(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(54)【発明の名称】冷媒
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20230207BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C09K5/04 E ZAB
F25B1/00 396T
F25B1/00 396D
F25B1/00 396F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536694
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 IB2020062008
(87)【国際公開番号】W WO2021124135
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019000024174
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102020000008800
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517203615
【氏名又は名称】アンジェラントーニ テスト テクノロジーズ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ イン ショート エイティーティー ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】パトリツィオ パラビ
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポ カポダリオ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ カタンザーニ
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を含み、環境制御された試験室内でマイナス57℃よりもはるかに低い温度に到達することができる冷媒を製造すること。
【解決手段】少なくとも二酸化炭素、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよびジフルオロメタンを含むガス混合物を含む冷凍装置(10)用冷媒であって、二酸化炭素が前記ガス混合物全体に対して50質量%を超えていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二酸化炭素、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよびジフルオロメタンを含むガス混合物を含む冷凍装置(10)用冷媒であって、二酸化炭素が前記ガス混合物全体に対して50質量%を超えていることを特徴とする冷凍装置(10)用冷媒。
【請求項2】
二酸化炭素が前記ガス混合物全体の50質量%~75質量%を占めていることを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置(10)用冷媒。
【請求項3】
二酸化炭素が前記ガス混合物全体に対して67質量%~70質量%、好ましくは69質量%を占めていることを特徴とする請求項2に記載の冷凍装置(10)用冷媒。
【請求項4】
1,1,1,2-テトラフルオロエタンが前記ガス混合物全体に対して12.5質量%~22質量%、好ましくは19質量%を占めていることを特徴とする請求項3に記載の冷凍装置(10)用冷媒。
【請求項5】
ジフルオロメタンが前記ガス混合物全体の9質量%~19質量%、好ましくは12質量%を占めていることを特徴とする請求項3または4に記載の冷凍装置(10)用冷媒。
【請求項6】
二酸化炭素、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよびジフルオロメタンの前記質量百分率が、前記ガス混合物を不燃性にするものであることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の冷凍装置(10)用冷媒。
【請求項7】
冷媒が循環する閉回路(C)を有する冷凍装置(10)を備えた冷凍機(1)であって、前記閉回路(C)は、少なくとも1台の圧縮機(2)、前記冷媒用の冷却手段(3)、前記冷媒用の膨張手段(4)、および少なくとも1台の蒸発器(5)を備えており、請求項1~6のいずれかに記載の冷媒が前記閉回路(C)を循環することを特徴とする冷凍機(1)。
【請求項8】
第2冷媒が循環する第2閉回路(C1)を有する第2冷凍装置(15)を備えており、
前記第2閉回路(C1)は、少なくとも1台の第2圧縮機(21)、前記第2冷媒用の第2冷却手段(31)、前記第2冷媒用の第2膨張手段(41)、および少なくとも1台の第2蒸発器(51)を備えており、
前記少なくとも1台の第2蒸発器(51)は、前記閉回路(C)の前記冷却手段(3)を循環する前記冷媒を冷却するために使用され、前記第2冷媒は、前記冷媒とは異なっていることを特徴とする請求項7に記載の冷凍機(1)。
【請求項9】
前記第2冷媒は、R404A、またはR449A、またはR452A、または同様の熱力学的特性を有する他の冷媒を含んでいることを特徴とする請求項8に記載の冷凍機(1)。
【請求項10】
試験が行われる試験用試料(22)が組み込まれている断熱空間(21)を有しており、請求項7から9のいずれかに記載の冷凍機(1)を備えていることを特徴とする環境制御された試験室(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷媒に関する。特に、このような冷媒は、環境制御された試験室で作動する冷却装置で使用される。このような試験室は、温度、湿度、圧力のさまざまな条件下で試験用の機械本体を組み込むことができる断熱空間を有している。このような断熱された空間内では、マイナス60℃(-60℃、213.15K)未満の非常に低い温度に到達することが度々必要となる。
【背景技術】
【0002】
法規定によれば、冷媒が大気中のオゾン層のホールの拡大にも地球温暖化にも大きく影響してはならないことは、周知のことである。そのため、ハロゲン化合物、特に、フッ素化ガスや塩素化合物を冷媒としてもはや使用することはできない。加えて、冷却装置で使用される冷媒は、遵守しなければならない可能性のある安全規則に照らして、試験室における充填、輸送、および操作をより容易かつ安全にするために、不燃性でなければならない。さらに、可燃性冷媒を使用する場合、その場合に必要な技術的手段のために、冷凍装置内で冷媒が流れる回路の製造はより高価になる。ここで、可燃性とは、冷媒が周囲の酸素と反応して熱を発生することを意味する。特に、EN378規制またはDin 378規制によると火災クラスA2L、A2、およびA3 Cに該当する場合、冷媒は、可燃性である。
【0003】
さらに、冷媒のCO2換算値を相対的に低くすることが必要である。基本的に、その相対的な地球温暖化係数(global warming potential)(英国では「Global Warming Power」または「GWP」としても知られている)は、冷媒が放出された場合に環境への間接的なダメージを避けるために、可能な限り小さくすることが必要である。GWPは、地球温暖化に寄与する温室効果ガスの定義された質量を測定する。このような値は、二酸化炭素を基準として設定されているため、基準値として機能する。したがって、GWPは、特定のガスまたはガス混合物の特定の時間間隔(この場合は100年)にわたる平均加熱の影響を表している。CO2相当量またはそれぞれのGWPの定義に関しては、本明細書および欧州議会および理事会の(EU)規則No.517/2014を参照のこと。
【0004】
上記の考慮事項に照らして、GWPが小さく、いかなる場合でも不燃性である冷媒が開発された。これに関して、とりわけ、二酸化炭素、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134aとしても知られている)およびジフルオロメタン(R32としても知られている)を含む混合物を使用する冷媒が知られている。
【0005】
特に、インペリアルケミカルインダストリーズ社の特許文献1の第1の実施形態によると、混合物全体に対して二酸化炭素を2~15重量%、R134aを30~96重量%、R32を2~55重量%含む混合物を開示している。同じ国際公開のさらなる実施形態によれば、混合物は、混合物全体に対して二酸化炭素を1~20重量%、R134aを5~60重量%、およびR32を30~90重量%含んでいる。
【0006】
また、Clodic Devisらの特許文献2は、二酸化炭素、R134aおよびR32を含む混合物について開示している。しかし、この国際公開では、冷却用混合物は、混合物全体に対して二酸化炭素を3~7質量%、R134aを65~75質量%、およびR32を15~25質量%含んでいる。
【0007】
さらに、ダイキン工業株式会社の特許文献3は、二酸化炭素、R134a、およびR32を全体に対して二酸化炭素を1~3質量%、R134aを74~62質量%、およびR32を25~35質量%含む混合物からなる冷媒について開示している。最後に、昭和電工株式会社の特許文献4には、二酸化炭素、R32、およびR134aを含む別の冷媒が開示されている。特許文献4に記載された実施形態の1つにおいて、R32、R134aおよび二酸化炭素は、混合物全体に対して、それぞれ5.70質量%、89.47質量%、および4.82質量%を有している。
【0008】
上記の混合物は、従来の冷凍装置で使用することができ、GWPが非常に小さく、不燃性である。しかし、これらの混合物は、試験用の成分が配置されている試験室の断熱空間を、マイナス50℃(-50℃、223.15K)未満の温度にすることはできない。
【0009】
二酸化炭素とペンタフルオロエタン(R125)とからなる冷媒のさまざまな混合物も存在する。例えば、WEISS UMWELTTECHNIK GMBHの特許文献5は、二酸化炭素とペンタフルオロエタン(R125)からなる冷媒を開示しており、二酸化炭素は、20~80質量%である。ただし、このような溶液は、技術的にマイナス57℃(-57℃、216.15K)未満の温度に到達できないだけでなく、GWPも大きくなる。加えて、この種の混合物は、非常に低い温度が要求される場合、冷凍装置の回路内で凍結するリスクがあり、その結果、冷凍装置が設置されている環境制御された試験室全体に大きな問題を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第1996/002606号
【特許文献2】国際公開第2000/066678号
【特許文献3】特開平06-867870号公報
【特許文献4】特開平06-220435号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2019/0093926号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、特に、二酸化炭素を含み、環境制御された試験室内でマイナス57℃(-57℃、216.15K)よりもはるかに低い温度に到達することができる冷媒を製造することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、不燃性であり、GWP値が可能な限り小さい冷却用混合物を製造することである。
【0013】
さらに、本発明の目的は、R23ガスの代替となる冷媒を特定することである。R23ガスは、これまで、マイナス55℃未満の温度に到達することが望まれ、同時に非常に小さいGWPを実現する、環境制御された試験室に設備される冷却装置で使用されてきた。
【0014】
最後に、本発明の目的は、既存の環境制御された試験室で使用する冷凍装置でも、この冷凍装置を改造することなく、循環することができる冷媒を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目的は、ガス混合物を含む冷凍装置用冷媒によって達成され、前記ガス混合物は、少なくとも二酸化炭素、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよびジフルオロメタンを含んでおり、二酸化炭素が混合物全体に対して50質量%を超えていることを特徴とする。
【0016】
このような冷却用混合物は、マイナス57℃をはるかに下回る温度でも環境制御された試験室の断熱領域を機能させることができることが証明されている。さらに、このような冷媒は、GWPが非常に小さく、不燃性である。基本的に、冷媒ガスの混合物全体に対する二酸化炭素が50質量%を超えると、それが循環する冷却装置の作動に害を与える可能性があるという技術的偏見を解消しているこの種の冷却用混合物は、環境に有害な冷媒ガスを効果的に置き換えることができ、さらに環境に害のない冷媒ガスであってもマイナス57℃(-57℃、216.15K)未満の非常に低い温度に到達することはできない冷媒ガスでさえも効果的に置き換えることができることが証明されている。
【0017】
二酸化炭素は、混合物全体の50質量%~75質量%を占めている。特に、二酸化炭素は、混合物全体に対して67質量%~70質量%、好ましくは69質量%を占めている。
【0018】
さらに、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)は、混合物全体の12.5質量%~22質量%、好ましくは19質量%を占めている。
【0019】
有利なことに、ジフルオロメタンは、混合物全体の9質量%~19質量%、好ましくは12質量%を占めている。
【0020】
この最終混合物は、驚くべきことに、自身の凍結温度を下げることができると同時に、自身を不燃性にすることができることが証明されている。
【0021】
特に、二酸化炭素、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよびジフルオロメタンの前記質量百分率は、前記混合物を不燃性にするものである。
【0022】
さらに、本発明は、冷媒が循環する閉回路を有する冷凍装置を備えた冷凍機を提供するものであり、前記閉回路は、少なくとも1台の圧縮機、前記冷媒用の冷却手段、前記冷媒用の膨張手段、および少なくとも1台の蒸発器を備えており、請求項1~6のいずれかに記載の冷媒が前記閉回路を循環することを特徴とする。
【0023】
さらに、このような冷凍機は、第2冷媒が循環する第2閉回路を有する第2冷凍装置を備えており、前記第2閉回路は、少なくとも1台の第2圧縮機、前記第2冷媒用の第2冷却手段、前記第2冷媒用の第2膨張手段、および少なくとも1台の第2蒸発器を備えており、前記少なくとも1台の第2蒸発器は、前記閉回路の前記冷却手段を循環する前記冷媒を冷却するために使用され、前記第2冷媒は、前記冷媒とは異なっている。特に、好ましくは、前記第2冷媒は、R404A、またはR449A、またはR452A、または同様の熱力学的特性を有する他の冷媒を含んでおり、特に、外気温度に近い温度で凝縮することができる。
【0024】
最後に、試験が行われる試験用試料が組み込まれている断熱空間を有しており、かつ、請求項7から9のいずれかに記載の冷凍機を備えていることを特徴とする環境制御された試験室も設けられている。
【0025】
次に、本発明のいくつかの特定の実施形態を、添付の
図1を参照して、非限定的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】試験用試料が配置されている断熱空間を内部に備えた環境制御された試験室における冷凍機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、冷媒が循環する閉回路Cを有する冷凍装置10を備えた冷凍機1を簡略化して示している。閉回路Cは、主圧縮機2、冷媒用の少なくとも1台の冷却装置3(冷媒が相変化する場合は、凝縮器とも呼ばれる)、冷媒の膨張手段4、および蒸発器5を備えている。膨張手段4は、特定の場合、サーモスタットタイプの膨張弁を備えており、他の実施形態では、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、毛細管ラインまたは他の機構を備えることができる。
【0028】
冷凍機1は、第2冷媒が循環する第2閉回路C1を有する第2冷凍装置15をさらに備えている。このような第2閉回路C1は、第2圧縮機21、第2冷媒用の第2冷却手段31、第2冷媒用の第2膨張手段41、および第2蒸発器51を備えている。本明細書に記載の実施形態によれば、第2蒸発器51は、冷凍装置10の閉回路Cの冷却手段3を循環する冷媒を冷却および/または凝縮するために使用される。基本的に、冷凍機1は、カスケードされた2台の冷凍装置10および15を備えている。
【0029】
このような冷凍機1は、公知の環境制御された試験室(または試用室)20で使用されており、本明細書で詳細には説明していなく、
図1にも詳細に示していない。このような試験室20は、異なる環境条件下で試験が行われる試験用試料22が配置されている断熱空間21を備えている。
【0030】
有利なことに、第2冷媒は、冷凍装置10の閉回路Cを循環する冷媒とは異なり、好ましくは、R404Aを含んでいる。R404Aの代替として、このような第2冷媒は、R449A、またはR452A、または同様の熱力学的特性を有する他の冷媒も含むことができる。
【0031】
一方、閉回路Cの冷凍装置10で作動する本発明による冷媒は、ガス混合物を含んでいる。このようなガス混合物は、少なくとも二酸化炭素、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよびジフルオロメタンを含んでおり、二酸化炭素は、ガス混合物全体の50質量%を超えている。
【0032】
特に、本明細書に記載の実施形態によれば、二酸化炭素は、混合物全体に対して69質量%を占めている。いずれにしても、混合物全体の50質量%~75質量%、好ましくは混合物全体の67質量%~70質量%を占めている冷媒は、依然として本発明の権利範囲内に含まれる。
【0033】
本発明によれば、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(またはR134a)は、19質量%である。しかし、別の実施形態では、1,1,1,2-テトラフルオロエタンの質量百分率は、本発明の権利範囲から逸脱することなく、混合物全体の12.5質量%~22質量%とすることができる。
【0034】
さらに、ジフルオロメタン(またはR32)は、混合物全体に対して12質量%である。しかし、ジフルオロメタンの混合物全体に対する9質量%~19質量%は、本発明の権利範囲に含まれるであろう。
【0035】
したがって、基本的に、本明細書に記載の好ましい実施形態によれば、本発明の目的である冷却用混合物は、混合物全体に対して69質量%の二酸化炭素、混合物全体に対して19質量%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(またはR134a)、混合物全体に対して12質量%のジフルオロメタン(またはR32)を含んでいる。
【0036】
このような組成物は、不燃性であることが証明されている。
【0037】
発明者は、そのような冷媒組成物が、環境制御された試験室20の断熱空間21内で、-57℃(216.15K)よりもはるかに低い温度まで、さらには約-78℃(195.15K)まで到達することができることも実証した。さらに、このようにして得られた冷媒は、GWP値が非常に小さく、すなわち、100年にわたって380未満である。最後に、このような冷媒は、温室効果を拡大することはない。
【符号の説明】
【0038】
1 冷凍機
2 主圧縮機
3 冷却装置、冷却手段
4 膨張手段
5 蒸発器
10 冷凍装置
15 第2冷凍装置
20 試験室
21 断熱空間
22 試験用試料
31 第2冷却手段
41 第2膨張手段
51 第2蒸発器
C 閉回路
C1 第2閉回路
【国際調査報告】