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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(54)【発明の名称】ダニ侵襲処理
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/50 20060101AFI20230207BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20230207BHJP
   A01N 43/832 20060101ALI20230207BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20230207BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A01N43/50 L
A01P7/02
A01N43/50 P
A01N43/832
A01N25/10
A01M1/20 A
A01N43/50 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535956
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 FR2020052402
(87)【国際公開番号】W WO2021116631
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】PCT/FR2019/053064
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522232086
【氏名又は名称】ベト-ファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】パード, レミ
(72)【発明者】
【氏名】シャルパンティエ, ゲール
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラール, イサベル
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121CC02
2B121EA30
2B121FA20
4H011AC04
4H011BA01
4H011BB09
4H011BB10
4H011BC19
4H011DA07
(57)【要約】
【課題】ダニ侵襲処理の提供。
【解決手段】本発明は、殺ダニ剤としての式(I)の化合物、その塩またはこれを含有する組成物、ダニによる動物の侵襲を低減または防止する方法であって、ダニを式(I)の化合物に曝露するステップを含む方法、式(I)の化合物を含む組成物、1種または複数のミツバチ用誘引剤およびポリマー、式(I)の化合物を含む養蜂に使用するのに適したストラップ、および式(I)の化合物を含むミツバチの巣箱に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺ダニ剤としての式(I)の化合物、その塩またはこれを含有する組成物の使用であって、
前記式(I)が
【化1】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化2】
【化3】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、使用。
【請求項2】
ダニによる動物の侵襲を低減または防止するための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
動物のダニ侵襲を低減または防止する方法であって、前記ダニを式(I)の化合物、その塩またはこれを含有する組成物に曝露するステップを含み、
前記式(I)が
【化4】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化5】
【化6】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、方法。
【請求項4】
前記式(I)の化合物の組成物または前記式(I)の化合物の塩の組成物が、0.001~200μg/μL、好ましくは0.01~100μg/μLの前記式(I)の化合物またはその塩を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項5】
前記動物のダニ侵襲が、ミツバチの巣箱、好ましくはセイヨウミツバチ(Apis mellifera)、トウヨウミツバチ(Apis cerana)、オオミツバチ(Apis dorsata)またはコミツバチ(Apis florea)属のミツバチの巣箱のダニ侵襲である、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項6】
ダニ侵襲の低減が、前記動物に付着した生きているダニの数の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはさらには100%の減少である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項7】
前記式(I)の化合物、前記その塩または前記これを含有する組成物がストラップ中および/または上に含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項8】
前記動物がミツバチであり、前記ダニがバロアダニである、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項9】
ミツバチにおける殺バロアダニ剤として使用するのに適した組成物であって、式(I)の化合物またはその塩と、1種または複数のミツバチ用誘引剤と、プラスチック材、ゴム、接着剤、樹脂およびポリホロシド繊維から選択される1種または複数のポリマーとを含み、前記式(I)が
【化7】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化8】
【化9】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、組成物。
【請求項10】
(i)式(I)の化合物、その塩、これを含有する組成物、または(ii)請求項9に記載の組成物を含む、養蜂に使用するのに適したストラップであって、
前記式(I)が
【化10】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化11】
【化12】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、ストラップ。
【請求項11】
(i)式(I)の化合物、その塩もしくはこれを含有する組成物、(ii)請求項9に記載の組成物、または(iii)請求項10に記載のストラップを含むミツバチの巣箱であって、
前記式(I)が
【化13】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化14】
【化15】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、ミツバチの巣箱。
【請求項12】
Yが基(IV)または(V):
【化16】
【化17】
である、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用、方法、組成物、ストラップまたはミツバチの巣箱。
【請求項13】
Aが基(II)であり、XがNHであり、Yが基(IV)であり、Zがハロゲンであり、ZがHであり、Zがハロゲンであるか、
Aが基(II)であり、XがCHまたはCH-CHであり、Yが基(V)であり、ZがCHであり、ZがCHであり、ZがHであるか、あるいは
Aが基(III)であり、XがNHであり、Yが基(IV)であり、Zがハロゲンである、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用、方法、組成物、ストラップまたはミツバチの巣箱。
【請求項14】
前記アロゲンがF、ClまたはBrから選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用、方法、組成物、ストラップまたはミツバチの巣箱。
【請求項15】
前記式(I)の化合物が、デトミジン、デクスメデトミジン、メデトミジン、ロミフィジン、クロニジン、チザニジンまたはこれらの化合物のうちの1つの塩から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用、方法、組成物、ストラップまたはミツバチの巣箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺ダニ剤としてのα-2-アドレナリンアゴニスト化合物の使用、ならびにダニをα-2-アドレナリンアゴニスト化合物に曝露することにある、ミツバチの巣箱におけるバロアダニ(varroa mite)侵襲を低減または防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの動物にダニが外寄生し得る。これは、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどの飼育動物だけでなく、ミツバチ、ウシ、ヒツジ、家禽などの家畜にも当てはまる。動物に引き起こされる不便さを超えて、ダニは動物を衰弱させ得る、疾患を伝染させ得る、または動物の死を引き起こしさえし得る。
【0003】
蜂群崩壊症候群(CCD)は、世界中でミツバチ群において1990年代以降観察されている異常かつ反復性の大量死の現象に与えられた名称である。この現象についてのいくつかの説明、特に寄生生物疾患の増加、より具体的にはバロアおよびバロア症ダニによって引き起こされるものが既に提唱されている。このダニは、ミツバチに寄生し、その免疫防御およびその生理学的状態を低下させることによって蜂群を衰弱させ、ウイルスのベクターとなり得る。この寄生生物の処理は、蜂群の生存、したがって、受粉の維持ならびにその生産性の維持にとって大きな問題である。
【0004】
今日、誰もが蜂群に対するバロアダニの影響を認識している。蜂群侵襲を判定するために多くの技術が使用されている。これらは、特に、洗浄剤、アルコールを含む液体、COまたは粉糖を使用して、ミツバチに付着したバロアダニを除去し(ミツバチ100匹当たりの便乗バロアダニのパーセンテージ)、次いで、脱離したバロアダニを計数することによる、ミツバチ侵襲のパーセンテージの計算に基づく[1]。ミツバチからのバロアダニを除去するためのいくつかの多かれ少なかれ複雑な装置が文献に記載されており、特にカナダ特許出願第2943917号明細書に記載される装置またはコミュニティモデル第003419415-0001号に記載される装置がある。侵襲のパーセンテージは、100匹の成虫ミツバチに見られるバロアダニの数に相当する。時期に応じて、指標を生成することが可能である:
・ 0~2%の間の侵襲では、蜂群が良好に機能している。
・ 約5%の侵襲では、集団動態および蜂蜜生産に影響がある(ハニーフロー(honey flow)中の収穫量が約25%少ない、[2])。
・ 約10%以上の侵襲では、蜂群が多かれ少なかれ急速に死亡し、冬を越さない。
【0005】
季節の終わりに蜂群が最大5%の侵襲を有するためには、春の侵襲が1%未満であることが非常に重要である。
【0006】
30年超にわたって行われた研究および実験の努力にもかかわらず、このダニと戦うために利用可能な治療兵器は少数の製品に減少し、養蜂家はこの災難に直面して無力と感じている。しかしながら、後者は、蜂群を保護するために介入するいくつかの処理を有するが、バロア症を処理することが実際に認可されている化合物はほとんどない。
【0007】
フランスでは、現在までに可変性の効率でバロア症(varroasis)に対して使用するための6種の活性化合物が存在する。
【0008】
処理は、現在、化学的化合物および生物学的化合物の2つのカテゴリーに分けられているが、処理期間(長期または短期)によっても区別される。長期処理は、一般に、8月/9月の致命的なバロアダニのピークの前の養蜂シーズンの終わり(8月半ば)に行われ、可能な限り夏の侵襲を制限することに加えて、春にも施用することができる。短期処理は、(夏季以外の)ブルード(brood)の非存在下で行われなければならず、長期処理の効率を高めるために長期処理に加えて使用される。
【0009】
合成分子から誘導される3種の化学化合物:アミトラズ、タウ-フルバリネートおよびフルメトリンが存在する。アミトラズは以下の式:
【化1】
の化合物である。
【0010】
有機養蜂で使用される3種の天然化合物:チモール、シュウ酸およびギ酸が存在する。
【0011】
それらの中には、使用されるある特定の化合物に対するバロアダニの耐性増加のために、残念なことに効率が低下するものがある。これは、タウ-フルバリネートおよびフルメトリン化合物の場合に特に当てはまる。さらに、利用可能な処理の数が減少すると、有効な健康管理の状況で十分な変更が可能にならない。
【0012】
これらの化合物はまた、ミツバチ以外の動物におけるダニによる侵襲の処理における効率も示している。
【0013】
したがって、ダニに対して有効であり、処理された動物およびヒトに対するリスクを伴わず、特にバロアダニに対抗するためのものであり、ヒトの消費用の蜂蜜の品質を低下させることなく、蜂群と環境および養蜂家の両方に対するリスクを伴わない新たな分子を識別するための研究が依然として必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様によると、本発明は、殺ダニ剤としての式(I)の化合物、その塩またはこれを含有する組成物の使用であって、前記式(I)が
【化2】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化3】
【化4】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、使用に関する。
【0015】
第2の態様によると、本発明は、ダニによる侵襲を低減または防止する方法であって、ダニを式(I)の化合物、その塩またはこれを含有する組成物に曝露するステップを含み、
前記式(I)が
【化5】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化6】
【化7】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、方法に関する。
【0016】
第3の態様によると、本発明は、ミツバチにおける殺バロアダニ剤(varroacide)として使用するのに適した組成物であって、式(I)の化合物またはその塩と、1種または複数のミツバチ用誘引剤と、プラスチック材、ゴム、接着剤、樹脂およびポリホロシド(polyholoside)繊維から選択される1種または複数のポリマーとを含み、
前記式(I)が
【化8】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化9】
【化10】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、組成物に関する。
【0017】
第4の態様によると、本発明は、(i)式(I)の化合物、その塩、これを含有する組成物、または(ii)本発明による組成物を含む、好ましくは養蜂に使用するのに適した、ストラップであって、
前記式(I)が
【化11】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化12】
【化13】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、ストラップに関する。
【0018】
第5の態様によると、本発明は、(i)式(I)の化合物、その塩、これを含有する組成物、(ii)本発明による組成物、または(iii)本発明によるストラップを含むミツバチの巣箱であって、
前記式(I)が
【化14】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化15】

【化16】

から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、ミツバチの巣箱に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
式(I)の化合物の定義
【0020】
式(I)の化合物は、α-2-アドレナリンアゴニストである。その式は、
【化17】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化18】

【化19】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である。
【0021】
有利には、Yが以下の基(IV)または(V):
【化20】
【化21】
である。
【0022】
有利には、式(I)の化合物が、
【化22】
(式中、
・ Aは基(II)であり、XはNHであり、Yは基(IV)であり、Zはハロゲンであり、ZはHであり、Zはハロゲンであるか、
・ Aは基(II)であり、XはCHまたはCH-CHであり、Yは基(V)であり、ZはCHであり、ZはCHであり、ZはHであるか、あるいは
・ Aは基(III)であり、XはNHであり、Yは基(IV)であり、Zはハロゲンである)
である。
【0023】
有利には、アロゲン(allogen)がF、ClまたはBrから選択される。
【0024】
特定の実施形態では、式(I)の化合物が、デトミジン(CAS番号:76631-46-4)、メデトミジン(D)(すなわち、デクスメデトミジン-CAS番号:113775-47-6)、メデトミジン(L)(すなわち、レボメデトミジン-CAS番号:119717-21-4)、ロミフィジン(CAS番号:65896-16-4)、クロニジン(CAS番号:4205-90-7)、チザニジン(CAS番号:51322-75-9)またはこれらの化合物のうちの2つ以上の混合物から選択される。これは、例えば、ラセミ混合物、例えばメデトミジンのラセミ体(CAS番号:86347-14-0)であり得る。
【0025】
デトミジンは、化学名4-[(2,3-ジメチルフェニル)-メチル]-3H-イミダゾールによっても知られている。これは以下の式:
【化23】
を有する。
【0026】
デクスメデトミジンは、メデトミジンの右旋性エナンチオマーに相当する。デクスメデトミジンは、化学名(S)-4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)-エチル]-1H-イミダゾールによっても知られている。これは以下の式:
【化24】
を有する。
【0027】
クロニジンは、N-(2,6-ジクロロフェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-アミンの化学名によっても知られている。これは以下の式:
【化25】
を有する。
【0028】
ロミフィジンは、N-(2-ブロモ-6-フルオロフェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-アミンの化学名によっても知られている。これは以下の式:
【化26】
を有する。
【0029】
チザニジンは、化学名4-クロロ-N-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)-8-チア-7,9-ジアザビシクロ,ノナ-2,4,6,9-テトラエン-5-アミンによっても知られている。これは以下の式:
【化27】
を有する。
【0030】
特に好ましい実施形態では、式(I)の化合物がデクスメデトミジンである。デクスメデトミジンは、本出願人が、この化合物がミツバチに対する毒性を伴わずに殺バロアダニ剤特性を有することを示したので、養蜂に使用するための特に興味深い化合物である。
【0031】
本発明による式(I)の化合物は、塩の形態であってもよい。「塩」という用語は、正味電荷を有さない中性生成物を形成するカチオンおよびアニオンで構成されるイオン性化合物を意味する。当業者であれば、本発明を実施するのに適した塩、すなわち取り扱う人および/またはミツバチおよび/または蜂蜜の消費にとって非毒性である塩を選択する方法を知っていよう。塩は、以下の塩から選択することができる:塩酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、キシナホ酸塩(xinofoate)、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミンおよび亜鉛。例えば、薬学的に許容されることが知られている塩は、本発明の実施に適しており、特に、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use by Stahl and Wermuth(Wiley-VCH,2002)に言及されている。
【0032】
本発明を実施するのに特に適した塩は、デトミジン、メデトミジン(D)(すなわち、デクスメデトミジン)、メデトミジン(L)(すなわち、レボメデトミジン)、ロミフィジン、クロニジン、チザニジンまたはこれらの化合物のうちの2つ以上の混合物から選択される化合物の塩である。有利には、塩は塩酸塩である。塩は、例えば、メデトミジン(L)塩酸塩(すなわち、レボメデトミジン塩酸塩-CAS番号:190000-46-5)および/またはメデトミジン(D)塩酸塩(例えば、デクスメデトミジン塩酸塩-CAS番号:145108-58-3またはメデトミジン塩酸塩-CAS番号:86347-15-1)、クロニジン塩酸塩(CAS番号:4205-91-8)、チザニジン塩酸塩(CAS番号:64461-82-1)、またはデトミジン塩酸塩(CAS番号:90038-00-9)であり得る。
【0033】
本発明の文脈において、式(I)のいくつかの化合物は互いに関連付けられ得る。
【0034】
養蜂の分野で本発明を実施するのに特に適した塩は、本出願人が、この化合物がミツバチに対する毒性を伴わずに殺バロアダニ剤特性を有することを示したので、デクスメデトミジン塩酸塩である。
【0035】
定義
【0036】
「殺ダニ剤」という用語は、ダニを死滅させる特性を有する化合物を意味する。例えば、化合物は、麻痺によってダニを死滅させる特性を有し得る。本発明の特定の実施形態では、殺ダニ剤が、「殺バロアダニ剤」、すなわち、バロアダニを死滅させる特性を有する化合物であり得る。
【0037】
本発明の文脈において、ダニは、
・ マダニ(metastigmata)亜目(マダニ)、特にイクソデス(Ixodidae)科のダニ、例えばイクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)、イクソデス・スカプラリス(Ixodes scapularis)、リピセファルス・サングイネウス(Rhipicephalus sanguineus)およびボーフィルス・ミクロプルス(Boophilus microplus)(ウシマダニ)、デルマセントル・ヴァリアビリス(Dermacentor variabilis)、アムブリオンマ・アメリカヌム(Amblyomma americanum);
・ トゲダニ(Mesostigmata)亜目、特にデルマニシダエ科(Dermanyssidae)のダニ、例えばデルマニスス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)(家禽シラミ)またはヘギイタダニ科(Varroidae)のダニ、例えばバロア(Varroa);
・ コナダニ(Astigmata)亜目(「フシダニ」)、特にサルコプチダエ(Sarcoptidae)科のダニ、例えばサルコプテス・スカビエイ(Sarcoptes scabiei)およびノトエドレス・カチ(Notoedres cati)、またはプソロプチダエ(Psoroptidae)科のダニ、例えばプソロプテス・オビス(Psoroptes ovis)、コリオプテス・ボビス(Chorioptes bovis)およびオトデクテス・シノチス(Otodectes cynotis);または
・ ケダニ(Prostigmata)亜目、特にデモジシダエ(Demodicidae)科のダニ、例えばデモデクス・ボビス(Demodex bovis)およびデモデクス・カニス(Demodex canis)、またはケイレチエリダエ(Cheyletiellidae)科のダニ、例えばケイレチエラ・ヤスグリ(Cheyletiella yasguri)
であり得る。
【0038】
本発明のこの特定の実施形態では、ダニがバロアダニである。「バロア」という用語は、外寄生ミツバチダニを指す。これは、その発達の全ての段階に寄生し、ミツバチの健康、特にミツバチの巣箱における、蜂群の健康に影響を及ぼす。本発明の文脈において、バロアは、好ましくはミツバチヘギイタダニ(varroa destructor)である。
【0039】
本発明の文脈における「動物」という用語は、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、家禽、ウシ、ヒツジ、ミツバチを表す。
【0040】
「ミツバチ」という用語は、膜翅目(Hymenoptera)およびアピス属(Apis)の昆虫を示す。ミツバチにはオオミツバチ(Apis dorsata)、コミツバチ(Apis florea)、トウヨウミツバチ(Apis cerana)およびセイヨウミツバチ(Apis mellifera)の4つの種がある。本発明の特定の実施形態では、ミツバチがセイヨウミツバチ(Apis mellifera)である。
【0041】
「ミツバチの巣箱」という用語は、蜂群を収容する構造を示す。ミツバチの巣箱の内部は、蜜蝋の六角形の穴によって形成された櫛で構成されている。ミツバチは、食物貯蔵(蜂蜜および花粉)および集団再生(卵、幼虫および蛹)のためにこれらの穴を使用する。養蜂においては、ミツバチの巣箱は、蜂群を収容するために養蜂家によって構築された生きたユニットである。これは通常、木製またはプラスチック製の箱である。
【0042】
「ストラップ」という用語は、可撓性材料を切断するまたは編むことによって作製されたストリップを示す。可撓性材料は、例えば、プラスチック材、ゴム、織物、樹脂またはポリホロシド繊維であり得る。ストラップは様々な形状がある。これは、例えば、ネコの首輪、イヌの首輪、または養蜂で使用されるストラップであり得る。好ましくは、ストラップは、養蜂に使用するのに適したストラップ、すなわち、ストラップがミツバチの巣箱のフレーム間に滑り込み得るように適合されたサイズ、剛性および形状を有する非円形ストラップ、好ましくは平坦なストラップである。
【0043】
本発明は、式(I)の化合物の殺ダニ効果の発明者らによって実証された利点に端を発する。
【0044】
使用および方法
【0045】
第1の態様によると、本発明は、殺ダニ剤としての式(I)の化合物、その塩またはこれを含有する組成物の使用であって、前記式(I)が
【化28】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化29】
【化30】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、使用に関する。
【0046】
有利には、式(I)の化合物が、
・ ダニによる侵襲を低減または防止するため、
・ 動物(例えば、動物は、ネコ、イヌ、ウマ、家禽、ウシ、ヒツジまたはミツバチである)におけるダニによる侵襲を低減または防止するため、
・ ミツバチの巣箱におけるダニ(好ましくは、ダニはバロアダニである)による侵襲を低減または防止するため
に使用される。
【0047】
第2の態様によると、本発明は、ダニによる侵襲を低減または防止する方法であって、バロアダニを式(I)の化合物、その塩またはこれを含有する組成物に曝露するステップを含み、前記式(I)が
【化31】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化32】
【化33】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、方法に関する。
【0048】
本発明の第2の態様によると、ダニによる侵襲は、
・ 動物(例えば、動物は、ネコ、イヌ、ウマ、家禽、ウシ、ヒツジまたはミツバチである)におけるダニによる侵襲、
・ ミツバチの巣箱におけるダニ(好ましくは、ダニはバロアダニである)による侵襲
であり得る。
【0049】
本発明の文脈において、式(I)の化合物の組成物または式(I)の化合物の塩の組成物は、0.001~200μg/μL、好ましくは0.01~100μg/μL、0.1~100μg/μL、例えば約0.1μg/μL、約1μg/μL、約10μg/μL、約25μg/μL、約50μg/μL、約75μg/μL、またはさらには約100μg/μLの式(I)の化合物またはその塩を含有する。
【0050】
式(I)の化合物またはその塩は、溶媒に希釈することができる。溶媒は、例えば、アセトニトリル、アセトン、エタノールまたはメタノールであり得る。
【0051】
式(I)の化合物またはその塩は、組成物の形態であり得る。これは、以下に定義される本発明による組成物であり得る。
【0052】
式(I)の化合物、その塩またこれを含有する組成物は、ストラップ中および/または上に含まれ得る。これは、以下に定義される本発明によるストラップであり得る。
【0053】
本発明の特定の実施形態では、ダニ侵襲の低減が、動物に付着した生きているダニの数の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはさらには100%の減少である。このような減少は、有利には、例えば実施例部分に記載される試験を実施することによって、処理後24時間(h)未満、例えば処理後12時間未満、6時間未満またはさらには3時間未満で得られる。実際の条件では、数日後またはさらには数週間後に減少を得ることができる。侵襲の低減は、例えば、バロアダニによるミツバチの侵襲の場合、100匹のミツバチをミツバチの巣箱から取り出し、それらに付着したバロアダニの数を計数することによって容易に測定することができる。そのため、処理されたミツバチの巣箱と未処理のミツバチの巣箱との間、または処理前のミツバチの巣箱と処理後の同じミツバチの巣箱との間で、ミツバチに付着したバロアダニの数を比較することは容易である。50%の減少は、処理動物が未処理動物の半分の数のダニを保有していることを意味する。100%の減少は、動物がもはやダニを保有していないことを意味する。
【0054】
有利には、本発明による使用および本発明による方法の実施は、動物の生存に影響を及ぼさない。動物がミツバチである場合、好ましくはミツバチの20%未満、好ましくは15%未満、10%未満、5%未満が、ミツバチの巣箱を式(I)の化合物で処理することによって死滅し、理想的にはミツバチが全く死滅しない。
【0055】
化合物への曝露は、ダニを式(I)の化合物と接触させることによって、例えば式(I)の化合物またはその塩の蒸発、昇華、燻煙、散布または気化によって行うことができる。ダニの曝露は、動物が式(I)の化合物またはその塩を摂取した後にも行われ得る。
【0056】
曝露は、侵襲を防止するため、またはダニによる侵襲を処理するために行われ得る。動物がミツバチであり、ダニがバロアダニである場合、式(I)の化合物、その塩またはこれを含有する組成物への曝露は、養蜂場のバロア個体数が多すぎる場合には春に、ソバもしくはカルーナ蜂蜜を得るために監督を離れたいと望む養蜂家については夏の初めに、または最後のハニーフローの直後の夏の終わり(7月の終わり/8月の半ば)に行われ得る。暴露は、冬にも行われ得る。
【0057】
式(I)の化合物、その塩またこれを含有する組成物は、動物の少なくとも一部に施用することができる。
【0058】
動物がミツバチであり、ダニがバロアダニである場合、式(I)の化合物、その塩またはこれを含有する組成物は、例えば、ミツバチの巣箱に置かれた装置、例えばストラップ上のミツバチの巣箱の入口で、ミツバチの巣箱の少なくとも一部に、ミツバチに直接、またはバロアダニに直接施用することができる。化合物が施用される形態は、例えば、粉末の形態、ゲルの形態、ポリマーの形態、煙の形態、溶液の形態等で、所望の殺バロアダニ剤効果を有することを可能にする限り、変えることができる。
【0059】
特定の実施形態では、式(I)の化合物が、組成物中で、1種または複数のミツバチ用誘引剤と組み合わされる。ミツバチ用誘引剤は、文献、例えば欧州特許第0499510号明細書に広く記載されている。ミツバチ用誘引剤の中でも、例えばゲラニオール、シトラール、ネロール酸、レモングラス、ファルネソールおよび/またはローヤルゼリーの成分、例えばアジピン酸、ピメリン酸(pinelic acid)、スベリン酸および/または4-ヒドロキシ安息香酸を挙げることができる。(論文「Compounds which affect the behavior of the honeybee Apis mellifera-Bee world 69-1988-104-123参照)。式(I)の化合物への1種または複数のミツバチ用誘引剤の添加は、ミツバチを誘引することを可能にする。したがって、ミツバチは、自然に式(I)の化合物に向かって移動し、したがって、自身が前記式(I)の化合物と接触していることが分かる。結果として、ミツバチは、その体の少なくとも一部に式(I)の化合物を自己施用する。
【0060】
組成物
【0061】
本明細書は、式(I)の化合物またはその塩と、プラスチック材、ゴム、接着剤、樹脂および多糖繊維から選択される1種または複数のポリマーとを含み、
前記式(I)が
【化34】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化35】
【化36】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、組成物に関する。
【0062】
第3の態様によると、本発明は、ミツバチにおける殺バロアダニ剤として使用するのに適した組成物であって、式(I)の化合物またはその塩と、1種または複数のミツバチ用誘引剤と、プラスチック材、ゴム、接着剤、樹脂およびポリホロシド繊維から選択される1種または複数のポリマーとを含み、
前記式(I)が
【化37】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化38】
【化39】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、組成物に関する。
【0063】
プラスチック材は、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー(EVAコポリマー)であり得る。
【0064】
樹脂は、天然または合成樹脂であり得る。
【0065】
多糖繊維は、セルロース、デンプンまたはイヌリンである。
【0066】
組成物は、有利には、殺ダニ剤としての使用、例えば動物における殺ダニ剤としての使用に適している。本発明の文脈において、組成物は、ミツバチにおける殺バロアダニ剤としての使用に適しており、前記組成物は、1種または複数のミツバチ用誘引剤をさらに含む。ミツバチ用誘引剤は、文献、例えば欧州特許第0499510号明細書に広く記載されている。ミツバチ用誘引剤の中でも、例えばゲラニオール、シトラール、ネロール酸、レモングラス、ファルネソールおよび/またはローヤルゼリーの成分、例えばアジピン酸、ピメリン酸(pinelic acid)、スベリン酸および/または4-ヒドロキシ安息香酸を挙げることができる。(論文「Compounds which affect the behavior of the honeybee Apis mellifera-Bee world 69-1988-104-123参照)。
【0067】
組成物は、ダニによる侵襲の低減、好ましくは動物に付着した生きているダニの数の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはさらには100%の減少を可能にするのに十分な式(I)の化合物またはその塩の1つを含有しなければならない。このような減少は、有利には、処理後24時間(h)未満、例えば処理後12時間未満、6時間未満またはさらには3時間未満で得られる。特定の実施形態では、このような減少は、処理の施用後数日、例えば処理の施用後少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、例えば処理の施用後最大12週間でミツバチの巣箱において得ることができる。
【0068】
本発明の組成物は、ミツバチに対して毒性であるべきでない。好ましくは、ミツバチの20%未満、好ましくは15%未満、10%未満、5%未満が本発明の組成物と接触した場合に死滅し、理想的にはどのミツバチも死滅しない。
【0069】
したがって、式(I)の化合物またはその塩の濃度は、動物にとって毒性であることなくダニを死滅させるのに適している。当業者は、必要に応じて濃度を容易に適合させることができる。例えば、式(I)の化合物の組成物または式(I)の化合物の塩の組成物は、0.001~200μg/μL、好ましくは0.01~100μg/μL、0.1~100μg/μL、例えば約0.1μg/μL、約1μg/μL、約10μg/μL、約25μg/μL、約50μg/μL、約75μg/μL、またはさらには約100μg/μLの式(I)の化合物またはその塩を含有する。
【0070】
ストラップ
【0071】
第4の態様によると、本発明は、(i)式(I)の化合物、その塩、これを含有する組成物、または(ii)本発明による組成物を含む、好ましくは養蜂に使用するのに適した、ストラップであって、前記式(I)が
【化40】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化41】
【化42】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、ストラップに関する。
【0072】
ストラップは、例えばイヌまたはネコ用の首輪の形態で、殺ダニ剤処理において獣医学分野で慣用的に使用されている。ストラップはまた、殺バロアダニ剤処理において養蜂で慣用的に使用されている。養蜂に適したいくつかのストラップが市販されている(例えば、APIVAR(登録商標)装置)。
【0073】
一般に、殺ダニ化合物は、ストラップの内部からその表面に移動し、動物および/またはダニと接触する。これは、APIVAR(登録商標)製品の場合である。ミツバチはストラップを擦って化合物を負う。次いで、化合物が、接触によってミツバチの間に分配される。よって、ミツバチに付着したバロアダニが、バロアダニの死をもたらす化合物に曝露される。その後、バロアダニがミツバチから脱離する。ミツバチの巣箱では、このようにして脱離したバロアダニがミツバチの巣箱の底に落下する。
【0074】
したがって、本発明のストラップは、養蜂への使用に適し得る。特に、これは、ミツバチの巣箱に滑り込ませることができるように適合された、すなわち、ストラップがミツバチの巣箱のフレーム間に滑り込み得るように適合されたサイズ、剛性および形状を有する。適合された形状は、非円形または非湾曲ストラップ、好ましくは平坦なストラップに相当する。適合されたサイズは、幅が1cm~20cmの間、好ましくは4cm~20cmに含まれ、長さが5cm~50cmの間、好ましくは15cm~25cmの間に含まれるストラップに相当する。ストラップの厚さは、理想的には0.5mm~5mmの間に含まれ、好ましくは1mm~2mmの厚さである。適合された剛性は、ミツバチの巣箱のフレーム間に形成され得る蜜蝋の架橋を破壊するのに十分な剛性に相当する。
例えばストラップに殺ダニ化合物を噴霧することによって、前記化合物をストラップに含浸させるまたは前記化合物でストラップをコーティングすることができる。ストラップはまた、殺ダニ化合物を既に含む混合物から、例えばこの混合物を押し出して所望の形状にすることによって、または成形によって製造することができる。
【0075】
ミツバチの巣箱
【0076】
第5の態様によると、本発明は、(i)式(I)の化合物、その塩、これを含有する組成物、(ii)本発明による組成物、または(iii)本発明によるストラップを含むミツバチの巣箱であって、
式(I)が
【化43】
(式中、
Aは基(II)または(III):
【化44】
【化45】
から選択され;
XはNH、CHまたはCH-CHであり;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含む5結合複素環であり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHであり;
はハロゲン、HまたはCHである)
である、ミツバチの巣箱に関する。
【0077】
ミツバチの巣箱は、十分な量の(i)式(I)の化合物、その塩もしくはこれを含有する組成物、(ii)本発明による組成物、または(iii)本発明によるストラップを含む。
【0078】
特定の実施形態では、例えばミツバチの巣箱に殺ダニ化合物を噴霧することによって、ミツバチの巣箱の全部または一部が殺ダニ化合物で覆われる。
【0079】
別の特定の実施形態では、ミツバチの巣箱が蜂群を含み、例えば蜂群に殺ダニ化合物を噴霧することによって、蜂群が殺ダニ化合物で覆われる。
【0080】
別の特定の実施形態では、ミツバチの巣箱が、1つまたは複数の本発明によるストラップを含む。
【0081】
他の目的
【0082】
別の目的は、「式(I)の化合物の定義」で定義される式(I)の化合物を含む、ミツバチのための栄養組成物に関する。ミツバチのための栄養組成物は、様々な形態、例えば、ミツバチ用シロップ、スイートペーストまたはミツバチ用タンパク質ペーストの形態であり得る。
【0083】
別の目的は、「式(I)の化合物の定義」で定義される式(I)の化合物を含む、例えば養蜂における獣医学的使用のための装置に関する。装置は、ストラップまたはミツバチの巣箱であり得る。例えば装置に殺ダニ化合物を噴霧することによって、前記化合物を装置に含浸させるまたは前記化合物で装置をコーティングすることができる。装置はまた、殺ダニ化合物を既に含む混合物から、例えばこの混合物を押し出して所望の形状にすることによって、または成形によって製造することができる。
【0084】
別の目的は、動物における上に定義されるダニによる侵襲の処理または防止に使用するための「式(I)の化合物の定義」で定義される式(I)の化合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1A図1Aは、バロアダニに対するある特定の溶媒の毒性を表す図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。
図1B図1Bは、ミツバチに対するある特定の溶媒の毒性を表す図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。
図2A図2Aは、アミトラズの殺バロアダニ剤効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図2B図2Bは、ミツバチに対するアミトラズの効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図3A図3Aは、クロニジン塩酸塩の殺バロアダニ剤効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図3B図3Bは、ミツバチに対するクロニジン塩酸塩の効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図4A図4Aは、デトミジン塩酸塩一水和物の殺バロアダニ剤効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図4B図4Bは、ミツバチに対するデトミジン塩酸塩一水和物の効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図5A図5Aは、デクスメデトミジン塩酸塩の殺バロアダニ剤効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図5B図5Bは、ミツバチに対するデクスメデトミジン塩酸塩の効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図6A図6Aは、ロミフィジン塩酸塩の殺バロアダニ剤効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図6B図6Bは、ミツバチに対するロミフィジン塩酸塩の効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図7A図7Aは、チザニジン塩酸塩の殺バロアダニ剤効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図7B図7Bは、ミツバチに対するチザニジン塩酸塩の効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図8A図8Aは、メデトミジン塩酸塩の殺バロアダニ剤効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図8B】は、ミツバチに対するメデトミジン塩酸塩の効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図9図9は、ミツバチの給餌によるデクスメデトミジン塩酸塩の殺バロアダニ剤効果を表す図である。陰性対照は、純粋なシロップのみを受けているミツバチに相当する。
図10A図10Aは、レボメデトミジン(levmedetomidine)塩酸塩の殺バロアダニ剤効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図10B図10Bは、ミツバチに対するレボメデトミジン塩酸塩の効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は、分子を可溶化する、および/または希釈もしくは濃縮を行うことを可能にした。
図11A図11Aは、オクトパミンの殺バロアダニ剤効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は分子を可溶化することを可能にした。
図11B図11Bは、ミツバチに対するオクトパミンの効果を測定する図である。陰性対照は、未処理のミツバチ、すなわち胸部沈着を受けていないミツバチに相当する。溶媒は分子を可溶化することを可能にした。
図12図12は、マダニを飼育するための給餌ユニットを示す写真である。
図13図13は、7日間にわたる様々な処理による死亡マダニのパーセンテージを表す図である。
図14図14は、ミツバチの巣箱におけるバロアダニに対する処理時間の関数としての試験化合物の累積効率を測定する図である。
図15図15は、ミツバチの巣箱における試験化合物を施用した後の成虫ミツバチの死亡率を測定する図である。
【実施例
【0086】
実施例1:ミツバチヘギイタダニに対する式(I)の化合物の殺ダニ効果の実証
【0087】
材料および方法
【0088】
バロアダニの調製
【0089】
ミツバチヘギイタダニに感染した約300匹のミツバチ(セイヨウミツバチ(Apis mellifera))を、ミツバチヘギイタダニに重感染したミツバチの巣箱から採取した。次いで、ミツバチを、粉糖で満たしたミツバチに付着したバロアダニを脱離することを可能にする装置(コミュニティモデル第003419415-0001号に記載される装置)に入れた。装置を2分間撹拌して、ミツバチに付着したバロアダニをサンプリングした。粉糖は、ミツバチとミツバチに付着したバロアダニとの間の干渉を可能にする。バロアダニは、ミツバチとは異なり、装置の穴を通過するため、粉糖で収穫した。次いで、バロアダニを粉糖から分離した。
【0090】
こうして回収したバロアダニを箱の中に送った(1箱当たり10匹のバロアダニ)。20匹のバロアダニについてのデータを得るために、2つの箱を使用して同じ用量で各化合物を試験した。
【0091】
ミツバチの調製
【0092】
実験の効果が以前の処理からもたらされたものではないことを確実にするために、最後の6か月間いかなる処理も受けていなかったミツバチの巣箱からミツバチを収穫した。
【0093】
次いで、ミツバチを箱の中に送った(10匹/箱)。20匹のミツバチについてのデータを得るために、2つの箱を使用して同じ用量で同じ化合物を試験した。
【0094】
次いで、ピペットを使用して胸部に1μLの試験する化合物を沈着させるために、CO(3リットルの流量で20秒間)を使用して数分間、ミツバチを眠らせた。10μg/μLの濃度でロミフィジン塩酸塩を受けたミツバチは、2μLの製品を受けたことに留意すべきである。ミツバチは、試験する化合物を沈着させた時間、すなわち約3分の間意識を失っており、その後、目覚めた。
【0095】
試験する化合物を胸部に沈着させた後、同じ箱からの10匹のミツバチを、10匹のバロアダニを含有する箱に移した(上記の「バロアダニの調製」参照)。観察の間、ミツバチに餌を与えるために液糖を各箱に残した。次いで、ミツバチの巣箱の条件に可能な限り近づくために、一連の箱を湿度50%の25℃のオーブンに入れた。5分後、全てのバロアダニがミツバチに付着したことを確認する。
【0096】
バロアダニおよびミツバチに対する化合物の効果
【0097】
次いで、試験する化合物をミツバチに施用した5分後、2時間後、4時間後および24時間後に、バロアダニおよびミツバチの死亡率を監視した。死亡バロアダニは、ミツバチから脱離したバロアダニに相当する。死亡ミツバチは、もはや動かず、しばしば胸部に置かれるミツバチに相当する。
【0098】
使用した溶媒の試験
【0099】
結果に対する(正または負の)影響がないことを確認するために、溶媒を試験した。エタノール、メタノール、アセトンおよびアセトニトリルの4種の溶媒を試験した。
【0100】
結果
【0101】
結果を図1に示す。試験した溶媒は、バロアダニまたはミツバチのいずれに対しても有意に毒性であることは証明されなかった。
【0102】
結論
【0103】
試験した溶媒は、ミツバチおよびバロアダニの生存率に影響を及ぼさなかった。したがって、これらを使用して試験化合物を希釈することができる。
【0104】
化合物の試験
【0105】
試験化合物
【0106】
以下の組成物をミツバチの胸部に施用した:
・ 溶媒、
・ アセトン中1μg/μLのアミトラズ、
・ メタノール中100μg/μL、10μg/μL、1μg/μLおよび0.1μg/μLのクロニジン塩酸塩、
・ メタノール中1μg/μLのデトミジン塩酸塩一水和物、
・ メタノール中100μg/μL、10μg/μL、1μg/μLおよび0.1μg/μLのデクスメデトミジン塩酸塩、
・ メタノール中10μg/μLおよび5μg/μLのロミフィジン塩酸塩、
・ メタノール中1μg/μLのチザニジン塩酸塩、
・ エタノール中0.1μg/μLのメデトミジン塩酸塩、
・ メタノール中100μg/μL、10μg/μL、1μg/μLおよび0.1μg/μLのレボメデトミジン塩酸塩、
・ エタノール中1μg/μLのオクトパミン。
【0107】
結果
【0108】
アミトラズ:バロアダニの100%が死滅し、ミツバチの0%が死滅した(図2)。予想通り、アミトラズはバロアダニとの戦いにおいて非常に有効である。アミトラズは陽性対照である。
【0109】
クロニジン塩酸塩:結果を図3に提示する。100μg/μLおよび10μg/μLの濃度では、バロアダニの死亡率は85%に達し、ミツバチの10%のみが死滅した。驚くべきことに、バロアダニに対する化合物の効率は、1μg/μLの濃度で特に顕著であり、ミツバチの死亡率はゼロであり、バロアダニの死亡率は95%であった。この分子の動態は、24時間後にその完全な効率を示したので、陽性対照と比較してかなり遅いように見えた。
【0110】
デトミジン塩酸塩一水和物:結果を図4に提示する。デトミジン塩酸塩一水和物は、2時間後に、ミツバチの死亡を伴わずに、バロアダニの40%が死滅したので、特に有効であることが判明した。24時間後、ミツバチの死亡を伴わずに、バロアダニの100%が死滅した。
【0111】
デクスメデトミジン塩酸塩:結果を図5に提示する。結果は、100μg/μLの濃度のみがミツバチにとって毒性であることを明らかにした。他の濃度(10μg/μl;1μg/μl;0.1μg/μl)では、24時間後に、ミツバチについて5%未満の死亡率、およびバロアダニについて体系的に100%の死亡率が観察された。したがって、バロアはこの化合物に対して感受性であった。
【0112】
ロミフィジン塩酸塩:結果を図6に提示する。この分子は非常に有効であることが判明した。2μlの10μg/μLの製品を沈着させた2時間後、バロアダニの死亡率は75%、次いで、4時間後に95%であった。5μg/μLの濃度では、同じレベルのバロアダニの死亡率を得るのに24時間かかった。全ての用量で、またさらには24時間後でも、ミツバチの死亡率はゼロのままであった(図は示さず)。
【0113】
チザニジン塩酸塩:結果を図7に示す。この製品は、ミツバチに対する毒性を伴わずに、24時間後に1μg/μLで非常に有効であることが判明した(80%のバロアダニ死亡率)。
【0114】
メデトミジン塩酸塩:結果を図8に示す。この製品は非常に有効であることが判明した。
【0115】
レボメデトミジン塩酸塩:結果を図10に示す。結果は、デクスメデトミジンで得られたものと同様である。したがって、バロアダニはこの化合物に対して感受性であった。
【0116】
オクトパミン:結果を図11に示す。殺バロアダニ剤効果は観察されなかった。ミツバチの死亡率もゼロのままであった。
【0117】
実施例2:給餌による式(I)の化合物への曝露
【0118】
ミツバチとバロアダニを入手し、実施例1に詳述されるように(処理ステップなしで)接触させた。
【0119】
バロアダニを付着させたミツバチ(10匹のバロアダニと接触させた10匹のミツバチ)に、
・ 純粋なシロップ(陰性対照)、または
・ 100μg/mLシロップのデクスメデトミジン塩酸塩を含むシロップ
を与えた。
【0120】
シロップを1.5mLエッペンドルフチューブ中で自由にミツバチに与えた。
【0121】
結果
【0122】
結果を、殺バロアダニ剤効果については図9に提示し、ミツバチに対する毒性については表1に提示する。
【0123】
【表1】
【0124】
実施例3:イクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)に対する本発明による化合物の殺ダニ効果の実証
【0125】
本発明により試験した化合物
【0126】
SN0305:デクスメデトミジン塩酸塩
【0127】
SN0306:メデトミジン塩酸塩
【0128】
SN0307:デトミジン塩酸塩
【0129】
概要
【0130】
実験室試験を行って、イクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)に対する本発明による3つの化合物(SN0305、SN0306およびSN0307)の経口殺ダニ特性を決定した。各化合物を1、10および100ppmで試験し、溶媒のみ(0.1% DMSO)に相当する陰性対照と比較した。100ppmのアミトラズを陽性対照として使用した。
【0131】
試験化合物と混合した血液を含有する給餌ウェル内の膜上に、イクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)マダニ(若虫および成虫)を24時間置いた。マダニ死亡率(各ウェル中の死亡マダニ、瀕死マダニ、または未罹患マダニの数)、膜への付着(各ウェルで付着/脱離したマダニの数)、および行動(攣縮の有無)を、化合物へのマダニ曝露開始1、3、6、12、24、48、72、および96時間後に調べた。
【0132】
方法
【0133】
試験系-節足動物
【0134】
マダニ(イクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus))を収集した。収集した成虫雌を若虫から離して保持し、両方を加湿チャンバー内の滅菌チューブに入れて約80%の湿度および17℃にした。健康なマダニ(雌/若虫)のみを実験のために選択した。
【0135】
12匹の成虫または若虫のバッチを給餌ウェルに挿入した。約24時間後、それらの付着をブラシで調べた。死亡マダニまたは瀕死マダニおよび付着しなかったマダニを除去した。
【0136】
試験品-化合物
【0137】
それぞれ3つの濃度(1、10、100ppm)で試験した3つの化合物(SN0305、SN0306およびSN0307)の効率を、溶媒対照(0.1% DMSO、Sigma-Aldrich D-5879;ロット101K0028)および陽性対照(100ppmのアミトラズ(Amitraze))と比較した。
【0138】
【0139】
110~140μmの間に含まれる厚さを有するシリコーン被覆膜を給餌ユニットの構築に使用した。
【0140】
給餌ユニット
【0141】
給餌ユニット(滅菌アクリルガラス管)を、滅菌6ウェルプレートで作られた給餌ウェルに入れた。
【0142】
3.1mlの滅菌10-3M ATP富化血液を各給餌ウェルに適用した。次いで、給餌ウェルを加熱水浴に挿入し(図12)、37℃±2℃に維持した。
【0143】
試験化合物および施用
【0144】
100000ppmのストック溶液を調製し、所望の濃度に達するように0.1% DMSO中で10倍希釈を行った。ダニ付着後(マダニを給餌ウェルに入れた24時間後)、3.1μlの溶液を、3.1mlの血液を含有する各給餌ウェルに添加した。12時間後、試験する化合物を新たに補充して血液を交換した。マダニを合計24時間製品に曝露し、その後、血液を新鮮な未処理血液に再び交換した。
【0145】
評価
【0146】
マダニ死亡率(各ウェル中の死亡マダニ、瀕死マダニ、または未罹患マダニの数)、付着(各ウェルで付着/脱離したマダニの数)、および行動(攣縮の有無および強度)を、化合物へのマダニ曝露開始1、3、6、12、24、48、72、および96時間後に調べた。
【0147】
結果
【0148】
マダニの攣縮、罹患または死亡
【0149】
3つの試験化合物(SN0305、SN0306およびSN0307)は、試験した濃度にかかわらず、1時間の曝露からマダニに対する強力な効果を示した(マダニの攣縮、罹患または死亡)。マダニの100%が罹患していた。アミトラズ陽性対照は若虫について同等の結果を得たが、成虫マダニでははるかに弱い効果が観察された(表2)。96時間の実験の間、溶媒(陰性対照)については効果が観察されなかった。
【0150】
【表2】
【0151】
表2:100ppmのアミトラズへの経口曝露開始後の罹患成虫マダニ(マダニの攣縮、罹患または死亡)の平均パーセンテージ。
【0152】
マダニの脱離
【0153】
試験した3つの製品(SN0305、SN0306およびSN0307)は、マダニの脱離に関して非常に限られた効果を示した。非常に孤立した症例のみが観察された:1ppmのSN0305のレプリカにおいて1匹の脱離した若虫、100ppmのSN0305のレプリカにおいて1匹の脱離した成虫マダニ、1ppmのSN0307のレプリカにおいて2匹の脱離した成虫。完全に給餌された若虫の55%が、溶媒対照において72時間~96時間の間に自然に放出された。成虫マダニは溶媒対照において脱離しなかった。
【0154】
アミトラズは、成虫マダニの強力な脱離を誘導した(表3)。
【0155】
【表3】
【0156】
表3:100ppmのアミトラズへの曝露開始後の付着した成虫マダニの平均パーセンテージ。
【0157】
マダニ死亡率
【0158】
試験した3つの製品(SN0305、SN0306およびSN0307)は、96時間後に若虫および成虫マダニで100%の死亡率(瀕死マダニまたは死亡マダニ)を引き起こした。アミトラズは、若虫において100%の死亡率および成虫において97.5%の死亡率を引き起こした。溶媒では死亡率は観察されなかった(表4および5)。
【0159】
【表4】
【0160】
表4:1、10および100ppmのSN0305、SN0306およびSN0307、溶媒対照(0.1% DMSO)または100ppmのアミトラズに曝露したマダニ若虫の死亡率(瀕死若虫または死亡若虫)の平均パーセンテージ。
【0161】
【表5】
【0162】
表5:1、10および100ppmのSN0305、SN0306およびSN0307、溶媒(0.1% DMSO)または100ppmのアミトラズ(AMITRAZE)に曝露した成虫マダニ死亡率(瀕死または死亡成虫マダニ)の平均パーセンテージ。アミトラズ処理における成虫マダニの生存は、マダニの早期脱離によって引き起こされ得る。
【0163】
結論
【0164】
全ての試験化合物が、イクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)に対する殺ダニ効果を示した。
【0165】
実施例4:リピセファルス・サングイネウス(Rhipicephalus sanguineus)に対する本発明による化合物の殺ダニ効果の実証
【0166】
概要
【0167】
実験室試験を行って、リピセファルス・サングイネウス(Rhipicephalus sanguineus)に対する本発明による3つの化合物(SN0305、SN0306およびSN0307)の殺ダニ特性を決定した。各化合物を1、10および100ppmで試験し、溶媒のみ(0.1% DMSO)に相当する陰性対照と比較した。100ppmのアミトラズを陽性対照として使用した。
【0168】
方法
【0169】
試験系
【0170】
単一コホートからの第2段階のクリイロコイタマダニ、リピセファルス・サングイネウス(Rhipicephalus sanguineus)を使用した。
【0171】
試験化合物および施用
【0172】
3つの化合物、ならびに参照化合物(アミトラズ(Amitraze))を試験した。各試験化合物およびアミトラズについて、4つの用量(1000、100、10および1ppm)をマダニに局所施用した。陰性対照(アセトン)および未処理群を比較のために含めた。実験を3連で行った。
【0173】
実験プロトコル
【0174】
10匹のマダニを、およそ直径120mmおよび高さ45mmの透明なプラスチック容器に入れた。次いで、二酸化炭素への直接曝露(10秒間)によってマダニに麻酔をかけた。次いで、Hamiltonシリンジを使用して、マダニ1匹当たり最大0.5μlの処理(1回の施用)で、各マダニの背中(背甲)に処理を施用した。
【0175】
水に浸した綿を各容器に入れて、実験全体を通して湿度を提供した。容器はまた、各容器に空気を導入するためのチューブを用いて実験全体を通して通気した。容器を23±3℃の温度に維持した。生存、ショックおよび死亡マダニ数を、7日間、処理後毎日採取した。
【0176】
統計解析
【0177】
各評価カテゴリー(健康、ノックダウンおよび死亡)のパーセンテージの平均値ならびに標準誤差を計算した。Minitabソフトウェア、第16版を使用して分散分析(ANOVA))を実施した。
【0178】
結果および結論
【0179】
結果を図14に示す。
【0180】
1000ppm処理
【0181】
1000ppmでの処理は、処理の7日後に化合物SN0305、SN0306、SN0307およびアミトラズについて100%の死亡率をもたらし、化合物間に統計学的有意差はなかった。
【0182】
100ppm処理
【0183】
100ppm処理は、処理の7日後に、化合物SN0305、SN0306、SN0307およびアミトラズについてそれぞれ100%、93.3%、50%および96.7%の死亡率をもたらした。化合物SN0307と比較して、化合物SN0305、SN0306およびアミトラズについての7日での死亡率レベルは有意に高かった。
【0184】
10ppm処理
【0185】
10ppmでの処理は、処理の7日後に化合物SN0305、SN0306、SN0307およびアミトラズについてそれぞれ93.3%、66.7%、23.3%および46.7%の死亡率をもたらした。化合物SN0305は、他の全ての処理と比較して有意に高い死亡率をもたらした。化合物SN0306は、SN0307と比較して有意に高い死亡率を引き起こしたが、アミトラズと比較しては引き起こさなかった。
【0186】
1ppmでの処理
【0187】
1ppmでの処理は、処理の7日後に化合物SN0305、SN0306、SN0307およびアミトラズについてそれぞれ20%、26.7%、26.7%および30%のはるかに低い死亡率をもたらした。
【0188】
陰性対照
【0189】
対照で観察された死亡率は低いままであり、7日後、アセトンで報告された死亡率は3.3%、未処理対照群で観察された死亡率は6.7%であった。
【0190】
実施例5:ミツバチヘギイタダニに対する式(I)の化合物のミツバチの巣箱およびブルードの外側の状況における殺ダニ効果の実証
【0191】
材料および方法
【0192】
ミツバチの巣箱の調製
【0193】
蜂群強度(ミツバチの数)およびバロア侵襲に関して、18個のミツバチの巣箱を3つの均質なミツバチの巣箱の6つの群に分けた。
【0194】
試験化合物を施用する3週間前に、各ミツバチの巣箱の女王をケージに入れた。したがって、試験化合物の施用をブルードの外側の状況で行い、これにより、バロアダニの生殖期から便乗期への強制通過が可能になる(したがって、これらが全てミツバチ上に存在する)。
【0195】
試験化合物を、女王がケージに入れられた3週間後にゲルの形態で施用した。化合物の活性を9日間試験した。
【0196】
これら9日間の処理の後、シュウ酸による対照処理を行った(処理期間は1週間に等しい)。
【0197】
床に落下したバロアダニの数を一定の時間間隔で計測し、死亡バロアダニ数を定量した。
【0198】
処理効率を、D0からD9までの全死亡バロアダニの合計(試験化合物)を取り、これをD0からD16までの全死亡バロアダニの合計(試験化合物+対照処理)で割ることによって計算した。
【0199】
試験した化合物の潜在的な毒性を実証するために、ミツバチの死亡率も定量した。この目的のために、ミツバチの巣箱の前に配置された死亡ミツバチトラップを使用した。
【0200】
化合物の試験
【0201】
試験化合物
【0202】
以下の化合物を試験した:
・ 塩酸塩形態の55mg/ミツバチの巣箱のデクスメデトミジン、
・ 塩酸塩形態の110mg/ミツバチの巣箱のデクスメデトミジン、
・ 塩酸塩形態の220mg/ミツバチの巣箱のデクスメデトミジン、
・ 塩酸塩形態の38.4mg/ミツバチの巣箱のデトミジン、
・ 塩酸塩形態の110mg/ミツバチの巣箱のデトミジン、
・ 塩酸塩形態の220mg/ミツバチの巣箱のデトミジン、
【0203】
結果
【0204】
試験化合物の効率の計算に関する結果を図14に提示する。バロアダニに対する効率に対するデクスメデトミジンの用量効果が明らかに現れる。最も有効な用量は220mg/ミツバチの巣箱(全効率94.5%)であった。
【0205】
デトミジンに関しては、結果は、220mg/ミツバチの巣箱の用量が殺バロアダニ剤効果を有することを可能にすることを示した。
【0206】
したがって、デクスメデトミジンは、バロアダニに対して最も有効な化合物であった。
【0207】
ミツバチの死亡率に関する結果を図15に提示する。結果は、220mg/ミツバチの巣箱のデトミジンでのミツバチの死亡率の増加を示した。他方、デクスメデトミジンでは、ミツバチの死亡率の増加は観察されなかった。
【0208】
これらの結果は、殺バロアダニ剤としてのデトミジンおよびデクスメデトミジン、特に要求する用量が低く、ミツバチに対して毒性ではないデクスメデトミジンの関心を裏付けている。
【0209】
参考文献
[1] Macedo,P.A.,WU,J.,and ELLIS,Marion D.Using inert dusts to detect and assess varroa infestations in honey bee colonies.Journal of Apicultural Research,2002,vol.41,n°1-2,p.3-7
【0210】
[2] Kretzschmar A.(2016).APIMODEL,modelisation fonctionnelle de l’activite des colonies d’abeilles pour caracteriser des seuils de dysfonctionnement a l’echelle du rucher.Generalisation a partir de la miellee sur lavandes.INRA-BioSP,Avignon.http://w3.avignon.inra.fr/lavandes/biosp/rapportfinal2016.pdf
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】