(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(54)【発明の名称】解剖学的構造をモニタする自動化システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517873
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 SG2020050538
(87)【国際公開番号】W WO2021054901
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522108954
【氏名又は名称】ニー・アン・ポリテクニック
【氏名又は名称原語表記】NGEE ANN POLYTECHNIC
【住所又は居所原語表記】Block 40,02-06,535 Clementi Road,Singapore 599489 (SG)
(71)【出願人】
【識別番号】522108965
【氏名又は名称】シンガポール・ヘルス・サービシィズ・ピーティーイー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SINGAPORE HEALTH SERVICES PTE LTD
【住所又は居所原語表記】31 Third Hospital Avenue #03-03,Bowyer Block C,Singapore 168753 (SG)
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】アチャリヤ,ラジェンドラ・ウドヤヴァラ
(72)【発明者】
【氏名】タン,リュ・サン
(72)【発明者】
【氏名】小林 牧子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 将之
(72)【発明者】
【氏名】山川 俊貴
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB02
4C601BB03
4C601DD14
4C601DD15
4C601DE03
4C601EE09
4C601EE10
4C601EE11
4C601FF01
4C601GA01
4C601GB02
4C601GB18
4C601GB20
4C601GD04
4C601JB34
4C601JB49
4C601JC05
4C601JC06
4C601KK13
4C601LL14
(57)【要約】
実施の形態は、患者の解剖学的構造の機能及び動きをモニタするパッチ型の超音波センサシステム及び方法を含み、受信した少なくとも1つの超音波画像を、ラドン変換、高次スペクトル技術及び/又はアクティブ・コンター・モデルを含む1つ又は複数の分析ツールを使用して処理して、少なくとも1つの処理済み超音波画像を生成すること、少なくとも1つの処理済み超音波画像を深層学習畳み込みニューラルネットワークに入力して解剖学的構造の機能状態を示す2つ以上のクラスから選択された自動分類結果を得ることを含む。パッチ型の超音波センサシステムは、無線又は有線で通信することができる。モニタリングは、安静時、手術中、その他の処置中、又は医療検査の一環として対象者が何らかの生理的ストレスにさらされている間に行うことができ、心臓、血管、肺、関節などの身体構造の機能をモニタリングするために使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の解剖学的構造を自動的にモニタするシステムであって、
前記対象者に装着される少なくとも1つの超音波パッチと、
サーバと、
ストレージ媒体と、
出力部を備え、
前記超音波パッチは、1つ又は複数の超音波センサ、通信システム並びに超音波の送信及び/又は受信のための電気基板を備え、
前記超音波パッチは、Mモード、2D、3D及びドップラー超音波を含むグループから選択される1つ又は複数のモードで少なくとも1つの超音波画像を生成し、
前記サーバは、1つ又は複数の分析ツールを用いて前記少なくとも1つの超音波画像を処理して、少なくとも1つの処理済み超音波画像を生成し、
前記少なくとも1つ又は複数の分析ツールは、ラドン変換、高次スペクトル技術、及び/又はアクティブ・コンター・モデルを含み、
前記ストレージ媒体は、深層学習CNNを定義する命令を格納するように構成され、
前記サーバは、前記深層学習CNNを実行して、解剖学的構造の機能状態を示す2つ以上のクラスから選択された自動分類結果を得、
前記出力部は、前記分類結果をユーザに伝える、システム。
【請求項2】
前記2つ以上のクラスは正常クラスと異常クラスを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの超音波パッチは、柔軟な圧電材料を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記超音波パッチは柔軟性があり、前記対象者の表面に適合する、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記超音波画像はMモード及び2D画像である、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記超音波画像は2D及びドップラー画像である、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ又は複数の分析ツールはラドン変換を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ又は複数の分析ツールは、バイスペクトラム・プロット及び/又はキュムラント・プロットを生成する高次スペクトル技術を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記1つ又は複数の分析ツールは、ラドン変換、HOS技術及びアクティブ・コンター・モデルを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの超音波画像はMモード画像を含み、
前記1つ又は複数の分析ツールは、ラドン変換、HOS技法及びアクティブ・コンター・モデルを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの超音波画像はMモード画像を含み、
前記1つ又は複数の分析ツールはラドン変換及びHOS技術を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの超音波画像は、Mモード画像を含み、
前記1つ又は複数の分析ツールは、アクティブ・コンター・モデルを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
前記解剖学的構造は、対象者の心臓又は血管である、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
前記血管は上腕動脈である、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの超音波パッチは、無線接続を介して前記サーバに接続されている、請求項1記載のシステム。
【請求項16】
対象者の解剖学的構造を自動的にモニタリングするためのコンピュータに実装される方法であって、
少なくとも1つの超音波パッチから少なくとも1つの超音波画像を取得するステップと、
少なくとも1つの超音波画像をサーバに送信するステップと、
1つ又は複数の分析ツールを用いて前記少なくとも1つの超音波画像を処理して、少なくとも1つの処理済み超音波画像を生成するステップと、
前記少なくとも1つの処理済み超音波画像を深層学習CNNに入力して、解剖学的構造の機能状態を示す2つ以上のクラスから選択された自動分類結果を得るステップと、
前記分類結果をユーザに表示するステップを含む方法。
【請求項17】
前記2つ以上のクラスは、正常クラスと異常クラスを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記分類結果は、前記対象者が病気又は疾患を有する可能性を示す、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記分類結果は、損傷した組織、血流の遮断、血管の狭窄、腫瘍、先天性血管奇形、血流の減少、血流の欠如、又は血流の増加のうちの少なくとも1つを特定する、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記病気又は疾患が、心血管疾患、癌、感染症又は軟部組織損傷の少なくとも1つである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの超音波画像は、無線接続を介して前記サーバに送信される、請求項16記載の方法。
【請求項22】
病気を持つ対象者の病気を特定する又は予後を決定する方法であって、
前記対象者に装着された少なくとも1つの超音波パッチから、前記対象者の解剖学的構造の少なくとも1つの超音波画像を取得するステップと、
前記少なくとも1つの超音波画像をサーバに送信するステップと、
1つ又は複数の分析ツールを用いて前記少なくとも1つの超音波画像を処理して、少なくとも1つの処理済み超音波画像を生成するステップと、
前記少なくとも1つの処理済み超音波画像を深層学習CNNに入力して、前記解剖学的構造の機能状態を示す2つ以上のクラスから選択された自動分類結果を得るステップと、
前記分類結果をユーザに表示するステップを含み、
前記分類結果は、前記対象者が病気を持つリスク又は病気を持つ前記対象者の予後を示すものである、方法。
【請求項23】
前記分類結果が、損傷した組織、血流の遮断、血管の狭窄、腫瘍、先天性血管奇形、血流の減少、血流の欠如、又は血流の増加のうちの少なくとも1つを特定する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記病気が、心血管疾患、癌、感染症、又は軟部組織損傷のうちの少なくとも1つである、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記1つ又は複数の分析ツールがラドン変換を含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記1つ又は複数の分析ツールは、アクティブ・コンター・モデルを備える、請求項22記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの超音波画像は、無線接続を介して前記サーバに送信される、請求項22記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月19日に出願された米国仮出願第62/902,926号の優先権を主張する出願であり、その内容は参照により組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、診断及び治療用の医用画像に関するものであり、特に、対象者の解剖学的構造の機能を監視するためのコンピュータ実装システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
背景技術
超音波画像(ソノグラムとしても知られている)は、プローブを使って組織に超音波のパルスを発信することで作られる。超音波パルスは、反射特性の異なる組織に反響し、画像として記録及び表示される。医療用超音波(診断用超音波又は超音波検査とも参照される)は、超音波の診断用画像又は治療用アプリケーションを参照する。超音波は、腱、筋肉、関節、血管、内臓などの体の内部構造を画像化することができる。その目的は、多くの場合、病気の原因を見つけたり、病的なものを除去したりすることである。産科用超音波検査は、臨床用超音波が早くに開発されて応用されたものであり、今日では一般的なものになっている。
【0004】
超音波は、他の診断方法に比べていくつかの利点がある。その利点とは、侵襲性がなく、リアルタイムで画像を得ることができる点である。さらに、最近の機械は持ち運びができ、ベッドサイドに持っていくことができる。他の画像診断機器に比べて大幅にコストが低く、有害な電離放射線を使用しないことが特徴である。
【0005】
人体内の臓器、筋肉又は組織の構造及び機能を評価して、病気又は疾患、又はそのような病気又は疾患の悪化の可能性を特定することを促進するために、数多くの超音波センサーデバイスが開発されている。これらの超音波診断装置では、通常、1回の検査にかかる数分の間に数秒の短いスキャンを複数回行い、それらのデータを利用している。上記と同じ目的で、ストレス因子の投与前、投与中、投与後に、短時間(通常は数分)で評価を行うこともできる。例えば、運動時(運動負荷心電図など)、虚血・再灌流時(血流拡張試験時に上腕動脈の血流を圧縮閉塞するなど)、温熱・冷熱時、さらには手術時(術中心電図など)などに超音波検査を行うことができる。しかし、人体の対象部位にセンサを常に圧接させておく必要があるため、1時間を超える長時間の超音波照射又は遠隔操作は実現できていなかった。
【0006】
従来の超音波センサーデバイスは、ライブ画像を提供し、信号処理技術を用いて特徴的な特徴を抽出することができる。例えば、心臓病学の分野では、超音波はどこにでもある汎用的な技術であり、心臓及び血管をリアルタイムで撮影して心血管の健康状態を評価することができる。超音波プローブは、テストの間、検査対象となる心臓又は血管の上の皮膚に置かれる。プローブで得られた信号は、超音波プローブに取り付けられたワイヤーを通じてスキャナに伝えられ、スキャナは信号を処理して画像を生成する。なお、装置は持ち運びができるが、診断情報はスキャン時にしか得られない。従来の装置では、超音波スキャナが起動した段階で、動いている組織の1枚の静止画又は動画を短時間で作成することに限界がある。よって、心臓のような臓器の動きを非侵襲的に長時間にわたって連続的にモニタすることができれば、明らかに有用である。改良された装置では、無線接続によって遠隔地での連続スキャンが可能になり、プローブ及び超音波源は、より長時間にわたるスキャンでも充電する必要がなく、別の場所にあるコンピュータにデータを送信できる。
【0007】
米国特許出願US 2012/0065479 A1は、超音波センサ(好ましくはセンサアレイ)と、体内への超音波送信のための信号情報を生成するように適合された超音波センサに結合された送信システムと、体内から受信した反射超音波信号から信号情報を受信するように適合された超音波センサに結合された受信システムとを備える、身体上で使用するためのウェアラブルパッチを開示している。制御回路は、送信システム及び受信システムに結合されている。パッチは、外部からの制御及び/又は通信を可能にするために、無線通信システムを備えることが好ましい。このパッチは、患者の日常的な活動を妨げることなく、心拍の継続的な監視を可能になる。用途としては、診断、モニタリング、リハビリテーション、創傷治癒などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これは従来の超音波技術に比べて改善されているが、このパッチが継続的に収集・保存する大量のデータを分析する能力がないまま導入された場合には限界がある。データは、訓練を受けた専門家が分析しなければならず、時間がかかり、かつ、主観も入りやすくなるためである。
【0008】
従来の超音波センサ装置から得られた信号及びデータは、医療用途に応じて、測定値の抽出及び結果の分類のためにいくつかの方法で処理することができる。従来の超音波センサの信号データを処理する方法は、例えばノイズ除去の閾値のレベルなど、ある程度の人間の手動入力を本質的に必要とするため、一貫性に欠ける場合がある。これに関して、深層学習(ディープ・ラーニング)技術は、超音波センサ信号データを処理して分類するために、様々な研究で広く使用されている。深層学習型の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、現在、医療分野において、医療用センサからの信号を処理及び分析し、処理速度を向上させて、かつ、効率的な方法で病気又は疾患を特定しやすくする結果を提供するために使用されている。
【0009】
そのため、人体内の解剖学的構造を非侵襲的に評価するための、改良された自動計算実装システム及び方法が必要とされている。また、深層学習CNNを使用することも含めて、受信した超音波信号を処理して正確に分類するために、長時間にわたって信号を継続的に監視するオプションもある。
【発明の概要】
【0010】
概要
以下の概要は、開示された実施の形態に特有の革新的な特徴を理解しやすくするために提供するものであり、いくつかの特徴の説明であって完全な説明を意図するものではない。本明細書に開示された実施の形態の様々な側面の完全な理解は、明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を全体として考慮することによって得ることができる。
【0011】
実施例には、受信した超音波信号を深層学習CNNにより分類するために対象者の解剖学的構造の機能をモニタするパッチタイプの超音波センサシステム及び方法が含まれる。モニタリングは、対象者が安静にしている間、一つ又は複数のストレッサーに応答している間、又は、手術又は他の処置の間に行うことができる。特に、本明細書に開示されたシステム及び方法は、心臓又は血管だけでなく、肺、組織及び関節を含むがこれらに限定されない他の身体構造の機能をモニタリングする際の使用にも適応することができる。
【0012】
ある実施の形態では、対象者の解剖学的構造を評価及び監視するためのシステムであって、前記対象者に装着される少なくとも1つの超音波パッチと、サーバと、ストレージ媒体(記録媒体)と、出力部を備えるものが提供される。ここで、前記パッチは、1つ又は複数の超音波センサ、通信システム、及び、超音波の送信及び/又は受信のための電気基板を備える。前記超音波パッチは、Mモード、2次元(2D)、3次元(3D)、及びドップラー超音波からなるグループから選択される1つ又は複数のモードで、少なくとも1つの超音波画像を生成する。前記サーバは、1つ又は複数の分析ツールを用いて前記少なくとも1つの超音波画像を処理して、少なくとも1つの処理済み超音波画像を生成するクラウドシステムを備える。ここで、前記1つ又は複数の分析ツールは、ラドン変換、高次スペクトル(HOS)技術、及び/又はアクティブ・コンター・モデル(active contour model)を含む。前記ストレージ媒体は、深層学習CNNを定義する命令を記憶するものである。前記サーバは、深層学習CNNを実行して、解剖学的構造の機能状態を示すために、2つ以上のクラスから選択された自動分類結果を取得する。前記出力部は、分類結果をユーザに伝えるためのものである。
【0013】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの処理済み超音波画像は、「正常」又は「異常」のいずれかの2つのクラスに分類される。
【0014】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波パッチは、Mモード、2D、3D及びドップラー超音波からなる前記グループから選択される1つ又は複数のモードで、前記少なくとも1つの超音波画像を生成する。前記超音波センサが用いられている間に超音波エコーを連続的に取得でき、画像を連続的に生成して保存する間に、前記画像出力も、医療上の必要性並びに記憶容量及び/又は分析容量に応じて、臨床医の裁量により、「静止」画像又はビデオ形式(「cine」)の「動」画像の形態で保存することができることが理解されるであろう。「動」画像の持続時間は、わずかな秒数から数秒程度で、対象構造の位相的な動きを描写するのに十分であると考えられている。例えば、標準的な臨床用途の心臓超音波検査では、心臓の拍動を調べるのに1~10心拍の時間で十分であるとされる。1つの「静止」超音波画像は、ある有限の期間にキャプチャされた構造の保存された2D画像であるとするができる。あるいは、「静止」画像は、関心のある構造の段階的な動きを描写するのに十分であるとみなされる時間期間、典型的にはわずかな秒数又は数秒にわたって取得される1次元の空間情報及び/又はドップラー由来の速度情報をキャプチャすることもできる。特に、Mモード超音波は、x軸上の時間に対するy軸上の1次元空間情報を描き、スペクトル・ドップラー超音波は、x軸上の時間に対するy軸上の速度情報を描く。
【0015】
前記少なくとも1つの超音波画像を生成するためのデータは、従来の「cine」スキャンの典型的な持続時間よりも長い所定の時間、例えば少なくとも15秒から24時間にわたって連続的に取得して、それ自体が持続時間のより短い、より小さな時系列データセットのセグメントに分割できる「時系列データ」を構成することもできる。「時系列データ」は、ビデオ形式で保存及び表示することができ、経時的に取得されたドップラー由来の速度情報のオーバーレイがある若しくはない2D空間情報を描写する画像、又は、経時的に取得されたドップラー由来の速度情報のオーバーレイがある若しくはない3D空間情報を描写する画像で構成することができる。また、「時系列データ」は、Mモード超音波又はスペクトル・ドップラー超音波のように、x軸上の取得時間に対してy軸上に1次元の空間情報及び/又はドップラー由来の速度情報を表示する、保存された「静止」画像で構成することもできる。これに関連して、「時系列データ」は、ストレッサーの適用又は治療の投与前、投与中及び投与後の対象構造の構造的及び機能的変化を特徴付け、定量化するのに有用である。
【0016】
したがって、ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、ある期間における構造(すなわち空間)情報に基づく時系列データセットを表すことができる。ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、予め定められた時間期間にわたる解剖学的構造の時系列データセットを表すMモード画像とすることができる。前記予め定められた時間は、少なくとも15秒から24時間までとすることができる。ただし、これは、モニタする構造、対象者、及び/又は評価とモニタリングの状況に応じて変更することができる。
【0017】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波パッチは、薄くて柔軟な圧電材料で構成される。
【0018】
ある実施の形態では、前記超音波パッチは、柔軟性があり、対象者の皮膚の表面に適合する。しかし、ある実施の形態では、前記超音波パッチは、対象者の内部体腔の表面に取り付けられて適合するように変更及び適合させることもできることが理解されるであろう。他の実施の形態では、前記超音波パッチは、移植可能なセンサとして動作するように変更及び適合させることができる。
【0019】
ある実施の形態では、前記超音波画像は、Mモード、2Dエコー、3Dエコー又はドップラーエコー画像である。
【0020】
ある実施の形態では、前記1つ又は複数の分析ツールは、ラドン変換を含む。
【0021】
ある実施の形態では、前記1つ又は複数の分析ツールは、バイスペクトラム・プロット(a bispectrum plot)及び/又はキュムラント・プロット(a cumulant plot)を生成するためのHOS技術を含む。
【0022】
ある実施の形態では、前記1つ又は複数の分析ツールは、ラドン変換、HOS技術、及びアクティブ・コンター・モデルを含む。
【0023】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、Mモード画像を含む。ここで、前記1つ又は複数の分析ツールは、ラドン変換、HOS技術及びアクティブ・コンター・モデルを含む。
【0024】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、Mモード画像を含む。ここで、前記1つ又は複数の分析ツールは、ラドン変換及びHOS技術を含む。
【0025】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、Mモード画像を含む。ここで、前記1つ又は複数の分析ツールは、アクティブ・コンター・モデルを含む。
【0026】
ある実施の形態では、解剖学的組織は、対象者の心臓又は血管又は他の体内器官である。
【0027】
ある実施の形態では、前記血管は上腕動脈である。
【0028】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波パッチは、無線通信により前記サーバに接続される。
【0029】
ある実施の形態では、対象者の解剖学的構造を自動的に評価するための計算機で実装された方法が提供される。前記方法は、以下のステップを含む。超音波パッチから少なくとも1つの超音波画像を取得するステップと、クラウドシステムを含むサーバに前記少なくとも1つの超音波画像を送信するステップと、前記クラウドシステムにおいて、1つ又は複数の分析ツールを用いて前記少なくとも1つの超音波画像を処理して、少なくとも1つの処理済み超音波画像を生成するステップと、前記少なくとも1つの処理済み超音波画像を深層学習CNNに入力して、解剖学的構造の機能状態を示す2つ以上のクラスから選択される自動分類結果を得るステップと、前記分類結果をユーザに表示するステップである。
【0030】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの処理済み超音波画像は、「正常」又は「異常」のいずれかの2つのクラスに分類される。
【0031】
ある実施の形態では、前記分類結果は、対象者が病気又は疾患を有する可能性を示す。
【0032】
ある実施の形態では、分類結果は、損傷した組織、血流の遮断、血管の狭窄、腫瘍、先天性血管奇形、血流の減少、血流の欠如、又は血流の増加のうちの少なくとも1つを特定する。
【0033】
ある実施の形態では、前記病気又は疾患は、心血管疾患、癌、感染症又は軟部組織損傷の少なくとも1つである。
【0034】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、無線通信により前記サーバに送信される。
【0035】
ある実施の形態では、病気を持つ対象者の病気の特定又は予後の決定を支援する方法が提供される。この方法は、以下のステップを含む。対象者に装着された少なくとも1つの超音波パッチから前記対象者の解剖学的構造の少なくとも1つの超音波画像を取得するステップと、サーバに前記少なくとも1つの超音波画像を送信するステップと、1つ又は複数の分析ツールを使用して前記少なくとも1つの超音波画像を処理して、少なくとも1つの処理済み超音波画像を生成するステップと、前記少なくとも1つの処理済み超音波画像を深層学習CNNに入力して、解剖学的構造の機能状態を示す2つ以上のクラスから選択された自動分類結果を得るステップと、前記分類結果をユーザに表示するステップである。ここで、前記分類結果は、対象者の病気のリスク又は病気の予後を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図面の簡単な説明
上記の発明の概要、及び例示的な実施の形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解される。図面には、本開示を説明する目的で、本開示の例示的な構成を示している。しかし、本開示は、ここに開示された特定の方法及び手段に限定されるものではない。さらに、当業者であれば、図面が縮尺通りではないことを理解するであろう。可能な限り、同様の要素は同一の番号で示している。
【0037】
【
図1】
図1は、開示された実施の形態について、超音波パッチ110を使用して対象者の解剖学的構造を自動モニタするための計算機実装システム100の概念図である。
【0038】
【
図2】
図2は、開示された実施の形態について、超音波パッチ110のフレキシブルプリント回路基板200のブロック図である。
【0039】
【
図3】
図3は、CNNネットワークを用いて入力された超音波画像を分類するステップを示す概念図である。
【0040】
【
図4】
図4は、機能状態の分類のために、対象者の上腕動脈から得られた超音波画像の処理の例示的な実施の形態を示すフロー図である。
【0041】
【
図5】
図5は、5人の対象者を対象とした上腕動脈閉塞試験において、「正常」、「閉塞」及び「解放」の機能状態で取得された上腕動脈の超音波信号の時系列データを処理したキュムラント・プロット(cumulant plots)とバイスペクトラム・プロット(bispectrum plots)を示す図である。
【0042】
【
図6】
図6は、5人の対象者を対象とした上腕動脈閉塞試験における、「正常」、「閉塞」及び「解放」の上腕動脈の機能状態を、アクティブ・コンター法を用いて処理したセグメント画像を示す図である。
【0043】
【
図7】
図7は、5人の対象者を対象とした上腕動脈閉塞試験時の、「正常」、「閉塞」及び「解放」の機能状態における上腕動脈のアテンション・マップを示す図である。
【符号の説明】
【0044】
数値参照特徴
以下の索引番号と関連する特徴のリストは、
図1から
図7及び本開示の例示的な実施の形態を参照しやすくするためのものである。
100-超音波パッチを用いて被検体の解剖学的構造を自動モニタするシステム
110-超音波パッチ
115-クラウドシステム
120-CNNモデル
130-サーバ
135-出力デバイス
200-回路基板
205-センサ
210-パルサー/レシーバ
215-マイクロプロセッサ
220-パワーソース
225-トランスミッタ/レシーバ(Tx、Rx)
230-アンテナ/通信システム
【発明を実施するための形態】
【0045】
定義の説明
本明細書における「ある実施の形態/側面(one embodiment/aspect)」又は「1つの実施の形態/側面(an embodiment/aspect)」への言及は、実施の形態/側面に関連して説明される特定の特徴、構成又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施の形態/側面に含まれることを意味する。本明細書の様々な個所での「ある実施の形態/側面において」又は「別の実施の形態/側面において」という表現の使用は、必ずしもすべてが同じ実施の形態/側面を指しているわけではなく、また、別の又は代替の実施の形態/側面は、他の実施の形態/側面と相互に排他的である。さらに、いくつかの実施の形態/側面で発揮され、他の実施の形態/局面では発揮されない可能性がある様々な特徴が記載されている。同様に、いくつかの実施の形態/側面の要件であって、他の実施の形態/側面の要件ではないかもしれない様々な要件が記載されている。実施の形態及び側面は、特定の例では交換可能に利用することができる。
【0046】
本明細書で使用されている用語は、一般的に、本開示の文脈の中及び各用語が使用されている特定の文脈の中で、当該技術分野における通常の意味を有する。本開示を説明するために使用される特定の用語については、下記又は本明細書の他の場所で述べられ、本開示の説明に関して当業者に追加のガイダンスを提供する。同じことを2つ以上の方法でいうことができることが理解されるだろう。
【0047】
その結果、本明細書で議論されている用語のいずれか1つ又は複数に対して、代替言語及び同義語を使用することができる。また、ある用語が本明細書で詳述されているか否かに特別な意味を持たせることはない。特定の用語の同義語が提供されている。1つ又は複数の同義語の説明は、他の同義語の使用を排除するものではない。ここで議論されている任意の用語の例を含む本明細書の任意の場所での例の使用は、例示のみであり、本開示又は例示された用語の範囲及び意味をさらに限定することを意図していない。同様に、本開示は、本明細書で与えられる様々な実施の形態に限定されるものではない。
【0048】
該当する場合、本明細書において及び添付の特許請求の範囲において使用される「約」又は「一般的に」という用語は、他に示されない限り、±10%のマージンを意味する。また、該当する場合、本明細書において及び添付の特許請求の範囲において使用される用語「実質的に」は、他に示されない限り、±20%のマージンを意味する。上記の用語のすべての使用が、参照される範囲を適用できるように定量化できるわけではないことを理解していただきたい。
【0049】
「解剖学的構造」又は「構造」という用語は、人体の任意の部分(典型的には器官、組織、及び細胞などの解剖学的システムの構成要素)を指す。これに関連して、組織は、対象者の体内の筋肉組織、結合組織、上皮組織及び神経組織を含み、さらには、これらに限定されない任意の身体組織を指すことがある。例えば、本明細書に記載のシステムは、軟部組織(例えばカテーテル/針を挿入するため)、肺組織(例えば動脈/静脈)、心臓(例えば、血腹及び心膜タンポナーデのため)、腹部(膵臓、大動脈、下大静脈、肝臓、胆嚢、胆管、腎臓、及び脾臓を含む)、女性の骨盤内臓器(例えば子宮、卵巣、卵管)、膀胱、隣接器官(adnexa)、ダグラス窩、頭頸部(甲状腺、副甲状腺、リンパ節、唾液腺を含む)、及び、筋骨格系(腱、筋肉、神経、靭帯、軟部組織塊、骨表面を含む)のような解剖学的構造をモニタすることができる。
【0050】
「病気」(condition)又は「疾患」(disease)という用語は、「病気」(ailment)と互換的に使用することができ、一般的には、病気、疾患、又は、その他の物理的若しくは精神的な障害を指す。超音波で識別できる病気には、例えば、動脈及び静脈疾患、末梢血管疾患、心臓の狭窄又は不全、胃腸及び大腸の異常、膵臓、大動脈、下大静脈、肝臓、胆嚢、胆管、腎臓及び脾臓の異常、虫垂炎、甲状腺及び副甲状腺の異常、リンパ節、唾液腺の異常などがある。異常には、損傷した組織/外傷、血流の遮断(血栓など)、血管の狭窄、腫瘍及び先天性の血管奇形、精巣又は卵巣などの様々な器官への血流の減少若しくは欠如又は血流の増加がある。これは感染症の兆候である可能性がある。
【0051】
用語「対象者」、「患者」及び「個体」は、本明細書において互換的に使用され、超音波画像を受信するために超音波パッチを装着することができる動物、例えばヒト又はヒト以外の動物を指す。対象者という用語は、人間のような特定の動物の特有の状態又は病状を測定又はモニタリングする際に、その特定の動物を指すために使用する用語である。本明細書で互換的に使用される「非ヒト動物」及び「非ヒト哺乳類」には、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、及び非ヒト霊長類などの哺乳類が含まれる。また、「対象者」という用語は、哺乳類、爬虫類、両生類及び魚類を含み、これらに限定されないあらゆる脊椎動物を包含する。しかし、対象者は、ヒトなどの哺乳類、又は、飼いならされた哺乳類、例えばイヌ、ネコ、ウマなどの他の哺乳類、又は、生産哺乳類、例えばウシ、ヒツジ、ブタなどの他の哺乳類であることが好ましい。本発明のシステム及び方法の患者、個人又は対象者は、本明細書における本開示の開示の文脈では、ヒトに加えて獣医学的対象者である。このような対象者には、家畜やペットのほか、馬、グレイハウンドなどのスポーツ動物も含まれる。
【0052】
「深層学習」(ディープラーニング)という用語は、より高いレベルの抽象化とデータからの改善された予測を可能にする2つ以上の隠れ階層からなる、人工的なニューラルネットワーク(「ANN」)の改良を指す。「深層学習モデル」とは、深層学習ニューラルネットワークモデルを含むことができる分類モデルを指す。
【0053】
「畳み込みニューラルネットワーク」(「CNN」)という用語は、この技術分野で従来から使用されているものであり、一般に、コンピュータビジョンタスクのための強力なツールを指す。深層学習CNNは、画像などの生データから得られる中レベル及び高レベルの抽象化を自動的に学習するように定式化することができる。畳み込み層は、1つ又は複数の畳み込みカーネルを含むことができる。各カーネルは、同じであっても、異なるフィルタに対応する異なる係数を持つ入力行列を持つ。層内の各畳み込みカーネルは、出力ニューロンがカーネルごとに異なるように、異なる出力マップを生成する。畳み込みネットワークは、1つ又は複数の出力マップのニューロングループの出力を組み合わせる、ローカル又はグローバルな「プーリング」層も含むことができる。出力の組み合わせは、例えば「プーリング」層の出力マップ上で、対応する出力に対して、ニューロンのグループの出力の最大値又は平均値を計算することで構成することができる。「プーリング」層を設けることで、ネットワークのある層から他の層への出力マップのサイズを小さくすることができ、また、入力データの小さな変形又は変換に対する耐性を高めることで、それの性能レベルを向上させることができる。
【0054】
「コンピュータ学習」とは、人工知能(AI)を応用したものを指し、システムに対して、明示的にプログラムしなくても、経験から自動的に学習し、改善する能力を与える。
【0055】
「モジュール」という用語は、それ自体が定義されたタスクを実行して、かつ、他の同様のユニットとリンクして、より大きなシステムを形成することができる、電子部品及び関連する配線のアセンブリ又はコンピュータソフトウェアのセグメントなどの自己完結型ユニットを意味する。
【0056】
「Mモード」という用語は、超音波ビームの単一の選択された経路に沿った超音波読み出しのタイムモーション表示を意味する。超音波読み出しは、典型的には、超音波源から発せられた超音波ビームの経路に対して相対的に移動する音波反射を生じる臓器境界の深さに関する空間情報である。また、超音波読み出しは、上述した一次元の空間的な深さ情報と、カラーコード化されたドップラー由来の速度情報、すなわちカラーMモードとを組み合わせて構成することもできる。
【0057】
超音波の文脈における「2次元」若しくは「2D」又は「3次元」若しくは「3D」という用語は、超音波画像の空間的な次元を意味する。2D又は3Dの超音波画像は、基本的な又は送信された超音波周波数から構築されるものであってもよい。あるいは、体組織を通過する超音波の非線形伝搬から生成される高調波周波数から、より質の高い画像を構築してもよい。
【0058】
「ドップラー」及び「ドップラー超音波」という用語は、ドップラー効果を利用して、関心のある構造における血流又は(組織ドップラーイメージングの場合)組織の速度を計算して視覚化することを意味し、ドップラー画像の取得及び読み出しの様々なモードを包含する。ドップラー超音波法は、超音波源の方向に相対的に動いている血球や組織から反射される超音波の周波数の変化を検出することに基づいている。スペクトラル・ドップラー超音波法は、連続波ドップラー及びパルス波ドップラーを含み、それぞれ、超音波ビームのラインに沿ってサンプリングされた深さでの最大血流速度及び特定血流速度を計算し、x軸の時間に対してy軸に得られた速度をグラフで表示するものである。カラードップラー法では、対象エリア又はボリューム内で算出された血流速度はコンピュータで色の配列に変換され、対象構造の標準的な2D又は3D画像に重ねて表示することで、構造内の血流の速度及び方向をカラーで視覚化する。カラードップラー法よりも感度の高いパワードップラー法では、血流の速度のみが表示され、方向は表示されない。組織からの反射超音波信号を強調し、血液からの信号を減衰させるフィルタを用いて、組織ドップラーイメージング法では、対象構造内の組織からの速度を算出することができる。パルス波による組織ドップラーイメージング法で得られた単一の小さなサンプル領域での組織速度は、高い時間分解能で取得し、y軸に組織速度、x軸に時間をとってグラフィカルに表示することができる。また、より広い範囲の組織速度を低い時間分解能で取得することができ、その組織速度は符号化され、対象となる構造の画像内のカラーコード化された2Dエリア又は3Dボリュームを用いて表示される。
【0059】
「時系列データ」という用語は、従来の「cine」スキャンの典型的な期間よりも長い所定の時間、例えば少なくとも15秒から24時間にわたって連続的に取得されたデータを意味する。所定の期間は、モニタする構造、対象者、及び/又は評価とモニタリングの状況に応じて変更することができる。「時系列データ」は、それ自体が、より短い持続時間のより小さな「時系列データ」のセグメントに分割することができる。「時系列データ」は、通常、ビデオ形式で表示され、経時的に取得されたドップラー由来の速度情報のオーバーレイのある若しくはない2次元空間情報を描いた画像、又は、経時的に取得されたドップラー由来の速度情報のオーバーレイのある若しくはない3次元空間情報を描いた画像で構成することができる。Mモード超音波及バイスペクトラム・ドップラー超音波の読み出しのように、静止画像が経時的に構造及び/又は速度情報を描写する場合、画像データは、当該時間帯における「時系列データ」を構成することができる。具体的には、Mモード画像自体は、時間経過及びこれに伴う一次元の距離をそれぞれx軸上及びy軸上にプロットしているため、「時系列データ」の画像となる。
【0060】
「プロセッサ」という用語は、データ、信号又は他の情報を処理する任意の適切なハードウェア及び/又はソフトウェアシステム、機構又はコンポーネントを含む。プロセッサは、汎用の中央処理装置、マルチプロセッシングユニット、特定の機能を実装する専用回路、又は他のシステムを含んでもよい。プロセスは、地理的な場所に限定される必要はなく、時間的な制限もない。例えば、プロセッサは、「リアルタイム」、「オフライン」、「バッチモード」などで機能を実行することができる。処理の一部は、別の(又は同じ)処理システムによって異なる時間と場所で実行することができる。処理システムの例としては、サーバ、クライアント、エンドユーザーデバイス、ルーター、スイッチ、ネットワークストレージなどを含むことができる。コンピュータは、メモリと通信する任意のプロセッサとすることができる。メモリは、任意の適切なプロセッサ読み取り可能なストレージ媒体であり、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、磁気ディスク又は光ディスク、又は他の有形媒体などで、プロセッサによって実行される命令を格納するのに適したものである。
【0061】
「特徴」という言葉は、画像に存在する隠れたシグネチャを意味する。
【0062】
「ReLu」という用語は、学習中の勾配爆発を避けるために使用される活性化関数である調整線形ユニット(Rectified Linear Unit)を意味し、ここで、勾配爆発とは、学習されていない又は収束していないモデルを意味する。
【0063】
「ラドン変換すること」又は「ラドン変換」という用語は、平面上で定義された関数fを、平面上の線の(2次元)空間上で定義された関数Rfに変換する積分変換を意味し、その特定の線における値は、その線上の関数の線積分に等しい。ここでは、ラドン変換は、画像を一次元の時系列に変換し、線積分を用いて画像の方向的特徴をキャプチャするものとして使用される。
【0064】
「アクティブ・コンター・モデル」又は「スネーク」という用語は、ノイズを多く含み得る2D画像から物体の輪郭を描き出すためのコンピュータ・ビジョンにおけるフレームワークを意味する。このモデルはコンピュータ・ビジョンで人気があり、スネークはオブジェクトトラッキング、形状認識、セグメンテーション、エッジ検出、ステレオマッチングなどのアプリケーションで広く使用されている。
【0065】
「ラジオミクス」という用語は、データ特性化アルゴリズムを用いて放射線医用画像から多数の特徴を抽出する方法を意味する。この特徴は、ラジオミクス特徴と呼ばれ、視覚的な検査では検出されない疾患の特徴を明らかにすることができる。目的は、病気を示す複数の特徴を含む「ラジオミック・シグネチャ」を特定することである。
【0066】
「治療する」又は「治療」という用語は、(1)病気を抑制すること、及び(2)病気を改善することの1つ以上を意味する。(1)病気を抑制することは、例えば、病気、疾患又は障害の病理又は症状を経験又は表示している個体において、病気、疾患又は障害を抑制すること(すなわち、病理及び/又は症状のさらなる進展を阻止すること)である。(2)病気を改善することは、例えば、疾患の重症度を減少させるように、病気、疾患又は障害を経験又は表示している個体において、病気、疾患又は障害を改善すること(すなわち、病理及び/又は症状を逆転させること)である。
【0067】
本明細書で使用されているその他の技術用語は、様々な技術辞書で例示されているように、それらが使用されている技術分野での通常の意味を持っている。これらの非限定的な例で議論される特定の値及び構成は、ここでは変化させることができ、単に少なくとも1つの実施の形態を説明するために引用されているだけであり、その範囲を限定することを意図していない。
【0068】
例示的な実施の形態の詳細な説明
以下の説明で述べられている特定の構成は、変化させることができる非限定的な例であり、単に少なくとも1つの実施の形態を説明するために引用されており、その範囲を限定することを意図していない。
【0069】
超音波を使用して、対象者の心臓などの体内の解剖学的構造を調べることは、異常な構造及び/又は機能を診断するための一般的なツールである。また、超音波は、安静時、ストレス要因への反応時、手術やその他の処置時に、解剖学的構造の健康状態をモニタ及び測定するためにも使用できる。対象者の健康状態を評価する際、臨床医やその他の医療関係者は、解剖学的構造の測定値を得ることをしばしば要求し、解剖学的構造の機能及び/又はストレス要因に対する反応を評価するための医療検査を行う。このような測定値は、さまざまな種類の病状や疾患を示すものであり、また、そのような病状や疾患が進行する可能性を示すものでもある。
【0070】
超音波は、対象者を治療する際にも重要である。臨床医やその他の医療関係者は、外科手術やその他の介入処置、薬物投与やその他の形態の治療などの治療プロセスにおいて、解剖学的構造の測定値を得ることをしばしば要求する。このような測定は、治療に対する機能及び/又は反応を評価するために重要となる。このような測定値は、多くの場合、治療の有効性、無効性又はそのような治療に対する将来の反応の可能性を示すものであり、最終的には予後を決定することになる。
【0071】
理解されるように、手動プロセスでこのような測定値を生成するには、訓練を受けた超音波ソノグラファーが物理的にプローブを対象者に当てる必要がある。対象者をモニタし、測定値を記録し、医療報告書にまとめなければならない。手動プロセスは、時間がかかり、リソースが集中し、ヒューマンエラーが発生しやすく、測定結果が不完全になってしまう可能性がある。さらには、超音波プローブを手動で適用及び調整する必要があるため、超音波信号取得の期間が制限される。
【0072】
したがって、医療提供者の観点からすると、超音波センサパッチは、人間の超音波ソノグラファーがプローブを手動で適用及び調整する必要性を排除し、対象者内の解剖学的構造の超音波信号取得の持続時間を延長することを容易にする。また、超音波パッチを無線化することで、超音波信号の取得をリモートで行うことも可能になる。超音波パッチセンサの低エネルギー設計を併せると、定期的な充電の必要性がなくなり、外来診療での継続的なリモート超音波モニタリングが可能になる。
【0073】
このように、超音波画像から解剖学的構造の測定値の完全なセットを自ら生成することができる自動化されたコンピュータ実装システムは、医療専門家のための意思決定サポートサービスを支援する上で大きな利益をもたらす可能性がある。このような自動化されたコンピュータ実装システムは、超音波医学的評価を生成するプロセスを高速化し、ワークフローを迅速化することができる。医療提供者の観点からすると、この種の自動化されたコンピュータ実装システムは、人間の超音波ソノグラファーが解剖学的構造の測定値を人手で測定及び記録する必要性を排除することができる。自動化されたシステムは、ワークフローの効率を改善させ、対象者の診断(すなわち、より信頼性が高く正確な診断)、予後の予測及び治療のモニタリングへと導くことができる。
【0074】
さらに、超音波信号データを効率的に処理及び分析することができる自動化されたコンピュータ実装システムは、長時間にわたる超音波信号の取得に有利である。時間をかけて複数の画像を得る超音波システムは、処理及び分析しなければならない大量のデータを生成する。
【0075】
連続的な信号モニタリングは、潜在的に、処理及び分析にかなりの時間を必要とする大量のデータを生成し、手動又は従来の処理及び/若しくは分析方法では実現できない場合がある。深層学習CNNは、このような大量のデータセットを処理及び分析する際の効率と時間コストを向上させることができる。
【0076】
本発明は、好ましくは、従来、超音波画像によってモニタされていた対象者の様々な解剖学的構造の心臓、血管、肺、関節、筋肉、体組織、腫瘍などの健康状態をモニタするために使用できることが理解されるであろう。対象者は、手術中やその他の処置中と同様に、安静時にも、虚血・再潅流、運動、加熱/冷却などの生理的ストレスを受けている最中やその後に、本システムを用いてモニタすることができる。また、本システムを使用して、病院内やリモートの外来診療で長期間にわたって対象者をモニタすることができる。
【0077】
本明細書では、臨床医や医療専門家などのユーザに、対象者の解剖学的構造の健康状態を判断し、その後、前記対象者が病気又は疾患を有する可能性を判断することを支援することを提供するシステム及び方法を開示している。本システム及び方法は、得られた超音波画像に1つ又は複数のデータ分析技術を適用し、訓練された深層学習CNNに供給することで、解剖学的構造の機能状態を「正常」又は「異常」などの2つ以上のクラスから自動的に分類することができる。この分類は、解剖学的構造の様々な機能状態を区別することに貢献し、健康な対象者と健康でない(病的な)対象者を互いに区別するのに役立つ。
【0078】
例えば、対象者の動脈閉塞試験中に本システムを用いて血管をモニタすると、(1)正常な静止状態、(2)閉塞状態(すなわち、外部から圧縮圧力をかけている間)、(3)解放後の状態、を含む様々なエポックで、所定の期間に記録された時系列データに基づいて、様々な機能状態を自動的に分類することができる。これは、本システムが、異なる測定エポックにおいて、前記血管を通る正常な血流と異常な血流を識別する能力、又は、前記血管の異なる機能状態を識別する能力を有することを示している。同時に、対象者の動脈閉塞試験中に本システムを用いて血管をモニタリングすることで、閉塞解除に対する血流の反応に基づいて、血管機能を正常又は異常に自動的に分類することができ、これを虚血再灌流のシミュレーションに用いることができる。
【0079】
これらの自動分類は、モニタされる解剖学的構造及び機能状態に応じて、得られた測定値に関する臨床ガイドラインを用いて、2つ以上のクラスに変更及び/又は細分化することができる。例えば、本システムは、心臓のイメージングに適用することができ、左心室壁運動の超音波信号の取得を、安静時、運動中及び運動後に行うことができ、安静時、運動中及び運動後に記録された時系列データと同様に、安静時の超音波信号の処理及び分析に基づいて、心臓の機能に関する自動分類を行うことができる。
【0080】
理解されるように、分類結果は、対象者が病気又は疾患を有する可能性を示すことができ、それにより、分類結果は、正常クラス(健康)又は異常クラス(病的)とすることができる。また、分類結果は、前記病気、疾患又は病いの特定の重症度又は状態を反映するために、さらに細分化することができる。
【0081】
本開示は、データ処理技術及び訓練された深層学習CNNを使用して、超音波画像を機能状態又は健康(「正常」又は「異常」)を示す1つ又は複数のクラスに区別するための高度に識別可能なシステム及び方法を提供する。本システム及び方法は、機能状態、病気又は疾患を示す特徴を正確かつ鋭敏に判別することができる。特に、本システム及び方法は、超音波画像から、機能状態及び/又は病気若しくは疾患の症候性病態を検出することができる。
【0082】
その結果、本開示は、対象者の解剖学的構造の機能的健全性を自動的にモニタリングするためのソリューションを提供し、得られた分類結果は、個人が病気又は疾患を有するか、又はそのリスクがあるかの可能性を正確かつ効率的に決定する。
【0083】
ある実施の形態では、本システム及び方法は、少なくとも1つの超音波画像を、解剖学的構造の機能状態を表す1つ又は複数のクラスに自動的に分類することができる。ある実施の形態では、分類は、例えば内皮機能の代用である虚血-再灌流に対する「正常」対「異常」の血管応答などの2つのクラスに分けることができる。ある実施の形態では、分類は、モニタされる解剖学的構造及び臨床設定に応じて、定量的又は定性的な2つ以上のクラスに分けることができる。例えば、解剖学的構造としての心臓の文脈では、定量的なクラスには、「正常」のクラスと、機能障害(すなわち、心臓の収縮機能)の重症度の様々な等級を表す1つ以上のクラスが含まれ、一方、定性的なクラスには、「正常」、「虚血」又は「梗塞」の心筋が含まれる。
【0084】
ある実施の形態では、本システム及び方法は、少なくとも1つの超音波画像を正常クラス又は異常クラスのいずれかに自動的に分類することができる。正常クラス及び/又は異常クラスの分類は、監視すべき解剖学的構造に応じて、さらに他の複数の分類に細分化することができる。
【0085】
図1は、超音波パッチ110を用いて対象者の体内の解剖学的構造を自動モニタするための代表的なコンピュータ実装システム100の概念図である。超音波パッチ110は、1つ以上の単一の超音波センサと、超音波の送信/受信及び通信のための電気基板と、対象者に取り付けるための手段とを含む。超音波パッチ110は、超音波のバーストを送信し、モニタ対象の解剖学的構造からのエコー信号を受信する。エコー信号は、少なくとも1つの超音波画像を生成するために使用され、その画像は、画像データを処理及び分析するためにクラウドシステム115が配置されているサーバ130に送信することができる。処理された画像は、次に、訓練された深層学習CNNモデル120に供給され、サーバ130を経て実行されて、画像を自動的に分類して、2つ以上のクラスから選択された自動分類結果を得ることができる。次に、CNNからの分類結果は、サーバ130に送信され、その後、出力デバイス135を介して1人以上のユーザに表示される。分類結果は、対象者と通信する前に、別のモニタ装置を介してユーザが任意に検証することができる。出力デバイス135は、コンピュータ、ラップトップなどに限定されない。
■超音波パッチ
[0001]
ある実施の形態では、本システムは、対象者に取り付けられた少なくとも1つの超音波パッチを含むことができる。複数の超音波パッチを含み、モニタする解剖学的構造に応じて1つ又は複数の位置で対象者に取り付けることができる。理解できるように、本システムは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のパッチを同時に使用することができる。
【0086】
図2に示されているように、超音波パッチの電気コンポーネントは、フレキシブルプリント回路基板200上に統合することができる。構成要素は、超音波センサ205、パルサー/レシーバ210、マイクロプロセッサ215、電源(バッテリ)220、送信機/受信機(Tx、Rx)225及びアンテナ又は通信システム230を含むことができる。
【0087】
ある実施の形態では、超音波パッチは、1つ又は複数の超音波センサ、マイクロプロセッサ、受信機、超音波の送信及び/又は受信のための電気基板、及び電源を含むことができる。超音波パッチは、対象者の表面に取り付けられる、「ウェアラブル」である。これに関連して、パッチは、医療用テープ、ストラップ、衣料品若しくはアクセサリー又はそれらの組み合わせで対象者に取り付けることができるものであり、プラスチック、弾性体又は布などの薄い柔軟な材料として形成することができる。
【0088】
1つ又は複数の超音波センサは、エコー信号(画像データ)を送信することができ、これにより、これらのエコー信号は、パルサー/レシーバを介してマイクロプロセッサによって処理され、超音波画像を生成することができる。
【0089】
ある実施の形態では、マイクロプロセッサ215は、アナログtoデジタル(A/D)コンバータ、デジタルフィルタ及びタイミングアナライザを含むことができる。
【0090】
ある実施の形態では、超音波センサは、エコー信号(画像データ)を連続的及び/又は断続的に送信することができる。
【0091】
ある実施の形態では、超音波パッチは、画像データを送信するために、有線又は無線のいずれかの接続を介してコンピュータ・サーバに接続することができる。
【0092】
ある実施の形態では、超音波センサは、連続的又は断続的に送信される画像データで遠隔モニタリングをするために、無線接続を介してコンピュータ・サーバに接続することができる。超音波画像データは、画像データをサーバに転送する受信機に送信される。ここで開示されている超音波パッチの無線又は有線接続は、この技術分野で知られている任意の従来の手段及びハードウェアコンポーネントを使用することができることが理解されるであろう。
【0093】
ある実施の形態では、超音波パッチは、対象者の複雑な体表面に密着して動作する薄くて柔軟なパッチであることができる。正しく機能するためには、適用される超音波のすべての用途及び形状と同様に、センサ表面から対象者の表面まで、超音波の「空気のない」音響経路が必要である。空洞/気泡があると、音響インピーダンスが著しく低くなるため、超音波の伝搬が著しく妨げられてしまい、伝搬する波の反射及び屈折が起こり、表面に衝突して伝搬する超音波の強度が低下してしまう。より正確な測定を行うために、医療グレードのゲルを塗布して表面との接触を改善することができる。
【0094】
特に、対象者の表面に接触させて密着できる材料は、通常、材料を表面に接触させるために多方向にある程度の張力を用いる。紙のような柔軟なシート状の素材は、一重に湾曲した形状、例えば円筒形には容易に適合するが、二重に湾曲した形状、例えば球形には適合しにくい。
【0095】
このように、超音波パッチには、頻繁かつ多数の屈曲/曲げに耐えられる堅牢な電気的相互接続が必要である。接続部の故障により、パッチが動作しなくなる可能性がある。したがって、複雑な表面形状への成形及び適合を可能にしながら、反復的な屈曲に耐えることができる超音波パッチの電気的相互接続システムが必要である。したがって、本超音波パッチは、柔軟性があり、対象者の体の表面に密着することができ、パッチの座屈によってパッチと対象者の表面(例えば皮膚)の間に空気の隙間ができるだけ生じないようにする。
【0096】
ある実施の形態では、超音波パッチは、柔軟性があり、対象者の皮膚の表面に適合させて取り付けることができる。しかし、ある実施の形態では、超音波パッチは、対象者の体腔内の表面に取り付けて適合させるように変更して使用することができることが理解されるであろう。したがって、超音波パッチは、柔軟性があり、対象者の外部(皮膚)又は内部(体腔)の表面に取り付けるために適合させることができる。
【0097】
ある実施の形態では、対象者の外面は、皮膚とすることができる。
【0098】
別の実施の形態では、超音波パッチを埋め込み可能なセンサとして動作するように修正及び適合させることができる。
【0099】
ある実施の形態では、超音波パッチは、表面が湾曲していても、対象者の外部又は内部の表面に対して密接に適合することができる。ある実施の形態では、超音波パッチを表面に取り付けるために、任意の空隙を満たす自由流動性のゲルを使用することができ、及び/又は、適切な生体適合性のある接着剤を使用することができる。別の実施の形態では、超音波パッチと表面との間に任意の空気空間を満たす自由流動性のゲルを適用することができ、パッチは、適切な生体適合性の粘着テープによってパッチ及び周囲の表面を覆うように固定される。あるいは、ある実施の形態では、超音波パッチは、ゲルや接着剤を使用せずに、対象者の表面に密着させることができる。生体適合性のある接着剤を戦略的に任意に使用することで、ゲルを塗布する必要性を排除することができる。
【0100】
ある実施の形態では、超音波パッチは、1つ又は複数の超音波センサを含むことができる。ある実施の形態では、センサパターンによって任意の形状を形成する際に、単一のセンサ上に複数のセンサアレイを含むことができる。ある実施の形態では、超音波パッチは、円、長方形、三角形などを含むがこれらに限定されない任意の形状を形成することができる。ある実施の形態では、超音波パッチは、円形の形状を形成することができる。
【0101】
ある実施の形態では、超音波センサは、ゾルゲルスプレー技術に基づく圧電複合トランスデューサを含むことができる。この技術は、圧電性ゾルゲル溶液と強誘電体粉末との複合材料を噴霧することにより圧電振動子を開発する方法である。ゾルゲルスプレー技術では、ゾルゲル複合体を噴霧する方法で圧電層を作製する。ゾルゲル複合スプレー法で作製した圧電層は、強誘電体粉末相、誘電体ゾルゲル相及び空気相の3つの相で構成されている。空気相は、ゾルゲル溶液に含まれるアルコールと水が焼成時に気化して発生する。
【0102】
ある実施の形態では、超音波センサは、ゾルゲルスプレー技術によって製造することができる。ある実施の形態では、超音波センサは、ゾルゲル複合材料を含むことができる。ある実施の形態では、超音波パッチは、薄くて柔軟な圧電材料を含むことができる。
【0103】
超音波パッチは、超音波信号及びエコー信号を同時にかつ連続的に測定することができる。ある実施の形態では、超音波パッチは、Mモード、2D、3D及びドップラー超音波を含むグループから選択される1つ又は複数のモードで、少なくとも1つの超音波画像を生成することができる。
【0104】
ある実施の形態では、超音波パッチは、2D画像を生成する。
【0105】
ある実施の形態では、超音波パッチは、3D画像を生成する。
【0106】
ある実施の形態では、超音波パッチは、デュアルディスプレイ形式の静止画又は動画(「cine」モード)のいずれかの2D画像が組み合わされたMモード画像を生成する。
【0107】
ある実施の形態では、超音波パッチは、ドップラー画像を生成する。
【0108】
ある実施の形態では、超音波パッチは、デュアルディスプレイで、静止画又は動画(「cine」モード)のいずれかの2D画像を組み合わせたドップラー画像を生成する。
【0109】
この点において、超音波画像は、「静止」画像、2D又は3D動画の「cine」画像、又は「時系列データ」画像の形態であることができる。「静止」画像は、有限の時点で取得された保存された2D画像、又は、取得時間に対してプロットされた1次元の空間情報及び/又はドップラー由来の速度情報のグラフィカルな表現とすることができる。前記グラフィカルな表現は、従来の「cine」ムービーよりも長い所定の期間にわたって取得された場合、「時系列データ」を構成することができる。「cine」ムービーは、関心のある解剖学的構造の段階的な動きを描写するのに十分であると考えられる時間(典型的にはわずかな秒数又は数秒)にわたって取得された超音波エコー及び生成された超音波画像から形成することができる。「時系列データ」は、対象となる解剖学的構造の構造的及び機能的変化をリアルタイムでモニタするための画像を含むことができる。例えば、対象者にストレスを与えたり治療を行ったりする際に、超音波パルスを常に送信及び受信して、従来の「cine」ムービーよりも長い所定の時間のビデオを形成する。
【0110】
ある実施の形態では、時系列データセットは、シーケンシャルな2D動画像、又は、時間とともに変化する空間次元又は速度を本質的に表示するMモード画像スペクトル・ドップラー画像を形成することができる。
【0111】
ある実施の形態では、1つ又は複数のモードの超音波パッチは、解剖学的構造のモニタリングのための少なくとも1つの超音波画像を生成することができる。
【0112】
ある実施の形態では、超音波パッチでモニタリングする解剖学的構造には、血管、心臓及び体内器官が含まれる。モニタリングは、対象者が安静にしている間だけでなく、虚血-再潅流、運動、熱/冷房の適用などの生理的ストレス条件の適用前、適用中及び適用後にも行うことができる。
【0113】
ある実施の形態では、超音波パッチでモニタリングする解剖学的構造には、血管、心臓及び体内器官が含まれる。モニタリングは、対象者が、手術、他の介入処置及び薬物療法の投与を含む治療を受ける前、間及び後に実施することができる。
【0114】
■超音波画像処理
理解されるように、本システム及び方法は、ハードウェア及びソフトウェアの両方の組み合わせを使用して、プログラマブル・コンピュータ上で実装することができる。様々な側面は、プログラマブル・コンピュータ上で実装することができ、各コンピュータは、1つ又は複数の入力ユニット、データ・ストレージ媒体、ハードウェアプロセッサ及び出力部又は通信インタフェースを含む。サーバ、サービス、ユニット、モジュール、インタフェース、ポータル、プラットフォーム、又はコンピューティングデバイスから形成される他のシステムなどの用語は、コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体に格納されたソフトウェア命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを有する1つ又は複数のコンピューティングデバイスを表すものとして使用されることを理解すべきである。例えば、サーバは、記述された役割、責任又は機能を果たすため、ウェブサーバ、データベースサーバ、又はその他のタイプのコンピュータ・サーバとして動作する1つ又は複数のコンピュータを含む。
【0115】
図3は、超音波パッチ、コンピュテーショナルハードウェア及びソフトウェアコンポーネントの間のシステム及び動作関係を示す代表的なフローチャートである。システムは、少なくとも1つの超音波画像を生成する超音波パッチと、少なくとも1つの超音波画像を受信するサーバと、クラウドシステムと、深層学習CNNを定義する情報をサーバが実行するためのソフトウェア命令として格納するように構成されたストレージ媒体と、サーバから得られた分類結果を1人又は複数のユーザに伝達するように構成された出力部と、を備えることができる。
【0116】
さらに、本コンピュータシステムは、追加のコンポーネントを含むことができる。例えば、システムは、1つ若しくは複数の通信チャネル、又は、システムのコンポーネントを相互に接続する、バス、コントローラ、ネットワークなどの相互接続機構を含むことができる。オペレーティングシステムソフトウェアの様々な実施の形態では、コンピュータシステムで実行される様々なソフトウェアの動作環境を提供し、コンピュータシステムのコンポーネントの様々な機能性を管理する。通信チャネルは、他の様々なコンピューティング・エンティティとの通信媒体における通信を可能にする。通信媒体は、通信メディアで、プログラム命令などの情報やその他のデータを提供する。通信メディアは、電気、光学、高周波、赤外線、音響、マイクロ波、ブルートゥースなどの伝送メディアで実装された有線又は無線の方法論を含むことができる。
【0117】
したがって、ある実施の形態では、本コンピュータシステムは、超音波パッチから画像データを受信する有線及び/又は無線の方法論のための1つ又は複数の通信コンポーネントを含むことができる。ある実施の形態では、本コンピュータシステムは、超音波パッチから画像データを受信する無線方法論のための1つ又は複数の通信コンポーネントを含むことができる。通信コンポーネントは、超音波画像をサーバに送信する無線受信機を含むことができる。
【0118】
ある実施の形態では、超音波パッチのパルサー/レシーバは、超音波パルスを送信/受信し、パルスを超音波画像に変換することができる。ある実施の形態では、超音波パッチのパルサー/レシーバは、パルスを変換して、サーバに送信するための1ライン分のMモード及び他のタイプの画像(2D、3D又はドップラー)を生成することができる。
【0119】
したがって、ある実施の形態では、少なくとも1つの超音波画像を生成するための超音波パッチと、サーバと、クラウドシステムと、少なくとも1つの超音波画像を自動的に分類するために深層学習畳み込みニューラルネットワークを実行するためのソフトウェア命令として深層学習CNNを定義する命令を格納するように構成されたストレージ媒体と、分類結果をユーザに伝達するように構成された出力部とを備えることができる、対象者の解剖学的構造を自動的にモニタするためのシステムが提供される。
【0120】
別の実施の形態では、少なくとも1つの超音波画像を生成するためのワイヤレス超音波パッチと、無線受信機と、サーバと、クラウドシステムと、少なくとも1つの超音波画像を自動的に分類するために深層学習CNNを実行するためのソフトウェア命令として深層学習CNNを定義する命令を格納するように構成されたストレージ媒体と、分類結果をユーザに伝えるように構成された出力部とを備えることができる、対象者の解剖学的構造を自動的にモニタするためのシステムが提供される。
【0121】
本システムは、対象者の解剖学的構造を自動的にモニタする方法を実装することができる。したがって、別の実施の形態では、以下のステップを含むことができる、対象者の解剖学的構造を自動的にモニタするためのコンピュータで実装される方法が提供される。本明細書に開示された超音波パッチから少なくとも1つの超音波画像を取得するステップと、クラウドシステムを構成するサーバに前記少なくとも1つの超音波画像を入力(送信)するステップと、1つ以上の分析ツールを使用して前記少なくとも1つの超音波画像を処理して、少なくとも1つの処理済み超音波画像を生成するステップと、前記少なくとも1つの処理済み超音波画像を深層学習CNNに入力して、少なくとも1つの処理済み超音波画像の機能状態に関する自動分類結果を取得するステップと、を含むことができる。
【0122】
別の実施の形態では、本明細書に記載のシステムは、対象者の病気を特定する方法又は病気の予後を決定する方法を実施することができる。この方法は、以下のステップを含むことができる。前記対象者に装着された少なくとも1つの超音波パッチから前記対象者の解剖学的構造の少なくとも1つの超音波画像を取得するステップと、前記少なくとも1つの超音波画像をサーバに送信するステップと、1つ又は複数の分析ツールを使用して前記少なくとも1つの超音波画像を処理し、少なくとも1つの処理済み超音波画像を生成するステップと、前記少なくとも1つの処理済み超音波画像を深層学習CNNに入力して、解剖学的構造の機能状態を示す2つ以上のクラスから選択された自動分類結果を得るステップと、前記分類結果をユーザに表示するステップを含むことができる。ここで、前記分類結果は、対象者が病気を患っていること、又は病気の予後を示すものである。これに関連して、本方法は、前記分類結果に基づいて、対象者が病気を患っている可能性又は病気を患うリスクを判断する際に、ユーザを支援することができる。また、本方法は、前記分類結果に基づいて、前記対象者が病気を患う感受性を判断する際に、ユーザを支援することができる。このように、前記分類結果は、対象者がある病気を持つことによるリスクの増加又はリスクの減少をユーザに示すことができ、また、前記病気の予後を決定することを支援することができる。
【0123】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、Mモード画像、2D画像、3D画像、ドップラー画像、又はそれらの組み合わせであってもよい。ある実施の形態では、前記システムは、静止画及び/又は時系列の超音波信号を表す複数の超音波画像を処理することができる。
【0124】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、時系列データセットから生成することができる。これに関連して、時系列データセットを表す前記超音波画像は、分析のために、時間枠及び持続時間がより短い、より小さな時系列データセットのセグメントにセグメント化して分割することができる。ある実施の形態では、前記時系列データセットは、解剖学的構造をモニタ及び評価する目的で所望される任意の時間帯を表すことができる。ある実施の形態では、セグメントは、1秒、5秒、10秒、15秒、20秒などの時間間隔を表すことができ、それによって、セグメント化のための任意の時間間隔を適用することができることが理解されるであろう。ある実施の形態では、セグメントは、15秒の時間間隔を表すことができる。
【0125】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、1つ又は複数の分析ツールによって処理することができる。前記1つ又は複数の分析ツールは、サーバに接続されたクラウドシステム又はサーバ自体で保存及び実行することができる。ある実施の形態では、前記1つ又は複数の分析ツールは、クラウドシステムを必要とせずに、サーバ内で保存及び実行することができる。前記分析ツールは、ラドン変換、HOS技術及びアクティブ・コンター・モデルを含むことができ、これらに限定されない。
【0126】
ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、2つ以上の分析ツールを通じて、これらによって、処理されることができる。ある実施の形態では、前記少なくとも1つの超音波画像は、3つ以上の分析ツールを通じて、これらによって、処理されることができる。
【0127】
ある実施の形態では、前記分析ツールは、ラドン変換を含むことができる。ラドン変換は、コンピュータ断層撮影信号から入力超音波画像を再構成するために使用することができる。特に、ラドン変換は、入力超音波画像を1次元時系列に変換することができ、それによって、画像の方向的特徴は、線積分を使用して捉えることができる。
【0128】
ある実施の形態では、前記分析ツールは、HOS技術を含むことができる。
【0129】
HOS技術は、対象者に装着した超音波パッチから得られる非線形、非定常及び非ガウスの生理信号を解析するための強力なツールである。特に、HOSは、3次以上のモーメントやキュムラントのような高次統計のスペクトル表現である。HOSの特徴を用いて超音波画像を解析することで、非線形性及びガウス性からの逸脱を検出することができる。また、HOS技術は、ノイズの線形性などを仮定することなく、信号ノイズの低減をもたらす。
【0130】
HOS技術は、入力超音波画像の3次キュムラント・プロット及び/又はバイスペクトラム・プロットを生成することができる高次統計を参照することができる。ある実施の形態では、3次キュムラント・プロット及び/又はバイスペクトラム・プロットは、超音波画像の静止画又は時系列データに基づいて生成することができる。
【0131】
キュムラント・プロットやバイスペクトラム・プロットを生成することで、超音波パッチから得られた静止画像又は時系列画像を用いて、疾患の識別(定量)のための固有の特徴(ラジオミクス)を得ることができる。また、HOSのバイスペクトラム・プロットやキュムラント・プロットからは、様々な非線形パラメータやテクスチャの特徴を得ることができる。これらのユニークな範囲の特徴を利用して、様々な機能状態、条件及び病気を特定することができる。例えば、Mモード画像から0度の信号を取り出し、時系列信号を得てHOS解析を行うことができる。しかし、1度ごとの信号を取得することで、HOS分析の分類性能を向上させることができることが理解できるであろう。この点については、これらのプロットからエントロピーなどの非線形パラメータのような特徴を抽出して、CNNの2つ以上のクラス(すなわち、異常と正常)から選択される出力のための固有の範囲を提案することができる。
【0132】
ある実施の形態では、HOS技術は、超音波画像のバイスペクトラム・プロットを生成することを含む。
【0133】
この点について、バイスペクトラム・プロットは、次の式を用いて近似されるノンパラメトリック法を含むことができる。
B(f1,f2)=E[X(f1)X(f2)X*(f1+f2)]
ここで、B(f1,f2)は信号のバイスペクトラムを表し、X(f)は、x(nT)で示される、セグメント又はランダム信号のフーリエ変換(又は窓をかけられた部分)を示す。ここで、n、T及びE[.]は、それぞれ、整数のインデックス、サンプリング間隔、期待値演算子を示す。
【0134】
決定論的信号とは、ランダム信号の固定長の記録を表すものであり、そのフーリエ変換の存在により、離散形式での和算が可能である。統計学的な正確さのために、期待値演算は多数のリアライゼーションにわたって行われることになっている。窓をかける処理(ウインドウイング)は離散フーリエ変換(DFT)プロセスにスペクトルの漏れをもたらし、この効果が無視できる場合には、初期のランダムプロセスのバイスペクトラムは、上の式で計算される近似値に近いものになると予想される。HOS技術を適用することで、静止画や時系列データの微妙な変化を効果的に捉えることができる。
【0135】
バイスペクトラム・プロットは、1つの周波数を含む関数として記述されるパワースペクトルとは対照的に、2つの周波数を含む関数として記述することができる。周波数fは、ナイキスト周波数(サンプリング周波数の半分)によって、0と1の間になるように正規化することができる。バイスペクトラム・プロットは、周波数成分のパワースペクトルによって0から1の間の大きさに正規化することができ、周波数成分の間の位相結合の範囲を示す。
【0136】
ある実施の形態では、バイスペクトラム・プロットは、さらなる処理のために少なくとも1つのバイスペクトラム画像を生成することができる。
【0137】
ある実施の形態では、HOS技術は、超音波画像のキュムラント・プロットを生成することを含む。
【0138】
この点に関して、キュムラント・プロットは、対象者の超音波画像から得られる生理学的信号の分析に使用することができる。一次及び二次のキュムラント統計は、これらの信号における非線形変化を容易に検出するのに適さない場合がある。ある実施の形態では、キュムラント・プロットは、一つ又は複数の入力超音波画像から生成された3次キュムラント・プロットとすることができる。
【0139】
{x1,x2,x3 … xk}はk次元の多変量信号を示すとする。x1,x2,x3 …は、時系列のサンプルを示す。最初の3次モーメントは、以下のように定義される。
1次モーメント:m1
x=E[x(n)] [1]
2次モーメント:m2
x(i)=E[x(n)x(n+i)] [2]
3次モーメント:m3
x(i,j)=E[x(n)x(n+i)x(n+j)] [3]
ここで、E[.]は期待値演算子を表し、i及びjはタイムラグ・パラメータを表す。キュムラントは、モーメントの非線形結合として定義される。これらは、以下のように定義される。
1次キュムラント:C1
x=m1
x [4]
2次キュムラント:C2
x=m2
x(i) [5]
3次キュムラント:C3
x=m3
x(i,j) [6]
【0140】
ある実施の形態では、キュムラント・プロットは、さらなる処理のために、少なくとも1つのキュムラント画像を生成することができる。
【0141】
ある実施の形態では、キュムラント・プロットは、受信した超音波信号に関するより多くの情報を提供するために、3次のキュムラントを使用することができる。
【0142】
これらの非線形技術を超音波画像に適用した場合、得られたプロットにより、変化がより明確になり、解剖学的構造の機能状態をより容易に識別することができる。
【0143】
ある実施の形態では、HOS技術は、超音波画像のキュムラント・プロットとバイスペクトラム・プロットの両方を生成することができる。
【0144】
ある実施の形態では、入力超音波画像のキュムラント・プロット及びバイスペクトラム・プロットは、互いに同時に生成することができる。
【0145】
ある実施の形態では、分析ツールは、超音波画像のキュムラント・プロット及びバイスペクトラム・プロットの両方を生成することを含むことができるラドン変換及びHOS技術を含むことができる。ある実施の形態では、分析ツールは、少なくとも1つのキュムラント画像及び少なくとも1つのバイスペクトラム画像の両方を生成することを含むことができるラドン変換及びHOS技術を含むことができる。
【0146】
ある実施の形態では、分析ツールは、一つ又は複数の入力された超音波画像の変化を画定するためのアクティブ・コンター・モデルを含むことができる。ある実施の形態では、アクティブ・コンター・モデルに適用される超音波画像は、Mモード、2D、3D、ドップラー画像、又はそれらの組み合わせである。
【0147】
ある実施の形態では、アクティブ・コンター・モデルに適用される超音波画像はMモード画像であり、アクティブ・コンター・モデルは、Mモード画像の時系列データをセグメント化する目的で適用することができる。
【0148】
ある実施の形態では、アクティブ・コンター・モデルは、さらなる処理のためにセグメント化された超音波画像を生成することができる。
【0149】
アクティブ・コンター・モデルは、与えられた画像(この場合は超音波画像)に適応する能動的な変形可能モデルである。アクティブ・コンター・モデルは、多くの点からなるエネルギー最小化スプラインであり、そのスプラインの内部エネルギーと外部拘束力によって操られる。一般的には5つのステップがある。(i)Mモードの長さに沿って平均を取るステップ、(ii)高さ閾値=0.50、距離=20のパラメータによって平均の最も高いピークの2つを見つけるステップ、(iii)画像に2本の線を引き、アクティブ・コンター・アルゴリズムを用いてフィットさせるステップ、(iv)アクティブ・コンターのパラメータ:アルファ=0.003、ベータ=0.012、w_line=9、w_edge=-3、ガンマ=0.1、max_iterations=1000を設定するステップ、及び、(v)フィットさせた2本の線を用いて中間線を算出するステップ、である。
【0150】
ある実施の形態では、少なくとも1つの超音波画像は、ラドン変換、HOS技術及びアクティブ・コンター・モデルによって処理することができる。
【0151】
ある実施の形態では、超音波パッチは、解剖学的構造のモニタリングのための時系列データ読み出しを表すMモード画像を生成することができ、Mモード画像は、ラドン変換、HOS技術及びアクティブ・コンター・モデルを含む分析ツールによって処理をすることができる。アクティブ・コンター・モデル、HOSバイスペクトラム及びキュムラント画像から得られたセグメント化された画像は、深層学習CNNによる更なる処理のためにサーバに入力することができる。
【0152】
ある実施の形態では、超音波パッチは、解剖学的構造のモニタリングのための時系列データ読み出しを表すMモード画像を生成することができ、Mモード画像は、ラドン変換及びHOS技術を含む分析ツールによって処理をすることができる。結果として得られたHOSのバイスペクトラム及びキュムラント画像は、深層学習CNNによる更なる処理のためにサーバに入力することができる。
【0153】
ある実施の形態では、超音波パッチは、解剖学的構造のモニタリングのための時系列データ読み出しを表すMモード画像を生成することができ、Mモード画像は、アクティブ・コンター・モデルを含む分析ツールによって処理することができる。アクティブ・コンター・モデルから得られたセグメント化された画像は、深層学習CNNによるさらなる処理のためにサーバに入力することができる。
【0154】
ある実施の形態では、分析ツールを通じて処理された少なくとも1つの超音波画像は、その後、出力として少なくとも1つの処理済み超音波画像の分類結果を生成するために、深層学習CNNへの入力のための少なくとも1つの処理済み超音波画像を生成する。
【0155】
これに関連して、システムのストレージ媒体は、少なくとも1つの処理済み超音波画像を自動的に分類するために、深層学習CNNのサーバが実行するための命令を格納することができる。
【0156】
これに関連して、CNN及び当該CNNを実行するための命令は、ソフトウェア製品の形態とすることができる。ストレージ媒体及びその上に記憶されたソフトウェア製品は、サーバがCNNを定義する命令を実行することを可能にする多数の命令を含むことができる。
【0157】
ある実施の形態では、ストレージ媒体は、その上に格納されたコンピュータ読み取り可能なプログラムコードを有する非一過性のコンピュータ読み取り可能な媒体とすることができ、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードは、サーバが実行したときに、サーバに少なくとも1つの処理済み超音波画像を受信して分類させるための命令を含むことができる。サーバは、深層学習CNNを使用して少なくとも1つの処理済み超音波画像から1つ又は複数の特徴を抽出し、少なくとも1つの処理済み超音波画像を分類する。サーバは、例えば、任意のタイプの汎用プロセッサ、マイクロプロセッサ若しくはマイクロコントローラ、デジタル信号処理(DSP)プロセッサ、集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、再構成可能なプロセッサ、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。ある実施の形態では、サーバは、グラフィックス処理ユニット(GPU)又は中央処理装置(CPU)とすることができる。
【0158】
ある実施の形態では、コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体が提供される。コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体は、本明細書で開示されたコンピュータで実装された方法及びCNNモデルを実行するサーバを制御するための非一過性の命令を格納する。ここで、本明細書で開示されたシステムで実装されてもよく、前記ストレージ媒体における本明細書で開示されたCNNモデルを定義する命令を実行するように構成された別のシステムで実装されてもよい。
【0159】
ある実施の形態では、CNN及び当該CNNの実行のための命令は、クラウドシステムに格納することができ、サーバがCNNを定義する命令を実行することを可能にする多数の命令を含むことができる。
【0160】
本明細書に開示されるCNNは、様々な解剖学的構造と関連する機能状態及び健康状態(健康又は病的)を表す超音波画像のデータセットを用いて事前に学習されており、深層学習技術を用いて処理され、2つ以上のクラスから選択された出力として分類結果を得る。分類結果は、臨床現場に適用可能な解剖学的構造の機能状態又は健康状態(異常又は正常)を決定する1人又は複数のユーザを支援するために伝達することができる。また、分類結果は、モニタされている解剖学的構造に関連する病気又は疾患を対象者が有する可能性又はリスクを決定するために、1人又は複数のユーザを支援することができる。
【0161】
CNNは、自動化された特徴学習を利用して、各入力超音波画像を分類する。深層学習技術を通じてCNNをトレーニングすることにより、CNNは、解剖学的特徴に関連する病気又は疾患の症状的特徴を示すことができる機能的特徴を正確かつ鋭敏に識別するために、本明細書に開示されるシステム及び方法に適用することができる。したがって、ある実施の形態では、本明細書で開示されるCNNは、深層学習CNNである。
【0162】
特に、CNNはバックプロパゲーションアルゴリズムでトレーニングすることができ、最適なトレーニング性能のためにエラーを減らすように重みを調整することができる。また、CNNの性能は、LSTM(long short-term memory)やオートエンコーダなどの他の深層学習モデルと比較することができる。
【0163】
本明細書に開示されたCNNの学習に深層学習技術を適用すると、分類のためにCNNが抽出する特徴を事前に選択して決定するのではなく、そのような画像の特徴を自動的に捕捉することを容易にする自己特徴抽出が得られる。具体的には、深層学習CNNは、入力された超音波画像から特徴の抽象化を自動的に学習する。この自動的な深層学習CNNモデルは、アプリケーション固有のフィルタを用いて画像を前処理したり、計算可能な特徴を計算したりするための、時間のかかる特徴についての手作業を減らすことができるので望ましい。しかし、CNNの学習は更新できないため、アルゴリズム又は学習データに変更があった場合は、ネットワーク全体の再最適化が必要となる。
【0164】
ある実施の形態では、深層学習CNNは、超音波画像のデータセットを用いて事前に訓練及び開発されている。別の実施の形態では、深層学習CNNは、各解剖学的構造に対する少なくとも200枚の超音波画像のデータセットを用いて、事前に訓練及び開発されている。ある実施の形態では、解剖学的構造は、上腕動脈などの血管、心臓、関節、体組織、及び腫瘍組織を含む。
【0165】
訓練に使用されるこれらの超音波画像は、様々な機能及び健康状態を有する患者の異種コホートを含む。特に、解剖学的構造における発達の異なる段階及び重症度における多数の病気又は疾患の超音波画像をトレーニング目的に使用することができる。データセット内の超音波画像のそれぞれは、資格を有する臨床医や医療専門家によって、臨床設定に応じて「正常」(「健康」)、「異常」(「非健康」)などの2つ以上のクラスとして機能状態を示すラベルと事前に関連付けられている。データセットには、様々な対象者からの超音波画像の包括的なセットを含めることができる。データセットの大きさと、幅広いバラエティのある画像のサイズ、解像度及び品質により、よりロバストな深層学習CNNモデルを得ることができる。
【0166】
深層学習CNNのトレーニングに続いて、分類結果とそれに伴う精度は、ブラインドデータセットでのクロスバリデーション技術を用いて検証されることが好ましい。特に、深層学習CNNは、トレーニングに使用されず、トレーニングデータセットとは別の画像データセットである超音波画像のバリデーションセットで処理することができる。バリデーションデータセットを用いた深層学習CNNの性能を訓練データセットと比較して、本明細書に開示された深層学習CNNの精度を決定することができる。
【0167】
理解されるように、画像処理用の典型的な従来のCNNアーキテクチャは、一連のデータ削減層又はプーリング層に挟まれた、一連の畳み込みフィルタの層を含むことができる。畳み込みフィルタ又はカーネルは、入力画像の領域に適用され、画像内のより関連性の高い特徴(例えば、線又は円)、さらにはローカル及びグローバルな形状やテクスチャなどの高次の特徴を検出するが、これらの特徴は、モニタ対象の解剖学的構造の機能状態又は疾患若しくは病気の症状を示す特徴である可能性がある。これらの畳み込みフィルタは、CNNがトレーニングから学習する。CNNの出力は、典型的には、1つ又は複数の確率又はクラスラベルであり、本発明の文脈では、2つのクラス(「正常」又は「異常」)又はそれ以上のクラスとすることができる。
本明細書で開示するCNNネットワークは、畳み込み層、プーリング層及び完全連結層の3つの主要層を含むことができる。ある実施の形態では、これらの3つの主要層は、一連の畳み込み層及びプーリング層をさらに含むことができる。追加の層は、マージ層(和算/加算/連結層)、平坦化層、活性化関数層(調整線形ユニット(RELU)層又はシグモイド層)などを含むことができる。
【0168】
これに関して、本明細書に開示されるCNNの代表的な内部アーキテクチャは、畳み込み層、プーリング層及び完全連結層からなる少なくとも3つの主要層タイプを含むことができる。畳み込み層及びプーリング層は、特徴抽出を実行することができ、これにより、畳み込み層は、解剖学的構造の機能状態又は病気若しくは疾患の症状の特徴を検出する。完全連結層は、これらの特徴に基づいて分類器として機能し、入力画像に確率を割り当てる。
【0169】
CNNの出力として複数のクラスの分類結果を得る場合、ソフトマックス活性化関数を用いることができる。ソフトマックス活性化関数は、各クラスに10進数の確率を割り当て、それによって、予測されたすべてのクラス出力の確率の加算が1になる。画像があるクラスに属する可能性は、この確率の値によって決まる。
【0170】
ある実施の形態では、確率は、ソフトマックス活性化関数による出力とすることができる。
【0171】
ある実施の形態では、確率はシグモイド関数による出力とすることができ、その値は0から1の範囲であり、その値が0.5未満であれば、その確率は「正常」と記載され、0.5以上であれば、その確率は「異常」とラベルされる。異常クラスは、対象者の病気又は疾患を示すことができる。各病気又は疾患は、病理学的発展の異なる段階、並びに、進行及び/又は重症度を示している可能性がある。
【0172】
ある実施の形態では、CNNは、1つ以上の畳み込み層、1つ以上のプーリング層、1つ以上の平坦化層、1つ以上の完全連結層、1つ以上のマージ層、1つ以上の活性化関数層を含むことができる。したがって、ある実施の形態では、CNNは10、11、12又はそれ以上の層を含むことができる。
【0173】
ある実施の形態では、1つ又は複数の超音波画像は、入力画像を解釈するための異なるサイズのカーネル(フィルタ)を有する畳み込み層によって最初に処理され、特徴マップの異なるサイズのグループを生成することができる。畳み込み層の特徴マップは、集約、分析及び特徴抽出のために一緒に連結することができる。畳み込み層で抽出された特徴は、後続の層での分類に利用できる。
【0174】
各畳み込み層の後に、プーリング層を実行して、分類のために画像の次元を減らすことができる。プーリング層は、パラメータ数の削減を可能にし、各特徴マップを独立してダウンサイズし、高さと幅を縮小するが、深さはそのまま維持する。プーリング層は、入力画像上にウィンドウをスライドさせ、特定のサイズとストライドのウィンドウ内の最大値を単純に取る。使用できるプーリングの一つのタイプである最大プーリングは、プーリングウィンドウ内の最大値を取得するもので、パラメータはない。
【0175】
ある実施の形態では、連結軸を除いて類似した形状の複数の入力を取り込み、適切な情報を失うことなく単一の出力を返す、1つ又は複数のマージング層を含むことができる。
【0176】
ある実施の形態では、ベクトル化によって3次元(3D)サンプルを2次元(2D)サンプルに変換するために、1つ又は複数の平坦化層を含むことができる。画像を完全連結層に入力するために、プーリング層の出力をベクトルに平坦化して、完全連結層への入力画像とすることができる。平坦化とは、これまでの畳み込み層とプーリング層の3次元ボリュームを、単純に2次元表現に整えることである。
【0177】
ある実施の形態では、活性化関数層は、ReLu及び/又はシグモイド活性化関数を適用することができる。
【0178】
ある実施の形態では、完全連結層は、バックプロパゲーションアルゴリズムでトレーニングすることができ、その後、ノードの半分がランダムにドロップされる。この技術分野で容易に理解されるように、ドロップアウトは、トレーニング中のオーバーフィッティングを防止するために正則化技術によってCNNに適用することができ、それによって、各反復において、ニューロン又はノードは、確率pで一時的に「ドロップ」又は無効化される。ハイパーパラメータpは、ドロップアウト率と呼ぶことができ、典型的には、ニューロン又はノードの50%がドロップアウトされることに対応する0.5前後の数であり得る。ある実施の形態では、本明細書に開示されたCNNは、ドロップアウト率が0.5で構成されることができる。
【0179】
ある実施の形態では、最終的な完全連結ステップの出力は、出力ノードから10進数の確率を得ることができる。各ノードはクラスによって表すことができ、それによって、予測された出力の確率の加算は1になる。画像があるクラスに属する可能性は、確率の値によって決まる。なお、CNNは、特定の解剖学的構造に関連する機能状態又は病気/疾患の状態を区別するために、分類をさらに細分化して、他のより具体的な分類に変更することができることを理解されたい。
【0180】
本明細書に開示されたCNNからの出力結果は、出力部を介して1人又は複数のユーザに伝達することができる。したがって、ある実施の形態では、システムは、システムに入力された少なくとも1つの超音波画像の分類結果を、1人以上のユーザに伝達するように構成された出力部を含むことができる。特に、出力部は、該当する場合、2つ以上のクラスから選択された少なくとも1つの超音波画像のCNN分類結果を、ユーザ端末及び通信可能なインタフェース上で通信又は表示する。ある実施の形態では、出力部は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)とすることができる。ある実施の形態では、GUIは、GUIの「テキストパネル」上に出力クラスを表示する、1人又は複数のユーザによって押される「診断」ボタン/関数を有する入力画像をロードして表示する機能を有することができる。
【0181】
本システムのある実施の形態では、本システムの1人又は複数のユーザは、1人又は複数の個人、1人又は複数の患者、1人又は複数の医師、及びその他の関係する個人を含むことができる。ある実施の形態では、出力部は、CNNによる分類結果を様々なフォーマットで伝達するように構成することができる。ある実施の形態では、分類結果は、1つ又は複数の通信チャネルを介して1人又は複数のユーザに自動的に伝達され得る。
【0182】
本明細書に開示されたシステムの分類及び出力結果は、必ずしも完全な自動診断をするためだけのものはなく、解剖学的構造の機能状態に関連する病気又は疾患を対象者が有する可能性を決定するのを支援するために使用することもできる。これに関連して、本明細書に開示されたシステムは、モニタされた解剖学的構造に関連する病気又は疾患を対象者が有するリスクを示す又は決定するためにも使用することができる。
【0183】
本明細書に開示されたシステム及びコンピュータで実装される方法からは、多くの有利性が得られる。例えば、診断のための臨床医への依存を低減又は排除することができ、これにより、個人又は技術者は、本明細書に開示されたシステム又は方法を使用して、モニタされた解剖学的構造に関連する病気又は疾患を対象者が有する可能性に関する独立した予測を達成することができる。さらに、本明細書に開示されたシステム又は方法は、リスクのある集団の病気又は疾患の効率的なスクリーニングを促進することにより、医療現場における臨床医又は医療専門家の作業負荷を軽減することができ、臨床医は、モニタされた解剖学的構造に関連する病気又は疾患のリスクが高いと既に判断された患者に対応することができ、それにより、時間的に効率の良い方法で実際の治療を行うことに集中することができる。
【0184】
本明細書に開示されているシステムは、有利なことに低ノイズを示し、良好な信号toノイズ(S/N)比を有しており、それによって、より多くのデータを入力すると、システムは、ノイズに対するロバスト性及び性能を向上させることができる。また、本明細書に開示されたシステムは、超音波信号の読み取り中に生じる可能性のあるヒューマンエラーを排除又は低減することができる。
【0185】
上記を考慮して、本明細書に開示されたシステムは、リモート無線モニタリングの機能を有して、一定期間、対象者の心臓、血管などの解剖学的構造の超音波信号を捕捉するためのウェアラブル超音波パッチを含む。これらの信号から生成された1つ又は複数の超音波画像は、サーバに送信される。1つ又は複数の超音波画像は、1つ又は複数の分析ツールで処理された後、CNNネットワークに入力され、CNNネットワークは1つ又は複数の超音波画像を自動的に分類して、解剖学的構造の機能状態に依存する2つ以上のクラスから選択された自動分類結果を出力として得ることができる。この出力は、臨床医などに提供され、対象者のタイムリーな評価及び治療に役立てることができる。
【0186】
例えば、本明細書に開示されているシステムは、手術やその他の処置の際において、対象者の心臓の状態又は血管の機能を詳細にモニタすることが重要な場合に役立つ可能性がある。本明細書に開示されたシステムは、自動心臓診断システム(AHDS)と結合して、日常的な手動解釈が不要なリアルタイム分析を行うことができ、これにより、コストを大幅に削減することができる。
【0187】
上記の開示されたその他の特徴及び機能のバリエーション、又はそれらの代替品は、他の多くの異なるシステム又はアプリケーションに望ましく組み合わせることができることが理解されるだろう。また、特許請求の範囲に包含されることも意図されている、そこにおける様々な現在予想されていない又は予期されていない代替品、修正、変形又は改良が、当業者によってその後作られるかもしれない。
【0188】
本開示の実施の形態は、可能な態様をカバーするためにかなり詳細に包括的に説明してきたが、当業者であれば、本開示の他のバージョンも可能であることを認識するであろう。
【0189】
動作例
以下の非限定的な例は、現在企図されている代表的な実施の形態のより完全な理解を容易にするために、例示の目的でのみ提供される。これらの例は、このフォーミュレーションの構成要素を組み合わせることができるすべての可能なコンテキストの単なるサブセットであることを意図している。したがって、これらの例は、このフォーミュレーションの構成要素、及び/又は、方法及び使用のタイプと量に関するものを含め、本明細書に記載された実施の形態のいずれかを制限するものと解釈されるべきではない。
【0190】
例1
虚血-再灌流反応の血液循環モニタリング
図4は、本明細書に開示された例示的なシステムを示しており、血管の異常な機能状態を誘発する閉塞試験の間、対象者の上腕動脈をモニタしている。これは、虚血-再灌流反応をシミュレートして、内皮機能の代替試験である流動媒介性拡張を誘導するものである。健康な内皮機能を持つ対象者では、放出段階で動脈の拡張及び血流の増加が見られる。
【0191】
この点に関して、例示されたシステムにおける血管の直径変化を測定するために、本質的にノイズの多い超音波Mモード画像が生成され、Mモード画像信号は分析のためにバイスペクトラム及びキュムラント・プロットに処理することができる。処理済みMモード画像に深層学習CNNを適用することで、Mモード画像上で最も顕著な特徴の不一致がある領域のアテンション・マップを生成することができる。このような画像生成及び処理により、例示したシステムは、血管の機能状態を「正常」、「閉塞」及び「解放」に識別及び分類することができ、また、個々の対象者の閉塞に対する反応も識別することができる。
【0192】
この例示されたシステムでは、時系列読み出しのMモード画像が超音波パッチから取得され、サーバ及びクラウドシステムに送信され、Mモード画像の変化を描出するためにMモード画像がアクティブ・コンター法にかけられ、次にラドン変換を使用して一つ又は複数のMモード画像を1次元画像に変換する。その後、HOS技術、すなわちHOSバイスペクトラム及びキュムラント・プロットを画像に適用する。次に、セグメント化されたMモード画像、HOSバイスペクトラム及びキュムラント画像をCNNネットワークに与え、正常、閉塞及び解放の状態を分類する。
【0193】
図5は、上腕動脈閉塞試験の正常期、閉塞期、解放期の違いを示すために、5人の健常者の閉塞前、閉塞中及び閉塞後の15秒間のMモード時系列画像(ローパスフィルタやピーク検出などの従来のノイズ除去を必要としない)をラドン変換して得られたキュムラント・プロット及びバイスペクトラム・プロットを示す図である。
図5のキュムラント・プロットとバイスペクトラム・プロットは、HOS技術を適用して正常(ベースライン、安静時)、閉塞及び解放の特徴的な機能状態を識別するシステムの能力を示す。
【0194】
さらに、
図6は、アクティブ・コンター法を適用して、5人の健常者の閉塞前、閉塞中及び閉塞後の15秒間のMモード時系列画像からセグメント化された画像を生成したことを示す図である。
【0195】
ニューラル・アテンション・メカニズムは、CNNネットワークに、その入力(又は特徴)のサブセットに焦点を当てる能力を与える。したがって、訓練されたCNNを用いて、(15秒間の)時系列取得からアテンション・マップと特徴マップを生成した。
【0196】
図7は、5人の健常者の閉塞前、閉塞中及び閉塞後の15秒間のMモード時系列画像から生成したアテンション・マップを示す図である。アテンション・マップは、ネットワークの最後の畳み込み層を介して生成される。アテンション・マップは、ネットワークが特定のクラスを識別するために使用する識別領域を研究することができる。この点で、アテンション・マップはデバッグに有用であり、臨床医が分類CNNによる意思決定プロセスを理解する助けとなる。
【0197】
図5、
図6及び
図7に関連して示すように、5人の対象者からのMモード時系列(15秒)画像は、ラドン変換を用いて1D画像データに変換された。その後、CNNでのさらなる処理のために3次のキュムラント及びバイスペクトラム・プロットを生成して、機能状態を表す3つの異なるクラスに超音波画像を分類する。なお、Mモード画像の代わりに、ラドン変換を行わずに超音波画像を直接入力として使用することも可能であることが理解されるであろう。
【0198】
キュムラント・プロット、バイスペクトラム・プロット及びアテンション・マップは、個別に及び/又は組み合わせて使用することで、画像データ全体を凝縮したユニークなラジオミクス・シグネチャが得られ(すなわち、元のソース画像及び信号に変換することができる)、(潜在的-オミクス連携研究のために)効率的なデータ保存と同様に診断及び予後判定のためのマルチパラメトリック解析に利用することができる。
【0199】
ベースライン(安静時)の状態でも何らかの生理学的変化があれば、疾患/病気と正常とではラジオミクス・シグネチャは異なることが理解されるであろう。ラジオミクス・シグネチャは、心臓や血管に限定されるものではなく、組織(例えば、腫瘍組織)などの他の解剖学的構造にも適用して、一時的なストレス要因(例えば、熱、寒さ、光、非特異的造影剤又は特異的リガンド修飾造影剤の注入、マイクロバブル、超音波エネルギー、高周波エネルギーなど)に応答して、それらの機能及び動きをモニタすることもできる。
【0200】
この点に関して、本明細書で開示するシステムは、超音波パッチから生成されたMモード時系列読み出しで機能状態の変化(すなわち、血流の閉塞)を識別するために、超音波画像を処理して血管(すなわち、上腕動脈)の質的なプロットを得る。本システムでは、HOS技術を用いることで、対象となる信号若しくはノイズの線形性もガウス分布も仮定することなく、超音波信号を完全に特徴づけて識別し、ノイズを低減することができる。これは、最終的には、処理済み超音波画像の機能状態を正確に分類することにつながり、対象者が病気及び疾患を患っているかどうかを示すことができる。
【0201】
例2
外来診療における血液循環のモニタリング
この例では、喫煙者であり糖尿病患者である高齢の男性が、末梢血管疾患を示唆する下肢の跛行の一般的な徴候及び症状の状態で臨床医にアプローチする。具体的には、患者は、100メートル以上歩くと右ふくらはぎの痛みを感じる。末梢血管疾患のスクリーニング検査として確立されている足関節上腕血圧比は、右足で0.9以上であり、正常である。しかし、この検査は感度が低く、高齢者の動脈は相対的に弾力性がないために高齢者では偽陰性になる可能性があることが知られている。
【0202】
本明細書に開示されたシステム及び方法は、下肢動脈の機能状態を決定するために適用することができる。この例では、臨床医は、日常的な日常活動の間に、歩行環境における遠位下肢血流の動的変化を測定することを望む。よって、臨床医は両足の足背動脈を覆う両足の伸筋表面に超音波パッチを装着する。このシステムは、超音波を使用してデータを継続的に収集し、それを画像に変換する。
【0203】
画像は、分析ツールを使用して処理され、反対側の足と比較して、安静時及び活動時の足背動脈の寸法及び/又は血流に変化があるかどうかを示す。
【0204】
上述したように、CNNモデルは、健康な下肢循環と異常な下肢循環とを区別するように訓練することができる。具体的には、システムは、HOS技術を適用して、正常な循環と障害のある循環の特徴的な機能状態を識別することができる。これにより、臨床医は治療法を測定し、滴定することができる。これは、超音波パッチを使って心臓機能を遠隔地でワイヤレスにモニタリングすることで可能になる。
【0205】
例3
院内・院外における心機能のモニタリング
この例では、中年男性の患者が、急性代償性心不全の一般的な徴候及び症状のある状態で臨床医にアプローチする。具体的には、患者は、安静時の息切れを経験し、横になると悪化し、脚の浮腫を伴い、血圧は境界線上の低さである。患者は入院して利尿薬を投与され、急性心不全治療を開始することになった。臨床医が通常の心エコー図を実施すると、左室駆出率の低下を示した。患者は急性心不全治療から回復し、その後、慢性心不全治療薬を服用して退院する。
【0206】
本発明のシステム及び方法は、左心室の収縮機能の状態を測定するために適用される。臨床医は、患者が受けている急性期治療に伴う左心室駆出率の動的変化を測定したいと考えている。そこで、臨床医は、患者の胸部に、左心室付近にパッチを貼る。このシステムでは、超音波を用いて連続的にデータを収集し、画像に変換する。
【0207】
画像は、解析ツールで処理すると、急性期と退院後の慢性期の両方での治療により(計算された駆出率に基づいて)左心室の寸法と収縮力に変化(改善又は悪化)があるか又は変化がないかを示す。
【0208】
上述したように、CNNモデルは、健常な左心室機能と左心室機能障害の重症度の様々な等級とを区別するように訓練することができる。具体的には、システムは、HOS技術を適用して、正常な左心室機能と障害のある左心室機能の特徴的な機能状態を識別することができる。これにより、臨床医は治療法を測定し、滴定することができる。これは、超音波パッチを使って心機能を遠隔地でワイヤレスにモニタリングすることで可能になる。
【0209】
例4
手術中の心機能のモニタリング
この例では、既知の冠状動脈心疾患を有する患者が、虚血性心疾患を引き起こし、心機能に支障をきたす可能性のある、下肢の高リスクの血管手術を受けている。本発明のシステム及び方法は、手術中及び早期回復期に左心室の収縮機能及び壁運動の状態を連続的に測定するために適用される。よって、臨床医は、患者の胸部に、左心室付近にパッチを貼る。このシステムは、超音波を使って連続的にデータを収集し、それを画像に変換する。
【0210】
画像は、術中及び術後早期に、左心室寸法、左心室駆出率、左心室ストロークボリューム出力(左心室流出部のドップラー超音波検査によるストロークボリューム)及び左心室壁運動に大きな変化がないことを示す。手術は安全に行われ、患者は問題なく回復する。
【0211】
上記の開示された及び他の特徴及び機能のバリエーション又はそれらの代替品は、必要に応じて、多くの他の異なるシステム又はアプリケーションに組み合わせることができることが理解されるであろう。また、今後、特許請求の範囲に包含されることも意図されている、その中の様々な現在予想されていない又は予期されていない代替品、修正、変形又は改良が、当業者によって作られる可能性がある。
【0212】
本開示の実施の形態は、可能な態様をカバーするためにかなり詳細に包括的に説明してきたが、当業者であれば本開示の他のバージョンも可能であることを認識するであろう。
【0213】
本発明は、特定の実施の形態及び応用の観点から要約及び詳細な形式で説明してきたが、これらの説明は、いかなる形でもその範囲をそのような実施の形態及び応用に限定することを意図したものではなく、本明細書に例示された方法及びシステムの説明された実施の形態、応用、及びその動作の詳細における多くの置換、変更及び変形が、本発明の精神から逸脱することなく当業者によってなされ得ることが理解されるであろう。
【国際調査報告】