(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(54)【発明の名称】眼科デバイスのための個人化患者インタフェース
(51)【国際特許分類】
A61B 3/00 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
A61B3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531604
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2020086169
(87)【国際公開番号】W WO2021122562
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503317201
【氏名又は名称】カール ツァイス メディテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウブ、ヨッヒェン
(72)【発明者】
【氏名】アリアンタ、カビール エム.
(72)【発明者】
【氏名】ダルビシュザデ バルチェイ、マハサ
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316FA04
4C316FC02
4C316FC04
(57)【要約】
医療眼科システムは、眼科システムと患者の眼との間に所定のアラインメントを確立するために患者固有のフェイスマスクを使用する。患者固有のフェイスマスクは、眼の遮光筐体を任意選択的に提供する。フェイスマスクは、眼科システムの眼科デバイス又はハウジング/筐体に直接結合される。フェイスマスクは、患者の顔の3Dモデルに基づいて3D印刷される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科システムであって、
前記眼科システムと患者の眼との間に所定のアラインメントを確立するフェイスマスクを含む患者インタフェースを備える眼科システム。
【請求項2】
前記眼科システムが、眼科診断システム、眼科治療システム、又は眼科治療薬分注システムのうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フェイスマスクは、患者の顔に対して個人化される、請求項1乃至2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記フェイスマスクは、患者の顔の既知の輪郭に基づいて事前構成された形状を有するとともに、前記所定のアラインメントを確立する所定の位置に患者の顔を保持するように構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記フェイスマスクによって生じる圧点の数が最小化されたときに、患者の顔は、前記所定の位置に存在する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記フェイスマスクは、3D印刷されたものである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記フェイスマスクは、患者の顔の事前取得済みの3Dモデルに基づいて3D印刷されたものである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記3Dモデルは、3D撮像デバイスを用いて取得される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記3D撮像デバイスは、深度感知カメラ及びマルチカメラ撮像システムのうちの1つ又は複数を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記3D撮像デバイスは、スマートフォンに一体化されている、請求項8乃至9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記3D撮像デバイスは、レーザ三角測量3D走査技術、構造化光3D走査技術、接触ベースの3D走査技術、飛行時間3D走査技術、及び写真測量法のうちの1つ又は複数を実装している、請求項8乃至10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記フェイスマスクは、患者の識別に従って着脱可能且つ交換可能である、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記3Dモデルは、1つ又は複数の接触プローブを含む機械走査システムを用いて取得される、請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
前記フェイスマスクは、複数の接触プローブを含む機械走査システム内に具現化され、前記接触プローブの変位により前記フェイスマスクの輪郭が画定される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記接触プローブは、前記機械走査システム内に顔を押し込む患者に応答して変位され、前記接触プローブの変位した位置は、その変位した位置にロック可能である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記接触プローブの前記変位した位置は、電子メモリ内に記憶されるプローブ高さマップを定義し、選択プローブは、該選択プローブの対応する既に記憶された前記プローブ高さマップにより規定された目標位置に移動可能である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記電子メモリは、複数の異なる患者の複数のプローブ高さマップを記憶し、前記機械走査システムの前記フェイスマスクは、選択患者の記憶されたプローブ高さマップに従って選択プローブを該選択プローブの対応する目標位置に移動させることによって、前記複数の異なる患者の中から選択された任意の選択患者に対して構成可能である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムは、眼科デバイスと、前記フェイスマスクを前記眼科デバイスに結合するコネクタとを含み、
前記コネクタは、複数の異なるタイプの眼科デバイスを受け入れるように適応化されている、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の異なるタイプの眼科デバイスは、眼圧計、治療薬分注器、眼底撮像システム、光干渉断層撮影システム、光干渉断層血管造影システム、バイオメトリックシステム、屈折器、視野試験器、手術装置、眼科レーザ、及び波面センサのうちの1つ又は複数を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記システムは、眼科デバイスと、前記フェイスマスクを前記眼科デバイスに結合するコネクタとを含み、
前記フェイスマスクは、異なる患者にそれぞれ個人化された複数の個人化フェイスマスクの1つであり、
前記コネクタは、前記複数の個人化フェイスマスクのうちの任意のものを選択的に受け入れるように適応化されている、請求項1乃至19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記フェイスマスクは、患者の額、頬骨、鼻梁、及び顎先のうちの1つ又は複数を覆う全フェイスマスク又は部分フェイスマスクのうちの1つである、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記フェイスマスクは、患者の顔の鼻骨を含む1つ又は複数の骨部のみをアラインメントするように構成された部分フェイスマスクである、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記フェイスマスクは、前記患者インタフェースに一体化された部分フェイスマスクであり、前記フェイスマスクにより覆われない患者の顔の一部分は、前記患者インタフェースにフィットされる、請求項1乃至22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記眼科システムは、ポータブルである、請求項1乃至23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記眼科システムは、固視標を含む、請求項1乃至24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記眼科システムは、眼底撮像システム、光干渉断層撮影システム、光干渉断層血管造影システム、バイオメトリックシステム、屈折器、視野試験器、波面センサ、眼圧計、手術装置、眼科レーザ、及び治療薬分注器のうちの1つ又は複数を含む、請求項1乃至25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記フェイスマスクは、患者の顔が周辺光から眼を遮蔽する遮光筐体を形成する、請求項1乃至26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記フェイスマスクは、眼から周辺光をブロックすることによって、眼の自然な拡大を可能にする、請求項1乃至27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記システムは、眼科デバイスを含み、
前記フェイスマスクの内部構成は、患者に固有であり、
前記フェイスマスクの外部構成は、前記眼科デバイスに固有である、請求項1乃至17及び請求項21乃至28のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、眼科システムに関する。より詳細には、本発明は眼科デバイスを患者の眼にアラインメントするためのシステム、デバイス、及び/又は方法に関する。特に、本発明は、自己管理式(self-administered)眼科処置(例えば自己管理式眼科検査、自己管理式眼科薬物治療、自己管理式眼科診断、自己管理式眼科試験、自己管理式眼科撮像、自己管理式眼科治療など)を支援する眼科システムに向けられる。
【背景技術】
【0002】
眼科システム/デバイスは、患者の眼に対してアラインメントされる必要があり、特に、患者の瞳孔に対するアラインメントを必要とし得る。様々な眼科システムは様々なレベルのアラインメント要件を有するが、すべての眼科システムは或るレベルのアラインメントを必要とし、いくつかの眼科システムは適切な操作のための非常に高いアラインメント要件を有する。いくつかの眼科システムは、三空間次元におけるサブミリメートル精度のアラインメント要件を患者の眼の瞳孔に課す。通常、アラインメント要件が高ければ高いほど、精密アラインメントを実現するためのシステム手順はより複雑になり、且つ入り組む。このような場合、アラインメントタスクは従来から眼科技術者により又は自動測位システムにより行われる。
【0003】
システム-患者アラインメントは、特にシステムが自己管理式眼科処置(家庭使用、ポータブル使用、及び/又は個人使用などのための)を支援することが望ましい場合に実現するのが困難になり得る。このようなシステムはシステム-患者アラインメントを提供するためにオペレータに依存することができない。さらに、このようなシステムは、複雑、高価、かつ信頼性問題に脆弱である傾向が通常あるので、自動アラインメントサブシステムの使用を厳しく制限し得る低コスト要件をしばしば有する。
【0004】
様々な異なるタイプの眼科システム/デバイスが、知られており、しばしば診断目的及び/又はセラピー(例えば治療)目的に使用される。眼科セラピーシステム/デバイスの例は、眼科治療薬送達システム(手動システム、自動システム、又は半自動システム)又は眼科治療処置(例えば眼科レーザ手術)において使用されるシステムなどの眼科治療システムであり得る。眼科診断システム/デバイスの例は、視野計、自動屈折計、角膜厚さ計、眼科超音波デバイス、細隙灯、眼圧計、手術装置/ツール、及び様々な眼科撮像システムを含み得る。眼科デバイスは通常、患者の眼に対するデバイスのアラインメントを必要とし、いくつかのデバイスは他のものよりさらにクリティカルなアラインメント要件を有する。本明細書において提示されるのは、眼科システムに好適なアラインメントシステム/方法全般であるが、よりクリティカルなアプリケーションのための高レベルの眼アラインメントを再現可能に且つ一貫して提供することもできるものである。
【0005】
本発明は、いかなる特定のタイプの眼科システム(診断及び/又はセラピー)にも限定されないが、簡潔性のために、本説明は、本発明が視野計などの他のタイプの眼科システムに適用され得るという了解の下で本発明を使用する例示的なシステムとしての眼科撮像システムに関する。
【0006】
眼科撮像システムの一例は、眼の眼底(又は網膜)を撮像するために通常使用される眼底撮像装置である。眼底は、眼レンズ(すなわち水晶体)と反対方向に在る眼の内面であり、網膜、視神経円板、網膜黄斑、中心窩及び後極を含み得る。眼底を撮像するために使用される2つのカテゴリの眼底撮像装置は投光照明撮像装置及び走査撮像装置である。走査撮像装置はさらに共焦点走査眼底撮像装置と線走査撮像装置とに分けられ得る。眼科撮像デバイスの別の例は、組織の現場リアルタイム断面(例えば深さ)撮像(例えば眼の前部または後部の撮像)を許容する光干渉断層撮影(OCT:optical coherence tomography)システムである。OCTシステムは、OCTビームが試料(例えば眼底)に衝突するとOCTビームの散乱プロファイルを測定し、単一点における一次元(1D)深さ情報、二次元(2D)断面画像及びen face画像、並びに三次元(3D)立体画像を構築し得る。複数のOCT画像が、同じ場所において撮影され、運動情報(流体(例えば血液)流など)を抽出するように処理され得る。血流情報を抽出するOCTシステムはOCT血管造影法(OCTA:OCT Angiography)システムと称され得る。
【0007】
眼科システムのタイプに関係なく、眼科診断システムに対する人間の眼の正しいアラインメントは性能にクリティカルであり得る。例えば、眼の瞳孔を眼科撮像システムの射出瞳(又は開口)に正しくアラインメントすることは、眼底カメラ又はOCTシステムにより人間の網膜を撮像するためにクリティカルである。眼底撮像装置では、これは、撮像システムの開口を光が眼に入射する照明瞳と、眼から出射した光が撮像のために収集される(例えば画像データを収集するための)収集瞳とに分割する必要性により複雑化される。典型的眼科撮像システムは、通常、調整可能な機械ステージ上に通常は取り付けられる眼科撮像システムを頭部が剛性顎当てにより固定位置に保持される患者に対して位置決めするために、様々なフィードバック機構及びアラインメント補助具を使用する技術者により操作される。アラインメントのための様々なフィードバック機構を使用する自動制御システムが実証されたが、このような自動システムはシステムの複雑性及びコストを増加し、最適な性能のための定期保守を必要とする傾向がある。
【0008】
より小さい、低コスト、ポータブル又は携帯型の眼科撮像システムが提案された。しかし、このようなシステムは、トレーニングされた技術者を依然として必要とし、患者の眼への撮像システムの再現可能な位置決めを実現しようとするためにアイカップ、安定化棒などの使用も必要とする。その使用をさらに複雑化することには、低コストポータブルシステムは、技術者のための低減された組のアラインメント補助具を有する傾向があり、したがって、良好な画像データを実現するためのより高度のスキルを必要とする。
【0009】
眼科撮像システムデバイスのコストの大きな割合は、眼に対する撮像デバイスの機械的配置の観点と、オペレータ及び/又は自動システムが最良のアラインメントを実現するためにどのようにデバイスを移動すべきかを知るのを補助するアラインメント補助具の観点との両方の観点で、デバイス-患者アラインメントの実現の方向に行く。
【0010】
自己管理式眼科処置の一部として使用され得る別のアラインメント手法は「セルフアラインメント」と称され得る。この手法では、患者は、自身と撮像デバイスとのアラインメントを実現するために自身及び/又は撮像デバイスを移動する。一般的に、セルフアラインメントを助長するために、最小の努力及びトレーニングでもって正しいアラインメント修正を行い、高い再現性を有する良好な測定結果を取得するためのフィードバックを患者に提供するために、撮像システムがアラインメント補助具を有するということが望ましい。このようなシステムは、限定しないがフィードバックの物理的移動及び精神的処理を含む患者からの共同作業(例えば自発的協力)を必要とする。この手法が望ましい状況は、個人的ケア及び/又は在宅ケアのものである。
【0011】
在宅ケア及び/又は介護生活ケアは、在宅解決策の必要性が高まるにつれて(特に、眼科診断システム(例えばデジタルカメラ及びコンピューティング機器)の様々な部品のコストが下がるにつれて)、ますます重要な市場になるように設定されている。在宅ケアは、補助的オペレータ(例えば技術者)が画像データを取得するのを支援するために利用可能である可能性が低い特別なケースを提示する。この場合、患者及び眼科診断システムは、コストの大幅な増加又は使い易さの低下無しに良好なデータを取得するために連携する必要がある。
【0012】
アラインメントを支援するために、眼科撮像システムは通常、網膜が撮像される人の眼にいくつかの形式の視覚刺激を提供する。良好なアラインメントは以下のことを必要とし得る:1)眼の瞳孔はシステムの照明瞳(開口)及び収集瞳(開口)に対して三次元で精確に位置決めされる;2)眼の凝視は正しい角度方向にある;及び3)網膜に焦点が合っている。一般的に、撮像システムは、システムの照明瞳だけのためのアラインメント補助具(例えばフィードバック機構)を提供するが、システムの収集瞳に関係するアラインメント情報を提供しない。
【0013】
技術者が適切なアラインメントを実現するのを支援するために、撮像システムは、画像データの捕捉を活性化することに先立って患者の網膜のプレビューを提供するために二次的照明/撮像システムを提供し得る。二次的照明システムは、人間の眼が比較的低い感度を有する低強度白色光及び低強度赤色光であってもよいし、又は人間の眼が非常に低い感度を有する赤外線光であってもよい。デバイスが正しくアラインメントされると、この光は撮像システムの視野より若干広い網膜の領域をカバーし得る。被検者が遠方からシステムの開口に近づくと、被検者は、撮像システムの対物レンズの向こう側に数センチメートルの空中に見かけ上浮遊する数ミリメートル径の照明された仮想オブジェクトとしてカメラの照明瞳を可視化し得る。被検者が、眼底カメラを覗き込み、照明された仮想オブジェクトと重なる方向に自身の眼を移動させながら正しいアラインメントに近づくと、当該仮想オブジェクトに焦点を合わせることが不可能となり、被検者は、眼の近くの仮想オブジェクトにより照明された自身の瞳孔の陰影を見始めるようになる。これは、被検者が正しい軸方向位置に近づくにつれてサイズが増加し、横方向アラインメントに依存して横方向位置にずれる環状照野として被検者に出現し得る。照明が最大視野サイズ及び最大光度に到達するように被検者が成功裡に眼を置くと、眼の瞳孔は撮像システムの照明瞳に対してアラインメントされ、光のほとんどは制約されずに通過すると仮定することができる。
【0014】
固視標が、被検者の凝視方向を特定の方向に配向するために一般的に使用される。頻繁に、固視標は、眼科撮像システムの光学素子を介し、撮像される同じ眼に提示される。固視標は、網膜の様々な部分がシステムの視野内に入るように被検者を誘導するために眼科撮像システムの視野に対して移動され得る。異なる凝視位置で取得された複数の画像は、単一露光で収集される可能性があるものより大きな視野を跨ぐモザイク像を形成するために一緒に合成(モンタージュ)され得る。このような固視標は、被検者に対して焦点が合うように通常は提示され、被検者が凝視方向を高精度で配向し得るように小さな角度範囲を有する少なくともいくつかの特徴を有する。いくつかの固視標は、特に、視野の中心において小さな標的を知覚することができないかもしれない低中心視力を有する個人のために、より大きな横方向広がりの領域を含み得る。被検者は、焦点ノブにアクセスし、固視焦点が最適化されるようにシステム内側のレンズの位置を制御し得る。任意選択的に、固視標は収集瞳を介し逆投影され得る。この場合、固視標を見ることは、収集瞳の少なくとも一部分が邪魔されていないということを検証するのに十分である。
【0015】
上記から明らかなように、患者の眼の眼科システムへの適切なアラインメントを実現することは複雑であるがクリティカルなタスクである。要約すると、眼科システムは通常、三次元のサブミリメートル精度でもって患者の眼の瞳孔に対してアラインメントされる必要がある。このタスクは、トレーニングされた眼科技術者により従来より行われてきたものであり、かつ/又は自動測位システムを用いて容易にされ得る。これらの手法は両方とも複雑性及びコスト制約を導入し、したがって、いずれも在宅使用(在宅ケア)などの自己管理式眼科処置に役立たない。在宅の患者は、オペレータ(例えば訪問技術者)に機械の調整を任せることが出来ず、自動化されたシステムは複雑且つ高価であり、信頼性の問題が発生しやすく、患者が対処することは期待できない。以前のセルフアラインメント手法は、依然として複雑で信頼性が低く、高齢者にとっては困難であり、達成することが出来ない傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、患者の眼を眼科システムにアラインメントする複雑性を低減することである。
本発明の別の目的は、自己管理式処置、セルフアラインメント、及び/又は在宅ケア使用に好適な眼科患者-デバイスアラインメントシステムを提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、最小の技術者トレーニングでもって再現可能な高精度アラインメントを提供する眼科システムを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、特に家庭使用のための眼科患者アラインメントシステムのコストを低減することである。
【0018】
本発明の別の目的は、撮像処置、治療処置、薬物治療処置及び診断関連処置を含む眼科処置の自己管理を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、眼科システムと患者の眼との所定(既知)アラインメントを確立するために患者固有のフェイスマスクを使用するシステム/デバイス/方法において満足される。フェイスマスクは眼科システムの眼科デバイス(ハウジング/筐体)に又は眼科システムの基部に直接結合され得る。フェイスマスクは患者の顔の3Dモデルに基づいて3D印刷され得る。
【0020】
本質的に、典型的眼科システムのすべての機械的アラインメント調整(セルフアラインメント調整、システムオペレータにより操作可能なアラインメント調整、及び自動システム調整を含む)が排除され得る。これは、全フェイスマスク又は部分フェイスマスクから構成されるか又はそれを含む個人化顔インタフェースを使用することにより患者の顔を再現可能な位置に置くことにより実現される。フェイスマスクは、成型額、鼻梁、眉弓、こめかみ、頬、顎、顎先又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0021】
3D走査アプリケーション(又はソフトウェアツール)が患者の顔の3Dモデルを取得するために使用され得、3Dモデルは次に、カスタム化フェイスマスク又はその一部を3D印刷するために使用され得る。3Dモデルは、そのいずれも携帯型コンピューティングデバイス(スマートフォン又はタブレットコンピュータなど)内に一体化され得るマルチカメラ撮像システム又は深度感知カメラなどの3D撮像デバイスを用いて取得され得る。3Dモデルは、任意の他の既知の3D走査/撮像技術を単独で又は組み合わせて用いて取得され得るということを理解すべきである。好適な3D走査/撮像技術の例は、レーザ三角測量3D走査技術、構造化光3D走査技術、接触ベースの3D走査技術、飛行時間(time-of-flight)3D走査技術、及び写真測量法を含む。
【0022】
本発明のその他の目的及び達成事項は、本発明のより十分な理解と共に、添付の図面と併せて解釈される以下の説明と特許請求の範囲を参照することにより明らかとなり、理解されるであろう。
【0023】
本発明の理解を容易にするために、本明細書においていくつかの刊行物を引用または参照している。本明細書で引用または参照される全ての刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0024】
本明細書で開示される実施形態は例にすぎず、本開示の範囲はそれらに限定されない。1つの請求カテゴリ、例えばシステムにおいて記載される何れの実施形態の特徴も、他の請求カテゴリ、例えば方法においても特許請求できる。付属の請求項中の従属性又は後方参照は、形式的な理由のためにのみ選択されている。しかしながら、それ以前の請求項への慎重な後方参照から得られる何れの主題もまた特許請求でき、それによって請求項及びその特徴のあらゆる組合せが開示され、付属の特許請求の範囲の中で選択された従属性に関係なく、特許請求できる。
【0025】
添付図面において同様な参照符号/文字は同様な構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】臨床環境において見出され得るような眼科システムの筐体11を示す。
【
図2A】本発明による患者個人化顔インタフェースを提供する第1の方法を示す。
【
図2B】本発明による患者個人化顔インタフェースを提供する第2の方法を示す。
【
図2C】本発明による患者個人化顔インタフェースを提供する第2の方法を示す。
【
図2D】フレーム48内の
図2Bの接触子アレイ40の使用を示し、接触子アレイ40は
図2Aのフェイスマスク63と同様なやり方でフェイスマスクとして使用され得るように患者の眼領域(単数または複数)に対応する開口60と共に構成される。
【
図3】
図1のシステム11の患者インタフェース内に組み込まれる(例えば、後付けされる)患者個人化フェイスマスクを示す。
【
図4a-4b】
図2の全フェイスマスク及び部分フェイスマスクをそれぞれ組み込む
図3の筐体のプロファイル図を示す。
【
図5】トレーニングされたシステムオペレータ/技術者が容易に利用可能ではないかもしれない在宅、介護生活、又は他の非臨床環境に好適な代替(より小さなプロファイルの)筐体を示す。
【
図6a-6c】
図6aは、フェイスマスク及び筐体を組み込む(在宅/ポータブル)眼科システムの第1の構成を示し、
図6bは、遮光拡張部がフェイスマスク又は筐体に組み込まれた、
図6aの眼科システムの第2の構成を示し、
図6cは、
図6bの遮光拡張部は剛性であり、フェイスマスクを眼科筐体に結合するために十分な構造的支持を提供する、
図6aの眼科システムの第3の構成を示す。
【
図7a-7b】計測器を移動させる、及び/又は患者を移動させることによって、単眼システムを患者の2つの眼のいずれかにアラインメントする方法を示す。
【
図8a-8c】本発明による眼科システムの代替実施形態を示し、ここではフェイスマスクは眼科デバイス筐体73に対して1つの又は複数の異なる偏垂直(off-vertical)傾斜角に位置する。
【
図9a-9b】代替実施形態の2つの構成を提供し、ここでは本発明による眼科システムは携帯型構成を有し、フェイスマスクはテーブル基部を使用すること無く筐体に直接結合される。
【
図10a-10b】フェイスマスクに直接結合された眼科デバイス筐体を示す。
【
図11a-11e】本発明による部分フェイスマスクの様々な例を提供する。
【
図12】患者の視野を検査するための例示的な視野検査機器(視野計)を示す図である。
【
図13】眼底を撮像するためのスリット走査式眼科システムの例を示す図である。
【
図14】本発明と使用するのに適した眼の3D画像データを収集するために使用される一般型周波数領域光干渉断層撮影システムを図解する。
【
図15】en face脈管画像の例を示す図である。
【
図16】本発明での使用に適した例示的な(据え置き型/ポータブル/携帯型)コンピュータシステム(又はコンピューティングデバイス又はコンピュータ)を図解する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
眼科システム(例えば眼科診断システム、眼科セラピーシステム(例えばイットリウムアルミニウムガーネットレーザ、YAGレーザなどの眼科レーザ)、及び眼科薬物治療(すなわち治療薬分注)システム)は、通常、適切な操作を実現するために或るレベルの患者-計器アラインメント要件を有する。より高いアラインメント要件を有するシステムは通常、システムオペレータ(例えば技術者)がシステムのアラインメント過程を支援し得る臨床設定に限定される。自己管理式眼科処置(在宅「自己取得」、及び/又は「自己試験」)眼科デバイスを支援する眼科システムは通常、患者が自身の眼を眼科システムにセルフアラインメントすることに依存する。ZEISS Matrix(登録商標)デスクトップ視野計(周波数2倍化技術(frequency doubling technology)(FDT)視野測定デバイス)などの小型の又はポータブル眼科システムは、遥かに広い範囲の瞳位置を許容し、これによりその眼アラインメント要件を緩和するために大きな射出瞳(アイボックス)により設計され得るが、アラインメント要件を緩和するためのこのような技術は、通常、眼科手術システム及び眼科撮像システムなどの高精度眼科システムでは可能でない。眼底撮像装置、光干渉断層撮影(OCT)システム、OCT血管造影(OCTA:OCT angiography)システムなどの眼科撮像システムは、高い眼-システムアラインメント要件を有する傾向がある。これは、自己管理式アプリケーション(例えば在宅アプリケーション)におけるその使用を邪魔してきたので、通常、その使用を高レベルのシステムオペレータのトレーニング又は自動化を必要とする臨床設定に制限してきた。本発明は、より容易に適切な患者-システムアラインメントを達成するための機構/システムを提供することにより、高精度眼科システムを含む眼科システムの操作を容易にすることを目的とする。
【0028】
例示目的のため、かつ本発明の有効性を紹介するために、本発明のいくつかの実施形態は、本明細書では眼科撮像デバイス内に実装されるとして提示されるが、本発明は治療及び薬物治療システムを含む他のタイプの眼科システムに組み込まれ得るということを理解すべきである。本発明による使用に好適ないくつかの例示的な眼科システムの詳細説明が以下に提供されるが、本発明のアプリケーションは、これらの具体例に制限されず、眼アラインメントを必要とする任意の眼科システムに適用され得る。本発明を組み込み得る眼科システムの例は、眼圧計、眼治療薬分注器/塗布器(例えば、点眼器)、バイオメトリックシステム、屈折器、視野試験器、波面センサ、細隙灯、眼科レーザ処理システム、手術用デバイス、眼底撮像システム、OCTシステム及びOCT血管造影法システムを含む。
【0029】
例示目的のために、
図1は臨床環境において見出され得るような眼科システムの筐体11を示す。筐体11は眼底撮像装置、OCT、OCTAなどの1つ又は複数のタイプの眼科システムを収容し得る。筐体11は、表面13(例えば調整可能テーブル)上に置かれ得るとともに、患者21を眼科システム11に対して位置決めするように機能する患者インタフェース15と結合され得る。通常、従来からの患者インタフェース15は患者21(又は被検者例えば患者の眼)を支持するためのヘッドレスト17及び/又は顎当て19を含み得る。計器11及び/又は患者インタフェース15の様々な部分は、被検者が撮像されている間の計器11の眼アラインメントを容易にするために互いに対して移動され得る(例えばジョイスティック23及びノブ25、27などのハードウェア制御器を使用することにより)。ディスプレイ(例えば電子画面、図示せず)もテーブル13上に取り付けられ得る。眼科用レンズ29は画像取得などのための計測器の開口として機能し得る。したがって、ジョイスティック23、ノブ25/27、及びディスプレイは、システムに対する(例えば、眼科用レンズ29及び/又はシステムの内部光学素子に対する)患者の眼/瞳孔の最適な水平、垂直及び軸方向位置を実現するように患者アラインメントを調整するために患者インタフェース15及び計器11の位置を調整するために使用され得る。
【0030】
本発明は、患者-システムアラインメント過程を容易にすることを目指しており、セルフアラインメント調整、オペレータ支援アラインメント調整、又はシステム自動アラインメント調整であろうとすべて(又はほとんど)のアラインメント調整(又は過程)の必要性を排除することによって、そのようにする。これは、患者の顔を眼科システムに対する既知の所定の位置に信頼可能且つ再現可能に置く機構/方法により実現される。1つの手法は、患者の顔特徴に対してカスタムメイド(又はカスタムフィット)された成型額、鼻骨フレーム、頬押付部、及び/又は顎当て(又はこれらの任意の組合せ)を有する患者個人化顔インタフェース(例えば全フェイスマスク又は部分フェイスマスク)、を使用することである。以下に述べるように、この組み合わせは好適には、患者の鼻を眼科システムの開口に対する予測可能な位置(例えば3D空間内の角度及び位置)に保持するように構成され得る鼻骨フレームを含み得る。
【0031】
図2Aは、本発明による患者個人化フェイスマスクを提供する方法を示す。本方法は患者21の3Dモデル31を取得することにより始まり得る。3Dモデル31は、「ワイヤフレーム」又はポリゴンメッシュ、例えばクワッドメッシュ(4縁/頂点組み合わせ)又は三角形メッシュ(3縁/頂点組み合わせ)であり得る。3Dモデル31を生成する複数の方法があり、そのうちの2つが矢印33、35により示されるように
図2Aに示される。第1の方法は、(矢印39a、39bにより示されるように)患者の顔及び/又は頭部全体にわたって走査するために患者21の頭部を中心に移動され得る深度感知カメラなどの3D撮像デバイス37を使用することである。深度感知カメラ37は、スマートフォンなどの携帯型デバイス内に又はタブレットコンピュータ又はカスタムコンピューティング/電子デバイスなどの他のポータブルコンピューティングデバイス内に具現化され得る。携帯型デバイスは、3D走査ソフトウェアアプリケーション(アプリ)を実行し、かつ/又は捕捉された3Dデータを3Dモデル31の処理及び/又は生成のために遠隔コンピュータデバイス(例えばインターネット又はイントラネット接続上の)に送信し得る。任意選択的に、3Dモデル31は3D撮像デバイス37内で完全に生成されてもよいし部分的に生成されてもよい。
【0032】
代替的に、3D撮像デバイスはマルチカメラ撮像システム41により具現化され得る。この場合、3Dデータは、患者の顔及び/又は頭部に好適に跨る複数のカメラ38を使用することにより様々な角度から患者21の複数の重畳画像を(例えば同時に)捕捉することにより取得され得る。一列のカメラ38が示されるが、(例えば頭部の上側及び下側部分に跨るために)複数行/列のカメラが使用され得るということを理解すべきである。再び、捕捉された3Dデータは3Dモデル31を生成するために局所的又は遠隔的に処理され得る。3Dモデル31を処理するリモートサイトは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はインターネットなどのコンピュータネットワーク上でアクセス可能であり得、ウェブサイトサービス(例えばウェブブラウザを介しアクセス可能な)として提供され得る。
【0033】
3D撮像デバイスは、他の3D走査/画像技術を単独で又は組み合わせて具現化し得る。例えば、3D撮像デバイスは、顔/頭部上にレーザビームを投射して、レーザビームの変形を測定し得るレーザ三角測量3D走査技術を具現化し得る(同走査技術に基づき得る)。別の例は、顔/頭部の表面の形状を3D走査するために顔/頭部上の光パターンの変形を測定し得る構造化光3D走査技術である。追加の3D撮像技術は、通常はコンピュータビジョンアルゴリズム及び計算幾何学アルゴリズムを使用することにより複数の2D画像捕捉(例えば捕捉されたデジタル画像又は写真)から顔/頭部の3Dモデルを構築し得る写真測量法(例えば「写真術からの3D走査」)である。さらに別の例は、レーザビームの飛行時間に基づく飛行時間(例えば、「レーザパルス」)3D走査技術である。例えば、レーザビームは顔/頭部上に投射され、センサ上で収集され得る。3D幾何情報(顔/頭部の3Dモデル)は、レーザの発射と受信との間のレーザの進行の時間から判断され得る。代替的に、3Dモデルはまた、接触ベースの3D走査技術などの様々な機械的手法を使用することにより構築され得る。例えば、接触面(例えばプローブ又は複数のプローブ)の変形(すなわち変位)を使用して、顔/頭部表面上のいくつかの点を測定/サンプリングして3Dモデルを生成し得る接触ベースの3D走査技術を使用し得る。
【0034】
どのように3Dモデルが取得されるかに関係なく、患者個人化(例えば、患者固有の)フェイスマスク43は、患者の顔の事前取得済みの3Dモデル31に基づいて生成され得る。例えば、3Dプリンタが、フェイスマスク43又はその一部を3D印刷するために使用され得る。矢印45は例示的な患者個人化全フェイスマスク43の斜視図を識別し、矢印47は全フェイスマスク43の側面図を識別する。要約すると、本手法は、患者の顔/頭部を3D走査することなどにより患者固有の3Dモデル31を生成すること、及びガイドとして患者固有の3Dモデル31を使用することにより物理的マスク43を生成することを含み得る。患者の顔/頭部の様々な部分の輪郭、構造(例えば骨格)、サイズ及び位置(例えば鼻骨に対する眼窩内の眼の位置)が患者固有の3Dモデル31から知られるだけでなく、人間の顔のどの部分が概して剛性であるか、およびどの部分(例えば頬)が可鍛性又は圧縮可能である傾向があるかを知るので、眼科デバイス(例えば眼科診断デバイス、眼科セラピーデバイス、眼科治療デバイス又は眼科治療薬分注デバイス)に取り付けられたときに患者の眼を眼科デバイスに対する所望のアラインメント位置に位置決めするフェイスマスク43を生成し得る。
【0035】
次に、このようにして生成された3Dフェイスマスク43は、眼科デバイスの既存の患者インタフェースとして使用され得るか、又はその一部であり得るか、又はそれに組み込まれ得る。患者の顔/頭部の輪郭は知られており(例えば患者の個人固有3D顔モデルから判断される)、眼科システム/デバイスの物理的特性(例えばシステムの開口の位置及び配向、システム光路、撮像特性など)も同様に知られているので、フェイスマスク43は、最適なアラインメントを眼科デバイスに提供するように設計された眼科デバイスに対して、特定の所定の位置に及び配向で患者の頭部を保持するように設計され得る。すなわち、フェイスマスクの外部(例えば眼科デバイスに面するマスクの外側)は特定の患者及び/又は特定の眼科デバイスのために個人化され得る。例えば、フェイスマスクの外部は、特定の眼科デバイスに結合するためのカスタムコネクタを組み込み得る。コネクタ(例えばコネクタピン)の位置及び/又はフェイスマスクの外形は、例えば、患者の瞳と鼻梁との間の距離、及び/又は患者の瞳孔間距離、及び/又は患者の眉弓、眼窩、鼻梁、頬構造などのサイズ及び輪郭を考慮することによって、患者の瞳孔が、眼科デバイスの平面中心(例えばX-Y面内の零)に一致するように常に位置決めされるように、構成され得る。また、フェイスマスクの厚さ及び/又は形状は、フェイスマスクが眼科デバイスの作動距離と(例えば、その調整と)干渉しないように眼科デバイスに対して構成され得る。フェイスマスクはさらに、患者快適性を考慮するように設計され得る。例えば、フェイスマスクは、快適な呼吸を促進するために、かつ制約される感覚を生成することを回避する(例えば、閉所恐怖症知覚を回避する)ために患者と眼科デバイスとの間の十分なクリアランスを提供し得る。必要に応じ、フェイスマスクは、眼科デバイスに結合されたときに、フェイスマスクが患者の眼を周辺光から遮蔽するように構築され得る。これは、眼の瞳孔の自然な拡大を可能にし得る。さらに、フェイスマスクと眼科デバイスとの間の機械的基準が固定されるので、フェイスマスクは、顔とぴったり合うようにして、遮光筐体を作成することができる。これは、撮像/走査眼科用途などのいくつかの眼科用途において有益であり得る。したがって、フェイスマスクの内部(例えば患者に面するマスクの内側)は、複数の患者のうちの特定の患者に個人化され(又は結び付けられ)得、フェイスマスクの外部は、複数の(例えば複数のタイプの)眼科デバイスのうちの特定のデバイスのためにカスタム化され(又は結び付けられ)得る。
【0036】
図2B、
図2Cは顔の3Dモデル(
図2Aの3Dモデル31など)を生成する別の方法を示し、
図2Dはカスタムフェイスマスク(
図2Aのフェイスマスク43など)を生成する
図2B、
図2Cの方法を元に構築する。上に説明したように、3Dモデルは機械的接触ベースの走査システムを用いて定義され得るが、このような機械システムは、また、物理的患者個人化フェイスマスク自体を提供し得るか、又は物理的患者個人化フェイスマスク自体として(完全に又は部分的に)機能し得る。
図2Bは、
図2Aの3Dモデル31を定義するために使用され得るような接触ベースの3D走査システムの例を示す。本接触ベースの3D走査システムは、接触面(例えばピストン棒44bの先端44a)が任意選択的に膜(図示せず)により覆われ得る個別の可動プローブ(例えばピン又はピストン)42の接触子アレイ40を含み得る。患者46aが自身の顔/頭部を接触子アレイ40内に押し込むと、接触子アレイ40の様々な部分は、個々のピストン(又はピン)42が患者の顔/頭部の輪郭に従って押し戻される(変位される)ので、異なるやり方で変形/変位されることになる。例えば、患者の顔は、先端44a(又は先端44aの上の膜表面)と接触し、対応ピストン棒44bを押し進める可能性があり、対応ピストン棒44bを顔輪郭により決定される量だけ変位させる(例えば任意選択的にシリンダバレル44c内に移動させる)。各プローブ/ピストン42のその結果の高さ(及び/又はその変形/変位の量)が、患者の顔の形状を符号化するために検出/測定され、これにより顔走査(ピン/ピストン/プローブ高さ(変位/変形)マップとして表され得る)を生成することができる。
図2Cはフレーム48内の接触子アレイ40の使用を示す。患者46bが湾曲矢印50により示されるように自身の顔を接触子アレイ40内に押し込んだ後、個々のプローブ/ピストン/ピン変形/変位位置52が読み取られ、3D走査の記録を維持するために記憶される。任意選択的に、変位した位置52はフレーム48内の適所にロック可能であり得る。
【0037】
本機械的3D走査システムは、眼科システムからの光が患者の眼を通過して到達するための開放エリア(又は半透明エリア)を有するように構成されることによって、フェイスマスク(又はフェイスマスクの一部)として機能するように適合され得る。したがって、この機械システムは、顔/頭部の3Dモデルを生成するだけでなく、患者個人化(例えば患者固有の)フェイスマスクとしても機能し得る。
図2Dは、以下により詳細に説明されるように眼科システムの筐体11(
図1を参照)内に一体化される又はそれに取り付け可能であり得るか、又はそれ以外の方法でそれに結合され得るフレーム48内の接触子アレイ40の例示的な使用を示す。本例では、接触子アレイ40は、光が患者46bの眼と眼科システムとの間を通過するための開口60を含む。プローブ/ピストン/ピン変形52を適所にロックすることにより、患者の顔/頭部のフェイスマスクがフレーム48内に画定される。すなわち、プローブ位置は「次に患者が自身の顔をフェイスマスクにもってきたときに、患者の頭部が最初の時と同じ位置に来ることになる」ということを保証するためにロックされ(かつ記憶され)得る。
【0038】
上述のように、プローブ/ピストン/ピンは、
図2Aの3D印刷されたフェイスマスク43と同様な表面を生成するために膜又は他の軟質片(単数または複数)又は面(単数または複数)により覆われ得る。本接触子アレイ40は患者の顔の選択部分の輪郭を捕捉/走査する(例えば、部分フェイスマスクを生成する)及び/又は患者の顔の選択部分のプローブ/ピストン/ピン変位/変形情報だけを記憶するように構成され得るということを理解すべきである。このようにして、プローブ変位位置データ(のすべて、又はマスク形状に対応するピストンの選択部分)が記憶されている場合、このデータは患者が本デバイスに戻ったときに、呼び出され得る。次に、プローブ/ピストン/ピンは以前に検出された位置に戻され(手動で又は自動的に)、次に、適所にロックされ得る。例えば、本システムは、個々のピストン棒44bをそれらの個々に応じて記憶された変位位置に移動するために
図2Bの選択シリンダバレル44cを自動的に作動させ得る(必要に応じて対応プローブ高さマップに従って)。これにより、使用可能な状態に在る患者の顔/頭部の正確なインプリントが再生成される。本システムは複数の患者のマスク情報(例えばプローブ高さマップ)を電子メモリ内に記憶し、各患者のカスタムマスク情報を呼び出して、本システムを使用することになる特定の患者に適合するようにマスク(例えば接触子アレイ48)を再構成し得るということを理解すべきである。したがって、本実施形態は複数の患者が同じデバイス上で撮像されることを可能にする。異なる患者毎に、本システムはピストン高さマップを呼び出し(例えばコンピュータネットワーク(例えばインターネット)を介しアクセス可能なローカル又はリモートデータベースなどのメモリストレージからアクセスし)、それに応じて本デバイスを設定することになる。これにより、中央試験室又はステーションにおける(例えば介護ホームにおける又は診療室のウォークアップ試験室における)より大きな集団の繰り返し測定が可能となる。任意選択的に、患者の顔/頭部の正確な形状(又は、こめかみ、鼻(例えば鼻梁)の全体又は一部、及び頬骨などの顔/頭部の標的領域)が走査されると、本システムは「患者が次にフェイスマスクに接触する場合に、患者が本システムとの適切なアラインメント状態になる」ということを保証するために、フェイスマスクを回転及び/又は並進させ得るか、又はそれ以外の方法で再位置決めし得る。
【0039】
例示目的のために、
図3は、
図1の筐体11の斜視図と、システム11の患者インタフェース15内に組み込まれる(例えば、後付けされる)全フェイスマスク43又は部分フェイスマスク43’(矢印49により示される)とを提供する。別途述べられない限り又は文脈から理解されない限り、フェイスマスク43及び部分フェイスマスク43’のすべての説明/実施形態/特徴はプローブアレイ40により画定されるフェイスマスクに適用されるということを理解すべきである。フェイスマスクは、システム11をX,Y,Z空間方向(例えば三次元(3D)空間)においてアラインメントする必要性に置き換わるものである。全フェイスマスク43が患者インタフェース15に組み込まれることになれば、ヘッドレスト17及び/又は顎当て19は除去されて、全フェイスマスク43により置換され得る。部分フェイスマスク43’を患者インタフェース15内に組み込む場合、ヘッドレスト17は除去されて、部分フェイスマスク43’により置換され得るが、調整可能な顎当て(カップ)19は、任意選択的に保持され、顎当て機能性だけでなく高さ調整も提供し得る。代替的に、患者インタフェース15は、全フェイスマスク43及び/又は部分フェイスマスク43’に基づく(例えば、全フェイスマスク43及び/又は部分フェイスマスク43’用にカスタム化された)新たな患者インタフェースにより置換され得る。部分フェイスマスク43’は患者固有の額/頬部分を含むように示されるが、異なる部分フェイスマスク構成が可能であるということを理解すべきである。いくつかの別の部分フェイスマスク構成が以下に説明される。
【0040】
図4a、
図4bは、
図2Aの全フェイスマスク43及び部分フェイスマスク43’をそれぞれ組み込んでいる
図3の筐体11のプロファイル図を示す。
図4aでは、全フェイスマスク43は、患者インタフェース15内に組み込まれて、
図3のヘッドレスト17及び顎当て19に代わる。
図4bでは、部分フェイスマスク43’は患者インタフェース15に組み込まれて、ヘッドレスト17に代わるが、患者インタフェース15は顎当てカップ19を用いて一般的な高さ調整を依然として提供し得る。これは臨床設定において使用される全フェイスマスク43又は部分フェイスマスク43’の例であろう。本例では、全フェイスマスク43及び部分フェイスマスク43’は、患者の顔に個人化され、かつ眼科システム11と患者21の眼との既知のアラインメントを確立するために使用される。すなわち、フェイスマスク43、43’はそれぞれ、患者の顔の既知の輪郭に基づく事前構成済み形状(患者の事前取得された3D顔モデルから判断され、患者の顔を所定の位置(既知及び所望のアラインメントを確立する)に保持するように構成された)を有する。この手法を使用することにより、患者21が行う必要がある唯一のタスクは、オペレータ又は自動フィードバックシステムからの支援無しに、又は最少の支援でもってアラインメントを実現するために自身の顔をフェイスマスク43又は43’のいずれか内に置くことである。フェイスマスク43、43’は、適切な患者-システムアラインメントを実現するためのX,Y,Zの空間的調整の必要性をなくす。フェイスマスク43、43’は、それぞれ、患者の顔の既知の輪郭に基づく事前構成済み形状であって、所望及び所定のアラインメントを確立する所定の位置に患者の顔を保持するように構成された事前構成済み形状を有する。フェイスマスクは患者の顔の輪郭に対して個人化されるので、患者自身の快適レベルが適切なアラインメントの指標となる。すなわち、患者は「フェイスマスクにより生成される圧点の数が最小化されると、眼が所望の所定の位置に正しくアラインメントされた」ということを識別し得る。すなわち、患者の頭部がフェイスマスク43又は43’内に正しく置かれると、額、鼻骨、こめかみ、頬、及び/又は顎先上の圧点は排除又は最小化され、患者の快適設定を生み出す。実験結果は、(実現するために多くのオペレータの支援を過去に必要としたであろう)三空間次元すべてにおいて、0.1mmの再現可能なアラインメント精度を実現した。したがって、患者固有のマスク43又は43’を使用することによって、患者が眼科システムに接近する前に、いかなるアラインメント調整無しに、眼科システムが個々の患者に対して予めアラインメントされる。
【0041】
任意選択的に、フェイスマスク43、43’は患者の識別に従って着脱可能であり且つ交換可能であり得る。例えば、患者固有の個人化フェイスマスクのライブラリ(例えば集合又はストレージ)が構築され得、第1の患者に対応する第1のフェイスマスクは、患者インタフェース15から除去されて、第2の患者の眼を調べることに備えて、第2の患者に対応する第2のフェイスマスクに置換され得る。このようにして、様々な患者の連続検査の容易性及び速度が改善され得る。
【0042】
図5は、トレーニングされたシステムオペレータ/技術者が容易に利用可能ではないかもしれない在宅、介護生活、又は他の非臨床環境などにおける自己管理式眼科処置の用途に好適な代替のより小さなプロファイルの筐体51を示す。このようなデバイスは、在宅ケア環境において慢性的又は短期的疾患を治療及び/又は監視するために使用され得る。本例では、全フェイスマスク43及び/又は部分フェイスマスク43’は個々の矢印53、54により示されるように筐体51に直接結合され得る又は筐体51の一体部分を形成し得る。代替的に、患者固有のフェイスマスク43又は43’のいずれかは、筐体51を含む眼科システムの一部であり得る患者インタフェース(例えばフレーム又は支持体)55にくみ組み込まれ得る(矢印57により示されるように)。
【0043】
図6aは、フェイスマスク43及び筐体51を組み込む(例えば、在宅/ポータブル)眼科システム59の第1の構成を示す。本例では、患者インタフェース55は、眼科システム59の基部57に固定されて、患者(図示せず)を筐体51とアラインメントさせるために患者固有のフェイスマスク43を所定の位置に保持する。同様に、筐体51は基部57に結合されたアーム61により既知の所定の位置に保持され得る。任意選択的に、アーム61は、並進運動(例えば、左から右、前方及び後方、上下、及び/又は曲線運動)のためのレール及び/又はラチェットシステム62に、かつ/又は筐体51の回転運動のためのスイベルハブ63に結合され得る。このようにして、本システムは、より良好な患者快適性のための筐体51の位置調整を提供し得る。代替的に、本システムは特定の患者に適切であると判断されたモジュラ位置に事前設定され得る。本システムは、また、所定の位置(任意選択的にロック可能な位置)間の位置調整を提供し得る。例えば、このような位置は、患者の眼(例えば瞳孔及び/又は網膜)の交互のアラインメントされた視野を提供するように設定され得る。
【0044】
図6bは、
図6aの眼科システム51の第2の構成を示し、ここでは遮光拡張部64がフェイスマスク43内に又は筐体51に組み込まれる。このようにして、フェイスマスク43が眼科筐体/デバイス51に結合されると、フェイスマスク43は周辺光を遮断するように機能する(例えば、遮光部として作動/機能する)。
【0045】
図6cは、
図6aの眼科システム51の第3の構成を示し、ここでは遮光拡張部64は、剛性であり、かつフェイスマスクを眼科筐体/デバイス51に直接結合するために十分な構造的支持を提供する。このようにして、
図6aの患者インタフェース55は排除され得る。任意選択的に、支持棒66が必要に応じ追加構造を提供し得る。支持棒はさらに、フェイスマスク43に接続するための追加の結合器を提供し、かつ/又はフェイスマスク43及び/又は遮光拡張部64を筐体51の上方に持ち上げるための回転棒として機能し得る。
【0046】
本眼科システムは、双眼であり得る(例えば、一方の眼を単独で又は両方の眼を同時に検査、撮像、診断、治療、又は薬物治療するための2つの開口を有し得る)、又は単眼であり得る(例えば、一度に一方の眼を検査、撮像、診断、治療、又は薬物治療するための1つの開口を有し得る)。単眼システムの場合、筐体51(又は、光路を画定し得るその内部)は一方の眼又は他方の眼とアラインメントするために1つの位置から別の位置に移動され得る(例えば左から右にスライドし得る、逆も同様)。双眼システムでは、筐体51は、2つの別個の光路(眼毎に1つ、又は開口毎に1つ)又はいずれかの眼に選択的に向けられ得る単一光路を提供し得る(例えば、いずれかの眼の視野を単一光路に選択的に向けるミラー切り替えシステムを用いて、又は患者の2つの眼の一方又は他方と選択的にアラインメントされるように単一光路を筐体51内で物理的に(例えば、並進的に及び/又は軸方向に)移動する機構を用いて)。
【0047】
図7a、
図7bは、単眼システムを患者の2つの眼のいずれかにアラインメントする2つの方法を示す。
図7aでは、フェイスマスク43は静止しており、筐体51は少なくとも2つの(所定)位置(各位置は筐体51を患者の2つの眼の個々の1つにアラインメントする)間で移動され得る。本例では、筐体51は第1の位置65aから第2の位置65bにスイベルハブ63を中心に旋回され得る(矢印67により示されるように)。位置65aに在る場合、筐体51は患者の右眼にアラインメントされる(象徴的な標的十字線69aにより示されるように)。同様に、筐体51が位置65bに在る場合(点線輪郭により示されるように)、筐体51は患者の右眼にアラインメントされ、これは標的十字線69bにより象徴的に識別される。代替的に、筐体51は位置65a及び65b間で横方向に移動され得る(例えばレールシステム62を用いて)。
【0048】
図7bは、単眼システムを患者の2つの眼のいずれかにアラインメントする第2の方法を示す。説明を簡単にするために、
図7bは、患者インタフェース55の一部としてのフェイスマスク43の正面図を示すが、筐体51の図を省略する。筐体51は、静止しており、
図6aと同様なやり方でフェイスマスク43の前に位置決めされるであろうということを理解すべきである。本実施形態では、フェイスマスク43は、筐体51がフェイスマスク43の前に静止している間に、少なくとも2つの(所定)位置間で移動され得る。例えば、フェイスマスク43は、患者の左の瞳孔69aを筐体51の開口にアラインメントする第1の位置71aに矢印73aに従って移動(例えば、患者インタフェース55のレールに沿ってスライド)され得、かつ患者の右の瞳孔69bを筐体51の同開口にアラインメントする第2の位置71bに矢印73bに従って移動され得る。
【0049】
図8a、
図8b、
図8cは、本発明による眼科システムの代替実施形態を示し、ここではフェイスマスク43は、眼科デバイス筐体73に対して1つ又は複数の異なる偏垂直傾斜角に配置され得る。
図8a、
図8bの実施形態は
図6cと同様な遮光部72を含む。
図8aでは、遮光部72(フェイスマスク43の一部であり得る)は、フェイスマスク43を眼科デバイス筐体73に直接結合して支持する。
図8bでは、任意選択的な支持棒74がフェイスマスク43と眼科デバイス筐体73とを結合するのを支援するために設けられ得る。
図8a~
図8cは、3つのそれぞれ異なる傾斜角α1、α2、α3を示すフェイスマスク43の3つの異なる例75a、75b、75cを提供する。理解されるように、各角度は、患者の顔をフェイスマスク43内に置くために、患者による異なるレベルの傾斜を必要とすることになる。患者は、他の傾斜角度よりも快適な傾斜角度を見出し得、眼科システムは、フェイスマスク43を所与の患者又は一群の患者に快適な角度で提示するように構成され得る。角度は固定であっても、調整可能であってもよい。
【0050】
図9は、代替実施形態の2つの構成77a、77bを提供し、ここでは本発明による眼科システムは携帯型構成を有し、フェイスマスク43はテーブル基部を使用すること無く筐体51に直接結合される。この構成は、眼科デバイスが軽量であり、且つ片手又は両手で把握可能である場合に有益であり得る。任意選択的に、取っ手(単数または複数)79(実施形態77a)又はハンドル81(単数または複数)(実施形態77b)が患者による把持及び位置決めを容易にするために設けられ得る。このようにして、眼科デバイスは、寝たきり患者に過度に負担を掛けること無く、傾斜位置又は横臥位置において使用され得る。すなわち、眼科デバイスは、静止位置において、患者の顔に快適に押し付けられたときに、適切なアラインメント状態にあると判断され得る。
【0051】
任意選択的に、フェイスマスク43は、患者インタフェースの全部又は大部分を含み得る。例えば、
図10a、
図10bはフェイスマスク43に直接結合される眼科デバイス筐体を示す。この構造は、例えば、眼圧計81(
図10aに示す)及び/又は眼治療薬(例えば点眼薬)分注器83(
図10bに示す)を収容する場合などのように、眼科デバイス筐体が小さい状況において好ましい。
【0052】
眼圧計は、緑内障を患う患者にとって特に関心があり得る眼内の圧力(眼内圧)を測定するものである。緑内障は視神経の陥凹(剥離)である。これは通常、視神経への着実に進行する損傷を生じ、患者の視野の一様に着実な低下に至る。治療無しでは、これは視力の喪失を生じ得る。緑内障又は視神経に対する損傷の正確な原因は十分に理解されていないが、眼内圧の増加が、可能性の高い指標として識別されている。
【0053】
したがって、自宅での治療薬適用及び眼内圧(IOP:intraocular pressure)監視は緑内障ケアの不可欠部分である。両方は、人が通常は病気と共生して高齢に入るので、長年にわたる繊細な運動技能及び連続的な患者アドヒアランスを必要とする。しかし、患者が支援無しに厳密な監視及び治療薬投与計画を遵守することは困難であり得る。自己管理式治療薬(特に点眼薬適用)は、不良な患者アドヒアランス及び不成功な点眼薬管理結果が生じるということが示された。慢性疾患の世界的増加は(ヘルスケアシステムへのその関連する負担と共に)、患者自己管理のための要求を増加する可能性が高くなる。不良なアドヒアランスの1つの理由は、このような眼科デバイスの使用に伴うそのための困難性であり得る。
【0054】
図10aは、リバウンド測定原理に基づく眼圧計81を示し、ここではプローブ(例えばロッド)85は、眼内圧を測定するために眼球上で出入りして繰り返しリバウンドする(例えば、ロッド先端85aは眼球に繰り返し押し付けられて、跳ね返されることが可能である)。このデバイスは、診療所外でのIOP監視を可能にし、より多くの情報を眼科医に提供する。
図10bは、治療薬瓶83を使用する液滴送達システムに基づく治療薬適用器基部を示す。他の治療薬送達システム(例えば局所治療薬のための)は、眼圧計81のプローブ85と同様なやり方で眼に接触することによって眼科治療薬を塗布するプローブ、又は治療薬の液滴を眼に射出する圧電薬物送達システムを含み得る。
【0055】
いずれにせよ、そのような眼科デバイスは、典型的には携帯型であり、特に、高齢者又は手が安定していない人にとっては、携帯型眼科デバイスを人の眼の極近傍にもってくるか、又はそれと接触させることを必要とする医療処置を自己管理することが難しい場合がある。典型的に携帯型眼科デバイスを患者固有のフェイスマスク43に取り付けることによって、フェイスマスク43が眼科デバイスを患者の眼から所定距離且つ安全距離に維持するので、患者は、自信を持って眼科デバイス(例えば眼圧計81又は治療薬瓶83)を自身の眼に持ち込むことが可能である。
【0056】
本構成はまた、絞り出し式液滴瓶、手動電子起動式(例えば圧電又はピエゾ印刷)治療薬分注器、又は眼球が利用可能である(例えば、カメラを用いて判断され得る)いうことを感知したときに、治療薬を自動的に分注する自動電気的/電子的治療薬分注器を用いて眼科治療薬を適用する際に好ましいものであり得るように、横臥位置における本システムの使用を簡単にする。
【0057】
任意選択的に、フェイスマスク43を筐体(例えば眼圧計81又は治療薬瓶83)に接続/結合するための結合機構(例えばコネクタアーム)87は、様々なタイプの筐体(例えば眼圧計81又は治療薬瓶83)及びしたがって様々なタイプの眼科デバイスを受け入れるためのモジュラ式又は可撓性の端部87aを有し得る。このようにして、患者は、患者が複数の眼科デバイス(眼圧計81又は眼科デバイス治療薬分注器83など)のうちの任意の1つを選択的に(交換可能に)取り付け得る単一フェイスマスク43を提示することができる。
【0058】
上述の実施形態のいくつかは全フェイス型患者固有のフェイスマスク43の使用を示すが、すべての実施形態は全フェイスマスク又は部分フェイスマスクにより実施され得る。
図11a~
図11eは、部分フェイスマスクの様々な例を提供する。これらの構成のすべてにおいて、使用されるフェイスマスクの一部分は、患者の顔の1つ又は複数の骨部に(任意選択的に骨部のみに)アラインメントするように構成され得る。
図11aは、上側部分91a及び下側部分91bを含むツーピースの部分フェイスマスク91を示す。上側部分91aは、患者の額(及び任意選択的に、患者のこめかみ領域)にアラインメントするように構成された第1の領域R1及び患者の鼻骨にアラインメントするように構成された第2の領域R2に跨り得る。下側部分91bは患者の顎先(かつ下顎骨)に跨り得る。
【0059】
図11bは、
図11aと同様なやり方で額領域R1及び鼻骨領域R2に跨る代替ワンピースの部分フェイスマスク93を示す。部分フェイスマスクが患者インタフェースに結合された場合(例えば
図3~
図6に示すように)、このフェイスマスクにより覆われない患者の顔の一部分が患者インタフェースにフィットされ得る。例えば、患者インタフェースは
図3に示すように調整可能な顎当てを提供し得、顎当ては、フェイスマスク内に嵌め込まれた患者の顔と共に患者にフィットされ得る。
【0060】
図11cは、患者の頬領域R3を少なくとも部分的に含むように部分フェイスマスク93のカバレッジを拡大するさらに別のワンピース部分フェイスマスク95を示す。マスクカバレッジを鼻領域R2(鼻梁及び鼻カートリッジの任意選択的に少なくとも1つの部分)及び眼窩上隆起(例えば眉弓)R4に制限する第3のワンピース構成が
図11dに示される。
【0061】
任意選択的に、すべての部分フェイスマスク構成は、少なくとも患者の鼻骨領域を含む。
図11eを参照すると、患者の鼻領域R2に対して構成されるフェイスマスクの一部分99は、患者の顔(及び、したがって患者の眼)が適切なアラインメントのために所定の位置(及び角度)に在るということを保証するために効果的である。一部分99は、好適には患者の鼻を締め付けないが、患者が自身の鼻を一部分99内に快適に挿入することにより、適切なアラインメントが改善される。患者の鼻に加えて他の領域を覆うフェイスマスクを有することは、基準点として追加接点を患者に提供するのに役立つ。
【0062】
患者の網膜の選択的なビューに依存する、眼底撮像装置又はOCTベースシステムなどの眼科システムに本フェイスマスクが組み込まれる場合、クリティカルなアラインメント仕様が必要とされ得る。このような場合、アラインメントのための追加の精緻化技術を提供することが有益であり得る。この精緻化技術は、患者の位置の追加の機械的調整無しに、患者がその凝視方向を変更することだけにより提供され得る。この状況では、凝視調整は、眼科システム内の固視標の包含により提供され得る。固視標(例えば固視光又は固視光パターン)は、凝視すべき何かを患者に提供し、これにより患者の凝視を所望方向に向ける。固視標のより詳細な説明は以下に示される。
【0063】
以下に、本発明に好適な各種ハードウェアおよびアーキテクチャについて説明する。
視野検査システム
本明細書で説明される改良点は、任意の種類の視野テスタ/システム(例えば、視野計)と組み合わせて使用することができることである。そのようなシステムの1つは、
図12に示すような、「ボウル」視野テスタVF0である。被検者(例えば、患者)VF1は、一般にボウルの形をした半球状の投影画面(または他の種類のディスプレイ)VF2を観察するようにして示されており、このためテスタVF0がそのように呼ばれる。通常、被検者は半球状の画面VF3の中心にある点に凝視するように指示される。被検者は、顎載せ台VF12および/または額当てVF14を含み得る患者サポートに自身の頭部を置く。例えば、被検者は、自身の頭部を顎載せ台VF12に置き、額を額当てVF14に当てる。任意選択的に、顎載せ台VF12および額当てVF14は、例えば、被検者が画面VF2を見ることができるレンズを保持し得るトライアルレンズホルダVF9に対して、患者の眼を正しく固定/位置決めするために、共にまたは互いに独立して移動することができる。例えば、顎載せ台およびヘッドレストは、異なる患者の頭部のサイズに対応するために垂直方向に独立して移動し、頭部を正しく配置するために水平方向および/または垂直方向に共に移動することができる。しかしながら、これは限定的ではなく、当業者であれば他の配置/移動を想定することができる。
【0064】
プロセッサVF5の制御下にあるプロジェクタまたは他の画像形成デバイスVF4は、一連の検査刺激(例えば、任意の形状の検査点)VF6を画面VF2上に表示する。被検者VF1は、ユーザ入力VF7を作動させる(例えば、入力ボタンを押下する)ことにより、刺激VF6を見たことを示す。この被検者の反応は、プロセッサVF5によって記録することができる。プロセッサVF5は、被検者の反応に基づいて眼の視野を評価し、例えば、被検者VF1によってもはや見ることができない試験刺激VF6のサイズ、位置、及び/又は強度を決定し、それによって検査刺激VF6の(可視)閾値を決定するように機能し得る。カメラVF8を使用して、検査全体を通して患者の視線(例えば、視線方向)をキャプチャすることができる。視線方向は、患者の位置合わせ、および/または患者が適切な検査手順の遵守を確認するために使用することができる。この例では、カメラVF8は、患者の眼に対して(例えば、トライアルレンズホルダVF9に対して)Z軸上に配置されるとともに、患者の眼のライブ画像(単数または複数)またはビデオをキャプチャするためにボウルの(画面VF2の)背後に配置される。他の実施形態では、このカメラは、このZ軸から離れて配置され得る。視線カメラVF8からの画像は、患者の位置合わせまたは検査の検証を支援するために、臨床医(本明細書では交換可能に技術者と呼ばれ得る)に対して第2のディスプレイVF10に任意選択的に表示することができる。カメラVF8は、各刺激呈示中に眼の1つまたは複数の画像を記録および保存することができる。これにより、検査条件に応じて、1回の視野検査で数十から数百の画像を収集することができる。代替的に、カメラVF8は、検査中に全長動画を記録および保存し、各刺激が呈示された時を示すタイムスタンプを提供することもできる。さらに、VF検査の期間中の被検者の全体的な注意の詳細を提供するために、刺激の呈示の間に画像を収集することもできる。
【0065】
眼の屈折異常を矯正するために、トライアルレンズホルダVF9を患者の眼の前に配置してもよい。任意選択的に、レンズホルダVF9は、患者VF1に可変屈折矯正を提供するために利用され得る液体トライアルレンズを担持または保持することができる(例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8668338号明細書を参照)。しかしながら、本発明は、屈折矯正用の液体トライアルレンズを使用することに限定されず、当該技術分野で既知の他の従来の/標準的なトライアルレンズも使用することができることに留意されたい。
【0066】
いくつかの実施形態では、角膜などの眼の表面からの反射を生成する1つまたは複数の光源(図示せず)を被検者VF1の眼の前に配置することができる。一変形例では、光源は、発光ダイオード(LED)であり得る。
【0067】
図12は、投影型視野テスタVF0を示しているが、本明細書に記載の本発明は、液晶ディスプレイ(LDC)または他の電子ディスプレイ(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8132916号明細書を参照)を介して画像を生成する装置を含む、他の種類の装置(視野テスタ)と共に使用することができる。他の種類の視野テスタには、例えば、フラット画面テスタ、小型テスタ、および両眼視野テスタが含まれる。これらの種類のテスタの例は、参照により全体が本明細書にそれぞれ組み込まれる、米国特許第8371696号明細書、米国特許第5912723号明細書、米国特許第8931905号明細書、米国意匠登録第D472637号に見出すことができる。
【0068】
視野テスタVF0は、ハードウェア信号と電動位置決めシステムを使用して患者の眼を自動的に目的の位置(例えば、レンズホルダVF9における屈折矯正レンズの中心)に配置する機器制御システム(例えば、ソフトウェア、コード、および/またはルーチンであり得るアルゴリズムを実行する)を組み込むことができる。例えば、ステッピングモータは、ソフトウェア制御下で顎載せ台VF12および額当てVF14を移動させることができる。担当技術者が顎載せ台と額のステッピングモータを作動させることにより、患者の頭部の位置を調整できるようにするために、ロッカースイッチが設けられてもよい。手動で移動可能な屈折レンズは、患者の快適性に悪影響を与えることなく、レンズホルダVF9上の患者の眼の前にできるだけ患者の眼の近くに配置することもできる。任意選択的に、器具制御アルゴリズムは、顎載せ台/または額モータ移動部が進行中である間、そのような移動が検査の実行を妨害する場合、視野検査の実行を一時停止することができる。
【0069】
眼底撮像システム
眼底を撮像するために使用される撮像システムの2つのカテゴリは、投光照明撮像システム(又は投光照明撮像装置)及び走査照明撮像システム(又は走査撮像装置)である。投光照明撮像装置は、閃光ランプを用いるなどにより、被検査物の対象となる視野(FOV)全体を同時に光であふれさせ、フルフレームカメラ(例えば、全体として、所望のFOVを取り込むのに十分なサイズの二次元(2D)光センサアレイを有するカメラ)を用いて被検査物(例えば、眼底)のフルフレーム画像を取り込む。例えば、投光照明眼底撮像装置は、眼の眼底を光であふれさせ、カメラの単一の画像取り込みシーケンスで眼底のフルフレーム画像を取り込む。走査撮像装置は、対象物、例えば眼を横切って走査される走査ビームを提供し、走査ビームは、走査ビームが対象物を横切って走査され、所望のFOVの合成画像を作成するように再構成され、例えば合成され得る一連の画像セグメントを作成するときに、異なる走査位置で結像される。走査ビームは、点、線、又はスリット若しくは幅広線などの二次元領域とすることができる。
【0070】
図13は、眼水晶体(又は水晶体)CLとは反対側の眼Eの内表面であり且つ網膜、視神経乳頭、黄斑、中心窩、及び後極を含み得る、眼底Fを撮像するためのスリット走査式眼科システムSLO-1の例を図示する。本例では、撮像システムは、走査線ビームSBは、眼底F全体にわたって走査されるように、眼Eの光学構成要素(角膜Crn、虹彩Irs、瞳孔Ppl、及び水晶体を含む)を横断する、いわゆる「スキャン-デスキャン」構成である。投光眼底撮像装置の場合には、スキャナは不要であり、光は一度に所望の視野(FOV)全体に照射される。他の走査構成は当技術分野で知られており、特定の走査構成は本発明にとって重要ではない。図示のように、撮像システムは、1つ又は複数の光源LtSrc、好ましくは、エタンデュが好適に調節された多色LEDシステム又はレーザシステムを含む。任意選択のスリットSlt(調節可能又は静止)は、光源LtSrcの前に位置決めされ、走査線ビームSBの幅を調節するために使用され得る。追加的に、スリットSltは、撮像中に静止したままであり得るか、又は特定の走査に関して若しくは反射抑制に使用される走査中に異なる共焦点レベル及び異なる用途を可能にするために異なる幅に調整され得る。任意選択の対物レンズObjLは、スリットSltの前に配置することができる。対物レンズObjLは、限定されるものではないが、屈折、回折、反射、又はハイブリッドレンズ/システムを含む最先端のレンズのいずれか1つとすることができる。スリットSltからの光は、瞳分割ミラーSMを通過して、スキャナLnScnへ導かれる。走査面と瞳面とをできるだけ近づけて、システムの口径食を低減することが望ましい。2つの構成要素の画像間の光学距離を操作するために、オプションの光学系DLが含まれ得る。瞳分割ミラーSMは、光源LtSrcからスキャナLnScnに照明ビームを通過させ、スキャナLnScnからの検出ビーム(例えば、眼Eから戻る反射光)をカメラCmrに向けて反射し得る。瞳分割ミラーSMのタスクは、照明ビームと検出ビームとを分割し、システム反射の抑制を補助することである。スキャナLnScnは、回転ガルボスキャナ又は他のタイプのスキャナ(例えば、圧電又はボイスコイル、微小電気機械システム(MEMS)スキャナ、電気光学偏向器、及び/又は回転ポリゴンスキャナ)とすることができる。瞳分割がスキャナLnScnの前に行われるか又は後に行われるかに応じて、1つのスキャナが照明経路内にあり、別々のスキャナが検出経路内にある2つのステップに走査を分割することができる。特定の瞳分割配置は、米国特許第9456746号明細書において詳細に説明されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
スキャナLnScnから、照明ビームは、眼Eの瞳孔がシステムの画像瞳に結像されることを可能にする1つ又は複数の光学系、この場合は、走査レンズSL及び眼科用又は接眼レンズOLを通過する。概して、走査レンズSLは、複数の走査角度(入射角)のいずれかでスキャナLnScnから走査照明ビームを受け取り、略平面焦点面(例えば、コリメートされた光路)を有する走査線ビームSBを生成する。眼科用レンズOLは、走査線ビームSBを眼Eの眼底F(又は網膜)に集束させ、眼底を撮像し得る。このようにして、走査線ビームSBは、眼底Fを横切って移動する横断走査線を作成する。これらの光学系の可能な構成の1つは、2つのレンズ間の距離がほぼテレセントリックな中間眼底画像(4-f構成)を生成するように選択されるケプラー型望遠鏡である。眼科用レンズOLは、単レンズ、色消しレンズ、又は異なるレンズの配置とすることができる。全てのレンズは、当業者に知られているように、屈折性、回折性、反射性、又はハイブリッドとすることができる。眼科用レンズOL、走査レンズSLの焦点距離、瞳分割ミラーSM及びスキャナLnScnのサイズ及び/又は形状は、所望の視野(FOV)に応じて異なる可能性があり、そのため、例えば、視野に応じて、光学系のフリップ、電動ホイール、又は着脱可能な光学要素を使用することにより、複数の構成要素をビーム経路の内外に切り替えることができる配置を想定することができる。視野の変化により瞳孔上に異なるビームサイズがもたらされるので、FOVの変更に合わせて瞳分割をも変更することができる。例えば、45°~60°の視野は、眼底カメラについての典型的な又は標準的なFOVである。60°~120°以上のより高視野、例えば広視野FOVも実現可能であり得る。広視野FOVは、幅広線眼底撮像装置(BLFI)と光干渉断層撮像法(OCT)などの別の撮像モダリティとの組み合わせに望ましい場合がある。視野の上限は、人間の眼の周りの生理学的条件と組み合わせたアクセス可能な作動距離により決定され得る。典型的な人間の網膜は、FOVが水平140°及び垂直80°~100°であるため、システム上で可能な限り高いFVOに関して非対称の視野を有することが望ましいことがある。
【0072】
走査線ビームSBは、眼Eの瞳孔Pplを通過して、網膜又は眼底、すなわち表面Fへ導かれる。スキャナLnScn1は、眼Eの横方向位置の範囲が照明されるように、網膜又は眼底F上の光の位置を調整する。反射光又は散乱光(又は蛍光撮像の場合は放射光)は、照明と同様の経路に沿って導かれ、カメラCmrへの検出経路上に集光ビームCBを定義する。
【0073】
本発明の例示的なスリット走査式眼科システムSLO-1の「スキャン-デスキャン」構成では、眼Eから戻る光は、瞳分割ミラーSMへの途中でスキャナLnScnにより「デスキャン」される。すなわち、スキャナLnScnは、瞳分割ミラーSMからの照明ビームSBを走査して、眼Eを横切る走査照明ビームSBを定義するが、スキャナLnScnは、同じ走査位置で眼Eからの戻り光も受け取るので、戻り光をデスキャンして(例えば、走査動作をキャンセルして)、スキャナLnScnから瞳分割ミラーSMへの非走査(例えば、定常又は静止)集光ビームを定義するという効果があり、瞳分割ミラーSMは、集光ビームをカメラCmrに向けて折り返す。瞳分割ミラーSMにおいて、反射光(又は蛍光撮像の場合には放射光)は、画像を取り込むために光センサを有するデジタルカメラであり得る、カメラCmrへ導かれる、検出経路上への照明光から分離される。撮像(例えば、対物レンズ)レンズImgLは、眼底がカメラCmrに結像されるように検出経路内に位置決めされ得る。対物レンズObjLの場合のように、撮像レンズImgLは、当技術分野で知られている任意のタイプのレンズ(例えば、屈折、回折、反射又はハイブリッドレンズ)であり得る。追加の動作の詳細、特に、画像におけるアーチファクトを低減する方法が、国際公開第2016/124644号パンフレットで説明されており、その内容の全体は参照により本明細書に組み込まれる。カメラCmrは、受信した画像を取り込み、例えば、画像ファイルを作成し、この画像ファイルは、1つ又は複数の(電子)プロセッサ又は計算装置(例えば、
図16に示すコンピュータシステム)により更に処理することができる。したがって、集光ビーム(走査線ビームSBの全ての走査位置から戻る)は、カメラCmrにより収集され、フルフレーム画像Imgは、個々に取り込まれた集光ビームの合成から、モンタージュなどにより、構築され得る。しかしながら、照明ビームが眼Eを横切って走査され、集光ビームがカメラの光センサアレイを横切って走査されるものを含む、他の走査構成も想定される。参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2012/059236号パンフレット及び米国特許出願公開第2015/0131050号明細書は、戻り光がカメラの光センサアレイを横切って掃引される設計、戻り光がカメラの光センサアレイを横切って掃引されない設計などの様々な設計を含む、スリット走査式検眼鏡のいくつかの実施形態を説明している。
【0074】
本例では、カメラCmrは、プロセッサ(例えば、処理モジュール)Procとディスプレイ(例えば、表示モジュール、コンピュータ画面、電子画面など)Dsplとに接続され、プロセッサとディスプレイの両方は、画像システム自体の一部とすることができ、又は、無線ネットワークを含むケーブル又はコンピュータネットワークを介してデータがカメラCmrからコンピュータシステムに渡されるコンピュータシステムなどの、別個の専用の処理及び/又は表示ユニットの一部であり得る。ディスプレイ及びプロセッサは、一体型ユニットとすることができる。ディスプレイは、従来の電子ディスプレイ/画面とするか又はタッチスクリーン型とすることができ、機器オペレータ又はユーザに情報を表示し且つ機器オペレータ又はユーザから情報を受信するためのユーザインタフェースを含むことができる。ユーザは、限定されるものではないが、マウス、ノブ、ボタン、ポインタ、及びタッチスクリーンを含む、当技術分野で知られているような任意のタイプのユーザ入力装置を使用してディスプレイと対話することができる。
【0075】
撮像の実行中に患者の視線が固定されたままであることが望ましい場合がある。視線の固定を達成する1つの方法は、患者に凝視するように指示できる固視標を提供することである。固視標は、眼のどの領域が撮像されるかに応じて、機器の内部又は外部とすることができる。内部固視標の一実施形態が
図13に示されている。撮像のために使用される一次光源LtSrcに加えて、1つ又は複数のLEDなどの、任意選択の第2の光源FxLtSrcは、レンズFxL、走査要素FxScn及び反射器/ミラーFxMを使用して光パターンが網膜に結像されるように位置決めすることができる。固視スキャナFxScnは、光パターンの位置を移動させることができ、反射器FxMは、光パターンを固視スキャナFxScnから眼Eの眼底Fへ導く。好ましくは、固視スキャナFxScnは、所望の固視位置に応じて網膜/眼底上の光パターンを移動させることができるように固視スキャナFxScnがシステムの瞳面に位置するように配置される。
【0076】
スリット走査式検眼システムは、用いられる光源及び波長選択フィルタリング要素に応じて、異なる撮像モードで動作することが可能である。トゥルーカラー反射率撮像(手持ち式又は細隙灯検眼鏡を使用して眼を検査するときに臨床医により観察される撮像と同様の撮像)は、一連の有色LED(赤色、青色、緑色)を用いて眼を撮像する場合に達成することができる。各カラーの画像は、各走査位置で各LEDをオンにした状態で段階的に構築することができ、又は各カラー画像を別個に完全に撮影することができる。3つのカラー画像は、トゥルーカラー画像を表示するために組み合わせることができ、又は網膜の異なる特徴を強調するために個々に表示することができる。赤色チャネルは、脈絡膜を最も良く強調し、緑色チャネルは網膜を強調し、青色チャネルは網膜前層を強調する。追加的に、特定の周波数の光(例えば、個々の有色LED又はレーザ)は、眼内の異なる蛍光体(例えば、自発蛍光)を励起するために使用することができ、結果として得られる蛍光は、励起波長をフィルタで除去することにより検出できる。
【0077】
眼底撮像システムはまた、赤外線レーザ(又は他の赤外線光源)を使用するなどにより、赤外線反射率画像を提供することができる。赤外線(IR)モードは、眼がIR波長に敏感ではないという点で有利である。この赤外線(IR)モードは、機器の位置合わせ中にユーザを補助するために(例えば、プレビュー/位置合わせモードで)眼の邪魔をせずにユーザが画像を連続的に撮影することを可能にし得る。また、IR波長は、組織を通る透過性が高く、且つ脈絡膜構造の視覚化の改善をもたらし得る。加えて、蛍光眼底血管造影(FA)及びインドシアニングリーン(ICG)血管造影撮像は、蛍光色素が被検者の血流に注入された後に画像を収集することにより達成することができる。例えば、FA(および/またはICG)では、光反応性色素(例えば蛍光色素)を被検者の血流に注入した後に、一連のタイムラプス画像を捕捉し得る。蛍光色素は、一部の人において生命を脅かすアレルギー反応を引き起こす可能性があるため、注意が必要であることに留意されたい。高コントラストのグレースケール画像は、色素を励起するために選択された特定の光周波数を用いてキャプチャされる。色素が眼の中を流れる際に、眼の様々な部分が明るく輝く(例えば、蛍光を発する)ため、色素、ひいては血流が眼の中をどのように進行しているかを視認できるようになる。
【0078】
光干渉断層撮影システム
眼底写真、眼底自発蛍光(FAF)、蛍光眼底造影法(FA)に加えて、眼科画像はその他の撮像モダリティ、例えば光干渉断層撮影法(OCT)、OCT血管造影法(OCTA)、及び/又は眼エコー写真によって製作されてもよい。本発明又は本発明の少なくとも一部は、当業界で理解されるように、若干の改良を加えて、これらのその他の眼科撮像モダリティにも応用されてもよい。より具体的には、本発明はまた、OCT及び/又はOCTA画像を生成するOCT/OCTAシステムにより生成された眼科画像にも応用されてよい。例えば、本発明は、en face OCT/OCTA画像にも応用されてよい。眼底画像の例は米国特許第8967806号明細書及び同第8998411号明細書において提供されており、OCTシステムの例は米国特許第6741359号明細書及び同第9706915号明細書において提供され、OCTA撮像システムの例は米国特許第9700206号明細書及び同第9759544号明細書に見られるかもしれず、これらすべての内容の全体を参照によって本願に援用する。万全を期して、例示的なOCT/OCTAシステムの例を本願で提供する。
【0079】
図14は、本発明との使用に適した眼の3D画像データ収集用の一般型周波数領域光干渉断層撮影(FD-OCT)システムを図解する。FD-OCTシステムOCT_1は、光源LtSrc1を含む。典型的な光源には、時間コヒーレンス長が短い広帯域光源、又は掃引レーザ光源が含まれるがこれらに限定されない。光源LtScr1からの光のビームは、典型的に光ファイバFbr1によってサンプル、例えば眼Eを照明するように誘導され、典型的なサンプルは人間の眼内組織である。光源LrSrc1は、スペクトル領域OCT(SD-OCT)の場合の短い時間コヒーレンス長の広帯域光源か、掃引光源OCT(SS-OCT)の場合の波長調整可能レーザ源の何れかとすることができる。光は、典型的には光ファイバFbr1の出力とサンプルEとの間のスキャナScnr1でスキャンされ、それによって光のビーム(破線Bm)はサンプルの画像撮影対象領域を横方向に(x及びyに)スキャンされる。フルフィールドOCTの場合、スキャナは不要であり、光は一度に所望の視野(FOV)全体に当てられる。サンプルから散乱した光は、典型的に照明用の光を案内するために使用されるものと同じ光ファイバFbr1へと集光される。同じ光源LtSrc1から派生する参照光は別の経路に沿って移動し、この場合、これには光ファイバFbr2及び調整可能な光学遅延を有する逆反射板RR1が含まれる。当業者であればわかるように、透過性の参照経路も使用でき、調整可能な遅延はサンプル又は干渉計の参照アームの中に設置できる。集光されたサンプル光は、典型的にファイバカプラCplr1において参照光と結合され、OCT光検出器Dtctr1(例えば、光検出器アレイ、デジタルカメラ等)内の光干渉を形成する。1つのファイバポートが検出器Dtctr1に到達するように示されているが、当業者であればわかるように、干渉信号のバランス又はアンバランス検出のために様々な設計の干渉計を使用できる。検出器Dtctr1からの出力は、プロセッサCmp1(例えば、コンピューティングデバイス)に供給され、それが観察された干渉をサンプルの深さ情報へと変換する。深さ情報は、プロセッサCmp1に関連付けられるメモリ内に保存され、及び/又はディスプレイ(例えば、コンピュータ/電子ディスプレイ/スクリーン)Scn1に表示されてよい。処理及び保存機能はOCT機器内に配置されてよく、又は機能は収集されたデータが転送される外部処理ユニット(例えば、
図16に示されるコンピュータシステム)上で実行されてもよい。このユニットは、データ処理専用とすることも、又はごく一般的で、OCTデバイス装置に専用ではないその他のタスクを実行することもできる。プロセッサCmp1は例えば、ホストプロセッサに供給される前に、又は並行してデータ処理ステップの一部又は全部を実行するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途集積回路(ASIC)、グラフィクス処理ユニット(GPU)、システムオンチップ(SoC)、中央処理ユニット(CPU)、汎用グラフィクス処理ユニット(GPGPU)、又はそれらの組合せを含んでいてよい。
【0080】
干渉計内のサンプルアームと参照アームは、バルク光学系、ファイバ光学系、又はハイブリッドバルク光学システムで構成でき、また、当業者の間で知られているように、マイケルソン、マッハ・ツェンダ、又は共通光路系設計等、異なるアーキテクチャを有することができる。光ビームとは、本明細書において使用されるかぎり、慎重に方向付けられるあらゆる光路と解釈されるべきである。ビームを機械的にスキャンする代わりに、光の場が網膜の一次元又は二次元エリアを照明して、OCTデータを生成できる(例えば、米国特許第9332902号明細書、ディー.ヒルマン(D.Hillmann)他著、「ホロスコピ-ホログラフィック光干渉断層撮影(Holoscopy-holographic optical coherence tomography)」オプティクスレターズ(Optics Letters)、第36巻(13)、p.2290、2011年、ワイ.ナカムラ(Y.Nakamura)他著、「ラインフィールドスペクトルドメイン光干渉断層撮影法による高速3次元ヒト網膜撮像(High-Speed three dimensional human retinal imaging by line field spectral domain optical coherence tomography)」、オプティクスエクスプレス(Optics Express)、第15巻(12)、p.7103、2007年、ブラスコヴィッチ(Blazkiewicz)他著、「フルフィールドフーリエドメイン光干渉断層撮影法の信号対ノイズ比の研究(Signal-to-noise ratio study of full-field Fourier-domain optical coherence tomography)」、アプライド・オプティクス(Applied Optics)、第44巻(36)、p.7722(2005年)参照)。時間領域システムでは、参照アームは干渉を生じさせるために調整可能な光学遅延を有する必要がある。バランス検出システムは典型的にTD-OCT及びSS-OCTシステムで使用され、分光計はSD-OCTシステムのための検出ポートで使用される。本明細書に記載の発明は、何れの種類のOCTシステムにも応用できる。本発明の様々な態様は、何れの種類のOCTシステムにも、又はその他の種類の眼科診断システム及び/又は、眼底撮像システム、視野試験装置、及び走査型レーザ偏光計を含むがこれらに限定されない複数の眼科診断システムにも適用できる。
【0081】
フーリエドメイン光干渉断層撮影法(FD-OCT)において、各測定値は実数値スペクトル制御干渉図形(Sj(k))である。実数値スペクトルデータには典型的に、背景除去、分散補正等を含む幾つかの後処理ステップが行われる。処理された干渉図形のフーリエ変換によって、複素OCT信号出力Aj(z)=|Aj|eiφが得られる。この複素OCT信号の絶対値、|Aj|から、異なる経路長での散乱強度、したがってサンプル内の深さ(z-方向)に関する散乱のプロファイルが明らかとなる。同様に、位相φjもまた、複素OCT信号から抽出できる。深さに関する手散乱のプロファイルは、軸方向スキャン(A-スキャン)と呼ばれる。サンプル内の隣接する位置において測定されたA-スキャンの集合により、サンプルの断面画像(断層画像又はB-スキャン)が生成される。サンプル上の横方向の異なる位置で収集されたBスキャンの集合が、データボリューム又はキューブを構成する。特定のデータボリュームについて、速い軸とは1つのB-スキャンに沿ったスキャン方向を指し、遅い軸とは、それに沿って複数のB-スキャンが収集される軸を指す。「クラスタスキャン」という用語は、血流を識別するために使用されてよいモーションコントラストを解析するために、同じ(又は実質的に同じ)位置(又は領域)での反復的取得により生成されるデータの1つのユニット又はブロックを指してよい。クラスタスキャンは、サンプル上のほぼ同じ位置において比較的短い時間間隔で収集された複数のA-スキャン又はB-スキャンで構成できる。クラスタスキャンのスキャンは同じ領域のものであるため、静止構造はクラスタスキャン中のスキャン間で比較的変化しないままであるのに対し、所定の基準を満たすスキャン間のモーションコントラストは血液流として識別されてよい。B-スキャンを生成するための様々な方法が当業界で知られており、これには、水平又はx方向に沿ったもの、垂直又はy方向に沿ったもの、x及びyの対角線に沿ったもの、又は円形若しくは螺旋パターンのものが含まれるがこれらに限定されない。B-スキャンは、x-z次元内であってよいが、z次元を含む何れかの断面画像であってもよい。
【0082】
OCT血管造影法又は関数型OCTにおいて、解析アルゴリズムは、動き又は流れを解析するために、サンプル上の同じ、又はほぼ同じサンプル位置において異なる時間に収集された(例えば、クラスタスキャン)OCTデータに適用されてよい(例えば、米国特許出願公開第2005/0171438号明細書、同第2012/0307014号明細書、同第2010/0027857号明細書、同第2012/0277579号明細書、及び米国特許第6549801号明細書を参照されたく、これらの全ての全体を参照によって本願に援用する)。OCTシステムでは、血流を識別するために多くのOCT血管造影法処理アルゴリズム(例えば、モーションコントラストアルゴリズム)のうちの何れか1つを使用してもよい。例えば、モーションコントラストアルゴリズムは、画像データから導出される強度情報(強度に基づくアルゴリズム)、画像データからの位相情報(位相に基づくアルゴリズム)、又は複素画像データ(複素に基づくアルゴリズム)に適用できる。en face画像は3D OCTデータの2D投射である(例えば、個々のA-スキャンの各々の強度を平均することにより、これによって、各A-スキャンが2D投射内のピクセルを画定する)。同様に、en face脈管画像は、モーションコントラスト信号を表示する画像であり、その中で深さに対応するデータディメンション(例えば、A-スキャンに沿ったz方向)は、典型的にはデータの全部又は隔離部分を加算又は集積することによって、1つの代表値(例えば、2D投射画像内のピクセル)として表示される(例えば、米国特許第7301644号明細書を参照されたく、その全体を参照によって本願に援用する)。血管造影機能を提供するOCTシステムは、OCT血管造影(OCTA)システムと呼ばれてよい。
【0083】
図15は、en face脈管構造画像の例を示す。データを処理し、当業界で知られるモーションコントラスト法の何れかを用いてモーションコントラストをハイライトした後に、網膜の内境界膜(ILM:internal limiting membrane)の表面からのある組織深さに対応するピクセル範囲を加算して、その脈管構造のen
face(例えば、正面図)画像が生成されてよい。
【0084】
コンピューティングデバイス/システム
図16は、例示的なコンピュータシステム(又はコンピューティングデバイス又はコンピュータデバイス)を図解する。幾つかの実施形態において、1つ又は複数のコンピュータシステムは本明細書において記載又は図解された機能を提供し、及び/又は本明細書において記載又は図解された1つ又は複数の方法の1つ又は複数のステップを実行してよい。コンピュータシステムは、何れの適当な物理的形態をとってもよい。例えば、コンピュータシステムは、埋込みコンピュータシステム、システムオンチップ(SOC)、又はシングルボードコンピュータシステム(SBC)(例えば、コンピュータ・オン・モジュール(COM)又はシステム・オン・モジュール(SOM)等)、デスクトップコンピュータシステム、ラップトップ若しくはノートブックコンピュータシステム、コンピュータシステムのメッシュ、携帯電話、携帯型情報端末(PDA)、サーバ、タブレットコンピュータシステム、拡張/仮想現実装置、又はこれらのうちの2つ以上の組合せであってよい。適当であれば、コンピュータシステムはクラウド内にあってよく、これは1つ又は複数のクラウドコンポーネントを1つ又は複数のネットワーク内に含んでいてよい。
【0085】
幾つかの実施形態において、コンピュータシステムはプロセッサCpnt1、メモリCpnt2、ストレージCpnt3、入力/出力(I/O)インタフェースCpnt4、通信インタフェースCpnt5、及びバスCpnt6を含んでいてよい。コンピュータシステムは、任意選択により、ディスプレイCpnt7、例えばコンピュータモニタ又はスクリーンも含んでいてよい。
【0086】
プロセッサCpnt1は、コンピュータプログラムを構成するもの等、命令を実行するためのハードウェアを含む。例えば、プロセッサCpnt1は、中央処理ユニット(CPU)又は汎用コンピューティング・オン・グラフィクス処理ユニット(GPGPU)であってもよい。プロセッサCpnt1は、命令を内部レジスタ、内部キャッシュ、メモリCpnt2、又はストレージCpnt3から読み出し(又はフェッチし)、この命令を復号して実行し、1つ又は複数の結果を内部レジスタ、内部キャッシュ、メモリCpnt2、又はストレージCpnt3に書き込んでよい。特定の実施形態において、プロセッサCpnt1は、データ、命令、又はアドレスのための1つ又は複数の内部キャッシュを含んでいてよい。プロセッサCpnt1は、1つ又は複数の命令キャッシュ、1つ又は複数のデータキャッシュを、例えばデータテーブルを保持するために含んでいてよい。命令キャッシュ内の命令は、メモリCpnt2又はストレージCpnt3内の命令のコピーであってもよく、命令キャッシュはプロセッサCpnt1によるこれらの命令の読出しをスピードアップするかもしれない。プロセッサCpnt1は、何れの適当な数の内部レジスタを含んでいてもよく、1つ又は複数の算術論理演算ユニット(ALU:arithmetic logic units)を含んでいてよい。プロセッサCpnt1は、マルチコアプロセッサであるか、又は1つ若しくは複数のプロセッサCpnt1を含んでいてよい。本開示は特定のプロセッサを説明し、図解しているが、本開示は何れの適当なプロセッサも想定している。
【0087】
メモリCpnt2は、処理を実行し、又は処理中に中間データを保持するプロセッサCpnt1のための命令を保存するメインメモリを含んでいてよい。例えば、コンピュータシステムは、命令又はデータ(例えば、データテーブル)をストレージCpnt3から、又は他のソース(例えば、他のコンピュータシステム)からメモリCpnt2にロードしてもよい。プロセッサCpnt1は、メモリCpnt2からの命令とデータを1つ又は複数の内部レジスタ又は内部キャッシュにロードしてもよい。命令を実行するために、プロセッサCpnt1は内部レジスタ又は内部キャッシュから命令を読み出して復号してもよい。命令の実行中又はその後に、プロセッサCpnt1は1つ又は複数の結果(これは、中間結果でも最終結果でもよい)を内部レジスタ、内部キャッシュ、メモリCpnt2、又はストレージCpnt3に書き込んでよい。バスCpnt6は、1つ又は複数のメモリバス(これは各々、アドレスバスとデータバスを含んでいてよい)を含んでいてよく、プロセッサCpnt1をメモリCpnt2及び/又はストレージCpnt3に連結してよい。任意選択により、1つ又は複数のメモリ管理ユニット(MMU)は、プロセッサCpnt1とメモリCpnt2との間のデータ伝送を容易にする。メモリCpnt2(これは、高速揮発性メモリであってもよい)には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、例えばダイナミックRAM(DRAM)又はスタティックRAM(SRAM)が含まれていてよい。ストレージCpnt3には、データ又は命令のための長期又は大容量メストレージを含んでいてよい。ストレージCpnt3はコンピュータシステムに内蔵されても外付けでもよく、ディスクドライブ(例えば、ハードディスクドライブHDD、又はソリッドステートドライブSSD)、フラッシュメモリ、ROM、EPROM、光ディスク、磁気光ディスク、磁気テープ、ユニバーサルシリアルバス(USB)-アクセス可能ドライブ、又はその他の種類の不揮発性メモリのうちの1つ又は複数を含んでいてよい。
【0088】
I/OインタフェースCpnt4は、ソフトウェア、ハードウェア、又はそれら両方の組合せであってよく、I/Oデバイスと通信するための1つ又は複数のインタフェース(例えば、シリアル又はパラレル通信ポート)を含んでいてよく、これはヒト(例えば、ユーザ)との通信を可能にしてもよい。例えば、I/Oデバイスとしては、キーボード、キーパッド、マイクロフォン、モニタ、マウス、プリンタ、スキャナ、スピーカ、スチールカメラ、スタイラス、テーブル、タッチスクリーン、トラックボール、ビデオカメラ、他の適当なI/Oデバイス、又はこれら2つ以上の組合せが含まれていてよい。
【0089】
通信インタフェースCpnt5は、他のシステム又はネットワークと通信するためのネットワークインタフェースを提供してもよい。通信インタフェースCpnt5は、Bluetooth(登録商標)インタフェース又はその他の種類のパケットベース通信を含んでいてよい。例えば、通信インタフェースCpnt5は、ネットワークインタフェースコントローラ(NIC)及び/又は、無線ネットワークとの通信のための無線NIC若しくは無線アダプタを含んでいてよい。通信インタフェースCpnt5は、WI-FIネットワーク、アドホックネットワーク、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、無線PAN(例えば、Bluetooth WPAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、携帯電話ネットワーク(例えば、汎欧州デジタル移動電話方式(Global System for Mobile Communications)(GSM(登録商標))ネットワーク等)、インターネット、又はこれらの2つ以上の組合せとの通信を提供してよい。
【0090】
バスCpnt6は、コンピューティングシステムの上述のコンポーネント間の通信リンクを提供してよい。例えば、バスCpnt6は、アクセラレーテッド・グラフィックス・ポート(Accelerated Graphics Port)(AGP)若しくはその他のグラフィクスバス、拡張業界標準(Enhanced Industry Standard)アーキテクチャ(EISA)バス、フロントサイドバス(FSB)、ハイパートランスポート(HyperTransport)(HT)インタコネクト、業界標準アーキテクチャ(ISA)バス、インフィニバンド(InfiniBand)バス、low-pin-count(LPC)バス、メモリバス、マイクロチャネルアーキテクチャ(MCA)バス、ペリフェラル・コンポーネント・インターコネクト(Peripheral Component Interconnect)(PCI)バス、PCI-Express(PCIe)バス、シリアル・アドバンスト・テクノロジ・アタッチメント(serial advanced technology attachment)(SATA)バス、ビデオ・エレクトロニクス・スタンダーズ・アソシエーション・ローカル(Video Electronics Standards Association local)(VLB)バス、若しくはその他の適当なバス、又はこれらの2つ以上の組合せを含んでいてよい。
【0091】
本開示は、特定の数の特定のコンポーネントを特定の配置で有する特定のコンピュータシステムを説明し、図解しているが、本開示は何れの適当な数の何れの適当なコンポーネントを何れの適当な配置で有する何れの適当なコンピュータシステムも想定している。
【0092】
本明細書において、コンピュータ可読非一時的記憶媒体は、1つ又は複数の半導体ベース又はその他の集積回路(IC)(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)若しくは特定用途IC(ASIC))、ハードディスクドライブ(HDD)、ハイブリッドハードドライブ(HHD)、光ディスク、光ディスクドライブ(ODD)、磁気光ディスク、磁気光ドライブ、フロッピディスケット、フロッピディスクドライブ(FDD)、磁気テープ、ソリッドステートドライブ(SSD)、RAM-ドライブ、SECURE DIGITALカード若しくはドライブ、その他のあらゆる適当なコンピュータ可読非一時的記憶媒体、又は適当であればこれらの2つ以上あらゆる適当な組合せを含んでいてよい。コンピュータ可読非一時的記憶媒体は、揮発性、不揮発性、又は適当であれば揮発性と不揮発性の組合せであってよい。
【0093】
本発明は幾つかの具体的な実施形態と共に説明されているが、当業者にとっては明白であるように、上記の説明を参照すれば多くのその他の代替案、改良、及び変形型が明らかである。それゆえ、本明細書に記載の発明は、付属の特許請求の範囲の主旨と範囲に含まれるかもしれないあらゆるこのような代替案、改良、応用、及び変形型の全てを包含することが意図されている。
【国際調査報告】