS XPの規定の試験定義および測定指示を含み、製造者の指示にしたがって試験を行う。サンプルの結果を、標準/参照曲線を用いて評価する。
【0152】
標準/参照曲線の作製のために、標準ヒト血漿(Siemens)を異なる希釈段階で二重の測定において使用する。coagulation system(BCS XP)は、カリブレーターを基準の10~200%の範囲で自動希釈する。参照曲線の妥当性を、コントロール製剤(Control Plasma N)を用いて試験する。
【0153】
測定のために、Owren's Veronal Buffer中11:1、1:10希釈で、フィブリノゲン濃厚物サンプルの希釈シリーズを調製する。すべての他の希釈、インキュベーション、試薬キット中に提供される異なる試薬の使用は、試験システム(BCS XP)により自動的に準備される。
【0154】
FXIII活性(FXIII:Ac)測定
FXIIIの活性を、Behring coagulation system (BCS XP, Siemens Healthcare) で測定される測光試験(Berichrom FXIII, Siemens Healthcare Diagnostics GmbH)によって測定する。
【0155】
提供される試薬ならびにcoagulation system BCS XPの規定の試験定義および測定指示を含み、製造者の指示にしたがって試験を行う。サンプルの結果を、標準/参照曲線を用いて評価する。
【0156】
標準/参照曲線の作製のために、標準ヒト血漿(Siemens)を異なる希釈段階で二重の測定において使用する。coagulation system(BCS XP)は、カリブレーターを基準の15~130%の範囲で自動希釈する。参照曲線の妥当性を、コントロール製剤(Control Plasma N)を用いて試験する。ここで、基準の100%(Siemens標準ヒト血漿(CoA))は、WHO基準での1IU/mlに相当する。
【0157】
測定のために、NaCl溶液(0.9%、w/v)中1:1、1:3および1:5希釈で、フィブリノゲン濃厚物サンプルの希釈シリーズを調製する。すべての他の希釈、インキュベーション、試薬キット中に提供される異なる試薬の使用は、coagulation system(BCS XP)により自動的に準備される。
【0158】
FXIII:Ag濃度測定
この測定は、Matched-Pair抗体セットおよびVisuLize Buffer Pak(いずれもAffinity Biologicals)を用いるサンドイッチElisaアッセイに基づく。提供される試薬ならびに規定の試験定義および測定指示を含み、製造者の指示にしたがって試験を行う。較正の目的で、標準ヒト血漿(Siemens)を、1:100から7段階の1:2希釈で使用する。
【0159】
FXIII Aサブユニットに対するアフィニティー精製ポリクローナル抗体をマイクロタイタープレートにコーティングする。残りの結合部位を、ウシ血清アルブミンでブロックする。洗浄後、標準およいサンプルを適用する。結合FXIIIを、ペルオキシダーゼ結合FXIII抗体で検出する。ペルオキシダーゼ活性をOPD(o-フェニレンジアミン)に作用させ、H2SO4で停止する。490nmにおけるODを測定する。ここで、基準の100%は、WHO基準での1IU/mlにほぼ相当する。
【0160】
Dダイマー測定
INNOVANCE D-Dimerは、Behring coagulation system (BCS XP) で測定される、ヒト血漿または血漿プロダクト中の架橋フィブリン分解産物(Dダイマー)の定量測定のための粒子増強免疫比濁アッセイである。
【0161】
提供される試薬ならびにcoagulation system BCS XPの規定の試験定義および測定指示を含み、製造者の指示にしたがって試験を行う。サンプルを、標準/参照曲線を用いて評価する。
【0162】
標準/参照曲線の作製のために、INNOVANCE D-dimerカリブレーターを異なる希釈段階で二重の測定において使用する。coagulation system(BCS XP)は、カリブレーターを0.17~4.4mg/lの範囲で自動希釈する。参照曲線の妥当性を、コントロール製剤(Control Plasma N)を用いて試験する。
【0163】
測定のために、希釈剤(試験キット中に提供される)中1:1、1:5希釈で、フィブリノゲン濃厚物サンプルの希釈シリーズを調製する。すべての他の希釈、インキュベーション、試験キット中に提供される異なる試薬の使用は、試験システム(BCS XP)により自動的に準備される。
【0164】
TnBP濃度測定
サンプル溶液からのTNBP抽出のためにN-Hexanを使用する。規格限界と同じ量を含む参照溶液を調製し、他のサンプルと同じ抽出手順に付す。参照およびサンプル溶液からのヘキサン相をガスクロマトグラフィーによって分析する。
【0165】
規格への適合の評価を、サンプルおよび対応する参照溶液からのクロマトグラムにおけるTNBPピーク高さの比較によって行う。参照溶液は、TNBP-Assay-Testからの有効標準溶液から希釈によって調製する。
【0166】
ポリソルベート80濃度測定
ポリソルベート80の測定を、欧州薬局方最新版2.2.25にしたがう測光法によって行う。
【0167】
タンパク質溶液中のポリソルベート80を測光アッセイによって測定する。ポリソルベート80のようなポリオキシル化化合物は、アンモニウムコバルトチオシアネートと青色の複合体を形成する。
【0168】
高タンパク質含量による妨害を、エタノールによる除タンパクによって回避する。エタノールによるタンパク質沈殿の後、上清を乾固に近づくまで蒸発させる。複合体をジクロロメタンで抽出し、620nmで光度測定する。校正関数を、除タンパクステップを行わずに作成する。
【0169】
リストセチンコファクター活性(RCoF、vWF:RiCo)
フォン・ヴィルブランド因子のコファクター活性を、Behring coagulation system (BCS XP) で測定される、血小板凝集によるヒト血漿または血漿プロダクト中のフォン・ヴィルブランド因子のリストセチンコファクター活性の測定のためのインビトロ試験であるBCフォン・ヴィルブランド試薬によって測定する。
【0170】
試験は原則として、提供される試薬を含み製造者の指示にしたがって行う。参照曲線を、基準の20~150%から5~100%に変更する。coagulation system BCS XPの試験定義および測定指示を適合させる。サンプルを、標準/参照曲線を用いて評価する。
【0171】
較正/参照曲線の作製のために、標準ヒト血漿を異なる希釈段階で二重の測定において使用する。coagulation system(BCS XP)は、カリブレーターを基準の5~100%の範囲で自動希釈する。参照曲線の妥当性を、コントロール製剤(Control Plasma N)を用いて試験する。
【0172】
測定のために、NaCl溶液(0.9%、w/v)中1:1および1:5希釈で、フィブリノゲン濃厚物サンプルの希釈シリーズを調製する。すべての他の希釈、インキュベーション、試験キット中に提供される異なる試薬の使用は、試験システム(BCS XP)により自動的に準備される。
【図面の簡単な説明】
【0173】
(原文に記載なし)
【国際調査報告】