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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(54)【発明の名称】Tacr2のアゴニスト
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230208BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230208BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230208BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230208BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230208BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230208BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230208BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230208BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230208BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20230208BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230208BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
A61P3/04
A61P3/10
A61P43/00 111
A61K38/17
A61K47/64
A61K47/60
A61K47/61
A61K47/54
C07K7/06 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522926
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2019078201
(87)【国際公開番号】W WO2021073742
(87)【国際公開日】2021-04-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508335820
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ コペンハーゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハルト-ハインズ,ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ジェイコブ ボンド
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ,ツエ ダブリュー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB16
4C076CC21
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE41
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA22
4C084BA42
4C084CA59
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC411
4C084ZC412
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA14
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA21
(57)【要約】
本開示は、Tacr2のペプチドアゴニストなどのTacr2のアゴニスト、ならびにインスリン抵抗性、肥満および/または糖尿病の処置のためにTacr2のアゴニストを使用する方法に関する。本開示はまた、個体におけるエネルギ消費の増強のための前記Tacr2のアゴニストの使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置における使用のためのTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩。
【請求項2】
それを必要とする個体において体重減少を誘導する方法における使用のためのTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩。
【請求項3】
ペプチドを含むまたはそれからなる、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項4】
コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなる、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項5】
前記アゴニストまたは前記ペプチドが、配列XFXのペプチドを含みまたはそれからなりかつ
=アスパラギン酸(E)またはグルタミン酸(D);
=セリン(S)またはリシン(K);
=バリン(V)またはトリプトファン(W);
=グリシン(G)、β-アラニン(β-ala);
=メチル-ロイシン(Me-Leu)、L,γ-ラクタム-ロイシン(γ-ラクタム-Leu);
=ノルロイシン(Nle)、メチオニン(M)
である、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項6】
前記アゴニストまたは前記ペプチドが、配列DXFXのペプチドを含みまたはそれからなりかつ
=セリン(S)またはリシン(K);
=バリン(V)またはトリプトファン(W);
=グリシン(G)、β-アラニン(β-ala);
=メチル-ロイシン(Me-Leu)、L,γ-ラクタム-ロイシン(γ-ラクタム-Leu);
=ノルロイシン(Nle)、メチオニン(M)
である、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項7】
前記アゴニストまたは前記ペプチドが、ニューロキニンAまたはその機能的類似体を含むまたはそれからなる、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項8】
前記ペプチドが、少なくとも7および多くとも130のアミノ酸残基からなる、請求項4~7のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項9】
前記ペプチドが、少なくとも10および多くとも130のアミノ酸残基からなる、請求項4~7のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項10】
前記ペプチドが、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15のニューロキニンAの前駆体タンパク質または少なくとも75%の配列同一性を共有するその機能的類似体を含む、請求項4~9のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項11】
前記ペプチドが、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15のニューロキニンAの前駆体タンパク質または少なくとも75%の配列同一性を共有するその機能的類似体の断片を含む、請求項4~10のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項12】
前記ペプチドが、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15または少なくとも75%の配列同一性を共有するその機能的類似体の連続配列からなる、請求項4~11のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項13】
前記ペプチドが、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含みかつ多くとも2つのアミノ酸が、交換されている、請求項4~12のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項14】
前記ペプチドが、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27からなる群から選択される配列からなりかつ多くとも2つのアミノ酸が、交換されている、請求項4~13のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項15】
SEQ ID NO:2を含むまたはそれからなる、請求項4~14のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項16】
前記ペプチドが、SEQ ID NO:1を含むまたはそれからなる、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項17】
前記ペプチドが、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含むまたはそれからなる、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項18】
前記ペプチドが、C末端アミド化またはN末端アセチル化を含有する、請求項3~17のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項19】
前記コンジュゲートされた部分が、ペプチド、脂質、グリカン、糖類およびPEGからなる群から選択される、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項20】
前記コンジュゲートされた部分が、マンノースなどの、糖類である、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項21】
前記コンジュゲートされた部分が、マンノースであり、かつ前記マンノースが、前記ペプチドのN末端アミノ酸にコンジュゲートされる、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項22】
前記コンジュゲートされた部分が、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキドン酸からなる群から選択される脂肪酸である、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項23】
前記コンジュゲートされた部分が、-Naa-カプリン酸、-Naa-ラウリン酸、-Naa-ミリスチン酸、-Naa-パルミチン酸、-Naa-ステアリン酸、および-Naa-アラキドン酸からなる群から選択される、アミノ酸に連結された脂肪酸である、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項24】
前記コンジュゲートされた部分が、請求項5~18のいずれか1項に記載のペプチドの末端アミノ酸にまたは非末端アミノ酸に付着される、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項25】
前記コンジュゲートされた部分が、-Naa-ミリスチン酸、-Naa-パルミチン酸、-Naa-ステアリン酸からなる群から選択され、-Naa-が、任意のタンパク質構成アミノ酸であり、かつ前記コンジュゲートされた部分が、SEQ ID NO:1のペプチドの2位にあるリシンに付着される、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項26】
前記コンジュゲートされた部分が、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸からなる群から選択され、かつ前記コンジュゲートされた部分が、SEQ ID NO:1のペプチドのN末端アミノ酸に付着される、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項27】
前記コンジュゲートされた部分が、マンノースであり、かつ前記マンノースが、SEQ ID NO:21のペプチドのN末端セリンにコンジュゲートされる、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項28】
Tacr1に対してよりもTacr2に対してより高い親和性を有する、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項29】
前記糖尿病が、1型糖尿病、2型糖尿病および妊娠糖尿病のいずれか1つである、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項30】
前記アゴニストが、前記それを必要とする個体の血中グルコースCminを低減する、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項31】
前記アゴニストが、前記それを必要とする個体においてインスリンに応答して血中グルコースCminに達してからプレインスリングルコースレベルに戻る間の時間間隔を増加させる、前記請求項のいずれか1項に記載のアゴニスト。
【請求項32】
それを必要とする個体における肥満、インスリン抵抗性および/または糖尿病の処置のための請求項1~31のいずれか1項に定義されたTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩を含む医薬組成物。
【請求項33】
インスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための医薬の製造のためのTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩の使用。
【請求項34】
前記アゴニストが、請求項1~31のいずれか1項に定義された通りである、請求項3333に記載の使用。
【請求項35】
前記糖尿病が、1型糖尿病、2型糖尿病および妊娠糖尿病のいずれか1つである、請求項3333に記載の使用。
【請求項36】
それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための方法であって、前記個体にTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項37】
それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための方法であって、前記個体へのTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩の治療有効量の投与により前記個体における褐色脂肪組織細胞の活性を増強することを含む、方法。
【請求項38】
それを必要とする個体において体重減少を誘導するための方法であって、前記個体にTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項39】
それを必要とする個体において体重減少を誘導するための方法であって、前記個体へのTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩の治療有効量の投与により前記個体における褐色脂肪組織細胞の活性を増強することを含む、方法。
【請求項40】
前記Tacr2のアゴニストが、請求項2~42のいずれか1項に定義された通りである、請求項36~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記アゴニストが、前記個体に非経口投与される、請求項36~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記Tacr2への前記ペプチドアゴニストの結合をさらに含む、請求項36~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
初代褐色脂肪細胞における基礎酸素消費速度および/またはノルエピネフリン誘導性酸素消費速度および/または最大酸素消費速度を増加させることをさらに含む、請求項36~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
褐色およびベージュ脂肪細胞においてグルコースの吸収を増加させることをさらに含む、請求項36~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
褐色およびベージュ脂肪細胞においてエネルギー消費を増加させることをさらに含む、請求項36~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記個体においてインスリン感受性を増加させることをさらに含む、請求項36~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
褐色およびベージュ脂肪細胞において内因性ニューロキニンAの放出を刺激することをさらに含む、請求項47~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記個体の血中グルコースCminを低減することをさらに含む、請求項36~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
インスリンに応答して血中グルコースCminに達してからプレインスリングルコースレベルに戻る間の時間間隔を増加させることをさらに含む、請求項36~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
糖尿病が、1型糖尿病、2型糖尿病および妊娠糖尿病のいずれか1つである、請求項36~49のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、Tacr2のペプチドアゴニストなどのTacr2のアゴニスト、ならびにそれを肥満および/または糖尿病の処置に使用する方法に関する。本開示はまた、個体におけるグルコースおよびエネルギー消費の増大のための上記Tacr2アゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
世界にはおよそ20億人の過体重または肥満個体と、3億5千万人の糖尿病個体が存在し(世界保健機関による)、継続的研究がなされているにもかかわらず、依然として有効な処置が必要とされている。
【0003】
試験された治療的方策の1つは、ベージュ/ブライト脂肪組織の活性化である。ノルエピネフリン(NE)による褐色およびベージュ/ブライト脂肪組織の古典的活性化は、ベータ-アドレナリン作動性受容体(β3AR)を通してこれらの細胞内でのエネルギー消費を増加させる(Cannon and Nedergaard, 2004)。これらの褐色およびベージュ/ブライト脂肪のエネルギー消費量の主なエフェクターの1つは、プロトン勾配を解消してATP発生の代わりに熱を生成する、脱共役タンパク質1(Ucp1)である。褐色およびベージュ/ブライト脂肪組織の活性化に加えて、寒冷暴露もまた、褐色およびベージュ/ブライトの脂肪デポの拡大を惹起する。褐色およびベージュ/ブライト脂肪組織の拡大および活性化は、有意な量の脂質およびグルコースを消費するその能力ゆえ、肥満および糖尿病を処置するための大きな関心を寄せられている。NEは現在、褐色およびベージュ/ブライト脂肪の拡大および活性化の有力な神経伝達物質およびエフェクターであると考えられている。不幸にもNEは、それが血圧および心拍数の上昇を招くため、肥満および糖尿病の処置に有用でない。
【0004】
現在、肥満および/または糖尿病の処置のための褐色およびベージュ/ブライト脂肪組織の活性化剤は、存在しない。アドレナリン作動性活性化剤のうち、過活動膀胱を処置するために認可された薬物ミラベグロン(Myrbetriq、Astellas Pharma, Inc.)は、ヒト褐色脂肪を活性化することが概念実証試験で示された(Cypess et al., 2015)。しかしこの薬物は、潜在的な肥満患者の望ましくない副作用である血圧および心拍数上昇をもたらし、この治療手段への熱意を低下させた。
【0005】
それゆえ、アドレナリン作動性活性化剤の全身投与を必要とせずに、褐色およびベージュ/ブライト脂肪デポのより特異的な活性化を提供する手段が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本開示は、それを必要とする個体において糖尿病および/または肥満の処置で使用するためのTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩に関する。本発明者らは、Tacr2のアゴニスト、特にTacr2のペプチドアゴニストが、ノルエピネフリン(NE)/β-アドレナリン作動性受容体シグナル伝達から独立して褐色およびベージュ/ブライト脂肪組織を活性化し得ることを見出した。本発明は、個体へのTacr2のアゴニストの投与が、肥満および糖尿病の処置に有益である、褐色およびベージュ脂肪細胞に対する多数の効果を有することを開示する。特にTacr2のアゴニストは、褐色およびベージュ脂肪細胞において、酸素消費速度を、好ましくはグルコース吸収、酸素消費速度、エネルギー消費、および熱産生も増加させる。好ましくはTacr2のアゴニスト、特にTacr2のペプチドアゴニストは、褐色脂肪組織の活性化をもたらし、血圧および心拍数上昇などの有害な副作用を引き起こさない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置で使用するためのTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩、特にTacr2のペプチドアゴニストに関する。
【0008】
本開示の別の態様は、それを必要とする個体における肥満および/または糖尿病の処置のための、本明細書に定義されたTacr2アゴニストまたはその医薬的に許容できる塩、特にTacr2のペプチドアゴニストを含む医薬組成物に関する。
【0009】
本開示の別の態様は、糖尿病および/または肥満の処置のための医薬の製造のための、Tacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩、特にTacr2のペプチドアゴニストの使用に関する。
【0010】
本開示の別の態様は、それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置のための方法であって、Tacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩、特にTacr2のペプチドアゴニストの治療有効量を上記個体に投与することを含む、方法に関する。
【0011】
本発明の別の態様は、それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置のための方法であって、上記個体へのTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩、特にTacr2のペプチドアゴニストの治療有効量の投与により上記個体における褐色脂肪組織細胞の活性を増強することを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】褐色および白色脂肪組織中のNKA/TACR2の発現的および機能的特徴づけ。C57BI/6マウスからの温熱的中性に比べた、寒冷誘導された(a)肩甲骨間の褐色脂肪組織(iBAT)、(b)鼠径部の白色脂肪組織(iWAT)および(c)精巣上体の白色脂肪組織(eWAT)におけるTacr2の発現プロファイル。データは、n=5の平均およびSEMを示す。
図1b】褐色および白色脂肪組織中のNKA/TACR2の発現的および機能的特徴づけ。C57BI/6マウスからの温熱的中性に比べた、寒冷誘導された(a)肩甲骨間の褐色脂肪組織(iBAT)、(b)鼠径部の白色脂肪組織(iWAT)および(c)精巣上体の白色脂肪組織(eWAT)におけるTacr2の発現プロファイル。データは、n=5の平均およびSEMを示す。
図1c】褐色および白色脂肪組織中のNKA/TACR2の発現的および機能的特徴づけ。C57BI/6マウスからの温熱的中性に比べた、寒冷誘導された(a)肩甲骨間の褐色脂肪組織(iBAT)、(b)鼠径部の白色脂肪組織(iWAT)および(c)精巣上体の白色脂肪組織(eWAT)におけるTacr2の発現プロファイル。データは、n=5の平均およびSEMを示す。
図2a】(a)Tacr2 mRNA発現レベルを、温熱的中性に馴化された、または寒冷チャレンジされたマウスのiBATからの成熟脂肪細胞および間質血管画分において決定した。(b)12週間の固形飼料または60%高脂肪食(HFD)のどちらかを摂取したC57BI/6マウスからのiBAT中のTacr2 mRNA発現。データは、n=8の平均およびSEMを示す。(c)
図2b】(a)Tacr2 mRNA発現レベルを、温熱的中性に馴化された、または寒冷チャレンジされたマウスのiBATからの成熟脂肪細胞および間質血管画分において決定した。(b)12週間の固形飼料または60%高脂肪食(HFD)のどちらかを摂取したC57BI/6マウスからのiBAT中のTacr2 mRNA発現。データは、n=8の平均およびSEMを示す。(c)
図2c】(a)Tacr2 mRNA発現レベルを、温熱的中性に馴化された、または寒冷チャレンジされたマウスのiBATからの成熟脂肪細胞および間質血管画分において決定した。(b)12週間の固形飼料または60%高脂肪食(HFD)のどちらかを摂取したC57BI/6マウスからのiBAT中のTacr2 mRNA発現。データは、n=8の平均およびSEMを示す。(c)
図3a】(a)Tacr2またはベクター対照のどちらかをトランスフェクトされた初代褐色脂肪細胞におけるNKA介在性IP3産生。(b)NKAまたはビヒクルで72時間処置された初代褐色脂肪細胞において、Seahorse Bioscience Analyzerにより測定された酸素消費速度(OCR)。基礎呼吸の測定に続いて、NE(5μM)、オリゴマイシン(1μM)、FCCP(1μM)ならびにロテノンおよびアンチマイシンA(各々1μM)を用いて測定した。データは、平均およびSEMを示す、n=8。
図3b】(a)Tacr2またはベクター対照のどちらかをトランスフェクトされた初代褐色脂肪細胞におけるNKA介在性IP3産生。(b)NKAまたはビヒクルで72時間処置された初代褐色脂肪細胞において、Seahorse Bioscience Analyzerにより測定された酸素消費速度(OCR)。基礎呼吸の測定に続いて、NE(5μM)、オリゴマイシン(1μM)、FCCP(1μM)ならびにロテノンおよびアンチマイシンA(各々1μM)を用いて測定した。データは、平均およびSEMを示す、n=8。
図4a】マウスに、連続9日間の照光期間に、矢印で標識された1mg/kg NKA(灰色)またはビヒクル(黒色)を1日2回注射した。酸素消費を、PhenoMasterを利用して5分ごとに測定した。データは、全日の代表であり、n=6の平均±SEMを示す。
図4b】体重を、実験期間全体で毎日測定した。データは、n=6~7の平均±SEMを示す。シダック多重比較を用いた二元配置分散分析を利用して、 p<0.05、** p<0.01。
図4c】インスリン負荷テストを、処置の翌日に3時間絶食マウスにおいて実施し、マウスは、1UI/kg除脂肪体重のインスリンを腹腔内に受けた。データは、n=6~7の平均±SEMを示す。シダック多重比較を用いた二元配置分散分析を利用して、 p<0.05、** p<0.01。
図4d】3つの大きな脂肪組織を、実験終了時に採取して計量した。データは、n=6~7の平均±SEMを示す。対応のないスチューデントt検定を利用して、 p<0.05。
図5a】ビヒクル(黒色)または[Lys2-γ-Glu-C16]NKA(灰色)のどちらかで処置されたマウスにおけるa)体重減少;b)摂餌量;およびc)カロリー消費。データは、n=6の平均±SEMを示す。
図5b】ビヒクル(黒色)または[Lys2-γ-Glu-C16]NKA(灰色)のどちらかで処置されたマウスにおけるa)体重減少;b)摂餌量;およびc)カロリー消費。データは、n=6の平均±SEMを示す。
図5c】ビヒクル(黒色)または[Lys2-γ-Glu-C16]NKA(灰色)のどちらかで処置されたマウスにおけるa)体重減少;b)摂餌量;およびc)カロリー消費。データは、n=6の平均±SEMを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な記載
定義
本明細書で用いられる用語「アゴニスト」は、他に具体的に断りがなければ、Tacr2のアゴニストに関する。本明細書で定義されるTacr2のアゴニストは、Tacr2を結合しそれによりTacr2の活性を増強できるペプチドを含む、またはそれからなる化合物を指す。
【0014】
本明細書で用いられる「褐色および/またはベージュ/ブライト脂肪細胞の活性」などの用語「褐色および/またはベージュ/ブライト脂肪組織細胞の活性」は、Tacr2とアゴニストの相互作用に応答して変動し得る褐色およびベージュ/ブライト脂肪組織の細胞に典型的な複数の生化学的パラメータを指す。褐色および/またはベージュ/ブライト脂肪細胞の活性を定義するパラメータの幾つかの例は、基礎酸素消費速度(OCR)、ノルエピネフリン(NE)誘導性OCR、最大呼吸、グルコース取り込み/吸収、脂質取り込み/吸収、熱産生である。
【0015】
タンパク質構成「アミノ酸」は、IUPACからの推奨に従って1文字コードを利用して本明細書で命名されており、例えばhttp://www chem.qmw.ac.uk/iupacを参照されたい。他に何も指定されなければ、アミノ酸は、DまたはL型であり得る。
【0016】
本明細書で用いられる用語「Cmin」は、化合物の最小血液濃度を指す。したがってインスリンの投与後の血中グルコースレベルに関係するCminは、上記投与後に観察される最小血中グルコース濃度である。多くの場合、血中グルコースレベルに関係するCminは、インスリン投与間隔の間に観察される最小血中グルコース濃度である。
【0017】
本明細書で用いられる用語「機能的類似体」は、参照化合物と類似の様式で作用する化合物を指す。したがってTacr2のペプチドアゴニストの機能的類似体は、Tacr2のペプチドアゴニストとして作用する。機能的類似体は、例えばペプチドを含む化合物であり得、ペプチドは、Tacr2を結合しそれによりTacr2の活性を増強し得るアミノ酸残基から必ずしもならない部分で修飾されていてもよい。
【0018】
「非標準的アミノ酸」は、任意の生物体の遺伝暗号によりコードされていないアミノ酸残基である。非標準的アミノ酸残基は、生物体の中で自然に発生し得る。非標準的アミノ酸の非限定的例は、D配置の天然アミノ酸、βアミノ酸、γアミノ酸および非タンパク質構成アミノ酸である。
【0019】
用語「PEG」ポリエチレングリコールは、化学式C2n4n+2n+1および繰り返し構造:
【化1】
を有するエチレングリコールのポリマーを指す。
【0020】
本明細書で用いられる用語「ペプチド」は、アミド結合を介して連結された少なくとも2つのアミノ酸残基の配列である。
【0021】
用語「ペプチドアゴニスト」は、他に具体的に断りがなければ、Tacr2の化合物アゴニストを指す。本明細書で定義されるTacr2のペプチドアゴニストは、Tacr2を結合しそれによりTacr2の活性を増強できるペプチドを含む、またはそれからなる化合物を指す。Tacr2のペプチドアゴニストは、ペプチドおよびコンジュゲートされた部分からなっていてもよい。コンジュゲートされた部分は、例えば熟練者に有益と見なされる糖、脂質、第二のペプチド、または任意の他の化学基であってもよい。
【0022】
本明細書で用いられる用語「配列同一性」は、アライメントによる候補配列と参照配列の間の同一アミノ酸またはヌクレオチドの割合%を指す。したがって参照配列と80%のアミノ酸同一性を共有する候補配列は、アライメントにより、候補配列中のアミノ酸の80%が参照配列中の対応するアミノ酸と同一であることを必要とする。本発明による同一性は、非限定的に、ポリペプチド配列のアライメントのためのClustal Omegaコンピュータアライメントプログラム(Sievers et al. (2011 October 11) Molecular Systems Biology 7 :539, PMID: 21988835; Li et al. (2015 April 06) Nucleic Acids Research 43 (W1) :W580-4 PMID: 25845596; McWilliam et al., (2013 May 13) Nucleic Acids Research 41 (Web Server issue):W597-600 PMID: 23671338)などのコンピュータ解析、およびその中に示唆されたデフォルトパラメータの助力により決定される。Clustal Omegaソフトウエアは、EMBL-EBIからhttps://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/で入手可能である。デフォルト設定でこのプログラムを利用して、クエリーの成熟(生物活性)部分および参照ポリペプチドがアライメントされる。完全に保存された残基の数が、カウントされ、参照ポリペプチドの長さで割られる。MUSCLEまたはMAFFTアルゴリズムが、ヌクレオチド配列のアライメントに用いられてもよい。配列同一性は、アミノ酸配列に指示されたものと類似の方法で計算されてもよい。したがって本明細書で提供される配列同一性は、参照配列の全長にわたり計算される。
【0023】
本明細書で用いられる用語「処置」は、病気、疾患または障害を克服することを目的とした患者の管理およびケアを指す。この用語は、症状もしくは合併症を軽減または緩和すること;病気、疾患もしくは障害の進行を遅延させること;病気、疾患または障害を好転、治癒もしくは排除すること;および/または病気、疾患または障害を予防すること、を目的とした活性化合物の投与などの、患者が罹患している所与の病気のための処置の全領域を含むと意図される。処置される患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。処置される患者は、様々な年齢であり得る。
【0024】
Tacr2のアゴニスト
本開示の一態様は、肥満および/または糖尿病の処置で使用するための、Tacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩、特にTacr2のペプチドアゴニストに関する。Tacr2のアゴニストは、Tacr2を結合しTacr2の活性を増強できる任意の化合物であってよい。幾つかの実施形態において、Tacr2のアゴニストは、ペプチドアゴニストである。上記Tacr2のペプチドアゴニストは、以下の「ペプチドアゴニスト」および「コンジュゲートされた部分」の節に詳細に記載される通り、ペプチドおよび場合によりコンジュゲートされた部分を含んでいても、またはそれからなってもよい。
【0025】
好ましくはTacr2のアゴニストは、任意の適切なアッセイにより、特にTacr2の活性を測定し得る細胞機能アッセイ、例えば両者ともAblas J. et al. (1995)に記載されるCa2+動員アッセイまたはイノシトール-3-リン酸(IP3)の生成により決定されるTacr2の活性を増強できる。放射性リガンドアッセイまたは他のアッセイ、例えば機能的「モノレセプトリアル(monoreceptorial)」バイオアッセイが、Tacr2活性を測定するための適切な手段として熟練者に選択され得る。したがってTacr2のアゴニストは、前述のアッセイのいずれかにより決定されるTacr2のアゴニストを増強できる、好ましくはTacr2の活性を少なくとも30%など、例えば少なくとも40%など、少なくとも20%増強できる、ペプチドアゴニストなどの任意の化合物であってよい。
【0026】
幾つかの実施形態において、アゴニスト活性は、Tacr2を発現する細胞中のIP3産生を決定することにより測定される。好ましくはTacr2のアゴニストは、そのような細胞と接触するとIP3の産生増加をもたらす、化合物である。したがって、化合物がTacr2のアゴニストであるかどうかは、
・Tacr2を発現する細胞を提供するステップと、
・上記細胞を、ミオイノシトールおよびTacr2の推定アゴニストである化合物と接触させるステップと、
・Tacr2の上記推定アゴニストの非存在下および存在下で上記細胞中のIP3の産生を決定するステップ、
を含み、
上記化合物の存在下でのIP3の産生増加が、上記化合物がTacr2のアゴニストであることの指標である、方法により決定されてよい。
【0027】
細胞は、Tacr2を内因的に発現してよく、またはそれらは、Tacr2を発現するように組換え操作された細胞であってよく、例えば細胞は、Tacr2をコードする非相同核酸を含むCOS-7またはHEK293細胞であってよい。IP3の産生は、用量反応曲線として決定されてよい。
【0028】
細胞はまた、初代褐色脂肪細胞、例えばTacr2をコードする非相同核酸を含む初代褐色脂肪細胞であってよい。したがって、Tacr2のアゴニストは、実施例2に記載された通り実施されたアッセイでIP3の産生を誘導する化合物であることが、好ましいかもしれない。好ましくは上記アゴニストは、NKAと類似の様式でIP3の産生を誘導する化合物、または実施例2に記載された通り決定される場合にNKAに比較して少なくとも80%のIP3の産生を誘導する化合物である。
【0029】
Tacr2のアゴニストはそれゆえ、上記の通りIP3産生をモニタリングするアッセイを利用した測定でTacr2活性を少なくとも20%増強する化合物であってよい。Tacr2のアゴニストは、上記の通りIP3産生をモニタリングするアッセイを利用した測定でTacr2活性を少なくとも30%増強する化合物であってよい。
【0030】
Tacr2のアゴニストは、上記の通りIP3産生をモニタリングするアッセイを利用した測定でTacr2活性を少なくとも40%増強する化合物であってよい。
【0031】
Tacr2のアゴニストは好ましくは、Tacr2への高い親和性を有する。受容体への化合物の親和性、すなわちTacr2への化合物の親和性は、異なるアッセイを介して測定でき、それにより以下に記載される、表1に示されるような異なる親和性単位をもたらす:
- pIC50は、アゴニストのIC50の底10での負の対数であり、ここでIC50は、複数の方法で用いられる用語であり、特に放射セリリガンドの結合を50%阻害する非標識アゴニストのモル濃度であってよく;放射性リガンドの濃度が与えられなければならず、本開示のIC50の単位は、他に指定されなければM(モーラー)である。
- pEC50は、アゴニストのEC50の底10での負の対数であり、ここでEC50は、アゴニストの、この節で先に定義された適当なアッセイでの測定で、可能な最大効果の50%を生じるアゴニストのモル濃度である。他のパーセント値(EC20、EC40など)を指定でき、本開示におけるEC50の単位は、他に指定されない限りM(モーラー)である。
- pKは、Kの底10での負の対数であり、ここでKは、アゴニストの標識形態を利用した結合アッセイで直接決定されるアゴニストの平衡解離定数を指す。
- pKは、Kの底10での負の対数であり、ここでKは、阻害試験で決定されるリガンドの平衡解離定数を指す。所与のリガンドのKは典型的には(必ずではないが)、平衡条件下で該当する競合リガンドによる参照放射性リガンドの結合の阻害を測定することにより、競合放射性リガンド結合試験で決定される。
【0032】
特にTacr2のアゴニスト、例えばペプチドアゴニストは、Bellucci F. et al.(2002)に記載された通り、放射性リガンドアッセイまたは「モノレセプトリアル」アッセイなどのテストでの測定で、8~10のpEC50を有する化合物であってよい。
【0033】
幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、実施例7に記載された通り決定される場合に、6.7~9.5の範囲のネズミ受容体でのpEC50を有する化合物であってよい。
【0034】
例えばペプチドアゴニストは、少なくとも7のpEC50など、好ましくは少なくとも7.5のpEC50、例えば少なくとも8のpEC50、少なくとも8.5のpEC50など、好ましくは少なくとも9のpEC50などの、少なくとも6.8のネズミ受容体のpEC50を有する化合物であってよい。
【0035】
幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、実施例7に記載された通り決定される場合に、7.2~9.5の範囲のヒト受容体でのpEC50を有する化合物であってよい。
【0036】
例えばペプチドアゴニストは、少なくとも7.8のpEC50など、好ましくは少なくとも8のpEC50、例えば少なくとも8.5のpEC50、少なくとも9のpEC50などの、少なくとも7.5のヒト受容体でのpEC50有する化合物であってよい。
【0037】
特にTacr2のアゴニスト、例えばペプチドアゴニストは、Bellucci F. et al.(2002)に記載された通り放射性リガンド結合アッセイまたは「モノレセプトリアル」バイオアッセイなどのテストでの測定で、6~10のpKを有する化合物であってよい。
【0038】
特にTacr2のアゴニスト、例えばペプチドアゴニストは、Bellucci F. et al.(2002)に記載された通り放射性リガンド結合アッセイまたは「モノレセプトリアル」バイオアッセイなどのテストでの測定で、5~10のpKを有する化合物であってよい。
【0039】
この節の冒頭に記載された通りTacr2の活性を測定するアッセイを利用して、潜在的アゴニストがTacr2への高い親和性を有するかどうかも決定されてよい。アゴニストは、Ca2+動員またはイノシトール蓄積の増加などのTacr2活性の上昇をもたらすそれらの化合物、好ましくはペプチドアゴニストである。好ましくは本開示のペプチドアゴニストはまた、Tacr1よりもTacr2に対して高い親和性を有することを特徴とする。それらは、Tacr1に対して低い、または無視できるほどの親和性を有してよい。それらは、Tacr1に結合できるが、Tacr2へのそれらの親和性は、Tacr1への親和性より高い。したがって好ましくはTacr2のペプチドアゴニストなどのTacr2のアゴニストは、Tacr1への親和性の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍であるTacr2への親和性を有する。
【0040】
Tacr2のアゴニストは、天然由来および人工の両方の化合物であり得る。ヒト(ホモサピエンス、Hs)、ラット(ラッツス・ノルベギクス、Rn)およびモルモット(キャビア・ポルセルス、Cp)で見出されたTacr2の天然アゴニストの非限定的例、ならびにTacr2へのそれらの親和性のリストが、表1に列挙される(Douglas S. D., et al. 2015)。
【表1】
【0041】
Tacr2のアゴニスト、例えばペプチドアゴニストは、Bellucci F. et al.(2002)に記載された通り放射性リガンド結合アッセイまたは「モノレセプトリアル」バイオアッセイなどのテストで測定され得る、高い有効性を有する化合物であってよく、その最上値は、テストされたアゴニストの有効性を示し、最上値と最低値の差は、テストされた値の有効性のスパンを示す。
【0042】
本開示の一実施形態において、Tacr2のアゴニスト、例えばペプチドアゴニストは、可能な限り高い有効性を有する化合物であってよい。有効性は、例えばBellucci F. et al.(2002)に記載された通り放射性リガンド結合アッセイまたは「モノレセプトリアル」バイオアッセイなどのテストで得られた最上値から得られてよい。
【0043】
本開示の一実施形態において、Tacr2のアゴニスト、例えばペプチドアゴニストは、実施例7に記載された通り決定される場合、少なくとも1300の相対的単位など、少なくとも1400の相対的単位など、少なくとも1500の相対的単位など、少なくとも1600の相対的単位など、少なくとも1700の相対的単位など、少なくとも1800の相対的単位など、少なくとも1900の相対的単位など、少なくとも2000の相対的単位など、少なくとも2400の相対的単位など、少なくとも2700の相対的単位などの、少なくとも1260の相対的単位のネズミ受容体への有効性を有する化合物であってよい。
【0044】
本開示の一実施形態において、Tacr2のアゴニスト、例えばペプチドアゴニストは、実施例7に記載された通り決定される場合、少なくとも2200の相対的単位など、少なくとも2400の相対的単位など、少なくとも2600の相対的単位など、少なくとも2800の相対的単位など、少なくとも3000の相対的単位などの、少なくとも2000の相対的単位のヒト受容体への有効性を有する化合物であってよい。
【0045】
本開示の一実施形態において、Tacr2のアゴニスト、例えばペプチドアゴニストは、可能な限り大きな有効性を有する化合物であってよい。有効性のスパンは、例えばBellucci F. et al.(2002)に記載された通り放射性リガンド結合アッセイまたは「モノレセプトリアル」バイオアッセイなどのテストで得られた最上値から最低値を差し引くことにより測定されてよい。
【0046】
本開示の一実施形態において、Tacr2のアゴニスト、例えばペプチドアゴニストは、実施例7に記載された通り決定される場合、少なくとも1300の相対的単位など、少なくとも1400の相対的単位など、少なくとも1500の相対的単位など、少なくとも1600の相対的単位など、少なくとも1700の相対的単位など、少なくとも1800の相対的単位など、少なくとも1900の相対的単位など、少なくとも2000の相対的単位など、少なくとも2400の相対的単位など、少なくとも2700の相対的単位などの、少なくとも1100の相対的単位のネズミ受容体に関係する有効性スパンを有する化合物であってよい。
【0047】
本開示の一実施形態において、Tacr2のアゴニスト、例えばペプチドアゴニストは、実施例7に記載された通り決定される場合、少なくとも2000の相対的単位など、少なくとも2200の相対的単位など、少なくとも2400の相対的単位など、少なくとも2600の相対的単位など、少なくとも2800の相対的単位など、少なくとも3000の相対的単位などの、少なくとも1700の相対的単位のヒト受容体に関係する有効性スパンを有する化合物であってよい。
【0048】
ペプチドアゴニスト
本開示の一態様は、それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置で使用するための、Tacr2のペプチドアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩に関し、ぺプチドアゴニストは、ペプチドを含む、またはそれからなる。Tacr2のペプチドアゴニストが、ペプチドを含む場合、上記ペプチドは、以下の「コンジュゲートされた部分」の節に記載される通り、コンジュゲートされた部分に共有結合で連結されてよい。好ましくはペプチドアゴニストは、Tacr2に結合でき、Tacr2を発現する細胞においてCa2+動員またはイノシトール蓄積を増加させることができる。ペプチドアゴニストは、上記の「Tacr2のアゴニスト」の節に記載された通りTacr2に対して高い親和性を有することを特徴とする。Tacr2のペプチドアゴニストおよびその親和性の幾つかの例が、表1に列挙される。
【0049】
一実施形態において、ペプチドアゴニストは、ニューロキニンAまたはその機能的類似体を含む、またはそれからなる。サブスタンスKとしても知られるニューロキニンAは、プレプロタキキニン遺伝子から翻訳されるペプチドである。ニューロキニンAは、プレプロタキキニン遺伝子の異なるアイソフォームから選択的スプライシングを介して翻訳され得る。ヒトには、ニューロキニンAをコードする遺伝子の2つのアイソフォームと、それによる2つの前駆体タンパク質、プロタキキニン-1アイソフォームベータ前駆体(SEQ ID NO:12)およびプロタキキニン-1アイソフォームガンマ前駆体(SEQ ID NO:13)が存在する。同様にニューロキニンAをコードする遺伝子の2つのアイソフォームと、それによる2つの前駆体タンパク質が、マウスにも存在し、プロタキキニン-1アイソフォーム2前駆体(SEQ ID NO:14)およびプロタキキニン-1アイソフォーム1前駆体(SEQ ID NO:15)と命名されている。
【0050】
幾つかの実施形態において、Tacr2のペプチドアゴニストは、ニューロキニンAの前駆体タンパク質またはその断片を含む、またはそれからなる。したがって幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15のニューロキニンAの前駆体タンパク質、またはそれと少なくとも80%など、例えば少なくとも85%、少なくとも90%など、例えば少なくとも95%などの、少なくとも75%の配列同一性を共有する機能的類似体を含む。好ましくはペプチドアゴニストは、ヒトプロタキキニン-1アイソフォームベータ前駆体またはその断片を含む、またはそれからなる。より好ましくはペプチドアゴニストは、ヒトプロタキキニン-1アイソフォームガンマ前駆体またはその断片を含む、またはそれからなる。より好ましくはペプチドアゴニストは、ネズミプロタキキニン-1アイソフォーム2前駆体またはその断片を含む、またはそれからなる。より好ましくはペプチドアゴニストは、ネズミプロタキキニン-1アイソフォーム1前駆体またはその断片を含む、またはそれからなる。
【0051】
幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15のニューロキニンAの前駆体タンパク質の、またはそれと少なくとも80%など、例えば少なくとも85%、少なくとも90%など、例えば少なくとも95%などの、少なくとも75%の配列同一性を共有する機能的類似体の断片を含む。したがって幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15の、またはそれらと少なくとも80%など、例えば少なくとも85%、少なくとも90%など、例えば少なくとも95%などの、少なくとも75%の配列同一性を共有する上述のいずれかの機能的類似体の、多くとも130のアミノ酸残基の連続配列からなる。例えば幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなってよく、ペプチドは、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15の、、またはそれと少なくとも80%など、例えば少なくとも85%、少なくとも90%など、例えば少なくとも95%などの、少なくとも75%の配列同一性を共有する上述のいずれかの機能的類似体の、多くとも130のアミノ酸残基の連続配列からなり、上記ペプチドは、SEQ ID NO:16および/またはSEQ ID NO:30の配列を含む。
【0052】
好ましくはTacr2のペプチドアゴニストは、ニューロキニンAの機能的類似体である。幾つかの実施形態において、Tacr2のペプチドアゴニストは、連続配列XFX[SEQ ID NO:30]を含み、またはそれからなり、ここで
=アスパラギン酸(E)またはグルタミン酸(D);
=セリン(S)またはリシン(K);
=バリン(V)またはトリプトファン(W);
=グリシン(G)、β-アラニン(β-ala);
=メチル-ロイシン(Me-Leu)、L,γ-ラクタム-ロイシン(γ-ラクタム-Leu);
=ノルロイシン(Nle)、メチオニン(M)。
【0053】
より好ましくは、Tacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、少なくとも7のアミノ酸および多くとも130のアミノ酸の配列からなり、配列は、SEQ ID NO:30を含む。
【0054】
別の実施形態において、Tacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:30の配列を含む少なくとも7および多くとも130のアミノ酸残基からなる。好ましくはペプチドは、SEQ ID NO:30の配列を含む少なくとも7および多くとも70のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:30の配列を含む少なくとも7および多くとも50のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:30の配列を含む少なくとも7および多くとも30のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:30の配列を含む少なくとも7および多くとも20のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:30の配列を含む少なくとも7および多くとも15のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:30の配列を含む少なくとも7および多くとも100のアミノ酸残基からなる。さらなる実施形態において、ペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:30の7アミノ酸残基からなる。
【0055】
好ましくはTacr2のペプチドアゴニストは、ニューロキニンAの機能的類似体である。幾つかの実施形態において、Tacr2のペプチドアゴニストは、連続配列DXFX[SEQ ID NO:16]を含み、またはそれからなり、ここで
=セリン(S)またはリシン(K);
=バリン(V)またはトリプトファン(W);
=グリシン(G)、β-アラニン(β-ala);
=メチル-ロイシン(Me-Leu)、L,γ-ラクタム-ロイシン(γ-ラクタム-Leu);
=ノルロイシン(Nle)、メチオニン(M)。
【0056】
より好ましくはTacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、少なくとも7のアミノ酸および多くとも130のアミノ酸の配列からなり、配列は、SEQ ID NO:16を含む。
【0057】
幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、Tacr2のペプチドアゴニストの親和性またはそのアゴニスト性挙動を改善し得るD-γ-ラクタム、β-アラニン、γ-ラクタム-ロイシン、メチル-ロイシン、ノルロイシンまたは他のアミノ酸などの非標準的アミノ酸残基を含んでよい。
【0058】
別の実施形態において、Tacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:16を含む、少なくとも7および多くとも130のアミノ酸残基からなる。好ましくはペプチドは、SEQ ID NO:16の配列を含む少なくとも7および多くとも70のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:16の配列を含む少なくとも7および多くとも50のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:16の配列を含む少なくとも7および多くとも30のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:16の配列を含む少なくとも7および多くとも20のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:16の配列を含む少なくとも7および多くとも15のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:16の配列を含む少なくとも7および多くとも100のアミノ酸残基からなる。さらなる実施形態において、ペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:16の7アミノ酸残基からなる。
【0059】
別の実施形態において、Tacr2のペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、および多くとも2つのアミノ酸が標準的または非標準的アミノ酸で交換されている前述のもののいずれかからなる群から選択される配列を含む、またはそれからなる。
【0060】
特に、Tacr2のペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、および多くとも1つのアミノ酸が交換されている前述のもののいずれかからなる群から選択される配列を含んでも、またはそれからなってもよい。より好ましくはTacr2のペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む、またはそれからなる。
【0061】
別の実施形態において、Tacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、および多くとも1つなどの多くも2つのアミノ酸が標準的または非標準的アミノ酸で交換されている前述のもののいずれかからなる群から選択される配列を含む、少なくとも7および多くとも130のアミノ酸残基からなる。特にTacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなってよく、ペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む少なくとも7および多くとも70のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む少なくとも7および多くとも50のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む少なくとも7および多くとも30のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む少なくとも7および多くとも15のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む少なくとも7および多くとも100のアミノ酸残基からなる。
【0062】
したがって幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:15、または前述のもののいずれかの断片の、またはそれと少なくとも80%など、例えば少なくとも85%、少なくとも90%など、例えば少なくとも95%の、少なくとも75%の配列同一性を共有する前述のもののいずれかの機能的類似体の、7~100の範囲など、例えば7~50の範囲など、7~15の範囲の連続するアミノ酸などの、7~130の範囲のアミノ酸の連続配列からなり、ペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む。
【0063】
1つの好ましい実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列からなる。
【0064】
別の実施形態において、Tacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、配列SEQ ID NO:2を含む少なくとも7および多くとも130のアミノ酸残基からなり、多くとも1つなどの多くとも2つのアミノ酸は、標準的または非標準的アミノ酸で交換されている。特にTacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなってよく、ペプチドは、配列SEQ ID NO:2を含む少なくとも7および多くとも70のアミノ酸残基など、配列SEQ ID NO:2を含む少なくとも7および多くとも50のアミノ酸残基など、配列SEQ ID NO:2を含む少なくとも7および多くとも30のアミノ酸残基など、配列SEQ ID NO:2を含む少なくとも7および多くとも15のアミノ酸残基など、少なくとも7および多くとも100のアミノ酸残基からなる。
【0065】
したがって幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:2の、7~100の範囲など、例えば7~50の範囲、7~15の連続アミノ酸の範囲でなどの、7~130アミノ酸の範囲の連続配列からなり、多くとも1などの多くとも2つのアミノ酸が、標準的または非標準的アミノ酸で交換されている。
【0066】
1つの好ましい実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、配列SEQ ID NO:2からなる。
【0067】
別の実施形態において、Tacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、配列SEQ ID NO:1を含む少なくとも10および多くとも130のアミノ酸残基からなり、多くとも1つなどの多くとも2つのアミノ酸は、標準的または非標準的アミノ酸で交換されている。特にTacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなってよく、ペプチドは、配列SEQ ID NO:1を含む少なくとも10および多くとも70のアミノ酸残基など、配列SEQ ID NO:1を含む少なくとも10および多くとも50のアミノ酸残基など、配列SEQ ID NO:1を含む少なくとも10および多くとも30のアミノ酸残基など、配列SEQ ID NO:1を含む少なくとも10および多くとも15のアミノ酸残基など、配列SEQ ID NO:1を含む少なくとも10および多くとも100のアミノ酸残基からなる。
【0068】
したがって幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:1の、が10~100の範囲など、例えば10~50の範囲、10~15の連続アミノ酸の範囲でなどの、10~130アミノ酸の範囲の連続配列からなり、多くとも1などの多くとも2つのアミノ酸が、標準的または非標準的アミノ酸で交換されている。
【0069】
1つの好ましい実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、配列SEQ ID NO:1からなり、多くとも1つなどの多くとも2つのアミノ酸は、交換されている。1つの好ましい実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、配列SEQ ID NO:1からなる。
【0070】
幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、配列DSFVGLM(SEQ ID NO:2)を含む、またはそれからなる。好ましくはペプチドアゴニストは、ニューロキニンA(SEQ ID NO:1)を含む、またはそれからなる。好ましくはペプチドアゴニストは、ニューロキニンA(SEQ ID NO:1)である。
【0071】
別の実施形態において、Tacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む、少なくとも10および多くとも130のアミノ酸残基からなり、多くとも1つなどの多くとも2つのアミノ酸が、標準的または非標準的アミノ酸で交換されている。特にTacr2のペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなってよく、ペプチドは、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む、少なくとも10および多くとも70のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む、少なくとも10および多くとも50のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む、少なくとも10および多くとも30のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む、少なくとも10および多くとも15のアミノ酸残基など、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列を含む、少なくとも10および多くとも100のアミノ酸残基からなる。
【0072】
したがって幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列の、10~100の範囲など、例えば10~50の範囲、10~15の連続するアミノ酸の範囲でなどの、10~130アミノ酸の範囲の連続配列からなり、多くとも1つなどの多くとも2つのアミノ酸が、標準的または非標準的アミノ酸で交換されている。
【0073】
1つの好ましい実施形態において、ペプチドアゴニストは、コンジュゲートされた部分に場合により連結されたペプチドからなり、ペプチドは、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27からなる群から選択される配列からなる。
【0074】
幾つかの実施形態において、ペプチドアゴニストは、SKTDSFVGLM(SEQ ID NO:21)、HKTDSFVGLX(SEQ ID NO:22)、HKTESFVGLM(SEQ ID NO:23)、HKTESFVGLX(SEQ ID NO:24)、KTDSFVGLM(SEQ ID NO:25)、KDSFVGLM(SEQ ID NO:26)、KESFVGLM(SEQ ID NO:27)からなる群から選択される配列を含む、またはそれからなる。
【0075】
コンジュゲートされた部分
Tacr2のアゴニストは、コンジュゲートされた部分に共有結合で連結されたペプチドを含んでいても、またはそれからなってもよい。例えばペプチドアゴニストは、本明細書の上記の「ペプチドアゴニスト」の節に記載されたペプチドアゴニストのいずれかであってよく、コンジュゲートされた部分は、この節に記載されたコンジュゲートされた部分のいずれかであってよい。
【0076】
一実施形態において、コンジュゲートされた部分は、ペプチドに共有結合で連結され得るペプチド、糖、脂質または任意の他の化学基であってよい。好ましくはコンジュゲートされた部分は、Tacr2に対するアゴニストのアゴニスト性挙動を改善する。コンジュゲートされた部分はまた、溶解度、安定性または半減期などのTacr2のアゴニストの物理的特性を改善してもよい。
【0077】
一実施形態において、コンジュゲートされた部分は、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖または修飾PEG、例えばNPEGなどの、宿主免疫系からアゴニストを覆い隠す化合物であってよい。
【0078】
幾つかの実施形態において、1~50の間のエチレングリコール単位を含むPEG部分が、ペプチドアゴニストにコンジュゲートされる。PEG部分は、少なくとも4エチレングリコール単位など、少なくとも6エチレングリコール単位など、少なくとも2エチレングリコール単位を含んでよい。PEG部分は、ペプチドアゴニストの存在への宿主免疫反応を低減でき、またはそれは、その水力学的サイズを増加でき、それによりその循環時間を増加できる。
【0079】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、アゴニストと膜および他の生物学的構造との相互作用を容易にする。例えば1種または複数の脂肪酸などの1種または複数の脂質が、ペプチドアゴニストにコンジュゲートされてよい。コンジュゲートされた脂肪酸は、ペプチドアゴニストの疎水性を増強してよく、それゆえ膜とのその相互作用を増強してもよい。ペプチドアゴニストにコンジュゲートされ得る脂質の例は、パルミトレオイル基、プレニル基、ミリストイル基である。他の脂質基が、コンジュゲートされてもよい。
【0080】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、ペプチド、例えばポリアルギニンなどの細胞透過を容易にするペプチドである。好ましくはコンジュゲートされた部分は、Tacr2のアゴニストと生物学的系の中に存在するタンパク質および/またはペプチドとの相互作用を容易にするペプチドである。有利であれば、コンジュゲートされた部分は、ホルモン断片であってもよい。
【0081】
幾つかの実施形態において、アゴニストは、グリコシル化、例えばN-グリコシル化またはO-グリコシル化されてよい。アゴニストのグリコシル化は、正しいフォールディングを容易する、または生物学的系の中に存在する他の炭水化物部分、例えば他のグリコシル化部分の認識を容易にし得る。ペプチドにコンジュゲートされ得る、またはTacr2のアゴニストに含まれ得るグリカンの幾つかの例は、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、ノイラミン酸、N-アセチルグルコサミン、フルクトース、マンノース、および他の単糖類を含むグリカンである。
【0082】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、糖類、例えば単糖類、または二糖類、または多糖類である。
【0083】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、糖類であり、上記糖類は、ペプチドのアミノ酸残基の中の酸素原子にコンジュゲートされる。例えば上記糖類は、セリンのヒドロキシル基にコンジュゲートされてよい。
【0084】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、糖類であり、上記糖類は、ペプチドのアミノ酸残基の中の窒素原子にコンジュゲートされる。例えば上記糖類は、アルギニンのアミノ基にコンジュゲートされてよい。
【0085】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、糖類、例えばマンノース(Man)である。例えばコンジュゲートされたペプチドアゴニストは、配列SEQ ID NO:21を含み、またはそれからなり、SEQ ID NO:21の12位のセリンにコンジュゲートされたマンノースを有する。
【0086】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、アミン基である。例えば、アゴニストがペプチドアゴニストである本発明の実施形態において、上記ペプチドは、C末端アミド化を含有しよく、例えばペプチドのC末端OH基は、アミン基と交換されてよい。
【0087】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、アセチル基である。例えば、アゴニストがペプチドアゴニストである本発明の実施形態において、上記ペプチドは、N末端アセチル化を含有してよく、例えばN末端アミンは、アセチル化されてよい。
【0088】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、ペプチドアゴニストの末端アミノ酸に付着される。
【0089】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、ペプチドアゴニストの末端アミノ酸に付着され、ペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25, SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、およびSEQ ID NO:30からなる群から選択される配列を含む、またはそれからなる。
【0090】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、本明細書に定義されたペプチドアゴニストの非末端アミノ酸の側鎖のアミノ基に、例えばリシンの、またはアルギニンのγ-Nに付着される。
【0091】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、脂質であり、それは直接、またはさらなるアミノ酸を介して、ペプチドアゴニストに付着される。一実施形態において、コンジュゲートされた部分は、脂肪酸であり、例えばコンジュゲートされた部分は、C6~40アルキレン-COOH、例えばC8~30アルキレン-COOH、例えばC10~25アルキレン-COOHであってよい。一実施形態において、脂質は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキドン酸からなる群から選択される。
【0092】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、アミノ酸に連結された脂肪酸であり、例えばコンジュゲートされた部分は、-Naa-C6~40-アルキレン-COOH、例えば-Naa-C8~30-アルキレン-COOH、例えば-Naa-C10~25-アルキレン-COOHであってよく、ここでNaaは、任意のアミノ酸、例えばGluまたはAspなどの任意のタンパク質構成アミノ酸であってよい。
【0093】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、-Naa-ミリスチン酸であり、それは、ペプチドアゴニストの非末端リシンのγ-アミノ基に付着される。例えば一実施形態において、コンジュゲートされたペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:1のペプチドであり、グルタミン酸塩がSEQ ID NO:1の2位にあるリシンの側鎖のγ-Nに接続され、ミリスチン酸が上記グルタミン酸塩のアミノ基に接続される。
【0094】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、-Naa-パルミチン酸であり、それは、ペプチドアゴニストの非末端リシンのγ-アミノ基に付着される。例えば一実施形態において、コンジュゲートされたペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:1のペプチドであり、グルタミン酸塩がSEQ ID NO:1の2位にあるリシンの側鎖のγ-Nに接続され、パルミチン酸が上記グルタミン酸塩のアミノ基に接続される。
【0095】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、-Naa-ステアリン酸であり、それは、ペプチドアゴニストの非末端リシンのγ-アミノ基に付着される。例えば一実施形態において、コンジュゲートされたペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:1のペプチドであり、グルタミン酸塩がSEQ ID NO:1の2位にあるリシンの側鎖のγ-Nに接続され、ステアリン酸が上記グルタミン酸塩のアミノ基に接続される。
【0096】
幾つかの実施形態において、コンジュゲートされた部分は、パルミチン酸であり、それは、ペプチドアゴニストのN末端アミノ酸のアミノ基に付着される。例えば一実施形態において、コンジュゲートされたペプチドアゴニストは、SEQ ID NO:1のペプチドであり、パルミチン酸が上記ペプチドのN末端アミノ酸のアミノ基に接続される。
【0097】
Tacr2
アゴニストは、タキキニン受容体2(Tacr2)への高い親和性を有すること、および上記受容体のアゴニストであることを特徴とする。Tacr2は、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)であり、本発明者らは、それが寒冷暴露後に褐色およびベージュ/ブライト脂肪組織で誘導されることを見出した。本発明者らは、褐色およびベージュ/ブライト脂肪細胞の膜上のTacr2の発現および存在を増加させること、ならびにペプチドアゴニストとTacr2の相互作用によりTacr2の活性を増加させることが、褐色およびベージュ/ブライト脂肪細胞内の基礎酸素消費速度(OCR)、ノルエピネフリン(NE)誘導性OCR、および最大呼吸の増加をもたらすことを見出した。褐色およびベージュ/ブライト脂肪細胞は、NEでの活性化により脂肪およびグルコースを消費して熱を産生する。
【0098】
本発明のTacr2のアゴニストは、SEQ ID NO:10からなるヒトTacr2と相互作用でき、SEQ ID NO:11からなるネズミTacr2とも相互作用できる。
【0099】
医薬組成物
本開示の一態様は、医薬組成物、特に必要とする個体における肥満および/または糖尿病の処置のための、本明細書で定義されたTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩を含む医薬組成物に関する。
【0100】
「Tacr2のアゴニスト」の節において先に定義されたアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩は、医薬組成物の一部であってよく、そのため以下の「糖尿病および/または肥満の処置のための方法」の節に記載される通り、肥満および/または糖尿病に冒された個体に投与されてよい。
【0101】
本開示の別の態様は、糖尿病および/または肥満の処置のための医薬の製造のための、上記の節に定義されたTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩の使用に関する。
【0102】
本発明の化合物または塩は、原材料のペプチドアゴニストとして投与されることが可能であるが、医薬配合剤の形態でそれらを与えることが好ましい。したがって本発明はさらに、本明細書に定義された本発明の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはエステルと、それらのための医薬的に許容できる担体とを含む医薬配合剤を提供する。医薬配合剤は、 例えばRemington(2005)に記載された通り、従来の技術により調製されてよい。
【0103】
医薬組成物は、先に定義された通りTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩と、医薬的に許容できる担体および/または希釈剤とを含んでよい。医薬的に許容できる担体および/または希釈剤は、当業者に熟知されている。溶液として配合された組成物の場合、許容できる担体および/または希釈剤としては、生理食塩水および滅菌水が挙げられ、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および他の一般的添加剤を場合により含んでよい。
【0104】
本発明によるTacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩を含む医薬組成物は特に、非経口投与物に配合されてよい。したがって本発明の医薬組成物は、非経口投与用の多種多様の配合剤で配合されてよい。
【0105】
注射および輸液の場合、配合剤は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョン、例えば水性ポリエチレングリコール中の溶液のような形態をとってよい。あるいは有効成分が、滅菌固体の無菌単離により、または使用前に適切なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水で構成するための溶液から凍結乾燥により得られる粉末形態であってもよい。配合剤は、アンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ、輸液バックなどの単回投与もしくは反復投与用の密閉コンテナの中で与えることができ、または使用の直前に注射用の滅菌液体賦形剤、例えば水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で貯蔵できる。用時注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0106】
油性または非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および注射可能な有機エステルが挙げられ、防腐剤、湿潤剤、乳化剤もしくは懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの配合剤を含有してよい。
【0107】
医薬組成物は、任意の種類の非経口投与のために配合されてよい。好ましい実施形態において、医薬組成物は、必要とする個体への皮下注射用に調製されてよい。
【0108】
インスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための方法
本開示の態様は、それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための方法であって、「Tacr2のアゴニスト」の節に定義されたTacr2のアゴニストの治療有効量を上記個体に投与することを含む、方法に関する。本発明はまた、そのような方法での使用のための、例えばこの節に記載された方法での使用のための、Tacr2のアゴニストを提供する。
【0109】
本開示の別の態様は、それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための方法であって、上記個体への、「Tacr2のアゴニスト」の節に定義されたTacr2のアゴニストの治療有効量の投与により、上記個体における褐色脂肪組織細胞の活性を増強することを含む、方法に関する。
【0110】
本開示のさらなる態様は、それを必要とする個体における体重減少を誘導する方法であって、「Tacr2のアゴニスト」の節に定義されたTacr2のアゴニストの治療有効量を上記個体に投与することを含む、方法に関する。
【0111】
本開示のさらなる態様は、それを必要とする個体における体重減少を誘導する方法であって、上記個体への、「Tacr2のアゴニスト」の節に定義されたTacr2のアゴニストの治療有効量の投与により、上記個体における褐色脂肪組織細胞の活性を増強することを含む、方法に関する。
【0112】
幾つかの実施形態において、アゴニストは、「医薬組成物」の節に定義された通り、医薬組成物の形態で投与される。多くの場合、アゴニストは、非経口投与される。例えばアゴニストは、注射を介して投与されてよい。アゴニストは、皮下注射を介して投与されてよい。
【0113】
幾つかの実施形態において、投与されたアゴニストは、褐色およびベージュ脂肪細胞中のTacr2を結合する。
【0114】
投与されたアゴニストは、Tacr2に及ぼす多数の効果を有してよい。したがって好ましくはそれは、褐色およびベージュ/ブライト脂肪細胞の細胞膜上のTacr2の発現およびTacr2の局在化を刺激する。それはまた好ましくは、グルコース取り込み、特に褐色脂肪細胞によるグルコース取り込みを増加させてよい。それはまた好ましくは、脂質取り込み、特に褐色脂肪細胞による脂質取り込みを増加させてよい。それはまた好ましくは、エネルギー消費、特に褐色脂肪細胞によるエネルギー消費を増加させてよい。それはまた好ましくは、酸素消費、特に褐色脂肪細胞での酸素消費を増加させてよい。それはまた好ましくは、熱産生、特に褐色脂肪細胞での熱産生を増加させてよい。それらの効果は、肥満および/または糖尿病を処置することにおいて有益である。
【0115】
幾つかの実施形態において、それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、初代褐色脂肪細胞における基礎酸素消費速度を増加させることを含む。脂肪細胞における酸素消費は、当該技術分野で公知の方法を利用して測定されてよく、例えば実施例2にも記載される通りSeahorse XF-96 Flux Analyzerを利用して測定されてよい。それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置のための方法はまた、初代褐色脂肪細胞におけるノルエピネフリン誘導性酸素消費速度を増加させることを含んでよい。それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置のための方法はまた、初代褐色脂肪細胞における最大酸素消費速度を増加させることを含んでよい。
【0116】
幾つかの実施形態において、それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、褐色およびベージュ脂肪細胞へのグルコースの吸収/取り込みを増加させることを含む。したがって方法は、血中グルコースのレベル低減をもたらしてよい。血中グルコースレベルは、当該技術分野で公知の方法を利用して評価されてよい。例えば、実施例4にも記載されるグルコース負荷テスト(GTT)、または経口グルコースチャレンジテスト(OGCT)、または熟練者が適切と見なす他のテスト。
【0117】
幾つかの実施形態において、それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、褐色およびベージュ脂肪細胞におけるエネルギー消費を増加させることを含む。細胞のエネルギー消費の測定のためのアッセイは、当該技術分野で即座に利用可能であり、例えばエネルギー消費は、例えば実施例5に記載される通り、代謝ケージ内の生存動物における間接的熱量測定(即ち、O消費/CO産生)により測定され得る。エネルギー散逸はまた、ニューロキニンAに応答した動物の深部および褐色脂肪温度の増加を記録する、動物組織内に埋め込まれたサーモメータを介して測定され得る。
【0118】
幾つかの実施形態において、それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、Tacr2のアゴニストへの褐色およびベージュ脂肪細胞の脱感作なしに、本明細書に開示された上記Tacr2のアゴニストの投与により上記褐色およびベージュ脂肪細胞におけるエネルギー消費を増加させることを含む。
【0119】
幾つかの実施形態において、それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、褐色およびベージュ脂肪細胞において内因性ニューロキニンAの放出を刺激することを含む。
【0120】
幾つかの実施形態において、それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、Tacr2の発現を増加させること、および結果的に褐色およびベージュ/ブライト脂肪細胞の細胞膜への局在化を増加させることを含む。
【0121】
幾つかの実施形態において、それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、上記個体における体重減少を誘導することを含む。
【0122】
幾つかの実施形態において、上記誘導された体重減少は、白色脂肪組織の低減に対応する。
【0123】
幾つかの実施形態において、上記誘導された体重減少は、褐色およびベージュ/ブライト脂肪組織の低減に対応しない。
【0124】
Tacr2のアゴニストの投与量は、個々のアゴニストおよび個体に依存してよい。幾つかの実施形態において、Tacr2のアゴニスト、特にTacr2のアゴニストは、例えば2μg/kg体重未満の投与量でヒト個体に投与されてよい。幾つかの実施形態において、アゴニストは、例えば0.1と2μg/kg体重の間など、0.5と2μg/kg体重の間など、1と2μg/kg体重の間など、0.1と1.5μg/kg体重の間など、0.1と1μg/kg体重の間など、0.1と0.5μg/kg体重の間などの、0.05と2μg/kg体重の間の用量でヒト個体に投与されてよい。
【0125】
幾つかの実施形態において、それを必要とする個体は、肥満および/または糖尿病に冒されている。個体は、任意の個体であってよく、例えば個体は、哺乳動物、特にヒトであってよい。
【0126】
一実施形態において、本発明は、糖尿病を処置する方法に関し、上記糖尿病が、例えば1型糖尿病、2型糖尿病および妊娠糖尿病からなる群から選択される。上記糖尿病は、特にインスリン抵抗性に関連する糖尿病であってよい。
【0127】
幾つかの実施形態において、それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、上記個体におけるインスリン感受性を増加させることを含む。インスリン感受性は、実施例4および5に記載されたインスリン負荷テスト(ITT)などの当該技術分野で公知の方法を利用して決定されてよい。
【0128】
幾つかの実施形態において、本発明は、インスリン感受性を増加させるための方法および/またはインスリン抵抗性の処置のための方法を提供する。インスリン抵抗性は、糖尿病2型の前駆症状であってよく、またはそれは、糖尿病2型に関連してよい。したがって糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、上記個体においてインスリン感受性を増加させることを含んでよい。インスリン感受性を決定するための方法は、当該技術分野で公知であり、例えば血中グルコースレベルがインスリンの投与後に決定されるインスリン負荷テスト(ITT)であってよい。有用なITTは、実施例4および5に記載されており、熟練者は、本明細書に記載された方法を他の哺乳動物に、例えばヒトに適応させることができよう。一実施形態において、インスリン抵抗性が、高インスリン血症性正常血糖クランプ法を利用して全血グルコース消失率(GDR)を決定することにより決定される。GDRは、高インスリン血症を完全に補填するのに必要な外因性グルコースの量を反映する。個々の個体がインスリン抵抗性に罹患しているかどうかについての決定は、例えばTam et al.,Diabetes Care.2012 Jul;35(7):1605-10.doi:10.2337/dc11-2339に記載される通り実施されてよい。
【0129】
通常、血中グルコースレベルは、インスリン投与の結果減少し、Cminに達する。特定の期間の後、血中グルコースレベルは、再度上昇して、典型的にはインスリンの投与前に登録されたレベルに戻る。インスリン抵抗性に罹患した個体は、異なる方法でインスリンの投与に応答し、特にその応答は、
- インスリン抵抗性に罹患していない個体のCminより高いCmin;および/または
- Cminに達してから、インスリン投与前に登録された血中グルコースレベルである、「プレインスリングルコースレベル」に戻るまでの、インスリン耐性に罹患していない個体に比較して短い時間間隔、
を特徴とする。
【0130】
本開示の方法によれば、Tacr2のアゴニストは、それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置のために、例えばインスリン抵抗性に罹患している、または罹患した疑いがある個体に、投与される。インスリン抵抗性に罹患している、または罹患した疑いがあり、本開示の方法により、即ちTacr2のアゴニストの投与により処置される個体は、インスリン抵抗性に罹患している、または罹患した疑いがあり、本明細書に開示されるTacr2のアゴニストを投与されない個体に比較して、異なる方法でインスリン投与に応答する。特に、本明細書に記載されるTacr2のアゴニストの投与を受けた個体は、
- より低いCmin;および/または
- Cminに達してからプレインスリングルコースレベルに戻るまでのより長い時間間隔、
を特徴とする応答を有する。
【0131】
上記応答は、インスリン抵抗性に罹患しており、もしくは罹患した疑いがあり、本明細書に開示されるTacr2のアゴニストを投与されない個体、または処置前の同じ個体に比較されてよい。
【0132】
それゆえ幾つかの実施形態において、それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、血中グルコースCminを低減することを含む。
【0133】
幾つかの実施形態において、それを必要とする個体における糖尿病および/または肥満の処置のための方法は、インスリンに応答して血中グルコースCminに達してからプレインスリングルコースレベル、即ちインスリン投与前に登録された血中グルコースレベルに戻るまでの時間間隔を増加させることを含み、上記インスリンは、内因性または外因性である。
【0134】
幾つかの実施形態において、本開示は、それを必要とする個体における肥満および/または肥満関連疾患の処置のための方法であって、「Tacr2のアゴニスト」の節に定義されたTacr2のアゴニストの治療有効量を上記個体に投与することを含む、方法に関する。
【0135】
他の実施形態において、本開示は、それを必要とする個体における肥満および肥満関連疾患の処置のための方法であって、上記個体への、「Tacr2のアゴニスト」の節に定義されたTacr2のアゴニストの治療有効量の投与により、上記個体における褐色脂肪細胞の活性を増強することを含む、方法に関する。
【0136】
さらなる実施形態において、本開示は、体重減少を誘導するための方法であって、「Tacr2のアゴニスト」の節に定義されたTacr2のアゴニストの治療有効量を上記個体に投与することを含む、方法に関する。
【0137】
他の実施形態において、本開示は、それを必要とする個体において体重減少を誘導するための方法であって、上記個体への、「Tacr2のアゴニスト」の節に定義されたTacr2のアゴニストの治療有効量の投与により上記個体における上記褐色脂肪組織細胞の活性を増強することを含む、方法に関する。
【0138】
幾つかの実施形態において、肥満および/または肥満関連障害は、それを必要とする個体の体重を少なくとも6%など、少なくとも7%など、少なくとも8%など、少なくとも10%など、またはより多量など、少なくとも5%低減することにより処置される。
【0139】
それゆえ本開示の幾つかの実施形態において、Tacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩は、肥満および/または肥満関連疾患に罹患している、または罹患した疑いがある個体に投与され、上記個体の体重の少なくとも6%など、少なくとも7%など、少なくとも8%など、少なくとも10%など、またはより多量などの、少なくとも5%の低減を引き起こす。
【0140】
一実施形態において、処置を必要とする個体は、過体重、肥満および/または肥満関連疾患、例えば糖尿病または心臓疾患に罹患した個体である。
【0141】
一実施形態において、処置を必要とする個体は、30以上など、例えば35以上、40以上などの、25以上のBMIを有する。別の実施形態において、処置を必要とする個体は、少なくとも0.80、例えば0.80~0.84、少なくとも0.85(女性)または少なくとも0.90など、例えば0.9~0.99、1.00を超える(男性)などの、少なくとも0.80のウエスト/ヒップ比を有する。さらなる実施形態において、処置を必要とする個体は、少なくとも6.1mmol/l、例えば少なくとも7.0mmol/lの空腹時血糖を有する。さらなる実施形態において、処置を必要とする個体は、42と46mmol/molの間など、少なくとも48mmol/molなどの、少なくとも42mmol/molの糖化ヘモグロビンを有する。
【0142】
開示された方法により提供される処置を必要とする個体は、以下の症状の1つまたは複数を提示してよい:
・ 140/90mmHg以上の高血圧;
・ 脂質異常症:1.695mmol/L以上のトリグリセリド(TG)かつ0.9mmol/L以下(男性)、1.0mmol/L(女性)以下の高比重リポタンパク質コレステロール(HDL-C);
・ 中心性肥満;0.90を超える(男性)、0.85を超える(女性)ウエスト:ヒップ比、または30kg/m2を超えるボディマス指数;
・ 微量アルブミン尿症:20μg/分以上の尿中アルブミン排泄率または30mg/g以上のアルブミン:クレアチニン比;
・ 高血糖:11.1mmol/l(200mg/dl)より高い血糖レベル、または5.6~7mmol/l(100~126mg/dl)の慢性糖レベル。
【0143】
したがって肥満関連疾患は、前述の症状に関連する疾患であってよい。
【表2】
【0144】
実施例
実施例1 寒冷暴露および高脂肪食に応答した脂肪組織中のTacr2発現
動物
全ての動物実験を、食餌および水に随意に接近できる、12時間の明暗周期で、Danish animal legislationに従って実施した。雄C57BI/6マウスを、4週齢でTaconic(デンマーク)から購入し、実験前に1週間馴化した。寒冷暴露試験では、マウスを、寒冷暴露前の少なくとも3週間の温熱的中和(およそ28℃)での個別飼育の前にMRIスキャン(EchoMRI、米国テキサス州)により測定した体重および体組成に従って無作為化した。高脂肪食試験では、雄C57BI/6マウスを、室温で飼育し、60%高脂肪食(Research Diets D12492、デンマーク)を7週間摂取させた。
【0145】
脂肪細胞の分別
温熱的中性または寒冷で飼育された4週齢雄C57BI/6マウスからの肩甲骨内BATを、10分ごとにボルテックス処理しながら、37℃の水平振とう式水槽で30分間、コラゲナーゼII型(Sigma-Aldrich、デンマーク)で消化した。間質血管画分(SVF)および脂肪細胞画分を、遠心分離により分離した。
【0146】
RNA抽出
組織を、Tri-Reagent(Invitrogen、デンマーク)を用いて溶解し、Tissue Lyser(Thermo、デンマーク)を用いてホモジナイズした。RNAを、製造業者のプロトコルに従いQiagen RNeasy Mini Kit(ドイツ)により抽出した。
【0147】
qPCR
相補性DNAを、製造業者のプロトコルに従いAB High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems、デンマーク)を用いて作製し、qPCRを、Roche LC480(Roche、スイス)によりSybr Green(Primer Design、米国)を用いて実施した。プライマーを、Tag Copenhagen(デンマーク)から購入した。表2を参照されたい。
【表3】
【0148】
結果
インビボ実験は、Tacr2が、温熱的中性(30℃)に比較して寒冷暴露(4℃)の後に肩甲骨内褐色脂肪組織(iBAT)および鼠径部白色脂肪組織(iWAT)中に有意に誘導されることを示する。注目すべきことに、iBATおよびiWAT中で寒冷により誘導されたTacr2発現は、1週間の寒冷暴露の終了時に依然として著しく誘導され、一方で褐色化を受けず、または感知できるほどのエネルギー消費量を誘起しなかった精巣上体白色脂肪組織(eWAT)は、寒冷チャレンジによりTacr2発現を誘導しない(図1a~c)。BAT中のTacr2の寒冷介在性誘導は、成熟脂肪細胞および脂肪前駆幹細胞の両方で起こっている(図2a~b)。その上、60%高脂肪食チャレンジは、褐色脂肪細胞中のTacr2発現レベルを増加させ、肥満個体におけるNKAなどのTacr2アゴニストの投与への治療的感知を示唆する(図2c)。
【0149】
結果:褐色脂肪細胞、脂肪前駆幹細胞およびiWAT中でのTacr2の発現は、寒冷への暴露に応答して誘導された。Tacr2発現レベルは、高脂肪食にも応答して、褐色脂肪細胞中で増加する。
【0150】
実施例2:NKAで処置された初代褐色脂肪細胞におけるイノシトール3リン酸(IP3)レベルおよびO消費
初代脂肪細胞の単離、分化および培養
初代褐色脂肪前駆細胞を、10分ごとにボルテックス処理しながら、37℃の水平振とう式水槽で30分間、コラゲナーゼ1型(Worthington、米国ニュージャージー州)消化により肩甲骨内褐色脂肪体から単離した。コラゲナーゼを、遊離脂肪酸不含BSA(Sigma-Aldrich、デンマーク)を含むKRBにより1:10の比で希釈した。酵素反応を、生育培地の添加により停止し、細胞懸濁液を、ペレット化し、生育培地に再懸濁した後、40μmナイロンメッシュ(VWR、デンマーク)でふるいにかけて組織の凝集を回避した。脂肪前駆細胞を、コンフルエントまで、10%ウシ胎児血清(Invitrogen、デンマーク)ならびに1%ペニシリンおよびストレプトマイシン(Lonza、デンマーク)を補充されたDMEM(Gibco、デンマーク)中で増殖させた。コンフルエントに達した翌日に、初代褐色脂肪前駆細胞を、インスリン(0.5mg/mL)、ロシグリタゾン(1mM)、デキサメタゾン(100μM)、IBMX(50mM)およびT3(1μM)からなるカクテルを用いて2日間分化させ、その後、細胞を、インスリンおよびT3を含有する生育培地中で実験期間全体にわたり維持した。維持培地を、2日ごとに交換した。細胞を、37℃および10%COで生育させた。
【0151】
一過性トランスフェクションおよび処置
分化の3日目に、細胞を、電気穿孔により一過的にトランスフェクトするか、または実験のために再播種した。一過性トランスフェクションでは、マウスTacr2コード配列を含有する、またはエンプティのpcDNA3.1(Genscript、米国ニュージャージー州)を、Lonza(デンマーク)の電気穿孔装置プログラムA34およびキットを用いて脂肪細胞中に電気穿孔した。脂肪細胞を、示された時間ニューロキニンA(10-7M)で処置した。
【0152】
IP3アッセイ
電気穿孔の翌日、初代褐色脂肪細胞に完全維持培地中の5μCi ミオ-[3H]イノシトール(Perkin Elmer、デンマーク)を負荷し、一晩インキュベートした。細胞を、10mM LiClを補充されたHBSS中でNKAにより37℃で90分間処置した。処置の後、細胞を、10mMギ酸で抽出し、細胞膜を、ポリ-L-リシンコーティングSPAビーズ(Perkin Elmer、デンマーク)を用いて捕捉し、Top Counter(Perkin Elimer、デンマーク)で分析した。
【0153】
酸素消費
酸素消費を、Seahorse XF-96 Flux Analyzer(Seahorse Bioscience、デンマーク)を用いて測定した。初代褐色脂肪細胞を、電気穿孔の翌日に完全維持培地中でSeahorse96ウェル細胞培養プレート(Seahorse Biosciences、デンマーク)に播種し、実験前にさらに4日間培養した。細胞を、0.5%遊離脂肪細胞不含BSA(Sigma-Aldrich、デンマーク)、25mMグルコースおよび1mMピルビン酸塩(Company、Country)を補充されたフェノールレッド不含の非緩衝DMEM(Sigma-Aldrich、デンマーク)からなるFlux培地中で平衡化させ、pHを、7.4に調整した。全ての読み取りを、2分間にわたり実施し、混合を、3分間実施した。C末端アミド化を含有するSEQ ID NO:1のニューロキニンA(NKA)を、IP3決定前24時間および酸素消費決定の開始(図3bの0時間)前72時間、細胞に添加した。化合物を、Flux培地で希釈し、図3bに示された時間に細胞培養物に最終濃度のノルエピネフリン(5μM)、FCCP(1μM)、アンチマイシンA(1μM)およびロテノン(1μM)になるように注射した。実験を、NKAに暴露された初代脂肪細胞で72時間実行した(図3b)。
【0154】
結果
このインビトロ実験は、24時間のNKA処置が、Tacr2を過剰発現する初代褐色脂肪細胞中のIP3レベルを上昇させることを示す(図3a)。この実験はまた、72時間のNKA処置が、Tacr2でトランスフェクトされていない初代褐色脂肪細胞においても酸素消費速度(OCR)を増加させることを示す(図3b)。
【0155】
酸素消費の増加は、NKAに応答した褐色脂肪細胞のエネルギー消費量の増加を示している。
【0156】
実施例3
グルコース取り込み試験を、条件付きおよび全身性ノックアウトマウスを用いて、C末端アミド化を含有するSEQ ID NO:1のニューロキニンA(NKA)またはビヒクルのどちらかの投与後に、Tacr2機能喪失型試験の初代褐色およびベージュ/ブライト脂肪細胞で実施する。加えて、ヒト褐色およびベージュ/ブライト脂肪細胞の呼吸能力へのNKA介在性アゴニズムをテストする。エネルギー消費量を、PETスキャンを介して評価する。
【0157】
実施例4:肥満および糖尿病関連の合併症の熱発生および復帰に及ぼすTACR2アゴニズムの影響
高脂肪食(HFD)
5週齢雄C57BI/6マウスに、2型糖尿病(T2D)のモデルとして肥満(50g)およびグルコース不耐性になるまで、脂肪からの60%エネルギーを有するHFDを摂取させる。
【0158】
レプチン欠損(Ob/Ob)マウス
Ob/Obマウスに、T2Dの遺伝的モデルとして肥満およびグルコース不耐性になるまで固形飼料を摂取させる。
【0159】
反復低用量ストレプトゾトシン(MLDS)
固形飼料を摂食した7週齢C57BI/6マウスに、1型糖尿病のモデルとしてストレプトゾトシン(35mg/kg)の1日1回注射を連続5日間投与する(Hansen JB et al. 2012)。
【0160】
インスリン負荷テスト(ITT)
肥満マウスにグルコースi.p.を注射し、グルコースレベルを2時間にわたり評価する。
【0161】
グルコース負荷テスト(GTT)
肥満マウスにグルコースi.p.を注射するか、またはグルコースを強制経口投与で与え、グルコースレベルを2時間にわたり評価する。
【0162】
体重および体組成
体重および体組成(MRIスキャン)を、実験全期間でモニタリングする。
【0163】
エネルギー消費量
NKA/ビヒクルでの処置にわたり、マウスを、TSE間接的熱量測定システム中で飼育して、摂餌量および摂水量、身体活性、マウスからのO消費およびCO産生を測定する。
【0164】
実施例5
動物
全ての動物実験を、食餌および水に随意に接近できる、12時間の明暗周期で、Danish animal legislationに従って実施した。雄C57BI/6マウスを、4週齢でJanvier(デンマーク)から購入し、実験前に1週間馴化した。高脂肪食試験では、雄C57BI/6マウスを、室温で飼育し、60%高脂肪食(Research Diets D12492、デンマーク)を18週間摂取させた。この食餌を摂取した後、マウスは、典型的には42~45gの体重を有する、高肥満になった。これらのマウスは、食餌誘導型肥満(DIO)マウスとも称され得る。マウスを、処置前の少なくとも1週間の個別飼育の前にMRIスキャン(EchoMRI、米国テキサス州)により測定された体重および体組成に従って無作為化した。酸素消費および呼吸効率(RER)を、PhenoMaster(TSE-Systems、ドイツ)を用いて測定した。食餌摂取量を、2日ごとに手作業で評価した。
【0165】
ニューロキニンA処置
SEQ ID NO:1のニューロキニンA(NKA)を、Almac Group(英国)によりカスタム合成し、滅菌生理食塩溶液に溶解した。処置では、NKAを、皮下注射の前にGelofusine(登録商標)(B.Braun、デンマーク)で希釈した。マウスを、1日2回9日間処置した。
【0166】
インスリン負荷テスト
マウスを、腹腔内インスリン負荷テスト(IPITT)の前に3時間、絶食させた。インスリン(Actrapid、Novo Nordisk、デンマーク)を、処置前に測定したkg除脂肪体重あたり1IU投与した。血中グルコースを、Rocheからのグルコメータを用いて決定した。より低い血中グルコースレベルは、より大きなインスリン感受性を示す。
【0167】
結果
ニューロキニンA処置は、食餌誘導型肥満(DIO)マウスにおいてカロリー消費を増加させ(図4a)、代謝パラメータを改善した。興味深いことに、カロリー消費は、NKAの脱感作を伴なわず、実際に図4aに示された結果は、連続9日間の処置を表している。体重の有意な低減もまた観察され(図4b)、それは図4dに示される通り、白色脂肪組織の低減によるものであり、褐色脂肪によるものでなかった。加えて、ITTは、処置されたマウスが、インスリン処置後に対照マウスより有意に低い血中グルコースレベルを、つまりより高いインスリン感受性を有したことを示した。興味深いことに、血中グルコースレベルは、より低いだけでなく、Cminに達した後に、より緩やかに基礎レベルに戻る。
【0168】
実施例6
ペプチド設計および合成
NKAを、N末端での脂肪酸アシル化、またはLys2上に付着されたガンマGluへの脂肪酸アシル化を介してアルブミンを結合するように設計した。ペプチドを、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)またはステアリン酸(C18)で標識した。NKAを追加的に、Ser残基に連結されたマンノースを利用してグリコシル化した。ペプチドを、Almac Group(スコットランド)により樹脂合成を利用して合成し、RP-HPLCにより精製した。ペプチドを、HPLCおよび質量分析により分析した。
【0169】
実施例7
IP3アッセイ
HEK293細胞を、Lipofectamine2000(Thermo Fisher、デンマーク)を用いてヒトまたはマウスTacr1~3をコードするプラスミド (pcDNA3.1、Genscript、米国ニュージャージー州)で一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後に、細胞に、完全維持培地中の5μCi ミオ-[3H]イノシトール(Perkin Elmer、デンマーク)を負荷し、一晩培養した。細胞を、10mM LiClを補充されたHBSS中でNKA類似体により37℃で90分間処置した。処置の後、細胞を、10mMギ酸で抽出し、細胞膜を、ポリ-L-リシンコーティングSPAビーズ(Perkin Elmer、デンマーク)を用いて捕捉し、Top Counter(Perkin Elimer、デンマーク)で分析した。NKA類似体を、DMSOに溶解し、0.2%または2%w/v遊離脂肪酸(FFA)不含ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma、デンマーク)を含有するPBSで希釈した。データを、4パラメータロジスティックカーブフィッティングを用いたGraphPad Prism7(GraphPad、米国カリフォルニア州)を利用して解析した。データ解析は、最上値、最低値、ヒルスロープに加え、LogE50の計算を含んだ。
【0170】
体重減少
食餌誘導型肥満(DIO)マウスを、先の実施例5に記載された通り調製した。DIOマウスを、1mg/kg(Lys2-γ-Glu-C16]NKAまたはビヒクル(3%w/v FFA不含BSAおよび1.25%DMSOを含有する滅菌濾過生理食塩溶液)によりs.c.で1日1回、連続3日間処置し、続いて休薬期間をおき、さらに4回処置した。マウスを、処置後にモニタリングして、処置の持続効果を観察した。摂餌量およびカロリー消費を、PhenoMaster(TSE-Systems、ドイツ)を利用してモニタリングした。
【0171】
結果:IP3アッセイの結果は、NKAおよびNKA類似体(ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)またはマンノースで標識されたSEQ ID NO:1および21)が、ネズミおよびヒト受容体の両者の例でTacr2受容体に特異的であることを示す;表3、4および5を参照されたい。
【表4】
【表5】
【表6】
【0172】
IP3アッセイの結果は、安定なNKA類似体(SEQ ID NO:2、5および22~27)がネズミおよびヒト受容体の両者の例でTacr2受容体に特異的であることを示す;表4を参照されたい。
【0173】
表5に示される通り、NKAおよびNKA類似体(ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)またはステアリン酸(C18)で標識されたSEQ ID NO:1および21)は、低いBSA結合親和性を有し、それらがTacr2に特異的であることを示す。
【表7】
【0174】
体重の有意な低減が、[Lys2-γ-Glu-C16]NKAでの処置の結果として観察され(図5a)、それは、白色脂肪組織の低減によるものであり、褐色脂肪によるものでなかった。摂餌量は、マウスを[Lys2-γ-Glu-C16]NKAで処置した場合に有意に低減された。[Lys2-γ-Glu-C16]NKAでの処置はまた、食餌誘導型肥満(DIO)マウスにおいて体重の低減(図5C)および代謝パラメータの改善により示された通り、カロリー消費を増加させた。
【0175】
参考資料
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図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
【手続補正書】
【提出日】2022-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023506117000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする個体におけるインスリン抵抗性、糖尿病および/または肥満の処置における使用のための医薬であって、Tacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩を含む医薬
【請求項2】
それを必要とする個体において体重減少を誘導する方法における使用のための医薬であって、Tacr2のアゴニストまたはその医薬的に許容できる塩を含む医薬
【請求項3】
前記アゴニストがペプチドを含むそれからな前記ペプチドは場合によりコンジュゲートされた部分に連結されている、請求項1または2に記載の医薬
【請求項4】
前記アゴニストまたは前記ペプチドが、配列XFXのペプチドを含むかそれからなりかつ
=アスパラギン酸(E)またはグルタミン酸(D);
=セリン(S)またはリシン(K);
=バリン(V)またはトリプトファン(W);
=グリシン(G)、β-アラニン(β-ala);
=メチル-ロイシン(Me-Leu)、L,γ-ラクタム-ロイシン(γ-ラクタム-Leu);
=ノルロイシン(Nle)、メチオニン(M)
である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬
【請求項5】
前記アゴニストまたは前記ペプチドが、配列DXFXのペプチドを含むかそれからなりかつ
=セリン(S)またはリシン(K);
=バリン(V)またはトリプトファン(W);
=グリシン(G)、β-アラニン(β-ala);
=メチル-ロイシン(Me-Leu)、L,γ-ラクタム-ロイシン(γ-ラクタム-Leu);
=ノルロイシン(Nle)、メチオニン(M)
である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬
【請求項6】
前記アゴニストまたは前記ペプチドが、ニューロキニンAまたはその機能的類似体を含むそれからなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬
【請求項7】
前記ペプチドが、少なくとも7および多くとも130のアミノ酸残基からな例えば少なくとも10および多くとも130のアミノ酸残基からなる、請求項のいずれか1項に記載の医薬
【請求項8】
前記ペプチドが、配列番号12、配列番号13、配列番号14もしくは配列番号15のニューロキニンAの前駆体タンパク質または少なくとも75%の配列同一性を共有するその機能的類似体を含み、例えば前記ペプチドが、配列番号12、配列番号13、配列番号14もしくは配列番号15のニューロキニンAの前駆体タンパク質または少なくとも75%の配列同一性を共有するその機能的類似体の断片を含む、請求項のいずれか1項に記載の医薬
【請求項9】
前記ペプチドが、配列番号12、配列番号13、配列番号14もしくは配列番号15または少なくとも75%の配列同一性を共有するその機能的類似体の連続配列からなる、請求項のいずれか1項に記載の医薬
【請求項10】
前記ペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27からなる群から選択される配列を含むかそれからなりかつ多くとも2つのアミノ酸が、交換されている、請求項のいずれか1項に記載の医薬
【請求項11】
前記ペプチドが、配列番号2、配列番号1、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26および配列番号27からなる群から選択される配列を含むそれからなる、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬
【請求項12】
前記ペプチドが、C末端アミド化またはN末端アセチル化を含有する、請求項3~11のいずれか1項に記載の医薬
【請求項13】
前記コンジュゲートされた部分が、ペプチド、脂質、グリカン、糖類およびPEGからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬
【請求項14】
前記コンジュゲートされた部分が、
a.マンノースなどの、糖類である、かつ/または
b.カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキドン酸からなる群から選択される脂肪酸であり、例えば-Naa-カプリン酸、-Naa-ラウリン酸、-Naa-ミリスチン酸、-Naa-パルミチン酸、-Naa-ステアリン酸、および-Naa-アラキドン酸からなる群から選択される、アミノ酸に連結された脂肪酸であり、-Naa-が、任意のタンパク質構成アミノ酸である、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬
【請求項15】
a.前記コンジュゲートされた部分が、-Naa-ミリスチン酸、-Naa-パルミチン酸、-Naa-ステアリン酸からなる群から選択され、-Naa-が、任意のタンパク質構成アミノ酸であり、かつ前記コンジュゲートされた部分が、配列番号1のペプチドの2位にあるリシンに付着されてい
b.前記コンジュゲートされた部分が、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸からなる群から選択され、かつ前記コンジュゲートされた部分が、配列番号1のペプチドのN末端アミノ酸に付着されているか、または
c.前記コンジュゲートされた部分が、マンノースであり、かつ前記マンノースが、配列番号21のペプチドのN末端セリンにコンジュゲートされている、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬
【請求項16】
前記アゴニストが、Tacr1に対してよりもTacr2に対してより高い親和性を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬
【請求項17】
前記糖尿病が、1型糖尿病、2型糖尿病および妊娠糖尿病のいずれか1つである、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬
【請求項18】
前記アゴニストが、前記それを必要とする個体の血中グルコースCminを低減する、かつ/または
前記アゴニストが、前記それを必要とする個体においてインスリンに応答して血中グルコースC min に達してからプレインスリングルコースレベルに戻る間の時間間隔を増加させる、請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬
【請求項19】
前記アゴニストが、前記個体に非経口投与される、請求項18のいずれか1項に記載の医薬
【請求項20】
前記Tacr2への前記ペプチドアゴニストの結合をさらに含む、請求項19のいずれか1項に記載の医薬
【請求項21】
初代褐色脂肪細胞における基礎酸素消費速度および/もしくはノルエピネフリン誘導性酸素消費速度および/もしくは最大酸素消費速度を増加させること、並びに/または
褐色およびベージュ脂肪細胞においてグルコースの吸収を増加させること、並びに/または
褐色およびベージュ脂肪細胞においてエネルギー消費を増加させること、並びに/または
褐色およびベージュ脂肪細胞において内因性ニューロキニンAの放出を刺激すること、並びに/または
前記個体においてインスリン感受性を増加させることをさらに含む、請求項20のいずれか1項に記載の医薬
【国際調査報告】