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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(54)【発明の名称】保存果実組成物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20230207BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230207BHJP
   A01N 37/36 20060101ALI20230207BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20230207BHJP
   A23L 3/3508 20060101ALI20230207BHJP
   A23B 7/10 20060101ALI20230207BHJP
   A23G 3/48 20060101ALN20230207BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A01P3/00
A01N37/36
A01N37/02
A23L3/3508
A23B7/10 Z
A23G3/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535869
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2020086246
(87)【国際公開番号】W WO2021122612
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19218188.1
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504421730
【氏名又は名称】ピュラック バイオケム ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】イアンク, カタリン
(72)【発明者】
【氏名】プリタワルダニ, プリタ
【テーマコード(参考)】
4B014
4B016
4B021
4B169
4H011
【Fターム(参考)】
4B014GG09
4B014GL04
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
4B014GP27
4B016LC06
4B016LE05
4B016LG01
4B016LK04
4B016LK08
4B016LK09
4B016LK20
4B016LP02
4B016LP13
4B021LA42
4B021LW02
4B021MC01
4B021MK20
4B021MP01
4B169HA11
4B169KA01
4B169KB10
4B169KC08
4B169KC35
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB06
4H011BC18
4H011DA13
(57)【要約】
本発明は、10°~60°のブリックス値、少なくとも20重量%の含水量及び3.0~4.2の範囲のpHを有する保存果実組成物を調製する方法であって、非保存果実組成物を用意するステップと;非保存果実組成物を3.0~5.7の範囲のpHを有する酢酸緩衝液と合わせて、緩衝果実組成物を調製するステップであり、前記酢酸緩衝液が、溶解酢酸及び溶解酢酸アニオンの形態にある10~50重量%の溶解酢酸塩を含有する、ステップと;必要な場合、水及び/又は酸味料を緩衝果実組成物に添加して、少なくとも20重量%の含水量及び3.0~4.2の範囲のpHを達成するステップとを含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10°~60°のブリックス値、少なくとも20重量%の含水量及び3.0~4.2の範囲のpHを有する保存果実組成物を調製する方法であって、
少なくとも15重量%の総含水量を有し、85重量%以下の乾燥物質を含む、非保存果実組成物を用意するステップであり、前記乾燥物質が、乾燥物質の30~92重量%の、フルクトース、グルコース、スクロース及びこれらの組合せから選択される糖、並びに乾燥物質の8~80重量%の非糖乾燥果実物質を含む、ステップと、
前記非保存果実組成物を3.0~5.7の範囲のpHを有する酢酸緩衝液と合わせて、緩衝果実組成物を調製するステップであり、前記酢酸緩衝液が、溶解酢酸及び溶解酢酸アニオンの形態にある10~50重量%の溶解酢酸塩を含有する、ステップと、
必要な場合、水及び/又は酸味料を前記緩衝果実組成物に添加して、少なくとも20重量%の含水量及び3.0~4.2の範囲のpHを達成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記酢酸緩衝液が、溶解酢酸及び溶解酢酸アニオンの形態にある15~45重量%の溶解酢酸塩を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酢酸緩衝液が、3.2~5.5の範囲のpHを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酢酸緩衝液が、(i)カリウム、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン及びこれらの組合せから選択されるカチオン、並びに(ii)溶解酢酸塩を、1:25~1:1.5のモル比、好ましくは1:20~1:2のモル比で含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
酢酸アニオンが、前記酢酸緩衝液中の溶解アニオンの少なくとも80モル%に相当し、カリウムカチオンが、前記酢酸緩衝液中の溶解カチオンの少なくとも90モル%に相当する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酢酸緩衝液が、溶解プロトン化有機酸及び溶解有機酸アニオンの形態にある5~30重量%の溶解有機酸を含有し、前記有機酸が、乳酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸及びこれらの組合せから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酢酸緩衝液が、溶解酢酸塩及び溶解有機酸を、1:1~5:1のモル比、好ましくは1.3:1~3:1のモル比で含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酢酸緩衝液が、(i)ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、カルシウムカチオン及びこれらの組合せから選択されるカチオン、並びに(ii)1:25~1:1.5のモル比、より好ましくは1:20~1:2のモル比の溶解酢酸塩及び溶解有機酸の組合せを含有する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記有機酸が乳酸である、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非保存果実組成物が、保存果実調製物1キログラム当たり25~300ミリモルの、溶解酢酸及び酢酸アニオンの形態にある溶解酢酸塩を提供する量の酢酸緩衝液と合わされる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
100重量部の前記非保存果実組成物が、0.5~10重量部の前記酢酸緩衝液と合わされる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記非糖果実材料が、リンゴ、サクランボ、バナナ、ブドウ、レモン、ライム、オレンジ、マンゴー、アプリコット、パイナップル、ブルーベリー、イチゴ、ラズベリー、クワ、クロフサスグリ、アカフサスグリ、プラム、イチジク、西洋ナシ、マンダリン、グレープフルーツ、桃、パッションフルーツ、メロン、キーウィフルーツ、グアバ、ポポー、ココナッツ、レイシ及びこれらの組合せから選択される果実に由来する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記非保存果実組成物が、少なくとも0.1グラムの重量を有する果実片を、少なくとも30重量%含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記非保存果実組成物が、乾燥物質の40~90重量%の、フルクトース、グルコース、スクロース及びこれらの組合せから選択される糖、並びに乾燥物質の10~60重量%の非糖乾燥果実物質を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に規定された酢酸緩衝液の、果実組成物を保存するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の技術分野]
本発明は、10°~60°のブリックス値、少なくとも20重量%の含水量、及び3.0~4.2の範囲のpHを有する保存果実組成物を調製する方法であって、酢酸緩衝液の添加を含む、方法に関する。この方法で保存することができる果実組成物の例としては、果実調製物、果実フィリング、果実ピューレ、果実ソース、果実砂糖漬け(fruit preserve)、果汁及び濃縮果汁が挙げられる。
【0002】
本発明はまた、果実組成物を保存するための酢酸緩衝液の使用にも関する。
【0003】
酢酸緩衝液は、微生物による腐敗を防止又は遅らせることによって果実組成物の保存期間を延長するために、好適に使用することができる。酢酸緩衝液は、ソルビン酸カリウム及び安息香酸ナトリウムなどの保存料に対するクリーンラベル代替物として使用することができる。さらに、酢酸緩衝液は、製品の味又は外観に悪影響を及ぼすことなく果実組成物に適用することができる。
【0004】
[発明の背景]
食品の腐敗は、食品の浪費、製造者及び消費者に対する相当な経済的損失、並びにブランド名への悪影響につながる、食品産業にとって大きな問題である。微生物学的腐敗は、多種多様な細菌、かび及び酵母によってもたらされる。酵母及びかびによる腐敗は、一般に5.5以下の低いpH、高い含水量の製品において並びに糖、有機酸及び他の容易に代謝される炭素源の存在によって好まれる。
【0005】
微生物による腐敗を回避し、従って製品保存期間を延ばすために、異なる処理(安息香酸塩、ソルビン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、及び亜硫酸塩などの殺菌剤及び化学保存料の使用を含む)が使用される。並行して、公共企業体は、食品産業がこれらの化合物の使用を制限し、食品保存用に天然の方法を開発することを奨励している。これには、消費者がより自然で、それほど著しく加工されておらず、より安全な製品を探しているので、「クリーンラベル」食品の製品への強い社会的要求が伴っている。消費者は、食品の組成を知りたがっている。このため、消費者は製品ラベルにより注意を払い、主に天然の成分及び消費者が知っていて理解している成分名を有する、短く、クリーンで明瞭なラベルを好む。
【0006】
Verdad Ovvio 410は、デリカテッセン風のサラダ、ディップ及びスプレッドのようなチルド食品において自然保存用に使用される酢ベースの製品である。Verdad Ovvio 410は保存期間を自然に延ばし、重要な食欲をそそる風味を高める。
【0007】
国際公開第2019/038681号は、植物の精油、有機酸及びこれらの組合せを含む群から選択される、天然の食品保存料に関する。この文献は、実施例においてジャム用保存料の調製を記載しており、リボン混合物(ribbon mixture)に、クローブバッドオイル30g、乳酸250g、クエン酸193g、カルダモン抽出物7g、ナタマイシン70g、マルトデキストリン200g、及びシリカ250gが取り入れられ、十分混合された。約1000gの均一に混合された、果実ジャム用粉末保存料配合物を得た。
【0008】
米国特許第5,624,698号は、分散オイル相を0.2~3%含み、30°~70°のブリックス値を有する飲料販売機(beverage fountain)シロップ組成物を安定化させる方法であって、キサンタンガム0.02~0.3%及び変性食品用デンプン0.2~0.10%を前記シロップ組成物の中へ組み込むステップから本質的になり、オイルに対する変性食品用デンプンの比が、約0.1~約0.4である、方法を記載している。
【0009】
[発明の概要]
本発明者らは保存果実組成物を調製する方法であって、酢酸緩衝液の添加を含む、方法を開発した。より詳細には、本発明は、10°~60°のブリックス値、少なくとも20重量%の含水量及び3.0~4.2の範囲のpHを有する保存果実組成物を調製する方法であって、
少なくとも15重量%の総含水量を有し、85重量%以下の乾燥物質を含む、非保存果実組成物を用意するステップであり、前記乾燥物質が、乾燥物質の30~92重量%の、フルクトース、グルコース、スクロース及びこれらの組合せから選択される糖、並びに乾燥物質の8~80重量%の非糖乾燥果実物質を含む、ステップと、
非保存果実組成物を3.0~5.7の範囲のpHを有する酢酸緩衝液と合わせて、緩衝果実組成物を調製するステップであり、前記酢酸緩衝液が、溶解酢酸及び溶解酢酸アニオンの形態にある10~50重量%の溶解酢酸塩を含有する、ステップと、
必要な場合、水及び/又は酸味料を緩衝果実組成物に添加して、少なくとも20重量%の含水量及び3.0~4.2の範囲のpHを達成するステップと
を含む、方法に関する。
【0010】
本発明の保存方法によって、製品の官能特性に悪影響を与えることなく、果実組成物における微生物による腐敗を効果的に予防することができる。酢酸緩衝液の使用には、例えば酢が成分として使用される場合、酢酸緩衝液を「クリーンラベル」成分の形態で適用することができるという、追加の利点がある。
【0011】
本方法は、非保存果実組成物を酢酸緩衝液と合わせた後に、水及び/又は酸味料を添加するステップを任意選択で含む。例えば、4.2のpHを有する60°ブリックス果汁濃縮物に酢酸緩衝液を添加し、続いて水を添加してブリックス値を15°に低減し、酸味料を添加して希釈された汁濃縮物のpHをpH3.6に低減することによって、保存果実濃縮物を本発明に従って調製することができる。
【0012】
本発明はさらに、果実組成物を保存するための、上述の酢酸緩衝液の使用に関する。
【0013】
[発明の詳細な説明]
従って、本発明の第1の態様は、10°~60°のブリックス値、少なくとも20重量%の含水量及び3.0~4.2の範囲のpHを有する保存果実組成物を調製する方法であって、
少なくとも15重量%の総含水量を有し、85重量%以下の乾燥物質を含む非保存果実組成物を用意するステップであり、前記乾燥物質が、乾燥物質の30~92重量%の、フルクトース、グルコース、スクロース及びこれらの組合せから選択される糖、並びに乾燥物質の8~80重量%の非糖乾燥果実物質を含む、ステップと、
非保存果実組成物を3.0~5.7の範囲のpHを有する酢酸緩衝液と合わせて、緩衝果実組成物を調製するステップであり、前記酢酸緩衝液が、溶解酢酸(CHCOOH)及び溶解酢酸アニオン(CHCOO)の形態にある10~50重量%の溶解酢酸塩を含有する、ステップと、
必要な場合、水及び/又は酸味料を緩衝果実組成物に添加して、少なくとも20重量%の含水量及び3.0~4.2の範囲のpHを達成するステップと
を含む、方法に関する。
【0014】
本明細書で使用する「果実組成物」という用語は、果実片、果実ピューレ及び/又は果汁の形態にある果実材料を含有し、添加糖及び任意選択で多少の微量成分を含有し得る甘味の食品を指す。本発明による果実組成物の非限定的な例としては、果実調製物、果実フィリング、果実ピューレ、果実ソース、果実砂糖漬け、果汁及び果汁濃縮物が挙げられる。
【0015】
本明細書で使用する「非糖乾燥果実物質」という用語は、果実組成物に含有される、果実の糖成分、すなわち、フルクトース、グルコース及びスクロースの組合せ以外の果実の乾燥物質を指す。
【0016】
本明細書で「含水量」又は「総含水量」に言及する場合には常に、例えば果実片に含有される水を含む、総含水量を意味する。
【0017】
保存果実組成物のブリックス値は、組成物に含有される液体のブリックスと等しい。果汁の場合には、ブリックス値は、果汁のブリックス値と等しい。果実片及び液相を含有する果実フィリングの場合には、ブリックス値は、液相のブリックス値と等しい。ブリックス値は、屈折計を使用して20℃で決定される。
【0018】
本明細書で果実に言及する場合には常に、特に断りのない限り、甘味又は酸味であり、生の状態で食べられる植物の多肉質種子関連構造(fleshy seed-associated structure)を意味する。
【0019】
好ましい実施形態では、非糖乾燥果実物質は、リンゴ、サクランボ、バナナ、ブドウ、レモン、ライム、オレンジ、マンゴー、アプリコット、パイナップル、ブルーベリー、イチゴ、ラズベリー、クワ、クロフサスグリ(blackcurrant)、アカフサスグリ(redcurrant)、プラム、イチジク、西洋ナシ(pear)、マンダリン、グレープフルーツ、桃、パッションフルーツ、メロン、キーウィフルーツ、グアバ、ポポー(pawpaw)、ココナッツ、レイシ(litchi)及びこれらの組合せからなる群から選択される果実に由来する。
【0020】
本発明の保存果実組成物は、好ましくは、少なくとも12°のブリックス値、より好ましくは13~55°の範囲、最も好ましくは15~40°の範囲のブリックス値を有する。
【0021】
保存果実組成物の含水量は、好ましくは60~88重量%の範囲、より好ましくは65~85重量%の範囲、最も好ましくは68~82重量%の範囲にある。
【0022】
保存果実組成物は、好ましくは3.2~4の範囲、より好ましくは3.3~3.8の範囲のpHを有する。
【0023】
好ましい実施形態では、保存果実組成物は、4~50重量%、より好ましくは6~40重量%、最も好ましくは7~32重量%の、フルクトース、グルコース、スクロース及びこれらの組合せから選択される糖を含有する。
【0024】
さらに好ましい実施形態では、保存果実組成物は、3~40重量%、より好ましくは5~30重量%、最も好ましくは8~20重量%の非糖乾燥果実物質を含有する。
【0025】
フルクトース、グルコース、スクロース及び非糖乾燥物質の組合せは、通常は、保存果実組成物の少なくとも10重量%、より好ましくは12~70重量%、最も好ましくは14~35重量%を構成する。
【0026】
保存果実組成物は、好ましくは0.3~4重量%、より好ましくは0.5~3.2重量%の、溶解酢酸及び溶解酢酸アニオンの形態にある溶解酢酸塩を含む。
【0027】
溶解酢酸塩は、例えば欧州特許第3122865号に記載されている、酢などの天然物を含有する酢酸から得ることができる。
【0028】
糖、非糖乾燥果実物質及び水に加えて、保存果実組成物は、香味料、着色剤、増粘剤、ゲル化剤、ビタミン、ミネラル及び酸化防止剤などの他の成分を好適に含有することができる。
【0029】
好ましい実施形態では、保存果実組成物は、少なくとも0.8、より好ましくは少なくとも0.85、最も好ましくは少なくとも0.9の水分活性を有する。
【0030】
本方法で用いられる非保存果実組成物は、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも45重量%、最も好ましくは少なくとも60重量%の総含水量を有する。
【0031】
非保存果実組成物は、好ましくは70重量%以下の乾燥物質、より好ましくは12~60重量%の乾燥物質、最も好ましくは15~50重量%の乾燥物質を含む。
【0032】
特に好ましい実施形態によれば、非保存果実組成物は、少なくとも30重量%の果実片、より好ましくは少なくとも45重量%、最も好ましくは少なくとも55重量%の、少なくとも0.1グラムの重量を有する果実片を含む。
【0033】
前述の果実片は、好ましくは、リンゴ、サクランボ、バナナ、ブドウ、レモン、ライム、オレンジ、マンゴー、アプリコット、パイナップル、ブルーベリー、イチゴ、ラズベリー、クワ、クロフサスグリ、アカフサスグリ、プラム、イチジク、西洋ナシ、マンダリン、グレープフルーツ、桃、パッションフルーツ、メロン、キーウィフルーツ、グアバ、ポポー、ココナッツ、レイシ及びこれらの組合せから選択される果実の片である。
【0034】
非保存果実組成物の総含水量は、好ましくは、40~90重量%の範囲、より好ましくは60~88重量%の範囲、最も好ましくは65~86重量%の範囲にある。
【0035】
非保存果実組成物は、好ましくは乾燥物質の40~90重量%の、フルクトース、グルコース、スクロース及びこれらの組合せから選択される糖、並びに乾燥物質の10~60重量%の非糖乾燥果実物質を含む。より好ましくは、非保存果実組成物は、好ましくは、乾燥物質の45~80重量%の、フルクトース、グルコース、スクロース及びこれらの組合せから選択される糖、並びに乾燥物質の20~55重量%の非糖乾燥果実物質を含む。
【0036】
フルクトースは、好ましくは乾燥物質の少なくとも10重量%の濃度、より好ましくは乾燥物質の12~45重量%の濃度、最も好ましくは乾燥物質の15~40重量%の濃度で、非保存果実組成物中に含有される。
【0037】
本方法で用いられる酢酸緩衝液は、好ましくは15~45重量%、より好ましくは17.5~40重量%、最も好ましくは18~35重量%の、溶解酢酸及び溶解酢酸アニオンの形態にある溶解酢酸塩を含有する。
【0038】
特に好ましい実施形態によれば、酢酸緩衝液は、3.2~5.5の範囲のpHを有する。
【0039】
好ましくは、酢酸緩衝液は、(i)カリウム、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン及びこれらの組合せから選択されるカチオン、並びに(ii)溶解酢酸塩を、1:25~1:1.5のモル比、好ましくは1:20~1:2のモル比で含有する。
【0040】
特に好ましい実施形態によれば、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン及びカリウムカチオンは、酢酸緩衝液において、溶解カチオンの少なくとも90モル%、より好ましくは少なくとも90モル%を一緒に構成する。
【0041】
さらに好ましい実施形態によれば、カリウムカチオンは、溶解カチオンの少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも75モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%を構成する。
【0042】
別の好ましい実施形態によれば、酢酸アニオンは、酢酸緩衝液中の溶解アニオンの少なくとも80モル%に相当する。
【0043】
1つの有利な実施形態では、酢酸緩衝液において、酢酸アニオンは溶解アニオンの少なくとも80モル%に相当し、カリウムカチオンは溶解カチオンの少なくとも90モル%を相当する。
【0044】
代わりの有利な実施形態では、酢酸緩衝液は、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~25重量%、最も好ましくは15~20重量%の、溶解プロトン化有機酸及び溶解有機酸アニオンの形態にある溶解有機酸を含有し、前記有機酸は、乳酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸及びこれらの組合せから選択される。より好ましくは、有機酸は、乳酸、プロピオン酸及びこれらの組合せから選択される。最も好ましくは、有機酸は乳酸である。
【0045】
溶解有機酸を含有する酢酸緩衝液は、好ましくは溶解酢酸塩及び溶解有機酸を1:1~5:1のモル比、より好ましくは1.3:1~3:1のモル比で含有する。
【0046】
溶解有機酸を含有する酢酸緩衝液は、好ましくは、(i)ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、カルシウムカチオン及びこれらの組合せから選択されるカチオン、並びに(ii)1:25~1:1.5のモル比、より好ましくは1:20~1:2のモル比の溶解酢酸塩及び溶解有機酸の組合せを含有する。
【0047】
特に好ましい実施形態によれば、酢酸緩衝液は、5~30重量%、より好ましくは10~25重量%、最も好ましくは15~20重量%の、溶解プロトン化乳酸及び溶解乳酸アニオンの形態にある溶解乳酸を含有する。
【0048】
溶解乳酸を含有する酢酸緩衝液は、好ましくは酢酸アニオン及び乳酸アニオンを1:1~5:1のモル比、より好ましくは1.3:1~3:1のモル比で含有する。
【0049】
溶解乳酸を含有する酢酸緩衝液は、好ましくは、(i)ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、カルシウムカチオン及びこれらの組合せから選択されるカチオン、並びに(ii)1:25~1:1.5モル比、より好ましくは1:20~1:2のモル比の溶解酢酸塩及び溶解乳酸の組合せを含有する。
【0050】
別の好ましい実施形態によれば、非保存果実組成物は、保存果実調製物1キログラム当たり、25~300ミリモル、より好ましくは40~250ミリモル、最も好ましくは50~200ミリモルの、溶解酢酸及び酢酸アニオンの形態にある溶解酢酸塩を提供する量の、酢酸緩衝液と合わせる。
【0051】
さらに別の好ましい実施形態によれば、非保存果実組成物は、保存果実調製物1キログラム当たり、25~300ミリモル、より好ましくは40~250ミリモル、最も好ましくは50~200ミリモルの、(i)溶解酢酸及び酢酸アニオンの形態にある溶解酢酸塩並びに(ii)溶解プロトン化有機酸及び溶解有機酸アニオンの形態にある溶解有機酸の組合せを提供する量の、酢酸緩衝液と合わせる。
【0052】
本方法では、好ましくは100重量部の非保存果実組成物は0.5~10重量部の酢酸緩衝液と合わせ、より好ましくは100重量部の果実組成物は1~9重量部の酢酸緩衝液と合わせ、最も好ましくは100重量部の果実組成物は2~8重量部の酢酸緩衝液と合わせる。
【0053】
本発明のさらなる態様は、果実組成物を保存するための、本発明による酢酸緩衝液の使用に関する。
【0054】
好ましい実施形態によれば、本発明による酢酸緩衝液は、微生物による腐敗を防止又は抑制するために、より好ましくはかび及び/又は酵母の成長を防止又は抑制するために使用される。
【0055】
本発明は、以下の非限定的実施例によってさらに説明される。
【0056】
[実施例]
実施例1
本発明による酢酸緩衝液を、以下の表によって調製した。
【0057】
【表1】
【0058】
PURAC(登録商標)FCC80(Corbion、オランダ)は、80%の乳酸を含有する製品である。酢酸FCC、FGは、少なくとも99.5%の純度(メルク)を有する氷酢酸であり、酢酸カリウムは99%超の純度(ACROS)を有する無水製品である。
【0059】
実施例2
実施例1に記載した酢酸緩衝液を、25°(72重量%水)及び34°(63重量%水)ブリックスのベーカリー果実フィリング(bakery fruit filling)におけるクリーンラベル保存料として、試験した。25°ブリックスのベーカリー果実フィリングは、オランダで市販(製品名:「Taart Vlaaifruit」、供給者名:HAK)されており、51%の果実(さいの目に切られたりスライスされたりしていない完全なベリーとしての、イチゴ、ブラックベリー、クロフサスグリ、サクランボ)、水、糖、変性コーンスターチ及び天然香料を含有する。34°ブリックスのベーカリー果実フィリングは、25°のブリックスを有する製品へ糖を添加することによって得た。
【0060】
酢酸緩衝液を果実フィリング試料に異なる濃度で添加し、続いて果実フィリングに酵母又はかびの混合物(cocktail)を接種した。試料を20℃で培養し、微生物の成長を経時的に監視した。
【0061】
チャレンジ研究1
この研究では、pH3.2及びpH3.5(pHは、1M HCl及び1M NaOHを使用して調節)で、本発明による酢酸緩衝液の有効性を酵母の混合物に対して試験した。試料に、およそ3log CFU/gの、ピキア・メンブラニーファシエンス(Pichia membranefaciens)、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びロドトルラ・ムシラゲノーサ(Rhodotorula mucilagenosa)を含む混合物を接種した。その後、試料を20℃で培養し、経時的に監視した。結果を、下表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
チャレンジ研究2
この研究では、pH3.2及びpH3.5(pHは、1M HCl及び1M NaOHを使用して調節)で、本発明による保存料の有効性をかびの混合物に対して試験した。試料に、およそ3.75log胞子/gのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、タラロマイセス属の一種(Talaromyces sp.)及びネオサルトリア・スピノーザ(Neosartorya spinosa)を含む混合物を接種した。その後、試料を20℃で培養し、経時的に監視した。結果を、下表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
チャレンジ研究3
この研究では、pH3.8(pHは、1M HCl及び1M NaOHを使用して調節)及び異なるブリックス度で、本発明による保存料の有効性を酵母又はかびの混合物に対して試験した。試料に、およそ3log CFU/gの、サッカロミケス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、サッカロミケス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びロドトルラ・ムシラゲノーサを含む混合物を受け入れた(receive)酵母を接種した。試料に、およそ3.75log胞子/gの、アスペルギルス・ニガー、タラロマイセス属の一種及びネオサルトリア・スピノーザの混合物を受け入れたかびを接種した。接種後、試料を20℃で培養し、経時的に監視した。結果を、下表4に示す。
【0066】
【表4】


【国際調査報告】