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特表2023-506064シート及び物品に適した発泡ポリプロピレン組成物
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  • 特表-シート及び物品に適した発泡ポリプロピレン組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(54)【発明の名称】シート及び物品に適した発泡ポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20230207BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20230207BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20230207BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230207BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/06
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
B32B5/18
B32B27/32 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536670
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2020086475
(87)【国際公開番号】W WO2021122783
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19216557.9
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516071561
【氏名又は名称】アブ・ダビ・ポリマーズ・カンパニー・リミテッド・(ブルージュ)・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Abu Dhabi Polymers Co. Ltd (Borouge) L.L.C.
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ホウッケ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】テノリオ エメリト
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA20
4F074AA24
4F074AA98
4F074AB05
4F074BA01
4F074BC12
4F074CA22
4F074DA20
4F074DA34
4F100AK06A
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AT00B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10B
4F100CA01A
4F100CA30A
4F100DJ01A
4F100EJ02
4F100GB16
4F100JA06A
4F100JA13A
4F100JA20A
4J002BB032
4J002BB121
4J002FD207
4J002FD326
4J002GF00
4J002GG01
(57)【要約】
本発明は、総重量に基づいて、60.0~95.0重量%の直鎖状プロピレンホモポリマー(A)、及び5.0~40.0重量%の低密度ポリエチレン(B)を含み、発泡前に、荷重2.16kg、温度230℃の条件でISO 1133に従って決定された0.1~5.0g/10minのメルトフローレートMFRを有し、及びISO 16790:2005に従って決定された0.1~2.0cNのF30溶融強度を有する、発泡ポリプロピレン組成物、前記発泡ポリプロピレン組成物を含むシート、前記シートを含む物品、前記シートの製造方法、並びに物品の製造のための前記発泡ポリプロピレン組成物又は前記シートの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
総重量に基づいて、
60.0~95.0重量%の直鎖状プロピレンホモポリマー(A)、及び
5.0~40.0重量%の低密度ポリエチレン(B)を含み、
発泡前に、荷重2.16kg、温度230℃の条件でISO 1133に従って決定された0.1~5.0g/10minのメルトフローレートMFRを有し、及びISO 16790:2005に従って決定された0.1~2.0cNのF30溶融強度を有する、発泡ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
ISO 16790:2005に従って決定された、150mm/s未満のv30溶融伸展性を有する、請求項1に記載の発泡ポリプロピレン組成物。
【請求項3】
前記直鎖状プロピレンホモポリマー(A)は、両方ともISO 16790:2005に従って決定された、5.0cN未満のF30溶融強度及び/又は150mm/s未満のv30溶融伸展性、及び/又は荷重2.16kg、温度230℃の条件でISO 1133に従って決定された0.5~6.0g/10minのメルトフローレートMFRを有する、請求項1又は2に記載の発泡ポリプロピレン組成物。
【請求項4】
前記低密度ポリエチレン(B)は、ISO 1183Dに従って決定された915~930kg/mの密度、及び/又は荷重2.16kg、温度190℃の条件でISO 1133に従って決定された0.1~2.0g/10minのメルトフローレートMFRを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡ポリプロピレン組成物。
【請求項5】
核剤(C)を更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡ポリプロピレン組成物。
【請求項6】
発泡剤(D)を更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡ポリプロピレン組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡ポリプロピレン組成物を含む、シート。
【請求項8】
多層シートである、請求項7に記載のシート。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡ポリプロピレン組成物を含むコア層(CL)を含み、前記コア層(CL)は、前記コア層(CL)と付着接触するように2つのスキン層(SL)によってSL-CL-SL構成において挟まれている、請求項8に記載のシート。
【請求項10】
前記スキン層は未発泡のプロピレンポリマー組成物を含む、請求項9に記載のシート。
【請求項11】
175μm~1400μmの総厚さを有する、請求項7~10のいずれか1項に記載のシート。
【請求項12】
前記コア層は、75μm~1000μmの厚さを有し、前記スキン層は、それぞれ独立に50μm~200μmの厚さを有する、請求項9~11のいずれか1項に記載のシート。
【請求項13】
総重量に基づいて、60.0~95.0重量%の直鎖状プロピレンホモポリマー(A)と5.0~40.0重量%の低密度ポリエチレン(B)とを混合してポリプロピレン組成物を調製するステップa)と、
前記ポリプロピレン組成物に対して発泡プロセスを行うステップb)と、
前記発泡ポリプロピレン組成物を発泡シートに成形するステップc)と
を含む、請求項7~12のいずれか1項に記載のシートの製造方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡ポリプロピレン組成物、又は請求項7~12のいずれか1項に記載のシート、又は請求項13に記載のように製造されたシートを含む、物品。
【請求項15】
ボトル、カップ、缶、キャニスター、ボウル又はトレイなどの容器である、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
物品の製造のための、請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡ポリプロピレン組成物、又は請求項7~12に記載のシート、又は請求項13に記載のように製造されたシートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直鎖状プロピレンホモポリマー及び低密度ポリエチレンを含む発泡ポリプロピレン組成物、前記発泡ポリプロピレン組成物を含むシート、前記シートを含む物品、前記シートの製造方法、並びに物品の製造のための前記発泡ポリプロピレン組成物又は前記シートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、一般に、ボトル、カップ、缶、キャニスター、ボウル、又はトレイなどの容器などの包装用物品の製造に使用できるシートの製造に使用される。ポリプロピレン系樹脂は、優れた加工性と機械的特性を有するため、特に約1000マイクロメートルの厚さを有するシートの調製に一般に使用されている。
【0003】
その際に、ポリプロピレン系樹脂は、カラーマスターバッチの形の顔料、タルクなどの充填材を追加することにより、容易にカスタマイズできる。上記容器などの包装製品は、熱成形によって調製することができる。熱成形用途の場合、ポリプロピレン系樹脂は、優れた機械的特性、寸法安定性、耐熱性、マイクロ波放射に対する安定性、及び高い表面品質とともに、優れた伸縮性を示す必要がある。
【0004】
熱成形物品の壁の厚さを維持しながら重量を減らすために、ポリプロピレン系樹脂を発泡させることができる。その際に、発泡は通常、化学的又は物理的発泡剤の存在下でシートの成形中に起こる。その際に、発泡がポリプロピレン系樹脂の機械的安定性を低下させるので、発泡用途の場合、通常、高溶融強度を有するポリプロピレン系樹脂(いわゆるHMSポリプロピレン系樹脂)が使用される。
【0005】
欧州特許出願公開第3127951A1号明細書には、主成分として高溶融強度(HMS)ポリプロピレンと核剤を含む、発泡シート及び発泡物品に適したポリプロピレン組成物が開示されている。
【0006】
欧州特許出願公開第0787750号明細書、欧州特許出願公開第0879830号明細書、又は欧州特許出願公開第0890612号明細書などに開示されているように、HMSポリプロピレンは通常、ポリプロピレン樹脂を、熱分解フリーラジカル形成剤、及び二官能性不飽和低分子量モノマー又は多官能性不飽和低分子量ポリマーのいずれかと反応させて、本来直鎖状のポリプロピレン樹脂に分岐を導入するかなり費用のかかる押出プロセスを使用して調製される。
【0007】
したがって、容器などの熱成形用途に使用できるように優れた機械的安定性を有する発泡体の生成に適した、費用重視のポリプロピレン組成物が求められている。特に、HMSポリプロピレンは、発泡用途に適しているが、高価であるため、低価格の代替品が望まれる。発泡組成物は機械的特性が不十分であるため、発泡は、一般に、低溶融強度のポリプロピレンでは失敗する。
【0008】
驚いたことに、直鎖状プロピレンホモポリマー及び少量の低密度ポリエチレンを含むポリプロピレン組成物をそのような用途に使用できることが発見された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3127951A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0787750号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0879830号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0890612号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、総重量に基づいて、
60.0~95.0重量%の直鎖状プロピレンホモポリマー(A)、及び
5.0~40.0重量%の低密度ポリエチレン(B)を含み、
発泡前に、荷重2.16kg、温度230℃の条件でISO 1133に従って決定された0.1~5.0g/10minのメルトフローレートMFRを有し、及びISO 16790:2005に従って決定された0.1~2.0cNのF30溶融強度を有する、発泡ポリプロピレン組成物に関する。
【0011】
本発明は、更に、上記又は下記に定義された発泡ポリプロピレン組成物を含むシートに関する。
【0012】
本発明は、更に、
総重量に基づいて、60.0~95.0重量%の直鎖状プロピレンホモポリマー(A)と5.0~40.0重量%の低密度ポリエチレン(B)とを混合してポリプロピレン組成物を調製するステップa)と、
ポリプロピレン組成物に対して発泡プロセスを行うステップb)と、
発泡ポリプロピレン組成物を発泡シートに成形するステップc)と
を含む、上記又は下記に定義されたシートの製造方法に関する。
【0013】
本発明は、更に、上記又は下記に定義されたシートを含む物品に関する。
【0014】
最後に、本発明は、物品の製造のための、上記若しくは下記に定義された発泡ポリプロピレン組成物、又は上記若しくは下記に定義されたシートの使用に関する。
【0015】
定義
プロピレンホモポリマーは、本質的にプロピレンモノマー単位からなるポリマーである。特に商業的重合プロセスにおける不純物のために、プロピレンホモポリマーは、最大0.1mol%のコモノマー単位、好ましくは最大0.05mol%のコモノマー単位、最も好ましくは最大0.01mol%のコモノマー単位を含むことができる。
【0016】
高溶融強度(HMS)プロピレンポリマーは、分岐しているため、直鎖状プロピレンポリマーと対比すると、ポリプロピレン骨格が側鎖を覆うのに対し、非分岐ポリプロピレン、すなわち直鎖状ポリプロピレンが側鎖を覆わないという点で相違する。側鎖は、ポリプロピレンのレオロジーに大きな影響を与える。したがって、直鎖状ポリプロピレンと高溶融強度ポリプロピレンは、応力下の流動挙動によって明確に区別できる。
高溶融強度プロピレンポリマーは、一般に、150mm/sを超えるv30溶融伸展性と20.0cNを超えるF30溶融強度を有するが、直鎖状プロピレンポリマーは、より低いF30溶融強度とv30溶融伸展性を有する。
【0017】
直鎖状低密度ポリエチレン(LDPE)は、高圧ラジカルプロセスで重合することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】発泡シートの厚さの関数としての発泡シート1~4のMD引張弾性率を示す。
図2】発泡シートの厚さの関数としての発泡シート1~4の破断時のMD引張応力、破断時のMD引張ひずみ、降伏時のMD引張応力及び降伏時のMD引張ひずみを示す。
図3】発泡シートの厚さの関数としての発泡シート1~4のTD引張弾性率を示す。
図4】発泡シートの厚さの関数としての発泡シート1~4の破断時のTD引張応力、破断時のTD引張ひずみ、降伏時のTD引張応力及び降伏時のTD引張ひずみを示す。
図5】発泡シート5及び6の調製に使用される角度付きカレンダー及びダイ構成を備えたL型カレンダーシートラインの原理構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発泡ポリプロピレン組成物
本発明は、総重量に基づいて、
60.0~95.0重量%の直鎖状プロピレンホモポリマー(A)、及び
5.0~40.0重量%の低密度ポリエチレン(B)を含み、
発泡前に、荷重2.16kg、温度230℃の条件でISO 1133に従って決定された0.1~5.0g/10minのメルトフローレートMFRを有し、及びISO 16790:2005に従って決定された0.1~2.0cNのF30溶融強度を有する、発泡ポリプロピレン組成物に関する。
【0020】
当該発泡ポリプロピレン組成物は、総重量に基づいて、好ましくは65.0~92.5重量%、より好ましくは70.0~90.0重量%、最も好ましくは75.0~87.5重量%の直鎖状プロピレンホモポリマー(A)を含む。
【0021】
更に、発泡ポリプロピレン組成物は、総重量に基づいて、好ましくは7.5~35.0重量%、より好ましくは10.0~30.0重量%、最も好ましくは12.5~25.0重量%の低密度ポリエチレン(B)を含む。
【0022】
発泡ポリプロピレン組成物中の直鎖状プロピレンホモポリマー(A)と低密度ポリエチレン(B)の重量比は、好ましくは60.0:40.0~95.0:5.0、より好ましくは65.0:35.0~92.5:7.5、更により好ましくは70.0:30.0~90.0:10.0、最も好ましくは75.0:25.0~87.5:12.5である。
【0023】
発泡ポリプロピレン組成物は、核剤(C)を更に含むことができる。
【0024】
発泡セルのサイズを制御するために、核剤を発泡ポリプロピレン組成物に添加することができる。
【0025】
核剤(C)は、好ましくはポリマー核剤であり、より好ましくはポリマーアルファ核剤などのアルファ核剤である。
【0026】
発泡ポリプロピレン組成物又はその成分の1つ、好ましくは発泡ポリプロピレン組成物における核剤(C)の含有量は、好ましくは最大5.0重量%である。好ましい実施形態において、発泡ポリプロピレン組成物又はその成分の1つ、好ましくは発泡ポリプロピレン組成物は、3000ppm以下、より好ましくは1~2000ppmの核剤(C)、より好ましくはアルファ核剤(C)を含有し、特に、ジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、ジベンジリデンソルビトール誘導体、好ましくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、又は置換ノニトール誘導体(例えば、1,2,3,-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-0-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトール)、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択されるものを含有する。
【0027】
発泡ポリプロピレン組成物又はその成分の1つは、ビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーのようなビニルシクロアルカンポリマー及び/又はビニルアルカンポリマーを好ましいアルファ核剤として含有することが好ましい。好ましくは、この実施形態において、発泡ポリプロピレン組成物は、ビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーのようなビニルシクロアルカンポリマー及び/又はビニルアルカンポリマー、好ましくはビニルシクロヘキサン(VCH)を含有する。
【0028】
核剤(C)は、マスターバッチとして導入することができる。あるいは、本発明で定義されるいくつかのアルファ核剤は、以下に記載されるように、BNT技術によって導入することもできる。
【0029】
核剤は、ポリプロピレン(PP)又はその成分の1つの重合プロセス中などに、ポリプロピレン(PP)又はその成分の1つに導入されてもよく、担体ポリマーなどと共に、マスターバッチ(MB)の形態でプロピレンコポリマーに組み込まれてもよい。
【0030】
マスターバッチとして組み込まれる実施形態の場合、マスターバッチは、上記又は下記に定義されるように、好ましくはポリマー核剤であり、より好ましくはアルファ核剤であり、最も好ましくはビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーのようなビニルシクロアルカンポリマー及び/又はビニルアルカンポリマー、好ましくはビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーである核剤を、マスターバッチの重量(100重量%)に基づいて、500ppm以下、より好ましくは1~200ppm、更により好ましくは5~100ppmの量で含有する。この実施形態において、より好ましくは、前記マスターバッチは、ポリプロピレン(PP)の総量に基づいて、10.0重量%以下、より好ましくは5.0重量%以下、最も好ましくは3.5重量%以下の量で存在し、マスターバッチ(MB)の好ましい量は1.5~3.5重量%である。最も好ましくは、マスターバッチは、以下に記載されるようにBNT技術に従って核形成されたプロピレンのホモポリマー又はコポリマー、好ましくはホモポリマーを含み、好ましくはそれからなる。
【0031】
核剤は、直鎖状プロピレンホモポリマー(A)の重合プロセス中に発泡ポリプロピレン組成物に導入されることが好ましい。核剤は、好ましくは、固体触媒成分、好ましくは固体チーグラー・ナッタ触媒成分、共触媒及び任意の外部ドナーを含む触媒系の存在下で、上記又は下記に定義されるように、上記で定義されたビニル化合物、好ましくはビニルシクロアルカンを最初に重合することによって直鎖状プロピレンホモポリマー(A)に導入され、次いで得られたビニル化合物のポリマー、好ましくはビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーと触媒系との反応混合物は、直鎖状プロピレンホモポリマー(A)の生成に使用される。上述した、前記プロピレンコポリマーの重合中のポリプロピレン(PP)へのポリマー核剤の組み込みは、本明細書において、以下に記載されるように、BNT技術と呼ばれる。
【0032】
前記得られた反応混合物は、以下の本明細書において、変性触媒系と交換可能に呼ばれる。
【0033】
好ましくは、ビニルシクロアルカンは、BNT技術によって直鎖状プロピレンホモポリマー(A)に導入されるビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーである。
【0034】
この好ましい実施形態においてより好ましくは、直鎖状プロピレンホモポリマー(A)中のビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーのようなビニルシクロアルカンポリマー及び/又はビニルアルカンポリマー、より好ましくはビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーの量は、500ppm以下、より好ましくは1~200ppm、最も好ましくは5~100ppmである。
【0035】
BNT技術に関しては、国際出願国際公開第99/24478号パンフレット、国際公開第99/24479号パンフレット、特に国際公開第00/68315号パンフレットを参照する。この技術によれば、触媒系、好ましくはチーグラー・ナッタプロ触媒(触媒前駆体)は、特に特別なチーグラー・ナッタプロ触媒、外部ドナー、及び共触媒を含む触媒系の存在下でビニル化合物を重合することによって変性することができ、このビニル化合物の式は、以下のとおりである。
CH=CH-CHR
式中、R及びRは一緒に5又は6員の飽和環、不飽和環又は芳香環を形成するか、又は独立に1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、変性された触媒は直鎖状プロピレンホモポリマー(A)の調製に使用される。重合されたビニル化合物は、アルファ核剤として機能する。触媒の変性ステップにおけるビニル化合物と固体触媒成分との重量比は、好ましくは最大5(5:1)、好ましくは最大3(3:1)、最も好ましくは0.5(1:2)~2(2:1)である。最も好ましいビニル化合物は、ビニルシクロヘキサン(VCH)である。
【0036】
当該発泡ポリプロピレン組成物は、発泡剤(D)を更に含むことができる。本発明のポリプロピレン組成物の発泡に使用される発泡剤は、いかなるクラス又はタイプにも限定されない。該発泡剤は、化学的発泡剤、又は炭化水素系及び/又は無機系のいずれかの物理的発泡剤、化学的発泡剤と物理的発泡剤のうちのいずれか及び/又は両方と二酸化炭素との組み合わせであることができる。
【0037】
物理的発泡剤の場合、発泡剤は、気体又は液体の、ブタン、ブタンとプロパンの混合物などの3~10、好ましくは3~8個の炭素原子を有する脂肪族有機溶媒、又はHFC若しくはCOなどの気体発泡剤であることができる。
【0038】
化学的発泡剤は、熱分解時にガスを放出する有機又は無機化合物であることができる。
【0039】
物理的発泡剤は通常、気体又は液体の形態でポリマー溶融物に添加される。
【0040】
化学的発泡剤は、単一成分として、又は発泡剤が濃縮された形態で担体樹脂と混合されるマスターバッチの形態で、ポリマー溶融物に添加することができる。マスターバッチを使用する場合、担体樹脂の重量は、一般に発泡剤(D)の量に基づいて算出される。
【0041】
発泡剤は、発泡前のポリプロピレン組成物の総量に基づいて、好ましくは、0.1~7.5重量%、より好ましくは0.5~5.0重量%の量で発泡前のポリプロピレン組成物中に存在する。
【0042】
発泡ポリプロピレン組成物は、好ましくは、発泡後の密度が300~700kg/m、好ましくは325~650kg/m、最も好ましくは350~600kg/mである。
【0043】
未発泡のポリプロピレン組成物に比べて、発泡後の発泡ポリプロピレン組成物の密度は、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%低下する。
【0044】
通常、密度は、50%以下、より好ましくは40%以下低下する。
【0045】
当該発泡ポリプロピレン組成物は、好ましくは、上記量で、直鎖状プロピレンホモポリマー(A)、低密度ポリエチレン(B)、並びに任意に核剤(C)及び発泡剤(D)を含む。
特に好ましいのは、発泡ポリプロピレン組成物は、好ましくは、上記量で、直鎖状プロピレンホモポリマー(A)、低密度ポリエチレン(B)、核剤(C)及び発泡剤(D)を含む。
【0046】
当該発泡ポリプロピレン組成物は、酸化防止剤(例えば、立体障害性フェノール、ホスファイト/ホスホナイト、硫黄含有酸化防止剤、アルキルラジカルスカベンジャー、芳香族アミン、ヒンダードアミン安定剤、又はそれらの混合物)、金属不活性化剤(例えば、Irganox MD 1024)、又はUV安定剤(例えば、ヒンダードアミン光安定剤)などの安定剤などの添加剤を更に含むことができる。他の典型的な添加剤は、帯電防止剤又は防曇剤(例えば、エトキシル化アミン及びアミド、若しくはグリセロールエステル)、酸捕捉剤、発泡剤、付着剤(例えば、ポリイソブテン)、潤滑剤及び樹脂(イオノマーワックス、PE及びエチレンコポリマーワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンベースのワックス、フルオロベースの化合物、若しくはパラフィンワックス)、及びスリップ剤及びブロッキング防止剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、エルカミド、オレアミド、タルク天然シリカ及び合成シリカ、若しくはゼオライト)などの変性剤である。好ましくは、添加剤は、酸化防止剤(例えば、立体障害性フェノール、ホスファイト/ホスホナイト、硫黄含有酸化防止剤、アルキルラジカルスカベンジャー、芳香族アミン、ヒンダードアミン安定剤、若しくはそれらの混合物)、金属不活性化剤(例えば、Irganox MD 1024)、UV安定剤(例えば、ヒンダードアミン光安定剤)、帯電防止剤又は防曇剤(例えば、エトキシル化アミン及びアミド、若しくはグリセロールエステル)、酸捕捉剤、発泡剤、付着剤(例えば、ポリイソブテン)、潤滑剤及び樹脂(イオノマーワックス、PE及びエチレンコポリマーワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンベースのワックス、フルオロベースの化合物、若しくはパラフィンワックス)、スリップ剤(例えば、ステアリン酸カルシウム)、ブロッキング防止剤(例えば、エルカミド、オレアミド、タルク天然シリカ及び合成シリカ、若しくはゼオライト)、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
好ましい添加剤は、例えばステアリン酸カルシウムなどのスリップ剤である。
【0048】
典型的には、添加剤の総量は、発泡ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて、15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、例えば、0.1~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.2~1重量%の範囲にある。
【0049】
当該発泡ポリプロピレン組成物は、直鎖状プロピレンホモポリマー(A)、低密度ポリエチレン(B)、並びに任意に核剤(C)、発泡剤(D)及び添加剤からなることが好ましい。
【0050】
当該発泡ポリプロピレン組成物は、温度230℃、荷重2.16kgの条件でISO 1133に従って決定された、0.1~5.0g/10min、好ましくは0.2~4.5g/10min、最も好ましくは0.5~4.0g/10minのメルトフローレートMFRを有する。
【0051】
更に、当該発泡ポリプロピレン組成物は、ISO 16790:2005に従って決定された、0.1~2.0cN、好ましくは0.2~1.8cN、最も好ましくは0.5~1.5cNのF30溶融強度を有する。
【0052】
更に、当該発泡ポリプロピレン組成物は、好ましくは、ISO 16790:2005に従って決定された、150mm/s未満、より好ましくは125mm/s未満、最も好ましくは100mm/s未満のv30溶融伸展性を有する。
【0053】
直鎖状プロピレンホモポリマー(A)は、好ましくは、温度230℃、荷重2.16kgの条件でISO 1133に従って測定された、0.5~6.0g/10minの範囲、より好ましくは1.0~5.5g/10minの範囲、最も好ましくは2.0~5.0g/10minの範囲にあるメルトフローレートMFRを有する。
【0054】
更に、直鎖状プロピレンホモポリマー(A)は、好ましくは、ISO 11357/03に従って決定された、少なくとも140℃の範囲、好ましくは140~170℃の範囲、より好ましくは150~170℃の範囲、例えば155~170℃の範囲にある溶融温度Tを有する。
【0055】
直鎖状プロピレンホモポリマー(A)は、好ましくは、少量、すなわち、4.0重量%以下、好ましくは0.1~4.0重量%の範囲、より好ましくは0.1~3.0重量%の範囲、最も好ましくは0.1~2.5重量%の範囲にある低温キシレン可溶分(XCS)を特徴とする。
【0056】
直鎖状プロピレンホモポリマー(A)は、好ましくはアイソタクチックプロピレンホモポリマーである。したがって、直鎖状プロピレンホモポリマー(A)は、かなり高いアイソタクチックペンタッド濃度、すなわち90mol%より高く、より好ましくは92mol%より高く、更に好ましくは93mol%より高く、更により好ましくは95mol%より高く、例えば、97mol%より高いアイソタクチックペンタッド濃度を有することを理解されたい。
【0057】
直鎖状プロピレンホモポリマー(A)は、現在の技術水準のものであり、市販されている。
適切な直鎖状プロピレンホモポリマーは、例えば、Borouge Pte Ltd.(ボルージュ・ピーティーイー)のHC205TFである。
【0058】
直鎖状プロピレンホモポリマー(A)は、重合触媒の存在下で任意の適切な重合プロセスを使用して重合することができる。
重合は、1つの重合反応器、又は直列に配置された2つ以上の重合反応器(R1)及び(R2)などの連続多段重合反応器で実施することができる。
【0059】
重合反応器(R1)は、気相反応器(GPR)又はスラリー反応器(SR)であることができる。本発明による気相反応器(GPR)は、好ましくは、流動床反応器、高速流動床反応器又は固定床反応器又はそれらの任意の組み合わせである。
【0060】
好ましくは、重合反応器(R1)は、スラリー反応器(SR)であり、バルク又はスラリーで稼働する任意の連続又は単純撹拌式バッチタンク反応器又はループ反応器であってもよい。バルクとは、少なくとも60%(w/w)のモノマーを含む反応媒体中での重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器(SR)は、好ましくは(バルク)ループ反応器(LR)である。
【0061】
第2の重合反応器(R2)及び、存在する場合の任意の後続の反応器は、好ましくは気相反応器(GPR)である。そのような気相反応器(GPR)は、任意の機械的混合反応器又は流動床反応器であってもよい。好ましくは、気相反応器(GPR)は、少なくとも0.2m/secのガス速度を有する機械的撹拌流動床反応器を含む。したがって、気相反応器は、好ましくは機械的撹拌機を備えた流動床型反応器であることを理解されたい。
【0062】
任意の後続の反応器が存在する場合、第1の重合反応器(R1)のプロピレンホモポリマーは、好ましくは、第2の重合反応器(R2)、すなわち(第1の)気相反応器(GPR1)に、段階間でのフラッシュ工程なしに直接供給される。この種の直接供給は、欧州特許出願公開第887379A号明細書、欧州特許出願公開第887380A号明細書、欧州特許出願公開第887381A号明細書、及び欧州特許出願公開第991684A号明細書に記載されている。「直接供給」は、第1の重合反応器(R1)、すなわちループ反応器(LR)の内容物が、次段階の気相反応器に直接導入されるプロセスを意味する。
【0063】
あるいは、第1の重合反応器(R1)のプロピレンホモポリマー、より好ましくはループ反応器(LR)のポリマースラリーも、第2の重合反応器(R2)、すなわち気相反応器(GPR)に供給される前に、フラッシュ工程に向かわせてもよく、更なる濃縮工程を通過させてもよい。したがって、この「間接供給」は、第1の重合反応器(R1)、ループ反応器(LR)の内容物、すなわちポリマースラリーが、第2の重合反応器(R2)、すなわち第1の気相反応器(GPR1)に、反応媒体分離ユニットを介して供給され、反応媒体は分離ユニットからのガスとして供給されるプロセスを指す。
【0064】
しかしながら、プロピレンポリマー(PP1)は、1つの反応器、すなわち、ループ反応器(LR)である重合反応器(R1)で調製されることが好ましい。
【0065】
必要であれば、スラリー反応器(SR)、すなわちループ反応器(LR)の前には、予備重合反応器が配置される。
【0066】
チーグラー・ナッタ触媒は重合反応器(R1)に供給される。プロセスが予備重合工程も含む場合、すべてのチーグラー・ナッタ触媒が予備重合反応器に供給されることが好ましい。続いて、チーグラー・ナッタ触媒を含有する予備重合生成物は、重合反応器(R1)に移される。
【0067】
好ましい多段階プロセスは、デンマークのBorealis A/S(ボレアリス)によって開発され、例えば、欧州特許出願公開第0887379号明細書、国際公開第92/12182号パンフレット、国際公開第2004/000899号パンフレット、国際公開第2004/111095号パンフレット、国際公開第99/24478号パンフレット、国際公開第99/24479号パンフレット又は国際公開第00/68315号パンフレットなどの特許文献に記載されている「ループ-気相」プロセスである(BORSTAR(登録商標)技術として知られる)。
【0068】
したがって、重合反応器(R1)、好ましくはループ反応器(LR)内の運転温度は、62~90℃の範囲、より好ましくは65~85℃の範囲、更に好ましくは67~83℃の範囲にある。
【0069】
典型的には、重合反応器(R1)、好ましくはループ反応器(LR)内の圧力は、20~80バール、好ましくは30~70バール、例えば35~65バールの範囲にある。
【0070】
更に、重合反応器(R2)、好ましくは気相反応器(GPR)内の運転温度は、好ましくは60~115℃、例えば、70~110℃の範囲、より好ましくは70~110℃の範囲、更により好ましくは75~105℃の範囲にある。
【0071】
典型的には、重合反応器(R2)、好ましくは気相反応器(GPR)内の圧力は、10~30バール、好ましくは12~27バール、例えば15~25バールの範囲にある。
【0072】
好ましくは、分子量、すなわちメルトフローレートMFRを制御するために、水素が各重合反応器において添加される。
【0073】
直鎖状プロピレンホモポリマー(A)は、好ましくは、上記のように、チーグラー・ナッタ触媒、共触媒、及び任意に外部ドナーを含む触媒系の存在下で、連続重合プロセスによって調製される。
【0074】
チーグラー・ナッタ触媒は、好ましくは、IUPACの第4~6族の遷移金属、例えば、チタンの化合物(TC)と、第2族の金属、例えばマグネシウムの化合物(MC)と、好ましくは非フタル酸化合物、好ましくは非フタル酸エステル、更に好ましくは以下により詳細に説明する非フタル系ジカルボン酸のジエステルである内部ドナー(ID)とを含む、固体チーグラー・ナッタ触媒(ZN-C)である。したがって、触媒は、好ましい実施形態において、望ましくないフタル酸化合物を完全に含まない。更に、固体触媒は、シリカ又はMgClのような外部担持材料を含まず、触媒は自己担持型である。
【0075】
適切なチーグラー・ナッタ触媒の調製の詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/007430号パンフレット、欧州特許出願公開第2610271号明細書、欧州特許出願公開第261027号明細書及び欧州特許出願公開第2610272号明細書に開示されている。
【0076】
任意の外部ドナー(ED)は、特定のシラン、エーテル、エステル、アミン、ケトン、複素環式化合物、及びそれらの混合物を含むことができる。シランを使用することが特に好ましい。
【0077】
チーグラー・ナッタ触媒(ZN-C)と任意の外部ドナー(ED)に加えて、共触媒を使用できる。共触媒は、好ましくは、周期表(IUPAC)の第13族の化合物、例えば、有機アルミニウム、例えばアルミニウムアルキル、アルミニウムハライド又はアルミニウムアルキルハライド化合物のようなアルミニウム化合物である。
したがって、1つの特定の実施形態において、共触媒(Co)は、トリアルキルアルミニウム、例えば、トリエチルアルミニウム(TEAL)、ジアルキルアルミニウムクロリド若しくはアルキルアルミニウムジクロリド又はそれらの混合物である。1つの特定の実施形態において、共触媒(Co)は、トリエチルアルミニウム(TEAL)である。
【0078】
チーグラー・ナッタ触媒(ZN-C)は、好ましくは、ポリマー核剤を導入するために、上記予備重合工程中にいわゆるBNT技術によって変性される。
【0079】
そのようなポリマー核剤は、上記のように、以下の式のモノマーから誘導されるビニルポリマーなどのビニルポリマーである。
CH2=CH-CHR1R2
式中、R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と共に、任意に置換された飽和環又は不飽和環又は芳香環又は縮合環系を形成し、環又は縮合環部分は、4~20個の炭素原子を含有し、好ましくは5~12員の飽和環又は不飽和環又は芳香環又は縮合環系を形成するか、又は独立に直鎖状又は分岐状のC4-C30アルカン、C4-C20シクロアルカン又はC4-C20芳香環を表す。好ましくは、R1及びR2は、それらが結合しているC原子と共に、5員又は6員の飽和環又は不飽和環又は芳香族環を形成するか、又は独立に1~4個の炭素原子を含む低級アルキル基を表す。本発明に従って使用されるポリマー核剤の調製のための好ましいビニル化合物は、特にビニルシクロアルカン、特にビニルシクロヘキサン(VCH)、ビニルシクロペンタン、及びビニル-2-メチルシクロヘキサン、3-メチル-1-ブテン、3-エチル-1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン又はそれらの混合物である。VCHは、特に好ましくはモノマーである。
【0080】
重合触媒の変性ステップにおけるビニル化合物と重合触媒との重量比は、好ましくは0.3~40まで、例えば、0.4~20、より好ましくは0.5~15、例えば0.5~2.0である。
【0081】
本発明の発泡ポリプロピレン組成物に使用されるエチレンポリマーは、低密度エチレンポリマー(LDPE)(B)である。低密度エチレンポリマーは、長鎖分岐を含有するため、チーグラー触媒又はメタロセン触媒の存在下で生成されるエチレンとアルファオレフィンコモノマーの直鎖状コポリマーとは異なる。特に、長鎖分岐の存在は、ポリマーのレオロジー挙動に明らかな違いを引き起こす。
【0082】
低密度ポリエチレン(LDPE)の意味は、よく知られており、文献に記載されている。LDPEという用語は、低密度ポリエチレンの略語であるが、この用語は、密度範囲を限定するものではなく、フリーラジカル開始剤を使用したラジカル重合プロセスによって生成される低密度、中密度及び高密度の高圧ポリエチレン(HPポリエチレン)を包含する。オートクレーブ反応器及び管状反応器は、通常、HPエチレン重合プロセスで使用される。LDPEという用語は、オレフィン重合触媒の存在下で生成されたポリエチレンに比べて、典型的な特徴、例えば異なる分岐構造を備えたHPポリエチレンの性質のみを記載し、区別する。また、前記低密度ポリエチレン(LDPE)、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)ホモポリマーは、不飽和であってもよい。
【0083】
低密度ポリエチレン(LDPE)は、コポリマーである場合、典型的にはアクリレート、アクリル酸、メタクリレート、メタクリル酸及びアセテートから選択されるがこれらに限定されないコモノマーを含む。
【0084】
低密度ポリエチレン(LDPE)は、分子長又は分子量の分布(MWD)を引き起こす多くの異なる長さを有する鎖状分子からなる。MWDは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるため、MWDはMw/Mnである。本発明において使用されるポリエチレンは、その分子量分布(MWD)曲線の形、すなわち、その分子量の関数としてのポリマー重量分率のグラフの外観に関して、単峰性又は多峰性であることができる。ポリマーが連続工程プロセスで、すなわち直列に連結された反応器を利用し、各反応器で異なる条件を使用することによって生成される場合、異なる反応器で生成される異なるポリマー画分はそれぞれ、互いにかなり異なる可能性がある自身の分子量分布を有し、その結果、双峰性又は多峰性ポリマーが生成される。単峰性ポリマーには、そのような分子量の極大値の双峰性又は多峰性の外観がない。押出コーティング用途に使用される低密度ポリエチレンは、ポリマーの分岐構造のために広いMWDを有する。
【0085】
LDPE(B)は、好ましくは、高圧管状反応器で生成される。
【0086】
本発明において使用されるLDPE(B)は、ISO 1183Dに従って決定された、好ましくは915~930kg/mの範囲、より好ましくは918~928kg/mの範囲、最も好ましくは920~925kg/mの範囲にある密度を有する。
【0087】
温度190℃、荷重2.16kgの条件でISO 1133に従って測定されたLDPE(B)のメルトフローレートMFRは、0.1~2.0g/10min、好ましくは0.2~1.5g/10min、特に0.5~1.0g/10minである。
【0088】
更に、LDPE(B)は、好ましくは、ISO 11357/03に従って決定された、90~150℃の範囲、より好ましくは100~140℃の範囲、例えば105~130℃の範囲にある溶融温度Tmを有する。
【0089】
発泡体
本発明はまた、本明細書に記載の本発明のポリプロピレン組成物を含む発泡体を特徴とする。好ましくは、当該発泡体は、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、更により好ましくは少なくとも95重量%の本発明によるポリプロピレン組成物を含む。好ましい実施形態において、当該発泡体は、本発明のポリプロピレン組成物からなる(発泡プロセス後に発泡体にまだ存在する場合は発泡剤を除く)。
【0090】
発泡体の密度は、好ましくは300~700kg/m、好ましくは325~650kg/m、最も好ましくは350~600kg/mである。
【0091】
未発泡のポリプロピレン組成物に比べて、発泡体の密度は、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%低下する。
通常、密度は50%以下、より好ましくは40%以下低下する。
【0092】
発泡シート
本発明は、更に、上記又は下記に定義された発泡ポリプロピレン組成物を含むシートに関する。
【0093】
シートは、好ましくは175μm~1400μm、より好ましくは250μm~1250μm、最も好ましくは400μm~1000μmの厚さを有する。
【0094】
更に、シートは、好ましくは300~700kg/m、好ましくは325~650kg/m、最も好ましくは350~600kg/mの密度を有する。
【0095】
シートは、好ましくは、少なくとも2層、より好ましくは少なくとも3層を含む多層シートである。
【0096】
多層シートの少なくとも1層、より好ましくは1層のみが発泡され、本発明による発泡ポリプロピレン組成物を含むことが好ましい。
【0097】
好ましくは、少なくとも1つの発泡層、より好ましくは単一発泡層は、コア層(CL)であり、このCLは、その両側と付着接触するように少なくとも2つのスキン層(SL)の間にSL-CL-SL構成で挟まれている。
【0098】
この多層シートは、前記SL-CL-SL構成における3層からなることが特に好ましく、コア層は、本発明による発泡ポリプロピレン組成物を含む。
【0099】
スキン層(SL)は、好ましくは、未発泡のポリプロピレン組成物を含む。前記未発泡のポリプロピレン組成物は、好ましくは、上記又は下記に定義された直鎖状プロピレンホモポリマー(A)を少なくとも95重量%の量で含む。未発泡のポリプロピレン組成物は、好ましくは発泡剤を含まない。
【0100】
コア層(CL)は、好ましくは、発泡後、75μm~1000μm、より好ましくは100μm~800μm、最も好ましくは250μm~750μmの厚さを有する。
【0101】
スキン層(SL)は、独立に、好ましくは、50μm~200μm、より好ましくは60μm~175μm、最も好ましくは70μm~150μmの厚さを有する。
【0102】
物品
本発明は更に、本発明による発泡ポリプロピレン組成物又はシートを含む物品を対象とし、この物品は、好ましくは、本発明によるシートを含む。
【0103】
当該物品は、ボトル、カップ、缶、キャニスター、ボウル又はトレイなどの容器、容器など用のスリーブ、容器など用のふた、フィルム、ブランク、パッド、キャリア、チューブ、基板、パイプ、器(管、vessel)、建築用パネルなどのパネル、トラックライナーなどのライナー、テープ、ロール、又はプロフィールであってもよい。
【0104】
物品は、好ましくは容器である。
【0105】
容器は、例えば、ボトル、カップ、缶、キャニスター、ボウル、又はトレイであってもよい。
【0106】
本発明のシートをカップ本体として使用することにより、例えば冷たい飲み物及び熱い飲み物の場合に優れた断熱特性が得られる。また、カバー層がカップの内側に配置されることにより、カップ内の液体から発泡シートの細孔を密閉するため、カップへの液体の取り込みは最小限である。本発明による発泡シートは、優れた印刷適性を更に有するため、そのための外側の特定の層を必要としない。
【0107】
前記物品は、好ましくは熱成形によって生成される。
【0108】
更に、本発明は、上記又は下記に定義された物品のような物品の製造のための、上記又は下記に定義された発泡ポリプロピレン組成物、又は上記又は下記に定義されたシートの使用に関する。
【0109】
プロセス
本発明は更に、
総重量に基づいて、60.0~95.0重量%の直鎖状プロピレンホモポリマー(A)と5.0~40.0重量%の低密度ポリエチレン(B)とを混合してポリプロピレン組成物を調製するステップa)と、
このポリプロピレン組成物に対して発泡プロセスを行うステップb)と、
発泡ポリプロピレン組成物を発泡シートに成形するステップc)と
を含む、上記又は下記に定義されたシートの製造方法に関する。
【0110】
このポリプロピレン組成物は、好ましくは押出機で成形される。押出工程中に、任意の核剤及び添加剤を、ポリプロピレン組成物に添加することができる。
【0111】
次に、このポリプロピレン組成物に対して、好ましくは、発泡剤(D)の存在下で発泡プロセスが行われる。
発泡プロセスは、当業者の知識の範囲内である。そのようなプロセスにおいて、上記又は下記の発泡剤(D)を含む本発明のポリプロピレン組成物の溶融物は、圧力降下によって突然膨張される。
連続発泡プロセス及び不連続プロセスが適用されてもよい。連続発泡プロセスでは、ポリプロピレン組成物は、溶融されて、典型的に20バールを超える圧力下で発泡剤と共に押出機に充填され、その後にダイを通って押出され、圧力降下によって発泡体を形成する。発泡押出におけるポリプロピレンの発泡のメカニズムは、例えば、H.E.Naguib、C.B.Park、N.Reichelt、Fundamental foaming mechanisms governing the volume expansion of extruded polypropylene foams、Journal of Applied Polymer Science、91、2661-2668(2004)などに説明されている。発泡のプロセスは、S.T.Lee、Foam Extrusion、Technomic Publishing(2000)に概説されている。不連続発泡プロセスでは、ポリプロピレン組成物の(マイクロ)ペレットは、圧力下で発泡剤と共に充填され、溶融温度未満に加熱された後に、オートクレーブ内の圧力が突然緩和される。溶解した発泡剤は、気泡を形成し、発泡体の構造を形成する。不連続発泡ビーズの調製は、例えば、独国特許出願公開第3539352号明細書に記載されている。
【0112】
発泡剤の量は、通常、ポリマー組成物と発泡剤の総重量に基づいて10重量%未満であり、好ましくは、ポリマー組成物と発泡剤の総重量に基づいて5重量%未満である。
【0113】
上記で概説したように、好ましくは発泡シートが成形される。
発泡シートは、キャストシートライン又はカレンダーラインを使用して調製できる。
【0114】
上記及び下記の多層シートを製造するために、発泡ポリプロピレン組成物は、好ましくは、1種以上、より好ましくは2種以上のポリプロピレン組成物と共に共押出されて、共押出多層シートを生成する。
その際に、発泡ポリプロピレン組成物は、好ましくは、2つ以上、より好ましくは上記又は下記の共押出構成SL-CL-SLにおけるスキン層(SL)としての2種の未発泡ポリプロピレン組成物と共にコア層(CL)として押出される。
【0115】
キャストシートラインでは、ポリマー溶融物は通常、シートが成形されるフラットダイシステムを通って、冷却ユニットへ案内される。
冷却ユニットは通常、1つ以上の冷却ローラ、好ましくは2つの冷却ローラを含む。冷却ローラ(複数可)の温度は、独立に、好ましくは10~40℃の範囲、より好ましくは15~30℃の範囲にある。2つの冷却ローラが存在する場合、第2の冷却ローラは通常、第1の冷却ローラと同じかそれより低い温度を有する。
【0116】
カレンダーシートラインでは、ポリマー溶融物は通常、押出機セクションからフラットダイを通って、シートが形成される多数の円筒形ローラへ案内される。
多数の円筒形ローラは、3つ以上のローラを有するI型又は4つ以上のローラを有するL型など、シートを案内するいくつかの構成を有することができる。ローラは更に、ダイに向かってある角度で配置することができる。更に、ダイはローラシステムに向かってさまざまな角度で配置できる。
【0117】
カレンダー機は、好ましくは3~6個の円筒形ローラ、より好ましくは4個の円筒形ローラを含む。
好ましくは、図5に示される角度付きカレンダー及びダイ構成を備えたL型構成は、本発明によるシートを製造するためのカレンダー加工プロセスで使用される。
【0118】
本発明のシートを調製するためのカレンダー加工プロセスを最適化するために、いくつかの改善手段が見出された。
多数の円筒形ローラの温度は、好ましくは15~25℃の範囲に維持される。
ダイに近接する多数の円筒形ローラのうちの第1のローラの後の溶融物への圧力は、好ましくは150バール未満に低減される。これは、例えば、多数の円筒形ローラの回転速度を上げるか、又はシートが一度に1つの円筒形ローラにのみ接触するように多数の円筒形ローラ間のギャップを増やすことによって達成することができる。
ダイと多数の円筒形ローラのうち第1の円筒形ローラとの間の距離は、好ましくは100mm未満、より好ましくは80mm未満、最も好ましくは50mm未満に低減される。
【実施例
【0119】
1.決定方法
a)メルトフローレート
メルトフローレートは、ISO 1133に従って決定される。プロピレン系樹脂の場合、メルトフローレートは、230℃の温度で決定されるが、エチレン系樹脂の場合、メルトフローレートは190℃の温度で決定される。MFRは、荷重2.16kgの場合のメルトフローレートを意味する。
【0120】
b)密度
すべての密度は、ISO 1183Dに従って測定される。サンプルの調製は、ISO 1872-2:2007に準拠した圧縮成形によって行われる。
【0121】
c)F30溶融強度及びv30溶融伸展性
本明細書において記載される試験は、ISO 16790:2005に準拠している。
ひずみ硬化挙動は、論文「Rheotens-Mastercurves and Drawability of Polymer Melts」、M.H.Wagner、Polymer Engineering and Sience、第36巻、925~935ページに記載の方法によって決定される。この文献の内容は参照により含まれている。ポリマーのひずみ硬化挙動は、レオテンス(Rheotens)装置(ジーメンス通り(Siemensstr.) 2、74711 ブーヒェン(Buchen)、ドイツのGoettfert(ゲットフェルト)の製品)によって分析され、この装置では、溶融ストランドを定められた加速度で引き下げることにより引き伸ばす。
【0122】
レオテンスの実験は、工業的な紡系及び押出プロセスをシミュレートする。原則として、溶融物は丸形のダイを通して圧縮されるか又は押出され、得られたストランドは引き取られる。押出物への応力は、溶融特性と測定パラメータ(特に、出力量と引き取り速度との比率、実際には伸張速度の尺度)との関数として記録される。以下に示す結果では、材料は、実験室用押出機であるHAAKE Polylabシステムと円筒形ダイ(L/D=6.0/2.0mm)を備えたギアポンプで押出された。ギアポンプは、5mm/sのストランド押出速度に事前調節され、溶融温度は200℃に設定された。ダイとレオテンスホイールの間のスピンラインの長さは、80mmであった。実験の開始時に、レオテンスホイールの巻き取り速度は、押出されたポリマーストランドの速度(引張力ゼロ)に調節された。その後に、レオテンスホイールの巻き取り速度を、ポリマーフィラメントが破断するまでゆっくりと増大させて、実験を開始した。引張力が準定常条件下で測定されるように、ホイールの加速度は十分に小さくした。引き下げられた溶融ストランドの加速度は、120mm/sである。レオテンスは、PCプログラムのEXTENSと組み合わせて操作された。これは、引張力及び引き下げ速度の測定データを表示し保存するリアルタイムデータ収集プログラムである。レオテンス曲線(力対プーリー回転速度)の終点は、F30溶融強度及び延伸性の値として見なされる。
【0123】
d)発泡体の密度
これは、スイスのPRECISA Gravimetrics AG(プレシサ・グラビメトリクス)、スイスの分析用セミミクロ精密天秤、比重天秤(XS225A)を使用して測定され、テスト方法は、アルキメデス法を適用して、サンプルの密度を自動的に計算することである。
【0124】
e)引張特性
引張弾性率、破断時の引張応力、破断時の引張ひずみ、降伏時の引張応力、及び降伏時の引張ひずみは、ISO 527-3に従って機械方向(MD)及び横方向(TD)に以下のように調製された発泡シートで測定された。
【0125】
2.材料
発泡ポリプロピレン組成物に対して、以下の樹脂を使用した。
・HC205TFは、密度が900~910kg/m、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)が4g/10minのBNT核形成直鎖状プロピレンホモポリマーである。HC205TFは、Borouge Pte Ltd.によって市販されている。
・FT5230は、密度が923kg/m、メルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)が0.75g/10minの低密度ポリエチレンである。FT5230は、Borouge Pte Ltd.によって市販されている。
【0126】
3.シート及び熱成形物品の調製
a)ポリプロピレン組成物
本発明によるポリプロピレン組成物を得るために、85重量%のHC205TFを25重量%のFT5230と混合した。
比較ポリプロピレン組成物の場合、100重量%のHC205TFをポリプロピレン組成物に使用した。
ポリプロピレン組成物は、以下の条件下で、Coperion(コペリオン)ZSK 58二軸押出機を使用して配合した。
【0127】
溶融温度 >220℃
押出機のスループット 150.0kg/hr
スクリュー速度 150.0rpm
スクリュートルク 55.0%
SEI 172kWh/ton
【0128】
b)キャストフィルム技術を使用した多層発泡シートの調製
キャストシート共押出ラインで、a)における上記ポリプロピレン組成物をコア層として使用し、HC250TFをスキン層として使用して、3層シートを調製した。キャストシート共押出ラインには、3つの単軸押出機が含まれ、次の寸法を有する。
【0129】
スクリュー直径(mm) 45/75/45
スクリュー長さ(mm) 28D/33D/28D
フラットダイのリップ幅(mm) 1200
ダイのギャップ(mm) 0.5~1.0
出力量(kg/h) 370
最大フィルム幅(mm) 700
最小フィルム厚さ(μm) 18
最大フィルム厚さ(μm) 250
【0130】
発泡のために、Clariant(クラリアント)によって市販されるHydrocerol CT3232である化学的発泡剤マスターバッチを、押出時にコア層のポリプロピレン組成物に、ポリプロピレン組成物総重量の3.8重量%(シート1~3)及び4.0重量%(シート4)の量で添加する。スキン層のHC250TFには発泡剤は添加しなかった。
【0131】
発泡コア層を有する4種の多層シートを、下記表1に記載する条件下で生成する。
【0132】
【表1(1)】
【表1(2)】
【0133】
発泡コア層を有する多層シートは、コア層の厚さが50~60%増加することを示し、これは、コア層のポリプロピレン組成物の十分な発泡性を示す。発泡特性を表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
更に、発泡シートは、図1~4に示すように、機械方向(MD)及び横方向(TD)に優れた機械的特性を示す。これに関して、図1は、発泡シートの厚さの関数としての、発泡シートのMD引張弾性率を示す。図2は、発泡シートの厚さの関数としての、発泡シートの破断時のMD引張応力、破断時のMD引張ひずみ、降伏時のMD引張応力及び降伏時のMD引張ひずみを示す。図3は、発泡シートの厚さの関数としての、発泡シートのTD引張弾性率を示す。図4は、発泡シートの厚さの関数としての、発泡シートの破断時のTD引張応力、破断時のTD引張ひずみ、降伏時のTD引張応力及び降伏時のTD引張ひずみを示す。各図において、機械的特性は、LDPEを含まない比較ポリプロピレン組成物から作製したコア層を有する発泡シートの機械的特性と比較される。同等の機械的特性で、本発明による発泡コア層を用いると、より厚い発泡シートを得ることができる。
【0136】
c)多層シート1~4の熱成形
多層シート1~4を、市販の熱成形ラインを使用して、上記表2に示すトレイ、容器、及びふたに熱成形した。
熱成形部品は、目視検査で優れた表面品質及び機械的品質を示す。部品の収縮がオーブンでの熱曝露で観察されたが、許容できない収縮は見られなかった。ふたは容器に完全にフィットし、優れた立体安定性を示す。
【0137】
d)カレンダー技術を使用した多層発泡シートの調製
Piovan(ピオバン)製のL型カレンダーシートラインHOTPACKで、a)における上記ポリプロピレン組成物をコア層として使用し、HC250TFをスキン層として使用して、3層シートを調製した。ダイは、カレンダーローラ構成に対して角度付き構成になっている。共押出ラインは、コア層を押出する1つの単軸押出機と、スキン層を押出する2つの40mm付随押出機で構成される。L型カレンダーシートラインの原理構成を図5に示す。
発泡のために、Clariantによって市販されるHydrocerol CT3232である化学的発泡剤マスターバッチを、押出時にコア層のポリプロピレン組成物に、ポリプロピレン組成物総重量の2.2重量%の量で添加される。スキン層のHC250TFには発泡剤は添加しなかった。
【0138】
上記組成物とカレンダーシートラインを使用して、多層シートをカレンダー加工するためのいくつかの試験を行った。
すべての試験には、以下の条件を使用した。
一次押出温度プロファイル:215~240℃
二次押出温度プロファイル:215~240℃
すべてのシリンダーの温度:20℃
一次終了時の圧力: 102バール
【0139】
第1の試験では、ダイと第1のシリンダーの間のギャップは、約20cmであり、発泡シートの品質は不十分であった。
以下の措置を取った。
1)ダイと第1のシリンダーの間のギャップを約20cmから約8cmに縮小する。
2)すべてのシリンダー間の圧力を低下する。
3)発泡シートが一度に1つのシリンダーのみと接触するようにすべてのシリンダーを分離する。
【0140】
これらの措置により、カレンダー加工された発泡多層シートの外観が改善された。
【0141】
トレイ及びカップを熱成形するために、厚さの異なる2種の多層シートを製造した。
【0142】
トレイの場合、スキン層の厚さがそれぞれ40μm、コア層の厚さが700μmの3層シート(40-700-40)を製造した(シート5)。
カップの場合、スキン層の厚さがそれぞれ40μm、コア層の厚さが560μmの3層シート(40-560-40)を製造した(シート6)。
【0143】
発泡コア層を有するこれらの多層シートは、コア層の厚さが約16%増加することを示す。発泡特性を表3に示す。
【0144】
【表3】
【0145】
16%の重量軽減は予想より低かった。スキン層の厚さを40μmから約100μmに増加すると、より大きな重量軽減が期待される。
【0146】
e)多層シート5及び6の熱成形
多層シート5及び6を、市販の熱成形ラインを使用して、上記表3に示すトレイとカップに熱成形した。
熱成形部品は、目視検査で優れた表面品質及び機械的品質を示す。
【0147】
f)結論
本発明によるポリプロピレン組成物は、発泡コア層を有する多層シートに形成することができる。このシートは、キャストシートライン及びカレンダーシートラインで製造することができる。
十分な発泡性及び重量軽減を得るために、最小厚さのスキン層を適用する必要がある。
カレンダー加工プロセスでは、上記プロセス調整により性能が向上した。
【0148】
驚いたことに、十分な機械的安定性及び重量軽減を持つ発泡シートは、HMSプロピレンポリマー樹脂を含まず、少量のLDPEを含む直鎖状プロピレンホモポリマーのみを含むポリプロピレン組成物から形成できることが発見された。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】