(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(54)【発明の名称】自動車に組み込まれた、加速度病に対処することを意図した装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
B60R11/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535779
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 FR2020052108
(87)【国際公開番号】W WO2021116550
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518379522
【氏名又は名称】ノバレス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カズ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ボリエール フランソワ
【テーマコード(参考)】
3D020
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC01
3D020BD03
3D020BD09
3D020BE03
(57)【要約】
本発明は、3軸に沿った自動車(10)の加速度を検出し、対応する加速度信号を発するように構成された3軸加速度計と、前記自動車の第1の内面(13)の高さで少なくとも1つの第1の人工水平線(14,14')を形成し、自動車の第2の内面(15,15')の高さで少なくとも1つの第2の人工水平線(16、16')を形成することができ、前記第1及び第2の人工水平線(14,16;14',16')は互いに垂直又は実質的に垂直である、光マーカを表示するための表示手段(12,12',12'')と、前記3軸加速度計によって放射された加速度信号を受信し、前記第1及び第2の人工水平線(14,16,14',16')が前記自動車の加速度にかかわらず、重力ベクトルに対して垂直又は実質的に垂直に、かつ、水平面(A)に並ぶように、表示手段(12,12',12'')を駆動することができ、さらに、前記制御ユニットは、前記表示手段(12,12',12'')の制御の前に、前記加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定するように、前記加速度信号を処理するように構成され、かつ前記加速度周波数が、加速度病が起こりそうな閾値周波数よりも低い場合にのみ前記表示手段(12,12',12'')を駆動するように構成される、制御ユニットと、を含むことを特徴とする、自動車(10)に取り付けられた加速度病抑制装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3軸に沿った自動車(10)の加速度を検出し、対応する加速度信号を発するように構成された3軸加速度計と、
前記自動車の第1の内面(13)の高さで少なくとも1つの第1の人工水平線(14,14')を形成し、自動車の第2の内面(15,15')の高さで少なくとも1つの第2の人工水平線(16、16')を形成することができ、前記第1及び第2の人工水平線(14,16;14',16')は互いに垂直又は実質的に垂直である、光マーカを表示するための表示手段(12,12',12'')と、
前記3軸加速度計によって放射された加速度信号を受信し、前記第1及び第2の人工水平線(14,16,14',16')が前記自動車の加速度にかかわらず、重力ベクトルに対して垂直又は実質的に垂直に、かつ、水平面(A)に並ぶように、前記表示手段(12,12',12'')を駆動することができ、さらに、前記表示手段(12,12',12'')の制御の前に、前記3軸加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定するように、前記加速度信号を処理するように構成され、かつ前記加速度周波数が、速度増加が起こりそうな閾値周波数よりも低い場合にのみ前記表示手段(12,12',12'')を駆動するように構成される、制御ユニットと、
を含むことを特徴とする、自動車(10)に取り付けられた加速度病抑制装置。
【請求項2】
前記閾値周波数が、25Hzに等しいことを特徴とする、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記閾値周波数が、4Hz以上8Hz以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記閾値周波数が、
前記自動車の前後方向に対応する縦軸に沿った加速度、及び前記自動車の右左方向に対応する横軸に沿った加速度に対して0.5Hzに等しく、
前記自動車の上下方向に対応する縦軸に沿った加速度に対して2Hzに等しい
ことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記表示手段(12,12',12'')が、
前記第1の内面(13)に投射され、前記第1の人工水平線(14,14')を形成する第1の光線と、
前記第2の内面(15,15')に投射され、前記第2の人工水平線(16,16')を形成する第2の光線とからなる、
直線形状の少なくとも2つの光線をそれぞれ放射可能である
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記表示手段(12,12',12'')が、
主光線を放射する少なくとも1つの光源と、
前記主光線を2つの副光線に分離及び偏向する手段とを備える
ことを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記分離及び偏向する手段が、
前記光線を2つの二次光線に分離することを意図されたプリズムと、
前記二次光線の経路を修正することを意図されたミラー及び/又はレンズの組合せとを備える
ことを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記表示手段(12,12',12'')が、
少なくとも1一対の光源、それぞれ、
前記第1の光線を放出する第1の光源と、
前記第2の光線を放出する第2の光源とを備える
ことを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記光源、それぞれ一対の前記光源が、レーザ、それぞれ一対のレーザである
ことを特徴とする、請求項6から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
表示手段が、
前記第1の内面(13)と整列して配置され、前記第2の内面(15,15')と整列して配置される第1の光柱(12)と、
前記第2の内面(15,15')と整列して配置され、前記第1の光柱(12)の左又は右に整列して配置された第2の光柱(12')と、
前記第1の内面(13)と整列して配置され、前記第1の光柱(12)よりも自動車の後部に近い第3の光柱(12'')とを含む、それぞれ垂直に配向する少なくとも3つの光柱(12,12',12'')を備え、
前記光柱(12,12',12'')のそれぞれが、複数の垂直に整列した光点から形成され、
前記光点のそれぞれが、活性化状態で光を放射することができ、非活性化状態で光を放射することができず、
前記第1の人工水平線(14)が、第1及び第3の光柱(12,12'')上の最高又は最低の活性化光点(17,17'')をそれぞれ通過する仮想直線によって形成され、
前記第2の人工水平線(16)が、第1及び第2の光柱(12,12')上の最高又は最低の活性化光点(17,17')をそれぞれ通過する仮想直線によって形成される
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記光柱(12,12',12'')のそれぞれが、垂直に整列した発光ダイオードの直線アレイを含み、
前記発光ダイオードのそれぞれが、光点を形成する
ことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の加速度病抑制装置を備えた自動車(10)。
【請求項13】
請求項5~9のいずれか1項に記載の運動防止装置を装備した自動車(10)であって、
少なくとも1つの中央直立部材(11,11')を備え、
前記中央直立部材(11,11')は、前記表示手段(12,12')を支持し、
前記表示手段は、
前記第1の光線を前記自動車の後部横窓又は後部ドアパネル(13)上に投射し、
前記第2の光線を、前記後部横窓又は前記後部ドアパネル(13)に実質的に垂直に配置された乗客室の内面(15,15')、例えば、前記自動車の前部座席のうちの1つの背もたれ上に投射するように構成されている、
自動車。
【請求項14】
3軸加速度計を用いて3軸に沿った自動車の加速度を検出し、対応する信号を制御ユニットに送る工程と、
前記3軸加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定し、決定された加速度周波数と、それよりも下で加速度病が起こりそうな閾値周波数とを比較する工程と、
前記決定された加速度周波数が、前記閾値周波数よりも低い場合、前記自動車の第1の内面(13)の高さで少なくとも1つの第1の人工水平線(14,14')を形成することができる光マーカと、前記自動車の第2の内面(15,15')の高さで少なくとも1つの第2の人工水平線(16、16')を形成することができる光マーカとを表示するための手段(12,12',12'')を制御ユニットによって駆動する工程とを含み、
前記第1及び第2の人工水平線(14,16;14',16')が、互いに垂直又は実質的に垂直であり、
その結果、前記第1及び第2の人工水平線(14,16;14',16')が、前記自動車の加速度にかかわらず、重力ベクトルに垂直な水平面(A)に整列する
加速度病に対処することを意図した光マーカを表示するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に組み込まれた、加速度病に対処することを意図した装置及びその装置を搭載した自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、飛行機、又はボート内を移動する人々に共通する問題は、加速度病(kinetosis)としても知られている乗り物酔いである。乗り物酔いは、内耳の前庭系で感じる感覚と、人の視覚など他の感覚で感じる感覚との不一致によって起こる。内耳のバランス受容器は、重力(例えば、向きの変化)、速度、及び自動車が変位するときに生じる速度の変化(加速度)に敏感である。内耳が感じる感覚が、本人が感じる視覚信号に対応しないと、本人に乗り物酔いを起こすことが多く、特に吐き気や頭痛の形で現れる。
【0003】
例えば、自動車内の曲路上を走行する乗客は、カーブを介して自動車が変位するたびに直線加速度及び角加速度を経験する。自動車の動きによって引き起こされる加速度に対する前庭感知システムの応答は、人が道路を連続的に見ていない限り、視覚的知覚に対応せず、したがって、その内耳の知覚は、曲線を通して視覚的に知覚される自動車の経路に対応する。この理由のために、自動車の運転者は、通常、乗り物酔いに苦しむことはないが、自動車の乗客は乗り物酔いに苦しむことがある。実際、運転者は、道路を常時監視し、視覚的知覚が内耳の感覚に対応するように自動車の動きを視覚的に知覚する。逆に、自動車の乗客は、自動車の内側のみを確認したり、見たりするか、又は道路を見ることを妨げる他の活動に従事したりすると、内耳の視覚に対応しない視覚的知覚を有することになる。
【0004】
乗り物酔いを回避するために、1つの解決策は、乗客が自動車を運転しているかのように道路を見ることであり、その結果、乗客が受け取る視覚情報は、乗客の前庭系の感覚により密接に対応する。しかし、自動車の後ろに座ると、通常、部分的に道路を見る。したがって、前庭耳の内部聴覚装置によって知覚される乗客の実際の移動は、この移動の視覚的知覚と容易に関連付けることができない。したがって、この場合、乗り物酔いは回避することができない。
【0005】
特許文献1に記載されている、乗り物酔いに対する別の解決策は、自動車の乗客室の内部直立材に光マーカを使用することにあり、前記光マーカは、乗客室の両側に光柱を形成する。光柱の高さは、電子制御手段によって制御され、自動車に座った乗客の内耳の知覚に対応する人工的な水平線を作り出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0083739号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それにもかかわらず、この解決策は、自動車の変位にかかわらず光マーカを表示するという欠点を有する。したがって、この公知の解決策では、人工水平線が乗客室内に常に表示される。しかしながら、加速度病は、非常に特定の加速度周波数範囲に対してのみ生じることが科学的に証明されている。特に、運動の最初の警告症状は、一般に、25Hz未満の加速度周波数に対して生じる。乗客の不快感の最初の兆候は、実際には、4~8Hzの加速度周波数範囲に現れるに過ぎない。しかしながら、自動車の前後又は左右方向の加速度が0.5Hzよりも低い周波数を有する場合、又は垂直方向の加速度が2Hzよりも低い周波数を有する場合にのみ、加速度病は乗客にとって真に迷惑になる。したがって、特許文献1に記載されている解決策は、加速度病の危険性がゼロ又はゼロに近い場合であっても、自動車内部に光マーカを表示することを行う、という欠点を有する。したがって、この表示は、もし彼らがまだ加速度病に苦しんでいなければ、乗客を煩わせ得る。さらに、光マーカの表示のために光源を連続的に使用することは、特に例えば電気自動車の場合に、自動車の自律性に重大な影響を及ぼすことがある電気エネルギーの過剰消費を発生させる。
【0008】
したがって、本発明は、自動車に組み込まれ、前述の従来技術の欠点を有さない、加速度病に対処することを意図した装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明の、自動車に装着される加速度病抑制装置は、
3軸に沿った自動車の加速度を検出し、対応する加速度信号を発するように構成された3軸加速度計と、
自動車の第1の内面の高さで少なくとも1つの第1の人工水平線と、自動車の第2の内面の高さで少なくとも1つの第2の人工水平線とを形成することができる光マーカを表示し、前記第1及び第2の人工水平線が互いに垂直又は実質的に垂直である、表示手段と、
前記3軸加速度計によって放射された加速度信号を受信し、前記第1及び第2の人工水平線が前記自動車の加速度にかかわらず、重力ベクトルに対して垂直又は実質的に垂直に、水平面に並ぶように、表示手段を駆動することができ、さらに、前記表示手段の制御の前に、前記加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定するように、前記加速度信号を処理するように構成され、かつ前記加速度周波数が、前記速度増加が起こりそうな閾値周波数よりも低い場合にのみ前記表示手段を駆動するように構成される、制御ユニットとを有する。
【0010】
このような構成により、本発明の加速度病抑制装置は、それぞれ、自動車に座っている人の前に、及び、前記人のそばに、水平面に整列された、2つの人工水平線を表示することによって、乗り物酔いを排除することを可能にする。また、この装置は、加速度病の危険性が高い加速周波数範囲についてのみ、光マーカを表示することを可能にする。
【0011】
本発明の装置はまた、以下の特徴のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0012】
閾値周波数が25Hzになること。
【0013】
閾値周波数が4Hz以上8Hz以下であること。
【0014】
閾値周波数が、縦軸に沿った加速度については、自動車の前後方向に対応する0.5Hzに等しく、自動車の左右方向に対応する横軸に沿った加速度については、自動車の上下方向に対応する垂直軸に沿った加速度については、2Hzに等しいこと。
【0015】
表示手段が、第1の内面に投射され第1の人工水平線を形成する第1の光線と、第2の内面に投射され第2の人工水平線を形成する第2の光線とよりなる、直線形状の少なくとも2つの光線をそれぞれ放射することができること。
【0016】
前記表示手段が、メインビームを放射する少なくとも1つの光源と、前記メインビームを2つの二次光線に分離及び偏向する手段とを備えること。
【0017】
分離及び偏向する手段が、光線を2つの二次光線に分離するように意図されたプリズムと、前記二次光線の経路を修正するように意図されたミラー及び/又はレンズの組合せとを備えること。
【0018】
前記表示手段が、前記第1光線を出射する第1光源及び前記第2光線を出射する第2光源の、それぞれ少なくとも一対の光源からなること。
【0019】
それぞれ一対の光源である光源が、それぞれ一対のレーザであること。
【0020】
前記表示手段は、垂直に配向された少なくとも3つの光柱である、垂直に配向され、それぞれ、第1の内面と位置合わせされる第1の光柱と、前記第2の内面と位置合わせされ、前記第1の光柱の左右に位置合わせされて配置された第2の光柱と、前記第1の内面と位置合わせされ、前記第1の光柱よりも前記自動車の後部に近接して配置された第3の光柱とを含み、前記光柱の各々は、垂直方向に位置合わせされた複数の光点から形成され、前記光点の各々は、活性化状態で光を放射することができ、非活性化状態で光を放射することができず、前記第1の人工水平線は、前記第1の光柱上の最高又は最低の活性化光点をそれぞれ通過する仮想直線によって形成され、前記第2の人工水平線は、前記第1の光柱上の最高又は最低の活性化光点をそれぞれ通過する仮想直線によって形成されること。
【0021】
光柱の各々が、垂直に整列した発光ダイオードの直線アレイを備え、各発光ダイオードが、光点を形成すること。
【0022】
本発明はまた、上記で定義されたような加速度病抑制装置を装備した自動車に関する。
【0023】
本発明の特定の構成では、自動車は、少なくとも1つの中央直立部材を含み、前記中央直立部材は、表示手段を支持し、前記表示手段は、第1の光線を自動車の後部横窓又は後部ドアパネルに投射し、第2の光線を前記窓又は前記ドアパネルに実質的に垂直に配置された乗客室の内面、例えば自動車の前部座席の1つの背もたれに投射するように構成される。
【0024】
本発明はまた、加速度病に対処することを意図した光マーカを表示するための方法に関し、この方法は、
3軸加速度計を用いて3軸に沿った自動車の加速度を検出し、対応する信号を制御ユニットに送る工程と、
3軸加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定し、決定された加速度周波数と、それよりも下で加速度病が起こりそうな閾値周波数とを比較する工程と、
決定された加速度周波数が閾値周波数よりも低い場合、自動車の第1の内面の高さで少なくとも1つの第1の人工水平線を形成することができる光マーカと、自動車の第2の内面の高さで少なくとも1つの第2の人工水平線を形成することができる光マーカとを表示する手段を制御ユニットによって駆動する工程とを含み、
前記第1及び第2の人工水平線は、自動車の加速度にかかわらず、重力ベクトルに垂直な水平面に整列されるように、互いに垂直又は実質的に垂直である。
【0025】
他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられる、本発明の2つの特定の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態による自動車の乗客室の斜視図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態による自動車の乗客室の斜視図である。
【
図3】Y軸に沿った加速度を受けている、本発明に係る自動車の背面図である。
【
図4】X軸に沿った加速度を受けている、本発明に係る自動車の側面図である。
【
図5】Y軸に沿った加速度を受けている、本発明に係る自動車の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この明細書の残りの部分では、
図1及び
図2に示すデカルト座標系XYZを参照して、用語「長手方向」は、X軸に沿った方向に対して使用され、「横方向」は、Y軸に沿った方向に対して使用され、「垂直方向」は、Z軸に沿った方向に対して使用される。さらに、慣習的に、用語「前方」は自動車の前方に向けられた方向を示すために使用され、用語「後方」は自動車の後方に向けられた方向を示すために使用される。
【0028】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態による自動車10の乗客室が示されている。この実施形態では、垂直に配向された第1の光柱12は、自動車の中央直立部材11によって支持され、自動車の後部に座った乗客の視界に対して左側に配置され、垂直に配向された第2の光柱12'は、自動車の別の中央直立部材11'によって支持され、自動車の後部に座った乗客の視界に対して右側に配置される。各光柱12,12'は、第1の直線光線を自動車の後部横窓又は後部ドアパネル13に投射し、第2の直線光線を自動車の前部座席15又は15'の一方の背もたれに投射するように構成された少なくとも1つの光源を含む。第1の光柱12によって放射される第1の光線は、第1の線14に沿って第1の光柱12に直接隣接し、第1の人工水平線として後述する後部側方窓又は後部ドアパネル13上に投射され、第1の光柱12によって放射される第2の光線は、第2の線16に沿って第1の光柱12に直接隣接し、第2の人工水平線として後述する前部座席15の後部に投射される。同様に、第2の光柱12'によって放出された第1の光線は、第1の人工水平線として後述する第1の線14'に沿って第2の光柱12'に直接隣接する後部横窓又は後部ドアパネル(図示せず)上に投射され、第2の光柱12'によって放出された第2の光線は、第2の人工水平線として後述する第2の線16'に沿って第2の光柱12'に直接隣接する前部座席15'の背もたれ上に投射される。この構成では、第1及び第2の人工水平線は、互いに垂直又は略垂直である。
【0029】
したがって、光源を適切に駆動することによって、第1及び第2の人工水平線14,16及び14',16'を、常に重力ベクトルに垂直な水平面A内に整列させることができる。したがって、後部横窓13の隣で前部座席15の後ろに座り、前記人工水平線14,16をじっと見る人は、道路を見ている運転者と同じ視覚を有することになり、したがって、もはや乗り物酔いにさらされないことになる。この結果を達成するために、自動車10は、3軸X、Y及びZに沿った自動車の加速度を検出し、対応する加速度信号を発するように構成された3軸加速度計と、3軸加速度計によって発せられた加速度信号を受信し、第1及び第2の人工水平線14,16及び14',16'が、自動車の加速度にかかわらず、重力ベクトルに垂直な水平面Aに整列するように光源を駆動することができる制御ユニットとを備え、制御ユニットは、さらに、加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定し、前記加速度周波数が、加速度病が起こりそうな閾値周波数よりも低い場合にのみ、前記加速度信号を光源の制御の前に処理するように構成されると有利である。
【0030】
図2を参照すると、本発明の第2の実施形態による自動車の乗客室が示されている。この実施形態では、加速度病抑制装置は、自動車の中央直立部材11によって支持され、自動車の後部に座った乗客の視界に対して左側に配置される第1の光柱12と、自動車の後部に座った乗客の視界に対して右側に配置される、別の中央直立部材11'によって支持される第2の光柱12'と、自動車の後部に座った乗客の視界に対して後部横窓又は後部ドアパネル13の一部を形成する横方向直立部材11''によって支持される第3の光柱12''とをそれぞれ含む。各光柱12,12',12''は、垂直方向に並んだ複数の光点から形成され、各光点は活性化状態で発光することができ、非活性化状態で発光しない。したがって、第1及び第3の光柱12,12''上の最高活性化光点17,17''をそれぞれ通る仮想直線によって第1の人工水平線14が形成され、第1及び第2の光柱12,12'上の最高活性化光点17,17'をそれぞれ通る仮想直線によって第2の人工水平線16が形成される。この構成では、第1及び第2の人工水平線14,16は、互いに垂直又は略垂直である。本発明の有利な変形例では、各光柱12,12',12''は、例えば、垂直に並んだ発光ダイオードの直線アレイからなり、各発光ダイオードは、光柱の光点の1つを形成する。本発明の別の構成では、光点は、各光柱の頂部から始めて活性化することができる。この場合、第1の人工水平線14は、それぞれ第1及び第3の光柱12,12''上の最低活性化光点を通過する仮想直線によって形成され、第2の人工水平線16は、それぞれ第1及び第2の光柱12,12'上の最低活性化光点を通過する仮想直線によって形成される。さらに、自動車10は、後部横窓又は後部ドアパネルの一部を形成する側方直立部材によって支持され、自動車の後部に座っている乗客の視野に対して右側に支持される第4の光柱(図示せず)を備えることができ、前記第4の光柱は、第2の光柱12'と組み合わせて、自動車の右側に第3の人工水平線14'を画定することを可能にすると有利である。
【0031】
したがって、第1、第2、及び第3の光柱12,12'及び12''の発光ダイオードを好適に駆動することによって、第1及び第2の人工水平線14,16を、重力ベクトルに対して常に垂直な水平面内に整列させることができる。したがって、後部横窓又は後部横ドアパネル13の隣で前部座席15の後ろに着座し、前記人工水平線14,16をじっと見る人は、道路を見ている運転者と同じ視覚感覚を有することになり、したがって、乗客はもはや乗り物酔いにさらされないことになる。制御ユニットはまた、加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定し、前記加速度周波数が、それよりも下で加速度病が起こりそうな閾値周波数よりも低い場合にのみ前記発光ダイオードを駆動するように、発光ダイオードの駆動の前に前記加速度信号を処理するように構成される。
【0032】
上述の2つの実施形態は、明らかに本発明を限定するものではない。他の実施形態は、このレベルで想定することができる。
【0033】
図3~
図5は、いくつかの可能な走行状態及び本発明の加速度病抑制装置の対応する動作を示す。
【0034】
このように、自動車10が、
図3に示すように、重力ベクトルに垂直な固定水平面Hに対して左側に傾斜した道路を走行している場合には、Y軸に沿った加速度を受ける。この加速度は、3軸加速度計によって検出される。この3軸加速度計は、対応する加速度信号を制御ユニットに送信する。この加速度信号に応答して、制御ユニットは、加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定し、この加速度周波数を、加速度病が発生しそうな閾値周波数と比較する。本発明では、Y軸に沿ってリアルタイムに決定された加速度周波数が閾値周波数よりも低く、制御部は、Y軸の高さで自動車の床Pに対して傾斜した水平面Aに位置合わせされるように人工的な水平線を形成しようとする光マーカの表示を制御する。
【0035】
なお、自動車10が固定水平面Hに対して下方に傾斜した道路を走行している場合には、重力ベクトルに垂直に、
図4に示すように、X軸に沿った加速度を受ける。この加速度は、3軸加速度計によって検出される。この3軸加速度計は、対応する加速度信号を制御ユニットに送信する。この加速度信号に応答して、制御ユニットは、3軸加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定し、この加速度周波数を、加速度病が発生しそうな閾値周波数と比較する。本発明では、X軸に沿ってリアルタイムに求めた加速度周波数が閾値周波数よりも低い場合に、制御部は、X軸の高さで自動車の床Pに対して傾斜した水平面Aに位置合わせされるようにして人工水平線を形成しようとする光マーカの表示を制御する。
【0036】
自動車10が平坦な道路を走行して左折した場合、
図5に示すように、Y軸に沿った加速度を受ける。この加速度は、3軸加速度計によって検出される。この3軸加速度計は、対応する加速度信号を制御ユニットに送信する。この加速度信号に応答して、制御ユニットは、3軸加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定し、この加速度周波数を、加速度病が発生しそうな閾値周波数と比較する。本発明では、Y軸に沿ってリアルタイムに決定された加速度周波数が閾値周波数よりも低い場合に、制御部は、Y軸の高さで自動車の床Pに対して傾斜した水平面Aに位置合わせされるように人工的な水平線を形成しようとする光マーカの表示を制御する。
【0037】
さらに、本発明はまた、加速度病に対処することを意図した光マーカを表示するための方法を保護することを目的とする。この方法は、特に、
3軸加速度計を用いて3軸に沿った自動車の加速度を検出し、対応する信号を制御ユニットに送る工程と、
3軸加速度計の各軸に沿った加速度周波数をリアルタイムで決定し、決定された加速度周波数と、それよりも下で加速度病が起こりそうな閾値周波数とを比較する工程と、
決定された加速度周波数が閾値周波数よりも低い場合、自動車の第1の内面の高さで少なくとも1つの第1の人工水平線を形成すると共に自動車の第2の内面の高さで少なくとも1つの第2の人工水平線を形成することができる光マーカを表示する表示手段を制御ユニットによって駆動する工程とを含むことができ、
前記第1及び第2の人工水平線は、互いに垂直又は実質的に垂直であり、その結果、第1及び第2の人工水平線は、自動車の加速度にかかわらず、重力ベクトルに垂直な水平面に整列する。
【国際調査報告】