IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2023-505873少なくとも2つのセグメントを用いて、1つのパスラインに沿って通過する金属製品のプロセス調整、特に温度調整のフレキシブルな影響付与のための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(54)【発明の名称】少なくとも2つのセグメントを用いて、1つのパスラインに沿って通過する金属製品のプロセス調整、特に温度調整のフレキシブルな影響付与のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/00 20060101AFI20230206BHJP
   C21D 1/42 20060101ALI20230206BHJP
   F27B 9/40 20060101ALI20230206BHJP
   F27B 9/02 20060101ALI20230206BHJP
   B21B 39/00 20060101ALI20230206BHJP
   B21B 45/04 20060101ALI20230206BHJP
   B21B 38/00 20060101ALI20230206BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20230206BHJP
   B21B 45/02 20060101ALI20230206BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
C21D1/00 112B
C21D1/42 Z
F27B9/40
F27B9/02
B21B39/00 A
B21B45/04
B21B38/00 F
B21C51/00 P
B21B45/02 320R
B21B1/22 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535685
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2020085639
(87)【国際公開番号】W WO2021116350
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】102019219343.9
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020206176.9
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ハーファー・ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ペータース・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】カウパー・キリアン
【テーマコード(参考)】
4E002
4K034
4K050
【Fターム(参考)】
4E002AB01
4E002AD01
4E002BD07
4E002BD08
4E002BD09
4E002BD10
4K034AA07
4K034AA09
4K034AA19
4K034BA08
4K034BA09
4K034CA01
4K034DB02
4K034DB03
4K034DB04
4K034DB08
4K034EA12
4K050AA01
4K050AA02
4K050BA02
4K050BA03
4K050CA12
4K050CA13
4K050EA03
(57)【要約】
【課題】異なる金属製品及び/又は製品条件にプロセス調整、特に温度調整を適合することが可能であるように、公知の熱処理ラインを発展形成する。
【解決手段】パス方向Lにおいて相前後して配置されたセグメントを用いて、パスラインLに沿って通過する金属製品プロセス調整のフレキシブルな影響付与のための装置において、セグメントが、炉S2,S3、カプセル化された搬送区間、開放された搬送区間及び/又は冷却区間として形成されており、第1の炉セグメントS2,S3のほかに、別の炉セグメントS2,S3を位置決め可能であり、セグメントが、駆動ユニットを備えた搬送装置Tを用いて交換可能であり、搬送装置Tによってセグメントが別のセグメントと交換可能であり、互いに交換可能なセグメントが共通の支持構造7に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パス方向(L)において相前後して配置された少なくとも2つのセグメント(S)を用いて、1つのパスライン(L)に沿って通過する金属製品、特にスラブ、薄スラブ又は予備圧延された熱間ストリップのプロセス調整、特に温度調整のフレキシブルな影響付与のための装置であって、
少なくとも1つのセグメント(S)が、炉(S2,S3)、カプセル化された搬送区間(S4)、開放された搬送区間(S1)及び/又は冷却区間(S8)として形成されており、第1の炉セグメント(S2,S3)のほかに、別の炉セグメント(S2,S3)を位置決め可能である、前記装置において、
-少なくとも1つのセグメント(S)が、少なくとも1つの駆動ユニットを備えた搬送装置(T)を用いて交換可能であり、
-搬送装置(T)によって、搬送過程を用いて、1つのセグメント(S)が1つの連続的な動作工程において別のセグメント(S)と交換可能であり、
-互いに交換可能なセグメント(S)が共通の支持構造(7,8)に配置されている
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
搬送過程を用いて、搬送装置(T)によって1つのセグメント(S)が他のセグメントと同時に交換可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
セグメントが支持構造(7,8)において可動に、及び/又は連結解除可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
外部の位置(9)からセグメント(S)を支持構造(7,8)に設けることが可能であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
3つ以上のセグメント(S)を支持構造(7,8)に設けることが可能であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
支持構造(7,8)が、複数のセグメント(S)を互いに結合するための少なくとも1つの連結部(K)及び/又は少なくとも1つの支持プレート(P)を備えていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つのセグメント(S)が、パスライン(L)に沿って金属製品を搬送するためのローラを備えていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
炉セグメント(S3)が誘導式の加熱部を備えていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
炉セグメント(S2,S3)が、周囲に対して炉室を密閉するための少なくとも1つの炉の扉、好ましくは2つの炉の扉を備えていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
セグメント(S)、好ましくは交換可能なセグメントが、測定装置、好ましくは表面性状を検出する測定装置を備えていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
セグメント(S)が、表面を処理するための、特に表面を焼き、スケール除去し、ブラストし、及び/又は研磨するための装置(S6,S7)を備えていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つのセグメント(S)が、パスライン(L)においてセグメント(S)を向き調整する位置決め手段を備えていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
隣り合うセグメント(S)が、セグメント(S)を互いに結合解除可能に結合する相補的な連結部材(K)を備えていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
装置の複数のセグメント、好ましくは全てのセグメント(S)が、搬送装置(T)を用いて交換可能であることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
熱間圧延ラインの少なくとも1つの圧延機スタンドがパスライン(L)の始部に配置されていることを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
熱間圧延ラインの少なくとも1つの圧延機スタンドがパスライン(L)の終部に配置されていることを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
セグメント(S)及び搬送装置(T)のための開ループ制御部又は閉ループ制御部(ST)が設けられていることを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
好ましくは請求項1~17のいずれかにより、パスライン(L)において相前後して配置された少なくとも2つのセグメント(S)を用いて、パスライン(L)に沿って通過する金属製品(A,B)、特にスラブ、薄スラブ又は予備圧延された熱間ストリップのプロセス調整、特に温度調整のフレキシブルな影響付与のため方法において、
-セグメント(S)の交換によって、プロセス調整、特に温度調整が、金属製品(A,B)のパス方向(L)に沿って変更され、
-1つのセグメント(S)の他のセグメント(S)との交換が、搬送過程を用いて、1つの連続的な動作工程において搬送装置(T)によって行われ、
-共通の支持構造(7,8)に配置されたセグメント(S)が移動する
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
セグメント(S)の交換が、30分以内、好ましくは15分以内、更に好ましくは5分以内に行われることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
-上位の開ループ制御部(ST)又は閉ループ制御部が、プロセス調整に影響を与え、
-設定されたデータに基づき、好ましくは自動的に、温度調整を変更するためにセグメント(S)の交換を指示し、及び/又は個々のセグメント(S)に作用すること
を特徴とする請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
開ループ制御部又は閉ループ制御部(ST)が、パスラインにあるセグメント(S)に適した金属製品(A,B)の材料を特定することを特徴とする請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
開ループ制御部又は閉ループ制御部が、金属製品(A,B)の材料のためにパスラインに配置されるべきセグメント(S)を特定することを特徴とする請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
金属製品(A,B)が、ローラを用いて、パスライン(L)に沿って搬送されることを特徴とする請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのセグメントを用いて、1つのパスラインに沿って通過する金属製品のプロセス調整、特に温度調整のフレキシブルな影響付与のための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製品は、その製造時に、多くの場合、異なる目的方向を有する複数の熱処理を通る。ここで、熱処理は、加熱ステップ、保持(保温)ステップ、冷却ステップ又は例えば気体による表面処理も含み得る。通常、熱処理ラインは、特殊な金属製品又は金属製品の材料グループに対して最適化して設定及び構成されている。通常、炉は変更される温度設定に対して非常に鈍く反応するため、温度調整の変更、例えば炉の保持領域内での意図的な冷却は、存在する熱処理ラインにおいて実現するのは困難であり得る。
【0003】
したがって、温度調整の変更は、相応の時間遅延あるいは生産における停止時間を伴ってのみ実行されることが可能である。同様に、安全性の理由から相応の洗浄時間を遵守する必要があるため、特に炉セグメントが大きい場合には、ガス(気体)交換にも時間がかかる。加熱手法の根本的な交換、例えば天然ガス燃焼式の炉を誘導式の加熱に交換することは不可能である。同様に、メンテナンスの目的のために、生産中断時又は生産可能性の制限時にのみこのようなセグメントを交換することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、異なる金属製品及び/又は製品条件にプロセス調整、特に温度調整を適合することが可能であるように、公知の熱処理ラインを発展形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、請求項1の特徴を有する装置と、請求項18の特徴を有する方法とによって解決される。パスラインにおいて相前後して配置された少なくとも2つのセグメントを用いて、1つのパスラインに沿って通過する金属製品、特にスラブ、薄スラブ又は予備圧延された熱間ストリップのプロセス調整、特に温度調整が影響を受け、少なくとも1つのセグメントが、搬送過程を用いて、駆動ユニットを有する搬送装置によって、1つの連続的な動作工程において他のセグメントと交換可能である。少なくとも1つのセグメントは、炉、カプセル化(封止)された搬送区間、開放された搬送区間及び/又は冷却区間として形成されており、第1の炉セグメントのほかに、別の炉セグメントを位置決め可能である。
【0006】
本発明における意味合いでの「パスラインにおいて相前後して」は、セグメントがパスライン内に配置されており、したがって生産プロセスに関与し得る一方、隣りのセグメントはパスラインの外部、好ましくはパスラインに対して側方に離間して配置されている場合と理解される。本発明における意味合いでの連続的な動作工程は、多数の個別の動作ステップで構成されることも可能である。当該動作ステップは、本質的な時間遅延なしに連続して、又は同時に実行される。駆動ユニットは、リニア駆動部であってもよいし、また回転駆動部であってもよい。本発明の意味合いでは、駆動部は、好ましくは電気式、空圧式又は油圧式であってよい。駆動ユニットは、外部に配置されることができるとともに、セグメント遺体してのみ作用するか、又はセグメントに配置されることが可能である。
【0007】
互いに交換可能なセグメントは、共通の支持構造、好ましくはレールにおいて、及び/又は好ましくは隣のセグメントのパスラインに対して横方向に、及び/又は平行に配置されている。本発明の意味合いでのプロセス調整は、プロセスデータの検出及び/又は装置の開ループ制御あるいは閉ループ制御のための、及び/又は上位のDVシステムでのメモリのための製品データの検出も含み得る。メンテナンスの目的のための、1つのセグメントの他のセグメントとの交換も、本発明によれば、プロセス調整と理解される。
【0008】
好ましくは、搬送過程を用いて、搬送装置によって、同時に1つのセグメントを他のセグメントと交換可能である。本発明の意味合いでは、同時にとは、パスラインから1つのセグメントが出るように移動するのと同期して他のセグメントがパスラインへ入るように移動することを意味する。
【0009】
好ましくは、セグメントは、支持構造において移動可能に、及び/又は結合解除可能に設けられている。これにより、セグメントは、支持構造において交換可能であるとともに、製造されるべき製品の根本的な交換時に他の種類のセグメントと置き換えられるとともにパスラインへもたらされることが可能である。
【0010】
好ましくは、セグメントは、外部の位置から支持構造へ設けられることが可能である。特に、動作中の設置時には、対応する生産計画に関連して異なる金属製品及び/又は材料をフレキシブルに製造することが可能である。
【0011】
本発明によれば、少なくとも2つのセグメントが共通の支持構造に配置される。理想的には、3つ以上のセグメントを支持構造に設けることが可能である。これにより、プロセス調整の変更に必要な時間が短縮される。
【0012】
好ましくは、支持構造は、少なくとも1つの連結部及び/又は複数のセグメントを結合する少なくとも1つの支持プレートを備えている。これにより、様々なセグメントを共通の駆動装置を介して同時に搬送することが可能である。連結部では、セグメントが支持構造に直接配置されており、支持プレートでは、セグメントは、支持構造に設けられた平坦な構造部に共通に設置される。
【0013】
少なくとも1つのセグメントは、好ましくは金属製品をパスラインに沿って搬送するためのローラを備えている。金属製品を搬送するためのローラを用いることで、表面損傷についての確率が低減される。搬送時に高温であればなおさらである。
【0014】
理想的には、炉セグメントは誘導式の加熱部を備えている。これにより、例えば圧延機スタンドにおける特にブローチング前に、金属製品を迅速に加熱することが可能である。
【0015】
好ましくは、炉セグメントは、周囲に対して炉室を密閉するための少なくとも1つの炉の扉、好ましくは2つの炉の扉を備えている。これにより、例えば、目的とする炉雰囲気をパスラインの外部においても維持することができ、炉セグメントをラインへ復帰させるときの洗浄時間が低減される。さらに、これにより、炉セグメントの冷却によるエネルギー損失が低減される。
【0016】
セグメント、好ましくは交換可能なセグメントは、好ましくは、好ましくは表面性状を検出する測定装置を備えている。これにより、金属製品にとっても必要であると思われるとともにメンテナンスコストがこれにより削減される場合にのみ、測定装置を用いることが可能である。
【0017】
好ましくは、セグメントは、特に焼き、スケール除去し、ブラスト(吹付、吹払い)し、及び/又は研磨によって表面を処理する装置を備えている。そして、特に、交換可能な複数のセグメントが存在し、及び/又は表面検査が事前に行われる場合には、これにより、金属製品の表面は、異なるようにフレキシブルに処理され、所望の状態にもたらされることが可能である。これにより、最小限の材料除去によって欠陥を除去する処理手法のみが用いられるため、金属の生産性を改善することが可能である。
【0018】
少なくとも1つのセグメントは、好ましくはパスラインにおいてセグメントを向き調整する位置決め手段を備えている。位置決め手段は、パスラインに沿ったセグメントの確実な位置決めを可能し、これにより、装置全体を通る金属製品の通過を改善する。
【0019】
セグメント、好ましくは互いに隣り合うセグメントは、理想的には、セグメントを互いに結合解除可能に結合する相補的な連結部材を備えている。特にセグメントの互いに緊締に関連する連結により、装置全体の剛性ひいては装置を通る金属製品の通過が改善される。
【0020】
好ましくは、装置の複数のセグメント、より好ましくは全てのセグメントが、搬送装置を用いて交換可能である。これにより、従来技術に基づくコンセプトに比してフレキシビリティが向上する。
【0021】
好ましくは、パスラインの始部には熱間圧延ラインの粗圧延機が配置されており、パスラインの終部には熱間圧延ラインの仕上圧延機が配置されている。これら両圧延ライン間では、特別な温度調整によって好ましくは表面欠陥の検出に関連して、及び/又は表面欠陥の除去によって、特に高い特質を有する金属製品を生成することが可能である。
【0022】
上位の開ループ制御部又は閉ループ制御部は、理想的にはセグメントのために存在する。セグメントのフレキシブルな使用によって可能な構成は、セグメントの使用及びセグメント自体が開ループ制御部又は閉ループ制御部によって好ましくは全自動かつオンラインでなされる場合に、特に有利に活用されることが可能である。開ループ制御部又は閉ループ制御部が上位の製造計画部又は制御部と接続されていればなおさらである。
【0023】
さらに、本発明の課題は、請求項18の特徴を有する方法によって解決される。好ましくは請求項1~17のいずれかにより、パスラインにおいて相前後して配置された少なくとも2つのセグメントを用いて、パスラインに沿って通過する金属製品、特にスラブ、薄スラブ又は予備圧延された熱間ストリップのプロセス調整、特に温度調整のフレキシブルな影響付与のために、セグメントの交換によって、プロセス調整、特に温度調整が、金属製品のパス方向に沿って変更される。隣の他のセグメントとの1つのセグメントの交換は、搬送過程を用いて、連続的な動作工程において搬送装置によって行われる。共通の支持構造に配置されたセグメントは、好ましくはレールにおいて、及び/又は好ましくは隣のセグメントのパスラインに対して横方向に移動する。
【0024】
セグメントの交換は、理想的には30分以内、好ましくは15分以内、更に好ましくは5分以内に行われる。当該短い交換インターバルにより、プロセス調整において変更が必要な場合に、製造全体における生産中断が低減される。
【0025】
好ましくは、開ループ制御部又は閉ループ制御部は、プロセス調整、特に温度調整に影響を与えるとともに、設定されたデータに基づき、好ましくは自動的に、温度調整を変更するためにセグメントの交換を指示し、及び/又は個々のセグメントに作用する。これにより、設備条件におけるエラーについての可能性が低減され、設備の取扱い及び操作が単純化される。
【0026】
好ましくは、開ループ制御部又は閉ループ制御部は、パスラインに存在するセグメント又はパスラインに配置されるべきセグメントによる金属製品の材料に適した材料を特定する。これにより、第1の場合には、適合された生産計画によるセグメントのあり得る交換を省略することができるか、又はセグメントの必要な交換が意図的をもたらすことが可能である。両者は、設備の生産性を向上させる。
【0027】
金属製品は、好ましくはローラを用いてパスラインに沿って搬送される。特に、スラブ又は薄スラブ及び粗圧延機後のプレストリップにおいては、表面欠陥の除去が困難である。ここで、ローラにより表面欠陥についての確率が低減される。
【0028】
本発明の説明には、以下の6つの図が添付されている:
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】設備構成を示す図である。
図2a】設備構成を示す図である。
図2b】設備構成を示す図である。
図2c】設備構成を示す図である。
図3a】設備構成を示す図である。
図3b】設備構成を示す図である。
図4】温度曲線によるプロセス調整の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、上述の図を参照しつつ実施例の形態において本発明を詳細に説明する。全ての図において、同一の技術的な要素には同一の参照符号が付されている。
【0031】
図1には、パスライン(通過ライン)Lにおいて互いに連続する2つのセグメントS2,S3と共に本発明による装置についての設備構成が示されている。位置1には、固定して配置された、ガス燃焼部を有するガス炉セグメントS2が配置されている。位置2では、誘導式の炉セグメントS3が、ガス燃焼部を有する別の炉セグメントS2と交換されることが可能である。位置2には搬送装置Tが設けられており、当該搬送装置は、信号技術的に制御部STに接続されている。各セグメントは、支持構造7に配置されている。駆動装置Tを操作することで支持構造7における搬送過程を行うことが可能であり、その結果、セグメントS3はセグメントS2と交換される。このために、両セグメントは、矢印R1の方向へ変位する。
【0032】
図2a、図2b及び図2cには、それぞれ装置についての設備構成が示されている。
【0033】
図2aによる実施例では、パスラインLにおいて2つのセグメントが互いに連続して配置されている。これは、位置1ではガス燃焼される炉セグメントS2であり、位置2ではカプセル化(封止)されたローラテーブル(ローラコンベヤ)S4である。両セグメントは、原則的には支持構造7において交換可能に配置されているが、セグメントS4のみが利用可能で交換可能な2つのセグメントS1,S3を備えている。本例では、当該交換可能なセグメントは、個別の炉セグメントS3及びローラテーブルS1であり、これら炉セグメント及びローラテーブルは、同様に位置2についての支持構造7において配置されている。位置1に属する支持構造7は、更なる交換可能なセグメントを備えていないが、必要な場合には交換可能なセグメントを収容するように構成されている。利用可能な支持構造7のほかに、パーキング位置9には別の交換セグメントS8が、必要な場合には支持構造7へ位置決めされ得る急速冷却部の形態で配置されている。本例では、このために屋内クレーンが推奨される。当該実施例の全てのセグメントは個別の駆動装置Dを有しており、当該駆動装置は、セグメントを個別に動作させることが可能である。好ましくは、このためにモータ式の駆動部が用いられる。支持構造7は本実施例ではレールシステムとして設定されており、当該レールシステムでは、セグメントが走行するように、又は摺動するように交換されることが可能である。
【0034】
セグメントS4を交換するために、関連する媒体供給部への全ての連結部を解除する必要があり、場合によってはあり得る、パス方向Dへのセグメントへの連結部も同様に解除される必要がある。セグメントの交換は、パスラインに対して垂直で双方向矢印R2の両方向のうち1つの方向への3つ全ての交換セグメントS1,S4,S3の衝突することのない、好ましくは同期した搬送によってなされる。交換可能なセグメントの搬送を、2つ又は3つのセグメントについて同期して行うことが可能である。これに代えて、連続的(シーケンシャル)な搬送を行うことも可能である。セグメントの個別駆動部により、このフレキシビリティが可能となる。ローラテーブルS1がパスラインLへ搬送されるべき場合には、パス方向Lから見て左方への搬送が必要である。誘導式の炉セグメントS3がパスラインLへ搬送されるべき場合には、パス方向Lから見て右方への搬送が必要である。
【0035】
図2bによる実施例では、パスラインLにおいて2つのセグメントが互いに連続して配置されている。これは、位置1ではガス燃焼される炉セグメントS2であり、位置2では誘導式の炉セグメントS3である。セグメントS3のみが、支持装置7において交換可能に配置されているとともに、表面検査部を有するローラテーブルS5及びローラテーブルS1の形態の、利用可能で交換可能な2つのセグメントを備えている。位置1でのセグメントは、固定して配置された、ガス燃焼部を有するガス炉セグメントS2である。セグメントに対する空間的な近傍には、占有されていないパーキング位置9が配置されている。
【0036】
位置2の交換セグメントは、結合解除可能に互いに結合されている。当該実施例では、3つ全てのセグメントS1,S3,S5が1つの共通なプラットフォームPに配置されており、当該プラットフォームは、セグメントS1,S3,S5の結合を担う。結合を、ロッド又はこれに類する形態によって担うことも可能である。図示の結合あるいは支持プレートPにおける共通の配置によって、共通の、支持プレートに割り当てられた駆動部Dによって3つ全てのセグメントを搬送することが可能である。個々のセグメントに割り当てられた駆動部は不要である。駆動部は、モータ式に構成されるか、又はシリンダを介して構成されることが可能である。
【0037】
セグメントS3を交換するために、関連する媒体供給部の全ての連結部Kを解除する必要があり、場合によってはあり得る、パス方向Lへのセグメントへの連結部Kも同様に解除される必要がある。セグメントの交換は、パスラインLに対して垂直で双方向矢印R2の両方向のうち1つの方向への3つ全ての交換セグメントS1,S3,S5の搬送によってなされる。ローラテーブルS1がパスラインLへ搬送されるべき場合には、パスラインLから見て左方への搬送が必要である。表面検査部を有するローラテーブルS5がパスラインLへ搬送されるべき場合には、パス方向Lから見て右方への搬送が必要である。両方の搬送ケースでは、セグメントの搬送が同時になされる。
【0038】
図2cには、図2bに対応するセグメントの配置が示されている。位置2の交換セグメントは、共通の駆動ユニットを介して互いに連結されている。これにより、中央の、個々のセグメントに割り当てられていない駆動部は、セグメントを共通かつ同期して移動させることが可能である。連結部Kは、ロッド又はこれに類する形態によって担われることができ、駆動は、モータ式に、又はシリンダによって行われることが可能である。
【0039】
パスラインLにおいて相前後して配置されるセグメントの数を、図2a~図2cの全ての実施例において任意に増やすことが可能である。
【0040】
図3a及び図3bには、それぞれ本発明による装置についての別の例示的な構成が示されている。図3aによる実施例では、パスラインLにおいて3つのセグメントが互いに連続して配置されている。これは、位置1ではガス燃焼される炉セグメントS2であり、位置2,3ではそれぞれローラテーブルセグメントS1である。各位置1~3は、2つのセグメントのために割り当てられた固有の支持構造7を有している。
【0041】
支持構造8は、パスラインLに対して平行に配置されている。支持構造7,8は互いに交差している。支持構造8には、更なるセグメント、すなわち誘導式の炉セグメントS3、別のガス燃焼式の炉セグメントS2及びスカーフィング装置を有するローラテーブルS6が配置されている。全てのセグメントは、個別の駆動装置Dを備えている。
【0042】
位置2のセグメントS1が交換されるべき場合には、支持構造8における関連する構造空間がまずは空けられる必要があり、その結果、セグメントS1はパスラインLから双方向矢印R2の方向へ平行な支持構造8へ搬送されることが可能である。パスラインLへ搬入されるべきセグメントは、パスラインLの手前で位置2に位置決めされる。このために、平行な支持構造8にある全てのセグメントは、衝突することなく、好ましくは同期して双方向矢印R3の方向へ移動し、その結果、交換されるべきセグメントは、空の位置2の手前に位置する。後続ステップでは、交換されるべきセグメントは、パスラインLへの双方向矢印R2の方向に搬送されることができ、したがって、動作位置にある。当該互いに連続した動作ステップは、連続的な動作過程を形成するとともに、わずかな時間のみを要する、部分的に自動化された、又は完全に自動化されたフローシーケンスへ良好に組み合わせられることが可能である。
【0043】
図3bによる実施例では、パスラインLにおいて3つのセグメントS1,S2が互いに連続して配置されている。これは、位置1ではガス燃焼される炉セグメントS2であり、位置2,3ではそれぞれローラテーブルS1である。各位置1~3は、2つのセグメントのために割り当てられた固有の支持構造7を有している。
【0044】
支持構造8は、パスラインLに対して平行に配置されている。支持構造7,8は互いに交差している。支持構造8には、更なるセグメント、すなわちローラテーブルS1及び別のガス燃焼式の炉セグメントS2が配置されている。セグメントは、共通の支持プレートPにおいて互いに結合されて配置されている。セグメントは、いずれも個別の駆動部を備えていない。セグメントに対する空間的な近傍におけるパーキング位置9では、水スケール除去部を有するローラテーブルセグメントS7が位置決めされている。
【0045】
位置1におけるセグメントS2が交換されるべき場合には、支持プレート8における関連する構造空間がまずは空けられる必要があり、その結果、セグメントS2はパスラインLから双方向矢印R2の方向へ平行な支持プレートPへ搬送されることが可能である。パスラインLへ搬入されるべきセグメントは、位置1の手前に位置決めされる。このために、支持プレートPは、平行な支持構造8において双方向矢印R3の方向へ移動し、その結果、交換されるべきセグメントは、空の位置1の手前に位置する。セグメントは共通に支持プレートPにおいて搬送されるため、駆動部Dは、搬送プレートPのみに割り当てられており、各セグメントには割り当てられていない。後続ステップでは、交換されるべきセグメントは、パスラインLへの双方向矢印R2の方向に搬送されることができ、したがって、動作位置にある。当該互いに連続した動作ステップは、連続的な動作過程を形成するとともに、わずかな時間のみを要する、部分的に自動化された、又は完全に自動化されたフローシーケンスへ良好に組み合わせられることが可能である。
【0046】
本実施例では、それぞれの中央の駆動部Dを用いて双方向矢印の方向へセグメントが搬送される。中央の駆動部Dは、各セグメントに連結する、シリンダ又はモータ式の駆動部の形態で構成されることができる。したがって、セグメントは、固有の駆動装置なしに個々に移動することも可能である。
【0047】
パスラインLにおいて相前後して配置されるセグメントの数を、図3aあるいは図3bの両実施例において任意に増やすことが可能である。図2a及び図2bによる実施例に比べて、双方向矢印R3による追加的な搬送方向により、追加的なフレキシビリティと、交換可能なセグメントの数の増加とを達成することが可能である。
【0048】
セグメントSを交換するための図1図3に記載された搬送過程は、温度調整を適合するためのみならず、同様にメンテナンス措置の実行にも適している。故障した、又はメンテナンスのために設定されたセグメントSがパスラインLから取り外され、他のセグメントSで置き換えられれば、修理作業及びメンテナンス作業をより短い停止時間で実行することが可能である。場合によっては必要な冷却時間及び加熱時間は、パスラインLの外部で行われることができるとともに、プロセス調整を阻害しない。
【0049】
図4には、異なる金属製品のためのプロセス調整の適合と、制御部STに関連した対応する概略的な温度推移とが示されている。金属製品Aは、材料が高い成形温度を必要とする金属製品である。しかし、表面要件は比較的少ない。金属製品Bは、特殊な組織を調整するために、仕上げスタンドにおけるブローチング前に、中間冷却と、短く迅速な加熱とを必要とする。さらに、表面は、コントロールされてスケール除去される。設備構成は、金属製品Aについて、6つのセグメントを有する装置で構成されている。セグメント1は、ローラテーブルS1と、これにつづく2つの炉セグメントS2と、2つのカプセル化されたローラテーブルS4と、誘導式の加熱部を有する炉セグメントS3である。金属製品Bは、Aの設備構成の変形態様によって生産される。セグメント1は、表面検査部を有するローラテーブルS5によって取り換えられる。位置3における炉セグメントS2は、水素雰囲気による集中冷却部S8によって置き換えられる。つづいて、検出される表面欠陥がスカーフィング装置S6によって除去される。これにつづく加熱は、誘導炉セグメントS3と、これにつづく、温度の均一化のためのカプセル化されたローラテーブルS4とによって行われる。両プロセス調整間の切換は、セグメントの交換によって5分以内に行われることが可能である。
【0050】
当該異なるプロセス調整に基づき、フレキシブルなプロセス調整が設定(調整)され得ることが明らかとなる。同様に、上位の制御部STによる6つのセグメントの必要な組合せの演算の意義が明らかとなる。
【0051】
上位の制御部STは製造されるべき最終製品についてのデータセットを受け取り、当該データセットは、本質的な幾何学的なデータ、特に例えば冶金的な、及び/又は表面に関連する特性のような材料特性を含んでいる。制御部STの実施態様に応じて、例えば金属製品Aについての温度シーケンスのような必要なプロセス調整のデータは、最終製品についてのデータセットに既に含まれており、制御部STは、セグメントの交換のみを指示する。他の一実施態様では、制御部STへ供給されるデータセットは、必要なプロセス調整についての完成された情報を含んでいない。この場合、制御部STは、プロセス調整自体のために必要な演算を行うとともに、つづいて、セグメントの必要な編成を開始する。当該演算は制御部において単独で行われることができ、好ましくは、及び演算ユニット及びモデルを有する設備の全体構成に関して、図4において破線で図示された別の演算システム、モデル、データベースなどへの接続が有意義に設定されている。他のモデル及びデータベースとのデータ交換は、制御部による演算を補助及び簡易化することができ、場合によっては、制御部は、例えば温度モデル又は表面モデルによる既に存在する演算を参照し、全体像へ組み合わせることが可能である。
【0052】
制御部STによる演算は、進行している生産に対してオンラインで行われることが可能であり、及び/又はオフラインで行われることが可能である。合目的には、オフライン演算は生産計画に関連付けられるため、プロセス調整がセグメント交換に関連していない製品は閉じた順序(クローズドシーケンス)で製造され、したがって、高い生産性のために、交換過程の総数を制限することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 様々なセグメントについての位置
2 様々なセグメントについての位置
3 様々なセグメントについての位置
4 様々なセグメントについての位置
5 様々なセグメントについての位置
6 様々なセグメントについての位置
7 パスラインに対して垂直な支持構造
8 パスラインに対して平行な支持構造
9 パーキング位置
A 金属製品
B 金属製品
L パスライン
S セグメント
S1 ローラテーブル
S2 ガス燃焼式の炉セグメント
S3 誘導式の炉セグメント
S4 カプセル化されたローラテーブル
S5 表面検査部を有するローラテーブル
S6 スカーフィング装置を有するローラテーブル
S7 水スケール除去部を有するローラテーブル
S8 急速冷却部
T 搬送装置
ST 制御部
D 駆動装置
P プラットフォーム
R1 搬送方向
R2 搬送方向
R3 搬送方向
K 連結部
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図3a)】
図3b)】
図4
【国際調査報告】