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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(54)【発明の名称】フェノール系化合物の固定化
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
C07F7/18 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535817
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020086591
(87)【国際公開番号】W WO2021122859
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19216697.3
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】512245791
【氏名又は名称】スパゴ ナノメディカル アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Spago Nanomedical AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】グラム,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】アクセルソン,オスカー
(72)【発明者】
【氏名】ラーション,リカルド
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ21
4H049VR21
4H049VR43
(57)【要約】
本開示は、M≧500g/molを有するフェノール系化合物を固定化する方法であって、フェノール系化合物を塩基に供することによりフェノール系化合物をイオン化するステップと;かき混ぜながら該イオン化フェノール系化合物を、-C(=O)-CHXCHR(ここでXは、Br、Cl、I、CN、OMs、OTs、又はOTfからなる群から選択され、Rは、H、CH、又は炭素原子を1~8個有する分枝状若しくは非分枝状アルキルである)で示される官能基を含む架橋樹脂と接触させるステップと、を含む、方法に関する。本開示はまた、少なくとも1つのアルコキシシラン基を有する化合物を含む組成物からM≧500g/molを有するフェノール系化合物を除去する方法にも関する。本開示は、本開示による方法の使用、及びM≧500g/molを有する少なくとも1種のフェノール系化合物が本開示による方法により除去されている生成物にも関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
≧500g/molを有するフェノール系化合物を固定化する方法であって、
- 前記フェノール系化合物を塩基に供することにより前記フェノール系化合物をイオン化するステップと、
- かき混ぜながら前記イオン化フェノール系化合物を、-C(=O)-CHXCHR(ここでXは、Br、Cl、I、CN、OMs、OTs、又はOTfからなる群から選択され、Rは、H、CH、又は炭素原子を1~8個有する分枝状若しくは非分枝状アルキルである)で示される官能基を含む架橋樹脂と接触させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記フェノール系化合物が、M≧750g/mol、好ましくはM≧1,000g/molを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フェノール系化合物が、M≦2,000g/molを有する、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記-C(=O)-CHXCHRで示される官能基が、α-ハロケト基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋樹脂が、
で示される官能基を含む架橋ポリマー樹脂である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基が、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、立体障害性アルコキシド、強いアミジン塩基、アミド塩基及びホスファゼン塩基からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記接触のステップが、前記塩基及び溶媒の存在下で実施される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、THF、MTBE、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、DMF、NMP、及びMeCNからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記架橋樹脂が、前記所与の溶媒中で1~5.5の膨潤係数(swelling factor)を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
混合物からM≧500g/molを有するフェノール系化合物を除去するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項11】
少なくとも1つのアルコキシシラン基を有する化合物を含む組成物から、M≧500g/molを有するフェノール系化合物を除去する方法であって、前記アルコキシシラン基が、-SiRであり;
ここで
が、-O(CH)x-CHであり、ここでx=0~7であり;
が、Rと同じであるか、又はOHであり;
が、Rと同じであるか、又はOHであり;
前記方法が、
- 前記フェノール系化合物を塩基に供することにより前記フェノール系化合物をイオン化するステップと、
- かき混ぜながら前記イオン化フェノール系化合物を-C(=O)-CHXCHR(ここでXは、Br、Cl、I、CN、OMs、OTs、又はOTfからなる群から選択され、Rは、H、CH、又は炭素原子を1~8個有する分枝状若しくは非分枝状アルキルである)で示される官能基を含む架橋樹脂と接触させるステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記塩基が、CH-(CH-O-Yであり、ここでy=0~7であり、ここでy=xであり;Yは、Na、K、Liである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのアルコキシシラン基を有する化合物を含む混合物から、M≧500g/molを有するフェノール系化合物を除去するための、請求項11に記載の方法の使用。
【請求項14】
≧500g/molを有する少なくとも1種のフェノール系化合物が請求項11~12のいずれか1項に記載の方法により除去されている、生成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、500g/mol以上の分子量を有するフェノール系化合物を固定化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのフェノール系化合物は、少量の酸化生成物の存在によりやや黄色~やや褐色の色を有する。したがって、フェノール系化合物が、例えば医薬化合物の合成において、副生物として生成される場合、反応混合物は、フェノール系化合物の酸化生成物によりやや黄色~やや褐色の色を有することになる。
【0003】
フェノール系化合物は多くの場合、抽出、逆相クロマトグラフィー、順相シリカクロマトグラフィー、蒸留又は分別晶析法などの標準の精製法により反応混合物から除去され得る。
【0004】
しかし、混合物中のフェノール系化合物の性質及び/又は他の化合物の性質に応じて、精製法の選択が限定される場合がある。
【0005】
精製される化合物が、水分に感受性がある場合、加水分解条件下で進行する抽出又は逆相クロマトグラフィーなどの精製法は、水分に感受性がある化合物が加水分解することになるため、混合物からフェノール系化合物を除去するのに用いることができない。精製される化合物が、例えばシリカの表面シラノールと反応するエトキシシリル基などの基を含有するならば、順相シリカクロマトグラフィーは、不適切である。
【0006】
≧500g/molなどの高分子量を有するフェノールは、減圧下であっても蒸留により除去され得ない。さらに反応混合物が、例えばポリマー系製品などの分子量分布を有する製品を含有するならば、分別晶析は、精製に用いられ得ない。
【0007】
低~中分子量、即ち、≦500g/molのフェノールを含有する混合物は、例えばポリスチレン樹脂へのエストラジオール(Mw282.38g/mol)誘導体のフェノール系官能基の付着が記載されたJ.Comb.Chem.,2000,2(1),48-65における、様々な活性化樹脂へのフェノールの固定化により精製され得る。
【0008】
しかし、除去されるべきフェノール(複数可)の分子量が、増加するにつれ、活性化樹脂へのフェノールの付着が、より困難になる。酵素のようなより大きな分子を固定化するためには、専用のマクロ孔質樹脂が必須であり、それらのために、最も単純な表面官能基のみが利用可能であることが周知である(例えば、www.sigma.aldrich.com product no.564095-(アミノメチル)ポリスチレン)。
【0009】
本開示の目的は、これらの問題を克服することである。
【発明の概要】
【0010】
第一の形態によれば、上記の、そして他の目的は、全てが、又は少なくとも一部が請求項1に定義された方法により実現される。この請求項によれば、上記の目的は、フェノール系化合物を塩基に供することによりフェノール系化合物をイオン化するステップと、かき混ぜながらイオン化フェノール系化合物を、-C(=O)-CHXCHR(ここでXは、Br、Cl、I、CN、OMs、OTs、又はOTfからなる群から選択され、Rは、H、CH、又は炭素原子を1~8個有する分枝状若しくは非分枝状アルキルである)で示される官能基を含む架橋樹脂と接触させるステップと、を含む、分子量(M)≧500g/molを有するフェノール系化合物を固定化する方法により実現される。
【0011】
フェノール系化合物は、特異的分子構造を有し、したがって特異的分子量を有する、即ち分子量分布を有さない、フェノール系化合物であってもよい。或いはフェノール系化合物は、ポリマー性部分、即ち、複数のモノマーを有する部分を含むフェノール系化合物であってもよい。ポリマー性部分の中のモノマーの数は、異なる個々の分子の間で変動してもよい。したがってポリマー性部分を含むフェノール系化合物は、分子量部分を有していて、特異的分子量を有さなくてもよい。
【0012】
当業者に察知される通り、特異的分子構造を有するフェノール系化合物の分子量は、フェノール系化合物の原子の数及び原子の性質に基づいて計算される通りの分子量である。それは、例えば質量分析(MS)により、測定されてもよい。
【0013】
一態様によれば、本明細書で用いられる通りのポリマー性部分を含むフェノール系化合物の分子量は、重量平均分子量(質量平均モル質量又は重量平均モル質量とも称される)をいう。当業者に察知される通り、重量平均分子量は、例えばゲル濾過又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、決定されてもよい。
【0014】
一態様によれば、重量平均分子量は、ISO 16014-1:2019及びISO 16014-5:2019(「サイズ排除クロマトグラフィーを利用したポリマーの平均分子量及び分子量分布の決定」)に従って決定される。
【0015】
別の態様によれば、重量平均分子量は、ISO 16014-2:2019~ISO 16014-4:2019のいずれかとの組み合わせたISO 16014-1:2019に従って決定される。
【0016】
さらなる態様によれば、重量平均分子量は、SECにより決定され、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して検証される。好ましくはHPLC法は、本明細書に記載された通りである。
【0017】
そのような方法は、抽出、逆相クロマトグラフィー、順相シリカクロマトグラフィー、蒸留又は分別晶析などの伝統的方法により混合物から除去され得ないフェノール系化合物を除去するために用いられ得る。さらにそのような方法は、水分に感受性がある化合物の存在下であっても用いられ得る。重要なこととして、≧500g/mol、≧1,000g/mol、≧1,500g/mol、≧2,000g/mol、≧2,500g/mol、≧3,000g/mol、≧3,500g/mol、≧4,000g/mol、≧4,500g/molなどの最大5,000g/molの高分子量を有するフェノール系化合物は、樹脂からスカベンジされ得、したがって混合物から除去され得る。
【0018】
該方法は、水分に感受性がある化合物を含む混合物からM≧500g/molを有するフェノール系化合物を除去するために用いられてもよい。
【0019】
該方法は、少なくとも1つのアルコキシシラン基を含有する化合物、いわゆるアルコキシシラン類を含む混合物からM≧500g/molを有するフェノール系化合物を除去するために用いられてもよい。アルコキシシラン基は、エトキシシリル基であってもよい。
【0020】
該方法の追加的利点は、マスキングされたフェノール、例えば加水分解感受性シランにより保護されたフェノールが加水分解されて、混合物から除去されてもよいことである。
【0021】
かき混ぜは、多数の方法で、例えば振とう、機械的かき混ぜ、機械的撹拌、又は不活性ガスでのバブリング若しくは樹脂床を通る液流によるかき混ぜで実現されてもよい。樹脂は一般に、有機溶媒中で膨潤した後は非常に脆弱になり、そのため摩耗させない撹拌が必須である。したがって振とう機での中速(320rpm)での振とうは、特に小規模の場合には有用である。鋭利でない撹拌羽根での穏やかな機械的撹拌もまた、特に大規模の場合に有用である。窒素バブリングによるかき混ぜもまた、用いられ得る。
【0022】
一態様によれば、フェノール系化合物は、M≧750g/mol、好ましくはM≧1,000g/molを有する。
【0023】
フェノール系化合物は、M≦5,000g/molを有してもよい。
【0024】
フェノール系化合物は、M≦4,000g/molを有してもよい。
【0025】
フェノール系化合物は、M≦3,000g/molを有してもよい。
【0026】
一態様によれば、前記フェノール系化合物は、M≦2,000g/molを有する。
【0027】
架橋樹脂は、架橋ポリマー樹脂であってもよい。
【0028】
架橋ポリマー樹脂は、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂又はアクリルアミド-Pegコポリマーなど、所望の溶媒と相溶性がある任意のポリマーであってもよい。
【0029】
-C(=O)-CHXCHRで示される官能基において、Rは、好ましくは、例えばメチル又はエチルなど、炭素原子を1~8個有する分枝状又は非分枝状アルキルである。さらにより好ましくはRは、メチルである。
【0030】
一態様によれば、-C(=O)-CHXCHRで示される官能基は、α-ハロケト基である。
【0031】
好ましくはα-ハロケト基において、Xは、Br又はClである。さらにより好ましくはXは、Brである。
【0032】
好ましくはα-ハロケト基において、Rは、例えばメチル又はエチルなど、炭素原子を1~8個有する分枝状又は非分枝状アルキルである。さらにより好ましくはRは、メチルである。
【0033】
α-ハロケト基は、
【0034】
などのα-ブロモ-ケトンであってもよい。
【0035】
好ましくはα-ハロケト基は、
【0036】
である。
【0037】
一態様によれば、前記架橋樹脂は、
【0038】
で示される官能基を含む架橋ポリマー樹脂である。
【0039】
この樹脂は、臭素化Wangとも称される。
【0040】
塩基は、溶媒に可溶性であってもよい。
【0041】
塩基は、溶媒に不溶性であってもよい。
【0042】
塩基は、溶媒の対応する塩基であってもよい。
【0043】
別の態様によれば、前記塩基は、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、立体障害性アルコキシド、強いアミジン塩基、アミド塩基及びホスファゼン塩基からなる群から選択される。
【0044】
アルカリ金属水素化物は、水素化ナトリウム、水素化リチウム、及び水素化カリウムであってもよい。
【0045】
アルカリ土類金属水素化物は、水素化カルシウムであってもよい。
【0046】
立体障害性アルコキシドは、t-ブトキシドであってもよい。
【0047】
強いアミジン塩基は、テトラメチルグアニジン、DBU又はDBNであってもよい。
【0048】
アミド塩基は、LDA、LiTMP、LiHMDS又はKHMDSであってもよい。
【0049】
ホスファゼン塩基は、tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホレンであってもよい。ホスファゼン塩基などの非常に非求核性の塩基は、直接、樹脂の存在下で用いられてもよい。
【0050】
フェノール系化合物を含む混合物中でのエトキシシランなどの化合物中の求電子性官能基に及ぼす求核置換の正味の効果がゼロであるならば、例えばエトキシドがエトキシドにより置換される、又はメトキシドがメトキシドにより置換されるならば、NaOEt、NaOMe、又はNaOiPrなどの求核性塩基が用いられ得る。
【0051】
具体的には、前記塩基は、立体障害性アルコキシド、NaOEt、NaOMe、NaOiPr、NaH、LiH、KH、及びCaHからなる群から選択される。
【0052】
立体障害性アルコキシドは、t-ブトキシ、又は最大8個の炭素原子を有する別の立体障害性アルコキシドとして存在してもよい。
【0053】
アルコキシ塩基は、NaOEt、NaOMe、又はNaOiPrであってもよい。
【0054】
好ましくは塩基は、NaOEt又はNaHから選択される。
【0055】
塩基は、フェノール化合物の量に関して1~10当量、又は1~7当量、又は1~3当量、又は1~1.2当量の量で存在してもよい。
【0056】
-C(=O)-CHXCHR基は、フェノール化合物の量に相対的なフェノール化合物の量に関して1~10当量、又は1~7当量、又は1~3当量、又は1~1.2当量の量で存在してもよい。
【0057】
1つの具体的態様において、リンカーは、
【0058】
であり、
【0059】
塩基は、NaOEtである。
【0060】
別の具体的態様において、リンカーは、
【0061】
であり、
【0062】
塩基は、NaHである。
【0063】
別の態様によれば、前記接触のステップは、塩基及び溶媒の存在下で実施される。
【0064】
さらに別の態様によれば、前記溶媒は、THF、MTBE、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、DMF、NMP、及びMeCNからなる群から選択される。
【0065】
溶媒は、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。
【0066】
溶媒は、THF、トルエン、ジクロロメタン又はMTBEであってもよい。
【0067】
溶媒は、THF又はトルエンであってもよい。
【0068】
1つの具体的態様において、α-ハロケト基は、
【0069】
であり、
【0070】
塩基は、NaOEtであり、溶媒は、トルエンである。
【0071】
別の具体的態様において、α-ハロケト基は、
【0072】
であり、
【0073】
塩基は、NaHであり、溶媒は、トルエンである。
【0074】
1つの具体的態様において、α-ハロケト基は、
【0075】
であり、
【0076】
塩基は、NaOEtであり、溶媒は、THFである。
【0077】
別の具体的態様において、α-ハロケト基は、
【0078】
であり、
【0079】
塩基は、NaHであり、溶媒は、THFである。
【0080】
別の具体的態様において、α-ハロケト基は、
【0081】
であり、
【0082】
塩基は、NaOEtであり、溶媒は、MTBEである。
【0083】
一態様によれば、前記架橋樹脂は、所与の溶媒中で1~5.5の膨潤係数(swelling factor)を有する。高い膨潤係数は、(=O)-CHXCHR基により良好に接近するフェノール系化合物を与え、したがってより短時間が固定化に必要とされる。
【0084】
溶媒は、大規模固相合成に適切になり得る。そのような溶媒の例は、THF、MTBE、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、DMF、NMP、及びMeCNである。
【0085】
樹脂床のサイズは、100~200メッシュ又は200~400メッシュなど、170メッシュなど、120メッシュなどの100~400メッシュであってもよい。好ましくはビーズサイズは、100~200メッシュ又は200~400メッシュである。
【0086】
樹脂が、最初に用いられる前に、潜在的毒性を有する化合物を除去するために、樹脂が洗浄されてもよい。樹脂を洗浄するステップは、樹脂を失活させずに、又は物理的に破壊せずに実施されるべきである。樹脂は一般に、有機溶媒中で膨潤した後は非常に脆弱になり、そのため摩耗させない撹拌が必須である。これは、先に記載された通り実現され得る。振とう機での中速(320rpm)での振とうは、小規模の場合には有用である。大規模の場合には、鋭利でない撹拌羽根での穏やかな機械的撹拌が、有用である。窒素バブリングによるかき混ぜもまた、有用であり得る。
【0087】
樹脂の洗浄に用いられる溶媒は、THF、トルエン、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、DMF、NMP、DCM、MeCNからなる群から選択されてもよい。そのような溶媒は、感知できるほどに樹脂を分解しない。樹脂の洗浄に適した溶媒の具体的例は、メトキシt-ブチルエーテルなどのエーテルである。
【0088】
樹脂を新鮮な溶媒で数回、繰り返し浸漬することにより、又はより効率的に樹脂をソックスレー装置での連続抽出に供することより、樹脂の効率的洗浄が実現されてもよい。
【0089】
したがって本発明の一態様において、樹脂は、使用前にソックスレー抽出に供される。
【0090】
スカベンジされたフェノール系化合物の溶出は、好ましくは350nmでの、光分解により実現されてもよい。
【0091】
第二の形態によれば、混合物からM≧500g/molを有するフェノール系化合物を除去するための本開示による方法の使用が提供される。
【0092】
第三の形態によれば、少なくとも1つのアルコキシシラン基を有する化合物を含む組成物から、M≧500g/molを有するフェノール系化合物を除去する方法が提供され、アルコキシシラン基は、-SiRであり;ここでRは、-O(CH)x-CHであり、x=0~7であり;Rは、Rと同じであるか、又はOHであり;Rは、Rと同じであるか、又はOHであり;該方法は、フェノール系化合物を塩基に供することによりフェノール系化合物をイオン化するステップと、かき混ぜながらイオン化フェノール系化合物を-C(=O)-CHXCHR(ここでXは、Br、Cl、I、CN、OMs、OTs、又はOTfからなる群から選択され、Rは、H、CH3、又は炭素原子を1~8個有する分枝状若しくは非分枝状アルキルである)で示される官能基を含む架橋樹脂と接触させるステップと、を含む。樹脂及び塩基の性質は、先に記載された通りであってもよい。
【0093】
樹脂は、先に記載された通りのα-ハロケト基を含んでいてもよい。
【0094】
接触のステップは、塩基及び溶媒の存在下で実施されてもよい。塩基及び溶媒の性質は、先に記載された通りであってもよい。
【0095】
塩基は、アルコキシ塩基であってもよい。
【0096】
一態様によれば、塩基は、CH-(CH-O-Yであり、ここでy=0~7であり、y=xであり;Yは、Na、K、Liである。
【0097】
一態様において、xは、1であり、即ちRは、-O-CH-CHであり、Rは、Rと同じであるか、又はOHであり;Rは、Rと同じであるか、又はOHである。
【0098】
少なくとも1つのアルコキシシラン基を有する化合物を含む混合物からフェノール系化合物を除去するために上記の方法を利用する追加的利点は、おそらく先行のヒドロシリル化反応の仕上げの間の水分暴露から形成される、最終生成物の純度に影響を及ぼすシラン加水分解産物も同様に除去されて、大幅により純粋な生成物をもたらすことである。これは、医薬使用のための材料を生成する場合に有利である。
【0099】
第四の形態によれば、少なくとも1つのアルコキシシラン基を有する化合物を含む組成物から、Mw≧500g/molを有するフェノール系化合物を除去するための本開示による方法の使用が提供される。
【0100】
第五の形態によれば、Mw≧500g/molを有する少なくとも1種のフェノール系化合物が本開示による方法により除去されている生成物が提供される。
【0101】
本発明の他の目的、特色及び利点は、以下の詳細な開示から、添付の特許請求の範囲から、そして図面から明らかとなろう。本発明が特色の全ての可能な組み合わせに関することに、留意されたい。
【0102】
一般に、特許請求の範囲で用いられる全ての用語は、本明細書で他に明白に定義されない限り、技術分野の通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの(a/an)/その(the)[溶媒、塩基、ステップほか]」の全ての参照が、他に明白に述べられない限り、率直に前記溶媒、塩基、ステップほかの少なくとも1つの例の参照と解釈されるべきである。本明細書に開示された任意の方法のステップは、明白に述べられない限り、開示された厳密な順序で実施される必要はない。
【0103】
本明細書で用いられる通り、用語「含むこと」及びこの用語の変形は、他の添加剤、成分、整数又はステップを除外しないものとする。
【0104】
定義及び略語
本明細書で用いられる通り、用語「アルコキシ」は、式-OR(式中、Rは、C1~8アルキル、例えば、メトキシ、エトキシ,n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ,tert-ブトキシ、アミルオキシ、イソ-アミルオキシ及び同様のものである)をいう。本発明によるアルコキシ基は、場合により置換されていてもよい。
【0105】
本明細書で用いられる通り、用語「ゲル」は、共有結合のネットワークが対象全体を通して伸長する架橋ポリマーを意味する。ネットワークポリマーは、ゲルの同義語である。
【0106】
本明細書で用いられる通り、用語「低級アルキル」は、炭素原子を1~8個有するアルキルをいう。
【0107】
フェノール(又はフェノール系化合物)は、ヒドロキシベンゼンの慣用名であり、又はより広義には、ヒドロキシ置換された芳香族環を含有する任意の化合物である。
【0108】
本明細書で用いられる通り、用語「分子量」は、ポリマー性部分の中のモノマーの数が異なる個々の分子の間で変動するポリマー性部分を含む化合物の、特異的分子構造を有する化合物の分子量、又は質量平均モル質量若しくは重量平均モル質量とも称される重量平均分子量をいう。したがって、特異的分子構造を有するフェノール系化合物の分子量は、フェノール系化合物の原子の数及び性質に基づいて計算された分子量、又は例えば質量分析により、測定された分子量である。ポリマー性部分を含むフェノール系化合物の分子量は、質量平均モル質量又は重量平均モル質量とも称される重量平均分子量をいい、例えばゲル濾過又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、決定されてもよい。より具体的には重量平均分子量は、ISO 16014-1:2019及びISO 16014-5:2019(「サイズ排除クロマトグラフィーを利用したポリマーの平均分子量及び分子量分布の決定」)に従って決定されてもよく、又はISO 16014-2:2019~ISO 16014-4:2019のいずれかとの組み合わせたISO 16014-1:2019に従って決定されてもよい。或いは重量平均分子量は、SECにより決定され、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して検証されてもよい。好ましくはHPLC法は、本明細書に記載された通りである。
【0109】
本明細書で用いられる通り、用語「樹脂」は、不溶性有機材料と定義される。
【0110】
臭素化Wang樹脂:臭素化α-メチルフェニルアシルポリスチレン樹脂。
【0111】
DBUは、ジアザビシクロウンデセン(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)の頭字語である。
【0112】
DCMは、ジクロロメタンの頭字語である。
【0113】
DMFは、ジメチルホルムアミドの頭字語である。
【0114】
DVBは、ジビニルベンゼンの頭字語である。
【0115】
EtOHは、エタノールの頭字語である。
【0116】
カルステッド触媒は、ジビニル含有ジシロキサンから誘導された有機白金触媒であり、ヒドロシリル化触媒の中で広く用いられる(米国特許第3775452号明細書)。
【0117】
KHMDSは、カリウムヘキサメチルジシラジドの頭字語である。
【0118】
LDAは、リチウムジイソプロピルアミドの頭字語である。
【0119】
LiHMDSは、リチウムヘキサメチルジシラジドの頭字語である。
【0120】
LiTMPは、リチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの頭字語である。
【0121】
官能基:反応性基質、例えばフェノールをポリマー担体に定着させる。
【0122】
MeCNは、アセトニトリルの頭字語である。
【0123】
MeOHは、メタノールの頭字語である。
【0124】
MTBEは、メチルtert-ブチルエーテルの頭字語である。
【0125】
NMPは、1-メチル-2-ピロリジノンの頭字語である。
【0126】
OMsは、メチルスルホナトオキシの頭字語である。
【0127】
OTsは、パラ-トルエンスルホナトオキシの頭字語である。
【0128】
OTfは、トリフルオロメチルスルホナトオキシの頭字語である。
【0129】
ペグ化:ポリマー性エチレンオキシドでのアルキル化。
【0130】
PEGは、ポリエチレングリコールの頭字語である。
【0131】
PPOAは、(4-プロピオニルフェノキシ)酢酸の頭字語である。
【0132】
スカベンジング:反応混合物からの望ましくない不純物の除去。
【0133】
THFは、テトラヒドロフランの頭字語である。
【0134】
「%a/a」は、クロマトグラムにおける全てのピークの総面積により除算された具体的化合物を表すピークの面積、として計算される。本開示において、クロマトグラムは、220nmの波長で得られた。
【0135】
更なる目的、特色及び利点は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な記載から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1】化合物1及びフェノール2を含む粗材料の不純物プロファイルのクロマトグラム(スキーム1、HPLC法1)を示す。ピークの下の数は、スキーム1~4の数に対応する。
図2】隠れたフェノール(4)の全てが本開示による方法の過程で求核攻撃によりエトキシドから遊離された(即ち、フェノール2に変換された)場合の図1からの材料のクロマトグラム(HPLC法1)を示す。ピークの下の数は、以下のスキーム1~4の数に対応する。
図3】材料の中に存在するフェノールが本開示により除去された後の図1からの材料のクロマトグラム(HPLC法1)を示す。ピークの下の数は、以下のスキーム1~4の数に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0137】
国際公開第2018/130713A1号パンフレットは、医薬製品としての使用のためのコーティングナノ材料中での使用のための複数の化合物を開示している。そのようなコーティング材料の一例が、化合物1である。1は、平均750g/mol前後の分子量の分布を有するメトキシPEGから生成される。最も共通する重合度は16であり、9~25の重合度を有する類似体が、1の中で検出され得る。したがって本開示において、化合物1は、10~22など、12~20など、14~18など、15~17などの9~25の(-CH-CH-O-)単位を有すると解釈される。同じことが、化合物2、3、4、5、6、7及び13に適用される。ポリマー性部分、即ちPEG部分を含有するこれらの化合物(1、2、3、4、5、6、7及び13)の分子量は、質量平均モル質量又は重量平均モル質量とも称される重量平均分子量である。
【0138】
コーティング材料1(スキーム1、Mw=1267.7g/mol)を大規模に生成する場合、生成物の褐色の着色に時々遭遇する。褐色の着色は、フェノール系不純物(2)の存在に由来する可能性があり、生成物中で、時にはどちらかと言えば多量に見出される。図1のクロマトグラムには、構造の割り当てを有する粗材料の不純物プロファイルが、示される。カルステッド触媒などの白金触媒の存在下でのヒドロシリル化反応は常に、所望のヒドロキシル化とアルカンへの還元の混合を与える。二重結合が転位し得る場合も、通常はそのことにある程度遭遇する(J.Polym.Sci.,Part A:Polym.Chem.,2018,56,527-536)。本発明の場合、二重結合の転位は、加水分解に感受性があるビニルエーテル(3、スキーム1)を生じ、後にフェノールを遊離して、順次、生成物の暗褐色着色を生じる。これは、製剤製品に望ましくない。フェノールは、酸化条件下のフェノールカップリングと呼ばれる反応で暗色の高分子量ポリマーを形成し得ることが周知である(例えば、J.Org.Chem.,1973,(5)97-134,J.Org.Chem.,2019,84(4),1677-1686)。1の感受性は、加水分解条件下で進行する抽出又は逆相クロマトグラフィーなどの標準の精製法の使用を阻む。1のエトキシシリル基は、シリカの表面シラノールと反応するため、順相シリカクロマトグラフィーもまた、不適切である。さらに高分子量は、減圧下であっても蒸留を不可能にし、ポリマー性部分を有する化合物を含む混合物では、分子量の広がりが、精製のための分別晶析の利用を阻む。
【0139】
【0140】
多数の反応性樹脂が、固相ペプチド合成という大規模で発展しつつある分野に利用可能である。しかし化合物2は、1063.4g/molの分子量を有し、既にネットワークポリマー(ゲル/樹脂)中での拡散を予防する、又は実質的に緩徐にするのに充分大きい。文献での一般的意見では、500g/molを超える分子量を有する化合物が樹脂への固定化が困難になり始める、とある。この一般に受け入れられた既成概念にもかかわらず、本発明者らは、市販の樹脂の初期スクリーニングを実施した(表1)。市販の樹脂のこの初期スクリーニング(表2)は、それらの樹脂の幾つかがM≧500g/molM≧500g/molを有するフェノール系化合物を固定化するのに、そして/又は少なくとも1つのアルコキシシラン基を有する化合物を含む組成物からM≧500g/molを有するフェノール系化合物を除去するのに、潜在的に有用になり得ることを示した。
【0141】
【0142】
混合物中のフェノール系化合物の初期量は、5.4%a/a(220nm)であり、化合物1と5の間の比(%a/a(220nm):%a/a(220nm))は、3.66であった。塩基の存在下で溶媒中の粗製物1混合物(図1)をかき混ぜる際に、隠れたフェノール4(図1)の加水分解を介してフェノール2の量が17%a/a(220nm)に増加されることが見出された(図2)。%a/aは、クロマトグラムにおける全てのピークの総面積により除算された具体的化合物を表すピークの面積、として計算される。この場合、クロマトグラムは、220nmの波長で得られた。
【0143】
本発明者らは、樹脂であるメリフィールドペプチド樹脂(実験1、表2)、Wang臭化物(実験3、表2)、Tentagel R Br(実験4、表2)、Tentagel S Br(実験5、表2)及びスルホニルクロリド樹脂(実験2、表2)は、フェノール2の濃度を低減したが、1/5比の低下により示される通り、1の実質的分解も導いた(表2)。1の分解は、用いられた樹脂が加水分解感受性反応混合物中でのフェノールスカベンジャー樹脂として不適切であることを示している。
【0144】
この実験は、実験終了時の化合物1と5の比が2.0を超えていたため、臭素化PPOA(臭素化[4-プロピオニルフェノキシ]酢酸)樹脂(実験6、表2)及び臭素化Wang(実験7、表2)が、≧500g/molの分子量を有するフェノール系化合物を固定化するのに用いられ得ることを明らかにした。
【0145】
臭素化PPOA樹脂及び臭素化Wangにおける官能基は、同じ求電子性官能基(メチル置換されたα-ブロモケトン、表1)を共有しているが、ポリマー性担体へのリンカーの付着が異なる(C-C vs.アミド/エーテル結合)。第二級アミド官能基は、脱プロトン化/求核攻撃を受け易く、エーテル結合は、α-ブロモケトン上の電子密度を改変する。驚くべきことに臭素化Wang樹脂(実験7、表2)は、1のいずれの分解も行わずに、まさしく2時間でダイポッド(dipod)混合物からフェノール2を除去し、一方で臭素化PPOA(実験6、表2)は、フェノール2の総濃度を低減したが、1の実質的分解も導いた。驚くべきことに、上記の結果は、表1に示された構造を有する臭素化Wangという名称の樹脂固体が、加水分解感受性基質からなる反応混合物中のM≧500のフェノールのスカベンジングに用いられ得ることを示している。したがってこの樹脂は、さらなる評価に選択された(表3)。
【0146】
表2.フェノール2の固定化のための樹脂。この実験は、1及びフェノール系化合物を含む粗材料の同じバッチで実施された。溶媒は、THFであった。この実験は、室温(RT)で実施された。F-I列の結果は、E列で示された時間(時間2)の後に報告されている。樹脂及び塩基の量は、フェノール2(スキーム1)に関する%a/a(220nm)として表される。フェノールの除去後のフェノール含量(全混合物に対する%a/a(220nm)として表される)が、示される。左及び右のショルダーは、4に対応する(図1)。化合物1と5の比(%a/a(220nm):%a/a(220nm))もまた、示される。
【0147】
特に、500g/molを超える分子量を有するフェノールの固定化は、本発明に妥当である。分子量が、5,000g/mol以上であれば、反応時間が法外に長くなり(以下の実施例5)、本発明の範囲外になる。500g/mol及び2,000g/molを含むそれらの間の分子量では、本発明の方法が、特に有用である。
【0148】
他の2つの高分子量フェノールが、合成され、調査された(それぞれスキーム2及び3の化合物10及び12)。
【0149】
【0150】
【0151】
その結果、約2,000g/mol(2kDa)の分子量(質量平均モル質量又は重量平均モル質量とも称される重量平均分子量)を有するフェノール10が固定化され、24時間未満で溶液から除去されて(以下の実施例1c)、有用と見なされるが、約5,000g/mol(5kDa)の分子量(質量平均モル質量又は重量平均モル質量とも称される重量平均分子量)を有するフェノール12は、1週間後には影響を受けなくなった(室温でTHF中のナトリウムエトキシド(NaOEt)及び臭素化Wang)。したがって本発明の方法は、5,000g/mol(5kDa)未満の分子量を有するフェノールの固定化及び除去に有用である。
【0152】
化合物1の中のエトキシ基が、本開示による方法で用いられる塩基による求核攻撃に感受性があるため、用いられる塩基の選択は重要である。妥当な樹脂は全て、求核剤に対して反応性があり、ほとんどの塩基も、求核性である。これは、2つの問題を生じる:I,塩基との直接反応による活性化樹脂の分解の可能性、並びにII,最も感受性の基である求核剤アルコキシシランとの反応による化合物1及び/又は5の分解。第一の問題を回避するためには、充分強い塩基を使用することが重要であり、それによりフェノールの本質的に全てが、反応性樹脂の添加前に第一のステップでそのフェノールを塩基と接触させることにより脱プロトン化され得る。
【0153】
【0154】
本発明の例(組成物がエトキシシランを含む場合)の最良の選択は、複数の利点を有するナトリウムエトキシドを用いることであることが分かった。I,安価で、かつ高品質で入手でき、II,シランと反応し得るが、同一基の交換のみであるため正味の効果がゼロであり(スキーム4)、III,フェノールを本質的に完全に脱プロトン化するのに充分強く、そのため樹脂がその後に添加され得、それにより樹脂分解のリスクが最小限になる。
【0155】
大規模でのフェノール2からの1の精製のために最も実践的な塩基は、ナトリウムエトキシドであったが(表3)、多くの他の塩基もまた適切である。水素化ナトリウム、水素化リチウム、及び水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物などの塩基が、有用である。水素化カルシウムなどのアルカリ土類金属水素化物を使用することも、考えられる。t-ブトキシドなどの立体障害性アルコキシドもまた、考えられる。テトラメチルグアニジン、DBU又はDBNなどの強いアミジン塩基、LDA、LiHMDS又はKHMDSなどのアミド塩基、tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホランなどのホスファゼン塩基もまた、有用になり得る。樹脂の存在下で直接、ホスファゼン塩基などの非常に非求核性の塩基を使用することが、考えられる。
【0156】
表3.フェノール希釈、溶媒、塩基、塩基の当量数、樹脂の当量数及び反応時間の効果の調査。この実験は、1及びフェノール系化合物を含む粗材料の同じバッチで実施された。列H~Kの結果は、列6に示された時間(時間2)の後に報告されている。樹脂(臭素化Wang)及び塩基の量は、フェノール2に関する分子当量として表される。フェノールの除去後のフェノール含量(全混合物の%a/a(220nm)として表される)が、示されている。左及び右のショルダーは、隠れたフェノール4に対応する(図2)。化合物1と5の比(%a/a(220nm):%a/a(220nm))もまた、示される。
【0157】
塩基がフェノール化合物の量に関して1.2当量もの低い量(実験13)及び5.9当量もの高い量(実験7)で存在し得ることが、見出された。
【0158】
樹脂、即ち
【0159】
で示される官能基が、
【0160】
フェノール化合物の量に相対的なフェノール化合物の量に関して1.5当量もの低い量(実験13)及び7.6当量もの高い量(実験7)で存在し得ることも、見出された。
【0161】
フェノールのpKa値は典型的には、フェノールを99%以上まで脱プロトン化するように8~11(水中)の範囲内であり、2以上のpKa単位の差が、所与のフェノールに適切である。例えば1,3,5-トリヒドロキシベンゼンが、8.45のpKa値を有し、そのためこの場合の適切な塩基は、10.45以上のpKa値を有する。pKa値は、異なる溶媒では異なるが、この単純な規則は、当業者にとって塩基の選択に有用なはずである。
【0162】
本発明者らは、図1に示された反応混合物の精製の間、質量分析により二量体又は三量体として同定される生成物の幾つかから、より多くのフェノールが徐々に遊離されることも発見した。おそらくフェノールは、シリル基によりマスキングされており、 求核剤、例えばエトキシドからの求核攻撃により徐々に放出される。ナトリウムエトキシドが、反応混合物に添加され、その後、1、2、6、12、24、48時間などの何らかの時間撹拌されると、マスキングされたフェノール不純物が遊離され、樹脂により除去され易くなる(図2)。これは図2において、図1の対応するピークに比較した、2と呼称されるピーク(フェノール)の増加及び4と呼称されるピーク(マスキングされたフェノール)の減少として認められる。
【0163】
以下の実施例4には、どのようにして初期のフェノール濃度が5%になり、ナトリウムエトキシドによるマスキングされたフェノール画分の遊離後に、それが17%に上昇するのか、が示される。臭素化Wang樹脂での処置の後、フェノール含量は、1%に低下した(図3)。これは図3において、図1及び2の対応するピークに比較した2と呼称されるピーク(フェノール)の減少として認められる。
【0164】
樹脂を利用して臨床使用のための化合物を精製するためには、化合物を失活又は物理的に破壊することなく、注意深く洗浄して潜在的毒性を有する化合物を除去しなければならない。樹脂は一般に、有機溶媒中で膨潤した後は非常に脆弱になり、そのため摩耗させない撹拌が必須である。これは、複数の方法で実現され得る。本発明者らは、振とう機での中速(320rpm)での振とうが、小規模の場合に有用であることを見出した。大規模の場合、鋭利でない撹拌羽根での穏やかな機械的撹拌が、有用である。窒素バブリングによるかき混ぜもまた、有用になり得る。洗浄のための最適な溶媒が、効果的であるが樹脂を感知できるほど分解しないメトキシt-ブチルエーテルなどのエーテルであることを見出した。樹脂の効率的洗浄が、新鮮な溶媒で数回、繰り返し浸漬することにより(実施例5)、又はより効率的にソックスレー装置での連続抽出に供することにより(実施例4)、実現され得る。樹脂の洗浄に適した他の溶媒は、トルエン、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、DMF、DCM、MeCNである。
【0165】
態様のリスト
本発明の一態様において、
【0166】
【0167】
で示される官能基を含む臭素化Wang樹脂が用いられて、化合物1を含有する反応混合物中のフェノール2を固定化する。
【0168】
本発明の一態様において、臭素化Wang樹脂が用いられて、化合物1を含有する反応混合物中のフェノール2を固定化し、それにより溶液中の2の濃度は、1の濃度の5%未満になる。
【0169】
本発明の一態様において、臭素化Wang樹脂が用いられて、化合物1を含有する反応混合物中のフェノール2を固定化し、それにより溶液中の2の濃度は、1の濃度の2%未満になる。
【0170】
本発明の一態様において、臭素化Wang樹脂が用いられて、化合物1を含有する反応混合物中のフェノール2を固定化し、それにより溶液中の2の濃度は、1の濃度の1%未満になる。
【0171】
本発明の一態様において、臭素化Wang樹脂が用いられて、化合物1を含有する反応混合物中のフェノール2を固定化し、それにより溶液中の2の濃度は、1の濃度の0.1%未満になる。
【0172】
本発明の一態様において、臭素化Wang樹脂が用いられて、溶液から分子量2,000g/mol(2kDa)のフェノールを90%、又は99%程度、又は100%近くまで固定化及び/又は除去する。
【0173】
本発明の一態様において、臭素化Wang樹脂が用いられて、溶液から500g/mol(0.5kDa)~4,000g/mol(4kDa)の間の分子量のフェノールを固定化及び/又は除去し、その後、それを樹脂に結合させながら化学反応によりさらに修飾し、最後に光化学反応などの化学反応により樹脂から生成物を放出させる。
【0174】
本発明の一態様において、可溶性の強塩基が用いられて、500g/mol(0.5kDa)~4,000g/mol(4kDa)の間の分子量を有するフェノールを脱プロトン化した後、そのフェノールを臭素化Wang樹脂と接触させて、1を含有する反応混合物又は組成物中のフェノール2を固定化する。
【0175】
本発明の一態様において、可溶性の強塩基が用いられて、フェノール2を脱プロトン化した後、そのフェノールを臭素化Wang樹脂と接触させて、1を含有する反応混合物又は組成物中のフェノール2を固定化する。
【0176】
本発明の一態様において、ナトリウムエトキシドが用いられて、フェノール2を脱プロトン化した後、そのフェノールを臭素化Wang樹脂と接触させて、1を含有する反応混合物又は組成物中のフェノール2を固定化する。
【0177】
本発明の一態様において、水素化ナトリウムが用いられて、フェノール2を脱プロトン化した後、そのフェノールを臭素化Wang樹脂と接触させて、1を含有する反応混合物又は組成物中のフェノール2を固定化する。
【0178】
本発明の一態様において、臭素化Wang樹脂が、使用前に48時間、ソックスレー抽出機においてメトキシt-ブチルエーテルで洗浄された。
【0179】
本発明の一態様において、臭素化Wang樹脂が、使用前にメトキシt-ブチルエーテルで数回に分けて洗浄された。
【0180】
実験
一般的情報
他に記載されない限り、材料、試薬及び溶媒は、商業的供給源から得られ、さらに精製されずに用いられた。NMRスペクトル(CDCl)が、Varian Unity INOVA 400 MHzで記録され、化学シフトが、重水素化溶媒の残りの溶媒ピークに相対的に報告されている。HPLCは、40℃のオーブン温度で1ml/分で溶出するAgilent Poroshell 120 EC-C18 4.6×50mmカラムと、220nmで記録するDAD検出器と、ELSD検出器と、を具備されたHewlett Packard Series 1100で実施された。
【0181】
【0182】
【0183】
実施例1:高分子量を有するフェノール
実施例1a:9の合成(スキーム2)
mPeg2000OTs(1.64g、0.75mmol)が、真空下、55℃で一晩加熱された。0℃のTHF(4ml)中の8(302mg、1.5mmol)の溶液に、NaH(44mg、1.6mmol)が添加され、混合物が0℃で撹拌された。35分後に、混合物が室温に達するまで放置されて、THF(2ml)に溶解された上記のmPeg2000-OTsが添加され、混合物が50℃に加熱された。4日後に、室温のMeOH(2ml)の添加により、反応がクエンチされた。混合物が4時間撹拌され、その後、揮発物が蒸発された。粗材料がCHCl(100ml)に取り出され、MgSO(6.4g)が添加されて、混合物が室温で撹拌された。2時間後に、溶媒が濾別され、揮発物が蒸発された。粗製物が最小量のCHClに溶解され、0℃のEtOの緩やかな添加により沈殿されて、10分間遠心分離され(3200rpm)、デカンテーションされた。固体がEtOで洗浄され、遠心分離されてデカンテーションされ、これを3回繰り返した。生成物が真空乾燥され、9をもたらした(1.399g、0.65mmol、86%)。
【0184】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ=7.45-7.29(m,5H),6.93-6.82(m,4H),5.02(s,2H),4.08(t,J=4.6 Hz,2H),3.82(t,4.6 Hz,3H),3.65(bs,208 H),3.57-3.52(m,1H),3.49-3.45(m,1H),3.39(s,3H)。注意! 不純物としてのmPEG2000-OH。
【0185】
実施例1b:10の合成(スキーム2)
THF(20ml、5分間Nバブリング)中のベンジル保護されたフェノール9(1.399g、0.65mmol)に、10%Pd/C(0.073g)が添加された。3サイクルの真空/Nの後、3サイクルの真空/Hが実施された。混合物が、室温でのH(バルーン)雰囲気下で撹拌された。16時間後に、3サイクルの真空/Nが実施され、固体が濾別され、揮発物が蒸発された。粗製物が最小量のCHClに溶解され、EtOの緩やかな添加により沈殿されて、10分間遠心分離され(3200rpm、5℃)、デカンテーションされた。固体がEtOで洗浄され、遠心分離されてデカンテーションされ、それを2回行った。生成物が真空乾燥され、10をもたらした(1.112g、0.53mmol、81%)。HPLC/NMR分析は、生成物がmPeg-OHにより混入されていることを示している。
【0186】
H-NMR(400 MHz,CDCl)δ= 6.83-6.73(m,4H),6.08(bs,1H),4.08(t,J=4.6 Hz,2H),3.83(t,4.6 Hz,3H),3.65(bs,287 H),3.58-3.52(m,2H),3.49-3.45(m,1H),3.38(s,3H)。注意! 不純物としてのmPEG2000-OH。
【0187】
実施例1c:臭素化Wang樹脂への10のローディング(スキーム2)
臭素化Wang樹脂(0.663g、0.73mmol)が、4ml MTBEにより20分ずつ3回膨潤/洗浄された後、4ml THFにより20分ずつ3回膨潤/洗浄された。THF(4ml)中のフェノール10(486mg、0.24mmol)にNaOEt(41mg、0.56mmol)が添加され、混合物がNのブランケットの下、室温でかき混ぜられた。1時間後に、上記の膨潤/洗浄された樹脂が一度に添加され、混合物が暗所においてNのブランケットの下、かき混ぜられた。反応の進行は、HPLCによりモニタリングされた(方法2)。22時間後に、10(溶液中)は、HPLCにより検出され得なかった。さらに1日かき混ぜた後に、樹脂が濾別され、THF(5ml)により5分ずつ3回洗浄され、プールされた画分が蒸発されて、非UV活性材料(未反応のmPeg2000-OH)0.1gをもたらした。
【0188】
実施例1d:11の合成(スキーム3)
mPeg5000OTs(5g、0.97mmol)がトルエン(50ml)に溶解され、ディーン・スターク装置で加熱還流された。3時間後に、溶液が室温まで冷却され、揮発物が蒸発された。室温のTHF(10ml)中の8(391mg、1.9mmol)の溶液に、NaH(60mg、1mmol)が添加され、混合物が室温で撹拌された。35分後に、THF(15ml)に溶解された上記のmPeg5000OTsが添加され、混合物が50℃で加熱された。7日後に、反応物が室温でのMeOH(10ml)の添加によりクエンチされた。混合物が4時間撹拌され、その後、揮発物が蒸発された。粗材料がCHCl(100ml)に取り出され、MgSO(6.5g)が添加され、混合物が室温で撹拌された。1時間45分後に、固体が濾別され、揮発物が蒸発された。粗製物がCHCl(100ml)に取り出され、MgSO(6.3g)が添加され、混合物が室温で撹拌された。3.5時間後に、固体が濾別され、揮発物が蒸発された。粗製物が最小量のCHClに溶解され、EtOの緩やかな添加により沈殿されて、10分間遠心分離され(3200rpm)、デカンテーションされた。固体がEtOで洗浄され、遠心分離されてデカンテーションされ、これを3回繰り返した。生成物が真空乾燥され、11をもたらした(3.873g、0.74mmol、76%)。
【0189】
H-NMR(400 MHz,CDCl)δ= 7.45-7.29(m,5H),6.93-6.80(m,4H),5.01(s,2H),4.08(t,J=4.6 Hz,2H),3.82(m,4H),3.74-3.52(bs,513 H),3.49-3.44(m,2H),3.39(s,3H)。注意! 不純物としてのmPEG5000-OH。
【0190】
実施例1e:12の合成(スキーム3)
ギ酸(10ml)及びジオキサン(6ml)中のベンジル保護されたフェノール11(1.020g、0.19mmol)に、10%Pd/C(0.115g)を添加された。混合物が加熱還流された。21.5時間後に、混合物が室温まで冷却され、二重のガラスマイクロファイバーフィルター及びMgSOのパッドで濾過され、揮発物が蒸発された。粗製物がトルエン(10ml)に溶解され、蒸発された。粗製物が最小量のCHClに溶解され、EtOの緩やかな添加により沈殿されて、10分間遠心分離された(3200rpm、5℃)。固体がEtOで洗浄され、遠心分離されてデカンテーションされ、これを3回繰り返した。固体が真空乾燥され、トルエンから蒸発され、それが3サイクル行われて12をもたらした(669mg、0.13mmol、68%)。
【0191】
H-NMR(400 MHz, CDCl)δ= 6.82-6.72(m,4H),6.12(bs,1H),4.08(t,J=4.6 Hz,2H),3.81(t,4.6 Hz,2H),3.77-3.55(bs,598 H),3.49-3.44(m,3H),3.39(s,3H)。不純物としてのmPEG5000-OH。
【0192】
実施例1f:臭素化Wang樹脂への12のローディング(スキーム3)
臭素化Wang樹脂(0.214g、0.235mmol)が、4ml THFにより20分ずつ3回膨潤/洗浄された。THF(5ml)中のフェノール12(0.398g、0.078mmol)に、NaOEt(0.014g、0.180mmol)が添加され、混合物がNのブランケットの下、室温でかき混ぜられた。1.5時間後に、上記の膨潤/洗浄された樹脂が一度に添加され、混合物が暗所においてNのブランケットの下、かき混ぜられた。反応の進行は、HPLCによりモニタリングされた(方法2)。7日後に、UV活性フェノールピークの低減は、HPLCにより検出され得ず、12が臭素化Wang樹脂にロードされていないことが示された。
【0193】
実施例2:一般的手順、表2:フェノールの固定化のための樹脂
示された溶媒中に2を含有する反応混合物に、示された塩基が添加された。混合物がNでパージされ、室温でかき混ぜられた。示された時間(時間1)の後、求電子性樹脂が一度に添加され、Nでパージされ、光から保護されてかき混ぜられた。反応は、HPLCによりモニタリングされ(方法1)、結果が示された時間(時間2)の後、報告されている。
【0194】
注意! 当量数は、1混合物中で17mol%フェノールに基づく。
【0195】
実施例3:一般的手順、表3:希釈、溶媒、塩基、塩基の当量数、樹脂の当量数及び反応時間の調査
注意!実験7及び10において、樹脂は膨潤/洗浄されなかった。実験20では、樹脂がソックスレー抽出され、乾燥されて、再膨潤された。実験21では、樹脂がソックスレー抽出され、いずれかのさらなる追加的膨潤/洗浄を行わずに反応混合物に添加された。樹脂が示された溶媒により20分ずつ3回膨潤/洗浄された。示された溶媒中に2を含有する反応混合物に、示された塩基が添加され、Nでパージされ、かき混ぜられた/撹拌された。示された時間(時間1)の後、膨潤/洗浄/ソックスレー抽出された樹脂が一度に添加され、Nでパージされ、光から保護されてかき混ぜられた/撹拌された。反応は、HPLCによりモニタリングされ(方法1)、示された時間(時間2)の後の結果が、表3に報告されている。
【0196】
実施例4:小規模スカベンジング(実験21、表3)
臭素化Wang樹脂(1.283g、1.17mmol)が、MTBE(60ml)を溶媒として用いて48時間にわたりソックスレー装置で膨潤/洗浄された。
【0197】
1(5.001g、0.8mmol 総フェノール(2))を含む混合物が、機械的撹拌を具備した三口丸底フラスコ内でMTBE(33ml)に溶解された。NaOEt(77mg、1.08mmol)が添加され、混合物がN雰囲気下で撹拌された。70分後に、マスキングされたフェノールの全てが、フェノール(2)に変換され(17%、図2)、上記の膨潤/洗浄された臭素化Wang樹脂が一度に添加された。混合物が穏やかに撹拌され、N雰囲気下で光から保護された。22時間後、フェノール(2)含量は1%となり(図3)、樹脂が放置されて沈降し、液体がフィルタースティックを用いて除去された。樹脂はMTBE(24ml)で3回洗浄され、濾液がひとまとめにされて、ガラスファイバーフィルターで濾過されて 蒸発され、精製されたダイポッド混合物をもたらした(3.6g、除去されたフェノール(2)の94%で計算されて86%収率)。
【0198】
実施例5:大規模スカベンジング(実験23、表3)
抽出可能/浸出可能な樹脂がHPLC/重力分析により検出され得なくなるまで、そしてオリゴスチレンがNMRにより検出され得なくなるまで、臭素化Wang樹脂(351g、386mmol)が、機械的撹拌(Teflonコーティングされたダブルムーンブレードスターラー、100rpm)が具備されてN雰囲気下で光から保護された5Lフラスコ内で、MTBE(2.7L)によりバッチ式に膨潤/洗浄された。膨潤/洗浄された樹脂32gが除去され、以下のスカベンジング工程で用いられなかった。注意! 洗浄からの溶媒は蒸留され、以下の洗浄で再使用された。スキーム1に記載された反応混合物(1048g、165mmol不純物)が、機械的撹拌(Teflonコーティングされたダブルムーンブレードスターラー、100rpm)を具備した10L デュラン瓶内でMTBE(6.5L)に溶解された。3サイクルの真空/窒素の後、NaOEt(18.8g、271mmol)が添加され、混合物がN雰囲気下、室温で65分間撹拌され(175rpm)、その後、フェノール(2)含量が19%となった。上記の膨潤/洗浄された樹脂が、カニューレ式真空トランスファーを介して混合物に一度に添加された。混合物が光から保護され、N雰囲気下で穏やかに撹拌された(100rpm)。17.5時間後に、フェノール含量は1%となり、液体がフィルタースティックを用いて除去され、樹脂がMTBE(1サイクルあたり1.8L、30分)で2回洗浄された。画分がひとまとめにされ、二重のガラスファイバーフィルターで濾過され、蒸発されて、精製されたダイポッド混合物をもたらした(788g、除去された94%フェノール(2)で計算されて89%収率)。

図1
図2
図3
【国際調査報告】