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特表2023-505881高トルクに耐えることができる外部ショルダを有する部分的に自動ロック式に係合するねじ接続部
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  • 特表-高トルクに耐えることができる外部ショルダを有する部分的に自動ロック式に係合するねじ接続部 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(54)【発明の名称】高トルクに耐えることができる外部ショルダを有する部分的に自動ロック式に係合するねじ接続部
(51)【国際特許分類】
   F16L 15/04 20060101AFI20230206BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20230206BHJP
   E21B 17/042 20060101ALI20230206BHJP
   E02D 5/24 20060101ALI20230206BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
F16L15/04 A
E21B43/00
E21B17/042
E02D5/24 101
E02D5/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535704
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2020085467
(87)【国際公開番号】W WO2021116264
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】19215951.5
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504255249
【氏名又は名称】ヴァルレック オイル アンド ガス フランス
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ベルジェ,エリック
【テーマコード(参考)】
2D041
2D129
3H013
【Fターム(参考)】
2D041BA19
2D041CA01
2D041CB01
2D041CB06
2D041DB02
2D041DB11
2D129EC07
3H013JA02
3H013JA03
(57)【要約】
本発明は、ねじ接続部に関する。ねじ接続部は、第1の管状要素(C1)と、第2の管状要素(C2)と、を備え、第1の管状要素は、第1のパイプ本体(10)と、雄側端部(1)と、を備え、雄側端部は、遠位面(17)と、雄ねじ領域(13)と、を備え、第2の管状要素は、第2のパイプ本体(20)と、雌側端部(2)と、を備え、雌側端部は、遠位面と、雌ねじ領域(23)と、を備え、雄ねじ領域(13)および雌ねじ領域(23)は、ねじ山の幅が変化されている変化領域と、ねじ山の幅が一定であり、変化領域に隣接する無変化領域と、を備え、雄ねじ領域の変化領域は、雌ねじ領域の変化領域と締め付けられ、雄ねじ領域の無変化領域は、雌ねじ領域の無変化領域と締め付けられ、雄ねじ領域および雌ねじ領域のねじ山プロファイルは、台形状であり、雄側端部のピン側外部ショルダ(37)は、雌側遠位面の対応する当接面(42)に対して軸方向に当接する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ接続部であって、
第1の管状要素(C1)と、第2の管状要素(C2)と、を備え、
前記第1の管状要素は、第1のパイプ本体(10)と、雄側端部(1)と、を備え、
前記雄側端部は、雄側遠位面(17)と、前記雄側端部の外周面に配置された雄ねじ領域(13)と、を備え、
前記第2の管状要素は、第2のパイプ本体(20)と、雌側端部(2)と、を備え、
前記雌側端部(2)は、雌側遠位面と、前記雌側端部の内周面に配置された雌ねじ領域(23)と、を備え、
前記雄ねじ領域(13)および前記雌ねじ領域(23)は、ねじ山の幅が変化されている変化領域(40,50)と、ねじ山の幅が一定であり、前記変化領域に隣接する無変化領域(41,51)と、をそれぞれ備え、
前記雄ねじ領域の変化領域(40)は、前記雌ねじ領域の変化領域(50)と締め付けられ、前記雄ねじ領域の無変化領域(41)は、前記雌ねじ領域の無変化領域(51)と締め付けられ、
前記雄ねじ領域および前記雌ねじ領域のねじ山プロファイルは、台形状であり、ロードフランクと、スタブフランクと、谷底と、山頂と、を含み、
前記雄側端部のピン側外部ショルダ(37)は、前記雌側遠位面の対応する当接面(42)に対して軸方向に当接し、
前記ピン側外部ショルダは、前記第1のパイプ本体と前記雄ねじ部との間に保持されることを特徴とする、
ねじ接続部。
【請求項2】
前記無変化領域における前記雄側スタブフランクと前記雌側スタブフランクとの間のねじの軸方向隙間は、締め付け後に、0.002mm~1mmの範囲であり、好ましくは0.05~0.5mmの範囲であり、より好ましくは0.036mmに等しいことを特徴とする、請求項1に記載のねじ接続部。
【請求項3】
前記雄側スタブフランクが前記雌側スタブフランクと接触し、前記雄側ロードフランクが前記雌側ロードフランクと接触するように、自動ロック式に締め付けられる前記変化領域内のターン数は、2~15の範囲であり、好ましくは2~12の範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載のねじ接続部。
【請求項4】
前記雌側変化領域内のターン数の5%~50%は、不完全な高さを有するねじ山プロファイルを有し、前記変化領域における不完全な雌ねじ山の山頂は、円筒部分に保持されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項5】
前記雌ねじ領域の総ターン数の10%~30%は、不完全な高さを有するねじ山プロファイルを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項6】
前記変化領域および前記無変化領域は、同じ螺旋部上で隣接していることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項7】
前記雄ねじ領域および前記雌ねじ領域の各々は、単一の螺旋部から形成されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項8】
前記雄側無変化領域内のターン数の0~50%は、不完全な高さを有するねじ山プロファイルを含み、前記無変化領域における不完全な雄ねじ山の山頂は、円筒部分に保持されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項9】
前記雄ねじ領域および前記雌ねじ領域の台形状のねじ山プロファイルは、蟻継ぎ式になっていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項10】
前記雄ねじ領域および前記雌ねじ領域の台形状のねじ山プロファイルは、ロードフランクおよび/またはスタブフランクを備え、前記ロードフランクおよび/または前記スタブフランクは、対応する前記フランクの半径方向寸法の少なくとも一部にわたって「負」の角度を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項11】
前記雄ねじ領域および前記雌ねじ領域のロードフランクおよびスタブフランクは、前記第1の管状要素の長手方向軸に垂直な平面と負の角度を画定し、前記負の角度は、1°~15°の範囲であり、好ましくは3°~7°の範囲であり、例えば5°に等しいことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項12】
締め付け後に、前記雄ねじ山の山頂と前記雌ねじ山の谷底との間には半径方向隙間が存在し、例えば前記半径方向隙間は、0.05mm~0.5mmの範囲であり、好ましくは0.05mm~0.15mmの範囲であり、例えば0.1mmに等しいことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項13】
前記ピン側外部ショルダは、1°~45°の範囲、好ましくは5°~20°の範囲、例えば15°に等しい逆角度を画定することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項14】
前記雄側遠位面は、締め付け後に、前記雌側端部の対応する内面からの距離がゼロではないままであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項15】
トーラス/コーンタイプの金属対金属のシール(3)を備え、好ましくはトーラス(15)が前記雄側端部にあり、コーン(26)が前記雌側端部にあり、前記金属対金属のシールは、前記ピン側外部ショルダの反対側で、前記雄ねじ領域(13)と前記雄側遠位面(17)との間に位置することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項16】
前記雄側端部は、前記雄ねじ部と前記金属対金属のシール部との間に円筒形の溝(62)を有することを特徴とする、請求項15に記載のねじ接続部。
【請求項17】
前記ねじ領域は、テーパされており、テーパは、4%~15%の範囲であり、好ましくは1/14であることを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項18】
ケーシングまたはライナーのための、請求項1~17のいずれか1項に記載のねじ接続部の使用方法であって、パイプ本体の外径は、177.8mm(7インチ)超、好ましくは244.5mm(9と5/8インチ)超、さらに好ましくは406.4mm(16インチ)超であるように選択され、前記ケーシングおよび前記ライナーのねじ接続部は、「略同一平面」となっている、使用方法。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか1項に記載のねじ接続部の締め付け方法であって、前記雌側端部の対応する当接面への前記ピン側外部ショルダの当接は、前記変化領域における前記雄側スタブフランクと前記雌側スタブフランクとの間のねじの軸方向隙間がゼロに等しくなる前に行われる、方法。
【請求項20】
締め付け終了時に、前記ピン側外部ショルダが前記雌側端部の対応する当接面に当接し、前記変化領域における前記スタブフランクの間のねじの軸方向隙間は、ゼロよりも大きい、またはゼロに等しいままであることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
締め付け終了時に、前記変化領域における前記スタブフランクの間のねじの軸方向隙間は、前記無変化領域における前記スタブフランクの間のねじの軸方向隙間よりも小さいままであることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高トルクに耐えることができる外部ショルダを有する部分的に自動ロック式に係合するねじ接続部に関する。本発明の設計は、深海等における開発井または試掘井に適している。本発明による接続部は、ケーシングを用いた掘削、掘削中のケーシング作業、セメント注入中の回転、または必要に応じて高度に偏位した坑井でのドラッグ(drag)を緩和またはそれに対応するためなどの特殊な用途に要求される高トルクに耐えることができる。本発明によれば、高トルク容量は、例えば127mm(5インチ)超のパイプ本体に対して40,674N.M(30,000ft.lb)を超える、ショルダ付き接続部よりも高いトルク容量を意味する。用途は、シール性および構造的耐性を損なうことなく、坑井内で回転させる必要がある接続に特に適している。
【0002】
ケーシング継手、ライナーおよびその他の油田用管状要素は、坑井の掘削、完成および生産に頻繁に使用される。例えば、ケーシング継手は、地層を損傷する可能性のある高い坑井圧力(例えば地層圧力を超える坑井圧力)に対して地層を安定させて保護するように坑井内に配置される場合がある。ケーシング継手は、(例えば鋼製またはチタン製の)パイプの部分であり、これらは、ねじ接続部によって、または当該技術分野で知られているその他の任意の接続機構によって、端部から端部まで結合される場合がある。このように、接続部は、通常、結合されたケーシング継手の内部と、ケーシング継手の外壁と坑井(すなわち地層)の内壁との間に形成されたアニュラスとの間に少なくとも1つのシールが形成されるように設計されている。
【0003】
典型的には、雄雌型の管状ねじ接続部では、接続部の雄側要素は「ピン」部材と呼ばれ、雌側要素は「ボックス」部材と呼ばれる。本明細書において、「締め付け(make-up)」とは、ピン部材をボックス部材に係合させ、トルクおよび回転によって部材を互いにねじ込むことを意味する。また、「締め付け」とは、坑井内にパイプストリングを下ろす前に保持される継手の組立工程を意味する。通常、所与の接続部には公称締め付けトルクが設定される。公称締め付けトルクは、正しく係合したピンとボックスについて、坑井内に下ろして必要な性能を確保するように、一方が他方に十分に挿入されて活性化される値に対応する。
【0004】
ねじ山の形状に関して、「ロードフランク」という用語は、ねじ山が形成されたそれぞれのピン部材またはボックス部材の外側端部から離れる方向に面するねじ山の側壁面を定義し、これは、坑井内にぶら下がる下部管状部材の重量(すなわち引張負荷)を支持する。同様に、「スタブフランク」という用語は、それぞれのピン部材またはボックス部材の外側端部に向かう方向に面するねじ山の側壁面を定義し、これは、継手の初期締め付け中に継手を互いに対して圧縮する力、またはボアホールの底に対して下部管状部材を押し付けるために加えられる力(すなわち圧縮力)などを支持する。「谷底」および「山頂」という用語は、同じねじ山の隣接するスタブフランクとロードフランクとの間に保持される表面を定義し、谷底は山頂の対義語であり、山頂はピン側およびボックス側のそれぞれのねじ山の最も外側の表面を定義する。
【0005】
台形状のねじ山は、ロードフランクと、スタブフランクと、谷底と、山頂と、を含む。隣接する2つの谷底の間で、ロードフランク、スタブフランクおよび山頂は、実質的に台形の形状を画定する。ロードフランクと谷底または山頂との間の移行は湾曲していてもよく、スタブフランクと谷底または山頂との間の移行も湾曲していていもよい。蟻継ぎ式ねじ山とは、台形状のねじ山プロファイルを意味する。この場合、ねじ山の第1の高さ位置は、パイプの長手方向軸に沿って測定したねじ山の軸方向幅が同じねじ山の第2の高さ位置の軸方向幅よりも広くなっている位置に存在し、ここで、ねじ山の第2の高さ位置は、ねじ山の第1の高さ位置よりもねじ山の谷底に近くなっている。蟻継ぎ式プロファイルは、特に内圧負荷を伴う牽引圧縮サイクル下で、接続部において雄側部材および雌側部材が半径方向に分離することを防止する。
【0006】
本明細書において、「ねじの変化領域」は、特定のねじ山の形状にかかわらず、ピン部材およびボックス部材において互いに反対方向に軸方向幅(すなわち、パイプの長手方向軸に沿って測定したロードフランクとスタブフランクとの間の軸方向距離)が増加するねじ山である。これにより、接続部の締め付け時に、相補的なピン側およびボックス側の、幅が変化されているねじ山が移動して係合する。幅が変化されているねじ山は、通常、締め付け終了時に自動ロック式構成となる。自動ロック式構成とは、締め付け終了時に、ピン部材およびボックス部材のそれぞれのロードフランクの間にも、ピン部材およびボックス部材のそれぞれのスタブフランクの間にも、ねじの軸方向隙間が残らないことを意味する。
【0007】
ねじ山の幅が接続部に沿って変化する比率は、「幅変化率」として知られる変数によって定義される。本明細書において、「幅変化率」は、技術的には比率ではないが、スタブフランクのリードとロードフランクのリードとの間の差を意味し、ねじ山の回転ごとに対向する表面がどのように組み合わされるかを示している。さらに、本明細書において、ねじ山の「リード」とは、連続するねじ山の構成要素の間の距離の差を意味する。このように、「スタブフランクのリード」は、接続部の軸方向長さに沿った連続するねじ山のピッチのスタブフランクの間の距離を表す。幅が変化されているねじ山の幅のばらつきは、ロードフランクがスタブフランクとは異なるリードを有する結果として生じる。ねじ山のリードは、1回転あたりのmm単位で数値化される場合がある。なお、これは一般的に使用される「ねじ山のピッチ」の逆の意味であり、一般的には1mmあたりのねじ山として数値化されることに留意されたい。
【0008】
典型的には、幅が変化されているねじ山は、例えば米国特許第5,360,239号または米国特許第6,682,101号に記載されているようなものであり、ポジティブストップ式トルクショルダを有さないため、それらの締め付けが「不確実」となる。その結果、ピン部材とボックス部材との相対的な位置は、ポジティブストップ式トルクショルダを有する接続部よりも、適用される所与のトルク範囲に対して選択された締め付け中に、より変化する可能性がある。したがって、選択された締め付け時においてフランクの干渉があり、且つポジティブストップ式トルクショルダを有さない幅が変化されているねじ山の場合、公称締め付けトルクは、締め付けチャート上で操作者が締まり嵌めによるトルク抵抗を観察した後に、選択されたトルク量を得るように定義される。
【0009】
したがって、幅が変化されているねじ山は、より多くのフランクの干渉および/または谷底/山頂の干渉を有するように接続部を設計することで、より高い圧力の気体および/または液体を密閉することができる。しかしながら、干渉が増加すると、選択された締め付け中に接続部の応力が増加して、接続部の早期破壊につながる可能性がある。さらに、締まり嵌めの締め付けが最も高い、幅が変化されているねじ山は、さらに不確実になり、締め付け終了時のピン部材とボックス部材との相対的な軸方向位置が、連続する締め付けおよび分解サイクルにわたって変化することになる。
【0010】
上述したように、典型的には、幅が変化されているねじ山は、ポジティブストップ式トルクショルダを含まない。なぜなら、ポジティブストップ式トルクショルダは、ねじ山に適用できるパイプ厚の量を減らすからである。その代わりに、ねじ山は、「くさび効果」、すなわち、幅が変化されているねじ山がスタブフランクおよびロードフランクと係合して幅変化率を「トルクショルダ」として機能させることに依存している。幅が変化されているねじ山の接続部には、問題が残っている場合がある。しかしながら、幅が変化されているねじ山の選択された締め付け完了時のボックス部材およびピン部材の相対的な最終位置は、締め付けごとにばらつきが生じる場合がある。これは、接続部のねじ山以外の特徴、すなわちシールの接触応力のばらつきを引き起こす場合がある。シールの不具合は、ねじ接続部の早期破壊につながる可能性がある。
【0011】
そのため、米国特許出願第2011/278838号には、対応するシール性能を改善するように、内部シールに隣接するポジティブストップ式内部トルクショルダを有する、ねじ山の幅が変化されている接続部が記載されている。ポジティブストップ式トルクショルダによって、シール面の適切な位置決めが可能になる。このねじ接続部を機械加工するには、シールと幅が変化されているねじ山の両方を同時に適切に組み合わせて適切なバランスを得るために、機械加工公差を小さくする必要がある。
【0012】
また、米国特許第9273521号には、外部シールに隣接するポジティブストップ式外部トルクショルダを有する、ねじ山の幅が変化されている別のタイプの接続部が記載されている。しかしながら、この文献の教示によれば、低い締め付けトルクにおいて、ねじ山の位置に依存することなく、飛び出しの危険性を低減させるために、スタブフランクの間の軸方向隙間が締め付け後にも残ってしまう。接続部は、自動ロック式ではなく、より大きい機械加工公差を許容するため、ねじ山は、いかなるシール機能も提供できず、シール機能をねじ部の両端に追加してシール性を得る必要がある。オーバートルク現象が生じた場合、外部ショルダとシールの両方が機能せず、性能が許容できるものではなくなる。米国特許第9273521号には、高いトルク能力に関する解決策が記載されていない。
【0013】
また、米国特許出願第2018-340378号には、ピン部材とボックス部材の両方のねじ部の端部におけるねじ止め部の特定の設計によって提供されるポジティブストップ式トルクショルダを有する、ねじ山の幅が変化されている別の接続部が記載されている。ピンおよびボックスのねじ止め部は、ピン側およびボックス側の、幅が変化されているねじ山が完全に係合したときに接触するように構成されている。この設計によれば、ピン側のねじ止め部およびボックス側のねじ止め部は、従来のポジティブストップ式トルクショルダのように作用して、締め付け中または他の孔内作業中にねじ接続部でオーバートルクが生じた場合に接続部を「保護」する。このような構成において、接続部でオーバートルクが生じたときに、ねじ止め部が接触するように移動して、管状ねじ要素の追加の相対的な回転運動(およびねじ山の損傷)を防止することができる。米国特許出願第2018-340378号には、ねじ止め部の間の接触応力を、接続部の材料の降伏限界を下回るように維持することが記載されている。
【0014】
ボアホールに挿入させおよび/またはその中で回転させたときに、締め付け後の高いトルクに耐えられるように、加工コストと、締め付け終了時における正確な相対的なシール位置による高いシール性能と、予測可能な締め付け手順の提供との間で適切なバランスをもつ接続部が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、低い製造コストおよび上述した問題に関して、改善された接続部を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ねじ接続部に関する。該接続部は、第1の管状要素と、第2の管状要素と、を備える。第1の管状要素は、第1のパイプ本体と、雄側端部と、を備える。雄側端部は、遠位面と、雄側端部の外周面に配置されたねじ領域と、を備える。第2の管状要素は、第2のパイプ本体と、雌側端部と、を備える。雌側端部は、遠位面と、雌側端部の内周面に配置されたねじ領域と、を備える。雄ねじ領域と雌ねじ領域の両方は、ねじ山の幅が変化されている変化領域と、ねじ山の幅が一定であり、変化領域に隣接する無変化領域と、をそれぞれ備える。雄ねじ領域の変化領域は、雌ねじ領域の変化領域と締め付けられ、雄ねじ領域の無変化領域は、雌ねじ領域の無変化領域と締め付けられる。雄ねじ領域および雌ねじ領域のねじ山プロファイルは、台形状であり、ロードフランクと、スタブフランクと、谷底と、山頂と、を含む。雄側端部のピン側外部ショルダは、雌側遠位面の対応する当接面に対して軸方向に当接する。ピン側外部ショルダは、第1のパイプ本体と雄ねじ部との間に保持される。
【0017】
好ましくは、無変化領域における雄側スタブフランクと雌側スタブフランクとの間のねじ山の軸方向隙間は、締め付け後に、0.002mm~1mmの範囲であってもよく、好ましくは0.05mm~0.5mmの範囲であってもよく、より好ましくは0.036mmに等しくてもよい。
【0018】
例えば、雄側スタブフランクが雌側スタブフランクと接触し、雄側ロードフランクが雌側ロードフランクと接触するように、自動ロック式に締め付けられる変化領域内のターン数は、2~15の範囲であってもよく、好ましくは2~12の範囲であってもよい。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、雌側変化領域内のターン数の5%~50%は、不完全な高さを有するねじ山プロファイルを含んでいてもよい。変化領域における不完全な雌ねじ山の山頂は、円筒部分に保持される。
【0020】
同様に、好ましい本実施形態において、または別の実施形態において、雌ねじ領域の総ターン数の10%~30%は、不完全な高さを有するねじ山プロファイルを含んでいてもよい。
【0021】
好ましくは、変化領域および無変化領域は、同じ螺旋部上で隣接していてもよい。また、さらに好ましくは、雄ねじ領域および雌ねじ領域の各々は、単一の螺旋部から形成される。
【0022】
好ましい実施形態において、雄側無変化領域内のターン数の0~50%は、不完全な高さを有するねじ山プロファイルを含んでいてもよい。無変化領域における不完全な雄ねじ山の山頂は、円筒部分に保持される。
【0023】
好ましくは、雄ねじ領域および雌ねじ領域の台形状のねじ山プロファイルは、高い内圧条件下での飛び出しを回避するために、蟻継ぎ式になっていてもよい。そのために、雄ねじ領域および雌ねじ領域の台形状のねじ山プロファイルは、ロードフランクおよび/またはスタブフランクを備えてもよく、ロードフランクおよび/またはスタブフランクは、対応するフランクの半径方向寸法の少なくとも一部にわたって「負」の角度を有してもよい。雄ねじ領域および雌ねじ領域のロードフランクおよびスタブフランクは、第1の管状要素の長手方向軸に垂直な平面と負の角度を画定してもよい。負の角度は、1°~15°の範囲であり、好ましくは3°~7°の範囲であり、例えば5°に等しい。
【0024】
例えば、締め付け後に、雄ねじ山の山頂と雌ねじ山の谷底との間には半径方向隙間が存在してもよい。例えば、半径方向隙間は、0.05mm~0.5mmの範囲であり、好ましくは0.05mm~0.15mmの範囲であり、例えば0.1mmに等しい。
【0025】
また、ピン側外部ショルダは、1°~45°の範囲、好ましく5°~20°の範囲、例えば15°に等しい逆角度を画定してもよい。このような構成によって、圧縮に対する抵抗力をより高めることができる。
【0026】
雄側遠位面は、締め付け後に、雌側端部の対応する内面からの距離がゼロでないままであってもよい。
【0027】
好ましくは、ねじ接続部は、トーラス/コーンタイプの金属対金属のシールを備えてもよい。好ましくは、トーラスが雄側端部にあり、コーンが雌側端部にある。金属対金属のシールは、ピン側外部ショルダの反対側で、雄ねじ領域と雄側遠位面との間に位置する。したがって、金属対金属のシールは、降伏する場合があるショルダから離れている。金属対金属のシールをさらに保護するために、雄ねじ部と金属対金属のシール部との間に円筒形の溝が設けられてもよい。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、ねじ領域は、テーパされており、テーパは、4%~15%の範囲であり、好ましくは1/14である。
【0029】
また、本発明は、本発明によるねじ接続部をケーシングまたはライナーとして使用することを目的としている。ここで、パイプ本体の外径は、177.8mm(7インチ)超、好ましくは244.5mm(9と5/8インチ)超、さらに好ましくは406.4mm(16インチ)超であるように選択される。これらのケーシングおよびライナーのねじ接続部は、「略同一平面」となっている。
【0030】
また、本発明のねじ接続部と関連して、本発明は、ねじ接続部の締め付け方法を定義することを目的としている。ここで、雌側端部の対応する当接面へのピン側外部ショルダの当接は、変化領域における雄側スタブフランクと雌側スタブフランクとの間のねじの軸方向隙間がゼロに等しくなる前に行われる。このような方法は、締め付け終了時に、ピン側外部ショルダが雌側端部の対応する当接面に当接し、変化領域におけるスタブフランクの間のねじの軸方向隙間がゼロよりも大きいか等しいままであるように定義されてもよい。代替的に、または追加的に、締め付け終了時に、変化領域におけるスタブフランクの間のねじの軸方向隙間は、無変化領域におけるスタブフランクの間のねじの軸方向隙間よりも小さいままであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照してより明確になるであろう。
図1】本発明による接続部のねじ領域を模式的に示す断面図である。
図2a】本発明による接続部の雌ねじ領域の台形状のねじ山プロファイルを詳細に示す断面図である。
図2b】本発明による接続部の雄ねじ領域の台形状のねじ山プロファイルを詳細に示す断面図である。
図3図1に示す雄側部材および雌側部材のねじ山に沿った、ロードフランクとスタブフランクとの間のリードの変化を、雄側端部の遠位面からの距離の関数として示すグラフである。
図4】雄側端部のねじ領域と遠位面との間の詳細を模式的に示す断面図である。
図5a】本発明による接続部において、雌側端部における外部ショルダとねじ領域との間の弾塑性有限要素解析に基づいて、締め付け終了時に観察される歪みのばらつきの詳細を示す断面図である。
図5b】本発明による接続部において、雄側端部における外部ショルダとねじ領域との間の弾塑性有限要素解析に基づいて、締め付け終了時に観察される歪みのばらつきの詳細を示す断面図である。
図6】本発明による接続部のトルク締め付け曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付の図面は、本発明を構成するのに役立つだけでなく、必要に応じてその定義にも貢献する。本願の断面図におけるすべての図面では、構成要素は管と接続部の軸に関して実質的に対称であるため、平面における半分のみを示している。
【0033】
図1は、雄側端部1を有する第1の管状要素C1と雌側端部2を有する第2の管状要素C2との締め付けによって形成された本発明による接続部を示している。接続部は、内部シール3を備える。
【0034】
管状要素C1およびC2に各々は、パイプ本体10および20をそれぞれ備える。本発明による接続部を形成するように意図された雌側端部および雄側端部は、これらの管の端部に配置される。雄側端部1は、第1のパイプ本体10の一端に配置される。雌側端部2は、第2のパイプ本体20の一端に配置される。パイプ本体10および20は、数メートルの長さを有してもよく、例えば、範囲3タイプの10メートル~15メートルの長さを有してもよい。好ましくは、パイプ本体10および20は、同じ公称外径と同じ公称パイプ幅とを有する。長い管の一端には、雄側端部が設けられてもよく、他端には、雌ねじ要素が設けられてもよい。しかしながら、本発明は、その両端に雌側端部が設けられた短い管を備えるカップリングを採用する接続部にも適用されてもよい。
【0035】
本発明による接続部は、炭化水素井のためのケーシングストリングまたはチューブストリング、作業ライザーまたは掘削パイプストリングを構成するために使用されてもよい。
【0036】
好ましくは、管は、鋼から形成される。例えば、鋼材のグレードは、80ksi(550MPa)~140ksi(965MPa)の範囲である。例えば、鋼のグレードは、100ksi(690MPa)超であり、例えば125ksi(860MPa)である。実際、これらは異なるグレードを有する非合金鋼、低合金鋼または高合金鋼から作製されてもよく、または例えば機械的負荷のレベル、または管の内部または外部の流体の腐食性などの使用条件に応じて、鉄合金または非鉄合金から、あるいは熱処理または硬化加工によって作製されてもよい。また、例えば耐食性合金または合成材料などの保護コーテイングで覆った、耐食性が低い鋼管を使用することもできる。
【0037】
図1において、雄側端部1は、雄側端部1の外周面に配置された雄ねじ領域13を備え、雌側端部2は、雌側端部の内周面に配置された雌ねじ領域23を備える。本実施形態によれば、雄ねじ領域13および雌ねじ領域23は、実質的に同様にテーパされており、例えば、テーパは、4%~15%の範囲であり、好ましくは約1/14である。
【0038】
このようなねじ領域13および23を互いに締め付けるために、ねじ用ドープまたは少なくとも1つのねじ領域に既に塗布されたドープフリーコーテイングを使用することが好ましい。
【0039】
雄ねじ領域13と雄側端部1の自由遠位端17との間には、雄側内部リップ部11が設けられる。自由遠位面17は、管状要素C1の長手方向軸に対して実質的に半径方向に延在する。締め付け終了時に、雄側遠位面17は、雌側端部2とのいかなる接触もない。雌側端部2は、雄側内部リップ部11に対向する雌側内部凹部24を備える。雌側内部凹部は、雄側遠位面17からゼロではない距離にある内部ショルダ28を備える。
【0040】
また、雌側内部凹部は、テーパ状の雌側内部シール面26を備える。シール面26は、2°~15°の範囲の円錐半角で内部ショルダ28に向けて直径が減少する。このシール面26は、雄側内部リップ部11に設けられた対応する雄側内部シール面15と干渉接触することができる。雌側内部シール面26は、雄側内部シール面15と同じテーパを有してもよい。雄側内部シール面15は、10mm~80mmの範囲の凸状半径部を有する円環形状であってもよい。
【0041】
さらに、雄側端部1は、パイプ本体10の方向において雄ねじ領域13を越えて、その外周に雄側外部凹部34を備える。雄側外部凹部は、雄ねじ領域13に直接隣接する円筒面34を備える。円筒面34は、ピン側外部ショルダ37とも呼ばれる外部当接面37まで延在する。雌側端部2は、自由遠位面42の方向においてねじ領域23を越えて、その内周に雌側外部リップ部21をさらに備える。雌側外部リップ部21は、円筒形であり、ゼロではない距離において対応する雄側外部凹部の円筒面34に対向する。
【0042】
締め付け終了時に、雌側遠位面42は、対応する雄側外部当接面37に当接して接続部に外部ショルダを提供する当接面を形成する。外部当接面37は、接続部の長手方向軸に垂直な方向に対して正の角度αを有する。正の角度は、三角関数的に、すなわち時計回りに方向付けられている。好ましくは、外部当接面37と雌側遠位面42の両方は、同じ角度を呈している。代替的に、雌側遠位面は、正の角度αとはわずかに不一致であってもよい。正の角度αは、1°~45°の範囲であり、好ましくは5°~20°の範囲であり、本実施形態において15°に等しい。
【0043】
ねじ領域13および23は、ねじ歯プロファイルを有する台形状のねじ山を備える。ねじ山は、ロードフランクLFと、スタブフランクSFと、谷底Rと、山頂Cと、を含む。台形状の雄ねじ歯は、ロードフランクLFpと、スタブフランクSFpと、谷底Rpと、山頂Cpと、を含む。台形状の雌ねじ歯は、ロードフランクLFbと、スタブフランクSFbと、谷底Rbと、山頂Cbと、を含む。本発明の一実施形態によれば、図2aおよび図2bに示すように、これらのねじ領域は、蟻継ぎ式プロファイルを有する歯を備える。谷底RpおよびRb、ならびに山頂CpおよびCbは、パイプ本体10および20の長手方向軸Xに平行である。ロードフランクFPpまたはFPbと、それに対応するように隣接する谷底RpまたはRbとの間の角度β1、ならびにスタブフランクSFpと、それに対応するように隣接する谷底RpまたはRbとの間の角度β2は、共に90°未満であり、好ましくは85°未満であるか、それに等しい。好ましくは、角度β1とβ2は等しい。
【0044】
このように、蟻継ぎ式である台形状のねじ山プロファイルにおいて、山頂の幅は、その山頂と隣接する谷底との間に画定される位置における歯の幅よりも大きい。図に示すように、好ましくは、雄側の歯の高さHpは、雌側の歯の高さHbよりも半径方向に小さい。これにより、雄側山頂Cpと雌側谷底Rpとの間に半径方向隙間が画定される。ねじ領域13および23がテーパ状であるため、雄側ロードフランクLFpの半径方向高さHsfpは、Hpよりも小さく、同様に、雌側ロードフランクLFbの半径方向高さHsfbは、Hbよりも小さく、Hsfpは、Hsfbよりも小さい。この半径方向隙間は、締め付け時のドープのための螺旋状経路を画定する。山頂および谷底は、同じ長手方向軸に平行であり、半径方向隙間は、経路に沿ってすべて一定の半径方向高さを有してもよく、例えば高さは、0.1mmである。
【0045】
ねじ領域13および23の各々は、変化領域40および50、またはくさび領域と、無変化領域41および51と、を備える。図3は、図1に示す雄ねじ領域および雌ねじ領域について、接続部が締め付けられたときのロードフランクとスタブフランクとの間のリードの変化を、雄側端部1の遠位面17からの距離の関数として示す、本発明の異なる実施形態に関するグラフである。図3のグラフは、雄側スタブフランク(SFP_p)、雄側ロードフランク(LFP_p)、雌側スタブフランク(SFP_b)、および雌側ロードフランク(LFP_b)のそれぞれのy軸に沿ったリード値を示している。ここで、x軸は、接続部が締め付けられたときの雌側遠位当接面42と雄側遠位面17との間の、管状要素の長手方向軸に沿ったねじ山の位置を示している。
【0046】
より詳細には、図3に示すように、雄ねじ領域13は、第1の部分40を備える。ここで、雄側スタブフランクの間のリードSFL_pは、値SFL_p1で一定であり、雄側ロードフランクの間のリードLFL_pは、一定であるが異なる値LFL_p1である。図1に示す実施例において、LFL_p1は、SFL_p1よりも厳密に大きい。例えば、本発明の一実施形態において、次式が満たされる。
・ LFL_p1=8.466mm
・ SFL_p1=8.066mm
雄ねじ領域13の第2の無変化部分41において、リードSFL_pは、同じ値SFP_p1で一定であり、リードLFL_pは、一定であり且つSFL_pに等しくなる。
【0047】
したがって、ロードフランクのリードとスタブフランクのリードとの差である第1の部分50の幅変化率は、ここでは0.4mmに等しい。
【0048】
図3に示すように、雌ねじ領域23は、第1の部分50を備える。ここで、雌側スタブフランクの間のリードSFL_bは、値SFL_b1で一定であり、雌側ロードフランクの間のリードLFL_bは、一定であるが異なる値LFL_b1である。図1に示す実施例において、LFL_b1は、SFL_b1よりも厳密に大きい。例えば、本発明の一実施形態において、次式が満たされる。
・ LFL_p1=LFL_b1
・ SFL_p1=SFL_b1
雌ねじ領域23の第2の部分51において、リードSFL_bは、同じ値SFL_b1で一定であり、リードLFL_bは、一定であり且つSFL_bに等しくなる。本発明の範囲内で、他のスタブフランクのリード値および他のロードフランクのリード値も許容可能である。
【0049】
したがって、第1の部分50および51の幅変化率は同一である。また、雄ねじ領域13および雌ねじ領域23は、雄側変化領域40が雌側変化領域50に重なり、雄側無変化領域41が雌側無変化領域51に重なるように構成される。
【0050】
本発明による接続部の締め付けは、外部ショルダに当接したときに、雌側端部2への雄側端部1の軸方向移動が停止するようになっている。したがって、変化領域と無変化領域との間の変化の相対的な位置が決定される。そのため、雄ねじ領域と雌ねじ領域の両方に対するスタブフランクのリードにおける変化は、同じターン内、好ましくは同じ半ターン内で生じる。ねじ領域13および23は、一条ねじであってもよい。ねじ領域の各々は、固有の先細りねじであってもよい。固有の先細りねじとは、中断のないねじを意味する。したがって、変化領域および無変化領域は、同じ螺旋部上で隣接している。スタブフランクの角度β2およびロードフランクの角度β1は、変化領域40、50と無変化領域41、51の両方において同じままである。
【0051】
無変化領域41および51の歯が互いに締め付けられたときに、一定の幅を有するねじ山が自動ロック式に締め付けられないので、無変化領域41および51のスタブフランクの間にねじの軸方向隙間TAGが画定される。TAGは、例えば0.3mm超である。ピン側外部ショルダ37が対応する当接面42に当接したときに、変化領域におけるロードフランクとスタブフランクとの間のねじの軸方向隙間は、正の値であってもよく、ゼロに等しくてもよい。締め付け終了時に正の値である場合、変化領域40、50におけるスタブフランクの間のねじの軸方向隙間は、TAGよりも小さいままである。
【0052】
したがって、締め付け後に接続部をボアホール内に下ろして回転させたときに、余分なトルクがかかることがあり、ショルダへの追加のトルクが少なくとも雄側外部当接面37を降伏させる、さらに、変化領域40および50のロックねじが接触してそのレベルのトルクを受けることになる。これは、シールの設計がシール面のわずかな軸方向移動を許容するため、シール性には影響を与えない。図5aおよび図5bは、図6に示すオーバートルクVが締め付けられた接続部に適用されたときの外部ショルダ37および対応する当接面42内の降伏領域を示している。オーバートルクの下で、図5aに示す雌側外部リップ部21を介して完全に降伏している壁領域25が網掛線で示されている。雌側外部リップ部21は、このオーバートルク条件下では不安定である。網掛線で示す45°の角度が付けられた領域35は、外部ショルダ37の横に、その外部ショルダ37の全高にわたって画定されている。領域35は、完全に降伏しており、図6に示すVレベルを超えた追加のトルクが加えられても、外部当接ショルダの降伏状態がそれ以上進行することはない。図5aおよび図5bに示すように、そのVレベルにおいて、ねじ山は降伏していない。
【0053】
図6は、x軸に沿ったボックス部材へのピン部材の相対的なターン数に応じた、接続部のy軸方向におけるトルク容量を示している。図に示すように、締め付けMU前は、シールおよび/またはねじ山の半径方向の干渉によるトルク抵抗があるため、ピン部材およびボックス部材が非常に低いトルク勾配で相対的に回転する。外部ショルダが点Oで接触し始めると、グラフでの傾きが急激に増加するが、変化領域におけるねじ山がまだ自動ロックしていないため、変化領域における雄側スタブフランクと雌側スタブフランクとの間のねじの軸方向隙間はまだゼロを上回っている。
【0054】
点Oから点Pまで、傾きは直線的である。OとPとの間では、雄側内部リップ部11で最大0.2%の塑性歪みが得られる。
【0055】
リグ要件に準じた締め付けMU、または公称締め付けトルクMUの終了は、OからPの間で選択される。OからPまでの間では、ピン部材およびボックス部材の相対的な運動は、ターン数「n」で非常に小さく、例えば0.4ターンを下回る。外部ショルダの剛性により、ピンおよびボックスは、ほとんど相対的に回転しなくなる。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、公称締め付けMUは、変化領域におけるスタブフランクの間のねじの軸方向隙間がゼロよりも大きいままであるように選択される。本発明の代替実施形態によれば、公称締め付けは、変化領域におけるスタブフランクの間のねじの軸方向隙間が存在せず、ゼロに等しくなるように、および無変化領域におけるスタブフランクの間のねじの軸方向隙間がゼロよりも厳密に大きいままであるように選択される。
【0057】
点P以降は、ショルダが降伏し、曲線がわずかにたわむ。MU以降、さらに点P以降は、変化領域におけるねじ山がトルク容量を吸収し始める。変化領域における雄側スタブフランクと雌側スタブフランクとの間のねじの軸方向隙間が徐々に閉じ始め、且つ/またはスタブフランクの間の接触圧力が増加する。MU以降、さらに点P以降のトルク容量の曲線のたわみは、本発明による接続部の特徴である。
【0058】
シール3は、金属対金属のシールであり、干渉シール長を有する。締め付け前の雄側シール面16の外径は、略シール長を表す所与の距離に沿った雌側シール面24の内径を上回る。
【0059】
図4に示すように、雄側シール面16は、一方の側における雄側遠位面17に半径方向につながるテーパ状部分60と、他方の側における円筒部分61との間に配置された、曲率半径が大きい表面である。雄側内部リップ部11には、雄ねじ側変化領域40と円筒部分61との間に位置するように、溝62が画定されている。
【0060】
雌ねじ側変化領域50は、その溝62に対向する雌側内部凹部24に隣接する不完全なねじ山から始まる。不完全なねじ山は、不完全なねじ山の特定の位置における雌側山頂Cbが同じ円筒面に整列しているので、ねじ山の高さがHbを下回ることからそのように呼ばれている。不完全な雌ねじ山は、変化領域50におけるターン数の半分を下回る。不完全な雌ねじ山は、雌ねじ領域23の総ターン数の30%未満を占める。不完全な雌ねじ山は、変化領域に排他的に保持されている。
【0061】
雄ねじ側無変化領域51は、雄側円筒面34に隣接する不完全なねじ山から始まる。不完全なねじ山は、不完全なねじ山の特定の位置における雄側山頂Cpが円筒面34と同じ面に整列しているので、ねじ山の高さがHpを下回ることからそのように呼ばれている。不完全な雄ねじ山は、無変化領域51におけるターン数の半分を下回る。不完全な雄ねじ山は、雄ねじ領域13の総ターン数の30%未満を占める。不完全な雄ねじ山は、無変化領域51に排他的に保持されている。
【0062】
変化領域における自動ロックまでのねじのターン数は、2~12の範囲に設定される。最も大きいターン数は、パイプ本体の外径の最大サイズに関するものである。例えば、外径が558.8mm(22インチ)の場合、変化領域におけるターン数は約12であり、外径が431.8mm(17インチ)の場合、変化領域におけるターン数は約9である。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図6
【国際調査報告】