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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(54)【発明の名称】1,3-α-ジエン(I)の官能化
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20230208BHJP
   C07C 33/14 20060101ALI20230208BHJP
   C07C 29/48 20060101ALI20230208BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
C07F7/18 C CSP
C07F7/18 D
C07C33/14
C07C29/48
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532091
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2020086174
(87)【国際公開番号】W WO2021130058
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】19219366.2
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, マーク‐アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ウェステンベルグ, ベッティーナ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC13
4H006AC41
4H006BA02
4H006BA32
4H006BE12
4H006BE32
4H039CA92
4H039CF10
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ03
4H049VR21
4H049VR22
4H049VR23
4H049VR41
4H049VR42
4H049VR43
4H049VS21
4H049VT17
4H049VW02
4H049VW32
(57)【要約】
本発明は、特定の1,3-α-ジエンの官能化に関する。これらの官能化1,3-α-ジエンは、有機合成における(特にカロテノイド、ビタミンA及び/又はビタミンA誘導体の合成における)重要な中間体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化方法であって、式(I)
【化1】

(式中、Rは、
【化2】

(式中、星印は、接続結合を示す)
である)
の化合物は、少なくとも1種の遷移金属触媒の存在下において、式(II)
【化3】

(式中、
は、-CH、-CHCH、-(OCHCH)又はフェニルであり、
は、-CH、-CHCH又は-(OCHCH)であり、
は、-CH、-CHCH又は-(OCHCH)である)
の化合物と反応される、ヒドロシリル化方法。
【請求項2】
不活性溶媒中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
いかなる溶媒も用いずに行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(Ia)
【化4】

の化合物は、出発物質として使用される、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(Ib)
【化5】

の化合物は、出発物質として使用される、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(Ic)
【化6】

の化合物は、出発物質として使用される、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
式(Id)
【化7】

の化合物は、出発物質として使用される、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(IIa)
【化8】

の化合物は、ヒドロシリル化反応剤として使用される、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(II)の前記化合物は、式(I)の前記化合物に対して等モル量で反応混合物に添加される、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒は、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリドである、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒は、式(I)の前記化合物に対して0.01~0.5モル%の量で使用され、より好ましいのは、式(I)の前記化合物に対して0.05~0.3モル%の範囲である、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
25℃~100℃の温度範囲で行われる、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
過酸化水素及び塩基の存在下における、請求項1~12の何れか一項に記載の方法によって得られる反応生成物の酸化的開裂。
【請求項14】
式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(III’a)、(III’b)及び(III’c)
【化9】

の化合物。
【請求項15】
式(IIId)、(IIIe)、(IIIf)、(IIId’)、(III’e)及び(III’f)
【化10】

の化合物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特定の1,3-α-ジエンの官能化に関する。これらの官能化1,3-α-ジエンは、有機合成における(特にカロテノイド、ビタミンA及び/又はビタミンA誘導体の合成における)重要な中間体である。
【0002】
本発明は、その後に対応するアルコールへの酸化が続く、ヒドロシリル化による特定の1,3-α-ジエンの官能化に関する。
【0003】
官能化の第1の工程は、ヒドロシリル化方法である。本発明のヒドロシリル化の驚くべき効果は、過半数を占める1,4-付加物が得られることにある。1,2-付加生成物は、わずかな量でのみ得られる。
【0004】
ヒドロシリル化は、周知の反応である。類似の化合物(本特許出願において本発明者らが特許請求及び記載するような)のヒドロシリル化は、先行技術から(即ちI.Ojima et al,Journal of Organometallic Chemistry 1978,157(3),359-372から)知られている。
【0005】
先行技術から知られている類似の化合物の全てのヒドロシリル化では、1,2付加生成物が主生成物である。(I.Ojima et al,Journal of Organometallic Chemistry 1978,157(3),359-37)によって開示された反応では、1,2-付加生成物対1,4-付加生成物の比率は、常に少なくとも3:1である。
【0006】
1,4-付加生成物は、有機合成における、特にカロテノイド、ビタミンA及びビタミンA誘導体の合成における極めて興味深い中間体である。
【0007】
従って、1,4-付加物を多量に生成することを可能にし、且つさらに全収率が優れているヒドロシリル化方法が必要とされている。
【0008】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)であって、式(I)
【化1】

(式中、Rは、
【化2】

(式中、星印は、接続結合を示す)
である)
の化合物は、少なくとも1種の遷移金属触媒の存在下において、式(II)
【化3】

(式中、
は、-CH、-CHCH、-(OCHCH)又はフェニルであり、
は、-CH、-CHCH又は-(OCHCH)であり、
は、-CH、-CHCH又は-(OCHCH)である)
の化合物と反応される、ヒドロシリル化方法(P)に関する。
【0009】
ヒドロシリル化は、任意の溶媒を用いて又は用いずに行うことができる。溶媒が使用される場合、溶媒は、不活性である必要がある。
【0010】
好ましくは、ヒドロシリル化は、いかなる溶媒も用いずに行われる。
【0011】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)であり、不活性溶媒中で行われるヒドロシリル化方法(P1)にも関する。
【0012】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)であり、いかなる溶媒も用いずに行われるヒドロシリル化方法(P2)にも関する。
【0013】
好ましいのは、式(Ia)
【化4】

の化合物が出発物質として使用される方法である。
【0014】
さらに好ましいのは、式(Ib)
【化5】

の化合物が出発物質として使用される方法である。
【0015】
さらに好ましいのは、式(Ic)
【化6】

の化合物が出発物質として使用される方法である。
【0016】
さらに好ましいのは、式(Id)
【化7】

の化合物が出発物質として使用される方法である。
【0017】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)、(P1)又は(P2)であり、式(Ia)
【化8】

の化合物が出発物質として使用される、ヒドロシリル化方法(P3)にも関する。
【0018】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)、(P1)又は(P2)であり、式(Ib)
【化9】

の化合物が出発物質として使用される、ヒドロシリル化方法(P3’)にも関する。
【0019】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)、(P1)又は(P2)であり、式(Ic)
【化10】

の化合物が出発物質として使用される、ヒドロシリル化方法(P3’’)にも関する。
【0020】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)、(P1)又は(P2)であり、式(Id)
【化11】

の化合物が出発物質として使用される、ヒドロシリル化方法(P3’’’)にも関する。
【0021】
さらに、式(Ib)
【化12】

の化合物は、新規である。
【0022】
従って、本発明は、式(Ib)
【化13】

の化合物にも関する。
【0023】
化合物(Ib)を良好な収率で得るための方法は、以下:
【化14】

である。
【0024】
好ましいのは、式(IIa)
【化15】

の化合物がヒドロシリル化反応剤として使用される方法である。
【0025】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)又は(P3’’’)であり、式(IIa)
【化16】

の化合物がヒドロシリル化試薬として使用される、ヒドロシリル化方法(P4)にも関する。
【0026】
式(II)の化合物は、式(I)の化合物に対して、通常、等モル量で反応混合物に添加される。式(I)の化合物に対してわずかに過剰の式(II)の化合物を添加することが可能である。好ましいのは、等モル量である。
【0027】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P3’’’)又は(P4)であり、式(II)の化合物が式(I)の化合物に対して等モル量で反応混合物に添加される、ヒドロシリル化方法(P5)にも関する。
【0028】
本発明による方法は、少なくとも1種の遷移金属触媒、好ましくはRh触媒の存在下で行われる。
【0029】
極めて好ましい触媒は、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリドである。
【0030】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P3’’’)、(P4)又は(P5)であり、触媒がトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリドである、ヒドロシリル化方法(P6)にも関する。
【0031】
触媒は、少量で添加される。通常の(且つ同様に好ましい範囲は、式(I)の化合物に対して0.01~0.5モル%である。より好ましいのは、式(I)の化合物に対して0.05~0.3モル%の範囲である。
【0032】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P3’’’)、(P4)、(P5)又は(P6)であり、触媒が式(I)の化合物に対して0.01~0.5モル%の量で使用される、ヒドロシリル化方法(P7)にも関する。(より好ましいのは、式(I)の化合物に対して0.05~0.3モル%の範囲である。
【0033】
ヒドロシリル化反応は、通常、25℃~100℃の温度範囲で行われる。好ましいのは、昇温(30℃~100℃)である。
【0034】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P3’’’)、(P4)、(P5)、(P6)又は(P7)であり、25℃~100℃の温度範囲で行われるヒドロシリル化方法(P8)にも関する。
【0035】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P8)であり、30℃~100℃の温度範囲で行われるヒドロシリル化方法(P8’)にも関する。
【0036】
さらに、ヒドロシリル化反応は、不活性ガス雰囲気(通常、Nガス)下で行うことができる。
【0037】
従って、本発明は、ヒドロシリル化方法(P)、(P1)、(P2)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P3’’’)、(P4)、(P5)、(P6)、(P7)、(P8)又は(P8’)であり、不活性ガス雰囲気(通常、Nガス)下で行われるヒドロシリル化方法(P9)にも関する。
【0038】
さらに、ヒドロシリル化方法から得られる反応生成物の幾つか(式(III)及び(III’)の化合物)は、新規な化合物である。
【0039】
以下の(式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(III’a)、(III’b)及び(III’c):
【化17】

の化合物は、新規である。
【0040】
従って、本発明のさらなる実施形態は、式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(III’a)、(III’b)及び(III’c):
【化18】

の化合物である。
【0041】
さらに、以下の式(IIId)、(IIIe)、(IIIf)、(IIId’)、(III’e)及び(III’f)
【化19】

の化合物は、新規である。
【0042】
式(IIId)、(IIIe)、(IIIf)、(IIId’)、(III’e)及び(III’f)の化合物が任意のE/Z異性体形態であり得ることは、明白である。
【0043】
従って、本発明の別の実施形態は、式(IIId)、(IIIe)、(IIIf)、(IIId’)、(III’e)及び(III’f)
【化20】

の化合物である。
【0044】
出発物質である式(I)の化合物は、(市販で得られなければ)一般に知られている方法(即ちDesai,Shailesh R.et al.,Tetrahedron 1992,48(3),481-490)によって生成することができる。
【0045】
有機合成において(特にカロテノイド、ビタミンA及びビタミンA誘導体の生成において)極めて好適である中間体を得るために、ヒドロシリル化方法の反応生成物(式(III)及び(III’)の化合物)は、以下のスキームに示したように、酸化的開裂を介してアルコールに転換される。
【化21】
【0046】
酸化的開裂は、周知の方法に従って行われる。通常且つ好ましくは、酸化的開裂は、過酸化水素及び塩基の存在下で行われる。
【0047】
以下の実施例では、本発明を例示する。全ての部は、重量に関連し、温度は、℃で与えられる。
【0048】
[実施例]
[実施例1]
不活性ガス雰囲気下の5mlのフラスコに、続いてシクロ-α-ファルネセン(式(Ia)の化合物)(1.00g、4.08mmol)、トリエトキシシラン(0.758ml、4.08mmol)及びトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(3.78mg、4.08μmol、0.1モル%)を添加した。混合物を油浴中で65℃に加温し、24時間撹拌した。その後、油浴を取り除き、反応混合物が室温に冷却させた。それ以上のワークアップを行わずに、粗生成物を1,4-付加生成物及び1,2-付加生成物(式(IIIa)及び(III’a)の化合物)の混合物(1.64g、qNMRによる純度64.4%、収率84%、2a/3a=83:17)として得て、カラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン/ジイソプロピルエーテル 9:1)によって精製した。
【0049】
[実施例2]
不活性ガス雰囲気下の5mlのフラスコに、続いてシクロ-α-ファルネセン(式(Ia)の化合物)(1.00g、4.08mmol)、ジエトキシメチルシラン(0.653ml、4.08mmol)及びトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(3.78mg、4.08μmol、0.1モル%)を添加した。混合物を油浴中で65℃に加温し、21.5時間撹拌した。その後、油浴を取り除き、反応混合物が室温に冷却させた。それ以上のワークアップを行わずに、粗生成物を1,4-付加生成物及び1,2-付加生成物(式(IIIb)及び(III’b)の化合物)の混合物(1.50g、qNMRによる純度78.2%、収率85%、2b/3b=46:54)として得て、カラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン/ジイソプロピルエーテル(9:1))によって精製した。
【0050】
[実施例3]
不活性ガス雰囲気下の5mlのフラスコに、続いてシクロ-α-ファルネセン(式(Ia)の化合物)(1.00g、4.16mmol)、ジメチルエトキシシラン(0.610ml、4.16mmol)及びトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(3.85mg、4.16μmol、0.1モル%)を添加した。混合物を油浴中で65℃に加温し、16時間撹拌した。その後、油浴を取り除き、反応混合物が室温に冷却させた。それ以上のワークアップを行わずに、粗生成物を1,4-付加生成物及び1,2-付加生成物(式(IIIc)及び(III’c)の化合物)の混合物(1.43g、qNMRによる純度77%、収率86%、2c/3c=33:67)として得て、カラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン/ジイソプロピルエーテル(95:5))によって精製した。
【0051】
[実施例4]
不活性ガス雰囲気下の5mlのフラスコに、続いてα-ファルネセン(式(Ic)の化合物)(0.75g、99.4%、3.65mmol)、ジエトキシメチルシラン(0.584ml、3.62mmol)及びトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(3.38mg、3.65μmol)を添加した。混合物を油浴中で65℃に加温し、23時間撹拌した。その後、油浴を取り除き、反応混合物が室温に冷却させた。それ以上のワークアップを行わずに、粗生成物を以下の式:
【化22】

の1,4-付加生成物及び1,2-付加生成物の混合物(1.19g、qNMRによる純度79.3%、収率76%、(IIId)/(III’d)=84:16[GC/MS面積%!によって決定された(IIId)/(III’d)比])として得て、カラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン/ジイソプロピルエーテル(95:5))によって精製した。
【0052】
[実施例5]
不活性ガス雰囲気下の5mlのフラスコに、続いてα-スプリンゲン(式(Id)の化合物)(0.300g、83.1%、0.915mmol)、トリエトキシシラン(0.179ml、0.915mmol)及びトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(4.23mg、4.57μmol)を添加した。混合物を油浴中で65℃に加温し、4時間撹拌した。その後、油浴を取り除き、反応混合物が室温に冷却させた。粗生成物を薄茶色の液体として得て、それ以上のワークアップを行わずに分析した(490.7mg、qNMRによる純度75.7%、収率93%、(GC/MSによると主として1,4-付加生成物)。
【化23】
【0053】
[実施例6:式(Ib)の化合物の合成]
不活性ガス雰囲気下において、2,5-ジヒドロ-3-メチルチオフェン-1,1-ジオキシド(8.68g、65.6mmol)をテトラヒドロフラン(135ml)中に溶解させ、1-(5-ブロモ-3-メチル-3-ペンテニル)-2,6,6-トリメチル-シクロヘキセン(24.16g、65.6mmol)を添加した。褐色の溶液を-78℃に冷却させた。この温度でリチウムビス(トリメチルシリル)アミドを50分間にわたって滴加した(発熱反応)。完全な添加後、反応混合物を-78℃でさらに15分間撹拌した。次に、反応混合物を0℃に加温させ、飽和塩化アンモニウム水溶液(90ml)を用いてクエンチし、15分間撹拌した。この時間中、白色の沈降物が形成されたため、これを水の添加によって溶解させた。層を分離し、水相をTHF(1×100ml)で抽出した。合わせた有機層を濾過して減圧下で濃縮した。生じた橙色の懸濁液(26.6g)をヘプタン/酢酸エチル(95:5v/v)(60ml)中に溶解させ、カラムクロマトグラフィーによって精製した(13.53g、収率61%)。
【0054】
精製生成物(10.08g、30.0mmol)をピリジン(120ml)中に溶解させ、黄色溶液を還流するまで加熱した(115℃)。3時間後、反応混合物を室温に冷却させ、BHT(1mg)を添加した。次に、ピリジンを45℃及び25mbarでの蒸留(2時間)によって取り除いた。生じた残渣をヘプタン中に溶解させ、シリカ(24gのSiO、7mlのヘプタン)の上で濾過し、減圧下で濃縮した。生成物((Ib)の化合物)は、収率87%(純度95.4%)で黄色の液体(7.46g)として得られた。
【0055】
[実施例7]
不活性ガス雰囲気下の5mlのフラスコに、続いてα-ジエン(式(Ib)の化合物)(3.50g、95.4%、12.25mmol)、トリエトキシシラン(2.394ml、12.25mmol)及びトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(11mg、12μmol、0.1モル%)を添加した。混合物を油浴中で65℃に加温し、5.5時間撹拌した。その後、油浴を取り除き、反応混合物が室温に冷却させた。それ以上のワークアップを行わずに、粗生成物を1,4-付加生成物及び1,2-付加生成物の混合物(
【化24】

(5.44g、qNMRによる純度84.7%、収率86%、(IIIe)/(III’e)=90:10)として得た。
【0056】
[実施例8]
不活性ガス雰囲気下の5mlのフラスコに、続いてα-ジエン(11)(500g、95.4%、1.751mmol)、ジエトキシメチルシラン(280μl、1.751mmol)及びトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(1.62mg、1.751μmol、0.1モル%)を添加した。混合物を油浴中で65℃に加温し、4.5時間撹拌した。その後、油浴を取り除き、反応混合物が室温に冷却させた。それ以上のワークアップを行わずに、粗生成物を1,4-付加生成物及び1,2-付加生成物の混合物
【化25】

(714.6mg、qNMRによる純度75.6%、収率76%、(IIIf)/(III’f)=78:22)として得た。
【0057】
[実施例9]
不活性ガス雰囲気下の5mlのフラスコに、続いてα-ジエン(500g、95.4%、1.751mmol)、ジメチルエトキシシラン(256μl、1.751mmol)及びトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(1.62mg、1.751μmol、0.1モル%)を添加した。混合物を油浴中で65℃に加温し、3時間撹拌した。その後、油浴を取り除き、反応混合物が室温に冷却させた。それ以上のワークアップを行わずに、粗生成物を1,4-付加生成物及び1,2-付加生成物の混合物
【化26】

671.7mg、qNMRによる純度78.1%、収率80%、(IIIg)/(III’g)=77:23)として得た。
【0058】
[実施例10]
不活性ガス雰囲気下の25mlのフラスコ内のTHF(2.50ml)及びメタノール(2.500ml)中に(E)-トリエトキシ(3-メチル-5-(2,6,6-トリメチル-シクロヘキス-1-エン-1-イル)ペント-2-エン-1-イル)シラン(500mg、1.276mmol)を溶解させた。炭酸水素カリウム(128mg、1.276mmol)及びH(0.521ml、5.11mmol)を添加し、反応混合物を還流するまで加熱した。2時間後、反応混合物を0℃に冷却した。飽和炭酸水素ナトリウム溶液(10ml)を添加し、混合物をジエチルエーテル(20ml)により希釈し、分液漏斗に移した。層を分離した。有機層を半飽和食塩水(2×20ml)で洗浄し、水層は、ジエチルエーテル(2×20ml)を用いて再抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムの上で乾燥させ、減圧下(rotavap、35℃)で濃縮して、式(IVa)及び(IV’a)
【化27】

の化合物の幾何異性体の混合物として、84:16(IVa:(IV’a)の比において、300mgの粗生成物(qNMRによる純度77.8%、収率82%)を得た。この物質は、カラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン/酢酸エチル8:2)によって精製した。
【0059】
[実施例11]
不活性ガス雰囲気下の10mlのフラスコにおいて、(E)-ジエトキシ(メチル)(3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキス-1-エン-1-イル)ペント-2-エン-1-イル)シラン(300mg、0.811mmol)をTHF(2.50ml)及びメタノール(2.500ml)中に溶解させた。炭酸水素カリウム(81mg、0.811mmol)及びH(0.331ml、3.24mmol)を添加し、反応混合物を還流するまで加熱した。2.5時間後、反応混合物を0℃に冷却した。飽和炭酸水素ナトリウム溶液(10ml)を添加し、混合物をジエチルエーテル(20ml)により希釈し、分液漏斗に移した。層を分離した。有機層を半飽和食塩水(2×20ml)で洗浄し、水層は、ジエチルエーテル(2×20ml)を用いて再抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムの上で乾燥させ、減圧下(rotavap、35℃)で濃縮して、式(IVa)及び(IV’a)
【化28】

の化合物の幾何異性体の混合物として、40:60(IVa:(IV’a)の比において、281mgの粗生成物(qNMRによる純度63.3%、収率99%)を得た。この物質をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン/酢酸エチル(8:2))によって精製した。
【0060】
[実施例12]
((2E,6E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキス-1-エン-1-イル)ノナ-2,6-ジエン-1-イル)トリエトキシシラン(5.39g、10.45mmol)をTHF(35ml)及びメタノール(35ml)中に溶解させた。炭酸水素カリウム(1.046g、10.45mmol)及び30%の過酸化水素(4.27ml、41.8mmol)を添加し、反応混合物を還流するまで加熱した。4.5時間後、反応混合物を0℃に冷却し、飽和NaHCO水溶液(100ml)を添加した。混合物を分液漏斗内に移し、ジエチルエーテル(200ml)を用いて希釈した。層を分離し、有機相を、半飽和食塩水(2×200ml)を用いて洗浄した。水層をジエチルエーテル(2×200ml)により抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムの上で乾燥させ、濾過し、35℃の減圧下で濃縮して、粗生成物(3.76g)を得た。粗物質は、カラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン/酢酸エチル8:2)によって精製した。2.23gの生成物が、式(IVb)及び(IV’b)
【化29】

の幾何異性体の混合物(qNMRによる純度88.3%)として得られた。
【国際調査報告】