(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(54)【発明の名称】操作された抗IL-2抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230207BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230207BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230207BHJP
C12N 1/18 20060101ALI20230207BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230207BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230207BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20230207BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230207BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230207BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230207BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230207BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230207BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230207BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230207BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230207BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230207BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230207BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230207BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230207BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230207BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20230207BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230207BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/18
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/24
A61P35/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P37/04
A61K35/17
A61K39/395 R
A61K39/395 S
A61K39/395 T
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 U
A61K48/00
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/34
A61K47/20
A61K47/22
A61K38/20
A61K45/00
A61K39/39
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549329
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 IB2021051267
(87)【国際公開番号】W WO2021161287
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522324587
【氏名又は名称】アウロス バイオサイエンス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アミット、インバール
(72)【発明者】
【氏名】レヴィン、イタイ
(72)【発明者】
【氏名】ニムロッド、ガイ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュマン、シャロン
(72)【発明者】
【氏名】バラクフックス、ロイト
(72)【発明者】
【氏名】ストラジブル、マレック
(72)【発明者】
【氏名】ワイアント、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ゼニン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ブルヴシュタイン エルモラエフ、オルガ
(72)【発明者】
【氏名】サッソン、イェヘスケル
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン、ノーム
(72)【発明者】
【氏名】レビティン、ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】オフラン、ヤナイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA45
4C076AA12
4C076BB01
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4C076BB21
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB27
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4C076BB30
4C076BB31
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4H045AA11
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4H045DA76
4H045EA29
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示によれば、改変されたアミノ酸配列を有する操作された抗IL-2抗体が提供される。本開示の操作された抗IL-2抗体は、IL-2と抗IL-2抗体との複合体に、改変された受容体結合特異性を付与し、それによって、IL-2のCD25への結合を阻害する。本開示の操作された抗IL-2抗体は、エフェクター免疫細胞のサブセットの増殖を促進し、それによって、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響を低減させる。したがって、本開示の操作された抗IL-2抗体は、癌や感染などの疾患の治療に有用であると考えられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗IL-2抗体であって、
前記重鎖可変領域(VH)は、重鎖相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域(VL)は、軽鎖相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記重鎖相補性決定領域(HCDR)及び前記軽鎖相補性決定領域(LCDR)のアミノ酸配列は、
(a)前記HCDR1が配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号40のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号41のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号42のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号43のアミノ酸配列を含むか、
(b)前記HCDR1が配列番号44のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号45のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号46のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号47のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号48のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号49のアミノ酸配列を含むか、
(c)前記HCDR1が配列番号50のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号51のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号52のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号53のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号54のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号55のアミノ酸配列を含むか、
(d)前記HCDR1が配列番号56のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号57のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号58のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号59のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号60のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号61のアミノ酸配列を含むか、または、
(e)前記HCDR1が配列番号62のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号63のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号64のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号65のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号66のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号67のアミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体であって、
前記重鎖可変領域(VH)及び前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は、
(a)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号11のアミノ酸配列を含むか、
(b)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号12のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号13のアミノ酸配列を含むか、
(c)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号15のアミノ酸配列を含むか、
(d)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号16のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号17のアミノ酸配列を含むか、
(e)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号18のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号19のアミノ酸配列を含むか、
(f)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号20のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号21のアミノ酸配列を含むか、
(g)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号22のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号23のアミノ酸配列を含むか、
(h)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号24のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号25のアミノ酸配列を含むか、
(i)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号26のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号27のアミノ酸配列を含むか、または、
(j)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号36のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号37のアミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項3】
請求項1に記載の抗体であって、
当該抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、F(ab´)
2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体を含む、抗体。
【請求項4】
請求項1に記載の抗体であって、
当該抗体は、Fcγ受容体への結合を減少させる突然変異を有する重鎖を含む、抗体。
【請求項5】
請求項4に記載の抗体であって、
当該抗体は、重鎖配列と、軽鎖配列とを含み、
前記重鎖配列及び前記軽鎖配列は、
(a)配列番号68に記載の重鎖配列及び配列番号69に記載の軽鎖配列、
(b)配列番号70に記載の重鎖配列及び配列番号71に記載の軽鎖配列、または、
(c)配列番号72に記載の重鎖配列及び配列番号73に記載の軽鎖配列、を含む、抗体。
【請求項6】
請求項1に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、
pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、
ヒスチジン緩衝液及びクエン酸緩衝液から選択される緩衝液を含む、組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物であって、
スクロース、メチオニン、またはPS80のうちの少なくとも1つ、または、それらの任意の組み合わせをさらに含む、組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の組成物であって、
IL-2をさらに含む、組成物。
【請求項10】
抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
前記重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列が、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項11】
請求項10に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項12】
請求項11に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項14】
請求項13に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項16】
抗IL-2抗体scFvをコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
配列番号1、2、3、4、5、31、32、33、34、または35に記載されている、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項17】
請求項16に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
対象における疾患または状態を治療する方法であって、
請求項1に記載の抗IL-2抗体を含む組成物を前記対象に投与するステップを含み、
前記抗体が、免疫細胞のサブセットの分化成長を促進し、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響を低減させ、
それによって、前記対象における前記疾患または状態を治療する、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記組成物は、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、
前記疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を含む、方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法であって、
前記状態は、免疫系が弱った状態を含み、
前記状態の治療は、前記免疫系を予防的に高めることを含む、方法。
【請求項23】
請求項19に記載の方法であって、
前記状態は、前記対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項26】
請求項19に記載の方法であって、
前記免疫細胞は、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、CD8
+T細胞、NK細胞、またはナチュラルキラーT細胞のうちの1以上を含む、方法。
【請求項27】
請求項19に記載の方法であって、
IL-2によって引き起こされる前記望ましくない影響は、制御性T細胞の活性化、CD25
+Tエフェクター細胞のアポトーシス、IL-2誘導性肺水腫、IL-2誘導性肺炎、またはIL-2誘導性血管漏出のうちの1以上を含む、方法。
【請求項28】
請求項19に記載の方法であって、
前記抗IL-2抗体は、CD25へのIL-2の結合を阻害する、方法。
【請求項29】
請求項19に記載の方法であって、
前記対象は、1以上の免疫チェックポイントを標的とする1以上の免疫チェックポイント阻害剤でさらに治療される、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、
前記対象は、前記抗IL-2抗体による治療と同時に、前記抗IL-2抗体による治療の前に、または、前記抗IL-2抗体による治療の後に、前記免疫チェックポイント阻害剤で治療される、方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法であって、
前記免疫チェックポイントは、PD-1、PDL-1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、B7-H3、CD73、LAG3、CD27、CD70、4-1BB、GITR、OX40、SIRP-α(CD47)、CD39、ILDR2、VISTA、BTLA、VTCN-1、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項32】
請求項21に記載の方法であって、
前記ウイルス感染症は、SARS-CoV-2;ノロウイルス;ロタウイルス;A型、B型、C型、D型、またはE型の肝炎ウイルス;狂犬病ウイルス;西ナイルウイルス;エンテロウイルス;エコーウイルス;コクサッキーウイルス;単純ヘルペスウイルス(HSV);HSV-2;水痘帯状疱疹ウイルス;蚊媒介ウイルス;アルボウイルス;セントルイス脳炎ウイルス;カリフォルニア脳炎ウイルス;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);ポリオウイルス;ジカウイルス;風疹ウイルス;サイトメガロウイルス;ヒトパピローマウイルス(HPV);エンテロウイルスD68;重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス;中東呼吸器症候群コロナウイルス;エプスタイン・バー・ウイルス;インフルエンザウイルス;呼吸器合胞体ウイルス;JCウイルスを含むポリオーマウイルス;BKウイルス;エボラウイルス;デングウイルス;またはそれらの任意の組み合わせによって引き起こされる、方法。
【請求項33】
対象を免疫化する方法であって、
アジュバントを含むワクチンを投与するステップを含み、
前記アジュバントは、IL-2抗体アジュバントを含み、
前記IL-2抗体アジュバントは、請求項1に記載の抗IL-2抗体を含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、
前記IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法であって、
前記対象は、免疫系が弱っている、方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法であって、
前記対象は、該対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を有する、方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月16日出願の米国特許仮出願第62/977、292号及び2021年1月20日出願の米国特許仮出願第63/139、315号に基づく優先権を主張するものである。上記の両出願の開示内容の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表に関する声明)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、この配列表の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。2021年2月14日に作成されたこのASCIIコピーの名前は、「P-593094-PC-SEQ-14FEB21_ST25.txt」であり、そのサイズは、64.6キロバイトである。
【0003】
(技術分野)
本開示は、一般に、抗体の分野に関する。一実施形態では、本開示は、IL-2に改変された受容体結合特異性を付与する、操作された抗IL-2抗体の作製及び使用に関する。
【背景技術】
【0004】
インターロイキン2(IL-2)は、4つのヘリックスバンドル構造を持つ15.4kDaのI型サイトカインである。IL-2が30年以上前に発見されて以来、免疫系の調節におけるIL-2の重要性が何度も説明されてきた。IL-2は、主に、抗原によって活性化されたCD4+T細胞によって産生され分泌される。比較的程度は低いが、IL-2は、CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、及び肥満細胞によっても産生される。
【0005】
IL-2シグナル伝達は、相反する2つの作用を有する。IL-2は、エフェクター細胞を活性化及び増殖させることによって、免疫応答を高めることができる。また、IL-2は、CD4+制御性T(Treg)細胞を活性化及び増殖させることによって、免疫応答を低下させることができる。これらの機能を促進するために、IL-2は、下記の(i)及び(ii)の2種類のIL-2受容体に結合することによって、その作用を仲介する。(i)IL-2Rα(CD25)、IL-2Rβ(CD122)、及びIL-2Rγ(γc、CD132)共通鎖からなる三量体(トリマー)IL-2受容体。(ii)IL-2Rβ及びIL-2Rγサブユニットのみからなる二量体(ダイマー)IL-2受容体。二量体受容体及び三量体受容体は両方とも、STAT5経路を介してIL-2結合シグナルを伝達することができる。しかしながら、IL-2は、αβγ三量体受容体に、βγ二量体受容体の100倍も強固に結合する。hIL-2は、αβγ三量体受容体への結合親和性が約10pMであり、βγ二量体受容体への結合親和性が1nMであることが実証されている。
【0006】
IL-2の二量体受容体と三量体受容体とに対する結合親和性の違いは、インビボでの免疫学的恒常性を維持する重要な機構の1つである。三量体受容体の活性化は、より多くのαβγ三量体受容体をその膜上に発現する、TregにおけるFoxP3介在性転写と関連している。対照的に、IL-2のβγ二量体受容体への結合は、βγ二量体受容体を比較的高レベルで発現し、αβγ三量体受容体を非常に低レベルで発現する、NK細胞及びメモリー表現型(MP)CD8+細胞の活性化と関連している。正常な生理的状態ではIL-2の自然レベルは比較的低いので、IL-2の主な機能は、Tregの活性化及び増殖因子として作用することによって、免疫寛容を促進することであると思われる。一方、免疫系が活性化されると、IL-2レベルが上昇し、次いで、IL-2がβγ二量体受容体と結合して、メモリー表現型エフェクターT細胞(MP)CD8+及びNK細胞の活性化及び増殖を促進することができる。
【0007】
1990年代初頭以来、高用量IL-2療法が、黒色腫及び転移性腎細胞癌の治療に使用されており、奏効率は10%~15%である。この治療方法は有効であるが、致死的となり得る血管漏出症候群(VLS)などのIL-2依存性副作用により、多くの患者がこの治療方法の対象から除外されるため、他の癌には採用されていない。投与されるIL-2は、半減期が短いため、非常に頻繁な投与を必要とし、IL-2の循環レベルのスパイクが繰り返され、その結果、副作用を悪化させる。最後に、野生型IL-2は、選択的ではないので、Treg細胞の望ましくない活性化を促進する恐れがある。
【0008】
特定の抗体がIL-2に結合して、βγ二量体IL-2受容体またはαβγ三量体IL-2受容体への結合を調節することが発見されている。そのような特定の抗体と複合体を形成したIL-2は、半減期が比較的長く、このIL-2複合体は、エフェクター細胞または免疫細胞の特定のサブセットを活性化させる。例えば、S4B6抗体(マウス)とIL-2との複合体は、インビボでマウスのエフェクター細胞を選択的に活性化する。また、JES6.1抗体(マウス)とIL-2との複合体は、インビボでマウスのT調節細胞を選択的に活性化する。JES6.1抗体による調節機構は解明されている。JES6.1とmIL-2との複合体は、インビトロでCD25に結合するが、CD122には結合しないことが分かっている。
【0009】
IL-2の増加は、ウイルス感染に関与していると考えられている。SARS-CoV-2は、呼吸器系ウイルスのコロナウイルス科の陽性鎖RNAウイルスである。このウイルスは、肺及び胃腸の組織上のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することによって、宿主に侵入する。感染経過は、約7~14日間の潜伏期間と、それに続く、空咳、発熱、息切れの症状を特徴とする。有症者のうちの最大20%が重篤な症状を呈し、平均3%が肺不全により死亡する。コロナウイルスファミリーのメンバーを対象にした先行研究では、コロナウイルス感染が制御性Tリンパ球の増加を引き起こし、このことがウイルス排除の遅延に寄与している可能性があることが実証されている。COVID-19患者に関するより最近の研究では、ICUの患者は、非ICUの患者よりもIL-2、IL-7、IL-10、GSCF、IP10、MCP1、MIP1A、及びTNF-αのレベルが高いことが分かっており、重症疾患における免疫病理学的な役割を示唆している。SARS-CoV-2感染患者の末梢血白血球の免疫学的特徴を用いた白血球の恒常性の変化の直接的な証拠に対する調査により、COVID-19では、いくつかの慢性感染症と同様に、CD4+T細胞の機能の損傷が、CD8+T細胞の過剰活性化とその後の消耗とを促進することを分かった。このようなT細胞サブセットの摂動は、最終的には、宿主の抗ウイルス免疫を低下させる恐れがある。したがって、ウイルス増殖を遅らせるか、または免疫応答を高めてウイルス負荷を排除するとともに、関連する免疫病理のいくつかを減少させる治療法は、大きな利益になるであろう。
【0010】
ウイルスに対する免疫応答は、自然免疫系と獲得免疫系との両方からなる。自然免疫系は、Toll様受容体(TLR)とレチノイン酸誘導遺伝子I(RIG-I)タンパク質とを使用して、ウイルスのRNA/DNAを感知し、初期応答を誘導する。この初期応答には、抗ウイルス性サイトカイン(例えば、インターフェロンαなど)の産生、免疫系を感染部位に誘導するケモカインの産生、及び、マクロファージ/樹状細胞群の動員が含まれる。ナチュラルキラー(NK)細胞(自然リンパ球)は、MHCクラスI発現の非存在下で、ウイルス感染細胞を直接殺滅する。このことは、ウイルスがMHCクラスI提示系に干渉した場合にも起こり得る。
【0011】
加えて、感染応答時に、NK細胞がインターフェロン-γ(IFN-γ)を産生し、それによって、細胞上のMHCクラスIの発現を増加させて、獲得免疫系の応答能力を高める。獲得免疫系は、T細胞(CD4及びCD8)とB細胞とからなる。CD4+T細胞は、抗原提示細胞上のMHC-IIとの関連でウイルス抗原を認識し、(サイトカインを介して)免疫応答を増幅し、B細胞のクラススイッチと、その後の抗ウイルス抗体の産生を誘導する。CD4細胞、特にTh1細胞の活性化により、IFN-γを放出し、それによって、ウイルス抗原の提示を促進する。CD8+T細胞は、MHC-Iとの関連でウイルスペプチドを提示しているウイルス感染細胞に対して、直接的な溶解効果を示す。免疫応答の初期誘導期は、一般的に、7~10日かけてT細胞集団を増殖させて、ウイルスを排除するのに必要な細胞を産生する。
【0012】
IL-2は、T細胞及びNK細胞の増殖及び活性化における重要なメディエータである。IL-2は、一般的に、T細胞の活性化に必要な二次シグナルにおいて主要な役割を果たすと考えられている。二量体(βγ)IL-2受容体複合体及び三量体(αβγ)IL-2受容体複合体の発現では、CD25(αサブユニット)を含む三量体受容体は、制御性T細胞、及び、活性化短寿命細胞傷害性エフェクターT細胞のサブセット上で高度に発現しており、一方、二量体受容体は、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、及びNK細胞上に見られるという点で、系統選択性を示す。したがって、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、及びNK細胞は、二量体受容体に結合したIL-2を介してシグナルを受け取ることができる。制御性T細胞は、高親和性三量体受容体複合体に依存してその機能を強化し、これには、メモリーT細胞やナイーブT細胞への結合からIL-2を隔離することが含まれ、それによって、これらの細胞集団の機能を低下させる。IL-2の作用機序を
図1に示す。
【0013】
また、エフェクターT細胞サブセットも、三量体IL-2受容体複合体を発現する。これらの細胞は極めて活性に富むが、エフェクターT細胞のサブセットにIL-2が結合すると、活性化誘導性細胞死(AICD)が誘導される。さらに、CD25は、肺内皮や血管内皮に発現することが分かっている。この発現は、高用量IL-2療法を用いたマウスモデルにおける、肺水腫及び血管漏出と相関している。肺細胞におけるCD25の発現が、高用量IL-2療法の肺毒性の原因であることが示唆されている。加えて、肺内皮細胞は定常状態条件下でCD25を発現するが、肺内皮細胞上のCD25の発現レベルは、マウスにIL-2を注射するとインビボで増加する。IL-2と抗IL-2抗体(IL-2/mAb)との免疫複合体を用いて、非免疫細胞上のCD25をノックアウトするか、または、IL-2のCD25結合エピトープを阻害することによって、IL-2誘導性の肺水腫や血管漏出症候群を予防できることが分かっている。また、遺伝的操作によってT細胞及びB細胞を欠失させた後、残存する免疫細胞(NK、単球、DC、及び顆粒球)を除去するために亜致死的に放射線照射したマウスに高用量IL-2を投与すると、免疫成分の不在を示す、重篤な肺水腫が生じることが実証されている。
【0014】
肺のウイルス感染を除去する能力におけるIL-2の二重の役割について、多くの研究がなされてきた。IL-2は、ウイルス排除のためのCD8+T細胞の増殖に必要であることが分かっている。また、IL-2が肺水腫を媒介することも分かっている。例えば、インフルエンザウイルス肺感染のマウスインフルエンザモデルにおいて、メモリーCD4+T細胞が高レベルのIL-2を産生し、このIL-2の存在が疾患を悪化させることが実証されている。制御性T細胞は、ウイルス感染における肺組織への病理学的損傷を低減するために重要である。TregによってCD8+エフェクター細胞を制御する機序の1つは、Treg上のCD25三量体受容体を介したIL-2の高親和性消費によるものであると仮定され、実証されている。これは、実際には、増殖するエフェクター細胞からIL-2を除去し、次いで、エフェクター細胞の有効性を制限し、ウイルス排除を低下させる恐れがある。Tregはまた、CD25+内皮細胞からIL-2を隔離することによって、肺内皮に対するIL-2の作用を制限するようである。転帰は、Teff/Tregの比率に依存する。Teff(エフェクターT細胞)のレベルが高くなるとウイルス排除がもたらされるが、その一方で、免疫活性化した細胞によってIL-2が過剰レベルで分泌されて、肺水腫を引き起こす恐れがある。対照的に、Tregが大きく増殖すると、肺水腫の病状を軽減するが、その一方で、ウイルス排除が低下して、ウイルス感染の長期化をもたらす恐れがある。
【0015】
COVID-19患者からの最近のデータは、ウイルス負荷が高くなると、転帰がより不良となることを示唆している。したがって、ウイルス排除の低下は、転帰の悪化に関連すると考えられる。マウスモデルでは、ウイルス排除の低下におけるTregの役割を、インフルエンザAウイルス(IAV)感染モデルを使用して実証した。IAVに感染したマウスは、肺、脾臓、及びリンパ節でのTregのレベルがより高く、かつ、肺組織でのウイルス負荷がより高かった。このことは、感染開始の6週間後でも観察された。インフルエンザAは、免疫応答によるウイルス排除を回避するためにTregの増殖を誘導することが示唆された。免疫応答を高めると、肺におけるIAV感染の排除が増加するかどうかを評価するために、研究者らは、IAV感染マウスに、活発な細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導するリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)を感染させた。また、IAV感染肺における広範な免疫応答は、肺水腫と広範な肺組織損傷を引き起こした。一方、LCMVの投与前に、抗CD25遮断抗体でIAV感染マウスを処置した場合には、重篤な肺水腫からの保護が達成された。これらのデータは、Tregによりウイルス排除を遅延させた状況で免疫応答を高めると、ウイルス排除を誘導できることを実証している。加えて、CD25+細胞へのIL-2結合を阻害すると、ウイルス排除中の免疫介在性肺水腫のリスクが低下することも実証されている。
【0016】
単剤療法として投与されたIL-2は、抗ウイルス免疫応答を高めることが示されている。LCMV感染マウスのT細胞の増殖期、収縮期、及びメモリー期におけるIL-2療法の効果を調べたところ、増殖期におけるIL-2療法は、CD25の発現を一過性に上方制御する急速に分裂するエフェクターT細胞の生存にとって有害であることが分かった。これらのエフェクターT細胞は、その後、活性化誘導性細胞死(AICD)に誘導された。対照的に、IL-2療法は、収縮期には非常に有効であり、ウイルス特異的T細胞の生存及び活性化をもたらした。IL-2療法は、静止メモリーT細胞の活性化及び増殖を促進することが観察された。しかしながら、IL-2療法には欠点がある。IL-2は、半減期が短いため、複数回投与が必要であり、例えば、毎日の負荷投与と、それに続く週1回の投与が必要であり、このことは、関連する有害事象が生じたり、免疫原性が増加したりするリスクにつながる。加えて、高用量IL-2の外因性投与は、CD25陽性内皮細胞に結合することが予想される。実際、肺水腫及び血管漏出症候群は、腫瘍学における高用量IL-2療法の主要な重篤な有害事象である。これらの問題点を克服する技術の開発が、IL-2を治療薬として使用する上で非常に重要である。
【0017】
当業者であれば、IL-2及びウイルス感染症の治療に関して上述した原理が、IL-2及び細菌感染症の治療または癌の治療にも等しく適用可能であることを認識できるであろう。
【0018】
生体分子工学の分野における進歩により、研究者は、分子設計戦略を適用して、天然に存在するタンパク質を改変し、標的疾患治療のための新しい分子を生成するための前例のない機会を得ることができるようになった。或る分野では、サイトカインをベースにした薬剤や、抗体をベースにした薬剤などの免疫療法薬の開発は、進歩した技術及びタンパク質工学からの知見によって後押しされている。したがって、特定の疾患状態、これに限定しないが、例えば、ウイルス感染、細菌感染、及び癌におけるIL-2の機能を調節するために使用することができる操作された抗IL-2抗体の開発が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示の一態様では、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗IL-2抗体であって、
重鎖可変領域(VH)は、重鎖相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
軽鎖可変領域(VL)は、軽鎖相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
重鎖相補性決定領域(HCDR)及び軽鎖相補性決定領域(LCDR)のアミノ酸配列は、
(a)HCDR1が配列番号38のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号40のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号41のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号42のアミノ酸配列を含み、かつ、LCDR3が配列番号43のアミノ酸配列を含むか、
(b)HCDR1が配列番号44のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号45のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号46のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号47のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号48のアミノ酸配列を含み、かつ、LCDR3が配列番号49のアミノ酸配列を含むか、
(c)HCDR1が配列番号50のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号51のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号52のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号53のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号54のアミノ酸配列を含み、かつ、LCDR3が配列番号55のアミノ酸配列を含むか、
(d)HCDR1が配列番号56のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号57のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号58のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号59のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号60のアミノ酸配列を含み、かつ、LCDR3が配列番号61のアミノ酸配列を含むか、または、
(e)HCDR1が配列番号62のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号63のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号64のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号65のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号66のアミノ酸配列を含み、かつ、LCDR3が配列番号67のアミノ酸配列を含む、抗体が提供される。
【0020】
関連する別の態様では、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は、
(a)重鎖可変領域(VH)が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号11のアミノ酸配列を含むか、
(b)重鎖可変領域(VH)が配列番号12のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号13のアミノ酸配列を含むか、
(c)重鎖可変領域(VH)が配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号15のアミノ酸配列を含むか、
(d)重鎖可変領域(VH)が配列番号16のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号17のアミノ酸配列を含むか、
(e)重鎖可変領域(VH)が配列番号18のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号19のアミノ酸配列を含むか、
(f)重鎖可変領域(VH)が配列番号20のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号21のアミノ酸配列を含むか、
(g)重鎖可変領域(VH)が配列番号22のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号23のアミノ酸配列を含むか、
(h)重鎖可変領域(VH)が配列番号24のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号25のアミノ酸配列を含むか、
(i)重鎖可変領域(VH)が配列番号26のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号27のアミノ酸配列を含むか、または、
(j)重鎖可変領域(VH)が配列番号36のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号37のアミノ酸配列を含む。
【0021】
関連する別の態様では、本開示の抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、F(ab´)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体を含む。
【0022】
関連する別の態様では、本開示の抗体は、Fcγ受容体への結合を減少させる突然変異を有する重鎖を含む。関連するさらに別の態様では、本開示の抗体は、重鎖配列と、軽鎖配列とを含み、重鎖配列及び軽鎖配列は、(a)配列番号68に記載の重鎖配列及び配列番号69に記載の軽鎖配列、(b)配列番号70に記載の重鎖配列及び配列番号71に記載の軽鎖配列、または、(c)配列番号72に記載の重鎖配列及び配列番号73に記載の軽鎖配列、を含む。
【0023】
本開示の一態様では、上記の本開示の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。関連する別の態様では、本開示の組成物は、約pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、ヒスチジン緩衝液及びクエン酸緩衝液から選択される緩衝液を含む。関連するさらに別の態様では、本開示の組成物は、スクロース、メチオニン、またはPS80のうちの少なくとも1つ、または、それらの任意の組み合わせをさらに含む。関連するさらに別の態様では、本開示の組成物は、IL-2をさらに含む。
【0024】
本開示の一態様では、抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列が、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列が提供される。関連する別の態様では、抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする単離ポリヌクレオチド配列を含むベクターであって、重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列が、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36に記載されたアミノ酸配列を含む、ベクターが提供される。関連するさらに別の態様では、抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする単離ポリヌクレオチド配列を含むベクターを含む宿主細胞であって、重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列が、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36に記載されたアミノ酸配列を含む、宿主細胞が提供される。
【0025】
本開示の一態様では、抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、 軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列が提供される。関連する別の態様では、抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列を含むベクターであって、軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37に記載されたアミノ酸配列を含む、ベクターが提供される。関連するさらに別の態様では、抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列を含むベクターを含む宿主細胞であって、軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37に記載されたアミノ酸配列を含む、宿主細胞が提供される。
【0026】
本開示の一態様では、抗IL-2抗体scFvをコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、配列番号1、2、3、4、5、31、32、33、34、または35に記載されている、単離ポリヌクレオチド配列が提供される。関連する別の態様では、抗IL-2抗体scFvをコードする単離ポリヌクレオチド配列を含むベクターであって、単離ポリヌクレオチド配列が配列番号1、2、3、4、5、31、32、33、34、または35に記載されている、ベクターが提供される。関連するさらに別の態様では、抗IL-2抗体scFvをコードする単離ポリヌクレオチド配列を含むベクターを含む宿主細胞であって、単離ポリヌクレオチド配列が配列番号1、2、3、4、5、31、32、33、34、または35に記載されている、宿主細胞が提供される。
【0027】
本開示の一態様では、対象における疾患または状態を治療する方法であって、上記の本開示の抗IL-2抗体を含む組成物を対象に投与するステップを含み、抗体が、免疫細胞のサブセットの分化成長を促進し、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響を低減させ、それによって、対象における疾患または状態を治療する、方法が提供される。
【0028】
関連する別の態様では、本開示の組成物は、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む。
【0029】
関連する別の態様では、疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を含む。関連するさらに別の態様では、ウイルス感染症は、SARS-CoV-2;ノロウイルス;ロタウイルス;A型、B型、C型、D型、またはE型の肝炎ウイルス;狂犬病ウイルス;西ナイルウイルス;エンテロウイルス;エコーウイルス;コクサッキーウイルス;単純ヘルペスウイルス(HSV);HSV-2;水痘帯状疱疹ウイルス;蚊媒介ウイルス;アルボウイルス;セントルイス脳炎ウイルス;カリフォルニア脳炎ウイルス;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);ポリオウイルス;ジカウイルス;風疹ウイルス;サイトメガロウイルス;ヒトパピローマウイルス(HPV);エンテロウイルスD68;重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス;中東呼吸器症候群コロナウイルス;エプスタイン・バー・ウイルス;インフルエンザウイルス;呼吸器合胞体ウイルス;JCウイルスを含むポリオーマウイルス;BKウイルス;エボラウイルス;デングウイルス;またはそれらの任意の組み合わせによって引き起こされる。
【0030】
関連する別の態様では、状態は、免疫系が弱った状態を含み、状態の治療は、免疫系を予防的に高めることを含む。関連するさらに別の態様では、状態は、IL-2誘導性肺水腫、またはIL-2誘導性血管漏出を含む。
【0031】
関連する別の態様では、状態は、対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を含む。関連するさらに別の態様では、遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む。関連するさらに別の態様では、遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0032】
関連する別の態様では、免疫細胞は、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはナチュラルキラーT細胞のうちの1以上を含む。
【0033】
関連するさらに別の態様では、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響は、制御性T細胞の活性化、CD25+Tエフェクター細胞のアポトーシス、IL-2誘導性肺水腫、IL-2誘導性肺炎、またはIL-2誘導性血管漏出のうちの1以上を含む。
【0034】
関連するさらに別の態様では、抗IL-2抗体は、CD25へのIL-2の結合を阻害する。
【0035】
関連するさらに別の態様では、対象は、1以上の免疫チェックポイントを標的とする1以上の免疫チェックポイント阻害剤でさらに治療される。関連するさらに別の態様では、対象は、抗IL-2抗体による治療と同時に、抗IL-2抗体による治療の前に、または、抗IL-2抗体による治療の後に、免疫チェックポイント阻害剤で治療される。関連するさらに別の態様では、免疫チェックポイントは、PD-1、PDL-1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、B7-H3、CD73、LAG3、CD27、CD70、4-1BB、GITR、OX40、SIRP-α(CD47)、CD39、ILDR2、VISTA、BTLA、VTCN-1、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0036】
本開示の一態様では、対象を免疫化する方法であって、アジュバントを含むワクチンを投与するステップを含み、アジュバントは、IL-2抗体アジュバントを含み、IL-2抗体アジュバントは、請求項1に記載の抗IL-2抗体を含む、方法が提供される。関連する別の態様では、IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む。関連するさらに別の態様では、対象は、免疫系が弱っている。
【0037】
関連する別の態様では、対象は、該対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を有する。関連するさらに別の態様では、遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む。関連するさらに別の態様では、遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本特許または本出願は、少なくとも1つのカラー図面を含んでいる。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開の写しは、請求し必要な手数料を支払うことで、特許商標庁から提供される。
【0039】
本開示の操作された抗IL-2抗体は、その作製及び使用方法との両方に関して、その目的、特徴、及び利点と共に、以下の詳細な説明を参照することによって、最もよく理解することができるであろう。
【0040】
【
図1】
図1は、IL-2の作用機序と、免疫応答の制御におけるIL-2の2つの役割を示す概略図である。
【
図2】
図2は、抗IL-2抗体指向免疫療法を示す概略図である。
【
図3A】
図3A及び
図3Bは、COVID-19感染の進行と、アジュバント介入としての潜在的な抗IL-2療法を示す概略図である。
図3Aは、「Shi Y et al., (2020) COVID-19 infection: the perspectives on immune responses. Cell Death & Differentiation volume 27, pages1451-1454 (doi:10.1038/s41418-020-0530-3), Fig. 1.」から引用した。
【
図3B】
図3A及び
図3Bは、COVID-19感染の進行と、アジュバント介入としての潜在的な抗IL-2療法を示す概略図である。
【
図4A】
図4Aは、ヒトIL-2に結合するJES6.1抗体の代表的なSPRセンサグラムを示す。
【
図4B】
図4Bは、マウスIL-2に結合するJES6.1抗体の代表的なSPRセンサグラムを示す。
【
図4C】
図4Cは、ヒトIL-2に結合するJES6.1RMC抗体の代表的なSPRセンサグラムを示す。
【
図4D】
図4Dは、マウスIL-2に結合するJES6.1RMC抗体の代表的なSPRセンサグラムを示す。
【
図5A】
図5A~
図5Cは、scFvフォーマットでJES6.1抗体を発現するYSDクローンのIL-2結合の結果を示す。X軸の蛍光レベルはJes6.1のscFv発現レベルに対応し、Y軸の蛍光レベルはヒトまたはマウスのIL-2の結合に対応する。
図5Aは、IL-2を含まない陰性対照を示す。
【
図5B】
図5Bは、1000nMのヒトIL-2を含むJES6.1YSDクローンを示す。
【
図5C】
図5Cは、100nMの標識JES6.1と共にインキュベートされ、マウスIL-2を発現するYSDを示す。
【
図6A】
図6Aは、単離された酵母表面ディスプレイクローンのIL-2(0.1nM)への結合を示す。平均蛍光強度(Em 655nM)を酵母表面発現量に対して正規化した。陰性YSDクローンを500nMのhIL-2で標識した。
【
図6B】
図6Bは、YSDクローンのOX40/PD-1/TNFR2の混合物への非特異的結合を示す。クローンを500nMの混合物で標識した。TNFR2結合酵母クローンを陽性対照として用いた。
【
図7】
図7は、BDG17.023IgGの精製を示す。抗体を、GE Superdex200 10/300増加(CV=25ml)で、PBS緩衝液中で0.5ml/分で実行した。1番目のピーク(0.38CV)は典型的な凝集体に相当し、約12.9mlの保持を有する2番目のピーク(0.51CV)は通常のヒトIgGに特有のものである。
【
図8A】
図8Aは、BDG17.023IgGのhIL-2への結合キネティクスを示す。
【
図8B】
図8Bは、BDG17.023IgGのmIL-2への結合キネティクスを示す。
【
図9】
図9は、BDG17.023/IL-2複合体による受容体識別のSPR応答のトレースを示す。BDG17.023をCM5チップに固定し、hIL-2(60RU)、CD122(20RU)、及びCD25(0RU)を矢印で示すように流した。
【
図10A】
図10A~
図10Dは、JES6.1/mIL-2複合体及びBDG17.023/hIL-2複合体で処理したマウスの脾臓免疫細胞集団を示す。
図10Aは、JES6.1/mIL-2複合体で処理したマウス由来の免疫細胞集団のパーセンテージを示す。
【
図10B】
図10Bは、JES6.1/mIL-2複合体で処理したマウスのメモリー表現型エフェクターT細胞(MP)CD8+/Treg比を示す。
【
図10C】
図10Cは、BDG17.023/hIL-2複合体で処理したマウス由来の免疫細胞集団のパーセンテージを示す。
【
図10D】
図10Dは、BDG17.023/hIL-2複合体で処理したマウスのMPCD8+/Treg比を示す。
【
図11】
図11は、JES6.1のクローン1(17.021)、クローン2(17.022)、クローン4(17.023)、クローン5(17.030)、及びクローン6(17.035)の重鎖可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。
【
図12】
図12は、JES6.1のクローン1(17.021)、クローン2(17.022)、クローン4(17.023)、クローン5(17.030)、及びクローン6(17.035)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。
【
図13A】
図13Aは、ヒト化クローン17.014、クローン17.038、クローン17.043、クローン17.053、及びクローン17.054の重鎖可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。黒色の三角形はIMGT CDRの位置を示す。太字/斜体は、それぞれABR/CDRの位置を示す。
【
図13B】
図13Bは、ヒト化クローン17.014、クローン17.038、クローン17.043、クローン17.053、及びクローン17.054の軽鎖可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。黒色の三角形はIMGT CDRの位置を示す。太字/斜体は、それぞれABR/CDRの位置を示す。
【
図14A】
図14A~
図14Gは、ヒトIL-2に対する各抗体の結合キネティクスを示す。表面プラズモン共鳴(SPR)センサグラムは、ヒトIL-2に対する抗IL-2抗体クローンであるBDG17.038の結合キネティクスをトレースした。BDG17.038の結合キネティクスは、マルチサイクル法によって測定した。
【
図14B】表面プラズモン共鳴(SPR)センサグラムは、ヒトIL-2に対する抗IL-2抗体クローンであるBDG17.043の結合キネティクスをトレースした。BDG17.043の結合キネティクスは、マルチサイクル法によって測定した。
【
図14C】表面プラズモン共鳴(SPR)センサグラムは、ヒトIL-2に対する抗IL-2抗体クローンであるBDG17.053の結合キネティクスをトレースした。BDG17.053の結合キネティクスは、単回サイクル法によって測定した。
【
図14D】表面プラズモン共鳴(SPR)センサグラムは、ヒトIL-2に対する抗IL-2抗体クローンであるBDG17.054の結合キネティクスをトレースした。BDG17.054の結合キネティクスは、単回サイクル法によって測定した。
【
図14E】表面プラズモン共鳴(SPR)センサグラムは、ヒトIL-2に対する抗IL-2抗体クローンであるBDG17.066の結合キネティクスをトレースした。BDG17.066の結合キネティクスは、マルチサイクル法によって測定した。
【
図14F】表面プラズモン共鳴(SPR)センサグラムは、ヒトIL-2に対する抗IL-2抗体クローンであるBDG17.067の結合キネティクスをトレースした。BDG17.067の結合キネティクスは、マルチサイクル法によって測定した。
【
図14G】表面プラズモン共鳴(SPR)センサグラムは、ヒトIL-2に対する抗IL-2抗体クローンであるBDG17.069の結合キネティクスをトレースした。BDG17.069の結合キネティクスは、マルチサイクル法によって測定した。
【
図15A】
図15A及び
図15Bは、カニクイザルIL-2に対する各抗体の結合キネティクスを示す。表面プラズモン共鳴(SPR)センサグラムは、カニクイザルIL-2に対する抗IL-2抗体クローンであるBDG17.067の結合キネティクスをトレースした。
【
図15B】表面プラズモン共鳴(SPR)センサグラムは、カニクイザルIL-2に対する抗IL-2抗体クローンであるBDG17.069の結合キネティクスをトレースした。
【
図16A】
図16A~
図16Gは、各IgGの融点の示差走査蛍光分析(DSF)の分析結果を示す。薄緑色の破線はTonsetを示し、緑色の太い破線はTm1を示し、該当する場合にはTm2を示す。分析した抗IL-2クローンは、BDG17.038である。
【
図16B】分析した抗IL-2クローンは、BDG17.043である。
【
図16C】分析した抗IL-2クローンは、BDG17.053である。
【
図16D】分析した抗IL-2クローンは、BDG17.054である。
【
図16E】分析した抗IL-2クローンは、BDG17.066である。
【
図16F】分析した抗IL-2クローンは、BDG17.067である。
【
図16G】分析した抗IL-2クローンは、BDG17.069である。
【
図17A】
図17A及び
図17Bは、SPR応答のトレースによる各抗体/IL-2複合体の受容体識別を示す。抗体をCM5チップに固定化し、hIL-2、CD122、及びCD25を矢印で示すようにストリーミングした。
図17Aは、SPRチップへの化合物の注入の概略的な順序を示し、CD122に結合するが、CD25には結合しない、ヒトIL-2(hIL2)と複合体を形成した連続的な抗IL-2抗体を表す。
【
図18A-1】
図18Aは、抗ヒトIL-2抗体(クローン17.043及びクローン17.054)がインビボで強力な免疫刺激効果を示すことを表す。抗IL-2抗体/hIL-2複合体はエフェクター細胞集団を増加させるが、制御性T細胞に対する影響は認められない。
図18Aは、C57BL/6マウスに、0.5μgのhIL-2と予め複合体化した抗IL-2抗体(10μg)を4日間毎日投与した例を示す。5日目に脾細胞を単離し、免疫細胞集団をフローサイトメトリーで分析した。各実験群の平均値を示した(各群のn=6)。リンパ球は、側方散乱及び前方散乱のパラメータにしたがってゲート制御され、その後の免疫細胞亜集団は、以下のようにゲート制御された:Treg(CD45+、CD3+、CD4+、CD25+、FoxP3+)、CD8T細胞(CD45+、CD3+、CD8+、CD122+、CD25-)、NKT細胞(CD45+、CD3+、CD49b+、NK1.1+)、NK細胞(CD45+、CD3-、CD49b+、NK1.1+)。
【
図18A-2】
図18Aは、抗ヒトIL-2抗体(クローン17.043及びクローン17.054)がインビボで強力な免疫刺激作用を示すことを表す。抗IL-2抗体/hIL-2複合体はエフェクター細胞集団を増加させるが、制御性T細胞に対する影響は認められない。
図18Aは、C57BL/6マウスに、0.5μgのhIL-2と予め複合体化した抗IL-2抗体(10μg)を4日間毎日投与した例を示す。5日目に脾細胞を単離し、免疫細胞集団をフローサイトメトリーで分析した。各実験群の平均値を示した(各群のn=6)。リンパ球は、側方散乱及び前方散乱のパラメータにしたがってゲート制御され、その後の免疫細胞亜集団は、以下のようにゲート制御された:Treg(CD45+、CD3+、CD4+、CD25+、FoxP3+)、CD8T細胞(CD45+、CD3+、CD8+、CD122+、CD25-)、NKT細胞(CD45+、CD3+、CD49b+、NK1.1+)、NK細胞(CD45+、CD3-、CD49b+、NK1.1+)。
【
図18B-1】
図18Bは、抗ヒトIL-2抗体(クローン17.043及びクローン17.054)がインビボで強力な免疫刺激効果を示すことを表す。抗IL-2抗体/hIL-2複合体はエフェクター細胞集団を増加させるが、制御性T細胞に対する影響は認められない。
図18Bは、C57BL/6マウスに、1.25μgのhIL-2と予め複合体化した抗IL-2抗体(25μg)を4日間毎日投与した例を示す。5日目に脾細胞を単離し、免疫細胞集団をフローサイトメトリーで分析した。各実験群の平均値を示した(各群のn=6)。リンパ球は、側方散乱及び前方散乱のパラメータにしたがってゲート制御され、その後の免疫細胞亜集団は、以下のようにゲート制御された:Treg(CD45+、CD3+、CD4+、CD25+、FoxP3+)、CD8T細胞(CD45+、CD3+、CD8+、CD122+、CD25-)、NKT細胞(CD45+、CD3+、CD49b+、NK1.1+)、NK細胞(CD45+、CD3-、CD49b+、NK1.1+)。
【
図18B-2】
図18Bは、抗ヒトIL-2抗体(クローン17.043及びクローン17.054)がインビボで強力な免疫刺激効果を示すことを表す。抗IL-2抗体/hIL-2複合体はエフェクター細胞集団を増加させるが、制御性T細胞に対する影響は認められない。
図18Bは、C57BL/6マウスに、1.25μgのhIL-2と予め複合体化した抗IL-2抗体(25μg)を4日間毎日投与した例を示す。5日目に脾細胞を単離し、免疫細胞集団をフローサイトメトリーで分析した。各実験群(各群n=6)の平均値を示した。リンパ球は、側方散乱及び前方散乱のパラメータにしたがってゲート制御され、その後の免疫細胞亜集団は、以下のようにゲート制御された:Treg(CD45+、CD3+、CD4+、CD25+、FoxP3+)、CD8T細胞(CD45+、CD3+、CD8+、CD122+、CD25-)、NKT細胞(CD45+、CD3+、CD49b+、NK1.1+)、NK細胞(CD45+、CD3-、CD49b+、NK1.1+)。
【
図19A】
図19A及び
図19Bは、抗ヒトIL-2抗体(クローン17.043及びクローン17.054)がインビボで強力な用量依存性免疫刺激作用を示すことを表す。
図19Aは、C57BL/6健康マウスに、抗IL-2抗体/hIL-2複合体(それぞれ25μg/1.25μg)を4日間毎日投与した例を示す。5日目に脾細胞を単離し、免疫細胞集団をフローサイトメトリーで分析した。リンパ球は、側方散乱及び前方散乱パラメータにしたがってゲート制御され、その後の免疫細胞亜集団は、以下のようにゲート制御された:Treg(CD45+、CD3+、CD4+、CD25+、FoxP3+)、CD8T細胞(CD45+、CD3+、CD8+、CD122+、CD25-)、NKT細胞(CD45+、CD3+、CD49b+、NK1.1+)、NK細胞(CD45+、CD3-、CD49b+、NK1.1+)。
【
図19B】
図19A及び
図19Bは、抗ヒトIL-2抗体(クローン17.043及びクローン17.054)がインビボで強力な用量依存性免疫刺激作用を示すことを表す。
図19Bは、抗ヒトIL-2抗体が、用量依存性様式で強力なインビボ免疫刺激効果を示すことを表す。C57BL/6健常マウスに、抗IL-2抗体/hIL-2複合体の用量を適宜増加させながら毎日投与した。5日目に、脾細胞を単離し、免疫細胞集団をフローサイトメトリーで分析した。リンパ球は、側方散乱及び前方散乱パラメータにしたがってゲート制御され、その後の免疫細胞亜集団は、以下のようにゲート制御された:Treg(CD45+、CD3+、CD4+、CD25+、FoxP3+)、CD8T細胞(CD45+、CD3+、CD8+、CD122+、CD25-)、NKT細胞(CD45+、CD3+、CD49b+、NK1.1+)、NK細胞(CD45+、CD3-、CD49b+、NK1.1+)。
【
図20A】
図20A及び
図20Bは、抗ヒトIL-2抗体(クローン17.043及びクローン17.054)がインビボで安全な投与レジメンを示すことを表す。
図20Aは、C57BL/6健康マウスに、抗IL-2抗体/hIL-2複合体(それぞれ10μg/0.5μg)を4日間毎日投与した例を示す。実験終了後、マウスの体重を測定し、試験開始時の各マウスの体重に対する体重変化率をそれぞれ算出した。各実験群(各群n=6)の体重(BW)変化の平均パーセントを示した。
【
図20B】
図20A及び
図20Bは、抗ヒトIL-2抗体(クローン17.043及びクローン17.054)がインビボで安全な投与レジメンを示すことを表す。
図20Bは、C57BL/6健康マウスに、抗IL-2抗体/hIL-2複合体(それぞれ25μg/1.25μg)を4日間毎日投与した例を示す。実験終了後、マウスの体重を測定し、試験開始時の各マウスの体重に対する体重変化率をそれぞれ算出した。各実験群(各群n=6)の体重(BW)変化の平均パーセントを示した。
【
図21A】
図21A及び
図21Bは、抗IL-2抗体(クローン17.043及びクローン17.054)が、許容可能な安全性プロファイルでI/O耐性腫瘍モデルにおける腫瘍増殖を阻害することを示す。0日目に、C57BL/6健常マウスにB16F10メラノーマ腫瘍細胞を接種した。5日目に、マウスを実験群にランダム化し(各群n=10)、抗IL-2抗体/hIL-2複合体(それぞれ20μg/1μg)またはPBSを4日間毎日投与した。
図21Aは、各実験群の腫瘍体積の変化を示す。試験開始時の各マウスの体重に対する体重変化率を算出した。
【
図21B】
図21A及び
図21Bは、抗IL-2抗体(クローン17.043及びクローン17.054)が、許容可能な安全性プロファイルでI/O耐性腫瘍モデルにおける腫瘍増殖を阻害することを示す。0日目に、C57BL/6健常マウスにB16F10メラノーマ腫瘍細胞を接種した。5日目に、マウスを実験群にランダム化し(各群n=10)、抗IL-2抗体/hIL-2複合体(それぞれ20μg/1μg)またはPBSを4日間毎日投与した。
図21Bは、各実験群の体重の変化を示す。試験開始時の各マウスの体重に対する体重変化率を算出した。
【
図22A】
図22A~
図22Gは、抗IL-2抗体クローンBDG17.069の異なる製剤を分析した結果を示す。
図22Aは、T=0におけるBDG17.069パラメータを示す。
【
図22B】
図22Bは、T=0及び40°Cで1週間及び2週間インキュベーションした後の、BDG17.069の外観、pH、タンパク質濃度、及び亜視覚的粒子形成を示す。
【
図22C】
図22Cは、T=0及び40°Cで1週間及び2週間インキュベーションした後の、BDG17.069のSEC、キャリパーSDS、及びキャピラリー等電点電気泳動分析を示す。
【
図22D】
図22Dは、T=0、及び、300rpmでの3日間の撹拌後での、BDG17.069の外観、pH、タンパク質濃度、及び準可視粒子の形成を示す。
【
図22E】
図22Eは、T=0、及び、300rpmでの3日間の撹拌後での、BDG17.069のSEC、キャリパーSDS、及びキャピラリー等電点電気泳動分析を示す。
【
図22F】
図22Fは、T=0、及び、凍結/融解の5サイクル後の、BDG17.069の外観、pH、タンパク質濃度、及び準可視粒子の形成を示す。
【
図22G】
図22Gは、T=0、及び、凍結/融解の5サイクル後の、BDG17.069のSEC、キャリパーSDS、及びキャピラリー等電点電気泳動分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本開示は、予め定義された結合エピトープに対し高い親和性(例えば、12.7pM-48pM)をもってヒトIL-2に結合する、操作された抗ヒトIL-2抗体を提供する。抗体は、CD25の結合を完全に阻止しながらも、CD122へのIL-2の結合を残すようにIL-2に結合し、それによって、CD25発現細胞(例えば、制御性T細胞、短命細胞障害性T細胞、肺内皮細胞、及び血管内皮細胞)と相互作用することなくエフェクター細胞を直接活性化して増殖させることにより、免疫刺激に対する免疫反応を調節する。このように、抗体/IL-2複合体は、NK細胞、セントラルメモリーT細胞(メモリーT細胞)、及びウイルスまたは腫瘍特異的T細胞などのエフェクター細胞を増殖及び活性化させることによって、ウイルス負荷または腫瘍を排除する強固な免疫応答を促進する一方で、ウイルス/腫瘍の排除にとって重要な短寿命CD25+細胞障害性T細胞のIL-2活性化誘導細胞死を抑制する。また、抗体/IL-2複合体は、免疫系の調節機構によって引き起こされる免疫抑制を低減させるであろう。さらに、抗体/IL-2複合体は、IL-2と血管及び肺のCD25発現細胞との望ましくない相互作用を阻止し、それによって、ウイルス性肺感染症のモデルにおいて頻繁に見られるIL-2誘導性血管漏出及びIL-2誘導性肺水腫という重症症候群を予防するであろう。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された抗IL-2抗体の活性は、それが結合するように設計された、予め定義されたエピトープに依存する。
【0042】
当業者は、特定の実施形態において、本明細書で使用される「抗IL-2抗体」なる用語が「抗ヒトIL-2抗体」なる用語と交換可能であり、すべて同一の性質及び意味を有することを理解するであろう。同様に、全体を通して使用されるように、特定の実施形態において、「IL-2」なる用語は、「ヒトIL-2」用語と交換可能であり、すべて同一の性質及び意味を有する。
【0043】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗ヒトIL-2抗体は、IL-2受容体α(IL-2Rα、すなわち、CD25)サブユニットとのIL-2の結合を阻害し、したがって、三量体(トリマー)IL-2Rαβγ受容体への結合を阻害する。或る実施形態では、三量体IL-2受容体(IL-2Rαβγ)とのIL-2の結合を阻害する抗IL-2抗体は、二量体(ダイマー)IL-2受容体(IL-2Rβγ)とのIL-2の結合を阻害しない。
【0044】
図2は、抗IL-2抗体指向型の免疫療法の概略図である。様々な細胞集団に対するIL-2の標的化は、免疫抑制または免疫活性化に向けた免疫応答の調節に使用することができる。本明細書に開示される抗ヒトIL-2抗体は、CD25へのIL-2の結合を阻害するIL-2エピトープに、高い親和性をもって結合するように設計されている。結果として、IL-2は、高レベルのCD25を発現する制御性T細胞または短寿命CD8
+細胞傷害性T細胞への結合が妨げられるが、エフェクターT細胞に優先的に結合することにより、ウイルスまたは細菌の排除を改善するための免疫反応を高める。さらに、CD25を発現する内皮細胞へのIL-2の結合も阻害されるので、IL-2誘導性肺水腫及びIL-2誘導性血管漏出も予防されるであろう。
【0045】
一実施形態では、本開示は、T細胞免疫応答を高め、かつIL-2によって誘導される急性肺炎の重度の水腫症候群を予防するように設計された抗IL-2抗体によって、疾患(例えば、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌)または状態(例えば、これに限定しないが肺水腫などのIL-2によって引き起こされる望ましくない状態)を治療する方法を提供する。抗IL-2抗体は、IL-2受容体のα鎖(CD25)へのIL-2の結合を阻害する予め定義されたエピトープにおいて、高い親和性をもってヒトIL-2に特異的に結合する一方で、受容体の主要なシグナル伝達のβ鎖及びγ鎖複合体(CD122/CD132)への結合を温存する。その結果、このような抗体の存在下では、IL-2は、ウイルス/腫瘍の排除を担う免疫細胞に導かれ、かつ、免疫反応を鈍らせ、または、浮腫を生じさせる細胞から遠ざけられる。このIL-2/抗体免疫複合体の形成により、IL-2はナイーブTリンパ球、メモリーTリンパ球、NK細胞、ナチュラルキラーTリンパ球に特異的に結合し、活性化する一方で、制御性T細胞の活性化、短寿命CD25
+細胞障害性Tエフェクター細胞のアポトーシスを抑制する。全体として、例えばウイルスまたは腫瘍の排除などの効果的な免疫反応が最終的に得られる。さらに、この治療は、内皮CD25発現細胞へのIL-2結合によって引き起こされる毒性を予防することができる。したがって、一実施形態では、IL-2を、本明細書に開示される抗IL-2抗体の標的とすることは、ウイルスまたは細菌感染症によって引き起こされる呼吸器疾患の有効な治療となるであろう。別の実施形態では、本明細書に開示される抗IL-2抗体による治療は、内皮CD25発現細胞へのIL-2結合によって引き起こされる毒性、例えば肺水腫、またはIL-2誘導性血管漏出を予防するのに有効であろう。さらに重要なことに、特定の病原体(例えば、ウイルス抗原)に依存しない免疫エフェクター細胞の一般的な免疫活性化及び増殖に向けて、IL-2免疫刺激を強化することは、未知の病原体による将来のウイルスまたは細菌のパンデミックに対して有効な戦略である(
図3A及び
図3B)。
【0046】
一実施形態では、本明細書に開示される方法は、SARS Co-V2によって引き起こされる感染に対して有用であろう。SARS Co-V2は、肺細胞のアンジオテンシン変換酵素2に結合して、ウイルスの侵入及び複製を可能にする。肺のウイルス感染に対する免疫応答は、免疫系の自然免疫と獲得免疫との両方から構成されている。多くの呼吸器系ウイルスと同様に、肺からのSARS-CoV2の排除は、T細胞免疫反応に依存すると予想される。サイトカインIL-2はT細胞の増殖にとって重要であり、ウイルスに対する免疫反応において重要な役割を果たしている。しかし、IL-2は、内皮CD25発現細胞に結合することにより、刺激促進性(pro-stimulatory)だけでなく、肺水腫及び血管漏出症候群などの副作用を誘発する。
【0047】
図3A及び3Bは、COVID-19感染の進行と、アジュバント介入としての抗IL-2療法の可能性とを示す模式図である。
図3Aは、侵入したSARS Co-V2が非重症症状を引き起こし、潜伏期間後に防御免疫反応を誘発することを示している。感染の排除の成功は、感染者の健康状態に依存する。ウイルスに対する免疫反応が弱い人はウイルスの排除が難しいが、一方で、免疫反応が強すぎる人は肺水腫及びサイトカインによるその他の副作用を生じ得る。したがって、免疫反応を高め、肺水腫を予防する戦略が望まれている。高濃度のIL-2は、特に初期のウイルス排除にとって有益であるが、高濃度のIL-2は、IL-2とCD25発現内皮細胞との相互作用により、IL-2誘発性肺水腫及びIL-2誘発性血管漏出を引き起こす可能性がある。
図3Bは、結合してCD25/IL-2相互作用を阻害するように設計された抗ヒトIL-2抗体が、免疫エフェクター細胞の増殖を促進することによりウイルス排除を改善し、内皮細胞上に発現したCD25へのIL-2結合の負の影響を低減させ、それによって、IL-2誘導性肺水腫及びIL-2誘導性血管漏出を予防することが予測されることを示している。
【0048】
図1は、IL-2の作用機序と免疫反応の制御におけるその二重の役割についての概略図を示している。左のパネルは、IL-2が、親和性の異なる複数の形態のIL2-R(CD25、CD122、及びCD132)と相互作用する3つの結合エピトープ部位(α、β、γ)から構成されていることを示している。右のパネルは、異なるIL-2R複合体が異なるT細胞集団に発現しており、IL2に対するそれらの親和性の違いにより、IL-2の局所濃度が低い条件下では免疫抑制が可能になり、IL-2の局所濃度が上昇すると免疫刺激が可能になることを示している。
【0049】
以下の詳細な説明では、本明細書に開示される抗体の完全な理解を提供するために、多数の具体的な内容を記載する。しかしながら、本明細書に開示される抗体の調製及び使用は、或る場合には、これらの具体的な内容なしに実施され得ることが、当業者には理解されよう。他の例では、本明細書に示される開示を不明瞭にしないように、周知の方法、手順、及び構成要素について詳細には説明していない。
【0050】
本出願にわたって、様々な参考文献または出版物が引用されている。これらの文献または刊行物の開示は、本発明が属する技術の状態をより完全に説明するために、その全体が、参照により本願に組み込まれる。
【0051】
本明細書で使用するとき、「抗体」なる用語は、「免疫グロブリン」なる用語と互換的に使用され、すべて同一の性質及び意味を有する。抗体結合ドメインまたは抗原結合部位は、抗体の断片、または、抗体の1以上の断片の遺伝子的に操作された産物であり得、この断片は、標的抗原との特異的結合に関与する。「特異的結合」とは、目的の抗原に対して選択的に結合し、不要な相互作用や非特異的な相互作用と区別できることを意味する。例えば、平衡解離定数が10-5M以下、10-6M以下、または10-7M以下(平衡解離定数≦10-5、10-6、または10-7M)である場合、抗体はIL-2エピトープと特異的に結合すると言われている。いくつかの実施形態では、平衡解離定数は、10-8M以下または10-9M以下(平衡解離定数≦10-8、または10-9M)であってよい。いくつかのさらなる実施形態では、平衡解離定数は、10-10M以下、10-11M以下、または10-12M以下(平衡解離定数≦10-10、10-11、または10-12M)であってよい。いくつかの実施形態では、平衡解離定数は、10-5M~10-12M以下(平衡解離定数≦10-5M~10-12M)の範囲内であってもよい。
【0052】
本明細書で使用するとき、「抗体」なる用語は、これに限定しないが、例えばIgG、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、Fab断片、F(ab´)2断片、scFv断片、Fv断片、ナノボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及び単一ドメイン抗体を含む、結合特異性を保持する抗体断片を包含する(例えば、Hudson and Souriau, Nature Med. 9: 129-134 (2003)を参照)。また、これらの用語が当該技術分野で一般的に理解されているように、ヒト化抗体、霊長類化抗体、及びキメラ抗体も包含される。
【0053】
本明細書で使用するとき、「重鎖可変領域(VH)」なる用語は、「VHドメイン」または「VH」なる用語と互換的に使用され、すべて同一の意味及び性質を有する。本明細書で使用するとき、「軽鎖可変領域(VL)」なる用語は、「VLドメイン」または「VL」なる用語と互換的に使用され、すべて同一の意味及び品質を有する。当業者は、抗体についての「重鎖可変領域(VH)」すなわち「VH」が、フレームワーク領域としても知られる隣接するストレッチの間に介在する3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖の断片を包含することを認識するであろう。フレームワーク領域は相補性決定領域(CDR)よりも高度に保存されており、相補性決定領域(CDR)を支持するための足場を形成する。同様に、当業者は、抗体についての「軽鎖可変領域(VL)」すなわち「VL」が、フレームワーク領域の間に介在する3つの相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖の断片を包含することも認識するであろう。
【0054】
本明細書で使用するとき、「相補性決定領域」すなわち「CDR」なる用語は、重鎖可変領域(VH)または軽鎖可変領域(VL)の超可変領域を意味する。N末端から順に、重鎖または軽鎖ポリペプチドの各々は、「CDR1」、「CDR2」、及び「CDR3」と表記される3つの相補性決定領域(CDR)を有する。多くの抗原-抗体複合体の結晶構造解析により、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸残基が、結合した抗原との広範な接触を形成し、その中で最も広範な抗原接触は重鎖のCDR3との接触であることが明らかにされている。このように、相補性決定領域(CDR)領域は、抗原結合部位の特異性の主たる要因である。一実施形態では、抗原結合部位は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のそれぞれからの相補性決定領域(CDR)を含む、6つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0055】
本明細書では、「フレームワーク領域」すなわち「FR」なる用語は、重鎖可変領域(VH)または軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)を形作る4つの隣接したアミノ酸配列を指す。FR残基の一部は結合した抗原に接触するが、FR残基は主に、可変領域を抗原結合部位に折り畳む役割を担う。いくつかの実施形態では、可変領域を折り畳む役割を担うFR残基は、相補性決定領域(CDR)に対して直接隣接する残基を含む。FR内では、特定のアミノ残基及び特定の構造的特徴が、非常に高度に保存されている。この点に関して、すべての可変領域配列は、約90個のアミノ酸残基の内部ジスルフィドループを包含している。可変領域が抗原結合部位に折り畳まれると、相補性決定領域(CDR)は、抗原結合面を形成する突出したループモチーフとして表される。一般に、FRには、正確な相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列とは関係なく、相補性決定領域(CDR)ループの折り畳まれた形状を、特定の「標準的な」構造にする保存構造領域が存在することが認識されている。さらに、或るFR残基は、抗体の重鎖と軽鎖との相互作用を安定化させる非共有結合のドメイン間接触に関与することが知られている。
【0056】
Wu及びKabat(Tai Te Wu, Elvin A. Kabat. "An analysis of the sequences of the variable regions of bence jones proteins and myeloma light chains and their implications for antibody complementarity", Journal of Experimental Medicine, 132, 2, 8 (1970); Kabat EA, Wu TT, Bilofsky H, Reid-Miller M, Perry H. "Sequence of proteins of immunological interest" Bethesda: National Institute of Health; 1983. 323 (1983))は、 抗体ペプチド配列のアライメントのパイオニアであり、この点において彼らの貢献は大きかった。第1に、可変ドメイン間の配列の類似性を調べることにより、類似の3次元構造をとり、類似の機能的役割を果たし、隣接する残基と同様の相互作用をし、かつ、同様の化学環境に存在する限り、すべての脊椎動物種のすべての抗体において多かれ少なかれ相同性を有する、対応する残基を特定した。第2に、相同性を有する免疫グロブリン残基に同一の位置番号が割り当てられるペプチド配列番号付けシステムを考案した。当業者は、配列そのもの以外のいかなる実験データにも依存することなく、現在一般にKabatナンバリングと呼ばれている番号を、任意の可変ドメイン配列に明確に割り当てることができる。第3に、Kabat及びWuは、Kabatナンバリングされた各配列位置の変動性を計算したが、これは、可変ドメイン配列をアライメントさせたときに、少数または多数のアミノ酸が見つかることを意味する。彼らは、変動性の高い3つの連続した領域が、変動性の低い4つの連続した領域の中に組み込まれていることを確認した。Kabat及びWuは、これらの可変領域を構成する残基を正式に特定し、抗体と抗原との化学的相補性に結び付けて、これらを「相補性決定領域」(CDR)と命名した。抗原認識には関与していないが、可変領域の3次元的な折り畳みに関与している残りの可変性の低い領域は、現在では「フレームワーク領域」と呼ばれている。第4に、Kabat及びWuは、現在も維持されており、かつ当業者には周知である、抗体のペプチド及び核酸配列の公開データベースを確立した。
【0057】
Chothia及び共同研究者(Cyrus Chothia, Arthur M. Lesk. Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins. Journal of Molecular Biology, 196, 4, 8 (1987))は、Kabatの相補性決定領域(CDR)内の特定の部分領域が、アミノ酸配列のレベルでは大きな多様性を有しているにもかかわらず、ほぼ同一のペプチド骨格構造を有していることを見出した。これらの部分領域は、L1、L2及びL3、または、H1、H2、及びH3と命名され、「L」及び「H」は、それぞれ軽鎖領域及び重鎖領域を示している。これらの領域は、Kabatの相補性決定領域(CDR)と重複する境界を有するChothiaの相補性決定領域(CDR)と呼ばれることもある。
【0058】
最近の研究では、実質的にすべての抗体結合残基が構造的コンセンサス領域に含まれることが示されている(Kunik, V. et al., PloS Computational Biology 8(2): el002388 (February 2012))。いくつかの実施形態では、これらの領域は、抗体結合領域と呼ばれる。これらの領域は、抗体配列からも特定できることが示された。この目的のために、抗体の構造的コンセンサスを特定するための構造的アプローチの実装である「Paratome」が使用された(Ofran, Y. et al., J. Immunol. 757:6230-6235 (2008))。Paratomeによって特定された残基は実質的にすべての抗体結合部位を包含しているが、(一般的に使用される相補性決定領域(CDR)特定ツールによって特定された)相補性決定領域(CDR)は、そのかなりの部分を見逃している。Paratomeによって特定されたが、一般的な相補性決定領域(CDR)特定方法では特定されなかった抗体結合残基は、Paratome-ユニーク残基と呼ばれる。同様に、一般的な相補性決定領域(CDR)特定方法では特定されるが、Paratomeでは特定されない抗体結合残基は、CDR-ユニーク残基と呼ばれる。Paratome-ユニーク残基は、抗体-抗原相互作用にエネルギー的に大きく寄与しているが、CDR-ユニーク残基の寄与はかなり小さいことがわかる。これらの結果は、抗原結合部位の特定をより確実なものにする。
【0059】
IMGTは、international ImMunoGeneTics information systemである(Nucleic Acids Res. 2015 Jan; 43 (Database issue): D413-22. doi: 10.1093/nar/gku1056. Epub 2014 Nov 5 Free article. PMID: 25378316 LIGM:441 and Dev Comp Immunol. 2003 Jan;27(1):55-77)を参照)。IMGTは、免疫グロブリン及びT細胞受容体可変ドメインとIgスーパーファミリーV様ドメインについての独自のナンバリングシステムである(Lefranc et al., Dev Comp Immunol. 27: 55-77 (2003))。IMGTは、5以上のIG及びTcR可変領域配列のアライメントに基づき、FR及び相補性決定領域(CDR)のKabat定義、構造データ、及びChothiaの超可変ループの特徴付けを考慮して組み合わせた、これらのIG及びTcR可変ドメイン配列の統一したナンバリングシステムを提示している。IMGTは、抗体の普遍的なナンバリングスキームとして、当該技術分野ではよく知られていると考えられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)ドメインにおける潜在的な変異アミノ酸位置の特定には、IMGT解析システムを使用する。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)ドメインにおける潜在的な変異アミノ酸位置の特定には、Paratome解析システムを使用する。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)ドメインにおける潜在的な変異アミノ酸位置の特定には、Kabat解析システムを使用する。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)ドメインにおける潜在的な変異アミノ酸位置の特定には、Clothia解析システムを使用する。
【0061】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)ドメインに存在する変異アミノ酸位置の説明において、いくつかの実施形態では、IMGTナンバリングが使用される。重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)ドメインに存在する変異アミノ酸位置の説明において、いくつかの実施形態では、Paratomeナンバリングが使用される。重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)ドメインに存在する変異アミノ酸位置の説明において、いくつかの実施形態では、Kabatナンバリングが使用される。重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)ドメインに存在する変異アミノ酸位置の説明において、いくつかの実施形態では、Clothiaナンバリングが使用される。
【0062】
抗原結合配列は、通常、抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)内に配置される。例えば、これらの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を操作することにより、例えば異なる抗原または同一の抗原の異なるエピトープに結合する抗体またはその断片を作製する、新たな結合部位を作製してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、重鎖可変領域(VH)の配列、重鎖可変領域(VH)の配列、またはその両方を操作することにより、第2の抗原についての新たな結合部位が形成される。
【0063】
抗体は、これに限定しないが、相補性決定領域(CDR)、可変領域(Fv)、重鎖可変領域(VH)ドメイン、軽鎖可変領域(VL)ドメイン、単鎖可変領域(scFv)、及びFab断片などの様々なドメインを有して、あるいは様々な形態で存在していてもよい。
【0064】
当業者であれば、scFvは、短いリンカーペプチドによって連結された免疫グロブリンの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む融合ポリペプチドであり、リンカーは、例えば、10-約25のアミノ酸を有し得ることを理解するであろう。
【0065】
また、当業者であれば、抗体に関する「Fab」という用語は、一般に、単一の重鎖の可変領域及び第1定常領域にジスルフィド結合によって結合した単一の軽鎖(可変領域及び定常領域の両方)からなる抗体の部分を包含し、一方、F(ab′)2は、重鎖可変領域(VH)ドメイン及び軽鎖可変領域(VL)ドメインを含む軽鎖の断片を含むことを理解するであろう。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を含む、抗体分子全体を包含する。いくつかの実施形態では、抗体は、これに限定しないが、重鎖可変領域(VH)断片、軽鎖可変領域(VL)断片、Fab断片、F(ab´)2断片、scFv断片、Fv断片、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディなどの、結合特異性を保持する1以上の抗体断片を包含する。
【0067】
操作された抗IL-2抗体
【0068】
一実施形態では、本開示は、親の抗IL-2抗体にアミノ酸変異を導入することによって得られる操作された抗IL-2抗体を提供する。一実施形態では、1以上のアミノ酸変異は、CDR領域に導入される。別の実施形態では、1以上のアミノ酸変異は、フレームワーク(FR)領域内に導入される。さらに別の実施形態では、アミノ酸変異は、CDR領域とフレームワーク(FR)領域との両方に導入される。当業者であれば、当該技術分野で知られている様々な標準的技術を採用することにより、抗IL-2抗体にアミノ酸変異を導入した後、得られた改変された抗体をIL-2への結合の変化について試験することは容易であろう。標準的技術を用いることもできるが、新たに作成された抗体の結合パターンは予測できないので、機能性を判断するためには分析が必要である。
【0069】
或る実施形態では、本開示は、適切な条件下で二量化され得るVH及びVLドメインを含むポリペプチドを提供する。例えば、VH及びVLドメインを、適切な緩衝液中で結合させ、疎水性相互作用などの適切な相互作用により二量化することができる。別の実施形態では、VH及びVLドメインの二量化を促進することができる酵素、及び/または補因子を含む適切な緩衝液中でVH及びVLドメインを結合してもよい。別の実施形態では、VH及びVLドメインは、適切な試薬、及び/または触媒の存在下で互いに反応させることができる適切な媒体中で結合されてもよい。
【0070】
或る実施形態では、VH及びVLドメインは、例えば、これに限定しないが、定常領域、ヒンジ領域、リンカー領域、Fc領域、またはジスルフィド結合領域、またはそれらの任意の組み合わせなどの、より長いポリペプチド配列内に含まれる。定常ドメインとは、免疫グロブリン分子の定常部分の免疫グロブリンフォールドユニットであり、定常領域のドメインとも呼ばれる(例えば、CH1、CH2、CH3、CH4、Ck、Cl)。いくつかの実施形態では、より長いポリペプチドは、例えば、本明細書において生成されたポリペプチドがダイアボディまたはトリアボディを形成するために使用される場合、本明細書に開示された方法によって生成されたVH及びVLドメインの一方または両方の複数のコピーを含んでいてよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、Fc-ガンマ結合、すなわちFcγ受容体(FcγRs)への結合を減少させる少なくとも1つの突然変異を含む。いくつかの実施形態では、結合の減少は結合の消滅であり、Fcγ受容体への結合が検出可能である。いくつかの実施形態では、結合の減少は、Fcγ受容体への結合親和性を減少させる。いくつかの実施形態では、結合の減少は、Fcγ受容体へのオンレートを低下させる。いくつかの実施形態では、結合の減少は、Fcγ受容体へのオフレートを低下させる。いくつかの実施形態では、突然変異は、LALA変異としても知られているL234A、L235A突然変異を含む。いくつかの実施形態では、Fc-ガンマ結合を減少させる突然変異は、L234A、L235A突然変異に加えて、P329G突然変異を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体は、Fcγ受容体への結合を減少させる突然変異を含む重鎖を含む。
【0072】
一実施形態では、本開示は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む、操作された(または、改変された)抗IL-2抗体を提供する。一実施形態では、操作された抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、またはF(ab´)2を含み得る。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のサブクラスであり得る。別の実施形態では、操作された抗体は、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体を含み得る。
【0073】
一実施形態では、本開示は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つの配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、操作された(または、改変された)抗IL-2抗体を提供する。一実施形態では、操作された抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、またはF(ab´)2を含み得る。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のサブクラスであり得る。別の実施形態では、操作された抗体は、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体を含み得る。
【0074】
一実施形態では、本開示は、配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25、配列番号26及び27、または、配列番号36及び37のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、操作された(または、改変された)抗IL-2抗体を提供する。一実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、配列番号10及び11の配列を含む。一実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、配列番号12及び13の配列を含む。一実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、配列番号14及び15の配列を含む。一実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、配列番号16及び17の配列を含む。一実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、配列番号18及び19の配列を含む。一実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、配列番号20及び21の配列を含む。一実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、配列番号22及び23の配列を含む。一実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、配列番号24及び25の配列を含む。一実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、配列番号26及び27の配列を含む。一実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、配列番号36及び37の配列を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)含む単離抗IL-2抗体であって、重鎖可変領域(VH)は、重鎖相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、軽鎖可変領域(VL)は、軽鎖相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、重鎖相補性決定領域(HCDR)及び軽鎖相補性決定領域(LCDR)のアミノ酸配列は、(a)HCDR1が配列番号38のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号40のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号41のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号42のアミノ酸配列を含み、かつ、LCDR3が配列番号43のアミノ酸配列を含むか、(b)HCDR1が配列番号44のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号45のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号46のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号47のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号48のアミノ酸配列を含み、かつ、LCDR3が配列番号49のアミノ酸配列を含むか、(c)HCDR1が配列番号50のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号51のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号52のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号53のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号54のアミノ酸配列を含み、かつ、LCDR3が配列番号55のアミノ酸配列を含むか、(d)HCDR1が配列番号56のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号57のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号58のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号59のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号60のアミノ酸配列を含み、かつ、LCDR3が配列番号61のアミノ酸配列を含むか、または、(e)HCDR1が配列番号62のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号63のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号64のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号65のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号66のアミノ酸配列を含み、かつ、LCDR3が配列番号67のアミノ酸配列を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は、重鎖可変領域(VH)が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号11のアミノ酸配列を含むか、重鎖可変領域(VH)が配列番号12のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号13のアミノ酸配列を含むか、重鎖可変領域(VH)が配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号15のアミノ酸配列を含むか、重鎖可変領域(VH)が配列番号16のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号17のアミノ酸配列を含むか、重鎖可変領域(VH)が配列番号18のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号19のアミノ酸配列を含むか、重鎖可変領域(VH)が配列番号20のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号21のアミノ酸配列を含むか、重鎖可変領域(VH)が配列番号22のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号23のアミノ酸配列を含むか、重鎖可変領域(VH)が配列番号24のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号25のアミノ酸配列を含むか、重鎖可変領域(VH)が配列番号26のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号27のアミノ酸配列を含むか、または、重鎖可変領域(VH)が配列番号36のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域(VL)が配列番号37のアミノ酸配列を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖配列と、軽鎖配列とを含み、重鎖配列及び軽鎖配列は、配列番号68に記載の重鎖配列及び配列番号69に記載の軽鎖配列、配列番号70に記載の重鎖配列及び配列番号71に記載の軽鎖配列、または、配列番号72に記載の重鎖配列及び配列番号73に記載の軽鎖配列である。
【0078】
一実施形態では、操作された抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、またはF(ab´)2であり得る。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のサブクラスであり得る。別の実施形態では、操作された抗体は、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体の一部であり得る。
【0079】
一実施形態では、本開示はまた、抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列が、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列を提供する。別の実施形態では、本開示はまた、上記のポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。当業者であれば、本明細書に開示されるアミノ酸配列を考慮すると、アミノ酸配列をコードするベクターまたはプラスミドを容易に構築することができるであろう。別の実施形態では、本開示はまた、本明細書で提供されるベクターを含む宿主細胞を提供する。当業者であれば、用途や実験条件に応じて適切な宿主細胞を採用し、上記のポリヌクレオチド配列を担持及び/または発現させることは容易であろう。
【0080】
一実施形態では、本開示はまた、抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列を提供する。別の実施形態では、本開示はまた、上記のポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。当業者であれば、本明細書に開示されたアミノ酸配列を考慮すると、アミノ酸配列をコードするベクターまたはプラスミドを容易に構築することができるであろう。別の実施形態では、本開示はまた、本明細書で提供されるベクターを含む宿主細胞を提供する。当業者であれば、用途や実験条件に応じて適切な宿主細胞を採用し、上記のポリヌクレオチド配列を担持及び/または発現させることは容易であろう。
【0081】
本明細書に開示される重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の配列を考慮すると、当業者であれば、当該技術分野で知られている標準的な技術を採用し、抗IL-2scFvを構築することは容易であろう。一実施形態では、そのような抗IL-2scFvをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号1-5のうちの1つ、または配列番号31-35のうちの1つの配列を有し得る。
【0082】
或る実施形態では、抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする本明細書に開示される単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のいずれかのアミノ酸配列に記載された重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のいずれかのポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のいずれかのポリヌクレオチド配列を含むベクターを含む。
【0083】
或る実施形態では、抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする本明細書に開示される単離ポリヌクレオチド配列は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のいずれかのアミノ酸配列に記載された軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のいずれかのポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のいずれかのポリヌクレオチド配列を含むベクターを含む。いくつかの実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は抗IL-2scFvをコードし、ポリヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、31、32、33、34、または35に記載されている。いくつかの実施形態では、ベクターは抗IL-2scFvをコードする単離ポリヌクレオチド配列を含み、ポリヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、31、32、33、34、または35に記載されている。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、抗IL-2scFvをコードする単離ポリヌクレオチド配列を含むベクターを含み、ポリヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、31、32、33、34、または35に記載されている。
【0084】
別の実施形態では、本開示はまた、単離抗IL-2抗体を提供し、抗体は、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を有する重鎖可変領域(VH)を含む。一実施形態では、CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号34-46、それぞれ配列番号34-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、F(ab´)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体であり得る。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4であり得る。一実施形態では、本開示はまた、上記の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を包含する。
【0085】
別の実施形態では、本開示はまた、単離抗IL-2抗体を提供し、抗体は、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。一実施形態では、CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、F(ab´)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体であり得る。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4であり得る。一実施形態では、本開示はまた、上記の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を包含する。
【0086】
別の実施形態では、本開示はまた、単離抗IL-2抗体を提供し、抗体は、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を有する重鎖可変領域(VH)と、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を有する軽鎖可変領域(VL)とを含む。一実施形態では、重鎖可変領域(VH)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、F(ab´)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体であり得る。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4であり得る。一実施形態では、本開示はまた、上記の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を包含する。
【0087】
医薬組成物
【0088】
いくつかの実施形態では、治療的使用のための組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、本明細書に開示される抗IL-2抗体と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0089】
本明細書で使用するとき、「組成物」及び「医薬組成物」なる用語は、いくつかの実施形態では、すべて同一の性質及び意味を有し、互換的に使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような状態または疾患の治療のための医薬組成物が本明細書に開示される。
【0090】
いくつかの実施形態では、併用療法において使用するための医薬組成物が本明細書に開示される。
【0091】
別の実施形態では、対象における疾患または状態の治療に使用するための組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を含む。いくつかの実施形態では、状態は、IL-2誘導性状態を含む。いくつかの実施形態では、IL-2誘導性状態は、IL-2誘導性肺水腫またはIL-2誘導性血管漏出を含む。
【0092】
本明細書に開示される重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)ポリペプチドは、単独で、または担体、すなわち薬学的に許容される担体と組み合わせて、対象(例えば、ヒトまたは動物)に投与され得る。薬学的に許容されるとは、生物学的またはその他の点で望ましくない材料、すなわち、望ましくない生物学的効果を引き起こしたり、その材料が含まれる医薬組成物の他の成分のいずれとも有害な方法で相互作用したりすることなく、対象に投与され得る材料を意味する。当業者にはよく知られているように、担体は、本明細書に開示されるポリペプチドのあらゆる分解を最小限に抑え、かつ、対象におけるあらゆる有害な副作用を最小限に抑えるように選択される。医薬組成物は、医薬分野において周知の方法論によって調製されてよい。
【0093】
本明細書に開示されるポリペプチドを含む上記の医薬組成物は、局所治療が望まれるか、全身治療が望まれるかに応じて、任意の適切な方法で(例えば、哺乳動物、細胞、または組織に)投与され得る。例えば、組成物は、局所的に(例えば、眼内、膣内、直腸内、鼻腔内、経皮など)、経口的に、吸入によって、または非経口的に(静脈内注入若しくは皮下、胸腔内、腹腔内、皮内、または、筋肉内注射によるものを含む)、投与され得る。局所的な鼻腔内投与とは、鼻孔の一方または両方を通して鼻及び鼻腔内に組成物を送達することを指す。組成物は、噴霧機構若しくは液滴機構によって、またはエアロゾル化によって送達され得る。送達はまた、挿管によって呼吸器系(例えば、肺)の任意の領域に向けることができる。あるいは、投与は、腫瘍内投与、例えば、局所注射または静脈内注射であり得る。
【0094】
組成物が非経口的に投与される場合、投与は、一般に、注射によって行われる。注射剤は、液体溶液または懸濁液、注射前に液体中に懸濁するのに適した固体形態、あるいはエマルションとして、従来の形態で調製され得る。さらに、経口投与では、一定の投与量を維持するために、徐放性または持続性放出システムの調製を含み得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つの配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は、配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25、配列番号26及び27、または、配列番号36及び37のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含む、CDR1、CDR2及びCDR3領域を含む重鎖可変領域(VH)ドメインを含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む、CDR1、CDR2及びCDR3領域を含む軽鎖可変領域(VL)ドメインを含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含む、CDR1、CDR2及びCDR3領域を含む重鎖可変領域(VH)ドメインと、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む、CDR1、CDR2及びCDR3領域を含む軽鎖可変領域(VL)ドメインと、を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.014、BDG17.023、BDG17.038、BDG17.043、BDG17.053、BDG17.054、BDG17.066、BDG17.067、及びBDG17.069のいずれかを含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は抗IL-2抗体クローンBDG17.014を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は抗IL-2抗体クローンBDG17.023を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は抗IL-2抗体クローンBDG17.038を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は抗IL-2抗体クローンBDG17.043を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は抗IL-2抗体クローンBDG17.053を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は抗IL-2抗体クローンBDG17.054を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は抗IL-2抗体クローンBDG17.066を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は抗IL-2抗体クローンBDG17.067を含む。いくつかの実施形態では、組成物は抗IL-2抗体を含み、抗IL-2抗体は抗IL-2抗体クローンBDG17.069を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、組成物は、抗IL-2抗体と、薬学的に許容される担体とを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、抗IL-2抗体と、IL-2と、薬学的に許容される担体とを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、組成物は、抗IL-2抗体及びIL-2は、同一の組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は、抗IL-2抗体及びIL-2は、異なる組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、抗IL-2抗体とIL-2との組み合わせ、またはその組成物は、同時に投与される。いくつかの実施形態では、抗IL-2抗体とIL-2との組み合わせ、またはその組成物は、同時に投与される。いくつかの実施形態では、抗IL-2抗体とIL-2との組み合わせ、またはその組成物の投与は、IL-2またはその組成物の投与の前の、抗IL-2抗体またはその組成物の投与を含む。いくつかの実施形態では、抗IL-2抗体とIL-2との組み合わせ、またはその組成物の投与は、IL-2またはその組成物の後の、抗IL-2抗体またはその組成物の投与を含む。
【0099】
当業者は、「医薬組成物」が、本明細書に記載される1以上の活性成分と、生理学的に適切な担体及び賦形剤などの他の化学成分との調製物を包含し得ることを理解するであろう。医薬組成物の目的は、これに限定しないが抗体または化合物などの活性剤の生物に対する投与を容易にすることである。
【0100】
いくつかの実施形態では、免疫系が弱った対象を治療する治療用途のための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を患っている対象を治療する治療用途のための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、免疫系が弱った対象を治療するための併用療法の一部として使用するための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を患っている対象を治療するための併用療法の一部として使用するための医薬組成物が本明細書に開示される。
【0101】
当業者は、「生理学的に許容される担体」、「薬学的に許容される担体」、「生理学的に許容される賦形剤」、及び「薬学的に許容される賦形剤」という語句は、互換的に使用されてもよく、生物に著しい刺激を与えず、投与活性成分の生物活性及び特性を無効にしない担体、賦形剤または希釈剤を包含し得ることを理解するであろう。
【0102】
当業者は、「賦形剤」が、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、賦形剤には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及び様々な種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0103】
薬物の製剤化及び投与のための技術は、ペンシルバニア州イーストン所在のMack Publishing Co.社による「Remington's Pharmaceutical Sciences」の最新版に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、治療用組成物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、治療効果を有する。
【0105】
併用療法
【0106】
いくつかの実施形態では、抗IL-2抗体またはその組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、「免疫チェックポイント阻害剤」なる用語は、チェックポイントタンパク質の機能を阻害することができる任意の化合物または分子を包含する。いくつかの実施形態では、「免疫チェックポイント阻害剤」なる用語は、免疫チェックポイントタンパク質を標的とする任意の化合物または分子を包含する。当業者は、「免疫チェックポイント」が、刺激されると免疫学的刺激に対する免疫応答を減衰させることができる免疫系の重要な調節因子であることを理解するであろう。チェックポイント阻害剤は、阻害性チェックポイントをブロックすることにより、免疫系機能を回復させることができる。いくつかの実施形態では、1以上のチェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント阻害剤を含む。
【0107】
当業者は、「免疫チェックポイント阻害剤」(ICI)、「チェックポイント阻害剤」などの用語が、本明細書において互換的に使用され、すべて同一の性質及び意味を有しており、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫系の活性または制御機構を阻害する化合物を包含することを理解するであろう。免疫系チェックポイント、又は免疫チェックポイントは、一般に、自己免疫寛容を維持するために、または付随的な組織損傷を最小限に抑えるために生理的免疫応答の期間及び大きさを調節するために作用する免疫系における阻害経路である。チェックポイント阻害剤は、経路内のタンパク質の活性を阻害することにより、免疫系チェックポイントを阻害することができる。
【0108】
免疫チェックポイント阻害剤の対象は、これに限定しないが、PD-1、PDL-1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、B7-H3、CD73、LAG3、CD27、CD70、4-1BB、GITR、OX40、SIRP-α(CD47)、CD39、ILDR2、VISTA、BTLA、及びVTCN-1を含む。いくつかの実施形態では、抗IL-2抗体療法は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用され、免疫チェックポイント阻害剤の標的は、PD-1、PDL-1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、B7-H3、CD73、LAG3、CD27、CD70、4-1BB、GITR、OX40、SIRP-α(CD47)、CD39、ILDR2、VISTA、BTLA、VTCN-1、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0109】
チェックポイント阻害剤は、PD-1、PDL-1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、B7-H3、CD73、LAG3、CD27、CD70、4-1BB、GITR、OX40、SIRP-α(CD47)、CD39、ILDR2、VISTA、BTLA、またはVTCN-1のうちの1以上に結合して、ブロックまたは阻害する抗体もしくはその抗原結合断片、他の結合タンパク質、生物治療物質、または小分子を含む。例示的なチェックポイント阻害剤には、これに限定しないが、以下の表1に列挙されているものが含まれる。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PDL-1阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、TIGIT阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、TIM-3阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、B7-H3阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CD73阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、LAG3阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CD27阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CD70阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、4-1BB阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、GITR阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、OX40阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、SIRP-α(CD47)阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CD39阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ILDR2阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、VISTA阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、BTLA阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、VTCN-1阻害剤を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤、TIM-3阻害剤、B7-H3阻害剤、CD73阻害剤、LAG3阻害剤、CD27阻害剤、CD70阻害剤、4-1BB阻害剤、GITR阻害剤、OX40阻害剤、SIRP-α(CD47)阻害剤、CD39阻害剤、ILDR2阻害剤、VISTA阻害剤、BTLA阻害剤、VTCN-1阻害剤の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤、TIM-3阻害剤、B7-H3阻害剤、CD73阻害剤、LAG3阻害剤、CD27阻害剤、CD70阻害剤、4-1BB阻害剤、GITR阻害剤、OX40阻害剤、SIRP-α(CD47)阻害剤、CD39阻害剤、ILDR2阻害剤、VISTA阻害剤、BTLA阻害剤、及びVTCN-1阻害剤から選択された少なくとも2つのチェックポイント阻害剤を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の併用療法において使用するための医薬組成物は、有効量の、本明細書に記載のチェックポイント阻害剤と、薬学的に許容される担体と、を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、チェックポイント阻害剤と、薬学的に許容される担体と、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、チェックポイント阻害剤と、薬学的に許容される担体との組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤、TIM-3阻害剤、B7-H3阻害剤、CD73阻害剤、LAG3阻害剤、CD27阻害剤、CD70阻害剤、4-1BB阻害剤、GITR阻害剤、OX40阻害剤、SIRP-α(CD47)阻害剤、CD39阻害剤、ILDR2阻害剤、VISTA阻害剤、BTLA阻害剤、VTCN-1阻害剤を含むチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤、TIM-3阻害剤、B7-H3阻害剤、CD73阻害剤、LAG3阻害剤、CD27阻害剤、CD70阻害剤、4-1BB阻害剤、GITR阻害剤、OX40阻害剤、SIRP-α(CD47)阻害剤、CD39阻害剤、ILDR2阻害剤、VISTA阻害剤、BTLA阻害剤、またはVTCN-1阻害剤から選択された少なくとも2つのチェックポイント阻害剤と、薬学的に許容される担体と、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤、TIM-3阻害剤、B7-H3阻害剤、CD73阻害剤、LAG3阻害剤、CD27阻害剤、CD70阻害剤、4-1BB阻害剤、GITR阻害剤、OX40阻害剤、SIRP-α(CD47)阻害剤、CD39阻害剤、ILDR2阻害剤、VISTA阻害剤、BTLA阻害剤、VTCN-1阻害剤から選択された少なくとも2つのチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PDL-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤、TIM-3阻害剤、B7-H3阻害剤、CD73阻害剤、LAG3阻害剤、CD27阻害剤、CD70阻害剤、4-1BB阻害剤、GITR阻害剤、OX40阻害剤、SIRP-α(CD47)阻害剤、CD39阻害剤、ILDR2阻害剤、VISTA阻害剤、BTLA阻害剤、及びVTCN-1阻害剤から選択された少なくとも2つのチェックポイント阻害剤と、薬学的に許容される担体と、を含む。
【0117】
或る実施形態では、本明細書に記載の治療方法において2以上のチェックポイント阻害剤が使用される場合、各チェックポイント阻害剤は、別々の組成物内に含まれる。或る実施形態では、本明細書に記載の治療方法において2以上のチェックポイント阻害剤が使用される場合、チェックポイント阻害剤は、同一の組成物内に含まれる。
【0118】
いくつかの実施形態では、併用療法は、本明細書に記載の抗IL-2抗体またはその組成物、及び、チェックポイント阻害剤またはその組成物の使用を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、本明細書に記載の抗IL-2抗体またはその組成物、及びIL-2と、チェックポイント阻害剤またはその組成物と、の使用を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、本明細書に記載のIL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体またはその組成物と、チェックポイント阻害剤またはその組成物と、の使用を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、併用療法は、本明細書に記載の抗IL-2抗体またはその組成物、及び、少なくとも2つのチェックポイント阻害剤またはその組成物の使用を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、本明細書に記載の抗IL-2抗体またはその組成物、及びIL-2と、少なくとも2つのチェックポイント阻害剤またはその組成物と、の使用を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、本明細書に記載のIL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体またはその組成物と、少なくとも2つのチェックポイント阻害剤またはその組成物と、の使用を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、併用療法は、本明細書に記載されるように、1以上のチェックポイント阻害剤を含む第2の組成物を含む。
【0121】
併用療法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体及びIL-2は、チェックポイント阻害剤と同一の組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、抗IL-2抗体及びIL-2は、互いに、及び、チェックポイント阻害剤とは異なる組成物に含まれる。
【0122】
併用療法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体またはその組成物と、チェックポイント阻害剤またはその組成物と、の投与の順序は、どのような順序であってもよい。併用療法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体またはその組成物と、IL-2またはその組成物と、チェックポイント阻害剤またはその組成物と、の投与の順序は、どのような順序であってもよい。例えば、これに限定しないが、抗IL-2抗体は、チェックポイント阻害剤の投与前に、投与と同時に、または投与後に、投与される。同様に、抗IL-2抗体とIL-2との組み合わせは、チェックポイント阻害剤の投与前に、投与と同時に、または投与後に、投与される。いくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、少なくとも2つのチェックポイント阻害剤の投与前に、投与と同時に、または投与後に、投与される。同様に、抗IL-2抗体とIL-2との組み合わせは、少なくとも2つのチェックポイント阻害剤の投与前に、投与と同時に、または投与後に、投与される。
【0123】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤との併用療法の投与は、抗IL-2抗体またはその組成物と、チェックポイント阻害剤との同時投与を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤との併用療法の投与は、抗IL-2抗体及びIL-2またはそれらの組成物と、チェックポイント阻害剤との同時投与を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤との併用療法の投与は、チェックポイント阻害剤の投与前に、抗IL-2抗体またはその組成物を予め投与することを含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤との併用療法の投与は、チェックポイント阻害剤の投与前に、抗IL-2抗体及びIL-2、またはそれらの組成物を予め投与することを含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤との併用療法の投与は、チェックポイント阻害剤の投与後に、抗IL-2抗体またはその組成物を遅れて投与することを含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤との併用療法の投与は、チェックポイント阻害剤の投与後に、抗IL-2抗体及びIL-2、またはそれらの組成物を遅れて投与することを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、併用療法は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む抗IL-2抗体と、チェックポイント阻害剤と、の使用を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つの配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む抗IL-2抗体と、チェックポイント阻害剤と、の使用を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、配列番号10及び11、配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25、配列番号26及び27、または配列番号36及び37のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗IL-2抗体と、チェックポイント阻害剤と、の使用を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、重鎖可変領域(VH)ドメインを含む抗IL-2抗体と、チェックポイント阻害剤と、の使用を含み、重鎖可変領域(VH)ドメインは、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3領域を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、軽鎖可変領域(VL)ドメインを含む抗IL-2抗体と、チェックポイント阻害剤と、の使用を含み、軽鎖可変領域(VL)ドメインは、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3領域を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、重鎖可変領域(VH)ドメイン及び軽鎖可変領域(VL)ドメインを含む抗IL-2抗体と、の使用を含み、重鎖可変領域(VH)ドメインは、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3領域を含み、軽鎖可変領域(VL)ドメインは、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3領域を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、抗IL-2抗体との使用を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.014、BDG17.023、BDG17.038、BDG17.043、BDG17.053、BDG17.054、BDG17.066、BDG17.067、及びBDG17.069のいずれかを含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、抗IL-2抗体との使用を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.014を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、抗IL-2抗体との使用を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.023を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、抗IL-2抗体との使用を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.038を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、抗IL-2抗体との使用を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.043を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、抗IL-2抗体との使用を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.053を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、抗IL-2抗体との使用を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.054を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、抗IL-2抗体との使用を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.066を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、抗IL-2抗体との使用を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.067を含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、チェックポイント阻害剤と、抗IL-2抗体との使用を含み、抗IL-2抗体は、クローンBDG17.069を含む。
【0126】
配合
【0127】
抗IL-2抗体、抗IL-2抗体とIL-2との組み合わせ、またはチェックポイント阻害剤を含む本明細書に開示の医薬組成物は、例えば、等張水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液、または粘性組成物などの無菌液体製剤として都合よく提供することができ、これらは選択されたpHに緩衝されてもよい。液体製剤は、通常、ゲル、その他の粘性組成物、及び固体組成物に比べて調整しやすい。さらに、液体組成物は、特に注射による投与がいくらか便利である。一方、粘性組成物は、特定の組織との接触時間をより長くするために、適切な粘度範囲内で配合することができる。液体または粘性組成物は、担体を含むことができ、これは、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。
【0128】
無菌注射液は、本明細書に記載され、本明細書に開示される方法の実施において利用される抗IL-2抗体、抗IL-2抗体とIL-2との組み合わせ、またはチェックポイント阻害剤を、必要に応じて、様々な量の他の成分とともに必要量の適切な溶媒に組み込むことによって調製することができる。このような配合物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤、または賦形剤と混和されてもよい。配合物はまた、凍結乾燥することができる。配合物は、投与経路や所望の調整に応じて、湿潤剤、分散剤、または、乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化剤もしくは粘度向上剤、保存剤、香料、着色剤などの補助物質を含有することができる。過度の実験なしに、適切な調製物を調整するために、参照により本明細書に組み込まれる「"REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE"、第17版、1985年」などの標準テキストを参照してもよい。
【0129】
抗菌防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、及び緩衝剤を含む、配合物の安定性や無菌性を高める様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤及び抗真菌剤によって保証することができる。注射用医薬品の吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの使用により、延長することができる。
【0130】
或る実施形態では、「医薬組成物」、「組成物」及び「配合物」なる用語は、同一の意味及び品質を有し、互換的に使用される。
【0131】
本明細書に記載の組成物または配合物は、等張性であり得る。すなわち、血液及び涙液と同じ浸透圧を有し得る。本明細書に開示される組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム、あるいは、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、または他の無機もしくは有機溶質などの、その他の薬学的に許容される薬剤を用いて達成される。塩化ナトリウムは、好ましくは、特にナトリウムイオンを含む緩衝剤に対して使用される。
【0132】
組成物の粘度は、必要に応じて、薬学的に許容される増粘剤を用いて、選択されたレベルに維持することができる。メチルセルロースは、容易かつ経済的に入手可能であり、作業が容易であるので、好ましい。
【0133】
他の適切な増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。増粘剤の好ましい濃度は、選択された増粘剤に依存する。重要な点は、選択された粘度を達成する量を使用することである。明らかに、適切な担体及び他の添加物の選択は、正確な投与経路、及び特定の剤形(例えば、液体剤形など)の性質(例えば、組成物が、溶液、懸濁液、ゲル、あるいは、時限放出製剤または液体充填製剤などの別の液体剤形に配合されるべきかどうか)に依存する。
【0134】
いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.0~6.0のpH値になるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.0~7.0のpH値になるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.0~6.5のpH値になるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.0~5.5のpH値になるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.5~6.0のpH値になるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.5~6.5のpH値になるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.0のpH値になるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.5のpH値になるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH6.0のpH値になるように配合される。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH6.5のpH値になるように配合される。
【0135】
いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、薬学的に許容される緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒスチジン緩衝液またはクエン酸緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒスチジン緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、クエン酸緩衝液を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、ヒスチジン緩衝液及びクエン酸緩衝液から選択される緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、ヒスチジン緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、クエン酸緩衝液を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、組成物は、スクロース、メチオニン、またはPS80のうちの少なくとも1つ、または、それらの任意の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、スクロースをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、メチオニンをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、PS80をさらに含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に開示される抗IL-2抗体を含み、約pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、かつ、ヒスチジン緩衝液及びクエン酸緩衝液から選択される緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、IL-2をさらに含む。
【0139】
当業者は、組成物または製剤の成分は、化学的に不活性であり、本明細書に開示される方法において使用するために、本明細書に記載される初期アポトーシス細胞集団の生存率または効果に影響を与えないように選択されるべきであることを認識するであろう。このことは、化学的及び薬学的原理または問題における当業者にとって問題ない。すなわち、本開示及び本明細書に引用した文書から、標準的なテキストを参照することによって、または(過度の実験を伴わない)簡単な実験によって、問題は容易に回避され得る。
【0140】
使用方法
【0141】
一実施形態では、本開示は、抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)を作製する方法を提供し、本方法は、重鎖可変領域(VH)をコードするベクターの発現を促す条件下で宿主細胞を培養するステップを含み、これによって、抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)が作製される。
【0142】
一実施形態では、本開示は、抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)を作製する方法を提供し、本方法は、軽鎖可変領域(VL)をコードするベクターの発現を促す条件下で宿主細胞を培養するステップを含み、これによって、抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)が作製される。
【0143】
本明細書に開示される重鎖可変領域(VH)及び/または軽鎖可変領域(VL)ポリペプチドは、治療方法において使用される。一実施形態では、本開示のポリペプチドは、例えば、本明細書に記載されるような免疫細胞の分化活性化のための免疫療法剤として使用することができる。
【0144】
所望の効果を引き出すために必要な本発明のポリペプチドまたはその組成物の正確な量は、対象の種、年齢、性別、体重及び全身状態、特定のポリペプチド、投与経路、並びに、レジメンに他の薬剤が含まれているかどうかに応じて、対象ごとに異なる。したがって、すべての組成物について正確な量を特定することはできない。しかし、当業者であれば、日常的な実験により適切な量を決定することができる。投与量は様々であり、ポリペプチドは、1日1回以上(例えば、2回以上、3回以上、4回以上、または5回以上)の投与で、1日以上にわたって投与することができる。抗体の適切な用量を選択する際のガイダンスは、文献で容易に見つけることができる。
【0145】
本明細書に開示される抗IL-2抗体の使用方法のいくつかの実施形態では、対象は、哺乳類の対象を含む。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトの対象を含む。いくつかの実施形態では、対象は、免疫力低下問題を有する対象を含む。いくつかの実施形態における免疫力が低下した対象の治療は、予防治療を含む。
【0146】
一実施形態では、本開示は、対象における免疫細胞の分化成長を促進する方法であって、本明細書に開示される抗IL-2抗体を含む組成物を調製するステップと、組成物を対象に投与し、それによって、対象における免疫細胞の分化成長を促進するステップと、を含む方法を提供する。一実施形態では、本開示は、対象における免疫細胞の分化成長を促進する方法であって、本明細書に開示される抗IL-2抗体及びIL-2を含む組成物を調製するステップと、組成物を対象に投与し、それによって、対象における免疫細胞の分化成長を促進するステップと、を含む方法を提供する。一実施形態では、対象は、動物またはヒトであり得る。一実施形態では、免疫細胞は、CD8+T細胞またはNK細胞であり得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、対象における疾患または状態を治療する方法であって、本開示の抗IL-2抗体を含む組成物を対象に投与するステップを含み、抗体が、免疫細胞のサブセットの分化成長を促進し、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響を低減させ、それによって、対象における疾患または状態を治療する、方法が開示される。いくつかの実施形態では、本開示の疾患を治療する方法は、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む組成物の使用を含む。いくつかの実施形態では、疾患を治療する方法は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を治療するステップを含む。いくつかの実施形態では、状態を治療する方法は、免疫系が弱った状態を治療するステップと、免疫系を予防的に高めることを含む。
【0148】
疾患または状態を治療する方法のいくつかの実施形態では、状態は、対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を含む。いくつかの実施形態では、遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含む。いくつかの実施形態では、癌の可能性を増加させる遺伝的素因は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせの突然変異を含む。
【0149】
非限定的な例として、これに限定しないが、例えば遺伝性乳癌及び卵巣癌(HBOC)症候群、リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)、及びリ・フラウメニ症候群などの多くの遺伝性癌が当該技術分野で知られている。
【0150】
いくつかの実施形態では、遺伝的素因は、HBOCの可能性を増加させる。HBOCは、RAC1及びBRAC2遺伝子における突然変異と関連する。HBOCは、乳癌だけでなく、これに限定しないが、例えば卵管癌、原発性腹膜癌、男性乳癌、膵臓癌、及び前立腺癌などの様々な癌と関連する。いくつかの実施形態では、遺伝的素因は、乳癌、卵巣癌、卵管癌、原発性腹膜癌、男性乳癌、膵臓癌、または前立腺癌のいずれか、あるいはそれらの組み合わせの可能性を増加させる。
【0151】
いくつかの実施形態では、遺伝的素因は、遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)の可能性を増加させる。HNPCCは、これに限定しないが、例えばMLH1、MSH2、MSH6、PMS1及びPMS2などの遺伝子における突然変異と関連する。HNPCCは、子宮内膜癌、並びに、卵巣、胃、小腸、膵臓、腎臓、脳、尿管、及び胆管の癌の発生リスクの高さと関連する。いくつかの実施形態では、遺伝的素因は、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、卵巣癌、胃癌、小腸癌、膵臓癌、腎臓癌、脳癌、尿管癌、及び胆管癌のいずれかの可能性を増加させる。
【0152】
いくつかの実施形態では、遺伝的素因は、リ・フラウメニ症候群の可能性を増加させる。リ・フラウメニ症候群は、これに限定しないが、TP53及びCHEK2、またはその組み合わせなどの遺伝子において生じる。リ・フラウメニ症候群は、肉腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、白血病、脳(中枢神経系)がん、副腎皮質癌、及び乳癌、またはそれらの組み合わせなどの癌と関連する。いくつかの実施形態では、遺伝的素因は、肉腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、白血病、脳(中枢神経系)がん、副腎皮質癌、及び乳癌のいずれか、またはそれらの組み合わせの可能性を増加させる。
【0153】
いくつかの実施形態では、対象において治療される状態は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含む、遺伝的素因を有する対象を治療することを含み、遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0154】
本明細書に記載されるように、開示されたIL-2と抗IL-2抗体との複合体は、メモリー表現型エフェクターT細胞(MP)CD8+及びNK細胞の増殖を誘導する顕著な効果を示したが、CD4+Tregに対する影響は非常に小さかった。したがって、本明細書に開示される操作された抗IL-2抗体は、免疫細胞集団の調整、及び、特定の免疫エフェクター細胞の分化増殖を誘導において有用であろう。一実施形態では、免疫エフェクター細胞のそのような分化増殖は、免疫系の強固な活性化をもたらし、腫瘍の治療に有用である。いくつかの実施形態では、治療は、固形腫瘍の治療を含む。いくつかの実施形態では、治療は、非固形腫瘍の治療を含む。いくつかの実施形態では、治療は、これに限定しないが、例えばメラノーマ、腎細胞癌、小細胞肺癌、または他の癌の状態などの固形腫瘍または非固形腫瘍の治療を含む。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、ウイルス感染症または細菌感染症の治療に有用である。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、例えば肺水腫またはIL-2誘導性血管漏出などの、内皮CD25発現細胞へのIL-2の結合によって引き起こされる状態の治療または予防に有用である。
【0155】
疾患または状態を治療する方法のいくつかの実施形態では、分化成長を示す免疫細胞は、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはナチュラルキラーT細胞のうちの1以上を含む。疾患または状態を治療する方法のいくつかの実施形態では、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響は、制御性T細胞の活性化、CD25+Tエフェクター細胞のアポトーシス、IL-2誘導性肺水腫、IL-2誘導性肺炎、またはIL-2誘導性血管漏出のうちの1以上を含む。疾患または状態を治療する方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、CD25へのIL-2の結合を阻害する。
【0156】
いくつかの実施形態では、癌の治療は、維持治療を含む。いくつかの実施形態では、維持治療は、癌または腫瘍の非存在を維持するために投与が行われる。いくつかの実施形態では、維持治療は、癌または腫瘍の転移の欠如を維持するために投与が行われる。いくつかの実施形態では、維持治療は、癌または腫瘍の転移を阻害するために投与が行われる。いくつかの実施形態では、維持治療は、癌または腫瘍の成長の欠如を維持するために投与が行われる。いくつかの実施形態では、維持治療は、癌または腫瘍の成長を阻害するために投与が行われる。
【0157】
いくつかの実施形態では、癌の治療は、これに限定しないが、例えば癌を発症するリスクが高い遺伝子マーカーを有する対象などに対する予防的治療を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子マーカーは、BRCA1遺伝子における突然変異を含む。
【0158】
対象における免疫細胞の分化成長を促進する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に開示される抗IL-2抗体を含む組成物を調製及び投与するステップを含む。
【0159】
対象における免疫細胞の分化成長を促進する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に開示される抗IL-2抗体及びIL-2を含む組成物を調製及び投与するステップを含み、抗IL-2抗体及びIL-2の組み合わせ、またはそれらの組成物の投与は、同時に行われる。対象における免疫細胞の分化成長を促進する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、抗IL-2抗体及びIL-2を含む組成物を調製及び投与するステップを含み、抗IL-2抗体及びIL-2、またはそれらの組成物の投与は、IL-2またはその組成物の投与の前に、抗IL-2抗体またはその組成物を投与することを含む。対象における免疫細胞の分化成長を促進する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、抗IL-2抗体及びIL-2を含む組成物を調製及び投与するステップを含み、抗IL-2抗体及びIL-2、またはそれらの組成物の投与は、IL-2またはその組成物の投与の後に、抗IL-2抗体またはその組成物を投与することを含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、本開示は、免疫細胞の分化成長の誘導によって、疾患または状態を有する対象を治療する方法を提供する。一実施形態では、疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌であり得る。一実施形態では、状態は、IL-2誘導性肺水腫、またはIL-2誘導性血管漏出であり得る。本方法は、(a)本明細書に開示の抗IL-2抗体を含む組成物を調製するステップと、(b)ステップ(a)によって得られた組成物を対象に投与し、それによって、対象における免疫細胞の分化成長によって対象を治療するステップと、を含む。或る実施形態では、本明細書に開示される操作された抗IL-2抗体のいずれかが、本明細書に記載されるように、治療の方法において使用される。
【0161】
いくつかの実施形態では、本開示は、免疫細胞の分化成長の誘導によって、疾患または状態を有する対象を治療する方法を提供する。一実施形態では、疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌であり得る。一実施形態では、状態は、IL-2誘導性肺水腫、またはIL-2誘導性血管漏出であり得る。本方法は、(a)本明細書に開示の抗IL-2抗体及びIL-2を含む組成物を調製するステップと、(b)ステップ(a)によって得られた組成物を対象に投与し、それによって、対象における免疫細胞の分化成長によって対象を治療するステップと、を含む。抗体/IL-2複合体は、免疫エフェクター細胞のサブセットの増殖を促進することに加えて、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響(例えば、IL-2誘導性肺水腫、またはIL-2誘導性血管漏出)も低減させるであろう。一実施形態では、対象は、動物またはヒトであり得る。或る実施形態では、本明細書に開示される操作された抗IL-2抗体のいずれかが、本明細書に記載されるように、治療の方法において使用される。
【0162】
一実施形態では、本開示は、対象(例えば、動物またはヒト)における疾患または状態を治療する方法であって、抗IL-2抗体を含む組成物を対象に投与するステップを含み、抗体は、免疫細胞のサブセットの増殖を促進し、かつIL-2によって引き起こされる望ましくない影響を低減させ、それによって、対象における疾患または状態を治療する、方法を提供する。対象における疾患または状態を治療する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に開示される抗IL-2抗体を含む組成物を調製及び投与するステップと、抗IL-2抗体を含む組成物を投与するステップと、を含む。一実施形態では、組成物は、本明細書に開示される抗IL-2抗体及びIL-2を含む、あるいは、組成物は、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む。
【0163】
対象における疾患または状態を治療する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に開示される抗IL-2抗体及びIL-2を含む組成物を調製及び投与するステップを含み、抗IL-2抗体及びIL-2の組み合わせ、またはそれらの組成物の投与は、同時に行われる。対象における疾患または状態を治療する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、抗IL-2抗体及びIL-2を含む組成物を調製及び投与するステップを含み、抗IL-2抗体及びIL-2、またはそれらの組成物の投与は、IL-2またはその組成物の投与の前に、抗IL-2抗体またはその組成物を投与することを含む。対象における疾患または状態を治療する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、抗IL-2抗体及びIL-2を含む組成物を調製及び投与するステップを含み、抗IL-2抗体及びIL-2、またはそれらの組成物の投与は、IL-2またはその組成物の投与の後に、抗IL-2抗体またはその組成物を投与することを含む。
【0164】
一実施形態では、治療の方法は、IL-2誘導性肺水腫、またはIL-2誘導性血管漏出などの状態の治療に有効であろう。別の実施形態では、治療の方法は、ウイルス感染症または細菌感染症に起因する(軽度、または慢性の)肺水腫の治療に有効であろう。
【0165】
一実施形態では、疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、癌、自己免疫疾患、または免疫障害であり得る。一実施形態では、疾患は、上気道ウイルス感染症、早期肺感染症、または末期肺感染症であり得る。多くの病気及び癌は、ウイルスによって引き起こされることが知られている。病気を引き起こすウイルスの例としては、これに限定しないが、例えば、ノロウイルス;ロタウイルス;A型、B型、C型、D型、またはE型の肝炎ウイルス;狂犬病ウイルス、西ナイルウイルス、エンテロウイルス、エコーウイルス、コクサッキーウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、HSV-2、水痘帯状疱疹ウイルス、蚊媒介ウイルス、アルボウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ポリオウイルス、ジカウイルス、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、エンテロウイルスD68、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、中東呼吸器症候群コロナウイルス、SARSコロナウイルス2、エプスタイン・バー・ウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ポリオーマウイルス(JCウイルス、BKウイルスなど)、エボラウイルス、デングウイルス、またはそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、ウイルス感染症は、SARS CoV-2によって引き起こされる。別の実施形態では、癌は、これに限定しないが、例えばメラノーマまたは腎細胞癌などであり得る。
【0166】
一実施形態では、抗IL-2抗体による治療によって拡大する免疫細胞は、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはナチュラルキラーT細胞のうちの1以上を含む。一実施形態では、抗IL-2抗体による治療は、制御性T細胞の活性化、CD25+Tエフェクター細胞のアポトーシス、肺水腫、肺炎、及びIL-2誘導性血管漏出などの、IL-2によって引き起こされる1以上の望ましくない影響を低減させる。
【0167】
一実施形態では、上記の方法で投与される抗IL-2抗体は、CD25へのIL-2の結合を阻害することができる、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体である。いくつかの実施形態では、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つの配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体は、配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25、配列番号26及び27、または配列番号36及び37のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0168】
別の実施形態では、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体は、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を有する重鎖可変領域(VH)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域(VH)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含む。
【0169】
別の実施形態では、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体は、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。一実施形態では、軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、またはF(ab´)2であり得る。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のサブクラスであり得る。いくつかの実施形態では、操作された抗IL-2抗体は、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体の一部であり得る。
【0171】
いくつかの実施形態では、操作された抗IL-2抗体をコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書に記載の疾患または状態を有する対象を治療する方法において使用され、ポリヌクレオチド配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む、抗体をコードする。いくつかの実施形態では、操作された抗IL-2抗体をコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書に記載の疾患または状態を有する対象を治療する方法において使用され、ポリヌクレオチド配列は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つのアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体をコードする。いくつかの実施形態では、操作された抗IL-2抗体をコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書に記載の疾患または状態を有する対象を治療する方法において使用され、ポリヌクレオチド配列は、配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25、配列番号26及び27、または配列番号36及び37のうちの1つのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体をコードする。
【0172】
上記の疾患または状態を治療するためにポリヌクレオチドを使用する方法のいくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、またはF(ab´)2であり得る操作された抗IL-2抗体をコードする。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のサブクラスであり得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体の一部である操作された抗IL-2抗体をコードする。
【0173】
いくつかの実施形態では、操作された抗IL-2抗体をコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書に記載の疾患または状態を有する対象を治療する方法において使用され、ポリヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、31、32、33、34、または35のうちの1つの配列を含む。
【0174】
本明細書に記載の疾患または状態を有する対象を治療する方法のいくつかの実施形態では、治療によって活性化される免疫エフェクター細胞は、CD8+T細胞またはNK細胞である。一実施形態では、本明細書に開示される抗IL-2抗体、または、本明細書に開示される抗IL-2抗体とIL-2との複合体は、MP CD8+細胞及びNK細胞の増殖を誘導する顕著な効果を示したが、CD4+Tregに対する影響は非常に小さかった。或る実施形態では、CD4+Tregに対する影響はなかった。
【0175】
或る実施形態では、本明細書に開示される抗IL-2抗体の使用方法は、刺激促進効果を提供する。当業者は、本明細書(例えば、実施例1)に記載及び例示された抗IL-2抗体の使用が、抗刺激効果または調節促進(pro-regulatory)効果とは対照的に、刺激促進効果を明らかに示すことを理解するであろう。
【0176】
いくつかの実施形態では、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体の使用は、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つの配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体の使用は、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25、配列番号26及び27、または配列番号36及び37のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体の使用は、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体の使用を含む。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体及びIL-2の使用を含む。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体とIL-2との複合体の使用を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体の使用は、抗刺激または調節促進効果とは対照的に、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つの配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体の使用は、抗刺激または調節促進効果とは対照的に、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25、配列番号26及び27、または配列番号36及び37のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、操作された、すなわち改変された抗IL-2抗体の使用は、抗刺激または調節促進効果とは対照的に、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体の使用を含む。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体及びIL-2の使用を含む。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体とIL-2との複合体の使用を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列に記載の重鎖可変領域(VH)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)を含む抗IL-2抗体の使用は、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列に記載の軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗IL-2抗体の使用は、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列に記載の重鎖可変領域(VH)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)と、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列に記載の軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)と、を含む抗IL-2抗体の使用は、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体の使用を含む。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体及びIL-2の使用を含む。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体とIL-2との複合体の使用を含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列に記載の重鎖可変領域(VH)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)を含む抗IL-2抗体の使用は、抗刺激または調節促進効果とは対照的に、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列に記載の軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗IL-2抗体の使用は、抗刺激または調節促進効果とは対照的に、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列に記載の重鎖可変領域(VH)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)と、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列に記載の軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)と、を含む抗IL-2抗体の使用は、抗刺激または調節促進効果とは対照的に、それを必要とする対象において、刺激促進免疫効果を提供する。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体の使用を含む。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体及びIL-2の使用を含む。いくつかの実施形態では、使用は、抗IL-2抗体とIL-2との複合体の使用を含む。
【0180】
したがって、本明細書に開示される操作された抗IL-2抗体は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌などの疾患、あるいは、IL-2誘導性肺水腫、またはIL-2誘導性血管漏出などの状態を治療する方法において、免疫細胞集団の調整、及び、特定の免疫エフェクター細胞の分化増殖の誘導に有用であると考えられる。
【0181】
いくつかの実施形態では、対象を免疫化する方法であって、免疫化はアジュバントを含むワクチンを投与することを含み、アジュバントはIL-2抗体アジュバントを含む、方法が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む。いくつかの実施形態では、IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体及びIL-2を含む。いくつかの実施形態では、IL-2抗体アジュバントは、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む。いくつかの実施形態では、IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、免疫化される対象は、哺乳類の対象である。いくつかの実施形態では、免疫化される対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、免疫化される対象は、免疫系が弱っている。
【0183】
免疫化する方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む。免疫化する方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つの配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。免疫化する方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25、配列番号26及び27、または配列番号36及び37のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、抗IL-2抗体を含む。
【0184】
免疫化する方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3、CDR1、CDR2及びCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)を含む抗IL-2抗体を含む。免疫化する方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3、CDR1、CDR2及びCDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗IL-2抗体を含む。免疫化する方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗IL-2抗体を含み、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含み、重鎖可変領域(VH)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む。
【0185】
対象を免疫化する方法のいくつかの実施形態では、免疫化はアジュバントを含むワクチンを投与することを含み、アジュバントはIL-2抗体アジュバントを含み、当該抗IL-2抗体は本明細書に開示される抗IL-2抗体を含む。或る実施形態では、IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む。対象を免疫化する方法のいくつかの実施形態では、対象は、免疫系が弱っている。
【0186】
いくつかの実施形態では、IL-2抗体アジュバントを含むワクチンによる免疫化のための対象は、該対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を含む状態を有する対象を含む。いくつかの実施形態では、遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含む。いくつかの実施形態では、癌の可能性を増加させる遺伝的素因は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせにおける突然変異を含む。非限定的な例として、これに限定しないが、例えば遺伝性乳癌及び卵巣癌(HBOC)症候群、リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)、及びリ・フラウメニ症候群などの多くの遺伝性癌が当該技術分野で知られている。
【0187】
いくつかの実施形態では、疾患または状態の治療のために本明細書に開示される方法によって治療される対象は、1以上の免疫チェックポイントを標的とする1以上の免疫チェックポイント阻害剤でさらに治療される。いくつかの実施形態では、対象は、抗IL-2抗体による治療と同時に、抗IL-2抗体による治療の前に、または、抗IL-2抗体による治療の後に、免疫チェックポイント阻害剤で治療される。本明細書に開示される治療の方法のいくつかの実施形態では、免疫チェックポイントは、PD-1、PDL-1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、B7-H3、CD73、LAG3、CD27、CD70、4-1BB、GITR、OX40、SIRP-α(CD47)、CD39、ILDR2、VISTA、BTLA、VTCN-1、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、上記のように、本明細書に開示される治療の治療方法は、免疫チェックポイント阻害剤を含む追加の活性剤をさらに含む。当業者は、IL-2の存在下または非存在下での抗IL-2抗体療法と、さらにチェックポイント阻害剤とを含む併用療法が、本明細書に提供される抗IL-2抗体+/-IL-2、及びチェックポイント阻害剤を含む治療組成物または製剤のいずれかを利用し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのチェックポイント阻害剤が併用療法において使用される。
【0189】
本出願の実施形態は、以下を含む。
【0190】
配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む、単離抗IL-2抗体。
【0191】
IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、F(ab´)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体を含む、抗体。
【0192】
(a)IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4、(b)Fcγ受容体(FcγRs)への結合を減少させる突然変異を含む重鎖、(c)λまたはκ軽鎖、または、(d)(a)-(c)の任意の組み合わせ、を含むIgG。
【0193】
単離抗IL-2抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む組成物。
【0194】
配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つの配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、単離抗IL-2抗体。
【0195】
配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25、配列番号26及び27、または配列番号36及び37のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、単離抗IL-2抗体。
【0196】
相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を有する重鎖可変領域(VH)
を含む単離抗IL-2抗体であって、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含む、単離抗IL-2抗体。
【0197】
相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を有する軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗IL-2抗体であって、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む、単離抗IL-2抗体。
【0198】
それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む、重鎖可変領域(VH)と、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む、軽鎖可変領域(VL)と、を含む単離抗IL-2抗体。
【0199】
抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、重鎖可変領域(VH)は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つのアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【0200】
本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を含むベクター。本明細書に記載のベクターを含む宿主細胞。
【0201】
抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、軽鎖可変領域(VL)は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つのアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【0202】
抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、重鎖可変領域(VH)は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つのアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域(VL)は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つのアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【0203】
配列番号1、2、3、4、5、31、32、33、34、または35のうちの1つの配列を含み、scFvをコードする単離ポリヌクレオチド配列。
【0204】
抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)を作製する方法であって、本明細書に開示されるベクターを含む宿主細胞を、宿主細胞のベクターの発現を促す条件下で培養し、それによって、抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)を作製するステップを含む、方法。
【0205】
抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)を作製する方法であって、宿主細胞を、宿主細胞のベクターの発現を促す条件下で培養し、それによって、抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)を作製するステップを含む、方法。
【0206】
抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗IL-2抗体を作製する方法であって、宿主細胞を、宿主細胞のベクターの発現を促す条件下で培養し、それによって、抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)を作製するステップを含む、方法。
【0207】
対象における免疫細胞の分化成長を促進する方法であって、抗IL-2抗体を含む組成物を投与し、それによって、対象における免疫細胞の分化成長を促進するステップを含む、方法。
【0208】
免疫細胞の分化成長の誘導によって、癌を有する対象を治療する方法であって、抗IL-2抗体を含む組成物を投与し、それによって、癌を有する対象を治療するステップを含む、方法。
【0209】
対象における疾患または状態を治療する方法であって、抗IL-2抗体を含む組成物を対象に投与するステップを含み、抗IL-2抗体は、免疫細胞のサブセットの増殖を促進し、かつIL-2によって引き起こされる望ましくない影響を低減させ、それによって、対象における疾患または状態を治療する、方法。
【0210】
いくつかの実施形態では、疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を含む。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、SARS-CoV-2;ノロウイルス;ロタウイルス;A型、B型、C型、D型、またはE型の肝炎ウイルス;狂犬病ウイルス;西ナイルウイルス;エンテロウイルス;エコーウイルス;コクサッキーウイルス;単純ヘルペスウイルス(HSV);HSV-2;水痘帯状疱疹ウイルス;蚊媒介ウイルス;アルボウイルス;セントルイス脳炎ウイルス;カリフォルニア脳炎ウイルス;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);ポリオウイルス;ジカウイルス;風疹ウイルス;サイトメガロウイルス;ヒトパピローマウイルス(HPV);エンテロウイルスD68;重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス;中東呼吸器症候群コロナウイルス;エプスタイン・バー・ウイルス;インフルエンザウイルス;呼吸器合胞体ウイルス;JCウイルスを含むポリオーマウイルス;BKウイルス;エボラウイルス;デングウイルス;またはそれらの任意の組み合わせによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、状態は、免疫系が弱った状態を含み、治療は、免疫系を予防的に高める。
【0211】
いくつかの実施形態では、状態は、IL-2誘導性肺炎を含む。
【0212】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、免疫細胞は、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはナチュラルキラーT細胞のうちの1以上を含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響は、制御性T細胞の活性化、CD25+Tエフェクター細胞のアポトーシス、IL-2誘導性肺水腫、IL-2誘導性肺炎、またはIL-2誘導性血管漏出のうちの1以上を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗IL-2抗体は、CD25へのIL-2の結合を阻害する。
【0215】
対象を免疫化する方法であって、免疫化はアジュバントを含むワクチンを投与することを含み、アジュバントはIL-2抗体アジュバントを含む、方法。
【0216】
いくつかの実施形態では、IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む。
【0217】
いくつかの実施形態では、対象は、動物またはヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、免疫系が弱っている。
【0218】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、免疫細胞は、CD8+T細胞またはNK細胞である。
【0219】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む。
【0220】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37のうちの1つの配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0221】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、配列番号10及び11、配列番号10及び11、配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15、配列番号16及び17、配列番号18及び19、配列番号20及び21、配列番号22及び23、配列番号24及び25、配列番号26及び27、または、配列番号36及び37のうちの1つの配列を有する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0222】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3、CDR1、CDR2及びCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0223】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3、CDR1、CDR2及びCDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0224】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、抗IL-2抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のそれぞれは相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含み、重鎖の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、それぞれ配列番号38-40、それぞれ配列番号44-46、それぞれ配列番号50-52、それぞれ配列番号56-58、または、それぞれ配列番号62-64のアミノ酸配列を含み、軽鎖の相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)は、それぞれ配列番号41-43、それぞれ配列番号47-49、それぞれ配列番号53-55、それぞれ配列番号59-61、または、それぞれ配列番号65-67のアミノ酸配列を含む。
【0225】
本明細書で使用するとき、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、文脈が他の意味を明確に示さない限り、その指示対象の複数形も含む。例えば、「1つの化合物」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、それらの組み合わせを含む、複数の化合物を含み得る。
【0226】
本出願の全体を通じて、本発明の様々な実施形態を範囲形式で示すことがある。範囲形式での記載は単に便利さ及び簡潔さのためのであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定と解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲形式での記載は、その範囲内に含まれる個々の数値だけでなく、その範囲内に含まれるすべての可能な部分的な範囲を具体的に開示したものと見なされるべきである。例えば、1から6までという範囲の記載は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6まで、・・・、という部分的な範囲、並びに、その範囲内に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5、及び6)を具体的に開示したものと見なされるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0227】
本明細書において数値範囲を指定している場合は常に、指定された数値範囲内に含まれるすべての数値(分数または整数)を含むことを意味する。第1の指定数と第2の指定数と「の間の範囲」という表現、及び第1の指定数「から」第2の指定数「までの範囲」という表現は、本明細書では相互交換的に使用されており、第1の指定数及び第2の指定数、並びにこれらの間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0228】
当業者であれば、「約(about)」という用語が、示された数値または数値範囲からの0.0001~5%の逸脱を包含し得ることを理解するであろう。或る場合には、「約」という用語は、示された数値または数値範囲からの1~10%の逸脱を包含し得る。或る場合には、「約」という用語は、示された数値または数値範囲からの最大25%の逸脱を包含し得る。
【0229】
実施例
【0230】
実施例1
【0231】
本実施例では、改変された抗IL-2抗体の生成を、生成された抗体の実施形態に基づき説明する。改変された抗IL-2抗体の生成の例示は、本明細書に開示される抗体のサブセットに基づいている。実施例1に示された記載及び結果は例示的なものであり、本出願を通じて開示された改変された抗IL-2抗体の生成を制限するものではない。
【0232】
ライブラリの設計
【0233】
JES6.1の配列に変異を導入するためのライブラリを設計した。JES6.1の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号6及び配列番号7に示す。簡単に説明すると、すべてのアミノ酸をコードするコドン(コドンNNS)で3つの位置を変えた。ライブラリの設計により、CDRL3及びH3の両方において1つの変異を可能にし、また、CDR:H1、H2、またはL2のいずれかにおいて1つの変異を可能にした。CDRは、IMGTまたはABR(「Kunik et al., 2012」)のいずれかの定義を満たすことによって定義された。mIL2-JES6.1複合体(PDB4YQX)の結晶構造における、保存されているCDR残基(PDBデータベースに対するBlast検索に基づく)、または、マウスIL-2(mIL-2)と特異的相互作用を形成しないCDR残基は、変異から除外された。ライブラリの理論的サイズは、1.38E+7変異体であった。
【0234】
ライブラリの選択
【0235】
酵母表面ディスプレイを用いたスクリーニング及び選択
【0236】
酵母ディスプレイscFvライブラリをSDCAA選択培地中で増殖させ、確立されたプロトコルにしたがって、2%w/vのガラクトースで30°Cで一晩発現を誘導した。ライブラリを、PBS0.1%BSA中で、6xhisタグ(hIL-2-His)(イスラエル国レプロキン社(Reprokine))と共に100nMの組換えヒトIL-2と1時間インキュベートした。次いで、PBS0.1%BSAで3回洗浄し、蛍光標識抗体マウス抗Myc-FITC(米国サンタクルーズ社(Santa Cruze))、及び、マウスモノクローナル抗HisAPC(ドイツ国ミルテニーバイオテク社(Miltenyi Biotec)、cat:0020130-119-782)で標識した。標識後、ライブラリを、BioRad S3e蛍光活性化細胞ソータで、組換えヒトIL-2に対する高親和性結合剤についてソートした。最終ソートから分離したクローンの配列決定を、Zymoprepキット(米国サイモリサーチ社(Zymo Research))を使用して酵母クローンからプラスミドDNAを抽出することによって行い、それにより、DNAの配列決定を行った。
【0237】
Koffの選択
【0238】
オフレートが改善された結合剤を選択するために、選択の第2ラウンドのクローンを、10nMの6×hisタグ(hIL-2)と共に15分間インキュベートし、次いで、酵母を1mlのPBS0.1%BSAで3回洗浄し、100nMの未標識IL-2と共に5分間、4時間、6時間、及び24時間インキュベートした。指示された時点で、酵母を洗浄し、Myc-FITC(米国サンタクルーズ社)及びモノクローナル抗HisAPC(ドイツ国ミルテニーバイオテク社、cat:002030-119-782)で標識し、上記のようにSe3でソートした。
【0239】
IgGの産生
【0240】
JES6.1w.t.は、サーモ・フィッシャー社(Thermo Fisher)(cat:16-7022-81)から購入した。JES6.1.RMCは、マウスIgG2a定常領域を有するラットFvとしてクローニングされ、GeneScript抗体産生サービス(米国ニュージャージー州ジェンスクリプト社(Genscript))によって産生された。BDG17.0014は、ヒトIgG1定常領域にクローニングされ、GeneScript抗体産生サービスによって産生された。JES6.1.RMCの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号8及び配列番号9に示す。他のすべての抗体は、以下に記載するようにして作製した。
【0241】
再フォーマット
【0242】
選択したscFvクローンを、ヒトIgG1フォーマットに再フォーマットした。軽鎖(LC)可変領域及び重鎖(HC)可変領域の配列を哺乳動物コドンの使用に最適化し、IDT(米国アイオワ州コーラルビル、インテグレーテッド・ディーエヌエー・テクノロジーズ社(Integrated DNA Technologies))からジェンブロック(GB)としてオーダした。GBを、標準的なクローニング技術を用いて、pSF-CMV-HuIgG1_HC(HCプラスミド)、及び、pSF-CMV-HuLambda_LC(LCプラスミド)(英国オックスフォード、オックスフォード・ジェネティックス社(Oxford genetics))にクローニングした。指示された場合には、可変重鎖を、重鎖のL234及びL235をコードするDNAをアラニンコドン(L234A、L235A)に変異させたpSF-CMV-HuIgG1_HC_LALA(HCプラスミド)にクローニングした。
【0243】
IgGの発現
【0244】
Expi-CHO細胞(米国、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))に、LCプラスミド及びHCプラスミドを2:1の比率でトランスフェクトし、製造業者の説明書にしたがって発現させた。簡単に説明すると、50mlのExpi-CHO細胞を、37°C、120rpm、8%CO2で、6×106細胞/mlの密度になるように培養した。次いで、CHO細胞に、50μgの重鎖及び軽鎖発現プラスミドを1:2の比率で、トランスフェクトした。トランスフェクション後、ブースターエンハンサ及びフィードを培養物に添加し、増殖条件を32°C、120rpm、5%CO2に変更した。細胞は、トランスフェクションの10日後に採取した。IgGを上清からproteinAビーズ(ドイツ国、トーソー・バイオサイエンス社(Tosoh Bioscience GmbH))を用いて精製し、次いで、PBSを移動相(米国、GEヘルスケア社(GE healthcare))として、Superdex 200 10/300増加カラム上でサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)精製を行った。
【0245】
配列
【0246】
クローン1(17.021)のscFvをコードするDNA配列を配列番号1に示す。クローン2(17.022)のscFvをコードするDNA配列を配列番号2に示す。クローン4(17.023)のscFvをコードするDNA配列を配列番号3に示す。クローン5(17.030)のscFvをコードするDNA配列を配列番号4に示す。クローン6(17.035)のscFvをコードするDNA配列を配列番号5に示す。
【0247】
オリジナルのJES6_1開始配列と様々な抗IL-2クローンとの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、以下の表2と
図11及び
図12に示す。
【0248】
【0249】
ヒトIL-2に対するIgG結合の測定
【0250】
SPR解析は、CM5チップ(米国、GEヘルスケア社、cat:br10005-30)上のBiacore 200(米国、GEヘルスケア社)で行った。CM5チップを、ヒトIgGに対する一次捕捉抗体(米国、GEヘルスケア社、cat:br-1008-39)、またはマウスIgGに対する一次捕捉抗体(米国、GEヘルスケア社、cat:BR-1008-38)により、8000RUの標的に架橋した。一次捕捉抗体の架橋後、マウス及びヒトの試験抗体を、一次捕捉抗体上に、約500RUを追加の標的に固定化した。JES6.1をCM5チップに直接架橋した。ヒトIL-2(イスラエル国レプロキン社、cat:60568)分析物を、HEB-EPまたはPBS0.05%tween-20(PBS-T)緩衝液中で、128~0.03nMの範囲の濃度で、一連の2倍または3倍の希釈、各サイクルにつき1つの濃度でストリーミングした。マウスIL-2(イスラエル国レプロキン社、cat:RKP04351)を、0.5~40nMの範囲の濃度で、HEB-EPまたはPBS-T緩衝液中にストリーミングした。各サイクルの終わりに、3M MgCl2を用いてチップから分析物及び試験された抗体を剥がし、新しい被試験抗体を上記のようにチップ上に載置した。指示された場合には、抗体を剥がす代わりに、単一サイクルキネティクス法により、1サイクルにおいて一連の分析物濃度を注入することによってキネティクスを求めた。結合キネティクスは、Biacore T200評価ソフトウェアを用いて、1:1結合モデルにより求めた。
【0251】
カニクイザルIL-2に対するIgG結合
【0252】
SPR解析は、CM5チップ(米国、GEヘルスケア社、cat:br10005-30)上のBiacore 200(米国、GEヘルスケア社)で行った。CM5チップを、ヒトIgGに対する一次捕捉抗体(米国、GEヘルスケア社、cat:br-1008-39)により5000RUの標的に架橋し、カニクイザルIL-2(cIL-2)を上記と同じ条件下でマルチサイクル法を用いて試験した。
【0253】
SEC分析
【0254】
IgGを分析するために、100μgの試料を、GE AKTA Explorerクロマトグラフィシステム(米国、GEヘルスケア社)上でSuperdex 200 10/300増加カラム(米国、GEヘルスケア社)で0.8ml/分の流量でロードした。抗体保持時間の観察は280nmで行った。
【0255】
CD25及びCD122に対する特異的結合の検査
【0256】
CD25に対する特異的結合を試験するために、BDG17.023を、上記のように約300RUの標的RUのCM5チップに固定した。続いて、50nMのIL-2を、BDG17.023または対照抗体がIL-2で飽和するまで注入した。その後、Ab-IL-2複合体をPBS-T緩衝液で10秒間洗浄し、1000nMのCD25を注入し、応答を観察した。
【0257】
CD122に対する特異的結合を試験するために、BDG17.023を、上記のように約300RU~500RUの標的RUのCM5チップに固定した。続いて、50nMのhIL-2を、BDG17.023抗体がhIL-2で飽和するまで注入した。その後、Ab-hIL-2複合体をPBS-T緩衝液で10秒間洗浄し、1000nMのCD122を注入し、反応を観察した。
【0258】
CD122及びCD25に対するヒト化抗体IL-2複合体の特異的結合を試験するために、抗体BDG17.038、BDG17.043、BDG17.053、BDG17.054、BDG17.067、BDG17.069(これらのクローンの配列情報については、実施例2の表6及び表7を参照のこと)を、上記のように約300RUの標的RUのCM5チップチャネルに取り付けた捕捉抗体に固定化した。続いて、50nMのIL-2を、それぞれの抗体がhIL-2で飽和するまで注入した。次に、Ab-IL-2複合体をPBS-T緩衝液で60秒間洗浄し、1000nMのCD25を注入し、応答を観察した。その後、定常ベースラインに達するまでランニングバッファを60秒間注入し、次いで、30μl/分の流量で1000nMのCD122を30秒間注入した。CD122の結合を試験するために、同じ実験を逆の順序で繰り返した。すなわち、まず、CD25を注入し、その後に、CD122を注入した。
【0259】
IgG TmのDSF分析
【0260】
ヒト化抗hIL-2抗体のT-onset及びTmを求めるために、抗体をPBS中で0.5mg/mlに希釈し、NanoDSF Prometheus NT.48(ドイツ国ナノテンパー社(Nanotemper))を用いて1℃/分の温度上昇速度で分析した。
【0261】
インビボ実験
【0262】
IL-2/Ab複合体によるマウスの治療
【0263】
7~8週齢の6匹の雄のC57BL/6マウスのグループに、BDG17.023/hIL-2またはJES6.1/mIL-2免疫複合体を、4日間連続して毎日腹腔内(i.p.)投与した。PBS及び遊離hIL-2またはmIL-2を対照とした。4日目の終わりにマウスを屠殺し、脾臓を採取し、単一細胞懸濁液にホモジナイズした。細胞を濾過し、遠心分離し(400gを5分間)、5mlのPBS中に再懸濁し、5×106リンパ球/mlの最終濃度にした。実験は、イスラエルの動物実験委員会(IACUC)のガイドラインにしたがって行った。
【0264】
7~8週齢の6匹の雄のC57BL/6マウスのグループに、BDG17.038/hIL-2、BDG17.043/hIL-2、BDG17.054/hIL-2、BDG17.038/hIL-2、またはアイソタイプ対照/hIL-2免疫複合体を、4日間連続して毎日腹腔内(i.p.)投与した。この複合体を形成するために、投与前に、10μgの抗体を0.5μgのhIL-2と共に37°Cで30分間プレインキュベートした。4日目の終わりにマウスを屠殺し、脾臓を採取し、単一細胞懸濁液にホモジナイズした。細胞を濾過し、遠心分離し(400gを5分間)、5mlのPBS中に再懸濁し、5×106リンパ球/mlの最終濃度にした。実験は、イスラエルの動物実験委員会(IACUC)のガイドラインにしたがって行った。
【0265】
B16F10マウスメラノーマ腫瘍異種移植モデル
【0266】
雌のC57BL/6マウスの右後側腹部に、(2×105個の)B16-F10腫瘍細胞を皮下接種した。腫瘍体積が約30~50mm3に達した接種5日後に、マウスを実験群(各群n=10)に無作為化し、指示された抗体の10μgの抗IL-2抗体/1μgのhIL-2複合体の単回投与またはPBS対照を、4日間連続して毎日腹腔内投与した。実験を通じて、マウスにおける、腫瘍体積の増大、体重減少、及び非特異的臨床徴候を観察した。
【0267】
FACSによる免疫細胞集団の決定
【0268】
免疫細胞集団を同定するために、製造業者の説明書にしたがって、脾臓リンパ球を以下に記載する抗体で標識した。制御性T細胞(Treg):CD45+/CD3+/CD4+/CD25+/FoxP3+。メモリー表現型エフェクターT細胞(MPCD8+):CD45+/CD3+/CD8+/CD44+/IL-2RB(CD122)+。ナチュラルキラー細胞(NK):CD45+/CD3+/CD49b+/NK1.1(CD161)。ナチュラルキラーT細胞(NKT):CD45+/CD3+/CD49b+/NK1.1(CD161)。陽性細胞の頻度及び数は、フローサイトメータで取得した生データから算出した。
【0269】
【0270】
結果
【0271】
JES6.1は、マウスIL-2には強固に結合したが、ヒトIL-2には結合しなかった。
【0272】
JES6.1は、マウスIL-2(mIL-2)に対して5.6nMのKDで結合することが報告されている。JES6.1がヒトIL-2(hIL-2)に対して結合できるかどうかを試験するために、JES6.1抗体をBiacoreT200上でSPRによって試験した。JES6.1をCM5チップに直接架橋し、次いで、ヒトIL-2またはマウスIL-2の分析物を、それぞれ0.5~128nMまたは0.5~16nMの範囲の濃度でストリーミングした。
図4Aに示すように、ヒトIL-2で試験した場合、JES6.1は応答単位(RU)の明らかな変化は見られなかった。一方、マウスIL-2で試験した場合、強い応答が見られた(
図4B)。これにより、JES6.1がマウスIL-2には強固に結合するが、ヒトIL-2には結合しないことが示された。この実験は、本明細書に記載のようにマウス定常領域を有するJES6.1ラットFVとして発現させたJES6.1RMC抗体キメラを用いて繰り返した。GE抗体捕捉キットを使用して、CM5チップ上にJES6.1RMCを固定化した。hIL-2を最大で100nMの濃度でストリーミングしてもRUに変化はなく、これにより、ヒトIL-2(
図4C)に対しては結合しないことが示された。JES6.1RMCキメラが、上記のJES6.1のようにそのmIL-2結合特性を保持するかどうかを試験するために、マウスIL-2に対する結合を試験した。mIL-2を0.5~320nMの濃度でストリーミングしたところ、RUが大きく変化し、強固な結合を示した(
図4D)。これらの結果は、JES6.1及びJES6.1RMCは、マウスIL-2には強固に結合するが、ヒトIL-2への明らかな結合が見られないことを示す。hIL-2及びmIL-2の両方に対するJES6.1RMC結合キネティクスの分析結果を以下に示す。
【0273】
【0274】
マウスIL-2からヒトIL-2への結合特異性の変更
【0275】
マウスIL-2からヒトIL-2への結合特異性を変更するために、JES6.1をscFvとして酵母ディスプレイベクターにクローニングした。JES6.1のscFvフォーマットは、カルボキシ末端mycタグ標識で示されるように、酵母表面で良好に発現した(
図5A~
図5C)。IgGフォーマットの100nMのJES6.1を、マウスIL-2を発現するYSDクローンとインキュベートすると、強固な結合が生じた(
図5A~
図5C)。しかしながら、上記のSPR結果との相関関係において、JES6.1YSDクローンを、最大で1μMで標識したヒトIL-2とインキュベーションしても蛍光の増加は見られず、これにより、JES6.1scFvはヒトIL-2に対しては結合しないことが示された。
【0276】
JES6.1scFvをベースにして、上記のように、変異誘発ライブラリを作製した。簡単に説明すると、YSDライブラリを、上記のように、組換えヒトIL-2に対して選択した。変異体ライブラリは、1μMのヒトIL-2に対するMACS選択の1回のラウンド、及び、1μMのヒトIL-2に対するFACS選択の追加ラウンドを行った。上位0.2%のクローンを選択した。その後、この変異体ライブラリは、上記のように選択されたクローンのkoff特性を改善することを特に目的とした選択の2回の追加ラウンドを行った。3回目のラウンドでは、酵母を10nMのHis標識hIL-2と共に室温で15分間インキュベートし、次いで、酵母をhIL-2で洗浄し、100nMの非標識IL-2と共に室温で5分間インキュベートした。4回目のラウンドは、同様の方法で行ったが、酵母を標識及び洗浄した後、初期体積の20倍のPBS中で24時間インキュベートした。5回目のラウンドでは、酵母を標識及び洗浄した後、100nMの非標識IL-2と共に室温で6時間インキュベートした。5回目のラウンドの後、クローンを単離した。hIL-2への結合を獲得した5つのYSDクローン(
図6A及び
図6B)の配列決定を行った。加えて、これらのクローンを、500nMの可溶性TNFR2と、500nMのOX40と、500nMのPD1との混合物で標識することによって、特異性について試験した。
図6A及び
図6Bに見られるように、これらのクローンは、hIL-2に対して特異的であり、他のタンパク質には結合しなかった。
【0277】
BDG17.023の発現
【0278】
YSDの特性化後、hIL-2に対する有意な結合を示したクローン#4を、ラットFV及びヒトFcキメラを有するヒトキメラIgG1(BDG17.023)に再フォーマットした。ラット可変領域を、上記のように、2つの別個の発現ベクターである、pSF-CMV-HuIgG1_HC及びpSF-CMV-HuLambda_LCにサブクローニングした。IgGは、上記のように、ExpiCHO細胞に発現させた。精製されたIgGは、SDSPAGE分析から明らかなように、95%超の純度を有していた。Superdex200 10/300上でのBDG17.023のサイズ排除クロマトグラフィは、2つの主要なピークを示した。第1のピークは、約9.2ml(0.36CV)の保持時間を有し、これは、大きな凝集体に特有のものであった。第2のピークは、約12.6ml(0.528CV)の保持時間を有し、これは、通常のヒトhIgG1に特有のものであった。これらのSECランのピーク積分は、それぞれ11%と89%を示した(
図7)。
【0279】
BDG17.023の結合キネティクス
【0280】
BDG17.023の結合キネティクス、及び、mIL-2またはhIL-2に対する親和性を求めるために、上記のようにGE捕捉抗体キットを使用してBIAcore T200上でSPRによってIgGを分析した。
図8A及び
図8Bに示すように、BDG17.023は、hIL-2に約8×10
-11の親和性で結合し、オンレートは1.3×10
7、オフレートは1×10
-3であった。また、BDG17.023は、mIL-2に対して、約2.5×10
-6のはるかに低い親和性で結合することを示した。
【0281】
【0282】
BDG17.023-hIL-2複合体の受容体識別
【0283】
JES61-mIL-2複合体は、CD25には特異的に結合するが、CD122には結合しないことが報告されている。SPRチップに結合したJES6.1-mIL-2複合体は、CD25には結合するが、CD122には結合しなかった。BDG17.023-hIL-2複合体がCD25またはCD122への結合を識別できるかどうかを試験するために、上記と同様の実験を行った。
図9に示すように、hIL-2と複合体を形成した対照抗体は、ヒトCD25には結合したが、CD122には結合しなかった。対照的に、BDG17.023-hIL-2複合体は、CD122には結合するが、CD25には結合しないことが分かった。この結果は、BDG17.023はJES6.1に由来するが、JES6.1-mIL-2複合体、及びBDG17.023-hIL-2複合体は、おそらくそれぞれmIL-2及びhIL-2の異なるエピトープの結合により、非常に異なるIL-2受容体選択性を有することを示す。あるいは、IL-2受容体に対する結合選好性に影響を与えるmIL-2及びhIL-2に対して、異なるアロステリック効果が誘導され得る。
【0284】
BDG17.023のインビボ特性解析
【0285】
mIL-2と複合体を形成したJES6.1のインビボ投与は、制御性T細胞の強固な増殖及びエフェクターT細胞のはるかに小さい増殖をもたらし、それによって、MPCD8+/Treg比を免疫抑制に向けてシフトさせた。SPR生化学アッセイにおいて、BDG17.023-hIL-2複合体はCD122との結合に選好性を示し、CD25との結合を除外したことから、BDG17.023-hIL-2複合体はインビボにおいてCD8+エフェクター細胞及びNK細胞の増殖を増強すると予測される。ヒトIL-2は、マウスIL-2受容体と交差反応できるため、BDG17.023-hIL-2複合体をC57BL/6マウスに投与し、上記のようにインビボでその効果を試験した。簡単に説明すると、17.023抗体-hIL-2複合体をhIL-2と共に1:1のモル比でインキュベートし、C57BL/6マウスに4日間連続して毎日腹腔内投与した。対照として、JES6.1-mIL-2複合体、hIL-2単独、または、mIL-2単独も同様に投与した。5日目にマウスの脾臓を採取し、細胞を標識し、上記のようにFACSによって分析した。
【0286】
図10A~
図10Dに見られるように、BDG17.023は、MPCD8
+細胞及びNK細胞の増殖誘導に顕著な効果を示したが、CD4
+Tregに対する効果は非常に小さかった。一方、JES6.1は、報告されている抗炎症効果と一致して、非常に異なる効果を示した。これらの結果は、結合データと一致して、またJES6.1とは対照的に、BDG17.023-IL-2複合体は、抗刺激または調節促進効果とは対照的に、インビボで免疫系に対して強い刺激効果を有することを実証した。
【0287】
実施例2
【0288】
本実施例は、ヒトIL-2結合剤のさらなる選択、及びヒト化抗体の生成に関する結果を示す。
【0289】
別の選択ストラテジーを用いて、別の選択圧下でヒトIL-2結合剤を選択した。簡単に説明すると、ライブラリは、1μMのヒトIL-2に対するMACS選択の1回のラウンド、及び、100nMのヒトIL-2に対するFACS選択のさらなる4回のラウンドを行った。1回のラウンドのFACS選択の後、すべての結合剤が選択され、その後、結合剤の上位0.5%、上位0.5%、及び上位0.1%が選択された。5回のラウンドの選択の後、クローンC#7(173R5C1-17.002)(配列番号28)を単離し、結合を確認し、配列を決定した。
【0290】
抗体ヒト化
【0291】
クローンC#7(173R5C1-17.002)が、ヒト化のためのテンプレートとして選択された。ヒトテンプレートは、「Schrodinger BioLuminate 'Antibody Humanization: CDR Grafting' CDR tool (Kai Zhu, Tyler Day et al., Antibody structure determination using a combination of homology modeling, energy-based refinement, and loop prediction. Proteins: Structure, Function and Bioinformatics, 82, 8, 8 2014), and the PDB entry of JES6-1 was used as a query (4YQX; Jamie B. Spangler, Jakub Tomala et al., Antibodies to Interleukin-2 Elicit Selective T Cell Subset Potentiation through Distinct Conformational Mechanisms. Immunity, 42, 5, 5 2015)」を用いて選択された。L鎖及びH鎖のフレームワーク同一性及びステム幾何学の組み合わせに関して最良のスコアを有するPDBエントリ5I18が選択された(「Alexey Teplyakov, Galina Obmolova et al., Structural diversity in a human antibody germline library. mAbs, 8, 6, 8 2016」)。変異は、CDR領域(IMGTナンバリングスキームにしたがって)または4YQXにおける抗原と相互作用する位置(半径5A以内)のいずれかに導入された。これらの位置の多様性は、ヒトテンプレート(5I18)及びマウスクエリ(4YQX)のアミノ酸を含むように選択された。加えて、クエリのH1とテンプレートとの間の大きな構造的変化に起因して、4YQXのH1と5I18との間の完全な移行のオプションが導入された。このライブラリには、約1300種類の変異体が存在した。
【0292】
このライブラリは、FACSによる選択を2ラウンド受けた。1回目のラウンドでは、ライブラリを5nMのhIL-2で標識し、結合クローンの上位5%を選択した。2回目のラウンドでは、ライブラリを1nMのhIL-2で標識し、クローンの上位5%を選択した。クローンの選択後、クローンの配列決定を行い、クローンC#8(173.2A.C6-17.014)(配列番号31)が親和性成熟のためのテンプレートとして使用された。
【0293】
ヒト化抗体親和性成熟
【0294】
体細胞超変異の発生率が高いと予測されるCDR位置(IMGT/ABR定義)を変異の標的として選択した。JES6-1に基づいて抗原と相互作用すると推定されるL3の追加的な位置、及びH3全体も、変異の標的として選択した。変異は、DHYコドンであるH3以外のすべての位置の配列保存に基づくものであった。このライブラリの理論的多様性は、3.21×1012であった。
【0295】
クローンC#8(173.2A.C6-17.014)に基づき、すべてのアミノ酸をコードするNNS縮重コドンを用いてすべてのCDR位置を探索した別のライブラリを構築した。各CDRにつき1つまでの、2~3個の変異を有する変異体をスクリーニングした。このようなライブラリの理論的なサイズは、2×106個の二重変異体、及び、1×109個の三重変異体である。
【0296】
上記で作製したヒト化親和性成熟ライブラリを、選択のために一緒にプールした。簡単に説明すると、1回目の選択では、プールされたYSDライブラリを10nMのhIL-2で標識し、MACSにより選択した。2回目の選択では、酵母を0.1nMのhIL-2で標識し、MACSにより選択した。3回目の選択では、酵母を0.1nMのhIL-2で標識し、すべての結合剤をFACSにより選択した。4回目及び5回目の選択では、酵母を10nMのhIL-2で標識し、100nMの非標識hIL-2とそれぞれ24時間及び48時間競合させた。その後、酵母をFACSによりソートし、すべての結合剤を選択した。最後の選択は、4回目及び5回目と同様の方法で行ったが、標識及び洗浄後、酵母をPBS中の初期体積の1000倍で室温にて1週間インキュベートした。
【0297】
選択後、クローンを単離し、結合を確認し、配列を決定した。いくつかのクローンのアミノ酸配列を以下に示す。重鎖及び軽鎖の可変領域、並びに、クローンのサブセットのCDR領域のアライメントを、
図13A及び
図13Bに示す。
【0298】
【0299】
クローン17.066、17.067、及び17.069は、LALA変異(L234A変異、L235A変異)を含むことに留意されたい。
【0300】
特定のクローンのCDR配列を以下に示す。
【0301】
【0302】
【0303】
ヒト化抗体の結合キネティクス
【0304】
BDG17.038、BDG17.043、BDG17.053、BDG17.054、BDG17.067、BDG17.066、及びBDG17.069のhIL-2及びカニクイザルIL-2(cIL-2)に対する結合キネティクス及び親和性を求めるために、クローンをIgGに再フォーマットし、発現させ、精製した。その後、本明細書に記載のようにGE捕捉抗体キットを使用してBIAcore T200上でSPRによって抗体を分析した。表9、
図14A~
図14G、及び
図15A~
図15B示すように、抗体は、ヒトIL-2及びカニクイザルIL-2の両方に、2桁台の前半のpM範囲で強固に結合する。
【0305】
ヒト化抗体のサイズ排除クロマトグラフィプロファイル及び熱安定性
【0306】
ヒト化IgGであるBDG17.038、BDG17.043、BDG17.053、BDG17.054、BDG17.066、BDG17.067、及びBDG17.069が正しく折り畳まれていて安定しているかどうかを調べるために、抗体を、上記のサイズ排除クロマトグラフィ及び示差走査蛍光分析(DSF)分析に供した。その結果を
図16A~
図16G及び表8に要約する。
図16A~
図16G及び表8は、これらのIgGが95%超の非凝集種として産生され、ヒトIgG1に特有のSEC保持プロファイル、及び、54.4℃以上のTonset及び69℃以上のTm1を有する熱変性プロファイルを有することを示唆する。受容体識別アッセイの説明を
図17Aに示し、異なるクローンに対するSPRの結果を
図17B~
図17Gに示す。結論として、SPR、SEC、及びDSFの実験により、ヒト化抗体が、ヒトIL-2及びカニクイザルIL-2に対して強固に結合し、正確に折り畳まれ、かつ、非常に安定していることが示された。
【0307】
【0308】
実施例3
【0309】
本実施例は、ヒトIL-2のIL-2受容体CD25に対する結合を特異的に遮断し、インビボで免疫系を調節する抗IL-2抗体に関する開示を提供する。
【0310】
IL-2とヒトCD25との間の相互作用を特異的に遮断するエピトープでヒトIL-2に結合する抗IL-2抗体は、いくつかの意味を持つ。これにより、エフェクターT細胞及びNK細胞に対するIL-2抗体複合体の結合が可能になるが、高レベルのCD25を発現する非免疫細胞(例えば、肺内皮、血管内皮)、または高親和性の三量体複合体を発現する免疫細胞(例えば、Treg細胞、CD25+短寿命細胞傷害性エフェクターT細胞)に対するヒトIL-2の結合は阻害される。その結果、これらの抗IL-2抗体は、制御性T細胞を大幅に増加させることなく、エフェクターT細胞及びNK細胞を増加させることができる(
図1及び
図2参照)。加えて、肺内皮細胞がCD25を発現し、その存在下でIL-2が高レベルになると肺水腫を引き起こすことが以前から分かっている。同様の効果が、血管内皮細胞に発現したCD25とIL-2との相互作用による血管漏出のIL-2誘導においても観察された。したがって、CD25から離れてIL-2を標的とすることによって、本明細書に開示される抗IL-2抗体は、IL-2関連の肺及び血管の毒性を低減することが期待される(
図3A及び
図3B)。
【0311】
ヒト化IgG-hIL-2複合体の受容体識別
【0312】
BDG17.023-hIL-2複合体(抗IL-2抗体とヒトIL-2との複合体)は受容体結合の識別が可能であり、CD25ではなくCD122に結合して特異的な免疫系調節結果をもたらすことが見出された。ヒト化抗体が同様の効果を有するかどうかを試験するために、ヒト化抗体をhIL-2と複合体化し、SPRによってCD122及びCD25に対する結合を分析した。この分析は、本明細書に記載されるBDG17.023と同様の方法で行った。
図17B~
図17G中のSPRトレースに見られるように、ヒト化抗体BDG17.038、BDG17.043、BDG17.053、BDG17.054、BDG17.066、BDG17.0067、またはBDG17.069がhIL-2と複合体化した場合、その複合体はCD122には結合するが、CD25には結合しない。このことは、これらの抗体が、ヒトラットキメラBDG17.023の結合識別特性を保持することを示す。
【0313】
ヒト化抗体のインビボ特性評価
【0314】
高親和性抗体によってIL-2上のCD25結合エピトープをブロックすることにより、エフェクターT細胞及びNK細胞に対するヒトIL-2の結合が可能になるが、CD25を発現する非免疫細胞(例えば、肺内皮、血管内皮)または三量体複合体を発現する細胞(例えば、Treg細胞、CD25+エフェクターT細胞)に対するヒトIL-2の結合が阻害されるという仮説が立てられた。この仮説をインビボで試験するために、抗IL-2抗体をヒトIL-2と予め複合体化し、健康なC57BL/6雄マウスに投与した(
図18A及び
図18B)。
図18A及び
図18Bに見られるように、抗IL-2抗体BDG17.043及びBDG17.054は、おそらくはそれらのエピトープ特異的特性に起因して、制御性T細胞(
図18A~18B)を有意に増加させることなく、エフェクターT細胞、NKT細胞、及びNK細胞集団を増加させることができた。加えて、MP CD8+T細胞とNKTの増殖はIgG-hIL-2複合体の投与量に依存しており、hIL-2を投与したアイソタイプ対照と比べてはるかに強固であることから、BDG17.043/IL-2とBDG17.054/IL-2はCD25/CD122/CD132三量体経路を避けながらCD122/CD132二量体活性化経路を能動的に促進することが示唆された(
図19A及び
図19B)。
【0315】
IL-2と複合化したBDG17.043及びBDG17.054は、MP CD8エフェクターT細胞及びNK細胞の増殖を誘導したが、制御性T細胞の大幅な増殖を促進しなかったことから、これらの抗体-IL2複合体は、Tregの増殖を促進して免疫系の抗刺激作用を誘導するJES6.1-IL-2(「Spangler JB, Tomala J, Luca VC, Jude KM, Dong S, Ring AM, Votavova P, Pepper M, Kovar M, Garcia KC. Antibodies to Interleukin-2 Elicit Selective T Cell Subset Potentiation through Distinct Conformational Mechanisms. Immunity. 2015 May 19;42(5):815-25.」)や、ファイザー社のF5111.2-IL2(「Trotta E, Bessette PH, Silveria SL, et al. A human anti-IL-2 antibody that potentiates regulatory T cells by a structure-based mechanism. Nat Med. 2018;24(7):1005-1014.」)などの他の抗体-IL2複合体と比較して、免疫系に対する強力な刺激作用を有することが示唆された。
【0316】
上記のマウス試験では、マウスの体重減少及び非特異的な臨床症状について毎日観察した。マウスにおいて薬物化合物を評価する場合、20%の体重減少は倫理的介入を必要とする行動項目と考えられる。
図20A及び
図20Bに示すように、17.043/IL-2複合体または17.054/IL-2複合体が投与されたマウスは、実験終了時の体重減少は10%以下であった。この結果は、最大用量の25μgのIgG/1.25μgIL-2複合体が投与されたマウスを含むすべての用量コホートで観察され、投与された複合体の耐容性が十分に高いことが示された。
【0317】
B16F10同系癌モデルにおけるヒト化抗体の活性
【0318】
ウイルスクリアランス及び癌治療は両方とも、有効性を高めるためには、獲得T細胞免疫応答を拡大する必要があることが共通している。免疫応答を効果的に活性化する抗IL-2抗体の能力を、B16F10同系黒色腫モデルで試験した。C57BL/6マウスにB16F10メラノーマを接種し、本明細書に記載のように、10μgの抗IL-2抗体と1μgのhIL-2との複合体、またはPBS対照を投与した。
図21Aに示すように、IL-2と複合体化したBDG17.043またはBDR17.054が投与されたすべてのマウスは、投与後8日目に有意な腫瘍増殖阻害を示した。これは、アイソタイプ対照及びhIL-2をマウスに投与した場合(試験17日目)よりもはるかに大きく、おそらくは強力かつ特異的な免疫刺激に起因すると思われる。加えて、
図21Bに見られるように、2種類の抗IL-2抗体が投与されたマウスにおける一時的な平均体重減少は、6.84%±3.9%及び3.6%±5.2%であった。これは、同系B16F10腫瘍モデルの設定において、投与された抗体/IL-2複合体の耐容性が十分に高いことを示す。
【0319】
要約すると、これらの試験により、抗IL-2抗体(17.043及び17.054)は、予め定義されたエピトープでヒトIL-2に対して高親和的に結合し、それにより、IL-2とその受容体CD25との相互作用を完全に阻害することが示された。結論として、抗体/IL-2複合体は、IL-2Rの二量体(CD122/CD132)に結合し、活性化させる。
【0320】
二量体受容体複合体は、エフェクター細胞に存在する。インビボでの免疫刺激効果の分析により、抗IL-2クローン17.043及び17.054の存在下でIL-2がT-エフェクター細胞集団(IL-2Rβγ結合及びシグナル伝達)を増加させるが、制御性T細胞(IL-2Rαβγ結合及びシグナル伝達)に対する影響は観察されないことが実証された。これにより、IL-2と二量体IL-2受容体との相互作用は、非毒性免疫刺激をもたらすことが実証された。総合すると、これらのデータは、サイトカインのCD25陽性細胞に結合する能力を阻害する抗ヒトIL-2抗体が、癌に対する免疫応答を増強させるために癌患者の治療に使用することができるという仮説、または、COVID-19感染症の場合、ウイルス負荷のクリアランスを増加させることができるという仮説を支持する。加えて、これらの抗体特性は、SARS-CoV-2感染肺におけるIL-2誘発性肺水腫や肺組織損傷を防止することができる。
【0321】
実施例4
【0322】
本実施例は、抗IL-2抗体の製剤を調べるために実施された試験の説明を提供する。
【0323】
方法:30mg/mlの抗IL-2クローンBDG17.069を4種類の製剤でインキュベートすることによって、製剤分析を行った。
(F1)20mMのヒスチジン、8%のスクロース、0.04%のPS80、pH5.5;
(F2)20mMのヒスチジン、8%のスクロース、0.04%のPS80、pH6.0;
(F3)20mMのクエン酸、8%のスクロース、0.04%のPS80、pH5.5;及び、
(F4)20mMのヒスチジン、8%のスクロース、10mMのメチオニン、0.04%のPS80、pH5.5。
【0324】
抗体を、(1)40°Cでの1週間及び2週間のインキュベーション、(2)25°Cでの3日間の300rpmの撹拌、及び、(3)凍結/融解(F/T)の3~5回のサイクルに供した。T=0及び処置後に、抗体を、外観、サイズ排除クロマトグラフィ超高性能液体クロマトグラフィ(SEC-UPLC)、pH、タンパク質濃度、PI(キャピラリー等電点電気泳動:cIEF)、準可視粒子(マイクロフローイメージング:MFI)、及び、Tm(DSC)について分析した。
【0325】
【0326】
図22A~
図22Gに示した表から分かるように、F2、F3、F4として製剤化したBDG17.069は、40°Cで1週間及び2週間インキュベーションしても濃度の明らかな変化を示さず、外観の変化も検出されなかった。MFIによる準可視粒子の分析は、F1、F2、またはF4として製剤化されたBDG17.069において、25μM以上の粒子は形成されず、10μM以上の粒子の形成においてわずかな変化が見られることを実証する(
図22B)。SEC-UPLC分析は、4種類すべての製剤条件において、低分子量種のわずかな増加のみが見られたことを明らかにした。加えて、キャリパーSDS分析では、F2及びF4として製剤化されたBDG17.069においてわずかな変化が見られ、cIEFによる分析では、F4として製剤化されたBDG17.069において比較的小さな変化が見られることを示した。しかしながら、F3として製剤化されたBDG17.069は、2週間のインキュベーション後、40°Cでの酸性率が大幅に増加した(
図22C)。
【0327】
F2及びF3として製剤化したBDG17.069は、撹拌後にわずかな粒子形成を示した(
図22D)。また、F4及びF1として製剤化したBDG17.069は、凍結/解凍の5回のサイクル後に、その外観、pH、濃度、または5μM超の準可視粒子の形成に有意な変化を示さなかった(
図22F)。
【0328】
これらの試験結果を総合すると、製剤F1、F2、F3、及びF4において、BDG17.069が、攪拌後の良好な安定性、凍結融解応力を有し、40°Cで2週間インキュベーションした後の凝集率がごくわずかであったことが実証された。すべてのストレス条件を考慮すると、BDG17.069は、20mMのヒスチジン、8%のスクロース、10mMのメチオニン、0.04%のPS80、pH5.5で配合した場合(F4)に最も安定的であることは明らかである。
【0329】
実施例5
【0330】
本実施例は、エフェクターT細胞及びNK細胞を特異的に活性化することによって、SARS-CoV-2などの感染因子に対する免疫応答を増強するとともに、IL-2の制御性T細胞及び肺内皮に対する結合を抑制するように設計されたエピトープ特異的抗hIL-2抗体の安全性及び有効性を実証する試験についての記載を提供する。
【0331】
前臨床試験
【0332】
以下の非臨床試験は、健康な被験者に本化合物を単回静脈内投与した場合の安全性を実証する第1相と、ウイルス感染動物モデルに本化合物を複数回投与した場合の安全性を実証する第2相との、2つの相で実施される。
【0333】
本明細書に開示されるように、抗IL-2抗体は、ヒトIL-2に対して特異的に結合するが、マウスIL-2には結合しない。マウスIL-2受容体はヒトIL-2に結合することができるので、hIL-2を複合体にロードしてマウスモデルを使用することが可能であるが、正常マウスは、その後、高レベルのマウスIL-2の産生を開始するので望ましくない。そのため、分泌されたmIL-2は、肺の受容体に結合して浮腫を誘発するので、安全性の解釈を混乱させる。したがって、ヒトIL-2の使用を可能にするか、または内因性IL-2との抗体交差反応性が生じる動物モデルが好ましいモデルである。マウスモデルの場合、いくつかのオプションが利用可能できる。第1のオプションは、抗体またはAb/IL2複合体がCD25発現肺組織に対して直接有害な影響を与えるかどうかを調べるために、IL-2ノックアウトマウスを使用できることである。このモデルの主な限界は、その後の免疫応答の増幅や、追加的な免疫誘導性サイトカインを欠くことである。第2のオプションは、中和抗体を使用してマウスIL-2を枯渇させた健康なC57BL/6またはBalbCマウスを使用できることである。しかし、このモデルの最適化が依然として必要である。第3のオプションは、NOD-EXLマウスに移植されたCD34+ヒト臍帯血細胞を使用して、ヒト免疫系を発現するマウスを作製することである。このモデルの利点は、(いくつかの制限はあるが)ほぼ完全なヒト免疫系が、特にすべてのT細胞及びNK細胞集団が発現することである。このモデルは、急性ウイルス感染症モデルや腫瘍学研究におけるモデル系としての使用にも適している。
【0334】
ここに提示されたデータに基づいて、17.067及び17.069は、カニクイザルIL-2に対する強い親和性を示し、hIL-2及びcIL-2に対する高い相同性に基づき、その両方に対してAb-IL2複合体受容体識別を提示すると考えられるため、霊長類の安全性モデルを完成することができた。健康なカニクイザルを、単回漸増用量試験に供する。カニクイザルはSARS-CoV-1に感染し、アカゲザルはSARS-CoV-2に感染することが分かっている。いずれの状況においても、軽度のヒト感染で観察されるのと同様に、軽度の肺水腫が観察された。したがって、これらのサルモデルは、抗IL-2抗体/IL-2複合体の安全性及び有効性の両方の試験を可能にする。
【0335】
用量漸増実験は、健康な動物(例えば、ヒト化マウス、カニクイザルなど)を用いて以下のように行うことができる。
【0336】
ファースト・イン・マン(FIM)の健康性の支援。
(a)IL-2 KOマウスの用量漸増;及び/または
(b)mIL2抗体欠失hIL2+抗体;及び/または
(c)CD34+SCTヒト化マウス(+/-IL2);
(d)健康なカニクイザルまたはアカゲザルへの用量漸増単回投与;
(e)健康なカニクイザルまたはアカゲザルへの複数回投与(FIM単回漸増投与と同時に実施)。
【0337】
患者への投与の支援(第1b相または第2相)
(a)マウス(上記の(b)または(c)、及び/または、hACE2トランスジェニック)ウイルスロード(それぞれ急性インフルエンザ感染症モデルまたはコロナウイルス)。
(b)可能な場合は、カニクイザル(SARS-CoV)またはアカゲザル(SARS-CoV-2)のコロナウイルス急性感染モデル。
【0338】
臨床試験
【0339】
パート(1):健康な被験者を対象とした用量漸増試験を、最大耐量を特定するために実施した。安全性を判定するために、すべての被験者に対して適切な投与間隔を用いて、10人(試験8人、プラセボ2人)からなるコホートを最大で8つまでを実施した。
【0340】
パート(2):パート(1)で求められた用量を用いて、症状の軽い最近の症候性SARS-CoV-2の陽性患者を治療し、安全性と有効性を観察した。有効性は、ウイルスクリアランスまでの時間の短縮と呼吸器感染症の徴候及び症状の低減によって判断することができる。探索的評価項目には、末梢血免疫細胞集団の変化及び活性化状態が含まれる。
【0341】
化学、製造、及び制御
【0342】
細胞株、製剤原料(DS)、及び製剤(DP)は、GMPガイダンス下でGMP認定製造業者が製造することができる(例えば、ウーシー・バイオロジクス社(Wuxi Biologics))。材料の加速生産は、INDのための材料を6ヶ月で準備するために行うことができる。すべてのバイオバーデン、ウイルスクリアランス、ウイルス量、宿主細胞タンパク質は、製品の安全性を確保するために、検査し、現在の製造ガイドラインで規定されている仕様まで減らすことができる。Pは、静脈内投与用に製剤化することができる。製品の品質を長期にわたって確保するために、安定性試験も同時に行うことができる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗IL-2抗体であって、
前記重鎖可変領域(VH)は、重鎖相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域(VL)は、軽鎖相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記重鎖相補性決定領域(HCDR)及び前記軽鎖相補性決定領域(LCDR)のアミノ酸配列は、
(a)前記HCDR1が配列番号62のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号63のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号64のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号65のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号66のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号67のアミノ酸配列を含むか、
(
b)前記HCDR1が配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号40のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号41のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号42のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号43のアミノ酸配列を含むか、
(
c)前記HCDR1が配列番号44のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号45のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号46のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号47のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号48のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号49のアミノ酸配列を含むか、
(
d)前記HCDR1が配列番号50のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号51のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号52のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号53のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号54のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号55のアミノ酸配列を含むか、
または、
(
e)前記HCDR1が配列番号56のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号57のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号58のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号59のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号60のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号61のアミノ酸配列を含
む、抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体であって、
前記重鎖可変領域(VH)及び前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は、
(a)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号26のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号27のアミノ酸配列を含むか、
(
b)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号11のアミノ酸配列を含むか、
(
c)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号12のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号13のアミノ酸配列を含むか、
(
d)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号15のアミノ酸配列を含むか、
(
e)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号16のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号17のアミノ酸配列を含むか、
(
f)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号18のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号19のアミノ酸配列を含むか、
(
g)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号20のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号21のアミノ酸配列を含むか、
(
h)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号22のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号23のアミノ酸配列を含むか、
(
i)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号24のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号25のアミノ酸配列を含むか
、
(j)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号36のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号37のアミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の抗体であって、
当該抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、F(ab´)
2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体を含む、抗体。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれかに記載の抗体であって、
当該抗体は、Fcγ受容体への結合を減少させる突然変異を有する重鎖を含む、抗体。
【請求項5】
請求項4に記載の抗体であって、
当該抗体は、重鎖配列と、軽鎖配列とを含み、
前記重鎖配列及び前記軽鎖配列は、
(a)配列番号68に記載の重鎖配列及び配列番号69に記載の軽鎖配列、
(b)配列番号70に記載の重鎖配列及び配列番号71に記載の軽鎖配列、または、
(c)配列番号72に記載の重鎖配列及び配列番号73に記載の軽鎖配列、を含む、抗体。
【請求項6】
請求項1
~5のいずれかに記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、
pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、
ヒスチジン緩衝液及びクエン酸緩衝液から選択される緩衝液を含む、組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物であって、
スクロース、メチオニン、またはPS80のうちの少なくとも1つ、または、それらの任意の組み合わせをさらに含む、組成物。
【請求項9】
請求項6
~8のいずれかに記載の組成物であって、
IL-2をさらに含む、組成物。
【請求項10】
抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
前記重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列が、配列番号
26、10、12、14、16、18、20、22、24
、または36に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項11】
請求項10に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項12】
請求項11に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が、配列番号
27、11、13、15、17、19、21、23、25
、または37に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項14】
請求項13に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項16】
抗IL-2抗体scFvをコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
配列番号
35、1、2、3、4、5、31、32、33、
または3
4に記載されている、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項17】
請求項16に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
対象における疾患または状態
の治療
に使用される組成物であって、
請求項1
~5のいずれかに記載の抗IL-2抗体
を含み、
前記抗体が、免疫細胞のサブセットの分化成長を促進し、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響を低減さ
せる、
組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の
組成物であって、
前記組成物は、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む、
組成物。
【請求項21】
請求項19
または20に記載の
組成物であって、
前記疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を含む、
組成物。
【請求項22】
請求項19
~21のいずれかに記載の
組成物であって、
前記状態は、免疫系が弱った状態を含み、
前記状態の治療は、前記免疫系を予防的に高めることを含む、
組成物。
【請求項23】
請求項19
~21のいずれかに記載の
組成物であって、
前記状態は、前記対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を含む、
組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の
組成物であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む、
組成物。
【請求項25】
請求項23に記載の
組成物であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
組成物。
【請求項26】
請求項19
~25のいずれかに記載の
組成物であって、
前記免疫細胞は、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、CD8
+T細胞、NK細胞、またはナチュラルキラーT細胞のうちの1以上を含む、
組成物。
【請求項27】
請求項19
~26のいずれかに記載の
組成物であって、
IL-2によって引き起こされる前記望ましくない影響は、制御性T細胞の活性化、CD25
+Tエフェクター細胞のアポトーシス、IL-2誘導性肺水腫、IL-2誘導性肺炎、またはIL-2誘導性血管漏出のうちの1以上を含む、
組成物。
【請求項28】
請求項19
~27のいずれかに記載の
組成物であって、
前記抗IL-2抗体は、CD25へのIL-2の結合を阻害する、
組成物。
【請求項29】
請求項19
~28のいずれかに記載の
組成物であって、
当該組成物は、1以上の免疫チェックポイントを標的とする1以上の免疫チェックポイント阻害剤
とともに使用される、
組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の
組成物であって、
当該組成物は、前記抗IL-2抗体による治療と同時に、前記抗IL-2抗体による治療の前に、または、前記抗IL-2抗体による治療の後に、前記
1以上の免疫チェックポイント阻害剤
とともに使用される、
組成物。
【請求項31】
請求項29
または30に記載の
組成物であって、
前記免疫チェックポイントは、PD-1、PDL-1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、B7-H3、CD73、LAG3、CD27、CD70、4-1BB、GITR、OX40、SIRP-α(CD47)、CD39、ILDR2、VISTA、BTLA、VTCN-1、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
組成物。
【請求項32】
請求項21
~31のいずれかに記載の
組成物であって、
前記ウイルス感染症は、SARS-CoV-2;ノロウイルス;ロタウイルス;A型、B型、C型、D型、またはE型の肝炎ウイルス;狂犬病ウイルス;西ナイルウイルス;エンテロウイルス;エコーウイルス;コクサッキーウイルス;単純ヘルペスウイルス(HSV);HSV-2;水痘帯状疱疹ウイルス;蚊媒介ウイルス;アルボウイルス;セントルイス脳炎ウイルス;カリフォルニア脳炎ウイルス;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);ポリオウイルス;ジカウイルス;風疹ウイルス;サイトメガロウイルス;ヒトパピローマウイルス(HPV);エンテロウイルスD68;重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス;中東呼吸器症候群コロナウイルス;エプスタイン・バー・ウイルス;インフルエンザウイルス;呼吸器合胞体ウイルス;JCウイルスを含むポリオーマウイルス;BKウイルス;エボラウイルス;デングウイルス;またはそれらの任意の組み合わせによって引き起こされる、
組成物。
【請求項33】
対象
の免疫化
に使用されるワクチンであって
、
IL-2抗体アジュバントを含み、
前記IL-2抗体アジュバントは、請求項1
~5のいずれかに記載の抗IL-2抗体を含む、
ワクチン。
【請求項34】
請求項33に記載の
ワクチンであって、
前記IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む、
ワクチン。
【請求項35】
請求項33
または34に記載の
ワクチンであって、
前記対象は、免疫系が弱っている、
ワクチン。
【請求項36】
請求項33
~35のいずれかに記載の
ワクチンであって、
前記対象は、該対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を有する、
ワクチン。
【請求項37】
請求項36に記載の
ワクチンであって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む、
ワクチン。
【請求項38】
請求項36に記載の
ワクチンであって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
ワクチン。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗IL-2抗体であって、
前記重鎖可変領域(VH)は、重鎖相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域(VL)は、軽鎖相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記重鎖相補性決定領域(HCDR)及び前記軽鎖相補性決定領域(LCDR)のアミノ酸配列は、
(a)前記HCDR1が配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号40のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号41のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号42のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号43のアミノ酸配列を含むか、
(b)前記HCDR1が配列番号44のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号45のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号46のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号47のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号48のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号49のアミノ酸配列を含むか、
(c)前記HCDR1が配列番号50のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号51のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号52のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号53のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号54のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号55のアミノ酸配列を含むか、
(d)前記HCDR1が配列番号56のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号57のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号58のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号59のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号60のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号61のアミノ酸配列を含むか、または、
(e)前記HCDR1が配列番号62のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号63のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号64のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号65のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号66のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号67のアミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体であって、
前記重鎖可変領域(VH)及び前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は、
(a)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号11のアミノ酸配列を含むか、
(b)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号12のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号13のアミノ酸配列を含むか、
(c)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号15のアミノ酸配列を含むか、
(d)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号16のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号17のアミノ酸配列を含むか、
(e)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号18のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号19のアミノ酸配列を含むか、
(f)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号20のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号21のアミノ酸配列を含むか、
(g)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号22のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号23のアミノ酸配列を含むか、
(h)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号24のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号25のアミノ酸配列を含むか、
(i)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号26のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号27のアミノ酸配列を含むか、または、(j)前記重鎖可変領域(VH)が配列番号36のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号37のアミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項3】
請求項1に記載の抗体であって、
当該抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、F(ab´)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体を含む、抗体。
【請求項4】
請求項1に記載の抗体であって、
当該抗体は、Fcγ受容体への結合を減少させる突然変異を有する重鎖を含む、抗体。
【請求項5】
請求項4に記載の抗体であって、
当該抗体は、重鎖配列と、軽鎖配列とを含み、
前記重鎖配列及び前記軽鎖配列は、
(a)配列番号68に記載の重鎖配列及び配列番号69に記載の軽鎖配列、
(b)配列番号70に記載の重鎖配列及び配列番号71に記載の軽鎖配列、または、
(c)配列番号72に記載の重鎖配列及び配列番号73に記載の軽鎖配列、を含む、抗体。
【請求項6】
請求項1に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、
pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、
ヒスチジン緩衝液及びクエン酸緩衝液から選択される緩衝液を含む、組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物であって、
スクロース、メチオニン、またはPS80のうちの少なくとも1つ、または、それらの任意の組み合わせをさらに含む、組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の組成物であって、
IL-2をさらに含む、組成物。
【請求項10】
抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
前記重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列が、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または36に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項11】
請求項10に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項12】
請求項11に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25、27、または37に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項14】
請求項13に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項16】
抗IL-2抗体scFvをコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
配列番号1、2、3、4、5、31、32、33、34、または35に記載されている、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項17】
請求項16に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
対象における疾患または状態を治療する方法であって、
請求項1に記載の抗IL-2抗体を含む組成物を前記対象に投与するステップを含み、
前記抗体が、免疫細胞のサブセットの分化成長を促進し、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響を低減させ、
それによって、前記対象における前記疾患または状態を治療する、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記組成物は、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、
前記疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を含む、方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法であって、
前記状態は、免疫系が弱った状態を含み、
前記状態の治療は、前記免疫系を予防的に高めることを含む、方法。
【請求項23】
請求項19に記載の方法であって、
前記状態は、前記対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項26】
請求項19に記載の方法であって、
前記免疫細胞は、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはナチュラルキラーT細胞のうちの1以上を含む、方法。
【請求項27】
請求項19に記載の方法であって、
IL-2によって引き起こされる前記望ましくない影響は、制御性T細胞の活性化、CD25+Tエフェクター細胞のアポトーシス、IL-2誘導性肺水腫、IL-2誘導性肺炎、またはIL-2誘導性血管漏出のうちの1以上を含む、方法。
【請求項28】
請求項19に記載の方法であって、
前記抗IL-2抗体は、CD25へのIL-2の結合を阻害する、方法。
【請求項29】
請求項19に記載の方法であって、
前記対象は、1以上の免疫チェックポイントを標的とする1以上の免疫チェックポイント阻害剤でさらに治療される、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、
前記対象は、前記抗IL-2抗体による治療と同時に、前記抗IL-2抗体による治療の前に、または、前記抗IL-2抗体による治療の後に、前記免疫チェックポイント阻害剤で治療される、方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法であって、
前記免疫チェックポイントは、PD-1、PDL-1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、B7-H3、CD73、LAG3、CD27、CD70、4-1BB、GITR、OX40、SIRP-α(CD47)、CD39、ILDR2、VISTA、BTLA、VTCN-1、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項32】
請求項21に記載の方法であって、
前記ウイルス感染症は、SARS-CoV-2;ノロウイルス;ロタウイルス;A型、B型、C型、D型、またはE型の肝炎ウイルス;狂犬病ウイルス;西ナイルウイルス;エンテロウイルス;エコーウイルス;コクサッキーウイルス;単純ヘルペスウイルス(HSV);HSV-2;水痘帯状疱疹ウイルス;蚊媒介ウイルス;アルボウイルス;セントルイス脳炎ウイルス;カリフォルニア脳炎ウイルス;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);ポリオウイルス;ジカウイルス;風疹ウイルス;サイトメガロウイルス;ヒトパピローマウイルス(HPV);エンテロウイルスD68;重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス;中東呼吸器症候群コロナウイルス;エプスタイン・バー・ウイルス;インフルエンザウイルス;呼吸器合胞体ウイルス;JCウイルスを含むポリオーマウイルス;BKウイルス;エボラウイルス;デングウイルス;またはそれらの任意の組み合わせによって引き起こされる、方法。
【請求項33】
対象を免疫化する方法であって、
アジュバントを含むワクチンを投与するステップを含み、
前記アジュバントは、IL-2抗体アジュバントを含み、
前記IL-2抗体アジュバントは、請求項1に記載の抗IL-2抗体を含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、
前記IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法であって、
前記対象は、免疫系が弱っている、方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法であって、
前記対象は、該対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を有する、方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗IL-2抗体であって、
前記重鎖可変領域(VH)は、重鎖相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域(VL)は、軽鎖相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記重鎖相補性決定領域(HCDR)及び前記軽鎖相補性決定領域(LCDR)のアミノ酸配列は
、前記HCDR1が配列番号62のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号63のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号64のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号65のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号66のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号67のアミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体であって、
前記重鎖可変領域(VH)及び前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は
、前記重鎖可変領域(VH)が配列番号26のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号27のアミノ酸配列を含
む、抗体。
【請求項3】
請求項1に記載の抗体であって、
当該抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、F(ab´)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体を含む、抗体。
【請求項4】
請求項1に記載の抗体であって、
当該抗体は、Fcγ受容体への結合を減少させる突然変異を有する重鎖を含む、抗体。
【請求項5】
請求項1に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項6】
請求項
5に記載の組成物であって、
pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、
ヒスチジン緩衝液及びクエン酸緩衝液から選択される緩衝液を含む、組成物。
【請求項7】
請求項
6に記載の組成物であって、
スクロース、メチオニン、またはPS80のうちの少なくとも1つ、または、それらの任意の組み合わせをさらに含む、組成物。
【請求項8】
請求項
5に記載の組成物であって、
IL-2をさらに含む、組成物。
【請求項9】
抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
前記重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列が、配列番
号26に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項10】
請求項
9に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項11】
請求項
10に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が、配列番
号27に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項13】
請求項
12に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項14】
請求項
13に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
対象における疾患または状態を治療する方法であって、
請求項1に記載の抗IL-2抗体を含む組成物を前記対象に投与するステップを含み、
前記抗体が、免疫細胞のサブセットの分化成長を促進し、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響を低減させ、
それによって、前記対象における前記疾患または状態を治療する、方法。
【請求項16】
請求項
15に記載の方法であって、
前記組成物は、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む、方法。
【請求項17】
請求項
15に記載の方法であって、
前記疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を含む、方法。
【請求項18】
請求項
15に記載の方法であって、
前記状態は、前記対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を含む、方法。
【請求項19】
請求項
18に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項20】
請求項
18に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項21】
請求項
15に記載の方法であって、
前記免疫細胞は、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはナチュラルキラーT細胞のうちの1以上を含む、方法。
【請求項22】
請求項
15に記載の方法であって、
IL-2によって引き起こされる前記望ましくない影響は、制御性T細胞の活性化、CD25+Tエフェクター細胞のアポトーシス、IL-2誘導性肺水腫、IL-2誘導性肺炎、またはIL-2誘導性血管漏出のうちの1以上を含む、方法。
【請求項23】
請求項
15に記載の方法であって、
前記抗IL-2抗体は、CD25へのIL-2の結合を阻害する、方法。
【請求項24】
請求項
15に記載の方法であって、
前記対象は、1以上の免疫チェックポイントを標的とする1以上の免疫チェックポイント阻害剤でさらに治療される、方法。
【請求項25】
請求項
24に記載の方法であって、
前記対象は、前記抗IL-2抗体による治療と同時に、前記抗IL-2抗体による治療の前に、または、前記抗IL-2抗体による治療の後に、前記免疫チェックポイント阻害剤で治療される、方法。
【請求項26】
請求項
24に記載の方法であって、
前記免疫チェックポイントは、PD-1、PDL-1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、B7-H3、CD73、LAG3、CD27、CD70、4-1BB、GITR、OX40、SIRP-α(CD47)、CD39、ILDR2、VISTA、BTLA、VTCN-1、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項27】
対象を免疫化する方法であって、
アジュバントを含むワクチンを投与するステップを含み、
前記アジュバントは、IL-2抗体アジュバントを含み、
前記IL-2抗体アジュバントは、請求項1に記載の抗IL-2抗体を含む、方法。
【請求項28】
請求項
27に記載の方法であって、
前記IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む、方法。
【請求項29】
請求項
27に記載の方法であって、
前記対象は、免疫系が弱っている、方法。
【請求項30】
請求項
27に記載の方法であって、
前記対象は、該対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を有する、方法。
【請求項31】
請求項
30に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項32】
請求項
30に記載の方法であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗IL-2抗体であって、
前記重鎖可変領域(VH)は、重鎖相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域(VL)は、軽鎖相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記重鎖相補性決定領域(HCDR)及び前記軽鎖相補性決定領域(LCDR)のアミノ酸配列は、前記HCDR1が配列番号62のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号63のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号64のアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号65のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号66のアミノ酸配列を含み、かつ、前記LCDR3が配列番号67のアミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体であって、
前記重鎖可変領域(VH)及び前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は、前記重鎖可変領域(VH)が配列番号26のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖可変領域(VL)が配列番号27のアミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の抗体であって、
当該抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、Fv、scFv、Fab、F(ab´)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、または単一ドメイン抗体を含む、抗体。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか一項に記載の抗体であって、
当該抗体は、Fcγ受容体への結合を減少させる突然変異を有する重鎖を含む、抗体。
【請求項5】
請求項4に記載の抗体であって、
当該抗体は、重鎖配列と、軽鎖配列とを含み、
前記重鎖配列及び前記軽鎖配列は、配列番号72に記載の重鎖配列及び配列番号73に記載の軽鎖配列、を含む、抗体。
【請求項6】
請求項1
~5のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項7】
請求項
6に記載の組成物であって、
pH5.0~6.0のpH値になるように配合され、
ヒスチジン緩衝液及びクエン酸緩衝液から選択される緩衝液を含む、組成物。
【請求項8】
請求項
7に記載の組成物であって、
スクロース、メチオニン、またはPS80のうちの少なくとも1つ、または、それらの任意の組み合わせをさらに含む、組成物。
【請求項9】
請求項
6~8のいずれか一項に記載の組成物であって、
IL-2をさらに含む、組成物。
【請求項10】
抗IL-2抗体の重鎖可変領域(VH)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
前記重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列が、配列番号26に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項11】
請求項
10に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項12】
請求項
11に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
抗IL-2抗体の軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
前記軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が、配列番号27に記載されたアミノ酸配列を含む、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項14】
請求項
13に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項15】
請求項
14に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項16】
抗IL-2抗体scFvをコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、
配列番号35に記載されている、単離ポリヌクレオチド配列。
【請求項17】
請求項16に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
対象における疾患または状態
の治療に使用される組成物であって、
請求項1
~5のいずれか一項に記載の抗IL-2抗体を含
み、
前記抗体が、免疫細胞のサブセットの分化成長を促進し、IL-2によって引き起こされる望ましくない影響を低減させ
る、組成物。
【請求項20】
請求項
19に記載の
組成物であって、
前記組成物は、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む、
組成物。
【請求項21】
請求項
19または20に記載の
組成物であって、
前記疾患は、ウイルス感染症、細菌感染症、または癌を含む、
組成物。
【請求項22】
請求項
19~21のいずれか一項に記載の
組成物であって、
前記状態は、前記対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を含む、
組成物。
【請求項23】
請求項
22に記載の
組成物であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む、
組成物。
【請求項24】
請求項
22に記載の
組成物であって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
組成物。
【請求項25】
請求項
19~24のいずれか一項に記載の
組成物であって、
前記免疫細胞は、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、CD8+T細胞、NK細胞、またはナチュラルキラーT細胞のうちの1以上を含む、
組成物。
【請求項26】
請求項
19~25のいずれか一項に記載の
組成物であって、
IL-2によって引き起こされる前記望ましくない影響は、制御性T細胞の活性化、CD25+Tエフェクター細胞のアポトーシス、IL-2誘導性肺水腫、IL-2誘導性肺炎、またはIL-2誘導性血管漏出のうちの1以上を含む、
組成物。
【請求項27】
請求項
19~26のいずれか一項に記載の
組成物であって、
前記抗IL-2抗体は、CD25へのIL-2の結合を阻害する、
組成物。
【請求項28】
請求項
19~27のいずれか一項に記載の
組成物であって、
前記
組成物は、1以上の免疫チェックポイントを標的とする1以上の免疫チェックポイント阻害剤
とともに使用される、
組成物。
【請求項29】
請求項
28に記載の
組成物であって、
前記
組成物は、前記抗IL-2抗体による治療と同時に、前記抗IL-2抗体による治療の前に、または、前記抗IL-2抗体による治療の後に、前記
1以上の免疫チェックポイント阻害剤
とともに使用される、
組成物。
【請求項30】
請求項
28または29に記載の
組成物であって、
前記免疫チェックポイントは、PD-1、PDL-1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、B7-H3、CD73、LAG3、CD27、CD70、4-1BB、GITR、OX40、SIRP-α(CD47)、CD39、ILDR2、VISTA、BTLA、VTCN-1、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
組成物。
【請求項31】
対象
の免疫化
に使用されるワクチンであって、
IL-2抗体アジュバントを含み、
前記アジュバントは、IL-2抗体アジュバントを含み、
前記IL-2抗体アジュバントは、請求項1
~5のいずれか一項に記載の抗IL-2抗体を含む、
ワクチン。
【請求項32】
請求項
31に記載の
ワクチンであって、
前記IL-2抗体アジュバントは、抗IL-2抗体及びIL-2、または、IL-2と複合体を形成した抗IL-2抗体を含む、
ワクチン。
【請求項33】
請求項
31または32に記載の
ワクチンであって、
前記対象は、免疫系が弱っている、
ワクチン。
【請求項34】
請求項
31~33のいずれか一項に記載の
ワクチンであって、
前記対象は、該対象における癌の可能性を増加させる遺伝的素因を有する、
ワクチン。
【請求項35】
請求項
34に記載の
ワクチンであって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子、またはそれらの組み合わせを含む、
ワクチン。
【請求項36】
請求項
34に記載の
ワクチンであって、
前記遺伝的素因は、遺伝子産物の発現または活性の変化を含み、
前記遺伝子は、BRCA1、BRAC2、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2、TP53、CHEK2、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
ワクチン。
【国際調査報告】