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特表2023-505925バリアント型インターロイキン-2(vIL-2)ポリペプチドをコードする腫瘍溶解性ウイルスベクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(54)【発明の名称】バリアント型インターロイキン-2(vIL-2)ポリペプチドをコードする腫瘍溶解性ウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/861 20060101AFI20230207BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20230207BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230207BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230207BHJP
   C12N 15/34 20060101ALN20230207BHJP
   C12N 15/19 20060101ALN20230207BHJP
【FI】
C12N15/861 Z ZNA
A61K35/761
A61K48/00
A61P35/00
A61K35/17 A
A61P43/00 121
A61K39/395 N
C12N15/12
C12N15/34
C12N15/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521540
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 FI2020050673
(87)【国際公開番号】W WO2021069806
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】20195876
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521544757
【氏名又は名称】ティルト バイオセラピューティクス オサケユキチュア
【氏名又は名称原語表記】TILT BIOTHERAPEUTICS OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】サディア ザファー
(72)【発明者】
【氏名】ダフネ キッシャバイラ
(72)【発明者】
【氏名】リッカ ハーヴネン
(72)【発明者】
【氏名】アクセリ ヘミンキ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA01
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA01
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、トランスジーンとして変異体インターロイキン2(vIL-2)ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを提供するものである。本発明はまた、前記腫瘍溶解性ベクターと、生理学的に許容される担体、緩衝剤、賦形剤、アジュバント、添加剤、防腐剤、保存剤、充填剤、安定化剤および/または増粘剤のうちの少なくとも1つを含む医薬組成物を提供するものである。本発明の特定の目的は、癌または腫瘍、好ましくは固形腫瘍の治療に使用するための、前記腫瘍溶解性ウイルスベクターまたは医薬組成物を提供することである。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異型インターロイキン2(vIL-2)ポリペプチドをコードする核酸配列を導入遺伝子として含む、オンコライティックアデノウイルスベクター。
【請求項2】
前記変種IL-2は、受容体サブユニットIL-2Rαへの結合の低下を示すが、IL-2RβおよびIL-2Rγ結合活性を保持する、またはIL-2RβおよびIL-2Rγ結合活性が改善されている、請求項1に記載のオンコリティックウイルスベクター。
【請求項3】
前記溶菌アデノウイルスベクターのバックボーンが、アデノウイルス血清型5(Ad5)もしくは血清型3(Ad3)核酸バックボーンまたはアデノウイルス血清型3(Ad3)の繊維節を有するアデノウイルス血清型5(Ad5)バックボーンである、請求項2記載の溶菌性ベクター。
【請求項4】
変異型インターロイキン2(vIL-2)ポリペプチドをコードする前記核酸配列が、前記オンコリティックアデノウイルスベクターのE3領域において欠失した核酸配列の代わりにある、請求項2または3に記載のオンコリティックベクター。
【請求項5】
E3領域における核酸配列の欠失が、ウイルスgp19kおよび6.7kリーディングフレームの欠失である、請求項4に記載のオンコリティックベクター。
【請求項6】
前記腫瘍溶解性アデノウイルスベクターのアデノウイルスE1配列に24bpの欠失(Δ 24)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ベクター。
【請求項7】
ベクターがAd5/3ファイバーノブからなる、請求項1~6のいずれか1項に記載のオンコリティックベクター。
【請求項8】
ベクターがAd5/3-E2F-d24バックボーンを含んでなる、請求項1~7のいずれか1項に記載のオンコリティックベクター。
【請求項9】
ベクターが、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2の構造を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のオンコリティックベクター。
【請求項10】
前記核酸配列が、置換L80F、R81D、L85V、I86V及びI92Fを含む変異型IL-2ポリペプチドをコードし、その位置がSEQ ID NO:2のように定義されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のオンコリティックベクター。
【請求項11】
ベクターが、さらなる導入遺伝子をコードする核酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のオンコリティックベクター。
【請求項12】
前記さらなる導入遺伝子がサイトカインをコードするものである、請求項11に記載のオンコリティックベクター。
【請求項13】
サイトカインが、以下からなるリストから選択される、請求項12に記載のオンコリティックベクター。TNFα、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、補体C5a、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1,CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28。CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5(=ランテス)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CL、CX1、CXCL10。CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7 および XCL2。
【請求項14】
サイトカインがTNFαである、請求項12に記載のオンコリティックベクター。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のオンコリティックアデノウイルスベクターと、生理学的に許容される担体、緩衝剤、賦形剤、アジュバント、添加剤、防腐剤、保存剤、充填剤、安定化剤及び/又は増粘剤の少なくとも1つを含む、医薬組成物。
【請求項16】
癌または腫瘍、好ましくは固形腫瘍の治療に使用するための、請求項1~14のいずれか1項に記載のオンコリティックアデノウイルスベクターまたは請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
癌又は腫瘍が、鼻咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎癌、結合組織の癌、メラノーマ、肺癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳腫瘍、咽頭癌、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛癌からなる群から選択される、請求項16記載の癌又は腫瘍の治療における使用用のオンコライトベクター又は医薬組成物。ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病・リンパ腫、神経鞘腫、フォンヒッペルリンダウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、尿管がん、脳腫瘍。乏突起膠腫、神経芽腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨癌、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発不明癌、カルチノイド、消化管カルチノイド、線維肉腫、乳癌。パジェット病、子宮頸がん、食道がん、胆のうがん、頭がん、眼がん、頸がん、腎臓がん、ウィルムス腫瘍、カポジ肉腫、前立腺がん、精巣がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫口腔癌、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴン腫、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、絨毛癌、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、音響神経腫、菌状息肉腫、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチノーマ。歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口腔癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌、扁桃腺癌。
【請求項18】
養子細胞治療組成物と共に、請求項16または17に記載の癌の治療に用いるためのオンコリティックベクターまたは医薬組成物。
【請求項19】
被験体における養子細胞療法の効果を高めるための、請求項18に記載の癌の治療における使用のためのオンコリティックベクターまたは医薬組成物。
【請求項20】
放射線療法、モノクローナル抗体、化学療法、低分子阻害剤、ホルモン療法または他の抗癌剤または対象への介入とともに、請求項16~19のいずれか1項に記載の癌の治療に用いるためのオンコリティックベクターまたは薬学的組成物。
【請求項21】
請求項1~14のいずれか1項に記載のオンコルト型アデノウイルスベクター又は請求項15に記載の医薬組成物の薬学的有効量を対象に投与する、対象における癌又は腫瘍を治療する方法。
【請求項22】
癌または腫瘍が、鼻咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎癌、結合組織の癌、メラノーマ、肺癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、脳癌、喉癌、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛癌、ガストリノーマ、フェオクロマトーマ、プロラクチノーマからなる群から選ばれる、請求項21に従う方法。T細胞白血病・リンパ腫、神経鞘腫、ヒッペルリンダウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、尿管がん、脳腫瘍、オリゴデングリオーマ、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨肉腫、骨肉腫、骨粗鬆症、膵臓がん、胆道がん、胆道がん、胆道がん、胆嚢がん、胆道がん、膀胱がん、尿細管がんなど脊髄腫瘍、骨癌、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発不明癌、カルチノイド、消化管カルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、食道癌、胆石症、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌。食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼球癌、頸部癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、カポジ肉腫、前立腺癌、肺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、皮膚癌、中皮腫、膵臓癌、胆嚢癌、胆嚢癌、胆道癌、胆嚢癌、胆管癌、膵臓癌、膵臓癌、膀胱癌、膵臓癌、肺癌、胆嚢癌、皮膚癌皮膚がん、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、内分泌膵臓がん、グルカゴノーマ、副甲状腺がん、陰茎がん、下垂体がん、軟部肉腫、網膜芽細胞腫、小腸がん、胃がん。胸腺がん、甲状腺がん、絨毛がん、胞状奇胎、子宮がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、音響神経腫、菌状息肉腫、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチノーマ、歯茎がん、心臓がん、口唇がん、口臭予防、口臭予防、口臭予防、口臭予防、口臭予防、口臭予防。歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口腔癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌、扁桃腺癌。
【請求項23】
前記ベクターが養子細胞治療組成物と共に投与される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
対象への養子細胞治療組成物および癌治療ウイルスベクターの投与(複数可)が、同時にまたは連続して、任意の順序で実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
放射線療法、モノクローナル抗体、化学療法、低分子阻害剤、ホルモン療法、養子細胞療法または他の抗癌剤もしくは介入を同時にまたは連続して被験者に投与することをさらに含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
癌または腫瘍の治療のための医薬の製造のための、請求項1~14のいずれか一項に記載のオンコリティックベクターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生命科学および医学の分野に関するものである。具体的には、本発明は、ヒトの癌治療に関する。より具体的には、本発明は、バリアントインターロイキン-2(vIL-2)ポリペプチドをコードする核酸配列を含むオンコリティックウイルスベクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
免疫賦活性サイトカインであるインターロイキン-2(IL-2)は、γ鎖型サイトカインファミリーに属します。T細胞やナチュラルキラー(NK)細胞などの白血球の増殖因子である。IL-2は、主に活性化されたCD4+およびCD8+Tリンパ球によって産生され、T細胞の増殖および活性化の誘導、B細胞の増殖の増強、単球およびナチュラルキラー細胞の活性化など、様々な免疫学的作用を有する。 IL-2は、様々な免疫疾患の治療薬として研究されていますが、高用量のIL-2を全身投与することによる副作用のため、臨床応用には限界があります。IL-2は、3つのサブユニットからなる受容体に結合することでシグナルを伝達する。IL-2Rγ(またはCD132)、IL-2Rβ(またはCD122)およびIL-2Rα(またはCD25)である。制御性T細胞(CD4+Foxp3+; Tregs)を含むCD8+およびCD4+T細胞の両方は、構成的に三量体を発現している。IL-2RγとIL-2RβサブユニットからなるIL-2受容体の二量体中間型は、NK細胞や静止状態のCD8+およびCD4+T細胞に発現している。
【0003】
IL-2がCD8+エフェクター細胞を拡大し活性化する能力は、腎細胞癌やメラノーマの治療への応用を促した。しかし、IL-2は免疫抑制性制御細胞(主にTreg)の増殖と維持に中心的な役割を果たす。IL-2療法は一部の患者で長期間の反応を示したが、いくつかの臨床試験で全身投与には限界があることが示された。有効な治療のためには高用量のIL-2が必要であり、肝臓、心臓、肺の障害を引き起こす一方、Tregの誘導により抗腫瘍効果が損なわれている。
【0004】
先行技術において、Levinら、2012は、IL-2Rβに対する結合親和性が増加したIL-2「スーパーカイン」(スーパー2とも呼ばれる)を工学的に設計することによって、CD25発現に対するIL-2の機能的要件を排除した。IL-2と比較して、IL-2スーパーカインは、細胞傷害性T細胞の優れた拡大を誘導し、in vivoでの抗腫瘍反応の改善をもたらし、T制御細胞の拡大が比例して少なく、肺水腫を減少させた。
US9428567は、野生型ヒトIL-2のものよりも小さいIL-2Rβサブユニットに対する平衡解離定数を有するヒトインターロイキン-2(hIL-2)変種を開示している。変種はまた、野生型IL-2と比較して、IL-2RαまたはIL-2Rα サブユニットへの結合の減少を示すことができる。
【0005】
T細胞を刺激するIL-2の能力を考慮すると、IL-2をコードするウイルスは、T細胞療法を強化する可能性を有するであろう(Itzhakiら、2013;Schwartzら、2002)。T細胞療法には、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、受容体修飾T細胞(TCR)、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)などがある。T細胞は、患者の血液または腫瘍から抽出され、実験室で活性化および/または改変され、拡大され、治療レジメンとして患者に戻される(Tahtinen et al.、2016)。しかし、免疫抑制の強い腫瘍微小環境は養子移入されたT細胞を機能低下させるため、T細胞注入には化学療法剤と高用量の全身性IL-2でそれぞれ前および後処理をする必要があり、これらはいずれも重度の毒性を引き起こす。 (Schwartz, Stover et al. 2002, Itzhaki, Levy et al. 2013).
【0006】
長年にわたる開発の末、オンコリティックウイルスは現在、がん治療薬として使用され始めている。ウイルスの作用機序や効果に影響を与える要因についていくつかの発見がありましたが、ウイルス治療に対する全体的な反応を決定する経路を特定する必要性が依然として残っています。臨床試験において、オンコリティックウイルスは良好な安全性プロファイルと有望な有効性を実証している。
【0007】
WO2014170389は、癌の治療用途および治療方法のための治療用組成物とともに、または単独で、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターに関するものである。例えば、養子細胞治療組成物と腫瘍溶解性アデノウイルスベクターとを別々に投与することが開示されている。養子細胞療法(ACT)は、癌の治療だけでなく、感染症や移植片対宿主病などの他の疾患の治療にも有効なアプローチである。養子細胞移植は、生体外で増殖した細胞、最も一般的には免疫由来細胞を、移植の免疫学的機能および特性を移転する目的で、宿主に受動的に移植することである。また、WO2014170389には、オンコリティックアデノウイルスベクターの核酸配列が開示されている。
【0008】
WO2016146894は、二重特異性モノクローナル抗体をコードするオンコリティックアデノウイルスベクターを開示する。
【0009】
US2019062395は、IL-2バリアントをコードする導入遺伝子を含む修正オンコリティックワクシニアウイルスベクターを開示する。
【0010】
特に、転移の負荷が大きい患者においては、腫瘍溶解性ウイルス治療に対する反応には、まだ改善の余地があります。腫瘍溶解性ウイルスの活性に関連する経路の特徴をさらに明らかにすることで、ウイルス治療の有効性を向上させるための潜在的な標的が見つかる可能性があります。したがって、単独でまたは他の治療法と一緒に、腫瘍溶解性ウイルスベクターの効能は、依然として改善され得る。本発明は、特定のウイルスベクターを利用した、例えば養子細胞療法による、がん治療のための効率的なツールおよび方法を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US9428567
【特許文献2】US2019062395
【特許文献3】WO2014170389
【特許文献4】WO2016146894
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、IL-2療法に見られる制限、主に免疫抑制性Tregの刺激を克服することである。我々は、トランスジーンとしてバリアントIL-2(vIL-2)ポリペプチドを発現するオンコリティックアデノウイルスベクターを設計した。vIL-2遺伝子は、天然のIL-2遺伝子に点変異を導入し、CD25(受容体サブユニットα)との結合を消失させたものである。したがって、このように発現したvIL2は、Treg細胞を刺激することができず、結果として細胞傷害性T細胞が優先的に拡大する。このコンストラクトでは、ウイルス複製はがん細胞に限定され、導入遺伝子(vIL-2)の発現はウイルス複製に連動している。したがって、vIL-2は必要な場所、すなわち腫瘍の微小環境においてのみ発現する。がん細胞内でウイルスが複製されると、危険信号が発せられ、腫瘍関連抗原が拡散し、免疫系ががん細胞を認識しやすくなり、がん細胞を死滅させることができます。さらに、免疫賦活化サイトカインの発現が、この効果をさらに高める。
【0013】
従って、本発明の目的は、非効率的、安全でない、予測不可能な癌治療の問題を克服するための簡単な方法および手段を提供することである。つの実施形態において、本発明は、細胞治療のための新規な方法および手段を提供する。本発明の目的は、特定のウイルスベクター、方法および配置によって達成され、これらは独立請求項に記載されている内容によって特徴付けられる。本発明の具体的な実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0014】
具体的には、本発明は、バリアントインターロイキン2(vIL-2)ポリペプチドをコードする核酸配列を導入遺伝子として含む、オンコルトアデノウイルスベクターを提供するものである。本発明はまた、前記オンコリティックベクターと、生理学的に許容される担体、緩衝剤、賦形剤、アジュバント、添加剤、防腐剤、充填剤、安定化剤および/または増粘剤のうちの少なくとも1つを含む医薬組成物を提供するものである。本発明の特定の目的は、癌または腫瘍、好ましくは固形腫瘍の治療に使用するための、前記オンコリティックウイルスベクターまたは医薬組成物を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】変異型IL-2(vIL-2)は、従来のIL-2よりも免疫細胞集団の増殖に有益な効果をもたらす。リコンビナントヒト(rh)vIL-2は、従来のrhIL-2と比較して、A) CD3+ CD8+T細胞およびB) CD3-T CD56+NK細胞集団にかなりの増加を誘導する。C) rhIL-2は、(rh)vIL-2よりもCD3+T CD4+T細胞集団の増殖を誘発する。3日後、(rh)vIL-2はrhIL-2よりもCD8+エフェクターT細胞およびNK細胞の増殖を誘導する力が強いが、CD4+T細胞(Tregを含む)のレベルは変種では低いままであった。データは平均値+平均値の標準誤差(SEM)として表示されている。**p<0.01.
図2】エフェクターT細胞および疲弊したT細胞に対するvIL-2の効果。A) あらかじめ活性化したCD3+ T細胞親集団のCD8/CD4+ T細胞比を、rhIL-2、(rh)vIL-2、または培地のみと培養した。あるいは、非感染がん細胞(B)または感染がん細胞(C)の存在下で、予備活性化T細胞をrhIL-2、(rh)vIL-2、または培地のみで培養した。rhIL-2と(rh)vIL-2は、がん細胞の存在下および非存在下でCD8/CD4細胞の比率に同様の影響を与えた(AおよびB)。しかしながら、癌細胞がオンコリティックウイルスに感染している場合、rhvIL-2はCD4+細胞よりもCD8+CD27-CD62L-CD45RO+細胞が優位になる傾向を誘導した(C)。平均値を示す。ウイルスのAd5/3-E2F-d24;CC:がん細胞。
図3】中枢性メモリーT細胞に対するvIL-2の効果。 A) CD3+T細胞親集団のCD8/CD4+T細胞比を予め活性化し、rhIL-2、(rh)vIL-2、または培地のみと培養した。あるいは、予め活性化したT細胞を、非感染(B)または感染(C)癌細胞の存在下で、rhIL-2、(rh)vIL-2、または培地のみと培養した。癌細胞非存在下では、rhIL-2と(rh)vIL-2の間でCD8/CD4 Tcm比に差は見られなかった(A)。腫瘍細胞存在下では、まず2日目に比率が低下し、その後4日目に上昇することが観察された。ここでも、(rh)vIL-2は従来のrhIL-2よりもTcm集団において高いCD8/CD4比を誘導した(B)。バックボーンウイルスの存在下では、CD8/CD4 Tcm細胞は2日目に(rh)vIL-2投与群で高く、4日目まで安定していたが、他の群のこれらの細胞の比率は(rh)vIL-2群と比較して増加した(C).このことは、(rh)vIL-2がrhIL-2と同様にTcmコンパートメントに影響を与えることを示している。平均値を示す。ウイルスをAd5/3-E2F-d24、CC:癌細胞。
図4】エフェクターメモリーT細胞に対するvIL-2の効果。 A) CD3+T細胞親集団のCD8/CD4+T細胞比を予め活性化し、rhIL-2、(rh)vIL-2、または培地のみと培養した。あるいは、予め活性化したT細胞を、非感染(B)または感染(C)癌細胞の存在下で、rhIL-2、(rh)vIL-2、または培地のみと培養した。癌細胞が存在しない場合、rhIL-2と(rh)vIL-2の間でCD8/CD4 Tem比の違いは観察されなかった(A)。がん細胞がある場合、rhIL-2と(rh)vIL-2は4日目までに高いCD8/CD4 Temの比率を誘導する(B)。がん細胞を感染させた場合、(rh)vIL-2群では4日目にCD8/CD4 Tem比が高くなる傾向が観察された(C)。平均値を示す。ウイルスはAd5/3-E2F-d24、CC:がん細胞。
図5】構築されたウイルスはオンコリティックであり、一般的な風邪ウイルスであるアデノウイルス血清型5を骨格としている。A) E2Fプロモーター、E1Aの24塩基対欠損、E1Bの無効化欠損、E3領域へのヒトvIL-2導入遺伝子、Ad5繊維のAd3血清型ノブを持つキメラ5/3腫瘍溶解性アデノウイルスの模式図である。B) このウイルスはex vivoでオンコリティック効力を有する。BBは導入遺伝子を含まないバックボーンウイルスを示す C) ウイルス感染細胞は導入遺伝子産物を増殖培地中に分泌する。Ad5/3-E2F-d24-IL-2とAd5/3-E2F-d24-vIL-2の間でウイルスの殺細胞能力に大きな違いは見られなかったことから、vIL-2トランスジーンの存在がウイルスのオンコライジング能力を低下させないことが示された(B)。さらに、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2に感染した細胞は、サイトカインを分泌することができた(C)。
図6】腫瘍溶解性アデノウイルスAd5/3-E2F-d24-vIL-2は、CD8+エフェクター細胞優位を誘導し、Treg分化を誘導しない。A) 従来のIL-2をコードするウイルスとは異なり、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、活性化 CD4+ T細胞よりも活性化エフェクターT細胞 (CD3+ CD8+ CD25+ CD69+) の存在を誘導する。B) 従来のIL-2をコードするウイルスは、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2とは異なり、免疫抑制性Tregsの分化を刺激している。CD25+ CD69+活性化エフェクターT細胞のCD8/CD4比は、3日目と6日目にAd5/3-E2F-d24-vIL-2で処理したグループで、従来のIL-2を発現するウイルスで処理した場合(A)より、有意に高かった。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、Ad5/3-E2F-d24-IL-2のようにTreg分化を誘導しなかった(B)。データは平均+SEMで示した。****p<0.0001; **p=0.01。Ad5/3-vIL-2: Ad5/3-E2F-d24-vIL2; Ad5/3-IL-2: Ad5/3-E2F-d24-IL2; Ad5/3: Ad5/3-E2F-d24; PBMCs:ヒト末梢血単核細胞。
図7】Ad5/3-E2F-d24-vIL2 は、ハムスターにおける抗腫瘍効果および全生存期間を延長した:2*106 HapT1 腫瘍をシリアンハムスターに皮下移植した。(A-D) 1*109 VPのAd5/3-E2F-d24-IL-2、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2または非武装対照ウイルスAd5/3-E2F-d24で治療し、1、4、8および13日目にPBSを受けたモックについて16日までの個々の腫瘍成長量。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、他のグループと比較して、より良い腫瘍制御を示した。(E)確立されたHapT1腫瘍を有するハムスターを、1、4、8、13日目に異なるアデノウイルスで処置した。18日目から、グループは5日ごとに6回の追加治療を受けた。Ad5/3-E2F-d24-vIL2は、Ad5/3-E2F-d24-IL-2を含む他のグループと比較して、腫瘍の成長を有意に減少させた。 ハムスターは、腫瘍が見えなくなった時点で治癒とみなした。正規化した腫瘍体積中央値およびSEM。 ***、p<0.001;*、p<0.05。(F)30日目までに治癒した腫瘍のパーセンテージ。(G)全生存期間と統計的有意差。
図8】サイトカイン武装アデノウイルスによる処理後の腫瘍特異的免疫記憶の誘導。HapT1腫瘍を治癒したすべてのハムスターに、(A) HapT1(同じ腫瘍)および(B) DDT1-MF2(異なる腫瘍)をハムスターの上背部に移植し、再チャレンジした。サイトカインで武装したアデノウイルスによる前処理は、再チャレンジ後のHapT1細胞の成長を減少させるように見えた。最も重要なことは、vIL-2武装アデノウイルスが、HapT1再チャレンジ後の動物の40%(5匹中2匹)で完全な腫瘍拒絶を引き起こすことができたことである。
図9】変種IL-2-ウイルス処理は、腫瘍の実質的な縮小と腫瘍微小環境におけるCD4+およびCD8+の中程度の浸潤レベルを達成する。HapT1担持ハムスターを、PBS(Mock)、またはAd5/3-E2F-d24、またはAd5/3-E2F-d24-IL-2、またはAd5/3-E2F-d24-vIL-2の腫瘍内注射で4回処理した。フローサイトメトリーによる免疫細胞の検出のため、16日目(4回処理後)にハムスターから腫瘍を採取した。(A) 0日目および16日目の腫瘍体積。(B) CD4+細胞の頻度、(C) CD8+細胞の頻度。データは平均+SEMで表示。*p<0.05
図10】変異型IL-2-ウイルス処理により、腫瘍の微小環境において高レベルのIL-2が達成される。16日目(4回処理後)にハムスターから腫瘍を採取し、RT-qPCRによる相対的mRNAの定量を行った。ハムスター IL-2(下段バー)、ヒト IL-2 および IL-2 変異体(上段バー)の腫瘍内相対 mRNA 発現レベル。 データは平均+SEMで表示。*p<0.05,****p<0.0001
図11】ウイルス処理した動物の全体的な mRNA 発現プロファイル。腫瘍は、16日目にハムスターから採取し、mRNA発現プロファイルは、Nanostringを通して決定した。(A)Ad5/3-E2F-d24のmRNA発現プロファイル、(B)Ad5/3-E2F-d24-IL-2のmRNA発現プロファイル(C)Ad5/3-E2F-d24-IL-2のバリアントのmRNA発現プロファイル。リファレンス群と比較して、統計的に有意な発現量の差(調整後p値<0.05)があった遺伝子に名前を付けている(-1>log2 fold change>1)。
図12】野生型ヒト IL-2 または変異型 IL-2 をコードするオンコリティックアデノウイルスで処理した腫瘍における T 細胞受容体シグナル伝達および細胞傷害性化合物の mRNA 発現レベル。腫瘍は 16 日目にハムスターから採取し、mRNA 発現レベルはナノストリングスで測定した。(A)T細胞受容体(TCR)複合体およびシグナル伝達に関する遺伝子のmRNA数、(B)細胞障害性化合物に関する遺伝子のmRNA数、(C)バリアントIL-2 mRNA相対発現とGZMKまたはSAP1 mRNA数、あるいは後者両方の遺伝子間のピアソンの相関性。データは、参照群(Mock)と統計的に差があった遺伝子の平均+SEMで示した。 ns - 無意図
図13】ヒトIL-2またはバリアントIL-2をコードするオンコリティックアデノウイルスで処理した腫瘍における抗炎症性および炎症性シグナル遺伝子のmRNA発現レベル。腫瘍は16日目にハムスターから採取し、mRNA発現レベルはナノストリングスにより測定した。(A) 共刺激分子と共抑制分子に関連する遺伝子のmRNAの数。(B)抗原提示細胞、抑制性骨髄系細胞に関連する遺伝子のmRNA数。(C)抗炎症、炎症性シグナルに関連する遺伝子のmRNA数。データは、基準群(Mock)と統計的に差があった遺伝子の平均値+SEMで示した。*p<0.05,**p<0.01
【0016】
インターロイキン2(IL-2)およびその変異体
本明細書で使用される場合、「IL-2」は、ネイティブまたは組換えにかかわらず、野生型IL-2を意味する。成熟したヒトIL-2は、133アミノ酸配列として生じる(シグナルペプチドを含まず、追加の20個のN末端アミノ酸からなる)。ヒトIL-2のアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)は、アクセッション番号NP000577.2の下でGenbankに見出される。成熟したヒトIL-2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 2に描かれている。
【0017】
本明細書で使用される場合、「IL-2変種」、「変種IL-2」、「vIL2」または「vIL-2」は、インターロイキン-2ポリペプチドに対する特定の置換がなされたポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードする核酸(すなわち、遺伝子)を意味する。ポリペプチド」という用語は、本明細書では、その長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)にかかわらず、アミノ酸残基の任意の鎖を指す。変種IL-2ポリペプチドはまた、ネイティブIL-2ポリペプチド鎖の他の残基における、または1つ以上の部位でのアミノ酸の挿入、欠失、置換および修飾によって特徴付けることができる。本開示に従って、任意のそのような挿入、欠失、置換および修飾は、好ましくは受容体サブユニットIL-2αへの減少した結合を示すが、IL-2Rβ結合活性を保持または改善する変異体IL-2をもたらす。例示的な変種は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のアミノ酸の置換を含むことができる。変種はまた、IL-2の他の位置における保存的修飾および置換(すなわち、変種の活性または二次もしくは三次構造に最小限の影響を及ぼすもの)を含むことができる。
【0018】
例示的な変種IL-2ポリペプチドは、SEQ ID NO:2と少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含み、SEQ ID NO:2によって表されるポリペプチドがIL-2Rαを結合する親和性よりも低い親和性でIL-2Rαを結合させる。例示的な変種IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2と少なくとも約50%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約87%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一でありうる。変種ポリペプチドは、アミノ酸残基の数または含有量における変化を含み得る。例えば、変種IL-2は、野生型IL-2よりも多いまたは少ない数のアミノ酸残基を有することができる。代替的に、または追加的に、例示的な変種ポリペプチドは、野生型IL-2中に存在する1つまたは複数のアミノ酸残基の置換を含むことができる。様々な実施形態において、変種IL-2ポリペプチドは、単一のアミノ酸残基の付加、欠失、または置換、例えば、SEQ ID NO:2の80位の残基の置換によって野生型IL-2と異なり得る。同様に、例示的な変種ポリペプチドは、2つ以上のアミノ酸残基の置換、例えばSEQ ID NO:2の24、45、65、72、74、80、81、85、86、89、92、93、109および117位の残基によって野生型と異なることができる。例えば、変異は、以下のものからなる群から選択することができる。i24v、y45a p65h、l72g、q74r、q74h、q74n、q74s、l80f、l80v、r81i、r81t、r81d、l85v、i86v、i89v、i92f、v93i、d109l、f117aからなる群から選択され得る。好ましくは、変種ポリペプチドは、置換L80F、R81D、L85V、I86VおよびI92Fを含んでなる。
【0019】
別の実施形態では、バリアントIL-2ポリペプチドは、バリアントIL-2ポリペプチドと別の異種ポリペプチドとを含む融合ポリペプチドまたはキメラポリペプチドとして調製することもできる。バリアントIL-2およびその抗体または抗原結合部分を含むキメラポリペプチドを生成することができる。キメラタンパク質の抗体または抗原結合成分は、標的化部位として機能することができる。例えば、キメラタンパク質を特定の細胞サブセットまたは標的分子に局在化させるために使用することができる。
本発明は、特に、上記バリアントIL-2ポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列を導入遺伝子として含むオンコリティックウイルスベクターの設計に向けられたものである。
【0020】
ウイルスベクター
腫瘍溶解性ウイルスベクターは、がん細胞に選択的に感染し破壊することができる、治療上有用な抗がんウイルスである。現在のほとんどの溶菌ウイルスは、腫瘍選択性を高めるために適応されるか、あるいは設計されているが、レオウイルスやムンプスウイルスなど、もともとがん細胞を好むウイルスも存在する。腫瘍特異的なプロモーターエレメントを利用して、がん細胞でのみ複製が可能なように設計されたオンコリティックウイルスベクターが多く存在する。また、がん細胞が選択的に発現する表面マーカーをウイルス侵入のための受容体として利用することで、がん細胞を標的とすることもできる。現在では、アデノウイルス、レオウイルス、麻疹、単純ヘルペス、ニューカッスル病ウイルス、ワクシニアなど、多くのウイルスがオンコリティックウイルスとして臨床試験されている。
【0021】
好ましくは、本発明で用いられるオンコリティックベクターは、ヒトまたは動物の治療に適したアデノウイルスベクターである。本明細書で使用する「オンコリティック・アデノウイルスベクター」とは、腫瘍細胞と正常細胞との間で選択的に複製することにより、癌細胞に感染して死滅させることができるアデノウイルスベクターのことをいう。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、アデノウイルスベクターは、ヒトウイルスのベクターである。一実施形態では、アデノウイルスベクターは、Ad5、Ad3及びAd5/3ベクターからなる群から選択される。本明細書で使用される場合、表現「アデノウイルス血清型5(Ad5)核酸バックボーン」は、Ad5のゲノムを指す。同様に、「アデノウイルス血清型3(Ad3)核酸バックボーン」は、Ad3のゲノムを意味する。"Ad5/3ベクター "とは、Ad5ベクター及びAd3ベクターの両方を含むか又はその一部を有するキメラベクターを指す。具体的な実施形態では、アデノウイルスベクターのバックボーンは、特定の変異を有するアデノウイルス血清型5(Ad5)または血清型3(Ad3)核酸バックボーンである。例えば、ベクターの繊維領域が改変され得る。一実施形態では、バックボーンはAd5核酸バックボーンであり、Ad3繊維ノブをさらに含む。言い換えれば、構築物は、Ad3由来のファイバーノブを有する一方、残りのゲノムまたは残りの大部分はAd5由来である(例えば、WO2014170389を参照されたい)。
【0023】
アデノウイルスベクターは、当技術分野で知られている任意の方法、例えば、任意のウイルス領域を削除、挿入、変異または修正することによって、修正することができる。ベクターは、複製に関して腫瘍特異的に作られている。例えば、アデノウイルスベクターは、腫瘍特異的プロモーターの挿入(例えば、E1を駆動するため)、領域の欠失(例えば、「24」、E3/gp19k、E3/6・7kで使用されるようなE1の一定領域2)及びトランス遺伝子又はトランス遺伝子の挿入等のE1、E3及び/又はE4の改変から構成されてもよい。
【0024】
特定の実施形態において、一般にアデノウイルスベクターの複製を支持することが知られているE1B 19K遺伝子(SEQ ID NO:3)は、本発明のベクターにおいて無効化dE1B 19K(SEQ ID NO:4)を有している。E1B 19Kの欠失は、癌細胞をTNFαに感作することが知られており、したがってそれはアポトーシスを促進する(White et al.,1992).
【0025】
野生型E1B 19K遺伝子の配列は以下の通りである(削除可能な領域には下線を付した)。
atggaggctt gggagttt ggaagatttt tctgctgc gtaacttgct ggaacagc tctaacagta cctcttggtt ttggaggtt ctgtggct catccaggc aaagttagtc tgcagaattaaggaggatta caagtgggaa tttgaagc tttgaaatc ctggtgag ctgttgatt cttgaatct gggtcaccag gcgctttcc aagagaaggt catcaagact ttggatttt ccacaccggg ggcgctgcggctgctgttg cttttttgag ttttataaag gataaatgga gcgaagaaac ccatctgagc ggggtacc tgctggattt tctggccatg catctgtgga gagcggttgt gagacaag aatcgcctgc tactgttctcttccgtccgc ccgggataa taccgacgga ggagcag cagcagg aggaagccag gcggcgg caggagcaga gcccatggaa cccgagcc ggcctggacc ctcgggaatg a (SEQ ID NO:3)
【0026】
したがって、一実施形態では、本発明のウイルスベクターにおけるdE1B 19Kの配列は
atggaggctt gggagttt ggaagatttt tctgctgc gtaacttgct ggaacagctg ggtcaccagg cgctttcca agagaaggtc atcaagactt tggattttc cacaccgg cgcctgcg ctgctgttc ttttgagt tttataag ataaatggag cgaagaacc catctgagcg gggtacct ttttagt augatggag gagtagt gggtacttggcgctggatttt ctggccatgc atctgtggag agcggttgtg agacaaga atcgcctgct actgttgtct tccgtccgcc cgggataat accgacggag gagcagcagagcagcagcagagagccaggagg cggcggcagag cccatggaac ccgagccg gcctggacc tcgggaatga (SEQ ID NO:4)
【0027】
腫瘍特異的なオンコライトアデノウイルスを作製するための一つのアプローチは、E1の定常領域2(CR2)に影響を与える24塩基対(bp)欠失("Δ 24" または "d24" )を工学的に作り出すことです。野生型アデノウイルスでは、CR2は細胞内のRb腫瘍抑制因子/細胞周期制御因子タンパク質と結合し、合成(S)期、すなわちDNA合成期または複製期を誘導する役割を担っています。pRbとE1Aとの相互作用には、E1Aタンパク質保存領域のアミノ酸121から127が必要である。ベクターは、Heise C. ら(2000, Nature Med 6, 1134-1139)およびFueyo J. ら(2000, Oncogene 19(1):2-12) によるベクターのアミノ酸122-129に相当するヌクレオチドの欠失からなることができる。Δ 24を有するウイルスは、G1-Sチェックポイントを克服する能力が低下し、この相互作用が必要でない細胞、例えば、すべてのヒト腫瘍でないにしてもほとんどが含まれるRb-p16経路に欠陥のある腫瘍細胞においてのみ効率的に複製されることが知られている。本発明の1つの実施形態では、ベクターは、アデノウイルスE1のRb結合定数領域2における24bp欠失("Δ 24 "または" d24 ")を含んでなる(図5を参照されたい)。
【0028】
また、E1A内在性ウイルスプロモーターを、例えば腫瘍特異的プロモーターに置き換えることも可能である。例えば、E2F1プロモーター(例えば、Ad5ベースのベクターにおいて)またはhTERTプロモーター(例えば、Ad3ベースのベクターにおいて)を、E1A内在性ウイルスプロモーターの代わりに利用することが可能である。ベクターは、E1Aの腫瘍特異的発現のために、E2F1プロモーターを含んでいてもよい。
【0029】
E3領域は、生体外でのウイルス複製に非必須であるが、E3タンパク質は、宿主免疫応答の調節すなわち自然免疫応答及び特異免疫応答の両方の阻害に重要な役割を有する。本発明の1つの実施形態では、オンコリティックアデノウイルスベクターのE3領域における核酸配列の欠失は、ウイルスgp19k及び6.7kリーディングフレームの欠失である。E3のgp19k/6.7k欠失は、アデノウイルスE3A領域からの965塩基対の欠失を意味する。その結果、アデノウイルス構築物では、gp19kと6.7K遺伝子の両方が欠失されている(Kanerva Aら、2005、Gene Therapy 12、87-94)。gp19k遺伝子産物は、主要組織適合性複合体I(MHC1、ヒトではHLA1として知られている)分子を小胞体に結合して隔離し、細胞傷害性Tリンパ球による感染細胞の認識を阻害することが知られています。多くの腫瘍はHLA1/MHC1が欠損しているため、gp19kを欠損させるとウイルスの腫瘍選択性が高まる(正常細胞からは野生型ウイルスより早くウイルスが排出されるが、腫瘍細胞では差がない)。6.7Kタンパク質は細胞表面に発現しており、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)受容体2のダウンレギュレーションに関与している。
【0030】
本発明の1つの実施形態では、導入遺伝子、すなわちバリアントインターロイキン2(vIL2)をコードする遺伝子は、E3プロモーターの下で、gp19k/6.7k欠失E3領域に配置される。これは、ウイルスの複製とその後のE3プロモーターの活性化を可能にする腫瘍細胞への導入遺伝子の発現を制限する。特定の実施形態では、バリアントインターロイキン2をコードする核酸配列が、ウイルスgp19kおよび6.7k読み取り枠の削除された核酸配列の場所に挿入される。本発明の別の実施形態では、E3 gp19k/6.7kはベクター内に保持されるが、1つまたは多くの他のE3領域が削除されている(例えば、E3 9kDa、E3 10.2kDa、E3 15.2kDaおよび/またはE3 15.3 kDa)。
【0031】
E3プロモーターは、当該技術分野で知られている任意の外因性(例えばCMVまたはE2Fプロモーター)または内因性プロモーター、特に内因性E3プロモーターであってよい。E3プロモーターは主に複製によって活性化されるが、E1が発現した場合にも若干の発現が起こる。Δ24型ウイルスの選択性はE1発現後(E1がRbと結合できない時)に生じるため、これらのウイルスは形質導入された正常細胞においてもE1を発現します。従って、E3プロモーターを介した遺伝子発現を腫瘍細胞に限定するためには、E1発現も制御することが極めて重要である。
【0032】
本発明の特定の実施形態は、複製が二重選択性装置によってp16/Rb経路に制限されるオンコルトアデノウイルスベクター(例えば、Ad5またはAd3ベクター)を含む:E2F(例えば、E2F1)腫瘍特異的プロモーターが、一定領域2において変異したアデノウイルスE1A遺伝子の前に置かれ、その結果、E1Aタンパク質が細胞においてRbに結合できなくなるようにする。さらに、腫瘍細胞に効率よく入り込むために、5/3キメラにより繊維が修飾されている。
【0033】
本発明の具体的な実施形態では、オンコリティックアデノウイルスベクターは、以下を含む。
【0034】
1) アデノウイルスE1のRb結合定数領域2に24bpの欠失(Δ 24)があること。
2)ウイルスgp19kおよび6.7k読み取り枠の核酸配列欠失;および
3) 点2)で定義された削除された核酸配列の代わりに、バリアントインターロイキン2(vIL2)トランスジーンをコードする核酸配列。
【0035】
以下の実験の項では、Ad5/3-E2F-d24バックボーンをベースにしたオンコリティックアデノウイルスを構築し、vIL2で武装させることを特徴としている。このウイルスは、E2FプロモーターとE1A定常領域2(以下、D24)の24塩基対の欠失により、すべての癌細胞に共通する特徴の一つであるレチノブラストーマ/p16経路欠損細胞でのみ複製が可能です。E1B領域を欠失させ、がん細胞のアポトーシスを誘導する(dE1B 19K)。さらに、がん細胞への導入能力を向上させ、抗腫瘍効果を高めるために、このウイルスの特徴は血清型3由来の繊維芽を持ち、残りのゲノムは血清型5由来であることである。最も重要なことは、Ad5/3ウイルスは、ヒトにおいて良好な安全性プロファイルを有するということである。 好ましくは、vIL-2で武装したオンコリティックウイルスを、T細胞療法またはチェックポイント阻害剤を併用することで、現在治癒不可能な固形腫瘍を安全かつ効果的に治療するための潜在的プラットフォームとして使用することである。特に、Tregが重要な役割を果たす腫瘍種を好ましく治療することができる。
【0036】
一実施形態において、本発明は、バリアントインターロイキン2(vIL2)トランスジーンをコードする核酸配列を含む、オンコルトウイルスベクター、好ましくはオンコルトアデノウイルスベクターに向けられている。
【0037】
好ましい実施形態では、オンコルトアデノウイルスベクターのバックボーンは、アデノウイルス血清型5(Ad5)又は血清型3(Ad3)核酸バックボーンである。
【0038】
より好ましい実施形態では、バリアントインターロイキン2(vIL2)トランスジーンをコードする前記核酸配列は、前記オンコルトアデノウイルスベクターのE3領域における欠失した核酸配列の代わりに存在する。最も好ましくは、E3領域における核酸配列の欠失は、ウイルスgp19kおよび6.7kリーディングフレームの欠失である。
【0039】
別の好ましい実施形態では、ベクターはまた、前記オンコリティックアデノウイルスベクターのアデノウイルスE1配列における24bp欠失(Δ 24)を含んでいる。
【0040】
別の好ましい実施形態では、ベクターはまた、- E1Bの無効化欠失((dE1B 19K))を含む。
別の好ましい実施形態では、ベクターはまた、Ad5/3繊維ノブからなる。
別の好ましい実施形態では、ベクターは、さらなる導入遺伝子をコードする核酸配列を含んでいる。より好ましくは、さらなる導入遺伝子は、サイトカインをコードしている。実施形態において、サイトカインは、以下からなるリストから選択される。TNFα、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、補体C5a、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1,CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28。CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5(=ランテス)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CL、CX1、CXCL10。CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7 およびXCL2.
【0041】
より好ましい実施形態では、サイトカインは、TNFαである。
また、本発明で利用されるウイルスベクターは、上記以外の改変を含んでいてもよい。任意の追加の成分または改変を任意に使用することができるが、本発明にとって義務ではない。
【0042】
外来性エレメントを挿入することにより、標的細胞におけるベクターの効果を高めることができる。外来性の組織または腫瘍特異的プロモーターの使用は、組換えベクターにおいて一般的であり、本発明においても利用することができる。
【0043】
養子縁組細胞療法
【0044】
本発明の一つのアプローチは、がんと反応し破壊する能力を持つ免疫リンパ球の移植を用いた、がん患者の治療法の開発である。単離された腫瘍浸潤リンパ球を培養して大量に増殖させ、患者に注入する。本発明では、リンパ球の効果を高めるために、バリアントインターロイキン2(vIL2)トランスジーンをコードするオンコリティックベクターを利用することができる。本明細書において、「養子細胞治療の効果を高める」とは、本発明のオンコリティックベクターを養子細胞治療用組成物と併用した場合に、養子細胞治療用組成物単独の治療効果と比較して、被験者に強い治療効果を引き起こすことができる状態をいう。本発明の具体的な実施形態は、被験者の癌を治療する方法であって、本発明のオンコリティックベクターを被験者に投与することを含み、前記方法は、被験者に養子細胞治療用組成物を投与することをさらに含む。養子細胞治療組成物および本発明のベクターは、別々に投与される。養子細胞治療組成物及びアデノウイルスベクターの別個の投与は、骨髄破壊性又は非骨髄破壊性の前処理化学療法及び/又は放射線に先行させることができる。養子細胞治療法は、患者の癌を減少または除去することを目的としている。
【0045】
本発明の特定の実施形態は、アデノウイルスベクターおよび養子細胞治療組成物、例えば腫瘍浸潤リンパ球、TCR改変リンパ球またはCAR改変リンパ球を用いた治療法に関するものである。特にT細胞療法が、また、NK細胞療法または他の細胞療法のような他の任意の養子療法が、本発明において利用され得る。実際、本発明によれば、養子細胞治療組成物は、TIL療法のような非修飾細胞又は遺伝子改変細胞から構成されてもよい。腫瘍特異的標的へのT細胞の遺伝子ターゲティングを達成するための一般的な方法が2つある。一つは、特異性が知られており、ヒト白血球抗原(HLA、げっ歯類では主要組織適合性複合体と呼ばれる)の型が一致したT細胞受容体(TCR)の移入である。もう一つは、キメラ抗原受容体(CAR)のような人工的な分子で細胞を修飾する方法です。この方法は、HLAに依存せず、標的分子に関してより柔軟性がある。例えば、一本鎖抗体を使用することができ、CARはコスティミュレーションドメインを組み込むこともできます。しかし、CAR細胞の標的は標的細胞の膜上にある必要があり、一方、TCR修飾は細胞内標的を利用することができる。
【0046】
本明細書で使用される「養子細胞治療用組成物」は、養子細胞移植に適した細胞を含む任意の組成物を指す。本発明の1つの実施形態では、養子細胞治療組成物は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、TCR(すなわち異種T細胞受容体)改変リンパ球及びCAR(すなわちキメラ抗原受容体)改変リンパ球からなる群より選択される細胞型を含んでいる。本発明の別の実施形態では、養子細胞治療組成物は、T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、NK細胞、樹状細胞、デルタガンマT細胞、制御性T細胞及び末梢血単核細胞からなる群より選択される細胞型を含む。別の実施形態では、TIL、T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、NK細胞、デルタガンマT細胞、制御性T細胞又は末梢血単核細胞が、養子細胞治療組成物を形成する。本発明の1つの具体的な実施形態では、養子細胞治療組成物は、T細胞を含んでいる。本明細書で使用する「腫瘍浸潤性リンパ球」又はTILは、血流を離れて腫瘍に移動した白血球を指す。リンパ球は、B細胞、T細胞、及びナチュラルキラー細胞を含む3つのグループに分けることができる。本発明の別の具体的な実施形態では、養子細胞治療組成物は、標的特異的キメラ抗原受容体又は特異的に選択されたT細胞受容体で修飾されたT細胞からなる。本明細書で使用する「T細胞」は、CD4+ヘルパー細胞、CD8+細胞傷害性T細胞及びγδT細胞を含む、CD3+細胞を指す。
【0047】
本発明で使用される養子細胞治療用組成物は、適当な細胞に加えて、薬学的に許容される担体、緩衝剤、賦形剤、アジュバント、添加剤、防腐剤、充填剤、安定化剤および/または増粘剤などの他の任意の薬剤、ならびに対応する製品に通常見られる任意の構成要素を含んでいてもよい。組成物を配合するための適切な成分および適切な製造方法の選択は、当業者の一般的な知識に属するものである。
【0048】
養子細胞治療組成物は、投与に適した固体、半固体または液体などの任意の形態であってよい。製剤は、溶液、乳剤、懸濁液、錠剤、ペレット、およびカプセルからなる群から選択することができるが、これらに限定されるものではない。組成物は、特定の製剤に限定されるものではなく、代わりに、組成物は、任意の既知の薬学的に許容される製剤に製剤化することができる。医薬組成物は、当技術分野で公知の任意の従来のプロセスによって製造することができる。
【0049】
本発明のオンコリティックアデノウイルスベクターと養子細胞治療用組成物との組み合わせは、オンコリティックアデノウイルスベクターと養子細胞治療用組成物を一緒に、しかし別々の組成物として使用することを意味する。本発明のオンコリティックアデノウイルスベクターと養子細胞治療用組成物が1つの組成物として使用されないことは、当業者にとって明らかであろう。実際、アデノウイルスベクターは、養子細胞を改変するためではなく、標的腫瘍を改変し、腫瘍が細胞移植の所望の効果に対してより従順であるようにするために使用される。特に、本発明は、腫瘍への養子移植の採用を強化し、そこでの活性を増加させる。本発明の特定の実施形態では、腫瘍溶解アデノウイルスベクターと養子細胞治療組成物の組み合わせは、同時または連続的に、任意の順序で、対象への投与のためのものである。
【0050】
チェックポイント阻害剤
免疫チェックポイントタンパク質は、特定のリガンドと相互作用して、T細胞にシグナルを送り、T細胞の機能を抑制する。がん細胞はこれを利用して、チェックポイントタンパク質を細胞表面に大量に発現させ、抗がん免疫反応を抑制する。
【0051】
本明細書に記載されるチェックポイント阻害剤(CPIとも呼ばれる)は、免疫チェックポイントタンパク質の機能を阻害することができる任意の化合物である。阻害には、機能の低下だけでなく、完全な遮断も含まれる。特に、免疫チェックポイントタンパク質は、ヒトチェックポイントタンパク質である。したがって、免疫チェックポイント阻害剤は、好ましくは、ヒトの免疫チェックポイントの阻害剤である。
【0052】
チェックポイントタンパク質には、限定されないが、CTLA-4、PD-1(およびそのリガンドPD-L1およびPD-L2)、B7-H3、B7-H4、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、BTLA、TIGITおよび/またはIDOが含まれる。LAG3、BTLA、B7-H3、B7-H4、TIM3およびKIRが関与する経路は、CTLA-4およびPD-1依存経路と同様の免疫チェックポイント経路を構成することが当技術分野で認識されている。免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1(及びそのリガンドPD-L1及びPD-L2)、B7-H3、B7- H4、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、BTLA、TIGIT及び/又はIDOの阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1の阻害剤である。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1に選択的に結合するモノクローナル抗体であり、より好ましくは、以下のものからなる群から選択される。BMS-936559、LY3300054、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブ。
【0053】
いくつかの実施形態では、組み合わせのチェックポイント阻害剤は、抗体である。本明細書で使用される「抗体」という用語は、例えば標的免疫チェックポイント又はエピトープを結合することができる(例えば抗原結合部分を保持する)全長抗体又はその機能的断片若しくはアナログと同様に、天然由来の抗体及び設計された抗体を包含する。本明細書に記載の方法に従って使用するための抗体は、限定されないが、ヒト、ヒト化、動物又はキメラを含む任意の起源からであってよく、IgG1又はIgG4アイソタイプを優先して任意のアイソタイプであってよく、さらにグリコシル化又は非グリコシル化であってもよい。抗体という用語は、抗体が本明細書に記載される結合特異性を示す限り、二重特異性または多重特異性抗体も含む。
【0054】

本発明の組換えベクターは、腫瘍細胞において複製能がある。本発明の1つの実施形態では、ベクターは、Rb-経路、特にRb-p16経路に欠陥がある細胞において複製コンピテントである。これらの欠損細胞は、動物およびヒトにおけるすべての腫瘍細胞を含む。本明細書で使用される「Rb経路における欠陥」は、経路の任意の遺伝子またはタンパク質における突然変異および/またはエピジェネティックな変化を意味する。これらの欠陥のために、腫瘍細胞はE2Fを過剰発現し、したがって、効果的な複製のために通常必要とされるE1A CR2によるRbの結合は不必要である。さらに選択性はE2Fプロモーターによって媒介され、Rb/p16経路欠損細胞に見られるように、遊離E2Fの存在下でのみ活性化される。E2Fが存在しない場合、E1Aの転写は起こらず、ウイルスは複製されない。E2Fプロモーターを含めることは、正常組織でのE1Aの発現を防ぐために重要であり、直接的にもE3プロモーターからの導入遺伝子の発現を可能にすることによって間接的にも毒性を引き起こす可能性がある。
【0055】
本発明は、対象における癌を治療するためのアプローチに関する。本発明の一実施形態では、対象は、ヒトまたは哺乳動物、具体的には哺乳動物またはヒトの患者、より具体的には癌に罹患しているヒトまたは哺乳動物である。
【0056】
このアプローチは、悪性腫瘍と良性腫瘍の両方を含む任意の癌または腫瘍の治療に使用することができ、原発腫瘍と転移巣の両方がアプローチの標的となり得る。本発明の1つの実施形態では、癌は、腫瘍浸潤リンパ球を特徴とする。本発明のツールは、腫瘍浸潤リンパ球を特徴とする転移性固形腫瘍の治療にとって特に魅力的である。別の実施形態では、T細胞移植片は、キメラ抗原受容体の腫瘍または組織特異的T細胞受容体によって修飾されている。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「治療」又は「治療する」は、完全治癒のみならず、癌又は腫瘍に関連する障害又は症状の予防、改善、又は緩和を含む目的で、少なくともオンコルトアデノウイルスベクターを対象、好ましくは哺乳動物又はヒト対象に投与することを意味する。治療効果は、患者の症状、血中の腫瘍マーカー、または例えば腫瘍の大きさまたは患者の生存期間をモニターすることによって評価され得る。
【0058】
本発明の別の実施形態では、癌又は腫瘍は、上咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎癌、結合組織の癌、メラノーマ、肺癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、脳癌、喉癌、口腔癌、肝癌、骨癌、膵臓癌、絨毯癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクティノーマからなる群から選ばれている。T細胞白血病・リンパ腫、神経鞘腫、フォンヒッペルリンダウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、尿管がん、脳腫瘍、オリゴデングリオーマ、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨肉腫、骨粗鬆症、膵臓がん、膵臓がん、胆道がん、胆道がん、膀胱がん、胆管がん、胆道がん、膀胱がん、尿細管がんなど脊髄腫瘍、骨癌、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発不明癌、カルチノイド、消化管カルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、食道癌、胆石症、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌、膵臓癌。食道癌、胆嚢癌、頭頸部癌、眼球癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、カポジ肉腫、前立腺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓癌、胆嚢癌、胆嚢癌、胆嚢癌、胆道癌、胆嚢癌、胆嚢癌、膵臓癌、胆嚢癌、皮膚癌中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴノーマ、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌胸腺がん、甲状腺がん、絨毛がん、胞状奇胎、子宮がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、音響神経腫、菌状息肉腫、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチノーマ、歯茎がん、心臓がん、口唇がん、口臭予防、口臭予防、口臭予防、口臭予防、口臭予防、口臭予防。歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口腔癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌、扁桃癌など。好ましくは、治療される癌又は腫瘍は、腎臓癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、大腸癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌及び扁平上皮非小細胞肺癌等)、胃癌、古典的ホジキンリンパ腫、中皮腫、並びに肝癌からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、癌または腫瘍の種類は、頭頸部癌であり、最も好ましくはヒト頭頸部癌である。
【0059】
ヒトまたは動物の患者を本発明の治療に適していると分類する前に、臨床医は、患者を検査してもよい。正常な状態から逸脱し、腫瘍または癌を明らかにする結果に基づいて、臨床医は、患者に対して本発明の治療を提案することができる。
【0060】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、本発明のウイルスベクターの少なくとも1種を含有するものである。好ましくは、本発明は、(a)オンコリティックウイルスをそのまま、または(b)養子細胞組成物もしくは(c)チェックポイント阻害剤と組み合わせて含む薬学的組成物を提供する。本発明はまた、癌の治療における使用のための前記薬学的組合せを提供する。さらに、組成物は、少なくとも2つ、3つまたは4つの異なるベクターを含んでいてもよい。ベクター及び養子細胞組成物又はチェックポイント阻害剤に加えて、医薬組成物は、他の治療上有効な薬剤、薬学的に許容される担体、緩衝剤、賦形剤、アジュバント、添加剤、防腐剤、充填剤、安定化及び/又は増粘剤等の任意の他の薬剤、並びに対応する製品に通常見られる任意の構成要素を含んでも良い。組成物を配合するための適切な成分および適切な製造方法の選択は、当業者の一般的な知識に属するものである。
【0061】
医薬組成物は、投与に適した固体、半固体または液体などの任意の形態であってよい。製剤は、溶液、乳剤、懸濁液、錠剤、ペレット、およびカプセルからなる群から選択され得るが、これらに限定されるものではない。本発明の組成物は、特定の製剤に限定されるものではなく、代わりに、組成物は、任意の既知の薬学的に許容される製剤に製剤化することができる。本発明の医薬組成物は、当該技術分野において公知の任意の従来のプロセスによって製造することができる。
【0062】
本発明の医薬キットは、バリアントIL-2を導入遺伝子としてコードするオンコリティックアデノウイルスベクターと、1種以上の免疫チェックポイント阻害剤とを含む。トランスジーンとしてバリアントIL-2をコードするオンコリティックアデノウイルスベクターは、第1の製剤に配合され、前記1種以上の免疫チェックポイント阻害剤は、第2の製剤に配合される。あるいは、本発明の医薬キットは、変種IL-2を導入遺伝子としてコードするオンコリティックアデノウイルスベクターを第1の製剤に配合し、養子細胞組成物を第2の製剤に配合したものである。本発明の別の実施形態では、前記第1製剤及び前記第2製剤は、任意の順序で、対象への同時又は逐次投与のためのものである。別の実施形態では、前記キットは、癌または腫瘍の治療において使用するためのものである。
【0063】
管理部門
本発明のベクターまたは医薬組成物は、任意の哺乳類被験体に投与することができる。本発明の具体的な実施形態では、対象はヒトである。哺乳類は、ペット、家畜および生産動物からなる群から選択されてもよい。
【0064】
ベクターまたは組成物の対象への投与には、任意の従来の方法を使用することができる。投与経路は、組成物の製剤又は形態、疾患、腫瘍の位置、患者、併存疾患及び他の因子に依存する。従って、組み合わせにおける各治療薬の投与量及び投与頻度は、特定の治療薬、治療される癌の重症度、及び患者の特徴に部分的に依存する。好ましくは、投与レジメンは、許容可能なレベルの副作用と一致する患者に送達される各治療薬の量を最大化する。
【0065】
ベクターの有効量は、少なくとも治療を必要とする対象、腫瘍の種類及び腫瘍の位置並びに腫瘍のステージに依存する。用量は、例えば、約1x108 ウイルス粒子(VP)から約1x1014 VP、具体的には約5x109 VPから約1x1013 VP、より具体的には約3x109 VPから約2x1012 VPまで変化してもよい。一実施形態では、バリアントIL-2をコードするオンコリティックアデノウイルスベクターは、1x1010 - 1x1014 ウイルス粒子の量で投与される。本発明の別の実施形態では、用量は、約5x1010 - 5x1011 VPの範囲である。
【0066】
本発明の一実施形態において、腫瘍溶解ウイルスの投与は、腫瘍内注射、動脈内注射、静脈内注射、胸膜内注射、小胞内注射、節内注射、腹膜内注射、または経口投与により実施される。また、これらの投与方法を組み合わせることも可能です。局所投与でありながら、全身的な効果を得ることができる。
【0067】
本発明の一実施形態では、(a)導入遺伝子としてバリアントIL-2をコードするオンコリティックアデノウイルスベクターと、(b)1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤との対象への別々の投与(複数可)が、同時に又は連続して、任意の順序で行われる(複数可)。すなわち、(a)および(b)は、一緒に服用するための単一の単位投与形態で提供されてもよいし、同時にまたは一定の時間差をおいて投与するための別々の実体として(例えば、別々の容器で)提供されてもよい。この時間差は、1時間~2週間、好ましくは12時間~3日、より好ましくは24時間又は48時間までであってよい。好ましい実施形態では、アデノウイルスベクターの最初の投与は、チェックポイント阻害剤の最初の投与の前に実施される。さらに、チェックポイント阻害剤とは別の投与方法を介してウイルスを投与することも可能である。この点で、ウイルス又はチェックポイント阻害剤のいずれかを腫瘍内投与し、他方を全身又は経口投与することが有利であり得る。特定の好ましい実施形態では、ウイルスは腫瘍内投与され、チェックポイント阻害剤は静脈内投与される。好ましくは、ウイルスとチェックポイント阻害剤は、別々の化合物として投与される。この2つの薬剤による併用治療も可能である。
【0068】
好ましい実施形態では、チェックポイント阻害剤は、約2mg/kg~50mg/kg、より好ましくは約2mg/kg~25mg/kgの量で投与される。
【0069】
本明細書で使用する「別個の投与」または「別個の」は、(a)トランスジーンとしてバリアントIL-2をコードするオンコリティックアデノウイルスベクターと(b)1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤が、互いに異なる2つの異なる製品または組成物である、状況を意味する。
【0070】
本発明の治療法に加えて、任意の他の治療法または治療法の組み合わせが使用され得る。特定の実施形態では、本発明の方法または使用は、被験者に、同時または連続的な放射線療法、化学療法、血管新生剤または標的療法、例えばアルキル化剤、ヌクレオシド類似体、細胞骨格改変剤、細胞増殖剤、モノクローナル抗体、キナーゼ阻害剤または他の抗癌剤もしくは介入(手術を含む)の投与をさらに含む。
【0071】
本明細書で使用される「治療する」または「増加する」という用語、およびそこから派生する語は、必ずしも100%または完全な治療または増加を意味するものではない。むしろ、当業者が潜在的な利益または治療効果を有すると認識する程度の差はある。
【0072】
技術の進歩に伴い、本発明のコンセプトを様々な方法で実施できることは、当業者にとって明らかであろう。本発明およびその実施形態は、上述した例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々の変更が可能である。
【実施例
【0073】
実験部
材料と方法
セルライン
ヒト肺腺がん A549、ヒトメラノーマ SK-MEL-28、ハムスター平滑筋肉腫 DDT1-MF2 細胞株は DMEM で維持し、ハムスター膵臓がん HapT1 は RPMI で維持しました。DMEMまたはRPMIはいずれも、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシン、および2mM L-グルタミン(すべてSigma-Aldrich製)を補充した。両細胞株は、+37 Cおよび5% CO2 で培養した。
【0074】
リコンビナントヒトサイトカイン
組換えヒト(rh)IL-2(Peprotech)およびrh vIL-2(Adipogen)サイトカインを0.1-100 U/mLの濃度でex vivo実験における陽性対照として使用した。
【0075】
ウイルスとvIL-2トランスジーンの構築
本研究で使用したウイルスはすべてAd5/3-E2F-d24のバックボーンを有する。これとAd5/3-E2F-d24-IL-2の構築については、以前に説明した(Havunen et al.、2017)。
【0076】
vIL-2トランスジーンは、IL-2配列の80 L->F, 81 R->D, 85 L->V, 86 I->V, 92 I->Fの位置に5つの点変異を加えることによって構築された。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2ウイルスは、galk selection (Warming et al., 2005; Muck-Hausl et al., 2015) を用いた細菌人工染色体(BAC)-組み換え戦略で作製した。トランスジーンvIL-2は相同組換えによりE3領域に挿入された。PCR増幅したvIL-2をBAC-Ad5/3-E2F-Δ24-GalK/ampを含むSW102細菌にエレクトロポレーションし、vIL-2トランスジーンを持つ陽性クローンをデオキシグルコース選択で同定した。配列は制限酵素分析により確認した。BACからウイルスゲノムをPacI制限酵素(Thermo Scientific)で遊離し、Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を用いてA549細胞にトランスフェクトした。 その後、vIL-2武装Ad5/3ウイルスを塩化セシウム勾配遠心分離で2回精製した。ウイルス粒子(VP)濃度および感染単位を測定するために、それぞれ光学密度および組織培養感染量(TCID50)アッセイを使用した。
【0077】
ウイルスによる生体外でのサイトカイン発現
A549細胞にAd5/3-E2F-d24-IL-2、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2、または感染させないまま48時間感染させた。 上清を回収してろ過し(Amicon ultra 100K)、製造元の指示に従ってIL-2 human ELISA kit(Abcam)で分析し、ウイルス産生サイトカインの量を決定した。
【0078】
溶菌力アッセイ
10,000 A549細胞/ウェルを100ulの2% DMEMアッセイ培地で96ウェルプレートにプレーティングした。細胞にAd5/3-E2F-d24、Ad5/3-E2F-d24-IL-2、またはAd5/3-E2F-d24-vIL-2を0-1000 VP/細胞で3重反復感染させた。 3日後、細胞生存率を製造業者の説明書に従ってMTS細胞毒性アッセイで決定した(細胞力価96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay, Promega, Madison, WI)。
【0079】
細胞増殖アッセイ
末梢血単核細胞(PBMC)は健康なドナーから入手し、Lymphoprep(StemCell technologies)を用いた密度勾配遠心分離によって単離した。このPBMCを異なる濃度(0.1U、1U、10U、100U)のrh vIL-2およびrh IL-2と3日間インキュベートし、フローサイトメトリーによりCD4+ T細胞、CD8+ T細胞、NK細胞について分析した。相対的な細胞拡大を測定するために、3日目の陽性細胞の割合を0日目の対応する数値と比較した。
【0080】
T細胞の分離、および刺激
T細胞は、CD3+ T cell isolation kit (Miltenyi Biotec) を用いて、新鮮な単離PBMCから濃縮した。選別したTリンパ球をCD3/CD28ビーズ(Invitrogen)で1:5のビーズ/T細胞比で活性化し、その後4日間、以下のいずれかの方法で培養した。(1) rh IL-2 100 U/mL, (2) rh vIL-2 100 U/mL, または (3) サイトカインなしで、コントロールとして完全培地を使用した。これら3つの条件について、グループ1では活性化T細胞のみ、グループ2では活性化T細胞に加え腫瘍細胞、グループ3では活性化T細胞と腫瘍細胞に非武装ウイルスAd5/3-E2F-d24を加えて検討した。サイトカインとアッセイ培地の半分を2日目に交換した。 0、2、4日目の細胞は、Sony SH800Z (Sony, Tokyo, Japan)を用いたフローサイトメトリーで解析した。
【0081】
ex vivoでのウイルス感染後の免疫サブセット解析
腫瘍細胞は、非武装Ad5/3-E2F-d24、Ad5/3-E2F-d24-IL-2、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2のいずれかのウイルスに100 VP/細胞で感染するか、感染しないまま放置された。健康なドナーから分離したPBMCを、感染後24時間経過したがん細胞の上に追加した。PBMCs単独をモックコントロールとして使用した。細胞は、抗CD3、抗CD8、抗CD4、抗CD25、抗CD69、抗CD127、抗CD56で免疫蛍光染色し、BD Accuri C6フローサイトメーターで0、3、6日目に分析した。次に、特定の免疫細胞集団、すなわちT細胞およびNK細胞の効果を、同様のセットアップでより詳細に研究した。
【0082】
動物実験
治療による腫瘍の変化を調べるため、5週齢の免疫担当のシリアンハムスターに、1匹あたり2*106 HapT1細胞を皮下で腰部に移植した。平均腫瘍径が0.5cmに達した時点で、動物を4群(n=13)に無作為に振り分けた。ウイルス Ad5/3-E2F-d24, Ad5/3-E2F-d24-IL-2, Ad5/3-E2F-d24-vIL-2 を1*109 VPsで腫瘍内投与し、モックはPBSのみ投与した。ウイルスは1日目、4日目、8日目、13日目に注入した。
【0083】
16日目に各グループから5匹の動物を安楽死させ、腫瘍と選択した臓器を採取して、病理組織学的特徴と存在する免疫細胞サブセットを評価した。残りの動物は、生存をモニターした。これらの動物は、18日目から、5日ごとに6回の追加のウイルス処理を受けた。腫瘍は、30日目までのすべての偶数日にデジタルノギスで測定された。エンドポイント基準には、20.0mmの腫瘍サイズ限界と皮膚潰瘍が含まれた。
【0084】
治癒した動物に、観察期間160日後に、同じHapT1腫瘍(2*106 cells/tumor)または異なる腫瘍DDT-MF2(1.5*105 cells/tumor)を上背部に再チャレンジさせた。モック群として、がん細胞にも治療にも曝露したことのないナイーブな動物(n=3)を含めた。 腫瘍の成長は、DDT1-MF2腫瘍が最大耐容直径に達するまで21日間追跡された。注目すべきは、3匹のAd5/3-E2F-d24治療動物のうち2匹は、目に見える腫瘍の存在のために再チャレンジされなかった、すなわち、腫瘍が非武装ウイルスで治癒されなかったことである。
【0085】
病理組織学
病理学的評価として、各群5匹のハムスターから16日目に肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓、腫瘍などの臓器試料を採取した。採取した試料は、まず10 %ホルマリンで固定し、48時間後に70 %エタノールに移した後、パラフィンに包埋した。顕微鏡観察のため、厚さ5μmの組織切片をヘマトキシリン・エオジンで染色した。病理学者が染色された組織サンプルの組織学的変化を評価した。
【0086】
統計解析
腫瘍増殖の評価は、SPSS version 25 Statistics (IBM) を用いて、腫瘍体積を対数変換した線形混合モデルで行った。二元配置分散分析およびLog-rank(Mantel-Cox)検定は、それぞれ再チャレンジおよび生存曲線の群間変動を分析するために使用された。個別およびグループ化した腫瘍増殖データの提示と生存曲線のプロットには、GraphPad Prism(version 8.0.0.)が使用された。P値はp<0.05のとき有意とした。
【0087】
(実施例1)エフェクター細胞は、従来のIL-2を用いたex vivoよりもvIL-2の存在下でより増殖する
【0088】
我々は、CD8+ T細胞、NK細胞、CD4+ T細胞などの免疫細胞を刺激する能力に関して、rh vIL-2とrh IL-2を比較した。 我々は、PBMCを異なる濃度(0.1 - 100 U/ml)の組換えヒト(rh)vIL-2またはrh IL-2と一緒に、またはそれらを含まない状態で培養した。3日後、rh vIL-2はIL-2よりもCD8+エフェクターT細胞とNK細胞の増殖を誘導する力が強かったが、CD4+T細胞(Tregを含む)のレベルは変量で低いままであった(図1)。これらの結果は、vIL-2が従来のIL-2よりもT細胞およびNK細胞に対して優先的に作用することを示した。なお、活性化T細胞はIL-2を産生するので、vIL-2群でも培養液中にIL-2が存在することになる。これは、例えば、Tregに対するvIL-2の効果(の欠如)を希釈すると予想される。
【0089】
(実施例2)異なるT細胞サブセットに対するrh vIL-2の効果は、サイトカインをコードするウイルスを構築するための根拠を提供する。
アデノウイルス存在下でのrh vIL-2のT細胞への影響を調べるため、CD3/CD28ビーズでT細胞を分離し、100 U/mlのrh vIL-2またはrh IL-2と感染/非感染のがん細胞のどちらかで4日間活性化させた。IL-2とvIL-2は、がん細胞の存在下でも非存在下でもCD8/CD4細胞比に同様の効果を示した(図2AおよびB)。しかしながら、癌細胞がオンコリティックウイルスに感染している場合、vIL-2はCD4+細胞よりもCD8+CD27-CD62L-CD45RO+細胞が優勢になる傾向を誘導した(図2C)。
【0090】
獲得免疫の特徴は記憶反応であり、これは抗原特異的リンパ球のクローン拡大と分化の結果であり、生涯持続する(Sallusto et al., 2004)。我々は、感染または非感染の癌細胞でrh IL-2またはrh vIL-2の存在下で、中心記憶T細胞(Tcm;CD45RO+, CD62L+, CD27+)の変化率を評価した。Tcmは反応性メモリー反応を媒介し、抗原刺激によりエフェクター細胞へ分化する。がん細胞の非存在下では、IL-2とvIL-2の間でCD8/CD4 Tcm比に差は見られなかった(図3A)。腫瘍細胞存在下では、まず2日目に比率が低下し、次いで4日目に上昇することが観察された。ここでも、vIL-2は、従来のIL-2よりもTcm集団において高いCD8/CD4比を誘導した(図3B)。
【0091】
Tcmに加え、エフェクターメモリーT細胞(Tem;CD45RO+, CD62L-, CD27+)もTcmと同じ条件で評価した。Temは保護記憶を提供し、迅速なエフェクター機能を持つことが特徴である。がん細胞が存在しない場合、IL-2とvIL-2の間でCD8/CD4 Tem比の差は観察されなかった(図4A)。がん細胞がある場合、IL-2とvIL-2は4日目までに高い比率のCD8/CD4 Temを誘導する(図4B)。がん細胞を感染させた場合、4日目にはrh vIL-2群でCD8/CD4 Tem比が高くなる傾向が観察された(図4C)。結論として、炎症性T細胞コンパートメントへの影響に関しては、rh IL-2とrh vIL-2の間に有意差は見られなかった。これらの結果は、vIL-2武装腫瘍溶解アデノウイルスを構築するための確かな根拠となった。
【0092】
(実施例3)Ad5/3-E2F-d24-vIL-2ウイルスはvIL-2を発現し、ex vivoで効率的に腫瘍細胞を殺傷する。
【0093】
アデノウイルス5/3は、アデノウイルス血清型5のバックボーンとアデノウイルス血清型3のファイバーノブを備えており、その受容体が進行した腫瘍で高発現するため、腫瘍への感染を促進する(Wang et al.、2011)。 腫瘍細胞へのウイルス複製を制限するために、E1A遺伝子の定常領域2の変異と異種腫瘍特異的E2Fプロモーターの導入が行われた。アポトーシスを促進するために、E1B 19K遺伝子領域の欠失を可能にした。変異型IL-2トランスジーンは、発現をウイルス複製に結びつけるために、E3プロモーターの下のE3領域に置かれた(図5A)。この導入遺伝子カセットは、gp19kおよび6.7kのオープンリーディングフレームに置き換わる。
【0094】
構築したウイルスのオンコロジー能力を調べるために、ヒト肺がんA549細胞を用いて細胞毒性アッセイを実施した。Ad5/3-E2F-d24-IL-2とAd5/3-E2F-d24-vIL-2の間でウイルスの殺細胞能力に大きな違いは見られなかったことから、vIL-2トランスジーンが存在してもウイルスのオンコリックポテンシーを低下させないことが分かった(図5B)。さらに、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2に感染した細胞は、サイトカインを分泌することができた(図5C)。
【0095】
(実施例4)Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、エフェクター細胞を刺激するが、Tregを刺激しないex vivoの場合
ヒト癌細胞A549にAd5/3-E2F-d24, Ad5/3-E2F-d24-IL-2, Ad5/3- E2F-d24-vIL-2 のいずれかを感染させた、または感染させないまま放置した。24時間後、がん細胞をPBMCとインキュベートした。CD25+CD69+活性化エフェクターT細胞のCD8/CD4比は、3日目と6日目にAd5/3-E2F-d24-vIL-2で処理したグループで、従来のIL-2を発現するウイルスで処理したときよりも有意に高かった(図6A)。実際、コントロールウイルス間の活性化エフェクターT細胞のCD8/CD4比に有意差は見られなかった。したがって、vIL-2武装Ad5/3ウイルスは、エフェクター細胞に対して強力な刺激剤である。
【0096】
Tregに対する効果を調査するために、CD4+ CD3+親集団のCD25+CD127low 発現細胞を分析した。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、Ad5/3-E2F-d24-IL-2のようにTreg分化を誘導しなかった(図6B)。したがって、ウイルス産生vIL-2は、組換えvIL-2の主要な魅力的な特徴である、Tregよりもエフェクター細胞を優先的に刺激することを保持しているようである。
【0097】
実施例5.変異型IL-2武装オンコリティックアデノウイルスは、ハムスターにおける抗腫瘍効果および生存率を有意に高める。
【0098】
有望なex vivoの結果を受けて、次にバリアントIL-2武装アデノウイルスを免疫適合性シリアンハムスターで研究した。ヒトアデノウイルスはハムスターで複製することができ(マウスと異なり)、ヒトIL-2などのいくつかのヒトサイトカインはハムスターで生物活性があるので(Havunenら、2017;Gowenら、2008)、それは武装オンコルトアデノウイルス(Havunenら、2017)の研究のための最適モデルである。
【0099】
Ad5/3-E2F-d24またはIL-2武装ウイルス(Ad5/3-E2F-d24-IL-2)で治療した動物は、モックと比較して腫瘍制御の傾向を示した(差は有意でない)。印象的だったのは、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2で治療したグループで最も腫瘍が抑制され、この結果は30日目までに他のすべてのグループと比較して統計的に有意であったことである。これは、Tregに対する不要な免疫抑制効果を伴わない抗腫瘍エフェクターT細胞の刺激装置としてのvIL-2の有用性を強調するものである。このように、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、腫瘍の完全な根絶を可能にする方向へ、腫瘍の微小環境を強力に調節するものと思われる。
【0100】
この治療の作用機序を調べるため、1、4、8、13日目に、バックボーンのAd5/3-E2F-d24、Ad5/3-E2F-d24-IL-2、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2またはPBSでハムスターを処理した。16日目にハムスターを安楽死させ、腫瘍を採取し、フローサイトメトリーおよびナノストリング評価により腫瘍微小環境を深く分析した。治療関連の変化を調べるため、腫瘍と選択した臓器を採取し、病理組織学的評価を行った。病理学的な結果は、モックとオンコリティックアデノウイルス処理群に差がないことを示し、したがって、我々のウイルスはいかなる全身性毒性効果も引き起こさなかった。
生存データによると、バックボーンウイルスを投与したグループは、1匹のハムスターを治癒させることができました。さらに、安定した腫瘍を持つ2匹のハムスターが、実験終了まで生存した。Ad5/3-E2F-d24-IL-2は、3匹のハムスターを治癒させた。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、処置したハムスターの60%を治癒させることができ、この差はモックよりも有意であった(図7)。
【0101】
(実施例6)サイトカイン武装アデノウイルスによる処理は、腫瘍特異的免疫学的記憶を誘導する
【0102】
腫瘍特異的免疫記憶がオンコリティックウイルス治療によって誘導されたかどうかを調べるために、治癒したすべてのハムスターに、同じHapT1癌細胞と異なるDDT1-MF2癌細胞を再チャレンジさせた。どちらのがん細胞も治癒したハムスターの背中上部に移植した。この再チャレンジ実験では、異なるウイルスで治癒したハムスターの数が異なるため、1群あたりの動物数が異なる。ナイーブまたは非武装のウイルス処理動物において、HapT1(図8A)またはDDT1-MF2(図8B)腫瘍の再チャレンジに支障はなかった。対照的に、Ad5/3-E2F-d24-IL-2またはAd5/3-E2F-d24-vIL-2によるHapT1の事前の治癒は、HapT1再チャレンジに対する保護を提供するように思われた。注目すべきは、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2で処置した動物の40%が、再チャレンジ後もHapT1腫瘍がないままであったことである。しかし、DDT-MF2腫瘍はこれらの動物で正常に増殖し、武装したウイルスによってエピトープ特異的な免疫記憶が誘導されていることが明らかになった。これらの知見は、全身および腫瘍特異的な抗腫瘍免疫の確立におけるIL-2などのサイトカインの重要性を示す以前のデータと一致する(Havunenら、2017)。
【0103】
我々は、バリアントIL-2武装アデノウイルスAd5/3-E2F-d24-vIL-2が免疫無能力のシリアンハムスターにおいて安全かつ有効であると思われることを明らかにした。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、強力な抗腫瘍効果を示し、腫瘍の微小環境内でバリアントIL-2を発現させることができた。ヒトリンパ球を用いた研究では、抗腫瘍免疫学的効果の誘導が示された。特に、vIL-2は抑制的なTregよりもエフェクターT細胞を優先的に活性化するようであった。
【0104】
(実施例7)変異型IL-2コーディングオンコリティックアデノウイルスは、免疫細胞の中程度の浸潤およびIL-2の最も高い腫瘍内発現を伴う実質的な腫瘍の減少を誘導する
【0105】
セルライン
【0106】
ハムスター膵臓癌 HapT1 は、10%牛胎児血清(FBS)、100 U/mL ペニシリン、100 mg/mL ストレプトマイシン、2 mM L-グルタミン(すべてSigma-Aldrich製)添加のRPMIで維持された。両細胞株は、+37Cおよび 5% CO2 で培養した。
【0107】
ウイルスとvIL-2トランスジーンの構築
本研究で使用したウイルスはすべてAd5/3-E2F-d24のバックボーンを有する。後者およびAd5/3-E2F-d24-IL-2の構築は、Havunenら、2017において以前に説明されている。vIL-2トランスジーンは、80 L->F、81 R->D、85 L->V、86 I->V、92 I->Fの位置でIL-2配列の5点変異を行うことによって構築された。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2ウイルスは、galk selection (Warming et al., 2005; Muck-Hausl et al., 2015) を用いた細菌人工染色体(BAC)-組み換え戦略で作製した。 トランスジーンvIL-2は相同組換えによりE3領域に挿入された。 PCR増幅したvIL-2をBAC-Ad5/3-E2F-Δ24-GalK/ampを含むSW102細菌にエレクトロポレーションし、vIL-2トランスジーンを持つ陽性クローンをデオキシグルコース選択で同定した。配列は制限酵素分析により確認した。 BACからウイルスゲノムをPacI制限酵素(Thermo Scientific)で遊離し、Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を用いてA549細胞にトランスフェクトした。 その後、vIL-2武装Ad5/3ウイルスを塩化セシウム勾配遠心分離で2回精製した。ウイルス粒子(VP)濃度および感染単位を測定するために、それぞれ光学密度および組織培養感染量(TCID50)アッセイを使用した。
【0108】
動物実験
【0109】
治療による腫瘍の変化を調べるため、5週齢の免疫担当のシリアンハムスターに、動物あたり2x106 HapT1 cellを皮下的に腰部に移植した。 平均腫瘍径が0.5cmに達した時点で、動物を4群(n=13)に無作為に振り分けた。 ウイルス Ad5/3-E2F-d24, Ad5/3-E2F-d24-IL-2, Ad5/3-E2F-d24-vIL-2 を1x109 VPsで腫瘍内投与し、モックはPBSのみ投与した。ウイルスは1日目、4日目、8日目、13日目に注入された。
【0110】
16日目に各群5匹を安楽死させ、腫瘍を採取し、免疫学的変化とmRNA発現レベルを評価した。
【0111】
フローサイトメトリー
【0112】
16日目に採取したハムスター腫瘍サンプルを、単一細胞懸濁液として処理し、以前に確立されたプロトコルに従ってさらに分析した(Havunen et al. , 2017; Siurala et al., 2016)これらのサンプルを次にCD8+(PE、12-0080-82)、CD4+(PE-シアニン7、25-0041-82)及びMHC II+細胞(FITC、11-5980-82)細胞用の抗体で染色した。NK+細胞はポリクローナル抗体抗Asialo-GM1(Alexa Fluor-488、53-6507-80)で、マクロファージ+細胞は抗Galectin(PE、12-5301-82)で前述(Havunenら、2017)のように標識された。細胞の蛍光は、Sony SH800Z サイトメーター(Sony, Tokyo, Japan)を使用して、1サンプルあたり100.000イベントの取得時に検出された。細胞データの処理とゲーティングは、FlowJo v.10.6.1 (BD(R) , New Jersey, USA)を用いて実施した。
【0113】
遺伝子発現解析
【0114】
16 日目に採取した動物腫瘍サンプルの断片を RNAlater (R0901; Sigma-Aldrich, St. Louis, USA) で保存し、さらに処理するまで-20o C で保管した。これらのサンプルからの RNA は、RNAeasy Mini Kit (74104; QIAGEN, Hilden, Germany) を用いて、製造者の指示に従って精製した。 最終的な RNA 収量を Thermo Scientific NanoDropTM 1000 Spectrophotometer (Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA) で測定し、サンプルの RNA 濃度を 20ng/μl に調整した。
【0115】
逆転写酵素(RT)-定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
【0116】
16日目の腫瘍から精製したRNAを、ウイルスの導入遺伝子発現の相対定量化ならびにハムスターIL-2の相対発現に使用するために、Quantitect Reverse Transcription Kit(205313、QIAGEN、ヒルデン、ドイツ)を用いてcDNAを合成するために使用した。 逆転写リアルタイムPCR(RT-qPCR)は、Santosら、2017によって以前に記載されたように実施した。野生型IL-2ウイルス導入遺伝子は、ヒトIL-2について設計したプライマーおよびプローブを用いて検出した。IL-2バリアントウイルス導入遺伝子については、ヒトIL-2vについて設計したプライマーおよびプローブを用いた。ハムスターIL-2およびウイルスの導入遺伝子の正規化は、ハムスターGAPDH遺伝子(Siuralaら、2015)を用いて行った。
【0117】
統計解析
【0118】
腫瘍体積データ、相対的および絶対的mRNA発現量の提示にはGraphPad Prism(version 8.0.0.)を使用した。異なる治療グループ間の差異を評価するために、Welchの補正を用いた対応のないt-testを行った。ピアソンの相関係数は、グランザイム産生とSAP遺伝子またはバリアントIL-2トランスジーン産生との相関を決定するために計算された。P値はp<0.05のとき有意であるとみなした。
【0119】
結果
【0120】
腫瘍溶解性アデノウイルス処理によって誘導された生物学的事象についてさらに洞察を得るために、実験開始の16日後に腫瘍を収集した。0日目と16日目の腫瘍体積を比較すると、Ad5/3-E2F-D24による処理は、ハムスター腫瘍の成長を抑制する効果が最小であることが示された(図9A)。一方、ヒトIL-2およびバリアントIL-2をコードするオンコリティックアデノウイルス処理は、ハムスター膵臓腫瘍の腫瘍成長を実質的に遅延させた。このような効果は、16日目までに、このグループが最も低い腫瘍負担の傾向を示したことを考慮すると、バリアントIL-2コードオンコリティックアデノウイルスで処置したハムスターにおいてより顕著であった(図9A)。
【0121】
免疫学的コンパートメントのさらなる分析は、腫瘍中のCD4+およびCD8+細胞の頻度が、野生型ヒトIL-2オンコリティックアデノウイルス治療を受けたハムスターで最も高かったことを明らかにした(図9B-C)。一方、変種IL-2-ウイルス療法を受けたハムスターの腫瘍は、これらの細胞の浸潤が驚くほど中程度であった(図9B-C)。16日目の腫瘍体積は、サイトカインで武装したウイルスの間で有意差が認められなかったことを考えると、変種IL-2を発現するウイルスは、野生型の対応物に比べて質的に優れた抗腫瘍反応を誘導することが示唆される。
【0122】
さらに、野生型ヒトIL-2の重要な限界は、その薬物動態(短い半減期)、およびその結果、標的病巣におけるその最小限の蓄積である(Arenas-Ramirezら、2015年)。図10の結果は、Ad5/3-E2F-D24-vIL-2オンコリティックアデノウイルスで上記の問題が解消されることを実証している。例えば、野生型IL-2または変異型IL-2オンコリティックアデノウイルスで処理したハムスターの腫瘍の間で、IL-2の産生に有意差が観察され得る(図10)。実際、Ad5/3-E2F-D24-vIL-2処理グループは、他のすべてのグループと比較して、最も高いグローバルなサイトカイン発現(宿主IL-2およびIL-2バリアントトランスジーン)を呈した。さらに、IL-2バリアントのレベルは、最後のウイルス処置の3日後でさえも高かった(図10)。これらの結果は、類似の性質のタンパク質では予期されないものであり、組換えバリアントIL-2タンパク質を開発する努力は、安全性および腫瘍内関連の高レベルのバリアントIL-2タンパク質の改善に焦点を当てていることを考慮すると、特に注目に値する(Arenas-Ramirezら、2015年)。
【0123】
(実施例8)変異型IL-2コーディングオンコリティックアデノウイルス療法は、エフェクターT細胞機能の増加および低免疫抑制のための免疫再構成を引き起こす。
【0124】
セルライン
【0125】
ハムスター膵臓癌 HapT1 は、10%牛胎児血清(FBS)、100 U/mL ペニシリン、100 mg/mL ストレプトマイシン、2 mM L-グルタミン(すべてSigma-Aldrich製)添加のRPMIで維持された。両細胞株は、+37C および 5% CO2 で培養した。
【0126】
ウイルスとvIL-2トランスジーンの構築
【0127】
本研究で使用したウイルスはすべてAd5/3-E2F-d24のバックボーンを有する。後者およびAd5/3-E2F-d24-IL-2の構築は、Havunenら、2017において以前に説明されている。IL-2配列の80 L->F、81 R->D、85 L->V、86 I->Vおよび92 I->Fの位置で5つの点変異を行うことにより、vIL-2トランスジーンを構築した。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2ウイルスは、galk selection (Warming et al., 2005; Muck-Hausl et al., 2015) を用いた細菌人工染色体(BAC)-組み換え戦略で作製した。 トランスジーンvIL-2は相同組換えによりE3領域に挿入された。 PCR増幅したvIL-2をBAC-Ad5/3-E2F-Δ24-GalK/ampを含むSW102細菌にエレクトロポレーションし、vIL-2トランスジーンを持つ陽性クローンをデオキシグルコース選択で同定した。配列は制限酵素分析により確認した。 BACからウイルスゲノムをPacI制限酵素(Thermo Scientific)で遊離し、Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を用いてA549細胞にトランスフェクトした。 その後、vIL-2武装Ad5/3ウイルスを塩化セシウム勾配遠心分離で2回精製した。ウイルス粒子(VP)濃度および感染単位を測定するために、それぞれ光学密度および組織培養感染量(TCID50)アッセイを使用した。
【0128】
動物実験
【0129】
治療による腫瘍の変化を調べるため、5週齢の免疫担当のシリアンハムスターに、動物あたり2x106 HapT1 cellを皮下的に腰部に移植した。 平均腫瘍径が0.5cmに達した時点で、動物を4群(n=13)に無作為に振り分けた。 ウイルス Ad5/3-E2F-d24, Ad5/3-E2F-d24-IL-2, Ad5/3-E2F-d24-vIL-2 を1x109 VPsで腫瘍内投与し、モックはPBSのみを投与した。ウイルスは1日目、4日目、8日目、13日目に注入された。
【0130】
16日目に各群5匹を安楽死させ、腫瘍を採取し、免疫学的変化とmRNA発現レベルを評価した。
【0131】
遺伝子発現解析
【0132】
16 日目に採取した動物腫瘍サンプルの断片を RNAlater (R0901; Sigma-Aldrich, St. Louis, USA) で保存し、さらに処理するまで -20o C で保管した。これらのサンプルからの RNA は、RNAeasy Mini Kit (74104; QIAGEN, Hilden, Germany) を用いて、製造者の指示に従って精製した。 最終的な RNA 収量を Thermo Scientific NanoDropTM 1000 Spectrophotometer (Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA) で測定し、サンプルの RNA 濃度を 20ng/μl に調整した。
【0133】
NanoString nCounter(R) nCounter(R) Digital Analyzer (NanoString Technologies, Seattle, USA) を用いて、すべてのハムスター腫瘍の RNA サンプルで遺伝子発現解析を行った。遺伝子発現は、101の遺伝子を含むハムスター細胞用にデザインされたカスタムパネルで評価され、nSolver software 4.0 (NanoString Technologies, Seattle, USA) で分析された。発現の差は、各遺伝子の-log10(p値)およびlog2 fold changeの値としてボルカノプロットで表示される。同様に、RNA数(Log2)としての発現量の差は棒グラフで表示される。処理群における各遺伝子の発現量は、対照(モック)群における対応する遺伝子に対して正規化した。
【0134】
統計解析
【0135】
mRNAの絶対発現量の提示にはGraphPad Prism(version 8.0.0.)が用いられた。異なる治療グループ間の差異を評価するために、Welchの補正を用いた対応のないt-検定を実施した。ピアソンの相関係数は、グランザイム産生とSAP遺伝子またはバリアントIL-2トランスジーン産生との相関を決定するために計算された。P値はp<0.05のとき有意であるとみなした。
【0136】
結果
【0137】
さらに、ウイルス治療を受けた腫瘍のトランスクリプトームを評価することによって、特徴を明らかにした。Ad5/3-E2F-D24ウイルス治療と比較して、野生型IL-2または変異型IL-2をコードするオンコリティックウイルスで治療した腫瘍は、一見して同数のアップレギュレートされた遺伝子を実証した。両群のダウンレギュレーションプロフィールを評価すると、野生型IL-2はバリアントIL-2群よりも約34.5%多くの遺伝子をダウンレギュレートしていた(図11)。野生型IL-2群は、IL-2バリアントと比較して、アップレギュレートまたはダウンレギュレートされた、ほぼすべての遺伝子について高い値を示し、これは、文献において以前に関連したIL-2強力な生物学的効果と適合する(図11)(Jiangら、2016)ことに留意することが重要である。しかしながら、ここでは、Ad5/3-E2F-D24-vIL-2ウイルスが腫瘍縮小および全生存を促進する上で最も成功したグループであったため、値の上昇は必ずしも優れた全生存に変換されなかった。
【0138】
しかしながら、発現差解析の詳細な見解により、Ad5/3-E2F-D24-vIL-2ウイルスは、免疫抑制関連遺伝子よりもT細胞受容体複合体および下流シグナル伝達遺伝子に関連する既知の遺伝子の発現を優先的に刺激することが示された(図12および図13)。重要なことに、バリアントIL-2コードオンコリティックアデノウイルスによる処理は、TCR-複合体遺伝子(CD3E、CD3D)(図12A)の最も高い発現を誘導し、これらはMHC結合時にTCRを保有し、ヒトにおいてTCR誘導シグナリングを開始させる責任がある(Ngoenkam他、2018年)。さらに、変異型IL-2をコードするオンコリティックアデノウイルス処理は、野生型IL-2をコードするウイルスと比較して、既知の重要な下流シグナル伝達遺伝子(LCK、ITK、ZAP70)をアップレギュレートした(図12A)。驚くべきことに、IL-2バリアントコードウイルスによる処理は、TCR発現、アンカー、およびシグナル伝達のためのいくつかの重要な遺伝子(CD3G、SAP)のアップレギュレーションを刺激したが、野生型IL-2ウイルス群に対するそれらのレベルは変化しないままであった(図12A)。統計的に有意ではないにしても、これらのデータは、我々の知る限り、現在の技術において文書化されていなかった、変異型IL-2コーディングオンコリティックアデノウイルスによる処理時にT細胞のTCR機能の予想外の活性増加を示唆する。実際、変種IL-2ウイルスだけが、グランザイムおよびパーフォリン(GZMK、GZMM、PRF1)の高発現を誘導することが可能であった(図12B)。エフェクター細胞傷害性細胞(T細胞およびナチュラルキラー細胞)によって分泌されると、グランザイムおよびパーフォリンは、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する(Voskoboinikら、2015)。実際、バリアントIL-2トランスジーンmRNA相対発現とGZMKまたはSAP1遺伝子mRNA数の両方との相関の程度は高く、正であり、GZMKとSAP1遺伝子との間にはさらなる正の相関が見られる(図12C)。特に、グランザイムK及びグランザイムMの発現が、腫瘍溶解性アデノウイルスによってもバリアントIL-2タンパク質によっても誘導されることは、現在の技術から知られていない。
【0139】
TIM-3およびCTLA-4遺伝子の最も高い発現は、野生型IL-2コード化ウイルスで処理した腫瘍で見られた(図13A)。これらの遺伝子は、一般に、ヒトにおいてT細胞機能を阻害することが知られており(Ngoenkamら、2018)、したがって、これらは、免疫抑制環境の増大に潜在的に関連し得る。別の遺伝子であるPD-L1は、バリアントIL-2ウイルスによる処理時に変化しないままであった(図13A)。これは、マウス及びヒトにおける免疫抑制におけるPD-L1の役割を考慮すると、バリアントIL-2ウイルス処理動物に属する腫瘍における低免疫抑制の可能性に寄与している可能性がある。CD137(ヒト腫瘍反応性TILの活性化マーカー)の最も高い発現レベルが、野生型-IL-2コード化ウイルスで処置した動物の腫瘍で見られたにもかかわらず(図13A)、これらの腫瘍における免疫抑制に対抗するには不十分であった可能性がある。対照的に、CD27(共刺激マーカー)の発現は、変異型IL-2-ウイルス群で増加したが、野生型では変化がなかった(図13A)。CD27を発現するTILsではテロメアが長いことが以前に報告されており、したがって、変異型IL-2は末端分化が進んでいないTILsの存在を増加させる可能性があることを示唆している。一方、CD27はメモリーT細胞で高発現することが知られており、メモリーT細胞は多機能な応答を生み出すと考えられている。このことから、バリアントIL-2オンコリティックウイルスは、腫瘍に対して優れた品質反応を可能にすることが示唆された。
【0140】
一方、野生型IL-2のウイルス分泌は、ヒトやマウスの既知の抗原提示細胞(CD80、CD86、CD40)の発現を最も多くした(図13B)。しかし、驚くべきことに、野生型IL-2コード化ウイルス処理は、その変異型に比べ、ハムスターにおける抗腫瘍効果が劣ることが分かった。骨髄系細胞などの免疫抑制細胞の存在および活性(CD11b、CD206、Arg1)も、野生型IL-2ウイルスと比較して、変異型IL-2コーディングウイルスでは減少するか、変化していなかった(図13B)。一般的な技術に反して、変種IL-2タンパク質における特定の変異が、他の免疫抑制細胞の代わりに制御性T細胞の不要な標的化を主に防ぐことを目的としていることを考えると、そのような効果は予想外である。
【0141】
さらなる分析により、野生型IL-2または変異型IL-2-ウイルス療法のいずれかで処置したハムスターの腫瘍において、IL-6、TGFb、IL-10(図13C)の遺伝子発現が全体的に減少していることが明らかになった(図13C)。興味深いことに、前者はCCL3、TNF、IL-1b(図13C)(ヒトおよびマウスにおける炎症性サイトカインをコードする遺伝子)の発現を増加させていたが、野生型IL-2-ウイルス処理腫瘍は変種IL-2ウイルス処理腫瘍より大きいままであった。この説明として考えられるのは、抗腫瘍免疫におけるTNFの既知のあいまいな役割であり、慢性レベルでは、ヒトの腫瘍の進行に寄与しうるということである。
【0142】
要約すると、バリアントIL-2-ウイルスは、T細胞がTCRを保有する能力を促進し、シグナル伝達、骨髄系細胞区画からのT細胞阻害および免疫抑制を低下させる。これらの効果は、エフェクター細胞の細胞傷害性機能の向上に寄与していると考えられ、バリアントIL-2コーディングオンコリティックアデノウイルス療法は、他の治療グループと比較して、最高の生存率と抗腫瘍効果を提供することが可能であると考えられる。
【参考文献】
【0143】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11A
図11B
図11C
図12Aand12B
図12C
図13A-13C】
【配列表】
2023505925000001.app
【誤訳訂正書】
【提出日】2022-08-29
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライフサイエンス及び医学の分野に関する。厳密には、本発明は、ヒトのがん治療に関する。より厳密には、本発明は、バリアント型インターロイキン-2(vIL-2)ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、腫瘍溶解性ウイルスベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫賦活性サイトカインであるインターロイキン-2(IL-2)は、γ鎖サイトカインのファミリーに属する。IL-2は、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞等の白血球の増殖因子である。IL-2は、主に、活性化したCD4+Tリンパ球及びCD8+Tリンパ球によって産生されるものであり、T細胞の増殖及び活性化の誘導、B細胞の増殖の増進並びに単球及びナチュラルキラー細胞の活性化等、様々な免疫作用を有する。IL-2は、多種多様な免疫障害のための治療剤として調査されてきたが、高用量のIL-2の全身投与に関連付けられた有害作用により、IL-2の臨床用途は限定されてきた。IL-2は、3種のサブユニット:IL-2Rγ(又はCD132)、IL-2Rβ(又はCD122)及びIL-2Rα(又はCD25)からなるIL-2受容体に結合することによって、シグナル伝達する。CD8+T細胞と、制御性T細胞(CD4+Foxp3+;Treg)を含むCD4+T細胞との両方が、トリマー形態を恒常的発現させている。IL-2Rγ及びIL-2Rβサブユニットからなる、IL-2受容体のダイマー型中間形態は、NK細胞並びに休止中のCD8+T細胞及びCD4+T細胞上で発現する。
【0003】
CD8+エフェクター細胞を増殖及び活性化することができるIL-2の能力は、腎細胞がん及びメラノーマの処置へのIL-2の応用を促した。欠点として、IL-2は、免疫抑制作用のある制御性細胞、主にTregの増殖及び維持においても中心的な役割を担う。IL-2療法により、一部の患者では長期間持続する反応が示されてきたが、いくつかの臨床試験において、全身送達の制約も実証された。有効な処置には高用量IL-2が必要となり、肝臓、心臓及び肺の問題が引き起こされる一方、Treg誘導によって抗腫瘍有効性が損なわれる。
【0004】
従来技術において、Levinら、2012は、IL-2Rβに対する結合アフィニティが増大するようにIL-2「スーパーカイン」(super-2とも呼ばれる)を設計することにより、CD25発現に関するIL-2の機能的要件を省略した。IL-2スーパーカインは、IL-2との比較でより良好な細胞傷害性T細胞の増殖を誘導することにより、インビボでの抗腫瘍反応が改善され、制御性T細胞の増殖が比例的に減じ、肺水腫が低減される。
【0005】
US9428567は、野生型ヒトIL-2のものより低いIL-2Rβサブユニットに対する平衡解離定数を有する、ヒトインターロイキン-2(hIL-2)バリアントを開示している。このバリアントは、野生型IL-2に比べて低減された、IL-2Rα又はIL-2Rγサブユニットに対する結合を示すこともできる。
【0006】
IL-2がT細胞を刺激することができる能力を考えれば、IL-2をコードするウイルスには、T細胞療法を向上させる潜在能力があると思われる(Itzhakiら、2013;Schwartzら、2002)。T細胞療法は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、受容体修飾T細胞(TCR)及びキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)及びを含む。T細胞は、患者の血液又は腫瘍から抽出され、実験室で活性化及び/又は修飾され、増殖され、治療レジメンとして患者に戻される(Taehtinenら、2016)。しかしながら、腫瘍微小環境は免疫抑制作用が強く、養子移入されたT細胞の機能が低下するため、T細胞の注入には、化学療法薬を用いるプレコンディショニング及び高用量の全身投与用IL-2(systemic IL-2)を用いるポストコンディショニングが必要となるが、これらのプレコンディショニングとポストコンディショニングは両方とも、強い有毒性(Schwartz、Stoverら2002、Itzhaki、Levyら2013)をもたらす。
【0007】
何年にもわたる開発を経て、腫瘍溶解性ウイルスは現在、がん治療として使用され始めている。ウイルスの有効性に影響する作用機序及び因子に関してはいくつかの発見があったが、ウイルス療法に対する総合効果(overall response)を決定づける経路の特定は、依然として必要とされている。臨床試験において、腫瘍溶解性ウイルスは、好ましい安全性プロファイル及び有望な有効性を実証してきた。
【0008】
WO2014170389は、単独の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター、又は、治療目的での使用のための治療用組成物と一緒にした腫瘍溶解性アデノウイルスベクター、及びがんのための治療方法に関する。例えば、養子細胞療法用組成物と、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターとを別々に投与することが開示されている。養子細胞療法(ACT)は、がんを処置するための有力な手法であるが、感染症及び移植片対宿主病等の他の疾患を処置するための有力な手法でもある。養子細胞移入は、エクスビボで増殖した細胞、最も一般的には免疫由来細胞を、移植片の免疫機能及び免疫特性を移すという目的で宿主に受身伝達することである。WO2014170389は、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの核酸配列も開示している。
【0009】
WO2016146894は、二特異性モノクローナル抗体をコードする、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを開示している。
【0010】
US2019062395は、IL-2バリアントをコードする導入遺伝子を含む、修飾された腫瘍溶解性ワクシニアウイルスベクターを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第9428567号明細書
【特許文献2】国際公開第2014170389号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2016146894号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2019062395号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Levinら、2012
【非特許文献2】Itzhakiら、2013
【非特許文献3】Schwartzら、2002
【非特許文献4】Taehtinenら、2016
【非特許文献5】Schwartz、Stoverら2002
【非特許文献6】Itzhaki、Levyら2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特に、転移負荷(metastasis burden)が著しい患者においては、依然として、腫瘍溶解性ウイルス処置に対する反応に改善の余地がある。腫瘍溶解性ウイルスの活性に関連付けられた経路をさらにキャラクタリゼーションすれば、ウイルス療法の有効性を改善するための潜在的なターゲットを明らかにできる可能性がある。したがって、単独の又は他の療法と併用したときの腫瘍溶解性ウイルスベクターの有効性は、依然として改善することが可能なものである。本発明は、特定のウイルスベクターを、例えば養子細胞療法と一緒に利用することによって、がん治療薬のための効率的なツール及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、IL-2療法の使用に見受けられる制約、主には、免疫抑制性Tregの刺激を克服することである。本発明者らは、導入遺伝子としてバリアント型IL-2(vIL-2)ポリペプチドを発現する腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを設計した。vIL-2遺伝子は、天然のIL-2遺伝子に点変異を起こして、CD25(受容体サブユニットα)への結合を消失させたものである。したがって、このようにして発現したvIL2は、Treg細胞を刺激することができず、この結果、細胞傷害性T細胞が優先的に増殖する。このコンストラクトにおいて、ウイルス複製は、がん細胞に限定され、導入遺伝子(vIL-2)発現は、ウイルス複製に関連付けられている。したがって、vIL-2は、必要とされる場所にのみ、すなわち、腫瘍微小環境にのみ発現する。がん細胞内でウイルスが複製されると、危険信号が伝達され、腫瘍関連抗原が拡散するが、これにより、細胞を死滅させるという目的で免疫系ががん細胞を認識しやすくなる。さらに、免疫賦活性サイトカインの発現は、この効果をさらに増進する。
【0015】
したがって、本発明の一目的は、非効率的で、安全性が低く、予測不能ながん治療の課題を克服するための、簡便な方法及びツールを提供することである。一実施形態において、本発明は、細胞療法のための新規な方法及び手段を提供する。本発明の目的は、独立請求項に記載の事項を特徴とする、特定のウイルスベクター、方法及び構成によって達成される。本発明の特定の実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0016】
厳密には、本発明は、導入遺伝子としてバリアント型インターロイキン2(vIL-2)ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを提供する。本発明は、前記腫瘍溶解性ベクターと、生理学的に許容されるキャリア、バッファー、賦形剤、アジュバント、添加剤、消毒薬、保存料、充填剤、安定剤及び/又は増粘剤のうちの少なくとも1種とを含む、医薬組成物も提供する。本発明の特定の一目的は、がん又は腫瘍、好ましくは固形腫瘍の処置に使用するための、前記腫瘍溶解性ウイルスベクター又は医薬組成物を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】バリアント型IL-2(vIL-2)が、従来のIL-2より有益な効果を免疫細胞母集団の増殖に及ぼす、図である。組換えヒト(rh)vIL-2は、従来のrhIL-2との比較で、A) CD3+CD8+T細胞母集団及びB) CD3-T CD56+NK細胞母集団のかなりの増加を誘導している。C) rhIL-2は、(rh)vIL-2に比べてCD3+T CD4+T細胞母集団の増殖をより誘導する。3日後、(rh)vIL-2は、rhIL-2に比べてCD8+エフェクターT細胞及びNK細胞の増殖の誘導がより強力であるが、このバリアントでは、CD4+T細胞(Tregを含む)のレベルは低いままだった。データは、平均+標準誤差(SEM)として提示されている。**p<0.01。
図2】エフェクター細胞及び疲弊T細胞に及ぼされるvIL-2の効果の図である。A) 予備活性化し、rhIL-2、(rh)vIL-2又は培地のみと一緒に培養した、CD3+T細胞母集団のCD8/CD4+T細胞比。代替的には、予備活性化されたT細胞を、非感染がん細胞(B)又は感染がん細胞(C)の存在下でrhIL-2、(rh)vIL-2又は培地のみと一緒に培養した。rhIL-2及び(rh)vIL-2は、がん細胞(A及びB)の存在下及び非存在下においては、CD8/CD4細胞比に同様の効果を及ぼした。しかしながら、がん細胞に腫瘍溶解性ウイルスを感染させた場合、rhvIL-2は、CD4+細胞よりもCD8+CD27-CD62L-CD45RO+細胞が優位になる傾向を誘導した(C)。平均を示す。ウイルス:Ad5/3-E2F-d24;CC:がん細胞。
図3】セントラルメモリーT細胞に及ぼされるvIL-2の効果の図である。A) 予備活性化し、rhIL-2、(rh)vIL-2又は培地のみと一緒に培養した、CD3+T細胞母集団のCD8/CD4+T細胞比。代替的には、予備活性化されたT細胞を、非感染がん細胞(B)又は感染がん細胞(C)の存在下でrhIL-2、(rh)vIL-2又は培地のみと一緒に培養した。本発明者らは、がん細胞の非存在下においては、rhIL-2と(rh)vIL-2との間にCD8/CD4 Tcm比の差を全く見いだせなかった(A)。腫瘍細胞の存在下において、本発明者らは、CD8/CD4 Tcm比の低下を2日目に初めて観察したが、この比はその後、4日目に上昇した。やはり、(rh)vIL-2は、Tcm母集団においては、従来のrhIL-2より高いCD8/CD4比を誘導した(B)。骨格ウイルスの存在下では、(rh)vIL-2のある群におけるCD8/CD4 Tcm細胞は、2日目により高くなってはいるが、4日目まで安定したままであり、一方で、他の群におけるこれらの細胞の比は、(rh)vIL-2群との比較で上昇していた(C)。これにより、(rh)vIL-2は、rhIL-2と同じようにTcmコンパートメント(compartment)に影響することが示されている。平均を示す。ウイルス:Ad5/3-E2F-d24、CC:がん細胞。
図4】エフェクターメモリーT細胞に対するvIL-2の効果の図である。A) 予備活性化し、rhIL-2、(rh)vIL-2又は培地のみと一緒に培養した、CD3+T細胞母集団のCD8/CD4+T細胞比。代替的には、予備活性化されたT細胞を、非感染がん細胞(B)又は感染がん細胞(C)の存在下でrhIL-2、(rh)vIL-2又は培地のみと一緒に培養した。本発明者らは、がん細胞が存在しない場合においては、rhIL-2と(rh)vIL-2との間にCD8/CD4 Tem比の差を観察しなかった(A)。がん細胞がある場合、rhIL-2及び(rh)vIL-2は、4日目までに、高いCD8/CD4 Tem比を誘導した(B)。がん細胞に感染させた場合、本発明者らは、(rh)vIL-2群においては、4日目にCD8/CD4 Tem比が高くなっている傾向を観察した(C)。平均を示す。ウイルス:Ad5/3-E2F-d24、CC:がん細胞。
図5】構築されたウイルスが腫瘍溶解性であり、風邪ウイルスであるアデノウイルス血清型5に由来の骨格を有する、図である。A) E2Fプロモーターと;E1A内の24塩基対の欠失と;E1Bの機能無効化用の欠失と;E3領域に挿入されたヒトvIL-2導入遺伝子と;Ad5ファイバー内のAd3血清型ノブとを有する、キメラ5/3型腫瘍溶解性アデノウイルスの概略図。B) ウイルスは、エクスビボで腫瘍溶解効力を有する。BBは、導入遺伝子のない骨格ウイルスを示している。C) ウイルス感染細胞は、導入遺伝子産物を媒体増殖培地中に分泌する。Ad5/3-E2F-d24-IL-2と、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2との間には、ウイルスの細胞死滅能力に大きな差がなかったが、これにより、vIL-2導入遺伝子の存在がウイルスの腫瘍溶解効力を低下させないことが示されている(B)。さらに、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2を感染させた細胞は、サイトカインを分泌することが可能だった(C)。
図6】腫瘍溶解性アデノウイルスAd5/3-E2F-d24-vIL-2が、CD8+エフェクター細胞の優位を誘導し、Treg分化を誘導しない、図である。A) 従来のIL-2をコードするウイルスとは異なり、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、活性化CD4+T細胞よりも、活性化エフェクターT細胞(CD3+CD8+CD25+CD69+)の存在を誘導する。B) 従来のIL-2をコードするウイルスは、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2とは異なり、免疫抑制性Tregの分化を刺激する。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2によって処置された群は、従来のIL-2を発現するウイルスによって処置された場合に比べて、3日目及び6日目におけるCD25+CD69+活性化エフェクターT細胞のCD8/CD4比が有意に高かった(A)。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、Ad5/3-E2F-d24-IL-2のようなTreg分化を誘導しなかった(B)。データは、平均+SEMとして提示されている。****p<0.0001;**p=0.01。Ad5/3-vIL-2:Ad5/3-E2F-d24-vIL2;Ad5/3-IL-2:Ad5/3-E2F-d24-IL2;Ad5/3:Ad5/3-E2F-d24;PBMC:ヒト末梢血単核細胞。
図7】Ad5/3-E2F-d24-vIL2が、ハムスターにおける抗腫瘍有効性及び全生存期間を向上させた、図である。2×10HapT1腫瘍を、シリアンハムスターの皮下に植え込んだ。(A~D) 1日目、4日目、8日目及び13日目に1×10VPのAd5/3-E2F-d24-IL-2、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2又は武装化されていないコントロール用ウイルスAd5/3-E2F-d24によって処置されたハムスター、及び、PBSを受け入れたモックの、16日目までの個別の腫瘍増殖。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、他の群との比較でより良好な腫瘍抑制を示した。(E) HapT1腫瘍が確立したハムスターは、異なるアデノウイルスによって1日目、4日目、8日目、13日目に処置した。18日目から、群は、5日おきに別途6回の処置を受けた。Ad5/3-E2F-d24-vIL2は、Ad5/3-E2F-d24-IL-2を含む他の群との比較で、腫瘍増殖を有意に低減した。ハムスターは、腫瘍が見えなくなった時点で治癒したものと考えた。正規化したメジアン腫瘍体積及びSEM。***P<0.001;P<0.05。(F) 30日目までに治癒した腫瘍の百分率。(G) 全生存期間及び統計学的有意性。
図8】サイトカイン武装化アデノウイルスによる処置後における、腫瘍特異的な免疫記憶の誘導の図である。HapT1腫瘍が治癒したすべてのハムスターには、(A) HapT1(同じ腫瘍)及び(B) DDT1-MF2(異なる腫瘍)を再チャレンジして、ハムスターの上背部に植え込んだ。サイトカイン武装化アデノウイルスによる前処置は、再チャレンジ後にHapT1細胞の増殖を低減するように思われた。最も重要なこととして、vIL-2武装化アデノウイルスは、HapT1再チャレンジ後の動物のうちの40%(5匹のうちの2匹)に腫瘍の完全な排除を誘導することができた。
図9】バリアント型IL-2-ウイルス処置により、大幅な腫瘍縮小、及び、腫瘍微小環境におけるCD4+及びCD8+の適度な浸潤レベルが達成される、図である。HapT1を有するハムスターを、PBS(Mock)又はAd5/3-E2F-d24又はAd5/3-E2F-d24-IL-2又はAd5/3-E2F-d24-vIL-2の腫瘍内注射によって4回処置した。ハムスターから腫瘍を16日目(4回の処置後)に収集して、フローサイトメトリーによって免疫細胞を検出した。(A) 0日目及び16日目の腫瘍体積。(B) CD4+細胞の度数、(C) CD8+細胞の度数。データは、平均+SEMとして提示されている。p<0.05
図10】バリアント型IL-2-ウイルス処置により、腫瘍微小環境に高レベルのIL-2が産生される、図である。RT-qPCRによる相対的なmRNAの定量化を行うために、16日目(4回の処置後)にハムスターから腫瘍を収集した。ハムスターIL-2(下側のバー)、ヒトIL-2及びIL-2バリアント(上側のバー)の、腫瘍内における相対的なmRNA発現レベル。データは、平均+SEMとして提示されている。p<0.05、****p<0.0001
図11】ウイルスによって処置された動物の全体的mRNA発現プロファイルの図である。16日目にハムスターから腫瘍を収集し、NanostringによってmRNA発現プロファイルを測定した。(A) Ad5/3-E2F-d24のmRNA発現プロファイル。(B) Ad5/3-E2F-d24-IL-2のmRNA発現プロファイル。(C) Ad5/3-E2F-d24-IL-2バリアントのmRNA発現プロファイル。名称は、参照群との比較で統計学的に有意な発現の差(調整済みP値<0.05)があった遺伝子を示すものである(-1>log2倍率変化>1)。
図12】野生型ヒトIL-2又はバリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスによって処置された腫瘍における、T細胞受容体シグナル伝達及び細胞傷害性化合物のmRNA発現レベルの図である。16日目にハムスターから腫瘍を収集し、NanostringによってmRNA発現レベルを測定した。(A) T細胞受容体(TCR)複合体及びシグナル伝達に関連付けられた遺伝子のmRNA数。(B) 細胞傷害性化合物に関連付けられた遺伝子のmRNA数。(C) バリアント型IL-2のmRNAの相対的発現と、GZMK若しくはSAP1のmRNA数とのピアソンの相関、又は、GZMK遺伝子とSAP1遺伝子とのピアソンの相関。データは、参照群(Mock)との間に統計学的な差があった遺伝子の平均+SEMとして提示されている。ns - 有意差なし
図13】ヒトIL-2又はバリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスによって処置された腫瘍における、抗炎症性シグナル遺伝子及び炎症促進性シグナル遺伝子のmRNA発現レベルの図である。16日目にハムスターから腫瘍を収集し、NanostringによってmRNA発現レベルを測定した。(A) 共刺激分子及び共阻害分子と関連付けられた遺伝子のmRNA数。(B) 抗原提示細胞及び抑制性骨髄細胞と関連付けられた遺伝子のmRNA数。(C) 抗炎症性シグナル及び炎症促進性シグナルと関連付けられたシグナルと関連付けられた遺伝子のmRNA数。データは、参照群(Mock)との間に統計学的な差があった遺伝子の平均+SEMとして提示されている。p<0.05、**p<0.01
【発明を実施するための形態】
【0018】
インターロイキン2(IL-2)及びそのバリアント
本明細書において使用されているとき、「IL-2」は、天然IL-2であるか、組換えIL-2であるかにかかわらず、野生型IL-2を意味する。成熟ヒトIL-2は、133個のアミノ酸からなる配列(さらなる20個のN末端アミノ酸からなるシグナルペプチドは除いている。)として存在する。ヒトIL-2のアミノ酸配列(配列番号:1)は、Genbankにおいて、アクセッション番号NP000577.2で見つけられる。成熟ヒトIL-2のアミノ酸配列は、配列番号:2に示されている。
【0019】
本明細書において使用されているとき、「IL-2バリアント」、「バリアント型IL-2」、「vIL2」又は「vIL-2」は、インターロイキン-2ポリペプチドに特定の置換がなされたポリペプチド、又は前記ポリペプチドをコードする核酸(すなわち、遺伝子)を意味する。本明細書において、「ポリペプチド」という用語は、その鎖の長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)にかかわらず、複数のアミノ酸残基からなる任意の鎖を指す。バリアント型IL-2ポリペプチドは、天然IL-2ポリペプチド鎖にある1つ以上の部位又は他の残基におけるアミノ酸の挿入、欠失、置換及び修飾によって特徴付けることもできる。本開示によれば、このような挿入、欠失、置換及び修飾のいずれかの結果として、好ましくは低減された受容体サブユニットIL-2αへの結合を示すが、IL-2Rβ結合活性を保持又は改善する、バリアント型IL-2が生じる。例示的なバリアントは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上のアミノ酸の置換を含むことができる。バリアントは、IL-2の他の位置に保存的修飾及び置換(すなわち、バリアントの活性又は二次若しくは三次構造に最小の影響を及ぼすもの)を含むこともできる。
【0020】
例示的なバリアント型IL-2ポリペプチドは、配列番号:2によって表されるポリペプチドがIL-2Rαに結合するときのアフィニティより低いアフィニティでIL-2Rαに結合する配列番号:2に対して、少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含む。例示的なバリアント型IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2に対して少なくとも約50%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約87%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一であり得る。バリアント型ポリペプチドは、アミノ酸残基の数又は含量の変化を含み得る。例えば、バリアント型IL-2は、野生型IL-2より多い又は少ないアミノ酸残基の数を有することができる。代替的には又はさらには、例示的なバリアント型ポリペプチドは、野生型IL-2中に存在する1個以上のアミノ酸残基の置換を含むことができる。様々な実施形態において、バリアント型IL-2ポリペプチドは、単一のアミノ酸残基の付加、欠失又は置換、例えば、配列番号:2の80位にあるアミノ酸残基の置換により、野生型IL-2と異なっていてもよい。同様に、例示的なバリアント型ポリペプチドは、2個以上のアミノ酸残基、例えば、配列番号:2の24位、45位、65位、72位、74位、80位、81位、85位、86位、89位、92位、93位、109位及び117位のアミノ酸残基の置換により、野生型と異なっていてもよい。例えば、変異は、I24V、Y45A P65H、L72G、Q74R、Q74H、Q74N、Q74S、L80F、L80V、R81I、R81T、R81D、L85V、I86V、I89V、I92F、V93I、D109L、F117Aからなる群より選択することができる。好ましくは、バリアント型ポリペプチドは、置換L80F、R81D、L85V、I86V及びI92Fを含む。
【0021】
別の実施形態において、バリアント型IL-2ポリペプチドは、バリアント型IL-2ポリペプチドと、別の異種ポリペプチドとを含む、融合ポリペプチド又はキメラポリペプチドとして調製することもできる。バリアント型IL-2と、抗体又はその抗原結合部分とを含むキメラポリペプチドを作製することもできる。キメラタンパク質の抗体又は抗原結合部分は、標的化機能を有する部分(targeting moiety)として機能することができる。例えば、キメラタンパク質の抗体又は抗原結合部分を使用して、特定のサブセットの細胞又は標的分子にキメラタンパク質を局在化させることができる。
【0022】
本発明は、導入遺伝子として上記バリアント型IL-2ポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列を含む、腫瘍溶解性ウイルスベクターの設計を特に対象とする。
【0023】
ウイルスベクター
腫瘍溶解性ウイルスベクターは、がん細胞に選択的に感染し、破壊することができる、治療用として有用な抗がんウイルスである。現在の腫瘍溶解性ウイルスの大部分は、腫瘍選択性を得るように適合又は操作されているが、レオウイルス及びムンプウイルス等、天然でがん細胞に対する選好性を有するウイルスも存在する。操作された腫瘍溶解性ウイルスベクターの多くは、腫瘍特異的プロモーターエレメントを用いて、がん細胞内でのみ複製可能なものになっている。がん細胞によって選択的に発現される表面マーカーは、これらの表面マーカーをウイルス侵入用の受容体として用いることによって、標的化することも可能である。現在では、アデノウイルス、レオウイルス、麻疹、単純ヘルペス、ニューキャッスル病ウイルス及びワクシニアを含む複数のウイルスが、腫瘍溶解性作用物質として臨床試験されている。
【0024】
好ましくは、本発明において使用される腫瘍溶解性ベクターは、ヒト又は動物の処置に適したアデノウイルスベクターである。本明細書において使用されているとき、「腫瘍溶解性アデノウイルスベクター」は、正常細胞に対して腫瘍内で選択的に複製されることにより、がん細胞に感染して死滅させることができるアデノウイルスベクターを指す。
【0025】
本発明の一実施形態において、アデノウイルスベクターは、ヒトウイルスのベクターである。一実施形態において、アデノウイルスベクターは、Ad5、Ad3及びAd5/3ベクターからなる群より選択される。本明細書において使用されているとき、アデノウイルス血清型5(Ad5)核酸骨格」という表現は、Ad5のゲノムを指す。同様に、「アデノウイルス血清型3(Ad3)核酸骨格」は、Ad3のゲノムを指す。「Ad5/3ベクター」は、Ad5ベクターとAd3ベクターとの両方の部分を含み、又は有する、キメラベクターを指す。特定の一実施形態において、アデノウイルスベクターの骨格は、特定の変異を有する、アデノウイルス血清型5(Ad5)又は血清型3(Ad3)核酸骨格である。例えば、ベクターのファイバー領域を修飾することもできる。一実施形態において、上記骨格は、Ad3ファイバーノブ(fiber knob)をさらに含む、Ad5核酸骨格である。言い換えると、コンストラクトは、Ad3に由来のファイバーノブを有するが、ゲノムの残り部分又は残り部分の大部分は、Ad5に由来のものである(例えば、WO2014170389を参照されたい。)。
【0026】
アデノウイルスベクターは、当技術分野において公知の任意の方法によって修飾することが可能であり、例えば、任意のウイルス領域を欠失させ、挿入し、変異させ、又は修飾することによって修飾することができる。ベクターは、複製に関しては、腫瘍特異的なものにされている。例えば、アデノウイルスベクターは、腫瘍特異的プロモーターの挿入(例えば、E1をドライブする(drive)ための挿入)、領域の欠失(例えば、「Δ24」、E3/gp19k、E3/6.7kにおいて用いられる、E1の定常領域2の欠失)及び1つ以上の導入遺伝子の挿入等、E1、E3及び/又はE4における修飾を含むこともできる。
【0027】
特定の一実施形態において、E1B 19K遺伝子(配列番号:3)は、一般にはアデノウイルスベクターの複製を支援することが知られているものであるが、本ベクターにおいては、機能無効化用の欠失(disabling deletion)dE1B 19K(配列番号:4)を有する。E1B 19Kの欠失は、TNFαに対してがん細胞を感作させることにより、アポトーシスを促進することが公知である(Whiteら、1992)。
【0028】
野生型E1B 19K遺伝子の配列は、次のとおりである(欠失可能な領域には下線を引いている。)。
atggaggctt gggagtgttt ggaagatttt tctgctgtgc gtaacttgct ggaacagagc tctaacagta cctcttggtt ttggaggttt ctgtggggct catcccaggc aaagttagtc tgcagaatta aggaggatta caagtgggaa tttgaagagc ttttgaaatc ctgtggtgag ctgtttgatt ctttgaatct gggtcaccag gcgcttttcc aagagaaggt catcaagact ttggattttt ccacaccggg gcgcgctgcg gctgctgttg cttttttgag ttttataaag gataaatgga gcgaagaaac ccatctgagc ggggggtacc tgctggattt tctggccatg catctgtgga gagcggttgt gagacacaag aatcgcctgc tactgttgtc ttccgtccgc ccggcgataa taccgacgga ggagcagcag cagcagcagg aggaagccag gcggcggcgg caggagcaga gcccatggaa cccgagagcc ggcctggacc ctcgggaatg a (配列番号:3)
【0029】
したがって、一実施形態において、本ウイルスベクターのdE1B 19Kの配列は、次のとおりである。
atggaggctt gggagtgttt ggaagatttt tctgctgtgc gtaacttgct ggaacagctg ggtcaccagg cgcttttcca agagaaggtc atcaagactt tggatttttc cacaccgggg cgcgctgcgg ctgctgttgc ttttttgagt tttataaagg ataaatggag cgaagaaacc catctgagcg gggggtacct gctggatttt ctggccatgc atctgtggag agcggttgtg agacacaaga atcgcctgct actgttgtct tccgtccgcc cggcgataat accgacggag gagcagcagc agcagcagga ggaagccagg cggcggcggc aggagcagag cccatggaac ccgagagccg gcctggaccc tcgggaatga (配列番号:4)
【0030】
腫瘍特異的腫瘍溶解性アデノウイルスを作製するための一手法は、E1の定常領域2(CR2)に影響を与える、24塩基対(bp)欠失(「D24」又は「d24」)を作り出すことである。野生型アデノウイルスにおいて、CR2は、合成(S)期、すなわち、DNA合成期又は複製期を誘導するための、細胞のRb腫瘍抑制因子/細胞周期制御因子タンパク質の結合を担当する。pRbとE1Aとの相互作用は、E1Aタンパク質保存領域のアミノ酸121~127を必要とする。ベクターは、Heise C.ら(2000、Nature Med 6、1134~1139)及びFueyo J.ら(2000、Oncogene 19(1):2~12)によれば、ベクターのアミノ酸122~129に対応するヌクレオチドの欠失を含み得る。D24を有するウイルスは、G1/Sチェックポイントを通過する能力が低下しており、この相互作用が必要でない細胞内、例えば、すべてではないにしてもほとんどのヒト腫瘍を含む、Rb-p16経路を欠損した腫瘍細胞内でのみ効率的に複製されることが公知である。本発明の一実施形態において、ベクターは、アデノウイルスE1のRb結合定常領域2に含まれる24bp欠失(「D24」又は「d24」)を含む(図5を参照されたい。)。
【0031】
E1A内因性ウイルスプロモーターは、例えば腫瘍特異的プロモーターによって置きかえることもできる。例えば、E2F1(例えば、Ad5をベースとするベクターのE2F1)プロモーター又はhTERT(例えば、Ad3をベースとするベクターのhTERT)プロモーターを、E1A内因性ウイルスプロモーターの代用として利用することもできる。ベクターは、E1Aの腫瘍特異的発現のために、E2F1プロモーターを含むこともできる。
【0032】
E3領域は、エクスビボでのウイルス複製に必須ではないが、E3タンパク質は、宿主免疫反応の制御、すなわち、自然免疫反応と特異的免疫反応との両方の阻害において、重要な役割を担う。本発明の一実施形態において、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターのE3領域の核酸配列の欠失は、ウイルスgp19k及び6.7kリーディングフレームの欠失である。E3におけるgp19k/6.7Kの欠失は、アデノウイルスE3A領域からの965の塩基対の欠失を指す。得られたアデノウイルスコンストラクトにおいては、gp19k遺伝子と6.7K遺伝子との両方が欠失している(Kanerva Aら2005、Gene Therapy 12、87~94)。gp19k遺伝子産物は、小胞体において、主要組織適合遺伝子複合体I(MHC1、ヒト場合はHLA1として知られる)分子に結合して隔絶させ、細胞傷害性Tリンパ球が感染細胞を認識できないようにすることが公知である。多くの腫瘍はHLA1/MHC1を欠損しているため、gp19kの欠失は、ウイルスの腫瘍選択性を増大させる(ウイルスは、正常細胞からは野生型ウイルスより速く排除されるが、腫瘍細胞においては差がない。)。6.7Kタンパク質は、細胞表面上に発現し、リガンド(TRAIL)受容体2を誘導するTNF関連アポトーシスのダウンレギュレーションに関与する。
【0033】
本発明の一実施形態において、導入遺伝子、すなわち、バリアント型インターロイキン2(vlL2)をコードする遺伝子は、E3プロモーターの影響下で、gp19k/6.7kを欠失したE3領域内に配置される。これにより、導入遺伝子発現は、ウイルスの複製及び後続するE3プロモーターの活性化を行うことができる腫瘍細胞に限定される。特定の一実施形態において、バリアント型インターロイキン2をコードする核酸配列は、ウイルスgp19k及び6.7kリーディングフレームの欠失核酸配列の場所に挿入される。本発明の別の実施形態において、E3 gp19k/6.7kはベクター内に保持されているが、1つ又は多数の他のE3領域が欠失している(例えば、E3 9kDa、E3 10.2kDa、E3 15.2kDa及び/又はE3 15.3kDa)。
【0034】
E3プロモーターは、当技術分野において公知の任意の外因性プロモーター(例えば、CMV又はE2Fプロモーター)又は内因性プロモーター、特に内因性E3プロモーターであってもよい。E3プロモーターは主に複製によって活性化されるが、E1が発現したときにはある程度の発現が起きる。D24型ウイルスの選択性はE1発現後(E1がRbに結合できなくなったとき)に生じるため、これらのウイルスは、トランスダクションされた正常細胞においてもE1を発現させる。したがって、E1の発現も制御して、E3プロモーターに媒介される導入遺伝子の発現を腫瘍細胞に限定することが、決定的に重要である。
【0035】
本発明の特定の複数の実施形態は、二重選択性機構(dual selectivity device)、すなわち、定常領域2に変異があり、この結果、得られるE1Aタンパク質が細胞内でRbに結合できないものになる、アデノウイルスE1A遺伝子の前に配置された、E2F(例えば、E2F1)腫瘍特異的プロモーターにより、その複製がp16/Rb経路に限定される、腫瘍溶解性アデノウイルスベクター(例えば、Ad5又はAd3ベクター)を含む。さらに、ファイバーは、5/3キメラ現象によって修飾されており、これによって、腫瘍細胞への効率的な進入が可能になっている。
【0036】
本発明の特定の一実施形態において、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、次のものを含む:
1) アデノウイルスE1のRb結合定常領域2にある、24bp欠失(D24);
2) ウイルスgp19k及び6.7kリーディングフレームの核酸配列欠失;並びに
3) 上記2)に規定の欠失核酸配列の場所にある、バリアント型インターロイキン2(vlL2)導入遺伝子をコードする核酸配列。
【0037】
下記の実験の部において、本発明者らは、Ad5/3-E2F-d24骨格をベースとする腫瘍溶解性アデノウイルスの構築及びキャラクタリゼーションを行い、vlL2によって武装化した。ウイルスは、E2Fプロモーターと、E1A定常領域2内の24塩基対欠失(「D24」)とを有し、これによって、すべてのがん細胞に共通する特徴の1つである網膜芽細胞腫/p16経路欠損細胞内でのみウイルスが複製されるようにすることができる。E1B領域は、がん細胞アポトーシス(dE1B 19K)を誘導するように欠失している。さらに、がん細胞をトランスダクションして抗腫瘍的有効性を向上させる能力を改善するために、ウイルスは、血清型3に由来のファイバーノブを特徴とするが、ゲノムの残り部分は、血清型5に由来する。最も重要なことに、Ad5/3ウイルスは、ヒトにおいては、良好な安全性プロファイルを有する。好ましくは、vlL-2によって武装化した腫瘍溶解性ウイルスは、現在治癒不能な固形腫瘍を安全且つ効果的に処置するための有望なプラットフォームとして、併用T細胞療法又はチェックポイント阻害剤との併用で使用される。特に、Tregが重要な役割を担う腫瘍型が処置されることが好ましい。
【0038】
一実施形態において、本発明は、バリアント型インターロイキン2(vlL2)導入遺伝子をコードする核酸配列を含む、腫瘍溶解性ウイルスベクター、好ましくは腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを対象としている。
【0039】
好ましい一実施形態において、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの骨格は、アデノウイルス血清型5(Ad5)又は血清型3(Ad3)核酸骨格である。
【0040】
より好ましい一実施形態において、バリアント型インターロイキン2(vlL2)導入遺伝子をコードする前記核酸配列は、前記腫瘍溶解性アデノウイルスベクターのE3領域内の欠失核酸配列の場所にある。最も好ましくは、E3領域内の核酸配列の欠失は、ウイルスgp19k及び6.7kリーディングフレームの欠失である。
【0041】
別の好ましい実施形態において、ベクターは、前記腫瘍溶解性アデノウイルスベクターのアデノウイルスE1配列内に24bp欠失(D24)をさらに含む。
【0042】
別の好ましい実施形態において、ベクターは、E1B((6E1B 19K)の機能無効化用の欠失をさらに含む。
【0043】
別の好ましい実施形態において、ベクターは、Ad5/3ファイバーノブをさらに含む。
【0044】
別の好ましい実施形態において、ベクターは、さらなる導入遺伝子をコードする核酸配列を含む。より好ましくは、さらなる導入遺伝子は、サイトカインをコードしている。一実施形態において、サイトカインは、TNFα、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、補体C5a、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5(=RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7及びXCL2からなるリストより選択される。
【0045】
より好ましい一実施形態において、サイトカインは、TNFαである。
【0046】
本発明において利用されるウイルスベクターは、上記修飾以外の修飾を含むこともできる。任意選択により、さらなる任意の構成要素又は修飾を使用することもできるが、本発明に必須のものではない。
【0047】
外因性エレメントの挿入は、標的細胞内のベクターの効果を向上させることができる。外因性組織又は腫瘍特異的プロモーターの使用は、組換えベクターにおいては一般的なものであり、これらを本発明において利用することもできる。
【0048】
養子細胞療法
本発明の一手法は、がんと反応して破壊することができる免疫リンパ球の移入を用いる、がんに罹患している患者の処置の開発である。単離された腫瘍浸潤リンパ球を大量に培養増殖して、患者に注入した。本発明において、バリアント型インターロイキン2(vIL2)導入遺伝子をコードする腫瘍溶解性ベクターを利用して、リンパ球の効果を増進することもできる。本明細書において使用されているとき、「養子細胞療法の有効性を向上させる」は、本発明の腫瘍溶解性ベクターが、養子細胞療法用組成物と一緒に使用された場合に、単独の養子細胞療法用組成物の治療効果との比較でより強力な治療効果を対象にもたらすことができる状況を指す。本発明の特定の一実施形態は、本発明の腫瘍溶解性ベクターを対象に投与することを含む、対象のがんを処置する方法であって、養子細胞療法用組成物を対象に投与することをさらに含む、方法である。養子細胞療法用組成物と、本発明のベクターは、別々に投与される。養子細胞療法用組成物とアデノウイルスベクターとを別々に投与する前には、骨髄破壊作用のある又は骨髄破壊作用のないプレコンディショニング用の化学療法及び/又は放射線療法を先に行ってもよい。養子細胞療法による処置は、患者のがんを低減又は消滅させるように意図されている。
【0049】
本発明の特定の一実施形態は、アデノウイルスベクターと、養子細胞療法用組成物、例えば、腫瘍浸潤リンパ球、TCR修飾リンパ球又はCAR修飾リンパ球とを用いる療法に関する。本発明においては、NK細胞療法又は他の細胞療法等の任意の他の養子療法を利用することも可能ではあるが、特に、T細胞療法を利用することができる。実際、本発明によれば、養子細胞療法用組成物は、TIL療法の場合のような無修飾細胞、又は遺伝子組換えされた細胞を含むこともできる。T細胞を腫瘍特異的な標的に遺伝子ターゲッティングする2つの一般的な方法が存在する。1つの方法は、既知の特異性と、適合するヒト白血球抗原(HLA。げっ歯類においては主要組織適合遺伝子複合体として知られている)型とを有する、T細胞受容体(TCR)の移入である。もう1つの方法は、キメラ抗原受容体(CAR)等の人工的な分子による細胞の修飾である。この手法はHLAに依存せず、分子の標的化に関してはより自由度が高い。例えば、一本鎖抗体を使用することも可能であり、CARに共刺激ドメインを組み込むこともできる。しかしながら、CAR細胞の標的は、標的細胞膜上にある必要があるが、TCR修飾は、細胞内標的を利用することができる。
【0050】
本明細書において使用されているとき、「養子細胞療法用組成物」は、養子細胞移入に適した細胞を含む、任意の組成物を指す。本発明の一実施形態において、養子細胞療法用組成物は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、TCR(すなわち、異種T細胞受容体)修飾リンパ球及びCAR(すなわち、キメラ抗原受容体)修飾リンパ球からなる群より選択される細胞型を含む。本発明の別の実施形態において、養子細胞療法用組成物は、T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、NK細胞、樹状細胞、δγT細胞、制御性T細胞及び末梢血単核細胞からなる群より選択される細胞型を含む。別の実施形態において、TIL、T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、NK細胞、δγT細胞、制御性T細胞又は末梢血単核細胞が、養子細胞療法用組成物を形成する。本発明の特定の一実施形態において、養子細胞療法用組成物は、T細胞を含む。本明細書において使用されているとき、「腫瘍浸潤リンパ球」又はTILは、血流から出て腫瘍内に移動した白血球を指す。リンパ球は、B細胞、T細胞及びナチュラルキラー細胞を含む3つの群に分類することができる。本発明の別の特定の実施形態において、養子細胞療法用組成物は、標的特異的なキメラ抗原受容体又は特異的に選択されたT細胞受容体によって修飾されたT細胞を含む。本明細書において使用されているとき、「T細胞」は、CD4+ヘルパー細胞、CD8+細胞傷害性T細胞及びγδT細胞を含む、CD3+細胞を指す。
【0051】
適切な細胞に加えて、本発明において使用される養子細胞療法用組成物は、薬学的に許容されるキャリア、バッファー、賦形剤、アジュバント、添加剤、消毒薬、充填剤、安定剤及び/若しくは増粘剤等の任意の他の作用物質、並びに/又は、対応する製品中に通常見受けられる任意の構成要素を含むこともできる。本組成物を製剤化するための適切な原材料及び適切な製造方法の選択は、当業者の一般知識に含まれる。
【0052】
養子細胞療法用組成物は、固体形態、半固体形態又は液体形態等、投与に適する任意の形態であり得る。製剤は、限定されるわけではないが、液剤、乳剤、懸濁剤、錠剤、ペレット及びカプセル剤からなる群より選択することができる。本組成物は、特定の製剤に限定されず、本組成物は、薬学的に許容される任意の公知の製剤に製剤化することができる。医薬組成物は、当技術分野において知られた任意の従来のプロセスによって製造することもできる。
【0053】
本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターと、養子細胞療法用組成物との組合せは、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターと、養子細胞療法用組成物とを一緒に、ただし、別々の組成物として使用することを指す。本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターと、養子細胞療法用組成物とが1つの組成物の状態で使用されないことは、当業者には明らかである。実際、アデノウイルスベクターは、養子細胞を修飾するために使用されるのではなく、標的腫瘍を修飾するために使用され、この結果、腫瘍は細胞移植片の望ましい効果の影響をより受けやすくなる。特に、本発明は、腫瘍への養子移植片の動員を向上させ、腫瘍における養子移植片の活性を増大させる。本発明の特定の一実施形態において、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターと、養子細胞療法用組成物との組合せは、対象に同時に投与し、又は任意の順番で逐次投与するためのものである。
【0054】
チェックポイント阻害剤
免疫チェックポイントタンパク質は、T細胞の機能を阻害するシグナルをT細胞に送信する、特異的なリガンドと相互作用する。がん細胞は、この相互作用を、がん細胞の表面上にチェックポイントタンパク質を高レベル発現させることによって活用し、これにより、抗がん免疫反応を抑制している。
【0055】
本明細書に記載のチェックポイント阻害剤(CPIとも呼ばれる)は、免疫チェックポイントタンパク質の機能を阻害することができる、任意の化合物である。阻害は、機能の低下及び完全な遮断を含む。特に、免疫チェックポイントタンパク質は、ヒトチェックポイントタンパク質である。したがって、免疫チェックポイント阻害剤は、好ましくは、ヒト免疫チェックポイントの阻害剤である。
【0056】
チェックポイントタンパク質には限定はないが、CTLA-4、PD-1(並びにそのリガンドPD-L1及びPD-L2)、B7-H3、B7-H4、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、BTLA、TIGIT及び/又はIDOが挙げられる。LAG3、BTLA、B7-H3、B7-H4、TIM3及びKIRが関与する経路は、当技術分野においては、CTLA-4及びPD-1依存性経路に類似する免疫チェックポイント経路を構成すると認識されている。免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1(並びにそのリガンドPD-L1及びPD-L2)、B7-H3、B7-H4、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、BTLA、TIGIT及び/又はIDOの阻害剤であってもよい。
【0057】
一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1の阻害剤である。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1に選択的に結合するモノクローナル抗体であり、より好ましくは、BMS-936559、LY3300054、アテゾリズマブ、デュルマブマブ及びアベルマブからなる群より選択される。
【0058】
一部の実施形態において、組合せのチェックポイント阻害剤は、抗体である。本明細書において使用されている「抗体」という用語は、天然の抗体及び人工抗体を包含し、さらには、完全長抗体、又は、例えば標的とする免疫チェックポイント又はエピトープに結合することができる(例えば、抗原結合部分を保持している)完全長抗体の機能的フラグメント若しくはアナログも包含する。本明細書に記載の方法による使用のための抗体は、限定はないがヒト由来、ヒト化由来、動物由来又はキメラ由来を含む、任意の起源に由来のものであり得、任意のアイソタイプであってよく、好ましくはIgG1又はIgG4アイソタイプであり、さらには、グリコシル化されていてもよいし、又はグリコシル化されていなくてもよい。抗体という用語には、その抗体が本明細書に記載の結合特異性を示す限り、二特異性又は多特異性抗体も含まれる。
【0059】
がん
本発明の組換えベクターは、腫瘍細胞内で複製可能なものである。本発明の一実施形態において、ベクターは、Rb経路、厳密にはRb-p16経路に欠陥を有する細胞内で複製可能なものである。これらの欠損細胞は、動物及びヒトの腫瘍細胞のすべてを含む。本明細書において使用されているとき、「Rb経路の欠陥」は、Rb経路の何らかの遺伝子又はタンパク質の変異及び/又はエピジェネティックな変化を指す。これらの欠陥により、腫瘍細胞がE2Fを過剰発現させ、この結果、通常有効な複製のために必要とされる、E1A CR2によるRbの結合が不要になる。さらなる選択性は、Rb/p16経路欠損細胞において見受けられるように、遊離E2Fの存在下でのみ活性化するE2Fプロモーターによって媒介される。遊離E2Fの非存在下においては、E1Aの転写が起きず、ウイルスは複製されない。E2Fプロモーターの組入れは、E3プロモーターからの導入遺伝子の発現を可能にすることによって直接的にも間接的にも毒性を発生させ得る、正常組織内でのE1Aの発現を防止するために重要である。
【0060】
本発明は、対象のがんを処置するための手法に関する。本発明の一実施形態において、対象は、ヒト又はほ乳類、厳密にはほ乳類又はヒト患者、より厳密には、がんに罹患しているヒト又はほ乳類である。
【0061】
本手法を使用して、悪性腫瘍と良性腫瘍との両方を含む任意のがん又は腫瘍を処置することが可能であり、原発性腫瘍と転移との両方が本手法のターゲットになり得る。本発明の一実施形態において、がんは、腫瘍浸潤リンパ球を特徴とする。本発明のツールは、腫瘍浸潤リンパ球を特徴とする転移性固形腫瘍の処置用としては、特に魅力的なものである。別の実施形態において、T細胞移植片は、キメラ抗原受容体の腫瘍又は組織特異的なT細胞受容体によって修飾されている。
【0062】
本明細書において使用されているとき、「処置」又は「処置する」という用語は、がん又は腫瘍に関連付けられた障害又は症状の完全な治癒だけでなく、これらの予防、良化又は軽減も含む目的で、少なくとも腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを対象、好ましくはほ乳類又はヒト対象に投与することを指す。治療効果は、患者の症状、血液中の腫瘍マーカー、又は例えば腫瘍のサイズ若しくは患者の生存期間の長さのモニタリングによって査定することができる。
【0063】
本発明の別の実施形態において、がん又は腫瘍は、鼻咽腔がん、滑膜がん、肝細胞がん、腎臓がん、結合組織のがん、メラノーマ、肺がん、腸がん、結腸がん、直腸がん、大腸がん、脳がん、咽喉がん、口腔がん(oral cancer)、肝臓がん、骨がん、膵臓がん、絨毛がん、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォン・ヒッペル-リンドウ病、ゾリンジャー-エリソン症候群、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、尿管がん、脳がん、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨がん、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位のがん、カルチノイド、消化管のカルチノイド、線維肉腫、乳がん、パジェット病、子宮頸がん、食道がん、胆嚢がん、頭頸部がん、眼がん、腎臓がん、ウィルムス腫瘍、カポジ肉腫、前立腺がん、精巣がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔がん、皮膚がん、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、内分泌膵臓がん、グルカゴノーマ、副甲状腺がん、陰茎がん、下垂体がん、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸がん、胃がん(stomach cancer)、胸腺がん、甲状腺がん、絨毛がん(trophoblastic cancer)、胞状奇胎、子宮がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、聴神経腫、菌状息肉症、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチン産生腫瘍、歯肉がん、心臓がん、口唇がん、髄膜がん、口腔のがん(mouth cancer)、神経がん、口蓋がん、耳下腺がん、腹膜がん、咽頭がん、胸膜がん、唾液腺がん、舌がん及び扁桃腺がんからなる群より選択される。好ましくは、処置されるがん又は腫瘍は、腎臓がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、大腸がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん及び扁平非小細胞肺がん等)、胃のがん(gastric cancer)、古典的ホジキンリンパ腫、中皮腫及び肝臓がんからなる群より選択される。より好ましい一実施形態において、がん型又は腫瘍型は、頭頸部がん、最も好ましくはヒト頭頸部がんである。
【0064】
ヒト又は動物患者を本発明の療法に適するものとして分類する前には、臨床医が患者を検査してもよい。正常から逸脱しており、腫瘍又はがんを明らかにした結果に基づいて、臨床医は、患者に本発明の処置を提案することができる。
【0065】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、少なくとも1種類の本発明のウイルスベクターを含む。好ましくは、本発明は、(a) 単独の腫瘍溶解性ウイルスを含有し、又は、(b) 養子細胞組成物若しくは(c) チェックポイント阻害剤と組み合わせた腫瘍溶解性ウイルスを含有する、医薬組成物を提供する。本発明は、がんの処置において使用するための、前記医薬の組合せも提供する。さらに、本組成物は、少なくとも2種、3種又は4種の異なるベクターを含むこともできる。ベクター及び養子細胞組成物又はチェックポイント阻害剤に加えて、医薬組成物は、治療的に有効な他の作用物質、薬学的に許容されるキャリア、バッファー、賦形剤、アジュバント、添加剤、保存料、消毒薬、充填剤、安定剤及び/若しくは増粘剤等の任意の他の作用物質、並びに/又は、対応する製品中に通常見受けられる任意の構成要素をさらに含むことができる。本組成物を製剤化するための適切な原材料及び適切な製造方法の選択は、当業者の一般知識に含まれる。
【0066】
医薬組成物は、固体形態、半固体形態又は液体形態等、投与に適する任意の形態であり得る。製剤は、限定されるわけではないが、溶液、エマルション、懸濁液、錠剤、ペレット及びカプセルからなる群より選択することができる。本発明の組成物は特定の製剤に限定されず、本組成物は、薬学的に許容される任意の公知の製剤に製剤化することができる。医薬組成物は、当技術分野において知られた任意の従来のプロセスによって製造することもできる。
【0067】
本発明の医薬キットは、導入遺伝子としてバリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスベクターと、1種以上の免疫チェックポイント阻害剤とを含む。導入遺伝子としてバリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、第1の製剤中に配合され、前記1種以上の免疫チェックポイント阻害剤は、第2の製剤中に配合される。代替的には、本発明の医薬キットは、第1の製剤に含まれる、導入遺伝子としてバリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスベクターと、第2の製剤に含まれる養子細胞組成物とを含む。本発明の別の実施形態において、第1の製剤と第2の製剤は、対象に同時に投与し、又は任意の順番で逐次投与するためのものである。別の実施形態において、前記キットは、がん又は腫瘍の処置において使用するためのものである。
【0068】
投与
本発明のベクター又は医薬組成物は、任意のほ乳類対象に投与することができる。本発明の特定の一実施形態において、対象は、ヒトである。ほ乳類は、ペット、家畜及び生産動物からなる群より選択することができる。
【0069】
ベクター又は本組成物を対象に投与するために、任意の従来の方法を使用することもできる。投与経路は、本組成物の製剤又は形態、疾患、腫瘍の場所、患者、共存症及び他の因子に依存する。したがって、組合せに含まれる各治療剤の用量の量及び投薬頻度は、特定の治療剤、処置されるがんの重症度及び患者の特徴に部分的に依存する。好ましくは、投薬レジメンは、副作用の許容レベルに合致させながら、患者に送達される各治療剤の量を最大化する。
【0070】
ベクターの有効用量は少なくとも、処置を必要としている対象、腫瘍型及び腫瘍の場所並びに腫瘍のステージに依存する。前述の用量は、例えば、約1×10ウイルス粒子(VP)~約1×1014VP、厳密には約5×10VP~約1×1013VP、より厳密には約3×10VP~約2×1012VPであり得る。一実施形態において、バリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、1×1010~1×1014ウイルス粒子の量で投与される。本発明の別の実施形態において、前述の用量は、約5×1010~5×1011VPの範囲である。
【0071】
本発明の一実施形態において、腫瘍溶解性ウイルスの投与は、腫瘍内注射、動脈内注射、静脈内注射、胸膜内注射、膀胱内注射、腔内注射(intracavitary injection)、節内注射(intranodal injection)若しくは腹膜注射(peritoneal injection)又は経口投与によって実施される。任意の組合せの投与も可能である。本手法は、局所注射であっても全身的な有効性をもたらすことができる。
【0072】
本発明の一実施形態において、(a) 導入遺伝子としてバリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスベクターと、(b) 1種以上の免疫チェックポイント阻害剤とを対象に別々に投与することは、同時に実施され、又は任意の順番で連続して実施される。これは、(a)と(b)が、一緒に利用するために単一の単位剤形の状態で用意されてもよいし、又は、同時に投与し、若しくは特定の時間差で投与するために別々の実体(例えば、別々の容器に入っている実体)として用意されてもよいことを意味する。この時間差は、1時間~2週間、好ましくは12時間~3日間、より好ましくは最大24時間又は48時間であってよい。好ましい一実施形態において、アデノウイルスベクターの1回目の投与は、チェックポイント阻害剤の1回目の投与前に実施される。さらに、チェックポイント阻害剤とは別の投与方法によってウイルスを投与することもできる。この点に関して、ウイルス又はチェックポイント阻害剤の一方を腫瘍内投与し、もう一方を全身投与又は経口投与することが有利なこともある。特定の好ましい一実施形態において、ウイルスは腫瘍内投与され、チェックポイント阻害剤は静脈内投与される。好ましくは、ウイルスとチェックポイント阻害剤は、別々の化合物として投与される。これらの2種の作用物質を併用する処置も可能である。
【0073】
好ましい一実施形態において、チェックポイント阻害剤は、2mg/kg~50mg/kg、より好ましくは約2mg/kg~25mg/kgの量で投与される。
【0074】
本明細書において使用されているとき、「別々に投与する」又は「別々の」は、(a) 導入遺伝子としてバリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスベクターと、(b) 1種以上の免疫チェックポイント阻害剤とが、相互に区別される異なる2種の生成物又は組成物である状況を指す。
【0075】
本発明の療法に加えて、任意の他の処置又は処理の組合せを使用することができる。特定の一実施形態において、本発明の方法又は使用は、アルキル化剤、ヌクレオシドアナログ、細胞骨格調節剤、細胞分裂阻害剤、モノクローナル抗体、キナーゼ阻害剤又は他の抗がん薬若しくは介入(手術を含む)等、同時に又は逐次に行われる型の放射線療法、化学療法、抗血管新生剤又は標的化療法を対象に施用することをさらに含む。
【0076】
本明細書において使用されているとき、「処置する」又は「増大させる」という用語及びこれらの用語の派生語は、必ずしも100%の又は完全な処置又は増大を含意するとは限らない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果があるものとして認識する様々な度合いが存在する。
【0077】
技術が進歩するにつれて、本発明の概念が様々な様式で実装され得ることは、当業者には明白である。本発明及び本発明の実施形態は上記の例に限定されないが、特許請求の範囲内で変更することが可能である。
【実施例
【0078】
実験の部
材料及び方法
細胞株
ヒト肺腺がんA549細胞株、ヒトメラノーマSK-MEL-28細胞株及びハムスター平滑筋肉腫DDT1-MF2細胞株は、DMEM中で維持し、ハムスター膵臓がんHapT1は、RPMI中で維持した。DMEM又はRPMIの両方に、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLのペニシリン、100mg/mLのストレプトマイシン及び2mMのL-グルタミン(すべてSigma-Aldrich製)を添加した。両方の細胞株を、+37℃及び5%COで培養した。
【0079】
組換えヒトサイトカイン
エクスビボ実験においては、組換えヒト(rh)IL-2(Peprotech)及びrh vIL-2(Adipogen)サイトカインを、0.1~100U/mLの濃度でポジティブコントロールとして使用した。
【0080】
ウイルス及びvIL-2導入遺伝子の構築
この研究において使用されたウイルスのすべては、Ad5/3-E2F-d24の骨格を有する。このAd5/3-E2F-d24及びAd5/3-E2F-d24-IL-2の構築については、すでに説明されている(Havunenら、2017)。
IL-2配列に80位L->F、81位R->D、85位L->V、86位I->V及び92位I->Fという5つの点変異を作出することによって、vIL-2導入遺伝子を構築した。galk選択(Warmingら、2005;Muck-Hauslら、2015)を用いる細菌人工染色体(BAC:bacterial artificial chromosome)組換え戦略により、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2ウイルスを作製した。相同組換えによって、導入遺伝子vIL-2をE3領域に挿入した。PCR増幅したvIL-2を、BAC-Ad5/3-E2F-Δ24-GalK/ampを内包するSW102細菌にエレクトロポレーションし、vIL-2導入遺伝子を有する陽性クローンを、デオキシグルコース選択によって識別した。配列を制限酵素分析によって確認した。PacI制限酵素(Thermo Scientific)を用いてBACからウイルスゲノムを放出させ、Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を用いてA549細胞にトランスフェクションした。次いで、vIL-2武装化Ad5/3ウイルスを、塩化セシウム勾配遠心分離によって2回精製した。光学密度及び組織培養感染率(TCID50)についてのアッセイを用いて、それぞれウイルス粒子(VP)濃度及び感染単位を測定した。
【0081】
エクスビボでのウイルスによるサイトカインの発現
A549細胞に、Ad5/3-E2F-d24-IL-2を感染させ、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2を感染させ、又は48時間非感染のまま放置した。上清を収集し、ろ過(Amicon ultra 100K)した後、製造業者の取扱説明書に従ってIL-2ヒトELISAキット(Abcam)によって分析して、ウイルスが産生したサイトカインの量を測定した。
【0082】
溶解効力アッセイ
1ウェル当たり10,000個のA549細胞を、100μlの2%DMEMアッセイ培地に取り込ませた状態で96ウェルプレートに播種した。細胞には、トリプリケートにして0~1000VP/細胞でAd5/3-E2F-d24、Ad5/3-E2F-d24-IL-2又はAd5/3-E2F-d24-vIL-2を感染させた。3日後、製造業者の取扱説明書に従って、MTS細胞傷害性アッセイによって細胞生存率を測定した(cell titer 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay、Promega、Madison、WI)。
【0083】
細胞増殖アッセイ
末梢血単核細胞(PBMC)を健康なドナーから得、Lymphoprep(StemCell technologies)を使用する密度勾配遠心分離によって単離した。PBMCを、rh vIL-2及びrh IL-2と一緒にして異なる濃度(0.1U、1U、10U及び100U)で3日間インキュベートし、フローサイトメトリーによって、CD4+T細胞、CD8+T細胞及びNK細胞について分析した。相対的な細胞増殖を測定するために、本発明者らは、3日目の陽性細胞の百分率を、0日目の対応する数と比較した。
【0084】
T細胞の単離及び刺激
T細胞は、CD3+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)によって、新鮮な状態で単離したPBMCから濃縮した。ソーティングされたTリンパ球は、1:5のビーズ/T細胞比でCD3/CD28ビーズ(Invitrogen)を用いて活性化し、次いで、(1) 100U/mLのrh IL-2と一緒にして4日間培養し;(2) 100U/mLのrh vIL-2と一緒にして4日間培養し、又は、(3) いかなるサイトカインもなしで、ただし、コントロールとしての完全培地と一緒にして4日間培養した。これら3つの条件は、3つの群において研究した:群1においては、活性化T細胞のみ;群2においては、腫瘍細胞と活性化T細胞;群3においては、活性化T細胞と腫瘍細胞に加えて、武装化されていないウイルスAd5/3-E2F-d24。サイトカイン及びアッセイ培地の半分は、2日目に取り替えた。0日目、2日目及び4日目には、Sony SH800Z(ソニー、東京、日本)を用いたフローサイトメトリーによって細胞を分析した。
【0085】
エクスビボでのウイルス感染後の免疫サブセット分析
腫瘍細胞には、武装化されていないAd5/3-E2F-d24、Ad5/3-E2F-d24-IL-2若しくはAd5/3-E2F-d24-vIL-2ウイルスを100VP/細胞で感染させ、又は、腫瘍細胞を非感染状態のまま放置した。感染から24時間後の感染がん細胞の上に、健康なドナーから単離されたPBMCを加えた。単独のPBMCは、モックコントロールとして使用した。抗CD3、抗CD8、抗CD4、抗CD25、抗CD69、抗CD127及び抗CD56によって細胞を免疫蛍光染色し、BD Accuri C6フローサイトメーターによって0日目、3日目及び6日目に分析した。次に、特定の免疫細胞母集団、すなわち、T細胞及びNK細胞の効果を、類似の構成において、より詳細に研究した。
【0086】
動物実験
処置に起因する腫瘍の変化を研究するために、動物1匹当たり2×10HapT1細胞を、免疫能力を有する5週齢のシリアンハムスターの腰部の皮下に植え込んだ。平均腫瘍直径が0.5cmに到達したら、動物をランダム化して4つの群(n=13)に振り分けた。ウイルスAd5/3-E2F-d24、Ad5/3-E2F-d24-IL-2及びAd5/3-E2F-d24-vIL-2を1×10VPで腫瘍内投与し、モックは、PBSのみを受け入れた。ウイルスは、1日目、4日目、8日目及び13日目に注射した。
【0087】
各群から5匹の動物を16日目に安楽死させ、腫瘍及び選択した臓器を収集して、病理組織学的特性及び存在する免疫細胞サブセットを評価した。残りの動物は、生存をモニタリングした。これらの動物は、18日目から5日おきに別途6回のウイルス処置を受けた。30日目までのすべての偶数日に、デジタルノギスを用いて腫瘍を測定した。エンドポイント基準は、20.0mmの腫瘍サイズ限界及び皮膚潰瘍を含んでいた。
【0088】
治癒した動物には、160日の観察期間の後、同じHapT1腫瘍(2×10細胞/腫瘍)又は異なる腫瘍DDT-MF2(1.5×10細胞/腫瘍)を上背部に再チャレンジした。事前にいかなるがん細胞又は処置にもさらされなかったナイーブ動物(n=3)は、モック群として含まれた。DDT1-MF2腫瘍が最大許容直径に到達するまで、腫瘍の増殖を21日間追跡した。注意事項として、3匹のAd5/3-E2F-d24治療対象動物(therapeutic animal)のうちの2匹には、視認可能な腫瘍が存在したため、すなわち、武装化されていないウイルスによって腫瘍が治癒しなかったため、再チャレンジしなかった。
【0089】
病理組織学
病理学的評価のために、肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓及び腫瘍サンプル等のハムスター臓器を、各群に属する5匹のハムスターから16日目に収集した。収集したサンプルは、最初に10%ホルマリン中に固定し、48時間後、70%エタノールに移し、パラフィンに包埋した。顕微鏡評価のために、厚さ5μmの組織切片を、ヘマトキシンリン及びエオシンによって染色した。病理医は、染色された組織サンプルの組織学的変化を評価した。
【0090】
統計学的分析
腫瘍増殖の評価は、SPSSバージョン25 Statistics(IBM)により、対数変換した腫瘍体積を使った線形混合モデルを用いて実施した。二元配置分散分析及びログ-ランク(Mantel-Cox)検定を用いて、それぞれ再チャレンジの群間変動及び生存曲線を分析した。GraphPad Prism GraphPad Prism(バージョン8.0.0.)を使用して、個別の腫瘍増殖データ及びグループ化された腫瘍増殖データを提示し、生存曲線をプロットした。P値は、p<0.05の場合に有意であると考えた。
【0091】
(実施例1)
エフェクター細胞は、vIL-2の存在下においては、従来のIL-2を用いた場合に比べてエクスビボでより増殖する
本発明者らは、CD8+T細胞、NK細胞及びCD4+T細胞等の免疫細胞を刺激することができる能力についてrh vIL-2と、rh IL-2とを比較した。本発明者らは、組換えヒト(rh)vIL-2又はrh IL-2と一緒にして又は一緒にしないで、PBMCを異なる濃度(0.1~100U/ml)で培養した。3日後、rh vIL-2は、IL-2に比べてCD8+エフェクターT細胞及びNK細胞の増殖の誘導がより強力だったが、このバリアントでは、CD4+T細胞(Tregを含む)のレベルは低いままだった(図1)。これらの結果により、vIL-2は、従来のIL-2より好ましい効果をT細胞及びNK細胞に及ぼすことが示されている。活性化T細胞がIL-2を産生すると、vIL-2群においても培養物中にIL-2が存在することになることには、留意すべきである。これにより、例えば、Tregに対するvIL-2の効果が弱まること(効果の喪失)が予想される。
【0092】
(実施例2)
異なるT細胞サブセットに対するrh vIL-2の効果は、サイトカインをコードするウイルスを構築するための理論的根拠を提供する
アデノウイルスの存在下でのT細胞に対するrh vIL-2の効果を調査するために、本発明者らは、CD3/CD28ビーズを用いてT細胞を単離し、これらのT細胞を、100U/mlのrh vIL-2又はrh IL-2及び感染/非感染がん細胞のいずれかと一緒にして4日間活性化した。IL-2とvIL-2は、がん細胞の存在下及び非存在下においては、CD8/CD4細胞比に同様の効果を及ぼした(図2A及び図2B)。しかしながら、がん細胞に腫瘍溶解性ウイルスを感染させた場合、vIL-2は、CD4+細胞よりもCD8+CD27-CD62L-CD45RO+が優位になる傾向を誘導した(図2C)。
【0093】
獲得免疫の特徴は記憶応答であるが、記憶応答は、抗原特異的なリンパ球のクローン増殖、及び生涯にわたって続いていくことになる分化の結果である(Sallustoら、2004)。本発明者らは、感染がん細胞又は非感染がん細胞と一緒にしたrh IL-2又はrh vIL-2の存在下において、中枢メモリーT細胞(Tcm;CD45RO+、CD62L+、CD27+)の変化率%を評価した。Tcmは、反応性記憶応答(reactive memory response)を媒介し、抗原刺激されると分化してエフェクター細胞になる。本発明者らは、がん細胞の非存在下においては、IL-2とvIL-2との間にCD8/CD4 Tcm比の差を全く見いだせなかった(図3A)。腫瘍細胞の存在下においては、本発明者らは、CD8/CD4 Tcm比の低下を2日目に初めて観察したが、この比はその後、4日目に上昇した。やはり、vIL-2は、Tcm母集団においては、従来のIL-2より高いCD8/CD4比を誘導した(図3B)。
【0094】
Tcmに加えて、本発明者らは、Tcm細胞と同じ条件下でエフェクターメモリーT細胞(Tem;CD45RO+、CD62L-、CD27+)も評価した。Temは、防御記憶(protective memory)を提供するものであり、迅速なエフェクター機能を特徴とする。本発明者らは、がん細胞が存在しない場合においては、IL-2とvIL-2との間にCD8/CD4 Tem比の差を観察しなかった(図4A)。がん細胞がある場合、IL-2及びvIL-2は、4日目までに、高いCD8/CD4 Tem比を誘導した(図4B)。がん細胞に感染させた場合、本発明者らは、rh vIL-2群においては、4日目にCD8/CD4 Tem比が高くなっている傾向を観察した(図4C)。結論として、本発明者らは、炎症促進性T細胞コンパートメントに対する効果に関しては、rh IL-2とrh vIL-2との間に有意差を見いだせなかった。これらの結果により、本発明者らは、vIL-2武装化腫瘍溶解性アデノウイルスを構築するための確かな根拠を得た。
【0095】
(実施例3)
Ad5/3-E2F-d24-vIL-2ウイルスはvIL-2を発現し、エクスビボで腫瘍細胞を効率的に死滅させる
アデノウイルス5/3は、アデノウイルス血清型5の骨格及びアデノウイルス血清型3のファイバーノブを特徴とするが、アデノウイルス5/3の受容体は進行腫瘍で高発現するため、腫瘍トランスダクションを促進する(Wangら、2011)。ウイルス複製を腫瘍細胞に限定するために、E1A遺伝子の定常領域2の変異及び腫瘍特異的な異種E2Fプロモーターの導入を実施した。アポトーシスを促進するために、E1B 19K遺伝子領域の欠失を可能にしておいた。バリアント型IL-2導入遺伝子は、E3プロモーターの影響下で、E3領域内に配置され、これによって、その発現がウイルス複製に関連付けられる(図5A)。導入遺伝子カセットは、gp19k及び6.7kのオープンリーディングフレームを置きかえる。
【0096】
構築されたウイルスの腫瘍溶解効力を調査するために、ヒト肺がんA549細胞を使用して細胞傷害性アッセイを実施した。Ad5/3-E2F-d24-IL-2と、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2との間には、ウイルスの細胞死滅能力に大きな差がなかったが、これにより、vIL-2導入遺伝子の存在がウイルスの腫瘍溶解効力を低下させないことが示されている(図5B)。さらに、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2を感染させた細胞は、サイトカインを分泌することが可能だった(図5C)。
【0097】
(実施例4)
Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、エクスビボでエフェクター細胞を刺激するが、Tregは刺激しない
ヒトがん細胞A549に、Ad5/3-E2F-d24、Ad5/3-E2F-d24-IL-2若しくはAd5/3-E2F-d24-vIL-2を感染させ、又は非感染のまま放置した。24時間後、がん細胞をPBMCと一緒にしてインキュベートした。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2によって処置された群は、従来のIL-2を発現するウイルスによって処置された場合に比べて、3日目及び6日目におけるCD25+CD69+活性化エフェクターT細胞のCD8/CD4比が有意に高かった(図6A)。実際、本発明者らは、コントロール用ウイルス間では、活性化エフェクターT細胞のCD8/CD4比に有意差を全く見いだせなかった。したがって、vIL-2武装化Ad5/3ウイルスは、エフェクター細胞の強力な刺激因子である。
【0098】
Tregに対する効果を調査するために、本発明者らは、CD4+CD3+母集団のうちで、CD25+CD127lowを発現している細胞を分析した。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、Ad5/3-E2F-d24-IL-2のようなTreg分化を誘導しなかった(図6B)。したがって、ウイルスが産生したvIL-2は、Tregよりもエフェクター細胞を優先的に刺激することという、組換えvIL-2の魅力的な主要特徴を保持しているように思われる。
【0099】
(実施例5)
バリアント型IL-2武装化腫瘍溶解性アデノウイルスは、ハムスターにおける抗腫瘍有効性及び生存期間を有意に向上させる
エクスビボで有望な結果が出た後には次いで、バリアント型IL-2武装化アデノウイルスを、免疫能力を有するシリアンハムスターにおいて研究した。ヒトアデノウイルスは、(マウスの場合とは異なり)ハムスターでは複製が可能なものであり、ヒトIL-2等の一部のヒトサイトカインは、ハムスターにおいて生物活性である(Havunenら、2017;Gowenら、2008)ため、前述のハムスターは、武装化腫瘍溶解性アデノウイルスを研究するのに最適なモデルである(Havunenら、2017)。
【0100】
骨格Ad5/3-E2F-d24又はIL-2武装化ウイルス(Ad5/3-E2F-d24-IL-2)によって処置された動物は、腫瘍抑制に関しては、モックとの比較である傾向を示した(有意差なし)。印象的なことに、本発明者らは、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2によって処置された群において、最良の腫瘍抑制を達成したが、この結果は、すべての他の群との比較で30日目まで統計学的に有意だった。これは、Tregに対する望ましくない免疫抑制効果を伴わない抗腫瘍エフェクターT細胞の刺激因子としての、vIL-2の有用性を強調するものである。したがって、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、腫瘍の完全な消失に合致する傾向に誘導する、腫瘍微小環境の強力な調節因子であるように思われる。
【0101】
療法の作用機序を調査するために、本発明者らは、1日目、4日目、8日目及び13日目に、骨格Ad5/3-E2F-d24、Ad5/3-E2F-d24-IL-2、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2又はPBSによってハムスターを処置した。16日目に、ハムスターを安楽死させ、腫瘍を収集して、フローサイトメトリー及びNanostringによる査定によって腫瘍微小環境を綿密に分析した。処置に関連する変化を研究するために、腫瘍及び選択した臓器を収集して、病理組織学的評価を行った。病理学的結果によっては、モック群と、腫瘍溶解性アデノウイルスによって処置された群との差が明らかにならず、したがって、本発明者らのウイルスは、いかなる全身的な有毒作用も引き起こさなかった。
【0102】
生存データにより、骨格ウイルスによって処置された群は、1匹のハムスターを治癒することができることが示された。さらに、安定な腫瘍を有する2匹のハムスターは、実験の終了時まで生存した。Ad5/3-E2F-d24-IL-2は、3匹のハムスターを治癒した。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、処置されたハムスターの60%を治癒することが可能だったが、この差異は、モックに対して有意だった(図7)。
【0103】
(実施例6)
サイトカイン武装化アデノウイルスによる処置は、腫瘍特異的免疫記憶を誘導する
腫瘍溶解性ウイルスによる処置が腫瘍特異的免疫記憶を誘導したかどうかを研究するために、治癒したすべてのハムスターには、同じHapT1がん細胞及び異なるDDT1-MF2がん細胞を再チャレンジした。両方のがん細胞型を、治癒したハムスターの上背部に植え込んだ。この再チャレンジ実験においては、異なるウイルスにより異なる数のハムスターが治癒したため、1群当たりの動物の数も異なっていた。ナイーブ動物又は武装化されていないウイルスによって処置された動物においては、HapT1(図8A)腫瘍又はDDT1-MF2(図8B)腫瘍の再チャレンジに障害はなかった。対照的に、Ad5/3-E2F-d24-IL-2又はAd5/3-E2F-d24-vIL-2によるHapT1の前治療(prior cure)は、HapT1再チャレンジに対する保護を提供するように思われた。注意事項として、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2によって処置された動物の40%は、再チャレンジ後であっても、HapT1腫瘍が存在しないままだった。しかしながら、DDT-MF2腫瘍は、これらの動物において正常に増殖しており、このことにより、武装化ウイルスによって誘導されるエピトープ特異的な免疫記憶が強調されている。これらの知見は、全身的且つ腫瘍特異的な抗腫瘍免疫の確立におけるIL-2等のサイトカインの重要性を示す先行データ(Havunenら、2017)とも整合する。
【0104】
本発明者らにより、バリアント型IL-2武装化アデノウイルスAd5/3-E2F-d24-vIL-2は、免疫能力を有するシリアンハムスターにおいて安全且つ有効なものであると思われることが示された。Ad5/3-E2F-d24-vIL-2は、強力な抗腫瘍有効性及び腫瘍微小環境内におけるバリアント型IL-2の発現を示した。ヒトリンパ球についての研究により、抗腫瘍免疫作用の誘導が示された。厳密には、vIL-2は、抑制性TregよりもエフェクターT細胞を優先的に活性化するように思われた。
【0105】
(実施例7)
腫瘍溶解性アデノウイルスをコードするバリアント型IL-2は、免疫細胞の適度な浸潤及び最も高いIL-2の腫瘍内発現を伴って、大幅な腫瘍縮小を誘導する
細胞株
ハムスター膵臓がんHapT1を、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLのペニシリン、100mg/mLのストレプトマイシン及び2mMのL-グルタミン(すべてSigma-Aldrich製)を添加したRPMI中に維持した。両方の細胞株を、+37℃及び5%COで培養した。
【0106】
ウイルス及びvIL-2導入遺伝子の構築
この研究において使用されたウイルスのすべては、Ad5/3-E2F-d24の骨格を有する。このAd5/3-E2F-d24及びAd5/3-E2F-d24-IL-2の構築については、Havunenら、2017においてすでに説明されている。IL-2配列に80位L->F、81位R->D、85位L->V、86位I->V及び92位I->Fという5つの点変異を作出することによって、vIL-2導入遺伝子を構築した。galk選択(Warmingら、2005;Muck-Hauslら、2015)を用いる細菌人工染色体(BAC)組換え戦略により、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2ウイルスを作製した。相同組換えによって、導入遺伝子vIL-2をE3領域に挿入した。PCR増幅したvIL-2を、BAC-Ad5/3-E2F-Δ24-GalK/ampを内包するSW102細菌にエレクトロポレーションし、vIL-2導入遺伝子を有する陽性クローンを、デオキシグルコース選択によって識別した。配列を制限酵素分析によって確認した。PacI制限酵素(Thermo Scientific)を用いてBACからウイルスゲノムを放出させ、Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を用いてA549細胞にトランスフェクションした。次いで、vIL-2武装化Ad5/3ウイルスを、塩化セシウム勾配遠心分離によって2回精製した。光学密度及び組織培養感染率(TCID50)についてのアッセイを用いて、それぞれウイルス粒子(VP)濃度及び感染単位を測定した。
【0107】
動物実験
処置に起因する腫瘍の変化を研究するために、動物1匹当たり2×10HapT1細胞を、免疫能力を有する5週齢のシリアンハムスターの腰部の皮下に植え込んだ。平均腫瘍直径が0.5cmに到達したら、動物をランダム化して4つの群(n=13)に振り分けた。ウイルスAd5/3-E2F-d24、Ad5/3-E2F-d24-IL-2及びAd5/3-E2F-d24-vIL-2を1×10VPで腫瘍内投与し、モックは、PBSのみを受け入れた。ウイルスを1日、4日、8日目及び13日目に注射した。
【0108】
各群から5匹の動物を16日目に安楽死させ、腫瘍を収集して、免疫学的変化及びmRNA発現レベルを評価した。
【0109】
フローサイトメトリー
16日目に収集したハムスター腫瘍サンプルを単一細胞懸濁液として処理し、すでに確立されたプロトコル(Havunenら、2017;Siuralaら、2016)に従ってさらに分析した。次いで、これらのサンプルを、CD8+細胞(PE、12-0080-82)、CD4+細胞(PE-シアニン7、25-0041-82)及びMHC II+細胞(FITC、11-5980-82)細胞に対する抗体によって染色した。既報(Havunenら、2017)のように、ポリクローナル抗体である抗Asialo-GM1(Alexa Fluor-488、53-6507-80)によってNK+細胞を標識し、抗ガレクチン(PE、12-5301-82)によってマクロファージ+細胞を標識した。Sony SH800Zサイトメーター(ソニー、東京、日本)を使用して、1サンプル当たり100.000イベントを取得した時点で細胞蛍光を検出した。細胞データの処理及びゲーティングは、FlowJo v.10.6.1(BD(登録商標)、NewJersey、USA)を用いて実施した。
【0110】
遺伝子発現分析
16日目に採取した動物腫瘍サンプルの断片は、RNAlater(R0901;Sigma-Aldrich、St.Louis、USA)中に保存し、さらなる処理まで-20℃で貯蔵した。次いで、これらのサンプルから得たRNAを、製造業者の取扱説明書に従ってRNAeasy Mini Kit(74104;QIAGEN、Hilden、Germany)によって精製した。最終的なRNA収率を、Thermo Scientific NanoDrop(商標)1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific、Massachusetts、USA)によって測定し、サンプルのRNA濃度を20ng/μlに調整した。
【0111】
逆転写酵素(RT)-定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
ウイルス導入遺伝子発現の相対的定量化及びハムスターIL-2の相対的発現のために使用されるQuantitect逆転写キット(205313、QIAGEN、Hilden、Germany)を使用することにより、16日目の腫瘍から精製したRNAを使用して、cDNAを合成した。Santosら、2017によって既報のようにして、逆転写リアルタイムPCR(RT-qPCR)を実施した。野生型IL-2ウイルス導入遺伝子を、ヒトIL-2用に設計されたプライマー及びプローブによって検出した。IL-2バリアント型ウイルス導入遺伝子に関しては、ヒトIL-2v用に設計されたプライマー及びプローブを使用した。ハムスターGAPDH遺伝子(Siuralaら、2015)を使用して、ハムスターIL-2及びウイルス導入遺伝子の正規化を実施した。
【0112】
統計学的分析
GraphPad Prism GraphPad Prism(バージョン8.0.0.)を使用して、腫瘍体積データ、相対的なmRNA発現レベル及び絶対的なmRNA発現レベルを提示した。Welchの補正を用いる対応のないt検定を実施して、異なる治療群間の差を査定した。ピアソンの相関係数を決定して、グランザイム産生と、SAP遺伝子又はバリアント型IL-2導入遺伝子の産生との相関を判定した。P値は、p<0.05の場合に有意であると考えた。
【0113】
結果
腫瘍溶解性アデノウイルスによる処置によって誘導される生物学的事象についてさらなる知見を得るために、本発明者らは、実験開始から16日後に腫瘍を収集した。0日目の腫瘍体積と、16日目の腫瘍体積とを比較することにより、Ad5/3-E2F-D24による処置は、ハムスター腫瘍の増殖の抑制に及ぼす効果が最小であることが示された(図9A)。一方、ヒトIL-2及びバリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスによる処置は、ハムスター膵臓腫瘍の腫瘍増殖を大幅に遅延させた。このような効果は、バリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスによって処置されたハムスターにおいては、この群が、腫瘍負荷が最低になる傾向を16日目までに明示したことから考えて、より顕著だった(図9A)。
【0114】
免疫学的コンパートメントのさらなる分析により、腫瘍内におけるCD4+及びCD8+細胞の度数は、野生型ヒトIL-2腫瘍溶解性アデノウイルスによって処置されたハムスターにおいて最高であることが明らかになった(図9B及び図9C)。対照的に、バリアント型IL-2-ウイルス療法を受けたハムスターから得た腫瘍においては、これらの細胞の浸潤レベルが驚くほどに適度なものだった(図9B及び図9C)。16日目の時点ではサイトカイン武装化ウイルス間に腫瘍体積の有意差が認められなかったことを考えると、これは、ウイルスを発現しているバリアント型IL-2が、野生型IL-2に比べて定性的により優れた抗腫瘍反応を誘導することを示唆している。
【0115】
さらに、野生型ヒトIL-2に関する主な制約は、その薬物動態(短い半減期)と、この薬物動態のため、標的病変部への蓄積が最小になることである(Arenas-Ramirezら、2015)。図10の結果により、上記課題は、Ad5/3-E2F-D24-vIL-2腫瘍溶解性アデノウイルスによって解消できることが実証された。例えば、野生型IL-2又はバリアント型IL-2腫瘍溶解性アデノウイルスによって処置されたハムスターから得た腫瘍間では、IL-2の産生に有意差を認めることができる(図10)。実際、Ad5/3-E2F-D24-vIL-2によって処置された群は、他のすべての群との比較で、最も高い全体的サイトカイン発現(宿主IL-2及びIL-2バリアント導入遺伝子)を提示した。さらに、IL-2バリアントのレベルは、最後のウイルス処置から3日後さえ高かった(図10)。これらの結果が、類似の性質を有するタンパク質では予期されないものであることに留意することは重要であり、このことは、組換えバリアント型IL-2タンパク質を開発しようとする取り組みが、バリアント型IL-2タンパク質の安全性及び腫瘍内での高いレベルを改善することに重点を置いている(Arenas-Ramirezら、2015)ことを考えれば、特に顕著である。
【0116】
(実施例8)
バリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスによる療法により、エフェクターT細胞の機能向上及び低度の免疫抑制のための免疫再構成が起きる
細胞株
ハムスター膵臓がんHapT1を、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLのペニシリン、100mg/mLのストレプトマイシン及び2mMのL-グルタミン(すべてSigma-Aldrich製)を添加したRPMI中に維持した。両方の細胞株を、+37℃及び5%COで培養した。
【0117】
ウイルス及びvIL-2導入遺伝子の構築
この研究において使用されたウイルスのすべては、Ad5/3-E2F-d24の骨格を有する。このAd5/3-E2F-d24及びAd5/3-E2F-d24-IL-2の構築については、Havunenら、2017においてすでに説明されている。IL-2配列に80位L->F、81位R->D、85位L->V、86位I->V及び92位I->Fという5つの点変異を作出することによって、vIL-2導入遺伝子を構築した。galk選択(Warmingら、2005;Muck-Hauslら、2015)を用いる細菌人工染色体(BAC)組換え戦略により、Ad5/3-E2F-d24-vIL-2ウイルスを作製した。相同組換えによって、導入遺伝子vIL-2をE3領域に挿入した。PCR増幅したvIL-2を、BAC-Ad5/3-E2F-Δ24-GalK/ampを内包するSW102細菌にエレクトロポレーションし、vIL-2導入遺伝子を有する陽性クローンを、デオキシグルコース選択によって識別した。配列を制限酵素分析によって確認した。PacI制限酵素(Thermo Scientific)を用いてBACからウイルスゲノムを放出させ、Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を用いてA549細胞にトランスフェクションした。次いで、vIL-2武装化Ad5/3ウイルスを、塩化セシウム勾配遠心分離によって2回精製した。光学密度及び組織培養感染率(TCID50)についてのアッセイを用いて、それぞれウイルス粒子(VP)濃度及び感染単位を測定した。
【0118】
動物実験
処置に起因する腫瘍の変化を長鎖するために、動物1匹当たり2×10HapT1細胞を、免疫能力を有する5週齢のシリアンハムスターの腰部の皮下に植え込んだ。平均腫瘍直径が0.5cmに到達したら、動物をランダム化して4つの群(n=13)に振り分けた。ウイルスAd5/3-E2F-d24、Ad5/3-E2F-d24-IL-2及びAd5/3-E2F-d24-vIL-2を1×10VPで腫瘍内投与し、モックは、PBSのみを受け入れた。ウイルスは、1日目、4日目、8日目及び13日目に注射した。
【0119】
各群から5匹の動物を16日目に安楽死させ、腫瘍を収集して、免疫学的変化及びmRNA発現レベルを評価した。
【0120】
遺伝子発現分析
16日目に採取した動物腫瘍サンプルの断片は、RNAlater(R0901;Sigma-Aldrich、St.Louis、USA)中に保存し、さらなる処理まで-20℃で貯蔵した。次いで、これらのサンプルから得たRNAを、製造業者の取扱説明書に従ってRNAeasy Mini Kit(74104;QIAGEN、Hilden、Germany)によって精製した。最終的なRNA収率を、Thermo Scientific NanoDrop(商標)1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific、Massachusetts、USA)によって測定し、サンプルのRNA濃度を20ng/μlに調整した。
【0121】
nCounter(登録商標)デジタルアナライザー(NanoString Technologies、Seattle、USA)を利用して、すべてのハムスター腫瘍のRNAサンプルを対象にして、NanoString nCounter(登録商標)遺伝子発現分析を実施した。101の遺伝子を内包するハムスター細胞用に設計されたカスタムパネルを、nSolverソフトウェア4.0(NanoString Technologies、Seattle、USA)によって分析することにより、遺伝子発現を査定した。差次的発現は、ボルケーノプロットにおいては、各遺伝子の-log10の値(p値)及びlog2倍率変化の値として表示されている。同様に、RNA数(Log2)としての差次的発現も棒グラフに表示されている。処置群の各遺伝子の発現レベルは、これらの処置群の各遺伝子に対応する、コントロール(Mock)群の遺伝子に対して正規化した。
【0122】
統計学的分析
GraphPad Prism GraphPad Prism(バージョン8.0.0.)を使用して、絶対的なmRNA発現レベルを提示した。Welchの補正を用いる対応のないt検定を実施して、異なる治療群間の差を査定した。ピアソンの相関係数を計算して、グランザイム産生と、SAP遺伝子又はバリアント型IL-2導入遺伝子の産生との相関を判定した。P値は、p<0.05の場合に有意であると考えた。
【0123】
結果
ウイルス療法を受けた腫瘍のトランスクリプトームを評価することによって、さらなるキャラクタリゼーションを実施した。Ad5/3-E2F-D24ウイルスによる処置との比較で、野生型IL-2又はバリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性ウイルスによって処置された腫瘍は、一見したところ同じくらいの数のアップレギュレーションされた遺伝子を明示した。両方の群におけるダウンレギュレーションプロファイルを評価すると、野生型IL-2は、バリアント型IL-2群に比べて、ダウンレギュレーションされた遺伝子が約34.5%多かった(図11)。野生型IL-2群が、アップレギュレーション又はダウンレギュレーションされた遺伝子のほとんどすべてについて、IL-2バリアントとの比較でより高い値を示したことに留意することは重要であり、このことは、以前に文献で述べられたIL-2の強力な生物学的効果とも合致する(図11)(Jiangら、2016)。しかしながら、Ad5/3-E2F-D24-vIL-2ウイルスが腫瘍収縮の促進及び全生存期間の延長に関して最も好結果の群だったため、ここでは、値の上昇が、総合効果(overall response)の向上であると解釈されるとは限らなかった。
【0124】
しかしながら、差次的発現分析を詳細に検討してみると、Ad5/3-E2F-D24-vIL-2ウイルスは、免疫抑制関連遺伝子よりも、T細胞受容体複合体及び下流シグナル伝達遺伝子に関連付けられた既知の遺伝子の発現を優先的に刺激することが明示された(図12及び図13)。重要なことに、バリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスによる処置は、最も高いTCR複合体遺伝子(CD3E、CD3D)の発現を誘導し(図12A)、これらのTCR複合体遺伝子は、ヒトにおいては、MHC結合の際のTCRの保持(harboring)及びTCR誘導シグナル伝達の開始を担当する(Ngoenkamら、2018)。さらに、バリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスによる処置は、野生型IL-2をコードするウイルスに比較して、既知の主要な下流シグナル伝達遺伝子(LCK、ITK、ZAP70)をアップレギュレーションした(図12A)。驚くべきことに、IL-2バリアントをコードするウイルスによる処置は、TCRの発現、係留(anchoring)及びシグナル伝達のために重要な一部の遺伝子(CD3G、SAP)のアップレギュレーションを刺激したが、野生型IL-2ウイルス群におけるこれらの遺伝子のレベルは、無変化のままだった(図12A)。統計学的に有意ではないとしても、これらのデータは、バリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスによる処置を受けると、予想外なことに、T細胞のTCR機能の活性が上昇することを示唆しており、このことは、本発明者らの知る限りでは、当技術分野において文書で報告されていなかった。実際、バリアント型IL-2ウイルスのみが、グランザイム及びパーフォリン(GZMK、GZMM、PRF1)の高発現を誘導することが可能だった(図12B)。エフェクター細胞傷害性細胞(T細胞及びナチュラルキラー細胞)から分泌されると、グランザイム及びパーフォリンは、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する(Voskoboinikら、2015)。実際、バリアント型IL-2導入遺伝子のmRNAの相対的発現と、GZMK遺伝子又はSAP1遺伝子の両方のmRNA数との相関度は高く、正であるが、GZMK遺伝子とSAP1遺伝子との間には、さらなる正の相関関係を認めることができる(図12C)。特に、グランザイムK及びグランザイムMの発現が、腫瘍溶解性アデノウイルスによっても、バリアント型IL-2タンパク質によっても誘導されることは、現行技術からは公知でない。
【0125】
最も高いTIM-3及びCTLA-4遺伝子の発現は、野生型IL-2をコードするウイルスによって処置された腫瘍において見受けられた(図13A)。これらの遺伝子は、ヒトにおいては、T細胞の機能を阻害することが一般に知られており(Ngoenkamら、2018)、したがって、潜在的には、免疫抑制環境の増進と関連している可能性がある。別の遺伝子PD-L1は、バリアント型IL-2ウイルスによる処置を受けても無変化のままだった(図13A)。マウス及びヒトの免疫抑制におけるPD-L1の役割を考えると、これは、バリアント型IL-2ウイルスによって処置された動物にある腫瘍において、低度の免疫抑制が可能だったことの一因になった可能性がある。野生型IL-2をコードするウイルスによって処置された動物から得た腫瘍においては、最も高いCD137(ヒト腫瘍反応性TILの活性化マーカー)の発現レベルが見受けられたが(図13A)、これは、これらの腫瘍における免疫抑制を打ち消すには不十分だった可能性がある。対照的に、CD27(共刺激マーカー)の発現は、バリアント型IL-2-ウイルス群においては増大した、野生型IL-2-ウイルス群においては無変化だった(図13A)。CD27を発現しているTILでは、テロメアがより長くなっていることが以前に報告されており、これにより、バリアント型IL-2が、最終分化に至っていないTILの存在を増加させる可能性があることが示唆されている。一方、CD27は、メモリーT細胞において高発現することが公知であり、多機能的な反応を発生させるものであると考えられた。これは、バリアント型IL-2腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍におけるより質の高い反応の可能にすることを示唆している。
【0126】
一方、ウイルスに起因する野生型IL-2の分泌により、ヒト及びマウスにおける既知の抗原提示細胞(CD80、CD86、CD40)の最も高い発現が起きた(図13B)。しかしながら、驚くべきことに、野生型IL-2をコードするウイルスによる処置は、バリアント型IL-2をコードするウイルスによる処置との比較で劣る、ハムスターにおける抗腫瘍有効性を示した。骨髄細胞等の免疫抑制細胞(CD11b、CD206、Arg1)の存在及び活性も、バリアント型IL-2をコードするウイルスにおいては、野生型IL-2ウイルスとの比較で低下しており、又は無変化だった(図13B)。一般的な技術とは著しく異なり、このような効果は、バリアント型IL-2タンパク質における特定の変異の目的が、他の免疫抑制細胞ではなく制御性T細胞が不要に標的化されることを主に防ぐことであることを考えれば、予期せぬものである。
【0127】
さらなる分析により、野生型IL-2又はバリアント型IL-2-ウイルス療法によって処置されたハムスターの腫瘍(図13C)においては、IL-6、TGFb、IL-10の全体的な遺伝子発現が減少している(図13C)ことが明らかになった。興味深いことに、野生型IL-2-ウイルス療法によって処置されたハムスターの腫瘍では、CCL3、TNF、IL-1b(図13C)(ヒト及びマウスにおいて炎症性サイトカインをコードする遺伝子)の発現が増加したが、野生型IL-2-ウイルスによって処置された腫瘍は、バリアント型IL-2ウイルスによって処置された腫瘍より大きいままだった。これに対する説明としては、公知のとおり抗腫瘍免疫におけるTNFの役割が不明瞭であり、慢性的なレベルにおいては、ヒトにおける腫瘍進行の一因となる可能性があるということが考えられる。
【0128】
要するに、バリアント型IL-2-ウイルスは、T細胞がTCRを保持する能力、シグナル伝達、T細胞阻害の低減及び骨髄細胞コンパートメントからの免疫抑制を促進する。これらの効果が寄与して、エフェクター細胞の細胞傷害機能が改善され、この結果として、バリアント型IL-2をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスによる療法は、他の治療群との比較で最良の生存期間及び抗腫瘍有効性を提供できるものになったと思われる。
【0129】
参考文献
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引用特許公報:
US9428567
US2019062395
WO2014170389
WO2016146894
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入遺伝子としてバリアント型インターロイキン2(vIL-2)ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項2】
前記バリアント型IL-2が、低減された受容体サブユニットIL-2Rαへの結合を示すが、IL-2Rβ結合活性及びIL-2Rγ結合活性を保持し、又は改善されたIL-2Rβ結合活性及びIL-2Rγ結合活性を有する、請求項1に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項3】
腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの骨格が、アデノウイルス血清型5(Ad5)若しくは血清型3(Ad3)核酸骨格であり、又は、アデノウイルス血清型3(Ad3)のファイバーノブを有するアデノウイルス血清型5(Ad5)骨格である、請求項2に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項4】
バリアント型インターロイキン2(vIL-2)ポリペプチドをコードする前記核酸配列が、前記腫瘍溶解性アデノウイルスベクターのE3領域内の欠失核酸配列の場所にある、請求項2又は3に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項5】
E3領域内の核酸配列の欠失が、ウイルスgp19k及び6.7kリーディングフレームの欠失である、請求項4に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項6】
前記腫瘍溶解性アデノウイルスベクターのアデノウイルスE1配列内に24bp欠失(Δ24)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項7】
Ad5/3ファイバーノブを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項8】
Ad5/3-E2F-d24骨格を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項9】
構造Ad5/3-E2F-d24-vIL-2を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項10】
前記核酸配列が、配列番号:2に規定の位置にある置換L80F、R81D、L85V、I86V及びI92Fを含むバリアント型IL-2ポリペプチドをコードする、請求項1から9いずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項11】
さらなる導入遺伝子をコードする核酸配列を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項12】
さらなる導入遺伝子が、サイトカインをコードしている、請求項11に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項13】
サイトカインが、TNFα、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、補体C5a、CD40L、IL12、IL-23、IL15、IL17、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14-1、CCL14-2、CCL14-3、CCL15-1、CCL15-2、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23-1、CCL23-2、CCL24、CCL25-1、CCL25-2、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L1、CCL4、CCL4L1、CCL5(=RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR2、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCRL1、CCRL2、CX3CL1、CX3CR、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7及びXCL2からなるリストより選択される、請求項12に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項14】
サイトカインが、TNFαである、請求項12に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターと、生理学的に許容されるキャリア、バッファー、賦形剤、アジュバント、添加剤、消毒薬、保存料、充填剤、安定剤及び/又は増粘剤のうちの少なくとも1種とを含む、医薬組成物。
【請求項16】
がん又は腫瘍、好ましくは固形腫瘍の処置において使用するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター又は請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
がん又は腫瘍が、鼻咽腔がん、滑膜がん、肝細胞がん、腎臓がん、結合組織のがん、メラノーマ、肺がん、腸がん、結腸がん、直腸がん、大腸がん、脳がん、咽喉がん、口腔がん、肝臓がん、骨がん、膵臓がん、絨毛がん、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォン・ヒッペル-リンドウ病、ゾリンジャー-エリソン症候群、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、尿管がん、脳がん、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨がん、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位のがん、カルチノイド、消化管のカルチノイド、線維肉腫、乳がん、パジェット病、子宮頸がん、食道がん、胆嚢がん、頭部がん、眼がん、頸部がん、腎臓がん、ウィルムス腫瘍、カポジ肉腫、前立腺がん、精巣がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔がん、皮膚がん、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、内分泌膵臓がん、グルカゴノーマ、膵臓がん、副甲状腺がん、陰茎がん、下垂体がん、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸がん、胃がん、胸腺がん、甲状腺がん、絨毛がん、胞状奇胎、子宮がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、聴神経腫、菌状息肉症、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチン産生腫瘍、歯肉がん、心臓がん、口唇がん、髄膜がん、口腔のがん、神経がん、口蓋がん、耳下腺がん、腹膜がん、咽頭がん、胸膜がん、唾液腺がん、舌がん及び扁桃腺がんからなる群より選択される、請求項16に記載のがん又は腫瘍の処置において使用するための、腫瘍溶解性アデノウイルスベクター又は医薬組成物。
【請求項18】
養子細胞療法用組成物と一緒にして、請求項16又は17に記載のがんの処置において使用するための、腫瘍溶解性アデノウイルスベクター又は医薬組成物。
【請求項19】
対象における養子細胞療法の有効性を向上させるという目的で、請求項18に記載のがんの処置において使用するための、腫瘍溶解性アデノウイルスベクター又は医薬組成物。
【請求項20】
対象への放射線療法、モノクローナル抗体、化学療法、低分子型阻害剤、ホルモン療法又は他の抗がん薬若しくは介入と一緒にして、請求項16から19のいずれか一項に記載のがんの処置において使用するための、腫瘍溶解性アデノウイルスベクター又は医薬組成物。
【請求項21】
薬学的に有効な量の請求項1から14のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター又は請求項15に記載の医薬組成物が、対象に投与される、対象のがん又は腫瘍を処置する方法。
【請求項22】
がん又は腫瘍が、鼻咽腔がん、滑膜がん、肝細胞がん、腎臓がん、結合組織のがん、メラノーマ、肺がん、腸がん、結腸がん、直腸がん、大腸がん、脳がん、咽喉がん、口腔がん、肝臓がん、骨がん、膵臓がん、絨毛がん、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォン・ヒッペル-リンドウ病、ゾリンジャー-エリソン症候群、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、尿管がん、脳がん、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨がん、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位のがん、カルチノイド、消化管のカルチノイド、線維肉腫、乳がん、パジェット病、子宮頸がん、食道がん、胆嚢がん、頭部がん、眼がん、頸部がん、腎臓がん、ウィルムス腫瘍、カポジ肉腫、前立腺がん、肺がん、精巣がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔がん、皮膚がん、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、内分泌膵臓がん、グルカゴノーマ、副甲状腺がん、陰茎がん、下垂体がん、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸がん、胃がん、胸腺がん、甲状腺がん、絨毛がん、胞状奇胎、子宮がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、聴神経腫、菌状息肉症、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチン産生腫瘍、歯肉がん、心臓がん、口唇がん、髄膜がん、口腔のがん、神経がん、口蓋がん、耳下腺がん、腹膜がん、咽頭がん、胸膜がん、唾液腺がん、舌がん及び扁桃腺がんからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍溶解性アデノウイルスベクターが、養子細胞療法用組成物と一緒に投与される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
対象への養子細胞療法用組成物及び腫瘍溶解性ベクターの投与が、同時に実施され、又は任意の順番で連続して実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
同時に又は逐次に行われる型の放射線療法、モノクローナル抗体、化学療法、低分子型阻害剤、ホルモン療法、養子細胞療法又は他の抗がん薬若しくは介入を対象に施用することをさらに含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
がん又は腫瘍の処置用の医薬の製造のための、請求項1から14のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ベクターの使用。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図2
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図2
【誤訳訂正4】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図3
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図3
【誤訳訂正5】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図4
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図4
【誤訳訂正6】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図5
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図5
【誤訳訂正7】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図6
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図6
【誤訳訂正8】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図7
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図7
【誤訳訂正9】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図8
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図8
【誤訳訂正10】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図9-1
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図9-1】
【誤訳訂正11】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図9-2
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図9-2】
【誤訳訂正12】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図10
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図10
【誤訳訂正13】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図11A
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図11A
【誤訳訂正14】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図11B
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図11B
【誤訳訂正15】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図11C
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図11C
【誤訳訂正16】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図12-1
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図12-1】
【誤訳訂正17】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図12-2
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図12-2】
【誤訳訂正18】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図13
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13
【手続補正2】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正4
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正5
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正6
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正7
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正8
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正9
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正10
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正11
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正12
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正11】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正13
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正12】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正14
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正13】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正15
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正14】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正16
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正15】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正17
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正16】
【補正対象書類名】誤訳訂正書
【補正対象項目名】誤訳訂正18
【補正方法】削除
【補正の内容】
【国際調査報告】