(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(54)【発明の名称】選択的に塗布した勾配塗膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230207BHJP
C09D 7/60 20180101ALI20230207BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20230207BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/60
C09D201/02
C09K3/18 102
C09K3/18 104
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535822
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 US2020064396
(87)【国際公開番号】W WO2021119373
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/065978
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520439715
【氏名又は名称】ネルンボ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】アン,マイケル・エイ
(72)【発明者】
【氏名】マー,ジェームズ・エム
(72)【発明者】
【氏名】ウォルサー,デビッド・シー
(72)【発明者】
【氏名】ブロックウェイ,ランス・アール
【テーマコード(参考)】
4H020
4J038
【Fターム(参考)】
4H020AA06
4H020BA11
4H020BA31
4J038AA001
4J038HA161
4J038PA07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
熱交換器などの装置に組み込んだ際に、環境による影響または運転ストレスで高まった悪影響を抑制または排除するために基板に塗布できる表面改質剤及び塗膜材料を提供する。構造化セラミック表面改質剤は、表面改質剤に組み込み得、また、任意に、1つ以上の物理的または化学的特性の勾配を含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に関する塗膜または改質剤を含む組成物であって、前記塗膜または改質剤は、前記基板表面の少なくとも一部において、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記勾配を含む前記塗膜または改質剤が、前記基板表面に単層で設けられている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記塗膜または改質剤が、セラミック、ポリマー材料、または自己組織化単分子層を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記塗膜または改質剤が複数の層を含み、また、前記層の少なくとも1つが、前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む前記少なくとも1つの層が、セラミック、ポリマー材料、または自己組織化単分子層を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記複数の層が、前記基板と接触する前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む第1の層と、前記第1の層において前記勾配を含まない第2の機能性材料層とを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記複数の層が、前記基板と接触する前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含まない第1の層と、前記第1の層において前記勾配を含む第2の機能性材料層とを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記塗膜または改質剤が、前記基板表面の空間的に離間した領域に塗布されている、また、前記基板表面の1つ以上の領域が、前記塗膜または改質剤を含まない、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記塗膜または改質剤が、前記基板表面の空間的に離間した複数の領域に塗布されている、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記塗膜または改質剤が、前記基板表面の実質的にすべての領域にわたって空間的に連続している、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記基板が、実質的に基板表面全体に加工塗膜またはプライマーで改質されており、かつ、前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む層が、前記加工塗膜またはプライマーの上にコーティングされている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む前記層が、前記加工塗膜またはプライマーの空間的に離間した領域に塗布されており、また、前記加工塗膜またはプライマーの1つ以上が、前記勾配を含まない、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む前記層が、前記加工塗膜またはプライマーの空間的に離間した複数の領域に塗布されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む前記層が、前記加工塗膜またはプライマーの実質的にすべての領域にわたって空間的に連続している、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記加工塗膜またはプライマーが、クロメート、フルオロジルコン酸塩、フルオロチオン酸塩、ゾルゲル、リン酸塩、ジルコニウム、希土類金属、または青色もしくは黒色の酸化物を含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む前記層が、セラミック、ポリマー材料、または自己組織化単分子層を含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む層が、前記基板表面の少なくとも一部に塗膜されており、及び、実質的に均質な機能性材料層が、前記勾配を含む前記層の上に、かつ前記基板表面の実質的にすべての領域にわたって塗膜されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む前記層が、セラミック、ポリマー材料、または自己組織化単分子層を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む前記塗膜または改質剤または層が、セラミック材料を含み、及び、
前記セラミック材料が、約20%超の結晶化度を示す結合剤不含セラミック材料である、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記セラミック材料が、金属酸化物、金属酸化物の水和物、金属水酸化物、及び/または金属水酸化物の水和物を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記セラミック材料が、金属水酸化物を含み、かつ、前記金属水酸化物の少なくとも一部が層状複水酸化物を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記セラミック材料が:
約10m
2~1500m
2の表面積/予測セラミック材料の平方メートル;
約15m
2~1500m
2の表面積/セラミック材料のグラム;
約2nm~約20nmの平均細孔径;
約0.2マイクロメートル~約25マイクロメートルの膜厚;
約10%超の空隙率;及び、
水銀圧入ポロシメトリーで決定した約100mm
3/g~約7500mm
3/gの空隙容量、の内の1つ以上を含む、請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む前記塗膜または改質剤または層が、ラテックス、アルカン、アルケン、アルコール、アクリル、アルキド、エナメル、エポキシ、シロキサン、フルオロポリマー、またはウレタンを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む前記塗膜または改質剤または層が、頭部基及び尾部基を有する分子を含み、
前記頭部基は、シラン基、スルホネート基、スルホン酸基、ボロネート基、ボロン酸基、ホスホネート基、ホスホン酸基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ビニル基、水酸化物基、アルコール基、チオレート基、チオール基、及び/または四級アンモニウム基を含む、及び
前記尾部基は、炭化水素基、フルオロカーボン基、ビニル基、フェニル基、エポキシド基、アクリル基、アクリレート基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、チオール基、及び/または四級アンモニウム基を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記勾配の少なくとも1つの物理的または化学的特性が、膜厚、密度、孔径、孔径分布、細孔充填率、化学的または物理的組成、酸化状態、金属濃度、架橋密度、等電点、電気伝導率、熱伝導率、静電容量、または、それらの組み合わせから選択される、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記基板表面が、熱交換器、車両、航空機、船舶、または橋梁の表面である、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記基板表面が、熱交換器、またはその構成要素の表面である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記熱交換器が、蝋付けしたアルミニウム熱交換器、銅管-アルミニウムフィン熱交換器、または鋼管-アルミニウムフィン熱交換器である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記熱交換器またはその構成要素が、前記組成物を含まない同一の熱交換器または構成要素と比較して、環境による損傷に対してより高い耐性を有する、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記熱交換器またはその構成要素の表面に塗膜または改質剤を含む熱交換器またはその構成要素であって、前記塗膜または改質剤が、前記熱交換器またはその構成要素の表面の少なくとも一部において、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む、前記熱交換器またはその構成要素。
【請求項31】
前記熱交換器が、蝋付けしたアルミニウム熱交換器、銅管-アルミニウムフィン熱交換器、または鋼管-アルミニウムフィン熱交換器である、請求項30に記載の熱交換器またはその構成要素。
【請求項32】
前記熱交換器またはその構成要素が、前記塗膜または改質剤を含まない同一の熱交換器または構成要素と比較して、環境による損傷に対してより高い耐性を有する、請求項30に記載の熱交換器またはその構成要素。
【請求項33】
環境による損傷から基板を保護する方法であって、基板に対して請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物を塗布することを含み、前記基板は、前記組成物を含まない同一の基板と比較して、環境による損傷に対してより高い耐性を有することを含む、前記方法。
【請求項34】
前記環境による損傷が、腐蝕、デブリの蓄積、水または氷の蓄積、生物付着、及び摩耗の内の1つ以上を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
水または氷の蓄積による腐蝕を抑制または防止する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記基板が、熱交換器またはその構成要素の表面である、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年12月12日に出願したPCT出願第PCT/US2019/065978号の優先権を主張しており、かつ、2020年3月13日に出願した米国仮出願第62/989,092号、2020年3月13日に出願した米国仮出願第62/989,150号、2020年6月12日に出願した第63/038,642号、2020年6月12日に出願した第63/038,693号、及び2020年6月16日に出願した第63/039,965号の利益を主張するものであって、それらの全内容を、本明細書で援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、塗膜材料、特に、塗膜材料を塗布した基板の腐蝕など、環境または運転ストレスを軽減する、1つ以上の物理的または化学的特性の勾配を提供する塗膜材料に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
熱交換器、及びその他の関連システムを、局所的な環境下に置くと、それらの性能、及び、最終的には、それらの有用性に影響を与え得る条件に曝される。認められる影響は、局所的腐蝕、水と霜の蓄積であり、これらは、腐蝕、デブリの蓄積、または浮遊するデブリによる摩耗を招き、腐蝕保護の効果を低下させたり、微生物を増殖させた後に、腐蝕を引き起こす。別の例では、熱交換器の前縁の表面には、後縁とは比べものにならないほど非常に多くのデブリが蓄積する。凝縮した水が蓄積すると、熱交換器表面の後縁に凝集してしまい、腐蝕が進行して損傷を大きくする。路面の摩耗はタイヤの接触領域で発生しており、また、オイルの蓄積は車線の中央で起っており、これらは両方ともに、路面の摩耗と腐蝕のパターンを変化させる。これらの装置及びシステムでの性能を高めるために、関心のある領域において、標的を絞った方法で、これらの条件に直接に対処することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
発明の簡単なまとめ
塗膜組成物、及びその使用方法を、本明細書で提供する。
【0005】
ある態様では、基板表面のための塗膜または改質剤の形態の組成物を提供しており、この塗膜または改質剤は、基板表面の少なくとも一部において、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む。例えば、勾配の少なくとも1つの物理的または化学的特性として、膜厚、密度、細孔サイズ、細孔サイズ分布、細孔充填率、化学的または物理的組成、酸化状態、金属濃度、架橋密度、等電点、電気伝導率、熱伝導率、及び静電容量の1つ以上を含み得るが、これらに限定されない。一部の実施形態では、勾配、例えば、上記した特性のいずれかの勾配は、塗膜または改質剤の所与の特性の最大値、または基板上での所与の特性の最大値に対して、約1%~約99%、約5%~約95%、約10%~約90%、約20%~約80%、または約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約99%のいずれか、または少なくとも約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約99%とすることができる。
【0006】
一部の実施形態では、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む塗膜または改質剤は、基板表面上の単層にある。例えば、塗膜または改質剤は、セラミック、ポリマー材料、または自己組織化単分子層を含み得る。
【0007】
一部の実施形態では、塗膜または改質剤は複数の層を含み、層の少なくとも1つは、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む。例えば、勾配を含む少なくとも1つの層は、セラミック、ポリマー材料、または自己組織化単分子層を含み得る。一部の実施形態では、複数の層は、基板と接触する少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む第1の層と、第1の層の上に置かれた勾配を含まない第2の機能性材料層とを含む。
【0008】
別の実施形態では、複数の層は、基板と接触する勾配を含まない第1の層と、第1の層の上に置かれた勾配を含む第2の機能性材料層とを含む。
【0009】
一部の実施形態では、塗膜または改質剤を、基板表面の空間的に離間した領域に塗布する、そして、基板表面の1つ以上の領域は、塗膜または改質剤を含まない。例えば、塗膜または改質剤は、基板の表面の空間的に離間した複数の領域に塗布し得る。一部の実施形態では、基板表面の約1%~約99%、約5%~約95%、約10%~約90%、約20%~約80%、または約1%、約5%、約10%のいずれか、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約99%、または、少なくとも約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約99%のいずれかは、塗膜、層(複数可)、または改質剤で覆われている。
【0010】
一部の実施形態では、塗膜または改質剤は、すべての領域にわたって空間的に連続している、または、実質的に基板表面のすべての領域を覆っている。
【0011】
一部の実施形態では、基板は、基板表面全体または実質的に基板表面全体に加工塗膜またはプライマーで改質しており、また、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む層を、加工塗膜またはプライマーの上に塗装する。一部の実施形態では、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む層を、加工塗膜またはプライマーが空間的に離間した領域に塗布する、そして、加工塗膜またはプライマーの1つ以上の領域は、勾配を含む層を含まない。一部の実施形態では、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む層を、加工塗膜またはプライマーが空間的に離間した複数の領域に塗布する。一部の実施形態では、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む層は、加工塗膜またはプライマーのすべての領域、または実質的にすべての領域にわたって空間的に連続する。一部の実施形態では、加工塗膜またはプライマーは、クロメート、フルオロジルコネート、フルオロチタネート、ゾルゲル、リン酸塩、ジルコニウム、希土類金属、及び青色または黒色の酸化物の内の1つ以上を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む層は、セラミック、ポリマー材料、または自己組織化単分子層を含む。
【0012】
一部の実施形態では、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む層を、基板表面の少なくとも一部に塗装する、そして、基板表面のすべての領域または実質的にすべての領域にわたって、均質または実質的に均質な機能性材料層を、勾配を含む層の上に塗装する。一部の実施形態では、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む層は、セラミック、ポリマー材料、または自己組織化単分子層を含む。
【0013】
一部の実施形態では、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む塗膜または改質剤または層は、セラミック材料を含む、またはセラミック材料からなる。例えば、当該セラミック材料は、結晶化度が約20%超の結合剤不含セラミック材料とし得る。当該セラミック材料は、金属酸化物、金属酸化物の水和物、金属水酸化物、及び/または金属水酸化物の水和物を含み得る。一部の実施形態では、当該セラミック材料は、金属水酸化物を含み、また、当該金属水酸化物の少なくとも一部は、層状複水酸化物の形態である。一部の実施形態では、当該セラミック材料は:対象とする基板面積1平方メートルあたり約10m2~1500m2の表面積;セラミック材料1グラムあたり約15m2~1500m2の表面積;約2nm~約20nmの平均細孔径;約0.2マイクロメートル~約25マイクロメートルの膜厚;約10%を超える空隙率;及び、水銀圧入ポロシメトリーで決定した約100mm3/g~約7500mm3/gの空隙体積から選択する1つ以上の特性を含む。
【0014】
一部の実施形態では、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む塗膜または改質剤または層は、ラテックス、パラフィン(アルカン)、アルケン、アルコール、アクリル、アルキド、エナメル、エポキシ、シロキサン、フルオロポリマー、またはウレタンを含む、または、それらからなる。
【0015】
一部の実施形態では、少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む塗膜または改質剤または層は、頭部基及び尾部基を有する分子を含み、例えば、頭部基は、シラン基、スルホネート基。スルホン酸基、ボロネート基、ボロン酸基、ホスホネート基、ホスホン酸基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ビニル基、ヒドロキシド基、アルコール基、チオレート基、チオール基、及び/または第4級アンモニウム基を含み、及び、尾部基は、炭化水素基、フルオロカーボン基、ビニル基、フェニル基、エポキシド基、アクリル基、アクリレート基、ヒドロキシル基、カルボキシル酸基、チオール基、及び/または第4級アンモニウム基を含む。
【0016】
一部の実施形態では、基板表面は、熱交換器、車両、航空機、船舶、または橋梁の表面、またはそれらが配置された、または操作を行っている環境の条件下で環境摩耗または環境劣化を受けやすいその他のあらゆる表面である。例えば、基板表面は、蝋付けしたアルミニウム熱交換器、銅管-アルミニウムフィン熱交換器、または鋼管-アルミニウムフィン熱交換器の表面とし得る。
【0017】
別の態様では、熱交換またはその構成要素を提供しており、本明細書に記載した組成物(すなわち、本明細書に記載した基板表面の少なくとも一部に及ぶ少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む塗膜または改質剤)を、熱交換器の表面または熱交換器の構成要素の表面に塗布する。例えば、熱交換器は、蝋付けしたアルミニウム熱交換器、銅管-アルミニウムフィン熱交換器、または鋼管-アルミニウムフィン熱交換器とし得る。熱交換器の表面または構成要素は、本明細書に記載した組成物を含まない同一の熱交換器または構成要素と比較して、環境による損傷を最小限にし得る。
【0018】
別の態様では、環境による損傷から基板を保護するための方法を提供する。この方法は、本明細書に記載した組成物(すなわち、基板表面の少なくとも一部に及ぶ少なくとも1つの物理的または化学的特性の勾配を含む塗膜または改質剤)を基板に塗布することを含み、当該組成物を含まない同一の基板と比較して、当該基板は環境に対する影響を最小限にし得る。例えば、環境による損傷として、腐蝕、デブリの蓄積、水または氷の蓄積、生物付着、及び摩耗の内の1つ以上を含み得るが、これらに限定されない。一部の実施形態では、水または氷の蓄積による腐蝕は、本明細書に記載した組成物を含まない同一の基板と比較して、抑制または防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例43に記載したセラミック被覆パネルの乾燥速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
塗膜形成組成物の選択的塗布は、環境保護のために使用することができる。さらに、時間の経過とともに、予防または手当する条件が変化する。このことは、例えば、装置の寿命期間内に層を変更した時に、様々な保護を提供する層状塗膜構造で対処することができる。
【0021】
本明細書では、縁部、材料または複合界面、低速の領域、高電気化学的腐蝕領域、または過剰な湿気、塩分、デブリの蓄積、生物付着、または摩耗を受ける、またはその影響を受けやすい領域など、環境曝露及び環境による損傷が特に著しい領域での腐蝕などの環境に起因する摩耗または劣化を最小限に抑えるための塗膜形成組成物及び基板改質剤を提供し得る。
【0022】
塗膜または表面改質剤は、耐蝕性に優れた材料の塗布、または環境曝露の大きな領域、またはストレス、または、例えば、組成物を部分的に塗膜するために機器を稼働させている間の運転に起因するストレスを受ける基板から逃れた水などの液体の動きを促し、または、速める、そして、表面全体または装置に塗膜が必要でなければ、経時的に材料を部分的に保護するために、例えば、基板表面全体において、塗膜または表面改質剤の厚み、または、表面の標準勾配(例えば、重ねている塗膜または表面改質剤から基板表面と接触している底部の間の1つ以上の化学的または物理的特性の勾配)に変化をつける、及び/またはブランディング、またはコスト削減手段として使用し得る。
【0023】
塗膜または表面改質剤の選択的塗布を使用して、塗膜の熱抵抗に起因する熱伝達損失などの潜在的な悪影響を最小限に抑えながら、耐蝕性などの補完的な利点を実現することもできる。
【0024】
使用用途の1つは、熱交換器に関係している。一部の屋外熱交換器は、降雨後の水たまり、スプリンクラー、海洋環境近傍での使用、または動物、例えば、猫などの尿が故に、非常に特定された箇所で腐蝕して故障を起こす。本明細書に記載した組成物及び表面改質剤を使用することで、軽減または排除し得るその他の環境ストレスとして、排気汚染、都市汚染、粉塵/デブリ、肥料、路面塩、路面砂、海洋エアロゾル、産業排出物(例えば、精製所、水処理場、製造所)、または微生物(例えば、細菌、真菌)、またはウイルス曝露、及び/またはバイオフィルム形成(すなわち、抗微生物、抗菌、抗真菌、または抗ウイルス塗膜、または表面改質剤)がある。空間勾配の特性を使用して、勾配効果を使用することができる。例えば、水などの流体に方向性をつけて吸い上げて、ある方向から別の方向に「ポンプ」する空隙率の空間勾配は、腐蝕防止や、乾燥の強化や流体移動などのその他の目的にも使用し得る。
【0025】
一部の実施形態では、塗膜または表面改質剤は、熱交換器またはその構成要素を、衝突する汚染物質(例えば、食肉処理場での粒子、腐蝕性エアロゾルなど)に対して耐性にし得る、また、熱伝導率を下げることにより、表面温度が上がり、それにより、熱抵抗が上がって、着霜率を下げ得る。フィンパックの下流では、耐蝕性を低下させて、熱伝達/霜抑制の特性を向上させるために、塗膜を変え得る。
【0026】
塗膜または表面改質剤は、基板表面全体に、または選択的(基板表面の1つ以上の部分、例えば、劣悪環境条件下、または環境または運転ストレスを受ける1つ以上の領域など)に塗布し得る。本明細書に記載した特定の実施形態では、塗膜または表面改質剤は、基板表面全体または装置全体または装置の一部または構成要素全体にわたって、1つ以上の次元の勾配(すなわち、空間的変動)を構成する。例示的な材料パラメータとして、材料密度の勾配、細孔サイズ分布、細孔充填(すなわち、充填率、または多孔質材料の細孔を充填する材料の空間勾配)、または材料の膜厚を含み得る。
【0027】
基板、または基板を組み込む装置または構成要素に対する環境的または運転過程での負荷を軽減または防ぐ方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの化学的または物理的特性の勾配を含む1つ以上の材料を含む本明細書に記載した塗膜または表面改質剤のいずれかを、空間的に連続的な塗布、または空間的に離間した塗布し得ることを含み、塗膜または基板改質剤を含まない基板と比較して、当該基板は、環境に対する影響または運転時の事故、例えば、腐蝕、デブリの蓄積、水または氷の蓄積、生物付着、または摩耗などの運転時の事故を抑える。
【0028】
定義
本明細書で提供する数値範囲は、その範囲を定義する数字を含む。
【0029】
「A」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に指示されていない限り、複数形の対象を含む。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する句「及び/または(and/or)」は、そのように結合した要素、すなわち、そのように結合した「いずれか、または、両方(either or both)」、すなわち、これら要素が、ある事例では、コンジュケートしており、そして、その他の事例では、コンジュケートしていない、と意味することを理解するべきである。文脈で明確に指示されていない限り、それら要素が特異的に定めたものと関連していても、または、関連していなくとも、句「及び/または(and/or)」で明確に示した要素以外は、その他の要素は任意に存在する。したがって、「A及び/またはB」の記載は、「含む(comprising)」などのオープンエンド言語と組み合わせて使用すると、一部の実施形態では、Bが無い状態のA(B以外の要素を任意に含む);別の実施形態では、Aが無い状態のB(A以外の要素を任意に含む);なおも別の実施形態では、A及びB(その他の要素を任意に含む)のことを指す、などがあるが、これらに限定されない。
【0031】
「結合剤(Binder)」または結合剤(binding agent)は、その他の材料を一緒に保持して、または引き寄せて、全体を機械的、化学的に接着して形成するあらゆる材料または物質である。
【0032】
「結合剤不含」とは、特に、有機結合剤または樹脂(ポリマー、接着剤(glues)、接着剤(adhesives)、アスファルトなど)、または無機結合剤(石灰、セメントガラス、石膏など)に関して、構造的完全性を改善するために、一次材料に外因的に添加できる結合剤が無い、ことを意味する。
【0033】
「キャピラリークライム」とは、多孔質基板が故に、液体の自由表面と接触させることで、試料を押し上げる液体の表面張力(キャピラリークライムは、重力による力(ベクトル)の方向と平行であり、かつ、反対である)のことを指す。
【0034】
「セラミック」または「セラミック材料」は、金属または半金属の無機化合物、及びイオン結合または共有結合を有する非金属を含む固体材料のことを指す。「非金属」は、酸素(酸化物セラミック)、または炭素(炭化物)、または窒素(窒化物)(非酸化物セラミック)を含み得る。「金属」として、周期表の第1族の非水素元素、周期表の第2~12族の元素、またはpブロックの元素(周期表の第12~17族)、例えば、Al、Ga、In、TI、Sn、Pb、Bi、またはそれらの組み合わせがある。「メタロイド」として、B、Si、Ge、As、Sb、Se、Te、またはPo、またはそれらの組み合わせがある。
【0035】
「接触角」とは、表面と接触面の気液界面との間を、液体を通して測定した角度のことを指す。
【0036】
「隣接する(Contiguous)」または「隣接(contiguity)」とは、互いに直接に接触する壁及び特徴を含む、または個々の細孔または構造に対して大きな領域または寸法において共通の壁を共有する細孔及び構造のことを指す。
【0037】
「加工塗膜」とは、反応物が、処理する表面と化学的に反応して、基板を別の化合物に変換する表面層のことを指す。このプロセスは、一般的に、付加的または定着的ではなく、わずかな質量変化を招き得る。
【0038】
「第1四分位細孔径」とは、細孔径が大きくなる方向において決定する累積細孔表面積が、BJHガスの吸着/脱着測定で決定する総累積細孔表面積の25%に相当する細孔径の値のことを指す。
【0039】
「機能性材料層」とは、周囲の環境と相互作用する最上部の表面層として機能する、または、後続の材料の界面層(その他の2つの材料層での中間層)として機能する材料の層のことを指す。機能性材料層は、下方にある基板、及び/または定着する材料に1つ以上の望ましい機能的特性を付与する。
【0040】
「勾配」とは、本明細書では、材料を配置または固定化する基板表面に沿って、ある点から別の点に空間的に通過させる、そして、材料上または材料を通るデカルト座標のx、y、またはz方向を変化させて認められる、材料の1つ以上の物理的または化学的特性の量的増加または減少のことを指している。勾配特性の例として、厚み、密度、硬度、延性、細孔サイズ、細孔サイズ分布、細孔充填率、または、化学的または物理的組成があり、例えば、酸化状態、金属濃度、または架橋密度があり、その結果、等電点、電気伝導率、熱伝導率、静電容量などが変動するが、これらに限定されない。
【0041】
「親水性」とは、水との親和性が高い表面のことを指す。接触角は非常に小さく(例えば、空気の存在下で、液体の水を介して表面から測定して30度未満)、及び/または測定不可能である。
【0042】
「層状複水酸化物」とは、一般的な配列[AcB Z AcB]nの層状構造を特徴とするイオン性固体のクラスのことを指しており、式中、cは、金属カチオンの層である、AとBは水酸化物アニオンの層である、及び、Zは、その他の陰イオン及び/または中性分子(水など)の層である。層状複水酸化物は、PCT出願第PCT/US2017/052120号にも記載されており、この文献は、参照により、その全内容を本明細書で援用する。
【0043】
「マクロボイド(macro void)」とは、個々の細孔または特徴(例えば、膜厚)の特徴的寸法よりも実質的に大きな特徴的寸法、例えば、特徴的寸法よりも、少なくとも約5倍~約10倍、または約10倍~約100倍を有する固体内部の幾何学的空間のことを指す。
【0044】
「平均」とは、算術的平均(mean)または平均(average)のことを指す。
【0045】
「平均細孔径」は、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)吸着/脱着法で求めた総表面積と総体積の測定値を使用して、円筒形の細孔とみなして、4倍の総細孔体積を総細孔表面積で割って(4V/A)計算する。
【0046】
「マルチモーダル」とは、複数の異なるピークとして出現する複数の異なるモードを含む分布のことを指す。
【0047】
流体力学における「透過性」とは、多孔質材料が流体を通過させる能力の尺度である。媒体の透過性は、多孔性のみならず、媒体の細孔の形状と、それらの連結性のレベルにも関係する。
【0048】
「細孔径分布」とは、水銀圧入ポロシメトリー(MIP)、Washburmの式で決定するそれぞれの細孔径または範囲または細孔径の相対的な存在量のことを指す。
【0049】
「空隙率」とは、材料内の空隙(つまり「空である」)空間の尺度であり、また、空隙の体積の割合は、0と1との間、または、0%~100%の間の総体積を超える、すなわち、マクロ空隙である。本明細書に開示した空隙率は、水銀圧入ポロシメトリーで測定した。
【0050】
「空隙率」とは、固体材料内の空間、穴、または空隙のことを指す。
【0051】
「超疎水性」とは、非常に濡れにくい表面のことを指す。本明細書に記載した超疎水性表面での超疎水性材料の水滴の接触角は、液滴接触角>150°のことを指す。疎水性の大きな接触角は、>120°である。本明細書に記載した接触角は、液体を介して表面間に形成する角度のことである。
【0052】
「対象とする基板面積の平方メートルあたりの表面積」とは、実際に測定した表面積のことを指しており、通常は、平方メートルで測定をしており、原子的に滑らかであれば(粗くなければ)、通常は、平方メートルで基板の表面積で除算する。
【0053】
「相乗効果(Synergy)」または「相乗的な(synergistic)」とは、2つ以上の物質、材料、または作用物質の間の相互作用または相互連携のことを指しており、それらの個々の個別の効果の合計よりも大きい(正の相乗効果)、または小さい(負の相乗効果)複合効果を生み出す。
【0054】
「膜厚」は、基板の表面と、表面改質剤(例えば、セラミック)の頂部との間の長さのことを指す。
【0055】
「第3四分位細孔径」とは、細孔径が大きくなる方向において決定する累積細孔表面積が、BJHガスの吸着/脱着測定で決定する総累積細孔表面積の75%に相当する細孔径の値のことを指す。
【0056】
「屈曲度」とは、多孔質構造Δlを通る最短経路の割合と、その経路Δxの始点と終点の間のユークリッド距離のことを指す。
【0057】
「調節可能」とは、材料の機能、特性、または品質を、変更または修正する能力のことを指す。
【0058】
選択的塗膜及び表面改質剤
熱交換器の表面などの基板の選択的コーティングは;基板の表面の一部を部分的(選択的)にコーティングするものであって、局所的な耐蝕性の必要性、またはその他の必要性、例えば、限定を意図するものではないが、水分量の大きな領域での微生物(例えば、Legionella)の増殖、または基板から逃れる水などの液体の移動を制限する必要性に基づいている;第1の材料Aを用いた基板の完全なコーティング、及び第1の材料の上に第2の材料Bの部分的なコーティング(すなわち、第1の材料Aの表面の一部(1つ以上の領域)を覆う第2の材料Bの選択的コーティング)であって、当該第2の材料は、第1の材料と同じものとし得る、または、相違させ得る;及び、環境または運転ストレスを軽減する、などの複数の方法で実施することができる。
【0059】
本明細書の勾配は、少なくとも1つの化学的または物理的特性に関して空間的に可変である。例えば、塗膜または表面改質剤Aは、基板表面上の均質な材料とし得る、または、限定を意図するものではないが、材料密度、細孔サイズ分布、細孔の埋まり具合、及び膜厚などの1つ以上の特性における空間勾配(変動性)を含み得る。加えて、任意の第2の材料Bを、材料Aの上にも塗布し得る、そうすることで、均質な材料になり得る、または、限定を意図するものではないが、材料密度、細孔サイズ分布、膜厚、及び/または材料Aの細孔の埋まり具合などの1つ以上の特性に空間的変動性を与え得る。一部の実施形態では、任意の第3の材料Cも選択的に塗布し得る、そして、基板全体または直下の材料全体にわたって均質な材料とし得る、または、限定を意図するものではないが、材料密度、細孔サイズ分布、膜厚、及び/または材料Bの細孔の埋まり具合などの1つ以上の特性に空間的変動性を与え得る。一部の実施形態では、材料Cは、限定を意図するものではないが、A-B-Aなどの材料の定着物に塗布する、そして、限定を意図するものではないが、材料密度、細孔サイズ分布、膜厚、及び/または材料Cの真下にある材料、例えば、材料Aの細孔の埋まり具合などの1つ以上の特性に空間的変動性を与え得る。均質な材料、または勾配のある材料のさらなる任意の層も含み得る。塗膜または表面改質剤(複数可)を、基板表面全体、または1つ以上の別個の(選択的)領域、例えば、当該基板を組み込んだ装置または構成要素での使用に供した際に環境または運転ストレスを受ける領域などに連続的に塗布し得る。
【0060】
本明細書に開示した勾配層は、構造層の1つ以上の勾配特性を含み得る。例えば、勾配は、接合部近傍での高い空隙率、パネルの構造複合材料の膜厚、例えば、特定の温度での浸漬プロセスの排出及び乾燥での底部または縁部の近傍の膜厚の変化、選択材料を選択的に噴霧する領域、選択領域での材料のさらなる塗膜を加えること、前縁での材料の増量を招く噴霧塗布、または電気化学ポテンシャルに影響を与える組成変化を含み得る。
【0061】
勾配は、構造層の処理の間に発生し得る、例えば、処理の間に反応物または組成物(を滴下して)成分の濃度レベルを変化させ、その結果、塗膜の膜厚を介して組成物を変化させる、及び/または温度を変化させる、例えば、処理の間に処理槽の温度、構造を変更する、または処理の間に部品の温度を変更する、または処理の間の可変温度ゾーンを設定する、例えば、当該部品のホットゾーン及びコールドゾーンによって、厚い材料、薄い材料、または異なる材料、例えば、構造化セラミック材料を作り出す。機械部品の攪拌、流体の移流、局所的な熱または光の付加、圧力差、及び/または重力沈降差による局所的な化学反応性の変更も、勾配特性を生成するために使用することができる。乾燥及び硬化プロセスを使用して、選択した温度域、乾燥具合、及び/または選択的に光を使用して、特性勾配を生成することもできる。
【0062】
一部の実施形態では、1つ以上の塗膜または表面改質剤(例えば、材料A~C)は、構造化セラミック、例えば、第2の材料で細孔の一部を充填して勾配を生成する方法で、充填、非充填、または一部充填し得る細孔を有する結合剤不含セラミック表面改質剤などである。一部の実施形態では、セラミック材料は、ポリマー材料などの第2の材料で充填した細孔の連続したネットワークを含む。
【0063】
一部の実施形態では、表面改質剤は、加工塗膜またはプライマー(例えば、三価のリン酸クロム、その他のクロム酸塩、フルオロジルコン酸塩、フルオロチタン酸塩、ゾルゲル、リン酸塩、青色または黒色の酸化物塗料、または陽極酸化処理などがあるが、これらに限定されない)とし得る。
【0064】
一部の実施形態では、1つ以上の表面改質剤を、塗料プライマーに塗布する。例えば、定着した材料を、例えば、ラテックス、アクリル、アルカン、アルケン、アルコール、エナメル、エポキシ、シロキサン、ポリシラザン、フルオロポリマー、またはウレタンなどの塗料とし得る。例えば、定着物は、天然の脂肪酸、または加工した脂肪酸、アルコール、炭化水素、またはオイル、例えば、リノール、パルミチン、オレイン酸、グリセロール、パラフィン、テレピン、トール油、亜麻仁油、パーム油、キリ油、または煮沸した亜麻仁油、水素化脂肪酸、精製グリセロール、蒸留パラフィン、ミネラル油、または精製パーム油とし得る。
【0065】
一部の実施形態では、1つ以上の表面改質剤は、単層の化学物質であり、限定を意図するものではないが、湿潤性、密封性、光線などの一連の特性のいずれかを提供し得る。
【0066】
大抵の基板は、銅-アルミニウム熱交換器、鋼-アルミニウム熱交換器、蝋付けアルミニウム熱交換器、橋梁や車両のネジとリベット、及び複合界面を含むその他の構成要素などのマルチメタル構成要素である。このような込み入った状況での選択的保護は、様々な環境、及び陽極/陰極領域の電解腐蝕の影響を受けやすい金属カップルに対するさらなる保護(選択的陽極保護など)を提供することができる。組成が均質または不均質であるその他の基板には、局所的な摩耗、液体の滞留、または空気流の勾配などの局所的な環境に起因する腐蝕の影響を受けやすい局所的な領域を含む。
【0067】
一部の実施形態では、基板は、マイクロチャネル熱交換器などの熱交換器、またはその構成要素である。その他の実施形態として、橋梁、航空機、車両、及び船舶、またはそれらの構成要素がある。
【0068】
塗膜または表面改質剤の特性及び組成の例として、限定を意図するものではないが、本明細書に記載したような層(「n」)がある:
n1 加工塗膜またはプライマー-無勾配の連続被覆
n2 加工塗膜またはプライマー-勾配を有する連続被覆
n3 加工塗膜またはプライマー-無勾配の選択的(離間)被覆
n4 加工塗膜またはプライマー-勾配を有する選択的被覆
n5 構造化セラミック-無勾配の連続被覆
n6 構造化セラミック-勾配を有する連続被覆
n7 構造化セラミック-無勾配の選択的被覆
n8 構造化セラミック-勾配を有する選択的被覆
n9 定着単分子層/塗料/オイル/樹脂-無勾配の連続被覆
n10 定着単分子層/塗料/オイル/樹脂-勾配を有する連続被覆
n11 定着単分子層/塗料/オイル/樹脂-選択的勾配を持たない被覆
n12 定着した単分子層/塗料/オイル/樹脂-勾配を有する選択的被覆
【0069】
限定を意図していない塗膜または表面改質剤の配置(n=「A」、「B」、「C」、..式中、A、B、Cなどは、塗布する順序、または基板に対する近接具合、例えば、Aが、基板と接触している、または当該基板の近位にある材料である、または複数の材料の層の最下部の材料である)として:
A1-B11 (連続被覆加工塗膜+選択的被覆塗料)
A1-B10 (連続被覆加工塗膜+連続被覆勾配塗料)
A1-B12 (連続被覆加工塗膜+選択的被覆勾配塗料)
A1-B6 (連続被覆プライマー+連続被覆勾配構造化セラミック)
A1-B7 (連続被覆プライマー+選択的被覆構造化セラミック)
A1-B8 (連続被覆プライマー+選択的被覆勾配構造化セラミック)
A1-B5-C9-D11 (連続被覆加工塗膜+連続被覆構造化セラミック+連続被覆機能性材料層+選択的被覆塗料)
A1-B5-C10 (連続被覆加工塗膜+連続被覆構造化セラミック+連続被覆勾配機能性材料層)
A1-B5-C11 (連続被覆加工塗膜+連続被覆構造化セラミック+選択的機能性材料層)
A1-B5-C12 (連続被覆加工塗膜+連続被覆構造化セラミック+選択的被覆勾配機能材料層)
A3 (選択的被覆加工塗膜)
A5-B9-C11 (連続被覆構造化セラミック+連続被覆機能性材料層+被覆選択的塗料)
A5-B10 (連続被覆構造化セラミック+連続被覆勾配機能材料層)
A5-B11 (連続被覆構造化セラミック+選択的被覆機能材料層)
A5-B12 (連続被覆構造化セラミック+選択的被覆勾配機能材料層)
A6 (連続被覆勾配構造化セラミック)
A6-B9 (連続被覆勾配構造化セラミック+連続被覆機能材料層)
A6-B10 (連続被覆勾配構造化セラミック+連続被覆勾配機能材料層)
A6-B11 (連続被覆勾配構造化セラミック+選択的被覆機能材料層)
A6-B12 (連続被覆勾配構造化セラミック+選択的被覆勾配機能材料層)
A7 (選択的被覆構造化セラミック)
A7-B9 (選択的被覆構造化セラミック+連続被覆機能性材料層)
A7-B11 (選択的被覆構造化セラミック+選択的被覆機能性材料層)
A8 (選択的被覆勾配構造化セラミック)
A9-B11 (連続被覆単層塗膜+選択的被覆塗料)
A10 (連続被覆勾配塗料)
A11 (選択的被覆塗料)
A12 (選択的被覆勾配塗料)がある。
【0070】
構造化セラミック材料
本明細書に記載した、連続した、または離間した塗膜または表面改質剤は、構造化セラミック、例えば、結晶化度が約20%超の結合剤不含セラミックなどの結合剤不含(例えば、表面固定化)セラミックとし得る。一部の実施形態では、構造化セラミックは、多孔質である。限定を意図しないセラミック材料の例は、PCT/US19/65978に提供されており、このものは、参照により、その全内容を本明細書で援用する。
【0071】
セラミック材料は、金属酸化物、及び/または水酸化物セラミック、例えば、単一金属または混合金属酸化物、及び/または水酸化物セラミックを含み得る。一部の実施形態では、当該セラミック材料は、金属水酸化物、及び/または水酸化物セラミック、例えば、単一の金属、または混合金属酸化物、及び/または水酸化物セラミックを含む。一部の実施形態では、当該セラミック材料は、金属酸化物、及び金属水酸化物セラミックを含み、また、当該金属酸化物、及び金属水酸化物は、同一、または異なる、単一金属または混合金属を含む。一部の実施形態では、当該セラミック材料は、金属酸化物、及び/または金属水酸化物セラミックを含み、また、当該基板は、水またはその他の化合物で水和しており、その結果、表面エネルギーの変化、及び潜在的に当該セラミックの金属水酸化物組成に対する金属酸化物の比率を定める。一部の実施形態では、当該セラミック材料は、金属水酸化物を含み、また、当該金属水酸化物の少なくとも一部は、層状複水酸化物の形態である、例えば、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の金属水酸化物が、二層の水酸化物である。
【0072】
一部の実施形態では、「金属酸化物」または「金属水酸化物」は、それぞれ、金属酸化物または金属水酸化物の水和物の形態とし得る、または金属酸化物または金属水酸化物の一部は、それぞれ、金属酸化物または金属水酸化物の水和物の形態とし得る。
【0073】
混合金属酸化物または混合金属水酸化物は、例えば、2つ以上の金属の酸化物または水酸化物を含み得る、また、当該金属は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、クロム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、亜鉛、鉛、スズ、タングステン、セリウム、プラセオジミウム、サマリウム、ガドリニウム、ランタン、マグネシウム、アルミニウム、またはカルシウムがあるが、これらに限定されない。
【0074】
一部の実施形態では、セラミック材料を、結合剤不含のセラミック材料、すなわち、結合剤を使わずに基板上に定着させる。一部の実施形態では、セラミック材料を、基板上に固定化する。
【0075】
一部の実施形態では、セラミック材料は、例えば:1時間で、表面張力が小さい(例えば、イソプロパノールでは約25mN/m未満)液体を、密閉容器内で重力に逆らって表面を約5mm以上より上にまで持ち上げる毛管上昇をさせる能力;約0.1m2/g~約10,000m2/gの表面積;約10nm~約1000nm、または約1nm~約1000nmの平均孔径;約0~約1cc/gの水銀(Hg)侵入ポロシメトリーで測定した細孔容積;及び、最短距離までの流体経路の長さである「アークコード比」で定義する約1~約1000の屈曲度、及び/または、約1~約10,000ミリダルシーの透過性の1つ以上を特徴とする連続気泡多孔質構造を有する。
【0076】
一部の実施形態では、セラミック材料は、多孔質である、すなわち、約5%~約95%の空隙率である。一部の実施形態では、空隙率は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%である。一部の実施形態では、空隙率は、約10%~約90%、約30%~約90%、約40%~約80%、または約50%~約70%である。
【0077】
一部の実施形態では、多孔質セラミック材料は、約1~10,000ミリダルシーの透過性を有する。一部の実施形態では、透過性は、少なくとも約1、10、100、500、1000、5000、または10,000ミリダルシーのいずれかとし得る。一部の実施形態では、約500~約1000、約750~約2000、約1000~約2500、約2000~約5000、約3000~約7500、約5000~約10,000、約1~約1000、約1000~約5000、または約5000~約10,000ミリダルシーである。
【0078】
一部の実施形態では、多孔質セラミック材料は、水銀圧入ポロシメトリーで決定した約100mm3/g~約7500mm3/gの空隙体積を含む。一部の実施形態では、空隙体積は、少なくとも約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、または7500mm3/gのいずれかである。一部の実施形態では、空隙体積は、約100~約500、約200~約1000、約400~約800、約500~約1000、約800~約1500、約1000~約2000、約1500~約3000、約2000~約5000、約3000~約7500、約250~約5000、約350~約4000、約400~約3000、約250~約1000、約250~約2500、約2500~約5000、または約500~約4000mm3/gのいずれかである。
【0079】
本明細書に開示した多孔質セラミック材料は、液体材料との相互作用で特徴決定し得る。先述したように、当該セラミック材料は、1時間で、表面張力が小さい(例えば、イソプロパノールでは約25mN/m未満)液体を、密閉容器内で重力に逆らって表面を約5mmより上まで持ち上げる毛管上昇させる能力を特徴とし得る。20℃での表面張力が約25mN/m未満のその他の溶媒として:ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、n-ヘキサン(HEX)、ポリジメチルシロキサン(Baysilone M5)、tert-ブチルクロリド、n-ヘプタン、n-オクタン(OCT)、イソブチルクロリド、エタノール、メタノール、イソプロパノール、1-クロロブタン、イソアミルクロリド、プロパノール、n-デカン(DEC)、エチルブロミド、メチルエチルケトン(MEK)、n-ウンデカン、シクロヘキサンがあるが、これらに限定されない。20℃での表面張力が25mN/m超のその他の溶媒として:アセトン(2-プロパン)、n-ドデカン(DDEC)、イソベレロニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、n-テトラデカン(TDEC)、sym-テトラクロロメタン、n-ヘキサデカン(HDEC)、クロロホルム、1-オクタノール、ブチロニトリル、p-シメン、イソプロピルベンゼン、トルエン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1-デカノール、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)、ベンゼン、m-キシレン、n-プロピルベンゼン、エチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、1-ニトロプロパン、o-キシレン、ドデシルベンゼン、フマル酸ジエチルエステル、デカリン、ニトロエタン、二硫化炭素、シクロペンタノール、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジプロピレングリコール、シクロヘキサノール、ヘキサクロロブタジエン、ブロモベンゼン、ピロール(PY)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ニトロメタン、フタル酸ジエチルエステル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、メチルナフタレン、ベンジルアルコール、アントラニル酸エチルエステル、ヨードベンゼン、N-メチル-2-ピロリドン、リン酸トリクレジル(TCP)、m-ニトロトルエン、ブロモホルム、o-ニトロトルエン、フェニルイソチオシアネート、a-クロロナフタレン、フルフラール(2-フルアルデヒド)、キノリン、1,5-ペンタンジオール、アニリン(AN)、ポリエチレングリコール200(PEG)、アントラニル酸メチルエステル、ニトロベンゼン、a-ブロモナフタレン(BN)、ジエチレングリコール(DEG)、1,2,3-トリブロモプロパン、安息香酸ベンジル(BNBZ)、1,3-ジヨードプロパン、3-ピリジルカルビノール(PYC)、エチレングリコール(EG)、2-アミノエタノール、sym-テトラブロモエタン、ジヨードメタン(DI)、チオジグリコール(2,2’-チオビスエタノール)(TDG)、ホルムアミド(FA)、グリセロール(GLY)、水(WA)、及び水銀がある。
【0080】
多孔質セラミック表面改質剤は、様々な温度で、水の毛細管上昇を招く能力を有し得る。これらの材料は、エタノール-水、酢酸エチル-エタノール、またはブタノール-水などの混和性材料と二成分共沸混合物とを分離して、三成分共沸混合物を破壊する、あるいは、エタノールと水を含む混合物からアミルアルコールを除去する能力を有し得る。
【0081】
多孔質セラミック表面改質剤の細孔は、1つ以上の気体で満たしたオープンセルを含み得る、一部を満たした(例えば、1つ以上の固体材料(複数可)で一部を満たした)セルを含み得る、または完全に、または実質的に満たした(例えば、1つ以上の液体及び/または固体材料(複数可)で完全に、または実質的に満たした)セルを含み得る。一部の実施形態では、細孔は、部分的に、実質的に、または完全に、気体、液体、または固体の物質、あるいはそれらの組み合わせで満たす。
【0082】
一部の実施形態では、細孔は、第1の材料で部分的に充填する、次に、第2の材料で部分的に、または完全に充填する。一部の実施形態では、第2の材料は、部分的に満たした細孔を覆う材料の層として加える。一部の実施形態では、第1の材料は、気体、固体、または液体、あるいは気体、液体、及び/または固体(複数可)の物質の組み合わせである。一部の実施形態では、第2の材料は、気体、固体、及び/または液体物質(複数可)、または雰囲気(例えば、空気)である。例として、空隙率、ウィッキング、撥水性、及び/または濡れ挙動の変化が付与する機能;耐摩耗性、硬度、靭性、触感、弾性率、降伏強度、降伏応力、ヤング率、表面(圧縮または引張)応力、及び/または弾性の電気的/誘電的特性を変える複合材料(多孔質材料と第2の材料を含む)の変化;熱拡散率、伝導率、熱膨張係数、熱界面応力、及び/または熱異方性などの熱特性の変化;放射率、色彩、反射率、及び/または吸収係数などの光学特性の変化;腐蝕、触媒作用、反応性、不活性、相溶性、ファウリング耐性、イオンポンプブロッキング、微生物耐性、及び/または微生物適合性などの化学的特性の変化;及び/または生体触媒作用の基質がある。
【0083】
一部の実施形態では、第1の材料は、正または負の相乗的方法で第2の材料と相互作用して、湿潤性、硬度、弾性、機械的性質、電気的性質、圧電的性質、光学的性質、接着性、または熱的特性、微生物に対する親和性または耐性、バイオフィルム成長の変化、触媒活性、透過性、美的外観、撥水性、及び/または耐蝕性を変える。
【0084】
細孔を部分的または完全に充填するために使用可能な限定を意図しない材料として、頭部基と尾部基とを有する分子など、表面に結合することができる分子があり、当該頭部基として、シラン、ホスホネート、またはホスホン酸、カルボン酸、ビニル、水酸化物、チオール、またはアンモニウム化合物がある。尾部基として、炭化水素、フルオロカーボン、ビニル基、フェニル基、及び/または第4級アンモニウム基などのあらあらゆる官能基がある。その他のセラミック材料も、部分的または完全に細孔に定着させることができる。また、ポリマーを、部分的または完全に細孔に定着し得る。セラミック材料として、例えば、亜鉛、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、セリウム、ガドリニウム、及びコバルトの1つ以上の酸化物を含み得る。加えて、セラミック材料は、例えば、粘土、シリカ、ガラスなどの金属、非金属、またはメタロイド原子の無機化合物など、主にイオン結合及び共有結合で保持されている表面改質剤に添加することができる固体材料を含み得る。ポリマーとして、例えば、麻、シェラック、アンバー、羊毛、絹、天然ゴム、セルロース、及びその他の天然繊維、糖類、ヘミセルロース及びホロセルロース、多糖類、及び細胞外タンパク質などの生物学的に誘導した材料、DNA、キチンなどの天然高分子材料を含み得る。合成ポリマーとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、合成ゴム、フェノールホルムアルデヒド樹脂(または、Bakelite)、ネオプレン、ナイロン、ポリアクリロニトリル、PVB、シリコーン、ポリイソブチレン、PEEK、PMMA、及びPTFEがある。
【0085】
一部の実施形態では、細孔は、薄い複合ポリマー層で部分的に満たされており、ポリマーが提供する空隙率及び機能性を有する表面改質剤を生成する。その他の実施形態では、細孔を、厚いポリマー層で完全に満たして、多孔質をベースとした材料とポリマー層との複合特性を有する厚いポリマー層を備えた表面改質剤を生成する。本明細書の組成物に記載したポリマーは、コポリマーを含む。
【0086】
一部の実施形態では、細孔を、表面改質剤の表面に定着した材料の層で部分的または完全に満たす。一部の実施形態では、限定を意図するものではないが、アンモニウム基(例えば、第4級アンモニウム基)、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フルオロアルキル基などの1つ以上の官能基(複数可)を表面改質剤材料に加えた材料の層が定着する。一部の実施形態では、ポリマーまたはセラミック層が定着する。一部の実施形態では、基板上の結合剤不含多孔質セラミック材料のセラミックと同じまたは異なるセラミックであるセラミックの層が積み重なるように定着する。官能基(複数可)及びそれが付与する機能の例として、抗菌機能を呈する第4級アンモニウム基、撥水性及び炭化水素親和性を呈するアルキル鎖、撥水性及び撥油性機能を呈するペルフルオロアルキル基、機械的機能を呈するポリマー、美的機能、光電子機能、または防蝕機能を呈するその他のセラミックがある。
【0087】
一部の実施形態では、細孔を、気体、液体、または固体物質、またはそれらの組み合わせで部分的または完全に満たしており、そして、組成物は、セラミック材料の上面に材料の層をさらに置いており、そして、置いた材料は、1つ以上の機能、例えば、液体による湿潤性、及び/または液体での化合物の選択的分離などの機能を奏する。特定の実施形態では、上面に置いた材料は、細孔を、部分的に、実質的に、または完全に満たす物質とは別の材料であり、それ自体が細孔を充填する、または、そこに侵入することはない。一部の実施形態では、上面に置く材料は、細孔内の物質(複数可)と相互作用する。例えば、上面に置く材料は、細孔内の物質(複数可)と相互作用して、限定を意図するものではないが、熱管理、電気化学反応性の調節、及び/または機械的特性の調節などの1つ以上の機能を提供することができる。特定の実施形態では、上面に置く材料は、結合剤不含多孔質セラミック材料が接触している周囲環境である。
【0088】
一部の実施形態では、細孔は、実質的に、または完全に、ポリマーまたはセラミック材料で覆われている。
【0089】
一部の実施形態では、細孔内の材料は、セラミック材料と相互作用する。そのような物質の例と、それが奏する機能の例として、周囲の液体または蒸気による表面改質剤の酸化、微量成分(例えば、環境汚染物質)の凝縮、環境空気からのCOまたはH2Sなどの有害な環境材料の捕捉または酸化、及び/または環境でのそれら物質の回収と保持がある。
【0090】
一部の実施形態では、環境での水分または細孔に添加した水分は、細孔内の材料と相互作用して、細孔内の材料または表面改質剤を改質する。そのような物質と、同物質が奏する機能の例として、湿潤挙動の変化、光学特性の変化、酸化状態または反応性の変化、蒸発速度の変化、霜降り現象、着氷、または凝縮がある。
【0091】
一部の実施形態では、細孔内の材料は、セラミック材料と相互作用して、表面全体の特性を「調整」するようにデザインし得る。調整可能な特性の例として、湿潤性、硬度、微生物耐性、触媒活性、耐蝕性、色彩、及び/または光化学的活性があるが、これらに限定されない。
【0092】
一部の実施形態では、セラミック表面改質剤と細孔内の材料は、相乗的に相互作用して、例えば、表面改質剤、及び/または細孔内の材料だけの機能性と比較して、表面改質剤、及び/または細孔内の材料の少なくとも1つの機能性を高める、または低下させる。一部の実施形態では、細孔内の2つ以上の材料は相乗的に相互作用して、例えば、その材料だけが奏する機能性と比較して、細孔内の少なくとも1つの材料の少なくとも1つの機能性を高める、または低下させる。
【0093】
一部の実施形態では、セラミック表面改質剤は非対称な細孔形態である、例えば、球形、円筒形、立方体、またはその他の方法で明確に定義した、比較的に一定した、体積に対する表面積の正規分布を有するように秩序化しており、結合剤不含セラミック表面改質の膜厚に応じて第3四分位細孔径に対する第1四分位細孔径の比率を特徴決定する。特に、細孔形態は、球形、円筒形、または立方体の構造と比較すると、その中心に関して非対称である。限定を意図するものではないが、非対称細孔の例は、PCT出願番号PCT/US19/39743に示しており、この文献は、参照により、その全内容を本明細書で援用する。
【0094】
多孔質セラミック表面改質剤は、基板からの距離に応じて変化する広範な細孔径分布を特徴とし得る。特に、基板から所与の距離での細孔構造は、例えば、本明細書に記載したように、局所的に特徴決定することができ、また、距離に応じて異なる特徴を有する。結果として生じる非対称性は、基板、イオン移動度、それに、温度、圧力、及び濃度などの処理条件の組み合わせであり、インサイチュで決定する。非対称性の程度は、混合、攪拌、電場調節、及びタンク濾過などのバルク手段、または剪断速度、衝突流、または表面電荷の変更と調節などの表面配向プロセス手段でさらに調節することができる。非対称性は、エッチング、トラックエッチング、イオンビームミリング、酸化、光触媒などの様々な手段、またはさらなる手段で、エクスサイチュで決定することができる。これらの手法は、ゼオライト、トラックエッチングした膜、または拡張したPTFE膜など、膜厚及び/または細孔の深さを備えた、狭い、または対称的な細孔構造を有する材料のことを指す。
【0095】
一部の実施形態では、多孔質セラミック表面改質剤は、約2nm~約50nmの範囲のメソ多孔質平均細孔サイズを含む。その他の実施形態では、平均細孔サイズは、約50nm~約1000nmの範囲である。一部の実施形態では、結合剤不含多孔質セラミック材料は、約2nm~約20nmの平均細孔径を含む。一部の実施形態では、平均細孔径は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20nmのいずれかである。一部の実施形態では、平均細孔径は、約2~約5、約4~約9、約5~約10、約7~約12、約9~約15、約12~約18、約15~約20、約4~約11、約5~約9、約4~約8、または約7~約11nmのいずれかである。
【0096】
セラミック表面改質剤は、1つ以上の金属酸化物、及び/または金属水酸化物(及び/または、その水和物)を含み得る。限定を意図するものではないが、本明細書に開示したセラミック組成物が含み得る金属の例として:亜鉛、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、セリウム、銅、ガドリニウム、タングステン、スズ、鉛、及びコバルトがある。一部の実施形態では、セラミック材料として、遷移金属、第II族元素、希土類元素(例えば、ランタナム、セリウムガドリニウム、プラセオジム、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、またはネオジム)、アルミニウム、スズ、または鉛がある。一部の実施形態では、セラミック材料として、限定を意図するものではないが、亜鉛、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、セリウム、プラセオジム、及びコバルトなどの2つ以上の金属酸化物(例えば、混合金属酸化物)を含む。
【0097】
一部の実施形態では、セラミック表面改質剤として:亜鉛とアルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;ZnOとAl2O3、及びZn-アルミン酸塩の混合物;Zn、Al、及び酸素を含むあらゆる/すべての相を含む材料の混合物;マンガンとマグネシウム酸化物及び/または水酸化物の混合物;マンガン酸化物;アルミニウム酸化物;混合金属マンガン酸化物及び/または水酸化物;マグネシウムとアルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;マグネシウム、セリウム、及びアルミニウム酸化物及び/または水酸化物の混合物;亜鉛、ガドリニウム、及びアルミニウム酸化物及び/または水酸化物の混合物;コバルトと、アルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;マンガンと、アルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;セリウムと、アルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;鉄と、アルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;タングステンと、アルミニウム酸化物及び/または水酸化物との混合物;スズとアルミニウム酸化物との混合物;タングステン酸化物及び/または水酸化物;マグネシウム酸化物及び/または水酸化物;マンガン酸化物及び/または水酸化物;スズ酸化物及び/または水酸化物;または、亜鉛酸化物及び/または水酸化物がある。
【0098】
一部の実施形態では、セラミック材料での少なくとも1つの金属は、2+酸化状態にある。
【0099】
一部の実施形態では、セラミック表面改質剤は、亜鉛、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、セリウム、ガドリニウム、及びコバルトの1つ以上の酸化物及び/または水酸化物を含み、そして、基板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。
【0100】
一部の実施形態では、セラミック表面改質剤は、超疎水性である。一部の実施形態では、表面改質剤材料は、高度の疎水性である。一部の実施形態では、表面改質剤は、セラミック材料を含まない基板と比較して、湿潤性、硬度、弾性、機械的性質、電気的性質、圧電的性質、電磁気的性質、光学的性質、接着性、または熱的特性、微生物親和性または抵抗性、バイオフィルム成長の変化、触媒活性、透過性、美的外観、及び耐蝕性から選択する1つ以上の機能特性を含む。
【0101】
一部の実施形態では、機能性材料層(例えば、材料の最上層)が、セラミック材料の上に定着する。そのような材料の例として、抗菌機能のための第4級アンモニウム基、撥水性及び炭化水素親和性のためのアルキル鎖、撥水性及び撥油性機能のためのペルフルオロアルキル基、機械的特性機能のためのポリマー、美的機能、光電子機能、または防蝕機能のためのその他のセラミックがあるが、これらに限定されない。このような材料が付与する機能の例として、限定を意図するものではないが、空隙率、ウィッキング、撥水性、及び/または濡れ挙動;耐摩耗性、硬度、靭性、触感、弾性率、降伏強度、降伏応力、ヤング率、表面(圧縮または引張)応力、及び/または張強度、圧縮強度、及び/または弾性などの機械的特性に変化を与える電気的/誘電的特性を変える複合材料(多孔質材料と第2の材料を含む)の変化;熱拡散率、伝導率、熱膨張係数、熱界面応力、及び/または熱異方性などの熱特性の変化;放射率、色彩、反射率、及び/または吸収係数などの光学特性の変化;腐蝕、触媒作用、反応性、不活性、適合性、ファウリング耐性、イオンポンプブロッキング、微生物耐性、及び/または微生物適合性などの化学的特性の変化;及び/または生体触媒作用の基質がある。
【0102】
一部の実施形態では、セラミック表面改質剤は、ポリマーまたは本明細書に開示したあらゆる基板材料などの基板材料と比較して、紫外線による劣化に対して耐性がある。
【0103】
一部の実施形態では、セラミック表面改質剤は、約0.5マイクロメートル~約20マイクロメートルの膜厚を含む。一部の実施形態では、セラミック材料は、約0.2マイクロメートル~約25マイクロメートルの膜厚を含む。一部の実施形態では、膜厚は、少なくとも約0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25マイクロメートルのいずれかである。一部の実施形態では、膜厚は、約0.2~約0.5、約0.5~約1、約1~約5、約3~約7、約5~約10、約7~約15、約10~約15、約12~約18、約15~約20、約18~約25、約0.5~約15、約2~約10、約1~約10、約3~約13、約0.5~約15、約0.5~約5、約0.5~約10、または約5~約15マイクロメートルのいずれかである。
【0104】
一部の実施形態では、セラミック表面改質剤は、約0°~約180°の水接触角を特徴とする。その他の実施形態では、水接触角は、約30度未満である。その他の実施形態では、水接触角は、約150度より大きい。
【0105】
一部の実施形態では、セラミック表面改質剤は、対象とする基板面積の平方メートルあたり約1.1m2~約100m2の表面積を含む。一部の実施形態では、セラミック材料は、対象とする基板面積の平方メートルあたり、約10m2~約1500m2の表面積を含む。一部の実施形態では、表面積は、対象とする基板面積の平方メートルあたり、少なくとも約10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、または1500m2である。一部の実施形態では、表面積は、対象とする基板面積の平方メートルあたり、約10~約100、約50~約250、約150~約500、約250~約750、約500~約1000、約750~約1200、約1000~約1500、約70~約1000、約150~約800、約500~約900、または約500~約1000m2のいずれかである。
【0106】
一部の実施形態では、セラミック材料は、1グラムのセラミック材料あたり、約15m2~約1500m2の表面積を含む。一部の実施形態では、表面積は、1グラムのセラミック材料あたり、少なくとも約15、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、または1500m2である。一部の実施形態では、表面積は、1グラムのセラミック材料あたり、約15~約100、約50~約250、約150~約500、約250~約750、約500~約1000、約750~約1200、約1000~約1500、約50~約700、約75~約600、約150~約650、または約250~約700m2のいずれかである。
【0107】
基板
本明細書に記載した1つ以上の塗膜または表面改質剤を塗布または定着する基板は、構造的または機能的特性に適したあらゆる材料で構成し得る、または、例えば、熱交換器などの装置での使用の機能的用途に適したあらゆる材料で構成し得る。一部の実施形態では、基板は、アルミニウムである、またはアルミニウムを含み(例えば、アルミニウム合金)、鉄合金、亜鉛、亜鉛合金、銅、銅合金、ニッケル合金、ニッケル、チタン合金、チタン、コバルト-クロム含有合金、ガラス、ポリマー、コポリマー、天然材料(例えば、セルロースを含む天然材料)、またはプラスチックである。
【0108】
一部の実施形態では、基板は金属を含み、本明細書に記載したセラミック表面改質剤の一次金属は、基板の一次金属とは異なる。一次金属は、例えば、原子金属をベースとしたX線回折で決定をして、基板またはセラミック材料での全金属の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、または95%を占める金属である。基板の一次金属の例として、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、チタン、及びマグネシウムがあるが、これらに限定されない。セラミック一次金属の例として、亜鉛、アルミニウム、マンガン、マグネシウム、セリウム、銅、ガドリニウム、タングステン、スズ、鉛、及びコバルトがあるが、これらに限定されない。
【0109】
一部の実施形態では、基板は、基板金属の局所溶解を可能にする反応条件下で反応する(例えば、溶解する)ことができる金属を含み、そして、基板金属は、セラミック材料、例えば、結合剤不含の多孔質セラミック材料などの基板改質剤に取り込ませる。例えば、アルミニウム基板は、セラミック材料が基板上に定着するようにしたセラミック材料に取り込まれるアルミニウム(例えば、Al2+)を提供し得る。
【0110】
以下の実施例は、本発明の例示を目的としており、限定は意図していない。
【実施例】
【0111】
塗膜を設ける基板またはアセンブリは、一般的には、(a)表面調製または洗浄から始まり、(b)変換処理またはプライマーステップ、(c)構造化セラミック定着、及び(d)別のセラミック層の定着、定着した構造化セラミック層の変換処理、または単分子層、塗料、オイルまたは樹脂の定着に至るプロセスを経る。一部の事例では、一部の手順を回避して、異なる結果を得ることができる。
【0112】
(a)表面の調製と洗浄のステップ:以下の実施例では、表面を次のようにして調製した。金属基板またはアセンブリを、ポットクリーニングする、または、イソプロピルアルコール(IPA)を含ませたタオルで拭いて、残存しているオイルをすべて取り除いた。次に、表面に暗色が出現するまで、または約15分間、20℃の公称室温で、pH>10の苛性エッチング槽に部品を沈めた。次に、基板またはアセンブリを水で濯いで、こびりついた付着物、または軽く付着した残留物をすべて除去した。次に、これらの部品を、pH3未満、及び温度20℃の硝酸溶液に浸して、汚み、エッチング反応生成物、金属間化合物、及び表面酸化物を除去する、または、基板を酸で洗って、清浄な表面を剥き出しにした。清浄な表面をもたらすその他の表面処理技術が適切であり、かつ、適用可能である。ポリマー及びセルロース基板をポットで洗浄する、または、イソプロピルアルコールを含ませたタオルで拭いて、残留物を取り除いた。
【0113】
(b)加工塗膜またはプライマー:以下の実施例の加工塗膜、及び/またはプライマーは、特記しない限り、連続的であると見なす。選択的な適用範囲は、一部の化学物質への暴露、及び/またはマスク剤を使用して実施した。加工塗膜またはプライマーは、基板を化学的または電気化学的変換処理して生成した膜で構成されており、後述する構造化セラミック定着層と比較した場合、空隙率が低い薄膜が得られる。加工塗膜は、一般的には、酸化物、リン酸塩、またはクロム酸塩のいずれかであり、低いpHで利用する。塗布方法として、一部の事例で実施可能である電気バイアスを用いた塗布、またはコーティングする基板に対する化学溶液の噴霧を含む。その他の金属や陰イオン性反応物を含む水性酸性クロム(III)などの無機材料で、水溶液のpHを変更する。不溶性の固体材料からなる溶液を、40℃~100℃に加熱し、溶液/基板を、1~90分間接触させた。界面活性剤を添加すると、フィルム組成または基質変換反応速度を高めることができる。露出した基板の表面が反応して緻密な層を形成し、また、基板表面を変換処理して拡散バリアを提供すると、さらなる反応が制限を受ける。熱安定化ステップを使用して、変換処理層の形成を加速することができる。
【0114】
変換処理層またはプライマーは、特記しない限り、構造化セラミック定着法または定着した単層/塗料/オイル/樹脂層の導入前に乾燥させた。特記しない限り、変換処理層の利用から、その後の処理までの処理時間は、24時間未満であった。
【0115】
(c)構造化セラミック定着または多孔質セラミック定着:以下の実施例の構造化セラミック定着は、特記しない限り、連続的であると見なす。選択的な適用範囲は、一部の化学物質に対する曝露、及び/またはマスク剤を使用して実施した。次に、基板またはアセンブリを、20~500mMの金属硝酸塩と同様量のアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、または尿素など)を含む構造化セラミック定着槽に入れ、そして、30~90℃の反応温度で、基板を挿入する前に反応させた。濁度が100NTUを下回るまで、または約5分~約90分間、アセンブリを槽内に置いた。基板またはアセンブリを取り出し、水気を切り、濯ぎ、オーブンに入れて、約100℃~800℃で、数時間、乾燥及び/またはか焼(calcine)した。次に、部品を室温にまで冷却させた。特記しない限り、構造化セラミックは、単分子層/塗料/オイル/樹脂層を定着する前に乾燥させた。
【0116】
(d)定着した単分子層/塗料/オイル/樹脂-勾配あり/無勾配の連続/選択的被覆:以下の実施例での定着した単分子層/塗料/オイル/樹脂は、特記しない限り、連続的と見なす。選択的な適用範囲は、一部の接触、及び/またはマスク剤を使用して実施した。(c)で構成した構造化セラミックは、特記しない限り、定着したセラミックの変換処理、または空隙相互接続セラミックネットワークを部分的または完全に第2の材料で満たした第2のセラミックの定着などの後処理ステップの前に乾燥をした。基板温度は、一般的には、室温に維持しており、定着溶液は、特記しない限り、一般的には、周囲の室温に維持した。定着した単分子層/塗料/オイル/樹脂は、塗装、噴霧、浸漬、ウィッキング、気相凝縮によって上面層に塗布した材料からなり、そして、熱処理または触媒処理をして、材料の乾燥を促し、及び/または上面層に対する化学的または機械的接着を高め得る。これらの処理ステップは、必要に応じて、それぞれの実施例でさらに詳細に説明する。
【0117】
実施例1.A1-B11-加工塗膜+選択的被覆塗料
熱交換器(HX)を、浸漬または噴霧塗料プロセスを介して、3価クロムプロセス(TCP)などの加工塗膜で完全にコーティングする。続いて、マニホルドと、マニホルドとチューブとの蝋付け接合部を、部品の特定の箇所の一部を、浸漬または噴霧塗布を介して塗装する。この特定の事例では、コイル全体を完全に浸漬して加工塗膜を塗布する。次のステップでは、熱交換器のマニホルドを、次々と、塗料槽に浸す。コイルの変換領域には、熱伝達係数を維持しながら腐蝕保護が行われており、塗装したマニホルドと、マニホルドチューブの接合部には、さらなる腐蝕保護層が形成される。
【0118】
実施例2.A1-B10-加工塗膜+勾配塗料
HXは、TCPなどの加工塗膜で完全なコーティングを行っており、浸漬ステップによってHX全体を塗布する。このプロセスステップの後に、塗料の厚みが、HXの下部が上部よりも厚い完全な塗膜が続き、このものは、浸漬コーティングを介して塗布しており、また、塗料を優先方向に排出するように促して、その方向の層を厚くする。所望の厚さの位置に噴霧器をさらに通過させる完全な噴霧でも同様である。塗料の塗膜が厚い領域では、耐蝕性が増す。HXの上部は、蓄積した液体の露出時間が短いので、必要な塗料が少なくて済む、したがって、HX全体に均質な膜厚を持たせるための製造コストが削減される、その一方で、保護を必要とする主たる領域への塗料の塗布を最小限にする、及び/または重要な熱交換面に塗布する材料を制限することで、同様の腐蝕保護が提供される。
【0119】
実施例3.A1-B10-加工塗膜+勾配塗料
HXを、TCPなどの加工塗膜で完全にコーティングを行い、その後、HXの上部よりも下部の方が厚くなるように塗料を完全にコーティングする、すなわち、浸漬深さが浅い連続的な浸漬コーティングステップで塗布する。使用中にコイルの底の方に液体が溜まるので、底の塗膜が厚くなると耐蝕性が向上する。HXの上部は、蓄積した液体の露出時間が短いので、必要な塗料が少なくて済む。したがって、同様の腐蝕保護を提供しながら、HX全体で均質な膜厚に関する製造コストを削減する。
【0120】
実施例4.A1-B12-加工塗膜+選択的被覆勾配塗料
船体を構成し得るアルミニウム含有船体向け合金を、TCPなどの加工塗膜で完全にコーティングし得る。次に、この合金を、接触塗装または噴霧塗装を使って、耐蝕性塗料でコーティングする。塗料は、喫水線の近傍や船体の下部など、さらなる腐蝕保護を必要とする領域に複数の層を塗布して、擦過傷から保護する。さらに厚い塗料層を施すと、腐蝕環境に最も曝される領域での耐蝕性をさらに強化する。
【0121】
実施例5.A1-B6-プライマー+勾配構造化セラミック
フィンチューブHXコイルを、TCPまたは同様のリン酸塩塗料などの耐蝕性を備えたプライマーで完全にコーティングする。次に、HXを、液浸定着システムを用いて、セラミック表面改質剤で完全に改質する。定着流体の速度は、コイルの領域に応じて変化しており、速度が変化した領域の構造化セラミックの組成を変更する。この手法は、コイル全体に細孔径勾配を誘発するために使用することができる。細孔の大きさを変えると、ウィッキングパターンが変化してしまい、腐蝕しやすい領域から水を引き離すことができる。
【0122】
実施例6.A1-B7-プライマー+選択的被覆構造化セラミック
蝋付けしたアルミニウムHXを、TCPまたは同様のリン酸塩塗料など、耐蝕性を備えたセラミック表面改質プライマーで完全にコーティングする。次に、マニホルドと、マニホルドチューブを蝋付けした接合部を、最も脆弱な領域のHX表面に腐蝕性溶液が到達することを防ぐ多層構造のセラミックでコーティングする。構造化セラミック材料は、降雨、凝縮液、及びその他の塗布した液体を表面で保持する方法も変更する。一例として、構造化セラミック層は、低い接触角を有し得る。塗布した場所で薄い液体層を形成すると、このものは、表面の急速な乾燥を招く。
【0123】
実施例7.A1-B8-プライマー+選択的被覆勾配構造化セラミック
HXを、TCPやセリアなどの耐蝕性を備えたプライマーまたは加工塗膜で完全にコーティングする。次に、HXの上半分を構造化セラミック表面改質剤で改質を行い、その間に、剪断速度を変化させて、HXの上部に向けて細孔サイズの勾配を構成する。細孔径の勾配によって、HXの最も脆弱な領域から水が離れていき、HXの上部に向けて吸い上げられるようになる。
【0124】
実施例8.A1-B5-C9-D11-プライマー+構造化セラミック+機能性材料層+選択的被覆塗料)
蝋付けしたアルミニウムHXを、プライマー塗料で完全にコーティングして、構造化セラミック表面改質を行い、続いて、表面エネルギー改質を提供する立体酸などの任意の機能性材料層を設ける。次に、マニホルドとマニホルドチューブの接合部とを噴霧塗料または浸漬塗料で塗装を行い、さらなる腐蝕保護または美的外観を提供する。機能性材料層を塗布したコイルの主要部分は、接触角が高く、熱容量を高めて表面に水が溜まらないようにする、また、腐蝕しやすい機能性の低い領域を耐蝕性塗料で保護する。
【0125】
実施例9.A1-B5-C10-加工塗膜+構造化セラミック+勾配機能性材料層
船舶の船体を構成し得る船舶用合金は、TCPなどで完全に加工塗膜を設ける、その後、構造化セラミック表面改質を施した完全塗膜が続く。次に、船体は、超疎水性の表面にするために層状にした機能性材料で改質する。機能性材料層は、船体の船首が船尾よりも疎水性になるように塗布する。表面が超疎水性なので、船体は抗力をさらに効果的に抑制し、及び/または運航での最高の水剪断速度点でさらに耐久性を示し、そして、TCP及びセラミックの表面改質を行うことで、船体の残余の部分を海水の腐蝕から保護する。
【0126】
実施例10.A1-B5-C11-加工塗膜+構造化セラミック+選択的被覆機能性材料層
HXを、加工塗膜で完全にコーティングし、次いで、構造化セラミック表面改質を行う。次に、コイルの下半分を機能性材料で層状にして、超疎水性表面を形成する。コイルの下半分は水の凝縮を排除し、製造接合部、及びマニホルドチューブ接合部、フィンチューブ接合部、ルーバーなどのデザイン機能における水の蓄積を防ぐ。コイルの最も脆弱な領域での水の蓄積が減少するので、コイルにおいて腐蝕に対して最も脆弱な領域が保護さあれる。
【0127】
実施例11.A1-B5-C12-加工塗膜+構造化セラミック+選択的被覆勾配機能性材料層
HXを、加工塗膜で完全にコーティングし、次いで、構造化セラミックの表面改質を行う。次に、コイルを、HXの外側に面する側が内側に面する側よりも厚くなるように耐蝕性機能材料層を設ける。こうすることで、HXの外側(環境や気流など)に面する側が、腐蝕性環境(酸性雨、猫の尿など、または汚染物質を含む気流)から保護される。一方で、内側に面する側(例えば、環境条件または気流に曝されない側)では、熱伝達性能の低下が抑制される。全体として、圧力損失は、均質な膜厚の範囲に比べて減少する。
【0128】
実施例12.A3-選択的被覆加工塗膜
蝋付けしたアルミニウムHXは、マニホルドに対して加工塗膜で一部をコーティングしており、マニホルドと、チューブの蝋付け接合部は、プロセス槽への選択的浸漬で塗布する。コーティングした領域は、最も腐蝕しやすい領域の腐蝕を防ぐ。
【0129】
実施例13.A5-B9-C11-構造化セラミック+機能性材料層+選択的被覆塗料
HXを、構造化セラミック表面改質剤で完全にコーティングし、次いで、疎水性を高めて超疎水性表面を構成する機能性材料層を設ける。マニホルドと、マニホルドとチューブとの蝋付け接合部を、耐蝕性のあるコイルの領域を構成するために塗装する。コイルの超疎水性領域は、使用時の水の蓄積を排除し、そして、塗装したマニホルドと、マニホルドチューブ接合部は、さらに脆弱な領域を腐蝕から保護する。
【0130】
実施例14.A5-B10-構造化セラミック+勾配機能材料層
HXを、結合剤不含構造のセラミック表面改質剤で完全にコーティングする。次に、コイルを、HXの外側に面する側が内側に面する側よりも厚くなるように耐蝕性機能材料層でコーティングする。こうすることで、HXの外側に面する側が腐蝕性環境(酸性雨、猫の尿など)から保護されることになるが、内側に面する側での伝熱性能の低下は限られている。全体的に、圧力降下は、均質な膜厚の範囲に比べて減少する。
【0131】
実施例15.A5-B11-構造化セラミック+選択的被覆機能性材料層
蝋付けしたアルミニウム熱交換器に、結合剤不含構造の酸化マグネシウムセラミック表面改質剤で完全にコーティングし、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~100mM水溶液に、約50~80℃の温度で、約15~90分の時間をかけて定着させた。次に、このコイルを、約400℃の温度で、約1時間か焼した。このコイルを冷却した後に、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~100mM水溶液に、約50~80℃の温度で、約15~90分の時間をかけて浸漬した。次に、このコイルを、約400℃の温度で、約1時間、再度、か焼した。次に、このコイルを冷却し、室温加硫(RTV)シリコーンを、0.5重量%~10重量%、好ましくは、約2重量%の濃度で含むtert-ブチルアセテートの溶液に一部を浸漬した。熱交換器の約半分が溶液内にあり、熱交換器の約半分が溶液面上の蒸気空間に置くようにして、熱交換器を浸漬した。この熱交換器を、約10~300分、好ましくは、約30分間浸漬した。次に、この熱交換器を、24~72時間、空気中に置くと、RTVシリコーンが、熱交換器の表面に120°超の接触角で超疎水性機能層を形成した。次に、この熱交換器の機能化していない部分を、0.1重量%~10重量%、好ましくは、約5重量%の濃度で、アミノエチルアミノプロピルシルセスキオキサンを含む水溶液に入れた。この熱交換器を、10分~240分、好ましくは、約30分間浸漬した。この熱交換器を、脱イオン水で入念に濯いで、表面に残存している溶液をすべて除去し、そして、90℃及び140℃、好ましくは、約110℃のオーブンで、30分~300分間、好ましくは、約60分間、アニーリングした。シルセキオキサン機能性構造化セラミックは、親水性であり、また、水接触角は、<60°であった。
【0132】
完成した熱交換器では、RTV機能性セラミック表面とシルセキオキサン機能性セラミック表面との間に界面が認められた。この界面のRTV側では、水滴が撥水されて表面から転がり落ちた。シルセキオキサンで官能化したセラミック表面では、水滴が表面を濡らし、表面に沿って広がった。
【0133】
実施例16.A5-B11-構造化セラミック+選択的被覆機能性材料層
HXを、上記したようにして、マグネシウムとアルミニウム酸化物/水酸化物を含む結合剤不含構造のセラミック表面改質で完全にコーティングした。HXを、約60℃~80℃の温度で、約30~120分間、同様量のヘキサメチレンテトラミンを含む硝酸マグネシウムの25~75mMの水溶液に浸漬した。次に、このコイルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。その後の処理は、コイルの半分を機能性材料層の化学物質を含む槽に浸して行った。機能性材料であるヘキサデシルホスホン酸の層を、コイルの下半分に塗布した。機能性材料層は、コイルの下半分に超疎水性表面を構成した。
【0134】
次に、制御した空気流を熱交換器に整備させ、冷却したグリコールを使用して空気流の露点以下に冷却した。構造化セラミック層だけを含む熱交換器の上半分では、試験の間に凝縮物が生成して、熱交換器本体内にとどまる。超疎水性表面(接触角>150度)条件を招く機能性材料層で処理した熱交換器の下部では、熱交換を示す凝縮が認められたが、その凝縮物は、風トンネル試験の間に熱凝縮していたので、交換器本体にはとどまらなかった。
【0135】
実施例17.A5-B12-構造化セラミック+勾配機能材料層
蝋付けしたアルミニウム熱交換器を、結合剤不含構造の酸化マグネシウムセラミック表面改質で完全にコーティングし、そして、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mM水溶液に、約60℃~80℃の温度で、約30~90分の時間をかけて定着させた。次に、このコイルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。このコイルを冷却し、そして、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~100mM水溶液に、約50℃~80℃の温度で、約15~90分間の浸漬を2回行った。そして、このコイルを、約400℃の温度で、約1時間、再度、か焼した。2つの異なる溶液、すなわち、一方は、室温で、0.5wt%~10wt%、好ましくは、2wt%の濃度の室温加硫(RTV)シリコーンを含むtert-ブチルアセテートを含む溶液であった。他方の溶液は、アミノエチルアミノプロピルシルセスキオキサンを、0.1重量%~10重量%、好ましくは、約5重量%の濃度で含む水溶液であった。この熱交換器を、噴霧チャンバーに配置し、そして、1分~30分、好ましくは、約5分間かけて、熱交換器の一方の側にRTV溶液を、そして、他方の側にアミノエチルアミノプロピルシルセスキオキサン溶液を、それぞれ噴霧した。この熱交換器は、90℃~140℃、好ましくは、約110℃の温度で、30分~300分、好ましくは、約60分間、オーブン内でアニーリングした。シルセキオキサン機能性構造化セラミックは親水性であり、そして、水接触角は、<60°であり、また、RTV機能性構造化セラミックは疎水性であり、接触角は、>120°であった。
【0136】
完成した熱交換器では、噴霧パターンの結果として、RTV機能性セラミック表面とシルセキオキサン機能性セラミック表面との間に勾配界面が認められた。水を熱交換器に噴霧すると、水滴は疎水性の機能性表面で撥水し、親水性の機能性表面のフィンパックに吸い上げられた。水が凝縮する、または、水を表面に置くと、水は疎水性領域から親水性領域に向けて流れ、表面の熱伝達を改善する。
【0137】
実施例18.A5-B12-構造化セラミック+選択的被覆勾配機能性材料層
アルミニウムパネルを、硝酸マンガンと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの50~150mM水溶液に、約70~80℃の温度で、約30~120分の時間をかけて定着させたマンガンと酸化アルミニウムとの構造化セラミック材料で改質した。次に、このパネルを、約400℃の温度で、約1時間、乾燥した。次に、パネルの上部の約10%が覆われないように、パネルに、オイルまたはワックス、例えば、キリ油や亜麻仁油などの乾燥油、またはパラフィンワックスまたは蜂ワックスなどの封止材で選択的にコーティングした。こうすることで、試料との電気的接触が可能となり、バッテリーまたはコンデンサーの電極として使用できるようになる。
【0138】
実施例19.A6-勾配構造化セラミック
HXコイルを、マグネシウムとアルミニウム酸化物/水酸化物を含むマグネシウムをベースとした構造化セラミック表面改質剤で完全にコーティングをした。表面を、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mM水溶液に、約60~80℃の温度で、約30~90分間かけて定着させた。次に、このコイルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。反応する化学混合物の剪断速度は、コイルに隣接する領域、及び、コイルに沿った様々な領域で変化しており、表面改質した膜厚に勾配が生じた。上記したようにして、構造化セラミックを塗布するために熱交換器を処理した。再循環システムは、浸漬タンクの本体から処理液を、ポンプ及びフィルターに移動させて、その流れで浮遊物質を除去した。この液体は、液体排出装置を介して熱交換器を備えた浸漬タンクに戻され、液体排出装置は、排出装置に隣接する液体の動きを集束及び増幅した。再循環した流体は、熱交換器の長さに沿って、1つのマニホルドの中点に向かっていった。剪断速度が高い領域では、細孔サイズの変化に応じてセラミック改質剤の量が増加した。定着レベルの増加は、マニホルド及び熱交換器の表面に沿った材料の色彩の美観を介して実証された。定着物が増加した領域は、外観が灰色であった熱交換器の残余の部分よりも白色に見えた。蛍光X線(XRF)測定は、白色に見えた領域が、暗色に見えた隣接領域と比較して、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの表面改質の量が多いことを確認した。厚い構造層を備えたこれらの領域は、周囲環境からの腐蝕性要素に対して、保護を強化することができる。
【0139】
実施例20.A6-勾配構造化セラミック
HXコイルを、構造化セラミック表面改質で完全にコーティングする。コイルを、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mM水溶液に、約60~80℃の温度で、約30~90分間かけて置く。次に、このコイルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。処理の間、温度、濃度、及び剪断速度を変化させると、フィン近傍には細孔サイズが小さく密度の大きな構造と、フィンからさらに離間したセラミック定着物では細孔サイズが大きく密度が小さい構造が形成される。表面改質膜厚を有するセラミック構造の勾配は、セラミック定着物の外側領域での吸水特性を高めて乾燥時間を短縮する、そして、HXのフィン表面の密度の高まりと空隙率の低下が、基板に接触する水の量を最小限にする。これにより、表面の腐蝕を防ぎながら、乾燥時間と霜の発生を促す。
【0140】
実施例21.A6-B9-勾配構造化セラミック+機能性材料層
HXを、酸化マグネシウムをベースとした構造化セラミック表面改質剤で完全にコーティングする。このコイルを、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mM水溶液に、約60~80℃の温度で、約30~90分間かけて置く。次に、このコイルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼する。剪断速度を、コイルに沿った様々な領域で変化させて、細孔サイズの勾配を構成し、そして、セラミック表面のトポグラフィーを変更する。次に、HXを、機能性材料層で均質に処理して、ペルフルロアルキルシラン、脂肪酸、またはアルキルホスホン酸などの超疎水性表面を構成する。このセラミックの変更によって構成した勾配は、コイルの特定の領域の湿潤性を制御する液滴排除特性を提供する領域を構成する。これらの液滴排除の領域は、腐蝕に関連する障害に対して脆弱であることが公知の領域に見当をつけることができる。
【0141】
実施例22.A6-B10-勾配構造化セラミック+勾配機能材料層
蝋付けしたアルミニウム熱交換器を、浸漬タンクに浸漬し、そして、運転している間に、一次空気流方向に直交する方向に振動させて、当該要素を攪拌する。熱交換器本体の中央部分よりも、一次運転の気流方向を考慮すると、当該要素の動きによって、前縁と後縁に構造化セラミック層が多く定着する。この大きな定着速度は、保護する前縁及び後縁での材料の膜厚を増加させる。次に、前縁に機能性材料層を塗布して、この部分の処理を行い(気流の方向を考慮して)、前縁の摩滅保護及び摩耗保護を強化する。
【0142】
実施例23.A6-B11-勾配構造化セラミック+選択的被覆機能性材料層
航空機の本体を構成し得るアルミニウム合金は、構造化セラミック表面改質剤でコーティングする。剪断速度は、翼、プロペラブレード、水平尾翼、及び舵の前方部分が、トポグラフィーの変動性を高めるように変化する。次に、翼、プロペラブレード、水平尾翼、及び舵の前方に面する部分を、機能性材料層で選択的に処理する。セラミック表面改質剤によるトポグラフィーの変動性の高まりは、航空機の最も脆弱な領域での氷の形成を防ぐ上で役立つ液滴除去特性を有する機能性材料層を形成する。航空機の総重量は、選択的な保護によって加減される。
【0143】
実施例24.A6-B12-勾配構造化セラミック+選択的被覆勾配機能的材料層
HXを、構造化セラミック表面改質剤で完全にコーティングする。剪断速度は、HXの上部が下部よりも厚いセラミック層を持つように変化させる。次に、コイルの下半分を、マニホルドチューブ蝋付け接合部に見当を付けて、浸漬または噴霧塗装で塗装する。塗料の厚さが大きな領域は、コイルの脆弱な領域を保護し、一方で、厚いセラミック層は、塗料の下層から水を逃がして、水やその他の腐蝕性溶液が塗料の効果を損ねないようにする。
【0144】
実施例25.A7-選択的被覆構造化セラミック
鋼-アルミニウム熱交換器は、耐蝕性を有しており、鋼管よりもむしろ、アルミニウムフィンに優先的に定着する構造化セラミック表面改質剤でコーティングした。このコイルを、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mM水溶液に、約60~80℃の温度で、約30~90分間かけて置いた。次に、このコイルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。構造化セラミックには、亜鉛と、アルミニウム酸化物/水酸化物が含まれていた。このセラミック表面は、親水性であり、かつ、鋼管からアルミニウムフィンに至る良好な水は、鋼管を腐蝕から保護しながら、水の管理を改善し、熱交換器の性能を向上させた。
【0145】
実施例26.A7-選択的被覆構造化セラミック
アルミニウムパネルを、パターンで選択的に保護(マスク)した。このパネルは、シリコーンテープで所望のパターンにマスクしており、マスクしたパネルを、構造化セラミックで定着した。マスクした表面を、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mMの水溶液に、約60℃~80℃の温度で、約30~90分間かけて置いた。パネルからマスクを取り除き、次に、パネルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。マスクを除去すると、パターン化した構造化セラミックが残存して、選択的な水分回収(ウィッキング)パターン、または水分除去(排出)パターンが可能になった。この部分には、基板との電気的接触に使用し得る構造化層に隣接する地金の領域も含まれていた。
【0146】
実施例27.A7-選択的被覆構造化セラミック
アルミニウムパネルを、パターンで選択的に保護(マスク)した。このパネルは、染料顔料、樹脂、及び有機溶媒を含む油性マーカーペンでパターンにマスクした。マスクしたこのパネルは、その後、亜鉛及びアルミニウム酸化物/水酸化物を含む結合剤不含構造のセラミック表面改質剤でコーティングした。マスクしたパネルは、硝酸亜鉛と、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mM水溶液に、約60℃~80℃の温度で、約30~90分間かけて定着した。次に、このパネルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。熱処理の間に、マスク下の染料顔料、樹脂、及び有機溶媒が気化及び酸化したので、裸アルミニウム基板が残った。構造化セラミックが残存しているので、選択的な水分回収(ウィッキング)パターン、または水分除去(排出)パターンが可能になった。この部分には、基板との電気的接触に使用し得る構造化層に隣接する地金の領域も含まれていた。
【0147】
実施例28.A7-選択的被覆構造化セラミック
アルミニウムパネルを、パターンで選択的に保護(マスク)した。このパネルは、染料顔料、樹脂、及び有機溶媒を含む油性マーカーペンで、所望のパターンにマスクした。マスクしたこのパネルは、その後、亜鉛及びアルミニウム酸化物/水酸化物を含む結合剤不含構造のセラミック表面改質剤でコーティングした。マスクしたパネルは、硝酸亜鉛と、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mM水溶液に、約60℃~80℃の温度で、約30~90分間かけて定着した。次に、このパネルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。熱処理の間に、マスク下の染料顔料、樹脂、及び有機溶媒が気化及び酸化したので、裸アルミニウム基板が残った。次に、構造化セラミックを、セラミック材料に選択的なヘキサデシルホスホン酸官能層で改質した。これにより、親水性の大きな裸アルミニウム表面の近傍に超疎水性の構造化セラミック表面が得られた。機能化した構造化セラミック表面の水の接触角は、裸アルミニウムパネルの接触角よりも大きかった。
【0148】
実施例29.A7B9-選択的被覆構造化セラミック+連続機能材料
アルミニウムパネルを、パターンで選択的に保護(マスク)した。このパネルは、ポリイミドテープで所望のパターンにマスクをして、次に、マスクしたパネルを、マグネシウム及びアルミニウム酸化物/水酸化物を含む構造化した結合剤不含セラミック表面改質剤でコーティングした。このパネルを、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mMの水溶液に、約60℃~80℃の温度で、約30~90分かけて定着した。次に、このパネルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。ポリイミドテープの接着剤が気化して金属の表面に改めて付着して、超疎水性構造のセラミックが形成された。マスクを除去すると、構造化セラミック層が存在するので、機能層をコーティングした構造化セラミック表面と同じ機能層を設けたアルミニウム表面との間の接触角に差が認められた。
【0149】
実施例30.A7-選択的被覆構造化セラミック
アルミニウムパネルを、パターンで選択的に保護(マスク)する。続いて、マスクしたパネルに対して噴霧する、またはシャワーを浴びせて、マスクしていない表面にセラミック表面改質剤を定着させる。マスクを除去すると、マグネシウムとアルミニウム酸化物/水酸化物を含むパターン化した構造化セラミックが残存して、選択的な水分回収(ウィッキング)パターンまたは水分除去(排出)パターンが可能になる。セラミック材料を噴霧またはシャワーで塗布すると、優先的な排水箇所での定着物の被覆がさらに大きくなる。
【0150】
実施例31.A7-B11-選択的被覆構造化セラミック+選択的被覆塗料
アルミニウムパネルを、Kapton(ポリイミド)粘着テープを使用して、パターンで選択的に保護(マスク)した。次に、マスクしたパネルを、実施例29に記載したようなマグネシウム及びアルミニウム酸化物/水酸化物を含む結合剤不含構造セラミック表面改質剤をコーティングした。シリコーンテープは、アルミニウムパネル及びHX素材にも使用する。マスクを除去すると、パターン化した構造化セラミックが残った。次に、パターン化したパネルを陽極染料に浸漬し、また、パターン化した構造化セラミックが、染料の顔料を優先的に吸収したので、構造化した定着物区画の色彩だけを変化させた。
【0151】
実施例32.A7-B9-選択的被覆構造化セラミック+機能性材料層
ステンレス鋼または銅管よりもむしろ、アルミニウムフィンの方を優先する構造化セラミック表面改質剤で、ステンレス鋼-アルミニウム熱交換器をコーティングした。この熱交換器を、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mMの水溶液に、約60℃~80℃の温度で、約30~90分かけて浸漬して、構造化セラミック表面をコーティングした。次に、このコイルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。次に、この熱交換器を、ヘキサデシルホスホン酸、ペルフルオロアルキルシラン、脂肪酸、またはアルキルシランの希薄溶液(0.1~1質量%)に浸漬して、単層材料で機能化して、アルミニウムフィンに超疎水性表面を構成した。フィンの超疎水性機能材料層は、コーティングをしていない同様の熱交換器と比較して、液滴除去特性を奏する、フィンへの水の蓄積を防ぎ、そして、熱交換器の性能を向上させた。表面特性は、腐蝕に対する保護層も提供した。セラミック表面改質剤が、アルミフィンを選択的に改質するので、フィンとチューブの両方に表面改質を施した場合よりも、原材料の使用量が少なくなり、プロセスが安価になる。
【0152】
実施例33.A7-B9-選択的被覆構造化セラミック+機能性材料層
アルミニウムパネルを、パターンで選択的に保護(マスク)した。このパネルを、ポリイミドテープで所望のパターンにマスクをして、次に、マスクしたパネルには、構造化セラミック材料を定着させ、そして、高温になる前でも、ポリイミド材料は除去しなかった。このパネルを、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mMの水溶液に、約60℃~80℃の温度で、約30~90分間置いた。次に、このパネルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。得られたパネルは、マグネシウム及びアルミニウム酸化物/水酸化物を含むパターン化した構造化セラミックを有しており、そして、構造化セラミック層を含む領域では、構造化セラミックを含まないパターン化した(覆われた)領域よりも疎水性が顕著であった。マスクした領域は、未処理のパネルと比較して、接触角の差異を示した。
【0153】
実施例34.A7-B11-選択的被覆構造化セラミック+選択的被覆機能性材料層
ステンレス鋼または銅管よりもむしろ、アルミニウムフィンの方を優先する構造化セラミック表面改質剤で、ステンレス鋼-アルミニウム熱交換器をコーティングする。次に、機能性材料を、鋼とセラミックとの化学結合選択性だけを頼りにして、セラミック材料に選択的に層状に重ねる。これにより、フィンに超疎水性の表面が構成され、フィンに水が滞留することを防ぐので、改質していないステンレス鋼の本来の耐蝕性を維持しながら、熱交換器のフィンパックを通る空気の流れを減らす。
【0154】
実施例35.A8-選択的被覆勾配構造化セラミック
ステンレス鋼管よりもむしろ、アルミニウムフィンの方を優先する構造化セラミック表面改質剤で、ステンレス鋼-アルミニウム熱交換器をコーティングする。フィンは、一方の側が他方の側よりも長くなるように処理する。これにより、アルミニウムフィン全体に空隙率の勾配が構成される。
【0155】
実施例36.A8-選択的被覆勾配構造化セラミック
ステンレス鋼管よりもむしろ、アルミニウムフィンの方を優先する構造化セラミック表面改質剤で、ステンレス鋼-アルミニウム熱交換器をコーティングする。フィンは、製造プロセスと粒界が故に表面に粗さが残るが、厚い構造化セラミック材料を定着させると、これらの領域が選択的標的となるので、腐蝕が軽減される。
【0156】
実施例37.A8-選択的被覆勾配構造化セラミック
表1に示すように、一連の3003アルミニウムQパネル試験基板を、マグネシウムとアルミニウム酸化物/水酸化物を含む結合剤不含構造のセラミック表面改質でコーティングする、そして、定着プロセスの間に様々な流動条件に供した。これらのパネルを、硝酸マグネシウムと、同様量のヘキサメチレンテトラミンの25~75mMの水溶液に、約60℃~80℃の温度で、約30~90分間置いた。これらのパネルを、約400℃~600℃の温度で、約1時間、か焼した。
【0157】
表1に示すように、速度、定着物の質量、及び結果的に得られる濃度は、2行目に示す基本ケースを基準にしており、速度の設定値と結果として得られる質量及び濃度がリファレンスになっている。流動条件の変化により、定着物の量と定着物の組成が変化した。その他のすべてのプロセスパラメーター、温度、組成、材料には変更が無い。本実施例は、処理パラメータを使用して、結合剤不含セラミック表面層の構造特性に勾配をもたらし、そして、有用な利点を提供することができる。
【表1】
【0158】
実施例38.A8-選択的被覆勾配構造化セラミック
アルミニウム熱交換器を、構造化セラミック表面改質剤でコーティングする、そして、処理の間にプロセス条件を変化させる。処理槽の温度は、処理の間に低下し、その結果、均質な温度で処理する熱交換器と比較して、定着物の膜厚に応じて構造層の組成が変化する。
【0159】
あるいは、処理槽の化学組成は、処理の間に大きくなり、その結果、均質な化学組成で処理する熱交換器と比較して、定着物の膜厚に応じて構造層の組成が変化する。
【0160】
あるいは、処理槽とは異なる温度の作動流体が、処理の間に熱交換器を通過すると、熱交換器の表面全体の温度が変化する。構造化セラミック材料は、処理の間の局所温度と一致する構造特性を有する。使用している内に、熱交換器は、熱交換器の温度の差異が原因で動作温度勾配を有し得るようになる、したがって、セラミック表面層の所望の特性は、熱交換器の使用時の要望と一致する。
【0161】
実施例39.A9-B11-塗膜+選択的被覆塗料
橋梁に使用する鋼の表面はすべて、耐蝕性塗膜をコーティングして、鋼の腐蝕を防止する。次に、橋梁の道路に最も近似する表面を保護塗料で塗装する。この一部の塗装層は、除氷剤に使用する強力な塩化物イオンから耐蝕性塗膜を保護する。橋梁のすべての構造化鋼要素を塗装するのではなく、除氷剤を使う領域だけが保護塗膜層を必要とするので、全体的な塗装コストを削減できる。
【0162】
実施例40.A10-勾配塗料
HXを、浸漬または噴霧を介して耐蝕性塗料で塗装する。この塗料は、コイルの中央で最も薄く、マニホルドの端部で最も厚くなるように塗布する。腐蝕に対して最も脆弱な領域での腐蝕保護を維持しながら、塗装のコストを削減する。
【0163】
実施例41.A11-選択的被覆塗料
蝋付けしたアルミニウムHXコイルに関して、マニホルドと、マニホルドチューブ蝋付け接合部を浸漬する、または噴霧塗装して塗装する。これにより、コイルの最も脆弱な領域の周囲に腐蝕防止塗膜が構成される。
【0164】
実施例42.A12-選択的被覆勾配塗料
HXコイルに関して、マニホルドと、マニホルドチューブ蝋付け接合部だけを浸漬する、または噴霧を介して耐蝕性塗料で塗装する。勾配は、基板の選択した領域に複数の層を塗布する、あるいは、噴霧時間を変化させて形成する。塗料の塗布は、腐蝕に関連する障害に対して最も脆弱なマニホルドチューブ蝋付け接合部に見当を合わせる。このプロセスは、腐蝕防止の必要性が最も大きな領域を維持しながら、塗装のコストを大幅に削減する。コイル(fin pack)の機能領域を塗装しなくとも、HX性能の低下は防げる。
【0165】
実施例43
3003アルミニウムパネルは、本明細書で概説したように、改善した乾燥特性について試験をした。すべてのパネルは、68~70°F、30~50%の相対湿度(RH)の範囲の制御された周囲条件に供したパネルの質量を測定し、そして、その後の乾燥の間に、100マイクロリットルの2つの液滴を加えたときの質量をモニタリングして試験をした。最小限のパネルは、約3mgの水/cm2-時間の乾燥速度(液滴を加えた後の質量損失によって測定する)を有していた。同様に、ポリウレタンUV保護を備えた電気被覆したパネルは、3mg/cm2-時間の同様の乾燥速度を決定した。PCT/US19/65978に記載しているように、様々な構造化セラミック層を塗膜したパネルの乾燥速度は、20~50mg/cm2-時間であると決定した。3つの異なる構造化セラミック層調製物を塗布した。1つのパネルは、PCT/US19/65978に記載したようにして塗布したマグネシウム及びアルミニウム酸化物/水酸化物(「構造化セラミック」)を含んでいた。別のパネルは、マグネシウムとアルミニウム酸化物/水酸化物(「構造化セラミック2」)を含んでおり、同様のプロセス条件下で、さらに短時間で定着させた。3番目のパネルは、マンガンとアルミニウム酸化物/水酸化物(「構造化セラミック3」)を含んでいた。結果を、
図1に示す。
【0166】
構造化セラミック層を含むパネルと同様のパネルを、ヘキサデシルホスホン酸を含む機能性材料層でさらに処理して、接触角を大きくした。100マイクロリットルの水滴を塗布すると、水滴がパネルの表面から転がり落ちた。液滴は最初の時点の以前から表面から転がり落ちていたので、質量測定はしていない。
【0167】
実施例44
一連の3003アルミニウムq-パネルを、マグネシウム及びアルミニウム酸化物/水酸化物を含む結合剤不含構造のセラミック表面改質剤でコーティングを行い、実施例33で説明したものと同様に、70℃または80℃のいずれかの浸漬温度と、1分~64分の浸漬時間に供した。これらの同じ条件で構成した従前の試料は、構造化セラミック表面の多孔性と細孔径分布が、浸漬時間に応じて変化することを実証した。試料の脱イオン水の毛細管上昇を測定したところ、データは、水と表面との相互作用に影響を与えるプロセスパラメーターの能力を実証した。浸漬時間が長くなると毛細管上昇は改善し、また、高温浸漬も改善した毛細管上昇を示した。このことは、材料の表面全体で様々なプロセスパラメーターを使用して、特定の塗布を行うことで、表面と水との相互作用を最適化できることを示す。走査型電子顕微鏡(SEM)で得た構造化セラミック層の画像は、ナノメートルとマイクロメートルの両方のスケールでの特徴の差異を示した。最小限のアルミニウムq-パネルを使用して毛細管上昇の測定を行ったが、空気-水界面は変化しなかった。
【0168】
前出の発明は、理解を明確にする目的で例示及び実施例のレベルで詳細に説明はしているが、当業者であれば、特定の変更及び修正が、本発明の技術思想及び範囲から逸脱せずとも実施できることは自明である。したがって、詳細な説明をもってして、本発明の範囲を限定的に解釈すべではない。
【0169】
本明細書で引用するすべての刊行物、特許、及び特許出願は、すべての目的のために、それぞれの個別の刊行物、特許、または特許出願を、参照により、あたかも具体的かつ個別に示したものと同然に、参照により、それらの全内容を本明細書で援用する。
【国際調査報告】