(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(54)【発明の名称】セラミック複合材料
(51)【国際特許分類】
C04B 41/82 20060101AFI20230207BHJP
B32B 18/00 20060101ALI20230207BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C04B41/82 B
B32B18/00 C
B32B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535821
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 US2020064649
(87)【国際公開番号】W WO2021119514
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/065978
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520439715
【氏名又は名称】ネルンボ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】モンテス,ニコラス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルサー,デビッド・シー
(72)【発明者】
【氏名】ブロックウェイ,ランス・アール
(72)【発明者】
【氏名】ディアス,エリック・エル
(72)【発明者】
【氏名】タギ,アブヒシェク
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA17A
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4F100AA19A
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4F100AK52A
4F100AK53A
4F100AK54A
4F100AN01A
4F100AP00B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DJ00A
(57)【要約】
基材上のセラミック材料の相互連結したネットワークが、少なくとも部分的に、ポリマー、樹脂、及び/またはワックスが充填された、アクセス可能な細孔容積を有する細孔を含む複合セラミック材料が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)多孔質セラミック材料中に含浸されたポリマー、ワックス、及び/または樹脂を含む複合材料であって、前記多孔質セラミック材料が、セラミックの相互連結したネットワーク、及び少なくとも部分的に、前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が充填されたアクセス可能な細孔容積を含む前記複合材料と、
(ii)基材と
を含み、
前記複合材料が前記基材と接触している組成物。
【請求項2】
前記基材及び前記セラミック材料がそれぞれ一次金属を含み、前記セラミック材料中の前記一次金属が前記基材中の前記一次金属とは異なる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記複合材料の厚さが約1マイクロメートル~約100マイクロメートルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記複合材料中の総セラミック含有量の少なくとも約20質量%が相互連結している、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
セラミック材料の相互連結したネットワークが約10平方マイクロメートルよりも大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記複合材料が複数のセラミック材料の相互連結したネットワークを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記複数のセラミック材料の相互連結したネットワーク内の1つのセラミック材料の相互連結したネットワークの面積の中央値が約10平方マイクロメートルよりも大きい、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記セラミック材料が、希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素、またはアルミニウムを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記セラミック材料が、酸化物、水酸化物、及び/または層状複水酸化物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記酸化物、水酸化物、及び/または層状複水酸化物が、鉄、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、亜鉛、マンガン、チタン、クロム、ニッケル、コバルト、銅、銀、タンタル、タングステン、ケイ素、リン、スズ、バナジウム、ジルコニウム、カルシウム、バリウム、またはユーロピウムを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記基材が、アルミニウム合金、鋼合金、ニッケル合金、チタン合金、ポリマー、セルロース系材料、多糖、木材、綿、またはガラスを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が、同一の基材上に前記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスを含まない同一のセラミック材料と比較して、向上した硬度、弾性、粘弾性、接着性、熱特性、審美的外観、撥液性、及び耐食性から選択される1種以上の機能的特性を付与する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記セラミック材料が結合剤不含セラミック材料である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が、桐油、亜麻仁油、胡桃油、天然ゴム、セルロース、またはキチン由来のポリマーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリアクリラート、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテル、ポリクロロプレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン、ポリ(ジメチルシロキサン)、またはポリエポキシドポリマーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が、シラン、ケイ酸塩、シリコナート、ポリシラザン、オルガノトリエトキシシラン、またはオルガノトリメトキシシランを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が、ケイ酸カリウムメチル、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、またはケイ酸ナトリウムメチルを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が、石油ワックス、動物由来ワックス、植物由来ワックス、または鉱物由来ワックスを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が、パラフィンワックス、ミツロウ、ラノリン、シェラック、パームワックス、カルナウバワックス、大豆ワックス、セレシン、またはモンタンを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、色素、UV安定剤、フリーラジカルスカベンジャー、及び架橋剤から選択される1種以上のさらなる添加剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記添加剤が、粘度、可撓性、可燃性、色彩、UV安定性、化学反応性、及び架橋度から選択される1種以上の特性を前記複合材料に付与する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
水銀ポロシメトリー試験によって測定して、前記アクセス可能な細孔容積の約1%超に、前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が充填されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスの厚さが、前記セラミック材料の厚さの約1.5倍未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記セラミック材料が前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料と相互作用し、それによって、前記ポリマー、ワックス、及び/もしくは樹脂の架橋速度ならびに/または架橋度が、前記ポリマー、ワックス、及び/もしくは樹脂が、前記セラミック材料を含まない同一の基材に直接塗布される場合の架橋速度ならびに/または架橋度と比較して増加する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記セラミック材料が前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料と相互作用し、それによって、前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料の結晶化度が、前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料が、前記セラミック材料を含まない同一の基材に直接塗布される場合の結晶化度と比較して増加する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記セラミック材料が前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料と相互作用し、それによって、前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料のUV分解の速度が、前記セラミック材料を含まない同一の基材に直接塗布された前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料のUV分解の速度と比較して低下する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記セラミック材料がマグネシウム、マンガン、酸化亜鉛、または酸化アルミニウムもしくは水酸化アルミニウムを含み、前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が桐油またはパラフィンなどの乾性油を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記セラミック材料がマグネシウム、マンガン、酸化亜鉛、または酸化アルミニウムもしくは水酸化アルミニウムを含み、前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が前記セラミック材料と化学的に反応して、前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂の特性を改変する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂の前記特性を改変するための化学反応が、架橋、硬化、及び/または重合を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記基材の腐食に対する保護;接着性及び/または表面汚れに対する耐久性改質剤;接着の促進または遅延の構成;表面の触覚改質;撥液用途;光学特性の改質;硬度、弾性、及び粘弾性などの機械的改質;表面ならびに引っかき傷の自己修復及び修復の目的;分離用途;電気的特性の改質または電気特性用途;氷、コンデンセート、及び霜の軽減ならびに/または改変;表面均一性;欠陥の低減;ならびに審美的特性から選択される1種以上の機能的特性を付与するために、前記基材に前記複合材料が塗布され、
同一の基材上の、前記ポリマー、樹脂、及び/もしくはワックスを含まない同一の多孔質セラミック材料と比較して、または前記ポリマー、樹脂、及び/もしくはワックスが直接塗布された同一の基材と比較して、前記機能的特性が改善されるか、あるいはその程度がより大きい、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記複合材料が、前記複合材料の総容積の約40%を超えるセラミック容積濃度を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月12日に出願したPCT出願第PCT/US2019/065978号の優先権を主張しており、かつ、2020年3月13日に出願した米国仮出願第62/989,092号、2020年3月13日に出願した米国仮出願第62/989,150号、2020年6月12日に出願した第63/038,642号、2020年6月12日に出願した第63/038,693号、及び2020年6月16日に出願した第63/039,965号の利益を主張するものであって、それらの全内容を、本明細書で援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、セラミック複合材料、詳細には、セラミックの相互連結したネットワークが、少なくとも部分的に、ポリマー、樹脂、及び/またはワックスが充填されたアクセス可能な細孔容積を含む、多孔質セラミック材料の複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
複合材料は、当該複合材料を構成する各材料の特性を合体させることにより、相乗的な利点を提供することができる。金属基材、特にアルミニウム基材には、接着した層の接着性が不十分である場合があるという問題があり、また、自然酸化物が損なわれた場合に腐食する可能性があるという問題もある。ポリマー、樹脂、及びワックス材料を使用して、その下の基材を保護する、または上記基材の環境との相互作用の形態を改変することがよく行われる。これらの材料を平滑な金属基材に直接塗布すると、接着性の不足、もしくは、垂れ、流れ、及びまだらなどの審美的な問題、または塗布する材料の量に関連するその他の問題が生じる場合がある。より高い接着性、均一性、及び/または審美的特性を備えた材料が望まれる。
【発明の概要】
【0004】
複合材料及び上記複合材料を含む組成物が提供される。上記複合材料の用途も提供される。
【0005】
一態様において、(i)多孔質セラミック材料中に含浸されたポリマー、ワックス、及び/または樹脂を含む複合材料であって、上記多孔質セラミック材料が、少なくとも部分的に、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスが充填されたアクセス可能な細孔容積を有する細孔の相互連結したネットワークを含む上記複合材料と、(ii)基材とを含み、上記複合材料が上記基材と接触している組成物が提供される。いくつかの実施形態において、上記複合材料の少なくとも一部または実質的に全ては、上記基材と直接的に接触している。いくつかの実施形態において、上記セラミック材料の少なくとも20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%、または90質量%が相互連結している。
【0006】
いくつかの実施形態において、上記基材及び上記セラミック材料はそれぞれ一次金属を含み、上記セラミック材料中の上記一次金属は上記基材中の上記一次金属とは異なる。他の実施形態において、上記基材及び上記セラミック材料はそれぞれ一次金属を含み、上記セラミック材料中の上記一次金属は上記基材中の上記一次金属と同一である。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記複合材料の厚さは約1マイクロメートル~約100マイクロメートルである。
【0008】
上記セラミック材料は、希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素、またはアルミニウムを含んでいてもよい。上記セラミック材料は、酸化物、水酸化物、及び/または層状複水酸化物を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、上記酸化物、水酸化物、及び/または層状複水酸化物は、鉄、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、亜鉛、マンガン、チタン、クロム、ニッケル、コバルト、銅、銀、タンタル、タングステン、ケイ素、リン、スズ、バナジウム、ジルコニウム、カルシウム、バリウム、またはユーロピウムを含む。
【0009】
上記基材は、アルミニウム合金、鋼合金、ニッケル合金、チタン合金、ポリマー、多糖、またはセルロース系材料(例えば、木材、綿)、またはガラスを含んでいてもよい。
【0010】
さまざまな実施形態において、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂は、上記複合材料に、同一の基材上に上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂を含まない同一のセラミック材料と比較して、向上した硬度、弾性、粘弾性、接着性、熱特性、審美的外観、撥液性、消音、光散乱、及び耐食性から選択される1種以上の機能的特性を付与する。
【0011】
一実施形態において、上記セラミック材料は結合剤不含セラミック材料である。いくつかの実施形態において、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂は、桐油、亜麻仁油、胡桃油、天然ゴム、セルロース、またはキチン由来のポリマーなどの天然ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの合成ポリマー、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテル、ポリクロロプレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン、ポリ(ジメチルシロキサン)、またはポリエポキシドポリマーなどのポリアクリラートを含む。いくつかの実施形態において、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂は、シラン、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム)、シリコナート(例えば、ケイ酸カリウムメチル、ケイ酸ナトリウムメチル)、オルガノトリエトキシシラン、またはオルガノトリメトキシシラン、ポリシラザン(例えば、Durazane 1500、Durazane 1800、もしくはDurazane 2200)を含む。一実施形態において、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂は、石油ワックス(例えば、パラフィンワックス)、動物産生ワックス(例えば、ミツロウ、ラノリン、シェラック)、植物由来ワックス(例えば、パームワックス、カルナウバワックス、大豆ワックス)、または鉱物由来ワックス(例えば、セレシン、モンタン)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂は、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、色素、UV安定剤、フリーラジカルスカベンジャー、または架橋剤などの、但しこれらに限定されない、1種以上のさらなる添加剤を含む。例えば、上記添加剤は、粘度、可撓性、可燃性、色彩、UV安定性、化学反応性、及び/もしくは架橋度などの、但しこれらに限定されない、1種以上の構造的または機能的特性を上記複合材料に付与することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、水銀ポロシメトリー試験によって測定した、上記セラミック材料の上記細孔容積の少なくとも約1%、例えば、約1%~約99%に、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が充填されている。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスの厚さは、上記セラミック材料の厚さの約1.5倍未満である。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記セラミック材料は、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料と相互作用し、それによって、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂の1種以上の特性が変化する。一例において、上記相互作用によって、上記ポリマー、ワックス、及び/もしくは樹脂の架橋速度ならびに/または架橋度、例えば、炭素鎖の架橋速度ならびに/または架橋度が、上記ポリマー、ワックス、及び/もしくは樹脂が、上記セラミック材料を含まない同一の基材に直接塗布される場合の架橋速度ならびに/または架橋度と比較して増加する場合がある。別の例において、上記相互作用によって、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料の結晶化度が、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料が、上記セラミック材料を含まない同一の基材に直接塗布される場合の結晶化度と比較して増加する場合がある。別の例において、上記相互作用によって、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料のUV分解の速度が、上記セラミック材料を含まない同一の基材に直接塗布された上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂材料のUV分解の速度と比較して低下する場合がある。非限定的な一例において、上記セラミック材料中の酸化亜鉛はUV吸収剤として作用する場合がある。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記セラミック材料はマグネシウム、マンガン、酸化亜鉛、または酸化アルミニウムもしくは水酸化アルミニウムを含み、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂は桐油またはパラフィンなどの乾性油を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記セラミック材料はマグネシウム、マンガン、酸化亜鉛、または酸化アルミニウムもしくは水酸化アルミニウムを含み、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂は上記セラミック材料と化学的に反応して、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂の1種以上の特性を改変する。例えば、上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂の上記特性(複数可)を改変するための化学反応が、上記ポリマー、ワックス、及び/もしくは樹脂の架橋、硬化、ならびに/または重合を含んでいてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記基材の腐食に対する保護;接着性及び/もしくは表面汚れに対する耐久性改質剤;接着の促進または遅延の構成;表面の触覚改質;撥液用途;光学特性の改質;硬度、弾性、及び粘弾性などの機械的改質;表面ならびに引っかき傷の自己修復及び修復の目的;分離用途;電気的特性の改質または電気特性用途;氷、コンデンセート、及び霜の軽減ならびに/もしくは改変;または審美的特性などの、但しこれらに限定されない1種以上の機能的特性を上記基材に提供するために、本明細書に記載の複合材料が使用され、上記機能的特性が、同一の基材上の、上記ポリマー、樹脂、及び/もしくはワックスを含まない同一の多孔質セラミック材料よりも改善される、またはその程度がより大きいか、あるいは同一の基材に直接塗布された上記ポリマー、樹脂、及び/もしくはワックスと比較して、改善される、またはその程度がより大きい。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記複合材料は、塗料の臨界顔料/セラミック容積濃度を超える臨界顔料/セラミック容積濃度を含む。いくつかの実施形態において、上記顔料/セラミックの容積濃度は、上記複合材料の総容積の約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%のいずれかを超える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】例1に記載のセラミック材料のX線回折スペクトルを示す図である。
【
図2】例11に記載の、多孔質セラミックでコーティングされた、複合材料でコーティングされた、及びコーティングされていないアルミニウム板の比較を示す図である。A:多孔質セラミック表面、B:RTVシリコーンが部分的に充填された多孔質セラミック表面、C:RTVシリコーンでトップコーティングされたアルミニウム板
【
図3】例12に記載の、多孔質セラミックでコーティングされた、複合材料でコーティングされた、及びコーティングされていないアルミニウム板の比較を示す図である。A:多孔質セラミック表面、B:PDMSでトップコーティングされた多孔質セラミック表面、C:PDMSでトップコーティングされたアルミニウム板
【
図4】例16に記載の、腐食性塩の噴霧に供した、多孔質セラミックでコーティングされた、複合材料でコーティングされた、及びコーティングされていないアルミニウム板の比較を示す図である。A:多孔質セラミック表面、B:ポリウレタン表面処理剤でコーティングされたアルミニウム板、C:ポリウレタントップコート剤が充填された多孔質セラミック
【
図5】例17に記載の、碁盤目密着性試験に供した、多孔質セラミックでコーティングされた、複合材料でコーティングされた、及びコーティングされていないアルミニウム板の比較を示す図である。A:多孔質セラミック表面、B:ポリアクリル系シーラントでコーティングされたアルミニウム板、C:ポリアクリル系シーラントが充填された多孔質セラミック
【
図6】アクリル系シーラントでコーティングされた場合に、アルミニウム板上で観察されたたるみ、目視でのコーティングの欠陥の比較を示す図である。A:アクリル系シーラントでコーティングされたアルミニウム板はたるみを示し;B:アクリル系シーラントでコーティングされた多孔質セラミック表面にはたるみ欠陥がない。
【
図7】多孔質セラミック基材上でのセルフレベリング効果の経時的な進行の、剥き出しのアルミニウム基材との比較を示す図である。酸化亜鉛系(B)及び酸化マンガン系(C)多孔質セラミック基材上では、剥き出しのアルミニウム板(A)と比較して、10分間でより小さなエポキシ系樹脂との接触角が得られた。
【
図8】多孔質セラミック基材上で観測されたセルフレベリング効果の比較を示す図である。剥き出しのアルミニウム基材と比較して、亜鉛系及びマンガン系のコーティングされた多孔質セラミック基材上では、示されたエポキシ系樹脂との接触角はより小さく、延いては、より大きなセルフレベリングを示した。
【
図9】例22に記載の混合亜鉛/アルミニウム酸化物及び混合マンガン/アルミニウム酸化物セラミックでコーティングされたアルミニウム板上のパラフィンワックスのウィッキング挙動を示す図である。
【
図10】剥き出しのアルミニウムと比較して、Zn及びMn系多孔質セラミックでコーティングされた基材上でのパラフィンワックスの経時的な進行のウィッキング挙動を示す図である。多孔質セラミックでコーティングされた基材上では、剥き出しのアルミニウム板と比較して、より大きなウィッキング、延いては向上した(より均一な)被覆が5分で得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書ではセラミック複合材料が提供される。上記複合材料は、相互連結したセラミックネットワークを含む多孔質セラミック材料を含む。アクセス可能な細孔容積の少なくとも一部に、ポリマー、樹脂、及び/またはワックスが少なくとも部分的に充填されている。上記セラミック複合材料は基材上に積層される。本明細書に記載の複合材料は、基材に対する良好な接着などの有益な特性を提供し、金属基材などの基材に均一な外部コーティングを塗布するために、ならびに/あるいは本明細書に記載の基材に直接塗布されたポリマー、樹脂、及び/もしくはワックスに伴うことが多い垂れ、流れ、及びまだらの最小化または排除などの、但しこれらに限定されない望ましい審美的特性を付与するために使用することができる。
【0022】
定義
本明細書で提供する数値範囲は、その範囲を定義する数字を含む。
【0023】
「A」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に指示されていない限り、複数形の対象を含む。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する句「及び/または(and/or)」は、そのように結合した要素、すなわち、そのように結合した「いずれか、または、両方(either or both)」、すなわち、これら要素が、ある事例では、コンジュケートしており、そして、その他の事例では、コンジュケートしていない、と意味することを理解するべきである。文脈で明確に指示されていない限り、それら要素が特異的に定めたものと関連していても、または、関連していなくとも、句「及び/または(and/or)」で明確に示した要素以外は、その他の要素は任意に存在する。したがって、「A及び/またはB」の記載は、「含む(comprising)」などのオープンエンド言語と組み合わせて使用すると、いくつかの実施形態において、Bが無い状態のA(B以外の要素を任意に含む);別の実施形態では、Aが無い状態のB(A以外の要素を任意に含む);なおも別の実施形態では、A及びB(その他の要素を任意に含む)を指す、などがあるが、これらに限定されない。
【0025】
「結合剤(Binder)」または結合剤(binding agent)は、その他の材料を一緒に保持して、または引き寄せて、全体を機械的、化学的に接着して形成するあらゆる材料または物質である。
【0026】
「結合剤不含」とは、特に、有機結合剤または樹脂(ポリマー、接着剤(glues)、接着剤(adhesives)、アスファルトなど)、または無機結合剤(石灰、セメントガラス、石膏など)に関して、構造的完全性を改善するために、一次材料に外因的に添加できる結合剤が無い、ことを意味する。
【0027】
「キャピラリークライム」とは、多孔質基材が故に、液体の自由表面と接触させることで、試料を押し上げる液体の表面張力(キャピラリークライムは、重力による力(ベクトル)の方向と平行であり、かつ、反対である)を指す。
【0028】
「セルロース系」材料とは、セルロースまたはセルロースの誘導体、例えば、セルロースのエーテルもしくはエステルから構成されるか、あるいはそれらを含む材料を指す。
【0029】
「セラミック」または「セラミック材料」は、金属または半金属の無機化合物、及びイオン結合または共有結合を有する非金属を含む固体材料を指す。「非金属」は、酸素(酸化物セラミック)、または炭素(炭化物)、または窒素(窒化物)(非酸化物セラミック)を含み得る。「金属」として、周期表の第1族の非水素元素、周期表の第2~12族の元素、またはpブロックの元素(周期表の第12~17族)、例えば、Al、Ga、In、TI、Sn、Pb、Bi、またはそれらの組み合わせがある。「メタロイド」として、B、Si、Ge、As、Sb、Se、Te、またはPo、またはそれらの組み合わせがある。
【0030】
「接触角」とは、液体によって測定される、接触面における表面と気液界面との間の角度を指す。
【0031】
「隣接する(Contiguous)」または「隣接(contiguity)」とは、互いに直接に接触する壁及び特徴を含む、または個々の細孔または構造に対して大きな領域または寸法において共通の壁を共有する細孔及び構造を指す。
【0032】
「加工塗膜」とは、反応物が、処理する表面と化学的に反応して、基材を別の化合物に変換する表面層を指す。このプロセスは、一般的に、付加的すなわち積層ではなく、わずかな質量変化を招き得る。
【0033】
「第1四分位細孔径」とは、細孔径が大きくなる方向において決定する累積細孔表面積が、BJHガスの吸着/脱着測定で決定する総累積細孔表面積の25%に相当する細孔径の値を指す。
【0034】
「機能性材料層」とは、周囲の環境と相互作用する最上部の表面層として機能する、または、後続の材料の界面層(その他の2つの材料層での中間層)として機能する材料の層を指す。機能性材料層は、下方にある基材、及び/またはその上に上記機能性材料層が積層された材料に1種以上の望ましい機能的特性を付与する。
【0035】
「勾配」とは、本明細書では、材料を配置または固定化する基材表面に沿って、ある点から別の点に空間的に通過させる、そして、材料上または材料を通るデカルト座標のx、y、またはz方向を変化させて認められる、材料の1つ以上の物理的または化学的特性の量的増加または減少のことを指している。勾配特性の非限定的な例として、厚み、密度、硬度、延性、細孔サイズ、細孔サイズ分布、細孔充填率、または、化学的または物理的組成があり、例えば、酸化状態、金属濃度、または架橋密度があり、その結果、等電点、電気伝導率、熱伝導率、静電容量などが変動するが、これらに限定されない。
【0036】
「親水性」とは、水との親和性が高い表面を指す。接触角は非常に小さく(例えば、空気の存在下で、液体の水を介して表面から測定して30度未満)、及び/または測定不可能である。
【0037】
「含浸された」ポリマー、樹脂、及び/またはワックスとは、本明細書に記載の多孔質セラミック材料の細孔内に分散したポリマー、樹脂、及び/またはワックスを指す。
【0038】
「相互連結したセラミックネットワーク」または「セラミックの相互連結したネットワーク」とは、セラミック材料のネットワークまたはマトリクスであって、該ネットワーク中のセラミック材料が、該ネットワーク中の他のセラミック材料と物理的に接触している(連結している)上記ネットワークを指す。これは、塗料などの、個々のセラミック粒子が、結合剤、樹脂、油、またはワックスなどの媒体中に懸濁し、当該セラミック粒子が互いに固定接触していない、セラミック粒子を含む懸濁液とは対照をなす。本明細書に記載の相互連結したセラミックネットワークは、巨視的な面積または容積にわたって連続するセラミック相であり、該セラミック内に、別の材料を充填するまたは部分的に充填することができるアクセス可能な細孔容積を有する細孔(解放空間)を含んでいてもよい。
【0039】
「層状複水酸化物」とは、一般的な配列[AcB Z AcB]nの層状構造を特徴とするイオン性固体のクラスのことを指しており、式中、cは、金属カチオンの層である、AとBは水酸化物アニオンの層である、及び、Zは、その他の陰イオン及び/または中性分子(水など)の層である。層状複水酸化物は、PCT出願第PCT/US2017/052120号にも記載されており、この文献は、参照により、その全内容を本明細書で援用する。
【0040】
「マクロボイド(macro void)」とは、個々の細孔または特徴(例えば、膜厚)の特徴的寸法よりも実質的に大きな特徴的寸法、例えば、特徴的寸法よりも、少なくとも約5倍~約10倍、または約10倍~約100倍を有する固体内部の幾何学的空間を指す。
【0041】
「平均」とは、算術的平均(mean)または平均(average)を指す。
【0042】
「平均細孔径」は、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)吸着/脱着法で求めた総表面積と総容積の測定値を使用して、円筒形の細孔とみなして、4倍の総細孔容積を総細孔表面積で割って(4V/A)計算する。
【0043】
「多峰性」とは、複数の異なるピークとして出現する複数の異なるモードを含む分布を指す。
【0044】
流体力学における「透過性」とは、多孔質材料が流体を通過させる能力の尺度である。媒体の透過性は、多孔性のみならず、媒体の細孔の形状と、それらの連結性のレベルにも関係する。
【0045】
「細孔径分布」とは、水銀圧入ポロシメトリー(MIP)、Washburnの式で決定するそれぞれの細孔径または範囲または細孔径の相対的な存在量を指す。
【0046】
「空隙率」とは、材料内の空隙(つまり「空である」)空間の尺度であり、また、空隙の容積の割合は、0と1との間、または、0%~100%の間の総容積を超える、すなわち、マクロ空隙である。本明細書に開示した空隙率は、水銀圧入ポロシメトリーで測定した。
【0047】
「多孔質」とは、固体材料内の空間、穴、または空隙を指す。
【0048】
本明細書では、「樹脂」とは、部分的にもしくは完全にポリマーへと転化される、または転化することができる植物または合成起源の化合物の混合物を含む、固体あるいは高粘度の物質を指す。
【0049】
「超疎水性」とは、非常に濡れにくい表面を指す。本明細書に記載した超疎水性表面での超疎水性材料の水滴の接触角とは、液滴接触角>150°を指す。疎水性の大きな接触角は、>120°である。本明細書に記載の接触角は、液体を介して表面間に形成される角度のことである。
【0050】
「対象とする基材面積の平方メートルあたりの表面積」とは、実際に測定した表面積のことを指しており、通常は、平方メートルで測定をしており、原子的に滑らかであれば(粗くなければ)、通常は、平方メートルで基材の表面積で除算する。
【0051】
「相乗効果(Synergy)」または「相乗的な(synergistic)」とは、2つ以上の物質、材料、または作用物質の間の相互作用または相互連携のことを指しており、それらの個々の個別の効果の合計よりも大きい(正の相乗効果)、または小さい(負の相乗効果)複合効果を生み出す。
【0052】
「膜厚」は、基材の表面と、表面改質剤(例えば、セラミック)の頂部との間の長さを指す。
【0053】
「第3四分位細孔径」とは、細孔径が大きくなる方向において決定する累積細孔表面積が、BJHガスの吸着/脱着測定で決定する総累積細孔表面積の75%に相当する細孔径の値を指す。
【0054】
「屈曲度」とは、多孔質構造Δlを通る最短経路の割合と、その経路Δxの始点と終点の間のユークリッド距離を指す。
【0055】
「調節可能」とは、材料の機能、特性、または品質を、変更または修正する能力を指す。
【0056】
本明細書では、「ワックス」とは、一般に、中程度の温度では、親油性であり、展性のある固体であり、高温ではより低い粘度の液体である、炭化水素を含む、天然に産生されるかまたは合成される有機化合物を指す。ワックスは通常、長い脂肪族アルキル鎖を含み、脂肪酸、脂質、アルカン、一級及び二級アルコール、ケトン、アルデヒド、及び脂肪酸エステルを含むさまざまな官能基を含むこともあってよい。合成ワックスは多くの場合、官能基をもたない同族列の長鎖脂肪族炭化水素(アルカンまたはパラフィン)を含む。
【0057】
セラミック複合材料
セラミック複合材料が本明細書で提供される。本複合材料は、相互連結したセラミックネットワークの細孔内に含浸されたポリマー、ワックス、及び/または樹脂を含む。上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂が、上記セラミックネットワークのアクセス可能な細孔容積の少なくとも一部に、少なくとも部分的に充填されている。上記セラミックネットワークは、セラミックベース材料ネットワーク内の細孔の集合体を含む。上記細孔は、相互連結している(通常オープンセル)、独立している(通常クローズドセル)、または相互連結と独立との組み合わせ(混合セル)であってもよい。上記細孔は、セラミック層によって流体的に分離されていてもよいが、細孔の間のセラミックによって連結(linked)または連結(connected)していてもよい。例えば、上記セラミックの少なくとも約20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、98質量%、99質量%、または99.5質量%のいずれかが相互連結している(細孔間のセラミック材料が他のセラミック材料と接触している)、すなわち、ポリマー、樹脂、及び/またはワックスなどの別の材料に囲まれた、連結していないセラミック粒子とは対照をなす。
【0058】
本明細書に記載のセラミック複合材料は、塗料においては、顔料またはセラミックの粒子が懸濁状態にあり、塗料が表面に塗布されると、顔料またはセラミックの粒子は、一般に、該塗料内の他のセラミック粒子または顔料よりもむしろ、樹脂、ポリマー、ワックス、または油に周囲を囲まれ、且つこれらと物理的に接触しているという点で塗料とは異なる。相互連結したセラミックネットワークを含む本明細書に記載のセラミック組成物材料とは対照的に、塗料中の顔料またはセラミックの粒子は、塗料配合物中で懸濁状態にあり、互いに固定接触していない。塗料は通常、結合剤がすべての顔料を確実にコーティングできるように、相互連結した顔料またはセラミックのネットワークの形成を防ぐように、且つボイドを防ぐように、臨界顔料容積濃度未満で配合される。本明細書に記載のセラミック複合材料は、セラミックもしくは顔料を他のセラミック粒子もしくは顔料から分離する樹脂、ポリマー、ワックス、または油なしで相互連結したセラミック材料を含む。いくつかの実施形態において、本複合材料内の相互連結したセラミックネットワークの大部分は、単一のネットワークに相互連結されている。他の実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワークは、基材の離間した部分に塗布される。いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワークの連続性は、該相互連結したセラミックネットワーク内の亀裂によって途切れ、相互連結したセラミックネットワークの島を形成していてもよい。いくつかの実施形態において、本複合材料内の上記相互連結したセラミックネットワークの島は、連結している基材の公称平均平面上に投影される算術平均面積またはメジアン面積を有し、この面積は、約10平方マイクロメートル~約1平方センチメートル、約1000平方マイクロメートル~約10,000平方ミリメートル、約5000平方マイクロメートル~約50,000平方ミリメートル、約20,000平方ミリメートル~約100,000平方ミリメートル、約250,000平方ミリメートル~約1平方センチメートルであるか、または約10平方マイクロメートル、約50平方マイクロメートル、約100平方マイクロメートル、約200平方マイクロメートル、約500平方マイクロメートル、約1000平方マイクロメートル、約2000平方マイクロメートル、約5000平方マイクロメートル、約10,000平方ミリメートル、約20,000平方ミリメートル、約50,000平方ミリメートル、約100,000平方ミリメートル、約500,000平方ミリメートル、もしくは約1平方センチメートルのいずれかを超える。いくつかの実施形態において、本複合材料内の実質的にすべてのセラミックは相互連結している。
【0059】
上記セラミック材料は、希土類元素、遷移金属、アルカリ土類金属元素、及び/またはアルミニウムを含んでいてもよい。上記セラミック材料は、金属酸化物、金属水酸化物、もしくは層状複水酸化物、またはそれらの組み合わせの形態であってもよい。例えば、セラミックは、鉄、アルミニウム、マグネシウム、セリウム、亜鉛、マンガン、チタン、クロム、ニッケル、コバルト、銅、銀、タンタル、タングステン、ケイ素、リン、スズ、及びユーロピウムから選択される1種以上の元素を含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0060】
上記セラミック材料は、導電性、絶縁性、または半導電性であってもよい。いくつかの実施形態において、上記セラミック材料は上記基材よりも電気抵抗性である。他の実施形態において、上記セラミック材料は上記基材よりも導電性である。いくつかの実施形態において、上記セラミック材料は、バンドギャップが約0.1eV~約4eVの半導体である。いくつかの実施形態において、上記セラミック材料は、光活性であるか、圧電活性であるか、または圧力勾配もしくは熱勾配の印加時に発電する能力を有する。いくつかの実施形態において、上記セラミック材料は断熱材である。他の実施形態において、上記セラミック材料は熱伝導体である。
【0061】
上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、基材上に積層される。いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、基材上に固定化される。いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、基材上の結合剤不含の多孔質セラミック材料である。いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、基材と直接接触していてもよい。他の実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、基材と間接的に接触していてもよく、例えば、基材表面上の表面改質剤または表面処理剤と接触していてもよい。上記基材は、金属または合金(アルミニウム、鋼、チタン、またはそれらの合金など、但しこれらに限定されない)、ポリマー、多糖、セルロース系材料、木材、綿、またはガラスを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、上記基材は1種以上の金属を含み、該基材中の一次金属は上記セラミック材料中の一次金属とは異なる。
【0062】
上記基材上の本複合材料の厚さは、約1マイクロメートル~約100マイクロメートルであってよい。例えば、本複合材料の厚さは、約1μm~約10μm、約5μm~約25μm、約10μm~約50μm、約25μm~約75μm、約50μm~約100μm、約1μm~約25μm、約10μm~約100μm、または、少なくとも約1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、90μm、95μm、もしくは100μmのいずれかであってよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、例えば、水銀ポロシメトリー試験によって測定して、上記セラミック材料のアクセス可能な細孔容積の約1%~約99%に、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスが充填されている。例えば、上記細孔容積の、約1%~約5%、約5%~約20%、約10%~約30%、約20%~約40%、約30%~約50%、約40%~約60%、約50%~約70%、約60%~約80%、約70%~約90%、約80%~約99%、約1%~約20%、約10%~約50%、約25%~約75%、約50%~約99%、約10%~約90%、約1%~約99.9%、または、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%~約99%のいずれかに、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスが充填されている。
【0064】
一例において、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスは、セラミックのアクセス可能な細孔容積の一部に充填されているのみならず、それらの厚さは、多孔質セラミック構造(相互連結したセラミックネットワーク)の厚さよりも厚くなっている(例えば、多孔質セラミック構造の細孔から突出している)。別の例において、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスは、アクセス可能な細孔容積の一部に充填されているが、それらの厚さは、多孔質セラミック構造よりも厚くない(例えば、多孔質セラミック構造相互連結したセラミックネットワーク)の細孔内に収納されている)。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスは、上記セラミック材料の厚さの約1.5倍未満である層の形態である。いくつかの実施形態において、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスは、上記セラミック材料の厚さの、最大で約2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、または50倍のいずれかの層の形態である。
【0066】
本明細書に記載の複合材料中の天然ポリマーの非限定的な例としては、桐油、亜麻仁油、胡桃油、天然ゴム、セルロース、及びキチンが挙げられる。本明細書に記載の複合材料中の合成ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ酢酸ビニル、ポリクロロプレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(ジメチル)シロキサン)、ポリシラザン、及びポリエポキシド、ならびにそれらのコポリマーが挙げられる。
【0067】
本明細書に記載の複合材料中のポリマーまたは樹脂の非限定的な例としては、シラン、ケイ酸塩(ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムなど)、シリコナート(ケイ酸ナトリウムメチルまたはケイ酸カリウムメチルなど)、ポリシラザン、オルガノトリエトキシシラン及びオラグノトリメトキシシラン、ならびにシェラックが挙げられる。
【0068】
本明細書に記載の複合材料中のワックスの非限定的な例としては、石油ワックス、動物産生ワックス、植物由来ワックス、または鉱物由来ワックス、例えば、パラフィンワックス、ミツロウ、ラノリン、パームワックス、カルナウバワックス、大豆ワックス、セレシン、及びモンタンが挙げられる。
【0069】
上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスは、潤滑剤(例えば、粘性を付与する)、可塑剤(例えば、柔軟性を付与する)、難燃剤(難燃性を付与する)、色素または顔料(色彩を付与する)、紫外線(UV)安定剤(UV安定性を付与する)、フリーラジカルスカベンジャー(例えば、化学反応性に対する耐性を付与する)、もしくは架橋剤(架橋度を付与する)などの、但しこれらに限定されない、機能的特性または化学的/物理的特性を付与する1種以上の添加剤を含んでいてもよい。
【0070】
本明細書に記載の複合材料のいくつかの実施形態において、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスは、上記セラミック材料と化学的にもしくは物理的に相互作用して、望ましい機能的または構造的特性を提供することができる。例えば、上記相互作用によって、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスの架橋速度ならびに/または架橋度が、上記セラミック材料を含まない同一の基材に直接塗布または積層される場合の上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスの架橋速度ならびに/または架橋度と比較して増加する場合がある。別の例において、上記相互作用によって、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスの結晶化度が、上記セラミック材料を含まない同一の基材に直接塗布または積層される場合の上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂の結晶化度と比較して増加する場合がある。別の例において、上記相互作用によって、上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスのUV分解の速度が、上記セラミック材料を含まない同一の基材に直接塗布または積層される場合の上記ポリマー、樹脂、及び/またはワックスのUV分解の速度と比較して低下する場合がある。いくつかの実施形態において、上記セラミック材料と上記ポリマー、ワックス、及び/または樹脂は相乗的に相互作用し、同一の基材上に単独で積層されたいずれかの材料に対して、改善または向上した1種以上の機能的特性を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記多孔質または構造化セラミック材料を使用して、上記ポリマー、ワックス、または樹脂の輸送またはウィッキングを向上させて、辺縁部周辺の流れを促進し、且つ/またはより均一な厚さの層を作製する。いくつかの実施形態において、上記構造化セラミック層により、熱交換器などの複雑な形状または狭い間隔を有する基材上にポリマー、ワックス、または樹脂を均一に噴霧することが可能になる。いくつかの実施形態において、本複合材料は、使用する材料が少ないにもかかわらず、上記構造化セラミック層を含まずに、塗料またはポリマー、ワックス、もしくは樹脂でコーティングされた基材と同等の性能を提供する。いくつかの実施形態において、本複合材料は、ワニ皮割れ、ブリーディング、フクレ、ブルーミング、ブラッシング、ブリッジング、バブリング、チョーキング、チェッキング、ハジキ、クモの巣状のしわ、クレーター、クレージング、カラスの足跡、剥離(flaking)、亀甲割れ、ユズ肌、ピンホール、波紋、流れ、たるみ、溶剤による浮き上がり(solvent lifting)、及び/または応力割れなどの、但しこれらに限定されない欠陥を低減または排除する。
【0072】
いくつかの実施形態において、複合材料を作製するために、複数のポリマー、ワックス、及び/または樹脂が使用される。いくつかの実施形態において、第1のポリマー層が、上記構造化セラミック材料層の細孔を部分的に充填するために使用される。いくつかの実施形態において、第2のポリマー層が、上記セラミック材料の細孔をさらに充填するために使用される。いくつかの実施形態において、層間の研磨ステップが不要になるか、または相互連結した構造化セラミック層なしで基材上に複数のポリマー、樹脂、及び/またはワックス層を積層する場合と比較して、研磨の程度が低減される。
【0073】
用途
本明細書に記載の複合材料は、基材の腐食に対する保護;接着性及び表面汚れに対する耐久性改質剤;接着の促進または遅延の構成;表面の触覚改質;撥液性;微生物、ウイルス、及び真菌に対する特性の改質;光学特性の改質;硬度、弾性、及び粘弾性などの機械的改質;表面ならびに引っかき傷の自己修復及び修復;分離;電気的特性の改質;氷、コンデンセート、及び霜の軽減ならびに改変;または審美的特性を含むさまざまな用途に使用することができる。本複合材料によって、上記機能的特性のいずれか1つまたはそれらの任意の組み合わせを、同一の基材上の、上記ポリマー、ワックス、及び/もしくは樹脂を含まない同一の多孔質セラミック材料と比較して、または同一の基材に直接塗布された同一のポリマー、ワックス、及び/もしくは樹脂と比較して、改善することができる。
【0074】
構造化セラミック材料
本明細書に記載の、連続した、または離間した塗膜または表面改質剤は、構造化セラミック、例えば、結晶化度が約20%超の結合剤不含セラミックなどの結合剤不含(例えば、表面固定化)セラミックであってもよい。上記構造化セラミックは多孔質である、すなわち、上記相互連結したセラミックネットワーク材料はボイドまたは細孔を含む。限定を意図しないセラミック材料の例はPCT/US19/65978に提示されており、上記出願はその全体が本明細書に援用される。
【0075】
セラミック材料は、金属酸化物、及び/または水酸化物セラミック、例えば、単一金属または混合金属酸化物、及び/または水酸化物セラミックを含み得る。いくつかの実施形態において、当該セラミック材料は、金属水酸化物、及び/または水酸化物セラミック、例えば、単一の金属、または混合金属酸化物、及び/または水酸化物セラミックを含む。いくつかの実施形態において、当該セラミック材料は、金属酸化物、及び金属水酸化物セラミックを含み、また、当該金属酸化物、及び金属水酸化物は、同一、または異なる、単一金属または混合金属を含む。いくつかの実施形態において、当該セラミック材料は、金属酸化物、及び/または金属水酸化物セラミックを含み、また、当該基材は、水またはその他の化合物で水和しており、その結果、表面エネルギーの変化、及び潜在的に当該セラミックの金属水酸化物組成に対する金属酸化物の比率を定める。いくつかの実施形態において、当該セラミック材料は、金属水酸化物を含み、また、当該金属水酸化物の少なくとも一部は、層状複水酸化物の形態である、例えば、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の金属水酸化物が、二層の水酸化物である。
【0076】
いくつかの実施形態において、「金属酸化物」または「金属水酸化物」は、それぞれ、金属酸化物または金属水酸化物の水和物の形態とし得る、または金属酸化物または金属水酸化物の一部は、それぞれ、金属酸化物または金属水酸化物の水和物の形態とし得る。
【0077】
混合金属酸化物または混合金属水酸化物は、例えば、それぞれ2つ以上の金属の酸化物または水酸化物を含み得る、また、当該金属は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、クロム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、亜鉛、鉛、スズ、タングステン、セリウム、プラセオジミウム、サマリウム、ガドリニウム、ランタン、マグネシウム、アルミニウム、またはカルシウムがあるが、これらに限定されない。
【0078】
いくつかの実施形態において、上記セラミック材料は結合剤不含のセラミック材料である、すなわち、結合剤を使用せずに基材上に積層される。いくつかの実施形態において、上記セラミック材料は基材上に固定化される。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、例えば:1時間で、表面張力が小さい(例えば、イソプロパノールでは約25mN/m未満)液体を、密閉容器内で重力に逆らって表面を約5mm以上より上にまで持ち上げる毛管上昇をさせる能力;約0.1m2/g~約10,000m2/gの表面積;約10nm~約1000nm、または約1nm~約1000nmの平均孔径;約0~約1cc/gの水銀(Hg)侵入ポロシメトリーで測定した細孔容積;及び、最短距離までの流体経路の長さである「アークコード比」で定義する約1~約1000の屈曲度、及び/または、約1~約10,000ミリダルシーの透過性の1つ以上を特徴とする連続気泡多孔質構造を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワークの空隙率は約5%~約95%である。いくつかの実施形態において、空隙率は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%またはそれ以上のいずれかである。いくつかの実施形態において、空隙率は、約10%~約90%、約30%~約90%、約40%~約80%、または約50%~約70%である。
【0081】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、約1~10,000ミリダルシーの透過性を有する。いくつかの実施形態において、透過性は、少なくとも約1、10、100、500、1000、5000、または10,000ミリダルシーのいずれかとし得る。いくつかの実施形態において、透過性は、約1~約100,約50~約250,約100~約500,約250~約750,約500~約1000、約750~約2000、約1000~約2500、約2000~約5000、約3000~約7500、約5000~約10,000、約1~約1000、約1000~約5000、または約5000~約10,000ミリダルシーである。
【0082】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、水銀圧入ポロシメトリーで測定して、約100mm3/g~約7500mm3/gの空隙容積を含む。いくつかの実施形態において、上記空隙容積は、少なくとも約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、または7500mm3/gのいずれかである。いくつかの実施形態において、空隙容積は、約100~約500、約200~約1000、約400~約800、約500~約1000、約800~約1500、約1000~約2000、約1500~約3000、約2000~約5000、約3000~約7500、約250~約5000、約350~約4000、約400~約3000、約250~約1000、約250~約2500、約2500~約5000、または約500~約4000mm3/gのいずれかである。
【0083】
本明細書に開示の相互連結したセラミックネットワーク材料は、液体材料との相互作用で特徴決定し得る。先述したように、当該セラミック材料は、1時間で、表面張力が小さい(例えば、イソプロパノールでは約25mN/m未満)液体を、密閉容器内で重力に逆らって表面を約5mmより上まで持ち上げる毛管上昇させる能力を特徴とし得る。20℃での表面張力が約25mN/m未満のその他の溶媒として:ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、n-ヘキサン(HEX)、ポリジメチルシロキサン(Baysilone M5)、tert-ブチルクロリド、n-ヘプタン、n-オクタン(OCT)、イソブチルクロリド、エタノール、メタノール、イソプロパノール、1-クロロブタン、イソアミルクロリド、プロパノール、n-デカン(DEC)、エチルブロミド、メチルエチルケトン(MEK)、n-ウンデカン、シクロヘキサンがあるが、これらに限定されない。20℃での表面張力が25mN/m超のその他の溶媒として:アセトン(2-プロパン)、n-ドデカン(DDEC)、イソバレロニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、n-テトラデカン(TDEC)、sym-テトラクロロメタン、n-ヘキサデカン(HDEC)、クロロホルム、1-オクタノール、ブチロニトリル、p-シメン、イソプロピルベンゼン、トルエン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1-デカノール、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)、ベンゼン、m-キシレン、n-プロピルベンゼン、エチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、1-ニトロプロパン、o-キシレン、ドデシルベンゼン、フマル酸ジエチルエステル、デカリン、ニトロエタン、二硫化炭素、シクロペンタノール、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジプロピレングリコール、シクロヘキサノール、ヘキサクロロブタジエン、ブロモベンゼン、ピロール(PY)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ニトロメタン、フタル酸ジエチルエステル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、メチルナフタレン、ベンジルアルコール、アントラニル酸エチルエステル、ヨードベンゼン、N-メチル-2-ピロリドン、リン酸トリクレジル(TCP)、m-ニトロトルエン、ブロモホルム、o-ニトロトルエン、フェニルイソチオシアネート、a-クロロナフタレン、フルフラール(2-フルアルデヒド)、キノリン、1,5-ペンタンジオール、アニリン(AN)、ポリエチレングリコール200(PEG)、アントラニル酸メチルエステル、ニトロベンゼン、a-ブロモナフタレン(BN)、ジエチレングリコール(DEG)、1,2,3-トリブロモプロパン、安息香酸ベンジル(BNBZ)、1,3-ジヨードプロパン、3-ピリジルカルビノール(PYC)、エチレングリコール(EG)、2-アミノエタノール、sym-テトラブロモエタン、ジヨードメタン(DI)、チオジグリコール(2,2’-チオビスエタノール)(TDG)、ホルムアミド(FA)、グリセロール(GLY)、水(WA)、及び水銀がある。
【0084】
上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、様々な温度で、水の毛管上昇を招く能力を有し得る。これらの材料は、エタノール-水、酢酸エチル-エタノール、またはブタノール-水などの混和性材料と二成分共沸混合物とを分離して、三成分共沸混合物を破壊する、あるいは、エタノールと水を含む混合物からアミルアルコールを除去する能力を有し得る。
【0085】
上記相互連結したセラミックネットワーク材料の細孔は、1つ以上の気体で満たしたオープンセルを含み得る、一部を満たした(例えば、1つ以上の固体材料(複数可)で一部を満たした)セルを含み得る、または完全に、または実質的に満たした(例えば、1つ以上の液体及び/または固体材料(複数可)で完全に、または実質的に満たした)セルを含み得る。いくつかの実施形態において、細孔は、部分的に、実質的に、または完全に、気体、液体、または固体の物質、あるいはそれらの組み合わせで満たす。
【0086】
いくつかの実施形態において、細孔に、第1の材料が部分的に充填され、次に、第2の材料が部分的に、または完全に充填される。非限定的な一実施形態において、第1の材料は樹脂であり、第2の材料はワックスである。別の非限定的な実施形態において、第1の材料は樹脂であり、第2の材料はシーラント、保護トップコート、保護仕上げ材、また塗料である。いくつかの実施形態において、第2の材料は、部分的に充填された細孔を覆う材料の層として添加される。いくつかの実施形態において、第1の材料は、気体、固体、または液体、あるいは気体、液体、及び/または固体(複数可)の物質の組み合わせである。いくつかの実施形態において、第2の材料は、気体、固体、及び/または液体物質(複数可)、または雰囲気(例えば、空気)である。例として、空隙率、ウィッキング、撥水性、及び/または濡れ挙動の変化が付与する機能;耐摩耗性、硬度、靭性、触感、弾性率、降伏強度、降伏応力、ヤング率、表面(圧縮または引張)応力、及び/または弾性などの機械的特性に変化を与える電気的/誘電的特性を変える複合材料(多孔質材料と第2の材料を含む)の変化;熱拡散率、伝導率、熱膨張係数、熱界面応力、及び/または熱異方性などの熱特性の変化;放射率、色彩、反射率、及び/または吸収係数などの光学特性の変化;腐蝕、触媒作用、反応性、不活性、相溶性、ファウリング耐性、イオンポンプブロッキング、微生物耐性、及び/または微生物適合性などの化学的特性の変化;及び/または生体触媒作用の基質がある。
【0087】
いくつかの実施形態において、第1の材料は、正または負の相乗的方法で第2の材料と相互作用して、湿潤性、硬度、弾性、機械的性質、電気的性質、圧電的性質、光学的性質、接着性、または熱的特性、微生物に対する親和性または耐性、バイオフィルム成長の変化、触媒活性、透過性、美的外観、撥水性、及び/または耐蝕性などの、但しこれらに限定されないセラミック材料の1つ以上の機能的特徴を変える。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の複合材料の樹脂に対するセラミックまたは顔料の比は、塗料の臨界顔料容積濃度を超える。いくつかの実施形態において、上記セラミックまたは顔料の濃度は、上記複合材料の総容積の約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%を超える。
【0089】
また、本明細書に記載のポリマー、樹脂、及び/またはワックス材料を細孔中に沈着させ、細孔を部分的にまたは実質的に完全に充填してもよい。セラミック材料として、例えば、亜鉛、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、セリウム、ガドリニウム、及びコバルトの1つ以上の酸化物を含み得る。加えて、セラミック材料は、例えば、粘土、シリカ、ガラスなどの金属、非金属、またはメタロイド原子の無機化合物など、主にイオン結合及び共有結合で保持されている表面改質剤に添加することができる固体材料を含み得る。ポリマーとして、例えば、麻、シェラック、アンバー、羊毛、絹、天然ゴム、セルロース、及びその他の天然繊維、糖類、ヘミセルロース及びホロセルロース、多糖類、及び細胞外タンパク質などの生物学的に誘導した材料、DNA、キチンなどの天然高分子材料を含み得る。合成ポリマーとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、合成ゴム、フェノールホルムアルデヒド樹脂(または、Bakelite)、ネオプレン、ナイロン、ポリアクリロニトリル、PVB、シリコーン、ポリイソブチレン、PEEK、PMMA、及びPTFEを含むポリマー及びコポリマーがある。
【0090】
いくつかの実施形態において、細孔は、薄い複合ポリマー層で部分的に満たされており、ポリマーが提供する空隙率及び機能性を有する表面改質剤を生成する。その他の実施形態では、細孔を、厚いポリマー層で完全に満たして、多孔質をベースとした材料とポリマー層との複合特性を有する厚いポリマー層を備えた表面改質剤を生成する。本明細書の組成物に記載したポリマーは、コポリマーを含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、限定を意図するものではないが、アンモニウム基(例えば、第4級アンモニウム基)、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フルオロアルキル基などの1つ以上の官能基(複数可)を表面改質剤材料に加えた材料の層を積層される。いくつかの実施形態において、ポリマーまたはセラミック層が積層される。官能基(複数可)及びそれが付与する機能の例として、抗菌機能を呈する第4級アンモニウム基、撥水性及び炭化水素親和性を呈するアルキル鎖、撥水性及び撥油性機能を呈するペルフルオロアルキル基、機械的機能を呈するポリマー、美的機能、光電子機能、または防蝕機能を呈するその他のセラミックがある。
【0092】
いくつかの実施形態において、細孔は、実質的にもしくは完全に、ポリマーまたはセラミック材料で充填されている。
【0093】
いくつかの実施形態において、細孔内の材料は、セラミック材料と相互作用する。そのような物質の例と、それが奏する機能の例として、周囲の液体または蒸気による表面改質剤の酸化、微量成分(例えば、環境汚染物質)の凝縮、環境空気からのCOまたはH2Sなどの有害な環境材料の捕捉または酸化、及び/または環境でのそれら物質の回収と保持がある。
【0094】
いくつかの実施形態において、環境での水分または細孔に添加した水分は、細孔内の材料と相互作用して、細孔内の材料または表面改質剤を改質する。そのような物質と、同物質が奏する機能の例として、湿潤挙動の変化、光学特性の変化、酸化状態または反応性の変化、蒸発速度の変化、霜降り現象、着氷、または凝縮がある。
【0095】
いくつかの実施形態において、細孔内の材料は、セラミック材料と相互作用して、表面全体の特性を「調整」するようにデザインし得る。調整可能な特性の例として、湿潤性、硬度、微生物耐性、触媒活性、耐蝕性、音響特性、光反射性、色彩、及び/または光化学的活性があるが、これらに限定されない。
【0096】
いくつかの実施形態において、セラミック表面改質剤と細孔内の材料は、相乗的に相互作用して、例えば、表面改質剤、及び/または細孔内の材料だけの機能性と比較して、表面改質剤、及び/または細孔内の材料の少なくとも1つの機能性を高める、または低下させる。いくつかの実施形態において、細孔内の2つ以上の材料は相乗的に相互作用して、例えば、その材料だけが奏する機能性と比較して、細孔内の少なくとも1つの材料の少なくとも1つの機能性を高める、または低下させる。
【0097】
いくつかの実施形態において、セラミック表面改質剤は非対称な細孔形態である、例えば、球形、円筒形、立方体、またはその他の方法で明確に定義した、比較的に一定した、容積に対する表面積の正規分布を有するように秩序化しており、結合剤不含セラミック表面改質の膜厚の機能に応じて第3四分位細孔径に対する第1四分位細孔径の比率を特徴決定する。特に、細孔形態は、球形、円筒形、または立方体の構造と比較すると、その中心に関して非対称である。限定を意図するものではないが、非対称細孔の例は、PCT出願第PCT/US19/39743号に示しており、この文献は、参照により、その全内容を本明細書で援用する。
【0098】
多孔質セラミック材料(相互連結したセラミックネットワーク)は、基材からの距離に応じて変化する広範な細孔径分布を特徴とし得る。特に、基材から所与の距離での細孔構造は、例えば、本明細書に記載したように、局所的に特徴決定することができ、また、距離に応じて異なる特徴を有する。結果として生じる非対称性は、基材、イオン移動度、それに、温度、圧力、及び濃度などの処理条件の組み合わせであり、インサイチュで決定する。非対称性の程度は、混合、攪拌、電場調節、及びタンク濾過などのバルク手段、または剪断速度、衝突流、または表面電荷の変更と調節などの表面配向プロセス手段でさらに調節することができる。非対称性は、エッチング、トラックエッチング、イオンビームミリング、酸化、光触媒などの様々な手段、またはさらなる手段で、エクスサイチュで決定することができる。これらの手法は、ゼオライト、トラックエッチングした膜、または拡張したPTFE膜など、膜厚及び/または細孔の深さを備えた、狭い、または対称的な細孔構造を有する材料を指す。
【0099】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、約2nm~約50nmの範囲のメソ多孔質平均細孔サイズを含む。その他の実施形態では、平均細孔サイズは、約50nm~約1000nmの範囲である。いくつかの実施形態において、結合剤不含多孔質セラミック材料は、約2nm~約20nmの平均細孔径を含む。いくつかの実施形態において、平均細孔径は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20nmのいずれかである。いくつかの実施形態において、平均細孔径は、約2~約5、約4~約9、約5~約10、約7~約12、約9~約15、約12~約18、約15~約20、約4~約11、約5~約9、約4~約8、または約7~約11nmのいずれかである。
【0100】
上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、1つ以上の金属酸化物、及び/または金属水酸化物(及び/または、その水和物)を含み得る。限定を意図するものではないが、本明細書に開示したセラミック組成物が含み得る金属の例として:亜鉛、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、セリウム、銅、ガドリニウム、タングステン、スズ、鉛、及びコバルトがある。いくつかの実施形態において、セラミック材料として、遷移金属、第II族元素、希土類元素(例えば、ランタナム、セリウムガドリニウム、プラセオジム、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、またはネオジム)、アルミニウム、スズ、または鉛がある。いくつかの実施形態において、セラミック材料として、限定を意図するものではないが、亜鉛、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、セリウム、プラセオジム、及びコバルトなどの2つ以上の金属酸化物(例えば、混合金属酸化物)を含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料としては、亜鉛とアルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;ZnOとAl2O3、及びZn-アルミン酸塩の混合物;Zn、Al、及び酸素を含むあらゆる/すべての相を含む材料の混合物;マンガンとマグネシウム酸化物及び/または水酸化物の混合物;マンガン酸化物;アルミニウム酸化物;混合金属マンガン酸化物及び/または水酸化物;マグネシウムとアルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;マグネシウム、セリウム、及びアルミニウム酸化物及び/または水酸化物の混合物;亜鉛、ガドリニウム、及びアルミニウム酸化物及び/または水酸化物の混合物;コバルトと、アルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;マンガンと、アルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;セリウムと、アルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;鉄と、アルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;タングステンと、アルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;スズとアルミニウム酸化物との混合物;タングステン酸化物及び/または水酸化物;マグネシウム酸化物及び/または水酸化物;マンガン酸化物及び/または水酸化物;スズ酸化物及び/または水酸化物;または、亜鉛酸化物及び/または水酸化物が挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態において、セラミック材料での少なくとも1つの金属は、2+酸化状態にある。
【0103】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、亜鉛、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、セリウム、ガドリニウム、及びコバルトの1つ以上の酸化物及び/または水酸化物を含み、そして、基材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。
【0104】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、超疎水性である。いくつかの実施形態において、表面改質剤材料は、高度の疎水性である。いくつかの実施形態において、表面改質剤は、セラミック材料を含まない基材と比較して、湿潤性、硬度、弾性、機械的性質、電気的性質、圧電的性質、電磁気的性質、光学的性質、接着性、または熱的特性、微生物親和性または抵抗性、バイオフィルム成長の変化、触媒活性、透過性、美的外観、及び耐蝕性から選択する1つ以上の機能特性を含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、機能性材料層(例えば、材料の最上層)が、セラミック材料の上に積層される。かかる材料の例として、抗菌機能のための第4級アンモニウム基、撥水性及び炭化水素親和性のためのアルキル鎖、撥水性及び撥油性機能のためのペルフルオロアルキル基、機械的特性機能のためのポリマー、美的機能、光電子機能、または防蝕機能のためのその他のセラミックがあるが、これらに限定されない。このような材料が付与する機能の例として、限定を意図するものではないが、空隙率、ウィッキング、撥水性、及び/または濡れ挙動;耐摩耗性、硬度、靭性、触感、弾性率、降伏強度、降伏応力、ヤング率、表面(圧縮または引張)応力、張強度、圧縮強度、及び/または弾性などの機械的特性に変化を与える電気的/誘電的特性を変える複合材料(多孔質材料と第2の材料を含む)の変化;熱拡散率、伝導率、熱膨張係数、熱界面応力、熱異方性などの熱特性の変化;放射率、色彩、反射率、及び/または吸収係数などの光学特性の変化;腐蝕、触媒作用、反応性、不活性、適合性、ファウリング耐性、イオンポンプブロッキング、微生物耐性、及び/または微生物適合性などの化学的特性の変化;後続の材料層の接着性の促進及び/または生体触媒作用の基質がある。
【0106】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、ポリマーまたは本明細書に開示したあらゆる基材材料などの基材材料と比較して、紫外線による劣化に対して耐性がある。
【0107】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、約0.5マイクロメートル~約20マイクロメートルの膜厚を含む。いくつかの実施形態において、セラミック材料は、約0.2マイクロメートル~約25マイクロメートルの膜厚を含む。いくつかの実施形態において、膜厚は、少なくとも約0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25マイクロメートルのいずれかである。いくつかの実施形態において、膜厚は、約0.2~約0.5、約0.5~約1、約1~約5、約3~約7、約5~約10、約7~約15、約10~約15、約12~約18、約15~約20、約18~約25、約0.5~約15、約2~約10、約1~約10、約3~約13、約0.5~約15、約0.5~約5、約0.5~約10、または約5~約15マイクロメートルのいずれかである。
【0108】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、約0°~約180°の水接触角を特徴とする。その他の実施形態では、水接触角は、約30度未満である。その他の実施形態では、水接触角は、約150度より大きい。
【0109】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、対象とする基材面積の平方メートルあたり約1.1m2~約100m2の表面積を含む。いくつかの実施形態において、セラミック材料は、対象とする基材面積の平方メートルあたり、約10m2~約1500m2の表面積を含む。いくつかの実施形態において、表面積は、対象とする基材面積の平方メートルあたり、少なくとも約10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、または1500m2のいずれかである。いくつかの実施形態において、表面積は、対象とする基材面積の平方メートルあたり、約10~約100、約50~約250、約150~約500、約250~約750、約500~約1000、約750~約1200、約1000~約1500、約70~約1000、約150~約800、約500~約900、または約500~約1000m2のいずれかである。
【0110】
いくつかの実施形態において、上記相互連結したセラミックネットワーク材料は、1グラムのセラミック材料あたり、約15m2~約1500m2の表面積を含む。いくつかの実施形態において、表面積は、1グラムのセラミック材料あたり、少なくとも約15、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、または1500m2のいずれかである。いくつかの実施形態において、表面積は、1グラムのセラミック材料あたり、約15~約100、約50~約250、約150~約500、約250~約750、約500~約1000、約750~約1200、約1000~約1500、約50~約700、約75~約600、約150~約650、または約250~約700m2のいずれかである。
【0111】
基材
本明細書に記載の多孔質セラミック材料(相互連結したセラミックネットワーク)が塗布または積層された基材は、構造的または機能的特性に適したあらゆる材料で構成し得る、または、例えば、熱交換器などの装置での使用の機能的用途に適したあらゆる材料で構成し得る。いくつかの実施形態において、基材は、アルミニウムである、またはアルミニウムを含み(例えば、アルミニウム合金)、鉄合金、亜鉛、亜鉛合金、銅、銅合金、ニッケル合金、ニッケル、チタン合金、チタン、コバルト-クロム含有合金、ガラス、ポリマー、コポリマー、天然材料(例えば、セルロースを含む天然材料)、またはプラスチックである。
【0112】
いくつかの実施形態において、基材は金属を含み、本明細書に記載の相互連結されたセラミックネットワーク材料中の一次金属は、基材中の一次金属とは異なる。一次金属は、例えば、原子金属をベースとしたX線回折で決定をして、基材またはセラミック材料での全金属の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、または95%を占める金属である。基材の一次金属の例として、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、チタン、及びマグネシウムがあるが、これらに限定されない。セラミック一次金属の例として、亜鉛、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、セリウム、銅、ガドリニウム、タングステン、スズ、鉛、及びコバルトがあるが、これらに限定されない。
【0113】
いくつかの実施形態において、基材は、基材金属の局所溶解を可能にする反応条件下で反応する(例えば、溶解する)ことができる金属を含み、そして、基材金属は、セラミック材料、例えば、結合剤不含の多孔質セラミック材料などの基材改質剤に取り込ませる。例えば、アルミニウム基材では、セラミック材料が該基材上に積層されることから、セラミック材料中に組み込まれたアルミニウム(例えば、Al3+)を提供することができる。
【0114】
以下の実施例は、本発明の例示を目的としており、限定は意図していない。
【実施例】
【0115】
以下の実施例に記載の表面改質材は以下のように調製した。部品、基材、またはアセンブリはイソプロピルアルコール(IPA)及びタオルで洗浄して、残留した油分をすべて除去した。ポリマー基材またはpH感受性の基材は通常、IPAで洗浄したのみで、それに続く苛性処理及び酸処理ステップには供さなかった。次に、金属部品または基材を、約20℃~約60℃の温度の、pH>11の苛性エッチング浴に約5分~約20分間浸漬した。次いで、アセンブリを水ですすいで、残留する苛性物質または緩く付着した物質をすべて除去した。次に、部品を、pHが1未満、温度が約20℃~約40℃の硝酸溶液に浸漬して汚れを除去し、且つ/または基材を脱酸した。次いでアセンブリを、20~250mMの金属硝酸塩もしくは硫酸塩、または混合金属硝酸塩もしくは硫酸塩、及び同様のモル量のジアミン、トリアミン、またはテトラミンを含む、反応性の製造浴中に入れ、50~85℃の反応温度で静置した。部品、基材、またはアセンブリを、約5分~約3時間の範囲の期間、上記浴中に維持した。基材を取り出し、排水し、オーブン中に載置して、これらに限定されないが、約65%以上(例えば、水酸化物/酸化物の比率を変化させる一方で、一部の水酸化物を保持する)などの高い程度で、当該セラミック材料を酸化物に転化させるのに十分な温度、例えば、約50℃~約600℃の熱処理で、数分~数時間乾燥及び/または焼成した。この積層ステップは、任意選択で、乾燥ステップの前または後に任意に繰り返えしてもよく、必要に応じて、その後に別の任意の乾燥ステップが行われる。冷却後に、以下の例で説明するように、部品をさらに処理及び/または試験した。
【0116】
例1
清浄な3003アルミニウム板を、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。上記相互連結した多孔質セラミック表面剤は、硝酸マグネシウム及び同様の量のヘキサメチレンテトラミンの25~100mMの水溶液で、約50℃~80℃の温度で約15~90分間積層した。次にコイルを約300℃~約500℃の温度で約1時間焼成した。まずセラミック表面の上をエポキシ樹脂で覆い、次いで、上記相互連結した多孔質セラミック層の側面が露出するのに十分な材料が除去されるまで、集束イオンビームを上記試料の上面に照射することによって、上記試料の走査型電子顕微鏡(SEM)用の断面を調製した。上記相互連結した多孔質セラミック層の厚さを、アルミニウム基材表面に垂直な方向で測定し、約5ミクロンであることが判明した。上記試料を、水銀ポロシメトリー法、X線回折法(XRD)、示差走査熱量測定法、ナノインデンテーション法、及び分極抵抗法を使用して分析した。水銀ポロシメトリーにより、上記試料の細孔容積が1400mm
3/gであり、総気孔率が84%であることが明らかになった。
図1のXRDスペクトルは、35.6°、43.4°、及び62.7°に明確なピークを示しており、結晶性MgOの積層構造を示している。
【0117】
例2
例1に記載の手順と類似の手順で、清浄な3003アルミニウム板を、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。ポリスチレンのトルエン溶液を、20℃~35℃に保持した上記積層体表面上に流延した。試料が完全に乾燥するまで溶媒を蒸発させた。
【0118】
例3
例1に記載の手順と類似の手順で、清浄な3003アルミニウム板を、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。次いで上記板を、20℃~35℃に保持したポリスチレンのトルエン溶液に浸漬した。数時間後に、試料を上記溶液から取り出し、試料が完全に乾燥するまで、表面に保持された溶媒を蒸発させる。
【0119】
例4
清浄な3003アルミニウム板を、酸化亜鉛をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングする。別途に、清浄な3003アルミニウム板を、約66質量%の酸化亜鉛と34質量%の酸化マグネシウムからなる相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングする。別途に、清浄な3003アルミニウム板を、酸化マグネシウムをベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングする。3種の試料すべてをポリクロロプレンの酢酸tert-ブチル溶液に90分間浸漬する。次いで試料をこの溶液から取り出し、窒素雰囲気下、160℃で40分間硬化させる。
【0120】
各試料を、トルエンを用いた溶媒膨潤法及びフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を使用して分析して、上記ポリクロロプレンの架橋度を測定する。酸化亜鉛のみをベースにした試料の架橋度が最も高く、酸化マグネシウムのみをベースにした試料の架橋度が最も低く、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムの両方からなる試料の架橋度は、他の2種の試料の値の間の架橋度を示す。
【0121】
例5
清浄な3003アルミニウム板を、亜鉛及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする多孔質の相互連結したセラミック表面改質剤でコーティングした。上記多孔質セラミック表面改質剤は、硝酸亜鉛及び同様の量のヘキサメチレンテトラミンの25~100mMの水溶液で、約50℃~80℃の温度で約15~120分間積層した。次にコイルを約350℃~約550℃の温度で約1時間焼成した。次に、この試料を100℃に保持し、パラフィンワックスの溶融物を滴下流延して、試料の表面中へのウィッキングを行った。次いでこの試料を室温まで放冷した。室温に冷却してから24時間後に、この試料を電気化学的試験に供した。分極抵抗法を上記試料上で実施し、耐食性が2.3×106オームであることが明らかになった。次にこの試料を、ASTM G85-A3のプロトコルに従った腐食環境中への3時間の浸漬、ASTM D4587のプロトコルに従った115時間のUV曝露、及びASTM D870のプロトコルに従った180時間の水への浸漬に供した。この試料を再度分極抵抗試験に供し、耐食性が4.2×105オームであることが明らかになった。比較として、分極抵抗法を、パラフィン層のない、酸化亜鉛と酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングされた清浄な3003アルミニウム板上で実施し、耐食性が4.3×104オームであることが明らかになった。
【0122】
例6
例1に記載の手順と類似の手順で、清浄な3003アルミニウム板を、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。次に、この試料を100℃に保持し、パラフィンワックスの溶融物を滴下流延して、試料の表面中へのウィッキングを行った。次いでこの試料を室温まで放冷した。室温に冷却してから24時間後に、この試料を電気化学的試験に供した。分極抵抗法を上記試料上で実施し、耐食性が1.3×106オームであることが明らかになった。次にこの試料を、ASTM G85-A3のプロトコルに従った腐食環境中への3時間の浸漬、ASTM D4587のプロトコルに従った115時間のUV曝露、及びASTM D870のプロトコルに従った159時間の水への浸漬に供した。この試料を再度分極抵抗試験に供し、耐食性が1.7×105オームであることが明らかになった。比較として、分極抵抗法を、パラフィン層のない、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングされた清浄な3003アルミニウム板上で実施し、耐食性が2.2×104オームであることが明らかになった。
【0123】
例7
例1に記載の手順と類似の手順で、但し硝酸マグネシウムに代えて硝酸マンガンまたは硫酸マンガンを使用して、清浄な3003アルミニウム板を、酸化マンガン及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。次に、この試料を100℃に保持し、パラフィンワックスの溶融物を滴下流延して、試料の表面へのウィッキングを行った。次いでこの試料を室温まで放冷した。室温に冷却してから24時間後に、この試料を電気化学的試験に供した。分極抵抗法を上記試料上で実施し、耐食性が3.7×106オームであることが明らかになった。次にこの試料を、ASTM G85-A3のプロトコルに従った腐食環境中への3時間の浸漬、ASTM D4587のプロトコルに従った115時間のUV曝露、及びASTM D870のプロトコルに従った159時間の水への浸漬に供した。この試料を再度分極抵抗試験に供し、耐食性が1.1×106オームであることが明らかになった。比較として、分極抵抗法を、パラフィン層のない、酸化マンガンと酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングされた清浄な3003アルミニウム板上で実施し、耐食性が4.6×104オームであることが明らかになった。
【0124】
例8
例7に記載の手順と類似の手順で、清浄な3003アルミニウム板を、酸化マンガン及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。次にこの試料を、50容積%の桐油と50容積%のリモネンの溶液を用いた滴下流延によって桐油の層でコーティングした。上記溶液のウィッキングが試料全体に及んだ後に、この試料を室温で3日間吊るして乾燥した。
【0125】
乾燥後に、分極抵抗法を上記試料上で実施し、耐食性が3.4×105オームであることが明らかになった。次にこの試料を、ASTM G85-A3のプロトコルに従った腐食環境中への3時間の浸漬、ASTM D4587のプロトコルに従った115時間のUV曝露、及びASTM D870のプロトコルに従った158時間の水への浸漬に供した。この試料を再度分極抵抗試験に供し、耐食性が7.6×105オームであることが明らかになった。比較として、分極抵抗法を、桐油層のない、酸化マンガンと酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングされた清浄な3003アルミニウム板上で実施し、耐食性が4.6×104オームであることが明らかになった。
【0126】
例9
例5に記載の手順と類似の手順で、清浄な3003アルミニウム板を、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。次にこの試料を、次にこの試料を、50容積%の桐油と50容積%のリモネンの溶液を用いた滴下流延によって桐油の層でコーティングした。上記溶液のウィッキングが試料全体に及んだ後に、この試料を室温で3日間吊るして乾燥した。
【0127】
乾燥後に、分極抵抗法を上記試料上で実施し、耐食性が8.0×105オームであることが明らかになった。比較として、分極抵抗法を、桐油層のない、酸化亜鉛と酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングされた清浄な3003アルミニウム板上で実施し、耐食性が4.3×104オームであることが明らかになった。
【0128】
例10
例1に記載の手順と類似の手順で、清浄な3003アルミニウム板を、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。次にこの試料を、次にこの試料を、50容積%の桐油と50容積%のリモネンの溶液を用いた滴下流延によって桐油の層でコーティングした。上記溶液のウィッキングが試料全体に及んだ後に、この試料を室温で3日間吊るして乾燥した。
【0129】
乾燥後に、分極抵抗法を上記試料上で実施し、耐食性が6.1×105オームであることが明らかになった。比較として、分極抵抗法を、桐油層のない、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングされた清浄な3003アルミニウム板上で実施し、耐食性が2.2×104オームであることが明らかになった。
【0130】
例11
例5に記載の手順と類似の手順で、2枚の清浄な3003アルミニウム板を、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。相互連結した多孔質セラミックでコーティングされたアルミニウム板及びさらに剥き出しのコーティングされていない3003アルミニウム板を、酢酸tert-ブチル中に分散した1~5%の室温加硫性(RTV)フルオロシリコーンの溶液中に浸漬し、これを取り出して連続したフィルムを形成した。両方の試料が完全に乾燥するまで溶媒を蒸発させた。上記の板を、周囲環境において室温で48時間湿気により硬化させた。接触角の測定を、3種の板、すなわち、a)相互連結した多孔質セラミック表面剤、b)RTVシリコーンが部分的に充填された相互連結した多孔質セラミック表面剤、及びc)RTVシリコーンでトップコーティングされた3003アルミニウム板のすべてについて実施した。
図1は、上記相互連結したセラミック多孔質構造に、部分的にRTVシリコーンが充填された板(b)での151°が最大の接触角である、3種の板のすべてのSEM画像を示す。板(c)及び(b)で観測された接触角は、それぞれ114°及び<15°であった。板(b)を酢酸tert-ブチルに分散させたRTVシリコーンの溶液に再度浸漬して、上記相互連結した多孔質セラミック構造に完全に充填し、測定した接触角は117°であった。結果を
図2のA~Cに示す。
【0131】
例12
例7に記載の手順と類似の手順で、2枚の清浄な3003アルミニウム板を、酸化マンガン及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。相互連結した多孔質セラミックでコーティングされたアルミニウム板及びさらに剥き出しのコーティングされていない3003アルミニウム板を、トルエン中に分散した1~5%のポリジメチルシロキサン(PDMS)(Sylgard 182)の溶液中に浸漬し、これを取り出して連続したフィルムを形成した。両方の試料が完全に乾燥するまで溶媒を蒸発させ、板を80℃で2時間硬化させた。接触角の測定を、3種の板、すなわち、a)相互連結した多孔質セラミック表面剤、b)PDMSでトップコーティングされた相互連結した多孔質セラミック表面剤、及びc)PDMSでトップコーティングされた3003アルミニウム板のすべてについて実施した。
図3のA~Cは、上記相互連結したセラミック多孔質構造に、部分的に上記トップコーティング剤が充填された板(b)での141°が最大の接触角である、3種の板のすべてのSEM画像を示す。板(c)及び(b)で観測された接触角は、それぞれ117°及び<15°であった。
【0132】
例13
3枚の清浄な3003アルミニウム板を、a)ポリウレタン(Varathane)、b)ポリエーテル系シラン末端ポリマー(Geniosil WP1)、及びc)溶剤ベースのアクリル系(Krylon Crystal Clear Acrylic)をベースにした3種のシーラントでコーティングした。分極抵抗法を、3.5% NaCl溶液中、3種の板すべての開回路電位に対して-0.15mV~0.15mVで実施した。耐食性は、ポリウレタン、ポリエーテル系シラン末端ポリマー、及びアクリル系表面処理剤についてそれぞれ、5.9×107オーム、3.7×102オーム、及び9.7×103オームであると測定された。比較として、分極抵抗は、例6に記載の手順と類似の手順を使用して調製した、トップコーティングのない、酸化亜鉛と酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤上で実施し、1.1×103オームであることが明らかになった。比較として、3枚の清浄な3003アルミニウム板を、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。上記3枚の板を、上記と同一のポリマー、すなわち、a)ポリウレタン、b)ポリエーテル系シラン末端ポリマー、及びc)溶媒ベースのアクリル系で再度コーティングした。耐食性は、それぞれ1.4×108オーム、1.4×107オーム、及び1.0×107オームと測定された。
【0133】
例14
例7に記載の手順と類似の手順を使用して調整した、3枚の清浄な3003アルミニウム板を、酸化マンガン及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングし、これらに、a)ポリウレタン(Varathane Ultimate Spar)、b)水性ポリアクリル系(Minwax Polyacrylic)、及びc)ポリエーテル系シラン末端ポリマー(Geniosil WP1)をベースとする種々のシーラントをさらに充填した。耐食性を測定したところ、9.8×107オーム、5.7×107オーム、及び6.5×105オームであった。比較として、分極抵抗法を、清浄な3003アルミニウム板にコーティングした水性ポリアクリル系シーラント上で実施して、9.6×103オームであることが明らかになった。清浄な3003アルミニウム板上の、酸化マンガン及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤上での耐食性は1.7×104オームであった。剥き出しのアルミニウム板上のシーラントの抵抗が例13に掲載されている。
【0134】
例15
2枚の清浄な3003アルミニウム板を、例1に記載の手順と類似の手順を使用して調製した、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。上記板の1枚に、水系のMinwaxポリアクリル表面処理剤を浸漬コーティングし、上記表面処理剤の試料の表面へのウィッキングが起こるように室温に保持した。分極抵抗法をこの板上で実施し、耐食性が2.1×105オームであることが明らかになった。比較として、同様の手順で清浄な3003アルミニウム板にコーティングした水性ポリアクリル系シーラントの耐食性は、1.1×104オームであることが明らかになった。
【0135】
例16
2枚の清浄な3003アルミニウム板を、例5に記載の手順と類似の手順を使用して調製した、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。上記試料の1枚に、エアロゾル系ポリウレタンシーラント(Varathane)を噴霧し、試料の表面へのウィッキングを行い、室温で48時間硬化させた。別の清浄な3003アルミニウム板を、同様の手順でエアロゾル系ポリウレタン表面処理剤でコーティングした。次いで3種の試料の全てを、ASTM G85-A3のプロトコルに従って、腐食環境中での100時間の塩水噴霧に供し、脱イオン(DI)水で穏やかに洗浄し、DI水中で10分間超音波処理し、室温で1時間乾燥した後に撮像した。
図4のA~Cは、3種の試料、すなわち、a)酸化亜鉛及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤のみで修飾した板、b)エアロゾル系ポリウレタントップコーティング剤でコーティングした清浄な3003アルミニウム板、及びc)酸化亜鉛及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングし、エアロゾル系ポリウレタン表面処理剤を充填した板の全てにおける腐食の程度を示す。複合材料(c)は、試料(b)とは異なり、辺縁部周辺の腐食を防止した。ピット密度を
図4のA~Cに示す。
【0136】
例17
2枚の清浄な3003アルミニウム板を、例1に記載の手順と類似の手順を使用して調製した、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。上記試料の一方を、水性ポリアクリル系シーラント(Minwaxポリアクリル系)に浸漬し、試料の表面へのウィッキングを行い、室温で24時間硬化させた。別の清浄な3003アルミニウム板に、対照として水性ポリアクリル系シーラントをコーティングした。次いで3種の試料のすべてを、ASTM D3359のプロトコルに従って碁盤目密着性試験に供した。
図5のA~Cは、3種の試料、すなわち、a)酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした板(ASTM クラス:5B)、b)水性ポリアクリル系シーラントでコーティングした3003アルミニウム板(ASTM クラス:1B)、及びc)酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングし、水性ポリアクリル系シーラントを充填した板(5B)のすべてにおける、それぞれのコーティングの層間剥離の程度を示す。上記セラミックは上記ポリマーの接着性能を改善した。
【0137】
例18
清浄な3003アルミニウム板を、例5に記載の手順と類似の手順を使用して調製した、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。続いて、この試料にアクリル系シーラントを噴霧し、室温で24時間乾燥した。次いでこの試料をASTM D3363の方法のプロトコルに従って鉛筆硬度試験に供し、引っかき傷及びガウジ硬度がそれぞれHB及び4Hであることが明らかになった。比較として、前述の手順に従ってアクリル系トップコーティング剤を噴霧し、乾燥した清浄な3003アルミニウム板のスクラッチ及びガウジ硬度は、それぞれ5B及び3Bであった。
【0138】
例19
清浄な3003アルミニウム板を、例5に記載の手順と類似の手順を使用して調製した、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。続いて、この試料を、清浄な3003アルミニウム板と共にアクリル系シーラントでコーティングし、両方の試料に何らかのコーティングの欠陥がないかを目視検査した。
図6のA及びBに示すように、アクリル系シーラントでコーティングした清浄な3003アルミニウム板ではたるみが観察された(
図6のA)一方で、相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングし、次いでアクリル系シーラントを充填した板では欠陥は見られなかった(
図6のB)。アクリル系シーラントでコーティングした清浄な3003アルミニウム板ではたるみが観察された一方で、相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングし、次いでアクリル系シーラントを充填した板では欠陥は見られなかった。
【0139】
例20
清浄な3003アルミニウム板の表面上にエポキシ系樹脂を滴下し、接触角の進行を経時的に測定した(試料A)。比較として、清浄な3003アルミニウム板を、例5に記載の手順と類似の手順を使用して調製した、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングし、接触角の進行を経時的に測定した(試料B)。別の清浄な3003アルミニウム板を、例7に記載の手順と類似の手順を使用して調製した、酸化マンガン及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングし、上記と同様のプロトコルに従って、エポキシ系樹脂に対する接触角の進行を経時的に測定することにより、セルフレベリング特性を調べた(試料C)。
図7のA~Cは、3種の板のすべてのセルフレベリング現象の比較を示す。
【0140】
例21
2枚の清浄な3003アルミニウム板を、(それぞれ例5及び7に記載の手順と類似の手順を使用して調製した)酸化亜鉛/酸化アルミニウム及び酸化マンガン/酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。水性ポリアクリル系表面処理剤の液滴を用いた接触角の測定を上記両方の板上で実施し、それぞれ約57°及び<15°であることが明らかになった。比較としてセルフレベリング現象を示すために、清浄な3003アルミニウム板上の水性ポリアクリル系表面処理剤の接触角を測定したところ、
図8に示すように73°であった。
【0141】
例22
2枚の清浄な3003アルミニウム板(2×4インチ
2)を、(それぞれ例5及び7に記載の手順と類似の手順を使用して調製した)酸化亜鉛/酸化アルミニウム及び酸化マンガン/酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。100℃の加熱板上に保持した各試料の中央に、180mgの、融点が70℃より低いパラフィンワックスを滴下してウィッキング挙動を調べた。比較として、同様に100℃の加熱板上に保持した清浄な3003 Al板の中央にも、180mgのパラフィンワックスを滴下した。
図9は、すべての試料の比較、及び5分後に試料上で得られたパラフィンによる被覆状態を示す。各試料のパラフィンによる被覆率(面積%)を、ImageJのRegion Of Interest機能を使用して測定し、亜鉛/アルミニウムベースの表面剤については93.1%、マンガン/アルミニウムベースの表面剤については66.4%、及び3003アルミニウム板については23.5%であると測定された。
図10は、3種の基材すべてにおけるパラフィンワックスのウィッキング挙動を示す。亜鉛/アルミニウムベースのセラミック表面剤においては、パラフィンは、辺縁部から板の裏側までにわたるウィッキングも可能であった。パラフィンの辺縁部からの浸透を板の裏側で測定し、裏側において、試料の中央に向かって約2mmであった。
【0142】
例23
厚さ約3センチメートルのろう付けしたアルミニウム製熱交換器を、例7に記載の手順と類似の手順を使用して調製した、酸化マンガン及び酸化アルミニウムベースの結合剤不含構造化セラミック材料でコーティングした。この試料を乾燥器中で加熱し、次いで両面に加熱パラフィンワックスを噴霧した。ワックスの構造化セラミック層による内側へのウィッキングが起こり、構造化セラミック材料を含まない熱交換器よりもより均一にコーティングされた構成部分が作製された。
【0143】
例24
2枚の清浄な3003アルミニウム板を、例7に記載の手順と類似の手順を使用して調製した、酸化マンガン及び酸化アルミニウムの混合物をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面剤でコーティングした。相互連結した多孔質セラミックをコーティングしたアルミニウム板(板A)上、及びさらに剥き出しのコーティングされていない3003アルミニウム板(板B)上に、200μLの、n-酢酸ブチル中に分散した2重量%のポリシラザン(Durazane 1500)の溶液を滴加流延した。同様の手順に従って、別の相互連結した多孔質セラミックをコーティングしたアルミニウム板(板C)上、及びさらに剥き出しのコーティングされていない3003アルミニウム板(板D)上に、200μLの、20重量%のポリシラザンの溶液を滴加流延した。4種の試料すべてが完全に乾燥するまで溶媒を蒸発させ、200℃で8時間硬化させた。接触角の測定を、すべての板について、2μLのDI水の液滴を用いて実施した。測定した接触角は、板A、板B、板C、及び板Dについてそれぞれ、141°、97°、150°、及び81°であった。次いでこれらの試料をASTM D3363の方法のプロトコルに従って鉛筆硬度試験に供し、引っかき傷及びガウジ硬度を測定し、板Aについてはそれぞれ4B及び3H、板Bについてはそれぞれ2B及び2H、板Cについてはそれぞれ4B及び4H、板Dについてはそれぞれ2B及び5Hであることが明らかになった。
【0144】
例25
例24に記載の手順と類似の手順に従って、2枚の、相互連結した多孔質セラミックをコーティングしたアルミニウム板に、2重量%(板E)及び20重量%(板G)のDurazane 1800をベースとするの配合物をコーティングし、これを硬化させた。さらに2枚の剥き出しのコーティングされていない3003アルミニウム板に、2重量%(板F)及び20重量%(板H)のDurazane 1800をベースとするの配合物をコーティングし、これを硬化させた。接触角の測定を、すべての板について、2μLのDI水の液滴を用いて実施した。測定した接触角は、板E、板F、板G、及び板Hについてそれぞれ、141°、87°、108°、及び75°であった。次いでこれらの試料をASTM D3363の方法のプロトコルに従って鉛筆硬度試験に供し、引っかき傷及びガウジ硬度を測定し、板EについてはそれぞれHB及び3H、板FについてはそれぞれH及び4H、板Gについてはそれぞれ2H及び5H、板Hについてはそれぞれ3HB及び6Hであることが明らかになった。
【0145】
例26
酢酸セルロースの薄膜に、酸化亜鉛をベースとする相互連結した多孔質セラミックコーティング剤をコーティングした。この膜を過硫酸カリウムの希薄水溶液を使用して酸化した。次に、この膜に、上記の例に記載の方法と類似の方法を使用して、酸化亜鉛をベースとする相互連結した多孔質セラミック表面改質剤をコーティングした。線形4点プローブ測定によって測定した、剥き出しの酢酸セルロース膜の電気抵抗は、測定器の範囲外(1010オームを超える)であった。上記酸化亜鉛をコーティングした酢酸セルロース膜の電気抵抗は、約106~約107オームであると測定された。上記膜の電気抵抗は、該膜に上記相互連結した多孔質酸化亜鉛セラミック層をコーティングすると低下した。
【0146】
前出の発明は、理解を明確にする目的で例示及び実施例のレベルで詳細に説明はしているが、当業者であれば、特定の変更及び修正が、本発明の技術思想及び範囲から逸脱せずとも実施できることは自明である。したがって、詳細な説明をもってして、本発明の範囲を限定的に解釈すべではない。
【0147】
本明細書で引用するすべての刊行物、特許、及び特許出願は、すべての目的のために、それぞれの個別の刊行物、特許、または特許出願を、参照により、あたかも具体的かつ個別に示したものと同然に、参照により、それらの全内容を本明細書で援用する。
【国際調査報告】